(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-22
(54)【発明の名称】リードレスペースメーカー、その前端部材及び後端部材
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20240712BHJP
A61N 1/372 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/372
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535527
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 CN2021139373
(87)【国際公開番号】W WO2022135307
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】202011564889.8
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522465341
【氏名又は名称】マイクロポート ソアリング シーアールエム (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ヘ ミンチェン
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ23
4C053KK10
(57)【要約】
リードレスペースメーカーと前端部材と後端部材とを備える。前記前端部材は、互いに結合された前端本体及び係止部材を含む。前記前端本体は、所定の部位に固定されるように構成される。前記係止部材は、外力が作用していないときに初期構成をとる。前記係止部材の少なくとも一部は、外力の作用下で前記前端本体に対して径方向に拡張又は収縮可能である。前記係止部材は、前記前端本体の軸方向に延びる収容室を規定する。前記収容室は、前記前端本体の軸方向において、本体部と、前記本体部の近位端に位置する縮径部とを含む。前記係止部材の初期構成において、前記縮径部の内径寸法は、前記本体部の内径寸法よりも小さい。前記縮径部は、前記後端部材の腰部を収容するように構成され、前記本体部は、前記後端部材の第1肩部を収容するように構成される。後端部材を容易に収容室に挿入し収容室から取り外しでき、後端部材を容易に交換できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードレスペースメーカーの後端部材に着脱可能に結合されたリードレスペースメーカーの前端部材であって、互いに接続された前端本体及び係止部材を含み、
前記前端本体は、所定の部位に固定されるように構成され、
前記係止部材は、外力が作用していないときに初期構成をとり、外力が作用しているときに前記係止部材の少なくとも一部が前記前端本体に対して径方向に拡張又は収縮可能であり、
前記係止部材は、前記前端本体の軸方向に延びる収容室を規定し、前記収容室は、前記前端本体の軸方向において、本体部と、前記本体部の近位端に位置する縮径部とを含み、前記縮径部は、前記係止部材が初期構成にあるときに、前記本体部の内径寸法よりも小さい内径寸法を有し、前記縮径部は、後端部材の腰部を収容するように構成され、前記本体部は、前記後端部材の第1肩部を収容するように構成される、リードレスペースメーカーの前端部材。
【請求項2】
前記係止部材は、第1弾性要素と、複数の弾性ストリップと、複数の弾性要素コネクタとを含み、前記複数の弾性ストリップは、前記前端本体の周囲に周方向に配置され、前記弾性ストリップの遠位端は、前記前端本体に固定的に接続され、前記弾性要素コネクタは、前記弾性ストリップの内側に設けられ、隣接する2つの前記弾性要素コネクタのそれぞれは、前記第1弾性要素によって接続され、前記複数の弾性要素コネクタは、前記縮径部を規定し、前記弾性要素コネクタの遠位端に位置する前記複数の弾性ストリップの部分は、前記本体部を規定する、請求項1に記載の前端部材。
【請求項3】
前記弾性要素コネクタのそれぞれは、第1斜面と第2斜面とを含み、前記第1斜面は、近位に向いており、前記第2斜面は、遠位に向いており、前記第1斜面と前記第2斜面の両方は、前記前端本体の軸に向かって傾斜している、請求項2に記載の前端部材。
【請求項4】
前記弾性要素コネクタのそれぞれは、第1遷移面を更に含み、前記第1遷移面は、前記第1斜面と前記第2斜面の両方に遷移的に接合される、請求項3に記載の前端部材。
【請求項5】
前記弾性要素コネクタのそれぞれは、前記前端本体の周方向に貫通して延びる貫通孔を規定し、前記貫通孔は、第1弾性要素が通過するように構成され、前記第1弾性要素は、リング状であり、前記複数の弾性要素コネクタの貫通孔を順に通過する、請求項2に記載の前端部材。
【請求項6】
前記弾性要素コネクタは、前記弾性ストリップの近位端に設けられる、請求項2に記載の前端部材。
【請求項7】
前記弾性ストリップが3つ又は4つ設けられ、前記弾性要素コネクタが前記弾性ストリップと1対1に対応している、請求項2に記載の前端部材。
【請求項8】
前記前端本体の遠位端は、尖った螺旋を規定し、前記前端本体の近位端には、電極ヘッドが設けられ、前記電極ヘッドは、尖った螺旋に電気的に接続され、前記電極ヘッドは、前記後端部材の電極コネクタに電気的に接続されるように構成される、請求項1に記載の前端部材。
【請求項9】
前記電極ヘッドは、円柱状であり、前記前端本体の軸方向に延びている、請求項8に記載の前端部材。
【請求項10】
前記係止部材が初期構成にあるとき、前記縮径部の内径寸法は、前記後端部材の腰部の外径寸法よりも小さい、請求項1に記載の前端部材。
【請求項11】
リードレスペースメーカーの前端部材に着脱可能に結合されたリードレスペースメーカーの後端部材であって、互いに接続された腰部及び第1肩部を含み、
前記第1肩部は、前記腰部の遠位端に位置し、前記腰部は、前記第1肩部の外径寸法よりも小さい外径寸法を有し、
前記第1肩部は、前記前端部材の縮径部を通して挿入されて前記前端部材の本体部に収容され、前記前端部材の縮径部を通して前記本体部から取り外されるように構成され、前記腰部は、前記前端部材の縮径部に挿入されて収容され、前記前端部材の縮径部から取り外されるように構成される、リードレスペースメーカーの後端部材。
【請求項12】
前記第1肩部は、第2遷移面を含み、前記第2遷移面は、前記第1肩部の周側壁と前記第1肩部の遠位端面の両方に遷移的に接合される、請求項11に記載の後端部材。
【請求項13】
電極コネクタを更に含み、前記電極コネクタは、前記前端部材の電極ヘッドに電気的に接続されるように構成される、請求項11に記載の後端部材。
【請求項14】
前記電極コネクタは、前記第1肩部の軸方向に延びる電極室を含み、前記電極室が遠位に開口しており、前記前端部材の前記電極ヘッドを収容するように構成される、請求項13に記載の後端部材。
【請求項15】
前記電極コネクタは、前記電極室の周囲に周方向に配置された第2弾性要素を更に含み、前記第2弾性要素は、前記前端部材の前記電極ヘッドに当接して電気的に接続されるように構成される、請求項14に記載の後端部材。
【請求項16】
前記第2弾性要素は、リング状であり、前記前端部材の前記電極ヘッドの外径寸法よりも小さい内径寸法を有する、請求項15に記載の後端部材。
【請求項17】
第2肩部を更に含み、前記第2肩部は、前記腰部の近位端に接続され、前記腰部の外径寸法よりも大きい外径寸法を有する、請求項11に記載の後端部材。
【請求項18】
前記第2肩部の外径寸法は、前記第1肩部の外径寸法と等しい、請求項17に記載の後端部材。
【請求項19】
送達コネクタを更に含み、前記送達コネクタは、前記後端部材の近位端に配置され、送達装置を接続するように構成される、請求項11に記載の後端部材。
【請求項20】
請求項1~10のいずれか1項に記載の前端部材と、請求項11~19のいずれか1項に記載の後端部材とを含み、前記後端部材は、前記前端部材に着脱可能に結合されるように構成され、
前記係止部材が初期構成にあるとき、前記腰部の外径寸法は、前記縮径部の内径寸法よりも大きく、
前記第1肩部が前記縮径部を通過するとき、前記第1肩部は、前記係止部材の少なくとも一部を押し、径方向に拡張し、前記第1肩部が前記縮径部を通して前記本体部に入り込むか、又は前記本体部から近位に取り外された後に、前記係止部材の少なくとも一部は、径方向に収縮可能であり、
前記第1肩部が前記本体部に入り込んだ後、前記腰部は、前記縮径部に挿入されて収容される、リードレスペースメーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の分野に関し、特に、リードレスペースメーカー(leadless pacemaker)、前端部材及び後端部材に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓ペースメーカーは、植込み型治療用電子機器である。心臓ペースメーカーには、リードを介して電極に伝達される電気インパルスを送るためのインパルス発生器が組み込まれ、電極が取り付けられている心筋を刺激することにより、心臓を拍動及び収縮させ、一部の心不整脈状態によって引き起こされる心機能不全の治療に効果を発揮する。しかしながら、従来のリード付きの心臓ペースメーカーは、挿入される箇所にポケットを作成し、リードを静脈内に長期間留置する必要があるため、ポケット又はリードに関連する合併症の発生率が高く、患者の生命と健康に重大な脅威をもたらす。これに対して、リードレスペースメーカーは、電極リードを必要とせず、電池、回路及びペーシング電極を、単に経皮カテーテルを介して心臓に全体に植込むことができる「コンパクトカプセル」に統合しており、操作が容易であり、利便性が高く、外傷が軽微であり、ペースメーカーポケットの外科的作成の必要性が排除され、患者の外観への影響がなく、ペースメーカーポケット又はリードに関連する合併症がないなどの幅広い利点を有する。したがって、リードレスペースメーカーは、臨床現場で広く利用されている。
【0003】
従来のリードレスペースメーカーは、典型的には、その先端に配置された固定機構を含み、当該先端は、ペースメーカーが送達シースを通して心臓内の標的部位に送達されたときに心筋にねじ込むことができることにより、ペースメーカーを心筋に取り付けることができる。しかしながら、一方、このようなリードレスペースメーカーの植込みに係る操作は、困難であり、また、容易に移動し、心筋に損傷を与える可能性があるという問題を伴う。特に、植込み後、2か月以内に移動が頻繁に報告されている。他方、植込み後、リードレスペースメーカーの固定機構が心筋組織によって包まれるか、又はカプセル化されるため、リードレスペースメーカーの回収が困難になる。したがって、電池が切れた場合には、古いペースメーカーが依然として心臓に留められているとともに、新しいペースメーカーを植込む必要がある。その結果、電池が使い切った古いリードレスペースメーカーは、心臓内空間を占有し続けることに加えて、新しいペースメーカーに悪影響を与える可能性がある。心室内空間が限られているため、多くても2台のリードレスペースメーカーしか配置することができない。その結果、従来のリードレスペースメーカーは、一般的に、高齢の患者にのみ使用され、汎用性に欠ける。また、新しいペースメーカーの植込みは、心臓に別の切開を作成する必要があり、患者にさらなる損傷を与える可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、新規なリードレスペースメーカー、前端部材、及び後端部材を提供することにより、耐用年数が切れた後の既存のリードレスペースメーカーの交換が不便であるという課題を解決することである。
【0005】
このため、本発明の第1態様では、リードレスペースメーカーの後端(尾端。後側)部材(trailing component)に着脱可能に結合されたリードレスペースメーカーの前端(先端。前側)部材(leading component)が提供される。前記前端部材は、互いに結合された前端(先端。前側)本体(leading body)及び係止部材(locking member)を含む。
【0006】
前記前端本体は、所定の部位に固定されるように構成される。
【0007】
前記係止部材は、外力が作用していないときに初期構成をとり、外力が作用しているときには(外力の作用下で)、前記係止部材の少なくとも一部が前記前端本体に対して径方向に拡張又は収縮可能である。
【0008】
前記係止部材は、前記前端本体の軸方向に延びる収容室(accommodating chamber)を規定(define)し、前記収容室は、前記前端本体の軸方向において、本体部と、前記本体部の近位端に位置する縮径部(diametrically-reduced portion)とを含む。前記縮径部は、前記係止部材が初期構成にあるとき、前記本体部の内径寸法よりも小さい内径寸法を有する。前記縮径部は、前記後端部材の腰部を収容するように構成され、前記本体部は、前記後端部材の第1肩部を収容するように構成される。
【0009】
任意に、前記係止部材は、第1弾性要素(element)と、複数の弾性ストリップと、複数の弾性要素コネクタとを含んでもよく、前記複数の弾性ストリップは、前記前端本体の周囲に周方向に配置され、前記弾性ストリップの遠位端は、前記前端本体に固定的に結合され、前記弾性要素コネクタは、隣接する2つの前記弾性要素コネクタのそれぞれが前記第1弾性要素によって接続されるように、前記弾性ストリップの内側に設けられ、前記複数の弾性要素コネクタは、前記縮径部を規定し、前記弾性要素コネクタの遠位端に位置する前記複数の弾性ストリップの部分は、前記本体部を規定する。
【0010】
任意に、前記弾性要素コネクタのそれぞれは、第1斜面と第2斜面とを含んでもよく、前記第1斜面は、近位に向いており、前記第2斜面は、遠位に向いており、前記第1斜面と前記第2斜面の両方が前記前端本体の軸に向かって傾斜している。
【0011】
任意に、前記弾性要素コネクタのそれぞれは、第1遷移面(transition surface)を更に含んでもよく、前記第1遷移面は、前記第1斜面と前記第2斜面の両方に遷移的(transitionally)に接合される。
【0012】
任意に、前記弾性要素コネクタのそれぞれは、前記前端本体の周方向に貫通して延びる貫通孔を規定してもよく、前記貫通孔は、第1弾性要素が通過するように構成され、前記第1弾性要素は、リング状であり、前記複数の弾性要素コネクタの貫通孔を順に通過する。
【0013】
任意に、前記弾性要素コネクタは、前記弾性ストリップの近位端に設けられてもよい。
【0014】
任意に、前記弾性ストリップが3つ又は4つ設けられてもよく、前記弾性要素コネクタが前記弾性ストリップと1対1に対応している。
【0015】
任意に、前記前端本体の遠位端は、尖った螺旋を規定してもよく、前記前端本体の近位端には、電極ヘッドが設けられ、前記電極ヘッドは、尖った螺旋に電気的に接続され、前記電極ヘッドは、前記後端部材の電極コネクタに電気的に接続されるように構成される。
【0016】
任意に、前記電極ヘッドは、円柱状であってもよく、前記前端本体の軸方向に延びていてもよい。
【0017】
任意に、前記係止部材が初期構成にあるとき、前記縮径部の内径寸法は、前記後端部材の腰部の外径寸法よりも小さくてもよい。
【0018】
本発明の第2態様では、リードレスペースメーカーの前端部材に着脱可能に結合されたリードレスペースメーカーの後端部材が提供される。前記後端部材は、互いに結合された腰部及び第1肩部を含む。
【0019】
前記第1肩部は、前記第1肩部の外径寸法よりも小さい外径寸法を有する前記腰部に対して遠位に位置する。
【0020】
前記第1肩部は、前記前端部材の縮径部を通して挿入されて前記前端部材の本体部に収容され、前記前端部材の縮径部を通して前記本体部から取り外されるように構成される。前記腰部は、前記前端部材の縮径部に挿入されて収容され、前記前端部材の縮径部から取り外されるように構成される。
【0021】
任意に、前記第1肩部は、前記第1肩部の周側壁(circumferential side wall)と前記第1肩部の遠位端面の両方に接合された第2遷移面を含んでもよい。
【0022】
任意に、前記後端部材は、前記前端部材の電極ヘッドに電気的に接続されるように構成された電極コネクタを更に含んでもよい。
【0023】
任意に、前記電極コネクタは、前記第1肩部の軸方向に延びる電極室(chamber)を含んでもよく、前記電極室が遠位に開口しており、前記前端部材の前記電極ヘッドを収容するように構成される。
【0024】
任意に、前記電極コネクタは、前記電極室の周囲に周方向に配置された第2弾性要素を更に含んでもよく、前記第2弾性要素は、前記前端部材の前記電極ヘッドに当接して電気的に接続されるように構成される。
【0025】
任意に、前記第2弾性要素は、リング状であり、前記前端部材の前記電極ヘッドの外径寸法よりも小さい内径寸法を有してもよい。
【0026】
任意に、前記後端部材は、前記腰部の近位端(proximal end)に結合された第2肩部を更に含んでもよく、前記第2肩部は、前記腰部の外径寸法よりも大きい外径寸法を有する。
【0027】
任意に、前記第2肩部の外径寸法は、前記第1肩部の外径寸法と等しくてもよい。
【0028】
任意に、前記後端部材は、前記後端部材の近位端に配置された送達コネクタを更に含んでもよく、前記送達コネクタは、送達装置を接続するように構成される。
【0029】
本発明の第3態様では、上記前端部材及び上記後端部材を含むリードレスペースメーカーが提供される。前記後端部材は、前記前端部材に着脱可能に結合される。
【0030】
前記係止部材が初期構成にあるとき、前記腰部の外径寸法は、前記縮径部の内径寸法よりも大きい。
【0031】
前記第1肩部が前記縮径部を通過するとき、前記第1肩部は、前記係止部材の少なくとも一部を押し、径方向に拡張し、前記第1肩部が前記縮径部を通して前記本体部に入り込むか、又は前記本体部から近位に取り外された後に、前記係止部材の少なくとも一部は、径方向に収縮可能である。
【0032】
前記第1肩部が前記本体部に入り込むことにより、前記腰部は、前記縮径部に挿入されて収容される。
【0033】
要約すると、本発明は、リードレスペースメーカー、前端部材及び後端部材を提供する。前記前端部材は、互いに結合された前端本体及び係止部材を含む。前記前端本体は、所定の対象物に固定される。前記係止部材は、外力が作用していないときに初期構成をとる。前記係止部材の少なくとも一部は、外力の作用下で前記前端本体に対して径方向に拡張又は収縮可能である。前記係止部材は、前記前端本体の軸方向に延びる収容室を規定する。前記収容室は、前記前端本体の軸方向において、本体部と、前記本体部の近位端に位置する縮径部とを含む。前記係止部材の初期構成において、前記縮径部の内径寸法は、前記本体部の内径寸法よりも小さい。前記縮径部は、前記後端部材の腰部を収容し、前記本体部は、前記後端部材の第1肩部を収容する。
【0034】
この配置により、前端部材と後端部材とは、着脱可能及び分離可能に組み立てられる。使用時には、前端部材は、まず心臓内の所定の部位に植込まれてもよく、後端部材は、心臓内に送達されて前端部材に結合され、組み立てられてもよい。リードレスペースメーカーの耐用年数が切れると、後端部材は、前端部材から分解されてもよく、後端部材は、回収されてもよく、前端部材は、所定の部位に保持されてもよい。その後、後端部材は、新しい部品と交換されてもよい。
【0035】
前端部材の係止部材により、後端部材を容易に収容室に挿入するか又は収容室から取り外すことができる。これにより、後端部材がほぼ非侵襲的な方法で交換することができ、耐用年数が切れた後の既存のリードレスペースメーカーの交換が不便であるという課題が解決される。また、係止部材は、径方向に収縮可能であるため、前端部材の送達中に、係止部材がシースチューブによって圧着できることにより、前端部材は、最大外径が減少するため、通過能力が向上する。また、縮径部、本体部、腰部及び第1肩部は、後端部材の外周面に血管損傷の原因となる突起がないように、共に組み立てることができる。その結果、保護スリーブを用いることなく後端部材を送達することができ、後端部材の通過能力を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
当業者であれば、以下の図面は、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明をよりよく理解できるようにするために提示されるものであることが理解されよう。
【0037】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリードレスペースメーカーの植込み適用を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るリードレスペースメーカーの概略組立図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る前端部材を示す概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る弾性ストリップ及び弾性要素コネクタを概略的に示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る前端本体の概略分解図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る後端部材の概略図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る後端部材の概略部分断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る電池アセンブリの概略軸方向断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る電池アセンブリの概略分解図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る電子アセンブリの概略分解図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る電極コネクタの概略分解図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る電極コネクタの概略軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら、特定の実施形態によって示される以下の本発明のより詳細な説明を読むことにより、より明らかになるであろう。なお、図面は、開示された実施形態をより容易かつ明確に説明するのに役立つことのみを目的として、必ずしも正確な縮尺で描かれているわけではなく、非常に単純化された形式で提供されていることに留意されたい。また、図面に示されている構造は、通常、実際の構造の一部である。特に、図面は明確な強調を有する傾向があるため、異なる縮尺で描かれることがよくある。
【0039】
本明細書で使用される場合、不定(“a”, “an)或いは特定の対象を示す単数形の文言(“the”)は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数のものを指す場合もある。本明細書で使用される場合、用語「又は」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、一般的に、「及び/又は」、「少なくとも1つ」の「いくつか」、及び「2つ以上」の「少なくとも2つ」の意味で使用される。また、本明細書における「第1」、「第2」及び「第3」という用語の使用は、説明のみを目的としており、相対的な重要性を示したり暗示したり、参照項目の数値を暗黙的に示したりするものとして解釈されるべきではない。したがって、項目を「第1」、「第2」又は「第3」で定義することは、項目のうちの1つ又は少なくとも2つが存在することを明示的又は暗黙的に示すことである。本明細書で使用される場合、「近位」という用語は、一般的に操作者に近い側の端部を指し、「遠位」という用語は、一般的に患者の病変(lesion)に近い側の端部を指す。「一端」及び「他端」、並びに、「近位端」及び「遠位端」という用語は、一般的に、端点のみを指すのではなく、対向する端点を含む対向する端部の部分を指すのに使用される。「取付」、「結合」、及び「接続」という用語は、広い意味で解釈されるべきである。例えば、接続は、永続的、着脱可能若しくは一体型の接続、直接的な接続、1つ以上の介在媒体による間接的な接続、又は2つの要素間の内部通信若しくは相互作用であってもよい。本明細書で使用される場合、ある要素が別の要素に「配置されている」と表現されるとき、一般的には、2つの要素間に接続、結合、係合、又は伝達の関係が存在することのみを意味することを意図しており、これは、直接的なものであってもよく、1つ以上の介在要素による間接的なものであってもよく、また、2つの要素間の特定の空間的位置関係を示したり暗示したりするものとして解釈されるべきではない。即ち、要素は、文脈上明確に別段の指示がない限り、他の要素に対して内側、外側、上、下、横、又はその他の任意の位置に配置されてもよい。当業者であれば、文脈に応じて、本明細書における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0040】
本発明の目的は、新規なリードレスペースメーカー、前端部材、及び後端部材を提供することにより、耐用年数が切れた後の既存のリードレスペースメーカーの交換が不便であるという課題を解決することである。
【0041】
以下、添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【0042】
以下、
図1~
図12を参照する。
図1は、本発明の一実施形態に係るリードレスペースメーカーの植込み適用を示す概略図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るリードレスペースメーカーの概略組立図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る前端部材を示す概略図である。
図4は、本発明の一実施形態に係る弾性ストリップ及び弾性要素コネクタを概略的に示す図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る前端本体の概略分解図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る後端部材の概略図である。
図7は、本発明の一実施形態に係る後端部材の概略部分断面図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る電池アセンブリの概略軸方向断面図である。
図9は、本発明の一実施形態に係る電池アセンブリの概略分解図である。
図10は、本発明の一実施形態に係る電子アセンブリの概略分解図である。
図11は、本発明の一実施形態に係る電極コネクタの概略分解図である。
図12は、本発明の一実施形態に係る電極コネクタの概略軸方向断面図である。
【0043】
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態では、前端部材10及び後端部材20を含むリードレスペースメーカーが提供される。前端部材10は、後端部材20に着脱可能に結合される。
図1は、リードレスペースメーカーを使用して外科手術が行われる例示的な実施形態を示す。この手順では、前端部材10は、まず、心臓50の左心室心尖部のペーシング部位に植込むことができる。このステップでは、ペースメーカーの電極リードを植込む従来の方法に従って、効果的なペーシング部位が特定されてもよい。その後、後端部材20が送達装置30によって左心室内に送達された後、後端部材20は、前端部材10に結合され、組み立てられて、完全なリードレスペースメーカーを形成することにより、リードレスペースメーカーの植込みを実現することができる。リードレスペースメーカーの耐用年数が切れると、前端部材10は、心臓50に固定されたままであってもよく、送達装置30は、前端部材10から後端部材20を分離し、後端部材20を患者の身体から引き抜くために利用されてもよい。次いで、後端部材20は、新しいものと交換され、新しい後端部材20は、左心室内に送達されて、そこに残された前端部材10と組み立てられて、完全なリードレスペースメーカーを再び形成することができる。この配置により、増殖組織により包まれた可能性のある前端部材10は、再利用することができ、干渉を回避することができ、心臓に新しい切開を作成する必要がなくなる。当業者であれば、後端部材20と前端部材10とを送達し、植込むために、当該技術分野における共通の一般的知識に従って適切な送達装置30を選択することができ、本発明は、送達装置30のいかなる特定の構造又は機構にも限定されない。
【0044】
図2と併せて
図3及び
図6を参照すると、前端部材10は、互いに結合された前端本体11及び係止部材12を含む。前端本体11は、所定の部位(例えば、心臓50の左心室心尖部)に固定される。係止部材12は、外力が作用していないときに初期構成をとる。また、係止部材12の少なくとも一部は、外力の作用下で、前端本体11に対して径方向に拡張又は収縮可能である。係止部材12は、前端本体11の軸方向に延びる収容室13を規定する。収容室13は、前端本体11の軸方向において、本体部132と、本体部132に対して近位に位置する縮径部131とを含む。係止部材12の初期構成において、縮径部131の内径寸法は、本体部132の内径寸法よりも小さい。また、縮径部131は、後端部材20の腰部202を収容し、本体部132は、後端部材20の第1肩部201を収容する。
【0045】
後端部材20は、互いに接合された腰部202及び第1肩部201を有し、第1肩部201は、腰部202の遠位端に位置する。腰部202の外径寸法は、第1肩部201の外径寸法よりも小さい。第1肩部201は、縮径部131を通過して前端部材11の本体部132に挿入されて収容される。また、第1肩部201は、本体部132から縮径部131を通して取り外される。腰部202は、前端部材11の縮径部131に挿入されて収容され、縮径部131から取り外される。
【0046】
送達経路の送達能力を最大限に活かすために、前端部材10及び後端部材20の断面形状は、好ましくは、円形又は多角形(より好ましくは正多角形)である。したがって、本体部132及び縮径部131の断面形状も、好ましくは、円形又は多角形である。なお、本明細書では、縮径部131及び係止部材12の内径寸法とは、前端本体11の軸を通過する線に沿って測定された最小径方向幅を指す。縮径部131及び係止部材12の断面形状が円形である場合に、それらの内径寸法は、円形断面の直径、即ち、縮径部131及び係止部材12の内径である。縮径部131及び係止部材12の断面形状が多角形である場合に、それらの内径寸法は、多角形の断面の内接円の直径である。同様に、外径寸法は、円形断面の外径、又は多角形断面の外接円の直径である。以下に説明する内径寸法及び外径寸法も同様の方法で定義される。
【0047】
前端部材10の係止部材12により、後端部材20を容易に収容室13に挿入するか又は収容室13から取り外すことができる。これにより、後端部材20がほぼ非侵襲的な方法で交換することができ、耐用年数が切れた後の既存のリードレスペースメーカーの交換が不便であるという課題が解決される。また、係止部材12は、径方向に収縮可能であるため、前端部材10の送達中に、係止部材12が送達装置30のシースチューブによって圧着できることにより、前端部材10は、最大外径が減少するため、通過能力が向上する。また、縮径部131、本体部132、腰部202及び第1肩部201は、後端部材20の外周面に血管損傷の原因となる突起がないように、共に組み立てることができる。その結果、保護スリーブを用いることなく後端部材20を送達することができ、後端部材20の通過能力を更に向上させることができる。
【0048】
図4と併せて引き続き
図3を参照すると、任意に、係止部材12は、第1弾性要素121、複数の弾性ストリップ122、及び複数の弾性要素コネクタ123を含んでもよい。弾性ストリップ122は、前端本体11の周囲に周方向に配置されてもよい。弾性ストリップ122の遠位端は、前端本体11に固定的に接続される。弾性要素コネクタ123は、弾性ストリップ122に対して内側に配置されてもよく、隣接する弾性要素コネクタ123は、第1弾性要素121によって接続されてもよい。弾性要素コネクタ123は、共に、縮径部131を規定することができ、弾性要素コネクタ123に対して遠位に位置する弾性ストリップ122の部分は、本体部132を規定することができる。
図3に示す係止部材12の特定の例では、係止部材12は、4つの弾性ストリップ122と、4つの弾性要素コネクタ123とを含む。弾性ストリップ122の遠位端は、前端本体11の周側壁に固定されており、弾性ストリップ122の近位端は、自由端である。外力によって駆動されると、弾性ストリップ122の近位端は、前端本体11に対して径方向に曲がってもよい。好ましくは、4つの弾性ストリップ122は、前端本体11の周囲に周方向に均等に配置され、共に収容室13を規定する。各弾性ストリップ122の内側(前端本体11の軸に向く弾性ストリップ122の一側)は、弾性要素コネクタ123のそれぞれ1つと固定される。弾性要素コネクタ123が配置された収容室13の部分の径方向の範囲は、弾性要素コネクタ123による占有のため、弾性要素コネクタ123が設けられている部分以外の弾性ストリップ122の他の部分によって規定された収容室13の部分の径方向の範囲よりも小さいことが理解されるであろう。このため、弾性要素コネクタ123が配置された収容室13の部分を縮径部131とし、弾性要素コネクタ123に対して遠位に位置する弾性ストリップ122によって規定された部分を本体部132とする。本発明は、弾性ストリップ122上の弾性要素コネクタ123のいかなる特定の軸方向位置にも限定されない。例えば、弾性要素コネクタ123は、弾性ストリップ122の近位端に設けられてもよく(
図3を参照)、弾性ストリップ122の近位端から一定の距離を隔てて設けられてもよい。また、異なる弾性ストリップ122に対応する弾性要素コネクタ123の軸方向位置は、同じであってもよく、異なってもよい。好ましくは、
図3を参照すると、好ましい例では、4つの弾性要素コネクタ123は、4つの弾性ストリップ122のそれぞれの近位端に設けられてもよく、同様に寸法決めされ、構造され、軸方向に配置されてもよい。この配置により、弾性ストリップ122によって規定された収容室13の最大限の利用と、係止部材12への均一な応力付加(uniform stressing)との両方を容易にすることができる。
【0049】
他の実施形態では、第1弾性要素121は、例えば、バネなどであってもよい。また、単一の第1弾性要素121が設けられてもよく、複数の第1弾性要素121が設けられてもよい。例えば、単一の第1弾性要素121が設けられ、全ての弾性要素コネクタ123に順に接続されてもよい。複数の第1弾性要素121の場合、隣接する2つの弾性要素コネクタ123のそれぞれは、それらの間に配置された1つの第1弾性要素121によって接続されてもよい。これらの場合も同様の効果を得ることができる。好ましい例では、第1弾性要素121が1つ設けられ、弾性要素コネクタ123のそれぞれは、前端本体11の周方向に貫通して延びる貫通孔127を規定し、貫通孔127は、第1弾性要素121が通過するように構成される。第1弾性要素121は、リング状に形成され、弾性要素コネクタ123の貫通孔127を順に通過する。このようにして、隣接する弾性要素コネクタ123は、第1弾性要素121によって接続されており、外力が弾性要素コネクタ123に作用して径方向に拡張した構成に向けて付勢されるとき(例えば、第1肩部201が縮径部131を通過することにより)、弾性要素コネクタ123が設けられた弾性ストリップ122の部分は、第1弾性要素121の弾性力を受けながら外側に均一に曲がる。第1肩部201が縮径部131を通過して本体部132に入り込んだ後、弾性要素コネクタ123が設けられた弾性ストリップ122の部分は、第1弾性要素121の弾性力を受けて内側に均等に戻る。好ましくは、係止部材12の初期構成において、縮径部131の内径寸法は、腰部202の外径寸法よりも小さい。このようにして、第1肩部201が本体部132に一旦入り込むと、弾性要素コネクタ123の内側面が腰部202に嵌合されて、前端部材10に対する後端部材20の径方向の変位を防止することができる。また、弾性要素コネクタ123は、第1肩部201の近位端を制限し、第1肩部201を本体部132内に係止することができる。後端部材20を取り外すためには、送達装置30を通じて後端部材20に近位端に向かう力を加えることにより、第1肩部201は、第1弾性要素121の弾性力に打ち勝って、本体部132から縮径部131へ近位に移動した後、前端部材10の外に移動する。
【0050】
また、弾性要素コネクタ123の間に配置された第1弾性要素121は、リング状の物理的障壁を提供することができ、第1弾性要素121は、第1肩部201が本体部132に受け入れられた後、第1肩部201の近位端をブロックすることができる。即ち、第1弾性要素121が第1肩部201の近位端に当接できることにより、係止部材12は、第1肩部201をより確実に係止することができる。
【0051】
好ましくは、
図3と併せて引き続き
図4を参照すると、各弾性要素コネクタ123は、第1斜面124及び第2斜面125を含み、第1斜面124は、近位端に向いており、第2斜面125は、遠位端に向いており、第1斜面124及び第2斜面125は両方とも、前端本体11の軸に向かって内側に傾斜している。本明細書では、「前端本体11の軸に向かって内側に傾斜している」とは、弾性ストリップ122が前端本体11に組み立てられるとき、第1斜面124の法線及び第2斜面125の法線が全て、前端本体11の軸に向かって(即ち、前端部材10の内部に向かって)斜めに向くことを意味することを意図している。なお、前端本体11の軸に対する第1斜面124の傾斜角度と、前端本体11の軸に対する第2斜面125の傾斜角度とは、等しくてもよく、異なってもよい。第1斜面124及び第2斜面125により、第1肩部201と弾性要素コネクタ123との間のより小さな相互作用角度で、第1肩部201が縮径部131を通過することができることで、縮径部131を通過する第1肩部201の摩擦抵抗が低減される。各弾性要素コネクタ123は、第1遷移面126を更に含み、第1遷移面126は、第1斜面124及び第2斜面125の両方に接合される。例えば、これらの接合部は、丸めたり滑らかにしたり、面取りしたりすることができる。一実施形態では、第1遷移面126は、前端本体11に対して径方向に配置された直線部と、直線部に対して近位及び遠位にそれぞれ位置する2つの丸み部とを含んでもよい。第1肩部201が縮径部131を通過する際に遭遇する摩擦抵抗を更に低減するために、2つの丸み部は、第1斜面124及び第2斜面125に滑らかに接合されてもよい。任意に、各弾性ストリップ122は、折曲部128を含んでもよく、折曲部128は、好ましくは、特定の弾性ストリップ122と前端本体11との接合部に対して近位に配置される。これらの折曲部は、弾性ストリップ122の径方向の強度及び弾性ストリップ122の耐疲労性を向上させることができることにより、後端部材20とのより多くの嵌合/離脱サイクルに耐えることができるようにすることにより、前端部材10の耐用年数を延ばすことができる。
【0052】
実際の使用においては、第1肩部201を縮径部131に挿入したり、挿入力を測定することができる。第1肩部201が本体部132から縮径部131を取り外したり、取り外し力を測定することができる。これらの挿入力及び取り外し力は、第1弾性要素121の寸法、及び第1斜面124と第2斜面125との角度を調整することによって変更可能である。後端部材の重量と心筋の引張抵抗(約2N)を考慮すると、挿入力は、0.3N±0.2Nとして決定されてもよく、取り外し力は、0.5N±0.2Nとして決定されてもよい(以下に詳述するように、取り外し力は、更に、第2弾性要素215及び電極ヘッド111に依存してもよい)。
【0053】
任意に、
図5を参照すると、前端本体11の遠位端には尖った螺旋116が設けられてもよく、前端本体11の近位端には電極ヘッド111が設けられてもよく、電極ヘッド111は、尖った螺旋116に電気的に接続される。電極ヘッド111は、後端部材20の電極コネクタ21に電気的に接続されるように構成される。尖った螺旋116は、回転されて、心臓50の組織の所定の部位にねじ込まれることにより、前端本体11は、心臓50内に固定することができる。他の実施形態では、前端本体11は、電極112と、ストップリング113と、スナップリング115と、薬剤プランジャー117とを更に含んでもよい。電極ヘッド111は、電極112の近位端に配置され、後端部材20に電気的に接続されるように構成される。ストップリング113は、いくつかのストップノッチ114を規定し、尖った螺旋116は、ストップノッチ114にスナップ嵌めすることができ、スナップリング115は、電極112の遠位端でスナップ嵌めされる。これにより、電極112をストップリング113に固定することができるとともに、尖った螺旋116が緩むことにより、電極112が移動することを防止することができる。好ましくは、電極112及び電極ヘッド111は、ステンレス鋼又は白金-イリジウム合金からなり、ストップリング113は、ステンレス鋼又は純チタンからなる。また、スナップリング115が絶縁材料からなるため、スナップリング115は、スナップ留め機能を提供することに加えて、電極112とストップリング113とを絶縁することができる。尖った螺旋116は、ステンレス鋼316L又はMP35N合金からなり、心筋にねじ込まれ、ストップリング113と協働して前端本体11を心臓50の心内膜に固定する。また、薬剤プランジャー117は、シリカゲルと酢酸デキサメタゾンを主成分とし、心内膜のねじ込み部の止血及び炎症抑制のために用いられる。当業者であれば、当該技術分野における共通の一般的知識に基づいて前端本体11がどのように構造化されているかを認識するであろう。なお、
図5に示す前端本体11は、一例であり、その構造が図示されるように限定されるものではない。当業者であれば、心臓50の所定の部位に固定できる限り、前端本体11として他の適切な従来の構造を選択することができる。例えば、尖った螺旋は、省略されてもよく、前端本体11は、代わりに、同様の効果を達成しながら、自動解放可能な爪(self-releasable tines)などを含んでもよい。本発明は、これに関して限定されない。
【0054】
好ましくは、電極ヘッド111は、円柱状であり、前端本体11の軸方向に延びる。一例では、電極ヘッド111は、略円筒状であり、前端本体11の軸上に配置される。電極ヘッド111の近位端は、後端部材20の電極コネクタ21との接続を容易にするために、半球状のガイド構造を規定してもよい。尖った螺旋116(又は自己解放可能な爪など)は、一般的に、金属要素であり、心臓50の所定の部位にねじ込まれると、心臓50との電気的接続を確立することができることにより、心拍の感知(感知信号の捕捉)と心臓へのインパルス(ペーシング信号)の送達が可能になる。電極ヘッド111は、尖った螺旋116に電気的に接続され、感知信号を後端部材20に送信し、ペーシング信号を尖った螺旋116に送信するための導体として機能する。
【0055】
本実施形態の前端部材10によれば、係止部材12の弾性ストリップ122の近位端は、前端部材10の送達中に径方向内側に曲がることができるため、係止部材12は、シースチューブによって圧着できることにより、前端本体11の外径が通過中の前端部材10の最大外径を規定する。一方、係止部材12の構造は、通過中の前端部材10の最大外径に影響を与えない。これにより、前端部材10の通過性が確保されながら、係止部材12の組立及び分解が容易になる。また、第1肩部201を係止部材12に挿入し、係止部材12から取り外すための力が測定可能かつ一貫していることが保証されることで、後端部材20の植込み及び回収は、ほぼ非侵襲的(non-invasive)な方法で達成することができる。
【0056】
本実施形態に係る後端部材20については、
図6~
図12を参照して一例として以下に更に詳細に説明する。
図6及び
図7を参照すると、任意に、後端部材20は、電池アセンブリ25、電子アセンブリ22、及び電極コネクタ21を含んでもよい。電極コネクタ21は、前端部材10の電極ヘッド111に電気的に接続されるように構成されており、電極コネクタ21は、電子アセンブリ22に電気的に接続されている。電子アセンブリ22は、本質的に、前端部材10から感知信号を取得し、ペーシング信号を前端部材10に送信することができる、リードレスペースメーカー用の回路モジュール222を含む。電池アセンブリ25は、電子アセンブリ22に電源を供給する。電池アセンブリ25内の電池の耐用年数の切れ、又は電子アセンブリ22内の回路モジュール222の耐用年数の切れは、後端部材20全体の耐用年数の切れとみなされてもよい。これが起こった場合、後端部材20全体を交換することができる。
【0057】
代替の実施形態では、電池アセンブリ25、電子アセンブリ22、及び電極コネクタ21は、後端部材20の近位端から遠位端まで端と端とを連続するように順に接合される。
図10を参照すると、電子アセンブリ22は、第1筐体221を含み、回路モジュール222は、第1筐体221に収容される。回路モジュール222は、電力を供給されるために、電源ケーブル253によって電池アセンブリ25内の電池に接続される。また、回路モジュール222は、前端部材10と感知信号及びペーシング信号を交換するために、電極コネクタ21にも電気的に接続される。第1筐体221の近位端は、第1カバー23によって密封され、第1筐体221の遠位端は、電極コネクタ21に密封的に接続される。好ましくは、第1筐体221及び第1カバー23は、純チタン又はステンレス鋼などの金属材料からなる。
【0058】
図8及び
図9を参照すると、電池アセンブリ25は、第2筐体251を含み、電池252は、第2筐体251に収容される。第2筐体251の遠位端は、第2カバー24によって密封されている。電源ケーブル253の一端は、電池252に接続され、第2カバー24及び第1カバー23を順に通過して回路モジュール222に接続される。好ましくは、第2筐体251及び第2カバー24は、それぞれ純チタン又はステンレス鋼などの金属材料からなる。電池252は、好ましくは、外表面に絶縁のためにパリレンが噴霧された一次リチウム電池であり、電源ケーブル253は、好ましくは、絶縁ジャケットで覆われた可撓性金属線である。
【0059】
図11及び
図12を参照すると、電極コネクタ21は、前端本体11の電極ヘッド111に電気的に接続される。電極コネクタ21は、第3カバー211、フィードスルー212、中間要素213、角形本体214、及び第2弾性要素215を含む。第3カバー211の近位端は、第1筐体221に(例えば、溶接によって)密封的に接続される。第3カバー211の遠位端は、中間要素213に結合される。中間要素213の遠位端は、角形本体214を固定できる角形本体収容(square body accommodation)キャビティを規定する。
【0060】
好ましくは、電極コネクタ21は、第1肩部201の軸方向に沿って延びる電極室を含み、電極室は、遠位に開口して、電極ヘッド111を収容する。
図11及び
図12に示す例では、電極室は、角形本体214の遠位端に規定され、第2弾性要素215は、電極室を周方向に取り囲んでいる。任意に、第2弾性要素215は、例えば、バネ又は弾性を有する別の要素であってもよい。第2弾性要素215は、電極ヘッド111に当接することにより、電極ヘッド111に電気的に接続される。より好ましくは、第2弾性要素215は、リング状であり、第2弾性要素215は、電極ヘッド111の外径寸法よりも小さい内径寸法を有する。この配置により、電極ヘッド111が第2弾性要素215に挿入されると、第2弾性要素215は、良好な電気的接触を伴って径方向に拡張した構成となる。任意に、第2弾性要素215は、MP35N合金からなってもよい。第2弾性要素215と電極ヘッド111との寸法関係は、前述の取り外し力に影響を与える。当業者であれば、上に列挙した取り外し力の範囲に応じて、第2弾性要素215と電極ヘッド111との寸法関係を適切に設定することができる。好ましくは、電極ヘッド111の挿入をガイドするために、電極室の遠位開口部に第3斜面217が形成される。
【0061】
好ましくは、第3カバー211及び角形本体214は、それぞれ純チタン又はステンレス鋼などの金属材料からなる。好ましくは、中間要素213は、角形本体214を第3カバー211から電気的に絶縁するために、プラスチックなどの絶縁材料からなる。フィードスルー212を組み立てるためのフィードスルー孔(Feedthrough bores)は、第3カバー211及び中間要素213の対応する位置に規定される。フィードスルー212は、円形の絶縁コイルによって囲まれた針状導体として実質的に構造化される。コイルは、針状導体とフィードスルー孔とが直接接触することなく、フィードスルー孔に取り付けられる。針状導体の遠位端は、角形本体214に電気的に接続される。例えば、両者を互いに接触させて、それらの間に電気的接続を確立することができる。針状導体の近位端は、第3カバー211を貫通して第1筐体221内に挿入され、内部の回路モジュール222に電気的に接続される。感知信号は、尖った螺旋116、電極ヘッド111、第2弾性要素215、フィードスルー212(より正確には、内部の針状導体)及び回路モジュール222を通して連続的に伝搬され、ペーシング信号は、逆の経路を通して伝搬されることが理解されるであろう。
【0062】
後端部材20は、送達コネクタ26を更に含み、送達コネクタ26は、後端部材20の近位端に配置され、送達装置30を接続するように構成される。引き続き
図8及び
図9を参照すると、一実施形態では、送達コネクタ26は、第2筐体251に密封的に接続されるように、電池アセンブリ25の近位端に配置される。送達コネクタ26は、例えば、送達装置30の接続を容易にすることができるT字形の軸方向断面を有することができる。
【0063】
任意に、第1カバー23は、遠位密封部及び近位結合部を含む径可変構造であってもよい。密封部の外径寸法は、第1筐体221の外径寸法と一致しているため、密封部は、第1筐体221と密封的に組み立てることができる。好ましくは、第1カバー23が第1筐体221に組み立てられた後、第1カバー23は、第1筐体221に対して径方向に全く立ち上がらない。より好ましくは、密封部及び第1筐体221の径方向の輪郭は、両方とも円形であり、等しい外径を有する。結合部の外径寸法は、密封部の外径寸法よりも小さい。好ましくは、結合部も円形の径方向輪郭を有する。第2カバー24は、第1カバー23と同様の構造を有することができるが、反対の向きをとることができる。即ち、第2カバー24は、遠位結合部及び近位密封部を含む。第2カバー24の密封部は、第2筐体251に密封的に組み立てられる。好ましくは、第2カバー24の結合部は、第1カバー23の結合部と同じ径方向輪郭を有し、両者は、接合部が径方向に立ち上がった部分がなく真っ直ぐになるような方法で(例えば、レーザー溶接によって)互いに結合される。好ましくは、第2筐体251もまた、円形の径方向輪郭を有し、第1筐体221の外径と同じ外径を有する。より好ましくは、第1筐体221、第1カバー23、第2カバー24、及び第2筐体251は、端と端とを連続するように同軸に組み立てられる。また、電極コネクタ21も、径方向の輪郭が円形であり、第1筐体221の外径と同じ外径を有する。
【0064】
後端部材20の例では、第1カバー23と第2カバー24の結合部は、腰部202を構成し、第1カバー23の密封部、第1筐体221、及び電極コネクタ21は、第1肩部201を構成する。このように、後端部材20は、互いに結合された第1肩部201及び腰部202を少なくとも含む。第1肩部201は、腰部202に対して遠位に位置し、腰部202の外径寸法は、第1肩部201の外径寸法よりも小さい。第1肩部201は、縮径部131を通して前端部材10の本体部132に挿入され、縮径部131を通して本体部132から取り外される。腰部202は、前端部材10の縮径部131に挿入されて収納され、縮径部131から取り外される。前端部材10に関する上記の説明を参照すると、後端部材20の遠位第1肩部201が前端部材10の縮径部131に挿入された結果、縮径部131が拡張されることが理解されるであろう。また、第1肩部201が縮径部131を完全に通過して本体部132に入り込むと、縮径部131は、腰部202に当接して締め付けられるまで収縮する。これにより、後端部材20は、前端部材10に組み立てることができる。後端部材20は、逆のプロセスによって前端部材10から分解することができるが、そのさらなる説明は、本明細書では省略する。
【0065】
好ましくは、
図11を参照すると、第1肩部201は、第1肩部201の周側壁と第1肩部201の遠位端面との両方に接合された第2遷移面216を含む。
図11に示す例では、第2遷移面216は、中間要素213に設けられており、第1肩部201が縮径部131を通過する際に受ける抵抗を低減するために滑らかな外輪郭形状を有することが好ましい。
【0066】
好ましくは、後端部材20は、腰部202の近位端に結合された第2肩部203を更に含む。第2肩部203の外径寸法は、腰部202の外径寸法よりも大きい。
図6を参照すると、一例では、第2肩部203は、第2カバー24の密封部と、第2筐体251と、送達コネクタ26の一部とで構成される。任意に、第2肩部203の外径寸法は、第1肩部201の外径寸法よりも小さくてもよい。送達チャンネルの径方向寸法を最大限に活用するために、第2肩部203の外径寸法は、好ましくは、第1肩部201の外径寸法と等しい。これにより、第2筐体251は、より大きな容量の電池を収容できる、より大きな内部空間を有することができる。本実施形態は、第2肩部203のいかなる特定の外径寸法にも限定されず、第2肩部203の外径寸法は、ひいては、腰部202の外径寸法と等しくてもよい。この場合であっても、後端部材20と前端部材10との組立及び分解を確実に達成することができる。
【0067】
上記の配置により、後端部材20は、両端が広く、中央が狭いダンベル形状をとり、送達時に血管に損傷を与えるような放射状の突起がない。したがって、後端部材20を送達中にスリーブで保護する必要がなくなる。したがって、所定の送達寸法で、更に大きな内部空間を実現することができるため、更に大きな容量の電池を収容し、耐用年数を更に延ばすことができる。
【0068】
なお、
図6~
図12は、後端部材20の一例を示すものであり、後端部材20は、図示のものに限定されるものではない。実際には、電極コネクタ21、電子アセンブリ22、及び電池アセンブリ25は、遠位端から近位端まで順に配置されることに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、電子アセンブリ22と電池アセンブリ25との位置を交換してもよく、電子アセンブリ22と電池アセンブリ25を単一の部品に統合してもよく、電池252と回路モジュール222とを第1筐体221に収容することにより、これら3つが第1肩部201を構成してもよい。当業者であれば、前述の教示の範囲内で種々の変更が可能であり、本発明は、これに関して限定されない。
【0069】
要約すると、本発明は、リードレスペースメーカー、前端部材及び後端部材を提供する。前端部材は、互いに結合された前端本体及び係止部材を含む。前端本体は、所定の対象物に固定される。係止部材は、外力が作用していないときに初期構成をとる。係止部材の少なくとも一部は、外力の作用下で前端本体に対して径方向に拡張又は収縮可能である。係止部材は、前端本体の軸方向に延びる収容室を規定する。収容室は、前端本体の軸方向において、本体部と、本体部の近位端に位置する縮径部とを含む。係止部材の初期構成において、縮径部の内径寸法は、本体部の内径寸法よりも小さい。縮径部は、後端部材の腰部を収容し、本体部は、後端部材の第1肩部を収容する。
【0070】
この配置により、前端部材と後端部材とは、着脱可能及び分離可能に組み立てられる。使用時には、前端部材は、まず心臓内の所定の部位に植込まれてもよく、後端部材は、心臓内に送達されて前端部材に結合され、組み立てられてもよい。リードレスペースメーカーの耐用年数が切れると、前端部材は、所定の部位に保持されるとともに、後端部材は、前端部材から分解され、回収されてもよい。その後、後端部材は、新しい部品と交換されてもよい。前端部材の係止部材により、後端部材を容易に収容室に挿入するか又は収容室から取り外すことができる。これにより、後端部材がほぼ非侵襲的な方法で交換することができ、耐用年数が切れた後の既存のリードレスペースメーカーの交換が不便であるという課題が解決される。また、係止部材は、径方向に収縮可能であるため、前端部材の送達中に、係止部材がシースチューブによって圧着できることにより、前端部材は、最大外径が減少するため、通過能力が向上する。また、縮径部、本体部、腰部及び第1肩部は、後端部材の外周面に血管損傷の原因となる突起がないように、共に組み立てることができる。その結果、保護スリーブを用いることなく後端部材を送達することができ、後端部材の通過能力を更に向上させることができる。
【0071】
なお、上記の実施形態は、本発明の単なる例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。当業者であれば、本発明の概念から逸脱することなく、様々な変形及び修正を行うことができるが、そのような変形及び修正のいずれも、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
10 前端部材
11 前端本体
111 電極ヘッド
112 電極
113 ストップリング
114 ストップノッチ
115 スナップリング
116 尖った螺旋
117 薬剤プランジャー
12 係止部材
121 第1弾性要素
122 弾性ストリップ
123 弾性要素コネクタ
124 第1斜面
125 第2斜面
126 第1遷移面
127 貫通孔
128 折曲部
13 収容室
131 縮径部
132 本体部
20 後端部材
201 第1肩部
202 腰部
203 第2肩部
21 電極コネクタ
211 第3カバー
212 フィードスルー
213 中間要素
214 角形本体
215 第2弾性要素
216 第2遷移面
217 第3斜面
22 電子アセンブリ
221 第1筐体
222 回路モジュール
23 第1カバー
24 第2カバー
25 電池アセンブリ
251 第2筐体
252 電池
253 電源ケーブル
26 送達コネクタ
30 送達装置
50 心臓
【国際調査報告】