(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-22
(54)【発明の名称】放射線皮膚炎を治療する方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20240712BHJP
A61N 5/067 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61N5/067
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548803
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 US2022016770
(87)【国際公開番号】W WO2022178109
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523245104
【氏名又は名称】ムレヴァ フォトセラピー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コーターリー, ヴェダング
(72)【発明者】
【氏名】オージャ, ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】ラザーラ, ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】シェルナット, サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】リプコ, ナンシー
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PA10
4C082PC01
4C082PC04
4C082PC08
4C082PG17
4C082PJ12
4C082RA01
4C082RA04
4C082RJ07
(57)【要約】
パッドおよびパッドに支持された光源を利用した光線療法を提供することにより病状を治療するための光線療法デバイスが提供される。光源は、パッド上の異なる位置に配置されて治療電磁放射線を出射する複数の発光部を含む。光線療法の治療特性は、解剖学的治療領域の医学的特性に基づいて空間的に変化する。医学的特性は、解剖学的構造または病状の少なくとも1つを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮膚表面を介して患者の解剖学的治療領域に光線療法を提供することにより病状を治療するための光線療法デバイスであって、
電磁放射線を出射するように構成された光源と、
前記光源を支持するように構成されたパッドであって、前記パッドを前記皮膚表面に隣接して位置決めすることにより、前記光源から出力された前記電磁放射線が治療電磁放射線として前記皮膚表面により受け取られ、前記解剖学的治療領域と相互作用する、パッドと、を備え、
前記光源は、前記治療電磁波放射線の治療特性が前記解剖学的治療領域の医学的特性に基づいて空間的に変化するように、前記パッドの異なる位置に配置された複数の発光部を含み、
前記医学的特性は、解剖学的構造または前記病状の少なくとも1つを含む、
光線療法デバイス。
【請求項2】
空間的に変化する前記治療特性は、波長、光学的強度または光学的投与量の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の光線療法デバイス。
【請求項3】
前記発光部は、少なくとも1つの第1種類の発光部と、少なくとも1つの第2種類の発光部とを含み、
前記第1種類の発光部により出射される前記電磁放射線の治療特性は、前記第2種類の発光部により出射される電磁放射線の治療特性と異なり、
前記治療電磁放射線の前記治療特性が空間的に変化するように、前記少なくとも1つの第1種類の発光部の総数または位置の少なくとも1つが、前記少なくとも1つの第2種類の発光部と異なる、
請求項1または2に記載の光線療法デバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1種類の発光部は、第1波長域の電磁放射線を出射するように構成されており、
前記少なくとも1つの第2種類の発光部は、第2波長域の電磁放射線を出射するように構成されており、
前記第1波長域は、前記第2波長域と異なる、
請求項3に記載の光線療法デバイス。
【請求項5】
前記第1種類の発光部を前記第2種類の発光部とは別に制御することにより前記光源による前記電磁放射線の出射を制御するように構成されたプロセッサ回路をさらに備える、
請求項3または4に記載の光線療法デバイス。
【請求項6】
前記プロセッサ回路は、治療されている前記病状に基づいて前記第1種類の発光部および前記第2種類の発光部を制御するように構成されている、
請求項5に記載の光線療法デバイス。
【請求項7】
前記治療電磁放射線の光学投与量が空間的に変化するように、前記複数の発光部の配置が空間的に変化している、
請求項1~6の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項8】
前記発光部は、第1群の発光部および第2群の発光部を少なくとも含み、
前記第1群の発光部を前記第2群の発光部とは別に制御することにより前記電磁放射線の出射を制御するように構成されたプロセッサ回路をさらに備える、
請求項1~7の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項9】
前記第1群の発光部は、第1種類の病状を治療するために位置決めされており、
前記第2群の発光部は、第2種類の病状を治療するために位置決めされている、
請求項8に記載の光線療法デバイス。
【請求項10】
前記プロセッサ回路は、治療されている前記病状に基づいて前記第1群の発光部および前記第2群の発光部を制御するように構成されている、
請求項9に記載の光線療法デバイス。
【請求項11】
前記パッドは、前記パッドが前記皮膚表面に対して押圧されたときに前記パッドの内面が前記皮膚表面に隣接するように、前記皮膚表面の形状に基づいて形成されている、
請求項1~10の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項12】
前記パッドは、ファスナー、近端、遠端および内面を含み、
前記ファスナーは、前記パッドの前記内面が前記患者の喉の少なくとも一部を受け入れるように形作られたチャネルを形成するように、前記近端に対して前記遠端の位置を維持するように構成されている、
請求項11に記載の光線療法デバイス。
【請求項13】
前記パッドは、内面、前部および側部を含み、
前記前部の前記内面は前記患者の乳房を受け入れるように構成された凹みを形成する凹部を有し、
前記側部は、
前記前部に対して角度付けられており、
前記前部が前記患者の片側の乳房に隣接して位置決めされ前記患者の前記片側に隣接した腕が上げられたときに前記パッドの前記側部が前記患者の前記隣接した腕の下に配置され、かつ、前記患者の前記隣接した腕が下げられて前記患者の片側に押圧されたときに前記患者の前記乳房に隣接する前記前部の位置が維持されるように、十分に硬い、
請求項11~12に記載の光線療法デバイス。
【請求項14】
前記パッドは、複数のパッドから構成されており、前記複数のパッドのそれぞれは、前記複数の発光部の少なくとも1つを含み、
前記皮膚表面に対して前記複数のパッドの少なくとも1つの位置を維持するように構成されたファスナーをさらに備える、
請求項1~13の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項15】
前記パッドは、前記患者の顎から、前記患者の唇および鼻をまわり、前記患者の頬骨および顎関節まで上がり、前記患者の顎のラインに沿って下るまでの範囲に広がるように形作られている、
請求項1~14の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項16】
前記発光部は、前記パッドが前記患者の頬上に置かれたときに前記発光部が前記患者の頬に対して顎のラインに沿って優先的に配置されるように前記パッド上に配置されている、または、
前記顎のラインに沿って配置された前記発光部により出射された前記電磁放射線の前記光学的強度が前記顎のラインに沿って配置されていない前記発光部により出射された前記電磁放射線の前記光学的強度よりも高くなるように、前記顎のラインに沿って配置された前記発光部が前記治療電磁放射線を優先的に出射する、
請求項15に記載の光線療法デバイス。
【請求項17】
前記発光部は、前記パッドが前記患者の喉上に置かれたときに前記発光部が前記患者の胸鎖乳突筋の間に優先的に配置されるように前記パッド上に配置されている、または、
前記患者の胸鎖乳突筋の間に配置された前記発光部により出射される前記電磁放射線の前記光学的強度が前記患者の胸鎖乳突筋の間に配置されていない前記発光部により出射される前記電磁放射線の前記光学的強度よりも高くなるように、前記患者の胸鎖乳突筋の間に配置された前記発光部が前記治療電磁放射線を優先的に出射する、
請求項1~15の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項18】
前記パッドは、前記皮膚表面の少なくとも一部にわたり通気を許容するように構成された通気路を含み、
前記通気路は、前記パッドの前記内面が前記皮膚表面の前記少なくとも一部に物理的に接触しないようにする前記パッドの内面上の輪郭、または、前記パッドの前記内面と前記パッドの前記内面とは反対に配された前記パッドの外面との間の通路、の少なくとも1つを含む、
請求項1~17の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項19】
前記パッドは、前記パッドを90度に屈曲できるように構成された関節構造を含む、
請求項1~18の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項20】
前記複数の発光部のそれぞれは、発光ダイオードまたはレーザーダイオードの少なくとも1つである、
請求項1~19の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項21】
前記パッドは、前記光源により出射された前記電磁放射線の少なくとも一部を受け、前記受けた電磁放射線が前記パッドの光出斜面から出射されて前記生体組織と相互作用するように、前記受けた電磁放射線を全内部反射を介して前記パッドの光出射面まで伝搬することにより光ガイドとして機能する、
請求項1~20の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項22】
前記光源に電力を供給するように構成された電源をさらに備え、
前記電源は、前記パッドにより支持されている、または、前記電源が前記パッドにより支持されないように外部に配置されている、
請求項1~21の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項23】
前記パッドは、表面温度を監視するように構成された温度センサを含み、
前記温度センサが所定レベルよりも高い温度を検出したときに前記光源部による前記電磁放射線の出射が低減されるように前記光源による前記電磁放射線の出射を制御するように構成されたプロセッサ回路をさらに備える、
請求項1~22の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項24】
前記光源は、治療光の前記解剖学的治療領域への進入が改善されるように、前記治療光と赤外または近赤外光との両方を出射するように構成されている、
請求項1~23の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項25】
患者の皮膚表面を介して前記患者の解剖学的治療領域に光線療法を提供する光線療法デバイスを利用することにより病状を治療するための方法であって、
前記光線療法デバイスの光源により出射された電磁放射線が治療電磁放射線として前記皮膚表面により受け取られ、前記治療電磁放射線が前記解剖学的治療領域と相互作用するように、前記光線療法デバイスの前記光源を支持するパッドを前記患者の前記皮膚表面に隣接して配置すること、
前記光線療法デバイスのプロセッサ回路で前記病状の識別子を受信することと、
前記プロセッサ回路34が前記光源16を制御して、前記治療電磁放射線22の治療特性が前記解剖学的治療領域の医学的特性に基づいて空間的に変化するように、前記受信した前記病状の前記識別子に基づいて前記電磁放射線を出射させることと、を含み、
前記医学的特性は、解剖学的構造または前記病状の少なくとも1つを含む、
方法。
【請求項26】
前記病状は、放射線皮膚炎、嚥下障害、嚥下反応の惹起遅延、咽頭蠕動異常、食道炎、咽頭炎、構音障害、リンパ浮腫、放射線性線維症、神経痛、または、異常感覚の少なくとも1つを含む、
請求項17~19の何れかに記載の方法。
【請求項27】
前記病状は、放射線皮膚炎、口腔乾燥症、放射線性線維症、構音障害、神経痛/異常感覚、または、放射線性顎骨壊死の少なくとも1つを含む、
請求項17~19の何れかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概略、放射線皮膚炎に関し、より詳細には、放射線皮膚炎の治療および/または防止のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2021年2月18日に出願された米国仮出願63/150633の優先権の利益を享受する。この米国仮出願は、本願の一部として援用される。
【0003】
急性皮膚反応または急性皮膚障害は、放射線療法および/または化学療法の最も一般的な副作用の一つである。全投与量、分割照射、放射線エネルギー、治療領域の体積、治療期間および治療位置といった複数の放射線療法に関連する要因がその重症度に影響し得る。さらに、年齢、併存症、スキンタイプ(skin phototype)および遺伝学的素因といった患者に関連する要因が皮膚障害に影響する。痛ましい皮膚障害の1つである放射線皮膚炎は、皮膚の表皮および皮下構造に対する放射線の影響の結果であり、紅斑(痛みを伴う発赤)、乾燥性または湿性の皮膚剥脱および潰瘍により特徴付けられる。
【0004】
頭頸部癌または乳癌を患い放射線療法を受けるほとんどの患者は、なんらかの程度の急性放射線皮膚炎を発症する。他にはメラノーマを伴う患者も高い確率で放射線皮膚炎を発症する。放射線皮膚炎は、集束された放射線を受ける領域内に現れる。頭頸部癌の患者では、前頸部および下頬領域が最も高い放射線投与を受ける。乳癌の患者では、罹患した乳房およびそれに近いほうの脇下が最も高い放射線投与を受ける。頭頸部癌および乳癌の両方とも、癌は最も近いリンパ節(頸部および腋部)に最も広がりやすい。
【0005】
癌治療のための放射線療法インターベンションの他には、透視ガイド下インターベンション(fluoroscopically Guided Intervention)が、高い投与量、長時間の処置および高い頻度で使用されたときに、急性皮膚障害を誘発し得る。
【0006】
放射線皮膚炎のような急性皮膚障害の治療のための普遍的に受け入れられたガイドラインはない。治療および防止は、実情で顕著に異なる。現在の標準的な対処は、頻繁な洗浄、特定の制汗剤、外用剤・クリーム、ドレッシング材、局所的抗生物質の使用を含む。しかしながら、いくつかの薬、外用剤、ドレッシング材および放射線防護用具が放射線皮膚炎の防止および治療のために提案されてきている。
【発明の概要】
【0007】
放射線皮膚炎、化学療法および放射線療法の障害、および、抗がん治療の副作用は、フォトバイオモジュレーションを使用して治療および/または防止され得る。フォトバイオモジュレーションは、創傷治癒を含む生物学的機能を刺激するための光の特定の投与(例えば、波長、パワーおよび時間)の利用である。フォトバイオモジュレーションは、レーザー療法を利用することにより実施され得るが、レーザー療法は熟練の医療従事者を要し、1回で生体組織の小領域しか治療できず、各治療に1日当たり40分要する。
【0008】
本開示は、光線療法の治療特性が解剖学的治療領域の医学的特性に基づいて空間的に変化するように、異なる位置に配置された発光部を含むパッドを利用して病状を治療するための光線療法デバイスを提供する。例えば、治療特性が解剖学的構造および/または病状に基づいて変化するように、光線療法デバイスのプロセッサ回路が1または複数の発光部を別々に制御し得る(例えば、刺激の位置など)。
【0009】
本明細書では、多くの特徴が本発明の実施形態に関して記述されているが、特定の実施形態に関して記述された特徴は、他の実施形態にも採用され得る。以下の記述および添付図面は、本発明のいくつかの例示的実施形態を説明している。これらの実施形態は、本発明の原理が採用され得る種々の方法のいくつかを示しているに過ぎない。本発明の種々の観点による他の目的、利点および新規な特徴は、図面とともに勘案されて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付図面は、必ずしも縮尺は正しくなく、本発明の種々の観点を示し、類似の参照番号は種々の図面内の同一または類似の部品を示すように使用されている。
【
図1】
図1は、解剖学的治療領域の医学的特性に基づいて空間的に変化する特性を有する電磁放射線を提供する光学療法デバイスの例示的実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、2種類の発光部およびパッド上に不均一に離間した発光部を有する光学療法デバイスの例示的実施形態の概略図である。
【
図3A】
図3Aは、第2群の発光部とは別に制御可能な第1群の発光部を有し、通気路を含む光線療法デバイスの例示的実施形態の概略図である。
【
図3C】
図3Cは、光線療法デバイスの例示的実施形態の側面図である。
【
図4A】
図4Aは、患者の喉を治療するための光線療法デバイスの例示的実施形態の概略側面図である。
【
図5A】
図5Aは、患者の乳房を治療するための光線療法デバイスの例示的実施形態の概略側面図である。
【
図6】
図6は、スリットを含む光線療法デバイスの例示的実施形態の概略図である。
【
図7】
図7は、複数のパッドを有する光線療法デバイスの例示的実施形態の概略図である。
【
図8】
図8は、患者の胸鎖乳突筋の間に配置された発光部を利用したユーザーの喉を治療するための光線療法デバイスの例示的実施形態の概略図である。
【
図9A】
図9Aは、関節構造を含むパッドを有する光線療法デバイスの例示的実施形態の上面概略図である。
【
図10】
図10は、光線療法デバイスを利用した光線療法を適用することにより病状を治療するための方法の例示的実施形態のフローチャートである。
【0011】
以下、本発明が図面を参照して詳細に記述される。図面では、参照番号付きの各要素は、参照番号に付された文字とは無関係に同じ参照番号の他の要素と類似である。明細書では、特定の文字が付された参照番号は、その参照番号および文字を持つ特定の要素を示し、特定の文字が付されていない参照番号は、図面内で参照番号に付された文字とは無関係に同じ参照番号を持つ全ての要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態全般的に、パッドおよびパッドにより支持された光源を利用する光線療法を提供することにより病状を治療するための光線療法デバイスが提供される。光源はパッド上の異なる位置に配置されて治療電磁放射線を出射する複数の発光部を含む。光線療法の治療特性は、解剖学的治療領域の医学的特性に基づいて空間的に変化する。
【0013】
図1に移り、患者の皮膚表面14を介して患者の解剖学的治療領域12に光線療法を提供することにより病状を治療するための光線療法デバイス10の例示的実施形態が示されている。光線療法デバイス10は、光源16およびパッド18を含む。光源16は、電磁放射線20を出射する。パッド18は、パッド18を皮膚表面14に隣接して位置決めすることにより、光源16により出力された電磁放射線20が(1)治療電磁放射線22として皮膚表面14に受け取られ、(2)解剖学的治療領域12と相互作用するように、光源16を支持する。光源16は、治療電磁放射線22の治療特性が空間的に変化するように、パッド18上の異なる位置に配置された複数の発光部24を含む。例えば、治療電磁放射線22の波長、光学的強度または光学的投与量の少なくとも1つが空間的に変化し得る。治療特性は、解剖学的構造26の位置または病状のような、解剖学的治療領域12の医学的特性に基づいて空間的に変化する。
【0014】
図2に示された実施形態では、発光部24は、少なくとも1つの第1種類の発光部30および少なくとも1つの第2種類の発光部32を含む。第1種類の発光部30により出射される電磁放射線20の治療特性は、第2種類の発光部32により出射される電磁放射線20の治療特性と異なる。例えば、治療電磁放射線の治療特性が空間的に変化するように、発光部の総数または発光部の位置が第1種類の発光部30および第2種類の発光部32との間で変化し得る。
【0015】
ある実施形態では、第1種類の発光部30は第1波長域の電磁放射線20を出射し得、第2種類の発光部32は第1波長域とは異なる第2波長域の電磁放射線20を出射し得る。第1種類の発光部の数および/または位置が第2種類の発光部の数および/または位置と異なるので、光線療法デバイスにより出射された電磁放射線の波長域が第1および第2種類の発光部の位置に応じて空間的に変化する。
【0016】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、第1種類の発光部30を第2種類の発光部32とは別に制御することにより光源16による電磁放射線20の出射を制御するプロセッサ回路34を含む。例えば、プロセッサ回路34は、治療されている病状に基づいて第1種類の発光部30および第2種類の発光部34を制御し得る。例として、第1種類の発光部30がより長い光の波長を有する電磁放射線を出射し(すなわち、生体組織に深く進入するであろう)、第2種類の発光部32がより短い光の波長を有する電磁放射線を出射する場合(すなわち、生体組織に深くまで進入しないであろう)、主に骨組織を冒す病状を治療するとき、プロセッサ回路34は、第1種類の発光部30に第2種類の発光部32よりも大きな光学的投与を出射させ得る。代替的に、皮膚を冒す病状を治療しているとき、プロセッサ回路34は、第2種類の発光部32に第1種類の発光部30よりも大きな光学的投与を出射させ得る。
【0017】
図2に示された実施形態では、治療電磁放射線22の光学投与量が空間的に変化するように、発光部24の位置が空間的に変化する。例えば、発光部24は、パッド18が患者の規定された位置に置かれたときに解剖学的構造26の位置に重なる領域に集中され得る。
図2では、発光部24は、患者の顔上に配置されたとき、患者の顎骨と、耳下線、顎下腺または舌下線の少なくとも1つとに重なるように集中されている。
【0018】
図3に示された実施形態では、発光部24は、少なくとも第1群の発光部40および第2群の発光部42を含む。第1群の発光部40により出射される電磁放射線は、第2群の発光部42と異なるまたは同じ特性(例えば、波長域、強度、偏光、コヒーレンスなど)を有し得る。プロセッサ回路34は、第1群の発光部40を第2群の発光部42とは別に制御することにより光源16による電磁放射線20の出射を制御し得る。例えば、第1群の発光部40は、第1種類の病状を治療するために位置決めされ得、第2群の発光部42は、第2種類の病状を治療するために位置決めされ得る。
【0019】
プロセッサ回路34は、治療されている病状に基づいて、第1群の発光部40および第2群の発光部42を制御し得る。例えば、プロセッサ回路34は、治療されている病状の識別子92を受信するように構成された通信インターフェイスを含み得る。プロセッサ回路34は、治療特性(例えば、発光部、パワー設定、タイミングなど)を選択するためのルックアップテーブルを保存しているメモリ(例えば、非一時的コンピュータ読取可能媒体)を含み得る。プロセッサ回路34は、そして、第1および第2群の発光部40、42に、受信した識別子92に基づく電磁放射線を出射させ得る。
【0020】
光線療法デバイス10は、多くの異なる病状を治療するために利用され得る。頸部に関連する病状を治療するとき、パッド18が患者の喉上に置かれたとき発光部24が患者の胸鎖乳突筋の間に優先的に配置されるように、発光部24がパッド18上に配置され得る。例えば、本実施形態は、嚥下障害、嚥下反射の惹起遅延、咽頭蠕動異常(PPA)、音声障害(喉頭)、食道炎、咽頭炎または構音障害の少なくとも1つを治療するのに利用され得る。
【0021】
図4に示された実施形態では、パッド18が皮膚表面14に対して押圧されたときにパッド18の内面44(内部面とも称される)が皮膚表面14に隣接するように、パッド18は皮膚表面14の形状に基づいて形成されている。パッド18は、ファスナー46、近端48および遠端50を含み得る。ファスナー46は、パッド18の内面44が患者の喉の少なくとも一部を受け入れるように形作られたチャネル54を形成するように、近端48に対する遠端50の位置を維持し得る。
【0022】
図5Aおよび
図5Bに示された実施形態では、パッド18は、内面44、前部56および側部58を含む。前部56の内面44は患者の乳房を受け入れるための凹み60を形成する凹部を有する。側部58は、前部56に対して角度付けられており、患者がパッド上に腕を下ろすことによりパッド18の位置を維持し得るように十分に硬めであり得る。すなわち、前部56が患者の片側の乳房に隣接して位置され患者のその片側に隣接する腕が上げられたとき、パッド18の側部58は患者の隣接する腕の下に配置されている。また、患者の隣接する腕が下ろされて患者の片側を押圧したとき、患者の乳房に隣接する前部56の位置が維持される。
【0023】
パッド18は、患者の少なくとも乳房下溝(乳房の下)から患者の腋窩ひだ(腋窩)まで覆う形状およびサイズに形成され得る。パッド18は、患者の胸部に対して押圧されたときにパッドが乳房の形状を取るように柔軟であり得る。
【0024】
ある実施形態では、パッド18はリバーシブルであり得(すなわち、患者の左右両方を治療可能に)、1回に1つの乳房を被覆し得る。他の実施形態では、パッドは患者の両方の乳房を同時に被覆し得る。
【0025】
図6に示された実施形態では、パッドは、異なるサイズの乳房に利用するためにスリット59を含む。例えば、より大きな乳房に対してはパッド18はより広がり、スリット59のサイズを大きくする。
図5Bに示された実施形態では、パッドは乳房の上の胸部の領域(例えば、リンパ節を覆う)61を覆う形状に形成されている。
【0026】
図7に示される実施形態では、パッド18は複数のパッド18a、18b、18c、18dを備え、複数のパッド18のそれぞれは少なくとも1つの発光部24および皮膚表面14に対して複数のパッド18の少なくとも1つの位置を維持するように構成されたファスナー46を含む。複数のパッド18は、同じ電源および/またはプロセッサ回路34を共有し得る。例えば、複数のパッド18は、
図7に示されるように互いに配線接続され得る。
【0027】
放射線皮膚炎を治療するため、パッド18は、癌治療中に患者により受けられた放射線領域に基づいて頸部のまわりの複数の領域を囲うように形成され得る。同様に、嚥下障害(例えば、ディスファジア、嚥下反射の惹起遅延)を治療するために、電磁放射線は頸部の上部および顎の下を治療するように出射され得る。ディスファジアは、嚥下困難、咳、息苦しさ、または、食料または分泌物の安全な扱いの不能の主観的または客観的な患者の疾患として定義される。嚥下反射の惹起遅延は、ある低粘度の液体で濃度の薄い液体が喉頭および気管に容易に流れ落ち得ることから(誤飲性肺炎、死などを招く)、液体の嚥下の特段の懸念である。
【0028】
図2に示される実施形態では、パッド18は、患者の顎62から、患者の唇64および鼻66をまわり、患者の頬骨68および顎関節70まで達し、そして、患者の顎のライン72に沿って下るように広がる形状に形成されている。発光部24は、パッド18が患者の頬上に置かれたときに発光部24が患者の頬68に対して顎のライン72に沿って優先的に配置されるように、パッド18上に配置され得る。顎のライン72に沿って配置された発光部24は、顎のライン72に沿って配置された発光部24により出射される電磁放射線の光学的強度が顎のライン72に沿って配置されていない発光部により出射される電磁放射線の光学的強度よりも高くなるように、治療電磁放射線を優先的に出射し得る。
【0029】
ある実施形態では、パッドは、患者の顔の片側のみの上に配置される形状に形成されている。別の実施形態では、パッドは、患者の顔の左右両側の上に配置される形状に形成され得る。例えば、パッドは、軸に対して対称であり得る。
【0030】
光学療法デバイスは、放射線皮膚炎、口腔乾燥症、放射線性線維症、構音障害、神経痛/異常感覚、放射線性顎骨壊死、または、顎手術(例えば、腫瘍の切除)からの回復の少なくとも1つを治療するのに利用され得る。
【0031】
光学療法デバイスは、気管および喉領域を標的とするために胸鎖乳突筋、胸骨および顎の下の間の「V」領域(
図8にグレーの三角により表現されている)を照射する発光部24を介して治療電磁放射線22を優先的に出射するように利用され得る。
図8に示された実施形態では、発光部24は、パッド18が患者の喉74上に置かれたときに発光部24が患者の胸鎖乳突筋76の間に優先的に配置されるように、パッド18上に配置されている。患者の胸鎖乳突筋76の間に配置された発光部24は、患者の胸鎖乳突筋74の間に配置された発光部24により出射される電磁放射線20の光学的強度が患者の胸鎖乳突筋74の間に配置されていない発光部24により出射される電磁放射線20の光学的強度よりも高くなるように、治療電磁放射線22を優先的に出射し得る。
【0032】
例えば、治療電磁放射線22が頸部の側部に沿って配置された発光部24により出射されたとき、治療電磁放射線22は咽頭/気管、空気、および、喉/喉頭/喉頭蓋を連続的に通過する必要はない。その代わりに、側方から来ることにより、治療電磁放射線22は、甲状腺および筋肉の上/下に行き得る。
【0033】
頸部を照射するとき、脂肪質の生体組織、および、皮膚状態(例えば、メラニン濃度、毛髪など)は治療電磁放射線22の進入を低減し得る。プロセッサ回路34は、これらの問題(例えば、より長い波長を利用)を緩和するために治療電磁放射線の特性を調整し得る。ある実施形態では、患者の脂肪質の生体組織は、治療電磁放射線の進入を改善するために物理的に移動され得る。例えば、患者の脂肪質の生体組織は、移動されてストラップ、接着剤(例えば、サージカルテープ)を利用してその場に保持され得る。食道またはその他の頸部内の中央に位置された構造を標的とするとき、治療電磁放射線は胸鎖乳突筋の近くに配置された発光部を利用して出射され得る。例えば、発光部は、胸鎖乳突筋の近くに集中し得る。
【0034】
ある実施形態では、光線療法デバイスは、顎の下から喉/食道に向けて方向付けることにより、喉/食道を照射する。例えば、光線療法デバイスは、このようにして食道炎を治療し得る。食道炎は、上皮層の厚みの低減、炎症性サイトカインおよびケモカインのアップレギュレーション、炎症細胞の食道炎への浸潤、および、上皮細胞のアポトーシスにより特徴付けられる。
【0035】
図3Aおよび
図3Bに示された実施形態では、パッド18は、皮膚表面82の少なくとも一部にわたり通気を許容する通気路80を含む。通気路80は、パッド18の内面44が皮膚表面82の少なくとも一部に物理的に接触しないようにパッド18の内面44上の輪郭83を含み得る。通気路は、また、パッド18の内面44とパッド18の内面の反対に位置するパッド18の外部面86との間の通路84を含み得る。
【0036】
図3Bおよび
図3Cに示されるように、光線療法デバイス10は、光源24を支持し電力を供給するプリント配線板(PCB)(例えば、フレキシブルPCB)85を含み得る。
図3Bは、
図3Aに示された光線療法デバイス10の実施形態の側面図である。
【0037】
図9Aおよび
図9Bに示された実施形態では、パッド18は、パッド18を90°(度)に屈曲できるようにするための関節構造90を含む。関節構造90は、パッド18をより簡単に屈曲することを許容する如何なる形態も取り得る。例えば、関節構造92は、パッド18の薄肉領域、ヒンジなどを含み得る。
【0038】
発光部24は、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード、光ファイバの光出射端、または、マイクロLEDの少なくとも1つを含み得る。光源は、電磁放射線のあらゆる適切な波長を出射し得る。光源16は、600nmから1000nmまでの波長を有する光を出射し得る。例えば、光源16は、630nm、660nm、670nm、810nm、または、880nmの少なくとも1つに略同じ波長を有する電磁放射線を出射し得る。ある実施形態では、光源は、治療光の口腔の生体組織への進入が改善されるように、治療光と、赤外または近赤外光との両方を出射し得る。すなわち、赤外または近赤外光は、治療光の生体組織への進入を改善し得る。
【0039】
上述の通り、パッド18は、光源16を機械的に支持する。ある実施形態では、パッド18は、外部光源16(すなわち、パッド18により機械的に支持されていない)から光を追加的に受ける。パッド18は、光源16により出射された電磁放射線20の少なくとも一部を受けて、受けた電磁放射線がパッドの光出射面から出射されて皮膚表面14と相互作用するように、受けた電磁放射線を全内部反射を介してパッドの光出斜面まで伝搬することにより、光ガイドとして機能し得る。
【0040】
図3Cに示されるように、発光部24は、出射された電磁放射線20の分布に影響を与えるように構成された光取出構造で被覆され得、あるいは、含み得る。例えば、発光部24の少なくとも一部は、パッド18の一部が光取出構造を含む発光部24を覆うようにしてパッド18内に埋設され得る。光取出構造は、微細遮断、レンズ構造、パッド18の波形表面、パッド18の変化する断面領域、または、パッド18の長さに沿った光を取り出すように構成されたパッドの表面に沿った変化する表面仕上げであり得る。光取出構造は、出射された電磁放射線20が選択されたパターン(分布とも称される)を有するように選択され得る。
【0041】
パッド18は、あらゆる適切な材料からなり得、あらゆる適切な形状を有し得る。ある実施形態では、パッド18は、パッド18が異なる皮膚表面14および異なる患者の輪郭にカスタマイズ可能であるように柔軟(すなわち、変形可能)である。ある実施形態では、パッド18の少なくとも一部が、ショアAデュロメータで60またはそれ未満であり、100%よりも大きな伸び率を有する柔らかくおよび/または柔軟な材料から作られている。例えば、パッド18の表面は、ショアAデュロメータで60またはそれ未満であり、100%よりも大きな伸び率を有し得る。ある実施形態では、パッド18は、アクリル、ガラス、シリコーン、または、高分子材料の少なくも1つで作られている。例として、パッド18は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ナイロン、ABS樹脂、ポリオレフィン、または、その他の生体適合性の熱可塑プラスチックエラストマー材料といった異なる材料から作られている。
【0042】
ある実施形態では、パッド18は、パッド18または皮膚表面14の表面温度を監視するように構成された温度センサを含む。プロセッサ回路34は、また、温度センサが所定レベルよりも高い温度を検出したとき光源16による電磁放射線20の出射が低減されるように、光源16による電磁放射線20の出射を制御し得る。例えば、所定のレベルは、しきい温度(例えば、生体組織の損傷、光線療法デバイス10の一部の損傷または患者の不快感を起こすことで決定される)であり得る。
【0043】
治療電磁放射線22のために空間的に変化する(例えば、プロセッサ回路34により制御されて)電磁放射線20の特性は、強度、波長、出射期間長、コヒーレンス、出射の時間変調、または、標的領域からの出射の距離の少なくとも1つを含み得る。
【0044】
パッド18は、皮膚表面14内の異常(例えば、傷、色素における違いなど)を検出するために配置されたセンサを含み得る。例えば、プロセッサ回路34は、センサにより検出された異常に基づいて1または複数の標的領域の位置を決定し得る。プロセッサ回路34は、そして、検出された位置が他の位置に比べて優先的に照射されるように、検出された異常の位置に基づいて光源16による電磁放射線20の出射を調整し得る。他の実施形態では、光線療法デバイス10は、検出された色素沈着(例えば、そばかす、ほくろなど)の領域を照射することを回避し得る。この例では、色素沈着の検出された領域は、皮膚表面14の他の領域よりも少ない光学的投与量を受け得る。センサは、視覚的特性(例えば、色、ヒュー(hue)など)に基づいて異常を識別するように構成されたフォトセンサであり得る。
【0045】
光線療法デバイス10は、さらに、電源を含み得る。電源は、バッテリーおよび/または外部電源(例えば、電気コンセント)に接続するためにプラグから構成され得る。例えば、光線療法デバイス10は、光源16および/またはプロセッサ回路34に電力を供給するように構成されたバッテリーを含み得る。電源は、パッドにより支持され得、または、電源がパッドにより支持されないように外部に配置され得る。
【0046】
図10に示される実施形態では、患者の皮膚表面14を介して患者の解剖学的治療領域に光線療法を提供することにより病状を治療するための方法100が示されている。ステップ102では、光源16を支持しているパッド18を含む光線療法デバイス10は、患者の皮膚表面14に隣接して置かれる。ステップ104では、病状92の識別子が光線療法デバイスのプロセッサ回路34により受信される。ステップ106では、プロセッサ回路34は、光源16に、受信した病状92の識別子に基づいて治療電磁放射線22としての電磁放射線20を出射させる。治療電磁放射線22は、治療電磁放射線22の治療特性が解剖学的治療領域12の医学的特性に基づいて空間的に変化するように制御され得る。ある実施形態では、プロセッサ回路34は、受信した病状92の識別子に基づいて解剖学的治療領域12の医学的特性を決定する。
【0047】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、放射線皮膚炎、リンパ浮腫(頸部)、放射線性線維症、神経痛/異常感覚、および、手術(例えば、頸部皮弁(neck flaps))というような、頭頸部癌の治療として化学放射線療法を受けた患者に主に与える病状を治療するために利用され得る。
【0048】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、リンパ浮腫を治療するのに利用され得る。リンパ浮腫(例えば、頭頸部癌および乳癌)は、流体でのリンパ節の肥大である。本実施形態では、パッドは、側頸部(例えば、この領域はしばしば最も多くの冒されたリンパ節を有する)を優先的に標的とする治療電磁放射線を出射し得る。リンパ系は表面により近いので、より浅めに進入する治療電磁放射線が光線療法デバイス10により出射され得る。例えば、治療光は、より短い波長域(630nm~660nm、630nm~670nmなど)を有し得る。
【0049】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、放射線性線維症の治療に利用され得る。放射線治療後の放射線性線維症は、コラーゲンの沈着の増加(繊維芽細胞の分化の増加から筋繊維芽細胞へ)、乏しい血管新生、および、瘢痕化により特徴付けられる。本実施形態では、パッドは、胸鎖乳突筋およびその他の頸部回転筋を標的とする発光部からの治療電磁放射線を出射し得る。光源は、また、治療電磁放射線が放射線療法中に患者が受けた放射線の直接の経路内の皮膚組織に向けて方向付けられるように制御され得る。より浅めに進入する治療電磁放射線は、放射線性線維症を治療するときも光線療法デバイス10により出射され得る。例えば、治療光は、より短い波長域(例えば、660nm)を有し得る。
【0050】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、神経痛/異常感覚を治療するのに利用され得る。神経痛/異常感覚は、化学療法により誘引される神経障害性疼痛である。光源療法デバイスは、神経痛/異常感覚を治療するために赤色光(660nm)を利用し得る。本実施形態では、光線療法デバイスは、頸部を広く標的とする治療電磁放射線を出射し得る。例えば、治療電磁放射線は、より短い波長域(例えば、660nm)を有し得る。
【0051】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、フラップ(flap)の手術位置を照射することにより手術により引き起こされた頸部フラップを治療するために利用され得る(例えば、より深く進入する発光部を利用する)。
【0052】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、頬領域を全般に標的とするすることにより、放射線皮膚炎を治療するのに利用され得る。例えば、治療電磁放射線は、700nmを含む波長を有する。
【0053】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、頬骨のピークから顎の角までを優先的に照射し(例えば、浅めに進入する発光部群を利用して)、および、耳下腺および/または顎下腺を含むことにより、口腔乾燥症を治療するのに利用され得る。口腔乾燥症すなわちドライマウスは、頭頸部への化学療法および放射線療法の副作用であり得る。口腔乾燥症は、唾液腺(耳下腺、顎下腺および舌下線)の不適切な機能の結果である。光線療法デバイス10は、また、顎下に配置されて下顎の下/顎の下からの治療光を方向付ける発光部を含み得る。
【0054】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、放射線性線維症を治療するのに利用され得る。例えば、光線療法デバイスは、頬領域の全般を照射し得る。光線療法デバイスは、会話および咀嚼に利用される顔面筋(しばしば放射線性線維症により冒される)を優先的に照射し得る。
【0055】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、咬筋、下唇下制筋、口角下制筋の少なくとも1つを照射することにより、構音障害を治療するのに利用され得る。構音障害をもつ人は、彼または彼女の発話の音の高さ、大きさ、リズムおよび音声品質を制御する問題を有し得る。構音障害は、麻痺、筋力低下、または、口の筋肉を協調することの不能により引き起こされる。光線療法デバイスは、より深い生体組織に到達するために、より長い波長およびより高い強度を有する治療電磁放射線を利用し得る。
【0056】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、頬を全般に照射することにより、神経痛/異常感覚を治療するのに利用され得る。
【0057】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、顎の骨壊死(放射線性骨壊死とも称される)を治療し、または、顎の手術後の患者の回復を改善するのに利用され得る。放射線性骨壊死は、照射された骨が衰弱ときに起きる問題となる合併症である。本実施形態では、光線療法デバイスは、顎関節から下に向かって延びて顎に到達するにつれて厚くなる線に沿って配置されている発光部を利用して治療電磁放射線を優先的に生成し得る。光線療法デバイスは、同様に、骨生体組織に到達するためにより深く進入する発光部(例えば、850nm以上の波長を含み、660nmでより大きな光学的強度である、など)を利用し得る。
【0058】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、乳房および/または胸部壁の放射線皮膚炎を治療するのに利用され得る(例えば、癌の位置または癌治療により引き起こされた病状に応じて)。例えば、放射線皮膚炎は、しばしば乳房下溝および腋窩ひだにおいて悪化するが、放射線皮膚炎はこれらの領域に限定されない。光線療法デバイスは、より短い波長域(例えば、660nm)を有する治療電磁放射線を利用して、冒された領域を照射することにより放射線皮膚炎を治療し得る。
【0059】
ある実施形態では、光線療法デバイス10は、リンパ浮腫(例えば、乳房切断術後)を治療するのに利用され得る。光線療法デバイスは、高密度のリンパ節を有するとして知られた領域を照射し得る(例えば、側胸部壁、腋窩の下または内部)。
【0060】
光線療法デバイスは、バッテリーのような蓄電装置を含み得る。代替的にまたは追加的に、光線療法デバイスは、外部電源(例えば、壁にプラグを差し込んで)、または、パッドにより機械的に支持されていないバッテリー(例えば、別置きのバッテリーパック)から電力を受け得る。
【0061】
ある実施形態では、光線療法デバイスは、複数のパッドを含む。パッドは、個別に制御可能であり得る。代替的に、パッドは、電力を共有するために電気的に接続され得る。パッドは、また、各パッド上に配置されたプロセッサ回路またはパッドのサブセット(例えば、1つ)上に配置されたプロセッサ回路により個別に制御され得る。
【0062】
パッドは、大きな表面にわたり散光または集光するために光取出構造(例えば、レンズ)を含み得る。リッジ状の構造は、また、皮膚へのライン間の接触を防止し、さらなる通気性を許容し得る。
【0063】
光線療法デバイスは、患者に対してパッドの位置を維持するように構成されたサポートをさらに含み得る。例えば、サポートは、患者に対してパッドを固定するためのハーネスおよび/またはストラップであり得る。サポートは、また、サージカルテープのような接着剤であり得る。
【0064】
プロセッサ回路34は、様々な実施態様を有し得る。例えば、プロセッサ回路34は、プロセッサ(例えば、CPU)、プログラマブル回路、集積回路、メモリおよびI/O回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロコントローラ、 CPLD(Complex Programmable Logic Device)、他のプログラマブル回路などのような、あらゆる適切なデバイスを含み得る。プロセッサ回路34は、また、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(EEPROMまたはフラッシュメモリ)、または、その他の適切な媒体というような、非一時的コンピュータ読取可能な媒体を含み得る。以下に記述された方法を実施するために命令は、非一時的コンピュータ読取可能な媒体に保存され得、プロセッサ回路34により実行され得る。プロセッサ回路34は、コンピュータ読取可能な媒体、および、ネットワークインターフェースに、システムバス、マザーボードを介して、または、本技術分野で公知の他のあらゆる適切な構造を利用して、通信可能に接続され得る。プロセッサ回路34は、ネットワークインターフェースを介して光源16を制御するためのパラメータを受け得る。
【0065】
明細書および請求の範囲内で開示された全ての範囲および比率の限定は、あらゆる方法で組み合わせられ得る。特段の言及がない限り、「a」「an」および/または「the」への参照は、1または複数を含み得、そして、単数形のアイテムへの参照は、また、複数形のそのアイテムを含み得る。
【0066】
本発明は、ある実施形態または複数の実施形態に関して開示され且つ説明されているが、当業者は、本明細書および添付図面を読み且つ理解することで均等な代替及び変更を想到するであろう。特に上記要素(部品、アセンブリ、装置、組成など)により発揮される種々の機能に関して上記要素を表現するのに利用された用語(「手段」の参照を含む)は、特段の指定が無い限り、たとえそれがその機能を発揮するとして本発明の例示的実施形態または複数の実施形態で開示された構造物とは構造的には均等ではなくても、その説明された要素のその特定の機能を発揮するあらゆる要素に相当することを意図されている(すなわち、機能的均等)。さらに、本発明の特定の特徴が数例の実施形態のうちの1または複数の実施形態のみで上述されているかもしれないが、そのような特徴は、あらゆる任意または特定の応用に望まれ且つ利点を得るように、他の実施形態の1または複数の他の特徴と組み合わせ得る。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮膚表面を介して患者の解剖学的治療領域に光線療法を提供することにより病状を治療するための光線療法デバイスであって、
電磁放射線を出射するように構成された光源と、
前記光源を支持するように構成されたパッドであって、前記パッドを前記皮膚表面に隣接して位置決めすることにより、前記光源から出力された前記電磁放射線が治療電磁放射線として前記皮膚表面により受け取られ、前記解剖学的治療領域と相互作用する、パッドと、を備え、
前記光源は、前記治療電磁波放射線の治療特性が前記解剖学的治療領域の医学的特性に基づいて空間的に変化するように、前記パッドの異なる位置に配置された複数の発光部を含み、
前記発光部は、前記パッドが前記患者の喉上に置かれたときに前記発光部が前記患者の胸鎖乳突筋の間に優先的に配置されるように、前記パッド上に配置されており、
前記医学的特性は、解剖学的構造または前記病状の少なくとも1つを含む、
光線療法デバイス。
【請求項2】
空間的に変化する前記治療特性は、波長、光学的強度または光学的投与量の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の光線療法デバイス。
【請求項3】
前記発光部は、少なくとも1つの第1種類の発光部と、少なくとも1つの第2種類の発光部とを含み、
前記第1種類の発光部により出射される前記電磁放射線の治療特性は、前記第2種類の発光部により出射される電磁放射線の治療特性と異なり、
前記治療電磁放射線の前記治療特性が空間的に変化するように、前記少なくとも1つの第1種類の発光部の総数または位置の少なくとも1つが、前記少なくとも1つの第2種類の発光部と異なる、
請求項1または2に記載の光線療法デバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1種類の発光部は、第1波長域の電磁放射線を出射するように構成されており、
前記少なくとも1つの第2種類の発光部は、第2波長域の電磁放射線を出射するように構成されており、
前記第1波長域は、前記第2波長域と異なる、
請求項3に記載の光線療法デバイス。
【請求項5】
前記第1種類の発光部を前記第2種類の発光部とは別に制御することにより前記光源による前記電磁放射線の出射を制御するように構成されたプロセッサ回路をさらに備える、
請求項3または4に記載の光線療法デバイス。
【請求項6】
前記プロセッサ回路は、治療されている前記病状に基づいて前記第1種類の発光部および前記第2種類の発光部を制御するように構成されている、
請求項5に記載の光線療法デバイス。
【請求項7】
前記治療電磁放射線の光学投与量が空間的に変化するように、前記複数の発光部の配置が空間的に変化している、
請求項1~6の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項8】
前記発光部は、第1群の発光部および第2群の発光部を少なくとも含み、
前記第1群の発光部を前記第2群の発光部とは別に制御することにより前記電磁放射線の出射を制御するように構成されたプロセッサ回路をさらに備える、
請求項1~7の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項9】
前記第1群の発光部は、第1種類の病状を治療するために位置決めされており、
前記第2群の発光部は、第2種類の病状を治療するために位置決めされている、
請求項8に記載の光線療法デバイス。
【請求項10】
前記プロセッサ回路は、治療されている前記病状に基づいて前記第1群の発光部および前記第2群の発光部を制御するように構成されている、
請求項9に記載の光線療法デバイス。
【請求項11】
前記パッドは、前記パッドが前記皮膚表面に対して押圧されたときに前記パッドの内面が前記皮膚表面に隣接するように、前記皮膚表面の形状に基づいて形成されている、
請求項1~10の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項12】
前記パッドは、ファスナー、近端、遠端および内面を含み、
前記ファスナーは、前記パッドの前記内面が前記患者の喉の少なくとも一部を受け入れるように形作られたチャネルを形成するように、前記近端に対して前記遠端の位置を維持するように構成されている、
請求項11に記載の光線療法デバイス。
【請求項13】
前記パッドは、複数のパッドから構成されており、前記複数のパッドのそれぞれは、前記複数の発光部の少なくとも1つを含み、
前記皮膚表面に対して前記複数のパッドの少なくとも1つの位置を維持するように構成されたファスナーをさらに備える、
請求項1~12の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項14】
前記患者の胸鎖乳突筋の間に配置された前記発光部により出射される前記電磁放射線の前記光学的強度が前記患者の胸鎖乳突筋の間に配置されていない前記発光部により出射される前記電磁放射線の前記光学的強度よりも高くなるように、前記患者の胸鎖乳突筋の間に配置された前記発光部が前記治療電磁放射線を優先的に出射する、
請求項1~13の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項15】
前記パッドは、前記皮膚表面の少なくとも一部にわたり通気を許容するように構成された通気路を含み、
前記通気路は、前記パッドの前記内面が前記皮膚表面の前記少なくとも一部に物理的に接触しないようにする前記パッドの内面上の輪郭、または、前記パッドの前記内面と前記パッドの前記内面とは反対に配された前記パッドの外面との間の通路、の少なくとも1つを含む、
請求項1~14の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項16】
前記パッドは、前記パッドを90度に屈曲できるように構成された関節構造を含む、
請求項1~15の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項17】
前記複数の発光部のそれぞれは、発光ダイオードまたはレーザーダイオードの少なくとも1つである、
請求項1~16の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項18】
前記パッドは、前記光源により出射された前記電磁放射線の少なくとも一部を受け、前記受けた電磁放射線が前記パッドの光出斜面から出射されて前記生体組織と相互作用するように、前記受けた電磁放射線を全内部反射を介して前記パッドの光出射面まで伝搬することにより光ガイドとして機能する、
請求項1~17の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項19】
前記光源に電力を供給するように構成された電源をさらに備え、
前記電源は、前記パッドにより支持されている、または、前記電源が前記パッドにより支持されないように外部に配置されている、
請求項1~18の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項20】
前記パッドは、表面温度を監視するように構成された温度センサを含み、
前記温度センサが所定レベルよりも高い温度を検出したときに前記光源部による前記電磁放射線の出射が低減されるように前記光源による前記電磁放射線の出射を制御するように構成されたプロセッサ回路をさらに備える、
請求項1~19の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項21】
前記光源は、治療光の前記解剖学的治療領域への進入が改善されるように、前記治療光と赤外または近赤外光との両方を出射するように構成されている、
請求項1~20の何れかに記載の光線療法デバイス。
【請求項22】
患者の皮膚表面を介して前記患者の解剖学的治療領域に光線療法を提供する光線療法デバイスを利用することにより病状を治療するための方法であって、
前記光線療法デバイスの光源により出射された電磁放射線が治療電磁放射線として前記皮膚表面により受け取られ、前記治療電磁放射線が前記解剖学的治療領域と相互作用するように、前記光線療法デバイスの前記光源を支持するパッドを前記患者の前記皮膚表面に隣接して配置すること、
前記光線療法デバイスのプロセッサ回路で前記病状の識別子を受信することと、
前記プロセッサ回路34が前記光源16を制御して、前記治療電磁放射線22の治療特性が前記解剖学的治療領域の医学的特性に基づいて空間的に変化するように、前記受信した前記病状の前記識別子に基づいて前記電磁放射線を出射させることと、を含み、
前記医学的特性は、解剖学的構造または前記病状の少なくとも1つを含む、
方法。
【請求項23】
前記病状は、放射線皮膚炎、嚥下障害、嚥下反応の惹起遅延、咽頭蠕動異常、食道炎、咽頭炎、構音障害、リンパ浮腫、放射線性線維症、神経痛、または、異常感覚の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の光線療法デバイス。
【請求項24】
前記病状は、放射線皮膚炎、口腔乾燥症、放射線性線維症、構音障害、神経痛/異常感覚、または、放射線性顎骨壊死の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の光線療法デバイス。
【国際調査報告】