(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-22
(54)【発明の名称】細胞免疫療法の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240712BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240712BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240712BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240712BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240712BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20240712BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240712BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240712BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20240712BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20240712BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20240712BHJP
A61K 35/545 20150101ALN20240712BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240712BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240712BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240712BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/68
A61K35/15
A61K39/395 T
A61K31/337
A61K31/7076
A61K31/675
A61K47/62
A61K35/545
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562228
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 CN2022085921
(87)【国際公開番号】W WO2022214089
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】202110377518.7
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522072507
【氏名又は名称】クレージュ メディカル カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CRAGE MEDICAL CO.,LIMITED
【住所又は居所原語表記】Flat/RM A 12/F,ZJ 300,300 Lock hart Road,Wan Chai,Hong Kong,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李宗海
(72)【発明者】
【氏名】汪薇
(72)【発明者】
【氏名】肖▲じゅん▼
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB01
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4C085BB50
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4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086BA02
4C086DA35
4C086EA18
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA16
4C087MA02
4C087NA05
4C087ZB02
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
がん治療組成物、及びがん治療方法であって、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体による治療が失敗した患者に対するがん治療方法及び治療組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの先行治療が失敗した患者におけるがんを治療するための薬物の製造における細胞療法製品の使用であって、前記先行治療は、抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を用いる治療を含む、使用。
【請求項2】
前記細胞療法製品が、外因性受容体を発現している免疫エフェクター細胞を含有する請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記免疫エフェクター細胞が、T細胞、NK細胞、NK T細胞、肥満細胞、マクロファージ、樹状細胞、CIK細胞、幹細胞由来免疫エフェクター細胞又はそれらの組み合わせから選ばれる請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記免疫エフェクター細胞が、天然のT細胞及び/又は多能性幹細胞によって誘導されたT細胞に由来する請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記免疫エフェクター細胞が、自己/同種T細胞、又は初代T細胞である請求項2~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記T細胞が、幹細胞様メモリーT細胞(Tscm細胞)、セントラルメモリーT細胞(Tcm)、エフェクターT細胞(Tef)、制御性T細胞(Treg)、エフェクターメモリーT細胞(Tem)、γδ T細胞、αβ T細胞又はそれらの組み合わせを含む請求項3~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記外因性受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、T細胞融合タンパク質(TFP)、T細胞-抗原カプラー(TAC)又はそれらの組み合わせから選ばれる請求項2~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記外因性受容体の抗原結合ドメインが腫瘍抗原を特異的に認識する請求項2~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記腫瘍抗原が、CD19、CD20、CD22、CD30、メソテリン(Mesothelin)、BCMA、EGFR、EGFRvIII、PSMA、Muc1、claudin18.2、GPC3、IL13RA2、SLAMF7、GPRC5D、LILRB4又はそれらの組み合わせから選ばれ、好ましくは、前記腫瘍抗原が、GPC3、CD19、BCMA、Claudin18.2又はそれらの組み合わせから選ばれる請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記がんが、固形腫瘍及び/又は血液腫瘍を含み、好ましくは、前記固形腫瘍が消化管腫瘍を含み、より好ましくは、前記消化管腫瘍が胃がん/食道胃接合部腺がん、胆嚢がん、肝がん、クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍又はそれらの組み合わせを含む請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記がんが、クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍、胃がん、膵臓がん、胆嚢がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮がん(UC)、食道がん、子宮頸がん、肝がん、メルケル(Merkel)細胞がん、腎臓細胞がん(RCC)、結腸直腸がん(mCRC)、乳がんから選ばれる請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記抗PD-1抗体/PD-L1抗体が、ニボルマブ(Nivolumab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)、カムレリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ジムベレリマブ(GLS-010)、チスレリズマブ又はそれらの組み合わせから選ばれる請求項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記先行治療が、薬物療法、外科的治療、放射線療法又はそれらの組み合わせを含み、前記薬物療法は、化学薬物及び/又はバイオ薬物の投与を含み、好ましくは、前記先行治療が、オラパリブ、レンバチニブ、カボザンチニブ、アキシチニブ、イピリムマブ、白金系化学療法薬、ペメトレキセド、エトポシド、タキサン系化合物、ベバシズマブ、レゴラフェニブ、アンロチニブ、アパチニブ、レンバチニブ、フルキンチニブ、レゴラフェニブ又はそれらの組み合わせの投与を含む請求項1~12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記がんを患っている患者に少なくとも1サイクルの細胞療法製品を投与して治療し、好ましくは、前記がんを患っている患者に1~3サイクルの細胞療法製品を投与して治療する請求項1に記載の使用。
【請求項15】
前記キメラ抗原受容体(CAR)が、
(i)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD3ζ、
(ii)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン及びCD3ζ、
(iii)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD137の共刺激シグナルドメイン及びCD3ζ、及び/又は
(iv)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン、CD137の共刺激シグナルドメイン及びCD3ζを含む請求項7~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約2×10
9個の細胞/kg、約2×10
8個の細胞/kg若しくは約2×10
7個の細胞/kg患者の体重を超えず、又は細胞療法製品における細胞の用量は、約1×10
11個の細胞/患者、約1×10
10個の細胞/患者、約5×10
9個の細胞/患者、約2×10
9個の細胞/患者若しくは約1×10
9個の細胞/患者を超えない請求項14又は15に記載の使用。
【請求項17】
1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約1×10
5個の細胞/kg患者の体重~約2×10
7個の細胞/kg患者の体重、若しくは約1×10
6細胞/kg患者の体重~約2×10
7細胞/kg患者の体重であり、又は
1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約1×10
7個の細胞~約5×10
9個の細胞/患者、約1×10
7個の細胞~約2×10
9個の細胞/患者、若しくは約1×10
7個の細胞~約1×10
9個の細胞/患者であり、若しくは1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約1×10
8個の細胞~約5×10
9個の細胞/患者、約1×10
8個の細胞~約2×10
9個の細胞/患者、若しくは約1×10
8個の細胞~約1×10
9個の細胞/患者であり、若しくは1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約2.5×10
8個の細胞~約5×10
8個の細胞/患者である請求項16に記載の使用。
【請求項18】
各サイクルにおいて前記細胞療法製品を投与する前に前治療を行い、前記前治療は、前記患者に化学薬物、バイオ薬物、放射線療法又はそれらの組み合わせを与えることを含む請求項14~17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記前治療が、前記細胞療法製品の投与の1~8日前に実施され、好ましくは、前記細胞療法製品の投与の2~6日前に実施され、好ましくは、化学薬物、バイオ薬物、放射線療法又はそれらの組み合わせの連続的な使用は4日を超えない請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記化学薬物が、シクロホスファミド、フルダラビン、チューブリン阻害剤、ピリミジン系抗腫瘍薬からいずれか1つ若しくは少なくとも2つが選ばれ、又は前記化学薬物がシクロホスファミド及びフルダラビンを含み、又は前記化学薬物がシクロホスファミド、フルダラビン及びチューブリン阻害剤を含む請求項18又は19に記載の使用。
【請求項21】
前記チューブリン阻害剤がタキサン系化合物であり、好ましくは、前記タキサン系化合物が、パクリタキセル、アルブミン結合型パクリタキセル、ドセタキセルから選ばれ、より好ましくは、前記タキサン系化合物がアルブミン結合型パクリタキセルである請求項20に記載の使用。
【請求項22】
フルダラビンの投与量は、約10~50mg/m
2/日、又は約15~40mg/m
2/日、又は約15~30mg/m
2/日、又は約20~30mg/m
2/日、又は約25mg/m
2/日、又は約30~60mg/日、又は約30~50mg/日、又は約35~45mg/日であり、
シクロホスファミドの投与量は、約200~400mg/m
2/日、又は約200~300mg/m
2/日、又は約250mg/m
2/日、又は約300~700mg/日、又は約300~550mg/日、又は約300~500mg/日であり、
タキサン系化合物の投与量は、約300mg/日以下、若しくは約200mg/日以下であり、又は約90~120mg/日である請求項20又は21に記載の使用。
【請求項23】
前記シクロホスファミドが2~3回投与され、又は前記フルダラビンが1~2回投与され、又は前記タキサン系化合物が1回投与される請求項20~22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記抗原結合ドメインが、
配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号3に示されるHCDR3、配列番号4に示されるLCDR1、配列番号5に示されるLCDR2、配列番号6に示されるLCDR3、若しくは
配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、配列番号18に示されるHCDR3、配列番号19に示されるLCDR1、配列番号20に示されるLCDR2、配列番号21に示されるLCDR3、若しくは
配列番号27に示されるHCDR1、配列番号28に示されるHCDR2、配列番号29に示されるHCDR3、配列番号30に示されるLCDR1、配列番号31に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を備え、
又は前記抗原結合ドメインが、
配列番号7に示される重鎖可変領域及び配列番号9に示される軽鎖可変領域、若しくは配列番号22に示される重鎖可変領域及び配列番号23に示される軽鎖可変領域、若しくは配列番号33に示される重鎖可変領域及び配列番号34に示される軽鎖可変領域を備え、
又は前記抗原結合ドメインが、配列番号14、24、35、若しくは37に示される配列を備える請求項8~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記キメラ抗原受容体が、配列番号11、12、13、25、26、36、38、52のいずれかに示されるアミノ酸配列を備え、又は配列番号58、59、60、61、62、63、64、65、66若しくは67のいずれかに示される配列がそれぞれ配列番号80、81若しくは82に示される配列と順次連結して組み合わせてなるポリペプチドを備え、又は配列番号70、71、72、73、74、75、76、77、78若しくは79のいずれかに示される配列がそれぞれ配列番号80、81若しくは82に示される配列と順次連結して組み合わせてなるポリペプチドを備える請求項7~24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
各サイクルにおいて前記細胞療法製品を投与する前に、前記患者のCRSを示すサイトカイン、神経毒性を示すサイトカイン、腫瘍負荷を示す指標、及び/又は宿主の抗CAR免疫応答を示す因子の血清レベルを評価する請求項14~25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
前記細胞療法製品を投与して治療した後、前記患者は、重度のCRSを示さず、又はグレード3を超える神経毒性を示さない請求項1~26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を用いるがんの治療で失敗した患者のうちの少なくとも一部が、好ましくは、少なくとも40%が、より好ましくは、少なくとも50%が前記細胞療法製品に応答がある請求項1~27のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
前記応答が、ORRは40%より大きく、好ましくは、50%より大きいことである請求項28に記載の使用。
【請求項30】
細胞療法製品を用いて、がんの先行治療が失敗した患者におけるがんを治療する方法であって、前記先行治療は、抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を用いる治療を含む方法。
【請求項31】
前記細胞療法製品が、外因性受容体を発現している免疫エフェクター細胞を含有する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記免疫エフェクター細胞が、T細胞、NK細胞、NK T細胞、肥満細胞、マクロファージ、樹状細胞、CIK細胞、幹細胞由来免疫エフェクター細胞又はそれらの組み合わせから選ばれる請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記免疫エフェクター細胞が、天然のT細胞及び/又は多能性幹細胞によって誘導されたT細胞に由来する請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記免疫エフェクター細胞が、自己/同種T細胞、又は初代T細胞である請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記T細胞が、幹細胞様メモリーT細胞(Tscm細胞)、セントラルメモリーT細胞(Tcm)、エフェクターT細胞(Tef)、制御性T細胞(Treg)、エフェクターメモリーT細胞(Tem)、γδ T細胞、αβ T細胞又はそれらの組み合わせを含む請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記外因性受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、T細胞融合タンパク質(TFP)、T細胞-抗原カプラー(TAC)又はそれらの組み合わせから選ばれる請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記外因性受容体の抗原結合ドメインが腫瘍抗原を特異的に認識する請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記腫瘍抗原が、CD19、CD20、CD22、CD30、メソテリン(Mesothelin)、BCMA、EGFR、EGFRvIII、PSMA、Muc1、claudin18.2、GPC3、IL13RA2、SLAMF7、GPRC5D、LILRB4又はそれらの組み合わせから選ばれ、好ましくは、前記腫瘍抗原が、GPC3、CD19、BCMA、Claudin18.2又はそれらの組み合わせから選ばれる請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記がんが、固形腫瘍及び/又は血液腫瘍を含み、好ましくは、前記固形腫瘍が消化管腫瘍を含み、より好ましくは、前記消化管腫瘍が胃がん/食道胃接合部腺がん、胆嚢がん、肝がん、クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍又はそれらの組み合わせを含む請求項30~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記がんが、クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍、胃がん、膵臓がん、胆嚢がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮がん(UC)、食道がん、子宮頸がん、肝がん、メルケル(Merkel)細胞がん、腎臓細胞がん(RCC)、結腸直腸がん(mCRC)、乳がんから選ばれる請求項30~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記抗PD-1抗体/PD-L1抗体が、ニボルマブ(Nivolumab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)、カムレリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ジムベレリマブ(GLS-010)、チスレリズマブ又はそれらの組み合わせから選ばれる請求項30~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記先行治療が、薬物療法、外科的治療、放射線療法又はそれらの組み合わせを含み、前記薬物療法は、化学薬物及び/又はバイオ薬物の投与を含み、好ましくは、前記先行治療が、オラパリブ、レンバチニブ、カボザンチニブ、アキシチニブ、イピリムマブ、白金系化学療法薬、ペメトレキセド、エトポシド、タキサン系化合物、ベバシズマブ、レゴラフェニブ、アンロチニブ、アパチニブ、レンバチニブ、フルキンチニブ、レゴラフェニブ又はそれらの組み合わせの投与を含む請求項30~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記がんを患っている患者に少なくとも1サイクルの細胞療法製品を投与して治療し、好ましくは、前記がんを患っている患者に1~3サイクルの細胞療法製品を投与して治療する請求項30に記載の方法。
【請求項44】
前記キメラ抗原受容体(CAR)が、
(i)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD3ζ、
(ii)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン及びCD3ζ、
(iii)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD137の共刺激シグナルドメイン及びCD3ζ、及び/又は
(iv)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン、CD137の共刺激シグナルドメイン及びCD3ζを含む請求項36~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約2×10
9個の細胞/kg、約2×10
8個の細胞/kg若しくは約2×10
7個の細胞/kg患者の体重を超えず、又は細胞療法製品における細胞の用量は、約1×10
11個の細胞/患者、約1×10
10個の細胞/患者、約5×10
9個の細胞/患者、約2×10
9個の細胞/患者若しくは約1×10
9個の細胞/患者を超えない請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約1×10
5個の細胞/kg患者の体重~約2×10
7個の細胞/kg患者の体重、若しくは約1×10
6個の細胞/kg患者の体重~約2×10
7個の細胞/kg患者の体重であり、又は
1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約1×10
7個の細胞~約5×10
9個の細胞/患者、約1×10
7個の細胞~約2×10
9個の細胞/患者、若しくは約1×10
7個の細胞~約1×10
9個の細胞/患者であり、若しくは1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約1×10
8個の細胞~約5×10
9個の細胞/患者、約1×10
8個の細胞~約2×10
9個の細胞/患者、若しくは約1×10
8個の細胞~約1×10
9個の細胞/患者であり、若しくは1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約2.5×10
8個の細胞~約5×10
8個の細胞/患者である請求項45に記載の方法。
【請求項47】
各サイクルにおいて前記細胞療法製品を投与する前に前治療を行い、前記前治療は、前記患者に化学薬物、バイオ薬物、放射線療法又はそれらの組み合わせを与えることを含む請求項43~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記前治療が、前記細胞療法製品の投与の1~8日前に実施され、好ましくは、前記細胞療法製品の投与の2~6日前に実施され、好ましくは、化学薬物、バイオ薬物、放射線療法又はそれらの組み合わせの連続的な使用は4日を超えない請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記化学薬物が、シクロホスファミド、フルダラビン、チューブリン阻害剤、ピリミジン系抗腫瘍薬からいずれか1つ若しくは少なくとも2つが選ばれ、又は前記化学薬物がシクロホスファミド及びフルダラビンを含み、又は前記化学薬物がシクロホスファミド、フルダラビン及びチューブリン阻害剤を含む請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
前記チューブリン阻害剤がタキサン系化合物であり、好ましくは、前記タキサン系化合物が、パクリタキセル、アルブミン結合型パクリタキセル、ドセタキセルから選ばれ、より好ましくは、前記タキサン系化合物がアルブミン結合型パクリタキセルである請求項49に記載の方法。
【請求項51】
フルダラビンの投与量は、約10~50mg/m
2/日、又は約15~40mg/m
2/日、又は約15~30mg/m
2/日、又は約20~30mg/m
2/日、又は約25mg/m
2/日、又は約30~60mg/日、又は約30~50mg/日、又は約35~45mg/日であり、
シクロホスファミドの投与量は、約200~400mg/m
2/日、又は約200~300mg/m
2/日、又は約250mg/m
2/日、又は約300~700mg/日、又は約300~550mg/日、又は約300~500mg/日であり、
タキサン系化合物の投与量は、約300mg/日以下、若しくは約200mg/日以下であり、又は約90~120mg/日である請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
前記シクロホスファミドが2~3回投与され、又は前記フルダラビンが1~2回投与され、又は前記タキサン系化合物が1回投与される請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記抗原結合ドメインが、
配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号3に示されるHCDR3、配列番号4に示されるLCDR1、配列番号5に示されるLCDR2、配列番号6に示されるLCDR3、若しくは
配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、配列番号18に示されるHCDR3、配列番号19に示されるLCDR1、配列番号20に示されるLCDR2、配列番号21に示されるLCDR3、若しくは
配列番号27に示されるHCDR1、配列番号28に示されるHCDR2、配列番号29に示されるHCDR3、配列番号30に示されるLCDR1、配列番号31に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を備え、
又は前記抗原結合ドメインが、
配列番号7に示される重鎖可変領域及び配列番号9に示される軽鎖可変領域、若しくは
配列番号22に示される重鎖可変領域及び配列番号23に示される軽鎖可変領域、若しくは
配列番号33に示される重鎖可変領域及び配列番号34に示される軽鎖可変領域を備え、
又は前記抗原結合ドメインが、配列番号14、24、35、若しくは37に示される配列を備える請求項37~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記キメラ抗原受容体が、配列番号11、12、13、25、26、36、38、52のいずれかに示されるアミノ酸配列を備え、又は配列番号58、59、60、61、62、63、64、65、66若しくは67のいずれかに示される配列がそれぞれ配列番号80、81若しくは82に示される配列と順次連結して組み合わせてなるポリペプチドを備え、又は配列番号70、71、72、73、74、75、76、77、78若しくは79のいずれかに示される配列がそれぞれ配列番号80、81若しくは82に示される配列と順次連結して組み合わせてなるポリペプチドを備える請求項36~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
各サイクルにおいて前記細胞療法製品を投与する前に、前記患者のCRSを示すサイトカイン、神経毒性を示すサイトカイン、腫瘍負荷を示す指標、及び/又は宿主の抗CAR免疫応答を示す因子の血清レベルを評価する請求項43~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記細胞療法製品を投与して治療した後、前記患者は、重度のCRSを示さず、又はグレード3を超える神経毒性を示さない請求項30~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を用いるがんの治療で失敗した患者のうちの少なくとも一部が、好ましくは、少なくとも40%が、より好ましくは、少なくとも50%が前記細胞療法製品に応答がある請求項30~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記応答が、ORRは40%より大きく、好ましくは、50%より大きいことである請求項57に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法の分野に属し、具体的には、腫瘍抗原を標的として認識し、免疫エフェクター細胞の活性化を引き起こし且つ抗腫瘍効果を発揮する免疫細胞療法に関する。
【背景技術】
【0002】
プログラム細胞死タンパク質-1(programmed death-1、PD-1)はTCRシグナルを負に制御する免疫抑制タンパク質である。PD-L1は、PD-1のリガンドであり、多くのタイプの腫瘍、例えば、卵巣がん、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、膵臓がん、胃がん、黒色腫、膠芽腫、非小細胞肺がんなどで発現され(Callahan 2014 J Leukoc Biol 94(1):41-53)、PD-1がPD-L1と結合すると抑制シグナルを提供し、T細胞のアポトーシスを誘導し、T細胞の活性化及び増殖を阻害することができる。したがって、PD-1又はPD-L1を標的とする薬物は、免疫調節によって、抗腫瘍効果を発揮できる。現在既に市販されているPD-1抗体又はPD-L1抗体として、ニボルマブ(Nivolumab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、アベルマブ(Avelumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)などが挙げられるが、PD-1抗体又はPD-L1抗体で治療した後に疾患が進行し、治療が失敗した患者は依然として多くいる。
【0003】
細胞免疫療法は、患者自身(又は同種異系)の免疫細胞を用いて組織、器官を修復する治療方法である。例えば、CAR-T細胞治療は、即ち、キメラ抗原受容体で患者自身(又は同種異系)のT細胞を修飾してがんなどの疾患を治療する。PD-1抗体又はPD-L1抗体によるがん治療と同様に、両者はいずれも免疫系によって腫瘍を殺す。PD-1抗体又はPD-L1抗体を用いる治療が失敗した患者は腫瘍免疫療法が一層適さないという可能性があるため、PD-1抗体又はPD-L1抗体治療に耐性のある患者は、他の免疫療法(例えば、CAR-T細胞治療)に非感受性であるという可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、がん治療組成物、及びがん治療方法を提供し、特に、抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体治療が失敗した患者に対するがん治療方法及び治療組成物を提供することである。
【0005】
具体的には、本発明は、次の事項に関する。
1.がんの先行治療が失敗した患者におけるがんを治療するための薬物の製造における細胞療法製品の使用であって、前記先行治療は、抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を用いる治療を含む使用。
【0006】
2.前記細胞療法製品が、外因性受容体を発現している免疫エフェクター細胞を含有する項1に記載の使用。
【0007】
3.前記免疫エフェクター細胞が、T細胞、NK細胞、NK T細胞、肥満細胞、マクロファージ、樹状細胞、CIK細胞、幹細胞由来免疫エフェクター細胞又はそれらの組み合わせから選ばれる項2に記載の使用。
【0008】
4.前記免疫エフェクター細胞が、天然のT細胞及び/又は多能性幹細胞によって誘導されたT細胞に由来する項2に記載の使用。
【0009】
5.前記免疫エフェクター細胞が、自己/同種異系T細胞、又は初代T細胞である項2~4のいずれか一項に記載の使用。
【0010】
6.前記T細胞が、幹細胞様メモリーT細胞(Tscm細胞)、セントラルメモリーT細胞(Tcm)、エフェクターT細胞(Tef)、制御性T細胞(Treg)、エフェクターメモリーT細胞(Tem)、γδ T細胞、αβ T細胞又はそれらの組み合わせを含む項3~5のいずれか一項に記載の使用。
【0011】
7.前記外因性受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、T細胞融合タンパク質(TFP)、T細胞-抗原カプラー(TAC)又はそれらの組み合わせから選ばれる項2~6のいずれか一項に記載の使用。
【0012】
8.前記外因性受容体の抗原結合ドメインが腫瘍抗原を特異的に認識する項2~7のいずれか一項に記載の使用。
【0013】
9.前記腫瘍抗原が、CD19、CD20、CD22、CD30、メソテリン(Mesothelin)、BCMA、EGFR、EGFRvIII、PSMA、Muc1、claudin18.2、GPC3、IL13RA2、SLAMF7、GPRC5D、LILRB4又はそれらの組み合わせから選ばれ、好ましくは、前記腫瘍抗原が、GPC3、CD19、BCMA、Claudin18.2又はそれらの組み合わせから選ばれる項8に記載の使用。
【0014】
10.前記がんが、固形腫瘍及び/又は血液腫瘍を含み、好ましくは、前記固形腫瘍が消化管腫瘍を含み、より好ましくは、前記消化管腫瘍が胃がん/食道胃接合部腺がん、胆嚢がん、肝がん、クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍又はそれらの組み合わせを含む項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【0015】
11.前記がんが、クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍、胃がん、膵臓がん、胆嚢がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮がん(UC)、食道がん、子宮頸がん、肝がん、メルケル(Merkel)細胞がん、腎臓細胞がん(RCC)、結腸直腸がん(mCRC)、乳がんから選ばれる項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【0016】
12.前記抗PD-1抗体/PD-L1抗体が、ニボルマブ(Nivolumab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)、カムレリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ジムベレリマブ(GLS-010)、チスレリズマブ又はそれらの組み合わせから選ばれる項1~11のいずれか一項に記載の使用。
【0017】
13.前記先行治療が、薬物療法、外科的治療、放射線療法又はそれらの組み合わせを含み、前記薬物療法は、化学薬物及び/又はバイオ薬物の投与を含み、好ましくは、前記先行治療が、オラパリブ、レンバチニブ、カボザンチニブ、アキシチニブ、イピリムマブ、白金系化学療法薬、ペメトレキセド、エトポシド、タキサン系化合物、ベバシズマブ、レゴラフェニブ、アンロチニブ、アパチニブ、レンバチニブ、フルキンチニブ、レゴラフェニブ又はそれらの組み合わせの投与を含む項1~12のいずれか一項に記載の使用。
【0018】
14.前記がんを患っている患者に少なくとも1サイクルの細胞療法製品を投与して治療し、好ましくは、前記がんを患っている患者に1~3サイクルの細胞療法製品を投与して治療する項1に記載の使用。
【0019】
15.前記キメラ抗原受容体(CAR)が、
(i)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD3ζ、
(ii)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン及びCD3ζ、
(iii)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD137の共刺激シグナルドメイン及びCD3ζ、及び/又は
(iv)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン、CD137の共刺激シグナルドメイン及びCD3ζを含む項7~14のいずれか一項に記載の使用。
【0020】
16.1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約2×109個の細胞/kg、約2×108個の細胞/kg若しくは約2×107個の細胞/kg患者の体重を超えず、又は細胞療法製品における細胞の用量は、約1×1011個の細胞/患者、約1×1010個の細胞/患者、約5×109個の細胞/患者、約2×109個の細胞/患者若しくは約1×109個の細胞/患者を超えない項14又は15に記載の使用。
【0021】
17.1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約1×105個の細胞/kg患者の体重~約2×107個の細胞/kg患者の体重、若しくは約1×106個の細胞/kg患者の体重~約2×107個の細胞/kg患者の体重であり、又は
1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約1×107個の細胞~約5×109個の細胞/患者、約1×107個の細胞~約2×109個の細胞/患者、若しくは約1×107個の細胞~約1×109個の細胞/患者であり、若しくは1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約1×108個の細胞~約5×109個の細胞/患者、約1×108個の細胞~約2×109個の細胞/患者、若しくは約1×108個の細胞~約1×109個の細胞/患者であり、若しくは1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約2.5×108個の細胞~約5×108個の細胞/患者である項16に記載の使用。
【0022】
18.各サイクルにおいて前記細胞療法製品を投与する前に前治療を行い、前記前治療は、前記患者に化学薬物、バイオ薬物、放射線療法又はそれらの組み合わせを与えることを含む項14~17のいずれか一項に記載の使用。
【0023】
19.前記前治療が、前記細胞療法製品の投与の1~8日前に実施され、好ましくは、前記細胞療法製品の投与の2~6日前に実施され、好ましくは、化学薬物、バイオ薬物、放射線療法又はそれらの組み合わせの連続的な使用は4日を超えない項18に記載の使用。
【0024】
20.前記化学薬物が、シクロホスファミド、フルダラビン、チューブリン阻害剤、ピリミジン系抗腫瘍薬からいずれか1つ若しくは少なくとも2つが選ばれ、又は前記化学薬物がシクロホスファミド及びフルダラビンを含み、又は前記化学薬物がシクロホスファミド、フルダラビン及びチューブリン阻害剤を含む項18又は19に記載の使用。
【0025】
21.前記チューブリン阻害剤がタキサン系化合物であり、好ましくは、前記タキサン系化合物が、パクリタキセル、アルブミン結合型パクリタキセル、ドセタキセルから選ばれ、より好ましくは、前記タキサン系化合物がアルブミン結合型パクリタキセルである項20に記載の使用。
【0026】
22.フルダラビンの投与量は、約10~50mg/m2/日、又は約15~40mg/m2/日、又は約15~30mg/m2/日、又は約20~30mg/m2/日、又は約25mg/m2/日、又は約30~60mg/日、又は約30~50mg/日、又は約35~45mg/日であり、
シクロホスファミドの投与量は、約200~400mg/m2/日、又は約200~300mg/m2/日、又は約250mg/m2/日、又は約300~700mg/日、又は約300~550mg/日、又は約300~500mg/日であり、
タキサン系化合物の投与量は、約300mg/日以下、若しくは約200mg/日以下であり、又は約90~120mg/日である項20又は21に記載の使用。
【0027】
23.前記シクロホスファミドが2~3回投与され、又は前記フルダラビンが1~2回投与され、又は前記タキサン系化合物が1回投与される項20~22のいずれか一項に記載の使用。
【0028】
24.前記抗原結合ドメインが、
配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号3に示されるHCDR3、配列番号4に示されるLCDR1、配列番号5に示されるLCDR2、配列番号6に示されるLCDR3、若しくは
配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、配列番号18に示されるHCDR3、配列番号19に示されるLCDR1、配列番号20に示されるLCDR2、配列番号21に示されるLCDR3、若しくは
配列番号27に示されるHCDR1、配列番号28に示されるHCDR2、配列番号29に示されるHCDR3、配列番号30に示されるLCDR1、配列番号31に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を備え、
又は前記抗原結合ドメインが、
配列番号7に示される重鎖可変領域及び配列番号9に示される軽鎖可変領域、若しくは
配列番号22に示される重鎖可変領域及び配列番号23に示される軽鎖可変領域、若しくは
配列番号33に示される重鎖可変領域及び配列番号34に示される軽鎖可変領域を備え、
又は前記抗原結合ドメインが、配列番号14、24、35、若しくは37に示される配列を備える項8~15のいずれか一項に記載の使用。
【0029】
25.前記キメラ抗原受容体が、配列番号11、12、13、25、26、36、38、52のいずれかに示されるアミノ酸配列を備え、又は配列番号58、59、60、61、62、63、64、65、66若しくは67のいずれかに示される配列がそれぞれ配列番号80、81若しくは82に示される配列と順次連結して組み合わせてなるポリペプチドを備え、又は配列番号70、71、72、73、74、75、76、77、78若しくは79のいずれかに示される配列がそれぞれ配列番号80、81若しくは82に示される配列と順次連結して組み合わせてなるポリペプチドを備える項7~24のいずれか一項に記載の使用。
【0030】
26.各サイクルにおいて前記細胞療法製品を投与する前に、前記患者のCRSを示すサイトカイン、神経毒性を示すサイトカイン、腫瘍負荷を示す指標、及び/又は宿主の抗CAR免疫応答を示す因子の血清レベルを評価する項14~25のいずれか一項に記載の使用。
【0031】
27.前記細胞療法製品を投与して治療した後、前記患者は、重度のCRSを示さず、又はグレード3を超える神経毒性を示さない項1~26のいずれか一項に記載の使用。
【0032】
28.前記抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を用いるがんの治療に失敗した患者のうちの少なくとも一部が、好ましくは、少なくとも40%が、より好ましくは、少なくとも50%が前記細胞療法製品に応答がある項1~27のいずれか一項に記載の使用。
【0033】
29.前記応答が、ORRは40%より大きく、好ましくは、50%より大きいことである項28に記載の使用。
【0034】
30.細胞療法製品を用いて、がんの先行治療に失敗した患者におけるがんを治療する方法であって、前記先行治療は、抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を用いる治療を含む方法。
【0035】
31.前記細胞療法製品が、外因性受容体を発現している免疫エフェクター細胞を含有する項30に記載の方法。
【0036】
32.前記免疫エフェクター細胞が、T細胞、NK細胞、NK T細胞、肥満細胞、マクロファージ、樹状細胞、CIK細胞、幹細胞由来免疫エフェクター細胞又はそれらの組み合わせから選ばれる項31に記載の方法。
【0037】
33.前記免疫エフェクター細胞が、天然のT細胞及び/又は多能性幹細胞によって誘導されたT細胞に由来する項31に記載の方法。
【0038】
34.前記免疫エフェクター細胞が、自己/同種T細胞、又は初代T細胞である項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【0039】
35.前記T細胞が、幹細胞様メモリーT細胞(Tscm細胞)、セントラルメモリーT細胞(Tcm)、エフェクターT細胞(Tef)、制御性T細胞(Treg)、エフェクターメモリーT細胞(Tem)、γδ T細胞、αβ T細胞又はそれらの組み合わせを含む項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【0040】
36.前記外因性受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、T細胞融合タンパク質(TFP)、T細胞-抗原カプラー(TAC)又はそれらの組み合わせから選ばれる項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【0041】
37.前記外因性受容体の抗原結合ドメインが腫瘍抗原を特異的に認識する項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【0042】
38.前記腫瘍抗原が、CD19、CD20、CD22、CD30、メソテリン(Mesothelin)、BCMA、EGFR、EGFRvIII、PSMA、Muc1、claudin18.2、GPC3、IL13RA2、SLAMF7、GPRC5D、LILRB4又はそれらの組み合わせから選ばれ、好ましくは、前記腫瘍抗原が、GPC3、CD19、BCMA、Claudin18.2又はそれらの組み合わせから選ばれる項37に記載の方法。
【0043】
39.前記がんが、固形腫瘍及び/又は血液腫瘍を含み、好ましくは、前記固形腫瘍が消化管腫瘍を含み、より好ましくは、前記消化管腫瘍が胃がん/食道胃接合部腺がん、胆嚢がん、肝がん、クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍又はそれらの組み合わせを含む項30~38のいずれか一項に記載の方法。
【0044】
40.前記がんが、クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍、胃がん、膵臓がん、胆嚢がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮がん(UC)、食道がん、子宮頸がん、肝がん、メルケル(Merkel)細胞がん、腎臓細胞がん(RCC)、結腸直腸がん(mCRC)、乳がんから選ばれる項30~39のいずれか一項に記載の方法。
【0045】
41.前記抗PD-1抗体/PD-L1抗体が、ニボルマブ(Nivolumab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)、カムレリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ジムベレリマブ(GLS-010)、チスレリズマブ又はそれらの組み合わせから選ばれる項30~40のいずれか一項に記載の方法。
【0046】
42.前記先行治療が、薬物療法、外科的治療、放射線療法又はそれらの組み合わせを含み、前記薬物療法は、化学薬物及び/又はバイオ薬物の投与を含み、好ましくは、前記先行治療が、オラパリブ、レンバチニブ、カボザンチニブ、アキシチニブ、イピリムマブ、白金系化学療法薬、ペメトレキセド、エトポシド、タキサン系化合物、ベバシズマブ、レゴラフェニブ、アンロチニブ、アパチニブ、レンバチニブ、フルキンチニブ、レゴラフェニブ又はそれらの組み合わせの投与を含む項30~41のいずれか一項に記載の方法。
【0047】
43.前記がんを患っている患者に少なくとも1サイクルの細胞療法製品を投与して治療し、好ましくは、前記がんを患っている患者に1~3サイクルの細胞療法製品を投与して治療する項30に記載の方法。
【0048】
44.前記キメラ抗原受容体(CAR)が、
(i)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD3ζ、
(ii)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン及びCD3ζ、
(iii)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD137の共刺激シグナルドメイン及びCD3ζ、及び/又は
(iv)腫瘍抗原と特異的に結合する抗原結合ドメイン、CD28若しくはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン、CD137の共刺激シグナルドメイン及びCD3ζを含む項36~43のいずれか一項に記載の方法。
【0049】
45.1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約2×109個の細胞/kg、約2×108個の細胞/kg若しくは約2×107個の細胞/kg患者の体重を超えず、又は細胞療法製品における細胞の用量は、約1×1011個の細胞/患者、約1×1010個の細胞/患者、約5×109個の細胞/患者、約2×109個の細胞/患者若しくは約1×109個の細胞/患者を超えない項43又は44に記載の方法。
【0050】
46.1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約1×105個の細胞/kg患者の体重~約2×107個の細胞/kg患者の体重、若しくは約1×106個の細胞/kg患者の体重~約2×107個の細胞/kg患者の体重であり、又は
1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約1×107個の細胞~約5×109個の細胞/患者、約1×107個の細胞~約2×109個の細胞/患者、若しくは約1×107個の細胞~約1×109個の細胞/患者であり、若しくは1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約1×108個の細胞~約5×109個の細胞/患者、約1×108個の細胞~約2×109個の細胞/患者、若しくは約1×108個の細胞~約1×109個の細胞/患者であり、若しくは1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量は、約2.5×108個の細胞~約5×108個の細胞/患者である項45に記載の方法。
【0051】
47.各サイクルにおいて前記細胞療法製品を投与する前に前治療を行い、前記前治療は、前記患者に化学薬物、バイオ薬物、放射線療法又はそれらの組み合わせを与えることを含む項43~46のいずれか一項に記載の方法。
【0052】
48.前記前治療が、前記細胞療法製品の投与の1~8日前に実施され、好ましくは、前記細胞療法製品の投与の2~6日前に実施され、好ましくは、化学薬物、バイオ薬物、放射線療法又はそれらの組み合わせの連続的な使用は4日を超えない項47に記載の方法。
【0053】
49.前記化学薬物が、シクロホスファミド、フルダラビン、チューブリン阻害剤、ピリミジン系抗腫瘍薬からいずれか1つ若しくは少なくとも2つが選ばれ、又は前記化学薬物がシクロホスファミド及びフルダラビンを含み、又は前記化学薬物がシクロホスファミド、フルダラビン及びチューブリン阻害剤を含む項47又は48に記載の方法。
【0054】
50.前記チューブリン阻害剤がタキサン系化合物であり、好ましくは、前記タキサン系化合物が、パクリタキセル、アルブミン結合型パクリタキセル、ドセタキセルから選ばれ、より好ましくは、前記タキサン系化合物がアルブミン結合型パクリタキセルである項49に記載の方法。
【0055】
51.フルダラビンの投与量は、約10~50mg/m2/日、又は約15~40mg/m2/日、又は約15~30mg/m2/日、又は約20~30mg/m2/日、又は約25mg/m2/日、又は約30~60mg/日、又は約30~50mg/日、又は約35~45mg/日であり、
シクロホスファミドの投与量は、約200~400mg/m2/日、又は約200~300mg/m2/日、又は約250mg/m2/日、又は約300~700mg/日、又は約300~550mg/日、又は約300~500mg/日であり、
タキサン系化合物の投与量は、約300mg/日以下、若しくは約200mg/日以下であり、又は約90~120mg/日である項49又は50に記載の方法。
【0056】
52.前記シクロホスファミドが2~3回投与され、又は前記フルダラビンが1~2回投与され、又は前記タキサン系化合物が1回投与される項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
53.前記抗原結合ドメインが、
配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号3に示されるHCDR3、配列番号4に示されるLCDR1、配列番号5に示されるLCDR2、配列番号6に示されるLCDR3、若しくは
配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、配列番号18に示されるHCDR3、配列番号19に示されるLCDR1、配列番号20に示されるLCDR2、配列番号21に示されるLCDR3、若しくは
配列番号27に示されるHCDR1、配列番号28に示されるHCDR2、配列番号29に示されるHCDR3、配列番号30に示されるLCDR1、配列番号31に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を備え、
又は前記抗原結合ドメインが、
配列番号7に示される重鎖可変領域及び配列番号9に示される軽鎖可変領域、若しくは
配列番号22に示される重鎖可変領域及び配列番号23に示される軽鎖可変領域、若しくは
配列番号33に示される重鎖可変領域及び配列番号34に示される軽鎖可変領域を備え、
又は前記抗原結合ドメインが、配列番号14、24、35、若しくは37に示される配列を備える項37~44のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
54.前記キメラ抗原受容体が、配列番号11、12、13、25、26、36、38、52のいずれかに示されるアミノ酸配列を備え、又は配列番号58、59、60、61、62、63、64、65、66若しくは67のいずれかに示される配列がそれぞれ配列番号80、81若しくは82に示される配列と順次連結して組み合わせてなるポリペプチドを備え、又は配列番号70、71、72、73、74、75、76、77、78若しくは79のいずれかに示される配列がそれぞれ配列番号80、81若しくは82に示される配列と順次連結して組み合わせてなるポリペプチドを備える項36~53のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
55.各サイクルにおいて前記細胞療法製品を投与する前に、前記患者のCRSを示すサイトカイン、神経毒性を示すサイトカイン、腫瘍負荷を示す指標、及び/又は宿主の抗CAR免疫応答を示す因子の血清レベルを評価する項43~54のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
56.前記細胞療法製品を投与して治療した後、前記患者は、重度のCRSを示さず、又はグレード3を超える神経毒性を示さない項30~55のいずれか一項に記載の方法。
【0061】
57.前記抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を用いるがんの治療に失敗した患者のうちの少なくとも一部が、好ましくは、少なくとも40%が、より好ましくは、少なくとも50%が前記細胞療法製品に応答がある項30~56のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
58.前記応答が、ORRは40%より大きく、好ましくは、50%より大きいことである項57に記載の方法。
【0063】
本発明が上記の目的を達成するために提供する技術的解決手段は次のとおりである。
本発明の第1態様において、先行治療で抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を用いる治療が失敗したがんの治療のための細胞療法製品の使用を提供する。
【0064】
好ましい実施形態では、先行治療で抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を用いる治療が失敗した患者の一部が細胞療法製品に応答がある。
【0065】
好ましい実施形態では、先行治療で抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を用いる治療が失敗した患者の少なくとも40%が細胞療法製品に応答がある。
【0066】
好ましい実施形態では、先行治療で抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を用いる治療が失敗した患者の少なくとも50%が細胞療法製品に応答がある。
【0067】
好ましい実施形態では、前記応答が、ORRは40%より大きく、好ましくは、50%より大きいことである。
【0068】
好ましい実施形態では、前記先行治療で、化学薬物又はバイオ薬物も使用され、好ましくは、前記化学薬物又はバイオ薬物が、オラパリブ、レンバチニブ、カボザンチニブ、アキシチニブ、イピリムマブ、白金系化学療法薬、ペメトレキセド、エトポシド、タキサン系化合物、ベバシズマブ、レゴラフェニブである。
【0069】
好ましい実施形態では、前記抗PD-1抗体が、ニボルマブ(Nivolumab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)、カムレリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ジムベレリマブ(GLS-010)、チスレリズマブから選ばれ、好ましくは、前記抗PD-1抗体が、ニボルマブ(Nivolumab)、ペンブロリズマブ(pembrolizumab)、カムレリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブ、チスレリズマブから選ばれる。
【0070】
好ましい実施形態では、前記抗PD-L1抗体が、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、アベルマブ(Avelumab)、スゲマリマブ(CS1001)から選ばれる。
【0071】
好ましい実施形態では、前記細胞療法製品が、外因性受容体を発現している免疫エフェクター細胞を含有し、好ましくは、前記免疫エフェクター細胞が、T細胞、NK細胞、NK T細胞、肥満細胞、マクロファージ、樹状細胞、CIK細胞、又は幹細胞由来免疫エフェクター細胞から選ばれる。
【0072】
好ましい実施形態では、前記免疫エフェクター細胞が、T細胞から選ばれ、前記外因性受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、T細胞融合タンパク質(TFP)及びT細胞-抗原カプラー(TAC)から選ばれる。
【0073】
好ましい実施形態では、前記外因性受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)から選ばれる。
【0074】
好ましい実施形態では、前記免疫エフェクター細胞が、T細胞、NK細胞、NK T細胞から選ばれる。
【0075】
好ましい実施形態では、前記細胞療法製品が腫瘍抗原を特異的に認識し、好ましくは、前記腫瘍抗原が、CD19、CD20、CD22、CD30、メソテリン(Mesothelin)、BCMA、EGFR、EGFRvIII、PSMA、Muc1、claudin18.2、GPC3、IL13RA2、SLAMF7、GPRC5D、LILRB4から選ばれ、より好ましくは、前記腫瘍抗原が、CD19、BCMA、Claudin18.2から選ばれる。
【0076】
好ましい実施形態では、前記がんが、胃がん、膵臓がん、胆嚢がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮がん(UC)、食道がん、子宮頸がん、肝細胞がん、メルケル(Merkel)細胞がん、腎臓細胞がん(RCC)、結腸直腸がん(mCRC)、乳がんから選ばれる。
【0077】
好ましい実施形態では、前記がんが、胃がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、尿路上皮がん(UC)、肝がん、黒色腫から選ばれる。
【0078】
好ましい実施形態では、前記患者に少なくとも1サイクルの細胞療法製品を投与して治療し、好ましくは、患者に1~3サイクルの細胞療法製品を投与して治療する。
【0079】
好ましい実施形態では、1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量が、約2×109個の細胞/kg受験者の体重を超えず、又は細胞療法製品における細胞の用量が、約1×1011個の細胞/人を超えない。好ましくは、1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量が、約2×108個の細胞/kg受験者の体重を超えず、又は細胞療法製品における細胞の用量が、約1×1010個の細胞/人を超えない。より好ましくは、1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量が、約2×107個の細胞/kg受験者の体重を超えず、又は細胞療法製品における細胞の用量が、約1×109個の細胞/人を超えない。
【0080】
好ましい例では、1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量が、約1×105個の細胞/kg受験者の体重~約2×107個の細胞/kg受験者の体重、又は約1×106個の細胞/kg受験者の体重~約2×107個の細胞/kg受験者の体重である。
【0081】
好ましい例では、1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量が、1×107個の細胞~1×109個の細胞であり、好ましくは、1×108個の細胞~1×109個の細胞であり、より好ましくは、2.5×108個の細胞~5×108個の細胞である。
【0082】
好ましい実施形態では、前サイクルの細胞製品が治療後に体内から検出されなくなってから、後サイクルの治療を行う。
【0083】
好ましい実施形態では、前記前サイクルの細胞製品の投与完了から30日後、後サイクルの細胞療法製品を投与する。
【0084】
好ましい実施形態では、前記後サイクルで投与される細胞製品の用量が、前記受験者の腫瘍負荷の細胞数を安定又は低減させるのに充分である。
【0085】
好ましい実施形態では、前記異なるサイクルで投与される細胞製品の用量が異なり又は同じである。
【0086】
好ましい実施形態では、各サイクルの細胞療法製品が1~5回で投与され、好ましくは、1~3回で投与される。
【0087】
好ましい実施形態では、各サイクルの細胞療法製品が5日以内に全ての投与が完了し、好ましくは、3日以内に、全ての投与が完了する。
【0088】
好ましい実施形態では、各回で細胞療法製品が1時間以内に注入が完了し、好ましくは、30分以内に注入が完了し、より好ましくは、4~30分以内に注入が完了する。
【0089】
好ましい実施形態では、後サイクルの治療を行う時に、前記受験者は次のいずれかの特徴を備える。
(i)サイトカイン放出症候群(CRS)に関連するサイトカインの受験者の血清におけるピークレベルが、前サイクルで細胞療法製品を投与した後のピークレベルより小さい。
(ii)グレード3又はそれ以上の神経毒性が示されない。
(iii)CRSレベルが前サイクルの細胞療法製品を投与した後のCRSレベルに比べて、低減している。
(iv)前記受験者は、細胞療法製品に対する検出可能な体液又は細胞によって媒介される免疫応答を示していない。
【0090】
好ましい例では、前記(i)で、サイトカインのレベルが前サイクルの細胞療法製品を投与した後のサイトカインのピークレベルに比べて、少なくとも50%低減し、好ましくは、少なくとも20%低減し、より好ましくは、少なくとも5%低減する。
【0091】
好ましい実施形態では、前記CRSレベルが前サイクルの細胞療法製品を投与する前のCRSレベルと同等である。
【0092】
好ましい実施形態では、各サイクルにおいて前記細胞療法製品を投与する前に前治療を行い、前記前治療は、前記受験者に化学薬物及び/又は放射線療法を与えることを含む。
【0093】
好ましい例では、前記放射線療法が、全身放射線療法又は局所放射線療法を含む。
【0094】
好ましい例では、前記前治療が細胞療法製品の投与の1~8日前に実施され、好ましくは、細胞療法製品の投与の2~6日前に実施される。
【0095】
好ましい例では、前記化学薬物が、シクロホスファミド、フルダラビン、チューブリン阻害剤、ピリミジン系抗腫瘍薬からいずれか1つ又は少なくとも2つ選ばれる。
【0096】
好ましい例では、前記化学薬物が、シクロホスファミド及びフルダラビン、又はシクロホスファミド、フルダラビン及びチューブリン阻害剤である。
【0097】
好ましい例では、前記チューブリン阻害剤がタキサン系化合物であり、好ましくは、前記タキサン系化合物が、パクリタキセル、アルブミン結合型パクリタキセル、ドセタキセルから選ばれ、より好ましくは、前記タキサン系化合物がアルブミン結合型パクリタキセルである。
【0098】
好ましい例では、前記ピリミジン系抗腫瘍薬が、5-フルオロウラシル、テガディフール、カルモフール、ドキシフルリジン、カペシタビンから選ばれる。
【0099】
好ましい例では、フルダラビンの投与量が、約10~50mg/m2/日、若しくは約15~40mg/m2/日、若しくは約15~30mg/m2/日、若しくは約20~30mg/m2/日であり、又は約25mg/m2/日である。
【0100】
好ましい例では、フルダラビンの投与量が約30~60mg/日、又は約30~50mg/m2/日である。
【0101】
好ましい例では、シクロホスファミドの投与量が、約200~400mg/m2/日、又は約200~300mg/m2/日、又は約250mg/m2/日である。
【0102】
好ましい例では、シクロホスファミドの投与量が、約300~700mg/日、又は約300~550mg/日、又は約300~500mg/日である。
【0103】
好ましい例では、タキサン系化合物の投与量が約300mg/日以下、又は約200mg/日以下であり、好ましくは、前記タキサン系化合物の投与量が約90~120mg/日である。
【0104】
好ましい例では、各化学薬物連続的な使用は4日を超えない。
【0105】
好ましい例では、前記シクロホスファミドが2~3回投与され、又は前記フルダラビンが1~2回投与される。
【0106】
好ましい例では、前記タキサン系化合物が1回投与される。
【0107】
好ましい例では、前記外因性受容体が、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含み、前記細胞外抗原結合ドメインが、腫瘍抗原を特異的に認識する抗体又はその断片を含み、ただし、前記抗体又はその断片が、
配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号3に示されるHCDR3、配列番号4に示されるLCDR1、配列番号5に示されるLCDR2、配列番号6に示されるLCDR3、又は
配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、配列番号18に示されるHCDR3、配列番号19に示されるLCDR1、配列番号20に示されるLCDR2、配列番号21に示されるLCDR3、又は
配列番号27に示されるHCDR1、配列番号28に示されるHCDR2、配列番号29に示されるHCDR3、配列番号30に示されるLCDR1、配列番号31に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を備える。
【0108】
好ましくは、前記抗体又はその断片が、
配列番号7に示される重鎖可変領域及び配列番号9に示される軽鎖可変領域、又は
配列番号22に示される重鎖可変領域及び配列番号23に示される軽鎖可変領域、又は
配列番号33に示される重鎖可変領域及び配列番号34に示される軽鎖可変領域を備える。
【0109】
好ましい例では、前記外因性受容体の細胞外抗原結合ドメインが、配列番号14、24、35、又は37に示される配列を備える。
【0110】
好ましい例では、前記キメラ抗原受容体が、配列番号11、12、13、25、26、36、38、52のいずれかに示されるアミノ酸配列を備える。
【0111】
好ましい実施形態では、前記細胞療法製品を投与する前に、前記受験者は細胞治療を受けたことはない。
【0112】
好ましい実施形態では、前記細胞療法製品を投与する前に、前記受験者は、薬物療法、外科的治療、放射線療法、又はその任意の組み合わせを受けたこともある。
【0113】
好ましい実施形態では、前記薬物療法が化学薬物治療又はバイオ薬物治療を含む。
【0114】
好ましい実施形態では、前記化学薬物治療がアンロチニブ、アパチニブ、レンバチニブ、フルキンチニブ、レゴラフェニブを含む。
【0115】
好ましい実施形態では、各サイクルにおいて細胞療法製品を投与する前に、前記受験者のCRSを示すサイトカイン、神経毒性を示すサイトカイン、腫瘍負荷を示す指標、及び/又は宿主の抗CAR免疫応答を示す因子の血清レベルを評価する。
【0116】
好ましい実施形態では、前記腫瘍負荷を示す指標は、前記受験者の腫瘍細胞の総数、又は前記受験者の器官における腫瘍細胞の総数、又は前記受験者の組織における腫瘍細胞の総数、又は腫瘍の質量若しくは体積、又は腫瘍の転移の程度、又は腫瘍の数量である。
【0117】
好ましい実施形態では、前記評価の結果から、細胞療法製品の投与用量を決定する。
【0118】
好ましい実施形態では、細胞療法製品を投与して治療した後、前記受験者が重度のCRSを示さず、又はグレード3を超える神経毒性を示さない。
【0119】
好ましい実施形態では、細胞療法製品を投与した後、細胞療法製品が前記受験者の体内で増殖する。
【0120】
本発明の第2態様において、また、外因性受容体によって修飾された免疫エフェクター細胞で腫瘍を治療する方法を提供し、前記方法は、腫瘍患者に免疫エフェクター細胞を投与する前に、前治療薬を投与することを含み、前記前治療薬は、シクロホスファミド、フルダラビン及びチューブリン阻害剤を含む。
【0121】
好ましい実施形態では、前記フルダラビンの投与量が、約10~50mg/m2/日、若しくは約15~40mg/m2/日、若しくは約15~30mg/m2/日、若しくは約20~30mg/m2/日であり、又は約25mg/m2/日である。
【0122】
好ましい実施形態では、フルダラビンの投与量が約30~60mg/日、又は約30~50mg/m2/日である。
【0123】
好ましい実施形態では、前記シクロホスファミドの投与量が、約200~400mg/m2/日、又は約200~300mg/m2/日、又は約250mg/m2/日である。
【0124】
好ましい実施形態では、シクロホスファミドの投与量が、約300~700mg/日、又は約300~550mg/日、又は約300~500mg/日である。
【0125】
好ましい実施形態では、タキサン系化合物の投与量が、約300mg/日以下、又は約200mg/日以下であり、好ましくは、前記タキサン系化合物の投与量が約90~120mg/日である。
【0126】
好ましい実施形態では、各前治療薬の連続的な使用は4日を超えない。
【0127】
好ましい実施形態では、前記シクロホスファミドが2~3回投与され、
好ましい実施形態では、前記フルダラビンが1~2回投与され。
【0128】
好ましい実施形態では、前記チューブリン阻害剤が1回投与される。
【0129】
好ましい実施形態では、前記チューブリン阻害剤がタキサン系化合物であり、好ましくは、前記タキサン系化合物が、パクリタキセル、アルブミン結合型パクリタキセル、ドセタキセルから選ばれ、より好ましくは、前記タキサン系化合物がアルブミン結合型パクリタキセルである。
【0130】
好ましい実施形態では、前記外因性受容体が、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含み、前記細胞外抗原結合ドメインが、腫瘍抗原を特異的に認識する抗体又はその断片を含み、ただし、前記抗体又はその断片が、
配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号3に示されるHCDR3、配列番号4に示されるLCDR1、配列番号5に示されるLCDR2、配列番号6に示されるLCDR3、又は
配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、配列番号18に示されるHCDR3、配列番号19に示されるLCDR1、配列番号20に示されるLCDR2、配列番号21に示されるLCDR3、又は
配列番号27に示されるHCDR1、配列番号28に示されるHCDR2、配列番号29に示されるHCDR3、配列番号30に示されるLCDR1、配列番号31に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を備える。
【0131】
好ましくは、前記抗体又はその断片が、
配列番号7に示される重鎖可変領域及び配列番号9に示される軽鎖可変領域、又は
配列番号22に示される重鎖可変領域及び配列番号23に示される軽鎖可変領域、又は
配列番号33に示される重鎖可変領域及び配列番号34に示される軽鎖可変領域を備える。
【0132】
好ましい実施形態では、前記外因性受容体の細胞外抗原結合ドメインが、配列番号14、24、35、又は37に示される配列を備える。
【0133】
好ましい実施形態では、前記免疫エフェクター細胞が、T細胞、NK細胞、NK T細胞、肥満細胞、マクロファージ、樹状細胞、CIK細胞、又は幹細胞由来免疫エフェクター細胞から選ばれる。
【0134】
好ましい実施形態では、前記免疫エフェクター細胞が、T細胞から選ばれ、前記外因性受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、T細胞融合タンパク質(TFP)及びT細胞-抗原カプラー(TAC)から選ばれる。
【0135】
好ましい実施形態では、前記外因性受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)から選ばれ、好ましくは、前記キメラ抗原受容体が、配列番号11、12、13、25、26、36、38、52のいずれかに示されるアミノ酸配列を備える。
【0136】
好ましい実施形態では、前記免疫エフェクター細胞が、T細胞、NK細胞、NK T細胞から選ばれる。
【0137】
好ましい実施形態では、前記外因性受容体によって修飾された免疫エフェクター細胞が腫瘍抗原を特異的に認識し、好ましくは、前記腫瘍抗原が、CD19、CD20、CD22、CD30、メソテリン(Mesothelin)、BCMA、EGFR、EGFRvIII、PSMA、Muc1、claudin18.2、GPC3、IL13RA2、SLAMF7、GPRC5D、LILRB4から選ばれ、より好ましくは、前記腫瘍抗原が、CD19、BCMA、Claudin18.2から選ばれる。
【0138】
好ましい実施形態では、前記腫瘍が、胃がん、膵臓がん、胆嚢がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮がん(UC)、食道がん、子宮頸がん、肝細胞がん、メルケル(Merkel)細胞がん、腎臓細胞がん(RCC)、結腸直腸がん(mCRC)、乳がんから選ばれる。
【0139】
好ましい実施形態では、前記腫瘍が、胃がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、尿路上皮がん(UC)、肝がん、黒色腫から選ばれる。
【0140】
好ましい実施形態では、前記免疫エフェクター細胞を投与する前に、前記受験者は細胞治療を受けたことはない。
【0141】
好ましい実施形態では、前記免疫エフェクター細胞を投与する前に、前記受験者は、薬物療法、外科的治療、放射線療法、又はその任意の組み合わせを受けたこともある。
【0142】
好ましい実施形態では、前記薬物療法が化学薬物治療又はバイオ薬物治療を含み、好ましくは、前記化学薬物治療がアンロチニブ、アパチニブ、レンバチニブ、フルキンチニブ、レゴラフェニブを含む。
【0143】
好ましい実施形態では、1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量が、約2×109個の細胞/kg受験者の体重を超えず、又は細胞療法製品における細胞の用量が、約1×1011個の細胞/人を超えない。好ましくは、1サイクル当たり投与される免疫エフェクター細胞の用量が、約2×108個の細胞/kg受験者の体重を超えず、又は細胞療法製品における細胞の用量が、約1×1010個の細胞/人を超えず、より好ましくは、1サイクル当たり投与される免疫エフェクター細胞の用量が、約2×107個の細胞/kg受験者の体重を超えず、又は細胞療法製品における細胞の用量が、約1×109個の細胞/人を超えない。
【0144】
好ましい実施形態では、1サイクル当たり投与される免疫エフェクター細胞の用量が、約1×105個の細胞/kg受験者の体重~約2×107個の細胞/kg受験者の体重、若しくは約1×106個の細胞/kg受験者の体重~約2×107個の細胞/kg受験者の体重であり、又は1サイクル当たり投与される免疫エフェクター細胞の用量が、1×107個の細胞~1×109個の細胞であり、好ましくは、1×108個の細胞~1×109個の細胞であり、より好ましくは、2.5×108個の細胞~5×108個の細胞である。
【0145】
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下に(例えば、実施例で)具体的に記述される各技術的特徴を互いに組み合わせることで、新しい又は好ましい技術的解決手段を構成できるということを理解されたい。紙面の都合上、ここで詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【
図1】
図1は、腫瘍負荷のベースラインからの最適な変化のウォーターフォールプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0147】
本発明者らが、幅広いかつ踏み込んだ研究を経て、がん患者に対する先行治療で抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を使用しており且つ治療が失敗した場合(RECIST 1.1に準拠する疾患進行PD)、細胞療法製品の有効性に影響はなく、依然として少なくとも40%の患者が細胞療法製品に応答があるという予期せぬ事実を見出した。例示的に、固形腫瘍の場合は、胃がん/食道胃接合部腺がん、クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍、肝がん、胆嚢がんの患者が抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体治療が失敗した後、細胞療法製品(例えば、CAR-T細胞)に応答がある。抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体治療が失敗した胃がん/食道胃接合部腺がん患者に、CAR-T細胞を用いて治療した後の疾患制御率は約79.2%に達していた。抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体治療が失敗した肝がん患者に、CAR-T細胞を用いて治療した後の疾患制御率は約54.5%に達していた。
【0148】
特に定義されない限り、本明細書で使用される専門用語、符号及び他の技術・科学用語又は固有用語の全てが当業者の一般的な理解と同じ意味を備える。場合によっては、本明細書で説明及び/又は引用しやすいよう、一般に理解される意味を備える用語をさらに限定し、本明細書でそのような更なる限定を含む場合は、当分野の一般的な理解と実質的な違いがあると理解されたくない。
【0149】
本発明で言及される特許文書、学術論文及びデータベースを含む全ての出版物は、いずれも独立的にその全体を引用することで本明細書に組み込まれることが可能である。本明細書で示される定義が、引用して本明細書に組み込まれる特許、公開出願及び他の出版物で示される定義と違い又は場合によって一致しない場合は、本明細書で示される定義に準拠する。
【0150】
本願では、特許請求された主題は範囲の形式で示されており、範囲の形式の記述は、単に便利さと簡潔さのためだけであり、且つ、特許請求された主題の範囲に対する厳格な限定と捉えるべきではないということを理解されたい。したがって、範囲での記述は、可能な部分範囲及び当該範囲内の単一の数値の全てが既に具体的に公開されているものと見なされるべきである。例えば、範囲の上限及び範囲の下限が提供される範囲では、当該範囲の上限と下限との間の各中間値のいずれもが特許請求された主題に含まれており、前記範囲の上限及び下限も特許請求された主題の範囲に属する。
【0151】
本明細書に記載のいずれの濃度範囲、パーセンテージ範囲、比例範囲又は整数範囲は、特に明記されない限り、前記範囲内のいずれの整数、そして場合によっては、その分数(例えば、整数の10分の1及び100分の1)の数値を含むように理解されたい。
【0152】
本明細書で使用される用語「約」とは、当業者が知りやすい各値の通常の誤差範囲を指す。本明細書で「約」をつけて値又はパラメータが言及される場合は、当該値又はパラメータ自体に対する実施形態を含む(且つ記述している)。例えば、「約X」という記述には、「X」に対する記述が含まれる。例えば、「約」は、当分野の実際の標準偏差に従って1以下又は1より大きいということを意味してもよい。又は「約」は、最大20%の範囲、又は最大10%の範囲、又は最大5%の範囲、又は最大1%の範囲を意味してもよい。例えば、約5mgは、4.5mgと5.5mgとの間のいずれの数値を含んでもよい。出願文書及び特許請求の範囲で特定の値又は組成が提供されている場合、特に明記されない限り、「約」は、当該特定の値又は組成の許容可能な誤差範囲内にあると仮定すべきである。
【0153】
本特許で、アミノ酸又は核酸配列を記述する時に、特定の配列「を備える」は、特定の配列の変異体をカバーしていると理解すべきである。本特許で前記アミノ酸又は核酸配列が特定の配列を備えるとは、前記アミノ酸又は核酸配列が前記特定の配列に対して80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%を超える配列同一性を備えることである。配列同一性は、配列解析ソフトウェア(例えば、BLAST、BESTFIT、GAP、PILEUP/PRETTYBOXなどのプログラム)によって計測されてもよい。そのようなソフトウェアは、相同性の程度を様々な置換、欠失及び/又は他の修飾に割り当てることにより同じ又は類似する配列にマッチングする。保存的置換は、一般に、グリシンとアラニンの群、バリンとイソロイシンとロイシンの群、アスパラギン酸とグルタミン酸とアスパラギンとグルタミンの群、セリンとトレオニンの群、リシンとアルギニンの群、及びフェニルアラニンとチロシンの群、のうちの置換を含む。同一性の程度を決定する例示的な方法で、BLASTプログラムを利用してもよく、e-3とe-100との間の確率スコアが密接に関連する配列であることを示す。
【0154】
本明細書に記載の「先行治療で抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を用いる治療が失敗した」とは、先行治療の時、患者はPD-1及び/又はPD-L1抗体治療を受けたことがあり、又はPD-1及び/又はPD-L1抗体を含む療法での治療を受けたことがあり、先行治療が疾患の進行を制御できないことである(例えば、固形腫瘍の効果判定基準RECIST 1.1により、疾患が疾患進行(PD)に進行している場合)。
【0155】
本明細書に記載の「PD-1及び/又はPD-L1抗体を含む療法」とは、治療では治療のニーズから、PD-1及び/又はPD-L1抗体を使用する他に、他の薬物又は療法も使用しているものを指す。例えば、治療でPD-1及び/又はPD-L1抗体を使用する他に、放射線療法、幹細胞移植なども使用しており、又は治療でPD-1及び/若しくはPD-L1抗体を使用する他に、他の化学薬物若しくはバイオ薬物として、例えば、オラパリブ、レンバチニブ、カボザンチニブ、アキシチニブ、イピリムマブ、白金系化学療法薬、ペメトレキセド、エトポシド、タキサン系化合物、ベバシズマブなど又はそれらの組み合わせも使用している。
【0156】
腫瘍患者の治療は非常に長い過程である。いわゆるファーストライン、セカンドライン、サードライン、レイトライン(フォースライン、フィフスラインなどを含む)治療は、実際は、腫瘍治療計画の選択及び使用の順番をいう。ファーストライン治療は、一般に腫瘍と診断される場合に、手術切除ができない腫瘍患者の場合は初回の全身化学薬物及び/又はバイオ薬物治療、手術切除が可能な腫瘍患者の場合は術後に(補助療法あり又はなし)再発する場合の初回の全身化学薬物及び/又はバイオ薬物治療を指す。セカンドライン治療は、一般にファーストライン治療が失敗した後(ファーストライン治療が有効でも患者に再び腫瘍の進行が出現する場合を含む)、異なる治療計画に変更する必要があることを指す。サードライン治療は、一般に、セカンドライン治療が失敗した後、再び他の計画に変更して治療することを指す。殆どの腫瘍は一般にサードラインになる時に、選択可能な薬物及び有効な治療計画がますます少なくなる。
【0157】
PD1及び/又はPD-L1抗体治療は腫瘍によって既に異なるライン数の治療で承認されている。現在、臨床でPD-L1陽性又は陰性の腫瘍患者のいずれもPD1及び/又はPD-L1抗体を投与して治療する場合があり、腫瘍治療のファーストライン、セカンドライン、サードライン、又はレイトライン(フォースライン、フィフスラインなど)では、いずれも、PD1及び/若しくはPD-L1抗体の単独投与治療、又はPD1及び/若しくはPD-L1抗体治療と他の薬物の併用の臨床使用がある。
【0158】
従来の胃がんの治療計画で、化学療法薬(タキサン系、イリノテカンなど)、標的薬(アパチニブ)及び/又は免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ)を使用する場合、客観的奏効率は約2~11.2%で、mPFSは約2~3か月で、mOSは約6か月である。本発明では、PD-1及び/又はPD-L1抗体治療が失敗した胃がん/食道胃接合部腺がん患者に対するセカンドライン、サードライン又はレイトライン治療で、細胞療法製品(例示的に、CAR-T細胞)を使用し、約50%とより高い奏効率を示しており、疾患制御率は約79.2%であり、無増悪生存期間及び全生存期間は長くなり、患者は著しい臨床的有用性を得ていた。CAR-T治療後にPRに達した12例の患者で、受験者のmDORは6.3か月であり、そのうち、6例の患者が全生存期間が約11か月以上に達しており、且つそのうち4例の患者が生存しているため追跡期間中である。本発明では、PD-1及び/又はPD-L1抗体治療が失敗した胃がん/食道胃接合部腺がん患者に、CAR-T細胞を使用して治療した後に有効性評価は完全寛解(CR)であることも確認され、臨床観察は持続している。
【0159】
クルッケンベルグ(Krukenberg)腫瘍は、主に胃、腸管に由来する転移性悪性卵巣がんであり、悪性度が高く、臨床特徴の特異度が高くないため、発見される時に全身転移を伴うことが多く、且つ腹水とびまん性腹膜転移を合併することも多く、化学療法に非感受性であり、治療効果は優れず、予後は悪い。本発明では、PD-1及び/又はPD-L1抗体治療が失敗したクルッケンベルグ(Krukenberg)腫瘍患者に対して、細胞療法製品(例示的に、CAR-T細胞)を使用し、より長い無増悪生存期間及び全生存期間が示され、患者は著しい臨床的有用性を得ていた。即ち、CAR-T細胞での治療後PRに達しており、無増悪生存期間は既に4か月を超えており、且つ依然として持続的寛解期にある。
【0160】
現在発表されている臨床研究結果によると、以前にファーストラインの標準的な治療を受けたことがある胆嚢がんの無増悪生存期間がいずれも約6か月未満(1.8~5.6か月)である。本発明では、PD-1及び/又はPD-L1抗体治療が失敗した胆嚢がん患者に対して、細胞療法製品(例示的に、CAR-T細胞)を使用し、より長い無増悪生存期間及び全生存期間が示され、患者は著しい臨床的有用性を得ていた。即ち、CAR-T細胞治療でSDに達しており、無増悪生存期間は既に7.5か月に達しており、且つ依然として持続的安定期にある。
【0161】
原発性肝がんは、現在、我が国で4番目に多い悪性腫瘍であり、腫瘍による死亡の2番目の要因となっている。患者の殆どは疾患の晩期にあり、腫瘍の悪化の程度が高いため、治療効果は優れない。これを受け、本発明では、PD-1及び/又はPD-L1抗体治療が失敗した肝がん患者に対して、細胞療法製品(例示的に、CAR-T細胞)を使用し、より長い無増悪生存期間及び全生存期間が示され、患者は著しい臨床的有用性を得ていた。即ち、CAR-T細胞での治療後、疾患制御率は約54.5%であり、疾患制御に達した6例の患者の無増悪生存期間は平均約4.4か月であり、このうち4例の患者の全生存期間が1年を超えており、この4例のうち3例が依然として生存しているため追跡期間中である。
【0162】
本明細書に記載の「細胞療法製品」とは、医学的治療効果を備える細胞製品を指し、例えば、免疫細胞療法製品は、人体自身又はドナーに由来する免疫細胞を用いて、体外操作(分離、精製、培養、増幅、分化誘導、活性化、遺伝子操作、細胞(株)の作成、凍結保存蘇生などを含むが、それらに限定されない)を経て、患者の体内に注入し(又は植え込み)、生体の免疫機能を誘導、増強又は抑制することによって疾患を治療する製品である。養子細胞療法(Adoptive cell therapy、ACT)製品、治療用ワクチンなどを含む。免疫細胞療法製品のタイプは、主にサイトカイン誘導キラー細胞(Cytokine-Induced Killer、CIK)、腫瘍浸潤リンパ球(Tumor Infiltrating Lymphocyte、TIL)、キメラ抗原受容体T細胞(Chimeric Antigen Recptor T-cell、CAR-T)、T細胞受容体導入T細胞(T Cell Receptor-engineering T-cell、TCR-T)、ナチュラルキラー細胞(Natural Killer、NK)細胞、樹状細胞(Dendritic cell、DC)、マクロファージなどを含むが、それらに限定されない。
【0163】
用語「抗PD-1抗体」とは、PD-1を認識し又は結合することができる抗体を指し、例えば、ヒトPD-1(細胞外セグメント 配列番号39)を認識し又は結合することができる抗体である。「ヒトPD-1を認識し又は結合する抗体」は、1.0×10-8mol/LのKD値又はより低い結合親和性でヒトPD1抗原と特異的に結合してもよい。一実施形態では、抗PD-1抗体が、ニボルマブ(Nivolumab)、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)、カムレリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0164】
用語「抗PD-L1抗体」とは、PD-L1を認識又は結合することができる抗体を指し、例えば、ヒトPD-L1(細胞外セグメント 配列番号40)を認識し又は結合することができる抗体である。「ヒトPD-L1を認識し又は結合する抗体」は、1.0×10-8mol/LのKD値又はより低い結合親和性でヒトPD-L1抗原と特異的に結合するものであってもよい。一実施形態では、抗PD-L1抗体が、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、アベルマブ(Avelumab)、スゲマリマブ(CS1001)又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0165】
用語「結合」とは、標的と選択的に結合することを指す。腫瘍抗原と結合する受容体を発現する免疫エフェクター細胞は腫瘍抗原を認識できる。
【0166】
「特異的に結合する」とは、ポリペプチド又はその断片が目標バイオ分子(例えば、ポリペプチド)を認識しそれと結合するが、基本的にサンプル中の他の分子を認識しそれと結合しないことを指す。
【0167】
結合親和性は、標準的な結合測定法で、例えば、表面プラズモン共鳴技術(GEヘルスケア、スウェーデン・ウプサラ)で測定されてもよい。
【0168】
本明細書に記載の「用量」は、体重に基づいて計算される用量であってもよいし、体表面積(BSA)に基づいて計算される用量であってもよいし、個人に基づいて計算される用量であってもよい。体重に基づいて計算される用量は、患者の体重に基づいて計算される患者への投与用量であり、例えば、mg/kg、細胞数/kgなどである。BSAに基づいて計算される用量は、患者の表面積に基づいて計算される患者への投与用量であり、例えば、mg/m2、細胞数/m2などである。個人に基づいて計算される用量とは、各患者の各サイクル又は各回の投与用量を指し、例えば、mg/人、細胞数/人である。
【0169】
本明細書に記載の「投与の回数」とは、各サイクルで細胞療法製品又は各前治療薬を投与する頻度を指す。例えば、フルダラビンを、連続4日で1日1回投与、連続3日で1日1回投与、連続2日で1日1回投与、又は1日1回投与で投与してもよい。シクロホスファミドを、連続4日で1日1回投与、連続3日で1日1回投与、連続2日で1日1回投与、又は1日1回投与で投与してもよい。アルブミン結合型パクリタキセルを、連続4日で1日1回投与、連続3日で1日1回投与、連続2日で1日1回投与、又は1日1回投与で投与してもよい。例示的に、各サイクルで投与される細胞療法製品は、一度に投与されてもよいし、又は2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回で投与されてもよく、連続の日単位投与であってもよいし、又は1日、2日、3日、4日、5日、6日の間隔で投与されてもよい。
【0170】
本明細書に記載の「応答がある」とは、固形腫瘍の治療効果判定基準v1.1(RECIST 1.1)に基づいて、完全寛解CR(全ての標的病変(病巣)が消失し、全ての病理学的リンパ節の短径が10mm未満まで減少しなければならない)、又は部分寛解PR(標的病変の直径の和がベースラインレベルに比べて少なくとも30%減少する)、又は疾患安定(SD)(標的病変の縮小の程度はPRに達していないが、増加の程度はPDレベルにも達しておらず、両者の間にあり、研究の時は直径の和の最小値を基準としてもよい)と評価されることを指す。固形腫瘍の治療効果判定基準v1.1(RECIST 1.1)に基づいて疾患進行(PD)と評価される場合は、試験研究の全過程で計測される全ての標的病変の直径の和の最小値を基準とし、直径の和が相対的に少なくとも20%増加し(ベースライン計測値が最小であればベースライン値を基準とする)、また、直径の和の絶対値が少なくとも5mm増加することを満たさなければならない(1つ又は複数の新しい病変が出現する場合もPDと見なす)。客観的奏効率(ORR)の定義は、最良治療効果が、確認されているCR又はPRに達している受験者が分析対象集団に占めるパーセンテージであり、疾患制御率(DCR)の定義は、最良治療効果が確認されている寛解(CR+PR)及び疾患安定(SD)になっている例数が分析集団に占めるパーセンテージである。無増悪生存期間(PFS)は、本特許の治療方法の第1用量から疾患進行の1回目の出現又は何らかの原因での死亡までの時間と定義される。データカットオフ日に進行と死亡のどちらにも該当しない受験者は、最終回の充分な腫瘍評価の日に削除される。治療集団用の記述統計学(平均、標準偏差、中央値、最小値及び最大値)でPFSをまとめる。カプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)法を用いて観測値と削除値の両者から計算される中央値を除いて、他の全ての統計学指標(平均、標準偏差、最小値及び最大値)は観測値からのみ計算される。全生存期間(OS)は、本特許の治療方法の第1用量から何らかの原因で死亡するまでの時間として計測され、且つ、PFSの記述と類似する方式で分析される。
【0171】
いくつかの実施形態では、応答があることは、本特許の治療方法で処理した後にCR又はPRが出現することを含む。いくつかの実施形態では、応答があることは、本特許の治療方法で処理した後にCR、PR又はSDが出現することを含み、いくつかの実施形態では、応答があるとは、本特許の治療方法を受ける受験者は明らかな臨床的有用性を得ることができ、PFS及び/又はOSが明らかに延長し、例えば、2週、3週、4週、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月又はさらに延長することを指す。いくつかの実施形態では、応答があるとは、ORRが10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは以上、又は100%に達していることを指す。いくつかの実施形態では、応答があるとは、DCRが10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは以上、又は100%に達していることを指す。
【0172】
用語「組成物」とは、2種又はそれ以上の物質の混合物を指す。溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性又はそれらのいかなる組み合わせであってもよい。
【0173】
本明細書に記載の細胞又は細胞集団が特定のマーカーに対して「陽性」であるとは、細胞の特定のマーカー(一般に表面マーカー)は検出によってそれが存在することが証明できることを指す。例えば、当該マーカーはサイトメトリーによって表面での発現が存在することが検出され、例えば、前記マーカーと特異的に結合する抗体で染色し、前記抗体を検出し、ここで、前記染色はサイトメトリーによって一定のレベルで検出されることが可能であり、前記レベルは、アイソタイプの一致するコントロールを用いて他の条件が同じである場合に同じステップを行ったときに検出される染色のレベルより著しく高く、且つ/又は前記マーカーに対して陽性である既知の細胞のレベルに実質的に似ており、且つ/又は前記マーカーに対して陰性である既知の細胞のレベルより著しく高い。特定の実施形態では、前記マーカーが、腫瘍抗原を含むが、それらに限定されない。例示的に、マーカー(腫瘍抗原CLDN18.2又はGPC3)に対して陽性である胃がん/食道胃接合部腺がん、クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍、肝がん、胆嚢がんの患者はPD-1及び/又はPD-L1抗体治療が失敗した後に、CAR-T細胞治療を受ける。
【0174】
本明細書に記載の細胞又は細胞集団が特定のマーカーに対して「陰性」であるとは、前記細胞は特定のマーカーを備えず又は備えるが検出できないことを指し、例えば、当該マーカーはサイトメトリーによって表面での発現が検出できず、又は表面での発現が存在することが検出され、例えば、前記マーカーと特異的に結合する抗体で染色し、前記抗体を検出することによって表面での発現を検出する場合に、前記染色はサイトメトリーによって一定のレベルで検出されることが可能であり、前記レベルは、アイソタイプの一致するコントロールを用いて他の条件が同じである場合に同じステップで検出される染色のレベルより著しく低く、且つ/又は前記マーカーに対して陽性である既知の細胞のレベルより著しく低く、且つ/又は前記マーカーに対して陰性である既知の細胞のレベルに実質的に似ている。特定の実施形態では、腫瘍細胞におけるマーカーPD-L1が陽性又は陰性である患者は、抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を用いる先行治療が失敗した後に、いずれもCAR-T細胞を用いて治療することができる。
【0175】
本明細書で使用される用語「ベクター」は、分離された核酸を含み、分離された核酸を細胞の内部に送達するために用いることができる組成物である。当分野では、線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミド、ウイルスを含むが、それらに限定されない多くのベクターが知られている。したがって、用語「ベクター」は、自律的に複製するプラスミド又はウイルスを含む。細胞への核酸の導入を促進する非プラスミド及び非ウイルス化合物、例えば、ポリリシン化合物、リポソームなどをさらに含んでもよい。
【0176】
用語「細胞」とは、ヒト又は非ヒトの、動物に由来する細胞を指してもよい。
【0177】
本明細書で「受験者」と「患者」は入れ替えて使用することができ、細胞製品治療を受ける個体を指し、例えば、ヒト又は他の動物であり、一般にヒトである。細胞治療研究に組み入れる前に、受験者は既にPD-1抗体及び/又はPD-L1抗体で治療されており、PD-1抗体又はPD-L1抗体に応答があり又は非応答である。
【0178】
用語「免疫エフェクター細胞」とは、免疫応答に関与し、免疫効果を生み出す細胞を指し、例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラー T(NK T)細胞、樹状細胞、CIK細胞、マクロファージ、肥満細胞、又は幹細胞由来免疫エフェクター細胞などである。いくつかの実施形態では、前記免疫エフェクター細胞がT細胞、NK細胞、NK T細胞である。いくつかの実施形態では、前記T細胞が、天然のT細胞及び/又は多能性幹細胞によって誘導されたT細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、前記T細胞が、自己T細胞、異種T細胞、同種T細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、前記NK細胞が、自己NK細胞又は同種NK細胞であってもよい。
【0179】
用語「人工的に改変された免疫エフェクター細胞の機能を備える細胞」とは、免疫効果を備えない細胞、又は人工的に改変され若しくは刺激物の刺激を受けた後、当該細胞が免疫エフェクター細胞の機能を得た細胞を指す。例えば、人工的に改変されることによって、免疫エフェクター細胞の機能を備えるようになる293T細胞、体外での誘導によって、免疫エフェクター細胞に分化される幹細胞である。
【0180】
場合によっては、「T細胞」は、骨髄に由来する多能性幹細胞が、胸腺内で分化成熟してなる免疫活性を備える成熟T細胞であってもよい。場合によっては、「T細胞」は、特定の表現型特徴を備える細胞集団、又は異なる表現型特徴を備える混合細胞集団であってもよく、例えば、「T細胞」は、少なくとも1種のT細胞サブセットを含む細胞であって、即ち、幹細胞様メモリーT細胞(stem cell-like memory T cell、Tscm細胞)、セントラルメモリーT細胞(Tcm)、エフェクターT細胞(Tef、Teff)、制御性T細胞(Treg)及び/又はエフェクターメモリーT細胞(Tem)であってもよい。場合によっては、「T細胞」は、特定のサブタイプのT細胞であってもよく、例えば、γδ T又はαβ T細胞である。
【0181】
T細胞は、PBMC(末梢血単核球)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位、腹水、胸水、脾臓組織及び腫瘍に由来する組織を含むが、それらに限定されない多くの供給源から得られてもよい。場合によっては、当業者に知られる任意の数の技術、例えば、Ficoll(商標)分離を用いて、個体から収集した血液よりT細胞を得ることができる。一実施形態では、アフェレーシスによって個体の循環血液に由来する細胞を得る。アフェレーシス製品は、一般に、T細胞、単球、顆粒球、B細胞を含むリンパ球、他の有核白血球、赤血球、血小板を含有する。一実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄することによって血漿分子を除去し、細胞を適切な緩衝液又は培地に置いてその後の加工ステップに供してもよい。又は、健康なドナー又はがんを患っていると診断された患者から細胞を誘導してもよい。T細胞は、いかなるタイプのT細胞であってもよく、いかなる発達段階であってもよく、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞を含むが、それらに限定されず、例えば、Th1及びTh2細胞、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤細胞、メモリーT細胞、ナイーブT細胞などである。
【0182】
本明細書で使用される用語「外因性」とは、1つの核酸分子又はポリペプチド、細胞、組織などが生物自体で内因的に発現されず、又は発現レベルが過剰発現場合に備える機能を実現するのに不充分であるを指す。
【0183】
用語「内因性」とは、1つの核酸分子又はポリペプチドなどが生物自体に由来することを指す。
【0184】
用語「キメラ受容体」は、即ち、遺伝子組換え技術で異なる由来のDNA断片又はタンパク質の対応するcDNA又はポリペプチド断片を連結させてなる融合分子であり、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含む。キメラ受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)、キメラT細胞受容体(TCR)、T細胞-抗原カプラー(TAC)を含むが、それらに限定されない。
【0185】
用語「キメラ抗原受容体」(CAR)は、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態では、CARの細胞外結合ドメインがscFvを含む。細胞内シグナル伝達ドメインは、刺激分子及び/若しくは共刺激分子のシグナル伝達に関わる機能ドメインを含み、又は刺激分子及び/若しくは共刺激分子の全ての細胞内部分、若しくは全ての天然の細胞内シグナル伝達ドメイン、若しくはその機能断片若しくは誘導体を含む。一態様では、刺激分子が、T細胞受容体複合体と結合するCD3ζ鎖を含み、一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインが、1種又は複数種の共刺激分子のシグナル伝達に関わる機能ドメイン、例えば、4-1BB(即ちCD137)、CD27及び/又はCD28をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチド成分が互いに連結される。例示的に、前記CARの細胞外抗原結合ドメインは、配列番号14、24、35、37、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、70、71、72、73、74、75、76、77、78又は79に示される配列を備える。
【0186】
用語「T細胞受容体(T cell receptor、TCR)」は、特異的な主要組織適合性複合体(MHC)-制限性ペプチド抗原に対するT細胞の認識を媒介し、天然のTCR受容体及び修飾されたTCR受容体を含む。天然のTCR受容体は、α、β2つのペプチド鎖からなり、各ペプチド鎖はまた可変領域(V領域)、定常領域(C領域)、膜貫通領域、細胞質領域などに分けられ、その抗原特異性がV領域に存在し、V領域(Vα、Vβ)は、それぞれ、3つの超可変領域CDR1、CDR2、CDR3を有する。特定の実施形態では、前記修飾されたTCR細胞外抗原結合ドメインが腫瘍抗原を認識する抗体を含む。例示的に、前記TCRは、配列番号14、24、35、37、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、70、71、72、73、74、75、76、77、78又は79に示される配列を備える。
【0187】
用語「TCR融合タンパク質」又は「TFP」は、TCRに由来する様々なタンパク質の組換えタンパク質を含み、一般に、i)標的細胞における表面抗原と結合し、ii)T細胞に局在される時に完全なTCR複合体の他のポリペプチド成分と相互作用することができる抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、当該T細胞がCD4+T細胞、CD8+T細胞又はCD4+/CD8+T細胞である。いくつかの実施形態では、当該TFP T細胞がNK T細胞である。いくつかの実施形態では、当該TFP T細胞がγδ T又はαβ T細胞である。特定の実施形態では、前記TFPの抗原結合ドメインが腫瘍抗原を認識する抗体を含む。例示的に、前記TFPは、配列番号14、24、35、37、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、70、71、72、73、74、75、76、77、78又は79に示される配列を備える。
【0188】
用語「T細胞-抗原カプラー(T cell antigen coupler、TAC)」は、次の3つの機能ドメインを含む。1.抗原結合ドメインであって、一本鎖抗体、設計されたアンキリンリピートタンパク質(designed ankyrin repeat protein、DARPin)又は他の標的基を含み、2.細胞外ドメインであって、TAC受容体がTCR受容体に近づくようにする、CD3と結合する一本鎖抗体であり、3.膜貫通領域とCD4共受容体の細胞内領域であって、細胞内領域は、プロテインキナーゼLCKに連結され、T細胞活性化の最初のステップとして、TCR複合体の免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)のリン酸化を触媒する。特定の実施形態では、前記TAC抗原結合ドメインが、腫瘍抗原を認識する抗体を含む。例示的に、前記TACは、14、24、35、37、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、70、71、72、73、74、75、76、77、78又は79に示される配列を備える。
【0189】
用語「抗原結合ドメイン」とは、免疫グロブリン分子(「抗体」と入れ替えて使用することができる)又は免疫分子の免疫活性を備える部分を指し、即ち、抗原と特異的に結合する(「免疫反応」)抗原結合部位を含有する分子であり、完全ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、マウス抗体などの抗体を含有してもよいし、抗原を認識するリガンドであってもよい。
【0190】
用語「抗体」は本明細書で最も広義で使用され、且つ様々な抗体構造を含み、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗体断片を含むが、それらに限定されず、所望の抗原結合活性を示すものでさえあればよい。本明細書で用語「抗体」とは、免疫系の抗原結合タンパク質を指す。「抗体」は、抗原結合領域を備える無傷の完全長抗体及びその「抗原結合部分」若しくは「抗原結合領域」が保持されているいずれの断片、又は、その一本鎖、例えば、一本鎖可変断片(scFv)を備える。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記される)及び重鎖定常領域からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記される)及び軽鎖定常領域からなる。用語「可変領域又は可変ドメイン」とは、抗体と抗原の結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。
【0191】
抗体断片は、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片(Fab’及びFab’-SHを含む)、(ii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iii)単一の抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片、(iv)単一の可変領域からなるdAb断片(Ward et al.,1989,Nature 341:544-546)、(v)連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片、(vi)一本鎖Fv分子の抗原結合部位(Bird et al.,1988,Science 242:423-426、Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 85:5879-5883)、(vii)二重特異性の一本鎖Fv二量体(PCT/US92/09965)、(viii)遺伝子融合によって構築された多価の又は多重特異性断片である「ジボディ」又は「トリアボディ」(Tomlinson et al.,2000,Methods Enzymol.326:461-479、WO94/13804、Holliger et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 90:6444-6448)、(ix)同じ又は異なる抗体の遺伝子と融合するscFv(Coloma&Morrison,1997,Nature Biotechnology 15,159-163)を含むが、それらに限定されない。
【0192】
特定の実施形態では、抗原結合ドメインが、scFv、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、シングルドメイン断片、又は抗原と結合する天然のリガンド、及びそれらのいかなる誘導体を含有してもよい。いくつかの態様では、細細胞外抗原結合ドメイン(例えば、scFv)が、抗原に特異的な軽鎖CDR及び/又は重鎖CDRを含んでもよい。
【0193】
好ましい実施形態では、抗原結合ドメインに含まれる抗体又はその断片が、次のCDR配列、即ち、配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号3に示されるHCDR3、配列番号4に示されるLCDR1、配列番号5に示されるLCDR2、配列番号6に示されるLCDR3、又は配列番号16に示されるHCDR1、配列番号17に示されるHCDR2、配列番号18に示されるHCDR3、配列番号19に示されるLCDR1、配列番号20に示されるLCDR2、配列番号21に示されるLCDR3、又は配列番号27に示されるHCDR1、配列番号28に示されるHCDR2、配列番号29に示されるHCDR3、配列番号30に示されるLCDR1、配列番号31に示されるLCDR2、配列番号32に示されるLCDR3を備えてもよい。
【0194】
好ましい実施形態では、抗原結合ドメインに含まれる抗体又はその断片が、次の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域配列、即ち、配列番号7に示される重鎖可変領域及び配列番号9に示される軽鎖可変領域、又は配列番号22に示される重鎖可変領域及び配列番号23に示される軽鎖可変領域、又は配列番号33に示される重鎖可変領域及び配列番号34に示される軽鎖可変領域を備えてもよい。
【0195】
特定の実施形態では、抗原結合ドメインに含まれる抗体又はその断片が、配列番号58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、70、71、72、73、74、75、76、77、78又は79に示されるscFv配列を備えてもよい。
【0196】
場合によっては、CARの細胞外領域は、腫瘍抗原を認識する抗原結合ドメイン及びリンカー断片(ヒンジ、スペーサー領域とも呼ばれる)を含む。リンカー断片は、細胞外抗原結合ドメインに柔軟性を提供するためのCARの一部と見なされてもよい。リンカー断片は、いかなる長さであってもよい。例示的に、一実施形態では、CARが1つのヒンジドメイン、例示的に、配列番号41に示されるCD8αヒンジを含む。
【0197】
用語「膜貫通ドメイン」は、外因性受容体を細胞の原形質膜にアンカーすることができる。例えば、配列番号42又は43に示される配列を備えるCD28、CD8の膜貫通ドメインを用いることができる。用語「シグナル伝達ドメイン」とは、細胞内で情報を伝達することによって機能するタンパク質の機能的部分を指し、セカンドメッセンジャーを生成し又はそのようなメッセンジャーに応答することによってエフェクターとしての役割を果たし、決定されたシグナル伝達経路によって細胞の活性を調節するために用いられる。細胞内シグナル伝達ドメインは、分子の全ての細胞内部分、又は全ての天然の細胞内シグナル伝達ドメイン、又はその機能断片若しくは誘導体を含んでもよい。例示的に、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号44、45、又は46に示される配列を備える。
【0198】
刺激分子のシグナル伝達に関わる機能ドメインは、「一次シグナルドメイン」とも呼ばれ、CAR又はTCR複合体の初期活性化を刺激的に調節する。一態様では、一次シグナルドメインが、例えば、TCR/CD3複合体とペプチドが搭載されているMHC分子が結合することによって誘導され、これによってT細胞の応答(増殖、活性化、分化などを含むが、それらに限定されない)を媒介する。刺激的に作用する一次シグナルドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフ又はITAMのシグナル伝達モチーフを含んでもよい。本願で特に役立つITAMを含む一次シグナルドメインの例は、CD3ζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD278(「ICOS」とも呼ばれる)及びCD66dに由来する配列を含むが、それらに限定されない。
【0199】
用語「共刺激分子」とは、細胞刺激シグナル分子、例えば、TCR/CD3と結合し、組み合わせてT細胞の増殖及び/又は重要な分子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションのシグナルを引き起こすものを指し、配列番号44又は45に示される配列を備える。T細胞における同族結合パートナーであり、それは共刺激リガンドと特異的に結合し、これによってT細胞の共刺激応答(細胞増殖を含むが、それらに限定されない)を媒介する。共刺激分子は、有効な免疫反応に必要な、抗原受容体でない細胞表面分子又はそのリガンドである。共刺激分子は、MHCクラスI分子、BTLAとTollリガンド受容体、及びOX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、4-1BB(CD137)を含むが、それらに限定されない。
【0200】
場合によっては、細胞内シグナル伝達ドメインは、いくつかの有望な刺激分子及び/又は共刺激シグナルドメインを含むように設計されてもよい。例示的に、第1世代のCARは、単一の刺激ドメイン、例えば、CD3ζ鎖を含み、第2世代のCARは、1つの共刺激ドメインを含み、例えば、CD3ζ鎖及びCD28を含み、又はCD3ζ鎖及び4-1BBを含み、第3世代のCARは、2つの共刺激ドメイン(第3世代のCAR)を含み、例えば、CD3ζ鎖及びCD28、OX40を含み、又はCD3ζ鎖及びCD28、4-1BBを含む。
【0201】
特定の実施形態では、CARが任意のリーダー配列を含む。一態様では、CARが細胞外抗原認識ドメインのN末端にリーダー配列をさらに含み、リーダー配列は、任意に、CARの細胞加工及び細胞膜への局在化のプロセスで抗原認識ドメイン(例えば、scFv)から切断される。一実施形態では、リーダー配列が、配列番号53に示される配列を備える。
【0202】
特定の実施形態では、本発明のGPC3-CARを標的とする抗原結合ドメインが、配列番号70、71、72、73、74、75、76、77、78又は79に示される配列を備え、膜貫通ドメインが、配列番号42又は43に示される配列を備え、細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号44及び46、又は配列番号45及び46、又は配列番号45、44及び46に示される配列を備える。例示的に、PD1及び/又はPD-L1抗体治療が失敗した肝がん患者に対して、前記GPC3-CAR-T細胞を投与したことにより、より長い無増悪生存期間及び全生存期間が示され、患者は著しい臨床的有用性を得ていた。本発明に記載の実施形態で、PD1及び/又はPD-L1抗体治療が失敗した肝がん患者に対して、前記GPC3-CAR-T細胞及び転写因子RUX3ポリペプチドを投与したことにより、一部の患者は治療後にPRと評価され、著しい臨床的有用性が示されていた。特定の実施形態では、前記GPC3-CAR-TがRUNX3ポリペプチドを発現する。
【0203】
用語「RUNX3(Runt-related transcription factor 3)」は、骨形成関連転写因子3とも呼ばれ、転写因子runtドメインファミリーのメンバーであり、GenBankアクセッション番号(Accession No.)NP_004341.1のアミノ酸配列である。細胞の成長、発達、アポトーシス、シグナル伝達及びその生物学的効果に関して重要な役割がある。
【0204】
用語「活性化」と「アクティベーション」は、交換して使用でき、細胞が静止状態から活性状態に変わるプロセスを指してもよい。当該プロセスは、抗原、遊走及び/又は機能活性状態の表現型又は遺伝的変化に対する応答を含んでもよい。例えば、用語「活性化」とは、T細胞が徐々に活性化されるプロセスを指してもよい。当該活性化プロセスは、第1刺激シグナル及び共刺激シグナルの両方から制御される。「T細胞の活性化」とは、検出可能な細胞増殖、サイトカインの産生及び/又は検出可能なエフェクター機能を誘導するようにT細胞が刺激された状態を指す。CD3/CD28磁気ビーズ、体外抗原刺激又は体内抗原刺激を用いると、いずれもT細胞の活性化の程度及び持続時間に影響を与える。一実施形態では、前記操作されたT細胞が、特定の標的抗原を含む腫瘍細胞と共インキュベーションされ又はウイルスで感染した後に活性化される。
【0205】
用語「治療」とは、疾患又はそれに関連する症状を全体的又は部分的に軽減又は減少させる、疾患の経過を変えようとする処置を指す。前記治療の効果は、疾患の発生又は再発の予防、症状の軽減、疾患のいずれの直接又は間接的病理学的結果の減少、転移の防止、疾患の進行速度の緩和、疾患状態の改善又は軽減、予後の軽減又は改善を含むが、それらに限定されない。本明細書で使用される「腫瘍進行の遅延」は、前記腫瘍の進行を遅延、妨害、緩和、低下、安定、抑制させ且つ/又は先延ばしにすることを表す。当該遅延は、異なる時間の長さを備えてもよく、これは、病歴及び/又は被治療個体によって決められる。当業者には、充分な又は著しい遅延が予防をカバーしてもよい(前記腫瘍が進行していない個体の場合)ということを理解されたい。例えば、晩期がん(例えば、転移の進行)を遅延させることができる。
【0206】
いくつかの実施形態では、提供される細胞療法製品が、腫瘍の進行を遅延させ又は腫瘍の進行を緩和するために用いられる。
【0207】
本明細書で使用される「阻害」とは、他の状況における同じ病状に比べる時に又は別の病状に比べて、機能又は活性が減少していることを指す。
【0208】
「有効量」又は「治療有効量」とは、個体の疾患(がん)を予防又は治療するのに充分な用量を指す。治療的又は予防に用いられる有効用量は、治療される疾患の段階及び重症度、受験者の年齢、体重、一般健康状態及び処方医の判断によって決められる。用量の多少は、また、選択される活性物質、投与方法、投与の期間及び頻度、特定の活性物質の投与に伴う不良な副作用の存在、性質と程度及び所望の生理学的効果によって決められる。処方医又は当業者の判断により、本願に記載の細胞療法製品を、1サイクル若しくは複数のサイクル、又は複数回で投与する必要となる場合がある。
【0209】
用語「腫瘍抗原」とは、過剰増殖性疾患が発生、進行する過程で新たに出現し又は過剰発現される抗原を指す。いくつかの態様では、本発明の過剰増殖性病状とは、がん(腫瘍を含む)を指す。本発明に記載の腫瘍抗原は、固形腫瘍抗原であってもよいし、血液腫瘍抗原であってもよい。
【0210】
用語「サイクル」とは、各回の細胞治療で治療を受ける前のベースライン期間(即ち、評価段階)から、次回の治療を受ける前のベースライン期間までの期間を指し、例えば、前治療薬の投与から、次のサイクルの前治療薬物治療の開始前までである。
【0211】
用語「前治療」とは、製品(例えば、細胞療法製品)を投与する前に、患者に他の薬物又は治療を与えることによって、患者の身体状態が製品治療に一層適するようにすることを指す。例えば、細胞療法製品(例えば、CAR-T細胞)を投与する前に、化学薬物、バイオ薬物、放射線療法又はそれらの組み合わせを与えて前治療を行う。好ましくは、先に化学薬物を投与して前治療を行い、より好ましくは、前記化学薬物が化学療法薬である。
【0212】
いくつかの実施形態では、各サイクルで細胞療法製品を投与する前にいずれも前治療を行う必要である。
【0213】
いくつかの実施形態では、前治療を行った後、患者のリンパ球が前治療前に比べて約50%、約55%、約60%、約65%又は約70%減少する。
【0214】
用語「化学薬」または「化学薬物」とは、化学合成の方法によって製造される抗がん剤を指し、従来の化学療法薬であってもよいし、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗がん性抗生物質などであり、標的薬であってもよく、例えば、アファチニブ、アレクチニブなどである。
【0215】
用語「バイオ薬」または「バイオ薬物」とは、分子生物学又は遺伝子工学的手段によって製造される薬物を指し、例えば、抗体医薬品、ADCなどである。
【0216】
用語「化学療法薬」とは、腫瘍を治療する薬物を指す。化学療法薬は、腫瘍細胞を殺し、又は腫瘍細胞の成長、遊走若しくは浸潤などを阻害することができる。これらの薬物は、腫瘍細胞の成長増殖の異なる段階で作用し、腫瘍細胞を阻害し又は殺すことができる。化学療法薬による治療は、現在、腫瘍を治療する主な手段の1つである。
【0217】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化学療法薬とは、化学療法で使用する薬物を指し、悪性腫瘍に予防又は治療効果のある化学薬物を指す。化学療法薬は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、植物性抗がん剤、ホルモン、免疫抑制剤などを含むが、それらに限定されない。例えば、ジテルペンアルカロイド化合物(例えば、タキサン)、シクロホスファミド、フルダラビン、シクロスポリン、ラパマイシン、メルファラン、ベンダムスチン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、リツキシマブ、ビンブラスチン及び/又はビンクリスチンなどである。いくつかの実施形態では、前記代謝拮抗剤が、例えば、カルモフール、テガフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキサート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン(Galocitabine)、シタラビンオクタデシルリン酸ナトリウム、フォステアビン(fosteabine)ナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド(paltitrexid)、エミテフル、チアゾフリン(tiazofurin)、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネララビン(nelzarabine)、2’-デオキシ-2’-メチレンシチジン、2’-フルオロメチレン-2’-デオキシシチジン、N-[5-(2,3-ジヒドロ-ベンゾフリル)スルホニル]-N’-(3,4-ジクロロフェニル)尿素、N6-[4-デオキシ-4-[N2-[2(E),4(E)-テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]-L-グリセロール-B-L-マンノース-ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン(aplidine)、エクチナサイジン、4-[2-アミノ-4-オキソ-4,6,7,8-テトラヒドロ-3H-ピリミド[5,4-b]チアジン-6-イル-(S)-エチル]-2,5-チエノイル(thienoyl)-L-グルタミン酸、アミノプテリン、5-フルオロウラシル、アラノシン、11-アセチル-8-(カルバモイルオキシメチル)-4-ホルミル-6-メトキシ-14-オキサ-1,11-ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)-テトラデカ-2,4,6-トリエン-9-イルアセテート、スウェインソニン、ロメトレキソール、デクスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’-シアノ-2’-デオキシ-N4-パルミトイル-1-B-D-アラビノフラノシル(arabinofuranosyl)シトシン、および3-アミノピリジン-2-アルデヒドアミノチオ尿素などの代謝拮抗剤を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、前記アルキル化剤が、例えば、ダカルバジン、メルファラン、シクロホスファミド、テモゾロミド、クロラムブシル、ブスルファン、窒素マスタード、およびニトロソ尿素などを含むが、それらに限定されない。
【0218】
細胞療法製品の使用又は方法:
本発明は、先行治療で抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を用いる治療が失敗したがん(「腫瘍」と入れ替えて使用される)の治療に用いる細胞療法製品の使用又は方法を提供する。
【0219】
いくつかの実施形態では、先行治療で抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を用いる治療が失敗した患者の少なくとも40%が細胞療法製品に応答がある。
【0220】
いくつかの実施形態では、先行治療で抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を用いる治療が失敗した患者の少なくとも50%が細胞療法製品に応答がある。
【0221】
いくつかの実施形態では、細胞療法製品を投与した後、患者のORRが40%より大きく、好ましくは、50%より大きい。
【0222】
本明細書で、「用量」とは、投与される医薬品の量を指し、例えば、1サイクル内で投与される細胞療法製品の量、又は1サイクル内で各回に投与される細胞療法製品の量、又は1サイクル内で、各回に投与される前治療薬の量である。
【0223】
いくつかの実施形態では、患者に少なくとも1サイクルの細胞療法製品を投与して治療する。特定の実施形態では、各サイクルの用量が、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0224】
いくつかの実施形態では、1サイクルの用量が1回又は複数回で受験者に投与され、各回の投与の分割用量は、同じでもよいし又は異なってもよい。例えば、1サイクルの細胞療法製品は1回で受験者に投与され、又は2回、3回、4回、5回、若しくはそれ以上の回数で受験者に投与される。
【0225】
いくつかの実施形態では、1サイクルの用量が複数回で受験者に投与される場合、各回に投与される細胞療法製品又は前治療薬の用量は、医師が受験者の具体的な状況に基づいて決定する。受験者の具体的な状況は、受験者の全体的な健康状況、疾患の重症度、同サイクルの前回の投与量に対する反応、前サイクルに対する反応、受験者の薬物併用状況、有害反応の程度又は可能性、合併症、がんの転移状況、及び医師が受験者が受ける細胞治療又は前治療薬の用量に影響を与えると考えるいかなる他の要因であってもよい。いくつかの実施形態では、各回の投与の用量が漸増する傾向にある。いくつかの実施形態では、各回の投与の用量が漸減する傾向にある。いくつかの実施形態では、各回の投与の用量が漸増してから漸減する傾向にある。いくつかの実施形態では、各回の投与の用量が漸減してから漸増する傾向にある。
【0226】
複数のサイクルの細胞療法製品を投与するとは、複数の期間があり、各期間において一定の総量の細胞療法製品を投与することを指す。いくつかの実施形態では、各期間の間隔が一致する。いくつかの実施形態では、各期間の間隔が一致しない。いくつかの実施形態では、少なくとも2サイクルの細胞療法製品を投与し、例えば、2サイクル、3サイクル、4サイクル、5サイクル、6サイクル、7サイクル、8サイクル、9サイクル又は10サイクルの細胞療法製品を投与する。
【0227】
いくつかの実施形態では、1サイクル当たり投与される細胞の用量及び投与の回数、異なるサイクルの間隔の設定は、1つ又は複数の結果の改善を目的として評価され、例えば、結果は、受験者の副作用の程度又は副作用の発生の可能性を低減させることであってもよいし、治療効果を改善することであってもよい。
【0228】
いくつかの実施形態では、1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量が、約2×109個の細胞/kg受験者の体重を超えず、又は細胞療法製品における細胞の用量が、約1×1011個の細胞/人を超えない。好ましくは、1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量が、約2×108個の細胞/kg受験者の体重を超えず、又は細胞療法製品における細胞の用量が、約1×1010個の細胞/人を超えない。より好ましくは、1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量が、約2×107個の細胞/kg受験者の体重を超えず、又は細胞療法製品における細胞の用量が、約5×109個の細胞/人、若しくは約2×109個の細胞/人、若しくは約1×109個の細胞/人、若しくは約5×108個の細胞/人を超えない。
【0229】
いくつかの実施形態では、1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量が、約1×105個の細胞/kg受験者の体重~約2×107個の細胞/kg受験者の体重、又は約1×106個の細胞/kg受験者の体重~約2×107個の細胞/kg受験者の体重である。
【0230】
いくつかの実施形態では、1サイクル当たり投与される細胞療法製品における細胞の用量が、約1×107個の細胞~約1×109個の細胞、約1×107個の細胞~約2×109個の細胞、約1×107個の細胞~約5×109個の細胞、又は約1×107個の細胞~約1×1010個の細胞であり、好ましくは、約1×108個の細胞~約1×109個の細胞、約1×108個の細胞~約2×109個の細胞、約1×108個の細胞~約5×109個の細胞であり、より好ましくは、約1×108個の細胞~約5×108個の細胞、又は約2.5×108個の細胞~約5×108個の細胞、約3.75×108個の細胞~約5×108個の細胞である。
【0231】
いくつかの実施形態では、各サイクルで細胞療法製品を投与する前に、患者に前治療を行い、前記前治療は、前記受験者に化学療法薬及び/又は放射線療法を与えることを含む。いくつかの実施形態では、前記放射線療法が全身放射線療法であってもよいし、局所放射線療法であってもよい。
【0232】
いくつかの実施形態では、前治療の化学療法薬が、シクロホスファミド、フルダラビン、チューブリン阻害剤、ピリミジン系抗腫瘍薬のうちのいずれか1つ又は少なくとも2つであってもよい。
【0233】
本明細書に記載のチューブリン阻害剤は、チューブリン重合促進剤及びチューブリン重合阻害剤を含む。チューブリン阻害剤は、例えば、タキサン系、エポチロン系、ディスコデルモリド(discodermolide)系、ラウリマライド(Laulimalide)などを含むが、それらに限定されない。
【0234】
用語「タキサン系(taxanes)薬」とは、タキサン系化合物を主成分として含有している薬物を指し、前記タキサン系化合物は、タキサンに似ている架橋メタノベンゾシクロデセン母核構造を備える。いくつかの実施形態では、前記タキサン系化合物の前記架橋メタノベンゾシクロデセン母核構造に不飽和結合が含有されている。いくつかの実施形態では、前記タキサン系化合物の前記架橋メタノベンゾシクロデセン母核構造に不飽和結合が含まれない。いくつかの実施形態では、前記タキサン系の前記架橋メタノベンゾシクロデセン母核構造における炭素原子が、N、O、S、Pから選ばれるヘテロ原子によって置換される。いくつかの実施形態では、前記タキサン系化合物の投与方式が注射投与である。
【0235】
いくつかの実施形態では、前治療の化学療法薬が、シクロホスファミド及びフルダラビン、又はシクロホスファミド、フルダラビン及びチューブリン阻害剤であってもよい。
【0236】
いくつかの実施形態では、前記チューブリン阻害剤がタキサン系化合物であり、好ましくは、前記タキサン系化合物が、パクリタキセル、アルブミン結合型パクリタキセル、ドセタキセルから選ばれ、より好ましくは、前記タキサン系化合物がアルブミン結合型パクリタキセルである。
【0237】
いくつかの実施形態では、前記ピリミジン系抗腫瘍薬が、5-フルオロウラシル、ギメラシル、オテラシルカリウム、テガディフール、カルモフール、ドキシフルリジン、カペシタビンから選ばれる。
【0238】
いくつかの実施形態では、フルダラビンの投与量が、約20~60mg/日、又は約30~55mg/日、又は約30~50mg/日である。
【0239】
いくつかの実施形態では、フルダラビンの投与量が、約10~50mg/m2/日、若しくは約15~40mg/m2/日、若しくは約15~30mg/m2/日、若しくは約20~30mg/m2/日であり、又は約25mg/m2/日である。
【0240】
いくつかの実施形態では、シクロホスファミドの投与量が、約200~700mg/日、又は約300~600mg/日、又は約300~560mg/日、又は約300~550mg/日、又は約300~500mg/日である。
【0241】
いくつかの実施形態では、シクロホスファミドの投与量が、約200~400mg/m2/日、又は約200~300mg/m2/日、又は約250mg/m2/日である。
【0242】
いくつかの実施形態では、タキサン系化合物の投与量が、約300mg/日以下、又は約200mg/日以下であり、好ましくは、前記タキサン系化合物の投与量が約90~200mg/日であり、より好ましくは、前記タキサン系化合物の投与量が約90~120mg/日である。
【0243】
いくつかの実施形態では、各化学療法薬の連続的な使用は4日を超えない。
【0244】
いくつかの実施形態では、シクロホスファミドが2~3回投与される。いくつかの実施形態では、フルダラビンが1~2回投与される。いくつかの実施形態では、タキサン系化合物が1回投与される。
【0245】
いくつかの実施形態では、本明細書によって提供される方法又は使用は、出願人が観察した、投与される細胞療法製品に対する受験者の応答及び治療結果から得られる。先行治療で抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を用いる治療が失敗したCLDN18A2陽性がんの受験者に異なる用量、又は異なるサイクル数のCLDN18A2を標的とするCAR-T細胞を投与する場合、CAR-T細胞は依然として、良好な治療結果を示すことができる。先行治療で抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を用いる治療が失敗したGPC3陽性がんの受験者に異なる用量、又は異なるサイクル数のGPC3を標的とするCAR-T細胞を投与する場合、CAR-T細胞は依然として、良好な治療結果を示すことができる。先行治療で抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を用いる治療が失敗したGPC3陽性がんの受験者に異なる用量、又は異なるサイクル数のRUNX3を発現するGPC3-CAR-T細胞を投与する場合、依然として、良好な治療結果を示すことができる。例えば、これらの治療結果は、患者の生存、寛解又は病状の安定を含む。
【0246】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の使用又は方法は、受験者に対する細胞療法製品の有害反応の程度又はリスクを監視し、前記有害反応の程度又はリスクに基づいて後の複数回投与又は後サイクルの投与用量及び間隔を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記有害反応の程度又はリスクが、例えば、CRS、神経毒性、マクロファージ活性化症候群、腫瘍崩壊症候群などを含むが、それらに限定されない。
【0247】
いくつかの実施形態では、一般に細胞療法製品を投与した後、有害反応又はその症状又は生化学的指標(例えば、CRS又は神経毒性、マクロファージ活性化症候群又は腫瘍崩壊症候群)のリスクが許容可能なレベルに等しい又は未満である場合に、後サイクルの治療を行う。いくつかの実施形態では、前記有害反応又はその症状又は生化学的指標が、発熱、低血圧、酸素欠乏、神経障害、炎症性サイトカイン、C反応性タンパク(CRP)の血清レベルのうちの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、前記有害反応又はその症状又は生化学的指標のリスクの許容可能なレベルとは、前サイクルの治療を行った後のピークレベルの95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、又は5%を指す。
【0248】
いくつかの実施形態では、前サイクルの細胞療法製品を与えた後、受験者におけるサイトカイン放出症候群(CRS)を示す因子の血清レベルが、前サイクルを投与する前の当該受験者の血清レベルの5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、21倍、22倍、23倍、24倍、25倍、26倍、27倍、28倍、29倍、30倍を超えない場合に後サイクルの治療を行う。
【0249】
いくつかの実施形態では、後サイクルを投与するタイミングを選択し、これによって前サイクルの投与で既に生じた宿主の免疫応答が、後サイクルの効果が低減するように誘導するという可能性を避ける。いくつかの態様では、宿主の免疫応答、例えば、投与される細胞及び/又はそれによって発現されるキメラ抗原受容体に対する適応性又は特異性、例えば、体液又は細胞によって媒介される免疫応答が出現する前に後サイクルを投与する。いくつかの実施形態では、例えば、1つ又は複数の専門的な検出方法でこのような応答を検出できる前に後サイクルを投与する。一般に、細胞に対する宿主の適応免疫応答が検出されておらず、まだ確立されておらず且つ/又はまだ一定のレベル若しくは程度若しくは段階に達していない時に1つ又は複数の後サイクルを投与する。
【0250】
いくつかの実施形態では、前サイクルの治療を経て、腫瘍負荷が安定し又は減少するようになった後、宿主の適応免疫応答(即ち、CAR-T細胞に対して身体が生じる拒絶反応)が生じる前に、1つ又は複数の後サイクルの治療を行う。このような条件において、後サイクルは、安全かつ有効に免疫監視を提供し、残存する腫瘍細胞の増殖又は転移を除去又は予防することができる。したがって、いくつかの実施形態では、後サイクルが地固め療法の用量である。
【0251】
いくつかの実施形態では、前サイクルの細胞療法製品を投与してから少なくとも28日後、29日後、30日後、31日後、32日後、33日後、34日後、又は35日後に、後サイクルの治療を行う。
【0252】
用語「腫瘍負荷」は、腫瘍の体積の大きさ若しくは分化の程度、又は転移のタイプ、段階、及び/又は中期若しくは晩期がんによく見られる合併症の出現と消失を含み、例えば、がん性の胸水又は腹水、及び/又は腫瘍マーカーの出現若しくは発現レベルの変化、及び/又は受験者に有害作用、例えば、CRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍崩壊症候群、神経毒性及び/又は投与される細胞及び/若しくはキメラ抗原受容体に対する宿主の免疫応答が生じる可能性若しくは発生率である。いくつかの実施形態では、腫瘍の大きさは、PET(陽電子放出断層撮影)及びCT(コンピュータ断層撮影)の備える尺度によって計測される。
【0253】
前記腫瘍マーカーとは、tumor markerとも言い、悪性腫瘍細胞に特徴的に存在し、又は悪性腫瘍細胞によって異常的に生成される物質、又は宿主が腫瘍刺激に応答することで生成された物質であって、腫瘍の発生、進行を反映し、治療に対する腫瘍の反応を監視することができる1種の物質を指す。腫瘍マーカーは、腫瘍患者の組織、体液及び排泄物の中に存在し、免疫学的、生物学的及び化学的方法で検出することができ、例示的に、アルファフェトプロテイン(AFP)、CA125、CA15-3、扁平上皮がん関連抗原(SCC)、サイトケラチン19の可溶性断片(CYFRA21-1)、がん胎児性抗原(CEA)、CA199、CA724などを含む。
【0254】
本発明によって提供される使用又は方法は、先行治療で抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体を用いる治療が失敗したがん患者に、少なくとも1サイクルの細胞療法製品として、例えば、CAR、TCR、TFP、又はTACを発現する免疫エフェクター細胞又はそれらの組み合わせを投与することを含む。
【0255】
本明細書に記載の「腫瘍抗原」は、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)、CD171、CS-1、C型レクチン様分子-1、ガングリオシドGD3、Tn抗原、CD19、CD20、CD22、CD30、CD70、CD123、CD138、CD33、CD44、CD44v7/8、CD38、CD44v6、B7H3(CD276),B7H6、KIT(CD117)、インターロイキン13受容体サブユニットα(IL-13Rα)、インターロイキン11受容体α(IL-11Rα)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、がん胎児性抗原(CEA)、NY-ESO-1、HIV-1Gag、MART-1、gp100、チロシナーゼ、メソテリン、EpCAM、セリンプロテアーゼ21(PRSS21)、血管内皮増殖因子受容体、ルイス(Y)抗原、CD24、血小板由来増殖因子受容体β(PDGFR-β)、発生段階特異的胎児性抗原-4(SSEA-4)、細胞表面のムチン1(MUC1)及びMUC6、上皮成長因子受容体ファミリー及びその変異体(EGFR、EGFR2、ERBB3、ERBB4、EGFRvIII)、神経細胞接着分子(NCAM)、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、LMP2、エフリンタイプA受容体2(EphA2)、フコシルGM1、シアリルルイス接着分子(sLe)、ガングリオシドGM3(aNeu5Ac(2-3)bDGalp(1-4)bDGlcp(1-1)Cer、TGS5、高分子黒色腫関連抗原(HMWMAA)、オルトアセチルGD2ガングリオシド(OAcGD2)、葉酸受容体、腫瘍血管内皮マーカー1(TEM1/CD248)、腫瘍血管内皮マーカー7関連タンパク質(TEM7R)、Claudin 6及びClaudin18.2及びClaudin18.1、ASGPR1、CDH16、5T4、8H9、インテグリンαvβ6、B細胞成熟抗原(BCMA)、CA9、κ軽鎖(kappa light chain)、CSPG4、EGP2及びEGP40、FAP、FAR、FBP、胎児性AchR、HLA-A1及びHLA-A2、MAGEA1及びMAGE3、KDR、MCSP、NKG2Dリガンド、PSC1、ROR1、Sp17、サバイビン(SURVIVIN)、TAG72、TEM1、フィブロネクチン、サイトタクチン、腫瘍内壊死領域のがん胎児性変異体、Gタンパク質共役型受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、X染色体のオープンリーディングフレーム61(CXORF61)、CD97、CD179a、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、ポリシアル酸、胎盤特異的タンパク質1(PLAC1)、globo H glycoceramideのヘキソース部分(Globo H)、乳がん関連抗原(NY-BR-1)、ウロプラキン2(uroplakin 2、UPK2)、A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1)、β3アドレナリン受容体(ADRB3)、パネキシン3(pannexin 3、PANX3)、Gタンパク質共役型受容体20(GPR20)、リンパ球抗原6複合体の遺伝子座K9(LY6K)、嗅覚受容体51E2(OR51E2)、TCRγ代替リーディングフレームタンパク質(TARP)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1)、ETS転座バリアント遺伝子6(ETV6-AML)、精子タンパク質17(SPA17)、X抗原ファミリーメンバー1A(XAGE1)、アンギオゲニン結合細胞表面受容体2(Tie2)、黒色腫がん精巣抗原-1(MAD-CT-1)、黒色腫がん精巣抗原-2(MAD-CT-2)、Fos関連抗原1、p53変異体、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、肉腫ブレークポイント領域、黒色腫のアポトーシス阻害剤(ML-IAP)、ERG(膜貫通型セリンプロテアーゼ2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(NA17)、ペアボックスタンパク質Pax-3(PAX3)、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、V-mycトリ骨髄球腫症ウイルス性がん遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN)、Rasホモログ遺伝子ファミリーメンバーC(RhoC)、シトクロムP4501B1(CYP1B1)、CCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様(BORIS)、T細胞によって認識される扁平上皮がん関連抗原3(SART3)、ペアボックスタンパク質Pax-5(PAX5)、プロアクロシン(proacrosin)結合タンパクsp32(OYTES1)、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK)、Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP-4)、滑膜肉腫、ブレークポイントX2(SSX2)、CD79a、CD79b、CD72、白血球免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)、IgA受容体のFc断片(FCAR)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーメンバー2(LILRA2)、CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF)、C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A)、骨髄間質細胞抗原2(BST2)、EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体2(EMR2)、リンパ球抗原75(LY75)、グリピカン-3(GPC3)、Fc受容体様タンパク質5(FCRL5)、免疫グロブリンλ様ポリペプチド1(IGLL1)を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、前記腫瘍抗原が、EGFR、EGFRvIII、グリピカン3、claudin 18.2又はBCMAである。
【0256】
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原が、CD19、CD20、CD22、CD30、メソテリン(Mesothelin)、BCMA、EGFR、EGFRvIII、PSMA、Muc1、claudin18.2、GPC3、IL13RA2のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0257】
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原が、CD19、BCMA、Claudin18.2、GPC3のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0258】
いくつかの実施形態では、腫瘍又はがんが、結腸がん、胆嚢がん、クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍、直腸がん、腎臓細胞がん、肝がん、肺がん、小細胞肺がん、小腸がん、食道がん、黒色腫、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚又は眼内の悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門がん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部肉腫、尿道がん、陰茎がん、小児固形腫瘍、膀胱がん、腎臓又は尿管がん、腎盂がん、中枢性神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、環境誘発性がん、前記がんの組み合わせ及び前記がんの転移性病変であってもよい。いくつかの実施形態では、胃がんが食道胃接合部腺がんを含む。いくつかの実施形態では、肝がんが肝細胞がんを含む。
【0259】
CLD18及びCLD18陽性腫瘍:
クローディン18(Claudin 18、CLD18)分子(Genbankアクセッション番号:スプライシングバリアント1(Claudin 18.1、CLD18A1):NP_057453、NM016369、及びスプライシングバリアント2(Claudin 18.2、CLD18A2):NM_001002026、NP_001002026))は、分子量が約27.9/27.72kDである膜内在性膜貫通型タンパク質である。クローディンは、上皮細胞及び内皮細胞のタイト結合内に位置する膜内在性タンパク質である。特定の実施形態では、CLD18A2が配列番号56に示される配列を備える。CLD18A2は、胃がん/食道胃接合部腺がん、食道がん、胆嚢がん、膵臓がん、肺がん、クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍を含むいくつかのタイプのがんで高度に発現される。発現は、主にこれらの適応症の腺がんサブタイプにある。
【0260】
GPC3及びGPC3陽性腫瘍:
本明細書で使用される「GPC3」又は「グリピカン3」は、細胞の成長及び分化を制御する上で重要な役割を果たすグリピカン(Glypican)ファミリーのメンバーである。特定の実施形態では、GPC3が配列番号68に示される配列を備える。GPC3の異常な発現は、複数の腫瘍の発生、進行と密接に関係し、例えば、肝がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、腎臓がん、甲状腺がん、胃がん、結腸直腸がんなどで異常に発現される。
【0261】
細胞療法製品の投与方法が知られている。いくつかの実施形態では、細胞療法製品(例えば、CAR-T細胞)を自己再注入の方式で患者に投与してもよい。したがって、いくつかの態様では、前記細胞療法製品が、前記細胞療法製品を必要とする受験者に由来し、体外で遺伝子の修飾を行った後に同一の受験者に投与される。いくつかの実施形態では、細胞療法製品(例えば、CAR-T細胞)を同種再注入の方式で患者に投与してもよい。したがって、別のいくつかの態様では、前記細胞療法製品が健康なドナーに由来し、ドナーは細胞を再注入される受験者と異なる。これらの態様において、細胞療法製品を遺伝的に組織適合性の高い受験者に投与し、例えば、ドナーと受験者は遺伝的に同じであり又は似ている。いくつかの実施形態では、前記ドナーと受験者が、同じHLAクラス又はスーパータイプを備える。
【0262】
前記細胞を、いずれの適切な方式で、例えば、注射(例えば、静脈内又は皮下注射、腹腔内注射、眼内注射、眼底注射、網膜下注射、硝子体内注射、逆間隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下(subconjectval)注射、結膜下(subconjuntival)注射、強膜上腔注射、眼球後注射、眼周囲注射又は眼球周囲送達)によって投与することができる。いくつかの実施形態では、それらが非経口、肺内及び鼻内によって、局所治療が望ましい場合に、病変内に投与されてもよい。腹腔外注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与を含む。
【0263】
疾患を予防又は治療する場合、適切な用量は、治療される疾患のタイプ、キメラ抗原受容体又は細胞のタイプ、疾患の重症度及び疾患の経過、当該細胞が予防的又は治療的目的で投与されるかどうか、これまでの治療、受験者の病歴及び前記細胞に対する応答、及び主治医の判断によって決められてもよい。いくつかの実施形態では、前記組成物及び細胞が、1つの時点で又は一連の治療として受験者に投与されるのに適する。
【0264】
細胞療法製品を投与する前に前治療を行うことは、免疫エフェクター細胞治療の効果を改善することができる。各サイクルの投与で免疫エフェクター細胞(例えば、CAR-T細胞)の1回目の注入の日を0日目と定め、免疫エフェクター細胞を注入して与える前に前治療を行う。いくつかの実施形態では、養子細胞又は免疫エフェクター細胞の投与前の少なくとも2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、又は10日に前治療を行う。いくつかの実施形態では、細胞療法製品の投与の2~8日前に前治療を実施し、好ましくは、細胞療法製品の投与の3~6日前に前治療を実施する。上述したように、各サイクルで患者にCAR-T細胞療法を行う日を0日目と定める。いくつかの実施形態では、CAR-T細胞療法を行う前のいずれの時点に前治療を行ってもよい。
【0265】
いくつかの実施形態では、前治療で投与される化学療法薬又は治療の投与期間又は回数を調整することによって、細胞療法製品の有効性を最大にすることができる。
【0266】
いくつかの実施形態では、前記シクロホスファミドが2~3回投与され、又は前記フルダラビンが1~2回投与され、又は前記アルブミン結合型パクリタキセルが1回投与される。
【0267】
いくつかの実施形態では、各化学療法薬の連続的な使用は4日を超えない。
【0268】
いくつかの実施形態では、フルダラビンの投与量が、約20~60mg/日、又は約30~60mg/日、又は約30~55mg/日、又は約30~50mg/日である。
【0269】
いくつかの実施形態では、フルダラビンの投与量が、約10~50mg/m2/日、若しくは約15~40mg/m2/日、若しくは約15~30mg/m2/日、若しくは約20~30mg/m2/日であり、又は約25mg/m2/日である。
【0270】
いくつかの実施形態では、シクロホスファミドの投与量が、約200~700mg/日、又は約300~700mg/日、又は約300~600mg/日、又は約300~560mg/日、又は約300~550mg/日、又は約300~500mg/日である。
【0271】
いくつかの実施形態では、シクロホスファミドの投与量が、約200~400mg/m2/日、又は約200~300mg/m2/日、又は約250mg/m2/日である。
【0272】
いくつかの実施形態では、タキサン系化合物の投与量が、約300mg/日以下、又は約200mg/日以下であり、好ましくは、前記タキサン系化合物の投与量が約90~200mg/日である。より好ましくは、前記タキサン系化合物の投与量が約90~120mg/日である。
【0273】
各サイクルで患者にCAR-T細胞療法を行う日を0日目と定める。いくつかの実施形態では、-6日目及び-5日目に患者にフルダラビンを投与する。いくつかの実施形態では、-5日目及び-4日目に患者にフルダラビンを投与する。いくつかの実施形態では、-4日目及び-3日目に患者にフルダラビンを投与する。いくつかの実施形態では、-6日目、-5日目、-4日目及び-3日目に患者にフルダラビンを投与する。いくつかの実施形態では、-7日目、-6日目、-5日目及び-4日目に患者にフルダラビンを投与する。いくつかの実施形態では、-6日目、-5日目、-4日目及び-3日目に患者にシクロホスファミドを投与する。いくつかの実施形態では、-6日目、-5日目及び-4日目に患者にシクロホスファミドを投与する。いくつかの実施形態では、-5日目、-4日目及び-2日目に患者にシクロホスファミドを投与する。いくつかの実施形態では、-5日目、-4日目及び-3日目に患者にシクロホスファミドを投与する。いくつかの実施形態では、-4日目、-3日目及び-2日目に患者にシクロホスファミドを投与する。いくつかの実施形態では、-4日目及び-3日目に患者にシクロホスファミドを投与する。いくつかの実施形態では、-6日目及び-5日目に患者にシクロホスファミドを投与する。いくつかの実施形態では、-5日目及び-4日目に患者にシクロホスファミドを投与する。いくつかの実施形態では、-2日目、-3日目、-4日目、-5日目、又は-6日目に、患者にタキサン系化合物(例えば、アルブミン結合型パクリタキセル)を投与する。
【0274】
同じ日又は異なる日にフルダラビン、シクロホスファミド及びアルブミン結合型パクリタキセルを投与することができる。同じ日にフルダラビン、シクロホスファミド及びアルブミン結合型パクリタキセルを投与する場合、フルダラビンより先又はその後にシクロホスファミド及び/又はアルブミン結合型パクリタキセルを投与してもよいし、又はシクロホスファミドより先又はその後にフルダラビン及び/又はアルブミン結合型パクリタキセルを投与してもよいし、又はアルブミン結合型パクリタキセルより先又はその後にシクロホスファミド及び/又はフルダラビンを投与してもよい。
【0275】
いくつかの実施形態では、フルダラビン、シクロホスファミド、アルブミン結合型パクリタキセルを同時に投与し又は順次投与することができる。いくつかの実施形態では、フルダラビンを投与する前に患者にシクロホスファミドを投与する。いくつかの実施形態では、フルダラビンを投与した後に患者にシクロホスファミドを投与する。いくつかの実施形態では、フルダラビンを投与する前に患者にアルブミン結合型パクリタキセルを投与する。いくつかの実施形態では、フルダラビンを投与した後に患者にアルブミン結合型パクリタキセルを投与する。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドを投与する前に患者にアルブミン結合型パクリタキセルを投与する。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドを投与した後に患者にアルブミン結合型パクリタキセルを投与する。
【0276】
いかなる経路(静脈内注射(IV)を含む)で、フルダラビン、シクロホスファミド及びアルブミン結合型パクリタキセルを投与してもよい。
【0277】
ここに記載の方法は他の様々な処置を含んでもよい。例えば、シクロホスファミド及びフルダラビンを投与した後に患者に有害事象を引き起こす可能性がある。本発明の範囲には、患者に組成物を投与することによってこれらの有害事象のいくつかの事象を減少させることが含まれる。いくつかの実施形態では、当該方法は、患者に生理食塩水を投与することを含む。シクロホスファミド及び/若しくはフルダラビンを投与する前又はその後に、又はシクロホスファミド及び/若しくはフルダラビンを投与する前及びその後に患者に生理食塩水を投与することができる。いくつかの実施形態では、各注入日にシクロホスファミド及び/又はフルダラビンを投与する前に、及びシクロホスファミド及び/又はフルダラビンを投与した後に患者に生理食塩水を投与する。また、患者にアジュバント及び賦形剤、例えば、メスナ(2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム)を投与してもよい。さらに、患者に外因性サイトカインを投与してもよい。
【0278】
受験者に細胞療法製品を投与した後に、様々な既知の方法のいずれかで操作された免疫エフェクター細胞集団の生物学的活性を計測することができる。評価用のパラメータは、in vivo(例えば、イメージングによる)又はex vivo(例えば、ELISA又はサイトメトリーによる)での、抗原に対する細胞の特異的結合を含む。いくつかの実施形態では、操作された免疫エフェクター細胞の標的細胞を破壊する能力は、当分野で知られているいずれの適切な方法で、例えば、文献Kochenderfer et al.,J.Immunotherapy,32(7):689-702(2009)、Herman et al.,J.Immunological Methods,285(1):25-40(2004)で記述されている細胞毒性アッセイで検出してもよい。いくつかの実施形態では、一部のサイトカイン、例えば、CD107a、IFNγ、IL-2、TNFの発現及び/又は分泌を測定することによって、免疫エフェクター細胞の生物学的活性を計測してもよい。いくつかの態様では、生物学的活性は、臨床結果、例えば、腫瘍負荷又は負荷の減少を評価することによって得られる。いくつかの態様では、腫瘍マーカーの低減を評価する。いくつかの態様では、細胞の毒性結果、持続性及び/若しくは増殖、及び/又は宿主の免疫応答の存否を評価する。
【0279】
本明細書で、「前サイクル」は、「後サイクル」に対して、後サイクルの投与より先の投与サイクルであり、例えば、1サイクル目の投与を完了した後、2サイクル目の投与及び3サイクル目の投与がある場合、2サイクル目と1サイクル目とでは、1サイクル目が前サイクルであり、2サイクル目が後サイクルであり、3サイクル目と2サイクル目とでは、2サイクル目が前サイクルであり、3サイクル目が後サイクルである。
【0280】
特定の実施形態では、細胞療法製品の用量とは、細胞療法製品に含有されている細胞数を指す。
【0281】
いくつかの実施形態では、後サイクルの量又は規模が、腫瘍負荷若しくはその指標、及び/又は疾患若しくは病状の1種若しくは複数種の症状を減少させるのに充分である。いくつかの実施形態では、用量が、受験者の生存期間を効果的に改善することができ、例えば、受験者の生存を改善し、例えば、受験者の生存、無再発生存又は無事象生存が少なくとも1か月又は少なくとも1年、2年、3年、4年若しくは5年持続するように誘導する。
【0282】
いくつかの実施形態では、前サイクル又は後サイクルを投与する前の時点に比べて、後サイクルの後、腫瘍の大きさ、腫瘍の体積及び/又は腫瘍の質量を含む腫瘍負荷の減少は、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又はそれ以上に等しい又は約それらである。
【0283】
他の実施形態では、後サイクルで投与される免疫エフェクター細胞の数が前サイクルで投与される免疫エフェクター細胞の数より少ない。
【0284】
いくつかの態様では、1つ又は複数の基準によって、例えば、前サイクルの治療に対する受験者の反応、例えば、化学療法の場合は、受験者の腫瘍負荷、例えば、腫瘍の体積、大きさ若しくは分化の程度、若しくは転移のタイプ、段階、及び/又は中期若しくは晩期がんによく見られる合併症、例えば、がん性の胸水若しくは腹水、及び/又は受験者に有害作用、例えば、CRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍崩壊症候群、神経毒性及び/又は投与される細胞及び/若しくはキメラ抗原受容体に対する宿主の免疫応答が生じる可能性又は発生率に基づいて、後サイクルの治療を行うかどうかを決定する。
【0285】
当業者は、本発明の教示から次のことを理解できるはずである。本発明で具体的に公開されている用量は本発明者らが研究で得た安全で有効の用量であり、当業者、例えば、臨床医師は、様々な実際の事情、例えば、患者の腫瘍負荷、患者自身の身体の状況などの要因に基づいて各サイクルの投与用量を決めることができ、後サイクルの投与がなお必要である場合、当業者は、例えば、免疫エフェクター細胞の投与後の腫瘍負荷の変化に基づいて後サイクルの用量を決めることができる。
【0286】
いくつかの態様では、前サイクルの治療を行う前の腫瘍負荷から後サイクルで投与される細胞療法製品の用量を決定する。いくつかの実施形態では、例えば、前サイクルが腫瘍負荷の減少又は低減を引き起こし、又は、既に特定の閾値量若しくはレベルより低くなっており、例えば、それを上回ると、有害作用のリスクが上昇し、後サイクルの用量を増加させることを示す。
【0287】
場合によっては、前サイクル治療を受けた後に、受験者の腫瘍負荷が低減しなくても、後サイクルの細胞療法製品の用量を増加させてもよい。
【0288】
いかなる経路(静脈内注射(IV)を含む)で、T細胞(例えば、CAR-T細胞)を投与してもよい。いくつかの実施形態では、次の時間内で、即ち、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、約15分、約16分、約17分、約18分、約19分、約20分、約21分、約22分、約23分、約24分、約25分、約26分、約27分、約28分、約29分、約30分、約40分、約50分、又は約60分でIVによってCAR-T細胞を投与する。
【0289】
いくつかの実施形態では、副作用(例えば、サイトカイン放出症候群(CRS)、マクロファージ活性化症候群、又は腫瘍崩壊症候群、又は神経毒性)を示す生化学的指標又はマーカーによって示される臨床リスクが存在せず又は既に過ぎ去っている場合、必要であれば、後サイクルの治療を行ってもよい。
【0290】
いくつかの実施形態では、後サイクルの治療を行うかどうか、後サイクルの治療をいつ行うか、及び/又は後サイクルで投与される細胞療法製品の用量は、受験者における前サイクルの細胞又はそれによって発現されるキメラ抗原受容体に対する免疫応答又は検出可能な免疫応答の存否又はその程度から決定される。
【0291】
いくつかの実施形態では、後サイクルの投与の時間は、前サイクルの細胞療法製品の完了(前サイクルの総用量の注入完了日を0日目と定める)から起算する。
【0292】
いくつかの実施形態では、受験者におけるCRSを示す因子の血清レベルが前サイクルの投与前の時点での受験者における当該マーカーの血清レベルの約10倍、約25倍、約50倍又は約100倍を超えない場合に、後サイクルの治療を行う。
【0293】
いくつかの実施形態では、受験者におけるCRSに関連する結果(例えば、CRSに関連する又はCRSを示す血清因子)又はその臨床徴候若しくは症状(例えば、発熱、酸素欠乏、低血圧又は神経障害)が既にピークレベルに達しており、且つ前サイクルの投与後に降下し始めた後に後サイクルの治療を行う。
【0294】
いくつかの実施形態では、宿主の適応免疫応答が検出されておらず、まだ確立されておらず、又はまだ一定のレベル、程度若しくは段階に達していない時に後サイクルの治療を行う。いくつかの態様では、受験者の記憶免疫応答が進行する前に後サイクルの治療を行う。
【0295】
いくつかの実施形態では、前サイクルと後サイクルとの間で腫瘍負荷を監視する。
【0296】
検出可能な免疫応答とは、特定の抗原及び細胞に対する特異的免疫応答を評価するための多くの既知の方法のいずれかで検出可能な量を指す。例えば、いくつかの実施形態では、受験者の血清においてELISPOT、ELISA又は細胞ベースの抗体検出方法(例えば、サイトメトリーによる)を行って、細胞に存在する抗原と特異的に結合及び/又は中和する、例えば、キメラ抗原受容体と結合するエピトープ、例えば、CAR抗体の存在を検出することによって、特定のタイプの免疫応答を検出する。いくつかのそのような測定では、検出された抗体のアイソタイプ、及び応答を示すことができるタイプ、及び/又は応答が記憶応答であるかどうかを決定する。
【0297】
いくつかの態様では、例えば、前サイクル又は後サイクルの治療を行った後に、免疫応答の量及び程度を検出又は計測する。
【0298】
いくつかの態様では、前サイクルの治療を行う前に、又は前サイクルと後サイクルの治療の間に、又は後サイクルの治療を行った後に、疾病負荷を計測又は検出する。
【0299】
いくつかの実施形態では、前サイクルの治療を行った後、疾病負荷が約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%又は約100%減少する。いくつかの態様では、後サイクルの治療を行うと疾病負荷がさらに低減し、例えば、後サイクルの治療前とその後の疾病負荷を比べると、治療後に約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%又は約100%低減する。
【0300】
いくつかの実施形態では、他の方法に比べて、当該方法は受験者の無増悪生存率又は全生存率を改善する。例えば、いくつかの実施形態では、前サイクルの治療から1か月後、受験者の無増悪生存率が、約10%より大きく、約20%より大きく、約30%より大きく、約40%より大きく、約50%より大きく、約60%より大きく、約70%より大きく、約80%より大きく、約90%より大きく、又は約95%より大きい。いくつかの態様では、総生存率が、約10%より大きく、約20%より大きく、約30%より大きく、約40%より大きく、約50%より大きく、約60%より大きく、約70%より大きく、約80%より大きく、約90%より大きく又は約95%より大きい。いくつかの実施形態では、受験者に、少なくとも約1か月、又は少なくとも約2か月、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約7か月、約8か月、約9か月、約10か月、約11か月、又は約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年若しくは約10年の無増悪生存、無再発生存又は全生存期間がある。いくつかの実施形態では、無増悪生存期間の長さが、例えば、1か月より大きい又は約1か月、又は少なくとも、約2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、又は1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年若しくは10年である。
【0301】
いくつかの実施形態では、当該方法による治療は、他の方法に比べて、再発の確率が低減する。例えば、いくつかの実施形態では、前サイクルから1か月後に再発又は進行する確率が約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、又は約6%未満である。
【0302】
細胞によって発現される外因性受容体:
細胞は、既知の生物学的技術によって外因性修飾されることで、外因性受容体を発現することができ、例えば、TCR受容体、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞融合タンパク質(T cell fusionprotein、TFP)、T細胞-抗原カプラー(T cell antigen coupler、TAC)を外因的に発現する。
【0303】
例示的な外因性受容体、例えば、CARを含む配列は、配列番号11、12、13、25、26、36、38、52のいずれかに示されるアミノ酸配列を備えてもよい。例示的に、本願のCARは、配列番号58、59、60、61、62、63、64、65、66又は67に示される配列が、それぞれ、配列番号80、81又は82に示される配列と順次連結されて組み合わされたものを備える。例示的に、配列番号58に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号58に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号58に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号59に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号59に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号59に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号60に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号60に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号60に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号61に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号61に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号61に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号62に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号62に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号62に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号63に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号63に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号63に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号64に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号64に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号64に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号65に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号65に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号65に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号66に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号66に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号66に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号67に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号67に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号67に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるものである。
【0304】
例示的に、本願のCARは、配列番号70に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号70に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号70に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号71に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号71に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号71に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号72に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号72に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号72に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号73に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号73に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号73に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号74に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号74に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号74に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号75に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号75に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号75に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号76に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号76に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号76に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号77に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号77に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号77に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号78に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号78に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号78に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるもの、配列番号79に示される配列が配列番号80に示される配列と順次連結され、又は配列番号79に示される配列が配列番号81に示される配列と順次連結され、配列番号79に示される配列が配列番号82に示される配列と順次連結されるものを備える。例示的に、配列番号83、84又は85に示される配列である。
【0305】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク」と「タンパク質」は、入れ替えて使用することができ、アミノ酸残基のポリマーを意味し、長さの最小制限がない。提供される受容体及び他のポリペプチド(例えば、リンカー又はペプチド)を含むポリペプチドは、天然及び/又は非天然のアミノ酸残基を含むアミノ酸残基を含んでもよい。当該用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアル酸化、アセチル化、リン酸化をさらに含む。いくつかの態様では、前記ポリペプチドは、タンパク質に必要な活性が保もたれていさえすれば、元の又は天然の配列に対する修飾を含んでもよい。これらの修飾は、意図的なものであってもよいし、例えば、部位特異的変異によって誘発されたものであり、又は偶発的なものであってもよく、例えば、タンパク質を生成する宿主の変異又はPCR増幅によって引き起こされる誤差である。
【0306】
本発明では、外因性受容体を発現する細胞は、一般に真核細胞であり、例えば、哺乳動物細胞であり、且つ一般にヒト細胞である。いくつかの実施形態では、細胞が、血液、骨髄、リンパ又はリンパ器官に由来し、免疫系の細胞(例えば、自然免疫又は適応免疫の細胞)であり、例えば、リンパ球(一般にT細胞、NK T細胞及び/又はNK細胞)を含む骨髄又はリンパ様細胞である。他の例示的な細胞は、幹細胞を含み、例えば、多分化能(multipotent)及び多能性(pluripotent)幹細胞(人工多能性幹細胞(iPSC)を含む)である。細胞は、一般に初代細胞であり、例えば、受験者から直接分離され且つ/又は受験者から分離して凍結された細胞である。いくつかの実施形態では、細胞が、T細胞又は他の細胞タイプの1つ又は複数のサブセットを含み、例えば、T細胞集団全体、CD4+細胞T細胞、CD8+細胞T細胞及びそのサブセットであり、例えば、機能、活性化状態、成熟、分化能、増幅、リサイクル、局在化、及び/又は持続性、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の器官又は区画における存在、マーカー又はサイトカインの分泌状況、及び/又は分化の程度によって限定されたT細胞である。被治療受験者については、細胞が、同種の及び/又は自己のものであってもよい。前記外因性受容体を発現する細胞の調製方法は従来の方法を含む。いくつかの実施形態では、当該方法が、受験者から細胞を分離し、それに対して調製、処理、培養及び/又は操作を行い、また凍結保存する前又はその後にそれを同じ受験者に導入することを含む。
【0307】
T細胞及び/又はCD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞のサブタイプ及びサブセットは、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT(TEFF)細胞、メモリーT細胞及びそのサブタイプを含み、例えば、幹細胞メモリーT(TSCM)細胞、セントラルメモリーT(TCM)細胞、エフェクターメモリーT(TEM)細胞、又は最終分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、天然及び養子制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞であり、例えば、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、α/β T細胞、δ/γ T細胞又はそれらの組み合わせである。
【0308】
いくつかの実施形態では、前記細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの実施形態では、前記細胞が、単球又は顆粒球であり、例えば、骨髄細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、好塩基球又はそれらの組み合わせである。
【0309】
いくつかの実施形態では、前記細胞が、遺伝子操作によって1種又は複数種の核酸が導入され、これによって前記核酸の組換え又は遺伝子操作された産物を発現することを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、異種のものであり、一般に細胞又は当該細胞から得たサンプルに存在せず、例えば、別の生体又は細胞から得たサンプルであり、又は例えば、一般に操作中の細胞になく且つ/又はそのような細胞の由来生体で発見されない。いくつかの実施形態では、核酸は、天然に存在するものではなく、例えば、核酸は自然の中で発見されたものではなく、複数の異なる細胞タイプに由来する様々なドメインをコードする核酸を含むキメラ組み合わせ、例えば、CAR、キメラサイトカイン受容体を含む。
【0310】
遺伝子操作のための方法及びベクター:
本発明は、また、キメラ抗原受容体を発現する遺伝子操作された細胞を生成するための方法、組成物及びキットを提供する。遺伝子操作は、一般に、前記組換え又は操作された部分をコードする核酸を細胞に導入することに関わり、例えば、ウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、AAV)形質導入、トランスフェクション又は形質転換によって行われる。
【0311】
用語「操作された」とは、細胞生物学及び分子生物学的原理及び方法を用いて、特定の工学的手法によって、細胞全体レベル又は細胞小器官レベルにおいて、要望に従い細胞内の遺伝物質を改変し又は細胞製品を得る総合的な科学技術を指す。一実施形態では、前記操作とは、核酸、例えば、生体のゲノム内の核酸の1つ又は複数の改変を指す。一実施形態では、前記操作とは、遺伝子の改変、追加及び/又は欠失を指す。一実施形態では、前記操作された細胞とは、追加、欠失及び/又は改変された遺伝子を備える細胞を指してもよい。
【0312】
いくつかの実施形態では、遺伝子導入は次の方法で行う。最初に、例えば、刺激物と合わせることによって、細胞を刺激し、前記刺激物が、応答、例えば、増殖、生存及び/又は活性化を誘導し、例えば、サイトカイン又は活性化マーカーの発現によって検出し、次に、当該活性化された細胞に形質導入し、且つ培養物の中で、臨床使用に充分な量になるまで増幅させる。
【0313】
いくつかの態様では、細胞は、サイトカイン又は他の因子の発現を促進するように操作されている。
【0314】
いくつかの実施形態では、組換え感染性ウイルス粒子、例えば、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターを用いて組換え核酸を細胞に導入する。いくつかの実施形態では、組換えレンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクター、例えば、γ-レトロウイルスベクターを用いて、組換え核酸をT細胞に導入する。
【0315】
いくつかの実施形態では、電気穿孔法(エレクトロポレーション)によって組換え核酸をT細胞に導入する。いくつかの実施形態では、転座によって組換え核酸をT細胞に導入する(例えば、Manuri et al.,(2010)Hum Gene Ther 21(4):427-437、Sharma et al.,(2013)Molec Ther Nucl Acids 2,e74、Huang et al.,(2009)Methods Mol Biol 506:115-126を参照する)。免疫細胞に遺伝物質を導入及び発現させるための他の方法は、リン酸カルシウムトランスフェクション法(例えば、「Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,NY」で記述されている)、プロトプラスト融合、カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション、タングステンベースの微粒子銃爆撃(Johnston,Nature,346:776-777(1990))、及びリン酸ストロンチウムDNA共沈降(Brash et al.,Mol.Cell Biol.,7:2031-2034(1987))を含む。
【0316】
免疫エフェクター細胞の調製:
いくつかの実施形態では、操作して改変された細胞の調製は、1つ又は複数の培養及び/又は1つ又は複数の調製ステップを含む。トランスジェニック受容体(例えば、CAR)をコードする核酸を導入するための細胞は、サンプル(例えば、生体サンプル、例えば、受験者から得られ又は由来するサンプル)から分離されてもよい。いくつかの実施形態では、細胞を分離される受験者は、所定の疾患若しくは病状を患っている又は細胞治療を必要とする又は細胞治療を行われようとする受験者である。いくつかの実施形態では、受験者は、特定の治療的介入を必要とするヒトであり、例えば、養子細胞療法又は免疫エフェクター細胞療法を必要とするヒトであり、当該療法に用いる細胞は、分離、加工及び/又は操作されたものである。いくつかの実施形態では、前記細胞が、初代細胞であり、例えば、初代ヒト細胞である。前記サンプルは、直接受験者から採取した組織、体液、他のサンプル、及び1つ又は複数の処理ステップ、例えば、分離、遠心分離、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターによる形質導入)、洗浄及び/又はインキュベーションから得られたサンプルを含む。前記生体サンプルは、直接生物から由来するサンプル又は処理されたサンプルであってもよい。生体サンプルは、体液、例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿及び汗、組織及び器官サンプルを含むが、それらに限定されない、それらに由来する処理されたサンプルを含む。
【0317】
いくつかの態様では、細胞が由来又は分離されるサンプルが、血液又は血液に由来するサンプル、又は、アフェレーシス若しくは白血球アフェレーシスからの産物である。例示的なサンプルは、全血、PBMC、白血球、骨髄、胸腺、組織生検検体、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ様組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳腺、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃腺若しくは他の器官、及び/又はそれらに由来する細胞を含む。細胞治療(例えば、養子細胞治療又は免疫エフェクター細胞治療)の場合、サンプルは、自己由来及び同種由来のサンプルを含む。
【0318】
いくつかの実施形態では、前記細胞が、細胞株、例えば、T細胞株に由来する。いくつかの実施形態では、細胞が異種由来であり、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、又はブタから得られる。
【0319】
いくつかの実施形態では、細胞の分離は、1つ又は複数の調製及び/又は親和性に基づいていない細胞分離ステップを含む。いくつかの例では、1種又は複数種の物質の存在下で細胞に対して洗浄、遠心分離及び/又はインキュベートし、例えば、不要な成分を除去し、所定の成分を濃縮し、特定の物質に感受性のある細胞を溶解又は除去する。いくつかの例では、細胞は、1種又は複数種の特性、例えば、密度、接着特性、サイズ、特定の成分に対する感受性及び/又は耐性によって分離される。いくつかの例では、例えば、アフェレーシス又は白血球アフェレーシスによって、受験者の循環血液に由来する細胞を得る。いくつかの態様では、前記サンプルが、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、及び/又は血小板を含むリンパ球を含み、そしていくつかの態様では、赤血球及び血小板とは別の細胞を含む。
【0320】
いくつかの実施形態では、前記方法が、密度に基づいた細胞分離方法を含み、例えば、赤血球を溶解し又は赤血球を溶解せず、末梢血又はアフェレーシスサンプル又は白血球アフェレーシスサンプルのPercoll又はFicoll勾配遠心分離によって末梢血単核球(PBMC)を調製する。
【0321】
いくつかの実施形態では、前記分離方法が、細胞中の1種又は複数種の特定の分子、例えば、表面マーカーによって、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカー又は核酸の発現若しくは存在によって、異なる細胞タイプを分離することを含む。いくつかの実施形態では、そのようなマーカーによって分離するいずれの既知の方法を用いてもよい。いくつかの実施形態では、前記分離が、親和性又は免疫親和性に基づいた分離である。例えば、いくつかの態様では、前記分離が、細胞の1種又は複数種のマーカー(一般に細胞表面マーカー)の発現又は発現レベルによって細胞及び細胞集団を分離することを含み、例えば、そのようなマーカーと特異的に結合する抗体又は結合パートナーとインキュベートし、その後、一般に洗浄ステップによって、前記抗体又は結合パートナーとまだ結合していないそれらの細胞から前記抗体又は結合パートナーと結合している細胞を分離する。
【0322】
前記分離では、特定の細胞集団又は特定のマーカーを発現する細胞の100%の濃縮又は除去を行わなくて済む。
【0323】
例えば、いくつかの態様では、T細胞の特定のサブセット、例えば、1種又は複数種の表面マーカー陽性細胞又は1種又は複数種の表面マーカーを高レベルで発現する細胞、例えば、CD3+、CD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+及び/又はCD45RO+T細胞が、正又は負の選択技術によって分離される。
【0324】
例えば、CD3+、CD28+T細胞は、CD3/CD28を連結された磁気ビーズ(例えば、DYNAビーズM-450CD3/CD28T細胞エキスパンダー)によって正に選択されてもよい。
【0325】
いくつかの実施形態では、T細胞が、非T細胞(例えば、B細胞、単球又は他の血液白血球)において発現されるマーカー(例えば、CD14)に対する負の選択によってPBMCサンプルから分離される。いくつかの態様では、CD4+又はCD8+選択ステップを用いてヘルパーCD4+及びCD8+細胞傷害性T細胞を分離する。1種又は複数種のナイーブ、メモリー及び/又はエフェクターT細胞サブセットにおいて発現され又は比較的高い程度で発現されるマーカーに対して正又は負の選択を行うことによって、そのようなCD4+及びCD8+集団をさらにサブセットにソーティングすることができる。
【0326】
いくつかの実施形態では、CD8+細胞は、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー及び/又はセントラルメモリー幹細胞に対してさらに濃縮又は枯渇させ、例えば、対応するサブセットに関連付けられる表面抗原によって正又は負の選択を行うことによる。いくつかの実施形態では、セントラルメモリーT(TCM)細胞に対する濃縮で、効果を向上させ、例えば、長期生存、増幅及び/又は投与後の植え込みを改善し、いくつかの態様では、そのようなサブセットで特に好適である。
【0327】
いくつかの実施形態では、調製方法が、凍結ステップであって、例えば、分離、インキュベーション及び/又は操作の前又はその後に、前記細胞を凍結保存することを含む。いくつかの実施形態では、前記凍結及び後の解凍ステップで顆粒球を除去し、且つ、場合によっては、細胞集団から単球を除去する。いくつかの実施形態では、例えば、洗浄ステップで血漿及び血小板を除去した後、前記細胞を凍結溶液に懸濁させる。いくつかの態様では、いずれの既知の様々な凍結溶液及びパラメータを利用してもよい。一例は、20%のDMSO及び8%のヒト血清アルブミン(HAS)を含むPBS又は他の適切な細胞凍結培地を用いることに関わる。次に、それを培地で1:1希釈することによって、DMSO及びHSAの最終濃度を、それぞれ、10%、4%にする。次に、一般に、プログラム制御冷却装置で所定のプログラム又は原理、例えば、1℃/分の速度で細胞を-80℃又は-90℃に凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相において保管する。
【0328】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作の前に又は遺伝子操作と同時に細胞をインキュベート及び/又は培養する。インキュベーションステップは、培養、インキュベーション、刺激、活性化、及び/又は増殖を含んでもよい。いくつかの実施形態では、刺激条件又は刺激試薬の存在下で細胞又は組成物をインキュベートする。そのような条件は、抗原との接触をシミュレートするために集団において細胞の増殖、繁殖、活性化、及び/又は生存を誘導するように設計された条件、および/又は細胞における遺伝子操作、例えば、組換え抗原受容体の導入のために設計された条件を含む。
【0329】
いくつかの実施形態では、刺激条件又は試薬が、1種又は複数種の物質であって、例えば、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができるリガンドを含む。いくつかの態様では、前記物質が、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケード反応を開始又は起動させる。そのような物質は、抗体であって、例えば、TCR成分及び/又は共刺激受容体に対する特異性を備える抗体、例えば、抗CD3、抗CD28を含んでもよく、例えば、それが固体支持体(例えば、ビーズ)、及び/又は1種又は複数種のサイトカインと結合されている。任意に、増幅方法は、次のステップをさらに含んでもよい。培地(例えば、少なくとも約0.5ng/mLの濃度)に抗CD3及び/又は抗CD28抗体を添加する。いくつかの実施形態では、刺激剤が、1L-2及び/又はIL-15及び/又はIL-7及び/又はIL-21、例えば、少なくとも約10単位/mLの濃度のIL-2を含む。
【0330】
一実施形態では、抗原で天然の又は抗原特異的Tリンパ球を刺激することによって抗原特異的T細胞、例えば、抗原特異的CD4+及び/又はCD8+T細胞を得る。例えば、抗原特異的T細胞株又はクローンは、サイトメガロウイルス抗原に対して生成されてもよく、これは感染した受験者からT細胞を分離し、同じ抗原で細胞を体外刺激することによって行われる。
【0331】
CARを発現する自己T細胞を用いるがん患者の治療:
本発明の方法を次のとおりに要約することができる。
「単核球分離法」により、がんを患っているヒト受験者の末梢血単核球(PBMC)からT細胞を調製し、且つ、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするウイルスベクターで前記T細胞の培養及び形質導入を行い、前記キメラ抗原受容体(CAR)は、受験者における腫瘍細胞によって発現される抗原(腫瘍関連抗原又は腫瘍特異性抗原)と特異的に結合する。単独の柔軟な凍結バッグで細胞を注入媒体に凍結保存する。それぞれが1単位用量の細胞であって、約1×106個の細胞~約5×107個の細胞を含む。各受験者に注入される前サイクルは、約1×1012個の細胞以下であり、好ましくは、約1×1011個の細胞以下であり、より好ましくは、約1×1010個の細胞以下又は約5×109個の細胞以下又は約2×109個の細胞以下である。注入する前に、細胞を約-130℃未満又は約-175℃未満の温度で保持する。
【0332】
細胞治療を始める前に、受験者から血液を得て、且つ任意に、ELISA及び/又はMSD及び/又はCBAの方法で血清の中でサイトカイン放出症候群(CRS)を示す1種又は複数種の血清因子のレベル、例えば、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターフェロンγ(IFNγ)、IL-10又はIL-6を評価する。治療を始める前に、例えば、PET又はCTスキャンによって固形腫瘍の大きさ又は質量を計測することによって、任意に腫瘍負荷を評価してもよい。
【0333】
約38℃に上昇させて蘇生させ、且つ、受験者に対して複数回の注入で前サイクルの細胞を投与する。各回の注入は約3~30分以内の連続注入による静脈内(IV)投与である。
【0334】
前サイクルを投与した後、受験者は、身体検査を受け、あらゆる毒性又は有害作用の症状、例えば、発熱、低血圧、酸素欠乏、神経障害又は炎症性サイトカイン又はC反応性タンパク(CRP)の血清レベルの上昇が監視される。任意に、前サイクルを投与した後、1回又は複数回の場合、患者から血液を得て、ELISA及び/又はMSD及び/又はCBAの方法でCRSを示す血清因子のレベルを評価する。血清因子のレベルと、ちょうど前サイクルを投与する前に得た血清因子のレベルとを比較する。必要であれば、抗IL6又は他のCRS治療を行ってCRSの症状を減少させる。
【0335】
前サイクルを投与した後、例えば、投与開始後の1週、2週、3週及び/又は4週で、任意に、例えば、qPCR、ELISA、ELISPOT、細胞ベースの抗体測定及び/又は混合リンパ球反応によって、受験者における抗CAR免疫応答の存否を検出する。
【0336】
前サイクルによって実現される腫瘍負荷減少のパーセンテージは、任意に、スキャン(例えば、PET及びCTスキャン)によって、固形腫瘍患者に前サイクルを投与した後に1回又は複数回計測され、且つ/又は血液若しくは腫瘍部位における腫瘍陽性細胞で定量化されてもよい。
【0337】
最初の投与から数年間にわたり、受験者を定期的に監視する。追跡調査し、腫瘍負荷を計測し、且つ/又は、サイトメトリー及び定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によってCAR発現細胞を検出することにより、投与される細胞の体内増殖及び持続性を計測し、且つ/又は抗CAR免疫応答の進行を評価する。
【0338】
各受験者に注入される前サイクルは、約1×1012個の細胞以下であり、好ましくは、約1×1011個の細胞以下であり、より好ましくは、約1×1010個の細胞以下、又は約5×109個の細胞以下、又は2×109個の細胞以下である。注入する前に、細胞を-175℃未満の温度で保持する。注入する時に、約38℃に上昇させて蘇生させる。
【0339】
後サイクルの投与用量は、患者に特異的であり、且つ腫瘍負荷、抗CAR免疫応答の存在及びCRS関連結果のレベルに基づく。後サイクルの投与用量は、約1×1012個の細胞以下であり、好ましくは、約1×1011個の細胞以下であり、より好ましくは、約1×1010個の細胞以下であり、さらに好ましくは、約5×109個の細胞以下又は約2×109個の細胞以下である。
【0340】
記述統計学の方法(例えば、例数、平均、中央値、標準偏差(SD)、最小値、最大値)を用いて分析する。カテゴリ変数は、度数分布表(度数及びパーセンテージ)で分析する。全ての有害事象(AE)をICH国際医薬用語集MedDRA最新版のコードに基づいて分類し、有害事象共通用語規準(CTCAE v5.0)に従ってグレード付けをし、度数分布、グラフ又は他の記述的指標を用いて分析し、器官別大分類、基本語及びグループによって治療後に発生した有害事象(TEAE)の受験者例数及びパーセンテージを計算する。異なる検出時点を含むCAR-T細胞のコピー数を生成する。ORR及びDCRに対してクロッパー・ピアソン(Clopper-Pearson)法を用いて95%信頼区間を計算する。
【実施例】
【0341】
次に、特定の実施例を用いて、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するためではなく、本発明を説明するためだけのものであるということを理解されたい。下記の実施例で具体的な条件が明記されない実験方法は、一般に、通常の条件、例えば、J.Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,2001,Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載の条件に従い、又はメーカーによって推奨される条件に従う。
【0342】
材料及び方法:
本発明の例示的な抗原受容体(CARを含む)、及び、遺伝子操作及び受容体の細胞への導入のための方法は、例えば、中国特許出願公開番号CN107058354A、CN107460201A、CN105194661A、CN105315375A、CN105713881A、CN106146666A、CN106519037A、CN106554414A、CN105331585A、CN106397593A、CN106467573A、CN108884459A、CN108610420A、CN108341872A、CN108456250A、CN109796532A、CN108866003A、CN108853144A、CN109385403A、CN109385400A、CN109468279A、CN109503715A、CN109880803A、CN110055275A、CN110123837A、CN110438082A、CN110468105A、国際特許出願公開番号WO2018006882A1、WO2015172339A8、WO2016086813A1、WO2017032293A1、WO2017020812A1、WO2017080377A1、WO2018108106A1、WO2018/133877A1、WO2018/149358A1、WO2018/219299A1、WO2019/096261A1、WO2018/210279A1、WO2019/024933A1、WO2020118634A1、WO2019052562A1、WO2019047932A1、WO2019109980A1、WO2019/141270A1、WO2019/149279A1、WO2019/170147A1、WO2019/210863A1、WO2019/219029A1、WO2020020210A1、WO2020057666A1、WO2020057641A1、WO2020/083406A1、WO2020114518A1、WO2020143631A1、WO2020156554A1、WO2021/027785A1、WO2021/052496A1、WO2021/057906A1、WO2021/136550A1、WO2021148019A1、WO2021232864A1、WO2016036973A1、WO2016049459A1で公開されている全体の内容を参照する。
【0343】
例示的に、本発明の下記の実施例で、キメラ抗原受容体のscFvは、腫瘍抗原claudin18.2を認識することができ、配列番号14に示される配列を備え、キメラ抗原受容体は、配列番号11に示される配列を備え、それが備えるCDR領域は、配列番号1に示されるHCDR1、配列番号2に示されるHCDR2、配列番号3に示されるHCDR3、配列番号4に示されるLCDR1、配列番号5に示されるLCDR2、配列番号6に示されるLCDR3である。
【0344】
CAR-T細胞の構築方法は次のとおりである。最初に、5’末端から3’末端まで、CD8αシグナルペプチド(塩基配列が配列番号47に示されるとおりである)、scFv(塩基配列が配列番号15に示されるとおりである)、CD8ヒンジ領域(塩基配列が配列番号48に示されるとおりである)、CD28膜貫通領域(塩基配列が配列番号49に示されるとおりである)、CD28の細胞内シグナル伝達ドメイン(塩基配列が配列番号50に示されるとおりである)、及びCD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインCD3ζ(塩基配列が配列番号51に示されるとおりである)をこの順に含むCAR遺伝子を構築する。次に、CAR遺伝子をプラスミドPRRLSIN-cPPT.EF-1αにクローニングして、CAR遺伝子を含有する目標プラスミドを得る。構築された目標プラスミド及びパッケージングプラスミドを293T細胞に共トランスフェクションして、レンチウイルスベクターを作成して、レンチウイルスベクターを患者の末梢血から得たT細胞に形質導入して、CAR-T細胞を得る。
【0345】
抗原(例えば、claudin18.2)陽性の強度は、免疫組織化学的染色の強度によって定義され、一部又は全体の細胞膜又は細胞質の染色であり、染色強度は、0(陰性、染色なし)、+(弱陽性染色)、++(陽性染色)及び+++(強陽性染色)に分けられる。染色された腫瘍細胞のパーセンテージとは、各染色強度の腫瘍細胞がそれぞれ腫瘍細胞全体に占めるパーセンテージを指す。
【0346】
実施例1:CAR-T細胞による治療
PD-1及び/又はPD-L1抗体による治療が失敗したCLDN18.2陽性の12例の胃がん患者に対してCAR-T細胞治療を行い、以前の手術又は生検の腫瘍組織切片を用いてCLDN18.2の発現を検出し、いずれもCLDN18.2発現陽性(≧+、10%)であり、全ての受験者に遠隔転移があり、12例の患者の状況は表1に示されるとおりであった。患者がこれまでに使用しているPD-1及び/又はPD-L1抗体は、カムレリズマブ、ペンブロリズマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、及びいくつかの臨床試験中のモノクローナル抗体であった。
【0347】
CAR-T細胞を投与する前に、患者は「単核球分離法」のアフェレーシス分離技術を受け、前治療を行った。
【0348】
アフェレーシスにより、受験者の体内からPBMCを得て、抗CLDN18A2CARをコードするウイルスベクターの形質導入及び増幅により、CAR-T細胞を得た。得られたCAR-T細胞は凍結バッグを用いて凍結液で凍結保存した。
【0349】
CAR-T細胞を投与する前に、患者に化学療法薬又は放射線療法を与えてリンパ球除去を行った。
【0350】
CAR-T細胞治療を行う前に、例えば、PET又はCTスキャンによって固形腫瘍の大きさ又は性状を計測することによって、任意に腫瘍負荷を評価してもよいし、且つ、腫瘍マーカーを検出し且つ/又は腫瘍合併症の発生及び重症度を観察することによって腫瘍負荷を評価してもよい。
【0351】
受験者に少なくとも1サイクルのCAR-T細胞治療を行う必要がる場合は、後サイクルのCAR-T細胞が、前サイクルのCAR-Tの投与完了から4週後に投与される。各サイクルのCAR T細胞投与は、1回で投与されてもよいし、2回又は2回以上で静脈内(IV)注入によって投与されてもよく、各回に投与される細胞製品は、約3~30分で注入を完了し、好ましくは、5~25分で注入を完了する。
【0352】
各サイクルでCAR-T細胞の投与が完了した後、受験者は、身体検査を受け、あらゆる毒性又は有害作用の症状、例えば、発熱、低血圧、酸素欠乏、神経障害又は炎症性サイトカイン又はC反応性タンパク(CRP)の血清レベルの上昇が監視される。検査は、患者から血液を得て、ELISA、及び/又はMSD、及び/又はCBAの方法でCRSを示すサイトカインのレベルを評価することであってもよい。必要であれば、抗IL6治療を行い、又は他のCRS治療を行って、CRSの症状を減少させる。
【0353】
各サイクルでCAR-T細胞の投与が完了した後、例えば、投与開始後の1週、2週、3週、及び/又は4週で、qPCR、ELISA、ELISPOT、抗体測定などによって受験者の体内のCAR-T細胞数を評価してもよい。
【0354】
各サイクルの治療後の腫瘍負荷の減少状況は、スキャン(例えば、PET及びCTスキャン)によって、且つ/又は血液又は腫瘍部位における抗原(例えば、claudin18.2)陽性となる細胞の定量化によって得られてもよい。
【0355】
フルダラビン、シクロホスファミド、アルブミン結合型パクリタキセルの三者の併用をCAR-T細胞治療の前治療とし、CAR-T細胞の注入の2~10日前に受験者に投与した。12例の患者は、いずれもフルダラビン、シクロホスファミド及びアルブミン結合型パクリタキセルによる前治療を受けた。フルダラビンを2回投与し、それぞれ、CAR-T細胞の注入の6日前、5日前(D-6、-5)、又は5日前、4日前(D-5、-4)、又は4日前、3日前(D-4、-3)にフルダラビンを30~50mg/日で静脈内注入し、7例が30~40mg/日であり、5例が41~50mg/日であり、1日平均用量は39.8(±4.08)mgであり、体表面積による1日平均用量は25.0(±0.30)mg/m2であった。シクロホスファミドを2回又は3回投与し、シクロホスファミドを2回投与する場合は、それぞれ、CAR-T細胞の投与の6日前、5日前(D-6、-5)、又は5日前、4日前(D-5、-4)、又は4日前、3日前(D-4、-3)に投与し、シクロホスファミドを3回投与する場合は、それぞれ、CAR-T細胞の投与の6日前、5日前(D-6、-5)、又は5日前、4日前(D-5、-4)、又は4日前、3日前(D-4、-3)に投与し、CAR-T細胞の投与の6日前、5日前、4日前(D-6、-5、-4)、又は5日前、4日前、3日前(D-5、-4、-3)、又は4日前、3日前、2日前(D-4、-3、-2)に投与し、投与されるシクロホスファミドの用量は300~600mg/日であり、患者に投与されるシクロホスファミドの量は300~400mg/日又は401~500mg/日であり、1日平均用量は395.8(±47.81)mgであり、体表面積に準拠すると249.6(±16.38)mg/m2であった。アルブミン結合型パクリタキセルを1回投与し、CAR-T細胞の投与の3~5日前に投与し、例えば、D-4にアルブミン結合型パクリタキセルを90~200mg/日で投与する。アルブミン結合型パクリタキセルの1日平均用量は102.2(±8.60)mgであった。
【0356】
12例の患者のうち、6例の患者が2サイクルの細胞注入を受け、1サイクル目のCAR-T細胞の投与終了と2サイクル目のCAR-T細胞の投与開始との間隔の中央値は64日であった。
【0357】
【0358】
実施例2:治療の評価
実施例1に係る12例の受験者の治療の評価では、カプラン・マイヤー(Kaplan Meier)法を用いて、PFS、DDC、DOR及びOSに対して統計分析、TTRに対して記述分析を行う。
【0359】
画像検査により標的病変及び非標的病変を検出して治療前及び治療後の腫瘍負荷を評価し、標的病変の数及び大きさを決定し、有効性評価の基準は、固形腫瘍の効果判定基準v1.1を参照する。
【0360】
CAR-T細胞を投与した後、受験者に対して評価し、神経毒性(錯乱、失語症、てんかん発作、けいれん、嗜眠及び/又は精神状態の変化を含む神経学的合併症)を監視し、重症度グレード付けにより(グレード1~5評価尺度、例えば、Guido Cavaletti&Paola Marmiroli,Nature Reviews Neurology 6,657-666(2010年12月)を使用)、グレード3(重度の症状)、グレード4(命に関わる危険のある症状)又はグレード5(死亡)は、深刻な神経毒性と見なされる。
【0361】
(一)サイトカイン放出症候群(CRS)の確認及び監視
グレード1(軽度)-命に関わる危険がない:全身治療、例えば、解熱剤、制吐剤だけでよい(例えば、発熱、吐き気、疲労、頭痛、筋肉痛、不快感)。
グレード2(中等度)-中等度の介入が必要、応答あり:吸入酸素濃度<40%、又は体液又は低用量の単一の昇圧剤が必要な低血圧、又はグレード2器官毒性(CTCAE v5.0による)。
グレード3(重度)-積極的な介入が必要、応答あり:吸入酸素濃度≧40%、又は高用量の単一の昇圧剤(例えば、ノルアドレナリン≧20μg/kg/分、ドーパミン≧10μg/kg/分、フェニレフリン≧200μg/kg/分、又はアドレナリン≧10μg/kg/分)が必要な低血圧、又は複数種の昇圧剤(例えば、抗利尿ホルモン+前記試薬の1つ、又は≧20μg/kg/分のノルアドレナリンの昇圧剤の組み合わせ)が必要な低血圧、又はグレード3の器官毒性又はグレード4のアミノトランスフェラーゼ増加(CTCAE v5.0による)。
グレード4(命に関わる危険がある)-人工呼吸器のサポートが必要、又はグレード4の器官毒性(アミノトランスフェラーゼ増加を除く)。
グレード5(致命的)-死亡。
【0362】
(二)神経毒性の例示的なグレード付け基準
グレード1(臨床症状なし又は軽度)-軽度又は臨床症状なし。
グレード2(中等度)-日常生活動作(ADL)、例えば、炊事、野菜の購入又は服の購入、電話の使用、金銭の管理を制限する症状あり。
グレード3(重度)-日常生活動作(ADL)、例えば、入浴、着服又は脱服、食事、トイレの使用、薬の服用を制限する症状あり。
グレード4(命に関わる危険がある)-命に関わる危険があり、緊急的な介入が必要な症状
グレード5(致命的)-死亡。
【0363】
(三)治療の有効性
1サイクル目のCAR-T細胞での治療を行った後、CAR-T治療の安全性及び有効性について評価し、結果を表2に示す。表2に示されるとおり、治療前の疾病負荷に関わらず、1サイクル目の治療で重度のCRS、重度の神経毒性が生じなかったため、1サイクル目の治療は安全であった。また、1サイクル目の治療を経て、5名の患者が疾患安定(SD)であり、5名の患者がPRに達しており、2名の患者が疾患進行(PD)であったことも観察され、CAR-T細胞は、PD-1又はPD-L1抗体を使用したことのある患者に依然として明らかな有効性を生じることができることが示され、ORRは41.6%(5/12)に達しており、疾患制御率は83.3%(10/12)に達していた。
【0364】
【0365】
一部の患者に対して2サイクル目の治療を行い、2サイクル目の治療開始時間及び治療後の有効性は、表3に示すとおりである。
【0366】
【0367】
図1に示されるとおり、RECIST 1.1基準に従って評価し、以前にPD-L1又はPD-1抗体による治療が失敗した12例の患者が、2.5×10
8~5.0×10
8個のCAR-T細胞での治療を受けた後、11例の患者の標的病変が、程度の差はあるが、いずれも縮小しており、6例が部分寛解に達しており、客観的奏効率(ORR)(95%CI)は50%(21.09%、78.91%)に達しており、疾患制御率(DCR)(95%CI)は75%(42.81%、94.51%)であった。
【0368】
客観的奏効に達した6例の受験者のmDOR(奏効期間の中央値)は5.4か月(1.9、NE)であった。そのうち、1回だけ治療を受けた1例の受験者が、持続的寛解が6.4か月に達しており、1例の患者は、1回の治療を受けた後、有効性評価の時に標的病変が検出されず、持続的寛解時間が既に4か月を超えている。
【0369】
無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS):逆K-M曲線(ReverseKaplan-Meier曲線)法を用いて12例の受験者のアフェレーシス及び初回のCAR-T細胞注入からの追跡期間の中央値を計算し、それぞれが約6.4か月、約5.6か月であり、K-M曲線法を用いてmPFS(95%CI)を計算し、CAR-T細胞治療を受ける全ての受験者のmPFSは4.2か月(2.2、NE)であり、K-M曲線法を用いてmOS(95%CI)は7.4か月(2.6、NE)と算出された。結果は、受験者がCAR-T治療から、より明らかな臨床的有用性を得ることができ、PFS及びOSが明らかに延長するということを示した。
【0370】
前サイクル及び後サイクルで投与される細胞の効果を一層評価するために、CAR-T細胞の体内での持続生存期、即ち、体内に「植え込まれた」CAR-T細胞の持続的に生存する期間を検出する。初回の注入(0日目)終了後から、各追跡時点にQ-PCRの方法を用いて(使用するプローブは、FAM-5’-CTGAGCAGCGTGACCGCCGC-3’TAMRA(配列番号49)であり、上流プライマー配列は、5’-TGGAGTGGATCGGCTACATC-3’(配列番号50)であり、下流プライマー配列は、5’-AGTAGTAGATGGCGGTGTCG-3’(配列番号51)であった)、末梢血の中に含有されているCAR-CLDN18DNAのコピー数を検出する。
【0371】
12例の受験者の細胞代謝結果は、1回目のCAR-T細胞注入後、体内で増幅しているコピー数のピーク到達時間の中央値が7日程度であり、CARコピーのピーク中央値(最小値、最大値)が、それぞれ、7196(3422、39315)[コピー数/μg gDNA]であることを示した。初回の注入後にCAR-T細胞が体内で増幅して持続的に存在し、最大203日であった。明らかな用量依存関係が見られなかった。2サイクル目の細胞注入を行った後、細胞増幅のピーク到達時間の中央値が5日以内に短縮され、振幅は1サイクル目より明らか低く、中央値Cmaxは1074コピー数/μg gDNAであった。
【0372】
(四)安全性
全ての有害事象(AE)をICH国際医薬用語集MedDRA最新版のコードに基づいて分類し、有害事象共通用語規準(CTCAE v5.0)に従ってグレード付けをし、度数分布、グラフ又は他の記述的指標を用いて分析し、器官別大分類、基本語及びグループによって治療後に発生した有害事象(TEAE)の受験者例数及びパーセンテージを計算する。
【0373】
当試験で94.6%の受験者にCRSが起こり、いずれもグレード1~2であった。臨床症状は、発熱、頻脈、末梢性浮腫が主であり、低血圧、低酸素血症も見られ、対症療法及び支持療法による回復が可能であり、2サイクル目の注入を行う患者は、血液学的検出指標が異常なAE発生率が初回の治療後と近いことから、再注入で蓄積毒性が生じず、受験者のリスクを上昇させないことが示された。
【0374】
実施例3:胃がんにおける抗PD-1/PD-L1抗体治療失敗後のCAR-T治療
前記実施例と同じように、新たな12例のCLDN18.2陽性胃がん患者が、PD-1及び/又はPD-L1抗体治療で進行(RECIST 1.1に準拠する疾患進行PD)を示した後、CLDN18A2-CAR-T治療を受けた。患者がこれまでに使用しているPD-1及び/又はPD-L1抗体は、カムレリズマブ、ペンブロリズマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、及びいくつかの臨床試験中のモノクローナル抗体であった。
【0375】
RECIST 1.1基準に従って評価し、新たな12例の、以前のPD-L1又はPD-1抗体治療が失敗した患者が、1サイクル又は2サイクルの約2.5×108~5.0×108個のCAR-T細胞/サイクルの治療を受けた後、4例の患者がSDであり、6例がPRに達しており、2例だけがPDであったことから、CAR-T細胞が、PD-1又はPD-L1抗体を使用したことのある胃がん患者に依然として明らかな有効性を生じることができることが示された。当試験受験者に起こったCRSはいずれもグレード1~2であり、神経毒性はなかった。臨床症状は、発熱、頻脈、末梢性浮腫が主であり、低血圧、低酸素血症も見られ、対症療法及び支持療法による回復が可能であった。
【0376】
実施例1に記載の12例の胃がん患者及び本実施例に記載の新たな12例の胃がん患者が、PD-1及び/又はPD-L1抗体治療で進行(RECIST 1.1に準拠する疾患進行PD)を示した後、CLDN18A2-CAR-T治療を受ける効果を総合的に統計すると、12例が部分寛解に達しており、ORR(95%CI)は約50%(29.1%、70.9%)に達しており、DCR(95%CI)は約79.2%(57.8%、92.9%)に達していた。
【0377】
CAR-T治療後にPRに達した12例の受験者のmDORは、6.3か月(1.9、9.5)であった。このうち、6例の患者が全生存期間が約11か月以上に達しており、且つ依然として生存しているため追跡期間中であった。
【0378】
K-M曲線法を用いてmPFS(95%CI)を計算し、CAR-T細胞治療を受ける全ての受験者のmPFSは4.9か月(2.6、7.4)であり、K-M曲線法を用いて計算されたmOS(95%CI)は6.7か月(3.7、9.0)であった。結果は、受験者がCAR-T治療から、より明らかな臨床的有用性を得ることができ、PFS及びOSが明らかに延長するということを示した。
【0379】
24例の受験者の細胞代謝結果は、1回目のCAR-T細胞注入後、体内で増幅しているコピー数のピーク到達時間の中央値が約7日であり、CARコピーのピーク中央値(最小値、最大値)が、それぞれ、4536(433、39315)[コピー数/μg gDNA]であることを示した。
【0380】
実施例4:クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍における抗PD-1/PD-L1抗体治療失敗後のCAR-T治療
前記実施例と同じように、CLDN18.2陽性クルッケンベルグ(krukenberg)腫瘍患者は、PD-1抗体(ペンブロリズマブ)治療で進行(RECIST 1.1に準拠する疾患進行PD)を示した後にCLDN18A2-CAR-T治療を受け、1サイクルの約2.5×108個のCAR-T細胞での治療により、PRに達しており、無増悪生存期間は約4か月であり、且つ依然として持続的安定期にあった。当受験者にグレード1のCRSが起こり、神経毒性はなかった。
【0381】
実施例5:胆嚢がんにおける抗PD-1/PD-L1抗体治療失敗後のCAR-T治療
前記実施例と同じように、CLDN18.2陽性胆嚢がん患者は、PD-1抗体(ペンブロリズマブ(Pembrolizumab))治療で進行(RECIST 1.1に準拠する疾患進行PD)を示した後にCLDN18A2-CAR-T治療を受け、1サイクルの約2.5×108個のCAR-T細胞での治療により、SDに達しており、無増悪生存期間は約7.5か月であり、且つ依然として持続的安定期にあった。当受験者にグレード2のCRSが起こり、神経毒性はなかった。
【0382】
実施例6:肝がんにおける抗PD-1/PD-L1抗体治療失敗後のCAR-T治療
前記実施例と同じように、本実施例では、例示的に、11例の腫瘍抗原GPC3陽性肝がん患者はPD-1及び/又はPD-L1抗体治療で進行(RECIST 1.1に準拠する疾患進行PD)を示した後にGPC3-CAR-T細胞治療を受けた。患者がこれまでに使用しているPD-1及び/又はPD-L1抗体は、カムレリズマブ、ペンブロリズマブ、シンチリマブ、トリパリマブ、及びいくつかの臨床試験中のモノクローナル抗体であった。この11例の患者は、いずれも以前に少なくともファーストラインの標準的な治療を受けたことがあり、そのうち1例がファーストライン治療を受け、8例がセカンドライン治療を受け、1例がフォースライン治療を受け、1例がシックスライン治療を受けた。
【0383】
RECIST 1.1基準に従って評価し、本実施例では11肝がん患者が1サイクル又は2サイクルの約2.5×108~5.0×108個のCAR-T細胞/サイクルの治療を受けた後、5例の患者がSDであり、1例がPRに達しており、5例がPDであったことから、CAR-T細胞は、PD-1又はPD-L1抗体を使用したことのある肝がん患者に依然として明らかな有効性を生じることができることが示され、疾患制御率は約54.5%(6/11)に達していた。疾患制御に達した6例の患者の無増悪生存期間は平均約4.4か月であり、このうち4例の患者の全生存期間が1年を超えており、この4例のうち3例が依然として生存しているため追跡期間中である。
【0384】
当試験受験者では、いずれも重度の制御不能なCRSが起こらず、神経毒性はなかった。臨床症状は、発熱、頻脈、末梢性浮腫が主であり、低血圧、低酸素血症も見られ、対症療法及び支持療法による回復が可能であった。
【0385】
実施例2に記載の方法のように、Q-PCRの方法を用いて、患者末梢血の中に含有されているCAR-GPC3DNAのコピー数を検出した。結果は、1回目のCAR-T細胞注入後、体内で増幅しているコピー数のピーク到達時間の中央値が約7日であるということを示した。
【0386】
本発明で言及されている全ての文献は、各文献が単独で引用で参照されるように、いずれも本願において引用で参照される。また、当業者は、本発明の上記の教示内容を読んだ後、本発明に様々な変更又は補正を行うことができ、これらの同等な形態も本願の添付の特許請求の範囲によって限定される範囲に入るということを理解されたい。
【0387】
下記の表では、本願で使用される配列が示されている。
【表4】
【配列表】
【国際調査報告】