(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-22
(54)【発明の名称】発毛を増強する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20240712BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240712BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240712BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20240712BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240712BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240712BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20240712BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P17/14
A61P43/00 111
A61K31/404
A61K31/506
A61K8/49
A61Q7/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501844
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 IB2022056437
(87)【国際公開番号】W WO2023285974
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504187858
【氏名又は名称】佛教慈濟醫療財團法人
【氏名又は名称原語表記】BUDDHIST TZU CHI MEDICAL FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】No. 707, Sec. 3, Chung-Yang Rd. Hualien Taiwan
(71)【出願人】
【識別番号】524015382
【氏名又は名称】リン・チンロン
【氏名又は名称原語表記】LIN, Chin-Lon
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100230156
【氏名又は名称】松尾 心
(72)【発明者】
【氏名】チャン・チュンシン
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C083AC851
4C083AC852
4C083CC37
4C083EE22
4C086BC13
4C086BC17
4C086BC42
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA92
4C086ZC20
(57)【要約】
毛包周期を調節することによって発毛を増強する必要がある対象において、かかる増強をするための方法が提供される。この方法は、対象の皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1の阻害を含む。毛髪着色の増加を必要とする対象において、かかる増加をさせるための方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚領域における発毛の増強を必要とする対象において、前記増強をする方法であって、カゼインキナーゼ1阻害剤を前記対象に投与して、前記皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1を阻害することを含む、方法。
【請求項2】
前記カゼインキナーゼ1が、休止期又は成長期に阻害される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カゼインキナーゼ1が、皮脂腺において阻害される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記皮膚領域における前記カゼインキナーゼ1が、カゼインキナーゼ1αである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が脱毛に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脱毛が、栄養欠乏によって引き起こされる脱毛、薬剤性脱毛、放射線誘導性脱毛、ストレス性脱毛、遺伝性脱毛、加齢性脱毛、又は疾患性脱毛である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤性脱毛が、化学療法薬、リチウム、ヒ素、ビスマス、ホウ酸、タリウム、コルヒチン、レチノイド、ヘパリン、ワルファリン、β遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、ホルモン、バルプロ酸、カルバマゼピン、フェニトイン、シメチジン、抗甲状腺薬、コレステロール低下薬、インターフェロン、抗感染症薬、アンフェタミン、抗うつ薬、抗真菌剤、抗発作剤、避妊薬、ビタミンA系薬剤、パーキンソン病用薬剤、胃の薬、又は非ステロイド性抗炎症薬によって誘導される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記疾患性脱毛が、自己免疫疾患、甲状腺疾患、メタボリックシンドローム、感染症、又はがんによって引き起こされる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記自己免疫疾患が、円形脱毛症、エリテマトーデス、乾燥症候群、強皮症、クローン病、炎症性腸疾患、又は乾癬である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、脱毛症に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記脱毛症が、アンドロゲン性脱毛症、円形脱毛症、成長期脱毛症、外傷性脱毛症、休止期脱毛症、及び瘢痕性脱毛症からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カゼインキナーゼ1阻害剤が、前記皮膚領域における前記カゼインキナーゼ1の遺伝子発現を阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記投与することが、前記カゼインキナーゼ1阻害剤の前記皮膚領域への局所塗布である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記カゼインキナーゼ1阻害剤が、D4476、IC261、CKI7、以下の一般式I及び式II~VIIによって表される化合物からなる群から選択される、請求項13に記載の方法:
【化1】
(式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルコキシ、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアシル、炭素数5~15のアリール、及び炭素数3~7のヘテロアリールからなる群から選択され、それぞれが、ハライド、ヒドロキシル、エステル、エーテル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、及びアミドの少なくとも1つによって任意に置換され;又は、R
1及びR
2は、それらが結合している窒素原子と共に、4~7員の飽和環、不飽和環、又は芳香族環を形成し、これらの環は、N、O、NH、C=N、C=O、及びSO
2の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ヒドロキシル、ハライド、及びシアノの少なくとも1つで任意に置換され;
R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H;ハライド、ヒドロキシル、アルコキシ、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、エステル、及びアミドの少なくとも1つによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキルからなる群から選択され;又は
R
1若しくはR
2は、R
3、並びにそれらがそれぞれ結合している炭素及び窒素原子と共に、4~7員の飽和環、不飽和環、又は芳香族環を形成し、これらの環は、N、NH、O、C=N、C=O、及びSO
2の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ヒドロキシル、カルボニル、及びハライドの少なくとも1つで任意に置換され;
R
5及びR
8は、それぞれ独立して、H、ハライド、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、及び少なくとも1つのハライドによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニルからなる群から選択され;
R
6は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニル、炭素数5~10のシクロアルキル、及び直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、炭素数3~7のシクロアルキル、4~6員複素環、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ハライド、ヒドロキシル、及び炭素数1~5のアルキルハライドの少なくとも1つによって任意に置換される飽和又は不飽和4~6員複素環から選択され;
R
7は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、及び炭素数3~7のシクロアルキル、4~6員複素環、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ハライド、ヒドロキシル、及び炭素数1~5のアルキルハライドの少なくとも1つによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニルからなる群から選択される)、
【化2】
【化3】
【請求項15】
皮膚領域における毛包周期の調節を必要とする対象において、前記調節をする方法であって、カゼインキナーゼ1阻害剤を前記対象に投与して、前記皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1を阻害することを含む、方法。
【請求項16】
前記皮膚領域における前記カゼインキナーゼ1が、カゼインキナーゼ1αである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記調節することが、前記毛包周期を成長期に誘導することである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記毛包周期が、前記皮膚領域における前記カゼインキナーゼ1の阻害前に休止期にある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記調節することが、毛包の成長期を延長することである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記毛包が、前記皮膚領域における前記カゼインキナーゼ1の阻害前に成長期にある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
皮膚領域における毛髪着色の増加を必要とする対象において、前記増加をさせる方法であって、カゼインキナーゼ1阻害剤を前記対象に投与して、前記皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1を阻害することを含む、方法。
【請求項22】
前記皮膚領域における前記カゼインキナーゼ1が、カゼインキナーゼ1αである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記皮膚領域が、白髪を含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カゼインキナーゼ1(CK1)を阻害することによって発毛(hair growth)を増強する方法に関する。また、カゼインキナーゼ1を阻害することによって、毛周期の段階を調節する方法及び毛髪着色(hair pigmentation)を増加させる方法も、本明細書で提供される。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、重要な生理機能を有する。例えば、被毛は、ほとんどの哺乳動物を、温かく、乾燥した、有害な要素から保護された状態に保つ。動物の生涯にわたり、休止期(細胞周期休止期(quiescence phase)又は静止期(resting phase))、成長期(再生期(regeneration phase)又は活発な毛成長期(active hair growth phase))、及び退行期(減退期(degeneration phase)又は移行期(transitional phase))を含む毛包の様々な段階の周期的反復を通じて、毛は発毛・成長する。休止期の終わりに毛は抜け落ち、新しい毛が元の毛に置き換わり、成長サイクルが再び始まる。各毛包は、年齢、疾患、及び多種多様なその他の因子によって影響を受け得るライフサイクルをそれぞれに有する。
【0003】
しかしながら、脱毛又は不十分な発毛は、多くのヒト並びに多くの動物が抱えている共通の課題である。毛包周期は、毛包幹細胞(HFSC)の細胞周期休止及び活性化を制御する内因性シグナル及び外因性シグナルの両方によって制御される。HFSCの不適切な活性化及び増殖は、加齢を含む数多くの生物学的状態及び病理学的状態での脱毛症の根底にある。HFSCの活性化及び成長期の開始を促進することができる分子は、毛髪再生がどのように調節されているかを明らかにするのに役立つとともに、治療介入及び美容介入を提供することができるので、活発に探索されてきた。
【0004】
この問題に対するアプローチとしては、紫外線放射、マッサージ、精神療法及び運動療法などの処置があるが、一般に有効であると認められているものはない。血管再生手術及び鍼治療などのアプローチでさえ、ほとんど効果が示されていない。
【0005】
現在までのところ、脱毛を治療するための最も一般的なアプローチは薬物療法である。ビタミンからホルモンに及ぶ多くの種類の薬物が試されてきたが、有望な治療効果が認められているものは非常に少ない。例えば、アンドロゲンホルモンは、男性型脱毛症の発症に関与することが知られている。したがって、抗アンドロゲンホルモンの全身又は局所投与は、脱毛症を予防又は治療するための阻害作用を提供する。それにもかかわらず、抗アンドロゲンホルモンは、期待されるほど有効ではない。
【0006】
したがって、有効で塗布が容易である、発毛の増強を必要とする対象において発毛を増強するための組成物及び方法を提供する、アンメット・ニーズが残っている。
【発明の概要】
【0007】
本開示では、皮膚領域における発毛の増強又は刺激を必要とする対象において、かかる増強又は刺激をするための方法であって、皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1を阻害することを含む、方法が提供される。少なくとも1つの実施形態では、カゼインキナーゼ1は、毛包周期の休止期中に阻害される。いくつかの実施形態では、カゼインキナーゼ1は、毛包周期の成長期中に阻害される。いくつかの実施形態では、カゼインキナーゼ1は、皮脂腺において阻害される。いくつかの実施形態では、皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1は、カゼインキナーゼ1αである。本開示の少なくとも1つの実施形態では、対象は、脱毛に罹患している。いくつかの実施形態では、脱毛は、栄養欠乏による脱毛、薬剤性脱毛、放射線誘導性脱毛、ストレス性脱毛、遺伝性脱毛、加齢性脱毛、又は疾患性脱毛である。いくつかの実施形態では、薬剤性脱毛は、化学療法薬、リチウム、ヒ素、ビスマス、ホウ酸、タリウム、コルヒチン、レチノイド、ヘパリン、ワルファリン、β遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、ホルモン、バルプロ酸、カルバマゼピン、フェニトイン、シメチジン、抗甲状腺薬、コレステロール低下薬、インターフェロン、抗感染症薬、アンフェタミン、抗うつ薬、抗真菌剤、抗発作剤(anti-seizure agent)、避妊薬、ビタミンA系薬剤、パーキンソン病用薬剤、胃の薬、又は非ステロイド性抗炎症薬によって誘導される。いくつかの実施形態では、疾患性脱毛は、自己免疫疾患、甲状腺疾患、メタボリックシンドローム、感染症、又はがんによるものである。いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、円形脱毛症、エリテマトーデス、乾燥症候群、強皮症、クローン病、炎症性腸疾患、又は乾癬である。
【0008】
いくつかの実施形態では、対象は、脱毛症に罹患している。いくつかの実施形態では、脱毛症は、アンドロゲン性脱毛症、円形脱毛症、成長期脱毛症、外傷性脱毛症(self-induced hair loss)、休止期脱毛症、及び瘢痕性脱毛症からなる群から選択される。
【0009】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、カゼインキナーゼ1の阻害は、皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1の遺伝子発現を阻害することを含む。本開示の少なくとも1つの実施形態において、カゼインキナーゼ1の阻害は、皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1αの遺伝子発現を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、阻害は、皮膚領域へのカゼインキナーゼ1阻害剤の局所塗布を含む。いくつかの実施形態では、カゼインキナーゼ1阻害剤は、D4476、IC261、CKI7、及び以下の式II~VIIによって表される化合物からなる群から選択される:
【0010】
【0011】
【0012】
いくつかの実施形態では、脱毛は、毛成長の遅延若しくは緩徐化、又は早期抜け毛によって生じる。少なくとも1つの実施形態では、本開示は、毛包周期の様々な段階における脱毛を治療する方法を提供する。本願の少なくとも1つの実施形態では、皮膚領域において毛包周期を調節する必要がある対象において、かかる調節をするための方法であって、皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1を阻害することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1は、カゼインキナーゼ1αである。本開示の少なくとも1つの実施形態では、皮膚領域における毛包周期を調節する必要がある対象において、かかる調節をするための方法は、皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1αを阻害することを含む。一実施形態では、毛包周期の調節は、毛包周期を成長期に誘導することであり、毛包は、皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1の阻害前に休止期にある。いくつかの実施形態では、毛包周期の調節は、毛包の成長期を延長することであり、毛包は、皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1の阻害前に成長期にある。
【0013】
本開示は、皮膚領域における毛髪着色の増加を必要とする対象において、かかる増加をさせるための方法であって、皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1を阻害することを含む、方法も提供される。本開示の少なくとも1つの実施形態では、皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1は、カゼインキナーゼ1αである。本開示の少なくとも1つの実施形態では、皮膚領域は、白髪を含む。
【0014】
本開示は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1A~
図1Dは、休止期初期の7週齢K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウス(CK1αKO)のケラチノサイトにおける、タモキシフェン(TMX)の腹腔内(i.p.)注射によるCK1α欠損誘導の結果を示す。
図1Aは、実験スキームを示す。
【
図1B】
図1A~
図1Dは、休止期初期の7週齢K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウス(CK1αKO)のケラチノサイトにおける、タモキシフェン(TMX)の腹腔内(i.p.)注射によるCK1α欠損誘導の結果を示す。
図1Bは、7週目(W7)の剃毛の前後、8週目(W8)、9週目(W9)、10週目(W10)、11週目(W11)、及び12週目(W12)におけるマウスの表現型を示す。
【
図1C】
図1A~
図1Dは、休止期初期の7週齢K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウス(CK1αKO)のケラチノサイトにおける、タモキシフェン(TMX)の腹腔内(i.p.)注射によるCK1α欠損誘導の結果を示す。
図1Cは、記載の各週齢で採取した皮膚サンプルのH&E染色を示す。
【
図1D】
図1A~
図1Dは、休止期初期の7週齢K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウス(CK1αKO)のケラチノサイトにおける、タモキシフェン(TMX)の腹腔内(i.p.)注射によるCK1α欠損誘導の結果を示す。
図1Dは、記載の各週齢で採取した皮膚サンプルのβ-カテニン染色を示す。
【
図2A】
図2A~
図2Eは、休止期中期の9週齢K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウス(CK1αKO)のケラチノサイトにおける、タモキシフェン(TMX)の腹腔内(i.p.)注射によるCK1α欠損誘導の結果を示す。
図2Aは、実験スキームを示す。
【
図2B】
図2A~
図2Eは、休止期中期の9週齢K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウス(CK1αKO)のケラチノサイトにおける、タモキシフェン(TMX)の腹腔内(i.p.)注射によるCK1α欠損誘導の結果を示す。
図2Bは、9週目(W9)の剃毛の前後、10週目(W10)、12週目(W12)、13週目(W13)、及び16週目(W16)におけるマウスの表現型を示す。
【
図2C】
図2A~
図2Eは、休止期中期の9週齢K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウス(CK1αKO)のケラチノサイトにおける、タモキシフェン(TMX)の腹腔内(i.p.)注射によるCK1α欠損誘導の結果を示す。
図2Cは、H&E染色を示す。
【
図2D】
図2A~
図2Eは、休止期中期の9週齢K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウス(CK1αKO)のケラチノサイトにおける、タモキシフェン(TMX)の腹腔内(i.p.)注射によるCK1α欠損誘導の結果を示す。
図2Dは、採取された皮膚サンプルのβ-カテニン染色を示す。矢印は毛芽を示し、β-カテニンは、CK1αKOマウスにおいて増加した。
【
図2E】
図2A~
図2Eは、休止期中期の9週齢K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウス(CK1αKO)のケラチノサイトにおける、タモキシフェン(TMX)の腹腔内(i.p.)注射によるCK1α欠損誘導の結果を示す。
図2Eは、BrdU染色を示す。
【
図3A】
図3A~
図3Dは、K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウスのケラチノサイトにおける、4-OH-TMX(CK1αKO)によるCK1α欠損の局所誘導の結果を示す。
図3Aは、9週目に剃毛した後のマウスの背部に、4-OH-TMXを局所塗布する実験スキームを示す。表現型を記録し、サンプルを9週目(W9)、11週目(W11)、及び13週目(W13)に得た。
【
図3B】
図3A~
図3Dは、K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウスのケラチノサイトにおける、4-OH-TMX(CK1αKO)によるCK1α欠損の局所誘導の結果を示す。
図3Bは、9週目(W9)、11週目(W11)、及び13週目(W13)のマウスの表現型を示す。
【
図3C】
図3A~
図3Dは、K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウスのケラチノサイトにおける、4-OH-TMX(CK1αKO)によるCK1α欠損の局所誘導の結果を示す。
図3Cは、記載のタイミングで採取した皮膚サンプルのH&E染色を示す。「D」は、誘導後の日数を示す。
【
図3D】
図3A~
図3Dは、K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウスのケラチノサイトにおける、4-OH-TMX(CK1αKO)によるCK1α欠損の局所誘導の結果を示す。
図3Dは、記載のタイミングで採取した皮膚サンプルのβ-カテニン染色を示す。「D」は、誘導後の日数を示す。
【
図4A】
図4A~
図4Fは、8週齢のC57/BL6野生型マウスにおける発毛及び毛髪着色の誘導において例示的なCK1阻害剤であるA51を示す。
図4Aは、8週目の間に、マウスの背部の毛を剃った後、このマウスの背部の皮膚にA51を2回又は3回局所塗布する実験スキームを示す。9週目、10週目、及び11週目を示す矢印は、サンプリングのタイミングを示す。
【
図4B】
図4A~
図4Fは、8週齢のC57/BL6野生型マウスにおける発毛及び毛髪着色の誘導において例示的なCK1阻害剤であるA51を示す。
図4Bは、8週目(W8)、9週目(W9)、10週目(W10)、及び12週目(W12)のマウスの表現型を示す。0.1
*2 Q.O.D.:1日おきに毎回0.1mg、合計0.2mg。Nは各群のマウスの匹数を示す。
【
図4C】
図4A~
図4Fは、8週齢のC57/BL6野生型マウスにおける発毛及び毛髪着色の誘導において例示的なCK1阻害剤であるA51を示す。
図4Cは、採取された皮膚サンプルのH&E染色を示す。
【
図4D】
図4A~
図4Fは、8週齢のC57/BL6野生型マウスにおける発毛及び毛髪着色の誘導において例示的なCK1阻害剤であるA51を示す。
図4Dは、採取された皮膚サンプルのβ-カテニン染色を示す。
【
図4E】
図4A~
図4Fは、8週齢のC57/BL6野生型マウスにおける発毛及び毛髪着色の誘導において例示的なCK1阻害剤であるA51を示す。
図4E及び
図4Fはそれぞれ、毛包の着色のフォンタナ・マッソン染色を高倍率及び低倍率で示す。
【
図4F】
図4A~
図4Fは、8週齢のC57/BL6野生型マウスにおける発毛及び毛髪着色の誘導において例示的なCK1阻害剤であるA51を示す。
図4E及び
図4Fはそれぞれ、毛包の着色のフォンタナ・マッソン染色を高倍率及び低倍率で示す。
【
図5A】
図5A~
図5Eは、8週齢のC57/BL6野生型マウスにおける発毛及び毛髪着色の誘導におけるCK1阻害剤D4476及びIC261を示す。
図5Aは、D4476又はIC261を1日おきに毎回0.04mgでマウスの背部の皮膚に局所塗布し、合計0.12mgを塗布した実験スキームを示す。9週目及び10週目を示す矢印は、サンプリングのタイミングを示す。
【
図5B】
図5A~
図5Eは、8週齢のC57/BL6野生型マウスにおける発毛及び毛髪着色の誘導におけるCK1阻害剤D4476及びIC261を示す。
図5Bは、8週目(W8)、9週目(W9)、及び10週目(W10)のマウスの表現型を示す。
【
図5C】
図5A~
図5Eは、8週齢のC57/BL6野生型マウスにおける発毛及び毛髪着色の誘導におけるCK1阻害剤D4476及びIC261を示す。
図5Cは、採取された皮膚サンプルのH&E染色を示す。
【
図5D】
図5A~
図5Eは、8週齢のC57/BL6野生型マウスにおける発毛及び毛髪着色の誘導におけるCK1阻害剤D4476及びIC261を示す。
図5Dは、採取された皮膚サンプルのβ-カテニン染色を示す。
【
図5E】
図5A~
図5Eは、8週齢のC57/BL6野生型マウスにおける発毛及び毛髪着色の誘導におけるCK1阻害剤D4476及びIC261を示す。
図5Eは、毛包の着色のフォンタナ・マッソン染色を示す。
【
図6A】
図6A~
図6Cは、CK1の阻害が、毛周期における成長期を延長することを示す。
図6Aは、4週目に剃毛した後のマウスの背部に、4-OH-TMXを局所塗布する実験スキームを示す。
【
図6B】
図6A~
図6Cは、CK1の阻害が、毛周期における成長期を延長することを示す。
図6Bは、4週目(W4)、6週目(W6)、7週目(W7)、及び8週目(W8)のマウスの表現型を示す。
【
図6C】
図6A~
図6Cは、CK1の阻害が、毛周期における成長期を延長することを示す。
図6Cは、8週目のH&E染色及びβ-カテニン染色の結果を示す。
【
図7A】
図7A~
図7Iは、ケラチノサイトにおけるCK1α欠損が、Mc1r
549delマウスにおいて着色した毛を生成することを示す。
図7Aは、ケラチノサイトにおけるCK1α欠損によりMc1r
549delマウスを得るための交配のスキームを示す。被毛色が黄色のMc1r
549delマウスをK14-CreER-CK1α
f/fマウスと交配させて、K14-CreER-CK1α
f/f;Mc1r
549delマウスを作製した。
【
図7B】
図7A~
図7Iは、ケラチノサイトにおけるCK1α欠損が、Mc1r
549delマウスにおいて着色した毛を生成することを示す。
図7Bは、K14-CreER-CK1α
f/f;Mc1r
549delマウスのケラチノサイトにおけるCK1αを欠損させるための、TMXの腹腔内注射のスキームを示す。
【
図7C】
図7A~
図7Iは、ケラチノサイトにおけるCK1α欠損が、Mc1r
549delマウスにおいて着色した毛を生成することを示す。
図7Cは、Mc1r
549delマウス及びケラチノサイトにおけるCK1α欠損を有するMc1r
549delマウス(CK1α
-/-;Mc1r
549del)の背部における毛の色の表現型を示す。
【
図7D】
図7A~
図7Iは、ケラチノサイトにおけるCK1α欠損が、Mc1r
549delマウスにおいて着色した毛を生成することを示す。
図7Dは、顕微鏡下での毛幹着色を示す。
【
図7E】
図7A~
図7Iは、ケラチノサイトにおけるCK1α欠損が、Mc1r
549delマウスにおいて着色した毛を生成することを示す。
図7E及び
図7Fはそれぞれ、フォンタナ・マッソン染色による毛包着色及びフォンタナ・マッソン染色された細胞の数を示す。
【
図7F】
図7A~
図7Iは、ケラチノサイトにおけるCK1α欠損が、Mc1r
549delマウスにおいて着色した毛を生成することを示す。
図7E及び
図7Fはそれぞれ、フォンタナ・マッソン染色による毛包着色及びフォンタナ・マッソン染色された細胞の数を示す。
【
図7G】
図7A~
図7Iは、ケラチノサイトにおけるCK1α欠損が、Mc1r
549delマウスにおいて着色した毛を生成することを示す。
図7G及び
図7Hはそれぞれ、マウスの背部の皮膚におけるKitL/c-Kit経路のタンパク質発現レベルのウェスタンブロット解析及びヒストグラムで定量化した発現レベルを示す。
【
図7H】
図7A~
図7Iは、ケラチノサイトにおけるCK1α欠損が、Mc1r
549delマウスにおいて着色した毛を生成することを示す。
図7G及び
図7Hはそれぞれ、マウスの背部の皮膚におけるKitL/c-Kit経路のタンパク質発現レベルのウェスタンブロット解析及びヒストグラムで定量化した発現レベルを示す。
【
図7I】
図7A~
図7Iは、ケラチノサイトにおけるCK1α欠損が、Mc1r
549delマウスにおいて着色した毛を生成することを示す。
図7Iは、14日目及び28日目のMc1r
549delマウスとCK1α
-/-;Mc1r
549delマウスの背部の皮膚を比較するユーメラニン分析を示す。
【
図8A】
図8A~
図8Dは、発毛を増強中の皮脂腺に対するCK1阻害の効果を示す。
図8Aは、K14-CreER-CK1α;ROSA
mT/mGのマウスの耳における生体内多光子イメージングを示す。
【
図8B】
図8A~
図8Dは、発毛を増強中の皮脂腺に対するCK1阻害の効果を示す。
図8Bは、IC261で24時間処理したSZ95細胞(ヒト皮脂腺細胞株)を用いたWST-1アッセイを示す。
【
図8C】
図8A~
図8Dは、発毛を増強中の皮脂腺に対するCK1阻害の効果を示す。
図8Cは、異なる濃度のDMSO又はIC261で処理したSZ95細胞におけるPPARγ(脂質生成についてのバイオマーカー)及びc-Myc(分化についてのバイオマーカー)の発現を示す。
【
図8D】
図8A~
図8Dは、発毛を増強中の皮脂腺に対するCK1阻害の効果を示す。
図8Cは、IC261が、処理されたSZ95細胞においてLC3Bを用量依存的に増加させたことを示す。この増加は、オートファジーが誘導されたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の例は、本開示を説明するために使用される。当業者であれば、本明細書の開示に基づいて、本開示の他の利点及び効果を容易に理解することができるであろう。本開示はまた、異なる例において説明されるように実装又は適用され得る。異なる態様及び用途のために、本開示の範囲に反することなく本開示を実施するために上記の例を修正又は変更することが可能である。
【0017】
全般的には、本明細書で使用される命名法、並びに本明細書に記載される有機化学、医薬品化学、生化学、生物学、及び薬理学における実験手順は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、全般的に、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。しかしながら、これらの用語は、当該技術分野における通常の知識を有する者の意図、先例、又は新しい技術の出現によって異なる意味を有することがある。また、一部の用語は、本出願人によって任意的に選択されることがあり、この場合、選択された用語の意味は、本開示の説明において詳細に説明される。したがって、本明細書で使用される用語は、明細書全般にわたる説明と共に、用語の意味に基づいて定義されるべきものである。
【0018】
本開示で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明白に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに更に留意されたい。「又は」という用語は、文脈が明らかに別のことを示さない限り、「及び/又は」という用語と互換的に使用される。
【0019】
また、ある部分がある構成要素又は工程を「含む(include)」又は「含む(comprise)」場合、特に反対の記載がない限り、他の構成要素又は他の工程を除外するものではなく、他の構成要素又は他の工程を更に含むことができる。
【0020】
「対象」、「患者」、及び「個体」という用語は、本明細書において互換的に使用され、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、又はマウスを含むがこれらに限定されない温血動物を指す。「対象」及び「患者」という用語は、例えば、ヒト対象などの哺乳動物対象に関して、本明細書において互換的に使用される。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0021】
「治療有効量」又は「有効量」という用語は、対象に投与された場合に、治療される障害、疾患、又は状態の症状のうちの1つ以上の発症を予防するか、又はある程度緩和するのに十分な化合物の量を含むことを意味する。「治療有効量」又は「有効量」という用語は、研究者、獣医、医師、又は臨床医によって求められている、生体分子(例えば、タンパク質、酵素、RNA、又はDNA)、細胞、組織、系、動物、又はヒトの生物学的又は医学的奏功を誘導するのに十分な化合物の量も指す。
【0022】
「製薬上許容される担体」、「製薬上許容される賦形剤」、「生理学的に許容される担体」、又は「生理学的に許容される賦形剤」という用語は、美容上又は製薬上許容される材料、組成物、又はビヒクル、例えば、液体又は固体の充填剤、希釈剤、溶媒、又はカプセル内包材料を指す。いくつかの実施形態では、各成分は、化粧料又は医薬製剤の他の成分と適合性があり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、又は他の問題若しくは合併症を伴わずに、対象(例えば、ヒト又は動物)の組織又は臓器と接触させて使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に見合っているという意味で「製薬上許容される」。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd ed.;Allen Ed.:Philadelphia,PA,2012;Handbook of Pharmaceutical Excipients,7th ed.;Rowe et al.,Eds.;The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2012;Handbook of Pharmaceutical Additives,3rd ed.;Ash and Ash Eds.;Gower Publishing Company:2007;Pharmaceutical Preformulation and Formulation,2nd ed.;Gibson Ed.;CRC Press LLC:Boca Raton,FL,2009を参照されたい。
【0023】
「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される所与の値についての許容可能な誤差を意味し、これは、値が測定又は決定される方法に部分的に依存する。いくつかの実施形態では、「約」又は「およそ」という用語は、1、2、3、又は4標準偏差以内を意味する。いくつかの実施形態では、「約」又は「およそ」という用語は、所与の値又は範囲の50%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.05%以内を意味する。
【0024】
「薬/薬物」、「化粧料」、及び「治療剤」という用語は、障害、疾患、又は状態の1つ以上の症状を予防、改善、又は治療するために対象に投与される化合物又はその化粧料組成物若しくは医薬組成物を指す。
【0025】
本開示のいくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、患者の年齢に関係なく対象を治療することを含むが、いくつかの疾患又は障害は、特定の年齢群においてより一般的である。
【0026】
本開示のCK1阻害剤(CKI)は、細胞周期を調節するサイクリン依存性キナーゼ(CDK)(例えば、Cdk2、Cdk4、及びCdk6)などの他のキナーゼと比較して少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍の阻害活性を、CK1に対して有することができる。更に、CK1阻害剤は、プロテインキナーゼC(PKC)、プロテインキナーゼA(PKA)、上皮成長因子受容体2(HER2)、RAF-1(rapidly accelerated fibrosarcoma 1)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ1(MEK1)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPキナーゼ)、上皮成長因子受容体(EGF受容体)、血小板由来成長因子受容体(PDGF受容体)、インスリン様成長因子受容体(IGF受容体)、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3キナーゼ)、Wee1キナーゼ、Src、及び/又はAblと比較して少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍の阻害活性を、CK1に対して有する。
【0027】
本開示のいくつかの実施形態では、CKIは、CK1α(CSNK1A;ゲノムレベル、mRNAレベル、又はタンパク質レベルで、GenBankアクセッション番号NP_001020276、NM_001025105、及びNM_001020276)に対して選択的である。本開示のいくつかの実施形態では、CKIは、CK1δ、CK1εなどの他のCKアイソザイムに対する阻害活性も有する。本開示の少なくとも1つの実施形態では、CKIは、CK1α、CK1δ、CK1ε、及びそれらの任意の組み合わせに対する阻害活性を有する。
【0028】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、カゼインキナーゼ1阻害剤は、その任意の立体異性体又は塩を含む、以下の一般式Iによって表される:
【0029】
【化3】
(式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルコキシ、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアシル、炭素数5~15のアリール、及び炭素数3~7のヘテロアリールからなる群から選択され、それぞれが、ハライド、ヒドロキシル、エステル、エーテル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、及びアミドの少なくとも1つによって任意に置換され;又は、R
1及びR
2は、それらが結合している窒素原子と共に、4~7員の飽和環、不飽和環、又は芳香族環を形成し、これらの環は、N、O、NH、C=N、C=O、及びSO
2の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ヒドロキシル、ハライド、及びシアノの少なくとも1つで任意に置換され;
R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H;ハライド、ヒドロキシル、アルコキシ、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、エステル、及びアミドの少なくとも1つによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキルからなる群から選択され;又は
R
1若しくはR
2は、R
3、並びにそれらがそれぞれ結合している炭素及び窒素原子と共に、4~7員の飽和環、不飽和環、又は芳香族環を形成し、これらの環は、N、NH、O、C=N、C=O、及びSO
2の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ヒドロキシル、カルボニル、及びハライドの少なくとも1つで任意に置換され;
R
5及びR
8は、それぞれ独立して、H、ハライド、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、及び少なくとも1つのハライドによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニルからなる群から選択され;
R
6は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニル、炭素数5~10のシクロアルキル、及び直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、炭素数3~7のシクロアルキル、4~6員複素環、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ハライド、ヒドロキシル、及び炭素数1~5のアルキルハライドの少なくとも1つによって任意に置換される飽和又は不飽和4~6員複素環から選択され;
R
7は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、及び炭素数3~7のシクロアルキル、4~6員複素環、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ハライド、ヒドロキシル、及び炭素数1~5のアルキルハライドの少なくとも1つによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニルからなる群から選択される)。
【0030】
更なるカゼインキナーゼI阻害剤としては、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2017/021969号に記載されているものが挙げられる。
【0031】
本明細書で提供される化粧料組成物又は医薬組成物は、エマルジョン、溶液、懸濁液、クリーム、ゲル、ハイドロゲル、軟膏、粉剤、ドレッシング、エリキシル剤、ローション、懸濁液、チンキ剤、ペースト、泡剤、フィルム、エアロゾル、洗腸排便剤(irrigation)、スプレー、坐剤、包帯、及び皮膚パッチを含む、局所効果又は全身効果のための局所投与に適した任意の剤形で製剤化することができる。本明細書で提供される化粧料組成物又は医薬組成物の局所製剤は、リポソーム、ミセル、マイクロスフェア、ナノシステム、及びそれらの任意の混合物も含むことができる。
【0032】
本明細書で提供される局所製剤における使用に適した美容上又は製薬上許容される担体及び賦形剤としては、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、微生物の増殖に対する抗菌剤又は防腐剤、安定剤、溶解促進剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁化剤及び分散剤、湿潤剤又は乳化剤、錯化剤、封鎖剤又はキレート剤、浸透促進剤、凍結保護剤、溶解保護剤(lyoprotectant)、増粘剤、及び不活性ガスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
化粧料組成物又は医薬組成物は、PowderTect(Chiron Corp.,Emeryville,CA)及びBioject(Bioject Medical Technologies Inc.,Tualatin,OR)等、エレクトロポレーション、イオントフォレシス、フォノフォレシス、ソノフォレシス、マイクロニードル、又は無針注射によって、局所投与することもできる。
【0034】
本明細書で提供される化粧料組成物又は医薬組成物は、軟膏、クリーム、及びゲルの形態で提供することができる。好適な軟膏ビヒクルとしては、豚脂、安息香豚脂(benzoinated lard)、白色ワセリン、オリーブ油、綿実油、及び他の油を含む、油性又は炭化水素ビヒクル;親水ワセリン、ヒドロキシステアリンサルフェート(hydroxystearin sulfate)、及び脱水ラノリン等の乳化性又は吸収性ビヒクル;親水性軟膏等の、水で除去可能なビヒクル;様々な分子量のポリエチレングリコールを含む水溶性軟膏ビヒクル;セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラノリン、及びステアリン酸を含む、エマルジョンビヒクル、油中水型(W/O)エマルジョン又は水中油型(O/W)エマルジョンのいずれもが挙げられる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmac参照)。これらのビヒクルは皮膚軟化剤であるが、概して抗酸化剤及び防腐剤の添加を必要とする。
【0035】
好適なクリーム基剤は、水中油型又は油中水型であり得る。好適なクリームビヒクルは、水洗可能であり得、油相、乳化剤、及び水相を含み得る。油相は「内部」相とも呼ばれ、概してワセリン及びセチルアルコール又はステアリルアルコール等の脂肪アルコールから構成される。水相は、必ずしも必要ではないが、通常、油相よりも体積が多く、概して保水剤を含む。クリーム製剤中の乳化剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、又は両性界面活性剤であってもよい。
【0036】
好適なゲルは、半固体の懸濁液タイプの系であってもよい。単相ゲルは、液体担体全体に実質的に均一に分布した有機高分子を含有する。好適なゲル化剤としては、カルボマー、カルボキシポリアルキレン、及びカーボポール等の架橋アクリル酸ポリマー;ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、及びポリビニルアルコール等の親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びメチルセルロース等のセルロースポリマー;トラガント及びキサンタンガム等のゴム;アルギン酸ナトリウム;並びにゼラチンが挙げられるが、これらに限定されない。均一なゲルを調製するために、アルコール又はグリセリンなどの分散剤を添加することができ、又はゲル化剤を粉砕、機械的混合、及び/若しくは撹拌によって分散させることができる。
【実施例】
【0037】
本開示の例示的な実施形態を以下の実施例において更に説明するが、これらは、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0038】
全般に、本明細書で使用される命名法及び本開示において利用される実験手順は、分子技術、生化学技術、及び組換えDNA技術を含む。このような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,Sambrook et al.,(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」,Volumes I-III AusubelR.M.,ed.(1994);「A Practical Guide to Molecular Cloning」,John Wiley & Sons,New York(1988);Watson et al.,「Recombinant DNA」,Scientific American Books,New York;Birren et al.(eds)「Cell Biology:A Laboratory Handbook」,Volumes I-III Cellis,J.E.,ed.(1994);「Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique」,Freshney,Wiley-Liss,N.Y.(1994),Third Ed.;「Transcription and Translation」,Hames,B.D.,and Higgins S.J.,eds.(1984);「Animal Cell Culture」,Freshney,R.I.,ed.(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」,IRL Press,(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」,Perbal,B.,(1984)and「Methods in Enzymology」,Vol.1-317,Academic Press;「PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications」,Academic Press,San Diego,Calif.(1990);Marshak et al.,「Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual」,CSHL Press(1996)を参照されたく、これらの全てが参照により、本明細書に完全に記載されている場合と同様に組み込まれる。他の一般的な参考文献は、本開示を通して提供される。一般的な文献中の手順は、当該技術分野において周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。文献中に含まれる全ての情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
材料及び方法
マウス
K14-Cr-ERT2-CK1αfl/flマウス、Mc1r549delマウス、及びケラチノサイトにおけるCK1αを欠損したMc1r549delマウス(CK1α-/-Mc1r549del)は、National Laboratory Animal Center(NLAC)(Tainan,Taiwan)で共同で作製され、野生型C57BL/6JマウスもNLACから購入された。実験及び飼育は、Laboratory Animal Center,Tzu Chi University(Hualien,Taiwan)で行われ、法的及び倫理的基準に従ってAnimal Care Committeeの承認を得た。雄及び雌マウスの両方を使用した。野生型C57BL/6Jマウスにおける毛周期は年齢に関連し、4~6週目は成長期、6~7週目は退行期、7~12週目は休止期である。
【0040】
標的遺伝子の活性化(CK1α欠損の誘導)
ケラチノサイトにおけるCK1α発現の欠失のために、K14-Cre-ERT2-CK1αfl/flマウスを、コーン油(C8267;Sigma)に溶解させた100mg/kgのタモキシフェン(TMX)で腹腔内注射により2回処置し、又は99.9%アルコール(32205;Sigma)に溶解した4-ヒドロキシル-タモキシフェン(4-OH-TMX)(H6278;Sigma)で局所的に処置した。5回/週の剃毛の後、3mg/mLの濃度で200μLを背部の皮膚に投与した。
【0041】
CK1阻害剤(CKI)の調製
A51は、Dr.Yinon Ben-Nerianの研究所からの寄贈品である(Cell,Volume 175,Issue 1,20 September 2018,pages 171-185に掲載された)。マウスの皮膚への局所塗布のために、1mgのCKIを6μLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、60%の白蝋及び40%のパラフィン油を含む54μLのビヒクルと混合した。最終的な使用濃度は0.1mg/cm2である。
【0042】
D4476は、Sigma Aldrich(#D1944)から購入した。マウスの皮膚への局所塗布のために、ストックとして4mgのCKIを1mLのDMSOに溶解した。10μLのストックを、60%の白蝋及び40%のパラフィン油を含む40μLのビヒクルと混合した。最終的な使用濃度は、0.04mg/cm2である。
【0043】
IC261は、Sigma Aldrich(#40090)から購入した。マウスの皮膚への局所塗布のために、ストックとして4mgのCKIを1mLのDMSOに溶解した。10μLのストックを、60%の白蝋及び40%のパラフィン油を含む40μLのビヒクルと混合した。最終的な使用濃度は、0.04mg/cm2である。
【0044】
局所薬物処置
8週齢のマウスを剃毛して、背部の皮膚の毛を除去し、75%エタノールで洗浄した。局所CKIを背部の皮膚に1週間に3回塗布し、組織をCKIの塗布後7日目、14日目、及び28日目に採取した。組織を以下に記載する方法により分析した。
【0045】
病理組織診断、免疫組織化学染色、及びフォンタナ・マッソン染色
皮膚サンプルを、記載のタイミングで組織分析のために採取した。パラフィン包埋標本を5μmの切片に切断した。脱パラフィン(組織スライドをキシレンに3回、各回5分間浸漬する)及び再水和(スライドを以下の段階的な一連のエタノール:100%、100%、95%、90%、及び70%中で、各回5分間インキュベートする)の後、スライドを蒸留水で5分間すすいだ。
【0046】
ヘマトキシリン及びエオジン(H&E)染色及びフォンタナ・マッソン染色
フォンタナ・マッソン染色及びH&E染色は、製造業者による使用説明書に従ってScyTek Laboratories,Inc.製のキットを使用することによって行った。
【0047】
簡潔に述べると、フォンタナ・マッソン染色のために、新たに混合したアンモニア銀溶液を58℃~60℃の水浴に入れ、平衡化させた。スライドを、加温したアンモニア銀溶液中で30~60分間、又は組織切片の色が黄色/褐色になるまでインキュベートし、次いで蒸留水で3~5秒間すすいだ。スライドを、塩化金溶液(0.2%)中で30秒間インキュベートし、次いで蒸留水で3~5秒間すすいだ。スライドを、チオ硫酸ナトリウム溶液(5%)中で1分間インキュベートし、次いで蒸留水で3~5秒間すすいだ。スライドをヌクレアファストレッド溶液中で5分間インキュベートし、水道流水中で1分間すすぎ、新鮮な無水アルコール(95%、95%、100%、及び100%)及びキシレンを4回交換して脱水し、Histokitt(Assistent)で封入した。
【0048】
H&E染色による病理組織診断のために、皮膚組織を、4℃、10%中性緩衝ホルマリン中で一晩固定し、次いで70%エタノールに移した後、処理し、パラフィン包埋した。次いで、パラフィン切片をH&Eで染色した。
【0049】
免疫組織化学染色
パラフィン切片を、加湿チャンバー内で、60℃で15分間インキュベートした。キシレンを2回交換して、切片を各回5分間脱パラフィンし、100%エタノールを2回交換して各回5分間、次いで95%及び80%エタノールで各回5分間水和し、最後に蒸留水ですすいだ。スライドをクエン酸緩衝液(DAKO;pH6.0)中で20分間マイクロ波処理(microwaving)して抗原賦活化を増強した。内因性ペルオキシダーゼ活性を、メタノール中3%過酸化水素でクエンチした。ブロッキング後、切片をβ-カテニン抗体(1/100;BD Bioscience)で、4℃で一晩インキュベートした。使用した二次抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)-ポリマー抗マウス抗体(Nichirei)であった。3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)色原体(ScyTek)を検出に使用し、ヘマトキシリンを対比染色として使用した。
【0050】
5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU)染色
マウスにおける増殖細胞を標識するために、200μLのBrdU(Amersham;細胞増殖標識試薬,RPN201,GE Healthcare)の腹腔内注射を実施した。6時間後、パラフィン包埋のために皮膚サンプルを採取した。4μmのパラフィン包埋切片を上記のように調製し、次いで、標的賦活液緩衝液(pH6.0)(DAKO、S1699)と共に、水浴中、95℃~120℃で20分間インキュベートした。染色皿を移して室温にし、スライドを30℃に放冷し、続いてPBSで1回すすいだ。次いで、スライドを一次抗体BrdU(Thermo Fisher Scientific、B23151、1:100)と共に4℃で一晩インキュベートした。スライドをPBSで3回、各回5分間すすいだ。スライドをEnVision/HRP,Rabbit/Mouse(ENV)(DAKO、k5007)と共に30分間インキュベートし、PBSで3回、各回5分間すすいだ。その後、スライドをAEC+High Sensitivity Substrate Chromogen Ready-to-Use(DAKO、K3461)と共に5分間インキュベートし、流水で5分間洗浄した。その後、スライドをヘマトキシリンで30秒~1分間対比染色し、流水で10分間洗浄した。スライドをAqueous-Mount(ScyTek、51934)で封入した。
【0051】
ウェスタンブロット
組織を使用する実験のために、組織をホモジナイズし、プロテアーゼ阻害剤(Millipore)を含有する1×組織タンパク質抽出試薬(Thermo Fisher)中で溶解し、氷上で維持した。細胞を使用する実験のために、細胞ペレットを回収し、プロテアーゼ阻害剤(Millipore)を含有する1×放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)溶解緩衝液中で溶解させ、氷上で維持した。製造業者による使用説明書に従ってProtein Assay Dye Reagent Concentrate(Bio-Rad)を使用し、マイクロプレートリーダーにより総タンパク質濃度を決定した。サンプルをSDS-PAGE Sample Buffer(Bio-Rad)に希釈し、95℃で5分間加熱した。次いで、タンパク質サンプルをSDS-PAGEゲル(TGX FastCastアクリルアミド溶液、Bio-Rad)上で分離させ、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)膜(Millipore)上に転写した。5%BSAを使用し、次いで、膜を一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。その後、膜を、Tween20を含むトリス緩衝生理食塩水(TBST)で洗浄し、二次抗体と共に室温で1時間インキュベートした。Thermo Fisher Scientific製のiBright FL1000 Imaging Systemを使用して、シグナルを検出した。
【0052】
抗体
本開示において免疫組織化学染色(IHC)及びウェスタンブロット(WB)において使用した抗体を以下の表1に掲載し、製造業者、カタログ番号、及び使用した希釈比を提示する。
【0053】
【0054】
ユーメラニン分析
皮膚サンプルを測定し、Ca2+、Mg2+を含まないPBS(pH 7.4)ですすいで、血液を除去した。メラニン含量のアッセイのために、組織をハサミで切り刻み、10倍体積のPBS中、28℃でホモジナイズした。ユーメラニンを化学分析して特異的な分解生成物であるピロール-2,3,5-トリカルボン酸(PTCA)を検出するために、皮膚サンプルを処理した。1ナノグラムのPTCAは、50ngのユーメラニンに相当する。ユーメラニン含量の差の統計的有意性は、サイズの等しい群を比較するスチューデントのt検定によって決定した。
【0055】
K14-CreER-CK1α;ROSAmT/mGマウスの作製
K14-CreER-CK1α;ROSAmT/mGマウスは、National Laboratory Animal Center(Tainan)において、K14-CreER-CK1αマウスとmT/mGマウスとを交配させることによって作製し、SPF(specific pathogen free)条件下で維持した。CK1αを欠損したケラチノサイトの標識のために、本発明者らは、コーン油に溶解させたTMXを1mg/日の用量で5日間連続して腹腔内注射した。TMXによってCK1αの欠損が誘導されると、ケラチノサイト上の赤色蛍光(tdTomato;mT)が緑色蛍光(EGFP;mG)に変わる。
【0056】
マウスの耳の皮膚の生体内多光子イメージング
本発明者らは、Dr.Peilin Chenの研究所(Research Center for Applied Sciences、Academia Sinica、 Taipei、Taiwan)でマウスの耳における生体内多光子イメージングを実施した。doi:10.1038/nprot.2011.438に従って、方法及び手順を修正した。EGFR(緑色蛍光)及びtdTomato(ROSA26)(赤色蛍光)のピーク発光波長は、それぞれ510nm及び580nmである。
【0057】
SZ95細胞培養及びWST-1アッセイ
37℃及び5%CO2の標準的な細胞培養条件下で、10%FBS及び5ng/mL上皮成長因子を添加したSebomed基礎培地(Sigma)中で、SZ95細胞(ヒト皮脂腺細胞株)を維持した。
【0058】
WST-1アッセイ 96ウェルプレートにおいて、密度1.5×104個/ウェルで細胞を播種し、一晩インキュベートする。培地を除去し、各ウェルに様々な量のIC261(1nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1000nM)を含有する100μLの新鮮培地を添加し、24時間インキュベートする。10μL/ウェルのWST-1を添加し、4時間インキュベートする。ELISAリーダーによりOD450nm及びOD655nmの吸光度を測定する。
【0059】
統計解析
本開示における統計解析は、解析結果を平均±標準偏差として提示する。群間の比較にはスチューデントのt検定を適用した。0.05未満のP値を統計的に有意であるとみなした。
【0060】
実施例1:CK1αの阻害は、毛周期における成長期を誘導する。
様々な手段によって、マウスケラチノサイトにおけるCK1α阻害を行ったところ、全ての手段が、休止期、初期休止期(7週)、及び中期休止期(9週)から毛周期における成長期を誘導することが示された。
【0061】
第1の試験では、7週齢のK14-Cre-ERT2-CK1α
fl/fl成体マウスを使用し、タモキシフェン(TMX)を腹腔内(i.p.)注射して、ケラチノサイトにおけるCK1α発現の欠損を誘導した。
図1Aは、7週目にマウス背部を剃毛し、剃毛後1日目及び2日目に100mg/kgの1日用量でTMXを腹腔内注射した試験デザインを示す。
図1B及び
図1Cにそれぞれ示されるように、マウス皮膚切片の表現型及び組織標本画像を7週目から12週目まで毎週記録した。対照マウス(N=6)では、マウスの背部の皮膚の毛包が7週目から12週目まで休止期に維持されることが示された。しかしながら、CK1αを欠損したマウス(CK1αKO、N=6)では、8週目又は9週目には早くも毛包の初期成長期が現れ、10週目~12週目の間には、完全な成長期を継続的に展開した。Wnt/β-カテニン経路は、毛包前駆細胞に作用し、休止期-成長期の移行のための近位シグナル(Proximal Signal)として働く。
図1Dに示されるように、8週目及び9週目では、CK1αを欠損したマウスの皮膚において、対照マウスと比較して増加したβ-カテニン染色が示された。
【0062】
第2の試験では、9週齢のK14-Cre-ERT2-CK1α
fl/fl成体マウスを使用し、タモキシフェン(TMX)を腹腔内(i.p.)注射して、ケラチノサイトにおけるCK1α発現の欠損を誘導した。
図2Aは、9週目にマウス背部を剃毛し、剃毛後1日目及び2日目に100mg/kgの1日用量でTMXを腹腔内注射した試験デザインを示す。それぞれ
図2Bに示すように、マウスの表現型を9週目から16週目まで記録した。対照マウス(N=3)では、マウスの背部の皮膚の毛包が9週目から12週目まで休止期に維持され、13週目に成長期が始まることが示された。16週目には、対照マウスの背部に目に見える毛が観察された。対照的に、CK1αを欠損したマウス(CK1αKO、N=3)では、10週目と11週目との間に毛包の初期成長期が現れ、目に見える毛は13週目に成長し始めた。CK1αを欠損したマウスの背部は、16週目には毛で完全に覆われた。
図2Cは、H&E染色したマウス皮膚切片の組織標本画像を示す。9週目のTMXの腹腔内注射による誘導前には、正常マウス及びCK1αKOマウスの両方が休止期の毛包を示した。そして、対照マウスでは9週目から11週目又は12週目まで休止期が続き、13週目に成長期が始まり、16週目には完全に成長期に達した(fully developed)。一方、CK1αKOマウスでは、10週目に成長期が始まり、11週目から16週目の間、毛の成長が継続した。すなわち、休止期中のケラチノサイトにおけるCK1α阻害は、毛周期の成長期を誘導し、及び早期に開始する。
図2Dは、β-カテニンの免疫組織化学染色の結果を示す。第1の試験と同様に、10週目では、CK1αを欠損したマウスの皮膚において、対照マウスと比較して増加したβ-カテニン染色が示された。
図2Eは、増殖細胞を標識する5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU)の免疫組織化学染色の結果を示す。CK1αKOマウスでは、対照マウスと比較して、毛包のマトリックスにおいて増加した染色が示された。
【0063】
次に、K14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウスの背部の皮膚のケラチノサイトにおけるCK1α欠損の局所的誘導のために、4-OH-TMXを使用した。
図3Aに示すように、9週齢のマウスを使用し、9週目に背部の毛を剃った後、剃毛した背部の皮膚に4-OH-TMXによる局所的誘導を行った。
図3B及び
図3Cは、9週目~13週目に記録された表現型及び組織標本画像を示す。正常マウス(N=5)では、9週目から11週目には休止期が観察され、13週目に成長期が始まることが認められた。CK1αを欠損したマウス(N=11)では、11週目には、組織標本画像において皮膚表面上での膨隆(elevated papules)の形成を伴う成長期が認められ、13週目に、完全に成長期に達し目に見える毛が認められた。
図3Dは、β-カテニンの免疫組織化学染色の結果を示す。CK1αの欠損誘導後の7日目(D7)及び14日目(D14)となる10週目(W10)及び11週目(W11)の毛芽では、β-カテニンの発現は、CK1αKOマウスにおいて対照マウスと比較して増加を示した。β-カテニン核染色は、表皮の基底層、二次毛芽、及びマトリックスで示され、この染色は、休止期-成長期の移行中のWnt/β-カテニンシグナルの活性化を示す。
【0064】
更に、野生型マウスへのCK1阻害剤の局所塗布を実施して、マウスの背部の皮膚におけるCK1発現を阻害した。
図4Aに示されるように、8週齢のマウス背部の剃毛した皮膚に、0.1mg/cm
2の濃度で局所CK1阻害剤(例えば、A51)を2回又は3回投与した。
図4Bは、9週目という早い時期にCK1阻害剤A51で局所的に処置されたマウスの背部における発毛の開始を示す。マウスの背部の大部分は12週目には毛で覆われた。
図4Cは、背部の皮膚のH&E染色を示す。対照群では、9週目、10週目、及び12週目の間、毛包が休止期のままであることが見出された。しかしながら、8週目に0.2mgのCKIで局所的に処置したマウスでは、9週目に成長期の誘導が観察され、0.3mgのCKIで局所的に処置したマウスでは、9週目に段階がより進行した成長期が誘導され、12週目には濃く着色した毛幹が観察された。すなわち、CK1阻害剤の局所塗布は、休止期から毛包の成長期を誘導及び開始することもできる。
図4Dは、β-カテニンの免疫組織化学染色の結果を示す。CK1阻害剤の局所塗布は、対照マウスと比較して、毛芽、外毛根鞘、及び表皮におけるβ-カテニンの発現を増加させた。
図4Eは、フォンタナ・マッソン染色の結果を示す。この染色によると、CK1阻害剤で処置した皮膚は、発毛に加えて毛包着色を示す。したがって、CK1阻害剤の局所塗布は、毛包成長及び着色した毛の形成を誘導する。
【0065】
D4476及びIC261を含むその他のCK1阻害剤も試験した。
図5Aに示すように、CK1阻害剤であるD4476及びIC261を、1cm
2の背部の皮膚当たり0.12mgの総用量で、8週齢のマウスの剃毛した背部の皮膚に1日おきに週3回局所塗布した。
図5Bは、D4476又はIC261の局所塗布が、毛周期を休止期から成長期へと移行させる結果として、処置されたマウス(N=3)の背部の皮膚上で発毛が有意に誘導されることを示す。
図5Cは、背部の皮膚のH&E染色を示す。CK1阻害剤の局所塗布が、毛周期の成長期を誘導することが見出され、及び成長期の特徴を示す毛包の形成が観察された。
図5Dは、β-カテニンの免疫組織化学染色の結果を示す。CK1阻害剤であるD4476及びIC261の局所塗布は、毛包のマトリックス中のβ-カテニンの発現も増加させた。
図5Eは、毛包成長及び着色した毛の形成を誘導するD4476及びIC261などの更なるCK1阻害剤の局所塗布についてのフォンタナ・マッソン染色の結果を示す。
【0066】
実施例2:CK1αの阻害は、毛周期における成長期を延長する。
ケラチノサイトの成長期中にCK1αを欠損させると、毛周期における成長期の期間が増加することが見出された。
図6Aに示されるように、4週齢のK14-Cre-ERT2-CK1α
fl/flマウスの背部の皮膚のケラチノサイトにおけるCK1α欠損の局所的誘導のために、4-OH-TMXを使用した。表現型を4週目から8週目まで記録した。
図6Bに示すように、対照マウス(N=6)では、4週目から5週目まで成長期が続き、6週目に退行期となり、7週目から8週目までは休止期を維持することが分かった。Ck1α欠損マウス(N=6)では、6~8週目に毛が現れ、剃毛した背部の皮膚を覆い始め、成長期が延長されたことを示した。
図6Cは、8週目のマウスのH&E染色及びβ-カテニン染色を示す。対照マウスは8週目には休止期にあったが、CK1αを欠損したマウスでは、8週目にも毛包のマトリックスにおけるβ-カテニン染色が増強されており、依然として成長期にあることが見出された。
【0067】
実施例3:CK1の阻害は毛の着色を増加させる。
ケラチノサイトにおけるCK1の阻害は、毛の着色も増加させることが見出された。毛周期が休止期中である8週目に、マウスの剃毛した背部皮膚に、A51、D4476、及びIC261を含むCK1阻害剤を局所塗布した。次に、マッソン・フォンタナ染色を行い、毛の着色を評価した。
図4Eに示すように、A51で局所的に処置したマウスの毛において、また、
図5Eに示すように、D4476及びIC261で局所的に処置したマウスの毛においても、濃く着色した毛包及び毛幹が見出された。
【0068】
野生型マウス(黒色C57BL/6)に加えて、Mc1r
549delマウスも動物モデルとして使用したところ、CK1の阻害による毛の着色の増加を示した。12アミノ酸のフレーム外変異をもたらすMc1rの549位の単一ヌクレオチドの欠失を有するMc1r
549delマウスが、Mountjoy、Robbins et al.1992によって報告されている。Mc1r遺伝子の549位に単一ヌクレオチドの欠失を有するC57BL/6J-Mc1r
549delマウスは、CRISPR/Cas9系によって以前に作製された。
図7Aの写真に示すように、この欠失は、フレームシフト変異を引き起こし、Mc1rタンパク質の機能の喪失をもたらし、メラノサイトによるフェオメラニンに限った合成及びユーメラニンの合成失敗により、マウスの被毛色を黄色にする。次いで、Mc1r
549delマウスをK14-CreER-CK1α
f/fマウスと交配させて、ケラチノサイトにおいてCK1αを欠損するように誘導することができるK14-CreER-CK1α
f/f;Mc1r
549delマウスを作製した。
図7Bに示すように、7週齢のマウスに、100mg/kgのタモキシフェンを、1日目、2日目、5日目、6日目、8日目、及び9日目の合計6回腹腔内注射し、誘導を行った。分析のために、14日目、28日目、42日目、及び56日目に皮膚サンプルを採取した。
図7Cに示されるように、CK1α欠損したMc1r
549delマウスのケラチノサイトでは、28日目に、Mc1r
549delマウスと比較して毛の着色の増加が認められた。
図7Dに示される解剖顕微鏡の結果は、CK1α欠損したMc1r
549delマウスのケラチノサイトでは、14日目及び28日目に、Mc1r
549delマウスと比較して毛幹の着色が増加していることに関して、より接近した、より明確な視野を提示する。
図7Eは、皮膚サンプルのフォンタナ・マッソン染色を示す。CK1α欠損したMc1r
549delマウスのケラチノサイトにおける経時的分析により、マトリックス及び内毛根鞘においてユーメラニンの強度が増加していたことが示されたが、この増加はMc1r
549delマウスでは観察されない。
図7Fは、
図7Eにおけるフォンタナ・マッソン染色によって染色された細胞の測定数を示す。
図7G及び
図7Hは、ウェスタンブロットの結果及び対応する定量化した発現レベルを示す。β-カテニン及びp53の安定化、並びにKitL、c-Kit、MITF及びチロシナーゼのアップレギュレーションを明らかにする。KitL/C-Kit経路は、毛の着色をアップレギュレーションされた。
図7Iは、14日目及び28日目のMc1r
549delマウスとCK1α
-/-;Mc1r
549delマウスの背部の皮膚を比較するユーメラニン分析を示す。パネルaはユーメラニン分析の実験計画を示す。Mc1r
549delマウスのCK1αを欠損させるためのタモキシフェンの腹腔内注射。誘導後14日目及び28日目に、比較する対照とCK1αノックアウトの背部の皮膚を採取した。パネルbに示されるように、データは、CK1αノックアウト後のMc1r
549delマウスにおけるユーメラニン産生の増加を示す。マウスの背部の皮膚上のユーメラニンは主に毛包に存在することから、毛のある皮膚におけるCK1α阻害が毛の色素を増加させ得ることを示している。
【0069】
実施例4:皮脂腺及び皮脂腺細胞に対するCK1阻害の効果
図8Aに示すように、K14-CreER-CK1α;ROSAmT/mGのマウスの耳の皮膚における生体内多光子イメージングである。誘導前、皮脂腺(SG)及び毛包(HF)のケラチノサイトは赤色蛍光を示す。誘導後、CK1αを欠損したケラチノサイトは緑色蛍光を示す。3日目に、皮脂腺のK14
+基底層は緑色蛍光を示した。基底層は、誘導されたHF伸長中17日目まで増殖し、緑色蛍光を伴うSGに分化することができる。SG及びHFにおけるCK1αの阻害中、SGの大きさは減少したが、HFの増殖は増強されたことで、CK1α阻害が、SGの大きさを調節し、毛嚢脂腺単位における多能性幹細胞の運命特定に関与し得ることが示されている。
図8Bに示すように、SZ95(ヒト皮脂腺細胞株)をIC261で24時間処理した。細胞数は1.5×10
4個/ウェルであり、IC50は約475.6nMである。
図8Cに示すように、SZ95細胞培養物は、様々な分化段階の脂腺細胞を提示した。PPARγは、脂腺細胞における脂質生成についての代表的なバイオマーカーであり、c-Mycは、未分化脂腺細胞についてのバイオマーカーである。まとめると、IC261処理は、PPARγの減少及びc-Mycの増加を誘導し、IC261処理による、脂腺細胞における脂質生成又は分化の阻害に対するその効果を示す。
図8Dに示されるように、LC3Bはオートファジーについてのマーカーである。全体として、SZ95細胞に対するIC261処理は、用量依存的にLC3B増加を誘導した。この増加は、IC261が脂腺細胞においてオートファジーを誘導することを示す。
【0070】
本開示は、その実施形態と共に説明されており、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正が本開示の実施形態に従うことが理解される。したがって、説明される実施形態は、本開示を限定するのではなく、本開示の範囲内の修正を包含することが意図される。したがって、特許請求の範囲は、全てのそのような修正を包含するように最も広い解釈を与えられるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カゼインキナーゼ1阻害剤を含む、発毛増強のために使用される組成物であって、
前記カゼインキナーゼ1阻害剤が、D4476、IC261、CKI7、以下の一般式Iによって表される化合物:
【化1】
(式中、
R
1
及びR
2
は、それぞれ独立して、H、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルコキシ、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアシル、炭素数5~15のアリール、及び炭素数3~7のヘテロアリールからなる群から選択され、それぞれが、ハライド、ヒドロキシル、エステル、エーテル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、及びアミドの少なくとも1つによって任意に置換され;又は、R
1
及びR
2
は、それらが結合している窒素原子と共に、4~7員の飽和環、不飽和環、又は芳香族環を形成し、これらの環は、N、O、NH、C=N、C=O、及びSO
2
の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ヒドロキシル、ハライド、及びシアノの少なくとも1つで任意に置換され;
R
3
及びR
4
は、それぞれ独立して、H;ハライド、ヒドロキシル、アルコキシ、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、エステル、及びアミドの少なくとも1つによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキルからなる群から選択され;又は
R
1
若しくはR
2
は、R
3
、並びにそれらがそれぞれ結合している炭素及び窒素原子と共に、4~7員の飽和環、不飽和環、又は芳香族環を形成し、これらの環は、N、NH、O、C=N、C=O、及びSO
2
の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ヒドロキシル、カルボニル、及びハライドの少なくとも1つで任意に置換され;
R
5
及びR
8
は、それぞれ独立して、H、ハライド、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、及び少なくとも1つのハライドによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニルからなる群から選択され;
R
6
は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニル、炭素数5~10のシクロアルキル、及び直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、炭素数3~7のシクロアルキル、4~6員複素環、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ハライド、ヒドロキシル、及び炭素数1~5のアルキルハライドの少なくとも1つによって任意に置換される飽和又は不飽和4~6員複素環から選択され;
R
7
は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、及び炭素数3~7のシクロアルキル、4~6員複素環、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ハライド、ヒドロキシル、及び炭素数1~5のアルキルハライドの少なくとも1つによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニルからなる群から選択される)、
式II~VIIによって表される化合物:
【化2】
からなる群から選択され、
それを必要とする対象の皮膚領域に局所投与される、組成物。
【請求項2】
前記対象が脱毛又は脱毛症に罹患している、請求項1に記載の
組成物。
【請求項3】
前記脱毛が、栄養欠乏によって引き起こされる脱毛、薬剤性脱毛、放射線誘導性脱毛、ストレス性脱毛、遺伝性脱毛、加齢性脱毛、又は疾患性脱毛であり、
前記脱毛症が、アンドロゲン性脱毛症、円形脱毛症、成長期脱毛症、外傷性脱毛症、休止期脱毛症、及び瘢痕性脱毛症からなる群から選択される、請求項
2に記載の
組成物。
【請求項4】
前記薬剤性脱毛が、化学療法薬、リチウム、ヒ素、ビスマス、ホウ酸、タリウム、コルヒチン、レチノイド、ヘパリン、ワルファリン、β遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、ホルモン、バルプロ酸、カルバマゼピン、フェニトイン、シメチジン、抗甲状腺薬、コレステロール低下薬、インターフェロン、抗感染症薬、アンフェタミン、抗うつ薬、抗真菌剤、抗発作剤、避妊薬、ビタミンA系薬剤、パーキンソン病用薬剤、胃の薬、又は非ステロイド性抗炎症薬によって誘導され、
前記疾患性脱毛が、自己免疫疾患、甲状腺疾患、メタボリックシンドローム、感染症、又はがんによって引き起こされる、請求項
3に記載の
組成物。
【請求項5】
前記自己免疫疾患が、円形脱毛症、エリテマトーデス、乾燥症候群、強皮症、クローン病、炎症性腸疾患、又は乾癬である、請求項
4に記載の
組成物。
【請求項6】
前記カゼインキナーゼ1阻害剤が、皮膚領域における毛包周期を調節する、請求項5に記載の
組成物。
【請求項7】
カゼインキナーゼ1が、休止期又は成長期中に阻害される、請求項6に記載の
組成物。
【請求項8】
前記調節することが、前記毛包周期を成長期に誘導することであり、
前記カゼインキナーゼ1の阻害前に、前記毛包周期が休止期にある、請求項
7に記載の
組成物。
【請求項9】
前記調節することが、毛包の成長期を延長することであり、
前記カゼインキナーゼ1の阻害前に、前記毛包が成長期にある、請求項
7に記載の
組成物。
【請求項10】
カゼインキナーゼ1阻害剤を含む、毛髪着色増加のために使用される組成物であって、
前記カゼインキナーゼ1阻害剤が、D4476、IC261、CKI7、以下の一般式Iによって表される化合物:
【化1】
(式中、
R
1
及びR
2
は、それぞれ独立して、H、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルコキシ、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアシル、炭素数5~15のアリール、及び炭素数3~7のヘテロアリールからなる群から選択され、それぞれが、ハライド、ヒドロキシル、エステル、エーテル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、及びアミドの少なくとも1つによって任意に置換され;又は、R
1
及びR
2
は、それらが結合している窒素原子と共に、4~7員の飽和環、不飽和環、又は芳香族環を形成し、これらの環は、N、O、NH、C=N、C=O、及びSO
2
の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ヒドロキシル、ハライド、及びシアノの少なくとも1つで任意に置換され;
R
3
及びR
4
は、それぞれ独立して、H;ハライド、ヒドロキシル、アルコキシ、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、エステル、及びアミドの少なくとも1つによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキルからなる群から選択され;又は
R
1
若しくはR
2
は、R
3
、並びにそれらがそれぞれ結合している炭素及び窒素原子と共に、4~7員の飽和環、不飽和環、又は芳香族環を形成し、これらの環は、N、NH、O、C=N、C=O、及びSO
2
の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ヒドロキシル、カルボニル、及びハライドの少なくとも1つで任意に置換され;
R
5
及びR
8
は、それぞれ独立して、H、ハライド、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、及び少なくとも1つのハライドによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニルからなる群から選択され;
R
6
は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニル、炭素数5~10のシクロアルキル、及び直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、炭素数3~7のシクロアルキル、4~6員複素環、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ハライド、ヒドロキシル、及び炭素数1~5のアルキルハライドの少なくとも1つによって任意に置換される飽和又は不飽和4~6員複素環から選択され;
R
7
は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、及び炭素数3~7のシクロアルキル、4~6員複素環、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ハライド、ヒドロキシル、及び炭素数1~5のアルキルハライドの少なくとも1つによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニルからなる群から選択される)、
式II~VIIによって表される化合物:
【化2】
からなる群から選択され、
それを必要とする対象の皮膚領域に局所投与される、組成物。
【請求項11】
前記皮膚領域が、白髪を含む、請求項10に記載の
組成物。
【請求項12】
カゼインキナーゼ1阻害剤を含む、皮脂腺を調節するために使用される組成物であって、
前記カゼインキナーゼ1阻害剤が、D4476、IC261、CKI7、以下の一般式Iによって表される化合物:
【化1】
(式中、
R
1
及びR
2
は、それぞれ独立して、H、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルコキシ、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアシル、炭素数5~15のアリール、及び炭素数3~7のヘテロアリールからなる群から選択され、それぞれが、ハライド、ヒドロキシル、エステル、エーテル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、及びアミドの少なくとも1つによって任意に置換され;又は、R
1
及びR
2
は、それらが結合している窒素原子と共に、4~7員の飽和環、不飽和環、又は芳香族環を形成し、これらの環は、N、O、NH、C=N、C=O、及びSO
2
の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ヒドロキシル、ハライド、及びシアノの少なくとも1つで任意に置換され;
R
3
及びR
4
は、それぞれ独立して、H;ハライド、ヒドロキシル、アルコキシ、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、エステル、及びアミドの少なくとも1つによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキルからなる群から選択され;又は
R
1
若しくはR
2
は、R
3
、並びにそれらがそれぞれ結合している炭素及び窒素原子と共に、4~7員の飽和環、不飽和環、又は芳香族環を形成し、これらの環は、N、NH、O、C=N、C=O、及びSO
2
の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~5のアルキル、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ヒドロキシル、カルボニル、及びハライドの少なくとも1つで任意に置換され;
R
5
及びR
8
は、それぞれ独立して、H、ハライド、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、及び少なくとも1つのハライドによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニルからなる群から選択され;
R
6
は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニル、炭素数5~10のシクロアルキル、及び直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、炭素数3~7のシクロアルキル、4~6員複素環、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ハライド、ヒドロキシル、及び炭素数1~5のアルキルハライドの少なくとも1つによって任意に置換される飽和又は不飽和4~6員複素環から選択され;
R
7
は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~8のアルキル、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルケニル、及び炭素数3~7のシクロアルキル、4~6員複素環、炭素数5~15のアリール、炭素数3~7のヘテロアリール、ハライド、ヒドロキシル、及び炭素数1~5のアルキルハライドの少なくとも1つによって任意に置換される直鎖又は分岐鎖の炭素数2~8のアルキニルからなる群から選択される)、
式II~VIIによって表される化合物:
【化2】
からなる群から選択され、
それを必要とする対象の皮膚領域に局所投与される、組成物。
【請求項13】
前記カゼインキナーゼ1阻害剤が、前記皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1の遺伝子発現を阻害する、請求項
1乃至12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記皮膚領域におけるカゼインキナーゼ1が、カゼインキナーゼ1αである、請求項
1乃至12のいずれか一項に記載の組成物。
【国際調査報告】