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特表2024-527194複数の病巣をモニタリングする為のシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-22
(54)【発明の名称】複数の病巣をモニタリングする為のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20240712BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240712BHJP
【FI】
G01T1/161 D
G06T7/00 612
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508998
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 US2022071534
(87)【国際公開番号】W WO2022232741
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】17/240,222
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023641
【氏名又は名称】ウイスコンシン アラムナイ リサーチ ファウンデーシヨン
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
(71)【出願人】
【識別番号】523403690
【氏名又は名称】エーアイキュー ソリューションズ インク.
【氏名又は名称原語表記】AIQ SOLUTIONS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ジェラジェイ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス,ビクター
(72)【発明者】
【氏名】パーク,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】フェルジャンチッチ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ハフ,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C188
5L096
【Fターム(参考)】
4C188EE02
4C188FF04
4C188FF07
4C188KK24
4C188MM05
5L096AA06
5L096AA09
5L096BA06
5L096BA13
5L096DA01
5L096DA02
5L096EA02
5L096FA06
5L096FA62
5L096FA64
5L096FA67
5L096FA69
5L096FA77
5L096GA32
5L096MA07
(57)【要約】
複数の病巣によって明らかにされる病変の進行を追跡する為の方法及び装置は、大域的最適化を実行して、例えば病巣の輪郭がモルフォロジー的にダイレーションされた後に、オーバーラップによって対応病巣を識別する。クラスタリングアルゴリズムは、病巣が部分に分離したり、互いに結合したりする問題に対処し、病変進行の明確な全体像を提供する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の治療を評価する為の装置であって、
(a)病変組織を明らかにする、前記の患者の組織の第1のスキャンとそれに続く第2のスキャンを受信することと、
(b)前記第1及び第2のスキャンのレジストレーションを実行することと、
(c)前記第1のスキャンにおける第1の病巣と前記第2のスキャンにおける第2の病巣を識別することと、
(d)前記第1の病巣周辺の第1の領域と前記第2の病巣周辺の第2の領域とのオーバーラップを測定することと、
(e)前記第1及び第2の領域のオーバーラップの大域的最適化に基づいて、第1の病巣を対応する第2の病巣に大域的に割り当てることと、
(f)対応する第1の病巣と第2の病巣の変化を比較して、病変の進行を示すレポートを提供することと、
を行う記憶されたプログラムを実行する電子コンピュータを備えた装置。
【請求項2】
前記割り当てが線形最適化を実行する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記割り当てがムンクレス割り当てアルゴリズムを採用する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記レポートが、病巣のカテゴリーを出現又は消失又は対応として識別し、対応病巣は前記第1及び第2のスキャンにおける同じ病巣の表現を含み、出現病巣は前記第1のスキャンに対応病巣を有していない前記第2のスキャンにおける病巣であり、消失病巣は前記第2のスキャンに対応病巣を有していない前記第1のスキャンにおける病巣である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記レポートが、前記第1及び第2のスキャンの間の病巣体積の変化及び異なる病巣を識別する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
ステップ(c)の後に病巣をクラスタリングして、前記第1及び第2のスキャンの内の他方における単一の病巣とオーバーラップする前記第1及び第2のスキャンの内の一方における少なくとも2つの病巣を、前記第1及び第2のスキャンの内の一方において単一の病巣に結合するステップを更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記結合が、前記単一の病巣の寸法と比較して、前記少なくとも2つの病巣の分離を評価する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記単一の病巣の前記寸法が、前記少なくとも2つの病巣の中心間の軸との関係において測定される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記寸法が、前記軸から所定の分離角を超えない前記単一の病巣の最大弦長である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記所定の分離角が10度未満である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記領域が前記病巣より大きく、前記病巣に共形的である請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記領域が少なくとも15mmのマージンだけダイレーションされている請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記領域が、前記領域の周りの所定のエリアにおける病巣の密度に機能的に関連するマージンだけダイレーションされている請求項11に記載の装置。
【請求項14】
スキャンが分子イメージングスキャンである請求項1に記載の装置。
【請求項15】
レジストレーションが非剛体レジストレーションの三次元レジストレーションを提供する請求項1に記載の装置。
【請求項16】
患者の癌治療を評価する為の方法であって、
(a)病変組織を識別する前記患者の組織の第1のスキャンとそれに続く第2のスキャンを受信することと、
(b)前記第1及び第2のスキャンの大域的レジストレーションを実行することと、
(c)前記第1のスキャンにおける第1の病巣と、前記第2のスキャンにおける第2の病巣を識別することと、
(d)前記第1の病巣の周囲の領域と前記第2の病巣の周囲の領域とのオーバーラップを測定することと、
(e)対応する第1の病巣と第2の病巣とのオーバーラップに従って、第1の病巣を対応する第2の病巣に大域的に割り当てることと、
(f)対応する第1の病巣と第2の病巣の変化を比較して、病変の進行を示すレポートを提供することと、を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府後援の研究開発に関する陳述
(関連出願の相互参照)
本願は、参照により本明細書に組み込まれる2021年4月26日出願の米国非仮出願第17/240,222号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、病変治療を評価する為の、特に、特に病巣の数が多いか又は密度が高い場合に、改善された病巣追跡を提供するコンピュータ化評価システムの為の技術に関する。
【背景技術】
【0003】
転移は、癌に関連した死亡の主要な原因である。転移では、原発性癌の細胞はそれらが最初に形成された場所から抜け出して、体内を移動して新たな病巣を形成する。各転移病巣は治療に対して異なる反応を示すことがあり、それに応じて病変反応を完全に理解する為に病巣レベルの評価が必要となることがある。しかしながら、このような病巣の評価は困難であり、典型的には、何百もの対応病巣を手作業で照合する必要があり、面倒で、主観的で、誤りを犯しやすい作業である。
【0004】
医用撮像は、転移病巣を識別し、それらの進行と治療反応をモニタリングする為の重要なツールである。医用撮像では、病変組織に親和性のある放射性同位体等の造影剤を患者に注入し、MRI、CT及び/又はPET等の撮像モダリティを用いて追跡する。
【0005】
病巣の画像を得ることができるようになった為、そのような画像を用いた病巣の自動追跡方法が研究されるようになった。これらのシステムでは、病巣は、例えば、時間的に分離された異なる画像における分子イメージングシグネチャー(例えば、取り込み)によって自動的に識別される。これらの画像を比較することにより、病変の進行及び/又は治療の有効性を評価することが可能になる。
【0006】
本発明の譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる、「骨病変評価の為の画像強調システム(Image Enhancement System for Bone Disease Evaluation)」と題する特許文献1は、病巣追跡システムを骨格系に存在する腫瘍について記載している。これらの後者は、関節を有するが剛体の標的を提示して、縦断的に取得された画像のレジストレーションを単純化する。患者の解剖学的構造全体に広がる転移病巣のより一般的な病巣追跡システムは、依然として困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第10,445,878号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、(1)連続する画像において病巣の複数の又は曖昧なオーバーラップを生じ得る高い病巣密度に対応できないこと、及び(2)分裂、融合、出現、又は消失する病巣を適切に考慮又は区別できないことを含む、病巣追跡へのその広範な適用可能性を制限する自動病巣追跡への現在のアプローチにおける重要な欠陥を特定した。本発明は、この前者の問題に、病巣周囲の共形的にダイレーションされたエリアに基づく最適化によって対処する。これは、より後の画像における対応領域をより良好に識別する。病巣の経時的な変わり易さは、腫瘍輪郭における特徴的な不規則性からの情報に基づくクラスタリングプロセスによって対処される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態では、本発明は、記憶されたプログラムを実行して以下を行う電子コンピュータを用いて、患者の癌治療を評価する為の装置を提供する。
(a)病変組織を明らかにする患者の組織の第1のスキャン及びそれに続く第2のスキャンを受信すること、
(b)第1及び第2のスキャンのレジストレーションを実行すること、
(c)第1のスキャンにおける病変組織からの第1の病巣と、第2のスキャンにおける病変組織からの第2の病巣とを識別すること、
(d)第1の病巣の周囲の第1の領域と第2の病巣の周囲の第2の領域とのオーバーラップを測定すること、
(e)第1の病巣と第2の病巣との間の大域的最適化されたオーバーラップに基づいて、第1の病巣を、対応する第2の病巣に割り当てること、並びに
(f)対応する第1の病巣と第2の病巣の変化を比較して、病変の進行を示すレポートを提供すること。
【0010】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、大域的最適化プロセスを使用することにより、特に病巣野が密集している時に、対応病巣をより良く識別することである。
【0011】
幾つかの実施形態では、大域的な割り当ては、ムンクレス(Munkres)割り当てアルゴリズムを採用し得る線形最適化を実行する。
【0012】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、利用可能な最適化ツールを利用し得る対応病巣を識別する為のアプローチを提供することである。
【0013】
レポートは、病巣のカテゴリーを、出現、消失、又は対応として識別することができ、対応病巣は、第1及び第2のスキャンにおける同じ病巣の表現を含み、出現病巣は、第1のスキャンに対応病巣を有していない第2のスキャンにおける病巣であり、消失病巣は、第2のスキャンに対応病巣を有していない第1のスキャンにおける病巣である。
【0014】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、単純な総体積測定とは対照的に、病巣のこれらのカテゴリーを適切に区別して、治療に対する病巣反応の変動をより良く理解することを可能にすることである。
【0015】
幾つかの実施形態では、レポートは、第1のスキャンと第2のスキャンとの間の異なる病巣における病巣体積の異なる変化を識別し得る。
【0016】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、異なる個々の又は群の病巣に特異的であり得る縦断的な体積比較を提供することである。
【0017】
本発明は、ステップ(c)の後に、病巣をクラスタリングして、第1と第2のスキャンの内の他方における単一の病巣とオーバーラップする第1と第2のスキャンの内の一方における少なくとも2つの病巣を、第1と第2のスキャンの内の前記一方において単一の病巣に結合するステップを含み得る。
【0018】
従って、本発明の少なくとも一つの実施形態の特徴は、病巣が分裂・融合し得るという事実に対応し、例えば分裂した病巣を新たな病巣又は出現病巣として扱うことなく、病巣反応の改善された測定値を提供することである。
【0019】
病巣の結合は、単一の病巣の寸法と比較された複数の病巣の分離を評価することができる。一実施形態では、単一の病巣の寸法は、複数の病巣の中心間の軸との関係で測定されてもよく、例えば、寸法は、軸から所定の分離角を超えない単一の病巣の最大弦長である。場合によっては、所定の分離角は10度未満である。
【0020】
従って、病巣の非対称性を保持する傾向がある生物学的プロセスからの情報に基づくクラスタリングプロセスを提供することが、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴である。
【0021】
病巣の周囲の領域は、病巣よりも大きい共形的な領域であってもよい。
【0022】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、改良された分析の為に、病巣の輪郭に関する情報をオーバーラップの分析において保持することである。
【0023】
幾つかの実施形態では、病巣の周囲の領域は少なくとも15mmのマージンだけダイレーションされる。
【0024】
このように、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、ミスレジストレーションに敏感ではないことと、密集した病巣野の病巣を適切に区別できないこととの間のトレードオフをもたらすことである。
【0025】
スキャンは分子イメージングスキャンであってもよい。
【0026】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、病変組織に関連し、医用画像によって明らかにされる生物学的又は生理学的プロセスの変動に関する知識を通じて、情報に基づいた病巣識別を可能にすることである。
【0027】
レジストレーションは、三次元の非剛体レジストレーションを提供してもよい。
【0028】
従って、本発明の少なくとも1つの実施形態の特徴は、例えば骨格病変の分析とは区別されるように、明確に定義された臓器外の軟組織で良好に機能することである。
【0029】
これらの特定の目的及び利点は、特許請求の範囲に該当する一部の実施形態にのみ該当し得るものであり、従って本発明の範囲を規定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施に使用する分子的(例えば、PET又はSPECT)及び/又は解剖学的(例えば、CT、MRI、又はUS)スキャンを得る為のスキャンプロセスを示す、本発明に関連するハードウェアの簡略ブロック図である。
図2】患者の体全体に分散した複数の病巣領域の定量的測定値を提供する際の主要なステップを示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態で使用される病巣をクラスタリングするプロセスのグラフィック表現であり、関連する寸法及び軸を示す。
図4】大域的プロセスによって正しく分離され得るオーバーラップ病巣の簡略図である。
図5】本発明で可能なレポートを提供するスクリーンディスプレイの図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
システムハードウェア
ここで図1を参照すると、病巣を識別できる医用撮像(例えば分子イメージング)が可能なスキャナ10は、造影剤14(例えば放射性トレーサー等)を患者12に導入した後で、患者12をスキャンすることができる。
【0032】
スキャナ10は、一例では、PET(陽電子放出断層撮影)スキャナであってもよい。当分野において一般に理解されているように、PETは、分子イメージング剤14が病変組織(以後、「病巣」)の全部又は一部に優先的に移動することによって反映される体内の機能的プロセスを明らかにする三次元画像データを生成する核医学撮像技術である。この場合の分子イメージング剤14は陽電子放出放射性ヌクレオチドであり、生物活性分子に結合され、後者は病巣の代謝に関与するように選択される。
【0033】
患者12は少なくとも2つの異なるスキャンを含む複数回撮像されて、2つの「スキャン」16a及び16bに収集され得る分子イメージングデータ15を生成し得る。例えば、スキャン16aは化学療法、放射線療法等による患者12の治療のセッションの前に撮像され、スキャン16bは後に撮像される。任意に、機能的スキャン16は、他のスキャナ20、例えば、従来のキロボルト数又はメガボルト数CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴撮像)、又は超音波システム、典型的には代謝情報を伴わずに解剖学的情報を提示するより高解像度の画像データ18を提供し得るようなものによる追加のスキャンで補足されてもよい。一般に、画像データ18を組み込んだスキャン16は、三次元に分布する体積要素(ボクセル)に各々が関連付けられた複数の点における分子イメージング剤14の測定値を提示するであろうが、明確にする為、二次元のみを図示している。
【0034】
治療前スキャン及び治療後スキャン16は、以下により詳細に説明されるように、処理の為に電子コンピュータ22によって受信され得る。一般に、電子コンピュータ22は、本発明の一部を実現する為に、データ及び記憶されたプログラム28を保持するメモリ26と通信する1つ以上の処理ユニット24を含む。コンピュータ22は、スキャン16に基づくカラー出力画像を表示する為のグラフィックディスプレイ30、及び夫々ユーザによるデータの入力を可能にするキーボード、マウス等のユーザ入力装置32と通信してもよい。一般に、プログラムディスプレイ30は、患者12の複数の病巣位置内の放射性トレーサーの取り込みの測定値に基づいて、病変の進行又は退行を示す出力を表示する。これらの測定値は、一方又は両方のスキャン16に基づいてもよい。本発明は、癌からの転移病巣の追跡に関して説明されるが、本発明者等は、皮膚病巣、網膜血管網異常、アルツハイマー病及び多発性硬化症に関連する脳病巣、種々のポリープ及び嚢胞、動脈石灰化、炎症リンパ節等を含むがこれらに限定されない種々の癌性及び非癌性病巣にも使用され得ることを企図している。
【0035】
プログラミング操作
ここで図2も参照すると、プログラム28は、プロセスブロック33によって示されるように、治療される癌又は他の病変のタイプ、スキャン16にアクセスする為のファイル名、及びイメージング14のタイプの識別(例えば、使用される分子イメージング剤のタイプ)を特徴付けるコンフィギュレーション情報を、入力装置32を介して受け入れてもよい。分子イメージング剤14による撮像の非限定的な例は、DNAを合成している増殖細胞に迅速に蓄積し、PETで撮像することができる細胞増殖のマーカーである18F-FLT(3’-デオキシ-3’[18F]フルオロ-L-チミジン)、及び18F-FDG(2-デオキシ-2-[18F]フルオロ-D-グルコース)を含む。18F-FLT及び18F-FDGは、尿路上皮癌、直腸癌、乳癌、肺癌(非小細胞癌)、前立腺癌、結腸癌、卵巣癌、虫垂癌、腺様癌、扁平上皮癌、及び転移性黒色腫の撮像に使用できる。
【0036】
本発明は更に、拡散強調磁気共鳴画像(DW-MRI)撮像からのパラメトリック拡散マップ、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)トレーサー、更には病巣増強物質を用いない解剖学的特徴付け等、組織病巣を健常組織から区別する他の方法の使用を企図している。
【0037】
取得後に、プロセスブロック34による三次元レジストレーションプロセスを用いて、治療前及び治療後スキャン16を互いにレジストレーション又はマッチングし得る。一例では、このレジストレーションで後のスキャン16aと前のスキャン16bの夫々のボクセル値間の差分二乗和を最小化できるが、本発明者等は正規化相互情報量等のような他のレジストレーション目的関数を使用する可能性を企図している。CT装置(又はMRI装置のような他の解剖学的撮像装置)からのボクセル値は、病巣の可能な変化から独立した解剖学的アライメントを実行するように、PET装置からの分子イメージングデータ上に使用されることが好ましい。本発明は、これらの又は他のレジストレーション技術を使用して二次元でのみレジストレーションを行うことが可能であることも企図している。
【0038】
一例示的実施形態では、参照により本明細書に組み込む、ルカート(Rueckert),D.、ソノダ(Sonoda),L.I.、ヘイエス(Hayes),C.、ヒル(Hill),D.L.G.、リーチ(Leach),M.O.、ホークス(Hawkes),D.J.著、1999年、「自由形状変形を用いた非剛体レジストレーション:乳房MR画像への応用(Nonrigid registration using free-form deformations: application to breast MR images)」、IEEEトランザクションズ・オン・メディカルイメージング(IEEE Transactions on Medical Imaging )、第18巻,第18号:p.712-21に記載されているような3次Bスプライン補間と階層的制御グリッドによる自由形状変換を用いて、可変形レジストレーションをスキャン16bに適用できる。結果として得られるレジストレーションは、下で論じられるように後のスキャン16bから得られるバイナリ病巣マスクに適用される変換フィールドTを提供する。
【0039】
依然として図2を参照すると、後続のプロセスブロック36において、例えば各ボクセルにおいて「1」の値で病巣40を表し、「0」の値で病巣がないことを表す三次元バイナリ病巣マスク38が、スキャン16a及び16bの各々について作成され得る。前述のように、スキャン16は、患者12全体の三次元的に分散したボクセルにおける分子イメージング剤の取り込みを表すデータ点の集合を提供する。バイナリ病巣マスク38を生成する1つの方法は、領域42内の分子イメージング取り込み値を、例えばバックグラウンド取り込みレベルを僅かに上回る閾値に対して評価してもよい。次いで、閾値52を超える分子イメージング剤取り込み値を有する患者12のボクセルが、病巣40として識別され得る。例えば、取り込みの勾配に基づく方法又は撮像特徴識別方法を含む他の識別技術が企図される。バイナリ病巣マスク38がスキャン16b用に展開された後で、スキャン16a及び16b用のマスクがほぼレジストレーションされるように、上述した変換フィールドTがそのマスク38に適用される。
【0040】
次に、バイナリ病巣マスク38の識別された病巣40は、例えば、1回以上の連続した反復で、病巣40の周縁部の境界を所定のマージンだけ膨張させるモルフォロジー的な数学的ダイレーションによって、ダイレーション又は膨張させられ得る。重要なことは、このダイレーションは共形的であり、球状病巣を想定しているのではなく、実際の病巣外面に沿っていることである。一実施形態では、ダイレーションは25mmから30mmの間、望ましくは15mmから40mmの間である。幾つかの実施形態では、ダイレーションは全ての方向で一様(例えば球状)でなくともよく、病巣が辿ることが知られている特定の解剖学的方向(例えば、乳管)に沿って相対的に長くてもよいし、或いは、病巣が見込まれない組織によって、例えば骨や他の解剖学的構造(例えば、頭蓋骨、他の骨)によって制限されることもある。
【0041】
このダイレーションは、スキャン16a及び16bの両方で実行され、各スキャン16において病巣40の周りに膨張させられた領域42を作成する。領域42は、異なるスキャン16a及び16bにおける対応する領域42間のオーバーラップ46を規定する。ダイレーションの量は、オーバーラップ46を制御し、従って、ミスレジストレーションされたがそれにも拘らず対応する病巣40(即ち、異なるスキャン16a及び16bにおける同じ病巣)を識別するシステムの能力を設定し、この原理によって導かれるように調整され得る。一実施形態では、ダイレーションの量は、病巣40の局所的な密度(体積当たりの病巣の数)に応じて、スキャン16の異なる部分において動的に変更されてもよく、密度が低い時にはダイレーションを増加させる。例えば、密度は、ダイレーションされる病巣40を包含する球の直径の所定の倍数、例えば5である球状領域を規定するように計算されてもよい。
【0042】
依然として図2を参照すると、後続のプロセスブロック44において、スキャン16aの各病巣40とスキャン16bの各病巣40とのオーバーラップ量46がコンパイルされる。この情報は、例えば、次元N×Nの論理行列Mに記録されてもよく、ここで、Nは、スキャン16a又は16bにおいて識別された病巣の最大数であり、各行列要素Mi,jは、サブスクリプトi及びjによって数字で識別された領域42の交差におけるカーディナリティを記述する(「i」は、スキャン16aにおける病巣40の識別番号であり、「j」は、スキャン16bにおける病巣40の任意の識別番号である)。交差のカーディナリティは、最も単純には、オーバーラップ46におけるボクセルの数である。
【0043】
引き続くプロセスブロック48において、病巣がスキャン16aと16bの間で融合又は分裂している可能性は、単一の所与のスキャン16a又は16b内のさもなければ別個の病巣40と40’を1つの病巣40としてリンクするクラスタリング操作によって対処される。クラスタリング操作は、各スキャン16a(病巣40の融合について)とスキャン16b(病巣40の分離について)を別々に考慮する。
【0044】
次に図3を参照すると、何れか一方のスキャンの病巣40についてのクラスタリングは、他方のスキャンの共通の病巣とオーバーラップする最初のスキャンの病巣40の分析に限定される。例えば、後のスキャン16bにおける病巣40b及び40c(ここでは明瞭化の為にそれらの領域42によって表される)は、先のスキャン16aにおける病巣40aとのそれらのオーバーラップによってリンクされ得、従ってクラスタリングを考慮され得る。クラスタリングプロセスでは、病巣40b及び40cのセントロイド52間の軸50が定義され、それらのセントロイド52間の距離dが決定される。次に、対応する距離d’が病巣40a上に展開される(明瞭にする為に、図3では複製され、病巣40b及び40cからずらしてある)。病巣40aのセントロイド52’を通る最大弦長であり、軸50に平行な中心位置とその中心位置から所定の角度の偏差の範囲極値(角度の偏差の2倍に等しい頂角を有し、軸50を中心とする円錐)とを有する軸54の角度の範囲に亘って評価される。一実施形態では、角度の範囲はプラスマイナス5度であり得る。dの長さがd’より小さい場合、病巣40b及び40cは、その後の分析の為に論理上の単一の病巣となるようにクラスタリングされる。説明したように、このプロセスは、スキャン16a及び16bの間で分裂している病巣40と結合している病巣40の両方に対して働くことに留意されたい。複数の病巣が存在する場合、軸50は、例えば最小二乗法によってセントロイド52にフィットした線であり得る。
【0045】
再び図2及びプロセスブロック60を参照すると、病巣40は次に、任意であるが病巣に固有のシーケンスで番号が付け直され、上述の行列Mが再構成される。オーバーラップ46は、今度は、他方のスキャン16における病巣とのオーバーラップ46内のボクセルの数に関して、一方のスキャン16におけるクラスタリングされた病巣40及び40’の和集合を考慮する。クラスタリングによってこのように定義された病巣40をここで分析して、スキャン16aと16bとの間の対応病巣を識別する。重要なことは、異なるスキャン16a及び16bにおける病巣40のこの関連付けは、最適化を大幅に改善する為に、非グリーディーな大域的プロセスを採用していることである。
【0046】
一実施形態では、行列M(上述したクラスタリングに対応するように調整された)は、Ci,j=1/Mi,j(病巣40間のオーバーラップを最大にしたいという要望を反映する)であるコスト行列Cを開発する為に使用され、このコスト行列を使用して、スキャン16aの病巣40から病巣40及びスキャン16bへの線形割り当て問題を解く。一実施形態では、このプロセスは、参照により本明細書に組み込まれる、ジャカマン(Jaqaman),K.、レールケ(Loerke),D.、メットレン(Mettlen),M.、クワタ(Kuwata),H.、グリンステイン(Grinstein),S.、シュミッド(Schmid),S.L.、ダヌサー(Danuser),G.著、2008年、「生細胞タイムラプスシーケンスにおけるロバストな単粒子追跡(Robust single-particle tracking in live-cell time-lapse sequences)」、ネイチャーメソッズ(Nature Methods)第5巻,p.695-702に記載の技術を踏襲してもよい。一般に、その結果、対応病巣間のオーバーラップ46の量は、1つのスキャン16における所与の病巣40が第2の画像16bにおける単一の病巣にのみ対応し得るという制約の下で、大域的最大化される。
【0047】
次に図4を参照すると、このプロセスを用いて、スキャン16aからの病巣40a及び40bは、例えばグリーディーアルゴリズムによるマッチングで起こり得るようなもの、病巣40aが病巣40’a及び40’bの両方にマッチングされるのではなく、スキャン16bからの病巣40’a及び40’bに夫々適切にマッチングされ得る。
【0048】
引き続くプロセスブロック62において、又、図5を参照すると、スキャン16aと16b間の対応病巣40の識別の結果、各病巣42が、対応病巣(スキャン16a及び16bの両方にカウンターパートを有する)、又はスキャン16bに存在するがスキャン16aにカウンターパートを有していない出現病巣、又はスキャン16aにインスタンスを有するがスキャン16bに対応病巣を有していない消失病巣40として識別されることを可能にする。この情報は、レポート61において、例えば、チャート項目64によって示されるように、これらの各カテゴリーの病巣の数を定量的に描写するチャートの形態でディスプレイ30上に提供され得る。重要なことに、各病巣(対応、出現、又は消失)は、患者の画像66(又は可動な拡大部分65)上に、スキャン16a又は16bの内の1つ以上から展開した固有のシンボル67(例えば、消失病巣には「x」、出現病巣には「n」、対応病巣には丸印)でマークされてもよく、その結果、医師は、病巣に関連する何らかの傾向の理解を、特定のエリア又は領域において、例えば消失病巣の数がより多い領域において、それらの領域における治効に関して得ることができる。個々の病巣(個々の病巣40に関連したポップアップ68に拡大表示される)又はエリア(チャートのエリア70に示される)で定義された病巣群も、病巣体積の減少又は増加の有無に関して(例えば、プラス記号又はマイナス記号によって)定量的に且つ画像上で追跡され得る。より一般的には、陰影付きの領域エリア72を画像66に適用して、それらの領域の病巣の病巣体積の増減に関するそれらの領域の数学的一般化を提供してもよい。例えば、赤色で病巣体積の増加を示し、緑色で病巣体積の減少を示す。
【0049】
他の実施形態では、レポートは、造影剤の最大取り込み値、平均取り込み値、合計取り込み値に関する情報も提供してもよい。
【0050】
特定の用語は、本明細書では参照の目的でのみ使用され、従って限定を意図するものではない。例えば、「上(upper)」、「下(lower)」、「上(above)」、「下(below)」等の用語は、参照される図面における方向を指す。「前面」、「背面」、「後面」、「底面」、「側面」等の用語は、一貫しているが任意の参照系内でのコンポーネントの部分の向きを表す。これは、論述するコンポーネントを説明する本文及び関連図面を参照することで明確になる。このような用語には、上記で特に言及した語、その派生語、及び類似の意味の語が含まれる。同様に、構造に言及する用語「第1」、「第2」及び他のそのような数的な用語は、文脈によって明確に示されない限り、シーケンス又は順序を意味しない。
【0051】
本開示及び例示的な実施形態の要素又は特徴を紹介する場合、冠詞「a」、「an」、「the」及び「前記(said)」は、そのような要素又は特徴が1つ以上存在することを意味することが意図される。「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、包括的であることを意図しており、具体的に記載された要素又は特徴以外の追加の要素又は特徴が存在し得ることを意味する。更に、本明細書に記載された方法のステップ、プロセス、及び操作は、実施順序として特に特定されない限り、必ずしも、論述又は図示された特定の順序で実施する必要があると解釈されるものではないことを理解されたい。又、追加的又は代替的なステップを採用してもよいことも理解されたい。
【0052】
電子コンピュータへの言及は、スタンドアロン環境及び/又は分散環境(複数可)で通信することができ、従って、他のプロセッサと有線又は無線通信を介して通信するように構成され得る1つ以上のコンピュータを含むと理解することができ、このような1つ以上のプロセッサは、類似のデバイス又は異なるデバイスであり得る1つ以上のプロセッサ制御デバイスに対して動作するように構成され得る。更に、メモリへの言及は、別段の指定がない限り、プロセッサ制御デバイスの内部でもプロセッサ制御デバイスの外部でもよく、有線又は無線ネットワークを介してアクセスすることができる、1つ以上のプロセッサ可読でアクセス可能なメモリ要素及び/又はコンポーネントを含み得る。
【0053】
本発明が、本明細書に含まれる実施形態及び図示に限定されないことが特に意図され、特許請求の範囲は、以下の特許請求の範囲の範囲内に入るように実施形態の一部及び異なる実施形態の要素の組み合わせを含む、それらの実施形態の改変された形態を含むと理解されるべきである。特許及び非特許刊行物を含む、本明細書に記載された刊行物は全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0054】
10 スキャナ
12 患者
14 イメージング剤
16a,16b スキャン
18 画像データ
20 スキャナ
24 処理ユニット
26 メモリ
28 プログラム
30 ディスプレイ
32 ユーザ入力装置
40 病巣
50、54 軸
52 セントロイド

図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】