(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-23
(54)【発明の名称】シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20240716BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G02C7/04
C08F290/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545896
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 KR2022016455
(87)【国際公開番号】W WO2023224184
(87)【国際公開日】2023-11-23
(31)【優先権主張番号】10-2022-0062008
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0079708
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516334938
【氏名又は名称】インテロジョ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】INTEROJO INC.
【住所又は居所原語表記】28, Sandan-ro 15beon-gil, Pyeongtaek-si, Gyeonggi-do 459-040 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】ピョン スンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ラ ミラエ
(72)【発明者】
【氏名】ハム ヒョンウン
【テーマコード(参考)】
2H006
4J127
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB03
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2H006BC07
4J127AA06
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4J127CB201
4J127CB282
4J127CB283
4J127CC132
4J127CC373
(57)【要約】
【課題】高酸素透過度及び高含水量を示すシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供する。
【解決手段】シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の重合によって調製されたポリマー組成物を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物が、約10~約40重量%の含ケイ素マクロマーと、約200~約1,000g/モルの分子量を有する約1~約20重量%のポリエチレングリコールと、架橋剤又は開始剤と、を含み、重合は、約100℃~約110℃の温度での熱重合又はUV光重合によって、少なくとも約95%のポリエチレングリコールが前記ポリマー組成物から除去される方式で行われる、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の重合によって調製されたポリマー組成物を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、
前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物が、
約10~約40重量%の含ケイ素マクロマーと、
約200~約1,000g/モルの分子量を有する約1~約20重量%のポリエチレングリコールと、
架橋剤又は開始剤と、を含み、
前記重合は、約100℃~約110℃の温度での熱重合又はUV光重合によって、少なくとも約95%のポリエチレングリコールが前記ポリマー組成物から除去される方式で行われる、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記ポリエチレングリコールがPEG200、PEG400、又はPEG1000である、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項3】
約40%~約65%の含水率と約70~約120の酸素透過率(Dk)を有する、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物が、
約10~約40重量%の含ケイ素マクロマーと、
約1~約20重量%のポリエチレングリコールと、
約10~約50重量%の親水性モノマーと、
約10~約20重量%の含ケイ素モノマーと、
架橋剤又は開始剤と、を含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの分散力(δD)、双極子引力(δP)、水素結合力(δH)が
-6.0MPa
1/2≦△δD≦1.0MPa
1/2、
1.5MPa
1/2≦△δP≦3.5MPa
1/2、
4.0MPa
1/2≦△δH≦8.0MPa
1/2の条件を満たす、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、引張強度が約6kgf/mm
2~約8kgf/mm
2、伸び率が約150%~約200%、引張弾性率が約0.3kgf/mm
2~約0.8kgf/mm
2、及び/又は酸素透過率が約80×10
-11(cm
2/s)[mlO
2/(ml・mmHg)]~約115×10
-11(cm
2/s)[mlO
2/(ml・mmHg)]である、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記含ケイ素マクロマーは、シロキサン鎖を含み、1種又は2種のアクリル官能基を有する、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記含ケイ素マクロマーが、約500Da~約2,500Daの重量平均分子量を有する、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物が、約21重量%~約48重量%の含ケイ素マクロマーを含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、親水性モノマーを更に含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記親水性モノマーが、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、及びそれらの組み合わせから選ばれる少なくとも1種である、請求項10に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、含ケイ素マクロマー100重量部に対して、前記親水性モノマーを約20重量部~約239重量部含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、含ケイ素モノマーを更に含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記含ケイ素モノマーは、α,ω-ビスメタクリロキシプロピルポリジメチルシロキサン(SiGMA)、3-メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、モノメタクリロキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、3-メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、メタクリロキシプロピルペンタメチルジシロキサン、それらの組み合わせから選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記架橋剤は、アリルメタクリレート(AMA)、ジビニルベンゼン(DVB)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TrEGDMA)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、エチレングリコールジメチルアクリレート(EGDMA)、エチレンジアミンジメタクリルアミド、グリセロールジメタクリレート、それらの組み合わせから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項16】
前記開始剤は、過酸化ラウリル、過酸化ベンゾイル、過炭酸イソプロピル、アゾビスイソブチロニトリル、芳香族α-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、tert-ブチルペルオキシンデカノエート、アシルホスフィンオキシド、第三級アミン、ジケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、カンファーキノン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、Irgacure819、Irgacure1700、Irgacure1800、Irgacure819、Irgacure1850、ルシリンTPO開始剤、及びそれらの組み合わせから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項17】
前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、UV遮断剤、顔料、希釈剤、それらの組み合わせから選ばれる少なくとも1種を更に含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項18】
-0.8MPa
1/2≦△δD≦0.3MPa
1/2、
2.0MPa
1/2≦△δP≦2.5MPa
1/2、
4.5MPa
1/2≦△δH≦5.7MPa
1/2の条件を満たす、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項19】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の重合によって調製されるコンタクトレンズポリマー組成物であって、
前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物が、
約10~約40重量%の含有ケイ素マクロマーと、
約200~約1,000g/モルの分子量を有する約1~約20重量%のポリエチレングリコールと、
架橋剤又は開始剤と、を含み、
前記重合は、約100℃~約110℃の温度での熱重合又はUV光重合によって、少なくとも約95%のポリエチレングリコールが前記ポリマー組成物から除去される方式で行われる、コンタクトレンズポリマー組成物。
【請求項20】
ポリマー組成物の調製方法であって、
約10~約40重量%の含有ケイ素マクロマーと、約200~約1,000g/モルの分子量を有する約1~約20重量%のポリエチレングリコールと、架橋剤又は開始剤と、を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物に対して重合を行うステップを含み、前記重合は、約100℃~約110℃の温度での熱重合又はUV光重合によって、少なくとも約95%のポリエチレングリコールが前記ポリマー組成物から除去される方式で行われる、ポリマー組成物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物、該組成物から製造されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、その組成物又はシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、視力矯正に加えて、或いは視力矯正とは別の美容目的で広く使用され、美容コンタクトレンズの市場は成長し続けている。新しい美容用コンタクトレンズを開発するための研究が盛んであり、その結果、様々な物理的特性を備えた新製品が後を絶たない。Zaniniらの米国特許第7,789,507号には、高分子量の親水性ポリマーと、有効量のヒドロキシル官能化シリコーン含有モノマーと、デバイス形成金型部品からのレンズの剥離を容易にするのに有効な量のポリエチレングリコールとを含み、ポリエチレングリコールは、PEG2000、mPEG、PEGDMEのうちの1つ以上を含む反応混合物から形成される眼用レンズが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一実施形態では、高酸素透過度及び高含水量を示すシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するための組成物が提供される。
別の実施形態では、高酸素透過度及び高含水量を示すシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが提供される。
更に別の実施形態では、本明細書におけるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ及び組成物の製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の重合によって調製されたポリマー組成物を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約10~約40重量%の含ケイ素マクロマーと、約200~約1,000g/モルの分子量を有する約1~約20重量%のポリエチレングリコールと、架橋剤又は開始剤と、を含み、該重合は、約100℃~約110℃の温度での熱重合又はUV光重合によって、少なくとも約95%のポリエチレングリコールがポリマー組成物から除去される方式で行われる。
【0005】
一実施形態において、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の重合によって調製されるコンタクトレンズポリマー組成物は、約10~約40重量%の含有ケイ素マクロマーと、約200~約1,000g/モルの分子量を有する約1~約20重量%のポリエチレングリコールと、架橋剤又は開始剤と、を含み、該重合は、約100℃~約110℃の温度での熱重合又はUV光重合によって、少なくとも約95%のポリエチレングリコールがポリマー組成物から除去される方式で行われる。
【0006】
一実施形態において、ポリマー組成物の調製方法は、約10~約40重量%の含有ケイ素マクロマーと、約200~約1,000g/モルの分子量を有する約1~約20重量%のポリエチレングリコールと、架橋剤又は開始剤と、を含む、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物に対して重合を行うステップを含み、該重合は、約100℃~約110℃の温度での熱重合又はUV光重合によって、少なくとも約95%のポリエチレングリコールが前記ポリマー組成物から除去される方式で行われる。
【0007】
本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、言及されていない他の目的や利点を含む。本開示の実施形態によって本開示を更に明確に理解することができる。
【0008】
他の態様の一部は以下の説明で定められ、一部は説明から明らかになるか、実施形態の具現に基づいて学習し得るようになる。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態において、高酸素透過度及び高含水量を示すシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するための組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、本開示が属する技術分野の当業者が容易に実施できるように詳細に説明する。本開示は、様々な形態で具体化することができるため、本明細書に記載の実施形態に限定されるものとして解釈してはいけない。
【0011】
角膜は、涙に溶けている酸素や空気中の酸素と接触して酸素を受け取るが、角膜に乗せてあるコンタクトレンズは酸素の供給を妨げる可能性がある。従って、コンタクトレンズの酸素透過度は、特に目の健康を改善するための新しいコンタクトレンズを開発する際に重要な考慮事項となる。
【0012】
また、コンタクトレンズ材料の場合、複数のモノマーの混合物と開始剤を含む組成物を金型に注入し、瞬間的なエネルギーにより架橋反応を起こしながら重合させる。レンズは重合反応により生成される高分子材料が役割を果たしており、組成物の成分によって屈折率、機械的強度、濡れ性、酸素透過度などのコンタクトレンズの特性が決められる。
【0013】
<定義>
本明細書における「ヒドロゲル」という用語は、水和したときに架橋ポリマーのマトリックス中に少なくとも10重量%以上の水を保持できる架橋ポリマー材料を指す。
本明細書における「含ケイ素マクロマー」とは、ケイ素を含有しエチレン性不飽和基を有するモノマーであり、重量平均分子量が500Da以上のマクロマーをいう。
本明細書における「ポリエチレングリコール」は、H-(O-CH2-CH2)n-OHの式で表される。一般に、nは4以上の値を有する。
本明細書における「親水性モノマー」とは、オレフィン基、アクリル基等の重合性官能基と、水酸基、アミン、ピロリドン等の親水性官能基とを有し、分子量が500Da未満のモノマーをいう。
本明細書における「含ケイ素モノマー」とは、ケイ素を含有しエチレン性不飽和基を有するモノマーとして、重量平均分子量が500Da未満のモノマーをいう。
【0014】
<シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ及びポリマー組成物>
本開示は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の重合によって調製されたポリマー組成物を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供する。前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、約10~約40重量%の含ケイ素マクロマーと、約200~約1,000g/モルの分子量を有する約1~約20重量%のポリエチレングリコールと、架橋剤又は開始剤と、を含み、該重合は、約100℃~約110℃の温度での熱重合又はUV光重合によって、少なくとも約95%のポリエチレングリコールがポリマー組成物から除去される方式で行われる。
【0015】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物中のポリエチレングリコールは、約200~約1,000g/モルの分子量を有するPEGであればいい。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造には、例えば2,000~6,000g/モルのような高分子量のポリエチレングリコールを使用することは望ましくない。このような高分子量PEGは、重合中に組成物から十分に除去されず、得られるポリマーは、高酸素透過度や高含水量などの所望の特性を達成できないからである。一実施形態では、ポリエチレングリコールは、PEG200、PEG300、PEG400、PEG600、PEG800、PEG1000からなる群から選択される。特定の実施形態では、ポリエチレングリコールは、PEG200、PEG400、又はPEG1000である。
【0016】
ポリマー組成物は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の重合によって調製される。一実施形態では、重合は、約100℃~約110℃の温度での熱重合によって行われる。別の実施形態では、重合はUV光重合によって行われる。
【0017】
様々な実施形態において、重合ステップは、少なくとも約95%のポリエチレングリコールがポリマー組成物から除去される方式で行われる。ポリエチレングリコールの除去率は、重合前の組成物中に含まれるポリエチレングリコールの初期量に基づいて測定される。言い換えれば、PEG除去率=100-重合後のPEGの残存量/重合前のPEGの量×100%となる。一部の実施形態では、重合は、組成物から約95%、96%、又は97%のポリエチレングリコールを除去するように行われる。
【0018】
一部の実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約40%~約65%の含水量を有する。様々な実施形態において、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、又は約65%の含水量を有する。
【0019】
一部の実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約70~約120の酸素透過度(Dk)を有する。様々な実施形態において、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、又は約120の酸素透過度(Dk)を有する。
【0020】
一部の実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、約10~約40重量%の含ケイ素マクロマーと、約1~約20重量%のポリエチレングリコールと、約10~約50重量%の親水性モノマーと、約10~約20重量%の含ケイ素モノマーと、架橋剤又は開始剤と、を含み、本明細書に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、酸素透過度と含水量など、様々な改善された特性を有する。
【0021】
モノマー間の相溶性を調整することで決定されるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの形態は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの物性に影響を与えるとともに、生産効率や品質の安定化にも役立つ。モノマー間の相溶性は、Flory-hugginsなどの熱力学的エネルギーの差によって計算できる。計算の正確性を高めるためには、3つの要素、つまり分散度、極性、水素結合を用いて適合度を算出する。水素結合は、適合度計算の精度を更に向上できるため、考慮される。従って、ハンセン溶解度パラメータが、相溶性を予測する手段として用いられる。
【0022】
含ケイ素ポリマーは酸素透過度が高いことが知られており、一般にシリコーン素材からなるコンタクトレンズは酸素透過度が高い。しかしながら、そのようなコンタクトレンズは、ポリマー材料の疎水性により、含水量が低いのが普通である。ポリマー中の親水性モノマーの量を増やして含水率を高くすると、酸素透過度は再び低下する。このように、シリコーン素材を使用した従来のコンタクトレンズにおいて、酸素透過度と分水量は相殺関係にある。つまり、高酸素透過度と高含水率を両立するコンタクトレンズを製造することは困難である。
【0023】
本開示のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、含ケイ素マクロマーを重合することによって調製され、尚且つ酸素透過度と含水量を満足の行くように両立できている。
【0024】
一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、含ケイ素マクロマー及びポリエチレングリコールを含み、含ケイ素マクロマーとポリエチレングリコールのそれぞれのハンセン溶解度パラメータにおける、ハンセン溶解度パラメータを定める分散力(δD)、双極子引力(δP)、水素結合力(δH)の差ΔδD、ΔδP、ΔδHは、次の条件を満たす。
-6.0MPa1/2≦△δD≦1.0MPa1/2
1.5MPa1/2≦△δP≦3.5MPa1/2
4.0MPa1/2≦△δH≦8.0MPa1/2
【0025】
本開示の一実施形態に係るシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物を重合して得られるポリマーを含み、該組成物は含ケイ素マクロマー及びポリエチレングリコールを含む。含ケイ素マクロマーとポリエチレングリコールのそれぞれのハンセン溶解度パラメータにおける、ハンセン溶解度パラメータを定める分散力(δD)、双極子引力(δP)、水素結合力(δH)の差ΔδD、ΔδP、ΔδHは、次の条件を満たす。
-6.0MPa1/2≦△δD≦1.0MPa1/2
1.5MPa1/2≦△δP≦3.5MPa1/2
4.0MPa1/2≦△δH≦8.0MPa1/2
【0026】
ポリエチレングリコールは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの重合時の加工助剤として使用され、ポリマー形成用材料の種類に応じて分散、増粘、高硬化などの役割を果たしている。また、ポリエチレングリコールは、組成物の組成比によって形成されるポリマーの特性に大きな影響を与え得る。非反応性のポリエチレングリコールは、反応開始時から組成物中の他の成分との相溶性により旋回半径や大きさが変化し、ポリエチレングリコールとポリマーとの相溶性が変化する場合がある。その後、水和プロセスを経て非反応性ポリエチレングリコールが抜け、旋回半径によって特定の大きさと分子配列を持って形成された構造が残る。旋回半径によって形成される構造は、コンタクトレンズの物理的性質を左右する。
【0027】
従って、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物においては、ポリエチレングリコールに対する含ケイ素マクロマーの溶解度を制御することにより、ポリエチレングリコールがヒドロゲルの物性制御に関与する。これにより、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、高酸素透過度と高含水量を実現することができる。含ケイ素マクロマーのポリエチレングリコールに対する溶解度を制御し、ハンセン溶解度パラメータを決定する3つの制御因子、即ち分散力(δD)、双極子引力(δP)、水素結合力(δH)が上記範囲を満たすようにする。
【0028】
具体的には、ポリエチレングリコールは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の重合過程で生成するポリマーとの相溶性が低下することで相分離を行い、重合反応終了後、水和過程でポリエチレングリコールが単離され、ポリマー鎖中に空隙を形成し、この空隙を水で満たすことで高含水量を実現する。
【0029】
含ケイ素マクロマーとポリエチレングリコールとの間の溶解度をハンセン溶解度パラメータ条件を満たすように調整することにより、ポリエチレングリコールは含水量を決定する水和部位を提供する役割を果たす。
【0030】
したがって、本開示のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが含ケイ素マクロマーベースのポリマーから作られることを考慮すると、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは高い酸素透過度を有する。また、上述したように、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、重合時にポリエチレングリコールを用いて含水量を高めることにより、高酸素透過度と高含水量を両立することができる。
【0031】
ハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、物質の分子間に働く力を表す3つのパラメータ(分散力δD、双極子引力δP、水素結合力δH)で構成されており、チャールズ・ハンセンが「Hansen Solubility Parameters: A User’s Handbook」第2版(2007)、Boca Raton、Fla.、CRC Press(ISBN 978-O-8493-7248-3)で提示してある方式に従って計算することができる。
【0032】
分散力(δD)は分子間の分散力、つまりファンデルワールス力のエネルギーを定量化する。双極子引力(δP)は分子間の双極子相互作用のエネルギーを表す。水素結合力(δH)は、分子間の水素結合から得られるエネルギー、つまり水素結合を介して相互作用する能力を定量化する。
【0033】
ハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、δD、δP、δHで表されるベクトル量であり、3つのパラメータを座標軸とした3次元空間(ハンセン空間)上にプロットして表現される。例えば、一般的に使用される材料のハンセン溶解度パラメータ(HSP)については、データベース等の既知の情報源を参照することにより、所望の材料のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を取得することができる。ハンセン溶解度パラメータ(HSP)がデータベースに登録されていない材料については、Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)などのコンピュータプログラムソフトウェアを使用して、物質の化学構造又はハンセン溶解度法からハンセン溶解度パラメータ(HSP)を計算することができる。具体的には、含ケイ素マクロマーのハンセン溶解度パラメータは、Y-BM Group Contribution法に従って計算してもよく、同様に、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の他の成分、例えば、ポリエチレングリコール、ポリマーなどの他の単分子の溶解度パラメータを計算して使用してもよい。
【0034】
ポリエチレングリコールに対する含ケイ素マクロマーの溶解度を制御する、即ち、ハンセン溶解度パラメータを決定するための3つのパラメータ、つまり分散力(Δd)、双極子引力(δP)、水素結合力(δH)が、-6.0MPa1/2≦△δD≦1.0MPa1/2、1.5MPa1/2≦△δP≦3.5MPa1/2、4.0MPa1/2≦△δH≦8.0MPa1/2の条件を満たすようにするために、分散力(Δd)、双極子引力(δP)、水素結合力(δH)の値に影響を与える変数を制御してもよい。例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の各成分の配合や各成分の量、含ケイ素マクロマーの構造や分子量、ポリエチレングリコールの分子量や含有量などの変数が上記条件に複雑に影響を与え得るものとして挙げられる。従って、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、これらを変数として制御することにより、上記の条件を満たすように設計することができる。
【0035】
本発明の他の実施形態に係るシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズにおいて、含ケイ素マクロマーとポリエチレングリコールのそれぞれのハンセン溶解度パラメータにおける、ハンセン溶解度パラメータを定める分散力(δD)、双極子引力(δP)、水素結合力(δH)の差ΔδD、ΔδP、ΔδHは、-0.8MPa1/2≦△δD≦0.3MPa1/2、2.0MPa1/2≦△δP≦2.5MPa1/2、4.5MPa1/2≦△δH≦5.7MPa1/2の範囲を満たしてもよい。
【0036】
一実施形態では、含ケイ素マクロマーは、少なくとも複数のシロキサン繰り返し単位[-Si-O-]を含み、1つや2つのアクリル官能基を含む。
【0037】
一実施形態では、含ケイ素マクロマーの重量平均分子量は、約500Da~約2,500Daの範囲であってよい。
【0038】
含ケイ素有マクロマーの具体例としては、メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、モノメタクリロキシアルキル末端ポリジメチルシロキサン、3-{α-(トリメチルシリル)ポリ[オキシ(ジメチルシリレン)]}プロピル2-メチルプロパ-2-エノエート、モノブチル末端ポリジメチルシロキサン、メタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、モノビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビス(ジビニル)末端ポリジメチルシロキサン、α-モノビニル-モノフェニル-Ω-モノヒドリド末端ポリメチルシロキサンが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。含ケイ素マクロマーは、これらの物質の少なくとも1種を含んでもよい。
【0039】
一実施形態において、含ケイ素マクロマーは、下記化学式1で表される化合物、下記化学式2で表される化合物、下記化学式3で表される化合物、下記化学式4で表される化合物、及びそれらの組み合わせから選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【0040】
【化1】
化学式1では、aは1~30の整数、bは1~30の整数、cは5~30の整数であり、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素又はC
1-C
6アルキルであり、R
5はC
1-C
8アルキル、トリ(C
1-C
8)アルキルシロキシ、フェニル、ナフチル、置換C
1-C
8アルキル、置換フェニル、又は置換ナフチルであり、アルキルの置換基は、C
1-C
8アルコキシカルボニル、C
1-C
8アルキル、C
1-C
8アルコキシ、アミド、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、C
1-C
8アルキルカルボニル、ホルミルから選ばれる少なくとも1種であり、フェニル及びナフチルの置換基は、それぞれC
1-C
8アルコキシカルボニル、C
1-C
8アルキル、C
1-C
8アルコキシ、アミド、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、C
1-C
8アルキルカルボニル、ホルミルから選ばれる少なくとも1種である。
【0041】
【化2】
化学式2では、aは1~27の整数、bは3~27の整数であり、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素又はC
1-C
8アルキルであり、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素、C
1-C
6アルキル、トリ(C
1-C
6)アルキルシロキシ、フェニル、ナフチル、置換C
1-C
6アルキル、置換フェニル、又は置換ナフチルであり、アルキルの置換基は、C
1-C
6アルコキシカルボニル、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、アミド、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、C
1-C
6アルキルカルボニル、ホルミルから選ばれる少なくとも1種であり、フェニル及びナフチルの置換基は、それぞれC
1-C
6アルコキシカルボニル、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、アミド、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、C
1-C
6アルキルカルボニル、ホルミルから選ばれる少なくとも1種である。
【0042】
【化3】
化学式3では、aは1~27の整数、bは3~27の整数であり、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素又はC
1-C
8アルキルであり、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素、C
1-C
6アルキル、トリ(C
1-C
6)アルキルシロキシ、フェニル、ナフチル、置換C
1-C
6アルキル、置換フェニル、又は置換ナフチルであり、アルキルの置換基は、C
1-C
6アルコキシカルボニル、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、アミド、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、C
1-C
6アルキルカルボニル、ホルミルから選ばれる少なくとも1種であり、フェニル及びナフチルの置換基は、それぞれC
1-C
6アルコキシカルボニル、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、アミド、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、C
1-C
6アルキルカルボニル、ホルミルから選ばれる少なくとも1種である。
【0043】
【化4】
化学式4では、aは1~8の整数、bは3~10の整数であり、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素又はC
1-C
6アルキルであり、R
5はC
1-C
8アルキル、トリ(C
1-C
8)アルキルシロキシ、フェニル、ナフチル、置換C
1-C
8アルキル、置換フェニル、又は置換ナフチルであり、アルキルの置換基は、C
1-C
8アルコキシカルボニル、C
1-C
8アルキル、C
1-C
8アルコキシ、アミド、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、C
1-C
8アルキルカルボニル、ホルミルから選ばれる少なくとも1種であり、フェニル及びナフチルの置換基は、それぞれC
1-C
8アルコキシカルボニル、C
1-C
8アルキル、C
1-C
8アルコキシ、アミド、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、C
1-C
8アルキルカルボニル、ホルミルから選ばれる少なくとも1種である。
【0044】
含ケイ素マクロマーの種類や含有量は、ポリエチレングリコールに対するハンセン溶解度パラメータの条件を満たす範囲内で自由に決定することができる。
【0045】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、約21重量%~約48重量%の含ケイ素マクロマーを含んでもよい。
【0046】
一実施形態では、ポリエチレングリコールの重量平均分子量は、約200g/モル~約1,000g/モルの範囲であってもよい。
【0047】
ポリエチレングリコールの含有量は、マクロマーに関するハンセン溶解度パラメータ条件を満たすために、含ケイ素マクロマーとの関係に応じて変化してもよい。例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、含ケイ素マクロマー100重量部に対して、約4重量部~約96重量部のポリエチレングリコールを含んでもよい。
【0048】
ポリエチレングリコールの種類、分子量、含有量等は、含ケイ素マクロマーに対するハンセン溶解度パラメータの条件を満たす範囲で自由に決めてよい。
【0049】
最終製品であるコンタクトレンズの物性は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の各成分の組成をどのように設計するかによって決定される。コンタクトレンズの物性を設計する際には、含水量、酸素透過度、耐久性の三つの要素が重要であるが、他にも有益な要素がある可能性がある。なお、耐久性の場合には、強度、伸び率、ヤング率が区別されることがある。このようなコンタクトレンズの物性を考慮して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、組成物が所定のハンセン溶解度パラメータ条件を満たす限り、含ケイ素マクロマー及びポリエチレングリコールに加えて、他の成分をさらに含んでもよい。
【0050】
一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、親水性モノマーを更に含んでもよい。
【0051】
親水性モノマーは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物のラジカル重合に関与し、ポリマー中には親水性モノマーに基づく構造単位が含まれる。含ケイ素マクロマーと親水性モノマーは、熱や光によるラジカル反応による重合反応により重合してポリマーを形成する。
【0052】
親水性モノマーは、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミドであってもよいが、これらに限定される訳ではなく、これらの材料の少なくとも1種を含んでもよい。
【0053】
一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、含ケイ素マクロマー100重量部に対して、約20重量部~約239重量部の親水性モノマーを含むことができる。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、親水性モノマーの含有量が上記範囲内であれば、市販のコンタクトレンズに比べて著しく高くはないものの、高含水量を有するコンタクトレンズを実現することができる。
【0054】
一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、含ケイ素モノマー及び架橋剤を更に含んでもよい。
【0055】
一実施形態では、含ケイ素モノマーは、少なくとも複数のシロキサン繰り返し単位[-Si-O-]を含み、1種又は2種のアクリル官能基を含む。
【0056】
含ケイ素モノマーは、500Da未満の重量平均分子量を有し、マクロマーではなく、含ケイ素マクロマーとは異なる。
【0057】
含ケイ素モノマーは、α,ω-ビスメタクリロキシプロピルポリジメチルシロキサン(SiGMA)、3-メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、モノメタクリロキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、3-メタクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、メタクリロキシプロピルペンタメチルジシロキサンであってもよいが、これらに限定される訳ではなく、これらの材料の少なくとも1種を含んでもよい。
【0058】
一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、100重量部の含ケイ素マクロマーに対して約23重量部~約143重量部を含み得る。
【0059】
一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、架橋剤を更に含んでもよい。
【0060】
架橋剤は、例えば、アリルメタクリレート(AMA)、ジビニルベンゼン(DVB)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TrEGDMA)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、エチレングリコールジメチルアクリレート(EGDMA)、エチレンジアミンジメタクリルアミド、グリセロールジメタクリレートであってもよいが、これらに限定される訳ではなく、これらの材料の少なくとも1種を含んでもよい。
【0061】
一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、含ケイ素マクロマー100重量部に対して、約1重量部~約38重量部の架橋剤を含むことができる。
【0062】
一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、開始剤を更に含んでもよい。開始剤としては、熱または赤外線や紫外線などの光によりラジカル反応を開始させる熱開始剤又は光開始剤であってもよい。
【0063】
開始剤としては、例えば、過酸化ラウリル、過酸化ベンゾイル、過炭酸イソプロピル、もしくはアゾビスイソブチロニトリルなどの化合物、或いは芳香族α-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、tert-ブチルペルオキシンデカノエート、アシルホスフィンオキシド、第三級アミン、ジケトン、又はそれらの混合物などの光開始剤が挙げられ得る。光開始剤の例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure819)、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、カンファーキノン、エチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエートなどが挙げられ、光開始剤は単独で使用してもよいし、これらの材料の組み合わせを使用してもよい。市販の可視光光開始剤の例としては、Irgacure819、Irgacure1700、Irgacure1800、Irgacure819、Irgacure1850(製造元:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、ルシリンTPO開始剤が挙げられるが、これらに限定される訳ではなく、これらの材料の少なくとも1種を含んでもよい。
【0064】
一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、含ケイ素マクロマー100重量部に対して、約1重量部~約38重量部の開始剤を含み得る。
【0065】
一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、コンタクトレンズを製造するための組成物に添加され得る添加剤として知られる物質、例えば、UV遮断剤、顔料、酸化防止剤、可塑剤、湿潤剤、潤滑剤、粘度低下剤、相溶性向上剤などを更に含んでもよい。
【0066】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物は、一般に公知のコンタクトレンズの製造方法によりシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造することができる。
例えば、上記で詳細に説明したように混合して得られたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物を金型に注入し、熱や紫外線、赤外線などの光を用いて重合させてレンズを形成し、乾燥したレンズを金型から取り外し、水和処理を行う。これにより、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造が完了する。
【0067】
上記のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物を用いて製造されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、高酸素透過度と高含水量を同時に満たす物性を示す。
【0068】
一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約50%~約60%の含水量と、約80~約120の酸素透過性(Dk)を有する。
【0069】
上述したように、製造されるコンタクトレンズの所望の物性を達成するには、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物を適切に配合する必要がある。その結果、強度、伸び率、ヤング率等の耐久性が向上し、含水量や酸素透過度も向上したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得ることができる。
【0070】
一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約6kgf/mm2~約8kgf/mm2引張強度を有する。一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約150%~約200%の伸び率を有する。一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約0.3kgf/mm2~約0.8kgf/mm2の引張弾性率を有する。一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約80×10-11(cm2/s)[mlO2/(ml・mmHg)]~約115×10-11(cm2/s)[mlO2/(ml・mmHg)]の酸素透過度を有する。一実施形態では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、約50%~約55%の含水量を有する。
【0071】
一部の実施形態では、本明細書の記載に従って調製された様々なレンズ組成物が提供され、当該組成物の例としては、(1)化学式11の含ケイ素マクロマー約100重量部、PEG200約95重量部、親水性モノマー約162重量部、含ケイ素モノマー約108重量部、架橋剤約5重量部、開始剤約5重量部からなる組成物、(2)化学式11の含ケイ素マクロマー約38重量部、化学式12の含ケイ素マクロマー約62重量部、PEG200約83重量部、親水性モノマー約135重量部、含ケイ素モノマー約90重量部、架橋剤約4重量部、開始剤約4重量部からなる組成物、(3)化学式13の含ケイ素マクロマー約100重量部、PEG200約83重量部、親水性モノマー約135重量部、含ケイ素モノマー約90重量部、架橋剤約4重量部、開始剤約4重量部からなる組成物、(4)化学式11の含ケイ素マクロマー約97重量部、化学式12の含ケイ素マクロマー約3重量部、PEG400約6重量部、親水性モノマー約114重量部、含ケイ素モノマー約76重量部、架橋剤約4重量部、開始剤約4重量部からなる組成物、(5)化学式12の含ケイ素マクロマー約3重量部、化学式13の含ケイ素マクロマー約97重量部、PEG400約6重量部、親水性モノマー約114重量部、含ケイ素モノマー約76重量部、架橋剤約4重量部、開始剤約4重量部からなる組成物、(6)化学式13の含ケイ素マクロマー約100重量部、PEG400約6重量部、親水性モノマー約114重量部、含ケイ素モノマー約76重量部、架橋剤約4重量部、開始剤約4重量部からなる組成物、(7)化学式14の含ケイ素マクロマー約100重量部、PEG400約28重量部、親水性モノマー約87重量部、含ケイ素モノマー約58重量部、架橋剤約3重量部、開始剤約3重量部からなる組成物、(8)化学式11の含ケイ素マクロマー約78重量部、化学式15の含ケイ素マクロマー約22重量部、PEG400約28重量部、親水性モノマー約87重量部、含ケイ素モノマー約58重量部、架橋剤約3重量部、開始剤約3重量部からなる組成物、(9)化学式14の含ケイ素マクロマー約25重量部、化学式16の含ケイ素マクロマー約75重量部、PEG400約95重量部、親水性モノマー約162重量部、含ケイ素モノマー約108重量部、架橋剤約5重量部、開始剤約5重量部からなる組成物、(10)化学式14の含ケイ素マクロマー約25重量部、化学式17の含ケイ素マクロマー約75重量部、PEG1000約83重量部、親水性モノマー約135重量部、含ケイ素モノマー約90重量部、架橋剤約4重量部、開始剤約4重量部からなる組成物、(11)化学式15の含ケイ素マクロマー約3重量部、化学式18の含ケイ素マクロマー約97重量部、PEG1000約95重量部、親水性モノマー約162重量部、含ケイ素モノマー約108重量部、架橋剤約5重量部、開始剤約5重量部からなる組成物、(12)化学式18の含ケイ素マクロマー約97重量部、化学式19の含ケイ素マクロマー約3重量部、PEG1000約95重量部、親水性モノマー約162重量部、含ケイ素モノマー約108重量部、架橋剤約5重量部、開始剤約5重量部からなる組成物、(13)化学式18の含ケイ素マクロマー約62重量部、式20の含ケイ素マクロマー約38重量部、PEG1000約95重量部、親水性モノマー約162重量部、含ケイ素モノマー約108重量部、架橋剤約5重量部、開始剤約5重量部からなる組成物が挙げられるが、これに限定される訳ではない。様々な実施形態において、親水性モノマーは、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)であり、架橋剤は、トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(TEGDMA)であり、含ケイ素モノマーは、α,ω-ビスメタクリロキシプロピルポリジメチルシロキサン(SiGMA)であり、開始剤は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)である。
【0072】
以下、本開示の実施例及び比較例について説明する。以下の実施例は、本開示の単なる実施形態であり、本開示を限定するためのものではない。
【実施例】
【0073】
[実施例1]
含ケイ素マクロマーとして下記化学式11で表される化合物(重量平均分子量1000Da)100重量部、親水性モノマーとしてN-ビニル-2-ピロリドン(NVP)162重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量200Da)を95重量部、架橋剤としてトリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(TEGDMA)を5重量部、含ケイ素モノマーとしてα,ω-ビスメタクリロキシプロピルポリジメチルシロキサン(SiGMA)、熱開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロ
ニトリル(AIBN)を混合して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物をポリプロピレン製の型に注入し、110℃で重合させてレンズを製造し、レンズを乾燥させた後、型から分離した。分離したレンズを生理食塩水で含水させ、120℃で滅菌することにより、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造を完了した。
【0074】
【化11】
化学式11において、R
1~R
4はメチル基、R
5はブチル基、a=1、b=1、c=15である。
【0075】
[実施例2]
化学式11で表される化合物と下記化学式12で表される化合物を下記表1に示す量で混合してケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを135重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量200Da)を83重量部、架橋剤としてTEGDMAを4重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの製造を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0076】
【化12】
化学式12において、R
1~R
4はメチル基、a=1、b=9である。
【0077】
[実施例3]
下記化学式13で表される化合物を用いて含ケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを135重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量200Da)を83重量部、架橋剤としてTEGDMAを4重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0078】
【化13】
化学式13において、R
1~R
4はメチル基、R
5はブチル基、a=3、b=6である。
【0079】
[実施例4]
化学式11で表される化合物と化学式12で表される化合物を下記表1に示す量で混合してケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを114重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量400Da)を6重量部、架橋剤としてTEGDMAを4重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0080】
[実施例5]
化学式12で表される化合物と化学式13で表される化合物を下記表1に示す量で混合してケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを114重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量400Da)を6重量部、架橋剤としてTEGDMAを4重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0081】
[実施例6]
化学式13で表される化合物を用いて含ケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを114重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量400Da)を6重量部、架橋剤としてTEGDMAを4重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0082】
[実施例7]
下記化学式14で表される化合物を用いて含ケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを87重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量200Da)を28重量部、架橋剤としてTEGDMAを3重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0083】
【化14】
化学式14において、R
1~R
4はメチル基、R
5はヒドロキシルに置換されたブチル基、a=6、b=18である。
【0084】
[実施例8]
化学式11で表される化合物と下記化学式15で表される化合物を下記表1に示す量で混合してケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを87重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量400Da)を28重量部、架橋剤としてTEGDMAを3重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0085】
【化15】
化学式15において、R
1~R
4はメチル基、a=1、b=9である。
【0086】
[実施例9]
化学式14で表される化合物と下記化学式16で表される化合物を下記表1に示す量で混合してケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを162重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量400Da)を95重量部、架橋剤としてTEGDMAを5重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0087】
【化16】
化学式16において、R
1及びR
2はメチル基、R
4及びR
3はアミンに置換されたメチル基、a=3、b=13である。
【0088】
[実施例10]
化学式14で表される化合物と下記化学式17で表される化合物を下記表1に示す量で混合してケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを135重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量1000Da)を83重量部、架橋剤としてTEGDMAを4重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0089】
【化17】
化学式17において、R
1~R
4はメチル基、R
5はヒドロキシルに置換されたヘキシル基、a=6、b=6、c=20である。
【0090】
[実施例11]
化学式15で表される化合物と下記化学式18で表される化合物を下記表1に示す量で混合してケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを162重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量1000Da)を95重量部、架橋剤としてTEGDMAを5重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0091】
【化18】
化学式18において、R
1~R
4はメチル基、R
5はアミドに置換されたヘキシル基、a=6、b=6、c=18である。
【0092】
[実施例12]
上記化学式18で表される化合物と下記化学式19で表される化合物を下記表1に示す量で混合してケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを162重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量1000Da)を95重量部、架橋剤としてTEGDMAを4重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0093】
【化19】
化学式19において、R
1~R
3はプロピル基、R
4はヒドロキシルに置換されたメチル基、a=6、b=13である。
【0094】
[実施例13]
化学式18で表される化合物と下記化学式20で表される化合物を下記表1に示す量で混合してケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを162重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量1000Da)を95重量部、架橋剤としてTEGDMAを4重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0095】
【化20】
化学式20において、R
1~R
3はプロピル基、R
4はヒドロキシルに置換されたメチル基、a=3、b=13である。
【0096】
[比較例1]
化学式13で表される化合物を用いて含ケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを114重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量200Da)を6重量部、架橋剤としてTEGDMAを4重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0097】
[比較例2]
化学式12で表される化合物と化学式13で表される化合物を下記表2に示す量で混合してケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを212重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量400Da)を10重量部、架橋剤としてTEGDMAを7重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0098】
[比較例3]
化学式11で表される化合物を用いて含ケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを212重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量400Da)を10重量部、架橋剤としてTEGDMAを7重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0099】
[比較例4]
化学式12で表される化合物を用いて含ケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを45重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量1000Da)を44重量部、架橋剤としてTEGDMAを1重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0100】
[比較例5]
化学式17で表される化合物を用いて含ケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを45重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量1000Da)を44重量部、架橋剤としてTEGDMAを1重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0101】
[比較例6]
化学式14で表される化合物と化学式19で表される化合物を下記表2に示す量で混合してケイ素マクロマーが100重量部となるようにし、親水性モノマーとしてNVPを45重量部、ポリエチレングリコール(重量平均分子量1000Da)を44重量部、架橋剤としてTEGDMAを1重量部、含ケイ素モノマーとしてSiGMA、熱開始剤としてAIBNを混合してシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の調製を完了した。続いて、実施例1と同様にしてシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造した。
【0102】
実施例1~13及び比較例1~6に従って製造されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成用組成物の処方を下記の表1及び表2に示す。
【0103】
【0104】
【0105】
[評価例1]
実施例1~13及び比較例1~6の各組成物における含ケイ素マクロマー及びポリエチレングリコールのハンセン溶解度パラメータを決定する分散力(δD)、双極子引力(δP)、水素結合力(δH)をY-BM Group Contribution法を用いて、その差ΔδD、ΔδP、ΔδHを評価して下記表3に示した。
【0106】
【0107】
[評価例2]
実施例1~13及び比較例1~6により製造された各シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの物性を下記の方法で評価し、表4に示した。
【0108】
(強度、伸び率、ヤング率の評価)
ASTM規格に適合した試験片の両端に引張試験用の治具を取り付ける。取り付け完了後、治具に一定速度で荷重をかけ、試料に現れる変形から試料の機械的物性を測定する。各試験片の特性により加えられた力に応じて変形や破壊が起こり、それぞれ引張ひずみ、引張応力と呼ばれる。また、荷重を加えたときに変形した後、荷重を取り除くと元の形状に戻ろうとする性質を弾性という。弾性領域の傾きはヤング率で表すことができる。伸び率は、試験片の元の標点長さL0(試験片に力を加える前の初期の試験片の長さ)に対する変化ΔL(加えた力に対する試験片の長さの変化)の比としてε=ΔL/L0と定義され、一般的に百分率で表される。
【0109】
(含水量)
各レンズの含水量は重量法で測定される。レンズの表面から水分を取り除き、重量を測定する。重量は100℃~110℃(レンズ素材が変更されている場合は60℃±5℃)で重量変化がなくなるまで乾燥させた後に測定する。100mg~300mgのレンズを使用し、重量を0.1mg単位で測定する。含水量(W
H20)は、以下の式を用いて百分率で計算する。
【数1】
m1:乾燥前のレンズ重量、m2:乾燥後のレンズ重量。
【0110】
(酸素透過度)
レンズの酸素透過度(Dk)は、材料を通過する能力である拡散係数(D)と、材料中の酸素の溶解の程度を示す溶解係数(k)によって表される。本発明では、ISO18369に準拠したポーラログラフィー法により酸素透過度を測定した。
【0111】
【0112】
表3及び表4に示す結果からわかるように、ハンセン溶解度パラメータの決定条件をすべて満たす実施例1~13のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、酸素透過度(Dk)が80~120であり、含有量が50%~60%であることが確認された。つまり、あらかじめ定められた基準をすべて満たしている。また、実施例1~13のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、強度、伸び率、ヤング率の耐久性評価結果が良好であることが確認された。
【0113】
前述の説明から明らかなように、本開示によるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、比較例と比べても、高酸素透過度及び高含水量を示す。
以下、本開示を実施するための具体的な内容を説明しながら、上述した効果に加えて、本開示の具体的な効果について説明する。
以上、実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示はこれらの実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば、本開示の技術的思想から逸脱しない範囲内で様々な変更を加えることができることを理解し得るはずである。また、上記の実施形態の詳細な説明では、本開示の構成による作用効果については明示的に記載されていないが、対応する構成による予測可能な効果も認識されるべきである。
【国際調査報告】