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特表2024-527207トリアゾロピラジン誘導体の新規なマレイン酸塩、組成物、使用方法及びこれの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】トリアゾロピラジン誘導体の新規なマレイン酸塩、組成物、使用方法及びこれの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20240717BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C07D487/04 145
C07D487/04 CSP
A61K31/5377
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540099
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 KR2022000536
(87)【国際公開番号】W WO2022164085
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/141,987
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517306400
【氏名又は名称】アビオン インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(74)【代理人】
【識別番号】100115451
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 武史
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク キュンエウィ
(72)【発明者】
【氏名】キム イェンムン
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB06
4C050CC08
4C050EE05
4C050FF10
4C050GG01
4C050HH04
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
【課題】トリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩を使用する薬剤学的組成物及び方法を提供する。
【解決手段】一側面では、本発明で提供する制約組成物は改善された貯蔵安全性及び薬動力学的特性を有する。トリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩はc-Metキナーゼのリン酸化部位に競争的に結合して多様な過増殖性疾患の治療又は予防に使用することができる。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式2で表現されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩。
【化2】
【請求項2】
前記マレイン酸塩は40℃及び相対湿度75%で15ヶ月が経過後化合物の純度が下記の化学式1で表現される遊離塩基形態の化合物と対比して4.7%以上であることを特徴とする請求項1に記載のマレイン酸塩。
【化1】
【請求項3】
前記マレイン酸塩は40℃及び相対湿度75%で15ヶ月が経過後水分吸収量が下記化学式1で表現される遊離塩基形態の化合物と対比して20%以下であることを特徴とする請求項1に記載のマレイン酸塩。
【化1】
【請求項4】
前記マレイン酸塩はpH1乃至3で溶解度が下記化学式1で表現される遊離塩基形態の化合物と対比して75%以下であることを特徴とする請求項1に記載のマレイン酸塩。
【化1】
【請求項5】
前記マレイン酸塩はpH1.2である0.05M胃液で溶解度が下記化学式1で表現される遊離塩基形態の化合物と対比して75%以下であることを特徴とする請求項1に記載のマレイン酸塩。
【化1】
【請求項6】
前記マレイン酸塩は示差走査熱量計(DSC)サーモグラムで55℃及び145℃の吸熱ピークと280℃の発熱ピークを有することを特徴とする請求項1に記載のマレイン酸塩。
【請求項7】
前記マレイン酸塩は水素磁気共鳴スペクトラムで下記のピークを有することを特徴とする請求項1に記載のマレイン酸塩。
3.48-3.58(m、2H)、3.64(brs、3H)、3.87-4.03(m、4H)、4.17-4.28(m、1H)、4.40(brd、J=13.43Hz、1H)、4.74(brd、J=12.21Hz、1H)、4.88-5.00(m、2H)、6.16(s、4H)、7.42(d、J=8.24Hz、2H)、7.66(d、J=8.24Hz、2H)、8.33(d、J=0.61Hz、1H)、8.67(s、1H)、8.77(s、2H)、9.23(s、1H)
【請求項8】
下記の化学式2で表現されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩を製造する方法に関するものであり、前記製造方法は下記の段階でなされることを特徴とするマレイン酸塩を製造する方法と、
(a)溶媒を含む反応器に下記化学式1で表示される化合物を投入する段階と、
【化1】
(b)前記反応器内で前記化合物及び溶媒を撹拌する段階と、
(c)前記(b)で製造された溶液にマレイン酸を化学式1の化合物に対して1:1乃至1:3の当量比で添加する段階と、
(d)前記(c)で製造された溶液を撹拌する段階と、及び
(e)前記(d)で製造された溶液を冷却させて下記化学式2で表示されるマレイン酸塩の沈殿物を得る段階。
【化2】
【請求項9】
前記マレイン酸塩は一つ以上のマレイン酸分子を含むことを特徴とする請求項8に記載のマレイン酸塩。
【請求項10】
前記マレイン酸塩は二つ以上のマレイン酸分子を含むことを特徴とする請求項9に記載のマレイン酸塩。
【請求項11】
前記溶媒はアセトナイトリル、アセトン及び1、2-ジメトキシエタンでなされる群から選択される何れか一つであることを特徴とする請求項8に記載の製造方法
【請求項12】
前記b段階は50℃で一時間以上遂行されることを特徴とする請求項8に記載の製造方法
【請求項13】
前記沈殿物は25℃で冷却された後24乃至48時間の間熟成されることを特徴とする請求項8に記載の製造方法
【請求項14】
下記の化学式2で表現されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩と薬学的に許容可能な担体を含むことを特徴とする薬学組成物。
【化2】
【請求項15】
前記薬学的に許容可能な担体はラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトル、マンニトル、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエイト、プロピルヒドロキシベンゾエイト、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルでなされる群から選択されることを特徴とする請求項14に記載の薬学組成物。
【請求項16】
前記薬学組成物は滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤のうち選択される一つ以上の成分を追加で含むことを特徴とする請求項14に記載の薬学組成物。
【請求項17】
対象体のc-Metキナーゼの活性を抑制する方法に関するものであり、前記方法はc-Metキナーゼの過活性によって発生する疾病の治療を要する対象体に下記の化学式2で表現されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩を投与することでなされることを特徴とする対象体のc-Metキナーゼの活性を抑制する方法。
【化2】
【請求項18】
前記疾病は異常増殖性障害者であることを特徴とする請求項17に記載の対象体のc-Metキナーゼの活性を抑制する方法。
【請求項19】
前記異常増殖性障害は肺癌、胃癌、膵膓癌、結腸癌、卵巣癌、腎細胞癌、前立腺癌及び脳腫瘍でなされる群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の対象体のc-Metキナーゼの活性を抑制する方法。
【請求項20】
前記マレイン酸塩を対象体に有効量が投与されることを特徴とする請求項17に記載の対象体のc-Metキナーゼの活性を抑制する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トリアゾロピラジン誘導体は、c-Metキナーゼの活性を抑制して過増殖性障害を治療するために使用する物質であることが、米国特許番号9403831号に記載されている。しかし、このようなトリアゾロピラジン誘導体は、塩形態ではない遊離塩基形態として記載されている。
【0002】
したがって、遊離塩基形態の薬動力学及び治療効果を実質的に維持しながら、追加の有利な特性を有する新規トリアゾロピラジン誘導体の新規塩形態が必要である。
【背景技術】
【0003】
本発明者らは、チロシンキナーゼに対する抑制活性を有する前記の化合物を発掘することで、非正常的なチロシンキナーゼの活性によって誘発される多様な異常増殖性疾患(hyper proliferative disorder)を、効率的に予防又は治療するための組成物を開発するために、鋭意研究努力した。その結果、本発明者らは、今まで知られない化学式1の化合物の新規塩化合物が、前記化合物のc-Metキナーゼの活性を抑制するという機能を維持しながら、前記化合物の保管安全性及び光安全性を向上させるということを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0004】
本発明によれば、本発明の化学式1の化合物の新規塩化合物は、肝細胞成長因子(hepatocyte growth factor:HGF)と結合してリン酸化を活性化させることで、細胞の増殖、移動、新生血管の形成を触発するc-Metキナーゼの活性を留意するように抑制する。
【0005】
したがって、本発明の塩化合物は、細胞の異常増殖活性化及び過度な血管新生を媒介にする多様な異常増殖性疾患を治療又は予防することに有用に利用されることができる。
【0006】
また、前記化学式1の化合物の新規塩化合物は、純水化合物とは相異な物理的特性、例えば融点、吸湿性、溶解度、流動特性又は熱力学安全性を示す。
【0007】
これによって、本発明で提供する前記化学式1の化合物の塩化合物は、薬物製造過程又は精製、カプセル剤、軟膏、懸濁液などの別個の薬物剤型の製造過程又は最適の薬動力学的特性を有する薬物形態の製造で薬理学的な用途のための一番好適な形態を選択するために使用されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記化学式1で表現されるトリアゾロピラジン誘導体の純物質の保管安全性及び光安全性が低く、薬物製造学的で加工性が良くないという点を改善するために、前記化合物に対して塩スクリーニングを実施し、これによって前記化合物の新規塩を開発することで前記の問題点らを解決することができた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の化学式1で表現される化合物様態が、その化合物の遊離塩基形態と実質的に類似する薬動力学的特性を維持しながらも、改善された溶解度、安全性及びその他の特性を有する前記化学式1で表示されるトリアゾロピラジン誘導体の新規な塩形態を提供する。
【0010】
一側面では、下記化学式1(ABN401)で表示されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩を提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
本発明は、前記化学式1で表現されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩を提供するためのものとして、下記化学式2で表現される。
【0013】
【化2】
【0014】
また、本発明は、前記化学式2で表現されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩の製造方法を提供するためのものであり、前記製造方法は、
【0015】
(a)溶媒を含む反応器に下記化学式1で表示される化合物を投入する段階と、
【化1】
【0016】
(b)反応器内で化合物及び溶媒を撹拌する段階と、(c)前記(b)で製造された溶液に化学式1に対して1:1乃至1:3の当量比でマレイン酸を添加する段階と、(d)前記(c)で製造された溶液を撹拌する段階と、(e)前記(d)で製造された溶液を冷却させて下記化学式2で表示されるマレイン酸塩の沈殿物を得る段階と、で構成される。
【0017】
【化2】
【0018】
また、本発明は、前記化学式2で表示されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩及び薬学的に許容可能な塩を含む薬学組成物を提供する。
【0019】
また、他の側面では、本発明は、対象体でc-Metキナーゼの活性を抑制する方法を提供する。前記方法は、c-Metキナーゼの活性増加に関連する障害の治療が必要な対象体に、前記化学式2で表示されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩を投与する段階を含む。
【0020】
本発明の一側面は、前記化学式1で表示される化合物の新規マレイン酸塩を開発して、前記化学式1で表示されるトリアゾロピラジン誘導体(ABN401)の貯蔵安全性を向上させるものである。
【0021】
本発明で提供する前記化学式1の化合物の新規な塩であるマレイン酸塩は、一つ以上のマレイン酸が結合されているマレイン酸塩(例えば、ジマレイン酸塩)を含む。
【0022】
また、本発明は、前記塩の製造方法及び前記塩を有効成分で含む薬剤学的組成物を提供する。
【0023】
本発明は、前記化学式1で表示されるトリアゾロピラジン誘導体の新規塩及びその製造方法に関するものであり、本発明で提供する前記化合物の新規塩は、前記化合物の貯蔵安定性を改善して薬学的使用性及び加工性を改善することができる。
【0024】
前記化合物の新規な塩は、癌、乾癬、リウマチ関節炎及び糖尿病性網膜病症などのようなキナーゼの非正常的な活性による過度な細胞増殖及び成長に関連する多様な非正常的な増殖性疾患に関連するキナーゼであるc-Metチロシンキナーゼの活性を抑制する。
【0025】
また、本発明は、前記新規な塩を有効成分で含むc-Metチロシンキナーゼの活性抑制用薬学的組成物及び過増殖性疾患の予防又は治療用薬学的組成物を開示する。
【0026】
また、本発明は、前記化学式1で表示されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩と薬学的に許容可能な賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0027】
また、本発明は、前記化学式1で表示されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩と薬学的に許容可能な賦形剤を使用して過増殖性疾患を治療する方法を提供する。
【0028】
また他の側面では、本発明は、前記マレイン酸塩又はジマレエイト形態のうち一つ以上を対象体又は患者に投与して過増殖性疾患を治療、改善又は予防することを含む、対象体又は患者を治療する方法を提供する。
【0029】
また、本発明は、前記マレイン酸塩又はジマレエイト形態のうち一つ以上を患者又は対象体に投与することで、前記化学式Iで表現される化合物の塩と肝細胞成長因子を結合させる方法を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、前記化学式1で表現されるトリアゾロピラジン誘導体の新規塩化合物及びその製造方法に関するものであり、本発明で提供する新規塩化合物は、純水物質の問題点であった保管安全性及び光安全性を向上させ、前記化合物の薬物製造学的有用性及び加工性を向上させる。
【0031】
前記化合物の新規塩は、c-Metチロシンキナーゼの活性を効率的に抑制することで、非正常的なキナーゼの活性による過度な細胞増殖及び成長に関連する多様な異常増殖性疾患、例えば、癌、乾癬、リウマチ関節炎、糖尿病性網膜症などの治療剤で有用に利用されることができる。また、前記新規塩化合物を有効成分で含むc-Metチロシンキナーゼ活性抑制用薬剤学的組成物及び異常増殖性疾患(hyper proliferative disorder)の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明で提供する前記化合物及び薬学組成物の特徴及びその他の利点は、添付図面とともに取られた後の詳細な説明からより明確に理解することができる。
図1】本発明の化学式1のマレイン酸塩の一実施例に対するDSC分析結果を示す図である。
図2】本発明の化学式1のマレイン酸塩の一実施例に対するDVS分析結果を示す図である。
図3】本発明の化学式1のマレイン酸塩の一実施例に対するH-NMR分析結果を示す図である。
図4】本発明の化学式1のマレイン酸塩の一実施例に対するTGAによる水分吸収量を示す図である。
図5】本発明で提供するマレイン酸塩のHPLCによる化合物の純度を測定した結果を示す図である。
図6】本発明で提供する化学式1のマレイン酸塩及び遊離塩基形態の溶解度を測定した結果を示す図である。
図7】本発明で提供する化学式1のマレイン酸塩及び遊離塩基形態の他のpHでの溶解度を測定した結果を示す図である。
図8】本発明で提供する化学式1のジマレエイト塩の薬物動力学数値を示す図である。
図9】化学式1の遊離塩基形態の薬物動力学数値を示す図である。
図10】本発明で提供する化学式1のジマレエイト塩ビーズの薬物動力学数値を示す図である。
図11】化学式1の遊離塩基形態の薬物動力学数値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
一側面では、本発明は、下記化学式1で表示されるトリアゾロピラジン誘導体の新規マレイン酸塩、その製造方法及びそれを含む薬学的組成物に関するものである。
【0034】
驚くべきことに、本発明に記載されたマレイン酸塩は、遊離塩基形態の薬動力学的特性を実質的に維持しながら、例えば、溶解度及び吸湿性に関連する改善された特性を提供する。
【0035】
【化1】
【0036】
本発明の目的は、チロシンキナーゼに対する抑制活性を有する化合物を見い出し、チロシンキナーゼの異常活性によって誘発される各種過増殖性疾患を効率的に予防又は治療するための組成物の開発に関するものである。その結果、本明細書に記載された結果は、今まで知られない化学式1の化合物の新規な塩が、化合物のc-Metキナーゼの活性を抑制する機能を維持しながら、化合物の貯蔵安全性を向上させる。
【0037】
本発明の一側面は、下記化学式2で表示されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩を提供する。
【0038】
【化2】
【0039】
一側面では、本発明で提供するマレイン酸塩は、40℃及び75%相対湿度で略15ヶ月後に化学式1で表示される遊離塩基形態より最少略4.7%以上の化学的純度を有する。
【0040】
一側面では、本発明で提供するマレイン酸塩は、40℃及び75%相対湿度で略15ヶ月後に化学式1で表示される遊離塩基形態より最少略22%以上低い水分含量を有する。
【0041】
一側面では、本発明で提供するマレイン酸塩は、pH1乃至3から化学式1で表示される遊離塩基形態より75%以上不十分に溶解される。
【0042】
一側面では、本発明で提供するマレイン酸塩は、0.05Mの上培地で略1.2のpHから化学式1で表示される遊離塩基形態より75%以上不十分に溶解される。
【0043】
一側面では、本発明で提供するマレイン酸塩形態は示差走査熱量計(DSC)サーモグラムで略55℃及び略145℃の吸熱ピーク及び280℃の発熱ピークを有することを特徴とする。
【0044】
一側面では、本発明で提供するマレイン酸塩は、水素核磁気共鳴(NMR)スペクトラムで3.48-3.58(m、2H)、3.64(brs、3H)、3.87-4.03(m、4H)、4.17-4.28(m、1H)、4.40(brd、J=13.43Hz、1H)、4.74(brd、J=12.21Hz、1H)、4.88-5.00(m、2H)、6.16(s、4H)、7.42(d、J=8.24Hz、2H)、7.66(d、J=8.24Hz、2H)、8.33(d、J=0.61Hz、1H)、8.67(s、1H)、8.77(s、2H)、9.23(s、1H)のピークを有する。
【0045】
また、本発明は前記化学式2で表現されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩の製造方法を提供するためのものであり、前記製造方法は、
【0046】
(a)溶媒を含む反応器に下記化学式1で表示される化合物を投入する段階と、
【化1】
(b)反応器内で化合物及び溶媒を撹拌する段階と、(c)前記(b)で製造された溶液に化学式1に対して1:1乃至1:3の当量比でマレイン酸を添加する段階と、(d)前記(c)で製造された溶液を撹拌する段階と、(e)前記(d)で製造された溶液を冷却させて下記化学式2で表示されるマレイン酸塩の沈殿物を得る段階と、で構成される。
【0047】
【化2】
【0048】
一側面では、本発明で提供する前記マレイン酸塩は最少一つのマレイン酸分子を含む。
【0049】
一側面では、本発明で提供する前記マレイン酸塩は最少二つのマレイン酸分子を含む。
【0050】
一側面では、前記溶媒はアセトニトリル、アセトン及び1、2-ジメトキシエタンでなされるグループから選択される。
【0051】
一側面では、前記段階(b)は略50℃で最少1時間の間遂行される。
【0052】
一側面では、前記沈殿物は略25℃で冷却した後24時間乃至48時間の間に熟成される。
【0053】
また他の側面では、本発明は、下記の化学式2で表現されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩と薬学的に許容可能な担体を含んで形成される薬学的組成物を提供する。
【0054】
【化2】
【0055】
また他の側面で、本発明で提供する薬学組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトル、マンニトル、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエイト、プロピルヒドロキシベンゾエイト、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含んで構成されるグループから選択された一つ以上の成分である。
【0056】
また、本発明で提供する前記薬学組成物は、前記成分ら以外に、滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを追加で含むことができる。
【0057】
また他の側面では、本発明は、対象体でc-Metキナーゼの活性を抑制する方法を提供する。
【0058】
前記方法は、下記の化学式2で表示されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩をc-Metキナーゼの活性増加に関連する疾患の治療が必要な対象体に投与することを含む。
【0059】
【化2】
【0060】
一側面では、前記疾患は、異常増殖性疾患である。
【0061】
一側面では、前記異常増殖性疾患は、肺癌、胃癌、膵膓癌、結腸癌、卵巣癌、腎細胞癌、前立腺癌及び脳腫瘍でなされた群から選択される。
【0062】
一側面では、前記マレイン酸塩は、対象体に薬学的に有効な量が投与される。
【0063】
また他の側面では、本発明で提示する前記マレイン酸塩は、c-Metキナーゼのリン酸化部位に競争的に結合することで、細胞の増殖、移動及び新しい血管形成を誘発するc-Metキナーゼの活性を有意に抑制する。
【0064】
したがって、本発明で提供する前記マレイン酸塩は、細胞の異常増殖活性化及び過度な血管新生によって媒介される多様な過増殖性障害の治療又は予防に有用に使用することができる。
【0065】
本発明で提供する前記マレイン酸塩は、驚くべきことに、化学式1で表現されるトリアゾロピラジン誘導体の遊離塩基形態の薬動力学的特性を実質的に維持しながら、遊離塩基形態と比べて物理的特性、例えば、融点、吸湿性、溶解度、流動性又は熱的安全性が異なることを示す。
【0066】
本発明で使用される用語“薬動力学的特性を実質的に維持する”ということは、記載されるように、遊離塩基形態の多様な薬動力学的パラメーターの少なくとも50、60、70、80、90、又は100%を有することを指称する。
【0067】
一側面では、本発明で提供するマレイン酸塩(例:マレイン酸塩、ジマレイン酸塩)は、驚くべきことに、化合物の遊離塩基形態と比べて非常に低下した溶解度を示す。例えば、図7に示されるように、マレイン酸塩(化学式2)は遊離塩基形態に対して上のpH(胃内pH)で50%以上は十分に溶解しない。
【0068】
(表1) pHに依存的な溶解度測定において使用された緩衝液
【0069】
一般に、化合物の塩形態は、遊離塩基形態に比べて溶解度が減少するよりは増加する溶解度を有すると予想されるであろう(Handbook of Pharmaceutical Salt:Properties, Selection, and Use, Edited by P. Heinrich Stahl and Camile G. Wermuth. VHCA, Verlag Helvetica Chimica Acta, Zurich, Switzerland, and Wiley-VCH, Weinheim, Germany. Introduction, Page 2, Paragraph 2、2002.参照)。
【0070】
本発明で提供するマレイン酸塩は、驚くべきことに減少された溶解度及び吸湿性を示す。図4で見られるように、マレイン酸塩(Mae2)は計時的に遊離塩基形態に比べて40℃、相対湿度75%(右側パネル)で水分含量が著しく低い15ヶ月にほとんど4倍底い)。
【0071】
本発明で提供するマレイン酸塩は、前記化合物の遊離塩基形態と比べてさらに大きい安全性を示す。図5に示すように、化学式1のマレイン酸塩は一般に、遊離塩基形態と比べて40℃及び相対湿度75%(右側パネル)で経時的にさらに高い化学的純度を有する。特に、マレイン酸塩形態は15ヶ月で略4.7%以上さらに高い化学的純度を示す。
【0072】
増加した安全性、さらに低い溶解度及びさらに低い吸湿性に加えて、本発明で提供するマレイン酸塩は、遊離塩基形態と実質的に類似する薬物動力学(PK)特性を維持する(図8及び図9参照)。
【0073】
図8は、単一投与後Wistarラットで特定の濃度で経時的に化学式2で表現されるジマレイン酸塩形態の血漿濃度を示す。前記薬物動力学(PK)特性を下記表2に示した。
【0074】
(表2) 単一投与後化学式2で表現されるジマレイン酸塩のPK数値
【0075】
図9は、単一投与後Wistarラットで特定の濃度で経時的に化学式1で表現される遊離塩基形態の血漿濃度を示す。前記薬物動力学(PK)特性を下記表3に示した。
【0076】
(表3) 単一投与後化学式1で表現される化合物のPK数値
【0077】
図8図9、表2及び表3に示すように、化学式1の遊離塩基形態とジマレイン酸塩のPK数値は実質的に等しい。
【0078】
図10と表4は、1日2回投与(ビーズ)後の化学式2で表現される化合物のPK数値を示す。
【0079】
(表4) 化学式2の化合物のビーズ投与後のPK数値
【0080】
図11及び表5は、化学式1で表現される化合物を1日2回投与した後のPK数値を示す。
【0081】
(表5)化学式1の化合物のビーズ投与後のPK数値
【0082】
図10図11、表4及び表5に示すように、前記化学式1の遊離塩基形態とジマレイン酸塩のPK数値は実質的に等しい。
【0083】
したがって、本発明で提供するマレイン酸塩は、薬物の製造工程、精製、カプセル剤、軟膏及び懸濁液のような別途の製剤の製造工程で薬理学的用途に一番好適な形態で選択されることができる最適の薬動力学特性を有する薬物の形態である。
【0084】
一側面では、本発明は、前記塩の形態のうち一つ以上を含んで構成される対象体又は患者に投与して、過増殖性疾患を治療、改善又は予防する方法を提供する。
【0085】
また、本発明は、前記に提示された一つ以上の塩が患者又は対象体に投与されることで肝細胞成長因子と結合する方法を提供する。
【0086】
本発明の他の側面では、本発明は、治療的有効量を含む前記化学式1の新規な塩を含む薬学組成物が提供される。例えば、本発明は前記化学式1の化合物の新規塩を有効成分で含む過増殖性疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0087】
本明細書で用語“異常増殖性疾患(hyper proliferative disorder)”は正常に成長中の動物体内で一般な制限手段によって調節されない過度な細胞の成長、分裂及び移動に起因して誘発される病的状態を意味する。本発明の組成物で予防又は治療する異常増殖性疾患には、例えば、癌、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植拒否、新生血管性緑内障、紅色症、増殖性網膜症、乾癬、リウマチ関節炎、骨関節炎、自己免疫疾患、クローン病、再発狭窄症、アテローム性動脈硬化、腸管接着、潰よう、肝硬変症、糸球体腎炎、糖尿病性腎臓病症、悪性腎硬化症、血栓性微小血管症、器官移植拒否及び新糸球体病症があるが、これらに限定されず、細胞の非正常的な増殖及び新生血管の過度な生成によって発生する全ての異常増殖性疾患が含まれる。
【0088】
より望ましくは、本発明の組成物で予防及び治療することができる異常増殖性疾患の一つの癌は、肺癌、胃癌、膵膓癌、大膓癌、卵巣癌、腎細胞癌、前立腺癌又は脳腫瘍である。
【0089】
前記用語‘治療的有効量’は、疾病又は状態の症状を治療、改善、治癒又は減少させるために十分な活性製薬成分の量を指称する。
【0090】
本発明で提供する薬学組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、提示に通常利用されるものとして、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトル、マンニトル、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエイト、プロピルヒドロキシベンゾエイト、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分ら以外に滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを追加で含むことができる。前記薬剤学的組成物は任意の好適な投与形態(例えば、経口溶液、エマルジョン、シロップ、エリクサー、精製、カプセル、液体充電カプセル、ソプトゲル、徐放型及び固体投与形態など)で提供されることができる。
【0091】
一側面では、化学式1で表現される化合物は、一般薬学組成物でうまく製造することができるが、化学式2で表現されるマレイン酸塩は、溶解度及び熱的安全性などの物性は一般薬学組成物製造において化学式1より優れた利点を有することができる。
【0092】
そこで、本発明者らは、トリアゾロピラジン誘導体の溶解度及び安全性を向上させるなど、薬剤学的製剤の製造に好適な塩を開発するために多様な塩スクリーニングを遂行し、その結果、高い溶解度及び優れた安全性を同時に有する優れた新規塩を開発し、前記新規塩の化合物の薬理学的活性は持続的に維持された。
【0093】
以下、本発明の実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【0094】
本発明は、c-Metキナーゼの活性を抑制して各種過増殖性疾患を効果的に予防又は治療することができる化学式1の化合物の新規なマレイン酸塩及びその製造方法に関するものである。
【0095】
本発明は、前記化学式1で表示される化合物の新規なマレイン酸塩に関するものであり、以下では前記化学式1で表示される化合物のマレイン酸塩の製造方法について説明する。
【0096】
以下で提示される実施例は、その他にも多様な形態で変形されることができるし、本発明の範囲が以下に説明する実施例に限定されるものではない。本開示内容の実施例らは、本開示内容をより完全に説明するためのものとして、これは本技術分野で通常の知識を有した者に自明なことである。
【0097】
本発明で提供するトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩は下記化学式2で表される。
【0098】
【化2】
【0099】
本発明で提供するマレイン酸塩は、化学式1の化合物のトリアゾロピラジン誘導体に少なくとも一つのマレイン酸分子が結合して形成することができる。一側面では、前記マレイン酸塩は2個のマレイン酸分子(ジマレイン酸塩)を含む。
【0100】
本発明で提供する新規塩の熱的安全性を確認するために、DSC(Differential Scanning calorimetry)分析を遂行し、吸湿性を確認するために、DVS(Dynamic vapor sorption)分析を遂行した。
【0101】
前記塩の熱流動性を確認するためにDSC3+STARe装置を利用してDSC分析を遂行し、塩の試料をアルミニウムファンに装着した後にピンホールを利用して25~300℃で加熱し、10℃/minの加熱速度を適用した。
【0102】
前記塩の吸湿性を確認するためにDVS-1装置を利用してDVS分析が遂行されたし、相対湿度40%、95%、0%で25℃で60分間遂行した。
【0103】
(実施例1)
ABN401(化学式1の化合物)のマレイン酸塩の製造
化学式1の化合物300mgをアセトニトリル5mLにとかして、化学式1の化合物とマレイン酸のモール比が1:2.1になるようにマレイン酸130mgを加えた。20mg/mL濃度のマレイン酸溶液5mLを添加して50℃で1時間の間反応させた。
【0104】
前記反応液を5℃間隔で25℃まで冷却した後、48時間熟成して化学式2の化合物の結晶350mgを得た。
【0105】
前記結晶を蒸溜水で洗滌して10mbar及び50℃の真空状態で乾燥させた。
【0106】
前記過程を通じて得た化学式2の化合物をH核磁気共鳴スペクトラム(NMR)で確認し、そのピークは次のとおりである。
【0107】
1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δppm2.78(br s,3H)3.48-3.58(m、2H)、3.64(brs、3H)、3.87-4.03(m、4H)、4.17-4.28(m、1H)、4.40(br d、J=13.43Hz、1H)、4.74(br d、J=12.21Hz、1H)、4.88-5.00(m、2H)、6.16(s、4H)、7.42(d、J=8.24Hz、2H)、7.66(d、J=8.24Hz、2H)、8.33(d、J=0.61Hz、1H)、8.67(s、1H)、8.77(s、2H)、9.23(s、1H)。
【0108】
前記マレイン酸塩に対するDSC分析結果、前記マレイン酸塩は25℃乃至100℃で吸熱性であることを示すが、この結果は、水の蒸発に関連があるように見える。また、DSC結果は、145.1℃で強い吸熱ピークを見せ、純水物質に比べてマレイン酸塩が溶融及び熱安定性が遥かに優れていることを示す。
【0109】
DSC分析結果前記マレイン酸塩形態は、略55℃及び略145℃で吸熱ピーク、280℃で発熱ピークを示すことを特徴とする。
【0110】
前記化学式2の化合物に対するDVS分析結果(図2)、相対湿度80%以下の範囲で湿度変化による質量損失が非常に低いことを示すが、これは前記マレイン酸塩の吸湿性が純水物質に比べて驚くべきくらいに改善し、貯蔵安全性も優れていることを示す。
【0111】
前記化学式2及び化学式1の化合物(reference)に対して、物理的及び化学的な安全性テストを遂行した。長期安全性研究は、特定の温度及び相対湿度水準25℃/60%RH及び40℃/75%RH)で遂行され、一定時間の間隔で固体試料をXRPD、TGMS及びHPLCで分析した。
【0112】
前記マレイン酸塩は、15ヶ月の間のインキュベーション後にも有意味な水準の水分吸収が確認されないことから、前記マレイン酸塩は吸湿性が少ない固体形態ということが分かる。
【0113】
前記化学式1及び化学式2の化合物の化学的純度を測定するために、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで1ヶ月、3ヶ月及び15ヶ月露出した後に、化学式1及び化学式2の化合物に対する化学的純度を測定した。その結果を図4及び図5に示す。
【0114】
化学式1で表現される遊離塩基形態は、25℃/60%RHで培養後経時的に部分的な化学的分解が生じ、40℃/75%RHで更に多くの分解を見せた。
【0115】
一方、化学式2で表されるマレイン酸塩は、25℃/60%RHに露出した後にも、有意な化学的分解が現われなかったし、40℃/75%RHで15ヶ月まで化学的に安定なものとして現われた。
【0116】
図4及び図5に示される例示的な実験の結果と同様に、40℃及び75%相対湿度で略15ヶ月後に、マレイン酸塩が化学式1で示される遊離塩基形態よりも略4.7%以上の化学的純度を示し、また、マレイン酸塩は40℃及び75%相対湿度で略15ヶ月後に、化学式1で示される遊離塩基形態より、略22%以上の水分含量を有することが見て取れる。
【0117】
これらの結果に基づき、化学式2の化合物が、化学式1の化合物に比べて吸湿性が少なく、化学的安全性が改善されたことが分かる。
【0118】
非経口投与に好適な剤型の開発のための化学式1及び化学式2で表される化合物の定量的溶解度を測定するために、溶解度向上賦形剤が添加されたリン酸塩緩衝液pH7.4で実験した。前記溶解度の目標濃度は、1-1.3mg/mLである。
【0119】
Transcutol(Gattefosse、France)及びTPGS(tocopherolethylene glycol succinate)を含むPBS製剤ビヒクルに対して決定された定性的溶解度結果を基礎し、化学式1の化合物及び化学式2の化合物の前記ビヒトルに対する最大溶解度に近接した状態で、前記化合物らの定量的溶解度を測定した。
【0120】
つぎに、熱力学的溶解度は、Transcutol(50%及び10%)及びTPGS20%及び10%)を含むPBS緩衝液及びPEG400(50%、2%のDMSO存在及び非存在)を含む剤型ビヒクルで決定された。化学式1の化合物及び化学式2の化合物の懸濁液は、化学式1の化合物濃度を略3.5-5mg/MLで選択されたビヒクルで製造され、これを室温で24時間インキュベーションした後に固相及び液相を分離した。前記溶液のうちAPIの濃度はHPLC分析によって決定され、その結果を図6に示す。
【0121】
前記化学式1の化合物は、50%Transcutol、10%TPGS及び20%TPGSを含む製剤ビヒクルで、略1mg/mL以上の溶解度を示す。PEG400を含むビヒクルの溶解度は、略0.3mg/mLであり、10%Transcutolだけを使用した場合、溶解度は略0.1mg/mLと測定された。
【0122】
前記化学式2の化合物は、10%Transcutolを含むビヒクルを除くほぼ全てのビヒクルで1.3mg/mL以上の溶解度を有することを示す。50%Transcutolを含むビヒクルでは、塩が完全に溶解されて24時間後にも沈澱が発生しなかったし、その溶解度は3.5mg/mL以上という高い値を示す。
【0123】
遊離塩基形態の実験で使用された溶液のpHは、さらに高いpHに転換され、反対に前記化学式2のサンプルのpH値はさらに低いpHに転換された。前記化学式2の化合物の溶解度は、試験した全ての製剤ビヒクルで化学式1の化合物よりも高い値を示す。
【0124】
前記例示から、前記マレイン酸塩はpH1乃至3で、化学式1によって示される遊離塩基形態よりも75%以上は十分に溶解しない。また、前記マレイン酸塩は、化学式1で示される遊離塩基形態よりも0.05Mの胃液pHが略1.2では75%以上は十分に溶解しない。
【0125】
また、本発明では、前記化学式1で示されるトリアゾロピラジン誘導体の新規塩を有効成分で含む薬学組成物を提供する。
【0126】
本発明で提供される薬学組成物の有効成分は、前記化学式2で示される化合物のマレイン酸塩であり、その薬学組成物は任意の薬学的に許容可能な担体を含む。
【0127】
本明細書に記載された化学式2で表現されるマレイン酸塩化合物の活性を試すために、下記例示的な実験プロトコルを遂行した。
【0128】
RPMI1640細胞培養培地、小胎児血清(FBS)及びトリプシンはGIBCO Co.、Ltd.(Grand Island、NY)で購入し、シグネミック医薬品で炭酸水素ナトリウム、アムホテリシンB及びゼンタマイシンを使用した。また、細胞毒性測定実験に使用された試薬であるsulforhodamine(SRB)B、Trisma Base、trichloroacetic acid(TCA)などの試薬はSigma Chemical Co.、Ltd.で購入した。MTS分析のために、Celltiter96Aqueous Non-Radioactive Cell Proliferation Assay製品はPromega Co.、Ltd.で購入した。また、細胞培養に使用されるT-25培養容器、96-well plate及び細胞培養に使用されるその他の使い捨て硝子はFolkon(Lincoln Park、ニュージャージー)製品を使用した。
【0129】
前記実験に使用された薬物は、実験培地で所望の濃度で希釈し、最終ジメチルスルホキシド(DMSO)の濃度は0.5%以下であった。
【0130】
実験に使用された癌細胞株は、人間由来の癌細胞株と肺癌細胞株であるEBC-1を使用した。RPMI1640培地は、10%FBS(fetal bovine serum)を使用して、37℃、5%CO培養器で培養して、3~4日間隔で1回継代培養した。
【0131】
具体的に、本発明の化合物との培養が終わった後に培養液を除去して各ウェルに冷たいTCA溶液を添加した。細胞を固定するために4℃で1時間の間放置した。TCA溶液を除去して細胞を常温で乾燥させて0.4%SRBを溶かした1%酢酸溶液で培養した後、常温で30分間放置した後染色した。細胞に結合されない余分のSRBを1%酢酸溶液で洗滌し、染め付けされた細胞にpH10.3~10.5の10mmトリス緩衝液(trisma base:unbuffered)を添加してSRBを湧出させた。
【0132】
前記マレイン酸塩の癌細胞増殖抑制実験結果を下記表6に示す。
【0133】
(表6)
【0134】
前記の実験結果から、本発明で提供される前記化学式2で表示されるトリアゾロピラジン誘導体のマレイン酸塩は前記化学式1で表示される遊離塩基形態の化合物に比べて癌細胞成長抑制活性がずっと改善されたことを分かる。
【産業上利用可能性】
【0135】
本発明は、産業上利用可能である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】