IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 广▲東▼美的▲環▼境科技有限公司の特許一覧

特表2024-527215クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備
<>
  • 特表-クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備 図1
  • 特表-クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備 図2
  • 特表-クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備 図3
  • 特表-クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備 図4
  • 特表-クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備 図5
  • 特表-クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備 図6
  • 特表-クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備 図7
  • 特表-クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備 図8
  • 特表-クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
F04C18/02 311M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557419
(86)(22)【出願日】2023-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 CN2023093916
(87)【国際公開番号】W WO2023246366
(87)【国際公開日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】202210721766.3
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519186428
【氏名又は名称】广▲東▼美的▲環▼境科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG MIDEA ENVIRONMENTAL TECHNOLOGIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.2 Building, 2th Keyuan Road, Shunde High Tech Zone, Ronggui Street Office, Shunde District, Foshan, Guangdong 528311 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 英超
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 晋涵
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA03
3H039BB11
3H039CC13
3H039CC27
(57)【要約】
本出願は圧縮機設計の技術分野に属し、特にクランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備に関する。そのうち、クランク軸用偏心スライダはスライダ本体を含み、スライダ本体にはクランク軸の偏心軸区間が挿入される組立孔が設置され、スライダ本体の外周壁面は、担持面と担持面に対向する非担持面とを含み、担持面は可動スクロールを駆動するために使用され、非担持面には空洞部が設置されており、空洞部は油液を収容するために使用される。本出願の技術案を適用することにより、偏心スライダの周方向表面と可動スクロールの相応する側壁との間に存在する油膜せん断力を低減することができ、スクロール圧縮機の性能及び信頼性を効果的に向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダ本体を含み、前記スライダ本体にはクランク軸の偏心軸区間が挿入される組立孔が設置され、前記スライダ本体の外周壁面は、担持面と前記担持面に対向する非担持面とを含み、前記担持面は可動スクロールを駆動するために使用されるクランク軸用偏心スライダであって、前記非担持面には空洞部が設置されており、前記空洞部は油液を収容するために使用されることを特徴とするクランク軸用偏心スライダ。
【請求項2】
前記非担持面は空洞側面を含み、前記空洞側面の両側は前記担持面の両側にそれぞれ接続し、前記空洞側面から前記スライダ本体の中心軸線までの距離は、前記担持面から前記スライダ本体の中心軸線までの距離より短く、前記空洞側面は前記空洞部の側壁となる、ことを特徴とする請求項1に記載のクランク軸用偏心スライダ。
【請求項3】
前記非担持面は第1移行側面と第2移行側面とをさらに含み、前記第1移行側面と前記第2移行側面とは前記空洞側面の両側にそれぞれ接続し、前記第1移行側面における前記空洞側面から離れる一側が前記担持面の一側に接続し、前記第2移行側面における前記空洞側面から離れる一側が前記担持面の他の一側に接続し、前記第1移行側面から前記スライダ本体の中心軸線までの距離と前記第2移行側面から前記スライダ本体の中心軸線までの距離とは、いずれも前記空洞側面から前記スライダ本体の中心軸線までの距離より長く、且つ、前記第1移行側面から前記スライダ本体の中心軸線までの距離と前記第2移行側面から前記スライダ本体の中心軸線までの距離とは、いずれも前記担持面から前記スライダ本体の中心軸線までの距離より短いまたは等しい、ことを特徴とする請求項2に記載のクランク軸用偏心スライダ。
【請求項4】
前記空洞部は、前記スライダ本体の軸線方向に沿って延びる1つの貫通溝である、ことを特徴とする請求項1に記載のクランク軸用偏心スライダ。
【請求項5】
前記空洞部は、複数の貫通溝を含み、各前記貫通溝は前記スライダ本体の軸線の延長方向に沿って延び、且つ、隣接した2つの前記貫通溝は間隔をおいて設置されている、ことを特徴とする請求項1に記載のクランク軸用偏心スライダ。
【請求項6】
前記空洞部における前記可動スクロールから離れる一端には、油液の漏洩を阻止するための阻止縁が設置されている、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のクランク軸用偏心スライダ。
【請求項7】
前記空洞部の両側がそれぞれ前記スライダ本体の中心軸線と結ぶ線がなす夾角の角度範囲は60°~120°である、ことを特徴とする請求項6に記載のクランク軸用偏心スライダ。
【請求項8】
前記偏心軸区間の回転方向に沿って、前記担持面の後方領域には、油液が流れるための流通側面が設置されている、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のクランク軸用偏心スライダ。
【請求項9】
クランク軸であって、前記クランク軸には偏心軸区間と、前記クランク軸の軸線方向に沿って延びる油路とが設置され、前記油路が前記偏心軸区間を貫通する、前記のクランク軸と、
取付部が設置されている可動スクロールと、を含むスクロール圧縮機であって、
前記スクロール圧縮機は、請求項1~5のいずれか1項に記載のクランク軸用偏心スライダをさらに含み、前記偏心軸区間が前記組立孔に挿入され、前記スライダ本体が前記取付部と前記偏心軸区間との間に取り付けられていることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項10】
前記スクロール圧縮機は可動スクロール軸受をさらに含み、前記可動スクロール軸受が前記取付部内に固定的に取り付けられ、前記スライダ本体が前記可動スクロール軸受の軸受孔に挿入設置され、前記スライダ本体の外周壁が前記可動スクロール軸受の軸受孔の孔壁に隙間嵌めされている、ことを特徴とする請求項9に記載のスクロール圧縮機。
【請求項11】
前記偏心スライダの外側壁と前記可動スクロール軸受の軸受孔の孔壁との間の隙間の大きさ範囲は0.1mm~0.6mmである、ことを特徴とする請求項10に記載のスクロール圧縮機。
【請求項12】
前記空洞部の壁面と、相応する可動スクロール軸受の軸受孔の孔壁との間の隙間の大きさ範囲は、0.2mm~0.6mmである、ことを特徴とする請求項11に記載のスクロール圧縮機。
【請求項13】
請求項9に記載のスクロール圧縮機を含むことを特徴とする温度制御設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年06月24日に中国特許局に提出された、出願番号が202210721766.3で、発明の名称が「クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備」である中国特許出願の優先権を主張し、その全内容が引用により本願に組み込まれている。
【0002】
本出願は圧縮機設計の技術分野に関し、具体的には、クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備に関する。
【背景技術】
【0003】
スクロール圧縮機は、通常、作動流体を圧縮するための可動スクロール及び固定スクロールを有し、そのうち、可動スクロールは、クランク軸の偏心軸区間の駆動下で公転しながら平面回転することを実現し、それによって固定スクロールと協働して流体を圧縮する。一般的に、偏心軸区間と可動スクロールとの間にラジアル調整可能な偏心スライダを設置し、圧縮された流体によって可動スクロールが大きな荷重を受けた場合(例えば、可動スクロールのスクロール板と固定スクロールのスクロール板とからなる圧縮チャンバーに粒子の大きな流体ひいては液体が進入すると、粒子の大きな流体や液体がスクロール板に加えるラジアル荷重が大きく変化する場合)に、偏心スライダは偏心軸区間に対してラジアル調整を行うことができ、アンロード機能を実現し、可動スクロールのスクロール板または固定スクロールのスクロール歯がラジアル荷重によって損傷する確率を低減し、それにより、スクロール圧縮機の信頼性を向上させることができる。しかし、偏心スライダが可動スクロールを駆動する過程において、偏心スライダの周方向表面と可動スクロールの相応する側壁との間にいずれも油膜せん断力が存在し、スクロール圧縮機の性能及び信頼性に不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願の目的は、如何にして偏心スライダの周方向表面と可動スクロールの相応する側壁との間に存在する油膜せん断力を低減するかという問題を解決することを含むがこれに限定されない、クランク軸用偏心スライダ、スクロール圧縮機及び温度制御設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願の実施例が採用する技術案は以下の通りである。
【0006】
第1方面において、クランク軸用偏心スライダが提供され、クランク軸用偏心スライダはスライダ本体を含み、スライダ本体にはクランク軸の偏心軸区間が挿入される組立孔が設置され、スライダ本体の外周壁面は、担持面と担持面に対向する非担持面とを含み、担持面は可動スクロールを駆動するために使用され、非担持面には空洞部が設置されており、空洞部は油液を収容するために使用される。
【0007】
ある実施例において、非担持面は空洞側面を含み、空洞側面の両側は担持面の両側にそれぞれ接続し、空洞側面からスライダ本体の中心軸線までの距離は、担持面からスライダ本体の中心軸線までの距離より短く、空洞側面は空洞部の側壁となる。
【0008】
ある実施例において、非担持面は第1移行側面と第2移行側面とをさらに含み、第1移行側面と第2移行側面とは空洞側面の両側にそれぞれ接続し、第1移行側面における空洞側面から離れる一側が担持面の一側に接続し、第2移行側面における空洞側面から離れる一側が担持面の他の一側に接続し、第1移行側面からスライダ本体の中心軸線までの距離と第2移行側面からスライダ本体の中心軸線までの距離とは、いずれも空洞側面からスライダ本体の中心軸線までの距離より長く、且つ、第1移行側面からスライダ本体の中心軸線までの距離と第2移行側面からスライダ本体の中心軸線までの距離とは、いずれも担持面からスライダ本体の中心軸線までの距離より短いまたは等しい。
【0009】
ある実施例において、空洞部は、スライダ本体の軸線方向に沿って延びる1つの貫通溝である。
【0010】
ある実施例において、空洞部は、複数の貫通溝を含み、各貫通溝はスライダ本体の軸線の延長方向に沿って延び、且つ、隣接した2つの貫通溝は間隔をおいて設置されている。
【0011】
ある実施例において、空洞部における可動スクロールから離れる一端には、油液の漏洩を阻止するための阻止縁が設置されている。
【0012】
ある実施例において、空洞部の両側がそれぞれスライダ本体の軸線と結ぶ線がなす夾角の角度範囲は60°~120°である。
【0013】
ある実施例において、偏心軸区間の回転方向に沿って、担持面の後方領域には、油液がスライダ本体の中心軸線の延長方向に沿って流れるための流通側面が設置されている。
【0014】
第2方面において、スクロール圧縮機が提供され、当該スクロール圧縮機は、
クランク軸であって、クランク軸には偏心軸区間と、クランク軸の軸線方向に沿って延びる油路とが設置され、油路が偏心軸区間を貫通する、前記のクランク軸と、
取付部が設置されている可動スクロールと、を含み、
スクロール圧縮機は、前記のクランク軸用偏心スライダをさらに含み、偏心軸区間が組立穴に挿入され、スライダ本体が取付部と偏心軸区間との間に取り付けられている。
【0015】
ある実施例において、スクロール圧縮機は可動スクロール軸受をさらに含み、可動スクロール軸受が取付部内に固定的に取り付けられ、スライダ本体が可動スクロール軸受の軸受孔に挿入設置され、スライダ本体の外周壁が可動スクロール軸受の軸受孔の孔壁に隙間嵌めされている。
【0016】
ある実施例において、偏心スライダの外側壁と可動スクロール軸受の軸受孔の孔壁との間の隙間の大きさ範囲は0.1mm~0.6mmである。
【0017】
ある実施例において、空洞部の壁面と、相応する可動スクロール軸受の軸受孔の孔壁との間の隙間の大きさ範囲は、0.2mm~0.6mmである。
【0018】
第3方面において、温度制御設備が提供される。具体的に、当該温度制御設備は前記のスクロール圧縮機を含む。
【0019】
本出願の実施例における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例または例示的な技術の記述に使用される必要な図面を簡単に説明し、以下の図面は、本願のいくつかの実施例にすぎず、当業者にとって、創造的な労力を払わずにこれらの図面に基づいて他の関連図面を得ることも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本出願の実施例に係るスクロール圧縮機におけるフレーム、クランク軸及び可動スクロール間の組立断面図である。
図2】本出願の実施例に係る偏心スライダがクランク軸に取り付けられた構造を示す概略図であり、そのうち、図における矢印rはクランク軸の回転方向を示す。
図3図2の平面図である。
図4】本出願の偏心スライダの一実施例の構造を示す概略図である。
図5図4に示す偏心スライダの平面図である。
図6】本出願の偏心スライダの別の一実施例の構造を示す概略図である。
図7図6に示す偏心スライダの平面図である。
図8】本出願の偏心スライダの更に別の一実施例の構造を示す概略図である。
図9図8に示す偏心スライダの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本出願の目的、技術案及び利点をより明確にし、理解しやすくするために、以下では、図面及び実施例とともに、本出願をさらに詳細に説明する。ここに記載された具体的な実施例は、本出願を解釈するためにのみ使用され、本出願を限定するために使用されないことを理解されたい。
【0022】
なお、部材が別の部材に「固定されている」または「設置されている」と呼ばれる場合、当該部材は直接または間接的に別の部品に固定されているまたは設置されていることが可能である。ある部材が別の部材に「接続されている」と呼ばれる場合、当該部材は直接または間接的に別の部品に接続されていることが可能である。「上」、「下」、「左」、「右」等の用語が示す方位または位置関係は、図面に基づいて示される方位または位置関係であり、記述を容易にするためだけのものであり、言及された装置または要素が特定の方位を有し、特定の方位で構成され、操作されなければならないことを示すまたは暗示するものでもなく、したがって、本出願を限定するものとして理解されず、当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の具体的な意味を理解することができる。「第1」、「第2」は、記述的な目的のためにのみ使用され、相対的な重要性を示すまたは暗示するものとして、または技術的特徴の数を暗黙に指定するものとして理解できない。「複数」とは、別段の明確で具体的な限定がない限り、2つまたは2つ以上を意味する。
【0023】
本出願が提供した技術案を説明するために、以下では、具体的な図面及び実施例とともに詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本出願の実施例は、フレーム51と、オルダムリング53と、クランク軸20と、クランク軸軸受54と、偏心スライダと、可動スクロール30と、固定スクロール(図示せず)と、ケーシング(図示せず)等とを含むスクロール圧縮機を提供する。組立時に、ケーシングには収容チャンバーが設置され、固定スクロールがケーシングに固定的に組み立てられて収容チャンバーの頂部位置に位置し、フレーム51が収容チャンバー内に取り付けられ、可動スクロール30がフレーム51の固定スクロールに向かう側に設置され、可動スクロール30のスクロール板と固定スクロールのスクロール板とが噛み合って圧縮チャンバーを形成し、可動スクロール30は、フレーム51に対して相対的に移動でき、オルダムリング53がフレーム51に移動可能に連結され、オルダムリング53を介してフレーム51に対する可動スクロール30の移動を制限し且つ移動案内を行い、クランク軸20がクランク軸軸受54を介して回動可能にフレーム51に組み立てられ、前記クランク軸20には偏心軸区間21が設置され、前記可動スクロール30の固定スクロールから離反する一側には取付部31が設置され、偏心軸区間21が偏心スライダを介して取付部31に駆動連結される。組立完了後、可動スクロール30とフレーム51との間は被覆結合されて貯油チャンバー52を形成し、クランク軸20には前記クランク軸20の軸線方向に沿って延びる油路22が設置され、前記油路22は前記偏心軸区間21を貫通し、油路22は貯油チャンバー52と連通し、油路22はケーシング底部の油溜まり内に延び、可動スクロール30と固定スクロールとの間の相対移動によって圧縮室内の流体が圧縮される過程において、油溜まり内の油液は、クランク軸20の高速回転による遠心力の作用下で油路22を通って吸い上げられ、偏心軸区間21の頂端から流下し、偏心スライダの周方向表面と可動スクロールの相応する側壁との間に進入し、油液が貯油チャンバー52に進入でき、そして、貯油チャンバー52内の油液はクランク軸軸受54及び可動スクロール30の取付部31の端面とフレーム51との間を潤滑し、摩耗を低減して使用寿命を延ばす。
【0025】
既存のスクロール圧縮機の作動過程において、偏心スライダの担持面と可動スクロールの内側壁との間は常に押圧状態にあり、ここで形成された油膜は、可動スクロールと固定スクロールとの間の圧縮流体に抗することに必要な駆動力の全てを伝達するため、油膜に対するせん断力(即ち油膜せん断力)により、油膜が昇温し、消費電力が大きくなる。実際に、既存のスクロール圧縮機は、偏心スライダが可動スクロールを駆動する過程において、偏心スライダの周方向表面と可動スクロールの相応する側壁との間にいずれも油膜が形成され、即ち、偏心スライダの周方向表面と可動スクロールの相応する側壁との間にいずれも油膜せん断力が存在し、スクロール圧縮機の性能及び信頼性に不利である。
【0026】
クランク軸20の偏心軸区間21が可動スクロール30をより効率的に駆動することができるようにするために、図2に示すように、本出願の実施例は偏心スライダを提供し、この偏心スライダを偏心軸区間21に組み立て、前記偏心スライダは、前記取付部31と前記偏心軸区間21との間に取り付られ、即ち、当該偏心スライダがスライダ本体10を含み、スライダ本体10には組立孔11が設置され、組立孔11はスライダ本体10の軸線に沿ってスライダ本体10の両端を貫通し、前記偏心軸区間21が前記組立孔11に挿入されるとともに、前記スライダ本体10の外周壁面には、担持面12と、前記担持面12に対向する非担持面13とが含まれ、前記担持面12は可動スクロール30を駆動するために使用され、前記非担持面13に空洞部14が形成され、即ち、前記空洞部14に対応する空間は、一部の非担持面13と、相応する可動スクロール30の側壁とによって囲まれた空間であり、前記空洞部14は、前記担持面12から前記非担持面13への方向に前記担持面12と前記可動スクロール30とによって押圧された油液を収容するために使用される。
【0027】
本出願の実施例が提供した偏心スライダを適用してスクロール圧縮機に組み立て、このように、スクロール圧縮機が起動、運転している過程において、偏心軸区間21がスライダ本体10の軸線をクランク軸20の軸線周りに回転させる(図2に示すr方向に沿って回転させる)ようにクランク軸20を回転させると、スライダ本体10の担持面12が可動スクロール30の相応する内側壁を押圧し、担持面12と可動スクロール30の相応する内側壁との間に油液が貯蔵されているため、油液が押圧されて油膜が形成され、ここで押圧された油液の一部が押圧されて非担持面13の空洞部14に進入するようにし、また、空洞部14と可動スクロール30の相応する側壁との間に多くの量の油液が存在することで、空洞部14と可動スクロール30の相応する側壁との間で油膜がせん断されて生じる押圧力が減少され、即ち、空洞部14と可動スクロール30の相応する側壁との間の油膜せん断力が低減されることで、偏心スライダの周方向表面と可動スクロール30の相応する側壁との間での全体的な油膜せん断力が全体的に低減され、スクロール圧縮機の性能及び信頼性を効果的に向上させる。
【0028】
本出願の実施例では、前記非担持面13は、前記空洞部14の側壁としての空洞側面141を含む。具体的に、前記空洞側面141の両側は前記担持面12の両側にそれぞれ接続し、前記空洞側面141から前記スライダ本体10の中心軸線までの距離は、前記担持面12から前記スライダ本体10の中心軸線までの距離より短く、即ち、空洞側面141は、円柱状のスライダ本体10の周方向表面を機械加工して得られるものである(旋削機加工で成形してもよいし、研削加工で成形してもよい)。このように、スライダ本体10が取付部31に進入して取り付けられた後、空洞側面141と可動スクロール30の相応する側壁との間に大きな隙間が形成されているため、空洞側面141に形成された油膜の厚さを減少させること、即ち油膜せん断力を減少させることで、偏心スライダの周方向表面と可動スクロール30の相応する側壁との間の全体的な油膜せん断力が全体的に減少し、スクロール圧縮機の性能及び信頼性を効果的に向上させる。
【0029】
さらに、図4に示すように、前記非担持面13は第1移行側面131と第2移行側面132とを更に含み、前記第1移行側面131と前記第2移行側面132とは前記空洞側面141の両側にそれぞれ接続し、前記第1移行側面131の前記空洞側面141から離れる一側が前記担持面12の一側に接続し、前記第2移行側面132の前記空洞側面141から離れる一側が前記担持面12の他の一側に接続し、担持面12と空洞側面141との間は第1移行側面131と第2移行側面132とを介して移行することで、担持面12と空洞側面141との間は円滑に接続し、取付部31に対する偏心スライダの駆動能力が保証される。本出願の実施例では、前記第1移行側面131から前記スライダ本体10の中心軸線までの距離と前記第2移行側面132から前記スライダ本体10の中心軸線までの距離とは、いずれも前記空洞側面141から前記スライダ本体10の中心軸線までの距離より長く、且つ、前記第1移行側面131から前記スライダ本体10の中心軸線までの距離と前記第2移行側面132から前記スライダ本体10の中心軸線までの距離とは、いずれも前記担持面から前記スライダ本体10の中心軸線までの距離より短いまたは等しい。好ましくは、前記第1移行側面131から前記スライダ本体10の中心軸線までの距離と前記第2移行側面132から前記スライダ本体10の中心軸線までの距離とは、いずれも前記担持面から前記スライダ本体10の中心軸線までの距離より短い。
【0030】
図4及び図5に示すように、前記空洞側面141には、油液の漏洩を阻止するための阻止縁15が設置され、阻止縁15は空洞側面141の可動スクロール30から離れる一端に固定的に接続され、阻止縁15の円弧状側壁と相応する可動スクロール30の側壁との間は基本的に接触している。このように、油液が空洞側面141の位置に貯蔵する際に、油液は重力によって下へ流れ、阻止縁15によって、油液が空洞側面141において下へ漏洩することを阻止することができ、油液が空洞側面141の位置においてより長く滞留することができ、つまり空洞側面141に形成された油膜の厚さを減少させ、即ち油膜せん断力を減少させる。当該実施例では、阻止縁15のスライダ本体10の軸方向に沿う厚さは2mmより大きいまたは等しいである。
【0031】
図6及び図7に示すように、他の実施例が提供した偏心スライダでは、前記空洞部14は前記スライダ本体10の軸線方向に沿って延びる1つの貫通溝142であり、即ち、当該貫通溝142の両端がスライダ本体10の両端面を貫通している。具体的には、この貫通溝142は、スライダ本体10に垂直な軸線に沿って切断したときの輪郭形状が円弧状を呈している。この貫通溝142は、ミリング機加工で成形してもよい。なお、この貫通溝142の前記可動スクロール30から離れる一端には、油液の漏洩を阻止するための阻止縁15がさらに設置されてもよく、このように、油液が貫通溝142に貯蔵する際に、油液は重力によって下へ流れ、阻止縁15によって、油液が貫通溝142において下への漏洩を阻止することができ、油液が空洞側面141の位置においてより長く滞留することができ、つまり空洞側面141に形成された油膜の厚さを減少させ、即ち油膜せん断力を減少させる。当該実施例では、阻止縁15のスライダ本体10の軸方向に沿う厚さは2mmより大きいまたは等しいである。
【0032】
図8及び図9に示すように、別の実施例が提出した偏心スライダでは、前記空洞部14は、複数の貫通溝143を含み、各前記貫通溝143は、前記スライダ本体10の軸線方向に沿って延び、各貫通溝143は、好ましくはスライダ本体10の軸線に平行な直線溝であり、且つ、隣接した2つの前記貫通溝143は間隔をおいて設置されている。この実施例では、各貫通溝143の両端はいずれもスライダ本体10の両端面を貫通しており、各貫通溝143は、鋸歯状の輪郭を形成するように順次に配列されている。なお、すべての貫通溝143の前記可動スクロール30から離れる一端には、油液の漏洩を阻止するための阻止縁15がさらに設置されてもよく、このように、油液が各貫通溝143に貯蔵する際に、油液は重力によって下へ流れ、阻止縁15によって、油液が各貫通溝143において下への漏洩を阻止することができ、油液が空洞側面141の位置においてより長く滞留することができ、つまり空洞側面141に形成された油膜の厚さを減少させ、即ち油膜せん断力を減少させる。当該実施例では、阻止縁15のスライダ本体10の軸方向に沿う厚さは2mmより大きいまたは等しいである。
【0033】
図3に示すように、前記空洞部14の両側がそれぞれ前記スライダ本体10の軸線と結ぶ線がなす夾角βの角度範囲は60°~120°である。好ましくは、βは90°~100°である。本出願の実施例が提供したスライダ本体10では、β=94°である。
【0034】
図2図9に示すように、本出願の実施例のスライダ本体では、前記偏心軸区間21の回転方向(図2に示すr方向)に沿って、前記担持面12の後方領域には、油液が前記スライダ本体10の中心軸線の延在方向に沿って流れるための流通側面16が設置されている。このように、油液が偏心軸区間21の頂部から流出してスライダ本体10の軸方向エッジに到達すると、油液がスライダ本体10の周方向表面と可動スクロール30の相応する側壁との間に進入し(このとき、油液は、空洞部14及び流通側面16に流れ込む)、流通側面16と可動スクロール30の相応する側面との間には油液が流れる通路が形成されているため、より多くの油液が当該通路から下へ速やかに流れるとともに、流通側面16が担持面12に近接しているため、流通側面16から流下した油液が、担持面12で油膜せん断力の作用により油膜に生じる摩擦熱を奪うことができ、効果的に温度を下げることができ、スクロール圧縮機の信頼性を向上させることができる。
【0035】
図1に示すように、前記スクロール圧縮機は可動スクロール軸受40をさらに含み、前記可動スクロール軸受40が前記取付部31に固定的に取り付けられ、前記スライダ本体10が前記可動スクロール軸受40の軸受孔に挿入設置され、前記スライダ本体10の外側壁が前記可動スクロール軸受40の軸受孔の孔壁に隙間嵌めされることで、偏心軸区間21の頂部から流出した油液がスライダ本体10の周方向表面と可動スクロール軸受40の軸受孔の孔壁との隙間に進入する。一般的に、可動スクロール軸受40は自己潤滑能力を有する材料で作られており、スクロール圧縮機が長時間で作業使用される過程において、スライダ本体10の周方向表面と軸受孔の孔壁との間の油液不足が生じることが避けられず、この時、スライダ本体10の担持面12と相応する軸受孔の孔壁との間は直接接触する乾式摩擦であるが、可動スクロール軸受40は自己潤滑能力を有するので、可動スクロール軸受40により、可動スクロール30の取付部31の内側壁及びスライダ本体10の担持面12を保護し、担持面12と軸受孔の孔壁との直接摩擦による摩耗を効果的に低減し、スクロール圧縮機の性能及び信頼性を向上させる。
【0036】
図3に示すように、前記スライダ本体10の外周壁と前記可動スクロール軸受40の軸受孔の孔壁との間の隙間の大きさ範囲は0.1mm~0.6mmであり、本出願の実施例では、特に担持面12と可動スクロール軸受40の相応する孔壁との間の隙間H1の大きさ範囲は0.1mm~0.5mmであることが好ましい。このように、担持面12と可動スクロール30の取付部31の内側壁との間の油液が常に油膜を形成してその位置を潤滑することができ、担持面12と相応する軸受孔の孔壁とに押圧されて発生する油膜せん断力が作用して油膜が完全に破壊されて担持面12と相応する軸受孔の孔壁とが直接に乾式摩擦されることを回避することができる。
【0037】
更に、図3に示すように、空洞部14の壁面と相応する軸受孔の孔壁との間の隙間H2の大きさ範囲は0.2mm~0.6mmであり、本出願では、担持面12と可動スクロール軸受40の相応する孔壁との間の隙間H1は空洞部14の壁面と相応する軸受孔の孔壁との間の隙間H2より小さい(即ち、H1<H2)。このように、空洞部14の位置に油液が貯蔵され、空洞部14と相応する軸受孔の孔壁との間の油膜厚さが効果的に低減され、即ち、油膜せん断力が低減されることで、偏心スライダの周方向表面と可動スクロール30の相応する側壁との間の全体的な油膜せん断力が全体的に減少し、スクロール圧縮機の性能及び信頼性を効果的に向上させる。
【0038】
本出願の更に別の方面によれば、温度制御設備(図示せず)が提供される。具体的に、当該温度制御設備は、本出願の前記のスクロール圧縮機を含み、このスクロール圧縮機を適用して温度制御設備の冷媒を圧縮する。
【0039】
以上は、本出願の任意の実施例に過ぎず、本出願を限定するものではない。当業者にとって、本出願には様々な変更や変化が可能である。本出願の精神及び原則において行われたいずれかの補正、均等置換、改良等も本出願の請求の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0040】
10、スライダ本体、11、組立孔、12、担持面、13、非担持面、131、第1移行側面、132、第2移行側面、14、空洞部、141、空洞側面、142、貫通溝、143、貫通溝、15、阻止縁、16、流通側面、
20、クランク軸、21、偏心軸区間、22、油路、
30、可動スクロール、31、取付部、
40、可動スクロール軸受、
51、フレーム、52、貯油チャンバー、53、オルダムリング、54、クランク軸軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】