(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有する三重活性体を含む組み合わせ物の治療学的用途
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20240717BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240717BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240717BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240717BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240717BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240717BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/7056 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/7034 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/382 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/70 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/7042 20060101ALI20240717BHJP
C07K 14/605 20060101ALN20240717BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240717BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P3/00 ZNA
A61P1/16
A61P11/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/68
A61P3/10
A61P3/04
A61P3/06
A61K31/351
A61K31/381
A61K31/7056
A61K31/7034
A61K31/7048
A61K31/382
A61K31/70
A61K31/7042
C07K14/605
C07K19/00
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566569
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 KR2022009449
(87)【国際公開番号】W WO2023277620
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0086014
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】イ ジョンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョングク
(72)【発明者】
【氏名】イ サンヒョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
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4C076CC15
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4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA18
4H045BA19
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4H045EA20
4H045FA74
4H045GA45
(57)【要約】
本発明は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤を含む組み合わせ物の用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的有効量の配列番号1~102のいずれか一つのアミノ酸配列を含むペプチド;及び
薬学的に許容される賦形剤を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療用薬学的組成物であって、
前記薬学的組成物は、SGLT-2(sodium-glucose cotransporter 2)抑制剤と併用されることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ペプチドは持続型結合体の形態であり、前記持続型結合体は、下記化学式(1)で示される、請求項1に記載の組成物:
【化1】
ただし、この時、Xは、前記配列番号1~102のいずれか一つのアミノ酸配列を含むペプチドであり;
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり、
Fは、免疫グロブリンFc領域であり、
-は、XとLとの間、LとFとの間の共有結合連結を示す。
【請求項3】
前記代謝症候群は、糖尿病、肥満、高脂血症及び異常脂質血症からなる群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記SGLT-2抑制剤は、エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、レモグリフロジン、エタボン酸レモグリフロジン、セルグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、ルセオグリフロジン、ソタグリフロジン、ベキサグリフロジン、アチグリフロジン及びエルツグリフロジンで構成された群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、体重減少及び/又は血糖降下の効果を有するものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、過体重または肥満の糖尿病患者に投与されるものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ペプチドは、配列番号21、22、42、43、50、77、及び96のいずれか一つのアミノ酸配列を含むものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
前記ペプチドは、C末端がアミド化したものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
前記ペプチドは、アミノ酸残基の間に環が形成されたものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項10】
前記免疫グロブリンFc領域は、非グリコシル化されたものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgG4 Fc領域である、請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
前記免疫グロブリンFc領域は、二つのポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一方の末端が前記二つのポリペプチド鎖中の一つのポリペプチド鎖のみに連結されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
前記結合体は、Lの一方の末端がFのアミノ基またはチオール基と、Lの他方の末端がXのアミノ基またはチオール基にそれぞれ反応して形成された共有結合でF及びXにそれぞれ連結されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
前記Lは、ポリエチレングリコールである、請求項2に記載の組成物。
【請求項15】
前記L内のエチレングリコール繰り返し単位の部分の化学式量は1~100kDaの範囲にある、請求項2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドを含む組み合わせ物;または上記ペプチド及びSGLT-2抑制剤を含む組み合わせ物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
グルカゴンは、薬物治療、疾病、ホルモンまたは酵素欠乏などのような多様な原因により血糖が低下すると、膵臓から生産されて分泌される。分泌されたグルカゴンは肝臓に作用し、グリコーゲンを分解してブドウ糖を放出するように誘導し、結局、血糖水準を正常レベルまで高める役割をすることが知られている。このようなグルカゴンは、グルカゴン受容体に作用することにより活性を示す。
【0003】
また、GLP-1(Glucagon-like peptide-1)及びGIP(Glucose-dependent insuliontropic polypeptide)は、代表的な胃腸ホルモンで、神経ホルモンであり、食物摂取に伴う血中糖成分の調節に関与する物質として知られている。
【0004】
最近、効能の増大や副作用の改善などのために、グルカゴン受容体に作用しながら、同時にグルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1,GLP-1)及びGIP(Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)受容体にも作用できる物質の必要性が台頭し、本発明者らは、グルカゴン、GLP-1、及びGIP受容体に作用できるペプチド及びその結合体を開発した(WO2017-116204;WO2017-116205)。
【0005】
糖尿病は、インスリンの分泌量が不足したり、正常な機能が行われない代謝疾患の一種で、血中ブドウ糖の濃度が高まる高血糖を特徴とし、高血糖により様々な症状及び兆候を起こし、尿からブドウ糖を排出する疾患である。
【0006】
このような糖尿病の主な原因の一つとして過体重または肥満が挙げられるが、肥満は、インスリン抵抗性の増加とインスリン分泌の減少を誘発し、糖尿病発病の要因になることが知られている。このような糖尿病と肥満の関連性は、アディポカイン(adipokines)と遊離脂肪酸(free fatty acid)の不規則的な分泌によって脂肪酸がベータ細胞や腎臓、肝臓、心臓などインスリン敏感性組織内に蓄積して脂肪毒性(lipotoxicity)を示すためである。
【0007】
特に、肥満は、それ自体でも代謝疾患の一つであるが、糖尿病患者の糖尿病合併症を誘発しうることが知られており、糖尿病の原因になるだけでなく、糖尿病患者の予後を深刻にする要因として知られている。肥満を伴う糖尿病患者では、脳卒中、血管合併症、心臓麻痺、糖尿病性網膜病症、腎機能障害、慢性腎疾患、神経障害、糖尿病性足部潰瘍、そして心血管系疾患のリスクが高まるため、糖尿病患者の効果的な治療のためには、体重の調節も求められる。
【0008】
現在の糖尿病の主な治療方法としては、インスリン、インスリン分泌促進剤、インスリン感受性改善剤、そして血糖降下剤などの薬物による血糖調節に依存している。
【0009】
普遍的な糖尿病治療剤であるインスリンは、経口血糖降下剤の治療にもかかわらず、血糖コントロールの目標に到達できなかったり、高血糖がひどい場合に処方される。ただし、その副作用として低血糖、体重増加などの副作用があることが知られている。
【0010】
血糖降下剤の一つであるSGLT-2(Sodium-Glucose Cotransporter 2)抑制剤系列の薬物は、主に、第2型糖尿病患者の血糖調節に用いられる経口用糖尿病治療剤であり、糖尿病患者で発現が増加したSGLT-2を抑制することにより腎臓のブドウ糖再吸収を抑制し、ブドウ糖を排出させて血糖降下の効果を得ることが知られている。特に、ブドウ糖を標的に作用してインスリンとは独立して作用できるため、ベータ細胞機能やインスリン抵抗にも関係なく処方できる利点がある。
【0011】
また、糖尿病の治療には、インスリン依存度を下げ、低血糖リスクを下げ、体重増加のような副作用を抑制しようとする目的で種々の薬物を共に投与する併用治療法も多用されている。
【0012】
糖尿病の治療には、血糖調節だけでなく、体重調節が必要であるにも関わらず、糖尿病患者は、適正量の食事量を摂取することが治療のために求められ、食事療法や運動治療法を通じた体重減少が困難なだけでなく、大抵インスリン治療剤をはじめとする糖尿病治療剤の投与によりインスリン調節過程で脂肪形成が促進されて肥満を誘発したり、または血糖が調節されると、尿から栄養分が抜け出る症状が改善されて体重が増加する現象を示す。
【0013】
これに対し、糖尿病患者において血糖減少だけでなく、体重の減少効果も得ることができると、糖尿病治療のための根本的で効果的な治療方法になることが期待される。また、肥満患者も糖尿病を伴う場合が多数であるから、体重の減少及び血糖降下を同時に達成できる治療法は、肥満においても効果的な治療方法になると期待される。
【0014】
これに対し、このような治療方法を開発しようとする努力の一環として2以上の薬物を併用投与して血糖調節及び体重減少の効果を共に得ようとする治療法を開発する努力が続けられているが、まだ確立された治療剤や治療法はないことが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO2017-116204
【特許文献2】WO2017-116205
【特許文献3】国際特許公開第WO97/34631号
【特許文献4】国際特許公開第96/32478号
【0016】
【非特許文献1】Pearson et al(1988)[Proc.Natl. Acad. Sci.USA 85]:2444
【非特許文献2】Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277
【非特許文献3】Needleman and Wunsch、1970,J. Mol.Biol.48:443-453
【非特許文献4】Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research 12:387(1984)
【非特許文献5】Atschul,[S.][F.,][ET AL,J MOLEC BIOL 215]:403(1990)
【非特許文献6】Guide to Huge Computers,Martin J.Bishop,[ED.,]Academic Press,San Diego、1994
【非特許文献7】[CARILLO ETA/。](1988)SIAM J Applied Math 48:1073
【非特許文献8】Smith and Waterman,Adv.Appl. Math(1981)2:482
【非特許文献9】Schwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp.353-358(1979)
【非特許文献10】Gribskov et al(1986)Nucl. Acids Res.14:6745
【非特許文献11】H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York,1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
血糖調節及び体重減少を達成できる治療剤または治療法の開発が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一つの目的は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドまたはその結合体を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療用薬学的組成物であって、SGLT-2(sodium-glucose cotransporter 2)抑制剤と併用されることを特徴とする薬学的組成物を提供することにある。
【0019】
本発明のもう一つの目的は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤を含む組み合わせ物を提供することにある。
【0020】
本発明のもう一つの目的は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療のための薬学的キットを提供することにある。
【0021】
本発明の他の一つの目的は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドまたはその結合体;またはこれを含む薬学的組成物をSGLT-2抑制剤と共にこれを必要とする個体に併用投与する段階を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療方法を提供することにある。
【0022】
本発明の他の一つの目的は、上記組み合わせ物、上記薬学的組成物、または薬学的キットをこれを必要とする個体に投与及び/又は使用する段階を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療方法を提供することにある。
【0023】
本発明のもう一つの目的は、上記組み合わせ物、薬学的組成物、または薬学的キットの代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療用途及び/又は代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療のための薬剤の製造のための用途を提供することにある。
【0024】
本発明の他の一つの目的は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【発明の効果】
【0025】
本発明のグルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチド;またはその結合体をSGLT-2抑制剤と併用投与することは、代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療のための効果的な投与治療法として利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】配列番号42の持続型結合体をエンパグリフロジンと併用投与して血糖減少及び体重減少の効果を確認した図である。
【
図2】配列番号42の持続型結合体をエンパグリフロジンと併用投与して奏される血糖減少効果をAUC(area under curve)で数値化して分析した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を具現する一態様は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドまたはその結合体を含む組成物である。
【0028】
一つの具体例による組成物として、薬学的有効量のグルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチド;及び薬学的に許容される賦形剤を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療用薬学的組成物であって、上記薬学的組成物は、SGLT-2(sodium-glucose cotransporter 2)抑制剤と併用されることを特徴とする。
【0029】
他の具体例による組成物であって、上記グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドは配列番号1~102のいずれか一つのアミノ酸配列を含むペプチドであることを特徴とする。
【0030】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記ペプチドは、持続型結合体の形態であり、前記持続型結合体は、下記化学式(1)で表されることを特徴とする:
【0031】
X-L-F・・・(1)
【0032】
ただし、この時、Xは、上記配列番号1~102のいずれか一つのアミノ酸配列を含むペプチドであり;
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり、
Fは、免疫グロブリンFc領域であり、
-は、XとLとの間、LとFとの間の共有結合連結を示す。
【0033】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、上記代謝症候群は、糖尿病、肥満、高脂血症及び異常脂質血症からなる群から選択されるいずれか一つ以上であることを特徴とする。
【0034】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、上記SGLT-2抑制剤は、エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、レモグリフロジン、エタボン酸レモグリフロジン、セルグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、ルセオグリフロジン、ソタグリフロジン、ベキサグリフロジン、アティグリフロジン及びエルツグリフロジンで構成された群から選択されるいずれか一つ以上であることを特徴とする。
【0035】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、上記組成物は、体重減少及び/又は血糖降下の効果を有することを特徴とする。
【0036】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、上記組成物は、過体重または肥満の肥満患者において血糖降下効果を有することを特徴とする。
【0037】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、上記組成物は、高血糖または糖尿病の肥満患者で血糖降下効果を有することを特徴とする。
【0038】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、上記ペプチドは、配列番号21、22、42、43、50、77、及び96のいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、上記ペプチドは、C末端が変形されていないか、アミド化したことを特徴とする。
【0039】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、上記ペプチドは、アミノ酸残基の間に環が形成されたことを特徴とする。
【0040】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記免疫グロブリンFc領域は、非グリコシル化されたことを特徴とする。
【0041】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記免疫グロブリンFc領域は、(a)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン;(b)CH1ドメイン及びCH2ドメイン;(c)CH1ドメイン及びCH3ドメイン;(d)CH2ドメイン及びCH3ドメイン;(e)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン中の1個または2個以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域またはヒンジ領域の一部との組合わせ;及び(f)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体で構成された群から選択されることを特徴とする。
【0042】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記免疫グロブリンFc領域は、ジスルフィド結合を形成できる部位が除去されたり、天然型FcでN末端の一部のアミノ酸が除去されたり、天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加されたり、補体結合部位が除去されたりまたはADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されたことを特徴とする。
【0043】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgEまたはIgMに由来したことを特徴とする。
【0044】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記免疫グロブリンFc領域はIgG、IgA、IgD、IgE、IgMからなる群から選択される免疫グロブリンに由来した相違する起源を有するドメインのハイブリッドであることを特徴とする。
【0045】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記免疫グロブリンFc領域は、二量体形態(dimeric form)であることを特徴とする。
【0046】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記免疫グロブリンFc領域は、二つのポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一方の末端が前記二つのポリペプチド鎖中の一つのポリペプチド鎖にのみ連結されていることを特徴とする。
【0047】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG4 Fc領域であることを特徴とする。
【0048】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc領域であることを特徴とする。
【0049】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、上記結合体は、Lの一方の末端がFのアミノ基またはチオール基と、Lの他方の末端がXのアミノ基またはチオール基にそれぞれ反応して形成された共有結合でF及びXにそれぞれ連結されていることを特徴とする。
【0050】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、上記Lは、ポリエチレングリコールであることを特徴とする。
【0051】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、上記L内のエチレングリコール繰り返し単位の部分の化学式量は1~100kDaの範囲にあることを特徴とする。
【0052】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、上記組成物は、肥満を有する個体において体重減少の効果を有することを特徴とする。
【0053】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記エチレングリコール繰り返し単位は[OCH2CH2]nであり、nは自然数で、前記ペプチド結合体内[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が1~100kDaになるように定められることを特徴とする。
【0054】
前述した具体例のいずれか一つによる組成物として、前記nの値は、前記ペプチド結合体内[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が10kDaになるように定められることを特徴とする。
【0055】
本発明の他の一態様は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤を含む組み合わせ物である。
【0056】
本発明の他の一態様は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療のための薬学的キットである。
【0057】
一つの具体例として、上記代謝症候群は、糖尿病、肥満、高脂血症及び異常脂質血症からなる群から選択されるいずれか一つ以上である薬学的キットである。本発明のもう一つの態様は、上記組み合わせ物、上記薬学的組成物、または薬学的キットをこれを必要とする個体に投与及び/又は使用する段階を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療方法である。
【0058】
一つの具体例として、上記代謝症候群は、糖尿病、肥満、高脂血症及び異常脂質血症からなる群から選択されるいずれか一つ以上の方法である。
【0059】
本発明のもう一つの態様は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドまたはその結合体;またはこれを含む薬学的組成物をSGLT-2抑制剤と共にこれを必要とする個体に併用投与する段階を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療方法である。
【0060】
一つの具体例として、上記代謝症候群は、糖尿病、肥満、高脂血症及び異常脂質血症からなる群から選択されるいずれか一つ以上の方法である。
【0061】
本発明のもう一つの形態は、上記組み合わせ物、薬学的組成物、または薬学的キットの代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療用途及び/又は代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療のための薬剤の製造のための用途である。
【0062】
一つの具体例として、上記代謝症候群は、糖尿病、肥満、高脂血症及び異常脂質血症からなる群から選択されるいずれか一つ以上の用途である。
【0063】
本発明のもう一つの態様は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療用薬学的組成物である。
【0064】
一つの具体例として、上記代謝症候群は、糖尿病、肥満、高脂血症及び異常脂質血症からなる群から選択されるいずれか一つ以上の組成物である。
【0065】
以下では、本発明をより詳細に説明する。
【0066】
一方、本願で開示されるそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの異なる説明及び実施形態にも適用され得る。即ち、本願で開示された多様な要素の全ての組合わせが本発明の範疇に属する。また、下記の具体的な記述により本発明の範疇が制限されるとは見られない。
【0067】
本明細書全体を通して、天然に存在するアミノ酸に対する通常の1文字及び3文字コードが用いられるだけでなく、Aib(2-アミノイソブチル酸、2-aminoisobutyric acid)、Sar(N-methylglycine)、α-メチルグルタミン酸(α-methyl-glutamic acid)などの他のアミノ酸に対して一般に許容される3文字コードが用いられる。また、本明細書において略語で言及したアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法に従って記載したものである。
【0068】
アラニンAla、A アルギニンArg、R
アスパラギンAsn、N アスパラギン酸Asp、D
システインCys、C グルタミン酸Glu、E
グルタミンGln、Q グリシンGly、G
ヒスチジンHis、H イソロイシンIle、I
ロイシンLeu、L リシンLys、K
メチオニンMet、M フェニルアラニンPhe、F
プロリンPro、P セリンSer、S
トレオニンThr、T トリプトファンTrp、W
チロシンTyr、Y バリンVal、V
【0069】
本明細書において「Aib」は「2-アミノイソ酪酸(2-aminoisobutyric acid)」または「アミノイソ酪酸(aminoisobutyric acid)」と混用され得、2-アミノイソ酪酸(2-aminoisobutyric acid)とアミノイソ酪酸(aminoisobutyric acid)は混用され得る。
【0070】
本発明を具現するための一態様は、グルカゴン受容体、GLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体、及びGIP(Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体を含む組成物である。具体的には、上記組成物は、上記ペプチドまたはその結合体を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療用薬学的組成物である。上記代謝症候群の具体的な例としては、糖尿病、肥満、高脂血症及び異常脂質血症などが挙げられるが、これに制限されない。
【0071】
本発明の一つの具体的な様態は、グルカゴン受容体、GLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体、及びGIP(Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体を含む組成物として、糖尿病及び/又は肥満の予防または治療用薬学的組成物である。
【0072】
一つの具現例として、上記ペプチドは、配列番号1~102のいずれか一つのアミノ酸配列を含んだり、必須的に構成されたり、または構成されるものであってもよい。
【0073】
もう一つの具現例として、上記組成物は、薬学的に許容される賦形剤と配列番号1~102のいずれか一つのアミノ酸配列を含むペプチドまたはその結合体を薬学的有効量で含む薬学的組成物であってもよい。
【0074】
本発明によるペプチドまたはその結合体を有効成分として含む組成物は、SGLT-2(sodium-glucose cotransporter)抑制剤と併用されるものであってもよい。
【0075】
具体的には、本発明の組成物は、SGLT-2抑制剤と併用投与されることにより、血糖降下の効果だけでなく、体重減少の効果を奏するため、血糖調節及び体重調節が共に求められる糖尿病患者(例えば、過体重または肥満の糖尿病患者)または肥満患者(例えば、高血糖または糖尿病を有する肥満患者)のような代謝症候群の患者で効果的な治療剤になり得る。
【0076】
また、本発明のペプチドまたはその結合体;またはこれらを含む組成物は、抗炎及び/又は抗線維化の効果を有するため、これをSGLT-2抑制剤と併用投与することにより、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患などにおいても効果を得ることができる。
【0077】
本発明において、「併用投与」、「併用される」、「併用する」とは、本発明によるペプチドまたはその結合体;またはこれを有効成分として含む組成物をSGLT-2抑制剤と共に個体に投与することを意味し、これは、単に併用される薬物の同時の投与を意味することだけでなく、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体及びSGLT-2抑制剤が個体に共に作用し、各物質が本来の機能と同等またはそれ以上の水準を行える投与の形態で理解されなければならない。従って、本願において、「併用」という用語が用いられる場合、これは、同時、個別、順次、または逆順の投与を示すことであり、その手順が無制限であると理解されなければならない。上記投与が順次、逆順または個別の場合、投与の手順は特に制限されず、ただし、2次成分の投与の間隔は、上記併用の有益な効果を失わないようにするものでなければならない。
【0078】
本発明において併用投与される(i)グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及び(ii)SGLT-2抑制剤は、次のような形態で投与されてもよいが、これに制限されない:
【0079】
a)(i)グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及び(ii)SGLT-2抑制剤が混合された一つの混合物(mixture)で投与;または
b)(i)グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及び(ii)SGLT-2抑制剤が分離した形態で投与されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0080】
グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体及びSGLT-2抑制剤が分離した形態の場合、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有する物質またはその結合体及びSGLT-2抑制剤が別個の製剤に製剤化されて同時、個別、順次、または逆順で投与されるものであってもよい。
【0081】
本発明は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体にSGLT-2抑制剤をさらに含めて併用する場合、血糖降下の効果及び体重減少の効果が同時に得られ、糖尿病及び/又は肥満の予防または治療効果が画期的に改善されることを確認し、上記併用療法を提供することになった。
【0082】
また、本発明により、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体にSGLT-2抑制剤をさらに含めて併用する場合、代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療効果を得ることができる。
【0083】
本発明において、上記血糖降下は血糖水準を下げることを意味する。インスリンとグルカゴンにより体内の血糖は恒常性を維持するが、血糖が正常範囲を超えて高い血糖水準を維持すると、糖尿病が発病する。経口用糖尿病治療剤であるSGLT-2抑制剤は、ブドウ糖の排出を促進して血糖を下げる役割をする。本発明によるペプチドまたはその結合体とSGLT-2抑制剤を併用投与すれば、血糖降下だけでなく、患者の体重を減少させることができ、糖尿病とともに糖尿病の原因となる肥満を治療でき、糖尿病合併症を予防できるという点で有利な治療法になる。また、高血糖または糖尿病を有する肥満患者でも血糖降下及び体重減少の効果を共に示すため、効果的な治療法になる。
【0084】
本発明の「グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド」は、本発明において「三重活性体」または「ペプチド」という名称でも混用され得る。
【0085】
このようなペプチドには、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体に対して有意なレベルの活性を有する様々な物質、例えば様々なペプチドが含まれる。
【0086】
特にこれに制限されるものではないが、前記グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体に対して有意なレベルの活性を有するペプチドは、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体のうち1つ又はそれ以上の受容体、具体的には2つ又はそれ以上の受容体、より具体的には3つの受容体の全てに対するin vitro活性が、当該受容体の天然リガンド(天然グルカゴン、天然GLP-1及び天然GIP)に比べて、約0.001%以上、約0.01%以上、約0.1%以上、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上を示すことができるが、有意に増加した範囲は制限なく含まれる。
【0087】
ここで、受容体に対する活性は、天然のものに比べて受容体に対するin vitro活性が約0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、1%以上2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、約200%以上を示す場合を例として挙げることができる。しかし、これに制限されるものではない。
【0088】
本発明において用語、「約」は±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などを全て含む範囲であり、約という用語に続く数値と同等又は類似の範囲の数値を全て含むが、これに限定されない。
【0089】
このような三重活性体のin vitro活性を測定する方法を本願明細書の実験例1に示すが、特にこれに限定されるものではない。
【0090】
一方、前記ペプチドは、次のi)~iii)の1つ以上、2つ以上、特に3つの活性を有すること、具体的には有意な活性を有することを特徴とする:
【0091】
i)GLP-1受容体の活性化;ii)グルカゴン受容体の活性化;iii)GIP受容体の活性化。
【0092】
ここで、受容体を活性化するとは、天然のものに比べて、受容体に対するin vitro活性が約0.001%以上、約0.01%以上、約0.1%以上、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上を示す場合を例として挙げることができる。しかし、これに制限されるものではない。
【0093】
また、前記ペプチドは、天然GLP-1、天然グルカゴン及び天然GIPのいずれかに比べて、体内半減期が延長されたものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0094】
例えば、本発明のペプチドは、配列番号1~102のいずれか一つのアミノ酸配列を含んでもよく、配列番号1~102のいずれか一つのアミノ酸配列で(必須に)構成されてもよく、または配列番号1~102のいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、または95%以上の配列同一性を有するペプチドも含んでもよいが、本発明の目的上、SGLT-2抑制剤と併用投与して血糖降下及び体重減少の効果を有する以上、特定配列に制限されない。
【0095】
より具体的な例として、上記ペプチドは、配列番号21、22、42、43、50、77、及び96のいずれか一つのアミノ酸配列を含んだり、(必須に)構成されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0096】
本願において特定配列番号で「構成される」ペプチドと記載されていても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるペプチドと同一もしくは相当する活性を有する場合であれば、当該配列番号のアミノ酸配列前後の無意味な配列の追加または自然に発生し得る突然変異、あるいはそのサイレント突然変異(silent mutation)を除外することではなく、このような配列の追加もしくは突然変異を有する場合であっても本願の範囲内に属することが自明である。即ち、一部の配列の差があるとしても、一定水準以上の相同性を示し、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及び/又はGIP受容体に対する活性を示すと、本発明の範囲に属することができる。
【0097】
例えば、本発明のペプチドにWO2017-116204及びWO2017-116205を参照することができる。
【0098】
本出願において、用語「相同性(homology)」または「同一性(identity)」は二つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列と相互に関連した程度を意味し、百分率で表すことができる。
【0099】
用語の相同性及び同一性はしばしば互換的に使用することができる。
【0100】
任意の2つのポリヌクレオチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、例えば、Pearson et al(1988)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85]:2444でのようなデフォルトパラメータを用いて「FASTA」プログラムなどの既知のコンピュータアルゴリズムを使用して決定することができる。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet. 16:276-277)(バージョン5.0.0または以降のバージョン)で行われるような、ニードルマン-ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch、1970,J. Mol. Biol. 48:443-453)を使用して決定することができる。(GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research 12:387(1984))、BLASTP,BLASTN,FASTA(Atschul,[S.] [F.,] [ET AL,J MOLEC BIOL 215]:403(1990);Guide to Huge Computers,Martin J. Bishop,[ED.,] Academic Press,San Diego、1994、及び[CARILLO ETA/。](1988)SIAM J Applied Math 48:1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLASTまたはClustalWを用いて相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0101】
ペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman,Adv. Appl. Math(1981)2:482において公知となっているように、例えば、Needleman et al.(1970),J Mol Biol.48:443のようなGAPコンピュータプログラムを用いて配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列中、より短いものにおける記号の総数であり、類似の配列された記号(即ち、アミノ酸)の数を除した値と定義する。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)一進法比較マトリックス(同一性のために1、そして非-同一性のために0の値を含む)及びSchwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp. 353-358(1979)により開示されているように、Gribskov et al(1986)Nucl.Acids Res.14:6745の加重比較マトリックス(またはEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップにおいて各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5);及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むことができる。従って、本発明で用いられたものとして、用語「相同性」または「同一性」は配列間の関連性(relevance)を示す。
【0102】
本発明のペプチドは、分子内架橋(intramolecular bridge)を含んでもよく(例えば、共有結合的架橋又は非共有結合的架橋)、具体的には環を含む形態であってもよい。例えば、ペプチドの16番目のアミノ酸と20番目のアミノ酸間に環が形成された形態であってもよいが、特にこれに限定されるものではない。具体的な例として、16番のアミノ酸はグルタミン酸、20番のアミノ酸はリシンであってもよいが、これに制限されない。
【0103】
前記環の非制限的な例として、ラクタム架橋(又はラクタム環)を含んでもよい。
【0104】
また、前記ペプチドは、目的とする位置に環を形成するアミノ酸を含むことにより環を含むように改変されたものが全て含まれる。
【0105】
例えば、ペプチドの16番目と20番目のアミノ酸対がそれぞれ環を形成するグルタミン酸又はリシンに置換されたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0106】
このような環は、ペプチド内のアミノ酸側鎖間に形成され、例えばリシンの側鎖とグルタミン酸の側鎖間にラクタム環が形成される形態であってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0107】
前記方法の組み合わせ物により作製されるペプチドの例として、天然グルカゴンとアミノ酸配列が少なくとも1つ異なり、N末端のアミノ酸残基のα炭素が除去された、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、アナログ作製のための様々な方法の組み合わせ物により、本発明に用いられるペプチドを作製することができる。
【0108】
また、本発明のペプチドは、活性体分解酵素の認識作用を回避して体内半減期を延長させるために、一部のアミノ酸を他のアミノ酸又は非天然化合物に置換するが、特にこれらに限定されるものではない。
【0109】
具体的には、前記ペプチドのアミノ酸配列のうち2番目のアミノ酸配列の置換により、分解酵素の認識作用を回避して体内半減期を延長させたペプチドであってもよいが、体内の分解酵素の認識作用を回避するためのアミノ酸の置換又は変更であればいかなるものでもよい。
【0110】
また、ペプチドの作製のためのこのような改変には、L型もしくはD型アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸を用いた改変、並びに/又は天然配列の修飾、例えば側鎖官能基の改変、分子内の共有結合、一例として側鎖間の環形成、メチル化、アシル化、ユビキチン化、リン酸化、アミノヘキサン化、ビオチン化などの修飾による改変が全て含まれる。
【0111】
さらに、アミノ及び/又はカルボキシ末端に少なくとも1つのアミノ酸が付加されたものが全て含まれる。
【0112】
前記置換されるか、付加されるアミノ酸としては、ヒトタンパク質において通常観察される20種のアミノ酸だけでなく、異常又は非自然発生アミノ酸を用いることができる。
【0113】
異常アミノ酸の市販元には、Sigma-Aldrich、ChemPep、Genzyme pharmaceuticalsが含まれる。これらのアミノ酸が含まれるペプチドと定型的なペプチド配列は、民間のペプチド合成会社、例えば米国のAmerican peptide companyやBachem、又は韓国のAnygenにおいて合成及び購入することができる。
【0114】
アミノ酸誘導体も同じ方式で入手することができ、一例として4-イミダゾ酢酸(4-imidazoacetic acid)などが挙げられる。
【0115】
また、本発明によるペプチドは、生体内のタンパク質切断酵素から保護して安定性を向上させるために、そのN末端及び/又はC末端などが化学的に修飾された形態、有機基により保護された形態、又はペプチド末端などにアミノ酸が付加されて改変された形態であってもよい。
【0116】
特に、化学的に合成したペプチドの場合、N及びC末端が電荷を帯びているので、その電荷を除去するために、N末端のアセチル化(acetylation)及び/又はC末端のアミド化(amidation)を行ってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0117】
具体的には、本発明のペプチドのN末端またはC末端はアミノ基(-NH2)またはカルボキシル基(-COOH)を有してもよいが、これに制限されない。
【0118】
また、本発明のペプチドは、その長さによってこの分野でよく知られている方法、例えば、自動ペプチド合成器により合成することができ、遺伝子操作技術により生産することもできる。
【0119】
具体的には、本発明のペプチドは、標準合成方法、組換え発現システム、又は任意の他の当該分野の方法により製造することができる。従って、本発明によるペプチドは、例えば、下記を含む方法を含む複数の方法で合成することができる:
【0120】
(a)ペプチドを固相又は液相法の手段で段階的に又は断片組立により合成し、最終ペプチド生成物を分離及び精製する方法;又は
(b)ペプチドをコードする核酸作製物を宿主細胞内で発現させ、発現生成物を宿主細胞培養物から回収する方法;又は
(c)ペプチドをコードする核酸作製物の無細胞試験管内の発現を行い、発現生成物を回収する方法;又は
(a)、(b)及び(c)の任意の組み合わせによりペプチドの断片を得、続いて、断片を連結させてペプチドを得、当該ペプチドを回収する方法。
【0121】
また、前記グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドは、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドに、その生体内半減期を延長させるための生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であってもよい。本発明における前記生体適合性物質は、キャリアと混用され得る。
【0122】
本発明における前記ペプチドの結合体は、キャリアが結合されていない前記ペプチドより効力の持続性が向上したものであり、本発明においては、このような結合体を「持続型結合体」という。
【0123】
本発明の用語、「持続型結合体」または「結合体」は、上記ペプチドと生体適合性物質が結合された構造を有し、上記生体適合性物質が結合されていないペプチドに比べて増加した効力の持続性を示すことができる。上記持続型結合体において生体適合性物質はペプチドに共有結合で連結されたものであってもよいが、特にこれに制限されない。本発明において、上記結合体の一構成要素であるペプチドは、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド、具体的には、配列番号1~102のアミノ酸配列のいずれか一つの配列を含むペプチドまたは断片であってもよく、生体適合性物質は、上記ペプチドの半減期を延長させる物質であり、本発明の上記結合体の一部をなす一構成である。
【0124】
例えば、上記結合体に含まれるペプチドは、配列番号1~102のいずれか一つのアミノ酸配列を含んだり、(必須に)構成されるペプチドであってもよい。また、生体適合性物質の結合により活性を喪失せずに半減期が増加するものであってもよいが、SGLT-2抑制剤と併用投与されて血糖降下及び体重減少の効果を有する限り、制限なく本発明の結合体の一構成要素として用いられる。
【0125】
本出願において、用語「生体適合性物質」は、生理活性物質である本発明のペプチドに結合されて生体適合性物質部またはキャリアと結合されていない生理活性物質に比べて生理活性物質の効力の持続性を増加させる物質をいう。上記生体適合性物質は、生理活性物質(例えば、ペプチド)に共有結合で連結されたものであってもよいが、特にこれに制限されない。
【0126】
上記生体適合性物質は、免疫グロブリンFc領域であってもよく、より具体的にはIgG Fc領域であってもよいが、特にこれに制限されない。
【0127】
本発明のペプチド内の一つ以上のアミノ酸側鎖は、生体内で可溶性及び/又は半減期を延長させて/させたり生体利用率を増加させるために、このような生体適合性物質に接合することができる。このような改変は、また、治療学的タンパク質及びペプチドのクリアランス(clearance)を減少させることができる。
【0128】
上述の生体適合性物質は、水溶性(両親媒性または親水性)及び/又は無毒性及び/又は薬学的に許容可能なものであってもよい。
【0129】
なお、このような結合体は、非自然発生の(non-naturally occurring)ものであってもよい。
【0130】
本発明の一つの具体例として、前記持続型結合体又は結合体は、下記化学式(1)で表されるものであってもよいが、これに制限されるものではない:
【0131】
X-L-F・・・(1)
【0132】
ただし、この時、Xは配列番号1~102のいずれか一つのアミノ酸配列を含むペプチドであり;
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり、
Fは、免疫グロブリンFc領域またはその誘導体であり、
-は、XとLとの間、LとFとの間の共有結合連結を示す。
【0133】
本発明の結合体は、結合体の形態でもグルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して有意な活性を示すことができ、従って、やはりSGLT-2抑制剤と共に併用投与されると、血糖降下及び体重減少の効果を発揮することができる。
【0134】
具体的には、本発明の結合体は、天然のものに比べてグルカゴン受容体、GLP-1受容体、及び/又はGIP受容体に対するin vitro活性が約0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.5%以上、0.7%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0135】
本発明の目的上、上記ペプチドまたはその結合体は、天然型比グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及び/又はGIP受容体に対する活性が約0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0136】
上記結合体においてXは、配列番号1~102のアミノ酸配列のいずれか一つのアミノ酸配列を含んでもよく、配列番号1~102のアミノ酸配列のいずれか一つのアミノ酸配列で必須的に構成されてもよく、構成されたものであってもよく、具体的には、配列番号21、22、42、43、50、77、及び96のいずれか一つのアミノ酸配列を含んでもよく、配列番号21、22、42、43、50、77、及び96のいずれか一つのアミノ酸配列で必須的に構成されてもよく、構成されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0137】
前記結合体において、FはX、すなわちグルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド、具体的には、配列番号1~102のアミノ酸配列のいずれか一つの配列を含むペプチドの半減期を延長させることのできる物質であり、本発明の前記結合体の一部をなす一構成である。
【0138】
上記Fは、Xと共有化学結合または非共有化学結合で互いに結合されるものであってもよく、共有化学結合、非共有化学結合またはこれらの組み合わせによりLを通じてFとXが互いに結合されるものであってもよい。
【0139】
より具体的には、XとL、及びLとFは、共有結合で互いに連結されるものであってもよく、この時、上記結合体は、化学式(1)の順に、X、L、及びFが共有結合を通じてそれぞれ連結された結合体である。
【0140】
前記Fは、免疫グロブリンFc領域であってもよく、より具体的には、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG由来であってもよいが、特にこれに制限されない。
【0141】
本発明における「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除いたものであり、重鎖定常領域2(CH2)及び/又は重鎖定常領域3(CH3)部分を含む部位を意味する。前記免疫グロブリンFc領域は、本発明の結合体の一部をなす一構成であってもよい。
【0142】
本発明において、Fc領域と言えば、免疫グロブリンのパパイン消化から得る天然型配列だけでなくその誘導体、例えば、天然配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより置換されて天然のものとは異なる配列なども含まれる。
【0143】
前記Fは、2つのポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記2つの鎖のうち1つの鎖の窒素原子を介してのみ連結されている構造であるが、これに限定されるものではない。前記窒素原子を介する連結は、リシンのεアミノ原子やN末端のアミノ基に還元的アミノ化により連結されるものであってもよい。
【0144】
還元的アミノ化反応とは、反応物のアミン基又はアミノ基が他の反応物のアルデヒド(すなわち、還元的アミノ化が可能な官能基)と反応してアミンを生成し、次いで還元反応によりアミン結合を形成する反応を意味し、当該技術分野で周知の有機合成反応である。
【0145】
一つの具体例として、前記Fは、そのN末端プロリンの窒素原子を通じて連結されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0146】
前記免疫グロブリンFc領域は、本発明の化学式(1)の結合体の一部をなす一構成であり、具体的には、前記化学式(1)においてFに該当することができる。
【0147】
このような免疫グロブリンFc領域は、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0148】
本発明における免疫グロブリンFc領域は、N末端に特定のヒンジ配列を含んでもよい。
【0149】
本発明における「ヒンジ配列」とは、重鎖に位置してジスルフィド結合(inter disulfide bond)により免疫グロブリンFc領域の二量体を形成する部位を意味する。
【0150】
本発明における前記ヒンジ配列は、次のアミノ酸配列を有するヒンジ配列中の一部が欠失して1つのシステイン残基のみ有するように変異したものであってもよいが、これに限定されるものではない:
【0151】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号103)。
【0152】
前記ヒンジ配列は、配列番号119のヒンジ配列中の8番目又は11番目のシステイン残基が欠失して1つのシステイン残基のみ含むものであってもよい。本発明のヒンジ配列は、1つのシステイン残基のみ含む、3~12個のアミノ酸からなるものであるが、これに限定されるものではない。より具体的には、本発明のヒンジ配列は次のような配列を有することができる:Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号104)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Pro(配列番号105)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号106)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro(配列番号107)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号108)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号109)、Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号110)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号111)、Glu-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号112)、Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号113)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号114)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号115)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号116)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号117)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro(配列番号118)、Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号1119)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号120)、Glu-Pro-Ser-Cys(配列番号121)、Ser-Cys-Pro(配列番号122)。
【0153】
より具体的には、前記ヒンジ配列は、配列番号113(Pro-Ser-Cys-Pro)又は配列番号122(Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0154】
本発明の免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列の存在により免疫グロブリンFc鎖の二つの分子が二量体を形成した形態であってもよく、また、本発明の化学式(1)の結合体はリンカーの一方の末端が二量体の免疫グロブリンFc領域の一つの鎖に連結された形態であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0155】
本発明における「N末端」とは、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端を意味し、アミノ末端の最末端、又は最末端から1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個以上のアミノ酸が含まれる。本発明の免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列をN末端に含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0156】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然のものと実質的に同等又は向上した効果を有するものであれば、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除き、一部又は全部の重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域であってもよい。
【0157】
さらに、CH2及び/又はCH3に相当する非常に長い一部のアミノ酸配列が欠失した領域であってもよい。
【0158】
例えば、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインの少なくとも1つのドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(又はヒンジ領域の一部)との組み合わせ、6)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体である。しかし、これに制限されるものではない。
【0159】
また、本発明の持続型結合体の一つの実施形態として、前記免疫グロブリンFc領域Fは二つのポリペプチド鎖からなる二量体(dimer)であり、この時、前記Fc領域二量体FとXはエチレングリコール繰り返し単位を含有する一つの同一のリンカーLを通じて共有結合的に連結されている。この実施形態の一具体例において、XはこのようなFc領域二量体Fの二つのポリペプチド鎖中の一つのポリペプチド鎖にのみリンカーLを通じて共有結合で連結されている。
【0160】
この実施形態のさらに具体的な例示において、このようなFc領域二量体Fの両ポリペプチド鎖中、Xが連結された一つのポリペプチド鎖には一分子のXのみがLを通じて共有結合的に連結されている。この実施形態の最も具体的な例示において前記Fはホモ二量体(homodimer)である。
【0161】
他の具体例において、前記免疫グロブリンFc領域Fは、二つのポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一方の末端が前記二つのポリペプチド鎖中の一つのポリペプチド鎖にのみ連結されているものであってもよいが、これに制限されない。
【0162】
本発明の持続型結合体の他の実施形態では、二量体形態の一つのFc領域にX2分子が対称に結合することも可能である。このとき、前記免疫グロブリンFcとXは非ペプチド性リンカーにより互いに連結されてもよい。しかし、上記記述された例に制限されるものではない。
【0163】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域には、天然アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体も含まれる。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより異なる配列を有するものを意味する。
【0164】
例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214~238、297~299、318~322又は327~331番目のアミノ酸残基が修飾に適した部位として用いられてもよい。
【0165】
また、ジスルフィド結合を形成する部位が除去された誘導体、天然FcからN末端のいくつかのアミノ酸が欠失された誘導体、天然FcのN末端にメチオニン残基が付加された誘導体など、様々な誘導体が用いられる。さらに、エフェクター機能をなくすために、補体結合部位、例えばC1q結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を作製する技術は、国際特許公開第WO97/34631号、国際特許公開第96/32478号などに開示されている。
【0166】
分子の活性を全体的に変化させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野で公知である(H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York,1979)。
【0167】
最も一般的な交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、アミド化(amidation)などにより修飾(modification)されてもよい。
【0168】
前述したFc誘導体は、本発明のFc領域と同等の生物学的活性を示し、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を向上させたものであってもよい。
【0169】
また、このようなFc領域は、ヒトや、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内から分離した天然のものから得てもよく、形質転換された動物細胞もしくは微生物から得られた組換えたもの又はその誘導体であってもよい。ここで、天然のものから得る方法は、全免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離し、その後タンパク質分解酵素で処理することにより得る方法であってもよい。パパインを処理する場合には、Fab及びFcに切断され、ペブシンを処理する場合にはpF’c及びF(ab)2に切断される。これをサイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFcまたはpF’cを分離することができる。より具体的な実施形態において、ヒト由来のFc領域は、微生物から得られた組換え免疫グロブリンFc領域である。
【0170】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然糖鎖、天然のものに比べて増加した糖鎖、天然のものに比べて減少した糖鎖、又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には、化学的方法、酵素学的方法、微生物を用いた遺伝工学的手法などの通常の方法が用いられてもよい。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)との結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が低減又は除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このようなことから、糖鎖が除去されるか、非グリコシル化された免疫グロブリンFcフラグメントは、薬物のキャリアとしての本来の目的により適する。
【0171】
本発明における「糖鎖の除去(Deglycosylation)」とは、酵素で糖を除去したFc領域を意味し、非グリコシル化(Aglycosylation)とは、原核生物、より具体的な実施形態においては大腸菌で産生されてグリコシル化されていないFc領域を意味する。
【0172】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒト起源、又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、より具体的な実施形態においてはヒト起源である。
【0173】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来のものであってもよく、それらの組み合わせ(combination)又はそれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域であってもよい。より具体的な実施形態においては、ヒト血液に最も豊富なIgG又はIgM由来のものであり、さらに具体的な実施形態においては、リガンド結合タンパク質の半減期を延長させることが知られているIgG由来のものである。一層具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fc領域であり、最も具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc領域であるが、これらに限定されるものではない。
【0174】
また、一つの具体的な実施形態において、免疫グロブリンFc切片はヒトIgG4 Fcの領域として、各単量体(monomer)の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合(inter-chain形態)により2個の単量体が連結されたホモ二量体(homodimer)の形態であってもよく、この時、ホモ二量体の各単量体は、独立に35番及び95番のシステイン間の内部のジスルフィド結合及び141番及び199番のシステイン間の内部のジスルフィド結合、即ち、2つの内部のジスルフィド結合(intra-chain形態)を有するものである/有するものであってもよい。各単量体のアミノ酸は、221個のアミノ酸からなり、ホモ二量体を形成するアミノ酸は、全体で442個のアミノ酸からなるが、これらに限定されるものではない。具体的には、免疫グロブリンFc切片は、配列番号123のアミノ酸配列(221個のアミノ酸からなる)を有する2個の単量体が各単量体の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合によりホモ二量体を形成し、前記ホモ二量体の単量体は、それぞれ独立して35番目と95番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合、及び141番目と199番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合を形成するものであるが、これに限定されるものではない。
【0175】
上記化学式(1)のFは、配列番号123のアミノ酸配列である単量体を含めてもよく、上記Fは、配列番号123のアミノ酸配列の単量体のホモ二量体であってもよいが、これに制限されない
【0176】
一つの例として、免疫グロブリンFc切片は、配列番号123のアミノ酸配列(442個のアミノ酸で構成される)を含むホモ二量体であってもよいが、これに制限されない。
【0177】
一方、本発明において免疫グロブリンFc領域と関連した「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する時、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc領域をコードするポリペプチドが相違する起源の単鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。即ち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgEのFc領域からなるグループから選択された2個以上の領域から二量体又は多量体の製造が可能である。
【0178】
本発明において「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリン定常領域内に2個以上の相違する起源の免疫グロブリンFc領域に該当する配列が存在することを意味する用語である。本発明の場合、種々の形態のハイブリッドが可能である。即ち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなるグループから1個~4個のドメインからなるドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含めてもよい。
【0179】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明ではそれらの組み合わせ又はこれらのハイブリダイゼーションも可能である。具体的には、IgG2及びIgG4サブクラスであり、最も具体的には補体依存的傷害(CDC、Complement dependent cytotoxicity)のようなエフェクタ機能(effector function)がほとんどないIgG4のFc切片である。
【0180】
また、上述した結合体は、効力の持続性が天然型GLP-1、GIP、あるいはグルカゴンに比べて、又はFが修飾されていないXに比べて増加したものであってもよく、このような結合体は上述した形態だけでなく、生分解性ナノパーティクルに封入された形態などを全て含むが、これに制限されない。
【0181】
一方、上記化学式(1)において、上記Lは、非ペプチド性リンカー、例えば、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであってもよい。
【0182】
本発明において「非ペプチド性リンカー」は、繰り返し単位が2個以上結合された生体適合性重合体を含む。上記繰り返し単位は、ペプチド結合ではない任意の共有結合を通じて互いに連結される。上記非ペプチド性リンカーは、本発明の結合体の一部をなす一構成であってもよく、上記化学式(1)においてLに該当する。
【0183】
本発明で用いられる非ペプチド性リンカーは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体であれば、制限なく用いられる。本発明において上記非ペプチド性リンカーは、非ペプチド性重合体と混用され得る。
【0184】
本発明において非ペプチド性リンカーは、末端に反応基を含み、結合体を構成する他の構成要素と反応を通じて結合体を形成することができる。両末端に反応性官能基を有する非ペプチド性リンカーが各反応基を通じて上記化学式(1)のX及びFと結合して結合体を形成する場合、上記非ペプチド性リンカーまたは非ペプチド性重合体は、非ペプチド性重合体連結部(linker moiety)または非ペプチド性リンカー連結部と命名することができる。
【0185】
特にこれに制限されないが、上記非ペプチド性リンカーは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカー、例えば、ポリエチレングリコールであってもよく、また、当該分野において既知のこれらの誘導体及び当該分野の技術水準で容易に製造できる誘導体も本発明の範囲に含まれる。
【0186】
上記非ペプチド性リンカーの繰り返し単位は、エチレングリコール繰り返し単位であってもよく、具体的には、上記非ペプチド性リンカーは、エチレングリコール繰り返し単位を含みながら、結合体の製造に用いられる官能基を末端に含むものであってもよい。本発明による持続型結合体は、上記官能基を通じてXとFとが連結された形態であってもよいが、これに制限されない。本発明において、上記非ペプチド性リンカーは、2個、または3個以上の官能基を含めてもよく、各官能基は、同一又は互いに異なってもよいが、これに制限されない。
【0187】
一つの具体例として、上記エチレングリコール繰り返し単位を含むリンカーであるLは、結合体で構成される以前には結合体の製造に用いられる官能基を末端に含むものであってもよい。本発明による持続型結合体は、上記官能基を通じてXとFとが連結された形態であってもよいが、これに制限されない。本発明において、上記エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーは、2個、または3個以上の官能基を含んでもよく、各官能基は同一又は互いに異なってもよいが、これに制限されない。
【0188】
具体的には、上記リンカーは、下記の化学式(2)で表されるポリエチレングリコール(PEG)であってもよいが、これに制限されるものではない:
【0189】
【0190】
ここで、n=10~2400、n=10~480、またはn=50~250であるが、これに制限されない。
【0191】
上記持続型結合体においてPEG部位は、-(CH2CH2O)n-構造だけでなく、連結要素とこの-(CH2CH2O)n-との間に介在する酸素原子も含めてもよいが、これに制限されるものではない。
【0192】
また、一つの具体的な実施形態において上記結合体は、配列番号1~102のいずれか一つのアミノ酸配列を含むペプチド(X)と免疫グロブリンFc領域(F)がエチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーを通じて共有結合で連結された構造であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0193】
上記ポリエチレングリコールは、エチレングリコールホモ重合体、PEG共重合体、またはモノメチル置換されたPEG重合体(mPEG)の形態を全部包括する用語であるが、特にこれに限定されるものではない。
【0194】
一つの具体例として上記エチレングリコール繰り返し単位は、その例として、[OCH2CH2]nと表すことができ、n値は自然数で、上記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が0超~約100kDaになるように定められてもよいが、これに制限されない。また、一つの例として、上記n値は自然数で、上記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が約1~約100kDa、約1~約80kDa、約1~約50kDa、約1~約30kDa、約1~約25kDa、約1~約20kDa、約1~約15kDa、約1~約13kDa、約1~約11kDa、約1~約10kDa、約1~約8kDa、約1~約5kDa、約1~約3.4kDa、約3~約30kDa、約3~約27kDa、約3~約25kDa、約3~約22kDa、約3~約20kDa、約3~約18kDa、約3~約16kDa、約3~約15kDa、約3~約13kDa、約3~約11kDa、約3~約10kDa、約3~約8kDa、約3~約5kDa、約3~約3.4kDa、約8~約30kDa、約8~約27kDa、約8~約25kDa、約8~約22kDa、約8~約20kDa、約8~約18kDa、約8~約16kDa、約8~約15kDa、約8~約13kDa、約8~約11kDa、約8~約10kDa、約9~約15kDa、約9~約14kDa、約9~約13kDa、約9~約12kDa、約9~約11kDa、約9.5~約10.5kDa、または約10kDaであってもよいが、これに制限されない。
【0195】
一つの具体例として、上記リンカーの両末端は、免疫グロブリンFc領域のチオール基、アミノ基、ヒドロキシル基及びペプチドのチオール基、アミノ基、アジド基、ヒドロキシル基に結合してもよいが、これに制限されない。
【0196】
具体的には、上記リンカーは、両末端にそれぞれ免疫グロブリンFc領域及びペプチドと結合されてもよい反応基、具体的には、免疫グロブリンFc領域のシステインのチオール基;N末端、リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンに位置したアミノ基;及び/又はC末端に位置したヒドロキシル基と結合され、ペプチドのシステインのチオール基;リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンのアミノ基;アジドリシンのアジド基;及び/又はヒドロキシル基と結合される反応基を含めんでもよいが、これに制限されない。
【0197】
より具体的には、上記リンカーの反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択される一つ以上であってもよいが、これに制限されない。
【0198】
前記において、アルデヒド基としてプロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を例として挙げることができるが、これに制限されない。
【0199】
一つの具体的な実施形態において上記非ペプチド性リンカーの両末端は、それぞれF、例えば、免疫グロブリンFc領域のアミノ基またはチオール基及びXのアミノ基またはチオール基に結合することができる。
【0200】
具体的には、上記非ペプチド性重合体は、両末端にそれぞれF(例えば、免疫グロブリンFc領域)及びXと結合されてもよい反応基、具体的には、X、あるいはF(例えば、免疫グロブリンFc領域)のN末端またはリシンに位置したアミノ基、またはシステインのチオール基と結合される反応基を含んでもよいが、これに制限されない。
【0201】
また、F、例えば、免疫グロブリンFc領域及びXと結合される、上記非ペプチド性重合体の反応基は、アルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体で構成された群から選択されてもよいが、これに制限されない。
【0202】
上記において、アルデヒド基としてプロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基を例として挙げられるが、これに制限されない。
【0203】
上記において、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジル吉草酸、スクシンイミジルメチルブタン酸、スクシンイミジルメチルプロピオネート、スクシンイミジルブタン酸、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチルまたはスクシンイミジルカーボネートが用いられるが、これに制限されない。
【0204】
非ペプチド性リンカーは、このような反応基を通じてXとFに連結されて非ペプチド性リンカー連結部に転換されてもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0205】
また、アルデヒド結合による還元性アミノ化により生成された最終産物は、アミド結合により連結されたものより遥かに安定している。アルデヒド反応基は、低pHでN末端に選択的に反応し、高pH、例えば、pH 9.0の条件ではリシン残基と共有結合を形成することができる。
【0206】
また、上記非ペプチド性リンカーの両末端の反応基は、互いに同一又は異なってもよく、例えば、両末端にアルデヒド基を有したり、または、一方の末端にはマレイミド基を、他方の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、またはブチルアルデヒド基を有することができる。しかし、非ペプチド性リンカーの各末端にF、具体的には、免疫グロブリンFc領域とXが結合することができるのであれば、特にこれに制限されない。
【0207】
例えば、上記非ペプチド性リンカーの一方の末端には反応基としてマレイミド基を含み、他方の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基などを含むことができる。
【0208】
両末端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを非ペプチド性重合体として用いる場合には、公知の化学反応により上記ヒドロキシ基を上記多様な反応基で活性化したり、商業的に入手可能な変形された反応基を有するポリエチレングリコールを用いて本発明の持続型タンパク質結合体を製造することができる。
【0209】
一つの具体的な実施形態において、上記非ペプチド性重合体はXのシステイン残基、より具体的にはシステインの-SH基に連結されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0210】
例えば、上記Xに該当するペプチドにおいて10番システイン残基、13番システイン残基、15番システイン残基、17番システイン残基、19番システイン残基、21番システイン残基、24番システイン残基、28番システイン残基、29番システイン残基、30番システイン残基、31番システイン残基、40番システイン残基、または41番システイン残基に上記非ペプチド性重合体が連結されたものであってもよいが、特にこれに制限されない。
【0211】
具体的には、上記システイン残基の-SH基に非ペプチド性重合体の反応基が連結されてもよく、反応基に対しては前述した内容が全部適用される。もし、マレイミド-PEG-アルデヒドを用いる場合、マレイミド基は、Xの-SH基とチオエーテル(thioether)結合で連結し、アルデヒド基はF、具体的には、免疫グロブリンFcの-NH2基と還元的アミノ化反応を通じて連結することができるが、これらに限定されるものではなく、これは一例に該当する。
【0212】
このような還元的アルキル化を通じて非ペプチド性重合体であるPEGの一方の末端に位置した酸素原子に免疫グロブリンFc領域のN末端アミノ基が-CH
2CH
2CH
2-の構造を有するリンカー官能基を通じて連結され、-PEG-O-CH
2CH
2CH
2NH-免疫グロブリンFcのような構造を形成することができ、チオエーテル結合を通じてPEGの一方の末端が配列番号1~102のいずれか一つの配列を含むペプチドのシステインに位置した硫黄原子に連結された構造を形成することができる。上述のチオエーテル結合は
の構造を含むことができる。
【0213】
しかし、上述の例に特に制限されるものではなく、これは、一例に該当する。
【0214】
他の具体的な実施形態において上記非ペプチド性重合体は、Xのリシン残基、より具体的には、リシンのアミノ基に連結されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0215】
また、上記結合体において、非ペプチド性重合体の反応基が免疫グロブリンFc領域のN末端に位置した-NH2と連結されたものであってもよいが、これは、一例に該当する。
【0216】
また、上記結合体において、ペプチドは、反応基を有するリンカーとC末端を通じて連結されてもよいが、これは、一例に該当する。
【0217】
本発明において「C末端」とは、ペプチドのカルボキシ末端を意味し、本発明の目的上、リンカーと結合できる位置をいう。その例として、これに制限されるものではないが、C末端の最末端アミノ酸残基だけでなく、C末端の周囲のアミノ酸残基を全部含むことができ、具体的には、最末端から最初~20番目のアミノ酸残基を含んでもよいが、これに制限されない。
【0218】
Fは免疫グロブリンFc領域として、免疫グロブリンのパパインの消化から得る天然型配列だけでなくその誘導体、置換体、例えば、天然配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的または保存的置換、又はこれらの組み合わせにより変換されて天然のものとは異なる配列など変形体も含まれる。上記誘導体、置換体、変形体はFcRnに結合する能力を有することを前提とする。
【0219】
前記Fは、2つのポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記2つの鎖のうち1つの鎖の窒素原子を介してのみ連結されている構造であるが、これに限定されるものではない。前記窒素原子を介する連結は、リシンのεアミノ原子やN末端のアミノ基に還元的アミノ化により連結されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0220】
還元的アミノ化反応とは、反応物のアミン基又はアミノ基が他の反応物のアルデヒド(すなわち、還元的アミノ化が可能な官能基)と反応してアミンを生成し、次いで還元反応によりアミン結合を形成する反応を意味し、当該技術分野で周知の有機合成反応である。
【0221】
一つの具体例として、前記Fは、そのN末端プロリンの窒素原子を通じて連結されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0222】
本明細書において別途に指すことがなければ、本発明による「ペプチド」又はこのようなペプチドが生体適合性物質に共有結合で連結された「結合体」に関する明細書の詳細な説明や請求の範囲の技術は、当該ペプチド又は結合体はもちろん、当該ペプチド又は結合体の塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容可能な塩)、又はその溶媒和物の形態を全て含む範疇にも適用される。従って、明細書に「ペプチド」又は「結合体」とだけ記載されていても当該記載内容はその特定塩、その特定溶媒和物、その特定塩の特定溶媒和物にも同様に適用される。このような塩形態は、例えば、薬学的に許容される任意の塩を用いた形態であってもよい。前記塩の種類は特に制限されない。ただし、個体、例えば、哺乳類に安全で効果的な形態であることが好ましいが、特にこれに制限されるものではない。
【0223】
前記塩の種類は特に制限されない。ただし、個体、例えば、哺乳類に安全で効果的な形態であることが好ましいが、特にこれに制限されるものではない。
【0224】
前記用語、「薬学的に許容される」とは、医薬学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、又はアレルギー反応などを誘発することなく所望の用途に効果的に使用可能な物質を意味する。
【0225】
本発明において用語、「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容される無機酸、有機酸、又は塩基から誘導された塩を含む。適した酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などを挙げることができる。適した塩基から誘導された塩はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、及びアンモニウムなどを含み得る。
【0226】
また、本発明で用いられた用語「溶媒和物」とは、本発明によるペプチド又はその塩が溶媒分子と複合体を形成したことをいう。
【0227】
本発明において、上記ペプチドまたはその結合体と併用投与されるSGLT-2(sodium-glucose cotransporter 2)抑制剤は、ナトリウム-グルコース共輸送体2ともいい、具体的には、エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、レモグリフロジン、エタボン酸レモグリフロジン、セルグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、ルセオグリフロジン、ソタグリフロジン、ベキサグリフロジン、アチグリフロジン及びエルツグリフロジンで構成された群から選択されるいずれか一つ以上であってもよいが、これに制限されない。
【0228】
上記SGLT-2は、近位尿細管でブドウ糖の再吸収に関与し、糖尿病患者ではSGLT-2により過剰なブドウ糖の再吸収が起きることが知られている。本発明によるペプチドまたはその結合体をSGLT-2抑制剤と併用投与することにより、血糖降下の効果を得ることができる。
【0229】
本発明において、上記「糖尿病」は、インスリンの分泌量が不足したり正常な機能が行われないなどの代謝疾患の一種であり、血中ブドウ糖の濃度が高まる高血糖を特徴とし、高血糖により様々な症状及び兆候を起こし、尿からブドウ糖を排出することになる疾病を意味する。第1型糖尿病及び第2型糖尿病に区別され、血糖降下だけでなく体重減少の効果も得ることができる限り、本発明によるペプチドまたはその結合体をSGLT-2抑制剤と併用投与することができる。
【0230】
本発明において、糖尿病は、肥満性糖尿病と糖尿病合併症を含むことができる。
【0231】
上記「肥満性糖尿病」は、糖尿病の原因となる肥満症状を伴う糖尿病、特に、第2型糖尿病や、または一般に第2型糖尿病患者に伴う肥満症状を意味する。第2型糖尿病患者の約80~90%は肥満症状を伴うことが知られている。本発明において上記肥満性糖尿病は、肥満から発生することであってもよい。
【0232】
上記「糖尿病合併症」とは、長期間高血糖状態が維持されて身体に伴う種々の病的症状を意味することであり、例えば、脳卒中、血管合併症、心臓麻痺、糖尿病性網膜病症、腎機能障害、慢性腎疾患、神経障害、糖尿病性足部潰瘍、そして心血管系疾患などが挙げられるが、これに限定されるものではない。高血糖状態が長期間維持されると、上記糖尿病合併症の危険が高くなるため、このような合併症を予防するためには、効果的な血糖管理と体重調節が不可欠である。
【0233】
本発明において、肥満は過剰な体重(体質量指数25.0以上)の状態を意味し、糖尿病の主な原因でもある。肥満は、糖尿病と密接に関連しているため、体重の減少は、肥満に対する治療効果として意義を有するだけでなく、糖尿病の治療にも重要な意義を有する。本発明のペプチドまたはその結合体をSGLT-2抑制剤と併用投与すると、血糖降下だけでなく、体重減少の効果も得るため、SGLT-2抑制剤と併用投与される、ペプチドまたはその結合体を含む組成物は、肥満の予防または治療、具体的には、高血糖または糖尿病の肥満患者の治療に用いられる。または、糖尿病患者、特に過体重または肥満の糖尿病患者で優れた予防または治療効果を得ることができる。
【0234】
これに対し、本発明のSGLT-2抑制剤と併用投与される、ペプチドまたはその結合体を含む組成物は、糖尿病及び/又は肥満患者、例えば、過体重または肥満の糖尿病患者;または糖尿病を有する肥満患者に投与されて血糖降下及び体重減少の効果を示すことにより、糖尿病及び/又は肥満の予防または治療効果を有し得るが、これに制限されない。
【0235】
一方、このような併用投与による効果は、糖尿病と肥満だけでなく、体重増加及び血糖調節異常による種々の疾患、例えば、代謝症候群の患者でも発揮され得る。
【0236】
本発明において、代謝症候群は、種々の代謝関連疾患を総称し、代謝症候群の例としては、糖尿病、肥満、高脂血症及び異常脂質血症などが挙げられるが、これに制限されない。このような代謝症候群の代表的な原因としては、インスリン抵抗性、過体重などが挙げられる。
【0237】
糖尿病及び肥満は、上述した通りである。
【0238】
本発明において、高脂血症は、血液内に低密度リポ蛋白コレステロール及び/又は中性脂肪が高い疾患を意味し、例えば、低密度リポ蛋白コレステロールが130mg/dLを超え及び/又は中性脂肪が200mg/dLを超える場合、高脂血症に該当する。
【0239】
本発明において、異常脂質血症は、血液内に低密度リポ蛋白コレステロール及び高密度リポ蛋白コレステロールと中性脂肪の数値が正常範囲から外れた状態を意味する。
【0240】
このような代謝症候群は、高血糖及び体重増加と密接に関連していることが知られているため、本発明による併用投与により血糖降下及び体重減少を達成することにより対象症候群に対する予防または治療効果を得ることができる。
【0241】
また、本発明によるSGLT-2抑制剤と併用投与される、ペプチドまたはその結合体を含む組成物は、抗炎及び抗線維化の効果も有するため、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療効果を示すことができる。
【0242】
本発明において、肝臓疾患は、単純脂肪症、非アルコール性脂肪肝、肝臓炎症、非アルコール性脂肪肝炎、代謝性肝疾患、胆汁うっ滞性肝疾患、肝線維症、肝硬変、肝不全及び肝臓癌などを含むが、これに制限されない。
【0243】
本発明において、肺疾患は、間質性肺疾患、進行性線維化を伴う間質性肺疾患、特発性間質性肺炎、非特異的間質性肺炎、肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、肺胞炎、肺炎、肺気腫、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、複合肺線維化と肺気腫(CPFE)、喘息などが挙げられる。
【0244】
肝臓及び肺疾患において、主要な病理学的メカニズムは、炎症の発生、及び組織損傷とそれによる線維化が挙げられる。本発明によるSGLT-2抑制剤と併用投与される、ペプチドまたはその結合体を含む組成物は、抗炎症及び抗線維化の効果を有するため、肝臓疾患及び肺疾患に対する効果も示すことができる。
【0245】
本発明の呼吸器感染疾患は、病原体(ウイルス、細菌、真菌など)の感染による呼吸器疾患であり、代表的な感染原因としては、呼吸器ウイルスが挙げられる。呼吸器感染疾患中、呼吸器ウイルス感染疾患は、病原性ウイルス感染による呼吸器疾患を意味し、上記呼吸器ウイルスは、アデノウイルス(adenovirus)、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)、パラインフルエンザウイルス(parainfluenza virus)、ライノウイルス(rhinovirus)、水痘ウイルス(varicella Zoster Virus)、麻疹ウイルス(measle virus)、呼吸器細胞融合ウイルス(respiratorysyncytial virus)、デングウイルス(Dengue virus)、HIV(human immunodeficiency virus)、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(coronavirus)、重症急性呼吸器症候群ウイルス(severe acute respiratory syndrome associated virus;SARS-associated virus)、または中東呼吸器症候群コロナウイルス(middle east respiratory syndrome coronavirus;MERS-CoV)であってもよいが、これに制限されない。
【0246】
上記コロナウイルスの制限されない一例として、SARS-CoV-2が挙げられ、SARS-CoV-2感染により新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019,COVID-19)が発病する。
【0247】
本出願において用語、新型コロナウイルス感染症は、コロナウイルス(2019-nCoVまたはSARS-CoV-2)の感染によるウイルス感染性疾患であり、まだ明確な感染源と感染経路は確認されていないが、伝播力が非常に強く全世界的なパンデミック事態を起こした。
【0248】
本発明の呼吸器感染疾患は、呼吸器感染疾患の後遺症を含むことができる。
【0249】
本発明の呼吸器感染疾患の後遺症は、呼吸器感染疾患患者に現れる、呼吸器感染と独立して現れる異常症状を意味する。具体的には、本発明において呼吸器感染疾患の後遺症は、呼吸器ウイルス感染疾患の後遺症、より具体的には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症を意味し得るが、これに制限されるものではない。
【0250】
本出願において、用語「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症(COVID-19 Sequelae)」は、SARS-CoV-2感染後の患者に現れる後遺症を意味する。具体的には、新型コロナウイルス感染症の後遺症は、呼吸困難、咳、肺炎、肺線維症、痛み、炎症、及び神経系障害などを含むが、これに制限されない。新型コロナウイルス感染症の後遺症として現れる呼吸困難、咳、慢性疲労、痛み、肺炎、線維症などは、呼吸器、特に、肺の機能低下及び/又は損傷により現れるが、これに制限されない。
【0251】
本発明において用語「予防」とは、上記ペプチド(例えば、上記ペプチド自体またはこれに生体適合性物質が結合された持続型結合体形態)またはこれらを含む組成物とSGLT-2抑制剤の併用投与により代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患を抑制または遅延させるあらゆる行為を意味する。本発明において用語「治療」とは、上記ペプチド(例えば、上記ペプチド自体またはこれに生体適合性物質が結合された持続型結合体形態)またはこれらを含む組成物とSGLT-2抑制剤の併用投与により代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の症状が好転または有益になるあらゆる行為を意味する。
【0252】
本発明による組成物は、ペプチド(三重活性体)またはその結合体を含むものであってもよく、具体的には、薬理学的有効量のペプチドまたはその結合体を含むものであってもよい。また、薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含んでもよい。本発明の組成物は、代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療用途を有するものであってもよく、または、血糖降下用途を有するものであってもよいが、これに制限されない。併せて、本発明による組成物は、体重減少の用途も有することができる。
【0253】
本発明における「薬学的に許容可能な」とは、治療効果を発揮する程度の十分な量と副作用を起こさないことを意味し、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康状態、性別、薬物に対する感受性、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合、同時用いられる薬物などの医学分野における公知の要素により当業者が容易に決定することができる。
【0254】
薬学的に許容される賦形剤は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素及び香料などを用いることができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤及び安定化剤などを混合して用いることができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤及び保存剤などを用いることができる。本発明の組成物の剤形は、上述したような薬学的に許容される賦形剤と混合して多様に製造することができる。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ及びウェハーなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは複数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル及び徐放性製剤などに剤形化することができる。
【0255】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱油などが用いられる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0256】
さらに、本発明の組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液剤、非水性溶剤、凍結乾燥剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれかの剤形を有してもよい。
【0257】
さらに、前記ペプチド又は結合体は、生理食塩水や有機溶媒のように薬剤に許容される様々な担体(carrier)と混合して用いることができ、安定性や吸収性を向上させるために、グルコース、スクロース、デキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸(ascorbic acid)、グルタチオンなどの抗酸化剤(antioxidants)、キレート剤、低分子タンパク質、他の安定化剤(stabilizers)などを薬剤として用いることができる。
【0258】
本発明の組成物の投与量と回数は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重、疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類により決定される。具体的には、本発明の組成物は、前記ペプチド又はその結合体を薬学的有効量として含むものであってもよいが、これに制限されない。
【0259】
上記ペプチドまたはその結合体を薬学的有効量として含むことは、ペプチドまたはその結合体による目的とする薬理活性(例えば、血糖降下及び/又は体重減少)が得られる程度を意味し、また、投与される個体において毒性または副作用が起こらなかったり僅かな水準として薬学的に許容される水準を意味しうるが、これに制限されない。このような薬学的有効量は、投与回数、患者、剤形などを総合的に考慮して決定することができる。
【0260】
特にこれに制限されないが、本発明の前記薬学的組成物は、前記成分(有効成分)を0.01~99%重量対体積で含有し得る。
【0261】
本発明の組成物の総有効量は、単回投与量(single dose)で患者に投与してもよく、複数回投与量(multiple dose)で長期間投与する分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与してもよい。本発明の組成物は、疾患の程度に応じて有効成分の含有量を変えてもよい。具体的には、本発明のペプチドまたはその持続型結合体の総用量は、1日体重1kg当たり約0.0001mg~500mgであることが好ましい。しかし、前記ペプチドまたはその持続型結合体の用量は、薬学的組成物の投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌、排泄率などの様々な要因を考慮して患者に対する有効投与量が決定されるので、これらを考慮すると、当該分野における通常の知識を有する者であれば、前記本発明の組成物の特定の用途に応じた適切な有効投与量を決定することができるであろう。本発明による薬学的組成物は、本発明の効果を奏するものであれば、その剤形、投与経路及び投与方法が特に限定されるものではない。
【0262】
例えば、本発明の組成物は、3日に1回、1週に1回、2週に1回、4週に1回、または1ヶ月に1回投与されるが、これに制限されない。
【0263】
本発明の組成物は、血糖降下及び/又は体重減少が必要なヒトを含むラット、家畜などを含む哺乳動物に投与されるものであってもよく、具体的には、糖尿病及び/又は肥満患者、より具体的には、過体重または肥満の糖尿病患者または高血糖または糖尿病を有する肥満患者に投与されるが、血糖降下及び体重減少により有益な効果を得ることができるのであれば、投与対象に制限がない。また、本発明の組成物は、代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の患者に投与され得るが、これに制限されない。
【0264】
本発明のペプチドまたはその持続型結合体;またはこれらを含む組成物は、SGLT-2抑制剤と併用投与されるものであり、併用投与により体重減少及び血糖降下の効果を有し、糖尿病及び/又は肥満患者、特に過体重または肥満の糖尿病患者または高血糖または糖尿病を有する肥満患者で優れた予防または治療効果を示すことができる。
【0265】
または、SGLT-2抑制剤と併用投与される本発明のペプチドまたはその持続型結合体;またはこれらを含む組成物は、抗炎症及び抗線維化の効果を有し、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患患者で優れた予防または治療効果を示すことができる。
【0266】
上記SGLT-2抑制剤は、併用投与に適切な形態の剤形、例えば、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内溶液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液、非水性溶剤、凍結乾燥製剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれか一つの剤形を有することができるが、これに制限されない。また、上記SGLT-2抑制剤は、併用投与に適切な投与経路、例えば、経口、または皮膚、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄膜腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、消化管内、局所、舌下、膣内もしくは直腸経路を含む非経口投与経路により投与されるが、これらに限定されるものではない。
【0267】
本発明のペプチドまたはその持続型結合体は、SGLT-2抑制剤と適した割合で併用投与することができる。例えば、1回の投与量を基準として、本発明のペプチドまたはその持続型結合体は0.1~100mg、0.5~80mg、1~60mg、1~25mg、5~20mg、または10~15mgで投与され、SGLT-2抑制剤は1~50mg、3~30mg、または5~25mgの用量で投与されてもよいが、これに制限されない。
【0268】
本発明のペプチドまたはその持続型結合体は、SGLT-2抑制剤と適した割合で併用投与され、優れた血糖調節効果を示しながらも体重減少の効果を示すことができる。万が一、ペプチドまたはその持続型結合体を過量投与する場合、糖尿病患者を治療できる水準の血糖調節効果を有し得ない危険が高く、SGLT-2抑制剤を過量投与する場合、体重が増加する副作用が現れる危険が高い問題点がある。
【0269】
本発明のペプチドまたはその持続型結合体;またはこれらを含む組成物は、SGLT-2抑制剤と一定の投与間隔で共に投与されたり、または異なる頻度で個別に投与されてもよく、二成分の併用投与による効果を有する限り、投与時点に制限はない。
【0270】
これに制限されないが、本発明のペプチドまたはその持続型結合体、またはこれらを含む組成物;及びSGLT-2抑制剤の投与頻度は、それぞれ独立して3日に1回、1週に1回、2週に1回、4週に1回、または1ヶ月に1回投与されてもよく、本発明のペプチドまたはその持続型結合体;またはこれらを含む組成物とSGLT-2抑制剤間の投与間隔は1~10日、1~5日または1~3日であってもよいが、これに制限されない。
【0271】
以上の内容は、本発明の他の具体例あるいは他の様態にも適用できるが、これに制限されるものではない。
【0272】
本発明を具現する他の一態様は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤を含む組み合わせ物、薬学的組成物、またはキットを提供する。一つの具体例として、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療用組み合わせ物、薬学的組成物、またはキットである。他の具体例として、糖尿病及び/又は肥満の予防または治療用組み合わせ物、薬学的組成物、またはキットである。
【0273】
上記ペプチド、その結合体、組成物、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患、糖尿病、肥満、SGLT-2抑制剤、併用投与、予防、治療については前述した通りである。
【0274】
本発明の組成物、組み合わせ物、またはキットは、(i)グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド、または(ii)上記グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体を含み、さらに/選択的にSGLT-2抑制剤を含むものであってもよいが、これに制限されない。本発明の組成物、組み合わせ物及びキットは、代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患患者に投与/使用されて予防または治療効果を示すものであってもよいが、これに制限されない。または本発明の組成物、組み合わせ物及びキットは、糖尿病患者、肥満患者、過体重または肥満の糖尿病患者、または糖尿病の肥満患者に投与/使用されて血糖降下及び体重減少の効果を示すものであってもよいが、これに制限されない。
【0275】
本発明において用語「組み合わせ物(combination)」は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤の併用投与用途を有することにより、「併用用途(combined used)」のような意味で理解できる。これは、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド;及びSGLT-2抑制剤が併用されることを特徴とする薬学的組成物形態を含むが、これに制限されない。
【0276】
上記組み合わせ物は
a)(i)グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及び(ii)SGLT-2抑制剤が混合された一つの混合物(mixture)で投与されるものであるか;または
b)(i)グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及び(ii)SGLT-2抑制剤が分離した形態で投与されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0277】
グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体及びSGLT-2抑制剤が分離した形態である場合、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有する物質またはその結合体及びSGLT-2抑制剤が別個の製剤に製剤化されて同時、個別、順次、または逆順に投与されてもよい。
【0278】
本発明のSGLT-2抑制剤と併用投与される、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体を含む組成物は、上記組み合わせ物を含むこともできる。
【0279】
本発明において用語「組み合わせ物を含む組成物(composition)」は、上記グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体及びSGLT-2抑制剤を含む組み合わせ物それ自体であるか、これを含み、治療学的用途を有するものであってもよいが、これに制限されない。その例として、代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療用途を有するものであってもよいが、これに制限されない。具体的には、糖尿病及び/又は肥満の予防または治療用途を有するものであってもよいが、これに制限されない。本願において「組み合わせ物を含む組成物」は「組成物」と互換的に用いられる。
【0280】
本発明による組み合わせ物を含む組成物は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体及びSGLT-2抑制剤を併用投与するためのものであり、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤が一つの製剤に製剤化されたものであるか、または個別的に製剤化されたものであってもよい。具体的には、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤を同時、個別、順次、または逆順に投与するものであってもよいが、これに制限されない。
【0281】
本発明において用語「キット」は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤を併用投与するために、本発明によるグルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤を含むものであってもよい。具体的には、本発明によるキットには、一つの製剤に製剤化されたグルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤を含んだり、上記ペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤の個別製剤を含んでもよく、二つの物質の併用投与に必要な物質をさらに含むものであってもよいが、これに制限されない。
【0282】
本発明の組み合わせ物、組成物、キットの投与/使用により体重減少及び血糖降下の効果を得ることができ、代謝症候群患者、具体的には、糖尿病患者、特に過体重または肥満を伴う糖尿病患者;または肥満患者、特に糖尿病の肥満患者で優れた糖尿病及び/又は肥満の予防または治療効果を得ることができる。
【0283】
また、本発明の組み合わせ物、組成物、キットの投与/使用により体重減少及び血糖降下の効果だけでなく、抗炎症及び抗線維化の効果も得ることができ、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患患者で予防または治療効果を得ることができる。
【0284】
本発明の組み合わせ物、組成物、キットは、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤を併用投与するために用いるものであってもよい。
【0285】
本発明を具現する他の一態様は、ペプチド、その結合体、またはこれらを含む組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む糖尿病及び/又は肥満の予防または治療方法または血糖降下方法である。
【0286】
本発明を具現する他の一態様は、ペプチド、その結合体、またはこれらを含む組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療方法または血糖降下方法である。
【0287】
本発明の方法は、SGLT-2抑制剤をこれを必要とする個体に投与する段階をさらに含んでもよい。具体的な例として、本発明の方法は、ペプチドまたはその結合体をSGLT-2抑制剤と併用投与する方法であってもよいが、これに制限されない。
【0288】
上記ペプチド、その結合体、組成物、SGLT-2抑制剤、併用投与、糖尿病、肥満、代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患、予防、治療、及び血糖降下については前述した通りである。
【0289】
本発明において上記個体は、血糖降下及び体重減少に有益な個体であり、ヒトを含むラット、家畜などを含む哺乳動物を意味するが、本発明のペプチドまたはその結合体、またはこれらを含む組成物による血糖降下の効果に有益な個体は、制限なく含まれる。特に、糖尿病及び/又は肥満を有する個体であってもよいが、これに制限されない。一つの具体例として、上記個体は、過体重であるか、肥満の糖尿病患者であってもよく、または肥満性糖尿病または糖尿病合併症を有したり、有する危険がある個体であってもよいが、これに制限されない。または肥満であるか、高血糖または糖尿病を有する肥満である個体であってもよいが、これに制限されない。または、代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患を有している個体であってもよいが、これに制限されない。
【0290】
本発明の用語、「投与」とは、任意の適切な方法で患者(個体)に所定の物質を導入することを意味し、上記ペプチド、その結合体、または組成物;及びSGLT-2抑制剤の投与経路は、特にこれに制限されないが、上記ペプチド、その結合体または組成物;及びSGLT-2抑制剤が生体内標的に到達できる任意の一般的な経路を通じて投与され得、例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与などが挙げられる。
【0291】
本発明の方法において、上記ペプチドまたはその結合体;及びSGLT-2抑制剤は同一の投与経路で投与されたり、またはそれぞれ異なる投与経路で投与されてもよく、併用投与される薬物の投与経路は、互いに独立してもよい。
【0292】
また、上記ペプチド、その結合体または組成物;及びSGLT-2抑制剤は、薬学的分野において通常の方法により患者の身体内投与に適した単位投与形の製剤、具体的には、タンパク質医薬品の投与に有用な製剤形態に剤形化させて当業界において通常使用する投与方法を用いて経口、または皮膚、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄膜腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、消化管内、局所、舌下、膣内もしくは直腸経路を含む非経口投与経路により投与できるが、これらに限定されるものではない。
【0293】
本発明のペプチド、その結合体またはこれらを含む組成物は、3日に1回、1週に1回、2週に1回、4週に1回、または1ヶ月に1回投与できるが、これに制限されない。
【0294】
一方、SGLT-2抑制剤は、本発明のペプチド、その結合体またはこれらを含む組成物と併用投与されることにより血糖降下効果及び体重減少効果を同時に発揮できる限り、投与頻度は制限されないが、例えば、3日に1回、1週に1回、2週に1回、4週に1回、または1ヶ月に1回投与することができる。また、上記ペプチドまたはその結合体と同一の間隔で投与されたり、または異なる間隔、例えば1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、または10日以上の間隔を置いて投与されるものであってもよいが、これに制限されるものではない、
【0295】
本発明の方法は、上記ペプチド、またはその結合体を含む組成物;及びSGLT-2抑制剤を薬学的有効量で投与することを含むことができる。適した総1日使用量は正しい医学的判断の範囲内で処置医により決定され、1回又は数回に分けて投与できる。しかし、本発明の目的上、特定患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によって他の製剤が用いられるかどうかをはじめとする具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食事、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物と共に用いられたり同時に用いられる薬物をはじめとする多様な因子と医薬分野によく知られている類似因子により異なって適用することが好ましい。
【0296】
本発明の方法において、上記ペプチドまたはその持続型結合体は、SGLT-2抑制剤と適した割合で併用投与することができる。例えば、1回の投与量を基準として、本発明のペプチドまたはその持続型結合体は0.1~100mg、0.5~80mg、1~60mg、1~25mg、5~20mg、または10~15mgで投与され、SGLT-2抑制剤は1~50mg、3~30mg、または5~25mgの用量で投与されてもよいが、これに制限されない。
【0297】
本発明を具現する他の一態様は、上記組み合わせ物、上記薬学的組成物、または薬学的キットを、これを必要とする個体に投与及び/又は使用する段階を含む糖尿病及び/又は肥満の予防または治療方法を提供することである。
【0298】
本発明を具現する他の一態様は、上記組み合わせ物、上記薬学的組成物、または薬学的キットを、これを必要とする個体に投与及び/又は使用する段階を含む代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療方法を提供することである。
上記組み合わせ物、薬学的組成物、薬学的キット、個体、投与、糖尿病、肥満、代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患、併用投与、予防、治療については前述した通りである。
【0299】
具体的な例として、上記方法は、ペプチドまたはその結合体をSGLT-2抑制剤と併用投与する方法であってもよいが、これに制限されない。
【0300】
本発明を具現する他の一態様は、ペプチド、その結合体、またはこれらを含む組成物の糖尿病及び/又は肥満の予防または治療用途及び/又は糖尿病及び/又は肥満の予防または治療のための薬剤の製造のための用途を提供することである。
【0301】
本発明を具現する他の一態様は、ペプチド、その結合体、またはこれらを含む組成物の代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療用途及び/又は代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療のための薬剤の製造のための用途を提供することである。
【0302】
上記ペプチド、その結合体、組成物、糖尿病、肥満、代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患、予防、治療については前述した通りである。
【0303】
具体的には、上記用途は、ペプチドまたはその結合体をSGLT-2抑制剤と併用投与するための用途であってもよい。
【0304】
本発明のもう一つの目的は、上記組み合わせ物、薬学的組成物、または薬学的キットの糖尿病及び/又は肥満の予防または治療用途及び/又は糖尿病及び/又は肥満の予防または治療のための薬剤の製造のための用途を提供することにある。
【0305】
本発明のもう一つの目的は、上記組み合わせ物、薬学的組成物、または薬学的キットの代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療用途及び/又は代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患の予防または治療のための薬剤の製造のための用途を提供することにある。
【0306】
上記組み合わせ物、薬学的組成物、薬学的キット、個体、投与、糖尿病、肥満、代謝症候群、肝臓疾患、肺疾患、または呼吸器感染疾患、予防、治療、併用投与、予防、治療については前述した通りである。
【0307】
具体的には、上記用途は、ペプチドまたはその結合体をSGLT-2抑制剤と併用投与するための用途であってもよい。
【0308】
以下、下記実施例により本発明をより詳しく説明する。ただし、下記実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0309】
実施例1:三重活性体の製造
GLP-1、GIP及びグルカゴン受容体の全てに対して活性を示す三重活性体を製造し、下記表1にその配列を示した。
【0310】
【0311】
上記の表1に記載された配列においてXと表記されたアミノ酸は、非天然のアミノ酸であるAib(2-aminoisobutyric acid)であり、下線で表されたアミノ酸は、下線及びボールドで表されたアミノ酸が互いに環を形成することを意味する。また、上記の表1においてCAは4-イミダゾアセチル(4-imidazoacetyl)を、Yはチロシンを意味する。
【0312】
実施例2:三重活性体の持続型結合体の製造
両末端にそれぞれマレイミド基及びアルデヒド基を有する10kDaのPEG、すなわちマレイミド-PEG-アルデヒド(10kDa、NOF、日本)を実施例1の三重活性体(配列番号21、22、42、43、50、77及び96)のシステイン残基にペグ化するために、三重活性体とマレイミド-PEG-アルデヒドのモル比を1:1~3とし、タンパク質の濃度を1~5mg/mlとし、低温で0.5~3時間反応させた。ここで、反応は、50mM Tris緩衝液(pH7.5)に20~60%イソプロパノールを添加した環境下で行った。反応終了後に、前記反応液をSPセファロースHP(GE healthcare、米国)に適用し、システインにモノペグ化された三重活性体を精製した。
【0313】
次に、上記精製されたモノペグ化された三重活性体と免疫グロブリンFc(配列番号123のホモ二量体)をモル比1:1~5、タンパク質の濃度10~50mg/mlにして4~8℃で12~18時間反応させた。反応は、100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に還元剤である10~50mMのシアノ水素化ホウ素ナトリウムと10~30%のイソプロパノールが添加された環境下で行われた。反応が終了した後、上記反応液をブチルセファロースFF精製カラム(GE healthcare、米国)とSource ISO精製カラム(GE healthcare、米国)に適用し、三重活性体と免疫グロブリンFcを含む結合体を精製した。精製されたこの持続型結合体は、分子内で三重活性体ペプチド、ポリエチレングリコール(PEG)リンカーとFc二量体が1:1:1のモル比で共有結合で連結された構造であり、PEGリンカーは、Fc二量体の両ポリペプチド鎖中の一本鎖のみに連結されている。
【0314】
一方、上記免疫グロブリンFcは、配列番号123のアミノ酸配列(221個のアミノ酸で構成される)を有する単量体2個が各単量体の3番のアミノ酸であるシステインの間にジスルフィド結合を通じてホモ二量体を形成し、上記ホモ二量体の単量体は、それぞれ独立して35番及び95番のシステイン間の内部のジスルフィド結合及び141番及び199番のシステイン間の内部のジスルフィド結合が形成されたものである。
【0315】
製造後に逆相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーで分析した純度は95%以上であった。
【0316】
ここで、配列番号21の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGリンカーを通じて連結された結合体を、「配列番号21と免疫グロブリンFcを含む結合体」あるいは「配列番号21の持続型結合体」と命名し、これらは本願において混用され得る。
【0317】
ここで、配列番号22の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGリンカーを通じて連結された結合体を、「配列番号22と免疫グロブリンFcを含む結合体」あるいは「配列番号22の持続型結合体」と命名し、これらは本願において混用され得る。
【0318】
ここで、配列番号42の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGを通じて連結された結合体を、「配列番号42と免疫グロブリンFcを含む結合体」あるいは「配列番号42の持続型結合体」と命名し、これらは本願において混用され得る。
【0319】
ここで、配列番号43の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGを通じて連結された結合体を、「配列番号43と免疫グロブリンFcを含む結合体」あるいは「配列番号43の持続型結合体」と命名し、これらは本願において混用され得る。
【0320】
ここで、配列番号50の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGを通じて連結された結合体を、「配列番号50と免疫グロブリンFcを含む結合体」あるいは「配列番号50の持続型結合体」と命名し、これらは本願において混用され得る。
【0321】
ここで、配列番号77の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGを通じて連結された結合体を、「配列番号77と免疫グロブリンFcを含む結合体」あるいは「配列番号77の持続型結合体」と命名し、これらは本願において混用され得る。
【0322】
ここで、配列番号96の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGを通じて連結された結合体を、「配列番号96と免疫グロブリンFcを含む結合体」あるいは「配列番号96の持続型結合体」と命名し、これらは本願において混用され得る。
【0323】
実験例1:三重活性体及びその持続型結合体のin vitro活性測定
実施例1及び2で製造した三重活性体とその持続型結合体の活性を測定するために、GLP-1受容体、グルカゴン(GCG)受容体及びGIP受容体がそれぞれ形質転換された細胞株を用いて、in vitroで細胞活性を測定する方法を用いた。
【0324】
前記各細胞株は、CHO(chinese hamster ovary)にヒトGLP-1受容体、ヒトGCG受容体及びヒトGIP受容体遺伝子をそれぞれ発現するように形質転換されたものであり、GLP-1、GCG及びGIPの活性を測定するのに適している。よって、それぞれの形質転換細胞株を用いて各部分の活性を測定した。
【0325】
実施例1と2で製造した三重活性体とその持続型結合体のGLP-1活性の測定のために、ヒトGLP-1を50nMから0.000048nMまで4倍連続希釈し、実施例1-1及び1-2で製造した三重活性体とその持続型結合体を400nMから0.00038nMまで4倍連続希釈した。前記培養したヒトGLP-1受容体を発現するCHO細胞から培養液を除去し、連続希釈した各物質を5μlずつ前記細胞に添加し、次いでcAMP抗体を含む緩衝液を5μlずつ追加し、その後常温で15分間培養した。次に、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)を含むdetection mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、常温で90分間反応させた。前記反応が終了した細胞溶解物をLANCE cAMP kit(PerkinElmer、USA)に適用し、蓄積されたcAMPからEC50値を算出し、相互比較した。ヒトGLP-1に対する相対力価を下記表2と表3に示す。
【0326】
前記実施例1と2で製造した三重活性体とその持続型結合体のGCG活性の測定のために、ヒトGCGを50nMから0.000048nMまで4倍連続希釈し、実施例1と2で製造した三重活性体とその持続型結合体を400nMから0.00038nMまで4倍連続希釈した。前記培養したヒトGCG受容体を発現するCHO細胞から培養液を除去し、連続希釈した各物質を5μlずつ前記細胞に添加し、次いでcAMP抗体を含む緩衝液を5μlずつ追加し、その後常温で15分間培養した。次に、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)を含むdetection mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、常温で90分間反応させた。前記反応が終了した細胞溶解物をLANCE cAMP kit(PerkinElmer、USA)に適用し、蓄積されたcAMPからEC50値を算出し、相互比較した。ヒトGCGに対する相対力価を下記表2と表3に示す。
【0327】
前記実施例1と2で製造した三重活性体とその持続型結合体のGIP活性の測定のために、ヒトGIPを50nMから0.000048nMまで4倍連続希釈し、実施例1と2で製造した三重活性体とその持続型結合体を400nMから0.00038nMまで4倍連続希釈した。前記培養したヒトGIP受容体を発現するCHO細胞から培養液を除去し、連続希釈した各物質を5μlずつ前記細胞に添加し、次いでcAMP抗体を含む緩衝液を5μlずつ追加し、その後常温で15分間培養した。次に、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)を含むdetection mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、常温で90分間反応させた。前記反応が終了した細胞溶解物をLANCE cAMP kit(PerkinElmer、USA)に適用し、蓄積されたcAMPからEC50値を算出し、相互比較した。ヒトGIPに対する相対力価を下記表2と表3に示す。
【0328】
【0329】
【0330】
上記の三重活性体及びその結合体は、GLP-1受容体、GIP受容体及びグルカゴン受容体の全てを活性化させる三重活性体として機能を有する。
【0331】
実験例2:DIO/STZ ratsにおける持続型結合体及びSGLT-2抑制剤併用投与の血糖降下及び体重減少効果の確認
上記実施例1及び2で製造された配列番号42の持続型結合体のSGLT-2抑制剤との併用投与による血糖降下効果を確認するために、配列番号42の持続型結合体をSGLT-2抑制剤であるエンパグリフロジンと共に肥満及び糖尿病モデルとしてよく知られたDIO/STZ ratsに4週間併用投与した。
【0332】
併用投与による血糖降下効力を確認するために、試験は、賦形剤対照群、配列番号42の持続型結合体単独投与群(0.163mg/kg,Q3D)、エンパグリフロジン単独投与群(10mg/kg,QD)、そして配列番号42の持続型結合体(0.163mg/kg、Q3D)及びエンパグリフロジン(10mg/kg,QD)の併用投与群に分け、当該物質を4週間皮下に繰り返し投与した。4週繰り返し投与をしながら体重変化と共に各ratの血液を尾静脈から取った後、血糖測定計(OneTouch(登録商標) Ultra(登録商標))を通じて血糖の変化程度も測定した。配列番号42の持続型結合体及びエンパグリフロジンを併用投与した群は、体重減少及び血糖数値が効果的に減少したことを確認することができた(
図1及び
図2)。
【0333】
統計処理は、一元ANOVAを用いて賦形剤群(対照群)と試験群とを比較した。
【0334】
このような結果は、本発明の持続型三重活性体結合体をエンパグリフロジンのようなSGLT-2抑制剤と併用投薬時に血糖減少及び体重減少の効果を共に示すため、糖尿病及び/又は肥満患者で治療効果を期待できることを示唆する。
【0335】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、前記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
【配列表】
【国際調査報告】