(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】モノクローナル抗体ノモグラムのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240717BHJP
G16H 20/10 20180101ALI20240717BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240717BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240717BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240717BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240717BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240717BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A61K39/395 H
G16H20/10
A61K39/395 M
A61P1/00
A61P19/02
A61P17/00
A61P37/08
A61P11/00
A61P25/00
A61P11/06
A61P17/06
A61P29/00 101
G01N33/50 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573361
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 US2022031650
(87)【国際公開番号】W WO2022256346
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518032982
【氏名又は名称】モールド, ダイアン アール.
(71)【出願人】
【識別番号】523446608
【氏名又は名称】モルナー, スティーブン
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】モールド, ダイアン アール.
(72)【発明者】
【氏名】モルナー, スティーブン
【テーマコード(参考)】
2G045
4C085
5L099
【Fターム(参考)】
2G045AA37
2G045CA26
2G045DA36
2G045DA37
2G045JA01
4C085AA14
4C085GG02
4C085GG04
5L099AA25
(57)【要約】
投薬レジメンの調整のためのノモグラムを構築および使用するためのシステムおよび方法が本明細書で提供される。ノモグラムは、測定された薬物濃度データを使用して、薬物または薬物のセットに対する特定の患者の有効半減期を決定する。患者特異的有効半減期は、用量の投与後に患者の体内の薬物濃度が目標濃度に達する時間を決定するために使用される。標識投与量および投薬間隔は平均的な患者に基づいているため、特定の患者に対する投薬レジメンの調整は、薬物との患者固有の薬物動態学的相互作用をよりよく説明する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の患者に投与されるモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体コンストラクトを含む薬物の投薬レジメンの用量および/または用量間隔を調整するのに有用なノモグラムを構築する方法であって、
プロセッサの入力モジュールにおいて、(1)目標薬物トラフ濃度を示すデータ、(2)前記薬物の以前の投薬量を示すデータ、(3)前記特定の患者の患者体重を示すデータ、(4)現在の用量間隔を示すデータ、(5)前記特定の患者の測定された薬物トラフ濃度を示すデータを受信することと、
前記患者の体重、薬物クリアランス値の範囲、前記現在の用量間隔、および前記以前の投薬量に基づいて、前記現在の用量間隔での有効薬物半減期範囲および予想薬物トラフ濃度の対応する範囲をシミュレーションすることと、
前記ノモグラム上の薬物濃度曲線として、前記有効薬物半減期範囲に対して前記予想される薬物トラフ濃度の範囲をプロットすることと、
前記ノモグラム上の前記薬物濃度曲線上の前記特定の患者における前記測定された薬物トラフ濃度を特定することと、
前記薬物濃度曲線上の前記特定された測定された薬物濃度に基づいて、前記特定の患者の有効薬物半減期を決定することと、
前記決定された薬物有効半減期および前記目標薬物トラフ濃度に基づいて前記特定の患者についての複数の目標値到達時間をシミュレーションすることであって、各目標値到達時間が、複数の利用可能な用量における利用可能な用量に対応することとを含む、方法。
【請求項2】
前記プロセッサが薬物動態モデルを用いて構成され、前記有効薬物半減期の範囲および対応する予想薬物トラフ濃度の範囲をシミュレーションすることが、
前記薬物動態モデルに、前記以前の投薬量、前記現在の用量間隔、および前記患者体重を入力することと、
前記薬物動態モデルを使用して、前記薬物クリアランス値の範囲内の複数の薬物クリアランス値を、段階的に通り抜けて、複数の予想薬物トラフ濃度を提供することと、
前記薬物動態モデルを使用して、前記患者体重について複数の有効薬物半減期を演算することであって、各有効薬物半減期が、前記複数の薬物クリアランス値の薬物クリアランス値に対応することと、
前記薬物動態モデルから、前記複数の有効薬物半減期を前記有効薬物半減期範囲として出力するこであって、前記複数の薬物トラフ濃度を、前記予想薬物トラフ濃度の範囲として出力することであって、各薬物トラフ濃度が、前記複数の有効薬物半減期の有効薬物半減期に対応することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬物動態モデルが、線形クリアランス、および必要に応じて、線形一次吸収を有する開放2コンパートメントモデルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有効薬物半減期範囲が、2日間~25日間の有効半減期を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記特定の患者が、維持投薬を受けている、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記維持投薬が、導入投薬期間が完了した後の第1の維持用量で始まる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記薬物が、インフリキシマブである、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記以前の投薬量が、5mg/kgのインフリキシマブである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記目標濃度が、1μg/mL~20μg/mLである、請求項7~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記薬物が、アダリムマブ、ベドリズマブ、ゴリムマブ、ウステキヌマブ、アバタセプト、リツキシマブ、イキセキズマブ、セルトリズマブペゴール、エタネルセプト(entanercept)、デュピルマブ、トシリズマブ、アレムツズマブ、セクキヌマブ、グセルクマブ、レスリズマブ、メポリズマブ、オマリズマブ、ベンラリズマブ、サリルマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ、オクレリズマブ、およびナタリズマブのいずれか1つである、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記薬物についての臨床試験に参加した患者の有効薬物半減期の領域をプロットして、前記薬物についての標識投与量を決定することをさらに含む、
請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記有効薬物半減期範囲にわたる患者応答の確率の確率プロットを生成することをさらに含む、
請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記確率が、患者集団についてのデータセットのロジスティック回帰を使用して決定され、前記データセットが、前記集団における各患者についての患者応答を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記データセットが、前記集団における各患者についての有効薬物半減期をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者応答が、クローン病活動指数(CDAI)、粘膜治癒、便中カルプロテクチン(FCP)濃度、C反応性タンパク質(CRP)濃度、抗薬物抗体(ADA)の発生、ステロイド使用、Mayoスコア、部分Mayoスコア、Harvey-Bradshaw指数、および第VIII因子タンパク質の濃度の群から選択されるものである、請求項12~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
経時的な抗薬物抗体存在の確率のプロットを生成することをさらに含み、確率-時間曲線が、有効薬物半減期部分範囲のセットの各々について生成される、
請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記決定された有効薬物半減期に基づいて、前記特定の患者の初回抗薬物抗体値到達時間を評価することをさらに含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
複数の利用可能な用量について、モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体コンストラクトを含む薬物の患者特異的投薬間隔を決定するためのノモグラムであって、請求項1~17のいずれかに記載の方法によるステップを実施するように構成されたコンピュータ可読媒体を含む、ノモグラム。
【請求項19】
グラフィカルユーザインターフェースであって、
請求項1~17のいずれかに記載の方法のステップに従って構築されたノモグラムと、
(1)~(5)の各々を受信するために前記プロセッサの前記入力モジュールに動作可能に結合された複数の入力ボックスと、
前記ノモグラム上の複数の矢印であって、各矢印が、前記特定された測定された薬物濃度、前記特定の患者の前記有効薬物半減期、および前記特定の患者の前記複数の目標値到達時間のうちの1つを指す、複数の矢印と、
前記複数の利用可能な用量について、前記特定の患者についての前記複数の目標値到達時間を表示するための出力と、を備える、グラフィカルユーザインターフェース。
【請求項20】
特定の患者について、モノクローナル抗体薬物の用量間隔を決定するための方法であって、請求項1~17のいずれかに記載の方法によるステップを含み、
前記特定の患者についての前記薬物の前記複数の利用可能な用量の各々についての新しい用量間隔を、前記特定の患者についての前記複数の目標値到達時間に設定することとを含む、方法。
【請求項21】
前記新しい投薬間隔が、標準治療用量間隔未満である場合、前記特定の患者に対してベイジアン個別化投薬を使用する推奨を提供することをさらに含む、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
特定の患者へのモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体コンストラクトの静脈内投与または皮下投与により、IBD、RA、JIA、AS、PsO、PsA、MS、アトピー性皮膚炎、湿疹、および喘息のうちの1つを処置する方法であって、請求項20~21のいずれかに記載の方法によるステップを含み、
前記薬物の前記複数の利用可能な用量の新たな用量を、前記対応する新しい用量間隔で前記特定の患者に投与することを含む、方法。
【請求項23】
モノクローナル抗体の薬物用量を割り当てる方法であって、請求項20~21のいずれかに記載の方法によるステップを含む、方法。
【請求項24】
請求項1~23のいずれかに記載の方法に従って決定された個別化治療投薬レジメンで患者を処置する方法。
【請求項25】
患者に投与するための医薬製剤であって、前記医薬製剤が、投薬レジメンにおいて有効成分を有し、前記投薬レジメンが請求項1~23のいずれかに記載の方法に従って決定される、医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年5月29日に出願された米国仮出願第63/194,987号に基づく米国特許法第119条(e)の下での優先権の利益を主張する。
【0002】
技術分野
この開示は、概して、限定されないが、モノクローナル抗体の投薬レジメンの調整を含む、投薬レジメンの調整のためのノモグラムの使用に関する。薬物動態モデルを使用するコンピュータ化されたシステムおよび方法を使用して、薬物動態パラメータを推定し、特定の患者に対する投薬レジメン調整を予測および提案し得る。
【背景技術】
【0003】
背景
薬剤ベースの処置レジメンで患者を開始する医師の決定は、処方される薬剤の投薬レジメンの決定を含む。年齢、体重、健康リスク因子などの異なる患者因子を有する異なる患者には、異なる投薬レジメンが適切であろう。投与量、投薬間隔、処置期間および他の変数は変更され得る。適切な投薬レジメンは非常に有益かつ治療的であり得るが、不適切な投薬レジメンは患者の健康にとって無効または有害であり得る。さらに、過少投与および過剰投与の両方は、時間、金銭および/または他の資源の損失をもたらし、望ましくない結果のリスクを増加させる可能性がある。
【0004】
現在の臨床診療では、医師は、典型的には、処方された医薬品の添付文書(PI)に含まれる投薬情報に基づいて投薬レジメンを処方する。PIの内容は、米国では食品医薬品局(FDA)により規制されており、欧州では欧州医薬品庁(EMA)により規制されている。当業者には理解されるように、PIは、典型的には、薬物の外観ならびに薬物の承認された適応症および使用を記載する基本情報のテキスト記述を含む印刷された情報リーフレットである。さらに、PIは、典型的には、薬物が体内でどのように作用し、どのように代謝されるかを記載する。PIはまた、典型的には、様々なタイプの副作用、他の薬物との相互作用、禁忌、特別な警告、過剰摂取への対処方法、および追加の予防措置を有する人々の割合に関する試験に基づく統計的詳細を含む。PIはまた、投薬情報を含む。そのような投薬情報は、典型的には、小児および成人集団などの異なる症状または異なる集団に対する投薬量に関する情報を含む。典型的なPIは、特定の限られた患者因子情報の関数として投薬情報を提供する。そのような投薬情報は、特定の患者に対する投薬量を処方する際の医師の基準点として使用されることが多い。
【0005】
投薬情報は、試験対象の集団への薬物の投与、患者の慎重な監視、および臨床試験に関連する臨床データの記録を含む臨床試験を実施した後に、医薬品の製造業者によって開発されることが多い。その後、臨床試験データをまとめて分析して、PIに含めるための投薬情報を作成する。典型的な投薬情報は、臨床試験中に収集および追跡された可能性があるいくつかの患者因子を含む特定の患者因子に関係なく、「平均」因子および「中程度」レベルの疾患を有する「平均」患者に適していると考えられる、様々な患者因子を有する個体を含む集団の臨床試験で収集されたデータからの一般的な減少または複合である。例として、アバタセプトについて収集された臨床試験データに基づいて、関連するPIは、3つの重量範囲(60kg未満、60~100kg、および100kg超)および関連する示された投薬レジメン(それぞれ500mg、750mg、および1000mg)などの非常に粗いレベルの詳細を有する示された投薬レジメンを提供する。限られた患者因子(例えば、重量)に関連するこのような粗いグラデーションは、最適またはほぼ最適な投薬レジメンに影響を及ぼし得る多くの患者特異的因子を無視する。したがって、PIによって推奨される投薬レジメンは、いかなる特定の患者にとっても最適またはほぼ最適である可能性は低いが、むしろ処置のための提案された開始点を提供することが十分に理解されており、主に試行錯誤プロセスによって特定の患者の投薬レジメンを改良することは医師に委ねられている。
【0006】
そのプロセスの一部として、医師は、PI情報の関数として患者の投薬レジメンを決定し得る。例えば、60~100kgの体重範囲に入る体重を有する患者について、示された投薬レジメンは、4週間ごとに750mgであると決定され得る。次いで、医師は、薬剤を処方し、薬剤を投与させ、および/または投薬レジメンと一致する用量を患者に投与することによって、示された投薬レジメンを投与する。
【0007】
上記で参照したように、示された投薬レジメンは、仮説上の「平均」患者を処置するための適切な開始点であり得るが、示された投薬レジメンは、特に最初の投与が完了し(例えば、患者の薬物濃度を治療レベルに迅速に上昇させる投与の導入段階の完了後)、患者が維持段階に到達した後(例えば、薬物濃度の治療レベルを維持するために、より少ない頻度の用量またはより低い用量が投与される場合)、処置されている特定の患者にとって最適または最適に近い投薬レジメンではない可能性が非常に高い。これは、例えば、PIによって説明される因子(例えば、重量)によって捕捉されない、処置されている特定の患者の個々の因子(例えば、年齢、併用薬、他の疾患、腎機能など)に起因し得る。さらに、これは、推奨される投薬レジメン(例えば、40kgの増分で)の大まかな層別化によるものであり得るが、適切な投与は、1またはそれを超える患者因子の連続的に変化する関数である可能性が高い。
【0008】
現在の臨床診療は、この不一致を認識している。したがって、患者および投薬レジメンを再評価するために、初期投薬レジメンの一定期間後に患者を追跡することが一般的な臨床実務である。したがって、医師は、指示された投薬レジメンに対する患者応答を後で評価することができる。しかしながら、最初の投薬レジメンに対する任意の調整は、主に、試行錯誤プロセスの一部として、および主に最後に投与された投薬レジメンの患者に対する効果を観察した後に収集されたデータに基づいて、アドホックベースで行われる。
【0009】
調整された投薬レジメンを投与した後、調整された投薬レジメンに対する患者応答を評価する。次いで、医師は、投薬レジメンをさらに調整するかどうかを再び決定し、プロセスを繰り返す。一般的に示された投薬レジメンおよび患者特異的に観察された応答に依存するこのような試行錯誤ベースのアプローチは、応答の開始が速い薬物治療にはかなりうまく機能する。しかしながら、このアプローチは、望ましい臨床応答を示すのに時間がかかる薬物にとって最適ではなく、満足のいくものではないことが多い。さらに、投薬レジメンを最適化するための時間の延長は、患者を望ましくない転帰のリスクにさらす。場合によっては、投与される投薬レジメンは、投薬間隔が長すぎるため、患者は、個々の薬物動態学的クリアランスに基づいて必要以上に多くの薬物を投与されている。状況によっては、より速い薬物動態学的クリアランスを有する患者は、次の用量が投与されるまで体内の薬物の濃度が治療レベルに留まることを確実にするために、より短い投薬間隔を必要とし得る。
【0010】
薬物を処方する医師は、薬物の2つの重要な薬物動態パラメータ:患者の有効薬物半減期または薬物投与直後の患者の血液中の最大薬物濃度を知らないことが多い。。これらの2つの重要なパラメータを知らないと、医師は、患者の薬物濃度が所望の目標薬物濃度(例えば、血清1mL当たり5μgのインフリキシマブ)に達するのにかかる時間量を容易に決定することができない。この時間量は、治療応答を適切に維持するために薬物濃度を目標よりも低下させるべきではないため、患者が次の用量の薬物を必要とする時間を決定する。
【発明の概要】
【0011】
要旨
本明細書に開示されるシステムおよび方法は、患者の有効薬物半減期を決定する個別化されたノモグラムを介護者に提供し、それによって介護者は、薬物濃度が患者の体内の目標濃度に達する時間(以下、「目標到達時間」と呼ぶ)を決定することができ、これは投薬間隔または投薬量の選択を導くことができる。目標到達時間を知ることにより、医師は、患者に目標濃度の維持に必要な量より多いまたは少ない薬物が投与されないように、より正確に用量を投与することが可能になる。このより正確でより個別化された投薬は、患者(または保険会社)が必要以上に多くの薬物を支払わないように、モノクローナル抗体などの高価な薬物にとって特に有利である。例えば、モノクローナル抗体薬の平均コストは年間約40,000米ドルであるため、平均半減期が2倍の患者は、投薬間隔を2倍延長し、年間約20,000米ドルの薬物を節約することができる。
【0012】
したがって、投薬レジメン調整のためのノモグラムを生成および使用するためのシステム、方法および物品が本明細書に開示される。これらのノモグラムは、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベドリズマブ、および薬物動態および薬力学において患者間で高いばらつきを有する本明細書で論じられる他のモノクローナル抗体薬物の投与に特に有利である。
【0013】
投薬レジメン(処置計画とも呼ばれる)は、投薬スケジュール、1もしくはそれを超える投薬量、および/または1もしくはそれを超える投与経路を含み得る。投薬レジメンは、ただ1つの薬物に限定されず、同じまたは異なる投与経路を有する複数の薬物を含み得る。薬物(医薬品、医薬品、医薬品、生物製剤、化合物、処置、治療法、または任意の他の同様の用語とも呼ばれる)は、体内に導入されると生理学的効果を有する物質である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のシステムは、特定の薬物に特異的ではなく、代わりに薬物非依存モデルで使用される薬物のクラス、またはサブセットもしくはグループに適用される。本明細書で使用される場合、「薬物」という用語は、単一の薬物または薬物のクラスもしくはセットを指し得る。
【0014】
薬物のクラスは、少なくとも1つの類似の薬物動態(PK)および/または薬力学(PD)挙動を示し、共通の作用機序を共有する、またはそれらの組み合わせ(例えば、異なる薬物動態特性を有するが、類似の分子量および適応症などの他の類似性を有する一連の薬物)である、1より大きい薬物の群であり得る。一例として、一組の薬物は、同じ疾患を処置するか、または同じ適応症に使用することができ、その例には、全身性炎症性疾患、炎症性腸疾患(IBD、例えば潰瘍性大腸炎、クローン病)、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、乾癬、鼻炎、喘息、または多発性硬化症が含まれる。薬物のセットは、同様の化学構造を有し得る。例えば、薬物のセットは、モノクローナル抗体、組換えモノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ヒト抗体、モノクローナル抗体フラグメント、または抗炎症性モノクローナル抗体を含み得る。本明細書に記載される方法は、モノクローナル抗体以外の種類の薬物、例えば、小分子、生物製剤、または当業者によって認識され得る他の薬物に適用され得る。医師、臨床医、またはノモグラムを構築するユーザなどのユーザは、特定の基準に基づいて薬物のクラスを定義され得、そのクラスのメンバーは、そのクラスの一部であるとしてデータベース内で電子的に指定され得る。そのデータベースは、そのクラスの任意の薬物に使用することができるクラスベースの投薬レジメンを決定する際に使用するための、本明細書に開示されるシステムおよび方法にアクセス可能である。いくつかの実施態様において、モデルから出力される投薬レジメンは、単一の薬物に特異的ではなく、薬物のクラスに対して一般的であり、そのクラスの任意の薬物に適している。例えば、投薬レジメンは、薬物非依存性単位測定(例えば、1単位、2単位、3単位などであり、単位は活性剤の指定量に対応する)および投与のための時間または複数の時間を含み得る。
【0015】
薬物は、皮下、静脈内または経口などの様々な経路を介して投与され得る。薬物動態モデルは、投与経路をシステムへの変数入力と見なすことによって投与経路を説明し得て、モデルのより大きな柔軟性を可能にする。患者が1つの薬物(例えば、インフリキシマブ)で処置され、その後に別の薬物(例えば、ベドリズマブ)で処置される場合、システムは、患者が新しい薬物で処置されると、適切な投薬レジメンを決定するときに、インフリキシマブに対する患者の処置からのすべての患者固有のデータ(薬物濃度測定、クリアランス速度、重量測定など)を保持し得る。患者固有のデータを保持することにより、モデルは、患者が薬物を処理する能力を正確に予測することができ、それにより、患者が薬物療法を変更する場合に、より適切な患者固有の投薬レジメンを提供することができる。
【0016】
本発明の一態様は、特定の患者に投与されるモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体コンストラクトを含む薬物の投薬レジメンの用量および/または用量間隔を調整するのに有用なノモグラムを構築する方法に関する。本方法は、コンピュータ実装され得、プロセッサの入力モジュールにおいて、以下のデータセット:(1)特定の患者の目標薬物トラフ濃度を示すデータ、(2)患者に以前に投与された薬物の以前の投薬量を示すデータ、(3)特定の患者の体重を示すデータ、(4)現在の投薬間隔を示すデータ、(5)特定の患者の測定された薬物トラフ濃度を示す1またはそれを超えるデータを受信するステップと、患者体重、薬物クリアランス値の範囲、現在の用量間隔、および以前の投薬量に基づいて、現在の用量間隔での有効薬物半減期範囲および予想薬物トラフ濃度の対応する範囲をシミュレーションするステップとをさらに含み得る。本方法は、ノモグラム上の薬物濃度曲線として、有効薬物半減期範囲に対して予想薬物トラフ濃度の範囲をプロットするステップ;ノモグラム上の薬物濃度曲線上の特定の患者における測定された薬物トラフ濃度を特定するステップ;薬物濃度曲線上の特定された測定された薬物濃度に基づいて、特定の患者の有効薬物半減期を決定するステップ;決定された薬物有効半減期および目標薬物トラフ濃度に基づいて特定の患者についての複数の目標値到達時間をシミュレーションするステップであって、各目標値到達時間が複数の利用可能な用量における利用可能な用量に対応する、ステップの1またはそれを超えるステップをさらに含み得る。本方法によって生成することができる追加の出力には、推奨される投薬間隔および推奨される投与量が含まれるが、これらに限定されず、これらの各々は、投与された投薬量および目標濃度の目標値到達時間(複数可)に基づいて決定され得る。
【0017】
シミュレーションされた目標値到達時間値は、チャート上にプロットされてもよく、テーブルに出力されてもよく、または出力装置(例えば、医師のパーソナルデバイス、ヘルスケアシステムもしくはネットワーク、または患者のパーソナルデバイス)に送信されてもよい。結果は、メモリデバイスまたはクラウドメモリアーキテクチャなどのライブラリに格納され得る。ライブラリは、ノモグラムが生成される個々の患者ごとに、用量、体重、測定濃度、または本明細書で論じられる任意の他のパラメータを格納し得る。1またはそれを超える一致するパラメータを有する別の患者がノモグラムを必要とする場合、ノモグラムプロセスを再計算するのではなく、以前に生成されたノモグラム結果を調べることができ、したがって時間および計算効率を節約する。
【0018】
いくつかの実施態様において、プロセッサは薬物動態モデルを用いて構成される。有効薬物半減期の範囲および対応する予想薬物トラフ濃度の範囲をシミュレーションすることは、薬物動態モデルに、以前の投薬量、現在の用量間隔、および患者体重を入力することと、薬物動態モデルを使用して、薬物クリアランス値の範囲内の複数の薬物クリアランス値を、段階的に通り抜けて、複数の予想薬物トラフ濃度を提供することと、薬物動態モデルを使用して、患者体重について複数の有効薬物半減期を演算することであって、各有効薬物半減期が、複数の薬物クリアランス値の薬物クリアランス値に対応することと、薬物動態モデルから、複数の有効薬物半減期を有効薬物半減期範囲として出力することであって、複数の薬物トラフ濃度を、予想薬物トラフ濃度の範囲として出力することであって、各薬物トラフ濃度が、複数の有効薬物半減期の有効薬物半減期に対応することと、を含む。薬物動態モデルは、線形クリアランスおよび必要に応じて線形一次吸収を有する開放2コンパートメントモデルであり得る。
【0019】
いくつかの実施態様において、有効薬物半減期範囲は、例えば、薬物に応じて、2日間~25日間、2日間~30日間、2日間~35日間、1日間~40日間、または任意の他の適切な範囲の有効な半減期を含む。いくつかの実施態様において、特定の患者は維持投薬を受けている。例えば、維持投薬は、導入投薬期間が完了した後の最初の維持用量で開始する。いくつかの実施態様において、本方法は、薬物の臨床試験に参加した患者の有効薬物半減期の領域をプロットして、薬物の標識投与量を決定することをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施態様において、薬物はインフリキシマブである。以前の投薬量は、5mg/kgのインフリキシマブであり得る。目標濃度は、1μg/mL~20μg/mLであり得る。他の実施態様において、薬物は、インフリキシマブアダリムマブ、ベドリズマブ、ゴリムマブ、ウステキヌマブ、アバタセプト、リツキシマブ、イキセキズマブ、セルトリズマブペゴール、エタネルセプト(entanercept)、デュピルマブ、トシリズマブ、アレムツズマブ、セクキヌマブ、グセルクマブ、レスリズマブ、メポリズマブ、オマリズマブ、ベンラリズマブ、サリルマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ、オクレリズマブ、オロキズマブ、およびナタリズマブのうちのいずれか1つである。
【0021】
いくつかの実施態様において、本方法は、有効薬物半減期範囲にわたる患者応答の確率の確率プロットを生成するステップをさらに含む。確率は、患者集団のデータセットのロジスティック回帰を使用して決定することができ、データセットは、集団内の各患者の患者応答を含む。データセットは、集団中の各患者についての有効薬物半減期をさらに含み得る。例えば、患者応答は、クローン病活動指数(CDAI)、粘膜治癒、便中カルプロテクチン(FCP)濃度、C反応性タンパク質(CRP)濃度、抗薬物抗体(ADA)の発生、ステロイド使用、Mayoスコア、部分Mayoスコア、Harvey-Bradshaw指数、および第VIII因子タンパク質の濃度の群から選択されるものである。
【0022】
いくつかの実施態様において、本方法は、経時的な抗薬物抗体存在の確率のプロットを生成することをさらに含み、確率-時間曲線が、有効薬物半減期部分範囲のセットの各々について生成される。この方法は、決定された有効薬物半減期に基づいて、特定の患者についての初回抗薬物抗体値到達時間を評価することをさらに含み得る。
【0023】
第2の態様では、複数の利用可能な用量についてモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体コンストラクトを含む薬物の患者特異的投薬間隔を決定するためのノモグラムが本明細書で提供され、ノモグラムは、第1の態様の方法によるステップを実施するように構成されたコンピュータ可読媒体を含む。
【0024】
第3の態様において、グラフィカルユーザインターフェースであって、第1の態様に記載の方法のステップに従って構築されたノモグラムと、(1)~(5)の各々を受信するためにプロセッサの入力モジュールに動作可能に結合された複数の入力ボックスと、ノモグラム上の複数の矢印であって、各矢印が、特定された測定された薬物濃度、特定の患者の有効薬物半減期、および特定の患者の複数の目標値到達時間のうちの1つを指す、複数の矢印と、複数の利用可能な用量について、特定の患者についての複数の目標値到達時間を表示するための出力と、を備える、グラフィカルユーザインターフェースが本明細書で提供される。
【0025】
第4の態様において、特定の患者について、モノクローナル抗体薬物の用量間隔を決定するための方法であって、第1の態様に記載の方法によるステップを含み、特定の患者についての薬物の複数の利用可能な用量の各々についての新しい用量間隔を、特定の患者についての複数の目標値到達時間に設定することとを含む、方法が本明細書で提供される。本方法は、新しい投薬間隔が、標準治療用量間隔未満である場合、特定の患者に対してベイジアン個別化投薬を使用する推奨を提供することをさらに含み得る。結果を比較するために、個別化投薬システムをノモグラム(すなわち、並列に)と共に使用することができる。ノモグラムシステムは、投薬システムからの出力がノモグラムへの入力として使用されるように、またはその逆に使用されるように、個別化投薬システムとの相互適合性を有し得る。例えば、クリアランスおよび体積などの薬物動態パラメータをベイジアン個別化投薬システムから取得し、ノモグラムの曲線をより迅速に決定するために使用してもよい。
【0026】
第5の態様では、特定の患者へのモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体コンストラクトの静脈内投与または皮下投与により、炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)、強直性脊椎炎(AS)、乾癬(PsO)、乾癬性関節炎(PsA)、多発性硬化症(MS)、アトピー性皮膚炎、湿疹、鼻炎、および喘息のうちの1つを処置する方法であって、第4の態様に記載の方法によるステップを含み、複数の利用可能な用量の薬物の新たな用量を、対応する新しい用量間隔で特定の患者に投与することを含む、方法が本明細書で提供される。
【0027】
第6の態様では、モノクローナル抗体の薬物用量を割り当てる方法であって、第4の態様の方法によるステップを含む方法が本明細書で提供される。
【0028】
上記態様のいずれかのいくつかの実施態様において、モデルは薬物動態モデルまたは薬物動態-薬力学モデルである。このモデルは、薬物動態学および薬力学の両方を記述し得る。モデルの薬物動態学的または薬力学的成分は、複数の薬物の濃度時間プロファイルを示し得る。モデルの薬物動態学的成分は、患者の体内、例えば1つまたは2つのコンパートメントモデルにおける薬物の流入および流出を表すクリアランスパラメータに基づき得る。モデルの薬力学的成分は、薬物に対する患者の個々の応答を示す薬力学的マーカーの合成および分解速度に基づき得る。いくつかの実施態様において、モデルは薬物動態学的成分と薬力学的成分の両方を含み、成分は相互に関連している。例えば、薬物動態学的成分のクリアランスは、薬力学的応答の関数であり得、および/またはその逆であり得る。このモデルは、ベイジアン予測などのベイジアン法を使用して、1またはそれを超える投薬レジメンの濃度時間プロファイルを予測し得る。
【0029】
上記態様のいずれかのいくつかの実施態様において、本方法は、推奨される投薬レジメンに従って特定の薬物を投与した患者の第2の測定濃度を示す追加の患者データを受信するステップをさらに含む。追加の患者データは、患者から得られた1またはそれを超えるサンプルちゅうの特定の薬物の1またはそれを超える濃度レベルを示す追加の濃度データを含み得る。次いで、ノモグラムは、患者の第2の測定濃度に基づいて更新される。患者の処置目的に達するために、更新されたノモグラムを使用して、少なくとも1つの更新された投薬レジメンを決定することができる。少なくとも1つの更新された投薬レジメンを患者に出力することができる(例えば、患者または医師のパーソナルデバイスに送信されるか、書面のレポートとして印刷されるか、または表もしくはグラフとして画面に表示される)。
【0030】
上記態様のいずれかのいくつかの実施態様において、ノモグラムは、「SYSTEM AND METHOD FOR PROVIDING PATIENT-SPECIFIC DOSING AS A FUNCTION OF MATHEMATICAL MODELS UPDATED TO ACCOUNT FOR AN OBSERVED PATIENT RESPONSE」と題され、2013年10月7日に出願された米国特許第10,083,400号;「SYSTEMS AND METHODS FOR PATIENT-SPECIFIC DOSING」と題され、2016年4月8日に出願された、米国特許出願公開第2016/0300037号;「SYSTEMS AND METHODS FOR MODIFYING ADAPTIVE DOSING REGIMENS」と題され、2019年4月23日に出願された、米国特許出願公開第2019/0326002号;および「SYSTEMS AND METHODS FOR DRUG-AGNOSTIC PATIENT-SPECIFIC DOSING REGIMENS」と題され、2020年3月9日出願された、米国特許出願公開第2020/0321096号に記載されているものなどの患者特異的投薬推奨システムと併せて(例えば、結果を照合するために、または第2の濃度示唆を提供するために)、臨床現場で使用される。上記の特許および特許公報の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
別の態様では、上記態様の任意の組み合わせを使用して決定された個別化治療投薬レジメンで患者を処置する方法が本明細書で提供される。さらに別の態様では、患者に投与するための医薬製剤が本明細書で提供され、医薬製剤は、上記態様の任意の組み合わせを使用して決定された投薬レジメンにおいて有効成分を含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
前述および他の目的および利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すると明らかになるであろう。添付の図面において、同様の参照符号は、全体を通して同様の部分を指す。
【0033】
【
図1A】
図1Aは、有効半減期および測定されたインフリキシマブ濃度に基づくインフリキシマブ投薬間隔調整のためのノモグラムを示す例示的なグラフであり、
図1Bは、例示的な実施態様による、ノモグラムに適用された特定の患者の結果を示す矢印を有するノモグラムのグラフである。
【
図1B】
図1Aは、有効半減期および測定されたインフリキシマブ濃度に基づくインフリキシマブ投薬間隔調整のためのノモグラムを示す例示的なグラフであり、
図1Bは、例示的な実施態様による、ノモグラムに適用された特定の患者の結果を示す矢印を有するノモグラムのグラフである。
【0034】
【
図2】
図2は、例示的な実施態様による、本明細書に記載の薬物動態ノモグラムを使用するためのプロセスを示すフローチャートである。
【0035】
【
図3A】
図3A、3B、および3Cは、例示的な実施態様による、薬物非依存性モデルに基づいて、異なる患者体重に対して生成されたインフリキシマブノモグラムを示す例示的なグラフである。
【
図3B】
図3A、3B、および3Cは、例示的な実施態様による、薬物非依存性モデルに基づいて、異なる患者体重に対して生成されたインフリキシマブノモグラムを示す例示的なグラフである。
【
図3C】
図3A、3B、および3Cは、例示的な実施態様による、薬物非依存性モデルに基づいて、異なる患者体重に対して生成されたインフリキシマブノモグラムを示す例示的なグラフである。
【0036】
【
図4】
図4は、例示的な実施態様による、本明細書に記載の方法を実行するためのシステムのブロック図である。
【0037】
【
図5】
図5は、例示的な実施態様による、薬物動態モデルを示すブロック図である。
【0038】
【
図6】
図6は、例示的な実施態様による、適応投薬システム用のコンピュータネットワークのシステム図を示す。
【0039】
【
図7A】
図7A~
図7Gは、推定された有効半減期に対する関心のある様々な患者応答の確率プロットの例を示す。
図7Aは、30週目のクローン病活動指数(CDAI)がベースラインよりも70ポイント低い確率を示す。
図7Bは、30週目のCDAIがベースラインよりも150ポイント低い確率を示す。
図7Cは、最終的な大腸内視鏡検査で明らかな粘膜治癒の確率を示す。
図7Dは、30週目における正常範囲(10mg/L未満)のC反応性タンパク質(CRP)濃度の確率を示す。
図7Eは、54週目における正常範囲(10mg/L未満)でのCRP濃度の確率を示す。
図7Fは、抗薬物抗体(ADA)が発生する確率を示す。
図7Gは、54週目におけるステロイド使用の確率を示す。
【
図7B】
図7A~
図7Gは、推定された有効半減期に対する関心のある様々な患者応答の確率プロットの例を示す。
図7Aは、30週目のクローン病活動指数(CDAI)がベースラインよりも70ポイント低い確率を示す。
図7Bは、30週目のCDAIがベースラインよりも150ポイント低い確率を示す。
図7Cは、最終的な大腸内視鏡検査で明らかな粘膜治癒の確率を示す。
図7Dは、30週目における正常範囲(10mg/L未満)のC反応性タンパク質(CRP)濃度の確率を示す。
図7Eは、54週目における正常範囲(10mg/L未満)でのCRP濃度の確率を示す。
図7Fは、抗薬物抗体(ADA)が発生する確率を示す。
図7Gは、54週目におけるステロイド使用の確率を示す。
【
図7C】
図7A~
図7Gは、推定された有効半減期に対する関心のある様々な患者応答の確率プロットの例を示す。
図7Aは、30週目のクローン病活動指数(CDAI)がベースラインよりも70ポイント低い確率を示す。
図7Bは、30週目のCDAIがベースラインよりも150ポイント低い確率を示す。
図7Cは、最終的な大腸内視鏡検査で明らかな粘膜治癒の確率を示す。
図7Dは、30週目における正常範囲(10mg/L未満)のC反応性タンパク質(CRP)濃度の確率を示す。
図7Eは、54週目における正常範囲(10mg/L未満)でのCRP濃度の確率を示す。
図7Fは、抗薬物抗体(ADA)が発生する確率を示す。
図7Gは、54週目におけるステロイド使用の確率を示す。
【
図7D】
図7A~
図7Gは、推定された有効半減期に対する関心のある様々な患者応答の確率プロットの例を示す。
図7Aは、30週目のクローン病活動指数(CDAI)がベースラインよりも70ポイント低い確率を示す。
図7Bは、30週目のCDAIがベースラインよりも150ポイント低い確率を示す。
図7Cは、最終的な大腸内視鏡検査で明らかな粘膜治癒の確率を示す。
図7Dは、30週目における正常範囲(10mg/L未満)のC反応性タンパク質(CRP)濃度の確率を示す。
図7Eは、54週目における正常範囲(10mg/L未満)でのCRP濃度の確率を示す。
図7Fは、抗薬物抗体(ADA)が発生する確率を示す。
図7Gは、54週目におけるステロイド使用の確率を示す。
【
図7E】
図7A~
図7Gは、推定された有効半減期に対する関心のある様々な患者応答の確率プロットの例を示す。
図7Aは、30週目のクローン病活動指数(CDAI)がベースラインよりも70ポイント低い確率を示す。
図7Bは、30週目のCDAIがベースラインよりも150ポイント低い確率を示す。
図7Cは、最終的な大腸内視鏡検査で明らかな粘膜治癒の確率を示す。
図7Dは、30週目における正常範囲(10mg/L未満)のC反応性タンパク質(CRP)濃度の確率を示す。
図7Eは、54週目における正常範囲(10mg/L未満)でのCRP濃度の確率を示す。
図7Fは、抗薬物抗体(ADA)が発生する確率を示す。
図7Gは、54週目におけるステロイド使用の確率を示す。
【
図7F】
図7A~
図7Gは、推定された有効半減期に対する関心のある様々な患者応答の確率プロットの例を示す。
図7Aは、30週目のクローン病活動指数(CDAI)がベースラインよりも70ポイント低い確率を示す。
図7Bは、30週目のCDAIがベースラインよりも150ポイント低い確率を示す。
図7Cは、最終的な大腸内視鏡検査で明らかな粘膜治癒の確率を示す。
図7Dは、30週目における正常範囲(10mg/L未満)のC反応性タンパク質(CRP)濃度の確率を示す。
図7Eは、54週目における正常範囲(10mg/L未満)でのCRP濃度の確率を示す。
図7Fは、抗薬物抗体(ADA)が発生する確率を示す。
図7Gは、54週目におけるステロイド使用の確率を示す。
【
図7G】
図7A~
図7Gは、推定された有効半減期に対する関心のある様々な患者応答の確率プロットの例を示す。
図7Aは、30週目のクローン病活動指数(CDAI)がベースラインよりも70ポイント低い確率を示す。
図7Bは、30週目のCDAIがベースラインよりも150ポイント低い確率を示す。
図7Cは、最終的な大腸内視鏡検査で明らかな粘膜治癒の確率を示す。
図7Dは、30週目における正常範囲(10mg/L未満)のC反応性タンパク質(CRP)濃度の確率を示す。
図7Eは、54週目における正常範囲(10mg/L未満)でのCRP濃度の確率を示す。
図7Fは、抗薬物抗体(ADA)が発生する確率を示す。
図7Gは、54週目におけるステロイド使用の確率を示す。
【0040】
【
図8A】
図8A~8Gは、様々な予測因子についての最初のADAまでの時間(TTFADA)の例示的なカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Aは、推定された有効半減期によるTTFADAカプラン・マイヤーロットを示す。
図8Bは、性別によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Cは、ベースライン重量によるTTFADAカプラン・マイヤープロット(BWT)を示す図である。
図8Dは、年齢によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Eは、クローン病罹患期間(CCDUR)によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Fは、免疫調節薬(IMM)の存在によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Gは、用量によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
【
図8B】
図8A~8Gは、様々な予測因子についての最初のADAまでの時間(TTFADA)の例示的なカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Aは、推定された有効半減期によるTTFADAカプラン・マイヤーロットを示す。
図8Bは、性別によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Cは、ベースライン重量によるTTFADAカプラン・マイヤープロット(BWT)を示す図である。
図8Dは、年齢によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Eは、クローン病罹患期間(CCDUR)によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Fは、免疫調節薬(IMM)の存在によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Gは、用量によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
【
図8C】
図8A~8Gは、様々な予測因子についての最初のADAまでの時間(TTFADA)の例示的なカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Aは、推定された有効半減期によるTTFADAカプラン・マイヤーロットを示す。
図8Bは、性別によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Cは、ベースライン重量によるTTFADAカプラン・マイヤープロット(BWT)を示す図である。
図8Dは、年齢によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Eは、クローン病罹患期間(CCDUR)によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Fは、免疫調節薬(IMM)の存在によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Gは、用量によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
【
図8D】
図8A~8Gは、様々な予測因子についての最初のADAまでの時間(TTFADA)の例示的なカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Aは、推定された有効半減期によるTTFADAカプラン・マイヤーロットを示す。
図8Bは、性別によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Cは、ベースライン重量によるTTFADAカプラン・マイヤープロット(BWT)を示す図である。
図8Dは、年齢によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Eは、クローン病罹患期間(CCDUR)によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Fは、免疫調節薬(IMM)の存在によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Gは、用量によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
【
図8E】
図8A~8Gは、様々な予測因子についての最初のADAまでの時間(TTFADA)の例示的なカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Aは、推定された有効半減期によるTTFADAカプラン・マイヤーロットを示す。
図8Bは、性別によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Cは、ベースライン重量によるTTFADAカプラン・マイヤープロット(BWT)を示す図である。
図8Dは、年齢によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Eは、クローン病罹患期間(CCDUR)によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Fは、免疫調節薬(IMM)の存在によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Gは、用量によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
【
図8F】
図8A~8Gは、様々な予測因子についての最初のADAまでの時間(TTFADA)の例示的なカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Aは、推定された有効半減期によるTTFADAカプラン・マイヤーロットを示す。
図8Bは、性別によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Cは、ベースライン重量によるTTFADAカプラン・マイヤープロット(BWT)を示す図である。
図8Dは、年齢によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Eは、クローン病罹患期間(CCDUR)によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Fは、免疫調節薬(IMM)の存在によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Gは、用量によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
【
図8G】
図8A~8Gは、様々な予測因子についての最初のADAまでの時間(TTFADA)の例示的なカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Aは、推定された有効半減期によるTTFADAカプラン・マイヤーロットを示す。
図8Bは、性別によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Cは、ベースライン重量によるTTFADAカプラン・マイヤープロット(BWT)を示す図である。
図8Dは、年齢によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Eは、クローン病罹患期間(CCDUR)によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Fは、免疫調節薬(IMM)の存在によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
図8Gは、用量によるTTFADAカプラン・マイヤープロットを示す。
【0041】
【
図9A】
図9は、有意な予測因子についてのTTFADAの生存プロットの例を示す図である。
図9Aは、推定された有効半減期についてのTTFADA生存プロットを示す。
図9Bは、年齢についてのTTFADA生存者プロットを示す。
図9Cは、IMMのTTFADA生存プロットを示す。
【
図9B】
図9は、有意な予測因子についてのTTFADAの生存プロットの例を示す図である。
図9Aは、推定された有効半減期についてのTTFADA生存プロットを示す。
図9Bは、年齢についてのTTFADA生存者プロットを示す。
図9Cは、IMMのTTFADA生存プロットを示す。
【
図9C】
図9は、有意な予測因子についてのTTFADAの生存プロットの例を示す図である。
図9Aは、推定された有効半減期についてのTTFADA生存プロットを示す。
図9Bは、年齢についてのTTFADA生存者プロットを示す。
図9Cは、IMMのTTFADA生存プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
本明細書に記載のシステムおよび方法は、測定された薬物濃度に基づいて特定の患者の薬物動態学的有効半減期を評価し、特定の患者の体内の薬物の目標濃度に達する計算された時間(すなわち、「目標到達時間」)に基づいて薬物の適切な投薬間隔を決定するためのノモグラムを構築および使用する。ノモグラムは、一般に、3またはそれを超える変数間の関係を表すダイアグラムまたは計算機などの数学的ツールを指す。ノモグラムは、形式がグラフィカルであり得、ユーザが1またはそれを超える変数を知っている結果を特定することを可能にする幾何学的構造を使用し得る。ノモグラムは、化学工学、地震学、航空学、弾道学、および生理学を含む様々な分野で一般的に使用されている。
【0043】
薬物動態学において、見かけのまたは「有効半減期」(本明細書で使用される場合)は、一般に、生物における生化学的または薬理学的物質の蓄積または除去の速度である。具体的には、半減期は、患者における薬物濃度が50%低下する時間に関する。これは、系における薬物の損失を反映し、薬物蓄積の重要な決定因子であり得る。有効半減期は、1またはそれを超える生理学的コンパートメントについての排出の動態、吸収の動態、消失の動態、排出および分布の複合関数、または上記の組み合わせのうちの1またはそれを超えるものから生じる個々の半減期の累積効果(例えば、加重平均)を反映する。レジメンによる薬物の反復投与では、より長い有効半減期を有する薬物はよりゆっくりであるが、より大きな程度で蓄積する。
【0044】
本明細書に記載のノモグラム(例えば、プロット、テーブル、または計算機)は、2つの薬物動態(PK)関係に基づいて構築される(および反映される):(1)薬物有効半減期と目標濃度に達するまでに経過する時間の量との間の関係、および(2)薬物有効半減期と前回投与後の経時的な患者における薬物濃度との間の関係。異なる有効半減期は、薬物に応じて、投薬後同じ日数後に異なる濃度をもたらす。正確な濃度値はまた、以前に投与された当量の後の投薬間隔において毎日変化する。目標濃度は、次の用量を与える前に医師が許容可能であると考える患者血清(または血液、または組織)中の薬物の最低濃度である。有効な半減期は様々な薬物で異なり、例えば、モノクローナル抗体フラグメントは数時間のスケールで有効な半減期を有し、マウスモノクローナル抗体は数日のスケールで有効な半減期を有し、キメラモノクローナル抗体およびヒトモノクローナル抗体は数週間のスケールで有効な半減期を有する。
【0045】
両方の関係(上記1および2)は、正確に同じ有効半減期値を使用して計算されるため、それらのグラフは重ね合わせることができる。有効半減期値をx軸にプロットし、目標値到達時間を左のy軸にプロットし、関連するトラフ薬物濃度を右のy軸にプロットする。x=0、y=0座標(原点)は、両方の関係の左下隅であり、0の理論的有効半減期を表す。
【0046】
第1のPK関係(1)は、患者の有効半減期、最大濃度、および目標濃度に基づいて目標到達時間を決定する以下の式(式1)に基づいてもよい:
【数1】
式1の目標到達時間は、医師によって選択された任意の異なる薬物目標レベルについて異なる。ノモグラムはまた、任意の薬物標的について構築されてもよく、または(例えば、目標濃度値を入力することによって、または推奨される目標のリストから選択することによって)ユーザが標的を選択できるように構成されてもよい。目標到達時間は、投薬量(すなわち、患者に提供されるもの)に関連する、異なる最大濃度に対して異なる。体重は、修正PKモデルを使用することによってノモグラムの構築中に考慮され得る。
【0047】
患者の有効半減期は、典型的には、導入投薬中に変化するため、医師は、患者が維持投薬を開始し、有効半減期が安定化したら、ノモグラムを使用することを決定し得る。式1によれば、短い有効半減期を有する患者は、目標投薬間隔までの時間が短い。インフリキシマブまたは他の薬物の場合、目標インフリキシマブ(または他の薬物)濃度にかかわらず、目標値到達時間が標準治療の投薬間隔未満である患者は、例えば、本明細書に記載される投薬レジメン推奨システムを使用して、より個別化投薬のために考慮され得る。
【0048】
第2のPK関係(2)は以下の式(式2)に基づき得て、これは、患者の薬物有効半減期および最大濃度に基づいて「#」(数)日間での患者のインフリキシマブ濃度を決定する:
【数2】
薬物濃度は、投薬間隔の任意の日について計算することができる。薬物の量は最大濃度に影響するため、日数は同じ所与の目標に対して異なる投薬量で異なる。式1と同様、有効半減期は、投薬の最初の約6週間にわたって、誘導中に有意に変化することが多いため、ノモグラムは、導入中ではなく維持中に使用されるように最適に構築され得る。
【0049】
しかしながら、医師は、特定の患者の有効半減期またはインフリキシマブの最大濃度を知らない可能性が高く、したがって、特定の患者について正確に式1および式2を計算することができない。そのため、本明細書に記載の方法によれば、式1および式2は、臨床患者集団の薬物有効半減期値の全範囲にわたって計算される。薬物有効半減期の範囲は、文献から得られる場合があり、または薬物で処置された患者において様々な有効半減期が観察された医師から収集されてもよい。得られた値をデカルト平面にプロットするかまたは表にしてノモグラムを作成し、ノモグラムを使用して、適切な有効半減期を特定し、次いで適切な有効半減期に基づいて有効な目標到達時間を特定することによって用量間隔を決定する。式1および式2の計算を、
図5に関連して記載されたモデルなどの薬物動態モデルを使用して実施することができる。
【0050】
本明細書に記載されるノモグラムを構築するための方法は、モノクローナル抗体を含むがこれに限定されない任意の医薬薬物の投薬レジメン調整に適用され得る。ノモグラムは、個々の薬物または薬物のクラスに適用され得る。例えば、類似の薬物動態学的特性を有する薬物群に対してノモグラムを使用することができる。
【0051】
そのような薬物の例を表1に含める。以下の定義を表1で使用する:「iv」は静脈内投与である;「sc」は皮下である;「RA」は関節リウマチである;「AS」は強直性脊椎炎である;「UC」は潰瘍性大腸炎である;「CD」はクローン病である;「IBD」は炎症性腸疾患であり、潰瘍性大腸炎および/またはクローン病を含み得る;「PsO」は乾癬である;「PsA」は乾癬性関節炎である;および「MS」は多発性硬化症である。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のシステムは、特定の薬物に固有のものではなく、代わりに薬物のクラスまたは他のサブセットもしくはグループ(例えば、類似の薬物動態学的または薬力学的効果を有すると予想される薬物、特定の症状を処置する候補であると知られている薬物、または他の類似点)に適用され得る。
【表1】
【0052】
例えば、本明細書に記載されるノモグラムは、炎症性疾患の処置に使用されるすべての生物製剤に使用することができる薬物動態薬物非依存性モデルを使用して構築され得る。そのようなモデルを使用して、完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)、キメラmAb、ヒト化mAb、融合タンパク質、およびmAbフラグメント(すなわち、異なる薬物動態特性を有するが、類似の分子量および適応症などの他の類似性を有する薬物の範囲)、例えば表1に列挙されるものについて、同じモデルを使用して患者特異的薬物動態を評価することができる。モデルは、炎症性腸疾患、関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬、多発性硬化症、および免疫調節不全から生じる他のそのような疾患を含む広範な患者集団で使用され得る。他の広範な薬物セット(例えば、アミノグリコシド系抗生物質、白血球数を低下させる化学療法剤など)における薬剤についての薬物非依存性ベイジアンモデルの開発および適用も同様に実現可能である。クラス内の薬物は、皮下、静脈内、経口、筋肉内、髄腔内、舌下、頬側、直腸、膣、眼、鼻、吸入、噴霧、皮膚または経皮などの様々な経路を介して投与され得る。
【0053】
薬物動態モデルは、投与経路をシステムへの変数入力と見なすことによって投与経路を説明し得て、モデルのより大きな柔軟性を可能にする。ベイジアンモデルなどの計算モデルを使用して、ノモグラムと併せて投薬レジメンの推奨を決定してもよい。例示的なベイジアンモデルは、「SYSTEM AND METHOD FOR PROVIDING PATIENT-SPECIFIC DOSING AS A FUNCTION OF MATHEMATICAL MODELS UPDATED TO ACCOUNT FOR AN OBSERVED PATIENT RESPONSE」と題され、2013年10月7日に出願された米国特許第10,083,400号;「SYSTEMS AND METHODS FOR PATIENT-SPECIFIC DOSING」と題され、2016年4月8日に出願された、米国特許出願公開第2016/0300037号;「SYSTEMS AND METHODS FOR MODIFYING ADAPTIVE DOSING REGIMENS」と題され、2019年4月23日に出願された、米国特許出願公開第2019/0326002号;および「SYSTEMS AND METHODS FOR DRUG-AGNOSTIC PATIENT-SPECIFIC DOSING REGIMENS」と題され、2020年3月9日出願された、米国特許出願公開第2020/0321096号に記載されている。上記の特許および特許公報の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、コンピュータ化されたノモグラムの各反復は、ベイズモデルを使用した推奨される投薬レジメンの計算または決定を含み得る。追加のデータ(患者から得られた生理学的パラメータデータまたは薬物濃度データなど)が利用可能になると、モデルの別の反復を実施して、追加のデータに基づいて更新された推奨投薬レジメンを決定してもよい。このプロセスは、患者を記述する任意の新しいデータを反映するために任意の回数繰り返すことができる。個別化投薬システムは、結果を比較して比較用量間隔を評価するためにノモグラムと並行して、またはノモグラムへの入力の供給源として直列に使用し得る。個別化投薬システムの例としては、InsightRX(登録商標)精密投薬、DoseMeRx(登録商標)精密投薬、およびiDose(登録商標)精密投薬が挙げられる。ノモグラムシステムは、投薬システムからの出力がノモグラムへの入力として、またはその逆に使用され、それによって用量間隔の決定を支援するための初期値として機能するように、個別化投薬システムとの相互適合性を有し得る。例えば、クリアランスおよび体積などの薬物動態パラメータは、ベイジアン個別化投薬システムからの出力として得られ、ノモグラムの曲線をより迅速に決定し、それによって最終的にノモグラムに基づいて適切な投薬間隔を決定するために使用され得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「投薬レジメン」は、少なくとも1つの投薬量の薬物または薬物のクラス、および少なくとも1つの投薬量の薬物を患者に投与するための推奨スケジュールを含む。投薬量は、薬物の利用可能な投与単位の倍数であり得る。例えば、利用可能な投与単位は、1つのピル、またはそれが容易に分割されるときに生じるピルの適切な画分、例えば半分のピルであり得る。いくつかの実施態様において、投薬量は、薬物の利用可能な投与単位の整数倍であり得る。例えば、利用可能な投与単位は、分割することができない10mg注射またはカプセルであり得る。いくつかの投与経路(例えば、IVおよび皮下)では、用量強度の一部または複数を投与することができる。推奨スケジュールは、第1の医薬投薬レジメンに応答した患者における薬物の予測濃度時間プロファイルが推奨時間での目標薬物曝露または応答レベル(例えば、目標薬物濃度トラフレベル)以上であるように、次の用量の薬物を患者に投与するための推奨時間を含む。
【0055】
上述のように、薬物のセットに対してノモグラムを構築することができる。薬物非依存性モデルを使用して、薬物間の共有類似性に基づいて複数の薬物に適用されるようにノモグラムを生成することができる。薬物非依存モデルは、単一の薬物のみではなく、薬物のセットに適用されるため、モデルは、患者が薬物のセット内の複数の薬物で処置される場合に患者固有の情報を保持し得る。例えば、一連の薬物には、インフリキシマブ、ベドリズマブ、アダリムマブ、および他の抗炎症性生物製剤が含まれ得る。患者が1つの薬物(例えば、インフリキシマブ)で処置され、その後に別の薬物(例えば、ベドリズマブ)で処置される場合、システムは、患者が新しい薬物で処置されると、適切な投薬レジメンを決定するときに、インフリキシマブに対する患者の処置からのすべての患者固有のデータ(薬物濃度測定、クリアランス速度、重量測定など)を保持し得る。患者固有のデータを保持することにより、薬物非依存性モデルは、患者が薬物を処理する能力を正確に予測することができ、それにより、患者が薬物療法を変更する場合に、より適切な患者固有の投薬レジメンを提供することができる。薬物非依存性モデルは、複数の適用経路および広範囲の疾患を有する広範囲のデータに適合することができるので、モデルは薬物および個々の患者について学習すべきである(例えば、ベイジアン学習を介して、)。そのような薬物非依存性薬物動態モデルは、例えば、伝統的な集団薬物動態モデルの新規な適用を表す。そのような薬物非依存性薬物動態(PK)モデルを開発する能力は、1)特定のクラスのすべての薬剤についての共通の普遍的な構造PKモデル、2)PKパラメータに対する患者因子の同様の効果、および3)同様の適応症を含む、1またはそれを超えるいくつかの因子に基づいて予測することができる。したがって、他の広範な薬物クラス(例えば、アミノグリコシド系抗生物質)の薬剤についての薬物非依存性ベイジアンモデルの開発および適用も同様に実現可能であり、クラス内の各薬物について複数のモデルを実装するのではなく、単一の薬物非依存性モデルのより大きな有用性を可能にする。
【0056】
同様に、薬力学的効果(薬物の測定された応答)について共通性を示す薬物クラスについて、薬物非依存性モデルを構築することができる。例えば、多くの化学療法剤は、好中球減少症または白血球数の低下を引き起こす。これは遅延応答であり、最も少ない白血球数は一般に、化学療法が投与されてから7~9日後に生じる。持続期間および白血球数の最下点に対する各薬物の影響は異なり得るが、薬物曝露と白血球数の減少との間の基礎となる関係は構造的に類似しており、白血球減少を引き起こす化学療法剤のクラスについて実用的な薬物非依存性薬力学モデルを開発することを可能にする。
【0057】
いくつかの実施態様において、モデルは薬物動態および薬力学を記述する。モデルは、PK成分およびPD成分を含み、これらはモデル内で分離していてもよく、または相互に関連していてもよい。例えば、PKおよびPD成分は、PKに対するPKおよびPDの影響がモデルに含まれるように相互に関連し得る。PK成分はPKクリアランスパラメータを含み得、PD成分はPD応答パラメータを含む。PK成分とPD成分との間の相互関係は、PD応答の関数であるPKクリアランスパラメータによって反映され得るか、またはその逆であり得る。1またはそれを超える微分方程式を使用して、患者応答および患者における薬物のクリアランスを記述することができる。モデルのPD成分は、第1の微分方程式を含み得、モデルのPK成分は、第2の微分方程式を含む。第1の微分方程式は、患者によるPD応答を表し得、第2の微分方程式は、患者によるPKクリアランスを表し得る。第1または第2の微分方程式は、PD応答および/またはPKクリアランスを含み得る。
【0058】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、患者に投与する特定の薬物を特定することなく、あるクラスの薬物に対する推奨される投薬レジメンを出力し得る。本明細書で使用される場合、「投薬レジメン」は、少なくとも1つの投薬量の薬物または薬物のクラス、および少なくとも1つの投薬量の薬物を患者に投与するための推奨スケジュールを含み得る。推奨スケジュールは、推奨時間における目標、例えば薬物濃度トラフレベル以上である第1の医薬投薬レジメンに応答して患者における薬物の予測濃度時間プロファイルを達成するために、患者に薬物の次の用量を投与するための推奨時間を含む。
【0059】
薬物のクラスは、少なくとも1つの類似のPKもしくはPD効果を示すか、または共通の作用機序、類似の構造モデル(例えば、薬物動態学のための1つ、2つ、または2つを超えるコンパートメントモデル)、または何らかの他の類似性を共有する、1より大きい薬物の群を示す。例えば、類似のPK効果は、特定の範囲内のクリアランスであり得る。同様の効果は、特定の範囲内の測定濃度、例えば、バイオアベイラビリティ、吸収、白血球数、血中濃度レベル、または本明細書で論じられるバイオマーカー/測定値のいずれかであり得る。特定の範囲は、10倍の差の範囲内であり得る、すなわち、0.1~1の値は、同様であると考えられ得る。特定の範囲は、システムインターフェース上でユーザによって指定されてもよい。薬物は、一般的な炎症性疾患、またはより具体的には炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病を含むIBD)、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、乾癬、喘息、または多発性硬化症など、それらが処置する疾患によってクラスに分類され得る。薬物クラスはまた、薬物構造に基づいてもよい。例えば、クラスには、モノクローナル抗体(mAb)、キメラmAb、完全ヒトmAb、ヒト化mAb、融合タンパク質、および/またはmAbフラグメントが含まれ得る。薬物のクラスには、抗炎症化合物、化学療法剤、コルチコステロイド、免疫調節剤、抗生物質もしくは生物学的療法、または任意の他の適切な群が含まれ得る。薬物クラスは、患者集団、すなわち小児科、老人科によってさらに決定され得る。薬物クラスはまた、他の基準に基づいてユーザによって決定されてもよく、そのクラス(または他のグループ)のメンバーは、そのクラス(またはグループ)の一部であるとしてデータベース内で電子的に指定されてもよい。そのデータベースは、クラス(または他の群)ベースの投薬レジメンを決定する際に使用するために、本明細書に開示されるシステムおよび方法にアクセス可能である。薬物クラスまたは群は、異なる投与経路または異なる製造業者を有する同じ薬物など、同じ薬物の変形を含み得る。この特徴は、医師が、価格、入手可能性、指示、および/または経路が異なる一般的なブランド薬と比較する必要がある場合に特に有用であり得る。本明細書に記載される例の多くは、医薬用インフリキシマブに関連する。しかしながら、本明細書に記載の実施態様は、免疫抑制、抗炎症、抗生物質、抗菌剤、化学療法、抗凝固剤、凝固促進剤、抗鬱剤、抗精神病剤、精神刺激剤、抗糖尿病剤、抗痙攣剤、鎮痛剤、または任意の他の適切な処置に適用され得る。
【0060】
本明細書に記載される実施態様の多くは、潰瘍性大腸炎またはクローン病などのIBDの処置に関する。IBDの標準的な処置レジメンはないが、以下の薬物群を使用してIBD患者を処置することができる:抗炎症化合物、コルチコステロイド、免疫調節薬、抗生物質または生物学的療法。最近開発された処置の1つには、腫瘍壊死因子(TNF)と呼ばれる炎症性タンパク質を標的とし、それに結合してそれを不活性にする生物学的療法(例えば、モノクローナル抗体(mAb)、例えば、インフリキシマブ)が含まれる。いくつかの例において、抗TNF剤(例えば、インフリキシマブなど)の組合せを、1またはそれを超える免疫調節剤(例えば、チオプリンなど)と組み合わせることができる。そのような併用療法は、効果的に排出速度を低下させ(それによって患者の血液中の薬物濃度レベルを上昇させ)、抗薬物抗体の形成を減少させ得る。IBDを有する患者を処置する際の最大の課題は、患者が治療に十分に曝露されることを確実にすることである。身体は、薬物の「クリアランス」のいくつかの経路を提示する。例えば、患者の代謝は、タンパク質分解(タンパク質の分解)、細胞取り込み、およびIBDに関連するさらなる非定型クリアランス機構によってmAbを分解し得る。例えば、疾患の性質のために、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)などの症状を有する患者は、尿路および/または消化管への薬物の過剰な損失に苦しむことが多い。さらに、重度のIBDでは、mAbが潰瘍化した粘膜および剥離した粘膜を介して糞便中に失われることがあり、クリアランスのさらなる経路を作り出す。全体として、IBD患者は、他の炎症性疾患よりも40%~50%高いインフリキシマブ排出速度を有すると推定され、IBDを処置することを特に困難にする。本明細書に記載のシステムおよび方法はまた、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、尋常性乾癬、低レベルの凝固第VIII因子、血友病、統合失調症、双極性障害、鬱病、双極性障害、感染性疾患、癌、発作、移植、または任意の他の適切な苦痛を処置するための投薬レジメンを開発し得る。
【0061】
患者データを使用して、特定の薬物を服用している特定の患者のモデルを更新および改良してもよい。本明細書に記載のシステムへの入力は、濃度データ、生理学的データ、および目標応答を含み得る。モデルへの入力は、一般に、濃度データ、生理学的データ、および目標応答を含む。上述のように、濃度データは、血液、血漿、尿、毛髪、唾液、または任意の他の適切な患者サンプルなどの患者から得られた1またはそれを超えるサンプル中の薬物の1またはそれを超える濃度レベルを示す。濃度データは、患者サンプル中の薬物自体の濃度レベル、または患者の体内の薬物の量を示す患者サンプル中の別の分析物の濃度レベルの測定値を反映し得る。薬物は、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病を含むIBD)、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、尋常性乾癬、または任意の他の適切な苦痛などの疾患または障害などの特定の健康状態を有する患者を処置するための処置計画の一部であり得る。そのような健康状態を処置するために使用される薬物には、モノクローナル抗体(mAb)(例えば、インフリキシマブまたはアダリムマブなど)が含まれる場合がある。本明細書に記載される例の多くは、IBDを処置するためにインフリキシマブを使用することに関連しているが、本開示のシステムおよび方法は、測定可能な様式で経時的にその有効性を失う任意の薬物または処置に適用可能であり、IBDなどの任意の炎症性疾患を含めて、任意の数の疾患を処置するために使用され得ることが理解されるであろう。
【0062】
システムへの入力はまた、処置される疾患、薬物のクラス、投与経路、利用可能な用量強度、好ましい投薬量(例えば、100mgバイアル、50mg錠剤など)、および特定の薬物が完全にヒトであるか否か(例えば、キメラ)などの他の薬物情報を含み得る。薬物情報を使用して、患者の利用可能な処置オプション、選択されたモデル、およびモデルパラメータを決定し得る。例えば、IBDのために処置される患者は、IBDを有しない患者よりも高いクリアランス速度を有することが多く、IBDによる処置のための薬物投薬レジメンをそれに応じて調整しなければならない。好ましい投薬量は、レジメンが患者に推奨される前に投薬レジメンを変更し得る。例えば、薬物が100mgバイアルでのみ利用可能である場合、推奨投薬量は、100mg増分に四捨五入される。いくつかの実施態様において、薬物情報は、患者を処置するために現在使用されている薬物を識別する情報を除外する。例えば、薬物データは、薬物クラスに対して一般的であり得る。生理学的データは、一般に、患者の少なくとも1つの生理学的パラメータの1またはそれを超える測定値を示す。これは、医療記録情報、炎症マーカー、アルブミン測定値またはC反応性タンパク質(CRP)の測定値などの薬物除去の指標、抗薬物抗体の測定値、ヘマトクリット値、薬物活性のバイオマーカー、体重、体の大きさ、性別、人種、病期、疾患状態、事前治療、事前臨床検査結果情報、併用投与薬物、付随疾患、Mayoスコア、部分Mayoスコア、Harvey-Bradshaw指数、血圧測定値、乾癬面積、重症度指数(PASI)スコア、疾患活動性スコア(DAS)、Sharp/van der Heijdeスコア、および人口統計学情報のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0063】
目標応答は、医師が患者の耐性および薬物療法に対する応答の評価に基づいて選択され得る。一例では、目標応答は、患者から得られたサンプル中の薬物の目標薬物濃度レベル(例えば、濃度最大値、最小値、または露光ウィンドウ)を含み、患者が次の用量をいつ受けるべきか、およびその次の用量の量を決定するために使用され得る。目標薬物濃度レベルは、目標薬物濃度トラフレベル;目標薬物濃度最大値;濃度時間曲線下の標的薬物領域(AUC);目標薬物濃度の最大値とトラフ値の両方;血圧もしくは凝固時間(clot time)などの目標薬力学エンドポイント;または薬物曝露の任意の適切なメトリックを含み得る。目標は、薬物データおよび/または濃度もしくは応答に基づいて医師によって決定され得る。いくつかの実施態様において、患者に治療応答をもたらすために、システムによって目標を自動的に決定してもよい。システムは、患者において治療応答をもたらす1またはそれを超える目標を決定するために入力された複数の目標を評価し得る。上記の入力(例えば、濃度データ、生理学的データ、薬物情報、および目標応答)は、本開示のシステムおよび方法によって、患者のための投薬レジメン推奨をパーソナライズするために使用される。
【0064】
受信した入力に基づいて、本明細書に記載のシステムおよび方法は、患者の薬物の濃度時間プロファイルの予測を生成する計算モデルの1またはそれを超えるパラメータ値(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、2016年4月8日出願の米国特許出願公開第2016/0300037号として公開された、「Systems and Methods for Patient-Specific Dosing」という名称の米国特許出願第15/094,379号(「’379出願」)に記載されているモデルパラメータのいずれかなどである)を設定し得る。いくつかの実施態様において、計算モデルはベイジアンモデルである。例えば、計算モデルは、患者特異的な標的化投薬レジメンを開発するために、過去のおよび/または患者データを考慮に入れてもよい。’379出願で論じられているように、計算モデルは、薬物の濃度時間プロファイルを示す薬物動態学的成分と、薬物に対する患者の個々の応答を示す薬力学的マーカーの合成および分解速度に基づく薬力学的成分とを含み得る。計算モデルは、受信した生理学的データに最もよく適合する計算モデルのセットから選択され得る。例えば、患者が45歳の男性である場合、システムは、30歳~50歳の男性に固有の計算モデルを選択し得る。この計算モデルは、患者固有の測定値(本明細書に記載の追加の濃度データおよび追加の生理学的パラメータデータなど)を考慮することによって、特定の患者に個別化することができる。結果を比較するために、個別化投薬システムをノモグラム(すなわち、並列に)と共に使用することができる。ノモグラムシステムは、投薬システムからの出力がノモグラムへの入力として使用されるように、またはその逆に使用されるように、個別化投薬システムとの相互適合性を有し得る。例えば、クリアランスおよび体積などの薬物動態パラメータをベイジアン個別化投薬システムから取得し、ノモグラムの曲線をより迅速に決定するために使用してもよい。
【0065】
システムおよび方法は、ベイジアン解析に依存し得る。例えば、ベイジアン解析を使用して、患者の血液中の薬物濃度を特定のレベル付近に維持するなど、望ましい結果を達成するために必要な適切な用量を決定し得る。ベイジアン解析は、ベイジアン予測およびベイジアン更新を含み得る。これらのベイジアン法を使用して、共変量患者因子としてモデルで説明される患者固有の特性の関数であるだけでなく、モデル自体では説明されず、モデルによって反映される典型的な患者から特定の患者を区別する被検体間変動(BSV)を反映する観察された患者固有の応答も反映するモデルを開発してもよい。このようにして、本開示は、従来の数学モデル(例えば、用量レジメンおよび患者因子のみに基づいて予測されなかったであろう患者応答)によって説明されていないおよび/または説明されていない個々の患者間の変動性を説明する。さらに、本開示は、体重、年齢、人種、検査結果などの典型的なモデルによって説明される患者因子を、カテゴリ(カットオフ)値としてではなく連続関数として扱うことを可能にする。これを行うことにより、特定の患者に合わせて個別化された投薬レジメンを予測、提案および/または評価するために、患者固有の予測および分析を実施できるように、モデルが特定の患者に適合される。
【0066】
特に、本開示は、患者に以前に投与された投薬レジメンを遡及的に評価するためだけでなく、提案された投薬レジメンを患者に投与する前に提案された投薬レジメンを予測的に評価するため、または所望の転帰を達成する患者のための投薬レジメン(投与量、投薬間隔および投与経路)を特定するためにも使用され得る。ベイジアン予測プロセスを使用して、モデル内の患者因子共変量として説明される患者の特定の特性、および数学的モデルの関数として、患者の様々な投薬レジメンを試験し得る。この予測は、患者特有の特性を有する典型的な患者の予測された応答に基づいて投薬レジメンを評価することを含む。一般に、ベイジアン予測は、数学的モデルパラメータを使用して、特定の患者が様々な投薬レジメンで示す可能性のある応答を予測することを含む。特に、予測は、提案された投薬レジメンの実際の投与前に、提案された投薬レジメンに対する可能性のある患者応答の決定を可能にする。したがって、予測は、患者特有の要因および/またはモデル/複合モデルのデータによって予測されるように、各投薬レジメンが患者にどのように影響を及ぼし得るかを決定するために、複数の異なる提案された投薬レジメン(例えば、様々な投薬量、用量間隔および/または投与経路)を試験するために使用することができる。予測値は、処置目的または目標曝露もしくは濃度レベルを達成するための満足のいくまたは最良の投薬レジメンのセットを作成するために比較され得る。例えば、目標は、治療閾値を超えるトラフ血中濃度レベルの維持を含み得る。
【0067】
いくつかの実施態様において、推奨される投薬レジメンには、特定の投薬レジメンが患者にとって治療上有効である可能性を示す信頼区間または予測区間が提供される。特に、個々のデータからの予測された応答または濃度の信頼区間または予測区間は、モデルの複雑さおよび個々のデータ(PKおよび/またはPDデータ)の量に基づいて評価され得る。特に、信頼区間は、モデルからの個々の予測における可能な誤差を反映し得る。
【0068】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、薬物のクラス(または他の群)について患者の薬物クリアランスを予測するために使用され得る。そのようなモデルは、薬物群内の薬物間の差を説明するために標準化され得る。いくつかの実施態様において、モデルは、薬物のクラスに対応する公開モデルのセットからパラメータ値を収集することによって作成される。パラメータ値は、ルックアップテーブルに収集され得る。パラメータ値は、薬物非依存性モデル内で比較またはプールすることができるように、「標準化値」に変換され得る。これにより、システムは、公開された共変量効果を有する公開されたモデルについては患者集団について、およびすべての測定され推定された共変量効果を有する拡張された公開されたモデルについては患者集団についてPK特性をシミュレーションすることができる。標準化されたパラメータには、体重、アルブミン、ADA陰性、免疫抑制剤の存在、CRP、グルコース、ヒトまたはキメラ、非IBD疾患、性別、非線形クリアランス、およびCLが含まれ得る。ルックアップテーブルを使用してパラメータを正規化し、薬物非依存モデルからの予備推定を可能にし得る。ルックアップテーブルは、ユーザインターフェースを介してユーザによって操作されてもよく、
図6のモデルデータベース606Dに格納されてもよい。ルックアップテーブルは、各薬物が様々なシナリオで容易にシミュレーションされ得るように、テーブルのサブセットがプログラム内のシミュレーション機能に送信され得るように構造化され得る。シミュレーションされた濃度データをプールデータに適合させるために、薬物群の各薬物の正規化されたパラメータからシミュレーションされた濃度を、その薬物群のプールデータに関して比較および分析してもよい。薬物群の薬物非依存モデルは、その群のすべての薬物に適用されるか、またはその群のすべての薬物を表すパラメータのセットを提供する。
【0069】
図1Aは、患者におけるインフリキシマブの測定濃度に基づいてインフリキシマブ投薬レジメンの「目標到達時間」を決定するための例示的なノモグラムを示す。ノモグラムは、2つの薬物動態(PK)関係に基づいて構築される。(1)インフリキシマブ有効半減期と目標濃度に達するまでに経過する時間の量との間の関係、および(2)インフリキシマブ有効半減期と前回投与後の経時的な患者におけるインフリキシマブ濃度との間の関係。異なる有効半減期は、投薬後の同じ日数後に異なる濃度を生じる。投薬間隔の各日に異なる濃度曲線が存在する。
図1Aは、8週間の投薬プログラムの56日目の曲線を示す。目標濃度は、次の用量を与える前に医師が許容できると考える最低濃度である。
【0070】
両方の関係(上記1および2)は、正確に同じ有効半減期値を使用して計算されるため、それらのグラフは重ね合わせることができる。有効半減期値をx軸にプロットし、目標値到達時間を左のy軸にプロットし、インフリキシマブ濃度を右のy軸にプロットする。x=0、y=0座標(原点)は、両方の関係の左下隅である。実線の曲線は第1のPK関係(1)を表し、破線の曲線は第2のPK関係(2)を表す。
【0071】
第1のPK関係(1)は式1(上記)に基づき、これは患者の有効半減期、最大濃度、および目標濃度に基づいて目標到達時間を決定する。式1の目標到達時間は、医師によって選択された任意の異なる目標ごとに異なる。
図1Aのノモグラムでは、目標は5μg/mLであるが、他のターゲットに対してノモグラムを構築したり、ユーザがターゲットを選択できるようにしてもよい(例えば、5、7.5、または10μg/mL)。目標到達時間は、投薬量(すなわち、患者に提供されるもの)に関連する、異なる最大濃度に対して異なる。
図1Aでは、8週間ごとの5mg/kgのFDA承認投薬量(標識用量としても知られている)が使用されているが、ノモグラムはまた、他の投薬量について構築されてもよく、またはユーザが投薬量(例えば、5、7.5、または10mg/kg)を選択することを可能にしてもよい。この例では、5mg/kgの投薬量は、患者の体重に関係なく血液のインフリキシマブ濃度を100μg/mL増加させるが、体重は、修正PKモデルを使用することによってノモグラムの構築中に考慮に入れてもよい。
【0072】
患者の有効半減期は、導入投薬中に変化するため、医師は、患者が維持投薬を開始し、有効半減期が安定化したら、ノモグラムを使用することを決定し得る。式1によれば、短い有効半減期を有する患者は、目標投薬間隔までの時間が短い。目標インフリキシマブ濃度にかかわらず、目標値到達時間が28日(4週間)未満の患者は、例えば、本明細書中に記載される投薬レジメン推奨システムを使用して、より個別化投薬のために考慮され得る。
【0073】
第2のPK関係(2)は式2(上記)に基づき、患者の薬物有効半減期および最大濃度に基づいて「#」(日数)での患者のインフリキシマブ濃度を決定する。インフリキシマブ濃度は、投薬間隔の任意の日(この場合、56日または8週間の投薬間隔)について計算することができ、
図1Aのプロットでは、濃度は56日目について計算される。薬物の量は最大濃度に影響するため、日数は同じ所与の目標に対して異なる投薬量で異なる。式1と同様に、有効半減期は、投薬の最初の約6週間の間に有意に変化するので、ノモグラムは、誘導ではなく維持の間に最適に使用され得る。
【0074】
しかしながら、医師は、特定の患者の有効半減期またはインフリキシマブの最大濃度を知らず、したがって、特定の患者について正確に式1および式2を計算することができない。
図1Aのノモグラムを作成するために、式1および式2は、臨床患者集団のインフリキシマブ有効半減期値の全範囲にわたって計算される。インフリキシマブの場合、有効半減期値は2日~15日の範囲である。得られた値をデカルト平面にプロットして
図1Aのノモグラムを作成し、これは5μg/mLの目標に基づいて5mg/kg用量を投与した56日後の集団中の全患者を表す(重みの差を考慮しない-
図3A~
図3Cのノモグラムは重み係数に対処する)。式1および式2の計算を、
図5に関連して記載されたモデルなどの薬物動態モデルを使用して実施することができる。
【0075】
ノモグラムは、(例えば、処置の0週目および2週目の最初の2回の投与後)「導入」を完了し、現在(例えば、8週間ごと)「維持」投薬を受けている患者に使用され得る。この例示的なノモグラムは、処置の14週目(例えば、維持投薬の開始)について構築される。インフリキシマブの場合、投薬間隔が8週間未満であるため、最初の3回の投与(0、2、および6週目)を導入と見なす。14週目に、維持投薬をインフリキシマブ患者に開始する。他のモノクローナル抗体および他の薬物は、異なる誘導持続時間を有する。例えば、アダリムマブは2用量である。
【0076】
図1Bは、測定されたインフリキシマブ濃度データに基づいて
図1Aのノモグラムを使用する2つの例を示す。点線の矢印で示されている第1の実施例は、5mg/kg用量(インフリキシマブについては標識用量)を受けた後の56日目に採取された血液サンプルを表し、実験室試験は、血液サンプル中の5μg/mLのインフリキシマブ濃度を測定する。右のy軸で始まるノモグラムを使用して、測定されたインフリキシマブ濃度を破線の矢印としてプロットする(濃度と有効半減期との間のPK関係を表す)。これは、特定の患者が12日間のインフリキシマブ有効半減期を有することを明らかにする。患者の有効半減期を知ると、実線の曲線(有効半減期と目標到達時間との間のPK関係を表す)まで点線の矢印を続け、次いで左のy軸まで続けることによって、対応する目標到達時間が明らかになる。投与パラメータおよび患者特異的有効半減期に基づく特定の患者の目標到達時間は56日であり、これは、5mg/kgの標識投与量および5μg/mLの目標を使用する場合、8週間の投薬間隔がこの特定の患者にとって正しいことを示唆している。
【0077】
実線の矢印で示されている第2の例は、同様に、異なる患者が5mg/kgの用量を受けた後の56日目に採取されている血液サンプルを表しているが、実験室試験では、血液サンプル中の3μg/mLのインフリキシマブ濃度が5μg/mLの目標を下回って測定される。最初の実施例と同様のステップをとると、実線矢印は、測定された濃度が特定の患者について10日間のインフリキシマブ有効半減期に対応することを示し、このことは、インフリキシマブが最初の実施例の患者よりも迅速にこの患者の血流を離れることを示唆している。実線矢印で示すように、この患者の10日間の有効半減期は、42~49日間の目標到達時間に相当する。したがって、医師は、この患者の低い有効半減期を説明するために、この患者の投薬レジメンを8週間ごとではなく6週間ごとに5mg/kgに変更してもよい。新しい投薬レジメンを投与した後、医師は、42日間の濃度曲線(図示せず)を有するノモグラムを使用して患者の結果を評価することができ、例えば、42日後に5μg/mLの測定濃度を見ることで、6週間の投薬間隔が患者にとって正しいことが示唆される。あるいは、医師は、
図1Bの第2の例で実証された患者のより低い有効半減期を説明するために投与量を増加させることができる。本明細書に記載のシステムは、1回の実行内で異なる線量(例えば、用量の増加)の目標到達時間を提供し、各線量のノモグラムまたは目標値到達時間を出力し得る。
【0078】
ノモグラムは、薬物の臨床試験に参加した患者の薬物有効半減期の範囲を示す領域と共にプロットすることができる。存在する場合、領域は、陰影が付けられてもよく、またはボックスによって境界が付けられてもよい。臨床試験は薬物の標識投与量を決定するために使用されたため、標識投与量によって表されるものを超える有効半減期の変動を視覚化することは医師にとって有用である。例えば、臨床試験におけるインフリキシマブの有効半減期は、約7.8日~約9.5日の範囲であった。ノモグラムの結果を標識レジメンと比較することもでき、例えば、特定の患者の目標値到達時間の出力を標識間隔と比較して、標識レジメンが特定の患者に不適切であるかどうかを示す。
【0079】
一方、
図1Aおよび
図1Bに示される実施例は患者体重を考慮しておらず、本明細書に記載のシステムおよび方法を利用してPK関係に体重を含めることができることを理解されたい。例えば、患者の正確な体重を使用して、カスタムノモグラムを作成してもよい。あるいは、医師は、異なる体重クラス(例えば、低体重クラス、中体重クラス、および高体重クラスの各々のノモグラム)に基づいて、ノモグラムのグループから患者のノモグラムを選択してもよい。ノモグラムはまた、投与経路を説明し得る。一部の薬物については、経路は薬物の薬物動態(ひいては半減期)に影響を及ぼすため、患者が使用する特定の投与経路についてノモグラムを構築すべきである。例えば、皮下投与は、典型的には、(静脈内投与と比較して)バイオアベイラビリティの低下に関連し、見かけのクリアランス速度が高くなる。ユーザは、皮下、静脈内、経口、筋肉内、髄腔内、舌下、頬側、直腸、膣、眼、鼻、吸入、噴霧、皮膚、または経皮を含むがこれらに限定されない経路から選択することができ、薬物動態学的モデリングは、経路間の違いを説明するために調整され得る。
【0080】
図1Aおよび
図1Bは、薬剤インフリキシマブに適用される、ノモグラム構築および使用のための本明細書に記載の方法の具体的な実施態様を表すことをさらに理解されたい。前述のように、類似の特性を有する薬物などの薬物のクラスについて、ノモグラムを構築することができる。例えば、モノクローナル抗体の投薬のために、
図1Aと同様のノモグラムを構築することができる。
【0081】
図2は、特定の患者のための投薬ノモグラムを構築し使用するための方法200を説明するフローチャートを示す。ノモグラムは、投薬レジメン(例えば、投薬量または投薬間隔の少なくとも1つ)を調整するのに特に有用である。ノモグラムは、モノクローナル抗体薬物の投薬レジメンを調整するために使用され得る。ノモグラムは、薬物または薬物のセットに特異的であり得る。方法200は、ステップ202、204、206、208、210、212、ならびに必要に応じて、214および216を含む。
【0082】
ステップ202は、以下のパラメータを表す入力モジュールデータを受信することを含む:特定の患者体重、薬物の投与された投薬量、現在の投薬間隔、目標薬物トラフ濃度、および特定の患者における測定された薬物トラフ濃度。ステップ204は、予想されるトラフ濃度をシミュレーションするために患者体重、投薬量、および用量間隔を使用することと、ある薬物クリアランス値の範囲に対する有効半減期値を演算することとを含む。ステップ206は、有効半減期値の範囲および目標濃度を使用して、有効半減期値の目標値到達時間をシミュレーションすることを含む。ステップ208は、有効半減期値に対して、シミュレーションされた予想トラフ濃度およびシミュレーションされた目標値到達時間をプロットすることによってノモグラムを生成することを含む。ステップ210は、患者特異的有効半減期を決定するために、濃度対半減期曲線上の測定されたトラフ濃度を読み取ることを含む。ステップ212は、患者特異的有効半減期に基づいて現在の投薬量を目標到達時間を決定することを含む。任意のステップ214は、患者特異的有効半減期に基づいて他の投薬量の目標値到達時間を決定することを含む。任意のステップ216は、特定の患者の投薬量の範囲についての目標値までの投薬量および時間のテーブルを出力することを含む。本方法によって生成することができる追加の出力には、推奨される投薬間隔および推奨される投与量が含まれるが、これらに限定されず、これらの各々は、投与された投薬量および目標濃度の目標値到達時間(複数可)に基づいて決定され得る。方法200は、入力モジュールで構成されたプロセッサを使用して実装され得る。方法200のステップは、プロセッサによる実行のためにコンピュータ可読媒体(例えば、コンピュータ可読命令としてのコード)で具現化され得る。グラフィカルユーザインターフェースを使用して、入力されたデータを受け入れ、方法200の結果(ノモグラムおよび推奨される投薬レジメンを含む)を表示し得る。方法200は、薬物または薬物のセットを使用する処置方法の一部として使用され得る。
【0083】
上記のように、予想される濃度および目標値到達時間は、薬物動態学的モデルを(少なくとも部分的に)使用して、式1および式2によって記載される薬物動態学的関係に従って、ある範囲の有効半減期値にわたってシミュレーションすることができる。薬物動態(PK)モデルを使用して、ステップ204および206のこれらの値をシミュレーションすることができる。
図5に示され、本明細書に記載される開放2コンパートメントPKモデルは、使用され得るモデルの一例である。モデルでは、線形クリアランス関係および線形一次吸収関係を使用してもよい。PKモデルは、現在の投薬量、現在の用量間隔、および患者体重をモデルに入力することによって使用することができる。患者の集団に対する体内の薬物の保持を表す薬物クリアランス値の範囲は、複数の予想薬物トラフ濃度を提供するためにモデル内で徐々に段階的に進むことができる。次いで、モデルを使用して、所与の患者体重に対する複数の有効薬物半減期を計算する。各有効薬物半減期は、クリアランス値の範囲内の薬物クリアランス値に対応する。次いで、モデルは、複数の有効薬物半減期を有効薬物半減期範囲として出力し、複数の薬物トラフ濃度を予想薬物トラフ濃度の範囲として出力する。各薬物トラフ濃度は、複数の有効薬物半減期の有効半減期に対応する。
【0084】
いくつかの実施態様において、薬物は、インフリキシマブアダリムマブ、ベドリズマブ、ゴリムマブ、ウステキヌマブ、アバタセプト、リツキシマブ、イキセキズマブ、セルトリズマブペゴール、エタネルセプト(entanercept)、デュピルマブ、トシリズマブ、アレムツズマブ、セクキヌマブ、グセルクマブ、レスリズマブ、メポリズマブ、オマリズマブ、ベンラリズマブ、サリルマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ、オクレリズマブ、オロキズマブ、およびナタリズマブのうちの1またはそれを超えるものである。一般化PKモデルを使用して、複数のこれらの薬物に適用されるノモグラムを作製してもよい。いくつかの実施態様において、有効薬物半減期範囲は、2日間~25日間の有効半減期値を含む。薬物がインフリキシマブである場合、以前の投薬量は約5mg/kgであり得、目標は1μg/mL~20μg/mLであり得る。
【0085】
上述のように、ノモグラムは、導入投薬を完了した後に維持投薬を受けている患者に特に有用であり得る。薬物に対する患者の有効半減期は、維持期間中により安定している可能性があるため、ノモグラムはより正確な結果を提供する。ノモグラムはまた、医師またはユーザが、患者の身体がいつ薬物から完全に取り除かれるか(すなわち、目標濃度を0に設定する)を知る必要がある状況で使用されてもよく、方法は、患者の身体がいつ完全に取り除かれるかの目標到達時間を出力することを含む。これは、患者がいつ新しい薬物に切り替えるかまたは臨床試験を開始するのに適格であり得るかを決定するのに有用であり得る。
【0086】
以下の表2は、方法200のステップ216の間に出力される表の一例である。表2の例は、
図1Aのノモグラムを作成するために使用されるのと同様のパラメータ(すなわち、5μg/mLの目標濃度、14週間で3μg/mLの測定濃度、180lb患者、8週間ごとに投与される5mg/kgの以前の用量)に基づく。表は、5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、および15mg/kgを含む複数の新しい投薬量を含む。方法200の結果は、各新しい投薬量について示されている。表2は、1人の特定の患者の有効半減期値、すなわち、新しい用量の各々について方法200で決定された患者固有の有効半減期を含むことを理解されたい。ステップ216で作成された表は、患者固有の有効半減期を含む行のみを示すように精密化されてもよい。
【0087】
表2:5μg/mLの目標濃度、14週間で3μg/mLの測定濃度、70kgの患者、8週間ごとに投与される5mg/kgの以前の用量に基づく、表形式のインフリキシマブ投薬ノモグラム。新たな用量、重量、有効半減期および目標到達時間を表にする。
【表2】
【0088】
ノモグラムは、患者の「ウォッシュアウト期間」を決定するために生成することもできる。米国国立医学図書館によれば、ウォッシュアウト期間は、「処置の効果を排除するために参加者が試験薬または他の薬物を服用しなくなる臨床試験中の期間」として定義される。ウォッシュアウト期間は、患者の処置後の効果を研究するため、および積極的処置が始まる前に患者の現在の処置を中止するための重要な臨床ツールである。臨床医は、処置間の交差効果を最小限に抑えるために、または臨床研究の場合には、新しい処置の効果のより明確な理解を得るために、以前の処置の効果を排除するために、新しい処置を開始する前に患者の身体が以前の処置の効果からの影響がないことを確実にしたい。ウォッシュアウト期間は、患者が特定の薬物による治療に失敗し、新しい薬物を開始する予定であるが、新しい薬物による治療を開始する前に失敗した薬物のウォッシュアウトを経る必要がある場合に使用することができる。典型的には、臨床医はすべての患者に30日間待機させるが、各個々の患者は所与の薬物に対して固有の有効半減期を有するため、真のウォッシュアウト期間は30日間より短くても長くてもよい。ウォッシュアウトノモグラムを使用して、臨床医は、個体のより正確なウォッシュアウト期間を見出すことができる。例えば、30日未満のウォッシュアウト期間に相当する有効半減期を有する患者は、そうでなければ30日間の標準治療を使用すると後退する。ウォッシュアウト期間を知ることはまた、患者が以前に投与された薬物の平均半減期よりも速い半減期を有する場合に、患者を新しい薬物をより速く投与することによって薬物追跡を加速するのに役立ち得る。
【0089】
ウォッシュアウト期間は、以前の薬物の濃度が患者の体内のウォッシュアウト閾値濃度に達するのにかかる時間として推定することができる。例えば、ウォッシュアウト閾値は、0または0付近(例えば、約0.1、約0.2、約0.3、約0.5、約1濃度単位、例えばμg/mL)であり得る。患者のウォッシュアウト期間は、ステップ202でウォッシュアウト閾値を目標用量として入力することによって、方法200によって生成された同じノモグラムを使用して計算することができる。したがって、方法200によってウォッシュアウトノモグラムを構築することができ、臨床医は患者がいつ薬物効果がなくなるかを決定することができる。以下の表3は、インフリキシマブ投与中の患者のウォッシュアウト期間を決定するためのノモグラムを出力した結果の例を示す。代替として、ステップ202でウォッシュアウト閾値濃度を目標として入力することによってウォッシュアウトノモグラムを生成するのではなく、方法200のさらなるステップ中にウォッシュアウトノモグラムを追加出力として構築することができる。ユーザは、所望のノモグラムを構築した後にウォッシュアウトノモグラムを生成するオプションを選択することができ得る。
【0090】
表3:0.01μg/mLの目標濃度(新たな用量に対するウォッシュアウト閾値濃度として)、14週目における1μg/mLの測定濃度、50kgの患者、6週間毎に投与される5mg/kgの以前の用量に基づく、表形式のインフリキシマブウォッシュアウトノモグラム。新たな用量、重量、有効半減期および目標到達時間を集計し、ここで目標到達時間は新たな用量のウォッシュアウト期間である。
【表3】
【0091】
結果は、メモリデバイスまたはクラウドメモリアーキテクチャなどのライブラリに格納され得る。ライブラリは、ノモグラムが生成される個々の患者ごとに、用量、体重、測定濃度、または本明細書で論じられる任意の他のパラメータを格納し得る。1またはそれを超える一致するパラメータを有する別の患者がノモグラムを必要とする場合、ノモグラムプロセスを再計算するのではなく、以前に生成されたノモグラム結果を調べることができ、したがって時間および計算効率を節約する。
【0092】
方法200に従って構築されたノモグラムと;ステップ202においてデータを受信するためにプロセッサの入力モジュールに動作可能に結合された複数の入力ボックスと;測定された薬物濃度、特定の患者に対する有効薬物半減期を示すノモグラム上の複数の矢印、線、またはマーカー(例えば、円、点、星、記号)と;特定の患者の目標値到達時間および投薬量(または投薬量の範囲にわたる特定の患者の目標値までの複数の時間)と;目標値到達時間(または複数の目標値到達時間)を表示するための出力とを含むグラフィカルユーザインターフェースにおいてノモグラムを実装することができる。インターフェースは、後述するように、TTFADAプロットの確率プロットを生成するためのボタンまたはオプションを含み得る。
【0093】
コンピュータプロセッサまたは医師は、方法200を実行し、さらに目標値到達時間(または複数の目標値到達時間)を特定の患者の薬物の投薬量(または複数の利用可能な投薬量の各々)の新しい用量間隔に設定することによって、特定の患者の薬物の用量間隔を決定する方法を実施し得る。新しい投薬間隔がケア投薬間隔の標準よりも小さい場合、方法は、例えば、2016年4月8日に出願され、米国特許出願公開第2016/0300037号として公開された「SYSTEMS AND METHODS FOR PATIENT-SPECIFIC DOSING」と題された米国特許出願第15/094,379号(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるシステムまたは方法を使用して、ベイジアン個別化投薬を使用する推奨を患者に提供することをさらに含んでもよい。
【0094】
医師は、方法200に従って決定された新しい投薬レジメンを使用して薬物を投与することによって処置方法を実施し得る。例えば、新しい投薬レジメンは、複数の利用可能な用量から選択される新しい用量を含むか、または投薬レジメンは、目標値到達時間から選択される投薬間隔を含む。処置方法は、上記の目標値到達時間(複数可)に基づく新しい用量間隔を使用して薬物を投与することを含む。例えば、この方法は、炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)、強直性脊椎炎(AS)、乾癬(PsO)、乾癬性関節炎(PsA)、多発性硬化症(MS)、アトピー性皮膚炎、湿疹、喘息、または任意の他の適切な症状もしくは疾患のいずれか1つを処置することを含み得る。これらの症状の処置のために、薬物は、抗体、モノクローナル抗体、抗体コンストラクト、またはモノクローナル抗体構築物であり得る。薬物は、静脈内または皮下投与などの標準治療手順を使用して投与され得る。
【0095】
方法200はまた、患者固有の有効半減期に基づいて目標濃度を維持するために最低量の薬物または最低頻度間隔が使用されるように、特定の患者に対する薬物の用量レジメンを設定することによって薬物用量を割り当てる方法として適用され得る。
【0096】
図3A~
図3Cは、
図2の方法200によって生成されるノモグラムの例であるノモグラムを示す。
図1Aおよび
図1Bのノモグラムと同様に、
図3A~
図3Cは、インフリキシマブの投薬のためのノモグラムである。各ノモグラムのパラメータは、5μg/mLの目標濃度、8週間ごとの5mg/kgの以前の投薬量、および5mg/kgの新しい投薬量である。これらの例示的なノモグラムは、6週目の維持開始後の56日目(すなわち、処置の14週目、5mg/kgの前の用量の8週間後)について構築される。
図3A~
図3Cの各ノモグラムは、異なる患者体重に対応する。
図3Aは、50kgの患者のノモグラムを示し、
図3Bは、70kgの患者のノモグラムを示し、
図3Cは、90kgの患者のノモグラムを示す。
【0097】
図3A~
図3Cの各ノモグラムを比較することによって、
図3A~
図3Cは、患者体重が増加するにつれて濃度対半減期曲線が上方に移動することを示しており、所与の測定濃度は、投薬量が体重当たりに投与されるために予想されるように、より重い患者においてより短い有効半減期に対応することを示唆している。
【0098】
システムおよびデバイス
図4は、本明細書に記載のプロセスのいずれかを実施するためのコンピューティングデバイスのブロック図である。これらのシステムの構成要素の各々は、1またはそれを超えるコンピューティングデバイス400上に実装され得る。特定の態様では、これらのシステムの複数の構成要素は、単一のコンピューティングデバイス400内に含まれてもよい。特定の実施態様において、構成要素および記憶装置は、いくつかのコンピューティングデバイス400にわたって実装され得る。
【0099】
コンピューティングデバイス400は、少なくとも1つの通信インターフェースユニットと、入出力コントローラ410と、システムメモリと、1またはそれを超えるデータ記憶デバイスとを含む。システムメモリは、少なくとも1つのランダムアクセスメモリ(RAM402)および少なくとも1つの読み出し専用メモリ(ROM404)を含む。これらの要素はすべて、コンピューティングデバイス400の動作を容易にするために中央処理装置(CPU406)と通信する。コンピューティングデバイス400は、多くの異なる方法で構成され得る。例えば、コンピューティングデバイス400は、従来のスタンドアロンコンピュータであってもよく、あるいは、コンピューティングデバイス400の機能は、複数のコンピュータシステムおよびアーキテクチャにわたって分散されてもよい。
図4において、コンピューティングデバイス400は、ネットワークまたはローカルネットワークを介して、他のサーバまたはシステムにリンクされる。
【0100】
コンピューティングデバイス400は、分散アーキテクチャで構成することができ、データベースおよびプロセッサは、別々のユニットまたは場所に収容される。いくつかのユニットは、一次処理機能を実施し、少なくとも汎用コントローラまたはプロセッサおよびシステムメモリを含む。分散アーキテクチャの実施態様において、これらのユニットの各々は、通信インターフェースユニット408を介して、他のサーバ、クライアントまたはユーザコンピュータおよび他の関連デバイスとの主要な通信リンクとして機能する通信ハブまたはポート(図示せず)に取り付けられてもよい。通信ハブまたはポートは、それ自体最小限の処理能力を有し得、主に通信ルータとして機能することができる。イーサネット(登録商標)、SAP、SASTM、ATP、BLUETOOTH(商標)、GSM(登録商標)およびTCP/IPを含むがこれらに限定されない様々な通信プロトコルがシステムの一部であり得る。
【0101】
CPU406は、CPU406からワークロードをオフロードするための、1またはそれを超える従来のマイクロプロセッサなどのプロセッサと、数値演算コプロセッサなどの1またはそれを超える補助コプロセッサとを含む。CPU406は、通信インターフェースユニット408および入出力コントローラ410と通信し、CPU406は、これらを介して、他のサーバ、ユーザ端末またはデバイスなどの他のデバイスと通信する。通信インターフェースユニット408および入出力コントローラ410は、例えば、他のプロセッサ、サーバまたはクライアント端末と同時に通信するための複数の通信チャネルを含み得る。
【0102】
CPU406はまた、データ記憶デバイスと通信する。データ記憶デバイスは、磁気、光学、または半導体メモリの適切な組み合わせを含むことができ、例えば、RAM402、ROM404、フラッシュドライブ、コンパクトディスクまたはハードディスクまたはドライブなどの光ディスクを含み得る。CPU406およびデータ記憶デバイスはそれぞれ、例えば、完全に単一のコンピュータまたは他のコンピューティングデバイス内に配置されてもよく、またはUSBポート、シリアルポートケーブル、同軸ケーブル、イーサネット(登録商標)ケーブル、電話回線、無線周波数トランシーバ、または他の同様の無線もしくは有線媒体、またはこれらの組み合わせなどの通信媒体によって互いに接続されてもよい。例えば、CPU406は、通信インターフェースユニット408を介してデータ記憶デバイスに接続されてもよい。CPU406は、1またはそれを超える特定の処理機能を実施するように構成され得る。
【0103】
データ記憶デバイスは、例えば、(i)コンピューティングデバイス400のためのオペレーティングシステム412;(ii)本明細書に記載のシステムおよび方法に従って、特にCPU406に関して詳細に記載されたプロセスに従ってCPU406に指示するように適合された1またはそれを超えるアプリケーション414(例えば、コンピュータプログラムコードまたはコンピュータプログラム製品);または(iii)プログラムに必要な情報を格納するために利用され得る情報を格納するように適合されたデータベース416を格納し得る。
【0104】
オペレーティングシステム412およびアプリケーション414は、例えば、圧縮された、未コンパイルの、および暗号化された形式で格納されてもよく、コンピュータプログラムコードを含んでもよい。プログラムの命令は、ROM404またはRAM402などのデータ記憶デバイス以外のコンピュータ可読媒体からプロセッサのメインメモリに読み込まれてもよい。プログラム内の命令のシーケンスの実行は、CPU406に本明細書に記載のプロセスステップを実施させるが、本発明のプロセスを実装するためのソフトウェア命令の代わりに、またはそれと組み合わせて、ハードワイヤード回路を使用することができる。したがって、記載されたシステムおよび方法は、ハードウェアとソフトウェアとの特定の組み合わせに限定されない。
【0105】
本明細書に記載の1またはそれを超える機能を実施するために、適切なコンピュータプログラムコードが提供され得る。プログラムはまた、プロセッサが入出力コントローラ410を介してコンピュータ周辺機器(例えば、ビデオディスプレイ、キーボード、コンピュータマウスなどである。)とインターフェースすることを可能にする、オペレーティングシステム412、データベース管理システム、および「デバイスドライバ」などのプログラム要素を含んでもよい。
【0106】
本明細書で使用される場合、「コンピュータ可読媒体」という用語は、実行のためにコンピューティングデバイス400のプロセッサ(または本明細書に記載のデバイスの任意の他のプロセッサ)に命令を提供するまたは提供に関与する任意の非一時的媒体を指す。そのような媒体は、不揮発性媒体および揮発性媒体を含むがこれらに限定されない多くの形態を取り得る。不揮発性媒体は、例えば、光学、磁気、もしくは光磁気ディスク、またはフラッシュメモリなどの集積回路メモリを含む。揮発性媒体は、典型的にはメインメモリを構成するダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)を含む。コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVD、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、PROM、EPROMもしくはEEPROM(電子的に消去可能なプログラム可能読み出し専用メモリ)、FLASH-EEPROM、任意の他のメモリチップもしくはカートリッジ、またはコンピュータが読み取ることができる任意の他の非一時的媒体を含む。
【0107】
様々な形態のコンピュータ可読媒体は、実行のためにCPU406(または本明細書に記載のデバイスの任意の他のプロセッサ)に1またはそれを超える命令の1またはそれを超えるシーケンスを搬送することに関与し得る。例えば、命令は、最初にリモートコンピュータ(図示せず)の磁気ディスク上に担持されてもよい。リモートコンピュータは、命令をその動的メモリにロードし、イーサネット(登録商標)接続、ケーブル回線、またはモデムを使用する電話回線を介して命令を送信することができる。コンピューティングデバイス200に対してローカルな通信デバイス(例えば、サーバ)は、それぞれの通信回線上でデータを受信し、そのデータをプロセッサ用のシステムバス上に配置することができる。システムバスは、データをメインメモリに運び、そこからプロセッサが命令を取り出して実行する。メインメモリによって受信された命令は必要に応じて、プロセッサによる実行の前または後のいずれかにメモリに格納されてもよい。さらに、命令は、様々なタイプの情報を搬送する無線通信またはデータストリームの例示的な形態である電気信号、電磁信号または光信号として通信ポートを介して受信され得る。
【0108】
図5は、本明細書に記載のノモグラムを計算するために使用することができる薬物動態(PK)モデル500A/500Bの一例を示す。500Aは、速度定数k、k
12、およびk
21を有するモデルを示し、500Bは、単純化されたパラメータQ(コンパートメント間クリアランス)およびCL(クリアランス)を有するモデルを示す。この例示的PKモデルは、中央コンパートメント504および末梢コンパートメント506を含む2コンパートメントモデルである。中央コンパートメント504は、一般に、生物内の血液循環を表すことができ、比較的急速な分布に対応する。例えば、中央コンパートメントは、肝臓または腎臓などの十分に発達した血液供給を有する、または循環系に制限され得る、生物内の器官および系を表し得る。対照的に、末梢コンパートメント506は、筋肉、除脂肪組織、および脂肪などの血流がより低い臓器またはシステムを表すことができ、または血液とは対照的に一般的な組織を指すことができる。
【0109】
PKモデル500A/500Bにおける2つのコンパートメントに加えて、
図5はまた、コンパートメントに出入りする入力流および出力流を示す。特に、注入(図示せず)は、投与部位を介して体内に入り、中央コンパートメント504に入る薬物の流量に対応する。クリアランス(CL)510は、中央コンパートメント504のクリアランスに対応し、代謝または排泄プロセスなどを介して系から洗い流される薬物の量を表し得る。クリアランスCLは、出口速度定数パラメータkを導出するために使用され、k=CL/V
1である。コンパートメント間クリアランス(Q)508は、中央コンパートメント504と末梢コンパートメント506との間の分布クリアランスに対応し、血流と、より低い血流を有する臓器および他の身体成分を含む組織との間の薬物の分布を広く表す。コンパートメント間クリアランスQは、コンパートメント1と2との間の各方向の流量を表す速度パラメータk
12およびk
21を導出するために使用される。パラメータV
1は、中央コンパートメント504の分布容積に対応し、パラメータV2は、末梢コンパートメント506の分布容積に対応する。式3および式4は、2コンパートメントPKモデルの中央および末梢コンパートメントそれぞれにおける薬物動態学的関係を表し、[A]は各コンパートメント1および2における薬物濃度である。
【数3】
【数4】
【0110】
本明細書で使用され得る薬物動態モデルおよび薬力学モデルはまた、2016年4月8日に出願され、米国特許出願公開第2016/0300037号として公開された、「SYSTEMS AND METHODS FOR PATIENT-SPECIFIC DOSING」と題する、米国特許出願第15/094,379号;2019年4月23日に出願され、米国特許出願公開第2019/0326002号として公開された、「SYSTEMS AND METHODS FOR MODIFYING ADAPTIVE DOSING REGIMENS」と題する、米国特許出願第16/391,950号;および米国特許出願第16/813,366号、発明の名称[2020年3月9日]、公開番号[US2020/0321096号]、(その各々が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0111】
図6は、本明細書に開示されたシステムおよび方法を実装するためのコンピュータ化されたシステム600のブロック図である。特に、システム600は、特定の患者のための適切な薬剤処置計画を予測、提案、および評価するために、薬剤特異的数学モデルおよび処置に対する観察された患者特異的応答を使用する。システム600は、サーバ604、臨床ポータル614、薬局ポータル624、および電子データベース106を含み、これらはすべてネットワーク602を介して接続されている。サーバ604はプロセッサ605を含み、臨床ポータル614はプロセッサ610およびユーザインターフェース612を含み、薬局ポータル624はプロセッサ620およびユーザインターフェース622を含む。本明細書で使用される場合、「プロセッサ」または「コンピューティングデバイス」という用語は、1もしくはそれを超えるコンピュータ、マイクロプロセッサ、論理デバイス、サーバ、または本明細書に記載の1もしくはそれを超えるコンピュータ化された技術を実行するようにハードウェア、ファームウェア、およびソフトウェアで構成された他のデバイスを指す。プロセッサおよび処理デバイスはまた、現在処理されている入力、出力、およびデータを記憶するための1またはそれを超えるメモリデバイスを含み得る。本明細書に記載のプロセッサおよびサーバのいずれかを実装するために使用することができる例示的なコンピューティングデバイス400を、
図4を参照して以下に詳細に説明する。本明細書で使用される場合、「ユーザインターフェース」は、1もしくはそれを超える入力デバイス(例えば、キーパッド、タッチスクリーン、トラックボール、音声認識システムなど)および/または1もしくはそれを超える出力装置(例えば、視覚ディスプレイ、スピーカ、触覚ディスプレイ、印刷デバイスなど)の任意の適切な組み合わせを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「ポータル」は、本明細書に記載の1またはそれを超えるコンピュータ化された技術を実行するために、ハードウェア、ファームウェア、およびソフトウェアで構成され1またはそれを超えるデバイスの任意の適切な組み合わせを含むが、これらに限定されない。ポータルを実装することができるユーザデバイスの例には、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、およびモバイル装置(例えば、スマートフォン、ブラックベリー、PDA、タブレットコンピュータなど)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、ポータルは、ユーザデバイスにインストールされたウェブブラウザまたはモバイルアプリケーションを介して実装されてもよい。図面の複雑化を避けるために、
図6には、1つのサーバ、1つの臨床ポータル614、および1つの薬局ポータル624のみが示されている。システム600は、複数のサーバならびに複数の臨床ポータルおよび薬局ポータルをサポートすることができる。
【0112】
図6では、患者616は、臨床ポータル614(例えば、APOLLO(商標)統合EMRシステムなどの電子医療記録(EMR)システム)にアクセスできる医療専門家618によって検査される。患者は、既知の進行を有する疾患に罹患している可能性があり、医療専門家618に相談する。医療専門家618は、患者616から測定を行い、これらの測定値を臨床ポータル614に記録する。例えば、医療専門家618は、患者616の血液のサンプルを採取し、血液サンプル中のバイオマーカーの濃度を測定してもよい。一般に、医療専門家618は、患者の血液、尿、唾液、または患者からサンプリングされた任意の他の液体もしくは組織からの濃度測定などの検査結果を含む、患者616の任意の適切な測定を行い得る。測定は、患者616によって示される任意の症候を含む、患者616の医療専門家618によって行われた観察に対応し得る。例えば、医療専門家618は、患者の検査を実施し、性別、年齢、体重、人種、病期、疾患状態、以前の治療、他の付随疾患、ならびに/または他の人口統計学的および/もしくは検査室検査結果情報などの患者特有の要因を収集または測定し得る。より具体的には、これは、薬物処置計画に対する患者応答を予測するために使用される数学的モデル内の患者因子共変量として反映される患者特性を識別することを含む。例えば、典型的な患者応答を体重および性別共変量の関数として記述するようにモデルが構築される場合、患者体重および性別特性が特定される。応答を予測することが示され、したがって、数学的モデルにおいて患者因子共変量として反映される任意の他の特性が特定され得る。例として、そのような患者因子共変量は、体重、性別、人種、検査結果、病期ならびに他の客観的および主観的情報を含み得る。あるいは、データは、臨床ポータル614とシステム600との間で自動的に送信される。例えば、臨床ポータル614内のEMRに見られる測定濃度データ(または以前の投薬データ、患者の特徴、または推奨投薬量)は、ノモグラムを構築するためにシステム600に送信される。
【0113】
患者の測定データに基づいて、医療専門家618は、患者の疾患状態の評価を行うことができ、患者616を処置するために患者616に投与するのに適した薬物を特定することができる。次いで、臨床ポータル614は、ネットワーク602を介してサーバ604に患者の測定値、(医療専門家618によって決定された)患者の疾患状態、および薬物の識別子を送信することができ、サーバは受信したデータを使用してモデルデータベース606から1またはそれを超える適切な計算モデルを選択する。適切な計算モデルは、薬物の投与に対する患者応答を予測することができると判定されたものである。1またはそれを超える選択された計算モデルは、患者に投与するための薬物の推奨された計画された投与量のセットを決定するために使用され、推奨は、医療専門家618による閲覧のためにネットワーク602を介して臨床ポータル614に送り返される。
【0114】
あるいは、医療専門家618は、患者の疾患状態を評価することも薬物を識別することもできず、これらのステップのいずれかまたは両方がサーバ604によって実施されてもよい。この場合、サーバ604は、患者の測定データを受信し、患者の測定データを患者データベース606a内の他の患者のデータと相関させる。次いで、サーバ604は、患者616と同様の症候またはデータを示した他の患者を識別し、他の患者の病状、使用された薬物、および転帰を決定することができる。他の患者からのデータに基づいて、サーバ604は、最も好ましい結果をもたらした最も一般的な疾患状態および/または使用された薬物を識別し、医療専門家618が考慮するためにこれらの結果を臨床ポータル614に提供し得る。
【0115】
図6に示すように、データベース606は、患者データベース606aと、疾患データベース606bと、処置計画データベース606cと、モデルデータベース606dとを含む4つのデータベースの組を含む。これらのデータベースは、患者およびそのデータ、疾患、薬物、投与スケジュール、および計算モデルに関するそれぞれのデータを格納する。特に、患者データベース606aは、医療専門家618によって行われた測定値または観察された症候を格納する。疾患データベース606bは、疾患に感染した患者がしばしば呈する様々な疾患および起こり得る症候に関するデータを格納する。処置計画データベース606cは、患者のセットに対する薬物および投与スケジュールを含む可能な処置計画に関するデータを格納する。患者のセットは、例えば、体重、身長、年齢、性別、および人種などの異なる特性を有する集団を含み得る。モデルデータベース606dは、身体に対するPK、PD、またはPKおよびPDの両方の変化を記述するために使用され得る計算モデルのセットに関するデータを格納する。PK/PDモデルの一例を
図5に関連して記載する。
【0116】
任意の適切な数学的モデルを、例えばコンパイルされたライブラリモジュールの形態などで、モデルデータベース606dに格納してもよい。特に、適切な数学モデルは、特定の医薬品についての投薬レジメンと観察された患者曝露および/または観察された患者応答(まとめて「応答」)との間の関係を記述する数学関数(または関数のセット)である。したがって、数学的モデルは、患者の集団に対する応答プロファイルを記述する。一般に、数学的モデルの開発は、当業者によって理解されるように、観察された臨床データを最良に「嵌合」または記述する曲線を定義する数学的関数または方程式を開発することを含む。典型的なモデルはまた、応答に対する特定の患者特性の予想される影響を記述し、患者特性だけでは説明できない説明できない変動の量を定量化する。そのようなモデルでは、患者特性は、数学的モデル内の患者因子共変量として反映される。したがって、数学的モデルは、典型的には、基礎となる臨床データおよび患者集団に見られる関連する変動性を記述する数学的関数である。これらの数学的関数は、「平均」または典型的な患者からの個々の患者の変動を記述する用語を含み、モデルが所与の用量についての様々な結果を記述または予測することを可能にし、モデルを数学的関数だけでなく統計的関数にするが、モデルおよび関数は、本明細書では「数学的」モデルおよび関数として包括的かつ非限定的に参照される。
【0117】
多くの適切な数学モデルが既に存在し、製剤開発などの目的に使用されていることが理解されよう。患者の集団に対する応答プロファイルを記述し、患者因子共変量を説明する適切な数学的モデルの例としては、PKモデル、PDモデル、ハイブリッドPK/PDモデルおよび曝露/応答モデルが挙げられる。そのような数学的モデルは、典型的には、医薬品製造業者、査読文献、およびFDAまたは他の規制機関から公開されるか、または他の方法で得ることができる。あるいは、適切な数学モデルは、独自の研究によって作成されてもよい。
【0118】
多くの場合、医療専門家618は、医療センターのメンバーまたは従業員であってもよい。同じ患者616は、様々な役割で同じ医療センターの複数のメンバーと会ってもよい。この場合、臨床ポータル614は、複数のユーザデバイス上で動作するように構成され得る。医療センターは、特定の患者についての独自の記録を有し得る。いくつかの実施態様において、本開示は、本明細書に記載の計算モデルと医療センターの記録との間のインターフェースを提供する。例えば、医師または看護師などの任意の医療専門家618は、認証情報(ユーザ名およびパスワードなど)を入力するか、またはユーザインターフェース612を介して従業員バッジをスキャンして、臨床ポータル614によって提供されるシステムにログインする必要があり得る。ログインすると、各医療専門家618は、専門家がアクセスを許可される対応する患者記録のセットを有し得る。
【0119】
いくつかの実施態様において、患者616は、患者616と相互作用するための患者固有のページまたは領域を有することができる臨床ポータル614と相互作用する。例えば、臨床ポータル614は、患者の処置スケジュールを監視し、予約およびリマインダを患者616に送信するように構成されてもよい。さらに、(スマートモバイルデバイスまたはセンサなどの)1またはそれを超えるデバイスを使用して、患者の進行中の生理学的データを監視し、生理学的データを臨床ポータル614に、またはネットワーク602を介してサーバ604に直接報告し得る。次いで、生理学的データを期待値と比較し、期待値からの逸脱にフラグを立てる。このようにして患者のデータを継続的に監視することにより、薬物に対する患者応答の予想からの逸脱の可能な早期検出が可能になり、早期介入または代替治療の必要性を示すことができる。
【0120】
本明細書で説明するように、計算モデルに提供される患者616からの測定値は、医療専門家618から、患者616を監視するデバイスから直接、またはその両方の組み合わせから決定され得る。計算モデルは、疾患および薬物の時間進行、ならびに身体に対するそれらの影響を予測するので、これらの測定値を使用してモデルパラメータを更新することができ、その結果、(モデルによって提供される)処置計画が精緻化され、患者の特定のデータを考慮して補正される。
【0121】
いくつかの実施態様において、計算モデルを実行するために必要な患者の測定データから患者の個人情報を分離することが望ましい。特に、患者の個人情報は、保護された健康情報(PHI)であってもよく、個人のPHIへのアクセスは、認可されたユーザに限定されるべきである。患者のPHIを保護するための1つの方法は、患者がサーバ604に登録されるときに各患者を匿名化コードに割り当てることである。コードは、臨床ポータル614を介して医療専門家618によって手動で入力されてもよく、または自動化されているが安全なプロセス(例えば、安全なデータボルト)を使用して入力されてもよい。サーバ604は、匿名化されたコードに従って各患者を識別することしかできず、患者のPHIにアクセスできない場合がある。特に、臨床ポータル614およびサーバ604は、患者616を識別することなく、または患者のPHIを明らかにすることなく、患者616に関するデータを交換することができる。
【0122】
コードの生成または選択は、クレジットカードシステムに対して行われるのと同様の方法で実施されてもよい。例えば、システムへのすべてのアクセスは、アプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)鍵によって保護され得る。さらに、医療専門家618が医療センターの一部である場合、臨床ポータル614を介した医療センターのネットワーク602への接続は、HIPAAに準拠して強化されたセキュリティシステムを有し得る。一例として、単一の管理データベースは、あるチームのメンバー(例えば、例えば医療専門家の1つのセット)が別のチームに関連付けられた記録を閲覧することを禁止されることを保証する方法でアクセスを定義することができる。これを実装するために、各エンドユーザアプリケーションは、データベースのどの部分にアクセスすることができるかを指定する単一のAPIキーを発行することができる。
【0123】
いくつかの実施態様において、ポータルとの複数のレベルの臨床医相互作用が構成される。例えば、一部の医療専門家は、臨床ポータル614にログインすると、患者のデータを閲覧することのみを可能にするアクセスを有し得る。別のレベルのアクセスは、医療専門家618が患者のデータを閲覧し、患者616に関する測定および観察データを入力することを可能にし得る。第3レベルのアクセスは、医療専門家618が患者のデータを閲覧および更新すること、ならびに患者616のための処置を処方すること、またはそうでなければ患者の処置計画または投薬スケジュールを更新することを可能にし得る。
【0124】
異なるタイプのユーザに対して異なるレベルのアクセスが設定されてもよい。例えば、臨床ポータル614のシステム管理者であるユーザは、他のユーザにシステムへのアクセスを許可または取り消すことができるが、患者記録にはアクセスできない。別の例として、処方者は、特定の患者の処置計画を修正し、患者記録への読み取りおよび書き込みアクセスを有することを許可される。レビュアーは、患者の記録への読み取り専用アクセスのみを有することができ、患者の処置計画のみを閲覧することができる。データマネージャは、患者記録への読み取りおよび書き込みアクセスを有し得るが、患者の処置計画を変更し得ない。
【0125】
いくつかの実施態様において、臨床ポータル614は、ネットワーク602を介して薬局ポータル624と通信するように構成される。特に、投薬レジメンが患者616に投与されるように選択された後、医療専門家618は、選択された投薬レジメンを薬局ポータル624に送信するために、選択された投薬レジメンの指示を臨床ポータル614に提供し得る。投薬レジメンを受け取ると、薬局ポータル624は、投薬レジメンおよび医療専門家618の識別子をユーザインターフェース上に表示し得て、ユーザインターフェース622は、注文を遂行するために薬剤師628と対話する。
【0126】
いくつかの実施態様において、薬物量の推奨またはカスタム注文が、ネットワーク602にアクセスできる薬物製造業者(図示せず)に提供される。薬物の製造業者は、「典型的な」患者の推奨投与量に対応し得る設定量または体積でのみ特定の薬物を製造し得る。これは、高価な薬物に特に当てはまる可能性がある。しかしながら、本明細書中に記載されるように、特定の患者に対する薬物の最適な量または投薬スケジュールは、異なる患者に対して異なり得る。さらに、一部の薬物は、有効期限を有するか、または薬物が棚に置かれるにつれて有効性が経時的に低下する。したがって、推奨される投薬レジメンに従って最適量の薬物を投与することが望ましい場合、少なくとも最適量が製造業者によって製造される設定量の整数倍に対応しない可能性があるため、これは潜在的に薬物浪費をもたらす可能性がある。
【0127】
この問題を媒介する1つの方法は、推奨される投薬レジメンを反映した情報を医薬品製造業者に事前に提供することであり、その結果、医薬品製造業者は、レジメンに従って所望の時間に特定の医薬品のカスタムサイズの注文を製造することができる。このようにして、本開示は、可能な限り投与時間に近い時間で所望の量の薬物を新たに製造することを可能にする。
【0128】
さらに、臨床第IV相薬物治験は、薬物の高価なコストのために制限されることが多い。本開示は、薬物に対する対象の特異的応答に関するデータをモデルにフィードバックして、対象の特異的データを適切に捕捉する方法を提供する。本開示は、決定論的な推奨投与スケジュールを演算する自動化された方法を提供する。投与スケジュールを、安全な方法(例えば、患者のPHIを明らかにせずに)で経済的かつ迅速に医薬品製造業者に供給することができ、次いで、医薬品製造業者はカスタマイズされた注文を製造し得て、それによってコストを節約し、医薬品の無駄を減らし得る。さらに、薬物の製造業者は、薬物の試験された有効性に関心がある場合があり、様々な投薬レジメンに対応するために、製造される薬物の量および/または製造スケジュールを調整することができ得る場合がある。
【0129】
さらに、薬物製造業者のタイムラインが特定の要因によって制限される限り、本開示は、薬物製造業者の制限内で推奨される投薬レジメンを提供することができる。例えば、技術的および/または経済的な理由から、薬物製造業者は、設定された量でしか薬物を製造することができない場合がある。投薬レジメンはしばしば2つのパラメータ(すなわち、薬物の量および薬物を投与する時間)を含むので、システム100によって提供される推奨投薬レジメンは、それに応じて、薬物製造業者の限界に適合するように変更され得る。
【0130】
図6に示すように、サーバ604は、臨床ポータル614から離れたデバイス(またはデバイスのセット)である。臨床ポータル614を収容するデバイスの計算能力に応じて、臨床ポータル614は、単に医療専門家618とサーバ604との間で主にデータを転送するインターフェースであってもよい。あるいは、臨床ポータル614は、患者の症候および測定データの受信、データベース606のいずれかへのアクセス、1またはそれを超える計算モデルの実行、および患者の特定の症候および測定データに基づく投与スケジュールの推奨の提供を含むがこれらに限定されない、サーバ604によって実施されるように記載されたステップのいずれかまたはすべてをローカルで実施するように構成されてもよい。さらに、
図6は、患者データベース606a、疾患データベース606b、処置計画データベース606c、およびモデルデータベース606dを、サーバ604、臨床ポータル614、または薬局ポータル624とは別個のエンティティとして示しているが、当業者は、データベース606のいずれかまたはすべてが、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載のデバイスまたはポータルのいずれかにローカルに格納され得ることを理解するであろう。
【0131】
追加の実施態様
有効半減期は、投薬レジメンの目標到達時間を決定するための有用な予測因子として前述に記載されているが、処置に対する患者応答の他の態様を予測するためにも有用である。各患者がクリアランスおよび有効半減期を有する患者の集団に対する患者応答のデータセットを使用して、ロジスティック回帰をデータセットに適用して、前述のノモグラムと同様に、有効半減期の範囲にわたって関心のある選択された応答をモデル化することができる。ロジスティック回帰(またはロジット)モデルは、一般に、合格/不合格、勝/敗、生存/死亡または健康/病気などの特定のクラスまたはイベントが存在する確率をモデル化するために使用される。これは、患者が特定の臨床転帰を有する可能性が高いかどうかを判定するなど、いくつかのクラスのイベントをモデル化するために拡張することができる。所与のクラスの可能な各結果には、0~1の確率が割り当てられ、合計は1である。選択された患者応答のモデル化の出力は、有効半減期(例えば、x軸上に)の範囲にわたる選択された応答(例えば、y軸上)の各結果の確率を示す1またはそれを超える確率プロットである。有効半減期の範囲は、データセットの患者について(例えば、データセットに含まれる)知られていてもよく、またはデータセット内の各患者の有効半減期は、観察された薬物動態データ(例えば、式1および2式を使用することによって)に基づいて推定されてもよい。関連性があり(例えば、IBD患者に対して)、このようにモデル化され得る患者応答の例には、クローン病活動指数(CDAI)、粘膜治癒、便中カルプロテクチン(FCP)(正規化されたまたは正規化されていないいずれか)、C反応性タンパク質(CRP)濃度、抗薬物抗体(ADA)の存在または発生、ステロイド使用、Mayoスコア、部分Mayoスコア、Harvey-Bradshaw指数、第VIII因子タンパク質の存在または濃度、および他の適切な患者応答またはパラメータが含まれるが、これらに限定されない。複合スコアは、個々の患者に対するこれらの応答の確率のうちの2またはそれを超える組み合わせ(例えば、重み付きまたは等しい組み合わせ)に基づいて生成され得ることも理解されるべきである。
【0132】
確率プロット(複数可)を、前述のノモグラムに加えて構築してもよい。例えば、システムまたはユーザインターフェースは、投薬ノモグラム(例えば、方法200によって、)を生成する前、生成中または生成後に、ユーザが、ノモグラムを構築するために使用される有効半減期または有効半減期範囲に基づいて1またはそれを超える確率プロット、表、または値出力を生成するオプションを選択することを可能にすることができる。1またはそれを超える確率プロットは、システムまたはインターフェースによって自動的に生成され得る。測定された濃度に基づいて特定の患者について推定された有効半減期を使用して、個々の患者について選択された応答の確率をプロットから読み取るか、または単に値として出力することができる。あるいは、投薬ノモグラムなしで1またはそれを超える確率プロット(または表)を生成してもよい。確率プロットは、2つのy軸で構成され得て、一方は選択された応答の確率を示し、他方は測定された薬物濃度を示し、測定された薬物濃度と有効半減期との間の相関に基づいて曲線が生成され、ユーザは所与の測定された薬物濃度(および対応する有効半減期)のプロットから確率を読み取ることができる。
【0133】
図7A~
図7Gは、推定された有効半減期に対する関心のある様々な患者応答の確率プロットの例を示す。これらの例示的な確率プロットは、220人の患者の集団に対する44の異なる応答を含むデータセットに基づいている。選択された応答(例えば、有効半減期によって最もよく予測されるもの)について、応答の確率対有効半減期を生成した。有効半減期がここで使用される唯一の予測因子であるが、限定するものではないが、ベースライン年齢、ベースライン体重(BWT)、用量、クローン病罹患期間(CDDUR)および性別などの他の予測因子を使用して、信頼区間(任意のステップとして理解されるべきである)と共に様々な応答の確率プロットを生成することができることを理解されたい。様々な予測因子を使用するすべての可能なモデルは、例えば、赤池情報量基準(AIC)を使用することによってランク付けされ得て、予測因子を含む最も慎重なモデル(例えば、最も低いAIC)が選択され得る。
【0134】
図7Aは、推定有効半減期の範囲に対して、30週目のクローン病活動指数(CDAI)がベースラインよりも70ポイント低い確率を示す。確率は、30週目のCDAIがベースラインよりも70ポイント小さい場合であり、そうでない場合、確率は0である。データセットは、この応答のための180の完全な症例を含んでいた。80%信頼区間は、メジアン確率を表す円を境界付ける上下の線によって示されている。この応答の最良のモデルは、予測因子推定有効半減期のみを含んでいた。
【0135】
図7Bは、30週目のCDAIがベースラインよりも150ポイント低い確率を示す。確率は、30週目のCDAIがベースラインよりも150ポイント小さい場合であり、そうでない場合、それは0である。データセットは、この応答のための180の完全な症例を含んでいた。80%信頼区間は、確率を表す円を境界付ける上下の線によって示されている。この応答の最良のモデルは、予測因子推定有効半減期およびベースライン年齢のみを含んでいた。この例示的プロットでは、ベースライン年齢を35に固定した。
【0136】
図7Cは、最終的な結腸鏡検査で明らかな粘膜治癒の確率を示す。この確率は、粘膜治癒が最終的な大腸内視鏡検査で明らかであった場合の確率であり、そうでない場合、確率は0に等しい。データセットは、この応答のための133の完全な症例を含んでいた。80%信頼区間は、確率を表す円を境界付ける上下の線によって示されている。この応答の最良のモデルは、予測因子推定有効半減期のみを含んでいた。
【0137】
図7Dは、30週目における正常範囲(10mg/L未満)のC反応性タンパク質(CRP)濃度の確率を示す。確率は、30週目にC反応性タンパク質(CRP)濃度が正常範囲内(10mg/L未満)である場合の確率であり、そうでない場合、確率は0に等しい。データセットは、この応答のための180の完全な症例を含んでいた。80%信頼区間は、確率を表す円を境界付ける上下の線によって示されている。この応答の最良のモデルは、予測因子推定有効半減期、ベースライン年齢、BWTおよびCDDURのみを含んでいた。この例のプロットでは、BWTを65kgに固定し、用量を35に固定し、CDDURを5年に固定した。
【0138】
図7Eは、54週目における正常範囲(10mg/L未満)におけるCRP濃度の確率を示す。確率は、54週目にCRP濃度が正常範囲(10mg/L未満)である場合の確率であり、そうでない場合、確率は0に等しい。データセットは、この応答のための170の完全な症例を含んでいた。80%信頼区間は、確率を表す円を境界付ける上下の線によって示されている。この応答の最良のモデルは、予測因子推定有効半減期、ベースライン年齢、用量およびCDDURのみを含んでいた。この例のプロットでは、ベースライン年齢を35に固定し、用量を325に固定し、CDDURを5年に固定した。
【0139】
図7Fは、抗薬物抗体(ADA)が発生する確率を示す。ADAが開発された場合の確率は1であり、そうでない場合、確率は0に等しい。80%信頼区間は、確率を表す円を境界付ける上下の線によって示されている。この応答の最良のモデルは、予測因子推定有効半減期、ベースライン年齢およびBWTのみを含んでいた。この例示的なプロットでは、ベースライン年齢を35に固定し、BWTを65kgに固定した。
【0140】
図7Gは、54週目におけるステロイド使用の確率を示す。確率は、ステロイドが54週目に使用された場合の確率であり(試験薬の前のステロイド使用を無視)、そうでない場合、確率は0に等しい。80%信頼区間は、確率を表す円を境界付ける上下の線によって示されている。この応答の最良のモデルは、予測因子推定有効半減期のみを含んでいた。
【0141】
患者応答を推定するための有効半減期アプローチの別の使用法は、患者への薬物の投与後の抗薬物抗体(TTFADA)の最初の出現までの時間を評価するための生存時間分析である。ADAは、投与された薬物に対する身体の免疫応答によって産生され、ADAは薬物処置の効果を不活性化することができ、場合によっては患者に有害作用を誘発する。したがって、臨床医が、患者がADAを発症するリスクだけでなく、ADAの発症がいつ始まり得るかの推定値も理解することは有用である。確率プロットについて上述したのと同様に、母集団データおよびロジスティック回帰を使用して、TTFADAを有効半減期の範囲にわたって推定することができる(母集団の各患者について知られているか、または観察された薬物動態に基づいて推定される)。
【0142】
ADAデータは、陽性ADA力価を経験しているかまたは経験したことがない対象について、それぞれ間隔として、または右打ち切りとして記載することができる。ベースラインにADAが存在する集団の対象は、分析から除外することができる。その後消失し、その後再出現するADAを発症する人は、TTFADAまでしか評価されない場合がある。最初に、データセットは、データセット内の各予測因子のグラフィカルなノンパラメトリック評価に使用され得る。これらは、
図7A~
図7Gに関連して上述したものと同じ予測因子とすることができる。予測因子の例には、ベースライン年齢、ベースライン体重(BWT)、推定有効半減期、クローン病罹患期間(CDDUR)、用量、性別、および免疫調節因子(IMM)の存在(例えば、アザチオプリン(AZA)またはメトトレキサート(MTX))が含まれるが、これらに限定されない。連続予測因子は、ホルミシスの証拠(低用量刺激、0用量および高用量阻害によって特徴付けられる用量応答現象であって、したがってJ字形または逆U字形の用量応答をもたらす用量応答現象)を特定することができるように、下四分位、四分位範囲、および上四分位ビンに三分割化することができる。カプラン・マイヤー生存者推定値(KM)をビンによってプロットすることができる。これらのプロットのTTFADA値を構築するために、集団中の各患者から以下のパラメータを使用することができる:最後の陰性ADA結果の日、最初の陽性ADA結果の日、および最初の陽性ADA結果の前の最後の陰性ADA結果の日。
【0143】
図8A~
図8Gは、様々な予測因子に対するTTFADAのKMプロットの例を示す。これらのプロットは、各々が有効半減期を有する220人の対象についての50個の応答または予測因子に関する情報を含む臨床データセットを使用して、上記の技術に従って生成された。表4は、このデータセット内の各予測因子のビンカウントを示す。KMプロットは、各予測因子に対してTTFADAについて生成され、ビンにわたって層別化される。
図8Aは、推定された有効半減期によるTTFADA KMプロットを示す。
図8Bは、性別によるTTFADA KMプロットを示す。
図8Cは、ベースライン重量(BWT)によるTTFADA KMプロットを示す。
図8Dは、年齢によるTTFADA KMプロットを示す。
図8Eは、クローン病罹患期間(CCDUR)によるTTFADA KMプロットを示す。
図8Fは、免疫調節因子(IMM)の存在によるTTFADA KMプロットを示す。
図8Gは、用量によるTTFADA KMプロットを示す。
【0144】
【0145】
次いで、得られたデータは、完全なモデルを構築することによってパラメトリックにモデル化することができる。例えば、集団薬物動態モデリングソフトウェアを使用して、完全なモデルを構築することができる。混合効果モデリングを使用することができる。例えば、NONMEM(登録商標)または同様のソフトウェアを使用することができる。次いで、構築された完全なモデルを、例えばWaldの近似法(WAM)アルゴリズムを使用してさらに洗練して、有意な予測因子を選択することができる。統計的または臨床的に有意な予測因子について、ハザード比(相対ハザードを比較するのに有用)および関心のある時点でADAを有する確率を計算することができる。いくつかの実施態様において、予測因子の異なる組み合わせを使用する複数のモデルが出力され、必要に応じて、最終モデルを選択するために比較される。最終モデルの選択は、少なくとも部分的に、目的関数値、シュワーツのベイジアン基準(SBC)(例えば、モデリングソフトウェアから)、または近似SBC(例えば、WAMによって近似されたSBC)に基づいてもよい。
【0146】
図8A~
図8Gからのデータセットを使用して、完全なモデルを構築し、改良した。有意な予測因子(有効半減期、年齢およびIMM)についてのADAを有しない確率をある範囲の時点にわたってプロットして、
図9A~
図9Cの生存率プロットを得た。1の確率はADAが存在しないことを表し、0の確率はADAが存在することを表す。これらのプロットは、これらの予測因子の個々の値に基づいて、個々の患者のTTFADAまたは特定の時点でADAを発症するリスクを推定するために使用することができる。
図9Aは、IMMを0(IMMなし)に固定し、年齢を32に固定した、推定有効半減期ビンを有するTTFADA生存者プロットを示す。
図9Bは、IMMを0(IMMなし)に固定し、有効半減期を9.5日に固定した、年齢ビンを有するTTFADA生存者プロットを示す。
図9Cは、年齢を32に固定し、有効半減期を9.5に固定した、IMMビン(1はIMMの存在であり、0はIMMの非存在である)を用いたTTFADA生存者プロットを示す。
【0147】
有効半減期の延長は、より長いTTFADAと関連していた。加齢はTTFADAの短縮に関連していた。IMMの存在は、より長いTTFADAと関連していた。有効半減期および年齢は、介護者によって制御することができないが、IMMは外部予測因子であるので、IMMの使用はADA発達を遅らせるために有益であり得る。TTFADAの有効半減期指標はまた、ADAの生成および薬物コストを最小限に抑えるために用量調整を導くのに有用であり得る。
【0148】
TTFADAプロット(KMまたは生存者プロット)をノモグラムに含めることができる。例えば、患者の予測因子の値および投与ノモグラムを構築するために使用される有効半減期の範囲を使用して、投薬ノモグラムと共に、またはノモグラムを出力した後の任意のオプションとして、TTFADAプロットを作成してもよい。TTFADAは、臨床医が投薬を調整するため、または患者に異なる処置を推奨するために使用され得る。
【0149】
様々な例示的な実施態様が記載されているが、前述の説明は単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本開示ではいくつかの例が提供されたが、開示されたシステム、構成要素、および製造方法は、本開示の範囲から逸脱することなく、多くの他の特定の形態で具現化され得ることを理解されたい。
【0150】
開示された例は、本明細書に記載の1またはそれを超える他の特徴との組み合わせまたは部分的な組み合わせで実装することができる。様々な装置、システム、および方法が、本開示に基づいて実装されてもよく、依然として本発明の範囲内にある。また、上記で説明または図示された様々な特徴は、他のシステムに組み合わされても統合されてもよく、または特定の特徴が省略されてもよく、または実装されなくてもよい。
【0151】
本開示の様々な実施態様が本明細書に示され説明されてきたが、そのような実施態様が例としてのみ提供されることは当業者には明らかであろう。本開示から逸脱することなく、当業者は多数の変形、変更、および置換を想到するであろう。本明細書に記載の本開示の実施態様に対する様々な代替形態が、本開示を実施する際に使用され得ることを理解されたい。
【0152】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み込まれ、本出願の一部とされる。
【国際調査報告】