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特表2024-527233代謝障害を有する患者においてNASHのリスク評価をするための方法
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  • 特表-代謝障害を有する患者においてNASHのリスク評価をするための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】代謝障害を有する患者においてNASHのリスク評価をするための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20240717BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20240717BHJP
   G01N 33/66 20060101ALI20240717BHJP
   G01N 33/573 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/403 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/4178 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/121 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/49 X
G01N33/66 A
G01N33/573 A
A61K45/00
A61K31/505
A61K31/454
A61K31/403
A61K31/713
A61K31/4178
A61K31/351
A61K31/121
A61K38/16
A61K48/00
A61P1/16
A61P3/00
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573438
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2022066410
(87)【国際公開番号】W WO2022263565
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】21305826.6
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506236163
【氏名又は名称】ジェンフィット
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤシーン・ハッジ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・マグナネンシ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ローズンキスト
(72)【発明者】
【氏名】スネイル・ホスマン
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA25
2G045CA26
2G045DA36
2G045DA48
2G045FB01
2G045FB03
2G045JA01
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA53
4C084CA59
4C084NA05
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC541
4C084ZC542
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086BC10
4C086BC33
4C086BC42
4C086BC62
4C086EA16
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA75
4C086ZB11
4C086ZC21
4C086ZC54
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA32
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA75
4C206ZB11
4C206ZC21
4C206ZC54
(57)【要約】
本発明は、代謝障害を有する患者において、リスクのある非アルコール性脂肪性肝炎を診断するための、新規なアッセイに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
代謝障害を有するヒト患者においてリスクのある非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を診断するための方法であって、
(i)前記患者の年齢、ボディ・マス・インデックス、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)/アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)比、血小板数、及び高血糖の状況から、非アルコール性脂肪性肝疾患のスコア(NFS)を計算する工程、並びに
(ii)前記患者の血液又は血液由来のサンプルにおいて測定されたhsa-miR-34a-5p、アルファ-2マクログロブリン(A2M)、YKL-40、及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)のレベルに基づいて、前記患者の非アルコール性脂肪性肝炎のスコア(NIS4)を計算する工程、
並びに、前記スコアに基づいて、前記患者におけるリスクのあるNASHの存在又は不存在を判定する工程
を含み、NFS検査がNIS4検査の前又は後に行われる、方法。
【請求項2】
計算されたNFSが、NFSの低カットオフ値と比較され、計算されたNIS4が、NIS4の低カットオフ値と比較される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
計算されたNFSが前記NFSの低カットオフ値よりも小さければ、又は計算されたNIS4が前記NIS4の低カットオフ値よりも小さければ、患者が、リスクのあるNASHを有さないと診断される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
計算されたNFSが前記NFSの低カットオフ値以上であれば、且つ計算されたNIS4が前記NIS4の低カットオフ値以上であれば、患者が、リスクのあるNASHを有すると診断される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法に従ってリスクのあるNASHを有すると診断されたそれを必要とする患者においてNASHを処置するための方法において使用するための、抗NASH薬又は抗線維化薬。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法に従ってリスクのあるNASHを有すると診断されたそれを必要とする患者においてNASHの進行を遅延又は停止させるための方法において使用するための、抗NASH薬又は抗線維化薬。
【請求項7】
アンブリセンタン、BMS-963272、BMS-986036、BMS-986251、BMS-986263、セニクリビロック、ダパグリフロジン、デュラグルチド、エラフィブラノール、エンパグリフロジン、フェノフィブラート、HepaStem、ラニフィブラノール、リラグルチド、LYS006、MET409、MET642、MGL-3196、オベチコール酸、オルリスタット(ゼニカル)、ピオグリタゾン、レスメチロム、ロシグリタゾン、サログリタザールマグネシウム、セラデルパー、セマグルチド、シタグリプチン、TERN-101、TERN-201、及びトロピフェクサー(LJN452)からなる群から選択される、請求項5又は6に記載の、使用のための抗NASH薬又は抗線維化薬。
【請求項8】
計算されたNFS及び計算されたNIS4がそれぞれNFSの低カットオフ及びNIS4の低カットオフを上回っていれば患者に投与される、請求項6又は7に記載の、使用のための抗NASH薬又は抗線維化薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代謝障害を有する患者において、リスクのある非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を診断するための、新規なアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
NASHは、脂肪酸の蓄積、肝細胞の損傷、及びアルコール性肝炎に似た炎症によって組織学的に特徴付けされる、肝臓の進行性の疾患である。NASHは、肝線維症、肝硬変、肝不全、及び/又は肝細胞癌(HCC)に繋がり得る。世界における肥満及び2型糖尿病の割合と共に、NASHの発生率はここ数年で増大しており、NASHを発症している患者では、肝臓に関連する死亡の割合が増大している。特に、2型糖尿病(T2D)等の代謝障害を有する患者は、NASH及び肝硬変を有するリスクがある(Caldazilla S.H.等、Int J Mol Sci、2016、17(5):774)。更に特に、T2Dは、NASHの発症の独立したリスク因子である(Tomah, S.等、Clinical Diabetes and Endocrinology、2020、6: 9頁)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2017167934
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Caldazilla S.H.等、Int J Mol Sci、2016、17(5):774頁
【非特許文献2】Tomah, S.等、Clinical Diabetes and Endocrinology、2020、6: 9頁
【非特許文献3】Glaros A.G.等、J Clin Psychol、1988、44(6):1013~23頁
【非特許文献4】Kleiner, D.E等、Hepatology、2005、6月、41(6):1313~21頁
【非特許文献5】Angulo P.等、Hepatology、2007、45:846~854頁
【非特許文献6】http://nafldscore.com/
【非特許文献7】Harrison S.A.等、The Lancet Gastroenterology and Hepatology、2020、5(11):970~985頁
【非特許文献8】Sterling R.K.等、Hepatology、2006、43:1317~1325頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NASHは、その初期段階では明らかな症候がないため、また、当該疾患を診断するために特異的に開発された広く利用可能な非侵襲性の検査がないことを理由に、依然としてほとんど過小診断されている。NASHの過小診断は、主要な満たされていないニーズであり、また、治療的介入の適格性があるであろう、糖尿病患者のような疾患進行のリスクがより高い患者を同定するための障壁である。
【0006】
血液ベースの診断検査の連続的な使用は、リスクのあるNASHの同定の全体的な診断正確度を向上させる可能性がある。感度(疾患を有する人を正確に同定する、検査の能力)及び特異度(疾患を有さない人を正確に同定する、検査の能力)は、検査の正確度の2つの必須の指標であり、医療供給者が診断ツールの適切性を判定することを可能にする(Glaros A.G.等、J Clin Psychol、1988、44(6):1013~23頁)。しかし、感度が増大すると特異度は低下する傾向があるため、感度と特異度とは逆相関している。したがって、代謝障害に罹患している患者、例えばT2D患者において、リスクのあるNASHを検出する能力を有する、最も正確で、バランスの取れた性能の、血液ベースの診断アルゴリズムを同定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、本明細書において、2つの異なる非侵襲的な検査、すなわちNIS4及びNFSの組合せが、T2D等の代謝障害を有する患者におけるリスクのあるNASHの最も正確でバランスの取れた診断を提供することを示す。
【0008】
したがって、本発明は、代謝障害を有するヒト患者においてリスクのあるNASHを診断するための方法であって、
(i)前記患者の年齢、ボディ・マス・インデックス、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)/アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)比、血小板数、及び高血糖の状況から、非アルコール性脂肪性肝疾患のスコア(NFS)を計算する工程、並びに
(ii)前記患者の血液又は血液由来のサンプルにおいて測定されたhsa-miR-34a-5p、アルファ-2マクログロブリン(A2M)、YKL-40、及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)のレベルに基づいて、前記患者の非アルコール性脂肪性肝炎のスコア(NIS4)を計算する工程、並びに
前記スコアに基づいて、前記患者におけるリスクのあるNASHの存在又は不存在を判定する工程
を含み、NFS検査がNIS4検査の前又は後に行われる、方法に関する。
【0009】
一部の実施形態において、計算されたNFSは、NFSの低カットオフ値と比較され、計算されたNIS4は、NIS4の低カットオフ値と比較される。他の実施形態において、計算されたNFSが前記NFSの低カットオフ値よりも小さければ、又は計算されたNIS4が前記NIS4の低カットオフNIS4よりも小さければ、患者は、リスクのあるNASHを有さないと診断される。他の実施形態において、計算されたNFSが前記NFSの低カットオフ値以上であれば、且つ計算されたNIS4が前記NIS4の低カットオフ値以上であれば、患者は、リスクのあるNASHを有すると診断される。特定の実施形態において、前記NFSの低カットオフ値は、-1.455に等しい。別の特定の実施形態において、前記NIS4の低カットオフ値は、0.36に等しい。
【0010】
本発明は更に、本明細書において開示されている診断方法に従ってリスクのあるNASHを有すると診断されたそれを必要とする患者においてNASHを処置するための方法で使用するための、抗NASH薬又は抗線維化薬に関する。本発明は更に、本明細書において開示されている診断方法に従ってリスクのあるNASHを有すると診断されたそれを必要とする患者においてNASHの進行を遅延又は停止させるための方法で使用するための、抗NASH薬又は抗線維化薬に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】Resolve-IT研究での非2型糖尿病(非T2D)患者及び2型糖尿病(T2D)患者における個々の及び連続的なスコアの診断能を示す図である。スコアは、異なる方法(組み合わされた又は組み合わされていない、NIS4検査、FIB4検査、及びNFS検査)に従って評価された。n:研究に登録された患者の数、acc:正確度、sen:感度、spe:特異度、abs.diff=感度と特異度との間の絶対差。
【発明を実施するための形態】
【0012】
NASH及び線維症のスコアリング/病期診断
組織学的スコアリング/病期診断システムは、NAFLDの活性レベル及び線維症の病期を評価するように、並びに臨床的な肝転帰への進行のリスクを評価するように開発されている。NALFD活性スコア(NAS)は、NAFLDの重症度を評価するように開発されている。NASは、肝生検スライスから決定される以下の3つの組織学的スコアの合計である:
- S:脂肪肝スコア: 0:5%未満、1:5~33%、2:34~66%、及び3:66%超、
- LI:小葉炎症スコア(20倍視野当たりの病巣): 0:なし、1:2未満の病巣、2:2~4の病巣、及び3:4超の病巣、並びに
- HB:風船様変性スコア: 0:なし、1:わずか、2:多くの細胞/顕著な風船化。
【0013】
このスコアリングシステムを使用して、「NASHを有する患者」は、脂肪肝で少なくとも1ポイント、小葉炎症で少なくとも1ポイント、及び肝細胞の風船化で少なくとも1ポイントの、3以上のNASを有する。「非NASH」患者は、(i)脂肪肝のスコア、小葉炎症のスコア、及び肝細胞の風船化のスコアのうちの少なくとも1つが0に等しい、3以上のNAS、又は(ii)3未満のNAS、のいずれかを有する患者である。加えて、本発明の文脈において、患者がウイルス性肝炎、アルコール関連の肝疾患、自己免疫性肝疾患、薬物性肝障害、又は慢性肝疾患の先天的原因、例えば遺伝性のヘモクロマトーシス、ウィルソン病、アルファ-1-アンチトリプシン欠乏症、及び多嚢胞性卵巣症候群を有する場合には、前記患者は、NASH患者であるとして排除される。
【0014】
組織学的検査での線維症(F)の局在化及び程度は、NASHの重症度(進行度)を示す。NASH-CRN(非アルコール性脂肪性肝炎臨床リサーチネットワーク(Nonalcoholic SteatoHepatitis Clinical Research Network))は、専用の線維症病期診断システムを開発した(Kleiner, D.E等、Hepatology、2005、6月、41(6):1313~21頁)。
【0015】
【表1】
【0016】
この線維症病期診断システムを使用して、線維症がない又は最小の(F=0~1)患者は、一般に、肝硬変、肝不全、HCC(肝細胞癌)、又は肝臓に関連する死亡のリスクがないとみなされる。顕著な(F=2)及び中等度の線維症(F=3)を有する患者は、肝硬変、肝不全、HCC、及び肝臓に関連する死亡を発症するリスクが増大している。代償性肝硬変を有する患者は、重度の線維症(F=4)を有しており、肝不全(非代償性肝硬変)、HCC、及び肝臓に関連する死亡のリスクが高い。HCC、硬化性の合併症、及び肝臓に関連する死亡を発症するリスクがある患者の同定は、肝臓の評価の最大の理由である。FDA及びEMAによって定義されているように、薬理学的に処置されるべき、肝転帰のリスクがある患者は、NASが4以上(脂肪肝、小葉炎症、及び風船化の各々について1以上のスコアを有する)で、NASH-CRN線維症スコア(F)が2以上の患者である。
【0017】
したがって、本発明の文脈において、「リスクのある患者」又は「肝転帰のリスクがある患者」とも呼ばれる、「リスクのあるNASH」を有する患者は、4以上のNAS、1以上のSスコア、1以上のLIスコア、1以上のHBスコア、及び2のFスコアを有する患者である。これは、少なくとも1つの命に関わる肝転帰、例えば肝硬変、肝不全、HCC、及び肝臓に関連する死亡を発症するリスクが高いNASH患者のサブグループを規定する。
【0018】
本発明は、T2D患者等の代謝障害を有する患者においてリスクのあるNASHを検出するために有用な、改良された方法に関する。
【0019】
本発明の方法
本明細書において、2つの非侵襲的な検査、NFS及びNIS4の組合せが、代謝障害を有する患者における、特にT2Dを有する患者におけるリスクのあるNASHの最も正確でバランスの取れた診断を提供することが示されている。実際、進行した形態のNASHは、T2D患者等の代謝障害を有する患者において、より一般的に生じる。上記のように、NASHは、肝硬変、肝不全、及びHCCのリスクを増大させる。このような患者におけるリスクのあるNASHの検出は、したがって、最も重要である。
【0020】
更に、不確定なカテゴリーに入る患者の考えられるパーセンテージが最も低く、リスクのあるNASHの可能性が高い又は低いと最も確信的に分類される患者の考えられるパーセンテージが最も高い、最も確信的な意思決定を可能にする方法を得ることも重要である。
【0021】
本発明は、これらの満たされていないニーズの解決をもたらす。
【0022】
本発明者らは、NIS4が、他の非侵襲的な検査と比較して、T2Dを有さない対象の中でリスクのあるNASHを有する対象を検出するための最も正確でバランスの取れた検査であることを示した。本発明者らは更に、T2D患者のサンプルから、NFS及びNIS4両方の組合せが、リスクのあるNASHを有する対象の、77%という高い感度及び65%という高い特異度の、より正確でバランスの取れた検出をもたらしたことを示した。
【0023】
NFS及びNIS4の両方を組み合わせる方法を目的とした本発明は、したがって、T2D患者等の代謝障害を有する患者におけるリスクのあるNASHの早期の検出に特に有利である。
【0024】
本発明の方法を必要とする患者
上記のように、NASHは、代謝障害に罹患している患者において、より一般的に生じる。加えて、NASHは、代謝障害等の併存症に関連していることが分かっている。したがって、本発明の方法は、このような併存症を呈している患者に有利であり得る。
【0025】
NASHの一般的な併存症としては、肥満、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、T2D、境界型糖尿病、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高血圧、及び心血管疾患が含まれる。NASH患者では、年齢が高いほどHCCにもなりやすい。
【0026】
特定の実施形態において、患者は、肥満、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、T2D、境界型糖尿病、脂質異常症、及び高トリグリセリド血症等の代謝障害に罹患している。
【0027】
好ましい実施形態において、患者はT2D患者である。
【0028】
NFS検査
「非アルコール性脂肪性肝疾患の線維症スコア」又は「NFS」は、NAFLDを有する対象において進行した肝線維症(すなわち、線維症ステージFが3以上)を検出するように開発された、非侵襲的な診断検査である(Angulo等、Hepatology、2007、45:846~854頁)。これは、年齢、BMI、AST/ALT比、血小板数、及び高血糖(又はIFG/糖尿病の状況:イエス若しくはノー)に基づく。スコアは、2つのカットオフ値を有する:-1.455未満のスコアは、進行した線維症の不存在を予測し、一方、0.675を超えるスコアは、進行した線維症の存在を予測する。NFSは、複数の研究によって検証されている。NAFLDガイドラインは、NFSがNAFLDを有する患者における進行した線維症を同定するための臨床的に有用なツールであることを認めた。このスコアは、http://nafldscore.com/でオンラインで入手可能であり、患者の受診の間に容易に計算することができる。しかし、このスコアの主な欠点は、患者の大部分が不確定なカテゴリーに入ってしまい、進行した線維症の可能性が高い又は低いと分類され得ないことである。
【0029】
本発明の文脈において、リスクのあるNASHを検出するための方法は、上記のような及びAngulo等、2007で記載されているNFS検査の使用を実行する。
【0030】
別の特定の実施形態において、得られたスコアは、低カットオフ値、例えば、Angulo等、2007において開示されている-1.455の低カットオフ値と比較される。本発明の文脈において、計算されたNFSが、
- 低カットオフ値よりも小さければ、患者はリスクのあるNASHを有さないと分類され、
- 低カットオフ値以上であれば、NIS4検査が実行される。
【0031】
NIS4検査
「NIS4」は、リスクのあるNASHを同定するための、血液ベースの診断検査を指す。NIS4は、4つの循環バイオマーカー:hsa-miR-34a-5p、アルファ-2マクログロブリン(A2M)、YKL-40(キチナーゼ3様タンパク質1[CHI3L1]としても知られている)、及び糖化ヘモグロビン(HbA1c)のレベルの測定に基づく。この検査は、WO2017167934及びHarrisonら、The Lancet Gastroenterology and Hepatology、2020、5(11):970~985頁において記載されている。
【0032】
本発明はこうして、T2D患者等の代謝障害に罹患している患者の血液由来のサンプルにおけるhsa-miR-34a-5p、A2M、YKL40、及びHb1Acのレベルの測定を実行する。特定の実施形態において、血液由来のサンプルは、血液、血清、又は血漿、特に血小板を含有しない血漿、例えば、無細胞の、クエン酸由来の血小板を含有しない血漿サンプルであり得る。特定の実施形態において、hsa-miR-34a-5p、A2M、及びYKL40のレベルは、対象から得られた1つ又は複数の血清サンプルから測定される。別の特定の実施形態において、HbA1cのレベルは、対象の血液サンプルから測定される。特定の実施形態において、hsa-miR-34a-5p、A2M、YKL40、及びHbA1cのレベルは、WO2017167934において記載されているように測定される。
【0033】
特定の実施形態において、本明細書において測定される循環マーカーのレベルは、例えば出願WO2017167934及びHarrisonら、2020において提供されている、スコアを計算するためのロジスティック関数において使用される。
【0034】
当業者は、WO2017167934及びHarrisonら、2020において提供されている情報を使用して、所要の検査の感度、特異度、陽性適中率、及び/又は陰性適中率に関するロジスティック関数及びカットオフを決定することができる。
【0035】
特定の実施形態において、NIS4スコアが計算され、次いで、以下で記載される低カットオフ値と比較され得る。
【0036】
NIS4スコアは、更に特に、以下のように、WO2017167934及びHarrisonら、2020において提供されているように計算され:
【0037】
【数1】
【0038】
式中、
Y=k+a×A+b×B+c×C+d×Dであり、
Sは、NIS4スコアであり、
Aは、Cq単位のhsa-miR-34a-5pの血清中レベルであり、
Bは、g/L単位のアルファ2マクログロブリンの血清中レベルであり、
Cは、ng/mL単位のYKL-40の血清中レベルであり、
Dは、パーセント単位のHbA1cのレベルであり(例えば、測定されたHbA1cパーセンテージが10%である場合、Dは10に等しい)、
kは、ロジスティック関数の定数であり、
aは、hsa-miR-34a-5pの血清中レベルに関する係数であり、
bは、アルファ2マクログロブリンの血清中レベルに関する係数であり、
cは、YKL-40の血清中レベルに関する係数であり、且つ
dは、HbA1cのレベルに関する係数である。
【0039】
特定の実施形態において、本願において記載されているように、NIS4スコアから誘導して、
kは、9.51から34.37の間に含まれる数であり、
aは、-1.17から-0.47の間に含まれる数であり、
bは、0.02から0.84の間に含まれる数であり、
cは、0.0061から0.0209の間に含まれる数であり、且つ
dは、0.07から0.89の間に含まれる数であり、
且つ、低カットオフ値は0.2013から0.5965の間に含まれ、更に特に0.36に等しい。
【0040】
更なる特定の実施形態において、本願において記載されているように、NIS4スコアから誘導して、
kは、12.24から22.74の間に含まれる数であり、
aは、-0.93から-0.5の間に含まれる数であり、
bは、0.36から0.68の間に含まれる数であり、
cは、0.005から0.015の間に含まれる数であり、
dは、0.37から0.69の間に含まれる数であり、
且つ、低カットオフ値は0.2013から0.5965の間に含まれ、更に特0.36に等しい。
【0041】
特定の実施形態において、計算されたNIS4スコアは、Harrisonら、2020において開示されているように、0.36の低カットオフ値と比較される。
【0042】
本発明に従うと、NIS4検査は、NFS検査の前又は後に実行される。注目すべきことに、NFSが最初に実行される場合、NFS検査が低カットオフNFS値以上の計算されたスコアを示せば、NIS4検査はNFS検査の後に実行される。そうでない場合、NFS検査が最初に実行され、低カットオフNFS値未満の計算されたスコアが示されれば、NIS4検査は実行されない。
【0043】
計算されたNIS4は、偽陰性を最少にし、確信的な除外診断を可能にするように確立された、低カットオフ値(例えば、感度が>80%でありバランスの取れた特異度の低カットオフ値)と比較される。特定の実施形態において、上記のように、前記低カットオフ値は、0.2013から0.5965の間に含まれる範囲で選択される。更に特定の実施形態において、前記低カットオフ値は0.36に等しい。
【0044】
NIS4検査がNFS検査の後に実行される実施形態の文脈において、(i)計算されたNIS4が低カットオフ値よりも小さければ、患者は、リスクのあるNASHを有する可能性が低い、又はリスクのあるNASHを有さないと分類され、また、(ii)計算されたNIS4が低カットオフ値以上であれば、患者は、リスクのあるNASHを有する可能性が高い、又はリスクのあるNASHを有すると分類される。
【0045】
NIS4検査がNFS検査の前に実行される実施形態の文脈において、計算されたNIS4が
- 低カットオフ値よりも小さければ、患者はリスクのあるNASHを有さないと分類され、
- 低カットオフ値以上であれば、次いでNFS検査が実行される。
【0046】
一部の実施形態において、本発明の方法を使用することで、リスクのあるNASHを処置又は予防するために、ライフスタイルの推奨を患者に提供すること(例えば、食事療法、若しくは身体活動の推奨の提供)、患者を医学的にケアすること(例えば肝臓損傷のマーカーを定期的にモニタリングするための、医師への定期的な受診若しくは定期的な診察を例えば設定することによる)、又は少なくとも1つのNASH若しくは肝線維症の治療法を患者に投与することが決定され得る。特定の実施形態において、ライフスタイルの推奨を対象に提供すること、又は少なくとも1つのNASH若しくは肝線維症の治療を投与することが決定され得る。
【0047】
本発明はしたがって、それを必要とする対象においてNASH又は肝線維症を処置するための方法で使用するための、抗NASH化合物又は抗線維化化合物であって、患者が、本発明に従った方法を使用することによって同定されている、化合物に関する。
【0048】
「処置」という用語は、本明細書において使用される場合、望ましくない生理学的変化又は障害を予防する又は遅延させる(減らす)ことを目的とした、治療手段と保護的又は予防的手段との両方に関連する。有利な又は望ましい臨床結果としては、限定はしないが、症候の軽減、病理学的状態の安定化(具体的には、悪化させない)、疾患の進行の遅延又は停止、病的状態の改善又は緩和が含まれる。特に、本発明の目的では、処置は、敗血症の進行を遅延させること、及び更なる合併症のリスクを低減させることを目的としている。処置はまた、処置が投与されなかった場合の予想される生存と比較した生存の延長ももたらし得る。
【0049】
抗NASH薬又は抗線維化薬は、治療有効量で投与される。本明細書において使用される場合、「治療有効量」という表現は、所望の治療結果を達成するために効果的な薬剤の量を指す。薬剤の治療有効量は、個体の病状、年齢、性別、及び体重、並びに薬剤が個体において所望の応答を引き起こす能力等の因子に従って変化し得る。治療有効量はまた、薬剤のあらゆる毒性の又は有害な影響を治療的に有利な効果が上回る量である。薬剤の有効な投与量及び投与量レジメンは、処置対象の疾患又は状態によって異なり、当業者によって決定され得る。当技術分野における通常の技術を有する医師は、所要の医薬組成物の有効量を容易に決定及び処方することができる。例えば、医師は、医薬組成物で利用される薬剤の用量を、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで開始させ、所望の影響が達成されるまで投与量を徐々に増大させることができる。通常、本発明の組成物の適切な用量は、特定の投与量レジメンに従って治療効果をもたらすために有効な最低用量である化合物量となる。このような有効用量は、一般に、上記の因子に依存する。
【0050】
特定の実施形態において、本発明は、代謝障害及びリスクのあるNASHに罹患している患者においてNASHを処置するための方法で使用するための、抗NASH化合物であって、患者が、本発明に従った方法を使用することによってリスクのあるNASHを有すると分類されている、化合物に関する。別の特定の実施形態において、本発明は、リスクのあるNASHを有するT2D患者においてNASHを処置するための方法で使用するための、抗NASH化合物であって、患者が、本発明に従った方法を使用することによってリスクのあるNASHを有すると分類されている、化合物に関する。
【0051】
本発明は更に、代謝障害及びリスクのあるNASHに罹患している患者において肝線維症を処置するための方法で使用するための抗線維化化合物であって、患者が、本発明に従った方法を使用することによって前記処置のレシピエントであると分類されている、化合物に関する。本発明はまた、リスクのあるNASHを有するT2D患者において肝線維症を処置するための方法で使用するための抗線維化化合物であって、T2D患者が、本発明に従った方法を使用することによって前記処置のレシピエントであると分類されている、化合物に関する。
【0052】
例示的な抗NASH化合物及び抗線維化化合物を以下に列挙する。
【0053】
- 式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩:
【0054】
【化1】
【0055】
式中:
X1は、ハロゲン原子、R1基、又はG1-R1基であり、
Aは、CH=CH又はCH2-CH2基であり、
X2は、G2-R2基であり、
同一であるか又は異なるG1及びG2は、酸素又は硫黄の原子であり、
R1は、水素原子、置換されていないアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基、シクロアルキルチオ基、及び複素環基から選択される1つ又は複数の置換基によって置換されている、アリール基又はアルキル基であり、
R2は、-COOR3基によって置換されているアルキル基であり、ここで、R3は、水素原子又はハロゲン原子、シクロアルキル基、及び複素環基から選択される1つ又は複数の置換基によって置換されている又は置換されていないアルキル基であり、
同一であるか又は異なるR4及びR5は、ハロゲン原子、シクロアルキル基、及び複素環基から選択される1つ又は複数の置換基によって置換されている又は置換されていないアルキル基である。
【0056】
- GS-0976、ND-654、AC-8632、PF05175157、CP640186、ゲムカベン、MK-4074、及びPF05175157等の、アセチル-CoAカルボキシラーゼ阻害剤。
【0057】
- 2-(1-ヘキシニル)-N-メチルアデノシン、ピクリデノソンCF101(IB-MECA)、ナモデノソンCF-102、2-Cl-IB-MECA、CP-532,903、イノシン、LUF-6000、及びMRS-3558等の、アデノシンA3受容体アゴニスト。
【0058】
- アパラレノン(MT 3995)、アミロライド、スピロノラクトン、エプレレノン、カンレノン及びカンレノ酸カリウム、プロゲステロン、ドロスピレノン、ゲストデン、並びにベニジピン等の、アルドステロンアンタゴニスト及び鉱質コルチコイド受容体アンタゴニスト。
【0059】
- PXL-770、MB-11055、Debio-0930B、メトホルミン、CNX-012、O-304、マンギフェリンカルシウム塩、エルトロンボパグ、カロツキシマブ、及びイメグリミン等の、AMP活性化プロテインキナーゼ刺激剤。
【0060】
- KBP-042及びKBP-089等の、アミリン受容体アゴニスト及びカルシトニン受容体アゴニスト。
【0061】
- ASPH-0047、IMC-TR1、及びISTH-0047等の、アンチセンスオリゴヌクレオチド標的化トランスフォーミング増殖因子ベータ2。
【0062】
- ARO-ANG3、IONIS-ANGGPTL3-LRx又はAKCEA-ANGPTL3LRx、エビナクマブ、及びALN-ANG等の、アンジオポエチン関連タンパク質3阻害剤。
【0063】
- IMM-124-E等の抗LPS抗体。
【0064】
- A-4250、ボリキシバット、旧名がSHP-625のマラリキシバット、GSK-2330672、エロビキシバット、及びCJ-14199等の、頂端側ナトリウム依存性胆汁酸トランスポーター阻害剤。
【0065】
- 無水ベタイン又はRM-003。
【0066】
- オベチコール酸(OCA)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、ノルウルソデオキシコール酸、及びウルソジオール等の、胆汁酸。
【0067】
- 5-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(15-HEPE、DS-102)、不飽和脂肪酸、例えば25アラキドン酸、イコサペントエチルエステル、エイコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸等の、生物活性脂質。
【0068】
- GRC-10801、MRI-1569、MRI-1867、DBPR-211、AM-6527、AM-6545、NESS-11-SM、CXB-029、GCC-2680、TM-38837、Org-50189、PF-514273、BMS-812204、ZYO-1、AZD-2207、AZD-1175、オテナバント、イビピナバント、スリナバント、リモナバント、ドリナバント、SLV-326、V-24343、及びO-2093等の、カンナビノイドCB1受容体アンタゴニスト。
【0069】
- アナバサム(レスナブ(Resunab)、JKT-101)等の、カンナビノイドCB2受容体模倣体。
【0070】
- デュアルカンナビノイドCB1受容体/iNOS阻害剤。
【0071】
- エムリカサン、ベルナカサン、ニボカサン、IDN-7314、F-573、VX-166、YJP-60107、MX-1122、IDN-6734、TLC-144、SB-234470、IDN-1965、VX-799、SDZ-220-976、及びL-709049等の、カスパーゼ阻害剤。
【0072】
- VBY-376、VBY-825、VBY-036、VBY-129、VBY-285、Org-219517、LY3000328、RG-7236、及びBF/PC-18等の、カテプシン阻害剤。
【0073】
- セニクリビロック(CCR2/5アンタゴニスト)、PG-092、RAP-310、INCB-10820、RAP-103、PF-04634817、及びCCX-872等の、CCRアンタゴニスト。
【0074】
- CCR3ケモカイン調節薬、及びエオタキシン2リガンド阻害剤。
【0075】
- IONIS-DGAT2Rx(旧名はISIS-DGAT2Rx)、LY-3202328、BH-03004、KR-69530、OT-13540、AZD-7687、及びABT-046等の、ジアシルグリセロール-O-アシルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤。
【0076】
- エボグリプチン、ビルダグリプチン、フォタグリプチン、アログリプチン、サキサグリプチン、チログリプチン、アナグリプチン、シタグリプチン、レタグリプチン、メログリプチン、ゴソグリプチン、トレラグリプチン、テネリグリプチン、デュトグリプチン、リナグリプチン、ゲミグリプチン、ヨグリプチン(yogliptin)、ベタグリプチン(betagliptin)、イミグリプチン、オマリグリプチン、ビルダグリプチン、及びデナグリプチン等の、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP4)阻害剤。
【0077】
- インスリンリガンド及びインスリン受容体アゴニスト。
【0078】
- インスリン感受性促進薬及びMCH受容体-1アンタゴニスト。
【0079】
- GKT-831(2-(2-クロロフェニル)-4-[3-(ジメチルアミノ)フェニル]-5-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-3,6(2H,5H)-ジオン)、旧名GKT137831、及びGKT-901等の、デュアルNOX(NADPHオキシダーゼ)1及び4阻害剤。
【0080】
- CNX-024、CNX-025、及びSB-030等の、細胞外マトリクスタンパク質調節薬。
【0081】
- ステアロイルCoAデサチュラーゼ-1阻害剤/脂肪酸胆汁酸コンジュゲート(FABAC)。
【0082】
- オベチコール酸(OCA)、GS-9674、LJN-452、EDP-305、AKN-083、INT-767、GNF-5120、LY2562175、INV-33、NTX-023-1、EP-024297、Px-103、及びSR-45023等の、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト。
【0083】
- オメガ-3脂肪酸、オマコール、MF4637、魚油、及び多価不飽和脂肪酸(エファマックス(efamax)、optiEPA)等の、脂肪酸。
【0084】
- TVB-2640、TVB-3199、TVB-3693BZL-101、2-オクタデシン酸、MDX-2、ファスナル(Fasnall)、MT-061、G28UCM、MG-28、HS-160、GSK-2194069、KD-023、シロスタゾール、及び以下の化合物:
【0085】
【化2A】
【0086】
【化2B】
【0087】
【化2C】
【0088】
等の、脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤。
【0089】
- 線維芽細胞増殖因子19(FGF-19)受容体リガンド、又はFGF-19の機能的な操作されたバリアント。
【0090】
- NGM-282等の、操作された線維芽細胞増殖因子19(FGF-19)類似体。
【0091】
- PEG-FGF21(旧名はBMS-986036)、YH-25348、BMS-986171、YH-25723、LY-3025876、及びNNC-0194-0499等の、線維芽細胞増殖因子21(FGF-21)アゴニスト。
【0092】
- GR-MD-02、TD-139、ANG-4021、ガレクチン-3C、LJPC-201、TFD-100、GR-MD-03、GR-MD-04、GM-MD-01、GM-CT-01、GM-CT-02、Gal-100、及びGal-200等の、ガレクチン3阻害剤。
【0093】
- セマグルチド、リラグルチド、エキセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド、リキシセナチド、ロキセナチド、エフェグレナタイド、タスポグルチド、MKC-253、DLP-205、及びORMD-0901等の、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)類似体。
【0094】
- LY-3305677及び長時間作用型のオキシントモジュリンのような、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニスト。
【0095】
- Gタンパク質共役受容体(GPCR)調節薬。
【0096】
- CNX-023。
【0097】
- Gタンパク質共役受容体84アンタゴニスト(GPR84アンタゴニスト)。
【0098】
- PBI-4050、PBI-4265、PBI-4283、及びPBI-4299等の、結合組織増殖因子リガンド阻害剤及び遊離脂肪酸受容体1アゴニスト(FFAR1アゴニスト)。
【0099】
- 成長ホルモン。
【0100】
- ビスモデギブ、TAK-441、IPI-926、サリデギブ、ソニデギブ/エリスモデギブ、BMS-833923/XL139、PF-04449913、タラデギブ/LY2940680、ETS-2400、SHR-1539、及びCUR61414等の、ヘッジホッグ細胞シグナル伝達経路阻害剤。
【0101】
- A-4250、GSK-2330672、ボリキシバット、CJ-15 14199、及びエロビキシバット等の、回腸ナトリウム胆汁酸コトランスポーター阻害剤。
【0102】
- PBI-4050、PBI-4265、PBI-4283、PBI-4299、及びAIC-649等の、免疫調節薬。
【0103】
- MSDC-0602k、MSDC-0602、CSTI-100、及びAMRI等の、インスリン感受性促進薬及びMCH受容体-1アンタゴニスト。
【0104】
- インテグリン阻害剤、Pliant Therapeutic社のインテグリン阻害剤、Indalo Therapeutics社のインテグリン阻害剤、セントルイス大学のインテグリン阻害剤、ProAgio、及びGSK-3008348。
【0105】
- JNJ-28165722、JNJ-42065426、JNJ-42152981、JNJ-42740815、JNJ-42740828、及びPF-06835919等の、ケトヘキソキナーゼ阻害剤。
【0106】
- チペルカスト(旧名はMN-001)、トメルカスト、スルカスト、マシルカスト、ザフィルルカスト、プランルカスト、モンテルカスト、ゲミルカスト、ベルルカスト、アクルカスト、ポビリカスト、シナルカスト、及びイラルカスト等の、ロイコトリエン(LT)/ホスホジエステラーゼ(PDE)/リポキシゲナーゼ(LO)阻害剤。
【0107】
- ラパポート、InterMune社、ファーマキシス、AB-0023、シムツズマブ、PXS-5382A、及びPXS-5338のような、リジルオキシダーゼホモログ2阻害剤。
【0108】
- ソリスロマイシン、アジスロマイシン、及びエリスロマイシン等の、マクロライド。
【0109】
- AB-0023、MT-1001、[18F]FB18mHSA、キセミス(Xemys)、テクネチウムTc 99mチルマノセプト、及びCDX-1307等の、マクロファージマンノース受容体調節薬。
【0110】
- システアミン、ECシステアミン、腸溶性システアミン酒石酸塩、システアミン酒石酸塩(腸溶性)、Bennu社、システアミン酒石酸塩(腸溶性)、Raptor社、システアミン酒石酸塩、DRシステアミン、遅延放出腸溶性システアミン酒石酸塩、メルカプトアミン、メルカプトアミン(腸溶性)、Bennu社、メルカプトアミン(腸溶性)、Raptor社、RP-103、RP-104、PROCYSBI、及びメルカプトアミン(腸溶性)等の、メチルCpG結合タンパク質2調節薬及びトランスグルタミナーゼ阻害剤。
【0111】
- RG-125(旧名はAZD4076)、RGLS-5040、RG-101、MGN-5804、及びMRG-201のような、miRNAアンタゴニスト。
【0112】
- Elastomic AbのMMP9刺激剤のような、メタロプロテイナーゼ9(MMP9)刺激剤。
【0113】
- TRO-19622、Trophos社、オレソキシム、RG-6083、及びRO-7090919等の、ミトコンドリアキャリアファミリー阻害剤及びミトコンドリアリン酸キャリアタンパク質阻害剤。
【0114】
- PF-06667272等の、ミエロペルオキシダーゼ阻害剤。
【0115】
- ベルチリムマブ、NGM-313、IL-20標的化mAb、フレソリムマブ(抗TGFβ)(旧名はGC1008)、チモルマブ(旧名はBTT-1023)、ナマシズマブ、オマリズマブ、ラニビズマブ、ベバシズマブ、レブリキズマブ、エプラツズマブ、フェルビズマブ、マツズマブ、モナリズマブ、レスリズマブ、及びイネビリズマブ等の、モノクローナル抗体。
【0116】
- 抗IL20 mAb、抗TGFβ抗体、抗CD3抗体、抗LOXL2抗体、及び抗TNF抗体等の、モノクローナル抗体。
【0117】
- SVP-シロリムスと同時投与されるAAV遺伝子療法であるMSDC-0602等の、mTOR調節薬。
【0118】
- NAD依存性デアセチラーゼサーチュイン刺激剤、PDE5阻害剤、例えばNS-0200。
【0119】
- LC-280126等の、NF-カッパB阻害剤。
【0120】
- ナイアシン及びビタミンB3等の、ニコチン酸。
【0121】
- ARI-3037MO、MMF、LUF 6283、アシフラン、IBC 293、MK-1903、GSK256073、MK-6892、MK-0354、SLx-4090、ロミタピド、レキシブリン等の、ニコチン酸受容体(GPR109)アゴニスト。
【0122】
- アパベタロン、アシフラン、ラロピプラント、ダポリナド、アナセトラピブ、INCB-19602、ST-07-02、ロメフロキサシン、ナイアシン、及び制御放出/ラロピプラント。
【0123】
- ニタゾキサニド(NTZ)、その活性代謝産物であるチゾキサニド(TZ)、又は他のTZのプロドラッグ、例えばRM-5061。
【0124】
- F-351、サリチレート(アスピリン)、アセトアミノフェン、プロピオン酸誘導体(イブプロフェン、ナプロキセン)、酢酸誘導体(インドメタシン、ジクロフェナク)、エノール酸誘導体(ピロキシカム、フェニルブタゾン)、アントラニル酸誘導体(メクロフェナム酸、フルフェナム酸)、選択的COX-2阻害剤(セレコキシブ、パレコキシブ)、及びスルホナニリド(ニメスリド)等の、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)。
【0125】
- DUR-928(旧名はDV 928)等の、核受容体リガンド。
【0126】
- CER-209等の、P2Y13タンパク質アゴニスト。
【0127】
- BOT-501及びBOT-191等の、PDGFR調節薬。
【0128】
- ペグバリアーゼ、サプロプテリン、AAV-PAH、CDX-6114、セピアプテリン、RMN-168、ALTU-236、ETX-101、HepaStem、ロリプラム、及びアルプロスタジル等の、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ刺激剤。
【0129】
- PZ-235及びNP-003等の、プロテアーゼ活性化受容体(PAR)-2アンタゴニスト。
【0130】
- CNX-014、MB-11055、ALF-1、マンギフェリン、アンレキサノクス、GS-444217、REG-101、及びバリン等の、プロテインキナーゼ調節薬。
【0131】
- フェノフィブラート、シプロフィブラート、ペマフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、ビニフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブリン酸、ニコフィブラート、ピリフィブラート、プラフィブリド、ロニフィブラート、テオフィブラート、トコフィブラート、及びSR10171等の、PPARアルファアゴニスト。
【0132】
- ピオグリタゾン、重水素化ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、エファツタゾン、ATx08-001、OMS-405、CHS-131、THR-0921、SER-150-DN、KDT-501、GED-0507-34-Levo、CLC-3001、及びALL-4等の、PPARガンマアゴニスト。
【0133】
- GW501516(エンデュラボル又は({4-[({4-メチル-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,3-チアゾール-5-イル}メチル)スルファニル]-2-メチルフェノキシ}酢酸))、MBX8025(セラデルパー又は{2-メチル-4-[5-メチル-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-2H-[l,2,3]トリアゾール-4-イルメチルスルファニル]-フェノキシ}-酢酸)、GW0742([4-[[[2-[3-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-4-メチル-5-チアゾールイル]メチル]チオ]-2-メチルフェノキシ]酢酸)、L165041、HPP-593、及びNCP-1046等の、PPARデルタアゴニスト。
【0134】
- サログリタザール、アレグリタザール、ムラグリタザール、テサグリタザール、及びDSP-8658等の、PPARアルファ/ガンマデュアルアゴニスト(グリタザールという名称でもある)。
【0135】
- エラフィブラノール及びT913659等の、PPARアルファ/デルタデュアルアゴニスト。
【0136】
- コンジュゲート型リノール酸(CLA)及びT3D-959等の、PPARガンマ/デルタデュアルアゴニスト。
【0137】
- IVA337、TTA(テトラデシルチオ酢酸)、ババチニン、GW4148、GW9135、ベザフィブラート、ロベグリタゾン、及びCS038等の、PPARアルファ/ガンマ/デルタパンアゴニスト又はPPARパンアゴニスト。
【0138】
- プレバイオティックファイバー。
【0139】
- プロバイオティクス。
【0140】
- リファンピシン等の、プレグナンX受容体。
【0141】
- KD-025、TRX-101、BA-1049、LYC-53976、INS-117548、及びRKI-1447等の、Rho関連プロテインキナーゼ2(ROCK2)阻害剤。
【0142】
- GS-4997等の、シグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤。
【0143】
- レモグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、イプラグリフロジン、チアナグリフロジン、カナグリフロジン、トホグリフロジン、ジャナグリフロジン、ベキサグリフロジン、ルセオグリフロジン、セルグリフロジン、HEC-44616、AST-1935、及びPLD-101等の、ナトリウム-グルコース輸送(SGLT)2阻害剤。
【0144】
- アラムコール、GRC-9332、ステアムコール(steamchol)、TSN-2998、GSK-1940029、及びXEN-801等の、ステアロイルCoAデサチュラーゼ-1阻害剤/脂肪酸胆汁酸コンジュゲート。
【0145】
- VK-2809、MGL-3196、MGL-3745、SKL-14763、ソベチロム、BCT-304、ZYT-1、MB-07811、及びエプロチローム等の、甲状腺受容体β(THRβ)アゴニスト。
【0146】
- ナルトレキソン、JKB-121、M-62812、レサトルビド、デンドロフィリン(dendrophilin)、CS-4771、AyuV-1、AyuV-25、NI-0101、EDA-HPVE7、及びエリトラン等の、Toll様受容体4(TLR-4)アンタゴニスト。
【0147】
- CNX-025及びKBP-7018等の、チロシンキナーゼ受容体(RTK)調節薬。
【0148】
- レシヌラド、RLBN-1001、ベリヌラド、KUX-1151、及びレシヌラド+アロプリノール等の、尿酸陰イオン交換物質阻害剤及びキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【0149】
- PXS-4728A、CP-664511、PRX-167700、ASP-8232、RTU-1096、RTU-007、及びBTT-1023等の、血管接着タンパク質-1(VAP-1)阻害剤。
【0150】
- カルシフェロール、アルファカルシドール、1,25-ジヒドロキシビタミンD3、ビタミンD2、ビタミンD3、カルシトリオール、ビタミンD4、ビタミンD5、ジヒドロタキステロール、カルシポトリオール、タカルシトール1,24-ジヒドロキシビタミンD3、及びパリカルシトール等の、ビタミンD受容体(VDR)アゴニスト。並びに
【0151】
- ビタミンE及びアイソフォーム、ビタミンC及びアトルバスタチンと組み合わされたビタミンE。
【0152】
他の抗NASH薬としては、KB-GE-001、NGM-386、NGM-395、NC-10、イコサブテート、NC-101、NAIA-101コレセベラム、及びPRC-4016が含まれる。他の抗線維化薬としては、HEC-585、INV-240、RNAi治療薬(Silence Therapeutics社)、SAMiRNAプログラム(Bioneer Corp社)、ピルフェニドン、受容体チロシンキナーゼ阻害剤(RTKI)、例えばニンテダニブ、ソラフェニブ、及び他のRTKI、アンギオテンシンII(AT1)受容体ブロッカー、CTGF阻害剤、並びに、MMP2、MMP9、THBS1、又は細胞表面インテグリン等の潜在型TGFβ複合体の活性化剤、TGFβ受容体I型(TGFBRI)又はII型(TGFBRII)及びTGFβ、アクチビン、インヒビン、ノダル、抗ミュラー管ホルモン、GDF、又はBMP等のそれらのリガンド、補助共受容体(III型受容体としても知られている)を含む、TGFβ及びBMP活性化経路の干渉の影響を受けやすいあらゆる抗線維化化合物、或いは、調節性又は阻害性のSMADタンパク質を含む、SMAD依存性の標準的経路の成分、或いは、MAPKシグナル伝達の様々な分岐、TAK1、Rho様GTPaseシグナル伝達経路、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ/AKT経路、TGFβ誘導型のEMTプロセス、又は、Hhリガンド若しくは標的遺伝子を含む標準的及び非標準的ヘッジホッグシグナル伝達経路を含む、SMAD非依存性又は非標準的経路のメンバー、或いは、WNTのあらゆるメンバー、或いは、TGFβの影響を受けやすいNotch経路が含まれる。
【0153】
特定の実施形態において、抗NASH薬は、FXRアゴニスト、セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO)阻害剤、甲状腺ホルモン受容体(THR)ベータアゴニスト、及びGLP1アゴニスト/ASK-1阻害剤から選択される。特定の実施形態において、抗NASH薬は、TERN-101(6-{4-[5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-フェニル)-イソオキサゾール-4-イルメトキシ]-ピペリジン-1-イル}-1-メチル-1H-インドール-3カルボン酸)、TERN-201、TERN-501、及びTERN-301から選択される。
【0154】
特定の実施形態において、抗NASH薬は、アンブリセンタン、BMS-963272、BMS-986036、BMS-986251、BMS-986263、セニクリビロック、ダパグリフロジン、デュラグルチド、エラフィブラノール、エンパグリフロジン、フェノフィブラート、HepaStem、ラニフィブラノール、リラグルチド、LYS006、MET409、MET642、MGL-3196、オベチコール酸、オルリスタット(ゼニカル)、ピオグリタゾン、レスメチロム、ロシグリタゾン、サログリタザールマグネシウム、セラデルパー、セマグルチド、シタグリプチン、TERN-101、TERN-201、及びトロピフェクサー(LJN452)から選択される。
【実施例
【0155】
本発明者らは、T2Dであると特徴付けされ、且つリスクのあるNASHを有する(4以上のNAS4及び2以上のF)と特徴付けされた患者における、単独の、又は線維症4(FIB4)及びNAFLD線維症スコア(NFS)である他のNITと組み合わせた、NIS4(miR-34a-5p、a2M、YKL-40、HbA1c)の臨床的パフォーマンスメトリクスを評価した。
【0156】
1.患者の特徴
RESOLVE-ITコホート(NCT02704403)
患者を、グローバルセンター(US、ラテンアメリカ、中央アメリカ、及びヨーロッパ)で募集した。肝生検を全ての患者について回収し、全ての生検サンプルは、専門の病理学者が中央で読み取った。血液サンプルは、標準的な血液学的及び生化学的及び生体分子的分析のための介入の前に回収した。脂肪性肝炎と診断されたNASHは、中央で読み取った、ランダム化の前6か月以内に採取された肝生検によって評価されており、NASH CRN線維症病期診断システムに従って、NASスコア(脂肪肝スコア0~3、風船様変性スコア0~2、及び小葉炎症スコア0~3)の各成分において少なくとも1つのスコアが1であり、NASが4以上であり、且つ線維症のステージが1以上及び4未満である。
【0157】
2型糖尿病を有する患者では、血糖はコントロールされていなければならない。
【0158】
血液学及び生化学的分析は、空腹条件下で、RESOLVE-ITトライアル(BARC-Europe社、ヘント、ベルギー)の中央ラボラトリーによって行われた。
【0159】
線維症-4[FIB-4:年齢、AST、ALT、血小板]、NAFLD活性スコア[NFS:年齢、BMI、IGF/糖尿病の状況、AST、ALT、血小板、アルブミン]、並びにNIS4[miR-34a-5p、アルファ-2-マクログロブリン、YKL-40、及びヘモグロビンA1c]を、文献(Sterling R.K.等、Hepatology、2006、43:1317~1325頁;Angulo P.等、Hepatology、2007、45:846~854頁;WO2017167934;及びHarrison S.A.等、The Lancet Gastroenterology and Hepatology、2020、5(11):970~985頁)に従って計算した。
【0160】
NASHの1つ又は複数のリスク因子を示し、対応するNITデータ:NIS4(miR-34a-5p、a2M、YKL-40、HbA1c)、線維症-4(FIB-4)、及びNAFLD線維症スコア(NFS)のデータを有していた、コホート内の患者を、リスクのあるNASHを有する患者を同定するために使用した。
【0161】
467人の患者を2つのサブグループに分け、非T2Dは276人、T2Dは191人であり、リスクのあるNASHの有病率はそれぞれ47%及び65%であった(Table 1(表2))。
【0162】
【表2】
【0163】
2.結果
結果は、非T2D患者の47%がリスクのあるNASHを有しており、一方、T2D患者では65%であったことを示している。リスクのあるNASHを有する患者は、リスクのあるNASHを有さない患者と比較して、ALT及びASTの上昇、より悪い血糖コントロール(HOMA-IR)、並びにより高い平均非侵襲性スコア(FIB-4、NFS、及びNIS4)を含む、より悪い生化学的特徴を有している(Table 1(表2))。
【0164】
1回又は2回の検査の組合せでのNIS4、FIB4、及びNFS(図1)、並びに各検査の確立された臨床カットオフを使用して、データを分析した。リスクのあるNASHを有する患者を同定するための全体的な診断の正確度を含む検査のメトリクスを、診断アルゴリズム毎に定量した。正確度は、(真陽性+真陰性)/(真陽性+偽陽性+真陰性+偽陰性)と定義された。感度は、(真陽性)/(真陽性+偽陰性)と定義された。特異度は、(真陰性)/(真陰性+偽陽性)と定義された。感度(Sen)及び特異度(Spe)に関しては、各アルゴリズムの全体的な診断性能も計算した。特異度と感度との間の絶対差(Abs.Diff)によって、リスクのあるNASHを有する患者を診断するための最も性能の良いアッセイの選択が可能となった。
【0165】
データは、非T2D集団では、リスクのあるNASHについての低カットオフ(0.36)を選択することによって、NIS4単独で、患者をリスクのあるNASHについて同定するための最良の性能(正確度=74%、感度=76%、特異度=72%、及び絶対差5未満)が得られたことを示した。正確度(74%)は、特異度(72%)及び感度(76%)に近かった。感度と特異度との間の絶対差はNIS4で最も小さく、このことは、非糖尿病患者においてNIS4がFIB4及びNAFLD線維症スコアよりも良い性能であったことを意味している。
【0166】
T2D患者では、NIS4単独の使用は、リスクのあるNASHを有する患者の感度の高い診断をもたらした(91%)が、低い特異度(41%)を示した。興味深いことに、別の血液ベースの検査であるNAFLD線維症スコア(NFS)検査と組み合わせたNIS4を連続的に使用すると、T2D患者におけるリスクのあるNASHの同定では全体的に更にバランスの取れた性能(正確度=73%、感度=77%、特異度=65%、及び絶対差=12)が得られ、正確度は非T2D集団のNIS4に匹敵し、糖尿病集団では73%であり、それに対し、非T2D集団では74%であった。診断アッセイの適用の順序(NIS4の後にNFSと、NFSの後にNIS4)は、診断の性能にいかなる影響も与えなかった。逆に、NIS4及びFIB4又はFIB4及びNFSの連続的な使用は、T2D集団及び非T2D集団の両方において、より大きな、感度と特異度との間の絶対差をもたらした。
【0167】
感度及び特異度は、検査の確立されたカットオフによって決定される、独立した特徴である。診断を成し遂げるために、最も正確な診断手順は、疾患を有する対象(感度)と疾患を有さない対象(特異度)とを完全に区別する能力を有するべきである。このことは、感度及び特異度が可能な限り高く、且つバランスが取れていなければならないことを意味する。
【0168】
本明細書において、NASHに関連する代謝障害であるT2Dの患者において、NIS4とNFSとを組み合わせることによって最良の診断性能が得られたことが示されている。
図1
【国際調査報告】