(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】硫黄-ホスト複合材料の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240717BHJP
B29B 7/38 20060101ALI20240717BHJP
B29B 7/58 20060101ALI20240717BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240717BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240717BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240717BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
B29B7/38
B29B7/58
H01M4/02 Z
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01M4/36 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574450
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 SG2022050378
(87)【国際公開番号】W WO2022255950
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10202105832Q
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】グラニエロ エチェベリガライ,セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】ナイアー,ヴィヴェック
(72)【発明者】
【氏名】カストロ ネト,アントニオ エリオ デ
【テーマコード(参考)】
4F201
5H050
【Fターム(参考)】
4F201AA49
4F201AC04
4F201AD02
4F201AD03
4F201AH81
4F201AM28
4F201AM30
4F201AR06
4F201BA01
4F201BC01
4F201BC02
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK36
4F201BK40
4F201BK75
4F201BR50
4F201BT02
5H050AA02
5H050BA08
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA10
5H050HA00
5H050HA02
5H050HA14
(57)【要約】
硫黄-ホスト複合材料の製造に適した装置であって、それぞれ加熱素子を備えた1つ又は複数の加熱領域を有するスクリュー押出機と、不活性雰囲気又は真空をスクリュー押出機に供給するための手段または装置と、スクリュー押出機から溶融流体を受け取り、溶融流体を霧化して霧化流体を形成するように構成された噴霧器と、を備え、前記スクリュー押出機は、使用時に、溶融硫黄と固体微粒子状のホスト材料とを含む溶融流体を生成するように構成されている、装置を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄-ホスト複合材料の製造に適した装置であって、
それぞれ加熱素子を備えた1つ又は複数の加熱領域を有するスクリュー押出機と、
不活性雰囲気又は真空をスクリュー押出機に供給するための手段または装置と、
スクリュー押出機から溶融流体を受け取り、溶融流体を霧化して霧化流体を形成するように構成された噴霧器と、を備え、
前記スクリュー押出機は、使用時に、溶融硫黄と固体微粒子状のホスト材料とを含む溶融流体を生成するように構成されている、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
噴霧器により形成された霧化流体を受け取るように構成された凝固チャンバと、
霧化流体を凝固するために冷却ガス流を凝固チャンバに供給するためのガス供給口と、
凝固化した霧化流体を分離するための第1の固気分離器と、を更に備えた装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
前記凝固チャンバに接続されたガス再循環兼固体分離システムを更に備え、
前記ガス再循環兼固体分離システムは、
凝固化した硫黄-ホスト複合材料を分離するための1つ又は複数の追加の固気分離器と、
前記凝固チャンバから前記1つ又は複数の追加の固気分離器へ接続する第1流体接続部と、
前記1つ又は複数の追加の固気分離器から前記凝固チャンバへ接続する第2流体接続部と、を備える、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、
前記ガス再循環兼固体分離システム、及び、前記凝固チャンバは、共に循環流体流路を形成し、該循環流体流路は、
前記第1流体接続部と、
前記1つ又は複数の追加の固気分離器と、
前記第2流体接続部と、
前記凝固チャンバと、を含む、装置。
【請求項5】
前記1つ又は複数の追加の固気分離器は、2つの追加の固気分離器を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の装置であって、
前記1つ又は複数の追加の固気分離器は、サイクロン分離器、静電分離器、及び、1つ以上のフィルタ及びトラップを含むシステムからなる群から選択された固気分離器を含む、装置。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか1項に記載の装置であって、
前記ガス供給口は、前記噴霧器から噴出される前記霧化流体の流れと略反対の方向に冷却ガス流を提供するように構成されている、装置。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか1項に記載の装置であって、
凝固チャンバは、耐食性金属(例えば、ステンレス鋼)、セラミック(例えば、ガラスセラミック、ガラス、磁器)、ポリマー、ポリマー複合材料(例えば、ガラス繊維)、及び、これらの組み合わせ(例えば、金属とセラミックから形成される別々の領域、セラミックで被覆された金属、金属で被覆されたセラミックなどの金属とセラミックの組み合わせなど)からなる群から選択された耐食性材料などの、耐食性材料から形成されている、装置。
【請求項9】
請求項2~8のいずれか1項に記載の装置であって、
凝固チャンバは、内部コーティングを有し、該内部コーティングは、
鏡面仕上げをされている、及び/又は90°より大きい水接触角を有する、装置。
【請求項10】
請求項2~9のいずれか1項に記載の装置であって、
前記凝固チャンバを包み、前記凝固チャンバを冷却するように構成された冷却ジャケットを更に備えた、装置。
【請求項11】
先行する請求項のいずれか1項に記載の装置であって、
前記噴霧器は、回転噴霧器、圧力ノズル、超音波噴霧器、又はより具体的なものとしては、二流体式空気ノズルからなる群の1つ又は複数から選択されたものである、装置。
【請求項12】
先行する請求項のいずれか1項に記載の装置であって、
前記噴霧器、前記凝固チャンバ、及び/又は前記ガス再循環システムの温度をモニタする1つ又は複数の熱電対を更に備えた、装置。
【請求項13】
先行する請求項のいずれか1項に記載の装置であって、
前記スクリュー押出機は、前記1つ又は複数の加熱領域の下流に、それぞれ冷却素子を備えた1つ又は複数の冷却領域を有する、装置。
【請求項14】
先行する請求項のいずれか1項に記載の装置であって、
前記不活性雰囲気又は真空を供給するための手段は、
不活性雰囲気を前記スクリュー押出機に供給するのに適した、供給口と、排出口と、それらの間の流体流路とを備えた構成であるか、又は
前記スクリュー押出機に真空を生ずるのに適した真空ポンプを備えた構成である、装置。
【請求項15】
先行する請求項のいずれか1項に記載の装置であって、
前記スクリュー押出機の上流に、フィードに対して混合、粉砕、又は、その他の処理を行うように構成された状態調整チャンバを更に備えている装置。
【請求項16】
硫黄-ホスト複合材料の略球状の粒子を形成する製造方法であって、
(i)スクリュー押出機に、単体硫黄と、微粒子状のホスト材料とを供給する工程と、
(ii)スクリュー押出機において単体硫黄と微粒子状のホスト材料とを115℃~450℃の範囲の温度下で混合して、固体微粒子状のホスト材料と溶融硫黄とを含む流体を生成する工程と、
(iii)固体微粒子状のホスト材料と溶融硫黄とを含む流体を噴霧器に通して、溶融硫黄に包み込まれた固体微粒子状のホスト材料から形成された粒子を含む霧化流体を形成する工程と、
(iv)霧化流体を冷却して、微粒子状のホスト材料のコアと、単体硫黄から形成されたシェルとを有する略球状の固体粒子を形成する工程と、を含む製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の製造方法であって、
前記微粒子状のホスト材料のコアと、単体硫黄から形成されたシェルとを有する略球状の固体粒子は、マイクロ粒子又はナノ粒子である、製造方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の製造方法であって、
前記工程(ii)は、130℃から250℃の範囲の温度、好ましくは、150℃から180℃の範囲の温度にて実行される、製造方法。
【請求項19】
請求項16~18のいずれか1項に記載の製造方法であって、
(a)前記単体硫黄と前記微粒子状のホスト材料とを混合して、均一な混合物を形成する前工程、及び/又は
(b)前記固体粒子を加工して、結晶性硫黄と、均一に分散したホスト材料とを含む複合材料を形成する後処理工程を含み、
任意で、前記単体硫黄の少なくとも45重量%は、α-硫黄の形態である、製造方法。
【請求項20】
請求項16~19のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記微粒子状のホスト材料はFe、Zn、Mn、Ti、W、Mo、Cr、Cu、Sn、Te、Gd、Ge、Lu、Co、Tb、Ru、Nb、V、Zr、Si、P、C、B、Al、Mg、Ca、これらの酸化物、及び、導電性高分子からなる群のうちの1つ又は複数から選択されたものであり、
任意で、
前記炭素は、1つ又は複数のカーボンナノ材料から選択されたものである、及び/又は
前記酸化物は、RuO
2、Ti
4O
7およびMnO
2からなる群のうちの1つ又は複数のものから選択されたものである、及び/又は
前記導電性ポリマーは、ポリアニリン(PANI)である、製造方法。
【請求項21】
請求項16~20のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記スクリュー押出機に供給されるホスト材料の単体硫黄に対する比率は、3:7~1:99の範囲であり、任意で1:4~3:97の範囲であり、例えば、3:17~1:19の範囲である、製造方法。
【請求項22】
請求項16~21のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記工程(iv)は、凝固チャンバ内にて実行され、前記スクリュー押出機、前記噴霧器、及び、前記凝固チャンバは、請求項1~15のいずれか1項に定義されている装置の一部である、製造方法。
【請求項23】
コア-シェル状のマイクロ粒子又はナノ粒子であって、
ホスト材料から形成されているコアと、
単体硫黄から形成されているシェルと、を有し、
略球状であるコア-シェル状のマイクロ粒子又はナノ粒子。
【請求項24】
請求項23に記載のコア-シェル状のマイクロ粒子又はナノ粒子であって、
前記微粒子状のホスト材料はFe、Zn、Mn、Ti、W、Mo、Cr、Cu、Sn、Te、Gd、Ge、Lu、Co、Tb、Ru、Nb、V、Zr、Si、P、C、B、Al、Mg、Ca、これらの酸化物、及び、導電性高分子からなる群のうちの1つ又は複数から選択されたものであり、
任意で、
前記酸化物は、RuO
2、Ti
4O
7およびMnO
2からなる群から選択されたものである、又は、前記導電性ポリマーは、PANIである、コア-シェル状のマイクロ粒子又はナノ粒子。
【請求項25】
請求項24又は25に記載のコア-シェル状のマイクロ粒子又はナノ粒子であって、
請求項16~22のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたコア-シェル状のマイクロ粒子又はナノ粒子。
【請求項26】
請求項23~25のいずれか1項に記載のコア-シェル状のマイクロ粒子又はナノ粒子を含む電極。
【請求項27】
電極を形成する製造方法であって、
(i)スクリュー押出機に、単体硫黄と、微粒子状のホスト材料とを供給する工程と、
(ii)スクリュー押出機において単体硫黄と微粒子状のホスト材料とを115℃~450℃の範囲の温度下で混合して、固体微粒子状のホスト材料と溶融硫黄とを含む流体を生成する工程と、
(iii)固体微粒子状のホスト材料と溶融硫黄とを含む流体を、115℃~135℃の範囲の温度にまで冷却する工程と、
(iv)工程(iii)からの冷却された流体を押し出して、自立電極を形成する工程と、を含む製造方法。
【請求項28】
請求項27に記載の製造方法であって、
前記工程(ii)は、130℃から250℃の範囲の温度、任意で、150℃から180℃の範囲の温度にて実行される、製造方法。
【請求項29】
請求項27又は28に記載の製造方法であって、
前記単体硫黄と前記微粒子状のホスト材料とを混合して、均一な混合物を形成する前工程を含む、製造方法。
【請求項30】
請求項27~29のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記微粒子状のホスト材料はFe、Zn、Mn、Ti、W、Mo、Cr、Cu、Sn、Te、Gd、Ge、Lu、Co、Tb、Ru、Nb、V、Zr、Si、P、C、B、Al、Mg、Ca、これらの酸化物、及び、導電性高分子からなる群のうちの1つ又は複数から選択されたものであり、
任意で、
前記炭素は、1つ又は複数のカーボンナノ材料から選択されたものである、又は、
前記酸化物は、RuO
2、Ti
4O
7およびMnO
2からなる群のうちの1つ又は複数のものから選択されたものである、又は、
前記導電性ポリマーは、PANIである、製造方法。
【請求項31】
請求項27~30のいずれか1項に記載の製造方法であって、
前記スクリュー押出機に供給されるホスト材料の単体硫黄に対する比率は、3:7~1:99の範囲であり、任意で1:4~3:97の範囲であり、例えば、3:17~1:19の範囲である、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄-ホスト複合材料の製造装置、硫黄-ホスト複合材料の、特に、略球状の硫黄-ホスト複合材料の製造方法、コア-シェル状の硫黄-ホスト複合体のマイクロ/ナノ粒子、及び、硫黄-ホスト複合材料を用いて電極を形成する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素系材料をホストとする単体硫黄の組成物の熱処理は、炭素-硫黄複合体の製造において広く使用されている合成技術である。この技術は低コストであり、スケーラビリティも有しているために、また、硫黄が、その理論的容量が高いので電池用電極の組成物において有用であるために広く利用されている。
【0003】
しかしながら、電池における硫黄系電極の使用には、硫黄が電解質に溶解すると、電池寿命が短くなるという問題がある。この問題を克服するために、硫黄-ホスト複合材料が使用されており、この硫黄--ホスト複合材料は、硫黄がホスト材料と共有結合(または他の強い結合)を形成し、それによって硫黄の溶解を防止している。
【0004】
しかしながら、より改善されたエネルギー密度や他の電気化学的特性をもたらす硫黄-ホスト複合材料が依然として求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、本開示に記載の装置や製造方法が、改善された特性を有する硫黄-ホスト材料の製造を可能にするという驚くべきことを見出した。
【0006】
本発明は、硫黄-ホスト複合材料の製造に適した装置であって、
それぞれ加熱素子を備えた1つ又は複数の加熱領域を有するスクリュー押出機と、
不活性雰囲気又は真空をスクリュー押出機に供給するための手段または装置と、
スクリュー押出機から溶融流体を受け取り、溶融流体を霧化して霧化流体を形成するように構成された噴霧器と、を備え、
前記スクリュー押出機は、使用時に、溶融硫黄と固体微粒子状のホスト材料とを含む溶融流体を生成するように構成されている、装置を提供する。
【0007】
噴霧器を使用することにより、微粒子状のホスト材料のコアを硫黄のシェルが包み込んでいる略球状の粒子を製造することが可能となるという効果を奏する。この粒子は、従来の押出物を粉砕する方法によって製造される不規則な形状の粉砕粒子と比較して以下のような利点を有する。
【0008】
-略球状の粒子から形成された電極は、細孔容積が大きく、表面積が大きいため、得られる電極において硫黄の活用を高めることが可能となる。これにより、電解質がアクセスする活性硫黄材料の表面積を広げることが可能となってイオン伝導性が向上し、それによりエネルギー密度およびレート特性を向上させることができる。
【0009】
-略球状の形状は、ホスト材料への親和性によって強化された球状マトリックス内のポリスルフィドの固定化や転化速度において有利である。これは、硫黄電極材料における電気化学的サイクルに関連する最も大きな問題のひとつであるポリスルフィドのシャトリングを抑制又は回避するのに役立つ。
【0010】
-略球状の形状は、硫黄電極材料の電気化学的サイクル中に必要な体積膨張を収めるのに十分な空間を提供する。
【0011】
また、本発明は、硫黄-ホスト複合材料の略球状の粒子を形成する製造方法であって、
(i)スクリュー押出機に、単体硫黄と、微粒子状のホスト材料とを供給する工程と、
(ii)スクリュー押出機において単体硫黄と微粒子状のホスト材料とを115℃~450℃の範囲の温度下で混合して、固体微粒子状のホスト材料と溶融硫黄とを含む流体を生成する工程と、
(iii)固体微粒子状のホスト材料と溶融硫黄とを含む流体を噴霧器に通して、溶融硫黄に包み込まれた固体微粒子状のホスト材料から形成された粒子を含む霧化流体を形成する工程と、
(iv)霧化流体を冷却して、微粒子状のホスト材料のコアと、単体硫黄から形成されたシェルとを有する略球状の固体粒子を形成する工程と、を含む製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、コア-シェル状のマイクロ粒子又はナノ粒子であって、
ホスト材料から形成されているコアと、
単体硫黄から形成されているシェルと、を有し、
略球状であるコア-シェル状のマイクロ粒子又はナノ粒子を提供する。
【0013】
また、本発明は、電極を形成する製造方法であって、
(i)スクリュー押出機に、単体硫黄と、微粒子状のホスト材料とを供給する工程と、
(ii)スクリュー押出機において単体硫黄と微粒子状のホスト材料とを115℃~450℃の範囲の温度下で混合して、固体微粒子状のホスト材料と溶融硫黄とを含む流体を生成する工程と、
(iii)固体微粒子状のホスト材料と溶融硫黄とを含む流体を、115℃~135℃の範囲の温度にまで冷却する工程と、
(iv)工程(iii)からの冷却された流体を押し出して、自立電極を形成する工程と、を含む製造方法を提供する。
【0014】
本発明の装置および方法は、高収率および低処理コストで硫黄-ホスト複合材料を連続的に製造することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明による装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明において有用であり得る噴霧器の詳細図である。
【
図3】
図3は、押出物がローラ間で集電体に圧着される様子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、硫黄-ホスト複合材料の製造に適した装置であって、
それぞれ加熱素子を備えた1つ又は複数の加熱領域を有するスクリュー押出機と、
不活性雰囲気又は真空をスクリュー押出機に供給するための手段または装置と、
スクリュー押出機から溶融流体を受け取り、溶融流体を霧化して霧化流体を形成するように構成された噴霧器と、を備え、
前記スクリュー押出機は、使用時に、溶融硫黄と固体微粒子状のホスト材料とを含む溶融流体を生成するように構成されている、装置を提供する。
【0017】
上述したように、装置に噴霧器を備えることにより、微粒子状のホスト材料のコアを硫黄のシェルが包み込んでいる略球状の粒子を製造することが可能となり、上記の利点をもたらす。
【0018】
本明細書に記載の実施形態においては、「含む、備える(comprising)」という単語は、記載の構成を必要とするが、他の構成の存在については限定していないと解釈されることができる。または、「含む、備える(comprising)」という単語は、列記された部材/構成のみが存在しているような状態に関する場合もありうる(例えば、「含む、備える(comprising)」という単語を「からなる(consisting of)」又は「本質的に~からなる(consists essentially of)」という表現により置き換えることも可能である)。本発明の全ての態様と実施形態は、より広い解釈とより狭い解釈の両方が適応可能であるように明示的に意図したものである。つまり、「含む、備える(comprising)」という単語及びその同義語は、「からなる(consisting of)」又は「本質的に~からなる(consists essentially of)」という表現により置き換えることも可能であり、その逆も可能である。
【0019】
「本質的に~からなる(consists essentially of)」という表現及びその同義語は、本明細書において、少量の不純物が存在しえる材料について言及していると解釈されることができる。例えば、該材料は、純度90%以上であってもよく、例えば、純度95%以上、純度97%以上、純度99%以上、純度99.9%以上、純度99.99%以上、純度99.999%以上、又は、純度100%などが挙げられる。
【0020】
本明細書において、硫黄-ホスト複合材料とは、硫黄とホスト材料とを含む材料である。硫黄は、その表面においてホスト材料と(例えば、共有結合及び/又は静電相互作用により)結合する単体硫黄の形態であってもよい。ホスト材料は、好適な材料であれば任意のものであってもよいが、硫黄を被覆や吸着したり、硫黄が含浸や拡散したりするようなものが好ましい。好適なホスト材料としては、本明細書に記載されているものもあるが、導電性材料、半導体材料、及び、絶縁性材料などが例として挙げられる。ホスト材料の具体例としては、Fe、Zn、Mn、Ti、W、Mo、Cr、Cu、Sn、Te、Gd、Ge、Lu、Co、Tb、Ru、Nb、V、Zr、Si、P、C、B、Al、Mg、Ca、これらの酸化物、及び、導電性高分子からなる群のうちの1つ又は複数を含むものである。硫黄のホスト材料として有用であり得る金属酸化物の具体例として、RuO2、Ti4O7およびMnO2などが挙げられ、一方、ホスト材料として有用であり得る導電性ポリマーの具体例としては、ポリアニリン(PANI)などが挙げられる。
【0021】
炭素は、特に、1つ以上のカーボンナノ材料の形態では、ホスト材料として有用であり得る。本明細書において、用語「カーボンナノ材料」は、適切なサイズ範囲を有する任意の適切な材料を意味しえる。例えば、本明細書に記載されたものでありうる本発明の特定の実施形態においては、カーボンナノ材料は、平均流体力学的直径が1~1000nmの範囲、例えば、100~400nmの範囲や1~100nmの範囲のものであってもよい。本明細書に記載されたものでありうる本発明のより具体的な実施形態においては、用語「カーボンナノ材料」は、規格「ISO/TS80004-3:2020(en) ナノテクノロジー-用語、語彙-パート3:カーボンナノオブジェクト」にて定義されているカーボンナノオブジェクトを意味するものであってもよく、本規格の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0022】
好適なカーボンナノ材料の例としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、フラーレン、グラフェン、グラフェン酸化物、ナノグラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、メソポーラス炭素、炭素量子ドット、グラフェン量子ドット及びこれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載のものでありうる具体的な実施形態では、カーボンナノ材料は、グラフェン及び/又はカーボンブラックであってもよい。これら材料は、規格「ISO/TS80004-3:2020(en) ナノテクノロジー-用語、語彙-パート3:カーボンナノオブジェクト」にて定義されているものであってもよい。本明細書に記載のものでありうる具体的な実施例では、グラフェンは、グラフェンナノプレートレットの形態であってもよく、カーボンブラックは、ケッチェンブラックの形態であってもよい。本明細書で使用されるグラフェンナノプレートレットは、規格:ISO/TS 80004-13:2017に定義されているものであってもよい。好適なグラフェンナノプレートレットは、市販されているものであってもよい。
【0023】
本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態では、カーボンナノ材料は、カーボンナノ材料に付着したハロゲン原子をさらに有していてもよい。ハロゲン原子は、カーボンナノ材料の活性部位に付着していてもよい。カーボンナノ材料の活性部位の例としては、表面、エッジ、ディフェクト(例えば、細孔)、および中間層などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
当業者には明らかなように、ホスト材料の形態は特に限定されない。ホスト材料の好適な形態の例としては、シート、繊維体、発泡体、チューブ、ロッド、球体、及び粒子などが挙げられ、それぞれ、多孔質または固体状の構造を有していてもよい。
【0025】
当業者は、硫黄のホスト材料として好適であり得る他の材料については熟知しているであろう。
【0026】
当業者には明らかなように、スクリュー押出機は、適切なタイプのものであればどのようなスクリュー押出機であってもよい。本明細書に記載のものでありうる本発明の実施形態では、スクリュー押出機は、二軸スクリュー逆回転押出機、二軸スクリュー共回転押出機、単軸スクリュー押出機、単軸スクリュー往復動押出機、リングスクリュー押出機、又は、所望の複合体を生成するために溶融および搬送を促進する任意の他の装置からなる群から選択されたものであってもよい。
【0027】
スクリュー押出機は、1つ又は複数の加熱領域を備え、この加熱領域により、スクリュー押出機を通る硫黄を溶融して溶融硫黄流体が形成されるようにする。これにより、ホスト材料(微粒子状のホスト材料)が溶融硫黄内に分散することができ、結果得られた流体をノズルに通すことができる。
【0028】
また、スクリュー押出機は、1つ以上の他の領域を有していてもよい。例えば、スクリュー押出機は、前記1つ又は複数の加熱領域の下流に、それぞれ冷却素子を備えた1つ又は複数の冷却領域を有していてもよい。冷却領域は、噴霧器へ搬送される前に溶融硫黄の温度を低下させて、その粘度を増加させることができる点で有益である。疑義を明確にすると、冷却領域は本発明の装置の本質的な要素ではなく、結果として得られる粒子を凝固チャンバ内で冷却することもできる。また、スクリュー押出機は、他の領域、例えば、フィードを受けとり、加熱するための領域や、均一な混合物を提供するためにフィードを混合するための混合領域を有していてもよい。混合領域は、グラフェンナノプレートレット及び/又は膨張化黒鉛などの供給時に凝集している形態の場合もあるホスト材料の解凝集を行うために、高剪断領域(例えば、混合スクリュー素子を備えた領域)を備えていてもよい。また、スクリュー押出機は、押出機内で材料を圧縮して、溶融状態の押出物が霧化するのに十分な速度でノズルを通過するように必要な圧力を溶融材料に印加する圧縮領域を含んでもよい。
【0029】
スクリュー押出機内の材料の滞留時間は、任意の適切な時間であってもよく、例えば、硫黄がホスト材料に吸着/含浸/拡散するのに十分な時間であってもよい。好適な滞留時間については、当業者は知っているであろう。いくつかの実施形態では、好適な滞留時間は10秒より長くてもよい。当業者には理解されるように、カーボンブラック及びケッチェンブラックのような多孔質材料及び中空材料は、より長い滞留時間を必要とする場合がある。
【0030】
スクリュー押出機は、不活性雰囲気(例えば、Ar、He、又は、N2)、又は真空をスクリュー押出機に供給するための手段又は装置を備えている。硫黄-ホスト複合材料は単体硫黄を含むことが望ましいため、加熱中の硫黄の酸化を防止するために、不活性雰囲気または真空が望ましい。不活性雰囲気または真空の目的は、硫黄の酸化を防止(または少なくとも最小限に抑制)するためのものなので、不活性雰囲気または真空を達成するための具体的な方法は、本発明にとって特に重要ではなく、スクリュー押出機において不活性雰囲気や真空をどのように達成するかについては、当業者は容易に理解できるであろう。スクリュー押出機に不活性雰囲気または真空を提供するための手段または装置の好適な例としては、不活性ガスを供給および排出するための供給口/排出口や、真空ポンプなどが挙げられる。
【0031】
したがって、本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態では、不活性雰囲気または真空を提供するための手段は、
スクリュー押出機に不活性ガス雰囲気を提供するのに適した供給口、排出口、及びそれらの間の流体流路、を備えた構成であるか、又は、
スクリュー押出機において真空を生ずるのに適した真空ポンプを備えた構成である。
【0032】
本発明の装置は、スクリュー押出機から溶融流体を受け取り、溶融流体を霧化して、霧化流体を形成するように構成された噴霧器を備えている。これにより、噴霧器が、押出物を粉砕又は他の方法によって処理することで生成され得る不規則な粒子ではなく、略球状の粒子を生成することが可能になるという効果を奏する。噴霧器がどのようなものかについては、特に限定されず、本発明によれば、任意の適切な噴霧器を使用することができる。当業者は、噴霧器が1つ以上のノズルを備えていてもよいことを理解するであろう。したがって、本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態では、噴霧器は、回転噴霧器、圧力ノズル、超音波噴霧器、又はより具体的なものとしては、二流体式空気ノズルからなる群から選択されたものであってもよい。本明細書で説明するように、噴霧器の使用は、略球状の硫黄-ホスト複合材料の製造を可能にするという効果を奏する。略球状であることは、上述した理由から、硫黄系電極の形成に使用する上で非常に有利である。当業者は、本明細書で使用される用語「略球状」は、粒子が球形若しくはおおよそ球形である、又は球体のような形状を有することを意味すると理解するであろう。特に、本発明のいくつかの実施形態では、略球状の粒子は、より大きな質量の材料/粒子を粉砕(不規則な表面を有する粒子を生成する粉砕)することによって生成されるものよりも更に球状である粒子でありうる。例えば、このような略球状の粒子は、噴霧器によって生成されてもよい。当業者は、粒子の形状が真球状であるか否かを判定することが常に可能というものではないため、ナノ粒子及びマイクロ粒子を説明する時に「略球状」という用語が当技術分野では一般的に使用されていることを知っているであろう。
【0033】
噴霧器を通るフィードの流量を増加させるように構成されたポンプを噴霧器に備えている構成であってよいし、そのようなポンプを噴霧器の上流に設けてもよい。このような構成は、安定して均一な霧化流体を生成するのに役立ちうる。
【0034】
ホスト材料の単体硫黄に対する比率は、例えば、3:7~1:99であってもよく、例えば、1:4~3:97などでもあってもよく、例えば、3:17~1:19などであってもよい。つまり、硫黄-ホスト材料複合体は、1~30重量%のホスト材料と、70~99重量%の単体硫黄とを含む構成であってもよく、例えば、3~25重量%のホスト材料と75~97重量%の単体硫黄とを含む構成などでもあってもよく、例えば、5~15重量%のホスト材料と85~95重量%の単体硫黄とを含む構成などであってもよい。
【0035】
本発明により製造された硫黄-ホスト複合材料は、電池用の電極として、又は電池用の電極の材料として有用であり得る。このような電極は、多数の電池サイクルにわたって容量が高く、また、硫黄が電解質に溶出しにくいという効果を奏する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、本装置は、噴霧器によって形成された霧化流体を受けるように構成された凝固チャンバを備える構成であってもよい。噴霧器によって形成された霧化流体は、固体微粒子状のホスト材料コアと、溶融状態の硫黄のシェルとを含む構成でありうる。凝固チャンバは、例えば、冷却ガス流を霧化流体に供給することによって、硫黄シェルの凝固化を助ける構成であってもよい。これは、霧化流体を凝固させるために凝固チャンバに冷却ガス流を提供するためのガス供給口を使用することによって達成され得る。当業者は、霧化流体を冷却する他の手段を、冷却ガス流に加えて、またはその代替として用いてもよいことを理解するであろう。例えば、本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態では、本装置は、凝固チャンバを冷却するように構成された、凝固チャンバを包む冷却ジャケットを備えた構成であってもよい。
【0037】
また、凝固チャンバは、凝固化した霧化流体を分離するための固気分離器を備えた構成であってもよいし、そのような固気分離器を凝固チャンバに付設してもよい。
【0038】
よって、本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態において、本装置は、
噴霧器によって形成された霧化流体を受け取るように構成された凝固チャンバと、
霧化された流体を凝固化させるために冷却ガス流を凝固チャンバに供給するガス供給口と、
凝固された霧化流体を分離するための第1の固気分離器と、を更に備えた構成であってもよい。
【0039】
本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態において、本装置は、凝固チャンバに接続されたガス再循環兼固体分離システムをさらに備えた構成であってもよい。ガス再循環システムを使用することにより、冷却ガス流を再循環させることができ、それによって、必要な冷却ガスの使用量を減少させることができる。この構成は、冷却ガスが不活性ガスである場合に有利であり得る。固体分離システムは、特に冷却ガスが使用される場合に、凝固化した霧化流体の回収効率を向上させる。これは、霧化流体の一部の粒子が、冷却ガス流により運ばれ、ガス再循環システム内を巡るからである。
【0040】
よって、本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態において、ガス再循環兼固体分離システムは、
凝固化した硫黄-ホスト複合材料を単離するための1つ以上の追加の固気分離器と、
凝固チャンバから前記の1つ以上の追加の固気分離器へ接続する第1の流体接続部と、
前記1つ以上の追加の固気分離器から凝固チャンバへ接続する第2の流体接続部と、を備える構成であってもよい。
【0041】
本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態において、ガス再循環兼固体分離システムと凝固チャンバは、共に循環流体流路を形成し、該循環流体流路は、
前記第1流体接続部と、
前記1つ以上の追加の固気分離器と、
前記第2流体接続部と、
前記凝固チャンバと、を含む構成であってもよい。
【0042】
凝固チャンバは、存在する場合、凝固チャンバの内部の検査を可能にする窓またはカメラを備えた構成であってもよい。
【0043】
本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態において、本明細書に記載され得る本発明のいくつかの実施形態では、1つ以上の追加の固気分離器は、2つ又は3つの追加の固気分離器、例えば、2つの追加の固気分離器を含む構成であってもよい。前記1つ以上の追加の固気分離器は、サイクロン分離器、静電分離器、及び、1つ以上のフィルタ及びトラップを含むシステムからなる群から選択されたものであってもよい。
【0044】
冷却ガス流を提供するように構成されたガス供給口を設けている場合、ガス供給口は、噴霧器から噴出される霧化流体の流れと略反対の方向に冷却ガス流を提供するように構成されていてもよい。この構成は、霧化流体に対する冷却効果を向上させると考えられるが、理論については特に縛られるものではない。
【0045】
本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態において、凝固チャンバは、耐食性金属(例えば、ステンレス鋼)、セラミック(例えば、ガラスセラミック、ガラス、磁器)、ポリマー、ポリマー複合材料(例えば、ガラス繊維)、及び、これらの組み合わせ(例えば、金属とセラミックの組み合わせ(例えば、金属とセラミックから形成される別々の領域、セラミックで被覆された金属、金属で被覆されたセラミックなど))からなる群から選択された耐食性材料などの、耐食性材料から形成されている構成であってもよい。当業者は、例えば、別々の材料から別々の構成要素/領域/部分を形成したり、ある材料の上に別の材料を被覆したりするなど、これらの材料は適宜組み合わせて使用され得ることを理解するであろう。
【0046】
凝固チャンバは、霧化流体が付着しにくい内面を有することが好ましい。これは、凝固化した霧化流体の回収を向上させることができる。よって、本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態において、凝固チャンバは、内部コーティングを有し、該内部コーティングは、
鏡面仕上げをされている、及び/又は
90°より大きい水接触角を有する。
【0047】
本装置は、噴霧器、凝固チャンバ、及び/又は、ガス再循環システムの温度をモニタするための1つ又は複数の温度センサ(例えば、熱電対)を備えた構成であってもよい。当業者は、硫黄を所望の状態(すなわち、固体または液体)に維持するために、これらの成分の温度をモニタすることが有利であることを理解するであろう。
【0048】
本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態において、本装置は、スクリュー押出機の上流に、(例えば、ボールミキサによる混合により)フィードに対して混合、粉砕、又は、その他の処理を行うように構成された状態調整チャンバを備えてもよい。この構成は、スクリュー押出機に入るフィードが、スクリュー押出機によって処理しやすい形態にするのに役立ちうる。状態調整チャンバの使用の具体例として、スクリュー押出機に入れる前にホスト材料の粒子サイズ/形状を処理することなどが挙げられる。
【0049】
例えば、乾燥チャンバや、順化チャンバ(真空又は雰囲気不活性化)などの本発明の装置に設けることが可能なその他の構成要素を備えることもできる。これらは、最終製品の純度を向上させるのに有用であり得る。
【0050】
また、本発明は、硫黄-ホスト複合材料の略球状の粒子を形成する製造方法であって、
(i)スクリュー押出機に、単体硫黄と、微粒子状のホスト材料とを供給する工程と、
(ii)スクリュー押出機において単体硫黄と微粒子状のホスト材料とを115℃~450℃の範囲の温度下で混合して、固体微粒子状のホスト材料と溶融硫黄とを含む流体を生成する工程と、
(iii) 固体微粒子状のホスト材料と溶融硫黄とを含む流体を噴霧器に通して、溶融硫黄に包み込まれた固体微粒子状のホスト材料から形成された粒子を含む霧化流体を形成する工程と、
(iv) 霧化流体を冷却して、微粒子状のホスト材料のコアと、単体硫黄から形成されたシェルとを有する略球状の固体粒子を形成する工程と、を含む製造方法を提供する。
【0051】
当業者には理解されるように、本明細書に記載の本発明の装置は、本発明の製造方法において有用であり得え、本発明の装置に関連して上述した本発明の構成は、本発明の方法に等しく適用される。例えば、ホスト材料や、単体硫黄に対するホスト材料の比率などは、上で定義した通りであってもよい。
【0052】
本製造方法は、微粒子状のホスト材料コアと、単体硫黄から形成されたシェルとを有する固体粒子(典型的にはマイクロ粒子又はナノ粒子)を提供する。その後、この粒子を加工して、結晶性硫黄と均一に分散したホスト材料とを含む複合材料を形成してもよい。本明細書に記載のものでありうる本発明の一実施形態において、複合材料は、α-硫黄を少なくとも45重量%(例えば、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、又は、少なくとも90重量%)含んだ構成であってもよい。
【0053】
よって、微粒子状のホスト材料コアと、単体硫黄から形成されたシェルとを有する粒子は、マイクロ粒子またはナノ粒子である。
【0054】
本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態において、本製造方法は、前記固体粒子を加工して、結晶性硫黄と均一に分散したホスト材料とを含む複合材料を形成する後処理工程を含んだ構成であってもよい。
【0055】
本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態において、工程(ii)は、130~250℃の範囲の温度、例えば150~180℃の範囲の温度で実施される構成であってもよい。
【0056】
本明細書に記載のものでありうる本発明のいくつかの実施形態において、本製造方法は、単体硫黄と微粒子状のホスト材料とを混合して均一な混合物を形成する前工程を含んだ構成であってもよい。当業者には理解されるように、このような工程は、本明細書に開示されるような状態調整チャンバ内で実行されてもよい。
【0057】
また、本発明は、コア-シェル状のマイクロ粒子又はナノ粒子であって、
ホスト材料から形成されているコアと、
単体硫黄から形成されているシェルと、を有し、
略球状であるマイクロ粒子又はナノ粒子を提供する。
【0058】
当業者には理解されるように、このようなコア-シェル状のマイクロ粒子またはナノ粒子は、本発明による製造方法によって製造され得るが、代替的に、異なる方法によって製造されてもよい。本発明のコア-シェル状の微粒子またはナノ粒子において、ホスト材料は、本発明の装置及び/又は製造方法に関連して本明細書において定義されたものであってもよい。
【0059】
また、本発明は、本発明によるコア-シェル状のマイクロ粒子又はナノ粒子を含む電極を提供する。
【0060】
また、本発明は、電極を形成する製造方法であって、
(i)スクリュー押出機に、単体硫黄と、微粒子状のホスト材料とを供給する工程と、
(ii)スクリュー押出機において単体硫黄と微粒子状のホスト材料とを115℃~450℃の範囲の温度下で混合して、固体微粒子状のホスト材料と溶融硫黄とを含む流体を生成する工程と、
(iii)固体微粒子状のホスト材料と溶融硫黄とを含む流体を、115℃~135℃の範囲の温度にまで冷却する工程と、
(iv)工程(iii)からの冷却された流体を押し出して、自立電極を形成する工程と、を含む製造方法を提供する。
【0061】
工程(iv)にて形成された押出物は自立電極として好適に使用可能であるが、該押出物を集電体(又は2つの集電体の間)に圧着して、電極を形成してもよい。好適な集電体材料の例としては、硫黄-ホスト複合材料よりも高い電子伝導性を有する材料などが挙げられる。
【0062】
材料としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、タングステンなどの金属、金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物、炭素、導電性高分子、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、集電体層は、ナノファイバネットワーク、ナノワイヤネットワーク、及びナノチューブネットワークなどのナノマテリアルネットワークであってもよい。ナノマテリアルネットワークのさらなる例としては、球体、円錐、ロッド、チューブ、ワイヤ、アーク、ベルト、サドル、フレーク、楕円体、メッシュ、積層発泡体、テープ、およびそれらの組み合わせのネットワークなどが挙げられる。ネットワークは、いくつかの実施例では、不均一で連続的なフィルムであってもよい。すなわち、フィルムは、1つ以上の連続した導電経路を提供し、フィルムを介して電気化学種の輸送を可能するように構成されている。また、電子伝導性バインダーを、本開示に記載の集電体のいずれかに添加してもよい。また、本明細書に記載の材料の組み合わせを使用して、集電体層を形成してもよい。
【0063】
集電体または2つの集電体の間への押出物の圧着は、例えば、テープキャスティング又は共押出しを行って、ローラ間で実施することができる。
【0064】
本発明の製造方法において、押出物は、好ましくは直方体形状であり、すなわち、押出機は、好ましくは、正方形のノズルを有する。
【0065】
このような製造方法は、本明細書に開示されている装置に類似しているが、噴霧器を備えていない装置を使用して実行されてもよい。技術的に適切な場合、上述した本発明の装置または製造方法の任意の構成は、本発明のこの製造方法に等しく適用される。例えば、
-工程(ii)は、130~250℃の範囲の温度(例えば、150~180℃の範囲)で実施してもよい。
-本方法は、単体硫黄と微粒子状のホスト材料とを粉砕、混合して均一な混合物を形成する前工程を含む構成であってもよい。
-ホスト材料は、本明細書に記載の通りであってもよい。
-スクリュー押出機に供給される硫黄に対するホスト材料の比率は、本明細書に記載の通りであってもよい。
【0066】
以下、図面を参照して本発明の方法および装置を詳細に説明する。
【0067】
図1に、装置100を示す。硫黄及び固体ホスト材料を含むフィードを、例えばホッパ101を介して、状態調整チャンバ102内に供給する構成であってもよい。状態調整チャンバ102は、フィードを混合、粉砕、又は他の方法で処理するように構成されている。フィードは、硫黄及びホスト材料を本明細書に記載のように含んでおり、例えば、70重量%の単体硫黄と、ホスト材料として30重量%のグラフェンナノプレートレットと、を含む。いくつかの実施形態では、状態調整チャンバ102は、フィードを(例えば、ボールミキサによる混合、又は、剪断搬送ツールの使用により)混合して均一な混合物を形成する構成であってもよい。状態調整チャンバ102は、不活性雰囲気を状態調整チャンバに供給するためのガス供給口103を備えた構成であってもよく、これにより、原料を順化して、水分の除去又は不活性ガスによる雰囲気の飽和を行ってもよい。
【0068】
そして、状態調整チャンバ102からの状態調整されたフィードは、スクリュー押出機104に搬送される。スクリュー押出機104は、4つの領域1041、1042、1043、及び1044を備えた構成であってもよい。第1の領域1041は、供給及び加熱領域であり、フィードを受け取り、それを加熱する。第2領域1042は、溶融領域であり、フィード中の硫黄を溶融するのに十分高い温度(ただし、一般にホスト材料を溶融するほど高くない温度)、例えば、約165℃までフィードを加熱する。第3の領域1043は、混合領域であり、溶融硫黄と固体のホスト材料とが完全に混ぜ合わされるようにする。第3の領域は、このような処理を必要とする材料、例えば、グラフェンナノプレートレットに対して、高い剪断力で混合を行って解凝集を行うような構成であってもよい。第4の領域1044は、任意で設けてもよい冷却領域であってもよく、混合フィードを、スクリュー押出機104から排出される前に冷却して(例えば、115~130℃の範囲の温度に冷却して)その粘度を上昇させるために設けられていてもよい。その他の実施形態では、第4の領域1044は、溶融した材料を、確実に霧化させるのに十分な速度でノズルを介して押し出すのに必要な圧力を提供するための圧縮領域であってもよい。スクリュー押出機104は、不活性雰囲気または真空をスクリュー押出機に、特に本実施形態に関して説明した第2および第3の領域に提供するための手段又は装置1045を備えた構成であってもよい。この手段または装置は、ガス供給口/排出口を備えた構成であってもよいし、又は真空ポンプを備えた構成であってもよい。そして、スクリュー押出機からの溶融流体は、溶融流体を受け取り、溶融流体を霧化して霧化流体とするように構成された噴霧器105に搬送されるが、任意で、その後凝固チャンバ106に送られる構成であってもよい。
【0069】
噴霧器105および凝固チャンバ106を
図2においてより詳細に示す。スクリュー押出機からの溶融流体201を噴霧器105によって受け取る構成であってもよく、該噴霧器105は、ポンプ1051、ヒータ1052、及び、ノズル1053を備えた構成であってもよい。溶融流体201(溶融硫黄及び固体微粒子状ホスト材料を含む溶融流体201)は、ノズル1053を通り、溶融硫黄のシェル及び固体微粒子状ホスト材料のコアを有する粒子を含む霧化流体202を形成する。霧化流体202は、霧化後に急速に冷却されて硫黄が凝固化し、単体硫黄から形成されたシェルと、ホスト材料のコアを有する略球状のマイクロ粒子又はナノ粒子を形成する。この固体マイクロ粒子又はナノ粒子を、例えば、固気分離器203にて回収する構成であってもよい。
【0070】
また、凝固チャンバは、(矢印205が示す)冷却ガス流を凝固チャンバに供給するためのガス供給口204を備えた構成であってもよく、冷却ガス流は、霧化流体202を凝固化させるのに役立つ。
【0071】
凝固チャンバの性能は、ガス再循環兼固体分離システム206を使用することによって改善され得る。ガス再循環兼固体分離システム206は、1つまたは複数の追加の固気分離器207および208を備えた構成であってもよく、各追加の固気分離器207および208は、例えば、サイクロン分離器、静電分離器、または1つ以上のフィルタおよびトラップを含むシステムであってもよい。また、ガス再循環兼固体分離システム206は、ガス再循環兼固体分離システム206内を巡るガスの流れを改善するためのアスピレータ209を備えていてもよい。霧化流体202の一部は、冷却ガス流205と共にガス再循環兼固体分離システム206に流入するが、この霧化流体202を1つまたは複数の追加の固気分離器207および208によって収集する構成であってもよい。冷却ガス205は、ガス再循環兼固体分離システム206を循環し、凝固チャンバ106に再び入り、そこで再び霧化流体202の冷却および凝固に貢献する。
【0072】
押出物の集電体への圧着、または2つの集電体間での圧着は、例えば、
図3に示すように、テープキャスティングまたは共押出しを行って、ローラ間で実施されてもよい。
図3において、押出機301は、ローラ304によって集電体303に圧着される押出物302を形成する。
図3の上部において、単層の集電体を含む構成を示し、
図3の下部において2層の集電体を含む構成を示す。
【0073】
収集された固体マイクロ/ナノ粒子は、本明細書に開示されるように、さらに処理されてもよい。
【国際調査報告】