(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】分離された微生物ラクチプランチバクチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)SNI3株、SNI3株に基づく製剤、脊椎動物の雄、繁殖用の雄及びヒト男性に対する、行動を好都合に変化させるため、体脂肪含有量を減少させるため、及び精子数及びテストステロンレベルを増大させるため、並びに、SNI3に基づく調製物:散剤、液剤、シロップ剤、乳製品(milk product)、カプセル剤、錠剤又はチュアブル錠製品を製造するための、その適用。
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240717BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20240717BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240717BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240717BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A61K35/744
A61P3/04
A61P15/00
A61P43/00 111
A23L33/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575447
(86)(22)【出願日】2022-06-04
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 HU2022050050
(87)【国際公開番号】W WO2022254230
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523456146
【氏名又は名称】ハン - レン インスティテュート オブ エクスペリメンタル メディシン
(71)【出願人】
【識別番号】523456157
【氏名又は名称】ザイムバイオシス クタト エス フェジーレスト コルラートルト フェレレーセゲ タールササーグ
(71)【出願人】
【識別番号】523456168
【氏名又は名称】フェレンツィ、シラマー イムレ
(71)【出願人】
【識別番号】523456179
【氏名又は名称】コバチ、クリスティーナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェレンツィ、シラマー イムレ
(72)【発明者】
【氏名】コバチ、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】クコリャ、ヨージェフ
(72)【発明者】
【氏名】バタネ ヴィダース、イルディコー
(72)【発明者】
【氏名】ナギー、イシュトヴァン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD86
4B018ME14
4B065AA01X
4B065BA22
4B065CA41
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC55
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA70
4C087ZA81
4C087ZC41
(57)【要約】
本発明は、NCAIM(P)B001482として寄託された本発明者らによる新規の分離菌であるラクチプランチバクチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)SNI3細菌株、SNI3株に基づく製剤、脊椎動物の雄、繁殖用の雄及びヒト男性に対する、行動及び除脂肪体重を好都合に変化させるため、体脂肪含有量を減少させるため、並びに生殖適応度、精子数及びテストステロンレベルを増大させるための、製剤の適用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NCAIM(P)B001482として寄託された、ラクチプランチバクチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)SNI3細菌株。
【請求項2】
請求項1に記載のラクチプランチバクチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)SNI3細菌株を含有する組成物であって、1グラム又は1ミリリットルの栄養補助食品、飲料水、ジュース飲料、栄養素、飼料、及び/又は食品、栄養補助飼料が、請求項1に記載の細菌株をそれぞれ10
1~10
11CFU/ml及び10
1~10
11CFU/gの濃度で含有する、組成物。
【請求項3】
生ラクチプランチバクチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)SNI3細菌株、熱により死滅させた細菌、細菌溶解物、細菌の任意の構成成分及び/又はその代謝産物を含有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の組成物の適用であって、生殖状態を10~25%増大させるため、精子数を少なくとも10~25%増加させるため、血清中テストステロンレベルを1.5~5倍上昇させるため、攻撃性及び不安を少なくとも10~25%低減させるための、脊椎動物の雄及び人間男性における適用であり、調製物が10
1~10
11CFU/ml又は10
1~10
11CFU/gの請求項1に記載のラクチプランチバクチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)SNI3細菌株を含有する、適用。
【請求項5】
薬草、マンノース又はマンノオリゴ糖を含有することを特徴とする、請求項2~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
請求項2から5のいずれかに記載の組成物の、脊椎動物の雄における、繁殖用動物及びヒト男性の行動を好ましく変更するための使用であって、脊椎動物の雄、繁殖用動物の雄及びヒト男性に、以下のために投与されることを特徴とする、使用:
生殖状態を増大させるため
精子数を増加させるため
テストステロン血清中レベルを上昇させるため
除脂肪筋肉量を増加させ、脂肪量を減少させるため
攻撃性及び不安を低減させるため。
【請求項7】
請求項2~5のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする、散剤、液剤、シロップ剤、乳製品(dairy product)、カプセル剤、錠剤又はチュアブル錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題:
本発明は、NCAIM(P)B001482として寄託された、本発明者らによる分離菌であるラクチプランチバクチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)SNI3細菌株、SNI3株に基づく製剤、脊椎動物の雄、繁殖用の雄及びヒト男性に対する、行動及び除脂肪体重を好都合に変化させるため、体脂肪含有量を減少させるため、並びに生殖適応度、精子数及びテストステロンレベルを増大させるための、製剤の適用に基づく。
【0002】
本微生物株及びその調製物は、精子数及び血清中テストステロンレベルを増大させると同時に、攻撃的行動及び不安の特徴を低減させるものである。
【0003】
ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3細菌組成物を含有する栄養補助飼料及び栄養補助食品(food supplement)には、上記の体組成パラメータ、生殖生理的パラメータ及び行動パラメータに対する相乗効果がある。
【0004】
記載の通りに得て、所望であれば熱又は超音波により前処理したラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3細菌を、製剤技術に一般に使用されている担体、賦形剤を添加することによって、及び/又はプレバイオティクス材料を添加することによって、栄養補助食品及び栄養補助飼料に変換する。
【0005】
本発明が適用される主要な分野:脊椎動物の雄、繁殖用動物及び雄の生殖に関する問題を減少させること、並びに健全な繁殖性を維持すること。加齢、種々の環境毒物、乏しい及び/又は不十分な栄養、不健康な食事及び過度のストレスによって低下した正常な精子数及び精子の質を増大/回復させること。男性更年期のテストステロンレベルの回復。繁殖用動物の雄の攻撃的行動に対して、落ち着いた、平穏で不安のない方向に影響を及ぼすこと。ヒト及び脊椎動物における肥満の低減、筋肉量の増加。
【0006】
本発明の範囲には、
・除脂肪体重を増加させ、体脂肪を減少させることによって理想的な体組成をもたらすため;
・動物の雄及びヒト男性における健全な生殖の状態を維持するため
・雄の繁殖性に関する問題を減少させるため
・加齢、種々の環境毒物、乏しい及び/又は不十分な栄養、不健康な食事及び過度のストレスによって低下した正常な精子数及び精子の質を増大/回復させるため
・男性更年期の低下したテストステロンレベルを回復させるため
・雄の不安及び攻撃性を低減させるため
の、組成物の使用も包含される。
【0007】
用語の定義及び説明に使用される定義:
1.細菌株:細菌のある1種の遺伝的バリアント又は亜型。例えば、乳酸桿菌(Lactobacillus)株は、それに特異的な排他的遺伝情報を有する乳酸細菌である。
ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3株は、1993年にSajobabony(ハンガリー)において繁殖用ブタの糞便から分離された。この株は、National Collection of Agricultural and Industrial Microorganisms、Institute of Food Science and Technology、Hungarian University of Agriculture and Life Sciencesに寄託された(Lactiplantibacillus plantarum SNI3 NCAIM(P)B001482)。
2.CFU:コロニー形成単位。生存可能なコロニーを生成することができる所与の微生物の数。微生物の濃度は液体製品に関してはCFU/mlで示され、固体製品に関してはCFU/gで示される。
3.テストステロン:精巣で産生される最も重要な雄性ホルモン。雄の二次性徴(雄性特異的な骨及び骨格筋、体毛、行動)の発達において大きな役割を果たす。
4.本発明において言及される種の群分け:
4.1.ヒト:分類学的観点では、ヒト属は、動物界、霊長類目、ヒト科(Hominidae)に属する。現在生きているヒトは、ヒト(Homo sapiens)種(「知能を有する人類」)に属する。生物学的性別に従うと、ヒトは女性又は男性である。
4.2.農用動物:その繁殖が農業に密接に関わる。馴化させる中で、人間が野生動物種のいくつかの群れを人工的に管理された繁殖に導入し、人工的な選択によって人工的な品種が創出された。
4.2.1.家畜:経済的利益のために繁殖させる動物を農用動物と称する:脊椎動物、これだけに限定されないが、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ウマ、鳥類:雄鶏、シチメンチョウ、ガチョウ、アヒル、ダチョウ、エミュー、魚類)。
4.2.2.繁殖用動物:優れた性能及び遺伝学的特色を有し、さらなる繁殖のために指定された雄又は雌の動物。繁殖用動物(平均的な繁殖価値を超えるもの)を区別するために、通常は「繁殖用」という接頭辞を使用する(すなわち、繁殖用雌ブタ、繁殖用雌ウマなど)。
4.3.趣味のための動物(Hobby animal):ペット又はコンパニオンアニマルは、多くの場合、家庭に住み、人に世話をされ、人がコンパニオンとして愛着をもつ動物である。そのような動物は、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、一部の齧歯類、魚類、両生類、は虫類及び鳥類であり得る。
4.4.野生脊椎動物:自然界の生息地で生きている脊椎動物。
4.5.絶滅の危機に瀕している動物及び外来動物:深刻な絶滅危機種は、自然界の生息地において絶滅するリスクが極めて高く、即時に介入を行わなければ絶滅する可能性が高い種である(status iucn CR icon.svg)。IUCN絶滅危惧種レッドリスト(Red List of the World Conservation Union)において、そのような種及び亜種は近絶滅種(絶滅危惧IA類)カテゴリー、省略してCRに分類されている。この分類上の位置づけは、元の生息地で生存している種に関して、レッドリストにおいて用いられている状態のうちで最も脅威が深刻な状態である(絶滅状態及び野生絶滅状態は除く)。レッドリスト2010版によれば、1,859種の動物が絶滅の危機に瀕している。
4.6.実験動物:実験のために繁殖され、種々の課題、例えば、薬物試験、生物学的試験、遺伝学的試験及びバイオテクノロジー試験のために使用される動物。マウス、ラット、ネコ、イヌ、ブタ、ショウジョウバエ(Drosophila)及び多くの他の動物種。
5.生殖能:生きている対象の繁殖する能力。脊椎動物の雄の生殖能は雄性配偶子、すなわち精子の数、並びにそれらの生理的特徴、主にそれらの運動性及び繁殖性に依存する。
6.行動:所与の状況において対象によってなされる一連の反応、応答、又は動作。行動の型は生得的なもの又は学習されたものである。
6.1.攻撃性:攻撃性は、エネルギッシュな、衝動的であり、非常に多くの場合に有害な形態の社会的相互作用であり、以下であり得る:
行動の目的が損傷若しくは危害を引き起こすことである場合、負である、
又は
目的のある探求、創出、自己実現(ヒトの場合)のためのものである場合、正である。
別の観点では、パートナー間で異なるリソース(食物、交尾相手など)について争っている場合にも、行動は攻撃的行動である。
実験の状況では、攻撃的行動を試験すること、すなわち、社会的相互作用試験で試験することができる。
6.2.不安:落ち着きのなさ、恐怖。「スタンバイ」状態は実際の又は認識された脅威に関連する。齧歯類は、開けた空間、又は捕食者の匂いを怖がり、それらを回避しようとする。ヒトでは、不愉快とみなされる事象、人前への恐れ、又は以前に経験したトラウマの再発の可能性が不安の原因になり得る。
6.3.強迫性障害(OCD)は、人に望ましくない思考、観念又は感覚が繰り返し生じ(強迫観念)、それにより、何かを反復して行うよう駆り立てられていると感じる(強迫衝動)障害である。齧歯類では、OCD行動をガラス玉覆い隠し試験を用いて試験することができる。
7.ガラス玉覆い隠し試験:ガラス玉覆い隠し試験は、不安又は強迫性(OCD)行動を試験するために使用される、動物モデルの行動を測定するための試験である:この試験は、実験用齧歯類が床敷内の物体を有害又は無害とすることの観察に基づく。例えば、齧歯類をガラス玉を含むケージに入れると、動物は経時的にガラス玉を床敷で覆い隠す。この行動は不安又はOCDに関連する。齧歯類に抗不安薬又はOCDの治療に使用される薬物を注射すると、覆い隠されるガラス玉の量が減少する。
本発明の分野
【0008】
繁殖性に関する問題/障害の低減。脊椎動物の雄及び人間男性における正常な、健全な繁殖性の維持。加齢、種々の環境毒物、栄養不良及び/又は過度のストレスに起因して損なわれた正常な精子数及び精子の質の回復。男性更年期の減退するテストステロンレベルの上昇。繁殖用動物の雄の攻撃的行動を落ち着いた平穏な方向に変化させること。不安の低減。ヒト及び脊椎動物における肥満の低減、筋肉量の増加。
本発明の生物学的背景
【0009】
脊椎動物の雄の生殖能は、雄性配偶子、すなわち精子の数、並びにそれらの生理的特徴、特にそれらの運動性及び受精能に依存する。精子形成は、精巣の精細管(seminiferous tubule)において、セルトリ細胞の助けで行われる。プロセス全体にはおよそ5~8週間かかる。精子の活動性は、尿路に沿った付属腺からの分泌によって補助される。精液の量及び精液中の精子の数は種に応じて変動する:マウス:950万pcs/ml;ラット:4800万33pcs/ml;雄ブタ:154~500ml(100,000pcs/ml);雄ウマ:30~200ml(100,000pcs/ml);雄鶏:0.3~0.8ml(200~350万/ml);シチメンチョウ:0.3~0.5ml(3~600万pcs/ml)。健康な若い男性:1.5~2ml、(3300~3600万pcs/ml)。老齢動物及び人間では、精子数が減少する確率が若年集団と比較して経時的に上昇する。
【0010】
研究により、人間男性の精子数が最後の50年間に40%減少することが示されている。農用動物の間ではそのような強烈な減少は起こらないが、畜産においても人工授精に使用されるドナー雄動物からの精液の質及び数量が重要である。精子数及び質が増大すれば精子ドナーの数を減らすことができ、したがって、動物を維持する費用を減らすことができる。繁殖性の維持及び増強はペットの繁殖に関しても等しく重要な側面である。精子数の増加、したがって生殖能の増大は、絶滅の危機に瀕した種を救うことに関しても、十分な子孫を得るために必須である。
【0011】
テストステロンレベル(血漿/血清中):最も重要な雄性ホルモンであるテストステロンは、精巣の(間質性)ライディッヒ細胞により合成される。テストステロンは、セルトリ細胞に作用することにより、正常な精子が精原細胞から分化するのを補助し、また、雄性特異的行動の調節に関与する。実験用齧歯類におけるテストステロンの血漿中レベル:マウス:1~2ng/ml;ラット:2~2.5ng/ml;他の種におけるテストステロンの血漿中レベル:雄ブタ:4.5~8 15ng/ml、雄ウマ:1.9~2.1ng/ml、健康な若い男性:2.5~8.6ng/ml、老齢男性:1.9~7.3ng/ml。老齢の体において健康なテストステロンレベルを維持することは、生殖だけでなく、心血管及び代謝的な健康にとっても重要である。
【0012】
テストステロンは、中枢神経系を通じて行動に影響を及ぼす。テストステロンはヒト及び動物のどちらにおいても優勢のホルモンであると一般に捉えられている。群集内で生きている種では、向社会的(相互支持的)行動と反社会的な攻撃的なテストステロン依存性行動のどちらも観察され得る。
【0013】
ヒト及び動物の医薬では、精子数、生存能及び繁殖性を増大させるために種々のビタミン調製物(ビタミンA、B、C、D、E)、抗酸化剤(フェルラ酸、補酵素Q、カルニチン、緑茶)、微量栄養素及び多量栄養素(Fe、Zn、Se、Cu、Mn、Cr)が使用される。薬草の中では、ハマビシ(ハマビシ(Tribulus terrestris))、アシュワガンダ(アシュワガンダ(Withania somnifera))及びフェヌグリーク(フェヌグリーク(Trigonella foenum-graecum))が使用される。一部の製剤は列挙したいくつかの構成成分を含有するが、残念ながら、そのような治療は特異的なものではなく、効果は十分でない。
【0014】
本発明の過程で、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3の組成物が雄の繁殖性/生殖能の改善に効果的であることが見いだされた。
【0015】
最近の技術:
米国特許US2021023147(A1)には、高血中グルコースレベルを低下させ、抗酸化活性を有する乳酸桿菌株が記載されている。
【0016】
体重増加を低減する又は体重減少を誘導するためのロイテリサイクリン又はその類似体の使用に関するカナダ特許公開CA3105723(A1)。
【0017】
WO2017223364(A1)の発明は、イヌ科動物の唾液から分離されたラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)細菌の、対象の体重を変化させるための使用に関する。
【0018】
Probio24と称される栄養補助食品(Nutraceutics Ltd.)(https://probio24.nutraceutics.hu/)、11種の異なるプロバイオティクス細菌株:ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及びラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)を含有する市販のプロバイオティクス複合体。
【0019】
Bio-Kult(https://bio-kult.hu/)(Vitaminkosar GmbHにより流通されている)と称される栄養補助食品(dietary supplement)のカプセル剤には、14種の細菌株が含有される:(ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ラムノサス、枯草菌(Bacillus subtilis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ラクチス、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、及びラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)。
【0020】
Borre et al.及びCodagnone et al.による刊行物。マイクロバイオームは原核生物及び真核生物の共生群集であり、宿主生理機能に対して有意な影響を及ぼす(1,2)。
【0021】
Palleja et al.は、マイクロバイオームが体と環境の境界面に見いだされ、マイクロバイオームを構成する種の数は数千種であると推定されることを報告している。最もよく研究されたマイクロバイオームの部分は、腸に存在する群集(腸内マイクロバイオーム)である(3)。
【0022】
Ghosh et al.及びSaeedi et al.による刊行物によれば、乳酸菌は腸内マイクロバイオームのほんの一部であるが、宿主機能に対して有意な有益な効果をもたらす(4,5)。
【0023】
Poutahidis et al.、Warda et al.、Thomas et al.及びPrete et al.による刊行物では、宿主に対して有益な効果をもたらすプロバイオティクス細菌の中で、乳酸桿菌が最も卓越した属であることが明らかにされている。乳酸菌は、有害な種に取って代わることによって腸内機能に著しい効果をもたらす。乳酸菌は、免疫機能、粘膜免疫を刺激し、抗肥満作用を有し、又、抗炎症及び抗酸化代謝産物を産生する(6~9)。
【0024】
過去数年のPoutahidis et al.、Fadda et al.、Sheikh et al.、Varian et al.による刊行物では、ある特定の乳酸菌に雄の生殖機能に対する有益な効果がある可能性が言及されている(10~13)。
【0025】
認識された事項
本発明を開発する中で、本発明者らの実験の結果から、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3と称される本発明者らによる細菌分離株(NCAIM(P)B110482として寄託された)に以下の効果があることが明らかになっている:
・生殖促進(精子数及びテストステロンレベルの増大)効果
・サイコバイオティクス(抗不安及び抗攻撃性)効果
及び
・体脂肪の減少。
【0026】
この新規の複合的な有益な身体的及び行動的効果を実験用齧歯類モデルにおいて試験した。
【0027】
主要な請求項に従った一般的な解決法の記載
本発明は、NCAIM(P)B110482として寄託された本発明者らによる細菌分離株であるラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3株、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3株を含有する調製物、並びに、脊椎動物の雄、繁殖用動物の雄及び人間男性に対する、行動、除脂肪体重を好都合な方向に変化させるため、体脂肪を減少させるため、生殖能、精子数及び質を増大させるため、並びにテストステロンレベルを上昇させるための、調製物の適用を包含する。
【0028】
好ましい一態様によると、本発明による調製物は、栄養補助食品、飲料水、ジュース飲料、飼料、食品、栄養補助飼料/食品1ミリリットル又は1グラム当たり1×101~1011CFU(コロニー形成単位)のSNI3細菌を含有する。
【0029】
前記調製物は、生きている細菌株、熱により失活させた細菌、細菌溶解物、任意の細菌構成成分及び/又は代謝産物を含有することが好ましい。
【0030】
本発明はさらに、SNI3細菌株を含む調製物/組成物の使用にも関する。組成物の適用は、脊椎動物の雄及びヒト男性の生殖の状態を改善するため、精子数を増加させるため、攻撃性及び不安を低減させるためのものである。
【0031】
本発明の組成物は、薬草、マンノース又はマンノオリゴ糖もまた含有してもよい。
【0032】
本発明のある態様では、前記組成物は、栄養補助飼料又は栄養補助食品として、液体製剤又は固形製剤であり、ここで、前記固形製剤は、散剤、錠剤、チューイングタブレット、カプセル剤からなる群から選択され、前記液体製剤は、経口液剤、乳剤、シロップ剤及び乳製品(milk product)からなる群から選択される。
【0033】
本発明のさらなる態様では、公知の様式で調製され、所望であれば熱又は超音波で前処理した細菌ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3を含む前記組成物を、製剤技術で一般に使用されるものから選択される担体及び賦形剤と共に医薬調製物又は栄養補助食品に調製する。
【0034】
2018年~2021年に成体雄C57BL6マウス及びウィスターラットに対して本発明者らの実験を実施した。動物を、Institute of Experimental Medicine、Eotvos Lorand Research Network、Budapest、Hungaryの最小疾患(MD)レベルの動物施設において標準的な実験条件(温度:21±1℃;湿度:50%明暗サイクル:12時間の暗及び12時間の明)下で維持した。動物に標準的な齧歯類用飼料を自由に摂取させた。
【0035】
ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3株を閉じた瓶中、MRS(deMan、Rogosa、及びSharpe培地)で37℃で48時間成長させ、次いで、細菌培養物を遠心分離し、細菌を滅菌飲料水中に再懸濁させた。動物にラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3懸濁液を4週間にわたって与え、細菌溶液を含有する瓶を毎日交換した。ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3の濃度は1~5×106CFU/mlであった。対照動物には飲用として滅菌水を与えた。
【0036】
動物にラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3培養物の細胞を含まない上清を4週間にわたって飲用させた場合、対照動物にはMRS培地を飲用として与えた。
【0037】
他の場合では、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3細胞を生理食塩水に懸濁させ、次いで、80℃で1時間加熱した。加熱処理した細菌を滅菌飲料水と混合し、動物に飲料液として4週間にわたって与えた。
【0038】
さらに他の場合では、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3細胞を生理食塩水に懸濁させ、超音波処理した。次いで、細胞溶解物を0.2μmのフィルターを通過させ、動物に飲用として4週間にわたって与えた。
【0039】
動物の体重を週に1回測定し、体組成を処置の開始前及び実験の最後にEchoMRI(商標)によって分析した。
【0040】
実験の最後に、社会的相互作用試験及びガラス玉覆い隠し試験を実施した。動物を断頭し、体幹血を採取し、遠心分離し、テストステロン濃度を血清からELISAを使用して測定した。精子を精巣上体尾部から単離し、ブルカーチャンバーで計数した。解剖した胸腺、副腎、脾臓及び精巣の重量を測定した。肝臓の左葉、結腸及び一方の精巣を液体N2で凍結させた。結腸内容物試料をドライアイスで凍結させた。他方の精巣をホルマリンで固定し、パラフィンに包埋して、ヘマトキシリン-エオシン染色用の組織学的切片を調製した。
【0041】
活性成分の使用を以下の例及び例に関する図面によって例示する。
図面の一覧:
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】生ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3による処置の雄マウスの体脂肪のパーセンテージに対する効果を示すグラフである。
【
図2】ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3による処置の雄マウスにおける攻撃的行動の要素に対する効果を示すグラフである。
【
図3】ガラス玉覆い隠し試験の結果を示すグラフである。
【
図4】対照群に対する処置群における相対的な精巣重量を示すグラフである。
【
図5】ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3で処置したマウス及び対照マウスから得た精巣の組織像を示す写真である。
【
図6】ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3で処置したマウス及び対照マウスの精巣内の精細管の面積を示すグラフである。
【
図7】ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3で処置したマウスにおける、対照と比較した精巣の胚上皮の肥厚を示すグラフである。
【
図8】精巣上体から単離された精子の数を示すグラフである。
【
図9】血清中テストステロンレベルの変化を示すグラフである。
【
図10】異なる形態のラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3のマウスの精巣重量に対する効果を示すグラフである。
【
図11】異なる形態のラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3のマウスの精子数に対する効果を示すグラフである。
【
図12】対照と比較した、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3を用いて処置されたラットの精巣上体から単離された精子の数を示すグラフである。
【
図13】種々の(プレバイオティクス(prebiotic))炭水化物のラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3の細胞数に対する効果を示すグラフである。
【0043】
図1では、生ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3を用いた処置の体脂肪に対する効果が確認される。相対的な体脂肪含有量がラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3による処置に応答して減少することが明らかになった:EchoMRIによって得られたデータ、平均値(mean)+SEM値、対応のないt検定、p=0.014。
【0044】
図2では、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3の社会的相互作用試験における攻撃的行動要素(威嚇、攻撃、かみつき)の頻度に対する効果が確認される。平均値(mean)+SEM値、対応のないt検定、p=0.05。攻撃的行動要素の頻度が、対照動物の行動の値が「3」であるのと比較して、ゼロに近いことがはっきり認められる。
【0045】
図3では、ガラス玉覆い隠し試験の結果が確認される。この試験は不安を測定するものである。マウスはケージ内に置かれたガラス玉などの見慣れない物体を覆い隠し、覆い隠されたガラス玉の数が不安の程度に比例する。本図には、対照(水道水)マウス及びラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3で処置したマウスによって覆い隠されたガラス玉の数が示されている。平均値(average)+SEM。対応のないt検定、p=0.0011。
【0046】
図4には、生ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3の相対的な精巣重量(体重1g当たりの精巣重量(mg))に対する効果が示されている。マウスに細菌溶液を飲料水を通じて4週間にわたって与えた。平均値(average)+SEM。対応のないt検定、p=0.0011。
【0047】
図5では、ヘマトキシリン-エオシン染色した精巣切片の顕微鏡写真が見いだされる。滅菌水道水を飲用させたマウスと比較して、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3で処置したマウス由来の切片では、精細管、胚上皮及び間質細胞の面積の拡大を観察することができる。
【0048】
図6には、精細管面積の定量的変化が示されている。4週間にわたって水道水を飲用させたマウスでは面積が16500μm
2であったのが、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3で処置したマウスでは17500μm
2に増大し、これは、面積が6%増大したことを意味する。平均値(average)+SEM。対応のないt検定、p<0.05。
【0049】
図7では、4週間にわたってラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3溶液を飲用させた動物における胚上皮の水道水を飲用させたマウスにおける胚上皮と比較した肥厚が確認される。平均値(average)+SEM。対応のないt検定、p=0.0002。
【0050】
図8では、精巣上体から単離される精子の数がラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3溶液を用いて処置したマウスにおいて対照と比較して増加することがはっきりと認識される。処置群では水道水を飲用させた群と比較して精子数が3倍に増加した。
【0051】
図9には、4週間にわたって水道水を飲用させた対照マウス及びラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物を用いて処置したマウスにおける血清中テストステロンレベルの変化が示されている。処置群ではテストステロンレベルが8倍に上昇した。ELISAによって得られたデータ、平均値(average)+SEM。対応のないt検定、p=0.003。
【0052】
図10では、異なる形態
*のラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3のマウス精巣重量に対する効果が確認される(
*生細菌、細菌培養物の細胞を含まない上清、細菌溶解物及び熱失活させた細菌)。
【0053】
図11では、以下を飲用させたマウスの精子数(精巣上体から単離されたもの)を明白に確認することができる:
・水道水(対照)
・生ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3、
・SNI3細菌培養物の細胞を含まない上清、
・SNI3細菌溶解物、及び
・熱失活させたSNI3細菌。
平均値(average)+SEM。対応のないt検定、
***p=0.0024;
*p=0.0154。
生ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3を用いて処置したマウスの群において見いだされた精子数が最も多く、対照と比較して2.6倍の変化であった。
【0054】
図12には、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物を与えたウィスターラットにおける対照と比較した精子数の変化が示されている。処置群の精子数が無処置の対照群の1.3倍であると結論づけられる。平均値(average)+SEM。対応のないt検定、p=0.0402。
【0055】
図13では、光学濃度によって測定した、種々の炭水化物(培養培地に対して2%添加した)のラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3培養物(37℃、48時間)の成長に対する効果。炭水化物を含まないMRS培地:MRS-G;G:グルコース、M:マンノース;MO:マンノオリゴ糖。本図から、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3の成長のためにマンノース及びマンノオリゴ糖の添加が最良であることがはっきりと認識される。
【0056】
実施例
(例1)
ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物の雄C57BL6マウスに対する効果。
ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3細菌の潜在的な治療効果を試験するために、成体雄マウスを2つの群にランダムに割り当てた:
4週間にわたって、一方の群のマウス(対照)には滅菌濾過した水道水を与え、他方の群には滅菌濾過した水道水中に懸濁させたラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3の生細菌懸濁液を1~5×106CFU/mlの用量で与えた。
【0057】
1a.濾過した水道水を飲用として4週間にわたって与えたマウス
【0058】
1b.ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物を4週間にわたって与えたマウス
【0059】
細菌組成物の体組成に対する効果:4週間の処置期間の最後に、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3で処置したマウスの相対的な脂肪量は8%から5%まで減少した。Echo-MRIによって得られたデータ。平均値(mean)+SEM値、対応のないt検定、p=0.014。
図1に、マウスの体重に対する体脂肪含有量が示されている:a.)濾過した水道水を飲用させたマウス又はb.)ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物を飲用させたマウス。
【0060】
(例2)
手順は、この場合は社会的相互作用試験で攻撃的行動を試験したこと以外は例1におけるものと同じであった。ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物の社会的(攻撃的)行動に対する効果が
図2において確認される。この図には、攻撃的行動要素の頻度がおよそ3であり、一方、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物を用いて4週間にわたって処置したマウスの攻撃的行動はほぼゼロまで減少したことが示されている(平均値(mean)+SEM値、対応のないt検定、p=0.05)。
【0061】
(例3)
ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物の不安に対する効果。
手順は、この場合、対照マウス及び処置マウスに対してガラス玉覆い隠し試験を実施したこと以外は例1におけるものと同じであった。この試験は、不安及び強迫行動を測定するものである。覆い隠されたガラス玉の数が少ないほど、動物の不安が少ない。この試験により、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3を用いた処置したマウスの不安が水道水のみで処置したマウスの不安と比較して有意に少ないことが明らかになった(
図3)。
【0062】
図3には、マウスをラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物を用いて4週間処置することにより、動物の不安が低減することが示されている。ガラス玉覆い隠し試験の結果:ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物を与えた動物では、水道水を飲用させた動物と比較して覆い隠されたガラス玉の数が少なかった。
図3には、対照(水道水を飲用させた)マウス及びSNI3で処置したマウスによって覆い隠されたガラス玉の数が示されている(平均値(mean)+SEM値、対応のないt検定、p=0.0011)。
【0063】
(例4)
ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3のマウス精巣重量に対する効果。
手順は例1におけるものと同じであった。実験の最後に、マウスを断頭し、精巣を取り出し、秤量した。ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3で処置したマウスでは対照と比較して精巣の絶対的な重量及び相対的な重量(体重に対して正規化したもの)が増加したことが示された。精巣測定の結果は、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3で処置したマウスの精巣重量が対照動物(水道水を飲用させた)の精巣重量よりも有意に重いものとして
図4に示されている。ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3で処置したマウスの精巣重量は対照の精巣重量の1.11倍であった。
図4には、組成物の投与後の正規化された精巣重量の増加が示されている。4週間にわたる生ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物の飲用の精巣重量(体重に対するもの:mg単位の精巣重量/g単位の体重)に対する効果。平均値(mean)+SEM値、対応のないt検定、p=0.0114。この段階で精巣の組織学的検査を行った。
図5には精巣の組織像が示されており、
図6には精細管の面積の変化が示されており、
図7には胚上皮の肥厚が示されている。
【0064】
(例5)
ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物の精子数に対する効果。
手順は例1におけるものと同じであった。実験の最後に、精巣上体尾から単離した精子の数を計数した。ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物を摂取したマウスの精子数は対照と比較して3倍であった。
図8には、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3で処置したマウスの精子の数及び水道水を飲用させた対照動物の精子の数が示されている。平均精子数/μm
2+SEM、対応のないt検定、p<0.001。
【0065】
(例6)
ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物のマウスにおける血清中テストステロンレベルに対する効果。
手順は例1におけるものと同じであった。実験の最後にELISAを使用して血清テストステロン濃度を測定した。結果によると、テストステロン濃度は、水道水対照では1.46±0.54ng/mlであったのと比較して、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物を用いて処置したマウスでは11.9±3.46ng/mlであった(8.15倍増加した)。
【0066】
(例7)
生ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3、細菌培地の細胞を含まない上清、熱失活させた細菌及び細菌溶解物の効果の比較。
【0067】
ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3の活性構成成分を調査するために、成体雄マウスを以下の5つの群に分けた:1:滅菌濾過した水道水を飲用させる対照マウス飲料;2:1~5×10
6CFU/mlの生細菌を滅菌濾過した水道水に混合したものを含有するラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物を飲用させるマウス;3:48時間ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3培養培地の細胞を含まない上清を飲用させるマウス;4.1~5×10
6CFU/mlのラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3の溶解させた懸濁液を飲用させるマウス(溶解物は以下の通り調製した:細菌懸濁液をリゾチームで消化し(4時間、37℃)、25×1分間、20kHzで超音波処理し、20μmのフィルターを通して濾過した);5.1~5×10
6CFU/mlを含有する、熱失活させた(80℃、1時間)形態のラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物を飲用させるマウス。動物をこれらの細菌形態を用いて4週間にわたって処置した。
図10に種々の細菌調製物の精巣重量に対する効果が示されている。生ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3で最も高い精巣成長促進効果が示されたが、熱失活形態でも有意な効果が認められた。
【0068】
図11に種々の細菌調製物の精子数に対する効果が示されている。実験の最後に、精巣上体から精子を調製し、ブルカーチャンバーで計数した。
図11に示されている通り、生細菌を用いて処置した群において精子数の最も大きな増加が認められたが、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3培養物の細胞を含まない上清を用いて処置した群においても有意な増加が見いだされた。
【0069】
(例8)
ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物のラットの精子数に対する効果。本試験では、成体雄ウィスターラットを2つの群に分けた:一方の群の動物には滅菌濾過した水を飲用として与え、他方の群のラットには滅菌水道水中に混合したラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物を1~5×10
6CFU/mlの用量で飲用させた。どちらの処置も4週間行った。実験の最後に、死体解剖後、精巣上体から精子を調製し、ブルカーチャンバーで計数した。
図12に実験の結果が示されている。
図12には、生ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3組成物によりラットにおける精子数の30%の増加がもたらされたことが示されている。
【0070】
(例9)
プレバイオティクスのラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3の成長に対する効果
ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3の正の作用をプレバイオティクスによってさらに支持することができる。プレバイオティクスは、有益な細菌の成長又は作用を、特別な細菌の食物を提供することによって促進する化合物である。以下のプレバイオティクスを試験した:ラクトース、キシロース、マンノース、キシロオリゴ糖及びマンノオリゴ糖。これらの効果を、最も好ましい細菌のエネルギー源であるグルコースと比較した。種々の炭水化物の存在下で細菌培養物の595nmにおける光学濃度をFiltermax Multimode Readerを使用して測定することにより、細菌の成長を観察した。データをBaranyiモデルに当てはめ、成長パラメータ(成長スピード、遅滞期、及び最大細胞密度)を決定した。炭水化物を含まないMRS培地を陰性対照と使用した。試験材料は0.2%濃度で添加した。
図13に、種々の炭水化物のラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3の細胞密度に対する効果が示されている。
図13に示されている通り、ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3の成長を支持するためにマンノース及びマンノオリゴ糖が最良であった。これらの炭水化物の最良の供給源はアロエベラ(aloe vera)である。
【0071】
本発明による解決法を使用して得られる利点の説明:
ラクチプランチバクチルス・プランタルムSNI3株(NCAIM(P)B001482として寄託された)微生物に基づく調製物は、以前には知られていなかった様式で、以下の正の生理的及び精神的効果を同時に示す:
-体脂肪パーセンテージの低下(30%超)
-抗不安活性;
-精巣の相対的な重量及び精細管(seminiferous duct)の面積の増大、胚上皮の肥厚(<10%)
-精子数の増加(<1.5倍);
-テストステロンレベルの上昇(5~8倍)
-テストステロンレベルの上昇は一方で攻撃的行動の疑いを伴うものではなく、攻撃性の値は実際にゼロに近い。
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【国際調査報告】