(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】月面電力グリッドアセンブリ
(51)【国際特許分類】
H02S 10/40 20140101AFI20240717BHJP
H02S 10/20 20140101ALI20240717BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240717BHJP
B60L 53/51 20190101ALI20240717BHJP
B60L 53/57 20190101ALI20240717BHJP
B64G 4/00 20060101ALN20240717BHJP
B64G 99/00 20090101ALN20240717BHJP
【FI】
H02S10/40
H02S10/20
H02J7/00 303A
B60L53/51
B60L53/57
B64G4/00
B64G99/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576059
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 US2022032988
(87)【国際公開番号】W WO2022261423
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523462468
【氏名又は名称】アストロボティック テクノロジー,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ASTROBOTIC TECHNOLOGY,INC.
【住所又は居所原語表記】1016 N Lincoln Ave,Pittsburgh,Pennsylvania 15233 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソーントン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクソン,ダン
(72)【発明者】
【氏名】オバースト,トーマス
【テーマコード(参考)】
5F251
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5F251BA02
5F251BA05
5F251JA28
5F251JA30
5F251KA04
5F251KA10
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA04
5G503DA17
5G503FA06
5H125AA20
5H125AC09
5H125AC12
5H125BE02
5H125FF14
(57)【要約】
【解決手段】 予め選択された2つの月面サイトに、相互接続された垂直太陽電池アレイの対が提供される。ケーブルは、一方の垂直太陽電池アレイと他方の垂直太陽電池アレイとの間で電力を伝送し、他方の垂直太陽電池アレイが集めていない場合に、一方の垂直太陽電池アレイが集めたエネルギーを他方の垂直太陽電池アレイに送り、他方の垂直太陽電池アレイの温度を維持できるようにする。蓄電デバイスは、垂直太陽電池アレイから太陽エネルギーを受け取る。給電インターフェースは、月面にある1つ又は複数の月面デバイスへエネルギーを分配する。着陸ビークルには、相互接続された1対の垂直太陽電池アレイ、ケーブル、蓄電デバイス、給電インターフェースのうち少なくとも1つを搭載するためのペイロードが搭載されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の月面サイトと第2の月面サイトからなる1対の予め選択された月面サイトを有する月面に配備するための月面電力グリッドアセンブリであって、
太陽エネルギーを集めるために第1の月面サイトに配置された第1の垂直太陽電池アレイと、太陽エネルギーを集めるために第2の月面サイトに配置された第2の垂直太陽電池アレイとからなる、相互接続された1対の垂直太陽電池アレイと、
第1の垂直太陽電池アレイと第2の垂直太陽電池アレイの間で電力を伝送するケーブルであって、一方の垂直太陽電池アレイがエネルギーを集めていない場合に、他方の垂直太陽電池アレイの温度を維持するために、集めたエネルギーを他方の垂直太陽電池アレイに送ることができるケーブルと、
第1の垂直太陽電池アレイと第2の垂直太陽電池アレイとから太陽エネルギーを受け取る蓄電デバイスと、
月面にある1つ又は複数の月面デバイスへエネルギーを分配するための給電インターフェースと、
相互接続された前記1対の垂直太陽電池アレイ、前記ケーブル、前記蓄電デバイス、前記給電インターフェースのうち少なくとも1つを運搬するためのペイロードを有する着陸ビークルと、
を備える、月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項2】
前記ペイロードは、相互接続された前記1対の垂直太陽電池アレイ、前記ケーブル、前記蓄電デバイス、及び前記給電インターフェースを含む、請求項1に記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項3】
第2の垂直太陽電池アレイが月面ビークルに搭載され、前記着陸ビークルが第1の月面サイトに着陸して第1の垂直太陽電池アレイを配置し、前記月面ビークルが第2の垂直太陽電池アレイを第2の月面サイトに運搬することができる、請求項2に記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項4】
前記月面ビークルは自律型自動運転トレーラーである、請求項3に記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項5】
前記ペイロードは複数の移動式給電アウトレットを含む、請求項4に記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項6】
前記複数の移動式給電アウトレットは、前記着陸ビークルが第1の月面サイトに着陸する前に前記自律型自動運転トレーラーに格納される、請求項5に記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項7】
前記複数の移動式給電アウトレットの各々は月面ローバーである、請求項5に記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項8】
前記月面ビークルが前記着陸ビークルに繋がれている、請求項3記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項9】
前記着陸ビークルがブレーキングステージを含む、請求項2に記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項10】
月面ビークル、移動式給電アウトレット、及びローバーからなる群から選択される少なくとも1つのサーフェスビークル(surface vehicle)を更に含んでおり、
前記着陸ビークルは、第1の着陸ビークルと第2の着陸ビークルからなる1対の着陸ビークルのうちの1つであり、第1の垂直太陽電池アレイが第1の着陸ビークルに搭載され、第2の垂直太陽電池アレイが第2の着陸ビークルに搭載され、
第1の着陸ビークルが第1の月面サイトに着陸して第1の垂直太陽電池アレイを配置し、第2の着陸ビークルが第2の月面サイトに着陸して第2の垂直太陽電池アレイを配置し、
前記サーフェスビークルは、前記1対の垂直太陽電池アレイの一方から他方の垂直太陽電池アレイまで、月面にわたってケーブルの一端を運んで、前記1対の垂直太陽電池アレイを互いに接続することができる、請求項1に記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項11】
前記給電インターフェースは、移動式給電アウトレット、科学機器、ツール、サーフェスローバー、通信アンテナ、及び採掘装置からなる群から選択される月面デバイスに電力を供給することができる、請求項1記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項12】
第1の垂直太陽電池アレイと第2の垂直太陽電池アレイは、垂直太陽電池アレイ技術発電機である、請求項1記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項13】
第1の月面サイトと第2の月面サイトは、約10度未満の傾斜を有する着陸面を有する、請求項1に記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項14】
第1の月面サイトと第2の月面サイトは、365日にわたって95%を超える照明を分担する、請求項1に記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項15】
前記蓄電デバイスはバッテリーである、請求項1に記載の月面電力グリッドアセンブリ。
【請求項16】
月面に月面電力グリッドを構築する方法であって、
第1の月面サイトと第2の月面サイトとからなる、予め選択された月面サイトの対を特定する工程と、
月面ビークルに搭載された第1の垂直太陽電池アレイ及び第2の垂直太陽電池アレイからなる1対の相互接続された垂直太陽電池アレイと、それらの間で電力を送るケーブルと、給電インターフェースと、それらに接続された蓄電デバイスとを有する着陸ビークルを準備する工程と、
前記着陸ビークルを第1の月面サイトに着陸させて、そこに第1の垂直太陽電池アレイを配置する工程と、
第2の垂直太陽電池アレイを前記月面ビークルによって第2の月面サイトに運ぶ工程と、
前記蓄電デバイスへの貯蔵と前記給電インターフェースを介した送電のために、第1の垂直太陽電池アレイと第2の垂直太陽電池アレイとで電力を集める工程と、
を含む、方法。
【請求項17】
第1の垂直太陽電池アレイが電力を集めていない場合に、第2の垂直太陽電池アレイから第1の垂直太陽電池アレイに電力を送り、第1の垂直太陽電池アレイを加熱する工程と、
第2の垂直太陽電池アレイが電力を集めていない場合に、第1の垂直太陽電池アレイから第2の垂直太陽電池アレイに電力を送り、第2の垂直太陽電池アレイを加熱する工程と、
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
月面に月面電力グリッドを構築する方法であって、
第1の月面サイトと第2の月面サイトとからなる、予め選択された月面サイトの対を特定する工程と、
第1の垂直太陽電池アレイを有する第1の着陸ビークルを第1の月面サイトに着陸させる工程と、
第2の垂直太陽電池アレイを有する第2の着陸ビークルを第2の月面サイトに着陸させる工程と、
蓄電デバイスと給電インターフェースとを、ケーブルで第1の垂直太陽電池アレイと第2の垂直太陽電池アレイに接続する工程と、
前記蓄電デバイスへの貯蔵と前記給電インターフェースを介した送電のために、第1の垂直太陽電池アレイと第2の垂直太陽電池アレイとで電力を集める工程と、
を含む、方法。
【請求項19】
第1の垂直太陽電池アレイが電力を集めていない場合に、第2の垂直太陽電池アレイから第1の垂直太陽電池アレイに電力を送り、第1の垂直太陽電池アレイを加熱する工程と、
第2の垂直太陽電池アレイが電力を集めていない場合に、第1の垂直太陽電池アレイから第2の垂直太陽電池アレイに電力を送り、第2の垂直太陽電池アレイを加熱する工程と、
を含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2021年6月11日に出願された、「METHODS,SYSTEMS,AND APPARATUS FOR ESTABLISHING A LUNAR POWER GRID」と題する同時係属中の米国仮出願第63/209,664号の35 U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、月面電力グリッドを設けるためのシステム、方法、及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
月における我々の共有する野心の全ては、継続的で信頼できる電力の確立にかかっている。宇宙飛行士の居住施設、現地資源利用パイロットプラント、長期間のローバー移動、及び商業ビジネス計画は全て、途切れないかなりの電力を必要とする。電力に対する要求は、地表での活動からだけでなく、住むのに適さず、短い月面の一日を生き延びる必要性からも来るものである。
【0004】
以前に使用されていた従来の月面発電システムは、各ミッション用に開発されたものであった。システムの運用はもちろんのこと、メンテナンスについても事前に十分に決定しておく必要があった。このようなカスタム設計のシステムは、ミッションに多大なコストと複雑さを加えるものであった。さらに、これらのシステムを通じて供給される電力は、一時的で限られたものであった。
【0005】
将来のミッションについて提案されている月面電力解決策のほとんどは、大幅な技術開発を必要としており、また、技術成熟度の低いシステムを利用している。例えば、電力ビーミングは、まだ宇宙で展開されて利用されていない。月面核分裂発電システムは、まだ設計の初期段階にあり、民間セクターによる配備・運用が可能になるまでには、大幅な政策展開が必要であろう。したがって、従来の月面電力や提案されている月面発電システムの欠点を持たない、改良された月面電力システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
様々な実施態様において、月面に配備するための月面電力グリッドアセンブリが提供される。月面は、第1の月面サイトと第2の月面サイトとからなる予め選択された1対の月面サイトを有する。相互接続された1対の垂直太陽電池アレイが提供され、当該1対の垂直太陽電池アレイは、太陽エネルギーを集めるために第1の月面サイトに配置された第1の垂直太陽電池アレイと、太陽エネルギーを集めるために第2の月面サイトに配置された第2の垂直太陽電池アレイからなる。ケーブルは、第1の垂直太陽電池アレイと第2の垂直太陽電池アレイの間で電力を伝送し、一方の垂直太陽電池アレイがエネルギーを集めていないときに、他方の垂直太陽電池アレイの温度を維持するために、集めたエネルギーを他方の垂直太陽電池アレイに送ることができる。蓄電デバイスは、第1の垂直太陽電池アレイと第2の垂直太陽電池アレイとから太陽エネルギーを受け取る。給電インターフェースは、月面にある1つ又は複数の月面デバイスへエネルギーを分配する。着陸ビークルは、相互接続された1対の垂直太陽電池アレイ、ケーブル、蓄電デバイス、及び給電インターフェースの少なくとも1つを搭載するためのペイロードを有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、開示される主題に従った月面電力グリッドの一実施形態の概略図である。
【0008】
【
図2】
図2は、開示される主題に従った、月面電力グリッドアセンブリの構成要素を搭載する着陸ビークルの実施形態のブロック図である。
【0009】
【
図3】
図3は、開示される主題に従った垂直太陽電池アレイのブロック図である。
【0010】
【
図4】
図4は、開示される主題に従った例示的なプロセスである。
【0011】
【
図5】
図5は、開示される主題に従った月面電力グリッドの別の実施形態の概略図である。
【0012】
【
図6】
図6は、開示される主題に従った別の例示的なプロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の主題は、月面電力グリッドを設けるためのシステム、方法、及び装置に関する。月面電力グリッドは、垂直太陽電池アレイを予め選択された2つの月面サイトに運ぶ1つ又複数の着陸ビークルを用いて設けることができる。垂直太陽電池アレイには、給電インターフェースと蓄電デバイスとが接続される。給電インターフェースは、ツール、ローバーや他のビークル、その他の機器を含む様々なデバイスの給電ポートとして機能することができる。
【0014】
幾つかの実施形態では、単一の着陸ビークルが、月面電力グリッドの全ての構成要素を月面に運ぶ。そのような実施形態では、着陸ビークルは、垂直太陽電池アレイの一方を配置するために、予め選択された第1の月面サイトに着陸する。他方の垂直太陽電池アレイは、その垂直太陽電池アレイを予め選択された第2の月面サイトに運搬できる月面ビークルに搭載することができる。2つの垂直太陽電池アレイは相互接続することができる。
【0015】
他の実施形態では、複数の着陸ビークルが電力グリッドの構成要素を地表に運ぶ。ある着陸ビークルは、第1の垂直太陽電池アレイを第1の月面サイトに運ぶ。第2の着陸ビークルは、第2の垂直太陽電池アレイを第2の月面サイトに運ぶ。ローバーなどの月面ビークルが、ケーブルの少なくとも一端を一方の月面サイトから他方の月面サイトまで運び、2つの垂直太陽電池アレイを互いに接続する。
【0016】
本開示の主題である月面電力グリッドは、有人着陸システム(HLS)、月面探査ビークル(LTV)、地表居住施設(surface-based habitats)、現地調達における資源活用(in-situ resource utilization)(ISRU)、商業月輸送サービス(CLPS)、ディスカバリークラスのミッションなどの様々な構造物、機能、及びミッションに電力を供給することができる。電力グリッドは、科学機器、表面探査ローバー、通信アンテナ、採掘装置、及びその他のデバイスを含む様々なデバイスに電力を供給することができる。
【0017】
添付図面に関連して以下に提供される詳細な説明は、実施例の説明として意図されたものであり、本実施例が構築又は利用され得る唯一の形態を表すことを意図したものではない。本明細書は、実施例の機能と、実施例を構築し動作させるためのステップのシーケンスとを説明する。しかしながら、同じ又は同等の機能及びシーケンスが、異なる実施例によって達成されてよい。
【0018】
「ある実施形態」、「実施形態」、「例示的な実施形態」、「ある実装」、「実装」、「ある実施例」、「実施例」等への言及は、記載される実施形態、実装、又は実施例が特定の特徴、構造、又は特性を含み得るが、全ての実施形態、実装、又は実施例が必ずしも特定の特徴、構造、又は特性を含むとは限らないことを意味している。さらに、このような表現は、必ずしも同じ実施形態、実装、又は実施例を指すものではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性が、ある実施形態、実装、又は実施例に関連して記載される場合、そのような特徴、構造、又は特性は、明示的に記載されるか否かにかかわらず、他の実施形態、実装、又は実施例に関連して実装されてよいことを理解のこと。
【0019】
記載される主題の1つ又は複数の実施形態の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が説明される。しかしながら、このような実施形態は、これらの具体的な詳細がなくても実施することができることを理解のこと。
【0020】
主題の開示の様々な特徴が、図面を参照してより詳細に説明されるが、ここで、同じ符号は、通常、全体を通して、同様の要素又は対応する要素を指す。図面及び発明の詳細な説明は、特許請求の範囲に記載される主題を、説明される特定の形態に限定することを意図するものではない。むしろ、特許請求の範囲に記載される主題の精神及び範囲内の全ての変更、均等物、及び代替物を包含することが意図されている。
【0021】
本開示は、月に飛行可能な1つ又は複数のローンチビークル(launch vehicles)に統合されるシステムに関している。起動されると、このシステムは、戦略的に決定された月面上の2つの相互に接続された位置に配置された垂直太陽電池アレイを介して豊富で安価な太陽エネルギーを利用して、複数年有効な地表システムに電力を供給することができる。
【0022】
稼働時において、各垂直太陽電池アレイは太陽光発電を順番に行って、月面で配電する。垂直太陽電池アレイはまた、月面の暗い時間帯でも温かさを維持して存続するために、バッテリーに電力を蓄える。本システムは、モバイル給電アウトレットとして機能するワイヤレス充電器及び/又は有線充電器を装備したテザー(tethered)月面ローバーを使用することで、ローカルエリア(キロメートル規模)の任意の地表資産(surface asset)に電力を分配する。
【0023】
本システムは、資源が豊富な鉱床や、科学的又は商業的に興味深い特徴を持つ月面サイトに配備することができる。さらに、一度に何年も運用できるように、月面資産をよりロバストで低価格にすることができる。月面ミッションは、一般的な14日間の期間を超えて延長されることがあるため、このシステムは数十年以上にわたって月の開発に不可欠なインフラストラクチャーとなるであろう。
【0024】
ここで図面、特に
図1~3を参照すると、全体を通して符号100で示される、月面電力グリッドを構築するためのシステムが示されている。システム100は、その上にペイロード112を有する着陸ビークル110を含んでよい。ペイロード112は、1対の垂直太陽電池アレイ114~116、給電インターフェース118、及び蓄電デバイス120を含んでよい。垂直太陽電池アレイ114~116、給電インターフェース118、及び蓄電デバイス120は、それらの間で電力を送るためのケーブル121で互いに接続されている。
【0025】
一方の垂直太陽電池アレイ116は、月面ビークル122に搭載される。月面ビークル122は、自律型自動運転トレーラー、車輪付きフレーム、又は、垂直太陽電池アレイ116に装着された一組の車輪であってよい。着陸ビークル110は、予め選択された2つの月面サイト126~128の何れかにて月面124に着陸し、システム100を配備する。月面ビークル122は、垂直太陽電池アレイ116を第2の月面サイト128まで運ぶ。月面ビークル122は、着陸ビークル110に繋がれていてよい。
【0026】
幾つかの実施形態では、システム100は月面ビークル122に組み込まれてよく、月面ビークル122は、ペンシルバニア州ピッツバーグのAstrobotic Technology社によるGRIFFIN(登録商標)ローンチビークルのような単一のランダー(lander)であってよい。
【0027】
月面サイト126~128は、ある所定の基準を満たすサイトを選択することによって予め選択される。例えば、幾つかの実施形態では、月面サイト126~128は、互いの間隔が約4キロメートル未満であるべきとされる。他の実施形態では、月面サイト126~128は、互いに約2キロメートル未満であるべきとされる。このような実施形態では、月面サイト126~128は、約10度未満の勾配を有しており、365日にわたって95%を超える照度を共に担うべきである。
【0028】
月面サイト126~128に配備されると、垂直太陽電池アレイ114~116は、蓄電デバイス120に貯蔵するエネルギーを集めることができる。垂直太陽電池アレイ114~116は交互にエネルギーを集めてよく、垂直太陽電池アレイ116がエネルギーを集めることができない場合に垂直太陽電池アレイ114がエネルギーを集めることができ、その逆も可能である。故に、垂直太陽電池アレイ114は、エネルギーを集めていない場合に垂直太陽電池アレイ116の温度を維持するために、エネルギー(又はその一部)を垂直太陽電池アレイ116に送ることができる。
【0029】
垂直太陽電池アレイ114~116の各々は伸展式太陽電池アレイ(roll-out solar arrays)を含んでよく、伸展式太陽電池アレイは、方位角に従うか、使用しない間は方位角からそれてよい。幾つかの実施形態では、垂直太陽電池アレイ114~116は、月面ビークル122が月面から約1メートルにある状態で、月面124から約10メートル離れた太陽電池を含んでよい。太陽電池は、約±5度の角度で配置されてよい。
【0030】
図1~3に示すように、システム100は、給電インターフェース118に接続可能な1つ又は複数の移動式給電アウトレット130~134を含んでよい。移動式給電アウトレット130~134は、給電インターフェース118に接続して、蓄電デバイス120から電力を受け取ることができる。その後、移動式給電アウトレット130~134は、給電インターフェース118から外されてよく、また、月面124にわたって移動することによって種々の月面資産136に移動してよい。
【0031】
幾つかの実施形態では、着陸ビークル110は、システム100の他の構成要素と共に移動式給電アウトレット130~134を運ぶことができる。着陸ビークル110は、ペイロード112を運ぶためのブレーキングステージ(braking stage)138を備えてよい。
【0032】
移動式給電アウトレット130~134は、着陸ビークル110にある月面ビークル122に格納されてよい。幾つかの実施形態では、月面ビークル122は、自走式車輪付きビークルである月面インフラストラクチャトレーラ(Lunar Infrastructure Trailer)(LIT)であって、垂直太陽電池アレイ114~116と、バッテリーと、着陸ビークル110に接続するためのワイヤリールと、ワイヤレス給電器を搭載した移動式給電アウトレット130~134とを保持してよい。垂直太陽電池アレイ116は、慣性計測ユニットとジンバルでサポートされて、動きを制御されてよい。このような実施形態では、LITは、LIT上で2.4GHz WiFiのデータレートで通信するように構成されてよい。垂直太陽電池アレイ114~115は、900MHzのレートで通信するように構成されてよい。
【0033】
LITは、着陸ビークル110に適合する大きさにされてよく、ランプ(ramps)や外部ロボットによる支援なしに着陸ビークル110から配備可能である。一部の実施形態では、LITは、ワイヤレス給電コイル、ワイヤレス給電トランスミッタ、電力管理・分配モジュール(PMAD)、コマンド・データ処理(C&DH)、RF通信、姿勢決定・制御(Altitude determination and control)(ADC)、及び展開可能機構作動を含んでよい。LITはまた、電力変換器と電力インターフェースを含んでよい。
【0034】
垂直太陽電池アレイ114~116は、垂直太陽電池アレイ技術発電機、特に、垂直太陽電池アレイ技術(VSAT)発電機であってよい。垂直太陽電池アレイ114~116の各々には、防耐性を持つワイヤレス給電システムが取り付けられており、当該システムは、月面資産136等の地表資産に85%の効率で電力を送信することができる。
【0035】
システム100の運用は、戦略的に配置された月面124上の対のサイトである月面サイト126~128の特定の特性によって強化されており、垂直太陽電池アレイ114~116に何年も継続的して一度に発電する能力を提供する。月面124には、戦略的に配置された対のサイトが100箇所も存在してよい。
【0036】
給電インターフェース118は、ワイヤレス近接給電器と自動位置合わせ(self-aligning)物理コネクタであってよい。給電インターフェース118がワイヤレス給電器である場合、給電インターフェース118は、約80%の伝送効率を達成することができ、レゴリスの塵埃被覆に影響を受けない。
【0037】
移動式給電アウトレット130~134は、超軽量で、モジュール式で、拡張可能な商用月面ローバーであってよい。この例示的な実施形態では、月面ローバーは、ペンシルバニア州ピッツバーグのAstrobotic Technology社のCUBEROVER(登録商標)ロボット運搬ビークルであってよい。
【0038】
移動式給電アウトレット130~134は、月面で使用するためのケーブルリールアセンブリを備えてよく、当該アセンブリは、ペイロードベイ内に取り付けられてよい。ケーブルリールアセンブリは、リール、ガイド、アクチュエータ、ヒーター、及びケーブル自体を含んでよい。
【0039】
蓄電デバイス120は、適切な蓄電デバイス又はシステムであってよく、バッテリーを含んでよい。蓄電デバイス120は、5kVACを生成する電力インバータ及び/又は120VDCを生成する電力レギュレータを含んでよい。
【0040】
図3を参照すると、垂直太陽電池アレイ114は、1つ又は複数の太陽電池パネル140と内部構成要素142とを含んでよい。内部構成要素142は、1つ又は複数のヒーターを含んでよく、それらヒーターは、太陽電池パネル140が太陽エネルギーを集めていない場合に、
図1~2に示した垂直太陽電池アレイ116から電力を受け取ってよい。
【0041】
内部構成要素142は、繊細な電子デバイス又は部品を更に含んでよく、それら電子デバイス又は部品は、垂直太陽電池アレイ116によって集められたエネルギーによって加熱できる。
図1~2に示した垂直太陽電池アレイ116も同様に構成されていることは理解されるべきである。この機構を使用して内部構成要素142を加熱することによって、小型化されたバッテリーで機能することができるシステムが提供される。
【0042】
次に
図4を参照すると、全体として符号200で示された、月面に月面電力グリッドを構築するためのプロセスが示されている。プロセス200は、
図1~3のシステム100を使用することによって達成することができる。
【0043】
201において、第1の月面サイトと第2の月面サイトとからなる、予め選択された月面サイトの対が特定される。月面サイトの特定は、4つの部分からなるサブプロセスによって達成することができる。
【0044】
サブプロセスの第1の部分は、ペンシルバニア州ピッツバーグのAstrobotic Technology社によるLUNARAY(登録商標)ソフトウェアを使用して、
図1に示す月面サイト126~128に対応するサイトの対を特定することを含む。このソフトウェアには、垂直太陽電池アレイ配備の候補サイトを特定するシミュレーションツールが含まれている。
【0045】
このソフトウェアは、物理的に正確な惑星レンダラー(renderer)として機能し、精密な着陸とローバーの往来経路を計画するための一連のソフトウェアツールを含む。このソフトウェアは、地形データと天体暦データを使用して、任意の場所と時間における月面の照明条件を測光学的に正確にレンダリングする。この機能は、長く広がる影によって照明条件が劇的に変化する可能性がある極地ミッションで利点がある。
【0046】
このソフトウェアは、通信計画のために地上局の視線マップと地球高度マップを生成することができる。このソフトウェアは、リアルタイムの物理ベースのレイトレーシングを組み込むことができ、最先端の写真測量手法を用いて、軌道画像と光検出測距(LiDAR)データから高解像度のデジタル標高モデル(DEM)を合成する。
【0047】
第2の部分は、データセットの分析を通じて、各ピクセルが照らされている時間と暗い時間の割合を決定することにより、サイトの照明割合を決定することを含む。
【0048】
第3の部分は、データセットを解析して、ピクセルが照らされている連続した日の最大数を計算することを含む。連続した日照がある領域は、日照のない日が頻繁にある領域よりも、垂直太陽電池アレイタワーにとって魅力的な選択肢となる。
【0049】
第4の部分は、配置される各垂直太陽電池アレイ間のケーブル長を考慮し、各グラフのグリッドを2km単位で配置することにより、各ケーブル長の距離を決定することを含む。
【0050】
同定サブプロセスは、2つの場所のうちの1つは常に太陽光を利用できるような2つの場所を見つけることに焦点を当てている。このアーキテクチャにより、垂直太陽電池アレイの一方には常に電力が供給され、グリッド全体に電力が供給される。
【0051】
与えられた時間枠にわたって照明を分担する2つの場所を見つけるために、照明割合(illumination fractions)が高い場所が出発点として使用された。次に、完全なデータセットのより小さなセクションが切り取られ、最初の出発点又は着陸サイトに基づく局所的な検索に使用された。
【0052】
202では、月面ビークルに搭載された第1の垂直太陽電池アレイ及び第2の垂直太陽電池アレイからなる1対の相互接続された垂直太陽電池アレイと、それらの間で電力を送るケーブルと、給電インターフェースと、蓄電デバイスとを有する着陸ビークルが提供される。
【0053】
203において、着陸ビークルは第1の月面サイトに着陸し、そこに第1の垂直太陽電池アレイを配置する。着陸ビークルは、そのランダーに垂直に配置される静止垂直太陽電池アレイと、自走式テザーLITに搭載された1つの可動垂直太陽電池アレイとを運ぶ。LITは、1又は複数のテザー月面ローバーを搭載している。
【0054】
着陸すると、LITは着陸ビークルから自己離脱し、対の他方のサイトへの走行を開始するが、ステップ204では、着陸ビークルにケーブルでつながれたままである。ケーブルは、走行中、垂直太陽電池アレイのリールから展開されて、過酷な月の地形での引きずりや引っ掛かりが避けられる。LITが脱出すると、着陸ビークルの静止垂直太陽電池アレイは垂直に配置されて、発電と蓄電を開始する。
【0055】
204では、第2の垂直太陽電池アレイが月面ビークルによって第2の月面サイトに運ばれる。LITが対におけるもう一方の目的地に到着すると、垂直太陽電池アレイが配置され、発電と蓄電の順番が回ってくるのを待つ。両方の垂直太陽電池アレイが配置されて接続されると、2つのシステムは交互に発電を行い、日照が少ない短時間の間、もう一方のシステムを温かく保つ。
【0056】
205では、蓄電デバイスへの貯蔵と給電インターフェースを介した送電のために、第1の垂直太陽電池アレイと第2の垂直太陽電池アレイとで電力が集められる。その後、月面ローバーはLITから自力で脱出し、電力を必要とする地表資産に向けて走行を開始する。LITと同様、月の地形での引きずりや引っ掛かりを避けるため、走行中、ケーブルはキューブサット(CubeSat)自体のリールから展開される。資産に到達すると、月面ローバーはワイヤレス近接給電器を介して、特にハイパワーの資産には自動位置合わせ物理コネクタを介して電力供給を開始する。
【0057】
次に、前述の図を引き続き参照しながら
図5を参照すると、月面電力グリッドを構築するための、全体を通して符号300で示されるシステムの別の実施形態が示されている。
図1~3に示した実施形態と同様に、システム300は、着陸ビークル310、1対の垂直太陽電池アレイ312~314、給電インターフェース316、及び蓄電デバイス318を含む。垂直太陽電池アレイ312~314、給電インターフェース316、及び蓄電デバイス318は、それらの間で電力を送るためのケーブル320で互いに接続されている。
【0058】
着陸ビークル310は、予め選択された2つの月面サイト324~326の何れかにて月面322に着陸し、垂直太陽電池アレイ312を配備する。システム300は複数の移動式給電アウトレット328~332を含んでよく、それら給電アウトレット328~332は、給電インターフェース316から電力を受け取り、また、月面資産334などの様々な他の月面サイトへ移動することができる。
【0059】
図1~3に示した実施形態とは異なり、システム300は、垂直太陽電池アレイ314を予め選択された月面サイト324~326のうちの第2の月面サイトに着陸させるための第2の着陸ビークル336を含んでよい。そのような実施形態では、移動式給電アウトレット328などの月面ビークルは、垂直太陽電池アレイ312~314を互いに接続するために、垂直太陽電池アレイ314にケーブル320の一端を運ぶことができる。
【0060】
図5は、2台の着陸ビークル(即ち、着陸ビークル310と着陸ビークル336)を備えたシステム300を図示しているが、月面電力グリッドの構成要素を運搬するために3つ以上の着陸ビークルを備えた他のシステムも考えられることを理解のこと。
【0061】
次に
図6を参照すると、全体として符号400で示された、月面に月面電力グリッドを構築するためのプロセスが示されている。プロセス400は、
図5のシステム300を使用することによって達成することができる。
【0062】
401において、第1の月面サイトと第2の月面サイトとからなる、予め選択された月面サイトの対が特定される。この例示的な実施形態では、月面サイトは、
図4に示すプロセス200のステップ201でサイトが特定されたのと同じ方法で、或いは、他の好適な任意の手法又は方法によって特定されてよい。
【0063】
402では、第1の垂直太陽電池アレイを有する第1の着陸ビークルが、第1の月面サイトに着陸する。この例示的な実施形態では、着陸ビークルは、
図5に示す着陸ビークル310であってよい。
【0064】
403では、第2の垂直太陽電池アレイを有する第2の着陸ビークルが、第2の月面サイトに着陸する。この例示的な実施形態では、着陸ビークルは、
図5に示す着陸ビークル336であってよい。
【0065】
404では、蓄電デバイスと給電インターフェースが、ケーブルで第1の垂直太陽電池アレイと第2の垂直太陽電池アレイに接続される。405では、蓄電デバイスへの貯蔵と給電インターフェースを介した送電のために、第1の垂直太陽電池アレイと第2の垂直太陽電池アレイとで電力が集められる。この例示的な実施形態では、垂直太陽電池アレイ、給電インターフェース、蓄電デバイス、及びケーブルは、
図5に示す垂直太陽電池アレイ312~314、給電インターフェース316、蓄電デバイス318、及びケーブル320であってよい。
【0066】
開示されるシステム、方法、及び装置は、月面グリッドを構築するためのシステム内で説明されているが、開示されるシステム、方法、及び装置は、他の天体上又は地球上で適用されてよいことを理解のこと。
【0067】
<サポートされる特徴及び実施形態>
サポートされる実施形態は、戦略的な月面サイトの対に配置され、交互に電力を生成し蓄積するテザー垂直太陽電池アレイを利用するシステムに関して、様々な付随的及び/又は技術的利点を提供することができる。このシステムは、継続的に発電と蓄電とを行うことで作動する。さらに、時の経過に伴いバッテリーを交換することで、月面で継続的で中断のない発電を実現できる。
【0068】
システムは独立しており、自己完結型である。このシステムは、米航空宇宙局(NASA)からの支援や、事前に着陸した地表資産からの支援を必要とせず、荷降ろし、運搬、コンポーネントの設置などを行うことができる。システムでは、独自の脱出機能、モビリティ機能、ケーブル展開機能、ケーブル接続機能が完全に統合されている。本システムは、他のミッション活動に先駆けて、1回の打上げと月面着陸とで提供されてよい。
【0069】
システムはスケーラブルであって、オプションの拡張が可能である。本システムは、単一のローンチビークルに統合されて、単一の月着陸ビークルと共に配備することが可能である一方で、月面にわたって垂直太陽電池アレイユニットを追加することで、システムの規模を拡大することができる。そして、運用と電力供給範囲を、最初のシステム配備サイトを超えて、新たな領域に拡大することができる。
【0070】
システムは移動可能な電力を提供する。静的に電力を生成して、且つ、配電と接続収容の要件を月面資産に任せるのではなく、本システムはローバーの使用を通じて電力を分配する。ローバーは、有線及びワイヤレス給電器を通じて、居住施設、実験施設、ローバー、及びその他のハードウェアに電力を供給する移動式アウトレットとして機能する。
【0071】
添付図面に関連して上記に提供された詳細な説明は、実施例の説明として意図されたものであり、本実施例が構成又は利用できる唯一の形態を表すことを意図したものではない。本明細書に記載された構成及び/又は試みは、基本的に例示的なものであって、記載された実施形態、実装及び/又は例は、多数の変形例が可能であるため、限定的な意味で検討されるものではないことを理解のこと。
【0072】
本主題は、構造的特徴及び/又は方法論的行為に特有の言語で説明されてきたが、添付の特許請求の範囲において定義される主題は、必ずしも上述の特定の特徴又は行為に限定されないことを理解のこと。むしろ、上述した特定の特徴及び所業は、特許請求の範囲を実施する例示的な形態として提示されている。
【国際調査報告】