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特表2024-527251積層造形用の生分解性および/または堆肥化可能な生物由来粉末、ならびにその使用方法
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  • 特表-積層造形用の生分解性および/または堆肥化可能な生物由来粉末、ならびにその使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】積層造形用の生分解性および/または堆肥化可能な生物由来粉末、ならびにその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20240717BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240717BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240717BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20240717BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20240717BHJP
   C08G 63/06 20060101ALI20240717BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
B29C64/314
B33Y70/00 ZBP
B29C64/153
B29C64/165
C08L67/04
C08G63/06
C08L101/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576328
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2022065574
(87)【国際公開番号】W WO2022258698
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21179131.4
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509113977
【氏名又は名称】ストラタシス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランシスクス・ヨハンネス・マリー・デルクス
(72)【発明者】
【氏名】ステイン・ウィテルス
(72)【発明者】
【氏名】ヨゼフ・ペトロネラ・フリーデリヒス
(72)【発明者】
【氏名】ルート・デ・フロート
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4F213AA24
4F213AB17
4F213AC04
4F213AR12
4F213AR15
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4J002CF181
4J002GB01
4J002GC00
4J002GN00
4J002GQ00
4J029AA02
4J029AB07
4J029AC01
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD06
4J029AD08
4J029AD10
4J029AE01
4J029EA02
4J200AA04
4J200AA06
4J200BA12
4J200BA15
4J200BA16
4J200CA02
4J200DA24
4J200DA28
4J200EA07
4J200EA10
4J200EA21
(57)【要約】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末を含むものなど、積層造形用の特定の生分解性および/または堆肥化可能な生物由来粒状組成物に向けられるものであり、当該粒状組成物および/またはPHA粉末は、(a)ASTM D1895-96によって決定される、0.30g/mLを超えるゆるみかさ密度、および(b)摂氏15度を超える焼結性領域を有する。また、本発明は、積層造形プロセス用の粉末造形材料として有用な当該生分解性および/または堆肥化可能な生物由来粒状組成物を製造する特定の方法に向けられる。加えて、本発明は、他の箇所に記載される生分解性および/または堆肥化可能な生物由来粒状組成物を利用する積層造形プロセスと共に、それから印刷された物品に向けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末を含む、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末からなる、または本質的にポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末からなる積層造形用の粒状組成物であって、前記粒状組成物および/またはPHA粉末は、
a.ASTM D1895-96によって決定される、0.30g/mLを超えるゆるみかさ密度、および
b.摂氏15度を超える焼結性領域であって、該焼結性領域はISO 11357-1(2009)に従うTi,mからTf,cを減算した値によって決定される、焼結性領域を有するものである、粒状組成物。
【請求項2】
前記PHA粉末は、30%を超える、または40%を超える、または50%を超える、または60%を超える結晶化度を有し、前記結晶化度は、DSC法によって決定された融解エンタルピー(ΔH)を、1グラム当たり146ジュール(J/g)の理論的最大値で除算することによって決定される、請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項3】
前記粒状組成物および/または前記PHA粉末の前記焼結性領域は、ISO 11357-1(2009)によって決定されると、摂氏15~50度、または15~42℃、または18~42℃、または20~40℃である、請求項1または2に記載の粒状組成物。
【請求項4】
前記PHA粉末は、0.3~0.65g/mL、または0.4~0.5g/mLのゆるみかさ密度を有する、請求項1~3のいずれかに記載の粒状組成物。
【請求項5】
前記粒状組成物は、ポリエステルを含む、本質的にポリエステルからなる、またはポリエステルからなる、請求項1~4のいずれかに記載の粒状組成物。
【請求項6】
前記粒状組成物および前記PHA粉末は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を含む、本質的にポリヒドロキシアルカノエート(PHA)からなる、またはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)からなる、請求項1~5のいずれかに記載の粒状組成物。
【請求項7】
前記粒状組成物および/または前記PHA粉末は、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、ポリヒドロキシオクタノエート(PHO)、ポリヒドロキシデカノエート(PHD)、ポリヒドロキシドデカノエート(PHDD)、もしくはその共重合体を含む、本質的にポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、ポリヒドロキシオクタノエート(PHO)、ポリヒドロキシデカノエート(PHD)、ポリヒドロキシドデカノエート(PHDD)、もしくはその共重合体からなる、またはポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシヘキノエート(PHH)、ポリヒドロキシオクタノエート(PHO)、ポリヒドロキシデカノエート(PHD)、ポリヒドロキシドデカノエート(PHDD)、もしくはその共重合体からなる、請求項1~6のいずれかに記載の粒状組成物。
【請求項8】
前記粒状組成物および/または前記PHA粉末は、P3HBを含む、本質的にP3HBからなる、またはP3HBからなる、請求項1~7のいずれかに記載の粒状組成物。
【請求項9】
前記粒状組成物および/または前記PHA粉末は、30~100ミクロンのD50粒子径を有する、請求項1~8のいずれかに記載の粒状組成物。
【請求項10】
前記粒状組成物および/または前記PHA粉末は、100ミクロン以下のD90粒子径、および少なくとも30ミクロンのD10粒子径を有する、請求項1~9のいずれかに記載の粒状組成物。
【請求項11】
前記PHA粉末は、少なくとも100℃、または少なくとも120℃、または少なくとも125℃のTm,onset値を有する、請求項1~10のいずれかに記載の粒状組成物。
【請求項12】
前記PHA粉末は、135℃未満、または125℃未満、または110℃未満のTc,onset値を有する、請求項1~11のいずれかに記載の粒状組成物。
【請求項13】
前記粒状組成物は一以上の添加剤をさらに含む、請求項1~12のいずれかに記載の粒状組成物。
【請求項14】
前記添加剤は、流動補助剤を含み、また前記添加剤は前記粒状組成物全体に対して0.5重量%~20重量%の量で存在する、請求項1~13のいずれかに記載の粒状組成物。
【請求項15】
前記PHA粉末のPHAは、溶離液としてヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用いたポリメタクリル酸メチルを基準としたゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される、200000~1000000g/molの重量平均分子量Mwを有する、請求項1~14のいずれかに記載の粒状組成物。
【請求項16】
積層造形プロセスを介してオブジェクトを形成する方法であって、
(a)請求項1~14のいずれかに記載のPHA粉末を含む積層造形用の粒状組成物の層を提供するステップと、
(b)任意選択で、液体組成物を前記粒状組成物の前記層上に選択的に堆積させるステップであって、前記粒状組成物または液体組成物のうちの少なくとも一方が融合剤を含むものである、選択的に堆積させるステップと、
(c)電磁放射を、
(i)前記粒状組成物の前記層上の特定の場所、または
(ii)前記粒状組成物上に選択的に堆積された前記液体組成物の場所、の少なくとも一方に印加するステップであって、
前記粒状組成物は、形成しようとする三次元オブジェクトの一部分に対応するコンピュータデータに従って、前記電磁放射および/または前記液体組成物が適用された場所の少なくとも一部において溶融を受けて、融合部分を形成するものである、印加するステップと、
(d)ステップ(a)、任意選択でのステップ(b)、およびステップ(c)を複数回繰り返して、融合された三次元オブジェクトを形成するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D印刷のためのある特定の生分解性の生物由来粉末、3D印刷プロセスにおけるそれらの使用、およびその製造プロセスに関する。さらに、本発明は、ある特定の生分解性の生物由来粉末を含有する組成物、それから製造された3D印刷物品、および当該特定の生分解性の生物由来粉末を含有する組成物を用いた3D印刷物品の製造方法に関する。
【0002】
関連出願への相互参照
本願は、2021年6月11日に出願された欧州特許出願第21179131.4号の優先権を主張するものであり、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
様々な積層造形プロセスが公知であり、使用される。造形媒体として粉末を利用するこうしたプロセスの一つのサブセットは、いくつかの最終用途にとって特に有用である。こうした粉末による積層造形プロセスには、選択的レーザー焼結(SLS)、高速焼結(HSS)、またはマルチジェットフュージョン(MJF)が含まれる。こうしたプロセス間には既知のバリエーションがあるが、粉末による積層造形方法はすべて、概して、粒子の一部分を所望の形状に選択的に溶融または融合するために、レーザーなどの高密度の高エネルギー放射線源の印加を伴う。制御機構は、レーザーの経路および強度の両方を方向付けて、多くの場合、層状に、指定の境界内に配置された粉末を融合するように機能する。各層、すなわち「スライス」は、指定の厚さで製造される最終構成要素の断面を表す。機械制御は、粉末の連続層を焼結するように選択的に動作し、一緒に焼結された複数のスライスを含む完成した部品が製造される。機械制御機構は、コンピュータ指示によるものであり、様々なフォーマットのCADファイルを利用して、スライスごとに画定される境界を決定することが好ましい。
【0004】
部品は、部品床のターゲット表面上に焼結可能な粉末の第一の部分を堆積させること、ターゲット表面上に向けられたレーザーを走査すること、およびターゲット表面上の粉末の第一の部分の第一の層を焼結して第一のスライスを形成することによって製造され得る。したがって、粉末は、粉末を焼結するのに十分なエネルギーまたはフルエンスで、第一のスライスを画定する境界内に向けられたレーザービームを操作することによって焼結される。第一のスライスは、部品の第一の断面領域に対応する。
【0005】
次いで、第二の部分の粉末を、部品床およびその上に置かれている第一の焼結スライスの表面上に堆積させ、配向されたレーザービームを、第一の焼結スライスを覆う粉末に対してスキャンしてもよい。したがって、第二の部分の粉末の第二の層は、レーザービームを境界内で操作することによって焼結され、それによって第二のスライスが画定される。焼結された第二のスライスは、それを第一のスライスに対して焼結するのに十分な温度で形成され、二つのスライスは、構築しようとするオブジェクトの単一の部分へと一緒に融合される。引き続く層の粉末が、それ以前に焼結されたスライス上に堆積され、各層は順に焼結されて、追加のスライスを形成する。
【0006】
粉末による積層造形プロセスでは、多種多様な材料が使用され得る。多くの熱可塑性樹脂、金属またはセラミックがよく使用される。多数の最終用途に好適であり得る多種多様な特性を有する三次元構成要素の作製を容易にするという理由から、熱可塑性粉末が好ましい。好ましいポリマー粉末としては、より結晶性が高い熱可塑性材料と比較した場合に焼結性が高いという理由から、半結晶性熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0007】
粉末による積層造形プロセスで使用され得る熱可塑性ポリマーの種類としては、ポリオレフィン、ポリアリールケトン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリールケトン、液晶ポリマー、ポリアセタール、およびフルオロ化学樹脂が挙げられる。
【0008】
現在、積層造形に利用可能な熱可塑性樹脂の最も一般的なクラスとしては、ポリアミドが挙げられる。最も周知のポリアミドのうちの二つに、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(PA66またはナイロン6,6)およびポリカプロラクタム(PA6またはナイロン6)がある。PA6(CAS番号#25038-54-4)およびPA66(CAS番号#32131-17-2)の両者は、高い引張強さ、靭性、柔軟性、弾性、および低クリープ性を含めた優れた機械的特性を有する。これらは染色が簡単で、摩擦係数が小さいため(自己潤滑性)、優れた耐摩耗性を示す。ナイロンは典型的に、高い溶融温度およびガラス転移温度を有し、それによって、それから形成される固体ポリマーが、高温であっても優れた機械的特性を有することを可能にする。
【0009】
さらに、特定のポリエステルも公知であり、記述されている。ポリエステルは、いくつかの最終用途にとって有用であり得る一定の利点を提供する。例えば、ナイロン6,12などのナイロンでは、難燃剤などの特定の添加剤の配合が容易に促進されない。むしろ、このような添加剤は、いわゆる「乾燥混合物」を介して様々なナイロンに添加されなければならない。ポリエステルでは、こうした添加剤のより容易な配合が促進され得る。さらに、ポリエステルは、概して、同等のポリアミドよりも水分取り込みが少ない。さらに、ポリエステルは、他のプラスチックよりも持続可能な利点を提供する。多くのポリエステルが生分解性または少なくとも堆肥化可能であるという事実に加えて、ポリエステルのリサイクルのための手段および基幹施設は、実質的にすべての他の熱可塑性材料の手段および基幹施設を超えるので、より容易な循環する解決策を提供する。積層造形用のポリエステル粉末は、元々はDSM IP Assets B.V.社に割り当てられた国際公開第2020/085912号に記載されている。
【0010】
プラスチックの使用が世界的に増加していることを考慮すると、より持続可能な解決策を提供することの強力かつ高まる需要が存在する。前置きとして、積層造形技術はこれを容易にするが、これはその比較的複雑な製造方法が、従来の製造技術よりも高度なカスタマイズを提供しながら、最終的な廃棄物が少ないためである。さらに、記載されるとおり、いくつかのプラスチックは容易にリサイクル可能であり、このことが出発材料の所与の単位からの複数の機能的な使用を容易にする。さらにまた、ますます多くの製造業者が、石油由来の供給源ではなく、生物由来の供給源から熱可塑性材料を提供している。「生物由来」とは、材料が、植物、動物、または微生物などの生物起源から全体的または部分的に合成されていることを意味する。
【0011】
前述のアプローチに加えて、生分解性または少なくとも堆肥化可能なプラスチックの利用を増加させることも望ましいであろう。広く知られているように、今日使用されているほとんどのプラスチックは、その耐用寿命の終了時に容易に分解または還元せず、それらは典型的には、焼却や埋め立て物としての堆積のいずれかによって廃棄される。残念なことに、使用済みのプラスチックの多くは、地球上の水路および海洋にますます流入している。このプラスチックの蓄積は、見苦しいというだけでなく、特定の海洋生物に有害な影響を与える。したがって、「生分解性」であるより多くのプラスチック、すなわち生物によって水、二酸化炭素、およびバイオマスなどの天然副産物に容易に分解され得るプラスチックをより多く、確保して利用することが特に望ましい。
【0012】
多くの種類の生分解性プラスチックが公知である。生分解性プラスチックは、生物由来または石油由来の供給源から生じ得る。持続可能性の観点から、典型的には、生物由来のプラスチックが好ましい。生物由来の生分解性プラスチックとしては、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、デンプンと他の生分解性可塑剤との混合物、および特定のセルロースエステルなどのセルロース系プラスチックが挙げられる。
【0013】
3D印刷用の特定の生分解性の生物由来プラスチックの提供の試みがいくつか行われてきた。Tepha Inc.社に譲渡された米国特許出願公開第2019/375149A1号は、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)およびその共重合体の3D印刷によってオブジェクトを作製する方法に関する。一つの方法では、これらオブジェクトは、フィラメントの低い軟化温度および供給されたフィラメントに沿った熱クリープから生じるフィラメントの不十分な供給の問題を克服する装置および条件を使用した連続的に融合したフィラメントの加工によって製造される。ヒートシンク、メルトチューブ、加熱ブロックおよびノズル、ならびにヒートシンクと加熱ブロックとの間の移行ゾーンを含む装置を使用する方法であって、溶融チューブが、ヒートシンク、移行ゾーン、およびヒートブロックを通ってノズルまで延在するものである該方法が開示されている。3Dオブジェクトはまた、融合ペレット堆積(FPD)、溶融押出堆積(MED)、選択的レーザー溶融(SLM)、凝固浴を使用したスラリーおよび溶液の印刷、ならびに結合溶液およびポリマー顆粒を使用した印刷によっても印刷される。
【0014】
Ct de Tecnologia Da Informacco Renato Archerに譲渡されたブラジル国特許出願公開第BRPI1003549A2号公報は、インプラントの足場材料および/またはプロトタイプ用の飛散性のポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)を提供するための解決策を記載する。
【0015】
Evonik Rohm Gmbh社に譲渡された国際公開第2019/043137A1号公報は、3D印刷用途に使用される生体適合性ポリマー粉末(ポリ乳酸(PLLA)、ポイル乳酸ポリカプロラクトン(poylactic acid polycaprolactone)(PCL)、およびポリカプロラクトン(PCL)に基づく例を伴う)に向けられる。より具体的には、この3D印刷プロセスは、特に移植可能または再生性の空間において医療デバイスの工具不要の製造を可能にするものである。その流動性およびその他の加工特性が、選択的レーザー焼結での使用を適格にさせているとされるものであるが、その他の粉末による3D印刷技術にも好適であるだろう。
【0016】
PHAおよびPHBなどの公知の生分解性生物由来ポリマーの大部分が、ポリアミドなどの他の公知のポリマーと比較して、溶融から比較的迅速に結晶化することが知られている。この特性は、結果として得られるより短いサイクル時間、より低い成形温度、および優れた寸法安定性のために、射出成形適用において有利であり得るが、レーザー焼結適用での加工性をより困難にする。これは、積層造形プロセスの実行可能な動作枠が、処理された特定の材料の溶融と結晶化との間の差と相関するためである。したがって、溶融と結晶化との間の小さなデルタが、小さな実行可能な動作枠の原因となり、このことが効果的な積層造形プロセスの達成を困難または潜在的に不可能にさせる。SLSプロセスでは、例えば、より低温の新しい粉末の層が、より温かい直近の焼結されたばかりの層上に堆積される。焼結材料の融解温度と結晶化温度との間の差が狭すぎる場合、より低温の新しい粉末が、その材料の結晶化温度を下回る点まで温度降下を引き起こし得る。これは、急速に冷却された部分の変形、湾曲、または反りをもたらし得、さらに適切な密度または部品均一性のない部品をもたらし得る。
【0017】
さらに、三次元印刷プロセスの固有の限界により、ポリマー粉末の大部分は所望の形状へと変形されない。この残りのポリマー粉末(廃棄物、失敗した形状、凝集した粒子、および流された粉末を含む)は、典型的には、高温、酸素、汚染物質、および/または処理流体に長期間曝露されている。こうした曝露の結果として、粉末は、例えば、溶融特性に悪影響を及ぼすこととなる。したがって、粉砕再生後であっても、材料、特に狭い焼結性領域で始まる材料は、再びMJF、HSS、またはSLS印刷プロセスで確実に使用することができない。
【0018】
積層造形用の既存のPHAはさらに、十分な加工性/再利用性を提供しないが、これはそれらが粒子径の変動に起因して適切に流動しないため、および/または溶融温度と結晶化温度との間に十分な差を提供するように形成されないためである。
【0019】
PHAなどの生分解性(または堆肥化可能)の生物由来材料の利点の利用を可能にする積層造形プロセス用の粉末を提供することが望ましい。代替的に、または追加的に、3D印刷プロセスでの使用に対する適合性を改善するために、ポリマーの融点開始温度とその結晶化開始温度との間の差である、より高く、より広い「焼結性領域」を有するこうした粉末を提供することが有益であろう。
【0020】
したがって、前述の試みにもかかわらず、これまでに、改善された印刷可能性、流動性、および/またはそれから作製されるオブジェクトの機械的特性を介してなど、改善された有用性および/または性能を提供する積層造形用途で使用するための、特定の生分解性(または堆肥化可能)の生物由来のポリマー粉末、特に特定のポリヒドロキシアルカノエートを提供するという未だ対処されていない要望が存在する。
【発明の概要】
【0021】
本発明の第一の態様は、積層造形焼結プロセス用の粉末造形材料として有用な粒状組成物の製造方法であって、(a)3-ヒドロキシ酪酸のホモポリマーまたはコポリマーを含む出発材料を提供することと、(b)任意選択で、出発材料を>40kNの圧密圧力で圧密し、それによって圧密された材料を得ることと、(c)ステップ(a)の出発材料またはステップ(b)の当該圧密材料を、出発材料または圧密材料の固着を防止するのに十分な温度に加熱し、それによってアニールされた材料を得ることと、(d)ステップ(c)の当該アニール材料を、20~100ミクロンのD50粒子径値を有する粉末に粉砕し、それによって粉砕された材料を得るステップと、を含む方法に向けられる。
【0022】
本発明の第二の態様は、積層造形用の粒状組成物である。第二の態様の好ましい実施形態によれば、粒状組成物は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末を含むか、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末からなるか、または本質的にポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末からなり、粒状組成物および/またはPHA粉末は、(i)ASTM D1895-96によって決定される、0.30g/mLを超えるゆるみかさ密度、および(ii)摂氏15度を超える焼結性領域を有し、この焼結性領域はISO 11357-1(2009)に従うTi,mからTf,cを減算した値によって決定される。
【0023】
第二の態様のさらに好ましい実施形態によれば、粒状組成物は、積層造形焼結プロセス用の造形材料として使用され、第一の態様の実施形態のいずれかによる方法によって得ることができる。
【0024】
本発明の第三の態様は、本発明の第二の態様の実施形態のいずれかによる粒状組成物および/もしくはPHA粉末、ならびに/または第一の態様の実施形態のいずれかに記載されるプロセスによって作製される粒状組成物のいずれかを含む積層造形プロセスを含む。
【0025】
第三の態様の好ましい実施形態によれば、プロセスは、(a)第二の態様の実施形態のいずれかによるPHA粉末を含む積層造形用の粒状組成物の層を提供するステップと、(b)任意選択で、液体組成物を粒状組成物の層上に選択的に堆積させるステップであって、粒状組成物または液体組成物の少なくとも一方が融合剤を含むものである、選択的に堆積させるステップと、(c)電磁放射を、(i)粒状組成物の層上の特定の場所または(ii)粒状組成物上に選択的に堆積されている液体組成物の場所のいずれか一方に印加するステップであって、粒状組成物が、形成しようとする三次元オブジェクトの一部分に対応するコンピュータデータに従って、電磁放射および/または液体組成物が適用された場所の少なくとも一部において溶融を受けて融合部分を形成するものである、印加するステップと、(d)ステップ(a)、任意選択でのステップ(b)、およびステップ(c)を複数回繰り返して、融合した三次元オブジェクトを形成するステップとを含む。
【0026】
本発明の第四の態様は、第三の態様に記載のプロセスのいずれかを介して印刷された物品である。第四の態様によって印刷される物品は、第二の態様の実施形態のいずれかによる粒状組成物に由来することが好ましく、該粒状組成物は本発明の第一の態様に従って記述された実施形態のいずれかを介して生じることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、サンプル物質のDSC曲線を示し、その上にさらに特定の材料の様々な融点および結晶化点の判断を容易にするために示されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、3D印刷に対する適合性が強化された生分解性および/または堆肥化可能な生物由来の粉末を提供することに向けられる。本明細書では、積層造形焼結プロセス用の造形材料としてこうした粉末を作製する方法、それから製造される造形材料、該造形材料を積層造形プロセスにおいて使用する方法、およびそれから印刷された物品が記載される。また、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末を含む積層造形プロセスで使用するための特定の粒状組成物が本明細書に記載され、当該組成物および/または粉末は、3D印刷プロセスでの使用を特に好適にさせる特定の新規の特徴を有するように構成される。さらにまた積層造形プロセスを行う方法についても記載され、これがPHA粉末を含む粒状組成物を利用することを含むこと、それから製造される物品も記載される。
【0029】
本発明の第一の態様は、積層造形焼結プロセス用の粉末造形材料として適切な粒状組成物を製造する方法であって、
(a)3-ヒドロキシ酪酸のホモポリマーまたはコポリマーを含む出発材料を提供するステップと、
(b)任意選択で、出発材料を>40kNの圧密圧力で圧密し、それによって圧密された材料を得るステップと、
(c)ステップ(a)の出発材料またはステップ(b)の当該圧密材料を、出発材料または圧密材料の固着を防止するのに十分な温度に加熱し、それによってアニールされた材料を得るステップと、
(d)ステップ(c)の当該アニール材料を、20~100ミクロンのD50粒子径値を有する粉末に粉砕し、それによって粉砕された材料を得るステップと、を含む方法である。
【0030】
第一の態様の実施形態では、出発材料が提供される。出発材料は、3-ヒドロキシ酪酸のホモポリマーまたはコポリマーを含む。β-ヒドロキシ酪酸としても知られる3-ヒドロキシ酪酸は、有機化合物であり、化学式CHCH(OH)CHCOHを有するベータヒドロキシ酸であり、その共役塩基は、3-ヒドロキシブチレートとしても知られるβ-ヒドロキシブチレートである。β-ヒドロキシ酪酸は、二つのエナンチオマー、D-β-ヒドロキシ酪酸およびL-β-ヒドロキシ酪酸を有するキラル化合物である。その酸化された高分子誘導体は、自然界で広く発生する。3-ヒドロキシ酪酸は、生分解性ポリエステルであるポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)の前駆体である。P3HBの化学構造を以下に示す。
【化1】
【0031】
好ましい実施形態では、出発材料は、P3HBポリマーを含む、P3HBポリマーからなる、または本質的にP3HBポリマーからなる。標準温度および標準圧力では、P3HBポリマーは、粉末、フレーク、または顆粒などの任意の好適な形態をとり得る。これらのうち、粉末が好ましい。
【0032】
様々な実施形態では、出発材料は、3-ヒドロキシ酪酸および追加の酸の(コ)ポリマーを含む。追加の酸は、結果として生じるポリマーの適合性および生分解性を確実にする任意の好適なタイプのものであり得るが、特に好ましい追加の酸としては、3-ヒドロキシヘキサン酸および3-ヒドロキシ吉草酸が挙げられる。本明細書で使用される場合、3-ヒドロキシ酪酸および3-ヒドロキシヘキサン酸のコポリマーは「PHBH」と称され、一方で3-ヒドロキシ酪酸および3-ヒドロキシ吉草酸のコポリマーは「PHBV」と称される。さらに、本明細書で使用される場合、3-ヒドロキシ酪酸のホモポリマー、または3-ヒドロキシ酪酸と任意の追加の酸とのコポリマーの全般的な名称については、全般的な名称「PHBx」にしたがって本明細書では称される。
【0033】
使用される場合、コモノマーは、1~50モル%、好ましくは1~15モル%の量などである、所望のように互いに対して相対的な任意の量で組み込まれ得る。
【0034】
P3HBは、細菌であるalcaligenes eutrophusなどを介して自然に発生するが、それは、-他のPHBxポリマーと共に-合成的にも製造され得る。PHBxの生産のための公知の全般的なこうしたプロセスは、混合物を得るためのサッカロースの存在下での好適な細菌の発酵を伴う。得られたPHBxは、その後細菌から単離され得る。この段階では、PHBxは、0.25~1ミクロンオーダーの典型的な粒子径を有する。次に、ほとんどの商業プロセスは凝集ステップを有し、それによってポリマーは1~200ミクロンの平均粒子径になる。PHBxの粉末、フレークまたは顆粒の合成のための他のプロセスは、本発明が関連する分野の当業者によって理解されるであろう。
【0035】
第一の態様の様々な実施形態による出発材料は、積層造形焼結プロセスに好適な粉末造形材料を得るための様々なプロセスに供される。特定の実施形態によれば、出発材料は圧密される。発明者らは、これまでに公知の既存のPHBx粉末が、積層造形プロセスに好適な造形材料として機能するのに十分ではないことを発見した。発明者らは、ほとんどが最適な流動性をもたらさない(または十分な流動性ですらない)飛散性の粉末であり、印刷された部品の構築を可能にする場合であっても、それらは、多くの最終用途に要求される必要な寸法精度および精密さで印刷されたオブジェクトの作製を可能にしない場合があることを見出した。さらに、こうした粉末では、十分な機械的特性を有するオブジェクトの作製が促進されない。このように、それら粉末は、骨足場または組織足場など、限定された用途でのみ使用され得る。
【0036】
したがって、第一の態様によるいくつかの実施形態では、出発材料は、最初に圧密ステップに供される。好ましい実施形態では、圧密は、例えば、Bepex社実験室用コンパクター(Bepex Labor Kompaktor)を含む、こうした材料を圧密するための任意の適切な装置によって実施される。出発材料に加えられる力および/または圧力は、所望に応じて変動し得るが、好ましい実施形態では、出発材料は、少なくとも40キロニュートン/センチメートル(kN/cm)、より好ましくは少なくとも80kN/cm、より好ましくは少なくとも100kN/cm、または40~400kN/cm、または80~300kN/cm、または100~25kN/cmである比線圧(specific linear force)で圧密される。こうした圧密は、二つのローラー間で達成することができる。別の実施形態では、圧密は、材料に対して、5kN/cmを超える、より好ましくは25kN/cmを超える、より好ましくは40kN/cmを超える、または5~400kN/cm、または25~300kN/cm、または40~200kN/cmである圧力を与えるように実施される。発明者らは驚くべきことに、この圧密ステップの有益な効果が、結果として得られる加工された材料が積層造形用途での使用に対する向上した適合性を保持するように、本明細書の他の箇所に記載される後続する下流のプロセス後でさえも出発材料に留まることを発見した。
【0037】
第一の態様のいくつかの実施形態によれば、圧密ステップで圧密された材料は、次に加熱されて、アニールされた材料を生成する。加熱ステップでは、圧密材料を、圧密材料の固着を防止するのに十分な温度に加熱することが好ましい。加熱プロセスは、圧密された材料がそのガラス転移温度またはピーク融解温度を下回る温度まで中程度の期間加熱され、その後、その内部応力を低減するために再び冷却されるという意味でアニーリングを含むことが好ましい。
【0038】
加熱の方法は、限定されるものではないが熱処理される材料の所望の量などである本発明が関連する分野の当業者によって理解されるであろういくつかの因子に応じて異なることとなる。包括的な通常の技術では、バッチ加熱および連続加熱を含む。バッチ加熱は、典型的には、オーブン内での強制対流を伴うが、実験室スケールの量については、不活性ガスでパージしながら真空下での高温油浴またはタンブル乾燥機に材料を含むフラスコを挿入するなど、他の方法を用いることができる。一方で、連続加熱は典型的に、加熱された管またはチャンバー内にコンベヤーに沿って材料を通過させることを伴う。この方法は、気流の制限をより少なくさせるので、産業規模の加熱プロセスにとってより好適である。バッチ式加熱プロセスまたは連続加熱プロセスのいずれが利用されるかにかかわらず、赤外線放射の適用を介してなどの他の加熱方法を、前述の対流加熱の代替として採用してもよい。
【0039】
全般的な技術に関係なく、プロセスは典型的に、材料を(i)所望の温度に、(ii)制御された速度で、加熱すること、(iii)指定の期間の間、この所望の温度を維持すること、次いで材料を(iv)制御された速度で、(v)最終温度に、冷却することを伴う。(i)~(v)のいずれかは、当業者によって理解されるように、所望に応じて変動させることができ、異なるPHBxポリマーは、本質的に異なる材料特性を有することとなるという理由から、様々な条件を必要とすることがさらに理解される。
【0040】
しかしながら、様々な実施形態では、(i)は、最大で120℃、または130℃、または135℃、または140℃、または150℃、または160℃、または170℃であるように選択される。最終的な所望の温度(i)は、利用される材料のピーク融解温度を超えないように選択されるべきであるが、材料の融点開始温度(T,onset)を少なくとも短時間超えてもよい。他の実施形態では、(i)は、100~200℃、または120~180℃、または130~160℃など、材料に応じて変動し得る。
【0041】
最終的な加熱温度にかかわらず、例えば1℃/時間~100℃/時間、または2℃/時間~25℃/時間など、より好ましくは5℃/時間~10℃/時間である様々な(ii)の加熱速度が選択され得るが、他の速度が好適に用いられてもよい。(ii)の加熱速度は、材料が均一に加熱され、局所的にピーク融解温度を超えないことを条件として、(i)または(iii)ほど必ずしも重要ではない。当然のことながら、全体的な処理時間を最小化するために、急速な加熱が望ましいことが理解されよう。
【0042】
さらに、加熱は連続的に、または段階的なプロセスで生じ得ることが理解される。すなわち材料は、最終的な所望のピーク温度(i)を下回る特定の中間値に加熱されて、指定の期間の間維持され、その後必要に応じてさらに上昇され得る。この段階的プロセスは、二以上のいわゆる中間の所望の温度の存在下で、その間に一、二、または二以上の中間の維持時間を伴って生じ得る。
【0043】
最終的な所望の温度(i)が達成されると、材料は、任意の指定の長さの時間(iii)の間、こうした温度で維持され得る。一実施形態では、(iii)は、1分~4時間、または30分~2時間である。
【0044】
最終的に、材料は、材料のさらなる処理に使用するための平衡温度に戻るように、所望の温度から冷却されることが好ましい。この冷却は、任意の速度(iv)で起こり得、冷却は、連続的または段階的な様式であってもよく、またN雰囲気の適用下および/または減圧下であり得ることが理解される。一方で、最終的な平衡温度(v)は、周囲温度または室温またはその近傍であることが好ましい。
【0045】
一実施形態では、本発明の第一の態様による方法は、加熱ステップの後に、当該アニール材料を粉砕して、とりわけ所望の平均粒子径または粒子径分布を有する、粉砕された材料を形成する任意選択のステップを含む。このステップは、出発材料が、指定の積層造形プロセスのための最終的な造形材料の所望の最終平均粒子径よりも大きい平均粒子径を有するフレーク、顆粒または別の粉末の形態である場合に必要である。
【0046】
いずれにしても、このアニール材料は、意図される印刷プロセスに適した粒子径を提供するために、粉砕または微粒子化プロセスに供され得る。粉砕は、室温(例えば、10~30℃)またはその近傍で行うことができるが、極低温粉砕などの他の方法ではより低くてもよい。極低温粉砕、すなわちクライオ粉砕では、ポリマーは液体窒素(Nの代替物としては固体または液体の二酸化炭素が挙げられる)によって冷却され、軟化および粉砕中の装置の詰まりを防止する。次に、物理的な選別またはふるい分けを実施して、粒子を所望の最大サイズ未満に維持してもよい。
【0047】
他の周知の粉砕技術には、ジェット粉砕および機械粉砕が含まれる。ジェット粉砕プロセスは、例えば、圧縮空気または不活性ガスの高速ジェットを使用して粒子を相互に衝突させることによって材料を粉砕する。ジェット粉砕機は、特定のサイズ未満の粒子を出力するように設計または使用することができ、そのサイズを超える粒子を連続的に粉砕し、結果として生じる生成物の狭い粒子径分布をもたらす。粉砕機を出た粒子は、サイクロン分離によってガス流から分離することができる。
【0048】
粉砕技術、特に機械粉砕は、ピンディスクミル、流動床対向ジェットミル、またはバッフルプレート衝撃ミルで実施され得る。使用される粉砕技術および装置(その全てが本発明が適用される技術で周知である)に関係なく、プロセスは、結果として得られる粒子径分布が、1~650ミクロン、またはより好ましくは1~400ミクロン、または例えば、10~200ミクロン、20~100ミクロン、または40~50ミクロンの範囲の中央粒子径D50を有するように実施されるべきである。中央粒子径D50は、TEM、SEM、動的光散乱、および静的光散乱を含む様々な方法を介して決定され得る。粒子径を測定するための適切な装置の非限定的な例としては、ホリバ・インスツルメンツ社(Horiba Instruments,Inc.)から入手可能であり、動的光散乱によって粒子径を測定する装置LB-550が挙げられる。D50中央粒子径を決定するための好ましい方法は、ISO 13320-1に従うレーザー回折粒子径分析によるものがある。
【0049】
好ましい実施形態では、アニール粉末は、20~100ミクロン、または30~90ミクロン、または30~80ミクロン、または40~90ミクロン、または40~80ミクロン、または40~50ミクロンの範囲のD50粒子径を有する粒子径分布に粉砕される。列挙したサイズの平均粒子を有する狭い粒子径分布が望ましいものであるが、これはそれから作製される最終的な粉末の流動性を向上させる傾向があるためである。このことが、当該粉末がマルチジェット融合または選択的レーザー焼結などの粉末による積層造形プロセスで使用される場合に、優れた加工性と凝集の低減を確実にする。
【0050】
好ましい実施形態では、粉砕ステップは、ジェット粉砕または機械的粉砕プロセスを含み、ジェット粉砕または機械的粉砕プロセスは、15~35℃、または15~30℃の温度で実施される。
【0051】
粉砕後、粒子は、粒子を丸めるために、好ましくはポリマーの融点開始温度またはガラス転移温度未満で、大きな剪断力を有するミキサーで後処理に供することができる。粒子を丸めて流動性を向上させるための粒子の他のさらなる処理としては、ふるい分けを介した分別ステップ、篩過、または粉末流動補助剤の添加があり得る。粒子を丸めることは、球状度が増加した粒子の作製を促進するため、有利である。このことは、その後に、3D印刷用途における適合性を最大化するために、粉末の流動電位にプラスの効果がある。
【0052】
第一の態様の他の実施形態によれば、圧密ステップは必要とされない場合がある。こうした材料提供、圧密、加熱、および粉砕ステップに加えて、追加的なステップも挿入されてもよい。こうしたステップは、所望に応じて前述のステップのいずれかの前、間、または後に含めることができ、それらは一回または二回以上実施され得る。
【0053】
一実施形態では、第一の態様によるプロセスはまた、一つまたは複数の組成添加剤を出発材料、圧密材料、アニール材料、および/または粉砕材料に添加するステップを伴う。添加剤が含まれる場合、粒状組成物は、添加剤成分と共に、処理済みの出発材料の生成物(3-ヒドロキシ酪酸のホモポリマーまたはコポリマーなど)の両方を含むこととなる。
【0054】
こうした添加剤は、限定されるものではないが、難燃剤、流動補助剤、充填剤、顔料、および安定剤など、3D印刷に使用される任意の適切な添加剤であってもよい。適切な流動補助剤としては、ヒュームドシリカ、沈降シリカが挙げられる。適切な充填剤としては、ガラス粒子およびガラス繊維(100ミクロン以下であるが、好ましくはそれ未満の長さを有する)、ガラスビーズ、金属粒子、およびセラミック粒子が挙げられる。適切な顔料としては、二酸化チタン、ルチル系の粒子、アナターゼ系の粒子、カーボンブラック粒子、炭素繊維、ならびに熱安定剤およびUV安定剤などの安定剤が挙げられる。使用される場合、一実施形態では、粒状組成物全体に対して0.05~20重量%の量で一以上の流動補助剤が含まれ得る。
【0055】
添加物の導入は、圧密ステップの前、圧密ステップと加熱ステップの間、加熱ステップと粉砕ステップの間、または粉砕ステップの後に行うことができる。添加剤は、乾燥混合物中に含めるか、または必要に応じて出発材料、圧密材料、アニール材料、および/または粉砕材料に配合され得る。
【0056】
前述のプロセスの各段階のうちの一以上において、本発明による粒状組成物に組み込むことができる様々な追加的な添加剤が知られている。本発明の様々な実施形態による積層造形用の粒状組成物への適切な添加剤としては、例えば流動補助剤(本明細書の他の箇所に記載される単量体、オリゴマーまたは高分子の流動補助剤以外)、充填剤(細断ガラス繊維または粉砕ガラス繊維、細断炭素繊維または粉砕炭素繊維、ナノ充填剤、クレー、珪灰石およびマイカなどの分散性の補強材料、ならびに連続性の補強材)、顔料、加工助剤(離型剤など)、均展剤、脱気剤、安定剤(抗酸化剤およびUV安定剤など)、可塑剤、衝撃改質剤(コアシェル型ゴム粒子)、および担体ポリマーが挙げられる。
【0057】
公知であり熱可塑性樹脂組成物で通常使用される充填剤のその他の例としては、例えばクレー、マイカ、タルク、およびガラス球またはビーズなどの無機充填剤が含まれる。補強繊維は、例えばガラス繊維である。ガラス繊維を含む樹脂組成物の利点は、特に高温でもその強度および剛性が高いことであり、これにより関連組成物中でのポリマーの融点に近い温度を最大とした温度で使用することが可能になる。
【0058】
無機物質は、耐水性、耐熱性、および堅牢な機械的特性を組成物に付与する傾向があるため、充填剤として特に好適である。本発明の一実施形態では、充填剤は無機物であり、シリカ(SiO2)のナノ粒子、すなわち1ナノメートル(nm)~999nmもしくは5nm~800nmの平均粒子径の粒子、またはマイクロ粒子、すなわち1マイクロメートル(μm)~999μmもしくは1~100μmの平均粒子径の粒子、などのセラミックを含む。平均粒子径は、ISO13320-1に従う走査電子顕微鏡またはレーザー回折粒子径分析などの様々な技術を使用して測定され得る。シリカナノ粒子のさらなる例については、米国特許第6,013,714号を参照されたい。
【0059】
本発明の他の実施形態では、ガラスまたは金属粒子を含有するものなど、代替的な無機充填剤物質が使用されてもよい。こうした物質の特定の非限定的な例としては、ガラス粉末、アルミナ、アルミナ水和物、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩ミネラル、珪藻土、シリカ砂、シリカ粉末、酸化チタン、アルミニウム粉末、青銅、亜鉛粉末、銅粉末、鉛粉末、金粉末、銀粉塵、ガラス繊維、セルロース繊維、セルロースナノ結晶、チタン酸カリウムウィスカー、炭素ウィスカー、サファイアウィスカー、検証リアウィスカー(verification rear whisker)、炭化ホウ素ウィスカー、炭化ケイ素ウィスカー、および窒化ケイ素ウィスカーが挙げられる。
【0060】
しかしながら、一実施形態では、本発明による粒状組成物は、実質的にあらゆる充填剤を全く含まない。充填剤が存在しないことは、それから形成される焼結生成物の作業性(すなわち、流動性、表面仕上げ)の改善を確実にするという理由から有益であり得る。
【0061】
適切な衝撃改質剤は、オレフィンなどの極性モノマーだけでなく、とりわけアクリレートおよびエポキシド、酸または無水物含有モノマーなどの極性または反応性モノマーも含む、ゴム状ポリマーである。例としては、エチレンと(メタ)アクリル酸とのコポリマー、または無水物基で官能化されたエチレン/プロピレンコポリマーが挙げられる。衝撃改質剤の利点は、樹脂組成物の衝撃強度を向上させるだけでなく、粘度の増加に寄与することである。適切な衝撃改質剤は、例えば、無水マレイン酸官能化ポリオレフィンである。
【0062】
顔料または染料などの着色剤もまた、随意に様々な実施形態に含まれてもよい。着色剤としては、例えば、カーボンブラックまたはニグロシンを用いることができる。EP2935430では、様々な他の一般的な顔料を記載しており、これは本明細書で適切に使用することができるが、例えば三種の結晶形態(ルチル型、アナターゼ型および板チタン型)のうちの一以上での二酸化チタン、群青、酸化鉄、バナジン酸ビスマス、アルミニウムフレークなどの金属顔料およびマイカなどの真珠光沢顔料を含む効果顔料、ならびに例えばフタロシアニン、ペリレン、アゾ化合物、イソインドリン、キノフタロン、ジケトピロロピロール、キナクリドン、ジオキサジン、およびインダントロンなどの有機顔料が含まれる。
【0063】
粒状組成物はさらに、一以上の安定剤を含み得る。安定剤の存在は任意である。安定剤はそれ自体が公知であり、例えば熱、光、およびラジカルによって形成される影響の結果としての劣化に対抗することを意図している。組成物に適用され得る公知の安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン安定剤、ヒンダードフェノール、フェノール系抗酸化剤、銅塩およびハロゲン化物、好ましくは臭化物およびヨウ化物、ならびに銅塩およびハロゲン化物の混合物、例えばヨウ化銅/ヨウ化カリウム組成物、ならびに亜リン酸塩、ホスホナイト(phosphonite)、チオエーテル、置換レオルシノール(substituted reorcinol)、サリチル酸塩、ベンゾトリアゾール、ヒンダード安息香酸塩、およびベンゾフェノンがある。好ましくは、安定剤は、無機の、ヒンダードフェノール酸化剤、ヒンダードアミン安定剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、安定剤は、無機安定剤、フェノール系抗酸化剤、およびヒンダードアミンの組み合わせである。一実施形態では、組成物が安定剤成分を含む場合、こうした成分は、組成物全体に対して、約0.05重量%~約2.0重量%、または約0.1~1.5重量%、または0.3重量%~1.2重量%の重量で存在する。
【0064】
一実施形態では、粒状組成物は一以上の潤滑剤も含む。こうした物質としては、長鎖脂肪酸、特にステアリン酸またはベヘン酸、その塩、特にステアリン酸Caまたはステアリン酸Zn、ならびにそれらのエステル誘導体またはアミド誘導体、特にエチレン-ビス-ステアリルアミド、モンタンろう、および低分子量のポリエチレンろうまたはポリプロピレンろうが挙げられる。一実施形態では、適切な潤滑剤としては、飽和脂肪族アルコールを有する8~40個の炭素原子の飽和脂肪族カルボン酸もしくは不飽和脂肪族カルボン酸のエステルもしくはアミド、または2~40個の炭素原子を有するアミン、ならびにエチレンビス-ステアリルアミドと共に使用される8~40個の炭素原子の飽和脂肪族カルボン酸または不飽和脂肪族カルボン酸の金属塩、およびステアリン酸カルシウムが挙げられる。
【0065】
前述の添加剤のリストは、限定することを意図するものではなく、本発明が適用される当業者が通常わかっているように、任意の他の適切な添加剤を採用してもよい。さらなるこうした例としては、UV安定剤、ガンマ線安定剤、加水分解安定剤、熱安定剤、静電防止剤、乳化剤、核形成剤、ドリップ剤(drip agent)(ポリテトラフルオロエチレンまたはポリビニルピロリドンなど)、および可塑剤が挙げられる。
【0066】
本明細書に記載の添加剤は、含まれる場合には、単独でまたは二以上の組み合わせで使用されてもよく、本発明による積層造形用の粉体造形材料として好適な粒状組成物と配合、分子的に混合、または乾燥混合され得る。何らかの添加剤が存在する場合、粒状組成物は、粒状組成物の総重量に対して、0.001重量%~80重量%、または0.1重量%~60重量%、または0.5重量%~25重量%の添加剤を含むことができる。
【0067】
様々な非限定的な実施形態によると、材料はまた、選別ステップに供されてもよい。選別ステップは、さらなる操作または使用のため、一回または複数回行って材料中に含有される粒子、フレークまたは顆粒のサブセットが選択されるようにしてもよい。これは、典型的には、篩過またはふるい分けを介して達成され、篩過および/またはふるい分け用の装置は、任意の指定のサイズを超えるおよび/または下回る粒子を選別して取り除くように、一以上の篩または隔壁で選択され得る。一実施形態では、出発材料は、30ミクロン未満および100ミクロン超の粒子がいかなる実質的な程度にも保持されないことを確実にするように篩い分けされる。選別ステップは、プロセスに沿った任意の時点または複数の時点で行われ得るが、通常、圧密ステップの前に実施される。あるいは、これは、加熱ステップの前、加熱ステップの後、粉砕ステップの前、粉砕ステップの後に実施され得るか、または全く実施されない場合がある。代替的な実施形態では、選別ステップは、プロセスの複数のステップの前もしくは後に、またはプロセスの各ステップの前もしくは後でも実施される。選別ステップは、積層造形プロセスで使用する粉末造形材料としての適合性のために最終的な粒状組成物が最適化されることを確実にするための最後のステップとして行うことが好ましい。
【0068】
別の実施形態によると、PHA粉末のPHAは、溶離液としてヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用いたポリメタクリル酸メチルを基準としたゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される、200000~1000000g/molの重量平均分子量Mwを有する。HFIP溶離液はまた、例えば0.1重量%の量でトリフルオロ酢酸カリウムを含んでもよい。GPC分析は、室温を超える温度、例えば35℃で実施され得る。Mwは、350000~900000g/molであることが好ましく、また380000~800000g/molであることがより好ましい。ポリマー中でのこのような高分子量は、バイオテクノロジープロセスを介して得ることができる。
【0069】
本発明の第二の態様は、積層造形用の粒状組成物であり、該粒状組成物は、本発明の第一の態様の実施形態のいずれかによる上述の方法によって得られることが好ましい。第二の態様の好ましい実施形態によれば、積層造形用の粒状組成物は、特定の閾値を超えるゆるみかさ密度、および/または特定の閾値を超える焼結性領域を有する。第二の態様による特に好ましい実施形態は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末を含む、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末からなる、または本質的にポリヒドロキシアルカノエート(PHA)粉末からなる積層造形用の粒状組成物に向けられるものであり、粒状組成物および/またはPHA粉末は、
(i)ASTM D1895-96によって決定される、0.30g/mLを超えるゆるみかさ密度、および
(ii)摂氏15度を超える焼結性領域であって、該焼結性の範囲はISO 11357-1(2009)に従うTi,mからTf,cを減算した値によって決定される、焼結性領域を有する。
【0070】
第二の態様による有用なPHAは、糖または脂質の細菌発酵を経ることを含む、多数の微生物によって自然界で生じ得るポリエステルである。このクラスの生分解性の生物由来ポリマーは、150を超える様々なモノマーの含有を伴い、これらを組み合わせて、幅広い特性を有する材料を得ることができる。こうした材料は、Biopolymers,Volume 4(Polyesters III-Applications and Commercial Products);Doi,Yoshiharu;Steinbuchel,Alexander(2002);Weinheim,Germany:Wiley-VCH(ISBN 978-3-527-30225-3)に記載されている。
【0071】
PHAポリマーは、以下の本明細書の他の箇所に記載されるPHBxポリマーよりも多数の種を包含するが、PHAの好ましいサブセットは、PHBx群の種を含む。粉末として有用なPHAの中でも特に好ましいものは、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、ポリヒドロキシオクタノエート(PHO)、ポリヒドロキシデカノエート(PHD)、ポリヒドロキシドデカノエート(PHDD)、またはその共重合体が挙げられる。したがって、一実施形態では、PHA粉末は、P3HB、P4HB、PHV、PHH、PHO、PHD、PHDD、もしくはそれらの任意の組み合わせを含むか、P3HB、P4HB、PHV、PHH、PHO、PHD、PHDD、もしくはそれらの任意の組み合わせからなるか、または本質的にP3HB、P4HB、PHV、PHH、PHO、PHD、PHDD、もしくはそれらの任意の組み合わせからなる。特に好ましい実施形態では、PHA粉末は、P3HBを含む、P3HBからなる、または本質的にP3HBからなる。
【0072】
本発明の第二の態様で有用なPHA粉末は、様々なプロセスおよび/または方法を介して提供され得る。これらには、2~3例を挙げると上記で、以下で、ならびにBiopolymersに記載される方法を介して明記される、PHBxポリマーの合成のための全般的なプロセスなどである非限定的な例が含まれる。
【0073】
第二の態様による粒状組成物は、単独で、または材料のキットとして提供されてもよく、またそれらは一以上の添加剤を含んでもよい。実施形態では、PHA粉末は、一以上の添加剤と乾燥混合されて、粒状組成物を形成する。別の実施形態では、PHA粉末および/または粒状組成物は、他のバイオポリマー(PLA、セルロースまたはデンプン系の)またはバイオモノマーを含むポリマー化合物粉末である。粒状組成物自体は、PHA粉末よりも多く、本発明の第一の態様に関して、以下で本明細書の他の箇所で指定されるように、積層造形用の粒状組成物を得るために一以上の添加剤をさらに含み得る。疑義を避けるために付言すると、本発明の第一の態様に関連して説明したこうした添加剤は、第二の態様による粒状組成物に関して説明した量と同じ量で同様に使用され得る。
【0074】
難燃剤、流動補助剤、充填剤、顔料、安定剤、およびガラス充填剤をはじめとする添加剤はよくあるものであり、単独でまたは任意の組み合わせで用いられ得、それらから作製された三次元部品の所望の最終用途に適するように用いられてもよい。こうした添加剤は、当業者によって理解されることとなるように、本明細書の他の箇所に記載される任意の段階またはステップ、および任意の様式で同様に組み込まれてもよく、または添加されてもよい。
【0075】
本明細書の別の箇所で言及した添加剤に加えて、粒状組成物のPHAでない部分は、他の粒状ポリマーを含み得、他の粒状ポリマーからなり得、または本質的に他の粒状ポリマーからなり得る。好ましい実施形態では、粒状組成物のPHAでない部分は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、またはその共重合体などのポリエステル粉末を含むか、該ポリエステル粉末からなるか、または実質的に該ポリエステル粉末からなる。PHAもポリエステルであることを考慮すると、一実施形態では、粒状組成物はポリエステルを含む、ポリエステルからなる、または本質的にポリエステルからなる。当然ながら、添加剤またはその他のポリマーが含まれない場合、第二の態様による粒状組成物は、PHA粉末を含み得、PHA粉末からなり得、または本質的にPHA粉末からなり得る。したがって、他の非限定的な実施形態では、粒状組成物中のポリエステル含有量は、PHA、PHBx、PHBH、もしくはP3HB、もしくはそれらの組み合わせからなるか、または本質的にPHA、PHBx、PHBH、もしくはP3HB、もしくはそれらの組み合わせからなる。
【0076】
記載するように、粒状組成物および/またはPHA粉末は、一定の密度値を有するように構成される。発明者らは、こうした粒状組成物および/または粉末が、必要な密度値を有しない限り、十分な印刷可能性をもたらさないことを発見した。入手可能な粉末の大半は、低すぎて好適でない密度を有する。こうした材料の密度は、好ましくは本発明の第一の態様の圧密ステップに関して本明細書の他の箇所で説明される方法を含む、多数の手段を介して増加し得る。
【0077】
粒状材料または粉末の密度は、数多くの異なる手法で測定され得るが、「見かけ密度」(「ゆるみかさ密度(free bulk density)」(FBD)とも別称され、本明細書においてはそのように称する)および「固めかさ密度(tapped bulk density)」(TBD)は通常に利用される二つの手法である。FBDは、固められていない粉末サンプルの密度の尺度であり、各粒子の固有密度、ならびに粒子間の配置の両方に依存する。一方で、TBDは、もはやそれ以上の指定の体積変化が観察されなくなる点まで粉末サンプルを含有する容器を機械的に固めた後の測定にのみ依存する。FBDおよびTBDを決定するための非限定的な方法は、ASTM D1895-96(2010)、試験方法Aである。
【0078】
したがって、一実施形態では、粒状組成物のFBDは、0.35g/ml超、または0.40g/ml超、または0.30~0.9g/ml、または0.30~0.6g/ml、または0.30~0.50g/ml、または0.40~0.9g/ml、または0.40~0.8g/ml、または0.40~0.7g/ml、または0.40~0.60g/ml、または0.40~0.50g/mlである。他の実施形態では、粒状組成物のTBDは、0.3g/ml超、または0.4g/ml超、または0.5g/ml超、または0.3~0.9g/ml、または0.3~0.75g/ml、または0.3~0.65g/ml、または0.4~0.9g/ml、または0.4~0.75g/ml、または0.4~0.65g/ml、または0.5~0.9g/ml、または0.5~0.75g/ml、または0.5~0.65g/mlである。
【0079】
しかしながら、特定の添加剤の固有の特性および用いられる量に起因して、粒状組成物の密度は変わり得るものであり、PHA粉末成分単独に関してのみ密度を測定することがより適切であり得る。したがって、別の実施形態では、PHA粉末のFBDは、0.40g/ml超、または0.30~0.6g/ml、または0.30~0.50g/ml、または0.40~0.7g/ml、または0.40~0.60g/ml、または0.40~0.50g/mlである。さらに他の実施形態では、PHA粉末のTBDは、0.3g/ml超、または0.4g/ml超、または0.5g/ml超、または0.3~0.9g/ml、または0.3~0.75g/ml、または0.3~0.65g/ml、または0.4~0.9g/ml、または0.4~0.75g/ml、または0.4~0.65g/ml、または0.5~0.9g/ml、または0.5~0.75g/ml、または0.5~0.65g/mlである。
【0080】
一方、密度値が高くなりすぎると、PHA粉末は十分な流動性を有しないこととなる。したがって、粒状組成物および/またはPHA粉末のFBDおよび/またはTBDは、100g/mL未満であることが好ましく、5g/mL未満、または1g/mL未満であることがより好ましい。
【0081】
必要な密度特性を有することに加えて、積層造形プロセスでの使用に対する適合性を最適化するために、本発明の第二の態様による粒状組成物および/またはPHAも、指定の熱的特性を有することが好ましい。ポリマー粉末のこのような特性で通常記載されるのは、結晶化温度(T)および融点温度(T)である。しかしながら、発明者らは、積層造形プロセスでの使用に対するその潜在的な適合性を評価するためにより重要な決定因子は、粉末の融点開始温度(T,onset)および結晶化開始温度(T,onset)であると仮定する。これは、本明細書で数学的にΔT=(T,onset-T,onset)として表されるこれら値間の差が、当該粉末が積層造形プロセスでの使用に適しているだろうと発明者らが推定するものである範囲内の温度範囲を表すためである。粉末のΔTは、その「焼結性領域」として本明細書で同義に称するが、これは粉末が使用される積層造形プロセスにおいて、自然な温度変動であったとしても当該粉末が一貫した様式で挙動することとなることを確実にするために最大化されなければならない。本発明の粉末は、同じタイプの従来の粉末よりも広い焼結性領域を呈し得る。これを達成するために、本発明の粉末はまた、より高いT,onset値も呈し得る。あるいは、より低いT,onset値を呈し得る。さらにそれらは、より高いT,onset値と、より低いT,onset値との両方を同時に呈し得る。
【0082】
本明細書全体を通して使用される場合、別段の指定がない限り、T,onsetの値は、T,onsetと共に、ISO 11357-1(2009)に規定の方法で決定される。ISO 11357-1の方法においてTi,mと称されるT,onsetは、評価対象の材料が第一の加熱サイクル中に示差走査熱量測定(DSC)によって立証される場合に、10℃/分の一定の加熱速度で加熱されて、融解ピーク曲線の外挿された開始ベースラインからの曲線の検出可能な最初の逸脱(0.1mWなど)を決定することによって測定される。T,onsetは、ISO 11357-1に従って関連する様式で決定され、またそれはTf,cと称されるが、評価対象の材料の結晶化ピーク曲線の外挿された終了ベースラインからの曲線の検出可能な最後の逸脱を意味する。
【0083】
ISO 11357-1(2009)に明記されるような関連する点を有する仮想DSC曲線を図1に示す。図1を参照すると、サーモグラフは、x軸上の温度の関数として評価されるサンプルに対して、y軸上の測定された熱流量(dQ/dtとも呼ばれる)を示す。この曲線に沿う様々な点を、ISO 11357-1を参照することで当業者によって理解されるであろう名称で表している。
【0084】
本明細書で使用される場合、ある材料の焼結性領域は、Tf,c(本明細書では同等にT,onsetと称する)において決定した温度の値からTi,m(本明細書では同等にT,onsetと称する)において決定した温度の値を減算することによって決定されることとなる。
【0085】
したがって、第二の態様の粒状組成物および/またはPHA粉末は、指定される焼結性領域を有する。前述したように、積層造形用の公知の類似の粒状組成物および/またはPHA粉末よりも高い焼結性領域を維持することによって、本発明の粉末は、こうした粒子が関連する選択的レーザー焼結またはマルチジェットフュージョンプロセスなどの積層造形プロセスでの使いやすさの向上を促す。さらに、記載するように、焼結性領域がより広い粉末は、より高い寸法精度、より少ない反り、湾曲、および変形、ならびに構造および均質性の改善を有する三次元構成要素の製造をより容易に与えることとなる。本明細書において規定するように、「焼結性領域」を特徴付けることは、溶融曲線および結晶化曲線上でそれぞれ高い温度および低い温度を得る他の方法よりも、現実世界の有用性にとって優れた代用であると考えられる。これは、理論上、粉末がさらに溶融曲線に沿う温度で動作可能であり続けることができたとしても、実際には、適用された粉末の一部は、融点曲線に沿ったこれら初期の段階においてさえも凝集を開始し得ることが理由である。したがって、最適な印刷可能性を確実にするためには、こうした凝集または粉末分解のリスクを可能な限り最大限回避することができる正確な範囲を知ることが役立つであろう。他の方法では、より広い動作範囲を見かけ上示すが(例えばISO 11357-1に従うTei,mとTef,cとの間の差を取ることなど)、部品の反りまたは湾曲のリスクが最小化されるような範囲の真の指標が与えられない。前述に関連する様々な点を図1に示す。
【0086】
したがって、一実施形態では、第二の態様の粒状組成物は、焼結性領域が少なくとも0℃である。このような値を有することは、粒状組成物が溶融し始める点と結晶化し始める点との間に重複がないことを保証する。好ましい実施形態では、粒状組成物は、焼結性領域が少なくとも15℃、または少なくとも20、または少なくとも25、または少なくとも30、または少なくとも35℃、または15~60、または15~45、または18~60、または18~45℃である。
【0087】
しかしながら、特定の添加剤の固有の特性および用いられる量に起因して、不均一な粒状組成物がもつ焼結性領域は変動し得る(または局所的に異なり得る)ので、PHA粉末成分単独に関してのみ密度を測定することがより適切であり得る。したがって、一実施形態では、第二の態様のPHA粉末は、焼結性領域が少なくとも0℃である。このような値を有することは、PHA粉末が溶融し始める点と結晶化し始める点との間に重複がないことを保証する。好ましい実施形態では、PHA粉末は、焼結性領域が少なくとも15℃、または少なくとも20、または少なくとも25、または少なくとも30、または少なくとも35℃、または15~60、または15~45、または18~60、または18~45℃である。
【0088】
さらに他の実施形態では、粒状組成物および/またはPHA粉末の焼結性領域は、ISO 11357-1(2009)によって決定されると、摂氏15~50度、または15~42℃、または18~42℃、または20~40℃である。
【0089】
発明者らは驚くべきことに、PHA粉末の熱的特性、特に焼結性領域が、特定の熱処理方法を介して劇的に改善され得ることを発見した。本発明の第二の態様のPHA粉末および/または粒状組成物は、本発明の第一の態様に関して、本明細書の他の箇所、以下で説明されるように、加熱ステップ(b)に供されることが好ましい。発明者らは、本明細書において、未加工の粉末に対する特定の加工により、積層造形プロセスでの使用に対する適合性が得られるようにその熱的特性を改善することができることを実証した。
【0090】
上述のように、異なるPHAポリマー間では物理的特性が著しく変動し得る。したがって、好ましいTm,onsetまたはTc,onsetの値は一つではなく、焼結性領域が概してより重要であることが理解される。それにもかかわらず、PHA粉末および/または粒状組成物は、その前述のonset値がそれとともに使用される積層造形装置の動作限界内で適合性があるように選択されるべきである。したがって、一実施形態では、PHAのTm,onset値は、少なくとも100℃、または少なくとも120℃、または少なくとも125℃、または100~180℃、または120~150℃である。さらに、一実施形態では、PHA粉末は、135℃未満、または125℃未満、または110℃未満、または90~130℃、または95~125℃のTc,onset値を有する。
【0091】
なおさらなる実施形態では、PHA粉末は、指定される結晶特性を有するように構成される。結晶性は、固体における構造秩序の程度を指す。ポリマー、特に半結晶性ポリマーの場合、結晶化度は、非晶質とは対照的な、結晶状態にある特定の物質の体積の割合の尺度である。結晶化度は、その硬度、密度、および熱的特性など、材料の多くの機械的特性に影響を与えることが知られている。物質の結晶化度は、X線結晶構造解析または熱量測定法などの多数の手段によって測定され得る。一実施形態では、PHAは、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも65%の結晶化度を有する。好ましい実施形態では、結晶化度は、DSC法で決定したエンタルピー変化(ΔH)を、1グラム当たり146ジュール(J/g)の理論的最大値で除算することで決定する。
【0092】
さまざまな積層造形プロセスでの使用に対する適合性を最大化するために、第二の態様の粒状組成物および/またはPHA粉末は、一定の粒子径および粒子径分布を有するように構成されることが望ましい。特定の粒子径分布が、積層造形プロセスにおいて最適な加工可能性および流動性を促進し得ることが当業者には公知である。したがって、本発明の第二の態様による一実施形態では、粒状組成物および/またはPHA粉末は、30~100ミクロン、または20~50ミクロン、または40~50ミクロンの範囲のD50粒子径を有する。約20ミクロン未満の粒子などの過度に小さな粒子は、粉末粒子の流動性を阻害し得る。反対に、適用要件に応じて、例えば50ミクロン超など、粒子が大きすぎる傾向がある場合には、最終的な印刷オブジェクトの解像度が影響を受ける。さらに、大きすぎる粒子も十分にパックされない傾向があるので、それから融合したオブジェクト内には空隙が入り得る。
【0093】
粒子径分布については、中央値はD50(または特定のISOガイドラインに従う場合はx50)と呼ばれる。D50は、この直径を超えている半分とこの直径未満である半分とで分布が二つに分かれる値の径(特に記載のない場合には本明細書ではミクロンで指定される)である。本明細書の第三の態様の実施形態で使用される場合、粒子径分布およびD50粒子径は、ISO 13320-1に従ってレーザー回折粒子径分析によって決定される。粒子の分布を分析するその他の方法の中央値には、その他の関連用語が対応する。例えば、Dv50(またはDv0.5)は、体積分布の中央値である。同様に、Dn50は個数分布に使用され、Ds50は面分布に使用される。レーザー回折の一次結果は体積分布であるため、言及するデフォルトのD50は体積中央値であり、D50は典型的には、「v」を含まないDv50を意味する。同様に、本明細書でも使用されるD10およびD90などの他の値は、類似の命名法に従い、それぞれ、体積分布による粒子径の10番目および90番目の百分位数に関連する。
【0094】
一実施形態では、したがって、粒状組成物および/またはPHA粉末は、少なくとも15ミクロン、もしくは少なくとも20ミクロン、もしくは少なくとも30ミクロンのD10値、および/または100ミクロン未満、もしくは90ミクロン未満、もしくは80ミクロン未満のD90値を有する。
【0095】
粒子径および/または粒子径分布は、本発明の第一の態様に関して本明細書の他の箇所に記載されるものを含む、様々な方法を介して必要に応じて調整され得る。具体的には、第一の態様に関連して説明した選別ステップ(e)は、粒子径分布を狭めるのに特に有用であり得、一方上記のステップ(c)で開示した粉砕方法は、平均粒子径を減少させるのに特に有用であり得る。もちろん、選別および粉砕の組み合わせは、他の方法の中でも特に、特定の設計要件に従って粒状組成物および/またはPHA粉末を加工するために用いられ得ることが意図されている。
【0096】
本発明の第三の態様は、本発明の第二の態様の実施形態のいずれかによる粒状組成物および/もしくはPHA粉末、ならびに/または第一の態様の実施形態のいずれかによる積層造形プロセス用の粉末造形材料として好適ないずれかの粒状組成物を含む積層造形プロセスである。
【0097】
第三の態様の好ましい実施形態によれば、プロセスは、(a)第二の態様の実施形態のいずれかによるPHA粉末を含む積層造形用の粒状組成物の層を提供するステップと、(b)任意選択で、液体組成物を粒状組成物の層上に選択的に堆積させるステップであって、粒状組成物または液体組成物の少なくとも一方が融合剤を含むものである、選択的に堆積させるステップと、(c)電磁放射を、(i)粒状組成物の層上の特定の場所または(ii)粒状組成物上に選択的に堆積されている液体組成物の場所のいずれか一方に印加するステップであって、粒状組成物が、形成しようとする三次元オブジェクトの一部分に対応するコンピュータデータに従って、電磁放射および/または液体組成物が適用された場所の少なくとも一部において溶融を受けて融合部分を形成するものである、印加するステップと、(d)ステップ(a)、任意選択でのステップ(b)、およびステップ(c)を複数回繰り返して、融合した三次元オブジェクトを形成するステップとを含む。
【0098】
本発明において規定される粒状組成物および/またはPHA粉末は、選択的レーザー焼結(SLS)、粉末/結合剤による方法、およびマルチジェットフュージョン(MJF)を含むがこれらに限定されない、様々な迅速プロトタイピング/迅速製造方法に特に好適である。SLSプロセスでは、ポリマー粒子はチャンバー内に導入され、レーザービームに選択的に短時間曝露され、それによりレーザービームによって影響を受けた粒子が溶融する。溶融粒子は合体し、急速に再び固体となり、固体塊を得る。このプロセスは、新しい層を絶えず適用し、当該層をレーザー光で繰り返し曝露して溶融し、その後三次元オブジェクトの形態として合体することによって、単純かつ迅速に三次元構造を製造することができる。
【0099】
本発明の粒状組成物および/またはPHA粉末を好適に組み込むことができるその他の積層造形方法としては、高速焼結(HSS)およびマルチジェットフュージョン(MJF)がある。こうした方法は、赤外線吸収流体の連続層を粉末材料上に堆積させる複数のジェットを利用し、その後、エネルギー、典型的には赤外線エネルギーの曝露を適用して粉末層を選択的に溶融する。さらに別の適した積層造形プロセスは、電子写真技術(electrophotography)による3D印刷である。この方法は、基部からオブジェクトの層を層ごとに構築する回転する光伝導体を用いる。
【0100】
この特定のプロセスの変形に関係なく、こうした3D印刷方法それぞれは典型的に、オブジェクトの製造に使用される移動可能な粉末床の同様の配置を利用する。さらに、各プロセスは、使用される加熱機構がわずかに異なるにもかかわらず、それぞれの場合で構築されるオブジェクトに類似の応力が印加されるため、それとともに類似の材料性能である粉末を利用することが必要となる。したがって、一実施形態では、本発明の記載の態様のいずれかの粒状組成物および/またはPHA粉末を、SLSプロセス、またはMJFプロセス、またはHSSプロセス、または粉末/結合剤によるプロセス、または電子写真技術3D印刷プロセスで使用する。
【0101】
一実施形態では、本発明は、三次元オブジェクトを形成する方法であって、本発明の第二の態様の実施形態のいずれかによる粒状組成物の層および/または本発明の第一の態様の実施形態のいずれかによって作製された粒状組成物の層を形成するステップと、三次元オブジェクトの少なくとも一部分の形状に対応するコンピュータデータに従って、粒状組成物の層上に液体組成物を選択的に堆積させるステップであって、粒状組成物または液体組成物の少なくとも一方が融合剤を含むものである、選択的に堆積させるステップと、液体組成物を堆積させてある粒状組成物の層の少なくとも一つの場所に電磁放射を印加するステップであって、粒状組成物が該少なくとも一つの場所で溶融を起こすものである、印加するステップと、前述のステップを複数回繰り返して、三次元オブジェクトを形成するステップとを含む方法を伴う。
【0102】
第三の態様による方法は、本発明の第一または第二の態様のいずれかの実施形態のいずれかに記載されるか、またはそれによって作製される粒状組成物を利用する。有利なことに、第二の態様の粒状組成物は、第一の態様による方法に従って作製される。
【0103】
粒状組成物からの三次元オブジェクトの形成は、追加的な材料を含むことで促進または補助され得る。こうした材料は、粒状の固体または液体であり得、ポリマー粉末内に散在されてもよく、または例えば選択的噴射などによって、その上に堆積されてもよい。融合剤は、中でも国際公開第2017196361A1号に記載されるが、MJFまたはHSSプロセスで広く使用される追加の材料の通常含まれる例である。融合剤は典型的に、活性成分として、電磁放射を吸収して熱を生じることができる一以上のエネルギー吸収体、または構成要素を含む。それらはまた、熱開始剤および/または光開始剤を含み得る。こうした構成要素は、スペクトルのUV、UV-vis、可視、近赤外線、または赤外線部分において電磁放射を吸収し得る。これら融合剤は、選択的場所に適用されると、それらが適用された領域および/または電磁放射がポリマー粉末に印加された領域でのみ溶融させることができる。
【0104】
融合剤の非限定的な例としては、カーボンブラック、タングステン青銅、モリブデン青銅、および金属ナノ粒子などの顔料、銅、亜鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、およびストロンチウムなどの様々な対イオンを有するリン酸塩、ならびにケイ酸塩、特にリン酸塩と同じまたは類似の対イオンを有するケイ酸塩が挙げられる。さらに、レーザー染料および環状ラクトン染料前駆体が使用されてもよい。近赤外線吸収染料をさらに使用することができ、例えばアルミニウム染料、テトラアリールジアミン染料、シアニン染料、プタロシアニン(pthalocyanine)染料、ジチオレン染料、およびそれらの組み合わせなどの例を含む。
【0105】
さらに、共役ポリマーは、融合剤として使用され得る。近赤外吸収共役ポリマーの例としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、ポリチオフェン、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリアニリン、ポリ(ピロール)、ポリ(アセチレン)、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリパラフェニレン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0106】
融合剤の量は、使用される構成要素に応じて様々であり得る。一実施形態では、融合剤は、0.1重量%~20重量%とすることができる。一実施例では、融合剤中のエネルギー吸収体の濃度は、0.1重量%~15重量%とすることができる。別の実施例では、濃度は、0.1重量%~8重量%とすることができる。さらに別の実施例では、濃度は、0.5重量%~2重量%とすることができる。特定の実施例では、濃度は、0.5重量%~1.2重量%とすることができる。
【0107】
融合剤はまた、樹脂成分の重合を開始することができる一以上のまたは開始剤を含んでもよい。これら開始剤には、熱開始剤および光開始剤が含まれる。
【0108】
熱開始剤としては、特に限定されないが、熱フリーラジカル重合開始剤および過酸化物が挙げられる。熱フリーラジカル重合開始剤の例としては、例えばアゾイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンニトリル)、1,1’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)などのアゾ化合物、例えばベンゾピナコール、過酸化物などのC-C不安定化合物、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
熱開始剤として潜在的に好適な過酸化物の例としては、例えば、過炭酸塩(式OC(O)Oの)、ペルオキシエステル(式C(O)OOの)、ペル無水物(peranhydride)としても知られるジアシル過酸化物(式C(O)OOC(O)の)、ジアルキルペルオキシドまたはペルエーテル(式-OOの)、ヒドロペルオキシド(式-OOHの)などが挙げられる。過酸化物はまた、本質的にオリゴマーまたはポリマーのものであってもよい。有機過酸化物の例としては、第三級アルキルヒドロペルオキシド(例えば、t-ブチルヒドロペルオキシドなど)、他のヒドロペルオキシド(例えば、クメンヒドロペルオキシドなど)、ケトンペルオキシド(ペルケトン、過酸化水素およびケトンの付加生成物であり、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシドおよびアセチルアセトンペルオキシなど)、ペルオキシエステルまたはペル酸(例えばt-ブチルペルエステル、過酸化ベンゾイル、ペルアセテートおよびペルベンゾアート、過酸化ラウロイルであり、(ジ)ペルオキシエステルを含み、ペルエーテル(例えばペルオキシジエチルエーテルなど)などである。
【0110】
熱フリーラジカル重合開始剤は、例えば、過炭酸エステル、ペルエステル、またはペル無水物(peranhydride)を含み得る。ペル無水物は、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)および過酸化ラウロイル(Laurox商標として市販されている)である。ペルエステルは、例えば、t-ブチルペルベンゾアートおよび2-エチルヘキシルペルラウレートである。過炭酸エステルは、例えば、ジ-t-ブチルペルカーボネートおよびジ-2-エチルヘキシルペルカーボネートまたはモノペルカーボネートである。
【0111】
最後に、三次元印刷のための光開始剤も公知であり、中でも米国特許第9,951,198号に記載されている。
【0112】
本明細書に記載の粒状組成物および融合剤は、一つの単一の組成物/配合中に存在してもよく、またはそれらは、別個に貯蔵され、積層造形プロセス中に選択的に互いに適用されてもよい。したがって、本発明の実施形態は、材料のキットに向けられるものであり、該キットは、(a)本明細書の他の箇所に記載される第一または第二の態様の実施形態のいずれかによって、またはそれらに従って形成される粒状組成物またはPHA粉末、(b)融合剤であって、エネルギー吸収剤、熱開始剤、または光開始剤をさらに含む、融合剤、のうちの少なくとも一つの組み合わせを含む。
【0113】
本発明の第四の態様は、第三の態様に記載のプロセスのいずれかを介して印刷された物品である。第四の態様によって印刷される物品は、第二の態様の実施形態のいずれかによる粒状組成物に由来することが好ましく、該粒状組成物は本発明の第一の態様に従って記述された実施形態のいずれかを介して生じることが好ましい。こうした物品は、非限定的な数例を挙げると、試作品、自動車、航空宇宙、医療、歯科、照明、電気、および履物を含む、様々な用途および/または市場で利用され得る。
【0114】
以下のこうした実施例は、本発明をさらに例示するが、当然ながら、その範囲をいかなる方法でも限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0115】
以下の実施例は、本発明の一定の好ましい実施形態の例示として意図されており、本発明の限定を暗に意味するものではない。表1は、D10/D50/D90粒子径(ミクロンまたはμm単位で表す)、ゆるみかさ密度(FBD)および固めかさ密度(TBD)(g/ml単位で表す)、融解温度(T)、ピーク結晶化温度(T)、融点開始温度(T,onset)、結晶化開始温度(T,onset)、焼結性領域(ΔT)、融解エンタルピー(J/g単位でのΔH)、および結晶化度(%単位)の一覧を含む、各実施例/比較例の性能の概要を提供する。別段に指定しない限り、すべての温度は摂氏温度で表される。前述の測定値を決定するために使用される方法を以下に明記する。
【0116】
本明細書の実施例で使用される各粒状組成物が提供される手段を以下にさらに説明する。具体的には、以下に別段に指定しない限り(例えばC8は、C7の粉砕されたバージョンとしたなど)、比較例1~10(C1~C10)は、その供給元から提供されたそのままのものであり、発明者によるさらなる処理は行わなかった。こうした材料のそれぞれのさらなる説明的な詳細を以下に記載する。さらに、実施例1~8で使用される粒状組成物が使用される特定の手段を、下記にさらに詳細に説明する。
【0117】
比較例1~10
C1は、TianAn Biologic Materials社によって製造され、HelianPolymers社(オランダ国)によって供給される、Enmat Y3000という名称で市販されているポリ(3-ヒドロキシブチレート)(PHB)の飛散性粉末である。以下の表1に示すように分析し、「飛散性Enmat Y3000」という名称で示した。
【0118】
C2は、Biomer Biopolyesters社(ドイツ国)から入手可能なPHB飛散性粉末である。以下の表1に示すように分析し、「飛散性Biomer」という名称で示した。
【0119】
C3は、TianAn Biologic Materials社によって製造され、NaturePlast社(フランス国)によって供給される、Enmat Y1000という名称で市販されているポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)の飛散性粉末である。以下の表1に示すように分析し、「飛散性Enmat Y1000」という名称で示した。
【0120】
C4は、Ceraflourという商標名で市販され、Byk社(オランダ国)によって供給されるPHBV飛散性粉末である。以下の表1に示すように分析し、「飛散性Ceraflour」という名称で示した。
【0121】
C5は、144℃の融点を有し、以下の表1で特定されたさらなる特性を有するポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)PHBH粉末である。これは表1に「PHBH粉末1」という名称で示している。
【0122】
C6は、100℃の融点を有し、以下の表1で特定されたさらなる特性を有するPHBH粉末である。これは表1に「PHBH粉末2」という名称で示している。
【0123】
C7は、152℃の融点を有し、以下の表1で特定されたさらなる特性を有するPHBH材料である。これは表1に「PHBH顆粒」という名称で示している。
【0124】
C8は、-40℃で、20000rpmのピンディスク速度で、Hosokawa社のUPZ 100クライオミル上で極低温粉砕されたC7のPHBH顆粒材料である。得られた粉末を125umの篩でふるい分けし、通過粒子を除いた。最終粉末を、以下の表1に示すように分析し、「クライオミル後C7」という名称で示した。
【0125】
C9は、146℃の融点を有し、以下の表1で特定されたさらなる特性を有する顆粒形態で提供されるPHBH材料である。これは表1に「PHBH顆粒2」という名称で示している。
【0126】
C10は、131℃の融点を有し、以下の表1で特定されたさらなる特性を有する顆粒形態で提供されるPHBH材料である。これは表1に「PHBH顆粒3」という名称で示している。
【0127】
実施例1~8
実施例1
190kNの力(このような例では378kN/cmの圧力に等しい)でプレス成形を用いて、直径0.4cmのPHB Y3000の錠剤を、飛散性粉末(C1の粉末)からプレスした。次に、錠剤を、1mmの篩を備えたRetsch社のZM1装置上で粉末に粉砕した。200ミクロン未満の粒子の画分を、ふるい分けによって単離した。PHB粉末からなる最終粒状組成物を表1に示すように分析し、「圧密C1」という名称で示す。
実施例1a
【0128】
上記の実施例1に開示されるように、最終的に得られた粉末3グラムを25mlの丸底フラスコに入れ、回転させながら電気加熱で100℃に加熱した。フラスコを減圧(1mbar)下にし、その後、Nで大気圧に戻して、すべての空気を除去した。この手順を3回繰り返した。温度を145℃に上昇させ、その温度で1時間維持した。その後、温度を1時間かけて155℃に上昇させ、その後1.5時間かけて165℃に上昇させた。その最小のステップ後、粉末を冷却した。PHB粉末からなる最終粒状組成物を表1に示すように分析し、「圧密/アニール後C1」という名称で示す。
【0129】
実施例2
PHBVのCeraflour飛散性粉末(C4の粉末)10kgを、40kNの力でBepex社のLabor Kompaktor L200/50(ローラー幅5cm)で圧密した。コンパクターは、互いにプレスされる2つのローラーで動作するため、プレスの比線圧を計算することができる。これはローラー幅で除算した力であり、40/5=8kN/cmとなる。ローラーで、粉末を4.6×1cmの断面の丸剤形状にプレスし、次に丸剤を、8mmの篩を備えたRetsch社のSM2000装置上で破砕してフレークにした。次いでフレークを、C4の新しい飛散性粉末と2:1の重量比(フレーク:C4粉末)で混合した。この混合物を110~120kNの力(比線圧24kN/cm)で再び圧密した。得られた丸剤を、最初に8mmの篩を備えたSM2000で粉砕し、その後二回目は8mmの篩を4mmの篩に換えた状態で再び粉砕した。次いで、最終的なフレークを、Hosokawa社のACM(Air Classifier Mill)および篩を用いて粉末に粉砕して、微細なものを除いた。PHBV粉末からなる最終的な粒状組成物を表1に示すように分析し、「圧密後C4」という名称で示す。
【0130】
実施例3
上記の実施例2に開示されるように、最終的に得られた粉末2kgを10リットルの丸底フラスコに入れ、加熱油浴中で回転させながら100℃に加熱した。フラスコを減圧(1mbar)下にし、その後、Nで大気圧に戻して、すべての空気を除去した。大気圧で7.2リットル/時間のN流でパージしながら、油浴の温度を145℃に加熱し、その温度で1時間維持した。その後、温度を150℃、155℃、160℃、165℃、および最終的に168℃まで段階的に上昇させ、それによって、各それぞれのステップの温度は1時間維持した後、温度をさらに上昇させた。その最小のステップ後、フラスコを油浴から取り出すことで、粉末を同じN流下で冷却した。
【0131】
PHBV粉末からなる最終的な粒状組成物を表1に示すように分析し、「圧密/アニール後C4」という名称で示す。
【0132】
実施例4
まず、5kgのPHBH粉末(C5の)を125umの篩でふるい分けし、より大きな粒子を除去した。次に、この選別した粉末2.7kgを10リットルの丸底フラスコに入れ、熱油浴中で回転させながら100℃に加熱した。次いで、フラスコを、Nで毎時8リットルの流れでパージしながら、4mbarの減圧下にした。1.5時間の乾燥段階後、油浴の温度を115℃に加熱し、その温度で1時間維持した。その後、温度を120℃、125℃、130℃、および最終的に135℃まで段階的に上昇させ、それによって、各それぞれのステップの温度は1時間維持した後、温度をさらに上昇させた。その最小のステップ後、フラスコを油浴から取り出すことで、粉末をNおよび減圧下で冷却した。PHBH粉末からなる最終的な粒状組成物を表1に示すように分析し、「アニール後C5」という名称で示す。
【0133】
実施例5
まず、10kgのPHBH粉末(C5の)を、Bepex社のLabor Kompaktor L200/50を用いて80kNの圧力で直径5mmの10×30mmの丸剤に圧密した。次に丸剤を、8mmの篩を備えたRetsch社のSM2000装置でフレークに粉砕した。その後、得られたフレーク3.8kgを10リットルの丸底フラスコに入れ、熱油浴中で回転させながら100℃に加熱した。フラスコを、Nで毎時7.2リットルの流れでパージしながら、1mbarの減空圧下にした。1.5時間の乾燥段階後、油浴の温度を115℃に加熱し、その温度で1時間維持した。その後、温度を120℃、125℃、130℃、および最終的に135℃まで段階的に上昇させ、それによって、各それぞれのステップの温度は1時間維持した後、温度をさらに上昇させた。その最小のステップの後、フラスコを油浴から取り出すことで、粉末をNおよび減圧下で冷却した。
【0134】
最終的なフレークを、100μmの篩を備えた極低温ミルで粉末に粉砕した。PHBH粉末からなる最終的な粒状組成物を表1に示すように分析し、「圧密/アニール後C5」という名称で示す。
【0135】
実施例6
この例では、C7のPHBH顆粒材料3.5kgを10リットルの丸底フラスコに入れ、加熱油浴中で回転させながら105℃に加熱した。フラスコを、Nで毎時10リットルの流れでパージしながら、1mbarの減圧下にした。1時間の乾燥段階後、油浴の温度を110℃に加熱し、その温度でさらに1時間維持した。その後、温度を115℃、120℃、125℃、および130℃まで段階的に上昇させ、それによって、それぞれの先述のステップの温度を1時間維持した後、温度をさらに上昇させた。その後、温度を135℃までさらにもう一回上昇させ、その後、この最終温度を2時間維持した。その最小のステップ後、フラスコを油浴から取り出すことで、粉末をNおよび減圧下で冷却した。得られたアニール顆粒を、ACM(Air Classifier Mill)で粉末に粉砕した。PHBH粉末からなる最終的な粒状組成物を表1に示すように分析し、「アニール後C7」という名称で示す。
【0136】
実施例7
C9のPHBH顆粒材料3.7kgを10リットルの丸底フラスコに入れ、加熱油浴中で回転させながら105℃に加熱した。フラスコを、Nで毎時7.2リットルの流れでパージしながら、1mbarの減圧下にした。1.5時間の乾燥段階後、油浴の温度を100℃に加熱し、その温度で1時間維持した。その後、温度を110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、および最終的に135℃まで段階的に上昇させ、それによって、各それぞれのステップの温度は1時間維持した後、温度をさらに上昇させた。その最小のステップ後、フラスコを油浴から取り出すことで、粉末をNおよび減圧下で冷却した。次いで、得られたアニール材料を、ACM(Air Classifier Mill)で粉末に粉砕した。PHBH粉末からなる最終的な粒状組成物を表1に示すように分析し、「アニール後C9」という名称で示す。
【0137】
実施例8
C10のPHBH顆粒材料110gを250mlの丸底フラスコに入れ、加熱油浴中で回転させながら85℃に加熱した。フラスコを、Nで毎時7.2リットルの流れでパージしながら、1mbarの減圧下にした。次に、油浴の温度を、中間段階を5℃刻みにして130℃に段階的に加熱し、それによって、それぞれの連続的な段階温度が達成された後で、温度を20分間維持するようにした。この指定されるステップ後、温度は130℃の温度に達し、その最終温度にさらに100分間保持した。その最小のステップ後、フラスコを油浴から取り出して、粉末をNおよび真空下で冷却した。次いで、得られたアニール材料を、極低温粉砕で粉末にした。PHBH粉末からなる最終的な粒状組成物を表1に示すように分析し、「アニール後C10」という名称で示す。
【0138】
D10/D50/D90粒子径
D10、D50、およびD90の粒子径値を、本明細書の他の箇所で言及されるように、ISO 13320-1に従って測定した。こうした値が導出された粉末の粒子径分布(PSD)を、RODOS乾燥分散ユニット、R5 4.5-875umを備えたSYMPATEC社のHELOSシステム(モデルHELOS/H3982)上でレーザー回折を使用して測定した。D50は、粒子径の統計的な体積中央値を表し、一方D10/D90はそれぞれ、こうした値の10番目および90番目の百分位数を表す。様々なサンプルについてのこの値を記録し、以下の表1で報告した。別段の記載がない限り、値はミクロン単位で報告している。
【0139】
密度
ゆるみかさ密度(FBD)または見かけ密度をASTM D1895-96に従い測定した。本明細書に記載する試験方法Aを使用した。100mlの容積および40mmの直径を有する円筒状測定カップを、底部に9.5mmの直径の開口を有する漏斗に結合するが、漏斗は測定カップの上方38mmの高さに取り付けるようにした。固めかさ密度(TBD)は、体積が一定になるまで、振幅0.2mmの振動プレート上にカップを置くことによって決定した。各組成物の値を、以下の表1にグラム/ミリリットル(g/ml)単位で報告している。
【0140】
、T、T,onset、T,onset、および焼結性領域
、T、T、T,onset、T,onset、および焼結性領域を、示差走査熱量測定(DSC)を介して決定した。DSC測定は、FS0812R0サンプルロボットおよびMettler TS0800GC1気体制御を備えたMettler社DSC823eで実施した。すべてのサンプルをアルミニウムの密封パン内で記録した。DSC機器の較正は、インジウムを用いて実施した。次いで、材料(3~10mgの量)のDSCサーモグラムを、10℃/分の走査速度で記録し、温度範囲はTf,mより高い25℃~15℃(±5℃)の温度であった。最高温度に達した後、温度を1分間一定に保ち、その後、10℃/分の走査速度で25℃に冷却した。データ収集は、STAReソフトウェアを使用して実施した。
【0141】
次いで、T、T、T,onset、T,onset、および焼結性領域の値を、ISO 11357-3(2009)に従ってDSCサーモグラフで決定した。第一に、Ti,mは、評価対象のサンプルが第一の加熱サイクル中にDSC法によって立証される場合に、10℃/分の一定の加熱速度で加熱されて、融解ピーク曲線の外挿された開始ベースラインからの曲線の検出可能な最初の逸脱を取ることによって決定した。さらに、「外挿開始ベースラインからの曲線の最初の検出可能な逸脱」は、サーモグラフがベースラインから少なくとも0.15mWの逸脱を示した点として規定された。このISO法に由来するTi,mの値を記録し、表1にT,onsetとして報告している。
【0142】
一方、Tf,cは、その後、同じISO法に従って決定され、これは評価対象材料の結晶化ピーク曲線の外挿された終了ベースラインからの曲線の最後の検出可能な逸脱を意味するが、「最後の検出可能な逸脱」は、ベースラインからの逸脱が0.1mW未満になった点として規定された。このISO法に由来するTf,cの値を記録し、表1にT,onsetとして報告している。
【0143】
同様の様式で、TおよびTを、それぞれTp,mおよびTp,cで示したのと同じISO法に従って決定した。これらの値も以下の表1に報告する。
【0144】
最後に、焼結性領域は、サンプルごとに、T,onsetからT,onsetの値を減算することによって、すなわちISO 11357-3のTi,m-Tf,cから決定した。この値は、以下の表1の「ΔT」と記された列で報告している。
【0145】
本明細書で報告するT、T,onset、T、T,onset、および焼結性領域のすべての値は、別段の記載がない限り、摂氏温度(℃)で表される。
GPC
個数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)および0.1重量%のトリフルオロ酢酸カリウムの溶液中でポリメタクリル酸メチルを基準とした35℃でのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。使用した分離カラムは、Polymer Standards Service GmbH社(ドイツ国)より提供された。次いで、プレカラムを有する三つのモデルPFG linear XL 7μm、300×8.0mmカラム(粒径:7um)を適用した。GPC分析は、紫外線(UV)、屈折率(RI)、差動粘度計(DV)、および直角光散乱(RALS)検出器を含む、Viscotek Triple検出器アレイ305を備えたViscotek GPC Max(システムID:LT-8)を使用して実施した。最後に、Malvern OmniSEC 4.7.0ソフトウェアを使用して、データ取得および計算を行った。
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
nd=決定されていないが、MWデータは実施例5と同様である(圧密したことでMWデータが変化するとは予想されない)
【0148】
別段の指定がない限り、重量%という用語は、それが組み込まれる組成物全体に対する特定の成分の質量を意味する。
【0149】
本発明を記述する文脈における用語“a”および“an”および“the”ならびに類似の言及の使用(特に続く特許請求の範囲の文脈において)は、本明細書において別段の示唆がない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。別段の記載がない限り、用語「含んでいる(comprising)」、「有している」、「含んでいる(including)」、および「含有している」は、オープンエンドの語(すなわち、「~を含むが、これらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書の値の範囲の記載は、本明細書に別段の示唆がない限り、その範囲内に収まる各別個の値に個別に言及する簡潔な方法として機能することを単に意図しており、各別個の値は、本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書に提供される任意のおよびすべての例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良好に明らかにすることを意図しており、別段に請求しない限り、本発明の範囲に限定をもたらすものではない。本明細書中のいかなる文言も、本発明の実施に必須である任意の請求されていない要素を示しているものと解釈されるべきではない。
【0150】
本発明の好ましい実施形態は、本発明を実施するための発明者に公知の最良の形態を含めて、本明細書に記述される。これらの好ましい実施形態の変形は、当業者であれば、前述の説明を一読することで明らかとなり得る。発明者は、当業者が必要に応じてそのような変形を採用することを予想しており、発明者は、本明細書に具体的に記載される以外の方法で本発明が実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法令により許容される範囲で、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙される主題のすべての変形および均等物を含む。さらに、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、上述の要素のすべての可能な変形における任意の組み合わせが本発明に包含される。
【0151】
本発明について、本発明を実施する現在の好ましい態様を含む特定の実施例に関して説明してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に記載されるように、本発明の趣旨および範囲内に該当する上述のシステムおよび技術の多数の変形および順序の変更があることを理解するであろう。
図1
【国際調査報告】