(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】分析対象分子の目視検出のためのフルオロフォア及び発色団含有コンジュゲートを調製する方法
(51)【国際特許分類】
C07F 9/09 20060101AFI20240717BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240717BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C07F9/09 U
C09K11/06
C09K11/06 650
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576338
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2022055558
(87)【国際公開番号】W WO2022264069
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン メリッサ エフ
(72)【発明者】
【氏名】マトライ トレイシー
【テーマコード(参考)】
2G043
4H050
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043EA01
2G043KA02
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB20
4H050AB81
4H050AC60
4H050BE90
(57)【要約】
水溶性色素として有用な化合物を調製する方法が開示される。具体的には、本化合物は、以下の構造(I):又はその立体異性体、互変異性体若しくは塩を有し、L
1、L
2、L
3、R
1、R
2及びMは、本明細書において定義されている通りである。
【化1】
(I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(I)の化合物を1,4-ジチオスレイトールに接触させるステップを含む、化合物を調製する方法であって、構造(I)の化合物が、以下の構造:
【化1】
(I)
(式中、
Mは、出現ごとに、独立して、2つ以上の二重結合及び少なくとも1共役度を含む部分であり、ただし、出現するMの少なくとも1つは、シアニン又はその誘導体であることを条件とし、
L
1、L
2及びL
3は、出現ごとに独立して、任意選択のリンカーであり、
R
1及びR
2は、独立して、H、OH、SH、NH
2、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシルアルキルエーテル、スルフヒドリルアルキル、-S-S-アルキル、-S-S-ヒドロキシルアルキル、アルキル-S-S-アルキル、アルキル-S-S-ヒドロキシルアルキル、ホスホアルキル-S-S-アルキル、ホスホアルキル-S-S-ヒドロキシルアルキル、スルフヒドリルアルキルエーテル(sulfyhdrylalkylether)、ホスフェート、チオホスフェート、アルキルホスホ、アルキルチオホスホ、-Oアルキルホスホ、-Oアルキルチオホスホ、アルキルエーテルホスホ、アルキルエーテルチオホスホ、-Oアルキルエーテルホスホ、-Oアルキルエーテルチオホスホ、ホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル、チオホスホアルキル、チオホスホアルキルエーテル、-Oホスホアルキル、-Oホスホアルキルエーテル、-Oチオホスホアルキル、-Oチオホスホアルキルエーテルであるか、又は以下の構造:
【化2】
を有し、
nは、0より大きな整数であり、
ただし、
R
1-L
2-又はR
2-L
3-の少なくとも一方は、-S-S-
*部分を含み、
*は、構造(I)の化合物の末端を表す)
を有する、方法。
【請求項2】
接触させるステップが、これによって、-S-S-
*部分を-S-H部分に変換する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
接触させるステップが、6.5~8の間のpHを有する溶液中で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
接触させるステップが、7~7.5の間のpHを有する溶液中で行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
溶液が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、請求項3~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
溶液が、約1~6mMの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
溶液が、約1.5~5.5mMの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、請求項3~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
溶液が、約1.9~4.2mMの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、請求項3~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
溶液が、約2~4mMの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、請求項3~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
溶液が、塩化マグネシウム(MgCl
2)を含む、請求項3~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
溶液が、約1~50mMの間の濃度の塩化マグネシウム(MgCl
2)を含む、請求項3~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
溶液が、約2~40mMの間の濃度の塩化マグネシウム(MgCl
2)を含む、請求項3~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
溶液が、約3~35mMの間の濃度の塩化マグネシウム(MgCl
2)を含む、請求項3~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
溶液が、約4~30mMの間の濃度の塩化マグネシウム(MgCl
2)を含む、請求項3~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
溶液が、約5~25mMの間の濃度の塩化マグネシウム(MgCl
2)を含む、請求項3~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
溶液が有機溶媒を含む、請求項3~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
有機溶媒がメタノールである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
有機溶媒がアセトニトリルである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
溶液が、約5体積%より高い有機溶媒濃度を有する、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
溶液が、約7.5体積%より高い有機溶媒濃度を有する、請求項16~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
溶液が、約10体積%より高い有機溶媒濃度を有する、請求項16~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
溶液が、約15体積%より高い有機溶媒濃度を有する、請求項16~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
-S-H部分を架橋試薬と接触させて、これによって、化合物と架橋試薬との間に共有結合を形成させるステップをさらに含む、請求項2~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
架橋試薬が、以下の構造:
【化3】
(式中、
L
4は、リンカーである)
を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
L
4が、C及びOから選択される原子を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
L
4が、以下の構造:
【化4】
(式中、
x
1及びx
2は、0より大きな整数である)。
のうちの1つを有する、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
x
1が1である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
x
1が3である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
x
1が5である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
x
2が2である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
x
2が3である、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
架橋試薬が、以下の構造:
【化5】
のうちの1つを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
L
1が、出現ごとに、C、O、S、N及びPから選択される原子を含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
L
2が、出現ごとに、C、O、S、N及びPから選択される原子を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
L
3が、出現ごとに、C、O、S、N及びPから選択される原子を含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
出現するL
1の少なくとも1つが、C、O及びNから選択される原子を含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
出現するL
1の少なくとも1つが、アルキレンリンカー又はヘテロアルキレンリンカーである、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
出現するL
1の少なくとも1つが、アルキレンリンカーである、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
出現するL
1の少なくとも1つが、ヘテロアルキレンリンカーである、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
出現するL
2の少なくとも1つが、以下の構造:
【化6】
(式中、
x
3及びx
4は、それぞれ独立して、0より大きな整数である)
を有する、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
x
3が、1、2、3又は4である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
x
4が、2、3、4又は5である、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
x
3が、1又は2であり、x
4が、2、3又は4である、請求項40~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
出現するL
1の少なくとも1つが、以下の構造:
【化7】
のうちの1つを有する、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
L
1が出現ごとに、以下の構造:
【化8】
のうちの1つを有する、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
nが、1~20の整数である、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
nが、2~10の整数である、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
出現するL
2の少なくとも1つが、C、O、S及びPから選択される原子を含む、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
出現するL
2の少なくとも1つが、アルキレン又はヘテロアルキレンである、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
出現するL
2の少なくとも1つが、以下の構造:
【化9】
を含む、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
出現するL
2の少なくとも1つが、以下の構造:
【化10】
(式中、
x
5は、0より大きな整数である)
を含む、請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
x
5が、2、3又は6である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
出現するL
2の少なくとも1つが、以下の構造:
【化11】
を含む、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
出現するL
3の少なくとも1つが、C、O、S及びPから選択される原子を含む、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
出現するL
3の少なくとも1つが、アルキレン又はヘテロアルキレンである、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
出現するL
3の少なくとも1つが、以下の構造:
【化12】
を含む、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
出現するL
3の少なくとも1つが、以下の構造:
【化13】
(式中、
x
6は、0より大きな整数である)
を含む、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
x
6が、2、3又は6である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
出現するL
3の少なくとも1つが、以下の構造:
【化14】
を含む、請求項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
出現するL
3の少なくとも1つが、以下の構造:
【化15】
(式中、
x
7は、0より大きな整数である)
を含む、請求項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
x
7が、1、2、3、4、5又は6である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
x
7が3である、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
R
1が、H、OH、SH、NH
2、アルキル、アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシルアルキルエーテル、スルフヒドリルアルキル、-S-S-アルキル、-S-S-ヒドロキシルアルキル、アルキル-S-S-アルキル、アルキル-S-S-ヒドロキシルアルキル、ホスホアルキル-S-S-アルキル、ホスホアルキル-S-S-ヒドロキシルアルキル、スルフヒドリルアルキルエーテル(sulfyhdrylalkylether)、ホスフェート、チオホスフェート又はアルキルホスホである、請求項1~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
R
2が、H、OH、SH、NH
2、アルキル、アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシルアルキルエーテル、スルフヒドリルアルキル、-S-S-アルキル、-S-S-ヒドロキシルアルキル、アルキル-S-S-アルキル、アルキル-S-S-ヒドロキシルアルキル、ホスホアルキル-S-S-アルキル、ホスホアルキル-S-S-ヒドロキシルアルキル、スルフヒドリルアルキルエーテル(sulfyhdrylalkylether)、ホスフェート、チオホスフェート、アルキルホスホであるか、又は以下の構造:
【化16】
を有する、請求項1~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
R
1が、以下の構造:
【化17】
(式中、
x
8及びx
9は、それぞれ独立して、0より大きな整数である)
を含む、請求項1~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
x
8が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
x
9が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12である、請求項65又は66に記載の方法。
【請求項68】
x
8が、4、5、6、7又は8であり、x
9が、4、5、6、7又は8である、請求項65~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
出現するMの少なくとも1つが、フルオロフォア又は発色団である、請求項1~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
出現するMの2つ以上が、FRETドナー-アクセプタの対を形成する、請求項1~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
出現するMの少なくとも1つが、3つ以上のアリール環若しくはヘテロアリール環、又はそれらの組合せを含む部分である、請求項1~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
Mが出現ごとに、クマリン色素、レゾルフィン色素、ジピロメテンボロンジフルオリド色素、ルテニウムビピリジル色素、チアゾールオレンジ色素、ポリメチン、N-アリール-1,8-ナフタルイミド色素、ホウ素-ジピロメテン、ローダミン、シアニン色素、ピレン、ペリレン、ペリレンモノイミド、6-FAM、5-FAM、6-FITC、5-FITC及びそれらの誘導体からなる群から独立して選択される、請求項1~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
出現するMの少なくとも1つが、以下の構造:
【化18】
のうちの1つを有する、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
溶液が、塩化マグネシウム、ジメチルスルホキシド、ポリソルベート又はそれらの組合せをさらに含む、請求項3~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
化合物を1,4-ジチオスレイトールと共に、インキュベート温度でインキュベート時間、加熱するステップをさらに含む、請求項1~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
インキュベート時間が1時間超である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
インキュベート時間が1.5時間超である、請求項75又は76に記載の方法。
【請求項78】
インキュベート時間が2時間超である、請求項75~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
インキュベート温度が25℃より高い、請求項75~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
インキュベート温度が30℃より高い、請求項75~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
インキュベート温度が35℃より高い、請求項75~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
インキュベート温度が、約37℃であり、インキュベート時間が、約2時間である、請求項75~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
共有結合した架橋試薬を分析対象分子と接触させて、これによって、化合物を試料混合物中の分析対象分子に結合させるステップをさらに含む、請求項7~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
分析対象分子が、核酸、炭水化物、アミノ酸、ポリペプチド、グリコタンパク質、ホルモン、アプタマー及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
分析対象分子が、RNA、DNA、オリゴヌクレオチド、修飾又は誘導化ヌクレオチド、酵素、細胞受容体、プリオン、細胞受容体リガンド、ホルモン、タンパク質、抗体、抗原、毒素、細菌、ウイルス、血液細胞、組織細胞及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
試料混合物が励起波長で照射されると、試料混合物が、光学応答を生じるほど十分な量の分析対象分子に結合した化合物を含む、請求項83~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
励起波長が、化合物の1つ又は複数のM部分の励起波長である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
光学応答が蛍光応答である、請求項86又は87に記載の方法。
【請求項89】
試料が細胞を含む、請求項86~88に記載の方法。
【請求項90】
フローサイトメトリーによって細胞を観察するステップをさらに含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
蛍光応答を、検出可能に異なる光学特性を有する第2のフルオロフォアの蛍光応答と区別するステップをさらに含む、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
その可視特性によって、分析対象分子に結合した化合物を検出するステップをさらに含む、請求項83~85のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、フルオロフォア及び発色団含有化合物(例えば、蛍光色素部分を含むポリマー化合物)の調製、並びに様々な分析法におけるそれらの使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
蛍光色素及び/又は発色色素は、非常に感度の高い検出試薬が望ましい用途にとって特に好適であることが知られている。試料中の特定の分析対象分子、成分又は構成成分を優先的に標識することが可能な色素によって、研究者は、その特定の分析対象分子、成分又は構成成分の存在、量及び/又は位置を決定することが可能となる。さらに、特定の系では、多様な環境における、その空間的及び時間的分布に関するモニタリングを行うことができる。
蛍光及び比色定量方法は、化学及び生物学において、非常に広範囲に普及している。これらの方法は、生体分子に関する、存在、構造、距離、配向、複合体形成及び/又は位置に関する有用な情報をもたらす。さらに、時間分解法は、動力学及び速度の測定に使用されることが次第に増えている。その結果、核酸及びタンパク質などの生体分子への蛍光標識又は着色標識のバイオコンジュゲートに関する多数の戦略が開発されてきた。生体分子の分析は、通常、水性環境で行われるので、所望の空間情報及び生体分子の相互作用を検討することが可能な水性系と適合可能な色素の開発及び使用に重点が置かれてきた。
したがって、バイオコンジュゲート、とりわけモル輝度の向上した色素のためのこのような水溶性色素の調製が、当分野において必要とされている。理想的には、所望の分析対象分子、成分又は構成成分にきれいにコンジュゲートする比較的純粋な生成物が得られるよう、フルオロフォア及び発色団を含む化合物を調製する。本開示は、この必要性を満たし、さらに関連する利点を実現する。
【発明の概要】
【0003】
手短に述べると、本開示の実施形態は、概して、生体分子などの分析対象分子の目視検出を可能にする、水溶性蛍光色素及び/又は発色色素及び/又はプローブとして有用な化合物の調製を対象とする。特に、一実施形態は、構造(I)の化合物を1,4-ジチオスレイトールに接触させるステップを含む、化合物を調製する方法であって、構造(I)の化合物が、以下の構造:
【化1】
(I)
(式中、R
1、R
2、L
1、L
2、L
3及びMは、本明細書に定義されている通りである)を有する、方法を提供する。本開示のこれらの態様及び他の態様が、以下の詳細説明を参照すると明白になろう。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の記載において、本開示の様々な実施形態の完全な理解をもたらすために、ある種の具体的な詳細が説明される。しかし、当業者は、本開示は、これらの詳細なしに実施され得ることを理解していよう。
文脈上異なる解釈を要する場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、語「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」などのその変化形は、オープンな包括的な意味、すなわち、「以下に限定されないが、含む」として解釈されるべきである。
本明細書全体を通じて、「一実施形態」又は「実施形態」と言う場合、その実施形態に関連して記載されている特定の機能、構造又は特徴が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書の全体の様々な位置における、「一実施形態では」又は「実施形態では」という言い回しの出現は、すべてが、必ずしも同じ実施形態を指す訳ではない。さらに、特定の機能、構造又は特徴は、1つ又は複数の実施形態における、あらゆる好適な方法において組み合わされ得る。
【0005】
用語「約」は、明記されている数値又は範囲と関連して使用される場合、当業者が約を妥当と考える意味、すなわち、明記した値の±20%;明記した値の±19%;明記した値の±18%;明記した値の±17%;明記した値の±16%;明記した値の±15%;明記した値の±14%;明記した値の±13%;明記した値の±12%;明記した値の±11%;明記した値の±10%;明記した値の±9%;明記した値の±8%;明記した値の±7%;明記した値の±6%;明記した値の±5%;明記した値の±4%;明記した値の±3%;明記した値の±2%;又は明記した値の±1%の範囲内で、明記した値若しくは範囲よりもいくらか大きい、又はいくらか小さいことを意味する。
「アミノ」とは、-NH2基を指す。
「カルボキシ」とは、-CO2H基を指す。
「スルフヒドリル」、「チオール」又は「チオ」は、-SH基を指す。
「チオオキソ」とは、=S基を指す。
「ヒドロキシル」又は「ヒドロキシル」とは、-OH基を指す。
【0006】
「アルキル」とは、不飽和を含まず、1~12個の炭素原子(C1-C12アルキル)、1~8個の炭素原子(C1-C8アルキル)又は1~6個の炭素原子(C1-C6アルキル)を有する、炭素原子及び水素原子のみからなる直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖の基であって、単結合によって分子の残りに結合している炭化水素鎖の基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソ-プロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシルなどを指す。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキル基は、置換されていてもよい。
「ヒドロキシルアルキル」とは、少なくとも1個の水素がヒドロキシル基により置き換えられている、上で定義されているあらゆるアルキル基を指す。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヒドロキシルアルキル基は、置換されていてもよい。
【0007】
「アミノアルキル」とは、少なくとも1個の水素がアミノ基により置き換えられている、上で定義されているあらゆるアルキル基を指す。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アミノアルキル基は、置換されていてもよい。
「スルフヒドリルアルキル」とは、少なくとも1個の水素がスルフヒドリル基により置き換えられている、上で定義されているあらゆるアルキル基を指す。本明細書において特に具体的に明記しない限り、スルフヒドリルアルキル基は、置換されていてもよい。
「アルキルエーテル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素結合が炭素-酸素結合により置き換えられている、上で定義されているあらゆるアルキル基を指す。炭素-酸素結合は、末端(アルコキシ基のように)に存在していてもよく、又は炭素酸素結合は、内部(すなわち、C-O-C)に存在していてもよい。アルキルエーテルは、少なくとも1つの炭素酸素結合を含むが、1つより多く含むことがある。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)は、アルキルエーテルの意味の範囲内で含まれる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキルエーテル基は置換されていてもよい。例えば、一部の実施形態では、アルキルエーテルは、アルコール又は-OP(=Ra)(Rb)Rcにより置換されており、Ra、Rb及びRcはそれぞれ、構造(I)の化合物に関して定義されている通りである。
【0008】
「ヒドロキシルアルキルエーテル」とは、少なくとも1個の水素がヒドロキシル基により置き換えられている、上で定義されているアルキルエーテル基を指す。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヒドロキシルアルキルエーテル基は置換されていてもよい。
「スルフヒドリルアルキルエーテル」とは、少なくとも1個の水素がスルフヒドリル基により置き換えられている、上で定義されているあらゆるアルキルエーテル基を指す。本明細書において特に具体的に明記しない限り、スルフヒドリルアルキルエーテル基は置換されていてもよい。
「アルコキシ」とは、式-ORaの基を指し、Raは、1~12個の炭素原子を含有する、上で定義したアルキル基である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルコキシ基は、置換されていてもよい。
【0009】
「アルキレン」又は「アルキレン鎖」とは、不飽和を含まず、1~12個の炭素原子を有する、炭素及び水素のみからなる、分子の残りをラジカル基に連結する、二価の直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレン、プロピニレン、n-ブチニレンなどを指す。アルキレン鎖は、単結合を介して分子の残りに、及び単結合を介してラジカル基に結合している。分子の残り及びラジカル基へのアルキレン鎖の結合点は、この鎖内の1個の炭素又はあらゆる2個の炭素を介することができる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキレンは、置換されていてもよい。
【0010】
「ヘテロアルキレン」とは、アルキレン鎖内、又はアルキレン鎖の末端において、少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、Si、N、O、P又はS)を含む、上で定義したアルキレン基を指す。一部の実施形態では、ヘテロ原子は、アルキレン鎖内に存在する(すなわち、ヘテロアルキレンは、少なくとも1つの炭素-[ヘテロ原子]-炭素結合を含み、xは、1、2又は3である)。他の実施形態では、ヘテロ原子は、アルキレンの末端に存在し、したがって、該アルキレンを分子の残りに結合させるよう働く(例えば、Ma-H-A-Mbであり、Ma及びMbはそれぞれ、分子の個別の部分であり、Hがヘテロ原子であり、Aがアルキレンである)。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヘテロアルキレン基は、置換されていてもよい。例示的なヘテロアルキレン基には、エチレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド)、並びに以下に例示されている「Cリンカー」、「HEGリンカー」及び「PEG1Kリンカー」という連結基:
【0011】
【0012】
上記のCリンカー、HEGリンカー及び/又はPEG1Kリンカーの多量体が、ヘテロアルキレンリンカーの様々な実施形態に含まれる。PEG1Kリンカーの一部の実施形態では、nは、19~25の範囲であり、例えば、nは、19、20、21、22、23、24又は25である。多量体は、例えば、以下の構造:
【化3】
(式中、xは、0又は0より大きい整数であり、例えば、xは、0~100(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)の範囲である)を含んでもよい。
「ヘテロ原子リンカー」に関連する「ヘテロ原子」とは、1個又は複数のヘテロ原子からなるリンカー基を指す。例示的なヘテロ原子リンカーには、O、N、P及びSからなる群から選択される単一原子、並びに複数のヘテロ原子、例えば、式-P(O
-)(=O)O-又は-OP(O
-)(=O)O-を有するリンカー及び多量体、並びにそれらの組合せが含まれる。
【0013】
「ホスフェート」とは、-OP(=O)(Ra)Rb基(Raは、OH、O-又はORcであり、Rbは、OH、O-、ORcである)、チオホスフェート基、又はさらなるホスフェート基(Rcは、対イオン(例えば、Na+など)である)を指す。
「ホスホアルキル」とは、-OP(=O)(Ra)Rb基であり、Raは、OH、O-又はORcであり、Rbは、-Oアルキル(又はアルコキシ)であり、Rcは、対イオン(例えば、Na+など)である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ホスホアルキル基は、置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、ホスホアルキル基における-Oアルキル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル又はチオホスホアルキルエーテルのうちの1つ又は複数により置換されていてもよい。
【0014】
「ホスホアルキルエーテル」とは、-OP(=O)(Ra)Rb基を指し、Raは、OH、O-又はORcであり、Rbは、-Oアルキルエーテルであり、Rcは、対イオン(例えば、Na+など)である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ホスホアルキルエーテル基は、置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、ホスホアルキルエーテル基における-Oアルキルエーテル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル又はチオホスホアルキルエーテルのうちの1つ又は複数により置換されていてもよい。
「チオホスフェート」とは、-OP(=Ra)(Rb)Rc基を指し、Raは、O又はSであり、Rbは、OH、O-、S-、ORd又はSRdであり、Rcは、OH、SH、O-、S-、ORd、SRd、ホスフェート基、又はさらにチオホスフェート基であり、Rdは対イオン(例えば、Na+など)であり、ただし、i)RaはSであり、ii)RbはS-又はSRdであり、iii)RcはSH、S-若しくはSRdであるか、又はiv) i)、ii)及び/又はiii)の組合せであることを条件とする。
【0015】
「チオホスホアルキル」とは、-OP(=Ra)(Rb)Rc基を指し、Raは、O又はSであり、Rbは、OH、O-、S-、ORd又はSRdであり、Rcは、-Oアルキルであり、Rdは、対イオン(例えば、Na+など)であり、ただし、i)RaはSであり、ii)RbはS-若しくはSRdである、又はiii)RaはSであり、Rbは、S-又はSRdであることを条件とする。本明細書において特に具体的に明記しない限り、チオホスホアルキル基は、置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、チオホスホアルキル基における-Oアルキル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル又はチオホスホアルキルエーテルのうちの1つ又は複数により置換されていてもよい。
「チオホスホアルキルエーテル」とは、-OP(=Ra)(Rb)Rc基を指し、Raは、O又はSであり、Rbは、OH、O-、S-、ORd又はSRdであり、Rcは、-Oアルキルエーテルであり、Rdは、対イオン(例えば、Na+など)であり、ただし、i)RaはSであり、ii)RbはS-若しくはSRdである、又はiii)RaはSであり、Rbは、S-又はSRdであることを条件とする。本明細書において特に具体的に明記しない限り、チオホスホアルキルエーテル基は、置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、チオホスホアルキル基における-Oアルキルエーテル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル又はチオホスホアルキルエーテルのうちの1つ又は複数により置換されていてもよい。
【0016】
「アルキルホスホ」とは、-RP(=O)(Ra)Rb基を指し、Rは、アルキレン基であり、Raは、OH、O-又はORcであり、Rbは、-Oアルキルであり、Rcは、対イオン(例えば、Na+など)である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキルホスホ基は、置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、アルキルホスホ基における-Oアルキル部分(Rb)は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル又はチオホスホアルキルエーテルのうちの1つ又は複数により置換されていてもよい。「-Oアルキルホスホ」は、酸素原子を介して分子の残りに結合しているアルキルホスホ基を指す。本明細書において特に具体的に明記しない限り、Oアルキルホスホ基は、置換されていてもよい。
「アルキルエーテルホスホ」とは、-RP(=O)(Ra)Rb基を指し、Rは、アルキレン基であり、Raは、OH、O-又はORcであり、Rbは、-Oアルキルエーテルであり、Rcは、対イオン(例えば、Na+など)である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキルホスホ基は、置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、アルキルエーテルホスホ基における-Oアルキルエーテル部分(Rb)は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル又はチオホスホアルキルエーテルのうちの1つ又は複数により置換されていてもよい。「-Oアルキルエーテルホスホ」は、酸素原子を介して分子の残りに結合しているアルキルエーテルホスホ基を指す。本明細書において特に具体的に明記しない限り、Oアルキルエーテルホスホ基は、置換されていてもよい。
【0017】
「アルキルチオホスホ」とは、-P(=Ra)(Rb)Rc基を指し、Raは、O又はSであり、Rbは、OH、O-、S-、ORd又はSRdであり、Rcは、-Oアルキルであり、Rdは、対イオン(例えば、Na+など)であり、ただし、RaはSであるか、又はRbはS-若しくはSRdであることを条件とするか、或いはRaはSであり、RbはS-又はSRdであることを条件とする。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキルチオホスホ基は、置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、アルキルチオホスホ基における-Oアルキル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル又はチオホスホアルキルエーテルのうちの1つ又は複数により置換されていてもよい。「-Oアルキルチオホスホ」は、酸素原子を介して分子の残りに結合しているアルキルチオホスホ基である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、Oアルキルチオホスホ基は、置換されていてもよい。
【0018】
「アルキルエーテルチオホスホ」とは、-P(=Ra)(Rb)Rc基を指し、Raは、O又はSであり、Rbは、OH、O-、S-、ORd又はSRdであり、Rcは、-Oアルキルエーテルであり、Rdは、対イオン(例えば、Na+など)であり、ただし、RaはSであるか、又はRbはS-若しくはSRdであることを条件とするか、或いはRaはSであり、RbはS-又はSRdであることを条件とする。本明細書において特に具体的に明記しない限り、アルキルエーテルチオホスホ基は、置換されていてもよい。例えば、ある種の実施形態では、アルキルエーテルチオホスホ基における-Oアルキルエーテル部分は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル又はチオホスホアルキルエーテルのうちの1つ又は複数により置換されていてもよい。「-Oアルキルエーテルチオホスホ」は、酸素原子を介して分子の残りに結合しているアルキルチオホスホ基である。本明細書において特に具体的に明記しない限り、Oアルキルエーテルチオホスホ基は、置換されていてもよい。
【0019】
「共役」とは、介在するシグマ結合全体の、1つのp軌道と別のp軌道との重なりを指す。共役は、環式化合物又は非環式化合物に起こり得る。「共役度」とは、介在するシグマ結合全体の、少なくとも1つのp軌道と別のp軌道との重なりを指す。例えば、1,3-ブタジエンは、1共役度を有する一方、ベンゼン及び他の芳香族化合物は、通常、複数の共役度を有する。蛍光化合物及び発色化合物は、通常、少なくとも1共役度を含む。
「バイオコンジュゲート(Bio-conjugation)」又は「バイオコンジュゲート(bio-conjugate)」、及び関連する変形語とは、2つの分子間に安定な共有結合を形成させるための化学反応戦略を指す。用語「バイオコンジュゲート」は、分子の1つが生体分子(例えば、抗体)である場合に一般に使用されるが、非生体分子(例えば、ポリマー樹脂)と共有結合を形成することを記載するために使用することができる。このような反応戦略に由来する生成物又は化合物とは、「コンジュゲート」、「バイオコンジュゲート」又は文法的等価物のことである。
【0020】
「リンカー」とは、炭素、酸素、窒素、硫黄、リン及びそれらの組合せなどの少なくとも1個の原子からなる連続鎖であって、分子のある部分を同一分子の別の部分、又は異なる分子、部分若しくは固体支持体(例えば、マイクロ粒子)に連結させる連続鎖を指す。リンカーは、イオン性結合相互作用又は水素結合相互作用などの、共有結合又は他の手段を介して分子に結合することができる。
用語「目視可能な」及び「目視により検出可能な」は、本明細書において、事前の照射、又は化学的活性化若しくは酵素的活性化なしに、目視検査によって観察可能な物質を指すために使用される。このような目視により検出可能な物質は、約300~約900nmの範囲のスペクトル領域の光を吸収して発光する。好ましくは、このような物質は、強く発色し、好ましくは、少なくとも約40,000M-1cm-1、より好ましくは、少なくとも約50,000M-1cm-1、さらにより好ましくは、少なくとも約60,000M-1cm-1、さらにより好ましくは、少なくとも約70,000M-1cm-1及び最も好ましくは、少なくとも約80,000M-1cm-1のモル消光係数を有する。本開示の化合物は、裸眼による観察によって検出され得るか、又は非限定的に、吸収スペクトル光度計、透過型光学顕微鏡、デジタルカメラ及びスキャナを含む光学に基づく検出デバイスにより検出され得る。目視により検出可能な物質は、可視スペクトルの光を放出及び/又は吸収するものに限定されない。紫外線(UV)領域(約10nm~約400nm)、赤外(IR)領域(約700nm~約1mm)の光を放出及び/又は吸収する物質、並びに電磁スペクトルの他の領域において放出及び/又は吸収する物質は、「目視により検出可能な」物質の範囲内にやはり含まれる。
【0021】
「蛍光」とは、特定の周波数の光を吸収して、異なる周波数の光を放出することが可能な分子を指す。蛍光は、当業者に周知である。
「有色の」とは、有色スペクトル(すなわち、赤色、黄色、青色など)内の光を吸収する分子を指す。
「FRET」又は「Forster共鳴エネルギー移動」とは、1つの部分(例えば、第1の発色団又は「ドナー」)の励起に起因するエネルギーが、隣接部分(例えば、第2の発色団又は「アクセプタ」)に移動することによる、物理的相互作用を指す。「FRET」は、時として、「蛍光共鳴エネルギー移動」とも互換的に使用される(すなわち、各発色団が、蛍光部分である場合)。一般に、FRETは、(1)アクセプタ発色団の励起又は吸収スペクトルは、ドナー発色団の発光スペクトルと重なる、(2)アクセプタ発色団及びドナー発色団の遷移双極子モーメントは、実質的に平行である(すなわち、約0°又は180°)、及び(3)アクセプタ発色団及びドナー発色団は、近接空間を共有する(すなわち、互いに近い)ことが必要である。ドナーからアクセプタへのエネルギー移動は、非放射双極子-双極子カップリングにより発生し、ドナー発色団とアクセプタ発色団との間の距離は、光の波長よりも一般にずっと短い。
【0022】
「ドナー」又は「ドナー発色団」とは、励起した電子状態に誘導される、又はこの状態に誘導することができる発色団(例えば、フルオロフォア)を指し、長距離双極子-双極子相互作用により非放射的に、その励起エネルギー又は吸収エネルギーを近傍のアクセプタ発色団に移動させることができる。理論によって拘束されることを望むものではないが、個々の発色団の振動双極子が類似の共鳴周波数を有するので、エネルギー移動が起こると考えられる。これらの類似の共鳴周波数を有するドナー及びアクセプタは、「ドナー-アクセプタ対」と称され、これは、「FRET部分」、「FRET対」、「FRET色素」又は類似語と互換的に使用される。一部の実施形態では、少なくとも1つのMは、ドナー発色団である。
「アクセプタ」又は「アクセプタ発色団」とは、発色団(例えば、フルオロフォア)であって、この発色団に、長距離双極子-双極子相互作用による非放射性移動を介して、ドナー発色団から励起エネルギー又は吸収エネルギーが移動する、上記の発色団を指す。一部の実施形態では、少なくとも1つのMは、アクセプタ発色団である。一部の実施形態では、Mはそれぞれ、ドナー発色団又はアクセプタ発色団のいずれか一方である。
【0023】
「ストークシフト」とは、励起又は吸収の最大バンドの位置(例えば、波長)と電子遷移(例えば、励起状態から非励起状態へ、又はその逆)の発光スペクトルとの間の差異を指す。一部の実施形態では、構造(I)の化合物は、25nmを超える、30nmを超える、35nmを超える、40nmを超える、45nmを超える、50nmを超える、55nmを超える、60nmを超える、65nmを超える、70nmを超える、75nmを超える、80nmを超える、85nmを超える、90nmを超える、95nmを超える、100nmを超える、110nmを超える、120nmを超える、130nmを超える、140nmを超える、150nmを超える、160nmを超える、170nmを超える、180nmを超える、190nmを超える又は200nmを超えるストークシフトを有する。
「J値」は、ドナー発色団の発光スペクトルとアクセプタ発色団の励起スペクトル又は吸収スペクトルとの間のスペクトル重なりの整数値として計算される。ドナー発色団の発光スペクトルは、ドナー発色団が好ましい励起波長又は吸収波長で励起されると生成するものである。ドナー発色団の好ましい励起波長又は吸収波長は、当業者に周知のそれらの個々の励起極大又は吸収極大(例えば、パシフィックブルーは、約401nmに励起極大又は吸収極大を有し、FITCは、約495nmに励起極大又は吸収極大を有する)に存在するか、又はそれらの近傍に存在する。
【0024】
「テトラメチルインド(ジ)-カルボシアニン」という「シアニン色素」は、一般式:
【化4】
(式中、
Rは、出現ごとに、独立して、置換されていてもよいアルキルであり、1つ又は複数のR基は一緒になって、複素環式又はヘテロアリール環又は環系を形成してもよく、
yは、0より大きな整数である)を有する、有機色素部分である。例えば、一部の実施形態では、yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。一部のさらに特定の実施形態では、yは、1、2、3、4、5又は6である。より特定の実施形態では、yは、1、2、3又は4である。一部の実施形態では、yは、1又は2である。
【0025】
シアニン色素には、ストレプトシアニン(又は、開環鎖シアニン)、ヘミシアニン、閉環鎖シアニン、ニュートロシアニン、メロシアニン(例えば、スピロピラン及びキノフタロン)、アポシアニンが挙げられる。上で明記されている通り、シアニン色素の窒素はどちらも、それぞれ独立して、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピリジニル、キノリニル、インドリル、ベンゾチアゾリルなどのヘテロアリール基の部分とすることができる。一部の実施形態では、シアニン色素の誘導体は、アルキル基(例えば、メチル、エチル、ブチルなど)、カルボキシ、アセチルメトキシ、スルホ及びそれらの組合せからなる群から選択される官能基の付加物を含んでもよい。例示的なシアニン色素は、以下、並びに報告された励起波長及び発光波長を含む:
【表1】
【0026】
本開示の実施形態はまた、1個又は複数の原子が異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられることによって同位体標識されている構造(I)の化合物のすべてを包含することが意図されている。開示化合物に組み込むことが可能な同位体の例には、それぞれ、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123I及び125Iなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素及びヨウ素の同位体を含む。
構造(I)又は(II)の同位体標識化合物は、一般に、当業者に公知の従来技法によって、又は以前に使用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して、以下及び以下の実施例に記載されているものに類似した方法によって一般に調製することができる。
「安定な化合物」及び「安定構造」は、反応混合物から有用な純度の程度までの単離、及び有効な治療剤への製剤化に分解しない(survive)ほど十分に頑強な化合物を示すことが意図されている。
【0027】
「任意選択の(Optional)」又は「してもよい(optionally)」は、その後に記載されている事象又は状況が発生することがあるか、又は発生しないことがあることを意味する。このような記載は、該事象又は状況が起こる場合、及びそれが起こらない場合を含む。例えば、「置換されていてもよいアルキル」は、アルキル基が置換されていてもよいこと、又は置換されていなくてもよいこと、及びこの記載は、置換アルキル基と置換を有していないアルキル基の両方を含むことを意味する。
「塩」は、酸付加塩と塩基付加塩の両方を含む。
「酸付加塩」とは、以下に限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、及び以下に限定されないが、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ショウノウ酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-二スルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-二スルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などの有機酸と共に形成される塩を指す。
【0028】
「塩基付加塩」とは、無機塩基又は有機塩基の遊離酸への付加から調製される塩を指す。無機塩基に由来する塩には、以下に限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩などが含まれる。有機塩基に由来する塩には、以下に限定されないが、一級、二級及び三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環式アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えばアンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの塩が含まれる。特に、好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン及びカフェインである。
【0029】
結晶化は、本明細書において記載されている化合物の溶媒和物を生じることがある。本開示の実施形態は、記載されている化合物の溶媒和物のすべてを含む。本明細書で使用する場合、用語「溶媒和物」とは、本開示の化合物の1つ又は複数の分子と溶媒の1つ又は複数の分子を含む凝集物を指す。溶媒は水であってもよく、この場合、溶媒和物は水和物であってもよい。代替的に、溶媒は、有機溶媒であってもよい。したがって、本開示の化合物は、一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物など、並びに対応する溶媒和形態を含む、水和物として存在することがある。本開示の化合物は、真の溶媒和物であってもよい一方、他の場合では、本開示の化合物は、単に偶発的な水又は別の溶媒を保持することがあるか、又は水とある偶発的な溶媒との混合物であってもよい。
【0030】
本開示の化合物(例えば、構造I又はIIの化合物)の実施形態、又はその塩、互変異性体若しくは溶媒和物は、1個又は複数の立体中心を含むことがあり、したがって、絶対立体化学に関して、(R)-若しくは(S)-、又はアミノ酸の場合、(D)-若しくは(L)-と定義され得る、鏡像異性体、ジアステレオマー及び他の立体異性体が生じることがある。本開示の実施形態は、すべてのこのような可能な異性体、並びにそのラセミ体及び光学的に純粋な形態を含むことが意図されている。光学活性な(+)及び(-)、(R)-及び(S)-、又は(D)-及び(L)-異性体は、キラルシントン若しくはキラル試薬を使用して調製することができるか、又は従来の技法、例えばクロマトグラフィー及び分別結晶化を使用して分割することができる。個々の鏡像異性体の調製/単離に関する従来の技法には、好適な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、又は例えば、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用するラセミ体(又は、塩若しくは誘導体のラセミ体)の分割が含まれる。本明細書において記載されている化合物が、オレフィン性二重結合又は幾何学的不斉の他の中心を含有している場合、及び特に指定しない限り、本化合物は、E及びZ幾何異性体の両方を含むことが意図されている。同様に、互変異性体の形態のすべてが含まれることがやはり意図されている。
【0031】
「立体異性体」とは、同じ結合によって結合した同一原子から構成されているが、相互交換することができない異なる三次元構造を有する化合物を指す。本開示は、様々な立体異性体及びその混合物を企図しており、2種の立体異性体であって、それらの分子が互いに重なり合わない鏡像である、2種の立体異性体を指す「鏡像異性体」を含む。
「互変異性体」とは、分子の1個の原子から同一分子の別の原子へのプロトン移動を指す。本開示は、あらゆる前記化合物の互変異性体を含む。本化合物の様々な互変異性体の形態が、当業者によって容易に誘導可能である。
本明細書において使用される化学命名プロトコル及び構造略図は、ACD/命名バージョン9.07ソフトウェアプログラム及び/又はChemDraw Ultraバージョン11.0ソフトウェア命名プログラム(CambridgeSoft)を使用する、I.U.P.A.C.命名システムの修正版である。当業者が精通している共通の名称も使用する。
【0032】
調製方法
本開示の方法は、分析対象分子(例えば、生体分子)を検出するための生体試料を調製するための手段として有用である。本開示の方法は、バイオコンジュゲート反応のために、完全にかつ確実に調製される化合物を提供する。本開示の方法は、色素分子、及び色素分子を含むバイオコンジュゲート分子(例えば、分析対象分子に結合している化合物)の調製に有用である。
ジスルフィド結合の還元に還元剤を使用すると、スルフヒドリル(sulfydryl)官能基が形成する。トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)は、最大で約1.08M(pH2.5)の水溶性があるトリアルキルホスフィンである。TCEPは、有機溶媒には最小限の溶解度を有し、幅広い範囲のpH(約pH2~9)にわたり機能する。TCEPは、チオール官能基をなんら含有せず、したがって、低濃度で使用した場合、残留試薬又は副生物を除去することを必要としない。
【0033】
1,4-ジチオスレイトール(Cleland試薬又はDTTとしても知られている)は、水にいくらか可溶であり(約50mg/mL)、かつエタノール、アセトン、クロロホルム及びエーテルに可溶な、不安定な還元剤である(例えば、それは、大気中の酸素によって酸化され得る)。DTTはpH>7で機能し、チオールを含有し、したがって、DTTは、使用後に反応混合物から除去されなければならない。
したがって、一実施形態は、構造(I)の化合物を1,4-ジチオスレイトールに接触させるステップを含む、化合物を調製する方法であって、構造(I)の化合物が、以下の構造:
【0034】
【化5】
(I)
(式中、
Mは、出現ごとに、独立して、2つ以上の二重結合及び少なくとも1共役度を含む部分であり、ただし、出現するMの少なくとも1つは、シアニン又はその誘導体であることを条件とし、
L
1、L
2及びL
3は、出現ごとに独立して、任意選択のリンカーであり、
R
1及びR
2は、独立して、H、OH、SH、NH
2、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシルアルキルエーテル、スルフヒドリルアルキル、-S-S-アルキル、-S-S-ヒドロキシルアルキル、アルキル-S-S-アルキル、アルキル-S-S-ヒドロキシルアルキル、ホスホアルキル-S-S-アルキル、ホスホアルキル-S-S-ヒドロキシルアルキル、スルフヒドリルアルキルエーテル(sulfyhdrylalkylether)、ホスフェート、チオホスフェート、アルキルホスホ、アルキルチオホスホ、-Oアルキルホスホ、-Oアルキルチオホスホ、アルキルエーテルホスホ、アルキルエーテルチオホスホ、-Oアルキルエーテルホスホ、-Oアルキルエーテルチオホスホ、ホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル、チオホスホアルキル、チオホスホアルキルエーテル、-Oホスホアルキル、-Oホスホアルキルエーテル、-Oチオホスホアルキル、-Oチオホスホアルキルエーテルであるか、又は以下の構造:
【0035】
【化6】
を有し、
nは、0より大きな整数であり、
ただし、
R
1-L
2-又はR
2-L
3-の少なくとも一方は、-S-S-
*部分を含み、
*は、構造(I)の化合物の末端を表す)
を有する、方法を提供する。
一部の実施形態では、接触させるステップは、これによって、-S-S-
*部分を-S-H部分に変換する。
【0036】
ある種の実施形態では、接触させるステップは、6.5~8の間のpHを有する溶液中で行われる。より特定の実施形態では、接触させるステップは、7~7.5の間のpHを有する溶液中で行われる。一部の実施形態では、接触させるステップは、約5.0、5.5、6.0、6.5、7.0又は7.35より高いpHを有する溶液中で行われる。一部の実施形態では、接触させるステップは、約9.0、8.5、8.0、7.9、7.8、7.75又は7.6より低いpHを有する溶液中で行われる。
一部の特定の実施形態では、溶液は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。さらに多くの実施形態では、溶液は、約1~6mMの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。ある種の特定の実施形態では、溶液は、約1.5~5.5mMの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。一部の特定の実施形態では、溶液は、約1.9~4.2mMの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。ある種の実施形態では、溶液は、約2~4mMの濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。ある種の実施形態では、溶液は、約1.0、1.5、1.75、1.8、1.9又は2.0mMより高い濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。ある種の実施形態では、溶液は、約6.0、5.5、5.0、4.75、4.5又は4.0mMより低い濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。
【0037】
一部の実施形態では、溶液は塩化マグネシウム(MgCl2)を含む。ある種の実施形態では、溶液は、約1~50mMの間の濃度の塩化マグネシウム(MgCl2)を含む。一部の特定の実施形態では、溶液は、約2~40mMの間の濃度の塩化マグネシウム(MgCl2)を含む。ある種の特定の実施形態では、溶液は、約3~35mMの間の濃度の塩化マグネシウム(MgCl2)を含む。一部のさらに特定の実施形態では、溶液は、約4~30mMの間の濃度の塩化マグネシウム(MgCl2)を含む。ある種のさらに特定の実施形態では、溶液は、約5~25mMの間の濃度の塩化マグネシウム(MgCl2)を含む。
一部の実施形態では、溶液は有機溶媒を含む。より特定の実施形態では、有機溶媒はメタノールである。他の実施形態では、有機溶媒はアセトニトリルである。一部の実施形態では、有機溶媒は、メタノールとアセトニトリルとの組合せである。一部の実施形態では、溶液は、ジメチルスルホキシド(DMSO)をさらに含む。
ある種の実施形態では、溶液は、約5体積%より高い有機溶媒濃度を有する。ある種の特定の実施形態では、溶液は、約7.5体積%より高い有機溶媒濃度を有する。より特定の実施形態では、溶液は、約10体積%より高い有機溶媒濃度を有する。一部の実施形態では、溶液は、約15体積%より高い有機溶媒濃度を有する。より特定の実施形態では、溶液は、約12体積%、17体積%、20体積%、25体積%、30体積%、35体積%、40体積%、45体積%、50体積%、55体積%、60体積%、70体積%、80体積%、90体積%より高い有機溶媒濃度を有する。
【0038】
ある種の実施形態では、本方法は、-S-H部分を架橋試薬と接触させて、これによって、化合物と架橋試薬との間に共有結合を形成させるステップをさらに含む。より特定の実施形態では、交差連結部分は、少なくとも1つのマレイミド部分を含む。ある種のさらに特定の実施形態では、架橋試薬は、以下の構造:
【化7】
(式中、
L
4は、リンカーである)を有する。
【0039】
ある種の特定の実施形態では、L
4は、C及びOから選択される原子を含む。一部の実施形態では、L
4は、以下の構造:
【化8】
(式中、
x
1及びx
2は、0より大きな整数である)
のうちの1つを有する。
一部の実施形態では、x
1は1である。より特定の実施形態では、x
1は3である。一部の実施形態では、x
1は5である。一部の実施形態では、x
1は、1、2、3、4、5、6、7又は8である。
ある種の実施形態では、x
2は2である。より特定の実施形態では、x
2は3である。一部の実施形態では、x
2は、1、2、3、4、5又は6である。
【0040】
ある種の実施形態では、架橋試薬は、以下の構造:
【化9】
のうちの1つを有する。
【0041】
ある種の実施形態では、L1は出現ごとに、C、O、S、N及びPから選択される原子を含む。一部の実施形態では、L2は出現ごとに、C、O、S、N及びPから選択される原子を含む。ある種の実施形態では、L3は出現ごとに、C、O、S、N及びPから選択される原子を含む。一部の実施形態では、出現するL1の少なくとも1つは、C、O及びNから選択される原子を含む。
より特定の実施形態では、出現するL1の少なくとも1つは、アルキレンリンカー又はヘテロアルキレンリンカーである。一部の実施形態では、出現するL1の少なくとも1つは、アルキレンリンカーである。一部の実施形態では、出現するL1の少なくとも1つは、ヘテロアルキレンリンカーである。より特定の実施形態では、出現するL2の少なくとも1つは、以下の構造:
【0042】
【化10】
(式中、
x
3及びx
4は、それぞれ独立して、0より大きな整数である)
を有する。
一部の実施形態では、x
3は、1、2、3又は4である。一部の実施形態では、x
3は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。ある種の実施形態では、x
4は、2、3、4又は5である。ある種の実施形態では、x
4は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。より特定の実施形態では、x
3は、1又は2であり、x
4は、2、3又は4である。
【0043】
ある種の実施形態では、出現するL
1の少なくとも1つは、以下の構造:
【化11】
のうちの1つを有する。
【0044】
一部の実施形態では、L
1は出現ごとに、以下の構造:
【化12】
のうちの1つを有する。
【0045】
一部の実施形態では、nは、1~20の整数である。より特定の実施形態では、nは、2~10の整数である。一部の実施形態では、nは、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。一部の実施形態では、nは、3、4、5、6、7、8、9又は10である。一部の実施形態では、nは、4、5、6、7、8、9又は10である。ある種の実施形態では、nは、5、6、7、8、9、10、11又は12である。一部の実施形態では、nは、6、7、8、9、10、11又は12である。
ある種の実施形態では、出現するL2の少なくとも1つは、C、O、S及びPから選択される原子を含む。一部の実施形態では、出現するL2の少なくとも1つは、アルキレン又はヘテロアルキレンである。
【0046】
より特定の実施形態では、出現するL
2の少なくとも1つは、以下の構造:
【化13】
を含む。
一部の実施形態では、出現するL
2の少なくとも1つは、以下の構造:
【化14】
(式中、
x
5は、0より大きな整数である)
を含む。
【0047】
ある種の実施形態では、x
5は、2、3又は6である。一部の実施形態では、x
5は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12である。一部の実施形態では、x
5は、1~100の範囲である。一部の実施形態では、x
5は、3~30の範囲である。一部の実施形態では、x
5は、10~30の範囲である。一部の特定の実施形態では、x
5は、3又は6である。
一部の実施形態では、出現するL
2の少なくとも1つは、以下の構造:
【化15】
を含む。
一部の実施形態では、出現するL
3の少なくとも1つは、C、O、S及びPから選択される原子を含む。より特定の実施形態では、出現するL
3の少なくとも1つは、アルキレン又はヘテロアルキレンである。
【0048】
ある種の実施形態では、出現するL
3の少なくとも1つは、以下の構造:
【化16】
を含む。
一部の実施形態では、出現するL
3の少なくとも1つは、以下の構造:
【化17】
(式中、
x
6は、0より大きな整数である)
を含む。
【0049】
一部の実施形態では、x
6は、2、3又は6である。一部の実施形態では、x
6は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12である。一部の実施形態では、x
6は、1~100の範囲である。一部の実施形態では、x
6は、3~30の範囲である。一部の実施形態では、x
6は、10~30の範囲である。一部の特定の実施形態では、x
6は、3又は6である。
ある種の実施形態では、出現するL
3の少なくとも1つは、以下の構造:
【化18】
を含む。
【0050】
ある種の実施形態では、出現するL
3の少なくとも1つは、以下の構造:
【化19】
(式中、
x
7は、0より大きな整数である)を含む。一部の実施形態では、x
7は、1、2、3、4、5又は6である。より特定の実施形態では、x
7は3である。
ある種の実施形態では、出現するL
3の少なくとも1つは、以下の構造:
【化20】
(式中、
x
7は、0より大きな整数である)を含む。一部の実施形態では、x
7は、1、2、3、4、5又は6である。より特定の実施形態では、x
7は3である。
【0051】
ある種の実施形態では、出現するL
3の少なくとも1つは、以下の構造:
【化21】
(式中、
x
7は、0より大きな整数である)を含む。一部の実施形態では、x
7は、1、2、3、4、5又は6である。より特定の実施形態では、x
7は3である。一部の実施形態では、x
7は1である。
ある種の実施形態では、R
1は、H、OH、SH、NH
2、アルキル、アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシルアルキルエーテル、スルフヒドリルアルキル、-S-S-アルキル、-S-S-ヒドロキシルアルキル、アルキル-S-S-アルキル、アルキル-S-S-ヒドロキシルアルキル、ホスホアルキル-S-S-アルキル、ホスホアルキル-S-S-ヒドロキシルアルキル、スルフヒドリルアルキルエーテル(sulfyhdrylalkylether)、ホスフェート、チオホスフェート又はアルキルホスホである。
【0052】
一部の実施形態では、R
2は、H、OH、SH、NH
2、アルキル、アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシルアルキルエーテル、スルフヒドリルアルキル、-S-S-アルキル、-S-S-ヒドロキシルアルキル、アルキル-S-S-アルキル、アルキル-S-S-ヒドロキシルアルキル、ホスホアルキル-S-S-アルキル、ホスホアルキル-S-S-ヒドロキシルアルキル、スルフヒドリルアルキルエーテル(sulfyhdrylalkylether)、ホスフェート、チオホスフェート、アルキルホスホであるか、又は以下の構造:
【化22】
を有する。
【0053】
一部の特定の実施形態では、R
1は、以下の構造:
【化23】
(式中、
x
8及びx
9は、それぞれ独立して、0より大きな整数である)を含む。
一部の特定の実施形態では、x
8は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12である。より特定の実施形態では、x
9は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12である。一部の実施形態では、x
8は、4、5、6、7又は8であり、x
9は、4、5、6、7又は8である。
【0054】
一部のさらに特定の実施形態では、出現するMの少なくとも1つは、フルオロフォア又は発色団である。一部の実施形態では、出現するMの2つ以上は、FRETドナー-アクセプタの対を形成する。一部の実施形態では、出現するMの少なくとも1つは、蛍光部分又は発色部分である。一部の実施形態では、出現するMの少なくとも1つは、蛍光色素又は発色色素の部分である。一部のさらなる実施形態では、出現するMの少なくとも2つは、蛍光部分又は発色部分である。一部のさらなる実施形態では、出現するMの少なくとも2つは、蛍光色素又は発色色素の部分である。
一部の実施形態では、出現するMの少なくとも1つは、3つ以上のアリール環若しくはヘテロアリール環、又はそれらの組合せを含む部分である。ある種の実施形態では、出現するMの少なくとも1つは、4つ以上のアリール環若しくはヘテロアリール環、又はそれらの組合せを含む部分である。一部の実施形態では、アリール環又はヘテロアリール環は、縮合環系を形成する。
【0055】
一部の実施形態では、出現するMの少なくとも2つは、3つ以上のアリール環若しくはヘテロアリール環、又はそれらの組合せを含む部分である。ある種の実施形態では、出現するMの少なくとも2つは、4つ以上のアリール環若しくはヘテロアリール環、又はそれらの組合せを含む部分である。一部の実施形態では、アリール環又はヘテロアリール環は、縮合環系を形成する。例えば、一部の実施形態では、Mは、ピレン色素であり、これは、縮合環系として4つのアリール環を含む部分と考えられる。
一部の実施形態では、Mは、出現ごとに、クマリン色素、レゾルフィン色素、ジピロメテンボロンジフルオリド色素、ルテニウムビピリジル色素、チアゾールオレンジ色素、ポリメチン、N-アリール-1,8-ナフタルイミド色素、ホウ素-ジピロメテン、ローダミン、シアニン色素、ピレン、ペリレン、ペリレンモノイミド、6-FAM、5-FAM、6-FITC、5-FITC及びそれらの誘導体からなる群から独立して選択される。
【0056】
ある種の実施形態では、出現するMの少なくとも1つは、以下の構造:
【化24】
のうちの1つを有する。
【0057】
一実施形態は、構造(II)の化合物を1,4-ジチオスレイトールに接触させるステップを含む、化合物を調製する方法であって、構造(II)の化合物が、以下の構造:
【化25】
(II)
(式中、
Mは、出現ごとに、独立して、発色団又はフルオロフォアであり、
L
1は、出現ごとに、独立して、i)任意選択のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン又はヘテロ原子のリンカー;又はii)2つの相補性反応性基の反応によって形成可能な官能基を含むリンカーのどちらかであり、
L
2及びL
3は、出現ごとに独立して、任意選択のアルキレン、ヘテロアルキレン又はヘテロ原子のリンカーであり、
L
4は、出現ごとに独立して、アルキレンリンカー又はヘテロアルキレンリンカーであり、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、OH、SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、-OP(=R
a)(R
b)R
c、Q若しくはそれらの保護形態、又はL’であり、
R
4は、出現ごとに独立して、OH、SH、O
-、S
-、OR
d又はSR
dであり、
R
5は、出現ごとに独立して、オキソ、チオオキソであるか、又は存在せず、
R
aは、O又はSであり、
R
bは、OH、SH、O
-、S
-、OR
d又はSR
dであり、
R
cは、OH、SH、O
-、S
-、OR
d、OL’、SR
d、アルキル、アルコキシ、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル又はチオホスホアルキルエーテルであり、
R
dは、対イオンであり、
Qは、出現ごとに独立して、分析対象分子、標的指向性部分、固体支持体又は相補性反応性基Q’と共有結合を形成することが可能な、反応性基又はその保護形態を含む部分であり、
L’は、出現ごとに独立して、Qへの共有結合を含むリンカー、標的指向性部分への共有結合を含むリンカー、分析対象分子への共有結合を含むリンカー、固体支持体への共有結合を含むリンカー、固体支持体残基への共有結合を含むリンカー、ヌクレオシドへの共有結合を含むリンカー、又は構造(II)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカーであり、
mは、出現ごとに独立して、ゼロ以上の整数であり、ただし、出現するmの少なくとも1つは、1以上の整数であることを条件とし、こうして、この化合物は、少なくとも1つのL
4を含み、
nは、1以上の整数であり、
ただし、
R
1-L
3-又はR
2-L
2-の少なくとも一方は、-S-S-
*部分を含むことを条件とし、
*は、構造(II)の化合物の末端を表す)、又はその立体異性体、塩若しくは互変異性体を有する、方法を提供する。
【0058】
一部の実施形態では、L4は、出現ごとに独立して、ポリエチレンオキシドリンカーである。
構造(II)の一部のより特定の実施形態では、出現するMの少なくとも1つは、蛍光部分又は発色部分である。一部の実施形態では、出現するMの少なくとも2つは、蛍光部分又は発色部分である。
一部の実施形態では、接触させるステップは、これによって、-S-S-*部分を-S-H部分に変換する。
【0059】
さらに別の実施形態は、構造(III)の化合物を1,4-ジチオスレイトールに接触させるステップを含む、化合物を調製する方法であって、構造(III)の化合物が、以下の構造:
【化26】
(III)
(式中、
Mは、出現ごとに独立して、発色団であり、ただし、出現するMの少なくとも1つは、FRETドナーであり、出現するMの別のものは、対応するFRETアクセプタであることを条件とし、
L
1は、出現ごとに、任意選択のリンカーであり、
L
2及びL
3は、出現ごとに独立して、任意選択のアルキレン、ヘテロアルキレン又はヘテロ原子のリンカーであり、
L
4は、出現ごとに独立して、アルキレンリンカー又はヘテロアルキレンリンカーであり、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、OH、SH、アルキル、アルコキシ、アルキルエーテル、ヘテロアルキル、-OP(=R
a)(R
b)R
c、Q若しくはそれらの保護形態、又はL’であり、
R
4は、出現ごとに独立して、OH、SH、O
-、S
-、OR
d又はSR
dであり、
R
5は、出現ごとに独立して、オキソ、チオオキソであるか、又は存在せず、
R
aは、O又はSであり、
R
bは、OH、SH、O
-、S
-、OR
d又はSR
dであり、
R
cは、OH、SH、O
-、S
-、OR
d、OL’、SR
d、アルキル、アルコキシ、ヘテロアルキル、ヘテロアルコキシ、アルキルエーテル、アルコキシアルキルエーテル、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホアルキル、チオホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル又はチオホスホアルキルエーテルであり、
R
dは、対イオンであり、
Qは、出現ごとに独立して、分析対象分子、標的指向性部分、固体支持体又は相補性反応性基Q’と共有結合を形成することが可能な、反応性基又はその保護形態を含む部分であり、
L’は、出現ごとに独立して、Qへの共有結合を含むリンカー、標的指向性部分への共有結合を含むリンカー、分析対象分子への共有結合を含むリンカー、固体支持体への共有結合を含むリンカー、固体支持体残基への共有結合を含むリンカー、ヌクレオシドへの共有結合を含むリンカー、又は構造(III)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカーであり、
mは、出現ごとに独立して、0以上の整数であり、
nは、1以上の整数であり、
ただし、
R
1-L
3-又はR
2-L
2-の少なくとも一方は、-S-S-
*部分を含むことを条件とし、
*は、構造(III)の化合物の末端を表す)、又はその立体異性体、塩若しくは互変異性体を有する、方法を提供する。
【0060】
一部の実施形態では、L4は、出現ごとに独立して、ポリエチレンオキシドリンカーである。
構造(III)の一部の実施形態では、出現するMの少なくとも1つは、蛍光部分又は発色部分である。一部の実施形態では、出現するMの少なくとも2つは、蛍光部分又は発色部分である。
一部の実施形態では、接触させるステップは、これによって、-S-S-*部分を-S-H部分に変換する。
【0061】
一部の実施形態では、Qは、例示的なQ部分の1つを有し、以下の表Aに提示されている。
【表2】
【0062】
一部の実施形態では、溶液は、塩化マグネシウム、ジメチルスルホキシド、ポリソルベート又はそれらの組合せをさらに含む。より特定の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80又はそれらの組合せである。
より特定の実施形態では、本方法は、化合物を1,4-ジチオスレイトールと共に、インキュベート温度でインキュベート時間、加熱するステップをさらに含む。一部の実施形態では、インキュベート時間は、1時間超である。一部の実施形態では、インキュベート時間は、1.5時間超である。一部の実施形態では、インキュベート時間は、2時間超である。より特定の実施形態では、インキュベート時間は、約0.5、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5又は3.75時間超である。一部の実施形態では、インキュベート時間は、約24、12、8、6、5、4又は3時間未満である。
【0063】
一部の実施形態では、インキュベート温度は、25℃より高い。より特定の実施形態では、インキュベート温度は、30℃より高い。一部の実施形態では、インキュベート温度は、35℃より高い。一部の特定の実施形態では、インキュベート温度は、約37℃であり、インキュベート時間は、約2時間である。一部の実施形態では、インキュベート温度は、約15℃、17℃、20℃、25℃、27℃、30℃、32℃、35℃、37℃又は40℃より高い。一部の実施形態では、インキュベート温度は、約60℃、55℃、50℃、45℃、42℃又は40℃未満である。
【0064】
一部の実施形態では、本方法は、共有結合した架橋試薬を分析対象分子(moleclule)と接触させて、これによって、化合物を試料混合物中の分析対象分子に結合させるステップをさらに含む。より特定の実施形態では、分析対象分子は、核酸、炭水化物、アミノ酸、ポリペプチド、グリコタンパク質、ホルモン、アプタマー及びそれらの組合せからなる群から選択される。ある種の実施形態では、分析対象分子は、RNA、DNA、オリゴヌクレオチド、修飾又は誘導化ヌクレオチド、酵素、細胞受容体、プリオン、細胞受容体リガンド、ホルモン、タンパク質、抗体、抗原、毒素、細菌、ウイルス、血液細胞、組織細胞及びそれらの組合せからなる群から選択される。
より特定の実施形態では、試料混合物が励起波長で照射されると、試料混合物は、光学応答を生じるほど十分な量の分析対象分子に結合した化合物を含む。一部の実施形態では、励起波長は、450~750nm、450~500nm、500~550nm、550~600nm、600~650nm、650~700nm、700~750nm又は750~800nmの間である。一部のさらに特定の実施形態では、励起波長は、化合物の1つ又は複数のM部分の励起波長である。
【0065】
ある種の実施形態では、光学応答は蛍光応答である。一部の実施形態では、試料は細胞を含む。ある種の実施形態では、本方法は、フローサイトメトリーによって細胞を観察するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、蛍光応答を、検出可能に異なる光学特性を有する第2のフルオロフォアの蛍光応答と区別するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、その可視特性によって、分析対象分子に結合した化合物を検出するステップをさらに含む。
一部の実施形態では、本ポリマー化合物は、ペプチド又はタンパク質ではない。一部の他の実施形態では、本ポリマー主鎖は、アミド結合を有していない。
【0066】
化合物調製
以下の反応スキームは、本開示の化合物(構造(I)、(II)又は(III)の化合物)を作製する例示的な方法を例示する。当業者は、類似の方法により、又は当業者に公知の他の方法を組み合わせることにより、これらの化合物を作製することが可能であり得ることが理解される。当業者は、適切な出発構成成分を使用し、必要に応じて合成のパラメータを修正することにより、以下には具体的に例示されていない、構造(I)、(II)又は(III)の他の化合物を、以下に記載されている類似方法で作製することが可能であることがやはり理解される。一般に、出発構成成分は、Sigma Aldrich、Lancaster Synthesis,Inc.、Maybridge、Matrix Scientific、TCI及びFluorochem USAなどの供給元から得ることができるか、又は当業者に公知(例えば、Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th edition (Wiley, December 2000)を参照されたい)の情報源に従い合成することができるか、又は本開示において記載されている通り調製することができる。
【0067】
構造(I)、(II)又は(III)の化合物を構築するため、DNA合成の方法論が適用され得る。モノマー(例えば、ホスホロアミダイトモノマー)は、商業的に購入することができるか(例えば、ChemGenes Corporation、Wilmington Mass.から)、又は当分野において公知の方法を使用して合成することができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2019/0136065号を参照されたい)。所望の部分の導入は、モノマーの部分として所望の部分を含ませることによって、DNA合成工程の間に達成することができる(例えば、以下の代表的なDNA合成サイクルのL及びMを参照されたい)。例示的なDNA合成スキームを以下に示す。
【0068】
【0069】
オリゴマー化は、通常、遊離-OH(ヒドロキシル)基にするため、保護基(例えば、ジメトキシトリチル基、DMTr)の除去により開始される(工程1、脱トリチル化)。後のカップリング工程では、遊離OH基と反応して、ジイソプロピルアミン基を同時に失いながら、リンへの新しい共有結合を作るホスホロアミダイトモノマーを導入する(工程2、カップリング)。得られたホスファイトトリエステルを、一層、安定なリン酸エステルへと酸化し(例えば、I2及びピリジンを使用)(工程3、酸化)、キャッピング工程により、あらゆる残存遊離OH基を未反応性状態にする(工程4、キャッピング)。新しい生成物であるホスフェートオリゴマーは、DMTr保護されたOH基を含み、この基は脱保護されて、合成サイクルが再度、始まり、そうして、別のホスホロアミダイトモノマーが、オリゴマーに付加され得る。
【0070】
工程2において、ホスホロアミダイトモノマーの選択によりカスタマイズ化をすることができる。上記のスキーム中のL(すなわち、リンカー基)及びM(すなわち、任意選択のフルオロフォア部分又は発色団部分)の性質は、構造(I)、(II)又は(III)の所望の化合物が合成されるよう選択される。Mは、M部分間に所望の空間を組み込むよう、存在しなくてもよい。当業者は、複数のモノマータイプ及び組合せを選択し、リンカー基中で複数のフルオロフォア又は発色団の数が同時に変動して含まれる本開示の化合物に到達することができる。
【0071】
周知の(自動化)DNA合成条件下での反応によって、所望の部分及びリンカー基を使用して、構造(I)、(II)又は(III)の所望の化合物を合成することができる。一般に、以下の構造を有する化合物:
【化28】
(式中、
Lは、所望のリンカー部分(例えば、PEG又はペンダント色素含有部分を含む)である)を使用することができる。
【0072】
一部の特定の実施形態では、以下の化合物は、構造(I)、(II)又は(III)の化合物:
【化29】
の合成に使用されてもよい。
【0073】
本明細書に記載されている方法では、中間化合物の官能基が好適な保護基によって保護される必要があり得ることが、当業者によって理解されよう。このような官能基には、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト及びカルボン酸が含まれる。ヒドロキシに好適な保護基には、トリアルキルシリル又はジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル又はトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジルなどが含まれる。アミノ、アミジノ及びグアニジノに好適な保護基には、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが含まれる。メルカプトに好適な保護基には、-C(O)-R”(式中、R”は、アルキル、アリール又はアリールアルキルである)、p-メトキシベンジル、トリチルなどが含まれる。カルボン酸の好適な保護基はアルキルエステル、アリールエステル又はアリールアルキルエステルを含む。保護基は、当業者に公知であり、本明細書に記載されている標準技法に準拠して、付加又は除去することができる。保護基の使用は、Green, T.W. and P.G.M. Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis (1999), 3rd Ed., Wileyに詳述されている。当業者が理解している通り、これらの保護基は、Wang樹脂、Rink樹脂又は塩化2-クロロトリチル樹脂などのポリマー樹脂とすることもできる。
【0074】
さらに、遊離塩基形態又は遊離酸形態で存在する本開示の化合物はすべて、当業者に公知の方法によって、適切な無機塩基若しくは有機塩基又は無機酸若しくは有機酸による処理によってその塩に変換することができる。本開示の化合物の塩は、標準技法によってその遊離塩基形態又は遊離酸形態に変換することができる。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
TCEP対DTTを使用する試験還元
代表的な化合物を試験し、1,4-ジチオスレイトール(DTT)と比較した、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を使用する還元条件を決定した。化合物は、以下の反応スキーム:
【0076】
【0077】
上記のスキーム中のCy
3は、以下の構造:
【化31】
を有する部分を指し、
上記のスキーム中のAF
680は、以下の構造:
【0078】
【0079】
TCEPを用いて還元を行った場合、質量分析スペクトルは複数のピークを示した。しかし、DTTを用いて還元を行った場合、ピークは、予測生成物に対応する単一ピークに分解された。還元工程後、カップリング条件下でビス-マレイミドエタン(又は1,1‘-(エタン-1,2-ジイル)ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン))を加えた。
TCEP還元の場合、より多くのTCEP(最大で10モル当量)及びポリソルベート20の添加は、還元反応の進行に役立ったが、ジスルフィドの完全な還元は達成されない。しかし、BMOEの添加により、化合物の二量化及び+18付加物(すなわち、水)がもたらされた。
DTT還元の場合、ジスルフィドは、完全に還元されて、二量体及び+18付加物は観察されない。
【0080】
多数の添加物及び反応条件も試験した。これらの検討により、DTTを使用した場合、7~7.5のpHが必須であり、2~4mMのEDTAにより還元が促進されたことが示された。ある特定の色素が存在する場合、メタノール及びアセトニトリルが役立つ。MgCl
2などの添加物は、ある特定の色素が存在する最終マレイミド生成物における凝集/二量化の阻止に有用である。
DTT(20モル当量)を用いる還元によって、架橋剤を添加すると、一層効率な活性化がもたらされた。架橋剤BMOE、BMH、BMB及びBM(PEG)
2を使用した場合、二量体又は+18付加物の再形成はなかった。
【化33】
上記の様々な実施形態を組み合わせると、さらなる実施形態が得られる。この明細書に言及されている、及び/又は出願データシートに一覧表示されている米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許公開物のすべてが、2021年6月16日出願の米国仮出願第63/211,435号を含め、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。実施形態の態様は、必要な場合、修正されて、様々な特許、出願及び公開物の概念を使用して、さらなる実施形態をやはり提示することができる。
【0081】
上記の詳細説明に照らし合わせて、これらの変更及び他の変更を実施形態に行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、本明細書及び特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態に制限すると解釈されるべきではないが、このような特許請求の範囲に権利が与えられる等価物の全範囲と共に可能なすべての実施形態を含むと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
【国際調査報告】