(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ピクセル補償を有するOLEDベースのディスプレイおよび方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3275 20160101AFI20240717BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240717BHJP
G09G 3/3225 20160101ALI20240717BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20240717BHJP
H10K 65/00 20230101ALI20240717BHJP
H03F 1/26 20060101ALI20240717BHJP
H04N 5/70 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
G09G3/3275
G09G3/20 642D
G09G3/20 642P
G09G3/20 642E
G09G3/3225
G09G3/20 623B
G09G3/20 623R
G09G3/20 623N
G09G3/20 612L
G09G3/20 633D
G09G3/20 641P
G09G3/20 611C
G09G3/20 641A
G09G3/20 670K
G09G3/20 680G
G09G3/20 621J
H10K59/12
H10K65/00
H03F1/26
H04N5/70 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577764
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 US2022033480
(87)【国際公開番号】W WO2022266133
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517381843
【氏名又は名称】イーマジン・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ソンキ・キム
(72)【発明者】
【氏名】アマルクマール・ピー・ゴーシュ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・プラーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュク・サン・クォン
【テーマコード(参考)】
3K107
5C058
5C080
5C380
5J500
【Fターム(参考)】
3K107AA01
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3K107EE03
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5J500AT07
(57)【要約】
明るさの損失に対する補償を有するOLEDディスプレイシステムが提供され、OLEDベースの表示ピクセルと、センサを有するセンシングシステムと、LIA、LPF、および各センサに接続され、各センサについてセンサ信号を提供するためのアナログデジタル回路網を有するプロセッサとを含む。プロセッサは、ディスプレイにおける少なくとも1つのOLEDピクセルに周期信号を有する駆動信号を印加し、センサ信号を受信し、周期信号に基づいてLIAを使用してセンサ信号から一次周波数成分を提供し、LPFを使用してセンサ信号から二次周波数成分を提供し、ADCを使用して二次周波数成分をデジタル信号に変換し、デジタル信号をセンシング信号としてプロセッサに提供し、駆動信号に対する補償を決定するように適合される。方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明るさの損失に対する視覚性能ピクセル補償を有する有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイシステムであって、
(a)各表示ピクセルがピクセル駆動回路網を備える、複数のOLEDベースの表示ピクセルと、
(b)複数のセンサを備えるセンシングシステムと、
(c)プロセッサとを備え、前記プロセッサが、
(i)ロックイン増幅器(LIA)と、
(ii)ローパスフィルタ(LPF)と、
(iii)前記センサの各々に動作可能に接続され、前記センサの各々についてセンサ信号を提供する、アナログデジタル(ADC)回路網とを備え、
前記プロセッサが、
(iv)前記ディスプレイにおける少なくとも1つのOLEDピクセルに、周期信号が埋め込まれた駆動信号を印加し、
(v)各センサについて前記ADC回路網から前記センサ信号を受信し、
(vi)前記周期信号に基づいて前記LIAを使用して前記センサ信号から一次周波数成分を提供し、
(vii)前記LPFを使用して前記センサ信号から二次周波数成分を提供し、
(viii)前記ADCを使用して前記二次周波数成分をデジタル信号に変換し、
(ix)前記デジタル信号をセンシング信号として前記プロセッサに提供し、
(x)前記駆動信号に対する補償を決定するように適合される、OLEDディスプレイシステム。
【請求項2】
前記プロセッサが増幅器を含み、かつ前記プロセッサが、前記二次周波数成分を増幅するように適合される、請求項1に記載のOLEDディスプレイシステム。
【請求項3】
前記ディスプレイシステムが、前記信号に著しいノイズを加えることなく前記ADCから前記センサ信号を増幅するための前置増幅器を備える、請求項1に記載のOLEDディスプレイシステム。
【請求項4】
前記センサが光検出器である、請求項1に記載のOLEDディスプレイシステム。
【請求項5】
前記センサが前記ディスプレイシステムの平面に直交して向けられる、請求項1に記載のOLEDディスプレイシステム。
【請求項6】
前記周期信号を有する前記駆動信号が、前記一次周波数を有するパルス幅変調(PWM)を使用して変調される、請求項1に記載のOLEDディスプレイシステム。
【請求項7】
前記周期信号が、表示フレーム当たりのパルス幅変調パルスの数が乗算された表示リフレッシュレートである、請求項1に記載のOLEDディスプレイシステム。
【請求項8】
前記センシングシステムの前記センサの少なくとも1つが、カバーガラス、センサおよび格子を備え、前記格子が、前記カバーガラスの少なくとも1つの側壁内へ形成されるスリットのパターンを備える、請求項1に記載のOLEDディスプレイシステム。
【請求項9】
前記センシングシステムの前記センサの少なくとも1つが、カバーガラス、センサ、ファセットおよびマスキング材料を備え、前記ファセットが、前記センサを取り付けるために利用可能な範囲を増やすように構成される前記カバーガラスのベベルエッジであり、かつ前記マスキング材料が、前記ファセットにおいて受光される光を遮断および吸収するためである、請求項1に記載のOLEDディスプレイシステム。
【請求項10】
前記マスキング材料がフォトレジスト材料である、請求項9に記載のOLEDディスプレイシステム。
【請求項11】
各表示ピクセルがピクセル駆動回路網を備える、複数のOLEDベースの表示ピクセルを備える有機発光ダイオードディスプレイシステムにおいて画像について少なくとも1つのピクセルを補償するための方法であって、
(a)複数のセンサを備えるセンシングシステムおよびプロセッサを提供するステップであって、前記プロセッサが、
(i)ロックイン増幅器(LIA)と、
(ii)ローパスフィルタ(LPF)と、
(iii)前記センサの各々に動作可能に接続されたアナログデジタル(ADC)回路網とを備え、前記ADC回路網が前記センサの各々についてセンサ信号を提供する、ステップと、
(b)前記ディスプレイにおける少なくとも1つのOLEDピクセルに、周期信号が埋め込まれた駆動信号を印加するステップと、
(c)各センサについて前記ADC回路網から前記センサ信号を受信するステップと、
(d)前記周期信号に基づいて前記LIAを使用して前記センサ信号から一次周波数成分を提供するステップと、
(e)前記LPFを使用して前記センサ信号から二次周波数成分を提供するステップと、
(f)前記ADCを使用して前記二次周波数成分をデジタル信号に変換するステップと、
(g)前記デジタル信号をセンシング信号として前記プロセッサに提供するステップと、
(h)前記駆動信号に対する補償を決定するステップとを含む、方法。
【請求項12】
前記プロセッサを提供することを含む前記ステップが、増幅器を提供することを含み、前記方法が、前記二次周波数成分を増幅することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プロセッサを提供する前記ステップが、前置増幅器を提供することを含み、前記方法が、前記信号に著しいノイズを加えることなく前記ADCから前記前置増幅器で前記センサ信号を増幅することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記一次周波数を有するパルス幅変調(PWM)を使用して前記駆動信号を変調するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
周期信号が埋め込まれた駆動信号を印加する前記ステップが、表示フレーム当たりのパルス幅変調パルスの数が乗算された表示リフレッシュレートである周期信号を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月17日に出願され、係属中の、High-Sensitivity External Sensor for Compensation of OLED-Based Display and Method Thereforという名称の、米国特許仮出願第63/211749号に対する優先権を主張するものであり、その完全な明細書が参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
本発明は、画像表示技術に関し、より詳細には、有機発光ダイオード(OLED)ベースのディスプレイ内のOLEDピクセルの視覚性能補償に関する。
【背景技術】
【0003】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイはピクセルのアレイを含み、その各々が、典型的には光を提供するための少なくとも1つのOLEDを含む。各OLEDは、カソードとアノードとの間に設けられるルミネセンス有機物質の発光層(または複数の副層)を含む。カソードおよびアノードに印加される電気信号に応答して、ルミネセンス有機物質は光を発する。ピクセルに適切な駆動信号を印加することによって、ディスプレイによって所望の画像が生成される。
【0004】
当業者に周知であるように、OLED素子について使用時間が増えるにつれて、それは、明るさの損失として現れる劣化を被る。結果として、各々が時間とともにさらされる応力の量の他に、その応力の累算期間の差のため、ディスプレイにわたるOLEDベースのピクセルの明るさの変動が時間とともに発生することになる。例えば、一部の場合には、ディスプレイ内の一部のOLEDが、固定されたシンボル体系、パターンまたはアイコンのため他より多くの応力下にある。不運にも、ピクセルの中の劣化の位置および重症度は、個々のピクセルを感知することなく識別することはできない。
【0005】
OLEDディスプレイにおいてピクセルの明るさの劣化を補償することは、しかしながら、典型的なピクセル駆動回路におけるナノアンペア範囲(nA)の小電気振幅などの、固有の信号特性のため困難である。事態を更に複雑にすることに、ピクセル領域において利用可能なスペースの量が限られる-特に高密度ディスプレイ、例えば、拡張現実(AR)および仮想現実(VR)装置などのニアアイ応用におけるマイクロディスプレイ(例えば、1インチ当たり数千を超えるドットを有するマイクロディスプレイ)が使用される場合。典型的には、これらのピクセル領域は、それらが必要とする電気部品(例えば、トランジスタ、コンデンサ等)の高密度のため既にスペースが限られている。結果として、全体的な信号完全性または製造歩留まりに負の影響を与えることなくピクセル補償のための特別な部品を追加することは、不可能でなくとも、難しい。
【0006】
従来の視覚性能補償のための手法は、ディスプレイのアクティブピクセル領域(すなわち、表示領域)の外側の領域におけるディスプレイバックプレーンへ組み込まれるセンシングユニットを利用する。1つの例証的な手法は、表示領域のすぐ外側のアクティブピクセルアレイの基板に基準ピクセル(または2つ以上)を置くことを含む。基準ピクセルにわたる電圧変化が測定され、測定された変化に従って表示領域内のピクセルを補償するために使用される。そのような手法は、例えば、米国特許第7,321,348号(Cokら)に記載されており、これが参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0007】
別の例証的な先行技術の補償のための手法は、表示領域における各アクティブピクセルの初期状態を測定すること、システムのバックプレーン上のフィードバックループを介してその電流値を測定すること、およびそれをメモリに記憶することを含む。OLED劣化に対応する抵抗変化を、電流フィードバックを観察することによって決定し、各OLEDに対する補償レベルを設定するために使用できる。そのような手法は、例えば、米国特許出願公開第2005/0110420号(Arnoldら)に記載されており、これが参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0008】
残念ながら、そのような先行技術の補償手法は、多くの応用には不十分でありかつディスプレイおよびそのバックプレーン技術のコストおよび複雑さを著しく増加させる。
【0009】
OLEDベースのディスプレイにおいて視覚性能補償を実際的で低コストの方式で提供することの必要性は、先行技術では、まだ満たされていないままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7,321,348号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0110420号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、OLEDベースのディスプレイのバックプレーンの外部であるセンサを使用するディスプレイの視覚性能補償を対象としており、時にそのような配置と関連付けられる低光信号電力を克服するためにセンサの感度が強化されている。センサの感度は、表示ピクセルの出力へ周期信号を埋め込み、バックプレーンの外部であるキャリアボードに実装されるASICに設けられるコンパクトなロックイン増幅器を使用して周期信号を検出することによって改善される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
例示的な一実施形態は、シリコンバックプレーンに設置される従来のOLEDディスプレイ、OLED発光範囲の近くに設けられる複数のセンサ、およびバックプレーンの外部であり、かつコンパクトなロックイン増幅器を含む処理回路網を含むASICを備える。一部の実施形態において、発光窓からの明るさを検出するために単一のセンサだけが使用される。
【0013】
一部の実施形態において、センサの光収集効率を改善するためにディスプレイのガラスカバープレートの1つまたは複数の縁に、回折格子、傾斜ファセット、反射鏡等などの、光学素子が設置される。
【0014】
動作に際して、複数のピクセルに含まれるOLEDが既知の一次周波数で変調される。センサシステムにおけるセンサの1つまたは複数において、アクティブOLED表示領域からの光の他に、ディスプレイを囲む周囲環境からの迷光がノイズ混入信号として受光される。センサシステムは、電気出力信号を処理回路網およびロックイン増幅器に提供し、これが一次周波数を検出して、ノイズ混入信号からのその選択的検出を可能にする。検出された一次周波数信号から1つまたは複数のピクセルの輝度が次いで決定される。
【0015】
一部の実施形態において、1つのピクセルだけのOLEDが一次周波数で変調される。
【0016】
一部の実施形態において、処理回路網は、ノイズ混入信号または検出された一次周波数信号中の残差高周波成分を抑制するためのローパスフィルタを含む。
【0017】
本発明の第1の例証的な実施形態において、明るさの損失に対する視覚性能ピクセル補償を有する有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイシステムが提供される。OLEDディスプレイシステムは、各表示ピクセルがピクセル駆動回路網を有する、OLEDベースの表示ピクセルと、センサを含むセンシングシステムと、プロセッサとを含む。プロセッサは、ロックイン増幅器(LIA)、ローパスフィルタ(LPF)、およびセンサの各々に動作可能に接続されるアナログデジタル(ADC)回路網を含む。ADC回路網は、センサの各々についてセンサ信号を提供する。プロセッサは、ディスプレイにおける少なくとも1つのOLEDピクセルに、周期信号が埋め込まれた駆動信号を印加し、各センサについてADC回路網からセンサ信号を受信し、周期信号に基づいてLIAを使用してセンサ信号から一次周波数成分を提供し、LPFを使用してセンサ信号から二次周波数成分を提供し、ADCを使用して二次周波数成分をデジタル信号に変換し、デジタル信号をセンシング信号としてプロセッサに提供し、駆動信号に対する補償を決定するように適合される。
【0018】
プロセッサは、増幅器を含んでよい。ここで、プロセッサは、二次周波数成分を増幅するように適合される。本ディスプレイシステムは、信号に著しいノイズを加えることなくADCからセンサ信号を増幅するための前置増幅器を含んでよい。センサは、光検出器でよい。センサは、本ディスプレイシステムの平面に直交して向けられてよい。周期信号を有する駆動信号は、一次周波数を有するパルス幅変調(PWM)を使用して変調されてよい。周期信号は、表示フレーム当たりのパルス幅変調パルスの数が乗算された表示リフレッシュレートでよい。センサの少なくとも1つが、カバーガラス、センサおよび格子を含んでよく、格子は、カバーガラスの少なくとも1つの側壁内へ形成されるスリットのパターンを有する。センシングシステムのセンサの少なくとも1つが、カバーガラス、センサ、ファセットおよびマスキング材料を備えてよい。ファセットは、センサを取り付けるために利用可能な範囲を増やすように構成されるカバーガラスのベベルエッジでよい。マスキング材料は、ファセットにおいて受光される光を遮断および吸収するためでよい。マスキング材料は、フォトレジスト材料でよい。
【0019】
有機発光ダイオードディスプレイシステムにおいて画像について少なくとも1つのピクセルを補償するための方法も提供される。ディスプレイシステムは、OLEDベースの表示ピクセルを含んでおり、各表示ピクセルは、ピクセル駆動回路網を有する。本方法は、センサを有するセンシングシステムおよびプロセッサを提供するステップを含む。プロセッサは、ロックイン増幅器(LIA)、ローパスフィルタ(LPF)、およびセンサの各々に動作可能に接続されるアナログデジタル(ADC)回路網を含む。ADC回路網は、センサの各々についてセンサ信号を提供する。本方法は、ディスプレイにおける少なくとも1つのOLEDピクセルに、周期信号が埋め込まれた駆動信号を印加するステップと、各センサについてADC回路網からセンサ信号を受信するステップと、周期信号に基づいてLIAを使用してセンサ信号から一次周波数成分を提供するステップと、LPFを使用してセンサ信号から二次周波数成分を提供するステップと、ADCを使用して二次周波数成分をデジタル信号に変換するステップと、デジタル信号をセンシング信号としてプロセッサに提供するステップと、駆動信号に対する補償を決定するステップとが続く。
【0020】
プロセッサを提供することを含むステップは、増幅器を提供することを含んでよい。ここで、本方法は、二次周波数成分を増幅することを含んでよい。プロセッサを提供するステップは、前置増幅器を提供することを含んでよい。ここで、本方法は、信号に著しいノイズを加えることなくADCから前置増幅器でセンサ信号を増幅することを含んでよい。本方法は、一次周波数を有するパルス幅変調(PWM)を使用して駆動信号を変調するステップを含んでよい。周期信号が埋め込まれた駆動信号を印加するステップは、表示フレーム当たりのパルス幅変調パルスの数が乗算された表示リフレッシュレートによって計算される周期信号を含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の例証的な実施形態に従う画像レンダリングシステムの顕著な特徴の略図である。
【
図2】
図1のディスプレイの一部分のより詳細な斜視図の略図である。
【
図3】本発明の例証的な実施形態に従う処理回路網の顕著な部品のブロック図である。
【
図4】本発明の例証的な実施形態に従うディスプレイにおける1つまたは複数のピクセルを補償するための方法のフローチャートである。
【
図5】本発明の例証的な実施形態に従う、テスト対象のOLEDに提供される駆動信号に埋め込むのに適切な変調信号の2つの例証的な図解である。
【
図6A】本発明の例証的な実施形態に従う、外部に設けられるセンサの光収集効率を改善するためにディスプレイのカバーガラスへの内包に適切な例証的な光学素子の簡略図である。
【
図6B】本発明の例証的な実施形態に従う、外部に設けられるセンサの光収集効率を改善するためにディスプレイのカバーガラスへの内包に適切な例証的な光学素子の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下は、単に本開示の原理を例示するだけである。そのため、本明細書に明示的に記載または図示されないが、本開示の原理を具現化しかつその趣旨および範囲内に含まれる様々な配置を当業者が考案することができることが認識されよう。
【0023】
更には、本明細書に列挙される全ての例および条件付き文言は、主として、本開示の原理および発明者らによって当該技術を促進することに寄与される概念を読者が理解する助けとなる単に教授目的であると明示的に意図され、かつそのような具体的に列挙される例および条件に限定されるものではないと解釈されるはずである。
【0024】
その上、本開示の原理、態様および実施形態の他に、その具体例を列挙する本明細書における全ての記述は、その構造的均等物も機能的等価物も包含すると意図される。追加的に、そのような均等物が現在公知の均等物の他に、将来開発される均等物、すなわち構造に関係なく、同じ機能を行う、いかなる開発される要素も含むことが意図される。
【0025】
そのため、例えば、本明細書におけるいずれのブロック図も本開示の原理を具現化する例示的な回路網の概念図を表すことが当業者によって認識されよう。同様に、いずれのフローチャート、フロー図、状態遷移図、擬似コード等も、実質的にコンピュータ可読媒体に表されて、そのようなコンピュータまたはプロセッサが明示的に図示されるか否かに関わらず、コンピュータまたはプロセッサによって実行され得る、様々なプロセスを表すことが認識されよう。
【0026】
「プロセッサ」として標識され得るいずれの機能ブロックも含め、図面に図示される様々な要素の機能は、適切なソフトウェアと関連した、専用ハードウェアの他にソフトウェアを実行することが可能なハードウェアの使用を通じて提供されてよい。プロセッサによって提供されるとき、機能は、単一の専用プロセッサによって、単一の共有プロセッサによって、または一部が共有され得る複数の個々のプロセッサによって提供されてよい。その上、用語「プロセッサ」または「コントローラ」の明示的な使用は、ソフトウェアを実行することが可能なハードウェアを排他的に指すと解釈されるべきではなく、限定することなく、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェアを記憶するためのリードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)および不揮発性ストレージを黙示的に含んでよい。他のハードウェアも、従来のものおよび/またはカスタマイズしたものも、含まれてよい。
【0027】
ソフトウェアモジュール、または単に、ソフトウェアであると意味されるモジュールは、本明細書において、フローチャート要素またはプロセスステップおよび/もしくはテキスト記述の履行を示す他の要素のいかなる組合せとしても表されてよい。そのようなモジュールは、明示的または黙示的に図示されるハードウェアによって実行されてよい。
【0028】
本明細書に別途明示的に指定されない限り、図面を構成する図は、原寸に比例して示されていない。
【0029】
ここで図面を参照すると、幾つかの図を通して同様の参照番号が同様の要素を指しており、
図1には、本開示に従う画像レンダリングシステムの顕著な特徴の略図が示される。ディスプレイ100は、ディスプレイシステム102、センシングシステム104およびプロセッサ106を含む。
【0030】
ディスプレイシステム102は、複数の表示ピクセルを含み、その各々が複数のOLEDベースのサブピクセル、ピクセル駆動回路網および関連したシステムエレクトロニクスを含む。
【0031】
センシングシステム104は、複数のセンサおよびセンサと動作可能に結合されるアナログデジタル変換(ADC)回路網を含む。
【0032】
プロセッサ106は、好ましくは、ディスプレイシステム102に画像データを提供すること、ADC回路網からセンサ信号を受信すること、プログラムを実行してデータを記憶すること、表示範囲202(
図2参照)における1つまたは複数のOLEDの健全性(すなわち、劣化の状態)を推定するためのソフトウェアルーチンを行うこと、OLEDに対する適切な駆動信号補償を決定すること、およびそれに応じて画像データを補償して、補償駆動信号をそれらの対応する表示ピクセルに提供することの少なくとも一部を行うように構成される外部プロセッサである。図の例では、プロセッサ106は、典型的には従来のディスプレイを駆動するために使用される、画像処理システムへ組み込まれる。一部の実施形態において、しかしながら、プロセッサ106は、ディスプレイシステムおよび/またはセンシングシステムに対してローカルであるハードウェアおよび/またはファームウェアを含む。一部の実施形態において、必要とされる補償を決定するための方法がディスプレイのファームウェアへ組み込まれることが好ましい。
【0033】
図2は、ディスプレイ100の一部分のより詳細な斜視図の略図を示す。
【0034】
ディスプレイシステム102は、表示領域202を含んでおり、これは、複数のOLEDベースのピクセルからの光の放出によって画像が生成されるディスプレイの領域である。表示領域202(「アクティブOLEDピクセル範囲」とも称される)は、複数の表示ピクセルを備え、その各々が少なくとも1つのOLEDおよびその関連したピクセル駆動回路網を含み、その他に任意の他の関連した電子回路網を備える。
【0035】
複数のOLEDおよびそれらの関連した駆動回路網は基板208に設けられており、これが表示領域202のバックプレーンを画定する。表示範囲はカバーガラス210によって覆われ、基板208はキャリアボード212の表面に設置される。
【0036】
センシングシステム104は、センサ204およびアナログデジタル変換(ADC)回路網206を含む。
【0037】
センサ204は、表示範囲202の外周の周りに配置される従来の光センサである。図の例では、センサ204の各々は従来の光検出器であるが、しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく任意の適切なセンサをセンシングシステム104に使用できる。センサ204は、それらのそれぞれの基板が基板208の平面に直交して向けられ、結果として、それらがカバーガラス210の縁においてOLEDから光を受けるように配置される。一部の実施形態において、カバーガラス210は、表示ピクセルのOLEDの1つまたは複数のルミネセンスを感知するセンサ204の能力を改善するための光学素子(例えば、回折光学素子、ホログラム、プリズム、傾斜ミラー等)を含む。
【0038】
ADC回路網206は、センサ204の出力をプロセッサ106によって使用可能なデジタル信号へ変換するのに適切な1つまたは複数の従来のアナログデジタル変換器回路および関連した追加部品を備える。
【0039】
当業者に明らかであろうが、本明細書を読むと、光センサ(例えば、光検出器)は、OLEDマイクロディスプレイの低い明るさの範囲では限られた感度を有することがある。結果として、ディスプレイにおける単一のピクセル(またはサブピクセル)の輝度強度は、一部のセンサによって測定されるには小さすぎることがある。更には、ピクセル間の明るさの差がそのようなセンサの感度に対して極めて小さくなることがあり、後処理回路が外部補償システムにおける差を区別することを、不可能でなくとも、難しくする。
【0040】
しかしながら、テスト画像をディスプレイによって生成し、もしあればディスプレイにおけるどのOLEDが補償を必要とするか、またそれらをどのように補償するかを決定するために使用できることが本開示の態様である。具体的には、各テスト対象のOLEDの出力に周期関数を埋め込み、それらの出力信号の検出にロックイン増幅器検出技術を利用することによって、センサ感度を強化できる。一部の場合には、1つまたは複数のセンサの感度が十分であれば、そのような画像を1つのピクセルだけの出力に限定できることが留意されるべきである。更には、本明細書に開示される方法は、テスト画像に必要とされるピクセルの数を時間とともに実験的に決定できる学習プロセスを可能にする。
【0041】
加えて、センサの光収集効率は、カバーガラス210の縁に格子スリットを含むことによって改善でき、それによってOLEDマイクロディスプレイに対する外部センサベースの補償システムにおける全体の光検出感度を更に強化する。
【0042】
図3は、本開示に従う処理回路網の顕著な部品のブロック図を示す。処理回路網206は、任意選択の前置増幅段302、ロックイン増幅器(LIA)304、ローパスフィルタ(LPF)306、任意選択の増幅段308およびアナログデジタル変換器310を含む。
【0043】
図4は、本開示に従うディスプレイにおいて1つまたは複数のピクセルを補償するための方法の動作を示す。方法400は、動作401で始まり、プロセッサ106が表示範囲202内の一群のOLEDに駆動信号110を印加し、駆動信号には周期信号が埋め込まれている。一部の実施形態において、プロセッサ106は、ディスプレイ100における1つのOLEDだけに周期信号を含む駆動信号を印加する。典型的には、高変調周波数の方が低いものより少ないノイズ影響を有するので、高変調周波数を有する周期信号が好まれることが留意されるべきである。
【0044】
図の例では、印加される駆動信号は、一次周波数を有するパルス幅変調(PWM)を使用して変調されるが、本開示の範囲から逸脱することなく任意の適切な変調方式をテスト対象のピクセルの出力を変調するために使用できる。
【0045】
図5は、本開示に従う、テスト対象のOLEDに提供される駆動信号に埋め込むのに適切な2つの例証的な変調信号を示す。
【0046】
変調信号500は、50%デューティサイクルを有し、各表示フレームの前半を占める信号連続パルス周期を使用して実装される。
【0047】
変調信号502も50%デューティサイクルを有するが、それは、各表示フレーム内で5つの短パルス周期を使用して実装される。
【0048】
各変調信号について、一次変調周波数は、表示フレーム当たりのPWMパルスの数が乗算された表示リフレッシュレート(すなわち、1秒当たりの表示フレームの数)によって与えられる。例証的な変調信号500および502の各々について、フレームリフレッシュレートは、1秒当たり120フレームに等しい。結果として、変調信号500および502の一次変調周波数は、それぞれ、120Hzおよび600Hzである。上述したように、より高い変調周波数を有する周期信号が、典型的には、より低い周波数を有する周期信号より少ないノイズ影響を有する。結果として、通常は変調信号500より変調信号502が好まれるであろう。
【0049】
動作402で、センサ204が表示範囲202からの光を検出する。当業者に明らかであろうが、本明細書を読むと、センサ204によって検出される光は、各駆動されたOLEDによって発生される光信号(すなわち、「ピクセル輝度」)の他に、表示範囲202を囲む環境からの迷光から成る光ノイズを含む「混合輝度信号」である。一部の場合には、光ノイズ輝度は、ピクセル輝度より強いことがあり、したがって、光ノイズ輝度がセンサ出力を支配するであろう。結果として、センサ出力108は、プロセッサ106に誤った光情報を提供して、ディスプレイにおけるOLEDの時効に対する誤補償に至るであろう。
【0050】
したがって、ピクセル時効を正確に決定でき、OLEDに適切な補償を適用できるように、ノイズが多い混合輝度信号からピクセル輝度を選択的に選び出すことが必要である。
【0051】
任意選択の前置増幅段302は、信号に著しいノイズを加えることなくセンサ出力214を増幅するのに適切な従来の前置増幅器である。前置増幅段の後、センサ出力214においてPWM変調周波数が優位に残るであろうことが留意されるべきである。
【0052】
動作403で、センサ出力214中の一次周波数成分を検出するために同期復調が使用される。
【0053】
図の例では、同期復調は、LIA304を介して行われ、プロセッサ106によって提供される駆動信号110に適用される既知の変調に基づいてセンサ出力214中の一次周波数成分を選択的に検出する。既知の変調周波数は、典型的にはそれが復調基準周波数として使用できるようにプロセッサ106によってLIA304に提供される。
【0054】
LIA304は、ディスプレイ100のバックプレーンの外部である特定用途向け集積回路(ASIC)上に作製されるコンパクトなロックイン増幅器回路である。
【0055】
LIA304は、センサ出力214中のPWM成分の一次周波数を検出し、それによって表示範囲202の周りの環境から生じるノイズ信号からピクセルルミネセンスが分離されることを可能にする。
【0056】
一部の実施形態において、LIA304は、一次変調信号を選択的に選び、それを復調して、DC成分を得ており、これは、明るさ強度と異なることができる。
【0057】
動作404で、LIAからの残差周波数が従来のローパスフィルタ(LPF)306を介してフィルタリングされる。
【0058】
任意選択の動作405で、ローパスフィルタ306の出力が任意選択の増幅段308によって増幅される。図の例では、増幅段308は、演算増幅器の他に、他の関連した回路網を備える。
【0059】
動作406で、ローパスフィルタ306の出力が従来のアナログデジタル変換器(ADC)310を介してデジタル信号に変換され、センシング信号108としてプロセッサ106に提供される。
【0060】
ディスプレイから1つまたは複数のOLEDの変調出力の一次周波数を選択的に検出する能力は、本開示に従う実施形態に、以下を含む、先行技術より有意な利点を与える:
i. 外部センサ感度を強化でき、OLEDベースのマイクロディスプレイにおいて無視できるほど低い明るさ範囲の差をピクセル補償方法で検出できる、または
ii. 相当なノイズ成分と混合された出力から有効な信号成分を選択的に選ぶことができる、または
iii. iおよびiiの組合せ。
【0061】
一部の実施形態において、前置増幅段302および増幅段308の一方または両方が処理回路網206に含まれないことが留意されるべきである。
【0062】
動作407で、プロセッサがセンシング信号108に基づいて画像生成中に駆動信号110に対する適切な補償を決定する。
【0063】
一部の実施形態において、参照により本明細書に組み込まれる、2021年6月10日に出願の、「OLED-Based Display Having Pixel Compensation and Method」という名称の、米国特許仮出願第63/209,215号(代理人整理番号:6494-237PR1)に記載されている補償方法など、本明細書に記載される方法および装置を強化するために追加の補償方法が使用される。
【0064】
一部の実施形態において、カバーガラス210上にまたは内に1つまたは複数の光学素子を含むことによってセンサ204によって収集される光量を改善することが望ましい。
【0065】
図6Aおよび
図6Bは、本開示に従う外部に設けられるセンサの光収集効率を改善するためにディスプレイのカバーガラスへの内包に適切な例証的な光学素子の略図を示す。
【0066】
構成600は、カバーガラス210、センサ204および格子602を含む。
【0067】
格子602は、カバーガラス210の縁に形成されるスリット604のパターンを備える。スリット604は、カバーガラスの側壁内へ形成される細い(例えば、10ミクロン程度、または数十ミクロンの幅などの)フィーチャである。
【0068】
図の例では、スリット604は、レーザリソグラフィを使用してカバーガラスの側壁内へ形成されるが、しかしながら、スリット604を形成するための任意の適切な方法を使用できる。スリット604を形成するのに適切な方法には、限定することなく、レーザアシストエッチング、一点ダイヤモンド加工、レーザアブレーション、粒子ブラスト等を含む。一部の実施形態において、格子602は、シャドーマスク堆積等などの方法を介してカバーガラス210の側壁上に堆積される材料のパターンを含む。
【0069】
構成606は、カバーガラス210、センサ204、ファセット608およびマスキング材料610を含む。
【0070】
ファセット608は、センサ204を取り付けるために利用可能な範囲を増やすように構成されるカバーガラスのベベルエッジである。一部の場合には、ベベルエッジは、センサのセンシング領域へより多くの光を屈折させるように作用する。
【0071】
マスキング材料610は、ファセット608において受光される光を遮断および/または吸収するのに適切な材料である。図の例では、マスキング材料610は、ブラックフォトレジスト材料(すなわち、ブラックマトリクス)であるが、しかしながら、本明細書を読むと、マスキング材料610での使用に適切な無数の材料が当業者に明らかであろう。
【0072】
本明細書が本発明の例証的な実施形態の一部の例を教示すること、および本開示を読んだ後に当業者によって本発明の多くの変形を容易に考案できること、および本発明の範囲が以下の特許請求の範囲によって定められることになることが理解されるはずである。
【符号の説明】
【0073】
100 ディスプレイ
102 ディスプレイシステム
104 センシングシステム
106 プロセッサ
108 センシング信号
110 駆動信号
202 表示領域
204 センサ
206 アナログデジタル変換(ADC)回路網
208 基板
210 カバーガラス
212 キャリアボード
214 センサ出力
302 前置増幅段
304 ロックイン増幅器(LIA)
306 ローパスフィルタ(LPF)
308 増幅段
310 アナログデジタル変換器
500 変調信号
502 変調信号
600 構成
602 格子
604 スリット
606 構成
608 ファセット
610 マスキング材料
【国際調査報告】