(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】共重合体分散剤およびこれを用いた分散液
(51)【国際特許分類】
C08F 220/10 20060101AFI20240717BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20240717BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240717BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20240717BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20240717BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20240717BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20240717BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240717BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240717BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20240717BHJP
H01M 4/139 20100101ALN20240717BHJP
【FI】
C08F220/10
C01B32/168
C08K3/04
C08L33/06
C08L33/02
C08L53/00
H01B1/24 A
H01M4/62 Z
H01M4/04 Z
H01G11/38
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578169
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 KR2022002503
(87)【国際公開番号】W WO2023277297
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0084505
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム, クァン-イン
(72)【発明者】
【氏名】オム, チン-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム, チャン-ボム
(72)【発明者】
【氏名】クォン, セ-マン
(72)【発明者】
【氏名】ソン, シ-ジン
(72)【発明者】
【氏名】ハン, ジェ-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム, スン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】パク, チャン-ス
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
4J100
5E078
5G301
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
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5H050AA19
5H050BA14
5H050CA02
5H050CA08
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5H050GA10
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA10
(57)【要約】
本発明は、置換もしくは非置換の2個以上の芳香族環を含むモノマー、炭素数5~22の線状または分枝状脂肪族炭化水素を含むモノマー、およびシアノ(CN)、ピロリドン(NC4H6O)およびカルボン酸(COOH)からなるグループより選択されたいずれか1つを含む極性モノマーの中から選択された2以上のモノマーを含む共重合体およびこれを用いた分散液に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化1で表される、
共重合体。
【化1】
前記化1中、
R
1~R
9は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~4の線状または分枝状炭化水素であり、
R’
1は、炭素数5~22の線状または分枝状脂肪族炭化水素であり、
R’
2は、置換もしくは非置換の2個以上の芳香族環を含み、
R’
3は、シアノ(CN)、ピロリドン(NC
4H
6O)およびカルボン酸(COOH)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上であり、
m、nは、それぞれ独立して、0~4,000の整数であり、
lは、1~7,000の整数である。
(ただし、m、nのいずれか1つが0の場合、残りは0であることはない)
【請求項2】
R’
1は、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、ラウリル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、セチル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、ステアリル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、n-イコシル、n-ヘンイコシル、n-ドコシル、iso-ペンチル、iso-ヘプチル、iso-オクチル、iso-ノニル、iso-デシル、iso-ウンデシル、iso-ドデシル、iso-トリデシル、iso-テトラデシル、iso-ペンタデシル、iso-セチル、iso-ヘキサデシル、iso-ヘプタデシル、iso-ステアリル、iso-オクタデシル、iso-ノナデシル、iso-イコシル、iso-ヘンイコシルおよびiso-ドコシルからなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含む、
請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
R’
2は、置換もしくは非置換のベンジル(benzyl)、フェニル(phenyl)、フェノキシ(phenoxy)、ナフタレン(naphthalene)、アントラセン(anthracene)およびピレン(pyrene)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含む、
請求項1に記載の共重合体。
【請求項4】
R’
2は、3-フェノキシベンジル(3-phenoxy benzyl)、1-ナフチル(1-naphthyl)、2-ナフチル(2-naphthyl)、9-アントラセニルメチル(9-anthracene methyl)および1-ピレンメチル(1-pyrene methyl)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含む、
請求項1に記載の共重合体。
【請求項5】
R’
2を含む単量体は、3-フェノキシベンジルアクリレート(3-phenoxy benzyl acrylate)および(1-ピレン)メチル2-メチル-2-プロペノエート((1-pyrene)2-methyl-2-propenoate)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上である、
請求項1に記載の共重合体。
【請求項6】
前記共重合体は、ランダムまたはブロック共重合体である、
請求項1に記載の共重合体。
【請求項7】
前記共重合体の数平均分子量が5,000~1,000,000である、
請求項1に記載の共重合体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の共重合体を含む、
分散剤。
【請求項9】
請求項8に記載の分散剤と、
溶媒と、を含む、
分散液。
【請求項10】
前記溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone)、N-エチル-2-ピロリドン(N-ethyl-2-pyrrolidone)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)およびγ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上である、
請求項9に記載の分散液。
【請求項11】
炭素材料を追加的に含む。
請求項9に記載の分散液。
【請求項12】
前記炭素材料は、黒鉛、活性炭、カーボンブラック、単一壁カーボンナノチューブ、多重壁カーボンナノチューブ、フラーレンおよびグラフェンからなるグループより選択されたいずれか1つ以上である、
請求項11に記載の分散液。
【請求項13】
前記分散液に固形分が1.5wt%含まれる時、前記分散液の粘度が3,300~18,000cpsであり、
前記分散液に分散した前記単一壁カーボンナノチューブ、前記多重壁カーボンナノチューブ、またはこれらの組み合わせの平均粒度(D50)が10μm以下である、
請求項12に記載の分散液。
【請求項14】
請求項8に記載の分散剤を含む、
電極用スラリー組成物。
【請求項15】
請求項8に記載の分散剤を含む、
電極。
【請求項16】
請求項8に記載の分散剤を含む、
二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体分散剤およびこれを用いた分散液に関し、少量使用でも炭素素材、特に、カーボンナノチューブなどのカーボンナノ素材の分散性を高めることができる分散剤およびこれを用いた分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素素材は、特有の機械的特性、電気的特性、熱的特性などを有するので、電子分野、生命工学分野、医薬分野などの多様な分野で使用されている。最近は、黒鉛、活性炭、カーボンブラックなどのような既存の炭素素材だけでなく、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェンなどのようなカーボンナノ素材が注目されている。
【0003】
一方、炭素素材を効率的に使用するためには、多様な素材のマトリックスに効果的に炭素素材を分散させなければならない。
【0004】
しかし、炭素素材、特に、カーボンナノ素材は、強いファンデルワールス力(Van der Waals force)によってマトリックス内で互いに凝集される傾向がある。炭素素材がマトリックス内で凝集されると、固有の特性を発揮できず、均一性が低下する問題が発生しうる。
【0005】
炭素素材を分散する方法には、超音波、ミリング、高剪断力のように物理的力を利用する機械的分散、分散剤を用いた分散、表面改質による分散などがある。
【0006】
しかし、機械的分散と表面改質による分散は、炭素素材の損傷をもたらしやすく、このような損傷によって炭素素材の本来の特性(例えば、電気伝導度、熱伝導度など)が大きく低下するという問題点がある。
【0007】
したがって、分散剤を活用した炭素素材の分散が活発に研究されており、特に、カーボンナノチューブのようなカーボンナノ素材を効率的に分散させるために、高分子分散剤でカーボンナノ素材をラッピング(wrapping)したり、高分子分散剤の芳香族環のp軌道とカーボンナノ素材のp軌道との間のπ-π相互作用(interaction)を利用する研究が集中的に行われている。
【0008】
しかし、炭素素材、特に、カーボンナノ素材の固有の特性を維持しながらも効率的に分散させることができる分散剤は依然として多くなく、これに関する研究が要求されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、本発明は、少量使用だけで炭素素材(特に、カーボンナノ素材)を効率的に分散させることができる分散剤を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記分散剤を用いた分散液を提供しようとする。
【0012】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の一態様は、下記化1で表される、
共重合体を提供する。
【0014】
【0015】
前記化1中、
R1~R9は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~4の線状または分枝状炭化水素であり、
R’1は、炭素数5~22の線状または分枝状脂肪族炭化水素であり、
R’2は、置換もしくは非置換の2個以上の芳香族環を含み、
R’3は、シアノ(cyano、CN)、ピロリドン(pyrrolidone、NC4H6O)およびカルボン酸(COOH)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上であり、
m、nは、それぞれ独立して、0~4,000の整数であり、
lは、それぞれ1~7,000の整数である。
(ただし、m、nのいずれか1つが0の場合、残りは0であることはない)
【0016】
本願の他の態様は、前記共重合体を含む、
分散剤を提供する。
【0017】
本願のさらに他の態様は、前記分散剤と、
溶媒と、を含む分散液を提供する。
【0018】
本願のさらに他の態様は、前記分散剤を含む電極用スラリー組成物、電極または二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明による共重合体は、分散剤として少量だけで効率的に炭素素材(特に、カーボンナノ素材)を分散させることができる効果がある。
【0020】
また、本発明の分散剤を用いた分散液は、炭素素材の分散が必要な多様な分野(例えば、電池、キャパシタの電極など)に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0022】
これに先立ち、本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則り、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0023】
したがって、本明細書に記載された実施例の構成は本発明の最も好ましい一つの実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例が存在できることを理解しなければならない。
【0024】
本明細書において、単数の表現は文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0025】
本願の一態様による共重合体は、下記化1で表される。
【化1】
前記化1中、
R
1~R
9は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~4の線状または分枝状炭化水素であり、
R’
1は、炭素数5~22の線状または分枝状脂肪族炭化水素であり、
R’
2は、置換もしくは非置換の2個以上の芳香族環を含み、
R’
3は、シアノ(CN)、ピロリドン(NC
4H
6O)およびカルボン酸(COOH)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上であり、
m、nは、それぞれ独立して、0~4,000の整数であり、
lは、1~7,000の整数である。
(ただし、m、nのいずれか1つが0の場合、残りは0であることはない)
【0026】
すなわち、前記共重合体は、置換もしくは非置換の2個以上の芳香族環を含むモノマー、炭素数5~22の線状または分枝状脂肪族炭化水素を含むモノマー、およびシアノ(CN)、ピロリドン(NC4H6O)およびカルボン酸(COOH)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含む極性モノマーの中から選択された2以上のモノマーを含む共重合体であってもよい。
【0027】
一実施形態において、前記化1のR’1は、n-ペンチル(pentyl)、n-ヘキシル(hexyl)、n-ヘプチル(heptyl)、n-オクチル(octyl)、2-エチルヘキシル(ethylhexyl)、n-ノニル(nonyl)、n-デシル(decyl)、n-ウンデシル(undecyl)、ラウリル(lauryl)、n-ドデシル(dodecyl)、n-トリデシル(tridecyl)、n-テトラデシル(tetradecyl)、n-ペンタデシル(pentadecyl)、セチル(cetyl)、n-ヘキサデシル(hexadecyl)、n-ヘプタデシル(heptadecyl)、ステアリル(stearyl)、n-オクタデシル(octadecyl)、n-ノナデシル(nonadecyl)、n-イコシル(icosyl)、n-ヘンイコシル(henicosyl)、n-ドコシル(docosyl)、iso-ペンチル、iso-ヘプチル、iso-オクチル、iso-ノニル、iso-デシル、iso-ウンデシル、iso-ドデシル、iso-トリデシル、iso-テトラデシル、iso-ペンタデシル、iso-セチル、iso-ヘキサデシル、iso-ヘプタデシル、iso-ステアリル、iso-オクタデシル、iso-ノナデシル、iso-イコシル、iso-ヘンイコシルまたはiso-ドコシルからなるグループより選択されたいずれか1つ以上であってもよい。
【0028】
すなわち、R’1を含む単量体として、炭素数5~22の線状または分枝状脂肪族炭化水素を含む1種の単量体のみを使用してもよく、炭素数5~22の線状または分枝状脂肪族炭化水素を含む2種以上の単量体を共に使用してもよい。
【0029】
ステアリルメタクリレートまたはラウリルメタクリレートのうちの1種のみを使用した共重合体、ステアリルメタクリレートおよびラウリルメタクリレートをすべて使用した共重合体などが例に挙げられる。
【0030】
前記炭素数5~22の線状または分枝状脂肪族炭化水素を含むモノマーは、炭素素材(特に、カーボンナノチューブのようなカーボンナノ素材)をラッピング(wrapping)して分散させ、分散液の粘度を低下させる役割を果たすことができる。
【0031】
前記線状または分枝状脂肪族炭化水素の炭素数が5個未満であれば、炭素素材(特に、カーボンナノチューブ)を十分に包むことができずに分散力が低下し、22個を超えると、NMPのような極性溶媒との相溶性が著しく低下しうる。
【0032】
また、前記炭素数5~22の線状または分枝状脂肪族炭化水素を含むモノマーは、全体共重合体の総含有量100mol%を基準として5~80mol%含まれる。
【0033】
前記炭素数5~22の線状または分枝状脂肪族炭化水素を含むモノマーの含有量が5mol%未満の場合、粒度と分散液の粘度が高くなり、80mol%を超えると、極性溶媒との相溶性が低くなって相分離されうる。
【0034】
一実施形態において、前記化1のR’2は、ベンジル(benzyl)、フェニル(phenyl)、フェノキシ(phenoxy)、ナフタレン(naphthalene)、アントラセン(anthracene)およびピレン(pyrene)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含むことができ、例えば、3-フェノキシベンジル(3-phenoxy benzyl)、1-ナフチル(1-naphthyl)、2-ナフチル(2-naphthyl)、9-アントラセニルメチル(9-anthracene methyl)および1-ピレンメチル(1-pyrene methyl)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含むことができる。
【0035】
一方、R’2は、置換もしくは非置換の2個以上の芳香族環を含む炭化水素であってもよい。
【0036】
また、R’2を含む単量体として、置換もしくは非置換の2個以上の芳香族環を含む1種の単量体のみを使用してもよく、置換もしくは非置換の2個以上の芳香族環を含む2種以上の単量体を共に使用してもよい。
【0037】
例えば、前記芳香族環が置換されている場合、置換基は、炭素数1~4の線状または分枝状炭化水素、酸素(O)を介して連結された置換基(例えば、エーテル(ether)を介して連結された置換もしくは非置換の芳香族環など)などであってもよい。
【0038】
一実施形態において、R’2を含む単量体は、3-フェノキシベンジルアクリレート(3-phenoxy benzyl acrylate)および(1-ピレン)メチル2-メチル-2-プロペノエート((1-pyrene)2-methyl-2-propenoate)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上であってもよい。
【0039】
前記置換もしくは非置換の2個以上の芳香族環を含むモノマーは、炭素素材(特に、カーボンナノチューブのようなカーボンナノ素材)とπ-π相互作用で分散の役割を果たし、NMPのような極性溶媒と相溶性を有することができる。
【0040】
前記置換もしくは非置換の2個以上の芳香族環を含むモノマーは、全体共重合体の総含有量100mol%を基準として0~60mol%含まれる。
【0041】
芳香族環を1個含むモノマーを用いる場合、分散効果が低下し、前記置換もしくは非置換の2個以上の芳香族環を含むモノマーの含有量が60mol%を超える場合、脂肪族炭化水素や極性モノマーの含有量が減少して分散液の粘度が高くなり、分散した炭素素材の粒度が大きくなりうる。
【0042】
前記シアノ(CN)、ピロリドン(NC4H6O)およびカルボン酸(COOH)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含む極性モノマーは、NMPのような極性溶媒に相溶性を付与する役割を果たすことができる。
【0043】
N-ビニル-2-ピロリドン(N-vinyl-2-pyrrolidone)またはアクリル酸のうちの1種のみを使用した共重合体、N-ビニル-2-ピロリドン(N-vinyl-2-pyrrolidone)およびアクリル酸をすべて使用した共重合体などが例に挙げられる。
【0044】
前記極性モノマーは、全体共重合体の総含有量100mol%を基準として0~60mol%含まれる。
【0045】
前記極性モノマーが全体共重合体の60mol%を超えると、極性溶媒と相溶性が過度に高くなって分散後に相分離が発生し、分散した炭素素材の粒度が大きくなりうる。
【0046】
前記極性モノマーを使用しなくても、炭素数が13個未満の脂肪族炭化水素を含むモノマーを使用しかつ、置換もしくは非置換の2個以上の芳香族炭化水素を含むモノマーとの比率の調節を適切にする場合、極性溶媒に対して相溶性を有することもできる。
【0047】
一実施形態において、前記共重合体は、合成工程によってランダムまたはブロック共重合体であってもよい。
【0048】
一実施形態において、前記共重合体の数平均分子量が5,000~1,000,000であってもよい。
【0049】
前記共重合体の数平均分子量が5,000未満の場合、分散剤の流動性が大きくなって炭素素材の再凝集を防ぐ能力が低下し、数平均分子量が1,000,000以上の場合には、使用するのに粘度が高すぎることがある。
【0050】
本願の他の態様による分散剤は、前記共重合体を含むことができる。
【0051】
本願のさらに他の態様による分散液は、前記分散剤および溶媒を含むことができる。
【0052】
一実施形態において、前記溶媒は、極性溶媒であってもよく、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(N-ethyl-2-pyrrolidone、NEP)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)およびγ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)からなるグループより選択されたいずれか1つ以上であってもよい。
【0053】
一実施形態において、前記分散液は、炭素材料を追加的に含むことができ、前記炭素材料は、黒鉛、活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンまたはグラフェンからなるグループより選択されたいずれか1つ以上であってもよいが、これに限定されない。
【0054】
前記カーボンナノチューブは、単一壁カーボンナノチューブ、多重壁カーボンナノチューブ、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0055】
一実施形態において、前記分散液に固形分が1.5wt%含まれる時、前記分散液の粘度が3,300~18,000cpsであり、前記分散液に分散した前記単一壁カーボンナノチューブ、前記多重壁カーボンナノチューブ、またはこれらの組み合わせの平均粒度(D50)が10μm以下であってもよい。
【0056】
本願のさらに他の態様によるスラリー組成物は、前記分散剤を含むことができる。前記スラリー組成物は、電極用スラリーであってもよく、電極活物質、バインダー、溶剤などを含むことができる。
【0057】
例えば、前記電極活物質のうち、Co、Ni、Mn、Alからなるグループより選択されたいずれか1つ以上を含むリチウム含有複合金属化合物、TiS2、TiS3、非結晶質MoS3などの遷移金属硫化物;Cu2V2O3、非結晶質V2O-P2O5、MoO3、V2O5、V6O13などの遷移金属酸化物などが使用できる。
【0058】
また、負極活物質としては、例えば、ケイ素系活物質、スズ系活物質、無定形カーボン、グラファイト、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ピッチ(pitch)系炭素繊維などの炭素質材料、ポリアセンなどの導電性高分子などが挙げられる。
【0059】
前記ケイ素系活物質としては、ケイ素酸化物、ケイ素炭素複合体、ケイ素合金などが例に挙げられる。
【0060】
前記バインダーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリビニリデンフルオライド、ポリヘキサフルオロプロピレン-ポリビニリデンフルオライドの共重合体(P(VdF/HFP))、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アルキル化ポリエチレンオキシド、ポリビニルエーテル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロライド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、およびこれらの共重合体からなるグループより選択されたいずれか1つ以上であってもよい。
【0061】
一方、前記スラリー組成物は、導電材をさらに含むことができる。前記導電材は特に限定されず、電池およびキャパシタの種類によって適宜選択可能である。例えば、リチウムイオン二次電池の場合には、グラファイト、活性炭などのカーボンが使用され、ニッケル水素二次電池の場合には、酸化コバルト、負極には、ニッケル粉末、酸化コバルト、酸化チタン、カーボンなどが使用できる。
【0062】
前記カーボンとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック(furnace black)、黒鉛、炭素繊維、フラーレン類が挙げられる。
【0063】
前記導電材の使用量は、電極活物質100重量部を基準として、通常1~20重量部、好ましくは2~10重量部である。
【0064】
前記電極用スラリー組成物には、その他の必要に応じて、粘度調整剤、流動化剤などがさらに添加されてもよい。
【0065】
本願のさらに他の態様による電極は、前記分散剤を含むことができる。前記電極は、一次電池、二次電池、キャパシタ、燃料電池などの正極または負極であってもよいが、これに限定されない。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を用いて本願をより具体的に説明するが、本願がこれに制限されるものではない。
【0067】
[実施例1]
5口フラスコ反応器に3-フェノキシベンジルアクリレート45.2g、ステアリルメタクリレート45.2g、アクリル酸9.6g、N-メチルピロリドン209.1gを入れて、還流冷却器、温度計を取り付けた後、窒素ガスを投入しながら65℃に昇温した。混合物が65℃に到達すれば、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル(V-65)0.25gをN-メチルピロリドン24.84gに溶かした後、30分かけて滴下した。滴下完了後、65℃で7時間維持し、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル(V-65)0.12gをN-メチルピロリドン12gに溶かして投入し、90℃で3時間維持して固形分30%の分散剤を合成した。
【0068】
合成した分散剤0.26g、多重壁カーボンナノチューブ(multi walled carbon nanotube、直径10nm、長さ150μm)1.24g、N-メチルピロリドン98.5g、0.65mmのジルコニアビーズ200gを遊星ボールミルに入れた後、400rpmで30分分散して分散液を調製した。
【0069】
[実施例2]
3-フェノキシベンジルアクリレートの代わりに(1-ピレン)メチル2-メチル-2-プロペノエート37.4g、ステアリルメタクリレートの代わりにラウリルメタクリレート55.1g、アクリル酸の代わりにメタクリル酸7.5gを用いたことを除けば、実施例1と同様に合成し、分散液を調製した。
【0070】
[実施例3]
3-フェノキシベンジルアクリレートを用いず、ステアリルメタクリレート82.5g、アクリル酸17.5gを用いたことを除けば、実施例1と同様に合成し、分散液を調製した。
【0071】
[実施例4]
アクリル酸を用いず、3-フェノキシベンジルアクリレート50g、ステアリルメタクリレートの代わりにラウリルメタクリレート50gを用いたことを除けば、実施例1と同様に合成し、分散液を調製した。
【0072】
[比較例1]
3-フェノキシベンジルアクリレートの代わりにベンジルメタクリレート36.4g、ステアリルメタクリレート52.4g、アクリル酸11.2gを用いたことを除けば、実施例1と同様に合成し、分散液を調製した。
【0073】
[比較例2]
3-フェノキシベンジルアクリレート62.9g、ステアリルメタクリレートの代わりにブチルアクリレート23.7g、アクリル酸13.4gを用いたことを除けば、実施例1と同様に合成し、分散液を調製した。
【0074】
[比較例3]
N-メチルピロリドンを209.1gの代わりに376.2gを入れて、初期反応温度を65℃の代わりに90℃としたことを除けば、実施例1と同様に合成し、分散液を調製した。
【0075】
[比較例4]
N-メチルピロリドンを209.1gの代わりに42g入れて、初期反応温度を65℃の代わりに60℃とし、反応時間を7時間の代わりに12時間としたことを除けば、実施例1と同様に合成し、分散液を調製した。
【0076】
[比較例5]
数平均分子量70,000の水素化されたニトリルブタジエンラバー(Hydrogenated nitrile butadiene rubber)を分散剤として用いて、実施例1の方法で分散液を調製した。
【0077】
具体的な実施例1~4および比較例1~4の分散液の分散剤の組成、NMPの含有量および反応条件を下記表1に示した。
【0078】
【表1】
前記表1中、PBAは3-フェノキシベンジルアクリレート、SMAはステアリルメタクリレート、AAはアクリル酸、pyMMPは(1-ピレン)メチル2-メチル-2-プロペノエート、LMAはラウリルメタクリレート、MAAはメタクリル酸、BMAはベンジルメタクリレート、BAはブチルアクリレートをそれぞれ示す。
【0079】
[実験例]
実施例1~4および比較例1~5の分散剤の数平均分子量はGPC方法で測定した。
【0080】
また、NMPの溶解性は、実施例1~4および比較例1~5の分散剤をNMPに溶解させた後、25℃で24時間保管しながら相分離の有無を判断して、相分離があれば「X」、相分離がなければ「O」とそれぞれ表記した。
【0081】
一方、実施例1~4および比較例1~5の分散液の粘度はレオメーター(rheometer)で測定し、shear rateが10の時の粘度を表記し、粒度はMastersizer3000(製造会社:Malvern Panalytical)を用いてD50の粒度を表記した。
【0082】
測定された実施例1~4および比較例1~5の分散剤の数平均分子量およびNMPの溶解性、分散液の粘度および分散液に分散したカーボンナノチューブの粒度を下記表2に示した。
【0083】
【0084】
芳香族環を1個のみ含んでいるモノマー(ベンジルメタクリレート)を用いた比較例1の場合、カーボンナノチューブの分散が十分に行われず、カーボンナノチューブの粒度が実施例1~4に比べて非常に大きいことを確認することができた。
【0085】
また、脂肪族炭化水素の炭素数が5未満のアルキルが置換されたブチルアクリレートを用いた比較例2の場合、実施例1~4に比べてカーボンナノチューブの粒度が非常に大きいだけでなく、分散液の粘度も非常に高くなることを確認することができた。
【0086】
一方、数平均分子量が調節された比較例3および4において、数平均分子量が3,506と低かった比較例3は、NMPによく溶解せずに相分離され、カーボンナノチューブの分散が十分に行われず、カーボンナノチューブの粒度が実施例1~4に比べて非常に大きいことを確認することができた。
【0087】
また、数平均分子量が1,050,005と高かった比較例4は、実施例1~4に比べて分散液の粘度が非常に高くなることを確認することができた。
【0088】
共重合体分散剤ではない既存の分散剤が用いられた比較例5は、実施例1~4に比べてカーボンナノチューブの分散が十分に行われず、カーボンナノチューブの粒度が大きくなることを確認することができた。
【0089】
すなわち、実施例1~4の分散液は、比較例1~5の分散液に比べて、粘度およびカーボンナノチューブの粒度の少なくとも1つの面に優れていた。
【0090】
実施例1~4の分散液は、粘度およびカーボンナノチューブの粒度の適切な均衡により炭素素材の分散が必要な多様な分野で比較的少量のみを使用しても優れた分散効果を期待することができる。
【0091】
本発明の範囲は上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明による共重合体は、分散剤として少量だけで効率的に炭素素材(特に、カーボンナノ素材)を分散させることができる効果がある。
【0093】
また、本発明の分散剤を用いた分散液は、炭素素材の分散が必要な多様な分野(例えば、電池、キャパシタの電極など)に使用できる。
【国際調査報告】