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特表2024-527277水性インクジェットインクを含む樹脂及び記録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】水性インクジェットインクを含む樹脂及び記録方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/16 20060101AFI20240717BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240717BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240717BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20240717BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B01J13/16
C08L101/00
C08G18/00 C
C09D11/30
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41M5/00 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578918
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2022066491
(87)【国際公開番号】W WO2022268645
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21180513.0
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507253473
【氏名又は名称】アグファ・ナームローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】AGFA NV
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・アールト,フベルトゥス
(72)【発明者】
【氏名】ベルテルス,エレン
(72)【発明者】
【氏名】ゴータルズ,ファビエンヌ
【テーマコード(参考)】
2H186
4G005
4J002
4J034
4J039
【Fターム(参考)】
2H186AB12
2H186BA08
2H186BA11
2H186DA09
2H186DA12
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
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2H186FB55
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4J039AE04
4J039AE06
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4J039GA24
(57)【要約】
コアを囲む架橋ポリマーシェルを含む、マイクロカプセルの水性分散液であって、コアが、非重合性である第2のポリマーを含む、水性分散液。分散液は、低吸収性又は非吸収性基材上にインクジェット印刷するための水性顔料含有インクジェットインク又は前処理液において有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセルの水性分散液であって、マイクロカプセルが、コアを囲む架橋ポリマーシェルを含み、コアが、第2のポリマーを含み、第2のポリマーが、エチレン性不飽和基、エポキシ基、イソシアネート基、β-ケト-エステル、β-ケト-アミド又は1,3-ジケトンを含まない、水性分散液。
【請求項2】
ポリマーシェルが、ポリ(尿素)、ポリ(ウレタン)、ポリ(アミド)、ポリ(エステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(スルホンアミド)又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
第2のポリマーが、ポリ(ウレタン)及びそのコポリマー、アクリル及びそのコポリマー、ポリ(エステル)、ポリ(スチレン)及びそのコポリマー、ポリ(ビニルアミド)及びそのコポリマー、ポリ(オレフィン)及びそのコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)誘導体及びそのコポリマー、ポリ(アセタール)及びそのコポリマー、ポリ(エーテル)及びそのコポリマー、ポリ(ビニルエーテル)及びそのコポリマー、ポリビニル(エステル)及びそのコポリマー、ポリ(イミド)及びそのコポリマー、ポリ(イミン)及びそのコポリマー、ポリカーボネート及びそのコポリマー、ポリ(塩化ビニル)及びそのコポリマー、ポリ(塩化ビニリデン)及びそのコポリマー、ポリ(アミド酸)及びそのコポリマー、多糖類及びその誘導体、並びにセルロース及びその誘導体からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の水性分散液。
【請求項4】
ポリマーシェルに分散基が共有結合される、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性分散液。
【請求項5】
分散基が、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、及びホスホン酸又はその塩からなる群から選択される、請求項4に記載の水性分散液。
【請求項6】
分散基が、プロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、第四級化第三級アミン、N-第四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウム及びホスホニウムからなる群から選択される、請求項4に記載の水性分散液。
【請求項7】
着色剤と、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性分散液とを含む、水性インクジェットインク。
【請求項8】
水性インクジェットインクから化合物を沈殿又は凝集させることができる化合物と、請求項6に記載の水性分散液とを含む前処理液。
【請求項9】
以下の工程を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロカプセル分散液の調製方法:
a)第2のポリマー及び第1のシェルモノマーを実質的に水不混和性の溶媒に溶解させることによって、第1の溶液を調製する工程と、
b)乳化剤及び任意選択的に第2のシェルモノマーを水に溶解することによって第2の溶液を調製する工程と、
c)第1の溶液を第2の溶液中に乳化する工程と、
d)任意選択的に、実質的に水不混和性の溶媒を蒸発させる工程と、
e)界面重合によりシェル形成を開始させる工程。
【請求項10】
インクジェット記録方法であって、
a)請求項7に記載のインクジェットインクを基材上に噴射する工程と、
b)少なくとも50℃の噴射されたインクの温度を得るように、熱を適用することによって、噴射されたインクジェットインクを乾燥させる工程と
を含む、方法。
【請求項11】
インクジェット記録方法であって、
a)請求項8に記載の前処理液を基材上に適用する工程と、
b)任意選択的に、少なくとも50℃の前処理液の温度を得るように、前処理液を少なくとも部分的に乾燥させる工程と、
b)適用された前処理液上に着色剤を含む水性インクジェットインクを噴射する工程と、c)インクジェットインクを乾燥し、工程b)が行われなかった場合に、少なくとも50℃の前処理液の温度を得るように熱を適用することによって前処理液を乾燥させる工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低吸収性又は非吸収性基材上のインクジェット印刷に使用するための、樹脂を含むコアを有するマイクロカプセルを含む水性インクジェットインク又は前処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
非吸収性及び半吸収性基材上に印刷された画像は、優れた接着性能、耐水性及び耐溶剤性、耐薬品性及び耐擦性を含む、一連の要件全体を満たさなければならない。これらの要件を満たすために、バインダーとして機能する追加の樹脂又はポリマーが、水性インクジェットインクに組み込まれる。いくつかの用途において、使用される基材は温度感受性であり、使用できる乾燥温度及び任意選択的に硬化温度を制限する。特定の用途の要件に応じて、温度感受性基材に適合する異なる樹脂技術が、先行技術において開示されている。
【0003】
いくつかの用途用の物理的特性に関するいくつかの要件を満たす結合能力を有するラテックスに基づくアプローチが、特許文献(特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)に開示されている。しかしながら、ラテックス系インクジェットインクは、一般に、段ボール又は非吸収性基材などの低吸収性基材上の印刷画像の耐水性及び耐擦性を同時に改善しない。さらに、ラテックス系インクジェットインクは、印刷ヘッドのノズル及びインク供給部において成膜する傾向があり、印刷中の信頼性の問題をもたらす。産業用途では、システムの信頼性、特に噴射の信頼性が最も重要である。したがって、より最適な樹脂技術の必要性が依然として存在した
【0004】
特許文献4には、樹脂がカプセルとして存在する水性樹脂系インクジェットインクが記載されている。良好な結合特性、ひいては耐久性のある印刷画像を達成するために、ブロックイソシアネートなどの反応性化学物質がカプセルのコアに組み込まれる。そのような反応物の存在は、得られた画像において完全に反応しない場合、健康及び安全性の問題を与える場合がある。さらに、コアからの反応性化学物質の放出は、インクの乾燥中又は乾燥後に熱活性化工程を必要とする。熱活性化ステップは、ポリエチレン又はポリプロピレンフィルムなどのポリ(オレフィン)系基材と適合しない100℃を超える温度までの印刷画像の加熱を含む。
【0005】
特許文献5は、重合性オリゴマー又はポリマーなどの重合性化合物を含むコアを有するカプセルを含むインクジェットインクを開示している。重合性化合物は、紫外線の適用又はブロックイソシアネートの存在下でのみ重合される。ブロックイソシアネートを活性化するためのUV光源又は熱源の必要性は、信頼性のあるインクジェット印刷システムの設計においてさらなる複雑さを生み出す。
【0006】
反応性官能基を有する重合性ポリマーは、イソシアネートなどの界面重合に使用される典型的なシェルモノマーに対して、特に中程度のアルカリ性pH以降から反応性を有することが知られている。シェルモノマーに対するこの反応性は、界面重合に基づくこれらのポリマーの封入の許容範囲を制限し、これは工業化及びスケーラビリティに対する問題である。コアシェル粒子の工業化における許容範囲は、生産における損失を回避するために重要であり、著しい経済的及び生態学的損失をもたらす。
【0007】
したがって、一方では、最終用途における優れた物理的特性と、他方では、信頼性の高い工業化とを組み合わせた、インクジェット印刷用途のための樹脂技術が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2018/114314A号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0245157A1号明細書
【特許文献3】欧州特許第3275949A1号明細書
【特許文献4】国際公開第2016/165956号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開第2019/0023922号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、上述の問題に対する解決策を提供することである。この目的は、請求項1に記載のカプセルを含む、水性インクジェットインク又は前処理液などの他のインクジェット印刷液を提供することによって達成された。
【0010】
本発明のさらなる目的は、請求項9に定義されるような上述のカプセルの調製方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の態様は、請求項10に定義されるような、請求項1に記載のカプセルを含むインクジェットインクを使用する印刷方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の特徴、要素、工程、特徴及び利点は、本発明の好ましい態様の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。本発明の特定の態様は、従属請求項にも定義されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
態様の説明
A. マイクロカプセルの水性分散液
A.1. マイクロカプセル
本発明の目的は、ポリマーシェルによって囲まれたコアを含むマイクロカプセルの水性分散液によって実現され、コアは、エチレン性不飽和基、エポキシ基、イソシアネート基又は活性メチレン基を実質的に含まない第2のポリマーを含む。
【0014】
A.1.1. 第2のポリマー
第2のポリマーは、エチレン性不飽和基、エポキシ基、イソシアネート基、β-ケト-エステル、β-ケト-アミド及び1,3-ジケトンからなる群から選択される反応性基を実質的に含まないポリマーである。これらの基が存在しないため、第2のポリマーは非重合性であり、したがってシェルモノマーと反応することができない(§ A.1.2及び§ A.2参照。)
【0015】
エチレン性不飽和基の例は、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基及びスチリル基である。
【0016】
原則として、いずれの公知の第2のポリマーも、本発明において使用することができる。好ましくは、第2のポリマーは、実質的に水不混和性の有機溶媒に可溶性である。好ましい態様では、第2のポリマーは、ポリ(ウレタン)及びそのコポリマー、アクリル及びそのコポリマー、ポリ(エステル)及びそのコポリマー、ポリ(スチレン)及びそのコポリマー、ポリ(ビニルアミド)及びそのコポリマー、ポリ(オレフィン)及びそのコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)誘導体及びそのコポリマー、ポリ(アセタール)及びそのコポリマー、ポリ(エーテル)及びそのコポリマー、ポリアミド及びそのコポリマー、ポリ(イミド)及びそのコポリマー、ポリ(イミン)及びそのコポリマー、ポリカーボネ
ート及びそのコポリマー、ポリ(塩化ビニル)及びそのコポリマー、ポリ(塩化ビニリデン)及びそのコポリマー、ポリ(アミド酸)及びそのコポリマー、多糖類及びその誘導体、セルロース及びその誘導体並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。多糖類の誘導体及びセルロースは、https://en.wikipedia.org/wiki/Celluloseに開示されているエステル及びエーテルである。それらは、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、ニトロセルロース(硝酸セルロース)、セルローススルフェート、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースを含む。
【0017】
ポリ(ウレタン)及びアクリルが特に好ましい。アクリルは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミドの重合又は共重合によって得られるポリマー樹脂として定義される。本発明では、アクリレート及びメタクリレート系ポリマー及びコポリマーが特に好ましい。
【0018】
好ましい態様では、第2のポリマーと、ポリイソシアネートなどの第1のシェルモノマーとを、界面重合の高剪断処理の前に混合する。したがって、第2のポリマーは、好ましくは、有機溶媒に可溶性であり、界面重合において親油性相を形成する必要があり(§ A.2参照)、又は少なくとも有機溶媒に可溶性若しくは膨潤性であるセグメントを有する必要がある。
【0019】
異なるセグメントが有機溶媒中で異なる溶解度を有する、グラフト又はブロックコポリマーなどのセグメント化された第2のポリマーを使用することができる。第2のポリマー中のポリエーテル鎖を有するグラフトコポリマー中などの親水性セグメントの存在は、500nm未満、さらには200nm未満の粒径を有するマイクロカプセルを得るのに有用であると思われる。
【0020】
第2のポリマーがポリウレタンである場合、親水性グラフトの組み込みは、ポリエーテルジオールの共重合によって達成することができる。第2のポリマーがポリアクリレートである場合、親水性グラフトの組み込みは、メタクリル末端ポリエチレングリコールのグラフトコポリマーによって達成することができる。その例は、Byk LPG21241などのポリエチレングリコール官能性ポリアクリレートコポリマー、又は有機相(酢酸エチル)に十分に可溶性であるポリエチレングリコール系ブロックコポリマーである。その場合、そのようなブロックコポリマーは、水に適合するポリエーテル鎖の他に、水に不溶性のセグメント(例えば、ポリエステル、ポリエーテル)も含む。
【0021】
本発明において適切なポリエーテルジオールは、Ymer N120、Ymer N90又はTegomer D 3403、すなわちα-[2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブチル]-ω-メトキシ-ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)である。これらのジオールは、トリメチロールプロパンオキセタン(TMPO)から調製することができる。可能な合成手順は、Fock,J.;Moehring,V.,Polyether-1,2- and -1,3-diols as macromonomers for the synthesis of graft copolymers,1.Synthesis and characterization of the macromonomers.Die Makromolekulare Chemie 1990,191(12),3045-3057により記載されている。一般に、他のポリエーテル1,2-又は1,3-ジオールも使用することができる。
【0022】
第2のポリマーに組み込まれたポリエーテル鎖の長さも、印刷画像の耐水性を決定することが観察された。Ymer N90などのより短いポリエーテル鎖は、Ymer N180などのより長いポリエーテル鎖よりも好ましい。本発明による第2のポリマーは、フリーラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、メタセシス重合及び重縮合を含む、当技術分野で公知のいずれかの重合方法に従って調製することができる。フリーラジカル重合を用いて調製される樹脂では、樹脂の分子量は、RAFT剤、ATRP、ニトロキシルラジカル技術又は移動剤、好ましくは、チオールを使用して制御することができる。
【0023】
第2のポリマーは、ポリ(エステル)であり得る。適切なポリ(エステル)は、テレフタル酸、イソファリック酸(isophalic acid)、アジピン酸、コハク酸若しくはそれらのアルキルエステルのようなジカルボン酸のコポリマー、又はカプロラクトンなどの環状エステル若しくはDL-ラクチドのような環状ジエステルの開環重合によって調製されるコポリマーからなる群から選択することができる。
【0024】
第2のポリマーとして適切なポリ(エーテル)は、ポリアルキレンオキシド又はコポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリスチレンオキシド及びポリTHFからなる群から選択することができる。
【0025】
第2のポリマーとして適切なポリ(アセタール)は、ポリ(ビニルブチラール)、ポリビニルアセトアルデヒド、及びヒドロキシ官能性ポリマーと脂肪族又は芳香族アルデヒドとの反応生成物からなる群から選択することができる。
【0026】
第2のポリマーとして適切なポリ(ウレタン)は、ジイソシアネート又はポリイソシアネートとジオールとの重合によって得ることができる。典型的なジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、2,4,4’-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)からなる群から選択することができる。
【0027】
ジオールは低分子量化合物であり得るが、オリゴマージオールは特に好ましい。典型的なオリゴマージオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアミドポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリオレフィンポリオールからなる群から選択することができる。
【0028】
第2のポリマーとして適切なアクリルは、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、セチルアクリレート、セチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレートからなる群から選択されるモノマー、並びにα-メチルスチレン、ビニルアセテート、ビニルバーサテート、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、パラ-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、ブチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル及びエチレンからなる群から選択されるモノマーと、アクリル又はメタクリルモノマーとのコポリマーの重合によって得られる。
【0029】
第2のポリマーは、好ましくは500g/mol~400,000g/mol、より好
ましくは1000g/mol~100,000g/mol、最も好ましくは2000g/mol~50,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0030】
第2のポリマーは、好ましくは好ましくは300g/mol~200,000g.mol、より好ましくは1000g/mol~50,000g/mol、最も好ましくは1000~30,000g/molの数平均分子量(Mn)を有する。
【0031】
A.1.2. ポリマーシェル
ポリマーシェルは、第2のポリマーを封入し、またインクジェットインク又は前処理液の水性ビヒクル中でのマイクロカプセルの分散性を保証する場合がある。
【0032】
カプセルのポリマーシェル中のポリマーのタイプには、実際の制限はない。好ましくは、ポリマーは架橋されている。架橋によって、より多くの剛性がカプセルに組み込まれ、インク製造及びインクジェット印刷機器の両方においてカプセルを取り扱うためのより広い温度範囲及び圧力範囲が可能となる。
【0033】
ポリマーシェル材料の好ましい例は、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホンアミド、メラミン系ポリマー、シリカ系ゾルゲルポリマー、又は米国特許第603149B1号におけるようなそれらの混合物を含み、ポリ尿素及びポリウレタンが特に好ましく、ポリ尿素が最も好ましい。
【0034】
粒子は、好ましくは、インク又は液体の総重量に基づいて45重量%以下、好ましくは5~25重量%の量で水性インクジェットインク又は前処理液中に存在する。30重量%を超えると、噴射は必ずしも信頼性が高いとは限らないことが観察された。
【0035】
カプセルは、好ましくは、ポリマーシェルに共有結合した分散基を介して、インクジェットインク若しくは前処理液の水性媒体中に分散されるか、又は、好ましくはカプセルの形成中若しくは形成後に添加される分散剤若しくは界面活性剤を使用することによって分散される。
【0036】
ポリマーシェルに共有結合した分散基は、好ましくは、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、ホスホン酸又はその塩からなる群から選択される。
【0037】
分散基は、立体安定化を達成するために、ポリマー分散剤と組み合わせて使用することができる。例えば、ポリマーシェルは、ポリマー分散剤のアミン基と相互作用する共有結合したカルボン酸基を有する場合がある。しかしながら、より好ましい態様では、ポリマー分散剤は使用されず、インクジェットインクの分散安定性は、静電安定化のみによって達成される。例えば、わずかにアルカリ性の水性媒体は、ポリマーシェルに共有結合したカルボン酸基をイオン基に変え、その後、負に帯電したカプセルは凝集する傾向がない。十分な分散基がポリマーシェルに共有結合している場合、カプセルは、いわゆる自己分散カプセルとなる。
【0038】
これらの負に帯電したカプセル表面はまた、インクジェット印刷中に有利に使用することができる。例えば、カチオン性ポリマー又は多価塩であるカチオン性物質を含む前処理液などの第2の液体を使用して、第2の液体の上に印刷されたインクジェットインク中のアニオン性カプセルを沈殿させることができる。この方法を使用することによって、インクのカプセルの固定化に起因する画質の改善を観察することができる。
【0039】
前処理液に組み込まれるポリマーシェルに共有結合した分散基は、好ましくは、プロト
ン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、第四級化第三級アミン、N-第四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウム及びホスホニウムからなる群から選択される。
【0040】
インクジェットインク又は噴射可能な前処理液などの噴射可能な水性配合物中に使用されるカプセルは、動的レーザー回折によって決定して、4μm以下の平均粒径を有する。インクジェット印刷ヘッドのノズル径は、通常20~35μmである。カプセルの平均粒径がノズル直径の5分の1の場合、信頼性のあるインクジェット印刷が可能である。4μm以下の平均粒径は、20μmの最小ノズル径を有する噴射ヘッドによる噴射を可能にする。より好ましい態様では、カプセルの平均粒径は、ノズル径の10分の1である。したがって、好ましくは、平均粒径は0.05~2μm、より好ましくは0.10~1μmである。カプセルの平均粒径が2μm未満である場合、優れた解像度及び経時的な分散安定性が得られる。
【0041】
A.2. マイクロカプセル分散液の調製
本発明によるマイクロカプセル分散液は、化学的方法及び物理的方法の両方を用いて調製することができる。適切な封入方法論は、複合液滴形成、リポソーム形成、噴霧乾燥及び重合方法を含む。
【0042】
本発明では、好ましくは重合方法が用いられ、これは、重合方法はカプセルの設計において最高の制御を可能にするためである。より好ましくは、界面重合を用いて本発明のカプセルを調製する。この技術は周知であり、Zhang Y.and Rochefort D.(Journal of Microencapsulation,29(7),636-649(2012)及びSalitin(in Encapsulation
Nanotechnologies,Vikas Mittal(ed.),chapter 5,137-173(Scrivener Publishing LLC(2013))によって概説されている。
【0043】
界面重縮合などの界面重合では、2つの反応物がエマルジョン液滴の界面で出会い、急速に反応する。
【0044】
一般に、界面重合は、水性連続相中の親油性相のエマルジョン又はその逆を必要とする。親油性相は、好ましくは、実質的に水不混和性の有機溶媒を使用することによって得られる。各相は、他方の相に溶解した別のモノマー(第2のシェルモノマー)と反応することができる少なくとも1種の溶解したモノマー(第1のシェルモノマー)を含む。重合すると、水性相及び親油性相の両方に不溶性であるポリマーが形成される。その結果、形成されたポリマーは、親油性相と水性相との界面で沈殿する傾向を有し、これにより分散相の周囲にシェルを形成し、これは、さらなる重合の際に成長する。本発明によるカプセルは、好ましくは、水性連続相中の親油性エマルジョンから調製される。
【0045】
本発明によるカプセルの典型的なポリマーシェルであって、界面重合によって形成されるポリマーシェルは、典型的には、第1のシェルモノマーとしてのジ-又はポリ酸塩化物及び第2のシェルモノマーとしてのジ-又はオリゴアミンから調製されるポリアミド、典型的には、第1のシェルモノマーとしてのジ-又はオリゴイソシアネート及び第2のシェルモノマーとしてのジ-又はオリゴアミンから調製されるポリ尿素、典型的には、第1のシェルモノマーとしてのジ-又はオリゴイソシアネート及び第2のシェルモノマーとしてのジ-又はオリゴアルコールから調製されるポリウレタン、典型的には、第1のシェルモノマーとしてのジ-又はオリゴスルホクロリド(oligosulfochloride)及び第2のシェルモノマーとしてのジ-又はオリゴアミンから調製されるポリスルホンアミド、典型的には、第1のシェルモノマーとしてのジ-又はオリゴ酸塩化物及び第2のシェルモノマーとしてのジ-又はオリゴアルコールから調製されるポリエステル、並びに
、典型的には、第1のシェルモノマーとしてのジ-又はオリゴクロロホルメート及び第2のシェルモノマーとしてのジ-又はオリゴアルコールから調製されるポリカーボネートからなる群から選択される。シェルは、これらのポリマーの組み合わせから構成することができる。
【0046】
本発明の好ましい態様では、界面重合が行われ、ポリ尿素シェルが界面に形成される。好ましくは、第1のシェルモノマーは、親油性相中に存在するポリイソシアネートであり、一方、ポリアミンは第2のシェルモノマーとして水性相中に存在し、これは架橋剤として作用する。ポリアミンが好ましく、一方、ポリオールは、はるかに遅い反応速度を示す。あるいは、水がイソシアネート部分と反応することができ、アミンを形成することができるので、第2のシェルモノマーを省略することができる。次いで、このインサイチュで形成されたアミンは、ポリイソシアネート中に存在する別のイソシアネート部分とさらに反応することができる。したがって、第2のシェルモノマーを添加しなくても、架橋ポリ尿素シェルを得ることができる。
【0047】
適切なポリイソシアネートとして、異なる化学物質を使用することができる。ポリイソシアネートの構造及び反応性、その分子量及び粘度は、高剪断下で小さな液滴を生成するプロセスにおいて重要である。
【0048】
水性相中で水不混和性溶媒を乳化する場合、液滴の破壊は溶媒及び水性相の粘度に依存する。通常、水不混和性溶媒と水性相の粘度が互いに近い場合に、最も高い剪断力が適用され得る。したがって、より低い分子量を有するポリイソシアネートも、高剪断による液滴サイズの低減においてより良好な結果を与える。親油性相(水不混和性溶媒、第2のポリマー及びポリイソシアネートによって得られる)のより小さい液滴サイズは、より小さい粒径を有するカプセルをもたらす。
【0049】
水不混和性溶媒/水の比も重要である。分散工程中に多すぎる水(>65重量%)を添加する場合、粘度がより低く、より高い剪断力が得られるだけでなく、水不混和性溶媒の一部が部分的に水性相に入るであろう。水不混和性溶媒中で低い溶解度を有する第2のポリマー又はポリイソシアネートの場合、高剪断分散工程中の低すぎる水不混和性溶媒濃度は、より大きい粒径を有する粒子をもたらすであろう。
【0050】
さらに、ポリイソシアネート、添加された第2のポリマーの濃度、特に、水不混和性溶媒相/水性相の比は、高剪断処理中の親油性液滴サイズを決定する。ポリイソシアネート中のイソシアネート基の量、それらの反応性、及び水性相、好ましくはポリアミン中の第2のシェルモノマーの濃度は、ポリマーシェルの架橋密度を決定する。
【0051】
界面重合において親油性相を形成する溶媒のタイプは、工業的にスケーラブルなプロセスを得るために重要である。好ましくは、酢酸エチル又は塩化メチレンなどの、容易に除去することができる低沸点の有機溶媒が使用される。有機溶媒は、水よりも低い沸点を有することが好ましい。
【0052】
ポリイソシアネートのタイプは、マイクロカプセル形成に有意な影響を有する。適切なポリイソシアネートは、モノマーイソシアネート、ビウレット構造、ウレチオン、アロファネート、イソシアヌレートトリマー、イソシアネート付加物又は(部分的に)変性されたポリイソシアネートであり得る。
【0053】
変性ポリイソシアネートの例は、親水性イソシアネート、例えば、ポリエーテル変性ポリイソシアネート、例えば、Bayhudur 3100、Bayhydur 305、Bayhydur XP2451/1である。
【0054】
イソシアネートの反応性は、構造に依存する。芳香族イソシアネートは、脂肪族イソシアネートよりも反応性が高い。反応性は、イソシアネート基における立体障害によってさらに低減される。ポリイソシアネートの構造も、シェルの最終的な機械的特性を決定する。その構造中に多くのsp混成炭素原子を有するポリイソシアネートは、少ないsp炭素原子を有するポリイソシアネートよりも柔軟なシェルをもたらすであろう。
【0055】
Bayhydur XP2547又はBayhydur XP2700などのイオン性ポリイソシアネートも使用することができるが、酢酸エチルなどの有機溶媒への低い溶解性のため、あまり好ましくない。
【0056】
第2のポリマーのタイプに加えて、ポリイソシアネート中に存在するイソシアネートのタイプも、非吸収性基材上のインクジェットインク又は前処理液の接着特性を決定する。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)よりも高い印刷画像の柔軟性を提供する。
【0057】
水中での分散性及びアミンとの反応性などの最適化された特性は、モノマーイソシアネートの混合物に基づくポリイソシアネートを使用して得ることができる。ポリイソシアネート中でのHDIとIPDIの混合物の使用は、極めて一般的である。ポリイソシアネートは、以下のモノマーイソシアネートに基づくことができる:イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、2,4,4’-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)。
【0058】
高反応性の第2のシェルモノマーが水性相中で使用される場合、まず、親油性相を高剪断で乳化して小さい液滴サイズとし、続いて第2のシェルモノマー(例えば、ポリアミン)をエマルジョンに添加して、早過ぎる重合を防止することができる。第2シェルモノマーが低い反応性を有する場合、第2シェルモノマーを乳化工程の前に添加することができる。
【0059】
変性ポリイソシアネートも、本発明のマイクロカプセルの調製に適している。その例は、ジイソシアネート又はポリイソシアネートと、TMP=トリメチロールプロパンなどのアルコール又はモノアルコキシ末端ポリエチレングリコールなどのアルコール末端ポリマーとの反応生成物である。
【0060】
さらなる態様では、ゼラチン、キトサン、アルブミン及びポリエチレンイミンなどのポリマーを第2のシェルモノマーとして、第1のシェルモノマーとしてのジ-又はオリゴ-イソシアネート、ジ-又はオリゴ-酸塩化物、ジ-又はオリゴ-クロロホルメート及びエポキシ樹脂と組み合わせて使用することができる。
【0061】
特に好ましい態様では、シェルは、ポリ尿素又はポリウレタンとのその組み合わせから構成される。さらに好ましい態様では、実質的に水不混和性の溶媒が分散工程で使用され、これは、シェル形成の前又は後に溶媒ストリッピングによって除去される。特に好ましい態様では、水不混和性溶媒は、常圧で100℃未満の沸点を有する。エステル及びケトンは、水不混和性溶媒として特に好ましい。
【0062】
実質的に水不混和性の溶媒は、水との混和性が低い有機溶媒である。低混和性は、1対1の体積比で混合された場合、20℃で2相系を形成する、水と溶媒のいずれかの組み合
わせとして定義される。
【0063】
マイクロカプセルのコアは、第2のポリマーを含む。これは、通常、水との混和性が低く、且つ水よりも沸点が低い有機溶媒に第2のポリマーを溶解させることによって、カプセルに組み込まれる。好ましい有機溶媒は、他の有機溶媒と比較して難燃性の危険性も低いため、酢酸エチルである。
【0064】
本発明によるカプセルの分散液を調製するための方法は、好ましくは、以下の工程を含む:
a)実質的に水不混和性であり、且つ好ましくは水よりも低い沸点を有する有機溶媒中で、ポリマーシェルを形成するための第1のシェルモノマー及び第2のポリマーの非水性溶液を調製する工程、
b)乳化剤及び任意選択的にポリマーシェルを形成するための第2のシェルモノマーの水性溶液を調製する工程、
c)非水性溶液を水性溶液中で高剪断下で乳化する工程、
d)任意選択的に、水性溶液と非水性溶液との混合物から有機溶媒をストリッピングする工程、並びに
e)任意選択的に、蒸発中に除去される水を添加して、所望のカプセル濃度を得る工程、並びに
f)第1のシェルモノマーの界面重合を、例えば、温度上昇、触媒の添加、又はUV照射によって開始することによってポリマーシェルを形成する工程。
【0065】
第2のシェルモノマー又は架橋剤は、高剪断分散工程に先立って、又はその後に、エマルジョンに添加することができる。界面重合の開始は、室温でほとんど自然に起こるので、開始は必要ない。本発明の好ましい態様におけるように、乳化剤が反応性である場合、乳化剤もポリマーシェルの一部となることができる。
【0066】
場合によっては、自己分散性の第2のポリマー、ポリイソシアネート又は非常に効率的な乳化剤を使用する場合、高剪断乳化工程は、通常の撹拌によって行うことができる。
【0067】
さらにより好ましい態様では、本発明によるマイクロカプセルの分散液は、以下の工程を含む方法に従って調製される:
a)例えば非水性溶液を形成するために、実質的に水不混和性の溶媒中で本発明による第2のポリマーを調製する工程、
b)第1のシェルモノマーを第2のポリマーの非水性溶液に添加する工程、
c)乳化剤及び任意選択的にポリマーシェルを形成するための第2のシェルモノマーの水性溶液を調製する工程、
d)非水性溶液を水性溶液中で高剪断下で乳化する工程、
e)任意選択的に、水性溶液と非水性溶液との混合物から有機溶媒をストリッピングする工程、並びに
f)第1の成分の界面重合によってポリマーシェルを形成する工程。これは、自然に起こるか、又は温度上昇、触媒の添加、若しくはUV照射によって開始させることができる。
【0068】
次いで、カプセル分散液は、例えば着色剤、水、保湿剤、界面活性剤、溶媒などの添加によって、水性インクジェットインク又は前処理液へと完成させることができる。
【0069】
アニオン性安定化基をカプセルのポリマーシェルに組み込むための好ましい戦略は、イソシアネートと反応することができるカルボン酸官能化反応性界面活性剤を利用する。これは、少なくとも部分的に第二級又は第一級アミンを含む両性タイプの界面活性剤をもたらす。スルホン酸若しくはその塩、リン酸エステル若しくはその塩、又はホスホン酸若し
くはその塩で官能化された他の反応性界面活性剤を使用することができる。
【0070】
第二級アミンを部分的に有するが第三級アミンも含む界面活性剤の混合物であるいくつかの両性界面活性剤が市販されている。市販の両性界面活性剤を使用することによって製造されたカプセルに基づくインクジェットインク中での禁止的な泡形成が、インクジェットプリンターにおいて遭遇した。発泡はインク供給に問題を引き起こし、また、インクから空気を除去しようとするための脱気にも問題を引き起こし、それにより信頼性のない噴射がもたらされる。したがって、好ましくは、国際公開第2016/165970号の式(I)による界面活性剤が第2のポリマーの封入プロセス中に使用される。
【0071】
本発明によるカプセルは、水性媒体中に分散される。水性媒体は、水からなるが、好ましくは、1種以上の水溶性有機溶媒を含む場合がある。
【0072】
1種以上の有機溶媒は、様々な理由で添加される場合がある。例えば、少量の有機溶媒を添加して、調製されるインクジェットインク中の化合物の溶解を改善し、多孔質基材中へのより良好な浸透を得、又はインクジェットヘッドのノズルにおけるインクの速い乾燥を防止することが有利であり得る。好ましい水溶性有機溶媒は、ポリオール(例えば、エチレングリコール、グリセリン、2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4-ブタントリオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プラパンジオール(prapanediol)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、及び2-メチル-1,3-プロパンジオール)、N-ヒドロキシエチル-ピロリドン、N-ブチル-ピロリドン、アミン(例えば、エタノールアミン、及び2-(ジメチルアミノ)エタノール)、一価アルコール(例えば、メタノール、エタノール、及びブタノール)、多価アルコールのアルキルエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、2,2’-チオジエタノール、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド、2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドンなどの複素環、並びにアセトニトリルである。
【0073】
B. 本発明の分散液を含む水性配合物。
B.1. 前処理液
水性前処理液は、好ましくは、低吸収性又は非吸収性基材上への水性ベースのインクを用いたインクジェット印刷において使用される。本発明による水性前処理液は、コアを囲むポリマーシェルからなるマイクロカプセルを含み、コアは、第2のポリマーを含む。ポリマーシェルは、好ましくは、シェルに好ましくは共有結合した分散基をさらに含み、より好ましくは分散基は、プロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、第四級化第三級アミン、N-第四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウム及びホスホニウムの群から選択される基である。
【0074】
カチオン性分散基は、水性インクジェットインク中のアニオン性安定化着色剤及び/又はバインダーの凝集、軟凝集、沈殿又は破砕を助け、形成された画像中のブリーディング及びビーディングの低減をもたらすであろう。カプセルは、前処理液の総重量に基づいて、好ましくは、45重量%以下、より好ましくは5~25重量%の量で存在する。30重
量%を超えると、噴射は必ずしも信頼できるとは限らないことが観察された。
【0075】
多価金属イオンは、インクジェットインクからアニオン性化合物、例えば、染料、顔料及びバインダーを沈殿又は凝集させることができる化合物として前処理液中に含ませることができる。適切な例は、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム及びアルミニウムなどの二価以上の金属カチオンと、フッ化物イオン(F)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、硫酸イオン(SO 2-)、硝酸イオン(NO )、及び酢酸イオン(CHCOO)などのアニオンとから形成される水溶性金属塩である。
【0076】
これらの多価金属イオンは、インクジェットインク中の顔料表面のカルボキシル基、又はインクに含まれるカプセルの分散ポリマーに作用してインクを凝集させる機能を有する。その結果、インクの着色剤が定着し、印刷された画像におけるブリーディング及びビーディングの減少をもたらす。したがって、インク中の顔料及び/又はカプセルの分散ポリマーの表面は、インク中に含まれる場合、アニオン基、好ましくは、カルボキシル基を有することが好ましい。
【0077】
前処理液は、顔料も含む場合がある。暗い又は透明な基材上に印刷するのに特に有用なのは、白色顔料を含む前処理液である。水性前処理液インクのための好ましい顔料は、二酸化チタンである。本発明において有用な二酸化チタン(TIO)顔料は、ルチル又はアナスターゼ(anastase)結晶形の場合がある。TiOの製造プロセスは、「The Pigment Handbook」,Vol.I,2nd Ed.,John
Wiley & Sons,NY(1988)により詳細に記載されており、その関連する開示は、あたかも完全に記載されているかのように、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
二酸化チタン粒子は、前処理液の所望の最終用途に応じて、約1ミクロン以下の多種多様な平均粒径を有することができる。高い隠蔽又は装飾的印刷用途を要求する用途では、二酸化チタン粒子は、好ましくは約Iμm未満の平均粒径を有する。好ましくは、粒子は約50~約950nm、より好ましくは約75~約750nm、さらにより好ましくは約100~約500nmの平均粒径を有する。
【0079】
ある程度の透明性を有する白色を要求する用途では、顔料の好ましいものは、「ナノ」二酸化チタンである。「ナノ」二酸化チタン粒子は、典型的には、約10~約200nm、好ましくは約20~約150nm、より好ましくは約35~約75nmの範囲の平均粒径を有する。ナノ二酸化チタンを含むインクは、光退色及び適切な色相角に対する良好な耐性を依然として保持しながら、改善された彩度及び透明度を提供することができる。被覆されていないナノグレードの酸化チタンの市販の例は、Degussa(Parsippany NJ)から入手可能なP-25である。
【0080】
さらに、複数の粒径を用いて、不透明度及びUV保護などの独特の利点を実現する場合がある。これらの複数の粒径は、顔料グレード及びナノグレードのTIOの両方を添加することによって達成することができる。
【0081】
二酸化チタンは、好ましくは、スラリー濃縮組成物を介して前処理配合物に組み込まれる。スラリー組成物中に存在する二酸化チタンの量は、好ましくは、総スラリー重量に基づいて約15重量%~約80重量%である。
【0082】
二酸化チタン顔料はまた、1つ以上の金属酸化物表面コーティングを有する場合がある。これらのコーティングは、当業者に公知の技術を用いて適用することができる。金属酸
化物コーティングの例は、とりわけ、シリカ、アルミナ、アルミナシリカ、ボリア(boria)及びジルコニアを含む。これらのコーティングは、二酸化チタンの光反応性を低下させることを含む改善された特性を提供することができる。アルミナ、アルミナシリカ、ボリア及びジルコニアの金属酸化物コーティングは、TiO顔料の正に帯電した表面をもたらし、したがって、顔料のさらなる表面処理が必要とされないので、本発明のカチオン安定化カプセルとの組み合わせにおいて特に有益である。
【0083】
このような被覆された二酸化チタンの市販の例は、R700(アルミナ被覆、E.I.DuPont deNemours、Wilmington Del.から入手可能)、RDI-S(アルミナ被覆、Kemira Industrial Chemicals、Helsinki、Finlandから入手可能)、R706(DuPont、Wilmington Del.から入手可能)及びW-6042(Tayco Corporation、大阪、日本からのシリカアルミナ処理ナノグレード二酸化チタン)を含む。
【0084】
前処理液は、少なくとも1種のpH調整剤を含む場合がある。適切なpH調整剤は、有機アミン、NaOH、KOH、NEt、NH、HCl、HNO及びHSOを含む。好ましい態様では、前処理液は、7未満のpHを有する。7以下のpHは、特にカプセルの分散基がアミンである場合、カプセルの静電安定化に有利に影響を及ぼすことができる。
【0085】
B.2. 水性インクジェットインク。
本発明による水性インクジェットインクは、少なくともa)水性媒体と、b)着色剤と、c)コアを囲むポリマーシェルからなるカプセルとを含み、コアは第2のポリマーを含む。ポリマーシェルは、好ましくはシェルに共有結合した分散基をさらに含む場合があり、より好ましくは分散基は、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、リン酸エステル又はその塩、ホスホン酸又はその塩からなる群から選択される基である。ポリマーシェルに連結されたアニオン性及び非イオン性分散基の両方の組み合わせを使用して、インクジェットインク中でカプセルを安定化することもできる。
【0086】
本発明による樹脂粒子は、好ましくは、インクジェットインクの総重量に基づいて30重量%以下、好ましくは2~25重量%の量でインクジェットインク中に存在する。30重量%を超える噴射は、必ずしも信頼性が高いとは限らないことが観察された。
【0087】
好ましい態様では、本発明によるインクジェットインクは、インクジェットインクセットの一部であり、より好ましくは、本発明による複数のインクジェットインクを含む多色インクジェットインクセットの一部である。インクジェットインクセットは、少なくともシアンインクジェットインク、マゼンタインクジェットインク、イエローインクジェットインク及びブラックインクジェットインクを含むことが好ましい。そのようなCMYK-インクジェットインクセットはまた、画像の色域をさらに拡大するために、レッド、グリーン、ブルー、バイオレット及び/又はオレンジなどの追加のインクで拡張される場合がある。インクジェットインクセットはまた、完全密度(full density)インクジェットインクと軽密度(light density)インクジェットインクとの組み合わせによって拡張される場合がある。暗色インクと明色インク、及び/又は黒色インクと灰色インクとの組み合わせは、粒状性の低下によって画質を改善する。
【0088】
好ましい態様では、インクジェットインクセットは白色インクジェットインクも含む。これは、特に透明基材上で、より鮮やかな色を得ることを可能にし、ここで白色インクジェットインクは、画像を透明基材を通して見る場合に、カチオン性化合物を含むプライマーの上に、又はカラーインクジェットインクの上に、プライマーとして適用され得る。
【0089】
インクジェットインクの粘度は、好ましくは、25℃及び90秒-1の剪断速度で25mPa・sより小さく、より好ましくは25℃及び90秒-1の剪断速度で2~15mPa・sである。
【0090】
インクジェットインクの表面張力は、好ましくは、25℃で約18mN/m~約70mN/mの範囲、より好ましくは25℃で約20mN/m~約40mN/mの範囲である。
【0091】
インクジェットインクはまた、基材上に良好な広がり特性を得るために、少なくとも1種の界面活性剤を含む場合がある。
【0092】
B.2.1. 溶媒
インクの水性媒体は、水を含むが、好ましくは、1種以上の水溶性有機溶媒を含む場合がある。インクに組み込むことができる適切な溶媒は、§ A.2に記載されている。
【0093】
B.2.2. 顔料
水性インクジェットインクの顔料は、ブラック、ホワイト、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、これらの混合物などの場合がある。着色顔料は、HERBST,Willy,et al.Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.3rd edition.Wiley - VCH,2004.ISBN 3527305769により開示されているものから選択される場合がある。
【0094】
適切な顔料は、国際公開第2008/074548号の段落[0128]~[0138]に開示されている。
【0095】
顔料粒子は、ポリマー分散剤又は界面活性剤によって水性媒体中に分散される。自己分散性顔料も使用される場合がある。アニオン性分散基を有するカプセルと組み合わされ場合、アニオン性界面活性剤を顔料の分散剤として好ましく使用する場合がある。自己分散性顔料は、界面活性剤又は樹脂を使用せずに水性媒体中に顔料を分散させることができる、表面に共有結合したアニオン性親水性基、例えば、塩形成基又はカプセルのための分散基として使用されるのと同じ基を有する顔料である。適切な市販の自己分散性着色顔料は、例えば、CABOTからのCAB--JET(商標)インクジェット着色剤である。
【0096】
本発明のインクジェットインクに含まれる顔料の特に適切な種類は、顔料が少なくとも部分的にポリマー、好ましくは架橋ポリマーで覆われている封入顔料である。封入顔料の適切な例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2014/092168号の[0070~0076]に記載されている。
【0097】
インクジェットインク中の顔料粒子は、インクジェット印刷装置、特に噴射ノズルを通るインクの自由な流れを可能にするのに十分に小さくなければならない。また、最大の色強度のために小さな粒子を使用し、沈降を遅くすることが望ましい。
【0098】
平均顔料粒径は、好ましくは0.050~1μm、より好ましくは0.070~0.300μm、特に好ましくは0.080~0.200μmである。最も好ましくは、数平均顔料粒径は、0.150μm以下である。顔料粒子の平均粒径は、動的光散乱の原理に基づいて、Brookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusで測定される。インクを水で希釈して、0.002重量%の顔料濃度とする。BI90plusの測定設定は、23℃、角度90°、波長635nm、及びグラフィック=補正機能で5回の実行である。
【0099】
しかしながら、白色顔料インクジェットインクについては、白色顔料の数平均粒径は§
B.1に記載されているものと同じである。
【0100】
適切な白色顔料は、国際公開第2008/074548号の[0116]の表2に示されている。白色顔料は、好ましくは、1.60を超える屈折率を有する顔料である。白色顔料は、単独で又は組み合わせて使用される場合がある。好ましくは、1.60を超える屈折率を有する顔料として二酸化チタンが使用される。適切な二酸化チタン顔料は、国際公開第2008/074548号の[0117]及び[0118]に開示されているものである。
【0101】
また、特殊な着色剤、例えば、衣類における特殊効果のための蛍光顔料、並びに織物上に銀色及び金色の高級な外観を印刷するための金属顔料を使用する場合がある。
【0102】
顔料に適したポリマー分散剤は、2種のモノマーのコポリマーであるが、3種、4種、5種、又はさらにはそれを超えるモノマーを含む場合がある。ポリマー分散剤の特性は、モノマーの性質及びポリマー中のそれらの分布の両方に依存する。コポリマー分散剤は、好ましくは、以下のポリマー組成を有する:
・ 統計的に重合されたモノマー(例えば、ABBAABABに重合したモノマーA及びB)、
・ 交互重合モノマー(例えば、ABABABABに重合したモノマーA及びB)、
・ 勾配(テーパー)重合モノマー(例えば、AAABAABBABBBに重合したモノマーA及びB)、
・ ブロックコポリマー(例えば、AAAAABBBBBBに重合したモノマーA及びB)であって、ブロックのそれぞれのブロック長(2、3、4、5又はさらにはそれを超える)がポリマー分散剤の分散能力にとって重要である、ブロックコポリマー、
・ グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは、主鎖に結合したポリマー側鎖を有するポリマー主鎖からなる)、及び
・ これらのポリマーの混合形態、例えばブロック状勾配コポリマー。
【0103】
適切な分散剤は、BYK CHEMIEから入手可能なDISPERBYK(商標)分散剤、JOHNSON POLYMERSから入手可能なJONCRYL(商標)分散剤、及びLubrisolから入手可能なSOLSPERSE(商標)分散剤である。非ポリマー分散剤及びいくつかのポリマー分散剤の詳細なリストは、MC CUTCHEON.Functional Materials,North American Edition.Glen Rock,N.J.:Manufacturing Confectioner Publishing Co.,1990.p.110-129により開示されている。
【0104】
ポリマー分散剤は、好ましくは、500~30000、より好ましくは1500~10000の数平均分子量Mnを有する。
【0105】
ポリマー分散剤は、好ましくは、100,000未満、より好ましくは50,000未満、最も好ましくは30,000未満の重量平均分子量Mwを有する。
【0106】
顔料は、好ましくは、それぞれインクジェットインクの総重量に基づいて、0.01~20重量%の範囲、より好ましくは0.05~10重量%の範囲、最も好ましくは0.1~5重量%の範囲で存在する。白色インクジェットインクの場合、白色顔料は、好ましくは、インクジェットインクの3重量%~40重量%、より好ましくは5重量%~35重量%の量で存在する。3重量%未満の量は、十分な被覆力を達成することができない。
【0107】
B.2.3. 樹脂
本発明によるインクジェットインク組成物は、追加の樹脂をさらに含む場合がある。この樹脂は、基材への顔料の良好な接着をさらに達成するために、又は印刷画像の耐水性及び耐溶剤性を高めるために、インクジェットインク配合物に度々添加される。この樹脂は、好ましくはポリマーであり、適切な樹脂は、アクリル系樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂又はワックスであり得る。適切なワックスは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びポリテトラフルオロエチレンワックスなどである。一例では、ワックスは、ポリプロピレンワックス、高密度ポリエチレン(HDPE)ワックス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0108】
本発明によるインクジェットインク中の樹脂の濃度は、少なくとも1(重量)%、好ましくは30(重量)%未満、より好ましくは20(重量)%未満である。
【0109】
B.2.4. 添加剤
インクジェットインクはまた、保湿剤を含む場合がある。保湿剤は、好ましくは、インクジェット又はバルブジェットなどの噴射技術によってこの液体を適用しなければならない場合、インクジェットインク中に組み込まれる。保湿剤は、ノズルの目詰まりを防止する。この防止は、インクジェットインク、特に液体中の水の蒸発速度を遅くするその能力に起因する。保湿剤は、好ましくは、水よりも高い沸点を有する有機溶媒である。適切な湿潤剤は、トリアセチン、N-メチル-2-ピロリドン、グリセロール、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、アルキル尿素、アルキルチオ尿素、ジアルキル尿素及びジアルキルチオ尿素、エタンジオール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含むジオール;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールを含むグリコール、並びにそれらの混合物及び誘導体を含む。好ましい保湿剤は、グリセロールである。
【0110】
保湿剤は、好ましくは、液体の総重量に基づいて0.1~20重量%の量で液体配合物に添加される。
【0111】
インクジェットインクは、界面活性剤を含む場合がある。いずれの公知の界面活性剤も使用される場合があるが、好ましくは、グリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤及び/又はポリシロキサン界面活性剤が使用される。アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤及び/又はポリシロキサン界面活性剤の使用は、ブリーディングをさらに低減して印刷品質を改善し、また印刷時の乾燥性を改善して高速印刷を可能にする。
【0112】
アセチレングリコール界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール界面活性剤は、好ましくは、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキシド付加物、2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール、及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキシド付加物から選択される1つ以上である。これらは、例えば、Air
Products(GB)から、又はNissin Chemical Industryから入手可能な、例えば、Olfine E1010などのOlfine(登録商標)、465及びSurfynol 61のような、104シリーズ及びSurfynol(登録商標)Eシリーズである。
【0113】
C. インクジェット印刷方法
好ましいインクジェット記録方法において、方法は、
a)基材上に水性インクジェットインクを噴射する工程であって、インクが、着色剤及びコアを取り囲むポリマーシェルからなるカプセルを含み、コアが、第2のポリマーを含む、工程と、
b)少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも80℃の噴射されたインクの温度を得るように、熱を適用することによって、噴射されたインクジェットインクを乾燥させる工程と
を含む。
【0114】
本発明によるインクジェットインクを噴射する前に、水性前処理液又はプライマーを基材上に適用することができる。水性前処理液は、好ましくは、本発明の水性インクジェットインクの成分を凝集させることができる成分を含む。そのような成分の例は、多価塩、カチオン性界面活性剤及びカチオン性樹脂からなる群から選択される軟凝集剤である。
【0115】
別の好ましいインクジェット記録方法において、方法は、a)基材上に水性前処理液を適用する工程であって、前処理液が、ポリマーシェル及びコアからなるマイクロカプセルの分散液を含み、コアが、第2の樹脂を含み、ポリマーシェルが、プロトン化アミン、プロトン化窒素含有ヘテロ芳香族化合物、第四級化第三級アミン、N-第四級化ヘテロ芳香族化合物、スルホニウム及びホスホニウムからなる群から選択される分散基を含む、工程と、b)任意選択的に、少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも60℃、最も好ましくは少なくとも80℃の適用された水性前処理液の温度を得るように、適用された水性前処理液を少なくとも部分的に乾燥させる工程と、c)適用された前処理液上に水性インクジェットインクを噴射する工程であって、インクが、着色剤、好ましくは顔料を含み、より好ましくは本発明によるマイクロカプセルの分散液も含む、工程と、d)噴射されたインクジェットインクを乾燥させる工程とを含む。工程b)が実施されなかった場合、又は前処理液の乾燥が完了しなかった場合、工程d)の乾燥は、適用された前処理液の温度が少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも80℃となるように熱を適用することによって実施されるべきである。
【0116】
本発明による水性分散液は、後処理液又はオーバープリントワニスに含まれていてもよく、これは次いでインクジェットヘッドにより噴射されることが好ましい。
【0117】
インクジェット記録方法における基材は、例えば、織物、紙及び皮革などの多孔質の場合があるが、好ましくは、低吸収性基材、例えば、カードボード基材、又は非吸収性基材、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリラクチド(PLA)、ポリメチルメタクリレート又はポリイミドである。
【0118】
基材はまた、普通紙又は樹脂被覆紙、例えばポリエチレン又はポリプロピレン被覆紙などの紙基材の場合がある。紙のタイプに実際の制限はなく、新聞用紙、雑誌用紙、オフィス用紙、壁紙、さらには、通常、裏白チップボール(white lined chipboard)、段ボール(corrugated board)及び包装ボード(packaging board)などのボードと呼ばれる、より高い坪量の紙を含む。
【0119】
基材は、透明、半透明又は不透明の場合がある。好ましい不透明基材は、1.10g/cm以上の密度を有する不透明ポリエステルシートであるAgfa-GevaertからのSynaps(商標)等級のような、いわゆる合成紙を含む。
【0120】
別の好ましいインクジェット記録方法では、前処理液はインクジェット、バルブジェット及びスプレーの群から選択される技術を介して適用される。より詳細には、これらのインクジェット及びバルブジェットの技術は、本発明による前処理液を、好ましくは、イン
クジェットインクが印刷されて画像を得る表面上に、画像状に適用することを可能にする。前処理液を適用するこれらの最後の手段は、必要な前処理液の量が、基材をプライミングする他の適用方法よりも実質的に少ないという利点を有する。
【0121】
本発明による前処理液又はインクジェットインクを乾燥させるための加熱プロセスの例は、加熱プレス、大気蒸気処理、高圧蒸気処理、THERMOFIXを含むがこれらに限定されない。加熱プロセスには、いずれの熱源も使用することができ、例えば、赤外線源が使用される。
【0122】
乾燥工程は、空気中で行うことができるが、加熱工程は、熱源を用いて行う必要があり、その例は、強制空気加熱、NIR-、CIR-及びSWIR放射を含むIR放射などの放射加熱、伝導加熱、高周波乾燥、並びにマイクロ波乾燥のための機器を含む。乾燥工程は、印刷された画像の温度が、好ましくは150℃未満で得られるようなものである。
【0123】
本発明による樹脂粒子を含むインクジェットインク又は前処理液を噴射するためのインクジェット印刷システムのための好ましいインクジェットヘッドは、圧電インクジェットヘッドである。圧電インクジェット噴射は、電圧が印加されたときの圧電セラミックトランスデューサの動きに基づく。電圧の印加は、印刷ヘッド内の圧電セラミックトランスデューサの形状を変化させ、空隙を形成し、次いで空隙はインク又は液体で充填される。電圧が再び除去されると、セラミックは元の形状に膨張し、インクジェットヘッドからインク滴を吐出する。しかしながら、本発明による粒子分散液を含む水性インクジェットインク又は水性前処理液の噴射は、圧電インクジェット印刷に限定されない。他のインクジェット印刷ヘッドを使用することができ、それは、連続タイプ、熱印刷ヘッドタイプ、MEMジェットタイプヘッド、及びバルブジェットタイプなどの様々なタイプを含む。
【実施例
【0124】
D. 実施例
D.1. 材料
以下の実施例で使用される全ての材料は、特に指定しない限り、Sigma-Aldrich(Belgium)及びAcros(Belgium)などの標準供給源から容易に入手可能であった。使用した水は、脱塩水であった。
・ Dynacoll 7150は、Evonikによって供給されるテレフタル酸エステル及びイソフタル酸エステル単位を含むポリエステルポリオールである
・ Ymer N90は、Perstorpによって供給される1,3ジオールポリエーテルである
・ Ymer N120は、Perstorpによって供給される1,3ジオールポリエーテルである
・ Reaxis C708は、Reaxis BVによって供給される触媒である
・ IPDIは、Evonikによって供給されるIPDIモノマーである
・ Vestanat T1890E IPDIは、Evonikによって供給される、酢酸ブチル中の70% IPDIトリマー溶液である
・ Desmodur N3200は、Covestroによって供給されるHDIベースのポリイソシアヌレートである
・ Desmodur N75は、CovestroからのHDIビウレットである
・ Lakeland ACP70は、Espachemによって供給されるN-ココアルキルβ-アラニン誘導体の70%溶液である
・ BDは、Acrosによって供給される1,4-ブタンジオールである
・ トリエチルアミンは、Acrosによって供給されるトリエチルアミンである
・ PU-3は、ポリウレタン樹脂の水性分散液であり、国際公開第2019/106089 A号において樹脂PU-3として調製されている。
・ 2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)は、Wako Chemicalsから得られる開始剤である
・ NeoCryl A-1127は、DSM NeoResinsからの44重量%水性ポリアクリレート分散液である
・ Mowinyl 6969Dは、ジャパンコーティングレジン株式会社からの42重量%水性ポリアクリレート分散液である
・ PDは、Dow Chemical製の1,2-プロパンジオールである
・ DPMは、Dow Chemical製のDowanol DPMである
・ SolvMIXは、Dowanol DPMとグリコールとの1:1混合物である
・ COL-1は、商品名Diamond D75Cで入手可能な、Lubrizolによって供給される市販のシアン分散液である
・ COL-2は、商品名DIAMOND D75Mで入手可能な、Lubrizolからのピグメントレッド122の15%水性分散液である
・ HDは、1,2-ヘキサンジオールである
・ SURF-1は、Evonikによって供給されるTegowet 270である
・ SUBST-1は、MM Kartonによって供給される180gsmのMM-Xライナーである
・ SUBST-2は、Antalisによって供給される粘土被覆EBフルートである・ SUBST-3は、AntalisによってPripak Classicとして供給されるポリプロピレンフィルムである
【0125】
D.2. 測定方法
D.2.1. 試料調製
10μmスパイラルバーを用いて自動バーコーターでそれぞれの基材上にインクジェットインク配合物を被覆した。80℃のオーブン中で5分間、被覆したフィルムを乾燥した後、それをさらに評価することができる。
【0126】
標準的なDimatix(商標) 10pl印刷ヘッドを備えたDimatix(商標) DMP2831システムを用いてインクジェットインク配合物を噴射した。インクは、5kHzの噴射周波数、25Vの噴射電圧、及び標準波形を用いて、22℃で噴射された。インクをSUBST-3上に噴射し、固体カラーパッチを得るように100℃で5分間乾燥させた。
【0127】
D.2.2. 耐水性
水を浸したQチップを用いて基材上に5回の二倍摩擦を行うことによって、乾燥コーティング上で耐水性を評価した。耐水性のレベルを、以下の表1の基準に従って定量化した。
【0128】
D.2.3. 耐水性-耐溶剤性
噴射及び乾燥した固体パッチを、Qチップを10回擦ることによって、それらの耐水性及び耐i-プロパノール性について評価した。耐水性及び耐溶剤性のレベルを、表1の基準に従って定量化した。
【表1】
【0129】
D.2.4. 耐擦性
ISO105-X12におけるように、白色の隣接する繊維を用いて10回の二倍摩擦を行うことによって、乾燥フィルム上で耐擦性を評価した。白色摩擦布の着色は、表2に示すように、ΔEab(CIE76)に基づいて評価される。
【表2】
【0130】
D.2.5. インク噴射信頼性
インクジェットインク配合物を§ D.2.1に記載したように噴射した。
【0131】
待ち時間の評価は、ノズルがキャップされていない状態で、2分間のアイドル時間後に噴射プロセスを再始動した後の、インクジェットヘッドの完全に機能するノズルの量に基づいていた(1=全てのノズルが依然として噴射する、2=ノズルの半分超が依然として噴射する、3=ノズルの半分未満が噴射する)。
【0132】
D.3. 本発明のマイクロカプセルの調製
D.3.1. 第2のポリマー:ポリウレタン樹脂の調製
PU-1溶液
まず、ポリウレタン溶液PU-1を以下の工程に従って調製する。227.49gのDynacol 7150を402.83gの酢酸エチルに45℃でErlenmeyer内で溶解した。56.87gのYmer N120をDynacol溶液に加えた。Ymer N120は、液体になり、且つ取り扱いが容易になるように、最初に90℃で予熱した。こうして酢酸エチル中の透明な溶液を得た。この混合物を室温に冷却させた。2.14gのReaxis C708を19.34gの酢酸エチルで希釈することによって触媒溶液を調製した。Ymer N120及びDynacol 7150の混合物を、コイル状凝縮器及びオーバーヘッド撹拌器を備えた1000mLの三口丸底フラスコに移した。フラスコを窒素でフラッシュし、撹拌及び反応の間、ゆっくりとした窒素流を維持した。続いて、触媒を、圧力均等化アームを備えた添加漏斗を介して滴加した。油浴を75℃に加熱した。1時間後、反応混合物は68℃の一定温度に達する。続いて、31.32gのIPDIを、35分間、圧力均等化アームを備えた添加漏斗を介して添加した。次いで、油浴を70℃とし、反応物を22時間にわたって一晩反応させた。一晩反応させた後、
油浴を再び30分間75℃とし、次いで室温に冷却した。PU-1溶液の42.98%の理論的固形分をさらなる使用のために使用した。
【0133】
PU-2溶液
ポリウレタン溶液PU-2を、以下の工程によって調製した。260.08gのDynacol 7150を402.90gの酢酸エチルに45℃でErlenmeyer内で溶解した。28.90gのYmer N90をDynacol溶液に加えた。Ymer N90は、液体になり、且つ取り扱いが容易になるように、最初に90℃で予熱された。こうして酢酸エチル中の透明な溶液を得た。この混合物を室温に冷却させた。2.14gのReaxis C708を19.34gの酢酸エチルで希釈することによって触媒溶液を調製した。ポリオール溶液を、コイル状凝縮器及びオーバーヘッド撹拌器を備えた1000mL三口丸底フラスコに移した。フラスコを窒素でフラッシュし、撹拌及び反応の間、ゆっくりとした窒素流を維持した。続いて、触媒を、圧力均等化アームを備えた添加漏斗を介して滴加した。油浴を75℃に加熱した。1時間後、反応混合物は、68℃の一定温度に達する。続いて、26.70gのIPDIを、圧力均等化アームを有する添加漏斗を介して40分間加えた。次いで、油浴を70℃とし、反応物を22時間にわたって一晩反応させた。一晩反応させた後、油浴を再び30分間75℃とし、次いで室温に冷却した。PU-2溶液の42.98%の理論的固形分をさらなる使用のために使用した。
【0134】
PU-4 溶液
ポリウレタン溶液PU-4を、以下の工程によって調製した。114.63gのDynacol 7150を201.45gの酢酸エチルに45℃でErlenmeyer内で溶解した。28.66gのYmer N90をDynacol溶液に加えた。Ymer N90は、液体になり、且つ取り扱いが容易になるように、最初に90℃で予熱された。こうして酢酸エチル中の透明な溶液を得た。この混合物を室温に冷却させた。1.07gのReaxis C708を9.67gの酢酸エチルで希釈することによって触媒溶液を調製した。ポリオール溶液を、コイル状凝縮器及びオーバーヘッド撹拌器を備えた500mL三口丸底フラスコに移した。フラスコを窒素でフラッシュし、撹拌及び反応の間、ゆっくりとした窒素流を維持した。続いて、触媒を、圧力均等化アームを備えた添加漏斗を介して滴加した。油浴を75℃に加熱した。1時間後、反応混合物は、68℃の一定温度に達する。続いて、14.56gのIPDIを、35分間、圧力均等化アームを有する添加漏斗を介して添加した。次いで、油浴を70℃とし、反応物を22時間にわたって一晩反応させた。一晩反応させた後、油浴を再び30分間75℃とし、次いで室温に冷却した。PU-4溶液について42.98%の理論的固形分をさらなる使用のために使用した。
【0135】
D.3.2. 第2のポリマー:ポリアクリル樹脂の調製
PMMA-1
PMMA-1は、以下のように合成されたポリメチルメタクリレートである:10gのメチルメタクリレートを、100mLの三口フラスコ中で30mLの酢酸エチルに溶解した。透明な溶液を窒素で10分間フラッシュし、その後、0.506gの1-ドデカンチオールを加える。この混合物を再び窒素で10分間フラッシュする。0.288gの2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を加え、反応混合物を一晩還流する。TLC(NP Merck 90/10ヘプタン/酢酸エチル及びI2染色)を用いて反応を追跡する。全てのモノマーが消費された後、溶媒を蒸発させ、固体生成物が得られる。
【0136】
ポリアクリレートを、サイズ排除クロマトグラフィー(3×混合Bカラムセット、THF/HOAc 95/5)で分析した。測定結果を表3に列挙する。
【表3】
【0137】
D.3.3. 本発明のマイクロカプセル分散液の調製
本発明のマイクロカプセル分散液CAP-1を界面重合により調製した。25.73gの酢酸エチル、16.5gのDesmodur N3200及び38.42gのPU-1溶液を混合することによって、親油性相を調製した。7.00gのLakeland ACP70、1.80gのリジン及び2.0gのトリエチルアミン及び102.94gの水を混合することによって、水性相を調製した。有機相を、広い開口を有するプラスチックボトルに入れ、氷浴内に置いた。水性相を親油性相に加えた。親油性相を、Ultraturrax装置を用いて5分間、18000RPMで水性相中で乳化した。エマルジョンを丸底フラスコに入れた。分散液の全てを移すために、プラスチックボトルを80.00gの水を用いてすすいだ。酢酸エチルをロータリーエバポレーターで145gの重量になるまで蒸発させた。温度を40℃に設定し、酢酸エチルを減圧下で除去した。蒸発を200mbarの圧力で開始し、圧力を40mbarまで徐々に減少させた。多すぎる水を蒸発させると、この水は合計で145gまでの添加によって補われた。丸底フラスコを温度40℃の油浴内に置き、30分以内に60℃まで加熱した。次いで、分散液を60℃で16時間にわたって一晩保ち、次いで室温に冷却した。得られたマイクロカプセル分散液CAP-1は、32.09重量%の固形分、7.88のpHを有し、平均粒径は208.7nmであった(Malvern粒径測定器によって測定)。
【0138】
本発明のマイクロカプセル分散液CAP-2を界面重合により調製した。25.73gの酢酸エチル、16.5gのDesmodur N3200及び38.42gのPU-4溶液を混合することによって、親油性相を調製した。7.00gのLakeland ACP70、1.80gのリジン及び2.0gのトリエチルアミン及び103.28gの水を混合することによって、水性相を調製した。親油性相を、広い開口を有するプラスチックボトルに入れ、氷浴内に置いた。水性相を親油性相に加えた。親油性相を、Ultraturrax装置を用いて5分間、18000RPMで水性相中で乳化した。エマルジョンを丸底フラスコに入れた。エマルジョンの全てを移すために、プラスチックボトルを80.00gの水を用いてすすいだ。酢酸エチルをロータリーエバポレーターで145gの重量になるまで蒸発させた。温度を40℃に設定し、酢酸エチルを減圧下で除去した。蒸発を200mbarの圧力で開始し、圧力を40mbarまで徐々に減少させた。多すぎる水を蒸発させると、この水は合計で145gまでの添加によって補われた。丸底フラスコを温度40℃の油浴内に置き、30分以内に60℃まで加熱した。次いで、分散液を60℃で16時間にわたって一晩保ち、次いで室温に冷却した。得られたマイクロカプセル分散液CAP-2は、25.44重量%の固形分、7.12のpHを有し、平均粒径は200.2nmであった(Malvern粒径測定器によって測定)。
【0139】
本発明のマイクロカプセル分散液CAP-3を界面重合により調製した。24.56gの酢酸エチル、12.19gのVestanat T1890E IPDI及び19.86gのPU-2溶液を混合することによって、親油性相を調製した。3.62gのLak
eland ACP70、0.93gのリジン及び1.04gのトリエチルアミン及び103.28gの水を混合することによって、水性相を調製した。親油性相を、広い開口を有するプラスチックボトルに入れ、氷浴内に置いた。水性相を親油性相に加えた。親油性相を、Ultraturrax装置を用いて5分間、18000RPMで水性相中で乳化した。エマルジョンを丸底フラスコに入れた。エマルジョンの全てを移すために、プラスチックボトルを80.00gの水を用いてすすいだ。酢酸エチルをロータリーエバポレーターで重量が75gになるまで蒸発させた。温度を40℃に設定し、酢酸エチルを減圧下で除去した。蒸発を200mbarの圧力で開始し、圧力を40mbarまで徐々に減少させた。多すぎる水を蒸発させると、この水は合計75gまでの添加によって補われた。丸底フラスコを温度40℃の油浴内に置き、30分以内に60℃まで加熱した。次いで、分散液を60℃で16時間にわたって一晩保ち、次いで室温に冷却した。得られたマイクロカプセル分散液CAP-3は、26.68重量%の固形分、7.43のpHを有し、平均粒径は171.1nmであった(Malvern粒径測定器によって測定)。
【0140】
本発明のマイクロカプセル分散液CAP-4を界面重合により調製した。24.56gの酢酸エチル、12.19gのIPDI Vestanat T1890E IPDI、及び19.86gのPU-2溶液を混合することによって、親油性相を調製した。3.62gのLakeland ACP70、0.93gのリジン及び0.622gの28% NH4OH水溶液及び54.29gの水を混合することによって、水性相を調製した。親油性相を、広い開口を有するプラスチックボトルに入れ、氷浴内に置いた。水性相を親油性相に加えた。親油性相を、Ultraturrax装置を用いて5分間、18000RPMで水性相中で乳化した。エマルジョンを丸底フラスコに入れた。エマルジョンの全てを移すために、プラスチックボトルを80.00gの水を用いてすすいだ。酢酸エチルをロータリーエバポレーターで重量が75gになるまで蒸発させた。温度を40℃に設定し、酢酸エチルを減圧下で除去した。蒸発を200mbarの圧力で開始し、圧力を40mbarまで徐々に減少させた。多すぎる水を蒸発させると、この水は合計75gまでの添加によって補われた。丸底フラスコを温度40℃の油浴内に置き、30分以内に60℃まで加熱した。次いで、分散液を60℃で16時間にわたって一晩保ち、次いで室温に冷却した。得られたマイクロカプセル分散液CAP-4は、25.52重量%の固形分、7.43のpHを有し、平均粒径は239.1nmであった(Malvern粒径測定器によって測定)。
【0141】
ポリアクリレートとしての第2のポリマーを含む本発明のマイクロカプセル分散液CAP-5を、以下のように調製した:
【0142】
POT Aでは、3.5gのPMMA-1を、4.657gのDesmodur N75及び0.7gのLakeland ACP70と共に、10gの酢酸エチルに加えた。POT Bでは、1.120gのLakeland ACP70、0.469gのL-リジン及び0.400gのトリエタノールアミンを17.5gの水に加えた。POT AをPOT Bに加え、Ultra-Turraxを用いて15000rpmで高剪断下で5分間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、除去された水を後で添加した。27.4重量%の乾燥残留物を含むカプセル分散液を得た。
【0143】
カプセル分散液を顕微鏡で評価し、粒径をナノサイザー(Malvern)で測定した。
【0144】
CAP-5分散液の特性の概要を表4に示す。
【表4】
【0145】
分散液は、良好な微視的品質を有する。
【0146】
D.4. 水性インクジェットインクの調製
D.4.1. PUポリマーを含む水性インクジェットインク。
表5に示す化合物を混合することによって、3種のシアンインクジェットインクを調製した。全ての重量パーセントは、インクジェットインクの総重量に対するものである。樹脂又はマイクロカプセルをインク配合物中に使用した場合、樹脂/マイクロカプセルの固形分は、インクの総重量の6.0重量%である。
【表5】
【0147】
D.4.2. ポリアクリレートポリマーを含む水性インクジェットインクの調製。
表6には、封入されたポリアクリレートポリマーを含む本発明のインク、及び封入されていないポリアクリレートポリマーを含む比較インクの組成がまとめられている。
【0148】
本発明のインクINVINK-2を、以下のように配合した:3.962gのCAP-5を2.28gのCOL-2と一緒に混合し、室温で撹拌した。3.962gのSolvMIXを滴加し、インクを室温で5分間撹拌し、濾過した(1.6μm)。得られた全てのインクは、室温で2週間安定であった。
【0149】
比較インク、COMPINK-3及びCOMPINK-4を、インク中で同じ固体濃度
を得るために、最初にMowinyl 6969D及びNeoCryl A-1127を水で希釈することによって作製した。その後、2.28gのCOL-2を加え、この混合物を室温で撹拌した。3.962gのSolvMIXを滴加し、インクを室温で5分間撹拌し、濾過した(1.6μm)。
【表6】
【0150】
D.5. INVINK-1、COMPINK-1及びCOMPINK-2で得られたコーティングの物理的特性の評価。
表5のインクをSUBST-1及びSUBST-2上に被覆し(§ D.2.1参照)、D.2.2及びD.2.4に記載したように評価した。評価の結果を表7にまとめる。
【表7】
【0151】
表7の結果から、本発明によるインクは、耐水性及び耐擦性の両方について良好に得点することが明らかである。インク中にバインダー/樹脂を使用しない場合、耐擦性は依然として問題ないが、耐水性は不十分である。ラテックスとしてPUバインダーをインクに添加すると、耐水性は改善するが、耐擦性は依然として不十分である。
【0152】
D.6. インクINVINK-2並びにCOMPINK-3及び4の評価。
表6の噴射インクの固体パッチ(§ D.2.1参照)の耐水性及び耐溶剤性を、§ D.2.3に従って評価した。結果を表8にまとめる。
【0153】
インクの噴射信頼性を§ D.2.5に記載したように評価した。結果を表8の列「待ち時間」に列挙する。
【表8】
【0154】
表8から、本発明のマイクロカプセル分散液を含む、噴射及び乾燥された本発明のインクの優れた耐水性及び耐溶剤性に加えて、比較インクよりもより信頼性の高い、再始動後の噴射が得られると結論付けることができる。
【国際調査報告】