(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】締付けシステムを使用してボルトの締付けプロセスをコンピュータ実装式に監視するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20240717BHJP
G06F 3/0481 20220101ALI20240717BHJP
G06F 3/14 20060101ALI20240717BHJP
F03D 13/00 20160101ALI20240717BHJP
【FI】
B25B23/14 620F
G06F3/0481
G06F3/14 330A
G06F3/14 320A
B25B23/14 630E
B25B23/14 620Z
F03D13/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578943
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2022065522
(87)【国際公開番号】W WO2022268505
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519081710
【氏名又は名称】シーメンス ガメサ リニューアブル エナジー エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Siemens Gamesa Renewable Energy A/S
【住所又は居所原語表記】Borupvej 16, 7330 Brande, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フェリクス レーゼ
【テーマコード(参考)】
3C038
3H178
5B069
5E555
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BC02
3C038CA05
3C038CA06
3C038CB02
3C038CC04
3C038EA02
3H178AA03
3H178BB75
3H178BB77
3H178DD67Z
5B069AA18
5B069CA19
5B069DD05
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5B069DD19
5B069FA04
5B069JA06
5E555AA07
5E555AA28
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5E555BA42
5E555BB01
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5E555CC22
5E555DB41
5E555DB53
5E555DB58
5E555DC13
5E555DC18
5E555DC31
5E555DC35
5E555DC84
5E555DD01
5E555DD06
5E555EA14
5E555FA00
(57)【要約】
締付けシステム(100)を使用してボルトの締付けプロセスをコンピュータ実装式に監視する方法であって、この方法は、ボルトを回転させるためのアクチュエータ(11)を有する手動操作式締付けツール(10)を有し、締付けツール(10)は、少なくとも1つの締付けシーケンスで締付けツール(10)のアクチュエータ(11)が動作可能な第1動作モードと、締付けツール(10)のアクチュエータ(11)が緩めシーケンスで動作可能な第2動作モードとの間で切換え可能に構成されており、締付けシーケンスおよび緩めシーケンスのそれぞれは、締付けツール(10)のアクチュエータ(11)についてのあらかじめ定めた動作パラメータを有し、締付けツール(10)はさらに、締付けシーケンスの間にかつ/または終了後にボルト接続の少なくとも1つのパラメータ(P1,P2)を特定するためのセンサユニット(12)を有し、少なくとも1つのパラメータ(P1,P2)のそれぞれは、ボルト接続の品質尺度を表し、締付けシステムはさらに、センサユニット(12)から受け取った少なくとも1つのパラメータ(P1,P2)を処理するための処理ユニット(20)を有し、処理ユニット(20)は、少なくとも1つのパラメータ(P1,P2)に基づいてボルト接続の状態(ST)を特定するように構成されており、状態(ST)は、適正なボルト接続を示す第1状態と、不良のボルト接続を示す第2状態とを有し、締付けツール(10)はさらに、ボルト接続についての接続情報を出力するためのユーザインタフェース(30)を有し、本方法は、次のステップ、すなわち、第1動作モードにおける締付けシーケンスの間にかつ/または終了後にインタフェース(21)により、締付けツール(10)からボルト接続の少なくとも1つのパラメータ(P1,P2)を受け取るステップと、ボルト接続の終了と同時にかつ/または終了後にボルト接続の状態(ST)を特定するステップと、状態(ST)が第2状態に対応する場合に、第1動作モードから第2動作モードに締付けツール(10)のアクチュエータ(11)を切り換えるステップと、ボルト(51,52,53)を締め付け直すために、第2動作モードから、第1動作モードの少なくとも1つの締付けシーケンスのまさに最初の締付けシーケンスに締付けツール(10)を切り換えるステップとを有する。
![](/Kouhou/img?c=P_P1&n=2024527279&FileName=2024527279000001.tif&ImageFormatCategory=tif)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締付けシステム(100)を使用してボルトの締付けプロセスをコンピュータ実装式に監視する方法であって、前記締付けシステム(100)は、
前記ボルトを回転させるためのアクチュエータ(11)を有する手動操作式締付けツール(10)を有し、前記締付けツール(10)は、
前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)が、少なくとも1つの締付けシーケンスで動作可能である第1動作モードと、
前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)が、緩めシーケンスで動作可能である第2動作モードと
の間で切換え可能に構成されており、
前記締付けシーケンスおよび前記緩めシーケンスのそれぞれは、前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)についてのあらかじめ定めた動作パラメータを有し、
前記締付けツール(10)はさらに、締付けシーケンスの間にかつ/または終了後に前記ボルト接続の少なくとも1つのパラメータ(P1,P2)を特定するためのセンサユニット(12)を有し、
少なくとも1つの前記パラメータ(P1,P2)のそれぞれは、前記ボルト接続の品質尺度を表し、
前記締付けシステム(100)はさらに、前記センサユニット(12)から受け取った少なくとも1つの前記パラメータ(P1,P2)を処理するための処理ユニット(20)を有し、前記処理ユニット(20)は、少なくとも1つの前記パラメータ(P1,P2)に基づいて前記ボルト接続の状態(ST)を特定するように構成されており、
前記状態(ST)は、適正なボルト接続を示す第1状態と、不良のボルト接続を示す第2状態とを有し、前記締付けシステム(100)はさらに、
前記ボルト接続についての接続情報を出力するためのユーザインタフェース(30)を有し、
前記方法は、次のステップ、すなわち、
a)前記第1動作モードにおける締付けシーケンスの間にかつ/または終了後にインタフェース(21)により、前記締付けツール(10)から前記ボルト接続の少なくとも1つの前記パラメータ(P1,P2)を受け取るステップと、
b)前記ボルト接続の終了と同時にかつ/または終了後に前記ボルト接続の前記状態(ST)を特定するステップと、
c)前記状態(ST)が前記第2状態に対応する場合に、前記第1動作モードから前記第2動作モードに前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)を切り換えるステップと、
d)前記ボルト(51,52,53)を締め付け直すために、前記第2動作モードから、前記第1動作モードの少なくとも1つの前記締付けシーケンスのまさに最初の締付けシーケンスに前記締付けツール(10)を切り換えるステップとを有する、方法。
【請求項2】
前記方法はさらに、次のステップ、すなわち、
e)締付けシーケンスのあらかじめ定めた順序に従って前記ボルト(51,52,53)を締め付け直すために、前記第1動作モードのまさに最初の前記締付けシーケンスから、少なくとも1つの後続締付けシーケンスに締付けツール(10)のアクチュエータ(11)を制御するステップを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1動作モードから前記第2動作モードに前記締付けツール(10)を切り換える、かつ/または前記第2動作モードから前記第1動作モードのまさに最初の前記締付けシーケンスもしくは後続締付けシーケンスの1つに前記締付けツール(10)を切り換える前記ステップを前記処理ユニット(20)の自動制御下で実行する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ユーザインタフェース(30)により、前記ボルト接続の前記状態(ST)および/また前記ボルト接続の品質尺度を表す少なくとも1つの前記パラメータ(P1,P2)を接続情報としてディスプレイ(31)に出力する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記接続情報をリアルタイムに出力する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
次のステップ、すなわち、
c1)前記第2動作モードにおける前記緩めシーケンスの間にかつ/または終了後に前記締付けツール(10)から前記ボルト接続の少なくとも1つの前記パラメータを受け取るステップと、
c2)前記ボルト接続が完全に緩められた否かを特定するステップとを実行した後、ステップd)を開始する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ステップc2)が終了した直後に前記ユーザインタフェース(30)により、前記ボルト接続の前記接続の表示を抑止する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記締付けシステムはさらに、前記ボルト(51,52,53)の締付けプロセスまたは緩めプロセスを実行すると同時に、ボルト締め付けされる製品の基準点に対して、前記締付けツール(10)の位置を特定するように構成された位置決めユニットを有し、前記処理ユニット(20)は、次のステップ、すなわち、
e1)前記ボルト(51,52,53)の締付プロセスを実行すると同時に前記締付けツール(10)の位置を特定するステップと、
e2)前記ボルト接続の前記状態が第2状態に対応する場合、前記締付けツール(10)の位置を第1位置として格納するステップと、
e3)前記締付けツール(10)の現在位置が、前記第1位置に対応する場合のみ、前記第2状態に関連付けられた前記ボルト(51,52,53)を緩めるための前記締付けツール(10)を解除するステップとを実行するように構成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ボルト接続の前記状態が前記第2状態に対応する場合にはそれぞれのボルト接続に関連付けられたカウンタを1だけ増加させ、ここで、前記カウンタは、ボルト接続の状態が最初に第2状態に対応する場合にはあらかじめ定めた開始値からスタートし、またボルト接続の状態がそれぞれ後の時点に第2状態に対応する場合には最後に格納した値からスタートする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記カウンタの実際値が、あらかじめ定めた閾値を超えた場合、新たなボルト(51,52,53)を使用する指示を前記ユーザインタフェース(30)に出力する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
締付けシステムを使用してボルト(51,52,53)の締付けプロセスをコンピュータ実装式に監視するための装置であって、前記装置は、
前記ボルトを回転させるためのアクチュエータ(11)を有する手動操作式締付けツール(10)を有し、前記締付けツール(10)は、少なくとも1つの締付けシーケンスで前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)が動作可能な第1動作モードと、前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)が緩めシーケンスで動作可能な第2動作モードとの間で切換え可能に構成されており、前記締付けシーケンスおよび前記緩めシーケンスのそれぞれは、前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)についてのあらかじめ定めた動作パラメータを有し、締付けシーケンスの間にかつ/または終了後に前記ボルト接続の少なくとも1つのパラメータを特定するためのセンサユニットを有し、少なくとも1つの前記パラメータのそれぞれは、前記ボルト接続の品質尺度を表し、前記装置はさらに、
前記センサユニットから受け取った少なくとも1つの前記パラメータを処理するための処理ユニット(20)を有し、前記処理ユニット(20)は、少なくとも1つの前記パラメータに基づいて前記ボルト接続の状態を特定するように構成されており、前記状態は、適正なボルト接続を示す第1状態と、不良のボルト接続を示す第2状態とを有し、前記装置はさらに、
前記ボルト接続についての接続情報を出力するためのユーザインタフェース(30)を有し、
前記処理ユニット(20)は、次のステップ、すなわち、
a)前記第1動作モードにおける締付けシーケンスの間にかつ/または終了後に前記締付けツール(10)から前記ボルト接続の少なくとも1つの前記パラメータを受け取るステップと、
b)前記ボルト接続の終了と同時にかつ/または終了後に前記ボルト接続の前記状態を特定するステップと、
c)前記状態が前記第2状態に対応する場合に、前記第1動作モードから前記第2動作モードに前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)を切り換えるステップと、
d)前記ボルト(51,52,53)を締め付け直すために、前記第2動作モードから、前記第1動作モードの少なくとも1つの前記締付けシーケンスのまさに最初の締付けシーケンスに前記締付けツール(10)を切り換えるステップとを実行するように構成されている、装置。
【請求項12】
前記装置は、請求項2から10までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている、請求項11記載の装置。
【請求項13】
非一時的な機械可読担体に格納された、プログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコードがコンピュータ上で実行される場合に請求項1から10までのいずれか1項記載の方法が実施される、コンピュータプログラム製品。
【請求項14】
プログラムコードを備えたコンピュータプログラムであって、前記プログラムコードがコンピュータ上で実行される場合に、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法が実施される、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締付けシステムを使用してボルトの締付けプロセスをコンピュータ実装式に監視するための方法および装置に関する。
【0002】
風力タービンのような大型のプラント構造体における被加工物は、ボルトを使用して接合される。ボルトは、過酷な条件下で25年よりも長く持ちこたえなければならないため、品質の主な指標である。ボルト接続に障害が発生すると、構造体全体が崩壊してしまうことがある。したがって、ボルト接続の締付けプロセスの品質管理が極めて重要である。文書化上の理由で、ボルトの締付けにおけるすべてのプロセスステップをモニタリングし、モニタリングシステムに記憶しなければならない。
【0003】
現在、締付けステップについての情報は、作業員によって手動で確認されなければならない。技術的なパラメータについての情報は、異なるソフトウェアシステムにおいて確認されなければならず、これには長い時間がかかり、またこれによって提供されるのは、後の人手による品質管理だけである。
【0004】
自動車産業で使用されるボルト締付けプロセスをモニタリングするための既存のソフトウェアツールが存在する。これらのソフトウェアツールにより、締付けプロセスを通して作業員がガイドされる。このようなソフトウェアツールは、作業員が正しい場所でプロセスステップを行っているか否かをチェックするための位置決めシステムと組み合わせられることがある。組立てライン生産によって保証されるのは、作業場において製品が常に同じ箇所に来ることである。したがって、製品のボルトの位置をあらかじめ定めることは容易であり、これにより、品質管理のために位置決めシステムを組み込むことは容易である。
【0005】
このような既存のソフトウェアツールは、作業環境が異なるため、大型のプラント構造体では使用できない。大型のプラント構造体では、製品または被加工物は、1つの作業場から別の作業場へ移動またはクレーンで釣り上げられ、これにより、製品または被加工物は作業場の常に同じ位置にはない。製品が作業場に到達した後、長時間にわたって製品の周囲に全員で作業する多くの作業員がおり、これにより、自動車産業からの既存のソフトウェアツールを使用することは困難になる。
【0006】
本発明の課題は、締付けシステムを使用してボルトの締付けプロセスをモニタリングするための容易な方法を提供することである。
【0007】
この課題は、特許請求の範囲の独立請求項によって解決される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に定められている。
【0009】
本発明により、締付けシステムを使用してボルトの締付けプロセスをコンピュータ実装式に監視する方法が提供される。
【0010】
締付けシステムは、ボルトを回転させるためのアクチュエータを有する手動操作式締付けツールを有し、アクチュエータは、締付けツールのアクチュエータが少なくとも1つの締付けシーケンスで動作可能である第1動作モードと、締付けツールのアクチュエータが緩めシーケンスで動作可能である第2動作モードとの間で切換え可能に構成されている。締付けシーケンスおよび緩めシーケンスのそれぞれは、締付けツールのアクチュエータについてのあらかじめ定められた動作パラメータを有する。さらに、締付けツールは、締付けシーケンスの間にかつ/または終了後にボルト接続の少なくとも1つのパラメータを特定するためのセンサユニットを有する。少なくとも1つのパラメータのそれぞれは、ボルト接続の品質尺度を表す。
【0011】
さらに、締付けシステムは、センサユニットから受け取った少なくとも1つのパラメータを処理するための処理ユニットを有し、処理ユニットは、少なくとも1つのパラメータに基づいてボルト接続の状態を特定するように構成されており、この状態は、適正なボルト接続を示す第1状態と、不良のボルト接続を示す第2状態とを有する。
【0012】
さらに、締付けシステムは、ボルト接続についての接続情報を出力するためのユーザインタフェースを有する。出力された接続情報は、締付けプロセスを通して作業員をガイドするために、または作業員にフィードバックを提供するために使用可能である。
【0013】
本発明の方法によれば、締付けシステムの動作中に次のステップを実行する。
【0014】
ステップa)では、第1動作モードにおける締付けシーケンスの間にかつ/または終了後にインタフェースにより、締付けツールからボルト接続の少なくとも1つのパラメータを受け取る。
【0015】
ステップb)では、ボルト接続の終了と同時にかつ/または終了後にボルト接続の状態を特定する。
【0016】
ステップc)では、ボルト接続の状態が第2状態に対応する場合、すなわち、ボルト接続の不良が示される場合に、第1動作モードから第2動作モードへ締付けツールのアクチュエータを切り換える。
【0017】
ステップd)では、ボルトを締め付け直すために、第2動作モードから、第1動作モードの少なくとも1つの締付けシーケンスのまさに最初の締付けシーケンスに締付けツールを切り換える。
【0018】
本発明の方法により、締付けシステムを使用してボルトの締付けプロセスを自動化して監視する簡単かつ直接的な方法が提供される。特に、締付けツールを操作する作業員は、品質モニタリングのためのソフトウェアツールにいかなる情報も手動で入力する必要がない。さらに、ボルト接続が不良の場合、締付けツールの動作モードを手動で切り換える必要がない。ボルト接続が不良であることが処理ユニットによって特定される場合、手動で締付けツールを切り換えることなく、不良のボルト接続を自動的に緩めることができる。不良のボルト接続を緩め終えた後、手動で締付けツールを切り換えることなく、締付けツールの動作モードが再び切り換わり、ボルトを締め付け直すことができるようになる。別の利点として、ボルトを締め付けるために複数の締付けシーケンスが必要である場合、締付け直しが、まさに最初の締付けシーケンスでスタートされることが保証される。
【0019】
別の好ましい実施形態によると、本方法は、e)締付けシーケンスのあらかじめ定めた順序に従ってボルトを締め付け直すために、第1動作モードのまさに最初の締付けシーケンスから、少なくとも1つの後続締付けシーケンスに締付けツールのアクチュエータを制御する、別のステップを有する。この実施形態によると、複数の締付けシーケンスのどれにエラーが発生したかという事実に関係なく、締付けツールを操作する作業員により、完全な個数の締付けシーケンスが実行されることを保証することができる。
【0020】
好ましい別の実施形態によると、第1動作モードから第2動作モードに締付けツールを切り換える、かつ/または第2動作モードから第1動作モードのまさに最初の締付けシーケンスもしくは後続締付けシーケンスの1つに締付けツールを切り換えるステップを処理ユニットの自動制御下で実行する。したがって、作業員は、締付けツールを制御するためにいかなる手動ステップも行う必要がない。
【0021】
好ましい別の実施形態によると、ユーザインタフェースにより、ボルト接続の状態および/またはボルト接続の品質尺度を表す少なくとも1つのパラメータを接続情報としてディスプレイに出力する。接続情報をディスプレイに表示することにより、締付けデバイスを操作する作業員は、ボルト接続が適正(OK)か、または不良(NOK、すなわちOKではない)かを検証することができる。さらに好ましいのは、接続情報がリアルタイムに出力される場合である。
【0022】
好ましい別の実施形態によると、次のステップを実行した後、ステップd)を開始する。すなわち、ステップc1)において、第2動作モードにおける緩めシーケンスの間にかつ/または終了後に締付けツールからボルト接続の少なくとも1つのパラメータを受け取る。ステップc2)において、ボルト接続が完全に緩められたか否かを特定する。したがって、あらかじめ定めた個数の締付けシーケンスでボルトの締付け直しがスタートされる前に、ボルト接続が完全に緩められることを保証することができる。
【0023】
接続情報の状態は、作業員がボルトに作業を行った毎に更新される。したがって、好ましくは、ステップc2)が終了した直後に、ユーザインタフェースによってボルト接続の接続状態の表示を抑制する。
【0024】
好ましい別の実施形態によると、締付けシステムはさらに、ボルトの締付けプロセスまたは緩めプロセスを実行すると同時に、ボルト締め付される製品または被加工物の基準点に対して、締付けツールの位置を特定するように構成された位置決めユニットを有し、処理ユニットは、次のステップを実行するように構成されている。すなわち、ステップe1)では、ボルトの締付けプロセスを実行すると同時に締付けツールの位置を特定する。ステップe2)では、ボルト接続の状態が第2状態に対応する場合、締付けツールの位置を第1位置として格納する。ステップe3)では、締付けツールの現在位置が、第1位置に対応する場合のみ、第2状態に関連付けられたボルトを緩めるための締付けツールを解除する。したがって、不良とマークされたボルトの作業位置に第1位置が対応する、締付けツールの2つの位置の間で比較を行う。締付けツールの第2位置は、緩める必要があるボルトの作業位置に対応する。これらの2つの位置が一致した場合、締付けツールを解除し(すなわち、そのアクチュエータが回転をスタートするように制御することができ)、緩めのプロセスをスタートさせることができる。これらの位置が一致しない場合、締付けツールを解除しない。したがって、作業員がそのアクチュエータを回転させるように制御されることはない。結果として、作業員は、適正なボルトで作業しているか否かについて、直接的な触覚によるフィードバックを受け取る。結果として、誤りを最小限に抑えることが可能であり、または回避することさえも可能である。
【0025】
好ましい別の実施形態によると、ボルト接続の状態が第2状態に対応する場合にはそれぞれのボルト接続に関連付けられたカウンタを1だけ増加させ、このカウンタは、ボルト接続の状態が最初に第2状態に対応する場合にはあらかじめ定めた開始値からスタートし、またボルト接続の状態がそれぞれ後の時点に第2状態に対応する場合には最後に格納した値からスタートする。好ましくは、カウンタの実際値が、あらかじめ定めた閾値を超えた場合、新たなボルトを使用する指示をユーザインタフェースに出力する。この特別な実施形態は、作業員が実際に新しいボルトを取ったか否かを監視できるようにする「かんばん」ロジックによって構築される保管システムと組み合わせ可能である。
【0026】
上述した本方法の他に、本発明は、締付けシステムを使用してボルトの締付けプロセスをコンピュータ実装式に監視するための装置に関し、この装置は、本発明による方法、または本発明による方法の1つまたは複数の好ましい実施形態を実施するように構成されている。
【0027】
本発明はさらに、非一時的な機械可読担体に格納されている、プログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品であって、このプログラムコードがコンピュータ上で実行される場合に本発明による方法または1つもしくは複数の好ましいその実施形態が実施されるコンピュータプログラム製品に関する。
【0028】
さらに、本発明は、プログラムコードを備えたコンピュータプログラムであって、プログラムコードがコンピュータ上で実行される場合に本発明による方法または1つもしくは複数の好ましいその実施形態が実施されるコンピュータプログラムに関する。
【0029】
次に、添付の図面に関して本発明の1つの実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に従い、ボルトの締付けプロセスをコンピュータ実装式に監視するための締付けシステムを示す概略図である。
【
図2】基本的な実施形態に従い、本発明の方法による異なるステップを示す流れ図である。
【
図3】3つのボルトによってボルト締め付けされる被加工物と、本発明による締付けシステムの締付けツールを操作する作業員のためにボルト締付けの進行状況を示す、ユーザインタフェースに出力されるディスプレイ画面とを示す概略図である。
【
図4】3つのボルトによってボルト締め付けされる被加工物と、本発明による締付けシステムの締付けツールを操作する作業員のためにボルト締付けの進行状況を示す、ユーザインタフェースに出力されるディスプレイ画面とを示す別の概略図である。
【
図5】3つのボルトによってボルト締め付けされる被加工物と、本発明による締付けシステムの締付けツールを操作する作業員のためにボルト締付けの進行状況を示す、ユーザインタフェースに出力されるディスプレイ画面とを示すさらに別の概略図である。
【
図6】3つのボルトによってボルト締め付けされる被加工物と、本発明による締付けシステムの締付けツールを操作する作業員のためにボルト締付けの進行状況を示す、ユーザインタフェースに出力されるディスプレイ画面とを示すさらに別の概略図である。
【
図7】3つのボルトによってボルト締め付けされる被加工物と、本発明による締付けシステムの締付けツールを操作する作業員のためにボルト締付けの進行状況を示す、ユーザインタフェースに出力されるディスプレイ画面とを示すさらに別の概略図である。
【
図8】3つのボルトによってボルト締め付けされる被加工物と、本発明による締付けシステムの締付けツールを操作する作業員のためにボルト締付けの進行状況を示す、ユーザインタフェースに出力されるディスプレイ画面とを示すさらに別の概略図である。
【
図9】3つのボルトによってボルト締め付けされる被加工物と、本発明による締付けシステムの締付けツールを操作する作業員のためにボルト締付けの進行状況を示す、ユーザインタフェースに出力されるディスプレイ画面とを示すさらに別の概略図である。
【
図10】3つのボルトによってボルト締め付けされる被加工物と、本発明による締付けシステムの締付けツールを操作する作業員のためにボルト締付けの進行状況を示す、ユーザインタフェースに出力されるディスプレイ画面とを示すさらに別の概略図である。
【
図11】3つのボルトによってボルト締め付けされる被加工物と、本発明による締付けシステムの締付けツールを操作する作業員のためにボルト締付けの進行状況を示す、ユーザインタフェースに出力されるディスプレイ画面とを示すさらに別の概略図である。
【0031】
図1には、本発明によるボルトの締付けプロセスをコンピュータ実装式に監視するための締付けシステム100の概略図が示されている。締付けシステム100は、単なる例として、例えば風力タービン等の被加工物50の3つのボルト51,52,53を締め付けるために使用される。しかしながら、被加工物50は、別の製品に取り付けられる大型のプラント構造体の任意の製品であってよい。
【0032】
締付けシステム100は、手動操作式締付けツール10と、処理ユニット20と、ユーザインタフェース30とを有する。締付けシステム100は選択的に位置決めユニット40を有していてもよい。
【0033】
締付ツール10は、アクチュエータ11と、センサユニット12と、プロセッサ13とを有する。アクチュエータ11は、後にボルト51,52,53を回転させるためのツールホルダに接続されるモータであってよい。締付けツール10は、第1動作モードと第2動作モードとの間で切換可能に構成される。第1動作モードと第2動作モードとの切り換えは、プロセッサ13の制御下で行われる。第1動作モードでは、アクチュエータ11は第1回転方向(前進方向)に回転されてボルト51,52,53を締め付ける。第2動作モードでは、アクチュエータは第1回転方向とは逆方向である第2回転方向(後退方向)に回転されてボルト51,52,53を緩める。
【0034】
第1動作モードでは、締付けツール10のアクチュエータ11は、1つまたは複数の締付けシーケンスで動作可能である。それぞれの締付けシーケンスは、締付けプロセスの間および/また終了後のボルト接続の1つまたは複数のあらかじめ定めたパラメータ、例えばトルクおよび/または角度等に到達するために、締付けツール10のアクチュエータ11についてのあらかじめ定めた制御パラメータ、例えば回転速度および/またはトルク等を有する。これらのあらかじめ定めたパラメータP1,P2は、ボルト接続の品質尺度を表している(後で参照する
図3~
図11のディスプレイ画面を参照されたい)。
【0035】
ボルト51,52,53を複数の締付けシーケンスで締め付けなければならない場合、締付けプロセスは複数のステップで実行される。例えば、第1ステップでは、最終的なトルクの75%までボルト51,52,53を締め付ける。第1ステップを終了した後、ボルト51,52,53が落ち着くのを待つ必要がある。短い中断の後、最後のトルクに到達するために最後の25%を締め付けることによって締付けプロセスを終了する。
【0036】
第2動作モードでは、締付けツール10のアクチュエータ11は、緩めシーケンスで動作可能である。この緩めシーケンスでは、締付けツール10のアクチュエータ11は、ボルト51,52,53を完全に緩めるために第2回転方向に回転するように制御される。
【0037】
センサユニット12は、1つまたは複数のセンサ、例えば、トルクセンサおよび/または回転速度センサおよび/または力センサ等を有する。センサユニット12は、締付けシーケンスおよび緩めシーケンスの間にかつ/または終了後にボルト接続の1つまたは複数のパラメータP1,P2をそれぞれ特定するように適合されている。
【0038】
処理ユニット20は、第1インタフェース21と、第2インタフェース22と、選択的な第3インタフェース23と、プロセッサ24とを有する。
【0039】
処理ユニット20は、それぞれの制御データを供給して、第1動作モードと第2動作モードとの間で締付けツール10を切り換えるために、また第1動作モードにおいてそれぞれの締付けシーケンスに対して適正な制御データを適用するために、第1インタフェース21を介して締付けツール10に接続されている。
【0040】
さらに、処理ユニット20は、センサユニット12の1つまたは複数のパラメータに基づき、それぞれのボルト接続の状態STを特定するために、第1インタフェース21を介し、センサユニット12によって取得した1つまたは複数のパラメータP1,P2を受け取る(
図3~
図11のディスプレイ画面を参照されたい)。ボルト接続12の状態STは、適正なボルト接続を示す第1状態(「OK」)と、不良のボルト接続を示す第2状態(「NOK」)とを有する。
【0041】
ユーザインタフェース30は、ディスプレイ31および入力手段32を有する。ディスプレイ31および入力手段32は、1つのユーザインタフェース、例えばタッチスクリーン等に組み合わせ可能である。ディスプレイ31には、ボルト接続についての情報、例えば、ボルト接続の1つまたは複数のパラメータP1,P2、ボルト接続の成功または失敗(すなわち状態「OK」または状態「NOK」)等が表示される。ディスプレイ31を介して出力される情報により、複数のボルト51,52,53を締め付けるプロセスにおいて作業員をガイドすることができる。後で参照する
図3~
図11には、ディスプレイ画面のこのような例が示されている。
【0042】
ユーザインタフェース30は、第2インタフェース22を介して処理ユニット20に接続されている。ディスプレイ31に表示される情報は、締付けツール10から受け取ったセンサデータに基づき、処理ユニット20のプロセッサ24によって特定され、選択的には第2インタフェース22を介して出力される。
【0043】
位置決めユニット40は、センサユニット41およびプロセッサ42を有する。センサユニット41は、1つまたは複数のセンサ、例えば1つまたは複数のカメラ、1つまたは複数の近接センサ、1つまたは複数のレーダセンサ等から構成される。プロセッサ42は、それぞれのボルト51,52,53の締付けプロセスまたは緩めプロセスを実行すると同時に、センサユニット41から受け取ったセンサデータに基づき、ボルト締め付けされる製品52の図示しない基準点に対して、締付けツール10の位置を特定するように適合されている。
【0044】
図2には、基本的な実施形態に従い、本発明の方法による異なるステップを示す流れ図を示されている。本方法は、処理ユニット20によって締付けプロセスをモニタリングして締付けツール10を制御することにより、たとえ問題が生じても、適切なシーケンスが作業員によって行われることが保証されるという考察に基づいている。処理ユニット20によるモニタリングおよび監視により、締付けプロセス全体がより容易になる。問題が生じた場合、締付けツール10は、ユーザインタフェース30を介して付加的に出力される次の適正なステップについて制御される。
【0045】
第1ステップS1では、第1動作モードにおける締付けシーケンスの間にかつ/または終了後に締付けツール10からボルト接続のパラメータP1、P2を受け取る。次に、処理ユニット20により、ボルト接続の終了と同時にかつ/または終了後にボルト接続の状態(ST)を特定する(ステップS2)。状態STが、第2状態NOKに対応する場合(すなわちST=NOK)、第1動作モードから第2動作モードに締付けツール10を切り換える(ステップS3)。最後のステップS4では、第2状態NOKに関連付けられたボルト51,52,53を締め付け直すために、第2動作モードから、第1動作モードの少なくとも1つの締付けシーケンスのまさに最初の締付けシーケンスに締付けツール10を切り換える。
【0046】
図3~
図11にはそれぞれ、締付けツール10を使用して作業員によって3つのボルト51,52,53が締め付けられなければならない被加工物50の概略図が左側に示されている。右側には、ボルト締付けの進行状況を示す例示的なディスプレイ画面が示されている。ディスプレイ画面は、作業員への情報提供および作業員のガイダンスのためにディスプレイ31に出力される。
【0047】
単なる例として、ボルト51,52,53は、2つの締付けシーケンスで、例えば32Nmのトルクを必要とする第1締付けシーケンスと、例えば40Nmの最終トルクを必要とする第2締付けシーケンスとで締め付けられなければならない。ここで想定されているのは、2つの締付けシーケンスが、
図1に関連して説明したのと同じ締付けツール10によって実行されることである。必要なパラメータ(アクチュエータの回転速度、トルク等)に関する締付けツール10の制御は、上述したように、処理ユニット20によって行われて監視される。
【0048】
作業仕様によると、ボルト51,52,53は、第1締付けシーケンスで順次に締め付けられ、次に第2締付けシーケンスでの締付けプロセスが続く。締付けの進行状況は、
図3~
図11のそれぞれの右側のディスプレイ画面に表示される。
【0049】
図3~
図5には、第1締付けシーケンスを行った後のボルト51,52,53の締付けが示されている。第1締付けシーケンス後の成功したボルト接続は、ボルトの参照符号51,52,53のそれぞれについての添字「/1」と、左下から右上へのハッチングとで示されている。
【0050】
それぞれのボルト接続についての情報は、ディスプレイ画面に表示される。ディスプレイ画面には、現在のボルト締付けプロセスについてのプロセス番号PNが、ボルト締付けプロセスの結果の状態STと、締付けツール10のセンサユニット12によって取得したパラメータP1およびP2と、位置決めユニット40によって取得した位置情報POSと共に表示される。第1パラメータP1は、例えば締付けプロセスのトルクを表し、達成すべきこのトルクは、あらかじめ定めた範囲内になければならない。第2パラメータP2は、例えば角度を表し、達成すべき角度はあらかじめ定めた範囲内になければならない。位置POSの座標x/y/zは、被加工物50の与えられた基準点(図示せず)に対して相対的に示されている。任意の適切な座標系が使用可能である。
【0051】
図3には、第1(左)ボルト51が第1締付けシーケンスで締め付けられた状況が示されている。ディスプレイ画面におけるそのプロセス番号は、PN=1である。取得したパラメータP1,P2および位置POSは、P1=32,P2=10およびPOS=10/20/30と示されている。処理ユニット20により、取得したパラメータP1,P2から、ボルト接続51/1の状態STが適正である、すなわちST=OKであると特定される。
【0052】
図4には、第2(中央)ボルト52が第1締付けシーケンスで締め付けられた状況が示されている。ディスプレイ画面におけるそのプロセス番号は、PN=2である。取得したパラメータP1,P2および位置POSは、P1=32,P2=9およびPOS=10/20/32と示されている。処理ユニット20により、取得したパラメータP1,P2から、ボルト接続52/1の状態STが適正である、すなわちST=OKであると特定される。
【0053】
図5には、第3(右)ボルト53が第1締付けシーケンスで締め付けられた状況が示されている。ディスプレイ画面におけるそのプロセス番号は、PN=3である。取得したパラメータP1,P2および位置POSは、P1=32,P2=11およびPOS=10/20/34と示されている。処理ユニット20より、取得したパラメータP1,P2から、ボルト接続53/1の状態STが適正である、すなわちST=OKであると特定される。
【0054】
図6~
図8には、第2締付けシーケンスを行った後のボルト51,52,53の締付けが示されている。第2締付けシーケンス後の成功したボルト接続は、ボルトの参照符号51,52,53のそれぞれについての添字「/2」と、交差したハッチングとで示されている。
【0055】
図6には、第1(左)ボルト51が、第2締付けシーケンスで締め付けられた状況が示されている。ディスプレイ画面におけるそのプロセス番号は、PN=4である。択一的な表示の選択肢として、行PN=1が、上書きされていることがある。取得したパラメータP1,P2および位置POSは、P1=40,P2=15およびPOS=10/20/30と示されている。処理ユニット20より、取得したパラメータP1,P2から、ボルト接続51/2の状態STが適正である、すなわちST=OKであると特定される。
【0056】
図7には、第2(中央)ボルト52が第2締付けシーケンスで締め付けられた状況が示されている。ディスプレイ画面におけるそのプロセス番号は、PN=5である。択一的な表示の選択肢として、行PN=2が、上書きされていることがある。取得したパラメータP1,P2および位置POSは、P1=40,P2=16およびPOS=10/20/32と示されている。処理ユニット20より、取得したパラメータP1,P2から、ボルト接続52/2の状態STが適正である、すなわちST=OKであると特定される。
【0057】
図8には、第3(右)ボルト53が第2締付けシーケンスで締め付けられた状況が示されている。ディスプレイ画面におけるそのプロセス番号は、PN=6である。択一的な表示の選択肢として、行PN=3が、上書きされていることがある。取得したパラメータP1,P2および位置POSは、P1=40,P2=30およびPOS=10/20/34と示されている。処理ユニット20より、取得したパラメータP1,P2から、ボルト接続53/2の状態STが不良である、すなわちST=NOKであると特定される。これは、ディスプレイ画面において強調表示の行PN=6によって示されている。さらに、ボルト53のボルト接続は、53/Fと、異なるハッチングとによって示されている。
【0058】
不良のボルト接続の結果、ボルト53は、緩められなければならず、また両方、すなわち第1締付けシーケンスおよび第2締付けシーケンスを繰り返さなければならない。状態STがNOK(第2状態)に対応することが特定されることに従い、締付けツール10は自動的に(ボルトを締め付けるための)第1動作モードから、(ボルトを緩めるための)第2動作モードに切り換えられ、すなわち、回転方向が逆転される。第1動作モードから第2動作モードへの切り換えは、処理ユニット20の制御下で自動的に行われる。
【0059】
次のステップとして、作業員はボルト53を緩めなければならない。作業員が別の2つの適正に締め付けられたボルト51,52の1つを緩めてしまうことを回避するために、位置決めユニット40は、締付けツール10が適正な位置にある場合にのみ、ボルト53を緩めるための締付けツールを解除するように構成されている。このようにするために、位置決めユニット40は、ボルト51,52,53の締付けプロセスが実行されると同時に締付けツール10の位置を特定するように構成されている。ボルト接続の状態ST(ここでは53/F)がNOKに対応する場合、図示していないメモリに(この例では座標10/20/34を有する)締付けツールの位置を第1位置として格納する。作業員がボルト53(またはいずれかのボルト)を緩めようとする場合、締付ツールの位置を再度特定する。締付けツール10の(座標10/20/34を有する)現在位置が、格納された第1位置に対応する場合、ボルト53を緩めることができるように締付けツール10が解除される。
【0060】
図9~
図11には、ボルト53の緩めおよび締付け直しが示されている。第1締付けシーケンス後の成功したボルト接続はここでも、ボルトの参照番号53についての添字「/1」と、左下から右上へのハッチングとで示されている。第2締付けシーケンス後の成功したボルト接続は、ボルト53の参照符号53についての添字「/2」と、交差したハッチングとで示されている。
【0061】
図9には、第3(右)ボルト53が緩められた状況が示されている。このディスプレイ画面では、緩めに成功したことは、行PN=3およびPN=6の表示を抑制することによって視覚化されている。ディスプレイ画面の別の行は変更されないままである。
【0062】
図10には、第3(右)ボルト53が第1締付けシーケンスで締め付けられた状況が示されている。ディスプレイ画面におけるそのプロセス番号はここではPN=3.1である。取得したパラメータP1,P2および位置POSは、P1=32,P2=11およびPOS=10/20/34と示されている。処理ユニット20より、取得したパラメータP1,P2から、ボルト接続53/1の状態STが適正である、すなわちST=OKであると特定される。
【0063】
図11には、第3(右)ボルト53が第2締付けシーケンスで締め付けられた状況が示されている。ディスプレイ画面におけるそのプロセス番号は、PN=6.1である。取得したパラメータP1,P2および位置POSは、P1=40,P2=14およびPOS=10/20/34と示されている。処理ユニット20より、取得したパラメータP1,P2から、ボルト接続53/2の状態STが適正である、すなわちST=OKであると特定される。
【0064】
図示しない実施形態では、ボルト接続の状態STがNOKに対応する場合にはそれぞれのボルト接続に関連付けられたカウンタを1つだけ増加させることができ、このカウンタは、ボルト接続の状態STが最初にNOKに対応する場合にはあらかじめ定めた開始値(例えば0)からスタートし、またボルト接続の状態STがそれぞれ後の時点にNOKに対応する場合には最後に格納した値からスタートする。好ましくは、カウンタの実際値が、あらかじめ定めた閾値を超えた場合、新たなボルトを使用する指示をユーザインタフェースに出力する。この特別な実施形態は、作業員が実際に保管庫から新しいボルトを取ったか否かを監視できるようにする「かんばん」ロジックによって構築される保管システムと組み合わせ可能である。
【0065】
要約すると、提案した本方法は、複数の利点を有する。すなわち、
問題がある場合であっても適切な締付けシーケンスが行われることを保証することができる。さらに、これにより、締付けシステムによる作業全体が容易になる。問題があれば、作業員は作業プロセスを通して導かれ、これによって人手による失敗が回避される。
【0066】
締付けツールと処理ユニットとの間にはデータ接続が存在するため、作業員によって発生し得る失敗または不正行為は存在しない。不良の接続の結果は、処理ユニットによって自動的に削除される。その結果、作業員が接続不良を見逃す恐れはない。さらに、品質上の理由から文書はクリーンである。
【0067】
位置決めユニットの機能により、大型のプラント構造体は、これを利用して製造をフェイルセーフにすることができる。
【0068】
結果的に、大型のプラント構造体用の不良ゼロの製造を保証することができる新たな作業員ガイダンスシステムが提供される。本システムは、大型のプラント構造体におけるデジタル品質管理用のメインシステムとして使用可能である。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締付けシステム(100)を使用してボルトの締付けプロセスをコンピュータ実装式に監視する方法であって、前記締付けシステム(100)は、
前記ボルトを回転させるためのアクチュエータ(11)を有する手動操作式締付けツール(10)を有し、前記締付けツール(10)は、
前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)が、少なくとも1つの締付けシーケンスで動作可能である第1動作モードと、
前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)が、緩めシーケンスで動作可能である第2動作モードと
の間で切換え可能に構成されており、
前記締付けシーケンスおよび前記緩めシーケンスのそれぞれは、前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)についてのあらかじめ定めた動作パラメータを有し、
前記締付けツール(10)はさらに、締付けシーケンスの間にかつ/または終了後に前記ボルト接続の少なくとも1つのパラメータ(P1,P2)を特定するためのセンサユニット(12)を有し、
少なくとも1つの前記パラメータ(P1,P2)のそれぞれは、前記ボルト接続の品質尺度を表し、
前記締付けシステム(100)はさらに、前記センサユニット(12)から受け取った少なくとも1つの前記パラメータ(P1,P2)を処理するための処理ユニット(20)を有し、前記処理ユニット(20)は、少なくとも1つの前記パラメータ(P1,P2)に基づいて前記ボルト接続の状態(ST)を特定するように構成されており、
前記状態(ST)は、適正なボルト接続を示す第1状態と、不良のボルト接続を示す第2状態とを有し、前記締付けシステム(100)はさらに、
前記ボルト接続についての接続情報を出力するためのユーザインタフェース(30)を有し、
前記方法は、次のステップ、すなわち、
a)前記第1動作モードにおける締付けシーケンスの間にかつ/または終了後にインタフェース(21)により、前記締付けツール(10)から前記ボルト接続の少なくとも1つの前記パラメータ(P1,P2)を受け取るステップと、
b)前記ボルト接続の終了と同時にかつ/または終了後に前記ボルト接続の前記状態(ST)を特定するステップと、
c)前記状態(ST)が前記第2状態に対応する場合に、前記第1動作モードから前記第2動作モードに前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)を切り換えるステップと、
d)前記ボルト(51,52,53)を締め付け直すために、前記第2動作モードから、前記第1動作モードの少なくとも1つの前記締付けシーケンスのまさに最初の締付けシーケンスに前記締付けツール(10)を切り換えるステップとを有する、方法。
【請求項2】
前記方法はさらに、次のステップ、すなわち、
e)締付けシーケンスのあらかじめ定めた順序に従って前記ボルト(51,52,53)を締め付け直すために、前記第1動作モードのまさに最初の前記締付けシーケンスから、少なくとも1つの後続締付けシーケンスに締付けツール(10)のアクチュエータ(11)を制御するステップを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1動作モードから前記第2動作モードに前記締付けツール(10)を切り換える、かつ/または前記第2動作モードから前記第1動作モードのまさに最初の前記締付けシーケンスもしくは後続締付けシーケンスの1つに前記締付けツール(10)を切り換える前記ステップを前記処理ユニット(20)の自動制御下で実行する、請求項
1記載の方法。
【請求項4】
前記ユーザインタフェース(30)により、前記ボルト接続の前記状態(ST)および/また前記ボルト接続の品質尺度を表す少なくとも1つの前記パラメータ(P1,P2)を接続情報としてディスプレイ(31)に出力する、請求項
1記載の方法。
【請求項5】
前記接続情報をリアルタイムに出力する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
次のステップ、すなわち、
c1)前記第2動作モードにおける前記緩めシーケンスの間にかつ/または終了後に前記締付けツール(10)から前記ボルト接続の少なくとも1つの前記パラメータを受け取るステップと、
c2)前記ボルト接続が完全に緩められた否かを特定するステップとを実行した後、ステップd)を開始する、請求項
1記載の方法。
【請求項7】
ステップc2)が終了した直後に前記ユーザインタフェース(30)により、前記ボルト接続の前記接続の表示を抑止する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記締付けシステムはさらに、前記ボルト(51,52,53)の締付けプロセスまたは緩めプロセスを実行すると同時に、ボルト締め付けされる製品の基準点に対して、前記締付けツール(10)の位置を特定するように構成された位置決めユニットを有し、前記処理ユニット(20)は、次のステップ、すなわち、
e1)前記ボルト(51,52,53)の締付プロセスを実行すると同時に前記締付けツール(10)の位置を特定するステップと、
e2)前記ボルト接続の前記状態が第2状態に対応する場合、前記締付けツール(10)の位置を第1位置として格納するステップと、
e3)前記締付けツール(10)の現在位置が、前記第1位置に対応する場合のみ、前記第2状態に関連付けられた前記ボルト(51,52,53)を緩めるための前記締付けツール(10)を解除するステップとを実行するように構成されている、請求項
1記載の方法。
【請求項9】
ボルト接続の前記状態が前記第2状態に対応する場合にはそれぞれのボルト接続に関連付けられたカウンタを1だけ増加させ、ここで、前記カウンタは、ボルト接続の状態が最初に第2状態に対応する場合にはあらかじめ定めた開始値からスタートし、またボルト接続の状態がそれぞれ後の時点に第2状態に対応する場合には最後に格納した値からスタートする、請求項
1記載の方法。
【請求項10】
前記カウンタの実際値が、あらかじめ定めた閾値を超えた場合、新たなボルト(51,52,53)を使用する指示を前記ユーザインタフェース(30)に出力する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
締付けシステムを使用してボルト(51,52,53)の締付けプロセスをコンピュータ実装式に監視するための装置であって、前記装置は、
前記ボルトを回転させるためのアクチュエータ(11)を有する手動操作式締付けツール(10)を有し、前記締付けツール(10)は、少なくとも1つの締付けシーケンスで前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)が動作可能な第1動作モードと、前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)が緩めシーケンスで動作可能な第2動作モードとの間で切換え可能に構成されており、前記締付けシーケンスおよび前記緩めシーケンスのそれぞれは、前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)についてのあらかじめ定めた動作パラメータを有し、締付けシーケンスの間にかつ/または終了後に前記ボルト接続の少なくとも1つのパラメータを特定するためのセンサユニットを有し、少なくとも1つの前記パラメータのそれぞれは、前記ボルト接続の品質尺度を表し、前記装置はさらに、
前記センサユニットから受け取った少なくとも1つの前記パラメータを処理するための処理ユニット(20)を有し、前記処理ユニット(20)は、少なくとも1つの前記パラメータに基づいて前記ボルト接続の状態を特定するように構成されており、前記状態は、適正なボルト接続を示す第1状態と、不良のボルト接続を示す第2状態とを有し、前記装置はさらに、
前記ボルト接続についての接続情報を出力するためのユーザインタフェース(30)を有し、
前記処理ユニット(20)は、次のステップ、すなわち、
a)前記第1動作モードにおける締付けシーケンスの間にかつ/または終了後に前記締付けツール(10)から前記ボルト接続の少なくとも1つの前記パラメータを受け取るステップと、
b)前記ボルト接続の終了と同時にかつ/または終了後に前記ボルト接続の前記状態を特定するステップと、
c)前記状態が前記第2状態に対応する場合に、前記第1動作モードから前記第2動作モードに前記締付けツール(10)の前記アクチュエータ(11)を切り換えるステップと、
d)前記ボルト(51,52,53)を締め付け直すために、前記第2動作モードから、前記第1動作モードの少なくとも1つの前記締付けシーケンスのまさに最初の締付けシーケンスに前記締付けツール(10)を切り換えるステップとを実行するように構成されている、装置。
【請求項12】
前記装置は、請求項2から10までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている、請求項11記載の装置。
【請求項13】
非一時的な機械可読担体に格納された、プログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコードがコンピュータ上で実行される場合に請求項1から10までのいずれか1項記載の方法が実施される、コンピュータプログラム製品。
【請求項14】
プログラムコードを備えたコンピュータプログラムであって、前記プログラムコードがコンピュータ上で実行される場合に、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法が実施される、コンピュータプログラム。
【請求項15】
少なくとも3つのボルト(51,52,53)と、請求項11記載の装置とを有するボルト接続、または少なくとも3つのボルト(51,52,53)を有するボルト接続を有する風力タービンであって、前記ボルト(51,52,53)は、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法を実施することによって締め付けられる、風力タービン。
【国際調査報告】