(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/14 20060101AFI20240717BHJP
B23K 35/30 20060101ALI20240717BHJP
C22C 5/08 20060101ALI20240717BHJP
C22C 9/00 20060101ALI20240717BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240717BHJP
C22C 38/52 20060101ALI20240717BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20240717BHJP
C21D 6/00 20060101ALI20240717BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20240717BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20240717BHJP
B23K 1/008 20060101ALI20240717BHJP
B23K 31/02 20060101ALI20240717BHJP
B23P 15/28 20060101ALI20240717BHJP
B23B 27/20 20060101ALI20240717BHJP
B23B 27/18 20060101ALI20240717BHJP
B23K 101/20 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
B23B27/14 B
B23K35/30 310B
B23K35/30 310C
C22C5/08
C22C9/00
C22C38/00 302N
C22C38/52
C22C38/60
C21D6/00 M
B23K1/00 330B
B23K1/19 J
B23K1/008 B
B23K31/02 310C
B23K31/02 310F
B23P15/28 Z
B23B27/20
B23B27/18
B23K101:20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579043
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2022066581
(87)【国際公開番号】W WO2022268660
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダール, レイフ
(72)【発明者】
【氏名】ウリツカ, ティモ
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046FF35
3C046FF41
3C046FF46
3C046HH04
(57)【要約】
本発明は、超硬合金基材に結合された多結晶ダイヤモンド(PCD)または立方晶窒化ホウ素(cBN)の焼結体を含む超硬質部位、およびマルエージング鋼部位を含み、超硬合金基材およびマルエージング鋼部位はろう付けによって接合されている、工具に関する。本発明は、こうした工具の製造にも関する。工具は、強いろう付け接合部、および均一な硬度を有する鋼部位を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超硬合金基材に結合した多結晶ダイヤモンド(PCD)または立方晶窒化ホウ素(cBN)の焼結体を含む超硬質部位と;
0~20HV1の標準偏差で350~580HV1の硬度を有するマルエージング鋼部位と;
前記超硬合金基材と前記マルエージング鋼部位を接合するろう付け接合部と
を含む切削工具であって、
前記ろう付け接合部がTiを含み、前記ろう付け接合部が、超硬合金基材に隣接して0.03~5μmの厚さのTiC層を含む、
切削工具。
【請求項2】
マルエージング鋼部位が、0~14HV1の標準偏差で400~580のHV1の硬度を有する、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
ろう付け接合部が5~200μmの厚さを有する、請求項1または2に記載の切削工具。
【請求項4】
ろう付け接合部の剪断強度が少なくとも130MPaである、請求項1から3のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項5】
ろう付け接合部が、Cu、AgおよびInを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項6】
ろう付け接合部が、30~80wt%の量のAg、15~65wt%の量のCu、0.3~15wt%の量のTiおよび10~25wt%の量のInおよび不可避の不純物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項7】
マルエージング鋼が、13~25wt%のNi、ならびに10~27wt%の量のCo、Mo、Ti、AlおよびCrから選択される1つまたは複数の合金元素、0.3wt%未満のCならびに残余Feを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項8】
マルエージング鋼が、17~19wt%のNi、8.5~12.5wt%のCo、4~6wt%のMo、0.5~1.2wt%のTi、0~0.15wt%のCr、0~0.2wt%のAl、0.1wt%未満のMn、PおよびSのいずれか、ならびに0.03wt%未満のC、ならびに残余Feを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の切削工具。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の切削工具を製造する方法であって、以下の工程
- 超硬合金基材に結合された多結晶ダイヤモンド(PCD)または立方晶窒化ホウ素(cBN)の焼結体を含む超硬質部位を提供する工程;
- マルエージング鋼部位を提供する工程;
- ろう付け材料の0.3~15wt%の量でTiを含むろう付け材料を、超硬合金基材とマルエージング鋼部位の間でそれぞれに接して配置する工程;
- ろう付け材料を間に有する超硬質部位およびマルエージング鋼部位を、600~780℃の温度の炉中のろう付け工程に1~60分の期間供する工程であり、ろう付けが真空中で行われる工程;
- 少なくともマルエージング鋼部位を、300~600℃の温度で5分~12時間エージング工程に供する工程
を含む、方法。
【請求項10】
ろう付け工程が600~780℃の温度で5~15分の期間行われる、請求項9に記載の切削工具を製造する方法。
【請求項11】
エージング工程が、300~600℃の温度で5分~12時間行われる、請求項9または10に記載の切削工具を製造する方法。
【請求項12】
ろう付け材料が488~1123℃の固相線温度および612~1180℃の液相線温度を有し、ろう付け材料が、Tiに加えて、Ag、Cu、Sn、In、Zr、HfおよびCrから選択される1つまたは複数の元素をさらに含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の切削工具を製造する方法。
【請求項13】
ろう付け工程中に0.5~10MPaの締付力が加えられる、請求項9から13のいずれか一項に記載の切削工具を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超硬合金基材に結合した多結晶ダイヤモンド(PCD)または立方晶窒化ホウ素(cBN)の焼結体を含む超硬質部位およびマルエージング鋼部位を含む切削工具であって、部位がろう付けによって接合されている、切削工具に関する。本発明は、こうした切削工具の製造にも関する。
【背景技術】
【0002】
切削工具に多結晶ダイヤモンド(PCD)または立方晶窒化ホウ素(cBN)を使用することは、当該技術分野で公知である。多くの事例では、PCDまたはcBN材料は超硬合金基材に結合される。これにはいくつかの理由があり、例えば、製造を単純化するため、また超硬合金中のCoが製造中にPCDまたはcBN材料に浸透し、従ってPCDまたはcBN材料の触媒またはバインダーとして機能するためでもある。
【0003】
ろう付けまたは溶接によって鋼を超硬合金に接合することは、工具製造の分野では長い間知られてきた。鋼を超硬合金と接合する場合、例えば、CTE(熱膨張係数)の違い、ろう付け接合部の強度、鋼の望ましくない硬度プロファイルなど、いくつかの課題がある。
【0004】
これらの問題のそれぞれを個別に改善できるいくつかの解決策があるが、これらの解決策はしばしば他の領域で問題をもたらし、全ての問題が解決できるわけではない。
【0005】
ろう付けの原理は、加熱時に2つの部品を接合するろう付け材料を使用することである。ろう付け接合部を加熱するいくつかの方法があり、最も一般的な方法の1つは誘導コイルを使用する誘導加熱である。コイルを使用する利点の1つは、ろう付け接合部のまわりの局所的領域だけが加熱され、工具の残りを影響されずに残すことである。しかし、この局所加熱は鋼部位に望まない硬度プロファイルをもたらす可能性があり、回転バイトおよび他の切削工具などを固定するためのねじ切りなどが鋼部位に提供される場合に、問題を引き起こす恐れがある。制御されない冷却、不均一な熱分布(表皮効果)および望まない格子変換によって引き起こされる残留応力をもたらす可能性もある。
【0006】
加熱にコイルを使用する別の不利点は、各工具を個別に扱う必要があり、より自動的な工業プロセスが好ましいことである。
【0007】
鋼および超硬合金部位全体を加熱すると、硬度プロファイルをより均一にするが、次いで、上昇した温度は鋼部位全体に影響し、従って全体の硬度を低下させる。
【0008】
切削工具を固定するために鋼部位にねじ切りが提供される場合に起こり得る別の問題は、磨耗である。同じ工具、例えばシャンクは長期間使用されることが好ましいので、切削工具の交換が頻繁に行われ、ねじ切りの磨耗が切削工具の固定にマイナスの影響を与える恐れがあり、例えば、工具が固着して取り外すことができなくなる可能性がある。
【0009】
別の問題は、高いろう付け温度がPCDまたはcBN材料にマイナスの影響を与える恐れがあることである。高温は、亀裂をもたらし得る応力を引き起こす恐れがある。PCDについては、高温でダイヤモンド粒子の黒鉛化も起こり得る。
【0010】
本発明の1つの目的は、強固なろう付け接合部、ならびに均一な硬度プロファイルおよび高硬度を備え、結果的に耐摩耗性が改善された鋼部位の両方を有する切削工具を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、鋼と超硬合金を接合する使いやすい方法を提供し、高強度である予測可能な接合部および予測可能な硬度を有する鋼部位をもたらすことである。
【0012】
本発明の別の目的は、鋼部位と、超硬合金基材に結合された多結晶ダイヤモンド(PCD)または立方晶窒化ホウ素(cBN)の焼結体を含む超硬質部位とを接合する方法であって、PCDまたはcBN材料にマイナスの影響を有さない方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】工具の模式図を示す図である。Aは鋼部位であり、Bはろう付け接合部であり、Cは超硬合金支持体であり、Dは超硬質成形体(superhard compact)である。
【
図2】例1における発明1の超硬合金部位とろう付け材料の間の接触面の、倍率10000でのSEM画像を示す図である。
【
図3】例1における発明1の超硬合金部位とろう付け材料の間の接触面の、倍率40000でのSEM画像を示す図である。
【
図4】例1における発明1の超硬合金部位とろう付け材料の間の接触面における、倍率10000での元素TiのEDSマッピングを示す図である。
【
図5】誘導加熱を使用した、工具の硬度プロファイルを示す図である。Aは鋼部位であり、Bはろう付け接合部であり。Cは超硬合金である。
【
図6】剪断試験装置の略図を示す図である。1は鋼部位であり2は超硬合金部位である。
【
図7】発明1のろう付け接合部の異なる部位を示す図である。Aは超硬合金部位であり、Bはマルエージング鋼部位である。
【
図8】発明1のろう付け接合部の異なる部位を示す図である。Aは超硬合金部位であり、Bはマルエージング鋼部位である。
【
図9】発明1のろう付け接合部の異なる部位を示す図である。Aは超硬合金部位であり、Bはマルエージング鋼部位である。
【
図10】特許請求される方法の工程を示す図である。Aは超硬合金部位を提供する工程であり、Bはマルエージング鋼部位を提供する工程であり、Cは超硬合金部位とマルエージング鋼部位の間にろう付け材料を配置する工程であり、Dはろう付けする工程であり、Eはエージングする工程である。
【
図11】ろう付けされた工具の例を示す図である。Aは超硬合金に支持されたPCD部位であり、Bはマルエージング鋼部位である。
【
図12】例1における発明2の鋼部位の断面における、硬度測定のパターンを示す図である。
【
図13】例1における発明2で行われた硬度測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、
- 超硬合金基材に結合した多結晶ダイヤモンド(PCD)または立方晶窒化ホウ素(cBN)の焼結体を含む超硬質部位;
- 0~20HV1の標準偏差で350~580HV1の硬度を有するマルエージング鋼部位
を含む切削工具に関する。切削工具は、前記超硬合金基材と前記マルエージング鋼部位を接合しているろう付け接合部をさらに含み、前記ろう付け接合部はTiを含み、前記ろう付け接合部は超硬合金に隣接して0.03~5μmの厚さのTiC層を含む。
【0015】
本明細書でPCD(多結晶ダイヤモンド)焼結体とは、一緒に焼結されたダイヤモンド結晶を含み、ダイヤモンド結晶の量が50~100vol%である材料を意味する。ダイヤモンド結晶は、典型的には0.5~30μmの粒径を有する。PCD焼結体は、Al、Cr、Co、Ni、V、FeおよびSiから選択される1つまたは複数の成分も含むことができる。
【0016】
本明細書でcBN焼結体とは、金属および/またはセラミックバインダーに埋め込まれたcBN粒を含み、cBN粒の量が30~99vol%である材料を意味する。セラミックバインダーは、Co、Niおよび元素周期表の第4~6族から選択される元素の炭化物、窒化物、炭窒化物、ホウ化物または酸化物である1つまたは複数の成分を含有することができる。
【0017】
多結晶ダイヤモンド(PCD)および立方晶窒化ホウ素(cBN)の焼結体は、通常、好適な粉末混合物を提供し、これを高温高圧(HPHT)焼結工程に供して焼結体を形成することによって製造される。成形体を超硬合金基材に結合する場合、これを行う1つの方法は、底部に超硬合金ディスクを備えたカップを使用することである。次いでカップに選択したPCDまたはcBNの粉末混合物を満たし、次いでカップを密封する。次いで密封したカップを高温高圧(HPHT)焼結工程に供する。PCDまたはcBN材料は、焼結工程中に超硬合金に結合される。次いで、例えばレーザーまたはWEDM(ワイヤー放電加工)を使用して、ディスクを好適な片に切断することができる。
【0018】
PCDまたはcBNの焼結体用の基材として使用される超硬合金は、当該技術分野で一般的な任意の超硬合金から製造することができる。超硬合金は、結合金属相(metallic binder phase)マトリックスに埋め込まれた硬質相を含む。
【0019】
本明細書で超硬合金とは、硬質相の少なくとも50wt%がWCであることを意味する。
【0020】
好適には、結合金属相の量は、超硬合金の3~20wt%、好ましくは4~15wt%である。好ましくは、結合金属相の主成分は、Co、NiおよびFeの1つまたは複数から選択され、より好ましくは、結合金属相の主成分はCoである。
【0021】
本明細書で主成分とは、バインダー相を形成するために他の元素が添加されないことを意味するが、例えばCrのような他の成分が添加される場合、それは焼結中にバインダー中に必然的に溶解される。
【0022】
本発明の一実施形態では、超硬合金は、元素としてまたは炭化物、窒化物もしくは炭窒化物として存在するCr、Ta、Ti、NbおよびVから選択される、超硬合金元素において一般的な他の成分も含むことができる。
【0023】
マルエージング鋼は、金属間化合物の沈澱によって硬化された(hardened)鋼の一種である。マルエージング鋼は、好適には13~25wt%のNi、ならびにCo、Mo、Ti、AlおよびCrから選択される1つまたは複数の合金元素を、合金元素の10~27wt%、好ましくは11~23wt%の全量で含有する。マルエージング鋼は、典型的には従来の鋼より少ない、好適には0.03wt%以下の炭素を含有する。残余はFeである。
【0024】
本発明によるマルエージング鋼は、好ましくは11~25wt%のNi、好ましくは17~25wt%のNiを含有する。合金元素は、好適には7~15wt%の量のCo、好ましくは8.5~12.5wt%のCo、3~10wt%の量のMo、好ましくは3~6wt%のMo、0.1~1.6wt%の量のTi、好ましくは0.5~1.2wt%のTi、0~0.15wt%のCr、0~0.2wt%の量のAl、0.1wt%未満のMn、PおよびSのうちのいずれか、ならびに0.03wt%未満のCである。残余はFeである。
【0025】
本発明の一実施形態では、マルエージング鋼は、17~19wt%のNi、8.5~12.5wt%のCo、4~6wt%のMo、0.5~1.2wt%のTi、0~0.15wt%のCr、0~0.2wt%のAl、0.1wt%未満のMn、PおよびSのうちのいずれか、ならびに0.03wt%未満のCの組成を有する。残余はFeである。
【0026】
マルエージング鋼部位の平均硬度は、好適には350~580HV1、好ましくは400~580HV1、より好ましくは410~580HV1である。
【0027】
硬度はビッカース硬さ試験機により、1kgf(キログラム重)の荷重および15秒の負荷時間を加えることにより測定する。マルエージング鋼部位の(表面ではなく)断面にわたって均一に分布した、少なくとも15のくぼみのパターンを施す必要がある。本明細書で断面全体にわたって均一に分布したとは、くぼみ間の距離がわずかに変化しても、くぼみが断面全体を覆うように配置されるべきであることを意味する。
【0028】
平均値は、これらの測定箇所の平均である。硬度値の標準偏差は、好適には0~20HV1、好ましくは0~14HV1である。
【0029】
ろう付け技術は、いわゆるアクティブなろう付けである。それは、接合部が、ろう付け材料を溶融させて金属結合を形成することによって形成されるだけでなく、接合する材料の一方または両方との化学反応も伴うことを意味する。ろう付け材料における反応性元素は、通常Tiであるが、Hf、V、ZrおよびCrなどの元素もアクティブな元素であると考えられる。本発明によれば、Tiはアクティブな元素である。
【0030】
本明細書でろう付け接合部とは、ろう付け材料によって埋められ、ろう付けプロセス中に形成される超硬合金とマルエージング鋼部位の間の領域または塊を意味し、以下を参照されたい。
【0031】
ろう付け接合部の厚さは、好適には5~200μm、好ましくは15~100μmである。
【0032】
ろう付け接合部は、均一な相ではない。むしろ、ろう付けの後、ろう付け材料中の元素は異なる相を形成する。
【0033】
ろう付け接合部は、Tiを含有する。ろう付け中に、Tiは、超硬合金部位の炭化タングステン中の炭素と反応し、ろう付け接合部と超硬合金部位の間の接触面にTiC層を形成する。
【0034】
TiC層の存在を検出するには、使用する機器のタイプに応じていくつかの方法がある。
【0035】
十分高い分解能を有する走査電子顕微鏡(SEM)を使用する場合、TiC層は、超硬合金部位に隣接して明瞭に目視可能である。例えば
図2および3を参照されたい。層の組成を確認するために、SEM-EDS(エネルギー分散型分光法)および/またはWDS(波長分散型分光法)を備えたSEM-EPMA(電子プローブ顕微鏡分析)を使用して、TiC層の個々の元素を確認することができる。
【0036】
使用するSEMがTiC層を示すのに十分な分解能を有さない場合、ろう付け材料と超硬合金基材の間の接触面におけるTiおよび/またはCの蓄積は、例えばSEM-EDSまたはWDSを備えたSEM-EPMAを使用して見ることができる。本明細書でTiの蓄積は以下Ti蓄積層(例えば
図4を参照されたい)と呼び、SEM画像で視覚的に検出されなくとも、TiC層が形成されている1つの指標である。Ti蓄積層は実際のTiC層より相当に厚く、これは全てのTiがTiCを形成するわけではないことを意味し得る。Ti蓄積層の厚さは、分析方法によっても部分的には影響を受ける。
【0037】
本発明の一実施形態では、TiC層の厚さは、0.03~5μm、より好ましくは0.05~0.5μm、最も好ましくは0.05~0.25μmである。
【0038】
好ましくは、ろう付け接合部は、Ag、Cu、Sn、In、Zr、Hf、Crから選択される1つまたは複数の元素をさらに含む。より好ましくは、Ag、Cu、およびInから。
【0039】
ろう付け後のろう付け接合部の組成は、元素が均一に分布していないので決定することが困難である。可能であれば、ペーストまたは箔は均一なブレンドであるので、最も容易な方法は使用したろう付け材料を調べることである。さらに、ろう付け接合部は、接合する材料からの少量の元素、例えば、超硬合金からのCo、Wなど、およびマルエージング鋼からのFe、Niなどを含み得る。
【0040】
ろう付け接合部におけるTiおよび他の元素の量は、エネルギー分散型X線分光法分析(EDS)を使用して測定することもできる。しかし、ろう付け接合部における元素の不均一な分布のために、多くの測定点を使用する必要があり、標準偏差は大きい。好ましくはろう付け接合部は、平均で、30~80wt%、好ましくは40~75wt%の量のAg、15~65wt%、好ましくは20~40wt%の量のCu、0.3~15wt%、好ましくは0.5~5wt%の量のTi、0~10wt%、好ましくは0~2wt%の量のSnおよび0~30wt%、好ましくは10~25wt%の量のInを含み、残余は不可避不純物である。
【0041】
本明細書で不可避不純物とは、ろう付け工程の前にろう付け材料に存在する可能性のある、上に挙げたもの以外の少量の元素、および接合される材料からの元素、例えば超硬合金からのCo、Wなど、およびマルエージング鋼からのFe、Niなどを意味する。ろう付け工程中に高温に供されて、ろう付け材料が溶融し、接合部位からの拡散が可能になると、接合される部位から少量の元素がろう付け材料中に不可避的に溶解される。温度および時間などのろう付けプロセスのパラメータが、本発明による範囲内にある限り、不可避不純物の全量は少なく、ろう付け接合部の性能に影響を与えることはない。
【0042】
ろう付け接合部は、好適には少なくとも130MPa、好ましくは少なくとも140MPaより好ましくは140~300MPaの剪断強度を有する。剪断強度は、剪断試験によって測定される。
【0043】
ろう付け接合部とマルエージング鋼部位の間の接触面において、Tiはろう付け接合部にも蓄積され、Tiは鋼中の鉄と金属結合を形成する。マルエージング鋼表面におけるTiの蓄積層の厚さは、好ましくは1~10μm、好ましくは2~5μmであり、例えばEDSによって測定することができる。
【0044】
本発明の一実施形態では、マルエージング鋼は1.2709であり、超硬合金は、4~15wt%のCo、0.1~1wt%のCrおよび残りのWCの組成を有する。ろう付け接合部は、58~62wt%のAg、22~26wt%のCu、13~15wt%のInおよび1.5~2.5wt%のTiの平均組成を有する。
【0045】
切削工具は、超硬合金基材に結合された多結晶ダイヤモンド(PCD)または立方晶窒化ホウ素(cBN)の焼結体が、ろう付けによって鋼部位に接合された工具または工具の一部、例えば、
図11に示されるカッターであり得る。
【0046】
本発明は、上記による切削工具を製造する方法であって、以下の工程:
- 超硬合金基材に結合された多結晶ダイヤモンド(PCD)または立方晶窒化ホウ素(cBN)の焼結体を含む超硬質部位を提供する工程;
およびマルエージング鋼部位;
- ろう付け材料の0.3~15wt%の量でTiを含むろう付け材料を、超硬合金基材とマルエージング鋼部位の間でそれぞれに接して配置する工程、
- ろう付け材料を間に有する超硬合金支持超硬質部位およびマルエージング鋼部位を、600~780℃、好ましくは650~750℃、より好ましくは700~740℃の温度の炉中のろう付け工程に1~60分の期間供する工程であり、ろう付けが真空中で行われる工程;
- 少なくともマルエージング鋼部位を、300~600℃の温度で5分~12時間、エージング工程に供する工程
を含む、方法にも関する。
【0047】
多結晶ダイヤモンド(PCD)または立方晶窒化ホウ素(cBN)の焼結体を含む超硬質部位およびマルエージング鋼部位は、上述の組成を有する。ろう付けに先立つ、マルエージング鋼の硬度は、マルエージング鋼のグレードおよび鋼がエージングされたか否かに応じて、上述したものと異なり得る。一実施形態では、マルエージング鋼は、約340HV1の硬度で溶体化焼鈍されて(solution anneal)提供される。
【0048】
超硬質部位およびマルエージング鋼部位の形状および大きさは、製造すべき工具のタイプに依存する。
【0049】
本発明によるろう付け材料(溶加材(filler metal)またははんだとも呼ばれる)は、全量で、ろう付け材料の0.3~15wt%、好ましくは1~5wt%のTiを含有する。本発明のろう付け材料は、好適には488~1123℃、好ましくは600~700℃の固相線温度(solidus temperature)を有する。さらに、本発明のろう付け材料は、の612~1180℃、好ましくは700~750℃の液相線温度を有する。ろう付け材料はTiに加えて、Ag、Cu、Sn、In、Zr、HfおよびCrから選択される1つまたは複数の元素をさらに含む。
【0050】
本発明の一実施形態では、ろう付け材料は、30~80wt%、好ましくは40~75wt%の量のAg、15~65wt%、好ましくは20~40wt%の量のCu、0.3~15wt%、好ましくは0.5~5wt%の量のTi、0~10wt%、好ましくは0~2wt%の量のSn、および0~30wt%、好ましくは10~25wt%の量のInを含む。
【0051】
好適には、ろう付け材料は箔またはペーストとして提供される。
【0052】
ろう付け材料は、超硬合金基材と鋼部位の接合表面上に提供される。
【0053】
ろう付けプロセス前のろう付け材料の厚さは、材料のタイプ、すなわち、箔またはペーストに依存する。ペーストが使用される場合、十分な材料が施され、ろう付けされる表面は覆われる。典型的には、厚さは20~200μm、好ましくは50~100μmである。
【0054】
次いで、部位は不活性または還元性環境、すなわち最小量の酸素を有する炉に入れられる。好ましくは、炉中のろう付け温度は、600~780℃、好ましくは650~750℃、より好ましくは730~740℃である。部位が高温に供される時間は、1~60分、好ましくは5~15分である。高温での時間がより短い場合、ろう付け接合部を形成し、Tiが反応してろう付け接合部の所望の強度に到達するための十分な時間がない。高温での時間がより長い場合、Tiを含有する脆い反応域が制御されずに成長し、接合部の性質、例えば、剪断強度にマイナスの影響を及ぼす。
【0055】
ろう付けは、好適には真空中または低い分圧のアルゴンの存在下で行われる。本明細書で真空とは、炉中の圧力が5×10-4mbar未満、好ましくは5×10-5mbar未満であることを意味する。アルゴンが存在する場合、アルゴンの圧力は1×10-2mbar未満である。
【0056】
炉中でのろう付け中に、ろう付けをさらに強化するために、締付力を加えてもよい。本明細書で締付力とは、鋼部位および超硬合金部位を互いに対して押しつけ、好ましくはカーバイド部位に外部重量を配置することによって、力を加えることを意味する。超硬合金部位またはマルエージング鋼部位の重量によってろう付け接合部に作用する力は、どの部位が他の部位の上にあるかに依存するが、これらの値には含まれない。
【0057】
一実施形態では、0.5~10MPa、好ましくは2~8MPaの締付力が加えられる。
【0058】
本発明の一実施形態では、締付力は加えられない。
【0059】
ろう付けの後に、部位を、300~600℃、好ましくは350~500℃、最も好ましくは400~440℃の高いエージング温度に5分~12時間、好ましくは3~6時間供することによって、部位はエージング工程に供される。
【0060】
好適には、エージング温度までの加熱速度は、1~50℃/分、好ましくは5~10℃/分である。好適には、エージング温度から少なくともろう付け材料の固相線温度未満、好ましくは300℃未満の温度までの冷却速度は、1~50℃/分、好ましくは5~10℃/分である。
【0061】
本発明により使用されるろう付け炉は、真空、加熱速度および冷却速度などに関して、上述したような、よく制御された状態を提供することができる任意の炉であり得る。ろう付けおよびエージングの工程は、同じ炉、または2つの別個の炉のいずれでも行うことができる。
【0062】
鋼部位が、例えばねじ切り、研削などのような機械加工作業に供されることは一般的である。鋼部位を機械加工することができるためには、硬度が高すぎることはあり得ず、最終工具における所望の硬度および耐摩耗性を達成するために、選択されるマルエージング鋼グレードのタイプに応じて、鋼部位の機械加工の前または後に、エージング工程を行うことができる。
【0063】
本発明の一実施形態では、ろう付け工程の後にエージングは直接行われ、すでにエージングされたマルエージング鋼の上に、すなわちエージング工程の後に、例えばねじ切りのような鋼の任意の機械加工が実行される。
【0064】
本発明の別の実施形態では、例えばねじ切りなどのような鋼の任意の機械加工の後に、エージングは行われる。
【実施例】
【0065】
例1(本発明)
【0066】
マルエージング鋼1.2709で製造された鋼部位を、10wt%のCo、1wt%の他のカーバイドおよび残りのWCの組成を有する超硬合金部位とともに提供した。
【0067】
ろう付け材料を、東京ブレイズ(株)製ペースト(TB-629)の形態で提供し、これを薄い層だが、ろう付けされる表面を覆うのに十分な量で施した。ろう付け材料は、58~62wt%のAg、22~26wt%のCu、1.5~2.5wt%のTi、および13~15wt%のInの組成を有した。固相線温度は約620℃であり、液相線温度は約720℃である。
【0068】
ペーストをマルエージング鋼部位と超硬合金部位の間に配置し、その結果両部位はペーストに接した。次いで、組み立てられた接合部品をTorvac真空炉に入れ、そこで最初に温度を20℃/分の速度で350℃に上げた。温度350℃でのろう付け材料の脱バインダー(debinding)を10分間保持した後、部品を20℃/分の速度で600℃まで加熱した。温度600℃での加熱を10分間保持した後、部品を5℃/分の速度で740℃まで加熱した。ろう付け温度740℃を20分間保持した後、部品を5℃/分の速度で300℃まで冷却した。300℃の後、自由冷却した。
【0069】
ろう付け工程の後、マルエージング鋼の硬度を上げるために、ろう付けされた部品をエージングプロセスに供した。3つの異なるエージング温度を試験し、1つのろう付けされた部品は、比較のためにエージングプロセスに供しなかった。部品を炉に入れ、温度を5℃/分の速度でエージング温度に上げた。施した異なるエージング温度は、355、440および490℃であった。エージング温度を3時間保持し、その後部品を5℃/分の速度で300℃まで冷却した。300℃の後、自由冷却した。
【0070】
例2(比較)
鋼1.6582(34CrNiMo6)で製造された鋼部位を、10wt%Coおよび0.4wt%Crならびに残りのWCの組成を有する超硬合金部位とともに提供した。
【0071】
ろう付け材料は、1~2mmの直径を有する環として適用されるワイヤー形態のAg49Zn23Cu16Mn7.5Ni4.5であった。
【0072】
部品は、コイルを使用する誘導加熱により、ろう付け接合部を700℃に急速加熱して15秒間保持することによって接合し、その後粉末(powder)を切り、工具を室温に放冷した。
図5に鋼部位の硬度値を示しており、そこでは、鋼部位のろう付け接合部から、ろう付け接合部を越えて、超硬合金部位までの距離からの線に沿って計測点が配置されている。
【0073】
本明細書では、この試料を比較2と表示する。
【0074】
例3(比較)
炭素硬化熱間加工鋼1.2344で製造された鋼部位を、10wt%のCo、1wt%の他のカーバイドおよび残りのWCの組成を有する超硬合金部位とともに提供した。熱間加工鋼部材は、あらかじめ硬化された状態であった。鋼を真空炉内でN2を用いて1060℃から急冷し、その後200℃で10分間3回緩和した(relax)。急冷された1.2344部位の平均硬度値は、66HV1の標準偏差で582HV1であった。
【0075】
ろう付け材料1は、ペーストの形態で提供した。ろう付け材料2は、100μmの厚さを有する箔の形態で提供した。ろう付け材料1は、60.0wt%のAg、24.0wt%のCu、14.0wt%のIn、および2.0wt%のTiの組成を有した。固相線温度は約620℃であり、液相線温度は約720℃である。ろう付け材料2は、59.0wt%のAg、27.25wt%のCu、12.5wt%のIn、および1.25wt%のTiの組成を有した。固相線温度は約605℃であり、液相線温度は約715℃である。
【0076】
ろう付け材料をマルエージング鋼部位と超硬合金部位の間に配置し、その結果両部品はろう付け材料に接した。組み立てられた接合部品を炉の中に入れ、そこで最初に20℃/分の速度で500℃に温度を上げ、5分間保持した。次いで温度を50℃/分の速度で、500℃から、685℃(ろう付け材料1)と715℃(ろう付け材料2)の間で異なるろう付け温度Tろう付けまで上げた。Tろう付けを4分の滞留時間の間保持し、その後部品を自由冷却によって室温まで冷却した。
【0077】
硬度を測定し、結果を表2に示す。
【0078】
本明細書では、2つの試料685℃(ろう付け材料1)および715℃(ろう付け材料2)をそれぞれ比較3および4と表示する。
【0079】
剪断強度値は、決定されなかった。
【0080】
例4(比較)
炭素硬化熱間加工鋼(carbon-hardening hot-work steel)1.2344で製造された鋼部位を、10wt%Co、1wt%の他のカーバイドおよび残りのWCの組成を有する超硬合金部位とともに提供した。
【0081】
ろう付け材料を、100μmの厚さを有する箔の形態で提供した。ろう付け金属は、100.0wt%Cuの組成を有した。溶融温度は1085℃である。
【0082】
箔を鋼部位とマルエージング超硬合金部位の間に配置し、組み立てられた接合部品を炉の中に入れ、温度は最初に20℃/分の速度で650℃まで上げ、5分間保持した。次いで温度を10K/分の速度で、650℃から、1100℃であるろう付け温度Tろう付けまで上げた。Tろう付けを15分の滞留時間の間保持し、その後部品を50K/分の冷却速度で850℃まで冷却した。850℃からは、2barの過剰圧力および2500分-1のファン振動数で標本をN2急冷した。
【0083】
続いて、超硬合金-鋼接合部を、炭素硬化熱間加工鋼1.2344をとともに、630℃で2時間、2回エージングを行った。
【0084】
本明細書では、この試料を比較5と表示する。
【0085】
例5(比較)
炭素硬化冷間加工鋼1.2714で製造された鋼部位を、10wt%のCo、1wt%の他のカーバイドおよび残りのWCの組成を有する超硬合金部位とともに提供した。
【0086】
ろう付け金属を、100μmの厚さを有する箔の形態で提供した。ろう付け材料1は、100.0wt%Cuの組成を有した。溶融温度は1085℃である。
【0087】
箔をマルエージング鋼部位と超硬合金部位の間に配置し、組み立てられた接合部品を炉に入れ、温度は最初に20℃/分の速度で650℃まで上げ、5分間保持した。次いで温度を10K/分の速度で、650℃から、1100℃であるろう付け温度Tろう付けまで上げた。Tろう付けを15分の滞留時間の間保持した。滞留時間の後、室温まで自由冷却を開始した。
【0088】
続いて、超硬合金-鋼接合部を、炭素硬化冷間加工鋼1.2714部位とともに、トーチによって850℃の温度に10分間加熱し、次いでオイル中で室温に急冷した。その後、200℃の真空炉で2時間張力緩和(tension relaxing)を行った。
【0089】
続いて、超硬合金-鋼接合部を、炭素硬化冷間加工鋼1.2714部位とともに、500℃で2時間エージングした。
【0090】
本明細書では、この試料を比較6と表示する。
【0091】
例6
ろう付けされた接合部の剪断強度、マルエージング鋼部位ならびに適用可能な場合はろう付け接合部のTiC層およびTiC蓄積層の硬度を測定することによって、組み立てられた接合部品を評価した。
【0092】
接合部の強度特性を評価するために、
図6に示すようにセットアップされた剪断装置を使用して、試料の剪断試験を行った。ここで、1は鋼シリンダー形状(φ=20mm、h=5mm)の鋼部位であり、2は超硬合金シリンダー形状(φ=10mm、h=5mm)の超硬合金部位である。鋼シリンダーは剪断強度試験装置の隙間に配置され、従って荷重方向にのみ移動させることができる。装置の表面に侵食されたノッチは、接合された部位を正しい位置に保持し、ろう付け接合部へ均一に分配された力の誘導を保証する。加える力は、ろう付け接合部が破損し、超硬合金シリンダーが削ぎ取られるまで絶えず増加される。次いで、測定された最大の測定された力と初期接合表面(A=78.5mm
2)の商によって、極限剪断強度を計算した。ろう付け接合部の剪断強度を決定するより前に、ろう付け材料は取り去らなかった。
【0093】
マルエージング1.2709鋼部位の硬度は、ビッカース硬さ試験機によりマルエージング鋼部位の断面に1kgf(キログラム重)の荷重および15秒の負荷時間を加えて測定した。断面において、マルエージング鋼1.2709部位の完全なプロファイル(約20×5mm
2)を覆う、3×6くぼみのパターンを施した。例えば、
図12および13を参照されたい。
【0094】
発明1~3について、ろう付け接合部と超硬合金の間の接触面を分析するために、SEM-EDS技術を使用した。使用したSEMは、熱電界放射陰極(ショトキー)を備えた高解像度電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)である、Jeol JSM-7001Fであった。発明1~3のろう付け接合部におけるTiC層の厚さは、倍率10000のSEM画像上で測定した。TiC層は、後方散乱電子モードで視覚的外観によって確認した。
図3に、TiC層が明確に目視可能な発明3のSEM画像を示す。表2に示すTiC層の厚さの値は、全てろう付け接合部の中央、すなわち端から離れて得た3つの測定値の平均である。
【0095】
EDSを使用して、Tiの蓄積を確認することができ、Ti蓄積層として測定した。本明細書で蓄積層とは、EDS走査から概算された蓄積の厚さを意味する。表2の中の値は、EDS走査の目視検査からの概算値であり、従って幅(interval)として与えられる。
【0096】
表2のTiC層の厚さは、全てろう付け接合部の中央、すなわち倍率10000のSEM画像の端から離れて得た3つの測定値の平均である。
【0097】
図4では、Tiの蓄積をEDSを使用して示している。
【国際調査報告】