(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】セルロース系材料の層と、少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネートを含む材料の層とを含む、包装材として使用できる多層材料
(51)【国際特許分類】
D21H 19/10 20060101AFI20240717BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20240717BHJP
D21H 27/10 20060101ALI20240717BHJP
C08L 89/00 20060101ALI20240717BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
D21H19/10 B
B32B29/00 ZAB
D21H27/10
C08L89/00
B65D65/42 C BRH
B65D65/42 BRQ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579146
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 FR2022051226
(87)【国際公開番号】W WO2022269198
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520222472
【氏名又は名称】ラクティップス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ベセール,バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】メロウキ,ケイルディン
(72)【発明者】
【氏名】シュバリエ,エロディ
(72)【発明者】
【氏名】シルーセル,ファニー
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
4L055
【Fターム(参考)】
3E086BA04
3E086BA14
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4F100AH02B
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4L055FA11
4L055FA14
4L055FA30
4L055GA05
4L055GA30
(57)【要約】
本発明は、包装材として使用できる多層材料の分野に関する。本発明の目的は、セルロース系材料をベースとし、リサイクル可能で、バイオベースで、生分解性であり、および/または改善されたバリア性を有し、例えば食品分野で、包装材として使用でき、好ましくは容易に生産できる、材料を提供することである。
特に、本発明は、セルロース系材料Aの層と、少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、水、および水以外の少なくとも1種の可塑剤、ならびに任意選択でゼラチンを含む材料Bの層とを含む、多層材料に関する。
本発明はまた、この材料から作られた包装材、この包装材で包装された製品、およびこの材料の製造方法にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)少なくとも1つのセルロース系材料Aの層、ならびに
ii)少なくとも1つの材料Bの層であって、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む、前記少なくとも1つの材料Bの層
を含む、多層材料。
【請求項2】
材料Bがゼラチンd)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の多層材料。
【請求項3】
材料Bが、
多塩基カルボン酸エステル;
C3-C33カルボン酸、好ましくはC4-C28脂肪酸、さらに好ましくはC6-C28不飽和脂肪酸;
およびそれらの混合物
から好ましくは選択される、
疎水化剤e)も含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の多層材料。
【請求項4】
材料Bが、好ましくはHLBが2~8の間の双性イオン界面活性剤から選択される、少なくとも1種の界面活性剤f)をさらに含むことを特徴とする、請求項1~3の1つに記載の多層材料。
【請求項5】
材料Bの前記可塑剤c)が、ポリオール、グリセロールアセテート、グリセロールプロピオネート、およびそれらの混合物から選択され、好ましくは、c)が、グリセロール、ソルビトール、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~4の1つに記載の多層材料。
【請求項6】
材料Bが、10~80%の間、好ましくは20~75%の間、さらに好ましくは25~70%の間のカゼインおよび/またはカゼイネートa)を含むことを特徴とする、請求項1~5の1つに記載の多層材料。
【請求項7】
前記セルロース系材料Aが、紙およびボール紙から選択されることを特徴とする、請求項1~6の1つに記載の多層材料。
【請求項8】
材料Bの前記層が、材料Bのフィルム層であることを特徴とする、請求項1~7の1つに記載の多層材料。
【請求項9】
セルロース系材料Aの層を、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む溶液Sでコーティングすること;
あるいは、セルロース系材料Aの層と、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む材料Bの層とを、任意選択でバインダーを用いて、好ましくは複合化またはラミネート化の実施によって、組み立てること、
のいずれかによって得られる多層材料。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の多層材料を含むことを特徴とする包装材。
【請求項11】
請求項10に記載の包装材で包装されていることを特徴とする製品。
【請求項12】
食品であることを特徴とする、請求項11に記載の製品。
【請求項13】
多層材料を製造する方法であって、
セルロース系材料Aの層を、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む溶液Sでコーティングするステップ、
あるいは、セルロース系材料Aの層と、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む材料Bの層とを、任意選択でバインダーを用いて、好ましくは複合化またはラミネート化の実施によって、組み立てるステップ、
のいずれかによって実施されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、包装材として使用できる多層材料の分野に関する。特に、本開示は、セルロース系材料Aの層と、少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネートを含む材料Bの層とを含む多層材料に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]石油のような非再生可能資源の希少性の増大と、これらの資源に関連する汚染の増大は、より汚染の少ない、より環境に優しい代替ソリューションの開発につながっている。特に包装材に関しては、欧州委員会は2030年までに包装材の100%を再利用可能、機械的にリサイクル可能、または堆肥化可能にすることを要望している(循環経済行動計画-2020)。
【0003】
[0003]食品分野では、紙またはボール紙の包装材などの、潜在的にリサイクル可能なセルロース系材料から作られた包装材の使用が増加している。しかし、これらの包装材のリサイクル可能性には未だ大きな障害がある。さらに、これらの包装材に再生紙を使用することは、消費者の安全性に問題をもたらす可能性もある。
【0004】
[0004]実際、持ち帰り料理およびファーストフードの使い捨て包装材は、消費者の便宜を図るため、一般にポリアミド(PA)またはパーフルオロアルキル物質(PFAS)で作られた、防グリースバリアとしてのプラスチック層を常に有している。これは、毎年ヨーロッパで廃棄される6万5千トン(生産される包装材ユニット20億2500万個に達する)に相当する。
【0005】
[0005]さらに、紙包装材の17%には、ガス、グリースもしくは水に対するバリアを提供して中の食品を見せるため、または密封性(パッケージの閉鎖)を可能にするために、プラスチック層(PE、PP、PET、PVDC、EVOH、またはPVOH製)が設けられている。
【0006】
[0006]加えて、例えば新聞など、以前の紙に使われていたインクから鉱油が移行するため、再生紙は食品と直接接触して使用することはできない。消費者の安全性のために、ここでも、プラスチックの層をバリアとして使用しなければならない。このことが、食品包装材に再生紙を広く使用することを妨げている。
【0007】
[0007]この包装材が選別されるとき、リサイクルセンターで紙からプラスチック層を除去することは現実的な問題であり、その結果、よくても紙繊維の10~20%が失われ、最悪の場合、繊維バッチがプラスチックによって汚染されてしまい、これはその後、焼却または埋めたてされなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]したがって、これらの欠点を克服できる包装材を開発することが必要である。
[0009]この文脈において、本発明は、以下の目的の少なくとも1つを満たすことを目的とする。
【0009】
[0010]本発明の目的の1つは、包装材として使用できるリサイクル可能な材料を提供することである。
[0011]本発明の目的の1つは、包装材として使用できるバイオベースのリサイクル可能な材料を提供することである。
【0010】
[0012]本発明の目的の1つは、食品分野で包装材として使用できるリサイクル可能な材料を提供することである。
[0013]本発明の目的の1つは、包装材として使用できる生分解性材料を提供することである。
【0011】
[0014]本発明の別の目的は、改善されたバリア性を有するセルロース系材料をベースとする材料を提供することである。
[0015]本発明の目的の1つは、容易に生産できるリサイクル可能な材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0016]本開示は、
i)セルロース系材料Aの層を少なくとも1つ、ならびに
ii)
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む材料Bの層を少なくとも1つ
含む、多層材料に関する。
【0013】
[0017]本開示はまた、
-セルロース系材料Aの層を、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む溶液Sでコーティングすること;
-あるいは、セルロース系材料Aの層と、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む材料Bの層とを、任意選択でバインダーを用いて、好ましくは複合化またはラミネート化の実施によって、組み立てること、
のいずれかによって得られる多層材料に関する。
【0014】
[0018]本開示はまた、多層材料を含む包装材に関する。
[0019]本開示はまた、多層材料を含む包装材によって包装された製品も目的とする。
[0020]本開示はまた、多層材料を製造する方法に関し、前記方法は、
-セルロース系材料Aの層を、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む溶液でコーティングするステップ、
-あるいは、セルロース系材料Aの層と、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む材料Bの層とを、任意選択でバインダーを用いて、好ましくは複合化またはラミネート化の実施によって、組み立てるステップ、
のいずれかによって実施される。
【0015】
[0021]本発明者らは、このような多層材料が包装材として使用できることを発見した。実際、この多層材料は、材料Bの層が水溶性であるため、ラインまたは方法を変更することなく、リサイクルセンターでリサイクルすることができる。リサイクルセンターでは、簡単な機械的濾過によってセルロース系素材繊維をほぼ100%回収することができる。材料Bの可溶化によって生じる材料Bの残渣は、リサイクル工場内にすでに設置されている水処理インフラストラクチャで生分解される。材料Bの残渣が生分解性であるという事実は、マイクロプラスチックに関連する汚染を回避することを可能にする。
【0016】
[0022]さらに、材料B層の存在により、多層材料のバリア性、特にグリースと酸素に対するバリア性を改善することが可能になり、食品包装材分野での使用を検討することが可能になる。
【0017】
[0023]本発明による多層材料はまた、良好な溶着性、特にヒートシール性を有する。
[0024]このように、本発明による多層材料は、良好なリサイクル性、改善されたバリア性、および良好な溶着性を兼ね備えており、これにより、特に食品分野における包装材として使用することができる。
【0018】
[0025]さらに、材料Bは食品との接触に対して安全であり、100%再生可能で、堆肥化可能で、海洋環境で生分解可能であり、これは包装材に使用される大部分のポリマーの場合と異なる。カゼインは既存の成分であり、食品産業で実証されており、容易に工業化可能である。従って、多層材料は容易に生産することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0026]特に断りのない限り、本明細書中、%は重量%で表される。
[0027]「包装材」とは、商品を収容し保護すること、生産者から消費者または使用者へのその取扱いおよび輸送を可能にすること、ならびにその提示、その保存、その保護および/またはその使用を可能にすることを意図した物体を意味する。
【0020】
[0028]「セルロース系材料」とは、例えば、セルロースパルプから得ることができる材料を意味する。このセルロースパルプは、当業者に周知の化学的および/または機械的処理によって生産することができる。このセルロースパルプは、木材、再生木材、一年生植物、農業残渣(バガス、わらなど)、イネ科植物(例えば、サトウキビ、竹)またはボール紙など、任意の適切な供給源から得ることができる。
【0021】
[0029]「熱可塑性」とは、例えば、所定の温度、ガラス転移温度Tg以上では柔軟で折り畳み可能になるが、このTg以下では再び硬くなる材料を意味し、これらの変換は可逆的である。
【0022】
[0030]「生分解性」とは、例えば、微生物(バクテリア、菌類、藻類など)の作用で分解できる材料を意味する。この分解の結果、水、CO2および/またはメタン、ならびに場合によっては環境に無害な副産物(残渣、新しいバイオマス)が蓄積される。それは、例えば、欧州規格EN NF13432および/またはNF T51-800規格に準拠した生分解性材料である。
【0023】
[0031]「x~yの間」とは、例えば、境界xとyが区間[x,y]に含まれることを意味する。
[0032]「水溶性」とは、例えば、水に溶解することを意味する。材料の水溶性は、以下の通り測定できる:フィルムの一片(5cm×5cm、打抜き型を使用した断片)を写真スライドホルダに固定し、容量1000mlであり、マグネットバーで300rpmにて攪拌した20℃の600mlの蒸留水を含むビーカーに浸漬する。フィルムがブリードスルー(フランス語で「se percer」)するまでの時間を測定する。フィルムの崩壊により、フィルム粒子が形成される。試験は10分間継続し、その後粒子を0.5mmのふるいに通して粒子径を測定する。ふるい中に粒子がない場合、フィルムは水溶性とみなされる。
【0024】
[0033]「可塑剤」とは、例えば、材料のガラス転移温度Tgを低下させることのできる物質を意味する。
[0034]「疎水性」とは、例えば、水との親和性が低く、そこに溶解しない傾向のある化合物を意味する。典型的には、主に非極性化合物である。
【0025】
[0035]「親水性」とは、例えば、水と親和性を有し、そこに溶解する傾向がある化合物を意味する。典型的には、水素結合を形成することができる極性基を有する化合物である。
【0026】
[0036]「界面活性剤」とは、例えば両親媒性分子、すなわち親水性と疎水性の両方の性質を有する分子を意味する。
[0037]「HLB」とは、例えば、親水性-親油性バランスを意味する。HLB値は、以下の方法で計算することができる:HLB=20×(疎水性部分のモル質量)/(分子のモル質量)。
【0027】
[0038]「脂肪酸」とは、例えば脂肪族モノカルボン酸を意味する。
[0039]「バイオベース」とは、例えば、生物由来の材料から製造された製品を意味する。
【0028】
[0040]「バインダー」とは、例えば、セルロース系材料Aの層と材料Bの層との間に接着層を形成することを可能にする薬剤を意味する。本発明で使用するバインダーは、多層材料、特に多層フィルムの製造に従来から使用されているバインダーであり得る。バインダーの中でも、ホットメルト接着剤(フランス語で「colles thermofusibles」)を挙げることができる。
【0029】
多層材料
[0041]本発明は、第一に、
i)セルロース系材料Aの層を少なくとも1つ、ならびに
ii)
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む材料Bの層を少なくとも1つ
を含む、多層材料に関する。
【0030】
[0042]本開示はまた、
-セルロース系材料Aの層を、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む溶液Sでコーティングすること、
-あるいは、セルロース系材料Aの層と、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む材料Bの層とを、任意選択でバインダーを用いて、好ましくは複合化またはラミネート化の実施によって、組み立てること、
のいずれかによって得られる多層材料に関する。
【0031】
[0043]多層材料は、好ましくはリサイクル可能および/またはバイオベースである。多層材料は、2018年5月30日の指令2018/852/EUに従ってリサイクル可能であり得る。実施形態によれば、多層材料は、好ましくはNF T51-800規格に準拠して、堆肥化可能である。
【0032】
[0044]多層材料は、0.01~100mmの間、好ましくは0.05~50mmの間の厚さを有することができる。
[0045]セルロース系材料Aは、好ましくは、紙およびボール紙から選択される。実施形態によれば、セルロース系材料Aは、20~500g/m2の間、好ましくは50~450g/m2の間の坪量を有する。実施形態によれば、セルロース系材料Aは、20~225g/m2の間の坪量を有する紙、および225~500g/m2の間の坪量を有するボール紙から選択される。
【0033】
[0046]セルロース系材料Aの層は、0.01~50mmの間、好ましくは0.05~20mmの間の厚さを有することができる。
[0047]セルロース系材料Aは、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%のセルロースを含む。
【0034】
[0048]セルロース系材料Aは着色することができ、顔料層を含むことができる。セルロース系材料Aは、例えばカオリンタイプの鉱物層を含み得る。
[0049]材料Bおよび/または溶液Sは、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む。
【0035】
[0050]カゼインは、水に溶けにくい乳由来のタンパク質である。主に、乳に酸(酸性カゼイン)もしくはレンネット(レンネットカゼイン)を加えて沈殿させることによって得られるか、または濾過(ミセルカゼイン)によって得られる。カゼインは、19,000~25,000g/molの間のモル質量を有するα-カゼイン、β-カゼインおよびκ-カゼインの混合物からなる。カゼイネートとは、例えば、対カチオンが、カルシウム、カリウム、アンモニウム、ナトリウムおよびマグネシウムを含む群、好ましくはそれらからなる群から選択される、カゼイン塩を意味する。
【0036】
[0051]別の実施形態によれば、a)は、少なくとも1種のカゼイネート、例えばカゼイネートナトリウム、またはカゼイネートの混合物を含む。
[0052]別の実施形態によれば、a)は、カゼインと少なくとも1種のカゼイネートとの混合物を含む。この場合、カゼインとカゼイネート(複数可)との質量比は、5/95~95/5、20/80~80/20、または40/60~60/40の間とすることができる。
【0037】
[0053]材料Bおよび/または溶液Sは、ゼラチンd)を含んでもよい。
[0054]ゼラチンは、グリシンとプロリンを多く含むタンパク質である。コラーゲンを部分的に加水分解して、主には、動物の皮および骨に含まれるコラーゲンから得られる。A型(コラーゲンを酸で処理したもの)とB型(コラーゲンを塩基で処理したもの)があり得る。また、コラーゲンを酵素処理することによっても得ることができる。使用されるゼラチンは、好ましくは化学修飾されていない。本発明の実施形態によれば、使用されるゼラチンは、市販またはB型の食品ゼラチンであり、シート、粉末または顆粒の形態であることができる。有利には、使用されるゼラチンはB型である。
【0038】
[0055]d)が含まれる場合、量の比a):d)は、90:10~20:80の間、好ましくは75:25~25:75の間、好ましくは60:40~40:60の間であり得る。特定の実施形態によれば、比a):d)は50:50である。特定の実施形態によれば、比a):d)は55:45~45:55の間である。
【0039】
[0056]可塑剤c)は、ポリオール、グリセロールアセテート、グリセロールプロピオネートおよびそれらの混合物から選択することができる。
[0057]ポリオールの例として、グリセロール、ヘキサントリオール、エチレングリコールを含むグリコール類ならびに糖類およびその誘導体を挙げることができる。
【0040】
[0058]糖の例として、マルトース、ラクトース、スクロースのような二糖類、およびフルクトースのような単糖類を挙げることができる。
[0059]糖誘導体の中では、ソルビトール、マルチトール、マンニトールおよびキシリトールなどの水素化誘導体、あるいはこれらの水素化誘導体の変換生成物、例えばソルビタンもさらに挙げることができる。
【0041】
[0060]実施形態によれば、可塑剤c)は、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、エチレングリコールおよびそれらの混合物から選択される。好ましくは、可塑剤c)は、グリセロール、ソルビトール、およびそれらの混合物から選択される。実施形態によれば、可塑剤c)はグリセロールである。
【0042】
[0061]可塑剤c)は残留水を含んでもよい。
[0062]可塑剤c)は、分子鎖の移動度を増加させることにより、製品の粘度を低下させることを可能にする。
【0043】
[0063]有利には、可塑剤c)は親水性可塑剤である。
[0064]材料Bおよび/または溶液Sは、疎水化剤e)を含むこともできる。疎水化剤e)は、
-多塩基カルボン酸エステル(カルボキシリックポリアシッドエステル)(carboxylic polyacid esters)(les esters de polyacide carboxylique);
-C3-C33カルボン酸、好ましくはC4-C28脂肪酸、さらに好ましくはC6-C28不飽和脂肪酸;
-およびそれらの混合物
から選択することができる。
【0044】
[0065]多塩基カルボン酸エステルは、少なくとも1種の多塩基カルボン酸と少なくとも1種のアルコール、好ましくはC1-C18アルコールから誘導することができる。
[0066]本発明の枠内で優先的に選択される多塩基カルボン酸の中では、クエン酸、ヒドロキシクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸を挙げることができる。
【0045】
[0067]本発明に従う好ましいアルコールの中では、例えば、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、n-ブタノールおよびtert-ブタノールのようなC2-C6アルコールを挙げることができる。
【0046】
[0068]実施形態によれば、疎水化剤e)は、クエン酸トリエチル、O-アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリブチルおよびそれらの混合物から選択される。
[0069]実施形態によれば、疎水化剤e)は、C3-C33カルボン酸、好ましくはC4-C28脂肪酸、さらに好ましくはC6-C28不飽和脂肪酸である。
【0047】
[0070]本発明の枠内で選択されるC4-C28脂肪酸の中では、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0048】
[0071]特に興味深いC6-C28不飽和脂肪酸の中では、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、およびそれらの混合物を挙げることができる。
[0072]材料Bおよび/または溶液Sは、好ましくはHLBが2~8の間の双性イオン界面活性剤から選択される、少なくとも1種の界面活性剤f)をさらに含んでもよい。
【0049】
[0073]好ましい界面活性剤の中では、レシチンおよび/またはその類似体、例えばジアセチレンホスホン酸塩、ならびにポリソルベート類を挙げることができる。ポリソルベート類は、脂肪酸とポリオキシエチレンソルビタンとのエステルである。ポリソルベート類の中では、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60およびポリソルベート80を挙げることができる。
【0050】
[0074]実施形態によれば、f)とe)の量の比は1以上である。例えば、この比は、1.3~3の間、好ましくは1.5~2.5の間とすることができる。
[0075]材料Bおよび/または溶液Sはまた、多糖類g)を含んでもよい。好ましくは、g)は、プルラン、デンプン、アルギネート、およびそれらの混合物から選択される。多糖類g)は、水溶性多糖類であり得る。
【0051】
[0076]材料Bおよび/または溶液Sは、苦味剤h)、好ましくは安息香酸デナトニウムをさらに含んでもよい。
[0077]苦味剤h)は、安息香酸デナトニウム、安息香酸デナトニウム誘導体、デナトニウムサッカリド、塩化デナトニウム、安息香酸スクロース、キニーネ、塩酸キニーネ、硫酸キニーネ、ブルシン、硫酸ブルシン、クアシア、クアシン、ナリンギン、リモニン、フェニルチオカルバミド、ケブラチョ、スクロースオクタアセテート、ケルセチン、ベルベリン、およびそれらの混合物から選択され得る。
【0052】
[0078]実施形態によれば、材料Bおよび/または溶液Sはまた、染料、タンパク質凝固剤、固結防止剤、滑沢剤、およびそれらの混合物から選択される添加剤i)も含む。凝固剤の中では、クエン酸および酢酸を挙げることができる。固結防止剤の中では、コロイダルシリカを挙げることができる。滑沢剤の中では、ポリエチレングリコールおよびアミド末端基を有する脂肪鎖、好ましくはC12~C28を有する化合物を挙げることができる。
【0053】
[0079]実施形態によれば、材料Bおよび/または溶液Sは、封鎖剤から選択される添加剤j)を含む。「封鎖剤」とは、例えば、銅、鉄、ニッケル、カルシウムおよびマグネシウムなどの金属イオンと化学錯体を形成する配位子を意味する。封鎖剤の中では、クエン酸二アンモニウム、EDTA、リン酸塩、クエン酸、ピロリン酸塩、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0054】
[0080]材料Bの異なる構成要素の割合は、室温での材料Bの総重量に対する重量%で表される。実施形態によれば、材料Bは、10~80%の間、好ましくは20~75%の間、さらに好ましくは25~70%の間のカゼインおよび/またはカゼイネートa)を含む。
【0055】
[0081]実施形態によれば、材料Bは、50~80%の間、好ましくは52~75%の間、さらに好ましくは55~70%の間のカゼインおよび/またはカゼイネートa)を含む。実施形態によれば、材料Bは、10~55%の間、好ましくは20~50%の間、より好ましくは25~40%の間、さらに好ましくは30~35%の間のカゼインおよび/またはカゼイネートa)を含む。
【0056】
[0082]実施形態によれば、材料Bは、1~55%の間、好ましくは5~50%の間、好ましくは10~40%の間、さらに好ましくは30~35%の間のゼラチンd)を含む。
[0083]特定の実施形態によれば、材料Bは、30~35%の間のカゼインおよび/またはカゼイネートa)と、30~35%の間のゼラチンd)とを含む。
【0057】
[0084]材料Bは、5~15%の間、好ましくは7~11%の間の水b)を含むことができる。水の量は9~10%の間に設定することができる。水は、材料Bの組成物に入る可塑剤c)と区別されなければならない可塑剤として作用する。
【0058】
[0085]材料Bは、10~35%の間、好ましくは15~30%の間の、c)とは異なる少なくとも1種の可塑剤c)を含むことができる。
[0086]材料Bは、0.1~8%の間、好ましくは1~4%の間の疎水化剤e)を含むことができる。有利には、材料Bは0.5~6%の間、好ましくは1~3%の間の疎水化剤e)を含む。
【0059】
[0087]材料Bは、0.5~6%の間の少なくとも1種の界面活性剤f)を含むことができ、f)は好ましくは、HLBが2~8の間の双性イオン界面活性剤から選択される。有利には、材料Bは、1~5%の間、好ましくは1.5~4.5%の間、さらに好ましくは2~4%の間の少なくとも1種の界面活性剤f)を含むことができる。
【0060】
[0088]材料Bは、2~10%の間の多糖類g)を含んでもよく、g)は、好ましくは、プルラン、デンプン、アルギン酸塩、およびそれらの混合物から選択される。有利には、材料Bは4~8%の間の多糖類g)を含む。
【0061】
[0089]材料Bは、0.001~0.5%の間の苦味剤h)、好ましくは安息香酸デナトニウムを含むことができる。有利には、材料Bは、0.05~0.15%の間の苦味剤h)をさらに含む。
【0062】
[0090]材料Bは、0.1%~5%の間のi)を含むことができる。材料Bは、1~5%の間の、封鎖剤から選択される添加剤j)を含むことができる。
[0091]材料Bは、水溶性および/または生分解性であり得る。材料Bはバイオベースであることができる。実施形態によれば、材料Bは熱可塑性材料である。材料Bは、実施例で述べるように、押出成形によって得ることができる。
【0063】
[0092]実施形態によれば、材料Bの層は、材料Bのフィルム層、好ましくは、熱可塑性であり生分解性であり水溶性である材料Bのフィルム層である。典型的には、材料Bのフィルム層は、1~150ミクロンの間、好ましくは2~50ミクロンの間、より好ましくは2.5~20ミクロンの間の厚さを有する。
【0064】
[0093]溶液Sの異なる構成要素の割合は、溶液S中の乾物の総重量に対する重量%で表される。実施形態によれば、溶液Sは、0.1~90%の間の乾物量、好ましくは1~50%の間の乾物量、好ましくは5~25%の間の乾物量、より好ましくは10~20%の間の乾物量を含む。溶液Sは、材料Bを水に可溶化することによって、または異なる構成成分を水に可溶化することによって得ることができる。
【0065】
[0094]実施形態によれば、溶液Sは、10~80%の間、好ましくは20~75%の間、さらに好ましくは25~70%の間のカゼインおよび/またはカゼイネートa)を含む。
【0066】
[0095]実施形態によれば、溶液Sは、50~80%の間、好ましくは52~75%の間、さらに好ましくは55~70%の間のカゼインおよび/またはカゼイネートa)を含む。実施形態によれば、溶液Sは、10~55%の間、好ましくは20~50%の間、好ましくは25~40%の間、さらに好ましくは30~35%の間のカゼインおよび/またはカゼイネートa)を含む。
【0067】
[0096]実施形態によれば、溶液Sは、1~55%の間、好ましくは5~50%の間、好ましくは10~40%の間、さらに好ましくは30~35%の間のゼラチンd)を含む。
[0097]特定の実施形態によれば、溶液Sは、30~35%の間のカゼインおよび/またはカゼイネートa)と、30~35%の間のゼラチンd)とを含む。
【0068】
[0098]溶液Sは、10~35%の間、好ましくは15~30%の間の、c)とは異なる少なくとも1種の可塑剤を含むことができる。
[0099]溶液Sは、0.1~8%の間、好ましくは1~4%の間の疎水化剤e)を含むことができる。有利には、溶液Sは0.5~6%の間、好ましくは1~3%の間の疎水化剤e)を含む。
【0069】
[0100]溶液Sは、好ましくはHLBが2~8の間の双性イオン界面活性剤から選択される、0.5~6%の間の少なくとも1種の界面活性剤f)を含むことができる。有利には、溶液Sは、少なくとも1種の界面活性剤f)を1~5%の間、好ましくは1.5~4.5%の間、さらに好ましくは2~4%の間で含むことができる。
【0070】
[0101]溶液Sは、2~10%の間の多糖類g)を含んでもよく、g)は、好ましくは、プルラン、デンプン、アルギン酸塩、およびそれらの混合物から選択される。有利には、溶液Sは4~8%の間の多糖類g)を含む。
【0071】
[0102]溶液Sは、0.001~0.5%の間の苦味剤h)、好ましくは安息香酸デナトニウムを含むことができる。有利には、溶液Sはまた、0.05~0.15%の間の苦味剤h)も含む。
【0072】
[0103]溶液Sは、0.1%~5%の間のi)を含むことができる。溶液Sは、封鎖剤から選択される添加剤j)を1~5%の間で含むことができる。
[0104]溶液Sはまた、防腐剤および/または殺生物剤を含み得る。防腐剤および/または殺生物剤の濃度は、0.1~5%の間であり得る。
多層材料を含む包装材
[0105]本開示はまた、多層材料を含む包装材に関する。ある場合には、包装材は多層材料以外の層を含み、他の場合には、包装材は多層材料で作られている。
【0073】
[0106]本開示はまた、様々な製品(医薬品、食品、化学薬品、化粧品など)を包装するための多層材料の使用を目的としている。
[0107]本開示はまた、多層材料を含む包装材によって包装された製品を目的としている。
【0074】
[0108]製品は、固体、液体、またはゲルの形態とすることができる。包装された製品は、例えば、機械部品、DIY用品、園芸用品、雑誌、新聞、または使い捨て皿など、どのようなものでもよい。
【0075】
[0109]包装された製品は、例えば、医薬品、食品、化学製品、化粧品から選択することができる。
[0110]実施形態によれば、包装された製品は、例えば、肉、魚、野菜、果物、パン菓子、ヴィエノワズリー、チョコレート、菓子、食品添加物、食材、乾燥調製物、食品粉末、惣菜などの食品である。
【0076】
[0111]実施形態によれば、包装された製品は化粧品である。実施形態によれば、包装された製品は洗剤である。
[0112]洗剤は、液体状であっても粉末状であってもよく、コンパクトであってもなくてもよい。例えば、洗剤タブレットであってもよい。洗剤タブレットの中では、食器洗い機用タブレットおよび洗濯用洗剤タブレットを挙げることができる。また、液体の洗濯用洗剤のような液体洗剤であってもよい。
【0077】
多層材料の製造方法
[0113]多層材料は、当業者に周知のラミネート法、コーティング法、シートペースト法(フランス語で「contre-collage」)、共押出法または押出コーティング法(フランス語で「extrusion couchage」)により製造することができる。
【0078】
[0114]本開示はまた、
-セルロース系材料Aの層を、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む溶液Sでコーティングするステップ、
-あるいは、セルロース系材料Aの層と、
a.少なくとも1種のカゼインおよび/または少なくとも1種のカゼイネート、
b.水、および
c.b)とは異なる少なくとも1種の可塑剤
を含む材料Bの層とを、任意選択でバインダーを用いて、好ましくは複合化またはラミネート化の実施によって、組み立てるステップ、
のいずれかによって実施されることを特徴とする、多層材料の製造方法に関する。
【0079】
[0115]実施形態によれば、多層材料の製造はコーティングによって行われる。この場合、セルロース系材料A層は溶液Sでコーティングされる。これは、当業者に周知の塗布材料(フランス語で「materiel de couchage」)を用いて行うことができる。コーティング後、コーティングされたセルロース系材料Aは、多層材料を得るために、例えばオーブン中で乾燥させることができる。
【0080】
[0116]別の実施形態によれば、多層材料の製造は、セルロース系材料Aの層と材料Bの層とを組み立てることによって行われる。この場合、組み立ては複合化またはラミネート化によって実施され得る。
【0081】
[0117]ラミネートは、冷間または熱間で実施することができる。コールドラミネートの場合、バインダーを使用することができる。ホットラミネートの場合、このステップはバインダーなしで実施することができる。
【0082】
[0118]複合化は、バインダーの有無にかかわらず、ラミネート、共押出または押出コーティングステップによって実施することができる。
[0119]バインダーが使用される場合、例えば、材料AまたはBの内の1つの一方の面をバインダーでコーティングし、その後、バインダーが2つの材料の間に存在するように2つの材料を接触させることによって、組み立てを実施することができる。組み立ては、カレンダーを使って実施することができる。
【実施例】
【0083】
[0120]以下の実施例では、2種類のセルロース系材料(紙)を、熱可塑性顆粒から調製したグリセロールおよびカゼインナトリウム溶液でコーティングし、本発明による多層材料を調製した。特に断りのない限り、本明細書中、%は重量%で表される。
【0084】
[0121]使用したセルロース系材料は以下の通りである:
-Sappi社のAlgro Sol PCC 90g/m2紙、片面にカオリンをコーティングしたクラフト紙、フォーマット21×35cm、光沢面にコーティング、
-Gascogne Paper社のTerrana 85g/m2紙、片面が擦られた天然クラフト紙、擦られた面にコーティング、フォーマット21×35cm。
【0085】
[0122]コーティングに使用した熱可塑性顆粒は、カゼインナトリウムから押出成形によって調製した。使用した押出機は、直径25mm、中心距離21mm、長さ900mmのClextral(登録商標)BC21共回転二軸押出機である。この押出機には少なくとも4つのゾーンがある:
導入用の第1ゾーン
導入用の第2ゾーン
脱ガス用の第3ゾーン、および
第4のゾーン:ダイ。
【0086】
[0123]ツインスクリューの回転速度は175~320rpmの間であり、異なるゾーンの温度は30~120℃の間である。
押出機の第1ゾーンは、カゼイネートとレシチンの粉末の導入ゾーンである。液体は第2ゾーンに導入される。押出機は、大気開放の脱ガスゾーンと、直径4mmの円筒形ロッドダイからなる最終ゾーンをさらに含む。
スクリューのプロフィールは以下の通りである:750mmダイレクトピッチスクリュー、50mmミキシングスクリュー、100mmリバースピッチスクリュー。
押出機の出口でロッドは乾燥され、直径2~3mmの顆粒を生産する造粒機に導入される。顆粒の最終組成は以下の通りである:
63%のカゼインナトリウム、
23.5%のグリセロール
10%の水、
2.3%の大豆レシチン、および
1.1%のオレイン酸。
【0087】
紙のコーティング
[0124]熱可塑性顆粒を攪拌しながら水に溶解し、乾物量11%、18%または19%の溶液を得る。
【0088】
[0125]溶液の紙へのコーティングは、紙の表面に溶液を拡げて供給するためのネジ状の棒を併進させる実験室用塗布(フランス語で「couchage」)設備、Elcometerを使用して行った。それぞれの紙の同じ面に、層重量が9g/m2または14g/m2になるように2回のコーティングを行った。得られた結果を表1に示す。
【0089】
[0126]
【0090】
【0091】
[0127]次に、コーティングされた紙のシートを55℃のオーブンで乾燥させ、次に80℃の半月型乾燥機で乾燥させる。その後、重い金属プレートの下に置く。
得られたコーティングされた紙の特性評価
【0092】
[0128]物理的性質
[0129]坪量および厚さ
[0130]コーティングなしの基材紙およびコーティングされた紙の特性評価は、23℃-50%RHの標準化された条件下で行った(NF EN 20 187,1993)。坪量測定は、規格NF EN ISO536,2012に記載されている方法に従って実施し、厚さ測定は、規格NF EN ISO534,2011に記載されている方法に従って実施した。得られた結果は、予想された値と一致しており、2つの紙への付着の違いに対応している。
【0093】
[0131]接着試験FINAT法
[0132]カゼインナトリウムを含む材料B層と、セルロース系材料の紙A層との間の良好な接着が求められる。
【0094】
[0133]コーティングされた層の紙への接着は、Finat1法を用いて試験した:良好な条件で試験が実施できるためには、手作業またはテープでサンプルに引っかかり(フランス語で「amorce」)を作り、コーティングを基材から引き離し、層を剥がす必要がある。しかし、コーティングされた層と紙基材との接着が強すぎる場合は、このような引っかかりを作ることはできなかった。
【0095】
[0134]次に、Finat3法を用いて接着性を試験した:この方法によれば、コーティングされた基材は、テープを使ってプレートに接合される。このようにして調製された試験片は、Finat3法に従って、すなわち、プレート/テープ/コーティングされた紙のアセンブリを6.86kPa(70g/cm2)の圧力下に23℃で20時間保持して作製される。Finat1法と同様に、コーティングされた層と紙基材との間の層間剥離は観察されなかった。実際、層間剥離はテープのレベルで発生した。
【0096】
[0135]これらの試験から、表面に付着した層は、剥離力を測定することができないほど、紙基材に非常によく接着していることがわかる。コーティングされた層の異なる基材への接着性は、付着層の重量(9g/m2または14g/m2)にかかわらず、非常に良好である。
【0097】
[0136]バリア性
[0137]グリースバリア:油に対するコッブ指数測定法
[0138]コッブ指数の測定は25cm2の表面で行われ、その時間はここでは60秒とする。スダンレッドIIIで着色されたISIO4油が使用され、欠陥が存在する場合にそれを可視化することができる。SCAN-P37規格に由来する方法が使用される。コッブ指数を測定することで、紙またはボール紙の表面が特定の時間、ここでは60秒間に吸収できる油の量を決定することができる。コッブ指数はできるだけ低い方が望ましい。
【0098】
[0139]測定は、5つの異なるサンプルに対して行われる。その後、平均値と標準偏差を計算する。測定は、サンプルを少なくとも12時間、23℃/50%RHに放置した後に、23℃/50%RHの条件下で実施する。結果を表2に示す。
【0099】
[0140]
【0100】
【0101】
[0141]これらの結果は、本発明による多層材料が、コーティングされていない紙基材よりもはるかに低いコッブ指数を有し、これはグリースバリア性の改善を反映していることを示している。
【0102】
[0142]酸素バリア:ASTM F1927規格に準拠した23℃-50%RHでのOTR測定特性評価
[0143]酸素測定は、ASTM F1927規格に準拠したPresens機器を用いて行う。測定は、調整された部屋の温湿度レベル、すなわち23℃/50%RHで行われる。測定は4つの異なるサンプルで2回行った。結果を表3に示す。
【0103】
[0144]
【0104】
【0105】
[0145]これらの結果は、本発明による多層材料が、コーティングされていない紙基材よりもはるかに低い酸素透過性を有することを示しており、これは酸素バリア性の改善を反映している。
【0106】
[0146]本発明による多層材料のリサイクル性
[0147]本発明による多層材料のリサイクル性を測定した。包装材のリサイクル性は、2018年5月30日の指令2018/852/EU(指令94/62/ECの改正)の目的内で評価される。
【0107】
[0148]包装材のリサイクル性は、包装材が再生紙産業において回収可能であり得るように2つの基準を満たすことに帰着する:
-包装材は、少なくとも50重量%の紙-ボール紙材料を含む、ボール紙ベースの構造でなければならない、および
-包装材は、工業的に利用可能な、関連のある公知のリサイクル技術に適合する材料または材料の組み合わせで設計されていなければならない。また、リサイクル方法に悪影響を与えてはならない。
【0108】
[0149]本発明に従って調製されたすべての多層材料は、少なくとも50重量%の紙/ボール紙材料を含む。従って、第1の条件は満たされている。
[0150]次に、カゼインナトリウムを含む材料Bの層の存在の影響を評価するために、本発明に従って調製された多層材料でリサイクル試験を実施した。実施した様々なステップを以下に示す。
【0109】
[0151]パルプ化または再懸濁(ISO 5263-1*規格)
[0152]パルプ化操作は、スクリーニングする目的で繊維状懸濁液が汲み上げ可能になるように、実験室用パルパーを使用してセルロース系繊維を個別化することからなる。試験、特に再懸濁の目的で、60gのサンプルを実験室用パルパーのサイズに適合させるため、約3×3cmの断片に裂いた。次に、調製した原料を以下の条件で再懸濁する:
-温度*:40℃
-濃度:3%(重量)
-時間:15分
-条件:中性
[0153]これらの条件は、工業的に適用される条件を代表するものである(*例外:工業的リサイクル方法における水温をシミュレートするための40℃の温度)。
【0110】
[0154]解繊後の繊維状懸濁液の観察
[0155]15分間の解繊後、解繊された原料(パルプまたは繊維状懸濁液と呼ばれる)は、2つの点を確認するために目視で観察される:
-繊維の個別化は良好な離解(defibration)を示し、したがって十分なパルプ化時間を示す。必要に応じて15分延長することもできる。
-パルプ化水の色により、包装材が排出されたかどうか(色、インクおよび/または光沢)を確認する。
【0111】
[0156]非繊維状の不要物のスクリーニングまたは除去(TAPPI-ANSI T275 sp-18規格):
[0157]次に、試験されるサンプルの解繊に対応するパルプを回収し、1番目は15/100mmのスロットのある篩、2番目は10/100mm篩が備え付けられている2つのカスケード式Somerville実験室スクリーニング装置でさらにスクリーニングする。許容されたパルプはスクリーナーのスロットを通過し、望ましくない要素(プラスチック片など)はスクリーニング篩の表面に残る。1番目のスクリーナーは大きな汚染物質を、2番目のスクリーナーはあらゆる残留汚染物質を保持することができる。
【0112】
[0158]外観ハンドシート
[0159]パルプ化ステップと10/100mmスクリーニングステップの出口で、Rapid-Koethenの方法(規格ISO5269-2:2004パルプ-実験室シートの調製)に従って実験室シート(ハンドシートと呼ばれる)を作成する。
【0113】
[0160]得られた結果を以下の表4に示す。
[0161]
【0114】
【0115】
[0162]これらの結果は、以下を示す:
-パルプ化中に良好な繊維個別化が達成されること。
-スクリーニング中に適切な排除率が得られること;これらの率はリサイクル性に関して許容可能であること。
-パルパーまたはスクリーンの出口にあるハンドシートは、目視外観が十分に満足できること。
【0116】
[0163]これらの結果は、本発明による多層材料が、2018年5月30日の指令2018/852/EUの目的における包装材の異なるリサイクル性基準を良好に満たすことを示している。
【0117】
[0164]セルロース系材料の層A上に、グリセロールおよびカゼインナトリウムを含む材料Bの層が存在することは、このセルロース系材料のリサイクル性に影響しない。
【0118】
[0165]本発明による多層材料のヒートシール性
[0166]上述の手順に従って多層材料を調製した。層重量は10g/m2である。ヒートシール性試験は、Lako Sool社のLako Seal Tester SL10装置上で、以下のパラメータで行った:
-圧力:0.2N/mm2
-接触時間:0.5秒
-温度:150~170℃の間。
ヒートシールされた試験片の寸法は20mm×25.4mmであった。
【0119】
[0167]試験片を密封した後、23℃、50%RHで24時間パッキングを行った。その後、規格ASTM F88に準拠して、T字型に保持しない状態での剥離試験を実施した。選択した各シール条件について、3回の剥離試験を実施した。
サンプルの幅:25mm
剥離距離:=20mm、すなわちシール距離
剥離速度:300mm/分。
【0120】
[0168]得られた結果を以下の表4に示す。
[0169]
【0121】
【0122】
[0170]これらの結果は、本発明による多層材料が良好な溶着性を有することを示している。実際、凝集破壊があるという事実は、その破壊がシール部ではなく材料内で起こることを示している。さらに、150℃、160℃または170℃で実施されたシーリングの剥離力は類似しており、強い。このように、本発明による多層材料は良好なヒートシール性を有する。
【国際調査報告】