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▶ ナンキン イムノファージ バイオテック カンパニー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】抗CCR8抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240717BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240717BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20240717BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240717BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240717BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240717BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/6806 Z
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K38/02
A61K48/00
A61K39/395 L
A61K47/68
A61P35/00
A61P25/04
A61P1/00
A61K35/76
A61K35/761
G01N33/574 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579158
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 CN2022101000
(87)【国際公開番号】W WO2022268192
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/102324
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/092803
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522495751
【氏名又は名称】ナンキン イムノファージ バイオテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NANJING IMMUNOPHAGE BIOTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 1502-1, Building A, Phase 1, Zhongdan Ecological Life Science Industrial Park, No. 3-1 Xinjinhu Road, High-tech Development Zone Nanjing, Jiangsu 210032 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン、グォファン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ジェンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ、ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ナ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ43
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B064AG27
4B064CA19
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC16
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076FF34
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA13
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA08
4C084ZA66
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA66
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA12
4C087CA20
4C087NA14
4C087ZA08
4C087ZA66
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA40
4H045BA71
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045EA51
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗CCR8抗体及びその使用方法に関する。本明細書で記載される前記抗体は、種々のがんおよび異常なCCL1/CCR8軸に関連する神経因性疼痛などの、CCR8および/またはCCLlが介在する疾患の診断及び治療に使用されることができる
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片が
a) 配列番号58、79および80;もしくは
b) 配列番号2、3および4;もしくは
c) 配列番号2、3および10;もしくは
d) 配列番号2、16および17;もしくは
e) 配列番号22、23および24;もしくは
f) 配列番号32、33および34;もしくは
g) 配列番号40、41および42;もしくは
h) 配列番号47、48および49;もしくは
i) 配列番号40、3および55;もしくは
j) 配列番号58、59および60;もしくは
k) 配列番号58、3および63;もしくは
l) 配列番号2、3および67;もしくは
m) 配列番号72、73および74;もしくは
n) 配列番号58、83および84;もしくは
o) 配列番号58、83および88;もしくは
からなる群から選択されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む少なくとも1つの重鎖可変領域、および
a) 配列番号6、7および14;もしくは
b) 配列番号6、7および8;もしくは
c) 配列番号12、7および14;もしくは
d) 配列番号19、7および14;もしくは
e) 配列番号26、20および27;もしくは
f) 配列番号30、20および27;もしくは
g) 配列番号36、37および38;もしくは
h) 配列番号44、37および45;もしくは
i) 配列番号51、52および53;もしくは
j) 配列番号6、7および8;もしくは
k) 配列番号65、7および14;もしくは
l) 配列番号69、70および13;もしくは
m) 配列番号76、37および77;もしくは
n) 配列番号86、7および14、
からなる群から選択されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む少なくとも1つの軽鎖可変領域を含み、ここで前記抗体またはその抗原結合断片はCCR8に特異的に結合し;前記アミノ酸配列のいずれかが、任意選択で1~5(もしくは1、2、3)個のアミノ酸の付加、欠失、修飾および/または置換により形成される、CCR8結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含む、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体またはその抗原結合断片が
a) 配列番号58、79、80、6、7および14;もしくは
b) 配列番号2、3、4、6、7および8;もしくは
c) 配列番号2、3、10、12、7および14;もしくは
d) 配列番号2、16、17、19、7および14;もしくは
e) 配列番号22、23、24、26、20および27;もしくは
f) 配列番号22、23、24、30、20および27;もしくは
g) 配列番号32、33、34、36、37および38;もしくは
h) 配列番号40、41、42、44、37および45;もしくは
i) 配列番号47、48、49、51、52および53;もしくは
j) 配列番号40、3、55、6、7および8;もしくは
k) 配列番号58、59、60、6、7および14;もしくは
l) 配列番号58、3、63、65、7および14;もしくは
m) 配列番号2、3、67、69、70および13;もしくは
n) 配列番号72、73、74、76、37および77;もしくは
o) 配列番号58、83、84、86、7および14;もしくは
p) 配列番号58、83、88、86、7および14
から選択されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記重鎖がさらに重鎖定常領域を含みおよび/または前記軽鎖がさらに軽鎖定常領域を含む、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体の重鎖可変領域はヒトまたはヒト化フレームワーク領域をさらに含み、および/または前記抗体の軽鎖可変領域はヒトまたはヒト化フレームワーク領域をさらに含む、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項5】
前記ポリペプチド配列が
a) 配列番号96のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号97のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
b) 配列番号78のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号81のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
c) 配列番号1のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号5のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
d) 配列番号9のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号11のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
e) 配列番号15のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号18のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
f) 配列番号21のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号25のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
g) 配列番号28のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号29のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
h) 配列番号31のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号35のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
i) 配列番号39のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号43のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
j) 配列番号46のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号50のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
k) 配列番号54のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号56のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
l) 配列番号57のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号61のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
m) 配列番号62のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号64のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
n) 配列番号66のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号68のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
o) 配列番号71のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号75のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
p) 配列番号82のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号85のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
q) 配列番号87のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号89のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
r) 配列番号90のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号91のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
s) 配列番号92のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号93のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
t) 配列番号94のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号95のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
u) 配列番号92のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号98のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
v) 配列番号92のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号99のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
w) 配列番号100のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号101のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
x) 配列番号102のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号103のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
y) 配列番号104のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号105のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
z) 配列番号106のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号107のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
aa) 配列番号108のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号109のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
bb) 配列番号110のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号111のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域、
からなる群から選択される、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号1、9、15、21、28、31、39、46、54、57、62、66、71、78、82、87、90、92、94、96、100、102、104、106、108または110に対して少なくとも(≧)85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるポリペプチド配列を有する重鎖可変領域、または配列番号5、11、18、25、29、35、43、50、56、61、64、68、75、81、85、89、91、93、95、97、98、99、101、103、105、107、109または111に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体がモノクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体またはその抗体断片である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が(i) 一本鎖抗体、一本鎖可変断片(scFv)、ヒンジ領域を欠く一価抗体またはミニボディー;(ii) Fab、Fab'またはF(ab')2断片;(iii) 完全長抗体;および (iv)ヒトIgG Fcドメインを含む抗体である、請求項7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、ヒトであるか、またはヒト化されている、請求項7に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒトCCR8に結合できるCCR8特異性抗体である、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒトCCR8に結合し、CCL1-CCR8シグナル伝達をブロックできる、CCR8特異性抗体である、請求項10に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒトCCR8のY94からK107までから選択される1以上のアミノ酸残基を含むエピトープでヒトCCR8に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒトCCR8のY94、L95、L96、D97、Q98、V100、T103、V104、M105およびK107から選択される1以上のアミノ酸残基を含むエピトープでヒトCCR8に特異的に結合する、請求項12に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
前記抗体またはその抗原結合断片が、ヒトCCR8のY94、L95、L96、Q98、V100、T103、V104、M105およびK107から選択される1個のアミノ酸残基を含むエピトープでヒトCCR8に特異的に結合する、請求項13に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
組み換えタンパク質であって、前記組み換えタンパク質が
(i) 請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片;及び
(ii) 発現および/または精製を支援する任意に選ばれるタグ配列
を含む、組換えタンパク質。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片または請求項15に記載の組み換えタンパク質をコードする、単離された核酸分子。
【請求項17】
請求項16に記載の単離された核酸分子を含む、ベクター。
【請求項18】
前記ベクターが、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルスなどの哺乳動物細胞ウイルスを含む、請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
ゲノムに請求項16に記載の核酸、または請求項17に記載のベクターが含まれる、操作された宿主細胞。
【請求項20】
請求項16に記載の核酸分子またはその相補配列の断片である、ハイブリダイゼーション・プローブ、PCRプライマーまたは配列決定プライマーとして使用するのに十分な単離ポリヌクレオチド。
【請求項21】
抗体複合体であって、前記抗体複合体が
(i) 請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片、または請求項15に記載の組み換えタンパク質、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる抗体部分;ならびに
(ii) 検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、前記抗体部分とカップリングするカップリング部分
を含む、抗体複合体。
【請求項22】
薬物組成物であって、前記薬物組成物が(i) 請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片、請求項15に記載の組み換えタンパク質、請求項16に記載の単離された核酸分子、請求項17に記載のベクター、請求項21に記載の抗体複合体またはこれらの組み合わせ、ならびに (ii) 薬学的に許容される担体を含む、薬物組成物。
【請求項23】
前記抗体が、腫瘍浸潤性Treg細胞を除去する効果を有する、請求項22に記載の薬物組成物。
【請求項24】
CCR8および/またはCCLlが介在する疾患を治療する方法であって、有效量の請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片、請求項15に記載の組み換えタンパク質、請求項16に記載の単離された核酸分子、請求項17に記載のベクター、請求項21に記載の抗体複合体または請求項22に記載の薬物組成物をそれを必要とする被験者に投与することを含む、方法。
【請求項25】
前記疾患はがんである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患は乳がん、胃がん、卵巣がん、膵臓がん、肝臓がん、結腸がんまたは膵臓がんである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記疾患は神経因性疼痛である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記神経因性疼痛が、糖尿病または脊髄損傷によって引き起こされる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患が、IgG4関連疾患である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記IgG4関連疾患がIgG4関連硬化性胆管炎である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
被験者中のCCR8のレベルを決定する方法であって、前記方法が(a)前記被験者からサンプルを得ること;(b)前記サンプルを請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片と接触させること;および (c) 被験者中のCCR8のレベルを決定することを含む、方法。
【請求項32】
活性成分のa) 診断試薬またはキットの製造;および/または (b) CCR8に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物の製造のための使用であって、前記活性成分が、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片、請求項15に記載の組み換えタンパク質、請求項16に記載の単離された核酸分子、請求項17に記載のベクター、請求項20に記載の抗体複合体およびこれらの組み合わせから選択される、使用。
【請求項33】
前記疾患はがんである、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記疾患は乳がん、胃がん、卵巣がん、膵臓がん、肝臓がん、結腸がんまたは膵臓がんである、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
検出キットであって、前記検出キットが
(i) 一次抗体として請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体を含有する第一の容器;及び
(ii)前記一次抗体に対する二次抗体を含有する第二の容器を含む、検出キット。
【請求項36】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組み換えポリペプチドを製造する方法であって、前記方法が
(i) 発現に適切な条件下において操作された宿主細胞を培養すること;及び
(ii)前記培養物から抗体、其抗原結合断片または組み換えタンパク質である組み換えポリペプチドを単離することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規抗CCR8抗体またはその抗原結合断片、前記抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸、前記核酸を含むベクターおよび宿主細胞、前記抗体またはその抗原結合断片の生産方法、有効成分として前記抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物、ならびにCCR8が介在する疾患の治療のための前記抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカインは、炎症の細胞動員および活性化に関する低分子量走化性サイトカインファミリーである。ケモカインは、ケモカイン受容体(Gタンパク質-カップリング受容体)と結合することによって、広範囲の細胞機能を調節し且つその効果を発揮することにより、免疫系の様々な細胞サブセットの走化性および活性化を引き起こす。タンパク質のN末端システイン残基の位置に応じて、ケモカインは、CC、CXC、CX3CおよびXCを含む様々なクラスに分類される。CCケモカインは、CCモチーフを含み、ここで、最初の二つのシステインは、任意のアミノ酸によって区切らず、CXCケモカインは、CXCモチーフを含み、ここで、最初の二つのシステインは、ランダムなアミノ酸によって区切られる。ケモカインの活性は、主に白血球表面受容体への緊密な結合によって媒介される。
【0003】
正常な生理状態では、ケモカインおよびケモカインレセプターの発現は繊細かつ厳密に制御されているが、ケモカインおよびケモカインレセプターのいずれかの調節不全な発現および活性化が、しばしば自己免疫疾患やがんなどの病気を引き起こす。
【0004】
人体には、がんの発生を防ぐように設計された多くの組み込みメカニズムがある。この点で、免疫系は、遺伝子突然変異を有する細胞を根絶する上で重要な役割を果たすと考えられる。従って、がん細胞は、通常免疫系の細胞に識別されないように進化して存続することがよくある。特に、研究によると、末梢循環中および腫瘍微小環境中の調節性Tリンパ球(本明細書では「Treg細胞」と呼ばれる場合がある)のレベルの上昇は、がん患者における免疫阻害の根底にあることを示す。Treg細胞の数の増加も、がん免疫療法の実施の成功に対する障壁として特定される。
【0005】
CCR8(C-Cモチーフケモカイン受容体8)は、主にTreg細胞およびTh2細胞で発現されるが、Th1細胞で発現されない。CCR8(CCR8+Treg細胞)を発現するCD4+Foxp3+Treg細胞のサブセットは、免疫阻害の主要な駆動要素であることが示され、Tregの機能および阻害に重要である。さらに、CCR8は、様々な腫瘍タイプの腫瘍常在Treg細胞によって選択的にアップレギュレートされる特定のマーカーである。CCR8+Treg細胞の増加が腫瘍逃避メカニズムに有利であることは、数多くの報告で示される。臨床的には、乳がん、胃がん、卵巣がん、膵臓がん、肝臓がん、結腸がん等の様々ながんのタイプの腫瘍微小環境におけるTreg細胞の増加は、予後不良と関連する。メカニズムにおいて、Treg細胞は、様々な抗腫瘍免疫応答を阻害するだけでなく、腫瘍微小環境で血管新生も促進する。腫瘍微小環境においてのがん細胞と免疫細胞は、CCR8の特異的リガンドであるCCL1を分泌し、CCR8+ Treg細胞を腫瘍微小環境にリクルートする。CCR8はまた、腫瘍微小環境におけるTregの増殖と拡大に関与している。
【0006】
CCR8阻害剤は、腫瘍浸潤Treg細胞を減少させることにより、腫瘍成長を防ぐことを示す。従って、CCR8は、がんの潜在的な治療標的と見なされる。さらに、CCR8は、脊髄ニューロンで発現し、脊髓CCL1の主要な供給源でもある。CCL1(SCYA1、I-309、TCA3、P500またはSISeとしても呼ばれる)は、CCサブファミリーのよく特徴付けられたケモカインである。細胞表面ケモカイン受容体CCR8と相互作用することにより、免疫細胞を引き付ける。CCL1及びCCR8神経シグナル伝達経路は、糖尿病、脊髄損傷によって引き起こされる神経因性疼痛でも重要な役割を果たす。従って、CCL1/CCR8軸は、糖尿病性神経障害の治療における医薬品開発の有望な新しい標的になる可能性がある。
【0007】
CCL1-CCR8相互作用はまた、IgG4関連硬化性胆管炎(ISC)などのIgG4関連疾患(IgG4-RD)において重要な役割を果たすことが報告されている。
【0008】
最近同定された別のCCR8リガンドは、β-ケモカインサブファミリーのケモカインであるCCL18である。原発性シェーグレン症候群および対照被験者と比較して、IgG4-RD患者の口唇唾液腺(LSG)および涙腺におけるCCL18-CCR8軸は、特異的にアップレギュレートされている。様々な細胞の走化性、線維化の誘導、IgG4産生の増強などの重要な病因的役割に基づき、この軸は、IgG4-RDの新規治療標的となる可能性がある
【0009】
様々な疾患の発病メカニズムにおけるCCR8の役割を考慮すると、CCR8が介在するがん、神経因性疼痛、および自己免疫性膵炎、好酸球性血管中心性線維症、線維化縦隔炎、肥厚性硬膜炎、広範な尿細管間質沈着を伴う特発性低補体性尿細管間質性腎炎、炎症性大動脈瘤、炎症性偽腫瘍、キュットナー腫瘍(慢性硬化性唾液腺炎)、縦隔線維症、ミクリッツ症候群、多病巣性線維硬化症、大動脈周囲炎および動脈周囲炎、後腹膜線維症(オーモンド病)、リーデル甲状腺炎、硬化性腸間膜炎、硬化性膵炎、硬化性胆管炎を含むが、これらに限定されないIgG4関連疾患(IgG4-RD)などの疾患の治療に使用できる、CCR8の活性を阻害する抗体を調製する必要がある。
【0010】
要約すると、ヒトにおいて最小限の副作用を引き起こしながら、CCR8シグナル伝達を効果的に阻害する抗CCR8抗体を含む、より効果的な治療薬が当技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、CCR8を特異的に発現するTreg細胞等によって媒介される免疫抑制を抑制することにより免疫を活性化する、CCR8と特異的に結合する抗CCR8抗体又はその抗原結合断片を提供することである。さらに、本明細書に開示される抗CCR8抗体またはその抗原結合断片は、CCL1/CCR8軸を制御することにより、神経因性疼痛を軽減することができる。このような抗体または抗原結合断片は、治療および診断目的のためにCCR8を発現する細胞を標的として使用され得る。
【0012】
本発明者らはまた、本明細書に開示されるヒト化抗体がCCR8に特異的に結合するだけでなく、強力なCCL1-CCR8シグナル伝達ブロックおよび改善された種の交差反応性を示すことを見出した。したがって、本発明の主な利点は以下の通りである:
(a)本発明の抗体は、優れた生物活性と特異性を有し、細胞表面CCR8に対して良好な結合親和性を有し、CCR8標的化抗体として使用され得る;
(b)本発明の完全ヒト抗体は、免疫抗体に匹敵する活性を有するだけでなく、免疫原性も低い;
(c)本発明の抗体は、CCLl誘導性走化性を阻害する顕著な効果を有するだけでなく、他の異常なCCL1/CCR8軸関連疾患にも適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の態様では、抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片は、
a) 配列番号2、3および4;もしくは
b) 配列番号2、3および10;もしくは
c) 配列番号2、16および17;もしくは
d) 配列番号22、23および24;もしくは
e) 配列番号32、33および34;もしくは
f) 配列番号40、41および42;もしくは
g) 配列番号47、48および49;もしくは
h) 配列番号40、3および55;もしくは
i) 配列番号58、59および60;もしくは
j) 配列番号58、3および63;もしくは
k) 配列番号2、3および67;もしくは
l) 配列番号72、73および74;もしくは
m) 配列番号58、79および80;もしくは
n) 配列番号58、83および84;もしくは
o) 配列番号58、83および88;もしくは
からなる群から選択されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む少なくとも一つの重鎖可変領域、および、
a) 配列番号6、7および8;もしくは
b) 配列番号12、7および14;もしくは
c) 配列番号19、7および14;もしくは
d) 配列番号26、20および27;もしくは
e) 配列番号30、20および27;もしくは
f) 配列番号36、37および38;もしくは
g) 配列番号44、37および45;もしくは
h) 配列番号51、52および53;もしくは
i) 配列番号6、7および8;もしくは
j) 配列番号6、7および14;もしくは
k) 配列番号65、7および14;もしくは
l) 配列番号69、70および13;もしくは
m) 配列番号76、37および77;もしくは
n) 配列番号86、7および14、
から選択されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む少なくとも一つの軽鎖可変領域を含み、ここで前記抗体またはその抗原結合断片はCCR8に特異的に結合し;前記アミノ酸配列のいずれかが、任意選択で1~5(もしくは1、2、3)個のアミノ酸の付加、欠失、修飾および/または置換により形成される、結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0014】
好ましい実施態様では、前記抗体またはその抗原結合断片が、
a) 配列番号2、3、4、6、7および8;もしくは
b) 配列番号2、3、10、12、7および14;もしくは
c) 配列番号2、16、17、19、7および14;もしくは
d) 配列番号22、23、24、26、20および27;もしくは
e) 配列番号22、23、24、30、20および27;もしくは
f) 配列番号32、33、34、36、37および38;もしくは
g) 配列番号40、41、42、44、37および45;もしくは
h) 配列番号47、48、49、51、52および53;もしくは
i) 配列番号40、3、55、6、7および8;もしくは
j) 配列番号58、59、60、6、7および14;もしくは
k) 配列番号58、3、63、65、7および14;もしくは
l) 配列番号2、3、67、69、70および13;もしくは
m) 配列番号72、73、74、76、37および77;もしくは
n) 配列番号58、79、80、6、7および14;もしくは
o) 配列番号58、83、84、86、7および14;もしくは
p) 配列番号58、83、88、86、7および14。
から選択されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む。
【0015】
好ましい実施態様では、前記重鎖がさらに重鎖定常領域を含みおよび/または前記軽鎖がさらに軽鎖定常領域を含む。
【0016】
好ましい実施態様では、前記抗体の3つのHCDRおよび3つのLCDRにおいて、付加、欠失、修飾および/または置換されているアミノ酸の数は1-5(例えば、1-3、好ましくは1-2、より好ましくは1)である。
【0017】
好ましい実施態様では、前記抗体の重鎖可変領域はヒトまたはヒト化フレームワーク領域をさらに含み、および/または前記抗体の軽鎖可変領域はヒトまたはヒト化フレームワーク領域をさらに含む。
【0018】
好ましい実施態様では、前記抗体またはその抗原結合断片は、
a) 配列番号1のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号5のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
b) 配列番号9のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号11のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
c) 配列番号15のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号18のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
d) 配列番号21のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号25のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
e) 配列番号28のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号29のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
f) 配列番号31のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号35のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
g) 配列番号39のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号43のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
h) 配列番号46のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号50のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
i) 配列番号54のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号56のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
j) 配列番号57のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号61のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
k) 配列番号62のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号64のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
l) 配列番号66のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号68のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
m) 配列番号71のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号75のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
n) 配列番号78のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号81のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
o) 配列番号82のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号85のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
p) 配列番号87のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号89のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
q) 配列番号90のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号91のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
r) 配列番号92のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号93のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
s) 配列番号94のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号95のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
t) 配列番号96のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号97のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
u) 配列番号92のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号98のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
v) 配列番号92のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号99のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
w) 配列番号100のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号101のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
x) 配列番号102のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号103のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
y) 配列番号104のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号105のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
z) 配列番号106のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号107のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
aa) 配列番号108のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号109のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域;もしくは
bb) 配列番号110のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域および配列番号111のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域
から選択される重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
好ましい実施態様では、前記抗体はモノクローナル抗体である。
【0019】
好ましい実施態様では、前記抗体は二本鎖抗体または一本鎖抗体である。
【0020】
好ましい実施態様では、前記抗体は完全長抗体タンパク質または抗原結合断片である。
【0021】
好ましい実施態様では、前記抗体は組み換え抗体である。
【0022】
好ましい実施態様では、前記抗体またはその抗原結合断片はキメラである。
【0023】
好ましい実施態様では、前記抗体は二重特異性または多重特異性抗体である。
【0024】
別の好ましい実施態様では、前記CCR8特異性抗体は、(i) 一本鎖抗体、一本鎖可変断片(scFv)、ヒンジ領域を欠く一価抗体またはミニボディー;(ii) Fab、Fab'またはF(ab')2断片;(iii) 完全長抗体;および (iv)ヒトIgG Fcドメインを含む抗体から選択される。
【0025】
好ましい実施態様では、前記抗体またはその抗原結合断片はヒトであるか、またはヒト化されている。
【0026】
好ましい実施態様では、前記抗体はヒト抗CCR8抗体である。
【0027】
好ましい実施態様では、前記抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1、9、15、21、28、31、39、46、54、57、62、66、71、78、82、87、90、92、94、96、100、102、104、106、108または110に対して少なくとも(≧)85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるポリペプチド配列を有する重鎖可変領域、または配列番号5、11、18、25、29、35、43、50、56、61、64、68、75、81、85、89、91、93、95、97、98、99、101、103、105、107、109または111に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0028】
特に好ましい実施態様では、前記CCR8特異性抗体的VH鎖およびVL鎖は、以下から選択される各々のVH鎖およびVL鎖のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、なおより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する:配列番号1および5;もしくは配列番号9および11;もしくは配列番号15および18;もしくは配列番号21および25;もしくは配列番号28および29;もしくは配列番号31および35;もしくは配列番号39および43;もしくは配列番号46および50;もしくは配列番号54および56;もしくは配列番号57および61;もしくは配列番号62および64;もしくは配列番号66および68;もしくは配列番号71および75;もしくは配列番号78および81;もしくは配列番号82および85;もしくは配列番号87および89;もしくは配列番号90および91;もしくは配列番号92および93;もしくは配列番号94および95;もしくは配列番号96および97;もしくは配列番号92および98;もしくは配列番号92および99;もしくは配列番号100および101;もしくは配列番号102および103;もしくは配列番号104および105;もしくは配列番号106および107;もしくは配列番号108および109;もしくは配列番号110および111。
【0029】
いくつかの実施態様では、本明細書には、ヒトCCR8のY94からK107までから選択される1以上のアミノ酸残基を含むエピトープでヒトCCR8に結合する、抗体または抗原結合断片が開示される。
【0030】
いくつかの実施態様では、本明細書には、ヒトCCR8のY94、L95、L96、D97、Q98、V100、T103、V104、M105およびK107から選択される1以上のアミノ酸残基を含むエピトープでヒトCCR8に結合する抗体または抗原結合断片が開示される。
【0031】
いくつかの実施態様では、本明細書には、ヒトCCR8のY94、L95、L96、Q98、V100、T103、V104、M105およびK107から選択される1個のアミノ酸残基を含むエピトープでヒトCCR8に結合する抗体または抗原結合断片が開示される。
【0032】
別の特に好ましい実施態様では、前記CCR8特異性抗体はIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgM抗体である。
【0033】
別の好ましい実施態様では、前記CCR8特異性抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4および合成IgGから選択されるIgGである。
【0034】
好ましい実施態様では、前記抗体は薬物複合体の形である。
【0035】
第二の態様では、
(i) 本願の第一の態様に記載の抗体またはその抗原結合断片;および
(ii) 発現および/または精製を支援する任意に選ばれるタグ配列を含む、組換えタンパク質(またはポリペプチド)を提供する。
【0036】
好ましい実施態様では、前記のタグ配列は6Hisタグを含む。
【0037】
好ましい実施態様では、前記組換えタンパク質(またはポリペプチド)は融合タンパク質を含む。
【0038】
好ましい実施態様では、前記組み換えタンパク質は、単量体、二量体、または多量体である。
【0039】
第三の態様では、本発明の第一の態様のモノクローナル抗体または抗原結合断片、または第二の態様の組み換えタンパク質をコードする、単離された核酸を提供する。
【0040】
第三の態様では、第一の態様の抗体または抗原結合断片または本発明の第二の態様の組み換えタンパク質をコードする、単離された核酸を提供する。
【0041】
第四の態様では、本発明の第一の態様の抗体または抗原結合断片、または第二の態様の組み換えタンパク質をコードする前記単離された核酸を含む、ベクターを提供する。
【0042】
好ましい実施態様では、前記ベクターは、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルスなどの哺乳動物細胞ウイルス、またはその他のベクターを含む。
【0043】
第五の態様では、(i)本発明の第一の態様の抗体または抗原結合断片、または第二の態様の組み換えタンパク質、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる抗体部分、ならびに
(ii)検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、前記抗体部分とカップリングするカップリング部分
を含有する抗体複合体を提供する。
【0044】
好ましい例では、前記の抗体部分と前記のカップリング部分は化学結合またはリンカーを介してカップリングしている。
【0045】
第六の態様では、(i)本発明の第一の態様の抗体またはその抗原結合断片、本発明の第二の態様の組み換えタンパク質、本発明の第三の態様の単離された核酸(特にDNAまたはRNA)、本発明の第四の態様のベクター、本発明の第五の態様の抗体複合体またはこれらの組み合わせ、ならびに(ii)薬学的に許容される担体を含有する薬物組成物を提供する
【0046】
好ましい実施態様では、前記抗体は、腫瘍浸潤性Treg細胞を除去する効果を有する。
【0047】
第七の態様では、有效量の第一の態様の抗体またはその抗原結合断片、第二の態様の組み換えタンパク質、第三の態様の単離された核酸(特にDNAまたはRNA)、第四の態様のベクター、第五の態様の抗体複合体または第七の態様の薬物組成物またはこれらの組み合わせをそれを必要とする被験者に投与することを含む、CCR8および/またはCCLlが介在する疾患を治療する方法;または、第一の態様の抗体またはその抗原結合断片、第二の態様の組み換えタンパク質、第三の態様の単離された核酸(特にDNAまたはRNA)、第四の態様のベクター、第五の態様の抗体複合体または第七の態様の薬物組成物またはこれらの組み合わせのCCR8および/またはCCLlが介在する疾患を治療するための薬物のための使用;または、CCR8および/またはCCLlが介在する疾患を治療することにおける使用のための第一の態様の抗体またはその抗原結合断片、第二の態様の組み換えタンパク質、第三の態様の単離された核酸(特にDNAまたはRNA)、第四の態様のベクター、第五の態様の抗体複合体または第七の態様の薬物組成物またはこれらの組み合わせを提供する。
【0048】
好ましい実施態様では、前記CCR8および/またはCCLlが介在する疾患はがんである。
【0049】
特に好ましい実施態様では、前記がんは乳がん、胃がん、卵巣がん、膵臓がん、肝臓がん、結腸がんまたは膵臓がんである。
【0050】
好ましい実施態様では、前記疾患は異常なCCL1/CCR8軸に関連する。
【0051】
特に好ましい実施態様では、前記異常なCCL1/CCR8軸に関連する疾患は神経因性疼痛である。
【0052】
特に好ましい実施態様では、前記神経因性疼痛は、糖尿病または脊髄損傷によって引き起こされる。
【0053】
特に好ましい実施態様では、前記疾患は、IgG4関連疾患である。
【0054】
特に好ましい実施態様では、前記IgG4関連疾患は硬化性胆管炎、自己免疫性膵炎、好酸球性血管中心性線維症、線維化縦隔炎、肥厚性硬膜炎、広範な尿細管間質沈着を伴う特発性低補体性尿細管間質性腎炎、炎症性大動脈瘤、炎症性偽腫瘍、キュットナー腫瘍(慢性硬化性唾液腺炎)、縦隔線維症、ミクリッツ症候群、多病巣性線維硬化症、大動脈周囲炎および動脈周囲炎、後腹膜線維症(オーモンド病)、リーデル甲状腺炎、硬化性腸間膜炎、または硬化性膵炎である。
【0055】
第八の態様では、(a)被験者からサンプルを得ること;(b)サンプルを本発明の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片と接触させること;および(c)被験者中のCCR8のレベルを決定することを含む、被験者中のCCR8のレベルを決定する方法を提供する。
【0056】
好ましくは、前記サンプルは組織サンプルまたは血液サンプルであり、かつ前記組織サンプルはがん組織サンプルであり得る。
【0057】
第九の態様では、活性成分の (a) 診断試薬またはキットの製造;および/または (b) CCR8に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物の製造のための、使用を提供し、ここで前記活性成分は、第一の態様の抗体またはその抗原結合断片、第二の態様の組み換えタンパク質、第三の態様の単離された核酸(特にDNAまたはRNA)、第四の態様のベクター、第五の態様の抗体複合体およびこれらの組み合わせから選択される。
【0058】
好ましい実施態様では、前記診断試薬は検出シートまたは検出プレートである。
【0059】
好ましい実施態様では、前記CCR8に関連する疾患はがんを含む。
【0060】
特に好ましい実施態様では、前記がんは乳がん、胃がん、卵巣がん、膵臓がん、肝臓がん、結腸がんまたは膵臓がんである。
【0061】
好ましい実施態様では、前記診断試薬またはキットは:
(i)サンプルにおけるCCR8タンパク質の検出;および/または
(ii)脊髄ニューロンにおける内因性のCCR8タンパク質の検出;および/または
(iii)CCR8タンパク質を発現する調節性Tリンパ球の検出に使用される。
【0062】
好ましい実施態様では、前記抗体は抗体-薬物複合体(ADC)の形である。
【0063】
第十の態様では、
体外でサンプルにおけるCCR8タンパク質を検出(診断的なものまたは非診断的なものを含む)する方法であって、
(i) 体外において、前記サンプルを本発明の第一の態様中の抗体と接触させること;および
(ii) 抗原-抗体複合体が形成したか否かを検出し、ここで複合体の形成はサンプル中のCCR8タンパク質の存在を示すことを含む、方法を提供する。
【0064】
第十一の態様では、
(1)一次抗体として本発明の抗体を含有する第一の容器、および
(2)本発明の一次抗体に対する二次抗体を含有する第二の容器を含む、
キットを提供する。
【0065】
第十三の態様では、組み換えポリペプチドの製造方法であって、
(a)発現に適切な条件下において、本発明の第五の態様の操作された宿主細胞を培養する工程、
(b)培養物から、本発明の第一の態様の抗体またはその抗原結合断片または本発明の第二の態様の組み換えタンパク質である、組み換えポリペプチドを単離する工程
を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1A図1Aは、クローン103G4、118H1、101E4、84B4、170G6、172E7、2P15、3C11、3O20、4M13、2L15、4D24、1G17、3F11、3F6および4G19のFACS結合分析において、抗体がCCR8過剰発現293F細胞(293F-CCR8)に対しての結合能を有することを示す。
図1B図1Bは、クローン103G4、118H1、101E4、84B4、170G6、172E7、2P15、3C11、3O20、4M13、2L15、4D24、1G17、3F11、3F6および4G19のFACS結合分析において、抗体がCCR8過剰発現293F細胞(293F-CCR8)に対しての結合能を有することを示す。
図1C図1Cは、いくつかのクローンのFACS結合解析において、抗体が親293F細胞と結合しなかったことを示す。
図1D図1Dは、いくつかのクローンのFACS結合解析において、抗体が親293F細胞と結合しなかったことを示す。
図2A図2Aは、抗CCR8抗体(すなわち、抗体クローン84B4)のMDA-MB-231異種移植においての抗腫瘍効果の結果を示す。
図2B図2Bは、抗CCR8抗体(すなわち、抗体クローン101E4)のMDA-MB-231異種移植においての抗腫瘍効果の結果を示す。
図2C図2Cは、抗CCR8抗体(すなわち、抗体クローン170G6)のMDA-MB-231異種移植においての抗腫瘍効果の結果を示す。
図2D図2Dは、抗CCR8抗体(すなわち、抗体クローン3C11)のMDA-MB-231異種移植においての抗腫瘍効果の結果を示す。
図2E図2Eは、抗CCR8抗体(すなわち、抗体クローン2P15)のMDA-MB-231異種移植においての抗腫瘍効果の結果を示す。
図3図3は、3F11hz4および3F11のマウスCCR8 CHOK1に対しての結合親和性の結果を示す。
図4A図4Aは、293T細胞株を用いたFACS結合解析において、抗体3F11hz4のヒトCCR8過剰発現293T細胞(ヒトCCR8-293T)に対しての結合能を有することを示す。
図4B図4Bは、293T細胞株を用いたFACS結合解析において、抗体3F11hz4のラットCCR8過剰発現293T細胞(ラットCCR8-293T)に対しての結合能を有することを示す。
図4C図4Cは、293T細胞株を用いたFACS結合解析において、抗体3F11hz4のイヌCCR8過剰発現293T細胞(イヌCCR8-293T)に対しての結合能を有することを示す。
図4D図4Dは、CHOK1細胞株を用いたFACS結合解析において、抗体3F11hz4のマウスCCR8過剰発現CHOK1細胞(マウスCCR8-CHOK1)に対しての結合能を有することを示す。
図4E図4Eは、293T細胞株を用いたFACS結合解析において、抗体3F11hz4のカニクイザルCCR8過剰発現293T細胞(カニクイザルCCR8-293T)に対しての結合能を有することを示す。
図5A図5Aは、3F11hz4の変異CCR8 293Tに対しての結合親和性を示す。
図5B図5Bは、3F11hz4の変異CCR8 293Tに対しての結合親和性を示す。
図6A図6Aは、3F11hz4のhCCR4 293Tに対しての結合親和性の結果を示す。
図6B図6Bは、3F11hz4のhCX3CR1 293Tに対しての結合親和性の結果を示す。
図7図7は、3F11hz4抗体のHCC827肺がん皮下腫瘍(CD34ヒト化モデル)に対しての抗腫瘍効果を示す。
図8図8は、3F11hz4抗体のH22肝がん皮下腫瘍(シンジェニックモデル)に対しての抗腫瘍効果を示す。
図9図9は、3F11hz4抗体のLLC肺がん皮下腫瘍(シンジェニックモデル)に対しての抗腫瘍効果を示す。
図10図10は、Treg細胞の遊走試験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明者らは、幅広く深く研究したところ、意外に、一連の斬新なアミノ酸配列を有する完全ヒトCCR8抗体を得た。本発明のCCR8抗体は、CCR8タンパク質に対しての優れた高親和性を有するため、同種免疫疾患、自己免疫疾患、アレルギー、炎症性疾患、腫瘍、神経因性疼痛、あるいはIgG4関連疾患などのCCR8関連疾患の治療に有用である。これに基づき、本発明を完成させた。
【0068】
用語
別途定義されていない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する分野の当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。さもなければ、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書で規定されている意味を有する。
【0069】
本明細書で使用する場合、及び添付した特許請求の範囲においては、単数形「a」、「an」及び「the」は、別途文脈が明白に規定していない限り、複数の言及を含むことに留意しなければならない。
【0070】
特に明記しない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などの任意の数値は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、数値は、通常、列挙された値の±10%を含む。例えば、濃度1mg/mLは、0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%(w/v)~10%(w/v)の濃度範囲は、0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用する場合、数値範囲の使用は、全ての可能な部分的範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含み、文脈に明らかに別段の指示がない限り、そのような範囲内の整数及び値の分数を含む。
【0071】
別段の指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連のあらゆる要素を指すと理解すべきである。当業者は、通例の実験だけを使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多数の等価物を認識することになるか、又は確認することがきできるであろう。このような等価物は、本発明に包含されるものとする。
【0072】
本明細書で使用する場合、用語「~を含む(comprises)」、「~を含む(comprising)」、「~を含む(includes)」、「~を含む(including)」、「~を有する(has)」、「~を有する(having)」、「~を含有する(contains)」、若しくは「~を含有する(containing)」、又はそれらの任意の他の変形は、記載された整数又は整数群を包含することを意味するものと理解されるが、任意の他の整数又は整数群の排除を意味するものではなく、非排他的又はオープンエンドであることが意図されている。例えば、構成要素の一覧を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は必ずしもそれらの構成要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されていない、又はそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、若しくは装置が本来具備している他の構成要素を含むことができる。さらに、明確に反対のことを述べない限り、「又は」は包括的「又は」を意味し、排他的「又は」を意味しない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか1つによって満たされる。Aが真であり(又は、存在し)且つBが偽である(又は、存在しない)、Aが偽であり(又は、存在しない)且つBが真である(又は、存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は、存在する)。
【0073】
本明細書で使用する場合、多数の列挙された要素間の接続語「及び/又は」は、個々の選択肢及び組み合わせた選択肢の両方を包含すると理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって結合される場合、第1選択肢は第2要素を伴わない第1要素の適用性を指す。第2選択肢は、第1要素を伴わない第2要素の適用性を指す。第3選択肢は、第1及び第2要素を合わせた適用性を指す。これらの選択肢のいずれか1つは、本明細書で使用する用語「及び/又は」の意味の範囲内に含まれ、このため用語「及び/又は」の要件を満たすと理解される。2つ以上の選択肢の同時の適用性は、さらに用語「及び/又は」の意味の範囲内に含まれ、このため用語「及び/又は」の要件を満たすと理解される。
【0074】
本明細書で使用する場合、「~からなる(consists of)」という用語、又は「~からなる(consist of)」若しくは「~からなる(consisting of)」などのその変形は、本明細書及び特許請求の範囲を通して使用されるとき、記載された整数又は整数群を全て包含するが、その特定の方法、構造、又は組成物にさらなる整数又は整数群を加えることはできないことを意味する。
【0075】
本明細書で使用する場合、「実質的に~からなる(consists essentially of)」という用語、又は「実質的に~からなる(consist essentially of)」若しくは「実質的に~からなる(consisting essentially of)」などのその変形は、本明細書及び特許請求の範囲を通して使用されるとき、記載された整数又は整数群を全て包含し、且つ、その特定の方法、構造、又は組成物の基本の又は新規の特性を実質的に変化させない記載された整数又は整数群を任意選択的に包含することを意味する。M.P.E.P.2111.03節を参照されたい。
【0076】
本明細書で使用する場合、「被験者」は、あらゆる動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。用語「哺乳動物」は、本明細書で使用する場合、あらゆる哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ネズミ、ウサギ、モルモット、サル、ヒトなど、より好ましくはヒトが挙げられるが、これに限定されない。
【0077】
語「右」、「左」、「下」及び「上」は、参照される図面における方向を指定する。
【0078】
また、本明細書で好ましい発明の構成要素の寸法又は特性に言及するときに使用される「約」、「略」、「一般に」、「実質的に」などの用語は、当業者に理解されるとおり、記載された寸法/特性が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同じか又は類似している、そこからのわずかな変形を排除しないことを示すことは理解されたい。少なくとも、そのような数値パラメータを含む言及は、当該技術分野で受容されている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定又はその他の系統誤差、製造上の公差など)を使用して、最下位数を変化させない変動を含むであろう。
【0079】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列(例えば、抗CCR8抗体及びそれらをコードするポリヌクレオチド、並びにCCR8ポリペプチドおよびそれらをコードするポリヌクレオチド)の文脈における用語「同一」又はパーセント「同一性」は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、又は目視による調査によって測定されるとおり、最大の一致について比較及び整列される場合に、同じあるか、又は特定のパーセンテージの同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。
【0080】
配列比較のために、通常1つの配列が参照配列として作用し、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験配列及び参照配列をコンピューターに入力し、必要に応じて部分配列の座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次に、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメータに基づいて参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0081】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)によって、又は目視による調査(一般に、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,Greene Publishing Associates,Inc.とJohn Wiley & Sons,Inc.,の合弁事業(1995年増補版)(Ausubel)を参照のこと)によって実行され得る。
【0082】
パーセント配列同一性及び配列類似性を判定するのに好適なアルゴリズムの例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402において記載される。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同一の長さの文字列とアラインメントさせた場合、いくつかの正の値の閾値スコアTと一致又はそれを満たす、クエリ配列中の長さWの短い文字列を同定することにより、高スコア配列対(HSP)をまず同定することを含む。Tは隣接文字列スコア閾値と称される(Altschul et al、上記)。これらの最初の隣接文字列ヒットは、より長いHSPを含む文字列を探し出すための探索を開始するためのシードとして作用する。次に、文字列ヒットは、累積アラインメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に伸長される。
【0083】
累積スコアは、ヌクレオチド配列に関して、パラメータM(一致残基の対に関する報酬スコア;常に>0)及びN(不適正残基に関するペナルティースコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列に関して、スコアリングマトリックスは、累積スコアを計算するために使用される。各方向における文字列ヒットの伸長は、累積アラインメントスコアが、その最大到達値から量X減少する場合;1つ以上の負のスコアの残基のアラインメントが蓄積することにより、累積スコアが0以下となる場合;又はいずれかの配列の端に到達する場合に停止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、ワード長(W)が11、期待値(E)が10、M=5、N=-4、及び両鎖の比較を初期設定として使用する。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、ワード長(W)が3、期待値(E)が10、及びBLOSEIM62スコアリングマトリックスを初期設定として使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989))。
【0084】
パーセント配列同一性を計算することに加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析を行う(Karlin & Altschul,Proc.NatT.Acad.Sci. ETSA 90:5873-5787(1993))。BLASTアルゴリズムによりもたらされる類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率を示す最小合計確率(P(N))である。例えば、試験核酸と参照核酸の比較における最小合計確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、及び最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は参照配列と類似していると考えられる。
【0085】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることのさらなる指標は、以下に記載されるとおり、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、第2の核酸によってコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは通常、例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合には第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0086】
本明細書で用いる「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの連鎖と定義される。その上、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で用いる核酸およびポリヌクレオチドは互換的である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、それらはモノマー性「ヌクレオチド」に加水分解されうるという一般知識を有する。モノマー性ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解されうる。本明細書で用いるポリヌクレオチドには、組換え手段、すなわち通常のクローニング技術およびPCR(商標)などを用いて組換えライブラリーまたは細胞ゲノムから核酸配列をクローニングすること、および合成手段を非限定的に含む、当技術分野で利用可能な任意の手段によって得られる、すべての核酸配列が非限定的に含まれる。
【0087】
本明細書で用いる場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基で構成される化合物のことを指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなくてはならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成しうるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって相互に結合した2つまたはそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書で用いる場合、この用語は、例えば、当技術分野において一般的にはペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも称される短鎖、ならびに当技術分野において一般にタンパク質と称される長鎖の両方のことを指し、それらには多くの種類がある。「ポリペプチド」には、いくつか例を挙げると、例えば、生物学的活性断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0088】
本明細書で用いられる「抗原結合断片」という用語は、対象の抗原に結合する免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖の少なくとも1つのCDRを含有するポリペプチド断片を指し、この抗原は、本明細書に記載される特に好ましい実施形態では、C-Cモチーフケモカイン受容体8(CCR8)に結合する。この点で、本明細書で記載される抗体の抗原結合断片は、CCR8に結合する抗体に由来する、本明細書で示されるVH配列および/またはVL配列の1、2、3、4、5、または6つ全てのCDRを含みうる。本明細書で記載されるCCR8特異的抗体の抗原結合断片は、CCR8への結合が可能である。他の実施形態では、抗原結合断片の結合が、CCR8リガンドのCCR8受容体への結合を防止または阻害し、さもなければリガンドの受容体への結合から結果として生じる生物学的応答をブロックする。ある特定の実施形態では、抗原結合断片が、CCR8に特異的に結合し、かつ/またはその生物学的活性を阻害もしくはモジュレートする。
【0089】
「抗原」という用語は、抗体などの選択的結合剤による結合が可能であり、加えて、動物において、この抗原のエピトープへの結合が可能な抗体を産生するのに用いることが可能な分子または分子の部分を指す。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有しうる。
【0090】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体への特異的結合が可能である、任意の決定基、好ましくはポリペプチド決定基を包含する。エピトープとは、抗体が結合する抗原の領域である。ある特定の実施形態では、エピトープ決定基に、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニルなど、分子の化学的に活性な表面の組み分け(grouping)が含まれ、ある特定の実施形態では、特定の三次元構造特徴および/または特定の電荷特徴を有しうる。ある特定の実施形態では、抗体は、タンパク質および/または高分子の複合混合物中でその標的抗原を優先的に認識する場合に、抗原に特異的に結合するという。抗体は、ある実施形態によれば、抗体-抗原結合についての平衡解離定数が10-6M未満もしくはそれに等しいか、または10-7M未満もしくはそれに等しいか、10-8M未満もしくはそれに等しい場合に、特異的に抗原に結合するといわれることができる。一部の実施形態では、平衡解離定数が10-9M未満もしくはそれに等しい場合もあり、10-10M未満もしくはそれに等しい場合もある。
【0091】
「ベクター」という用語は、コード情報を宿主細胞へと導入するのに用いられる任意の分子(例えば、核酸、プラスミド、またはウイルス)を指すのに用いられる。「発現ベクター」という用語は、宿主細胞の形質転換に適し、挿入された異種核酸配列の発現を誘導し、かつ/または制御する核酸配列を含有するベクターを指す。発現には、転写、翻訳、および、イントロンが存在する場合は、RNAスプライシングなどの過程が含まれるがこれらに限定されない。
【0092】
C-Cモチーフケモカイン受容体8(CCR8)
CCR8は、以前はCy6、CKR-L1またはTER1とも呼ばれていたが、胸腺、脾臓などで発現するGタンパク質共役型7回膜貫通型CCケモカイン受容体タンパク質である。このタンパク質をコードする遺伝子はヒト染色体3p21に存在する。ヒトCCR8は355個のアミノ酸からなる。CCL1はCCR8の内因性リガンドとして知られている。ヒトCCR8 cDNAはGenBank ACC番号M_005201.3で表されるヌクレオチド配列によって構成され、マウスCCR8 cDNAはGenBank ACC番号NM_007720.2で表されるヌクレオチド配列によって構成される。
【0093】
本発明のCCR8には、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、イヌ、ブタ、およびサルおよびヒトを含む霊長類哺乳動物に由来するものが含まれる。ヒトCCR8が好ましい。
【0094】
抗体
本発明は、全般的に、単離された抗CCR8抗体、当該抗体をコードしている核酸及び発現ベクター、当該ベクターを含有する組換え細胞、並びに当該抗体を含む組成物に関する。抗体を作製する方法、及びがんを含む疾患を治療するために抗体を使用する方法も提供される。本発明の抗体は、CCR8に対する高親和性結合、CCR8に対する高い特異性、並びに単独で又は他の抗がん療法と組み合わせて投与されたときに、それを必要とする被験者および動物モデルにおいて腫瘍の成長を阻害する能力を含むがこれらに限定されない、1つ以上の望ましい機能特性を有する。
【0095】
全般的な態様では、本発明は、CCR8に特異的に結合する単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0096】
本明細書で使用するとき、用語「抗体」は、広義で使用され、免疫グロブリン、又はモノクローナル又はポリクローナルである、ヒト、ヒト化、複合、及びキメラ抗体を含む抗体分子並びに抗体断片を含む。全般的には、抗体とは、特定の抗原に対する結合特異性を示すタンパク質又はペプチド鎖である。抗体の構造は、公知である。免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて5つの主なクラス(すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM)に割り当てることができる。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。したがって、本発明の抗体は、5つの主要なクラス又は対応する下位クラスのいずれかのものであることができる。本発明の抗体はIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4であることが好ましい。脊椎動物種の抗体軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて2つの明確に異なるタイプ、すなわちκ及びλのうちの一方に割り当てることができる。したがって、本発明の抗体は、κ又はλ軽鎖定常ドメインを含有することができる。特定の実施形態によれば、本発明の抗体は、ラット又はヒト抗体由来の重鎖及び/又は軽鎖定常領域を含む。重及び軽定常ドメインに加えて、抗体は、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域からなる抗原結合領域を含有し、これらのそれぞれは3つのドメイン(すなわち相補性決定領域1~3;CDR1、CDR2、及びCDR3)を含有する。軽鎖可変領域ドメインは、あるいはLCDR1、LCDR2、及びLCDR3と称され、重鎖可変領域ドメインは、あるいはHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と称される。
【0097】
本明細書で使用するとき、用語「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、CD33に特異的に結合する単離された抗体は、CCR8に結合しない抗体を実質的に含まない)。更に、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない。
【0098】
本明細書で使用するとき、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量に存在する可能性のある自然発生変異を除いて同一である。本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ技術、単一リンパ球遺伝子クローニング技術、又は組換えDNA法によって作製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、トランスジェニック非ヒト動物、例えば、トランスジェニックマウス又はラットから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって生成され得、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する。
【0099】
本明細書で使用するとき、用語「抗原結合断片」は、例えば、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、一本鎖抗体分子(scFv)、単一ドメイン抗体(sdab)scFv二量体(二価ダイアボディ)、1つ以上のCDRを含む抗体の一部から形成される多重特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、又は抗原に結合するが完全な抗体構造を含まない任意の他の抗体断片などの抗体断片を指す。抗原結合断片は、親抗体又は親抗体断片が結合する同じ抗原に結合することができる。特定の実施形態によれば、抗原結合断片は、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域、及び重鎖のFd断片を含む。他の特定の実施形態によれば、抗原結合断片はFab及びF(ab’)を含む。
【0100】
本明細書で使用するとき、用語「一本鎖抗体」は、約15~約20個のアミノ酸の短いペプチドによって接続される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、この分野における従来の一本鎖抗体を指す。本明細書で使用するとき、用語「単一ドメイン抗体」は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域を含むか、又は重鎖可変領域のみを含む、この分野における従来の単一ドメイン抗体を指す。
【0101】
本明細書で使用するとき、用語「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体、又は当該技術分野において既知の任意の技術を用いて作製される、ヒトによって産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体のこの定義は、インタクトな若しくは完全長の抗体、その断片、並びに/又は少なくとも1つのヒト重鎖及び/若しくは軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。
【0102】
本明細書で使用するとき、用語「ヒト化抗体」とは、抗体の抗原結合特性が保持されるが、人体における抗原の抗原性が低下するように、改変により配列相同性をヒト抗体のそれに対して増加させた非ヒト抗体を意味する。
【0103】
本明細書で使用するとき、用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2つ以上の種に由来する抗体を指す。軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、多くの場合、所望の特異性、親和性、及び能力を有する1つの種の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)に由来する抗体の可変領域に対応し、一方で定常領域は、その種における免疫応答の誘発を回避するために、別の種の哺乳動物(例えば、ヒト)に由来する抗体の配列に対応する。
【0104】
本明細書で使用するとき、用語「多重特異性抗体」は、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む抗体を指し、複数のうちの第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第1のエピトープに対する結合特異性を有し、複数のうちの第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第2のエピトープに対する結合特異性を有する。ある実施形態では、第1及び第2のエピトープは、同じ抗原、例えば、同じタンパク質(又は多量体タンパク質のサブユニット)上にある。ある実施形態では、第1及び第2のエピトープは、重複するか、又は実質的に重複する。ある実施形態では、第1及び第2のエピトープは、重複しないか、又は実質的に重複しない。ある実施形態では、第1及び第2のエピトープは、異なる抗原、例えば、異なるタンパク質(又は異なる多量体タンパク質のサブユニット)上にある。ある実施形態では、多重特異性抗体は、第3、第4、又は第5の免疫グロブリン可変ドメインを含む。ある実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体分子、三重特異性抗体分枝、又は四重特異性抗体分子である。
【0105】
本明細書で使用するとき、用語「二重特異性抗体」は、2つ以下のエピトープ又は2つ以下の抗原に結合する多重特異性抗体を指す。二重特異性抗体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列、及び第2のエピトープに対する結合特異性を有する第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列によって特徴付けられる。ある実施形態では、第1及び第2のエピトープは、同じ抗原、例えば、同じタンパク質(又は多量体タンパク質のサブユニット)上にある。ある実施形態では、第1及び第2のエピトープは、重複するか、又は実質的に重複する。ある実施形態では、第1及び第2のエピトープは、異なる抗原、例えば、異なるタンパク質(又は異なる多量体タンパク質のサブユニット)上にある。ある実施形態では、二重特異性抗体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列と、第2のエピトープに対する結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列とを含む。ある実施形態では、二重特異性抗体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体又はその断片と、第2のエピトープに対する結合特異性を有する半抗体又はその断片とを含む。ある実施形態では、二重特異性抗体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有するscFv又はその断片と、第2のエピトープに対する結合特異性を有するscFv又はその断片とを含む。ある実施形態では、第1のエピトープはCCR8に位置し、第2のエピトープは、PD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3、CTLA-4、EGFR、HER-2、CD19、CD20、CD33、CD47、CD73、apelin、DLL3、claudinl8.2、TIP-l、CD3、及び/又は他の腫瘍関連免疫抑制因子若しくは表面抗原に位置する。
【0106】
用語「特異的に結合する」により、抗体に関して本明細書中で使用するように、特定の抗原を認識するが、しかし、サンプル中の他の分子を実質的に認識又は結合しない抗体を意味する。例えば、1つの種からの抗原に特異的に結合する抗体はまた、1つ又は複数の種からのその抗原に結合しうる。しかし、そのような異種間の反応性は、それ自体は、特異的としての抗体の分類を変化させない。別の例では、抗原に特異的に結合する抗体はまた、異なる対立遺伝子形態の抗原に結合しうる。しかし、そのような交差反応性は、それ自体は、特異的としての抗体の分類を変化させない。一部の例では、用語「特異的結合」又は「特異的に結合する」は、抗体、タンパク質、又はペプチドと第2の化学種との相互作用への参照において使用することができるが、相互作用が化学種上の特定の構造(例、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存していることを意味する;例えば、抗体は、一般的にタンパク質よりもむしろ、特定のタンパク質構造を認識して結合する。抗体がエピトープ「A」について特異的である場合、エピトープA(又は遊離の非標識A)を含む分子の存在によって、標識「A」及び抗体を含む反応において、抗体に結合した標識Aの量が低下する。
【0107】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体およびその抗原結合断片は、重鎖及び軽鎖フレームワーク領域(FR)セットの間にそれぞれ挿入された重鎖及び軽鎖のCDRセットを含み、この重鎖及び軽鎖フレームワーク領域(FR)は、CDRに支持を提供し互いに対するCDRの空間的関係を定める。本明細書で使用する場合、用語「CDRセット」は、重鎖又は軽鎖のV領域の3つの超可変領域を指す。重鎖又は軽鎖のN末端から出発して、これらの領域はそれぞれ「CDR1」、「CDR2」及び「CDR3」と表される。それゆえ、抗原結合部位は、重鎖及び軽鎖のV領域のそれぞれからのCDRを含む6つのCDRセットを含む。単一のCDR(例えば、CDR1、CDR2又はCDR3)を含むポリペプチドは、本明細書において「分子認識単位」と呼ばれる。いくつかの抗原-抗体複合体の結晶学的分析は、CDRのアミノ酸残基が結合した抗原と広範な接触を形成し、最も広範な抗原接触は重鎖CDR3との接触であることを実証した。従って、分子認識単位は、抗原結合部位の特異性に主に関与する。
【0108】
本明細書で使用する場合、用語「FRセット」は、重鎖又は軽鎖のV領域のCDRセットのCDRを囲む4つの隣接アミノ酸配列を指す。いくつかのFR残基は、結合した抗原と接触してもよい。しかしながら、FRは、V領域を抗原結合部位に折り畳むことに主に関与し、特にCDRに直接隣接するFR残基はそうである。FR内では、特定のアミノ残基及び特定の構造的特徴が非常に高度に保存されている。この点に関して、すべてのV領域配列は、約90アミノ酸残基の内部ジスルフィドループを含む。V領域が結合部位に折り畳まれるとき、CDRは、抗原結合表面を形成する突出ループモチーフとして提示される。正確なCDRアミノ酸配列にかかわらず、CDRループがある「標準的な」構造へと折り畳まれたときの形状に影響を及ぼすFRの保存された構造領域が存在することが一般に認識されている。さらに、ある種のFR残基は、抗体重鎖及び軽鎖の相互作用を安定化させる非共有結合ドメイン間接触に関与することが知られている。
【0109】
免疫グロブリン可変領域の構造および位置は、Kabat, E. A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、4版、US Department of Health and Human Services、1987年、および現在ではインターネット(immuno.bme.nwu.edu)で入手可能なその改定版、Chothia, AbMおよびIMGT(例えば、Johnsonら、 Nucleic Acids Res., 29:205-206 (2001); ChothiaおよびLesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 (1987); Chothiaら、 Nature, 342:877-883 (1989); Chothiaら、 J. Mol. Biol., 227:799-817 (1992); Al-Lazikaniら、 J. Mol. Biol., 273:927-748 (1997) ImMunoGenTics (IMGT) numbering (Lefranc, M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999); Lefranc, M.-P.ら、 Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003) (“IMGT” ナンバリングスキーム)を参照されたい) を参照することにより決定することができる。抗原結合部位の定義は以下にも記載されている: Ruizら、Nucleic Acids Res.、28:219-221(2000);およびLefranc, M. P., Nucleic Acids Res.、29:207-209(2001);MacCallumら、J. Mol. Biol.、262:732-745(1996);およびMartinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:9268-9272 (1989); Martin et al., Methods Enzymol., 203:121-153 (1991); およびReesら、 In Sternberg M. J. E. (ed.), Protein Structure Prediction, Oxford University Press, Oxford, 141-172 (1996). 例えば、Kabatでは、重鎖可変ドメイン(VH)中のCDRアミノ酸残基は、31~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)、及び95~102(HCDR3)と番号付けられており;軽鎖可変ドメイン(VL)中のCDRアミノ酸残基は、24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、及び89~97(LCDR3)と番号付けられている。IMGTでは、VHのCDRアミノ酸残基は約26-35(HCDR1)、51-57(HCDR2)、および93-102(HCDR3)と番号付けられており、VLのCDRアミノ酸残基は約27-32(LCDR1)、50-52(LCDR2)、および89-97(LCDR3)と番号付けられている(Kabatによる番号付け)。IMGTでは、抗体のCDR領域を、IMGT/DomainGap Alignというプログラムを使用して決定し得る。別段指定しない限り、本明細書に開示されるCDRおよびフレームワーク領域の位置は、IMGTナンバリングスキームに従って決定される。
【0110】
本明細書において使用される「抗体重鎖」は、それらの天然に生じる立体配座(conformations)において全ての抗体分子中に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちの大きい方を云う。脊椎動物種の重鎖は、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つの異なるクラス(またはアイソタイプ)のうちの1つに割り当てることができる。これらのクラスは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμとも称される。IgGおよびIgAクラスは、配列および機能の違いに基づいてサブクラスにさらに分けられる。ヒトは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2のサブクラスを発現する。
【0111】
本明細書において使用される「抗体軽鎖」は、それらの天然に生じる立体配座において全ての抗体分子中に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちの小さい方を云い、κ及びλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを云う。
【0112】
用語「合成抗体」により、本明細書中で使用するように、本明細書に記載のバクテリオファージによって発現される抗体など、組換えDNA技術を用いて作成される抗体を意味する。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子であって、抗体タンパク質を発現するDNA分子、又はその抗体を指定するアミノ酸配列の合成によって作成された抗体を意味するとも解釈されるべきであり、DNA又はアミノ酸配列は、当技術分野において利用可能な周知の合成DNA又はアミノ酸配列技術を用いて得られたものである。
【0113】
また本発明の抗体は、そのN末端あるいはC末端に他のタンパク質を融合してもよい(Clinical Cancer Research, 2004, 10, 1274-1281)。融合するタンパク質は当業者が適宜選択することができる。
【0114】
好ましい実施態様では、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片はHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む。HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3のポリペプチド配列は:
1. 配列番号2、3、4、6、7および8;もしくは
2. 配列番号2、3、10、12、7および14;もしくは
3. 配列番号2、16、17、19、7および14;もしくは
4. 配列番号22、23、24、26、20および27;もしくは
5. 配列番号22、23、24、30、20および27;もしくは
6. 配列番号32、33、34、36、37および38;もしくは
7. 配列番号40、41、42、44、37および45;もしくは
8. 配列番号47、48、49、51、52および53;もしくは
9. 配列番号40、3、55、6、7および8;もしくは
10. 配列番号58、59、60、6、7および14;もしくは
11. 配列番号58、3、63、65、7および14;もしくは
12. 配列番号2、3、67、69、70および13;もしくは
13. 配列番号72、73、74、76、37および77;もしくは
14. 配列番号58、79、80、6、7および14;もしくは
15. 配列番号58、83、84、86、7および14;もしくは
16. 配列番号58、83、88、86、7および14、からなる群から選択され、
前記抗体またはその抗原結合断片はCCR8、好ましくはヒトCCR8に特異的に結合し、
ここでCDRの位置は、IMGTナンバリングスキームに従って決定される。
【0115】
別の特定の態様では、本発明は、配列番号1、9、15、21、28、31、39、46、54、57、62、66、71、78、82、87、90、92、94、96、100、102、104、106、108または110のいずれかと少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、例えば、95%、96%、97%、98%または99%同一のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域、または配列番号5、11、18、25、29、35、43、50、56、61、64、68、75、81、85、89、91、93、95、97、98、99、101、103、105、107、109または111のいずれかと少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、例えば、95%、96%、97%、98%または99%同一のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0116】
本発明において、本発明の抗体は、さらにその保存的変異体を含み、本発明の抗体のアミノ酸配列と比較すると、10個以下、好ましくは8個以下、より好ましくは5個以下、最も好ましくは3個以下のアミノ酸が類似または近い性質を持つアミノ酸で置換されてなるポリペプチドをいう。これらの保存的変異ポリペプチドは、表Aのようにアミノ酸の置換を行って生成することが好ましい。
【0117】
【0118】
本発明は、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片をコードする単離された核酸に関する。タンパク質のアミノ酸配列を変えることなく、タンパク質のコード配列を変える(例えば置換する、欠失する、挿入するなど)ことができることが、当業者には理解されよう。したがって、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸配列を、タンパク質のアミノ酸配列を変えずに変化させることができる点は当業者には理解されるであろう。
【0119】
ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞および調製方法
本発明には、本明細書に開示されるいずれかの抗体をコードするポリヌクレオチドも提供される。いくつかの実施態様では、本明細書には、配列番号58、79および80に示されるアミノ酸配列を有する3つの軽鎖CDRを含む;および/または配列番号6、7および14に示されるアミノ酸配列を有する3つの重鎖CDRを含む、CCR8に結合する抗体または抗体断片をコードする単離されたポリヌクレオチドが開示される。いくつかの実施態様では、本明細書には、配列番号58、79および80に示されるアミノ酸配列を有する3つの軽鎖CDR;および配列番号6、7および14に示されるアミノ酸配列を有する3つの重鎖CDRを含むCCR8に結合する抗体または抗体断片をコードする単離されたポリヌクレオチドが開示される。いくつかの実施態様では、以下から選択されるポリペプチド配列の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、CCR8に結合する抗体または抗体断片をコードする単離されたポリヌクレオチドが開示される:配列番号96および97;配列番号78および81;配列番号90および91;配列番号92および93;配列番号94および95;配列番号92および98;もしくは配列番号92および99。
【0120】
本発明には、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子を含むベクターも提供される。プラスミド、コスミド、ファージベクター、又はウイルスベクターなどの、本開示の観点から当業者に公知の任意のベクターも使用することができる。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドなどの組換え発現ベクターである。ベクターは、例えば、プロモーター、リボソーム結合エレメント、ターミネーター、エンハンサー、選択マーカー、及び複製起点という、発現ベクターの従来の機能を確立するための任意のエレメントを含むことができる。プロモーターは、常時発現型、誘導型、又は再形成可能なプロモーターであり得る。細胞に核酸を送達することができる多数の発現ベクターが当技術分野において知られており、細胞内で抗体またはその抗原結合断片を生成するために、本明細書で使用することができる。従来のクローニング技術、又は人工遺伝子合成を使用して、本発明の実施形態に従った組換え発現ベクターを生成することができる。このような技術は、本開示に鑑みて、当業者に周知である。
【0121】
本発明には、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子を含む宿主細胞も提供される。本開示に鑑みて、当業者に公知の任意の宿主細胞を、本発明の抗体又はその抗原結合断片の組換え発現に使用することができる。一部の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌(E. coli)TG1若しくはBL21細胞(例えば、scFv又はFab抗体の発現用)、CHO-DG44細胞、CHO-K1細胞又はHEK293細胞(例えば、完全長IgG抗体の発現用)である。特定の実施形態によれば、従来の方法、例えば、化学的トランスフェクション、熱ショック、又はエレクトロポレーションによって、組換え発現ベクターは宿主細胞に形質転換され、組換え核酸が有効に発現されるように組換え発現ベクターが宿主細胞のゲノムに安定して組み込まれる。
【0122】
本発明には、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を生産する方法であって、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を産生する条件下で、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を含む細胞を培養するステップ、及び細胞又は細胞培養物から(例えば、上清から)、抗体又はその抗原結合断片を回収するステップを含む方法も提供される。当技術分野で公知であり、本明細書に記載される従来の技術に従って、発現された抗体又はその抗原結合断片を細胞から採取し、精製することができる。
【0123】
当業者が理解する通り、ポリヌクレオチドは、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドなどを発現させる、またはこれらを発現させるように適合させる場合もある、ゲノム配列、ゲノム外およびプラスミドによりコードされる配列、ならびにより小型の作出された遺伝子セグメントを包含しうる。このようなセグメントは、天然で単離される場合もあり、当業者が合成的に改変する場合もある。
【0124】
これもまた当業者が十分に理解する通り、ポリヌクレオチドは、一本鎖(コード鎖またはアンチセンス鎖)の場合もあり、二本鎖の場合もあり、DNA(ゲノムDNA、cDNA、または合成DNA)分子の場合もあり、RNA分子の場合もある。RNA分子は、イントロンを含有し、DNA分子に一対一で対応するHnRNA分子、およびイントロンを含有しないmRNA分子を包含しうる。本開示に従うポリヌクレオチドには、さらなるコード配列または非コード配列を存在させることもできるが存在させなくともよく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持物質に連結することもできるが連結しなくともよい。ポリヌクレオチドは、天然配列を含む場合もあり、このような配列の改変体または誘導体をコードする配列を含む場合もある。
【0125】
ポリヌクレオチド改変体は、好ましくは、改変体のポリヌクレオチドによりコードされる抗体の結合親和性が、本明細書で具体的に示されるポリヌクレオチド配列によりコードされる抗体と比べて実質的に減殺されないように、1つまたは複数の置換、付加、欠失、および/または挿入を含有することが典型的である。
【0126】
本明細書で記載されるポリヌクレオチドまたはそれらの断片は、コード配列それ自体の長さにかかわらず、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、さらなる制限酵素部位、多重クローニング部位、他のコードセグメントなど、他のDNA配列と組み合わせることができ、その結果、その全体の長さが大幅に変化しうる。したがって、ほぼ任意の長さの核酸断片であって、全長が調製の容易さおよび意図される組換えDNAプロトコールにおける使用により限定されることが好ましい核酸断片を用いうることが想定される。例えば、全長が約10,000、約5000、約3000、約2,000、約1,000、約500、約200、約100、約50塩基対の長さなど(全ての中間の長さを含めた)である例示的なポリヌクレオチドセグメントは、有用であると想定される。
【0127】
部位特異的変異誘発は、特異的なオリゴヌクレオチド配列であって、所望の変異を有するDNA配列をコードする他、横断される欠失接合部の両側において安定的な二重鎖を形成するのに十分なサイズおよび配列の複雑性を有するプライマー配列をもたらすのに十分な数の隣接するヌクレオチドもコードするオリゴヌクレオチド配列の使用を介する変異体の産生を可能とする。選択したポリヌクレオチド配列における変異を使用して、ポリヌクレオチドそれ自体の特性を改善するか、変化させるか、低下させるか、修飾するか、もしくは他の形で変更することもでき、かつ/またはコードされるポリペプチドの特性、活性、組成、安定性、もしくは一次配列を変化させることもできる。
【0128】
抗体依存的細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)
抗体依存的細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)とは、非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が、標的細胞上の結合抗体を認識した後、標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性反応を指す。好ましくい実施形態においては、そのような細胞はヒト細胞である。いかなる特定の作用機序にも制限されることを望むものではないが、ADCCを媒介するこれらの細胞傷害性細胞は、一般的にはFc受容体(FcR)を発現する。ADCCを媒介する一次細胞、NK細胞は、FcγRIIIを発現するが、単球はFcγRI、FcγRII、FcγRIIIおよび/またはFcγRIVを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、RavetchおよびKinet, Annu. Rev. Immunol., 9:457-92 (1991)にまとめられている。分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載のものなどのin vitro ADCCアッセイを行うことができる。そのようなアッセイにとって有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性を、例えば、Clynesら、PNAS (USA), 95:652-656 (1998)に開示されたものなどの動物モデルにおいて、in vivoで評価することができる。
【0129】
「エフェクター細胞」は、1種以上のFcRを発現し、エフェクター機能を実行する白血球である。好ましくは、この細胞は少なくともFcγRI、FcγRII、FcγRIIIおよび/またはFcγRIVを発現し、ADCCエフェクター機能を担持する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、PBMC、NK細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球が挙げられ、PBMCおよびNK細胞が好ましい。好ましい実施形態では、エフェクター細胞はヒト細胞である。
【0130】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明するのに用いられる。好ましい実施形態では、FcRは天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましい実施形態では、FcRはIgG抗体に結合するもの(γ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、およびFcγRIVサブクラスの受容体、例えば、対立遺伝子変異体およびあるいは、これらの受容体のスプライスされた形態が挙げられる。FcγRII受容体としては、主にその細胞質ドメインにおいて異なる類似アミノ酸配列を有する、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)が挙げられる。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシンに基づく阻害モチーフ(ITIM)を含む(Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234 (1997)を参照)。FcRは、RavetchおよびKinet, Annu. Rev. Immunol., 9:457-92 (1991); Capelら、Immunomethods, 4:25-34 (1994);ならびにde Haasら、J. Lab. Clin. Med., 126:330-41 (1995)に概説されている。将来同定されるものを含む、他のFcRも、本明細書では用語「FcR」により包含される。この用語はまた、胎児への母体IgGの移動を担う新生児受容体FcRnを含む(Guyerら、Immunol., 117:587 (1976)およびKimら、J. Immunol., 24:249 (1994))。
【0131】
補体依存的細胞傷害性(CDC)
補体依存的細胞傷害性(CDC)とは、補体活性化を開始し、補体の存在下で標的を溶解する分子の能力を指す。補体活性化経路は、同族抗原と複合体化した分子(例えば、抗体)への補体系(C1q)の第1成分の結合により開始する。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santaroら、J. Immunol. Methods, 202:163 (1996)に記載のようなCDCアッセイを行うことができる。
【0132】
抗体-薬物複合体(ADC)
本発明はまた、本発明の抗体に基づく抗体薬物複合体(ADC)を提供する。
【0133】
典型的に、前記抗体薬物複合体は、前記抗体、およびエフェクター分子を含み、前記抗体は、前記エフェクター分子にカップリングされ、好ましくは化学カップリングである。ここで、前記エフェクター分子は、治療活性を有する薬物であることが好ましい。さらに、前記エフェクター分子は、毒性タンパク質、化学療法薬物、小分子薬物または放射性核種のうちの1つまたは複数であり得る。
【0134】
本発明の抗体および前記エフェクター分子は、カップリング剤を介してカップリングされ得る。前記カップリング剤の例は、非選択的カップリング剤、カルボキシル基を使用するカップリング剤、ペプチド鎖、およびジスルフィド結合を使用するカップリング剤のいずれか1つまたは複数であり得る。前記非選択的カップリング剤は、グルタルアルデヒドなどのエフェクター分子と抗体が共有結合を形成することを可能にする化合物を指す。前記カルボキシル基を使用するカップリング剤は、シス-アコニット酸無水物カップリング剤(シス-アコニット酸無水物など)およびアシルヒドラゾンカップリング剤(カップリング部位はアシルヒドラゾンである)のいずれか1つまたは複数であり得る。
【0135】
抗体の特定の残基(CysまたはLysなど)は、イメージング試薬(発色団や蛍光基など)、診断試薬(MRI造影剤や放射性同位元素など)、安定剤(グリコールポリマーなど)および治療薬などのさまざまな官能基に接続するために使用される。抗体は、機能剤にカップリングして、抗体機能剤複合体を形成することができる。機能剤(例えば、薬物、検出試薬、安定剤)は抗体にカップリング(共有結合)される。機能剤は、リンカーを介して直接的または間接的に抗体に連結され得る。
【0136】
抗体を薬物にカップリングさせて、抗体薬物複合体(ADC)を形成できる。典型的に、ADCは薬物と抗体の間に位置するリンカーを含む。リンカーは、分解性リンカーまたは非分解性リンカーであり得る。分解性リンカーは、典型的には細胞内環境で容易に分解され、例えば、リンカーは標的部位で分解され、その結果、薬物が抗体から放出される。適切な分解性リンカーは、例えば、細胞内プロテアーゼ(リソソームプロテアーゼまたはエンドソームプロテアーゼなど)によって分解され得るペプチジル含有リンカーを含む酵素分解リンカー、またはグルクロニダーゼによって分解され得るグルクロニド含有リンカーなどの糖リンカーを含む。ペプチジルリンカーは、例えば、バリン-シトルリン、フェニルアラニン-リジンまたはバリン-アラニンなどのジペプチドを含み得る。他の適切な分解性リンカーは、例えば、pH感受性リンカー(例えば、ヒドラゾンリンカーなどの5.5未満のpHで加水分解されるリンカー)および還元条件下で分解するリンカー(例えば、ジスルフィド結合リンカー)を含む。非分解性リンカーは、典型的には、抗体がプロテアーゼにより加水分解される条件下で薬物を放出する。
【0137】
リンカーは、抗体に接続する前に、特定のアミノ酸残基と反応できる反応基を持ち、活性反応基を介して接続される。スルフヒドリル特異的反応性反応基が好ましく、例えば、マレイミド化合物、ハロゲン化アミド(例えば、ヨウ素、臭素、または塩素化);ハロゲン化エステル(例えば、ヨウ素、臭素、または塩素化);ハロゲン化メチルケトン(例えば、ヨウ素、臭素、塩素化);ハロゲン化ベンジル(例えば、ヨウ素、臭素、塩素化);ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド;3、6-3,6-ビス-(水銀メチル)ジオキサンなどの水銀誘導体、および対イオンは酢酸塩、塩化物または硝酸塩;およびポリメチレンジメチルスルフィドチオスルホネートを含む。リンカーは、例えば、チオスクシンイミドを介して抗体に連結されたマレイミドを含み得る。
【0138】
薬物は、任意の細胞毒性、細胞増殖阻害または免疫抑制薬物であり得る。 実施形態では、リンカーは抗体と薬物を接続し、薬物はリンカーと結合を形成することができる官能基を有する。例えば、薬物は、リンカーとの結合を形成することができるアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、またはケトン基を有し得る。薬物がリンカーに直接結合している場合、薬物は抗体に結合する前に反応性活性基を持っている。
【0139】
薬物の特に有用なクラスは、例えば、抗チューブリン薬物、DNA小溝結合試薬、DNA複製阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、葉酸拮抗薬、代謝拮抗薬、化学療法増感剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイドなどを含む。特に有用な細胞毒性薬物系の例は、例えば、DNA小溝結合試薬、DNAアルキル化試薬、およびチューブリン阻害剤を含み、典型的な細胞毒性薬物は、例えば、オーリスタチン(auristatins)、カンプトテシン(camptothecins)、デュオカルマイシン(duocarmycins)、エトポシド(etoposides)、メイタンシン(maytansines)及びメイタンシノイド(maytansinoids)(例えば、DM1及びDM4)、タキサン(taxanes)、ベンゾジアゼピン(benzodiazepines)またはベンゾジアゼピンを含有する薬物(benzodiazepine containing drugs)(例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン(PBDs)、インドリノベンゾジアゼピン(indolinobenzodiazepines)及びオキサゾリジノベンゾジアゼピン(oxazolidinobenzodiazepines))、ビンカアルカロイド(vinca alkaloids)を含む。
【0140】
本発明において、薬物-リンカーを使用して、1つの簡単なステップでADCを形成することができる。他の実施形態では、二官能性リンカー化合物を使用して、2ステップまたは複数のステップ方法でADCを形成することができる。例えば、システイン残基は第1のステップでリンカーの反応活性部分と反応し、その後のステップでリンカーの官能基が薬物と反応してADCを形成する。
【0141】
通常、リンカー上の官能基は、薬物部分上の適切な反応性基との特定の反応を促進するように選択される。非限定的な例として、アジドベースの部分に基づいて、薬物部分の反応性アルキニル基と特異的に反応させることができる。薬物は、アジド基とアルキニル基の間の1,3-双極子環状付加を介してリンカーに共有結合する。他の有用な官能基は、例えば、ケトンおよびアルデヒド(ヒドラジドおよびアルコキシアミンとの反応に適する)、ホスフィン(アジドとの反応に適する);イソシアネートおよびイソチオシアネート(アミンとの反応に適する);およびN-ヒドロキシスクシンイミドエステルなどの活性化エステル(アミンやアルコールとの反応に適する)を含む。「Bioconjugation Technology」、第2版(Elsevier)に記載されているようなこれらおよび他のライゲーション戦略は、当業者によく知られている。当業者は、薬物部分とリンカーの選択的反応について、反応性官能基の相補的対が選択される場合、相補的対の各メンバーをリンカーおよび薬物の両方に使用できることを理解できる。
【0142】
本発明はまた、ADCを調製するための方法を提供し、抗体複合体(ADC)を形成するのに十分な条件下で抗体を薬物-リンカー化合物と組み合わせることをさらに含み得る。
【0143】
特定の実施形態では、本発明の方法は、抗体-リンカー複合体を形成するのに十分な条件下で、抗体を二官能性リンカー化合物と接続することを含む。これらの実施形態では、本発明の方法はさらに、リンカーを介して薬物部分を抗体に共有結合させるのに十分な条件下で抗体リンカー複合体を薬物部分に結合することを含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体ADCは、以下の分子式に示され:
Ab-(LU-D)p
ここで:
Abは抗体であり;
LUはリンカーであり;
Dは薬物であり;
且つ下付きpは1~8から選択される値である。
【0145】
薬物組成物および他の用途
CCL1/CCR8シグナル伝達は、がん、炎症性疾患および糖尿病性神経障害等を含むいくつかの疾患の病因における重要な経路である。特に、本明細書に記載の抗体は、予想外に高い親和性でCCR8に特異的に結合し、特定の実施形態では、CCR8シグナル伝達をブロックする能力を有し、CCLl誘導走化性を阻害する。CCR8+Treg細胞は、腫瘍逃避機構に貢献することが知られている。いくつかの態様において、本明細書には、CCR8+Treg細胞などが介在する免疫抑制を阻害することによって、被験者中に存在する腫瘍中の腫瘍浸潤T制御細胞(TITR)の数または活性を減少させる方法、およびこの機構を介したがん治療のための医薬組成物が提供される。このようながんには、限定するものではないが、乳がん、胃がん、卵巣がん、膵臓がん、肝臓がん、結腸がん、膵臓がん及び他の多くのがん種が含まれ、予後不良と関連する。いくつかの態様において、本明細書には、被験者に抗CCR8抗体を投与することによって、被験者の腫瘍中のTエフェクター細胞の量を増加させる方法が提供される。細胞傷害性は、抗体依存的細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)または補体依存的細胞傷害性(CDC)であってもよい。薬剤は、抗体、例えばペプチド、低分子、タンパク質薬物複合体、または干渉性核酸であってもよい。さらに、本発明は、糖尿病性神経障害、脊髄損傷、および硬化性胆管炎(ISC)のようなIgG4関連疾患のような疾患を治療する可能性のあるCCL1/CCR8軸を調節することもできる。例示的な抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはその相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列。
【0146】
本発明には、本発明の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容される担体を含む、薬物組成物も提供される。本明細書で使用する場合、用語「薬物組成物」は、本発明の活性成分および薬学的に許容される担体を含む製品を意味し、ここで活性成分は、第一の態様の単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片、第二の態様の組み換えタンパク質、第三の態様の単離された核酸(特にDNAまたはRNA)、第四の態様のベクター、第六の態様の的抗体複合体、第七の態様の免疫細胞またはこれらの組み合わせから選択される。本発明的活性成分およびそれらを含む組成物は、本明細書で言及される治療用の薬物の製造のためにも使用され得る。
【0147】
本明細書で使用する場合、疾患を「治療する」とは、被験者が経験する疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重症度を減少させることを意味する。
【0148】
投与量は、治療される疾患または徴候の種類および程度、患者の全体的な健康状態、抗体のインビボ効力、医薬製剤、抗体の血清半減期ならびに投与経路などの変数に依存する。
【0149】
投与頻度は、投与経路、投与量、抗体または融合タンパク質の血清半減期、および治療されている疾患などの要因に応じて変化し得る。
【0150】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、診断試験及びアッセイなどの非治療目的、例えば、被験者からの試料におけるCCR8レベルを確定するために使用される。試料を本発明のCCR8特異的抗体と接触させ、試料中の抗体とCCR8との間の免疫反応性を検出することによる方法が提供される。
【0151】
検出用途及びキット
本発明の抗体またはそのADCは、例えば試料の検出等の検出適用に使用され、それによって診断情報を提供することができる。
【0152】
本発明において、使用される試料(サンプル)は、細胞、組織試料及び生検標本を含む。本発明で使用される「生検」という用語は、当業者に知られているあらゆる種類の生検を含むものとする。従って、本発明で使用される生検は、切除された腫瘍のサンプル、及び内視鏡又は器官の穿刺又は針生検によって調製される組織試料を含むことができる。
【0153】
本発明で使用される試料は、固定又は保存された細胞又は組織試料を含む。
【0154】
本発明は、本発明の抗体(又はその断片)を含むキットをさらに提供し、本発明の好ましい例において、前記キットは、容器、取扱説明書、緩衝剤等をさらに含む。好ましい例において、本発明の抗体は、検出プレートに固定化されることができる。
【0155】
本発明のさらなる態様により、サンプル中のCCR8タンパク質の存在または量を検出することによって被験者においてのCCR8が介在する疾患を診断する。
【0156】
本発明は、抗CCR8抗体を含む、がんの予後を予測または診断するためのキットを提供さする。本発明のキットは、ELISAに使用される当該技術分野で公知のツールおよび/または試薬をさらに含むことができる。本発明のキットは、必要に応じて、各成分を混合するためのチューブ、ウェルプレート、使用方法を記載した取扱説明書等をさらに含むことができる。
【実施例
【0157】
本発明は、以下の実施例を参照してさらに説明される。以下の実施例は、単に本発明を説明するために使用されるが、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。以下の実施例でその特定の条件が示されていない実験方法は、通常、従来の条件、例えばSambrook et al., Molecular Cloning: Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載される条件、又は製造業者により推薦される条件に従って、実施される。特に断らない限り、百分率及び部は、重量百分率及び重量部を意味する。細胞株は、市販されているか又はATCCから購入される従来の製品であり、そしてすべてのプラスミドは、市販されている製品である。
【0158】
細胞株:
293F細胞株はThermo Fisher(R79007)から入手され、Expi293 TM発現培地で培養された。
【0159】
実施例1. 抗CCR8モノクローナル抗体の生成
抗CCR8モノクローナル抗体は、CCR8を過剰発現する293F細胞でSJLマウスを免疫することにより開発された。簡潔に述べると、293F細胞をポリブレン(8μg/mL)によりCCR8をコードするレンチウイルスベクターでトランスフェクトし、ピューロマイシン(2μg/mL)を含む培地で選択し、FACSによりCCR8の発現を試験した。CCR8に対するMFIが最大であった個々のクローンが、その後の研究のために選択された。
【0160】
これらのマウスの脾臓およびリンパ節細胞を、標準的な方法で骨髄腫細胞(SP20)に融合させ、独特な抗体を産生するハイブリドーマを作製した。これらの細胞のプールにより産生された抗体を含む上清を、CCR8過剰発現細胞との反応性について細胞ベースのELISAにより試験した。細胞ベースのELISAは一般に以下のように実施した。ウェル当たり約3×104個の293F-CCR8細胞を96ウェルプレートに播種し、一晩培養した後、細胞を1×PBS-Tで洗浄し、続いて100μLの4%パラホルムアルデヒド溶液を添加し細胞をマイクロプレートに固定し架橋した。細胞を1×PBS-Tで2回洗浄した。次に、ブランクと陽性コントロールを含むハイブリドーマ培養物から採取したニート上清を細胞と37℃で60分間インキュベートした。その後、細胞を1×PBS-Tで4回洗浄した。次に、100 μL PBS中1:10000希釈のヤギ抗マウスIgG二次抗体と37℃で60分間インキュベートし、1×PBS-Tで4回洗浄した。100μLのTMBを96ウェルプレートに添加した。10~12分間インキュベートした後、波長450nmで検出し、プレートをスキャンした。
【0161】
これらの陽性クローンの上清を、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって確認した。FACS分析は、一般に以下のように実施した。サンプルあたり約5×105個の293F-CCR8細胞を調製し、Mouse BD Fc Blockでブロックした。細胞を96ウェル丸底ポリスチレンプレートに分配し、ハイブリドーマ培養から採取したニート上清とともに氷上で20-30分間インキュベートした。次に、細胞をPBS/0.5%BSAで洗浄し、遠心分離した。ペレット化した細胞サンプルを、100μL PBS/0.5% BSA中1:300希釈のFITC標識抗マウスIgGの二次抗体と氷上で30分間インキュベートした後、PBS/0.5% BSAで洗浄し、スピンダウンした。細胞ペレットをPBS/0.5% BSAに再懸濁し、サンプルをCYTOFLEX(Beckman)で分析した。一般に、反応性抗体がCCR8を特異的に認識することを確認するために、同じ上清を非トランスフェクト親細胞で試験した。
【0162】
陽性プールが同定され、限界希釈によってサブクローニングされた。3回融合後、FACSによりCCR8過剰発現細胞を特異的に認識する独特な抗体を産生する9つのクローンが得られた: 101E4、172E7、103G4、118H1、170G6、84B4、2P15、3C11、3O20、4M13、2L15、4D24、1G17、3F11、3F6および4G19。ハイブリドーマは、それから産生される抗体と同じ呼称で呼ばれた(例えば、ハイブリドーマ84B4は抗体84B4を産生する)。すべての抗CCR8抗体クローンは、高親和性抗体を有し、それらのVHおよびVLのアミノ酸配列は表1に示された。
【0163】
【表1A】
【0164】
【表1B】
【0165】
【表1C】
【0166】
【表1D】
【0167】
【表1E】
【0168】
【表1F】
【0169】
【表1G】
【0170】
【表1H】
【0171】
【表1I】
【0172】
【表2】
【0173】
実施例2. CCR8発現細胞に対する抗CCR8抗体の結合親和性
抗CCR8抗体の親和性をFACSにより評価した。細胞表面に高レベルのCCR8が発現している293F-CCR8を結合試験に用いた。親和性解析は概ね以下のように行った。サンプルあたり約5×105個の293F-CCR8細胞を調製し、Human BD Fc Blockでブロックした。試験抗体はPBS/0.5%BSAで希釈した(225μg/mLから0.00381μg/mLまでの1:3系列希釈)。トランスフェクトした細胞と非トランスフェクト親細胞とを96ウェル丸底ポリスチレンプレートに分配し、希釈抗体とともに氷上で20~30分間インキュベートした。次に、サンプルをPBS/0.5%BSAで洗浄し、細胞を遠心分離した。ペレット化した細胞サンプルを、氷上で100μLのPBS/0.5%BSA中1:300希釈の抗マウスIgG-FITC-2次抗体と30分間インキュベートし、PBS/0.5%BSAで洗浄した後、細胞をペレット化した。細胞ペレットをPBS/0.5% BSAに再懸濁し、CYTOFLEX(Beckman)を用いてサンプルを分析した。
【0174】
その結果、図1に示されるように、これらの抗体はヒトCCR8過剰発現293F細胞に結合したが、CCR8を過剰発現していない細胞には結合しなかった。図1Aおよび1Bは、これらの抗体がCCR8過剰発現293F細胞(293F-CCR8)に結合能を有するが、293Fの親細胞には結合しないことを示している(図1Cおよび1D)。結合能を示したクローンのEC50を表3にまとめた:
【0175】
【表3】
【0176】
実施例3. 抗CCR8抗体によるCCL1-CCR8シグナルのブロック
上記の抗体のどれかがCCL1-CCR8シグナルをブロックできるかを確定するために、Tango-CCR8-Gal4-CHO-K1細胞を構築した。細胞をペレット化し、1×104cells/70μL/wellで再懸濁し、細胞を96wellプレートに分配し、飢餓培地(F12K、1%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン)中、37℃、5%CO2で6時間培養し、試験抗体を添加し、1時間培養した後、CCL1(R&D、カタログ番号:272-I)を添加し、37℃、5%CO2で24時間培養した。
【0177】
一晩培養後、細胞をONE-Glo作業試薬とともに、室温、暗所で10分間インキュベートた後、各サンプルの相対発光単位(RLU)をマイクロプレートリーダーを用いて560nm波長で蛍光値を測定し、記録した。
【0178】
101E4、170G6、3O20、4M13、4D24、3F11、3F6などのクローンの抗体は、強いCCL1-CCR8シグナルブロックを示した。各クローンの抗体のシグナルブロック能力を表4に示す。
【0179】
【表4】
【0180】
実施例4. CCR8抗体の抗腫瘍効果試験
ヒト末梢血単核球(hu-PBMC、Milestone Biotechnologies)で再構成したヒト化マウスにおいて、インビボ抗腫瘍効果を評価した。研究を促進するために、MDA-MB-231マウス異種移植モデルを確立した。ヒト乳がんMDA-MB-231細胞(5×106/マウス)を雌性NCGマウスの前面と右背部の皮膚に皮下接種した。移植腫瘍の平均サイズが80-100mm3に達した時点で、腫瘍サイズが同様である担がんマウスを選択し、無作為に群分けして健常ドナーに由来する2×106個のhu-PBMCを尾静脈から注射した。その1時間後、CCR8抗体を週1回マウスに腹腔内注射した。腫瘍の大きさはノギスで週2回測定し、腫瘍の大きさは体積(mm3)で表し、その式は:V=0.5a×b2(aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径および短径を表す)である。図2(A-E)に示されるように、84B4、101E4、170G6、3C11および2P15のクローンの抗体は、P≦0.001で有意な抗腫瘍効果を示した。
【0181】
結果を図2に示す。腫瘍増殖曲線によると、抗CCR8抗体を注射したマウス群では、ビヒクル投与群と比較して腫瘍増殖が有意に抑制された(P<0.001)
【0182】
実施例5. CCR8抗体のカニクイザルCCR8に対する結合能
293F細胞を、ポリブレン(8μg/mL)により、カニクイザルCCR8をコードするレンチウイルスベクターでトランスフェクトし、ピューロマイシン(2μg/mL)を含む培地で選択し、FACSによりカニクイザルCCR8の発現について試験した。
【0183】
カニクイザルCCR8過剰発現細胞株と親293F細胞株を用いて、フローサイトメトリーにより抗体のカニクイザルCCR8への特異的結合を調べた。その結果、抗体84B4、170G6、172E7、3C11、3O20、1G17、3F11および4G19は、カニクイザルCCR8を発現する293F細胞に結合したが、293F細胞には結合しなかった。
【0184】
実施例6. 体3F11、3O20および1G17のヒト化
選択したヒトIgG生殖系列フレームワークにリード抗体のCDRを移植することにより、抗体3F11、3O20および1G17をヒト化した。ヒト生殖細胞系列IGHV3-73*01、IGKV2-28*01、IGHV1-46*01およびIGKV2-30*02は、両方のフレームワーク(FR)内の配列類似性に基づいて選択された。正規ループ構造及び鎖界面を維持するために、ヒト生殖細胞系列フレームワークにおける特定の残基を、対応するマウス残基に逆変異させた(表5)
【0185】
インシリコ予測では、3F11のCDRにおいて、リスクの高い配列の責任があることを意味した。例えば、3F11のCDR-L1領域にNGモチーフがある。軽鎖のN33位の1つの責任変異を、活性に影響を与えることなく、VL中の潜在的な脱アミド化部位を除去できるかどうかを確認するために評価した。
【0186】
3F11、3O20および1G17のヒト化により、モノクローナル抗体3F11hz0、3F11hz1、3F11hz2、3F11hz3、3F11hz4、3F11hz5および3F11hz6; 3O20hz0、3O20hz1、3O20hz2、および3O20hz3;ならびに1G17hz0、1G17hz1、1G17hz2、および1G17hz3が得られた。
【0187】
【表5A】
【0188】
【表5B】
【0189】
【表5C】
【0190】
すべての最適化された抗体は、ヒトCCR8発現293Fに結合することが確認された。ヒト化バージョンの抗体3F11、3O20および1G17の親和性定数を表6に示す。
3F11hz4、3O20hz2、1G17hz3の親和性は、3F11hz0、3O20hz0、1G17hz0のようなキメラ抗体と同等またはそれ以上である。
【0191】
【表6】
【0192】
次に、3F11hz4、3O20hz2、1G17hz3がマウスCCR8およびカニクイザルCCR8と交差反応性を有するかどうかを、実施例5と同様にFACSで試験した。ヒト化抗体3F11hz4および3F11のマウスCCR8に対する親和性を図3に示した。ヒト化後、3F11hz4のマウスCCR8に対する親和性は681.9nMから1.926nMに増加した。ヒト化後の3O20hz2および1G17hz3のカニクイザルCCR8に対する親和性は、それぞれ6418nMおよび3142nMであった。
【0193】
実施例7. ヒト化抗体のカルシウム移動性アッセイ
カルシウムイオン移動性アッセイは、Gタンパク質カップリング受容体の活性化または阻害に関連するカルシウムフラックスを測定するための細胞ベースの第2のメッセンジャー測定である。蛍光強度の変化は、標的受容体のリガンド活性化に応答して、細胞質に放出される細胞内カルシウムの含有量に直接関連する。このアッセイは、上記のヒト化抗体のどれがCCL1-CCR8シグナルをブロックできるかを決定するために使用される。
【0194】
インキュベーター(37℃、5%CO2)中、完全培地(DMEM培地、10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、0.75μg/mLピューロマイシン、400μg/mL G418)中で継代したhCCR8-Gqi5-293T細胞(Genomeditechにより構築)をカルシウム移動性アッセイに使用した。
【0195】
蛍光性の膜透過性カルシウム結合色素(FLIPRカルシウム6アッセイキット)をアッセイバッファー(1*のHank's Balanced Salt Solution(HBSS)を含む20mM HEPESバッファー、pH7.4)に溶解した。5mMのプロベネシドを含む色素溶液でローディングバッファーを調製した。プロベネシドは1N NaOHで500mMのストック溶液に調製し、使用前にHBSS緩衝液で250mMに希釈した。
【0196】
約1.5*104個のhCCR8-Gqi5-293T細胞を384ウェルプレートに播種し、25μLの飢餓培地(DMEM、1%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン)中、5%CO2、37℃で16時間インキュベートした。その後、飢餓培地を25μLのアッセイバッファーで完全に置換し、25μLのローディングバッファーを目的のウェルに添加した。色素添加後、セルプレートを37℃、5% CO2で2時間インキュベートし、その後、使用するまで室温で保存した。12.5μLのアッセイバッファー中の化合物を所望の濃度(5×)で各ウェルに添加し、室温で細胞とともに30分間インキュベートした。インキュベーション後、マイクロプレートをFLIPR装置に移し、装置のユーザーガイドに記載されているようにカルシウムアッセイを開始した。CCL1を含むかまたは含まない12.5μLのアッセイバッファーをアッセイ中に添加した。MAX比の値を抗体濃度に対してプロットし、GraphPad Prism 7.0で分析して、濃度曲線を作成した。
【0197】
すべてのヒト化抗体はCCL1-CCR8シグナルブロックを示し、3F11hz4は最も強いCCL1-CCR8シグナルブロックを示した。本明細書に開示された代表的な抗体のシグナルブロッキング能を表7に示す。
【0198】
【表7】
【0199】
実施例8. ヒト化抗体の安定性検証
モノクローナル抗体はタンパク質であるため、不安定性の問題がある。モノクローナル抗体の安定性試験は、それらの治療用生物学的分子としての開発および商業化において重要な規制事項である。3F11hz4、3O20hz2、1G17hz3などのヒト化抗体の安定性と活性を、表8に示されるストレス条件下で試験した。
【0200】
【表8】
【0201】
実施例2および7と同様の方法で、異なる時点におけるヒト化抗体の結合親和性およびカルシウム移動を行った。結果を表9に示す。3F11hz4は、他のヒト化抗体よりも優れた安定性を示した。
【0202】
【表9】
【0203】
実施例9. F11hz4と293F/CHOK1ラット、イヌ、マウスおよびカニクイザルCCR8との交差反応性
293F細胞を、ポリブレン(8μg/mL)により、ラットおよびイヌCCR8をコードするレンチウイルスベクターでトランスフェクトし、ピューロマイシン(2μg/mL)を含む培地で選択し、FACSによりラットおよびイヌCCR8の発現について試験した。CHOK1細胞を、ポリブレン(8μg/mL)によりマウスCCR8をコードするレンチウイルスベクターでトランスフェクトし、ピューロマイシン(6μg/mL)を含む培地で選択し、FACSによりマウスCCR8の発現について試験した。
【0204】
ヒト、ラット、イヌ、マウス、およびカニクイザルCCR8過剰発現および親293F細胞株またはCHOK1細胞株を用いて、フローサイトメトリーにより、ヒト化抗体のヒト、ラット、イヌ、マウス、およびカニクイザルCCR8に対する特異的結合について研究した。
【0205】
結果を図4A~4Eに示す。結合親和性によれば、3F11hz4は、ヒト(4A)、ラット(4B)、イヌ(4C)、マウス(4D)およびカニクイザルCCR8(4E)を発現するHEK293/CHOK1細胞に結合したが、親細胞には結合しなかった。
【0206】
実施例10. ヒト化モノクローナル抗体のエピトープ解析
ヒト、ラット、イヌ、マウスおよびカニクイザルCCR8の配列を解析した。その結果、ヒト、ラット、イヌ、マウスおよびカニクイザルCCR8のECD2領域は類似していることが示された(表10)。3F11hz4ヒト化抗体はECD2と結合すると仮定し、その結合の評価は、ECD2の各変異体を293F細胞で一過性に発現させ、その変異体を25μg/mLから3倍ずつ14回連続希釈して調製したヒト化3F11hz4抗体の抗体溶液と反応させることにより行った。4℃で1時間反応させた後、Alexa Fluor 488 affinipure goat anti-human Ig(H+L) (Jackson, 109-545-003)と反応させ、フローサイトメトリー解析を行った。連続希釈の最高MFIを100%とし、以下の式により阻害率を算出した。
【0207】
阻害率% = (最高MFI-MFI)/最高MFI * 100%
結果を図5A-Bおよび表11に示す。ヒトCCR8と比較して、CCR8の97アミノ酸の変異体は、EC50を0.2335 nMから23.96 nMに上昇させることができる。
【0208】
【表10】
【0209】
【表11】
【0210】
実施例11. 3F11hz4ヒト化抗体のヒトCCR4およびヒトCX3CR1への結合についての研究
フローサイトメトリーにより、3F11hz4ヒト化抗体のCCR4およびCX3CR1過剰発現細胞への結合について試験した。簡潔に述べると、293F細胞をポリブレン(8μg/mL)によりヒトCCR4およびCX3CR1をコードするレンチウイルスベクターでトランスフェクトし、ピューロマイシン(2μg/mL)を含む培地で選択し、CCR4抗体(Biolegend、359408)およびCX3CR1抗体(Biolegend、341610)を用いてFACSによりヒトCCR4およびCX3CR1の発現について試験した。結合評価は、ヒト CCR4 および CXCR1 を 293F 細胞で発現させ、25μg/mL から 3 倍に連続希釈したヒト化 3F11hz4 抗体の抗体溶液と反応させることにより行った。4℃で1時間反応させた後、Alexa Fluor 488 affinipure goat anti-human Ig(H+L) (Jackson, 109-545-003)と反応させ、フローサイトメトリー解析を行った。
【0211】
図6A~6Bに示されるように、ヒト化3F11hz4抗体は、ヒトCCR8(4A)を発現する293F細胞に結合したが、ヒトCCR4(6A)、ヒトCX3CR1(6B)、または293F細胞(4A)を発現する293F細胞には結合しなかった。
【0212】
実施例12. 3F11hz4ヒト化抗体と他のCCR8抗体との比較
本明細書に開示された3F11hz4ヒト化抗体と他の先行技術のCCR8抗体との結合親和性、種交差反応性、およびシグナル伝達ブロックを研究した。先行技術のCCR8抗体は、関連文献に従って作製され、特徴づけられた。具体的には、Gilead(WO2021163064)、Shionogi(EP3903817A1)、Surface(SRF-114)およびBayer(TPP-23411、WO2021152186)のCCR8抗体配列をCHO細胞を通して発現した。様々な抗体を、親和性(EC50)、種交差反応性、カルシウム移動性(IC50)で比較した。結果は表12に示される。
【0213】
【表12】
【0214】
表12に示されるように、3F11hz4は、結合親和性、種の交差反応性およびシグナルブロックCa2+において優位性を示した。
【0215】
実施例13. CD34ヒト化マウスにおける3F11hz4抗体の抗腫瘍効果
hu-HSC-NPGヒト免疫系マウスモデルの調製および検出: 4週齢のメスNPGマウスにX線生物学的照射装置で4-24時間照射し、尾静脈から臍帯血に由来するCD34+造血幹細胞を注入した。移植16週後、眼窩から血液サンプルを採取し、EDTA-Na2抗凝固チューブで血液サンプルを採取した。フローサイトメトリーを用いて、動物の末梢血中のヒトCD45、CD3、CD4およびCD8陽性細胞の含量を分析し、移植されたヒトT細胞の割合を決定した腫瘍ベアリングモデルを確立するために、T細胞移植比率の高いHu-造血幹細胞-NPGを選択した。
【0216】
腫瘍の接種: 肺がん(HCC827)を培養し、十分な数まで増殖させ、PBS溶液に懸濁し、5×106細胞/0.2mlの量で背側皮下に注射した。各ラウンドで合計45匹のマウスに接種し、皮下腫瘍がはっきり見えた時点で体積を観察した。7-14日後、皮下腫瘍は50-100 mm3に成長した。皮下腫瘍が大きすぎるマウスや小さすぎるマウスを除いて、1群につき10匹で無作為に4群に分けた。分類は以下の通り:グループ1: IgG1 10 mpk, iv, biw; グループ2: CCR8-Ab-IgG1 1 mpk, iv, biw; グループ3:CCR8-Ab-IgG1 3 mpk、iv、biw;グループ4:CCR8-Ab-IgG1 10 mpk、iv、biw。動物にCCR8抗体を静脈内注射した。抗体は皮下腫瘍の成長速度に応じて週2回、計5~6回投与した。皮下腫瘍の体積とマウスの体重を週2回測定した。腫瘍体積計算式:体積=長径×短径×短径/2。
【0217】
統計方法: データ解析 GraphPad Prism 8.0統計解析ソフトウェアを用いて、CCR8抗体投与群とアイソタイプコントロール群の間で皮下腫瘍体積に統計学的な差があるかどうかを解析した。まずデータに対して正規分布と等分散性検定を行った。その結果、正規分布を満たす(p>0.20)とともに分散が等分散性(p>0.10)であった: 複数群間の比較は一元配置分散分析(one-way ANOVA)法で検定し、P<0.05を統計学的有意とした。正規分布を満たしていない、又は分散が等しくない場合は、ノンパラメトリック検定であるKruskal-Wallis H方法を採用し解析した。腫瘍体積抑制率(TGI)は以下のように算出した: TGI=100%×[1-RTV(実験群)/RTV(対照群)]。
【0218】
結論:CD34ヒト化動物モデルにおいて、皮下肺がん(HCC827細胞株)に対する3F11hz4抗体の用量依存的な抗腫瘍効果が認められた(図7)。
【0219】
実施例14. 3F11hz4抗体のシンジェニックモデルにおける抗腫瘍効果
肺がん、肝臓がんなどの固形がんモデルにおいて、3F11hz4の用量-効果関係を検討し、最小有効量および最大有効量を探索した。
【0220】
肺がんおよび肝臓がんのシンジェニック移植腫瘍モデルマウスにおけるインビボ効能検証:各ラウンドの実験には、8 週齢の雌性マウス 50 匹を用意した。200μLのPBS中の1×106の肺がん(LLC)と肝臓がん(H22)細胞をマウスの右側腹部に皮下接種し、接種日を0日目と記録した。4-7日後、皮下腫瘍は50-100 mm3に成長した。皮下腫瘍の体積に応じて、皮下腫瘍が大きすぎるマウスまたは小さすぎるマウスの一部を除いて、1群につき10匹で無作為に4群に分けた。分類は以下の通り:グループ1: mIgG2a 10mpk, ip, biw; グループ2: CCR8-Ab-mIgG2a 1mpk, ip, biw; グループ3: CCR8-Ab-mIgG2a 3 mpk, ip, biw; グループ4: CCR8-Ab-mIgG2a 10 mpk, ip, biw。動物にCCR8抗体を腹腔内(i.p.)注射した。皮下腫瘍の成長速度に応じて、週2回、合計3-6回抗体を投与した。皮下腫瘍の体積とマウスの体重を週2回測定した。腫瘍体積の計算式:体積=長径×短径×短径/2。GraphPadソフトウェアを用いて、CCR8抗体投与群とホモ型対照群との間で皮下腫瘍体積に統計学的な差があるか否かを解析した。
【0221】
結論:皮下肺がん(HCC827 細胞株)に対する 3F11hz4 抗体の用量依存的な抗腫瘍効果は、CD34 ヒト化動物モデル(図 7)、マウス肝腫瘍(H22 細胞株)およびマウス肺がん(LLC 細胞株)合成モデル(図 8 および 9)において確認された。
【0222】
実施例15. Treg細胞遊走試験
Treg細胞遊走試験: マウスH22皮下腫瘍中のCD4+CD25+Treg細胞を磁気ビーズソーティング法により濃縮し、CCR8抗体フローサイトメトリーにより濃縮されたTreg細胞のCCR8発現率を検出し、CCR8発現率が80%以上になった時点で遊走試験を行った。CD4+CD25+Treg細胞を飢餓培地1640+1%FBS(Ce)+1%P/Sで3時間処理し、細胞を回収して遠心カウントし、1640+0.5%BSA培地で2.66x106/mLになるように懸濁した。1640+0.5%BSA+1%P/S培地によるCCR8抗体の希釈:まず、998μLの1640+0.5%BSA+1%P/S培地に2μLの10mg/mLのCCR8抗体を加え、50μg/mLに希釈した;CCR8抗体を含まない陽性対照群は、5倍で6点の段階希釈により設定した。75μLに希釈したCCR8抗体を75μLの細胞懸濁液と混合し、37℃のインキュベーター中に放置し、30分間インキュベートした。CCL1を遊走培地1640+0.5%BSA+1%P/Sで希釈した(8ウェルあたり1mL)。100μLの10ng/mL CCL1希釈液をトランスウェルプレートの下層にあらかじめ添加した。75μLのCCR8抗体と共培養した細胞をトランスウェルプレートの上層に加えた。37℃のインキュベーターで3時間培養した。フローサイトメトリーで下層細胞数をカウントし、高速は60ul/min、1分に設定した。GraphPad Prismでデータを処理し、Treg細胞の遊走に対するCCR8抗体の阻害性を解析した。
【0223】
結論:H22肝臓がんの皮下腫瘍組織から選択したTreg細胞を用いて、CCR8抗体がTreg細胞の遊走を阻害できることを検証した(図10)。
【0224】
本発明において言及される全ての文書は、あたかも各個々の文書が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されるのと同程度に参照により本出願に組み込まれる。 さらに、本発明で教示された内容を読んだ後、当業者によって本発明に対して様々な修正及び変更がなされてもよく、これらの同等物もまた特許請求の範囲によって定義される範囲に含まれることを理解すべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2024527288000001.app
【国際調査報告】