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特表2024-527292PIKFYVEアンチセンスオリゴヌクレオチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】PIKFYVEアンチセンスオリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240717BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C12N15/113 130
A61P25/00 ZNA
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/7125
A61K31/712
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579396
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022034539
(87)【国際公開番号】W WO2022271836
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/202,717
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523480819
【氏名又は名称】アキュラステム インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ウェン-スアン
(72)【発明者】
【氏名】リー, エミリー エリザベス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA181
4C084ZA182
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
(57)【要約】
本開示は、PIKFYVEアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、それを含有する医薬組成物、及びそれにより神経疾患を治療、阻害、抑制、及び予防する方法に関する。一実施形態は、PIKFYVEの発現を抑制する一本鎖ASOであり、ASOは、配列番号1~500のいずれかの核酸塩基の配列の少なくとも12または15連続核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する。ASOの核酸塩基配列は、配列番号1~500のいずれかの核酸塩基配列の30、25、24、23、22、21、または20連続核酸塩基を含み得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PIKFYVEの発現を抑制する一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号1~500のいずれかの核酸塩基配列の少なくとも12または15連続核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する、前記アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号1~500のいずれか1つの核酸塩基配列を有する、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、18~20個の連結したヌクレオシドを有する、請求項1または2に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
少なくとも1つのヌクレオシド間結合が、修飾されたヌクレオシド間結合である、先行請求項のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である、請求項4に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
各修飾ヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である、請求項4に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
少なくとも1つのヌクレオシド間結合が、ホスホジエステルヌクレオシド間結合である、先行請求項のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
少なくとも1つのヌクレオシド間結合が、ホスホロチオエート結合であり、少なくとも1つのヌクレオシド間結合がホスホジエステル結合である、請求項7に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
少なくとも1つのヌクレオシドが、修飾された核酸塩基を含む、先行請求項のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
前記修飾された核酸塩基が5-メチルシトシンである、請求項9に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシドが、修飾された糖部分を含む、先行請求項のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
前記修飾された糖部分が、2’-O-メトキシエチル基を含む、請求項11に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドがギャップマーである、先行請求項のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、
8~12個の連結したデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント、
3~5個の連結したヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント、
3~5個の連結したヌクレオシドからなる3’ウイングセグメントを含み、
前記ギャップセグメントが、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントの間に位置し、各ウイングセグメントのヌクレオシドが修飾された糖部分を含む、請求項13に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
各ウイングセグメントの各ヌクレオシドが、修飾された糖部分を含む、請求項14に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
各ウイングセグメントを構成する前記ヌクレオシドが、少なくとも2つの異なる修飾された糖部分を含む、請求項14に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
各ウイングセグメントを構成するヌクレオシドが、同じ修飾された糖部分を含む、請求項14に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
前記修飾された糖部分が、2’-O-メトキシエチル基を含む、請求項15に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、15~50のヌクレオシドを含む、先行請求項のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号501~533のいずれかの核酸塩基配列の少なくとも12または15連続核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する、先行請求項のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号501~533の配列を有する、先行請求項のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号520の配列を有する、先行請求項のいずれかに記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
先行請求項のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドと、薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/または賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項24】
前記医薬組成物が、非経口投与用に製剤化される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記医薬組成物が、脳室内注射用に製剤化される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
治療を必要とする、神経疾患または神経変性疾患を有する対象の治療方法であって、治療有効量の請求項1~22のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは請求項23~25のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記治療方法。
【請求項27】
前記神経疾患が、ニューロンの過剰興奮性と関連している、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記神経疾患が、異常なエンドソーム輸送と関連している、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記神経疾患が、異常なリソソーム輸送と関連している、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記神経疾患が、家族性及び孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)、家族性及び孤発性前頭側頭型認知症(FTD)、進行性核上性麻痺、アルツハイマー病、慢性外傷性脳症、パーキンソン病、シャルコー・マリー・トゥース病2A型及び4B型、ハンチントン病、認知症、伝染性海綿状脳症、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、脊髄小脳失調症、及びクロイツフェルト・ヤコブ病からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記神経疾患が、家族性筋萎縮性側索硬化症である、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記神経疾患が、孤発性筋萎縮性側索硬化症である、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記神経疾患が、家族性前頭側頭型認知症である、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記神経疾患が、孤発性前頭側頭型認知症である、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記神経疾患が、TDP-43病理を伴う前頭側頭型認知症である、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記神経疾患が、タウ病理を伴う前頭側頭型認知症である、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が、前記C9ORF72遺伝子に関してハプロ不全である、請求項26~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、C90RF72においてGGGGCCリピート配列伸長を有する、請求項26~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が、C90RF72において(GGGGCC)ヘキサヌクレオチド伸長を有し、nが、少なくとも30である、請求項26~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が、C9orf72関連前頭側頭型認知症を有する、請求項26~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象が、微小管関連タンパク質タウ(MAPT)関連前頭側頭型認知症を有する、請求項26~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が、V337M MAPT変異を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
神経疾患または神経変性疾患を有する患者におけるPIKFYVEの発現の阻害または抑制方法であって、有効量の請求項1~22のいずれか1項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド、または請求項23~25のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記阻害または抑制方法。
【請求項44】
12~30個の連結したヌクレオシドからなり、かつ配列番号1~533の核酸塩基配列のいずれかの少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20連続核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する、オリゴヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月22日に出願された米国特許出願第63/202,717号の利益を主張し、その出願は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、PIKFYVEアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、それを含有する医薬組成物、及びそれにより神経疾患または神経変性疾患を治療、阻害、抑制、及び予防する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
患者における多くの神経変性障害は、特に特定の患者における神経変性障害の病理が完全に理解されていない場合、効果的に治療することが困難である。
【0004】
国際公開第2016/210372号には、PIKFYVE阻害剤を投与することによって神経変性疾患を治療する方法が開示されている。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び前頭側頭型認知症(FTD)などの多くの神経変性障害に対する効果的な治療が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/210372号
【発明の概要】
【0006】
本発明は、PIKFYVEアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、それを含有する医薬組成物、及び神経変性障害の治療におけるそれらの使用に関する。
【0007】
一実施形態は、PIKFYVEの発現を抑制する一本鎖ASOであり、ASOは、配列番号1~500のいずれかの核酸塩基の配列の少なくとも12または15連続核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する。ASOの核酸塩基配列は、配列番号1~500のいずれかの核酸塩基配列の30、25、24、23、22、21、または20連続核酸塩基を含み得る。ASOは、配列番号1~500のいずれかであり得る。
【0008】
別の実施形態は、12~30個の連結したヌクレオシドからなり、かつ配列番号1~500の核酸塩基配列のいずれかの少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20連続核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する、オリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、配列番号1~500のいずれかの核酸塩基配列の25、24、23、22、21、または20連続核酸塩基を含み得る。
【0009】
特定の実施形態では、少なくとも1つのヌクレオシド間結合は、修飾されたヌクレオシド間結合であり、修飾されたヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合、またはホスホジエステルヌクレオシド間結合であってもよい。ヌクレオシドのうちの少なくとも1つは、修飾された核酸塩基であってもよい。
【0010】
他の実施形態では、ASOの少なくとも1つのヌクレオシドは修飾された糖部分であってよく、その修飾された糖部分は二環式糖部分であり得るか、またはその修飾された糖部分は2’-O-メトキシエチル基を含み得る。特定の態様では、二環式糖部分は、4’-CH(R)-O-2’架橋を含み、R基は、独立して、H、C1-12アルキル、または保護基である。
【0011】
さらに他の実施形態では、ASOは、ギャップマー(例えば、MOEギャップマー)であり、ギャップセグメントは8~12個の結合したデオキシヌクレオシド、3~5個の結合したヌクレオシドからなる5’ウイングセグメント、及び3~5個の結合したヌクレオシドからなる3’ウイングセグメントからなり得る。特定の態様では、ギャップセグメントを、5’ウイングセグメントと3’ウイングセグメントの間に配置してもよく、各ウイングセグメントのヌクレオシドは、修飾された糖部分(例えば、2’-O-メトキシエチル基を有する糖部分)を含む。
【0012】
他の実施形態は、オリゴヌクレオチドは、12~30個の連結したヌクレオシドからなり、かつ配列番号1~500の核酸塩基配列のいずれかの少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20連続核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する。
【0013】
別の実施形態は、本発明のPIKFYVE ASOと、1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/または賦形剤とを含む医薬組成物である。一実施形態では、医薬組成物は、非経口投与、例えば、脳室内注射または髄腔内投与に適している。
【0014】
さらに別の実施形態は、PIKFYVE ASOまたは本明細書に記載の医薬組成物(例えばその有効量の)を患者に投与(例えば、脳室内注射または髄腔内投与)することにより、患者(例えば、神経疾患または神経変性疾患を有する患者)におけるPIKFYVEの発現を阻害、抑制、または予防する方法である。
【0015】
さらに別の実施形態は、治療有効量のPIKFYVE ASOまたは本明細書に記載される医薬組成物を投与することによって、神経疾患または神経変性疾患を有する対象を治療する方法である。一実施形態では、疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)(例えば、C9orf72関連ALS)である。別の実施形態では、疾患は、TDP-43病理を有するFTD、またはタウ病理を有するFTDなどの前頭側頭型認知症(FTD)である。さらに別の実施形態では、疾患は、C9orf72関連FTD(C9-FTD)である。さらに別の実施形態では、本疾患は、微小管関連タンパク質タウ(MAPT)関連FTD(MAPT-FTD)、例えば、V337M MAPT変異を伴うFTDである。
【0016】
さらに別の実施形態は、治療有効量のPIKFYVE ASOまたは本明細書に記載の医薬組成物を投与することによって、PIKFYVE疾患または障害を有する対象の治療方法である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明のより完全な理解とそれに付随する利点の多くは、添付の図面と関連させて考慮した場合に、以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるため、容易に得られるであろう。
【0018】
図1】対照(NCASO)に対するASO 1~33(配列番号1~33)の相対的mRNA発現レベルを測定する、HeLa細胞におけるPIKFYVE ASOスクリーニングを示す。
【0019】
図2】新生児トランスジェニックhPIKFYVE BACマウスにおける様々なPIKFYVE ASOの抑制効果を示す棒グラフである。
【0020】
図3】ASO-520または人工髄液(aCSF)を処理した場合と処理しない場合の非ヒト霊長類(NHP)におけるPIKFYVE mRNA及びPIKFYVEタンパク質の変化を示す棒グラフである。
【0021】
図4A】非コードASO(NC ASO)存在下での対照運動ニューロン、または(i)NC ASOもしくは(ii)AS-20(配列番号20)の存在下でのC9ALS患者由来の運動ニューロンの生存率を示すグラフである。
【0022】
図4B】NC ASO存在下での対照運動ニューロン、または(i)NC ASOもしくは(ii)AS-520(配列番号520)の存在下でのC9ALS患者由来の運動ニューロンに関するハザード比を示す棒グラフである。
【0023】
図5A】NC ASOまたはAS-520(配列番号520)の存在下でMAPT V337VまたはV337Mを用いたFTD患者由来の皮質ニューロンの生存確率を示すグラフである。
【0024】
図5B】NC ASOまたはAS-520で処置した、対照由来の皮質ニューロン、C9orf72関連FTD(C9-FTD)、孤発性FTD(sFTD)、及び微小管関連タンパク質タウ(MAPT)関連FTD(MAPT-FTD)患者のハザード比を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。相反が生じる場合、定義を含む本明細書が優先される。好ましい方法及び材料については後述するが、本明細書に記載されるものと類似するまたは均等な方法及び材料も、本発明の実施または試験に使用することができる。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により援用される。本明細書に開示される材料、方法、及び実施例は、例示的であるに過ぎず、限定的であることを意図するものではない。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することを目的としているに過ぎず、制限することを意図するものではない。
【0026】
定義
【0027】
用語 「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含有する(contain(s))」、「であってもよい(may)」、及びそれらの変形は、本明細書で使用される場合、さらなる行為または構造の可能性を排除しない、開放式の移行句、用語、または語句であることが意図される。
【0028】
文脈から明らかにそうでないと示されない限り、単数形の「a」、「an」、及び「the」には複数の指示対象が含まれる。
【0029】
本開示はまた、明示的に記載されているかどうかにかかわらず、本明細書に存在する実施形態または要素「を含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」、及び「から本質的になる(consisting essentially of)」他の実施形態も企図する。
【0030】
本明細書で使用する場合、「2’-デオキシヌクレオシド」は、天然のデオキシリボ核酸(DNA)及び核酸塩基に認められるような2’-H(H)フラノシル糖部分を含有するヌクレオシドを意味する。特定の実施形態では、2’-デオキシヌクレオシドは、修飾された核酸塩基及びフラノシル糖部分を含んでもよく、またはRNA核酸塩基(ウラシル)及びフラノシル糖部分を含んでもよい。
【0031】
本明細書で使用する場合、「2’-置換ヌクレオシド」とは、2’-置換糖部分を含むヌクレオシドを意味する。本明細書で使用される場合、糖部分に関して「2’-置換」とは、HまたはOH以外の少なくとも1つの2’-置換基を含む糖部分を意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「アンチセンス分子」とは、少なくとも1つのアンチセンス活性を達成することができるオリゴマー核酸またはオリゴマー二本鎖を意味する。
【0033】
量に関連して用いられる修飾語「約」は、述べられた値を含み、文脈によって指示される意味を有する(例えば、それは、少なくとも、特定の量の測定と関連付けられた誤差の程度を含む)。また、修飾語「約」は、2つの端点の絶対値によって定義される範囲を開示していると見なされるべきである。例えば、表現「約2~約4」は、「2~4」の範囲をも開示している。用語「約」は、示された数のプラスまたはマイナス10%を指し得る。例えば、「約10%」は、9%~11%の範囲を示し得、「約1」は、0.9~1.1を意味し得る。「約」の他の意味は、四捨五入などの文脈から明らかであり、例えば、「約1」は、0.5~1.4を意味する場合がある。
【0034】
本明細書における数値範囲の列挙に関しては、それらの間に介在する同程度の正確さを有する各数値が明示的に企図される。例えば、6~9の範囲では、6及び9に加えて、数値7及び8が企図され、範囲6.0~7.0では、数値6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び7.0が、明示的に企図される。
【0035】
本明細書で使用する場合、「二環式糖」または「二環式糖部分」とは、2つの環を含む修飾された糖部分を意味し、その場合、第1の環における原子の2つを結びつける架橋を介して第2の環が形成され、それによって二環構造が形成される。特定の実施形態では、二環式糖部分の第1の環は、フラノシル部分である。特定の実施形態では、二環式糖部分は、フラノシル部分を含まない。本明細書で使用する場合、「二環式ヌクレオシド」または「BNA」とは、二環式糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0036】
本明細書で使用する場合、「キラル富化集団」とは、特定のキラル中心がステレオランダムである場合に、集団内で特定のキラル中心に特定の立体化学配置を含む分子の数または割合が、集団内の同じ特定のキラル中心に同じ特定の立体化学配置を含むと予想される分子の数または割合よりも大きい、同一の分子式の複数の分子を意味する。各分子内に複数のキラル中心を有する分子キラル富化集団は、1つ以上のステレオランダムキラル中心を含み得る。特定の実施形態では、分子は修飾オリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、分子は、修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物である。
【0037】
本明細書で使用する場合、オリゴヌクレオチドに関する「相補的」とは、オリゴヌクレオチドの核酸塩基またはその1つ以上の領域と、別の核酸の核酸塩基またはその1つ以上の領域の少なくとも70%が、オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列と他の核酸が反対方向にアラインする場合に、互いに水素結合できることを意味する。相補的な核酸塩基とは、互いに水素結合を形成することができる核酸塩基を意味する。相補的な核酸塩基対としては、アデニン(A)とチミン(T)、アデニン(A)とウラシル(U)、シトシン(C)とグアニン(G)、及び5-メチルシトシン(mC)とグアニン(G)が挙げられる。相補的なオリゴヌクレオチド及び/または核酸は、各ヌクレオシドで相補的な核酸塩基を有している必要はない。むしろ、いくつかのミスマッチが許容される。本明細書で使用する場合、オリゴヌクレオチドに関して「完全に相補的な」または「100%相補的な」とは、オリゴヌクレオチドが他のオリゴヌクレオチドまたは核酸に対して、オリゴヌクレオチドの各ヌクレオシドで相補的であることを意味する。
【0038】
本明細書で使用する場合、「ギャップマー」とは、1個以上のヌクレオシドを有する外部領域間に位置する、RNase H切断を支援する複数のヌクレオシドを有する内部領域を含む修飾オリゴヌクレオチドを意味し、内部領域を含むこれらのヌクレオシドは、外部領域を含むヌクレオシドまたは複数のヌクレオシドとは化学的にはっきりと異なる。内部領域は「ギャップ」と呼ばれる場合があり、外部領域は「ウイング」と呼ばれる場合がある。特段の記載が無い限り、「ギャップマー」とは、糖モチーフを指す。特段の記載がない限り、ギャップマーのギャップのヌクレオシドの糖部分は、未修飾2’-デオキシフラノシルである。したがって、用語「MOEギャップマー」は、両ウイングの2’-MOEヌクレオシドの糖モチーフと2’-デオキシヌクレオシドのギャップを有するギャップマーを示す。特段の記載がない限り、MOEギャップマーは、1つ以上の修飾ヌクレオシド間結合及び/または修飾された核酸塩基を含み得、そのような修飾は、必ずしも糖修飾のギャップマーパターンに従う必要はない。以下の表2に、例示的なMOEギャップマーを示す。
【0039】
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、規定のパターンまたは糖モチーフでオリゴヌクレオチドまたはその領域に沿って配置された1種類以上の修飾された糖及び/または未修飾された糖部分を含む。特定の例では、そのような糖モチーフには、本明細書で論じる糖修飾のいずれかが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、2つの外部領域すなわち「ウイング」と、中央もしくは内部領域すなわち「ギャップ」とによって画定されるギャップモチーフを有する領域を含むか、またはそれからなる。ギャップマーモチーフの3つの領域は、「5’ウイング」、「ギャップ」、及び「3’ウイング」を含み、これらはヌクレオシドの連続配列を形成し、各ウイングのヌクレオシドの糖部分の少なくとも一部は、ギャップのヌクレオシドの糖部分の少なくとも一部と異なる。具体的には、少なくとも、ギャップに最も近い各ウイングのヌクレオシド(5’-ウイングの最も3’側のヌクレオシド及び3’-ウイングの最も5’側のヌクレオシド)の糖部分が、隣接するギャップヌクレオシドの糖部分とは異なり、それ故に、ウイングとギャップとの間の境界(すなわち、ウイング/ギャップ接合部)が画定される。特定の実施形態では、ギャップ内の糖部分は、互いに同一である。特定の実施形態では、ギャップは、ギャップの1個以上の他のヌクレオシドの糖部分とは異なる糖部分を有する1個以上のヌクレオシドを含む。特定の実施形態では、2個のウイングの糖モチーフは、互いに同一である(対称性ギャップマー)。特定の実施形態では、5’-ウイングの糖モチーフは、3’-ウイングの糖モチーフとは異なる(不斉ギャップマー)。
【0041】
特定の実施形態では、ギャップマーのウイングは、1~5個のヌクレオシドを含む。特定の実施形態では、ギャップマーの各ウイングの各ヌクレオシドは修飾ヌクレオシドである。
【0042】
特定の実施形態では、ギャップマーのギャップは、7~12個のヌクレオシド(例えば、10個のヌクレオシド)を含む。特定の実施形態では、ギャップマーのギャップの各ヌクレオシドは、未修飾2’-デオキシヌクレオシドである。
【0043】
特定の実施形態では、ギャップマーはデオキシギャップマーである。実施形態において、各ウイング/ギャップ接合部のギャップ側のヌクレオシドは未修飾2’-デオキシヌクレオシドであり、各ウイング/ギャップ接合部のウイング側のヌクレオシドは修飾ヌクレオシドである。特定の実施形態では、ギャップの各ヌクレオシドは、未修飾2’-デオキシヌクレオシドである。特定の実施形態では、ギャップマーの各ウイングの各ヌクレオシドは修飾ヌクレオシドである。
【0044】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、完全に修飾された糖モチーフを有する領域を含むか、またはそれからなる。そのような実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドの完全に修飾された領域の各ヌクレオシドは、修飾された糖部分を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチド全体の各ヌクレオシドは修飾された糖部分を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、完全に修飾された糖モチーフを有する領域を含むか、またはそれからなり、完全に修飾された領域内の各ヌクレオシドは、本明細書において均一修飾された糖モチーフと呼ばれる同じ修飾された糖部分を含む。特定の実施形態では、完全に修飾されたオリゴヌクレオチドは、均一修飾オリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、均一修飾オリゴヌクレオチドの各ヌクレオシドは、同じ2’修飾を含む。
【0045】
本明細書で使用される「阻害する」とは、特定の病原体(例えば、感染性病原体)または疾患の活性の進行または重症度を実質的に拮抗、阻止、予防、抑制、抑止、遅延、妨害、変更、排除、停止、または逆転させる能力を指す。
【0046】
本明細書で使用する場合、「ヌクレオシド間結合」とは、オリゴヌクレオチド内の隣接するヌクレオシド間の共有結合を意味する。本明細書で使用する場合、「修飾ヌクレオシド間結合」とは、リン酸ジエステルヌクレオシド間結合以外の任意のヌクレオシド間結合を意味する。「ホスホロチオエート結合」とは、ホスホジエステルヌクレオシド間結合の非架橋酸素原子の1つが硫黄原子で置換された、修飾ヌクレオシド間結合である。
【0047】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドのヌクレオシドは、任意のヌクレオシド間結合を用いて共に連結され得る。ヌクレオシド間結合基の2つの主要なクラスは、リン原子の存在または非存在によって定義される。リンを含有する代表的なヌクレオシド間結合としては、ホスホジエステル結合(未修飾または天然の結合とも称される)、ホスホトリエステル、メチルホスホネートまたは他のアルキルホスホネート、ホスホロアミダート、及びホスホロチオエート、及びホスホロジチオエートを含むリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。非リン酸を含有する代表的なヌクレオシド間結合基としては、メチレンメチルイミノ(-CH-N(CH)-O-CH-)、チオジエステル、チオノカルバメート(-O-C(=O)(NH)-S-)、シロキサン(-O-SiH-O-)、及びN,N’-ジメチルヒドラジン(-CH-N(CH)-N(CH)-)が挙げられるが、これらに限定されない。天然のリン酸結合と比較して、修飾ヌクレオシド間結合は、オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性を変える(通常は増加させる)ために使用され得る。リン含有及び非リン含有ヌクレオシド間結合の調製方法は、当業者に周知である。
【0048】
キラル中心を有する代表的なヌクレオシド間結合としては、アルキルホスホネート及びホスホロチオエートが挙げられるが、これらに限定されない。キラル中心を有するヌクレオシド間結合を含む修飾オリゴヌクレオチドは、ステレオランダムヌクレオシド間結合を含む修飾オリゴヌクレオチドの集団として、または特定の立体化学的配置のホスホロチオエート結合を含む修飾オリゴヌクレオチドの集団として調製することができる。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドの集団は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含み、その場合、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合のすべてがステレオランダムである。そのような修飾オリゴヌクレオチドは、各ホスホロチオエート結合の立体化学構造のランダムな選択をもたらす合成法を使用して生成することができる。それにもかかわらず、当業者によく理解されているように、各個々のオリゴヌクレオチド分子の各個々のホスホロチオエートは、規定の立体配置を有する。特定の実施形態では、特定の独立して選択される立体化学的配置の、1つ以上の特定のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む修飾オリゴヌクレオチドに関して、修飾オリゴヌクレオチドの集団を富化する。特定の実施形態では、特定のホスホロチオエート結合の特定の構成は、集団内の分子の少なくとも65%に存在する。特定の実施形態では、特定のホスホロチオエート結合の特定の構成は、集団内の分子の少なくとも70%に存在する。特定の実施形態では、特定のホスホロチオエート結合の特定の構成は、集団内の分子の少なくとも80%に存在する。特定の実施形態では、特定のホスホロチオエート結合の特定の構成は、集団内の分子の少なくとも90%に存在する。特定の実施形態では、特定のホスホロチオエート結合の特定の構成は、集団内の分子の少なくとも99%に存在する。そのようなキラル富化した修飾オリゴヌクレオチドの集団は、当技術分野で公知の合成方法、例えば、Oka et al.,JACS 125,8307(2003);Wan et al.,Nuc.Acid.Res.42,13456(2014);Chapter 10 of Locked Nucleic Acid Aptamers in Nucleic Acid and Peptide Aptamers:Methods and Protocols v 535,2009 by Barciszewski et al.,editor Gunter Mayerand;及びWO2017/015555に記載されている方法を使用して生成することができる。特定の実施形態では、少なくとも1つの示されたホスホロチオエートを(Sp)配置で有する修飾オリゴヌクレオチドについて、修飾オリゴヌクレオチドの集団を富化する。別の実施形態では、少なくとも1つの示されたホスホロチオエートを(Rp)配置で有する修飾オリゴヌクレオチドについて、修飾オリゴヌクレオチドの集団を富化する。
【0049】
本明細書で使用する場合、「MOE」は、メトキシエチルを意味する。「2’-MOE」は、フラノシル環の2’位の-OCHCHOCH基を意味する。
【0050】
「神経疾患」とは、脳、脊椎、またはニューロンに、電気的異常、生化学的異常、または構造的異常を引き起こす疾患である。例えば、神経疾患は、神経変性疾患であり得る。神経変性疾患は、例えば運動ニューロンの変性を引き起こし得る。神経疾患は、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、または前頭側頭型認知症であり得る。神経疾患のさらなる例としては、例えば、パーキンソン病、多発性硬化症、末梢性ミオパチー、ラスムッセン脳炎、注意欠陥多動性障害、自閉症、中枢性疼痛症候群、不安症、及び/または鬱病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
神経疾患は、異常なエンドソーム輸送を伴う場合がある。例えば、エンドソーム経路及びエンドソームは、膜結合タンパク質のリサイクルまたは破壊、ゴルジ関連タンパク質の輸送、及びエキソソーム中のタンパク質の細胞外放出のために必要な構成要素である。これらのプロセスは、神経伝達を補助し、例えば、シナプス小胞または神経伝達物質受容体のリサイクル及び分解のバランスを促進する。
【0052】
神経疾患には、異常なリソソーム分解が伴う場合がある。リソソーム分解の変化は、神経変性疾患などの神経疾患に存在し得る。加齢及び加齢関連疾患によるカテプシンの不均衡は、中枢神経系(CNS)ニューロンに有害な影響を引き起こす場合があり、リソソームは、膜タンパク質またはその前駆体のアンフォールド及び部分分解の部位となって、その後、細胞から排出されるか、または死細胞から放出され、病理学的実体として蓄積し得る。
【0053】
ヘルスケアプロフェッショナルは、運動ニューロン変性の1つ以上の症状を評価することによって、運動ニューロン変性に関連する疾患を有するものとして対象を診断する場合がある。神経疾患を診断するために、物理的試験の後に徹底的な神経学的検査を行う場合がある。神経学的検査では、運動及び感覚技能、神経機能、聴覚及び発話、視覚、協調及びバランス、精神状態、ならびに気分または行動の変化を評価してもよい。神経疾患に関連する疾患の非限定的な症状は、腕、脚、足、または足首の脱力感、言語不明瞭、足の前部とつま先を持ち上げるのが困難、手の脱力感または不器用、筋麻痺、筋硬直、不随意痙攣または苦悶運動(舞踏病)、不随意の持続的な筋肉の拘縮(ジストニア)、動作緩慢、自動運動の喪失、姿勢及びバランスの障害、柔軟性の欠如、体の一部がチクチクする、頭を動かすと起こる電気ショックの感覚、腕、肩、及び舌の痙攣、嚥下困難、呼吸困難、咀嚼の困難、視力の部分的または完全な喪失、複視、緩慢または異常な目の動き、振戦、不安定歩行、倦怠感、記憶喪失、めまい、思考または集中の困難、読み書きの困難、空間関係の誤解、見当識障害、鬱、不安、決断及び判断の困難、衝動制御の喪失、常習的作業の計画及び実行の困難、攻撃性、易刺激性、ひきこもり、気分変動、認知症、睡眠習慣の変化、放浪、及び食欲の変化であり得る。
【0054】
検査を実施して、神経疾患に類似した症状を示し得る疾患及び障害を判定し、筋肉の関与を測定し、ニューロンの変性を評価してもよい。検査の非限定的な例は、筋電図検査(EMG)、神経伝導速度の試験、血液、尿、または他の物質の臨床検査、磁気共鳴画像法(MRI)、磁気共鳴分光法、筋肉または神経の生検、経頭蓋磁気刺激法、遺伝子スクリーニング、X線、透視検査、血管造影、コンピュータ断層撮影(CT)法、陽電子放出断層撮影法、脳脊髄液分析、くも膜下造影CTスキャン、脳波記録法、電気眼振検査、誘発応答、睡眠ポリグラフ、サーモグラフィー、超音波である。医療専門家は、患者の運動ニューロン変性に関連する疾患の家族歴を評価し、神経疾患の家族歴に部分的に基づいて診断を下す場合もある。ヘルスケアの専門家は、1つ以上の症状が現れた後に、対象の神経疾患に関連する疾患を診断してもよい。
【0055】
神経変性疾患は、ニューロンの進行性の破壊をもたらし、ニューロンのシグナル伝達に影響を及ぼす。例えば、神経変性は、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、ハンチントン病、フリードライヒ運動失調症、レヴィー小体病、パーキンソン病、脊髄筋萎縮症、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮症、進行性球麻痺、及び仮性球麻痺であり得る。
【0056】
運動ニューロンの変性に関連する疾患は、運動ニューロンの進行性の破壊をもたらし、筋肉へのニューロンのシグナル伝達を妨げ、筋力の低下及び消耗を引き起こす病態であり得る。健康な個体では、上位運動ニューロンが、脳から脳幹及び脊髄の下位運動ニューロンにシグナルを伝達し、次いで、このシグナルが筋肉に伝達されて、随意的な筋活動が生じる。上位及び下位運動ニューロンの破壊は、呼吸、会話、嚥下、及び歩行などの活動に影響を及ぼし、経時的にこれらの機能が失われ得る。運動ニューロン疾患の例としては、筋萎縮性側索硬化症、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮、進行性球麻痺、及び仮性球麻痺が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
ニューロンの過剰興奮性は、NMDA受容体及びAMPA受容体などの興奮性神経伝達物質グルタミン酸の受容体(グルタミン酸受容体)が、過剰なグルタミン酸によって、またはグルタミン酸受容体に作用する他の化合物もしくは神経伝達物質によって過剰活性化される場合に発生し得る。興奮毒性は、ニューロンの過剰興奮性により生じ得る。興奮毒性は、神経細胞が過剰な刺激によって損傷または破壊される病理プロセスである。過度の刺激により、高レベルのカルシウムイオン(Ca2+)が細胞内に入ることが可能になる。細胞へのCa2+の流入は、ホスホリパーゼ、エンドヌクレアーゼ、及びプロテアーゼ、例えばカルパインを含む多くの酵素を活性化する。これらの酵素は、細胞骨格、膜、及びDNAの成分などの細胞構造を損傷させ得る。
【0058】
ニューロンの過剰興奮性は、脊髄損傷、脳卒中、外傷性脳損傷、難聴(騒音過剰曝露または聴器毒性による)、てんかん、有痛性ニューロパチー、注意欠陥多動性障害、自閉症、中枢性疼痛症候群、神経変性疾患、多発性硬化症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、統合失調症、ラスムッセン脳炎、ハンチントン病、アルコール依存症またはアルコール離脱、特に急速ベンゾジアゼピン離脱症、及びハンチントン病に関与している場合がある。ニューロンの周囲の過剰なグルタミン酸濃度を引き起こす他の一般的な病態は、低血糖症である。血糖は、NMDA及びAMPA受容体部位のシナプス間空間からグルタミン酸を除去する主要な方法である。
【0059】
本明細書で使用する場合、「非二環式修飾された糖部分」とは、第2の環を形成するために糖の2つの原子間に架橋を形成しない、置換基などの修飾を含む修飾された糖部分を意味する。
【0060】
本明細書で使用する場合、「核酸塩基」とは、未修飾の核酸塩基または修飾された核酸塩基を意味する。本明細書で使用する場合、「未修飾された核酸塩基」は、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U)、またはグアニン(G)である。本明細書で使用する場合、「修飾された核酸塩基」は、少なくとも1つの未修飾された核酸塩基または修飾された核酸塩基と対形成することができる、未修飾のA、T、C、U、またはG以外の原子団である。「5-メチルシトシン」すなわち「mC」は、修飾された核酸塩基である。ユニバーサル塩基は、5つの未修飾された核酸塩基の任意の1つと対形成することができる修飾された核酸塩基である。本明細書で使用する場合、「核酸塩基配列」とは、任意の糖またはヌクレオシド結合修飾から独立した、核酸またはオリゴヌクレオチド中の連続的な核酸塩基の順序列を意味する。
【0061】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、未修飾された核酸塩基を含む1つ以上のヌクレオシドを含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、修飾された核酸塩基を含む1つ以上のヌクレオシドを含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、脱塩基ヌクレオシドと称される核酸塩基を含まない、1つ以上の核酸塩基を含む。
【0062】
特定の実施形態では、修飾された核酸塩基は、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、アルキルまたはアルキニル置換ピリミジン、アルキル置換プリン、ならびにN-2、N-6、及びO-6置換プリンから選択される。特定の実施形態では、修飾された核酸塩基は、2-アミノプロピルアデニン、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-N-メチルアデニン、2-プロピルアデニン、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-プロピニル(-C≡C-CH)ウラシル、5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、5-リボシルウラシル(プソイドウラシル(pseudouracil))、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、8-アザ及び他の8-置換プリン、5-ハロ、とりわけ5-ブロモ、5-トリフルオロメチル、5-ハロウラシル、及び5-ハロシトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、3-デアザアデニン、6-N-ベンゾイルアデニン、2-N-イソブチリルグアニン、4-N-ベンゾイルシトシン、4-N-ベンゾイルウラシル、5-メチル4-N-ベンゾイルシトシン、5-メチル4-N-ベンゾイルウラシル、ユニバーサル塩基、疎水性塩基、プロミスカス塩基(promiscuous base)、サイズ拡張塩基(size-expanded base)、及びフッ素化塩基から選択される。さらなる修飾された核酸塩基としては、三環ピリミジン、例えば、1,3-ジアザフェノキサジン-2-オン、1,3-ジアザフェノチアジン-2-オン、及び9-(2-アミノエトキシ)-1,3-ジアザフェノキサジン-2-オン(G-クランプ)が挙げられる。修飾された核酸塩基には、プリンまたはピリミジン塩基が、他の複素環、例えば、7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、及び2-ピリドンに置換される塩基も含まれ得る。さらなる核酸塩基としては、米国特許第3,687,808号に開示されている核酸塩基、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,Kroschwitz,J.I.,Ed.,John Wiley&Sons,1990,858-859、Englisch et al.,Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613、Sanghvi,Y.S.,Chapter15,Antisense Research and Applications,Crooke,S.T.and Lebleu,B.,Eds.,CRC Press,1993,273-288に開示されている核酸塩基、ならびにAntisense Drug Technology,Crooke S.T.,Ed.,CRC Press,2008,163-166、及び442-443のChapter6及び15で開示されている核酸塩基が挙げられる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「ヌクレオシド」とは、核酸塩基及び糖部分を含有する化合物を意味する。核酸塩基及び糖部分は、それぞれ独立して、未修飾または修飾である。本明細書で使用する場合、「修飾ヌクレオシド」とは、修飾された核酸塩基及び/または修飾された糖部分を含有するヌクレオシドを意味する。修飾ヌクレオシドには、核酸塩基を欠く脱塩基ヌクレオシドが含まれる。「連結ヌクレオシド」とは、連続した配列で連結されたヌクレオシドである(すなわち、連結されたヌクレオシドの間に追加のヌクレオシドが存在しない)。
【0064】
本明細書で使用する場合、「オリゴマー化合物」とは、オリゴヌクレオチド、及び任意選択で、共役基または末端基などの1つ以上の追加の特徴を意味する。オリゴマー化合物は、第1のオリゴマー化合物に対して相補的な第2のオリゴマー化合物と対形成してもよく、または対形成しなくてもよい。「一本鎖オリゴマー化合物」とは、対形成しないオリゴマー化合物である。用語「オリゴマー二本鎖」とは、相補的な核酸塩基配列を有する2つのオリゴマー化合物によって形成される二本鎖を意味する。オリゴマー二本鎖の各オリゴマー化合物は、「二重化オリゴマー化合物」と呼ばれる場合がある。
【0065】
本明細書で使用する場合、「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオシド間結合を介して結合した一本鎖の連結ヌクレオシドを意味し、各ヌクレオシド及びヌクレオシド間結合は、修飾または未修飾であってよい。ヌクレオシド間結合は、本明細書に記載された任意の結合であってよい。別段に示されない限り、オリゴヌクレオチドは、8~50個の連結ヌクレオシドからなる。本明細書で使用する場合、「修飾オリゴヌクレオチド」とは、少なくとも1つのヌクレオシドまたはヌクレオシド間結合が修飾されている、オリゴヌクレオチドを意味する。本明細書で使用する場合、「未修飾オリゴヌクレオチド」とは、いずれのヌクレオシド修飾またはヌクレオシド間修飾も含まないオリゴヌクレオチドを意味する。
【0066】
当技術分野で「ホスファチジルイノシトール-3-リン酸5-キナーゼIII型」または「PIPKIII」としても知られる「PIKFYVE」は、PIKFYVE遺伝子によりコードされるFYVEフィンガー含有ホスホイノシチドキナーゼである。PIKFYVEは、高度に進化的に保存された脂質キナーゼであり、また内膜恒常性を調節し、早期エンドソームからエンドソーム担体小胞を生合成する際に役割を果たすプロテインキナーゼ活性も有する。PI3PからPI(3,5)PへのPIKFYVE媒介変換は、タンパク質EEA1の動員を遮断する。EEA1の早期エンドソームへのアンカーを可能にするRAB5を有するプラットフォームを形成するにはPIP3が必要なため、動員は遮断される。その後、EEA1はエンドサイトーシス小胞及び他のエンドソーム小胞との融合を促進する。
【0067】
本明細書で使用する場合、「PIKFYVE疾患または障害」には、リソソーム分解疾患及びPIKFYVEにより媒介される障害が含まれる。例えば、PIKFYVE疾患または障害は、アミロイド疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、2型糖尿病、糖尿病性アミロイドーシス、及び慢性血液透析関連アミロイドなど)、多発性硬化症、ならびにMPS障害(MPS I、MPS II、MPS IIIA、MPS IIIB、MPS IIIC、MPS HID、MPS IVA、MPS IVB、MPS VI、MPS VII、またはMPS IXなど)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、疾患は、自己免疫疾患(多発性硬化症、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬、乾癬性関節炎、成人スチル病、ベーチェット症候群、家族性地中海熱、クローン病、ハンセン病、骨髄炎、結核、慢性気管支拡張症、キャッスルマン病など)、またはCNS疾患(海綿状脳症(クロイツフェルト・ヤコブ病、クールー病、狂牛病)など)である。治療を必要とする対象に治療有効量の本明細書に記載のPIKfyve ASOまたは医薬組成物を投与することを含む、リソソーム蓄積症を有する個体の治療のために、本開示の組成物及び方法を使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示のASO及び組成物は、PIKfyveの活性を低減または阻害し、リソソーム蓄積症においてリソソーム内に異常に貯蔵される物質の量を減少させる方法で、エンドソーム系またはリソソーム系の生合成、機能、または動態を変化させる。いくつかの実施形態では、ASO及び組成物は、PIKfyveの活性を標的にし、低減し、または阻害し、したがって、リソソーム蓄積症においてリソソーム内に異常に貯蔵される物質の量を減少させる方法で、小胞体またはゴルジ体の生合成、機能、または動態を変化させる。他の実施形態では、疾患は神経障害である。
【0068】
本明細書で使用する場合、「糖部分」は、未修飾された糖部分または修飾された糖部分を意味する。上付きのプライム記号(’)は、ヌクレオシドまたはヌクレオチドの糖の番号付けを記述するために使用される(核酸塩基の位置はプライムなしで番号付けされる)。糖のみを記載する場合は、プライム記号を使用しない。本明細書で使用する場合、「未修飾された糖部分」とは、RNAに認められる2-OH(H)フラノシル部分(「未修飾RNA糖部分」)、またはDNAに認められる2-H(H)部分(「未修飾DNA糖部分」)を意味する。未修飾された糖部分は、1、3、及び4位のそれぞれに1個の水素、3位に1個の酸素、5位に2個の水素を有する。本明細書で使用する場合、「修飾された糖部分」または「修飾された糖」とは、修飾フラノシル糖部分または糖代替物を意味する。本明細書で使用する場合、修飾フラノシル糖部分とは、未修飾された糖部分の少なくとも1つの水素の代わりに非水素置換基を含むフラノシル糖を意味する。特定の実施形態では、修飾フラノシル糖部分は2-置換糖部分である。そのような修飾フラノシル糖部分は、二環式糖及び非二環式糖を含む。
【0069】
特定の実施形態では、修飾された糖部分は、1つ以上の置換基を有するフラノシル環を含み、そのいずれもフラノシル環の2つの原子を架橋して二環式構造を形成しない非二環式修飾された糖部分である。そのような非架橋置換基は、フラノシルの任意の位置にあってよく、これには、2位、4位、及び/または5位の置換基が含まれるがこれに限定されない。特定の実施形態では、非二環式修飾された糖部分の1つ以上の非架橋置換基が分岐している。非二環式修飾された糖部分に適した2-置換基の例としては、2-F、2-OCH(「OMe」または「O-メチル」)、及び2-O(CHOCH(「MOE」)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、2’-置換基は、ハロ、アリル、アミノ、アジド、SH、CN、OCN、CF、OCF、O-C1-10アルコキシ、O-C1-10置換アルコキシ、O-C1-10アルキル、O-C1-10置換アルキル、S-アルキル、N(R)-アルキル、O-アルケニル、S-アルケニル、N(R)-アルケニル、O-アルキニル、S-アルキニル、N(Rm)-アルキニル、O-アルキレンイル-O-アルキル、アルキニル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリル、O-アラルキル、O(CHSCH、O(CHON(R)(R)またはOCHC(=O)-N(R)(R)の中から選択され、式中、各R及びRは、独立して、H、アミノ保護基、または置換もしくは非置換C1-10アルキルであり、2-置換基は、独立して、ヒドロキシル、アミノ、アルコキシ、カルボキシ、ベンジル、フェニル、ニトロ(NO)、チオール、チオアルコキシ、チオアルキル、ハロゲン、アルキル、アリール、アルケニル、及びアルキニルから選択される1つ以上の置換基でさらに置換され得る。非二環式修飾された糖部分に適した4’-置換基の例としては、アルコキシ(例えば、メトキシ)、及びアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。非二環式修飾された糖部分に適した5-置換基の例としては、5-メチル(RまたはS)、5-ビニル、及び5-メトキシが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、非二環式修飾された糖部分は、複数の非架橋糖置換基、例えば2-F-5-メチル糖部分などを含む。
【0070】
特定の実施形態では、2’-置換非二環式修飾ヌクレオシドは、F、NH、N、OCF、OCH、O(CHNH、CHCH=CH、OCHCH=CH、OCHCHOCH、O(CHSCH、O(CHON(R)(R)、O(CHO(CHN(CH、及びN-置換アセトアミド(OCHC(=O)-N(R)(R))から選択される非直鎖状2’-置換基を含む糖部分を含み、式中、各R及びRは、独立して、H、アミノ保護基、または置換もしくは非置換のC1-10アルキルである。
【0071】
特定の実施形態では、2’-置換ヌクレオシド非二環式修飾ヌクレオシドは、F、OCF、OCH、OCHCHOCH、O(CHSCH、O(CHON(CH、O(CHO(CHN(CH、及びOCHC(=O)-N(H)CH(「NMA」)から選択される非直鎖状2’-置換基を含む糖部分を含む。
【0072】
特定の実施形態では、2’-置換非二環式修飾ヌクレオシドは、F、OCH、及びOCHCHOCHから選択される非架橋2’-置換基を含む糖部分を含む。
【0073】
特定の修飾された糖部分は、フラノシル環の2つの原子を架橋して第2の環を形成する置換基を含み、その結果、二環式糖部分が得られる。特定のそのような実施形態では、二環式糖部分は、4フラノース環原子と2フラノース環原子との間に架橋を含む。そのような4~2個の架橋糖置換基の例としては、4-CH-2、4-(CH-2、4-(CH-2、4-CH-O-2(「LNA」)、4-CH-S-2、4-(CH)2-O-2(「ENA」)、4-CH(CH)-O-2(「拘束エチル」または「cEt」と呼ばれる)、4-CH-O-CH-2、4-CH-N(R)-2、4-CH(CHOCH)-O-2(「制約MOE」または「cMOE」)及びその類似体、4-C(CH)(CH)-O-2及びその類似体、4-CH-N(OCH)-2及びその類似体、4-CH-O-N(CH)-2、4-CH-C(H)(CH)-2、4-CH2-C(=CH)-2及びその類似体、4-C(R)-N(R)-O-2、4-C(R)-O-N(R)-2、4-CH-O-N(R)-2、及び4-CH-N(R)-O-2が挙げられるが、これらに限定されず、式中、各R、R、及びRは、独立して、H、保護基、またはC1-12アルキルである。
【0074】
特定の実施形態では、そのような4~2個の架橋は、独立して、-[C(R)(R)]-、-[C(R)(R)]-O-、-C(R)=C(R)-、-C(R)=N-、-C(=NR)-、-C(=O)-、-C(=S)-、-O-、-Si(R-、-S(=O)x-、及び-N(R)-から選択される1~4個の連結基を独立して含み、xは、0、1、または2であり、nは、1、2、3、または4であり、各R及びRは、独立して、H、保護基、ヒドロキシル、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C1-12アルケニル、置換C2-12アルケニル、C2-12アルキニル、置換C2-12アルキニル、C5-20アリール、置換C5-20アリール、複素環ラジカル、置換複素環ラジカル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C5-7脂環式ラジカル、置換C5-7脂環式ラジカル、ハロゲン、OJ、NJ、SJ、N、COOJ、アシル(C(=O)-H)、置換アシル、CN、スルホニル(S(=O)-J)、またはスルホキシル(S(=O)-J)、各J及びJは、独立して、H、C1-12アルキル、置換C1-12アルキル、C2-12アルケニル、置換C2-12アルケニル、C2-12アルキニル、置換C2-12アルキニル、C5-20アリール、置換C5-20アリール、アシル(C(=O)-H)、置換アシル、複素環ラジカル、置換複素環ラジカル、C1-12アミノアルキル、置換C1-12アミノアルキル、または保護基である。
【0075】
追加の二環式糖部分は当技術分野で公知であり、例えば、Freier et al.,Nucleic Acids Research,1997,25(22),4429-4443,Albaek et al.,J.Org.Chem.,2006,71,7731-7740,Singh et al.,Chem.Commun.,1998,4,455-456;Koshkin et al.,Tetrahedron,1998,54,3607-3630;Kumar et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1998,8,2219-2222;Singh et al.,J.Org.Chem.,1998,63,10035-10039;Srivastava et al.,J.Am.Chem.Soc.,20017,129,8362-8379;Wengel et a.,米国特許第7,053,207号;Imanishi et al.,米国特許第6,268,490号;Imanishi et al. 米国特許第6,770,748号;Imanishi et al.,U.S.RE44,779;Wengel et al.,米国特許第6,794,499号;Wengel et al.,米国特許第6,670,461号;Wengel et al.,米国特許第7,034,133号;Wengel et al.,米国特許第8,080,644号;Wengel et al.,米国特許第8,034,909号;Wengel et al.,米国特許第8,153,365号;Wengel et al.,米国特許第7,572,582号;及びRamasamy et al.,米国特許第6,525,191号;Torsten et al.,WO2004/106356;Wengel et al.,WO1999/014226;Seth et al.,WO2007/134181;Seth et al.,米国特許第7,547,684号;Seth et al.,米国特許第7,666,854号;Seth et al.,米国特許第8,088,746号;Seth et al.,米国特許第7,750,131号;Seth et al.,米国特許第8,030,467号;Seth et al.,米国特許第8,268,980号;Seth et al.,米国特許第8,546,556号;Seth et al.,米国特許第8,530,640号;Migawa et al.,米国特許第9,012,421号;Seth et al.,米国特許第8,501,805号;ならびにAllerson et al.,米国特許公開第US2008/0039618号及びMigawa et al.,米国特許第US2015/0191727号を参照されたい。
【0076】
本明細書で使用される「対象」及び「患者」とは、哺乳類(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、及びマウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザルまたはアカゲザルなどのサル、チンパンジーなど)、ならびにヒト)を含むが、これらに限定されない任意の脊椎動物を指す。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトであってもよく、または非ヒトであってもよい。特に好ましい実施形態では、対象または患者はヒトである。対象または患者は、他の形態の治療を受けてもよい。一実施形態では、患者は、C9ORF72遺伝子の変異によって、神経疾患を有する(例えば、患者は、C9ORF72遺伝子に関してハプロ不全(例えば、C9ORF72タンパク質活性を50%以上低下させる)であってもよく、またはC9ORF72遺伝子は、GGGGCCリピート配列伸長(例えば、C9ORF72内に(GGGGCC)ヘキサンヌクレオチド拡張)を含んでもよい。変数「n」は、少なくとも30であり得る。
【0077】
本明細書において同じ意味で使用する「治療有効量」または「有効用量」または「有効量」は、別段の定義がない限り、所望の治療結果を達成するために必要な期間にわたって有効な薬物の用量を意味する。有効用量は、当業者によって決定してもよく、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体において所望の反応を誘発する薬物の能力などの要因に応じて変動し得る。本明細書で使用するこの用語は、受容体の機能を低下及び/または阻害するなど、動物、哺乳類、またはヒトにおいて所望のin vivo効果をもたらすのに有効な量を指す場合もある。治療有効量は、1回以上の投与(例えば、予防的処置として、または疾患進行の任意の段階、症状の前後などで治療的に薬剤を投与してもよい)、塗布、または用量で投与してもよく、特定の製剤、組み合わせ、または投与経路に限定することを意図するものではない。対象の治療過程中の様々な時点で、薬物を投与してよいことは本開示の範囲内である。使用する投与時間及び用量は、治療の目標(例えば、治療か、予防か)、対象の状態などの複数の要因に依存し、当業者によって容易に決定され得る。
【0078】
本明細書で使用する場合、対象を「治療する」または「治療すること」という用語は、疾患または障害の少なくとも1つの症状が治癒、軽減、緩和、変化、治療、低減、寛解、または改善されるように、本明細書に記載の組成物または薬剤を対象に投与することを指す。治療は、疾患または障害に関連する1つ以上の症状を軽減、緩和、変化、治療、低減、寛解、及び/または改善するのに有効な量を投与することを含む。この治療は、疾患または障害に関連する症状の悪化または悪化を抑制し得る。
【0079】
本明細書に記載される治療方法は、PIKFYVE発現を阻害または抑制することによって、神経疾患を治療する有効量の1つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含み得る。1つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、神経変性を低減または阻害し得る。1つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ニューロンの過剰興奮性を低下させ得る。PIKFYVE mRNA及びPIKFYVEタンパク質レベルを低下させると、毒性TDP-43凝集体、DPR凝集体(例えば、C9ORF72-ALS患者における)、及びTDP-43の核内保持が促進されることによって、神経変性が抑制される。本明細書に記載のPIKFYVE mRNAを標的とするASOを送達すると、PIKFYVEタンパク質レベルが低下する。
【0080】
この組成物は、キナーゼの発現を阻害することによってキナーゼ活性を阻害し得る。本発明の組成物は、PIKFYVEキナーゼの活性または発現を阻害し得る。1種以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、小分子治療薬(例えば、アピリモド及び/またはYM201636)と組み合わせることができる。
【0081】
本開示は、PIKFYVE発現を調節するために使用することができるオリゴヌクレオチド(修飾または未修飾)を提供する。表1に、本開示のPIKFYVEアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは阻害核酸に対する塩基の一般的な配列を示す(5’から3’方向に):
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】

【表1-5】

【表1-6】

【表1-7】

【表1-8】

【表1-9】

【表1-10】

【表1-11】

【表1-12】

【表1-13】

【表1-14】
【0082】
一実施形態では、本開示は、12~30個の連結したヌクレオシドからなり、表1の配列番号1~500のいずれかの核酸塩基配列の少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20連続ヌクレオチド塩基を含む核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、配列番号1~500を含むか、またはそれらからなる配列のいずれかと、少なくとも80%~100%(すなわち、80%、82%、84%、86%、88%、90%、92%、94%、96%、98%、もしくは100%、または前述の値のいずれかの間の任意の数値範囲もしくは値)同一である。
【0083】
表1に示す配列を使用して、PIKFYVE発現の阻害のためのアンチセンス分子を設計することができる。例えば、ギャップマーオリゴヌクレオチドは、表1の配列を用いて設計することができ、約3~5ヌクレオチドの5’ウイング、約3~5ヌクレオチドの3’ウイング、及び表1の配列のいずれか1つの8~12連続デオキシリボヌクレオシドを含むギャップ領域を含み得る。一実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチドは、5’及び3’ウイングセグメントに隣接する、表1の配列番号1~136のいずれかの核酸塩基配列の少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12,少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20連続ヌクレオチド塩基のギャップセグメントを有するギャップマーを含み、そのギャップセグメントは、5’及び3’ウイングセグメントの間に位置し、各ウイングセグメントは、修飾された糖を含む。一実施形態では、ギャップセグメントは、長さが8~10のヌクレオシドであり、各ウイングセグメントは、長さが3~5の修飾ヌクレオシドである。さらに別の実施形態では、本開示のオリゴヌクレオチドは、修飾された糖を含み、かつ配列番号1~500のいずれかの最初の3~5個の核酸塩基の核酸塩基配列を有する5’ウイングセグメント、それに続いて、配列番号1~500に対応する同じ配列の次の8~12個の未修飾ヌクレオチドのギャップ、それに続いて、修飾された糖を含み、かつ配列番号1~500に対応する同じ配列の最後の3~5個の核酸塩基の核酸塩基配列を有する3’ウイングセグメントを含む。表2に、本開示のMOEギャップマーを示す。
【0084】
5’及び/または3’ウイングは、以下の化合物:2’-OMe、2’-MOE、LNA、またはDNAを、単独で、または互いに組み合わせて使用して含み得る。5’及び/または3’ウイングの骨格結合は、ホスホロチオエートまたはホスホジエステルとホスホロチオエートとの混合物であり得る。ギャップ領域における結合は、ホスホロチオエートであり得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは一本鎖である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド上の電荷を中和して、細胞膜を介した取り込み及び移動を促進する部分を含むか、またはそれと複合体を形成する。
【0086】
一実施形態では、表1における各ASOは、以下の5-10-5モチーフ:2MOE*2MOE-2MOE-2MOE-2MOE-N**********2MOE-2MOE-2MOE*2MOE*2MOEを有し、(i)2MOEは、2’-OCHCH-OCH基(すなわち、2’-MOE)を有する核酸塩基であり、(ii)Nは核酸塩基であり、(iii)アスタリスク(*)は、ホスホロチオエート結合を指し、(iv)ダッシュ(-)は、ホスホジエステル結合を指す。以下の表2は、このモチーフを配列番号1~33(本明細書では配列番号501~533)で示す。
【0087】
表2:PIKFYVEアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)における塩基配列(ギャップマー設計:5’-5つの2’-メトキシエチルリボースヌクレオチド-10個のDNAヌクレオチド-5個の2’-メトキシエチルリボースヌクレオチド-3’、大文字は2’-メトキシエチルリボースヌクレオシド、小文字はDNAヌクレオシド、アスタリスク(*)はホスホロチオエート結合、アスタリスクを有さない結合はホスホジエステル結合である)(以下の表は、2’MOEウイングを示しているが、2’-OMeまたはLNA(ロックド核酸)を含む代替のウイングも想定されることに留意されたい)。
【表2】
【0088】
本開示のPIKFYVEキナーゼアンチセンスまたは阻害性核酸は、PIKFYVEに関連する発現、したがってその活性を阻害することができる。PIKFYVEキナーゼアンチセンスまたは阻害性核酸は、表2に記載のオリゴヌクレオチドと、それに対して98%~99%同一である配列との任意の組み合わせを含み得る。
【0089】
本明細書に記載のPIKFYVE ASO、例えば配列番号501~533は、最小限のオフターゲット結合でPIKFYVE mRNA発現を抑制する。
【0090】
治療方法には、開示されている組成物を投与する任意の数の様式が含まれ得る。投与様式は、水性、脂質、油性、または他の溶液、シミュレートされた脳脊髄液の溶液、水中油型エマルション、リポソーム、水性、または油性懸濁液などのエマルションを含み得る。通常、本開示のASOを、対象のCNSに直接投与する。したがって、製剤または組成物は無菌であり、より好ましくは注射に適している。以下の製剤及び方法は、単なる例であり、決して限定するものではない。
【0091】
非経口投与に適した製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張無菌注射液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、アンプル及びバイアルなどの単位用量または複数用量の密封容器で提供してもよく、注射のために、使用直前に、滅菌液体賦形剤、例えば水の添加のみを必要とする液体として、またはフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。即時注射溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製され得る。製剤は、プレフィルドシリンジ内に提供してもよい。
【0092】
さらなる治療薬(複数可)を、開示される1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸及び組成物と同時にまたは連続して投与してもよい。連続投与には、開示される1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸または組成物の前または後の投与が含まれる。いくつかの実施形態では、追加の治療薬を、開示される1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸と同じ組成物中で投与してもよい。他の実施形態では、追加の治療薬の投与と、開示される1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸の投与との間に、時間間隔があってもよい。いくつかの実施形態では、開示される1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸と共に追加の治療薬を投与することによって、他の治療薬をより低用量に、及び/または投与の間隔をより低頻度にすることができる場合がある。1つ以上の他の活性成分と組み合わせて使用する場合、本開示の1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸、及び他の活性成分を、それぞれ単独で使用する場合よりも低用量で使用してよい。したがって、本開示の医薬組成物には、本開示の1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸に加えて、1つ以上の他の活性成分を含有する医薬組成物が含まれる。上記の組み合わせには、本開示の1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸と、1つの他の活性化合物だけでなく、2つ以上の他の活性化合物との組み合わせも含まれる。例えば、本開示の化合物を、神経疾患を治療するための様々な薬物と組み合わせてもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドを、別のオリゴヌクレオチド、例えばPIKFYVE以外の標的と共有結合させてもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドを、抗体と共有結合させてもよい。
【0093】
開示される1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸を、以下に挙げるがこれらに限定されない、抗コリン薬、抗けいれん薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、うっ血除去薬、筋弛緩薬、鎮痛薬、及び/または刺激薬と組み合わせることができる。追加の種類の療法及び治療としては、デジタル通信装置、栄養管、機械的人工呼吸、栄養補助、深部脳刺激、作業療法、物理的療法、及び/または言語療法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
開示される組成物(複数可)を、対象(例えば、ヒトまたは非ヒトであり得る患者)に投与するのに適した医薬組成物に組み込んでもよい。医薬組成物は、担体(例えば、薬学的に許容される担体)を含み得る。任意の好適な担体を本開示に関して使用することができ、そのような担体は、当技術分野で周知である。担体の選択は、部分的に、組成物の特定の使用(例えば、動物への投与)及び組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。したがって、本発明の組成物の多種多様な好適な製剤が存在する。
【0095】
医薬組成物は、治療有効量または予防有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み得る。組成物の治療有効量は、当業者によって決定されてもよく、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体における所望の応答を誘発する組成物の能力などの要因に応じて変動し得る。治療有効量はまた、本開示の1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸の毒性または有害な効果が治療上有益な効果よりも勝る量でもある。「予防有効量」とは、所望の予防的結果を達成するために必要な用量及び期間における有効量を意味する。通常、予防的用量は疾患の早期段階の前または早期段階で対象において使用されるため、予防有効量は、治療有効量よりも少ないこととなる。
【0096】
医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体を含み得る。本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」とは、非毒性、不活性、固体、半固体、または液体の充填剤、希釈剤、封入材、またはあらゆる種類の製剤助剤を意味する。薬学的に許容される担体として機能し得る物質のいくつかの例は、乳糖、ブドウ糖、及びスクロースなどであるがこれらに限定されない糖、コーンスターチ、及びジャガイモデンプンなどであるがこれらに限定されないデンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどであるがこれらに限定されないセルロース及びその誘導体、粉末トラガント、麦芽、ゼラチン、タルク、カカオバター、及び座薬ワックスなどがあるがこれらに限定されない賦形剤、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及びダイズ油などがあるがこれらに限定されない油、プロピレングリコールなどのグリコール、オレイン酸エチル、及びラウリン酸エチルなどであるがこれらに限定されないエステル、寒天、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどがあるがこれらに限定されない緩衝剤、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、及びリン酸緩衝液、ならびにラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性の適合性潤滑剤であり、ならびに離型剤、コーティング剤、防腐剤、及び抗酸化剤もまた、配合者の判断によって組成物中に存在させてもよい。
【0097】
開示される1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸を投与する経路及び組成物の形態により、使用する担体の種類が決定される。
【0098】
本開示の医薬組成物は、局所治療が望まれるか全身治療が望まれるか、及び治療しようとする領域に応じて、多くの方法で投与することができる。投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、もしくは筋肉内への注射もしくは注入、または頭蓋内、例えば、髄腔内、脳室内、もしくは側脳室内への投与を含む、非経口であり得る。一実施形態では、アンチセンスまたは阻害性核酸を、静脈内注射、腹腔内注射、もしくはボーラス注射として投与するか、または標的臓器に直接投与する。別の実施形態では、アンチセンスまたは阻害性核酸を、ボーラス注入として髄腔内または脳室内に投与する。
【0099】
全身投与の担体としては、一般的に、溶媒、希釈剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、香料、甘味料、抗酸化剤、防腐剤、滑剤、溶媒、懸濁剤、湿潤剤、界面活性剤、それらの組み合わせなどのうちの少なくとも1つが挙げられる。すべての担体は、組成物中で任意選択である。
【0100】
好適な希釈剤としては、グルコース、ラクトース、デキストロース、及びスクロースなどの糖、プロピレングリコールなどのジオール、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、グリセリンなどの糖アルコール、マンニトール、及びソルビトールが挙げられる。
【0101】
好適な潤滑剤としては、シリカ、タルク、ステアリン酸、及びそのマグネシウム塩及びカルシウム塩、硫酸カルシウム、ならびにポリエチレングリコールなどの液体潤滑剤、ならびにピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びテオブロマ油などの植物油が挙げられる。全身組成物または局所組成物中の潤滑剤(複数可)の量は、通常、約5~約10%である。
【0102】
好適な結合剤としては、ポリビニルピロリドン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、コーンスターチ及びジャガイモデンプンなどのデンプン、ゼラチン、トラガント、ならびにセルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。全身組成物中の結合剤(複数可)の量は、通常、約5~約50%である。
【0103】
好適な崩壊剤としては、寒天、アルギン酸及びそのナトリウム塩、発泡性混合物、クロスカルメロース、クロスポビドン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、グリコール酸デンプンナトリウム、粘土、及びイオン交換樹脂が挙げられる。全身組成物中の1種以上の崩壊剤(複数可)の量は、一般的に、約0.1%~約10%である。
【0104】
好適な着色剤には、FD&C色素などの着色剤が含まれる。使用する場合、全身組成物または局所組成物中の着色剤の量は、通常、約0.005~約0.1%である。
【0105】
好適な香料としては、メントール、ペパーミント、及びフルーツフレーバーが挙げられる。全身組成物または局所組成物中で使用する場合、香料(複数可)の量は、通常、約0.1~約1.0%である。
【0106】
好適な抗酸化剤としては、ブチル化ヒドロキシアニソール(「BHA」)、ブチル化ヒドロキシトルエン(「BHT」)及びビタミンEが挙げられる。全身組成物または局所組成物中の抗酸化剤(複数可)の量は、通常、約0.1~約5%である。
【0107】
好適な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン、及び安息香酸ナトリウムが挙げられる。全身組成物または局所組成物中の防腐剤(複数可)の量は、通常、約0.01~約5%である。
【0108】
好適な滑剤としては、二酸化ケイ素が挙げられる。全身組成物または局所組成物中の滑剤(複数可)の量は、通常、約1~約5%である。
【0109】
好適な溶媒としては、水、等張食塩水、オレイン酸エチル、グリセリン、ヒドロキシル化ヒマシ油、アルコール、例えばエタノール、及びリン酸緩衝溶液が挙げられる。全身組成物または局所組成物中の溶媒の量は、通常、約0~約100%である。
【0110】
好適な懸濁剤には、AVICEL RC-591(Philadelphia,PAのFMC Corporation製)及びアルギン酸ナトリウムが含まれる。全身組成物または局所組成物中の懸濁剤(複数可)の量は、通常、約1~約8%である。
【0111】
好適な界面活性剤としては、レシチン、ポリソルベート80、及びラウリル硫酸ナトリウムが挙げられ、Wilmington,DelawareのAtlas Powder Company製のTWEEN(登録商標)が挙げられる。好適な界面活性剤には、C.T.F.A. Cosmetic Ingredient Handbook,1992,pp.587-592;Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.1975, pp.335-337;及びMcCutcheon’s Volume 1,Emulsifiers & Detergents,1994,North American Edition,pp.236-239に開示されている界面活性剤が含まれる。全身組成物または局所組成物中の界面活性剤(複数可)の量は、通常、約0.1%~約5%である。
【0112】
非経口、髄腔内、脳室内、または側脳室内投与のための組成物及び製剤はまた、緩衝剤、希釈剤、ならびに浸透促進剤、担体化合物、及び他の薬学的に許容される担体または賦形剤を含むがこれらに限定されない、他の好適な添加剤をさらに含有し得る無菌水溶液を含み得る。例えば、髄腔内脳脊髄液(CSF)カテーテルを使用して、本開示のアンチセンス製剤を送達することができる。カテーテルは、L3またはL4椎骨に挿入することができる。カテーテルの遠位端を、髄腔内でほぼLI椎骨まで延進させる。アンチセンスオリゴヌクレオチドを生理食塩水に溶解し、濾過により滅菌し、そして1.0ml容量で0.33ml/分にて投与し、その後0.5mlの滅菌水で洗浄する。総注入時間は4.5分である。
【0113】
非経口投与用の組成物は通常、0.1%~10%の活性物質と、希釈剤及び溶剤を含む90%~99.9%の担体とを含む。
【0114】
開示される化合物と共に使用する担体の量は、薬剤の単位用量あたりの投与のための実用的な量の組成物を提供するのに十分である。本発明の方法において有用な剤形を製造するための技術及び組成物は、以下の参考文献:Modern Pharmaceutics,Chapters 9 and 10,Banker & Rhodes,eds.(1979);Lieberman et al.,Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets (1981);及びAnsel,Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,2nd Ed.,(1976)に記載されている。
【0115】
当業者に公知の手段によって、候補アンチセンスまたは阻害性核酸のin vivo試験を実施してよい。例えば、1つ以上の候補アンチセンスまたは阻害性核酸を、マウスまたはウサギなどの哺乳類に投与してもよい。ある用量の候補アンチセンスまたは阻害性核酸を、好適であると考えられる任意の経路によって哺乳類に投与してよい。次いで、従来の方法及び基準を使用して、運動ニューロンの活性及び/またはPIKFYVE遺伝子もしくはタンパク質の発現もしくは活性の低下または向上の徴候について、それぞれ、動物をモニタリングすることができる。必要に応じて、候補アンチセンスまたは阻害性核酸の存在下で得られた結果を、候補アンチセンスまたは阻害性核酸で処置していない対照動物における結果と比較することができる。神経疾患を治療することができる1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸を識別するために、及び/または候補アンチセンスまたは阻害性核酸の任意の後続試験をin vivoで実施するために、本明細書に記載される方法で、またはこれに関連して、投与試験を実施してもよい。当業者であれば、1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸の適切な用量を決定し得る。用量は、疾患の抑制または改善の徴候について対象をモニタリングすることによって決定してもよい。所望の処置頻度を得るために、用量を増減させてもよい。1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸の毒性及び有効性は、例えば、集団の50%に対する致死量(LD50)と集団の50%に対する治療有効量(ED50)を決定する、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る。LD50/ED50の用量比は、毒性と治療効果の比率を示す治療指数である。1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸を特定の標的に送達する、例えば、運動神経系または中枢神経系のニューロンに特異的に送達することにより、有害な副作用を予防することを支援するように送達系を設計してもよい。1つ以上のアンチセンスまたは阻害性核酸の最適な用量は、例えば、末梢神経の興奮性を分析するために、臨床電気生理学または筋電図検査の結果に基づいて決定してもよい。
【0116】
ヒトにおける使用のための用量は、動物試験及び細胞培養アッセイから得られたデータを評価することによって決定してもよい。毒性をほとんどまたはまったく示さず、ED50を含む用量が好ましい。この用量は、剤形及び投与経路に応じて変動させてもよい。本明細書に記載の方法で使用する任意のアンチセンスまたは阻害性核酸について、最初に細胞培養物中で用量を推定してもよい。症状の最大半量の抑制を達成する被験化合物の濃度(LD50)を含む動物モデルにおいて、細胞培養物中で決定されるような用量で製剤化してよい。細胞培養物及び動物モデルから得られるそのような情報を使用して、ヒトにおける有効用量をより正確に決定してもよい。
【0117】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって示される複数の態様を有する。
【実施例
【0118】
PIKFYVEキナーゼの小分子阻害剤と、PIKFYVEの発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び前頭側頭型認知症(FTD)を引き起こすC9ORF72遺伝子の変異を保有するヒト及びマウスのニューロンの変性を予防することができる。
【0119】
ASOは、中枢神経系への送達が容易であり、末梢への曝露が比較的低いため、神経変性疾患の魅力的な治療の選択肢である。これらの特性は、中枢神経系における標的係合を最大化し、末梢における望ましくない標的係合またはオフターゲット効果を最小化する。
【0120】
本開示は、ヒト細胞におけるPIKFYVE発現を抑制することができるPIKFYVE遺伝子を標的とする新規アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)配列を提供する。PIKFYVE ASOはまた、孤発性ALS患者由来の運動ニューロンの生存率を回復させることもできる。さらに、PIKFYVE ASOは、マウスのin vivoでのC9ORF72リピート配列伸長に由来する神経毒性ジペプチドリピートタンパク質凝集体のレベルを低下させることができる。
【0121】
実施例1
ヒト細胞におけるPIKFYVE発現を抑制するASO配列を同定するために、RNase Hの基質として使用する能力を維持する一方でヌクレアーゼ耐性及び融解温度を上昇させる糖及び結合修飾を含むMOEギャップマーとしてASOを設計し(表2を参照のこと)、合成した。PIKFYVE RNAレベルを抑制するための各ASOの能力を、これらを100nMの濃度でLipofectamine2000と共にヒト胎児腎臓293T細胞にトランスフェクトし、トランスフェクションの7日後にPIKFYVE発現を測定することによって試験した。対照として、NCASOを使用した。示されている相対的なPIKFYVE発現は、3回の技術的反復の平均であり、値はGAPDH対照に正規化することによって計算した。まとめると、これらの結果は、図1に示すように、いくつかのPIKFYVE ASO(図中のASO1~33に対応する配列番号1~33)が、ヒト細胞においてPIKFYVE発現を抑制することを示している。
【0122】
実施例2
本明細書に記載の様々なASOについて、CNTN5などのオフターゲット遺伝子の抑制がコンピュータで予測された。その結果を表3に示す。
【表3】
【0123】
ASO-520(配列番号520)については、配列解析(トフェルセンの場合の25個と比較して)から五種類(5つ)のオフターゲット遺伝子候補が予測された。これらの遺伝子のうち2つは、脳での発現が非常に低く、誘導ニューロンでは検出できない。残りの3つの遺伝子(ZNF385D、ERC2、及びAKAP6)についての実際のオフターゲット抑制を評価するために、これらの3つの遺伝子及びPIKFYVEの発現に対するASO-520処置の効果を、患者誘導ニューロン株においてqPCRにより試験した。ASO-520は、PIKFYVEを50%低下させた用量では、それらの発現に有意な影響を及ぼさなかった。
【0124】
実施例3
試験では、新生児トランスジェニックhPIKFYVE BACマウスに、P1での脳室内(ICV)注射(生後1日目)により25μgの陰性対照ASOまたは被験化合物を投与し、組織試料を処置後14日目に回収した。図2に示すように、試験したASOは、強力なPIKFYVE抑制剤であった。0.0004μg~25μgのASO-520の用量では、マウスにおいて用量依存的なPIKFYVE mRNAレベルの低下が観察された。
【0125】
実施例4
神経変性、運動障害、及び麻痺を発症するTDP-43マウスモデルを用いて、PIKFYVE抑制の有効性を評価した。Wils et al.,“TDP-43 Transgenic Mice Develop Spastic Paralysis and Neuronal Inclusions Characteristic of ALS and Frontotemporal Lobar Degeneration.”PNAS 107(8):3858-63,2010。
【0126】
マウスをさらに遺伝子改変して、1コピーのPIKFYVEを欠失させた。この欠失は、TDP-43マウスにおける運動機能を有意に回復させ、平均生存率を28%延長させ、死亡リスク(hR:ハザード比)を73%低下させた。この欠失は、野生型(WT)マウスにおいては、運動障害、認知障害、または健康障害を引き起こさなかった。
【0127】
出生後1日目の25μgのmPIKFYVEを標的とするASOの脳室内注射(中枢神経系中で5μg/μl濃度)により、PIKFYVEの発現が、陰性対照(NC)ASOと比較して約50%、有意に低下した。このPIKFYVE ASO処置は、TDP-43マウスの運動機能及び生存率を、遺伝子を欠失させた場合と同様のレベルで有意に回復させ、WTマウスの機能を変化させなかった。5倍低い用量の5μgのPIKFYVE ASOもまた、遺伝子欠失と同様のレベルで運動機能及び生存率を有意に回復させた。これにより、ASOがこのモデルにおいて少なくとも5倍の治療濃度域を有することが示された。
【0128】
組織学的分析により、TDP-43マウスにおいて上昇した病理学的pTDP-43凝集体の数が、mPIKFYVE ASO処置によって有意に減少し、WTマウスのレベルまで完全に回復することが示された。TDP-43マウスの細胞質に病理学的に局在するTDP-43の全体的な局在は、処置時に核に有意に再局在される。PIKFYVE ASO処置マウスでは、脊髄前角領域の外側運動柱の運動ニューロンの数がWTのレベルまで完全に回復した。
【0129】
実施例5
35mgのASO-520を非ヒト霊長類に隔週で2週間(2回)髄腔内投与した。その結果、図3に示すように、PIKFYVE mRNAが減少し、PIKFYVEが80%抑制され、有害事象(脳及び脊髄の組織病理を含む)は観察されなかった。(1つの外れ値をRNA-seqデータから除外した。)
【0130】
実施例6
非コードASOまたはAS-520(配列番号520)の存在下で生存する運動ニューロンの能力を測定した。図4Aは、非コードASO(NC ASO)の存在下での対照運動ニューロン、または(i)NC ASOもしくは(ii)AS-520の存在下でのC9ALS患者由来の運動ニューロンの生存率を示す。ASO-520の存在下では、NC ASOの存在下よりも多くのC9ALS患者由来運動ニューロンが生存していた。図4Bは、NC ASO存在下での対照運動ニューロン、または(i)NC ASOもしくは(ii)AS-520(配列番号520)の存在下でのC9ALS患者由来の運動ニューロンのハザード比を示す。AS-20の存在下でのC9ALS患者由来の運動ニューロンのハザード比は、NC ASOの存在下でのハザード比よりも有意に低かった。
【0131】
非コードASOまたはAS-520(配列番号520)の存在下で生存するFTD患者由来皮質ニューロンの能力を測定した。図5Aは、NC ASOまたはAS-520(配列番号520)の存在下でMAPT V337VまたはV337Mを用いたFTD患者由来の皮質ニューロンの生存確率を示すグラフである。AS-520は、MAPT V337M皮質ニューロンの生存確率を、NC ASOと比較して増加させた。図5Bは、NC ASOまたはAS-520で処置した、対照由来の皮質ニューロン、C9orf72関連FTD(C9-FTD)、孤発性FTD(sFTD)、及び微小管関連タンパク質タウ(MAPT)関連FTD(MAPT-FTD)患者のハザード比を示す棒グラフである。AS-520は、C9-FTD、sFTD、及びMAPT-FTD皮質ニューロンにおけるハザード比を有意に低下させた。
【0132】
本開示は、ヒト細胞においてPIKFYVE発現を抑制するASOを提供する。付随するデータから、これらのASOがALS及びFTD患者における神経変性を予防することが可能であり得ることが示唆されている。
【0133】
前述の説明及び図面は、本発明の原理の例示としてのみ考慮されるべきである。本発明は、好ましい実施形態によって限定されることを意図しておらず、当業者には明らかな様々な方法で実施してもよい。当業者であれば、本発明の多くの応用例を容易に思いつくであろう。したがって、本発明を、開示された特定の実施例、または図示及び説明された正確な構造及び動作に限定することは望ましくない。むしろ、本発明の範囲内で、あらゆる好適な修正及び均等物を利用してもよい。本明細書に引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により援用される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
【配列表】
2024527292000001.app
【国際調査報告】