(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ホットスタンピング部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 2/06 20060101AFI20240717BHJP
C21D 1/18 20060101ALI20240717BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20240717BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240717BHJP
C23C 2/26 20060101ALI20240717BHJP
C22C 38/58 20060101ALN20240717BHJP
C22C 18/00 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
C23C2/06
C21D1/18 C
C21D9/00 A
C22C38/00 301T
C22C38/00 301Z
C23C2/26
C22C38/58
C22C18/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579870
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 KR2022001490
(87)【国際公開番号】W WO2023277292
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0086120
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、クンウ
【テーマコード(参考)】
4K027
4K042
【Fターム(参考)】
4K027AA22
4K027AB09
4K027AB15
4K027AB44
4K027AC82
4K027AC86
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA05
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4K042CA02
4K042CA06
4K042CA08
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4K042CA13
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4K042DD01
4K042DD05
4K042DE02
4K042DE03
4K042DE05
4K042DE06
(57)【要約】
本発明の一実施例によるホットスタンピング部品は、鋼板;鋼板上に位置し、Znを含むメッキ層;及びメッキ層上に位置する表面層;を含み、表面層は、Si系無機系後処理剤を含む後処理層;メッキ層上で後処理層と同一層に位置するZn酸化層;及び後処理層及びZn酸化層のうち少なくとも1層と、メッキ層との間で、後処理層及びZn酸化層のうち少なくとも1層と重畳して位置し、Si、Mn、O、Fe、Zn及びSiOのうち少なくとも1つを含む相互拡散層を含み、鋼板の引張強度が1,680MPa以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板と、
前記鋼板上に位置し、Znを含むメッキ層と、
前記メッキ層上に位置する表面層と、を含み、
前記表面層は、
Si系無機系後処理剤を含む後処理層と、
前記メッキ層上で前記後処理層と同一層に位置するZn酸化層と、
前記後処理層及び前記Zn酸化層のうち少なくとも1層と、前記メッキ層との間で、前記後処理層及び前記Zn酸化層のうち少なくとも1層と重畳して位置し、Si、Mn、O、Fe、Zn及びSiOのうち少なくとも1つを含む相互拡散層と、を含み、
前記鋼板の引張強度が1,680MPa以上である、ホットスタンピング部品。
【請求項2】
前記相互拡散層の面積分率は、前記後処理層の全体面積分率に対して10%以上80%以下である、請求項1に記載のホットスタンピング部品。
【請求項3】
前記後処理層は、Si系後処理剤の酸化物、及び前記鋼板と前記メッキ層から拡散された成分として、Si、Mn、O、Fe、Zn及びSiOのうち少なくとも1つを含む、請求項2に記載のホットスタンピング部品。
【請求項4】
前記後処理層の平均厚さは、前記Zn酸化層の平均厚さより薄く、
前記後処理層の平均厚さは、前記Zn酸化層の平均厚さの5%以上100%未満である、請求項1に記載のホットスタンピング部品。
【請求項5】
前記後処理層の平均厚さは、0.5μm~3μmであり、
前記Zn酸化層の平均厚さは、1μm~10μmである、請求項4に記載のホットスタンピング部品。
【請求項6】
前記相互拡散層の平均厚さは、0.1μm~2μmである、請求項5に記載のホットスタンピング部品。
【請求項7】
Znを含むメッキ層上にSi系無機系後処理剤が塗布された鋼板を加熱炉内に投入して加熱する加熱段階と、
前記加熱された鋼板を前記加熱炉からプレス金型に移送する移送段階と、
前記移送された鋼板をホットスタンピングして成形体を形成する成形段階と、
前記成形体を冷却する段階と、を含み、
前記加熱する段階において、
前記無機系後処理剤と前記メッキ層の成分が拡散されて相互拡散層、後処理層、及び前記メッキ層が酸化されたZn酸化層が形成され、
前記相互拡散層は、前記後処理層及び前記Zn酸化層のうち少なくとも1層と、前記メッキ層との間で、前記後処理層及び前記Zn酸化層のうち少なくとも1層と重畳して位置し、Si、Mn、O、Fe、Zn及びSiOのうち少なくとも1つを含み、
前記鋼板の引張強度は、1680MPa以上である、ホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項8】
前記相互拡散層の面積分率は、前記後処理層の全体面積分率に対して10%以上80%以下に形成される、請求項7に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項9】
前記後処理層は、前記無機系後処理剤の酸化物、及び前記鋼板と前記メッキ層から拡散された成分として、Si、Mn、O、Fe、Zn及びSiOのうち少なくとも1つを含む、請求項8に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項10】
前記後処理層の平均厚さは、前記Zn酸化層の平均厚さより薄く、
前記後処理層の平均厚さは、前記Zn酸化層の平均厚さの5%以上である、請求項7に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項11】
前記後処理層の平均厚さは、0.5μm~3μmであり、
前記Zn酸化層の平均厚さは、1μm~10μmに形成される、請求項10に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項12】
前記相互拡散層の平均厚さは、0.1μm~2μmに形成される、請求項11に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項13】
前記加熱段階において、
前記鋼板は、前記加熱炉内でAc3~910℃の温度範囲を有するターゲット加熱温度まで加熱され、
120秒~600秒間滞留しながら加熱される、請求項7に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項14】
前記加熱段階以前に、
前記メッキ層が形成された鋼板上に前記Si系無機系後処理剤を塗布し、乾燥してプリ(pre)後処理層を形成する後処理段階をさらに含む、請求項7に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項15】
前記後処理段階において、
前記無機系後処理剤は、前記鋼板に0.5μm~3μmの厚さに塗布されて前記プリ後処理層を形成し、前記無機系後処理剤の塗布量は、0.5g/m
2~3g/m
2である、請求項14に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【請求項16】
前記後処理段階において、
前記無機系後処理剤が塗布された鋼板を70℃~150℃温度で1秒~10秒間乾燥する、請求項14に記載のホットスタンピング部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットスタンピング部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用部品には、軽量化及び安定性のために高強度鋼が適用される。一方、高強度鋼は、重量に対して高強度特性を確保することができるが、強度が増加することにより、プレス成形性が低下して加工中に素材の破断が発生するか、スプリングバック現象が発生して複雑で精密な形状の製品の成形が困難である。
【0003】
そのような問題点を改善するための方案として、ホットスタンピング工法があり、それに対する関心が高くなりつつ、ホットスタンピング用素材に対する研究も活発になされている。例えば、韓国公開特許公報第10-2017-0076009号発明に開示されたところのように、ホットスタンピング工法は、ホットスタンピング用鋼板を高温加熱した後、プレス金型内で成形と同時に急速冷却して高強度部品を製造する成形技術である。
【0004】
これに係わる技術としては、大韓民国特許公開公報第10-2018-0095757号(発明の名称:ホットスタンピング部品の製造方法)などがある。
【0005】
一方、ホットスタンピング用鋼板は、加熱時に鋼板の表面が酸化されてスケールが生成され、これにより、製品の表面特性、塗装性が低下し、耐食性もメッキ材より劣位になる問題点がある。したがって、製品成形後、スケールを除去するショットブラストやショットピーニングのような別途の工程が必要である。あるいは、前記問題点を防止するために、Al系メッキ層を使用して鋼板表面の酸化反応を抑制し、Alの不動態被膜形成を誘導して鋼板の耐食性を増大させる方法が使用されてきた。しかし、前記のようなAlメッキ材の場合、耐熱性は、優れるが、Znメッキ材に比べて、耐食性が劣位であり、製造コストが増加する問題点がある。
【0006】
しかし、Zn系ホットスタンピング鋼板は、ホットスタンピング熱処理中に発生するZnの酸化によって塗装密着性及び外観が大きく低下しうる。それを解決するために、ショットピーニングなどの後処理工程を導入したが、それは、追加費用及び追加工程を発生させて生産性が低下する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、表面性及び塗装性が向上したホットスタンピング部品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例によるホットスタンピング部品は、鋼板;前記鋼板上に位置し、Znを含むメッキ層;及び前記メッキ層上に位置する表面層;を含み、前記表面層は、Si系無機系後処理剤を含む後処理層;前記メッキ層上で前記後処理層と同一層に位置するZn酸化層;及び前記後処理層及び前記Zn酸化層のうち少なくとも1層と、前記メッキ層との間で、前記後処理層及び前記Zn酸化層のうち少なくとも1層と重畳して位置し、Si、Mn、O、Fe、Zn及びSiOのうち少なくとも1つを含む相互拡散層を含み、前記鋼板の引張強度が1680MPa以上である。
【0009】
前記相互拡散層の面積分率は、前記後処理層の全体面積分率に対して10%以上80%以下でもある。
【0010】
前記後処理層は、Si系後処理剤の酸化物、及び前記鋼板と前記メッキ層から拡散された成分として、Si、Mn、O、Fe、Zn及びSiOのうち少なくとも1つを含みうる。
【0011】
前記後処理層の平均厚さは、前記Zn酸化層の平均厚さより薄く、前記後処理層の平均厚さは、前記Zn酸化層の平均厚さの5%以上100%未満でもある。
【0012】
前記後処理層の平均厚さは、0.5μm~3μmであり、前記Zn酸化層の平均厚さは、1μm~10μmでもある。
【0013】
前記相互拡散層の平均厚さは、0.1μm~2μmでもある。
【0014】
本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法は、Znを含むメッキ層上にSi系無機系後処理剤が塗布された鋼板を加熱炉内に投入して加熱する加熱段階;前記加熱された鋼板を前記加熱炉からプレス金型に移送する移送段階;前記移送された鋼板をホットスタンピングして成形体を形成する成形段階;及び前記成形体を冷却する段階;を含み、前記加熱する段階で、前記無機系後処理剤と前記メッキ層の成分が拡散されて相互拡散層、後処理層、及び前記メッキ層が酸化されたZn酸化層が形成され、前記相互拡散層は、前記後処理層及び前記Zn酸化層のうち少なくとも1層と、前記メッキ層との間で、前記後処理層及び前記Zn酸化層のうち少なくとも1層と重畳して位置し、Si、Mn、O、Fe、Zn及びSiOのうち少なくとも1つを含み、前記鋼板の引張強度は、1680MPa以上である。
【0015】
前記相互拡散層の面積分率は、前記後処理層の全体面積分率に対して10%以上80%以下に形成されうる。
【0016】
前記後処理層は、前記無機系後処理剤の酸化物、及び前記鋼板と前記メッキ層から拡散された成分として、Si、Mn、O、Fe、Zn及びSiOのうち少なくとも1つを含みうる。
【0017】
前記後処理層の平均厚さは、前記Zn酸化層の平均厚さより薄く、前記後処理層の平均厚さは、前記Zn酸化層の平均厚さの5%以上である。
【0018】
前記後処理層の平均厚さは、0.5μm~3μmであり、前記Zn酸化層の平均厚さは、1μm~10μmである。
【0019】
前記相互拡散層の平均厚さは、0.1μm~2μmでもある。
【0020】
前記加熱段階で、前記鋼板は、前記加熱炉内でAc3~910℃の温度範囲を有するターゲット加熱温度まで加熱され、120秒~600秒間滞留しながら加熱されうる。
【0021】
前記加熱段階以前に、前記メッキ層が形成された鋼板上に前記Si系無機系後処理剤を塗布し、乾燥してプリ(pre)後処理層を形成する後処理段階をさらに含みうる。
【0022】
前記後処理段階で、前記無機系後処理剤は、前記鋼板に0.5μm~3μmの厚さに塗布されて前記プリ後処理層を形成し、前記無機系後処理剤の塗布量は、0.5g/m2~3g/m2でもある。
【0023】
前記後処理段階で、前記無機系後処理剤が塗布された鋼板を70℃~150℃温度で1秒~10秒間乾燥する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の実施例によれば、無機系後処理を用いて表面性及び塗装性が向上したホットスタンピング部品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施例によるホットスタンピング工程前の素材の一部を示すTEM(透過電子顕微鏡)イメージである。
【
図3】本発明の一実施例によるホットスタンピング工程後の部品の一部を示すTEMイメージである。
【
図4】本発明の一実施例によるホットスタンピング工程後の部品を示す断面図である。
【
図5】
図2のホットスタンピング工程後の部品の一部を拡大したTEMイメージである。
【
図6】比較例によるホットスタンピング部品と本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の密着性評価を比較した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、多様な変換を加え、様々な実施例を有することができるところ、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。本発明の効果、及び特徴、及びそれらを達成する方法は、図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すれば、明確になるであろう。しかし、そのような発明は、以下に開示される実施例に限定されるものではなく、多様な形態に具現されうる。
【0027】
以下の実施例において、第1、第2などの用語は、限定的な意味ではなく、1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的に使用された。
【0028】
以下の実施例において、単数形表現は、文脈上、明白に異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【0029】
以下の実施例において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、または構成要素が存在することを意味し、1つ以上の他の特徴または構成要素の付加可能性を予め排除するものではない。
【0030】
以下の実施例において、膜、領域、構成要素などの部分が他の部分の上にまたは上方にあるとするとき、他の部分の真上にある場合のみならず、その中間に他の膜、領域、構成要素などが介在されている場合も含む。
【0031】
図面では、説明の便宜上、構成要素の大きさが誇張または縮小されうる。例えば、図面に示された各構成の大きさ、及び厚さは、説明の便宜上、任意に示したものなので、本発明が、必ずしも図示されたところに限定されない。
【0032】
ある実施例が異なって具現可能な場合、特定の工程順序は、説明される順序と異なって遂行されうる。例えば、連続して説明される2つの工程が実質的に同時に遂行され、説明される順序と逆順にも進められる。
【0033】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明し、図面を参照して説明するとき、同一であるか、対応する構成要素は、同じ図面符号を付する。
【0034】
図1は、本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0035】
図1を参照すれば、一実施例によるホットスタンピング部品の製造方法は、後処理段階(S100)、加熱段階(S200)、移送段階(S300)、成形段階(S400)、及び冷却段階(S500)を含みうる。
【0036】
後処理段階(S100)では、Znを含むメッキ層が形成された鋼板上にSi系無機系後処理剤を塗布してプリ後処理層を形成し、乾燥して後処理された鋼板を準備する。後処理段階(S100)以前のメッキ層が形成された鋼板を準備する段階は、ホットスタンピング用として適用される公知の組成を有する鋼スラブを準備し、前記鋼スラブを公知の熱間圧延及び冷間圧延のうち少なくとも1つを遂行した後、焼鈍熱処理することで、鋼板材を製造する過程に進められうる。前記焼鈍熱処理後に、前記鋼板材上にZnメッキ層を公知の方法によって形成することができる。
【0037】
後処理段階(S100)で無機系後処理剤が塗布された鋼板を乾燥してプリ後処理層を形成することができる。この際、前記乾燥段階は、一例として、70℃~150℃温度で1秒~10秒間遂行されうる。
【0038】
後処理段階(S100)で生成されるホットスタンピングの全部品については、後述する
図2でさらに詳細に説明する。
【0039】
以後、加熱段階(S200)において、前記無機系後処理剤が塗布された鋼板を加熱炉内に投入して加熱する。前記加熱段階において、鋼板は、加熱炉内で鋼板の材質確保及びZnメッキ層の気化防止のために、ターゲット加熱温度まで加熱され、前記ターゲット加熱温度は、約Ac3~910℃でもある。鋼板は、加熱段階(S200)で約120秒~600秒間滞留しながら加熱されうる。
【0040】
加熱段階200において、鋼板温度が、約700℃からターゲット加熱温度に到逹する区間での鋼板の平均昇温速度は、約1.5℃/sec~7℃/secでもある。平均昇温速度が約1.5℃/sec~7℃/secである場合、メッキ層と後処理層との成分が互いに拡散され、同時に鋼板とメッキ層の材質を確保しうる。昇温速度が約1.5℃/sec未満である場合、鋼板の材質未達及び生産性低下の問題があり、昇温速度が約7℃/sec超過である場合、メッキ層の過合金化によってターゲットするメッキ層構造を確保し難い。
【0041】
実施例によって、加熱段階では、多段加熱またはクラック加熱が行える。
【0042】
多段加熱段階は、鋼板を段階的に加熱する段階であり、クラック加熱段階は、均一な温度で多段加熱された鋼板を加熱する段階でもある。多段加熱段階では、鋼板が加熱炉内に備えられた複数の区間を通過して段階的に昇温されうる。加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、多段加熱段階が遂行される区間は、複数個存在し、鋼板が投入される加熱炉の入口から鋼板が取り出される加熱炉の出口方向に高くなるように、各区間別に温度が設定されて鋼板を段階的に昇温させうる。多段加熱段階以後にクラック加熱段階がなされる。クラック加熱段階では、多段加熱された鋼板が約Ac3~910℃の温度に設定された加熱炉の区間を通過して熱処理されうる。また、加熱炉内に備えられた複数の区間のうち、クラック加熱段階が遂行される区間は、少なくとも1つ以上でもある。
【0043】
前記加熱段階(S200)遂行中に前記後処理剤を含むプリ後処理層とメッキ層の成分が互いに拡散されて形成された相互拡散層、第2後処理層及び前記メッキ層が酸化されたZn酸化層が形成されうる。前記相互拡散層は、前記第2後処理層及び前記Zn酸化層のうち少なくとも1層と、前記メッキ層との間で、前記第2後処理層及び前記Zn酸化層のうち少なくとも1層と重畳して位置し、Si、Mn、O、Fe、Zn及びSiOを含みうる。加熱段階(S200)以後の部品の上述した層については、後述する
図3ないし
図5でさらに詳細に説明する。
【0044】
以後、移送段階(S300)で前記加熱された鋼板を加熱炉からプレス金型に移送しうる。移送段階(S300)で加熱されたブランクは、5秒~30秒間空冷されうる。
【0045】
成形段階(S400)は、移送された鋼板をホットスタンピングして成形体を形成する段階である。成形段階(S400)で成形開始温度は、約550℃~750℃でもある。成形温度が約750℃以上である場合は、液体金属脆化(Liquid Metal Embrittlement; LME)現象によって部品側壁部にクラックが約10μm以上のレベルに発生して耐久性が低下する問題点がある。逆に、成形温度が約550℃以下である場合は、鋼板の材質特性が不十分であるという問題点がある。
【0046】
冷却段階(S500)は、形成された成形体を冷却する段階である。冷却段階(S500)で平均冷却速度は、約25℃/sec以上でもある。
【0047】
プレス金型で最終部品形状に成形すると共に、成形体を冷却して最終製品が形成されうる。プレス金型には内部に冷媒が循環する冷却チャネルが備えられうる。プレス金型に備えられた冷却チャネルを介して供給される冷媒に循環によって加熱されたブランクを急冷させうる。この際、板材のスプリングバック(spring back)現象を防止すると共に、所望の形状を保持するには、プレス金型を閉状態で加圧しながら、急冷を実施しうる。加熱されたブランクの成形及び冷却操作において、マルテンサイト終了温度まで平均冷却速度を少なくとも10℃/s以上に冷却しうる。ブランクは、プレス金型内で3秒~20秒間保持されうる。プレス金型内の保持時間が3秒未満である場合、素材の冷却が十分になされず、残存熱による部位別温度偏差によって寸法品質に影響を与えてしまう。また、十分な量のマルテンサイトが生成されず、機械的物性が確保されない。一方、プレス金型内の保持時間が20秒を超過する場合、プレス金型内の保持時間が長くなって生産性が低下しうる。
【0048】
そのような本発明の一実施例による製造方法を通じて制御されたホットスタンピング部品は、無機系後処理剤とメッキ層の成分が互いに拡散されて形成された相互拡散層を介して表面性及び塗装密着力が向上しうる。この際、相互拡散層の面積分率は、前記第2後処理層の全体面積分率に対して10%以上80%以下でもある。そして、前記第2後処理層の平均厚さは、Znメッキ層が酸化されて形成されたZn酸化層の平均厚さよりも薄い。それら層の具体的な関係については、後述する
図3ないし
図5で説明する。
【0049】
図2は、本発明の一実施例によるホットスタンピング工程(または加熱)前の素材10(以下、「ホットスタンピング素材」とも称する)の一部を示すTEM(透過電子顕微鏡)イメージである。
【0050】
本発明の一実施例によるホットスタンピング素材10は、鋼板100、ホットスタンピング前のメッキ層200p、及び前記メッキ層200p上のプリ(pre)後処理層300pを含みうる。以下、ホットスタンピング素材10の後処理層300pを後述するホットスタンピング工程後の部品20の後処理層310と区別するために「プリ後処理層300p」と指称して説明する。
【0051】
本発明の鋼板100は、所定の合金元素を所定含量含むように鋳造されたスラブに対して熱間圧延工程及び/または冷間圧延工程を進めて製造された鋼板でもある。鋼板100は、炭素(C)、シリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、クロム(Cr)、ホウ素(B)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、添加剤及び残部の鉄(Fe)とその他不可避な不純物を含みうる。また、一実施例において、鋼板100は、添加剤としてチタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)のうち、少なくともいずれか1つをさらに含みうる。他の実施例において、鋼板100は、所定含量のカルシウム(Ca)をさらに含みうる。
【0052】
炭素(C)は、鋼板100内のオーステナイト安定化元素として作用する。炭素は、鋼板100の強度及び硬度を決定する主要元素であり、ホットスタンピング工程以後、鋼板100の引張強度(例えば、1,680MPa以上の引張強度)を確保し、焼入性特性を確保するための目的に添加される。そのような炭素は、鋼板100の全重量に対して0.25wt%~0.50wt%含まれうる。炭素の含量が0.25wt%未満である場合、硬質相(マルテンサイトなど)確保が困難であり、鋼板100の機械的強度を満足させ難い。逆に、炭素の含量が0.50wt%を超過する場合、鋼板100の脆性発生または曲げ性能低減の問題が引き起こされうる。
【0053】
シリコン(Si)は、鋼板100内のフェライト安定化元素として作用する。シリコン(Si)は、固溶強化元素であって、鋼板100の展延性を向上させ、低温域炭化物の形成を抑制することで、オーステナイト内の炭素濃化度を向上させる。また、シリコンは、熱間圧延、冷間圧延、熱間プレス組織均質化(パーライト、マンガン偏析帯制御)及びフェライト微細分散の核心元素である。シリコンは、マルテンサイト強度不均質制御元素として作用して衝突性能を向上させる役割を行う。そのようなシリコンは、鋼板100の全重量に対して0.10wt%~0.8wt%含まれうる。シリコンの含量が0.10wt%未満である場合、上述した効果が得られず、最終ホットスタンピングマルテンサイト組織でセメンタイト形成及び粗大化が発生し、鋼板100の均一化効果が微々たるものであり、V曲げ角を確保することができなくなる。逆に、シリコンの含量が0.8wt%を超過する場合、熱間圧延、冷間圧延の負荷が増加し、熱間圧延赤スケールが過多になって鋼板100のメッキ特性が低下しうる。
【0054】
マンガン(Mn)は、鋼板100内のオーステナイト安定化元素として作用する。マンガンは、熱処理時に焼入性及び強度増加目的に添加される。そのようなマンガンは、鋼板100の全重量に対して0.30wt%~3.0wt%含まれうる。マンガンの含量が0.30wt%未満である場合、結晶粒微細化効果が十分ではなく、焼入性不十分によってホットスタンピング後成型品内の硬質相分率が十分なものではなくなる。一方、マンガンの含量が3.0wt%を超過する場合、マンガン偏析またはパーライトバンドによる展延性及び靭性が低下し、曲げ性能低下の原因になって不均質微細組織が発生しうる。
【0055】
リン(P)は、鋼板100の靭性低下を防止するために、鋼板100の全重量に対して0超過0.05wt%以下に含まれうる。リンの含量が0.05wt%を超過する場合、リン化鉄化合物が形成されて靭性及び溶接性が低下し、製造工程中に鋼板100にクラックが誘発されうる。
【0056】
硫黄(S)は、鋼板100の全重量に対して0超過0.01wt%以下含まれうる。硫黄の含量が0.01wt%を超過すれば、熱間加工性、溶接性及び衝撃特性が低下し、巨大介在物生成によってクラックなど表面欠陥が発生しうる。
【0057】
ホウ素(B)は、フェライト、パーライト及びベイナイト変態を抑制してマルテンサイト組織を確保することで、鋼板100の焼入性及び強度を確保する目的に添加される。また、ホウ素は、結晶粒界に偏析されて粒界エネルギーを低めて焼入性を増加させ、オーステナイト結晶粒成長温度増加によって結晶粒微細化効果を有する。そのようなホウ素は、鋼板100の全重量に対して0.0005wt%~0.005wt%含まれうる。ホウ素が前記範囲で含まれるとき、硬質相粒界脆性発生を防止し、高靭性と曲げ性を確保することができる。ホウ素の含量が0.0005wt%未満である場合、焼入性効果が足りず、逆に、ホウ素の含量が0.005wt%を超過する場合、固溶度が低く、熱処理条件によって結晶粒界で容易に析出されて焼入性が劣化されるか、高温脆化の原因になり、硬質相粒界脆性発生によって靭性及び曲げ性が低下しうる。
【0058】
クロム(Cr)は、鋼板100の焼入性及び強度を向上させる目的に添加される。クロムは、析出硬化を介した結晶粒微細化及び強度確保を可能にする。そのようなクロムは、鋼板100の全重量に対して0.01wt%~1.0wt%含まれうる。クロムの含量が0.01wt%未満である場合、析出硬化効果が低調であり、逆に、クロムの含量が1.0wt%を超過する場合、Cr系析出物及びマトリックス固溶量が増加して靭性が低下し、コスト上昇によって生産費が増加しうる。
【0059】
モリブデン(Mo)は、鋼板100の全重量に対して0.01wt%~1.0wt%以下に含まれうる。
【0060】
ニッケル(Ni)は、鋼板100の全重量に対して0.001wt%~1.0wt%以下に含まれうる。
【0061】
添加剤は、窒化物または炭化物生成元素でもある。具体的には、添加剤は、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)のうち、少なくともいずれか1つを含みうる。チタン(Ti)、ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)は、窒化物または炭化物形態の微細析出物を形成することで、ホットスタンピング、焼き入れた部材の強度を確保することができる。また、これらは、Fe-Mn系複合酸化物に含有され、耐遅延破壊特性向上に有効な水素トラップサイトとして機能し、耐遅延破壊性の改善に必要な元素である。そのような添加剤は、合計で鋼板100の全重量に対して0.01wt%~0.1wt%以下に含まれうる。添加剤の含量が0.1wt%を超過すれば、降伏強度の上昇が過度に大きくもなる。
【0062】
チタン(Ti)は、熱間プレス熱処理後、析出物形成による焼入性強化及び材質向上の目的に添加されうる。また、高温でTi(C,N)などの析出相を形成し、オーステナイト結晶粒微細化に効果的に寄与する。チタンは、連鋳不良及び析出物粗大化を防止し、鋼材の物性を容易に確保し、鋼材表面にクラック発生などの欠陥を防止しうる。
【0063】
ニオブ(Nb)及びバナジウム(V)は、マルテンサイトパケットサイズ(Packet size)減少による強度及び靭性増加を目的に添加される。ニオブ及びバナジウム熱間圧延及び冷間圧延工程で鋼材の結晶粒微細化効果に優れ、製鋼/連鋳時にスラブのクラック発生と、製品の脆性破断の発生を防止し、製鋼性粗大析出物の生成を最少化することができる。
【0064】
鋼板100は、一例として、下記[表1]のような組成を有する。下記[表1]を参照すれば、C、Si、Mn、P、S及びBは、必須成分であり、Cr、Mo、Ni及び添加剤は、選択成分でもある。添加剤は、一例として、Ti、Nb及びVのうち少なくとも1つ以上を含み、これらの総量は、約0.01~0.1wt%でもある。
【0065】
【0066】
本発明の鋼板100の組織は、一例として、フェライト、パーライト、残部その他不可避な組織及びその他析出物を含みうる。本発明の鋼板100の物性は、一例として、ホットスタンピング後、引張強度(TS)が約1,680~2,300MPa、降伏温度(YP)は、約1,150~1,500MPa、及び延伸率(EL)は、約4%以上約10%以下でもある。本発明のメッキ層200pは、Zn系メッキ層でもある。すなわち、本発明のホットスタンピング素材10は、亜鉛メッキ鋼板であって、一例として、鋼板100と亜鉛が熱拡散によって合金化されたメッキ層200pが形成された合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(Galva-annealed Iron; GA)であり、鋼板100の表面で溶融状態の亜鉛が凝固する間、形成された微細な亜鉛結晶粒でメッキ層200pが形成された結晶粒溶融亜鉛メッキ鋼板(Galbanized Iron; GI)でもあり得る。
【0067】
本発明のホットスタンピング前のメッキ層200pは、Zn、Feを含みうるが、それに限定されない。メッキ層200pは、鋼板100の一面に、約15g/m2~100g/m2(両面基準約30~200g/m2)の付着量でメッキされ、メッキ層200pの厚さh1は、約4μm~30μmでもある。
【0068】
本発明のプリ後処理層300pは、
図1で前述した後処理段階(S100)で塗布し、乾燥して形成された層である。プリ後処理層300pについて前述した後処理段階(S100)と関連付けて説明する。プリ後処理層300pは、無機系後処理剤を含み、一例として、Si系無機系後処理剤でもある。プリ後処理層300pの前記Siは、ホットスタンピング熱処理工程のうち、鋼板100またはメッキ層200p表面にSiOを含む相互拡散層を形成してホットスタンピング部品の部品特性を向上させる。それについては、後述する関連図面でさらに詳細に説明する。本発明では、無機系後処理剤を使用することで、カーボン(C)鎖を含む有機系後処理剤を使用する場合、ホットスタンピング工程中、加熱によって鎖が切断されて耐久性が落ちる問題点を改善しうる。
【0069】
後処理段階(S100)において、前記無機系後処理剤は、鋼板100に約0.5μm~3μmの厚さに塗布されてプリ後処理層300pを形成することができる。すなわち、プリ後処理層300pの厚さh0は、約0.5μm~3μmでもある。この際、前記無機系後処理剤の塗布量は、約0.5g/m2~3g/m2でもある。本発明の無機系後処理剤がそのような塗布量によって塗布されて初めて、後述する本発明の一実施例によるホットスタンピング部品及びその表面性、塗装密着力を確保することができる。
【0070】
以下、
図3及び
図4を共に参照して、ホットスタンピング工程後の最終部品について説明する。
図3は、本発明の一実施例によるホットスタンピング工程後の部品20の一部を示すTEMイメージであり、
図4は、本発明の一実施例によるホットスタンピング工程後の部品20(以下、「ホットスタンピング部品」と称する)を示す断面図である。以下、ホットスタンピング部品20は、
図1で前述したS200~S500段階がいずれも遂行された後の部品を意味する。
図2で前述した内容と実質的に同じ内容は、説明を省略するか、簡単にする。
【0071】
本発明のホットスタンピング部品20は、鋼板100、Znを含むメッキ層200及びホットスタンピング工程を通じて形成された表面層300を含みうる。表面層300は、メッキ層200上に位置し、後処理層310、Zn酸化層320及び相互拡散層330を含みうる。ホットスタンピング工程後の鋼板100の成分は、
図2で前述したホットスタンピング工程前の鋼板100と類似してもいるが、その組織は、異なってもいる。本発明のホットスタンピング工程後、鋼板100の組織は、相変態され、一例として、マルテンサイト90%以上、残部その他不可避な組織及びその他析出物を10%未満含む。
【0072】
ホットスタンピング工程後のメッキ層200は、ホットスタンピング素材10の鋼板100とメッキ層200pの成分が互いに拡散されて形成されうる。メッキ層200は、Zn、Fe、Al、Mn及びSiのうち少なくとも1つを含みうる。メッキ層200の組成は、一例として、10~70wt%Fe、0~5wt%Al、0~5wt%Mn、0~5wt%Si、残部Zn及びその他不純物を含みうるが、それに限定されない。メッキ層200は、約5μm~50μmの厚さに形成されうる。メッキ層200の厚さが5μm未満である場合、耐食性が低下し、厚さが50μm超過時には、生産性が低下しうる。
【0073】
表面層300は、ホットスタンピング素材10の鋼板100、メッキ層200pの成分がプリ後処理層300pで拡散して形成されうる。またはホットスタンピング工程のうち、ホットスタンピング素材10の鋼板100、メッキ層200pの成分が拡散されて形成されるホットスタンピング部品20のメッキ層200成分が後処理層300pに拡散されて形成されうる。表面層300は、メッキ層200上に位置し、後処理層310、Zn酸化層320及び相互拡散層330を含みうる。
【0074】
後処理層310は、メッキ層200上に位置し、無機系後処理剤を含みうる。一例として、後処理層310は、Si系無機系後処理剤を含み、プリ後処理層300pに対して後処理層310は、Siが酸化されたSiOなどの酸化シリコン、そして、メッキ層200pや鋼板100から拡散された成分をさらに含みうる。後処理層310は、Si系後処理剤、前記後処理剤の酸化物、及び前記鋼板100の前記メッキ層200の成分が混合されて形成されうる。または、ホットスタンピング素材10の鋼板100及びメッキ層200pの成分が混合されて形成されうる。一例として、前記鋼板100やメッキ層200、200pから拡散された成分は、Si、O、Mn、Zn及びFeのうち少なくとも1つを含みうる。
【0075】
後処理層310は、メッキ層200上に形成されてメッキ層200、200pのZn成分が酸素と結合して塗装密着性を低下させるZn酸化層が形成されることを抑制、最小化しうる。このように後処理層310は、塗装層とのバインディングを阻害するZn酸化物の生成は抑制し、塗装層とのバインディングを向上させるSi酸化物の生成を誘導することで、最終的にホットスタンピング部品20の塗装密着力を向上させうる。後処理層310のZn平均含量は、メッキ層200のZn平均含量よりも少ない。後処理層310のZn平均含量は、後処理層310のSi平均含量より多くもなる。一例として、後処理層310及びその上に形成される塗装層(図示せず)との間に燐酸塩を含む燐酸塩処理層がさらに介在され、後処理層310は、そのような燐酸塩処理層との結合力が強く、これにより、塗装密着性も向上しうる。
【0076】
後処理層310の平均厚さh3は、後述するZn酸化層320の平均厚さh4よりも薄い。後処理層310の平均厚さh3は、Zn酸化層200の平均厚さh4の約5%以上約100%未満でもある。一例として、後処理層310の平均厚さh3は、約0.5μm~3μmでもあり、0.5μm以下である場合、塗装性が低下しうる。後処理層310の全体表面層300に対して面積分率は、約20%~100%でもあり、20%未満である場合、塗装性が低下しうる。後処理層310は、SiO、Zn、Fe及びMnのうち少なくとも1つを含みうる。後処理層310の組成は、一例として、下記[表2]のように、Si 20~90wt%、Mn 0~15wt%、O 10~80wt%、Fe 0~15wt%及びZn 0~15wt%でもある。
【0077】
【0078】
Zn酸化層320は、メッキ層200上で後処理層310と同一層に位置しうる。Zn酸化層320は、メッキ層200の亜鉛がホットスタンピング熱処理工程のうち、酸化されて形成されうる。Zn酸化層320は、部品の表面性及び塗装密着力を低下させる問題点を引き起こしうる。Zn酸化層320の平均厚さh4は、約1μm~10μmでもあり、10μm超過時、部品の塗装性が低下しうる。本発明では、前述した無機系後処理剤で構成される後処理層310と、そこから形成される後述する相互拡散層330の形成を通じてZn酸化層320の厚さ及び面積分率を減少させることで、表面性及び塗装性低下を解決しようとする。本発明の相互拡散層330は、後処理層310及びZn酸化層320のうち、少なくとも1層と、メッキ層200との間で、後処理層310及びZn酸化層320のうち、少なくとも1層と重畳するように位置しうる。本図面では、相互拡散層330が後処理層310とメッキ層200との間で相互拡散層330の少なくとも一部がそれらと重畳することを例に挙げて図示した。相互拡散層330は、Si、Mn、O、Fe、Zn及びSiOのうち少なくとも1つを含みうる。相互拡散層330の組成は、一例として、下記[表3]のように、Si 15~35wt%、Mn 0~15wt%、O 35~80wt%、Fe 0~15wt%及びZn 5~40wt%でもある。相互拡散層330のZn平均含量は、前述した後処理層310のZn平均含量より多くもなる。
【0079】
【0080】
相互拡散層330の面積分率は、後処理層310の全体面積分率に対して約10%以上約80%以下でもある。相互拡散層330が後処理層310の10%以上存在して初めて、メッキ層200とその上の塗装層(図示せず)との結合力が確保されてZn酸化層320を十分に減少させて必要な塗装性を確保しうる。相互拡散層330の平均厚さは、一例として、約0.1μm~2μmでもある。相互拡散層330の平均厚さは、後処理層310の平均厚さの約10%以上約80%以下でもある。
【0081】
このように本発明の一実施例によれば、ホットスタンピング熱処理を通じて(第1)後処理層300pから形成された後処理層310及び相互拡散層330を含む表面層300は、メッキ層200との追加的な結合力によってホットスタンピング部品20の塗装密着力を向上させうる。また、無機系後処理剤を用いた相互拡散層330の形成を用いてメッキ層200のZnがその表面に拡散されず、むしろ相互拡散層330で消耗させることにより、すなわち、後処理層310よりZn平均含量が高い相互拡散層330を形成することで、Zn酸化層320の量は減少させ、最終的に塗装密着力を向上させうる。
【0082】
図5は、
図3のホットスタンピング工程後の部品の一部を拡大したTEMイメージ21である。前述したところと実質的に同じ内容は、説明を省略するか、簡単にしうる。
【0083】
図5を参照すれば、ホットスタンピング部品21のうち、Znメッキ層200、その上に位置する表面層300、及び表面層300上に塗布された分析用サンプリングのためのサンプリングプレート400が図示されている。第2後処理層310及び相互拡散層330を含む表面層300は、その下に位置するメッキ層200とその上部にコーティングされる塗装層(図示せず)を互いにバインディングする役割を遂行し、相互拡散層330は、メッキ層200と後処理層310のバインディングを遂行し、最終的にメッキ層200と塗装層との結合力を向上させ、これにより、ホットスタンピング部品20の表面性及び塗装密着力が増大しうる。
【0084】
図6は、比較例によるホットスタンピング部品と本発明の一実施例によるホットスタンピング部品の密着性評価を比較した図面である。比較例1は、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(GA)に、本発明の無機系後処理剤を塗布せず、ショットピーニング工程を遂行していない場合であり、比較例2は、同じGA鋼板にショットピーニング用粉末を用いてショットピーニング後処理工程を実施した場合(本発明の無機系後処理剤は、塗布しない)であり、実施例1は、本発明の一実施例によって製造されたホットスタンピング部品に対する実施例(ショットピーニングなどの後処理工程未実施)を示す。
【0085】
図6の密着力評価は、Dollyテストを遂行した例示であり、各比較例や実施例によって設けられたホットスタンピング部品上に接着剤を用いてドリーを固定した後で分離するとき、テスト部品の表面の物質がどれ位除去されるかによって部品の密着力を評価することができる。
【0086】
まず、比較例1は、ショットピーニング工程を行っていない実施例として部品の表面上の塗装層やメッキ層がドリー上に相当部分付いて塗装性低下を確認しうる。一方、比較例2は、従来のホットスタンピング部品の塗装性を向上させるためにショットピーニング工程を遂行した実施例であって、ドリーを取り外してもホットスタンピング部品の表面がほとんど保持されて塗装性が向上したことが分かる。本発明の実施例1を参照すれば、ショットピーニングやショットブラストなどの後処理工程を実施せず、本発明の無機系後処理剤を使用した場合にも、その部品の表面がほとんど保持された。すなわち、本発明の無機系後処理剤を用いてショットピーニングなどの複雑で高費用の工程なしにも、それを実施したときと同様の表面性、塗装性及び密着性が確保されることを確認することができる。
【0087】
このように本発明は、図面に図示された一実施例に基づいて説明したが、それらは、一例示に過ぎず、当該分野で通常の知識を有する者であれば、それから多様な変形及び実施例の変形が可能であるという点を理解するであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【国際調査報告】