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特表2024-527312無流量の非侵襲性識別及び向上した精度を伴う、超音波流量センサ及び熱エネルギーセンサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】無流量の非侵襲性識別及び向上した精度を伴う、超音波流量センサ及び熱エネルギーセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20240717BHJP
【FI】
G01F1/66 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580381
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 DK2022050136
(87)【国際公開番号】W WO2023274476
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】PA202100690
(32)【優先日】2021-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA202200049
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523162018
【氏名又は名称】レモニ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マドセン,ボー エスケロッド
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035DA08
2F035DA09
2F035DA14
(57)【要約】
管状構造物(2)を流れ抜ける流体(26)の流量(Q)を測定するよう構成された、超音波流量センサ(1)が開示される。流量センサ(1)は、-少なくとも1つの超音波トランスデューサ(4、4’)を使用することで、超音波(6、8)を送信及び受信するよう配置された、第1の検出器(34)と、-流体(26)の温度(T)を検出するよう配置及び構成された、温度センサ(14)と、-周りの温度(周囲温度)(T)を検出するよう配置及び構成された、温度センサ(12)と、-少なくとも1つの超音波トランスデューサ(4、4’)及び温度センサ(12、14)によって検出されたデータを受信するよう構成された、データプロセッサ(10)と、を備える。流量センサ(1)は、-超音波(6、8)のタイムオブフライト(t、t、t)を判断して、タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて音速の変化を計算するよう、-検出された流体(26)の温度(T)の関数として、予想された音速(c)の変化を計算するよう、-予想された音速(c)の変化が、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に対応するかどうかを判断するよう、-以下の基準すなわち、A)予想された音速(c)の変化が、タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に対応すること、及びB)周りと流体(26)との温度差(ΔTsf)が、0.01~0.5℃の間で固定されたレベルで予め設定された所定のレベル未満であること、を満たしたとき、流体が流量がない無流量状態を識別するよう、構成される。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状構造物(2)を流れ抜ける流体(26)の流量(Q)を測定するよう構成された、超音波流量センサ(1)であって、
少なくとも1つの超音波トランスデューサ(4、4’)を使用することで、超音波(6、8)を送信及び受信するよう配置された、第1の検出ユニット(34)と、
流体(26)の温度(T)を検出するよう配置及び構成された、温度センサ(14)と、
周りの温度(周囲温度)(T)を検出するよう配置及び構成された、温度センサ(12)と、
少なくとも1つの前記超音波トランスデューサ(4、4’)及び前記温度センサ(12、14)によって検出されたデータを受信するよう構成された、データプロセッサ(10)と、を備え、
ここで前記流量センサ(1)は、
超音波(6、8)のタイムオブフライト(t、t、t)を判断して、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて音速の変化を計算するよう、
検出された流体(26)の温度(T)の関数として、予想された音速(c)の変化を計算するよう、
予想された音速(c)の変化が、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に対応するかどうかを判断するよう、
以下の規準すなわち、
A)予想された音速(c)の変化が、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に対応すること、及び
B)周りと流体(26)との間の温度差(ΔTsf)が、0.01~0.5℃の間で固定されたレベルで予め設定された所定のレベルを下回ること、
を満たしたとき、流体(26)の流量がない、無流量状態を識別するよう、構成されることを特徴とする、流量センサ(1)。
【請求項2】
無流量状態は、前記流量センサ(1)の安定かつ正確な超音波流量測定を保証するために、前記流量センサ(1)の超音波流量測定計算を較正するために使用される、請求項1に記載の流量センサ(1)。
【請求項3】
予想された音速(c)が、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に対応しない場合、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に基づき、流体(26)の密度(ρ)における変化の補正値を計算するよう構成される、請求項1または2に記載の流量センサ(1)。
【請求項4】
予想された音速の変化(c)が、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に対応しない場合、密度(ρ)の補正値に基づき、流体(26)における特定の熱容量(c)の補正値を計算するよう構成される、請求項3に記載の流量センサ(1)。
【請求項5】
予想された音速(c)の変化が、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に対応しない場合、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化の基づき、流体(26)の流量(Q)における変化の補正値を計算するよう構成される、請求項3または4に記載の流量センサ(1)。
【請求項6】
前記第1の検出ユニット(34)は、前記第1の検出ユニット(34)を使用して測定できる低い流量(Q)を表わす、所定の低い流量レベル(Q)、を上回る流量(Q)を検出するよう構成され、前記流量センサ(1)は第2の検出ユニット(36)を備え、前記第2の検出ユニット(36)は
周りの温度(周囲温度)(T)を検出するよう配置及び構成された、第1の温度センサ(12)と、
前記温度センサ(12、14)に接続された、データプロセッサ(10)と、を備え、
前記第2の検出ユニット(36)は、周りと流体(26)との間の温度差(ΔTsf)に基づいて、前記低い流量レベル(Q)を下回る流量(Q)を推定するように構成され、前記温度差(ΔTsf)は、前記第1の温度センサ(12)及び前記第2の温度センサ(14)によって測定され、前記第2の検出ユニット(36)は、流量較正領域(B)で成された1回または複数回の測定(M、M)に基づいて、前記低い流量レベル(Q)を下回る流量(Q)を推定するよう構成され、前記流量較正領域(B)において、前記流量センサ(1)は、温度差(ΔTsf)に依存して流量(Q)を検出することができ、前記流量較正領域(B)で成された1回または複数回の前記測定(M、M)は、いかにして流量(Q)が、前記流量較正領域(B)、及び前記流量較正領域(B)を下回る流量領域(B)、における温度差(ΔTsf)に依存するかを判断するために必要とされる、1つまたは複数のパラメータを判断するために使用される、請求項1~5の内いずれか一項に記載の流量センサ(1)。
【請求項7】
前記第2の検出ユニット(36)は、単一の測定(M、M)、ならびに、流体(26)の密度(ρ)及び特定の熱容量(C)を含んだ所定のデータに基づいて、前記低いレベル(Q)を下回る流量(Q)を推定するよう構成される、請求項6に記載の流量センサ(1)。
【請求項8】
前記第2の検出ユニット(36)は、流量較正領域(B)で成される2回以上の測定(M、M)に基づいて、前記低い流量レベル(Q)を下回る流量(Q)を推定するよう構成される、請求項6に記載の流量センサ(1)。
【請求項9】
規則的または継続的に、
流量較正領域(B)で1回または複数回の測定(M、M)を行うよう、及び
いかにして流量(Q)が、前記流量較正領域(B)、及び前記流量較正領域(B)を下回る前記流量領域(B)、における温度差(ΔTsf)に依存するかを判断するために必要とされる、さらなるパラメータを更新するよう、構成される、請求項6~8の内いずれか一項に記載の流量センサ(1)。
【請求項10】
流量(Q)と温度差(ΔTsf)との間の依存関係は、以下の数式で定義され、
【数1】
または
【数2】
ここで、Cは定数、及びΔTは基本流量レベルに対応する温度差である、請求項6~9の内いずれか一項に記載の流量センサ(1)。
【請求項11】
(第2の)温度センサ(14)は、前記管状構造物(2)の外側における温度を測定することによって、流体(26)の温度(T)を検出するよう、配置及び構成される、請求項1~10の内いずれか一項に記載の流量センサ(1)。
【請求項12】
前記データプロセッサ(10)及び前記第2の温度センサ(14)は、ハウジング(20)の内側に配置される、請求項1~11の内いずれか一項に記載の流量センサ(1)。
【請求項13】
前記第1の温度センサ(12)は、前記ハウジング(20)の中に配置される、請求項12に記載の流量センサ(1)。
【請求項14】
前記第1の温度センサ(12)は、前記ハウジング(20)の外側に配置される、請求項12に記載の流量センサ(1)。
【請求項15】
前記第2の検出ユニット(36)は、
前記ハウジング(20)の内側位置における中間温度(T)を検出するよう配置及び構成された、中間温度センサ(16)を備え、前記ハウジング(20)の内側位置は、周囲温度(T)と流体(26)の温度(T)との間の温度を有することが想定される、請求項1~14のいずれか一項に記載の流量センサ(1)。
【請求項16】
前記管状構造物(2)の外側から流体(26)の流量(Q)を測定するよう構成された、クランプオン式流量センサ(1)である、請求項1~15の内いずれか一項に記載の流量センサ(1)。
【請求項17】
検出された音速(c)の値に基づいて、送信される超音波(6)及び受信される超音波(8)が、流体(26)を移動する距離(L)を自動で計算するよう構成される、請求項1~16の内いずれか一項に記載の流量センサ(1)。
【請求項18】
請求項1~17の内いずれか一項に記載の流量センサ(1)を備える、熱エネルギー計(5)。
【請求項19】
超音波流量センサ(1)によって、管状構造物(2)を流れ抜ける流体(26)の流量(Q)を測定するための方法であって、第1の検出ユニット(34)を備え、前記第1の検出ユニット(34)には、
少なくとも1つの超音波トランスデューサ(4、4’)であって、少なくとも1つの前記超音波トランスデューサ(4,4’)を使用することによって、超音波(6、8)を送信及び受信するよう配置され、前記超音波流量センサ(1)は、流体(26)の温度(T)を検出するよう配置及び構成された温度センサ(14)を備えた、少なくとも1つの超音波トランスデューサ(4、4’)が設けられ、
ここで前記方法は、
超音波(6、8)のタイムオブフライト(t、t、t)を判断するステップと、
前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて音速の変化を計算するステップと、
検出された流体(26)の温度(T)の関数として、予想された音速(c)の変化を計算するステップと、
前記予想された音速(c)の変化が、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に対応するかどうかを判断するステップと、
以下の基準、
A)前記予想された音速(c)の変化が、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に対応すること、及び
B)周りと流体(26)との間の温度差(ΔTsf)が、0.01~0.5℃の間で固定されたレベルにおいて、予め設定された所定のレベルを下回ること、
を満たしたとき、流体(26)が流量がない無流量状態を識別するステップと、を含む、方法。
【請求項20】
前記無流量状態は、前記流量センサ(1)の安定かつ正確な超音波流量測定を保証するために、前記流量センサ(1)の超音波流量測定計算を較正するために使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
予想された音速(c)が、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に対応しない場合、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化の基づき、流体(26)の密度(ρ)における変化の補正値を計算するステップを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
予想された音速の変化(c)が、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に対応しない場合、密度(ρ)の補正値に基づいて、流体(26)における特定の熱容量(c)の補正値を計算するステップを含む、請求項19~21の内いずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
予想された音速(c)の変化が、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に対応しない場合、前記タイムオブフライト(t、t、t)に基づいて計算された音速の変化に基づき、流体(26)の流量(Q)の補正値を計算するステップを含む、請求項19~22内いずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の検出ユニット(34)は、前記第1の検出ユニット(34)を使用して測定できる最も低い流量(Q)を表わす、所定の低い流量レベル(Q)、を上回る流量(Q)を検出するよう構成され、前記方法は、第2の検出ユニット(36)を、
温度センサ(12)によって、周りの温度(周囲温度)(T)を検出するため、
流体(26)の温度(T)を検出するよう配置及び構成された温度センサ(14)によって、流体(26)の温度(T)を検出するため、
前記温度センサ(12、14)によって測定された、周りと流体(26)との間の温度差(ΔTsf)に基づいて、前記低い流量レベル(Q)を下回る流量(Q)を推定するため、
に適用するステップを備え、
ここで前記方法は、
a)流量較正領域(B)において、前記第1の検出ユニット(34)によって1回または複数回の測定(M、M)を実施するステップであって、前記流量較正領域(B)において、前記流量センサ(1)は、温度差異(ΔTsf)に依存して流量(Q)を検出できる、実施するステップと、
b)いかにして流量(Q)が、前記流量較正領域(B)、及び前記流量較正領域(B)を下回る流量領域(B)、における温度差(ΔTsf)に依存するかを判断するために必要とされる、1つまたは複数のパラメータを判断するために、前記流量較正領域(B)で成された1回または複数回の前記測定(M、M)を適用するステップと、
c)前記流量較正領域(B)で成された1回または複数回の前記測定(M、M)に基づいて、前記低い流量レベル(Q)を下回る流量(Q)を推定するステップと、を含む、請求項19~23の内いずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記流量較正領域(B)において2回以上の流量測定を実施するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
規則的または継続的に、
流量較正領域(B)で1回または複数回の前記測定(M、M)を実施するステップと、
いかにして流量(Q)が、前記流量較正領域(B)、及び前記流量較正領域(B)を下回る前記流量領域(B)、における温度差(ΔTsf)に依存するかを判断するために必要とされる、さらなるパラメータを更新するステップと、を含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
流量(Q)と温度差(ΔTsf)との間の依存関係は、以下の数式で定義され、
【数3】
または、
【数4】
ここで、Cは定数、及びΔTは基本流量レベルに対応する温度差である、請求項24~26の内いずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
流体(26)温度(T)は、前記管状構造物(2)の外側に配置された温度センサによって測定される、請求項19~27の内いずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ハウジング(20)の内側位置に配置された中間温度センサ(16)によって、中間温度(T)を検出するステップであって、前記ハウジング(20)は、流体(26)の温度(T)を検出するために使用される前記温度センサ(14)、及び前記中間温度センサ(16)を収容し、前記中間温度(T)は、前記周囲温度(T)と流体(26)の温度(T)との間における値を有することが想定される、検出するステップを含む、請求項19~28の内いずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
流量(Q)を測定する前に、密度及び/または、推定される流体(26)の不均質性を測定するステップを含む、請求項19~29の内いずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記管状構造物(2)の外側から流体(26)の流量(Q)を測定するよう構成された、クランプオン式流量センサ(1)を使用することによって実施される、請求項19~30の内いずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
送信される超音波(6)及び受信される超音波(8)が流体(26)を移動する距離(L)を、検出された音速(c)の値に基づいて、自動的に計算するステップを含む、請求項19~31の内いずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
流体の流量(Q)を検出するために、請求項19~32の内いずれか一項に記載の方法を適用する、流体(26)の熱エネルギーを測定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に超音波流量センサ、特にクランプオン式超音波流量センサに関する。本発明はさらに、超音波流量センサを使用した熱エネルギー計、及びクランプオン式超音波熱エネルギー計に関する。
【背景技術】
【0002】
流量測定は、産業、建設物、及び電力系統のために広く使用される。流量は、様々なタイプの流量センサを使用して検出することができる。従来技術における流量センサとして、機械式流量センサ及び超音波流量センサが挙げられる。超音波流量センサは、主に2つのバージョン、すなわち、純流体(水、ガス、製造業用液体など)における測定のための所謂デルタタイムオブフライトと、多くの粒子(スラリー、気泡を伴う液体など)を含有する流体を測定するためのドップラー効果と、で使用される。
【0003】
先行技術の超音波流速測定において、技術の使用を限定する既知の制限が存在する。これらの制限の内1つは、センサのオフセットを検出するために必要とされる、無流量(流体がパイプ内に停滞すること)を検出することが困難であることである。
【0004】
従来技術の超音波流量センサは、通常では信頼できて正確であるが、測定精度を向上させることは有利となるであろう。さらに、向上した精度を有する超音波熱計を提供することは有利となるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無流量での検出を提供できる方法、及び超音波流量センサを提供することが、本発明の目的である。従来技術で公知の解決策よりも高い精度を提供できる方法、及び超音波流量センサを提供することも、本発明の目的である。公知の超音波熱エネルギー計よりも高い精度を有する、超音波熱エネルギー計を提供することも、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目標は、請求項1で定義する超音波流量センサによって、及び請求項19で定義する方法によって、実現することができる。好ましい実施形態は従属請求項で定義され、以下の記載で説明し、添付の図面に例示する。
【0007】
本発明による流量センサは、管状構造物を流れ抜ける流体の流量を測定するよう構成された、超音波流量センサであり、この流量センサは:
-少なくとも1つの超音波トランスデューサを使用することで、超音波を送信及び受信するよう配置された、第1の検出器;
-流体の温度を検出するよう配置及び構成された、温度センサ;
-周りの温度(周囲温度)を検出するよう配置及び構成された、温度センサ;
-少なくとも1つの超音波トランスデューサ及び温度センサによって検出されたデータを受信するよう構成された、データプロセッサ;を備え、
この流量センサは:
-超音波のタイムオブフライトを判断して、このタイムオブフライトに基づいて音速の変化を計算するよう;
-検出された流体の温度の関数として、予想された音速の変化を計算するよう;
-予想された音速の変化が、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化に対応するかどうかを判断するよう;
-以下の基準:
A)予想された音速の変化が、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化に対応すること、及び
B)周りと流体との温度差が、0.01~0.5℃の間で固定されたレベルで予め設定された所定のレベルを下回ること、
を満たしたとき、流体の流量がない無流量状態を識別するよう、
構成される。
【0008】
これによって、無流量における検出を提供することを可能にする。それによって、流量センサのオフセットを識別することができる。
【0009】
管状構造物は、それを通して流体が流れるパイプ、または別の構造物とし得る。1つの実施形態において、管状構造物はパイプである。1つの実施形態において、管状構造物はホースである。実施形態において、管状構造物は容器である。1つの実施形態において、管状構造物は箱である。
【0010】
本発明による流量センサは、流体の流量を測定するよう構成された流量センサである。1つの実施形態において、流体は液体である。1つの実施形態において、流体は水を含有した液体である。実施形態において、流体はガスである。
【0011】
データプロセッサは、マイクロプロセッサとし得る。
【0012】
実施形態において、無流量状態は、流量センサの安定かつ正確な超音波流量測定を保証するために、流量センサの超音波流量測定計算を較正するために使用される。
【0013】
実施形態において、超音波流量センサは、予想された音速が、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化に対応しない場合、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化に基づき、流体密度の変化の補正値を計算するよう構成される。これによって、従来技術で公知の解決策よりも高い精度をもたらすことができる、超音波流量センサを提供することが可能である。
【0014】
実施形態において、超音波流量センサは、予想された音速の変化が、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化に対応しない場合、密度の補正値に基づいて、流体における特定の熱容量の補正値を計算するよう構成される。それによって、従来技術で公知の解決策よりも高い精度をもたらすことができる、超音波流量センサを提供することが可能である。
【0015】
実施形態において、超音波流量センサは、予想された音速の変化が、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化に対応しない場合、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化に基づき、流体の流量の補正値を計算するよう構成される。これによって、従来技術で公知の解決策よりも高い精度をもたらすことができる、超音波流量センサを提供することが可能である。
【0016】
実施形態において、第1の検出ユニットを使用して測定できる低い流量を表わす、所定の低い流量レベルを上回る流量を検出するよう、第1の検出ユニットは構成される。この流量センサは第2の検出ユニットを備え、それは:
-周りの温度(周囲気温)を検出するよう配置及び構成された、第1の温度センサ;
-この温度センサに接続された、データプロセッサ;を備え、
第2の検出ユニットは、周りと流体との間の温度差に基づいて、低い流量レベルを下回る流量を推定するように構成される。温度差は、第1の温度センサ及び第2の温度センサによって測定される。第2の検出ユニットは、流量較正領域で成された1つまたは複数の測定に基づいて、低い流量レベルを下回る流量を推定するよう構成される。この流量較正領域において、流量センサは、温度差に依存して流量を検出することができる。流量較正領域で成された1回または複数回の測定は、いかにして流量が、流量較正領域、及び流量較正領域を下回る流量領域、における温度差に依存するかを判断するために必要とされる、1つまたは複数のパラメータを判断するために使用される。
【0017】
これによって、従来技術の流量センサよりも大きい流量範囲で、流量を検出できるセンサを提供することが可能である。本発明による流量センサは、特に、低い流量レベルを下回る流量を検出できる。
【0018】
実施形態において、第2の検出ユニットは、単一の測定、ならびに、流体の密度及び特定の熱容量を含んだ所定のデータに基づいて、低い流量レベルを下回る流量を推定するよう構成される。
【0019】
1つの実施形態において、第2の検出ユニットは、2回の単一測定に基づいて、低い流量レベルを下回る流量を推定するよう構成される。
【0020】
これによって、2回の測定を利用して、流量と温度差との間の関係を表わす曲線を調整することが可能である。
【0021】
これは、この曲線が既知の形状を有するために成され得る(これは図8で示され、それを参照して説明するように、数式(1)及び数式(6)によって定義された関係に従う)。
【0022】
実施形態において、第2の検出ユニットは、流量較正領域で成される2回以上の測定に基づいて、低い流量レベルを下回る流量を推定するよう構成される。
【0023】
実施形態において、流量センサは規則的または継続的に:
-流量較正領域で1回または複数回の測定を行うよう、ならびに
-いかにして流量が、流量較正領域、及び流量較正領域を下回る流量領域、における温度差に依存するかを判断するために必要な、さらなるパラメータを更新するよう、構成される。
【0024】
これによって、信頼できる流量測定と、規則的に、環境条件の変化(例えば強められた換気など)によってパラメータを調整することと、を提供することが可能である。流量センサは、流量較正領域で必要な回数の測定を自動的に実施するよう、ならびに、いかにして流量が、流量較正領域、及び流量較正領域を下回る流量領域、における温度差に依存するかを判断するために必要とされる、さらなるパラメータを、計算して更新するよう構成される。
【0025】
1つの実施形態において、用語「規則的または継続的に」は、流量較正領域において1回または複数回の測定を提供するよう試みられるなかで、1秒に1回であると理解されたい。
【0026】
1つの実施形態において、用語「規則的または継続的に」は、流量較正領域において1回または複数回の測定を提供するよう試みられるなかで、5秒に1回であると理解されたい。
【0027】
1つの実施形態において、用語「規則的または継続的に」は、流量較正領域において1回または複数回の測定を提供するよう試みられるなかで、10秒に1回であると理解されたい。
【0028】
1つの実施形態において、用語「規則的または継続的に」は、流量較正領域において1回または複数回の測定を提供するよう試みられるなかで、30秒に1回であると理解されたい。
【0029】
1つの実施形態において、用語「規則的または継続的に」は、流量較正領域において1回または複数回の測定を提供するよう試みられるなかで、1分に1回であると理解されたい。
【0030】
1つの実施形態において、用語「規則的または継続的に」は、流量較正領域において1回または複数回の測定を提供するよう試みられるなかで、2分に1回であると理解されたい。
【0031】
1つの実施形態において、用語「規則的または継続的に」は、流量較正領域において1回または複数回の測定を提供するよう試みられるなかで、5分に1回であると理解されたい。
【0032】
1つの実施形態において、用語「規則的または継続的に」は、流量較正領域において1回または複数回の測定を提供するよう試みられるなかで、15分に1回であると理解されたい。
【0033】
1つの実施形態において、用語「規則的または継続的に」は、流量較正領域において1回または複数回の測定を提供するよう試みられるなかで、30分に1回であると理解されたい。
【0034】
1つの実施形態において、用語「規則的または継続的に」は、流量較正領域において1回または複数回の測定を提供するよう試みられるなかで、1時間に1回であると理解されたい。
【0035】
実施形態において、流量(Q)と温度差(ΔTsf)との間の依存関係は、以下の数式で定義される:
【0036】
【数1】
または、
【0037】
【数2】
ここで、Cは定数、及びΔTは基本流量レベルに対応する温度差である。図8において、基本流量レベルQが例示される。
【0038】
これらの数式は2つの未知数を有する。
-基本流量レベルQに対応する温度差ΔT、及び
-定数Cである。
【0039】
このように、流量較正領域で成された2回の測定は、流量(Q)と温度差(ΔTsf)との間の依存関係を判断するための、十分な情報を提供する。
【0040】
実施形態において、(第2の)温度センサは、管状構造物の外側における温度を測定することによって、流体の温度を検出するよう、配置及び構成される。これによって、(パイプなどの)管状構造物の外側に取り付けることができる、クランプオン式流量センサとしての流量センサを提供することが可能である。したがって、第2の温度センサを、流体に直接接触させるように至らせる必要はない。
【0041】
実施形態において、データプロセッサ及び(第2の)温度センサは、ハウジングの内側に配置される。これによって、簡易で容易な取り付けが可能で、かつ堅牢な流量センサを提供することが可能である。
【0042】
実施形態において、(第1の)温度センサは、ハウジングの中に配置される。これによって、流量センサの全ての構成要素を、単一のハウジングの中に設けることができる。
【0043】
実施形態において、(第1の)温度センサは、ハウジングの外側に配置される。これによって、対流による熱の伝播を考慮することが可能である。
【0044】
実施形態において、第2の検出ユニットは、ハウジングの内側位置における中間温度を検出するよう配置及び構成された、中間温度センサを備える。このハウジングの内側位置は、周囲温度と流体の温度との間の温度を有することが想定される。これによって、追加の情報を提供すること、したがって低い流量範囲における流量の向上した推定を提供すること、が可能である。
【0045】
1つの実施形態において、流量センサは、管状構造物の外側から流体の流量を測定するよう構成された、クランプオン式流量センサである。
【0046】
流量センサは超音波流量センサであり、第1の検出ユニットは、超音波を送信するよう配置された少なくとも1つの超音波トランスデューサと、超音波を受信するよう配置された少なくとも1つの超音波トランスデューサと、を備える。
【0047】
1つの実施形態において、流量センサは、検出された音速cに基づいて、送信された超音波及び受信された超音波が流体を移動する距離Lを自動で計算するよう構成される。これによって、正確なパイプの寸法を知らなくても、パイプの中の流量を測定することが可能であり、たとえ経時的にパイプの内側表面に堆積物がもたらされたとしても、正確な測定を実施することが可能である。
【0048】
本発明による熱エネルギー計は、本発明による流量センサを備える。
【0049】
実施形態において、第2の検出ユニットは、第1の検出ユニットに一体化される。実施形態において、第2の検出ユニット及び第1の検出ユニットは、別個のユニットとして提供される。
【0050】
1つの実施形態において、第2の検出ユニットは、いかにして流量が温度差に依存するかについての情報を含有した記憶装置または外部デバイスに、通信可能に接続され、データプロセッサは、温度差に基づいて流量を判断できるよう、この情報にアクセスして使用するよう構成される。
【0051】
本発明による方法は、第1の検出ユニットを備えた超音波流量センサによって、管状構造物を流れ抜ける流体の流量を測定するための方法であり、この第1の検出ユニットには:
-少なくとも1つの超音波トランスデューサを使用することによって、超音波を送信及び受信するよう配置された、少なくとも1つの超音波トランスデューサであって、超音波流量センサは、流体の温度を検出するよう配置及び構成された温度センサを備える、少なくとも1つの超音波トランスデューサが設けられ、
本方法は、以下のステップ:
-超音波のタイムオブフライトを判断するステップ;
-タイムオブフライトに基づいて音速の変化を計算するステップ;
-検出された流体の温度の関数として、予想された音速の変化を計算するステップ;
-予想された音速の変化が、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化に対応するかどうかを判断するステップ;
-以下の規準:
A)予想された音速の変化が、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化に対応すること、及び
B)周りと流体との温度差が、0.01~0.5℃の間で固定されたレベルで予め設定された所定のレベルを下回ること、
を満たしたとき、流体の流量がない無流量状態を識別するステップ、を含む。
【0052】
これによって、無流量における検出を提供することを可能にする。このように、オフセットを識別することができる。
【0053】
実施形態において、無流量状態は、流量センサの安定かつ正確な超音波流量測定を保証するために、流量センサの超音波流量測定計算を較正するために使用される。
【0054】
1つの実施形態において、超音波流量センサは、予想された音速が、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化に対応しない場合、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化に基づき、流体密度の変化の補正値を計算するよう構成される。これによって、流量測定の精度を向上されることが可能である。
【0055】
これによって、流体密度の補正値を判断することで、より正確な測定を提供することが可能である。
【0056】
実施形態において、方法は、予想された音速の変化が、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化に対応しない場合、密度の補正値に基づいて、流体の特定の熱容量の補正値を計算するステップを含む。これによって、向上した精度を伴う測定を提供することが可能である。
【0057】
1つの実施形態において、方法は、予想された音速の変化が、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化に対応しない場合、タイムオブフライトに基づいて計算された音速の変化の基づき、流体の流量の補正値を計算するステップを含む。これによって、流量測定の精度を向上されることが可能である。
【0058】
実施形態において、第1の検出ユニットは、第1の検出ユニットを使用して測定できる最も低い流量を表わす、所定の低い流量レベル、を上回る流量を検出するよう構成され、本方法は、第2の検出ユニットを:
-温度センサによって、周りの温度(周囲温度)を検出するため;
-流体の温度を検出するよう配置及び構成された温度センサによって、流体の温度を検出するため;
-温度センサによって周りと流体との間の温度差に基づいて、低い流量レベルを下回る流量を推定するため、に適用するステップを含み、
本方法は、以下のステップ:
a)流量較正領域で第1の検出ユニットによって1回または複数回の測定を実施するステップであって、この流量較正領域において、流量センサは、温度差に依存して流量を検出できる、実施するステップ;
b)いかにして流量が、流量較正領域、及び流量較正領域を下回る流量領域、における温度差に依存するかを判断するために必要とされる、1つまたは複数のパラメータを判断するために、流量較正領域で成された1回または複数回の測定を適用するステップ;及び、
c)流量較正領域で成された1回または複数回の測定に基づいて、低い流量レベルを下回る流量を推定するステップ、を含む。
【0059】
これによって、従来技術よりも低い流量を検出することが可能である。
【0060】
実施形態において、本方法は、流量較正領域において2回以上の流量測定を実施するステップを含む。
【0061】
実施形態において、本方法は、規則的または継続的に:
-流量較正領域で1回または複数回の測定を行うステップ、及び
-いかにして流量が、流量較正領域、及び流量較正領域を下回る流量領域、における温度差に依存するかを判断するために必要とされる、さらなるパラメータを更新するステップ、
を含む。
【0062】
1つの実施形態において、流量(Q)と温度差(ΔTsf)との間の依存関係は、以下の数式で定義される:
【0063】
【数3】
または、
【0064】
【数4】
ここで、Cは定数、ΔTは基本流量レベルに対応する温度差である。
【0065】
実施形態において、流体の温度は、管状構造物の外側に配置された温度センサによって測定される。
【0066】
実施形態において、本方法は、ハウジングの内側位置に配置された中間温度センサによって、中間温度を検出するステップを含み、このハウジングは、流体の温度を検出するための温度センサ及び中間温度センサを収容する。中間温度は、周囲温度と流体の温度との間における値を有することが予想された。
【0067】
実施形態において、本方法は、流量を測定する前に、流体の密度及び/または、推定される不均質性を測定するステップを含む。
【0068】
これによって、流量測定を向上させること、ならびに、流体の密度及び/または不均質性を考慮に入れること、が可能である。
【0069】
1つの実施形態において、本方法は、検出された音速cの値が、検出された流体の温度の関数として予想された音速cに対応しない場合、流体における特定の熱容量の補正値を計算するステップを含む。これによって、向上した精度を有する熱エネルギー計を提供するために、この流量センサを適用することが可能である。流体における特定の熱容量の補正値を使用することで、この熱エネルギー計が最も正確な測定を伝えるのを、保証することになる。
【0070】
1つの実施形態において、本方法は、管状構造物の外側から、流体の流量を測定するよう構成された、クランプオン式流量センサを使用することによって実施される。
【0071】
1つの実施形態において、本方法は、検出された音速c(及び任意選択で測定されたタイムオブフライト)の値に基づいて、送信される超音波及び受信される超音波が、流体を移動する距離Lを自動で計算するステップを含む。これによって、正確なパイプの寸法を知らなくても、パイプの中の流量を測定することが可能である。経時的にパイプの内面に堆積物がもたらされたとしても、正確な測定を実施することが可能である。
【0072】
流体の熱エネルギーを測定するための方法として、流体の流量を検出するために本発明による方法を適用する。
【0073】
本発明による流量センサは、流体の流量を測定するよう構成された流量センサである。1つの実施形態において、流体は液体である。1つの実施形態において、水を含有する液体である。1つの実施形態において、流体はガスである。
【0074】
流体は、管状構造物を流れ抜ける。1つの実施形態において、管状構造物はパイプである。1つの実施形態において、管状構造物はホースである。1つの実施形態において、管状構造物は容器である。1つの実施形態において、管状構造物は箱である。
【0075】
第1の検出ユニットは、有益な変位計であってもよく、それは、流量測定を提供するために、流体が、機械式流量検出ユニットの構成要素を、機械的に移動させることを必要とする。1つの実施形態において、第1の検出ユニットはタービンである。1つの実施形態において、第1の検出ユニットはインペラである。
【0076】
第1の検出ユニットは、超音波流量センサの構造とし得る。1つの実施形態において、第1の検出ユニットは、1つまたは複数の超音波トランスデューサを備える。1つの実施形態において、第1の検出ユニットは、1つまたは複数の超音波送信機、及び1つまたは複数の超音波受信機を備える。
【0077】
データプロセッサは、マイクロプロセッサとし得る。
【0078】
1つの実施形態において、第2の検出ユニットは、いかにして流量が温度差に依存するかについての情報を含有した記憶装置を含み、データプロセッサは、温度差に基づいて流量を判断できるよう、この情報にアクセスして使用するよう構成される。低い流量レベルを下回る流量範囲において、第2の検出ユニットは、温度差値に基づいて流量を判断することができる。これは、流量と温度差との間の関係が既知であり、かつ記憶装置に記憶されているとき、実現することができる。
【0079】
予想された音速は、検出された流体の温度に依存し、流体の温度の関数としての、所定の音速の間における関係を使用して、計算することができる。例として、流体が純水である場合、検出された流体の温度の関数としての、予測される音速の間における関係は、図7に例示されるように定義される。
【0080】
流体が純水とは異なる場合(例えば塩、砂糖、または他の物資を含有する水)、検出された流体の温度の関数として、予測される音速の間における、異なる所定の関係を使用することができる。
【0081】
予想された音速を、単に音速を検出して比較することによって、検出された音速値と比較することができる。この検出は、以下の数式(16)を使用して実施することができる。
(16)
【0082】
【数5】
ここで、cは音速、Lは音信号が移動する距離、ならびに、t及びtはそれぞれ、送信及び反射した音信号の移動時間である。
【0083】
密度の補正値、及び流量は、検出された音速値が予想された音速に対応しない場合、計算される。密度の補正値は、以下の数式(18)を使用して計算することができる:
(18)
【0084】
【数6】
ここで、Kは流体の体積弾性率、ρは流体密度である。
【0085】
1つの実施形態において、流量センサは、検出された音速cの値が、検出された流体の温度の関数として予想された音速cに対応しない場合、流体における特定の熱容量の補正値を計算するよう構成される。これによって、向上した精度を有する熱エネルギー計を提供するために、この流量センサを適用することが可能である。流体における特定の熱容量の補正値を使用することで、この熱エネルギー計が最も正確な測定を伝えるのを、保証することになる。
【0086】
1つの実施形態において、流体は液体である。1つの実施形態において、水を含有した液体である。1つの実施形態において、流体はガスである。
【0087】
1つの実施形態において、本方法は以下のステップ:
-いかにして流量が温度差に依存するかについての情報を記憶するステップ;
-この情報を使用して、温度差に基づいて流量を判断するステップ、を含む。
【0088】
これによって、記憶された情報を使用して、簡単で信頼できる方法で流量の推定を提供することができる。この情報は、外部のデバイスに記憶され得る。1つの実施形態において、情報はウェブベースのサービスに記憶される。
【0089】
1つの実施形態において、本方法は以下のステップ:
-いかにして流量が温度差に依存するかについての情報を、第2の検出ユニットに記憶するステップ;
-この情報を使用して、温度差に基づいて流量を判断するステップ、を含む。
【0090】
これによって、記憶された情報を使用して、簡単で信頼できる方法で流量の推定を提供することができる。
【0091】
1つの実施形態において、本方法は、データプロセッサを備えた流量センサによって実施され、このデータプロセッサ及び第2の温度センサは、ハウジングの内側に配置される。
【0092】
1つの実施形態において、本方法は、流量センサによって実施され、そこでは、第1の温度センサはハウジングの中に配置される。
【0093】
1つの実施形態において、本方法は、流量センサによって実施され、そこでは、第1の温度センサはハウジングの外側に配置される。
【0094】
1つの実施形態において、本方法は以下のステップ:
-流体のサンプルで、1回または複数回の測定を実施するステップ;
-1回または複数回の測定を適用して、流体の測定の前に、流体の密度及び/または、推定される流体の不均質性を計算するステップ、を含む。
【0095】
1つの実施形態において、推定される流体の不均質性は、流体内の1つまたは複数の基質の含有量に対応する。この基質は、以下のさらなる物質:砂糖、塩、エチレン、グリコール、グリセロール、プロピレングリコール、の内1つとし得る。
【0096】
本発明は、本明細書の以下で与えられた詳細な説明から、より完全に理解されよう。添付の図面は、例示のみに与えられるため、本発明を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1A】パイプを通る流体の流量の関数として、周りと、パイプを流れ抜ける流体との間の温度差を表わすグラフである。
図1B図1Aに示されたグラフにおける、低い流量部分を示すグラフである。
図2A】本発明によるクランプオン式流量センサの概略図である。
図2B】本発明による別のクランプオン式流量センサの概略図である。
図3A】本発明による流量センサの概略図である。
図3B】本発明による別の流量センサの概略図である。
図4A】パイプの外側に取り付けられた、本発明によるクランプオン式流量センサの概略図である。
図4B】本発明による別の流量センサの概略図である。
図5A】本発明による流量センサの概略図である。
図5B】本発明による別の流量センサの概略図である。
図6A】本発明による流量センサの概略図である。
図6B】本発明による別の流量センサの概略図である。
図7】水の温度の関数として、水中の音速を表わすグラフである。
図8】温度差の関数として、流量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0098】
次に、本発明の好ましい実施形態を例示する目的である図を詳細に参照すると、パイプを通る流体の流量Qの関数として、周りと、パイプを流れ抜ける流体との間の温度差ΔTsfを表わすグラフ28が、図1Aに例示される。
【0099】
(実線で表わされた)グラフ28は、低い流量レベルQを上回って延びる。低い流量レベルQは、従来技術の流量センサによって測定できる最も低い流量を表わす。しかし低い流量レベルQを下回ると、グラフ28は推定されたものである。この低い領域30は、点線の楕円で表わされる。
【0100】
図1Bは、図1Aに示されたグラフ28における、低い流量部分30を例示する。従来技術の流量センサは、低い流量レベルQを下回る流量を検出することはできないが、本発明による流量センサ及び方法は、この低い流量レベルQを下回る流量測定を、提供することができる。
【0101】
基本流量レベルQを上回ると、グラフ28は温度差ΔTsfが一定を示すので、流量Qは無関係である。
【0102】
低い流量レベルQと、基本流量レベルQとの間の、流量較正領域Bにおいて、温度差ΔTsfは、流量Qの関数として増加する。この流量較正領域Bにおいて、流量センサの第1の測定M及び流量センサの第2の測定Mが表わされる。
【0103】
いかにして流量Qが、流量較正領域B、及び流量較正領域Bを下回る流量領域B、における温度差ΔTsfに依存するかを判断するために必要とされる、パラメータを判断するために、流量較正領域Bで成された流量センサ測定の内、1つまたは複数を使用することが可能である。
【0104】
流量Qの関数としての、温度差ΔTsfは、以下の数式(1)によって与えられる。
(1)
【0105】
【数7】
ここで、ΔTは、基本流量レベルQに対応する温度差、及びCは定数である。2回の測定M及びMを実施することによって、2つの未知数ΔT及びCを、数式(1)から判断することが可能である。
【0106】
このように、流量センサがいかなる測定も提供できない流量領域Bにおいて、流量QM3を判断することが可能である。流量QM3は、流量センサによって検出された、測定された温度差ΔTM3に基づいて、判断することができる。流量QM3は、数式(1)、または検出された温度差ΔTsfの関数として流量Qを定める以下の数式(2)によって、判断することができる:
(2)
【0107】
【数8】
ここで、Cは定数、及びΔTは基本流量レベルQに対応する温度差である。
【0108】
本発明による流量センサ及び方法は、周りと、パイプを流れ抜ける流体との間の温度差ΔTsfを測定することによって、低い流量レベルQを下回る流量Qを推定する。この推定は、流量較正領域Bで成される1回または複数回の流量測定M、Mが、数式(1)または数式(2)における未知数を判断するために使用されることによって、可能である。このように、流量領域Bにおける任意の流量Qを、数式(2)を使用して計算できる。
【0109】
図1Bにおいて、第1の流量Qが、測定された第1の温度差ΔTに基づいて検出されることが、確認できる。同様に、図1Bは、第1の流量Qが、測定された第2の温度差ΔTに基づいて検出されることを示す。
【0110】
低い流量レベルQは、測定された温度差ΔTに対応する。同様に、基本流量レベルQは、測定された、より高い温度差ΔTに対応する。
【0111】
温度差は、本発明によるセンサである温度センサを使用して、検出することができる。これは、図2A図2B図3A図3B、及び図4Bに示され、これらを参照して説明する。
【0112】
1つの実施形態において、流量較正領域Bにおいて、20℃の水を測定するために使用される、本発明による流量センサが、ポイントMにおける測定のために適用され、それは、2ml/s(すなわち0.000002m/s)の流量QM2、及び10℃の温度差ΔTM2に対応する。
【0113】
周り及び流体の間における温度差ΔTsfと、流量Qとの間の関係は、数式(2)によって与えられる:
(2)
【0114】
【数9】
=5.02min/cm及びdt=10.02℃である場合、以下の値を計算することができる:
表1
【0115】
【表1】

【0116】
別の例において、低い流量レベルQを下回る場合、温度差ΔTsfと流量Qとの間の関係は、数式(2)によって与えられる。ここで、C=4.88及びdt=12.54℃であり、以下の値を計算することができる。
表2
【0117】
【表2】

【0118】
図2Aは、本発明によるクランプオン式流量センサ1の概略を例示する。流量センサ1は、パイプ2内の流体26(例えば液体)の流量を検出するよう配置される。流量センサ1は、データプロセッサ10を備える。
【0119】
流量センサ1は、周囲温度(パイプ2の周りの温度)を検出するために配置された、第1の温度センサ12を備える。流量センサ1は、流体26の温度を検出するために配置された、第2の温度センサ14を備える。流量センサ1は、第1の超音波発生器4、及び第2の超音波発生器4’を備える。波発生器は、超音波を発生させるよう配置及び構成された、圧電トランスデューサ4、4’として形成され、超音波は、流量Qの方向に対して角度を付けて、流体26の中に導入される。流量センサ1は、ドップラー効果式の流量センサ1、または伝播時間測定タイプの流量センサ1、のいずれかとし得る。両方の超音波6、8は、1/2Lの距離を移動することが示される。したがって、合計移動距離はLである。
【0120】
圧電トランスデューサ4、4’は、音響波6、8を使用して、パイプを通る流量Qを検出するためのトランスデューサとして操作される。1つの実施形態において、流量センサ1は、パイプ2内の流量Qの断面にあまり依存しないよう、いくつかの圧電トランスデューサ4、4’を備える。動作周波数は用途に依存し、ガスについて100~200kHzの周波数範囲、及び液体について、より高いMHz周波数範囲とし得る。
【0121】
1つの実施形態において、流量センサ1は、ドップラー効果式の流量センサ1である。この実施形態において、流量センサ1は、単一の圧電トランスデューサのみを備える。この場合、第2の圧電トランスデューサ4’を省略することができ、第1の圧電トランスデューサ4は、超音波6の送信及び超音波8の受信、の両方に使用される。ドップラー効果式の流量センサ1において、送信された波6が、流体中の粒子または気泡によって反射されたとき、その周波数は、粒子の相対速度のためにずらされる。液体の流速が速いほど、発せられた波と反射された波との間の周波数のずれは、大きくなる。
【0122】
1つの実施形態において、流量センサ1は、いくつかの圧電トランスデューサ4、4’を備えた、ドップラー効果式の流量センサ1である。この場合、1つの圧電トランスデューサ4は、超音波6を送信するために使用することができ、その一方で他方の圧電トランスデューサ4’は、反射した超音波8を受信するために使用することができる。
【0123】
1つの実施形態において、流量センサ1は、伝播式の流量センサ1である。この実施形態において、流量センサ1は、流量Q方向に対して斜めに配置された、送信及び受信の両方として動作する2つの圧電トランスデューサを適用する。流れる媒体中における超音波の送信は、音伝播速度及び流速の重畳を発生させる。流速は、流量Qの方向及び反対方向における伝播時間の差の、逆数に比例する。伝播式の測定方法は、音伝播速度とは無関係であり、したがって媒体とも無関係である。このように、同じ設定を用いて、異なる液体またはガスを測定することが可能である。
【0124】
温度センサ12、14、及び圧電トランスデューサ4、4’は、データプロセッサ10に接続される。これにより、データプロセッサ10は、温度センサ12、14及び圧電トランスデューサ4、4’からのデータを処理し、それによって、このデータに基づいて流量を検出することができる。低い流量において
【0125】
図2Aにおいて、第2の温度センサ14は、パイプ2の外側に配置される。第2の温度センサ14は、パイプ2に熱的に接続される。したがって、第2の温度センサ14は、パイプ2の温度を測定することが可能である。パイプ2の温度は、通常はパイプ2の中における流体26の温度に相当するか、または非常に近くなる。
【0126】
流量センサ1の低い流量レベルを下回る、低い流量領域において、流量センサ1は、第1の温度センサ12及び第2の温度センサ14によって成された温度測定に基づいて、流量を判断する。実際、流量センサ1の低い流量レベルの下回ると、流量センサ1は、第1の温度センサ12及び第2の温度センサ14によって検出された温度間の差として定義された、温度差ΔTsfに基づいて、流量を判断する。
(9)ΔTsf=|T-T
ここで、Tは、第1の温度センサ12によって測定された周りの温度、及びTは、第2の温度センサ14によって測定された流体26の温度である。
【0127】
図2Bは、本発明によるクランプオン式流量センサ1の概略を例示する。図2Bに示される流量センサ1は、基本的に図2Aに示されるものに対応する。しかし温度センサ14は、パイプ2の内側で流体26と接触する。構造物が、パイプ2の壁を通して延びる。温度センサ14は、この構造物を通して延びたワイヤを介して、データプロセッサ10に接続される。両方の超音波6、8は、1/2Lの距離を移動することが示される。したがって、合計移動距離はLである。
【0128】
図3Aは、本発明による熱エネルギー計5の概略を例示する。熱エネルギー計5は、本発明による流量センサ1を備える。流量センサ1は、パイプ2に装着されたハウジング20を備える。流量センサ1は、パイプ2内の流体26(例えば水を含有した液体)の流量Qを検出するよう配置及び構成される。
【0129】
流量センサ1は、周りの温度(例えば周囲温度)Tを検出するために配置された、第1の温度センサ12を備える。流量センサ1は、パイプ2内における流体26の温度Tを検出するよう配置された、第2の温度センサ14を備える。流量センサ1は、中間温度Tを検出するよう配置された、第3の温度センサ16を備える。中間温度Tは、周囲温度Tと流体26の温度Tとの間における値を有するものと、予想された。
【0130】
流量センサ1は、圧電トランスデューサ4、4’として形成された、第1の超音波発生器4及び第2の超音波発生器4’を備え、それらは、流量Qの方向に対して角度を付けて、流体26の中に送信される超音波を発生させるよう、配置及び構成される。圧電トランスデューサ4、4’は、図2A及び図2Bで示され、かつ参照して説明されたのと同じ方法で使用される。
【0131】
流量センサ1は、圧電トランスデューサ4、4’及び温度センサ12、14、16に接続された、データプロセッサ10を備える。このようにデータプロセッサ10は、温度センサ12、14及び圧電トランスデューサ4、4’からのデータを処理することによって、このデータに基づいて流量を検出することができる。
【0132】
配置された第3の温度センサ16は、低い流量レベルを下回る流量の向上した推定を、流量センサ1にもたらすために適用され得る、温度測定を提供する。向上した推定は、2つの温度差:
-周りと流体26との間の差ΔTsf
(10)ΔTsf=|T-T|、及び
-ハウジング20における中間ポイントと、流体26との間の温度差ΔTf:
(11)ΔTf=|T-T
を使用することによって実現できる。
【0133】
熱エネルギー計5は、パイプ3に熱的に接続された外部の温度センサを備える。供給パイプ3内における流体の温度、及び戻りパイプ2内における流体26の温度を測定することによって、消費される熱量(熱エネルギー)を計算することが可能である。外部の温度センサ17は、図3Aに示される有線接続によって、または図3Aに示されるワイヤレス接続によって、データプロセッサ10に接続され得る。
【0134】
図3Bは、本発明による別の熱エネルギー計5の概略を例示する。熱エネルギー計5は、本発明による流量センサ1を備える。流量センサ1は、基本的に図3Aに示されるものに対応する。しかし第1の温度センサ12は、ハウジング20の外面に設置される。熱エネルギー計5は、供給パイプ3の外面に装着された温度センサ17を備える。このように、温度センサ17は、供給パイプ3に熱的に接続される。供給パイプ3内における流体の温度、及び戻りパイプ2内における流体26の温度を測定することによって、消費される熱量(熱エネルギー)を計算することが可能である。
【0135】
図4Aは、本発明によるクランプオン式流量センサ1の概略を例示する。流量センサ1は、パイプ2の外側に取り付けられる。流量センサ1は、パイプ2の外側形状と一致した接触構造物を有する、ハウジング20を備える。熱的接続構造物(例えば金属層)は、接触構造物に装着される。これによって、熱的接続構造物は熱抵抗を減少させ、それによって、パイプ2と流量センサ2の温度センサ(図示せず)との間の、向上した効果的な熱移動を提供する。
【0136】
1つの実施形態において、熱的接続構造物は、各側に熱接着でコーティングされた、金属製フォイルである。このような熱的接続構造物は、恒久的な付着をもたらすことが可能であり、接合部分における微小空気細孔を充填することによって、熱抵抗を減少させる。1つの実施形態において、熱的接続構造物は、熱伝導性のアルミニウムテープである。熱的接続構造物は、熱伝導性の両面構造接着のアルミニウムテープである。
【0137】
図4Bは、本発明による流量センサ2の概略図である。流量センサ2は、機械式流量検出ユニット24を備え、それはパイプ3の内側に配置されるので、流体26の中に沈められる。
【0138】
流量センサ1は、有益な変位計であり、それは、流量測定を提供するために、流体が、機械式流量検出ユニット24の機械式変位構成要素へ向かうことを必要とする。機械式流量検出ユニット24は、タービンまたはインペラとすることができる。タービンまたはインペラの活動及び回転速度は、データプロセッサ10への直接的な接続を使用することによって、またはタービンもしくはインペラの角速度を測定するよう配置及び構成された検出部材(図示せず)によって、検出することができる。流量センサ1は、例として、タービン流量計、単一のジェット流量計、または外輪流量計、とし得る。機械式流量検出ユニット24は、第1の検出ユニット34を構成する。データプロセッサ10及び温度センサ12、14は、第2の検出ユニット36を構成する。
【0139】
流量センサ1は、周りの温度(例えば周囲温度)を検出するために配置及び構成された、第1の温度センサ12を備える。流量センサ1は、パイプ3の内側における流体26の温度を検出するよう配置及び構成された、第2の温度センサ14を備える。第2の温度センサ14は、パイプ3の壁の外側部分にもたれかかる。しかし、別の実施形態において、第2の温度センサ14は、パイプ3の内側に配置され得る。別の実施形態において、第2の温度センサ14は、パイプ3の壁の中に一体化され得る。
【0140】
流量センサ1は、第1のフランジ18及び第2のフランジ18’が設けられたパイプ3を備える。これらのフランジ18、18’は、2本のパイプ2、2’の対応したフランジ19、19’に、機械的に接続される。1つの実施形態において、フランジ18、18’は、流量センサ1をパイプ2、2’に装着するように設計された、類似の装着構造物と取り替えられる。
【0141】
1つの実施形態において、パイプ2、2’の遠位部分には雄ネジ山が設けられ、その一方で流量センサ3の遠位部分には対応した雌ネジ山が設けられ、パイプ3をパイプ2、2’の上にネジ止めすることを可能にする。
【0142】
1つの実施形態において、パイプ2、2’の遠位部分には雌ネジ山が設けられ、その一方で流量センサ3のパイプ3の遠位部分には対応した雄ネジ山が設けられ、パイプ3をパイプ2、2’の上にネジ止めすることを可能にする。
【0143】
図5Aは、本発明による流量センサ1の概略図である。流量センサ1は、基本的に図3Aに示されるものに対応する。
【0144】
図5Bは、本発明による流量センサ1の概略図である。流量センサ1は、基本的に図3Bに示されるものに対応する。
【0145】
しかし図5A及び図5Bにおいて、ハウジング20はパイプ2にもたれかかる部分を備え、その一方で第2の温度センサ14ならびに圧電トランスデューサ4、4’は、流量センサ1がパイプ2に装着されたときに、パイプ2の外側部分に直接的に接続させるために、ハウジング20の上記の部分を通して延びる。流量センサをパイプ2に締付けるための、ケーブルタイまたはホースクランプなど、締付け構造物を適用することが可能である。
【0146】
圧電トランスデューサ4、4’は、第1の検出ユニット34を構成する。データプロセッサ10及び温度センサ12、14、16は、第2の検出ユニット36を構成する。
【0147】
本発明による流量センサ1は、流体26が流れ抜ける物理的ゾーン間で、ほとんどの場合に流体26が熱を移すこと、及びこれらの物理的ゾーンが異なる温度を有すること、を利用する。これらのゾーン間の温度差を検出することによって、流速のための代替の測定を提供することが可能である。
【0148】
したがって、本発明による流量センサ1及び方法は、先行技術の流量センサがいかなる流量も検出できない、低い流量範囲における流量を、検出できる。
【0149】
さらに、本発明による流量センサ1及び方法は、上述のゾーン間における温度差を利用することによって、全体的に向上した(より正確な)流量検出を提供することができる。
【0150】
流体から周りへの熱伝達量q(E/tに相当)は、以下の数式(12)で定義される:
(12)q=UAΔTsf
ここで、ΔTsfは周りと流体26との間の温度差、Aは熱伝達が行われる表面積、及びUは熱伝達係数である。
【0151】
熱伝達係数Uは、以下の数式(13)で定義される。
(13)U=k/s
ここで、kは熱伝達が行われる材料の熱伝導率、及びsは熱伝達が行われる材料の厚さである。
【0152】
ドップラー効果式の流量センサ1の作動原理を、図6Aに示し、それを参照して概略説明する。ドップラー効果式の流量センサは、流体26における音速の変化によって影響を受ける。したがって、ドップラー効果式の流量センサは、流体26における密度及び温度の変化に影響を受けやすい。そのため、従来技術における多くのドップラー効果式の流量センサは、高度に正確な測定用途に対して好適ではない。しかし本発明は、流体26における温度及び音速を検出すること、及び温度及び流体(密度)の変化を補うこと、したがって向上した精度を提供すること、が可能である。同様に、本発明は、流量センサ1の精度をさらに向上させるために、(流体26のサンプルの測定を行うことを介して)流体26の密度を検出すること、ならびに、温度及び/または流体(密度)の変化を補うこと、を可能にする。
【0153】
ドップラー効果式の流量センサ1は、タイムオブフライトの超音波流量センサであり、それは、音が送信機4と受信機4’との間を移動するための時間を測定する。典型的な設定において、図6Aに例示されるもののように、2つのトランスデューサ(送信機/受信機)4、4’は、流量Qが測定されることになるパイプ2の両側に設置される。送信機4、4’は、所定の周波数における拍動性の超音波6を、一方の側から他方の側に送信する。平均流体速度Vは、周波数の差に比例する。
【0154】
したがって、流体速度Vを、次のように表わすことができる:
(14)
【0155】
【数10】
ここで、tは下りの送信時間のための送信時間、tは上りの送信時間、Lはトランスデューサ間の距離、φは送信された超音波ビーム6と流体流量Q間の相対角度である。
【0156】
流量Qは、流体速度Vとパイプ2の断面積Apipeとの間の積として計算することができる:
(15)q=VApipe
【0157】
同時に、音速cは以下の数式(16)によって与えられる:
(16)
【0158】
【数11】
【0159】
図6Aに示される流量センサ1は、周囲温度(パイプ2の周りの温度)を検出するために配置された、第1の温度センサ12を備える。流量センサ1は、流体26の温度を検出するために配置された、第2の温度センサ14を備える。流量センサ1は、データプロセッサ10を備える。図6Bには示されないが、温度センサ12、14、及び2つのトランスデューサ4、4’は、データプロセッサ10に接続される。それによって、データプロセッサ10は、温度センサ12、14及び2つのトランスデューサ4、4’からのデータに基づき、データを処理して流量Qを計算することができる。
【0160】
粒子32を含有した流体における流量を測定する、ドップラー効果式の流量センサ1の作動原理を、図6Bに示し、それを参照して概略説明する。
【0161】
流体速度Vは、以下の数式(17)を使用して計算することができる:
(18)
【0162】
【数12】
ここで、frは受信した波の周波数、ftは送信した波の周波数、φは送信した超音波ビームと流体流量Qとの間の相対角度、及びcは流体26における音速である。
【0163】
流量Qは、流体速度Vとパイプ2の断面積Apipeとの間の積として計算することができる:
(15)Q=VApipe
【0164】
数式15及び16は、図2A図2B図3A、及び図3Bに示される流量センサを使用して流量を計算するときにも、使用することができる。
【0165】
図7は、水の温度Tの関数として、水中の音速cを表わすグラフである。しかし類似のグラフを他の流体のために作ることができる。以下で、水は単に考えられる流体を表わし、水は別の液体と取り替えられ得る。
【0166】
水の流量Qが流れる(パイプなどの)管状構造物の寸法が未知である場合、水中で音が移動する距離Lの推定が必要である。この課題は、特に超音波クランプオン式センサに当てはまる。経時的に、堆積物がパイプの内面にもたらされ得る。これは徐々に距離Lを減少させることになる。それに応じて本発明は、このような状況下で距離Lの推定を可能にする。
【0167】
水中の音速cを判断することによって、距離Lを推定することが可能であり、これによって検出される水の速度V及び流量Qの精度を向上させることが可能である。このように、水中の音速cの変化は関連深い。
【0168】
音速cが検出されたとき、水中で音が移動する距離Lを計算することが可能である。
【0169】
音速cは以下の数式(12)によって与えられる:
(18)c=√K/ρ
ここで、Kは体積弾性率、ρは密度である。
【0170】
水の密度は温度Tに依存するので、音速cは温度Tに依存する。さらに、音速cは水中の物質(グリコールなど)の濃度に依存する。
【0171】
傾斜角αが既知であるとき、(デルタタイムオブフライトによって測定された管内における)水の平均速度Vは、以下の数式(19)を使用するものとすることができる:
(19)
【0172】
【数13】
【0173】
音速cが既知であるとき、Lは、以下の数式(16)を使用して計算または推定することができる(t及びtが測定されるため)。
(16)
【0174】
【数14】
【0175】
このように、流量Qは、水の平均速度Vとパイプ2の断面積Apipeとの間の積として計算することができる:
(15)Q=VApipe
【0176】
測定された流体の温度T及び測定されたタイムオブフライトを使用して、数式(18)を使用することによって密度ρ及び音速cを判断することができる。
【0177】
流量センサが、26℃の温度Tで純水において較正された場合、図7は(Tにおける)音速cが1500m/sであることを示す。21.5℃の低い温度Tが検出された場合、(Tにおける)音速cは1485m/sである。このように、既知の温度T及び密度ρにおける流体(例えば水などの液体)を使用して流量センサを較正することによって、数式(18)を使用することで、音速cを検出するために、簡単な温度測定で十分である。
(18)c=√K/ρ
【0178】
流体(例えば水)の特定の熱容量は、追加物質(例えば砂糖、塩、エチレングリコール、グリセロール、またはプロピレングリコール)の含有量に依存する。
【0179】
音速cが既知であるとき、検出された流体の密度に基づいて、追加物質を有する流体(例えば水)の特定の熱容量を計算することが可能である。これによって、本発明による流量センサを有する熱エネルギー計を、より正確にすることが可能である。
【0180】
追加物質(例えば砂糖、塩、エチレングリコール、グリセロール、またはプロピレングリコール)の含有量を測定することは、有利となり得る。これによって流量センサは、これらの測定に基づいて較正することが可能である。
【0181】
[実施例1]
純水で使用される流量センサが、26℃の温度Tで1リットル/分の流量Qを検出した場合、図7は(Tにおける)音速cが1500m/sであることを示す。
【0182】
音速c(1500m/s)が既知であるとき、Lは、以下の数式(16)を使用して計算することができる(t及びtが流量センサによって検出されるため)。
(16)
【0183】
【数15】
【0184】
流量センサが後の時点で使用されるとき、同じ温度Tである26℃で予測される音速cは、1500m/sとなる。しかし、数式(16)及び既知のLを使用して計算された、検出された音速cが1485m/sである場合、音速の減少は約1%である。これは、水の密度ρの変化によって生じ得る。体積弾性係数Kが一定であると仮定した場合、数式(18)によって、密度ρが約2%増加することになる(数式18を使用することで)。
【0185】
流量センサが熱エネルギー計で使用された場合、検出された水の密度に基づいて、特定の水の熱容量を補正することが可能である。それにより、追加物質(例えば砂糖、塩、エチレングリコール、グリセロール、またはプロピレングリコール)の含有量が増加したと結論付けることができる。このように、熱エネルギー計の精度を向上させることが可能である。追加物質(例えば砂糖、塩、エチレングリコール、グリセロール、またはプロピレングリコール)の含有量は、時間に応じて変化し得るので、これは当てはまる。流量センサが、流体密度の変化を自動的に検出するよう構成された場合、熱エネルギー計は流量センサに使用され、追加物質の含有量が経時的に変化したとしても、高い精度をもたらすことを可能にする。
【0186】
図8は、本発明による流量センサによって検出された流量Qを、温度差ΔTsfの関数として表すグラフを例示する。
【0187】
低い流量レベルQは、従来技術の流量センサによって測定できる最も低い流量を表わす。従来技術の流量センサは、低い流量レベルQを下回る流量を検出することはできず、本発明による流量センサ及び方法は、この低い流量レベルQを下回る流量測定を、提供することができる。
【0188】
基本流量レベルQを上回ると、グラフは温度差ΔTsfが一定であることを示し、したがって流量Qとは無関係である。
【0189】
低い流量レベルQと基本流量レベルQとの間の、流量較正領域Bにおいて、温度差ΔTsfは、流量Qの関数として増加する。この流量較正領域Bにおいて、第1の流量センサ測定M及び第2の流量センサ測定Mが表わされる。
【0190】
これらの流量センサの測定M及びMは、いかにして流量Qが、流量較正領域B、及び流量較正領域Bを下回る流量領域B、における温度差ΔTsfに依存するかを判断するために必要とされる、パラメータを判断するために、流量較正領域Bで成される。流量Qと温度差ΔTsfとの間の関係は、数式(2)によって与えられる:
(2)
【0191】
【数16】
【0192】
温度差ΔT、ΔTM3、及びΔTを測定すること、ならびに、数式(2)を使用して流量Qを計算すること、が可能である。
【符号の説明】
【0193】
1 流量センサ
2、2’、3 パイプ
4、4’ 超音波トランスデューサ(圧電トランスデューサ)
5 熱エネルギー計
6 超音波振動波
8 反射した超音波振動波
10 データプロセッサ(マイクロプロセッサ)
12 温度センサ
14 温度センサ
16 温度センサ
18、18’ フランジ
19、19’ フランジ
20 ハウジング
22 熱的接続構造物(例えば金属層)
24 機械式流量検出ユニット
26 流体
28 グラフ
30 低い流量領域
32 粒子
34、36 検出ユニット
周りの温度
流体の温度
ΔT 温度差
ΔTsf 周りと流体との間の温度差
ΔT、ΔT 温度差
ΔT、ΔT 温度差
、T 温度
、M、M 流量測定
流量領域
流量較正領域
特定の熱容量
k 熱伝導率
U 熱伝達係数
A 表面積
W 体積
t タイムオブフライト
t’ 温度を補うタイムオブフライト
Δt デルタタイムオブフライト
、t タイムオブフライト
dt、dt 温度差
dt、dt 温度差
dtM1、dtM2 温度差
dtM3 温度差
s 厚さ
Q 流量
、Q 流量
、Q 流量
M1、QM2 流量
M3 流量
V 流体速度
α 角度
L 距離
図1A-1B】
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
【国際調査報告】