(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】海水電解により拡張可能な大気のCO2の鉱物化が可能になる
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20240717BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20240717BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20240717BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20240717BHJP
C25B 1/18 20060101ALI20240717BHJP
C25B 15/031 20210101ALI20240717BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240717BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240717BHJP
C25B 9/19 20210101ALN20240717BHJP
【FI】
B01D53/14 200
C02F1/461 101Z
B01J19/00 311Z
B01J19/08 A
C25B1/18
C25B15/031
C25B15/08 304
C25B9/00 Z
C25B9/00 A
C25B9/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580457
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 US2022035289
(87)【国際公開番号】W WO2023278423
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラ プラント, エリカ キャラゴン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, シン
(72)【発明者】
【氏名】ジャスビー, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】サント, ガウラブ
(72)【発明者】
【氏名】シモネッティ, ダンテ
(72)【発明者】
【氏名】ツェン, イェンウェン
(72)【発明者】
【氏名】トレイナー, トーマス
【テーマコード(参考)】
4D020
4D061
4G075
4K021
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA16
4D020BB03
4D020BC10
4D061DA04
4D061DA10
4D061DB18
4D061EA02
4D061EA05
4D061EB02
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB19
4D061EB28
4D061EB29
4D061EB30
4D061EB35
4D061FA08
4G075AA04
4G075BB04
4G075BD13
4K021AB03
4K021BB02
4K021BC02
4K021DB31
4K021DB36
4K021DC15
(57)【要約】
電気化学的に増強されたアミン回収を用いてガス源からCO2を回収して濃縮CO2蒸気を形成し、続いて隔離ステップにおいて濃縮された蒸気からCO2を隔離する方法が本明細書に開示される。隔離ステップは、濃縮された蒸気を、不溶性炭酸塩形成が可能なイオンを含む隔離水溶液と接触させて、この隔離水溶液がCO2(隔離溶液を電気化学的に塩基性化する)を含むようにし、それによって炭酸塩固体を沈殿させ、炭酸塩固体を隔離水溶液またはメッシュの表面から分離することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス源からCO
2を回収する方法であって:
(a)
(i)前記ガス源を、溶媒及び溶質を有する吸収溶液と接触させ、ここで、前記溶媒及び/または前記溶質はアミンを含み、それによって、アミン-CO
2複合体を含む溶液を形成することと;
(ii)前記吸収溶液のpHを電気化学的に約7未満に電気化学的に調整し、それによってCO
2を濃縮蒸気として放出することと;
(iii)前記濃縮蒸気を収集することと;を含む濃縮ステップにおいて前記ガス源からCO
2を濃縮することと、
(b)
(iv)前記濃縮された蒸気を、不溶性炭酸塩を形成し得るイオンを含む隔離水溶液と接触させて、前記隔離水溶液がCO
2を含むようにすることと;
(v)CO
2を含む前記隔離水溶液を電気活性表面と接触させて、CO
2を含む前記隔離水溶液を塩基性にし、それによって炭酸塩固体を沈殿させることと;
(vi)前記炭酸塩固体を前記隔離水溶液または前記電気活性表面から分離することと;を含む隔離ステップにおいて前記濃縮蒸気からCO
2を隔離することと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記アニオン性錯体がカルバミン酸イオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒が、アミンを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶質が、アミンを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒及び前記溶質が、アミンを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記アミンが、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、またはそれらの混合物である、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アミンが、第一級アミンまたは第二級アミンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法であって、前記アミンが、式Iの構造を有し:
R
xNH
3-x,(I);
式中、Rは、任意選択で置換されたアルキル、エーテル、及びヒドロキシアルキルから選択されるか、または2つのRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、窒素含有複素環を形成し;かつ
xは1、2、または3である、前記方法。
【請求項9】
前記アミンが、モノエタノールアミン、2-エチルアミノエタノール、2-メチルアミノエタノール、エチレンジアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、ピロリジン、モルホリン、2,6-ジメチルモルホリン、モノイソプロパノールアミン、ピペラジン2-(ジメチルアミノ)エタノール、N-tert-ブチルジエタノールアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール、2-ジエチルアミノエタノール、3-ジエチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール、トリエタノールアミン、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、1-ジエチルアミノ-2-プロパノール、3-ピロリジノ-1,2-プロパンジオール、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン、2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール、3-ピペリジノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、3-ヒドロキシ-1-メチルピペリジン、N-エチルジエタノールアミン、1-エチル-3-ヒドロキシピペリジン、及びこれらの任意の組み合わせから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が水を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(ii)が水電解を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ガス源が、約0.4~約25%(v/v)のCO
2を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ガス源が、工業源からの流出物である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(ii)が、約100℃未満の温度で行われる、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ガス源が大気源である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記濃縮蒸気が、約2~99%(v/v)のCO
2を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記濃縮蒸気が、2~15%(v/v)のCO
2を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記吸収溶液が、強塩基アニオン交換樹脂を用いて再生される、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記隔離水溶液が、前記ガス流と熱平衡にある、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記隔離水溶液が、前記ガス流と熱平衡にない、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
不溶性炭酸塩を形成し得る前記イオンが、Ca、Mg、Ba、Sr、Fe、Zn、Pb、Cd、Mn、Ni、Co、Cu、Alのイオン、及びこれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記隔離水溶液が、約1,000ppm以上の濃度でNaClを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記隔離水溶液が、約30,000ppm以上の濃度でNaClを含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記隔離水溶液が海水を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記電気活性表面が、金属または非金属組成物を含む陽極及び/または陰極を含む、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
電気活性メッシュが、前記電気活性メッシュから約2~20,000μmの距離内で、前記隔離水溶液の塩基性をインサイチュで、増加させる、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記隔離水溶液のpHが少なくとも約9である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記隔離水溶液のpHは、約9~約10である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記電気活性表面が電気活性メッシュである、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記電気活性メッシュが、金属メッシュ、炭素系のメッシュ、または両方の組み合わせである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記電気活性メッシュが、鋼、ステンレス鋼、酸化チタン、ニッケル及びニッケル合金、カーボンナノチューブ、ポリマー、グラファイト、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記電気活性メッシュが、約0.1μm~約10,000μmの範囲の直径を有する細孔を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記隔離水溶液が、ブライン溶液である、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記隔離水溶液が、アルカリ土類金属含有溶液である、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記炭酸塩固体を沈殿させることが、Ca、Mg、Ba、Sr、Fe、Zn、Pb、Cd、Mn、Ni、Co、Cu、Alのイオン、またはそれらの任意の組み合わせを含む炭酸塩を沈殿させることを含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記溶液または前記電気活性メッシュの表面から前記炭酸塩の固体(複数可)を分離することが、表面上に前記電気活性メッシュを有する回転ディスク陰極を、スクレーパを越えて回転させることを含み、前記スクレーパが、前記メッシュの前記表面から前記沈殿した炭酸塩を除去する、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(a)が、(iv)前記溶媒及び/または前記溶質を再生することをさらに含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記溶媒及び/または前記溶質を再生することが、前記隔離水溶液のpHを約8より大きく調整することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ステップ(a)が、ステップ(iii)の後に再生された溶媒及び/または溶質を任意選択で収集することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記再生された溶媒が、少なくとも1回、ステップ(i)において収集され、再利用される、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月28日に出願された米国特許仮出願第63/215,853号の優先権の利益を主張し、その内容全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
政府支援に関する記述
本発明は、米国エネルギー省によって授与された契約番号DE-FE0031705の下で政府支援を受けて行われた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ギガトン(Gt)のCO2を回収し得る変換技術は、環境変化を緩和するために重要である。種々のCO2回収、隔離、及び貯蔵プロセス(CCSS)が、種々の供給源からのCO2排出を管理するために検討されている。アミンを使用した炭素回収の現在の技術は、CO2が気泡流塔で吸収され、その後CO2リッチのアミン溶液の再生が140℃を超える充填蒸留塔で行われる熱スイングサイクルに依存している。このプロセスは発電における燃焼後の回収に使用されているが、大きなエネルギー強度(発電用はCO21トン当たり1.2MWh、及びDAC用はCO21トン当たり5.0MWh)でアミン溶液に回収されたCO2の一部(約50%)のみを脱着するのに必要なエネルギー強度が大きいという問題がある。低いアミン再生範囲は、低い作用CO2吸収能力(例えば、DAC及び発電に関して、MEA 1モル当たりそれぞれ、約0.05及び0.25モルCO2につながる。(E.S.Sanz-Perez,et al.,Direct Capture of CO2 from Ambient Air,116 Chem.Rev.11840-76(2016)を参照のこと)。さらに、アミン再生に必要な高温(>140℃)は、化学分解及びエバポレーションによる溶媒損失(solvent loss)を生じる。
【0004】
直接空気回収のための苛性溶液(例えば、KOH/K2CO3)の使用はまた、pHスイングプロセスのための鉱物試薬を生成するのに必要な高エネルギー強度という問題がある(例えば、NaOH及びHClを生成するための塩素-アルカリのためのCO21トン当たり4.5MWh)。直接空気回収のために、固体材料を用いた吸着も提案されてきたが、これらのプロセスはまた、脱着のために高いエネルギー要件(CO21トン当たり>2.0MWh)も要する。
【0005】
海水を介した間接回収のための戦略も提案されているが、これらの戦略は、複雑な電気化学電池(例えば、電気透析(electrodialysis))及び/または遅い沈殿動態に依存する鉱物化戦略(mineralization strategy)のいずれかを必要とする。例えば、海水からのMg-炭酸塩種の沈殿は、長い時間尺度(週から月)にわたって上昇した炭酸塩濃度(>100mM)を必要とする。(I.M.Power,et al.,Room Temperature Magnesite Precipitation,17 Cryst.Growth Des.5652-59(2017)を参照のこと)。
従って、CO2の直接空気回収のためのより効率的で、エネルギー集約性の低いプロセス(process)に大きな関心が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】E.S.Sanz-Perez,et al.,Direct Capture of CO2 from Ambient Air,116 Chem.Rev.11840-76(2016)
【非特許文献2】I.M.Power,et al.,Room Temperature Magnesite Precipitation,17 Cryst.Growth Des.5652-59(2017)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施形態では、本開示は、CO2をガス源から回収する方法に関し、この方法は:(a)濃縮ステップでガス源からCO2を濃縮することであって:(i)ガス源を、溶媒および溶質を有する吸収溶液と接触させ、この溶媒及び/または溶質がアミンを含み、それによって、アミン-CO2複合体を含む溶液を形成することと;(ii)吸収溶液のpHを電気化学的に約7未満に電気化学的に調整し、それによってCO2を濃縮蒸気として放出することと;(iii)濃縮された蒸気を収集することと;及び(b)隔離ステップにおいて、濃縮蒸気からCO2を隔離することであって;(iv)濃縮蒸気を、不溶性炭酸塩を形成し得るイオンを含む隔離水溶液と接触させ、それによって、この隔離水溶液がCO2を含むようにすることと;(v)CO2を含む隔離水溶液を、電気活性表面と接触させて、CO2を含む隔離水溶液を塩基性化し、それによって炭酸塩固体を沈殿させることと;(vi)炭酸塩固体を隔離水溶液または電気活性表面から分離することと、を含むことと、を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、アニオン性錯体は、カルバミン酸イオンを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、溶媒はアミンを含むが、他方では、溶質はアミンを含み、さらに他の実施形態では、溶媒及び溶質はアミン(amine)を含む。アミンは、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、またはそれらの混合物であってもよい。好ましくは、アミンは第一級または第二級アミンである。
【0010】
いくつかの実施形態では、アミンは、式Iの構造を有し:
RxNH3-x,(I);
式中、Rは、任意選択で置換されたアルキル、エーテル、及びヒドロキシアルキルから選択されるか、または2つのRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、窒素含有複素環を形成し;
xは1、2、または3である。
【0011】
いくつかの実施形態では、アミンは、モノエタノールアミン、2-エチルアミノエタノール、2-メチルアミノエタノール、エチレンジアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、ピロリジン、モルホリン、2,6-ジメチルモルホリン、モノイソプロパノールアミン、ピペラジン2-(ジメチルアミノ)エタノール、N-tert-ブチルジエタノールアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール、2-ジエチルアミノエタノール、3-ジエチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール、トリエタノールアミン、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、1-ジエチルアミノ-2-プロパノール、3-ピロリジノ-1,2-プロパンジオール、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン、2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール、3-ピペリジノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、3-ヒドロキシ-1-メチルピペリジン、N-エチルジエタノールアミン、1-エチル-3-ヒドロキシピペリジン、及びこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、溶媒は、水を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、ガス源は、約0.4~約25%(v/v)のCO2を含む。ガス源は、工業原料(industrial source)からの流出物、大気、またはそれらの組み合わせのガス源であってもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、pH調整ステップは、水電解を介して行われる。いくつかの実施形態では、ガス源は、工業原料または周囲空気からの流出物である。いくつかの実施形態では、pH調整ステップは、100℃未満の温度で行われる。いくつかの実施形態では、再生された溶媒を収集し、同じプロセスに再度使用する。いくつかの実施形態では、ガス源は、大気源(atmospheric source)(例えば、周囲空気)である。
【0015】
いくつかの実施形態では、濃縮蒸気は、約2~99%(v/v)のCO2を含む。いくつかの実施形態では、濃縮蒸気は、2~15%(v/v)のCO2を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、吸収溶液は、強塩基アニオン交換樹脂を用いて再生される。
【0017】
いくつかの実施形態では、隔離水溶液は、ガス流と熱平衡状態にある。いくつかの実施形態では、隔離水溶液は、ガス流と熱平衡状態にない。
【0018】
いくつかの実施形態では、不溶性炭酸塩を形成し得るイオンは、以下のCa、Mg、Ba、Sr、Fe、Zn、Pb、Cd、Mn、Ni、Co、Cu、及びAlのうちの1つ以上を含むイオンを含む。いくつかの実施形態では、隔離水溶液(aqueous sequestration solution)のNaCl濃度は約1,000ppm以上である。いくつかの実施形態では、この隔離水溶液(aqueous sequestration solution)は、約30,000ppm以上のNaCl濃度を有する。いくつかの実施形態では、この隔離水溶液は海水を含む。いくつかの実施形態では、この隔離水溶液はブライン溶液である。いくつかの実施形態では、この隔離水溶液は、アルカリ金属含有溶液である。
【0019】
いくつかの実施形態では、電気活性表面は、金属または非金属組成物を含む陰極を含む。いくつかの実施形態では、この電気活性表面は、電気活性メッシュの約2~20000μm以内の隔離水溶液中で、インサイチュで、アルカリ条件の増加を生じるメッシュである。いくつかの実施形態では、アルカリ化条件は、pH9以上である。いくつかの実施形態では、電気活性メッシュは、金属または炭素系メッシュ(carbon-based mesh)からなる。いくつかの実施形態では、電気活性メッシュは、金属(鋼、ステンレス鋼、酸化チタン、ニッケル及びニッケル合金など)、カーボンナノチューブ、ポリマー、及び/もしくはグラファイト、またはこれらの材料の他のハイブリッド組成物を含む。いくつかの実施形態では、電気活性メッシュは、約0.1μm~約10000μmの範囲の直径を有する細孔を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、炭酸塩固体の沈殿を誘導することは、Ca、Mg、Ba、Sr、Fe、Zn、Pb、Cd、Mn、Ni、Co、Cu、またはAlを有する少なくとも1つの炭酸塩の沈殿を誘導することを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、沈殿した炭酸塩固体を隔離溶液またはメッシュの表面から除去することは、表面上にメッシュを有する回転ディスク陰極を、スクレーパを越えて回転させることであって、このスクレーパが、沈殿した炭酸塩をメッシュの表面から除去することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本開示によるCO
2回収及び鉱物化のプロセスの概略図である。
【
図1B】本開示に係るCO
2吸収プロセスの概略図である。
【
図2】陰極201、陽極202、第2のカチオン交換膜203、アニオン交換膜204、第1のカチオン交換膜205、塩基溶液206、塩溶液207、アミン溶液208、及び酸溶液209を含む、アミン系CO
2回収に有用な例示的な電気化学セル200の概略図である。
【
図3】pH値(丸)、ならびにMEAの1モル当たり0.25(赤)及び0.5(黒)モルのCO
2というCO
2負荷を有する22容積%のMEA溶液についての種々の溶液プロトン:MEA比におけるCO
2脱着の程度(三角)のプロットである。
【
図4A】例示的な拡張可能な二酸化炭素鉱物化リアクターの断面図であり、オンラインpHモニタリングシステムが、印加される電流を制御して、大気CO
2回収及び鉱物化を可能にする一定の陰極液pHを達成する。このリアクターは、回転されて生成物の除去及び収集のためにスクレーパを通過する、回転ディスク陰極(rotating disc cathode)(316Lのステンレス鋼メッシュ)を使用する。
【
図4B】実験室規模の単一区画CSTRの断面図である。
【
図5A】二酸化炭素鉱物化プロセスにおけるpH発生(それぞれ150分.HRT及び10-分.HRT)を示しており、これは、空気、海水、及びリアクター設計(
図4Bに示される)を使用して実証された。
【
図5B】二酸化炭素鉱物化プロセスにおけるpH発生(それぞれ150分.HRT及び10-分.HRT)を示しており、これは、空気、海水、及びリアクター設計(
図4Bに示される)を使用して実証された。
【
図5C】二酸化炭素鉱物化プロセスにおけるCa
2+除去を示す(それぞれ150分.HRT及び10-分.HRT)を示しており、これは、空気、海水、及びリアクター設計(
図4Bに示される)を使用して実証された。
【
図5D】二酸化炭素鉱物化プロセスにおけるCa
2+除去を示す(それぞれ150分.HRT及び10-分.HRT)を示しており、これは、空気、海水、及びリアクター設計(
図4Bに示される)を使用して実証された。
【
図5E】二酸化炭素鉱物化プロセスにおける得られた流出無機炭素(IC)を示す(それぞれ150分.HRT及び10-分.HRT)を示しており、これは、空気、海水、及びリアクター設計(
図4Bに示される)を使用して実証された。
図5E及び
図5Fの挿入図は、PPメッシュ上に形成されたアラゴナイト(CaCO
3)の厚い層を示す走査電子画像である。
【
図5F】二酸化炭素鉱物化プロセスにおける得られた流出無機炭素(IC)を示す(それぞれ150分.HRT及び10-分.HRT)を示しており、これは、空気、海水、及びリアクター設計(
図4Bに示される)を使用して実証された。
図5E及び
図5Fの挿入図は、PPメッシュ上に形成されたアラゴナイト(CaCO
3)の厚い層を示す走査電子画像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示によるプロセスは、エネルギー効率の良いCO2の濃縮及び貯蔵のために必要なプロトン及び/または水酸化物イオンを生成するために水電解を利用する一連の電気化学的に強化されたリアクターに基づく。全体的なプロセスにおける第1のステップは、吸収溶液(例えば、アミン水溶液)を使用する空気からのCO2の分離(例えば、CO2の吸収)を含む。そのようなプロセスとしては、限定するものではないが、2022年4月15日に出願されたPCT出願番号PCT/US22/25028(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されたプロセスを含む。このプロセスにおける第2のステップは、吸収された炭素種を濃縮CO2ガス流中に放出することを含む。プロセスの第3のステップは、水溶液(例えば、海水またはブライン)中での鉱物化によって、アミン系CO2吸収プロセスから分離されたCO2を隔離することを含む。そのようなプロセスとしては、限定するものではないが、2020年6月12日に出願されたPCT公開番号WO2021/061213(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されたプロセスが挙げられる。
【0024】
図1Bは、本開示によるCO
2回収プロセス全体を示す。簡単に述べると、CO
2は、アニオン性錯体(例えば、カルバミン酸錯体)の形成により、1つ以上のガス源(例えば、空気または工業用プロセスガス)からアミン水溶液に吸収される。次いで、電気化学的に誘導された酸性化を介して、アミンからCO
2が脱着される。アミン溶液は、電気化学ステップからのアルカリ陰極液を用いて再生される強塩基アニオン交換樹脂を用いて、さらなる吸収のために再生される。
【0025】
このプロセスは、ガス源からCO2を吸収するためにアミン溶液(pH>10)を使用する。しかし、CO2-リッチアミンは、プロトンが陽極の水溶液(及び陰極の水酸化物イオン)から生成される電気化学セルで再生される。これらのプロトンは、リッチアミン溶液中に拡散し、アミン溶液のpHの低下(pH<7)と、カルバミン酸イオンの分解と、CO2(例えば、CO2を含む濃縮された蒸気として)の放出とを生じる。CO2は、1~99%のCO2を含有するガス流として放出され得る。塩橋(salt bridge)は、アミン溶液中の電荷中性を維持するためにアニオンを供給し、陰極溶液にカチオンを供給する。
【0026】
さらに
図1Bを参照すると、CO
2が放出された後、アミン溶液は、強塩基アニオン交換樹脂を用いたイオン交換を介して高pHに回復される。陰極からの塩基性溶液を用いてイオン交換樹脂を再生し、それによって塩橋溶液(salt bridge solution)への再循環のために塩を回収する。
【0027】
この電気化学的に誘導されるpH-スイングプロセスは、危険で、高価で、かつ炭素集約的な試薬(例えば、鉱酸)を、豊富でかつ良性の供給源(例えば、水)と置き換える一方で、再生可能なエネルギーを活用してこのプロセスを容易にさせるという利点を有する。したがって、本明細書に開示される技術は、電気化学的に生成されたプロトン及び水酸化物イオンを介してpHスイングを誘導し、それによって、エネルギー効率が良く低い炭素強度の様式で、より高い吸脱着量差(working capacity)を達成するために、水電解をアミン吸収プロセスに組み込むことを目的とする。このpH-スイングプロセスは、周囲温度で起こり、したがって、以下の利点を提供する:(1)より単純なプロセス装置要件;(2)完全なアミン再生(したがって、最大吸脱着量差);及び(3)溶媒損失の減少。2022年4月15日に出願されたPCT出願番号PCT/US22/25028に開示されているような、電気化学的に誘導されたpHスイングプロセスの特定の態様を以下に考察する。
【0028】
電気化学的に誘導されたpHスイングプロセス(pH-Swing Process)によるCO2吸収
従来のアミン洗浄プロセスの間、CO2-含有ガスを濃縮(20~50%v/v)アミン水溶液と接触させる。塩基性条件下(pH>10)では、CO2とアミン(例えば、MEA;RNH2、式中、R=CH2CH2OH)との反応によって吸収が起こり、カルバミン酸アニオン(RNHCOO-,RNCOO2-)、プロトン化アミン(RNH3
+)、およびプロトン/ヒドロニウムイオン(H+/H3O+)が、式1~3に従って形成されるが、N2及びO2などの他のガスは流出液中に逃げる。CO2はまた、高pHで炭酸塩を形成する(式4)4。
RNH2+CO2⇔H++RNHCOO- (1)
RNHCOO-+RNH2⇔RNH3
++RNCOO2- (2)
RNHCOO-+H2O⇔H3O++RNCOO2- (3)
CO2+H2O⇔CO3
2-+2H+ (4)
【0029】
CO2を放出し、アミンを再生するための既存のアプローチは、熱プロセスである。この熱プロセスでは、溶液を高温(>140℃)に加熱し、ここでカルバミン酸塩が分解して元のアミン分子を生成し、CO2を濃縮蒸気として放出する3、5-6。しかし、大きな熱負荷(例えば、DAC用途に対して0.05モル/モルの吸脱着量差についてCO2の1トン当たり>5MWh)3は、熱プロセスを経済的に非魅力的なものにする。さらに、アミン再生に必要な高温は、化学分解及びエバポレーションによる溶媒損失を生じ得る3。これらの因子は、CAPEXの最大50%の増加及びOPEXの最大25%の増加をもたらし得、これは、炭素回収の高コスト(>$100/トンCO2)7-8につながり、及び点光源エミッタ(例えば、化石燃料火力発電所)へのアミン系プロセスの使用を制限する。
【0030】
熱アミン再生の代替は、溶液のpHを酸性条件(pH≦7)にシフトすることであり、これは、式(1)及び(3)の逆に従って、カルバミン酸イオンの分解(酸加水分解による)を促進する。このpH-スイングプロセスは、周囲温度で起こり、したがって、以下の利点を提供する:(1)より単純なプロセス装置要件;(2)アミンの最大吸脱着量差の利用;及び(3)溶媒損失の減少。しかし、pHをシフトするための化学量論的試薬としての酸及び塩基の要件によって、広範囲の採用に対してpH-スイングプロセスが実行不可能になる。鉱酸及び塩基の代替は、カルバミン酸イオン加水分解に必要なプロトンを生成するために(例えば、リッチアミン溶液を希薄液に変換するために)水電解を使用すること、及びCO
2吸収の後続のサイクルのために希薄液のpHを増加させるのに必要な水酸化物イオンを生成することである(
図1B(左側))。
【0031】
ここで
図2を参照すると、このアプローチでは、プロトンは、以下の式(5)及び(6)に従って、電気化学セルにおいて、陽極における水溶液から生成される(陰極において生成される水酸化物イオンを伴う)。
2H
2O(l)→O
2(g)+4H
+(水溶液)+4e
-;E
0=1.23V vs.SHE (5)
4H
2O(l)+4e
-→2H
2(g)+4OH
-(水溶液);E
0=-0.83V vs.SHE (6)
【0032】
プロトンは、カチオン交換膜(CEM)を介してリッチアミン溶液中に拡散し、pHの低下をもたらし、これがカルバミン酸イオンの分解及びCO
2の放出をもたらす。CEMは、カルバミン酸アニオンの陽極及び陰極チャンバへの拡散を防止し、それによってカルバミン酸塩/MEAの電気酸化を防止するために含まれる。電気的中性を維持するために、濃塩溶液(例えば、NaClまたはNaNO
3)を使用して、アミン溶液に対して対アニオンを提供し、陰極液に対してカチオンを提供する。アニオン交換膜(anion exchange membrane)(AEM)は、塩溶液カチオンのMEA区画への拡散を防止する。CO
2が放出された後、アミン希薄液は、強塩基アニオン交換樹脂を使用して高pHに回復される(
図1B(右側))。この樹脂は、塩リザーバ(例えば、アミン溶液中に蓄積した)からの対イオン(例えば、Cl
-またはNO
3
-)を水酸化物イオンと交換して、希薄アミンのpHを元の基本値まで上昇させる。
【0033】
アニオン交換樹脂は、電気化学セルの陰極区画からの水酸化物リッチ溶液を用いて再生され、それによって塩溶液区画で用いられるアニオンを回収する。この再生プロセスは、必要な試薬の効率的なリサイクルを保証し、動作コストを最小化し、廃棄物生成を防止する。この電気化学的に誘導されるpH-スイングプロセスは、危険で、高価で、炭素集約的な試薬(例えば、鉱酸)を、豊富でかつ良性の供給源(例えば、水)と置き換える一方で、再生可能なエネルギーを活用してこのプロセスを容易にさせるという利点を有する。
【0034】
アミン再生のための電気化学反応の組み込み
いくつかの最近の研究は、アミン系のCO2回収のための電気化学の活用に焦点を当てている9-16。これらの研究では、金属(例えば、Cu2+イオン)とアミンの間の錯体形成反応を利用しており、これによりカルバミン酸イオンが分解されてCO2が放出される11-12、14-16。この錯体形成反応は、陽極で電気化学的に進行し(Cu金属の酸化によりCu2+イオンが生成される)、陰極ではCu-アミン錯体がアミンに再生される(Cu2+はCu金属に還元される)。
【0035】
この研究は、固体ポリアントラキノン上の電気化学CO2回収に拡張された9、13。このシステムでは、ファラデーエレクトロスイングプロセスを使用して、キノン(ポリビニルフェロセンが酸化されている)とのカルボキシル化反応(還元)を介してCO2を回収し、続いてセルの極性を反転させてカルボキシル-キノン化合物を分解し(そしてポリビニルフェロセンを還元し)、それによってCO2を脱着し、そしてポリアントラキノンを再生する。これらの電気化学プロセスは、高い吸脱着量差(12%v/v CO2流に対してアミン1モル当たり0.62モルものCO2)及び低いエネルギー要件(1トンのCO2当たり約0.60MWhという理論上の最小要件)を示したが、それには高価なジアミン類またはキノン類を用いた複雑なCu系の酸化還元化学も必要とする。更に、電子化学は、アミンに直接作用する。これらの機能はアミンまたは電極の劣化を促進し、より高価な設備投資/運用コスト(CAPEX/OPEX)につながる可能性がある17。重要なことには、これらの研究はまた、直接空気(DAC)用途(約400ppm)における研究ではなく、発電所(約12%)における非常に高いCO2濃度に焦点を当てた。
【0036】
水電解をアミン再生に統合することは、2つの主要な利点を有する。第1に、分離された陽極/陰極チャンバにおいて水電解を行うことにより、化学量論的または高価な/外添剤(exotic regent)、触媒、または材料を必要とせずに、アミン/電極の電気化学的分解のリスクを低減して、プロトン及び水酸化物の局所的な生成が可能になる。第2に、陰極における水電解は、H2を生成し、それによって、進化したH2を回収し使用することによって、2.0MWh/トンCO2という現実的なエネルギー要件の機会を提供する。電気化学的処理を使用する追加の利点は、必要なエネルギーの最大100%が再生可能な供給源から供給され得ることである。これらの革新は、プロセス設備及びエネルギー効率の両方に影響を与える。周囲温度でのアミン分子の完全な再生は、酸媒介性カルバミン酸塩分解を介して達成され得る。これは、(1)容量の増加に比例する量だけ必要とされるアミンの量を減らすこと、及び(2)複雑な蒸留塔を、より単純なモジュラー電気化学セル及びアニオン交換カラムで置き換えることによって、プロセス設備に影響を与える。この単純なプロセス装置は、CAPEXを低減し(例えば、アミンストリッパーカラムに対して>$6千万の投資コスト未満で7)、システムの可塑性及びモジュール性を増大させる可能性を有し、その両方が、より広い用途のアレイにおけるプロセスの使用を可能にする(例えば、産業プロセスからの回収及び直接空気からの回収)。
【0037】
電気化学的に強化されたアミンプロセスに対する現実的なエネルギー要件は、CO
2の脱着に必要とされるプロトンの数と、約80%の効率で動作する現在の最新の電気分解装置とに基づいて推定され得る(例えば、式(5)および(6)に示すように、化学量論的水素発生反応に対する熱力学需要が54.8 kWh/kgであると仮定すると
19、生成H
21kg当たり68kWh
18)。例えば、種々のCO
2負荷での22%MEA溶液の滴定(
図3を参照のこと;0.25及び0.5モルCO
2/モルMEA)によって、MEAの1モル当たり約1.0モルのH
+が、12から0.6へのpH減少(全てのCO
2が脱着される点)に必要であることが示される。この情報から、技術の2つの実施形態に対するエネルギー要件を推定することができる:(1)初期MEA負荷を有するDACは、1モルのMEA
20当たり0.25モルのCO
2、及び(2)1-12%のCO
2(1モルのMEA当たり0.5モルのCO
2という初期負荷)を含有する工業用流出物。
【0038】
いくつかの実施形態では、直接空気回収(「DAC」)用途に関して、プロトンとCO2との比は、完全な脱着に関して約4である。現在の電気分解装置を使用すると、このプロセスは6.3MWh/トンCO2を除去する必要がある。H2エネルギーの約70%が回復すると、この値は3.8MWh/トンCO2(除去)に減少する。95%の細胞効率では、エネルギー要件は、H2の回収無し及び有りでそれぞれ5.3及び2.8MWh/トンのCO2であり得る。従来のサーマルスイングプロセスと比較すると、1モルのMEA当たりCO20.30~0.25モルの負荷からCO2を脱着するのに必要なリボイラーの負荷は、約5.0MWh/トンのCO2であり3、完全な脱着に必要な負荷は、>25MWh/トンのCO2となる3、21。この予備的なエネルギー分析によって、このプロセスが現在、従来の熱スイングプロセスよりもはるかに低いエネルギー要件(6.3対25.0MWh/トンのCO2)で実行できるだけでなく、潜在的に5倍高い吸脱着量差(0.25対0.05モルCO2/モルMEA)の係数を達成できる可能性もあることが示される。
【0039】
CO2を>1%含む流出液を使用する用途では、エネルギー要件が減少する。例えば、最初のMEA負荷がMEAの1モル当たり0.5モルのCO2であると仮定すると、完全な脱着に対するプロトンのCO2に対する比は約2である。80%の効率で、このプロセスは、3.1MWh/トンのCO2を除去する必要がある。H2エネルギーの約70%が回復すると、この値は1.9MWh/トンCO2の除去までに減少する。95%の細胞効率では、エネルギー要件は、H2の回収無し及び有りでそれぞれ2.6及び1.4MWh/トンのCO2である。従来のサーマルスイングプロセスと比較すると、1モルのMEA当たりCO2が0.5~0.25モルの負荷からCO2を脱着するのに必要なリボイラーの負荷は、約1.3MWh/トンのCO2である5。この負荷は、脱着について>2.2MWh/トンのCO2まで1モルのMEA当たり0.20モルのCO2未満まで増大し、低濃度のアミンからの脱着では>5MWh/トンのCO2である(例えば、1モルのMEA当たり0.3~0.2モルのCO2)5。これらの研究に基づいて、完全な脱着に必要な負荷は>25MWh/トンCO2であり、これは、低CO2負荷ではCO2脱着が熱力学的に好ましくないためである5、32。この予備的なエネルギー分析によって、このプロセスが現在、従来の熱スイングプロセスと同等のエネルギー要件(1.9対1.3MWh/トンCO2)で実行可能であり、潜在的に2倍の高い吸脱着量差(1モルのMEA当たり0.5モル対0.25モルのCO2)を達成し得ることが示される。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、CO2を含むガス源を、アニオン性錯体を形成し得る溶媒を含むこの吸収溶液と接触させることと、吸収溶液のpHを電気化学的に約7未満に調整することと、pH調整ステップの間または後に放出される濃縮された蒸気としてCO2を収集することと、溶媒及び/または溶質を再生することと、任意選択で、再生された溶媒及び/または溶質を収集することとを含む、CO2を吸収する方法またはステップを含む。いくつかの実施形態では、アニオン性錯体は、カルバミン酸イオン及び/または水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を含む。いくつかの実施形態では、溶媒はアミンである。いくつかの実施形態では、アミンは、RxNH3-x(式中、Rは任意選択で置換されたアルキル、エーテルまたはアルコールから選択される)である。
【0041】
いくつかの実施形態では、pH調整ステップは、水電解を介して行われる。いくつかの実施形態では、CO2源は、工業源(例えば、天然ガス火力発電所、石炭火力発電所、製鉄所、製鋼所、セメント工場、エタノール工場、または化学製造プラントから放出される燃焼排ガス)からの流出物である。いくつかの実施形態では、CO2源は、大気源(例えば、周囲空気)である。いくつかの実施形態では、pH調整ステップは、100℃未満の温度で行われる。いくつかの実施形態では、再生されたアミンを回収し、同じプロセスに再度使用する。
【0042】
いくつかの実施形態では、アミンは、1つ以上の第一級アミン(例えば、モノエタノールアミン(MEA)、2-エチルアミノエタノール、2-メチルアミノエタノール、エチレンジアミン、ベンジルアミン);1つ以上の第二級アミン(例えば、ジエタノールアミン(DEA)、ピロリジン、モルホリン、2,6-ジメチルモルホリン、モノイソプロパノールアミン、ピペラジン(PZ));1つ以上の第三級アミン(例えば、2-(ジメチルアミノ)エタノール(DMAE)、N-tert-ブチルジエタノールアミン(tBDEA)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール(DMA-1P)、3-ジエチルアミノ-1,2-プロパンジオール(DMA-1,2-PD)、2-ジエチルアミノエタノール(DEAE)、3-ジエチルアミノ-1,2-プロパンジオール(DEA-1,2-PD)、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール(DEA-1P)、トリエタノールアミン(TEA)、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール(DMA-2P)、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン[1-(2HE)PRLD]、1-ジエチルアミノ-2-プロパノール(DEA-2P)、3-ピロリジノ-1,2-プロパンジオール(PRLD-1,2-PD)、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール(DIPAE)、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン[1-(2HE)PP]、2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール(DMA-2M-1P)、3-ピペリジノ-1,2-プロパンジオール(3PP-1,2-PD)、3-ジメチルアミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール(DMA-2,2-DM-1P)、3-ヒドロキシ-1-メチルピペリジン(3H-1MPP)、N-エチルジエタノールアミン、1-エチル-3-ヒドロキシピペリジン);およびそれらの混合物を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、CO2を吸収する溶液は、塩基性pH(例えば>7)を有する。いくつかの実施形態では、CO2を吸収する溶液のpHは、約7より大きいか、約7.5より大きいか、約8より大きいか、約8.5より大きいか、約9より大きいか、約9.5より大きいか、約10より大きいか、約10.5より大きいか、約11より大きいか、約11.5より大きいか、もしくは約12より大きいか、またはその間の任意の範囲もしくは値である。いくつかの実施形態では、CO2を吸収する溶液は、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、約12、約12.5、約13、約13.5、もしくは約14、またはその間の任意の範囲もしくは値のpHを有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、CO2吸収ステップは、約100℃未満、約95℃未満、約90℃未満、約85℃未満、約80℃未満、約75℃未満、約70℃未満、約65℃未満、約60℃未満、約55℃未満、約50℃未満、約45℃未満、約40℃未満、約30℃未満、もしくは約25℃未満、またはその間の任意の範囲もしくは値の温度で行われる。いくつかの実施形態では、CO2吸収ステップは、約100℃、約95℃、約90℃、約85℃、約80℃、約75℃、約70℃、約65℃、約60℃、約55℃、約50℃、約45℃、約40℃、約30℃、もしくは約25℃、またはその間の任意の範囲もしくは値の温度で行われる。いくつかの実施形態では、CO2吸収ステップは、周囲条件(例えば、室温及び圧力)下で行われる。
【0045】
いくつかの実施形態では、溶液のpHを電気化学的に調整して、CO2を濃縮蒸気として放出する。いくつかの実施形態では、溶液のpHは、約7.5未満、約7未満、約6.5未満、約6未満、約5.5未満、約5未満、約4.5未満、約4未満、約3.5未満、約3未満、約2.5未満、約2未満、約1.5未満、もしくは約1未満、またはその間の任意の範囲もしくは値に調整される。いくつかの実施形態では、溶液のpHは、約7.5、約7、約6.5、約6、約5.5、約5、約4.5、約4、約3.5、約3、約2.5、約2、約1.5、もしくは約1、またはその間の任意の範囲もしくは値に調整される。
【0046】
いくつかの実施形態では、pH調整ステップは、約100℃未満、約95℃未満、約90℃未満、約85℃未満、約80℃未満、約75℃未満、約70℃未満、約65℃未満、約60℃未満、約55℃未満、約50℃未満、約45℃未満、約40℃未満、約30℃未満、もしくは約25℃未満、またはその間の任意の範囲もしくは値の温度で行われる。いくつかの実施形態では、pH調整ステップは、約100℃、約95℃、約90℃、約85℃、約80℃、約75℃、約70℃、約65℃、約60℃、約55℃、約50℃、約45℃、約40℃、約30℃、もしくは約25℃、またはその間の任意の範囲もしくは値の温度で行われる。いくつかの実施形態では、pH調整ステップは、周囲条件(例えば、室温及び圧力)下で行われる。
【0047】
いくつかの実施形態では、濃縮蒸気は、(v/v)で約2%~約99%のCO2、約2%~約95%のCO2、約2%~約90%のCO2、約2%~約85%のCO2、約2%~約80%のCO2、約2%~約75%のCO2、約2%~約70%のCO2、約2%~約65%のCO2、約2%~約60%のCO2、約2%~約55%のCO2、約2%~約50%のCO2、約2%~約45%のCO2、約2%~約40%のCO2、約2%~約35%のCO2、約2%~約30%のCO2、約2%~約25%のCO2、約2%~約20%のCO2、約2%~約15%のCO2、約2%~約10%のCO2、約2%~約5%のCO2、またはその中の任意の範囲または値を含む。いくつかの実施形態では、濃縮された蒸気は、(v/v)で約2%のCO2、約5%のCO2,%のCO2、約10%のCO2、約15%のCO2、約20%のCO2、約25%のCO2、約30%のCO2、約35%のCO2、約40%のCO2、約45%のCO2、約50%のCO2、約55%のCO2、約60%のCO2、約65%のCO2、約70%のCO2、約75%のCO2、約80%のCO2、約85%のCO2、約90%のCO2、約95%のCO2、約96%のCO2、約97%のCO2、約98%のCO2、約99%のCO2、もしくはそれ以上、またはその間の任意の範囲もしくは値を含む。
【0048】
電気化学的pHスイングシステムの概念実証は、2022年4月15日に出願されたPCT国際出願番号PCT/US22/25028に開示されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0049】
鉱物化(Mineralization)による回収CO2の隔離
いくつかの実施形態では、本開示による方法は、上記で考察したCO2吸収ステップで生成された濃縮蒸気からCO2を隔離する方法またはステップを含む。いくつかの実施形態では、CO2吸収ステップで生成された濃縮蒸気からCO2を隔離する方法またはステップは、CO2を含有する濃縮蒸気を、不溶性炭酸塩を形成し得るイオンを含む隔離水溶液と接触させて、二酸化炭素を含む水溶液を生成することと;二酸化炭素を含む水溶液を、そのアルカリ化を誘導する電気活性メッシュと接触させて、隔離溶液からの炭酸塩固体(複数可)の沈殿を強制することと;沈殿した炭酸塩固体を隔離溶液から、またはメッシュの表面(そこで炭酸塩固体が堆積し得る)から除去することとを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、隔離水溶液は、ガス流と熱平衡状態にある。いくつかの実施形態では、隔離水溶液は、ガス流と熱平衡状態にない。
【0051】
いくつかの実施形態では、不溶性炭酸塩を形成し得るイオンは、Ca、Mg、Ba、Sr、Fe、Zn、Pb、Cd、Mn、Ni、Co、Cu、及びAlのうちの1つ以上のイオンを含む。いくつかの実施形態では、この水溶液は、海水またはブラインを含む。いくつかの実施形態では、水溶液は、約1,000ppm以上、約2,000ppm以上、約3,000ppm以上、約4,000ppm以上、約5,000ppm以上、約6,000ppm以上、約7,000ppm以上、約8,000ppm以上、約9,000ppm以上、約10,000ppm以上、約15,000ppm以上、約20,000ppm以上、約25,000ppm以上、または約30,000ppm以上、約35,000ppm以上、約40,000ppm以上、約45,000ppm以上、約50,000ppm以上、約55,000ppm以上、または約60,000ppm以上、またはそれ以上、またはその間の任意の範囲もしくは値のNaCl濃度を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、電気活性メッシュは、金属または非金属組成物を含むメッシュ陰極を含む。いくつかの実施形態では、電気活性メッシュは、金属または炭素系のメッシュを含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、電気活性メッシュは、鋼、ステンレス鋼、酸化チタン、ニッケル及びニッケル合金、カーボンナノチューブ、ポリマー、及び/もしくはグラファイト、またはこれらの材料の他のハイブリッド組成物を含む。いくつかの実施形態では、電気活性メッシュは、約0.1μm~約10000μm(例えば、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、1000、1500、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、または10000μm)の範囲の直径を有する細孔を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、この方法は、鉱物化された二酸化炭素1トン当たり約2.5MWh以下のエンドツーエンドエネルギー強度(end-to-end energy intensity)を利用する。いくつかの実施形態では、水溶液は、ある量の溶解した二酸化炭素を含み、この量は、大気の量まで緩衝される。
【0054】
いくつかの実施形態では、この電気活性メッシュは、電気活性メッシュの約2~20000μm以内の隔離水溶液中で、インサイチュで、アルカリ条件の増加を生じる。いくつかの実施形態では、アルカリ化条件は、7以上、7.5以上、8以上、8.5以上、9以上、9.5以上、10以上、10.5以上、11以上、11.5以上、もしくは12以上、またはその間の任意の範囲もしくは値のpHである。いくつかの実施形態では、アルカリ化条件は、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、約12、約12.5、約13、約13.5、もしくは約14、またはその間の任意の範囲もしくは値のpHである。
【0055】
いくつかの実施形態では、炭酸塩固体の沈殿を誘導することは、溶液中の電気活性メッシュからなる円筒を回転させることを含み、一方、吸引を適用して、メッシュの外面上に溶液を引き込む。いくつかの実施形態では、この方法は、回転ディスク陰極(rotating disc cathode)を使用する。
【0056】
いくつかの実施形態では、溶液は、ブライン溶液である。いくつかの実施形態では、溶液は、アルカリ金属含有溶液である。いくつかの実施形態では、炭酸塩固体の沈殿を誘導することは、Ca、Mg、Ba、Sr、Fe、Zn、Pb、Cd、Mn、Ni、Co、Cu、またはAlを含む少なくとも1つの炭酸塩の沈殿を誘導することを含む。いくつかの実施形態では、炭酸塩固体の沈殿を誘導することは、Ca及び/またはMgを含む少なくとも1つの炭酸塩の沈殿を誘導することを含む。
【0057】
本開示のいくつかの実施形態は、電気活性メッシュを含む回転シリンダと流体接続する吸入装置と、固体を表面または溶液から分離するための掻取装置及び/または液体スプレー系の装置とを含む、フロースルー電解リアクター(flow-through electrolytic reactor)を含む。
【0058】
ここで
図4Aを参照すると、膜のないリアクター400は、数ギガトンのCO
2を回収する可能性を有する海水中の電気化学的に促進された(Mg,Ca)-炭酸塩及び/または水酸化物の沈殿に基づく、単一ステップの炭素隔離及び貯蔵(sCS
2)戦略に適応するように概念化された。非限定的な例として、このようなプロセスは、2020年6月12日に出願されたPCT公開番号WO2021/061213に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
塩基性CO2鉱物化プロセスは、中性周囲のCa及びMg含有溶液(例えば、海水、アルカリ金属に富む地下水、工業用排水、脱塩ブライン)をアルカリ化することによって達成され得る。本発明者らは、単一区画の連続攪拌タンクリアクター(CSTR)を使用することによって、概念化された多区画リアクター(multi-compartment reactor)の実現可能性を評価した。動作パラメータ(例えば、電圧、電流密度、及び水圧保持時間(hydraulic retention time)(「HRT」))もまた、設計の炭酸化エネルギー強度を実証するように選択され得る。
【0060】
さらに
図4Aを参照すると、リアクター400は、大気及び/または濃縮CO
2蒸気を、リザーバ405内に含まれる隔離水溶液(例えば、海水)に導入するための1つ以上の空気入口404と流体連通する空気ポンプ401を含む。リアクターは、さらに、海水入口403及び海水出口411を含む。電極アセンブリ406は、隔離水溶液リザーバ405と流体的に接触し、バリア層408によって分離された回転ディスク陰極407及び陽極409を含む。回転ディスク陰極407(例えば、316Lステンレス鋼メッシュ)は、製品の除去及び回収のためにスクレーパ410を通過させるために、シャフト402の周りを回転されてもよい。このリアクターは、中和プール412をさらに含んでもよい。O
2は、陽極409で生成され得、O
2出口413で放出され得る。H
2は、回転ディスク陰極407で生成され得、H
2出口414で放出され得る。
【0061】
電解質は、以下の理由により多孔質バリアで分離され得る:(1)陽極液と陰極液との間の中和反応を最小限にすることにより、CO2回収及び鉱物化のための安定な陰極pHが可能になる;(2)分離された電解質は、リアクターのより高いエネルギー効率を促進する;(3)ガス流(H2及びO2)を別々に分割及び収集する必要がある場合がある;ならびに(4)大気CO2鉱物化は、一般に、酸性化プロセスであり、生成された酸の余剰は、海洋の酸性化を回避するために保留する必要がある。
【0062】
さらに
図4Aを参照すると、陰極液は、大気CO
2が電解アルカリ度と反応して鉱物炭酸塩及び水酸化物を生成するように、空気パージされて、海水フラッシュされてもよい。オンラインpHモニタリングシステムを使用して、例えば、9.5~9.6で一定の陰極液pHを達成するように印加電流を制御してもよい。このpHは、大気中のCO
2の回収、またはCO
2を含む濃縮蒸気(例えば、上述の吸収ステップで生成されたもの)からの回収を有利に最大化する。ステンレス鋼陰極407は、炭酸化触媒として疎水性メッシュ(例えば、ポリプロピレン(PP)メッシュ)で覆ってもよい。
【0063】
PPで覆われたステンレス鋼の陰極は、炭酸塩を除去するためにスクレーパ(例えば、金属ブラシ、ブレード、または高圧ノズル)を通過するように回転され得、それによって、ディスクが液体中に回転して戻る際に、後続の炭酸化のために陰極を再生する。多孔質バリア408(例えば、セルロースまたは他のポリマーフィルム)を使用して、陽極液(例えば、酸)を陰極液(例えば、アルカリ化海水)から分離し、海水の酸性化及びCO2脱ガスを防止してもよい。次いで、陽極液を中和プール412に循環させてもよく、生成された酸性度は、苦鉄質、超苦鉄質鉱物、及び岩石を溶解してアルカリ性に戻すために消費される。Caリッチフライアッシュ及びミネラル(例えば、石膏)を用いて、陽極液中のCa2+を濃縮してもよい。
【実施例】
【0064】
実施例1:概念実証の2チャンバリアクター
ここで
図4Bを参照すると、本開示によるプロセスを実証するために、2チャンバCSTRリアクター500が、陽極液リザーバ505と陰極液リザーバ506とを分離するために、バリア層(この例では濾紙)512と共に使用された。0.3MのNa
2SO
4溶液を陽極液として使用し、海水組成物をシミュレートする溶液(INSTANT OCEAN(登録商標)塩を使用して調製)を、陰極液として使用し、入口502を介して導入し、出口503を介して除去した。PPメッシュで覆われた316ステンレス鋼メッシュを陰極508として使用し、白金コーティングされたチタンプレートを陽極509として使用した。CSTRセットアップでは、陰極液の流量をプログラム可能なシリンジポンプ(New Era Pump Systems,Inc.)によって制御し、一方、蠕動ポンプを使用して陽極液の流量を制御した。陰極液pHを9.5に維持した。効果的な混合及びCO
2平衡化は、空気ポンプ501を用いたエアレーションによって可能にされ、これは、入口504を介して空気を導入する。pHコントローラ510は、陽極チャンバ506および隔離水溶液リザーバ505内の所望のpHを維持する。陽極液プール507は、陽極チャンバ506と流体連結している。
【0065】
ここで
図5A~Fを参照すると、2組の実験(150分-HRT及び10分-HRT)を様々な操作パラメータで行った。バリア(濾紙)は、酸性化された電解質及びアルカリ化された電解質を効果的に分離し、膜なし設定(membrane-less setup)の実現可能性を実証した。約30%のCa除去が150分-HRT実験において達成されたが(
図5C)、10分-HRT実験は、同様であるが、より低いCa除去速度を達成し(約25%、
図5D)、しかし、リアクターははるかに速い流速に対応した。
【0066】
両方の実験の海水流出液を9.5のpHで制御したが、150分-HRT実験(1.5mM、
図5E)で観察されたものと比較して、HRTが10分の場合(
図5F)、IC濃度はより高い(2mM)。Ca除去及び流出物ICから計算すると、10分-HRT実験は、150分-HRT実験(約0.07gの大気CO
2/L海水)と比較して、大気CO
2鉱物化(約0.09gの大気CO
2/L海水)に関してはるかに効率的である。さらに、両方の実験からの流出物中のICの高いpH及び存在量は、海中に排出された場合に、さらなるCO
2回収能力を与える。
図5E及び5Fの挿入図に示すように、CO
2は、PPメッシュ上に厚いが脆性のスケールを形成するアラゴナイト(CaCO
3)として鉱物化され、単純な掻き取りプロセスによる容易な除去を可能にした。
【0067】
炭酸化プロセスの電気エネルギー強度(electric energy intensity)(EEI)を、以下の式(7)を用いて算出した。
【数1】
式中、U及びIは、印加電圧及び電流(それぞれMV、kV、V、またはmV、及びAで表す)であり、Fは流量(L/h)であり、Rは大気CO
2(CO
2(トン数)/L(海水)で表す)除去速度である。結果として、10分-HRT実験のエネルギー効率は、150分-HRT実験(10.7MWh/t CO
2)及び添加剤としてNaOHを使用する海水アルカリ化(4.5MWh/t CO
2)と比較して、大気CO
2に対して顕著(2.1-4.0MWh/t CO
2)である。
【0068】
実施例2(予測的):
実施例1に記載のリアクター構成は、空気パージによるCaCO
3の形成に有用であるが、MgCO
3の形成は、上述の動力学的制限のせいで起こらない。MgCO
3の形成がないと、システムのCO
2除去能力が5分の1を超えて低下する。この制限に取り組むために、上述の鉱物化プロセスは、低エネルギーのアミン系DACプロセス(例えば、2021年4月16日に出願されたPCT出願番号PCT/US22/25028に開示されたものと同様であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)と組み合わされる。このプロセス(
図1Bに概略的に示す)は、アミン溶液(pH>10)を使用して、気相流からCO
2を吸収する。しかし、CO
2-リッチアミンは、プロトンが陽極の水溶液(及び陰極の水酸化物イオン)から生成される電気化学セルで再生される。これらのプロトンは、リッチアミン溶液中に拡散し、アミン溶液のpHの低下(pH<7)と、カルバミン酸イオンの分解と、CO
2の放出とを生じる。(塩橋(salt bridge)は、アミン溶液中の電荷中性を維持するためのアニオンと、陰極溶液へのカチオンとを供給する。)CO
2は、1~99%のCO
2を含有するガス流として放出され、これは海水に吸収されて、溶解した無機炭素濃度を>>10mMレベルまで増加し得、これはCaCO
3、及びMgCO
3の両方の鉱物化に十分である。
【0069】
CO2が放出された後、アミン溶液は、強塩基アニオン交換樹脂を用いたイオン交換を介して高pHに回復される。陰極からの塩基性溶液を用いてイオン交換樹脂を再生し、それによって塩橋溶液(salt bridge solution)への再循環のために塩を回収する。このpH-スイングプロセスは、周囲温度で起こり、したがって、少なくとも以下の利点を提供する:(1)より単純なプロセス装置要件;(2)完全なアミン再生(したがって、最大吸脱着量差);及び(3)溶媒損失の減少。重要なことには、このプロセスは、熱スイングプロセス(回収された1トンのCO2当たり>5.0MWh)と比較して、約2x低エネルギー(回収された1トンのCO2当たり2.8MWh)を必要とする。
【0070】
本明細書で使用する場合、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、「a」、「an」及び「the」という単数の用語には、複数の言及物が含まれる。したがって、例えば、文脈が他の方法で明確に指示しない限り、ある物体への言及は、複数の物体を含み得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、「セット」という用語は、1つ以上の物体の集合を指す。したがって、例えば、物体のセットは、単一の物体または複数の物体を含んでもよい。
【0072】
本明細書で使用する場合、用語、「実質的に」、及び「約」は、小さな変動を記述し、説明するために使用される。事象または状況と合わせて使用するとき、この用語は、事象または状況が近い近似値で発生する事象だけではなく、その事象または状況が非常に近似して発生する事象を指す場合もある。例えば、数値と合わせて使用するとき、この用語は、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下等のその数値の±10%以下の変動範囲を包含し得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「サイズ」という用語は、ある物体の特性寸法(characteristic dimension)を指す。従って、例えば、ある円形の物体のサイズは、その物体の直径を指す場合もある。非円形である物体の場合、非円形の物体のサイズは、対応する円形物体の直径を指す場合もあり、この対応する円形物体は、非円形の物体の直径と実質的に同じ導出可能なまたは測定可能な特性の特定のセットを示すか、または有する。代替として、または併せて、非円形物体のサイズは、物体の様々な直交寸法の平均を指す場合がある。従って、例えば、楕円である物体のサイズは、その物体の長軸と短軸の平均を指す場合がある。特定のサイズを有する物体のセットを参照する場合、その物体は、特定のサイズの周りのサイズの分布を有する場合があることが企図される。したがって、本明細書で使用される場合、物体のセットのサイズは、平均サイズ、中央サイズ、またはピークサイズなど、サイズの分布の典型的なサイズを指す場合がある。
【0074】
さらに、量、比率、及び他の数値は、範囲形式で本明細書に提示されることもある。係る範囲形式が便宜上、及び簡略に使用され、範囲の制限として明示的に指定された数値を含むが、あたかも各数値及び部分的な範囲が明示的に指定されるかのように、その範囲内に包含されたすべての個々の数値または部分的な範囲を含むと柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例えば、約1~約200の範囲の比は、約1~約200の明確に記載された制限を含むが、約2、約3、及び約4などの個々の比、ならびに約10~約50、約20~約100などの部分範囲も含むと理解されるべきである。
【0075】
本開示を、その特定の実施形態を参照して説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲に定義されるような本開示の真の主旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われてもよく、均等物が置き換えられてもよいことを理解されたい。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、方法、操作(複数可)を、本開示の目的、主旨、及び範囲に適応させるために、多くの修正が行われてもよい。すべてのそのような修正は、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。詳細には、特定の方法が、特定の順序で実行される特定の操作に関して説明されているが、これらの操作が、本開示の教示から逸脱することなく同等の方法を形成するために組み合わされてもよく、細分化されてもよく、または再順序付けされてもよいことが理解される。したがって、本明細書において明確に示されない限り、操作の順序及び分類は本開示の制限ではない。
【0076】
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【国際調査報告】