(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】手動制御入力装置の可変減衰のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20240717BHJP
【FI】
A61B34/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580762
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 IB2022056015
(87)【国際公開番号】W WO2023275757
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518083032
【氏名又は名称】オーリス ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】タヘリ・ホセイン
(72)【発明者】
【氏名】パルティバン・チェンビアン
(72)【発明者】
【氏名】フアン・ヤナン
【テーマコード(参考)】
4C130
【Fターム(参考)】
4C130AB02
4C130AC01
4C130AC07
4C130AC11
4C130AD11
4C130BA02
4C130CA11
(57)【要約】
手動制御入力装置の可変減衰のためのシステム及び方法が開示され、それによって、(例えば、遠隔操作のための)医療用器具の減衰制御を提供する。このシステムは、ロボットユーザインターフェースと、1つ以上の変数に基づいてロボットユーザインターフェースに異なる可変減衰係数を適用するための制御ユニットとを含む。ロボットユーザインターフェースは、協働して医療用器具の遠隔操作を容易にする1つ以上のリンク及び1つ以上の関節を含む。制御ユニットは、1つ以上の関節から動き情報を受信し、受信された動き情報に基づいて複数の異なる減衰修正子から減衰修正子を決定し、決定された減衰修正子を1つ以上の関節のうちの少なくとも1つの関節に適用して、医療用器具の遠隔操作中に少なくとも1つの関節の力又はトルクを修正するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用器具を制御するためのシステムであって、
協働して医療用器具の遠隔操作を容易にする1つ以上のリンク及び1つ以上の関節を含むロボットユーザインターフェースと、
制御ユニットであって、
前記1つ以上の関節から動き情報を受信し、
前記受信された動き情報に基づいて複数の異なる減衰修正子から減衰修正子を決定し、
前記決定された減衰修正子を前記1つ以上の関節のうちの少なくとも1つの関節に適用して、前記医療用器具の前記遠隔操作中に前記少なくとも1つの関節の力又はトルクを修正するように構成された、制御ユニットと、を含む、システム。
【請求項2】
前記制御ユニットは、
前記動き情報に基づいて前記ロボットユーザインターフェースのための速度ベクトルを決定するように更に構成され、前記減衰修正子は、前記速度ベクトルに基づいて決定される減衰係数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記減衰係数は、(i)前記速度ベクトルが第1の閾値を満たすことに応答する第1の減衰領域と、(ii)前記速度ベクトルが第2の閾値を満たすことに応答する第2の減衰領域とを含む減衰関数に基づいて選択される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記減衰修正子は、前記速度ベクトルに応答して連続的な一定でない関係を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記動き情報を受信することは、複数の関節の各々に対する力ベクトルを受信することを含み、前記速度ベクトルは、前記受信された力ベクトルに基づいて決定される、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記動き情報は、前記ロボットユーザインターフェースに加えられた力の大きさ又は前記ロボットユーザインターフェースの速さを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記動き情報は、前記ロボットユーザインターフェースの現在位置を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記減衰修正子を決定することは、
前記ロボットユーザインターフェースの少なくとも一部分の速さ又は速度によって複数の減衰修正子をインデックス付けすることを含み、前記決定された減衰修正子は前記速さ又は速度に対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記適用された減衰修正子は、前記少なくとも1つの関節の前記力又はトルクを、前記ロボットユーザインターフェースの一部の現在の速さ又は速度が第1の範囲内にあるときには前記現在の速さ又は速度に比例して変化させ、前記現在の速さ又は速度が第2の範囲内にあるときには前記現在の速さ又は速度に反比例して変化させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記適用された減衰修正子は、前記少なくとも1つの関節の前記力又はトルクを、第3の範囲内にあるときに固定されたままにする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記適用された減衰修正子は、前記少なくとも1つの関節の前記力又はトルクを、前記ロボットユーザインターフェースの一部の現在の速さ又は速度が第1の範囲内にあるときには可変量だけ修正し、前記第1の範囲よりも大きい第2の範囲内にあるときには固定量だけ修正する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記適用された減衰修正子は、前記現在の速さ又は速度が第4の範囲内にあるとき、対数減衰に従って前記力又はトルクを修正する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記決定された減衰修正子は、前記少なくとも1つの関節の角速度を修正する、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御ユニットは、前記ロボットユーザインターフェースの少なくとも一部の動きの間、前記減衰修正子の決定及び適用を連続的に繰り返すように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
協働して医療用器具の遠隔操作を容易にする1つ以上のリンク及び1つ以上の関節を備えるロボットユーザインターフェースの操作に基づいて、前記医療用器具の移動をロボット的に容易にすることと、
前記1つ以上の関節から動き情報を受信することと、
前記受信された動き情報に基づいて複数の異なる減衰修正子から減衰修正子を決定することと、
前記決定された減衰修正子を前記1つ以上の関節のうちの少なくとも1つの関節に適用して、前記医療用器具の前記遠隔操作中に前記少なくとも1つの関節の力又はトルクを修正することと、を含む、医療用器具を制御するための方法。
【請求項16】
前記動き情報に基づいて、前記ロボットユーザインターフェースの速さ又は速度を決定することを更に含み、前記減衰修正子は、前記速さ又は速度に基づいて決定される減衰係数である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
医療用器具の減衰制御のための手動制御入力装置であって、
前記医療用器具の操作を可能にする1つ以上のリンク及び関節と、
速さ又は速度及び/又は位置に対応する情報を制御ユニットに送信するために、前記1つ以上のリンク及び関節上に配置された1つ以上のセンサと、を備え、
前記制御ユニットが、
前記送信された情報に基づいて、可変減衰関数を適用して、前記リンク及び関節のうちの1つ以上の力又はトルクを修正するように構成されている、手動制御入力装置。
【請求項18】
前記可変減衰関数は、(i)前記速さ又は速度が第1の閾値を満たすことに応答する第1の減衰領域と、(ii)前記速さ又は速度が第2の閾値を満たすことに応答する第2の減衰領域とを含む、請求項17に記載の入力装置。
【請求項19】
前記第1の減衰領域において、前記可変減衰関数が一定の減衰係数を含み、前記第2の減衰領域において、前記可変減衰関数が一定でない減衰係数を含む、請求項18に記載の入力装置。
【請求項20】
前記可変減衰関数は、前記速さ又は速度に応答する連続的な一定でない関係を含む、請求項17に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、コントローラに関し、特に、医療システムを含むロボット対応の遠隔操作システムのための減衰コントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の医療処置では、ロボット対応の医療システムを使用して、器具及びそのエンドエフェクタの挿入及び/又は操作を制御することができる。ロボット対応の医療システムは、ロボットアーム、又は他の器具位置付けデバイスを含んでもよい。ロボット対応の医療システムは、処置中の器具の位置付けを制御するために使用されるコントローラも含んでもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の主題技術のシステム、方法及びデバイスはそれぞれ、いくつかの革新的な態様を有し、そのうちの1つとして本明細書に開示される望ましい属性を単独で司るものではない。
【0004】
様々な態様によれば、医療器具の減衰制御を提供する、手動制御入力装置の可変減衰のためのシステムが開示される。システムは、協働して医療用器具の遠隔操作を容易にする1つ以上のリンク及び1つ以上の関節を含むロボットユーザインターフェースと、制御ユニットであって、1つ以上の関節から動き情報を受信し、受信された動き情報に基づいて複数の異なる減衰修正子から減衰修正子を決定し、決定された減衰修正子を1つ以上の関節のうちの少なくとも1つの関節に適用して、医療用器具の遠隔操作中に少なくとも1つの関節の力又はトルクを修正するように構成された、制御ユニットと、を含む。いくつかの実施形態では、制御ユニットは、動き情報に基づいてロボットユーザインターフェースのための速度ベクトルを決定するように更に構成され、減衰修正子は、速度ベクトルに基づいて決定される減衰係数である。いくつかの実施形態では、減衰係数は、(i)速度ベクトルが第1の閾値を満たすことに応答する第1の減衰領域と、(ii)速度ベクトルが第2の閾値を満たすことに応答する第2の減衰領域とを含む減衰関数に基づいて選択される。
【0005】
様々な態様によれば、医療用器具の減衰制御のための方法も開示される。当該方法は、協働して医療用器具の遠隔操作を容易にする1つ以上のリンク及び1つ以上の関節を備えるロボットユーザインターフェースの操作に基づいて、医療用器具の移動をロボット的に容易にすることと、1つ以上の関節から動き情報を受信することと、受信された動き情報に基づいて複数の異なる減衰修正子から減衰修正子を決定することと、決定された減衰修正子を1つ以上の関節のうちの少なくとも1つの関節に適用して、医療用器具の遠隔操作中に少なくとも1つの関節の力又はトルクを修正することと、を含む。いくつかの実施形態では、当該方法は、動き情報に基づいて、ロボットユーザインターフェースの速さ又は速度を決定することを更に含み、減衰修正子は、速さ又は速度に基づいて決定される減衰係数である。
【0006】
様々な態様によれば、医療用器具の減衰制御のための手動制御入力装置が開示される。当該装置は、医療用器具の操作を可能にする1つ以上のリンク及び関節と、速さ又は速度及び/又は位置に対応する情報を制御ユニットに送信するために、1つ以上のリンク及び関節上に配置された1つ以上のセンサと、を備え、制御ユニットが、送信された情報に基づいて、可変減衰関数を適用して、リンク及び関節のうちの1つ以上の力又はトルクを修正するように構成される。いくつかの実施形態では、可変減衰関数は、(i)速さ又は速度が第1の閾値を満たすことに応答する第1の減衰領域と、(ii)速さ又は速度が第2の閾値を満たすことに応答する第2の減衰領域とを含む。いくつかの実施形態では、第1の減衰領域において、可変減衰関数が一定の減衰係数を含み、第2の減衰領域において、可変減衰関数が一定でない減衰係数を含む。いくつかの実施形態では、可変減衰関数は、速さ又は速度に応答する連続的な一定でない関係を含む。
【0007】
主題技術の他の構成は、主題技術の様々な構成が例示として示され説明される以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになることが理解される。理解されるように、本主題技術は、他の異なる構成も可能であり、また、そのいくつかの詳細は、本主題技術の趣旨から逸脱せずに、種々の他の点で変更が可能である。したがって、図面及び詳細な説明は、限定的な性質のものではなく、例示的な性質のものと見なされることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
開示される態様は、以下、添付の図面と併せて説明され、開示された態様を示すが、限定するものではなく、同様の称号は同様の要素を示す。
【
図1】診断及び/又は治療用気管支鏡検査処置用に配置されたカートベースのロボットシステムの例示的な一実施形態を示す。
【
図2】
図1のロボットシステムの更なる態様を描写する。
【
図3】尿管鏡検査用に配置された
図1のロボットシステムの別の例示的な実施形態を示す。
【
図4】血管処置用に配置された
図1のロボットシステムの別の例示的な実施形態を示す。
【
図5】気管支鏡検査処置用に配置されたテーブルベースのロボットシステムの例示的な一実施形態を示す。
【
図6】
図5のロボットシステムの第2の図を提供する。
【
図7】ロボットアームを収容するように構成されたシステム例を示す。
【
図8】尿管鏡検査処置用に構成されたテーブルベースのロボットシステムの例示的な一実施形態を示す。
【
図9】腹腔鏡処置用に構成されたテーブルベースのロボットシステムの例示的な一実施形態を示す。
【
図10】ピッチ又は傾き調節を有する
図5~
図9のテーブルベースのロボットシステムの例示的な一実施形態を示す。
【
図11】
図5~
図10のテーブルベースのロボットシステムのテーブルとカラムとの間のインターフェースの例示的な図示を提供する。
【
図13】ペアの器具ドライバを有する例示的な医療器具を示す。
【
図14】駆動ユニットの軸が器具の細長シャフトの軸に平行である、器具ドライバ及び器具の第2の設計を示す。
【
図15】例示的な実施形態に係る、
図13及び
図14の器具の位置などの、
図1~
図10のロボットシステムの1つ以上の要素の位置を推定する例示的な位置特定システムを示すブロック図を描く。
【
図16A】ロボット対応の医療用器具のためのコントローラを含むロボット対応の医療システムの例示的な一実施形態を示すブロック図である。
【
図16B】ハイブリッドインピーダンス及びアドミタンス制御のために構成され得る
図16Aのコントローラの例示的な一実施形態を示すブロック図である。
【
図16C】2つのジンバル及び位置決めプラットフォームを含むコントローラの例示的な一実施形態の等角図である。
【
図17】コントローラのためのジンバルの例示的な一実施形態の等角図である。
【
図18】HIDのインピーダンス制御を通じて一定の仮想減衰が追加され得ることを示す。
【
図19】本明細書において開示される主題技術の態様による、コントローラの第2の実施形態の斜視図である。
【
図20A】本明細書に開示される主題技術の態様による、異なる減衰係数を選択するための4つの領域を含む、第1の例示的な減衰関数を示す。
【
図20B】遷移レジームを含む第2の例示的な減衰関数を示す。
【
図20C】複数の遷移レジームを含む第3の例示的な減衰関数を示す。
【
図21】本明細書に開示される主題技術の態様による、医療器具の減衰制御を提供する、手動制御入力装置の可変減衰のための例示的なプロセスを示す。
【
図22】本明細書に開示される主題技術の態様による、触覚壁減衰領域を含む、ロボット関節のための第1の例示的な仮想触覚壁を示す。
【
図23】本明細書に開示される主題技術の態様による、触覚壁減衰領域及び触覚前壁減衰領域を含む、ロボット関節のための第2の例示的な仮想触覚壁を示す。
【
図24】本明細書に開示される主題技術の態様による、触覚前壁減衰領域内の減衰及び触覚壁減衰領域内の減衰を含む、関節の動きを減衰させるための例示的な減衰関数を示す。
【
図25】本明細書に開示される主題技術の態様による、医療用器具の減衰操作のための例示的なプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.概要。
本開示の態様は、腹腔鏡検査などの低侵襲性の処置、及び内視鏡検査などの非侵襲性の両方の処置を含む、様々な医療処置を実施することができるロボット対応の医療システムに統合され得る。このシステムは、内視鏡処置のうち、気管支鏡検査、尿管鏡検査、胃鏡検査などを実施することができる。
【0010】
幅広い処置を実施することに加えて、システムは、医師を支援するための強化された減衰制御などの追加の利益を提供することができる。また更に、システムは、システムの器具のうちの1つ以上をユーザ1人だけで制御することができるような、向上した使いやすさで処置を実施する能力を医師に与えることができる。
【0011】
以下、説明を目的として、図面とともに、様々な実施形態が説明される。本開示の概念の多くの他の実装態様が考えられ、本開示の実装態様で様々な利点が実現され得ることを理解されたい。本明細書には、参照に、また様々な節の位置を特定する助けとなるように、見出しを含めている。この見出しは、それに関して述べられる概念の範囲を限るものではない。本明細書全体にわたってこのような概念を適用することができる。
【0012】
A.ロボットシステム-カート。
ロボット対応の医療システムは、特定の処置に応じて様々な方式で構成され得る。
図1は、診断及び/又は治療用気管支鏡検査処置用に配置されたカートベースのロボット対応システム10の一実施形態を示す。気管支鏡検査の間、システム10には、気管支鏡検査用の処置特有気管支鏡であり得る操縦可能な内視鏡13などの医療器具を、診断ツール及び/又は治療ツールを送達する自然開口アクセスポイント(すなわち、この例ではテーブルに位置決めされた患者の口)に送達するための1つ又は2つ以上のロボットアーム12を有するカート11を備えることができる。示される通り、カート11は、アクセスポイントへのアクセスを提供するために、患者の上部胴体に近接して位置決めすることができる。同様に、アクセスポイントに対して気管支鏡を位置決めするように、ロボットアーム12を作動させることができる。消化管(Gastro-Intestinal、GI)処置を、GI処置に特化した内視鏡である胃鏡を用いて実施するときにも
図1の配置を利用することができる。
図2には、カートの例示的な実施形態をより詳細に示す。
【0013】
図1を引き続き参照すると、カート11が適切に位置決めされると、ロボットアーム12は、操縦可能な内視鏡13をロボットで、手動で、又はそれらの組み合わせで患者内に挿入することができる。示す通り、操縦可能な内視鏡13には、内側リーダー部及び外側シース部などの少なくとも2つの入れ子式パートを備えることができ、各部は、器具ドライバ28のセットから別個の器具ドライバに結合され、各器具ドライバは、個々のロボットアームの遠位端に結合されている。リーダー部をシース部と同軸上に位置合わせしやすい、器具ドライバ28のこの線形配置は、1つ又は2つ以上のロボットアーム12を様々な角度及び/又は位置に巧みに操ることによって空間において位置決めし直すことができる「仮想レール」29を作り出す。本明細書に記載の仮想レールは、破線を使用して図に描いており、したがって破線は、システムの如何なる物理的構造も描いていない。仮想レール29に沿った器具ドライバ28の並進は、外側シース部に対して内側リーダー部を入れ子にするか、又は内視鏡13を患者から前進若しくは後退させる。仮想レール29の角度は、臨床用途又は医師の好みに基づいて調節することも、並進させることも、枢動させることもできる。例えば、気管支鏡検査では、示される仮想レール29の角度及び位置は、内視鏡13への医師のアクセスを提供することと、内視鏡13を患者の口内に曲げ入れることから生じる摩擦を最小限に抑えることとの折衷案を表す。
【0014】
内視鏡13は、標的の目的場所又は手術部位に到達するまで、ロボットシステムからの正確なコマンドを使用して挿入後に患者の気管及び肺の下流に方向付けられてもよい。患者の肺網を通したナビゲーションを強化しかつ/又は望ましい標的に達するために、内側リーダー部を外側シース部から入れ子状に延ばして、関節運動を強化し、曲げ半径を大きくするように、内視鏡13を操作することができる。別個の器具ドライバ28の使用により、リーダー部とシース部とが互いに独立して駆動することも可能になる。
【0015】
例えば、内視鏡13は、患者の肺内の病巣又は小結節などの標的に生検針を送達するように方向付けられ得る。病理医によって分析される組織試料を得るように、針は内視鏡の長さにわたる作業チャネルを展開させることができる。病理の結果に応じて、更なるツールは、更なる生検について内視鏡の作業チャネルを展開させることができる。小結節を悪性であると特定した後、内視鏡13は、ツールを内視鏡下で送達し、潜在的な癌組織を切除することができる。場合によっては、診断及び治療的処置は、別個の処置で送達される必要があってもよい。これらの状況において、内視鏡13はまた、基準を送達して、標的となる小結節の場所を「マーク」するのに使用され得る。他の事例では、診断的治療及び治療的治療を同じ処置中に送達することができる。
【0016】
システム10はまた、カート11に支持ケーブルを介して接続されて、カート11への制御、電子機器、流体素子、光学系、センサ、及び/又は電力のためのサポートを提供し得るタワー30を含んでもよい。様々な実施形態によれば、タワー30は、本明細書に記載のロボットアーム(複数可)及び触覚インターフェースデバイスを含む、ロボットシステムの様々な構成要素の動作のための制御ユニットとして機能してもよく、又はそれを含んでもよい。タワー30にこのような機能を配置することにより、カート11のフォームファクタを小さくすることができ、手術を行う医師及びそのスタッフがより容易にカート11を調節しかつ/又は位置決めし直すことができる。追加的に、カート/テーブルと支持タワー30との間の機能の分割は、手術室の乱雑さを低減し、臨床ワークフローの改善を促進する。カート11を患者の近くに位置決めしてもよいが、タワー30は、処置中に邪魔にならないように離れた場所に収容することができる。いくつかの実施例では、タワー30は移動可能であってもよい。
【0017】
上述のロボットシステムをサポートするために、タワー30は、例えば、永続的な磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内にコンピュータプログラム命令を記憶するコンピュータベースの制御システムの構成要素を含んでもよい。これらの命令の実行は、実行がタワー30内で行われるのか又はカート11内で行われるのかにかかわらず、システム全体又はそのサブシステムを制御してもよい。例えば、コンピュータシステムのプロセッサによって実行されると、命令は、ロボットシステムの構成要素に、当該キャリッジ及びアームマウントを作動させ、ロボットアームを作動させ、医療器具を制御させることができる。例えば、制御信号を受信したことに応答して、ロボットアームの関節にあるモータが、アームをある特定の姿勢に位置決めすることができる。
【0018】
タワー30は、内視鏡13を通して展開され得るシステムに制御された灌注及び吸引能力を提供するために、ポンプ、流量計、弁制御、及び/又は流体アクセスも含んでもよい。これらの構成要素は、タワー30のコンピュータシステムも使用して制御されてもよい。いくつかの実施形態では、別個のケーブルを介して内視鏡13に灌注能力及び吸引能力を直接もたらすことができる。
【0019】
タワー30は、フィルタリングされ、保護された電力をカート11に提供するように設計された電圧及びサージ保護具を含んでもよく、それによって、カート11内に電力変圧器及び他の補助電力構成要素を配置することが回避され、カート11はより小さく、より移動可能になる。
【0020】
タワー30は、ロボットシステム10全体に展開されたセンサのための支持機器も含んでもよい。例えば、タワー30は、ロボットシステム10全体にわたり光センサ又はカメラから受信したデータを検出し、受信し、処理するためのオプトエレクトロニクス機器を含んでもよい。制御システムと組み合わせて、このようなオプトエレクトロニクス機器を使用して、タワー30内を含むシステム全体にわたって展開した任意の数のコンソールに表示するためのリアルタイム画像を生成することができる。同様に、タワー30は、展開した電磁(ElectroMagnetic、EM)センサから信号を受信し、受信した信号を処理するための電子サブシステムも含むことができる。タワー30はまた、医療器具内又は医療器具上のEMセンサによる検出用のEM場発生器を収容し、位置決めするのにも使用することができる。
【0021】
タワー30はまた、システムの残りの部分で利用可能な他のコンソール、例えば、カートの上部に装着されたコンソールに追加して、コンソール31も含んでもよい。コンソール31は、オペレータである医師用に、ユーザインターフェース及びタッチスクリーンなどの表示画面を含むことができる。システム10のコンソールは、通常、ロボット制御と、内視鏡13のナビゲーション情報及び位置特定情報などの処置の術前情報及びリアルタイム情報との両方を提供するように設計される。コンソール31が、医師が使用できる唯一のコンソールではない場合、看護師などの第2のオペレータがコンソール31を使用して、患者の健康又は生命及びシステムの工程を監視するとともに、ナビゲーション情報及び位置特定情報などの処置固有のデータを提供することもできる。他の実施形態では、コンソール30は、タワー30とは別個の本体内に収容される。
【0022】
タワー30は、1つ又は2つ以上のケーブル又は接続部(図示せず)を介してカート11及び内視鏡13に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、タワー30からのサポート機能が、1本のケーブルを通してカート11に提供されることにより、手術室を簡略化し、整理することができる。他の実施態様では、特定の機能を別個のケーブル線及び接続部において結合することができる。例えば、電力ケーブル1本だけを通してカートに電力を供給することができる一方、制御装置、光学系、流体素子、及び/又はナビゲーションに対する支えを、別個のケーブルを通して与えることができる。
【0023】
図2は、
図1に示されるカートベースのロボット対応システムからのカートの実施形態の詳細な図を提供する。カート11は、通常、細長支持構造14(しばしば「カラム」と呼ばれる)、カート基台15、及びカラム14の頂部にあるコンソール16を含む。カラム14は、1つ又は2つ以上のロボットアーム12(
図2には3つ示している)の展開を支えるためのキャリッジ17(代替として「アーム支持体」)などの1つ又は2つ以上のキャリッジを含むことができる。キャリッジ17は、患者に対する位置決めを良くするように、直交軸に沿って回転してアーム12の基台を調節する、個々に構成可能なアームマウントを含むことができる。キャリッジ17はまた、キャリッジ17がカラム14に沿って垂直方向に並進するのを可能にするキャリッジインターフェース19を含む。
【0024】
キャリッジインターフェース19は、キャリッジ17の垂直方向の並進をガイドするためにカラム14の両側に位置決めされているスロット20などのスロットを通してカラム14に接続されている。スロット20には、カート基台15に対して様々な垂直方向の高さでキャリッジを位置決め、保持するための垂直方向並進インターフェースが入っている。キャリッジ17の垂直方向並進により、カート11は、様々なテーブル高さ、患者の大きさ、及び医師の好みを満たすようにロボットアーム12のリーチを調節することが可能となる。同様に、キャリッジ17上の個々に構成可能なアームマウントにより、ロボットアーム12のロボットアーム基台21を様々な構成で角度付けすることが可能となる。
【0025】
いくつかの実施形態では、キャリッジ17が垂直方向に並進するときにカラム14の内部チャンバ及び垂直方向の並進インターフェース内に汚れ及び流体が侵入するのを防止するために、スロット20には、スロット表面と同一平面にありかつ平行であるスロットカバーが追加されてもよい。スロット20の垂直上下の近くに位置決めされたばねスプール対を通してスロットカバーを展開させることができる。カバーは、キャリッジ17が上下に垂直方向に並進するにつれて、コイル状態から伸縮するように展開するまで、スプール内でコイル巻きにされている。スプールのばね仕掛けにより、キャリッジ17がスプールに向かって並進するときにはカバーをスプールに引っ込める力が与えられる一方、キャリッジ17がスプールから離れるように並進するときには密封も維持する。キャリッジ17が並進するのにつれて、カバーが適切に伸縮するのを確実にするために、例えば、キャリッジインターフェース19にあるブラケットを使用してキャリッジ17にカバーを接続することができる。
【0026】
カラム14は、例えば、コンソール16からの入力などのユーザ入力に応答して生成された制御信号に応答してキャリッジ17を機械的に並進させるために垂直方向に位置合わせされた主ねじを使用するように設計された、ギア及びモータなどの機構を内部に含んでもよい。
【0027】
ロボットアーム12は、一般に、一連の関節24によって接続されている一連のリンク23によって分離されたロボットアーム基台21及びエンドエフェクタ22を含んでもよく、各関節は独立したアクチュエータを含み、各アクチュエータは、独立して制御可能なモータを含む。それぞれ別々に制御可能な関節は、ロボットアームが使用できる独立した自由度を示す。アーム12のそれぞれには7つの関節があり、引いては7つの自由度をもたらす。多数の関節により、多数の自由度がもたらされ、「冗長」自由度を可能にする。冗長自由度により、ロボットアーム12が、様々なリンク位置及び関節角度を使用して、空間において特定の位置、配向、及び軌道で、そのそれぞれのエンドエフェクタ22を位置決めすることが可能になる。これにより、システムが空間において望ましい個所から医療用器具を位置決めし、方向付けることが可能になる一方、医師がアーム関節を患者から離れる臨床上都合の良い位置に移動させて、アームの衝突を回避しながらより大きいアクセスを引き起こすことを可能にする。
【0028】
カート基台15は、床の上のカラム14、キャリッジ17、及びアーム12の重量の釣り合いをとる。したがって、カート基台15は、電子機器、モータ、電源とともに、カートの移動及び/又は固定化のいずれでも可能にする構成要素など、より重い部品を収容する。例えば、カート基台15は、処置前にカートが部屋中をあちこちに容易に移動することを可能にする、転動可能なホイール形状のキャスタ25を含む。適切な位置に到達した後、キャスタ25は、処置中にカート11を所定の場所に保持するためのホイールロックを使用して動かないようにされてもよい。
【0029】
カラム14の垂直方向の端部に位置決めされたコンソール16は、ユーザ入力を受信するためのユーザインターフェース及び表示画面(又は、例えば、タッチスクリーン26などの二重目的デバイス)の両方を可能にして、術前データ及び術中データの両方を医師であるユーザに提供する。タッチスクリーン26上の潜在的な術前データは、術前計画、術前コンピュータ断層撮影(computerized tomography、CT)スキャンから導出されたナビゲーション及びマッピングデータ、並びに/又は術前の患者への問診からのメモを含んでもよい。ディスプレイ上の術中データが、ツールから提供される光学情報、センサからのセンサ情報及び座標情報とともに、呼吸、心拍数、及び/又はパルスなどの不可欠な患者統計も含むことがある。医師に、キャリッジ17の反対側のカラム14側からコンソールにアクセスさせるように、コンソール16を位置決めし、傾けることができる。この位置から、医師は、コンソール16をカート11の背後から操作しながら、コンソール16、ロボットアーム12、及び患者を見ることができる。示す通り、コンソール16は、カート11を巧みに操り、安定させるのを助けるハンドル27も含む。
【0030】
図3は、尿管鏡検査用に配置された、ロボット対応システム10の実施形態を示す。尿管鏡検査処置では、患者の尿道及び尿管を通るように設計された処置専用内視鏡である尿管鏡32を患者の下腹部領域に送達するようにカート11を位置決めすことができる。尿管鏡検査では、尿管鏡32が、その領域における敏感な解剖学的構造に対する摩擦及び力を抑制するように患者の尿道と直接に位置合わせされることが望ましいことがある。示す通り、ロボットアーム12が尿管鏡32を、患者の尿道に直接線形アクセスするように位置決めするのを可能にするように、カート11をテーブルの脚に位置合わせすることができる。テーブルの脚から、ロボットアーム12は、尿道を通して患者の下腹部に直接に、仮想レール33に沿って尿管鏡32を挿入することができる。
【0031】
気管支鏡検査におけるのと同様の制御技法を使用して尿道に挿入した後、尿管鏡32は、診断及び/又は治療用途のために、膀胱、尿管、及び/又は腎臓にナビゲートされてもよい。例えば、尿管鏡32は、尿管及び腎臓に指向され、尿管鏡32の作業チャネルの下方に展開されたレーザ又は超音波砕石デバイスを使用して、形成された腎臓結石を破壊することができる。結石破砕が完了した後、尿管鏡32を展開していくバスケットを使用して、結果として得られた結石片を取り除くことができる。
【0032】
図4は、血管処置用に同様に配置された、ロボット対応システムの実施形態を示す。血管処置において、システム10は、カート11が、操縦可能なカテーテルなどの医療器具34を、患者の脚にある大腿動脈におけるアクセスポイントに送達することができるように構成され得る。大腿動脈は、ナビゲーションのためのより大きな直径と、患者の心臓への迂回と蛇行が比較的少ない通路との両方を提供し、これによりナビゲーションが簡単になる。尿管鏡検査処置に見られるように、カート11を患者の脚及び下腹部に向けて位置決めすることにより、ロボットアーム12に、患者の大腿/腰領域における大腿動脈アクセスポイントへの直接線形アクセスを仮想レール35に与えることを可能にさせることができる。動脈への挿入後、器具ドライバ28を並進させることによって、医療器具34を方向付けし、挿入することができる。これに加えて又は代わりに、例えば、肩及び手首の近くの頸動脈及び腕動脈などの代替の血管アクセスポイントに達するために、カートを患者の上腹部の周囲に位置決めすることができる。
【0033】
B.ロボットシステム-テーブル。
ロボット対応の医療システムの実施形態はまた、患者テーブルを組み込んでもよい。テーブルの組み込みは、カートを取り外すことによって手術室内の資本設備量を減らし、患者へのアクセスを良くすることができる。
図5は、気管支鏡検査処置用に配置されたこのようなロボット対応システムの一実施形態を示す。システム36は、プラットフォーム38(「テーブル」又は「ベッド」として図示)を床全体にわたり支えるための支持構造体又はカラム37を含む。カートベースのシステムとよく似て、システム36のロボットアーム39のエンドエフェクタには、器具ドライバ42の線形位置合わせから形成された仮想レール41を通して又はそれに沿って、
図5の気管支鏡40などの細長医療器具を巧みに操るように設計されている器具ドライバ42が含まれる。実際には、エミッタ及び検出器をテーブル38の周りに置くことによって、蛍光透視撮像をもたらすためのCアームを患者の上腹部域全体にわたって位置決めすることができる。
【0034】
図6は、説明を目的として、患者及び医療器具なしのシステム36の別の図を提供する。示す通り、カラム37が、システム36において、1つ又は2つ以上のロボットアーム39の基台となり得る、リング形状として示される1つ又は2つ以上のキャリッジ43を含むことができる。キャリッジ43は、カラム37の長さを走る垂直カラムインターフェース44に沿って並進して、そこからロボットアーム39を患者に達するように位置決めすることができる様々な視座を与えることができる。キャリッジ43は、カラム37内に位置決めされた機械式モータを使用してカラム37を中心として回転して、ロボットアーム39に、例えば、患者の両側などのテーブル38の複数の側面へアクセスさせることができる。複数のキャリッジを有する実施形態では、キャリッジは、カラムに別々に位置決めされてもよく、他のキャリッジとは無関係に並進しかつ/又は回転してもよい。キャリッジ43は、カラム37を取り囲む必要はなく、円形であることさえ必要はないが、図示のリング形状は、構造上のバランスを維持しながらカラム37を中心としたキャリッジ43が回転を容易にする。キャリッジ43の回転及び並進により、システムが、内視鏡及び腹腔鏡などの医療器具を患者の様々なアクセスポイントに位置合わせすることが可能になる。他の実施形態(図示せず)では、システム36は、それに並んで延在するバー又はレールの形態の調節式アーム支持体を有する患者テーブル又は患者ベッドを含んでもよい。垂直方向に調節することができる調節式アーム支持体に1つ又は2つ以上のロボットアーム39を取り付けることができる(例えば、肘関節を有する肩部を介して)。垂直方向の調節をもたらすことによって、患者テーブル又は患者ベッドの下にロボットアーム39をコンパクトに収容することができ、その後、処置中に上げることができるのが好都合である。
【0035】
アーム39は、ロボットアーム39に追加の構成可能性を提供するために個別に回転及び/又は入れ子式に延在し得る一連の関節を備えるアームマウント45のセットを介してキャリッジに装着されてもよい。更に、アームマウント45をキャリッジ43に位置決めすることができ、キャリッジ43が適切に回転すると、アームマウント45を、テーブル38の同じ側面(
図6に示す通り)、テーブル38の両側(
図9に示す通り)、又はテーブル38の隣り合う側面(図示せず)のいずれにでも位置決めすることができる。
【0036】
カラム37は、テーブル38の支持及びキャリッジの垂直方向の並進のための経路を構造的に提供する。内部に、カラム37は、キャリッジの垂直並進を案内するための主ねじと、主ねじに基づくそのキャリッジの並進を機械化するためのモータとを備えることができる。カラム37は、キャリッジ43に、またそれに取り付けられたロボットアーム39に電力信号及び制御信号を伝達することもできる。
【0037】
テーブル基台46は、
図2に示すカート11のカート基台15と同様の機能を果たし、テーブル/ベッド38、カラム37、キャリッジ43及びロボットアーム39の釣り合いをとるためにより重い構成要素を収容する。テーブル基台46にはまた、剛性キャスタも組み込んで、処置中に安定性をもたらすことができる。テーブル基台46の底から展開するキャスタは、基台46の両側で反対方向に伸び、システム36を移動させる必要があるときには引っ込むことができる。
【0038】
引き続き
図6によれば、システム36は、テーブルとタワーとの間でシステム36の機能を分割して、テーブルのフォームファクタ及びバルクを低減するタワー(図示せず)も含んでもよい。先に開示した実施形態に見られるように、タワーは、処理能力、計算能力、及び制御能力、電力、流体素子、並びに/又は光学及びセンサ処理などの様々なサポート機能をテーブルに与えることができる。タワーは、医師のアクセスを改善し、手術室を整理整頓するように、患者から離して位置決めされるようにも移動させることができるものである。更に、タワーに構成要素を置くことにより、ロボットアームの考えられる収容用に、テーブル基台に収納スペースを広げることが可能になる。タワーは、キーボード及び/又はペンダントなどのユーザ入力用のユーザインターフェースと、リアルタイム撮像、ナビゲーション、及び追跡情報などの術前及び術中情報を対象とする表示画面(又はタッチスクリーン)との両方を提供するマスタコントローラ又はコンソールも含むことができる。いくつかの実施形態では、タワーは、通気に使用されるガスタンク用のホルダも含むことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、テーブル基台は、使用されていないときにロボットアームを収容して格納してもよい。
図7は、テーブルベースのシステムの一実施形態におけるロボットアームを収容するシステム47を示す。システム47では、ロボットアーム50、アームマウント51、及びキャリッジ48を基台49内に収容するように、キャリッジ48を基台49の中に垂直方向に並進させることができる。基台カバー52は、キャリッジ48、アームマウント51、及びアーム50を、カラム53を中心として展開させるのに、基台カバー52を並進し、引っ込めて開き、使用しないときにはそれらをしまって保護するために、基台カバーを閉じることができる。基台カバー52をその開口の縁に沿って膜54で密閉して、閉じたときに汚れ及び流体の侵入を防ぐことができる。
【0040】
図8は、尿管鏡検査処置用に構成されたロボット対応テーブルベースのシステムの一実施形態を示す。尿管鏡検査では、テーブル38は、患者をカラム37及びテーブル基台46からオフ角に位置決めするためのスイベル部55を含むことができる。スイベル部55は、スイベル部55の底部をカラム37から離して位置決めするために、枢動点(例えば、患者の頭部より下に位置する)を中心に回転又は枢動することができる。例えば、スイベル部55の枢動により、Cアーム(図示せず)を、テーブル38より下のカラム(図示せず)とスペースを奪い合うことなく、患者の下腹部にわたって位置決めすることができる。カラム37の周りにキャリッジ35(図示せず)を回転させることにより、ロボットアーム39は、尿道に到達するように、仮想レール57に沿って、患者の鼠径部領域に尿管鏡56を直接挿入してもよい。尿管鏡検査では、この処置にわたって患者の脚の位置を支え、患者の鼠径部領域への明確なアクセスを可能にするように、テーブル38のスイベル部55にあぶみ58を固定することもできる。
【0041】
腹腔鏡処置では、患者の腹壁内の小さな切開部を通して、低侵襲性器具を患者の解剖学的構造に挿入してもよい。いくつかの実施形態では、低侵襲性器具には、患者内の解剖学的構造にアクセスするのに使用されるシャフトなどの細長剛性部材が含まれる。患者の腹腔の膨張後、把持、切断、アブレーション、縫合などの外科タスク又は医療タスクを実施するために、この器具を方向付けることができる。いくつかの実施形態では、この器具は、腹腔鏡などのスコープを備えることができる。
図9は、腹腔鏡処置用に構成されたロボット対応テーブルベースのシステムの一実施形態を示す。
図9に図示されるように、システム36のキャリッジ43は回転し、垂直方向に調整されて、器具59が患者の両側の最小切開部を通過して患者の腹腔に到達するようにアームマウント45を使用して位置決めされ得るように、ロボットアーム39の対をテーブル38の両側に位置決めしてもよい。
【0042】
腹腔鏡処置に対応するために、ロボット対応テーブルシステムはまた、プラットフォームを所望の角度に傾斜させてもよい。
図10は、ピッチ調整式又は傾き調整式のロボット対応医療システムの一実施形態を示す。
図10に示す通り、システム36は、テーブル38の傾きに適合して、テーブルの一部分を他の部分よりも床から離して位置決めする。更に、アーム39がテーブル38と同じ平面関係を維持するような傾斜に一致するように、アームマウント45が回転することができる。急角度に適合するために、カラム37は、テーブル38が床に接触するか又は基台46と衝突するのを防ぐようにカラム37の垂直伸びを可能にする入れ子部60も含むことができる。
【0043】
図11は、テーブル38とカラム37との間のインターフェースの詳細な図を提供する。カラム37に対するテーブル38のピッチ角を複数の自由度で変えるように、ピッチ回転機構61を構成することができる。カラム-テーブルインターフェースにおける直交軸1、2の位置決めによって、ピッチ回転機構61を有効化することができ、各軸は、電気ピッチ角コマンドに応答して別々のモータ3、4によって作動する。あるねじ5に沿った回転は、ある軸1における傾き調節を可能にすると考えられる一方、もう1つのねじ6に沿った回転は、もう1つの軸2に沿った傾き調節を可能にすると考えられる。いくつかの実施形態では、球関節を使用すると、カラム37に対するテーブル38のピッチ角を複数の自由度で変えることができる。
【0044】
例えば、ピッチ調整は、テーブルをトレンデレンブルグ体位に位置決めしようとするときに、すなわち下腹部手術のために患者の下腹部よりも床からより高い位置に患者の下腹部を位置決めしようとするときに、特に有用である。トレンデレンブルグ体位により、重力によって患者の内臓を患者の上腹部に滑らせ、低侵襲性器具が入って腹腔鏡前立腺切除術などの下腹部の外科処置又は医療処置を実施する際に、腹腔を空にする。
【0045】
C.器具ドライバ及びインターフェース。
システムのロボットアームのエンドエフェクタは、(i)医療器具を作動させるための電気機械的手段を組み込む器具ドライバ(代替的には、「器具駆動機構」又は「器具デバイスマニピュレータ」と呼ばれる)と、(ii)モータなどの任意の電気機械的構成要素を欠いていてもよい除去可能な又は取り外し可能な医療器具と、を含む。この二分は、医療処置において使用される医療器具を滅菌する必要性と、医療器具の複雑な機械組立と敏感な電子機器とに起因して高価な資本設備を十分に滅菌することができないこと、によって引き起こされる可能性がある。したがって、医師又は医師のスタッフによる個々の滅菌又は廃棄時に、器具ドライバ(引いてはそのシステム)から取り外され、除去され、入れ替えられるように、医療器具を設計することができる。これに対して、器具ドライバは、取り替えられなくても、滅菌されなくても済み、保護のために掛け布をすることができる。
【0046】
図12は、例示的な器具ドライバを示す。ロボットアームの遠位端に位置決めされた器具ドライバ62は、駆動軸64を介して医療器具に制御式トルクを与えるように平行軸を伴って配置された1つ又は2つ以上の駆動ユニット63で構成されている。各駆動ユニット63は、器具と相互作用するための個別の駆動軸64と、モータ軸回転を望ましいトルクに変換するためのギアヘッド65と、駆動トルクを発生させるためのモータ66と、モータ軸の回転速度を測定して制御回路にフィードバックを与えるエンコーダ67と、制御信号を受信して駆動ユニットを作動させるための制御回路68と、を備える。各駆動ユニット63は、他と無関係に制御され、電動化され、器具ドライバ62は、複数(
図12では4つを示す)の独立した駆動出力を医療器具に与えることができる。作動時、制御回路68が、制御信号を受信し、モータ66にモータ信号を送信し、エンコーダ67によって測定された結果として得られたモータ回転速度を望ましい回転の速度と比較し、モータ信号を変調して望ましいトルクをもたらすと考えられる。
【0047】
滅菌環境を必要とする処置のために、ロボットシステムは、器具ドライバと医療器具との間に位置する、滅菌ドレープに接続された滅菌アダプタなどの駆動インターフェースを組み込んでもよい。滅菌アダプタの主な目的は、駆動軸と駆動入力との物理的分離、引いては無菌性を維持しながら、器具ドライバの駆動軸から器具の駆動入力に角運動を伝達することである。したがって、滅菌アダプタ例は、器具ドライバの駆動軸と対合することが意図された一連の回転入力及び出力と、器具への駆動入力とで構成することができる。滅菌アダプタに接続される滅菌ドレープは、透明プラスチック又は半透明プラスチックなどの薄い可撓性材料で構成され、器具ドライバ、ロボットアーム、及びカート(カートベースのシステムにおける)又はテーブル(テーブルベースのシステムにおける)などの資本設備を覆うように設計されている。ドレープの使用により、滅菌を必要としない範囲(すなわち、非滅菌野)に依然として位置している間に、資本設備を患者に近接して位置決めすることが可能となる。滅菌ドレープのもう一方の側では、医療器具は、滅菌を必要とする範囲(すなわち、滅菌野)において患者と界面でつながることができる。
【0048】
D.医療器具。
図13は、ペアの器具ドライバを備えた例示的な医療器具を示す。ロボットシステムで使用するように設計された他の器具と同じく、医療器具70は、細長シャフト71(又は細長本体)及び器具基台72を備える。医師による手動相互作用が意図されているその設計により「器具ハンドル」とも呼ばれる器具基台72には、通常、ロボットアーム76の遠位端において器具ドライバ75上の駆動インターフェースを貫通する駆動出力74と対合するように設計されている回転式駆動入力73、例えば、レセプタクル、プーリ、又はスプールを備えることができる。物理的に接続されると、掛け金が掛けられると、かつ/又は結合されると、器具基台72の対合駆動入力73は、器具ドライバ75における駆動出力74と回転軸を共有して、駆動出力74から駆動入力73へのトルクの伝達を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、駆動出力74には、駆動入力73にあるレセプタクルと対合するように設計されているスプラインを備えることができる。
【0049】
細長シャフト71は、例えば、内視鏡におけるような解剖学的開口部若しくは管腔、又は腹腔鏡検査におけるような低侵襲性切開部のいずれかを通して送達されるように設計される。細長シャフト71は、可撓性(例えば、内視鏡と同様の性質を有する)若しくは剛性(例えば、腹腔鏡と同様の性質を有する)のいずれでもよく、又は可撓性部と剛性部との両方のカスタマイズされた組み合わせを含めてもよい。腹腔鏡検査用に設計される場合、少なくとも1つの自由度を備えるクレビスから形成された関節式リストから延在するエンドエフェクタに剛性細長シャフトの遠位端を接続することができ、また駆動入力が器具ドライバ75の駆動出力74から受信したトルクに応答して回転するにつれて、テンドンからの力に基づいて作動することができる、例えば、把持具又ははさみなどの手術ツール又は医療器具に剛性細長シャフトの遠位端を接続することができる。内視鏡検査用に設計される場合、可撓性の細長シャフトの遠位端は、器具ドライバ75の駆動出力74から受信したトルクに基づいて関節運動させ、曲げることができる操縦可能屈曲部又は制御可能屈曲部を含むことができる。
【0050】
器具ドライバ75からのトルクは、シャフト71に沿った腱を使用して細長シャフト71の下流に伝達される。器具ハンドル72内の個々の駆動入力73にプルワイヤなどのこれらの個々のテンドンを個別に固定することができる。ハンドル72から、テンドンが、細長シャフト71に沿って1つ又は2つ以上のプルルーメンを進んでいき、細長シャフト71の遠位部分に固定されるか、又は細長シャフトの遠位部分にあるリストに固定される。腹腔鏡処置、内視鏡処置、又はハイブリッド処置などの外科処置中、リスト、把持具、又ははさみなどの遠位取り付けエンドエフェクタに、これらのテンドンを結合することができる。このような配置下で、駆動入力73に及ぼされるトルクは、テンドンに張力を伝達することにより、エンドエフェクタを何らかの方式で作動させると考えられる。いくつかの実施形態では、外科処置中、テンドンが、軸を中心として関節を回転させることによって、エンドエフェクタをある方向又は別の方向に移動させ得る。これに加えて又は代わりに、テンドンからの張力によって把持具が閉じる、細長シャフト71の遠位端で把持具の1つ以上のジョーにテンドンを接続することができる。
【0051】
内視鏡検査では、腱は、接着剤、制御リング、又は他の機械的固定を介して、細長シャフト71に沿って(例えば、遠位端に)位置決めされている屈曲部又は関節運動部に結合されてもよい。屈曲部分の遠位端に固定して取り付けられると、駆動入力73に及ぼされるトルクがテンドンに伝わっていくことにより、より柔らかい屈曲部分(関節運動部分又は関節運動領域と呼ばれることがある)が曲がるか又は関節運動すると考えられる。非屈曲部分に沿って、個々のテンドンを内視鏡シャフトの壁に沿って(又は内側に)方向付ける個々のプルルーメンを螺旋状又は渦巻状にして、プルワイヤにおける張力からもたらされる半径方向の力の釣り合いをとるのが都合の良い場合がある。これらの間の螺旋及び/又は間隔の角度は、特定の目的で変えることも巧みに工作することもでき、螺旋が狭くなると、負荷力下で劣ったシャフト圧縮を呈する一方、螺旋の程度が下がると、負荷力下で優れたシャフト圧縮をもたらすが、曲げの限界も呈する。スペクトルのもう一方の端では、プルルーメンを細長シャフト71の長手方向軸に平行に方向付けると、望ましい曲がり部分又は関節運動式部分における制御式関節運動を可能にすることができる。
【0052】
内視鏡検査では、細長シャフト71は、ロボット処置を支援するいくつかの構成要素を収容する。細長シャフトは、手術ツール(又は医療器具)、灌注、及び/又は吸引をシャフト71の遠位端における手術部位に展開させるためのワーキングチャネルで構成され得る。細長シャフト71には、光学カメラを含むことがある光学組立体に/から遠位先端において信号を伝える、ワイヤ及び/又は光ファイバも収容することができる。シャフト71は、発光ダイオードなどの近位に位置する光源からシャフトの遠位端に光を搬送するための光ファイバも収容してもよい。
【0053】
器具70の遠位端では、遠位先端部は、診断及び/又は治療、灌注、及び吸引のためにツールを手術部位に送達するための作業チャネルの開口部を含んでもよい。遠位先端には、内部解剖学的空間の画像を取り込むために、ファイバスコープ又はデジタルカメラなどのカメラ用のポートも含むことができる。これに関連して、遠位先端には、カメラを使用する際に解剖学的空間を照らすための光源用のポートも含むことができる。
【0054】
図13の実施例では、駆動シャフト軸、したがって駆動入力軸は、細長シャフトの軸に直交する。しかし、この配置は、細長シャフト71のロール能力を複雑にする。駆動入力73を静止させながら、細長シャフト71をその軸に沿って転がすことの結果として、テンドンが駆動入力73から出て、細長シャフト71内のプルルーメンに入るにつれて、テンドンの望ましからざるもつれをもたらす。結果として生じるこのようなテンドンのもつれは、内視鏡処置中に可撓性の細長シャフトの移動を予測することを目的とする如何なる制御アルゴリズムも邪魔することがある。
【0055】
図14は、駆動ユニットの軸が器具の細長シャフトの軸に平行である、器具ドライバ及び器具の別の設計を示す。示す通り、円形の器具ドライバ80は、その駆動出力81がロボットアーム82の端において平行に位置合わせされた状態の4つの駆動ユニットを備える。駆動ユニット及びそのそれぞれの駆動出力81は、その組立体83内の駆動ユニットのうちの1つによって駆動される器具ドライバ80の回転組立体83に収容されている。回転駆動ユニットによって与えられるトルクに応答して、回転組立体83は、回転組立体83を器具ドライバの非回転部84に接続する円形ベアリングに沿って回転する。電力信号及び制御信号が、器具ドライバ80の非回転部84から電気接点を通して回転組立体83に電力信号及び制御信号を伝えることができ、ブラシ付きスリップリング接続(図示せず)により回転を通して維持され得る。他の実施形態では、回転組立体83は、非回転可能部84に一体化され、引いては他の駆動ユニットと平行ではない別個の駆動ユニットに応答することができる。回転機構83により、器具ドライバ80が、器具ドライバ軸85を中心とする単一ユニットとして、駆動ユニット及びそのそれぞれの駆動出力81を回転させることが可能になる。
【0056】
先に開示した実施形態と同様に、器具86は、細長シャフト部分88と、器具ドライバ80内の駆動出力81を受け入れるように構成された複数の駆動入力89(レセプタクル、プーリ、及びスプールなど)を含む器具基台87(説明目的のために透明な外部スキンで示される)と、を含んでもよい。先の開示した実施形態とは異なり、器具シャフト88は、器具基台87の中心から延び、軸は、
図13の設計にあるように直交するのではなく、駆動入力部89の軸に実質的に平行である。
【0057】
器具ドライバ80の回転組立体83に結合されると、器具基台87及び器具シャフト88を含む医療器具86は、器具ドライバ軸85を中心にして回転組立体83と一緒に回転する。器具シャフト88が器具基台87の中心に位置決めされているため、器具シャフト88は、取り付けられると器具ドライバ軸85と同軸になる。したがって、回転組立体83の回転により、器具シャフト88は、自らの長手方向軸を中心として回転する。また、器具基台87が器具シャフト88とともに回転するので、器具基台87にある駆動入力89に接続されたいずれのテンドンも、回転中にもつれることはない。したがって、駆動出力81、駆動入力89、及び器具シャフト88の軸の平行性は、どの制御テンドンももつれさせることなくシャフト回転を可能にする。
【0058】
E.ナビゲーション及び制御。
従来の内視鏡検査は、オペレータである医師に腔内誘導を提供するために、蛍光透視法(例えば、Cアームを通して送達され得るような)、及び他の形態の放射線ベースの撮像モダリティの使用を伴うことがある。これに対し、主題技術によって意図されるロボットシステムは、放射線への医師の曝露を減らし、手術室内の機器量を減らすために、非放射線ベースのナビゲーション手段及び位置特定手段を提供することができる。本明細書で使用する際、「位置特定」という用語は、基準座標系内の対象物の位置を判断し/又は監視することを指すことがある。術前写像、コンピュータビジョン、リアルタイムEM追跡、及びロボットコマンドデータなどの技術を個別に又は組み合わせて使用して、放射線のない手術環境を実現することができる。放射線ベースの撮像モダリティが依然として使用される他のケースでは、術前写像、コンピュータビジョン、リアルタイムEM追跡、及びロボットコマンドデータを個別に又は組み合わせて使用して、放射線ベースの撮像モダリティを通してのみ得られる情報を向上させることができる。
【0059】
図15は、例示的な実施形態による、器具の場所など、ロボットシステムの1つ以上の要素の場所を推定する位置特定システム90を示すブロック図である。位置特定システム90は、1つ又は2つ以上の命令を実行するように構成された1つ又は2つ以上のコンピュータデバイスセットであってもよい。コンピュータデバイスは、上で考察した1つ又は2つ以上の構成要素における1つのプロセッサ(又は複数のプロセッサ)及びコンピュータ可読メモリによって具体化されてもよい。一例として、コンピュータデバイスは、
図1に示すタワー30、
図1~
図4に示すカート、
図5~
図10に示すベッドにあってもよいが、それに限定されるものではない。
【0060】
図15に示されるように、位置特定システム90は、入力データ91~94を処理して医療器具の遠位先端部の位置データ96を生成する位置特定モジュール95を含んでもよい。位置データ96は、基準系に対する器具の遠位端の場所及び/又は配向を表すデータ又は論理であってもよい。基準系とは、患者の解剖学的構造に対する、又はEM場発生器(EM場発生器についての以下の考察を参照)などの分かっている対象物に対する基準系とすることができる。
【0061】
ここで、様々な入力データ91~94についてより詳細に説明する。低用量CTスキャンの収集の使用を通して術前写像を果たすことができる。術前CTスキャンは、例えば、患者の内部解剖学的構造の切欠図の「スライス」として可視化される3次元画像に再構成される。全体として分析される場合、患者の肺網などの患者の解剖学的構造の解剖学的空腔、解剖学的空間、及び解剖学的構造を対象とする画像ベースのモデルを生成することができる。中心線形状などの手法をCT画像から判断し、近似して、モデルデータ91(術前CTスキャンのみを使用して生成された場合は「術前モデルデータ」とも呼ばれる)と呼ばれる患者の解剖学的構造の3次元ボリュームを作成することができる。中心線形状の使用は、米国特許出願第14/523,760号で考察されており、その内容はその全体が本明細書に組み込まれる。ネットワーク位相モデルもまた、CT画像から導出することができ、気管支鏡検査に特に適している。
【0062】
いくつかの実施形態では、器具はカメラを装備して、視覚データ92を提供してもよい。位置特定モジュール95が、1つ又は2つ以上の視覚ベースの場所追跡を可能にするように、視覚データを処理することができる。例えば、術前モデルデータを視覚データ92と併用して、医療器具(例えば、内視鏡、又は内視鏡のワーキングチャネルを通って前進する器具)のコンピュータビジョンベースの追跡を可能にすることができる。例えば、術前モデルデータ91を使用して、ロボットシステムは、内視鏡の予想される移動路に基づいて、モデルから予測される内視鏡画像ライブラリを起こすことができ、各画像はモデル内の位置にリンクされる。手術中に、カメラ(例えば、内視鏡の遠位端にあるカメラ)に取り込まれたリアルタイム画像を画像ライブラリにあるものと比較して、位置特定を助けるために、ロボットシステムがこのライブラリを参照することができる。
【0063】
他のコンピュータビジョンベースの追跡技術は、特徴追跡を使用して、カメラ、ひいては、内視鏡の運動を判定する。位置特定モジュール95のいくつかの特徴は、解剖学的管腔に対応する円形幾何学形状を術前モデルデータ91において特定し、その幾何学的形状の変化を追跡し、どの解剖学的管腔が選択されたか、またカメラの相対的な回転及び/又は並進運動を確認し得る。位相マップの使用は、視覚ベースのアルゴリズム又は視覚ベースの技法を更に向上させることができる。
【0064】
光学フロー、別のコンピュータビジョンベースの技術は、カメラの移動を推測するために、視覚データ92内のビデオシーケンス内の画像ピクセルの変位及び並進を分析してもよい。光学フロー技術の例としては、運動検出、物体セグメンテーション計算、輝度、運動補償符号化、立体視差測定などを挙げることができる。複数の反復にわたり複数のフレームを比較することにより、カメラ(及びしたがって内視鏡)の移動及び場所を判定することができる。
【0065】
位置特定モジュール95は、リアルタイムEM追跡を使用して、術前モデルによって表される患者の解剖学的構造に登録され得るグローバル座標系内に、内視鏡のリアルタイムの位置を生成することができる。EM追跡では、医療器具(例えば、内視鏡器具)に1つ又は2つ以上の場所及び配向で埋め込まれた1つ又は2つ以上のセンサコイルで構成されたEMセンサ(又はトラッカ)が、分かっている場所に位置決めされた1つ又は2つ以上の静的EM場発生器によって生み出されたEM場の変動を測定する。EMセンサによって検出された場所情報は、EMデータ93として保存される。埋め込まれたセンサが検出することができる低強度磁場を生み出すように、患者の近くにEM場発生器(又は送信機)を置くことができる。磁場は、EMセンサのセンサコイルに小さい電流を誘導し、この電流を分析して、EMセンサとEM場発生器との間隔及び角度を確認することができる。患者の解剖学的構造の術前モデルにおける位置と座標系における単一の場所を位置合わせする幾何学的変換を決定するために、この間隔及び配向を患者の解剖学的構造(例えば、術前モデル)に術中「見当合わせ」することができる。見当合わせされると、医療器具の1つ以上の位置(例えば、内視鏡の遠位先端)に埋め込まれたEMトラッカが、患者の解剖学的構造を通る医療器具の進行のリアルタイム表示を提供することができる。
【0066】
ロボットコマンド及び運動学データ94はまた、ロボットシステムのための位置特定データ96を提供するために、位置特定モジュール95によって使用されてもよい。術前較正中に、関節運動コマンドからもたらされるデバイスピッチ及びヨーを確認することができる。術中に、これらの較正測定を分かっている挿入深度情報と組み合わせて使用して、器具の位置を推定することができる。これに加えて又は代わりに、これらの計算を、EM、視覚、及び/又は位相モデリングと組み合わせて分析して、ネットワーク内の医療器具の位置を推定することができる。
【0067】
図15が示すように、いくつかの他の入力データは、位置特定モジュール95によって使用することができる。例えば、
図15には示していないが、形状感知ファイバを利用する器具が、位置特定モジュール95が器具の位置及び形状を確認するのに使用することができる形状データを提供することができる。
【0068】
位置特定モジュール95は、入力データ91~94を組み合わせて使用することができる。一部の場合では、かかる組み合わせは、位置特定モジュール95が入力データ91~94の各々から判定された場所に信頼重み(confidence weight)を割り当てる確率的アプローチを使用し得る。したがって、EMデータが信頼できない場合(EM干渉がある場合など)、EMデータ93によって確認された位置の信頼性を低下させることがあり、位置特定モジュール95は、視覚データ92並びに/又はロボットコマンド及び運動学データ94をより強く当てにすることがある。
【0069】
上で考察されるように、本明細書で考察されるロボットシステムは、上述の技術のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを組み込むように設計することができる。タワー、ベッド、及び/又はカートに基づくロボットシステムのコンピュータベースの制御システムは、例えば、永続的な磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内に、コンピュータプログラム命令を記憶してもよく、コンピュータプログラム命令は、実行されると、システムに、センサデータ及びユーザコマンドを受信及び分析させ、システム全体の制御信号を生成させ、グローバル座標系内の器具の位置、解剖学的マップなどのナビゲーション及び位置特定データを表示させる。
【0070】
2.ロボット対応の遠隔操作システムのためのコントローラ
上述のシステムなどのロボット対応の遠隔操作システムは、操作者(例えば、ロボット対応の医療処置を行う医師)が1つ以上の器具を操作及び制御することを可能にするように構成された入力デバイス又はコントローラを含むことができる。いくつかの実施形態では、ロボット対応の遠隔操作システムは、1つ以上の医療用器具を操作するためのコントローラを備える。当業者であれば、本明細書に記載されるコントローラは、非医療状況においても適用され得ることを理解するであろう。例えば、コントローラは、有害物質に関わるツールを操作するのに有用であり得る。加えて、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるコントローラは、物理的環境及び/又は仮想環境においてオブジェクトを把持するのに有用であり得る。いくつかの実施形態では、コントローラは、人間の操作者と相互作用するサービスロボットとして、自足であり得る。いくつかの実施形態では、コントローラの操作が器具の対応する操作を引き起こすように、コントローラは、器具(例えば、医療用器具など)と結合(例えば、通信可能に、電子的に、電気的に、無線で、及び/又は機械的に)することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ及び器具は、マスタスレーブ対内に配設される。いくつかの実施形態では、コントローラは、マニピュレータ、エミュレータ、マスタ、インターフェースなどと称されてもよい。いくつかの実施形態では、コントローラは、並列又は直列に組み立てられた複数のリンクを備えることができる。
【0071】
コントローラは、内視鏡、腔内、腹腔鏡、又は開腹手術器具などの医療用器具の動作を制御するための、操作者のための入力デバイスとして機能することができる。操作者によるコントローラの移動は、医療用器具の移動を導き得る。例えば、操作者がコントローラを3次元空間内で並進させると(例えば、上、下、左、右、後方、前方)、システムは、医療用器具の対応する並進を引き起こすことができる。同様に、操作者がコントローラを回転させる場合(例えば、3つの直交軸のいずれかの周りで)、システムは、医療用器具の対応する回転運動を引き起こすことができる。コントローラはまた、操作者が医療用器具を作動させることを可能にする入力を含むことができる。一例として、医療用器具が把持具を含む場合、コントローラは、操作者が把持具を開閉することを可能にする入力を含むことができる。
【0072】
コントローラはまた、知覚フィードバックを操作者に提供することができる。例えば、いくつかの実施形態では、医療用器具に付与された力又はトルクは、コントローラを介して操作者に送り返すことができる。いくつかの実施形態では、コントローラを介して知覚フィードバックを操作者に提供することにより、改善された動作、制御、又は駆動体験をユーザに提供する。いくつかの実施形態では、操作者がコントローラと相互作用し、システムを動作させるのを容易にするために、クリスピック触覚キュー(crisp haptic cues)を提供することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、コントローラはまた、例えば、医療用器具を切り替えるときに、操作者の手を医療用器具の向きと整列させるために使用される。例えば、医療用器具が医療処置中に患者内に位置決めされている場合、医療用器具が予期せず又は意図せずに移動しないことが重要である。したがって、操作者が身体内に既に位置決めされた医療用器具の制御を行うことを望む場合、コントローラは、器具が適所に留まっている間に、医療用器具の向きと一致するように最初に移動することができる。コントローラが医療用器具の向きと一致するように正確に方向付けられた状態で、操作者は、コントローラを使用して医療用器具を操作することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、ロボット対応の医療システムは、操作者の手の動きに追従する自由度7を有するコントローラを含み、自由度7は、位置自由度3(例えば、x、y、z空間での並進運動)、回転自由度3(ピッチ、ロール、及びヨー軸を中心とした回転運動)、及び器具の作動自由度1(又は1以上)(例えば、角度の自由度)を含む。いくつかの実施形態では、器具の作動自由度は、物体を保持するためのグリッパ又は把持具などの、医療用器具のエンドエフェクタの開閉を制御することができる。いくつかの実施形態では、器具の作動自由度は省略されてもよい。いくつかの実施形態では、コントローラは、より多くの又はより少ない数の自由度を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、コントローラは、1以上の冗長自由度を提供するために、3を超える位置自由度又は3を超える回転自由度を含んでもよい。いくつかの実施形態では、冗長自由度は、例えば、コントローラの機械的構造によって生じる特異点を回避するために、コントローラに更なる機械的柔軟性を提供することができる。
【0075】
図16Aは、コントローラ102の実施形態の概略図及びロボット対応の医療用器具310の実施形態の概略図を含むロボット対応の医療システム100の実施形態のブロック図を示す。上で簡単に述べたように、コントローラ102の操作が、ロボット対応の医療用器具310の実質的に対応する動きを引き起こし、ロボット対応の医療用器具310に付与された力が、コントローラに送り返され、操作者に知覚的に伝達され得るように、コントローラ102は、ロボット対応の医療用器具310と結合されることができる。いくつかの実施形態では、コントローラ102及びロボット対応の医療用器具310は、マスタスレーブ構成で配設される。
【0076】
システム100の図示された実施形態では、コントローラ102は、ハンドル104、ジンバル106、及び位置決めプラットフォーム108を含む。ハンドル104は、操作者によって保持されるように構成され得る。示されるように、いくつかの実施形態では、ハンドル104は、ジンバル106及び位置決めプラットフォーム108に結合される。上述したように、ハンドル104は、器具を作動させるための1つ又は2つ以上の自由度を含むことができる。ジンバル106は、操作者がハンドル104を回転させることを可能にする1つ又は2つ以上の回転自由度を提供するように構成され得る。いくつかの実施形態では、ジンバル106は、少なくとも回転自由度3を提供するように構成される。例えば、ジンバル106は、操作者がハンドル104をピッチ、ロール、及びヨー軸の周りで回転させることを可能にするように構成され得る。位置決めプラットフォーム108は、操作者がハンドル104を並進させることを可能にするために、1つ又は2つ以上の並進(本明細書では位置とも称される)自由度を提供するように構成され得る。いくつかの実施形態では、位置決めプラットフォーム108は、少なくとも位置自由度3を提供するように構成される。例えば、位置決めプラットフォーム108は、操作者が3次元空間内で(例えば、x方向、y方向、及びz方向に)ハンドル104を並進させることを可能にするように構成され得る。例示的な位置決めプラットフォーム108は、
図16C及び19に見ることができ、以下でより詳細に説明される。ともに、ジンバル106及び位置決めプラットフォーム108は、ユーザがハンドル104を操作することを可能にすることができる。
【0077】
示された実施形態では、ロボット対応の医療用器具310は、器具又はツール312(エンドエフェクタを含んでもよい)、器具ドライバ314、及びロボットアーム316(又は他の器具位置決めデバイス)を含む。医療用器具312は、例えば、上記の
図9に示される腹腔鏡器具59、並びに本出願をとおして記載され、当業者に明らかである他のタイプの内視鏡又は腹腔鏡医療用器具であり得る。医療ツール312は、エンドエフェクタ又は複数のエンドエフェクタを含むことができる。エンドエフェクタは、医療ツール312の遠位端に位置決めされ得る。エンドエフェクタは、患者の身体に挿入するように構成され得る。いくつかの実施形態では、エンドエフェクタは、とりわけ、把持具、グリッパ、カッター、バスケット装置、又ははさみであり得る。いくつかの実施形態では、医療ツール312は、スコープ又はカメラを含むことができる。
【0078】
医療ツール312は、器具ドライバ314に取り付けられ得る。器具ドライバ314は、上述のように医療用器具312を作動させるように構成され得る。例えば、器具ドライバ314は、医療用器具312の1つ又は2つ以上のプルワイヤを引っ張り、医療用器具312を作動させるように構成され得る。いくつかの実施形態では、器具ドライバ314は、上述のような器具駆動機構であり得る。器具ドライバ314は、例えば、
図13に図示されるように、ロボットアーム316に取り付けられ得る。ロボットアーム316は、医療用器具312を更に操作し、位置決めするために関節運動又は移動するように構成され得る。例示的な医療用器具/ツール、器具ドライバ、及びロボットアームが、上記の
図1~
図15のシステムに示されている。
【0079】
ハンドル104の操作が、医療ツール312の実質的に対応する移動を引き起こし、医療ツール312に付与された力が、ハンドル104を通して操作者に知覚的に送信され得るように、コントローラ102は、ロボット対応の医療用器具310と結合され得る。ハンドル104の操作は、ジンバル106及び位置決めプラットフォーム108の力及び移動を測定することによって測定又は決定することができる。医療用器具312の移動は、器具ドライバ314及び/又はロボットアーム316の関節運動及び移動によって引き起こされ得る。したがって、ハンドル104を操作することによって、操作者は、医療用器具312を制御することができる。
【0080】
多くの例において、操作者が医療ツール312を微細かつ正確に制御し、過度に疲れることなくコントローラ102を使用することができるように、コントローラ102が操作者によって容易に操作されることが望まれている。コントローラの操作の容易さを測定するための1つのメトリックは、システムの知覚される慣性及び/又は知覚される質量である。いくつかの実施形態では、システムの知覚される慣性は、ユーザがハンドル104を操作する際に点質量であるかのように感じるシステムの質量である。一般に、より低い知覚される慣性を有するコントローラ102は、操作がより容易であり得る。他の実施形態では、知覚される慣性は、ハンドル104を操作する際にユーザが感じる慣性モーメントを含む。
【0081】
以下に記載されるように、本出願に記載されるコントローラは、既存のシステムに勝る利点を提供する、いくつかの新規かつ非自明の特徴を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に説明されるコントローラは、コントローラ、ロボットアーム、及び医療用器具の両方の精密制御のために、減衰アルゴリズム及び/又は関数を採用するように有利に構成される。様々な実施形態によれば、本明細書で開示されるコントローラは、アドミタンス制御及び/又はインピーダンス制御の両方で動作する。以下に記載されるように、アドミタンス制御及びインピーダンス制御の両方を含むハイブリッドコントローラは、改善された操作経験を提供することができる。様々な実施形態によれば、開示されたコントローラは、他のコントローラと比較して、より低い又は低減された知覚慣性を有利に提供することができる。いくつかの実施形態では、開示されたコントローラは、改善された知覚フィードバック及び応答を提供することができる。更に、以下に記載されるように、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるコントローラは、不規則かつ予測不可能な移動を引き起こす可能性がある機械的短絡(以下に記載される)の可能性を防止又は低減することができる。本出願に記載されるコントローラのこれら及び他の特徴及び利点は、以下の項で更に考察される。
【0082】
A.ハイブリッドコントローラ
図16Bは、インピーダンス制御及びアドミタンス制御の両方を使用して動作するように構成されたコントローラ102の一実施形態のブロック図である。かかるコントローラ102は、ハイブリッドコントローラと称されることがある。
【0083】
インピーダンス制御及びアドミタンス制御は、ロボットシステムを制御するための2つの制御スキームである。インピーダンス制御の下で、システムは、変位(例えば、位置及び速度の変化)を測定し、力を出力する。例えば、インピーダンス制御の場合、システムは、操作者がコントローラをどれだけ遠く又は速く移動させたかを測定し、その測定に基づいて、(例えば、モータを作動させることによって)器具に力を発生させることができる。インピーダンス制御の下で、コントローラの操作者の移動は、器具の一部をバックドライブ(back drive)することができる。多くの場合、インピーダンス制御の使用は、大きな知覚される慣性をもたらすことができる。これは、例えば、インピーダンス制御が、コントローラを動かす操作者に依存するためであり得る。インピーダンス制御の下では、操作者は、コントローラを動かすためにその知覚される質量又は慣性を克服して、コントローラに重く感じさせる必要がある場合がある。インピーダンス制御では、操作者は、コントローラを移動させるために、システム内の慣性の大部分又は全てを物理的に克服しなければならない。他のコントローラは、単にインピーダンス制御にのみ依存し、そのためシステムは、本明細書に記載されるコントローラと比較してより高い知覚された慣性又は質量を有し得る。より高い知覚された慣性のために、操作者は、そのような他のコントローラを使用するときに、疲れ果てる場合がある。
【0084】
アドミタンス制御下では、システムは、操作者によってコントローラに付与された力及び/又はトルクを測定し、コントローラの対応する速度及び/又は位置を出力する。いくつかの点では、アドミタンス制御は、インピーダンス制御の逆である。いくつかの実施形態では、アドミタンス制御の使用は、システムの知覚された慣性又は質量の減少を有利にもたらすことができる。アドミタンス制御を使用して、高い質量又は慣性を有すると知覚されるコントローラのダイナミクスを変更することができる。場合によっては、アドミタンス制御を使用することによって、操作者は、コントローラを移動させるためにシステム内の慣性の全てを克服する必要はない。例えば、アドミタンス制御下で、ユーザがコントローラに力を付与すると、システムは、力を測定し、コントローラに関連する1つ又は2つ以上のモータを駆動することによって、ユーザがコントローラを移動させることを支援し、それによってコントローラの所望の速度及び/又は位置をもたらすことができる。換言すれば、アドミタンス制御では、力センサ又はロードセルは、操作者がコントローラに加えている力を測定し、コントローラ並びに結合されたロボット対応の医療用器具310を、光を感じるように移動させる。アドミタンス制御下では、コントローラ内のモータが質量を加速させる助けとなり得るため、コントローラの知覚された慣性を隠すことができるため、アドミタンス制御は、インピーダンス制御よりも軽く感じることができる。対照的に、インピーダンス制御を用いると、ユーザは、全て又は実質的に全ての質量加速度に関与する。
【0085】
図16Bの図示された実施形態に示されるように、コントローラ102は、ハンドル104、ジンバル106、及び位置決めプラットフォーム108を含む。上述したように、ジンバル106は、1つ又は2つ以上の回転自由度(例えば、3つ又は4つ)を提供するように構成することができ、位置決めプラットフォーム108は、1つ又は2つ以上の回転自由度(例えば、3つ又は4つ)を提供するように構成され得る。ジンバル106及び位置決めプラットフォーム108は、ユーザがハンドル104を3次元空間内で移動させ、ハンドル104をピッチ軸、ロール軸、及びヨー軸の周りで回転させることができるようにする。ハンドル104の操作は、対応する医療用器具の移動をもたらす。更に、ハンドル104、ジンバル106、及び位置決めプラットフォーム108は、医療用器具に付与された力を表す知覚フィードバックを操作者に提供するように構成され得る。
【0086】
図16Bの破線のボックスによって示されるように、コントローラ102において、ジンバル106は、インピーダンス制御するように構成され、位置決めプラットフォーム108は、アドミタンス制御するように構成されている。したがって、いくつかの実施形態では、位置決めプラットフォーム108の並進又は位置自由度はアドミタンス制御に依存し、ジンバル106の回転自由度はインピーダンス制御に依存する。以下に更に記載されるように、このタイプのハイブリッドコントローラ102は、いくつかの利点を有することができる。他の実施形態(図示せず)では、ジンバル106は、アドミタンス制御するように構成され、位置決めプラットフォーム108は、インピーダンス制御するように構成される。いくつかの実施形態では、ジンバル106及び位置決めプラットフォームは、両方ともがアドミタンス制御するように構成されてもよく、又は両方ともがインピーダンス制御するように構成されてもよい。
【0087】
アドミタンス制御を利用するために、コントローラ102は、少なくとも1つの力センサ又はロードセル112を含む。ロードセル112は、操作者によってコントローラ102に付与された力(一般に、ハンドル104に付与された力)を測定するように構成される。それに加えて、又は代わりに、
図18~25に関して更に説明されるように、コントローラ102の各関節は、関節に付与される力及び/又はトルクを含む、現在の速さ、速度、力、及びトルクを含む、動き情報を報告してもよい。
【0088】
図16Bを引き続き参照すると、ロードセル112の出力信号(力の尺度)は、位置決めプラットフォーム108などのコントローラ102の移動を制御する制御信号を提供するために使用される。ロボット対応の医療用器具310は、(例えば、器具ドライバ314又はロボットアーム316内の1つ以上のモータを作動させることによって)ハンドル104の運動に追随する。いくつかの実施形態では、ロードセル112は、3つの方向の力を測定する3自由度ロードセルであり得る。
【0089】
示された実施形態では、ロードセル112は、ジンバル106内に位置決めされている。ロードセル112の他の位置も可能である。いくつかの実施形態では、ロードセル112は位置決めプラットフォーム108内に位置決めされる。いくつかの実施形態では、2つ以上のロードセル112(例えば、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のロードセル)が含まれ、ハンドル104、ジンバル106、及び/又は位置決めプラットフォーム108内に位置決めされることができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、ロードセル112は、コントローラ102内で遠位に(ハンドル104により近く)有利に位置決めされる。これは、いくつかの実施形態では、アドミタンス制御を使用して、ロードセル112の近位に位置するコントローラ102の部分(例えば、ハンドル104から見てロードセル112の反対側に位置するコントローラ102の部分)の知覚された質量を隠すことができるためである。
【0091】
図16Cは、コントローラ102の実施形態の斜視図である。示された実施形態では、コントローラ102は、1つ以上の医療用器具の操作を可能にするように構成されている。示されるように、コントローラ102は、一対のハンドル104を含むことができる。いくつかの実施形態では、一対のハンドル104は、単一の器具を動作させ、一方他の実施形態では、一対のハンドル104の各々は、各々それ自体の対応する器具を動作させる。各ハンドル104は、ジンバル106に接続されている。各ジンバルは、位置決めプラットフォーム108に接続されている。いくつかの実施形態では、ハンドル104は、位置決めプラットフォーム108に対して遠位にあると見なされるジンバル106から遠位にあると見なされる。ハンドル104及びジンバル106は、
図17により詳細に示され、以下に説明される。
【0092】
図16Cに図示されるように、図示の実施形態では、各位置決めプラットフォーム108は、直動関節116によってカラム114に結合された複数のリンクを有する選択的コンプライアンスアセンブリロボットアーム(selective compliance assembly robot arm、SCARA)アーム118を含む。直動関節116は、カラム114に沿って(例えば、レール117に沿って)並進して、ハンドル104をz方向に並進させ、第1の自由度を提供するように構成されている。SCARAアーム118は、x-y平面におけるハンドル104の動きを可能にし、追加の自由度2を与えるように構成されている。したがって、
図16Cに示される位置決めプラットフォーム108の各々は、位置又は並進自由度3を提供し、操作者が3次元(例えば、x、y、z)空間内の任意の位置(位置決めプラットフォームが届く範囲内)にハンドル104を位置決めすることを可能にするように構成されている。
【0093】
いくつかの実施形態では、カラム114(及びレール117)は、ワークスペースの垂直方向(例えば、示されるようなz方向)と整列する軸に沿って延在し、この軸は、重力の方向と整列させることができる。この位置決めプラットフォーム108の利点は、重力補償を提供することができることである。換言すれば、位置決めプラットフォーム108の直動関節116は、重力に対するジンバル106の一定の向きを維持することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、位置決めプラットフォーム108は、他の構成を有することができる。例えば、位置決めプラットフォーム108は、全ての実施形態において直動関節及び/又はSCARAアームを含む必要はない。
【0095】
いくつかの実施形態では、ロードセル112(
図16Cには示されていない)は、コントローラ102の一部内(例えば、ジンバル106内など)に提供され得る。ロードセル112の付加は、コントローラがインピーダンス制御に加えてアドミタンス制御を有することを可能にする。アドミタンス制御下では、コントローラ102の知覚された慣性を低減することができる。これは、ジンバル106及び/又は位置決めプラットフォームの質量がロードセル112を介して隠され得るためである。これは、ロードセル112がコントローラに付与された力を測定し、コントローラ102内のモータを駆動してコントローラ102の動作を支援する出力を提供するために使用され得るためであり得る。隠された質量の量は、ロードセル112の位置に依存する。いくつかの実施形態では、ロードセル112の近位の質量は、部分的に又は実質的に隠され得るが、ロードセル112に対して遠位の質量は隠されない。
【0096】
いくつかの実施形態では、ロードセル112をコントローラ102上に遠位に(例えば、
図16Cに示すジンバル106内に)位置決めすることによって、コントローラ102を動作させながらジンバル106の質量を部分的に又は実質的に隠すことができる。同様に、位置決めプラットフォーム108(ジンバル106よりも比較的高い質量を有する)の質量はまた、コントローラ102を動作させている間、部分的又は実質的に隠され得る。隠された質量は、有利には、臨床医によって知覚される慣性をより低くする。ロードセル112がなければ、ハンドル104をz方向に移動させるために、操作者は、ハンドル104に十分な力を供給して、ハンドル104、ジンバル106、及びSCARAアーム118を上方に持ち上げる必要がある。更に、z方向に移動するよりも、x-y平面内でハンドルを移動するために、より少ない力を必要とすることが想定され得る。この視差は、コントローラ102を使用することを困難にする不均一な操作経験を操作者にもたらす可能性が高い。したがって、本明細書に記載されるようなロードセル112を含むことにより、コントローラ102は、ユーザがハンドル104をx方向、y方向、及びz方向に並進させるのを支援することができ、はるかに均一で制御された操作経験を提供することができる。いくつかの実施形態では、ロードセル112は、位置決めプラットフォーム108が、アドミタンス制御下で実質的に又は完全に動作することを可能にする。位置決めプラットフォーム108とは対照的に、ジンバル106の慣性モーメントは比較的低くなり得る。これは、概して、ジンバル106が位置決めプラットフォーム108よりもはるかに小さいためであり得る。このため、ジンバル106の少なくとも一部は、インピーダンス制御に好適であり得る。
【0097】
本明細書に記載されるようなハイブリッドインピーダンス/アドミタンスコントローラ102の1つの利点は、システムの知覚された慣性が、インピーダンス制御に完全に依存するシステムよりも比較的低い場合があることである。更に、ハイブリッドコントローラ102の機械的構造は、アドミタンス制御を使用してシステムの移動を補い、平均化するために使用することができるため、より単純であり得る。対照的に、インピーダンスのみのシステムの機械的構造は、多くの場合、システムを異なる方向に移動させるのに必要な力を正規化し、知覚された慣性を最小化しようとするため、非常に複雑である。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるようなハイブリッドコントローラ102を使用することによって、コントローラ102の総質量及び慣性の大部分が位置決めプラットフォームのアドミタンス制御によって隠され得るため、ジンバル106の質量及び慣性を、インピーダンスのみのコントローラのジンバルに対して、実際に増加させることが可能である。ジンバルのサイズを増大させることは、いくつかの実施形態では、より大きなモータの使用を可能にすることができ、それにより、コントローラは、全体の質量と慣性の増加を避けるために軽量のジンバルとモータを使用する必要がある他のシステムと比較したときに、より強い知覚フィードバック力を提供することが可能となり得る。
【0099】
図16Cに図示されるように、ハイブリッドコントローラ102は、例えば、シリアルリンクマニピュレータとして、連続して複数のリンク及び関節として見ることができる。ハンドル104、ジンバル106、及び位置決めプラットフォーム108は各々、動作可能に結合された1つ又は2つ以上のリンクを備え、最も近位のリンクは、位置決めプラットフォーム108のカラム114に隣接し、最も遠位側リンクは、ハンドル104自体の一部である。いくつかの実施形態では、コントローラ102の少なくとも一部のアドミタンス制御を提供するために、コントローラ102に1つ以上のロードセル112(
図16Cには示さず)を挿入することができる。コントローラ102の他の部分は、臨床医又は操作者によるインピーダンス制御(又は場合によっては、受動制御)によって制御することができる。いくつかの実施形態では、ロードセル112の近位にあるリンク及び関節は、ロードセル112によって直接的又は間接的に影響を受け得る。したがって、これらの近位リンク及び関節の操作は、アドミタンス制御を支援することができる。いくつかの実施形態では、ロードセル112の遠位にあるリンク及び関節は、ロードセル112の直接的又は間接的な影響を受けない場合がある。したがって、これらの遠位リンク及び関節の操作は、インピーダンス制御の支援を受けることができる。例えば、(以下でより詳細に考察される)
図19Aの実施形態では、遠位関節128、130、132(
図17に示される)がロードセル112の直接的又は間接的な影響を受け得ないように、ロードセル112はジンバル106内に位置決めされる。換言すれば、これらの関節におけるジンバル106の軸の操作は、ロードセル112の出力に直接又は間接的に基づくものではない。これらの遠位リンク及び関節は、インピーダンス制御によって移動され得る。対照的に、ロードセル112の近位のリンク及び関節(位置決めプラットフォーム108内のものなど)は、ロードセル112の影響を直接的又は間接的に受け得る。換言すれば、これらの関節における軸の操作は、ロードセル112の出力に直接的又は間接的に基づく。これらの近位リンク及び関節は、アドミタンス制御によって動かされ得る。
【0100】
B.触覚インターフェース制御のためのジンバル
上述したように、いくつかの実施形態では、ロードセル112(又は力センサ)は、ジンバル106内に位置決めされる。いくつかの実施形態では、ジンバル106は、インピーダンス制御を有するコントローラ102の回転自由度を提供し、一方、位置決めプラットフォーム108は、(例えば、ジンバル106内に位置決めされたロードセル112の出力に基づいて)アドミタンス制御を有するコントローラ102の位置自由度を提供することができる。ロードセル112をジンバル106内に位置決めすることができる多くの方法が存在する。コントローラ102の知覚された慣性が低減される程度は、ジンバル106内のロードセル112の位置に部分的に基づくことができる。ジンバル106の2つの異なる部分に位置決めされたロードセル112を示す2つの例示的な実施形態が、このセクションで説明される。他の実施形態も可能である。
【0101】
図17は、ジンバル106の一実施形態の等角図である。示されるように、いくつかの実施形態では、ジンバル106は、位置決めプラットフォーム108の遠位端に位置決めされる(位置決めプラットフォーム108の最後のリンクのみが
図17に示されている)。本出願で使用するとき、コントローラ102との関連において、遠位という用語は、ハンドル104に向かう方向を指し(例えば、ハンドル104はコントローラ102最遠位構成要素である)、近位という用語は、反対方向(例えば、カラム114に向かう方向、
図16Cを参照のこと)を指す。したがって、ジンバル106の近位端は、位置決めプラットフォーム108の遠位端に取り付けられ得る。更に、ハンドル104は、ジンバル106の遠位端に位置決めされ得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、ハンドル104は、操作者によって保持されるように構成される。ハンドル104は、コントローラ102が制御に使用される医療用器具をシミュレート又は模倣するように構成され得る。いくつかの実施形態では、ハンドルは、把持具ハンドル(例えば、半径方向に対称な把持具ハンドル)、スタイラス、パドル型ハンドルなどを含む。示された実施形態では、ハンドル104は、上で考察した器具作動自由度を提供するように構成された2つの作動アーム120を含む。ハンドル104を保持している間、操作者は、作動アーム120間の角度を調節して、制御された医療用器具と関連付けられた対応する角度を制御することができる。例えば、医療用器具が把持具、剪断具などである場合、作動アーム120間の角度を使用して把持具の2つのジョー間の角度を制御することができる。
【0103】
示された実施形態では、ジンバル106は、関節によって接続された3つのアーム又はリンクを備える。遠位から近位に配設され、
図17に示されるように、ジンバル106は、第1のリンク122、第2のリンク124、及び第3のリンク126を備える。遠位から近位に配設され、
図17に示されるように、ジンバル106は、第1の関節128、第2の関節130、第3の関節132、及び第4の関節134を備える。関節は、様々なリンクが回転することを可能にし、ジンバル106に上述した回転自由度を提供する。
【0104】
ハンドル104は、第1の関節128によって第1のリンク122の遠位端に接続される。第1の関節128は、ハンドル104が第1のリンク122に対して回転することを可能にするように構成され得る。示された実施形態では、第1の関節128は、ハンドル104がロール軸136の周りを回転することを可能にする。いくつかの実施形態では、ロール軸136は、ハンドル104の長手方向軸と整列される。第1の関節128は、外旋関節であり得る。
【0105】
第1のリンク122の近位端は、第2の関節130によって第2のリンク124の遠位端に接続される。第2の関節130は、ハンドル104及び第1のリンク122が第2のリンク124に対して回転することを可能にするように構成され得る。示された実施形態では、第2の関節130は、ハンドル104及び第1のリンク122がヨー軸138の周りを回転することを可能にする。いくつかの実施形態では、ヨー軸138は、第2の関節130を通って延在し、ハンドル104の中心点でロール軸136と交差する。第2の関節130は、外旋関節であり得る。図示されるように、いくつかの実施形態では、第1のリンク122は、L字形状を含む。いくつかの実施形態では、第1のリンク122は、第2のリンク124を受け入れるためにその中に形成された凹部を有し、第2のリンク124が第1のリンク122に対して回転することを可能にするように構成される。
【0106】
第2のリンク124の近位端は、第3の関節132によって第3のリンク126の遠位端に接続される。第3の関節132は、ハンドル104、第1のリンク122、及び第2のリンク124が第3のリンク126に対して回転することを可能にするように構成され得る。示された実施形態では、第3の関節132は、ハンドル104、第1のリンク122、及び第2のリンク124がピッチ軸140の周りで回転することを可能にする。いくつかの実施形態では、ピッチ軸140は、第3の関節132を通って延在し、ハンドル104の中心点でロール軸136及びヨー軸138と交差する。第3の関節132は、外旋関節であり得る。図示されるように、いくつかの実施形態では、第2のリンク124は、L字形状を含む。いくつかの実施形態では、L字形状の第2のリンク124は、L字形状の第1のリンク122の凹部内に受け入れられる(
図17に図示されるように)。他の実施形態では、L字形状の第1のリンク122は、L字形状の第2のリンク124の凹部内に受け入れられ得る。
【0107】
示された実施形態では、第1の関節128、第1のリンク122、第2の関節130、第2のリンク124、及び第3の関節132は、回転自由度3を提供し、ハンドル104の回転をピッチ、ロール、及びヨーで調整できるようにする。示された実施形態では、ジンバル106は、冗長な回転自由度を提供する第3のリンク126及び第4の関節134を更に含む。これは全ての実施形態に含まれる必要はないが、より大きな機械的柔軟性をジンバル106に提供することができる。
【0108】
図示されるように、第3のリンク126の遠位端は、第3の関節132によって第2のリンク124の近位端に接続される。第3のリンク126の近位端は、第4の関節134によって位置決めプラットフォーム108の遠位端に接続される。第4の関節134は、ハンドル104、第1のリンク122、第2のリンク124、及び第3のリンク126が位置決めプラットフォーム108に対して回転することを可能にするように構成することができる。示された実施形態では、第4の関節134は、ハンドル104、第1のリンク122、第2のリンク124、及び第3のリンク126が軸142の周りで回転することを可能にする。いくつかの実施形態では、軸142は、ヨー軸138に平行である。いくつかの実施形態では、ヨー軸138及び軸142は同軸であるが、示されるように、これは全ての実施形態でそうである必要はない。軸142(及びヨー軸138)は、重力の方向に平行であり、上記のように重力の方向に対するジンバルの向きを維持することができる。第4の関節134は、外旋関節であり得る。図示されるように、いくつかの実施形態では、第3のリンク126は、L字形状を含む。
【0109】
C.触覚インターフェース制御のための可変減衰
ロボットシステム、ロボットアーム、及び/又は器具を制御するための上述のコントローラのいずれかを含む触覚インターフェースデバイス(haptic interface device、HID)は、可能な限りバックドライブ可能であることを目標として機械的に設計される。構成要素は、摩擦及び減衰などの機械的散逸効果が最小になるように設計又は選択される。このようにして、HIDは、ユーザに対して透明であるように設計され、これは、ユーザが自由空間内でHIDを移動させるときに多くの抵抗又はインピーダンスを感じるべきではないことを意味し、それによって、ユーザが、HIDによって課される最小限の負担及び注意散漫で外科タスクを完了することを可能にする。
【0110】
一方、散逸が非常に少ないことは、望ましくない結果を有し得る。例えば、ハンドルがぶつかったり、ユーザの制御から外れたりすると、停止距離が非常に大きくなる可能性がある。同様に、ユーザは、特に低速では、HIDインターフェースが逸走している、又は移動が容易すぎると感じる場合がある。
【0111】
図18に示されるように、一定の仮想減衰が、HIDのインピーダンス制御を通して追加され得る。減衰力(例えば、トルク)は、現在の線形(例えば、角)速度に一定の減衰係数を乗算することによって計算することができる。場合によっては、適用する減衰の一定レベルを決定することは困難であり、逆説的でさえある可能性がある。例えば、低速での大きな減衰係数は、HIDが「逸走」し得るように感じることを防止するために望ましくあり得るが、そのような係数は、非常に小さい速度においてシステムを不安定にし、外科医がコントローラを移動させることを困難にし得ることが見出されている。同様に、高速での高い減衰係数は、HIDのバックドライブ可能な能力を減少又は無効にする可能性がある。更に、異なる用途に対して、所望の減衰挙動は異なり、矛盾することさえあり得る。そのような課題を克服するために、主題技術は、HIDがユーザによってどのように操作されるかに部分的に基づいて、適切なレベルの減衰抵抗をシステム及び/又はユーザベースの入力に与える、新規の可変減衰解決策を含む。本明細書に説明される制御ユニット(例えば、1つ以上のプロセッサを含む)は、1つ以上の変数に基づいて、異なる可変減衰係数をロボットユーザインターフェースに適用してもよい。
【0112】
図19は、HID又はコントローラ102の第2の実施形態の斜視図である。示された実施形態では、コントローラ102は、上記したように、1つ以上の医療用器具の操作を可能にするように構成されている。図示されるように、コントローラ102は、1つ以上のハンドル104を含み得る。種々の実施形態によると、コントローラは、2つのハンドル(
図16Cに示されるように)を含み、そのうちの1つのハンドルが、
図19に描写される。一対のハンドル104は、(ロボットシステムの他の構成要素とともに)単一の器具を操作するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、一対のハンドル104の各々は、それぞれの器具として動作してもよい。各ハンドル104は、ジンバル106に接続されている。各ジンバルは、リンク118a及び118bを含む位置決めプラットフォーム108に接続される。いくつかの実施形態では、ハンドル104はジンバル106から遠位にあると考えられる。
【0113】
図示された位置決めプラットフォーム108と
図16Cに示されたものとの違いは、図示された位置決めプラットフォーム108が、カラム114に沿った直動関節116の垂直並進ではなくリンク118aの動きに基づいてZ方向に並進するのに対して、Y方向の並進は、(
図16Cに示されるような)リンク118の横方向の動きではなく関節120によるプラットフォームの動きに基づいていることである。リンク118は、それぞれ軸G1及びG2を中心とした関節116a及び116bの回転によって垂直に並進するように構成され、ハンドル104がz方向に並進することを可能にし、それによって第1の自由度を提供する。アーム118は、関節120を介して軸G0の周りに(及びジンバル106は関節116cを介して軸G3の周りに)並進して、ハンドル104のx-y平面内での動きを可能にし、追加自由度2を提供するように構成される。したがって、
図19に示される位置決めプラットフォーム108は、位置又は並進自由度3を提供し、操作者が3次元(例えば、x、y、z)空間内の任意の位置(位置決めプラットフォームが届く範囲内)にハンドル104を位置決めすることを可能にするように構成されている。
【0114】
様々な実施形態によれば、HIDコントローラ102は、ロボットインピーダンス制御下で動作されてもよく、それによって、ユーザの動きがロボットツールをバックドライブする。これに加えて又は代わりに、HIDコントローラ102は、アドミタンス制御又はハイブリッドアドミタンスインピーダンス制御の下で動作されてもよい。そのような実施形態では、制御ユニットは、ユーザがHIDコントローラ102に加えている力を測定し、HIDコントローラ102の位置を出力することができる。言い換えれば、インピーダンス制御は、変位(位置及び速度)を測定して力を出力するのに対して、アドミタンスはその逆を行う。多くの場合、アドミタンス制御はインピーダンス制御よりも軽く感じるが、これは、アドミタンス制御下では、触覚マスタ内(例えば、位置決めプラットフォーム内)のモータが質量を加速するのを助けることができるので、知覚される質量を隠すことができるからである。
【0115】
外科医が遠隔操作を介して器具を操作するためにHIDを使用しているので、HIDシステムは、可能な限りバックドライブ可能であるように設計される。前述したように、図示の構成要素は、摩擦及び減衰などの機械的散逸効果が最小になるように設計又は選択される。このようなバックドライブ性を提供することによって、コントローラ102を操作するユーザは、操作されている医療用器具が、可能な限り少ない抵抗又はインピーダンスでユーザの直接制御下にあるかのように感じることができる。
【0116】
ハンドルが衝撃を受けたり、ユーザの制御から外れたりした場合や、非常に逸走しやすい場合などの特定の条件では、コントローラによって測定された線形速度及び/又は角速度に減衰修正子を乗算することによって減衰力を提供することができる。本明細書では、減衰係数の使用に関して例が提供される。しかしながら、開示される減衰修正子は、開示されるHID又はその構成要素の減衰を修正するための任意の関数又は変数を含んでもよい。
【0117】
様々な実施形態によれば、開示されたロボットシステムの制御ユニットは、一定でない、又は可変の減衰係数を有する(例えば、インピーダンス制御を使用する)減衰のためのアルゴリズムを組み込む。一定である代わりに、アルゴリズムは、減衰係数を、現在の減衰レジーム(以下で説明する)及び/又は直接測定されるか、又はオンザフライの他のリアルタイム測定値(例えば、現在のHID速度)に基づいて計算されるシステムの変数の関数として決定することができる。この減衰係数は、HIDに適用される仮想減衰力を決定するために、線形速度及び/又は角速度によって乗算され得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、HIDに適用される減衰係数は一定のままであってもよく、減衰力(例えば、トルク)は、
図18に示すように、線形(角)速度に一定の減衰係数を乗算することによって計算されてもよい。更に説明されるように、一定又は可変減衰修正子は、概して、HID、又はHIDの1つ以上のロボット関節(例えば、関節116)に適用され、関節の力又はトルクを修正してもよい。様々な実施形態によれば、減衰修正子は、医療用器具312の操作中に適用され、様々な実施形態によれば、関節又は医療用器具の動きに対する抵抗を提供する。
【0119】
減衰アルゴリズムは、複数の減衰レジームを有する減衰関数を使用することができる。一例として、1つの減衰レジームは、ユーザに対して比較的低い量の抵抗を提供することができ(例えば、水の中で動く手と同様)、異なる減衰レジームは、ユーザに対して比較的高い量の抵抗を提供することができる(例えば、糖蜜の中で動く手を想定する)。別の減衰レジームは、HIDから(例えば、関節から)受信される動き情報に応じて可変量の抵抗を提供し得る。いくつかの実施形態では、抵抗は、動き情報中で受信された変数に比例又は反比例し得る。
【0120】
開示されたシステムに複数の又は可変の減衰レジームを組み込むことにより、行われる医療処置に利益がもたらされる。例えば、外科医がHIDをゆっくりと駆動している場合、1つのレジームは、外科医が非常に細かい動きを制御していると感じることができるように、ある程度の減衰を提供することができる。外科医がより大きな動きをし始めると、減衰力が大きすぎると疲労を引き起こす可能性があるので、減衰力を低減するために別のレジームを選択することができる。言い換えれば、HIDの速度が増加するにつれて、減衰係数及び関連する減衰が低減され得る。
【0121】
様々な実施形態によれば、制御ユニットによって実行される減衰アルゴリズムは、現在の減衰レジーム及び/又はリアルタイムの測定値に基づいて直接測定若しくは計算された変数の関数として減衰係数を決定することができる。例えば、HIDから受信した動き情報に従って減衰係数を動的に決定するために、減衰関数を使用することができる。この点に関して、受信された動き情報は、HIDの速さ若しくは速度、HIDの現在位置、又はHIDに加えられた力、又はその一部(HIDに関連付けられた1つ以上の関節など)を含むことができる。各ロボット関節は、例えば、関節の速度、関節の現在位置、又は関節の現在の力若しくはトルクを含む動き情報を制御ユニットに報告してもよい。いくつかの実施形態では、報告される力又はトルクは、関節又は医療用器具の動きに抵抗する力又はトルクを含んでもよく、又はその力又はトルクであってもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、減衰関数は、(例えば、コンソール16又は31の)制御ユニットに関連付けられたグラフィカルユーザインターフェース(graphical user interface、GUI)において選択されてもよく、次いで、減衰係数は、動き情報に基づいて決定されてもよい。いくつかの実施形態では、減衰関数は、行われている医療処置に基づいて制御ユニットによって選択され得る。いくつかの実施形態では、制御ユニットは、どのシナリオ(例えば、不安定性を回避すること、逸走感を回避すること、より多くのバックドライブ性、過速度を回避することなど)が特定の処置に最も関連するかを決定することができる。
【0123】
別の測定変数は、ユーザによってHID(又は1つ以上の関節)に加えられる力を含んでもよい。一例では、HID上の力は、ユーザによってHIDに加えられているグリップの量に関してシステムに通知することができ、それによって、HIDの潜在的な制御喪失又はドリフトのリスクをシステムに通知する。望ましくないドリフトのリスクが高い場合、より高い減衰係数を有する減衰レジームを有する減衰関数の選択が保証され得る。
【0124】
(機器の遠隔操作以外の)可変減衰レジームの1つの適用は、カメラ制御中であり、この場合、両方のHIDアームが仮想ばねによって接続されて、ステアリングホイールのような触覚効果を提供する。ユーザは、ステアリングホイールを操作するのと同様にカメラをパン及びロールすることができる。非常に低い出力インピーダンス、及びステアリングホイールのような動きの人間工学に起因して、ユーザは、カメラをパンしている間に意図しないロール運動を行う傾向があり得る。ロール運動に大きな仮想減衰を加えることは、カメラの意図しないロールを防止し得るが、それはまた、カメラを意図的にロールさせることをより困難にし得る。これに対処するために、減衰係数をより低い速度で高く設定して、意図しないロールを防止し、より細かいロール運動に対してより良好な制御を提供することができる。より高い速度では、正のローリング運動がユーザによるHIDの動きから検出されるので、減衰係数を低減することができ、それによって、ユーザに対してより良好なカメラ制御経験を提供する。
【0125】
別の例は、サポート補助HID制御を含むことができ、この場合、ユーザの遠隔操作能力を依然として可能にしながら、HIDが運動エネルギを安定的かつ迅速に消散させて意図しない動きがないように抑制することが望ましい場合がある。選択された減衰関数は、低速では減衰係数を急速に上昇させ、高速では高い減衰係数w/トルク飽和を維持するか、又は減衰係数を調整し、それによってユーザが連続的な遠隔操作のためにHIDを更にバックドライブすることを可能にすることを含むことができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、HIDが物理的に通り抜けることができない仮想壁又は想像上の壁を使用することができる。HIDは、仮想壁に到達する前であっても速度を落とすことができ、例えば、ハードストップで終わる。したがって、HIDの位置は、異なる減衰レジームをトリガする更に別の変数とすることができる。例えば、減衰係数は、仮想壁に対するHIDの現在位置に基づいてもよい。そのような実施形態では、減衰関数は、距離が第1の閾値を満たすとき、ロボット関節の抵抗力又はトルクを修正するための第1の減衰係数を決定し、距離が第2の閾値を満たすとき、抵抗力又はトルクを修正するための第2の減衰係数を決定し得る。
【0127】
図20A、20B、及び20Cは、本明細書で開示される主題技術の態様による、速度に基づいて減衰係数を選択する3つの例示的な減衰関数を示す。図示された減衰関数は、変化する速度に応答してHIDの挙動を修正するようにシステムをプログラムすることができる単に代表的な方法であり、網羅的なものと見なされるべきではない。例えば、挙動が修正される速度は、HIDの速度を表すことができる。いくつかの実施形態では、図示された減衰関数は、HIDの位置又はHIDに加えられる力など、速度に加えて、又は速度に代わる他の要因に基づいて減衰係数を決定することができる。いくつかの実施形態では、減衰機能によって使用される速度、位置、又は力は、HID内の、又はHIDに関連付けられた1つ以上のそれぞれの関節の回転速度、位置、又は力(又はトルク)を含み得る。
【0128】
図20Aは、異なる減衰係数を選択するための4つの領域を含む第1の例示的な減衰関数を示す。開示の目的のために、各領域は、所与の変数の異なる範囲に対応してもよく、それによって、減衰係数を決定するための異なるレジームを実施する。この点に関して、本開示は、関数がHID又はその関節の減衰を(例えば、減衰係数を決定することによって)どのように修正するかを説明するときに、「領域」及び「レジーム」という用語を互換的に使用し得る。
【0129】
図示の例では、第1のレジーム(レジーム1)を非常に低速で使用することができる。これに関して、これはシステムが振動するのを防ぐのに役立ち得るので、いくらかの減衰を有することが有益であり得る。ある時点で、より高い速度に到達し、第2のレジーム(レジーム2)が、逸走を回避するためにより多くの減衰を提供するために採用され得る。これは、例えば、外科医がこのより高い速度で把持を失った場合に、より高い減衰がドリフトを最小化するので、有益であり得る。第3のレジーム(レジーム3)は、速度が更に増加するときに使用され得る。第3のレジームでは、減衰の必要性は実際に減少し得る。これは、より高い速度では、外科医がHIDをより固く、よりしっかりと把持する傾向があり、それによって、制御されないドリフトの可能性を最小限に抑えるためである。したがって、減衰係数は、実際には、第2のレジーム(レジーム2)よりも第3のレジーム(レジーム3)において低くなり得る。
【0130】
より高い速度では、減衰係数をもう一度増加させる必要があり得る。例えば、非常に高速では、HIDの逸走に関する懸念がより少なくなり、HIDの速度超過に関する懸念がより大きくなる可能性がある。HIDがあまりに速く移動する場合、患者側ロボットアーム又は器具は追従することができない場合がある。したがって、第4のレジーム(レジーム4)は、より高い減衰係数を提供することができる。
【0131】
図20Aに見られるように、あるレジームは、(例えば、レジーム1において)HID又はロボット関節の現在の速さ又は速度に比例するHID又はロボット関節の動きを修正する減衰係数を選択してもよく、別のレジームは、(例えば、レジーム2とレジーム3との間で遷移する間に)HID又はロボット関節の現在の速さ又は速度に反比例するHID又はロボット関節の動きを修正する減衰係数を選択してもよい。動きは、少なくとも1つの関節の力又はトルクを変化させる適用された減衰係数によって修正されてもよい。様々な実施形態によれば、減衰修正子は、
図20Aのレジーム2、3、及び4のプラトーによって示されるように、現在の速さ及び/又は速度が特定の範囲内にあるとき、動き(又は、例えば、1つ以上の関節の速度、力、又はトルク)を固定されたままにするように選択され得る。
【0132】
図20Bは、遷移レジームを含む第2の例示的な減衰関数を示す。いくつかの実施形態では、高いバックドライブ性のための低い減衰係数が、低速(レジームA.1)において所望され得る。一方、例えば、HID(レジームA.3)の速度超過を回避するために、より高速での高い減衰係数も望ましい場合がある。低減衰レジーム(レジームA.1)と高減衰レジーム(レジームA.3)との間で突然の上昇が生じるのは、ユーザに滑らかな制御が提供されない可能性があるため、望ましくない可能性がある。したがって、図示の減衰関数は、2つの他のレジームの間に遷移減衰領域(レジームA.2)を提供する。
【0133】
適用される減衰係数(複数可)は、HIDの速度を動的に調整するために1つ以上のロボット関節の力又はトルクを修正するように選択され得る。力又はトルクは、例えば、ロボットユーザインターフェースの一部分の現在の速さ又は速度が第1の範囲(例えば、レジームA.1に対応する)内にあるときに固定量だけ修正され、ロボットユーザインターフェースの一部分の現在の速さ又は速度が第2の範囲(例えば、レジームA.2に対応する)内にあるときに可変量だけ修正され(例えば、図示された実施形態では増加する)、第1の範囲よりも大きい第2の範囲(例えば、レジームA.3の図示されたプラトーに対応する)内にあるときに別の固定量だけ修正され得る。
【0134】
図示された減衰領域は連続的な遷移を提供するが、いくつかの実施形態では、遷移は連続的でなくてもよい。例えば、遷移は、それぞれがそれ自体の減衰係数を有し、最終的に高減衰領域に進む、いくつかのサブ領域を含んでもよい(例えば、
図23参照)。
【0135】
図20Cは、複数の遷移レジームを含む第3の例示的な減衰関数を示す。図示された減衰関数は、
図20Bの減衰関数と同様であるが、減衰係数が減少する第4のレジームを含む。第4の減衰レジームは、例えば、HID速度が高速であるが、外科医がHIDに対してより大きな制御を有し、それによって、より低い減衰係数を保証するときに実施され得る。図示の例では、現在の速さ又は速度が第4の範囲内にあるとき、適用される減衰修正子は、(例えば、1つ以上の関節の力又はトルクを修正することによって)対数減衰に従ってHIDの動きを修正する。
【0136】
図21は、本明細書に開示される主題技術の態様による、医療用器具の減衰制御を提供する、手動制御入力装置の可変減衰のための例示的なプロセスを示す。説明のために、例示的なプロセス200の様々なブロックは、本明細書で説明される構成要素及び/又はプロセスを参照して本明細書で説明される。プロセス200のブロックのうちの1つ以上は、例えば、前述のロボットシステムの制御ユニットによって実行されるソフトウェアを含む、例えば、1つ以上のコンピューティングデバイスによって実施されてもよい。いくつかの実施形態では、ブロックのうちの1つ以上は、1つ以上の機械学習アルゴリズムに基づいて実施され得る。いくつかの実施形態では、ブロックのうちの1つ以上は、他のブロックとは別に、1つ以上の異なるプロセッサ又はデバイスによって実施され得る。更に説明のために、例示的なプロセス200のブロックは、連続して、又は線形に発生するものとして説明される。しかしながら、例示的なプロセス200の複数のブロックが並行して生じてもよい。加えて、例示的なプロセス200のブロックは、示される順序で実行される必要はなく、及び/又は例示的なプロセス200のブロックのうちの1つ以上は、実行される必要はない。
【0137】
図示される例では、開示されるロボットシステムの制御ユニットは、ロボットユーザインターフェースの操作に基づいて、3次元空間を通した医療用器具の移動をロボット的に促進する(202)。ロボットインターフェース(例えば、HID)は、(
図19に描写されるように)例えば、ユーザの入力に基づいて、医療用器具の遠隔操作を促進するように協働する、1つ以上のリンク及び1つ以上の関節を含む。
【0138】
動き情報は、1つ以上の関節から受信される(204)。様々な実施形態によれば、各関節は、その速度及び位置(例えば、角速度及び角度位置)を制御ユニットに報告することができる。いくつかの実施形態では、関節は、関節によって付与された又は関節に加えられた角度力又はトルクを報告することができる。いくつかの実施形態では、動き情報は、ロボットユーザインターフェースに印加される力の大きさ又はロボットユーザインターフェースの速さを含んでもよい。いくつかの実施形態では、動き情報は、ロボットユーザインターフェースの現在位置を含む。
【0139】
様々な実施形態によれば、制御ユニットは、各関節から動き情報を受信し、ロボットインターフェース全体の速度ベクトル、又はそれぞれの関節若しくはインターフェースの他の部分(例えば、ジンバル106若しくはハンドル104、又はそれぞれの1つ若しくは複数のリンク116)の速度ベクトルを決定することができる。いくつかの実施形態では、動き情報は、各関節に関連付けられたベクトル又は力の寄与度と、集合的寄与度に基づいて決定された速度ベクトルとを含み得る。速度ベクトルは、3次元空間を通してロボットインターフェースによってとられる経路に対応し得る。
【0140】
受信された動き情報に基づいて、減衰修正子が、受信された動き情報に基づく複数の異なる減衰修正子から決定される(206)。様々な実施形態によれば、減衰修正子を決定することは、
図20A~
図20Cに関して前に説明したものなどから減衰関数を決定することを含むことができ、それは次いで、動き情報の受信された変数に基づいて減衰係数を決定することができる。いくつかの実施形態では、減衰修正子は、前述のように、測定されたパラメータに基づいて決定された減衰係数を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、減衰係数は、(i)速度ベクトルが第1の閾値を満たすことに応答する第1の減衰領域と、(ii)速度ベクトルが第2の閾値を満たすことに応答する第2の減衰領域とを含む減衰関数に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、減衰係数は、ロボットユーザインターフェースの少なくとも一部の速さ又は速度によって複数の減衰係数(例えば、データベースに記憶されている)をインデックス付けして、速さ又は速度に対応する減衰係数を取得することによって決定され得る。速度ベクトルが導出されるいくつかの実施形態では、減衰係数は、速度ベクトルの大きさに基づいて決定され得る。
図20A~
図20Cに示すように、減衰係数は、所与のパラメータに応じて連続的な一定でない関係にあってもよい。
【0142】
決定された減衰修正子は、1つ以上の関節のうちの少なくとも1つの関節に適用されて、医療用器具の操作中に少なくとも1つの関節の力又はトルクを修正する(208)。減衰修正子は、例えば、関節のうちの少なくとも1つの角速度を修正するために適用されてもよく、いくつかの実施形態では、ロボットユーザインターフェース又はその一部の動きに対する抵抗を含む、ロボットユーザインターフェースの動きを修正してもよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、適用された減衰修正子は、少なくとも1つの関節の力又はトルクを、現在の速さ又は速度が第1の範囲内にあるときにはロボットユーザインターフェースの一部分の現在の速さ又は速度に比例して変化させ、現在の速さ又は速度が第2の範囲内にあるときには現在の速さ又は速度に反比例して変化させる。
図20Aの変動する減衰係数は、そのような実施形態の例を提供する。
【0144】
一方、
図20A~20Cの図示の例に見られるように、適用された減衰修正子は、第3の範囲内にあるとき、1つ以上の関節の力又はトルクを固定されたままにすることができる。いくつかの実施形態では、適用された減衰修正子は、ロボットユーザインターフェースの一部分の現在の速さ又は速度が第1の範囲内にあるときには可変量だけ、第1の範囲よりも大きい第2の範囲内にあるときには固定量だけ、関節(複数可)の力又はトルクを修正し得る。いくつかの実施形態では、
図20Cに見られるものと同様に、適用された減衰修正子は、現在の速さ又は速度が第4の範囲内にあるとき、対数減衰に従って力又はトルクを修正し得る。
【0145】
様々な実施形態によれば、(例えば、関節から)動き情報を受信し、減衰修正子を決定し適用する前述のサイクルは、連続的に繰り返され得る。例えば、制御ユニットは、1秒当たり、数百ではないとしても複数のサイクルを処理することができる。このようにして、ロボットインターフェースが移動するにつれて減衰を調整することができ、抵抗の様々な変化はユーザによってほとんど知覚されず、それによってインターフェースの動きを改善し、ユーザの体験を向上させる。
【0146】
C.医療用器具のロボット動作のための可変減衰
前のセクションは、HID又はコントローラにおいて可変減衰レジームを提供することについて扱ったが、本セクションは、ロボットアーム又は関節の動きを手動で制御するときに可変減衰レジームを提供することについて扱う。
図22は、本明細書に開示される主題技術の態様による、触覚壁減衰領域220を含む、ロボット関節24のための第1の例示的な仮想触覚壁を示す。ロボット関節24は、例えば、
図2に関して前述したように、ロボットアーム12の一部であってもよい。
【0147】
様々な実施形態によれば、仮想触覚壁220は、所定の関節限界222の近くで作用する仮想触覚力又はトルクであり、関節が関節限界に達するのを防止するために適用され得る。様々な実施形態によれば、ロボットアームは、インピーダンス制御下で動作するように構成されてもよく、その間に触覚壁220が用いられてもよい。インピーダンスモード(重力及び摩擦補償を伴う制御モードである)は、ユーザがロボットアームを直接引く又は押すことによってロボット関節を移動させることを可能にし得る。しかしながら、関節が高速で仮想触覚壁に当たるとき、ユーザは、触覚壁に過度に電力を供給し、関節限界を超えて関節を移動させて障害を引き起こすことができる場合がある。この時点で、ユーザは、障害が解消されるまでロボットアームを更に使用することができない場合がある。本主題技術は、この過剰電力供給を回避するために、触覚壁への進入速度を低減する。
【0148】
図示された例は、ロボットアーム12における関節の速度、又はロボットアームによる医療用器具の動きに対する抵抗が、関節位置224に基づいてどのように修正され得るかを示す。関節24に対して1つ以上の運動限界が決定される。様々な実施形態によれば、各ロボット関節24は、2つの限界を含むことができ、つまり回転方向ごとに1つずつ限界を含む。関節が移動又は回転(例えば、角回転)すると、位置情報が制御ユニットに提供される。制御ユニットは、それぞれの関節限界222を用いて予めプログラムされてもよく、各関節24から受信した現在位置情報をそのそれぞれの限界と比較してもよい。したがって、制御ユニットは、ロボット関節24によって報告された現在位置と運動限界との間の距離を決定することができる。この距離に基づいて、減衰係数を決定し、ロボット関節に適用して、ロボット関節24の力又はトルクを修正することができる。このようにして、ロボットアーム24による医療用器具の動きに対する抵抗が影響を受ける。様々な実施形態によれば、関節が所定の触覚壁進入位置226を過ぎて移動(例えば、回転)するまで、減衰係数は決定されなくてもよい。
【0149】
図23は、本明細書に開示される主題技術の態様による、触覚壁減衰領域230及び触覚前壁減衰領域232を含む、ロボット関節24のための第2の例示的な仮想触覚壁を示す。様々な実施形態によれば、触覚壁220への最大進入速度は、関節位置及び速度に応じて減衰係数234を変化させることによって制限される。関節位置に関して、関節24の回転位置が触覚壁進入位置226から遠いとき、関節に適用される減衰係数234は低くてもよい。しかしながら、関節が触覚壁進入位置226のより近くに移動するにつれて、減衰係数234及び結果として生じる減衰力又はトルクは、より高くなり得、それは、関節速度を減速させる。
【0150】
速度に関しては、より低い速度ではより低い減衰係数を適用することができ、より高い速度ではより高い減衰係数を適用することができる。この点に関して、関節は、触覚壁への進入速度を含む最大関節速度を依然として制限しながら、低速及び中速で移動することがより容易であり得る。
図24は、本明細書に開示される主題技術の態様による、触覚前壁減衰領域232内の減衰及び触覚壁減衰領域220内の減衰を含む、関節の動きを減衰させるための例示的な減衰関数を示す。図示された例では、触覚前壁減衰領域232において、関節運動は、遷移レジーム240に基づいて減衰される。減衰係数に対する調整は、
図20A~20Cに関して前述したように、連続的及び/又は線形であってもよく、又は
図24に示すように、1つ以上の異なる線形調整を含んでもよい。触覚壁減衰領域220において、関節運動は、前述のように、固定量242だけ減衰されてもよい。
【0151】
図25は、本明細書に開示される主題技術の態様による、医療用器具の減衰操作のための例示的なプロセスを示す。説明のために、例示的なプロセス300の様々なブロックは、本明細書で説明される構成要素及び/又はプロセスを参照して本明細書で説明される。プロセス300のブロックのうちの1つ以上は、例えば、前述のロボットシステムの制御ユニットによって実行されるソフトウェアを含む、例えば、1つ以上のコンピューティングデバイスによって実施されてもよい。いくつかの実施形態では、ブロックのうちの1つ以上は、1つ以上の機械学習アルゴリズムに基づいて実施され得る。いくつかの実施形態では、ブロックのうちの1つ以上は、他のブロックとは別に、1つ以上の異なるプロセッサ又はデバイスによって実施され得る。更に説明のために、例示的なプロセス300のブロックは、連続して、又は線形に発生するものとして説明される。しかしながら、例示的なプロセス300の複数のブロックが並行して生じてもよい。加えて、例示的なプロセス300のブロックは、示される順序で実行される必要はなく、及び/又は例示的なプロセス300のブロックのうちの1つ以上は、実行される必要はない。
【0152】
図示の例では、ロボットアーム12とともに使用するように構成されたロボット関節24が提供される(302)。前述のように、ロボットアーム12は、協働して医療用器具を移動させる1つ以上のリンク及び1つ以上の関節(ロボット関節を含む)を含む。
【0153】
医療用器具が3次元空間内で移動されると、ロボット関節の現在位置が制御ユニットによって受信される(304)。様々な実施形態によれば、制御ユニットは、ロボット関節24の現在の速度を受信及び/又は決定することもできる。前述のように、各関節24は、その速度及び位置(例えば、角速度及び角度位置)を制御ユニットに報告してもよい。それに加えて、又は代わりに、関節24は、関節によって付与される、又はそれに印加される角度力又はトルクを報告してもよい。
【0154】
次に、制御ユニットは、ロボット関節24の現在位置とロボット関節の第1の運動限界との間の距離を決定する(306)。一例として、現在位置はロボット関節24の回転位置であってもよく、距離は関節の回転距離であってもよい。いくつかの実施形態では、ロボット関節24は、2つのそれぞれの運動限界に関連付けられ、各限界は、ロボット関節のそれぞれの回転方向に関連付けられる。
【0155】
次いで、制御ユニットは、距離に基づいてロボット関節24に減衰関数を適用して、医療用器具の動きに対する抵抗を修正する(308)。様々な実施形態によれば、減衰関数は、(例えば、減衰係数の適用によって)ロボット関節の動きに対する抵抗力又はトルクの増加を引き起こす。関節速度が受信又は決定されるいくつかの実施形態では、ロボット関節に適用される減衰関数はまた、現在の速度に基づき得る。
【0156】
他の前述の実施形態と同様に、制御ユニットは、距離が第1の閾値を満たすとき、ロボット関節の動きに対する抵抗力又はトルクを修正するための第1の減衰係数を決定し、距離が第2の閾値を満たすとき、抵抗力又はトルクを修正するための第2の減衰係数を決定してもよい。
【0157】
ロボット関節24の各回転方向は、複数の減衰領域と関連付けられてもよく、それぞれの回転方向の各減衰領域は、ロボット関節の力又はトルクを修正するための異なる減衰係数を決定する。例えば、減衰関数は、第1の閾値を満たす関節24の現在位置に応じて可変量だけ関節24の力又はトルクを修正する第1の減衰領域と、第2の閾値を満たす関節24の現在位置に応じて固定量に従って力又はトルクを修正する第2の減衰領域とを含むことができる。
【0158】
図23及び
図24に関して説明したように、適用される減衰関数は、仮想壁に対するロボットアームの現在位置に基づくことができ、仮想壁に至る1つ以上の減衰領域内にある関節の位置に基づいて減衰係数を選択し、各減衰領域において力又はトルクを異なるように修正することができる。したがって、減衰機能は、仮想壁への触覚前限界232に達すると、関節24の速度を低減し始めてもよい。減衰関数は、関節24が触覚前限界232と仮想壁226との間で移動するときに減衰係数234を変化させることができる。
図23を簡単に参照すると、減衰係数234は、関節が触覚前限界から仮想壁226に向かって移動するにつれて増加し得る。次いで、減衰係数234は、関節24が仮想壁226を越えて移動するときに一定のままであってもよい。いくつかの実施形態では、減衰機能は、触覚壁限界222におけるハードストップを含んでもよい。
【0159】
いくつかの実施形態では、減衰関数は、ロボットアームの速度に基づいて減衰係数を決定し、減衰関数は、ロボットアームの速度が増加するにつれて減衰係数を変化させてもよい。前述の実施形態と同様に、速度ベクトルは、例えば、各関節に関連付けられた力、位置、及び/又は速度寄与度から決定されてもよい。速度ベクトルは、3次元空間を通してロボットインターフェースによってとられる経路に対応し得る。
【0160】
上述の例示的なプロセス200及び300、並びに関連する特徴及びアプリケーションの多くはまた、コンピュータ可読記憶媒体(コンピュータ可読媒体とも呼ばれる)上に記録された命令のセットとして指定されるソフトウェアプロセスとして実装されてもよく、自動的に(例えば、ユーザの介入なしに)実行されてもよい。これらの命令が1つ以上の処理ユニット(例えば、1つ以上のプロセッサ、プロセッサのコア、又は他の処理ユニット)によって実行されるとき、これらの命令は、処理ユニットに命令に示されたアクションを実行させる。コンピュータ可読媒体の例は、CD-ROM、フラッシュドライブ、RAMチップ、ハードドライブ、EPROMなどを含むが、これらに限定されず、コンピュータ可読媒体は、無線又は有線接続を介して通過する搬送波及び電子信号を含まない。
【0161】
「ソフトウェア」という用語は、適切な場合、プロセッサによる処理のためにメモリに読み込むことができる、読み出し専用メモリに常駐するファームウェア又は磁気記憶装置に記憶されたアプリケーションを含むことを意味する。また、いくつかの実施形態では、本開示の複数のソフトウェア態様は、主題技術の別個のソフトウェア態様を維持しながら、より大きいプログラムのサブパートとして実装され得る。いくつかの実施形態では、複数のソフトウェア態様を別個のプログラムとして実装することもできる。最後に、本明細書で説明するソフトウェア態様を一緒に実装する別個のプログラムの任意の組み合わせは、主題技術の範囲内である。いくつかの実施形態では、ソフトウェアプログラムは、1つ以上の電子システム上で動作するようにインストールされたとき、ソフトウェアプログラムの動作を実行及び実施する1つ以上の特定の機械実施形態を定義する。
【0162】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、又はコードとしても知られている)は、コンパイラ型言語若しくはインタープリタ型言語、宣言型言語若しくは手続き型言語を含む任意の形態のプログラミング言語で書くことができ、スタンドアロンプログラムとして、又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、オブジェクト、若しくはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとして含む任意の形態で展開することができる。コンピュータプログラムは、ファイルシステム内のファイルに対応してもよいが、対応しなくてもよい。プログラムは、他のプログラム又はデータ(例えば、マークアップ言語文書に格納された1つ以上のスクリプト)を保持するファイルの一部に、当該のプログラム専用の単一ファイルに、又は複数の協調ファイル(例えば、1つ以上のモジュール、サブプログラム、又はコードの一部を格納するファイル)に格納することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、又は1つのサイトに位置するか若しくは複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開され得る。
【0163】
3.実装システム及び用語。
本明細書に開示される実施形態は、ロボット対応の医療システムのためのシステム、方法、及び装置を提供する。本明細書に記載される様々な実施形態は、ロボット対応の医療システムのためのコントローラを含む。
【0164】
本明細書で使用するとき、「結合する」、「結合している」、「結合された」という用語、又は結合という単語の他の変形は、間接的接続又は直接的接続のいずれかを示し得ることに留意されたい。例えば、第1の構成要素が第2の構成要素に「結合される」場合、第1の構成要素は、別の構成要素を介して第2の構成要素に間接的に接続されている、又は第2の構成要素に直接に接続されている、のいずれかであってもよい。
【0165】
本明細書に記載の位置推定機能及びロボット動作作動機能は、プロセッサ可読媒体又はコンピュータ可読媒体上の1つ以上の命令として記憶されてもよい。「コンピュータ可読媒体」という用語は、コンピュータ又はプロセッサがアクセスすることができる任意の利用可能な媒体を指すものである。一例として、限定するものではないが、このような媒体は、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(electrically erasable programmable read-only memory、EEPROM)、フラッシュメモリ、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(compact disc read-only memory、CD-ROM)、又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、若しくは他の磁気記憶デバイス、又は命令若しくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用することができ、コンピュータによってアクセスされることができる任意の他の媒体を含んでもよい。コンピュータ可読媒体が、有形で、非一時的であってもよいことに留意されたい。本明細書で使用する際、「コード(code)」という用語は、コンピューティングデバイス又はプロセッサによって実行可能であるソフトウェア、命令、コード、又はデータを言うことができる。
【0166】
本明細書に開示される方法は、記載される方法を達成するための1つ又は2つ以上のステップ又は行為を含む。方法ステップ及び/又は行為は、特許請求の範囲から逸脱しない限り、互いに置き換えることができる。言い換えれば、記載の方法の正しい実施に特定の順序のステップ又は行為が必要とされない限り、特許請求の範囲から逸脱しない限り、特定のステップ及び/又は行為の順序及び/又は使用を修正することができる。
【0167】
本明細書で使用するとき、「複数」という用語は、2つ又はそれ以上を示す。例えば、複数の構成要素は、2つ又はそれ以上の構成要素のことである。「判断する(determining)」という用語は、多種多様な行為に及び、したがって、「判断する」には、計算する、コンピュータで計算する、処理する、導出する、調査する、ルックアップする(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造を調べる)、確かめるなどを含めることができる。また、「判断する」には、受け取る(例えば、情報を受信する)、アクセスする(例えば、メモリ内のデータにアクセスする)などを含めることができる。また、「判断する」には、解決する、選択する、選出する、確立するなどを含めることができる。
【0168】
語句「に基づく」は、別段に明示的に指定されない限り、「のみに基づく」を意味しない。言い換えれば、語句「基づく」は、「のみに基づく」及び「少なくとも基づく」の両方を言うものである。
【0169】
本明細書で使用するとき、「およそ」又は「約」という用語は、長さ、厚さ、量、期間、又は他の測定可能な値の測定範囲を指す。このような測定範囲は、開示されるデバイス、システム、及び技術において機能するためにかかる変形が適切である限り、指定された値の+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、更により好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含する。
【0170】
開示される実装態様の前述の説明は、任意の当業者が本発明を製造すること、又は使用することを可能にするために提供される。当業者であれば、これらの実装形態に対す様々な修正がすぐに分かるようになり、本明細書に規定の一般的な原理は、本発明の範囲から逸脱することのない限り、他の実装態様にも適用することができる。例えば、当業者であれば、締結、取り付け、結合、又は係合ツール構成要素と同様の方式、特定の作動運動を生み出すのと同等の機構、及び電気エネルギを送達するのと同等の機構など、多くの対応する代替、同等の構造上の細目を採用することができることが分かるであろう。したがって、本発明は、本明細書に示す実装形態に限られるものではなく、本明細書に開示した原則及び新規な特徴と一致する最も広い範囲が与えられるものである。
【0171】
以下の条項により、いくつかの実施形態又は実装形態を記述する。
条項1.医療用器具を制御するためのシステムであって、
協働して医療用器具の遠隔操作を容易にする1つ以上のリンク及び1つ以上の関節を含むロボットユーザインターフェースと、
制御ユニットであって、
1つ以上の関節から動き情報を受信し、
受信された動き情報に基づいて複数の異なる減衰修正子から減衰修正子を決定し、
決定された減衰修正子を1つ以上の関節のうちの少なくとも1つの関節に適用して、医療用器具の遠隔操作中に少なくとも1つの関節の力又はトルクを修正するように構成された、制御ユニットと、を含む、システム。
【0172】
条項2.制御ユニットは、
動き情報に基づいてロボットユーザインターフェースのための速度ベクトルを決定するように更に構成され、減衰修正子は、速度ベクトルに基づいて決定される減衰係数である、条項1に記載のシステム。
【0173】
条項3.減衰係数は、(i)速度ベクトルが第1の閾値を満たすことに応答する第1の減衰領域と、(ii)速度ベクトルが第2の閾値を満たすことに応答する第2の減衰領域とを含む減衰関数に基づいて選択される、条項2に記載のシステム。
【0174】
条項4.減衰修正子は、速度ベクトルに応答して連続的な一定でない関係を含む、条項2又は3に記載のシステム。
【0175】
条項5.動き情報を受信することは、複数の関節の各々に対する力ベクトルを受信することを含み、速度ベクトルは、受信された力ベクトルに基づいて決定される、条項2~4のいずれかに記載のシステム。
【0176】
条項6.動き情報は、ロボットユーザインターフェースに加えられた力の大きさ又はロボットユーザインターフェースの速さを含む、条項1~5のいずれかに記載のシステム。
【0177】
条項7.動き情報は、ロボットユーザインターフェースの現在位置を含む、条項1~6のいずれかに記載のシステム。
【0178】
条項8.減衰修正子を決定することは、
ロボットユーザインターフェースの少なくとも一部分の速さ又は速度によって複数の減衰修正子をインデックス付けすることを含み、決定された減衰修正子は速さ又は速度に対応する、条項1~7のいずれかに記載のシステム。
【0179】
条項9.適用された減衰修正子は、少なくとも1つの関節の力又はトルクを、ロボットユーザインターフェースの一部の現在の速さ又は速度が第1の範囲内にあるときには現在の速さ又は速度に比例して変化させ、現在の速さ又は速度が第2の範囲内にあるときには現在の速さ又は速度に反比例して変化させる、条項1~8のいずれかに記載のシステム。
【0180】
条項10.適用された減衰修正子は、少なくとも1つの関節の力又はトルクを、第3の範囲内にあるときに固定されたままにする、条項9に記載のシステム。
【0181】
条項11.適用された減衰修正子は、少なくとも1つの関節の力又はトルクを、ロボットユーザインターフェースの一部の現在の速さ又は速度が第1の範囲内にあるときには可変量だけ修正し、第1の範囲よりも大きい第2の範囲内にあるときには固定量だけ修正する、条項1~10のいずれかに記載のシステム。
【0182】
条項12.適用された減衰修正子は、現在の速さ又は速度が第4の範囲内にあるとき、対数減衰に従って力又はトルクを修正する、条項1~11のいずれかに記載のシステム。
【0183】
条項13.決定された減衰修正子は、少なくとも1つの関節の角速度を修正する、条項1~12のいずれかに記載のシステム。
【0184】
条項14.制御ユニットは、ロボットユーザインターフェースの少なくとも一部の動きの間、減衰修正子の決定及び適用を連続的に繰り返すように構成されている、条項1~13のいずれかに記載のシステム。
【0185】
条項15.
協働して医療用器具の遠隔操作を容易にする1つ以上のリンク及び1つ以上の関節を備えるロボットユーザインターフェースの操作に基づいて、医療用器具の移動をロボット的に容易にすることと、
1つ以上の関節から動き情報を受信することと、
受信された動き情報に基づいて複数の異なる減衰修正子から減衰修正子を決定することと、
決定された減衰修正子を1つ以上の関節のうちの少なくとも1つの関節に適用して、医療用器具の遠隔操作中に少なくとも1つの関節の力又はトルクを修正することと、を含む、医療用器具を制御するための方法。
【0186】
条項16.
動き情報に基づいて、ロボットユーザインターフェースの速さ又は速度を決定することを更に含み、減衰修正子は、速さ又は速度に基づいて決定される減衰係数である、条項15に記載の方法。
【0187】
条項17.医療用器具の減衰制御のための手動制御入力装置であって、
医療用器具の操作を可能にする1つ以上のリンク及び関節と、
速さ又は速度及び/又は位置に対応する情報を制御ユニットに送信するために、1つ以上のリンク及び関節上に配置された1つ以上のセンサと、を備え、
制御ユニットが、
送信された情報に基づいて、可変減衰関数を適用して、リンク及び関節のうちの1つ以上の力又はトルクを修正するように構成されている、手動制御入力装置。
【0188】
条項18.可変減衰関数は、(i)速さ又は速度が第1の閾値を満たすことに応答する第1の減衰領域と、(ii)速さ又は速度が第2の閾値を満たすことに応答する第2の減衰領域とを含む、条項17に記載の入力装置。
【0189】
条項19.第1の減衰領域において、可変減衰関数が一定の減衰係数を含み、第2の減衰領域において、可変減衰関数が一定でない減衰係数を含む、条項18に記載の入力装置。
【0190】
条項20.可変減衰関数は、速さ又は速度に応答する連続的な一定でない関係を含む、条項17~19のいずれかに記載の入力装置。
【0191】
〔実施の態様〕
(1) 医療用器具を制御するためのシステムであって、
協働して医療用器具の遠隔操作を容易にする1つ以上のリンク及び1つ以上の関節を含むロボットユーザインターフェースと、
制御ユニットであって、
前記1つ以上の関節から動き情報を受信し、
前記受信された動き情報に基づいて複数の異なる減衰修正子から減衰修正子を決定し、
前記決定された減衰修正子を前記1つ以上の関節のうちの少なくとも1つの関節に適用して、前記医療用器具の前記遠隔操作中に前記少なくとも1つの関節の力又はトルクを修正するように構成された、制御ユニットと、を含む、システム。
(2) 前記制御ユニットは、
前記動き情報に基づいて前記ロボットユーザインターフェースのための速度ベクトルを決定するように更に構成され、前記減衰修正子は、前記速度ベクトルに基づいて決定される減衰係数である、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記減衰係数は、(i)前記速度ベクトルが第1の閾値を満たすことに応答する第1の減衰領域と、(ii)前記速度ベクトルが第2の閾値を満たすことに応答する第2の減衰領域とを含む減衰関数に基づいて選択される、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記減衰修正子は、前記速度ベクトルに応答して連続的な一定でない関係を含む、実施態様2に記載のシステム。
(5) 前記動き情報を受信することは、複数の関節の各々に対する力ベクトルを受信することを含み、前記速度ベクトルは、前記受信された力ベクトルに基づいて決定される、実施態様2に記載のシステム。
【0192】
(6) 前記動き情報は、前記ロボットユーザインターフェースに加えられた力の大きさ又は前記ロボットユーザインターフェースの速さを含む、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記動き情報は、前記ロボットユーザインターフェースの現在位置を含む、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記減衰修正子を決定することは、
前記ロボットユーザインターフェースの少なくとも一部分の速さ又は速度によって複数の減衰修正子をインデックス付けすることを含み、前記決定された減衰修正子は前記速さ又は速度に対応する、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記適用された減衰修正子は、前記少なくとも1つの関節の前記力又はトルクを、前記ロボットユーザインターフェースの一部の現在の速さ又は速度が第1の範囲内にあるときには前記現在の速さ又は速度に比例して変化させ、前記現在の速さ又は速度が第2の範囲内にあるときには前記現在の速さ又は速度に反比例して変化させる、実施態様1に記載のシステム。
(10) 前記適用された減衰修正子は、前記少なくとも1つの関節の前記力又はトルクを、第3の範囲内にあるときに固定されたままにする、実施態様9に記載のシステム。
【0193】
(11) 前記適用された減衰修正子は、前記少なくとも1つの関節の前記力又はトルクを、前記ロボットユーザインターフェースの一部の現在の速さ又は速度が第1の範囲内にあるときには可変量だけ修正し、前記第1の範囲よりも大きい第2の範囲内にあるときには固定量だけ修正する、実施態様1に記載のシステム。
(12) 前記適用された減衰修正子は、前記現在の速さ又は速度が第4の範囲内にあるとき、対数減衰に従って前記力又はトルクを修正する、実施態様1に記載のシステム。
(13) 前記決定された減衰修正子は、前記少なくとも1つの関節の角速度を修正する、実施態様1に記載のシステム。
(14) 前記制御ユニットは、前記ロボットユーザインターフェースの少なくとも一部の動きの間、前記減衰修正子の決定及び適用を連続的に繰り返すように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(15) 協働して医療用器具の遠隔操作を容易にする1つ以上のリンク及び1つ以上の関節を備えるロボットユーザインターフェースの操作に基づいて、前記医療用器具の移動をロボット的に容易にすることと、
前記1つ以上の関節から動き情報を受信することと、
前記受信された動き情報に基づいて複数の異なる減衰修正子から減衰修正子を決定することと、
前記決定された減衰修正子を前記1つ以上の関節のうちの少なくとも1つの関節に適用して、前記医療用器具の前記遠隔操作中に前記少なくとも1つの関節の力又はトルクを修正することと、を含む、医療用器具を制御するための方法。
【0194】
(16) 前記動き情報に基づいて、前記ロボットユーザインターフェースの速さ又は速度を決定することを更に含み、前記減衰修正子は、前記速さ又は速度に基づいて決定される減衰係数である、実施態様15に記載の方法。
(17) 医療用器具の減衰制御のための手動制御入力装置であって、
前記医療用器具の操作を可能にする1つ以上のリンク及び関節と、
速さ又は速度及び/又は位置に対応する情報を制御ユニットに送信するために、前記1つ以上のリンク及び関節上に配置された1つ以上のセンサと、を備え、
前記制御ユニットが、
前記送信された情報に基づいて、可変減衰関数を適用して、前記リンク及び関節のうちの1つ以上の力又はトルクを修正するように構成されている、手動制御入力装置。
(18) 前記可変減衰関数は、(i)前記速さ又は速度が第1の閾値を満たすことに応答する第1の減衰領域と、(ii)前記速さ又は速度が第2の閾値を満たすことに応答する第2の減衰領域とを含む、実施態様17に記載の入力装置。
(19) 前記第1の減衰領域において、前記可変減衰関数が一定の減衰係数を含み、前記第2の減衰領域において、前記可変減衰関数が一定でない減衰係数を含む、実施態様18に記載の入力装置。
(20) 前記可変減衰関数は、前記速さ又は速度に応答する連続的な一定でない関係を含む、実施態様17に記載の入力装置。
【国際調査報告】