(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】抗OX40モノクローナル抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240717BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240717BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240717BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240717BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240717BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240717BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240717BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240717BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240717BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240717BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240717BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240717BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240717BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240717BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12P21/08
C12Q1/02
A61K47/68
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P43/00 107
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580855
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 IB2022000372
(87)【国際公開番号】W WO2023275616
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522256668
【氏名又は名称】ハイファイバイオ(ホンコン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン,フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】シュワイツァー,リャング
(72)【発明者】
【氏名】チャン,キアン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ユン-ユエ
(72)【発明者】
【氏名】ラウエ,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ02
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4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB16
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4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
抗OX40抗体の組成物を含む新規な抗OX40抗体、当該抗OX40抗体をコードするポリヌクレオチド、当該抗OX40抗体を調製する方法、及び当該抗OX40抗体を使用する方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
OX40アゴニストとして、OX40(例えば、ヒトOX40)と、配列番号34を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるエピトープにおいて特異的に結合し、OX40-OX40L相互作用/結合に実質的に影響を及ぼさない、単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
OX40Lの存在下または非存在下でNF-kB媒介性OX40シグナル伝達を誘導する、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
(内因性)OX40L誘導性OX40シグナル伝達(例えば、NF-kBシグナル伝達)を阻害しないかまたは増強する、請求項1または2に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
OX40Lが少なくとも約50nM、60nM、70nM、80nM、90nMまたはそれ以上である、請求項3に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
活性化された初代(ヒトまたはカニクイザル)CD4
+CD3
+T細胞に、約0.01~5nM、0.1~0.3nM、または0.5~1.5nM(例えば、0.65または1.36nM)のEC50値で結合する、請求項1~4のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
活性な(例えば、CD3/CD28で刺激された)末梢ヒトCD4
+T細胞上の総表面レベルOX40発現量を用量依存的に増加させる(例えば、最大のOX40発現は、約1nMの前記抗体またはそのフラグメントによって刺激される)、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
T細胞活性化を用量依存的に増強する、請求項1~6のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
活性化されたヒトPBMCにおけるサイトカイン(例えば、IL-2)産生を増加させ、場合により、前記ヒトPBMCは、1または10ng/mLのStaphylococcus aureus腸毒素A(SEA)によって刺激される、請求項6に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
OX-40発現標的細胞の存在下で、例えば、12:1~1:1のエフェクター対標的細胞(E:T)比で約0.3~1.2nMのEC50で、エフェクター細胞にCD16媒介性ADCCを用量依存的に誘導する、請求項1~8のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
300μg/mL以下では初代PBMCに有意なサイトカイン放出を誘導しない、請求項1~9のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
少なくとも約100mg/kgの最大耐用量でマウスに有意な毒性を誘導しない、請求項1~10のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
a)配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2、及び配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、
b)配列番号9の軽鎖CDR1、配列番号10の軽鎖CDR2、及び配列番号11の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)と、
を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
a)前記VHが、配列番号4のアミノ酸配列、または配列番号4と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、かつ、
b)前記VLが、配列番号12のアミノ酸配列、または配列番号12と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む、
請求項12に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
重鎖定常領域(CH)及び軽鎖定常領域(CL)をさらに含む、請求項12または13に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
1)前記CHが、配列番号5のアミノ酸配列、または配列番号5と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、及び/または、
2)前記CLが、配列番号13のアミノ酸配列、または配列番号13と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む、
請求項14に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
前記VHに対してN末端に重鎖シグナル配列を、及び/または前記VLに対してN末端に軽鎖シグナル配列をさらに含む、請求項12~15のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
1)前記重鎖シグナル配列が、配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、及び/または、
2)前記軽鎖シグナル配列が、配列番号14のアミノ酸配列、または配列番号14と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む、
請求項16に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項18】
前記抗体が、IgG、例えば、IgG1である、請求項12~17のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項19】
前記抗原結合フラグメントが、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFv、またはsdAbである、請求項12~18のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントと、治療部分と、を含む抗体薬物複合体(ADC)であって、場合により、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントが、タンパク質である前記治療部分に融合される、前記抗体薬物複合体。
【請求項21】
請求項1~19のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド。
【請求項22】
配列番号20のポリヌクレオチド配列を有する重鎖可変領域のコード配列、及び/または配列番号28のポリヌクレオチド配列を有する軽鎖可変領域のコード配列を含む、請求項21に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
配列番号21のポリヌクレオチド配列を有する重鎖定常領域のコード配列、及び/または配列番号29のポリヌクレオチド配列を有する軽鎖定常領域のコード配列をさらに含む、請求項21または22に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項21~23のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター(例えば、哺乳動物発現用の発現ベクター)。
【請求項25】
請求項21~23のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、または請求項24に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項26】
請求項1~19のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを産生する方法であって、請求項25に記載の宿主細胞を前記宿主細胞内での抗体発現に適した条件下で培地中で培養することを含み、場合により、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを前記培地から収穫、回収、単離または精製することをさらに含む、前記方法。
【請求項27】
請求項1~19のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項20に記載のADC、請求項21~23のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、または請求項24に記載のベクターと、薬学的に許容される担体または賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項28】
第2の治療剤をさらに含むか、または第2の治療剤と共に投与するための、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
がんの治療を必要とする患者のがんを治療する方法であって、治療有効量のOX40アゴニスト抗体またはその抗原結合フラグメントを前記患者に投与することを含み、前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、OX40アゴニストとして、OX40(例えば、ヒトOX40)と、配列番号34を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるエピトープにおいて特異的に結合し、OX40-OX40L相互作用/結合に実質的に影響を及ぼさない、前記方法。
【請求項30】
がんの治療を必要とする患者のがんを治療する方法であって、請求項1~19のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項20に記載のADC、請求項21~23のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項24に記載のベクター、または請求項27または28に記載の医薬組成物を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項31】
がんを治療するための医薬の製造における、請求項1~19のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項20に記載のADC、請求項21~23のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項24に記載のベクター、または請求項27または28に記載の医薬組成物の使用。
【請求項32】
前記がんが、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(消化管癌、及び消化管間質癌を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿道癌、肝臓腫瘍、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒色腫、結節型黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、母斑症、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連するものなど)及びMeigs症候群に関連する異常血管増殖、脳腫瘍及び脳癌、頭頸部癌、及び関連する転移からなる群から選択される、請求項29または30に記載の方法、または請求項31に記載の使用。
【請求項33】
Treg機能の阻害(例えば、Tregの抑制的機能の阻害)、OX40発現細胞(例えば、高いレベルのOX40を発現する細胞)の殺滅、エフェクターT細胞機能の増大及び/またはメモリーT細胞機能の増大、腫瘍免疫の低下、T細胞機能の増強及び/またはOX40発現細胞の枯渇のうちの1つ以上に使用される、請求項1~19に記載の抗OX40モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、または請求項20に記載の抗体薬物複合体、または請求項27または28に記載の医薬組成物のいずれか1つの使用。
【請求項34】
Treg機能の阻害(例えば、Tregの抑制的機能の阻害)、OX40発現細胞(例えば、高いレベルのOX40を発現する細胞)の殺滅、エフェクターT細胞機能の増大及び/またはメモリーT細胞機能の増大、腫瘍免疫の低下、T細胞機能の増強及び/またはOX40発現細胞の枯渇のうちの1つ以上を行うための医薬の製造における、請求項1~19に記載の抗OX40モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント、または請求項20に記載の抗体薬物複合体、または請求項27または28に記載の医薬組成物のいずれか1つの使用。
【請求項35】
請求項1~19のいずれか1項に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項20に記載の抗体薬物複合体、または請求項27または28に記載の医薬組成物を含み、好ましくは投与装置をさらに含む、キット。
【請求項36】
T細胞(例えば、CD4
+T細胞)を活性化するか、Treg細胞を阻害するか、OX40発現標的細胞を殺滅するか、エフェクターもしくはメモリーT細胞機能を増強するか、または腫瘍誘導性免疫抑制を低減する方法であって、前記T細胞、前記Treg細胞、前記OX40発現標的細胞、前記エフェクターまたはメモリーT細胞を、それぞれ、請求項1~19のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントのようなOX40アゴニスト抗体と接触させることを含み、前記アゴニスト抗体が、配列番号34のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるヒトOX40エピトープに結合する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月29日に出願された米国仮特許出願第63/216,189号の出願日に対する優先権及びその利益を主張するものであり、その全図面及び配列表を含むその全容を、あらゆる言語において、参照によって本明細書に援用するものである。
【0002】
本発明は、抗OX40抗体の組成物を含む新規な抗OX40抗体、当該抗OX40抗体をコードするポリヌクレオチド、当該抗OX40抗体を調製する方法、及び疾患の治療に当該抗OX40抗体を使用する方法に関する。
【0003】
配列表の参照
本出願は、電子的に提出された配列表を含み、その全容を参照によって本明細書に援用するものである。2022年6月28日に作成された配列表のコピーは、131206-00920_SLのファイル名で、そのサイズは33,739バイトである。
【背景技術】
【0004】
生物製剤の使用によって、固形腫瘍を有する患者における抗腫瘍免疫応答は改善されてきている。例えば、米国及び欧州では、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))及びペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))の2種類の抗PD-1モノクローナル抗体が、切除不能の転移性黒色腫、及び転移性非小細胞肺癌などの疾患の治療に承認されている。従来、これらの薬剤の抗腫瘍応答は、患者の無増悪生存期間及び/または全生存期間の改善によって評価されている。健康管理の基準及び期待がより高まるにつれ、より効果的な抗癌製品及び戦略が新たに必要とされている。
【0005】
PD-1及びCTLA-4は、T細胞活性化のプロセスにおいて免疫抑制効果を発揮し、それにより腫瘍細胞に対するT細胞の免疫機能を阻害する。モノクローナル抗体は、これら2つの免疫抑制標的をブロックすることにより、T細胞の抗腫瘍免疫応答を回復することができる。上記の免疫抑制チェックポイントの阻害に加えて、刺激性チェックポイントの活性化は、新しい薬物の開発の標的となる。
【0006】
刺激性免疫チェックポイント分子とは、主に、T細胞活性化に対する刺激効果を発揮するリガンドと受容体のペアを指す。これらの分子には、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーに属し、T細胞増殖、活性化、及び分化に役割を果たすOX40、CD40、4-1BB、及びGITRが含まれるが、これらに限定されない。
【0007】
OX40受容体は、CD134及びTNFRSF4(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4)としても知られ、TNFRスーパーファミリー受容体のメンバーである。CD28のような他の構成的T細胞共刺激受容体とは異なり、OX40はナイーブT細胞では発現されない。OX40は、活性化の24~72時間後に活性化T細胞で主に発現する二次的共刺激免疫チェックポイント分子である。同様に、OX40のリガンドであるOX40L(CD252またはTNFSF4)は、休止状態の抗原提示細胞では発現しないが、活性化後に発現される。OX40の発現は、T細胞の完全活性化に依存する。
【0008】
OX40は、そのリガンドであるOX40Lに結合し、細胞内領域にTNFR分子を動員してIKKα-IKKβ及びPI3k-PKB(Akt)シグナル伝達複合体を形成させることにより、共刺激シグナルを活性化する。OX40及びTCRは、未知の機構を通じて細胞内Ca2+レベルを増加させ、核因子活性化T細胞(NFAT)の核侵入を導くことによって、NFATシグナルを活性化するうえで相乗効果を有する。OX40はまた、PI3k/PKB及びNFAT経路、古典的NF-κB1経路、または非標準的NF-κB2経路の活性化を介してT細胞の活性化、増強、増殖、及び生存に中心的な役割を果たす。さらに、OX40は、CTLA-4及びFoxp3の発現を減少させる。
【0009】
免疫応答の増強におけるOX40-OX40L複合体の機構には二通りある。第一に、OX40-OX40L複合体は、エフェクターT細胞及びメモリーT細胞の生存率及び増殖を増強することによって、IL-2、IL-4、IL-5、IFN-γなどのサイトカインの分泌を増加させる。第二に、OX40-OX40L複合体は、調節性T細胞の免疫抑制活性を減少させることによってT細胞活性化を増加させる。腫瘍微小環境において、免疫系の活性化は、OX40の発現を増加させ、エフェクターT細胞の活性化及び増殖を増強し、調節性T細胞を阻害し、これらは共に、複雑な抗腫瘍免疫応答に寄与する。現在、がん治療における抗OX40抗体の多くの臨床試験が、Clinical Trialsのウェブサイトで入手可能である。
【0010】
しかしながら、新たながん治療を開発するためのより多くの新規の抗OX40抗体が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、がん治療のための、OX40に特異的に結合してこれを活性化する新規な抗OX40抗体を提供する。
【0012】
一実施形態では、本発明は、重鎖CDR1ドメイン(配列番号1)、重鎖CDR2ドメイン(配列番号2)、及び重鎖CDR3ドメイン(配列番号3)を有する重鎖可変領域と、軽鎖CDR1ドメイン(配列番号9)、軽鎖CDR2ドメイン(配列番号10)、及び軽鎖CDR3ドメイン(配列番号11)を有する軽鎖可変領域と、を含む、抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載のOX40抗体またはその抗原結合フラグメントと、さらなる治療剤とを含む抗体薬物複合体を提供し、好ましくは、抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、リンカーによってさらなる治療剤と連結される。
【0014】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、配列表に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたは本明細書に記載の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントを産生するための方法であって、本明細書に記載の宿主細胞を抗体またはその抗原結合フラグメントの発現に適した条件下で培養することと、発現された抗体または抗原結合フラグメントを培地から回収することと、を含む、方法を提供する。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、本明細書に記載の抗体薬物複合体、本明細書に記載のポリヌクレオチド、または本明細書に記載の発現ベクターと、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
一態様では、本発明は、がんの治療に使用される、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、がんを治療するための方法であって、治療を必要とする個体に、治療有効量の本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、がんを治療するための薬剤の製造における、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、または本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は、がんを治療するための薬物の製造における、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、または本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0023】
一実施形態では、本発明は、以下のうちの1つ以上、すなわち、Treg機能の阻害(例えば、Tregの抑制的機能の阻害)、OX40発現細胞(例えば、高いレベルのOX40を発現する細胞)の殺滅、エフェクターT細胞機能の増大及び/またはメモリーT細胞機能の増大、腫瘍免疫の低下、T細胞機能の増強及び/またはOX40発現細胞の枯渇のうちの1つ以上に使用される、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、または本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、以下の治療機序、すなわち、Treg機能の阻害(例えば、Tregの抑制的機能の阻害)、OX40発現細胞(例えば、高いレベルのOX40を発現する細胞)の殺滅、エフェクターT細胞機能の増大及び/またはメモリーT細胞機能の増大、腫瘍免疫の低下、ならびにT細胞機能の増強及び/またはOX40発現細胞の枯渇のうちの1つまたは組み合わせを有する薬剤の製造に使用される、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、または本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物と、1つ以上のさらなる治療剤と、を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物を含み、好ましくは投与装置をさらに含む、キットを提供する。
【0027】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、抗体の開発可能性を改善するように設計された、そのアミノ酸配列の1つ以上の点変異を含む。好ましい実施形態では、1つ以上の点変異は、宿主細胞での発現、調製及び/または製剤化における精製、及び/または個体への投与のプロセスにおいて抗体をより安定化させる。別の好ましい実施形態では、1つ以上の点変異は、調製及び/または製剤化のプロセスにおいて抗体を凝集しにくくする。いくつかの他の実施形態では、本発明は、例えば、それらの配列の1つ以上の(例えば、それらのCDRの1つ以上の)アミノ酸を置き換えて疎水性を除去または低減し、及び/または電荷を最適化することによって、開発可能性の問題を最小化または低減した治療抗体を提供する。
【0028】
本発明の一実施形態は、配列番号33のアミノ酸残基56~74(配列番号34:CSRSQNTVCRPCGPGFYN)に対応するOX40のエピトープに特異的に結合することができる、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0029】
本発明の別の実施形態は、OX40に特異的に結合することができるモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであって、OX40とOX40リガンドとの結合を妨げない、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0030】
本発明の別の実施形態は、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの結合が、三量体または多量体凝集状態でOX40とOX40リガンドとの結合を妨げない、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0031】
本発明の別の実施形態は、OX40に特異的に結合することができるモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであって、OX40及び内因性OX40リガンドへの抗体の結合がともに刺激性シグナル伝達経路を活性化する、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0032】
本発明の別の実施形態は、OX40が、ヒトOX40である、上記の実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0033】
本発明の別の実施形態は、エピトープが配列番号2を含む、上記実施形態のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0034】
本発明の別の実施形態は、約1nM~約10nMのKDでOX40に結合する、上記実施形態のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0035】
本発明の別の実施形態は、OX40に対するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの結合が、OX40の発現を減少させず、または細胞表面に存在するOX40の量を減少させない、上記実施形態に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0036】
本発明の別の実施形態は、前記モノクローナル抗体を用いてがんを治療する方法であって、がんが、固形腫瘍、非固形腫瘍、または腫瘍浸潤T細胞の細胞表面上にOX40発現がみられる種類のがんである、方法である。
【0037】
本発明の別の実施形態は、OX40とモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントとの結合によって試料中のOX40を検出するための方法である。
【0038】
本発明の別の実施形態は、対象におけるOX40のレベルを決定するための方法であって、
a)前記対象から試料を得ることと、
b)試料を本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントと混合することと、
c)対象におけるOX40のレベルを決定することと、を含み、
試料が、組織試料、血液試料、または腫瘍/がん試料である、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1A】OX40タンパク質へのHFB10-1E1hG1の結合を示す。HFB10-1E1hG1のEC80は、0.71nMである。
【
図1B】293T細胞の表面上に発現されたヒトOX40タンパク質に対するHFB10-1E1hG1の結合を示す。EC50は2nMである(平均蛍光強度(MFI))。
【
図1C】293T細胞の表面上に発現されたカニクイザルOX40タンパク質に対するHFB10-1E1hG1の結合を示す。EC50は2.9nM(MFI)である。
【
図1D】293T細胞の表面上に発現されたマウスOX40タンパク質に対するHFB10-1E1hG1の結合を示す。HFB10-1E1hG1は、293T細胞の表面上に発現されたマウスOX40タンパク質には結合しない(MFI)。
【
図1E】293T細胞の表面上に発現されたヒトCD40タンパク質に対するHFB10-1E1hG1の結合を示す。HFB10-1E1hG1は、293T細胞の表面上に発現されたヒトCD40タンパク質には結合しない(MFI)。
【
図1F】HFB10-1E1hG1、参照例1、参照例2、参照例3、及び参照例4のそれぞれに対する、293T細胞の表面上に発現されたヒトOX40タンパク質の結合を示す。HFB10-1E1hG1のEC50は2.02nM(MFI)であり、参照例1のEC50は2.67nM(MFI)であり、参照例2のEC50は4.17nM(MFI)であり、参照例3のEC50は1.92nM(MFI)であり、参照例4のEC50は2.11nM(MFI)である。
【
図1G】HFB10-1E1hG1、参照例1、参照例2、参照例3、及び参照例4のそれぞれに対する、293T細胞の表面上に発現されたカニクイザルOX40タンパク質の結合を示す。HFB10-1E1hG1のEC50は2.94nM(MFI)であり、参照例1のEC50は2.91nM(MFI)であり、参照例2のEC50は6.13nM(MFI)であり、参照例3のEC50は2.57nM(MFI)であり、参照例4のEC50は3.54nM(MFI)である。
【
図2A】Jurkatレポーター細胞におけるHFB10-1E1hG1のアゴニスト活性を示す。抗ヒトIgGと架橋される場合、HFB10-1E1hG1のEC50は、2.9nM(GFPのMFI)である。
【
図2B】Jurkatレポーター細胞におけるHFB10-1E1hG1のアゴニスト活性を示す。HFB10-1E1hG1のEC50は、抗ヒトIgGと架橋していない場合に大幅に高い。抗ヒトIgGとの架橋がない場合、三量体OX40L組換えタンパク質単独は、EC50が45nMに等しい場合にNF-kbシグナル伝達経路を活性化することができる。MFI:蛍光(GFP)強度の尺度。
【
図2C】抗ヒトIgGとの架橋におけるHFB10-1E1hG1とOX40Lの相乗的なアゴニスト作用を示す。HFB10-1E1hG1とOX40Lとは共に、個々の成分が単独で作用する場合の効果と比較して、GFPのMFIを増加させた。
【
図2D】初代CD4
+T細胞におけるHFB10-1E1hG1のアゴニスト活性を示す。初代CD4
+T細胞におけるHFB10-1E1hG1のアゴニスト活性をIL-2分泌のレベルにより測定したところ、得られたEC50は0.2nMであった。
【
図2E】初代CD4
+T細胞におけるHFB10-1E1hG1のアゴニスト活性を示す。HFB10-1E1hG1とOX40Lとは共に、初代CD4
+T細胞におけるIL-2分泌を刺激する際に相乗的なアゴニスト作用を有する。
【
図3】HFB10-1E1hG1の薬物動態試験を示す。IgGのレベルは、処理後100時間で100μg/mL超から10μg/mL未満に減少した。
【
図4A】インビボでのHFB10-1E1hG1の抗腫瘍効果を示す。PBSコントロールと比較して、HFB10-1E1hG1は腫瘍サイズを有意に減少させた。
【
図4B】インビボでのHFB10-1E1hG1の抗腫瘍効果を示す。HFB10-1E1hG1は、マウスに有意な体重減少を引き起こす望ましくない副作用を示さなかった。
【
図4C】0.1mg/kgのHFB10-1E1hG1、1mg/kgのHFB10-1E1hG1、1mg/kgの参照例1、及び10mg/kgのコントロールのインビボ抗腫瘍効果(腫瘍サイズ)を示す。1mg/kgのHFB10-1E1hG1処理は、測定した15日間にわたって腫瘍サイズを抑制するうえで最も効果的であった。
【
図4D】0.1mg/kgのHFB10-1E1hG1、1mg/kgのHFB10-1E1hG1、1mg/kgの参照例1、及び10mg/kgのコントロールのインビボ抗腫瘍効果(体重)を示す。HFB10-1E1hG1は、マウスに有意な体重減少を引き起こす望ましくない副作用を示さなかった。
【
図5A】HFB10-1E1hG1の安定性に対する温度の影響を示す。SDS-PAGEの結果によって示唆されるように、HFB10-1E1hG1は異なる温度で良好な安定性を有する。
【
図5B】HFB10-1E1hG1の安定性に対するpHの影響を示す。SDS-PAGEの結果によって示唆されるように、HFB10-1E1hG1は異なるpH条件下で良好な安定性を有する。
【
図5C】HFB10-1E1hG1の酸化ストレス試験を示す。SDS-PAGEの結果によって示唆されるように、HFB10-1E1hG1は異なる酸化ストレス条件下で良好な安定性を有する。
【
図5D】HFB10-1E1hG1の安定性に対する凍結/解凍の影響を示す。SDS-PAGEの結果によって示唆されるように、HFB10-1E1hG1は、異なる凍結/解凍条件下で良好な安定性を有する。
【
図6A】3匹の異なるサルから単離された活性化CD4
+T細胞に対するHFB10-1E1hG1の結合を示す。各曲線は、4パラメータモデルを用いた非線形曲線当てはめを表す。曲線上の各ドットは実際のデータポイントを表す。#200107の陽性細胞の割合を示す。
【
図6B】3匹の異なるサルから単離された活性化CD4
+T細胞に対するHFB10-1E1hG1の結合を示す。各曲線は、4パラメータモデルを用いた非線形曲線当てはめを表す。曲線上の各ドットは実際のデータポイントを表す。#200107のMFIを示す。
【
図6C】3匹の異なるサルから単離された活性化CD4
+T細胞に対するHFB10-1E1hG1の結合を示す。各曲線は、4パラメータモデルを用いた非線形曲線当てはめを表す。曲線上の各ドットは実際のデータポイントを表す。#M20Z013009の陽性細胞の割合を示す。
【
図6D】3匹の異なるサルから単離された活性化CD4
+T細胞に対するHFB10-1E1hG1の結合を示す。各曲線は、4パラメータモデルを用いた非線形曲線当てはめを表す。曲線上の各ドットは実際のデータポイントを表す。#M20Z013009のMFIを示す。
【
図6E】3匹の異なるサルから単離された活性化CD4
+T細胞に対するHFB10-1E1hG1の結合を示す。各曲線は、4パラメータモデルを用いた非線形曲線当てはめを表す。曲線上の各ドットは実際のデータポイントを表す。#M20Z025008の陽性細胞の割合を示す。
【
図6F】3匹の異なるサルから単離された活性化CD4
+T細胞に対するHFB10-1E1hG1の結合を示す。各曲線は、4パラメータモデルを用いた非線形曲線当てはめを表す。曲線上の各ドットは実際のデータポイントを表す。#M20Z025008のMFIの割合を示す。
【
図7】野生型(WT)マウスにおけるBmk1(1mg/kg及び10mg/kg)及びHFB10-1E1hG1(1mg/kg及び10mg/kg)の時間に対する平均抗体濃度プロファイルを示す。記号:各データポイントの平均値。HFB10-1E1hG1投与は、測定した両方の用量でBmk1よりも高い抗体濃度を生じた。
【
図8】hOX40-KIマウスにおけるBmk1及びHFB10-1E1hG1の時間に対する平均抗体濃度プロファイルを示す。記号:各データポイントの平均値。10mg/kgでのHFB10-1E1hG1の投与は、Bmk1(投与の約70時間後に0.1μg/mL未満)と比較して長時間にわたって持続する効果を有する(投与の200時間後に1μg/mLよりも高い)。
【
図9】腫瘍組織のCD45
+細胞中のCD8
+T細胞の割合を示す。
【
図10】腫瘍組織のCD4
+T細胞中のTregの割合を示す。
【
図11】腫瘍組織のCD4
+及びCD8
+T細胞におけるKi67の発現を示す。
【
図12】腫瘍組織のCD4
+及びCD8
+T細胞におけるPD-1の発現を示す。
【
図13】OX40及びOX40L複合体の3D結晶構造に対してマッピングした、抗OX40抗体のエピトープとしてのHFB301001を示す。
【
図14】細胞ベースの生物発光アッセイを用いて測定されたOX40リガンドのアゴニスト活性を示す。Aは、OX40リガンド単独のレポーター遺伝子活性を示し、Bは、抗OX40抗体であるHFB301001、ベンチマーク1またはベンチマーク2の存在下でのOX40リガンドのレポーター遺伝子活性を示す。Y軸は相対発光量を示す。
【
図15】抗体処理後のCD4
+T細胞におけるOX40発現のレベルを示す。Aは、フローサイトメトリーによって測定した、異なる濃度の抗OX40抗体で処理した後のヒトPBMCから単離されたOX40陽性CD4
+T細胞の割合を示す。ヒトOX40(hOX40)ノックインMC-38マウス結腸直腸癌モデルにおいて、CD4
+T細胞におけるOX40発現量を10mg/kgの抗OX40抗体による3回目の処理の24時間後に測定した(B)。MFIは平均蛍光強度を表す。
【
図16】アイソタイプコントロール(10mg/kg)、抗OX40抗体ベンチマーク1(1mg/kg)、または抗OX40抗体HFB301001(0.1mg/kg及び1mg/kg)による処理後のhOX40ノックインMC-38マウス腫瘍モデルにおける腫瘍サイズを示す。矢印は処理時点を示し、エラーバーは標準誤差を示す。有意性は、最後の時点で一元配置ANOVAによって計算される(*:P<0.05、**:P<0.01)。
【
図17】抗OX40抗体HFB301001(10mg/kg、1mg/kg、0.1mg/kg)、抗OX40抗体ベンチマーク1(10mg/kgまたは1mg/kg)、コントロール(10mg/kg)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)による処理後のMC-38マウス結腸直腸癌モデルにおけるヒトOX40(hOX40)ノックインマウスの生存率(%)を示す。有意性は、ログランク検定によって計算した(*:P<0.05、**:P<0.01)。
【
図18A】コントロール(IgG1)、OX40抗体ベンチマーク1、または抗OX40抗体HFB301001による処理後のhOX40ノックインMC-38マウス結腸直腸癌モデルの腫瘍微小環境における特異的免疫細胞集団の割合を示す。CD45
+CD3
+CD4
+生細胞中のCD3
+CD4
+Ki67
+T細胞の割合を示す。
【
図18B】コントロール(IgG1)、OX40抗体ベンチマーク1、または抗OX40抗体HFB301001による処理後のhOX40ノックインMC-38マウス結腸直腸癌モデルの腫瘍微小環境における特異的免疫細胞集団の割合を示す。CD45
+CD3
+CD8
+生細胞中のCD3
+CD8
+Ki67
+T細胞の割合を示す。
【
図18C】コントロール(IgG1)、OX40抗体ベンチマーク1、または抗OX40抗体HFB301001による処理後のhOX40ノックインMC-38マウス結腸直腸癌モデルの腫瘍微小環境における特異的免疫細胞集団の割合を示す。CD45
+CD3
+CD4
+生細胞中のCD3
+CD4
+PD-1
+T細胞の割合を示す。
【
図18D】コントロール(IgG1)、OX40抗体ベンチマーク1、または抗OX40抗体HFB301001による処理後のhOX40ノックインMC-38マウス結腸直腸癌モデルの腫瘍微小環境における特異的免疫細胞集団の割合を示す。CD45
+CD3
+CD8
+生細胞中のCD3
+CD8
+PD-1
+T細胞の割合を示す。
【
図18E】コントロール(IgG1)、OX40抗体ベンチマーク1、または抗OX40抗体HFB301001による処理後のhOX40ノックインMC-38マウス結腸直腸癌モデルの腫瘍微小環境における特異的免疫細胞集団の割合を示す。CD45
+CD3
+CD4
+生細胞中のCD3
+CD4
+CD25
+Foxp
3+細胞の割合を示す。
【
図19】HFB10-1E1hG1、ベンチマーク1(Bmk1)、またはベンチマーク2(Bmk2)抗体とのインキュベーション後のOX40シグナル伝達レポーターであるJurkat T細胞(NF-kB-Luc2/OX40レポーターJurkat細胞)からのルシフェラーゼシグナルを示す。
【
図20A】HFB10-1E1hG1抗体の存在下でOX40リガンド(OXL40)によって刺激したOX40レポーター細胞(NF-kB-Luc2/OX40レポーターJurkat細胞)からのルシフェラーゼシグナルを示す。
【
図20B】アイソタイプコントロール抗体の存在下でOX40リガンド(OXL40)によって刺激したOX40レポーター細胞(NF-kB-Luc2/OX40レポーターJurkat細胞)からのルシフェラーゼシグナルを示す。
【
図20C】ベンチマーク1抗体の存在下でOX40リガンド(OXL40)によって刺激したOX40レポーター細胞(NF-kB-Luc2/OX40レポーターJurkat細胞)からのルシフェラーゼシグナルを示す。
【
図20D】ベンチマーク2抗体の存在下でOX40リガンド(OXL40)によって刺激したOX40レポーター細胞(NF-kB-Luc2/OX40レポーターJurkat細胞)からのルシフェラーゼシグナルを示す。
【
図21】活性化ヒトCD4
+CD3
+T細胞に対するHFB10-1E1hG1の結合を示す。T細胞を、#190055(A:陽性細胞の割合、B:MFI)及び#190061(C:陽性細胞の割合、D:MFI)の2人のドナーから単離した。アイソタイプコントロール及びベンチマーク1抗体(Bmk1)もこの実験で試験される。
【
図22】HFB10-1E1hG1による処理後の初代CD4
+T細胞上のOX40の発現量を示す。T細胞を、#191223-B(A)及び#190061(B)の2人の異なるドナーから単離した。T細胞上のOX40発現量を、抗OX40抗体で染色することによって決定した。
【
図23】ヒトPBMCをSEAと、抗OX40抗体、HFB10-1E1hG1及びベンチマーク1(Bmk1)とで刺激した後のIL-2レベルを示す。ヒトIL-2を、70時間の刺激後に培養上清中で定量した。PBMCを、10ng/mL(A)または1ng/mL(B)SEAのいずれかで刺激した。各実験条件を2連で試験した。記号は平均を示し、エラーバーは、標準偏差(SD)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
一実施形態では、本発明は、重鎖CDR1ドメイン(配列番号1)、重鎖CDR2ドメイン(配列番号2)、及び重鎖CDR3ドメイン(配列番号3)を有する重鎖可変領域と、軽鎖CDR1ドメイン(配列番号9)、軽鎖CDR2ドメイン(配列番号10)、及び軽鎖CDR3ドメイン(配列番号11)を有する軽鎖可変領域と、を含む、抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0041】
別の実施形態では、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号4に示す重鎖可変領域、または配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号12に示す軽鎖可変領域、または配列番号12と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有する軽鎖可変領域と、を含む。
【0042】
別の実施形態では、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をさらに含み、好ましくは、重鎖定常領域は、配列番号5であるか、または配列番号5と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有し、及び/または好ましくは、軽鎖定常領域は、配列番号13であるか、または配列番号13と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有する。
【0043】
別の実施形態では、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域に連結された重鎖シグナルペプチド及び/または軽鎖可変領域に連結された軽鎖シグナルペプチドをさらに含み、好ましくは、重鎖シグナルペプチドは、配列番号6であるか、または配列番号6と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有し、及び/または好ましくは、軽鎖シグナルペプチドは、配列番号14であるか、または配列番号14と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有する。
【0044】
別の実施形態では、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、IgG抗体またはその抗原結合フラグメント、または好ましくはIgG1抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0045】
別の好ましい実施形態では、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントである。
【0046】
別の実施形態では、本明細書に記載の抗OX40抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、またはsdAbである。
【0047】
特定の実施形態では、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、OX40アゴニストとして、OX40(例えば、ヒトOX40)と、配列番号34を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるエピトープにおいて特異的に結合し、OX40-OX40L相互作用/結合に実質的に影響を及ぼさない。
【0048】
特定の実施形態では、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、OX40Lの存在下または非存在下でNF-kB媒介性OX40シグナル伝達を誘導する。
【0049】
特定の実施形態では、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、(内因性の)OX40Lにより誘導されるOX40シグナル伝達(例えば、NF-kBシグナル伝達)を阻害せず、または増強し、場合により、OX40シグナル伝達は、少なくとも約50nM、60nM、70nM、80nM、90nM以上の濃度のOX40Lによって誘導される。
【0050】
特定の実施形態では、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、活性化された初代(ヒトまたはカニクイザル)CD4+CD3+T細胞に、約0.01~5nM、0.1~0.3nM、または0.5~1.5nM(例えば、0.65または1.36nM)のEC50値で結合する。
【0051】
特定の実施形態では、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、活性な(例えば、CD3/CD28で刺激された)末梢ヒトCD4+T細胞上の総表面レベルOX40発現量を用量依存的に増加させる(例えば、最大のOX40発現は、約1nMの前記抗体またはそのフラグメントによって刺激される)。
【0052】
特定の実施形態では、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、用量依存的にT細胞活性化を増強する。
【0053】
特定の実施形態では、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、活性化されたヒトPBMCにおけるサイトカイン(例えば、IL-2)産生を増加させる。場合により、前記ヒトPBMCは、1または10ng/mLのStaphylococcus aureus腸毒素A(SEA)によって刺激される。
【0054】
特定の実施形態では、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、OX-40発現標的細胞の存在下で、例えば、12:1~1:1のエフェクター対標的細胞(E:T)比で、約0.3~1.2nMのEC50で、エフェクター細胞にCD16媒介性ADCCを用量依存的に誘導する。
【0055】
特定の実施形態では、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、300μg/mL以下では初代PBMCに有意なサイトカイン放出を誘導しない。
【0056】
特定の態様では、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも約100mg/kgの最大耐用量でマウスに有意な毒性を誘導しない。
【0057】
一態様では、本発明は、本明細書に記載のOX40抗体またはその抗原結合フラグメントといくつかのさらなる治療剤とを含む抗体薬物複合体に関し、好ましくは、抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントは、リンカーによってさらなる治療剤に連結される。
【0058】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0059】
一実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、配列番号20の重鎖可変領域ポリヌクレオチドコード配列及び/または配列番号28の軽鎖可変領域ポリヌクレオチドコード配列を含み、好ましくは、ポリヌクレオチドは、配列番号21の重鎖定常領域ポリヌクレオチドコード配列及び/または配列番号29の軽鎖定常領域ポリヌクレオチドコード配列をさらに含む。
【0060】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクターに関する。
【0061】
別の実施形態では、本発明は、本発明に記載のポリヌクレオチドまたは本明細書に記載の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0062】
一態様では、本発明は、本発明に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメントを産生するための方法であって、本明細書に記載の宿主細胞を抗体またはその抗原結合フラグメントの発現に適した条件下で培養することと、発現された抗体または抗原結合フラグメントを培地から回収することと、を含む、方法を提供する。
【0063】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、本明細書に記載の抗体薬物複合体、本明細書に記載のポリヌクレオチド、または本明細書に記載の発現ベクターと、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供する。
【0064】
別の態様では、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物はがんの治療に使用される。一実施形態では、がんは、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(消化管癌、及び消化管間質癌を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿道癌、肝臓腫瘍、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒色腫、結節型黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連するものなど)及びMeigs症候群に関連する異常血管増殖、脳腫瘍及び脳癌、頭頸部癌、及び関連する転移からなる群から選択される。
【0065】
別の態様では、本発明は、がんを有する対象を治療する方法であって、対象に治療有効量の本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含み、それにより前記対象を治療する、方法を提供する。一実施形態では、がんは、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(消化管癌、及び消化管間質癌を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿道癌、肝臓腫瘍、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒色腫、結節型黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連するものなど)及びMeigs症候群に関連する異常血管増殖、脳腫瘍及び脳癌、頭頸部癌、及び関連する転移からなる群から選択される。
【0066】
一態様では、本発明は、がんを治療するための別の医薬組成物の製造における、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、または本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。一実施形態では、がんは、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(消化管癌、及び消化管間質癌を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿道癌、肝臓腫瘍、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒色腫、結節型黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連するものなど)及びMeigs症候群に関連する異常血管増殖、脳腫瘍及び脳癌、頭頸部癌、及び関連する転移からなる群から選択される。
【0067】
一態様では、本発明は、以下のうちの1つ以上、すなわち、Treg機能の阻害(例えば、Tregの抑制的機能の阻害)、OX40発現細胞(例えば、高いレベルのOX40を発現する細胞)の殺滅、エフェクターT細胞機能の増大及び/またはメモリーT細胞機能の増大、腫瘍免疫の低下、ならびにT細胞機能の増強及び/またはOX40発現細胞の枯渇のうちの1つ以上に使用される、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、または本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物に関する。
【0068】
一態様では、本発明は、以下のうちの1つ以上、すなわち、Treg機能の阻害(例えば、Tregの抑制的機能の阻害)、OX40発現細胞(例えば、高いレベルのOX40を発現する細胞)の殺滅、エフェクターT細胞機能の増大及び/またはメモリーT細胞機能の増大、腫瘍免疫の低減、T細胞機能の増強及び/またはOX40発現細胞の枯渇、のうちの1つ以上の処置のための別の医薬組成物の製造における、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、または本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0069】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物と、1つ以上のさらなる治療剤と、を含む医薬組み合わせを提供する。
【0070】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、本明細書に記載の抗体薬物複合体、または本明細書に記載の医薬組成物を含み、好ましくは投与装置をさらに含む、キットを提供する。
【0071】
本発明の特定の実施形態は、固有のOX40エピトープに特異的であり、したがって、他のOX40アゴニスト抗体と比較して、OX-40受容体の下方制御をほとんどまたはまったくもたらさないOX40アゴニスト抗体に関する。市場における他の公知のアゴニスト抗体と比較して、開示されるアゴニスト抗体は、より良好な結合反応速度を示し得る。
【0072】
開示される発明または関連する応用例は、当業者が、本発明に開示される情報の1つ、一部、または全部を理解し、組み合わせることを可能ならしめるものである。以下の開示に、本発明の詳細な説明及びその関連する応用例を示す。
【0073】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が、アラインメントが完全に一致する場合に同じである場合に「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、比較ウインドウにわたって配列同士を比較して、いくつかの局所領域にわたって配列類似性を特定し、比較することによって行われる。本明細書で使用する場合、「比較ウインドウ」とは、1つの配列を同じ数の連続位置の参照配列と、2つの配列同士を最適にアラインした後で比較することができる、少なくとも約20個の連続位置、通常は30~約75個、または40~約50個のセグメントのことを指す。
【0074】
完全な配列アラインメントは、バイオインフォマティクスソフトウェア(DNASTAR(登録商標),Inc.,Madison,Wl)のLasergene(登録商標)スイートのMegAlign(登録商標)プログラムのデフォルトのパラメータを用いて行うことができる。このプログラムは、以下の参考文献に記載されるいくつかのアラインメントスキームを実現するものである:Dayhoff,M.O.,1978,A model of evolutionary change in proteins-Matrices for detecting distant relationships.In Dayhoff,M.O.(ed.)Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,Washington DC Vol.5,Sup.3,pp.345-358;Hein J.,1990,Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp.626-645 Methods in Enzymology vol.183,Academic Press,Inc.,San Diego,CA;Higgins,D.G.and Sharp,P.M.,1989,CABIOS 5:151-153;Myers,E.W.and Muller W.,1988,CABIOS 4:11-17;Robinson,E.D.,1971,Comb.Theor.1 1:105;Santou,N.,Nes,M.,1987,Mol.Biol.Evol.4:406-425;Sneath,P.H.A.and Sokal,R.R.,1973,Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy,Freeman Press,San Francisco,CA;Wilbur,W.J.and Lipman,D.J.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726-730。
【0075】
いくつかの実施形態では、「配列同一性のパーセンテージ」は、少なくとも20個の連続した核酸またはアミノ酸残基にわたる完全な配列アラインメントの比較によって決定され、比較ウインドウ内のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、20%以下、通常は5~15%、または10~12%の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。パーセンテージは、一致した位置の数を参照配列中の位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)で割り、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。
【0076】
あるいは、バリアントは、天然の遺伝子またはその一部もしくは相補体と実質的に相同であってもよい。そのようなポリヌクレオチドバリアントは、適度にストリンジェントな条件下で、天然の抗体(または相補配列)をコードする天然に存在するDNA配列とハイブリダイズすることができる。
【0077】
「適度にストリンジェントな条件」は、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中での予備洗浄、50℃~65℃、5×SSCで一晩のハイブリダイゼーションの後、0.1%SDSを含む2×、0.5×及び0.2×SSCによる、65℃で20分間の2回の洗浄を含む。
【0078】
本明細書で使用する場合、「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」とは、(1)洗浄に低いイオン強度及び高温を用いるもの、例えば、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを50℃で用いるもの、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミドなどの変性剤を用いるもの、例えば、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を含む50%(v/v)のホルムアミドと、50%の750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを42℃で用いるもの、または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理サケ精子DNA(50Mg/mL)、0.1%SDS、及び10%デキストラン硫酸を42℃で用い、42℃の0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)及び55℃の50%ホルムアミド中での洗浄後、EDTAを含む0.1×SSCによる55℃での高ストリンジェンシー洗浄を行うものである。当業者であれば、プローブ長などの変数に適合させるために必要に応じて温度及びイオン強度などの実験条件を最適化することができる。
【0079】
遺伝子コードの縮重の結果として、本明細書に記載のポリペプチドをコードし得る多くのヌクレオチド配列が存在することは、当業者には認識されよう。これらのポリヌクレオチドのいくつかは、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小限の相同性を有する。それにもかかわらず、コドンの使用の差異に起因して異なるポリヌクレオチドは、本開示によって具体的に想到される。さらに、本明細書に提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子のアレルは、本開示の範囲内である。アレルは、例えばヌクレオチドの欠失、付加及び/または置換などの1つ以上の変異の結果として変化する内因性遺伝子である。得られるmRNA及びタンパク質は、変化した構造または機能を有し得るが、必ずしもそうとは限らない。アレルは、標準的な技術(例えば、ハイブリダイゼーション、増幅及び/またはデータベースの配列比較)を用いて同定することができる。
【0080】
本開示のポリヌクレオチドは、化学合成、組換え法、またはPCRを用いて得ることができる。化学的ポリヌクレオチド合成法は当該技術分野では周知のものであり、本明細書に詳細に記載する必要はない。当業者は、本明細書に提供される配列及び市販のDNA合成装置を使用して所望のDNA配列を生成することができる。
【0081】
組換え法を用いてポリヌクレオチドを調製するには、本明細書にさらに記載するように、所望の配列を含むポリヌクレオチドを適切なベクターに挿入し、このベクターを複製及び増幅に適した宿主細胞に導入することができる。ポリヌクレオチドは当該技術分野で周知のいずれの手段によって宿主細胞に挿入してもよい。宿主細胞は、直接取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F接合、またはエレクトロポレーションによって外因性ポリヌクレオチドを導入することによって形質転換される。外因性ポリヌクレオチドは、導入されると、非組み込み型ベクター(プラスミドなど)として細胞内で維持されるか、または宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。そのようにして増幅されたポリヌクレオチドは、当該技術分野では周知の方法によって宿主細胞から単離することができる。例えば、Sambrook et al.,1989を参照されたい。
【0082】
あるいは、PCRによればDNA配列の再生産が可能である。
【0083】
RNAは、単離されたDNAを適切なベクター中で使用し、これを適当な宿主細胞に挿入することによって得ることができる。細胞が複製してDNAがRNAに転写される際、当業者には周知の方法を用いてRNAを単離することができる。
【0084】
適当なクローニング及び発現ベクターは、プロモーター、エンハンサー、及び他の転写調節配列などのさまざまな構成要素を含むことができる。異なるベクターへの抗体可変ドメインのその後のクローニングを可能にするようなベクターを構築することもできる。
【0085】
適当なクローニングベクターは、標準的技術に従って構築することができ、あるいは当該技術分野において入手可能な多くのクローニングベクターから選択してもよい。選択されるクローニングベクターは、使用される宿主細胞に応じて異なり得るが、有用なクローニングベクターは、一般に自己複製能を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼの標的を1つ有することができ、及び/またはベクターを含むクローンの選択に用いることができる遺伝子マーカーを保有し得る。適当な例としては、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3及びpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これら及び他の多くのクローニングベクターが、BioRad、Strategene、Invitrogenなどの商業的供給元から販売されている。
【0086】
発現ベクターをさらに提供する。発現ベクターは、一般に、本開示によるポリヌクレオチドを含む複製可能なポリヌクレオチドコンストラクトである。いわゆる発現ベクターは、エピソームとして、または染色体DNAの一体部分として、宿主細胞中で複製できなければならない。適当な発現ベクターとしては、これらに限定されるものではないが、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクター、コスミド、及びPCT公開第WO87/04462号に開示される発現ベクターが挙げられる。ベクター構成要素としては、これらに限定されるものではないが、一般に、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、適当な転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、及びターミネーターなど)のうちの1つ以上が挙げられる。発現(すなわち、翻訳)には、例えば、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、及び終止コドンなどの1つ以上の翻訳制御エレメントも通常は必要とされる。
【0087】
目的のポリヌクレオチドを含むベクター及び/またはポリヌクレオチド自体を、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、またはパーティクルガンのような他の物質を用いたトランスフェクション;リポフェクション;及び感染(例えば、ベクターがワクシニアウイルスのような感染因子である場合)を含む任意の適当な手段によって宿主細胞に導入することができる。導入ベクターまたはポリヌクレオチドの選択は、しばしば宿主細胞の特徴によって決まる。
【0088】
本発明の抗体は、組換え方法によって調製、発現、産生、または単離されたヒト抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現された抗体(以下のセクションIIでさらに記載する)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体(以下のセクションIIIでさらに記載する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子トランスジェニック動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、(Taylor,LD et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295)を含むか、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意の他の方法によって調製、発現、産生または単離された抗体に関する。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する(Kabat,EA,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,USDepartment of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照)。
【0089】
本発明の抗体または抗体部分は、宿主細胞中で免疫グロブリン軽鎖遺伝子及び重鎖遺伝子を組換え法により発現させることによって調製することができる。抗体を組換え法により発現させるには、抗体の免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードするDNAフラグメントを有する1つ以上の組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトすることにより、軽鎖及び重鎖が宿主細胞内で発現され、好ましくは、宿主細胞が培養される培地中に分泌され、そこから抗体を回収することができる。標準的な組換えDNA法を用いて、抗体重鎖遺伝子及び抗体軽鎖遺伝子を得て、これらの遺伝子を組換え発現ベクターに導入し、次いでベクターを宿主細胞に導入する。標準的な方法としては、例えば、以下の文献に記載の方法がある:Sambrook,Fritsch and Maniatis(editors),Molecular Cloning;A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,NY,(1989),Ausubel,FM,etc. (editors)Current Protocols in Molecuar Biology,Greene Publishing Associates,(1989)及びBoss Et al.米国特許第4,816,397号。
【0090】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、適当な宿主細胞を用いて組換え法により作製することができる。抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを発現ベクターにクローニングし、次いでこれを、ベクターなしでは免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞(例えば、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞)に導入することで、組換え宿主細胞中で抗体を合成させることができる。好ましい宿主細胞としては、当該技術分野では周知の多くの細胞の中でも、CHO細胞、ヒト胚性腎(HEK)293細胞、またはSp2.0細胞が挙げられる。
【0091】
抗体フラグメントは、完全長抗体のタンパク質分解または他の分解、組換え法、または化学合成によって生成することができる。抗体のポリペプチドフラグメント、特にアミノ酸約50個以下のより短いポリペプチドは、化学合成によって簡単に作製することができる。タンパク質及びペプチドの化学合成法は当該技術分野では周知のものであり、市販されている。
【0092】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、親和性成熟させることができる。例えば、親和性成熟抗体は、当該技術分野では周知の方法によって生成することができる(Marks et al.,1992,Bio/Technology,10:779-783;Barbas et al.,1994,Proc Nat.Acad.Sci,USA 91:3809-3813;Schier et al.,1995,Gene,169:147-155;Yelton et al.,1995,J.Immunol.,155:1994-2004;Jackson et al.,1995,J.Immunol.,154(7):3310-9;Hawkins et al.,1992,J.Mol.Biol.,226:889-896;及びWO2004/058184)。
【0093】
抗体バリアント
特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体のアミノ酸配列バリアントが想到される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を向上させることが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な改変を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。かかる改変には、例えば、抗体のアミノ酸配列中の残基の欠失、アミノ酸配列中への残基の挿入、及び/またはアミノ酸配列中の残基の置換が含まれる。最終的なコンストラクトが、所望の特性、例えば、抗原結合性を有するものである限り、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行って最終的なコンストラクトとすることができる。
【0094】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、抗体の開発可能性を改善するように設計された、そのアミノ酸配列の1つ以上の点変異を含む。例えば、Raybould et al.,“Five computational developability guidelines for therapeutic antibody profiling,”PNAS,March 5,2019,116(10)4025-4030は、Therapeutic Antibody Analysis Tool(治療抗体分析ツール)(TAP)について記載しているが、これは、5つの開発可能性ガイドラインに対して試験され、配列ライアビリティーの可能性及びカノニカル型の報告である、可変ドメイン配列のダウンロード可能な相同性モデルについて確立された計算ツールである。著者はさらに、opig.stats.ox.ac.uk/webapps/sabdab-sabpred/TAP.phpで無償で入手可能なTAPを提供している。抗原に対する所望の親和性を得ることに加えて、治療用モノクローナル抗体の開発には、自然免疫原性、化学的及びコンフォメーション不安定性、自己会合、高粘度、多重特異性、及び発現の低さをはじめとする、多くの障壁がある。例えば、高い疎水性(特に、可変性の高い相補性決定領域(CDR)における)は、凝集、粘度、及び多重特異性への関与が繰り返し指摘されている。重鎖及び軽鎖可変ドメインの正味電荷の非対称性も、高濃度での自己会合及び粘度に関係している。CDR内の正及び負に帯電したパッチは、高いクリアランス速度及び低い発現レベルに関係している。生成物の不均一性(例えば、酸化、異性化、またはグリコシル化による)は、通常、翻訳後または翻訳時修飾を受けやすい特定の配列モチーフによって引き起こされる。計算ツールを使用して、配列ライアビリティーを容易に特定することができる。Warszawskiもまた、可変軽鎖-重鎖界面の自動設計によって抗体の親和性及び安定性を最適化するための方法について記載している。Warszawski et al.(2019) Optimizing antibody affinity and stability by the automated design of the variable light-heavy chain interfaces,PLoS Comput Biol 15(8):e1007207, https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1007207。他の方法を使用して、候補抗体の潜在的な開発可能性における問題を特定することもでき、本発明の好ましい実施形態では、1つ以上の点変異を従来の方法によって候補抗体に導入してこうした問題を解決し、それによって本発明の最適化された治療抗体を得ることができる。
【0095】
a)置換、挿入、及び欠失バリアント
特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異誘発の目的となる部位としては、HVR及びFRが挙げられる。保存的置換は、表Aの「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表Aの「例示的な置換」の見出しの下に示され、アミノ酸側鎖クラスに関して以下にさらに記載する。アミノ酸置換を目的の抗体中に導入し、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合性、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについて産物をスクリーニングしてもよい。
【表1】
【0096】
アミノ酸は、以下の共通する側鎖特性に従って分類することができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の向きに影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0097】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーと別のクラスとの交換を伴う。
【0098】
置換バリアントの1つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる研究のために選択される、結果として生じるバリアント(複数可)は、親抗体と比べて、特定の生物学的特性における改変(例えば、改善)(例えば、増加した親和性、低減された免疫原性)を有し、及び/または親抗体の実質的に保持された特定の生物学的特性を有する。例となる置換型バリアントは、例えば、本明細書に記載されるものなどのファージディスプレイに基づく親和性成熟法を使用して適宜作製することができる親和性成熟抗体である。簡潔に述べると、1つ以上のHVR残基が変異され、バリアント抗体がファージ上に提示され、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0099】
改変(例えば、置換)をHVRに行って、例えば、抗体親和性を改善することができる。かかる改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を生じるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照)、及び/または抗原と接触する残基で行われ得、結果として得られるバリアントVHまたはVLを結合親和性について試験する。二次ライブラリを構築及び再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.によるMethods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,edit,Human Press,Totowa,NJ,(2001).)に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、さまざまな方法(エラーを起こしやすくしたPCR、チェーンシャッフリング、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発など)により、成熟させるために選択された可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが作成される。次いで、このライブラリをスクリーニングして、所望の親和性を有するすべての抗体変異型を同定する。多様性を導入するための別の方法は、数個のHVR残基(例えば、1回に4~6個の残基)が無作為化される、HVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発またはモデリングを使用して、具体的に同定することができる。特にCDR-H3及びCDR-L3が、しばしば標的とされる。
【0100】
特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVRに行われてもよい。かかる改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側に行われてもよい。上記に示されるバリアントVH配列及びVL配列の特定の実施形態では、各HVRは、改変されないか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0101】
突然変異誘発の標的となり得る抗体の残基または領域を特定するための有用な方法は、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085に記載される、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれるものである。この方法では、残基または標的残基群(例えば、arg、asp、his、lys、及びgluなどの荷電残基)が特定され、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)に置き換えられて、抗体抗原相互作用が影響されたか否かが判定される。さらなる置換が、初期の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の場所に導入されてもよい。あるいは、または加えて、抗原抗体複合体の結晶構造を用いて抗体と抗原との接触点を特定するもできる。かかる接触残基及び隣接する残基は、置換の候補として標的とされるかまたは除外されてもよい。バリアントをスクリーニングして所望の特性を有するかどうかを判定することもできる。
【0102】
アミノ酸配列の挿入としては、長さが残基1個~100個以上の残基を含むポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合体、ならびに1個または複数のアミノ酸残基からなる配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入型バリアントとしては、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPT)またはポリペプチドの、抗体のN末端もしくはC末端への融合体が含まれる。
【0103】
b)グリコシル化バリアント
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が生成されるか、または除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって、簡便に行うことができる。
【0104】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物を改変することができる。哺乳類細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、一般にN結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む(例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照)。オリゴ糖類には、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖類構造の「ステム」においてGlcNAcに結合したフコースが含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体中におけるオリゴ糖の修飾は、特定の特性の改善を有する抗体バリアントを作製するために行われ得る。
【0105】
一実施形態では、提供される抗体バリアントは、Fc領域への直接的または間接的なフコース結合能力を欠いた炭水化物構造を有する。例えば、かかる抗体内のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%の範囲とであってよい。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されるMALDI-TOF質量分析法によって測定される、Asn297に結合したすべての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計に対する、糖鎖内のAsn297のフコースの平均量の比によって決定される。Asn297は、Fc領域における約297位(Fc領域残基のEu付番)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における小規模な配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸上流または下流、すなわち、294位~300位の間にも位置する。かかるフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第US2003/0157108号(Presta,L.)、US2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照。「脱フコース化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関する公開公報の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することが可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLed3 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、米国特許出願第US 2003/0157108A1号(Presta,L)、及びWO2004/056312A1(Adams et al)、及びα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);及びWO2003/085107を参照)が挙げられる。
【0106】
二分されたオリゴ糖類を有する、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖類がGlcNAcによって二分される、抗体バリアントがさらに提供される。かかる抗体変異体は、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体変異体の例は、例えばWO2003/011878(Jean-Mairet et al.);米国特許第6,602,684号(Umana et al.);及び米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana et al.)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。かかる抗体バリアントは改善されたCDC機能を有してもよく、例えば、WO1997/30087(Patel et al.)、WO1998/58964(Raju,S.)、及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0107】
c)Fc領域バリアント
特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾を本明細書に提供される抗体のFc領域に導入することにより、Fc領域バリアントを作製することができる。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含むことができる。
【0108】
特定の実施形態では、本発明では、すべてではないが一部のエフェクター機能を保有する抗体バリアントであって、インビボでの抗体の半減期が重要であるが特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不要または有害となるような用途における望ましい候補となる抗体バリアントが想到される。インビトロ及び/またはインビボの細胞傷害性アッセイを行って、CDC及び/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確認することができる。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-492(1991)の464頁の表3に要約されている。目的とする分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 83:7059-7063(1986)を参照)及びHellstrom, I et al., Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985)、同第5,821,337号(Bruggemann, M. et al., . Exp. Med.Med.166:1351-1361(1987))に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ方法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology, Inc.Mountain View、CA、及びCytoTox 96非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照)。このようなアッセイのための有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。上記に代えるかまたは加えて、対象とする分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et alProc. Nat’l Acad. Sci. USA 95:652-656(1998)に開示されるような動物モデルで評価することもできる。Clq結合アッセイを行って、抗体がClqに結合することができず、それ故にCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるClq及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定は、当該技術分野で既知の方法を使用して行うこともできる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照)。
【0109】
エフェクター機能が低下した抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。かかるFc変異体は、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297、及び327のうちの2つ以上での置換を含む(米国特許第7,332,581号)。
【0110】
FcRへの結合能が改善または低減された特定の抗体変異体が記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照)。
【0111】
特定の実施形態では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU番号付け)における置換を有する、Fc領域を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Tmmunol.164:4178-4184(2000)に記載されるように、C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害性(CDC)の改変(改善または減少のいずれか)をもたらす改変が、Fc領域に行われる。
【0113】
半減期が増加し、新生児型Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体が、US2005/0014934A1(Hintonら)に記載されている。FcRnは、母体のIgGの胎児への移行を担っている(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。これらの抗体は、FcRnに対するFc領域の結合能を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。かかるFcバリアントには、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号)を有するものが含まれる。
【0114】
また、Fc領域バリアントの例に関して、Duncan & Winter,Nature 322:738-40 (1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351も参照されたい。
【0115】
d)システイン操作された抗体バリアント
特定の実施形態では、抗体の1個以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作された抗体、例えば、「thioMAb」を作製ことが望ましい場合がある。一実施形態では、置換残基は、抗体のアクセス可能な部位にある。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基が抗体のアクセス可能な部位に位置付けられ、これらのチオール基を用いて、抗体を他の部分、例えば、薬物部分またはリンカー-薬物部分に結合させて、本明細書にさらに記載される免疫結合体を作製することができる。別の実施形態では、次の残基のうちのいずれか1つ以上がシステインで置換されてもよい:軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号の記載に従って作製することもできる。
【0116】
e)抗体誘導体
特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、当該技術分野では周知のものであり、かつ容易に入手可能なさらなる非タンパク質性部分を有するようにさらに修飾することができる。抗体の誘導体化に好適な部分としては、水溶性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中での安定性があるため、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであってもよく、分岐していても非分岐であってもよい。本抗体に結合したポリマーの数は異なる場合があり、2つ以上のポリマーが結合しているとき、それらは、同じ分子または異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善対象の抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下で療法において使用されるかどうかなどを含むが、これらに限定されない考慮に基づいて、決定することができる。
【0117】
一実施形態では、抗体と、放射線への曝露によって選択的に加熱することができる非タンパク質性部分との結合体が提供される。別の実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブ(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005))である。放射線は、任意の波長のものであってよく、正常細胞に損傷を与えないが、抗体-非タンパク質性部分の温度を、抗体-非タンパク質性部分の近くの細胞が死滅する温度にまで加熱する波長が含まれる(ただし、これに限定されない)。
【0118】
アッセイ
本明細書で提供される抗OX40抗体は、当該技術分野では周知のさまざまなアッセイによって、それらの物理的/化学的特性及び/または生物学的活性について同定、スクリーニング、または特性評価することができる。
【0119】
1.結合アッセイ及び他のアッセイ
一態様では、本明細書に記載される抗体の抗原結合活性は、例えば、ELISA、ウエスタンブロットなどの既知の方法によって測定される。OX40の結合能は、当該技術分野では周知の方法を使用して決定することができ、例示的な方法を本明細書に開示する。一実施形態では、例示的なラジオイムノアッセイが、抗原抗体結合の測定に使用される。OX40抗体をヨウ素化し、一定濃度のヨウ素化抗体と減少する濃度の連続希釈された非標識OZ X40抗体とを含む競合反応混合物を調製する。OX40を発現する細胞(例えば、ヒトOX40で安定的にトランスフェクトされたBT474細胞)を反応混合物に加える。インキュベーション後、遊離ヨウ素化OX40抗体を洗い流す。例えば、細胞にともなう放射能を計数することによって、細胞に結合したヨウ素化OX40抗体細胞を測定し、標準的な方法を用いて結合親和性を決定する。別の実施形態では、フローサイトメトリーを使用して、OX40を表面に発現する細胞(例えば、T細胞のサブセット)に対するOX40抗体の結合能を評価する。(例えば、ヒト、カニクイザル、ラット、またはマウスから)末梢白血球を得て、細胞を血清でブロッキングする。標識したOX40抗体を連続希釈物に加え、T細胞のサブセットを特定するために(当該技術分野では周知の方法を使用して)T細胞をさらに染色する。インキュベーション及び洗浄の後、細胞をフローサイトメトリーで選別し、データを当該技術分野では周知の方法を用いて分析する。別の実施形態では、OX40の結合能を、表面プラズモン共鳴を用いて分析することができる。例示的な表面プラズモン共鳴法を例示する。
【0120】
別の態様では、競合アッセイを使用して、本明細書に開示される抗OX40抗体のいずれかと競合するOX40結合抗体を同定することができる。特定の実施形態では、かかる競合抗体は、本明細書に開示される抗OX40抗体と同じエピトープ(例えば、線状またはコンフォメーションエピトープ)に結合する。抗体結合エピトープマッピングの詳細な例示的方法は、Morris(1996)“Epitope Mapping Protocols,”in Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)に示されている。競合アッセイは例示する。
【0121】
例示的な競合アッセイでは、固定化されたOX40を、OX40に結合する第1の標識抗体(例えば、mab1A7.gr.1、mab3C8.gr5)と第1の抗OX40抗体と競合する能力について試験される第2の非標識抗体とを含む溶液中でインキュベートする。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在してもよい。コントロールとして、固定化されたOX40を、第1の標識抗OX40抗体を含むが第2の非標識抗体は含まない溶液中でインキュベートする。OX40への第1の標識抗OX40抗体の結合を可能とする条件下でインキュベートした後、過剰な非結合抗体を除去し、固定化されたOX40にともなうシグナルの量を測定する。検出されたシグナルが試験試料でコントロールよりも有意に低い場合、第2の抗体が、固定化されたOX40との結合について第1の抗体と競合することを示唆する。Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照。
【0122】
2.活性アッセイ
一実施形態では、生物学的活性を有する抗OX40抗体を検出するための方法が提供される。生物学的活性には、例えば、OX40への結合(例えば、ヒト及び/またはカニクイザルOX40への結合)、OX40媒介シグナル伝達の増加(例えば、NFkB媒介転写の増加)、ヒトOX40を発現する細胞(例えば、T細胞)の枯渇、ADCC及び/または食作用によるヒトOX40を発現する細胞の枯渇、例えば、エフェクターT細胞の増殖を増加させる、及び/またはエフェクターT細胞のサイトカイン産生(例えば、γインターフェロン)を増加させることによる、Tエフェクター細胞機能(例えば、CD4+エフェクターT細胞)の増強、例えば、メモリーT細胞の増殖を増加させる、及び/またはメモリーT細胞によるサイトカイン産生(例えば、γインターフェロン)を増加させることによる、メモリーT細胞機能(例えば、CD4+メモリーT細胞)の増強、例えば、エフェクターT細胞機能(例えば、CD4+エフェクターT細胞の機能)のTreg抑制を減少させることによる、制御性T細胞機能の阻害、ならびにヒトエフェクター細胞への結合が含まれ得る。かかる生物学的活性をインビボ及び/またはインビトロでの両方で有する抗体も本明細書で提供される。
【0123】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、かかる生物学的活性について試験される。
【0124】
T細胞共刺激の測定のための当該技術分野では周知の方法を本明細書に例示する。例えば、T細胞(例えば、メモリーT細胞またはエフェクターT細胞)は、(例えば、Ficoll勾配遠心分離を使用してヒト全血から単離された)末梢白血球から得ることができる。メモリーT細胞(例えば、CD4+メモリーT細胞)またはエフェクターT細胞(例えば、CD4+Teff細胞)は、当該技術分野では周知の方法を用いてPBMCから単離することができる。例えば、Miltenyi CD4+メモリーT細胞単離キットまたはMiltenyiナイーブCD4+T細胞単離キットを使用することができる。単離されたT細胞は、抗原提示細胞(例えば、CD32及びCD80を発現する照射L細胞)の存在下で培養し、OX40アゴニスト抗体の存在下または非存在下で抗CD3抗体の添加によって活性化させる。T細胞増殖に対するアゴニストOX40抗体の効果を、当該技術分野では周知の方法を用いて測定することができる。例えば、CellTiter Gloキット(Promega)を使用し、マルチモードプレートリーダー(Perkin Elmer)で結果を読み取ることができる。あるいは、T細胞機能に対するアゴニストOX40抗体の効果は、T細胞によって産生されたサイトカインの分析によって決定することもできる。一実施形態では、CD4+T細胞によるインターフェロンγの産生は、例えば、細胞培養上清中のインターフェロンγの測定によって決定される。インターフェロンγを測定する方法は、当該技術分野では周知のものである。
【0125】
Treg細胞機能の測定のための当該技術分野では周知の方法を本明細書に例示する。一例において、TregのエフェクターT細胞増殖を抑制する能力がアッセイされる。T細胞は当該技術分野では周知の方法(例えば、メモリーT細胞またはナイーブT細胞を単離すること)を用いてヒト全血から単離される。精製CD4+ナイーブT細胞を(例えば、CFSEで)標識し、精製Treg細胞を異なる試薬で標識する。放射線照射した抗原提示細胞(例えば、CD32及びCD80を発現するL細胞)を、標識した精製ナイーブCD4+T細胞及び精製Tregと共培養する。抗CD3抗体を使用して共培養物を活性化させ、アゴニストMO抗体の存在下または非存在下で試験する。適当な時間(例えば、6日間の共培養)の後、CD4+ナイーブT細胞増殖のレベルを、FACS分析を使用して低減した標識染色(例えば、低減したCFSE標識染色)における色素希釈によって追跡する。
【0126】
OX40シグナル伝達の測定のための当該技術分野では周知の方法を本明細書に例示する。一実施形態では、OX40及びそのレポーター遺伝子(レポーター遺伝子(例えば、ベータルシフェラーゼ)に融合されたNFkBプロモータータンパク質を含む)を発現するトランスジェニック細胞が作製される。OX40アゴニスト抗体の増加によってもたらされるNFkB転写の増加は、レポーター遺伝子アッセイを用いて測定することができる。
【0127】
食作用は、例えば、単球由来のマクロファージ、またはU937細胞(成熟マクロファージの形態及び特性を有するヒト組織球性リンパ腫細胞株)を使用して測定することができる。OX40発現細胞を、抗OX40アゴニスト抗体の存在下または非存在下で、単球由来のマクロファージまたはU937細胞に加える。これらの細胞を適当な期間培養した後、OX40発現マーカー(例えば、GFP)を有する細胞の総数に対する(1)マクロファージまたはU937細胞と、(2)OX40発現細胞の二重染色マーカーを有する細胞の数の比によって食作用の割合が決定される。分析は、フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡のいずれかによって行うことができる。
【0128】
ADCCの測定のための方法は当該技術分野では周知のものであり、定義のセクションに例示している。いくつかの実施形態では、OX40発現細胞中のOX40のレベルは、ADCCアッセイによって特徴付けられる。細胞を標識抗OX40抗体(PE標識された)で染色した後、フローサイトメトリーを使用して蛍光レベルを決定することができ、結果は平均蛍光強度(MFI)として示される。別の実施形態では、ADCCをCellTiter Gloアッセイキットにより分析してもよく、細胞生存率/細胞傷害性を化学発光によって決定することができる。
【0129】
さまざまな抗体のFcγRIA、FcγRIIA、FcγRIIB、及びFcγRIIIA(F158及びV158)に対する結合親和性を、それぞれの組換えFcγ受容体を使用したELISAに基づくリガンド結合アッセイによって測定することができる。精製されたヒトFcγ受容体を、C末端にGly/6xHis/グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)ポリペプチドタグを結合した受容体γ鎖の細胞外ドメインを含む融合タンパク質として発現させる。これらのヒトFcγ受容体に対する抗体の結合親和性を、以下のように評価する。低親和性受容体、すなわち、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、及びFeγRIIIA(CD16)、ならびにFeγRIIIA(CD16)の2つのアロタイプであるF-158及びV-158の場合、抗体は、ヤギ抗ヒトカッパ鎖のF(ab’)2フラグメント(ICN Biomedical;Irvine,CA)により、抗体:架橋F(ab’)2=1:3の適切なモル比で架橋することにより、多量体として試験することができる。プレートを、抗GST抗体(Genentech)でコーティングし、ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングする。ELx405(商標)プレートウォッシャー(Biotek Instruments;Winooski,VT)を用いて0.05%のTween-20を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄した後、Fcγ受容体を25ng/ウェルでプレートに加え、室温で1時間、インキュベートする。洗浄後、各試験抗体の連続希釈物を多量体複合体として加え、プレートを室温で2時間インキュベートする。プレートを洗浄して非結合抗体を除去した後、Fcγ受容体に結合した抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ヒトF(ab’)2のF(ab’)2フラグメント(Jackson ImmunoResearch Laboratories;West Grove、PA)を用いて検出し、次いで、基質であるテトラメチルベンジジン(TMB)(Kirkegaard & Perry Laboratories;Gaithersburg,MD)を加えた。各プレートを、試験されるFcγ受容体に応じて5~20分間、室温でインキュベートして発色させた。反応を1M H3P04で停止させ、450nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(SpectraMax(登録商標)190,Molecular Devices;Sunnyvale、CA)で測定した。2連の抗体希釈物の吸光度の平均値を抗体濃度に対してプロットすることにより用量反応結合曲線を作成する。Fcγ受容体結合に対する半数効果濃度(EC50)を、SoftMax Pro(Molecular Devices)を使用して結合曲線を4パラメータの式に当てはめた後に決定する。
【0130】
コントロールと比較して、細胞死を誘導する抗体を、例えば、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルーまたは7AAD取り込みによって測定される、細胞膜の完全性の喪失によって選択した。PI取り込みアッセイは、補体及び免疫エフェクター細胞の非存在下で行うことができる。OX40発現細胞を、培地のみ、または例えば約10μg/mlの適切なモノクローナル抗体を含有する培地でインキュベートした。細胞を、一定期間(例えば、1または3日間)インキュベートした。各処理に続いて、細胞を洗浄し、分取した。いくつかの実施形態では、細胞を、35mm径のストレーナでキャップされた12×75本のチューブ(チューブ1本当たり1ml、各処理群ごとに3本のチューブ)に分取して細胞集塊を除去した。PI溶液を10μg/mlで各チューブに加えた。試料は、FACSCAN(商標)フローサイトメーター及びFACSCONVERT(商標)CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を使用して分析することができる。
【0131】
上記のインビトロアッセイのいずれかで使用するための細胞としては、OX40を天然に発現するか、またはOX40を発現するように操作された細胞または細胞株が挙げられる。かかる細胞としては、OX40を天然に発現する活性化T細胞、Treg細胞、及び活性化メモリーT細胞が挙げられる。かかる細胞としては、OX40を発現する細胞株、及びOX40を通常は発現しないがOX40をコードする核酸でトランスフェクトされた細胞株も挙げられる。上記のインビトロアッセイのいずれかで使用するための本明細書で提供される例示的な細胞株としては、ヒトOX40を発現するトランスジェニックBT474細胞(ヒト乳がん細胞株)が挙げられる。
【0132】
本発明の免疫複合体を抗OX40抗体の代わりにまたはそれに加えて使用して上述のアッセイのいずれかを行うことができる点は理解されよう。
【0133】
上記のアッセイのいずれにおいても、抗OX40抗体及び何らかの他の治療剤を使用することができる点は理解されよう。
【0134】
製剤及び使用
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、医薬組成物として製剤化することができる。医薬組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、薬学的に許容される担体、賦形剤、及び/または安定剤(Remington:The Science and practice of Pharmacy 20th Ed.,2000,Lippincott Williams and Wilkins, Ed.K.E.Hoover)をさらに含んでもよい。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、特定の用量及び濃度では投与対象に非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量ポリペプチド(約10残基未満);血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストランを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。薬学的に許容される賦形剤は本明細書にさらに記載される。
【0135】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、さまざまな治療または診断目的に使用することができる。例えば、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、親和性精製剤(例えば、インビトロ精製のための)及び診断剤(例えば、特定の細胞、組織、または血清中での発現を検出するための)として使用することができる。
【0136】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの例示的な治療用途には、がんの治療が含まれる。本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、疾患の予防に使用することもできる。
【0137】
治療用途では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、従来の方法、例えば、静脈内(ボーラスとして、または一定期間にわたる連続注入によって)、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、洞内、髄腔内、経口、局所、または吸入によって、哺乳動物、特にヒトに投与することができる。本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントはまた、腫瘍内、腫瘍周囲、病変内、または病変周囲の経路によって投与することもできる。
【0138】
特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、皮下投与される。特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、静脈内投与される。
【0139】
医薬組成物は、必要とする対象に疾患の重症度によって異なる頻度で投与することができる。予防療法の場合、頻度は、対象の疾患に対する感受性または素因に依存して異なり得る。
【0140】
組成物は、必要とする患者に、ボーラスとして、または連続注入によって投与することができる。例えば、Fabフラグメントとして与えられる抗体のボーラス投与は、0.0025~100mg/kg(体重)、0.025~0.25mg/kg、0.010~0.10mg/kgまたは0.10~0.50mg/kgの量とすることができる。連続注入の場合、Fabフラグメントとして与えられる抗体は、1~24時間、1~12時間、2~12時間、6~12時間、2~8時間、または1~2時間にわたって、0.001~100mg/kg(体重)/分、0.0125~1.25mg/kg/分、0.010~0.75mg/kg/分、0.010~1.0mg/kg/分、または0.10~0.50mg/kg/分で投与することができる。
【0141】
(完全な定常領域を含む)完全長抗体の場合、投与用量は、約1mg/kg~約10mg/kg、約2mg/kg~約10mg/kg、約3mg/kg~約10mg/kg、約4mg/kg~約10mg/kg、約5mg/kg~約10mg/kg、約1mg/kg~約20mg/kg、約2mg/kg~約20mg/kg、約3mg/kg~約20mg/kg、約4mg/kg~約20mg/kg、約5mg/kg~約20mg/kg、約1mg/kg以上、約2mg/kg以上、約3mg/kg以上、約4mg/kg以上、約5mg/kg以上、約6mg/kg以上、約7mg/kg以上、約8mg/kg以上、約9mg/kg以上、約10mg/kg以上、約11mg/kg以上、約12mg/kg以上、約13mg/kg以上、約14mg/kg以上、約15mg/kg以上、約16mg/kg以上、約17mg/kg以上、約19mg/kg以上、または約20mg/kg以上の範囲とすることができる。状態の重症度によって、投与頻度は、週3回~2週または3週に1回の範囲とすることができる。
【0142】
さらに、組成物は、皮下投与されてもよい。例えば、1~100mgの用量の抗OX40抗体を、週2回、週1回、2週に1回、3週に1回、4週に1回、5週に1回、6週に1回、7週に1回、8週に1回、9週に1回、10週に1回、月2回、月1回、2ヶ月に1回、または3ヶ月に1回、対象に皮下または静脈内投与することができる。
【0143】
特定の実施形態では、ヒトにおける抗OX40抗体の半減期は、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、約24日、約25日、約26日、約27日、約28日、約29日、約30日、約5日~約40日、約5日~約35日、約5日~約30日、約5日~約25日、約10日~約40日、約10日~約35日、約10日~約30日、約10日~約25日、約15日~約40日、約15日~約35日、約15日~約30日、または約15日~約25日である。
【0144】
特定の実施形態では、医薬組成物は、2~6週間ごとに、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約0.5mg/kg~約10mg/kg、約1mg/kg~約10mg/kg、約1.5mg/kg~約10mg/kg、約2mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約8mg/kg、約0.5mg/kg~約8mg/kg、約1mg/kg~約8mg/kg、約1.5mg/kg~約8mg/kg、約2mg/kg~約8mg/kg、約0.1mg/kg~約5mg/kg、約0.5mg/kg~約5mg/kg、約1mg/kg~約5mg/kg、約1.5mg/kg~約5mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約0.5mg/kg、約1.0mg/kg、約1.5mg/kg、約2.0mg/kg、約2.5mg/kg、約3.0mg/kg、約3.5mg/kg、約4.0mg/kg、約4.5mg/kg、約5.0mg/kg、約5.5mg/kg、約6.0mg/kg、約6.5mg/kg、約7.0mg/kg、約7.5mg/kg、約8.0mg/kg、約8.5mg/kg、約9.0mg/kg、約9.5mg/kg、または約10.0mg/kgの用量で皮下または静脈内投与される。
【0145】
一実施形態では、医薬組成物は、2~6週間ごとに約2.0mg/kgの用量で皮下または静脈内投与される。別の実施形態では、医薬組成物は、2~6週間ごとに約2.0mg/kg~約10.0mg/kgの用量で皮下または静脈内投与される。
【0146】
1つの例示的な実施形態では、医薬組成物は、2週間ごとに皮下投与される。
【0147】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは、単独で、またはがんの治療用の他の療法と併用することができる。
【0148】
定義
本明細書において特に定義されない限り、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、本明細書で特に指定されない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。一般に、本明細書に記載の細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質及び核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションに関連する用語及び技術は周知のものであり、当業者に一般的に使用されるものである。
【0149】
本明細書で使用する場合、抗体の「抗原結合部分」(または単純に「抗体部分」もしくは「抗体フラグメント」)という用語は、抗原と特異的に結合する能力(好ましくは、ほぼ同じ結合親和性で)を保持した完全長抗体の1つ以上のフラグメントを指す。抗原結合フラグメントの例としては、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価のフラグメントであるFabフラグメント、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2個のFabフラグメントを含む二価のフラグメントであるF(ab’)2フラグメント、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546)、ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ジスルフィド結合されたFv(dsFv)、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体及びイントラボディが挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLとVHは2個の異なる遺伝子によってコードされるが、これらのドメインは、組み換え法を用いて、VL領域とVH領域とが対合して一価の分子(1本鎖Fv(scFv)として知られる)を形成した単一のタンパク質鎖としてこれらを産生することを可能とする合成リンカーによって連結することができる。例えば、Bird et al.Science 242:423-426(1988)及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883(1988)を参照されたい。ダイアボディなどの一本鎖抗体の他の形態も包含される。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現される二価の二重特異性抗体であるが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能とするには短すぎるリンカーを使用し、それによってこれらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと強制的に対合させて2個の抗原結合部位を生成するようなものである(例えば、Holliger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993);Poljak et al.,1994,Structure 2:1121-1123)。
【0150】
本明細書で使用する場合、抗体の「可変ドメイン」という用語は、抗体軽鎖の可変領域(VL)または抗体重鎖の可変領域(VH)を、単独でまたは組み合わせて指す。当該技術分野では周知であるように、重鎖及び軽鎖の可変領域は、それぞれ3つの相補性決定領域(CDR)からなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する4つのフレームワーク領域(FR)によって連結されている。
【0151】
可変ドメイン中の残基は、抗体の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインについて使用される番号付けスキームであるKabat番号付けに従って番号付けされる。Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)を参照されたい。この番号付けシステムを使用した場合、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮またはそれへの挿入に対応する、より少ないアミノ酸またはさらなるアミノ酸を含み得る。ある特定の抗体では、残基のKabat番号付けは、「標準」Kabat配列とその抗体とのアラインメントによる1つ以上の相同領域によって決定することができる。Kabat番号付けを割り当てるためのさまざまなアルゴリズムが利用可能である。特に明記しない限り、本明細書で使用されるアルゴリズムは、Abysis(abysis.org)の2012年リリース版である。
【0152】
抗体の特定の具体的なアミノ酸残基(パラトープ残基など)の位置も、Kabat番号付けによって決定される。
【0153】
「相補性決定領域」(CDR)という用語は、周知のKabat、Chothia、Kabat及びChothiaの集積、AbM、接触点及び/またはコンフォメーションの定義、またはCDR測定のための任意の方法の定義によって同定することができる。例えば、Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.(超可変領域);Chothia et al.,1989,Nature 342:877-883(構造的ループ構造)を参照されたい。CDRのAbM定義は、KabatとChothiaとの妥協の産物であり、Oxford Molecular社のAbM抗体モデリングソフトウェア(Accelrys(登録商標))の使用である。CDRの「接触点」定義は、MacCallum et al.,1996,J.Mol.Biol.,262:732-745に記載される、観察された抗原接触点に基づく。CDRの「コンフォメーション」定義は、抗原結合に対するエンタルピー寄与を与える残基に基づく(例えば、Makabe et al.,2008,Journal of Biological Chemistry,283:1 156-1 166を参照)。さらに他のCDR境界の定義は、上記のアプローチの1つに厳密に従わないものもあろうが、それでもなお、KabatのCDR定義の少なくとも一部と重複するであろう。これらの領域は、特定の残基または残基群またはさらにはCDR全体が抗原結合に大きく影響しない場合、予測または実験的知見に基づいて短かくも長くもなり得る。本明細書で使用する場合、CDRは、異なるアプローチの組み合わせを含む、当該技術分野では周知のいずれの定義方法に基づいたものであってもよい。
【0154】
「エピトープ」という用語は、抗体が特異的に結合する抗原(Ag)の部分または領域(例えば、抗体(Ab)と相互作用するアミノ酸残基を含む部分または領域)を指す。エピトープは、直鎖状または非直鎖状(例えば、コンフォメーションを有する)であり得る。
【0155】
ある抗体またはその抗原結合フラグメントは、別の抗体またはその抗原結合フラグメントの同じエピトープに、対応する抗体またはその抗原結合フラグメントの結合が互いに排他的である場合、実質的に結合する。すなわち、1つの抗体またはその抗原結合フラグメントの結合は、他の抗体またはその抗原結合フラグメントの同時または順次の結合を排除する。エピトープは、抗原が両方の対応する抗体またはその抗原結合フラグメントに同時に結合することができる場合、固有であるか、または実質的に同じではない。
【0156】
「パラトープ」という用語は、上記の「エピトープ」の定義から導出され、抗原が結合する抗体の部分または領域(例えば、抗原と相互作用する残基を含む部分または領域)を指す。パラトープは、直鎖状であるかまたはコンフォメーションを有し得る(CDR中の不連続残基など)。
【0157】
ある特定の抗体/抗原の結合ペアにおけるエピトープ/パラトープは、さまざまな実験及び計算エピトープマッピング法を用いて、異なる詳細さのレベルで定義及び特徴付けすることができる。これらの方法としては、変異誘発法、X線結晶解析法、核磁気共鳴(NMR)分光法、水素/重水素交換質量分析法(HX-MS)及びさまざまな競合的結合法が挙げられる。これらの方法はそれぞれ、固有の抗体-抗原結合に依存するため、エピトープの記述はエピトープが決定された方法に密接に関連する。したがって、ある特定の抗体/抗原ペアのエピトープ/パラトープは、使用されるマッピング法に応じて異なる定義がなされる。
【0158】
その最も詳細なレベルにおいて、抗体(Ab)と抗原(Ag)との相互作用に関するエピトープ/パラトープは、Ag-Ab結合時の原子間相互作用の空間座標、ならびに結合の熱力学に対するそれらの相対的寄与度に関する情報に基づいて定義することができる。1つのレベルでは、エピトープ/パラトープ残基は、AgとAbとの原子間相互作用の空間座標によって特徴付けることができる。一態様では、エピトープ/パラトープ残基は、特定の基準、例えば、AbとAgとの間の原子距離(例えば、同族抗体の重原子と抗原の重原子との間の距離以下の距離)によって定義することができる。別の態様では、エピトープ/パラトープ残基は、水素結合と同族抗体/抗原または同族抗体/抗原にやはり水素結合(水媒介性水素結合)している水分子との間の相互作用へのその関与に基づいて特徴付けることができる。別の態様では、エピトープ/パラトープ残基は、同族抗体/抗原の残基と塩橋を形成することを特徴とし得る。さらに別の態様では、エピトープ/パラトープ残基は、同族抗体/抗原との相互作用のために、埋め込み表面積(BSA)にゼロでない変化を有する残基として特徴付けることができる。それほど詳細でないレベルでは、エピトープ/パラトープは、その機能に基づいて、例えば、他のAbとの競合的結合によって特徴付けることができる。エピトープ/パラトープはまた、別のアミノ酸によるその置換がAbとAgとの間の相互作用の特性を変化させるようなアミノ酸残基(例えば、アラニンスキャニング)を含むものとしてより一般的に定義することができる。
【0159】
エピトープの記述及び定義は、エピトープマッピングに用いられる方法及び異なる詳細さのレベルの情報に依存することから、異なるAbに対する同じAg上のエピトープ同士の比較を、異なる詳細さのレベルで同様に行うことができる。例えば、アミノ酸レベルでは、X線構造から決定される、同じアミノ酸の残基のセットを有するエピトープ同士は、同一であると言われる。
【0160】
競合的結合を特徴とするエピトープ同士は、対応する抗体の結合が相互に排他的である場合、すなわち、1つの抗体の結合が別の抗体の同時または順次の結合を排除する場合、重複している、と言われ、エピトープ同士は、抗原が両方の対応する抗体に同時に結合することができる場合、別個(固有)であると言われる。
【0161】
ある特定の抗体/抗原ペアにおけるエピトープ及びパラトープは、特定の常法によって同定することができる。例えば、あるエピトープの一般的な位置は、本明細書の他の箇所により詳しく記載しているように、異なるフラグメントまたは変異体ポリペプチドに結合する抗体の能力を評価することによって決定することができる。抗体内の他の特定の残基と接触するOX40内の特定の残基も、常法を用いて決定することができる。例えば、抗体/抗原複合体は結晶化させることができる。結晶構造を決定して、抗体と抗原との間の特異的相互作用部位を同定するために使用することができる。
【0162】
「特異的に結合する」及び「特異的結合」という用語、ならびにかかる特異的結合を測定する方法は、当該技術分野では周知のものである。ある分子は、別の細胞または物質に対するよりも、より高い頻度で、より迅速に、より長時間及び/またはより高い親和性で特定の細胞または物質と反応または結合する場合に、「特異的結合」を示すと言われる。抗体またはその抗原結合フラグメントは、他の物質に対するよりも、より高い親和性、アビディティーで、より容易に、及び/またはより長時間で結合する場合に、標的と「特異的に結合する」。
【0163】
例えば、OX40に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、他の抗原との結合よりも、より高い親和性、アビディティーで、より容易に、及び/またはより長時間でその同族抗原と結合するものである。より具体的には、抗OX40抗体は、標準的な結合アッセイ条件下でヒトOX40に特異的に結合し得るが、試料中の他の分子は実質的に認識しないかまたはこれと結合しない。第1の標的に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、第2の標的に特異的に結合する場合も、しない場合もある点は理解されよう。したがって、「特異的結合」は必ずしも排他的な結合を必要としない(ただしそれを含み得る)。一般に、必ずしもではないが、「結合」と言った場合には、特異的結合を意味する。
【0164】
さまざまな方法を使用して、目的の分子に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを選択することができる。抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを同定するために使用され得る多くの方法の中に、例えば、固相ELISA免疫アッセイ、免疫沈降法、Biacore(商標)(GE Healthcare)、KinExA、蛍光活性化細胞選別法(FACS)、Octet(商標)(ForteBio,Inc.)及びウエスタンブロット分析がある。通常、特異的結合は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍、より多くの場合、バックグラウンドの少なくとも10倍、バックグラウンドの少なくとも50倍、バックグラウンドの少なくとも100倍、バックグラウンドの少なくとも500倍、バックグラウンドの少なくとも1000倍、またはバックグラウンドの少なくとも1万倍のシグナルを生成する。
【0165】
抗体結合の特異性は、抗体とOX40との特異的結合のKD値を、コントロールがOX40に結合しないことが分かっている、OX40とコントロールとの結合のKD値と比較することによって評価することができる。一般に、抗体は、KDが約×10-5M以下である場合に抗原に「特異的に結合する」と言われる。
【0166】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、他の抗原に対する結合よりも高い親和性、アビディティーで、より容易に、及び/またはより長時間で抗原に結合しない場合、抗原に「実質的に結合しない」。通常、結合は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの2倍以下のシグナルを生成する。一般に、それは、1×10-4M以上、1×10-3M以上、1×10-2M以上、または1×10-1M以上のKDで抗原に結合する。
【0167】
抗体に関して本明細書で使用する場合、「競合する」という用語は、抗原への第1の抗体またはその抗原結合部分の結合が、同じ抗原の第2の抗体またはその抗原結合部分へのその後の結合を減少させることを意味する。一般に、第1の抗体の結合は、立体障害、コンフォメーション変化を生じさせるか、または共通のエピトープ(またはその一部)に対する第2の抗体の結合を減少させる。標準的な競合結合アッセイを用いて、2つの抗体が互いに競合するか否かを判定することができる。
【0168】
抗体競合分析のための1つの適切なアッセイでは、Biacore技術を使用するが、この技術は、一般的にはバイオセンサシステム(BIACORE(登録商標)システムなど)を使用した表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用して相互作用の程度を測定することができる。例えば、SPRをインビトロ競合結合阻害アッセイで使用することで、1つの抗体が第2の抗体の結合を阻害する能力を測定することができる。ELISA法に基づいた別の抗体競合の測定法もある。さらに、抗体競合に基づいて抗体を「ビニング」するための高スループット法がWO2003/48731に記載されている。1つの抗体またはその抗原結合フラグメントが、別の抗体またはその抗原結合フラグメントのOX40への結合を減少させる場合、競合が存在する。例えば、逐次結合競合アッセイは、異なる抗体を逐次的に加えることによって使用することができる。具体的には、第1の抗体は、結合飽和状態に近いレベルまで加えることができる。次いで、第2の抗体を加える。OX40に対する第2の抗体の結合が、第1の抗体の非存在下での平行アッセイ(この値を100%として設定することができる)と比較して、検出可能でないかまたは有意に減少している(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%の減少)場合、2つの抗体は、互いに競合すると考えられる。
【0169】
抗原に対する抗体の結合を、その標的の別の結合パートナー(例えば、別の抗体または他の形で標的に結合する可溶性受容体)による標的の結合と比較する競合結合アッセイを行うこともできる。50%阻害が生じる濃度は、Kiとして知られる。理想条件下では、Kiは、KDと等価である。したがって、一般に、Kiの測定値を、KDの上限値を与えるために便宜上置き換えることができる。異なる分子相互作用に関連する結合親和性、例えば、特定の抗原に対する異なる抗体の結合親和性の比較を、個々の抗体/抗原複合体のKD値の比較によって評価することができる。抗体または他の結合パートナーのKD値は、当該技術分野で十分に確立された方法を用いて決定することができる。
【0170】
「Fc融合」タンパク質という用語は、1つ以上のポリペプチドがFcポリペプチドと機能的に連結されたタンパク質である。Fc融合体は、免疫グロブリンのFc領域を融合パートナーと組み合わせたものである。「Fc領域」は、Fc領域の天然配列またはFc領域のバリアントであってよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、226位のCysまたは230位のProのアミノ酸残基からそのカルボキシル末端にわたるものとして定義される。Fc領域内の残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991に記載されるEUインデックスのものである。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、CH2及びCH3の2つの定常ドメインを含んでいる。当該技術分野では周知であるように、Fc領域は、ダイマーまたはモノマーのいずれかの形で存在し得る。
【0171】
「治療有効量」という用語は、意図される目的を達成するのに十分な量の抗OX40抗体またはその抗原結合フラグメント、またはかかる抗体またはその抗原結合フラグメントを含む組み合わせの量を意味する。正確な量は、治療組成物の成分及び物理的特性、意図される患者集団、個々の患者の詳細などを含むがこれらに限定されない多くの要因に依存し、当業者によって決定され得る。
【0172】
「治療」という用語は、予防的及び/または治療的処置を含む。疾患、障害、または状態のあらゆる臨床徴候または症状の発現の前に投与される場合、処置は予防的であると考えられる。治療的処置には、例えば、疾患、障害、もしくは状態を改善するまたはその重症度を低減すること、または疾患、障害、もしくは状態の長さを短縮することが含まれる。
【0173】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、ある値の±10%を指す。
【0174】
治療方法及び組成物
本明細書で提供される抗ヒトOX40抗体はいずれも、特定の治療方法に使用することができる。
【0175】
一態様では、本明細書で提供される抗ヒトOX40アゴニスト抗体は医薬組成物に使用される。別の態様では、本明細書で提供される抗ヒトOX40アゴニスト抗体はがんの治療に使用される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗ヒトOX40アゴニスト抗体は治療方法として使用される。他の実施形態では、本発明は、がんを有する対象を治療するための方法であって、対象に治療有効量の抗ヒトアゴニストOX40抗体を投与することを含む、方法を提供する。1つのかかる実施形態において、方法は、対象に、例えば下記に記載されるような、治療有効量の少なくとも1つのさらなる治療剤を投与することをさらに含む。
【0176】
一態様では、治療有効量の抗ヒトOX40アゴニスト抗体を個体に投与することを含む、がんを有する個体の免疫機能を増強(例えば、細胞媒介性免疫応答の増加によって)するのに使用される抗ヒトOX40アゴニスト抗体が提供される。別の態様では、治療有効量の抗ヒトOX40アゴニスト抗体を個体に投与することを含む、がんを有する個体のT細胞機能を増強するのに使用される抗ヒトOX40アゴニスト抗体が提供される。別の態様では、治療有効量の抗ヒトOX40アゴニスト抗体を個体に投与することを含む、ヒトOX40発現細胞(例えば、OX40発現T細胞、例えば、OX40発現Treg)を枯渇させるのに使用される抗ヒトOX40アゴニスト抗体が提供される。いくつかの実施形態では、枯渇はADCCにより実現される。他の実施形態では、枯渇は食作用により実現される。腫瘍免疫を有する個体を治療するための抗ヒトOX40アゴニスト抗体が提供される。
【0177】
さらなる態様では、感染症(例えば、細菌またはウイルスまたは他の病原体によって引き起こされる感染症)を治療するための抗ヒトOX40アゴニスト抗体が提供される。いくつかの実施形態では、本発明は、感染症を有する対象を治療するための方法であって、治療有効量の抗ヒトアゴニストOX40抗体を個体に投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、感染症は、ウイルス及び/または細菌によって引き起こされる。別の実施形態では、感染症は、他の病原体によって引き起こされる。
【0178】
別の実施形態において、本発明は、抗OX40抗体の製造または調製を含む医薬組成物の使用を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、がんを治療するためのものである。別の実施形態では、本発明は、がんを有する対象を治療するための方法であって、治療有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む、方法を提供する。1つのかかる実施形態において、方法は、個体に、例えば下記に記載されるような、有効量の少なくとも1つのさらなる治療剤を投与することをさらに含む。
【0179】
一態様では、医薬組成物は、がんを有する個体の免疫機能を増強させる(例えば、細胞媒介性免疫応答を増加させることによって)ために使用され、治療有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む。別の態様では、医薬組成物は、がんを有する個体のT細胞機能を増強するために使用するためのものであって、治療有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、T細胞機能不全疾患はがんである。一態様では、医薬組成物は、ヒトOX40発現細胞(例えば、高レベルのOX40を発現する細胞、例えば、OX40発現T細胞)を枯渇させるために使用するためのものであって、治療有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む。一実施形態では、枯渇はADCCにより実現される。別の実施形態では、枯渇は食作用により実現される。別の態様では、医薬組成物は、腫瘍免疫を有する個体を治療するためのものである。
【0180】
さらなる態様では、感染症(例えば、細菌、ウイルス、または他の病原体によって引き起こされる感染症)の治療に使用される医薬組成物が提供される。特定の実施形態では、医薬組成物は、感染症を有する個体を治療するために使用され、治療有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む。一実施形態では、感染症は、ウイルス及び/または細菌によって引き起こされる。別の実施形態では、感染症は、他のいくつかの病原体によって引き起こされる。
【0181】
さらなる態様では、本発明はがんを治療するための方法を提供する。一実施形態では、方法は、がんを有する個体に治療有効量の抗OX40抗体を投与することを含む。1つのかかる実施形態において、方法は、個体に、下記に記載されるような、有効量の少なくとも1つのさらなる治療剤を投与することをさらに含む。上記の実施形態のいずれかに記載される「個体」とは、ヒトであり得る。
【0182】
一態様では、がんを有する個体の免疫機能を増強する(例えば、細胞媒介性免疫応答を増加させることによって)ための方法であって、治療有効量の抗ヒトアゴニストOX40抗体を個体に投与することを含む、方法が提供される。一態様では、がんを有する個体のT細胞機能を増強するための方法であって、治療有効量の抗ヒトアゴニストOX40抗体を個体に投与することを含む、方法が提供される。別の態様では、ヒトOX40発現細胞(例えば、高レベルのOX40を発現する細胞、例えば、OX40発現T細胞)を枯渇させるための方法であって、治療有効量の抗ヒトアゴニストOX40抗体を個体に投与することを含む、方法が提供される。一実施形態では、枯渇はADCCにより実現される。別の実施形態では、枯渇は食作用により実現される。別の実施形態では、腫瘍免疫を有する個体を治療するための抗ヒトOX40アゴニスト抗体が提供される。
【0183】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるがんとしては、これらに限定されるものではないが、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL、巨大腫瘤病変性NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(例えば脳腫瘍に関連するもの)、B細胞増殖性疾患、及びMeigs症候群に関連する異常血管増殖がさらに挙げられる。より具体的な例としては、これらに限定されるものではないが、再発性または難治性NHL、フロントライン低悪性度NHL、第III/IV病期NHL、化学療法耐性NHL、前駆Bリンパ芽球性白血病及び/またはリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病及び/または前リンパ球性白血病及び/または小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性リンパ腫、免疫細胞腫及び/またはリンパ形質細胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、結節外辺縁帯-MALTリンパ腫、結節性辺縁帯リンパ腫、有毛細胞白血病、形質細胞腫及び/または形質細胞骨髄腫、低悪性度/濾胞性リンパ腫、中悪性度/濾胞性NHL、マントル細胞リンパ腫、濾胞中心リンパ腫(濾胞性)、中悪性度びまん性NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、侵攻性NHL(侵攻性フロントラインNHL及び侵攻性再発性NHLを含む)、自家幹細胞移植後に再発するまたはそれに対して不応性のNHL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL、巨大腫瘤病変NHL、バーキットリンパ腫、前駆体(末梢)大顆粒リンパ球性白血病、菌状息肉腫及び/またはセザリー症候群、皮膚(skin(cutaneous))リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、及び血管中心性リンパ腫が挙げられる。
【0184】
他の実施形態では、がんの例としては、これらに限定されるものではないが、B細胞増殖性疾患が挙げられ、B細胞増殖性疾患としては、これらに限定されるものではないが、リンパ腫(例えば、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL))及びリンパ性白血病がさらに挙げられる。かかるリンパ腫及びリンパ性白血病としては、例えば、a)濾胞性リンパ腫、b)小型非切れ込み核細胞性リンパ腫/バーキットリンパ腫(地域性バーキットリンパ腫、散発性バーキットリンパ腫、及び非バーキットリンパ腫を含む)、c)辺縁帯リンパ腫(結節外辺縁帯B細胞リンパ腫(粘膜関連リンパ組織リンパ腫、MALT)、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、及び脾臓辺縁帯リンパ腫を含む)、d)マントル細胞リンパ腫(MCL)、e)大細胞型リンパ腫(B細胞びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)、びまん性混合細胞型リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、原発性縦隔B細胞性リンパ腫、血管中心性リンパ腫-肺B細胞リンパ腫を含む)、f)有毛細胞性リンパ腫、g)リンパ球性リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、h)急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞前リンパ球性白血病、i)形質細胞腫瘍、形質細胞骨髄腫、多発性骨髄腫、形質細胞腫、及び/またはj)ホジキン病が挙げられる。
【0185】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、がんは、B細胞増殖性疾患である。他の実施形態では、B細胞増殖性疾患は、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、侵襲性NHL、再発性侵襲性NHL、再発性緩慢性NHL、難治性NHL、難治性緩慢性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、白血病、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)、またはマントル細胞リンパ腫である。いくつかの実施形態では、B細胞増殖性疾患は、緩慢性NHL及び/または侵襲性NHLなどのNHLである。別の実施形態では、B細胞増殖性疾患は、緩慢性濾胞性リンパ腫またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0186】
さらなる態様において、本発明は、上記の治療方法のいずれかに記載されるいずれかの抗OX40抗体を含むいくつかの医薬製剤を提供する。一実施形態では、医薬製剤は、本明細書に提供される抗OX40抗体のうちのいずれかと、薬学的に許容される担体と、を含む。別の実施形態では、医薬製剤は、本明細書に提供される抗OX40抗体のうちのいずれかと、例えば下記に記載されるような、少なくとも1つのさらなる治療剤と、を含む。
【0187】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、Tregの機能を阻害することにより(例えば、Tregの抑制機能を阻害することにより)、OX40発現細胞(例えば、高レベルのOX40を発現する細胞)を殺滅することにより、ならびにエフェクターT細胞機能を増加させる、及び/またはメモリーT細胞機能を増加させることにより、腫瘍免疫を阻害する。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、Tregの機能を阻害することにより(例えば、Tregの抑制機能を阻害することにより)、OX40発現細胞(例えば、高レベルのOX40を発現する細胞)を殺滅することにより、ならびにエフェクターT細胞機能を増加させる、及び/またはメモリーT細胞機能を増加させることにより、がんを治療する。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、Tregの機能を阻害することにより(例えば、Tregの抑制機能を阻害することにより)、OX40発現細胞(例えば、高レベルのOX40を発現する細胞)を殺滅することにより、ならびにエフェクターT細胞機能を増加させる、及び/またはメモリーT細胞機能を増加させることにより、免疫機能を増強する。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、Tregの機能を阻害することにより(例えば、Tregの抑制機能を阻害することにより)、OX40発現細胞(例えば、高レベルのOX40を発現する細胞)を殺滅することにより、ならびにエフェクターT細胞機能を増加させる、及び/またはメモリーT細胞機能を増加させることにより、T細胞機能を増強する。
【0188】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、阻害性抗ヒトアゴニスト抗体である。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体による治療は、細胞の枯渇(例えば、OX40発現細胞または高レベルのOX40を発現する細胞の枯渇)をもたらす。一実施形態では、枯渇はADCCにより実現される。別の実施形態では、枯渇は食作用により実現される。
【0189】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、エフェクター及び/またはメモリーT細胞機能(いくつかの実施形態では、エフェクターT細胞及び/またはメモリーT細胞の増殖及び/またはサイトカイン分泌)のTreg抑制を阻害することによって、Treg機能を阻害する。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、エフェクターT細胞の増殖を増加させる。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、メモリーT細胞の増殖を増加させる。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、エフェクターT細胞のサイトカイン産生(例えば、インターフェロンγの産生)を増加させる。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、メモリーT細胞のサイトカイン産生(例えば、インターフェロンγの産生)を増加させる。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、CD4+エフェクターT細胞の増殖及び/またはCD8+エフェクターT細胞の増殖を増加させる。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、メモリーT細胞の増殖(例えば、CD4+メモリーT細胞の増殖)を増加させる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、個体のCD4+エフェクターT細胞の増殖、サイトカイン分泌及び/または細胞溶解活性を増強する。
【0190】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、CD4+エフェクターT細胞の数は、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与前の数と比較して上昇する。いくつかの実施形態では、CD4+エフェクターT細胞のサイトカイン分泌は、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与前のレベルと比較して上昇する。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、個体のCD8+エフェクターT細胞の増殖、サイトカイン分泌及び/または細胞溶解活性を増強する。いくつかの実施形態では、CD8+エフェクターT細胞の数は、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与前の数と比較して上昇する。いくつかの実施形態では、CD8+エフェクターT細胞のサイトカイン分泌は、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与前のレベルと比較して上昇する。
【0191】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ヒトエフェクター細胞に結合し、例えば、ヒトエフェクター細胞で発現するFcγRに結合する。一実施形態では、ヒトエフェクター細胞は、ADCCエフェクター機能を行う。別の実施形態では、ヒトエフェクター細胞は、食作用エフェクター機能を行う。
【0192】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、IgG1Fcポリペプチドバリアント(例えば、ヒトエフェクター細胞へのその結合を消失させる変異(例えば、DANAまたはN297G変異))を含む抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、IgG1Fc領域の天然配列を有する抗ヒトOX40アゴニスト抗体と比較して低下した活性(例えば、CD4+エフェクターT細胞機能、例えば、増殖)を有する。いくつかの実施形態では、IgG1 Fcポリペプチドバリアント(例えば、ヒトエフェクター細胞へのその結合を消失させる変異(例えば、DANAまたはN297G変異))を含む抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、実質的な活性(例えば、CD4+エフェクターT細胞機能、例えば、増殖)を有しない。
【0193】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体が機能するうえで抗体架橋が必要とされる。いくつかの実施形態では、機能は、CD4+エフェクターT細胞増殖の刺激である。いくつかの実施形態では、抗体架橋能力は、固体表面(例えば、細胞培養プレート)上に接着した抗ヒトOX40アゴニスト抗体の量を測定することによって決定される。いくつかの実施形態では、抗体架橋能力は、抗体のIgG1 Fc領域に変異(例えば、DANA変異またはN297S変異)を導入し、変異抗体の機能を試験することによって決定される。
【0194】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、個体におけるメモリーT細胞の増殖及び/またはサイトカイン分泌を増加させた。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、メモリーT細胞の数を増加させた。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、メモリーT細胞のサイトカイン分泌(レベル)を増加させた。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、個体におけるエフェクターT細胞のTreg抑制(例えば、増殖及び/またはサイトカイン分泌)を減少させた。いくつかの実施形態では、エフェクターT細胞の数は、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与前の数と比較して上昇する。いくつかの実施形態では、エフェクターT細胞のサイトカイン分泌(レベル)は、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与前のレベルと比較して上昇する。
【0195】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、腫瘍組織内(浸潤性)CD4+エフェクターT細胞の数(例えば、CD4+エフェクターT細胞の総数、または例えば、CD45+細胞中のCD4+細胞の割合)は、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与前の数と比較して増加した。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、インターフェロンγ-を発現する腫瘍組織内(浸潤性)CD4+エフェクターT細胞の数(例えば、インターフェロンγ-発現CD4+細胞の総数、または例えば、総CD4+細胞中のインターフェロンγ-発現CD4+細胞の割合)は、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与前のそれらのレベルと比較して上昇した。
【0196】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、腫瘍組織内(浸潤性)CD8+エフェクターT細胞の数(例えば、CD8+エフェクターT細胞の総数、または例えば、CD45+細胞中のCD8+の割合)は、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与前の数と比較して増加した。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、インターフェロンγ-を発現する腫瘍組織内(浸潤性)CD8+エフェクターT細胞の数(例えば、総CD8+細胞中のインターフェロンγ-を発現するCD8+細胞の割合)は、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与前の数と比較して増加した。
【0197】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、腫瘍組織内(浸潤性)Tregの数(例えば、Tregの総数、または例えば、CD4+細胞中のFox3p+細胞の割合)は、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与前の数と比較して減少した。
【0198】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体の投与は、腫瘍抗原の投与と組み合わせて行われる。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、核酸を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、腫瘍細胞である。
【0199】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、がんは、ヒトエフェクター細胞を保有する(例えば、ヒトエフェクター細胞によって浸潤されている)。ヒトエフェクター細胞を検出するための方法は、当該技術分野では周知のものであり、例えば、IHCが含まれる。いくつかの実施形態では、がんは、高いレベルのヒトエフェクター細胞を特徴とする。いくつかの実施形態では、ヒトエフェクター細胞は、NK細胞、マクロファージ、及び単球のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、がんは、本明細書に記載のいずれかのがんである。いくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌(NSCLC)、膠芽腫、神経芽腫、黒色腫、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、または肝細胞癌である。
【0200】
本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの実施形態では、がんは、FcRを発現する細胞を保有している(例えば、FcRを発現する細胞によって浸潤されている)。FcRを検出するための方法は、当該技術分野では周知のものであり、例えば、IHCが含まれる。いくつかの実施形態では、がんは、高いレベルのFcR発現細胞を保有している。いくつかの実施形態では、FcRは、FcγRである。いくつかの実施形態では、FcRは、活性FcγRである。いくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌(NSCLC)、膠芽腫、神経芽腫、黒色腫、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、胃癌、結腸直腸癌(CRC)、または肝細胞癌である。
【0201】
上記の実施形態のいずれかによる「個体」または「対象」は、好ましくはヒトである。
【0202】
本発明の抗体は、単独で、または他の治療剤と併用して、使用することができる。例えば、本明細書に記載の抗体は、少なくとも1つのさらなる治療剤と同時投与することができる。
【0203】
上記に記載のかかる併用療法には、併用投与(同じまたは別々の製剤中に2つ以上の治療剤が含まれる)及び別個投与の両方が含まれ、本明細書に記載の抗体の投与を、1乃至複数のさらなる治療剤の投与の前、同時、及び/またはその後に行うことができる。一実施形態では、抗OX40抗体の投与とさらなる治療剤の投与とは、互いの約1ヶ月以内、または約1、2、もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内に行われる。本発明の抗体は、放射線療法と併用することもできる。
【0204】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、化学療法または化学療法剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、放射線療法または放射線療法剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、標的療法または標的療法剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、免疫療法または免疫療法剤、例えば、モノクローナル抗体と組み合わせて投与することができる。
【0205】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、PARP阻害剤(例えば、オラパラニブ、ルカパリブ、ニラパリブ、セジラニブ、BMN673、ベリパリブ)、トラベクテジン、ナブパクリタキセル(アルブミン結合パクリタキセル、ABRAXANE)、トレバナニブ、パゾパニブ、セジラニブ、パルボシクリブ、エベロリムス、フルオロピリミジン(例えば、FOLFOX、FOLFIRI)、IFL、レゴラフェニブ、レオリジン、アリムタ、ジカディア、スーテント、トーリセル(テムシロリムス)、インライタ(アキシチニブ、Pfizer)、アフィニトール(エベロリムス、Novartis)、ネクサバール(ソラフェニブ、Onyx/Bayer)、ヴォトリエント、パゾパニブ、アキシチニブ、IMA-901、AGS-003、カボザンチニブ、ビンフルニン、Hsp90阻害剤(例えば、アパトルシン)、Ad-GM-CSF(CT-0070)、テマゾロミド、IL-2、IFNa、ビンブラスチン、サロミド、ダカルバジン、シクロホスファミド、レナリドマイド、アザシチジン、レナリドマイド、ボルテゾミド(VELCADE)、アムルビシン、カルフィルゾミブ、プララトレキサート、及び/またはエンザスタウリンと組み合わせて投与することができる。
【0206】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストを含むがこれらに限定されないPD-1軸結合アンタゴニストと組み合わせて投与することができる。「PD-1」の別名としては、CD279及びSLEB2がある。「PD-L1」の別名としては、B7-H1、B7-4、CD274、及びB7-Hがある。PD-L2の別名としては、B7-DC、Btdc、及びCD273がある。いくつかの実施形態では、PD-1、PD-L1、及びPD-L2は、ヒトPD-1、PD-L1、及びPD-L2である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、リガンド結合パートナーへのPD-1の結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-1リガンド結合パートナーは、PD-L1及び/またはPD-L2である。別の実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、結合パートナーへのPD-L1の結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-L1リガンド結合パートナーは、PD-1及び/またはB7-1である。別の実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、結合パートナーへのPD-L2の結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-L2結合パートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ、OPDIVO)、Merck3475(MK-3475、ペムブロリズマブ)、及びKEYTRUDAWPCT-011(ピジリズマブ)から選択される。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1結合アンタゴニストは、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI4736、及びMDX-1105から選択される。MDX-1105、別名BMS-936559は、WO2007/005874に記載される抗PD-L1抗体である。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634A1に記載される抗PD-L1抗体である。MDX-1106、別名MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、またはニボルマブは、WO2006/121168に記載される抗PD-1抗体である。Merck3475、別名MK-3475、SCH-900475、またはペムブロリズマブは、WO2009/114335に記載される抗PD-1抗体である。CT-011、別名hBAT、hBAT-1、またはピジリズマブは、WO2009/101611に記載される抗PD-1抗体である。AMP-224、別名B7-DCIgは、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載されるPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、MDX-1106である。「MDX-1106」の別名としては、MDX-1 106-04、ONO-4538、BMS-936558、及びニボルマブがある。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体はニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。
【0207】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、活性化共刺激分子を標的とするアゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、活性化共刺激分子には、CD40、CD226、CD28、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127が含まれ得る。いくつかの実施形態では、活性化共刺激分子により標的とされるアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127に結合するアゴニスト抗体である。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、阻害性共刺激分子を標的とするアンタゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、阻害性共刺激分子には、CTLA-4(CD152としても知られる)、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼが含まれ得る。いくつかの実施形態では、阻害性共刺激分子により標的とされるアンタゴニストは、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3(例えば、LAG-3-IgG融合タンパク質(IMP321))、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼに結合するアンタゴニスト抗体である。
【0208】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CTLA-4(別名、CD152)を標的とするアンタゴニスト、例えば、遮断抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、イピリムマブ(別名MDX-010、MDX-101、またはヤーボイ(登録商標))と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、トレメリムマブ(別名チシリムマブまたはCP-675,206)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、B7-H3(別名、CD276)を標的とするアンタゴニスト、例えば、遮断抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、MGA271と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、TGFPを標的とするアンタゴニスト、例えば、メテリムマブ(別名、CAT-192)、フレソリムマブ(別名、GC1008)、またはLY2157299と組み合わせて投与することができる。
【0209】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞またはCTL)の養子移入を含む治療と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、UCART19と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、WT128zと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、KTE-C19(Kite)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CTL019(Novartis)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、例えば、ドミナントネガティブTGFベータII型受容体を含むT細胞の養子移入を含む治療と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、HERCREEM試験を含む治療と組み合わせて投与することができる(例えば、ClinicalTrials.gov識別番号:NCT00889954を参照)。
【0210】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CD19を標的とするアンタゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、M0R00208と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CD38に対するアンタゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ダラツムマブと組み合わせて投与することができる。
【0211】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CD137(別名、TNFRSF9、4-1BB、またはILA)を標的とするアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ウレルマブ(別名、BMS-663513)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CD40を標的とするアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CP-870893と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、OX40(別名、CD134)を標的とするアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、異なる抗OX40抗体(例えば、AgonOX)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CD27を標的とするアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CDX-1127と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)を標的とするアンタゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、IDOアンタゴニストは、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られる)である。
【0212】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CD137(別名、TNFRSF9、4-1BB、またはILA)を標的とするアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ウレルマブ(別名、BMS-663513)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CD40を標的とするアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CP-870893またはRO7009789と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、アゴニストの組み合わせOX40(別名、CD134)、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CD27を標的とするアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CDX-1127(別名、バルリルマブ)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)を標的とするアンタゴニストと組み合わせて投与することができる。一実施形態では、IDOアンタゴニストは、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られる)である。別の実施形態では、IDOアンタゴニストは、WO2010/005958(その内容を本明細書に記録により明示的に援用する)に記載されるものである。別の実施形態では、IDOアンタゴニストは、4-({2-[(アミノスルホニル)アミノ]エチル}アミノ)-N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシ-1,2,5-オキサジアゾール-3-カルボキシイミドアミド(例えば、本明細書に記載のWO2010/005958の実施例23に記載されるように)である。いくつかの実施形態では、IDOアンタゴニストは以下である。
【化1】
【0213】
いくつかの実施形態では、IDOアンタゴニストは、INCB24360である。いくつかの実施形態では、IDOアンタゴニストは、インドキシモド(1-メチル-トリプトファンのD異性体)である。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、抗体薬物複合体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体は、メルタンシンまたはモノメチルオーリスタチンE(MMAE)を含む。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、抗NaPi2b抗体-MMAE複合体(別名、DNIB0600A、RG7599、またはリファスツズマブベドチン)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、トラスツズマブエムタンシン(別名、T-DM1、アド-トラスツズマブエムタンシン、またはKADCYLA(登録商標)、Genentech)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、抗MUC16抗体-MMAE複合体であるDMUC5754Aと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、抗MUC16抗体-MMAE複合体であるDMUC4064Aと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、エンドセリンB受容体(EDNBR)を標的とする抗体薬物複合体、例えば、MMAEと結合されたEDNBRを標的とする抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、リンパ球抗原6複合体E遺伝子座(Ly6E)を標的とする抗体薬物複合体、例えば、MMAEと結合されたLy6Eを標的とする抗体(別名、DLYE5953A)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ポラツズマブベドチンと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CD30を標的とする抗体薬物複合体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ADCETRIS(別名、ブレンツキシマブベドチン)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ポラツズマブベドチンと組み合わせて投与することができる。
【0214】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、血管新生阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、VEGF、例えば、VEGF-Aを標的とする抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ベバシズマブ(別名、AVASTIN(登録商標)、Genentech)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、アンジオポエチン2(別名、Ang2)を標的とする抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、MEDI3617と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、VEGFR2に対する抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ラムシルマブと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、VEGF受容体融合タンパク質と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、アフリベルセプトと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ziv-アフリベルセプト(別名、VEGFトラップまたはZaltrap(登録商標))と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、VEGF及びAng2を標的とする二重特異性抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、RG7221(別名、バヌシズマブ)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、血管新生阻害剤、及びPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体などのPD-1結合アンタゴニスト、抗PD-L1抗体などのPD-L1結合アンタゴニスト、及び抗PD-L2抗体などのPD-L2結合アンタゴニスト)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ベバシズマブ、及びPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体などのPD-1結合アンタゴニスト、抗PD-L1抗体などのPD-L1結合アンタゴニスト、及び抗PD-L2抗体などのPD-L2結合アンタゴニスト)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ベバシズマブ及びMDX-1106(ニボルマブ、OPDIVO)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ベバシズマブ及びMerck3475(MK-3475、ペンブロリズマブ、KEYTRUDA)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ベバシズマブ及びCT-011(ピジリズマブ)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ベバシズマブ及びYW243.55.S70と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ベバシズマブ及びMPDL3280Aと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ベバシズマブ及びMEDI4736と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ベバシズマブ及びMDX-1105と組み合わせて投与することができる。
【0215】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、抗腫瘍剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CSF-1R(別名、M-CSFRまたはCD115)を標的とする薬剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、抗CSF-1R抗体(別名、IMC-CS4またはLY3022855)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、抗CSF-1R抗体であるRG7155(別名、RO5509554またはエマクツズマブ)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、インターフェロン、例えば、インターフェロンαまたはインターフェロンγと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、Roferon-A(別名、組換えインターフェロンα-2a)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、GM-CSF(別名、組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、rhu GM-CSF、サルグラモスチム、またはLeukine(登録商標))と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、IL-2(別名、アルデスロイキンまたはProleukin(登録商標))と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、IL-12と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、IL27と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、IL-15と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ALT-803と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CD20を標的とする抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、CD20を標的とする抗体は、オビヌツズマブ(別名、GA101またはGazyva(登録商標))またはリツキシマブである。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、GITRを標的とする抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、GITRを標的とする抗体は、TRX518である。いくつかの実施形態では、GITRを標的とする抗体は、MK04166(Merck)である。
【0216】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、イブルチニブと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)及び/またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)の阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、AG-120(Agios)と組み合わせて投与することができる。
【0217】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、オビヌツズマブ、及びPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体などのPD-1結合アンタゴニスト、抗PD-L1抗体などのPD-L1結合アンタゴニスト、及び抗PD-L2抗体などのPD-L2結合アンタゴニスト)と組み合わせて投与することができる。
【0218】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、がんワクチンと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、がんワクチンは、ペプチドがんワクチンである。いくつかの実施形態では、がんワクチンは、個別化がんワクチンである。いくつかの実施形態では、ペプチドがんワクチンは、多価長ペプチド、マルチペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド、またはペプチドパルス樹状細胞ワクチンである(例えば、Yamada et al.,Cancer Sci,104:14-21,2013を参照)。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、アジュバントと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、TLRアゴニスト、例えば、Poly-ICLC(別名、Hiltonol(登録商標))、LPS、MPL、またはCpG ODNを含む治療薬と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、腫瘍壊死因子α(TNFα)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、IL-1と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、HMGB1と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、IL-10アンタゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、IL-4アンタゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、IL-13アンタゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、IL-17アンタゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、HVEMアンタゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ICOSアゴニスト、例えば、ICOS-L、またはICOSを標的とするアゴニスト抗体の投与と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CX3CL1を標的とする治療薬と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CXCL9を標的とする治療薬と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CXCL10を標的とする治療薬と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CCL5を標的とする治療薬と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、LFA-1またはICAM1アゴニストと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、セレクチンアゴニストと組み合わせて投与することができる。
【0219】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、B-Rafの阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ベムラフェニブ(別名、Zelboraf(登録商標))と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ダブラフェニブ(別名、Tafinlar(登録商標))と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、エンコラフェニブ(LGX818)と組み合わせて投与することができる。
【0220】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、EGFR阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、エルロチニブ(別名、Tarceva(登録商標))と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、EGFR-T790Mの阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ゲフィチニブと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、アファチニブと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、セツキシマブ(別名、Erbitux(登録商標))と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、パニツムマブ(別名、Vectibix(登録商標))と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ロシレチニブと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、AZD9291と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、MEK1(別名、MAP2K1)及び/またはMEK2(別名、MAP2K2)などのMEK阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、コビメチニブ(別名、CDC-0973またはXL-518)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、トラメチニブ(別名、Mekinist(登録商標))と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ビニメチニブと組み合わせて投与することができる。
【0221】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、B-Raf阻害剤(例えば、ベムラフェニブまたはダブラフェニブ)及びMEK阻害剤(例えば、MEK1及び/またはMEK2(例えば、コビメチニブまたはトラメチニブ))と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ERKの阻害剤(例えば、ERK1/2)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、GDC-0994と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、B-Rafの阻害剤、MEKの阻害剤、及びERK1/2の阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、EGFRの阻害剤、MEKの阻害剤、及びERK1/2の阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、1つ以上のMAPキナーゼ経路阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CK127と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、K-Rasの阻害剤と組み合わせて投与することができる。
【0222】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、c-Metの阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、オナルツズマブ(別名、MetMAb)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、AF802(別名、CH5424802またはアレクチニブ)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、クリゾチニブと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、セリチニブと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ブパルリシブ(BKM-120)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ピクチリシブ(別名、GDC-0941)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ブパルリシブ(別名、BKM-120)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ペリホシン(別名、KRX-0401)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)のδ選択的阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、イデラリシブ(別名、GS-1101またはCAL-101)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、タセリシブ(taselisib)(別名、GDC-0032)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、BYL-719と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、Aktの阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、MK2206と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、GSK690693と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、イパタセルチブ(別名、CDC-0068)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、mTORの阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、シロリムス(別名、ラパマイシン)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、テムシロリムス(別名、CCI-779またはTorisel(登録商標))と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、エベロリムス(別名、RAD001)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、リダフォロリムス(別名、AP-23573、MK-8669、またはデフォロリムス)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、OSI-027と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、AZD8055と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、INK128と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、二重PBK/mTOR阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、XL765と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、GDC-0980と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、BEZ235(別名、NVP-BEZ235)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、BGT226と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、GSK2126458と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、PF-04691502と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、PF-05212384(別名、PKI-587)と組み合わせて投与することができる。
【0223】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、エストロゲン受容体を選択的に分解する薬剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、GDC-0927と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、HER3の阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ドゥリゴツズマブと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、LSD1の阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、MDM2の阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、BCL2の阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ベネトクラクスと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CHK1の阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CDC-0575と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、活性化ヘッジホッグシグナル伝達経路の阻害剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ERIVEDGEと組み合わせて投与することができる。
【0224】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、放射線療法と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ゲムシタビンと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、nab-パクリタキセル(ABRAXANE)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、トラスツズマブと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、TVECと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、IL27と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、シクロホスファミドと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、腫瘍にT細胞を動員する薬剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、リリルマブ(IPH2102/BMS-986015)と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、イデラリシブと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CD3及びCD20を標的とする抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、REGN1979と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、CD3及びCD19を標的とする抗体と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、ブリナツモマブと組み合わせて投与することができる。
【0225】
いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、腫瘍溶解性ウイルスと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、カルボプラチン及びnab-パクリタキセルと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、カルボプラチン及びパクリタキセルと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、シスプラチン及びペメトレキセドと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、シスプラチン及びゲムシタビンと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、FOLFOXと組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ヒトOX40アゴニスト抗体は、FOLFIRIと組み合わせて投与することができる。
【0226】
上記に述べた併用療法は、併用投与(同じまたは別々の製剤中に2つ以上の治療剤が含まれる場合)及び別個投与の両方が含まれ、本明細書に記載の抗体の投与を、さらなる治療剤及び/またはアジュバントの投与の前、同時、及び/またはその後に行うことができる。本発明の抗体は、放射線療法と併用することもできる。
【0227】
本発明の抗体(及び任意のさらなる治療剤)は、非経口、肺内、及び鼻腔内、ならびに局所治療が望ましい場合には病変内投与を含む、任意の適当な手段によって投与することができる。非経口投与としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が挙げられる。投薬は、投与が一時的であるかまたは長期的であるかに一部基づいて、例えば静脈内または皮下注射などの注射によるなど、任意の適当な投与経路によって行うことができる。本明細書で提供されるさまざまな投薬スケジュールとしては、これらに限定されるものではないが、異なる時点にわたった単回または複数回投与(例えば、ボーラス投与)及びパルス点滴が挙げられる。
【0228】
本発明の抗体は、良質の医療のための原則(good medical practice)に沿った形で、製剤化、投薬、投与される。この関連での考慮事項の要因としては、治療される特定の疾患、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的状態、疾患の原因、医薬組成物の送達部位、投与方法、投与のスケジュール管理、及び医療従事者に周知の他の要因が挙げられる。抗体は、必ずしもそうである必要はないが、対象とする疾患を予防または治療するために現時点で用いられている1つ以上の薬剤とともに製剤化することができる。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害及び治療の種類、及び上記に記載した他の要因に依存する。これらの他の薬剤は、一般に、本明細書に記載されるのと同じ投薬量で、本明細書に記載される投与経路により、または本明細書に記載される投薬量の約1%~99%で、または適切であると経験的/臨床的にみなされる任意の投薬量及び投与経路を用いて使用される。
【0229】
疾患の予防または治療に関して、本明細書に記載される抗体の適切な投薬量は(単独で、または1つ以上の他のさらなる治療剤と併用される場合)、治療される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的で投与されるかまたは治療目的で投与されるか、以前の療法、患者の病歴、及び抗体への応答、ならびに主治医の裁量に依存する。抗体は、1回または一連の投与で患者に投与され得る。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば、患者への1回以上の別個の投与によるものであれ、連続注入によるものであれ、約1μg/kg~40mg/kgの抗体を、初期候補投薬量とすることができる。一般的な1日の投薬量は、上記に述べた要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kgまたはそれ以上の範囲とすることができる。病態に応じて数日間またはより長い日数にわたる反復投与の場合、治療は、一般に、所望の転帰、例えば疾患進行の抑制が得られるまで持続される。医薬組成物は、断続的に、例えば、毎週または3週間毎に(例えば、患者に抗体の約2~約20回、または例えば、約6回用量が投与されるように)投与することができる。最初のより高い負荷用量を投与した後、1つ以上のより低い用量を投与してもよい。しかしながら、他の投与レジメンも有用であり得る。治療の進行は、従来の技術及び方法によって容易に監視される。
【0230】
上の製剤または治療方法のうちのいずれも、抗OX40抗体の代わりに、またはそれに加えて、本発明の免疫複合体を使用して行われ得ることが理解される。
【0231】
特定の実施形態では、本明細書に開示される抗OX40抗体の静脈内(IV)注入は、3、4、5、6、7、または8週毎に患者に投与される。患者1人当たりの抗OX40抗体の用量は、5mg、10mg、15mg、30mg、50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、または500mgとすることができる。特定の実施形態では、患者は、腎細胞癌、肝細胞癌、または頭頸部扁平上皮癌を有し得る。
【0232】
特定の実施形態では、抗OX40抗体は、患者の血液及び腫瘍微小環境中の免疫細胞に対する以下の望ましい変化の1つ以上を実現するために所定の用量及び投与レジメンで患者に投与される:
・フローサイトメトリーによって測定される、患者の末梢血由来のCD4+T細胞またはCD8+T細胞上の増殖(例えば、Ki67)及び活性化(例えば、CD69、CD25)マーカーの割合の増加、
・フローサイトメトリーによって測定される、患者の末梢血由来のCD4+CD25+T細胞上の抗OX40抗体のOX40受容体レベル及び占有率レベル、及び
・患者由来のマッチさせた治療前及び治療後の腫瘍生検組織に対する多重免疫組織化学法(mIHC)または多重免疫蛍光法(mIF)によって測定される、標的の関与(例えば、OX40の下方制御)、CD8+、及びCD4+T細胞の増殖(例えば、Ki67の上方制御)。
【0233】
特定の実施形態では、本明細書における抗OX40抗体の用量及び投与頻度は、患者への反復投与の際に十分なピーク対トラフ比及び最小蓄積量を有する曝露プロファイルが得られるように選択または決定され、それによって、長期の受容体飽和及びその後のT細胞枯渇を防止することで患者の持続的な免疫媒介抗腫瘍活性が実現される。
【0234】
他の実施形態では、本明細書における抗OX40抗体の用量及び/または投与頻度は、曝露プロファイルと、上記に述べたような患者の免疫細胞及び/またはTMEにおける所望の変化などの薬力学(PD)所見とを併せて選択または決定される。
【実施例】
【0235】
実施例1:抗OX40抗体HFB10-1E1hG1の調製
抗OX40抗体HFB10-1E1hG1の重鎖及び軽鎖のコーディングヌクレオチド配列(配列番号24及び32)を合成し(JinWeizhi Company)、それぞれpFUSEベクターにクローニングした。重鎖及び軽鎖のヌクレオチドコード配列を含むプラスミドを、PEIを1:1の比で用いて293F浮遊細胞に一過性に同時トランスフェクトして、完全長抗体を発現させた。1週間のインキュベーション後、Superdex(商標)200 Increase プレパックカラムを用いてAKTAシステムで抗体を精製した。
【0236】
実施例2 HFB10-1E1hG1の結合特性
実施例2.1 HFB10-1E1hG1及びOX40タンパク質の結合特性
試験前ELISAを行うため、参照例1、参照例2、参照例3、参照例4、HFB10-1E1hG1、及びアイソタイプコントロールを含む、5μg/mlの抗OX40抗体で96ウェルプレートを一晩コーティングした。翌日、プレートをPBST中1%BSA(Sangon Biotech、カタログ番号A600332-0100)で37℃で2時間ブロックし、次いで規定の濃度のビオチン化OX40組換えタンパク質を添加した。
【0237】
ビオチン化OX40組換えタンパク質の抗OX40抗体への結合に基づいてEC80を測定した。
図1Aに示されるように、参照例1のEC80は0.09nMであり、参照例2のEC80は0.22nMであり、参照例3のEC80は0.16nMであり、参照例4のEC80は0.24nMであり、HFB10-1E1hG1のEC80は0.71nMであり、OX40LのEC80は1.6nMである。
【0238】
実施例2.2:HFB10-1E1hG1と293T細胞の表面上に発現されたOX40タンパク質の結合特性
ヒトOX40(Sinobiological、カタログ番号HG10481-UT)、カニクイザルOX40(Sinobiological、カタログ番号CG90846-UT)、マウスOX40(Sinobiological、カタログ番号MG50808-UT)またはヒトCD40(Sinobiological、カタログ番号HG10774-UT)を含むOX40を過剰発現させるため、これらの標的をコードしたDNAプラスミドを、Lipusectamine LTX Reagent及びPLUS Reagent(Thermo、カタログ番号15338100)の使用説明書に従って293T細胞に一過性にトランスフェクトした。使用する293T細胞を、トランスフェクションの48時間後に回収した。結合親和性を測定するため、回収した細胞を、規定の濃度の一次抗体HFB10-1E1hG1と4℃で1時間インキュベートした。次いで、PBSで2回洗浄した後、細胞を二次ヤギ抗ヒトIgG PE抗体(1:200、Abcam、カタログ番号ab98596)と室温で30分間インキュベートした。HFB10-1E1hG1結合の検出は、Beckman CytoFLEXフローサイトメーターによって行った。
【0239】
図1Bに示されるように、293T細胞の表面上に発現されたヒトOX40タンパク質に対するHFB10-1E1hG1の結合のEC50は2nM(MFI)である。
【0240】
図1Cに示されるように、293T細胞の表面上に発現されたカニクイザルOX40タンパク質に対するHFB10-1E1hG1の結合のEC50は2.9nM(MFI)である。
【0241】
図1Dに示されるように、HFB10-1E1hG1は、293T細胞の表面上に発現されたマウスOX40タンパク質には結合しない(MFI)。
【0242】
図1Eに示されるように、HFB10-1E1hG1は、293T細胞の表面上に発現されたヒトCD40タンパク質には結合しない(MFI)。
【0243】
293T細胞の表面上に発現されたヒトOX40タンパク質に対するHFB10-1E1hG1、参照例1、参照例2、参照例3、及び参照例4の結合のEC50を
図1Fに示す。HFB10-1E1hG1のEC50は2.02nM(MFI)であり、参照例1のEC50は2.67nM(MFI)であり、参照例2のEC50は4.17nM(MFI)であり、参照例3のEC50は1.92nM(MFI)であり、参照例4のEC50は2.11nM(MFI)である。
【0244】
293T細胞の表面上に発現されたカニクイザルOX40タンパク質に対するHFB10-1E1hG1、参照例1、参照例2、参照例3、及び参照例4の結合のEC50を
図1Gに示す。HFB10-1E1hG1のEC50は2.94nM(MFI)であり、参照例1のEC50は2.91nM(MFI)であり、参照例2のEC50は6.13nM(MFI)であり、参照例3のEC50は2.57nM(MFI)であり、参照例4のEC50は3.54nM(MFI)である。
【0245】
実施例3 HFB10-1E1hG1のアゴニスト活性
実施例3.1 Jurkatレポーター細胞におけるHFB10-1E1hG1のアゴニスト活性
抗OX40抗体は、その作用様式に従って2つのクラスに分けることができる。OX40アゴニスト活性の第1のクラスはFc受容体の架橋に依存しないが、他方のクラスは、OX40アゴニスト活性を有するためにFc受容体の架橋を必要とする。腫瘍組織及び周囲の流入領域リンパ節は、より多くの既存の腫瘍関連炎症細胞を有し、Fc受容体FcγR2bは、腫瘍細胞の周囲でより多くの凝集を有する。したがって、「架橋抗体」アゴニストはより高い組織選択性を有する。これらの抗体アゴニストは、腫瘍微小環境においてのみ明らかなアゴニスト効果を生じ、正常な体組織では低レベルに維持されることから、治療安全性が高くなる。
【0246】
HFB10-1E1hG1のアゴニスト活性を測定するため、96ウェルプレートを5μg/mlのFc特異的抗ヒトIgG抗体で一晩コーティングした(Sigma、カタログ番号SAB3701275)。ヒトOX40を構成的に発現する、NF-kb応答エレメントの制御下でGFP遺伝子を発現する組換えJurkatレポーター細胞を使用した。規定の濃度のHFB10-1E1hG1及び1×105Jurkatレポーター細胞を1つのウェルに添加した。別の実験では、協調的効果を調べるために、50nM OX40L(Acrobiosystems、カタログ番号OXL-H52Q8)をHFB10-1E1hG1と共に加えた。24時間のインキュベーション後、Jurkatレポーター細胞を回収し、Jurkatレポーター細胞におけるHFB10-1E1hG1のアゴニスト活性を、Beckman CytoFLEXフローサイトメーターを用いてGFP陽性シグナルにより測定した。
【0247】
HFB10-1E1hG1のアゴニスト活性は、抗ヒトIgG架橋依存性である。
図2Aに示されるように、抗ヒトIgGと架橋される場合、HFB10-1E1hG1のEC50は、2.9nM(GFPのMFI)である。
図2Bに示されるように、抗ヒトIgGとの架橋がない場合、HFB10-1E1hG1のEC50ははるかに大きく、三量体OX40L組換えタンパク質単独で、NF-kbシグナル伝達をEC50=45nM(GFP MFI)で活性化することができる。
【0248】
抗ヒトIgGと架橋される場合、HFB10-1E1hG1は、OX40Lと相乗的なアゴニスト効果を示した。
図2Cに示されるように、HFB10-1E1hG1とOX40Lを互いに組み合わせると、個々の成分が単独で作用する場合と比較して、GFPのMFIが増加した。
【0249】
実施例3.2 初代CD4+T細胞におけるHFB10-1E1hG1のアゴニスト活性
初代CD4+T細胞におけるHFB10-1E1hG1のアゴニスト活性を測定するため、96ウェルプレートを0.3μg/mlまたは1μg/mlの抗CD3抗体(Thermo、カタログ番号16-0037-81)及び5μg/mlのFc特異的抗ヒトIgG抗体(Sigma、カタログ番号SAB3701275)で一晩コーティングした。翌日、初代CD4+T細胞を、CD4+T細胞単離キット(Miltenyi、カタログ番号130-045-101)の使用説明書に従って回収した。規定の濃度のHFB10-1E1hG1と2μg/ml抗CD28抗体(Thermo、カタログ番号16-0289-81)を1×105初代CD4+T細胞と共に1つのウェルに加えた。別の実験では、HFB10-1E1hG1とOX40Lとの相乗効果を調べるため、50nM OX40L(Acrobiosystems、カタログ番号OXL-H52Q8)をHFB10-1E1hG1と共に加えた。3日間のインキュベーション後、上清中のIL-2分泌レベルを測定し、ヒトIL-2 DuoSet ELISAキット(R&D、カタログ番号DY202-05)の使用説明書に従って初代CD4+T細胞におけるHFB10-1E1hG1のアゴニスト活性を評価した。
【0250】
初代CD4
+T細胞におけるHFB10-1E1hG1のアゴニスト活性を調べるため、精製CD4
+T細胞を1μg/mlの抗CD3抗体及び2μg/mlの抗CD28抗体で予め活性化した。HFB10-1E1hG1との架橋を促進するため、プレートを5μg/mlの抗ヒトIgGでプレコーティングした。
図2Dに示されるように、3日間のインキュベーション後、初代CD4
+T細胞におけるHFB10-1E1hG1のアゴニスト活性をIL-2分泌により測定したところ、得られたEC50は0.2nMであった。
初代CD4
+T細胞において、HFB10-1E1hG1は、OX40Lと相乗的なアゴニスト効果を示した。
図2Eに示されるように、HFB10-1E1hG1と50nM OX40Lとのインキュベーションによって、個々の成分が単独で作用する場合と比較して、IL-2の分泌が増加した。
【0251】
実施例4 HFB10-1E1hG1の薬物動態試験
384ウェルプレートを、30μl/ウェルPBS中、1μg/mlのF(ab’)2(Fc特異的)ヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson IR、カタログ番号109-006-098)で一晩コーティングした。PBST緩衝液で3回洗浄した後、PBS中に1mM EDTA、0.05%Tween、及び2%BSAを含むブロッキング緩衝液を用いて37℃で1時間、プレートをブロッキングした。次いで、1/150から開始して、マウス血清試料の3倍連続希釈物を15μL/ウェルで加え、プレートを37℃で2時間インキュベートした。PBST緩衝液で3回洗浄した後、二次ペルオキシダーゼ-ヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson IR、カタログ番号109-035-003)を1/5000希釈で加え、37℃で1/2時間インキュベートした。TMB基質(Biolegend、カタログ番号421101)を加え、さらに15分間インキュベートした。最後に、ELISA停止液(Beijing Dingguo Changsheng Biotechnology Co.,Ltd.)を加え、Multiskan Skyマイクロプレート分光光度計(ThermoFisher)を用いて450nmでプレートを読み取った。
【0252】
hOX40ノックインマウス(131、132、133、Shanghai Southern Model Biology Research Centerより購入)に10mg/kgのHFB10-1E1hG1を静脈内投与した。マウス血清を、投与の1時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、及び196時間後に採取した。
図3に示されるように、hOX40-KIマウス血清中のHFB10-1E1hG1の半減期は24時間であると決定された。時間0のデータポイントは、上から下に131、132、及び133である。
【0253】
実施例5 HFB10-1E1hG1のインビボでの抗腫瘍効力
hOX40ノックインマウスを、Shanghai Southern Model Biology Research Centerから購入した。5日間の隔離後、各マウスに、100μlのPBS中の8×105個のMC38腫瘍細胞(Nankai UniversityのZhang Hongkai教授より提供されたもの)を皮下接種した。腫瘍サイズが70~100mm3に達した時点で、100μlのPBS中、10mg/kg及びQ3D×5でマウスに抗OX40抗体を腹腔内投与することにより抗OX40抗体処理を開始した。腫瘍サイズ及びマウスの体重を週2回測定した。各腫瘍の長径及び短径をキャリパーによって測定する。mm3単位の腫瘍体積を、次式を用いて計算した:V=0.5a×b2(ただし、a及びbは、それぞれ、腫瘍の長径及び短径を表す)。
【0254】
7日目:35匹の8週齢マウスにMC38腫瘍細胞を接種した
-MC38細胞はZhang Hongkai教授より得た
-マウス1匹当たり8×105個のMC38細胞を接種した
0日目:平均腫瘍サイズは75mm3(40~120mm3)であった
-1群当たりマウス5匹の4つの群:
・PBS
・参照抗体1
・HFB10-1E1hG1
・参照抗体2
-10mg/kgの抗体をQ3D×5で腹腔内投与することにより開始。
18日目:PBSコントロール群の腫瘍サイズは2000mm3に達した。マウスを屠殺した。
-組織:血液、LN、肝臓、脾臓、腫瘍
-表現型分析:T細胞 CD3/CD4/CD8;Treg CD4/CD25/Foxp3;NK CD3/CD16/CD56
【0255】
図4A及び
図4Bに示されるように、この実験により、HFB10-1E1hG1は、体重減少によって特徴付けられる副作用を引き起こすことなく、PBSコントロールと比較して腫瘍増殖を有意に阻害したことが示された。
図4Aにおいて、最も右側のデータポイントは、上から下に、PBS、参照抗体1、HFB10-1E1hG1、及び参照抗体2であった。
図4Bにおいて、左から右に、第2のデータセットは上から下に、PBS、参照抗体1、参照抗体2、及びHFB10-1E1hG1であった。
【0256】
抗体用量反応の有効性を、hOX40ノックインマウスで行った。各処理群の情報は以下の通り:
第1群:PBS:Q3D×5、腹腔内;
第2群:HFB10-1E1hG1:1mg/kg、腹腔内、Q3/4D×5、腹腔内;
第3群:HFB10-1E1hG1:0.1mg/kg、腹腔内、Q3/4D×5、腹腔内;
第4群:参照抗体1:1mg/kg、腹腔内、Q3D×5、腹腔内。
合計20匹のhOX40ノックインマウス、4つの群、1処理群当たりマウス5匹。
【0257】
マウスにMC38腫瘍細胞を接種した。平均腫瘍サイズが75mm3となった時点から開始して、0日目、3日目、6日目、10日目、及び13日目に合計5回の抗体注射を行った。腫瘍サイズ及びマウス体重を、3週間まで、または腫瘍サイズが2000mm3を上回るまで、週2回測定した。
【0258】
異なる用量のHFB10-1E1hG1処理下での腫瘍サイズ及び体重記録を
図4C及び
図4Dに示す。結果は、1mg/kgのHFB10-1E1hG1による処理がインビボで最良の抗腫瘍効果を示すことを示唆した。
【0259】
実施例6 HFB10-1E1hG1のインビトロ特性評価
実施例6.1 HFB10-1E1hG1の加速安定性評価
抗体試料(HFB10-1E1hG1、3.1mg/mL、ロット番号CP181130004)を、遠心濾過装置(Millipore、カタログ番号UFC503096)によって10mg/mLに濃縮した(ロット番号JW20181203、ロット番号20190624)。適切な量の濃縮抗体をきれいな600μlのチューブに移し、25℃及び40℃でそれぞれ7、14及び30日間インキュベートした。
【0260】
インキュベートした各試料をSEC-HPLC及びSDS-PAGEにより分析した。
【0261】
SEC-HPLCでは、50μgの各処理済み試料を注入し、流速0.7mL/分、40分/試験、pH7.4の1×PBS緩衝液中(10×PBS緩衝液(Sangon、カタログ番号E607016)-0500からMilli-Q純水を用いて希釈)で行い、UV280nmの吸光度を検出した(4℃で保存した未処理試料も分析のためにロードした)。結果を表1に示した。25℃及び40℃で最大30日間インキュベートした後、SEC曲線でHFB10-1E1hG1の凝集または分解ピークの有意な増加は観察されず、HFB10-1E1hG1が処理条件下で良好な安定性を有することを示した。40℃で30日間のインキュベーション後に観察されたわずかな分解は、高温での長期のインキュベーションにおける不安定性を示している可能性がある。
【表2】
【0262】
SDS-PAGEの非還元条件及び還元条件下で各処理済み試料4μgを4%~20%グラジエントゲルにロードした。ゲルをトリス-グリシン緩衝液中150Vで1時間泳動し、染色溶液(TaKaRa、カタログ番号T9320A)中で1時間超染色した。次いで、
図5Aに示されるように、蒸留水中で数回脱色し、白色光プレート上で画像化した(4℃で保存した未処理試料も分析に使用した)。
【0263】
25℃及び40℃での30日間のインキュベーション後、SDS-PAGE画像でHFB10-1E1hG1の明らかな凝集または分解バンドは観察されず、HFB10-1E1hG1がこのような処理条件下で良好な安定性を有することを示した。40℃での30日間のインキュベーション後の非還元ゲル上のわずかな分解バンド及び還元ゲル上の凝集バンドは、高温でのHFB10-1E1hG1の長期のインキュベーションの不安定性を示している可能性がある。
【0264】
実施例6.2 HFB10-1E1hG1の分解実験
1.低pHストレス試験:
適切な量の抗体(HFB10-1E1hG1、3.1mg/mL)を600μlのチューブに移し、次いで、2M酢酸を1:20の比(v/v、抗体試料に対する酸、最終pHを約3.5に調整した)で加えた。試料をよく混合し、室温で0、3、または6時間インキュベートした。インキュベーション後、抗体溶液のpHを中和緩衝液で7.4に調整した(1M Tris-HCl、pH9.0をインキュベーション試料に13:100(v/v)の比で加えた)。上記に記載したように試料をSEC-HPLC及びSDS-PAGEによって分析した(加速安定性実験を参照、注:4℃で保存した未処理の試料も分析のためにロードした)。
【0265】
2.高pHストレス試験:
適切な量の抗体(HFB10-1E1hG1、3.1mg/mL)を600μlのチューブに移し、次いで、1M pH8.5のTris-HClを1:25の比(v/v、最終pHを約8.5に調整した)で加えた。試料をよく混合し、室温で0または6時間インキュベートした。上記に記載したように、各試料をSEC-HPLC及びSDS-PAGE(還元条件のみの分析)により分析した。
【0266】
SEC分析を表2に示す。対応するpH3.5及びpH8.5の溶液中での最大6時間のインキュベーション後、SEC曲線でHFB10-1E1hG1の凝集または分解ピークの増加は観察されず、HFB10-1E1hG1がこのような処理条件下で良好な安定性を有することを示した。
【表3】
【0267】
図5Bに、SDS-PAGE分析を示す。低pH及び高pHの緩衝液中で最大6時間インキュベートした後、SDS-PAGEゲル上でHFB10-1E1hG1の変化は観察されず、HFB10-1E1hG1がこのような処理条件下で良好な安定性を有することを示した。
【0268】
実施例6.3 HFB10-1E1hG1の酸化ストレス実験
適切な量の抗体(HFB10-1E1hG1、3.1mg/mL)を600μlのチューブに移し、次いでH2O2(それぞれ0.1%及び1%)またはt-BHP(最終0.1%まで)を加えた。十分に混合し、室温で0または6時間インキュベートした後、各試料を上記に述べたようにSEC-HPLC及びSDS-PAGEによって分析した。
【0269】
注:1)4℃で保存した未処理の試料を分析のためにロードした。2)SECランニングバッファーを100mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH6.8として調製した。
【0270】
表3にSEC分析を示した。対応する0.1%H
2O
2、1%H
2O
2、及び0.1%t-BHP(tert-ブチルヒドロペルオキシド)溶液中で6時間インキュベートした後、SEC曲線に有意なHFB10-1E1hG1の変化は観察されず、HFB10-1E1hG1がこれらの処理条件下で良好な安定性を有することを示している。
【表4】
【0271】
図5CにSDS-PAGE分析を示す。0.1%H
2O
2、1%H
2O
2、及び0.1%t-BHP(t-ブチルヒドロペルオキシド)溶液中で6時間インキュベートした後、非還元ゲルでのわずかな分解を除いて、SDS-PAGEゲルでHFB10-1E1hG1の有意な変化は観察されず、HFB10-1E1hG1がこのような処理条件下で良好な安定性を有することを示した。
【0272】
実施例6.4 HFB10-1E1hG1の凍結/解凍実験
抗体試料(HFB10-1E1hG1、3.1mg/mL、ロット番号CP181130004)を、遠心濾過装置(Millipore、カタログ番号UFC503096)によって10mg/mLに濃縮した(ロット番号JW20181203)。適切な量の濃縮された抗体試料をきれいな600μlのチューブ(3×チューブ)に移し、試料を液体窒素中で2分間凍結し、室温の水浴中で解凍した。同じ手順を2回または4回、または更に多い回数で繰り返した。
【0273】
各試料を上記で述べたようにSEC-HPLC及びSDS-PAGEによって分析した。注:1)4℃で保存した未処理の試料を分析した。2)SECランニングバッファーは、100mM NaH2PO4、150mM NaCl、pH6.8で自己調製した。
【0274】
DSFを用いた熱安定性分析の場合:製造業者の指示に従って、PCRプレート(Bio-Radプレート、カタログ番号HSP9655;Bio-Radメンブレン、カタログ番号MSB1001)でProteoStatアッセイキット(Enzo Life Sciences、カタログ番号ENZ-51027-K400)の各25μlの反応液に対して3μgの各処理済み試料を使用した。Bio-Rad PCR装置(C1000タッチ、CFX96リアルタイムシステム)の加熱プログラムは、以下の通りとした:25℃で2分間、10秒ごとに0.5℃ずつ、95℃まで昇温。蛍光吸光度をTexas Redモードで読み取った。Tm値は-dF/dTの最低点に関連している。
【0275】
表4にSEC分析を示した。表5にDSF分析を示した。SEC分析は、最大5サイクルの凍結/解凍処理後のSEC曲線でHFB10-1E1hG1の有意な変化が観察されなかったことを示した。DSF分析は、HFB10-1E1hG1のTm値が同じ処理後に有意に変化しなかったことを示し、HFB10-1E1hG1がこのような処理条件下で良好な安定性を有することを示した。
【表5】
【表6】
【0276】
図5DにSDS-PAGE分析を示す。最大5サイクルの凍結/解凍処理後、SDS-PAGEゲル上でHFB10-1E1hG1の有意な変化は観察されず、HFB10-1E1hG1がこのような処理条件下で良好な安定性を有することを示した。
【0277】
実施例7
アゴニスト抗体とOX-40との結合は、インビトロ及び臨床試験の両方で受容体の下方制御を引き起こし得ることが示されている(Wang et al.,Cancer Research 2019)。さらに、最初の注射後に患者で観察された標的発現のその後の喪失は、OX-40アゴニスト抗体の臨床試験における応用を制限し得ると仮定されている(Wang et al.,Cancer Research 2019)。PBMCから単離したエクスビボで活性化させたナイーブT細胞を用いることにより、本発明は、従来のアゴニスト抗体による処理と比較して、HFB10-1E1hG1による処理によるOX-40の減少が少ないことを示した。固有の結合エピトープ及び最適化された結合反応速度によって標的分解が最小に抑えられ、それによって、最初の注射後の標的発現の喪失が回避されることで、患者への連続薬物投与が可能となる。
【0278】
実施例8
HFB10-1E1hG1のヒトPK予測
カニクイザルのPKデータを2コンパートメントモデルに当てはめた。当てはめたPKプロファイル及び観察されたデータを
図6A~6Fに示す。当てはめの二乗平均平方根誤差は0.17であり、R
2は0.99であり、観察されたデータに対する良好な当てはめを示している。
【0279】
ヒトの2コンパートメントPKパラメータを、対応するサルのパラメータから指数規則(ROE)に基づいて予測した(Dong et.al,2011)。
【0280】
次いで、ヒトPKプロファイルを予測されたパラメータを用いてシミュレートした。
図7は、HFB10-1E1hG1の1mg/kgの単回静脈内注入の1時間後のヒトPKプロファイルの例を示す。
【0281】
hOX40 KIマウスにおけるHFB10-1E1hG1のPKデータに基づく最小ヒトPAD予測
hOX40 KIマウスにおける10mg/kgのHFB10-1E1hG1のCmax及びAUC(0~72h)値は、それぞれ160.5μg/mL及び2591μg/mL*hであった。線形PKを仮定すると、1mg/kgのHFB10-1E1hG1におけるCmax及びAUC(0~72h)値は、それぞれ16μg/mL及び259μg/mL*hである。
【0282】
1mg/kgのHFB10-1E1hG1における予測されたヒトCmax及びAUC(0~72h)値は、23.7μg/mL及び1213μg/mL*hである。ヒトにおける線形PKを仮定すると、最小PADは、0.68mg/kg(Cmaxに基づく)または0.21mg/kg(AUC(0~72h)に基づく)であると予測される。ヒト最小PADは、保守的とするために、0.21mg/kgまたは15mg(標準体重70kgと仮定する)の固定用量と仮定する。
【0283】
ヒトにおける投薬頻度の考慮
腫瘍微小環境におけるOX40のアゴニズム及びその後のエフェクターT細胞の増殖及び制御性T細胞の枯渇を最大とするには、OX40受容体を長期間にわたって飽和させないように注意を払わなければならない。OX40アゴニズム間に十分な時間を置くための1つの手法は、対象とするアゴニストの顕著な蓄積を避けることである。本発明者らは、2週に1回(Q2W)、3週に1回(Q3W)または4週に1回(Q4W)のスケジュールのHFB10-1E1hG1のPKプロファイルをシミュレートした。Q4WでのシミュレートされたPKプロファイルを
図8に示す。
【0284】
次に、本発明者らは、各スケジュールについて、定常状態のCmax、Cmin、及びCmax/Cmin比の蓄積指数を計算した。結果を表2に記載する。
【0285】
計算されたAI及びCmax/Cmin比に基づき、実際の考慮事項に加えて、Q4Wスケジュールでの15mgの初期用量をHFB10-1E1hG1のファーストインヒューマン試験のために選択した。
【0286】
HFB10-1E1hG1のヒトPKは、低いクリアランス速度(CL、0.084mL/h/kg)、低い分布容積(Vdss、0.084L/kg)、及び典型的なmAb半減期(T1/2、731時間、約30日)を有する典型的なIgG1モノクローナル抗体(mAb)と同様であると予測される。
【0287】
HFB10-1E1hG1の最小ヒトPADを、カニクイザルPKに対応する調整したヒトPK、hOX40 KIマウスにおけるMC38腫瘍有効性試験で得られた最小有効用量、及びhOX40 KIマウスにおけるHFB10-1E1hG1の曝露量データに基づいて予測した。KIマウスにおける曝露量及び有効性の関係に基づいて推定された、ヒトでの最小PADは0.21mg/kgであった。便宜上、同等の固定用量である15mgが、ヒトでの開始用量として推奨される。推奨される投与頻度は、異なる投与頻度での予測される定常状態PKプロファイルに基づいて、4週に1回(Q4W)である。
【0288】
ここで、本発明者らは、フローサイトメトリーを用いて、活性化された初代サルT細胞へのHFB10-1E1hG1の結合を評価した。
【0289】
CD4+T細胞を、Bmk1に結合するポジティブコントロールとした。HFB10-1E1hG1は、3人の異なるドナーから単離された活性化CD3/CD28初代サルT細胞(ロット番号200107、M20Z013009、及びM20Z025008)に結合することが示された。それぞれの結合アッセイについてMFI用量反応曲線から計算したEC50値は、それぞれ、0.09nM、0.19nM、及び0.17nMであった。
【0290】
ELISAアッセイの線形検出範囲は、実験Aでは125~1000pg/mlであり、実験Bでは125~2000pg/mlであった。LLOQは、両方の実験で18.75ng/mlであった。
【0291】
ここで、本発明者らは、Bmk1及びHFB10-1E1hG1の薬物動態を、1)10mg/kg及び1mg/kgでの単回静脈内投与によるWTマウス、及び2)10mg/kgでの単回投与によるhOX40-KIマウスにおいて評価した。時間に対するBmk1及びHFB10-1E1hG1の平均濃度を、
図7及び8に示されるように半対数プロットにプロットした。
【0292】
HFB10-1E1hG1及びBmk1の全身曝露が、すべての処理マウスで得られた。WTマウス(
図7)では、HFB10-1E1hG1とBmk1は、同様の用量依存的な線形クリアランス速度を示した。HFB10-1E1hG1とBmk1との用量比は1:10であった。HFB10-1E1hG1のCmax及びAUC(0~72h)の比は1:6.8及び1:7.9であり、Bmk1のこれらの比はそれぞれ、1:11.8及び1:8.6であった。
【0293】
1mg/kg及び10mg/kgでのHFB10-1E1hG1の血清クリアランス速度は、WTマウスでは0.71±0.34及び1.06±0.77ml/h/kgであり、hOX40-KIマウスでは、10mg/kgで3.09±0.27ml/h/kgであった。Bmk1 PKでも同様の血清クリアランス速度の差が観察された。1mg/kg及び10mg/kgでのBmk1の血清クリアランス速度は、野生型マウスで0.45±0.13及び0.62±0.10ml/h/kgであり、hOX40-KIマウスでは10mg/kgで7.24±2.24ml/h/kgであった。hOX40はhOX40-KIマウスでのみ発現されたことから、hOX40-KIマウスにおけるより高いHFB10-1E1hG1クリアランス速度は、おそらく標的介在性の薬物動態(TMDD)によるものと考えられる。
【0294】
HFB10-1E1hG1の1mg/kg及び10mg/kgでの定常分布容積(Vdss)値は、WTマウスでは0.21±0.03及び0.26±0.02L/kgであり、hOX40-KIマウスでは10mg/kgで0.14±0.01L/kgであった。同様に、1mg/kg及び10mg/kgでのBmk1のVdss値はWTマウスでは0.19±0.02及び0.21±0.01L/kgであり、hOX40-KIマウスでは10mg/kgでのVdss値は0.08±0.03L/kgであった。
【0295】
終末相半減期(T1/2)の明らかな差も、両抗体についてWTマウスとhOX40 KIマウスとの間で観察された。WTマウスでは、10mg/kg及び1mg/kgでのHFB10-1E1hG1のT1/2は、それぞれ、239.72±140.48時間及び274.52±193.12時間であり、10mg/kg及び1mg/kgでのBmk1の値は、それぞれ、252.04±51.82時間及び321.05±75.89時間であった。しかしながら、hOX40 KIマウスでは、10mg/kgでのT1/2値は大幅に短く、HFB10-1E1hG1について38.65±4.84時間、Bmk1については5.45±1.09時間であった。
【0296】
実施例9 薬力学試験
方法:30匹の雌のヒトOX40ノックインマウス(C57BL/6系バックグラウンド)の右脇腹にMC-38腫瘍細胞を皮下接種して腫瘍を発生させた。腫瘍接種の9日後、76~226mm3(平均腫瘍サイズ155mm3)の範囲の腫瘍サイズを有する20匹のマウスを選択し、それらの腫瘍体積に基づいて無作為に4群に割り当てた。各群5匹のマウスとした。各マウスに無作為化を行った日(0日目(D0)と定義)から4つの処理のうちの1つを投与した。4つの処理は、10mg/kgのアイソタイプコントロール、0.1mg/kgのHFB10-1E1hG1、1mg/kgのHFB10-1E1hG1、及び10mg/kgのHFB1-1E1hG1とした。いずれの処理も、D0、D3及びD7に腹腔内注射により投与した。腫瘍サイズ及び動物体重を、少なくとも週3回測定した。3回目の注射の6時間後、フローサイトメトリー(FCM)分析用の腫瘍試料を採取し、受容体占有率(RO)分析用の血液試料を採取し、さらなる分析を行うために血漿試料をHiFiBiO社に送付した。
【0297】
結果:HFB10-1E1hG1のPD効果を、MC-38腫瘍保有hOX40 KIマウスで試験した。血液及び腫瘍微小環境(主に腫瘍)の両方で、HFB10-1E1hG1によって、T細胞(主にCD4+T細胞)上の陽性割合におけるOX40発現量及びMFIが減少した。一方、HFB10-1E1hG1はTreg集団も有意に減少させた。腫瘍微小環境では、CD4+T細胞の減少は、主にTreg(CD25+FOXP3+細胞)の減少によって誘導され、CD4+T細胞(Ki67+細胞)の増殖は、CD69+T細胞の減少にともなって増加した。一方、PD1発現量は、腫瘍微小環境中のCD8+T細胞で減少した。これらの観察結果はいずれも、各処理群でHFB10-1E1hG1に用量依存的であった。これらを併せると、これらのデータは、HFB10-1E1hG1による処理がOX40シグナル伝達経路を活性化し、有効性試験において腫瘍微小環境で観察された持続的な免疫応答に寄与していることを示唆するものである。
【0298】
血液試料中のOX40発現量に対するHFB10-1E1hG1の効果を、HFB10-1E1hG1に対して非競合的であるマウス抗hOX40抗体(クローンACT35)を用いて分析した。CD4+、CD4+CD25+、及びCD11b+単球上の総OX40発現量を測定した(データ示さず)。HFB10-1E1hG1処理は、Tregを含むCD4+、及びCD4+CD25+T細胞上のOX40発現の有意な減少(陽性の割合及びMFIの両方)をもたらした。CD11b+細胞上のOX40発現量に変化は観察されなかった。
【0299】
HFB10-1E1hG1処理時の標的関与を評価するために、抗ヒトIgG(hIgG)をFCM分析で非競合的Ab ACT35と組み合わせて使用した。OX40+CD4+T細胞及びOX40+CD4+CD25+T細胞におけるhIgG+集団の割合は低かった。しかしながら、Tregを含むOX40+CD4+CD25+細胞上のhIgG+のMFIは、HFB10-1E1hG1に用量依存的な形で有意に増加した。
【0300】
OX40+CD11b+細胞では、アイソタイプ及び10mg/kgのHFB10-1EhG1処理群においてhIgG+シグナルの用量依存的な高レベルが観察され、hIgGがCD11b+細胞上のFcgRによって捕捉されたことを示唆した。
【0301】
腫瘍組織における浸潤性免疫細胞集団をフローサイトメトリー(FCM)により分析した。ここに例示するFCM分析グラフのすべてにおいて、
・G1:アイソタイプコントロール群、G2:0.1mg/kgのHFB10-1E1hG1処理群、G3:1mg/kgのHFB10-1E1hG1処理群、G4:10mg/kgのHFB10-1E1hG1処理群。
・各ドットは、個々の動物からのデータを表し、矩形のバーは、群平均を表し、エラーバーは、SEMを表す。
【0302】
T細胞(CD3+)、CD4
+T、CD8
+T細胞及びTreg(CD3
+CD4
+CD25
+Foxp3+)の割合を測定し、選択した結果を
図9及び10に示す。ナイーブT細胞(CD3
+CD44
-CD62L
+)、メモリーT細胞(CD3
+CD44
+CD62L
+)及びエフェクターT細胞(CD3
+CD44
+CD62L
-)の割合も測定した(データは示さず)。その結果、HFB10-1E1hG1(G3及びG4、G2なし)処理は、アイソタイプコントロール(G1)処理と比較して、CD4
+T細胞、Treg、ナイーブT細胞、及びナイーブCD4
+T細胞の割合を有意に減少させた。さらに、HFB10-1E1hG1処理はいずれも、コントロール処理と比較して、メモリーT細胞及びメモリーCD4
+T細胞の割合を有意に減少させた。すべてのHFB10-1E1hG1処理群でメモリーCD8
+T細胞の割合が減少したが、G2及びG3処理のみが統計的に有意であった。処理群間で、T細胞(CD3
+)、CD8
+T細胞及びエフェクターT細胞集団に有意な変化は観察されなかった。
【0303】
腫瘍におけるOX40の発現、異なるT細胞サブタイプの活性化及び増殖に対するHFB10-1EhG1処理の効果を調べた。総OX40発現量に対するHFB10-1E1hG1の効果を、HFB10-1E1hG1に対して非競合的であるマウス抗hOX40抗体(クローンACT35)を用いて分析した。CD3+、CD4+、CD8+T細胞、及びTreg(CD4+CD25+FoxP3+)上のOX40発現量を測定した(データは示さず)。アイソタイプコントロール群(G1)と比較して、HFB10-1E1hG1処理は、CD3+及びCD4CDT細胞上のOX40発現量を、割合及びMFIの両方で有意に減少させた(左パネルにOX40発現の陽性割合、及び右パネルにOX40のMFI)。また、HFB10-1E1hG1処理は、OX40発現量をMFIで有意に減少させたが、Tregにおける割合では有意に減少させなかった(データは示さず)。さらに、HFB10-1E1hG1処理は、CD8+T細胞における割合でOX40発現量を有意に減少させたが、MFIでは有意に減少させなかった。
【0304】
アイソタイプコントロール群(G1)と比較して、HFB10-1E1hG1の処理(G3及びG4)は、CD69
+CD4
+T細胞及びPD-1
+CD8
+T細胞の割合を有意に減少させ(
図12)、増殖(Ki67
+)CD4
+T細胞の割合を増加させた(
図11)。
【0305】
上記の観察結果は、HFB10-1E1hG1に用量依存的である。
【0306】
実施例10 エピトープマッピング
アゴニストモノクローナル抗OX40抗体としてHFB301001が開発されている。表1に、HFB301001のCDR、VH/VL及びHC/LCの配列を示す。
【0307】
選択したこれまでに公開されている抗体及びOX40リガンドの結合エピトープと比較して異なる抗OX40抗体のOX40結合エピトープを探索するための競合ELISAアッセイを用いたエピトープビニングによって結合エピトープの特徴付けを行った。簡単に述べると、プレートを1μg/mlの抗OX40捕捉抗体、OX40L、またはアイソタイプコントロール50μlでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートをPBST中1%BSAで室温にて2時間ブロッキングした。次に、50μl/ウェルのビオチン-OX40(ロット番号160921111、ChemPartner;東京、日本)を加えた。ビオチン-OX40は、0.5μg/mLからの8点希釈を行うために1~3倍の希釈濃度で使用し、37℃で1時間インキュベートした。HRP結合ストレプトアビジン(1/5000希釈率、50ul/ウェル)を加え、37℃で1時間インキュベートし、次いで100μl/ウェルのTMBを加え、室温で15分間インキュベートした。50μl/ウェルのELISA停止溶液を加えて反応を停止した。OD値を、Thermo Multiscan sky分光光度計を用いて450nmの波長で測定した。
【0308】
結合エピトープのより詳細な分解能は、水素重水素交換質量分析を用いて得た。簡単に述べると、H/D交換エピトープマッピングに質量分析(HDX-MS)を用いて、HFB301001と相互作用するOX40(組換えヒトOX40)のアミノ酸残基を決定した。H/D交換法の一般的な説明は、例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259;及びEngen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aに記載されている。Hisタグ付きOX40抗原タンパク質は、Sinobiological(カタログ番号10481-H08H;Sinobiological,Inc.,北京、中国)より購入した。ペプチド質量を測定するため、Novabioassays LLCにより提供される統合型HDX/MSプラットフォーム及びThermo Q Exactive HF質量分析計でHDX-MS実験を行った。4.5μLの全試料を、75μLの重水素酸化物標識緩衝液(1×PBS、pD7.4)と20℃で300秒間、600秒間、1800秒間、及び3600秒間インキュベートした。水素/重水素交換反応を、80μLの4M塩酸グアニジン、0.85M TCEP緩衝液(最終pH値2.5)を添加することによってクエンチした。その後、クエンチした各試料にオンカラムペプシン/プロテアーゼXIII消化を行った後、LC-MS分析を行った。質量スペクトルデータは、MSモードのみで記録した。ペプシン/プロテアーゼXIII消化、LC-MS及びデータ分析。HDX標識の後、80μLの4M塩酸グアニジン、0.85M TCEP緩衝液(最終pH2.5)を加え、20℃で3分間インキュベートすることによって各試料を変性させた。次いで、混合物に、内部充填ペプシン/プロテアーゼXIII(w/w、1:3)カラムを使用して、オンカラムペプシン/プロテアーゼXIII消化を行った。得られたペプチドを、Q Exactive(商標)に接続したWaters Acquity UPLCとハイブリッド四重極Orbitrap質量分析計(Thermo、Waltham、MA)とから構成されたUPLC-MSシステムを用いて分析した。2%~33%までの溶媒B(0.2%ギ酸を含むアセトニトリル)の20.5分の勾配を用いて50×1mm C8カラム上でペプチドを分離した。溶媒Aは、0.1%ギ酸水溶液とした。注入バルブ、酵素カラム及び関連する接続管を15℃に保たれた冷却ボックス内に配置した。第2の開閉弁、C8カラム及び関連する接続ステンレス鋼管継手を、-6℃に保たれた冷蔵リサイクルボックス内に配置した。ペプチド同定は、非特異的酵素消化及びヒトグリコシル化を共通変数として用いた改変Byonics(Protein Metrics、San Carlos、CA)ソフトウェアを用いて、HFB301001配列のMS/MSデータを検索することによって行った。前駆体イオン及び生成物イオンのマストレランスは、それぞれ10ppm及び0.02Daであった。H/D交換MSデータを分析するため、HDX WorkBenchソフトウェア(バージョン3.3)を使用して生MSデータを処理した(J.Am.Soc.Mass Spectrom.2012,23(9),1512-1521)。重水素化ペプチドとその非標識型(t0)との間の平均質量差を用いて重水素吸収レベルを計算した。単一の抗原試料と抗原抗体複合体試料中の同じペプチドの重水素吸収レベルを比較した。5%より大きい相対差は有意とみなした。エピトープ領域は、顕著な重水素吸収を有する複数の重複ペプチドとして定義された。hOX40.his単独及びhOX40-his-HFB301001複合体から、hOX40の70%の配列カバレッジを表す、hOX40-his由来の合計46個のペプチドが同定された(
図13)。5%を超えるD吸光度のパーセント差を示したペプチドは、有意に保護されていると定義した。hOX40-hisでは、アミノ酸56~74:CSRSQNTVCRPCGPGFYNDに対応する領域のポリペプチドは、HFB301001によって有意に保護されているエピトープとみなした。
図13に示されるように、エピトープ領域を、Compaan and Hymowitz.Structure.2006,14(8),1321-30を出典とするOX40/OX40L複合体の3Dモデルにマッピングした。HFB301001のエピトープは、配列番号33のアミノ酸56~74:CSRSQNTVCRPCGPGFYND(配列番号34)として定義された。
【0309】
実施例11 OX40リガンドのアゴニスト活性
OX40リガンド(OX40L)のアゴニスト活性を評価するために、OX40バイオアッセイキット(Promega、カタログ番号CS197704、Promega;Madison、WI)を製造者の指示に従って使用した。このアッセイでは、ヒトOX40を発現する遺伝子操作されたJurkat T細胞株(OX40エフェクター細胞)及び応答エレメントによって誘導されるルシフェラーゼレポーター遺伝子を使用した。簡単に述べると、OX40エフェクター細胞をアッセイ緩衝液中で使用前日に培養した。アッセイ当日に、OX40Lの連続希釈物をプレートに加えた。5時間の誘導後、Bio-Glo Luciferase Assay Systemを用いて生物発光シグナルを定量した。結果は、OX40LがOX40エフェクター細胞の生物発光シグナルを用量依存的に誘導したことを示した(
図14A)。
【0310】
OX40-Lアゴニスト活性に対する抗OX40抗体の効果を調べるため、OX40エフェクター細胞を、10nMのOX40Lの存在下で、連続希釈した抗OX40抗体(HFB301001、ベンチマーク1またはベンチマーク2)とインキュベートした。ベンチマーク1及びベンチマーク2は、これまでに公開されている抗OX40抗体であり、抗体エピトープがOX40の細胞膜から最も遠く離れていることから選択され、他のベンチマークは、OX40のリガンド結合ポケットの近くに結合することが記載されている。誘導の5時間後にBio-Glo Luciferase Assay Systemを使用して生体発光シグナルを定量した。ベンチマーク1及びベンチマーク2はいずれもOX40Lのアゴニスト効果を用量依存的に遮断したが、HFB301001は遮断しなかった(
図14B)。結果は、HFB301001が、ベンチマーク1及びベンチマーク2と比較してOX40上の異なる結合部位を認識し、その結合部位がOX40Lのアゴニスト機能を妨げないことを示した。
【0311】
実施例12 OX40受容体調節
OX40受容体への抗OX40抗体の結合の調節効果を調べるため、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)由来のCD4
+T細胞を、Miltenyi Human CD4
+T Isolation Kit(カタログ番号130-096-533、Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)を用いて単離した。初代CD4
+T細胞を、連続希釈したベンチマーク抗体またはHFB301001とインキュベートし、0.5μg/mLのプレート結合抗CD3抗体(クローンOKT3、eBioscience、カタログ番号16-0037-81)及び2μg/mLの可溶性抗CD28抗体(クローンCD28.2、eBioscience、カタログ番号16-0289-81、eBioscience,Inc.,San Diego,CA)により同時に活性化した。3日間のインキュベーション後、総表面OX40発現量を、抗OX40抗体による染色によって検出した(PerCP-Cy5.5、クローンACT35、Thermo Fisher、カタログ番号17-1347-42)。アイソタイプコントロールと比較して、HFB301001は、細胞表面上の安定なOX40発現を増加させた(
図15A)。すべてのベンチマーク処理群で、OX40の表面発現は、抗体濃度の増加としてU字形を示した。すなわち、OX40のレベルは、最初に減少し、約1nMでその最低点に達した後、再び増加した。
【0312】
実施例13 結合親和性の評価
バイオフィルム層干渉(BLI)実験をOctet QKe装置で行って、HFB301001とヒトOX40タンパク質との間で形成された組換え二量体(mFcで標識)の結合親和性を決定した。異なる濃度の組換えヒトOX40タンパク質を、解離期の後、pH7.4及び25℃で、センサー捕捉した試験抗体及びアイソタイプコントロールと混合した。結合シグナルの変化を記録し、結合パラメータの動態解析を、物質移動制限を用いた1:1モデルを用いて決定した。ランニングバッファー溶液を、0.1%BSA及び0.1%Tween20を含有するPBS、pH7.4で調製した。動力学的結合実験に先立って、抗ヒトFc捕捉センサーをランニングバッファーですすぎ、機器を25℃に予め温めた。試験抗体及びアイソタイプコントロール抗体を、ランニングバッファーで200nMに希釈した。OX40-mFcタンパク質をランニングバッファーで250、125、62.5、31.25、及び15.125nMに希釈した。OX40タンパク質とその抗体との結合を、pH7.4及び25℃のランニングバッファーを用いて2連で行った。簡単に述べると、最初に、抗ヒトFc捕捉センサーをランニングバッファーに300秒間浸漬して、第1のベースラインを設定した。次いで、センサーを200nMの試験抗体溶液と600秒間混合して抗体をロードした。センサーを再びランニングバッファーに300秒間浸漬して第2のベースラインを設定した後、異なる濃度のOX40抗原と900秒間会合させた。その後、センサーをランニングバッファーにさらに900秒間浸漬することによって解離を行った。並行して、1つのセンサーを参照用として選択し、ローディング、会合、及び解離のすべての工程をランニングバッファー中で行った。別のセンサーをネガティブコントロール実験として選択し、HFB-TT-hG1アイソタイプコントロール抗体をローディング工程に使用し、500nMのOX40-mFcタンパク質を会合工程に使用した。センサーグラムを、Fortebioデータ解析ソフトウェアバージョン8.2(ForteBio、Fremont、CA)によって分析した。最初に、シグナルをネガティブコントロール実験から引いてベースラインと比較した。異なる抗原濃度を有するこれらの特異的センサーグラムを1:1の結合モデルに全体的に当てはめることによって動力学パラメータを得た。解離速度定数と会合速度定数との比に基づいて平衡解離定数(KD)を計算した(KD=kd/ka)。HFB301001とヒトOX40タンパク質との間の相互作用の動力学的結合パラメータを、BLI技術を用いて決定した。このアッセイは、特定の濃度範囲のOX40タンパク質と、捕捉されたHFB10-1E1及び他の抗体との相互作用を25℃及びpH7.4で測定するものである。以下の結合親和性表に、計算された動力学的結合パラメータをまとめる。HFB301001は、組換えヒトOX40(hOX40.mFc)に対して高い親和性を有し、25℃及びpH7.4のKD値は4.5nMである。他の2つの抗体はより遅い解離速度を示し、ベンチマーク1では0.49nM、ベンチマーク2では0.58nMとより小さいKD値であった。HFB301001とヒトOX40-mFcとの間の相互作用の動力学的結合パラメータをBLI技術によって25℃及びpH7.4で決定した。HFB301001は、他の試験抗体と比較して大幅に高い親和性及びより速い解離速度で、組換えヒトOX40-mFcタンパク質と特異的に結合した。
【表7】
【0313】
実施例14 インビボ腫瘍モデル
ヒトOX40(hOX40)ノックイン(KI)マウスでMC-38マウス結腸癌モデルを用いた(カタログ番号NM-HU-00041、Shanghai Model Organisms Center,Inc.)。MC-38マウス結腸直腸癌モデルにおけるHFB301001の薬力学(PD)効果を評価するため、45匹の雌性hOX40 KIマウスの右体側にMC-38腫瘍細胞(マウス1匹当たり8×105細胞)を皮下接種して腫瘍を発生させた。腫瘍接種の8日後、104~243mm3(平均腫瘍サイズ181mm3)の範囲の腫瘍サイズを有する12匹のマウスを選択し、それらの腫瘍体積に基づいて各群4匹のマウスからなる3つの群に無作為に分けた。各処理群に、10mg/kgの抗OX40抗体HFB301001または抗OX40抗体ベンチマーク1またはIgG1アイソタイプコントロールの注射を投与した。すべての処理は、無作為な群分けの当日(D0)に腹腔内(i.p)投与した。
【0314】
10mg/kgの抗OX40抗体の3回目の注射の24時間後にCD4
+T細胞上のOX40発現量をフローサイトメトリーによって測定した。ベンチマーク1は、血中のCD4
+T細胞上のOX40発現の有意な減少を誘導したがHFB301001は誘導しなかった(
図15B)。
【0315】
MC-38マウス結腸直腸癌モデルにおけるHFB301001のインビボ抗腫瘍活性を評価するため、26匹の雌性hOX40 KIマウスの右体側にMC-38腫瘍細胞(マウス1匹当たり8×10
5細胞)を皮下接種して腫瘍を発生させた。腫瘍接種の7日後、101~175mm3(平均腫瘍サイズ133mm
3)の範囲の腫瘍サイズを有する20匹のマウスを選択し、それらの腫瘍体積に基づいて各群5匹のマウスからなる4つの群に無作為に分けた。4つの処理群は以下とした:1mg/kg及び0.1mg/kgの用量の抗OX40抗体HFB301001、1mg/kgの用量の抗OX40抗体ベンチマーク1、及び10mg/kgの用量のIgG1アイソタイプコントロール。いずれの処理も、D0、D3、D6、D10、及びD13に腹腔内に投与した。矢印は処理時点を表し、エラーバーは平均の標準誤差を表し、有意性レベルは最後の時点で一元配置ANOVAによって計算した(*:p値<0.05、**:p値<0.01)。腫瘍直径(幅及び長さ)によって表される腫瘍サイズを、無作為な群分け後のD0、D3、D6、D10、D12及びD15にデジタルキャリパーによって測定した。
図16は、コントロールと比較してHFB301001が腫瘍増殖を有意に阻害し、ベンチマーク1よりも高い抗腫瘍増殖効果を有することを示唆した。
【0316】
MC-38マウス結腸直腸癌モデルにおけるHFB301001のインビボ抗腫瘍活性を評価するため、80匹のhOX40 KIマウスの右体側にMC-38腫瘍細胞(マウス1匹当たり8×10
5細胞)を皮下接種して腫瘍を発生させた。腫瘍接種の7日後、42~147mm
3(平均腫瘍サイズ82mm3)の範囲の腫瘍サイズを有する65匹のマウスを選択し、それらの腫瘍体積に基づいて各群10匹のマウスからなる(5匹のみのマウスからなるPBS群を除く)7つの処理群に無作為に分けた。無作為な群分けの当日(0日目(D0)と定義)に処理を開始した。7つの処理群は以下とした:10mg/kg、1mg/kg及び0.1mg/kgの用量の抗OX40抗体HFB301001、10mg/kg及び1mg/kgの用量の抗OX40抗体ベンチマーク1、10mg/kgの用量のIgG1アイソタイプコントロール、及びPBS。いずれの処理も、D0、D3、D6、D10、及びD13に腹腔内に投与した。治療開始から61日目まで、腫瘍サイズ及び動物の体重を少なくとも週3回測定した。有意水準は、ログランク検定(*:p値<0.05、**:p値<0.01)によって計算した。無作為な群分け後の60日間にわたって生存率をモニターした。10mg/kgのHFB301001で処理したマウスの生存率は、10mg/kgのベンチマーク1で処理したマウスの生存率よりも有意に高かった(
図17)。
【0317】
抗OX40抗体HFB301001の有効性をさらに調べるため、抗OX40抗体による3回目の処理の24時間後に腫瘍T細胞によって誘導される変化を、フローサイトメトリーによって測定した。腫瘍接種の8日後、104~243mm
3(平均腫瘍サイズ181mm
3)の腫瘍サイズを有する12匹のマウスを選択し、それらの腫瘍体積に基づいて各群4匹のマウスからなる3つの群に無作為に分けた。HFB301001処理は、CD4
+T細胞及びCD8
+T細胞の両方において、KI67
+細胞を有意に増加させ(
図18A~
図18B)、PD-1+細胞を減少させた(
図18C~
図18D)。さらに、ベンチマーク及びHFB301001処理の両方が、腫瘍Tregの有意な減少をもたらし、HFB301001群における減少がより顕著であった(
図18E)。
【0318】
実施例15 HFB301001は、OX40シグナル伝達を効果的に誘導する
操作されたJurkat T細胞(NF-kB-Luc2/OX40レポーターJurkat細胞としても知られ、Luc2レポーターが、OX40活性化の際にNF-kB経路によって活性化されるプロモーターの転写制御下にあるもの。実施例3.1参照)をOX40エフェクター細胞として用い、抗体架橋を与えるためにFcγRIIbを発現するCHO-K1細胞を用いた、レポーター細胞ベースの実験において、HFB301001(HFB10-1E1hG1)は、一貫した用量依存性のアゴニスト活性を示した。
【0319】
HFB301001アゴニスト活性は、EC50値に基づいてベンチマーク1よりも効力が低かったが、同様のE
max値を有した(
図19参照)。実験をさらに2回繰り返したところ、同様の結果が得られた。データは、HFB301001がOX40シグナル伝達を効果的に誘導したことを示した。
【0320】
実施例16 OX40リガンドに応答したOX40シグナル伝達に対するHFB301001の効果
FcγRIIb発現細胞の非存在下でのOX40レポーター細胞(NF-kB-Luc2/OX40レポーターJurkat細胞)を使用して、OX40抗体が、OX40+細胞におけるOX40L結合及びシグナル伝達を遮断するかどうかを研究した。簡単に述べると、OX40レポーター細胞を、一定の濃度範囲の抗体及びOX40Lとインキュベートし、ルシフェラーゼシグナルをOX40シグナル伝達の読み取りとした。
【0321】
ベンチマーク1及びベンチマーク2抗体は、異なるOX40L濃度でOX40L誘導OX40シグナル伝達に対する用量依存的な阻害効果を示した(
図20C及び20Dを参照)。しかしながら、HFB301001(HFB10-1E1hG1)は、OX40レポーター細胞において、特にOX40Lの濃度80nMでは、OX40Lによって誘導されるシグナル伝達に対する阻害はわずかであるか、またはまったくみられなかった(
図20A)。
【0322】
この実験は、HFB301001が内因性OX40Lシグナル伝達を妨げないことを示唆するものである。これらのデータは、結合エピトープデータと一致している。内因性OX40Lシグナル伝達は、免疫ネットワークの調節において不可欠な役割を果たしているものと考えられ、これをインタクトに保つことは、リガンドをブロックする同様の抗体と比較して、HFB301001の利点を表すと考えられる。
【0323】
実施例17 ヒトCD4
+CD3
+T細胞へのHFB301001の結合
ヒトT細胞の活性化を、CD3/CD28 Dynabeadsを用いて予め活性化された2人のヒトドナーの末梢血単核細胞(hPBMC)から単離されたCD3
+T細胞を用いて評価した。CD3/CD28により誘導されるOX40は、主にCD3
+CD4
+T細胞上で発現した。HFB301001は、各ドナー由来の活性化された初代ヒトCD4
+CD3
+T細胞に、それぞれ0.65及び1.36nMのEC50値で結合した(
図21B及び21Dを参照)。
【0324】
HFB301001は、CD3/CD28抗体を用いて予め活性化したサルPBMCから単離した初代CD4+T細胞に対して同様の結合を示し、3つの独立した実験からのMFI用量反応曲線より計算した結合のEC50値は、0.09~0.19nMの範囲であった(データは示さず)。
【0325】
これらのデータは、HFB301001が活性化されたヒトまたはサルCD4+T細胞に結合することを示す。サルT細胞に対する結合親和性がより高いということは、サルにおける毒物試験によって、ヒトにおける潜在的な安全性の問題が過小評価されている可能性は低いことを示唆するものである。
【0326】
実施例18 HFB301001による処理後の初代CD4+T細胞におけるOX40発現
活性化されたヒトT細胞に対するOX40モノクローナル抗体の効果を調べた。2人の異なるドナーからT細胞を単離した(#191223-B及び#190061)。T細胞上のOX40発現量を、抗OX40抗体(クローンACT35)で染色することによって決定した。
【0327】
HFB301001は、CD3/CD28刺激末梢ヒトCD4
+T細胞上に発現されるOX40の総表面レベルを用量依存的に増加させ、およそ1nM濃度でプラトーに達した。これに対して、他の抗OX40抗体(いずれも臨床開発段階。Bmk1で表される)は、これらのCD4
+T細胞上の表面OX40レベルの減少を誘導した(
図22A及び22B参照)。
【0328】
OX40抗体によるT細胞上のOX40レベルの減少は、OX40アゴニスト抗体が最適な臨床的ベネフィットに達する可能性を低下させる可能性が高い。この効果はHFB301001では観察されないことから、より良好な臨床的有効性が予想されると考えられる。
【0329】
実施例19 T細胞機能に対するOX40抗体の効果
ヒトT細胞機能に対するOX40モノクローナル抗体の効果を、抗OX40抗体を超抗原Staphylococcus aureusエンテロトキシンA(SEA)の存在下で試験するインビトロでの共刺激活性実験で調べた。ヒトIL-2を、70時間の刺激後に培養上清中で定量した。
【0330】
特に1ng/mL(SEA)を使用した場合、ベンチマーク1(Bmk1)抗体では明確な用量依存性は認められなかった(
図23B)。より低いSEAレベルでは、4人のドナー由来のPBMCのすべてで、Bmk1抗体の濃度が高くなるほどIL-2の産生レベルは低くなった。
【0331】
これに対して、HFB301001(0.5~50nM)は、SEA(1または10ng/mL)によって刺激されたヒトPBMCにおけるサイトカインIL-2レベルを用量依存的に増加させた(
図23A及び23B)。この実験を、別の4人のドナー由来のPBMCを用いて1回繰り返したところ、同様の結果が得られた(データは示さず)。
【0332】
いずれの特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、HFB301001のより良好な用量依存性は、受容体の下方制御がみられず、内因性リガンドがブロックされないことに少なくとも一部拠るものと考えられる。
【0333】
これらのデータは、HFB301001が用量依存的にT細胞活性化を増強することを示すものであり、HFB301001が、臨床開発段階にある他のOX40モノクローナル抗体と比較して、臨床現場における最適な有効性を実現する可能性が高いことを示唆するものである。
【0334】
実施例20 抗体依存性細胞傷害(ADCC)に対するHFB301001の効果
T-regの枯渇は、OX40アゴニスト抗体による抗腫瘍有効性の潜在的メカニズムの1つであることから、CD16-NF-AT-LucレポーターJurkat細胞を、標的細胞(hOX40をトランスフェクトしたExpi293F細胞)及びOX40モノクローナル抗体の存在下で使用して、これらの抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)の可能性を調べた。
【0335】
HFB301001は、hOX40発現標的細胞の存在下で、エフェクター細胞にCD16シグナル伝達(潜在的なADCC活性を表す)を用量依存的に誘導した。エフェクターと標的細胞との比(E:T)=1:1、3:1、6:1、及び12:1で、それぞれ1.2、0.7、0.5、及び0.3nMのEC50値が得られた(表1)。
【0336】
Bmk1も、E:T比=1:1、3:1及び6:1でそれぞれ、2、0.8及び0.5nMのEC50値で用量依存的にADCC活性を示したが、IgG2アイソタイプであるBmk2は、予想されたような検出可能なADCC活性を示さなかった(表1)。
【0337】
反復実験において、CD16-NF-AT-LucレポーターJurkat細胞にOX40抗体によって誘導される潜在的なADCC活性を、E:T比=3:1及び6:1で試験したところ、同様の結果を得た(データは示さず)。
【0338】
これらのデータは、HFB301001がADCCエフェクター機能を維持することを示した。
【表8】
【0339】
実施例21 サイトカイン放出に対するHFB301001の効果
サイトカイン放出に対するHFB301001の効果を、6人の異なるドナー由来の新鮮なhPBMCを使用し、抗体を可溶性及びプレート結合フォーマットの両方で使用してインビトロで評価した。
【0340】
異なる濃度(3、30または300μg/ml)のHFB301001または培地/コントロール抗体/マイトジェンを、96ウェルU底プレートに4℃で一晩コーティングするか、または新たに加えた。100μlの新鮮なPBMC懸濁液(2×105細胞/ウェル)を各ウェルに加えた。各プレートを37℃、5%CO2のインキュベーター中で48時間インキュベートした。上清を各ウェルから回収し、分析前に-80℃で保存した。培養上清中の異なるサイトカインの濃度を、製造者の指示に従って、BDTM CBA Human Th1/Th2 Cytokine Kit II(IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNFα及びIFΝγ)を用いて決定した。
【0341】
可溶性フォーマットで試験した場合、すべてのドナー由来のPBMC中のすべての分析物についてネガティブコントロールのブランク(完全培地のみ)またはhIgG1アイソタイプコントロールで検出されたシグナルは最小であったのに対して、5μg/mlのポジティブコントロールPHAまたは10μg/mlのLPSは、すべてまたはほとんどのドナーのPBMC中のIL-2(PHAのみ)、IL-4(PHAのみ)、IL-6、IL-10、TNFα(PHAのみ)及びIFΝγ(PHAのみ)の放出の有意な増加を誘導した。ネガティブコントロールと同様、6人のドナーすべてのPBMC中、3、30または300μg/mlの濃度のHFB301001の存在下で検出されたシグナルは最小であり、可溶性フォーマットのインビトロサイトカイン放出アッセイで試験した濃度でのHFB301001誘導性サイトカイン放出のリスクが低いことを示唆した。
【0342】
プレート結合フォーマットで試験した場合、ブランクコントロールで検出されたシグナルは最小であった。しかしながら、hIgG1アイソタイプコントロールの存在下では、IL-4、IL-6及びTNFαがすべてのドナーのPBMCで誘導されたが、IL-2、IL-10またはIFNγは誘導されず、これは、hIgG1によるFc受容体が関与していることに起因すると考えられる。2つの抗hCD3抗体(10μg/mlのOKT3及び5μg/mlのUCHT1)をポジティブコントロールとして使用したところ、すべてまたはほとんどのドナーのPBMCでブランクコントロールと比較して顕著に高いサイトカイン放出が誘導された。3μg/mlの濃度のHFB301001の存在下では、6人のドナーすべてまたはほとんどのPBMCで検出されたシグナルが最小であったのに対して、30または300μg/mlのHFB301001の存在下では用量依存的にIL-4、IL-6及びTNFαの放出が検出された。重要な点として、300μg/mlのHFB301001によって誘導されたサイトカイン放出のレベル及びパターンは、同じ濃度のhIgG1アイソタイプコントロールと比較して同等またはより低いレベルのサイトカイン放出を示し、プレート結合フォーマットのインビトロサイトカイン放出アッセイにおいてHFB301001誘導サイトカイン放出のリスクはアイソタイプコントロールhIgG1と比較して増加しないことを示唆した。
【0343】
現在の実験条件下では、3~300μg/ml濃度の可溶性HFB301001は、6人のドナーすべてのPBMCに有意なサイトカイン放出を誘導しなかったが、300μg/mlのプレート結合HFB301001は、同じ濃度のhIgG1アイソタイプコントロールと比較して同等またはより低いレベルのサイトカイン放出を示した。
【0344】
実施例22 HFB301001の毒物試験
今日までに行われているすべてのマウス試験において、HFB301001は、治療関連毒性の徴候を伴うことなく十分に忍容されている。hOX40ノックインマウスにおいて、WTマウスよりも高いHFB301001のクリアランス及びより短いT1/2が観察され、標的介在性の薬物動態の可能性を示唆している。
【0345】
カニクイザルにおける単回用量毒性試験において、HFB301001は、すべての用量レベルで十分に忍容され、100mg/kgの最も高い用量で明らかな所見は観察されず、100mg/kgが最大耐用量(MTD)より低いことを示唆した。HFB301001への全身曝露では、性別関連の差異は観察されなかった。AUC0~t及びCend値は、1~100mg/kgの範囲で用量比例的に増加した。HFB301001は、典型的なmAbの薬物動態プロファイルを示した。活性化部分トロンボプラスチン時間及びプロトロンビン時間の増加及び総ビリルビン濃度の増加が、投与前と比較して100mg/kgで1匹の雌で観察され、総タンパク質濃度のある程度の増加もすべての動物で認められたが、これらの変化は、同時コントロール群が用いられておらず、用量応答関係が観察されなかったことから、試験対象物関連の効果ではない可能性がある。同様に、HFB301001によって誘導された低い抗KLH免疫グロブリン力価の曖昧な結果は、これまでのコントロール値の下限値以下であり、同時コントロール群が用いられなかったことから試験対象物関連の効果ではない可能性がある。
【0346】
反復投与において、GLP毒物試験を、週1回1時間の静脈内注入を4週間投与した後、4週間の回復を行った雄雌のカニクイザルで行った。潜在的な抗薬物抗体(ADA)が、10mg/kgの2匹の雄で投薬期間の終了時に検出され、1匹でHFB301001への曝露の有意な減少が誘導された。投与期間の終了時に他の動物でADAは検出されなかった。HFB301001の週1回投与は、すべての動物で十分に忍容され、毒性の関連する徴候を誘導しなかった。したがって、本試験の実験条件下で、HFB301001の無有害作用量(NOAEL)は、両方の性別で試験した最高用量である100mg/kgと考えられ、投薬期間終了時の雄及び雌の平均AUClastである380500μg・h/mLに相当する。
【0347】
以上をまとめると、HFB301001は、100mg/kgの最高用量以下の用量ですべてのマウス試験、またはNHP非GLP単回投与及び1ヶ月反復投与GLP毒性試験で有意な毒性所見を誘導しなかった。HFB301001は、提唱されるFIH開始用量(5mgの一定の毎月投薬量)で幅広い安全マージン(MOS)を有する。
【0348】
参考文献
Wang,R.,Gao,C.,Raymond,M.,Dito,G.,Kabbabe,D.,Shao,X.,Hilt,E.,Sun,Y.,Pak,I.,Gutierrez,M.,Melero,I.,Spreafico,A.,Carvajal,R.,Ong,M.,Olszanski,A.,Milburn,C.,Thudium,K.,Yang,Z.,Feng,Y.,Fracasso,P.,Korman,A.,Aanur,P.,Huang,S.,Quigley,M.(2019).An Integrative Approach to Inform Optimal Administration of OX40 Agonist Antibodies in Patients with Advanced Solid Tumors,Clinical Cancer Research,dx.doi.org/10.1158/1078-0432.CCR-19-0526.
【0349】
以上、本発明の対象について記載したが、これをさまざまな形で改変または変更することが可能であることは明白であろう。かかる改変及び変更は、本発明の対象の趣旨及び範囲からの逸脱とは見なされず、すべてのかかる改変及び変更は、以下の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【表9-5】
【表9-6】
【表9-7】
【表9-8】
【表9-9】
【表9-10】
【表9-11】
【表9-12】
【配列表】
【国際調査報告】