(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】CD47に特異的なヒト化抗体およびそれを含むCD47関連疾患の予防または治療用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240717BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240717BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240717BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240717BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240717BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580897
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2021018466
(87)【国際公開番号】W WO2023277281
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0085561
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0173465
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521533463
【氏名又は名称】イノベイション バイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】InnoBation Bio Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム ソン ク
(72)【発明者】
【氏名】キム ギ テ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085CC02
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、CD47に特異的なヒト化抗体およびそれを含むCD47関連疾患の予防または治療用医薬組成物に関し、より詳細には、CD47に特異的なヒト化抗体、上記ヒト化抗体を含むCD47を過剰発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物に関する。
本発明では、CD47に結合する抗体(3A5抗体)を用いて、ヒト化抗体16種を製造し、上記ヒト化抗CD47抗体はCD47抗原と特異的に結合することを確認した。
また、本発明のヒト化抗CD47抗体は、CD47-SIRPα結合を遮断するだけでなく、CD47を過剰発現する細胞と結合してマクロファージによるマクロファージ作用を促進し、CD47を発現する腫瘍の成長を抑制することができるので、CD47の過剰発現による免疫反応が抑制される疾患または腫瘍の予防または治療に適用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 配列番号11のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号12のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(2) 配列番号17のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号18のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(3) 配列番号23のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号24のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(4) 配列番号29のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号30のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(5) 配列番号35のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号36のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(6) 配列番号41のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号42のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(7) 配列番号47のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号48のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(8) 配列番号53のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号54のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(9) 配列番号59のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号60のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(10) 配列番号65のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号66のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(11) 配列番号71のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号72のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(12) 配列番号77のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号78のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(13) 配列番号83のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号84のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(14) 配列番号89のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号90のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(15) 配列番号95のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号96のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;または
(16) 配列番号101のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号102のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;を含む、CD47に特異的に結合するヒト化抗体又はその断片。
【請求項2】
請求項1に記載のCD47に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1記載のCD47に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項4】
請求項3記載のベクターで形質転換されたCD47に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片を産生する組換え細胞。
【請求項5】
請求項1記載のCD47に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片を含む、CD47を過剰発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物。
【請求項6】
請求項5において、上記組成物に含まれるCD47に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片は、CD47がシグナル調節タンパク質α(SIRPα)と相互作用することを防止したり、CD47過剰発現細胞に対するマクロファージ媒介の食作用を促進することを特徴とする、CD47を過剰発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物。
【請求項7】
請求項5において、上記組成物は、免疫関門阻害剤をさらに含むことを特徴とする、CD47を過剰発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物。
【請求項8】
請求項7において、上記免疫関門阻害剤は、抗PD-1抗体であることを特徴とする、CD47を過剰発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物。
【請求項9】
請求項5において、上記CD47を過剰発現する細胞によって媒介される疾患は、CD47を過剰発現する癌または腫瘍であることを特徴とする、CD47を過剰発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物。
【請求項10】
請求項9において、上記癌または腫瘍が、血液癌、卵巣癌、結腸癌、乳癌、肺癌、骨髄腫、神経芽細胞誘導されたCNS腫瘍、単球性白血病、B細胞誘導された白血病、T細胞誘導された白血病、B細胞誘導されたリンパ腫、T細胞誘導されたリンパ腫、および肥満細胞誘導された腫瘍からなる群から選択されることを特徴とする、CD47を過剰発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、CD47に特異的なヒト化抗体およびそれを含むCD47関連疾患の予防または治療用医薬組成物に関し、より詳細には、CD47に特異的なヒト化抗体、上記ヒト化抗体を含むCD47を過剰発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物に関する。
【0002】
[背景技術]
CD47は、インテグリン結合タンパク質(IAP)とも呼ばれ、細胞表面で広範囲に発現される膜貫通糖タンパク質で、免疫グロブリン上科(immunoglobulin superfamily)に属し、インテグリン、SIRPα(シグナル調節タンパク質α)、SIRPγとトロンボスポンジン(thrombospondin)などの様々なリガンドと相互作用する。
【0003】
SIRPαは主にマクロファージ、顆粒細胞、骨髄系樹状細胞(DCs)、肥満細胞、および造血幹細胞(HSCs)を含むその前駆体を含む骨髄細胞で発現される。SIRPαはマクロファージによる宿主細胞の食作用を抑制し、宿主標的細胞上に発現するCD47によるマクロファージ上のSIRPαの結紮(ligation)は、SHP-1によって媒介される抑制シグナルを生成し、食菌作用を陰性的で調節する。
【0004】
先天的な免疫システムにおいて、CD47は骨髄性細胞で発現するSIRPαとの結合を通じて機能を発揮し、生理学的条件においてCD47の広範な発現の作用は、健康な細胞が先天的な免疫システムによって除去されるのを防ぐ。
【0005】
しかし、腫瘍細胞はCD47の過剰発現による免疫監視を効果的に回避できるため、近年、CD47およびCD47-SIRPαシグナル伝達システムは、腫瘍治療における潜在的な薬物標的として最も注目されている。既存の研究によると、CD47の発現はほとんどのヒト癌(例えば、NHL、AML、乳癌、結腸癌、膠芽腫、神経膠腫、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌)でアップレギュレーションされており、CD47の発現レベルの上昇は侵襲性疾患と低生存率と関連していることが証明されている。
【0006】
抗CD47抗体の腫瘍に対する治療は様々なメカニズムと関連している。まず、抗CD47抗体は腫瘍細胞上のCD47とマクロファージ上のSIRPαの結合を遮断し、腫瘍細胞を貪食させる。また、抗CD47抗体はNK細胞が関与した腫瘍細胞の細胞毒性を誘導することができ、死滅を直接誘導して腫瘍細胞を除去することができる。最後に、抗CD47抗体はCD8+T細胞を活性化させ、獲得性T細胞の免疫反応を起こし、腫瘍細胞をさらに死滅させることができる。
【0007】
このようなCD47を過剰発現する腫瘍細胞またはCD47過剰発現に関連する疾患などの治療または診断のためにCD47に特異的な抗体の開発が行われており、国際公開特許WO2018-075857号、国際公開特許WO2017-121771号および国際公開特許WO2013-119714号には様々な抗CD47抗体について開示されている。
【0008】
上記のように治療のための抗体の生産のために、主にマウスを利用してモノクローナル抗体(monoclonal antibody)を生産している。しかし、マウス由来のモノクローナル抗体のような非人間抗体は、人体内で外来抗原とみなされるため、免疫反応を誘発し、半減期が短いため、治療効果が限定的な問題がある。
【0009】
上記の問題を解決するために、抗体の抗原と結合するCDR部位だけを除いて残りの部分を人間抗体で置換したヒト化抗体が開発された。現在使用されているマウス抗体のヒト化抗体への置換方法としては、置換する抗体に対する最も類似したヒト抗体遺伝子を選定し、CDR移植と呼ばれる方法でマウス抗体のCDR部位だけをヒト抗体のCDR位置に置換することである。このようなヒト化抗体は、遺伝子の大部分をヒト化したため、人体内での免疫反応を減らすことができるという利点がある。
【0010】
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
本発明では、人体内で免疫反応を減らすためにCD47に結合する抗体(3A5)を選別し、これを利用してヒト化抗CD47抗 体を製造した。本発明で製造したヒト化抗CD47抗体は、CD47抗原と特異的に結合することを確認し、CD47-SIRPα結合を効果的に遮断するだけでなく、白血病末梢型由来T細胞(Jurkat cell)の細胞死(apoptosis)を誘導し、腫瘍成長を効果的に抑制させることを確認し、本発明を完成した。
【0011】
したがって、本発明の目的は、CD47に特異的に結合するヒト化抗体、上記抗体をコードするポリヌクレオチド、上記抗体を発現するベクター、上記ベクターで形質転換された組換え細胞を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、上記CD47に特異的に結合するヒト化抗体を含む、CD47を過剰発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療用の医薬組成物を提供することである。
【0013】
[課題を解決するための手段]
上述の目的を達成するために、
本発明は、(1) 配列番号11のアミノ酸配列で表される重鎖可変部位及び配列番号12のアミノ酸配列で表される軽鎖可変部位;
(2) 配列番号17のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号18のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(3) 配列番号23のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号24のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(4) 配列番号29のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号30のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(5) 配列番号35のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号36のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(6) 配列番号41のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号42のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(7) 配列番号47のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号48のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(8) 配列番号53のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号54のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(9) 配列番号59のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号60のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(10) 配列番号65のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号66のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(11) 配列番号71のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号72のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(12) 配列番号77のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号78のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(13) 配列番号83のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号84のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(14) 配列番号89のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号90のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(15) 配列番号95のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号96のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;または
(16) 配列番号101のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号102のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;を含む、CD47に特異的に結合するヒト化抗体又はその断片を提供する。
【0014】
本発明の好ましい一実施例において、上記抗体は、モノクローナル抗体、好ましくはscFv(Single-chain variable fragment)であることができる。
また、本発明は、上記CD47に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0015】
また、本発明は、上記CD47に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
また、本発明は、上記ベクターで形質転換されたCD47に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片を産生する組換え細胞を提供する。
【0016】
他の目的を達成するため、
本発明は、上記CD47に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片を含む、CD47を過剰発現する細胞によって媒介される疾患の予防または治療用の医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、上記組成物は、免疫関門阻害剤をさらに含むことができ、上記免疫関門阻害剤は、好ましくは抗PD-1抗体であることができる。
本発明の好ましい他の実施形態において、上記CD47を過剰発現する細胞によって媒介される疾患は、CD47を過剰発現する癌または腫瘍であることができる。
【0018】
本発明の好ましい別の実施形態において、上記癌または腫瘍は、血液癌、卵巣癌、結腸癌、乳癌、肺癌、骨髄腫、神経芽細胞誘発性CNS腫瘍、単球性白血病、B細胞誘発性白血病、T細胞誘発性白血病、B細胞誘発性リンパ腫、T細胞誘発性リンパ腫、および肥満細胞誘発性腫瘍からなる群から選択することができる。
【0019】
[発明の効果]
本発明では、CD47に結合する抗体(3A5抗体)を用いてヒト化抗体16種を製造し、上記ヒト化抗CD47抗体はCD47抗原と特異的に結合することを確認した。
【0020】
また、本発明のヒト化抗CD47抗体は、CD47-SIRPα結合を遮断するだけでなく、CD47を過発現する細胞と結合してマクロファージによるマクロファージ作用を促進し、CD47を発現する腫瘍の成長を抑制することができるので、CD47の過発現による免疫反応が抑制される疾患または腫瘍の予防または治療に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明で選別した3A5(マウス)抗体のCD47過発現腫瘍細胞(MCF-7)に対する結合力をフローサイトメーター(flow cytometer)で確認したデータである。
【
図2a】
図2は、本発明のヒト化3A5抗体16種のCD47過発現腫瘍細胞(MCF-7)に対する結合力をフローサイトメーターで確認したデータである。
【
図2b】
図2は、本発明のヒト化3A5抗体16種のCD47過発現腫瘍細胞(MCF-7)に対する結合力をフローサイトメーターで確認したデータである
【
図3】
図3は、本発明のヒト化Hu3A5(V10)抗体のCD47-SIRPα結合遮断能を確認したデータである。
【
図4】
図4は、本発明のヒト化Hu3A5(V10)抗体が白血病末梢型由来T細胞(Jurkat Cell)の表面CD47と結合することにより、マクロファージの食作用を促進することを確認したデータである。
【
図5】
図5は、本発明のヒト化Hu3A5(V10)抗体と市販のCD47抗体(clone#CC2C6)の(A)赤血球及び血小板結合の有無、及び(B)赤血球凝集度を確認したデータである。
【
図6】
図6は、本発明の3A5(mouse)抗体をヒトCD47が発現されるマウス結腸腺癌細胞(murine colon adenocarcinoma cell)が移植されたマウスに投与したとき、(A)動物実験方法の模式図及び(B)3A5抗体投与による腫瘍サイズを確認したデータである。マウスPD-1抗体は、市販のPD-1抗体(clone#RMP1-14)を使用した。
【
図7】
図7は、本発明のヒト化されたHu3A5(V10)抗体をヒトCD47が発現されるラット結腸腺癌細胞が移植されたC57BL/6-hCD47/hSIRPαノックインマウス(C57BL/6-hCD47/hSIRPα knock-in mouse、hCD47 KI)に投与する際、(A)動物実験方法の模式図及び(B)Hu3A5(V10)抗体投与による腫瘍サイズを確認したデータである。
【
図8】
図8は上記
図7でHu3A5(V10)抗体投与後、C57BL/6-hCD47/hSIRPα溶かしたマウスの主要臓器を免疫組織化学(Immunohistochemistry、IHC)で観察したデータである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
CD47に特異的に結合するヒト化抗体
本発明は、一態様において、(1)配列番号11のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号12のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(2) 配列番号17のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号18のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(3) 配列番号23のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号24のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(4) 配列番号29のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号30のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(5) 配列番号35のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号36のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(6) 配列番号41のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号42のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(7) 配列番号47のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号48のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(8) 配列番号53のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号54のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(9) 配列番号59のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号60のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(10) 配列番号65のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号66のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(11) 配列番号71のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号72のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(12) 配列番号77のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号78のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(13) 配列番号83のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号84のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(14) 配列番号89のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号90のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;
(15) 配列番号95のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号96のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;または
(16) 配列番号101のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位および配列番号102のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位;を含むCD47に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片に関する。
【0023】
本発明において、用語"ヒト化抗体"は、抗原結合に核心的な部分であるCDR部位を除いた残りの部分を人間によって生産された抗体と対応するアミノ酸配列となるようにし、より人間抗体との類似性が増加された抗体を意味する。抗体(non-human antibody)をヒト化する最も一般的な方法としては、動物抗体のCDR部位を人間抗体に移植するCDR-グラフト(CDR-grafting)方法があり、これに限定されることなく、当業界に公知の方法を利用してヒト化抗体を製造することができる。
【0024】
本発明において、上記抗体は、モノクローナル抗体(monoclonal antibody)であることができる。本発明において、用語「モノクローナル抗体(monoclonal antibody)」は、単一抗体形成細胞が生成する抗体で、1次構造(アミノ酸配列)が均一な特徴がある。唯一の一つの抗原決定基だけを認識し、一般的に癌細胞と抗体生産細胞を融合したハイブリドーマ(hybridoma cell)を培養して生産される。
【0025】
本発明において、用語「CDR」、すなわち「相補性決定領域」は、重鎖および軽鎖部位の両方の可変領域内に見られる非接近(non-contiguous)抗原結合部位を意味する。
本発明において、「抗体」という用語は、2つの全長軽鎖および2つの全長重鎖を有する完全な形態だけでなく、抗体分子の断片も使用することができる。抗体分子の断片とは、少なくともペプチドタグ(エピトープ)結合機能を保有している断片を意味し、scFv、Fab、F(ab')、F(ab')2、単一ドメイン(single domain)などを含む。
【0026】
抗体断片のうち、Fabは軽鎖及び重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域及び重鎖の最初の不変領域(CH1)を持つ構造で、1つの抗原結合部位を持つ。Fab'は重鎖CH1ドメインのC末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ部位(hinge region)を持つという点で、Fabと違いがある。F(ab')2抗体は、Fab'のヒンジ部位のシステイン残基がジスルフィド結合を形成しながら生成される。Fvは重鎖可変部位及び軽鎖可変部位のみを持つ最小限の抗体断片で、二重鎖Fv(dsFv)はジスルフィド結合で重鎖可変部位と軽鎖可変部位が連結されており、短鎖Fv(scFv)は一般的にペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域が共有結合で連結されている。このような抗体断片は、タンパク質加水分解酵素を利用して得たり、好ましくは遺伝子組換え技術を通じて製作したりすることができる。
【0027】
本発明のCD47に特異的に結合するモノクローナル抗体は、CD47タンパク質全体または一部のペプチドを免疫原(または抗原)として用いて製造することができる。より詳細には、まず、免疫原としてCD47、CD47タンパク質を含む融合タンパク質またはCD47タンパク質を含むキャリア(carrier)を必要に応じて免疫増強剤であるアジュバント(adjuvant)(例えば、Freund adjuvant)と共に、ヒトを除く哺乳動物の皮下、筋肉、静脈、足凸部または腹腔内に1回ないしそれ以上注射することにより、免疫感作(immunization)をさせる。上記ヒトを除く哺乳動物は、好ましくは、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、鶏、ウサギ、猫、犬、豚、ヤギ、羊、ロバ、馬または牛(ヒト抗体を生産する形質転換(transgenic)マウスなどの他の動物由来の抗体を生産するように操作された形質転換(transgenic)動物を含む)であり、より好ましくは、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、鶏またはウサギである。最初の免疫から約1~21日ごとに1~4回の免疫を行い、最終免疫から約1~10日後に免疫感作された哺乳動物から抗体産生細胞を得ることができる。免疫を行う回数および時間的間隔は、使用する免疫原の特徴などによって適宜変更することができる。
【0028】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ(hybridoma)の製造は、ケイラおよびミルシュタインなどの方法(Nature、1975、Vol。256、p.495-497)およびそれに準ずる方法に従って行うことができる。上記のように免疫感作されたヒトを除く動物から採取した脾臓、リンパ節、骨髄または扁桃からなる群から選択されるいずれか、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生する細胞と自己抗体産生能力のない哺乳動物由来の骨髄腫細胞(myeloma cells)を細胞融合させることによりハイブリドーマ(hybridoma)を製造することができる。哺乳動物は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ニワトリ、ウサギまたはヒトであり得、好ましくはマウス、ラット、ニワトリまたはヒトであり得る。
【0029】
細胞融合は、例えば、ポリエチレングリコールやセンダイウイルスを含む融合促進剤や電気パルスによる方法が用いられ、例えば、融合促進剤を含む融合培地に抗体産生細胞と無限増殖可能な哺乳類由来の細胞を約1:1~1:10の割合で浮遊させ、この状態で、約30~40℃で約1~5分間インキュベートする。融合培地には、例えば、MEM培地、RPMI1640培地及びイスコブ修飾ダルベッコ培地(Iscove's Modified Dulbecco's Medium)を含む通常の一般的なものを用いるとよく、ウシ血清などの血清流は除いておくことが好ましい。
【0030】
上記モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンをスクリーニングする方法は、まず、上記のように取得した融合細胞をHAT培地などの選択用培地に移し、約30~40℃で約3日~3週間培養して、ハイブリドーマ以外の細胞を死滅させる。続いて、マイクロタイタープレート(microtiter plate)等でハイブリドーマを培養した後、上述したヒトを除く動物の免疫反応に用いた免疫原と培養上清との反応性が増加した部分をRIA(radioactive substance-marked immuno antibody)またはELISA(Enzyme-LiNKed Immunosorbent Assay)などのイムノアッセイ方法を用いて見つける方法によって行うことができる。そして、上記で見つけたモノクローナル抗体を産生するクローンは、上記免疫原に対して特異的な結合力を示す
本発明のモノクローナル抗体は、このようなハイブリドーマを生体内外で培養することにより得ることができる。培養には、哺乳動物由来の細胞を培養するための通常の方法が用いられ、培養物などからモノクローナル抗体を採取するためには、抗体一般を精製するためのこの分野における通常の方法が用いられる。それぞれの方法としては、例えば、塩析、透析、濾過、濃縮、遠心分離、分別沈殿、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ゲル電気泳動等電点電気泳動などが挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて適用される。精製したモノクローナル抗体は、その後、濃縮、乾燥し、用途に応じて液相または固相とする。
【0031】
本発明の具体的な一実施例では、CD47に特異的に結合する抗体を製造するために、抗CD47抗体を生産するハイブリドーマを製造及びスクリーニングし、CD47に特異的に結合する抗体(scFv)をスクリーニングし、これを3A5と命名した。
【0032】
上記3A5抗体は、配列番号1のアミノ酸で表示されるCDR1領域(GYTFTSYW)、配列番号2のアミノ酸で表示されるCDR2領域(IDPSDSYT)及び配列番号3のアミノ酸で表示されるCDR3領域(ARGGKRAMDY)を含む重鎖可変部位及び配列番号4のアミノ酸で表示されるCDR1領域(QSLVHSNGNTY)、配列番号5のアミノ酸で表示されるCDR2領域(KVS)及び配列番号6のアミノ酸で表示されるCDR3領域(SQSTHVPFT)を含む軽鎖可変部位で構成されていることを確認した。
【0033】
具体的には、3A5抗体は、配列番号7のアミノ酸で表示される重鎖可変部位及び配列番号8のアミノ酸で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号9の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号10の塩基配列でコードされることを確認した。
【0034】
本発明の具体的な他の一実施例では、抗CD47抗体である3A5をヒトに対応する構造に変更したヒト化抗体(humanized antibody)16種を製造し、これをHu3A5(V1)、Hu3A5(V2)、Hu3A5(V3)、Hu3A5(V4)、Hu3A5(V5)、Hu3A5(V6)、Hu3A5(V7)、Hu3A5(V8)、Hu3A5(V9)、Hu3A5(V10)、Hu3A5(V11)、Hu3A5(V12)、Hu3A5(V13)、Hu3A5(V14)、Hu3A5(V15)および Hu3A5(V16)と命名した。
【0035】
上記16種のヒト化抗CD47抗体の重鎖可変部位CDRと軽鎖可変部位CDRは3A5と同じで、CDR部分を除いた残りの部分をヒト化した。
好ましくは、Hu3A5(V1)抗体は、配列番号11のアミノ酸配列で示される重鎖可変部位及び配列番号12のアミノ酸配列で示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号13の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号14の塩基配列でコード化することができる。
【0036】
Hu3A5(V2)抗体は、配列番号17のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号18のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号19の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号20の塩基配列でコード化することができる。
【0037】
HU3A5(V3)抗体は、配列番号23のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号24のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号25の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号26の塩基配列でコード化することができる。
【0038】
Hu3A5(V4)抗体は、配列番号29のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号30のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号31の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号32の塩基配列でコード化することができる。
【0039】
Hu3A5(V5)抗体は、配列番号35のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号36のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号37の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号38の塩基配列でコード化することができる。
【0040】
Hu3A5(V6)抗体は、配列番号41のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号42のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号43の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号44の塩基配列でコード化することができる。
【0041】
Hu3A5(V7)抗体は、配列番号47のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号48のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号49の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号50の塩基配列でコード化することができる。
【0042】
Hu3A5(V8)抗体は、配列番号53のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号54のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号55の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号56の塩基配列でコード化することができる。
【0043】
Hu3A5(V9)抗体は、配列番号59のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号60のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号61の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号62の塩基配列でコード化することができる。
【0044】
Hu3A5(V10)抗体は、配列番号65のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号66のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号67の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号68の塩基配列でコード化することができる。
【0045】
Hu3A5(V11)抗体は、配列番号71のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号72のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号73の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号74の塩基配列でコード化することができる。
【0046】
Hu3A5(V12)抗体は、配列番号77のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号78のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号79の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号80の塩基配列でコード化することができる。
【0047】
Hu3A5(V13)抗体は、配列番号83のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号84のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号85の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号86の塩基配列でコード化することができる。
【0048】
Hu3A5(V14)抗体は、配列番号89のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号90のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号91の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号92の塩基配列でコード化することができる。
【0049】
Hu3A5(V15)抗体は、配列番号95のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号96のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号97の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号98の塩基配列でコード化することができる。
【0050】
Hu3A5(V16)抗体は、配列番号101のアミノ酸配列で表示される重鎖可変部位及び配列番号102のアミノ酸配列で表示される軽鎖可変部位で構成され、上記重鎖可変部位は配列番号103の塩基配列で、軽鎖可変部位は配列番号104の塩基配列でコード化することができる。
【0051】
本発明のCD47に特異的な抗体は、好ましくはscFv(single chain variable fragment)で、重鎖可変部位及び軽鎖可変部位がリンカーで連結されるように遺伝子組換え技術を通じて製作することができる。上記リンカーは、好ましくは、配列番号107のアミノ酸配列で表示されるか、または配列番号108ないし配列番号123の塩基配列でコードすることができるが、これに限定されない。
【0052】
軽鎖可変部位-リンカー-重鎖可変部位で連結された場合、Hu3A5(V1)抗体は配列番号15のアミノ酸配列で表示されるか、または配列番号16の塩基配列で、Hu3A5(V2)抗体は配列番号21のアミノ酸配列または配列番号22の塩基配列で、3A5(V3)抗体は配列番号27のアミノ酸配列または配列番号28の塩基配列で、Hu3A5(V4)抗体は配列番号33のアミノ酸配列または配列番号34の塩基配列で、Hu3A5(V5)抗体は配列番号39のアミノ酸配列または配列番号40の塩基配列、Hu3A5(V6)抗体は配列番号45のアミノ酸配列または配列番号46の塩基配列、Hu3A5(V7)抗体は配列番号51のアミノ酸配列または配列番号52の塩基配列、3A5(V8)抗体は配列番号57のアミノ酸配列または配列番号58の塩基配列、Hu3A5(V9)抗体は配列番号63のアミノ酸配列または配列番号64の塩基配列、Hu3A5(V10)抗体は配列番号69のアミノ酸配列または配列番号70の塩基配列、Hu3A5(V11)抗体は配列番号75のアミノ酸配列または配列番号76の塩基配列、Hu3A5(V12)抗体は配列番号81のアミノ酸配列または配列番号82の塩基配列、Hu3A5(V13)抗体は配列番号87のアミノ酸配列または配列番号88の塩基配列で、Hu3A5(V14)抗体は配列番号93のアミノ酸配列または配列番号94の塩基配列で、Hu3A5(V15)抗体は配列番号99のアミノ酸配列または配列番号100の塩基配列で、Hu3A5(V16)抗体は配列番号105のアミノ酸配列または配列番号106の塩基配列で表示することができる。
【0053】
本発明において、上記抗体は、CD47がシグナル制御タンパク質(SIRPα)と相互作用することを防止したり、CD47発現細胞に対するマクロファージ媒介の食作用を促進したりすることができる。
【0054】
本発明の具体的な一実施例において、本発明で選別した3A5抗体及びこれをヒト化した16種のHu3A5抗体全てがCD47を過剰発現する細胞と特異的に結合することを確認した(
図1及び
図2)。また、本発明のヒト化Hu3A5(V10)抗体がCD47とSIRPαの相互作用を防止するかどうかを確認した結果、
図3に示すように、CD47-SIRPα結合を効果的に遮断することを確認した。
【0055】
本発明の具体的な他の一実施例において、ヒト化3A5抗体が実際に抗体治療剤として使用できるかどうかを確認するために、Hu3A5(V10)抗体を白血病末梢型由来のT細胞(Jurkat cell)に処理した結果、Hu3A5(V10)によってマクロファージによるJurkat cellの食作用(phagocytosis)が効果的に誘導されることを確認した。
【0056】
CD47は赤血球表面にも多量に存在し、投与された抗CD47抗体が赤血球に付着すると、マクロファージが赤血球を捕食するため、貧血や赤血球が絡み合う血球凝集が起こる。商業的に販売されているまたは臨床試験中の一部のCD47抗体の場合、赤血球食作用による副作用が報告されている。
【0057】
本発明の具体的な別の一実施例において、ヒト化3A5抗体が赤血球凝集反応を誘導するかどうかを確認するために、ヒト化Hu3A5(V10)抗体と市販の抗CD47抗体(clone#CC2C6)の赤血球/血小板結合の有無及び赤血球凝集反応の有無を確認した。
図5に示すように、市販の抗CD47抗体(clone#CC2C6)は赤血球と反応して赤血球凝集反応を誘導したのに対し、本発明のヒト化Hu3A5(V10)抗体は赤血球及び血小板と結合せず(
図5A)、赤血球凝集反応も誘導しないことが分かった(
図5B)。
【0058】
すなわち、本発明のヒト化抗CD47抗体は、CD47を過剰発現する細胞を特異的に認識し、CD47-SIRPα結合を遮断することにより、癌または腫瘍細胞の免疫回避を抑制することができるだけでなく、マクロファージによるCD47を過剰発現する癌細胞のマクロファージ作用を効果的に促進することを確認した。さらに、ヒト化抗CD47抗体は赤血球凝集反応を誘導しないため、より安全かつ効果的にCD47を過剰発現する癌または腫瘍の予防または治療のための抗体治療剤として活用できる。
【0059】
本発明は、別の観点から、上記CD47に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドに関する。
本発明において、「ポリヌクレオチド」という用語は、一般に、任意の長さに分離された核酸分子、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、またはその類似体を指す。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、(1)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などのin-vitro増幅、(2)クローニングおよび組換え、(3)切断およびゲル電気泳動分離などの精製、(4)化学合成などの合成により製造することができ、好ましくは、分離されたポリヌクレオチドは組換えDNA技術により製造される。本発明において、抗体またはその抗原結合断片をコードするための核酸は、合成オリゴヌクレオチドの制限断片操作(restriction fragment operation)またはSOE PCRの適用を含むが、これに限定されず、当業界に公知の様々な方法によって製造することができる。
【0060】
本発明は、別の観点から、上記CD47に特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、および上記ベクターで形質転換された組換え細胞に関する。
【0061】
本発明において、「ベクター(expression vector)」という用語は、適切な宿主細胞内で目的遺伝子が発現できるように、プロモーターなどの必須の調節要素を含む遺伝子調製物である。ベクターは、プラスミド、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターのうちの1つ以上から選択することができる。適切な宿主に形質転換されると、ベクターは宿主ゲノムとは無関係に複製および機能することができ、または場合によってはゲノム自体に組み込むことができる。
【0062】
さらに、ベクターは、コード領域が適切な宿主において正確に発現されることを可能にする発現制御要素を含み得る。そのような調節要素は当業者に周知であり、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、および遺伝子転写またはmRNA翻訳を調節するための他の調節要素を含み得る。発現制御配列の特定の構造は、種または細胞型の機能に応じて変わり得るが、通常、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列などの転写開始および翻訳開始にそれぞれ関与する5'非-転写配列、および5'または3'非翻訳配列を含む。例えば、5'非転写発現制御配列は、機能的に連結された核酸を転写および制御するためのプロモーター配列を含み得るプロモーター領域を含み得る。
【0063】
本発明において、用語「プロモーター」は、転写を指示するのに十分な最小配列を意味する。さらに、細胞型特異的または外部のシグナルまたは制裁によって誘導される調節可能なプロモーター依存性遺伝子を発現させるのに十分なプロモーター構成を含めることができ、そのような構成は遺伝子の5'または3'部分に配置することができる。保存的プロモーターと誘導的プロモーターの両方が含まれる。プロモーター配列は、原核生物、真核生物またはウイルスに由来し得る。
【0064】
本発明において、「形質転換体」という用語は、1つ以上の目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有するベクターが宿主細胞に導入されて形質転換された細胞を意味し、発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換体を製造する方法としては文献(Sambrook、J.、et al.、Molecular Cloning、A Laboratory Manual(2版)、Cold Spring Harbor Laboratory、1.74、1989)に記載のリン酸カルシウム法または塩化カンシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法(electroporation)、電気注入法(electroinjection)、PEGなどの化学的処理方法、遺伝子銃(gene gun)などを用いる方法などがある。
【0065】
上記ベクターが発現される形質転換体を栄養培地で培養すると、抗体タンパク質を大量に製造、分離可能である。培地と培養条件は、宿主細胞によって慣用されるものを適宜選択して用いることができる。培養時の細胞の生育とタンパク質の大量生産に適するように、温度、培地のpH、培養時間などの条件を適切に調節しなければならない。
【0066】
本発明によるベクターは、抗体の生産のために宿主細胞、好ましくは哺乳動物細胞に形質転換させることができる。完全糖化タンパク質を発現することができる適切な宿主細胞は、COS-1(例えば、ATCC CRL 1650)、COS-7(例えば、ATCC CRL-1651)、HEK293、BHK21(例えば、ATCC CRL-10)、CHO(例えば、ATCC CRL 1610)およびBSC-1(例えば、ATCC CRL-26)細胞株、Cos-7細胞、CHO細胞、hep G2細胞、P3X63Ag8. 653、SP2/0-Agl4、293細胞、HeLa細胞等を含み、これらの細胞は、例えば、ATCC(American Type Culture Collection、米国)から容易に入手可能である。
【0067】
CD47過剰発現によって媒介される疾患の予防または治療用組成物
本発明は、別の観点から、CD47に特異的に結合するヒト化抗体を含む、CD47過剰発現によって媒介される疾患の予防または治療用医薬組成物に関する。
【0068】
本発明において、上記CD47過剰発現によって媒介される疾患は、CD47を過剰発現する癌または腫瘍であることができ、好ましくは、CD47を過剰発現する癌または腫瘍は、血液癌、卵巣癌、結腸癌、乳癌、肺癌、骨髄腫、神経芽細胞誘導されたCNS腫瘍、単球性白血病、B細胞誘導された白血病、T細胞誘導された白血病、B細胞誘導されたリンパ腫、T細胞誘導されたリンパ腫、および肥満細胞誘導された腫瘍からなる群から選択することができる。
【0069】
本発明において、上記組成物は、CD47を過剰発現する細胞によって媒介される疾患の治療剤をさらに含むことができ、上記治療剤は、CD47に特異的に結合する抗体の重鎖及び/又は軽鎖に共有結合した状態で存在するか、または本発明のCD47に特異的なヒト化抗体と併用投与することができる。
【0070】
上記治療剤は、低分子薬物、ペプチド性薬物、毒素(例えば、細胞毒素)等を含む。また、上記治療剤は、抗がん剤であってもよい。抗癌剤は、癌細胞の増殖を減少させ、細胞毒性薬剤および細胞増殖抑制剤を包含する非ペプチド性(すなわち、非タンパク質系)化合物を含む。抗癌剤の非限定的な例としては、アルキル化剤、ニトロソ尿素、抗代謝物質、抗腫瘍抗生物質、植物(ビンカ)アルカロイドおよびステロイドホルモンが挙げられる。ペプチド性化合物も使用することができる。
【0071】
また、上記組成物に追加される治療剤は、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤(Immune checkpoint inhibitor)であることができ、より好ましくは抗PD-1抗体であることができる。
【0072】
本発明の好ましい一実施例において、3A5抗体がCD47が発現される腫瘍の成長を阻害するかどうかを確認するために、
図6Aの模式図に示された方法のように、CD47が発現されるマウス結腸腺癌細胞(murine colon adenocarcinoma cell、MC38-hCD47)をマウスに移植した後、対照抗体(Rat IgG)、抗PD-1抗体、抗CD47抗体(3A5抗体)、および抗PD-1抗体(clone#RMP1-14)+抗CD47抗体(3A5抗体)をそれぞれ投与した。その結果、
図6Bに示すように、3A5抗体単独投与群でCD47を過剰発現する腫瘍の成長が抑制されることを確認し、特に3A5抗体及び抗PD-1抗体併用投与群の腫瘍成長抑制効能が最も優れていることを確認した。これは、免疫関門阻害剤である抗PD-1抗体と本発明の3A5抗体を併用投与する場合、腫瘍治療に対する相乗効果を示すことを意味する。
【0073】
本発明の好ましい他の一実施例において、ヒト化3A5抗体の腫瘍成長抑制効能を確認するために、マウスCD47及びSIRPα遺伝子がヒトCD47及びヒトSIRPα遺伝子に置換されたC57BL/6-hCD47/hSIRPα溶解マウスにヒトCD47が発現されるラット結腸腺癌細胞を移植した後、対照抗体(Rat IgG)、抗PD-1抗体(clone#RMP1-14)、抗CD47抗体(Hu3A5(V10)抗体)、および抗PD-1抗体(clone#RMP1-14)+抗CD47抗体(Hu3A5(V10)抗体)をそれぞれ投与した(
図7A)。その結果、Hu3A5(V10)抗体単独投与群で腫瘍の成長が抑制されることを確認し、特にHu3A5(V10)抗体及び抗PD-1抗体併用投与群の腫瘍成長抑制効能が最も優れていることを確認した。
【0074】
また、Hu3A5(V10)抗体投与後、C57BL/6-hCD47/hSIRPα溶解マウスの主要臓器を免疫組織化学(Immunohistochemistry、IHC)で観察した結果、炎症による主要組織の損傷は観察されなかった。
【0075】
すなわち、本発明のヒト化Hu3A5抗体は、他の組織の損傷なしにCD47を過剰発現する癌または腫瘍を標的にして腫瘍の成長を抑制することができるので、CD47を過剰発現する癌または腫瘍の予防または治療のための抗体治療剤として適用できることを確認した。
【0076】
上記医薬組成物は、治療的有効量の本発明の抗体を含むことが好ましい。ここで使用される用語「治療有効量」は、標的疾患または状態を治療、改善または予防するために必要な治療剤の量、または検出可能な程度の治療または予防効果を示すために必要な治療剤の量を意味する。ある抗体について、治療有効量は、細胞培養アッセイまたは通常、げっ歯類、ウサギ、ウサギ、犬、豚または霊長類などの動物モデルを用いて最初に決定することができる。動物モデルは、適切な濃度範囲と投与経路を決定するためにも使用することができる。これらの情報は、ヒトへの投与に有用な投与量と投与経路を決定するために使用することができます。
【0077】
ヒト患者に対する正確な有効量は、疾患の重症度、患者の一般的な健康状態、患者の年齢、体重および性別、食事療法、投与時間、投与頻度、薬剤の製造性、反応性、および治療に対する耐性/反応に依存する。上記量は、通常の実験によって決定することができ、臨床医の判断の範囲内である。一般的に、有効投与量は0.01~50mg/kg、好ましくは0.1~20mg/kg、より好ましくは約15mg/kgである。
【0078】
組成物は、患者に個別に投与されるか、または他の製剤、薬剤またはホルモンと組み合わせて投与することができる。本発明の抗体が投与される投与量は、治療される状態の性質、悪性リンパ腫または白血病のグレード、および抗体が疾患の予防のために使用されるか、または既存の状態を治療するために使用されるかによって異なる。
【0079】
投与頻度は抗体分子の半減期、薬の効果の持続性によって変わる。もし抗体分子が短い半減期(例えば、2~10時間)を持つ場合、1日1回またはそれ以上の投与量を提供する必要がある。または、抗体分子が長い半減期(例えば、2~15日)を有する場合、1日に1回、1週間に1回、または1ヶ月または2ヶ月ごとに1回の投与量を提供する必要がある。
【0080】
さらに、医薬組成物は、抗体の投与のために薬学的に許容可能な担体を含有することができる。担体は、それ自体が組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を引き起こしてはならず、毒性がなければならない。適切な担体としては、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子のような、徐々に代謝される高分子が挙げられる。
【0081】
薬学的に許容される塩は、例えば、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩のような鉱物塩、または酢酸、プロピオン酸。マロン酸および安息香酸のような有機酸の塩を使用することができる。
【0082】
治療組成物中の薬学的に許容される担体は、さらに、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールなどの液体を含むことができる。さらに、湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝剤などの補助物質がこのような組成物中に存在することができる。担体は、患者による薬剤組成物の摂取のために、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリーおよび懸濁剤として製剤化することができる。
【0083】
投与のための好ましい形態は、例えば、注射(injection)または注入(infusion)による非経口投与に適した形態を含む。生成物が注入または注射用である場合、それは、懸濁剤、防腐剤、安定化剤および/または分散剤などの処方剤を含む、油または水溶性賦形剤中の懸濁剤、溶液またはエマルジョンの形態をとることができる。あるいは、抗体分子は無水形態であってもよく、使用前に適切な滅菌液に再構成することができる。
【0084】
一旦製剤化された場合、本発明の組成物は、患者に直接投与することができる。治療される患者は動物であってもよい。しかしながら、組成物は、ヒト患者への投与用に適合させることが好ましい。
【0085】
本発明の医薬組成物は、限定されないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、動脈内、骨髄内、脊髄腔内、心室内、経皮、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、膣内、または直腸経路を含む経路で投与することができる。典型的には、治療組成物は、液体溶液または懸濁液として注射可能な物質として調製することができる。また、注入前に、液体賦形剤含有溶液または懸濁液に適した固体形態を調製することができる。
【0086】
組成物の直接送達は、一般的に注射、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、筋肉内注射によって行うことができ、または組織の間質(interstitial)空間に送達することもできる。また、組成物は創傷部位に投与することができる。投与量処理は、単一の投与スケジュールまたは複数の投与スケジュールであってもよい。
【0087】
CD47を発現する細胞によって媒介される疾患の診断またはモニタリング
本発明は、別の観点から、CD47に特異的に結合する抗体を含む、CD47を発現する細胞によって媒介される疾患の診断またはモニタリング用組成物に関する。
【0088】
上記CD47に特異的に結合する抗体は、直接または間接的に標識することができる。間接的標識は、検出可能な標識を含む二次抗体を含み、ここで二次抗体がCD47に特異的に結合する抗体に結合する。他の間接的標識は、ビオチンを含み、ここでビオチン化されたCD47に特異的に結合する抗体は、検出可能な標識を含むアビジンまたはストレプトアビジンを使用して検出することができる。
【0089】
適切な検出可能標識は、分光分析的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能な任意の組成物を含む。適切な標識は、非限定的に、磁気ビーズ、蛍光染料(例えば、フルオレセインソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質など)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14Cまたは32P)、酵素(例えば、マスタード無過酸化酵素、マスタード過酸化酵素、マスタードオキシダーゼなど)である、マスタード無過酸化酵素、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼおよび酵素結合免疫吸着試験(ELISA)に一般的に使用されるもの)およびコロイド状金または着色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズなどの標識系標識を含む。
【0090】
さらに、診断またはモニタリングのために、上記抗体は蛍光タンパク質で標識することができ、造影剤または放射線同位体を含むことができる。
本発明のCD47に特異的に結合する抗体を診断キットに利用する場合、上記抗体は支持体に固定されており、上記支持体は、マイクロプレート、マイクロアレイ、チップ、ガラス、ビーズまたは粒子、または膜であることができる。
【0091】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を示す。ただし、以下の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、以下の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0092】
実施例1 : CD47に特異的に結合する抗体の製造及びスクリーニング
CD47ペプチド特異的な抗体をスクリーニングするために、CD47と結合する抗体を生産するハイブリドーマを製造して抗体をスクリーニングした。
【0093】
まず、CD47タンパク質(Acrobiosystems、cat#CD7-HA2E9)を免疫して脾臓細胞を摘出し、マウス骨髄腫細胞と細胞融合を通じてハイブリドーマ細胞を作製した。
細胞融合に用いるマウス骨髄腫細胞はHGPRT(Hypoxanthine Guanidine-Phosphoribosyl-Transferase) を持っていないため、HAT培地では生存できないが、ハイブリドーマは脾臓細胞と融合することでHAT培地で生存できる。これを利用すればハイブリドーマのみを増殖させることができるので、通常はハイブリドーマを確立させるまでHAT培地で増殖させた。
【0094】
増殖したハイブリドーマの中からCD47と結合する抗体を産生するハイブリドーマを選別するために限界希釈法を用いた。まず96ウェル当たり1細胞以下になるようにし、1つの細胞から増殖したクローンから得られた抗体がCD47と結合するかどうかをELISAで確認し、CD47と結合するクローンを選別した。上記の過程を3回繰り返し、CD47と結合する抗体を生産するハイブリドーマを選別した。このような方法でCD47に結合する抗体を得た。
【0095】
上記抗体は3A5と命名し、それらの塩基配列とアミノ酸配列を分析した。配列分析結果による各抗体の重鎖可変部位及び軽鎖可変部位に対する配列情報は下記表1に示し、表1で下線を引いた部分は相補的決定部位(complementarity determining region; CDR)を意味する。
【0096】
【0097】
実施例2 : 選抜した抗体のCD47に対する特異性確認 - ELISAとフローサイトメーター(flow cytometer)
2-1: ELISA分析
本発明では、上記実施例1で確立した3A5抗体のCD47に対する特異性を確認するために、ELISA分析を行った。
【0098】
まず、CD47ペプチドをコードするために、CD47タンパク質(Acrobiosystems、cat#CD7-HA2E9)を100 ng/ウェルになるように96ウェルプレートに分注した後、4℃で一晩反応させた。その後、3%BSAを含む1 X PBSTを処理した後、室温で30分間ブロックした。
【0099】
3A5抗体を生産する各クローンのハイブリドーマ細胞培養液3μlを各ウェルに処理した後、室温で2時間反応させた後、1 X PBSTで3回洗浄した。2次抗体(anti-HRP、1:10、000)を処理して室温で30分間反応させた後、1 X PBSTで3回洗浄した後、発色のためにTMBを処理して室温で5分間反応させた。最後に1N H2SO4の停止液(stop solution)を処理して反応を終了させた後、450nmで吸光度を測定した。
【0100】
【0101】
【0102】
その結果、表3に示すように、本発明で選別した3A5抗体がCD47に特異的に結合することを確認した。
2-2: フローサイトメーター(flow cytometer)を用いた分析
本発明では、上記実施例1で確立した3A5抗体のCD47に対する特異性を確認するために、フローサイトメトリーを実施した。
【0103】
まず、CD47を過発現する乳癌細胞株MCF-7(1 X 107個)と3A5抗体(1μg)を30分間反応させた後、2次抗体で表面(surface)を染色した後、フローサイトメーターで測定した。
【0104】
ポジティブコントロールとしてCD47抗体(Biolegend PE anti-human CD47、cat# 323108、5μl)を、2次抗体としてPE-コンジュゲーションされた抗マウスIgG抗体(PE-conjugated goat anti-mouse IgG; Biolegend Inc.、cat# 405307、米国、5μl)を使用した。
【0105】
【0106】
その結果、
図1および表4に示すように、3A5抗体はCD47を過剰発現する細胞と特異的に結合することを確認した。
実施例3 : 3A5抗体基盤のヒト化抗体製造
上記実施例1で選別した3A5抗体をヒトに対応する構造に変更したヒト化抗体(humanized antibody)を製造した。
【0107】
具体的には、ヒト抗体の生殖系配列(germline sequence)をフレーム(frame)として、CD47と結合するマウス抗体のCDRをヒト抗体のCDRを交換するCDR-グラフト(CDR grafting)法により、マウス3A5抗体をヒト化した抗体16種を製作した。ヒト化抗体はそれぞれHu3A5(V1)、Hu3A5(V2)、Hu3A5(V3)、Hu3A5(V4)、Hu3A5(V5)、Hu3A5(V6)、Hu3A5(V7)、Hu3A5(V8)、Hu3A5(V9)、Hu3A5(V10)、Hu3A5(V11)、Hu3A5(V12)、Hu3A5(V13)、Hu3A5(V14)、Hu3A5(V15)およびHu3A5(V16) と命名し、アミノ酸配列を解析した。
【0108】
配列分析結果による抗体の重鎖可変部位及び軽鎖可変部位に対する配列情報を下記表5ないし表20に示した。下線部は相補的決定部位(complementarity determining region; CDR)を意味し、16種のヒト化3A5抗体のCDRは全て上記マウス3A5抗体(表1)のCDRと同じである。
【0109】
表5ないし表20において、scFvは軽鎖可変部位-リンカー-重鎖可変部位構造からなる抗体を意味し、scFvアミノ酸配列及びscFv塩基配列で下線を引いた部分はリンカー部分を意味する。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
実施例4:ヒト化3A5抗体のCD47に対する特異性確認 - ELISAとフローサイトメーター(flow cytometer)
4-1: ELISA分析
本発明では、上記実施例3で確立したヒト化抗体16種をCD47に対する特異性を確認するために、ELISA分析を行った。
【0127】
まず、CD47ペプチドをコードするために、CD47タンパク質(Acrobiosystems、cat#CD7-HA2E9)を100 ng/ウェルとなるように96ウェルプレートに分注し、4℃で一晩反応させた。その後、3%BSAを含む1 X PBSTを処理した後、室温で30分間ブロックした。
【0128】
精製された0.8 μgのヒト化抗体を各ウェルに処理した後、室温で2時間反応させた後、1 X PBSTで3回洗浄した。2次抗体(anti-HRP、1:5、000)を処理して室温で30分間反応させた後、1 X PBSTで3回洗浄した後、発色のためにTMBを処理して室温で5分間反応させた。最後に1N H2SO4の停止液(stop solution)を処理して反応を終了させた後、450nmで吸光度を測定した。
【0129】
【0130】
【0131】
その結果、表22に示すように、本発明で選抜したHu3A5(V1)、Hu3A5(V2)、Hu3A5(V3)、Hu3A5(V4)、Hu3A5(V5)、Hu3A5(V1)、Hu3A5(V6)、Hu3A5(V7)、Hu3A5(V8)、Hu3A5(V9)、Hu3A5(V10)、Hu3A5(V11)、Hu3A5(V12)、Hu3A5(V13)、Hu3A5(V14)、Hu3A5(V15)、および Hu3A5(V16)抗体がCD47に特異的に結合することを確認した。
【0132】
4-2:フローサイトメトリーを用いた解析
本発明では、上記実施例3で確立した16種のヒト化3A5抗体のCD47に対する特異性を確認するために、フローサイトメトリーを実施した。
【0133】
まず、CD47を過発現する乳癌細胞株MCF-7(1 x 107個)とヒト化された16種の3A5抗体(1 μl)それぞれを30分間反応させた後、2次抗体で表面(surface)を染色した後、フローサイトメーターで測定した。
【0134】
陽性対照群(positive control)としてCD47抗体(Biolegend PE anti-human CD47、cat# 323108、5μl)を、2次抗体としてPE-コンジュゲーションされた抗マウスIgG抗体(PE-conjugated goat anti-mouse IgG; Biolegend Inc.、cat# 405307、米国、5μl)を使用した。
【0135】
その結果、
図2に示すように、16種のヒト化3A5抗体は全てCD47を過剰発現する細胞と特異的に結合することを確認した。
実施例5:ヒト化3A5抗体のCD47-SIRPα結合遮断能の確認
癌細胞で発現されるCD47とマクロファージ上のSIRPα結合は、食作用を陰性に調節して癌細胞の免疫回避を誘導する。本発明では、ヒト化Hu3A5(V10)抗体がCD47-SIRPαの相互作用を遮断するかどうかを確認しようとした。
【0136】
CD47を発現するMCF-7細胞に10-1、100、101、102、103、104、105、106および107ng/ml濃度のHu3A5(V10)抗体をそれぞれ処理して、MCF-7細胞にHu3A5(V10)抗体が結合するようにした。次に、上記Hu3A5(V10)抗体が付着したMCF-7細胞とPEが付いたSIRPαタンパク質(Acrobiosystems、cat#SIA-HP252)を反応させた後、SIRPαが細胞表面のCD47と結合する程度をフローサイトメトリーで分析した。
【0137】
その結果、
図3に示すように、本発明のヒト化3A5(V10)抗体は、CD47-SIRPα結合を効果的に遮断することを確認した。
実施例6:ヒト化3A5抗体によるマクロファージのマクロファージ作用を向上させる効果を確認した。
【0138】
正常人の血液から末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll-Paqueで分離してAIM-Vメディアが入った24ウェルプレートに入れ、単球(monocyte)が底につくのを待ってから、単球がマクロファージ(macrophage)に分化するようにAIM-V培地で7日間培養した。
【0139】
末梢血単核細胞(PBMC)をCFSEをつけた低猫細胞と共培養(co-culture)した後、Hu3A5(V10)抗体と共に上記マクロファージが分化した共培養プレートに添加した後、マクロファージが低猫細胞を消化する食作用をCFSE+CD14+細胞で分析した。Hu3A5(V10)抗体は0.01、0.1、1および10 μg/ml濃度になるようにそれぞれ添加し、対照群として10 μg/ml濃度のヒトlgG(hlgG)を利用した。
【0140】
その結果、
図4に示すように、本発明のヒト化Hu3A5(V10)抗体は、CD47を過剰発現する癌細胞と結合し、マクロファージの癌細胞食作用を促進することを確認した。
実施例7:ヒト化3A5抗体の赤血球凝集の有無の確認
本発明では、ヒト化3A5抗体が赤血球凝集反応を誘導するかどうかを確認するために、Hu3A5(V10)抗体と市販の抗CD47抗体(clone#CC2C6)の赤血球/血小板結合の有無及び赤血球凝集反応の有無を確認した。
【0141】
健康なボランティアから採血した血液を1 mmol/l EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)を含むPBSで3回洗浄し、洗浄した血液を1:400の比率で1 mmol/l EDTAを含むPBSに希釈して人間のRBC(red blood cell)を準備した。洗浄したRBCを96-wellプレート(96-well round culture plate)に100 μl/wellずつ分注し、抗CD47抗体(anti-human CD47 mAb、CC2C6 clone)と本発明のヒト化Hu3A5(V10)抗体を0、0.1、0.5、1、5、10、25μg/mlの濃度でそれぞれ処理した。抗体を添加した96-wellプレートを37℃培養器で2時間培養して赤血球凝集反応(RBC hemagglutination)を確認した。
【0142】
図5に示すように、市販の抗CD47抗体(clone#CC2C6)は赤血球と反応して赤血球凝集反応を誘導したのに対し、本発明のヒト化Hu3A5(V10)抗体は赤血球及び血小板と結合せず(
図5A)、赤血球凝集反応も誘導しないことが分かった(
図5B)。
【0143】
実施例8:3A5抗体によるCD47過発現腫瘍の成長抑制効能の確認
本発明では、3A5抗体がCD47が発現される腫瘍の成長を阻害するかどうかを確認するために、
図6Aの模式図に示した方法のように動物実験を行った。
【0144】
まず、C57BL/6(6週齢、雌)マウスに2.5×106個のヒトCD47が発現するマウス結腸腺癌細胞(murine colon adenocarcinoma cell、MC38-hCD47、Biocytogen)を皮下注射で移植した。癌細胞移植10日目、各マウスの癌組織の大きさを測定し、均一にするために以下のように4つのグループに分けた(n=5 per group)。
【0145】
1) Rat IgG投与群(対照群)
2) 抗PD-1抗体投与群。
3) 抗CD47抗体(3A5抗体)投与群
4) 抗PD-1抗体および抗CD47抗体(3A5抗体)併用投与群
各実験群に合わせて200μg濃度の抗体をグループ別にそれぞれ腹腔内投与し、5日間隔で計3回投与した。抗体投与と一緒に癌組織の大きさを定期的に測定して癌組織の成長を測定した。
【0146】
その結果、
図6Bに示すように、3A5抗体単独投与群でCD47を過発現する腫瘍の成長が抑制されることを確認し、特に3A5抗体及び抗PD-1抗体併用投与群の腫瘍成長抑制効能が最も優れていることを確認した。これは、免疫関門阻害剤である抗PD-1抗体と本発明の3A5抗体を併用投与する場合、腫瘍治療に対する相乗効果を示すことを意味する。
【0147】
実施例9:ヒト化3A5抗体によるCD47過剰発現腫瘍の成長抑制効能の確認
ヒト化3A5抗体の腫瘍成長抑制効能を確認するために、マウスCD47及びSIRPα遺伝子がヒトCD47及びヒトSIRPα遺伝子に置き換えられたC57BL/6-hCD47/hSIRPαノックインマウス(C57BL/6-hCD47/hSIRPα knock-in mouse、hCD47 KI)を調製した。
【0148】
25匹のC57BL/6-hCD47/hSIRPα (hCD47 KI、female、6週齢)に2.5×106個のヒトCD47が発現するマウス結腸腺癌細胞(murine colon adenocarcinoma cell、MC38-hCD47、Biocytogen)を皮下移植した。癌細胞移植10日目に各マウスの癌組織サイズを測定した後、25匹のマウスのうち20匹を選定し、均等にするために以下のように4つのグループに分けた(n=5 per group)。
【0149】
1) Rat IgG投与群(対照群)
2) 抗PD-1抗体投与群
3) 抗CD47抗体(3A5抗体)投与群
4) 抗PD-1抗体および抗CD47抗体(3A5抗体)併用投与群
各実験群に合わせて200μg濃度の抗体をグループごとにそれぞれ腹腔内投与し、5日間隔で計4回投与した。抗体投与と一緒に癌組織の大きさを定期的に測定して癌組織の成長を測定した。
【0150】
上記実施例10と同様に、ヒトCD47が発現するラット結腸腺癌細胞をマウスに移植した後、対照抗体(Rat IgG)、抗PD-1抗体、抗CD47抗体(Hu3A5(V10)抗体)、および抗PD-1抗体+抗CD47抗体(Hu3A5(V10)抗体)をそれぞれ投与した(
図7A)。
【0151】
その結果、Hu3A5(V10)抗体単独投与群で腫瘍の成長が抑制されることを確認し、特にHu3A5(V10)抗体及び抗PD-1抗体併用投与群の腫瘍成長抑制効能が最も優れていることを確認した。
【0152】
また、最後の抗体投与後、実験を終了した癌細胞移植32日目のC57BL/6-hCD47/hSIRPα溶解マウスの主要臓器(肝臓、肺、腎臓)を分離し、10%ホルマリン溶液に浸して1日間組織を固定した。固定された各組織はパラフィンワックスに埋め込み(embedding)し、5 μmの厚さで切片を作り、ガラススライド(glass slide)に取り付けた。各スライドはH&E染色キット(Hematoxylin and Eosin stain kit; VECTOR laboratories、CAT #: H-3502)を用いてH&E(hematoxylin and eosin)染色した。染色が完了した各組織は、スライドスキャナー(Vectra Polaris Imaging system、PerkinElmer)を用いて画像を取得した。
【0153】
その結果、
図8に示すように、抗体投与でも炎症による主要な組織損傷は観察されなかった。
[産業上利用可能性]
本発明のヒト化抗CD47抗体は、CD47-SIRPα結合を遮断するだけでなく、CD47を過剰発現する細胞と結合してマクロファージによるマクロファージ作用を促進し、CD47を発現する腫瘍の成長を抑制することができるので、CD47の過剰発現による免疫反応が抑制される疾患または腫瘍の予防または治療に適用することができる。
【配列表】
【国際調査報告】