(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】マカウバ果実由来の食物繊維調製物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/21 20160101AFI20240717BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20240717BHJP
A23L 29/206 20160101ALI20240717BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20240717BHJP
A23K 50/40 20160101ALI20240717BHJP
【FI】
A23L33/21
A23L19/00 A
A23L29/206
A61K8/9794
A23K50/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580980
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022067694
(87)【国際公開番号】W WO2023275026
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】102021116922.4
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591037214
【氏名又は名称】フラウンホッファー-ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ
(71)【出願人】
【識別番号】522323465
【氏名又は名称】インスティトゥート デ テクノロジア デ アリメントス (アイティエーエル)
(71)【出願人】
【識別番号】524001994
【氏名又は名称】インスティトゥート アグロノミコ カンピーナス アイエーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】トレド エ シルヴァ セルジオ エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥアー ガブリエーレ
(72)【発明者】
【氏名】アイズナー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ミッターマイヤー ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ムレイニー イサベル
(72)【発明者】
【氏名】アパレシーダ フェラーリ ロゼリ
(72)【発明者】
【氏名】マーティンズ モレイラ アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】バッタリア ダ シルヴァ リディアネ
(72)【発明者】
【氏名】コロンボ カルロス
【テーマコード(参考)】
2B005
4B016
4B018
4C083
【Fターム(参考)】
2B005LB04
4B016LC04
4B016LG01
4B016LK01
4B016LK03
4B016LP01
4B018MD33
4B018MD48
4B018ME12
4C083AA111
(57)【要約】
本発明は、食物繊維調製物およびその製造方法に関する。該食物繊維調製物は、マカウバ果実の果肉から製造され、25重量%超、好ましくは30重量%超の食物繊維含有量を有し、20重量%未満、好ましくは10重量%未満の脂肪含有量を有し、20重量%未満、好ましくは15重量%未満の水含有量を有し、かつCIE-L*a*b*比色定量により求められたL*値が84超、好ましくは90超である淡色を有する。該調製物は、該食物繊維調製物に対するアルコール・水可溶性物質の割合が、該調製物の重量に関して40%未満であることを特徴とする。該調製物は、優れた工業的機能特性および官能特性を示し、食品、化粧品、ペットフードおよび工業用途に適しており、化学修飾なしに安価に製造可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マカウバ果実の果肉から製造された食物繊維調製物であって、前記食物繊維調製物は、
- AOAC Internationalの参照方法991.43に準拠して求められた25重量%超、好ましくは30重量%超の食物繊維含有量を有し、
- 20重量%未満、好ましくは10重量%未満の脂肪含有量を有し、
- 20重量%未満、好ましくは15重量%未満の水含有量を有し、かつ
- CIE-L
*a
*b
*比色定量により求められたL
*値が84超である淡色を有し、
- 前記食物繊維調製物に対するアルコール・水可溶性物質の割合が、前記調製物の重量に関して40%未満である、食物繊維調製物。
【請求項2】
前記アルコール・水可溶性物質の割合が、35重量%未満、有利には30重量%未満である、請求項1記載の食物繊維調製物。
【請求項3】
前記アルコール・水可溶性物質の割合が、20重量%未満、有利には10重量%未満、好ましくは5重量%未満である、請求項1記載の食物繊維調製物。
【請求項4】
前記食物繊維調製物が、5重量%未満、有利には3重量%未満、特に有利には2重量%未満の脂肪含有量を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の食物繊維調製物。
【請求項5】
前記食物繊維調製物が、10重量%未満、有利には7重量%未満の水含有量を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の食物繊維調製物。
【請求項6】
前記食物繊維調製物が、40重量%超、好ましくは50重量%超、特に有利には60重量%超の食物繊維含有量を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の食物繊維調製物。
【請求項7】
前記食物繊維調製物が、乾物ベースで10重量%未満、より良好には5重量%未満、有利には2重量%未満の皮含有量を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の食物繊維調製物。
【請求項8】
前記食物繊維調製物が、CIE-L
*a
*b
*比色定量により求められたL
*値が90超、有利には95超である淡色を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の食物繊維調製物。
【請求項9】
前記食物繊維調製物が、D
90体積基準粒度が1000μm未満、有利には500μm未満、特に好ましくは250μm未満または100μm未満である計量供給可能な粉末、粒状物またはミールとして形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の食物繊維調製物。
【請求項10】
前記食物繊維調製物が、1~8000ppm、有利には10~100ppmの有機溶媒の重量割合を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の食物繊維調製物。
【請求項11】
前記食物繊維調製物が、1000ppm超8000ppm以下のエタノールまたはプロパノールの重量割合を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の食物繊維調製物。
【請求項12】
前記食物繊維調製物が、以下の特性:
- 35m
2/g 乾燥調製物超、好ましくは55m
2/g 乾燥調製物超、特に好ましくは70m
2/g 乾燥調製物超の乳化活性指数、および/または30分超、好ましくは60分超、特に好ましくは120分超のエマルション安定性、
- 400mL/g 乾燥調製物超、より良好には500mL/g 乾燥調製物超、特に600mL/g 乾燥調製物超の乳化容量、
- 200体積%超、好ましくは400体積%超、特に好ましくは600体積%超の発泡活性、および25体積%超、好ましくは50体積%超、特に好ましくは75体積%超の発泡安定性、
- 1.5mL/g TSより大きい、好ましくは3mL/g TS超、特に好ましくは4mL/g TS超の水結合能、ならびに
- 1.5mL/g TSより大きい、好ましくは3.5mL/g TS超、特に好ましくは5mL/g TS超の油結合能
のうちの1つ以上を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の食物繊維調製物。
【請求項13】
前記食物繊維調製物が、以下の特性:
- 25m
2/g 乾燥調製物超、好ましくは35m
2/g 乾燥調製物超、特に好ましくは45m
2/g 乾燥調製物超の乳化活性指数、および/または30分超、好ましくは60分超、特に好ましくは120分超のエマルション安定性、
- 300mL/g 乾燥調製物超、より良好には400mL/g 乾燥調製物超、特に500mL/g 乾燥調製物超の乳化容量、
- 200体積%超、好ましくは400体積%超、特に好ましくは600体積%超の発泡活性、および25体積%超、好ましくは50体積%超、特に好ましくは75体積%超の発泡安定性、
- 1.5mL/g TSより大きい、好ましくは3mL/g TS超、特に好ましくは4mL/g TS超の水結合能、ならびに
- 1.5mL/g TSより大きい、好ましくは3.5mL/g TS超、特に好ましくは4.5mL/g TS超の油結合能
のうちの1つ以上を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の食物繊維調製物。
【請求項14】
マカウバ果実の果肉から食物繊維調製物を製造する方法であって、少なくとも以下:
- 脂肪含有量が乾物ベースで3重量%~60重量%である、マカウバ果実由来の部分脱油パルプを提供するステップ;
- 前記部分脱油パルプの前記脂肪含有量が比較的多い場合、前記部分脱油パルプの前記脂肪含有量を、1つ以上の抽出法により、20重量%未満、有利には10重量%未満の値に低下させるステップ、および
- 前記パルプ中のアルコール・水可溶性物質の含有量を、1つ以上の抽出法により、または水性抽出により前記パルプから得られたフラクションを用いて沈殿もしくは乾式分別により、乾物ベースで40重量%未満、好ましくは35重量%未満の値に低下させるステップ
を有する、方法。
【請求項15】
皮含有量が乾物ベースで10%未満、より良好には5%未満、有利には2重量%未満であり、内果皮および核の含有量が乾物ベースで3%未満、より良好には2%未満、有利には1重量%未満である前記部分脱油パルプを提供する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記パルプ中のアルコール・水可溶性物質の含有量を、30重量%未満、有利には20重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満の値に低下させる、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
前記パルプ中のアルコール・水可溶性物質の含有量の低下を、1つ以上の固液抽出法により行う、請求項14から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記パルプの前記脂肪含有量を、5重量%未満、有利には3重量%未満、好ましくは2重量%未満の値に低下させる、請求項14から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
ある割合の脂肪およびアルコール・水可溶性物質を、40~70℃、有利には50~65℃の温度で、重量比が94:6~90:10であるエタノールと水との1つ以上の混合物を用いて前記パルプから同時に分離する、請求項14から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記パルプ中の脂肪およびアルコール・水可溶性物質の割合のさらなる低下を、有利には40~90℃の温度で、水および/または重量比が90:10未満、より良好には80:20未満であるアルコールと水との1つ以上の混合物を利用することにより行う、請求項19記載の方法。
【請求項21】
アルコールとして、プロパノールまたはエタノールを使用する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記温度を、65~85℃、好ましくは80℃の値に設定する、請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
前記食物繊維調製物に、マカウバタンパク質ミールまたは他の植物性タンパク質調製物を添加し、前記添加を、前記添加後の前記食物繊維調製物が10~90重量%、有利には20~80重量%、特に有利には40~60重量%のタンパク質割合を有するような量で行う、請求項14から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記アルコール・水可溶性物質の含有量を低下させるための1つ以上の抽出法によって前記パルプから濃縮物を得て、前記濃縮物を水性抽出、次いでアルコールによる沈殿および乾燥に供して水溶性食物繊維調製物を得る、請求項14から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記水性抽出によって前記パルプから得られ、次いで沈殿に供されたフラクションを乾燥させて水溶性食物繊維調製物を得る、請求項14から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記水性抽出の際に残留する非水溶性成分の第2のフラクションを、非水溶性食物繊維調製物として提供する、請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
前記水性抽出の際に残留する非水溶性成分の第2のフラクションを、0.05~0.1mol/LのNaOHもしくは炭酸ナトリウムと0.5mmolのEDTAもしくはCDTAとを含むNaOH-EDTA溶液または0.5%(m/v)のシュウ酸アンモニウム溶液を用いて、可溶性の第3のフラクションと不溶性の第4のフラクションとに分離し、前記第3のフラクションを、次いで乾燥またはアルコール沈殿に供する、請求項24または25記載の方法。
【請求項28】
前記第4のフラクションを、濃アルカリ液によって、前記アルカリ液に可溶な第5のフラクションと、前記アルカリ液に不溶な第6のフラクションとに分離し、前記第5のフラクションを中和し、乾燥させるかまたはアルコール沈殿に供する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記食物繊維調製物または1つ以上の前記フラクションを乾燥後に粉砕して、D
90体積基準粒度が1000μm未満、有利には500μm未満、特に好ましくは250μm未満または100μm未満である計量供給可能な粉末、粒状物またはミールにする、請求項14から28までのいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
前記乾燥の前に、70~120℃、有利には70~100℃、特に有利には70~80℃の範囲の温度で所定の加熱を行い、前記加熱の時間が、60分以下、有利には30分未満、特に有利には15分未満である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
マカウバ果実の果肉から製造された水溶性食物繊維調製物であって、前記水溶性食物繊維調製物は、
- AOAC Internationalの参照方法991.43に準拠して求められた60重量%超、好ましくは70重量%超、より良好には80重量%より高い食物繊維含有量を有し、かつ
- 20重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満の脂肪含有量を有し、
- 前記食物繊維調製物に対するアルコール・水可溶性物質の割合が、前記調製物の重量に関して20%未満、有利には15%未満、より良好には10%重量未満である、水溶性食物繊維調製物。
【請求項32】
前記水溶性食物繊維調製物が、以下の特性:
- せん断速度100s
-1、25℃における水中1%分散液(m/v)の粘度が、50cPより高く、より良好には70cPより高く、より良好には80cPより高い;
- せん断速度100s
-1、25℃における水中5%分散液(m/v)の粘度が、3000cPより高く、有利には4000cPより高く、より良好には6000cPより高い;
- 油結合能が、0.5ml/g TS超、有利には1.0ml/g TS超である
のうちの1つ以上、より良好には複数を有する、請求項31記載の水溶性食物繊維調製物。
【請求項33】
マカウバ果実の果肉から製造された非水溶性食物繊維調製物であって、前記非水溶性食物繊維調製物は、
- AOAC Internationalの参照方法991.43に準拠して求められた60重量%超、好ましくは70重量%超、より良好には80重量%より高い食物繊維含有量を有し、かつ
- 20重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満の脂肪含有量を有し、
- 前記食物繊維調製物に対するアルコール・水可溶性物質の割合が、前記調製物の重量に関して20%未満、有利には15%未満、より良好には10%重量未満である、非水溶性食物繊維調製物。
【請求項34】
前記非水溶性食物繊維調製物が、以下の特性:
- 1.0ml/g TS超、好ましくは3ml/g TS超、特に好ましくは4ml/g TS超、なおもより良好には6ml/g TS超の水結合能;
- 1.0ml/g TS超、好ましくは3.0ml/g TS超、特に好ましくは4ml/g TS超、なおもより良好には6ml/g TS超の油結合能
のうちの1つ以上、より良好には複数を有する、請求項33記載の非水溶性食物繊維調製物。
【請求項35】
食品、化粧品またはペットフードの原材料としての、請求項1から13までのいずれか1項記載のもしくは請求項31から34までのいずれか1項記載の食物繊維調製物、または請求項26から28までのいずれか1項記載の方法によって得られたフラクションの使用。
【請求項36】
工業用途での、または工業的助剤としての、特に塗料およびワニス用の乳化剤、工業用発泡剤、工業用フィルム、箔ならびにコーティング材、接着剤、潤滑剤もしくは掘削用流体としての、請求項1から13までのいずれか1項記載のもしくは請求項31から34までのいずれか1項記載の食物繊維調製物、または請求項26から28までのいずれか1項記載の方法によって得られたフラクションの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マカウバ果実由来の、特に食品、化粧品、ペットフードおよび工業用途の機能性食物繊維調製物、ならびに該調製物の製造方法に関する。
【0002】
背景技術
食物繊維は、主に植物細胞壁(PCW)の多糖類およびリグニンから構成されている。ペクチン、ヘミセルロースおよびセルロースは、植物細胞壁の主要成分であり、植物種によって異なる割合で存在する。これらには、ガラクツロナン、アラビナン、キシラン、マンナン、キシログルカンおよびβ-グルカンなどの様々な多糖類群が含まれる[1~3]。単糖類の組成、結合の種類およびパターン、鎖の形態、重合および置換の度合いからなる構造の多様性が、細胞壁多糖類の特異的な性質を決定づけている。
【0003】
天然食物繊維や増粘剤は、人間やペットの栄養補給や工業用途での使用において、ますます重要性を増している。栄養生理学的に効果的な食物繊維、増粘剤、工業用繊維ならびにバイオベースポリマーおよび包装材料の原料に対する需要の高まりから、簡単かつコスト効率よく提供でき、化学的に変性しておらず、製造時に高い資源消費を引き起こさない食物繊維調製物に対するニーズが高まっている。穀類や豆類に由来する一部の食物繊維調製物を除き、多くの天然食物繊維は、食品や工業用途での使用に優れた機能特性を有していない。
【0004】
水溶液または懸濁液中で増粘、乳化、発泡およびゲル形成特性を有する先行技術による機能性食物繊維調製物は、例えば木材、藻類または微生物から得ることができる。このような高品質の調製物の例としては、特にカルボキシメチルセルロース、カラゲナン、アルギネートまたはキサンタンがある。原料、濃度、pH値および温度に応じて、これらは水との混合物中で特定のレオロジー特性を示し、加熱後にゲルを形成するか、または箔の形態のフィルムとしてもしくは射出成形部品として成形することができ、したがって、例えば石油ベースのプラスチックの代替品としての用途で用いることができる。しかし、これらの食物繊維調製物は、複雑な処理および/または修飾を必要とし、その結果、生産コストが増大し、また広範な加工ステップにより資源消費量が増加する。
【0005】
ここで、例えば植物油の採取時に生じる加工残渣に対して大きな可能性が拓かれる。今日まで、植物油から得られるこれらのフラクションは、主に肥料や家畜用飼料として利用されてきた。これらのフラクションは、抗栄養性の付随物質ゆえに、通常は飼料としての価値は低い。菜種、ヒマワリまたはアマニなどの種子から油を分離した後の残渣には、食物繊維の他に、さらにある割合の皮や二次的な植物物質が含まれている。その結果生じる濃色、不快な苦味や渋味、草のような味、そして部分的に多量の抗栄養成分、例えばフェノール酸、青酸配糖体、グルコシヌレート、オリゴ糖などにより、植物油の採取時に生じた残渣のほとんどは、食品分野やペットフードには使用できず、そしてその色のために多くの工業用途にも使用できない。
【0006】
これに関連して、本発明に記載されるような食物繊維調製物の可能な供給源として、マカウバ果実(アクロコミア亜種(Acrocomia ssp.))からの採油の残渣を使用することもできる。
【0007】
マカウバは、熱帯・亜熱帯アメリカ原産のヤシの一種である。この植物の果実は、外皮(外果皮)、油分および繊維質に富んだ果肉(パルプ)、内皮(内果皮)、ならびに核からなる。パルプ由来の油は、機械的圧搾および溶媒抽出によって得られ[4,5]、主にバイオ燃料の生産に使用されるが、その際、繊維質に富む脱油パルプが残留する。この副産物は果実総重量の約25%を占め、現在では家畜用飼料として利用されるか、または廃棄処分されている[7]。
【0008】
このパルプはこれまでほとんど利用されてこなかったが、食品への応用の可能性はすでに報告されている。全脂マカウバパルプミールは、ビスケット、カップケーキ、プロバイオティクス飲料、ミューズリーバー、ケーキおよびアイスクリームなどの食品に使用されている。しかし、パルプミールの高い油含有量は、主に油の酸化および不快な官能特性を有する酸化生成物の発生により、食品産業用の原材料としての使用を損なう。対照的に、本発明は、高い機能性および優れた官能特性を有する食物繊維調製物の開発を目的とする。このようなことが可能であるか否かは、これまで知られていなかった。
【0009】
マカウバパルプの工業用途やバイオテクノロジー用途への適性については、先行技術ではほとんど知られていない。Da Silvaらによって、脱油マカウバパルプミールを用いて製造された生分解性フィルムが製造された[6]。この研究では、脱脂ミールを水に分散させ、可塑剤としてグリセリンを加え、ペトリ皿に流し込んでバイオフィルムを製造した。得られたバイオフィルムは、黄色味を帯びて不透明であり、これは、箔にとって当然のことながら望ましくない性質である。
【0010】
先行技術には、マカウバパルプを加工するための圧搾法および溶媒抽出法の使用も記載されている。圧搾法には連続式圧搾法またはバッチ式油圧圧搾法があり、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどの様々な溶媒を使用することができる[4,5,6]。しかし、特定の処理が残渣の組成や機能特性にどのような影響を与えるかは、これらの文献からは明らかではない。例えば、Trentiniら[5]は、様々な溶媒(酢酸エチル、n-ヘキサンおよびイソプロパノール)によるマカウバパルプの処理について述べている。著者らによれば、脱油パルプの組成も機能性も、使用される溶媒の違いには影響を受けない。さらに、油の抽出残渣の機能特性および官能特性を向上させるための主要成分に対するこのようなプロセスの影響については述べられていない。また、食品、動物用飼料、化粧品および工業用途向けの高機能成分を得ることを目的とした残渣の後処理についても知られていない。したがって、マカウバパルプから機能的で官能的に魅力的な調製物や原材料を提供することは、先行技術によれば知られていない。
【0011】
特許文献にも、このような機能的かつ官能的に有益な調製物に関する言及はない。例えば、ブラジル特許出願公開第102012029493-1号明細書には、全脂または部分脱脂マカウバパルプを家畜用飼料として使用することが記載されている。該文献には、機能性食物繊維調製物としてのマカウバパルプの使用も、その可能な採取方法も記載されていない。ブラジル特許出願公開第102014024972-9号明細書には、鉱業用のアニオン捕捉剤としてのマカウバパルプ油の使用が記載されている。ブラジル特許出願公開第102016002700-4号明細書には、キシリトール製造へのマカウバパルププレスケーキの使用が記載されている。これは、まずマカウバパルプ由来の食物繊維を加水分解することにより達成される。官能的に魅力的な機能性食物繊維調製物へのパルプの使用に関する言及は開示されていない。ブラジル特許出願公開PI 0906455-9には、固相発酵によるリパーゼ生産へのマカウバパルププレスケーキの使用が記載されている。ブラジル特許出願公開第102015011035-9号明細書には、フルーツタブレットの製造へのマカウバパルプの使用が記載されている。このために、マカウバパルプをマルトデキストリンおよび水と混合し、混合物を矩形に成形する。凍結乾燥後にフルーツタブレットが得られる。このように、これらのいずれの文献にも、マカウバパルプから食品、ペットフード、動物用飼料、化粧品および工業用途向けの、官能的に魅力的で淡色でかつ機能的な食物繊維調製物が得られるか否かについて、何ら示唆が与えられていない。
【0012】
本発明の課題
本発明の課題は、優れた工業的機能特性と、淡色や中性的な味のような魅力的な官能特性とを備えた食物繊維調製物を低コストで化学修飾(chemische Modifikation)なしに提供し、それにより先行技術の既存の欠点を回避することであった。食物繊維調製物は、特に食品、ペットフードの製造および工業用途に適していることが望ましい。
【0013】
発明の説明
この課題は、請求項1および14記載の食物繊維調製物および方法によって解決される。食物繊維調製物および方法の有利な実施形態は、従属請求項の主題であるか、または以下の説明および実施例から得ることができる。
【0014】
本特許出願において、食物繊維という概念は、CODEX Alimentariusによる、ヒトの小腸内の内因性酵素によって加水分解されない炭水化物ポリマーとしての広範な定義に基づいている。特に、本特許出願における食物繊維という用語は、主に植物細胞壁の多糖類(セルロース、ヘミセルロース、ガムおよびペクチンを含む)およびリグニンを指し、これは、消化酵素による加水分解に耐性があり、濃度78%(v/v)以上のエタノール水溶液中で沈殿する。本特許出願において、食物繊維含有量は、消化酵素、特にα-アミラーゼ、プロテアーゼおよびアミログルコシダーゼによる試料の消化後の重量測定法に基づき、ASSOCIATION OF OFFICIAL ANALYTICAL CHEMISTS(AOAC International)の公定法(AOAC Internationalの参照方法991.43)を用いて求められる。
【0015】
本発明において、マカウバ果実由来のパルプから植物油を採取する際に得られる残渣が、アルコール・水可溶性物質の一部を除去した後に十分に中性的な味を有し、したがって、この残渣を、原料および加工のコストが低いにもかかわらず、食品、ペットフードまたは工業用途で、例えば先行技術の説明の導入部で示されたすべての用途に向けて非常に優れた工業的機能特性および官能特性を有する高品質の食物繊維調製物として、さらなる機能化なしに直接使用できることが判明した。
【0016】
本発明による調製物は、20重量%未満、有利には10重量%未満、より良好には5重量%未満、特に有利には3重量%未満、さらに有利には2重量%未満の油含有量を有する。微生物学的特性および官能特性を確保するために、調製物の水含有量は、20重量%未満、有利には15重量%未満、特に有利には10重量%未満、より良好には7重量%未満である。水含有量を低水分量まで低下させた後、本発明による調製物に含まれる油の加水分解および酸化の進行がゆっくりとなり、したがって匂いや味の活性化合物の形成が回避されることが十分に保証される。
【0017】
本発明による調製物は、アルコール・水可溶性物質(AWS)の割合が調製物の重量に関して40%未満である場合に特に有利である。以下で、アルコール・水可溶性物質とは、エタノールの重量割合が80%であるエタノールと水との混合物に温度80℃で可溶であるすべての化合物であると理解される。他の可溶性化合物に加えて、これらは特に、単糖類、二糖類、およびモノマー単位が10個までのオリゴ糖類を含む糖類である。
【0018】
本発明による生成物は、調製物中のアルコール・水可溶性物質の割合が35重量%未満、有利には30重量%未満、特に有利には20重量%未満、なおもより良好には10重量%未満、最良には5重量%未満である場合、特に淡色であるとともに、より一層優れた機能特性を有する。アルコール・水可溶性物質を可能な限り分離することにより、食物繊維調製物の機能性および適用範囲を増大させることができる。
【0019】
驚くべきことに、大部分が糖類からなるアルコール・水可溶性物質の含有量を低下させると、官能特性が著しく向上する。これに反して先行技術からは、糖類が官能特性を向上させることが知られている。加えて、調製物は、アルコール・水可溶性物質の含有量が少ないと味がより中性的になり、本発明による調製物に含まれるアルコール・水可溶性物質が少ないほど、色がより薄くなり、オーブンまたは押出機で加熱した際の褐変もわずかになる。これは、押出機での成形が必要な加熱食品やポリマーのような加熱を必要とする用途に特に有利である。
【0020】
本発明によるマカウバ果実のパルプ由来の食物繊維調製物の重要な特性は、以下のとおりである(重量およびパーセンテージのデータは、乾物ベースである):
- 食物繊維含有量が、25重量%より高く、より良好には30重量%より高く、なおもより良好には40重量%より高く、有利には50重量%より高く、特に有利には60重量%より高い;
- 脂肪含有量が、20重量%未満、10重量%未満、有利には5重量%未満、特に有利には3重量%未満である;
- CIE-L*a*b*比色定量により求められたL*値が84超、有利には90超、特に有利には95超である淡色である;
- 食物繊維調製物に対するアルコール・水可溶性物質の割合が、食物繊維調製物の重量に関して40%未満である。
【0021】
調製物はまた、例えば乳化ならびに/または発泡ならびに/または水および/もしくは油結合性のような、少なくとも1つの、より良好には複数の機能特性を有する。これらの機能特性について、詳細に後述する。
【0022】
食物繊維調製物の粒度分布を例えば粉砕によって所定の範囲に調整した場合に、機能特性をさらに向上させることができる。粒度D90が1mm未満(D90値:粒子の体積の90%が1mm未満である)、有利には500μm未満、特に有利には250μm未満の調製物は、特に良好に計量供給可能であり、同時に機能的である。いくつかの事例では、D90値が100μm未満であると機能性をなおもさらに高めることができるため、この粒度分布を有する調製物は有利である。食物繊維調製物を比較すると、脂肪含有量がわずかに高い方が、ダスト含量が低くなるため計量供給がより容易であることがわかる。D90値が250μm未満の場合、脂肪含有量が1重量%未満では、脂肪含有量が2重量%~5重量%の場合ほど計量供給に有利ではない。したがって、食物繊維調製物を1重量%未満まで脱油しないことが有利である。これは特に、ヘキサンの代わりに例えばエタノールやプロパノールなどの親油性の低い溶媒を使用することにより達成できる。
【0023】
食物繊維調製物を溶媒で処理した後、溶媒の割合を低下させなければならない。ここでは、25~120℃、好ましくは80℃超、有利には100℃超の温度、および1bar未満、有利には500mbar未満、特に有利には200mbar未満の圧力が用いられる。
【0024】
驚くべきことに、ヘキサンやアルコールのような溶媒をわずかな割合で依然として含有する食物繊維調製物は、無溶媒調製物と比較して、溶解性および他の機能特性の点で利点を示す。したがって、有利な一実施形態では、調製物は、1~8000ppm、有利には10~100ppmの範囲の有機溶媒を含む。アルコールが使用される場合、いくつかの事例では、エタノールまたはプロパノールの含有量が1000ppm~8000ppmである場合に利点が示される。
【0025】
以下では、マカウバ果実の果肉由来の食物繊維調製物において、(比較用の)ミールと濃縮物とを区別する。本特許出願において、ミールとは、脱油の直後に得られる、すなわち、アルコール・水可溶性物質をなおも40重量%以上の割合で含む生成物を指す。濃縮物とは、含まれるアルコール・水可溶性物質がより少なく、特に40重量%未満、より良好には35重量%未満、なおもより良好には30重量%未満、有利には20重量%未満、特に有利には10重量%未満、またはさらには5重量%未満である本発明による食物繊維調製物のうちの1つを表す。
【0026】
有利な実施形態では、マカウバ食物繊維の淡色および中性的な官能特性には、加工助剤の使用が寄与し得る。これには、例えば、クエン酸、酢酸、マレイン酸のような酸や、アスコルビン酸、システインおよび亜硫酸水素ナトリウムのような酸化防止剤をアルコール・水可溶性物質の減少(Reduktion)に使用することが含まれる。さらに、窒素などの不活性ガスを生成物において直接、および/または加工プラントの雰囲気中で使用することで、酸素含有量を低下させることができ、それにより脂質および二次的な植物物質の酸化が阻止される。酸、酸化防止剤および不活性ガスは、別々に、または組み合わせて、1つのプロセスステップで、より良好には複数のプロセスステップで使用することができる。
【0027】
本出願者らは、マカウバ植物の種も調製物の特性に大きな影響を及ぼすことを見出した。アクロコミア・アクレアタ(Acrocomia aculeata)の果実由来の食物繊維調製物は、部分的に、例えばアクロコミア・トタイ(Acrocomia totai)や他の種とは、いくつかの機能特性や色において大きく異なる。A.アクレアタ(A.aculeata)由来の調製物は、例えば乳化剤として特に好適であり、しばしばA.トタイ(A.totai)よりも高い乳化活性指数を示す。例えば、A.アクレアタ(A.aculeata)由来の食物繊維ミールは、30m2/g 乾燥調製物超の乳化活性指数を有し、5分超のエマルション安定性および400ml/g 乾燥調製物より高い乳化容量を示す。A.アクレアタ(A.aculeata)由来の食物繊維濃縮物は、35m2/g 乾燥調製物超、より良好には55m2/g 乾燥調製物超、特に有利には70m2/g 乾燥調製物超の乳化活性指数を有しており、30分超、有利には60分超、特に有利には120分超のエマルション安定性を有するエマルションを生成する。A.アクレアタ(A.aculeata)由来の食物繊維濃縮物は、500mL/g 乾燥調製物超、より良好には600mL/g 乾燥調製物超、特に700mL/g 乾燥調製物超の乳化容量を有する。10~90重量%、有利には20~80重量%、特に有利には40~60重量%のマカウバタンパク質ミールまたは他の植物性タンパク質調製物の添加(パーセンテージは、添加によって得られる食物繊維調製物とタンパク質との混合物中のタンパク質割合に対するものである)によって、食物繊維調製物の乳化特性を明らかに向上させることができる。
【0028】
A.トタイ(A.totai)の果実由来の食物繊維調製物も乳化剤として適している。この食物繊維調製物により達成される乳化活性指数の値はより低いが、エマルション安定性は、A.アクレアタ(A.aculeata)より高いことが多い。例えば、A.トタイ(A.totai)由来の食物繊維ミールは、25m2/g 乾燥調製物超の乳化活性指数を有し、30分超のエマルション安定性および300mL/g 乾燥調製物超の乳化容量を有する。アクロコミア・トタイ(Acrocomia totai)由来の食物繊維濃縮物は、25m2/g 乾燥調製物超、より良好には35m2/g 乾燥調製物超、特に有利には45m2/g 乾燥調製物超の乳化活性指数を有しており、30分超、有利には60分超、特に有利には120分超、個別の事例では180分超のエマルション安定性を有するエマルションを生成する。A.トタイ(A.totai)由来の食物繊維濃縮物は、500mL/g 乾燥調製物超、より良好には600mL/g 乾燥調製物超、特に700mL/g 乾燥調製物超の乳化容量を有する。
【0029】
A.アクレアタ(A.aculeata)の果実由来の食物繊維調製物は、発泡特性をも示す。例えば、A.アクレアタ(A.aculeata)由来の食物繊維ミールは、100体積%超の発泡活性を有し、5体積%超の発泡安定性を達成する。A.アクレアタ(A.aculeata)由来の食物繊維濃縮物は、明らかにより優れた発泡特性を示す。これらは、200体積%超、有利には400体積%超、特に有利には600体積%超の発泡活性値を達成し、25体積%超、有利には50体積%超、特に有利には75体積%超、個別の事例ではさらには90体積%超の発泡安定性を達成する。
【0030】
A.トタイ(A.totai)の果実由来の食物繊維調製物は、ミールとして、すなわちアルコール・水可溶性物質を事前に分離しなくても、すでに特に優れた発泡特性を示す。例えば、A.トタイ(A.totai)由来の食物繊維ミールは、200体積%超の発泡活性を有し、25体積%超の発泡安定性を達成する。A.トタイ(A.totai)由来の食物繊維濃縮物の場合、発泡特性は同等であるが、濃縮物はさらに色が薄い。この濃縮物は、200体積%超、より良好には400体積%超、特に有利には600体積%超、いくつかの事例では700体積%超の発泡活性値を達成し、25体積%超、有利には50体積%超、特に有利には75体積%超、個別の事例ではさらには85体積%超の発泡安定性を達成する。このように、これらの調製物は、その特性および色の点で卵白に非常に近いため、本発明による調製物を卵白の植物性代用品に使用することが可能である。
【0031】
本発明による調製物の油結合値および水結合値も、他の原料由来の調製物と比較して非常に高い。これらのパラメータにおいても、濃縮物が、通常はより優れた特性を有することが判明している。A.アクエラタ(A.acuelata)由来の食物繊維ミールの水結合能は、1mL/g TSより大きい(g TS:乾物1gをベースとする)。A.アクエラタ(A.acuelata)由来の食物繊維濃縮物の水結合能は、1.5mL/g TSより大きく、有利には3mL/g TS超であり、特に有利には4mL/g TS超である。A.トタイ(A.totai)の食物繊維ミールの水結合能は、同等である。ミールは、1mL/g TSより大きい値を示す。A.トタイ(A.totai)由来の濃縮物は、1.5mL/g TSより大きい、有利には3mL/g TS超、特に有利には4mL/g TS超の水結合性を有する。
【0032】
A.アクエラタ(A.acuelata)由来の食物繊維ミールの油結合能は、1mL/g TSより大きい。A.アクエラタ(A.acuelata)由来の食物繊維濃縮物の油結合能は、1.5mL/g TSより大きく、有利には3.5mL/g TS超であり、特に有利には5mL/g TS超である。A.トタイ(A.totai)由来の食物繊維ミールの油結合能は、0.8mL/g TSより大きい。A.トタイ(A.totai)由来の濃縮物の油結合能は、1.5mL/g TSより大きく、有利には3.5mL/g TS超であり、特に有利には4.5mL/g TS超である。
【0033】
このことは、本発明によるマカウバパルプ由来の食物繊維調製物が、特にその淡色、中性的な官能特性および優れた機能性により、食品における様々な用途に非常に好適であることを示している。したがって、マカウバ果実由来のパルプを脱油し、アルコール・水可溶性物質の割合を低下させることにより、食品、例えば、フォーム(ケーキ、フィリング、ベークド品)またはエマルション(クリーム、マヨネーズ、ソース、菓子、惣菜品)およびその他多くのものの製造の用途に、天然で機能的な増粘剤または食物繊維を容易に提供することができる。本発明による濃縮物は、ペットフードへの使用にも適している。従来の家畜用飼料とは異なり、犬、猫、または嗅覚が非常に優れた他のペット用の動物用飼料では、特に典型的な植物の青臭く、草のような、豆のような、苦いまたは渋い匂いや味のトーンに関して、特に中性的な匂いや味となるよう留意すべきである。これらの官能的に中性的な属性は、本発明による調製物により達成される。
【0034】
A.トタイ(A.totai)由来の調製物は、達成可能な泡体積および淡色により、フォームやゲルに特に有利である。よって、マカウバ植物の種またはさらには品種の選択により、機能性や官能特性の面で特に適したプロファイルを得ることもできる。
【0035】
果実の成熟度の選択、またはマカウバ植物の選別された種(例えばA.アクレアタ(A.aculeata)またはA.トタイ(A.totai))に応じて、パルプから油を分離した後、およびアルコール・水可溶性物質の含有量を低下させた後に、淡黄色ないしほぼ白色を呈し、味が中性的で、非常に優れた工業的機能特性を有する食物繊維調製物が得られる。したがって、本発明による調製物は、成熟度、種、品種および成長(生育)条件に応じて、様々な用途に向けて非常に特定の選択がなされ、用途に合わせられる。したがって、非常に低コストであるにもかかわらず非常に高品質の調製物が様々な産業分野で利用可能である。
【0036】
本発明の特に有利な実施形態では、濃縮物は最大6つのさらなるフラクションに分離され、それにより特に機能的で高価値のフラクションが食物繊維調製物として得られる。これらは以下のとおりである:(1)水溶性フラクション(5~100℃の水に可溶)および非水溶性の残留フラクション(2)。フラクション(2)は、アルカリ性のキレート形成性抽出環境を用いて、第2の可溶性ペクチンフラクション(3)と不溶性フラクション(4)とに分離することができる。このために、0.05~0.1mol/LのNaOHまたは炭酸ナトリウムを使用して弱アルカリ性状態を確保し、0.5mmolのEDTAもしくはCDTAまたは0.5%(m/v)のシュウ酸アンモニウムを使用してキレート化活性を確保する。
【0037】
このフラクション(4)は、今度は高濃度水酸化カリウム溶液(1~4mol/L)を用い、任意に10~50mmolの水素化ホウ素ナトリウムを添加して、可溶性ヘミセルロースフラクション(5)とセルロースに富む不溶性残渣(6)とに分離することができる。これらのフラクションは、非常に異なる水および油結合特性を示す。例えば、フラクション(1)は、特に良好に透明に水に可溶であり、固体のゲルを形成し、可塑剤や架橋剤を添加しなくても、水の乾燥後に耐引裂性を示す可撓性のフィルムを形成することができる。フラクション(1)に含まれるアルコール・水可溶性物質が少ないほど、フィルムの特性は良好となる。したがって、フラクション(1)中のアルコール・水可溶性糖類の割合を40重量%未満、有利には30重量%未満、より良好には20重量%未満、特に有利には10重量%未満、なおもより良好には5重量%未満の値に低下させるように努める。フラクション(1)を用いて製造されたフィルムは、アルコール・水可溶性物質の含有量が少なくなるにつれて、アルコール・水可溶性物質の含有量が多いフィルムよりも透明で強度が高くなることが判明した。このことから、フラクション(1)は、特に食品、化粧品、ペットフードのフォームやゲルの用途に加え、工業用フィルム、コーティング材、接着剤などの用途にも適している。機能特性に関して、フラクション(1)は、その優れた水溶性ゆえ、非常に低いないし測定不可能な水結合性と、有利には0.5~2mL油/g TSの辛うじて認められるわずかな油結合性とによって特徴付けられる。この油結合性の値は、フラクション(3)およびフラクション(5)の特性をも特徴付けるものである。一方、フラクション(6)は、特に優れた油結合性を示し、その値は5mL油/g TS超ないし8mL油/g TS超である。
【0038】
分別ステップで生成された不溶性フラクションは、水結合性に関して特に優れた特性を示す。ここで、1mL/g TS超ないし3mL/g TS超の値を有するマカウバミールおよびマカウバ濃縮物の水結合性は、フラクション(2)、フラクション(4)、フラクション(5)およびフラクション(6)において、4mL/g TS超ないし8mL/g TS超の値まで増加する。水結合性がさほど顕著でないのは、2mL/g TS未満のフラクション(3)のみである。
【0039】
濃縮物と同様に、上記のフラクションはすべて、特に水と組み合わせて機能性が求められるあらゆる用途に使用できる。これは、あらゆる種類の食品、化粧品、ペットフード、あるいは例えば保存期間を延長するための食品上の食用または非食用のコーティング材やフィルムに適用される。食品用途では、マカウバ濃縮物は、レオロジー、ゲル形成および増粘の範囲の挙動が多くの場合同等であることから、グアーガムやローカストビーンガムと類似している。
【0040】
本発明による調製物は、工業用助剤にも適している。これらは、塗料およびワニス用の乳化剤、工業用発泡剤、工業用フィルム、箔ならびにコーティング材、接着剤、潤滑剤または石油採掘における掘削用流体であり得る。特にこの化石資源採掘の分野では、環境に優しい増粘剤にますます注目が集まっており、マカウバ調製物はその要求を非常に十分に満たすことができる。
【0041】
以下に、本発明による食物繊維調製物の製造方法について説明する。本方法は、少なくとも以下のステップを有する:
- 脂肪含有量が乾物ベースで3重量%~60重量%である、マカウバ果実、有利にはアクロコミア・アクエラタ(Acrocomia acuelata)および/またはアクロコミア・トタイ(Acrocomia totai)由来の部分脱油パルプを提供する。部分脱油パルプの脂肪含有量は、植物種や収穫時期によって異なり得るものであり、また、前処理(例えば、予備圧搾、乾燥、フレーク化、機械的圧搾、他の従来の植物油採取法)によっても異なる。
【0042】
- パルプの油含有量を、抽出法により、(乾物ベースで)20重量%未満、有利には10重量%未満、より良好には5重量%未満、特に有利には3重量%未満、なおもより良好には2重量%未満の値に低下させる。
【0043】
- 抽出での分別法により、パルプ中のアルコール・水可溶性物質の含有量を、(乾物ベースで)40重量%未満、より良好には35重量%未満、好ましくは30重量%未満、有利には20重量%未満、特に有利には10重量%未満、なおもより良好には5重量%未満の値に低下させる。その際、パルプ濃縮物が得られる。有利には、固液抽出法が(例えば、混合反応器、パーコレーション、向流抽出などとしての実施形態で)用いられる。粉砕、ふるい分けおよび気流選別などの乾式分別技術も使用できる。
【0044】
任意に、かつ有利には:
- 溶媒を用いて油含有量を低下させる。この場合、溶媒として、例えばヘキサン、エタノール、プロパノール、超臨界CO2、または他の亜臨界もしくは超臨界溶媒、および他の有機溶媒を使用する。
【0045】
- 40~70℃、有利には50~65℃の温度で、重量比(それぞれエタノール:水)が94:6~90:10であるエタノールと水との混合物を利用して、マカウバパルプから油および可溶性物質を同時に分離する。
【0046】
- 水、または重量比(アルコール:水)が90:10未満、より良好には80:20未満であるアルコールと水との混合物を利用することにより、油含有量をさらに低下させ、かつパルプ中のアルコール・水可溶性物質の含有量を低下させて、パルプ濃縮物を得る。この場合、アルコールとして、有利にはプロパノールまたはエタノールを使用し、40~90℃、有利には65~85℃、特に有利には80℃の温度を使用することで、アルコール不溶性炭水化物の溶解が十分に回避される。
【0047】
- pH値が2.0~6.0の範囲にある酸性化した水とアルコールとの混合物を使用して、パルプ中のアルコール・水可溶性物質の含有量を低下させる。これは、酸、有利にはクエン酸、酢酸またはマレイン酸などの穏やかな有機酸を使用することで達成できる。
【0048】
- 水とアルコールとの混合物において酸化防止添加剤を使用して、パルプ中のアルコール・水可溶性物質の含有量を低下させる。これは、例えば、アスコルビン酸、システインまたは亜硫酸水素ナトリウムを用いて行うことができる。
【0049】
- 抽出媒体中および装置の雰囲気中の酸素含有量を低下させて、油および二次的な植物物質の酸化を防ぐ。これは、窒素のような不活性ガスを用いて行うことができる。
【0050】
- 乾式分別によりアルコール・水可溶性物質をさらに減少させる。部分脱脂マカウバパルプを、任意に粉砕するかまたは直接さらに加工する。粉砕には、カッティングミル、ボールミル、インパクトミルまたはジェットミルを使用することができ、粉砕の程度は、D90体積基準粒度が2mm未満、有利には500μm未満、より良好には250μm未満、特に有利には100μm未満となるように設定することができる。次に、この材料を、1~10種類のふるいを用いて、ふるい目開き2mm~50μmでふるい分けする。気流選別は、重力向流、重力直交流、遠心分離向流および遠心分離直交流などの様々な気流選別法を用いて行うことができる。
【0051】
- 以下のステップで、アルコール・水可溶性物質と水溶性食物繊維フラクションとを分別する:
・アルコールと水との混合物でパルプを抽出して、アルコール・水可溶性物質を水溶性食物繊維から分離し、糖類含有抽出物をラフィネートから任意に多段階で連続して分離し、次いで、ラフィネートを水で、有利には、30℃超、有利には40℃超の温度で抽出して水溶性食物繊維フラクションを得る、および/または
・すべての糖類および水溶性食物繊維を水で、有利には、30℃超、有利には40℃超の温度で抽出し、抽出物をラフィネートから分離し;次いで、抽出物を、限外ろ過によって、もしくはアルコール・水不溶性の炭水化物のアルコール沈殿によって、アルコールと水との混合物に良好に溶解するフラクションと、アルコールと水との混合物に良好に溶解しないフラクションとに分離する、または
・乾式分別により水溶性食物繊維を分別する。濃縮物を、任意に粉砕(カッティングミル、ボールミル、インパクトミルまたはジェットミル)して、D90体積基準粒度が2mm未満、有利には500μm未満、より良好には250μm未満、特に有利には100μm未満にするか、または粉砕せずにさらに加工する。次に、この材料を、1~10種類のふるいを用いて、ふるい目開き2mm~50μmでふるい分けする。気流選別は、重力向流、重力直交流、遠心分離向流および遠心分離直交流などの様々な気流選別法を用いて行うことができる。ここで、乾燥状態で存在する水溶性および非水溶性の繊維を、異なるフラクションに分離する。
【0052】
- 食物繊維の分別を、有利には、5重量%未満までの脱油および/または40℃での水性抽出によるアルコール・水可溶性物質の十分な減少の後に行い、これを以下により行う:
水性抽出物をラフィネートから分離し、有利には水溶性フラクション(1)を乾燥させ、0.05~0.1mol/LのNaOHもしくは炭酸ナトリウムと0.5mmolのEDTAもしくはCDTAとを含むNaOH-EDTA溶液または0.5%(m/v)のシュウ酸アンモニウム溶液を用いてラフィネート(フラクション2)を抽出し、可溶性フラクション(3)を不溶性ラフィネート(フラクション4)から分離して乾燥させ、最後に、濃アルカリ液(1~4mol/L)、例えば水酸化カリウム溶液で抽出し、抽出物(フラクション5)を不溶性残渣(フラクション6)から分離し、中和し、乾燥させる。
【0053】
これらの6つのフラクションの機能特性を、乾燥ステップの後に同様にさらに向上させることができ、これは、カッティングミル、ビーターミル、ボールミルまたはインパクトミルを用いた粉砕をふるいおよびふるいインサートの使用と組み合わせて行うことで、食物繊維調製物の粒度分布が所定の範囲に調整される場合に該当する。D90粒度が1mm未満、有利には500μm未満、特に有利には250μm未満、より良好には100μm未満である調製物は、特に機能的である。
【0054】
さらに、有利には、乾燥前に所定の加熱を行った場合に調製物の特性を向上させることができることが判明した。この場合、温度は、70~120℃、有利には70~100℃、特に有利には70~80℃の範囲とすることが望ましい。処理時間は、60分以下、有利には30分未満、特に有利には15分未満とすることが望ましい。
【0055】
以下に、全脂または部分脱油パルプの提供方法について説明する。マカウバ果実の成熟後に、これを有利には力を加えずに果房から切り離し、これを最良には成熟度によって異なる時期に行う。油もパルプも、個々の果実を果房から別々に収穫するのが最も品質が良い。また、果房ごとヤシの木から切り取ることも可能である。この場合、有利には、外皮の損傷を防ぐために、例えば柔らかいフィルムや落下を緩やかに減速させるための他のシステムを使用することにより、落下する果房を優しく受け止めることが望ましい。
【0056】
果実のさらなる機械的処理の前に、有利には、果実の表面を、表面温度が70℃超、有利には75℃超、特に有利には80℃超となるように少なくとも1分間(持続時間の定義:最高温度に達してから温度が65℃未満に低下するまで)、有利には10分間または20分間より長く、特に有利には30分間より長く熱処理することが望ましい。その後、有利には、外皮の水含有量を20重量%未満、有利には10重量%未満の値に低下させることにより、剥皮を効率的にし、かつ皮フラクション中のパルプの割合を低下させることが望ましい。ここで、公知のあらゆる形態の乾燥を用いることができる。油の所望の品質および目標乾燥速度に応じて、当業者は、屋外もしくは天日での乾燥、換気もしくは非換気室内での乾燥、または単純な循環式空気乾燥機、接触式乾燥機、対流式乾燥機から真空乾燥に至るまで、様々な乾燥方法から適切な方法を選択することができる。
【0057】
皮を乾燥させるだけでなく、果実全体の水含有量を20重量%未満、有利には15重量%未満、特に有利には10重量%未満の値まで低下させると、油の高い品質に特に有利であることが判明した。特に、10重量%未満の値まで十分に乾燥させた後、果実の保存期間が長くなり、油の品質が向上する。
【0058】
乾燥させ、場合により中間貯蔵を行った後、外果皮を先行技術による剥皮装置で剥皮する。この場合、パラメータの選択により、外果皮フラクションに残留するパルプが、皮フラクションの重量に対して20重量%未満、有利には10重量%未満、特に有利には5重量%未満となるように留意すべきである。1回の運転でこれが達成できない場合は、その後に、外果皮とパルプとの分離ステップを設けるべきである。
【0059】
剥皮の結果、さらに、剥皮後にパルプフラクションに皮が全くまたは少量しか含まれていないように留意すべきである。したがって、剥皮は、分離されたパルプが、最終的に乾物ベースで10%未満、より良好には5%未満、有利には2重量%未満の皮含有量を有するように実施されるべきである。植物原料の分別分野の当業者であれば、この分離作業に適切なユニットおよびプロセスパラメータを選択することができる。
【0060】
次のステップでは、パルプを、石果の核の硬い内皮である内果皮から分離する。これは、カッティングミルまたは当業者に公知の他のユニットを用いて行うことができる。有利には、このプロセスは、官能性の理由から、本発明による調製物のために、パルプ中の黒色内果皮由来の部分の割合が3重量%未満、有利には2重量%未満、より良好には1重量%未満、特に有利には0.1重量%未満となるように構成されている。この際に得られたパルプを、本発明による方法に供給する。さらなる前処理は、部分的な脱油からなることができる。特に内果皮の部分をパルプから分離するため、その後に機械的または抽出により得られた油は、リグニンまたは他のフェノール系成分の割合が特に低く、油の味がより中性的になる。
【0061】
30重量%未満、より良好には20重量%未満、有利には15重量%未満、特に有利には10重量%未満の値まで乾燥させることによりパルプから水を分離した後、機械的脱油を、有利には連続運転式プレス、例えばスクリュープレス、押出機または他の連続もしくは準連続式圧搾装置で行う。ここで、油含有量を、有利には30重量%未満、特に有利には20重量%未満または15重量%未満に低下させる。機械的脱油後の油含有量が15~25重量%である場合に、本発明による食物繊維調製物の特に有利な工業的機能特性が得られるが、これは、過度の摩擦による熱損傷が回避されるためである。
【0062】
以下に、製造された食物繊維調製物の定量的特性評価に使用される測定法について、簡単に説明する:
- 食物繊維含有量:
食物繊維含有量は、試料の酵素消化後の重量測定法(AOACの方法991.43)から得られた含有量として定義される[8]。
【0063】
- タンパク質含有量:
タンパク質含有量は、試料中の窒素を測定し、測定値に6.25の係数を乗じて算出される含有量として定義される。本特許出願では、タンパク質含有量は乾物(TS)ベースでのパーセンテージで表される。タンパク質含有量を測定するための参照方法は、デュマ燃焼法[9]およびケルダール消化法[10]である。
【0064】
- 色:
知覚可能な色は、CIE-L*a*b*比色定量によって定義される(DIN 6417参照)。ここで、L*軸は、明度を示し、黒色は値0、白色は値100であり、a*軸は、緑色または赤色成分を表し、b*軸は、青色または黄色成分を表す。本特許出願で示されるL*値は、食物繊維調製物のD90粒度が250μmである場合の測定に関するものである。
【0065】
- 乳化特性:
乳化活性指数およびエマルション安定性は、[11]と同様に測定される。乳化容量(乳化力)は、[12]に記載の方法で測定される。トウモロコシ油を、pH7で体積100mlの食物繊維調製物の1重量%懸濁液に添加し、この混合物をUltraturraxにより撹拌してエマルションとし、さらに、水中油型エマルションの相反転が起こるまで油を添加する。乳化容量は、水と食物繊維調製物との懸濁液の最大吸油容量として定義され、これは、相反転の際の導電率の自発的低下によって決定される。乳化容量は、ml 油/g 食物繊維調製物の単位で示され、すなわち、食物繊維調製物1グラム当たりの乳化油のミリリットル数で示される。
【0066】
- 脂肪含有量:
脂肪含有量は、ソックスレー法[13](AOACの方法920.39)を用いて重量測定法で求められる。
【0067】
- 発泡活性:
発泡活性は、泡立て器(ワイヤーウィスク)を備えたHobart 5ON標準フードプロセッサー(容量5リットルのスチール製ボウル)でレベル3(591rpm)にて8分間泡立てたときのpH7の食物繊維溶液の体積増加として測定され、パーセント単位で示される。
【0068】
- 発泡安定性:
発泡安定性は、発泡活性の項の記載にしたがって泡立てた後1時間以内の100mlの泡の残留体積として測定され、パーセント単位で示される。
【0069】
- 水含有量:
水含有量は、§64 LFGB法[14]にしたがって、105℃で恒量になるまで重量測定法で求められる。
【0070】
- アルコール・水可溶性物質の含有量:
アルコール・水可溶性物質の含有量は、重量測定法で以下のように求められる:試料(マカウバミール、食物繊維調製物または繊維フラクション)を、80%(v/v)の水性エタノールに固液比1:10(m/v)で分散させる。この分散液を、穏やかに撹拌しながら沸点(約80℃)に60分間保つ。次いで、この混合物を遠心分離(3300g、20分、20℃)し、ろ過し、上清(液相)を貯留する。固形ペレットを、80%の水性エタノールで、透明な抽出物が得られるまで(少なくとも5回の抽出サイクル)上記と同様の条件で抽出する。抽出サイクル終了後、液体抽出物を合し、エタノールを蒸留し、水を105℃で一晩蒸発させる。乾燥後に残った固形物の量を秤量し、分析開始時に抽出に供した試料量に対する%で表す。
【0071】
- 水結合能:
水結合能は、米国穀物化学者協会の方法[15]により測定される。
【0072】
- 油結合能:
油結合能は、室温で測定される。試料を過剰の油に分散させ、完全に混合して遠心分離した後、生成物に結合していない油の体積を測定する。参照方法は、[16]により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】提案された食物繊維調製物の製造の変形例を示す図である。
【
図2】提案された食物繊維調製物の製造の変形例を示す図である。
【0074】
実施例
図1および
図2は、提案された食物繊維調製物の製造の2つの変形例を例示しており、部分脱油パルプを提供するステップもこれらの例に示されている。
【0075】
実施例1(単なる比較用)
由来する収穫地域も種も異なる1パターン当たり各20個の果実からなる3パターンのマカウバ果実から、手作業で外皮(外果皮)を取り除いた。その後、パルプを同様に手作業で内核(内果皮)から分離し、その際に得られたパルプを分析した。3つの試料の水含有量は、産地、種および保存期間によって33~53重量%であった。パルプを45℃で12時間オーブンにて乾燥させた後、ほぼ無水のパルプの3つの試料から組成に関して以下の平均値を得た(表1):
【表1】
【0076】
実施例2
実施例1と同様にして得たA.アクレアタ(A.aculeata)およびA.トタイ(A.totai)のパルプ各500gの2つの試料を、2つの調製物に分別した。一方のフラクション(パルプミール)は、乾燥パルプを油含有量が20重量%となるまで圧搾した後、ソックスレー装置で純エタノールを用いて12時間脱油することにより得られた(ミール)。その後、この脱油試料を分割し、一方を直接分析し、他方を、本発明にしたがって80℃で水20%、エタノール80%の重量比の混合物で数回抽出し、その際、各段階で抽出物をラフィネートから分離し、新鮮な溶媒を加えた。最終的に、TSベースでのパルプ濃縮物の重量は、使用したミールの重量の約60%に相当した。その結果、表2に示す組成、および表3に示すフラクションの機能特性が得られた。エタノールと水との混合物で処理することで、食物繊維の割合を40.5重量%から80重量%超まで明らかに高めることができ、(差分測定から求めた)炭水化物の割合を50重量%超から10.6重量%まで低下させることができた。
【0077】
【0078】
【0079】
実施例3
実施例2と同様にして得たA.アクレアタ(A.aculeata)由来のパルプ濃縮物500gの試料から、本発明にしたがって分別した。このために、5000mLの水を40℃で濃縮物に加え、この混合物を30分間撹拌した後、不溶分をろ過により可溶分から分離した。この操作を3回繰り返した。得られた可溶性フラクション(1)を乾燥させ、分析可能な細かさに粉砕した。残渣を、0.5mmol/LのEDTAを加えた0.05mol/LのNaOH溶液で3回抽出した。可溶性フラクションとして、ペクチンに富むフラクション(3)が得られ、これを乾燥および粉砕した。第3のステップでは、残渣(フラクション4)を濃水酸化カリウム水溶液2mol/Lで再度3回抽出し、可溶性の上清(フラクション5)を不溶性の残渣(フラクション6)から分離した。すべてのフラクションを乾燥および粉砕した。得られた試料から、水および油結合性(表4)ならびに流動特性(表5)を測定した。
【0080】
【0081】
水および油結合性に関しては、パルプ濃縮物を分別することにより、機能特性を狙いどおりに調整できることがわかる。例えば、不溶性フラクション(6)は、表4に示されていないフラクション(2)およびフラクション(4)と同様に、水結合性および油結合性の双方に関して非常に優れた結合特性を示す。一方で、油結合性は、フラクション(1)、フラクション(3)およびフラクション(5)では約1.1mL/g TSと顕著に非常に低く、水結合性は、フラクション(5)およびフラクション(6)において同様に非常に高い。
【0082】
【0083】
水溶性フラクション(1)のレオロジー挙動は、濃度に依存することが明らかである。溶液100g当たり1gまでの調製物の希釈分散液において、(G ”>G”)の粘性液体挙動が判明した。レオロジー挙動は、含有量を1g/100gから2.5g/100gへ、そして10g/100gへと増加させると、弱いゲルへ、そしてゲルへと変化した。1g/100gのローカストビーンガム溶液についても、同様のプロファイルが観察されたが、ただし、その弾性率(G ”およびG”の双方)は、2.5および5g/100gの水溶性フラクション(1)の弾性率の間にあった。
【0084】
フラクション(3)についても、5および10g/100gの含有量でゲル状挙動が観察された。不溶性フラクション(6)の分散液は、全濃度範囲(1~10g/100gの範囲)でゲル状の挙動を示した。全体として、試験したすべてのフラクションは弱いゲルを形成し、tan(δ)の値は0.1より高かった。
【0085】
水中での本発明によるフラクションの分散液のレオロジー特性に対する温度の影響についても評価した。水溶性フラクション(1)は、温度に対してより敏感であることが実証され、その際、ゲルから粘性溶液への移行が、5および10g/100gで観察された。フラクション(3)および不溶性フラクション(6)は、G ”およびG”の双方において減少を示したが、どちらも試験した温度範囲(5~80℃)においてゲル挙動を維持した。
【0086】
実施例4
食物繊維調製物から水で抽出した水溶性フラクション(1)の皮膜形成特性を定性的に評価して、このフラクションから食用コーティング材やグミベアのような菓子を製造できるか否かを調べた。このために、水溶性フラクションの2.5%水溶液20gをペトリ皿(直径9cm)に注いだ。この溶液を空気循環式オーブンにて25℃で一晩乾燥させた。得られたフィルムは褐色を帯び、ペトリ皿から容易に剥がすことができ、成形可能であった。この水溶性フィルムは、食用コーティング材や菓子のベースとして優れた特性を示し、特に柔軟に変形させるのに可塑剤を使用する必要がなかった。
【0087】
実施例5
A.トタイ(A.totai)のマカウバパルプ由来のパルプ濃縮物を、実施例2に記載のとおりに製造した。得られた調製物を、表6に記載したようにマフィンの全卵の代用品として部分的に使用した。
【0088】
【0089】
乳化剤として、マカウバ食物繊維濃縮物は、マフィンの全卵の部分的な代用に非常に好適であった。得られたマフィンは、外観、食感、色および味の点で対照と非常に類似していた。
【0090】
実施例6
A.トタイ(A.totai)のマカウバパルプ由来のパルプ濃縮物を、実施例2に記載のとおりに製造した。得られた調製物を用いて、表7に示すような植物性ミルクを製造した。
【0091】
【0092】
調乳は、マカウバパルプ濃縮物を、均質な分散液となるまで50℃で水に懸濁させた後、糖類を加えることから構成されていた。次に菜種油を加え、21000rpmで5分間乳化させた。この混合物を目開き125μmのふるいを使用してろ過し、第1の段階では250bar、第2の段階では50barでホモジナイズした。ホモジナイズされたミルクを80℃で10分間殺菌し、4℃で保存した。得られた植物性ミルクは、好ましい味、好ましい口当たり、および優れた安定性を有していた。したがって、マカウバパルプ濃縮物は、植物性ミルクの製造に非常に好適である。
【0093】
実施例7
A.トタイ(A.totai)のマカウバパルプ由来のパルプ濃縮物を、実施例2に記載のとおりに製造した。得られた調製物を用いて、表8に示すような第2のタイプの植物性ミルクを製造した。
【0094】
【0095】
調乳は、マカウバパルプ濃縮物を、分散液が均質に見えるようになるまで50℃で水に懸濁させた後、糖類を加えることから構成されていた。次に、ヘミセルラーゼとペクチナーゼとからなる酵素調製物を加え、この混合物を50℃で1時間インキュベートした。次に菜種油を加え、21000rpmで5分間乳化させた。この混合物を目開き125μmのふるいを使用してろ過し、第1の段階では250bar、第2の段階では50barでホモジナイズした。ホモジナイズされたミルクを80℃で10分間殺菌し、4℃で保存した。得られた植物性ミルクは、好ましい味、好ましい口当たり、および好ましい安定性を有していた。この植物性ミルクは、実施例6の植物性ミルクよりも中性的な味を有し、粘度が低かった。
【0096】
出典:
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