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特表2024-527339金属破片を特性化するためのセンサ装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】金属破片を特性化するためのセンサ装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/72 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
G01N27/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580983
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022068308
(87)【国際公開番号】W WO2023275372
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】102021117119.9
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524002234
【氏名又は名称】インモックス・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・オーフライター
(72)【発明者】
【氏名】ダーニエル・ケイガーバウアー
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA02
2G053AA13
2G053AB01
2G053AB21
2G053BA02
2G053BA05
2G053BB03
2G053BC02
2G053BC14
2G053CA03
2G053CA05
2G053CA06
2G053CA17
2G053CB16
2G053CB24
2G053CB25
2G053DA01
2G053DA09
(57)【要約】
本発明は、破片を特性化するためのセンサ装置であって、破片分析範囲であり、破片分析範囲が空間領域である、破片分析範囲と、少なくとも1つの送信コイルを有する信号発生器であり、信号発生器が、電気励起信号を発生させ、送信コイルを用いて上記信号を磁気信号として破片分析範囲へ結合するように構成される、信号発生器と、少なくとも1つの受信コイルを有する破片分類器であり、破片分類器が、受信コイルを用いて破片分析範囲から破片信号を受信するように構成され、破片信号が、励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片によって発生される磁化信号である、破片分類器とを備える、センサ装置に関する。本発明は更に、少なくとも1つの信号発生器および1つの破片分類器を備えるセンサ装置を用いて破片を特性化するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破片(14、15)を特性化するためのセンサ装置(100)であって、
- 破片分析範囲(110)であり、前記破片分析範囲が空間領域である、破片分析範囲と、
- 少なくとも1つの送信コイル(210)を有する信号発生器(200)であり、前記信号発生器が、電気励起信号(220)を発生させ、前記送信コイルを用いて前記信号を磁気信号(230)として前記破片分析範囲へ結合するように構成される、信号発生器と、
- 少なくとも1つの受信センサ(310)を有する破片分類器(300)であり、前記破片分類器が、前記受信センサを用いて前記破片分析範囲から破片信号(260)を受信するように構成され、前記破片信号が、前記励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片(14、15)によって発生される磁化信号である、破片分類器とを備える、センサ装置において、
前記破片分類器(300)が、前記励起信号(220)と前記破片信号(260)との間の位相シフトおよび/または前記破片信号(260)の振幅を評価することによって前記破片分析範囲(110)内の前記少なくとも1つの破片(14、15)を分類するように更に構成されることを特徴とする、センサ装置。
【請求項2】
前記破片信号を受信するために受信コイルを有する前記受信センサが実装される、請求項1に記載のセンサ装置(100)。
【請求項3】
前記受信センサが、前記破片信号を受信するためにホール効果および/または磁気抵抗効果を活用するように構成される受信素子を有して実装される、請求項1または2に記載のセンサ装置(100)。
【請求項4】
前記破片分類器(300)が、前記破片の破片サイズおよび/または前記破片の破片材料を識別するために同相成分を評価し、前記成分が好ましくは前記破片の磁化に比例している、請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサ装置(100)。
【請求項5】
前記破片分類器(300)が、前記破片の硬さおよび/または破片材料を識別するために異相成分を評価し、前記成分が好ましくは前記破片のヒステリシス曲線下面積に比例している、請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサ装置(100)。
【請求項6】
前記励起信号(220)が交流電圧信号、特に正弦、三角または矩形交流電圧信号である、請求項1から5のいずれか一項に記載のセンサ装置(100)。
【請求項7】
前記励起信号(220)が100Hzから10kHzまでの周波数範囲内の周波数を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のセンサ装置(100)。
【請求項8】
前記破片(14、15)への前記励起信号の侵入深さを変化させるために前記励起信号(220)の前記周波数が既定のシーケンスで変更される、請求項7に記載のセンサ装置(100)。
【請求項9】
前記信号発生器(200)が、前記破片への前記励起信号の侵入深さを設定するために、正弦曲線および/または三角曲線および/または矩形曲線を有する前記電気励起信号(220)を発生させるように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載のセンサ装置(100)。
【請求項10】
前記破片分類器(300)が材料データベース(340)を備え、前記材料データベースに材料データが記憶され、かつ
(i)前記破片分類器(300)が、前記材料データと比較することによって前記破片の少なくとも1つの第1の硬さクラスおよび/もしくは1つの第2の硬さクラスを判定するために設定され、かつ/または
(ii)前記破片分類器(300)が、前記材料データと比較することによって前記破片の少なくとも1つの破片サイズを判定するために設定され、かつ/または
(iii)前記破片分類器(300)が、前記材料データと比較することによって前記破片の少なくとも1つの破片材料を判定するように構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載のセンサ装置(100)。
【請求項11】
前記材料データが少なくとも1つの比較信号曲線を備え、前記第1および/または第2の硬さクラスの存在が、好ましくは前記破片信号を前記少なくとも1つの比較信号曲線と比較することによって判定される、請求項10に記載のセンサ装置(100)。
【請求項12】
前記破片分類器(300)が、複数の受信コイル(310)を有してかつ/または複数のホール効果センサを有してかつ/または複数の磁気抵抗センサを有して実装され、かつ前記受信コイルおよび/または前記ホール効果センサおよび/または前記磁気抵抗センサが、特に前記破片の位置の判定および/または前記破片のサイズの判定を提供するために、センサヘッド(280)内にセンサ面(290)にわたって分散されて設けられ、前記受信コイルおよび/または前記ホール効果センサおよび/または前記磁気抵抗センサが、好ましくはセンサヘッド内にハニカムおよび/またはチェスボードパターンで分散されて設けられる、請求項1から11のいずれか一項に記載のセンサ装置(100)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの受信コイル(310)がコイル軸を備え、かつ/または前記少なくとも1つのホール効果センサがセンサ軸を備え、かつ/または前記少なくとも1つの磁気抵抗センサが、特に前記破片信号への前記励起信号の影響を最小化するために、センサ面平面に対して垂直方向に実装される少なくとも1つのセンサ軸を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のセンサ装置(100)。
【請求項14】
前記センサ装置が、分類されることになる前記少なくとも1つの破片(14、15)を前記破片分析範囲(110)に保持するために破片捕集器(270)を更に備え、前記破片捕集器が好ましくは、分類されることになる前記少なくとも1つの破片を前記破片分析範囲に磁場を用いて磁気的に保持するおよび/または前記破片を前記破片分析範囲に流体透過フィルタ構造を用いて機械的に保持するように構成される、請求項1から13のいずれか一項に記載のセンサ装置(100)。
【請求項15】
前記破片捕集器(270)が、分類されることになる前記少なくとも1つの破片を前記破片分析範囲に磁場を用いて磁気的に保持するように直流電流によって駆動されるコイルとして構成され、前記磁場が好ましくは、特に前記破片範囲を洗浄するために、制御ユニットを用いてオンおよびオフに切り替わるために実装される、請求項14に記載のセンサ装置(100)。
【請求項16】
前記破片分析範囲(110)が、液体が流れるライン(18)内の空間領域であり、前記液体が好ましくは油および/または液体冷却剤であり、前記ラインが更に好ましくは潤滑および/または冷却剤ラインである、請求項1から15のいずれか一項に記載のセンサ装置(100)。
【請求項17】
少なくとも1つの信号発生器(200)および1つの破片分類器(300)を備えるセンサ装置(100)を用いて破片(14、15)を特性化するための方法であって、
- 送信コイル(210)を有する前記信号発生器(200)を用いて電気励起信号(220)を発生させるステップ(S1)であり、前記信号発生器が、前記電気励起信号を発生させ、前記送信コイルを用いて前記信号を磁気信号として破片分析範囲へ結合するように構成され、前記破片分析範囲が空間領域である、ステップと、
- 少なくとも1つの受信センサ(310)を有する前記破片分類器(300)を用いて破片信号(260)を受信するステップ(S2)であり、前記破片分類器が、前記受信センサを用いて前記破片分析範囲(110)から前記破片信号を受信するように構成され、前記破片信号が、前記励起信号(220)によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片(14、15)によって発生される磁化信号である、ステップと、
- 前記破片分類器(300)を用いて前記破片信号(260)を評価するステップ(S3)であり、前記破片分類器が、前記励起信号(220)と前記破片信号(260)との間の位相シフトおよび/または前記破片信号(260)の振幅を評価することによって前記破片分析範囲(110)内の前記少なくとも1つの破片(14、15)を分類するように構成される、ステップとを含み、好ましくは、
前記センサ装置が請求項1から16のいずれか一項に従って実装される、方法。
【請求項18】
前記評価するステップが、
- 前記破片分類器を用いて、好ましくは前記破片の磁化に比例した、同相成分を判定することによって分類されることになる前記破片(14、15)の破片サイズおよび/または破片材料を判定するステップ、および/または、
- 好ましくは前記破片のヒステリシス曲線下面積に比例した異相成分を判定することによって分類されることになる前記破片(14、15)の少なくとも1つの硬さクラスおよび/または1つの破片材料を判定するステップを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
破片(14、15)を特性化するためのセンサ装置(100)であって、
- 破片分析範囲(110)であり、前記破片分析範囲が空間領域である、破片分析範囲と、
- 少なくとも1つの送信ユニット(210)を有する信号発生器(200)であり、前記信号発生器が、電気励起信号(220)を発生させ、前記送信ユニットを用いて前記信号を磁気信号(230)として前記破片分析範囲へ結合するように構成される、信号発生器と、
- 少なくとも1つの受信センサ(310)を有する破片分類器(300)であり、前記破片分類器が、前記受信センサを用いて前記破片分析範囲から破片信号(260)を受信するように構成され、前記破片信号が、前記励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片(14、15)によって発生される磁化信号である、破片分類器とを備える、センサ装置において、
前記破片分類器(300)が、前記励起信号(220)と前記破片信号(260)との間の位相シフトおよび/または前記破片信号(260)の振幅を評価することによって前記破片分析範囲(110)内の前記少なくとも1つの破片(14、15)を分類するように更に構成されることを特徴とする、センサ装置。
【請求項20】
破片(14、15)を特性化するためのセンサ装置(100)であって、
- 少なくとも1つの受信センサ(310)を有する破片分類器(300)であり、前記破片分類器が、前記受信センサを用いて破片信号(260)を受信するように構成され、前記破片信号が、励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片(14、15)によって発生される磁化信号である、破片分類器を備える、センサ装置において、
前記破片分類器(300)が、前記励起信号(220)と前記破片信号(260)との間の位相シフトおよび/または前記破片信号(260)の振幅を評価することによって前記少なくとも1つの破片(14、15)を分類するように更に構成されることを特徴とする、センサ装置。
【請求項21】
前記センサ装置が請求項1から16のいずれか一項に従って実装される、請求項19または20に記載のセンサ装置(100)。
【請求項22】
少なくとも1つの破片分類器(300)を備えるセンサ装置(100)を用いて破片(14、15)を特性化するための方法であって、
- 少なくとも1つの受信センサ(310)を有する前記破片分類器(300)を用いて破片信号(260)を受信するステップ(S2)であり、前記破片分類器が、前記受信センサを用いて、発生される破片信号を受信するように構成され、前記破片信号が、励起信号(220)によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片(14、15)によって発生される磁化信号である、ステップと、
- 前記破片分類器(300)を用いて前記破片信号(260)を評価するステップ(S3)であり、前記破片分類器が、前記励起信号(220)と前記破片信号(260)との間の位相シフトおよび/または前記破片信号(260)の振幅を評価することによって前記少なくとも1つの破片(14、15)を分類するように構成される、ステップとを含む、方法。
【請求項23】
前記方法を行うための前記センサ装置が請求項1から16のいずれか一項に従って実装される、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破片を特性化するためのセンサ装置に関する。本発明は更に、センサ装置を用いて破片を特性化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝動装置が基本的に公知である。伝動装置は、運動、エネルギーおよび/または力を伝達および変換するのに役立ち、この目的で、風力発電プラントに、船舶に、ヘリコプタに、ケーブルカーに、または車両になど、様々な技術システムに使用される。
【0003】
したがって、伝動装置は運動、エネルギーおよび/または力を伝達および変換するときに機械的に負荷されるので、実使用において摩耗を受けることが知られている。摩耗を減少させるためには、伝動装置における機械的摩耗を減少させかつ伝動装置を過熱から保護するために動圧潤滑状態を達成する目的で、歯車または転がり軸受などの機能的に重要な部品が潤滑される。
【0004】
動圧潤滑状態は、例えば動的負荷によりならびに始動および制動プロセスにより、常に動作の間、保証できるわけではなく、その結果、伝動装置内の部品は摩耗を受ける。そのため、ピッチング損傷、マイクロピッチングまたはゴーリングなどの、様々な損傷が歯車におよび転がりまたは平軸受に発生する。損傷または故障モードは、それによって様々な規格(例えば、DIN 3979)に従う。上記規格に定められるように、摩耗は、2つの物体を擦り合わせることによる材料のアブレーションであると理解される。この損傷は、以下摩耗と称される。
【0005】
摩耗または分離された伝動装置材料は、そのため潤滑回路に入り、金属粒子または金属破片の形態のアーチファクトとして潤滑回路に存在する。加えて、煤煙または気泡を含む非金属粒子など、他の浮遊物または異なる相も潤滑回路に存在し得る。
【0006】
伝動装置の保守および修理が時に多大な労力と関連付けられるので、そのような保全作業または修理は、時折高コストを引き起こす長期の休止時間に至り得る。加えて、一部の技術システムに対しては、摩耗が特に高度に監視されることになる、例えばヘリコプタにおいて、高水準の動作信頼度が所望される。
【0007】
この理由で、伝動装置を監視する試みがなされる。
【0008】
伝動装置の1つの公知の種類の監視が、伝動部品の金属摩耗粒子の数を計数するための粒子計数器として知られている。上記粒子計数器は、それによって光学的方法か電気的方法かを使用する。電気的方法が使用されるとき、金属破片を計数するために、例えば、潤滑ラインに電場が誘導される。
【0009】
そのようなシステムに関する課題が、しかしながら、そのようなシステムが基本的に可能にするのが摩耗についての定量的結論だけであり、摩耗または何らかの伝動装置損傷の種類についての結論ではないということである。潤滑回路において計数される粒子の数は、そのため、伝動装置損傷の結論を引き出すことができるために単に定量的指標である。
【0010】
加えて、上記システムは、上記粒子が粒子計数器によって検出されるように移動する(循環潤滑)摩耗粒子に依存している。
【0011】
光学システムに関しては、上記システムはダーク油においては粒子を検出できないので、上記システムがダーク油において限られた程度にしか金属粒子、気泡または煤煙の間で機能または区別できないことが問題である。
【0012】
伝動装置を有する技術システムの安全性、予測可能性および費用効果を上げるために、したがって、粒子を計数することを用いて摩耗を定量的に検証することだけでなく、摩耗を定性的に評価することならびに摩耗を重大および非重大な摩耗徴候へ区別することができることも望ましいであろう。これは現在、実験室試験を用いてまたは専門家による現場「推定」によってのみ可能である。
【0013】
ドイツ特許商標庁は、以下の先行技術を調査した:EP1933129B1、EP2121203B1、EP3349000A1、DE102010011936A1、WO2015/140411A2、EP2455774A1。公報EP1933129B1、EP3349000A1は各々、金属粒子を特性化するために、金属粒子によってもたらされる測定コイルと基準コイルとの間のインピーダンスの変化が比較される、装置および方法に関する。公報EP2121203B1は、コイルの磁気的に影響されていない状態が磁気的に影響された状態と比較されるという点でコンベヤベルト上の金属物体を識別する。公報DE102010011936A1およびWO2015140411A2は、試料容器内の試料を分析するための測定装置に関する。公報EP2455774A1は、永久磁石を有する破片捕集器を有するセンサ装置に関する。永久磁石の引力効果が無効にされることになると、誘導コイルを用いて対向場が発生され、磁気的に保持された破片を外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】EP1933129B1
【特許文献2】EP2121203B1
【特許文献3】EP3349000A1
【特許文献4】DE102010011936A1
【特許文献5】WO2015/140411A2
【特許文献6】EP2455774A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、したがって、上に示した課題の1つに対処すること、一般的技術水準を改善すること、または先行技術の代替を提供することである。特に、破片を検出することに加えて、現場でかつ動作中に摩耗の危険潜在性を評価することができるために破片の連続監視および評価が可能にされる解決策が提供されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、そのため、請求項1に係るセンサ装置が提案され、破片を特性化するためのセンサ装置が提供される。それによって特性化するとは、破片の硬さ、破片サイズ、すなわち、その体積、または破片ができている材料などの、破片の性質がセンサ装置を用いて識別または判定されることを意味する。硬さは、同義的に硬さクラスとも解釈されてよい。特性化は、破片の分析とも解釈されてよい。そのため破片が現場でかつ動作中にセンサ装置を用いて特性化および評価されることが提案される。破片は、例えば、伝動部品から分離された粒子である。破片は、そのため金属粒子または金属汚染物質と理解できる。破片は、同義的に薄片とも称することができる。
【0017】
破片は、好ましくは金属破片または金属性破片である。
【0018】
センサ装置は、破片分析範囲を備え、破片分析範囲は空間領域である。破片分析範囲は、破片の特性化および分析が行われる空間領域を描く。例えば、分析範囲内の破片の定常分析を提供するために、破片は、この目的で破片捕集器によって分析範囲に保持されてよい。破片分析範囲は、例えば、伝動装置の潤滑油回路における潤滑ライン内の空間区分、または冷却材回路における冷却材ライン内の空間区分である。
【0019】
更には、センサ装置は、少なくとも1つの送信コイルを有する信号発生器を備え、信号発生器は、電気励起信号を発生させ、送信コイルを用いて上記信号を破片分析範囲へ結合するように構成される。
【0020】
そのため、例えば送信コイルに導電的に接続される関数発生器を信号源として有する、信号発生器を用いて電気信号を発生させることが提案される。電気励起信号は、交流信号、例えば正弦波信号でよい。送信コイルは、例えば、磁心に巻回される銅コイルである。送信コイルは、励起コイルと同義と解釈されてよい。結合は、誘導とも解釈されてよい。そのため1つの破片または複数の破片が位置する破片分析範囲へ電磁信号を導くことが提案される。1つの破片または任意選択で複数の破片は、そのため磁気信号として破片分析範囲へ結合される励起信号によって励起される。送信コイルを有する信号発生器は、そのため破片を電気的または磁気的に励起するために破片分析範囲へ電気信号または磁気信号を導くための送信ユニットとも解釈されてよい。
【0021】
センサ装置は、少なくとも1つの受信センサを有する破片分類器を更に備え、破片分類器は、受信センサを用いて破片分析範囲から破片信号を受信するように構成され、破片信号は、励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片によって発生される磁化信号である。受信センサは、例えば、受信コイル、破片信号を受信するためにホール効果を活用するように構成される受信素子(ホール効果センサ)、破片信号を受信するために磁気抵抗効果を活用するように構成される受信素子(磁気抵抗センサ)等である。そのため受信センサを用いて破片信号を測定することが提案される。
【0022】
センサ装置は好ましくは、少なくとも1つの受信センサを有する破片分類器を備え、破片分類器は、受信コイルを用いて破片分析範囲から破片信号を受信するように構成され、破片信号は、励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片によって発生される磁化信号である。
【0023】
そのため破片分類器を用いて破片分析範囲から出る磁気信号、すなわち破片信号を受信することが提案される。破片信号は、励起信号によるその励起により破片によって発生される磁気信号である。上記したように、破片を電気的または磁気的に励起するために信号発生器および送信コイルを用いて破片分析範囲へ電磁信号が導かれる。上記磁気励起により、破片は、好ましくは受信コイルを用いて、励起信号に対して位相シフトして測定される測定可能信号を発生させる。破片信号は、例えば、受信コイルに電圧を誘導し、測定可能電圧または測定可能電流を発生させる。破片分類器は、そのため、好ましくは受信コイルを用いて、破片信号を測定するための受信または測定ユニットとも解釈されてよい。受信コイルは、それによってアレイ状に相互接続される複数のコイルとして実装されてよい。1つもしくは複数の受信コイルおよび/または送信コイルは、例えば、巻き銅コイルである。
【0024】
この根本原則は類似して、破片信号を受信するためにホール効果および/または磁気抵抗効果を活用するように構成される受信素子を有して実装される少なくとも1つの受信センサに当てはまる。磁気励起により、破片は、励起信号から位相シフトして受信素子を用いて測定される測定可能信号、すなわち破片信号を発生させる。破片信号は、受信素子に電圧を誘導し、測定可能電圧もしくは測定可能電流を発生させる、または受信素子における抵抗の測定可能変化に至る。破片分類器は、そのためホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサを用いて破片信号を測定するための受信または測定ユニットとも解釈されてよい。破片信号を受信するためにホール効果および/または磁気抵抗効果を活用するように構成される受信素子が、ホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサとも称されてよい。受信素子は、それによってアレイ状に相互接続される複数のセンサとして実装されてよい。
【0025】
少なくとも2つの物または物体が存在するとき物または物体の複数が存在する。
【0026】
破片分類器は、励起信号と破片信号との間の位相シフトおよび/または破片信号の振幅を評価することによって破片分析範囲内の少なくとも1つの破片を分類するように更に構成される。
【0027】
そのため破片分類器が評価ユニットとしても機能するまたはそのようなユニットを備えることが提案される。破片分類器は、そのため励起信号および破片信号を考慮し、2つの信号間の位相シフトを判定および/または処理できる。加えてまたは代替的に、破片分類器は、破片信号の振幅を判定および/または処理できる。位相シフトは、位相差またはフェージングとしても知られ、例えば、周期長は一致するがゼロインターセプトポイントが異なるときに、互いに対してシフトされた位相角を有する、2つの正弦振動を描く。破片信号の振幅は、算術平均の位置からの破片信号の最大偏位を描く。振幅は、ピーク値としても知られている。
【0028】
分類するとは、そのため、破片の硬さもしくは硬さクラス、破片サイズまたは破片材料などの、分類されることになる破片の性質が判定されることになるという事実を指す。分類することが破片を検出することも含むことが理解される。センサ装置は、それに応じて、励起信号と破片信号との間の位相シフトおよび/または破片信号の振幅を評価することによって破片分析範囲内の少なくとも1つの破片を検出するように更に構成される。
【0029】
好ましくは、破片を特性化するために破片信号の振幅の絶対値が評価または考慮されることが提案される。そのため振幅を絶対値として判定することが提案される。
【0030】
種々の性質を有する金属破片が存在することがあり、種々の性質により損傷または摩耗の範囲および/または起源について結論が引き出されるのを可能にすることが認識されている。特に、破片の硬さが、重大なまたはあまり重大でない伝動装置損傷または伝動装置摩耗が存在するかどうかのための適切な指標であることも認識されている。
【0031】
位相シフトおよび/または振幅を評価することによって、破片の硬さについての結論を引き出すことができる。例えば、磁気的に硬い破片が検出されると、次いで、重要な伝動部品が損傷されたと仮定できる。重要な伝動部品は、典型的には硬化されており、この理由で磁気的に硬い性質を有する。逆に、磁気的に柔らかい破片が検出されれば、磁気的に柔らかい金属は、あまり重要でない伝動部品のために使用されるので、その後、非重大な摩耗を仮定できる。
【0032】
位相シフトおよび/または振幅を評価することによって、硬さに加えて、破片サイズについての結論も引き出すことができる。破片サイズは、破片体積とも解釈できる。大きな破片が検出されると、伝動部品の損傷の範囲についての結論を引き出すことができる。
【0033】
加えて、位相シフトおよび/または振幅を評価することによって、異なる材料からできている破片が、異なる磁化率などの、異なる磁気的性質を有するので、破片の材料を判定することも可能である。
【0034】
そのため破片を伝動装置の潤滑回路における摩耗指標として使用することが提案される。破片の特性化、同義的に分類とも解釈される、は、それによって励起信号と破片信号との間の位相シフトおよび/または破片信号の振幅を評価することによって行われる。
【0035】
伝動装置の状態を監視するためのインテリジェントセンサが、そのため提供され、様々な技術システムに使用できる。
【0036】
破片分析範囲内の少なくとも1つの破片を分類するために励起信号と破片信号との間の位相シフトおよび/または破片信号の振幅の評価が実施形態において任意選択であることが理解されるべきである。破片分析範囲内の少なくとも1つの破片を分類するために他のまたは更なる評価方法が提供されてよい。
【0037】
破片分類器は好ましくは、評価方法を用いて、すなわち以下から成る評価方法のリストからの少なくとも1つの評価方法を用いて破片信号および/または励起信号の関数として破片分析範囲内の少なくとも1つの破片を分類するように構成される:
- 周波数分析を用いた、例えば、DFT(離散フーリエ変換)、FFT(高速フーリエ変換)またはSTFT(短期フーリエ変換)などの、フーリエ変換を用いた分類、
- ウェーブレット解析を用いた分類、
- 人工ニューラルネットワークを用いた分類。
【0038】
破片分類器は好ましくは、少なくとも、分類されることになる少なくとも1つの破片の硬さ、破片サイズおよび/または破片材料を判定するように構成される。上記パラメータは、ヒステリシス曲線下面積、磁化もしくは他の磁気的性質などの、磁気パラメータが破片信号の位相シフトおよび/もしくは振幅を分析することによって導出もしくは判定され、かつ/または評価方法を用いて評価することによって導出もしくは判定されるという点で判定される。
【0039】
受信センサは、好ましくは受信コイルを有して実装される。少なくとも1つの受信コイルを有する破片分類器が、そのため提案され、破片分類器は、受信コイルを用いて破片分析範囲から破片信号を受信するように構成され、破片信号は、励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片によって発生される磁化信号である。受信コイルを使用する動作の原理は、既に上記された。破片信号は、受信コイルに電圧を誘導し、測定可能電圧または測定可能電流を発生させる。破片分類器は、そのため、受信コイルを用いて破片信号を測定するための受信または測定ユニットとも解釈されてもよい。
【0040】
受信センサは好ましくは、破片信号を受信するためにホール効果および/または磁気抵抗効果を活用するように構成される受信素子を有して実装される。破片分類器は、そのためホール効果センサを用いてかつ/または磁気抵抗センサを用いて破片分析範囲から破片信号を受信するように構成される。そのため、受信コイルに加えてまたは代替的に、破片信号のための受信器としてホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサを使用することが提案される。ホール効果および磁気抵抗効果は、基本的に公知である。そのためホール効果および/または磁気抵抗効果を活用して磁場または磁気信号を測定するためのセンサを使用することが提案される。破片分析範囲からの破片信号は、そのためホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサを用いて測定され、破片信号は、励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片によって発生される磁化信号である。受信コイル、ホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサの組合せも提供されてよい。
【0041】
好ましくは、破片分類器が破片の破片サイズおよび/または破片の破片材料を識別するために同相成分を評価し、上記成分が更に破片の磁化に比例していることが提案される。いわゆる同相成分は、それによって信号処理から知られ、励起信号のおよび破片信号の復調が元のフェージング(同相)のために行われるという点で判定される。同相成分が破片の磁化に比例していることがここで認識された。それによって破片サイズおよび/または破片材料について磁化から結論を引き出すことができる。
【0042】
好ましくは、破片分類器が破片の硬さおよび/または破片材料を識別するために異相成分を評価し、上記成分が更に破片のヒステリシス曲線下面積に更に比例していることが提案される。いわゆる異相成分も、それによって信号処理から知られ、励起信号のおよび破片信号の復調が固定され、位相シフトされた基準周波数において行われるという点で判定される。異相成分は、「直角位相」としても知られている。異相成分が破片のヒステリシス曲線下面積に比例していることがここで認識された。ヒステリシス曲線下面積により破片の硬さについての結論が引き出されるのを可能にすることも認識された。例えば、大きな飽和磁化を有する狭いヒステリシス曲線が低い硬さ(磁気的に柔らかい)の指標であり、広くかつより浅いヒステリシス曲線が、比較的に、より高い硬さ(磁気的に硬い)の指標である。そのため、例えば、異相成分を評価することによって種々の硬さクラスを判定できる。
【0043】
同相成分および異相成分が、例えば周波数分析を用いて励起信号および/または破片信号から判定されることが理解される。
【0044】
そのため上記復調を用いて位相情報を得るためにI&Q方法(同相&直角位相方法)を行うことが提案される。
【0045】
好ましくは励起信号が交流電圧信号、例えば正弦、三角または矩形交流電圧信号であることも提案される。励起信号としての交流電圧信号の使用は、交流電圧信号によって破片信号が繰り返し励起されるため、上記信号を複数回かつ位相シフトして測定できるので、有利である。交流電圧信号は、交流電流信号として実装されてもよい。
【0046】
1つの更なる実施形態において、励起信号が100Hzから10kHzまでの周波数範囲内の周波数を有することが提案される。上記周波数範囲は、励起信号の侵入深さも調節できる周波数範囲であり、そのため、例えば上記信号が十分に測定可能でないときはいつでも破片信号を調整できる。
【0047】
好ましくは、破片への励起信号の侵入深さを変化させるために励起信号の周波数が既定のシーケンスで変更されることが提案される。そのため励起信号が一定周波数で動作されるのではなく、むしろ周波数変化が行われることが提案される。具体例では、第1の期間の間まず第1の周波数が設定され、次いで周波数が変更されて、第2の期間の間第2の周波数が設定される。そのため、磁気信号としての破片への励起信号の侵入深さも調節できる。
【0048】
好適な一実施形態において、信号発生器は、破片への励起信号の侵入深さを設定するために、正弦曲線および/または三角曲線および/または矩形曲線を有する電気励起信号を発生させるように構成される。正弦波信号は破片信号に高調波を誘導しにくいので、電気励起信号は特に好ましくは、正弦曲線を有して実装される。
【0049】
好ましくは、破片分類器が材料データベースを備え、材料データベースに材料データが記憶されることが提案される。
【0050】
特に好適な一実施形態において、材料データは、ここでは、保磁力、磁化率、残留磁気、磁気飽和またはヒステリシス曲線などの、比較データとして提供される。材料データは、それによって内挿できるように実装され、メモリユニットにデータセットとして記憶できる。材料データのためのメモリは、破片分類器の一部でよく、または外部データベースでよい。後者の場合、破片分類器がそれに応じて外部データベースから読み出すように構成されることが理解される。
【0051】
更に好ましくは、破片分類器が、材料データと比較することによって破片の少なくとも1つの第1の硬さクラスおよび/または1つの第2の硬さクラスを判定するように構成されることが提案される。第1の硬さクラスは、分類された破片が磁気的に柔らかいことを示す硬さクラスでよい。第2の硬さクラスは、分類された破片が磁気的に硬いことを示す硬さクラスでよい。硬さクラスの更なる中間段階も設けられてよい。
【0052】
加えてまたは代替的に、更に、破片分類器が、材料データと比較することによって破片の少なくとも1つの破片サイズを判定するように構成されることが提案される。破片サイズは、上記したように、体積とも解釈されてよい。例えば、破片サイズは、上記した比較データから判定できる。
【0053】
加えてまたは代替的に、好ましくは、破片分類器が、材料データと比較することによって破片の少なくとも1つの破片材料を判定するように構成されることが提案される。破片材料は、硬化鋼などの、破片ができている材料を記述する。
【0054】
材料データは好ましくは、少なくとも1つの比較信号曲線を備える。そのため、少なくとも1つの比較信号曲線が材料データの一部であり、取得される破片信号を比較信号曲線と比較できることが提案される。複数の比較信号曲線が材料データに記憶されてもよく、特性マップと解釈されてよい。それに応じて、例えば破片の硬さ、破片サイズまたは破片材料を判定するために、少なくとも1つの比較信号曲線と比較することによって破片分析範囲内の分類されることになる破片を分類することが提案される。
【0055】
特に好適な一実施形態において、第1および/または第2の硬さクラスの存在が、破片信号を比較信号曲線と比較することによって判定されることが提案される。破片分類器は好ましくは、破片信号を比較信号曲線と比較することによって第1および/または第2の硬さクラスの存在を判定するように構成される。
【0056】
好適な一実施形態において、破片分類器が複数の受信コイルを有して実装され、受信コイルがセンサヘッド内にセンサ面にわたって分散されて設けられることが提案される。加えてまたは代替的に、破片分類器が複数のホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサを有して実装され、ホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサがセンサヘッド内にセンサ面にわたって分散されて設けられることが提案される。複数の受信コイルを使用することによって、破片の位置を判定および提供できる。複数のホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサを使用することによって、破片の位置も判定および提供できる。位置判定は、それによってセンサヘッド上の破片の位置に関する。位置判定は、センサヘッドに位置する異なる破片の独立した特性化を提供するために複数の異なる破片を検出するために提供される。
【0057】
複数の受信コイルを使用することによって、破片のサイズを加えてまたは代替的に判定および提供できる。加えてまたは代替的に、複数のホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサを使用することによって、破片のサイズも加えてまたは代替的に判定および提供できる。例えば、破片が複数の受信コイルにわたって位置するとき、破片サイズは、分類されることになる破片の近くに設けられる受信コイルの破片信号を評価することによって判定できる。反射された破片信号が、そこで最も強く存在する。
【0058】
コイルは、このためにアレイとして相互接続でき、選択回路を用いて、例えばマルチプレクサを用いて個別に読み出すことができる。
【0059】
例えば、破片が複数のホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサにわたって位置するとき、破片サイズは、分類されることになる破片の近くに設けられるホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサの破片信号を評価することによって判定できる。反射された破片信号が、そこで最も強く存在する。
【0060】
ホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサは、このためにアレイとして相互接続でき、選択回路を用いて、例えばマルチプレクサまたはバスシステムを用いて個別に読み出すことができる。
【0061】
受信コイルは、好ましくはセンサヘッド内にハニカムパターンで分散されて設けられる。加えてまたは代替的に、ホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサは、センサヘッド内にチェスボードパターンで分散されて、すなわちチェスボードのように、2方向に互いに矩形状に隣接して設けられる。実装密度は、そのため上げることができる。
【0062】
少なくとも1つの受信コイルは好ましくは、センサ面平面に対して実質的に垂直方向に実装されるコイル軸を備える。センサ面への上記方向は、それによって破片信号への励起信号の影響を最小化することを可能にする。上記配置を用いて、受信コイルに垂直に向けられる励起場が発生される。受信コイルへの励起信号の影響は、そのため最小化される。加えてまたは代替的に、少なくとも1つのホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサは、特に破片信号への励起信号の影響を最小化するために、センサ面平面に対して垂直方向に実装される少なくとも1つのセンサ軸を備える。そのためホール効果センサおよび/または磁気抵抗センサが、励起信号を可能な限り測定しないように、または少なくとも多軸センサの少なくとも1つの軸が励起信号を可能な限り測定しないように向けられることが提案される。好適な一実施形態において、少なくとも1つのホール効果センサおよび/または少なくとも1つの磁気抵抗センサは、複数軸、特に3軸を有して実装される。受信コイルへの励起信号の影響は、そのため最小化される。
【0063】
センサ装置は好ましくは、分類されることになる少なくとも1つの破片を破片分析範囲に保持するために破片捕集器を備える。そのため分類されることになる1つまたは複数の破片を破片分析範囲に静止して保持するために装置が提供されることが提案される。これは、1つまたは複数の破片を取得するとも解釈されてよい。
【0064】
好適な一実施形態において、破片捕集器が分類されることになる少なくとも1つの破片を破片分析範囲に磁場を用いて磁気的に保持するように構成されることが提案される。この目的で、破片捕集器は、例えば直流電流が供給される、コイルとして実装されてよい。破片捕集器は、磁石、例えば永久磁石を有して実装されてもよい。
【0065】
加えてまたは代替的に、破片捕集器が分類されることになる少なくとも1つの破片を破片分析範囲に磁場を用いて磁気的に保持するように構成されることが好適な一実施形態において提案される。この目的で、破片捕集器は、金属メッシュを有してまたはバスケットもしくはネットを有して実装されてよい。
【0066】
好ましくは、破片捕集器が、分類されることになる少なくとも1つの破片を破片分析範囲に磁場を用いて磁気的に保持するように直流電流によって駆動されるコイルとして構成されることが提案される。直流電流によって駆動されるコイルを用いて、調節可能な磁場を有利に実装できる。磁気捕集器は、そのため必要に応じてオフに切り替えることができる。
【0067】
更なる好適な一実施形態において、磁場は、制御ユニットを用いてオンおよびオフに切り替えられるように実装される。そのため、例えば、破片範囲の洗浄を実装できる。保守のために、破片捕集器の磁場は、オフに切り替えることができる。オフに切り替えた後、破片は、もはや破片捕集器によって磁気的に保持されず、そのため容易に除くことができる。
【0068】
破片分析範囲は好ましくは、液体が流れるライン内の空間領域である。そのため、潤滑回路または冷却回路のラインなど、液体が流れる全てのラインにセンサ装置を設置および使用できることが提案される。
【0069】
前記のセンサ装置は、それに応じて液体が流れるいかなる任意のラインへも導入できる。
【0070】
好適な一実施形態において、液体は、油および/または液体冷却剤であり、ラインは更に好ましくは、潤滑および/または冷却剤ラインである。
【0071】
好ましくは破片分類器が破片信号を外部評価のために通信ユニットを用いて外部処理ユニットに提供するために設定されることが提案される。
【0072】
好ましくは、破片分類器が通信ユニットを用いて評価の結果を提供するように構成され、評価の結果が特に、分類された硬さクラス、分類された破片サイズおよび/または分類された破片材料であることが提案される。評価または分類の結果は、そのため更に処理されて、例えば、プロセス監視のためのプロセスコンピュータに提供でき、または分析ユニットを用いて分析でき、または保守もしくは修理の必要を示すために報告ユニットに提供できる。
【0073】
信号発生器は好ましくは、破片分類器におよび/または通信ユニットを用いて外部処理ユニットに参照信号として励起信号を提供するように構成される。
【0074】
外部処理ユニットは、例えば、外部プロセスコンピュータまたは外部制御ユニットである。外部プロセスコンピュータまたは外部制御ユニットは、センサ装置が使用される技術システムの一部でよい。
【0075】
好ましくは、破片分類器が、励起信号と破片信号との間の位相シフトおよび/もしくは破片信号の振幅を評価することによって破片分析範囲内の少なくとも1つの破片を分類するために、ならびに/または評価方法を用いて破片信号および/もしくは励起信号の関数として破片分析範囲内の少なくとも1つの破片を分類するために、演算器を備えることが提案される。
【0076】
演算器は、マイクロコントローラなど、センサ装置の一部としての内部演算器でよい。演算器は、外部プロセスコンピュータまたは外部制御ユニットなどの、外部演算器でもよい。
【0077】
本発明によれば、少なくとも1つの信号発生器および1つの破片分類器を備えるセンサ装置を用いて破片を特性化するための方法も提案される。
【0078】
方法は、送信コイルを有する信号発生器を用いて電気励起信号を発生させるステップであって、信号発生器が、電気励起信号を発生させ、送信コイルを用いて上記信号を破片分析範囲へ結合するように構成され、破片分析範囲が空間領域である、ステップと、
少なくとも1つの受信センサを有する破片分類器を用いて破片信号を受信するステップであって、破片分類器が、受信センサを用いて破片分析範囲から破片信号を受信するように構成され、破片信号が、励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片によって発生される磁化信号である、ステップと、
破片分類器を用いて破片信号を評価するステップであって、破片分類器が、励起信号と破片信号との間の位相シフトおよび/または破片信号の振幅を評価することによって破片分析範囲内の少なくとも1つの破片を分類するように構成される、ステップとを含む。
【0079】
特に好適な一実施形態において、センサ装置は、前の実施形態のいずれか1つに従って実装される。
【0080】
評価ステップは、好ましくは:
破片分類器を用いて、好ましくは破片の磁化に比例した、同相成分を判定することによって分類されることになる破片の破片サイズおよび/または破片材料を判定するステップ、および/または、
好ましくは破片のヒステリシス曲線下面積に比例した異相成分を判定することによって分類されることになる破片の少なくとも1つの硬さクラスおよび/または1つの破片材料を判定するステップを更に含む。
【0081】
破片を特性化するための上記したセンサ装置の説明、利点および実施形態は、センサ装置を用いて破片を特性化するための本方法に類似して当てはまる。
【0082】
本発明は、実施形態例を使用してかつ、同じ参照番号が同一または類似の部品に対して使用される、添付の図を参照して、以下により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】1つの実施形態におけるセンサ装置を有する伝動装置の潤滑回路の概略図である。
図2】1つの実施形態における本発明に係るセンサ装置の概略ブロック図である。
図3】液体が流れるラインへ導入された1つの実施形態におけるセンサ装置の一部の概略図である。
図4】1つの実施形態における一次コイルおよび複数の受信コイルを有するセンサ装置の一部の側断面図を概略的に示す図である。
図5】1つの実施形態における複数の受信コイルを有するセンサ装置の一部の上断面図を概略的に示す図である。
図6】励起信号と破片信号との間の位相シフトの評価および破片信号の振幅の評価を描く6つの図である。
図7】2つのヒステリシス曲線が概略的に示される図である。
図8】1つの実施形態における本発明に係る方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1は、1つの実施形態におけるセンサ装置100を有する伝動装置11の潤滑回路10を示す。伝動装置11は、例示目的で平歯車伝動装置として図示される。
【0085】
ポンプ12が潤滑回路10の一部であり、回路において潤滑油13を圧送するように構成される。潤滑油13は、伝動装置11の摩耗を減少させるために提供され、図示される平歯車伝動装置において機械的摩擦を減少させる。伝動装置への機械負荷により、伝動部品からの表面ピッチングまたはアブレーションなどの摩耗徴候が生じることがある。摩耗または分離された伝動装置材料は、そのため潤滑回路10に入り、金属粒子または金属破片14、15の形態のアーチファクトとして潤滑回路に存在する。例えば、図1において、2つの磁気的に硬い破片または粒子15および1つの磁気的に柔らかい破片または粒子14が図示され、潜在的に異なる時点において分離したものである。加えて、非金属ほこり粒子などの、他の浮遊物16も潤滑回路に存在する。
【0086】
潤滑油13から浮遊物16を除去するためにフィルタ17が設けられる。金属破片は、センサ装置100によってフィルタリングされる。センサ装置は好ましくは、分類されることになる少なくとも1つの破片または分類されることになる破片14、15を破片分析範囲110に保持するために破片捕集器を備える。
【0087】
破片を特性化するためのセンサ装置100は、潤滑回路10の一部である。センサ装置100は、例えば、図2図3図4または図5に図示されるように実装される。センサ装置100は、液体が流れるライン18へ導入され、点線の範囲として図示される、ライン18内の空間領域として破片分析範囲110を備える。
【0088】
センサ装置100は、少なくとも1つの送信コイルを有する、図1に不図示の、信号発生器を備え、信号発生器は、電気励起信号を発生させ、送信コイルを用いて上記信号を磁気信号として破片分析範囲110へ結合するように構成される。破片分析範囲110への磁気信号としての励起信号の結合は、図1に示される力線によって描かれる。
【0089】
図1は、平歯車伝動装置の潤滑回路10を図示する。図示されるセンサ装置100は、しかしながら、液体が流れる任意の他のライン18へ導入されてもよい。センサ装置100の機能原則は、伝動装置の潤滑回路10に限定されず、むしろ、例えば、冷却材回路にまたは直接伝動装置に導入されてもよい。
【0090】
図2は、例えば、図1に図示されるなどの、センサ装置100のブロック回路図を概略的に示す。
【0091】
センサ装置100は、破片14、15を特性化するために提供され、破片分析範囲110を備え、破片分析範囲110は、例えば、図1に図示されるように、液体が流れるライン18内の空間領域である。
【0092】
センサ装置100は、少なくとも1つの送信コイル210を有する信号発生器200を備え、信号発生器は、電気励起信号220を発生させ、送信コイル210を用いて上記信号を磁気信号230として破片分析範囲110へ結合するように構成される。電気励起信号220は、例えば、100Hzから10kHzまでの周波数範囲内の周波数において正弦交流電圧信号として関数発生器240を用いて発生されてよい。励起信号220の周波数は、この場合に破片14、15への侵入深さを調節するために既定のシーケンスで変化させることができる。
【0093】
電気励起信号220を増幅するために増幅器250も設けられてよい。
【0094】
電気励起信号220は、送信コイルにおいて磁気信号230へ変換され、そのため破片分析範囲110へ結合する。磁気信号230は、破片14、15を磁気的に励起し、その結果、磁気信号230による励起を基にして特性的かつ測定可能な破片信号260が発生される。
【0095】
センサ装置は、少なくとも1つの受信センサ310を有する破片分類器300を更に備え、破片分類器300は、受信コイルを用いて破片分析範囲110から破片信号260を受信するように構成される。受信コイルは、そのため測定コイルとも解釈されてよい。破片信号260は、励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片14、15によって発生される磁化信号である。
【0096】
受信コイルに加えてまたは代替的に、少なくとも1つのホール効果センサおよび/または1つの磁気抵抗センサが使用されてよい。受信コイルの使用が実施形態例に図示される。
【0097】
破片分類器300は、励起信号220と破片信号260との間の位相シフトおよび/または破片信号260の振幅を評価することによって破片分析範囲110内の少なくとも1つの破片14、15を分類するように構成される。
【0098】
例えば、破片分類器300は、破片14、15の破片サイズおよび/または破片14、15の破片材料を識別するために同相成分を評価し、上記成分は破片の磁化に比例している。加えてまたは代替的に、破片分類器300は、破片14、15の硬さおよび/または破片14、15の破片材料を識別するために異相成分を評価し、上記成分は、図6および図7に一例として図示されるように、破片のヒステリシス曲線下面積に比例している。
【0099】
破片分類器300は、所望の動作範囲内で受信コイル310を用いて測定される破片信号260を増幅するために増幅器330も備えてよい。
【0100】
破片分類器300が複数の受信コイル310を有して実装されて、受信コイル310が、図4および図5に図示されるなど、破片の位置の判定を提供するためにセンサヘッド内にセンサ面にわたって分散されて設けられる場合、複数の受信コイル310を互いから独立して評価するために、マルチプレクサなどの、選択回路320も設けられてよい。
【0101】
破片分類器300は、材料データベース340も備えてよく、材料データベースに、保磁力、磁化率、残留磁気、磁気飽和またはヒステリシス曲線などの、材料データが記憶される。
【0102】
破片分類器300は、演算器350を用いて、材料データと比較することによって破片14、15の少なくとも1つの第1の硬さクラスおよび/もしくは1つの第2の硬さクラス、破片サイズ、ならびに/または破片材料を判定するように構成される。そのため、例えば、磁気的に柔らかい破片14または磁気的に硬い破片15が存在するかどうかを判定できる。破片サイズまたは破片体積も判定でき、破片14または15の材料も判定できる。重大もしくは非重大な摩耗または重大もしくは非重大な伝動装置損傷についての結論を、そのため引き出すことができる。
【0103】
演算器350は、例えば、マイクロコントローラとして実装される。
【0104】
材料データベース340は、破片分類器の一部として図2に描かれるが、外部データベースでもよく、演算器350は、例えば通信モジュールを用いて外部データベースと通信してよい。
【0105】
材料データは、比較信号曲線も備えてよく、すなわち演算器によって、破片信号260を比較信号曲線と比較することによって第1および/または第2の硬さクラスの存在が判定される。そのため、材料データベース340に記憶される破片信号260の複数の信号曲線と比較が行われる。例えば、信号曲線は、材料データベース340に特性マップとして記憶されてよい。
【0106】
破片分類器300が励起信号220と破片信号260との間の位相シフトおよび/または破片信号260の振幅を評価することによって破片分析範囲内の少なくとも1つの破片14、15を分類した後に、分類の結果は、更に処理されて、例えば、プロセス監視のためのプロセスコンピュータ400に提供でき、または分析ユニット410を用いて分析でき、または保守もしくは修理の必要を示すために報告ユニット420に提供できる。
【0107】
図3は、図1または図2に図示されるなどの、破片を特性化するためのセンサ装置100の一部を示す。センサ装置100は、破片分析範囲110、好ましくは液体が流れるライン18内の空間領域を備える。センサ装置100は、不図示の、少なくとも1つの送信コイルを有する信号発生器を備える。信号発生器は、電気励起信号220を発生させ、同じく不図示の、送信コイルを用いて上記信号を磁気信号230として破片分析範囲110へ結合するように構成される。
【0108】
センサ装置100は、分類されることになる少なくとも1つの破片14、15を破片分析範囲110に、すなわちセンサ装置100のセンサヘッドに静止的に、保持するために破片捕集器270を更に備える。複数の金属破片14、15がセンサ装置100のセンサヘッドに付着するので、破片捕集器270は、図3に間接的にのみ図示される。破片捕集器270は、分類されることになる少なくとも1つの破片を破片分析範囲110に磁場を用いて磁気的に保持するように構成される。この目的で、破片捕集器は、分類されることになる少なくとも1つの破片14、15を破片分析範囲110に磁場を用いて磁気的に保持するように直流電流によって駆動されるコイルとして構成されてよく、磁場は、破片範囲を洗浄するために制御ユニットを用いてオンおよびオフに切り替わるために実装される。
【0109】
図4は、送信コイル210および複数の受信コイル310を有するセンサ装置100の一部の側断面図を示す。受信コイルは、破片14、15の位置の判定および/またはサイズの判定を提供するためにセンサヘッド280内にセンサ面290にわたって分散されて設けられる。
【0110】
受信コイル310は、破片信号への励起信号の影響を最小化するためにセンサ面平面290に対して垂直方向に実装されるコイル軸を備える。図示される実施形態における送信コイル210は、センサ面平面290に対して実質的に平行に実装されるコイル軸を更に備える。送信コイルのコイル軸は代替的に、特に送信コイルが垂直アームに巻回される場合、センサ面平面290に対して実質的に垂直に実装されてよい。上記整列を用いて、励起場が受信コイルに垂直であるので、磁気信号230として破片分析範囲110へ結合される励起信号の影響を低下させることができ、破片信号は改善された方式で測定できる。
【0111】
図5は、複数の受信コイル310を有するセンサ装置100の一部を描いており、受信コイル310は、破片14、15の位置の判定および/またはサイズの判定を提供するためにセンサヘッド280内にセンサ面290にわたって分散されて設けられ、受信コイル310は、センサヘッド280内にハニカムパターンで分散されて設けられる。図示される図5は、例えば、図4の上断面図である。
【0112】
図6は、破片を特性化するための評価原則を例示する。上記したように、破片分類器は、励起信号と破片信号との間の位相シフトおよび/または破片信号の振幅を評価することによって破片分析範囲内の少なくとも1つの破片を分類するように構成される。破片分類器は、そのため、例えば、破片サイズ、破片材料および/または破片の硬さクラスを判定するように構成される。
【0113】
上領域Aに磁気的に柔らかい破片の特性化を例示する3つの図A1図A3が示される。
【0114】
下領域Bに磁気的に硬い破片の特性化を例示する3つの図B1図B3が示される。
【0115】
2つの異なるヒステリシス曲線が図A1および図B1に示される。図A1および図B1両方において、磁化MがY軸にプロットされ、磁場強度HがX軸にプロットされる。Y軸との曲線の交点は、正および負の残留磁気に対応する。X軸との交点は、正および負の保磁力に対応する。点線は、初磁化曲線の経過に対応する。見て取れるように、曲線A1およびB1は、磁場強度が更に正に増加されるか負に増加されるかから独立して、正および負の両方向に飽和する。これは、磁気飽和として知られている。2つのヒステリシス曲線は、そのため正および負の磁気飽和も含む。図A1に見て取れるように、図B1と比較すると狭いヒステリシス曲線が生じ、柔らかい破片の結論に至る。図B1におけるヒステリシス曲線は、図A1と比較すると広くかつ低く、その結果、磁気的に硬い破片の結論を引き出すことができる。この関係は、図6におよび図7にも例示される。
【0116】
例えば、電気励起信号220および破片信号260が図A2および図B2に例示される。2つの図A2および図B2において時間tにわたって電圧Uがプロットされる。電圧曲線220および260は、実際同じ図に例示されるが、しかし信号曲線220および260の振幅値は異なってよい。
【0117】
図A2および図B2に見て取れるように、破片の異なる材料性質により電気励起信号220と破片信号260との間で異なる位相シフトが生じる。例えば、磁気的に柔らかい破片によって発生される破片信号が図A2に示される。図B2は、一例として、磁気的に硬い破片によって発生される破片信号を例示する。位相シフトを評価することによって、破片は、そのため、例えば硬さに関して分類できる。
【0118】
位相シフトに加えてまたは代替的に、破片信号260の振幅を評価することも提供される。電気励起信号の関数として磁気的に励起されるとき異なる破片が破片信号曲線において異なる振幅を実装するので、破片信号の振幅は、位相シフトに対する追加情報として使用されてよい。
【0119】
図A3および図B3は、基本的に図A2および図B2を異なる描写で、すなわち回転空間フェーザとして示す。見て取れるように、空間フェーザ220および260は、様々な大きさの位相角において互いと同期して回転する。そのため、位相シフトは、位相角を基にしても判定できる。
【0120】
図7は、3軸図にプロットされる2つのヒステリシス曲線の一例を示す。磁界強度HがX軸にプロットされる。磁束密度Bが第1のY軸にプロットされ、磁化Mが第2のY軸にプロットされる。
【0121】
見て取れるように、磁気的に硬いおよび磁気的に柔らかい破片は、ヒステリシス曲線の異なる領域によって異なる。この実現は、破片分析範囲内の破片を検出するためだけでなく、例えばそのサイズ(破片体積)、磁気的性質(硬さ)または材料性質(破片材料)に関して、特性化するためにも使用される。
【0122】
図8は、センサ装置を用いて破片を特性化するための方法のフローチャートを示す。
【0123】
第1のステップS1では、送信コイルを有する信号発生器を用いて電気励起信号を発生させることが行われ、信号発生器は、電気励起信号を発生させ、送信コイルを用いて上記信号を破片分析範囲へ結合するように構成され、破片分析範囲は空間領域である。
【0124】
第2のステップS2では、少なくとも1つの受信コイルを有する破片分類器を用いた破片信号の受信が行われ、破片分類器は、受信コイルを用いて破片分析範囲から破片信号を受信するように構成され、破片信号は、励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片によって発生される磁化信号である。
【0125】
第3のステップS3では、破片分類器を用いて破片信号を評価することが行われ、破片分類器は、励起信号と破片信号との間の位相シフトおよび/または破片信号の振幅を評価することによって破片分析範囲内の少なくとも1つの破片を分類するように構成される。
【0126】
加えて、2つの更に好適なステップS3.1およびS3.2がステップS3に例示される。
【0127】
ステップS3.1では、破片分類器を用いて、破片の磁化に比例した、同相成分を判定することによって、分類されることになる破片の破片サイズおよび/または破片材料を判定することが行われる。
【0128】
ステップ3.2では、破片のヒステリシス曲線下面積に比例した異相成分を判定することによって、分類されることになる破片の少なくとも1つの硬さクラスおよび/または1つの破片材料を判定することが行われる。
【0129】
更なる考察として、破片を特性化するためのセンサ装置であって、破片分析範囲であり、破片分析範囲が空間領域である、破片分析範囲と、少なくとも1つの送信ユニットを有する信号発生器であり、信号発生器が、電気励起信号を発生させ、送信ユニットを用いて上記信号を破片分析範囲へ結合するように構成される、信号発生器と、少なくとも1つの受信センサを有する破片分類器であり、破片分類器が、受信センサを用いて破片分析範囲から破片信号を受信するように構成され、破片信号が、励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片によって発生される磁化信号である、破片分類器とを備える、センサ装置において、破片分類器が、励起信号と破片信号との間の位相シフトおよび/または破片信号の振幅を評価することによって破片分析範囲内の少なくとも1つの破片を分類するように更に構成されることを特徴とする、センサ装置が提案される。
【0130】
送信コイルの代替的に、そのため、少なくとも1つの送信ユニットを有する信号発生器であって、信号発生器が、電気励起信号を発生させ、送信ユニットを用いて上記信号を磁気信号として破片分析範囲へ結合するように構成される、信号発生器を使用することが提案される。そのため、電気励起信号を発生させるために送信コイルの代わりに何らかの他の任意の技術装置を使用することが提案される。
【0131】
少なくとも1つの送信コイルを有する信号発生器であって、信号発生器が、電気励起信号を発生させ、送信コイルを用いて上記信号を磁気信号として破片分析範囲へ結合するように構成される、信号発生器を使用することが任意選択特徴である。単に破片信号を受信して、破片信号を評価するように構成されるセンサ装置も提供されてよい。
【0132】
更なる考察として、そのため、破片を特性化するためのセンサ装置であって、少なくとも1つの受信センサを有する破片分類器であり、破片分類器が、受信センサを用いて破片信号を受信するように構成され、破片信号が、励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片によって発生される磁化信号である、破片分類器を備え、破片分類器が、励起信号と破片信号との間の位相シフトおよび/または破片信号の振幅を評価することによって少なくとも1つの破片を分類するように構成される、センサ装置が提案される。
【0133】
汎用送信ユニットを有するまたは信号発生器のない本センサ装置は好ましくは、前の実施形態のいずれか1つに従って実装される。
【0134】
送信コイルを有する信号発生器を用いて電気励起信号を発生させる方法ステップであって、信号発生器が、電気励起信号を発生させ、送信コイルを用いて上記信号を破片分析範囲へ結合するように構成され、破片分析範囲が空間領域である、方法ステップが任意選択特徴である。単に破片信号を受信および評価するように構成される方法も提供されてよい。
【0135】
更なる考察として、そのため、少なくとも1つの破片分類器を備えるセンサ装置を用いて破片を特性化するための方法が提案される。方法は、少なくとも1つの受信センサを有する破片分類器を用いて破片信号を受信するステップであって、破片分類器が、受信センサを用いて、発生される破片信号を受信するように構成され、破片信号が、励起信号によって励起され、分類されることになる少なくとも1つの破片によって発生される磁化信号である、ステップと、破片分類器を用いて破片信号を評価するステップであって、破片分類器が、励起信号と破片信号との間の位相シフトおよび/または破片信号の振幅を評価することによって少なくとも1つの破片を分類するように構成される、ステップとを含む。測定方法が、そのため提案される。
【0136】
励起信号と破片信号との間の位相シフトおよび/または破片信号の振幅を評価することによって少なくとも1つの破片を分類する特徴も、そのため任意選択特徴である。破片を分類するために受信した破片信号を評価することが一般に提案される。励起によって発生され、励起への反応として破片に発生される磁気信号として破片信号を評価することが、そのため提案される。破片を特性化するための公知の方法が、対照的に、上の序論に記載されるように、測定コイルと基準コイルとの間のインピーダンスの変化を使用して破片を特性化するために比較コイルを使用する。
【符号の説明】
【0137】
10 潤滑回路
11 伝動装置
12 ポンプ
13 潤滑油
14、15 (金属)破片(磁気的に柔らかい、磁気的に硬い)
16 浮遊物
17 フィルタ
18 液体が流れるライン
100 センサ装置
110 破片分析範囲
200 信号発生器
210 送信コイル
220 励起信号
230 磁気信号
240 関数発生器
250 増幅器
260 破片信号
270 破片捕集器
280 センサヘッド
290 センサ面平面
300 破片分類器
310 受信コイル
320 選択回路
330 増幅器
340 材料データベース
350 演算器
400 プロセスコンピュータ
410 分析ユニット
420 報告ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
【国際調査報告】