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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】核酸の経口送達用の製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20240717BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240717BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240717BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20240717BHJP
   C07K 14/46 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A61K31/7088 ZNA
A61K31/7105
A61P9/12
A61P21/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P3/10
A61P3/04
A61P9/10
A61P17/00
A61P31/12
A61P9/00
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/12
A61K47/04
C12N15/113 120Z
C12N15/113 Z
C12N15/88 Z
C07K14/46
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581043
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 US2022035870
(87)【国際公開番号】W WO2023278802
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/202,970
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524002854
【氏名又は名称】セダーズ-シナイ メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルバン,エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒム,アーメド,ジー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076CC09
4C076CC11
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC29
4C076CC35
4C076DD22
4C076DD41
4C076DD43
4C076EE30
4C076EE41
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA13
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA70
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZB21
4C086ZB33
4C086ZC01
4C086ZC35
4C086ZC41
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA43
4H045EA20
4H045EA34
(57)【要約】
非コードRNAなどの核酸の経口送達用に構成された製剤が本明細書で提供される。本明細書で提供される製剤は、ミセル内に核酸をカプセル化するために使用される複数のカチオン性脂質、及び脂質を被覆するために使用され、ミセル上に被覆を形成する、カゼインタンパク質とキトサンポリマーとの混合物を含む。被覆されたミセルは、製剤に耐酸性を与え、そのため、炎症又は線維化に関連する状態、例えば、肥大型心筋症、駆出率が保持された心不全、筋肉障害、例えば筋ジストロフィー、強皮症及び/又はウイルス感染症に対する核酸のバイオアベイラビリティが増強した経口投与が可能である。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸、
カチオン性脂質、
少なくとも1つのカゼインタンパク質、及び
キトサン
を含む、核酸の経口送達のための製剤。
【請求項2】
核酸が、リボ核酸(RNA)を含み、RNAが、製剤の約0.0001~0.01重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
少なくとも1つのカゼインタンパク質が、少なくともα-s1カゼインサブユニットを含み、少なくとも1つのカゼインタンパク質が、製剤の約0.5~5重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
キトサンが、製剤の約0.001~1重量/体積%の間の範囲の量で存在する、
請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
製剤の約0.01~1重量/体積%の間の範囲の量で存在する酢酸をさらに含む、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
カチオン性脂質が、核酸の各マイクログラムに対して約0.1~約5マイクロリットルの範囲の量で存在する、請求項2に記載の製剤。
【請求項5】
核酸が、非コードRNAを含む、請求項2に記載の製剤。
【請求項6】
酸をさらに含む、請求項2に記載の製剤。
【請求項7】
酸が、製剤の約0.001~1体積%の間の範囲の量で存在し、酸が、酢酸、クエン酸、リン酸及びクエン酸から選択される、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
キトサンが、低分子量キトサンである、請求項2に記載の製剤。
【請求項9】
低分子量キトサンが、質量約50~約190キロダルトンの範囲である、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
核酸が、非コードRNAを含み、非コードRNAが、製剤の約0.001~約0.005重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
少なくとも1つのカゼインタンパク質が、α-s1カゼインサブユニットとα-s2カゼインサブユニットとβカゼインサブユニットとκカゼインサブユニットとの混合物を含み、カゼインサブユニットが、製剤の約1~3重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
キトサンが、製剤の約0.01~0.1重量/体積%の間の範囲の量で存在する、
請求項2に記載の製剤。
【請求項11】
非コードRNAが、製剤の約0.0015~約0.004体積%の間の範囲の量で存在し、
カゼインサブユニットの混合物が、製剤の約2~3重量/体積%の間の範囲の量で存在し、 キトサンが、製剤の約0.05~0.1重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
カチオン性脂質が、核酸の各マイクログラムに対して約1~約3マイクロリットルの範囲の量で存在する、
請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
非コードRNAが、製剤の約0.0015~約0.0035体積%の間の範囲の量で存在し、
カゼインサブユニットの混合物が、製剤の約2.2~2.8重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
キトサンが、製剤の約0.06~0.09重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
カチオン性脂質が、核酸の各マイクログラムに対して約1~約2マイクロリットルの範囲の量で存在する、
請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
対象に投与されると、非コードRNAが、IL1-B、IL-6、TGFベータ、NLRP3、p21、及びIL-4のうちの1つ以上の発現を低下させる、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
対象に投与されると、非コードRNAが、対象の収縮期血圧を低下させる、請求項12に記載の製剤。
【請求項15】
対象に投与されると、非コードRNAが、対象の拡張期血圧を低下させる、請求項2に記載の製剤。
【請求項16】
対象に投与されると、非コードRNAが、対象の少なくとも1つの筋肉の筋持久力、疲労に対する筋肉の耐性、筋力及び/又は筋収縮性を増強する、請求項12に記載の製剤。
【請求項17】
筋肉が、骨格筋又は心筋である、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
対象に投与されると、非コードRNAが、脳性ナトリウム利尿ペプチドの発現を低下させる、請求項12に記載の製剤。
【請求項19】
対象に投与されると、非コードRNAが、僧帽弁輪組織速度に対する拡張期僧帽弁流入速度(E/e')を低下させる、請求項12に記載の製剤。
【請求項20】
対象に投与されると、非コードRNAが、対象内の耐糖能を増強する、請求項12に記載の製剤。
【請求項21】
対象に投与されると、非コードRNAが、肥満を軽減し、且つ/又は対象の単位体重あたりの皮下脂肪組織を減少させる、請求項12に記載の製剤。
【請求項22】
心筋梗塞を起こした対象に投与されると、非コードRNAが、心筋梗塞後の梗塞サイズを減少させる、請求項12に記載の製剤。
【請求項23】
心筋梗塞を起こした対象に投与されると、非コードRNAが、心筋梗塞後の循環心臓トロポニンI濃度を低下させる、請求項12に記載の製剤。
【請求項24】
製剤が、炎症及び/又は線維化の増加に関連する疾患の1つ以上の症状を緩和する、請求項1~23のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項25】
疾患が、駆出率が保持された心不全、心筋梗塞、筋ジストロフィー、強皮症、ウイルス感染症、及び肥大型心筋症から選択される、請求項24に記載の製剤。
【請求項26】
核酸が、配列番号1~25、31、32のうちの1つ以上に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項27】
核酸が、配列番号1~25、31、32のうちの1つ以上に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列から本質的になる、請求項1~26のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項28】
人工脂質ミセル、
人工脂質ミセル内にカプセル化された核酸、及び
人工脂質ミセル上の、カゼインタンパク質とキトサンポリマーとの混合物を含む被覆
を含む、核酸の経口送達のための製剤。
【請求項29】
核酸が、リボ核酸(RNA)を含み、RNAが、製剤の約0.0001~0.01重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
カゼインタンパク質とキトサンポリマーとの混合物が、少なくともα-s1カゼインサブユニットを含み、少なくとも1つのカゼインタンパク質が、製剤の約0.5~5重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
キトサンが、製剤の約0.001~1重量/体積%の間の範囲の量で存在する、
請求項28に記載の製剤。
【請求項30】
製剤の約0.01~1重量/体積%の間の範囲の量で存在する酢酸をさらに含む、請求項28又は29に記載の製剤。
【請求項31】
カチオン性脂質が、核酸の各マイクログラムに対して約0.1~約5マイクロリットルの範囲の量で存在する、請求項28、29、又は30に記載の製剤。
【請求項32】
核酸が、非コードRNAを含む、請求項28~31のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項33】
酸をさらに含む、請求項28、29又は31~32に記載の製剤。
【請求項34】
酸が、製剤の約0.001~1体積%の間の範囲の量で存在し、酸が、酢酸、クエン酸、リン酸及びクエン酸から選択される、請求項33に記載の製剤。
【請求項35】
キトサンが、低分子量キトサンである、請求項28~34のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項36】
低分子量キトサンが、質量約50~約190キロダルトンの範囲である、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
核酸が、非コードRNAを含み、非コードRNAが、製剤の約0.001~約0.005体積%の間の範囲の量で存在し、
少なくとも1つのカゼインタンパク質が、α-s1カゼインサブユニットとα-s2カゼインサブユニットとβカゼインサブユニットとκカゼインサブユニットとの混合物を含み、カゼインサブユニットが、製剤の約1~3体積%の間の範囲の量で存在し、
キトサンが、核酸の各マイクログラムに対して約1~約3マイクロリットルの範囲の量で存在する、
請求項29に記載の製剤。
【請求項38】
非コードRNAが、製剤の約0.0015~約0.005体積%の間の範囲の量で存在し、
カゼインサブユニットの混合物が、製剤の約2~3体積%の間の範囲の量で存在し、
キトサンが、製剤の約0.05~0.1体積%の間の範囲の量で存在し、
カチオン性脂質が、核酸の各マイクログラムに対して約1~約2マイクロリットルの範囲の量で存在する、
請求項37に記載の製剤。
【請求項39】
非コードRNAが、製剤の約0.0015~約0.0035体積%の間の範囲の量で存在し、
カゼインサブユニットの混合物が、製剤の約2.2~2.8体積%の間の範囲の量で存在し、
キトサンが、製剤の約0.06~0.09体積%の間の範囲の量で存在し、
カチオン性脂質が、製剤1マイクロリットルあたり約15~約25ngの範囲の量で存在する、
請求項37又は38に記載の製剤。
【請求項40】
対象に投与されると、非コードRNAが、IL1-B、IL-6、TGFベータ、NLRP3、p21、及びIL-4のうちの1つ以上の発現を低下させる、請求項28~39のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項41】
対象に投与されると、非コードRNAが、対象の収縮期血圧を低下させる、請求項28~40のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項42】
対象に投与されると、非コードRNAが、対象の拡張期血圧を低下させる、請求項28~41のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項43】
対象に投与されると、非コードRNAが、対象の少なくとも1つの筋肉の筋持久力、疲労に対する筋肉の耐性、筋力及び/又は筋収縮性を増強する、請求項28~42のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項44】
筋肉が、骨格筋又は心筋である、請求項43に記載の製剤。
【請求項45】
対象に投与されると、非コードRNAが、脳性ナトリウム利尿ペプチドの発現を低下させる、請求項28~44のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項46】
対象に投与されると、非コードRNAが、僧帽弁輪組織速度に対する拡張期僧帽弁流入速度(E/e')を低下させる、請求項28~45のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項47】
対象に投与されると、非コードRNAが、対象内の耐糖能を増強する、請求項28~46のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項48】
対象に投与されると、非コードRNAが、肥満を軽減し、且つ/又は対象の単位体重あたりの皮下脂肪組織を減少させる、請求項28~47のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項49】
心筋梗塞を起こした対象に投与されると、非コードRNAが、心筋梗塞後の梗塞サイズを減少させる、請求項28~48のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項50】
心筋梗塞を起こした対象に投与されると、非コードRNAが、心筋梗塞後の循環心臓トロポニンI濃度を低下させる、請求項28~48のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項51】
製剤が、炎症及び/又は線維化の増加に関連する疾患の1つ以上の症状を緩和する、請求項28~50のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項52】
疾患が、駆出率が保持された心不全、心筋梗塞、筋ジストロフィー、強皮症、ウイルス感染症、及び肥大型心筋症から選択される、請求項51に記載の製剤。
【請求項53】
核酸が、配列番号1~25、31、32のうちの1つ以上に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項28~52のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項54】
核酸が、配列番号1~25、31、32のうちの1つ以上に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列から本質的になる、請求項1~25のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項55】
炎症及び/又は線維化を示す疾患を有する対象に、治療有効量の請求項1~54のいずれか一項に記載の製剤を投与するステップを含む、炎症及び/又は線維化に関連する疾患を治療する方法。
【請求項56】
炎症及び/又は線維化に関連する疾患の治療のための、請求項1~54のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項57】
炎症及び/又は線維化に関連する疾患の治療のための医薬の製造のための、請求項1~54のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項58】
疾患が、駆出率が保持された心不全、心筋梗塞、筋ジストロフィー、強皮症、ウイルス感染症、及び/又は肥大型心筋症を含む、請求項55又は56に記載の使用。
【請求項59】
核酸を、カチオン性脂質を含む溶液と接触させることによって、人工脂質ミセル中に核酸をカプセル化するステップであって、それにより核酸を含む人工脂質ミセルを生成する、ステップ、
核酸を含む人工脂質ミセルを、2~10%の間のカゼインタンパク質を含む溶液と接触させることによって、核酸を含む人工脂質ミセルを、カゼインタンパク質で被覆するステップであって、それにより核酸を含むカゼイン被覆人工脂質ミセルを生成する、ステップ、
核酸を含むカゼイン被覆人工脂質ミセルを、酸とキトサンポリマーとの混合物に曝露するステップであって、酸とキトサンポリマーとの混合物により、キトサンのカゼインタンパク質とのインターカレーション、及び核酸を含むカゼイン-キトサン被覆脂質ミセルの沈殿が可能になる、ステップ
を含む、核酸の経口送達のための製剤を製造する方法。
【請求項60】
核酸を、カチオン性脂質と、約10~30ngの間の核酸と1μLの脂質溶液との比で接触させる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
液体媒体を、核酸及びカチオン性脂質溶液に、最終体積約100μLまで添加するステップをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
カゼインタンパク質が、5%ウシカゼイン溶液の溶液内にあり、1:10の体積比で、核酸を含む人工脂質ミセルに添加される、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
酸とキトサンポリマーとの混合物が、約0.05~2%の間の酢酸溶液、及び約0.1%~2%の間のキトサン溶液を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
炎症及び/又は線維化に関連する疾患の治療又は寛解を必要とする対象に、
核酸、
カチオン性脂質、
少なくとも1つのカゼインタンパク質、及び
キトサン
を含む経口製剤を投与するステップを含む、炎症及び/又は線維化に関連する疾患を治療する又は寛解させる方法。
【請求項65】
核酸が、リボ核酸(RNA)を含み、RNAが、製剤の約0.0001~0.01重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
少なくとも1つのカゼインタンパク質が、少なくともα-s1カゼインサブユニットを含み、少なくとも1つのカゼインタンパク質が、製剤の約0.5~5重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
キトサンが、製剤の約0.001~1重量/体積%の間の範囲の量で存在する、
請求項64に記載の方法。
【請求項66】
製剤が、酢酸をさらに含み、酢酸が、製剤の約0.01~1重量/体積%の間の範囲の量で存在する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
カチオン性脂質が、核酸の各マイクログラムに対して約0.1~約5マイクロリットルの範囲の量で存在する、請求項64、65、又は66に記載の方法。
【請求項68】
核酸が、非コードRNAを含む、請求項64~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
製剤が、酸をさらに含む、請求項64~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
酸が、製剤の約0.001~1体積%の間の範囲の量で存在し、酸が、酢酸、クエン酸、リン酸及びクエン酸から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
キトサンが、低分子量キトサンである、請求項64~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
低分子量キトサンが、質量約50~約190キロダルトンの範囲である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
核酸が、非コードRNAを含み、非コードRNAが、製剤の約0.001~約0.005重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
少なくとも1つのカゼインタンパク質が、α-s1カゼインサブユニットとα-s2カゼインサブユニットとβカゼインサブユニットとκカゼインサブユニットとの混合物を含み、カゼインサブユニットが、製剤の約1~3重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
キトサンが、製剤の約0.01~0.1重量/体積%の間の範囲の量で存在する、
請求項64~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
非コードRNAが、製剤の約0.002~約0.005重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
カゼインサブユニットの混合物が、製剤の約2~3重量/体積%の間の範囲の量で存在し、 キトサンが、製剤の約0.05~0.1重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
カチオン性脂質が、核酸の各マイクログラムに対して約1~約3マイクロリットルの範囲の量で存在する、
請求項73に記載の方法。
【請求項75】
非コードRNAが、製剤の約0.0025~約0.004体積%の間の範囲の量で存在し、
カゼインサブユニットの混合物が、製剤の約2.2~2.8重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
キトサンが、製剤の約0.06~0.09重量/体積%の間の範囲の量で存在し、
カチオン性脂質が、核酸の各マイクログラムに対して約1~約2マイクロリットルの範囲の量で存在する、
請求項74に記載の方法。
【請求項76】
対象に投与されると、非コードRNAが、IL1-B、IL-6、TGFベータ、NLRP3、p21、及びIL-4のうちの1つ以上の発現を低下させる、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
対象に投与されると、非コードRNAが、対象の収縮期血圧を低下させる、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
対象に投与されると、非コードRNAが、対象の拡張期血圧を低下させる、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
対象に投与されると、非コードRNAが、対象の少なくとも1つの筋肉の筋持久力、疲労に対する筋肉の耐性、筋力及び/又は筋収縮性を増強する、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
筋肉が、骨格筋又は心筋である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
対象に投与されると、非コードRNAが、脳性ナトリウム利尿ペプチドの発現を低下させる、請求項75に記載の方法。
【請求項82】
対象に投与されると、非コードRNAが、僧帽弁輪組織速度に対する拡張期僧帽弁流入速度(E/e')を低下させる、請求項75に記載の方法。
【請求項83】
対象に投与されると、非コードRNAが、対象内の耐糖能を増強する、請求項75に記載の方法。
【請求項84】
対象に投与されると、非コードRNAが、肥満を軽減し、且つ/又は対象の単位体重あたりの皮下脂肪組織を減少させる、請求項75に記載の方法。
【請求項85】
心筋梗塞を起こした対象に投与されると、非コードRNAが、心筋梗塞後の梗塞サイズを減少させる、請求項75に記載の方法。
【請求項86】
心筋梗塞を起こした対象に投与されると、非コードRNAが、心筋梗塞後の循環心臓トロポニンI濃度を低下させる、請求項75に記載の方法。
【請求項87】
疾患が、駆出率が保持された心不全、心筋梗塞、筋ジストロフィー、強皮症、ウイルス感染症、及び肥大型心筋症から選択される、請求項64~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
核酸が、配列番号1~25、31、32のうちの1つ以上に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項64~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
核酸が、配列番号1~25、31、32のうちの1つ以上に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列から本質的になる、請求項64~88のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月1日に出願された米国仮出願第63/202,970号に対する優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載
本発明は、国立衛生研究所によりEduardo Marban博士に授与された助成金番号R01 HL124074の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
配列表への参照
本出願は、電子形式の配列表とともに出願されている。配列表は、2022年6月30日に作成された、16,471バイトのサイズのCSMC018WO2_ST25.txtと題されるファイルとして提供される。配列表の電子形式における情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
背景
技術分野
本開示は、核酸、例えば治療用RNA(例えば、非コードRNA又はコードRNA)の経口送達のための製剤に関する。いくつかの実施形態では、製剤は、このようなRNAの経口バイオアベイラビリティを増強し、そのため、例えば注射による送達ではなく経口送達によって、様々な疾患、特に炎症及び/又は線維化を特徴とする疾患の治療が可能になる。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの実施形態では、核酸、カチオン性脂質、少なくとも1つのカゼインタンパク質、及びキトサンを含む、核酸の経口送達のための製剤が本明細書で提供される。
【0006】
いくつかの実施形態では、製剤の核酸は、リボ核酸(RNA)を含み、RNAは、製剤の0.0001~約0.01重量/体積%の間の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカゼインタンパク質は、少なくとも、製剤の約0.25~約7重量/体積%の間の範囲の量で存在するα-s1カゼインサブユニットを含み、キトサンは、製剤の約0.0001~4重量/体積%の間の範囲の量で存在する。
【0007】
いくつかの実施形態では、複数の人工脂質ミセル、複数の核酸、及び人工脂質ミセル上の被覆を含む、核酸の経口送達のための製剤であって、核酸の一部が人工脂質ミセル内にカプセル化され、被覆がカゼインタンパク質とキトサンポリマーとの混合物を含む、製剤が提供される。いくつかの実施形態では、核酸は、リボ核酸(RNA)を含み、RNAは、製剤の約0.00001~約0.05重量/体積%の間の範囲の量で存在し、カゼインタンパク質とキトサンポリマーとの混合物は、少なくとも、製剤の約0.5~約5重量/体積%の間の範囲の量で存在するα-s1カゼインサブユニットを含み、キトサンは、製剤の約0.001~約1重量/体積%の間の範囲の量で存在する。
【0008】
いくつかの実施形態では、製剤は、酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、酸は、製剤の約0.001~約1体積%の間の範囲の量で存在し、酸は、酢酸、クエン酸、リン酸及びクエン酸から選択される。一実施形態では、製剤は、酢酸をさらに含み、酢酸は、製剤の約0.01~約1重量/体積%の間の範囲の量で存在する。
【0009】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、核酸の各マイクログラムに対して約0.1~約5マイクロリットルの範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、核酸は、非コードRNA、コードRNA(例えば、mRNA)、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、キトサンは、低分子量キトサンである。いくつかの実施形態では、低分子量キトサンは、質量約50~約190キロダルトンの範囲である。
【0010】
いくつかの実施形態では、核酸は、非コードRNA又はコードRNAを含み、RNAは、製剤の約0.001~約0.005重量/体積%の間の範囲の量で存在し、少なくとも1つのカゼインタンパク質は、α-s1カゼインサブユニットとα-s2カゼインサブユニットとβカゼインサブユニットとκカゼインサブユニットとの混合物を含み、カゼインサブユニットは、製剤の約1~3重量/体積%の間の範囲の量で存在し、キトサンは、製剤の約0.01~0.1重量/体積%の間の範囲の量で存在する。
【0011】
いくつかの実施形態では、核酸は、非コードRNA又はコードRNAを含み、RNAは、製剤の約0.0015~約0.004重量/体積%の間の範囲の量で存在し、カゼインサブユニットの混合物は、製剤の約2~3重量/体積%の間の範囲の量で存在し、キトサンは、製剤の約0.05~0.1重量/体積%の間の範囲の量で存在し、カチオン性脂質は、核酸の各マイクログラムに対して約1~約3マイクロリットルの範囲の量で存在する。
【0012】
いくつかの実施形態では、核酸は、非コードRNA又はコードRNAを含み、RNAは、製剤の約0.0015~約0.0035重量/体積%の間の範囲の量で存在し、カゼインサブユニットの混合物は、製剤の約2.2~2.8重量/体積%の間の範囲の量で存在し、キトサンは、製剤の約0.06~0.09重量/体積%の間の範囲の量で存在し、カチオン性脂質は、核酸の各マイクログラムに対して約1~約2マイクロリットルの範囲の量で存在する。
【0013】
いくつかの実施形態では、対象に投与されると、RNAは、IL1-B、IL-6、TGFベータ、NLRP3、p21、及びIL-4のうちの1つ以上の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、対象に投与されると、RNAは、対象の収縮期血圧を低下させる。いくつかの実施形態では、対象に投与されると、RNAは、対象の拡張期血圧を低下させる。いくつかの実施形態では、対象に投与されると、RNAは、対象の少なくとも1つの筋肉の筋持久力、疲労に対する筋肉の耐性、筋力及び/又は筋収縮性を増強する。実施形態に応じて、筋肉は、骨格筋又は心筋であってもよい。いくつかの実施形態では、対象に投与されると、RNAは、脳性ナトリウム利尿ペプチドの発現を低下させる。
【0014】
いくつかの実施形態では、対象に投与されると、RNAは、僧帽弁輪組織速度に対する拡張期僧帽弁流入速度(E/e')を低下させる。いくつかの実施形態では、対象に投与されると、RNAは、対象内の耐糖能を増強する。いくつかの実施形態では、対象に投与されると、RNAは、肥満を軽減し、且つ/又は対象の単位体重あたりの皮下脂肪組織を減少させる。いくつかの実施形態では、心筋梗塞を起こした対象に投与されると、RNAは、心筋梗塞後の梗塞サイズを減少させる。いくつかの実施形態では、心筋梗塞を起こした対象に投与されると、RNAは、心筋梗塞後の循環心臓トロポニンI濃度を低下させる。
【0015】
いくつかの実施形態では、製剤は、炎症及び/又は線維化の増加に関連する疾患の1つ以上の症状を緩和する。いくつかの実施形態では、疾患は、駆出率が保持された心不全、心筋梗塞、筋ジストロフィー、強皮症、ウイルス感染症、及び肥大型心筋症から選択される。いくつかの実施形態では、製剤は、配列番号1~25、31、32のうちの1つ以上に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、配列番号1~25、31、32のうちの1つ以上に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列から本質的になる核酸を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、配列番号26~30のうちの1つ以上に対して少なくとも80%の配列同一性を有する1つ以上のカゼインタンパク質を含む。
【0016】
炎症及び/又は線維化を示す疾患を有する対象に、治療有効量の本明細書に開示される製剤を投与するステップを含む、炎症及び/又は線維化に関連する疾患を治療する方法も本明細書で提供される。さらに、炎症及び/又は線維化に関連する疾患の治療のための、本明細書に開示される製剤の使用が提供される。さらに、炎症及び/又は線維化に関連する疾患の治療のための医薬の製造のための、本明細書に開示される製剤の使用が提供される。いくつかの実施形態では、疾患は、駆出率が保持された心不全、心筋梗塞、筋ジストロフィー、強皮症、ウイルス感染症、及び/又は肥大型心筋症を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、核酸を、カチオン性脂質を含む溶液と接触させることによって、人工脂質ミセル中に核酸をカプセル化するステップであって、それにより核酸を含む人工脂質ミセルを生成する、ステップ、核酸を含む人工脂質ミセルを、2~10%の間のカゼインタンパク質を含む溶液と接触させることによって、核酸を含む人工脂質ミセルを、カゼインタンパク質で被覆するステップであって、それにより核酸を含むカゼイン被覆人工脂質ミセルを生成する、ステップ、及び核酸を含むカゼイン被覆人工脂質ミセルを、酸とキトサンポリマーとの混合物に曝露するステップであって、酸とキトサンポリマーとの混合物により、キトサンのカゼインタンパク質とのインターカレーション、及び核酸を含むカゼイン-キトサン被覆脂質ミセルの沈殿が可能になる、ステップを含む、核酸の経口送達のための製剤を製造する方法が提供される。
【0018】
いくつかの実施形態では、核酸を、カチオン性脂質と、核酸の各マイクログラムに対して約0.5~2.0μLの間の脂質溶液の比で接触させる。いくつかの実施形態では、この方法は、液体媒体を、核酸及びカチオン性脂質溶液に、最終体積約100μLまで添加するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、カゼインタンパク質は、5%ウシカゼイン溶液の溶液内にあり、1:10の体積比で、核酸を含む人工脂質ミセルに添加される。いくつかの実施形態では、酸とキトサンポリマーとの混合物は、約0.05~2%の間の酢酸溶液、及び約0.1%~2%の間のキトサン溶液を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、核酸、カチオン性脂質、少なくとも1つのカゼインタンパク質、及びキトサンを含む経口製剤を対象に投与するステップを含む、炎症及び/又は線維化に関連する疾患を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、経口製剤は、毎日与えられる。いくつかの実施形態では、単回経口投与は、炎症及び/又は線維化に関連する疾患を寛解させるか又は他の方法で治療するのに有効である。いくつかの実施形態では、核酸は、リボ核酸(RNA)を含み、RNAは、製剤の約0.00001~0.01重量/体積%の間の範囲の量で存在し、少なくとも1つのカゼインタンパク質は、少なくともα-s1カゼインサブユニットを含み、製剤の約0.5~5重量/体積%の間の範囲の量で存在し、キトサンは、製剤の約0.001~1重量/体積%の間の範囲の量で存在する。
【0020】
CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)のヌクレオチド配列を含む単離された核酸であって、RNAであり、最大30nt長である、単離された核酸が本明細書で提供される。CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を含む単離された核酸であって、RNAであり、最大30nt長である、単離された核酸も提供される。任意選択で、核酸は、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、1~10個の間の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の1~12位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチド及び/又は13~24位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、骨格修飾を含む。一部の実施形態では、骨格修飾は、骨格糖修飾を含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位のうちの1つ以上において化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、ロックド核酸(LNA)である。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位においてLNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、24ヌクレオチド長である。
【0021】
CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を含む単離された核酸であって、RNAである、単離された核酸が本明細書で提供される。任意選択で、ヌクレオチド配列は、CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)である。一部の実施形態では、核酸は、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、1~10個の間の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の1~12位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチド及び/又は13~24位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、骨格修飾を含む。一部の実施形態では、骨格修飾は、骨格糖修飾である。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位のうちの1つ以上において化学修飾ヌクレオチドをさらに含む。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、ロックド核酸(LNA)である。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位においてLNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、最大30nt長である。
【0022】
一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列:CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAGからなる又は本質的になる。
【0023】
ヌクレオチド配列:CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号2)からなる核酸であって、核酸がRNAであり、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位のそれぞれがLNAである、核酸。
【0024】
本開示の単離された核酸のいずれか1つ及び薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物も提供される。任意選択で、組成物は、トランスフェクション試薬をさらに含む。任意選択で、トランスフェクション試薬は、リポソーム、細胞外小胞(EV)、及びポリエチレングリコール(PEG)-カチオン性脂質複合体(PCLC)のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、トランスフェクション試薬は、心筋球由来細胞(CDC)に由来するEVを含む。一部の実施形態では、組成物は、カゼインリンタンパク質をさらに含む。任意選択で、組成物は、キトサンをさらに含む。任意選択で、単離された核酸は、カゼイン-キトサン複合体中にカプセル化される。一部の実施形態では、組成物は、カゼインミセルを含む。
【0025】
本開示の核酸のいずれか1つに曝露されたか又はそれでトランスフェクトされたマクロファージであって、マクロファージの抗炎症活性が、核酸なしのマクロファージと比較して増加している、マクロファージが本明細書で提供される。任意選択で、マクロファージは、対象中にある。任意選択で、マクロファージは、培養中である。
【0026】
本開示の核酸のいずれか1つ及びトランスフェクション試薬を含む、キットも提供される。任意選択で、トランスフェクション試薬は、リポソーム、細胞外小胞(EV)、及びポリエチレングリコール(PEG)-カチオン性脂質複合体(PCLC)のうちの1つ以上である。一部の実施形態では、キットは、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。一部の実施形態では、キットは、カゼインリンタンパク質をさらに含む。一部の実施形態では、キットは、キトサンをさらに含む。
【0027】
心臓状態又はその症状の治療を必要とする対象に、治療有効量の、本開示の核酸のいずれか1つ又は本開示の組成物のいずれか1つを投与するステップであって、それにより心臓状態又はその症状を治療する、ステップを含む、心臓状態又はその症状を治療する方法も提供される。任意選択で、心臓状態は、心不全の症状及び/又は後遺症を含む。一部の実施形態では、心臓状態は、肥大型心筋症を含む。一部の実施形態では、心臓状態は、駆出率が保持された心不全(HFpEF)を含む。一部の実施形態では、心臓状態は、感染性疾患の症状又は後遺症を含む。一部の実施形態では、感染性疾患は、ウイルス感染症を含む。一部の実施形態では、対象は、心臓状態を有する。一部の実施形態では、対象は、心臓状態を発症するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、投与前に、高血圧、心エコー検査によるE/e'比の上昇、心肥大、心筋線維化、肥満、消耗、持久力の低下、及び全身性炎症マーカーの上昇のうちの1つ以上を示す。
【0028】
筋肉障害又はその症状の治療を必要とする対象に、治療有効量の、本開示の核酸のいずれか1つ又は本開示の組成物のいずれか1つを投与するステップであって、それにより筋肉障害又はその症状を治療する、ステップを含む、筋肉障害又はその症状を治療する方法も提供される。任意選択で、筋肉障害は、筋ジストロフィー又は心臓状態を含む。一部の実施形態では、筋肉障害は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む。一部の実施形態では、対象は、筋肉障害を有する。一部の実施形態では、対象は、筋肉障害を発症するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、筋肉障害を発症する遺伝的素因を有する。一部の実施形態では、対象は、投与前に、持久力の低下、及び骨格筋機能の低下のうちの1つ以上を示す。
【0029】
炎症状態の治療を必要とする対象に、治療有効量の、本開示の核酸のいずれか1つ又は本開示の組成物のいずれか1つを投与するステップであって、それにより炎症状態を治療する、ステップを含む、炎症状態を治療する方法も提供される。任意選択で、炎症状態は、感染性疾患の症状又は後遺症を含む。一部の実施形態では、感染性疾患は、ウイルス感染症を含む。一部の実施形態では、炎症状態は、サイトカインストームを含む。一部の実施形態では、炎症状態は、免疫療法(例えば、がんに対する)に関連している。一部の実施形態では、炎症状態は、強皮症(皮膚に影響を及ぼす自己免疫状態)である。一部の実施形態では、炎症状態は、全身性硬化症(強皮症に似ているが、皮膚だけでなく、肺及び心臓を含む内臓にも影響を及ぼす自己免疫状態)である。
【0030】
線維性状態の治療を必要とする対象に、治療有効量の、本開示の核酸のいずれか1つ又は本開示の組成物のいずれか1つを投与するステップであって、それにより線維性状態を治療する、ステップを含む、線維性状態を治療する方法も提供される。任意選択で、線維性状態は、感染性疾患の症状又は後遺症を含む。一部の実施形態では、感染性疾患は、ウイルス感染症を含む。一部の実施形態では、線維性状態は、特発性肺線維症である。一部の実施形態では、線維性状態は、肝硬変である。
【0031】
一部の実施形態では、核酸の治療有効量は、約0.001μg/g~約100μg/gを含む。一部の実施形態では、本開示の治療方法のいずれか1つは、治療有効量の核酸又は組成物を週2回以下の頻度で投与するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、治療有効量の核酸又は組成物を静脈内、筋肉内、心臓内、又は経口的に投与するステップを含む。任意選択で、治療有効量の核酸又は組成物は、経口投与される。
【0032】
本開示の核酸のいずれか1つ又は本開示の組成物のいずれか1つをマクロファージの集団と接触させるステップであって、それにより集団のマクロファージの抗炎症活性を促進する、ステップを含む、マクロファージの抗炎症活性を促進する方法も提供される。任意選択で、接触させるステップは、炎症又は線維化を特徴とする状態の治療を必要とする対象に、有効量の核酸又は組成物を投与するステップであって、それにより対象におけるマクロファージの抗炎症活性を促進する、ステップを含む。一部の実施形態では、マクロファージは、ヒトマクロファージである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1-1】図1A~1Bは、本明細書で提供されるような経口製剤についての様々な非限定的な概略図を示す。図1Aは、脂質を使用して、治療用核酸などの核酸をカプセル化し、カプセル化された核酸をカゼイン-キトサン複合体で被覆し、これにより経口送達が可能になる、非限定的な概略図を示す。図1Bは、RNA(例えば、非コードRNA又はコードRNA)などの治療用核酸についての代替製剤の代替の非限定的な概略図を示す。
図1-2】図1-1に記載の通り。
図2-1】図2A~2Cは、本明細書で提供されるような経口製剤に関する概略図及びデータを示す。図2A、2Bは、本明細書に開示される実施形態による、非コードRNA(2AにおけるTY4及び2BにおけるpiR-659/piREX1)、及び脂質-カゼイン-キトサン複合体中のそれらのカプセル化の様々な非限定的な概略図を示す。図2Cは、piREX1(及びその誘導体、UからAへ(U to A))の経口投与が、梗塞質量及び心臓トロポニンレベルの低下(対照と比較して)に有効であることを実証するデータを示す。
図2-2】図2-1に記載の通り。
図3-1】図3A~3Mは、本開示の一部の非限定的な実施形態による、駆出率が保持された心不全(HFpEF)におけるTY4投与の治療効果を示す。図3Aは、HFpEFのモデルにおいてTY4の治療効果を測定するためのプロトコールを示す概略図である。図3Bは、収縮期血圧(左パネル)及び拡張期血圧(右パネル)を比較するグラフである。図3Cは、トレッドミル運動距離を比較するグラフである。図3Dは、拡張早期僧帽弁流入速度の僧帽弁輪組織速度に対する比(E/e')を比較するグラフである。図3Eは、全身脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルを比較するグラフである。図3Fは、収縮期血圧(左パネル)及び拡張期血圧(右パネル)を比較するグラフの集合である。図3Gは、拡張早期僧帽弁流入速度の僧帽弁輪組織速度に対する比(E/e')を比較するグラフである。図3Hは、トレッドミル運動距離を比較するグラフである。図3Iは、全身BNPレベルを比較するグラフである。図3Jは、経時的に収縮期血圧を比較するグラフである。図3Kは、経時的に拡張期血圧を比較するグラフである。図3Lは、経時的にE/e'比を比較するグラフである。図3Mは、経時的にトレッドミル運動距離を比較するグラフである。
図3-2】図3-1に記載の通り。
図3-3】図3-1に記載の通り。
図3-4】図3-1に記載の通り。
図3-5】図3-1に記載の通り。
図3-6】図3-1に記載の通り。
図3-7】図3-1に記載の通り。
図4-1】図4A~4Fは、本開示の一部の非限定的な実施形態による、駆出率が保持された心不全(HFpEF)におけるTY4投与の治療効果を示す。図4A~4Eのデータは、図3からの対応するデータの追加の反復からのものである(例えば、より大きなサンプルサイズ)。図4Aは、対照、ビヒクル、及び経口製剤を受けた動物における収縮期血圧を比較するグラフである。図4Bは、対照、ビヒクル、及び経口製剤を受けた動物における拡張期血圧を比較するグラフである。図4Cは、対照、ビヒクル、及び経口製剤を受けた動物における、拡張早期僧帽弁流入速度の僧帽弁輪組織速度に対する比(E/e')を比較するグラフである。図4Dは、対照、ビヒクル、及び経口製剤を受けた動物における全身脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルを比較するグラフである。図4Eは、対照、ビヒクル、及び経口製剤を受けた動物におけるトレッドミル運動距離を比較するグラフである。図4Fは、対照、ビヒクル、及び経口製剤を受けた動物における循環血中グルコースレベルを比較するグラフである。図4Gは、対照、ビヒクル、及び経口製剤を受けた動物についての心臓サイズを示す。
図4-2】図4-1に記載の通り。
図4-3】図4-1に記載の通り。
図5-1】図5A~5Eは、心筋梗塞のモデルにおける治療用RNAの経口投与の有効性に関するデータを示す。図5Aは、梗塞サイズに関するデータを示す。図5Bは、様々な処置群からの心臓組織切片を示す。図5Cは、損傷から48時間後の心臓トロポニンの循環レベルについてのデータを示す。図5Dは、経口製剤にキトサンが使用されなかった処置群を含む、梗塞質量に関する追加データを示す。図5Eは、経口製剤にキトサンが使用されなかった処置群を含む、循環心臓トロポニンレベルに関する追加データを示す。
図5-2】図5-1に記載の通り。
図6-1】図6A~6Eは、強皮症のモデルにおいて治療用核酸を送達する経口製剤に関するデータを示す。図6Aは、表示される処置群におけるトレッドミルでの移動距離に関するデータを示す。図6Bは、体重に関するデータを示す。図6Cは、心臓指数(HI)を表す、心臓重量の体重に対する比に関するデータを示す。図6dは、肺指数(PI)を表す、肺重量の体重に対する比に関するデータを示す。図6Eは、表示される群についての肺重量に関するデータを示す。
図6-2】図6-1に記載の通り。
図7-1】図7A~7Dは、強皮症のモデルにおいて治療用核酸を送達する経口製剤に関する追加データを示す。図7Aは、心臓線維化に関する組織学データを示す。図7Bは、処置群ごとにまとめた、心臓線維化データの概要を示す。図7Cは、皮膚線維化に関する組織学を示す。図7Dは、処置群ごとにまとめた、皮膚線維化データの概要を示す。
図7-2】図7-1に記載の通り。
図8-1】図8A~8Fは、強皮症に関する追加データを示す。描写されたデータは、IL1-B(8A)、IL-6(8B)、TGFベータ(8C)、NLRP3(8D)、p21(8E)、及びIL-4(8F)の定量化を示す。
図8-2】図8-1に記載の通り。
図9-1】図9A~9Hは、筋ジストロフィーのモデルにおいて治療用核酸を送達する経口製剤に関するデータを示す。図9Aは、左心室駆出率(EF)を測定するための経胸壁心エコー検査に関するデータを示す。図9Bは、治療用核酸の経口投与により、ビヒクル対照マウスよりも少ない心筋線維化がもたらされることを示す、マッソントリクローム顕微鏡写真及びプールされたデータ(右サブパネル)を示す。図9Cは、ベースライン及び8週間後の筋機能をまとめたデータを示す。図9Dは、治療用核酸の経口投与により、ビヒクル対照マウスよりも少ない筋線維化がもたらされることを示す、マッソントリクローム顕微鏡写真及びプールされたデータ(右サブパネル)を示す。図9Eは、対照対経口送達された治療用RNAにおける筋線維数に関するデータを示す。図9Fは、経口処置された動物対対照の運動能力に関するデータを示す。図9Gは、経口処置された動物対対照の心機能に関するデータを示す。図9Hは、経口処置された動物対対照の筋機能に関するデータを示す。
図9-2】図9-1に記載の通り。
図9-3】図9-1に記載の通り。
【発明を実施するための形態】
【0034】
核酸治療薬は、遺伝子レベルで疾患を治療する可能性を提供する。多くの従来の治療は、根本的な原因ではなくタンパク質を標的とするため、一般に、一過性の治療効果を誘導する。対照的に、核酸治療薬は、遺伝子の阻害、付加、置換、又は編集を介して長期にわたる効果(又は永久的でさえある効果、例えば治癒的効果)の可能性を有する。しかし、核酸治療薬の使用の成功は、安定性及び/又はバイオアベイラビリティを改善する送達技術次第である。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される製剤は、対象への核酸の送達の増強を可能にする。いくつかの実施形態では、核酸は、DNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、コードRNA(例えば、メッセンジャーRNA又はmRNA)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、非コードRNA(ncRNA)を含む。mRNAは、治療効果をもたらすタンパク質をコードする配列の送達によって治療効果を提供することができる。実施形態に応じて、それは、非機能的タンパク質を置換するタンパク質であり得る。他の実施形態では、コードRNAは、例えば、そのタンパク質に対する抗体の産生のために、それに対する免疫応答が望まれるタンパク質(例えば、ウイルスタンパク質)をコードすることができる。ncRNAは、抗炎症性サイトカインの分泌を増加させるか、又は炎症性サイトカインの分泌を減少させるそれらの能力に基づいて、プラスの治療効果を示すことが知られている。ある特定のncRNAは、心臓保護効果、抗線維化効果、及び/又は抗肥大効果を示す。
【0036】
本明細書で提供される開示以前は、ncRNAは、それを必要とする対象に、非経口投与経路、例えば筋肉内注射、皮下注射、又は静脈内投与を介して送達された。いくつかの実施形態では、ncRNA又は他の治療用核酸の経口送達を可能にする製剤が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、製剤は、上部/中部消化管(例えば、胃)の低酸環境から核酸を保護し、そのため、それらは無傷の形態で下部消化管に到達し、それらの抗炎症効果及び/又は抗線維化効果を実現できる形態で吸収される。
【0037】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される製剤は、炎症及び/又は組織損傷が病理の主な要因である状態の治療における核酸の使用を可能にする。一部の実施形態では、このような製剤を使用して治療される状態としては、限定されないが、炎症性疾患、筋ジストロフィー、又は心臓損傷が挙げられる。一部の実施形態では、製剤は、強皮症及び/又は筋ジストロフィーなどの数ある疾患の中で、限定されないが、心筋梗塞及び/又は心不全による心臓損傷に罹患している対象に投与された場合、心臓保護効果を有する。理論に束縛されるものではないが、本開示の組成物は、下部消化管へのncRNAなどの核酸の送達の成功を可能にし、下部消化管で、核酸は、容易に吸収され、例えばマクロファージからのインターロイキン10(IL-10)の分泌を促進することによって、マクロファージの抗炎症活性を増加させることができる。一部の実施形態では、本開示の組成物は、下部消化管へのncRNAなどの核酸の送達の成功を可能にし、下部消化管で、核酸は、容易に吸収され、核酸に曝露されたマクロファージにおいて1つ以上の遺伝子産物の発現の変化及び/又はエピジェネティックな変化を誘導することができる。一部の実施形態では、状態、例えば炎症性疾患、筋ジストロフィー、又は心臓損傷は、本開示の核酸を含む製剤の投与によって治療される。
【0038】
定義
本明細書で使用される場合、用語「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」は、複数のヌクレオチド(例えば、リン酸基及び交換可能な有機塩基(置換ピリミジン(例えばシトシン(C)、チミジン(T)又はウラシル(U))又は置換プリン(例えばアデニン(A)又はグアニン(G))のいずれかである)に連結された糖(例えばリボース又はデオキシリボース)を含む分子)を指す。この用語は、ポリヌクレオシド(すなわち、ポリヌクレオチドからホスフェートを除いたもの)及び任意の他の有機塩基含有ポリマーを含む。プリン及びピリミジンとしては、以下に限定されないが、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、イノシン、5-メチルシトシン、2-アミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、2,6-ジアミノプリン、ヒポキサンチン、並びに他の天然に存在する核酸塩基及び天然に存在しない核酸塩基、置換及び非置換の芳香族部分が挙げられる。核酸は、任意の他の好適な修飾を含むことができる。したがって、核酸という用語はまた、塩基及び/又は糖におけるなど、置換又は修飾を有する核酸を包含する。
【0039】
本開示のポリペプチド又は核酸分子は、参照分子(例えば、参照ポリペプチド又は参照ポリヌクレオチド)、例えば、当技術分野で記載された分子(例えば、操作若しくは設計された分子又は野生型分子)と、ある程度の配列類似性又は同一性を共有し得る。当技術分野で知られている用語「同一性」は、配列を比較することによって決定した場合の、2つ以上のポリペプチド又はポリヌクレオチドの配列間の関係を指す。当技術分野において、同一性はまた、一続きの2つ以上のアミノ酸残基又は核酸残基の間のマッチ数によって決定した場合の、それらの間の配列関連性の程度を意味する。同一性は、特定の数学的モデル又はコンピュータプログラム(例えば、「アルゴリズム」)によって対処されるギャップアライメント(存在する場合)を用いた2つ以上の配列のうちのより小さいものの間の同一マッチのパーセントを測定する。関連ペプチドの同一性は、公知の方法によって容易に計算することができる。「同一性%」は、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列に適用される場合、最大の同一性パーセントを達成するために、配列をアラインし、必要な場合にギャップを導入した後に、第2の配列のアミノ酸配列又は核酸配列中の残基と同一である、候補アミノ酸又は核酸配列中の残基(アミノ酸残基又は核酸残基)のパーセンテージと定義される。アライメントのための任意の好適な方法及びコンピュータプログラムが使用可能である。同一性は、同一性パーセントの計算に依存するが、計算に導入されたギャップ及びペナルティにより値が異なり得ることが理解される。一般に、特定のポリヌクレオチド又はポリペプチドのバリアントは、本明細書に記載され当業者に公知の配列アライメントプログラム及びパラメータによって決定した場合、その特定の参照ポリヌクレオチド又はポリペプチドに対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%であるが100%未満の配列同一性を有する。アライメントのためのこのようなツールとしては、BLASTスイートのツールが挙げられる(Stephen F. Altschul, et al (1997), “Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs”. Nucleic Acids Res. 25:3389-3402)。別の一般的なローカルアライメント技術は、Smith-Watermanアルゴリズムに基づく(Smith, T. F. & Waterman, M. S. (1981) “Identification of common molecular subsequences.” J. Mol. Biol. 147:195-197)。動的計画法に基づく一般的なグローバルアライメント技術は、Needleman-Wunschアルゴリズムである(Needleman, S. B. & Wunsch. C. D. (1970) “A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequences of two proteins.” J. Mol. Biol. 48:443-453)。さらに最近では、Needleman-Wunschアルゴリズムを含む他の最適グローバルアライメント法よりも高速にヌクレオチド及びタンパク質配列のグローバルアライメントを生成すると考えられている、高速最適グローバル配列アライメントアルゴリズム(FOGSAA)が開発されている。他のツールは、特に以下の「同一性」の定義で、本明細書に記載される。
【0040】
用語「同一性」は、ポリマー分子間、例えばポリヌクレオチド分子(例えば、DNA分子及び/又はRNA分子)間、及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。2つのポリ核酸配列の同一性パーセントの計算は、例えば、最適な比較の目的のために2つの配列をアラインすることによって実施することができる(例えば、最適なアライメントのために、第1及び第2の核酸配列の一方又は両方にギャップを導入することができ、比較の目的のために、同一でない配列は無視することができる)。ある特定の実施形態では、比較の目的のためにアラインされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%である。次いで、対応するヌクレオチド位置におけるヌクレオチドが比較される。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置において同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアライメントのために導入される必要がある、ギャップの数及び各ギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一位置の数の関数である。2つの配列間の配列の比較及び同一性パーセントの決定は、好適な数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。例えば、2つの核酸配列間の同一性パーセントは、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects. Smith. D. W., ed., Academic Press. New York, 1993; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994;及びSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991(これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載される方法などの方法を使用して決定することができる。例えば、2つの核酸配列間の同一性パーセントは、PAM 120重み付け残基表、ギャップ長さペナルティ12及びギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている、Meyers及びMillerのアルゴリズム(CABIOS, 1989, 4:11-17)を使用して決定することができる。あるいは、2つの核酸配列間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックスを使用して、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを使用して決定することができる。配列間の同一性パーセントを決定するために一般に用いられる方法としては、以下に限定されないが、Carillo, H., and Lipman, D., SIAM J Applied Math., 48:1073 (1988)(参照により本明細書に組み込まれる)に開示される方法が挙げられる。同一性を決定するための技術は、公に利用可能なコンピュータプログラムに集成される。2つの配列間の相同性を決定するための例示的なコンピュータソフトウェアとしては、以下に限定されないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research, 12(1), 387 (1984))、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215, 403 (1990))が挙げられる。
【0041】
用語「ワトソン-クリック塩基対合」又は「塩基対合」は、ヌクレオチド塩基の特定の対(「相補的塩基対」)間の水素結合の形成を指す。例えば、アデニン(A)とウラシル(U)との間には2つの水素結合が形成し、グアニン(G)とシトシン(C)との間には3つの水素結合が形成する。2つのポリヌクレオチド間の結合の強さを評価する1つの方法は、2つのポリヌクレオチドのグアニン塩基とシトシン塩基との間に形成される結合のパーセンテージ(「GC含有量」)を定量化することによるものである。一部の実施形態では、多量体分子(例えば、多量体mRNA分子)の2つの核酸間の結合のGC含有量は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%である。一部の実施形態では、多量体分子(例えば、多量体mRNA分子)の2つの核酸間の結合のGC含有量は、10%~70%の間、約20%~約60%、又は約30%~約60%である。相補的な塩基対の結合による核酸二重鎖の形成はまた、「ハイブリダイゼーション」と呼ぶことができる。一般に、相補性領域を共有する2つの核酸は、好適な条件下で、(例えば、核酸塩基対合を介して)ハイブリダイズして二重鎖構造を形成することができる。相補性領域は、サイズが様々であり得る。一部の実施形態では、相補性領域は、長さ約2塩基対~約100塩基対の範囲である。一部の実施形態では、相補性領域は、長さ約5塩基対~約75塩基対の範囲である。一部の実施形態では、相補性領域は、長さ約10塩基対~約50塩基対の範囲である。一部の実施形態では、相補性領域は、長さ約20塩基対~約30塩基対の範囲である。
【0042】
「単離された」は、単離された生体分子、例えば核酸に関して本明細書で使用される場合、本開示を考慮して当業者にとって通常の慣習的な意味を有する。単離された生体分子、例えば単離された核酸は、一般に、非天然環境にあるか、又は生体分子若しくはその環境のヒトの介入がなければ生体分子が存在しなかったであろう環境にある。一部の実施形態では、単離された生体分子は、細胞又は生物の内部にはない。
【0043】
「細胞外小胞」又は「EV」は、本明細書で使用される場合、本開示を考慮して、当業者によって理解されるそれらの通常の慣習的な意味を有する。EVは、細胞によって生成される脂質二重層構造を含み、EVとしては、エキソソーム、微小胞、エピディディモソーム(epididimosome)、アルゴソーム(argosome)、エキソソーム様小胞、微粒子、プロミニノソーム(promininosome)、プロスタソーム(prostasome)、デキソソーム(dexosome)、テキソソーム(texosome)、デックス(dex)、テックス(tex)、アーケオソーム(archeosome)、及びオンコソーム(oncosome)が挙げられる。
【0044】
「ミセル」は、カゼインミセルに関して本明細書で使用される場合、本開示を考慮して、当業者によって理解されるその慣習的な通常の意味を有する。カゼインミセルは、1つ以上のカゼインリンタンパク質(例えば、アルファs1カゼイン、アルファs2カゼイン、ベータカゼイン、及びカッパカゼインのうちの1つ以上、2つ以上、3つ以上、又は4つすべて)の凝集体を含み得るコロイド粒子である。
【0045】
「対象」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物及び非哺乳動物を含む、任意の脊椎動物を指す。対象は、霊長類、例えばヒト、及び非霊長類哺乳動物、例えばげっ歯類、家畜又は猟獣を含み得る。非霊長類哺乳動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、キツネ、オオカミ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、シカ、バッファロー、バイソンなどが挙げられる。非哺乳動物としては、鳥(例えば、ニワトリ、ダチョウ、エミュー、ハト)、爬虫類(例えば、ヘビ、トカゲ、カメ)、両生類(例えば、カエル、サンショウウオ)、魚(例えば、サケ、タラ、フグ、マグロ)などが挙げられる。用語「個体」、「患者」、及び「対象」は、本明細書では互換的に使用される。
【0046】
「投与すること」は、本明細書で使用される場合、本明細書に開示されるような治療剤又は組成物を投与する任意の好適な経路を含み得る。好適な投与経路としては、限定されないが、経口、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、肺、皮膚、注射又は局所投与が挙げられる。投与は、局所的又は全身的であってよい。
【0047】
本明細書で使用される場合、「治療する」及び「治療」は、疾患、状態及び/又はそれらの症状を治癒する、改善する、寛解させる、その重症度を低下させる、予防する、その進行を遅らせる、及び/又はその出現を遅延させることを含む。
【0048】
本明細書に記載される方法による治療後に、本明細書に記載される状態の兆候若しくは症状の1つ以上が有益な様式で変わるか、他の臨床的に許容される症状が改善されるか若しくは寛解しさえするか、又は所望の応答が誘導される場合(例えば少なくとも2%、3%、4%、5%、10%、又はそれを超えて)、治療は、本明細書で使用される場合、「有効」又は「治療的に有効」であると考えることができる。有効性は、例えば、本明細書に記載される方法に従って治療される状態のマーカー、指標、症状、及び/若しくは発生率、又は任意の他の適切な測定可能なパラメータ、例えば運動持久力を測定することによって評価することができる。有効性はまた、入院によって評価した場合に個体が悪化しないこと、又は医療介入に対する必要性(例えば、疾患の進行が停止する)によって測定することができる。治療は、個体又は動物(一部の非限定的な例としてはヒト又は動物が挙げられる)における疾患又は状態のあらゆる治療を含み、以下を含む:(1)疾患又は状態を阻害すること、例えば、症状(例えば痛み又は炎症)の悪化を予防すること;又は(2)疾患又は状態の重症度を緩和すること、例えば、症状の退行を引き起こすこと。疾患又は状態の治療についての有効量は、それを必要とする対象に投与された場合に、その疾患又は状態について、その用語が本明細書で定義されるように有効な治療をもたらすのに十分な量を意味する。薬剤の有効性は、状態又は所望の応答の身体的指標(例えば筋肉の機能、質量又は体積)を評価することによって決定することができる。当業者は、このようなパラメータのいずれか1つ、又はパラメータの任意の組み合わせを測定することによって、投与及び/又は治療の有効性をモニタリングすることができる。
【0049】
用語「有効量」又は「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、疾患又は状態の少なくとも1つ又は複数の症状を緩和するのに必要な組成物又は薬剤の量を指し、所望の効果を提供するのに十分な量の治療用組成物に関する。用語「有効量」又は「治療有効量」は、典型的な対象に投与された場合に、特定の抗炎症効果及び/又は心臓保護効果を提供するのに十分な組成物又は治療剤の量を指し得る。有効量は、本明細書で使用される場合、様々な文脈において、疾患若しくは状態の症状の発症を遅延させるか、疾患若しくは状態の症状の経過を変更する(例えば、以下に限定されないが、疾患若しくは状態の症状の進行を遅らせる)か、又は疾患若しくは状態の症状を逆転させるのに十分な量を含み得る。一部の実施形態では、治療有効量は、治療剤の1つ以上の用量で投与される。一部の実施形態では、治療有効量は、単回投与で、又は一定期間にわたって複数の用量で投与される。
【0050】
本明細書で使用される場合、句「生理学的に適合性のある」及び「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織に接触して使用するのに好適な、妥当なベネフィット/リスク比で釣り合った化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために本明細書で互換的に用いられる。
【0051】
細胞生物学及び分子生物学における一般的な用語の定義は、“The Merck Manual of Diagnosis and Therapy”, 19th Edition, published by Merck Research Laboratories, 2006 (ISBN 0-91 1910-19-0); Robert S. Porter et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Science Ltd., 1994 (ISBN 0-632-02182-9); Benjamin Lewin, Genes X, published by Jones & Bartlett Publishing, 2009 (ISBN-10: 0763766321); Kendrew et al. (eds.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8)及びCurrent Protocols in Protein Sciences 2009, Wiley Intersciences, Coligan et al., edsに見出すことができる。
【0052】
単数形の用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別異に解される場合を除き、複数の指示対象を含む。同様に、単語「又は」は、文脈上明らかに別異に解される場合を除き、「及び」を含むことを意図している。略語「e.g.」は、非限定的な例を示すために本明細書で使用される。したがって、略語「e.g.」は、用語「例えば」と同義である。用語「約」は、例えば分子量の値及び範囲を規定するために本明細書で使用される場合、示される値及び/又は範囲限界が、±20%以内、例えば±10%以内、例えば±5%以内変動し得ることを意味する。数の前の「約」の使用は、その数自体を含む。例えば、「約5」は、「5」に対する明示的な根拠を提供する。範囲で提供される数は、重複する範囲及びその間の整数を含む;例えば、1~4及び5~7の範囲は、例えば、1~7、1~6、1~5、2~5、2~7、4~7、1、2、3、4、5、6及び7を含む。
【0053】
組成物
いくつかの実施形態では、経口投与用に構成され、治療用核酸(例えば、組成物によってカプセル化されたRNA(コードRNA又は非コードRNA)分子)を含む組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、医薬組成物である。一部の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。一部の実施形態では、組成物は、細胞を含まない組成物であり、例えば、組成物は、CDCなどの細胞を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、細胞由来材料、例えばエキソソーム又は細胞小胞を含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、人工小胞(例えば、カチオン性脂質などの脂質から形成された小胞)を含む。
【0054】
薬学的に許容される賦形剤として機能し得る材料の一部の非限定的な例としては、以下が挙げられる:(1)糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びバレイショデンプン;(3)セルロース、及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース及び酢酸セルロース;(4)粉末状トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルク;(8)カカオバター及び坐剤ワックス;(9)油、例えば落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及びダイズ油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール(PEG);(12)エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物;(22)増量剤、例えばポリペプチド及びアミノ酸、(23)血清成分、例えば血清アルブミン、HDL及びLDL;(22)C2~C12アルコール、例えばエタノール;及び(23)医薬製剤に用いられる他の非毒性の適合性物質。
【0055】
一部の実施形態では、組成物は、例えば標的細胞標的(インビトロ又はインビボ)への核酸の送達を促進するために、トランスフェクション試薬を含む。任意の好適なトランスフェクション試薬が、組成物に含まれてよい。好適なトランスフェクション試薬としては、限定されないが、リポソーム、細胞外小胞(EV)、及びポリエチレングリコール(PEG)-カチオン性脂質複合体(PCLC)が挙げられる。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質が使用される。一部の実施形態では、トランスフェクション試薬は、DharmaFECT(登録商標)又はLipofectamine(登録商標)を含む。いくつかの実施形態では、トランスフェクション試薬は、DharmaFECT(登録商標)を含む。一部の実施形態では、本開示の核酸は、核酸の細胞取り込み及び/又は薬物動態を促進するために、組成物中にトランスフェクション試薬とともに製剤化される。
【0056】
リポソームは、人工的に調製された小胞であり、主に脂質二重層(又は脂質の疎水性尾部が球内に位置するように配向された球状単層)から構成されていてよく、医薬製剤の投与のための送達ビヒクルとして使用することができる。リポソームは、様々なサイズであってよく、例えば以下に限定されないが、多層小胞(MLV)(直径が数百ナノメートルである場合があり、狭い水性区画によって分離された一連の同心二重層を含有し得る)、小型単一セル小胞(SUV)(直径が50nmより小さい場合がある)、及び大型単層小胞(LUV)(直径が50~500nmの間である場合がある)がある。リポソームの設計は、限定されないが、標的組織/細胞へのリポソームの付着を改善するための、又は限定されないがエンドサイトーシスなどの事象を活性化するための、オプソニン又はリガンドを含み得る。リポソームは、カーゴ、例えば本開示の核酸の送達を改善するために、低いpHを含んでも又は高いpHを含んでもよい。
【0057】
一部の実施形態では、組成物は、限定されないが、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)リポソーム、Marina Biotech(Bothell、Wash.)からのDiLa2リポソーム、1,2-ジリノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、及びMC3から形成されるものなどのリポソーム、並びに限定されないがJanssen Biotech, Inc.(Horsham、Pa.)からのDOXIL(登録商標)などのリポソームを含む。
【0058】
一部の実施形態では、組成物は、カチオン性脂質を含む。任意の好適なカチオン性脂質が、本組成物に使用可能である。好適なカチオン性脂質としては、限定されないが、DLin-DMA、DLin-D-DMA、DLin-MC3-DMA、DLin-KC2-DMA、DODMA及びアミノアルコール脂質が挙げられる。一部の実施形態では、組成物は、カチオン性脂質複合体、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)-カチオン性脂質複合体(PCLC)を含む。一部の実施形態では、カチオン性脂質は、PEG化される(例えば、2kDa PEG)(「PEG2000」)。任意の好適な選択肢が、カチオン性脂質をPEG化するために使用可能である。一部の実施形態では、PCLCは、PEGとカチオン性脂質との混合物を、1回以上の凍結/解凍サイクル、例えば、1、2、3、4、5回又はそれを超える凍結/解凍サイクルに曝露することによって形成される。一部の実施形態では、凍結/解凍サイクルは、混合物を液体窒素(例えば、約-190℃)で約5分間凍結し、約60℃で約5分間解凍することを含む。本開示の核酸は、PCLCと混合して、核酸とPCLCとの複合体を生成することができる。
【0059】
一部の実施形態では、組成物は、カゼイン、例えばカゼインミセルを含む。一部の実施形態では、組成物は、キトサンを含む。一部の実施形態では、組成物は、カゼイン及びキトサンを含む。一部の実施形態では、組成物は、カゼイン-キトサン複合体を含む。一部の実施形態では、組成物中の単離された核酸は、カゼイン-キトサン複合体中にカプセル化される。一部の実施形態では、組成物は、リンタンパク質:アルファs1カゼイン、アルファs2カゼイン、ベータカゼイン、及びカッパカゼインのうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、組成物は、2つ以上、3つ以上、又は4つすべてのリンタンパク質:アルファs1カゼイン、アルファs2カゼイン、ベータカゼイン、及びカッパカゼインを含む。リンタンパク質は、任意の好適な濃度(互いに対して、及び組成物の総体積に対して)で組成物中に存在してもよく、一部の実施形態では、カゼインミセルを形成するのに好適な量で存在する。一部の実施形態では、カゼインリンタンパク質は、組成物中に合わせて約5~10%(重量/体積)で存在する。別段の指示がない限り、重量/体積(weight per volume)又は重量/体積(weight by volume)という用語の使用は、1g/100mL=1%w/vを想定する。一部の実施形態では、カゼインリンタンパク質は、組成物中に合わせて約8%(重量/体積)で存在する。カゼインリンタンパク質は、任意の好適な動物、例えば哺乳動物、例えば以下に限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ラクダ、ヤギ、及びヒツジに由来するものであり得る。一部の実施形態では、カゼインリンタンパク質は、ウシのアルファs1カゼイン、アルファs2カゼイン、ベータカゼイン、及びカッパカゼインである。EVを有する好適なカゼイン製剤は、例えば、Aminzadeh et al., J Extracell Vesicles. 2021 Jan;10(3):e12045(その全体は参照により本明細書に組み込まれる)に提供される。一部の実施形態では、本明細書で提供されるような、カゼインとともに製剤化された本開示の組成物、例えば医薬組成物は、対象への経口投与に好適である。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示の治療用核酸の経口バイオアベイラビリティを増強するための組成物は、アルファs1カゼイン、アルファs2カゼイン、ベータカゼイン、及びカッパカゼインから選択される少なくとも2つのリンタンパク質を含み、リンタンパク質は、生理学的に適合性のある賦形剤中に、組成物の約5%~約10%(重量/体積)の間の量で存在する。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物中のリンタンパク質質量の約0%~約50%の間(例えば、約10%~約45%、約20%~約40%、約25%~約40%、例えば約30%~約40%)(重量で)の量のアルファs1カゼイン、約0%~約20%の間(例えば、約5%~約15%、約7%~約12%、例えば約8%~約12%)(重量で)の量のアルファS2カゼイン、約0%~約50%の間(例えば、約10%~約45%、約20%~約40%、約25%~約40%、例えば約30%~約40%)(重量で)の量のベータカゼイン、及び約0%~約20%の間(例えば、約5%~約18%、約8%~約18%、例えば約10%~約15%)(重量で)の量のカッパカゼインを含む。本組成物は、非コードRNAなどの治療用核酸の経口バイオアベイラビリティの増強を提供することができる。いくつかの実施形態では、治療用核酸は、RNA、例えば以下に限定されないが、mRNA及び非コードRNA(例えば、miRNA、lncRNA)を含む。一部の実施形態では、ペイロードは、合成分子、例えば、小分子又は薬物である。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される製剤は、脂質結合小胞、例えば、ミセル又はリポソームの形態であり、したがって、任意の好適な数の粒子を含み得る。一部の実施形態では、ミセル(例えば、カゼイン-キトサンで被覆されたミセル)の量は、約106~約1010個の粒子、例えば約2×106~約1010個の粒子、約5×106~約1010個の粒子、約107~約5×109個の粒子、約2×107~約5×109個の粒子、約5×107~約5×109個の粒子、例えば約1×108~約2×109個の粒子の範囲である。一部の実施形態では、集団中のミセル(例えば、カゼイン-キトサンで被覆されたミセル)の量は、約106個、約2×106個、約5×106個、約107個、約2×107個、約5×107個、約108個、約2×108個、約5×108個、約109個、約2×109個、約5×109個、若しくは約1010個の粒子、又は前述の値のいずれか2つの間の量である。
【0062】
いくつかの実施形態では、組成物は、カゼイン-キトサンで被覆された脂質ミセルを含み、カゼインリンタンパク質は、組成物中に好適な量(例えば、組成物中のリンタンパク質質量の好適な総量、互いに対するリンタンパク質の好適な割合)で存在する。一部の実施形態では、組成物は、アルファs1カゼイン、アルファs2カゼイン、ベータカゼイン、及びカッパカゼインから選択される2つ、3つ、又は4つすべてのリンタンパク質を含む。一部の実施形態では、組成物中のリンタンパク質の量は、組成物中に存在する1つ以上の他のリンタンパク質の量に依存する。
【0063】
一部の実施形態では、アルファs1カゼインは、遺伝子名CSN1S1に関連するリンタンパク質である。アルファs1カゼインは、任意の好適な哺乳動物に由来するCSN1S1リンタンパク質であり得る。一部の実施形態では、アルファs1カゼインは、ウシ(遺伝子ID:282208)、ブタ(遺伝子ID:445514)、ウマ(遺伝子ID:100033982)、ヒツジ(遺伝子ID:443382)、ヤギ(遺伝子ID:100750242)、ラクダ(遺伝子ID:105090954)、又はヒト(遺伝子ID:1446)である。一部の実施形態では、アルファs1カゼインは、非ヒトアルファs1カゼインである。一部の実施形態では、アルファs1カゼインは、配列番号26に示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は約100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0064】
一部の実施形態では、組成物は、任意の好適な量のアルファs1カゼインを含む。一部の実施形態では、組成物は、組成物中のリンタンパク質質量の約0%~約50%の間、例えば、約5%~約50%の間、約10%~約50%の間、約15%~約45%の間、約20%~約45%の間、例えば約25%~約40%の間の量(重量で)のアルファs1カゼインを含む。一部の実施形態では、組成物は、約0%、5%、10%、15%、20%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%の量(重量で)、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲内の量のアルファs1カゼインを含む。
【0065】
一部の実施形態では、アルファs2カゼインは、遺伝子名CSN1S2に関連するリンタンパク質である。アルファs2カゼインは、任意の好適な哺乳動物に由来するCSN1S2リンタンパク質であり得る。一部の実施形態では、アルファs2カゼインは、ウシ(遺伝子ID:282209)、ブタ(遺伝子ID:445515)、ウマ(遺伝子ID:100327035)、ヒツジ(遺伝子ID:443383)、ヤギ(遺伝子ID:100861229)、又はラクダ(遺伝子ID:105090951)である。一部の実施形態では、アルファs2カゼインは、配列番号27に示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は約100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0066】
組成物は、任意の好適な量のアルファs2カゼインを含み得る。一部の実施形態では、組成物は、組成物中のリンタンパク質質量の約0%~約20%の間、例えば、約2%~約18%の間、約3%~約18%の間、約4%~約17%の間、約5%~約16%の間、例えば約5%~約15%の間の量(重量で)のアルファs2カゼインを含む。一部の実施形態では、組成物は、約0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、18%、20%の量(重量で)、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲内の量のアルファs2カゼインを含む。
【0067】
一部の実施形態では、ベータカゼインは、遺伝子名CSN2に関連するリンタンパク質である。ベータカゼインは、任意の好適な哺乳動物に由来するCSN2リンタンパク質であり得る。一部の実施形態では、ベータカゼインは、ウシ(遺伝子ID:281099)、ブタ(遺伝子ID:404088)、ウマ(遺伝子ID:100033903)、ヒツジ(遺伝子ID:443391)、ヤギ(遺伝子ID:100860784)、ラクダ(遺伝子ID:105080412)、又はヒト(遺伝子ID:1447)である。一部の実施形態では、ベータカゼインは、非ヒトベータカゼインである。一部の実施形態では、ベータカゼインは、配列番号28又は29に示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は約100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0068】
組成物は、任意の好適な量のベータカゼインを含み得る。一部の実施形態では、組成物は、組成物中のリンタンパク質質量の約0%~約50%の間、例えば、約5%~約50%の間、約10%~約50%の間、約15%~約45%の間、約20%~約45%の間、例えば約25%~約40%の間の量(重量で)のベータカゼインを含む。一部の実施形態では、組成物は、約0%、5%、10%、15%、20%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%の量(重量で)、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲内の量のベータカゼインを含む。
【0069】
一部の実施形態では、カッパカゼインは、遺伝子名CSN3に関連するリンタンパク質である。ベータカゼインは、任意の好適な哺乳動物に由来するCSN3リンタンパク質であり得る。一部の実施形態では、カッパカゼインは、ウシ(遺伝子ID:281728)、ブタ(遺伝子ID:445511)、ウマ(遺伝子ID:100033983)、ヒツジ(遺伝子ID:443394)、ヤギ(遺伝子ID:100861231)、ラクダ(遺伝子ID:105080408又は105090949)、又はヒト(遺伝子ID:1448)である。一部の実施形態では、カッパカゼインは、非ヒトカッパカゼインである。一部の実施形態では、カッパカゼインは、配列番号30に示される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は約100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0070】
組成物は、任意の好適な量のカッパカゼインを含み得る。一部の実施形態では、組成物は、組成物中のリンタンパク質質量の約0%~約20%の間、例えば、約2%~約18%の間、約3%~約18%の間、約4%~約17%の間、約5%~約16%の間、例えば約5%~約15%の間の量(重量で)のカッパカゼインを含む。一部の実施形態では、組成物は、約0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、18%、20%の量(重量で)、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲内の量のカッパカゼインを含む。
【0071】
一部の実施形態では、異なる種に由来するカゼインの組み合わせが使用される。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上のヒトカゼインは、1つ以上のウシカゼインと組み合わせて使用される。一部の実施形態では、カゼインの比、例えば、アルファS1カゼイン:アルファS2カゼイン:ベータカゼイン:カッパカゼインの3:1:3:1の比が使用される。一部の実施形態では、異なる比、例えば、4:1:4:1、2:1:2:1、又は1:1:1:1が使用可能である。組成物中の任意の2つの所与のカゼインの間で、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、1:5、1:4、1:3、1:2などの範囲の比も使用可能である。
【0072】
任意の好適な総量のリンタンパク質が組成物中に存在し得る。一部の実施形態では、リンタンパク質は、組成物の5%~約10%、例えば、約6%~約10%、約6%~約9%、例えば約6%~約8%(重量/体積)の間の量で存在する。一部の実施形態では、リンタンパク質は、組成物の約5%、6%、7%、8%、9%、10%の量、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲内の量(重量/体積)で存在する。
【0073】
一部の実施形態では、カゼインリンタンパク質の1つ以上は、非ヒトカゼインリンタンパク質である。一部の実施形態では、エキソソームと、カゼインリンタンパク質の少なくとも1つとは、異なる種に由来する。一部の実施形態では、エキソソームはヒトエキソソームであり、カゼインリンタンパク質の1つ以上は非ヒトカゼインリンタンパク質である。一部の実施形態では、エキソソームはヒトエキソソームであり、カゼインリンタンパク質の1つ以上はウシ(又はヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、又はウマ)カゼインリンタンパク質である。
【0074】
一部の実施形態では、組成物は、カゼインリンタンパク質の少なくとも一部によって形成されるミセル構造を含む。一部の実施形態では、カゼインミセルは、実質的に球状である。一部の実施形態では、組成物中のカゼインミセルは、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm、約500nm若しくはそれを超える平均直径(ミセルごとに測定した場合)、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲内の平均直径を有する。一部の実施形態では、組成物中のカゼインミセルは、約40nm~約500nm、例えば、約40nm~約400nm、約50nm~約300nm、約60nm~約250nm、約70nm~約250nm、約80nm~約200nm、例えば約90nm~約150nmの範囲の平均直径(ミセルごとに測定した場合)を有する。本組成物のカゼインミセルは、全体的に沈殿していない又はゲル状ではない。
【0075】
一部の実施形態では、組成物は、1つ以上のコロイド状ミネラル(例えば、懸濁液中のミネラル)を含む。いくつかの実施形態では、複合(例えば、2つ以上の)ミネラルが、コロイド状ミネラル複合体として使用される。コロイド状ミネラル複合体は、任意の好適なミネラル化合物及び/又はそれらの塩を含み得る。一部の実施形態では、コロイド状ミネラル複合体としては、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、無機リン酸塩、クエン酸塩、ナトリウム、カリウム、及び塩化物、又はそれらのそれぞれの塩のうちの1つ以上が挙げられる。一部の実施形態では、コロイド状ミネラル複合体は、組成物中のリンタンパク質質量の約2%~約15%の間、例えば、約2%~約12%、約5%~約10%、約5%~約9%、例えば約6%~約9%(重量で)の量で存在する。一部の実施形態では、コロイド状ミネラル複合体は、約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%の量、又は前述のパーセンテージのいずれか2つによって規定される範囲内の量で存在する。
【0076】
本組成物は、一般に、生理学的に適合性のある賦形剤、例えば以下に限定されないが水又は緩衝液を含む。一般に、生理学的に適合性のある賦形剤は、カゼインリンタンパク質の保護特性に実質的に干渉しない(例えば、カゼインリンタンパク質によって形成されるミセル構造及び/又はそれらの保護特性に実質的に干渉しない)賦形剤である。好適な生理学的に適合性のある賦形剤としては、以下に限定されないが、食塩水、水性緩衝溶液、溶媒及び/又は分散媒が挙げられる。一部の実施形態では、生理学的に適合性のある賦形剤は、リン酸緩衝食塩水(PBS)である。生理学的に適合性のある賦形剤として機能し得る材料の他の非限定的な例としては、以下が挙げられる:(1)糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びバレイショデンプン;(3)セルロース、及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース及び酢酸セルロース;(4)粉末状トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルク;(8)カカオバター及び坐剤ワックス;(9)油、例えば落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及びダイズ油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール(PEG);(12)エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物;(22)増量剤、例えばポリペプチド及びアミノ酸、(23)血清成分、例えば血清アルブミン、HDL及びLDL;(22)C2~C12アルコール、例えばエタノール;及び(23)医薬製剤に用いられる他の非毒性の適合性物質。一部の実施形態では、生理学的に適合性のある賦形剤は、飲料である。一部の実施形態では、生理学的に適合性のある賦形剤は、液体乳児用調合乳である。一部の実施形態では、賦形剤は、活性剤、例えば核酸含有ミセルの分解を阻害する。
【0077】
一部の実施形態では、組成物は、(重量で)以下を含むカゼインミセルを含有する:リン酸緩衝食塩水中の約30~40%(例えば、約36%)のアルファS1カゼイン、約5~15%(例えば、約10%)のアルファS2カゼイン、約30~40%(例えば、約34%)のベータカゼイン、約5~15%(例えば、約12%)のカッパカゼイン、及び約7%のコロイド状ミネラル複合体(例えばリン酸塩、カルシウム、マグネシウム及びクエン酸塩)(カゼインリンタンパク質の総量は、組成物の約8重量/体積%である)。
【0078】
本明細書に記載されるような、治療用核酸の経口バイオアベイラビリティの増強のための組成物を調製する方法も提供される。この方法は、一般に、治療用核酸と、アルファs1カゼイン、アルファs2カゼイン、ベータカゼイン、及びカッパカゼインから選択される少なくとも2つのリンタンパク質と、生理学的に適合性のある賦形剤とを、組成物中の少なくとも2つのリンタンパク質を含むミセルを形成するのに十分な条件下で組み合わせるステップを含む。組成物の成分は、任意の好適な選択肢を使用して組み合わせてもよい。一部の実施形態では、最初に、カゼインリンタンパク質を生理学的に適合性のある賦形剤と組み合わせて、カゼイン組成物を作製し、次いで、核酸をカゼイン組成物と組み合わせて、核酸の経口バイオアベイラビリティの増強のための組成物を生成する。カゼイン組成物を生成するために、任意の好適な選択肢が使用可能である。カゼインリンタンパク質を有する組成物を提供する好適な方法は、例えば、欧州特許第2732710B1号に記載され、その全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
一部の実施形態では、組成物の1つ以上の成分は、保持され、対象に核酸を経口投与するための組成物に再構成することができる。一部の実施形態では、組成物のカゼインリンタンパク質は、保持され、対象に核酸を経口投与するための組成物に再構成される。一部の実施形態では、核酸は、保持され、対象に経口投与するための組成物(例えば、カゼインリンタンパク質及び生理学的に適合性のある賦形剤を有する組成物)に再構成される。「保持される」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載されるような核酸(単独であれ、又は本明細書で提供される組成物に統合されたものであれ)の機能活性が、標準的な保存条件下で少なくとも規定の期間保たれる状態を表すことができる。一部の実施形態では、保持された核酸は、保存後に再構成された場合、保持される前の機能活性と比較して、10%以上、例えば20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、又は約100%の機能活性を保つ。
【0080】
一部の実施形態では、核酸(例えば、カゼイン-キトサンで被覆されたミセル中にカプセル化された)は、保持され、標準的な保存条件下で1日以上、例えば2日以上、5日以上、2週間以上、1ヶ月以上、3ヶ月以上、6ヶ月以上、1年以上、3年以上、5年以上、例えば10年以上保存される。一部の実施形態では、核酸(例えば、カゼイン-キトサンで被覆されたミセル中にカプセル化された)は、保持され、標準的な保存条件下で1日~5年、例えば5日~3年、10日~2年、1ヶ月~1年、例えば3ヶ月~6ヶ月の期間保存される。
【0081】
一部の実施形態では、核酸(例えば、カゼイン-キトサンで被覆されたミセル中にカプセル化された)は、任意の好適な標準な保存条件下で保存される。一部の実施形態では、標準的な保存条件は、25℃以下、例えば20℃以下、15℃以下、10℃以下、5℃以下、0℃以下、-10℃以下、-20℃以下、-30℃以下、-40℃以下、-50℃以下、-60℃以下、-70℃以下、例えば-80℃以下の温度を含む。一部の実施形態では、標準的な保存条件は、-90℃~-80℃、-80℃~-70℃、-70℃~-60℃、-60℃~-50℃、-50℃~-40℃、-40℃~-30℃、-30℃~-20℃、-20℃~-10℃、-10℃~-5℃、-5℃~0℃、0℃~5℃、5℃~10℃、10℃~15℃、15℃~20℃、20℃~25℃、25℃~30℃、又は30℃~35℃の範囲の温度を有する。一部の実施形態では、標準的な保存条件は、室温及び標準的な大気圧である。
【0082】
一部の実施形態では、核酸(例えば、カゼイン-キトサンで被覆されたミセル中にカプセル化された)は、任意の好適な様式で保持される。一部の実施形態では、それらは凍結される。エキソソームを凍結する手段は、例えば、Bosch et al., Sci Rep. 2016 Nov 8;6:36162に記載される。一部の実施形態では、それらは凍結乾燥される。エキソソームを凍結乾燥する手段は、例えば、PCT公開第WO2018070939号に記載される。
【0083】
一部の実施形態では、核酸(例えば、カゼイン-キトサンで被覆されたミセル中にカプセル化された)は、任意の好適な選択肢を使用して組成物に再構成される。一部の実施形態では、エキソソームは、水又は緩衝溶液などの生理学的に許容される賦形剤に再構成される。
【0084】
本開示の組成物は、例えば、治療用核酸の全身送達によって治療することができる障害又は疾患を治療するために、治療用核酸(例えば、コードRNA又は非コードRNA)の全身送達が望まれる様々な状況において用途を見出す。したがって、本明細書に記載されるような組成物のいずれかを対象に経口投与するステップを含む方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、対象は、筋変性障害を有するか、又は筋変性障害を発症するリスクがあり、組成物は、治療用核酸を含み、それにより筋変性障害を治療する。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0085】
本開示の組成物は、組成物が経口投与された場合に、治療用核酸のバイオアベイラビリティの増強を提供することができる。一部の実施形態では、バイオアベイラビリティは、好適な対照組成物、例えば、カゼインリンタンパク質、キトサンポリマー、及び/又はカゼイン-キトサン複合体を含まない組成物と比較して増強している。一部の実施形態では、組成物中の治療用核酸の経口バイオアベイラビリティは、対照組成物の経口バイオアベイラビリティと比較して、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約25倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、約200倍、約300倍、約400倍、約500倍、約1,000倍、約2,000倍、約5,000倍、約10,000倍若しくはそれを超えて増強しているか、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲内の倍量、増強している。
【0086】
一部の実施形態では、経口バイオアベイラビリティの増強は、ペイロード分子のクラス内の様々な種(例えば、すべての核酸配列の中でも特有の核酸配列)の提示の増加を含む。一部の実施形態では、ペイロード分子のクラス内の実質的にすべての種が、生体利用可能である。一部の実施形態では、ペイロード分子のクラス内の種の少なくとも約50%、例えば少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、例えば少なくとも約99%が、生体利用可能である。一部の実施形態では、ペイロード分子は、エキソソーム核酸である。一部の実施形態では、ペイロード分子は、mRNA、ncRNA、lncRNA、又はmiRNAである。一部の実施形態では、ペイロード分子は、タンパク質である。一部の実施形態では、ペイロード分子は、小分子である。一部の実施形態では、ペイロード分子は、合成ペイロード、例えば、合成の核酸、タンパク質、又は小分子である。
【0087】
一部の実施形態では、経口バイオアベイラビリティの増強は、組成物によって、経口投与後、約1週間以内、約5日以内、約3日以内、約1日以内、約18時間以内、約12時間以内、約10時間以内、約8時間以内、約6時間以内、約5時間以内、約4時間以内、約3時間以内、約2時間以内、約1時間以内、約30分以内、約15分以内、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の任意の時間間隔内に達成される。
【0088】
いくつかの実施形態では、キトサンは、低分子量キトサンである。いくつかの実施形態では、キトサンは、質量約50~約190キロダルトンの範囲である。一部の実施形態では、より高分子量のキトサンが使用される。いくつかの実施形態では、キトサンは、製剤の約0.001~約0.1重量/体積%の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、キトサンは、製剤の約0.01~約0.1重量/体積%の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、キトサンは、製剤の約0.05~約0.1重量/体積%の範囲の量で存在する。
【0089】
いくつかの実施形態では、製剤は、製剤の様々な成分の比に基づいて生成される。例えば、カゼイン対RNA対キトサンの比は、約1000:1:25~約500:1:15(%w/v)の範囲である。いくつかの実施形態では、カゼイン対RNAの比は、約500:1~約1000:1の範囲である。いくつかの実施形態では、RNA対キトサンの比は、約1:10~約1:50の範囲である。いくつかの実施形態では、これらの比は、使用されるRNAの各マイクログラムに対して約0.5~約3マイクロリットルの範囲の体積のリポソームとともに用いられる。組成物の任意の2つの所与の成分間で、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、50:1、100:1、1000:1、1:1000、1:500、1:100、1:50、1:5、1:4、1:3、1:2などの範囲の比も使用することができる。
【0090】
一部の代替の実施形態では、組成物は、細胞外小胞(EV)、例えばエキソソームを含む。細胞外小胞(EV)は、任意の好適な供給源に由来するもの、例えば、心筋球由来細胞(CDC)又は線維芽細胞に由来するEVであり得る。CDC由来のEVなどの好適なEVは、例えば、米国出願公開第20080267921号、同第20160158291号及び同第20160160181号; Smith et al., Circulation. 2007. 115:896-908; Aminzadeh, M. A. et al. Stem Cell Reports 10, 942-955 (2018);及びIbrahim et al., Stem Cell Reports. 2014 May 8;2(5):606-19、Ibrahim, A. G. et al. Nanomedicine 33, 102347 (2020)(これらのそれぞれは、その全体が参照により組み込まれる)に提供される。一部の実施形態では、EVは、培養中のヒトCDCによって馴化された無血清培地から単離されたものである。一部の実施形態では、組成物は、トランスフェクション試薬としてEV及びリポソーム及び/又はPCLCを含む。一部の実施形態では、組成物は、CDC由来のEVを実質的に含まない。
【0091】
本明細書に開示されるEV、例えばエキソソームは、実施形態に応じてサイズが様々であり得る。実施形態に応じて、EVのサイズは、直径約15nm~約95nm、例えば約15nm~約20nm、約20nm~約30nm、約30nm~約40nm、約40nm~約50nm、約50nm~約60nm、約60nm~約70nm、約70nm~約80nm、約80nm~約90nm、約90nm~約95nm、及びそれらの重複範囲の直径の範囲である。いくつかの実施形態では、EVはより大きい(例えば、約140~約210nm、例えば約140nm~約150nm、約150nm~約160nm、約160nm~約170nm、約170nm~約180nm、約180nm~約190nm、190nm~約200nm、約200nm~約210nm、及びそれらの重複範囲の範囲のもの)。一部の実施形態では、EV直径は、直径約15nm~約200nm、例えば約15nm~約20nm、約20nm~約30nm、約30nm~約40nm、約40nm~約50nm、約50nm~約60nm、約60nm~約70nm、約70nm~約80nm、約80nm~約90nm、約90nm~約100nm、約100nm~約110nm、約110nm~約120nm、約120nm~約130nm、約130nm~約140nm、約140nm~約150nm、約150nm~約160nm、約160nm~約170nm、約170nm~約180nm、約180nm~約190nm、約190nm~約200nm、及びそれらの重複範囲の範囲である。一部の実施形態では、元の細胞体から生成されるEVは、元の細胞体よりも、少なくとも1つの寸法(例えば、直径)において100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、2,000、5,000、又は10,000倍小さい。
【0092】
本開示のEV及び核酸を含有する組成物は、任意の好適な選択肢を使用して調製することができる。一部の実施形態では、核酸をEVにロードすることは、核酸を、例えば上で提供されるような、リポソーム及び/又はPCLCとともに製剤化して、核酸-リポソーム混合物を生成すること;核酸-リポソーム混合物をEVと組み合わせること;及びエキソソームマーカーに関連するEVについて濃縮して、核酸について濃縮されたEVの集団を生成することを含む。核酸-リポソーム混合物をEVと組み合わせることは、任意の好適な選択肢を使用して行うことができる。一部の実施形態では、核酸-リポソーム混合物は、約30分間以上振盪しながら37℃でEVと組み合わされる。核酸について濃縮されたEVの集団を生成するために濃縮することは、任意の好適な選択肢を使用して行うことができる。一部の実施形態では、エキソソームマーカーに関連するEVについて濃縮することは、エキソソームマーカーに特異的な抗体を使用して、エキソソームマーカーに関連するEVを免疫沈降することを含む。一部の実施形態では、エキソソームマーカーは、CD9、CD63及びCD81のうちの1つ以上である。一部の実施形態では、エキソソームマーカーに関連するEVについて濃縮することは、すべてのエキソソームマーカー、CD9、CD63及びCD81に関連するEVを免疫沈降することを含む。一部の実施形態では、核酸について濃縮されたEVの集団のサイズ分布は、実質的に単峰性である。一部の実施形態では、集団の少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%は、サイズ分布において単一ピーク下の直径を有する。一部の実施形態では、核酸について濃縮されたEVの集団は、約50~180nm、例えば、60~170nm、70~160nm、80~150nm、90~140nm、100~130nm、又は約110~130nmの平均直径を有する。
【0093】
核酸
上で論じたように、核酸治療薬は、遺伝子レベルで疾患を治療する可能性を提供する。従来の治療は、一般に、根本的な遺伝的原因ではなくタンパク質を標的とするため、誘導される治療効果は一過性であり得る。対照的に、核酸治療薬は、遺伝子の阻害、付加、置換、又は編集を介して長期にわたる効果(又は永久的でさえある効果、例えば治癒的効果)の可能性を有する。本明細書に開示されるように、核酸治療薬の使用の成功は、安定性及び/又はバイオアベイラビリティを改善する送達技術次第である。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される製剤は、対象への核酸の送達の増強を可能にする。いくつかの実施形態では、核酸は、DNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、コードRNA(例えば、メッセンジャーRNA又はmRNA)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、非コードRNA(ncRNA)を含む。mRNAは、治療効果をもたらすタンパク質をコードする配列の送達によって治療効果を提供することができる。実施形態に応じて、それは、非機能的タンパク質を置換するタンパク質であり得る。他の実施形態では、コードRNAは、例えば、そのタンパク質に対する抗体の産生のために、それに対する免疫応答が望まれるタンパク質(例えば、ウイルスタンパク質)をコードすることができる。ncRNAは、抗炎症性サイトカインの分泌を増加させるか、又は炎症性サイトカインの分泌を減少させるそれらの能力に基づいて、プラスの治療効果を示すことが知られている。ある特定のncRNAは、心臓保護効果、抗線維化効果、及び/又は抗肥大効果を示す。
【0095】
非コードRNA(ncRNA)は、生物活性を有するとますます認識されるようになっている。前駆細胞に由来する細胞外小胞(EV)は、豊富で多様なncRNAを含有する;例えば、心筋球由来細胞は、低分子Y RNAが豊富なEVを分泌する。治療効果を示す核酸は、本明細書で提供される製剤を使用して送達することができる。非限定的な例として、単離されたマクロファージにおいて肥大性、炎症性及び線維性の遺伝子ファミリーを抑制し、心機能及び運動持久力を回復し、並びに/又は心不全及び炎症の血清バイオマーカーを減少させるncRNAが、本明細書に開示される実施形態に従って使用可能である。さらに、組織中のERK/Mapキナーゼ、線維性及び炎症性シグナル伝達の上方制御に拮抗するncRNAが使用可能である。虚血(心筋梗塞)、筋変性(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)及び自己免疫(強皮症)という多様な病理学的プロセスに対してプラスの効果を示すか、又は他のプラスの疾患修飾生物活性を示す任意のncRNAが、本明細書に開示される実施形態に従って使用可能である。表1は、炎症及び/又は線維化に関連する疾患を治療するための治療薬として使用するためのそのようなncRNAの非限定的な例を含む。
【0096】
【表1】
【0097】
CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)のヌクレオチド配列を含む単離された核酸、又はそのバリアントが本明細書で提供される。一部の実施形態では、核酸は、RNAである。一部の実施形態では、核酸は、CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)又は本明細書で提供される核酸配列のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、98%、99%同一のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列中の最大1、2、3、4、又は5個の位置における配列バリエーションを有するCGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)のヌクレオチド配列を含む。本明細書で使用される場合、ヌクレオチド配列又は核酸内の「位置」は、ヌクレオチド配列又は核酸の5'末端に対して定義される。一部の実施形態では、核酸のヌクレオチド配列は、CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)、又はその配列バリアントである。核酸は、任意の好適な長さであってよい。一部の実施形態では、核酸は、24ヌクレオチド(nt)長である。一部の実施形態では、核酸は、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40nt長であるか、又はそれより長い。一部の実施形態では、核酸は、最大30nt長である。一部の実施形態では、核酸は、16~30nt長、又は24~30nt長である。
【0098】
本開示の核酸は、一本鎖又は二本鎖(例えば、RNA/DNAハイブリッド)であってよい。一部の実施形態では、核酸は、一本鎖である。
【0099】
一部の実施形態における本開示の単離された核酸は、1つ以上の化学修飾ヌクレオチド、例えば、修飾された骨格を有するヌクレオチドを含む。一般に、化学修飾(複数可)は、核酸の治療効力を実質的に保持又は増強するものである。核酸の任意の好適な数のヌクレオチドを、化学的に修飾することができる。一部の実施形態では、核酸は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上、20個以上、21個以上、22個以上、23個以上、24個以上、25個以上、26個以上、27個以上、28個以上、29個以上、30個以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~15、1~20、1~25、又は1~30個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、1~10個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、8個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、6個の化学修飾ヌクレオチドを含む。
【0100】
化学修飾ヌクレオチドは、任意の好適な様式で、単離された核酸に沿って分布していてよい。一部の実施形態では、核酸は、核酸の前半、例えば核酸の5'半分内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の後半、例えば核酸の3'半分内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の前半、例えば核酸の5'半分内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチド、及び核酸の後半、例えば核酸の3'半分内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の5'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれを超えるヌクレオチド内に、1つ以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の3'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれを超えるヌクレオチド内に、1つ以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、2つの化学修飾ヌクレオチドは、核酸中で互いに隣接していない。一部の実施形態では、核酸は、核酸の5'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のヌクレオチド内に、それぞれ、1、1、2、2、3、3、4、4、5、5個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の3'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のヌクレオチド内に、それぞれ、1、1、2、2、3、3、4、4、5、5個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の5'半分及び3'半分に同数の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、核酸の5'末端から5個のヌクレオチド内に3個の化学修飾ヌクレオチド、及び/又は核酸の3'末端から5個のヌクレオチド内に3個の化学修飾ヌクレオチドを含む。
【0101】
一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)のヌクレオチド配列、又はその配列バリアント、又は本明細書で提供される他の核酸配列内にある。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の前半、例えばヌクレオチド配列の5'半分内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の1~12位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の後半、例えばヌクレオチド配列の3'半分内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の13~24位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の1~12位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチド、及びヌクレオチド配列の13~24位内に少なくとも1つの化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれを超えるヌクレオチド内に、1つ以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の3'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれを超えるヌクレオチド内に、1つ以上の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、2つの化学修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチド配列中で互いに隣接していない。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のヌクレオチド内に、それぞれ、1、1、2、2、3、3、4、4、5、5個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の3'末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のヌクレオチド内に、それぞれ、1、1、2、2、3、3、4、4、5、5個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'半分及び3'半分に同数の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'末端から5個のヌクレオチド内に3個の化学修飾ヌクレオチド、及び/又はヌクレオチド配列の3'末端から5個のヌクレオチド内に3個の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'半分及び3'半分に異なる数の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'半分よりも、3'半分により大きな数の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸は、ヌクレオチド配列の5'末端から5個のヌクレオチド内に3個の化学修飾ヌクレオチド、及び/又はヌクレオチド配列の3'末端から5個のヌクレオチド内に3、4、又は5個の化学修飾ヌクレオチドを含む。
【0102】
一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位のうちの1つ以上において化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列の1、3、5、20、22及び24位において化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)、又はその配列バリアントを有し、1、3、5、20、22、及び24位のうちの1つ以上は、化学的に修飾される。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチド(複数可)は、核酸のインビトロ及び/又はインビボ安定性を増加させる。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチド(複数可)は、例えば、炎症状態、心臓損傷、又は筋ジストロフィーを治療するための、核酸の治療効力を増加させる。
【0103】
一部の実施形態における単離された核酸は、1種類、又は2つ以上の異なる種類の化学修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、立体構造をロックするためにヌクレオチド糖環の2'-O原子と4'-C原子とを接続するメチレン架橋を有する(ロックド核酸(LNA))。一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)、又はその配列バリアントを含み、1、3、5、20、22、及び24位のうちの1つ以上はLNAである。一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号12)、又はその配列バリアントを有し、1、3、5、20、22、及び24位のうちの1つ以上はLNAである。一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号2)、又はその配列バリアントを含み、1、3、5、20、22、及び24位はLNAである。一部の実施形態では、単離された核酸は、ヌクレオチド配列CGUCCGAUGGUAGUGGGUUAUCAG(配列番号2)を有し、1、3、5、20、22、及び24位はLNAである。
【0104】
単離された核酸は、一部の実施形態では、任意の好適な化学修飾を含み得る。一部の実施形態では、化学修飾は、骨格修飾、例えば、糖/リン酸骨格の修飾である。一部の実施形態では、化学修飾は、骨格糖修飾である。一部の実施形態では、化学修飾ヌクレオチドは、LNAを含む。一部の実施形態では、化学修飾は、ヌクレオチド間のリンカーとしてのホスホロチオエート基の導入を含む。化学修飾ヌクレオチドの好適な骨格修飾としては、限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、短鎖アルキル若しくはシクロアルキル糖間結合、又は短鎖ヘテロ原子若しくはヘテロ環糖間結合が挙げられる。一部の実施形態では、化学修飾は、塩基修飾である。
【0105】
本開示の核酸は、任意の好適な選択肢を使用して調製することができる。好適な選択肢としては、限定されないが、化学合成、酵素的生成及び/又は生物学的生成が挙げられる。一部の実施形態では、核酸は、化学合成を使用して調製される。核酸の化学合成のための任意の好適な選択肢が使用可能である。好適な選択肢としては、限定されないが、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、ホスホロアミダイト、ホスファイト-トリエステル、及び固相合成アプローチが挙げられる。一部の実施形態では、核酸を調製することは、インビトロ転写を含む。一部の実施形態では、核酸は、組換えDNA技術を使用して調製される。一部の実施形態では、核酸は、目的のヌクレオチド配列を有する未修飾核酸を化学的に修飾することによって調製される。
【0106】
方法
治療用ペイロードとして核酸(例えば、RNA)を保有する経口製剤を含む本開示の製剤を使用して、治療を必要とする対象を治療する方法(本明細書では「治療方法」とも呼ばれる)が本明細書で提供される。治療方法によって治療可能な状態としては、以下に限定されないが、例えば、炎症及び/又は線維化に関連する疾患が挙げられる。状態としては、限定されないが、心臓状態、筋肉障害、心筋梗塞、心臓障害、心筋変化、筋ジストロフィー、線維性疾患、炎症性疾患、ウイルス感染症、強皮症、駆出率が保持された心不全、敗血症及び/又は創傷治癒が挙げられる。一部の実施形態では、本治療方法によって治療される状態は、感染症の症状及び/又は後遺症である。一部の実施形態では、感染症は、ウイルス感染症、例えば、COVID-19などの呼吸器ウイルス感染症、他のコロナウイルス又は他のウイルス病原体(例えば、インフルエンザ、H1N1、C型肝炎、HIVなど)による感染症である。
【0107】
一部の実施形態では、治療方法は、筋肉障害(又は筋肉状態)又はその症状を治療する方法を含み、この方法は、筋肉障害又はその症状の治療を必要とする対象に、治療有効量の、本開示の核酸を含有する組成物の1つ以上を経口投与するステップを含む。筋肉障害は、限定されないが、骨格筋障害又は心筋障害であってもよい。一部の実施形態では、筋肉障害は、筋ジストロフィー、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む。一部の実施形態では、対象は、筋ジストロフィーを有するか、又は筋ジストロフィーを発症するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、筋ジストロフィー、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーを発症する遺伝的素因を有する。一部の実施形態では、対象は、対象が筋ジストロフィー、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーを発症しやすくさせるジストロフィン遺伝子における1つ以上の変異を有する。
【0108】
一部の実施形態では、治療方法は、心臓状態又はその症状を治療する方法を含み、この方法は、心臓状態又はその症状の治療を必要とする対象に、治療有効量の、本開示の核酸を含有する組成物の1つ以上を経口投与するステップを含む。一部の実施形態では、対象は、ヒト対象である。一部の実施形態では、対象は、非ヒト対象、例えば非ヒト哺乳動物である。
【0109】
様々な心臓状態が、本方法によって治療可能である。一部の実施形態では、心臓状態は、心不全又は心筋梗塞の症状及び/又は後遺症を含む。一部の実施形態では、心臓状態は、肥大型心筋症を含む。一部の実施形態では、心臓状態は、駆出率が保持された心不全(HFpEF)を含む。
【0110】
一部の実施形態では、対象は、心臓状態を発症するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、対象の家族歴、遺伝的素因、生活様式、及び病歴のうちの1つ以上に基づいて、心臓状態を発症するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、対象が肥大型心筋症(HCM)を発症しやすくさせる心臓トロポニンIにおける変異を有する。一部の実施形態では、対象は、心臓状態に対する1つ以上の併存疾患を有する。一部の実施形態では、1つ以上の併存疾患は、肥満及び高血圧を含む。一部の実施形態では、対象は、心臓状態を有するか、又は心臓状態と診断される。
【0111】
一部の実施形態では、対象は、高血圧、E/e'比の上昇、心肥大、心筋線維化、肥満、消耗、持久力の低下、及び全身性炎症マーカーの上昇のうちの1つ以上を示す。一部の実施形態では、対象は、高血圧を有し、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、対象の血圧が低下する。一部の実施形態では、高血圧を有する対象は、130/90mmHgを超える安静時血圧を有する。一部の実施形態では、高血圧を有する対象は、140/90mmHgを超える安静時血圧を有する。一部の実施形態では、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、対象の収縮期血圧又は拡張期血圧が低下する。一部の実施形態では、対象の血圧(収縮期血圧又は拡張期血圧)は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも約5%、7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、25%、30%若しくはそれを超えて、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージ、低下する。一部の実施形態では、対象の血圧(収縮期血圧又は拡張期血圧)は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも、もはや高血圧ではないとみなされるレベルまで低下する。
【0112】
一部の実施形態では、対象は、上昇したE/e'比を有し、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、E/e'比が低下する。一部の実施形態では、対象のE/e'比は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも約5%、7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%若しくはそれを超えて、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージ、低下する。一部の実施形態では、対象のE/e'比は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも、もはや臨床的に関連性がないとみなされるレベルまで低下する。
【0113】
一部の実施形態では、対象は、心肥大を有し、治療有効量の、核酸を含む組成物の経口投与により、心肥大が軽減する。心肥大は、任意の好適な選択肢を使用して測定することができる。一部の実施形態では、心肥大は、心エコー検査を使用して測定される。一部の実施形態では、心肥大を有する対象は、心エコー検査によって測定した場合、増加した拡張期心室中隔壁径(IVSd)及び/又は左心室後壁径(LVPWd)を有し、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与することにより、IVSd及び/又はLVPWdが減少する。一部の実施形態では、対象のIVSd又はLVPWdは、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、少なくとも約5%、7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、25%、30%若しくはそれを超えて、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージ、減少する。一部の実施形態では、対象のIVSd又はLVPWdは、治療有効量の、核酸を含む組成物を投与した後、少なくとも、もはや肥大性でないとみなされるレベルまで減少する。
【0114】
一部の実施形態では、対象は、心筋線維化を有し、治療有効量の、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与することにより、線維化が予防される又は軽減する。「線維化」は、本明細書で使用される場合、心筋の任意の再構築(例えば、病理学的再構築)、例えば、以下に限定されないが、線維性組織及び/又は脂肪組織の沈着、線維性組織及び/又は脂肪組織による筋組織の置換などを含み得る。心臓線維化は、生検、超音波検査又はMRIなどの任意の好適な手段を使用してモニタリングされる。一部の実施形態では、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与することにより、心筋線維化及び/又は筋線維化が除去されるか、又は心筋線維化及び/又は筋線維化の発症が遅延する。
【0115】
一部の実施形態では、対象は、消耗又は体重減少を示し、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与することにより、消耗が遅延するか、又は予防される。一部の実施形態では、対象は、治療有効量の核酸(又はその組成物)を投与した後、最大で約20%、15%、10%、5%、3%若しくはそれを下回る、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージの体重減少を示す。一部の実施形態では、対象の体重は、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与した後、実質的に治療前レベルに回復するか、又は実質的に治療前レベルで維持される。
【0116】
一部の実施形態では、対象は、低下した持久力、例えば運動持久力を示し、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与することにより、持久力の低下が遅延するか、又は予防される。一部の実施形態では、対象は、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与した後、最大で約20%、15%、10%、5%、3%若しくはそれを下回る、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージの持久力の低下を示す。一部の実施形態では、対象の運動持久力は、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与した後、実質的に治療前レベルに回復するか、又は実質的に治療前レベルで維持される。一部の実施形態では、対象は、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与した後、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%若しくはそれを超える、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージの持久力の改善を示す。一部の実施形態では、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与した後の持久力の改善は、治療期間にわたって維持される。一部の実施形態では、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与した後の持久力の改善は、複数用量の投与にわたって維持される。
【0117】
一部の実施形態では、対象は、例えば末梢血中の、全身性炎症マーカーのレベルの上昇を示す。一部の実施形態では、全身性炎症マーカーは、IL-6及び脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態では、全身性炎症マーカーのレベルは、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与した後、少なくとも約5%、7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%若しくはそれを超えて、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージ、低下する。一部の実施形態では、対象の全身性炎症マーカーは、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与した後、少なくとも、もはや上昇していないとみなされるレベルまで低下する。
【0118】
一部の実施形態では、対象が肥満である場合、核酸を投与することの治療効果は、対象の肥満とは無関係である。一部の実施形態では、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与することは、対象の体重に影響を及ぼさない。
【0119】
一部の実施形態では、対象は、低下した骨格筋機能、例えば、骨格筋群によって発揮される力又はトルクの量を示す。一部の実施形態では、対象は、低下した骨格筋機能を示し、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与することにより、骨格筋機能の低下の発症が遅延するか、骨格筋機能の悪化が予防されるか、又は骨格筋機能が増強される。一部の実施形態では、対象の骨格筋機能は、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与した後、実質的に治療前レベルに回復するか、又は実質的に治療前レベルで維持される。一部の実施形態では、対象は、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与した後、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%若しくはそれを超える、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲のパーセンテージの骨格筋機能の改善を示す。
【0120】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与することの治療効果のいずれかは、治療期間にわたって維持される。一部の実施形態では、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与することの治療効果のいずれかは、複数用量の投与にわたって維持される。一部の実施形態では、本明細書で提供されるような治療用核酸を含む組成物を経口投与することの治療効果のいずれかは、治療期間にわたって一過性ではない。
【0121】
一部の実施形態では、本開示の治療方法は、様々な炎症状態のいずれか1つ以上を治療する。一部の実施形態では、炎症状態は、慢性状態である。一部の実施形態では、炎症状態は、IL-10の抗炎症効果に応答する状態である。一部の実施形態では、炎症状態は、自己免疫疾患、移植片対宿主病(GVHD)、又は臓器移植に対する免疫応答を含む。一部の実施形態では、炎症状態は、ウイルス感染症、敗血症、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎)、多発性硬化症、天疱瘡、及び1型糖尿病(インスリン依存性糖尿病(IDDM)とも呼ばれる)を含む。一部の実施形態では、炎症状態は、ベーチェット病、多発性筋炎/皮膚筋炎、自己免疫性血球減少症、自己免疫性心筋炎、原発性肝硬変、グッドパスチャー症候群、自己免疫性髄膜炎、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、アジソン病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性ムンプス、クローン病、インスリン依存性糖尿病、栄養障害性表皮水疱症、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、硬腫、脊椎関節症、甲状腺炎、血管炎、白斑、粘液水腫、悪性貧血及び潰瘍性大腸炎を含む。一部の実施形態では、炎症は、骨髄移植に関連している。一部の実施形態では、炎症は、組織移植後の同種移植片拒絶に関連している。一部の実施形態では、自己免疫疾患は、心臓自己免疫疾患、例えば自己免疫性心筋炎である。
【0122】
一部の実施形態では、本開示の治療方法は、様々な感染性疾患のうちのいずれか1つ以上の症状及び/又は後遺症を治療する。一部の実施形態では、本開示の核酸によって治療される心臓状態又は炎症状態は、感染性疾患の症状及び/又は後遺症を含む。一部の実施形態では、感染性疾患は、心筋損傷に関連している。一部の実施形態では、心臓状態は、感染性疾患に関連する急性心筋炎を含む。一部の実施形態では、炎症状態は、感染性疾患に関連するサイトカインストーム又は過剰炎症を含む。一部の実施形態では、炎症状態は、急性肺損傷又は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む。
【0123】
一部の実施形態では、感染性疾患は、限定されないが、以下の病原体のうちの1つ以上による感染症である:ウイルス(例えば以下に限定されないが、コロナウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、肝炎ウイルス、コクサッキーウイルス、帯状疱疹ウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、風疹、狂犬病ウイルス、ウイルス性出血熱、H1N1など)、プリオン、寄生生物、真菌、カビ、酵母及び細菌(グラム陽性及びグラム陰性の両方)。一部の実施形態では、病原体としては、限定されないが、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、大腸菌(Escherichia coli)(E. coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(P. aeruginosa)、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(S. aureus)、A群連鎖球菌(Group A streptococci)、S.ニューモニエ(S. pneumoniae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、及び様々な薬物耐性細菌が挙げられる。
【0124】
一部の実施形態では、炎症は、ウイルス、例えばDNAウイルス又はRNAウイルスによる感染症に続いて又はそれと同時に起こる。一部の実施形態では、ウイルスは、RNAウイルス、例えば一本鎖又は二本鎖ウイルスである。一部の実施形態では、RNAウイルスは、ポジティブセンスの一本鎖RNAウイルスである。一部の実施形態では、ウイルスは、ニドウイルス目(Nidovirales order)に属する。一部の実施形態では、ウイルスは、コロナウイルス科(Coronaviridae family)に属する。一部の実施形態では、ウイルスは、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、ガンマコロナウイルス又はデルタコロナウイルス属に属する。一部の実施形態では、アルファコロナウイルスは、限定されないが、ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスNL63又は伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)である。一部の実施形態では、ベータコロナウイルスは、限定されないが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、SARS-CoV-2(COVID-19)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、ヒトコロナウイルスHKU1、又はヒトコロナウイルスOC43である。一部の実施形態では、ガンマコロナウイルスは、感染性気管支炎ウイルス(IBV)である。
【0125】
核酸は、任意の好適な量(例えば、本明細書で提供されるような経口製剤内の量)で対象に投与することができる。一部の実施形態では、核酸の治療有効量は、約0.01μg、0.02μg、0.05μg、0.1μg、0.2μg、0.5μg、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、40μg、50μg、75μg、100μg、125μg、150μg、175μg、200μg、250μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、10mg、15mg、20mg、30mg、40mg、50mg、75mg、100mg若しくはそれを超える、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の量を含む。一部の実施形態では、核酸の治療有効量は、約0.001μg/g、0.002μg/g、0.005μg/g、0.01μg/g、0.02μg/g、0.05μg/g、0.1μg/g、0.15μg/g、0.2μg/g、0.5μg/g、1μg/g、2μg/g、3μg/g、4μg/g、5μg/g、6μg/g、7μg/g、8μg/g、9μg/g、10μg/g、15μg/g、20μg/g、25μg/g、30μg/g、35μg/g、40μg/g、45μg/g、50μg/g、60μg/g、70μg/g、80μg/g、90μg/g、100μg/g体重、若しくはそれを超える、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の量を含む。
【0126】
核酸又は組成物は、任意の好適な投与スケジュールで対象に投与することができる。一部の実施形態では、治療有効量の核酸又は組成物は、対象に、週2回、週1回、2週間に1回、月1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、4ヶ月以上に1回以下の頻度で、又は前述の値のいずれか2つによって規定される範囲の頻度で投与される。一部の実施形態では、核酸は、対象に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30回又はそれを超える回数投与される。一部の実施形態では、核酸は、対象に一定間隔で投与される。
【0127】
任意の好適な経路を使用して投与することができる製剤が本明細書に開示されるが、提供される製剤のいくつかの実施形態は、予想外に経口送達に好適である。あるいは、投与は、局所的又は全身的であってよい。一部の実施形態では、投与は、非経口的である。投与のための好適な選択肢としては、限定されないが、静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、腹腔内、又は経口投与が挙げられる。一部の実施形態では、核酸又は組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態では、核酸又は組成物は、注入によって投与される。好ましい実施形態によれば、組成物は、経口投与される。
【0128】
キット
本開示の核酸含有組成物を含むキットも本明細書で提供される。一部の実施形態における本キットは、本明細書で提供されるような、筋肉障害、心臓状態又は炎症状態(例えば、ウイルス感染症に関連する)の治療において用途を見出す。キットは、本開示の核酸及びトランスフェクション試薬を含み得る。トランスフェクション試薬は、本明細書で提供されるような、任意の好適なトランスフェクション試薬であってよい。一部の実施形態では、キットは、本明細書で提供されるような、薬学的に許容される賦形剤を含む。一部の実施形態では、キットは、カゼイン及び/又はキトサンを含む。キットは、キットの1つ以上の構成要素を保持するための1つ以上の容器(例えば、バイアル、アンプル、試験管、フラスコ又はボトル)を含み得る。キットは、状態(例えば、HCM、HFpEF、筋ジストロフィー、強皮症、及び/又はウイルス感染症に関連する炎症状態)を治療するためにキットを使用するための説明書をさらに含んでもよい。情報及び説明書は、言葉、絵、又はその両方などの形式であってもよい。
【0129】
本出願の全体にわたって引用されるすべての特許及び他の刊行物;例えば文献参照、発行された特許、公開された特許出願、及び同時係属中の特許出願は、例えば、本明細書に記載される技術に関連して使用される可能性があるこのような刊行物に記載される方法を記載及び開示する目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示についてのみ提供される。この点に関して、何も、発明者らが事前の発明又は任意の他の理由によりこのような開示に先行する権利を有していないことを認めるものと解釈されるべきではない。これらの文書の日付又は内容に関する表示に関するすべての記載は、本出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確性に関して認めるものではない。
【0130】
本開示の実施形態の記載は、網羅的であること、又は本開示を開示された正確な形態に限定することを意図したものではない。本開示の具体的な実施形態及び実施例は、例示を目的として本明細書に記載されるが、当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な等価な改変が可能である。例えば、方法のステップ又は機能は所与の順序で提示されるが、代替実施形態は異なる順序で機能を実施してもよく、又は機能は実質的に同時に実施してもよい。本明細書で提供される本開示の教示は、適宜、他の手順又は方法に適用することができる。本明細書に記載される様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本開示の態様は、必要な場合、上記の参考文献及び出願の構成、機能及び概念を用いて改変して、本開示のさらなる実施形態を提供することができる。さらに、生物学的機能等価性の考慮により、種類又は量において生物学的又は化学的作用に影響を及ぼすことなく、タンパク質構造にいくらかの変更を加えることができる。詳細な説明を考慮して、本開示にこれら及び他の変更を加えることができる。このような改変はすべて、添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図している。
【0131】
前述の実施形態のいずれかの特定の要素は、他の実施形態における要素と組み合わせるか、又はそれを置換することができる。さらに、本開示のある特定の実施形態に関連する利点がこれらの実施形態の文脈で記載されているが、他の実施形態もそのような利点を示す可能性があり、本開示の範囲内に入るために必ずしもすべての実施形態がそのような利点を示す必要はない。
【0132】
本明細書に記載される技術は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例は、さらに限定するものと決して解釈されるべきではない。
【実施例
【0133】
実施例1
本明細書で提供されるように、いくつかの実施形態は、コードRNA又は非コードRNAなどの治療用核酸を含む組成物の生成に関するものであり、組成物は経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、これらの組成物は、一例として、図1Aの全体的概略図に従って製剤化される。図1Bは、代替の実施形態を示す。図1Aは、核酸(例えば、投与した際に治療効果を有するRNA、特に非コードRNA)が人工脂質ミセル中にカプセル化される非限定的な実施形態を描写する。このカプセル化されたRNAは、任意選択のIV送達に好適である。しかし、本明細書に開示されるいくつかの実施形態によれば、人工ミセルは、カゼインタンパク質で被覆される。続いて、カゼインで被覆されたミセルを、酸性溶液及びキトサンに曝露し、これにより、カゼイン-キトサンで被覆されたミセルが得られる。カゼイン-キトサンで被覆されたミセルは、組成物に耐酸性を付与し、分解を制限しながら組成物が胃の酸性環境を通過することを可能にすることから、カゼイン-キトサンで被覆されたミセルにより、核酸のバイオアベイラビリティが増加した、核酸の経口送達が可能になる。
【0134】
非限定的な例として、図2A~2Bは、この様式でカプセル化されたRNAの2つの例を示す。図2Aは、TY4 RNAを含む組成物を示す。図2Bは、piR-659(piREX1とも呼ばれる)を含む組成物を示す。図2Cは、経口送達されたカプセル化されたpiREX1 RNA(及び核酸修飾を有するpiREX1)が、ビヒクルを受けた動物と比較して梗塞サイズを有意に減少させたことを実証するサンプルデータ(心筋梗塞モデルからの)を示す。同様に、本明細書で提供される組成物により、治療用piREX1 RNAが経口送達された場合、心臓トロポニンI(心臓損傷のマーカー)の循環濃度は有意に低下した。
【0135】
これらのデータは、治療効果をもたらすRNAなどの核酸の経口送達を、本明細書で提供される組成物を使用して達成することができ、治療用RNAのより高いバイオアベイラビリティに起因して治療効果が増強していることを実証する。
【0136】
実施例2
この非限定的な実施例は、駆出率が保持された心不全(HFpEF)のモデルにおける治療用核酸(ここでは非限定的な例は、TY4、特に経口投与されるTY4である)の治療効果を示す。
【0137】
HFpEFにおける経口TY4の治療利益。以前の研究は、肥大のモデルにおけるEV-YF1などの様々なRNA分子の生物活性(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第63/202,970号の実施例2を参照)、及び同じモデルにおけるTY4の同様の治療効力(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第63/202,970号の実施例4を参照)を示しており、TY4を、HFpEFを有するマウスで試験し、経口投与も調査した。この「2ヒット」モデルは、ヒトHFpEFに一般的に関連する2つの併存疾患(肥満及び高血圧)を組み込み、HFpEF患者の心臓組織に見られる一酸化窒素シグナル伝達異常を再現する。図3Aは、実験プロトコールを描写する。マウスを介入なしで観察した(WT)か、又はマウスに高脂肪食(HFD)及びL-NAMEを補充した水を与えた。5週間以内に、HFD/L-NAMEマウスは、肥満及び高血圧になり、拡張機能障害を有したが、EFは正常であった(ベースラインエコーによる)。次いで、HFpEFマウスを、ビヒクル又はTY4の週2回のr.o.注射(「IV Inj.」)又は経口用量(「経口」)を受けるように無作為に割り当てた。TY4を、注射又は経口投与あたり0.15μg/gで投与した。経口投与の場合、TY4を最初にリポソームと組み合わせてTY4-リポソーム複合体を形成させ、次いで、これを、本明細書で提供されるようなカゼイン-キトサン複合体中にカプセル化した。注入前/経口投与前及びその後の様々な時点で、マウスは、血圧測定、トレッドミル試験、心エコー検査、及び/又は循環バイオマーカーのための採血を受けた。ベースラインでの群間の唯一の違いは、疾患に関連するものであった(WTに対してHFpEFにおける、高血圧、低い運動耐性、上昇したE/e'比)。
【0138】
10週間後、以下の違いが明らかであった:TY4動物(IV注射)では、ビヒクルが投与されたHFpEF動物と比較して、血圧がより低く(図3B)、運動耐性がより高く(図3C)、E/e'比がより低く(図3D)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルがより低かった(図3E)。これらの健康指標は、WTレベル(非HFpEF動物)と同等であった。この効果は食事嫌悪によるものではなかった:TY4マウスは肥満のままであった。これらの所見は、TY4の顕著な疾患修飾生物活性を明らかにし、HFpEFの難治性の性質を考慮すると、とりわけ注目に値するものである。
【0139】
図3A~3C:静脈内投与されたTY4により、HFpEFマウスにおける疾患進行が逆転する。図3A:研究設計の概略図。研究のエンドポイントにおいて、TY4を静脈内に受けた動物は、より低い収縮期血圧(SBP)及び拡張期血圧(DBP)(図3B)、改善された運動耐性(図3C)及び拡張機能(E/e'、図3D)、及び心不全の血清バイオマーカーの低下したレベル(BNP;図3E)を有した。
【0140】
際立ったことに、TY4の経口投与は、同様の治療効果、及び場合によっては優れた治療結果をもたらした。TY4の経口投与により、ビヒクルが投与されたHFpEF動物と比較して、収縮期血圧と拡張期血圧の両方が低下し(図3F)、E/e'比が低下し(図3G)、運動耐性が増加し(図3H)、BNPレベルが低下した(図3I)。血圧、運動耐性及びE/e'比は、TY4で経口的に処置された動物においてWTレベル(非HFpEF動物)と同等であった。
【0141】
図3F~3I:経口投与されたTY4により、HFpEFマウスにおける疾患進行が逆転する。実験プロトコールを図3Aに示す。研究のエンドポイントにおいて、TY4を経口的に受けた動物は、より低い収縮期血圧(SBP)及び拡張期血圧(DBP)(図3F)、改善された拡張機能(E/e'、図3G)及び運動耐性(図3H)、及び心不全の血清バイオマーカーの低下したレベル(BNP;図3I)を有した。
【0142】
TY4の治療効果は、静脈内に処置された動物及び経口的に処置された動物の両方において、処置期間中一貫して観察された。低下した収縮期血圧は、早くも9週目に観察され(図3J)、一方、低下した拡張期血圧は、7週目以降に観察された(図3K)。改善されたE/e'比は、9週目から少なくとも14週目まで観察された(図3L)。改善された運動耐性は、経口的に処置された動物においてより一貫して見られ、TY4で処置されたすべての動物は、少なくとも11週目までにより高い運動耐性を示した(図3M)。
【0143】
一部の実施形態では、HFpEFを有する対象に治療有効量の治療用核酸、例えばTY4と機能が類似した非コードRNAを経口投与することにより、HFpEF(又はその1つ以上の症状、例えば限定されないが、炎症及び/又は線維化)が治療される。一部の実施形態では、HFpEFを有する対象への核酸、例えば非コードRNAの反復経口投与により、HFpEF(又はその1つ以上の症状)が治療される。一部の実施形態では、HFpEFを有する対象に治療有効量のTY4を静脈内又は経口投与することにより、HFpEFの1つ以上の症状が軽減又は緩和する。一部の実施形態では、HFpEFを有する対象に治療有効量のTY4を静脈内又は経口投与することにより、HFpEFに起因する、運動持久力の障害、血圧の上昇、E/e'比の上昇、及び全身性炎症のうちの1つ以上が軽減又は緩和する。
【0144】
実施例3
この非限定的な実施例は、実施例2からのさらなる実験の反復を表す。図4Aは、治療用核酸の非限定的な実施形態、この実施例ではTY4 RNAの送達後の収縮期血圧に関するデータを示す。図4Aに示すように、カゼイン-キトサンで被覆されたミセル中の治療用RNAの経口投与は、ビヒクル対照(及び非処置)と比較して、収縮期血圧の低下をもたらす。図4Bは、治療用RNAの経口投与による拡張期血圧の同等の低下を示す。図4Cは、治療用RNAの経口投与後のE/e'比の低下を示す。図4Dは、ビヒクル対照と比較した脳性ナトリウム利尿ペプチドの減少を示す。図4Eは、治療用RNAの経口送達後の持久力の回復を表す(実際、対照レベルよりも若干大きい)。
【0145】
図4Fは、実施例2のデータを超える新しいデータを示す。動物を、循環血中グルコース濃度について評価した。図4Fに示すように、ビヒクル単独による処置は、対照と比較して血中グルコース濃度の上昇をもたらす。本明細書に開示される実施形態による核酸含有組成物の経口投与は、HFpEFに関連する肥満に関連し得る、循環血中グルコースレベルの有意な低下をもたらす。図4Gは、ビヒクル処置マウスにおける脂肪蓄積を示す。治療用核酸の経口投与を受けた右端のマウスで示すように、脂肪蓄積の低下がある。
【0146】
まとめると、これらの追加の新しいデータは、非コードRNAなどの治療用核酸を含む経口送達組成物がHFpEFを効果的に治療できることをさらに補強する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物及び方法は、経口投与された場合、疾患の結果又は症状である炎症及び/又は線維化を効果的に軽減することができる。
【0147】
実施例4
この非限定的な実施例は、治療用核酸(その非限定的な例はTY4及び/又はその誘導体である)のインビボ送達のための様々な製剤を試験するための研究設計を示す(図1B)。
【0148】
PEGシールディング。PEG-カチオン性脂質複合体(PCLC)を、2kDaポリエチレングリコール(PEG2000;30%v/v)とDharmafectとの混合物を使用して形成させる。複合体を、以前の調製物から適合された5回の凍結/解凍サイクル(液体窒素/60℃)を使用して形成させる。単一の凍結-解凍サイクルは、混合物を-190℃(液体窒素)で5分間凍結し、その後60℃で5分間解凍することを含む。TY4(及び/又はその誘導体)のPCLCとの複合体を、適切な濃度のTY4(及び/又はその誘導体)を5μlのPCLCと混合し、最終体積100μlとすることによって作製する。調製物を、撹拌しながら室温で5分間インキュベートする。
【0149】
一部の実施形態では、治療用核酸、例えばTY4(及び/又はその誘導体)は、PCLCとの複合体として製剤化される。一部の実施形態では、治療用核酸、例えばTY4(及び/又はその誘導体)の医薬組成物は、TY4(及び/又はその誘導体)及びPCLCを含む。一部の実施形態では、治療用核酸、例えばTY4(及び/又はその誘導体)のPEGシールディングは、治療効果をもたらす核酸、例えばRNA、特に非コードRNAの経口取り込みを促進する。
【0150】
実施例5
この非限定的な実施例は、経口投与のためのカゼインを有するCDC-EVの製剤を示す。
【0151】
経口的に与えられた場合、変化していないCDC-EVは取り込まれ得る。母乳中の主要なタンパク質であるカゼインは、摂取されたCDC-EVの取り込み及び生物活性を増強し、血球において遺伝子発現を変化させ、mdxマウスにおいて筋機能を増強することができる。
【0152】
経口取り込みの定量化。リポソーム又はEVを、確立されているNanoSight法を使用して、記載されるように計数する。107個の粒子の開始「用量」を選択する。治療用核酸(非限定的な例は、TY4及び/又はその誘導体を含む)を含む治療用化合物を、そのまま投与するか、又はリン酸緩衝食塩水(PBS)中の8%カゼイン溶液と混合する。各治療用化合物製剤、又はカゼイン溶液と各治療用化合物製剤との混合物を、18時間の食料のみの絶食後にHFpEFマウスに強制経口投与し、18時間の食料のみの絶食後にPBS単独又は8%カゼイン溶液単独を与えた場合と比較する。各試験品の経口投与から1時間後、RNA抽出のために下大静脈から血液を収集する。血液への取り込みを、RNA単離法を使用して、qPCRにより全血中の治療用化合物レベルを測定することによって定量化する。測定されたPCRサイクルを、既知レベルのTY4をマウス血液に添加することによって作出された標準に対して比較する。TY4は、ヒト特異的配列に由来するため、マウスにおけるバックグラウンドレベルは、信頼できるPCR検出の限界を下回る。さらなる特徴付けのための選択は、血液中のTY4の測定されたレベルに基づく。qPCRによって対照の2増幅サイクル[Ct]又はそれより早くTY4が検出された場合、製剤(カゼインの有無にかかわらず)は、経口送達をもたらすと考えることができる。一部の実施形態では、製剤は、qPCRにより最も近い競合物より>3低いCtにおいて検出を提供する。製剤は、インビボ生物活性についてさらに試験してもよい。
【0153】
インビボ生物活性。疾患修飾生物活性を評価するために、マウスHFpEFモデルを使用する。高脂肪食+L-NAMEの開始から5週間後に開始して、HFpEFマウスに、1日置きに、ビヒクル(PBS)、及び進歩した製剤のそれぞれ(カゼインあり又はなし)を与える。
【0154】
一部の実施形態では、治療用核酸、例えば非コードRNA、例えばTY4(及び/又はその誘導体)(リポソーム又はCDC-EV中)は、カゼインとともに製剤化される。一部の実施形態では、TY4(及び/又はその誘導体)の医薬組成物は、リポソーム又はCDC-EV中のTY4(及び/又はその誘導体)、及びカゼインを含む。一部の実施形態では、TY4(及び/又はその誘導体)の医薬組成物は、リポソーム又はCDC-EV中のTY4(及び/又はその誘導体)、及び8%カゼインを含む。一部の実施形態では、TY4(及び/又はその誘導体)(リポソーム又はCDC-EV中)及びカゼイン、例えば8%カゼインの製剤は、TY4(及び/又はその誘導体)の経口取り込みを促進する。
【0155】
実施例6
この非限定的な実施例は、脂質ミセル中にカプセル化され、カゼイン-キトサン複合体で被覆された、治療用核酸を含む経口製剤が、心筋梗塞の症状を寛解させることを示す。
【0156】
治療用核酸の経口送達の有効性を評価するために、左前下行枝の45分間の開胸閉塞と、その後の再灌流により、マウスにおいて心筋梗塞をモデル化した。次いで、胸部を閉じた。再灌流から20分後、本明細書で提供されるように、ビヒクル、又は脂質でカプセル化された治療用RNAで構成されるIV組成物、又は脂質ミセル中にカプセル化されカゼイン-キトサンで被覆された治療用RNAを含む経口組成物のいずれかを、マウスに与えた。本明細書における核酸ペイロード使用の非限定的な例は、TY4であった。MIから48時間後に心臓を切除し、梗塞サイズ(IS)を組織学的に定量化した。
【0157】
図5Aは、梗塞サイズに関するプールされたデータを示す。示されるように、IV組成物及び経口組成物の両方が、梗塞サイズの減少をもたらした。特に、TY4の経口送達は、梗塞サイズの減少の増強を示す。各群についての代表的な左心室切片を図5Bに示し、経口処置群は著しく少ない梗塞瘢痕化を示す。心臓損傷のマーカーとして、図5Cは、経口投与されたTY4が、対照と比較して有意な減少をもたらしたことを示す。まとめると、組織学及びトロポニンIについてのデータは、経口送達された治療用核酸、例えば非コードRNA TY4の心臓保護効力を示す上で互いに補強し合っている。
【0158】
これらの所見にさらに基づいて、追加の比較分析を図5D及び5Eに示す。図5Dは、本明細書に開示される実施形態による組成物(例えば、カゼイン-キトサンで被覆されたミセル)に収容されたTY4(又はそのスクランブルバージョン)のIV注射又は経口投与されたTY4を示す。本明細書における追加群は、カゼイン単独(キトサンなし)で被覆されたミセル中にカプセル化された経口TY4を含む。図5Dのデータは、治療用RNAの経口送達に関して上で論じた所見を補強するが、好ましい実施形態により、脂質ミセルがカゼイン及びキトサンの両方で被覆されることも実証する。図5Dの右側の試験群は、カゼインのみで被覆されたRNAカプセル化ミセルである。その群の梗塞サイズは顕著に増加しており、これはTY4のバイオアベイラビリティの低下を示しており、胃の低酸環境において組成物に対する頑強な保護が弱くなったためであると考えられた。図5Eは、心臓トロポニンIの測定に関して、有効性の低下がより小さいことを示すが、カゼインのみの製剤は、少なくとも濃度上昇傾向にある(治療効果がより小さい)ようである。まとめると、これらのデータは、本明細書にいくつかの実施形態で提供されるような、カゼイン-キトサン被覆を使用した、経口送達された治療用核酸、例えば非コードRNA TY4の心臓保護効力を裏付ける。
【0159】
実施例7
この非限定的な実施例は、脂質ミセル中にカプセル化され、カゼイン-キトサン複合体で被覆された、治療用核酸を含む経口製剤が、強皮症の症状を改善することを示す。
【0160】
強皮症は、進行性の皮膚肥厚、並びに皮膚、心臓及び肺の線維化を特徴とする自己免疫障害である。マウスにブレオマイシンを3週間にわたって皮内注射した、強皮症の動物モデルを使用した。次いで、本明細書で提供されるような、治療用RNA分子の経口送達用に構成された組成物で動物を処置した。この実験は、カゼイン-キトサンで被覆された脂質ミセル中にカプセル化され、経口送達される、非限定的な例のRNAであるTY4を使用する。スクランブルRNA配列の経口送達(同じ送達組成物における)を対照として使用した。
【0161】
図6Aは、トレッドミルでの持久力試験に関するデータを示す。示されるように、治療用RNAの経口送達により、持久力が非処置対照マウスの持久力まで完全に戻り、PBS対照及びスクランブルRNA配列対照はそれぞれ持久力の有意な低下を示した。図6Bは、治療用RNAの経口送達により、マウスが、対照と有意に異ならないように体重を維持できたことを示す。図6Cは、各群におけるマウスの心臓重量を体重に関連付ける心臓指数(HI)を示す。非治療群での体重減少から予想されるように、これらの群はHIの上昇を示した。心臓重量の増加(例えば、線維化による)も、HIの増加の一側面を説明する可能性がある。同様に、肺重量を体重の関数として指標化する肺指数(PI)を測定した場合、経口送達された治療用RNAは、非治療群と比較して有意に低下したPIをもたらす(PIは依然として対照より上昇していたが)。図6Eは、肺重量データだけを示し、これはPIデータに対応する。
【0162】
特に心臓測定に目を向けて、図7Aは、線維化に関する組織学データを示す。上の行は、代表的な組織染色を示し、破線のボックスは、2番目の行に提供する拡大図に対応する。経口送達された治療用RNAは、組織の線維化の大幅な軽減を示す。図7Bは、各群についての線維化の定量化を示し、治療用RNAの経口送達が、有意に軽減した心臓線維化をもたらすことを示す。皮膚に影響を与える強皮症の症状に目を向けて、図7C及び7Dは、皮膚の線維化に関する。図7Cは、皮膚に関する組織学データを示し、左上は対照皮膚を示し、右上はビヒクル対照を示し、左下はスクランブルRNAを示し、右下は経口送達されたTY4 RNAを示す。治療用RNAの非限定的な例として、経口送達されたTY4 RNAは、非処置群と比較して、目に見えて少ない皮膚の肥厚/線維化をもたらした。図7Dは、各群についての皮膚の厚さのグラフによりこれを確認し、経口送達された治療用RNAは、対照と有意に異ならない皮膚の厚さをもたらす。
【0163】
様々な炎症性サイトカインの発現レベルに関して、追加の調査を行った。図8A~8Fは、IL1-B(8A)、IL-6(8B)、TGFベータ(8C)、NLRP3(8D)、p21(8E)、及びIL-4(8F)の定量化に関するqPCRデータを示す。経口送達される治療用RNAを投与した場合、これらのサイトカインのそれぞれは同等であるか、又は発現のわずかな増加のみを示した。したがって、これらのデータは、強皮症に続発する又は強皮症の症状を示すものなどの、線維化及び/又は炎症状態を軽減するための治療用RNAの経口送達の有効性を裏付ける。
【0164】
実施例8
この非限定的な実施例は、脂質ミセル中にカプセル化され、カゼイン-キトサン複合体で被覆された、治療用核酸を含む経口製剤が、筋ジストロフィーの症状を改善することを示す。
【0165】
経口送達された治療用RNAの効果を決定するために、12~14ヶ月齢の雌性mdxマウスに、TY4(0.15μg/g体重)又はビヒクルを週2回、8週間与えた。心臓及び骨格筋の機能を、与える前(すなわち、ベースライン)及び8週の研究エンドポイントにおいて測定した。心臓及び前脛骨筋(TA)を解剖し、マッソントリクローム染色用に処理して、間質性線維化を定量化した。
【0166】
図9Aに示すように、軽く麻酔したmdxマウスに経胸壁心エコー検査を実施して、左心室駆出率(EF)を測定した。ベースラインでは、群間で差は検出されなかった。8週間後、経口投与される、治療用RNAの例であるTY4を受けたmdxは、ビヒクル対照と比較してより高いEFを有したが、これは研究期間中に低下した。図9Bに示すように、マッソントリクローム顕微鏡写真及びプールされたデータ(右サブパネル)は、経口投与されるTY4を受けたmdxマウスが、ビヒクル対照マウスよりも少ない心筋線維化を有したことを示す。前下腿筋のインビボ筋機能に目を向けると、その前脛骨筋(TA)はこの筋肉群のトルク出力の約85%を生成し、これは、mdxマウスの足を(力変換器のサーボモーターに取り付けられた)アルミニウムの靴に取り付け、左総腓骨神経を刺激することによって記録した。強縮トルクは、200Hzで記録した。ベースラインでは、群間で差は検出されなかった(図9Cを参照)。8週間後、経口投与されるTY4を受けたmdxマウスは、ビヒクル対照マウスよりも大きなトルクを生成した。図9Dは、筋線維化に関するものであり、マッソントリクローム顕微鏡写真及びプールされたデータ(右サブパネル)を示す。これらのデータは、経口投与されるTY4を受けたmdxマウスが、ビヒクル対照マウスよりも少ない筋線維化を有したことを示す。図9Eは、より多くの筋線維数(1mm2あたり)があることを実証する、収集された生理学的データをまとめて示す。
【0167】
収集された機能的データは、治療用RNAをカプセル化し、カゼイン-キトサン複合体で被覆された脂質ミセルを使用した送達によって経口投与された治療用RNAの有効性をさらに裏付ける。図9Eは、間質性線維化の減少(図9C/9D)に加えて、治療用RNAをカプセル化する脂質ミセルを使用した送達によって経口投与された治療用RNAが、TA中の筋線維の数を増加させたことを示す。この生理学的効果は、治療用RNAをカプセル化する脂質ミセルを使用した送達による治療用RNAの経口投与を受けた動物において、それぞれ、運動能力、心機能及び筋機能の増強を示す機能的アッセイ(図9F~9H)で確認された。二元配置分散分析又は独立したt検定を使用して、群間の統計的有意性を決定した。*P<0.05、**P<0.01。データを平均±SEMとして表す。
【0168】
これらのデータは、治療用RNAをカプセル化し、カゼイン-キトサン複合体で被覆された脂質ミセルを使用した送達によって経口投与された治療用RNAの有効性をさらに裏付ける。いくつかの実施形態では、経口投与を介して治療用RNAを送達するためのこのような組成物は、RNAのバイオアベイラビリティの増加をもたらし、これは、次に、筋ジストロフィーなどの炎症及び/又は線維化を特徴とする疾患に対する治療アウトカムの向上をもたらす。
【0169】
上記は、明確化及び理解を目的として、例証及び実施例によって幾分詳細に記載されているが、本開示の精神から逸脱することなく改変を行うことができることは当業者により理解される。したがって、本明細書に開示される形態は、例示するのみであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではなく、本開示の実施形態の真の範囲及び精神に伴うすべての改変及び代替も包含するものであることが理解されるべきである。
【0170】
上に開示される実施形態の特定の特徴及び態様の様々な組み合わせ又は部分組み合わせを行うことができることが企図される。さらに、実施形態に関連する任意の特定の特質、態様、方法、特性、特徴、品質、属性、要素などの本明細書での開示は、本明細書に記載される他のすべての実施形態で使用することができる。したがって、開示される実施形態の様々な特質及び態様は、開示される主題の様々なモードを形成するために、互いに組み合わせること又は互いに置換することができることが理解されるべきである。したがって、本開示の範囲は、上記の特定の開示される実施形態によって限定されるべきではないことが意図される。さらに、開示される主題は様々な改変及び代替形態を受けることができるが、その特定の例が図面に示されており、本明細書に詳細に記載される。しかし、本開示は、開示される特定の形態又は方法に限定されるものではなく、記載される様々な実施形態及び添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内にあるすべての改変、均等物、及び代替物を包含することが理解されるべきである。
【0171】
本明細書に開示されるいずれの方法も、列挙される順序で実施される必要はない。本明細書に開示される方法は、開業医によって行われるある特定の行為を含むが、明示的又は暗黙的に、これらの行為の任意の第三者の指示を含むこともできる。例えば、「心臓状態又はその症状の治療を必要とする対象に治療有効量の核酸を投与する」などの行為は、「対象に有効量の核酸の投与を指示する」ことを含む。さらに、本開示の特質又は態様がマーカッシュ群に関して記載される場合、本開示がまた、それによって、マーカッシュ群の任意の個別のメンバー、又はマーカッシュ群のメンバーのサブグループに関して記載されていることを、当業者は認識する。
【0172】
本明細書に開示される範囲はまた、あらゆる重複、部分範囲、及びそれらの組み合わせを包含する。「最大でも」、「少なくとも」、「~より大きい」、「~より小さい」、「~の間」などの言語は、列挙される数を含む。「約」又は「およそ」などの用語が前にある数は、列挙される数を含む。例えば、「約90%」は「90%」を含む。一部の実施形態では、少なくとも95%の同一は、参照配列と96%、97%、98%、99%、及び100%の同一を含む。さらに、配列がヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を「含む」と開示される場合、このような言及はまた、別段の指示がない限り、配列が、列挙される配列を「含む」、列挙される配列「からなる」、又は列挙される配列「から本質的になる」ことを含むものとする。
【0173】
本出願で使用される用語及び句、並びにそれらの変形、特に添付の特許請求の範囲におけるものは、別段明示的な記載がない限り、限定するものではなくオープンエンドと解釈されるべきである。前述の例として、用語「含む」は、「含むが限定されない」、「含むが以下に限定されない」などを意味すると解釈されるべきである。
【0174】
本出願の全体にわたって引用されるすべての特許及び他の刊行物;例えば文献参照、発行された特許、公開された特許出願、及び同時係属中の特許出願は、例えば、本明細書に記載される技術に関連して使用される可能性のあるこのような刊行物に記載される方法を記載及び開示する目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示についてのみ提供される。この点に関して、何も、発明者らが事前の発明又は任意の他の理由によりこのような開示に先行する権利を有していないことを認めるものと解釈されるべきではない。これらの文書の日付又は内容に関する表示に関するすべての記載は、出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確性に関して認めるものではない。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図3-7】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
【配列表】
2024527340000001.app
【国際調査報告】