(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】特に洋上風力発電設備のタワー状の建造物のための接続装置、このような接続装置を有したタワー状の建造物、ならびに建造物を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
F03D 13/20 20160101AFI20240717BHJP
E04H 12/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F03D13/20
E04H12/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581078
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2022067916
(87)【国際公開番号】W WO2023275155
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524005523
【氏名又は名称】ローゼン 2 ホールディング アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】ROSEN 2 Holding AG
【住所又は居所原語表記】Obere Spichermatt 14, 6370 Stans, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ニルス レントマイスター
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー リンドナー
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ クリュンペル
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA25
3H178AA43
3H178BB75
3H178CC23
3H178DD67Z
3H178DD70X
(57)【要約】
本発明は、特に洋上風力発電設備のタワー状の建造物のための接続装置であって、特にプレート状または層状の複数の接続エレメントを有しており、これらの接続エレメントは、スリップジョイントを形成するために、建造物の上側の構造部分と下側の構造部分との間に配置され、建造物の中央の長手方向軸線に関して、長手方向軸線を中心とする周方向でかつ/または長手方向軸線の長手方向で、建造物の上側の構造部分と建造物の下側の構造部分との間の荷重伝達の目的で、互いに隣接するように位置決めされ、長手方向軸線に関して、接続装置は中央で、上端部および/または下端部におけるよりも大きな厚さを有しており、特に、長手方向で上方の接続エレメントと下方の接続エレメントとの間に位置する少なくとも1つの真ん中の接続エレメントは、上方の接続エレメントおよび/または下方の接続エレメントよりも大きな厚さを有している、接続装置に関する。さらに、本発明は、特に洋上建造物として形成された風力発電設備のタワー状の建造物であって、少なくとも1つの下側の構造部分と、スリップジョイントを形成するために部分的に下側の構造部分に被せられた少なくとも1つの上側の構造部分とを有しているタワー状の建造物、ならびにタワー状の建造物を製造するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に洋上風力発電設備(2)のタワー状の建造物のための接続装置であって、特にプレート状または層状の複数の接続エレメント(12)を有しており、前記接続エレメントは、スリップジョイントを形成するために、前記建造物の上側の構造部分(8)と下側の構造部分(6)との間に配置され、前記建造物の中央の長手方向軸線(14)に関して、前記長手方向軸線(14)を中心とする周方向でかつ/または前記長手方向軸線の長手方向で、前記建造物の前記上側の構造部分(8)と前記建造物の前記下側の構造部分(6)との間の荷重伝達の目的で、互いに隣接するように位置決めされる、接続装置において、
前記長手方向軸線(14)に関して、前記接続装置は中央で、上端部および/または下端部におけるよりも大きな厚さを有しており、特に、長手方向で上方の接続エレメント(12)と下方の接続エレメント(12)との間に位置する少なくとも1つの真ん中の接続エレメント(12)は、前記上方の接続エレメント(12)および/または前記下方の接続エレメント(12)よりも大きな厚さを有していることを特徴とする、接続装置。
【請求項2】
上方の接続エレメント(12)と下方の接続エレメント(12)との間に長手方向で隣接して配置された複数の真ん中の接続エレメント(12)は、前記上方の接続エレメント(12)および/または前記下方の接続エレメント(12)よりも大きな厚さを有している、請求項1記載の接続装置。
【請求項3】
周方向で互いに隣接して配置された接続エレメント(12)のうちの1つは、その隣に配置された前記接続エレメントよりも大きな厚さを有している、請求項1または2記載の接続装置。
【請求項4】
前記接続エレメント(12)の少なくとも一部は、少なくとも部分的に弾性的に変形可能である、請求項1から3までのいずれか1項記載の接続装置。
【請求項5】
前記接続エレメント(12)の少なくとも一部は、少なくとも部分的に圧縮可能であり、各前記接続エレメント(12)の圧縮性は、特に、表面の構造化によってかつ/または多層構造の前記接続エレメント(12)の少なくとも1つの層の材料によって形成される、請求項1から4までのいずれか1項記載の接続装置。
【請求項6】
前記接続エレメント(12)は、少なくともポリウレタンを含んで形成されており、好ましくは大部分の構成部分がポリウレタンから構成されている、請求項4または5記載の接続装置。
【請求項7】
前記接続エレメント(12)は、少なくとも2層から構成されていて、少なくとも1つのポリウレタンの層を有している、請求項6記載の接続装置。
【請求項8】
前記接続エレメント(12)の少なくとも一部は、前記ポリウレタンの層に加えて、少なくとも1つの減摩性のコーティング(18)を、特にスライドラッカの層を有している、請求項7記載の接続装置。
【請求項9】
前記接続エレメント(12)の少なくとも一部は、長手方向で減じられた厚さを有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の接続装置。
【請求項10】
前記接続エレメント(12)の少なくとも一部には、少なくとも部分的に接着層(20)が設けられている、請求項1から9までのいずれか1項記載の接続装置。
【請求項11】
前記接続エレメント(12)のうちの少なくとも2つは、互いに相補的な、特に形状接続的な接続領域を有している、請求項1から10までのいずれか1項記載の接続装置。
【請求項12】
接続エレメント(12)は、構造部分(8,6)の一部を収容するための、好ましくは前記接続エレメントの製造後に、特に真ん中のまたは上方の接続エレメント(12)が変化する厚さを有するように設けられた少なくとも1つの凹部を有している、請求項1から11までのいずれか1項記載の接続装置。
【請求項13】
特に洋上建造物として形成された風力発電設備(2)のタワー状の建造物であって、特にモノパイルとして形成された少なくとも1つの下側の構造部分(6)と、特にトランジションピースとして形成された少なくとも1つの上側の構造部分(8)とを有しており、前記上側の構造部分は、スリップジョイントを形成するために、前記下側の構造部分(6)に部分的に被せられており、前記上側の構造部分(8)と前記下側の構造部分(6)との間には、請求項1から12までのいずれか1項記載の接続装置(10)が配置されており、特に、少なくとも周方向で延在する支持体が、接続エレメント(12)のうちの1つの下側にまたは最下方の接続エレメント(12)の下側に配置されている、タワー状の建造物。
【請求項14】
請求項13のタワー状の建造物を製造するための方法であって、接続エレメント(12)の少なくとも一部を、下側および/または上側の構造部分(6,8)上に射出成形または流し込み成形することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13または14記載のタワー状の建造物を製造するための方法であって、接続エレメント(12)の少なくとも一部を予め製造し、次いで、下側のおよび/または上側の構造部分(6,8)上に取り付けることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記上側および/または下側の構造部分(6,8)を製造後に測定し、目標形状からのずれにより生じる偏差寸法を、前記接続エレメント(12)の異なる厚さおよび/または面状の延在により考慮する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記偏差寸法を、前記接続エレメント(12)のうちの少なくとも1つの接続エレメントの後加工により考慮する、請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の対象物に関する。さらに、装置は、請求項13の上位概念に記載の形式の対象物、ならびにタワー状の建造物を製造するための方法に関する。
【0002】
欧州特許第3443224号明細書により、冒頭で述べた対象物が公知である。しかしながら、メートル高さの構造部分の、その目標寸法からの偏差に基づいて、特に上側の構造部分の下端部および下側の構造部分の上端部において望ましくない応力ピークが生じるおそれがあることが判った。
【0003】
本発明の課題は、このような応力ピークを最小にすることである。
【0004】
この課題は、請求項1記載の対象物により、請求項13記載の対象物により、ならびに請求項14記載の方法により解決される。本発明の有利な構成は、これらの請求項を引用する従属請求項に記載されている。
【0005】
特に洋上風力発電設備のタワー状の建造物のための本発明による接続装置は、特にプレート状または層状の複数の接続エレメントを有しており、これらの接続エレメントは、スリップジョイントを形成するために、建造物もしくは支持構造の上側の構造部分と下側の構造部分との間に配置することができ、建造物の中央の長手方向軸線に関して、長手方向軸線を中心とする周方向でかつ/または長手方向軸線の長手方向で、建造物の上側の構造部分と建造物の下側の構造部分との間の荷重伝達の目的で、互いに隣接するように位置決めされてもよく、長手方向軸線に関して、接続装置は中央で、上端部および/または下端部におけるよりも大きな厚さを有しており、特に、長手方向で上方の接続エレメントと下方の接続エレメントとの間に位置決めされた少なくとも1つの真ん中の接続エレメントは、上方の接続エレメントおよび/または下方の接続エレメントよりも大きな厚さを有していることを特徴としている。厚さを大きくすることにより、建造物のこの領域において、建造物の上側の構造部分から建造物の下側の構造部分への荷重の伝達がより大きくなる。これにより、各構造部分の端部に存在する応力ピークが減じられ、またはそれどころか回避される。
【0006】
プレート状または層状の接続エレメントの厚さは、この場合、その面状の延在に対して垂直の方向での接続エレメントの延在である。厚さは通常、接続エレメントの長さおよび幅よりも著しく小さい。典型的には、接続エレメントの幅および/または長さは、厚さの少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍である。好ましくは、個々のプレート状もしくは層状の接続エレメントの厚さは、1.5~20cmの範囲、好ましくは2~10cmの範囲にある。厚さは、接続エレメントの表面に対する垂線の方向で、接続装置の組付け位置で典型的には建造物の底面から真ん中で上方に向かって延在する中央の長手方向軸線に向かって測定される。ただし、接続エレメントの厚さの測定のために、接続エレメントは、建造物の構造部分によって荷重をかけられるものとは見なさない。
【0007】
特に、例えば2つのリングの接続エレメントから形成される接続装置の高さにわたって、高さの15%~85%の領域が、少なくとも部分的に、高さの0%~15%および/または高さの85%~100%の領域よりも厚く形成されているならば、接続装置は、「長手方向軸線に関して真ん中」で相対的に大きな厚さを有している。高さの15%~85%のこの領域では、接続装置の上縁および下縁から離隔されて、相対的に大きな荷重が伝達される。好ましくは、真ん中の領域の厚さは最大で、上方または下方の領域の厚さの3倍であり、この場合、接続エレメントの角隅側の面取部または局所的な凹部は考慮されない。接続エレメントが2つのリングである場合、例えば、下側のリングの上半分と上側のリングの下半分とは相対的に厚く形成されていてもよい。
【0008】
プレートは、長手方向軸線に対して横方向で見て、長手方向軸線の方向で互いに隣接して配置されているならば、すなわち、水平方向の基礎に対して特に垂直な場合に、互いに上下に配置されているならば、長手方向で互いに隣接して配置されていると見なされる。中央で長手方向軸線は、建造物の組付け状態で、基礎から垂直に真ん中かつ中央に建造物を通って上方に向かって延在するような長手方向軸線である。
【0009】
建造物の下側の構造部分と建造物の上側の構造部分との間の接続は、スリップジョイントまたはスリップジョイント接続であると理解され、この場合、上側の構造部分および下側の構造部分は、部分的に円錐状の少なくとも1つの領域を有しており、この円錐状の領域は、コップを積み重ねる場合と類似の形式で、少なくとも所定の区分で互いに内外に重ねられる。下側の構造部分の上に上側の構造部分を被せることにより、モルタルまたはボルトを使用することなく摩擦に基づく接続が形成され、これにより、簡易にされた組付けおよび減じられた材料使用によって、この建造物の製造は簡単になる。
【0010】
プレート状の接続エレメントは、本発明の意味では、建造物の構造部分のうちの一方に配置される前に、持ち運び可能なかつ/または搬送可能なプレートとして製造された接続エレメントである。これらの接続エレメントは、製造後にさらに加工されてから、両構造部分のうちの一方に取り付けることができる。層状の接続エレメントは、本発明の意味では、構造部分のうちの一方の上に直接、特に射出成形または流し込み成形法により、層として形成された接続エレメントである。種々異なる厚さを有する層状の接続エレメントは、面の一部により多くの材料が設けられる、相前後して行われる複数回の、または唯1度の流し込み成形工程または射出成形工程により形成することができる。したがって、層状の接続エレメントは、互いに一体となるように移行することができ、種々異なる厚さを特徴とすることができる。建造物の一部の上に、相応に空間的に画定された層状の接続エレメントを製造するために、建造物に最初に、型または型枠を設け、次いでこの型または型枠内に、被着すべき材料を射出するまたは流し込むことができる。また、接続エレメントを製造するために、建造物の個々の部分を、射出成形装置または流し込み成形装置に対して相対的に動かして、所望の厚さの被着部を製造することも考えられる。
【0011】
好ましくはリング状、プレート状または層状の、特に圧縮可能かつ/または弾性的な接続エレメントにより既に、構造部分の目標寸法からのジオメトリ偏差が僅かな範囲で補償されてはいる。しかしながら、建造物の構造部分のサイズ、およびこれに伴う許容誤差の偏差により、従来の接続エレメントによっては、十分な許容誤差補償を行うことはできていない。本発明のさらなる構成によれば、接続エレメントの厚さを目的に合わせて適合させることにより初めて、補償が達成される。しかしながら、特に真ん中の接続エレメントの厚さを大きくすることにより既に、接続のこの領域では、従来の接続装置に対して改善された誤差補償が達成されている。
【0012】
さらなるジオメトリ偏差を、すなわち所定の目標寸法からの建造物のジオメトリの偏差を補償するために、上方の接続エレメントと下方の接続エレメントとの間に長手方向で隣接して配置された複数の真ん中の接続エレメントが、上方の接続エレメントおよび/または下方の接続エレメントよりも大きな厚さを有しているならばさらに有利である。これらの真ん中の接続エレメントも、互いに異なる厚さを有していてもよく、これにより長手方向で見て、例えば、接続領域の中心に向かって厚さの段階的な上昇が存在し、次いで、上端部に向かって再び厚さは順次に減少する。
【0013】
周方向でのジオメトリの偏差を補償するためには、本発明によれば、中央の長手方向軸線を中心とする周方向で互いに隣接して配置された接続エレメントのうちの少なくとも1つが、その隣に配置された前記接続エレメントよりも大きな厚さを有しているならばさらに有利である。
【0014】
また、さらなる本発明の構成では、接続エレメントのうちの少なくともいくつかが、周方向または長手方向で既に異なる厚さを有しているならば有利である。建造物の設置位置で、建造物の垂直の長手方向中心軸線に関して、基礎に向かって最下方の接続エレメントの上側に、1つの接続エレメントを配置する場合には、この接続エレメントは、(別の)1つの接続エレメントの上側に配置されている。
【0015】
有利には、接続装置の接続エレメントは、組付け位置で、建造物の両構造部分の間に互いに離隔されて配置されていてもよい。しかしながら、これらの接続エレメントを互いに所定の間隔を置いて位置決めすることも考えられ、この場合、この間隔は、接続エレメントの少なくとも一部が少なくとも部分的に弾性的に変形可能である場合には、各接続エレメントの押圧により、この間隔が減じられるように、またはゼロにまで減じられるように選択することができる。接続エレメントの全部がまたは接続エレメントの一部のみが、このために少なくとも部分的に弾性的に変形可能であるように形成されていてもよい。特に、これは、リング状、プレート状または層状の接続エレメントの、弾性的に形成されている1つの層であってもよい。
【0016】
有利には、接続エレメントの少なくとも一部は、少なくとも部分的に圧縮可能に形成されており、各接続エレメントの圧縮性は、特に、表面の構造化によってかつ/または多層構造の接続エレメントの少なくとも1つの層の材料によって形成される。圧力下でその密度を変化させる材料は、圧縮可能であると見なされる。例えば、これは、発泡性のまたは添加剤を含むポリウレタンに当てはまる。
【0017】
好ましくは、接続エレメントは、本発明によれば、少なくとも部分的にポリウレタンから構成されている。例えば、プレートは、75~95、好適には80~90のショアA硬度のポリウレタンの1つ以上の層から形成されている。これらのプレート状の接続エレメントは、弾性接着剤によって、特にモノパイルまたはトランジションピースの下側および/または上側の構造部分の鋼表面に接着することができる。
【0018】
特に、接続エレメントは、少なくとも大部分がポリウレタン(PU)から成る構成部分であり、好ましくは、少なくとも95%がポリウレタン(PU)から構成されている。
【0019】
本発明による接続装置は、少なくとも2層から構成された接続エレメントを有していてもよく、これらの接続エレメントは、少なくとも1つのポリウレタンの層の他に、または耐久性、硬度および圧縮性および延伸性に関して同じ作用を有する少なくとも1つのプラスチックの層の他に、別の層を有している。特に、弾性的に変形可能かつ/または圧縮可能なPU層に加えて付加的に、接続エレメントの少なくとも一部は、付加的にスライドラッカの層を有していてもよい。この層は、ポリウレタン層もしくは別のプラスチックから成る層を、部分的にまたは全周にわたって覆うこともできる。
【0020】
有利には、接続エレメントの少なくとも一部は、長手方向軸線の方向で減じる厚さを有することができるので、これらの接続エレメントは、横断面で、例えば少なくとも所定の区分で楔状に先細りするように形成されている。例えば、接続エレメントのうちの少なくとも1つは、斜めに面取りされた縁部を有することができる。個々の接続エレメントの面取りにより、建造物の構造部分を互いに内外に被せることを容易にすることができ、特に、下側の構造部分の側面に取り付けられた接続エレメントは、その上端部では相対的に小さい厚さを有している。代替的にまたは補足的に、上側の、すなわち被せるべき構造部分の側面に取り付けられた接続エレメントが、その下端部で相対的に小さい厚さを有することもできる。
【0021】
代替的にまたは補足的に、接続エレメントの少なくとも一部に、建造物の一方の構造部分上への組付けを容易にする接着層を少なくとも部分的に設けることができる。
【0022】
特に、接続エレメントの少なくとも一部、最低限1つの接続エレメントは、少なくとも1つの減摩性のコーティング、特にスライドラッカの層を有していて、このことは、構造部分を互いに内外に被せることを容易にし、ひいては、より均一な荷重伝達ももたらす。減摩性の層は、全周にわたってポリウレタン層を包囲していてもよい。これは、ポリウレタンの、互いに反対の側に向いた表面に配置された2つの層であってもよい。
【0023】
本発明によるさらなる実施例により、接続エレメントのうちの少なくとも2つの接続エレメントが互いに相補的な、特に形状接続的な接続領域を有しているならば、建造物の組付けおよび作動が改善される。このような接続領域は、例えば、溝・キー接続部、またはフック板の形式で互いに係合する前側突出部および後側突出部であってもよい。
【0024】
有利には、接続エレメントは、構造部分の一部を収容するための、好ましくは接続エレメントの製造後に設けられた少なくとも1つの凹部を有している。例えば、この凹部は、後からフライス加工された、溶接シームを収容するための溝であってもよい。
【0025】
冒頭で述べた課題は、特に洋上建造物として形成された風力発電設備のタワー状の建造物であって、特にモノパイルとして形成された少なくとも1つの下側の構造部分と、特にトランジションピースとして形成された少なくとも1つの上側の構造部分とを有しており、上側の構造部分は、スリップジョイントを形成するために、下側の構造部分に部分的に被せられており、上側の構造部分と下側の構造部分との間には、前述のまたは後述の接続装置が配置されている、タワー状の建造物によっても解決される。この建造物には、相応に説明された利点がある。
【0026】
冒頭で述べた課題は、さらに、上述したタワー状の建造物を製造するための方法であって、接続エレメントの少なくとも一部を、下側および/または上側の構造部分上に射出成形または流し込み成形することを特徴とする方法によっても解決される。
【0027】
さらに、冒頭で述べた課題は、接続エレメントの少なくとも一部を予め製造し、次いで、下側および/または上側の構造部分上に取り付けることによって解決される。特にこのために、上側および/または下側の構造部分を製造後に測定し、これにより、目標形状からの偏差に基づき生じる偏差寸法を特定することができる。このような偏差寸法は、接続エレメントの種々異なる厚さおよび/または面状の延在によって考慮されて対処される。このような対処は、各接続エレメントの製造時に既に、例えば流し込み型または流し込み工程を適合させることにより行われる。代替的にまたは補足的に、偏差寸法は、接続エレメントの後加工によっても考慮されて対処される。これは、より大量の接続エレメントを予め製造して、次いでこれらの接続エレメントを、場合によっては現場で、かつ設置中に、その厚さおよび延在長さに関してさらに適合させることができる点で特に有利である。
【0028】
設置のためには、接続エレメントを、場合によっては存在する接着剤が硬化されるまで、例えば磁石式保持装置によって所望の位置に保持することが有利である。
【0029】
本発明のさらなる利点と詳細は、以下の図面の説明により明らかである。概略的に図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明によるタワー状の建造物を含む風力発電設備を示す図である。
【
図2】
図1の対象物の一部を示す垂直方向断面図である。
【
図3】トランジションピース上に配置された本発明による対象物の一部を示す断面図である。
【
図4】さらなる本発明による装置を示す部分図である。
【
図5】本発明による対象物の接続エレメントの接続例を示す図である。
【
図6】さらなる本発明による対象物を示す部分図である。
【0031】
本発明による実施例の以下に説明する特徴は、単独であっても、図示または説明されたものとは異なる組み合わせであってもよいが、常に少なくとも独立請求項のうちの1つの特徴との組み合わせにおいて、本発明の対象であり得る。有意である限り、機能的に同一の作用を有する部材には、同一の符号を付してある。
【0032】
図1によれば、洋上風力発電設備2は、本発明に係る建造物の、海底4に配置された下側の構造部分6を有する。この構造部分6は、この場合、いわゆるモノパイルとして形成されている。しかしながらこれは、複数の支柱を備えて形成されるトリポッド基礎の構成であってもよい。この場合それらの支柱は、下側の構造部分6に被せられたそれぞれ上側の構造部分8に、固有のスリップジョイント接続によりそれぞれ接続されている。構造部分6および8は、本発明による接続装置によって、同じく本発明による建造物を成す。このような風力発電設備は、洋上設置ではなく、陸上に設置することもできる。
【0033】
図2により詳しく示した本発明による接続装置10は、両構造部分6と8との間に位置決めされている。接続装置は、下側の構造部分6の円錐状の区分と上側の構造部分8の円錐状の区分との間の接続領域に位置している。接続装置は、
図2による実施例では、直接隣接していない接続エレメント12を有しているが、接続装置は、建造物の長手方向軸線14を中心とする周方向で、この建造物に沿って間隔をあけずに互いに隣接して配置された個々の接続エレメント12から形成されていてもよい。異なる円錐角を補償するために、下側の接続エレメント12は、上側の接続エレメント12よりも厚い。
【0034】
図3の接続エレメント12は、トランジションピース上で、上側の構造部分8上に配置されて、断面図で示されている。垂直方向の縦断面図の一方の側、すなわちこの場合左側のみが図示されている。
図3の接続エレメント12も様々な厚さを有しており、高さ方向で真ん中の4つの接続エレメント12は、最下方および最上方の接続エレメント12よりも大きな厚さを有している。これらの合計4つの中央の接続エレメント12のうち、さらに中心に配置された2つの接続エレメント12は、これらに対して上方および下方に配置された接続エレメント12よりも大きな厚さを有し、これにより、下方から上方に向かって、まずは厚くなり次いで再び薄くなる接続エレメント12を備えた階段状の延在が生じる。等しい円錐角を有する円錐状の構成部分における荷重伝達は、大部分は、相対的に厚いエレメントによって、したがって、建造物の長手方向軸線14に関して、上側の構造部分8の下端部と下側の構造部分6の上端部との間の真ん中の領域において行われる。
【0035】
最下方の接続エレメント12は、その下端部で、支持体16によって画定されており(
図3の詳細
図B)、この支持体は、上側の構造部分8の表面と構造的な形状接続を成している。この支持体16の水平方向の延在は、有利には、最下方の接続エレメント12の厚さよりも小さく、これにより、この支持体自体と、その上に位置する接続エレメントとが滑落するのが阻止される。同時に、この水平方向の延在は、
図3に示したように、ここに示した断面図では、支持体16が、建造物の組付け位置において下側の構造部分6に接触しないような大きさである。代替的に、接続エレメント12が下側の構造部分6の側に配置される場合も、そこには相応の支持体を配置することができる。
【0036】
接続エレメント12は、全周にわたって、減摩性のスライドラッカとして形成されたコーティング18を備えており、接着層20によって上側の接続エレメント8の表面22に取り付けられている(
図3の詳細
図AおよびB)。コーティング18の厚さは、各接続エレメント12の厚さと比較して小さく、特に、コーティング18の厚さは、接続エレメント12の厚さの5%以下である。
【0037】
図4に開示された、建造物の両構造部分6,8の間の接続装置10の配置では、接続エレメント12の一部が、長手方向軸線14の方向で互いに密に重ねられて配置されており、これにより個々の領域のほぼ完全なカバーが生じている。しかしながら、これらの領域の間には、トランジションピース(構造部分8)の側に存在する溶接シーム25が、生じている隙間24内に位置することができるように、接続エレメント12によってカバーされていない面が延在している。これにより、溶接シーム25は、タワー状の建造物の完成した組付け状態で負荷軽減される。互いに間隔を置いた接続エレメント12の配置に対して代替的に、接続エレメントが溶接シーム25を覆うところで、接続エレメント12の材料が完全に破断されることがないように、接続エレメント12に凹部を設けることができる。したがって、溶接シーム25は、接続エレメント12内に埋設される、もしくは接続エレメント12の相応の凹部内に配置される。
【0038】
接続エレメント12は、
図5に示された別の構成によれば、互いに相補的に形成された取付け領域によって、特に互いに形状接続的に配置することができる。
図5の下図では、接続エレメントは、パズルピース式に接続されており、他方、
図5の上図では接続エレメント12はフックプレート式に接続されている。
【0039】
図6に示した本発明による建造物には、長手方向軸線14を中心とする周方向で接続エレメント12により形成された円環から成る接続エレメント12が設けられており、この場合、最下方のリングは、3.1cmの厚さを有し、真ん中の3つのリングは、3.4cmの厚さを有し、最上方のリングは再び3.1cmの厚さとなっており、これにより主な荷重伝達は、真ん中の3つの接続エレメントを介して行われる。
【国際調査報告】