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特表2024-527344抗体応答を抗原に適合させるための抗体の利用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】抗体応答を抗原に適合させるための抗体の利用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20240717BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240717BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240717BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20240717BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240717BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240717BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240717BHJP
   C07K 14/165 20060101ALI20240717BHJP
   C07K 14/11 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240717BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
A61K39/00 A ZNA
A61P37/02
A61K31/7088
A61K39/395 A
A61K39/395 H
A61K48/00
A61K31/7105
A61K31/711
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K39/00 H
A61K39/12
A61K39/215
A61K39/145
A61K9/16
C07K16/18
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C07K14/165
C07K14/11
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500049
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 US2022035968
(87)【国際公開番号】W WO2023283134
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/218,486
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】キラトスー,クリストス
(72)【発明者】
【氏名】バウム,アリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ペトロ,クリストファー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA31
4C076EE51
4C084AA13
4C084MA41
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB051
4C084ZB052
4C084ZB071
4C084ZB072
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085BA01
4C085BA51
4C085BA55
4C085BA71
4C085BB11
4C085DD88
4C086AA01
4C086AA02
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA41
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB05
4C086ZB07
4C087AA01
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA41
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB05
4C087ZB07
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書に記載されるのは、抗原の1つ以上の第1のエピトープ(例えば、ワクチン抗原の免疫優性エピトープ)を標的とする1つ以上の抗体を投与することによって、対象における抗体応答を、その抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的としないようにし、その抗原の1つ以上の第2のエピトープを標的とするようにする、方法及び組成物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における抗体応答の標的を、抗原の1つ以上の第1のエピトープから前記抗原の1つ以上の第2のエピトープに転換する方法であって、前記方法は、前記対象に、(i)前記抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子と、(ii)前記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを投与するステップを含み、前記抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子と、前記1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とは、前記抗原の1つ以上の第2のエピトープに対する抗体を生成するために有効な量で前記対象に投与される、方法。
【請求項2】
抗原の1つ以上の第1のエピトープを、対象の免疫系による認識から遮蔽する方法であって、前記方法は、前記対象に、(i)前記抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子と、(ii)前記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを投与するステップを含み、前記1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、前記抗原の1つ以上の第1のエピトープを前記対象の免疫系による認識から遮蔽するために有効な量で前記対象に投与される、方法。
【請求項3】
抗原の第2のエピトープを標的とする1つ以上の抗体を生成する方法であって、前記方法は、対象に、(i)前記抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子と、(ii)前記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを投与するステップを含み、前記抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子と、前記1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とは、前記抗原の1つ以上の第2のエピトープに対する抗体を生成するために有効な量で前記対象に投与される、方法。
【請求項4】
前記対象から、前記抗原を標的とする1つ以上の抗体を単離するステップ、又は前記抗原を標的とする抗体を産生する細胞を単離するステップを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記単離するステップは、前記抗体、又は前記抗体を産生する細胞を、前記抗原に結合させるステップを含み、前記抗原は検出可能な標識を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体を産生する細胞はB細胞である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記対象から単離した抗体又はその抗原結合断片をベースとして、モノクローナル抗体(mAb)を生成するステップを更に含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体(mAb)はヒト抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体(mAb)はヒト化抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
必要とする対象におけるワクチンの効能を向上させる方法であって、前記ワクチンは、抗原、又は抗原をコードする核酸分子を含み、前記方法は、前記対象に、(i)前記ワクチンと、(ii)前記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを投与するステップを含み、前記ワクチンと、前記1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とは、前記ワクチンの効能を向上させるために有効な量で前記対象に投与される、方法。
【請求項11】
前記ワクチンは前記対象にプライムブースト法で投与され、前記プライムブースト法は、前記ワクチンのプライミング用量を前記対象に投与した後、かつ前記ワクチンのブースト用量を前記対象に投与する前に、前記1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子を前記対象に投与するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、前記抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子を投与する前に、前記対象に投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、前記抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子の投与の3週間前までに、前記対象に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、前記抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子の投与の3日前までに、前記対象に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、前記抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子を投与した後に、前記対象に投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、前記抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子の投与の3週間後までに、前記対象に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、前記抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子の投与中に、前記対象に投与される、請求項1~11のいずれ1項に記載の方法。
【請求項18】
(i)前記1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子と、(ii)前記抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子とは、異なる製剤として投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(i)前記1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子と、(ii)前記抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子とは、同一の製剤で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
(i)前記1つ以上の抗体と(ii)前記抗原とをコードする核酸分子を投与するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記核酸分子はRNA分子である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記RNA分子はmRNA分子である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記核酸分子はDNA分子である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記核酸分子は化学修飾されている、請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記核酸分子は、前記抗原をコードするヌクレオチド配列及び/又は前記1つ以上の抗体をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、少なくとも1つの調節エレメントを含む、請求項20~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記調節エレメントはプロモーターである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記核酸分子はベクター内に含まれる、請求項20~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ベクターはウイルスベクターである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、又はワクシニアウイルスベクターである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記レトロウイルスベクターはレンチウイルスベクターである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ベクターは非ウイルスベクターである、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記非ウイルスベクターは、ミニサークルプラスミド、Sleeping Beautyトランスポゾン、piggyBacトランスポゾン、又は相同組換え修復(homology directed repair:HDR)ベースの遺伝子編集のためのテンプレートとして使用される一本鎖若しくは二本鎖DNA分子である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記1つ以上の第1のエピトープは、免疫優性エピトープである、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記免疫優性エピトープは、前記抗原が由来する病原体の異なる株又は種の間で、前記抗原の他のエピトープよりも保存性が低い、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗原はタンパク質抗原である、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記抗原は非タンパク質抗原である、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記抗原はクラスI病原体由来である、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記抗原はクラスII病原体由来である、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記病原体はウイルスである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ウイルスはコロナウイルスである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記コロナウイルスはSARS-CoV-2である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記抗原はSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質であり、前記1つ以上の第1のエピトープは、前記SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内に含まれる中和エピトープである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ウイルスはインフルエンザウイルスである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記抗原はインフルエンザヘマグルチニン(HA)であり、前記1つ以上の第1のエピトープは、前記HAのヘッドのシアル酸受容体結合部位(RBS)内に含まれる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記抗原は、前記対象の内因性分子である、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記抗原は、自己免疫疾患における免疫応答の標的とされる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記1つ以上の抗体はモノクローナル抗体(mAb)である、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記対象は哺乳類である、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象はヒトである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記対象は実験動物である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記対象はマウスである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
抗原と、前記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体とをコードする、核酸分子。
【請求項53】
前記核酸分子はRNA分子である、請求項52に記載の核酸分子。
【請求項54】
前記RNA分子はmRNA分子である、請求項53に記載の核酸分子。
【請求項55】
前記核酸分子はDNA分子である、請求項52に記載の核酸分子。
【請求項56】
前記核酸分子は化学修飾されている、請求項52~55のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項57】
前記核酸分子は、前記抗原をコードするヌクレオチド配列及び/又は前記1つ以上の抗体をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、少なくとも1つの調節エレメントを含む、請求項52~56のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項58】
前記調節エレメントはプロモーターである、請求項57に記載の核酸分子。
【請求項59】
請求項52~58のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項60】
前記ベクターはウイルスベクターである、請求項59に記載のベクター。
【請求項61】
前記ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、又はワクシニアウイルスベクターである、請求項60に記載のベクター。
【請求項62】
前記レトロウイルスベクターはレンチウイルスベクターである、請求項61に記載のベクター。
【請求項63】
前記ベクターは非ウイルスベクターである、請求項59に記載のベクター。
【請求項64】
前記非ウイルスベクターは、ミニサークルプラスミド、Sleeping Beautyトランスポゾン、piggyBacトランスポゾン、又は相同組換え修復(HDR)ベースの遺伝子編集のためのテンプレートとして使用される一本鎖若しくは二本鎖DNA分子である、請求項63に記載のベクター。
【請求項65】
請求項52~58のいずれか1項に記載の核酸分子、又は請求項59~64のいずれか1項に記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項66】
前記宿主細胞は哺乳類細胞である、請求項65に記載の単離された宿主細胞。
【請求項67】
請求項52~58のいずれか1項に記載の核酸分子、又は請求項59~64のいずれか1項に記載のベクターを含む、脂質ナノ粒子。
【請求項68】
請求項52~58のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項59~64のいずれか1項に記載のベクター、又は請求項67に記載の脂質ナノ粒子を含む、製剤。
【請求項69】
抗原、又は前記抗原をコードする核酸分子と、前記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを含む、製剤。
【請求項70】
抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする2つ以上のモノクローナル抗体(mAb)を含む、製剤。
【請求項71】
前記第1のエピトープは、免疫優性エピトープである、請求項70に記載の製剤。
【請求項72】
前記免疫優性エピトープは、前記抗原が由来する病原体の異なる株又は種の間で、前記抗原の他のエピトープよりも保存性が低い、請求項71に記載の製剤。
【請求項73】
前記抗原はタンパク質抗原である、請求項70~72のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項74】
前記抗原は非タンパク質抗原である、請求項70~72のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項75】
前記抗原はクラスI病原体由来である、請求項70~74のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項76】
前記抗原はクラスII病原体由来である、請求項70~74のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項77】
前記病原体はウイルスである、請求項76に記載の製剤。
【請求項78】
前記ウイルスはコロナウイルスである、請求項77に記載の製剤。
【請求項79】
前記コロナウイルスはSARS-CoV-2である、請求項78に記載の製剤。
【請求項80】
前記抗原はSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質であり、前記第1のエピトープは、前記SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内に含まれる中和エピトープである、請求項79に記載の製剤。
【請求項81】
前記ウイルスはインフルエンザウイルスである、請求項77に記載の製剤。
【請求項82】
前記抗原はインフルエンザヘマグルチニン(HA)であり、前記1つ以上の第1のエピトープは、前記HAのヘッドのシアル酸受容体結合部位(RBS)内に含まれる、請求項81に記載の製剤。
【請求項83】
前記抗原は、自己免疫疾患における免疫応答の標的とされる分子である、請求項70~74のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項84】
(i)抗原、又は抗原をコードする核酸分子と、(ii)前記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又は前記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年7月5日出願の米国仮特許出願第63/218,486号に対する優先権を主張するものであり、その開示は、その全体が参照により本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本明細書に記載されるのは、抗原の1つ以上の第1のエピトープ(例えば、ワクチン抗原の免疫優性エピトープ)を標的とする1つ以上の抗体を投与することによって、対象における抗体応答を、上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的としないようにし、上記抗原の1つ以上の第2のエピトープを標的とするようにする、方法及び組成物である。
【背景技術】
【0003】
ウイルス及び細菌といった病原性生物は、宿主の免疫応答に打ち勝つための精巧な戦略を進化させてきた。このような戦略は、多くの病原性生物に対するワクチン開発の成功のための努力を妨げることがある。例えば、病原性生物の表面露出抗原に対する免疫応答を誘発するワクチンは、特定の株に対しては優れた効果を有するものの、表面露出抗原の頻繁な変化により、変異株にはあまり効果がない場合がある。ワクチン設計における別の問題は、一部のエピトープが望ましくない免疫応答を誘発することである。従って、現行のワクチンの有効性を向上させるためには、免疫応答を望ましい抗原エピトープへと誘導して、望ましくないエピトープから離脱させることができるワクチン戦略が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上の「背景技術」のセクションで明記したように、抗体の応答を望ましい抗原エピトープへと誘導して、望ましくないエピトープから離脱させる方法の開発に対して、高い需要が存在する。本開示は、抗体応答を、抗原の1つ以上の望ましくないエピトープを標的としないようにするための、方法及び組成物を提供することによって、上述の需要及びその他の需要に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある態様では、本発明は、対象における抗体応答の標的を、抗原の1つ以上の第1のエピトープからその抗原の1つ以上の第2のエピトープに転換する方法を提供し、その方法は、対象に、(i)上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子と、(ii)上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを投与するステップを含み、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子と、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とは、上記抗原の1つ以上の第2のエピトープに対する抗体を生成するために有効な量で対象に投与される。
【0006】
別の態様では、本発明は、抗原の1つ以上の第1のエピトープを、対象の免疫系による認識から遮蔽する方法を提供し、その方法は、対象に、(i)上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子と、(ii)上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを投与するステップを含み、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを対象の免疫系による認識から遮蔽するために有効な量で対象に投与される。
【0007】
別の態様では、本発明は、抗原の第2のエピトープを標的とする1つ以上の抗体を生成する方法を提供し、その方法は、対象に、(i)上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子と、(ii)上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを投与するステップを含み、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子と、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とは、上記抗原の1つ以上の第2のエピトープに対する抗体を生成するために有効な量で対象に投与される。
【0008】
いくつかの実施形態では、上述の1つ以上の方法は更に、対象から、上記抗原を標的とする1つ以上の抗体を単離するステップ、又は上記抗原を標的とする抗体を産生する細胞を単離するステップを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、上記単離するステップは、上記抗体、又はその抗体を産生する細胞を、上記抗原に結合させるステップを含み、上記抗原は検出可能な標識を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、上記抗体を産生する細胞はB細胞である。
【0011】
いくつかの実施形態では、上述の方法は更に、対象から単離した抗体又はその抗原結合断片をベースとして、モノクローナル抗体(mAb)を生成するステップを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、上記モノクローナル抗体(mAb)はヒト抗体である。
【0013】
いくつかの実施形態では、上記モノクローナル抗体(mAb)はヒト化抗体である。
【0014】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象におけるワクチンの効能を向上させる方法を提供し、ワクチンは、抗原、又は抗原をコードする核酸分子を含み、上記方法は、対象に、(i)上記ワクチンと、(ii)上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを投与するステップを含み、上記ワクチンと、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とは、上記ワクチンの効能を向上させるために有効な量で対象に投与される。
【0015】
いくつかの実施形態では、ワクチンは対象にプライムブースト法で投与され、プライムブースト法は、ワクチンのプライミング用量を対象に投与した後、かつワクチンのブースト用量を対象に投与する前に、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子を対象に投与するステップを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子を投与する前に対象に投与される。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の3週間前までに対象に投与される。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の3日前までに対象に投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子を投与した後に、対象に投与される。
【0020】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の3週間後までに、対象に投与される。
【0021】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与中に、対象に投与される。
【0022】
いくつかの実施形態では、(i)上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子と、(ii)上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子とは、異なる製剤として投与される。
【0023】
いくつかの実施形態では、(i)上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子と、(ii)上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子とは、同一の製剤で投与される。
【0024】
いくつかの実施形態では、上記方法は、(i)上記1つ以上の抗体と(ii)上記抗原とをコードする核酸分子を投与するステップを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、上記核酸分子はRNA分子である。
【0026】
いくつかの実施形態では、上記RNA分子はmRNA分子である。
【0027】
いくつかの実施形態では、上記核酸分子はDNA分子である。
【0028】
いくつかの実施形態では、上記核酸分子は化学修飾されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、上記核酸分子は、上記抗原をコードするヌクレオチド配列及び/又は上記1つ以上の抗体をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、少なくとも1つの調節エレメントを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、上記調節エレメントはプロモーターである。
【0031】
いくつかの実施形態では、上記核酸分子はベクター内に含まれる。
【0032】
いくつかの実施形態では、上記ベクターはウイルスベクターである。
【0033】
いくつかの実施形態では、上記ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、又はワクシニアウイルスベクターである。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記レトロウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。
【0035】
いくつかの実施形態では、上記ベクターは非ウイルスベクターである。
【0036】
いくつかの実施形態では、上記非ウイルスベクターは、ミニサークルプラスミド、Sleeping Beautyトランスポゾン、piggyBacトランスポゾン、又は相同組換え修復(HDR)ベースの遺伝子編集のためのテンプレートとして使用される一本鎖若しくは二本鎖DNA分子である。
【0037】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の第1のエピトープは、免疫優性エピトープである。
【0038】
いくつかの実施形態では、上記免疫優性エピトープは、上記抗原が由来する病原体の異なる株又は種の間で、上記抗原の他のエピトープよりも保存性が低い。
【0039】
いくつかの実施形態では、上記抗原はタンパク質抗原である。
【0040】
いくつかの実施形態では、上記抗原は非タンパク質抗原である。
【0041】
いくつかの実施形態では、上記抗原はクラスI病原体由来である。
【0042】
いくつかの実施形態では、上記抗原はクラスII病原体由来である。
【0043】
いくつかの実施形態では、上記病原体はウイルスである。
【0044】
いくつかの実施形態では、上記ウイルスはコロナウイルスである。
【0045】
いくつかの実施形態では、上記コロナウイルスはSARS-CoV-2である。
【0046】
いくつかの実施形態では、上記抗原はSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質であり、上記1つ以上の第1のエピトープは、上記SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内に含まれる中和エピトープである。
【0047】
いくつかの実施形態では、上記ウイルスはインフルエンザウイルスである。
【0048】
いくつかの実施形態では、上記抗原はインフルエンザヘマグルチニン(hemagglutinin:HA)であり、上記1つ以上の第1のエピトープは、上記HAのヘッドのシアル酸受容体結合部位(RBS)内に含まれる。
【0049】
いくつかの実施形態では、上記抗原は、対象の内因性分子である。
【0050】
いくつかの実施形態では、上記抗原は、自己免疫疾患における免疫応答の標的とされる。
【0051】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体はモノクローナル抗体(mAb)である。
【0052】
いくつかの実施形態では、上記対象は哺乳類である。
【0053】
いくつかの実施形態では、上記対象はヒトである。
【0054】
いくつかの実施形態では、上記対象は実験動物である。
【0055】
いくつかの実施形態では、上記対象はマウスである。
【0056】
別の態様では、本発明は、抗原と、その抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体とをコードする、核酸分子を提供する。
【0057】
いくつかの実施形態では、上記核酸分子はRNA分子である。
【0058】
いくつかの実施形態では、上記RNA分子はmRNA分子である。
【0059】
いくつかの実施形態では、上記核酸分子はDNA分子である。
【0060】
いくつかの実施形態では、上記核酸分子は化学修飾されている。
【0061】
いくつかの実施形態では、上記核酸分子は、上記抗原をコードするヌクレオチド配列及び/又は上記1つ以上の抗体をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、少なくとも1つの調節エレメントを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、上記調節エレメントはプロモーターである。
【0063】
別の態様では、本発明は、抗原とその抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体とをコードする核酸分子を含む、ベクターを提供する。
【0064】
いくつかの実施形態では、上記ベクターはウイルスベクターである。
【0065】
いくつかの実施形態では、上記ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、又はワクシニアウイルスベクターである。
【0066】
いくつかの実施形態では、上記レトロウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。
【0067】
いくつかの実施形態では、上記ベクターは非ウイルスベクターである。
【0068】
いくつかの実施形態では、上記非ウイルスベクターは、ミニサークルプラスミド、Sleeping Beautyトランスポゾン、piggyBacトランスポゾン、又は相同組換え修復(HDR)ベースの遺伝子編集のためのテンプレートとして使用される一本鎖若しくは二本鎖DNA分子である。
【0069】
別の態様では、本発明は、本明細書で開示される核酸分子又は本明細書で開示されるベクターを含む、単離された宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、上記宿主細胞は哺乳類細胞である。
【0070】
別の態様では、本発明は、本明細書で開示される核酸分子又は本明細書で開示されるベクターを含む、脂質ナノ粒子を提供する。
【0071】
別の態様では、本発明は、本明細書で開示される核酸分子、本明細書で開示されるベクター、又は本明細書で開示される脂質ナノ粒子を含む、製剤を提供する。
【0072】
別の態様では、本発明は、抗原、又は抗原をコードする核酸分子と、上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを含む、製剤を提供する。
【0073】
別の態様では、本発明は、抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする2つ以上のモノクローナル抗体(mAb)を含む、製剤を提供する。
【0074】
別の態様では、本発明は、抗原の第1のエピトープと第2のエピトープとの組み合わせを標的とする2つ以上のモノクローナル抗体(mAb)を含む、製剤を提供する。
【0075】
いくつかの実施形態では、上記第1のエピトープは、免疫優性エピトープである。
【0076】
いくつかの実施形態では、上記免疫優性エピトープは、上記抗原が由来する病原体の異なる株又は種の間で、上記抗原の他のエピトープよりも保存性が低い。
【0077】
いくつかの実施形態では、上記抗原はタンパク質抗原である。
【0078】
いくつかの実施形態では、上記抗原は非タンパク質抗原である。
【0079】
いくつかの実施形態では、上記抗原はクラスI病原体由来である。
【0080】
いくつかの実施形態では、上記抗原はクラスII病原体由来である。
【0081】
いくつかの実施形態では、上記病原体はウイルスである。
【0082】
いくつかの実施形態では、上記ウイルスはコロナウイルスである。
【0083】
いくつかの実施形態では、上記コロナウイルスはSARS-CoV-2である。
【0084】
いくつかの実施形態では、上記抗原はSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質であり、上記第1のエピトープは、上記SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内に含まれる中和エピトープである。
【0085】
いくつかの実施形態では、上記ウイルスはインフルエンザウイルスである。
【0086】
いくつかの実施形態では、上記抗原はインフルエンザヘマグルチニン(HA)であり、上記1つ以上の第1のエピトープは、上記HAのヘッドのシアル酸受容体結合部位(RBS)内に含まれる。
【0087】
いくつかの実施形態では、上記抗原は、自己免疫疾患における免疫応答の標的とされる分子である。
【0088】
別の態様では、本発明は、(i)抗原、又は抗原をコードする核酸分子と、(ii)上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを含む、キットを提供する。
【0089】
ある態様では、本発明は、対象における抗体応答の標的を、抗原の1つ以上の望ましくないエピトープからその抗原の他のエピトープに転換する方法を提供し、上記方法は、上記1つ以上の望ましくないエピトープを標的とする1つ以上の抗体を有効量だけ対象に投与するステップを含み、上記1つ以上の抗体は、上記抗原又は上記抗原をコードする核酸の投与前又は投与中に対象に投与される。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体は、上記抗原又は上記抗原をコードする核酸を対象に投与する前(例えば約3日前)に投与される。いくつかの実施形態では、上記方法は、望ましくないエピトープではない他の抗原エピトープを認識する抗体を対象から単離するステップを更に含み、また任意に、対象から単離された上記抗体をベースとしてモノクローナル抗体(mAb)を生成するステップを更に含む。抗体の単離及び特性決定の方法の非限定的な例については、例えば、参照によりその全体が本出願に援用される米国特許第8,062,640号明細書;米国特許第7,582,298号明細書;及び米国特許第10,752,698号明細書を参照されたい。
【0090】
別の態様では、本発明は、対象におけるワクチンの効能を向上させる方法を提供し、上記ワクチンは、抗原又は抗原をコードする核酸を含み、上記方法は、上記抗原の1つ以上の望ましくないエピトープを標的とする1つ以上の抗体を有効量だけ対象に投与するステップを含み、上記1つ以上の抗体は、上記ワクチンの投与前又は投与中に対象に投与される。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体は、上記ワクチンを対象に投与する前(例えば約3日前)に投与される。いくつかの実施形態では、上記ワクチンはプライムブースト法で投与され、上記1つ以上の抗体は、対象に対する上記ワクチンのプライミング投与後かつブースト投与前(例えば約3日前)に投与される。
【0091】
本発明の上述の方法のうちのいずれかの、いくつかの実施形態では、上記1つ以上の望ましくないエピトープは、免疫優性エピトープである。いくつかの実施形態では、上記免疫優性エピトープは、上記抗原が由来する病原体の異なる株又は種の間で、上記抗原の他のエピトープよりも保存性が低い。
【0092】
本発明の上述の方法のうちのいずれかの、いくつかの実施形態では、上記抗原はタンパク質抗原である。
【0093】
本発明の上述の方法のうちのいずれかの、いくつかの実施形態では、上記抗原はクラスI病原体由来である。
【0094】
本発明の上述の方法のうちのいずれかの、いくつかの実施形態では、上記抗原はクラスII病原体由来である。いくつかの実施形態では、上記病原体はウイルスである。いくつかの実施形態では、上記ウイルスはコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、上記コロナウイルスはSARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、上記抗原はSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質であり、上記1つ以上の望ましくないエピトープは、上記SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内に含まれる中和エピトープである。
【0095】
更なる態様では、本発明は、抗原の1つ以上の望ましくないエピトープを、対象の免疫系による認識から遮蔽する方法を提供し、上記方法は、対象に、上記1つ以上の望ましくないエピトープを標的とする1つ以上の抗体を有効量で投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、上記抗原は、対象の内因性分子(例えばタンパク質)である。いくつかの実施形態では、上記抗原は、自己免疫疾患における免疫応答の標的とされる。
【0096】
本発明の上述の方法のうちのいずれかの、いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体はモノクローナル抗体(mAb)である。
【0097】
別の態様では、本発明は、抗原の望ましくないエピトープを標的とする2つ以上のモノクローナル抗体(mAb)を含む、組成物を提供する。別の態様では、本発明は、抗原の望ましいエピトープと望ましくないエピトープとの組み合わせを標的とする2つ以上のモノクローナル抗体(mAb)を含む、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、上記望ましくないエピトープは、免疫優性エピトープである。いくつかの実施形態では、上記免疫優性エピトープは、上記抗原が由来する病原体の異なる株又は種の間で、上記抗原の他のエピトープよりも保存性が低い。いくつかの実施形態では、上記抗原はタンパク質抗原である。いくつかの実施形態では、上記抗原はクラスI病原体由来である。いくつかの実施形態では、上記抗原はクラスII病原体由来である。いくつかの実施形態では、上記病原体はウイルスである。いくつかの実施形態では、上記ウイルスはコロナウイルスである。いくつかの実施形態では、上記コロナウイルスはSARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、上記抗原はSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質であり、上記望ましくないエピトープは、上記SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内に含まれる中和エピトープである。いくつかの実施形態では、上記抗原は、自己免疫疾患における免疫応答の標的とされる分子(例えばタンパク質)である。
【0098】
本明細書に記載のこれらの態様及び他の態様は、以下の説明、特許請求の範囲、及び図面において、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1】本明細書で説明されるような、抗原免疫化中の抗体ブロック及びそれによって得られる抗体応答の概略図である。
図2】SARS-CoV-2スパイク又はRBDの免疫化中に抗αSARS-CoV-2(α重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)受容体結合ドメイン(RBD)モノクローナル抗体(mAb)処置を行う又は行わない場合の抗体応答を評価するための研究設計の概要である。
図3A】SARS-CoV-2スパイク三量体、RBD、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のプライミング免疫化前(-3日目、白丸の記号)、又はブースター免疫化前(18日目、黒丸の記号)に、抗αSARS-CoV-2 RBD mAb(E10933及びE10987)で前処置(pretreatment)されたマウスからの、全てのSARS-CoV-2スパイク領域にわたる42日目(ブーストから3週間後)の免疫グロブリンG(IgG)結合レベルを示す。マウスの1つのサブセットはmAb処置を受けなかった(白い正方形の記号)。パネルは、特定のスパイク領域(RBD)に対する抗原特異性IgG応答を示す。数字は、各群の平均蛍光強度(MFI)IgGレベルを示す。
図3B】SARS-CoV-2スパイク三量体、RBD、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のプライミング免疫化前(-3日目、白丸の記号)、又はブースター免疫化前(18日目、黒丸の記号)に、抗αSARS-CoV-2 RBD mAb(E10933及びE10987)で前処置(pretreatment)されたマウスからの、全てのSARS-CoV-2スパイク領域にわたる42日目(ブーストから3週間後)の免疫グロブリンG(IgG)結合レベルを示す。マウスの1つのサブセットはmAb処置を受けなかった(白い正方形の記号)。パネルは、特定のスパイク領域(スパイク三量体)に対する抗原特異性IgG応答を示す。数字は、各群の平均蛍光強度(MFI)IgGレベルを示す。
図3C】SARS-CoV-2スパイク三量体、RBD、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のプライミング免疫化前(-3日目、白丸の記号)、又はブースター免疫化前(18日目、黒丸の記号)に、抗αSARS-CoV-2 RBD mAb(E10933及びE10987)で前処置(pretreatment)されたマウスからの、全てのSARS-CoV-2スパイク領域にわたる42日目(ブーストから3週間後)の免疫グロブリンG(IgG)結合レベルを示す。マウスの1つのサブセットはmAb処置を受けなかった(白い正方形の記号)。パネルは、特定のスパイク領域(S1)に対する抗原特異性IgG応答を示す。数字は、各群の平均蛍光強度(MFI)IgGレベルを示す。
図3D】SARS-CoV-2スパイク三量体、RBD、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のプライミング免疫化前(-3日目、白丸の記号)、又はブースター免疫化前(18日目、黒丸の記号)に、抗αSARS-CoV-2 RBD mAb(E10933及びE10987)で前処置(pretreatment)されたマウスからの、全てのSARS-CoV-2スパイク領域にわたる42日目(ブーストから3週間後)の免疫グロブリンG(IgG)結合レベルを示す。マウスの1つのサブセットはmAb処置を受けなかった(白い正方形の記号)。パネルは、特定のスパイク領域(Sタンパク質N末端ドメイン(N-Terminal Domain:NTD))に対する抗原特異性IgG応答を示す。数字は、各群の平均蛍光強度(MFI)IgGレベルを示す。
図3E】SARS-CoV-2スパイク三量体、RBD、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のプライミング免疫化前(-3日目、白丸の記号)、又はブースター免疫化前(18日目、黒丸の記号)に、抗αSARS-CoV-2 RBD mAb(E10933及びE10987)で前処置(pretreatment)されたマウスからの、全てのSARS-CoV-2スパイク領域にわたる42日目(ブーストから3週間後)の免疫グロブリンG(IgG)結合レベルを示す。マウスの1つのサブセットはmAb処置を受けなかった(白い正方形の記号)。パネルは、特定のスパイク領域(S2)に対する抗原特異性IgG応答を示す。数字は、各群の平均蛍光強度(MFI)IgGレベルを示す。
図4】SARS-CoV-2スパイク三量体、RBD、又はPBSのプライミング、ブースト免疫化マウスからの、42日目のSARS-CoV-2スパイク偽ウイルス中和力価(pVNT50)応答を示す。マウスは、SARS-CoV-2スパイク三量体、RBD、又は(ホスフェートPBSのプライミング免疫化前(-3日目、白丸の記号)、又はブースター免疫化前(18日目、黒丸の記号)に、抗αSARS-CoV-2 RBD mAb(E10933及びE10987)で前処置された。マウスの1つのサブセットはmAb処置を受けなかった(白い正方形の記号)。数字は各群の平均pVNT50力価を示す。
図5A】SARS-CoV-2スパイク三量体のプライミング、ブースト免疫化マウスからの、42日目における抗αSARS-CoV-2 RBD抗体レベルとpVNT50力価との相関の分析を示す。マウスは、SARS-CoV-2スパイク三量体、RBD、又は(ホスフェートPBSのプライミング免疫化前(-3日目、白丸の記号)、又はブースター免疫化前(18日目、黒丸の記号)に、抗αSARS-CoV-2 RBD mAb(E10933及びE10987)で前処置された。マウスの1つのサブセットはmAb処置を受けなかった(白い正方形の記号)。
図5B】SARS-CoV-2スパイクRBDのプライミング、ブースト免疫化マウスからの、42日目における抗αSARS-CoV-2 RBD抗体レベルとpVNT50力価との相関の分析を示す。マウスは、SARS-CoV-2スパイク三量体、RBD、又は(ホスフェートPBSのプライミング免疫化前(-3日目、白丸の記号)、又はブースター免疫化前(18日目、黒丸の記号)に、抗αSARS-CoV-2 RBD mAb(E10933及びE10987)で前処置された。マウスの1つのサブセットはmAb処置を受けなかった(白い正方形の記号)。
図6A】野生型SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対する抗SARS-CoV-2中和mAbの特異的結合応答を示す。数字は、各mAbの平均MFI IgGレベルを示す。
図6B】SARS-CoV-2の懸念される変異株(Variants of Concern:VOC)オミクロンBA.1のスパイクタンパク質に対する抗SARS-CoV-2中和mAbの特異的結合応答を示す。数字は、各mAbの平均MFI IgGレベルを示す。
図6C】SARS-CoV-2の懸念される変異株(VOC)オミクロンBA.2のスパイクタンパク質に対する抗SARS-CoV-2中和mAbの特異的結合応答を示す。数字は、各mAbの平均MFI IgGレベルを示す。
図6D】SARS-CoV-2の懸念される変異株(VOC)オミクロンBA.3のスパイクタンパク質に対する抗SARS-CoV-2中和mAbの特異的結合応答を示す。数字は、各mAbの平均MFI IgGレベルを示す。
図6E】SARS-CoV-2の懸念される変異株(VOC)アルファのスパイクタンパク質に対する抗SARS-CoV-2中和mAbの特異的結合応答を示す。数字は、各mAbの平均MFI IgGレベルを示す。
図6F】SARS-CoV-2の懸念される変異株(VOC)ベータに対する抗SARS-CoV-2中和mAbの特異的結合応答を示す。数字は、各mAbの平均MFI IgGレベルを示す。
図6G】SARS-CoV-2の懸念される変異株(VOC)デルタのスパイクタンパク質に対する抗SARS-CoV-2中和mAbの特異的結合応答を示す。数字は、各mAbの平均MFI IgGレベルを示す。
図6H】SARS-CoV-2の懸念される変異株(VOC)ガンマのスパイクタンパク質に対する抗SARS-CoV-2中和mAbの特異的結合応答を示す。数字は、各mAbの平均MFI IgGレベルを示す。
図7】SARS-CoV-2スパイクの免疫化に対する偏向(skewing)抗体応答に関するE10933及びE10987の用量滴定を評価するための研究の設計を示す。
図8A】SARS-CoV-2スパイク三量体でのプライミング免疫化前(-3日目)に10mg/kg~0.0001mg/kgの抗αSARS-CoV-2 RBD mAb(E10933及びE10987、正方形の記号)、10mg/kgのアイソタイプ対照mAb(E1932、黒丸の記号)、又はPBS(白丸の記号)で前処置されたマウスからの、42日目(ブーストから3週間後)のSARS-CoV-2スパイク偽ウイルス中和力価(pVNT50)を示す。全てのマウスはD21に、同一のワクチン接種製剤によるブースターを受けた。数字は、各群の平均pVNT50を示す。
図8B】SARS-CoV-2スパイク三量体でのプライミング免疫化前(-3日目)に10mg/kg~0.0001mg/kgの抗αSARS-CoV-2 RBD mAb(E10933及びE10987、正方形の記号)、10mg/kgのアイソタイプ対照mAb(E1932、黒丸の記号)、又はPBS(白丸の記号)で前処置されたマウスからの、42日目(ブーストから3週間後)のRBDに対するIgG結合レベルを示す。全てのマウスはD21に、同一のワクチン接種製剤によるブースターを受けた。数字は、各群の平均MFI IgGレベルを示す。
図9】本明細書に記載の免疫化スキームを示す。
図10A】ヒト抗SARS-CoV-2抗体の前投与あり又はなしの、VelocImmune(VI)マウスのSARS-CoV-2スパイクRBDに対する血清力価を示す。hIgGを除去した場合の、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(RBD).mmHに対する力価を示す。マウスは免疫化前に抗SARS-CoV-2スパイクmAbで前処置され、一方で対照コホートはmAbを投与されなかった。(1)対照、mAb処置なし(生理食塩水);(2)E15160+E14315で前処置;(3)E15160で前処置;(4)E14315で前処置;又は(5)E10933+E10987で前処置。抗体力価は、RBDタンパク質に対して投与されたヒトmAb抗体を除去した状態でアッセイされた。
図10B】ヒト抗SARS-CoV-2抗体の前投与あり又はなしの、VelocImmune(VI)マウスのSARS-CoV-2スパイクRBDに対する血清力価を示す。hIgGを除去していない場合の、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(RBD).mmHに対する力価を示す。マウスは免疫化前に抗SARS-CoV-2スパイクmAbで前処置され、一方で対照コホートはmAbを投与されなかった。(1)対照、mAb処置なし(生理食塩水);(2)E15160+E14315で前処置;(3)E15160で前処置;(4)E14315で前処置;又は(5)E10933+E10987で前処置。抗体力価は、RBDタンパク質に対して投与されたヒトmAb抗体を除去していない状態でアッセイされた。
図11】SARS-CoV-2スパイクmAbで前処置されたマウスからの、マウス抗ヒト抗体(MAHA)の力価を示す。(1)対照、mAb処置なし(生理食塩水);(2)E15160+E14315で前処置;(3)E15160で前処置;(4)E14315で前処置;又は(5)E10933+E10987で前処置。抗体力価は、各抗SARS-CoV-2ヒトmAbでコーティングされたプレート上でアッセイされた。
図12】SARS-CoV-2スパイクmAbで前処置されたマウスからの、抗血清中の抗SARS-CoV-2スパイク特異的hIgGレベル(μg/ml)を示す。(1)対照、mAb処置なし(生理食塩水);(2)E15160+E14315で前処置;(3)E15160で前処置;(4)E14315で前処置;又は(5)E10933+E10987で前処置。抗体力価は、各抗SARS-CoV-2ヒトmAbでコーティングされたプレート上でアッセイされた。*BDL(below detection limit:検出限界未満)データは散布図中に示されていない。
図13A】RBDと事前に複合体化されたE10933による、異なる複数の前処置免疫化アームに由来する個々のmAbの表面捕集SARS-CoV-2 RBDタンパク質に対する結合の阻害のパーセンテージを示す。各グラフの上の値は、RBDと事前に複合体化されたE10933 mAb-1によって、>50%でブロックされた、各前処置アームに由来するmAb全体のパーセンテージである。
図13B】RBDと事前に複合体化されたE10987による、異なる複数の前処置免疫化アームに由来する個々のmAbの表面捕集SARS-CoV-2 RBDタンパク質に対する結合の阻害のパーセンテージを示す。各グラフの上の値は、RBDと事前に複合体化されたE10987 mAb-1によって、>50%でブロックされた、各前処置アームに由来するmAb全体のパーセンテージである。
図13C】RBDと事前に複合体化されたE14315による、異なる複数の前処置免疫化アームに由来する個々のmAbの表面捕集SARS-CoV-2 RBDタンパク質に対する結合の阻害のパーセンテージを示す。各グラフの上の値は、RBDと事前に複合体化されたE10987 mAb-1によって、>50%でブロックされた、各前処置アームに由来するmAb全体のパーセンテージである。
図13D】RBDと事前に複合体化されたE15160による、異なる複数の前処置免疫化アームに由来する個々のmAbの表面捕集SARS-CoV-2 RBDタンパク質に対する結合の阻害のパーセンテージを示す。各グラフの上の値は、RBDと事前に複合体化されたE15160 mAb-1によって、>50%でブロックされた、各前処置アームに由来するmAb全体のパーセンテージである。
図14】インフルエンザヘマグルチニン(HA)抗体応答を調節するための研究の設計の一例を示し、ここではマウスは、HAヘッドのシアル酸受容体結合部位(RBS)に対する特異性を有するmAb1、又はRBSの外側でHAヘッドに結合するmAb2を前投与される。続いてマウスは、A/Perth/16/2009(H3N2)からのH3血清型のHA三量体タンパク質で免疫化される。研究の最後には、免疫化されたマウスからのヘマグルチニン阻害血清力価(hemagglutinin inhibition serum titer:HAI)が評価される(即ち、インフルエンザ由来のHA上のRBSに結合して赤血球細胞の凝固を阻害する血清抗体)。mAb1又はmAb1とmAb2との組み合わせを投与されたマウスは、免疫化中にmAb1がRBS部位をブロックすることにより、該部位に特異的な抗体を阻害するため、HAI血清力価を誘発しないと予想される。更に、これらのマウスからの血清を、異なる複数のインフルエンザHA血清型にわたる抗HA IgG結合力価に関して評価して、交差反応性を決定する。mAb1とmAb2との組み合わせを投与されたマウスは、HAヘッドに対するB細胞免疫をブロックし、免疫の標的を、抗体を幅広く中和するために複数のHA血清型及び部位にわたるより高い保存性を有するHAの下方のステム部分へと、転換させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0100】
表面露出抗原に対する免疫応答は典型的には、感染症に対して最も有効である。同時に、この免疫応答によって、このような表面露出抗原は、進化して免疫系を回避するための絶え間ない進化への圧力にさらされている。従って、ある特定の株の病原体に対する免疫応答を誘発するワクチンは、その株に対しては優れた効果を有するものの、変異株にはあまり効果がない場合がある。毒性株の進化を対象とするために、1つのワクチンが、複数の抗原を標的とするか、病原体の進化に従って新しい抗原を標的とするか、又は保存された抗原を標的とする必要があり得る。
【0101】
ワクチン設計における別の問題は、一部のエピトープが望ましくない免疫応答を誘発することである。例えば、非中和抗体の誘導によってマクロファージのFc仲介型感染が強まる恐れがあり、これはデングショック症候群の背後にあるメカニズムである。別の問題は、宿主抗原と交差反応する免疫応答の誘導である。この現象はギラン・バレー症候群で確認でき、これはカンピロバクター感染に関連するものであるが、インフルエンザ感染にも関連する。ギラン・バレー症候群は、1976年の豚インフルエンザワクチン接種プログラムの副作用として報告された。従って、ワクチン用のエピトープの選択は、慣例的な作業からは程遠いものである。
【0102】
ワクチンが誘導するポリクローナル抗体応答は、多くの場合、インフルエンザヘマグルチニン(HA)抗原の免疫優性「ヘッド」エピトープといった、いくつかの免疫優性エピトープ又は次善の抗体特性に関連するエピトープを標的とすることができる。
【0103】
本開示は、抗原の1つ以上の第1のエピトープ(例えば、上記抗原が由来する病原体の異なる株又は種の間で、保存性が比較的低い、ワクチン抗原の免疫優性エピトープ)を標的とする1つ以上の抗体(例えばモノクローナル抗体(mAb))を投与することによって、対象における抗体応答を、上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的としないようにし、上記抗原の1つ以上の第2のエピトープを標的とするようにする、方法及び組成物を提供する。何らかの特定の理論に束縛されることを望むものではないが、上記抗体は、B細胞受容体(BCR)に対する望ましくないエピトープの曝露、及びそれに続く、これらのエピトープを標的とする抗体の生成又は増幅をブロックすると思われる。従って、このような抗体仲介型のエピトープブロックは、免疫応答を、別の露出した(抗体によってブロックされていない)エピトープへと誘導でき、これによって、結果として得られる抗体応答を望ましい抗原エピトープに適合させることができる。
【0104】
上述の開示の非限定的な実施形態を図1に示す。図1の上側のパネルは、典型的なB細胞応答が、抗原に固有の免疫優性エピトープをベースとしたワクチン接種中に上記抗原に対して生成されていることを示す。これらの免疫優性エピトープに対するB細胞受容体(BCR)を有するナイーブB細胞は、上記エピトープに迅速に結合でき、その後、T細胞によって活性化される。BCRの活性化によって、エフェクターB細胞及びメモリーB細胞、及び上記エピトープに対する抗体応答が確立され、これによって宿主の免疫応答を支配できる。本開示の文脈では、下側のパネルは、特定のエピトープに結合する抗原特異性mAbが含まれることによって、これらのエピトープがBCR認識からブロックされ、これにより、ブロックされたエピトープの外側の、BCRを有する他のナイーブB細胞の、結合及びそれに続く活性化が可能になることを実証している。これにより、宿主は、ブロックされたエピトープの外側で、B細胞及び抗体免疫を確立できるようになる。
【0105】
定義
本明細書中で使用される技術用語及び科学用語は、それ以外の定義がなされていない限り、本開示が属する分野の当業者が共通して理解する意味と同じ意味を有する。
【0106】
単数形「ある(a、an)」及び「上記(the)」は、文脈によってそうでないことが規定されている場合を除いて、複数の指示対象を含む。従って例えば、「ある方法(a method)」に関する言及は、本明細書に記載されているタイプの、及び/又は本開示を読めば当業者には明らかになる、1つ以上の方法及び/又はステップを含む。
【0107】
用語「約(about)」又は「およそ(approximately)」は、ある値の、統計的に有意な範囲内にあることを含む。このような範囲は、所与の値又は範囲の1桁以内、好ましくは50%以内、より好ましくは20%以内、更に好ましくは10%以内、また更に好ましくは5%以内とすることができる。用語「約」又は「およそ」が包含する許容可能なばらつきは、研究中の特定の系に依存し、これは当業者には容易に理解され得る。
【0108】
用語「…を備える、含む(comprise(s))」、「…を含む(include(s))」、「…を有する(having、has)」、及び「…を含有する(contain(s))」は、追加の行為又は構造の可能性を排除することのない、非制限的な意味の移行句、用語、又は単語であることが意図されている。
【0109】
本明細書中で使用される場合、用語「抗原」は、免疫応答を誘発する、例えば対象の体内に存在する場合に(例えばヒト又は哺乳類対象の体内に存在する場合に)免疫応答を誘発する、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖類、糖タンパク質、糖脂質、ヌクレオチド、これらの一部分又は、これらの組み合わせといった物質を指す。
【0110】
本明細書中で使用される場合、「抗体」は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を包含し、クラスIgA(例えばIgA1若しくはIgA2)、IgD、IgE、IgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)、若しくはIgMの免疫グロブリン分子、又はFab、F(ab’)2、Fd、一本鎖抗体、ダイアボディ、二重特異性抗体、二重官能性抗体、ヒト化抗体、及びこれらの様々な誘導体を含むがこれらに限定されないその断片若しくは誘導体を指す。
【0111】
本明細書中で使用される場合、抗体又は抗原結合タンパク質の「抗原結合部分」又は「抗原結合断片」等の用語は、天然の、酵素によって得られる、合成の、又は遺伝子操作された、いずれのポリペプチド又は糖タンパク質であって、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、ポリペプチド又は糖タンパク質を含む。抗原結合断片の非限定的な例としては:(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)一本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;及び(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えばCDR3ペプチド等の、単離された相補性決定領域(CDR)、又は拘束性FR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。ドメイン特異性抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば1価ナノボディ、2価ナノボディ等)、小モジュラー免疫薬(small modular immunopharmaceutical:SMIP)、及びサメ可変IgNARドメインといった、他の改変分子も、本明細書中で使用される「抗原結合断片」という表現に内包される。
【0112】
抗体の抗原結合断片は、本開示のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの可変ドメインを含むことになる。可変ドメインはいかなるサイズ又はアミノ酸組成を有していてもよく、1つ以上のフレームワーク配列に隣接した、又は1つ以上のフレームワーク配列と共にフレーム単位となった、一般に少なくとも1つのCDRを含むことになる。VLドメインと会合したVHドメインを有する抗原結合断片では、上記VHドメイン及び上記VLドメインは、互いに対していかなる好適な配置にあってもよい。例えば、可変領域は二量体型であってよく、VH-VH、VH-VL、又はVL-VL二量体を含有してよい。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体型VH又はVLドメインを含有してよい。特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインと共有結合で連結された少なくとも1つの可変ドメインを含有してよい。本開示の抗体の抗原結合断片内で見つかる可能性がある可変及び定常ドメインの、非限定的かつ例示的な構成としては:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;及び(xiv)VL-CLが挙げられる。上に挙げた例示的構成のいずれかを含む、可変及び定常ドメインの任意の構成において、可変及び定常ドメインは互いに直接連結される場合も、又はヒンジ若しくはリンカー領域の全体若しくは一部によって連結される場合もある。ヒンジ領域は少なくとも2個(例えば5個、10個、15個、20個、40個、60個、又はそれより多数)のアミノ酸からなっていてよく、これにより、単一のポリペプチド分子内の隣接する可変及び/又は定常ドメイン間に、可撓性又は半可撓性の連結がもたらされる。更に、本開示の抗体の抗原結合断片は、互いに及び/又は1つ以上の単量体型VH若しくはVLドメインと(例えば1つ以上のジスルフィド結合によって)非共有結合した、上に挙げた可変ドメイン及び定常ドメイン構成のうちのいずれかのホモ二量体又はヘテロ二量体(又はその他の多量体)を含む場合がある。
【0113】
本開示の特定の実施形態では、抗体はヒト抗体である。用語「ヒト抗体(human antibody)」は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図している。ヒト抗体は、例えばCDR中の、特にCDR3中の、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えばインビトロでのランダムな若しくは部位特異的な変異の導入によって、又はインビボでの体細胞の変異によって導入される変異体)を含むことができる。しかしながら、本明細書中で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、マウス等の別の哺乳類種の生殖細胞系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列にグラフトした抗体を含むことを意図していない。
【0114】
本明細書で議論される抗体は、いくつかの実施形態では組換えヒト抗体であってよい。用語「組換えヒト抗体」は、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現させた抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子のために遺伝子導入された動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えばTaylor et al. (1992) Nucl. Acids Res. 20:6287-6295を参照)といった、組換え手段によって調製、発現、生成、若しくは単離されたあらゆるヒト抗体、又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む他のいずれの手段によって調製、発現、生成、若しくは単離された抗体を含むことが意図されている。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する。しかしながら特定の実施形態では、このような組換えヒト抗体は、インビトロでの変異誘発(又はヒトIg配列のために遺伝子導入された動物を使用する場合にはインビボでの体細胞の変異)に供され、従って上記組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VH及びVL配列に由来するものであり尚且つこれらに関連するものでありながら、インビボのヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然には存在しないものとなり得る。
【0115】
本開示の文脈において、用語「中和抗体」又は「nAb」は、病原体(例えばウイルス)に結合して、上記病原体の、細胞に感染する能力に干渉する、抗体又は抗原結合断片を指す。中和抗体の非限定的な例としては、ウイルス粒子に結合して、良好な形質導入、例えば結合、侵入、核への輸送、及びウイルスゲノムの転写から選択される1つ以上のステップを阻害する、抗体が挙げられる。一部の中和抗体は、侵入後のステップにおいてウイルスをブロックできる。本開示の具体的な実施形態の文脈では、「中和」又は抗スパイク性の糖タンパク質又は抗原結合タンパク質、例えば抗体又は抗原結合断片とは、スパイク糖タンパク質の活性を阻害する、例えばスパイク糖タンパク質の、ACE2等の受容体に結合する能力、TMPRSS2等のプロテアーゼによって切断される能力、又は宿主細胞へのウイルスの侵入若しくは宿主細胞内でのウイルスの繁殖を仲介する能力を阻害する、分子を指す場合がある。
【0116】
本明細書で開示される「抗体産生細胞」及び「抗体を発現する細胞」は、発現された抗体が細胞膜に結合又は固定されている細胞、即ち細胞表面抗体、及び抗体を分泌する細胞を包含し得る。
【0117】
用語「免疫応答」は、免疫系の細胞(例えばB細胞、T細胞、マクロファージ、又は多形核球)の、抗原(例えばウイルス抗原)等の刺激に対する応答を指す。能動免疫応答は、免疫担当細胞の分化及び増殖を伴うことができ、これは抗体の合成、又は細胞仲介型反応性の発現、又はこれら両方につながる。能動免疫応答は、(例えば感染又はワクチン接種による)抗原への曝露後に宿主によって開始され得る。能動免疫応答は受動免疫と対比でき、受動免疫は、例えば抗体、伝達因子、胸腺移植片、及び/又はサイトカイン等の物質の、能動免疫された宿主から非免疫宿主への伝達によって獲得できる。
【0118】
本明細書中でウイルス感染及びワクチン接種に関連して使用される場合、用語「防御免疫応答」又は「防御免疫」は、感染を予防若しくは軽減する、又は感染に関連する疾患の発症を予防若しくは軽減するという点で、対象に何らかの利益をもたらす免疫応答を指す。
【0119】
用語「免疫原性組成物」、「ワクチン組成物」、又は「ワクチン」は、交換可能なものとして使用され、対象において免疫応答(例えば体液性及び/又は細胞性応答)を誘導する少なくとも1つの免疫原性及び/又は抗原成分を含む組成物を指す。特定の実施形態では、上記免疫応答は防御免疫応答である。ワクチンは、感染症等の疾患の予防又は処置のために投与できる。ワクチン組成物としては、例えば生きた又は死滅した感染性病原体、組換え感染性病原体(例えば、免疫原性及び/又は抗原性成分を発現する、組換えウイルス粒子、ウイルス様粒子、ナノ粒子、リポソーム、又は細胞)、抗原性タンパク質又はペプチド、核酸等が挙げられる。免疫応答を増強するために、ワクチンをアジュバントと共に投与することもできる。
【0120】
用語「エピトープ」は、抗原結合タンパク質の特定の抗原結合部位、例えば抗体分子の可変領域(パラトープとして知られる)と相互作用する、抗原決定基を指す。
【0121】
用語「免疫優性エピトープ」は、抗原内のエピトープであって、宿主において免疫応答を選択的に引き起こすことによって、該抗原の他のエピトープの効果又は機能を部分的に又は完全に排除に排除する、エピトープを指す。
【0122】
用語「クラスI病原体(Class I pathogen)」は、以下の特性のうちの1つ以上を有する病原体を指す:(1)狭い年齢範囲に感染する;(2)宿主が自然回復を示す;(3)宿主が長期にわたる防御免疫を生成する;(4)病原体が遺伝的に安定しており、抗原の多様性が限定されている;(5)免疫応答が複数のエピトープを対象とする。
【0123】
用語「クラスII病原体(Class II pathogen)」は、以下の特性のうちの1つ以上を有する病原体を指す:(1)病原体が広い年齢範囲に感染する;(2)病原体が潜伏感染として存続することが多い;(3)長期にわたる防御免疫がない、又は低い;(4)野生型抗原によるプライミングでは、防御又は株特異的防御が得られない;(5)病原体は高い変異率を示し、エピトープ領域の高度な多様性を許容する;(6)免疫応答は比較的少数の遺伝的に可変な株特異性エピトープに限定され、早期の交差反応性リコールを示唆する。
【0124】
用語「誘導体」及び「バリアント」は、本明細書では交換可能なものとして使用され、参照実体との相当な構造的同一性を有するものの、参照実体と比較した場合の1つ以上の化学的部分の存在又はレベルにおいて、参照実体とは構造的に異なる、実体を指す。多くの実施形態では、誘導体はその参照実体とは機能的にも異なる。一般に、ある特定の実体が参照実体の「誘導体」であると適切にみなされるかどうかは、この特定の実体の、参照実体との構造的同一性の程度に基づく。当業者には理解されるように、いかなる生物学的又は化学的参照実体も、特定の特徴的な構造的要素を有する。誘導体はその定義上、1つ以上のこのような特徴的な構造的要素を共有する別個の実体である。ほんの数例を挙げると、ある小分子は、特徴的なコア構造要素(例えば大環状分子コア)及び/又は1つ以上の特徴的なペンダント部分を有することができ、従ってこの小分子の誘導体は、上記コア構造要素及び上記特徴的なペンダント部分を共有するものの、他のペンダント部分、及び/又はコア内に存在する結合のタイプ(単結合か二重結合か、EかZか等)が異なるものとなる。誘導体核酸は、直線又は3次元空間において互いに対して指定された位置を有する複数のヌクレオチド残基で構成された、特徴的な配列要素を有することができる。いくつかの実施形態では、誘導体の核酸配列は、参照配列又はその断片の全長にわたって、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は更に高いパーセンテージで、同一であってよい。誘導体ペプチド又はポリペプチドは、直線若しくは3次元空間において互いに対して指定された位置を有する複数のアミノ酸で構成された、及び/又はある特定の生物学的機能に寄与する、特徴的な配列要素を有することができる。誘導体ペプチド及びポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失、及び/又は置換によって参照ペプチド又はポリペプチドとはアミノ酸配列が異なるものの、上記参照ペプチド又はポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性(例えばウイルスによる細胞感染を仲介する能力、膜融合を仲介する能力、特異的抗体によって結合される又は免疫応答を促進する能力等)を保持する、ペプチド及びポリペプチドを含む。いくつかの非限定的な実施形態では、誘導体ペプチド又はポリペプチドは、全長にわたって、参照ペプチド又はポリペプチド(又はその断片)との、少なくとも50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は更に高いパーセンテージの同一性を示す。あるいは、又は更に、誘導体ペプチド又はポリペプチドは、(例えばグリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、パルミトイル化、酸化、ホルミル化、アミド化、ポリグルタミル化、ADP-リボシル化、ペグ化、ビオチン化等において)ポリペプチド主鎖に付着した1つ以上の化学部分、及び/又は1つ以上の化学部分の1つ以上の差異の結果として、参照ペプチド又はポリペプチドとは異なるものとなり得る。いくつかの実施形態では、誘導体ペプチド又はポリペプチドは、参照ポリペプチドの生物学的活性のうちの1つ以上を欠いているか、又は参照ポリペプチドと比較して1つ以上の生物学的活性のレベルが低下若しくは上昇している。ある特定のペプチド又はポリペプチドの複数の誘導体が、天然のものとして見られる場合があり、又は合成若しくは組換えによって産生され得る。本明細書中で使用される場合、用語「誘導体」又は「バリアント」は、様々な融合タンパク質及びコンジュゲートも包含し、これは、検出タグ(例えばHAタグ、ヒスチジンタグ、ビオチン、蛍光又は発光ドメインとの融合等)、二量体化/多量体化配列、Fc、シグナル伝達配列等との融合物又はコンジュゲートを含む。
【0125】
本明細書中で使用される場合、用語「コロナウイルス」は、ニドウイルス目内のコロナウイルス科内のコロナウイルス亜科の任意のウイルスを指す。コロナウイルスの非限定的な例としては、SARS-CoV-2、MERS-CoV、及びSARS-CoVが挙げられる。
【0126】
用語「CoV-S」又は「Sタンパク質」又は「スパイクタンパク質」又は「スパイク糖タンパク質」又は「S糖タンパク質」等は、コロナウイルスのスパイクタンパク質を指し、スパイクタンパク質のタンパク質バリアントを含む。本明細書で開示されるスパイクタンパク質は、SARS-CoV-2 Sタンパク質、MERS-CoV Sタンパク質、及びSARS-CoV Sタンパク質といった具体的なSタンパク質であってよい。本開示の文脈では、スパイクタンパク質は、様々なSARS-CoV-2分離株、及び組換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質又はその断片から単離できる。
【0127】
本明細書中で使用される場合、用語「コロナウイルス感染症」又は「CoV感染症」又は「SARS-CoV-2感染症」は、SARS-CoV-2、MERS-CoV、又はSARS-CoVといったコロナウイルスによる感染症を指す。この用語は、多くの場合下気道における、コロナウイルス気道感染症を含む。症状としては、高熱、空咳、息切れ、肺炎、下痢等の消化器症状、臓器不全(腎不全及び腎機能障害)、敗血症性ショック、そして重症例では死亡が挙げられる。
【0128】
用語「コードする」は、ウイルス粒子での発現のためにポリヌクレオチドの(+)又は(-)センス鎖のいずれかからコードすることを指すことができる。
【0129】
本明細書中で互換的に使用される用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、あらゆる長さのタンパク質断片、融合タンパク質、及び修飾タンパク質を含むあらゆる種類の天然及び合成タンパク質を包含し、修飾タンパク質は、限定するものではないが、糖タンパク質、及び他のあらゆるタイプの修飾タンパク質(例えばリン酸化、アセチル化、ミリストイル化、パルミトイル化、グリコシル化、酸化、ホルミル化、アミド化、ポリグルタミル化、ADP-リボシル化、PEG化、ビオチン化等から得られるタンパク質)を含む。100アミノ酸未満、好ましくは50アミノ酸未満の小さなポリペプチドを、「ペプチド(peptide)」と呼ぶことがある。
【0130】
本明細書中で互換的に使用される用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は、リボヌクレオチド(RNA)、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、又はこれらの類似体又は修飾されたバージョンを含む、いずれの長さのヌクレオチドのポリマー形態を含む。これらは、一本鎖、二本鎖、及び多本鎖DNA又はRNA、ゲノムDNA、相補的DNA(cDNA)、DNA-RNAハイブリッド、及びプリン塩基、ピリミジン塩基、又はその他の天然の、化学修飾された、生化学修飾された、非天然の、若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む、ポリマーを含む。
【0131】
用語「作動可能に連結される」等は、記載されている複数の構成要素がその意図された様式で機能できるような関係での、並置を指す。例えば、コード配列に「作動可能に連結される」制御配列は、該制御配列と適合する条件下で該コード配列の発現が達成されるような方法で、結合される。「作動可能に連結される」配列は、関心対象の遺伝子と連続した発現制御配列と、関心対象の遺伝子(又は関心対象の配列)の制御のためにトランスに又は離れて作用する発現制御配列との両方を含む。用語「発現制御配列(expression control sequence)」は、それらが結合されるコード配列の発現及びプロセシングに影響を及ぼすために必要な、ポリヌクレオチド配列を含む。「発現制御配列」には:適切な転写開始、終了、プロモーター、及びエンハンサー配列;スプライシング及びポリアデニル化シグナルといった効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を向上させる配列(即ちコザックコンセンサス配列);ポリペプチド安定性を向上させる配列;並びに所望の場合には、ポリペプチドの分泌を強化する配列が含まれる。このような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。例えば原核生物では、このような制御配列には一般にプロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終了配列が含まれ、真核生物では、このような制御配列には典型的にはプロモーター及び転写終了配列が含まれる。用語「制御配列(control sequence)」は、発現及びプロセシングのためにその存在が必須である構成要素を含むことが意図されており、また、例えばリーダー配列及び融合パートナー配列といった、その存在が有利となる追加の構成要素も含むことができる。
【0132】
用語「単離された」は、分子(ポリヌクレオチド又はポリペプチド等)であって、該分子が産生される系の他の構成要素から実質的に分離された及び/又は精製された分子の、均質な集団、並びに少なくとも1つの精製又は単離ステップに供されたタンパク質を指す。「単離された」は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない分子を指し、比較的高い順度まで、例えば80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の純度まで単離された分子を包含する。
【0133】
用量又は量に適用される用語「有効な」は、それを必要とする対象に投与した場合に所望の活性をもたらすために十分な、化合物(例えば組換えウイルス)又は組成物(例えば医薬組成物、ワクチン組成物、若しくは免疫原性及び/若しくは抗原性組成物)の量を指す。なお、複数の有効成分の組み合わせを投与する場合、上記組み合わせの有効量は、個別に投与した場合に有効であった各成分の量が含まれる場合と含まれない場合があることに留意されたい。必要である正確な量は、対象の種、年齢、及び全身状態、処置される状態の重篤度、採用される1つ以上の特定の薬物、投与の様式等に応じて、対象ごとに変化することになる。
【0134】
用語「投与」等は、対象又は系への(例えば細胞、器官、組織、有機体、若しくは関連するこれらの構成要素若しくは複数の構成要素のセットへの)組成物の投与を指し、またこれを含む。当業者であれば、例えば組成物が投与されている対象又は系、組成物の性質、投与の目的等に応じて投与の経路が変化し得ることを理解するだろう。例えば特定の実施形態では、動物である対象への(例えばヒト又はげっ歯類への)投与は、気管支(気管支点滴によるものを含む)、頬内、腸内、皮間、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、髄腔内、静脈内、脳室内、粘膜、鼻、口、直腸、皮下、舌下、局所、気管(気管内点滴によるものを含む)、経皮、腟、及び/又は硝子体投与であってよい。いくつかの実施形態では、投与は、断続的な投薬を含む場合がある。いくつかの実施形態では、投与は、少なくとも選択された期間にわたる連続的な投薬(例えば灌流)を含む場合がある。
【0135】
本開示の文脈において、本明細書で列挙される病状のいずれかに関連する限り、用語「処置する(treat)」、「処置(treatment)」等は、上記病状に関連する少なくとも1つの症状を緩和若しくは軽減すること、又は上記病状の進行を遅延若しくは反転させることを意味する。本開示の意味の範囲内において、用語「処置する」は、疾患を阻止すること、疾患の発病(即ち疾患の臨床所見前の期間)を遅延させること、及び/又は疾患の進展若しくは悪化のリスクを低減することも指す。状態、障害、又は病状に関する用語「処置する」、「処置」等は、(1)該状態、障害、若しくは病状に罹患している若しくはその素因を有する可能性があるものの、該状態、障害、若しくは病状の臨床的若しくは潜在的症状を依然として経験していない若しくは呈していない対象において発生している該状態、障害、若しくは病状の少なくとも1つの臨床的若しくは潜在的症状の出現の、予防若しくは遅延;又は(2)該状態、障害、若しくは病状の阻害、即ち疾患、若しくはその再発(維持療法の場合)、若しくはその少なくとも1つの臨床的若しくは潜在的症状の、発生の阻止、低減、若しくは遅延;又は(3)疾患の緩和、即ち該状態、障害、若しくは病状、又はその臨床的若しくは潜在的症状のうちの少なくとも一方の退行を引き起こすことを含む場合もある。例えばSARS-CoV-感染症の文脈において、COVID-19疾患の症状の非限定的な例としては、限定するものではないが、発熱、咳、息切れ、肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺症候群、嗅覚の喪失、味覚の喪失、喉の痛み、鼻汁、胃腸症状(例えば下痢)、臓器不全(例えば腎不全及び腎機能障害)、敗血症性ショック、及び死亡が挙げられる。ウイルス感染症(例えばSARS-CoV-2感染症、インフルエンザ感染症)によって引き起こされる疾患に関連して使用される場合、用語「予防する」、「予防すること」、又は「予防」は、ウイルスに曝露された対象の感染の拡大の防止、例えば対象の細胞へのウイルスの侵入の防止を指す。
【0136】
用語「個体」、「対象」、又は「患者」若しくは「動物」は、ヒト、家畜類(例えばネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ等)、及び疾患の実験動物モデル(例えばマウス、ラット、ウサギ、フェレット、サル等)を指す。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、ウイルス感染症又は癌といった疾患又は障害の予防及び/又は処置が必要な状態であってよい。対象は、ウイルス感染症、例えばSARS-CoV-2感染症若しくはインフルエンザ感染症に罹患していてよく、又は感染症を発症する素因を有していてよい。感染症を発症する素因を有する対象、又は(例えばコロナウイルス若しくはインフルエンザウイルスの)感染に罹患するリスクが高い可能性がある対象としては、自己免疫疾患によって免疫系が損なわれている対象、(例えば臓器移植後に)免疫抑制療法を受けている対象、ヒト免疫不全症候群(HIV)若しくは後天性免疫不全症候群(AIDS)に罹患している対象、白血球細胞を枯渇させる若しくは破壊する形態の貧血に罹患している対象、放射線若しくは化学療法を受けている対象、又は炎症性障害に罹患している対象が挙げられる。更に、非常に若い(例えば5歳以下の)又は高齢の(例えば65歳以上の)対象はリスクが高い可能性がある。更に対象は、疾患の発生に近接している(例えば対象が、人口密集都市に居住しているか、若しくはウイルスの感染が確認された若しくは疑われる対象の付近に居住している)こと、又は雇用の選択(例えば病院職員、製薬研究者、感染地域への旅行者、若しくは旅客機の頻繁な利用者)によって、ウイルス感染のリスクにさらされる場合もある。いくつかの実施形態では、対象は実験動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、フェレット、サル等)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を実験動物実験動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、フェレット、サル等)に適用することによって、抗原の1つ以上の所望のエピトープを標的とする処置用抗体が生成される。
【0137】
本明細書に記載の組成物に関連して使用される場合、句「薬学的に許容可能な」は、生理学的に忍容性があり、対象(例えばヒト)に投与したときに有害な反応を典型的には生成しない、このような組成物の分子実体及び他の成分を指す。好ましくは、用語「薬学的に許容可能な」は、哺乳類、より詳細にはヒトでの使用に関して、連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の一般的に認められている薬局方に記載されていることを意味する。
【0138】
本開示の実施は、特段の指示がない限り、統計分析、分子生物学(組換え技法を含む)、ウイルス学、微生物学、細胞生物学、化学、及び生化学の従来の技法を採用し、これらは当該技術分野の技能の範囲内である。このようなツール及び技法は、例えばSambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition. Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989(本明細書では「Sambrook et al., 1989」);DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II (D.N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization [B.D. Hames & S.J. Higgins eds. (1985)];Transcription And Translation [B.D. Hames & S.J. Higgins, eds. (1984)];Animal Cell Culture [R.I. Freshney, ed. (1986)];Immobilized Cells And Enzymes [IRL Press, (1986)];B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);Ausubel, F.M. et al. (eds.). Current Protocols in Molecular Biology. John Wiley & Sons, Inc., 1994に詳細に記載されている。これらの技法は、Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488- 492 (1985)、米国特許第5,071,743号、Fukuoka et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 263: 357-360 (1999);Kim and Maas, BioTech. 28: 196-198 (2000);Parikh and Guengerich, BioTech. 24: 4 28-431 (1998);Ray and Nickoloff, BioTech. 13: 342-346 (1992);Wang et al., BioTech. 19: 556-559 (1995);Wang and Malcolm, BioTech. 26: 680-682 (1999);Xu and Gong, BioTech. 26: 639-641 (1999)、米国特許第5,789,166号及び5,932,419号、Hogrefe, Strategies l4. 3: 74-75 (2001)、米国特許第5,702,931号、5,780,270号及び6,242,222号、Angag and Schutz, Biotech. 30: 486-488 (2001)、Wang and Wilkinson, Biotech. 29: 976-978 (2000)、Kang et al., Biotech. 20: 44-46 (1996)、Ogel and McPherson, Protein Engineer. 5: 467-468 (1992)、Kirsch and Joly, Nucl. Acids. Res. 26: 1848-1850 (1998)、Rhem and Hancock, J. Bacteriol. 178: 3346-3349 (1996)、Boles and Miogsa, Curr. Genet. 28: 197-198 (1995), Barrenttino et al., Nuc. Acids. Res. 22: 541-542 (1993)、Tessier and Thomas, Meths. Molec. Biol. 57: 229-237、及びPons et al., Meth. Molec. Biol. 67: 209-218に記載されているような部位特異的変異誘発が含まれる。
【0139】
抗原及びエピトープ
本開示中で使用される場合、抗原は、免疫応答を誘発する、例えば対象の体内に存在する場合に(例えばヒト又は哺乳類対象の体内に存在する場合に)免疫応答を誘発する、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖類、糖タンパク質、糖脂質、ヌクレオチド、これらの一部分又は、これらの組み合わせといった物質とすることができる。非限定的な例として、細胞内又は対象の体内に存在する場合、抗原は、例えば上記抗原に対する抗体の産生をトリガすることによって、抗原に対する免疫反応を免疫系に生成させることができ、例えば結合及び/又は中和抗体は、抗原に対して特異的なB細胞及び/又はT細胞応答をトリガでき、最終的には、後の時点での上記抗原との又は上記抗原が関連する病原体との遭遇に対して、防御又は予防的な応答を引き起こすことができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、上記抗原はタンパク質抗原である。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗原は、完全長タンパク質、例えば完全長ウイルスタンパク質を含んでよく、又は断片(例えばタンパク質のポリペプチド若しくはペプチド断片、サブユニット、若しくはドメイン、例えばウイルスタンパク質若しくはサブユニットドメイン)を含んでよい。
【0141】
いくつかの実施形態では、上記抗原は非タンパク質抗原である。
【0142】
いくつかの実施形態では、上記抗原は、対象の内因性分子である。いくつかの実施形態では、上記抗原は、自己免疫疾患における免疫応答の標的とされる。
【0143】
いくつかの実施形態では、上記抗原は、感染症、自己免疫疾患、腫瘍細胞、及び/又は腫瘍微小環境内の細胞、細胞外基質、若しくは特定の組織に関連するものである。
【0144】
感染関連抗原の非限定的な例としては:コロナウイルス科(例えばコロナウイルス);オルトミクソウイルス科(例えばインフルエンザウイルス);フラビウイルス科(例えばデングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱ウイルス);アデノウイルス科(ほとんどのアデノウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);カリシウイルス科(例えば胃腸炎を引き起こす株);フィロウイルス科(例えばエボラウイルス);ヘルペスウイルス科(ヘルペス単純ウイルス(herpes simplex virus:HSV)1及び2、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)、ヘルペスウイルス);イリドウイルス科(例えばアフリカ豚熱ウイルス);パラミクソウイルス科(例えばパラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス;HBsAg);レオウイルス科(例えばレオウイルス、オルビウイルス、及びロタウイルス);レトロウイルス科(例えば、HIV-1(HTLV-III、LAV若しくはHTLV-III/LAV、又はHIV-IIIとも呼ばれる)、及びHIV-LP等の他の分離株といった、ヒト免疫不全ウイルス);ノーウォークウイルス及び関連ウイルス、並びにアストロウイルス;ビルナウイルス科;ブニヤウイルス目(例えばハンタンウイルス、ブニヤウイルス、フレボウイルス、及びナイロウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);ピコルナウイルス科(例えばポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;トガウイルス科(例えばウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);ポックスウイルス科(天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);パピローマウイルス科(例えばパピローマウイルス);ラブドウイルス科(例えば水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);並びに未分類のウイルス(例えば非A型、非B型肝炎(即ちC型肝炎)の病原体、δ型肝炎の病原体、海綿状脳症の病原体)に由来するものが挙げられる。
【0145】
更なるウイルス抗原は、以下から選択されるウイルスの株に由来するものであってよい:水痘・帯状疱疹ウイルス;エプスタイン・バールウイルス;ヒトサイトメガロウイルス;ヒトヘルペスウイルス8型;BKウイルス;JCウイルス;天然痘;ポリオウイルス;B型肝炎ウイルス;ヒトボカウイルス;パルボウイルスB19;ヒトアストロウイルス;ノーウォークウイルス;コクサッキーウイルス;A型肝炎ウイルス;ポリオウイルス;ライノウイルス;重症急性呼吸器症候群ウイルス;C型肝炎ウイルス;黄熱ウイルス;デングウイルス;ウエストナイルウイルス;風疹ウイルス;E型肝炎ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);インフルエンザウイルス;ガナリトウイルス;フニンウイルス;ラッサウイルス;マチュポウイルス;サビアウイルス;クリミア・コンゴ出血熱ウイルス;エボラウイルス;マールブルグウイルス;麻疹ウイルス;ムンプスウイルス;パラインフルエンザウイルス;呼吸器合胞体ウイルス;ヒトメタニューモウイルス;ヘンドラウイルス;ニパウイルス;狂犬病ウイルス;D型肝炎;ロタウイルス;オルビウイルス;コルチウイルス;バンナウイルス;ヒトエンテロウイルス;ハンタウイルス;ウエストナイルウイルス;中東呼吸器症候群コロナウイルス;日本脳炎ウイルス;水疱性発疹ウイルス;及び東部ウマ脳炎。
【0146】
更なる感染性抗原としては、細菌抗原、真菌抗原、寄生虫抗原、又はプリオン抗原等が挙げられる。感染性細菌の非限定的な例としては、限定するものではないが:レンサ球菌(緑色レンサ球菌群)、スタフィロコッカス・アガラクティエ(B群レンサ球菌)、スタフィロコッカス・ボビス、スタフィロコッカス・フェカリス、肺炎レンサ球菌、化膿レンサ球菌(A群レンサ球菌)、バクテロイデス属、ボレリア・ブルグドルフェリ、クラミジア、ウェルシュ菌、破傷風菌、エンテロバクター・アエロゲネス、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス属、豚丹毒菌、髄膜炎菌、アクチノミセス・イスラエリ、フソバクテリウム・ヌクレアタム、梅毒トレポネーマ、トレポネーマ・ペルテヌエ、病原性カンピロバクター属、リケッチア、黄色ブドウ球菌、ストレプトバチルス・モニフォルミス、レンサ球菌(嫌気性種)、インフルエンザ菌、ヘリコバクター・ピロリ、クレブシエラ・ニューモニエ、レジオネラ・ニューモフィラ、レプトスピラ、ジフテリア菌、コリネバクテリウム属、リステリア・モノサイトゲネス、マイコバクテリウム属(例えばヒト型結核菌、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・ゴルドネ、マイコバクテリウム・イントラセルラレ、マイコバクテリウム・カンサシ)、淋菌、炭疽菌、緑膿菌、又はパスツレラ・ムルトシダが挙げられる。感染性真菌としては例えば、コクシジオイデス・イミティス、ブラストミセス・デルマティティジス、クリプトコックス・ネオフォルマンス、ヒストプラズマ・カプスラツム、クラミジア・トラコマチス、及びカンジダ・アルビカンスが挙げられる。更なる感染性生物(即ち原生生物)としては、マラリア原虫、例えば卵形マラリア原虫、熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、トキソプラズマ、及び住血吸虫が挙げられる。
【0147】
いくつかの実施形態では、上記抗原は、自己免疫疾患又は障害に関連するものである。自己免疫疾患又は障害に関連する抗原は、例えば、「自己(self)」指向性抗体を産生する細胞受容体及び/又は細胞に由来し得る。いくつかの実施形態では、抗原は、例えば血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、橋本病、乾癬、バセドウ病、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、重症筋無力症、強直性脊椎炎、強皮症、多発性筋炎、又は皮膚筋炎といった、自己免疫疾患又は障害に関連するものである。
【0148】
自己免疫抗原の非限定的な例としては、血小板抗原、島細胞抗原、ミエリンタンパク質抗原、リウマチ因子、抗シトルリン化タンパク質、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、受容体(リポコルチン1等)、好中球核タンパク質(ラクトフェリン及び25~35kD核タンパク質等)、Sm抗原(例えばsnRNP内)、顆粒タンパク質(殺菌性透過性増大タンパク質(bactericidal permeability increasing protein:BPI)等)、エラスターゼ、フィブリン、ビメンチン、フィラグリン、フィブリノーゲン、コラーゲンI及びIIペプチド、プラスミノーゲン、アルファエノラーゼ、翻訳開始因子4G1、核周囲因子、ケラチン、Sa(細胞骨格タンパク質ビメンチン)、シトルリン化タンパク質及びペプチド(CCP-1、CCP-2(cyclical citrullinated peptide:環状シトルリン化ペプチド)等)、循環血清タンパク質(RF(IgG、IgM)等)、関節軟骨成分(コラーゲンII、IX、及びXI等)、核成分(RA33/hnRNP A2等)、フェリチン、ストレスタンパク質(HSP-65、-70、-90、BiP等)、炎症/免疫因子(B7-H1、IL-1アルファ、及びIL-8等)、アルファ-エノラーゼ等の酵素、カルパスタチン、ジペプチジルペプチダーゼ、真核生物翻訳伸長因子1アルファ1、アルドラーゼ-A、オステオポンチン、カテプシンG、ミエロペルオキシダーゼ、プロテイナーゼ3抗原、リウマノイド因子、ヒストン、核酸(RNA、dsDNA、ssDNA、及びリボ核粒子等)、リボソームPタンパク質、ミエリンタンパク質、カルジオリピン、ビメンチン、Sm抗原(例えばSmD’s及びSmB’/Bを含む)、U1RNP、A2/B1 hnRNP、Ro(SSA)、並びにLa(SSB)抗原が挙げられる。
【0149】
いくつかの実施形態では、上記抗原は、対象の内因性分子である。いくつかの実施形態では、上記抗原は、本明細書で開示される自己免疫疾患における免疫応答の標的とされる。
【0150】
いくつかの実施形態では、上記抗原は腫瘍抗原であってよい。いくつかの実施形態では、上記腫瘍抗原は、卵巣癌、子宮頸癌、膠芽腫、膀胱癌、頭頸部癌、肝臓癌、膵臓癌、前立腺癌、腎細胞癌、又は血液悪性腫瘍に関連するものである。
【0151】
腫瘍抗原の非限定的な例としては、5T4、707-AP、AFP、ART-4、B7-H3、B7H4、BAGE、BCMA、Bcrabl、CA125、CAMEL、CAP-1、CASP-8、CD30、CD133、CD19、CD20、CD22、CD25、CD33、CD4、CD52、CD56、CD70、CD79、CD80、CDC27/m、CDK4/m、CEA、Claudin 18.2、CLL1、cMET、CT、Cyp-B、DAM、EGFR、EGFRvIII、ELF2M、EMMPRIN、EpCam、EpCAM、EpCAM、ErbB3、ETV6-AML1、FGFR1、FGFR3、FOLR1、FSHR、G250、GAGE、GD2、GnT-V、Gp100、GPC-3、GPRC5D、HAGE、HAST-2、HER-2/neu、HLA-A* 0201-R170I、HPV-E7、HSP70-2M、hTERT(又はhTRT)、iCE、IGF-1R、IL13Rα2、IL-2R、IL-5、KIAA0205、LAGE、LDLR/FUT、MAGE、MART-1/Melan-A、MART-2/Ski、MC1R、メソテリン、MET、MN/C IX抗原、MUC1、MUC16、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、NA88-A、Nectin-4、SLITRK6、NY-ESO1、NY-Eso-1、NY-Eso-B、p190 minor bcr-abl、PAP、PDGFRα、Pm1/RARα、PRAME、プロテイナーゼ-3、PSA、PSM、PSMA、RAGE、ROBO1、RU1、RU2、SAGE、SART-1、SART-3、SLAM F7、サバイビン、TEL/AML1、TGFβ、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/INT2、VEGF、WT1、α5β1インテグリン、及びβカテニン/mが挙げられる。
【0152】
いくつかの実施形態では、上記抗原はクラスI病原体に由来するものであってよい。本明細書で開示されるクラスI病原体は、以下の特性のうちの1つ以上を有することができる:(1)狭い年齢範囲に感染する;(2)宿主が自然回復を示す;(3)宿主が長期にわたる防御免疫を生成する;(4)病原体が遺伝的に安定しており、抗原の多様性が限定されている;(5)免疫応答が複数のエピトープを対象とする。クラスI病原体の非限定的な例としては、例えば麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、ジフテリア、犬ジステンパー、狂犬病、及びポリオウイルスといったウイルスが挙げられる。例えばTobin et al., Vaccine, 2008, 26:6189-6199を参照されたい。
【0153】
いくつかの実施形態では、上記抗原はクラスII病原体に由来するものであってよい。本明細書で開示されるクラスII病原体は、以下の特性のうちの1つ以上を有する:(1)病原体が広い年齢範囲に感染する;(2)病原体が潜伏感染として存続することが多い;(3)長期にわたる防御免疫がない、又は低い;(4)野生型抗原によるプライミングでは、防御又は株特異的防御が得られない;(5)病原体は高い変異率を示し、エピトープ領域の高度な多様性を許容する;(6)免疫応答は比較的少数の遺伝的に可変な株特異性エピトープに限定され、早期の交差反応性リコールを示唆する。クラスII病原体の非限定的な例としては、例えば、SARS-CoV-2等のコロナウイルス、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)、山羊関節炎・脳脊髄炎ウイルス(caprine arthritis encephalitis virus:CAEV)、ヒトライノウイルス(human rhinovirus:HRV)、口蹄疫ウイルス(Foot-and-Mouth Disease virus:FMDV)、C型肝炎ウイルス、無莢膜型インフルエンザウイルス、マラリア寄生虫、マイコプラズマ、トリパノソーマ、住血吸虫、リーシュマニア、アナプラズマ、エンテロウイルス、アストロウイルス、ライノウイルス、ノーウォークウイルス、毒素産生性/病原性大腸菌、ナイセリア、及びストレプトミセスが挙げられる。例えばTobin et al., Vaccine, 2008, 26:6189-6199を参照されたい。
【0154】
いくつかの実施形態では、上記抗原が本明細書で開示される病原体由来である場合、上記病原体はウイルスであり得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、上記病原体はウイルスであってよい。
【0156】
いくつかの実施形態では、上記ウイルスはインフルエンザウイルスであってよい。いくつかの実施形態では、上記ウイルスは、インフルエンザA若しくはインフルエンザBの株、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、インフルエンザA又はインフルエンザBの株は、鳥類、ブタ、ウマ、イヌ、ヒト、又は非ヒト霊長類に関連するものである。いくつかの実施形態では、上記抗原性ポリペプチドは、ヘマグルチニンタンパク質又はその断片である。いくつかの実施形態では、上記ヘマグルチニンタンパク質は、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17、H18、又はこれらの断片である。いくつかの実施形態では、上記ヘマグルチニンタンパク質はヘッドドメイン(HA1)を含まない。いくつかの実施形態では、上記ヘマグルチニンタンパク質はヘッドドメイン(HA1)の一部分を含む。いくつかの実施形態では、上記ヘマグルチニンタンパク質は細胞質ドメインを含まない。いくつかの実施形態では、上記ヘマグルチニンタンパク質は、細胞質ドメインの一部分を含む。いくつかの実施形態では、上記ヘマグルチニンタンパク質は切断されている。いくつかの実施形態では、切断されている上記ヘマグルチニンタンパク質は、膜貫通ドメインの一部分を含む。いくつかの実施形態では、上記ヘマグルチニンタンパク質又はその断片のアミノ酸配列は、インフルエンザ抗原に関する公知のアミノ酸配列のいずれかと、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。
【0157】
いくつかの実施形態では、上記インフルエンザウイルスは、限定するものではないがA/Perth/16/2009(H3N2)等の、インフルエンザA型ウイルスであってよい。特定の実施形態では、上記抗原はインフルエンザヘマグルチニン(HA)であり、上記1つ以上の第1のエピトープは、HAヘッドのシアル酸受容体結合部位(RBS)内に含まれる。特定の実施形態では、上記抗原は、A/Perth/16/2009由来のH3血清型のHA三量体タンパク質である。いくつかの実施形態では、上記1つ以上のエピトープは、インフルエンザヘマグルチニン(HA)のE4123である。いくつかの実施形態では、E4123は、HAヘッド上のシアル酸受容体結合部位(RBS)内に含まれていてよい。本開示のいくつかの実施形態では、上記抗原は、配列番号19の配列を含むインフルエンザヘマグルチニン(HA)、又は配列番号19に対して少なくとも77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは更に高いパーセンテージのアミノ酸配列同一性を有するその断片若しくは誘導体である。
【0158】
いくつかの実施形態では、上記ウイルスはコロナウイルスであってよい。理論によって束縛されることを望むものではないが、コロナウイルスビリオンは、直径およそ125nmの球状である。コロナウイルスの最も顕著な特徴は、ビリオンの表面から伸びる棍棒状のスパイク突起である。これらのスパイクはビリオンを区別する特徴であり、ビリオンに太陽のコロナのような外観を与え、これがコロナウイルスという名称の由来となっている。ビリオンのエンベロープ内にはヌクレオカプシドが存在する。コロナウイルスは螺旋対称のヌクレオカプシドを有し、これはポジティブセンスRNAウイルスには珍しいものであるが、ネガティブセンスRNAウイルスでははるかに一般的である。SARS-CoV-2、MERS-CoV、及びSARS-CoVが、コロナウイルス科に属する。宿主細胞に対するビリオンの最初の付着は、Sタンパク質とその受容体との間の相互作用によって開始される。コロナウイルスSタンパク質のS1領域内の受容体結合ドメイン(RBD)の部位はウイルスによって異なり、一部のウイルスはS1のC末端にRBDを有する。S-タンパク質/受容体相互作用は、コロナウイルスが宿主種に感染するための主要な決定要因であり、ウイルスの組織指向性も支配する。多くのコロナウイルスは、その細胞受容体として、ペプチダーゼを利用する。受容体との結合の後、ウイルスは続いて、宿主細胞のサイトゾルへのアクセスを得る必要がある。これは一般的に、カテプシン、TMPRRS2、又は別のプロテアーゼによるSタンパク質の酸依存性タンパク質切断と、これに続くウイルス膜と細胞膜との融合とによって、達成される。
【0159】
本明細書で開示されるコロナウイルスは、ニドウイルス目内のコロナウイルス科内のコロナウイルス亜科を指す。系統的関係及びゲノム構造に基づくと、この亜科は4つの属:アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、ガンマコロナウイルス、及びデルタコロナウイルスからなる。理論によって束縛されることを望むものではないが、アルファコロナウイルス及びベータコロナウイルスは、哺乳類に感染し得る。ガンマコロナウイルス及びデルタコロナウイルスは鳥類に感染し得るが、一部は哺乳類にも感染できる。アルファコロナウイルス及びベータコロナウイルスは、例えばヒトの呼吸器系疾患及び動物の胃腸炎を引き起こし得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片は、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、ガンマコロナウイルス、及び/若しくはデルタコロナウイルスに結合でき、並びに/又はこれらを中和できる。特定の実施形態では、この結合及び/又は中和は、コロナウイルスの特定の属に対して、又はある属の特定のサブグループに対して、特異的であり得る。3つの高病原性ウイルス、即ちSARS-CoV-2、SARS-CoV、及びMERS-CoVは、ヒトの重症呼吸器症候群を引き起こし得る。他の4つのヒトコロナウイルス、即ちHCoV-NL63、HCoV-229E、HCoV-OC43、及びHKU1は、免疫能を有する宿主では軽度の上気道疾患しか誘発しないものの、一部は乳児、幼児、及び高齢の個体において重篤な感染を引き起こす場合がある。商業的に重要なコロナウイルスの更なる非限定的な例としては、伝染性胃腸炎コロナウイルス(transmissible gastroenteritis coronavirus:TGEV)、ブタ呼吸器コロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネコ腸コロナウイルス、ネコ伝染性腹膜炎コロナウイルス、ウサギコロナウイルス、マウス肝炎ウイルス、唾液腺炎ウイルス、ブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス、ウシコロナウイルス、鳥類伝染性気管支炎ウイルス、及びシチメンチョウコロナウイルスが挙げられる。Cui et al., Nature Reviews Microbiology, 2019, 17:181-192;Fung et al., Annu. Rev. Microbiol., 2019, 73:529-557で報告されている。
【0160】
いくつかの実施形態では、上記コロナウイルスはSARS-CoV-2である。
【0161】
宿主細胞へのコロナウイルスの侵入は、膜貫通スパイク(S)糖タンパク質(互換的に「スパイク糖タンパク質」、「S糖タンパク質」、「Sタンパク質」、又は「スパイクタンパク質」等とも呼ばれる)によって仲介され、これは抗ウイルス中和抗体の主要な標的であり、処置及びワクチン設計の焦点である。S糖タンパク質は、1273アミノ酸のI型膜糖タンパク質であり、これは集合して、エンベロープに包まれたコロナウイルス粒子の表面上でスパイク又はペプロマーを構成する三量体となる。S糖タンパク質は2つの機能性サブユニットを含み、これらは、宿主細胞受容体への結合(S1サブユニット)、及びウイルス膜と細胞膜との融合(S2サブユニット)に関与する。SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2を含む多くのコロナウイルスに関して、S糖タンパク質はS1サブユニットとS2サブユニットとの境界で切断され、これらは融合前のコンフォメーションで非共有結合状態のままである。遠位のS1サブユニットは、1つ以上の受容体結合ドメイン(RBD)を含み、融合機構を含有する膜固定S2サブユニットの融合前状態の安定化に寄与する。Sは更に、融合ペプチドのすぐ上流に位置するS2’部位において、宿主プロテアーゼによって切断される。この切断は、コンフォメーションの変更によって膜融合のためにタンパク質を活性化することが提案されている。参照によりその全体が本出願に援用されるWalls et al., Cell(2020年3月9日オンライン公開、doi.org/10.1016/j.cell.2020.02.058にて入手可能)。
【0162】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗原はSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質であり、上記1つ以上の第1のエピトープは、上記SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内に含まれる中和エピトープである。
【0163】
本明細書で開示されるSタンパク質は、様々なSARS-CoV-2分離株から単離されたスパイクタンパク質のタンパク質バリアント、及び組換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質又はその断片を含む。特定の実施形態では、上記Sタンパク質は、BA.1、BA.2、BA.3、BA.4、BA.5、及びその子孫の系統を含むがこれらに限定されない、アルファ変異株(アルファバリアント)(例えばB.l.1.7)、ベータ変異株(ベータバリアント)(例えばB.1.351、B.1.351.2、若しくはB.1.351.3)、ガンマ変異株(ガンマバリアント)(例えばP.1、若しくはP.1.1若しくはP.1.2)、デルタ変異株(デルタバリアント)(例えばB.1.617.2、若しくはAY.1、若しくはAY.2、若しくはAY.3)又はオミクロン変異株(オミクロンバリアント)(例えばB.1.1.529)等のSタンパク質を含んでよい。上記Sタンパク質は、XE等の、BA.1/BA.2循環組換え型も含む。
【0164】
SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2はアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と直接相互作用して標的細胞に侵入でき、また、細胞セリンプロテアーゼ、膜貫通プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2)をSタンパク質のプライミングに使用できる(Hoffmann et al., Cell, 2020, 181:1-10;doi.org/10.1016/j.cell.2020.02.052にて入手可能)。SARS-CoV-S及びSARS-CoV-2-Sは、約76%のアミノ酸同一性を共有する。S糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)は、コロナウイルスゲノムの最も変化しやすい部分である。6個のRBDアミノ酸が、ACE2受容体への結合、及びSARS-CoV様ウイルスの宿主範囲の決定にとって重要であることが示されている。これらは、SARS-CoVにおいてはY442、L472、N479、D480、T487、及びY4911であり、これらはSARS-CoV-2のL455、F486、Q493、S494、N501、及びY505に対応する(Andersen et al., Nature Medicine, 2020;doi.org/10.1038/s41591-020-0820-9にて入手可能)。SARS-CoV-1サブユニット/ドメインと、これに対応する、SARS-CoV-1のアミノ酸残基(配列番号11)及びSARS-CoV-2のアミノ酸残基(配列番号1)と、配列整列(CLUSTAL O(1.2.4)多重配列整列)によって決定される、SARS-CoV-1のサブユニット/ドメインとSARS-CoV-2のサブユニット/ドメインとの間の%同一性とを、表1に示す。
【0165】
【表1】
【0166】
本開示の特定の実施形態では、上記S糖タンパク質抗原は、(配列番号1を含むか若しくはこれからなる)完全長SARS-CoV-2 S糖タンパク質、又は配列番号1に対して少なくとも77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは更に高いパーセンテージのアミノ酸配列同一性を有するその断片若しくは誘導体であってよい。
【0167】
野生型コロナウイルスS糖タンパク質は、細胞表面タンパク質へのコロナウイルスの結合を促進するS1サブユニットを含む。理論によって束縛されることを望むものではないが、野生型S糖タンパク質のS1サブユニットは、どの細胞がコロナウイルスに感染するかを制御する。野生型S糖タンパク質はS2サブユニットも含み、これは、ウイルス膜と細胞膜との融合を促進する膜貫通サブユニットである。本明細書に記載の様々な態様及び実施形態では、SARS-CoV-2 S糖タンパク質の断片又は誘導体は、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質のS1サブユニット、又は上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質のS1サブユニットに対して少なくとも65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは更に高いパーセンテージのアミノ酸配列同一性を有するその断片若しくは誘導体を含むことができる。本明細書に記載のいくつかの実施形態では、SARS-CoV-2 S糖タンパク質の断片又は誘導体は、配列番号1のアミノ酸14~168に対して少なくとも65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は更に高いパーセンテージのアミノ酸配列同一性を有する配列を含むことができる。本明細書に記載の様々な態様及び実施形態では、SARS-CoV-2 S糖タンパク質の断片又は誘導体は、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質のS2サブユニット、又は上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質のS2サブユニットに対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは更に高いパーセンテージのアミノ酸配列同一性を有するその断片若しくは誘導体を含むことができる。
【0168】
野生型コロナウイルスS糖タンパク質は、宿主細胞上の受容体に対するコロナウイルスの結合を促進する受容体結合ドメイン(RBD)を含む。SARS-CoV-2スパイク(S)糖タンパク質のRBDは、例えばAnderson et al., Nature Medicine, 2020(doi.org/10.1038/s41591-020-0820-9において入手可能)に記載されている。本明細書に記載の様々な態様及び実施形態では、SARS-CoV-2 S糖タンパク質の断片又は誘導体は、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質のRBD、又は上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質のRBDに対して少なくとも74%、75%、76%、77%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは更に高いパーセンテージのアミノ酸配列同一性を有するその断片若しくは誘導体を含むことができる。本明細書に記載のいくつかの実施形態では、SARS-CoV-2 S糖タンパク質の断片又は誘導体は、配列番号1のアミノ酸319~541に対して少なくとも74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は更に高いパーセンテージのアミノ酸配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0169】
特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、又は39個の残基の挿入、欠失、及び/又は置換を含んでよく、あるいは上記挿入、欠失、及び/又は置換からなってよい。発生し得る欠失のためのアミノ酸の非限定的な例としては、例えば145位のチロシン、679位のアスパラギン、680位のセリン、681位のプロリン、682位のアルギニン、683位のアルギニン、684位のアラニン、及び/又は685位のアルギニン(配列番号1に示されている位置)、あるいは変異型SARS-CoV-2 S糖タンパク質配列中の同等のアミノ酸残基が挙げられる。発生し得る置換のためのアミノ酸の非限定的な例としては、例えば5位においてフェニルアラニンへと変化するロイシン、28位においてアスパラギンへと変化するチロシン、29位においてイソロイシンへと変化するスレオニン、49位においてチロシンへと変化するヒスチジン、54位においてフェニルアラニンへと変化するロイシン、74位においてリシンへと変化するアスパラギン、96位においてアスパラギン酸へと変化するグルタミン酸、111位においてアスパラギンへと変化するアスパラギン酸、157位においてロイシンへと変化するフェニルアラニン、181位においてバリンへと変化するグリシン、221位においてトリプトファンへと変化するセリン、247位においてアルギニンへと変化するセリン、348位においてスレオニンへと変化するアラニン、408位においてイソロイシンへと変化するアルギニン、476位においてセリンへと変化するグリシン、483位においてアラニンへと変化するバリン、519位においてグルタミンへと変化するヒスチジン、520位においてセリンへと変化するアラニン、614位においてアスパラギンへと変化するアスパラギン酸、614位においてグリシンへと変化するアスパラギン酸、679位においてイソロイシンへと変化するアスパラギン、680位においてロイシンへと変化するセリン、682位においてグリシンへと変化するアルギニン、683位においてセリンへと変化するアルギニン、685位においてグルタミンへと変化するアルギニン、685位においてセリンへと変化するアルギニン、797位においてシステインへと変化するフェニルアラニン、930位においてバリンへと変化するアラニン、936位においてチロシンへと変化するアスパラギン酸、1078位においてバリンへと変化するアラニン、1168位においてヒスチジンへと変化するアスパラギン酸、及び/又は1259位においてヒスチジンへと変化するアスパラギン酸(配列番号1に示されている位置)、あるいは変異型SARS-CoV-2 S糖タンパク質配列中の同等のアミノ酸残基が挙げられる。Becerra-Flores and Cardozo, “SARS-CoV-2 viral spike G614 mutation exhibits higher case fatality rate,” The International Journal of Clinical Practice, published online May 6, 2020; Eaaswarkhanth et al., “Could the D614G substitution in the SARS-CoV-2 spike (S) protein be associated with higher COVID-19 mortality?” International Journal of Infectious Diseases, 96: July 2020, Pages 459-460; Tang et al., “The SARS-CoV-2 Spike Protein D614G Mutation Shows Increasing Dominance and May Confer a Structural Advantage to the Furin Cleavage Domain,” Preprints 2020, 2020050407 (doi: 10.20944/preprints202005.0407.v1); Hansen et. al., “Studies in humanized mice and convalescent humans yield a SARS-CoV-2 antibody cocktail” Science, published online June 15, 2020; Lokman et al., “Exploring the genomic and proteomic variations of SARS-CoV-2 spike glycoprotein: A computational biology approach”, Infection, Genetics and Evolution : Journal of Molecular Epidemiology and Evolutionary Genetics in Infectious Diseases, 2020 Jun;84:104389. DOI: 10.1016/j.meegid.2020.104389を参照。これらの文献はそれぞれ、意図されているあらゆる目的のために、その全体が参照により本出願に援用される。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、247位においてセリンをアルギニンへと、614位においてアスパラギン酸をアスパラギンへと、及び/又は685位においてアルギニンをグルタミンへと変化させることによって(配列番号1に示されている位置)、あるいは変異型SARS-CoV-2 S糖タンパク質配列中の同等のアミノ酸残基を変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチド(例えば野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質)とアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、247位においてセリンをアルギニンへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、614位においてアスパラギン酸をアスパラギンへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、685位においてアルギニンをグルタミンへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、247位においてセリンをアルギニンへと、及び614位においてアスパラギン酸をアスパラギンへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、247位においてセリンをアルギニンへと、及び685位においてアルギニンをグルタミンへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、614位においてアスパラギン酸をアスパラギンへと、及び685位においてアルギニンをグルタミンへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、247位においてセリンをアルギニンへと、614位においてアスパラギン酸をアスパラギンへと、及び685位においてアルギニンをグルタミンへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、溶解性がより高い表現型をもたらす。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、501位においてアスパラギンをチロシンへと、及び/若しくは484位においてグルタミン酸をリシンへと、及び/若しくは614位においてアスパラギン酸をグリシンへと変化させること、並びに/又は残基69~70の欠失(配列番号1に示されている位置)によって、あるいは変異型SARS-CoV-2 S糖タンパク質配列中の同等のアミノ酸残基の変化又は欠失によって、参照ペプチド又はポリペプチド(例えば野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質)とアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、501位においてアスパラギンをチロシンへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、484位においてグルタミン酸をリシンへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、614位においてアスパラギン酸をグリシンへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、残基69~70の欠失によって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、501位においてアスパラギンをチロシンへと、及び484位においてグルタミン酸をリシンへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、501位においてアスパラギンをチロシンへと、及び614位においてアスパラギン酸をグリシンへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、501位においてアスパラギンをチロシンへと変化させること、及び残基69~70の欠失によって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、484位においてグルタミン酸をリシンへと、及び614位においてアスパラギン酸をグリシンへとへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、484位においてグルタミン酸をリシンへと変化させること、及び残基69~70の欠失によって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、614位においてアスパラギン酸をグリシンへとへと変化させること、及び残基69~70の欠失によって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、501位においてアスパラギンをチロシンへと、484位においてグルタミン酸をリシンへと、及び614位においてアスパラギン酸をグリシンへと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、501位においてアスパラギンをチロシンへと変化させ、484位においてグルタミン酸をリシンへと変化させること、及び残基69~70の欠失によって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、501位においてアスパラギンをチロシンへと変化させ、614位においてアスパラギン酸をグリシンへと変化させること、及び残基69~70の欠失によって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、484位においてグルタミン酸をリシンへと変化させ、614位においてアスパラギン酸をグリシンへと変化させること、及び残基69~70の欠失によって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形
態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、501位においてアスパラギンをチロシンへと変化させ、484位においてグルタミン酸をリシンへと変化させ、614位においてアスパラギン酸をグリシンへと変化させること、及び残基69~70の欠失によって、参照ペプチド又はポリペプチドとアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、上記スパイクタンパク質内のフリン切断部位を不活化することによって、参照ペプチド又はポリペプチド(例えば野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質)とアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、配列番号1に示されているQ677TNSPRRARSV687(配列番号12)、又は変異型SARS-CoV-2 S糖タンパク質配列中の同等のアミノ酸残基を、QTILRSV(配列番号13)又はQTNSPGSASSV(配列番号14)へと変化させることによって、参照ペプチド又はポリペプチド(例えば野生型SARS-CoV-2スパイクタンパク質)とアミノ酸配列が異なるものとなる。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質誘導体、又はその断片は、S1/S2境界の一塩基フリン切断部位(QTILRSV(配列番号13))、又はフリン切断部位(QTNSPGSASSV(配列番号14))表現型の欠失をもたらす。特定の実施形態では、フリン切断部位に対する変更は、スパイク安定化擬似粒子をもたらすことができる。Hansen et. al.,“Studies in humanized mice and convalescent humans yield a SARS-CoV-2 antibody cocktail” Science(2020年6月15日オンライン公開)を参照。上記文献は、意図されているあらゆる目的のために、その全体が参照により本出願に援用される。
【0170】
特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質断片又は誘導体は、完全長SARS-CoV-2 S糖タンパク質の1つ以上のC末端残基を欠いている。例えば上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質断片は、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質のC末端残基のうちの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個を欠いていてよい。特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質断片又は誘導体は、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質の19個のC末端残基を欠いている。上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質断片又は誘導体は、配列番号2のアミノ酸配列、又は配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは更に高いパーセンテージで同一である配列を含んでよい。本明細書に記載のいくつかの実施形態では、SARS-CoV-2 S糖タンパク質の断片又は誘導体は、配列番号2のアミノ酸14~684に対して少なくとも65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は更に高いパーセンテージのアミノ酸配列同一性を有する配列を含むことができる。本明細書に記載のいくつかの実施形態では、SARS-CoV-2 S糖タンパク質の断片又は誘導体は、配列番号2のアミノ酸319~541に対して少なくとも74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は更に高いパーセンテージのアミノ酸配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0171】
SARS-CoV-2バリアント系統B.1.1.7、(20I/501Y.V1又はVOC 202012/01)、B.1.351(20H/501Y.V2)、P.1(B1.1.28.1又は20J/501.V3、484K.V2)、B.1.429(CAL.20C、CA VUI)、B.1.2 20C-US、B1.1.17、20E(EU1)、20A.EU2、N439K-D614G、ミンククラスター5バリアントに関する、挿入、欠失、及び/又は置換のためのアミノ酸残基の位置の非限定的な例を、表2に示す。
【0172】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0173】
特定の実施形態では、SARS-CoV-2 S糖タンパク質断片又はその誘導体は、D614G変異を含む。D614G変異を含み得るSARS-CoV-2 S糖タンパク質断片又はその誘導体は、配列番号3のアミノ酸配列、又は配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは更に高いパーセンテージで同一である配列を含んでよい。
【0174】
特定の実施形態では、SARS-CoV-2 S糖タンパク質断片又はその誘導体は、本明細書で開示される表3に記載の様々なSARS-CoV-2 S糖タンパク質のいずれか、又はそのいずれの断片若しくは誘導体であってよい。SARS-Cov-2 S糖タンパク質は例えば、WTスパイク三量体、オミクロンBA.1、オミクロンBA.2、オミクロンBA.3、アルファ、ベータ、デルタ、若しくはガンマ、又はこれらの断片若しくは誘導体であってよい。
【0175】
特定の実施形態では、SARS-CoV-2 S糖タンパク質断片又はその誘導体は、R682G、R683S、R685S、K986P、及び/又はV987P変異を含む。R682G、R683S、R685S、K986P、及び/又はV987P変異を含み得るSARS-CoV-2 S糖タンパク質断片又はその誘導体は、配列番号5のアミノ酸配列、又は配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは更に高いパーセンテージで同一である配列を含んでよい。
【0176】
いくつかの実施形態では、SARS-CoV-2 S糖タンパク質断片又はその誘導体は、配列番号6のアミノ酸配列、又は配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは更に高いパーセンテージで同一である配列を含んでよい。
【0177】
本開示の特定の実施形態では、上記SARS-CoV-2 S糖タンパク質又はその断片若しくは誘導体は、SARS-CoV-2の2つ以上の異なる株、変異体又はバリアントに由来するコンセンサス配列を含むことができる。他の実施形態では、本開示の方法は、SARS-CoV-2の2つ以上の異なる株、変異体又はバリアントに由来するSARS-CoV-2 S糖タンパク質(又はその断片若しくは誘導体)の混合物を使用する。
【0178】
特定の実施形態では、本明細書で開示される1つ以上の抗原、例えばSARS-CoV-2 S糖タンパク質、又はその断片若しくは誘導体は、検出可能な標識を含んでよい。特定の実施形態では、上記1つ以上の抗原はレポーター分子を含んでよい。上記検出可能な標識又はレポーター分子は:H、14C、32P、35S、又は125I等の放射性同位体;フルオレセインイソチオシアネート若しくはローダミン等の蛍光若しくは化学発光部分;又はアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、若しくはルシフェラーゼ等の酵素とすることができる。いくつかの実施形態では、上記検出可能な標識又はレポーター分子は、hisタグ又はポリヒスチジンタグとすることができる。いくつかの実施形態では、上記検出可能な標識又はレポーター分子は、C末端mFcタグ、myc-myc-ヒスチジンタグ、又はmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグとすることができる。非限定的な例として、本明細書で開示されるSARS-CoV-2糖タンパク質は、Fcタグ、例えばマウスFcタグ(mFc)を含んでよい。いくつかの実施形態では、mFCを含むSARS-CoV-2 S糖タンパク質断片又はその誘導体は、配列番号4のアミノ酸配列、又は配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは更に高いパーセンテージで同一である配列を含んでよい。別の非限定的な例として、本明細書で開示されるSARS-CoV-2糖タンパク質は、myc-myc-ヘキサヒスチジンタグを含んでよい。いくつかの実施形態では、myc-myc-ヘキサヒスチジンタグを含むSARS-CoV-2 S糖タンパク質断片又はその誘導体は、配列番号5のアミノ酸配列、又は配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは更に高いパーセンテージで同一である配列を含んでよい。
【0179】
本開示の特定の態様及び実施形態では、本明細書で開示される方法は、SARS-CoV-1 S糖タンパク質又はその断片若しくは誘導体を含んでよい。非限定的な例として、SARS-CoV-1 S糖タンパク質又はその断片若しくは誘導体は、配列番号11のアミノ酸配列、又は配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、若しくは更に高いパーセンテージで同一である配列を含んでよい。
【0180】
本明細書で開示される抗原は、抗原結合部位によって認識され得る抗原の部分構造、例えばポリペプチド又は炭水化物構造を含み得るエピトープとは区別できる。特に、本明細書で開示されるエピトープは、抗原結合タンパク質の特定の抗原結合部位、例えば抗体分子の可変領域(パラトープとして知られる)と相互作用する、抗原決定基を含んでよい。本明細書で開示される単一の抗原が、2つ以上のエピトープを有していてもよい。従って、異なる抗体は抗原の異なる領域に結合でき、異なる生物学的効果を有することができる。本明細書で開示されるエピトープは、抗原上の、B細胞及び/又はT細胞が応答する部位も含んでよい。エピトープは、抗原の、抗体が結合する領域も含んでよい。
【0181】
エピトープは、構造的なもの又は機能的なものとして定義できる。機能的エピトープは一般に構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接的に寄与する残基を有する。エピトープは、線状であるか、又は立体構造、即ち非線状アミノ酸からなるものであってよい。特定の実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、又はスルホニル基といった分子の化学的に活性な表面基である決定因子を含んでよく、また特定の実施形態では、特定の3次元構造的特徴、及び/又は特定の電荷的特徴を有してよい。
【0182】
エピトープは、B細胞エピトープ及びT細胞エピトープを含むことができる。B細胞エピトープは、特定の抗体産生性B細胞による認識のために必要なペプチド配列である。B細胞エピトープは、抗原の、抗体によって認識される特定の領域を指す。抗体の、エピトープに結合する部分は、パラトープと呼ばれる。エピトープは、構造及びパラトープとの相互作用に基づいて、立体構造エピトープ又は線状エピトープであってよい。線状エピトープ、即ち連続エピトープは、タンパク質のある特定の領域の一次アミノ酸配列によって定義される。抗体と相互作用する複数の配列は、タンパク質上で隣り合って順に位置しており、エピトープは通常、単一のペプチドによって模倣できる。立体構造エピトープは、天然タンパク質の立体構造によって定義されるエピトープである。これらのエピトープは連続していてよく、又は不連続であってもよく、即ちエピトープの複数の構成要素を、折りたたまれた天然タンパク質構造内で互いに接近した、タンパク質の異なる複数の部分に位置させることができる。
【0183】
T細胞エピトープは、APC上のタンパク質に関連して、特定のT細胞による認識のために必要なペプチド配列である。T細胞エピトープは細胞内でプロセシングされ、APCの表面に提示され、そこでMHCクラスII及びMHCクラスIを含むMHC分子に結合する。ペプチドエピトープは、エピトープとして適切であるいずれの長さであってもよい。いくつかの実施形態では、ペプチドエピトープは9~30アミノ酸である。例えば上記長さは、9~22、9~29、9~28、9~27、9~26、9~25、9~24、9~23、9~21、9~20、9~19、9~18、10~22、10~21、10~20、11~22、22~21、11~20、12~22、12~21、12~20,13~22、13~21、13~20、14~19、15~18、又は16~17アミノ酸であってよい。
【0184】
抗原結合タンパク質、例えば抗体又は断片又はポリペプチドのエピトープを決定する方法としては、アラニンスキャニング変異分析、ペプチドブロット分析(Reineke (2004) Methods Mol. Biol.248: 443-63)、ペプチド切断分析、結晶学的研究、及びNMR分析が挙げられる。更に、抗原のエピトープ切除、エピトープ抽出、及び化学修飾といった方法も採用できる(Tomer (2000) Prot. Sci.9: 487-496)。抗原結合タンパク質(例えば抗体又は断片又はポリペプチド)が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を特定するために使用できる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である。一般に、水素/重水素交換法は、関心対象のタンパク質を重水素標識するステップと、これに続いて、重水素標識された上記タンパク質に、抗原結合タンパク質、例えば抗体又は断片又はポリペプチドを結合させるステップとを含む。次に、タンパク質/抗原結合タンパク質複合体は水中に移され、抗体複合体によって保護されたアミノ酸内の交換可能なプロトンは、界面の一部になっていないアミノ酸内の交換可能なプロトンに比べて遅い速度での、重水素から水素への逆交換を受ける。その結果、タンパク質/抗原結合タンパク質の界面の一部を形成するアミノ酸は、重水素を保持でき、従って界面に含まれないアミノ酸に比べて相対的に高い質量を示すことができる。抗原結合タンパク質(例えば抗体又は断片又はポリペプチド)の解離後、標的タンパク質はプロテアーゼ切断及び質量分析に供され、これにより、抗原結合タンパク質が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識残基が明らかになる。
【0185】
特定の実施形態では、本明細書で開示されるエピトープは、免疫優性エピトープを含んでよい。免疫優性エピトープは、抗原内のエピトープであって、宿主において免疫応答を選択的に引き起こすことによって、該抗原の他のエピトープの効果又は機能を部分的に又は完全に排除に排除する、エピトープを含んでよい。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される1つ以上の第1のエピトープは、免疫優性エピトープである。いくつかの実施形態では、上記免疫優性エピトープは、上記抗原が由来する病原体の異なる株又は種の間で、上記抗原の他のエピトープよりも保存性が低い。
【0186】
エピトープの非限定的な例としては、本明細書に記載の抗SARS-CoV-2 S糖タンパク質抗体E10933、E10987、E14315、及びE15160によって標的とされるエピトープが挙げられる。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の第1のエピトープは、本明細書に記載の抗SARS-CoV-2 S糖タンパク質抗体E10933、E10987、E14315、又はE15160によって標的とされる1つ以上のエピトープを含んでよい。SARS CoV-2に対する抗体によって標的とすることができるエピトープの非限定的な例は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本出願に援用される米国特許第10,787,501号明細書に記載されている。
【0187】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の第1のエピトープは、本明細書で開示されているもの等のSARS-CoV-2 S糖タンパク質のRBDドメインに含有される配列を含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の第1のエピトープは、配列番号1のアミノ酸319~541に含有される配列、又は配列番号1のアミノ酸319~541に含有される上述の配列に対して少なくとも77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージのアミノ酸配列同一性を有する配列を含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の第1のエピトープは、配列番号2のアミノ酸319~541に含有される配列、又は配列番号2のアミノ酸319~541に含有される上述の配列に対して少なくとも77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージのアミノ酸配列同一性を有する配列を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質抗原の1つ以上の第1のエピトープは、例えば上記SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内に含まれる、1つ以上の中和エピトープであってよい。いくつかの実施形態では、上記中和エピトープは、本明細書で開示される抗体、例えば中和抗体によって標的とされ得る。
【0191】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の第1のエピトープは、本明細書に記載の抗インフルエンザヘマグルチニン(HA)抗体E4123によって標的とされるエピトープを含む。いくつかの実施形態では、上記エピトープは、HAヘッド上のシアル酸受容体結合部位(RBS)内に含まれていてよい。
【0192】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるインフルエンザヘマグルチニン(HA)抗原の1つ以上の第1のエピトープは、例えばHAヘッド上のシアル酸受容体結合部位(RBS)内に含まれた、1つ以上の中和エピトープであってよい。いくつかの実施形態では、上記中和エピトープは、本明細書で開示される抗体、例えば中和抗体によって標的とされ得る。
【0193】
抗体
特定の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、即ち2つの重鎖(heavy chain:HC)及び2つの軽鎖(light chain:LC)を含む免疫グロブリン分子(即ち「完全抗体分子(full antibody molecule)」)と、その多量体(例えばIgM)とを含んでよい。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」又は「VH」)と、(ドメインCH1、CH2及びCH3で構成された)重鎖定常領域とを含んでよい。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR」又は「VL」)と、軽鎖定常領域(CL)とを含んでよい。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的保存性が高い領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる可変性が極めて高い領域に更に細分化できる。VH及びVLはそれぞれ3つのCDR及び4つのFRを含んでよく、これらはアミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖CDRはHCDR又はCDR-Hと呼ぶこともでき、上述のように番号が付けられる(例えばHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又はCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3)。同様に、軽鎖CDRはLCDR又はCDR-Lと呼ぶこともでき、LCDR1、LCDR2及びLCDR3、又はCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3のように番号が付けられる。本開示の特定の実施形態では、抗体(又はその抗原結合断片)のFRは、ヒト生殖系配列と同一であるか、又は天然で若しくは人工的に修飾されている。
【0194】
特定の実施形態では、本開示は、モノクローナル抗体及びその抗原結合断片を含む。本明細書で開示されるモノクローナル抗体は、略均質な抗体の集団を含むことができ、即ちこの集団を構成する抗体分子は、少量存在し得る、自然発生する可能性がある変異体を除いて、アミノ酸配列が同一である。特定の実施形態では、本明細書で開示される組成物は、1つ以上の第1のエピトープ、例えば抗原の免疫優性エピトープを標的とする、2つ以上のモノクローナル抗体(mAb)を含んでよい。上記免疫優性エピトープは、上記抗原が由来する病原体の異なる株又は種の間で、上記抗原の他のエピトープよりも保存性が低くなり得る。
【0195】
本開示のいくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗体又は抗原結合断片は、例えばIgA型(例えばIgA1若しくはIgA2)、IgD型、IgE型、IgG型(例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)、又はIgM型の、重鎖定常ドメインを含んでよい。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、例えばκ又はλ型の、軽鎖定常ドメインを含んでよい。
【0196】
いくつかの実施形態では、上記抗体は、ヒト抗体又はその抗原結合断片を含んでよい。本明細書中で使用される場合、抗体等の「ヒト抗原結合タンパク質」は、ヒト細胞内に存在するものか、マウス細胞を例とする非ヒト細胞に移植されたものかにかかわらず、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含む。本開示のヒトmAbは、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えばインビトロでのランダムな若しくは部位特異的な変異の導入によって、又はインビボでの体細胞の変異によって導入される変異体)を含むことができる。
【0197】
特定の実施形態では、本開示は、キメラ抗体及びその抗原結合断片を含んでよい。本明細書で開示されるキメラ抗体は、第1の抗体に由来する可変ドメインと、第2の抗体に由来する定常ドメインとを有する抗体を含んでよく、上記第1の抗体及び上記第2の抗体は異なる種に由来するものである。
【0198】
本開示は更に、ハイブリッド抗原結合タンパク質、例えば抗体及びその抗原結合断片、並びにその使用方法を含む。本開示のハイブリッド抗体は、第1の抗体に由来する可変ドメインと、第2の抗体に由来する定常ドメインとを有する抗体を含んでよく、上記第1の抗体及び上記第2の抗体は異なる動物に由来するものであるか、又は上記可変ドメインは第1の動物に由来するものであるものの、上記定常領域はそうではない。例えば、可変ドメインは、ヒトから単離された抗体から得ることができ、また該抗体から単離されていない固定された定常領域と共に発現させることができる。ハイブリッド抗体は合成抗体であり、それらが含有する可変領域及び定常領域が単一の天然のソースから単離されたものではないため、天然には存在しない。
【0199】
本開示は更に、組換え抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、本開示の組換え抗体は、DNAスプライシング及びトランスジェニック発現を例として含む組換えDNA技術として当該技術分野で公知の技術又は方法によって、生成、発現、単離、又は取得された分子を含んでよい。この用語は、非ヒト哺乳類(トランスジェニック非ヒト哺乳類、例えばトランスジェニックマウスを含む)、若しくは細胞(例えばCHO細胞)発現系、若しくは非ヒト細胞発現系において発現された抗体、又は組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体を含む。いくつかの実施形態では、組換え抗体は、生物(例えばマウス又はヒト)から単離された抗体と配列を共有しているが、組換えDNA技術によって発現されたものである。このような抗体は、生物から単離された上記抗体とは異なる翻訳後修飾(例えばグリコシル化)を有することができる。
【0200】
特定の実施形態では、本明細書で開示される抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で開示されるSARS-CoV-2抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とすることができる。いくつかの実施形態では、上記抗原はSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質であり、上記第1のエピトープは、上記SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内に含まれる中和エピトープである。理論によって束縛されることを望むものではないが、コロナウイルスのRBDドメインは、立ち上がった(standing-up)位置と横になった(lying-down)位置とを常に切り替えており(Yuan 2017及びGui 2017)、これは、一部の中和抗体の標的化が状況に依存している可能性があることを示唆している。スパイクのタンパク質分解活性化も、膜融合及び細胞へのウイルスの侵入に必要であるため、S1/S2切断境界も中和抗体の標的となり得る。
【0201】
いくつかの実施形態では、上記抗体及び/又はその抗原結合断片は、本明細書に記載の抗SARS-CoV-2 S糖タンパク質抗体E10933、E10987、E14315、及びE15160、又はこれらの抗原結合断片、又はこれらの組み合わせから選択できる。いくつかの実施形態では、上記抗体はモノクローナル抗体(mAb)である。
【0202】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmAbは、mAb E10933であってよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmAbは、mAb E10987であってよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmAbは、mAb E14315であってよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmAbは、mAb E15160であってよい。
【0203】
本開示のいくつかの実施形態では、本開示の抗体及びその抗原結合断片は:配列番号20に記載のHCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する重鎖;及び/又は配列番号21に記載のLCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるHCの重鎖可変(VH)領域は、配列番号20のアミノ酸1~120に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるLCの軽鎖可変(VL)領域は、配列番号21のアミノ酸1~111に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0204】
本開示のいくつかの実施形態では、本開示の抗体及びその抗原結合断片は:配列番号22に記載のHCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する重鎖;及び/又は配列番号23に記載のLCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるHCの重鎖可変(VH)領域は、配列番号22のアミノ酸1~120に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるLCの軽鎖可変(VL)領域は、配列番号23のアミノ酸1~107に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0205】
本開示のいくつかの実施形態では、本開示の抗体及びその抗原結合断片は:配列番号24に記載のHCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する重鎖;及び/又は配列番号25に記載のLCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるHCの重鎖可変(VH)領域は、配列番号24のアミノ酸1~121に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるLCの軽鎖可変(VL)領域は、配列番号25のアミノ酸1~108に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0206】
本開示のいくつかの実施形態では、本開示の抗体及びその抗原結合断片は:配列番号26に記載のHCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する重鎖;及び/又は配列番号27に記載のLCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるHCの重鎖可変(VH)領域は、配列番号26のアミノ酸1~123に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるLCの軽鎖可変(VL)領域は、配列番号27のアミノ酸1~107に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むことができる。
【0207】
特定の実施形態では、本明細書で開示される1つの抗体又は抗原結合断片は、本明細書で開示されるインフルエンザ抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的としてよい。いくつかの実施形態では、上記抗原はインフルエンザヘマグルチニン(HA)であり、上記1つ以上の第1のエピトープは、HAヘッド上のシアル酸受容体結合部位(RBS)に含まれている。
【0208】
いくつかの実施形態では、上記抗体及び/又はその抗原結合断片は、本明細書に記載の抗インフルエンザヘマグルチニン(HA)抗体E4123であってよい。いくつかの実施形態では、上記抗体及び/又は抗原結合断片は、HAヘッド上のシアル酸受容体結合部位(RBS)に含まれるエピトープを標的としてよい。
【0209】
バリアント抗体又はその抗原結合断片は、例えばミスセンス変異(例えば保存的置換)、ナンセンス変異、欠失、又は挿入といった1つ以上(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個)の変異を除いて本明細書に記載されているアミノ酸配列を含む、ポリペプチドを含んでよい。
【0210】
核酸分子
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗原又は抗体は、上記抗原及び/又は抗体をコードする1つ以上の核酸分子として対象に投与できる。従っていくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で開示される抗原をコードする核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする本明細書に記載の1つ以上の抗体又は抗体断片をコードする、核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、上記抗原と、上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体又は抗体断片とをそれぞれコードする、1つ以上の核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、上記抗原をコードする核酸分子と、1つ以上の抗体又は抗体断片をコードする核酸分子とは、同時に投与される。
【0211】
いくつかの実施形態では、本開示は、抗原をコードする核酸分子と、本開示の核酸分子によってコードされる上記抗原の1つ以上のエピトープを標的とする1つ以上の抗体とを提供する。
【0212】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸分子はDNA分子である。
【0213】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸分子はRNA分子である。ある具体的な実施形態では、核酸分子はメッセンジャーRNA(mRNA)分子である。抗原をコードする1つ以上のmRNA分子が細胞へと送達されると、細胞内機構によってmRNAをポリペプチドに加工でき、この細胞内機構は続いて、上記ポリペプチドを、感染症又は癌に対する免疫反応を刺激できる抗原性断片へと加工できる。
【0214】
本開示による核酸分子は、一本鎖若しくは二本鎖、線状若しくは環状、又は特にmRNAの形態であってよい。
【0215】
本明細書に記載の核酸分子は、抗原及び/又は上記抗原の1つ以上のエピトープを標的とする1つ以上の抗体をコードする、1つ以上のオープンリーディングフレームを含む。本明細書中で使用される場合、用語「オープンリーディングフレーム(open reading frame)」、略称「ORF」は、核酸分子の、ポリペプチドをコードするセグメント又は領域を指す。ORFは、開始コドンで始まり終止コドンで終わる、重複しない複数の連続したフレーム内コドンを含み、リボソームによって翻訳される。
【0216】
本開示の核酸分子は、本明細書に記載の抗原及び/又は1つ以上の抗体をコードする、モノシストロン性、バイシストロン性、又はマルチシストロン性のものであってよい。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は少なくとも2つのコード領域を含有してよく、そのうちの1つは抗原をコードし、それ以外は、上記抗原の1つ以上のエピトープを標的とする1つ以上の抗体をコードする。上記1つ以上の抗体、又は1つ以上のエピトープは、同一であっても異なっていてもよい。非限定的な例として、本開示の核酸分子は、抗原をコードするもの、上記抗原の1つのエピトープを標的とする1つの抗体をコードするもの、及び上記抗原の別のエピトープを標的とする別の抗体をコードするものの、3つのコード領域を含有してよい。他の実施形態では、本開示の核酸分子は、1つのコード領域内で、抗原及び1つ以上の抗体をコードしてよい。
【0217】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、1つ以上の内部リボソーム進入部位(internal ribosomal entry site:IRES)を含んでよい。IRESは、唯一のリボソーム結合部位として機能できるが、リボソームによって互いに独立して翻訳されることになる抗原及び/又は1つ以上の抗体をコードする本開示による核酸分子を提供する役割も果たすことができる(「マルチシストロン構造(multicistronic construct)」)。このような核酸分子は例えば、重鎖及び軽鎖の対応するコード領域をIRES配列で互いに連結することによって、抗体の完全な配列をコードできる。しかしながら、本開示の核酸分子によってコードされることになる重鎖及び軽鎖は、単一の「シストロン(cistron)」内に存在してもよい。いくつかの実施形態では、軽鎖配列は重鎖配列に対して3’側にある。いくつかの実施形態では、軽鎖配列は重鎖配列に対して5’側にある。本明細書に記載のIRES配列は、特に、本開示による核酸分子によってコードされる軽鎖及び重鎖の同時かつ均一な発現のために採用できる。本開示で使用できるIRES配列の非限定的な例としては、古典的豚コレラウイルス(classical swine fever virus:CSFV)、コオロギ麻痺ウイルス(cricket paralysis virus:CrPV)、脳心筋炎ウイルス(encephalomyocarditis virus:ECMV)、ピコルナウイルス(例えば口蹄疫ウイルス(FMDV))、(ペストウイルス:CFFV)、ポリオウイルス(polio virus:PV)、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)、マウス白血病ウイルス(murine leukoma virus:MLV)、サル免疫不全ウイルス(simian immunodeficiency virus:SIV)、又はスーパーIRES配列に由来するものが挙げられる。
【0218】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、1つ以上の自己切断ペプチドをコードしてよい。自己切断ドメインをコードする「自己切断ペプチド(self-cleaving peptide)」又は「自己切断配列(self-cleaving sequence)」はそれぞれ、タンパク質翻訳中にリボソームスキッピングを誘導して切断をもたらすペプチド又はコード配列である。プロテアーゼ切断部位の例は、ポティウイルスNIaプロテアーゼ(例えばタバコエッチウイルスプロテアーゼ)、ポティウイルスHCプロテアーゼ、ポティウイルスP1(P35)プロテアーゼ、ビモウイルスNIaプロテアーゼ、ビモウイルスRNA-2-コード化プロテアーゼ、アフトウイルスLプロテアーゼ、エンテロウイルス2Aプロテアーゼ、ライノウイルス2Aプロテアーゼ、ピコルナウイルス3Cプロテアーゼ、コモウイルス24Kプロテアーゼ、ネポウイルス24Kプロテアーゼ、RTSV(rice tungro spherical virus:イネツングロ球状ウイルス)3C様プロテアーゼ、PYVF(parsnip yellow fleck virus:パースニップ黄斑ウイルス)3C様プロテアーゼ、トロンビン、因子Xa、及びエンテロキナーゼの切断部位である。その切断のストリンジェンシーの高さから、TEV(tobacco etch virus:タバコエッチウイルス)プロテアーゼ切断部位が特に好ましい。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、重鎖配列と軽鎖配列との間の自己切断ペプチジルドメインをコードする自己切断ペプチジル配列を含む。好ましい自己切断ペプチドとしては、ポティウイルス及びカルジオウイルス2Aペプチドに由来するものが挙げられる。いくつかの実施形態では、自己切断ペプチドは、FMDV(口蹄疫ウイルス)、ウマ鼻炎Aウイルス、トセアアシグナ(Thosea asigna)ウイルス、及びブタテシオウイルスに由来する2Aペプチドから選択される。
【0219】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される自己切断ペプチジルリンカー配列は、2A配列である。いくつかの実施形態では、上記自己切断ペプチジルリンカー配列は、T2A配列又はP2A配列である。いくつかの実施形態では、上記自己切断ペプチジルリンカー配列は、口蹄疫ウイルス配列である。いくつかの実施形態では、上記自己切断ペプチジルリンカー配列は、PVKQLLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号15)である。いくつかの実施形態では、上記自己切断ペプチジルリンカー配列は、ウマ鼻炎Aウイルス配列である。いくつかの実施形態では、上記自己切断ペプチジルリンカー配列は、QCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号16)である。複数の実施形態では、上記自己切断ペプチジルリンカー配列は、ブタテシオウイルス1配列である。複数の実施形態では、上記自己切断ペプチジルリンカー配列は、ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号17)である。いくつかの実施形態では、上記自己切断ペプチジルリンカー配列は、トセアアシグナ(Thosea asigna)ウイルス配列である。いくつかの実施形態では、上記自己切断ペプチジルリンカー配列は、EGRGSLLTCGDVESNPGP(配列番号18)である。
【0220】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、SARS-CoV-2 S糖タンパク質又はそのバリアント及び/若しくは断片であるポリペプチド配列をコードする、ヌクレオチド配列を含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は:配列番号1~6のいずれか1つのポリペプチド配列又はそのバリアント及び/若しくは断片に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列をコードする、ヌクレオチド配列を含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、本明細書に記載の抗SARS-CoV-2 S糖タンパク質mAb E10933、E10987、E14315、又はE15160から選択された1つ以上の抗体をコードする、1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、本明細書に記載の抗SARS-CoV-2 S糖タンパク質mAb E10933、E10987、E14315、又はE15160から選択された2つの抗体をコードする、1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、本明細書に記載の抗SARS-CoV-2 S糖タンパク質mAb E10933、E10987、E14315、又はE15160から選択された3つの抗体をコードする、1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、本明細書に記載の抗SARS-CoV-2 S糖タンパク質mAb E10933、E10987、E14315、又はE15160から選択された4つの抗体をコードする、1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
【0223】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は:配列番号20に記載のHCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する重鎖;及び/又は配列番号21に記載のLCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖をコードする、1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は:配列番号20のアミノ酸1~120に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、HCの重鎖可変(VH)領域;及び/又は配列番号21のアミノ酸1~111に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むLCの軽鎖可変(VL)領域をコードする、1つ以上のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0224】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は:配列番号22に記載のHCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する重鎖;及び/又は配列番号23に記載のLCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖をコードする、1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は:配列番号22のアミノ酸1~120に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、HCの重鎖可変(VH)領域;及び/又は配列番号23のアミノ酸1~107に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むLCの軽鎖可変(VL)領域をコードする、1つ以上のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0225】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は:配列番号24に記載のHCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する重鎖;及び/又は配列番号25に記載のLCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖をコードする、1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は:配列番号24のアミノ酸1~121に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、HCの重鎖可変(VH)領域;及び/又は配列番号25のアミノ酸1~108に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むLCの軽鎖可変(VL)領域をコードする、1つ以上のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0226】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は:配列番号26に記載のHCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する重鎖;及び/又は配列番号27に記載のLCアミノ酸配列に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖をコードする、1つ以上のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は:配列番号26のアミノ酸1~123に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、HCの重鎖可変(VH)領域;及び/又は配列番号27のアミノ酸1~107に対して少なくとも70%(例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは更に高いパーセンテージ)のアミノ酸配列同一性を有する配列を含むLCの軽鎖可変(VL)領域をコードする、1つ以上のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0227】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は:配列番号1~6のいずれか1つのポリペプチド配列又はそのバリアント及び/若しくは断片に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列をコードする、ヌクレオチド配列;並びに抗SARS-CoV-2 S糖タンパク質mAb E10933、E10987、E14315、又はE15160から選択された1つ以上(例えば2つ、3つ、4つ)の抗体をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
【0228】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、インフルエンザヘマグルチニン又はそのバリアント及び/若しくは断片であるポリペプチド配列をコードする、ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、配列番号19のいずれか1つのポリペプチド配列又はそのバリアント及び/若しくは断片に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列をコードする、ヌクレオチド配列を含む。
【0229】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗原及び/又は1つ以上の抗体をコードするヌクレオチド配列は、発現のためのプロモーターに作動可能に連結される。「プロモーター」は、ある特定のポリヌクレオチド配列について適切な転写開始部位でRNA合成を開始するようにRNAポリメラーゼに指示できるTATAボックスを通常は含む、DNAの調節領域である。プロモーターは更に、転写開始速度に影響を及ぼす他の領域も含んでよい。本明細書中で使用される場合、用語「プロモーター」はエンハンサーを包含する。本明細書で開示されるプロモーター配列は、作動可能に連結されたポリヌクレオチドの転写を調節する。プロモーターは、本明細書で開示される細胞型(例えば真核細胞、非ヒト哺乳類細胞、ヒト細胞、げっ歯類細胞、多能性細胞、一細胞期胚、分化細胞、又はこれらの組み合わせ)のうちの1つ以上において活性を有することができる。プロモーターは例えば、構成的に活性なプロモーター、条件的プロモーター、誘導性プロモーター、時間的に制限されたプロモーター(例えば発生的に調節されたプロモーター)、又は空間的に制限されたプロモーター(例えば細胞特異性若しくは組織特異性プロモーター)とすることができる。
【0230】
構成的プロモーターの例としては、限定するものではないが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1a、SV40、PGK1(ヒト又はマウス)、Ubc、ヒトβアクチン、CAG、Ac5、ポリへドリン、TEF1、GDS、CaMV35S、Ubi、H1、及びU6プロモーターが挙げられる。
【0231】
誘導性プロモーターとしては、例えば化学的に調節されたプロモーター、及び物理的に調節されたプロモーターを挙げることができる。化学的に調節されたプロモーターとしては、例えばアルコール調節プロモーター(例えばアルコールデヒドロゲナーゼ(alcA)遺伝子プロモーター)、テトラサイクリン調節プロモーター(例えばテトラサイクリン応答性プロモーター、テトラサイクリンオペレーター配列配列(tetO)、tet-Onプロモーター、tet-Offプロモーター)、ステロイド調節プロモーター(例えばラットグルココルチコイド受容体、エストロゲン受容体のプロモーター、若しくはエクジソン受容体のプロモーター)、又は金属調節プロモーター(例えば金属タンパク質プロモーター)が挙げられる。物理的に調節されたプロモーターとしては、例えば温度調節プロモーター(例えばHsp70及びHsp90由来のプロモーターといった熱ショックプロモーター)、並びに光調節プロモーター(例えば光誘導性プロモーター又は光抑制性プロモーター)が挙げられる。他の誘導性プロモーターとしては、lac、sp6、及びT7プロモーターが挙げられる。
【0232】
組織特異性プロモーターとしては、例えばニューロン特異性プロモーター、グリア特異性プロモーター、筋細胞特異性プロモーター、心臓細胞特異性プロモーター、腎細胞特異性プロモーター、骨細胞特異性プロモーター、内皮細胞特異性プロモーター、又は免疫細胞特異性プロモーター(例えばB細胞プロモーター若しくはT細胞プロモーター)を挙げることができる。
【0233】
発生的に調節されたプロモーターとしては、例えば発生の胚段階の間のみ、又は生体細胞内でのみ活性を有するプロモーターが挙げられる。
【0234】
本開示の核酸分子で使用できるプロモーターの他の非限定的な例としては、CB7/CAGプロモーター及び関連する上流調節配列、EF-1 αプロモーター、mU1aプロモーター、UB6プロモーター、ニワトリβアクチン(chicken beta-actin:CBA)プロモーター、並びに肝臓特異性プロモーター(TBG(Thyroxine-binding Globulin:チロキシン結合グロブリン)プロモーター、APOA2プロモーター、SERPINA1(hAAT)プロモーター、ApoE.hAAT等)、又は筋肉特異性プロモーター(ヒトデスミンプロモーター、CK8プロモーター若しくはPitx3プロモーター等)、誘導性プロモーター(低酸素誘導性プロモーター若しくはラパマイシン誘導性プロモーター等)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0235】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は1つのプロモーターを含んでよい。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は2つ以上(例えば2つ、3つ、4つ、又は5つ以上)のプロモーターを含んでよい。
【0236】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、本明細書に記載の抗原及び/又は1つ以上の抗体と融合したシグナルペプチドをコードできる。このようなシグナルペプチドは、長さが通常15~60アミノ酸の、コードされたタンパク質のN末端に局在化されることが好ましい配列である。シグナルペプチドは典型的には、分泌経路の膜を横断する転座に必要とされ、従って、真核生物及び原核生物の両方において、分泌経路へのほとんどのタンパク質の進入を全般的に制御する。真核生物では、新生前駆体タンパク質のシグナルペプチドは、リボソームを粗面小胞体(endoplasmic reticulum:ER)膜へと導き、プロセシングのために、成長するペプチド鎖の、上記膜を横断する輸送を開始させる。ERプロセシングは成熟タンパク質を生成し、シグナルペプチドは、典型的には宿主細胞のER常在シグナルペプチダーゼによって前駆体タンパク質から切断されるか、又は切断されないまま残存して膜アンカーとして機能する。シグナルペプチドは、タンパク質の細胞膜への標的化を促進することもできる。
【0237】
いくつかの実施形態では、シグナルペプチドの長さは15~60アミノ酸であってよい。例えば、シグナルペプチドの長さは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60アミノ酸であってよい。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドの長さは、20~60、25~60、30~60、35~60、40~60、45~60、50~60、55~60、15~55、20~55、25~55、30~55、35~55、40~55、45~55、50~55、15~50、20~50、25~50、30~50、35~50、40~50、45~50、15~45、20~45、25~45、30~45、35~45、40~45、15~40、20~40、25~40、30~40、35~40、15~35、20~35、25~35、30~35、15~30、20~30、25~30、15~25、20~25、又は15~20アミノ酸である。
【0238】
シグナルペプチドは、(本質的に関心対象の抗原以外の遺伝子の発現を調節する)異種遺伝子、又は関心対象の抗原をコードする同一の遺伝子に由来するものであってよい。本開示に従って使用できるシグナル配列の例としては、限定するものではないが、従来型及び非従来型のMHC分子、サイトカイン、カルレティキュリン及びカルネキシン、Erp57、免疫グロブリン、インバリアント鎖、Lamp1、タパシン、並びに膜に位置する更なるエンドソーム・リソソーム又は小胞体関連タンパク質の全てのシグナル配列が挙げられる。
【0239】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は化学修飾されておらず、標準的なリボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示のヌクレオチド及びヌクレオシドは、転写されたRNA中に存在するヌクレオシド残基(例えばA、G、C、又はU)等の標準的なヌクレオシド残基を含む。いくつかの実施形態では、本開示のヌクレオチド及びヌクレオシドは、DNA中に存在するデオキシリボヌクレオシド残基(例えばdA、dG、dC、又はdT)等の標準的なデオキシリボヌクレオシド残基を含む。特段の注記がある場合を除いて、本出願に記載のポリヌクレオチド配列は代表的なDNA配列中の「T」を列挙することになるが、配列がRNAを表す場合には「T」が「U」に置き換えられることは、当業者には理解されるだろう。
【0240】
いくつかの実施形態では核酸分子は化学修飾されている。核酸分子の化学修飾は、本開示の分子の特定の望ましい特性を促進でき、例えば上記分子に対する免疫応答のタイプに影響を及ぼすことができる。例えば、mRNAの適切な化学修飾により、mRNA成分に対する望ましくない自然免疫応答を低減でき、及び/又は関心対象の抗原若しくは抗体のタンパク質発現のレベルを望ましいものにするのを促進できる。
【0241】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、化学修飾核酸塩基を含む。修飾核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、例えばmRNA、DNA-RNAハイブリッド、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA:β-D-リボ構造を有するLNA、α-L-リボ構造を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2’-アミノ官能化を有する2アミノ-LNA、及び2’-アミノ官能化を有する2’-アミノ-a-LNAを含む)、エチレン核酸(ENA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)、並びに/又はこれらのキメラ及び/若しくは組み合わせであってよく、あるいはこれらを含んでよい。
【0242】
修飾ヌクレオチドは、1つ以上の修飾又は非天然ヌクレオシドを含めるための、例えば化学的、酵素的、又は組換え的な方法といったいずれの有用な方法によって、合成できる。ポリヌクレオチドは、ヌクレオシドが連結された1つ以上の領域を含むことができる。このような領域は、様々な骨格結合を有することができる。上記結合は、標準的なホスホジエステル結合であってよく、その場合ポリヌクレオチドはヌクレオチドの領域を含むことになる。
【0243】
本明細書で開示される修飾核酸は、様々な異なる修飾を含むことができる。いくつかの実施形態では、上記修飾核酸は、1つ、2つ、又は3つ以上の(場合によっては異なる)ヌクレオシド又はヌクレオチド修飾を含有する。いくつかの実施形態では、修飾核酸分子は、細胞に導入されたときに、未修飾の核酸分子に比べて、例えば細胞内でのタンパク質発現の改善、免疫原性の低下、又は分解の減少といった1つ以上の望ましい特性を示すことができる。
【0244】
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは:同じヌクレオシドタイプの全て若しくはいずれかの均一な化学修飾;又は同じヌクレオシドタイプの全て若しくはいずれかにおける同一の開始修飾の単なる漸減によって生成される、複数の修飾の集合;又は全てのウリジンが例えばシュードウリジン若しくは5-メトキシウリジンといったウリジン類似体によって置換される場合等の、同じヌクレオシドタイプであるがランダムに組み込まれたあらゆる化学修飾の測定パーセントを有することができる。別の実施形態では、上記ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド全体にわたって、同じヌクレオシドタイプの2つ、3つ、又は4つの均一な化学修飾を有することができる(例えば全てのウリジン及び全てのシトシン等が同一の方法で修飾される)。
【0245】
修飾ヌクレオチド塩基対形成は、標準的なアデノシン-チミン塩基対、アデノシン-ウラシル塩基対、又はグアノシン-シトシン塩基対だけでなく、ヌクレオチド及び/又は非標準塩基若しくは修飾塩基を含む修飾ヌクレオチドの間に形成される塩基対も包含し、水素結合ドナーと水素結合アクセプターとの配置によって、非標準塩基と標準塩基との間での水素結合、又は2つの相補的な非標準塩基構造の間での水素結合が可能になる。このような非標準塩基対形成の一例は、修飾ヌクレオチドであるイノシンと、アデニン、シトシン、又はウラシルとの間での塩基対形成である。塩基/糖又はリンカーのいずれの組み合わせを、本開示のポリヌクレオチドに組み込むことができる。
【0246】
本開示の核酸分子(例えばmRNAポリヌクレオチド)において有用な核酸の修飾としては、限定するものではないが、以下のヌクレオチド、ヌクレオシド、及び核酸塩基が挙げられる:シュードウリジン(ψ);2-チオウリジン(s2U);4’-チオウリジン;5-メチルシトシン;2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン;2-チオ-1-メチル-シュードウリジン;2-チオ-5-アザ-ウリジン;2-チオ-ジヒドロシュードウリジン;2-チオ-ジヒドロウリジン;2-チオ-シュードウリジン;4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン;4-メトキシ-シュードウリジン;4-チオ-1-メチル-シュードウリジン;4-チオ-シュードウリジン;5-アザ-ウリジン;ジヒドロシュードウリジン;5-メチルウリジン;5-メトキシウリジン;2’-O-メチルウリジン;1-メチル-シュードウリジン(m1ψ);1-エチル-シュードウリジン(e1ψ);5-メトキシ-ウリジン(mo5U);5-メチル-シチジン(m5C);α-チオ-グアノシン;α-チオ-アデノシン;5-シアノウリジン;4’-チオウリジン7-デアザ-アデニン;1-メチル-アデノシン(m1A);2-メチル-アデニン(m2A);N6-メチル-アデノシン(m6A);2,6-ジアミノプリン;1-メチル-イノシン(m1I);ウィオシン(imG);メチルウィオシン(mimG);7-デアザ-グアノシン;7-シアノ-7-デアザ-グアノシン(preQ0);7-アミノメチル-7-デアザ-グアノシン(preQ1);7-メチル-グアノシン(m7G);1-メチル-グアノシン(m1G);8-オキソ-グアノシン;7-メチル-8-オキソ-グアノシン;2,8-ジメチルアデノシン;2-ゲラニルチオウリジン;2-リシジン;2-セレノウリジン;3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)-5,6-ジヒドロウリジン;3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン;3-メチルシュードウリジン;5-(カルボキシヒドロキシメチル)-2’-O-メチルウリジンメチルエステル;5-アミノメチル-2-ゲラニルチオウリジン;5-アミノメチル-2-セレノウリジン;5-アミノメチルウリジン;5-カルバモイルヒドロキシメチルウリジン;5-カルバモイルメチル-2-チオウリジン;5-カルボキシメチル-2-チオウリジン;5-カルボキシメチルアミノメチル-2-ゲラニルチオウリジン;5-カルボキシメチルアミノメチル-2-セレノウリジン;5-シアノメチルウリジン;5-ヒドロキシシチジン;5-メチルアミノメチル-2-ゲラニルチオウリジン;7-アミノカルボキシプロピル-デメチルウィオシン;7-アミノカルボキシプロピルウィオシン;7-アミノカルボキシプロピルウィオシンメチルエステル;8-メチルアデノシン;N4,N4-ジメチルシチジン;N6-ホルミルアデノシン;N6-ヒドロキシメチルアデノシン;アグマチジン;環式N6-トレオニルカルバモイルアデノシン;グルタミル-キューオシン;メチル化低修飾(undermodified)ヒドロキシウィブトシン;N4,N4,2’-O-トリメチルシチジン;ゲラニル化5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン;ゲラニル化5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン;1-メチル-シュードウリジン;1-エチル-シュードウリジン;1,2’-O-ジメチルアデノシン;1-デアザアデノシントリホスフェート(triphosphate:TP);1-メチルアデノシン;2(アミノ)アデニン;2(アミノプロピル)アデニン;2(メチルチオ)N6(イソペンテニル)アデニン;2-(アルキル)アデニン;2-(アミノアルキル)アデニン;2-(アミノプロピル)アデニン;2-(ハロ)アデニン;2-(プロピル)アデニン;2’-a-エチニルアデノシンTP;2’-アミノ-2’-デオキシ-ATP;2’-a-トリフルオロメチルアデノシンTP;2’-アジド-2’-デオキシ-ATP;2’-b-エチニルアデノシンTP;2’-b-トリフルオロメチルアデノシンTP;2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロアデノシンTP;2’-デオキシ-2’-a-アミノアデノシンTP;2’-デオキシ-2’-a-アジドアデノシンTP;2’-デオキシ-2’-a-メルカプトアデノシンTP;2’-デオキシ-2’-a-チオメトキシアデノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-アミノアデノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-アジドアデノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-ブロモアデノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-クロロアデノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-フルオロアデノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-ヨードアデノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-メルカプトアデノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-チオメトキシアデノシンTP;2’フルオロ-N6-Bz-デオキシアデノシンTP;2’-OMe-2-アミノ-ATP;2’-O-メチルアデノシン;2’O-メチル-N6-Bz-デオキシアデノシンTP;2’-O-リボシルアデノシン(ホスフェート);2-アミノアデニン;2-アミノアデノシンTP;2-アミノ-ATP;2-アジドアデノシンTP;2-ブロモアデノシンTP;2-クロロアデノシンTP;2-フルオロアデノシンTP;2-ヨードアデノシンTP;2-メルカプトアデノシンTP;2-メトキシ-アデニン;2-メチルアデノシン;2-メチルチオ-アデニン;2-メチルチオ-N6イソペンテニルアデノシン;2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン;2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン;2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン;2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン;2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン;2-トリフルオロメチルアデノシンTP;3-デアザ-3-ブロモアデノシンTP;3-デアザ-3-クロロアデノシンTP;3-デアザ-3-フルオロアデノシンTP;3-デアザ-3-ヨードアデノシンTP;3-デアザアデノシンTP;4’-アジドアデノシンTP;4’-炭素環式アデノシンTP;4’-エチニルアデノシンTP;5’-ホモ-アデノシンTP;6(アルキル)アデニン;6(メチル)アデニン;6-(アルキル)アデニン;6-(メチル)アデニン;7(デアザ)アデニン;7-デアザ-8-アザ-アデノシン;7-デアザ-アデノシン;7-メチルアデニン;8(アルケニル)アデニン;8(アルキニル)アデニン;8(アミノ)アデニン;8(チオアルキル)アデニン;8-(アルケニル)アデニン;8-(アルキル)アデニン;8-(アルキニル)アデニン;8-(アミノ)アデニン;8-(ハロ)アデニン;8-(ヒドロキシル)アデニン;8-(チオアルキル)アデニン;8-(チオール)アデニン;8-アザ-ATP;8-アジド-アデノシン;8-ブロモ-アデノシンTP;8-トリフルオロメチルアデノシンTP;9-デアザアデノシンTP;アザアデニン;デアザアデニン;イソペンテニルアデノシン;N1-メチル-アデノシン;N6(メチル)アデニン;N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン;N6-(イソペンチル)アデニン;N6,N6(ジメチル)アデニン;N6,2’-O-ジメチルアデノシン;N6,N6,2’-O-トリメチルアデノシン;N6,N6-ジメチルアデノシン;N6-アセチルアデノシン;N6-シス-ヒドロキシ-イソペンテニル-アデノシン;N6-グリシニルカルバモイルアデノシン;N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン;N6-イソペンテニルアデノシン;N6-メチルアデノシン;N6-メチル-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン;N6-トレオニルカルバモイルアデノシン;1,2’-O-ジメチルグアノシン;1-Me-GTP;1-メチル-6-チオ-グアノシン;1-メチルグアノシン;2(プロピル)グアニン;2-(アルキル)グアニン;2’-a-エチニルグアノシンTP;2’-アミノ-2’-デオキシ-GTP;2’-a-トリフルオロメチルグアノシンTP;2’-アジド-2’-デオキシ-GTP;2’-b-エチニルグアノシンTP;2’-b-トリフルオロメチルグアノシンTP;2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオログアノシンTP;2’-デオキシ-2’-a-アミノグアノシンTP;2’-デオキシ-2’-a-アジドグアノシンTP;2’-デオキシ-2’-a-メルカプトグアノシンTP;2’-デオキシ-2’-a-チオメトキシグアノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-アミノグアノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-アジドグアノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-ブロモグアノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-クロログアノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-フルオログアノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-ヨードグアノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-メルカプトグアノシンTP;2’-デオキシ-2’-b-チオメトキシグアノシンTP;2’フルオロ-N2-イソブチル-グアノシンTP;2’-O-メチルグアノシン;2’O-メチル-N2-イソブチル-グアノシンTP;2’-O-リボシルグアノシン(ホスフェート);4’-アジドグアノシンTP;4’-炭素環式グアノシンTP;4’-エチニルグアノシンTP;5’-ホモ-グアノシンTP;6(メチル)グアニン;6-(アルキル)グアニン;6-(メチル)グアニン;6-メトキシ-グアノシン;6-メチル-グアノシン;6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン;6-チオ-7-デアザ-グアノシン;6-チオ-7-メチル-グアノシン;6-チオ-グアノシン;7(アルキル)グアニン;7(デアザ)グアニン;7(メチル)グアニン;7-(アルキル)グアニン;7-(デアザ)グアニン;7-(メチル)グアニン;7-アミノメチル-7-デアザグアノシン;7-シアノ-7-デアザグアノシン;7-デアザ-8-アザ-グアノシン;7-メチルグアノシン;8(アルキル)グアニン;8(アルキニル)グアニン;8(ハロ)グアニン;8(チオアルキル)グアニン;8-(アルケニル)グアニン;8-(アルキル)グアニン;8-(アルキニル)グアニン;8-(アミノ)グアニン;8-(ハロ)グアニン;8-(ヒドロキシル)グアニン;8-(チオアルキル)グアニン;8-(チオール)グアニン;8-ブロモ-グアノシンTP;9-デアザグアノシンTP;アルカエオシン;アザグアニン;デアザグアニン;メチルウィオシン;N(メチル)グアニン;N-(メチル)グアニン;N1-メチル-グアノシン;N2,2’-O-ジメチルグアノシン;N2,7,2’-O-トリメチルグアノシン;N2,7-ジメチルグアノシン;N2,N2,2’-O-トリメチルグアノシン;N2,N2,7-トリメチルグアノシン;N2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシン;N2,N2-ジメチルグアノシン;N2-イソブチル-グアノシンTP;N2-メチル-6-チオ-グアノシン;N2-メチルグアノシン;ウィオシン;(E)-5-(2-ブロモ-ビニル)シチジンTP;1-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン;1-メチル-シュードイソシチジン;2-(チオ)シトシン;2,2’-アンヒドロ-シチジンTP塩酸塩;2,6-ジアミノプリン;2’-a-エチニルシチジンTP;2’-アミノ-2’-デオキシ-CTP;2’-a-トリフルオロメチルシチジンTP;2’-アジド-2’-デオキシ-CTP;2’-b-エチニルシチジンTP;2’-b-トリフルオロメチルシチジンTP;2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジンTP;2’-デオキシ-2’-a-アミノシチジンTP;2’-デオキシ-2’-a-アジドシチジンTP;2’-デオキシ-2’-a-メルカプトシチジンTP;2’-デオキシ-2’-a-チオメトキシシチジンTP;2’-デオキシ-2’-b-アミノシチジンTP;2’-デオキシ-2’-b-アジドシチジンTP;2’-デオキシ-2’-b-ブロモシチジンTP;2’-デオキシ-2’-b-クロロシチジンTP;2’-デオキシ-2’-b-フルオロシチジンTP;2’-デオキシ-2’-b-ヨード
シチジンTP;2’-デオキシ-2’-b-メルカプトシチジンTP;2’-デオキシ-2’-b-チオメトキシシチジンTP;2’フルオロ-N4-Bz-シチジンTP;2’フルオロ-N4-アセチル-シチジンTP;2’-O-メチル-5-(1-プロピニル)シチジンTP;2’-O-メチルシチジン;2’-O-メチル-N4-アセチル-シチジンTP;2’O-メチル-N4-Bz-シチジンTP;2-アミノプリン;2-メトキシ-5-メチル-シチジン;2-メトキシ-シチジン;2-チオ-5-メチル-シチジン;2-チオシチジン;3(デアザ)5(アザ)シトシン;3(メチル)シトシン;3-(アルキル)シトシン;3-(デアザ)5(アザ)シトシン;3-(メチル)シチジン;3’-エチニルシチジンTP;3-メチルシチジン;4,2’-O-ジメチルシチジン;4’-アジドシチジンTP;4’-炭素環式シチジンTP;4’-エチニルシチジンTP;4-メトキシ-1-メチル-シュードイソシチジン;4-メトキシ-シュードイソシチジン;4-メチルシチジン;4-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン;4-チオ-1-メチル-シュードイソシチジン;4-チオ-シュードイソシチジン;5(ハロ)シトシン;5(メチル)シトシン;5(プロピニル)シトシン;5(トリフルオロメチル)シトシン;5-(1-プロピニル)アラ-シチジンTP;5-(2-クロロ-フェニル)-2-チオシチジンTP;5-(4-アミノ-フェニル)-2-チオシチジンTP;5-(アルキル)シトシン;5-(アルキニル)シトシン;5-(ハロ)シトシン;5-(プロピニル)シトシン;5-(トリフルオロメチル)シトシン;5,2’-O-ジメチルシチジン;5’-ホモ-シチジンTP;5-アミノアリル-CTP;5-アザ-シチジン;5-アザ-ゼブラリン;5-ブロモ-シチジン;5-シアノシチジンTP;5-エチニルアラ-シチジンTP;5-エチニルシチジンTP;5-ホルミル-2’-O-メチルシチジン;5-ホルミルシチジン;5-ヒドロキシメチルシチジン;5-ヨード-シチジン;5-メトキシシチジンTP;5-メチルシチジン;5-メチル-ゼブラリン;5-プロピニルシトシン;5-トリフルオロメチル-シチジンTP;6-(アゾ)シトシン;6-アザ-シチジン;7-デアザ-2,6-ジアミノプリン;7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン;7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン;7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン;アザシトシン;デアザシトシン;リシジン;N4(アセチル)シトシン;N4,2’-O-ジメチルシチジン;N4,N4-ジメチル-2’-OMe-シチジンTP;N4-アセチル-2’-O-メチルシチジン;N4-アセチルシチジン;N4-アミノ-シチジンTP;N4-ベンゾイル-シチジンTP;N4-メチルシチジン;シュードイソシチジン;シュード-イソ-シチジン;ピロロ-シチジン;ピロロ-シュードイソシチジン;ゼブラリン;α-チオ-シチジン;1-メチルイノシン;イノシン;1,2’-O-ジメチルイノシン;2’-O-メチルイノシン;7-メチルイノシン;エポキシキューオシン;ガラクトシル-キューオシン;マンノシルキューオシン;キューオシン;アリアミノ-チミジン;アザチミジン;デアザチミジン;デオキシ-チミジン;2’-O-メチルウリジン;2-チオウリジン;3-メチルウリジン;5-カルボキシメチルウリジン;5-ヒドロキシウリジン;5-タウリノメチル-2-チオウリジン;5-タウリノメチルウリジン;ジヒドロウリジン;シュードウリジン;(3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン;1-メチル-3-(3-アミノ-5-カルボキシプロピル)シュードウリジン;1-メチルシュードウリジン;2’-O-メチルシュードウリジン;2-チオ-2’-O-メチルウリジン;3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン;3,2’-O-ジメチルウリジン;3-メチル-シュード-ウリジンTP;4-チオウリジン;5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン;5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル;5,2’-O-ジメチルウリジン;5,6-ジヒドロ-ウリジン;5-アミノメチル-2-チオウリジン;5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン;5-カルバモイルメチルウリジン;5-カルボキシヒドロキシメチルウリジン;5-カルボキシヒドロキシメチルウリジンメチルエステル;5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチルウリジン;5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン;5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン;5-カルバモイルメチルウリジンTP;5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン;5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン;5-メトキシカルボニルメチルウリジン;5-メチルウリジン;5-メトキシウリジン;5-メチル-2-チオウリジン;5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン;5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン;5-メチルアミノメチルウリジン;5-メチルジヒドロウリジン;5-オキシ酢酸-ウリジンTP;5-オキシ酢酸-メチルエステル-ウリジンTP;N1-メチル-シュード-ウラシル;N1-エチル-シュード-ウラシル;ウリジン5-オキシ酢酸;ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル;3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)-ウリジンTP;5-(イソ-ペンテニルアミノメチル)-2-チオウリジンTP;5-(イソ-ペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチルウリジンTP;5-(イソ-ペンテニルアミノメチル)ウリジンTP;5-プロピニルウラシル;α-チオ-ウリジン;1(アミノアルキルアミノ-カルボニルエチレニル)-2(チオ)-シュードウラシル;1(アミノアルキルアミノカルボニルエチレニル)-2,4-(ジチオ)シュードウラシル;1(アミノアルキルアミノカルボニルエチレニル)-4(チオ)シュードウラシル;1(アミノアルキルアミノカルボニルエチレニル)-シュードウラシル;1(アミノカルボニルエチレニル)-2(チオ)-シュードウラシル;1(アミノカルボニルエチレニル)-2,4-(ジチオ)シュードウラシル;1(アミノカルボニルエチレニル)-4(チオ)シュードウラシル;1(アミノカルボニルエチレニル)-シュードウラシル;1置換2(チオ)-シュードウラシル;1置換2,4-(ジチオ)シュードウラシル;1置換4(チオ)シュードウラシル;1置換シュードウラシル;1-(アミノアルキルアミノ-カルボニルエチレニル)-2-(チオ)-シュードウラシル;1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジンTP;1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュード-UTP;1-メチル-シュード-UTP;1-エチル-シュード-UTP;2(チオ)シュードウラシル;2’デオキシウリジン;2’フルオロウリジン;2-(チオ)ウラシル;2,4-(ジチオ)シュードウラシル;2’メチル、2’アミノ、2’アジド、2’フルオロ-グアノシン;2’-アミノ-2’-デオキシ-UTP;2’-アジド-2’-デオキシ-UTP;2’-アジド-デオキシウリジンTP;2’-デオキシ-2’-a-アミノウリジンTP;2’-デオキシ-2’-a-アジドウリジンTP;2-メチルシュードウリジン;3(3アミノ-3カルボキシプロピル)ウラシル;4(チオ)シュードウラシル;4-(チオ)シュードウラシル;4-(チオ)ウラシル;4-チオウラシル;5(1,3-ジアゾール-1-アルキル)ウラシル;5(2-アミノプロピル)ウラシル;5(アミノアルキル)ウラシル;5(ジメチルアミノアルキル)ウラシル;5(グアニジニウムアルキル)ウラシル;5(メトキシカルボニルメチル)-2-(チオ)ウラシル;5(メトキシカルボニル-メチル)ウラシル;5(メチル)2(チオ)ウラシル;5(メチル)2,4(ジチオ)ウラシル;5(メチル)4(チオ)ウラシル;5(メチルアミノメチル)-2(チオ)ウラシル;5(メチルアミノメチル)-2,4(ジチオ)ウラシル;5(メチルアミノメチル)-4(チオ)ウラシル;5(プロピニル)ウラシル;5(トリフルオロメチル)ウラシル;5-(2-アミノプロピル)ウラシル;5-(アルキル)-2-(チオ)シュードウラシル;5-(アルキル)-2,4(ジチオ)シュードウラシル;5-(アルキル)-4(チオ)シュードウラシル;5-(アルキル)シュードウラシル;5-(アルキル)ウラシル;5-(アルキニル)ウラシル;5-(アリルアミノ)ウラシル;5-(シアノアルキル)ウラシル;5-(ジアルキルアミノアルキル)ウラシル;5-(ジメチルアミノアルキル)ウラシル;5-(グアニジニウムアルキル)ウラシル;5-(ハロ)ウラシル;5-(1,3-ジアゾール-1-アルキル)ウラシル;5-(メトキシ)ウラシル;5-(メトキシカルボニルメチル)-2-(チオ)ウラシル;5-(メトキシカルボニル-メチル)ウラシル;5-(メチル)2(チオ)ウラシル;5-(メチル)2,4(ジチオ)ウラシル;5-(メチル)4(チオ)ウラシル;5-(メチル)-2-(チオ)シュードウラシル;5-(メチル)-2,4(ジチオ)シュードウラシル;5-(メチル)-4(チオ)シュードウラシル;5-(メチル)シュードウラシル;5-(メチルアミノメチル)-2(チオ)ウラシル;5-(メチルアミノメチル)-2,4(ジチオ)ウラシル;5-(メチルアミノメチル)-4-(チオ)ウラシル;5-(プロピニル)ウラシル;5-(トリフルオロメチル)ウラシル;5-アミノアリル-ウリジン;5-ブロモ-ウリジン;5-ヨード-ウリジン;5-ウラシル;6(アゾ)ウラシル;6-(アゾ)ウラシル;6-アザ-ウリジン;アリアミノ-ウラシル;アザウラシル;デアザウラシル;N3(メチル)ウラシル;シュード-UTP-1-2-エタン酸;シュードウラシル;4-チオ-シュード-UTP;1-カルボキシメチル-シュードウリジン;1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン;1-プロピニル-ウリジン;1-タウリノメチル-1-メチル-ウリジン;1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン;1-タウリノメチル-シュードウリジン;2-メトキシ-4-チオ-シュードウリジン;(±)1-(2-ヒドロキシプロピル)シュードウリジンTP;(2R)-1-(2-ヒドロキシプロピル)シュードウリジンTP;(2S)-1-(2-ヒドロキシプロピル)シュードウリジンTP;(E)-5-(2-ブロモ-ビニル)アラ-ウリジンTP;(E)-5-(2-ブロモ-ビニル)ウリジンTP;(Z)-5-(2-ブロモ-ビニル)アラ-ウリジンTP;(Z)-5-(2-ブロモ-ビニル)ウリジンTP;1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-シュード-UTP;1-(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)シュードウリジンTP;1-(2,2-ジエトキシエチル)シュードウリジンTP;1-(2,4,6-トリメチルベンジル)シュードウリジンTP;1-(2,4,6-トリメチル-ベンジル)シュード-UTP;1-(2,4,6-トリメチル-フェニル)シュード-UTP;1-(2-アミノ-2-カルボキシエチル)シュード-UTP;1-(2-アミノ-エチル)シュード-UTP;1-(2-ヒドロキシエチル)シュードウリジンTP;1-(2-メトキシエチル)シュードウリジンTP;1-(3,4-ビス-トリフルオロメトキシベンジル)シュードウリジンTP;1-(3,4-ジメトキシベンジル)シュードウリジンTP;1-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュード-UTP;1-(3-アミノ-プロピル)シュード-UTP;1-(3-シクロプロピル-プロプ-2-イニル)シュードウリジンTP;1-(4-アミノ-4-カルボキシブチル)シュード-UTP;1-(4-アミノ-ベンジル)シュード-UTP;1-(4-アミノ-ブチル)シュード-UTP;1-(4-アミノ-フェニル)シュード-UTP;1-(4-アジドベンジル)シュードウリジンTP;1-(4-ブロモベンジル)シュードウリジンTP;1-(4-クロロベンジル)シュ
ードウリジンTP;1-(4-フルオロベンジル)シュードウリジンTP;1-(4-ヨードベンジル)シュードウリジンTP;1-(4-メタンスルホニルベンジル)シュードウリジンTP;1-(4-メトキシベンジル)シュードウリジンTP;1-(4-メトキシ-ベンジル)シュード-UTP;1-(4-メトキシ-フェニル)シュード-UTP;1-(4-メチルベンジル)シュードウリジンTP;1-(4-メチル-ベンジル)シュード-UTP;1-(4-ニトロベンジル)シュードウリジンTP;1-(4-ニトロ-ベンジル)シュード-UTP;1(4-ニトロ-フェニル)シュード-UTP;1-(4-チオメトキシベンジル)シュードウリジンTP;1-(4-トリフルオロメトキシベンジル)シュードウリジンTP;1-(4-トリフルオロメチルベンジル)シュードウリジンTP;1-(5-アミノ-ペンチル)シュード-UTP;1-(6-アミノ-ヘキシル)シュード-UTP;1,6-ジメチル-シュード-UTP;1-[3-(2-{2-[2-(2-アミノエトキシ)-エトキシ]-エトキシ}-エトキシ)-プロピオニル]シュードウリジンTP;1-{3-[2-(2-アミノエトキシ)-エトキシ]-プロピオニル}シュードウリジンTP;1-アセチルシュードウリジンTP;1-アルキル-6-(1-プロピニル)-シュード-UTP;1-アルキル-6-(2-プロピニル)-シュード-UTP;1-アルキル-6-アリル-シュード-UTP;1-アルキル-6-エチニル-シュード-UTP;1-アルキル-6-ホモアリル-シュード-UTP;1-アルキル-6-ビニル-シュード-UTP;1-アリルシュードウリジンTP;1-アミノメチル-シュード-UTP;1-ベンゾイルシュードウリジンTP;1-ベンジルオキシメチルシュードウリジンTP;1-ベンジル-シュード-UTP;1-ビオチニル-PEG2-シュードウリジンTP;1-ビオチニルシュードウリジンTP;1-ブチル-シュード-UTP;1-シアノメチルシュードウリジンTP;1-シクロブチルメチル-シュード-UTP;1-シクロブチル-シュード-UTP;1-シクロへプチルメチル-シュード-UTP;1-シクロへプチル-シュード-UTP;1-シクロヘキシルメチル-シュード-UTP;1-シクロヘキシル-シュード-UTP;1-シクロオクチルメチル-シュード-UTP;1-シクロオクチル-シュード-UTP;1-シクロペンチルメチル-シュード-UTP;1-シクロペンチル-シュード-UTP;1-シクロプロピルメチル-シュード-UTP;1-シクロプロピル-シュード-UTP;1-ヘキシル-シュード-UTP;1-ホモアリルシュードウリジンTP;1-ヒドロキシメチルシュードウリジンTP;1-イソ-プロピル-シュード-UTP;1-Me-2-チオ-シュード-UTP;1-Me-4-チオ-シュード-UTP;1-Me-α-チオ-シュード-UTP;1-メタンスルホニルメチルシュードウリジンTP;1-メトキシメチルシュードウリジンTP;1-メチル-6-(2,2,2-トリフルオロエチル)シュード-UTP;1-メチル-6-(4-モルホリノ)-シュード-UTP;1-メチル-6-(4-チオモルホリノ)-シュード-UTP;1-メチル-6-(置換フェニル)シュード-UTP;1-メチル-6-アミノ-シュード-UTP;1-メチル-6-アジド-シュード-UTP;1-メチル-6-ブロモ-シュード-UTP;1-メチル-6-ブチル-シュード-UTP;1-メチル-6-クロロ-シュード-UTP;1-メチル-6-シアノ-シュード-UTP;1-メチル-6-ジメチルアミノ-シュード-UTP;1-メチル-6-エトキシ-シュード-UTP;1-メチル-6-エチルカルボキシレート-シュード-UTP;1-メチル-6-エチル-シュード-UTP;1-メチル-6-フルオロ-シュード-UTP;1-メチル-6-ホルミル-シュード-UTP;1-メチル-6-ヒドロキシアミノ-シュード-UTP;1-メチル-6-ヒドロキシ-シュード-UTP;1-メチル-6-ヨード-シュード-UTP;1-メチル-6-イソ-プロピル-シュード-UTP;1-メチル-6-メトキシ-シュード-UTP;1-メチル-6-メチルアミノ-シュード-UTP;1-メチル-6-フェニル-シュード-UTP;1-メチル-6-プロピル-シュード-UTP;1-メチル-6-tert-ブチル-シュード-UTP;1-メチル-6-トリフルオロメトキシ-シュード-UTP;1-メチル-6-トリフルオロメチル-シュード-UTP;1-モルホリノメチルシュードウリジンTP;1-ペンチル-シュード-UTP;1-フェニル-シュード-UTP;1-ピバロイルシュードウリジンTP;1-プロパルギルシュードウリジンTP;1-プロピル-シュード-UTP;1-プロピニル-シュードウリジン;1-p-トリル-シュード-UTP;1-tert-ブチル-シュード-UTP;1-チオメトキシメチルシュードウリジンTP;1-チオモルホリノメチルシュードウリジンTP;1-トリフルオロアセチルシュードウリジンTP;1-トリフルオロメチル-シュード-UTP;1-ビニルシュードウリジンTP;2,2’-アンヒドロ-ウリジンTP;2’-ブロモ-デオキシウリジンTP;2’-F-5-メチル-2’-デオキシ-UTP;2’-OMe-5-Me-UTP;2’-OMe-シュード-UTP;2’-a-エチニルウリジンTP;2’-a-トリフルオロメチルウリジンTP;2’-b-エチニルウリジンTP;2’-b-トリフルオロメチルウリジンTP;2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロウリジンTP;2’-デオキシ-2’-a-メルカプトウリジンTP;2’-デオキシ-2’-a-チオメトキシウリジンTP;2’-デオキシ-2’-b-アミノウリジンTP;2’-デオキシ-2’-b-アジドウリジンTP;2’-デオキシ-2’-b-ブロモウリジンTP;2’-デオキシ-2’-b-クロロウリジンTP;2’-デオキシ-2’-b-フルオロウリジンTP;2’-デオキシ-2’-b-ヨードウリジンTP;2’-デオキシ-2’-b-メルカプトウリジンTP;2’-デオキシ-2’-b-チオメトキシウリジンTP;2-メトキシ-4-チオ-ウリジン;2-メトキシウリジン;2’-O-メチル-5-(1-プロピニル)ウリジンTP;3-アルキル-シュード-UTP;4’-アジドウリジンTP;4’-炭素環式ウリジンTP;4’-エチニルウリジンTP;5-(1-プロピニル)アラ-ウリジンTP;5-(2-フラニル)ウリジンTP;5-シアノウリジンTP;5-ジメチルアミノウリジンTP;5’-ホモ-ウリジンTP;5-ヨード-2’-フルオロ-デオキシウリジンTP;5-フェニルエチニルウリジンTP;5-トリジュウテロメチル-6-ジュウテロウリジンTP;5-トリフルオロメチル-ウリジンTP;5-ビニルアラウリジンTP;6-(2,2,2-トリフルオロエチル)-シュード-UTP;6-(4-モルホリノ)-シュード-UTP;6-(4-チオモルホリノ)-シュード-UTP;6-(置換-フェニル)-シュード-UTP;6-アミノ-シュード-UTP;6-アジド-シュード-UTP;6-ブロモ-シュード-UTP;6-ブチル-シュード-UTP;6-クロロ-シュード-UTP;6-シアノ-シュード-UTP;6-ジメチルアミノ-シュード-UTP;6-エトキシ-シュード-UTP;6-エチルカルボキシレート-シュード-UTP;6-エチル-シュード-UTP;6-フルオロ-シュード-UTP;6-ホルミル-シュード-UTP;6-ヒドロキシアミノ-シュード-UTP;6-ヒドロキシ-シュード-UTP;6-ヨード-シュード-UTP;6-イソ-プロピル-シュード-UTP;6-メトキシ-シュード-UTP;6-メチルアミノ-シュード-UTP;6-メチル-シュード-UTP;6-フェニル-シュード-UTP;6-プロピル-シュード-UTP;6-tert-ブチル-シュード-UTP;6-トリフルオロメトキシ-シュード-UTP;6-トリフルオロメチル-シュード-UTP;2(アミノ)プリン;2,4,5-(トリメチル)フェニル;2’メチル、2’アミノ、2’アジド、2’フルオロ-シチジン;2’メチル、2’アミノ、2’アジド、2’フルオロ-アデニン;2’メチル、2’アミノ、2’アジド、2’フルオロ-ウリジン;2’-アミノ-2’-デオキシリボース;2,6-(ジアミノ)プリン;1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェノキサジン-1-イル:1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェンチアジン-1-イル;1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェノキサジン-1-イル;1,3,5-(トリアザ)-2,6-(ジオキサ)-ナフタレン;2’-アジド-2’-デオキシリボース;2’フルオロ-2’-デオキシリボース;2’-フルオロ-修飾塩基;2’-OH-アラ-アデノシンTP;2’-OH-アラ-シチジンTP;2’-OH-アラ-グアノシンTP;2’-OH-アラ-ウリジンTP;2’-O-メチル-リボース;2-アミノ-6-クロロ-プリン;2-アミノ-リボシド-TP;2-アザ-イノシニル;2-オキソ-7-アミノピリドピリミジン-3-イル;2-オキソ-ピリドピリミジン-3-イル;2-ピリジノン;2-チオ-ゼブラリン;3ニトロピロール;3-(メチル)-7-(プロピニル)イソカルボスチリリル;3-(メチル)イソカルボスチリリル;4-(フルオロ)-6-(メチル)ベンズイミダゾール;4-(メチル)ベンズイミダゾール;4-(メチル)インドリル;4,6-(ジメチル)インドリル;4-デメチルウィオシン;5ニトロインドール;5置換ピリミジン;5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジンTP;5-(メチル)イソカルボスチリリル;5-アザ-2-チオ-ゼブラリン;5-ニトロインドール;6-(アザ)ピリミジン;6-(アゾ)チミン;6-(メチル)-7-(アザ)インドリル;6-クロロ-プリン;6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル;7-(アミノアルキルヒドロキシ)-1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェノキサジン-1-イル;7-(アミノアルキルヒドロキシ)-1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェンチアジン-1-イル;7-(アミノアルキルヒドロキシ)-1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェノキサジン-1-イル;7-(アミノアルキルヒドロキシ)-1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェンチアジン-1-イル;7-(アザ)インドリル;7-(グアニジニウムアルキルヒドロキシ)-1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェノキサジン-1-イル;7-(グアニジニウムアルキルヒドロキシ)-1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェノキサジンl-イル;7-(グアニジニウムアルキルヒドロキシ)-1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェンチアジン-1-イル;7-(グアニジニウムアルキルヒドロキシ)-1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェノキサジン-1-イル;7-(グアニジニウムアルキルヒドロキシ)-1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェンチアジン-1-イル;7-(プロピニル)イソカルボスチリリル;7-(プロピニル)イソカルボスチリリル、プロピニル-7-(アザ)インドリル;7-デアザ-2-アミノ-プリン;7-デアザ-イノシニル;7-置換1-(アザ)-2-(チオ)-3-(アザ)-フェノキサジン-1-イル;7-置換1,3-(ジアザ)-2-(オキソ)-フェノキサジン-1-イル;9-(メチル)-イミジゾピリジニル;α-チオ-シュード-UTP;アミノインドリル;アントラセニル;ビス-オルト-(アミノアルキルヒドロキシ)-6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル;ビス-オルト-置換-6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル;ジフルオロトリル;ホルマイシンA TP;ホルマイシンB TP;ヒドロキシウィブトシン;ヒポキサンチン;イミジゾピリジニル;イノシニル;イソカルボスチリリル;イソグアニシン;イソウィオシン;N2-置換プリン;N6
-(19-アミノ-ペンタオキサノナデシル)アデノシンTP;N6-メチル-2-アミノ-プリン;N6-置換プリン;N-アルキル化誘導体;ナフタレニル;ニトロベンズイミダゾリル;ニトロイミダゾリル;ニトロインダゾリル;ニトロピラゾリル;ネブラリン;O6-置換プリン;O-アルキル化誘導体;オルト-(アミノアルキルヒドロキシ)-6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル;オルト-置換-6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル;オキソホルマイシンTP;パラ-(アミノアルキルヒドロキシ)-6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル;パラ-置換-6-フェニル-ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル;ペンタセニル;ペルオキシウィブトシン;フェナントラセニル;フェニル;プロピニル-7-(アザ)インドリル;シュードウリジン1-(4-メチルベンゼンスルホン酸)TP;シュードウリジン1-(4-メチル安息香酸)TP;シュードウリジンTP1-[3-(2-エトキシ)]プロピオン酸;シュードウリジンTP1-[3-{2-(2-[2-(2-エトキシ)-エトキシ]-エトキシ)-エトキシ}]プロピオン酸;シュードウリジンTP1-[3-{2-(2-[2-{2(2-エトキシ)-エトキシ}-エトキシ]-エトキシ)-エトキシ}]プロピオン酸;シュードウリジンTP1-[3-{2-(2-[2-エトキシ]-エトキシ)-エトキシ}]プロピオン酸;シュードウリジンTP1-[3-{2-(2-エトキシ)-エトキシ}]プロピオン酸;シュードウリジンTP1-メチルホスホン酸;シュードウリジンTP1-メチルホスホン酸ジエチルエステル;シュード-UTP-N1-3-プロピオン酸;シュード-UTP-N1-4-ブタン酸;シュード-UTP-N1-5-吉草酸;シュード-UTP-N1-6-ヘキサン酸;シュード-UTP-N1-7-ヘプタン酸;シュード-UTP-N1-メチル-p-安息香酸;シュード-UTP-N1-p-安息香酸;ピレニル;ピリジン-4-オンリボヌクレオシド;ピリドピリミジン-3-イル;ピリドピリミジン-3-イル、2-オキソ-7-アミノ-ピリドピリミジン-3-イル;ピロロ-ピリミジン-2-オン-3-イル;ピロロピリミジニル;ピロロピリジニル;ピロロシンTP;Q塩基;プレQ0塩基;プレQ1塩基;スチルベンジル;置換1,2,4-トリアゾール;テトラセニル;ツベルシジン;低修飾ヒドロキシウィブトシン;ウィブトシン;キサンチン;キサントシン-5’-TP、及びこれらの組み合わせ。
【0247】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子(例えばmRNA)は、上に列挙した修飾核酸塩基のうちの1つを含むことができる。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子(例えばmRNA)は、上に列挙した修飾核酸塩基のうちの少なくとも2つ(例えば2つ、3つ、4つ、又は5つ以上)の組み合わせを含むことができる。
【0248】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子(例えばmRNA)は、少なくとも1つの化学修飾核酸塩基、糖、骨格、又はこれらのいずれの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、上記少なくとも1つの化学修飾核酸塩基は、シュードウラシル(ψ)、N1-メチルシュードウラシル(m1ψ)、1-エチルシュードウラシル、2-チオウラシル(s2U)、4’-チオウラシル、5-メチルシトシン、5-メチルウラシル、5-メトキシウラシル、及びこれらのいずれの組み合わせから選択される。
【0249】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、修飾糖部分を有するヌクレオチドを有することができる。例示的な修飾糖としては、炭素環式又は非環式糖、2’、3’、又は4’位のうちの1つ以上に置換基を有する糖、及び糖の1つ以上の水素原子の代わりに置換基を有する糖が挙げられる。いくつかの実施形態では、上記糖は、2’位に置換基を有することによって修飾される。更なる実施形態では、上記糖は、3’位に置換基を有することによって修飾される。他の実施形態では、上記糖は、4’位に置換基を有することによって修飾される。2’位(2’-)の糖の置換基は、アラビノ(上)位又はリボ(下)位にあってよい。2’-アラビノ修飾の一例は、2’-フルオロである。2’-アラビノ修飾の別の例は、2’-O-メチルである。他の同様の修飾を、糖部分の他の位置、特に3’末端ヌクレオシド上又は2’-5’結合オリゴヌクレオチド内の糖の3’位、及び5’末端ヌクレオチドの5’位において行うこともできる。いくつかの実施形態では、上記糖修飾は、2’-O-アルキル(例えば2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル)、2’-ハロ(例えば2’-フルオロ、2’-クロロ、2’-ブロモ)、及び4’チオ修飾である。
【0250】
本開示の核酸分子(例えばmRNA)は、1つ以上のホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、ボラノホスフェート、アルキルホスホネート、ホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、又はホスホノカルボキシレート結合といった、骨格修飾も含むことができ、上記結合は、通常の3’-5’結合、2’-5’結合類似体、又は3’-3’、5’-5’及び2’-2’等の逆結合である。
【0251】
いくつかの実施形態では、グアニン、アデニン、ウラシル、又はチミンの少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、又は100%が、化学修飾される。
【0252】
天然の真核生物のmRNA分子は通常、5’キャップ構造又は3’ポリ(A)テール等の他の構造的特徴に加えて、その5’末端の非翻訳領域(untranslated region:UTR)(5’UTR)及び/又はその3’末端の非翻訳領域(3’UTR)を含むがこれらに限定されない安定化エレメントを含有する。5’UTR及び3’UTRはいずれも、典型的にはゲノムDNAから転写され、未熟なmRNAのエレメントである。5’キャップ構造及び3’ポリ(A)テール等の、成熟mRNAに特徴的な構造的特徴は、通常、mRNAプロセシング中に、転写された(未熟な)mRNAに追加される。
【0253】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子(例えばmRNA)は、5’及び/又は3’フランキング領域を含有する。5’及び/又は3’フランキング領域に含めることができるエレメントの例としては、限定するものではないが、非翻訳領域(UTR)、コザック配列、オリゴ(dT)配列、検出可能なタグ、及びマルチクローニングサイトが挙げられる。フランキング領域のいずれの部分を配列最適化でき、またいずれの部分は独立して、配列最適化の前及び/又は後に、本明細書に記載の1つ以上の異なる修飾を含有できる。
【0254】
いくつかの実施形態では、5’UTR及び/又は3’UTR領域をフランキング領域として提供できる。非翻訳領域(UTR)は、開始コドンの前(5’UTR)及び終止コドンの後ろ(3’UTR)の、翻訳されないポリヌクレオチドの核酸セクションである。複数の5’又は3’UTRをフランキング領域に含めることができ、これらは同一の配列又は異なる配列とすることができる。
【0255】
UTRは、ポリヌクレオチドのコード領域に対して同種であっても異種であってもよい。いくつかの実施形態では、上記UTRは、抗原及び/又は抗体をコードするヌクレオチド配列に対して同種である。いくつかの実施形態では、上記UTRは、抗原及び/又は抗体をコードするヌクレオチド配列に対して異種である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは2つ以上の5’UTR又はその機能的断片を含み、これらはそれぞれ同一の又は異なるヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは2つ以上の3’UTR又はその機能的断片を含み、これらはそれぞれ同一の又は異なるヌクレオチド配列を有する。
【0256】
いくつかの実施形態では、上記5’UTRと上記3’UTRとは異種とすることができる。いくつかの実施形態では、上記5’UTRは、上記3’UTRとは異なる種に由来するものとすることができる。いくつかの実施形態では、上記3’UTRは、上記5’UTRとは異なる種に由来するものとすることができる。
【0257】
本出願の例示的なUTRとしては、限定するものではないが、以下の遺伝子配列に由来する1つ以上の5’UTR及び/又は3’UTRが挙げられる:アルブミン(例えばヒトアルブミン);アクチン(例えばヒトα又はβアクチン);ATPシンターゼ(例えばATP5A1、又はミトコンドリアH+-ATPシンターゼのβサブユニット);カルレティキュリン(Calr);α又はβグロビン(例えばアフリカツメガエル、マウス、ウサギ、又はヒトグロビン)等のグロビン;グルコーストランスポーター(例えばhGLUT1(ヒトグルコーストランスポーター1));グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH);強力なコザック翻訳開始シグナル;ヒトシトクロムb-245αポリペプチド(CYBA);コラーゲン(例えばIα2型コラーゲン(Col1A2)、Iα1型コラーゲン(Col1A1)、VIα2型コラーゲン(Col6A2)、VIα1型コラーゲン(Col6A1));ヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ(HSD17B4);ウイルス(例えばタバコエッチウイルス(TEV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、デングウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)(例えばCMV前初期1(IE1))、肝炎ウイルス(例えばB型肝炎ウイルス)、シンドビスウイルス、又はPAVオオムギ黄萎ウイルス(BYDV-PAV));熱ショックタンパク質(例えばhsp70);翻訳開始因子(例えばeIF4G);チューブリン;ヒストン;クエン酸回路酵素;ヌクレオビンジン(例えばNucb1);トポイソメラーゼ(例えば5’TOPモチーフ(オリゴピリミジントラクト)が欠けたTOP遺伝子);リボソームタンパク質Large32(L32);成長ホルモン(例えばウシ(bGH)又はヒト(hGH));伸長因子(例えば伸長因子1α1(EEF1A1));マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD);筋細胞エンハンサー因子2A(MEF2A);β-F1-ATPase、クレアチンキナーゼ、ミオグロビン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);リボフォリン(例えばリボフォリンI(RPNI));低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(例えばLRP1);カルジオトロフィン様サイトカイン因子(例えばNnt1);プロコラーゲン-リシン、2-オキソグルタル酸5-ジオキシゲナーゼ1(Plod1);リボソームタンパク質(例えば、rps9等のヒト又はマウスリボソームタンパク質);並びにこれらの断片及びこれらのいずれの組み合わせ。
【0258】
いくつかの実施形態では、上記5’UTRは:β-グロビン;強力なコザック翻訳開始シグナル;シトクロムb-245αポリペプチド(CYBA);DEN;HSD17B4;非構造タンパク質をコードする風疹ウイルス(RV)RNAの5’近位オープンリーディングフレーム;Hsp70;eIF4G;GLUT1;TEV;TEEV;これらの機能的断片、及びこれらのいずれの組み合わせに由来する、5’UTRであってよい。
【0259】
いくつかの実施形態では、上記3’UTRは:f3-グロビン;CYBA;アルブミン;成長ホルモン(GH);HBV;α-グロビン;DEN;BYDV-PAV;EEF1A1;MnSOD;ミトコンドリアH(+)-ATPシンターゼのβサブユニット(β-mRNA);GLUT1;MEF2A;β-F1-ATPase;VEEV;これらの機能的断片、及びこれらのいずれの組み合わせに由来する、3’UTRであってよい。
【0260】
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチド配列を操作して、具体的な標的器官の豊富に発現される遺伝子中に典型的に見られるUTRエレメントを組み込むことができる。例えば、アルブミン、血清アミロイドA、αフェトプロテイン、アポリポタンパク質A/B/E、エリスロポエチン、トランスフェリン、又は因子VIIIといった、肝臓で発現されるmRNAの5’UTRを導入すると、肝細胞株又は肝臓におけるポリヌクレオチドの発現を増強できる。同様に、他の組織特異性mRNA由来の5’UTRを用いて該組織における発現を改善することが、筋肉(例えばヘルクリン、MyoD、ミオシン、ミオグロビン、ミオゲニン)、内皮細胞(例えばCD36、Tie-1)、骨髄細胞(例えばC/EBP、AML1、G-CSF、GM-CSF、CD11b、MSR、Fr-1、i-NOS)、白血球(例えばCD45、CD18)、脂肪組織(例えばCD36、GLUT4、ACRP30、アディポネクチン)、及び胚上皮細胞(例えばSP-A/B/C/D)について可能である。
【0261】
いくつかの実施形態では、UTRは、そのタンパク質が共通の機能、構造、特徴、又は特性を共有する、転写産物のファミリーから選択される。例えば、コードされたポリペプチドは、ある特定の細胞内で、組織内で、又は発生中の何らかの時点で発現される、タンパク質の1つのファミリー(即ち少なくとも1つの機能、構造、特徴、局在性、起源、又は発現パターンを共有する)に属することができる。遺伝子又はmRNAのいずれかからのUTRを、同じ又は異なるファミリーのタンパク質の他のいずれのUTRと交換して、新たなポリヌクレオチドを生成できる。
【0262】
更に、1つ以上の合成UTRを使用できる。
【0263】
いくつかの実施形態では、上記ポリヌクレオチドは、複数のUTR、例えば二重、三重、又は四重の5’UTR又は3’UTRを含む。例えば、二重UTRは同一のUTRの2つのコピーを直列に又は実質的に直列に含む。
【0264】
他の非UTR配列を本開示のポリヌクレオチドに組み込むことができる。例えば、イントロン又はイントロン配列の一部分を、本開示のポリヌクレオチドに組み込むことができる。イントロン配列を組み込むことにより、タンパク質の産生及びポリヌクレオチドの発現レベルを向上させることができる。いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、UTRの代わりに、又はUTRに加えて、本明細書に記載されているもの等の内部リボソーム進入部位(IRES)を含む。
【0265】
いくつかの実施形態では、UTRは少なくとも1つの翻訳エンハンサーエレメントも含むことができる。非限定的な例として、上記翻訳エンハンサーエレメントは、翻訳プロモーターと開始コドンとの間に位置してよい。いくつかの実施形態では、5’UTRが翻訳エンハンサーエレメントを含む。いくつかの実施形態では、3’UTRが翻訳エンハンサーエレメントを含む。いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、翻訳エンハンサーエレメントの1つ又は複数のコピーを含む。翻訳エンハンサーヌクレオチド内の翻訳エンハンサーエレメントは、1つ以上の配列セグメントに編成できる。
【0266】
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチド(例えばmRNA)は、5’キャップ構造を含んでよい。ポリヌクレオチドの5’-キャッピングは、製造元のプロトコルに従って5’-グアノシンキャップ構造を生成するための以下の化学的RNAキャップ類似体を使用して、インビトロ転写反応中に同時に完了できる:3’-O-Me-m7G(5’)ppp(5’)G[ARCAキャップ];G(5’)ppp(5’)A;G(5’)ppp(5’)G;m7G(5’)ppp(5’)A;又はm7G(5’)ppp(5’)G。修飾RNAの5’-キャッピングは、「Cap0」構造:m7G(5’)ppp(5’)Gを生成するためのワクシニアウイルスキャッピング酵素を用いて、転写後に完了できる。Cap1構造は、ワクシニアウイルスキャッピング酵素と、m7G(5’)ppp(5’)G-2’-O-メチルを生成するための2’-O-メチル-トランスフェラーゼとの両方を用いて生成できる。Cap2構造は、Cap1構造に対して、2’-O-メチル-トランスフェラーゼを用いた、5’末端から3番目のヌクレオチドの2’-O-メチル化を行うことによって生成できる。Cap3構造は、Cap2構造に対して、2’-O-メチル-トランスフェラーゼを用いた、5’末端から4番目のヌクレオチドの2’-O-メチル化を行うことによって生成できる。酵素は組換えソースに由来するものであってよい。
【0267】
いくつかの実施形態では本開示のポリヌクレオチド(例えばmRNA)は、Cap0、Cap1、ARCA、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’-フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、2-アジドグアノシン、Cap2、Cap4、5’メチルGキャップ、又はこれらの類似体を含む、5’末端キャップを有する。
【0268】
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチド(例えばmRNA)は、3’ポリ(A)領域を含んでよい。上記3’ポリ(A)領域は、個々のmRNAの安定性のために必須のエレメントである可能性があり、また、コードされたタンパク質の発現レベルを高める可能性もある。3’ポリ(A)領域は典型的には、転写されたmRNAの3’末端に付加された一連のアデニンヌクレオチドである。これは場合によっては、最大約400のアデニンヌクレオチドを含むこともある。いくつかの実施形態では、上記ポリ(A)領域の長さは、約10~約200、約20~約180、約50~約160、約70~約140、又は約80~約120ヌクレオチドであってよい。
【0269】
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチド(例えばmRNA)は、安定化エレメントを含む。安定化エレメントは例えば、ヒストンステムループを含んでよい。ヒストンステムループは一般にヒストン遺伝子に由来し、短い配列からなるスペーサーによって隔てられている、2つの隣り合った、一部又は全体が逆転した相補的配列の、分子内塩基対を含み、これは構造のループを形成する。対合していないループ領域は、典型的には、ステムループエレメントと塩基対を形成できない。これは、多くのRNA二次構造の重要な構成要素であるため、RNAにおいてより頻繁に発生するが、一本鎖DNA内に存在することもある。ステムループ構造の安定性は一般に、対合した領域の長さ、ミスマッチ又はバルジの数、及び塩基組成に依存する。いくつかの実施形態では、ゆらぎ塩基対(非ワトソン・クリック型塩基対)が存在してもよい。いくつかの実施形態では、上記ヒストンステムループ配列の長さは15~45ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、上記ヒストンステムループ配列の長さは、15~30ヌクレオチド、20~35ヌクレオチド、25~40ヌクレオチド、又は30~45ヌクレオチドである。
【0270】
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチド(例えばmRNA)は、1つ以上のAUリッチ配列が除去されている。これらの配列は「AURES」とも呼ばれ、3’UTR内に見られる不安定化配列である。AURESは、本開示のポリヌクレオチド(例えばmRNA)から除去できる。
【0271】
いくつかの実施形態では、本開示の抗原及び/又は抗体をコードするヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。コドン最適化は、アミノ酸を指定する3塩基対コドンの組み合わせの多様性によって示されるように、コドンの縮重を利用しており、一般に、特定の宿主細胞(例えばパッケージング細胞)及び/又は標的細胞)内での発現を増強するために、天然配列の少なくとも1つのコドンを、天然のアミノ酸配列を維持したまま、上記宿主細胞及び/又は標的細胞の遺伝子内で比較的頻繁に又は最も頻繁に使用されるコドンに置き換えることによって、核酸配列を修飾するプロセスを含む。例えば、抗原タンパク質をコードする核酸を修飾することによって、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳類細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、又は他のいずれの宿主及び/若しくは標的細胞を含む所与の原核細胞又は真核細胞において、天然の核酸配列に比べて使用頻度が高いコドンを置換できる。コドン使用率表は、例えば「Codon Usage Database」で容易に入手できる。これらの表は様々な方法で適合させることができる。ある特定の宿主及び/又は標的内での発現のための、ある特定の配列のコドン最適化のためのコンピュータアルゴリズムも入手可能である(例えばGene Forgeを参照)。
【0272】
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチド(例えばmRNA)をコドン最適化することによって、G/Cのレベルを増強できる。核酸分子(例えばmRNA)中のG/C含有量は、RNAの安定性に影響を及ぼす可能性がある。グアニン(G)及び/又はシトシン(C)残基の量が増加したRNAは、アデニン(A)及びチミン(T)又はウラシル(U)ヌクレオチドを多量に含有するmRNAに比べて、機能的に安定し得る。
【0273】
いくつかの実施形態では、本開示による核酸分子の長さは、50~15,000ヌクレオチド、例えば50~13,000ヌクレオチド、100~12,000ヌクレオチド、200~10,000ヌクレオチド、300~9,000ヌクレオチド、400~8,000ヌクレオチド、450~8,000ヌクレオチド、500~7,000ヌクレオチド、600~6,000ヌクレオチド、700~5,000ヌクレオチド、又は800~4,500ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、本開示による核酸分子の長さは、約300ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約900ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約1100ヌクレオチド、約1200ヌクレオチド、約1300ヌクレオチド、約1400ヌクレオチド、約1500ヌクレオチド、約1600ヌクレオチド、約1700ヌクレオチド、約1800ヌクレオチド、約1900ヌクレオチド、約2000ヌクレオチド、約2400ヌクレオチド、約2500ヌクレオチド、約2700ヌクレオチド、約3000ヌクレオチド、約3500ヌクレオチド、約4000ヌクレオチド、約4500ヌクレオチド、約5000ヌクレオチド、約5500ヌクレオチド、約6000ヌクレオチド、約6500ヌクレオチド、約7000ヌクレオチド、約7500ヌクレオチド、約8000ヌクレオチド、約8500ヌクレオチド、約9000ヌクレオチド、約9500ヌクレオチド、約10000ヌクレオチド、又は約12000ヌクレオチドである。
【0274】
哺乳類宿主細胞にトランスフェクトされた場合、上記修飾核酸分子(例えばmRNA)は、12~18時間の、又は18時間を超える、例えば24、36、48、60、72、又は72時間を超える安定性を有することができ、哺乳類宿主細胞による発現が可能である。
【0275】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は化学的に合成及び/又は精製される。非限定的な例として、本開示の核酸は、全体的又は部分的に、固相技法を用いて作成できる。核酸の固相化学合成は、分子を固体支持体上に固定し、反応物質溶液中で段階的に合成する、自動化された方法である。固相合成は、核酸配列内に化学修飾を部位特異的に導入する際に有用である。あるいは、モノマー構築ブロックの逐次添加による本開示の核酸の合成を、液相内で実施してもよい。更なる代替例として、複数の合成方法の組み合わせを使用してもよい。例えば、固相又は液相化学合成を酵素ライゲーションと組み合わせて使用して、長鎖核酸を生成できる。
【0276】
ベクター
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸分子(例えば抗原及び/又は上記抗原の1つ以上のエピトープを標的とする1つ以上の抗体をコードする核酸分子)は、ベクター内に含まれる。上記ベクターは、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターとすることができる。
【0277】
いくつかの実施形態では、上記ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターの非限定的な例としては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV、例えばAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVS3)、レンチウイルス、ヘルパー依存アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、センダイウイルス(hemagglutinating virus of Japan:HVJ)、アルファウイルス(例えばセムリキ森林ウイルス(semliki forest virus:SFV)、シンドビスウイルス(SIN))、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスベクター、及びレトロウイルスベクター(例えばマウス白血病ウイルス(MLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV))が挙げられる。
【0278】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のウイルスベクターは組換えウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のウイルスベクターは、ヒトにおいて複製欠損となるように改変される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはハイブリッドベクター、例えば「無力な(helpless)」アデノウイルスベクター中に配置されたAAVベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、第1のウイルス由来のウイルスカプシドと、第2のウイルス由来のウイルスエンベロープタンパク質、例えば水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus:VSV)由来のVSV-Gタンパク質とを含む。
【0279】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のウイルスベクターはAAVベースのウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のAAVベースのベクターは、AAV rep遺伝子(複製に必要)及び/又はAAV cap遺伝子(カプシドタンパク質の合成に必要)をコードしない(rep及びcapタンパク質はパッケージング細胞によってトランスで提供され得る)。複数のAAV血清型が特定されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のAAVベースのベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAVS3、AAV.rh8、AAV.rhlO、AAV.rh20、AAV.rh39、AAV.rh46、AAV.rh73、AAV.Rh74、AAV.RHM4-1、AAV.hu37、AAV.Anc80、AAV.Anc80L65、AAV.7m8、AAV.PHP.B、AAV.PHP.eB、AAV2.5、AAV2tYF、AAV3B、AAV.LK03、AAV.HSC1、AAV.HSC2、AAV.HSC3、AAV.HSC4、AAV.HSC5、AAV.HSC6、AAV.HSC7、AAV.HSC8、AAV.HSC9、AAV.HSC10、AAV.HSC11、AAV.HSC12、AAV.HSC13、AAV.HSC14、AAV.HSC15、若しくはAAV.HSC16、又は他のrAAV粒子、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせのうちの1つ以上に由来するカプシド成分を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるAAVベースのベクターは、AAVの1つ以上の血清型に由来する成分を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のAAVベースのベクターは、所望の組織(例えば肝臓、筋肉、心臓、腎臓、ニューロン)に対する指向性を有する、AAVの1つ以上の血清型に由来する成分を含む。
【0280】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のウイルスベクターは、レンチウイルスベースのウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターはヒトレンチウイルス由来である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは非ヒトレンチウイルス由来である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、レンチウイルスカプシド中にパッケージングされる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のレンチウイルスベクターは、以下の要素:長鎖末端反復配列、プライマー結合部位、ポリプリントラクト、att部位、及びカプシド形成部位のうちの1つ以上を含む。
【0281】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のウイルスベクターは、HIVベースのウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のHIVベースのベクターは、少なくとも2つのポリヌクレオチドを含み、gag及びpol遺伝子はHIVゲノムに由来し、env遺伝子は別のウイルスに由来する。
【0282】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のウイルスベクターは、単純ヘルペスウイルスベースのウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の単純ヘルペスウイルスベースのベクターは、1つ以上の前初期(IE)遺伝子を含まないように修飾され、それによって非細胞傷害性となる。
【0283】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるウイルスベクターは、MLVベースのウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるMLVベースのベクターは、ウイルス遺伝子の代わりに最大8kbの異種DNAを含む。
【0284】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるウイルスベクターは、アルファウイルスベースのウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるアルファウイルスベクターは、組換え複製欠損アルファウイルスである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるアルファウイルスベクター中のアルファウイルスレプリコンは、そのビリオン表面上に機能的異種リガンドを提示することによって、特定の細胞タイプを標的とする。
【0285】
いくつかの実施形態では、上記ベクターは非ウイルスベクターである。非ウイルスベクターの非限定的な例としては、プラスミド(例えばミニサークルプラスミド)、Sleeping Beautyトランスポゾン、piggyBacトランスポゾン、又は相同組換え修復(HDR)ベースの遺伝子編集のためのテンプレートとして使用される一本鎖若しくは二本鎖DNA分子が挙げられる。
【0286】
ナノ粒子
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチド(例えば抗原、抗体)、上記抗原及び/若しくは1つ以上の上記抗体をコードする1つ以上の核酸分子、又は1つ以上の核酸分子を含むベクターを、キャリア中に製剤化してよい。用語「キャリア(carrier)」は、投与を容易にするために1つ以上の核酸分子と組み合わされる、天然又は合成の有機又は無機成分を指す。
【0287】
いくつかの実施形態では、上記キャリアは、脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle:LNP)、ポリマーナノ粒子、無機ナノ粒子、脂質キャリア(リピドイド、リポソーム、リポプレックス、ペプチドキャリア等)、ナノ粒子模倣体、ナノチューブ、又はコンジュゲートである。
【0288】
ナノ粒子組成物は典型的には、マイクロメートル以下のオーダーにサイズ設定されており、脂質二重層を含むことができる。ナノ粒子組成物としては例えば、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム、及びリポプレックスが挙げられる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、1つ以上の脂質二重層を含む小胞である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、水性区画によって隔てられた2つ以上の同心二重層を含む。脂質二重層は、互いに対して官能化及び/又は架橋できる。脂質二重層は、1つ以上のリガンド、タンパク質、又はチャネルを含むことができる。
【0289】
いくつかの実施形態では、1つ以上の核酸分子は、脂質ナノ粒子(LNP)中に製剤化される。LNPを用いることにより、化学修飾又は非修飾mRNAワクチンの効果的な送達が可能となる。LNP中に製剤化された修飾及び非修飾mRNAワクチンはいずれも、従来のワクチンより大幅に優れている。従って、本開示の1つ以上の核酸分子又はベクターを含む脂質ナノ粒子(LNP)が提供される。
【0290】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、リン脂質、イオン化可能な脂質(イオン化可能なカチオン性脂質等)、又は構造脂質といった、脂質を含んでよい。
【0291】
本明細書で開示されるLNPは、1つ以上のリン脂質、例えば1つ以上の飽和若しくは(ポリ)不飽和リン脂質、又はこれらの組み合わせを含むことができる。リン脂質は典型的には、1つのリン脂質部分と、1つ以上の脂肪酸部分とを含む。リン脂質部分は例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、2-リゾホスファチジルコリン、又はスフィンゴミエリンであってよい。脂肪酸部分は例えば、α-リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エルカ酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、フィタン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸であってよい。
【0292】
またリン脂質には、限定するものではないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸といったグリセロリン脂質と、スフィンゴミエリンといったスフィンゴリン脂質とが含まれる。本開示の組成物の調製に使用できるリン脂質の非限定的な例としては、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-コハク酸(DGS)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。典型的には鶏卵、羊毛、大豆、及び他の植物ソースに由来するリン脂質の天然混合物であるレシチンも使用できる。
【0293】
分岐、酸化、環化、及びアルキンを含む修飾及び置換を伴う天然種を含む、非天然リン脂質種も使用できる。例えばリン脂質は、1つ以上のアルキン(例えば1つ以上の二重結合が三重結合に置換されたアルケニル基)を用いて官能化でき、又はこれと架橋できる。適切な反応条件下において、アルキン基は、アジドへの曝露時に銅触媒環化付加を受けることができる。このような反応は、膜透過若しくは細胞認識を促進するためにナノ粒子組成物の脂質二重層を官能化する際に、又はナノ粒子組成物を標的化部分若しくはイメージング部分(例えばプローブ)等の有用な構成要素と結合する際に、有用となり得る。
【0294】
本明細書で開示されるLNPは、1つ以上のイオン化可能な脂質を含むことができる。本開示のLNP中で使用できるイオン化可能な脂質の例としては、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、(13Z,165Z)-N,N-ジメチル-3-ノニドコサ-13-16-ジエン-1-アミン(L608)、2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、3-(ジドデシルアミノ)-N1,N1,4-トリドデシル-1-ピペラジンエタンアミン(KL10)、N1-[2-(ジドデシルアミノ)エチル]-N1,N4,N4-トリドデシル-1,4-ピペラジンジエタンアミン(KL22)、14,25-ジトリデシル-15,18,21,24-テトラアザ-オクタトリアコンタン(KL25)、(2R)-2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA(2R))、及び(2S)-2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA(2S))が挙げられる。更に、イオン化可能なアミノ脂質は、環状アミン基を含む脂質であってもよい。
【0295】
本明細書で開示されるLNPは、1つ以上の構造脂質を含むことができる。本明細書中で使用される場合、用語「構造脂質(structural lipid)」はステロールを指し、またステロール部分を含有する脂質も指す。脂質ナノ粒子への構造脂質の組み込みにより、粒子中の他の脂質の凝集の軽減を補助できる。
【0296】
構造脂質としては、限定するものではないが、α-トコフェロール、ブラジカステロール、コレステロール、カンペステロール、エルゴステロール、フェコステロール、ホパノイド、フィトステロール、シトステロール、スチグマステロール、ステロイド、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、及びこれらの誘導体又は混合物を挙げることができる。いくつかの実施形態では、上記構造脂質はステロールである。いくつかの実施形態では、上記構造脂質はステロイドである。いくつかの実施形態では、上記構造脂質はコレステロールである。いくつかの実施形態では、上記構造脂質はコレステロール誘導体である。本開示における使用に好適なコレステロール誘導体としては、コレステロールβ-D-グルコシド、コレステロール3-硫酸ナトリウム塩、DC-コレステロール等の正電荷コレステロール、並びにカンペステロール、エルゴステロール、ベツリン、ルペオール、β-シトステロール、α-アミリン、β-アミリン、及び胆汁酸といった他のコレステロール様分子が挙げられる。
【0297】
更なる実施形態では、本明細書で開示されるLNPは、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)修飾脂質、又はPEG化脂質を含むことができる。PEG修飾脂質の非限定的な例としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジン酸、PEG-セラミドコンジュゲート(例えばPEG-CerC14又はPEG-CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン、並びにPEG修飾1,2-ジアシルオキシプロパン-3-アミンが挙げられる。例えばPEG脂質は、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG-c-DOMG、PEG-DMPE、PEG-DPPC、又はPEG-DSPE脂質とすることができる。
【0298】
いくつかの実施形態では、上記PEG修飾脂質としては、限定するものではないが、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロールメトキシポリエチレングリコール(PEG-DMG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)](PEG-DSPE)、PEG-ジパルミトイル、PEG-ジオレイル、PEG-ジステアリル、PEG-ジアシルグリカミド(PEG-DAG)、PEG-ジステリルグリセロール(PEG-DSG)、PEG-ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DPPE)、又はPEG-1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)が挙げられる。
【0299】
いくつかの実施形態では、PEG-脂質の脂質部分としては、長さが約C14~約C22、好ましくは約C14~約C16のものが挙げられる。いくつかの実施形態では、PEG部分、例えばmPEG-NH2のサイズは、約1000、2000、5000、10,000、15,000、又は20,000Daである。
【0300】
本開示のLNPは、炭水化物、ポリマー、透過性増強分子、表面改変剤(例えば界面活性剤)といった1つ以上の追加の成分を含むことができる。
【0301】
炭水化物としては、例えば単糖(例えばグルコース)並びに多糖類(例えばグリコーゲン並びにその誘導体及び類似体)を挙げることができる。
【0302】
ポリマーは、本明細書で開示される医薬組成物(例えば脂質ナノ粒子形態の医薬組成物)に含めることができ、及び/又はそれをカプセル化する、若しくは部分的にカプセル化するために使用できる。ポリマーは生分解性及び/又は生体適合性とすることができる。ポリマーの例としては、限定するものではないが、ポリアミン、ポリアセチレン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリカルバメート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ尿素、ポリスチレン、ポリイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、ポリイソシアネート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、及びポリアリレートが挙げられる。
【0303】
いくつかの実施形態では、脂質組成物とポリヌクレオチドとの比率は、約5:1~約60:1(wt/wt)とすることができる。例えば、脂質組成物とポリヌクレオチド(例えばmRNA)との比率は、約5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1、33:1、34:1、35:1、36:1、37:1、38:1、39:1、40:1、41:1、42:1、43:1、44:1、45:1、46:1、47:1、48:1、49:1、50:1、51:1、52:1、53:1、54:1、55:1、56:1、57:1、58:1、59:1、又は60:1(wt/wt)とすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の脂質ナノ粒子は、ポリヌクレオチド(例えばmRNA)を、約5:1~約10:1、約5:1~約15:1、約5:1~約20:1、約5:1~約25:1、約5:1~約30:1、約5:1~約35:1、約5:1~約40:1、約5:1~約45:1、約5:1~約50:1、約5:1~約55:1、約5:1~約60:1、約10:1~約15:1、約10:1~約20:1、約10:1~約25:1、約10:1~約30:1、約10:1~約35:1、約10:1~約40:1、約10:1~約45:1、約10:1~約50:1、約10:1~約55:1、約10:1~約60:1、約15:1~約20:1、約15:1~約25:1、約15:1~約30:1、約15:1~約35:1、約15:1~約40:1、約15:1~約45:1、約15:1~約50:1、約15:1~約55:1、又は約15:1~約60:1という脂質:ポリヌクレオチドの重量比で含むことができる。
【0304】
一実施形態では、本明細書に記載のLNPは、ポリヌクレオチド(例えばmRNA)を、約0.01mg/ml~2mg/ml、例えば限定するものではないが0.01mg/mL、0.02mg/mL、0.03mg/mL、0.04mg/mL、0.05mg/mL、0.06mg/mL、0.07mg/mL、0.08mg/mL、0.09mg/mL、0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.3mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml、0.6mg/ml、0.7mg/ml、0.8mg/ml、0.9mg/ml、1.0mg/ml、1.1mg/ml、1.2mg/ml、1.3mg/ml、1.4mg/ml、1.5mg/ml、1.6mg/ml、1.7mg/ml、1.8mg/ml、1.9mg/ml、2.0mg/ml、又は2.0mg/ml超の濃度で含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の脂質ナノ粒子は、ポリヌクレオチド(例えばmRNA)を、約0.01~0.1mg/mL、0.05~0.2mg/mL、0.1~0.3mg/mL、0.2~0.4mg/mL、0.3~0.6mg/mL、0.4~0.8mg/mL、0.5~1mg/mL、0.8~1.2mg/mL、1~1.5mg/mL、又は1~2mg/mLの濃度で含むことができる。
【0305】
ナノ粒子組成物は、多様な方法で特性決定できる。例えば、顕微鏡法、例えば透過電子顕微鏡法又は走査電子顕微鏡法を用いて、ナノ粒子組成物の形態及び粒径分布を調べることができる。動的光散乱又は電位差測定(例えば電位差滴定)を用いて、ゼータ電位を測定し、粒径を決定できる。Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd、英国、ウスターシャーカウンティ、マルバーン))等の機器を用いて、ナノ粒子組成物の複数の特徴、例えば粒径、多分散性指数、及びゼータ電位を測定することもできる。
【0306】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPの直径は、約10~約1000nm、例えば限定するものではないが約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm、約500nm、約550nm、約600nm、約650nm、約700nm、約750nm、約800nm、約850nm、約900nm、約950nm、又は約1000nmである。いくつかの実施形態では、本開示のLNPの直径は、約10~約20nm、約10~約30nm、約10~約40nm、約10~約50nm、約10~約60nm、約10~約70nm、約10~約80nm、約10~約90nm、約20~約30nm、約20~約40nm、約20~約50nm、約20~約60nm、約20~約70nm、約20~約80nm、約20~約90nm、約20~約100nm、約30~約40nm、約30~約50nm、約30~約60nm、約30~約70nm、約30~約80nm、約30~約90nm、約30~約100nm、約40~約50nm、約40~約60nm、約40~約70nm、約40~約80nm、約40~約90nm、約40~約100nm、約50~約60nm、約50~約70nm、約50~約80nm、約50~約90nm、約50~約100nm、約60~約70nm、約60~約80nm、約60~約90nm、約60~約100nm、約70~約80nm、約70~約90nm、約70~約100nm、約80~約90nm、約80~約100nm、約90~約100nm、約100~約150nm、約100~約200nm、約100~約300nm、約200~約400nm、約200~約300nm、約200~約500nm、約300~約400nm、約400~約600nm、約500~約800nm、約600~約900nm、約700~約1000nm、約800~約1000nmである。
【0307】
多分散性指数(polydispersity index:PDI)は、脂質小胞粒子の粒径分布の尺度である。PDIは、脂質小胞粒子の平均粒径、及び上記粒径の標準偏差を決定することによって計算できる。脂質小胞粒子のPDIの測定に利用できる複数の技法及び機器が存在する。例えば、DLSは、1nm未満の粒径を測定するために利用可能な技術を用いて、サブミクロン粒径範囲の粒子の粒径及び粒径分布を測定するための、十分に確立された技法である(LS Instruments、スイス;Malvern Instruments、英国)。小さな(例えば0.3未満の)多分散性指数は一般に、粒径分布が狭いことを示す。完璧に均一な試料では、PDIは0.0となる。いくつかの実施形態では、脱水前の本明細書に記載の脂質小胞粒子のPDIは、約0.1~約0.7である。いくつかの実施形態では、脱水前の本明細書に記載の脂質小胞粒子のPDIは、約0.1~約0.2、約0.1~約0.3、約0.1~約0.4、約0.2~約0.5、約0.3~約0.6、約0.4~約0.7、又は約0.5~0.7である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の脂質小胞粒子のPDIは、約0.1、約0.15、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、又は約0.7である。
【0308】
LNPに加えて、本明細書に記載のポリペプチド又はポリヌクレオチドを他のキャリア中に製剤化してもよい。他の好適なキャリアの例としては、限定するものではないが、リポソーム、リポイド、及びリポプレックス、微粒子若しくはポリマーナノ粒子、無機ナノ粒子、ペプチドキャリア、ナノ粒子模倣体、ナノチューブ、コンジュゲート、免疫刺激性複合体(immune stimulating complex:ISCOM)、ウイルス様粒子(virus-like particles:VLP)、自己集合性タンパク質、又はカチオン性サブミクロン水中油エマルジョン等のエマルジョン送達系が挙げられる。
【0309】
リポソームは、水性環境中で二重層を形成して水性コアをカプセル化できる両親媒性脂質である。上記ポリペプチド又はポリヌクレオチド(例えばmRNA)を、この水性コアに組み込むことができる。これらの脂質は、アニオン性、カチオン性、又は双性イオン性の親水性頭部基を有することができる。リポソームは、単一の脂質から、又は複数の脂質の混合物から形成できる。混合物は:(1)複数のアニオン性脂質の混合物;(2)複数のカチオン性脂質の混合物;(3)複数の双性イオン性脂質の混合物;(4)アニオン性脂質とカチオン性脂質との混合物;(5)アニオン性脂質と双性イオン性脂質との混合物;(6)双性イオン性脂質とカチオン性脂質との混合物;又は(7)アニオン性脂質、カチオン性脂質、及び双性イオン性脂質の混合物を含んでよい。同様に、混合物は飽和脂質及び不飽和脂質の両方を含んでよい。例示的なリン脂質としては、限定するものではないが、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、及びホスファチジルグリセロールが挙げられる。カチオン性脂質としては、限定するものではないが、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DSDMA)、ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、1,2-ジオレイルオキシ-N,Nジメチル-3-アミノプロパン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLenDMA)が挙げられる。双性イオン性脂質としては、限定するものではないが、アシル双性イオン性脂質及びエーテル双性イオン性脂質が挙げられる。有用な双性イオン性脂質の例としては、ドデシルホスホコリン、DPPC、及びDOPCが挙げられる。
【0310】
ポリマーマイクロ粒子又はナノ粒子を、ポリペプチド又はポリヌクレオチド(例えばmRNA)をカプセル化又は吸着するために使用することもできる。上記粒子は、実質的に無毒かつ生分解性であってよい。ポリヌクレオチド(例えばmRNA)の送達に使用できる粒子は、最適な粒径及びゼータ電位を有してよい。例えば、上記マイクロ粒子の直径は、0.02μm~8μmの範囲内であってよい。上記組成物が、直径が異なるマイクロ又はナノ粒子の集合である例では、これらの粒子の少なくとも80%、85%、90%、又は95%が、理想的には0.03~7μmの範囲内の直径を有する。これらの粒子はまた、上記粒子へのポリヌクレオチド(例えばmRNA)の最大の吸着を提供するために、40~100mVのゼータ電位を有してよい。
【0311】
非毒性かつ生分解性のポリマーとしては、限定するものではないが、ポリ(アヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリラクトン(ポリカプロラクトンを含む)、ポリジオキサノン、ポリバレロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリシアノアクリレート、チロシン由来ポリカーボネート、ポリビニル-ピロリジノン又はポリエステル-アミド、多糖類等の1つ以上の天然ポリマー(例えばプルラン、アルギン酸、イヌリン、及びキトサン)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、上記粒子は、ポリ(アヒドロキシ酸)(例えばポリ(ラクチド)(PLA))、ポリ(γ-グルタミン酸)(γ-PGA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリスチレン、ラクチドとグリコリドとのコポリマー(例えばポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLG))、及びD,L-ラクチドとカプロラクトンとのコポリマーから形成される。有用なPLGポリマーとしては、ラクチド/グリコリドモル比が例えば20:80~80:20の範囲内、例えば25:75、40:60、45:55、55:45、60:40、75:25であるものを挙げることができる。有用なPLGポリマーとしては、分子量が例えば5,000~200,000Da、例えば10,000~100,000、20,000~70,000、40,000~50,000Daであるものが挙げられる。
【0312】
上記ポリマーナノ粒子は、ヒドロゲルナノ粒子、即ち柔軟なメッシュサイズ、多価コンジュゲーションのための大きな表面積、高い含水率、及び高い抗原装入容量を含む好ましい特性を備えた、親水性三次元ポリマーネットワークを形成してもよい。ポリ(L-乳酸)(PLA)、PLGA、PEG、及び多糖類が、ヒドロゲルナノ粒子の形成に好適である。
【0313】
例えば無機ナノ粒子は、リン酸カルシウムナノ粒子、ケイ素ナノ粒子、又は金ナノ粒子であってよい。無機ナノ粒子は典型的には堅固な構造を有し、ポリペプチド若しくはポリヌクレオチドをカプセル化する殻、又はポリペプチド若しくはポリヌクレオチドを共有結合で付着させることができるコアを備える。上記コアは、金(Au)原子、銀(Ag)原子、銅(Cu)原子、Au/Ag、Au/Cu、Au/Ag/Cu、Au/Pt、Au/Pd、若しくはAu/Ag/Cu/Pdといった1つ以上の原子、又はリン酸カルシウム(CaP)を含んでよい。
【0314】
本開示のポリペプチド又はポリヌクレオチドとの複合体化に好適な他の分子としては、ポリアミドアミン、樹状ポリリシン、ポリエチレンイニリン若しくはポリプロピレンイミン、ポリリシン、キトサン、DNA-ゼラチンコアセルベート、DEAEデキストラン、デンドリマー、又はポリエチレンイミン(PEI)といった、カチオン性分子が挙げられる。
【0315】
いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチド又はポリヌクレオチドを、ナノ粒子に結合できる。本開示の抗原及び/又は抗体とのコンジュゲーションに使用できるナノ粒子としては、限定するものではないが、キトサン殻ナノ粒子、カーボンナノチューブ、PEG化リポソーム、ポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコリド)/モンモリロナイト(PLGA/MMT)ナノ粒子、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)ナノ粒子、ポリ-(リンゴ酸)ベースのナノ粒子、並びに他の無機ナノ粒子(例えば、ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)を含むマグネシウム-アルミニウム層状複水酸化物で作製されたナノ粒子、及びTiOナノ粒子)が挙げられる。ナノ粒子は、ウイルス感染細胞を標的とするために開発でき、組成物中に含有される抗原及び/又は抗体に結合できる。
【0316】
ポリペプチド又はポリヌクレオチド(例えばmRNA)を対象に送達するために、水中油エマルジョンを使用してもよい。上記エマルジョンの作製に使用できる油の例としては、動物(例えば魚)油、又は植物油(例えばナッツ、穀物、及び種子)が挙げられる。上記油は、生分解性かつ生体適合性であってよい。例示的な油としては、限定するものではないが、トコフェロール及びスクアレン、分岐したサメ肝油、不飽和テルペノイド、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。テルペノイドは、5炭素イソプレン単位で生化学的に合成される分岐鎖油である。
【0317】
上記エマルジョンの水性成分は、水とすることができ、又は更なる成分が追加された水とすることができる。例えば水は、緩衝液を形成するための塩、例えばナトリウム塩等のクエン酸塩又はリン酸塩を含んでよい。例示的な緩衝液としては、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、又はコハク酸緩衝液が挙げられる。
【0318】
いくつかの実施形態では、上記水中油エマルジョンは、1つ以上のカチオン性分子を含む。例えば、カチオン性脂質を上記エマルジョンに含めることによって、負電荷ポリヌクレオチド(例えばmRNA)が付着できる正電荷液滴表面を提供できる。例示的なカチオン性脂質としては、限定するものではないが、:1,2-ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、1,2-ジミリストイル-3-トリメチル-アンモニウムプロパン(DMTAP)、3’-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DCコレステロール)、ジメチルジオクタデシル-アンモニウム(DDA、例えば臭化物)、ジパルミトイル(C16:0)トリメチルアンモニウムプロパン(DPTAP)、ジステアロイルトリメチルアンモニウムプロパン(DSTAP)が挙げられる。他の有用なカチオン性脂質としては、塩酸ベンザルコニウム(BAK)、塩化ベンゼトニウム、ヘミコハク酸コレステロールコリンエステル、リポポリアミン(例えばジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、ジパルミトイルホスファチジルエタノール-アミドスペルミン(DPPES))、セトリミド、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、コレステロールのカチオン性誘導体(例えばコレステリル-3β-オキシスクシンアミドエチレントリメチルアンモニウム塩、コレステリル-3β-オキシスクシンアミドエチレン-ジメチルアミン、コレステリル-3β-カルボキシアミドエチレントリメチルアンモニウム塩、及びコレステリル-3β-カルボキシアミドエチレンジメチルアミン)、N,N’,N’-ポリオキシエチレン(10)-N-タロウ-1,3-ジアミノプロパン、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチル-アンモニウム、混合臭化アルキル-トリメチル-アンモニウム、ベンジルジメチルドデシル塩化アンモニウム、ベンジルジメチルヘキサデシル-塩化アンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムメトキシド、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、塩化メチルベンゼトニウム、塩化デカメトニウム、メチル混合トリアルキル塩化アンモニウム、メチルトリオクチル塩化アンモニウム)、N,N-ジメチル-N-[2(2-メチル-4-(1,1,3,3テトラメチルブチル)-フェノキシ]-エトキシ)エチル]-ベンゼンメタ-ナミニウムクロリド(DEBDA)、コレステリル(4’-トリメチルアンモニオ)ブタノエート)、N-アルキルピリジニウム塩(例えば臭化セチルピリジニウム、及び塩化セチルピリジニウム)、N-アルキルピペリジニウム塩、ジカチオン性ボラホルム電解質(C12Me6;C12BU6)、ジアルキルグリセチルホスホリルコリン、リゾレシチン、L-αジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、リポポリ-L(又はD)-リシン(LPLL、LPDL)、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミンに結合されたポリ(L(又はD)-リシン、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、[1-(2,3-ジオレイルオキシ)-プロピル]-N,N,N,トリメチル塩化アンモニウム、1,2-ジアシル-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(アシル基は、ジミリストイル、ジパルミトイル、ジステアロイル、又はジオレオイルとすることができる)、1,2-ジアシル-3(ジメチルアンモニオ)プロパン(アシル基は、ジミリストイル、ジパルミトイル、ジステアロイル、又はジオレオイルとすることができる)、1,2-ジオレオイル-3-(4’-トリメチル-アンモニオ)ブタノイル-sn-グリセロール、1,2-ジオレオイル3-スクシニル-sn-グリセロールコリンエステル、ペンダントアミノ基を有するジドデシルグルタミン酸エステル(C GluPhCnN)、並びにペンダントアミノ基を有するジテトラデシルグルタミン酸エステル(C14GluCnN+)が挙げられる。
【0319】
いくつかの実施形態では、油及びカチオン性脂質に加えて、エマルジョンは、非イオン性界面活性剤及び/又は双性イオン性界面活性剤を含むこともできる。有用な界面活性剤の例としては、限定するものではないが:ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤、例えばポリソルベート20及びポリソルベート80;酸化エチレン、酸化プロピレン、及び/又は酸化ブチレンのコポリマー、リニアブロックコポリマー;リン脂質、例えばホスファチジルコリン;ラウリル、セチル、ステアリル、及びオレイルアルコール由来のポリオキシエチレン脂肪エーテル;ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;オクトキシノール;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール;並びにソルビタンエステルが挙げられる。
【0320】
本開示の方法
ある態様では、本開示は、対象における抗体応答の標的を、抗原の1つ以上の第1のエピトープからその抗原の1つ以上の第2のエピトープに転換する方法を提供する。特定の実施形態では、上記方法は、対象に、(i)上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子と、(ii)上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを投与するステップを含み、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子と、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とは、上記抗原の1つ以上の第2のエピトープに対する抗体を生成するために有効な量で対象に投与される。
【0321】
別の態様では、本開示は、抗原の1つ以上の第1のエピトープを、対象の免疫系による認識から遮蔽する方法を提供する。特定の実施形態では、上記方法は、対象に、(i)上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子と、(ii)上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを投与するステップを含み、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを対象の免疫系による認識から遮蔽するために有効な量で対象に投与される。
【0322】
更に別の態様では、本開示は、抗原の第2のエピトープを標的とする1つ以上の抗体を生成する方法を提供する。特定の実施形態では、上記方法は、対象に、(i)上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子と、(ii)上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを投与するステップを含み、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子と、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とは、上記抗原の1つ以上の第2のエピトープに対する抗体を生成するために有効な量で対象に投与される。
【0323】
また更に別の態様では、本開示は、それを必要とする対象におけるワクチンの効能を向上させる方法であって、上記ワクチンは、抗原、又は抗原をコードする核酸分子を含む、方法を提供する。特定の実施形態では、上記方法は、対象に、(i)上記ワクチンと、(ii)上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを投与するステップを含み、上記ワクチンと、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とは、上記ワクチンの効能を向上させるために有効な量で対象に投与される。
【0324】
特定の実施形態では、対象は哺乳類である。特定の実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、対象は、限定するものではないが、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、又は霊長類(例えば非ヒト霊長類)といった、実験動物である。
【0325】
本開示の特定の態様及び実施形態では、本明細書で開示される方法は、対象に、上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子を有効量だけ投与するステップを含み、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、若しくは上記抗原をコードする核酸分子を投与するステップの前、又はステップ中に、対象に投与される。
【0326】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される1つ以上の抗原及び/又は抗体は、対象の体液中で、上記1つ以上の抗体の1000mg/L~0.01mg/L以上の濃度を達成するために有効な量で、投与してよい。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗原及び/又は抗体は、対象の体液中で、上記1つ以上の抗体の例えば990mg/L~10mg/L、980mg/L~20mg/L、970mg/L~30mg/L、960mg/L~40mg/L、950mg/L~50mg/L、940mg/L~60mg/L、930mg/L~70mg/L、920mg/L~80mg/L、910mg/L~90mg/L、900mg/L~100mg/L、890mg/L~110mg/L、880mg/L~120mg/L、870mg/L~130mg/L、860mg/L~140mg/L、850mg/L~150mg/L、840mg/L~160mg/L、830mg/L~170mg/L、820mg/L~180mg/L、810mg/L~190mg/L、800mg/L~200mg/L、790mg/L~210mg/L、780mg/L~220mg/L、770mg/L~230mg/L、760mg/L~240mg/L、750mg/L~250mg/L、740mg/L~260mg/L、730mg/L~270mg/L、720mg/L~280mg/L、710mg/L~290mg/L、700mg/L~300mg/L、690mg/L~310mg/L、680mg/L~320mg/L、670mg/L~330mg/L、660mg/L~340mg/L、650mg/L~350mg/L、640mg/L~360mg/L、630mg/L~370mg/L、620mg/L~380mg/L、610mg/L~390mg/L、600mg/L~400mg/L、590mg/L~410mg/L、580mg/L~420mg/L、570mg/L~430mg/L、560mg/L~440mg/L、550mg/L~450mg/L、540mg/L~460mg/L、530mg/L~470mg/L、520mg/L~480mg/L、若しくは510mg/L~490mg/Lの濃度、又は更に高い濃度を達成するために有効な量で、投与してよい。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗原及び/又は抗体は、対象の体液中で、上記1つ以上の抗体の例えば0.01mg/L以上、0.02mg/L以上、0.03mg/L以上、0.04mg/L以上、0.05mg/L以上、0.06mg/L以上、0.07mg/L以上、0.08mg/L以上、0.09mg/L以上、0.1mg/L以上、0.3mg/L以上、0.5mg/L以上、0.7mg/L以上、0.9mg/L以上、1mg/L以上、2mg/L以上、3mg/L以上、4mg/L以上、5mg/L以上、6mg/L以上、7mg/L以上、8mg/L以上、9mg/L以上、10mg/L以上、30mg/L以上、50mg/L以上、70mg/L以上、90mg/L以上、110mg/L以上、130mg/L以上、150mg/L以上、170mg/L以上、190mg/L以上、210mg/L以上、230mg/L以上、250mg/L以上、270mg/L以上、290mg/L以上、310mg/L以上、330mg/L以上、350mg/L以上、370mg/L以上、390mg/L以上、410mg/L以上、430mg/L以上、450mg/L以上、470mg/L以上、490mg/L以上、510mg/L以上、530mg/L以上、550mg/L以上、570mg/L以上、590mg/L以上、610mg/L以上、630mg/L以上、650mg/L以上、670mg/L以上、690mg/L以上、710mg/L以上、730mg/L以上、750mg/L以上、770mg/L以上、790mg/L以上、810mg/L以上、830mg/L以上、850mg/L以上、870mg/L以上、890mg/L以上、910mg/L以上、930mg/L以上、950mg/L以上、970mg/L以上、990mg/L以上、1000mg/L以上の濃度、又は更に高い濃度を達成するために有効な量で、投与してよい。いくつかの実施形態では、上記体液は、全血、血漿、血清、唾液、又は尿である。
【0327】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される1つ以上の抗原及び/又は抗体は、限定するものではないが例えば、タンパク質、タンパク質断片、及び/又はタンパク質融合物として投与してよい。
【0328】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗原及び/又はその1つ以上の抗体は、核酸分子(例えばDNA及び/又はRNA分子)であって、関心対象の上記抗原及び/又は抗体を含有し、抗原及び/又は抗体ポリペプチドをインビボで発現するための宿主細胞発現機構を用いて、関心対象の上記抗原及び/又は抗体を発現する、核酸分子として、投与してよい。本明細書で開示される1つ以上の抗原及び/又は抗体をコードする核酸分子については、これ以前の複数のセクションで更に説明されている。
【0329】
特定の実施形態では、(i)上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子と、(ii)上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子とは、異なる製剤として投与される。
【0330】
特定の実施形態では、(i)上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子と、(ii)上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子とは、同一の製剤で投与される。上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子と、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子とを、同一の製剤で投与する場合、上記方法は、(i)上記1つ以上の抗体と(ii)上記抗原とをコードする核酸分子を対象に投与するステップを含んでよい。いくつかの実施形態では、核酸分子はRNA分子(例えばmRNA分子)である。いくつかの実施形態では、核酸分子はDNA分子である。いくつかの実施形態では、核酸分子は化学修飾されている。上記化学修飾は、本明細書で開示されるいずれの数の化学修飾を含んでよい。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、本明細書で開示されるベクターの中に含まれていてよい。
【0331】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、ワクチンとして投与してよい。従って本明細書で開示される1つ以上の抗原又は上記1つ以上の抗原をコードする核酸分子を含むワクチンが、本明細書で提供される。
【0332】
本明細書で開示される、上記1つ以上の抗原及び/若しくは抗体、又はこれらをコードする関連核酸分子は、例えば非経口(皮下、筋肉内、若しくは静脈内を含む)、経腸(経口若しくは直腸を含む)、吸入、又は鼻腔内経路といった、いずれの適切な経路による投与に適合させることができる。
【0333】
このような組成物は例えば、滅菌条件下で、有効成分を1つ以上のキャリア又は1つ以上の賦形剤と混合することによって、調製できる。
【0334】
従って本明細書では、本開示の抗原及び/若しくは抗体又は抗原及び/若しくは抗体ベースの分子(例えば、本明細書で開示される抗原及び/若しくは抗体並びに関連する核酸分子、ベクター、細胞、若しくは結合部分を含む、ワクチン、複合体、融合タンパク質、若しくはコンジュゲート)を含む、製剤も提供される。
【0335】
いくつかの実施形態では、本明細書では、抗原、又は抗原をコードする核酸分子と、上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを含む、製剤が提供される。
【0336】
いくつかの実施形態では、本明細書では、抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする2つ以上のモノクローナル抗体(mAb)を含む、製剤が提供される。
【0337】
上記抗原及び/若しくは抗体又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子(例えば、本明細書で開示される抗原及び/若しくは抗体並びに関連する核酸分子、ベクター、細胞、若しくは結合部分を含む、ワクチン、複合体、融合タンパク質、若しくはコンジュゲート)をベースとする、組成物は、1つ以上の生理学的に許容可能なキャリア及び/又は賦形剤を用いて、いずれの従来の様式で製剤化できる。上記抗原及び/又は抗体、又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子(例えば、本明細書で開示される抗原及び/若しくは抗体並びに関連する核酸分子、ベクター、細胞、若しくは結合部分を含む、ワクチン、複合体、融合タンパク質、若しくはコンジュゲート)は、例えば注射、吸入、若しくは(口若しくは鼻を通した)送気による投与のため、又は経口、頬内、非経口若しくは直腸投与のため、又は器官若しくは組織への直接投与のために、製剤化できる。
【0338】
上記抗原及び/若しくは抗体又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子は、全身投与、局所(topical)投与、又は局所(localized)投与を含む、多様な投与の態様のために製剤化できる。全身投与については、筋肉内、静脈内、腹腔内、及び皮下を含む注入が好ましい。注入のために、上記医薬組成物は、液体溶液中に、好ましくはハンクス液又はリンガー液といった生理学的に適合性を有する緩衝液中に、製剤化できる。更に上記組成物は、使用直前に再溶解又は懸濁される固体の形態に製剤化できる。上記医薬組成物の凍結乾燥形態も好適である。
【0339】
いくつかの実施形態では、本開示の抗原及び/若しくは抗体又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子を含む、上記組成物は、凍結乾燥されていてよい。非限定的な例として、得られた凍結乾燥物を、含水溶媒の添加によって、含水組成物へと再構成できる。いくつかの実施形態では、上記含水組成物は、対象に直接非経口投与できるものであってよい。従って、本開示の更なる実施形態は、含水溶媒を用いた凍結乾燥物の再構成によって得ることができる、含水医薬組成物である。
【0340】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物は、凍結乾燥製剤を含んでよい。非限定的な例として、上記凍結乾燥製剤は、本開示の抗原及び/若しくは抗体若しくは上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子、マンニトール、並びに/又はTWEEN 80(登録商標)を含んでよい。別の非限定的な例として、上記凍結乾燥製剤は、本明細書で開示される抗原及び/若しくは抗体又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子、マンニトール、並びにポロキサマー188を含んでよい。いくつかの実施形態では、上記医薬組成物は、再構成液体組成物を含む凍結乾燥製剤を含んでよい。
【0341】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、既知の組成物よりも可溶性及び/又は湿潤性が増強された製剤を提供できる。非限定的な例として、凍結乾燥物の可溶性及び/又は湿潤性の増強は、賦形剤の適切な組成を用いることによって達成できる。これにより、本明細書で開示される本開示の抗原及び/若しくは抗体又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子を含む、本開示の組成物は、例えば-20℃、+5℃、又は+25℃で所望の貯蔵安定性を示すように開発でき、また、超音波ホモジナイザーを使用して又は使用せずに、緩衝剤又は他の賦形剤を用いて数秒から2分以上の間に完全に溶解させることができるよう、容易に再溶解可能なものとすることができる。非限定的な例として、得られる溶液のpH値はpH2.7~pH9であってよい。更に上記組成物は、本明細書で開示されるいずれの適切な送達経路、例えば非経口(皮下、筋肉内、若しくは静脈内を含む)、経腸(経口若しくは直腸を含む)、吸入、又は鼻腔内経路を介して、対象に容易に提供できる。
【0342】
上記抗原及び/若しくは抗体又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子の投与に使用できる送達経路の非限定的な例としては、耳介(耳内、又は耳経由)、胆汁灌流、頬内(頬に向かって)、心臓灌流、仙骨硬膜外ブロック、結膜、皮膚、歯(1本以上の歯に)、歯冠内、診断、電気浸透、頸管内、洞内、気管内、浣腸、経腸(腸内へ)、皮膚上(皮膚への塗布)、硬膜外(硬膜の中へ)、羊膜外投与、体外、点眼剤(結膜上へ)、胃腸、血液透析、浸潤、送気(鼻での強い吸気)、間質内、腹腔内、羊膜内、動脈内(動脈の中へ)、関節内、胆管内、気管支内、嚢内、心臓内(心臓の中へ)、軟骨内(軟骨の中)、馬尾内(馬尾の中)、空洞内注射(病的空洞の中へ)、腔内(陰茎の基部の中へ)、大脳内(大脳の中へ)、脳室内(脳室の中へ)、槽内(小脳髄大槽の中)、角膜内(角膜の中)、冠動脈内(冠動脈の中)、海綿体内(陰茎の海綿体の拡張可能な空間の中)、皮内(皮膚自体の中へ)、椎間板内(椎間板の中)、管内(腺の管の中)、十二指腸内(十二指腸の中)、硬膜内(硬膜の中又は下)、表皮内(表皮へ)、食道内(食道へ)、胃内(胃の中)、歯肉内(歯肉の中)、回腸内(小腸の遠位部分の中)、病変内(局所病変内、又は局所病変への直接導入)、管腔内(管腔の中)、リンパ内(リンパの中)、髄内(骨髄腔の中)、髄膜内(髄膜の中)、筋肉内(筋肉の中)、心筋内(心筋の中)、眼内(眼の中)、骨内注入(骨髄の中へ)、卵巣内(卵巣の中)、実質内(脳組織内へ)、心膜内(心膜の中)、腹膜内(腹膜の中への注入又は注射)、胸膜内(胸膜の中)、前立腺内(前立腺の中)、肺内(肺又はその気管支の中)、洞内(鼻腔又は眼窩周囲の洞の中)、脊柱内(脊柱の中)、滑膜内(関節の滑膜内の腔の中)、腱内(腱の中)、睾丸内(睾丸の中)、髄腔内(脊柱管の中へ)、髄腔内(脳脊髄軸のいずれかの高さにおける脳脊髄液の中)、胸腔内(胸郭の中)、管内(器官の細管の中)、腫瘍内(腫瘍の中)、鼓室内(中耳の中)、子宮内、腟内投与、血管内(1つ以上の血管の中)、静脈内(静脈の中へ)、静脈内ボーラス、静脈内点滴、心室内(心室の中)、膀胱内注入、硝子体内(眼を通して)、イオン導入(電流(身体の組織内への可溶性塩の移動)による)、洗浄(開いた創傷又は体腔を洗う又は洗い流すため)、喉頭部(喉頭に直接)、経鼻投与(鼻を通して)、経鼻胃(鼻を通して胃内へ)、神経ブロック、密封療法(局所投与であって、その後で該領域を閉塞する包帯で覆われる、局所投与)、眼科的(眼の外側に対する)、点耳薬、経口(口を介した)、中咽頭(口及び咽頭に直接)、非経口、皮膚貫通(percutaneous)、関節周囲、硬膜周囲、神経周囲、歯周、フォトフェレーシス、直腸、呼吸器(局所的又は全身的な効果を得るために経口又は経鼻吸入することによる、気道の中の)、眼球後(橋の後方又は眼球の後方)、軟組織、脊柱、くも膜下、結膜下、皮下(皮膚の下)、口唇下、舌下、粘膜下、局所、経皮、経皮(全身への分散のための、無傷の皮膚を通した拡散)、経粘膜(粘膜を通した拡散)、経胎盤(胎盤を通して、又は胎盤を横断して)、経気管(気管の壁を通した)、経鼓室(鼓室を横断した、又は鼓室を通した)、経膣、尿管(尿管へ)、並びに膣が挙げられる。
【0343】
経口投与のためには、上記医薬組成物は例えば:結合剤(例えばアルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、微結晶セルロース若しくはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、若しくはシリカ);崩壊剤(例えばジャガイモデンプン、若しくはグリコール酸デンプンナトリウム);又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)といった、薬学的に許容可能な賦形剤を用いて、従来の手段で調製された錠剤又はカプセルの形態を取ることができる。錠剤は、当該技術分野で公知の方法によってコーティングすることもできる。経口投与用の液体製剤は、例えば溶液、シロップ、若しくは懸濁液の形態を取ることができ、又は使用前に水若しくは他の好適なビヒクルを用いて再構成するための乾燥製品として提供することもできる。このような液体製剤は:懸濁剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体、又は水素化食用油);乳化剤(例えばレシチン又はアラビアガム);非水性ビヒクル(例えばationd oil、油性エステル、エチルアルコール、又は分別植物油);及び防腐剤(例えばp-ヒドロキシ安息香酸又はソルビン酸メチル又はプロピル)といった、薬学的に許容可能な添加剤を用いて、従来の手段で調製できる。上記製剤は、必要に応じて緩衝塩、香料、着色料、及び甘味料を含有することもできる。
【0344】
上記組成物は、注射による、例えばボーラス注射又は連続注入による、非経口投与のために製剤化できる。注射用製剤は、単位剤形で、例えばアンプルで又は複数用量用コンテナで提供でき、任意に防腐剤が添加される。上記組成物は更に、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルジョンとして製剤化でき、懸濁剤、安定化剤、及び/又は分散剤を含む他の作用剤を含有する場合もある。
【0345】
更に、上記組成物は、デポー製剤として製剤化することもできる。これらの長期作用型の製剤は、(例えば皮下若しくは筋肉内の)移植によって、又は筋肉内注射によって、投与できる。よって例えば、上記抗原及び/若しくは抗体又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子は、好適なポリマー性を用いて、若しくは疎水性材料を用いて(例えば許容可能な油中のエマルジョンとして)、若しくはイオン交換樹脂を用いて、又は難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として、製剤化され得る。他の好適な送達系としては、長期にわたる薬剤の局所的非侵襲性送達の可能性を提供するミクロスフェアが挙げられる。この技術は前毛細管サイズを有する微小球を含むことができ、これは、炎症又は虚血を引き起こすことなく、例えば冠動脈カテーテルを介して、器官の選択されたいずれの部分に注射できる。投与された処置剤はその後、ミクロスフェアから緩やかに放出され、選択された組織内に存在する周囲の細胞によって吸収できる。
【0346】
全身投与は、経粘膜又は経皮的手段によるものとすることもできる。経粘膜又は経皮投与のためには、浸透の対象となるバリアに対して適切な浸透剤を製剤中に使用する。このような浸透剤は当該技術分野で一般的であり、例えば経粘膜投与のためには、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体が挙げられる。更に、浸透の促進のために洗浄剤を使用してもよい。経粘膜投与は、経鼻スプレー又は座薬を用いて実施できる。局所投与のためには、本明細書に記載の抗原及び/若しくは抗体又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子を、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、又はクリームとして製剤化できる。
【0347】
注射での使用に好適な上記抗原及び/若しくは抗体又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子の形態としては:滅菌水性溶液又は分散液;ゴマ油、落花生油又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び滅菌注射液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末を挙げることができる。全ての場合において、上記形態は滅菌されている必要があり、また流体である必要がある。上記形態は、製造条件並びに特定の保管パラメータ(例えば冷蔵及び冷凍)の下で安定している必要があり、また細菌及び真菌等の微生物の汚染作用から保護される必要がある。
【0348】
上記抗原及び/若しくは抗体、又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子は、中性又は塩形態の組成物へと製剤化できる。塩としては、(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成された)酸添加塩が挙げられ、これは、例えば、塩酸若しくはリン酸といった無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等といった有機酸を用いて形成できる。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩は例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄といった無機塩基、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等といった有機塩基に由来するものであってもよい。
【0349】
キャリアは、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、これらの適切な混合物、並びに植物油を含有する、溶媒又は分散媒体とすることもできる。適切な流動性は、例えばレシチン等のコーティングを用いて、分散液の場合には必要な粒径を維持することによって、及び界面活性剤の使用によって維持できる。微生物の作用の防止は、当該技術分野で公知の様々な抗菌剤及び抗真菌剤によって得ることができる。多くの場合、例えば糖又は塩化ナトリウムといった等張剤を含めることが好ましい。注射用組成物の持続的な吸収は、上記組成物中に吸収を遅らせる作用剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを使用することによって得ることができる。
【0350】
滅菌注射液は、必要な量の活性化合物又は活性構築物を、必要に応じて上で挙げた他の成分のうちの様々なものと共に、適切な溶媒中に組み込んだ後、ろ過滅菌を実施することによって調製できる。
【0351】
製剤化後、上記溶液は、投薬用製剤に適合する方法で、有効量で投与できる。上記製剤は、上述のタイプの注射液のような多様な剤形で容易に投与されるが、徐放性カプセル又はマイクロ粒子及びマイクロスフェア等を採用することもできる。
【0352】
例えば水性溶液での非経口投与のためには、上記溶液を必要に応じて適切に緩衝する必要があり、また液体希釈剤を十分な生理食塩水又はグルコースで等張状態とする必要がある。これらの水性溶液は、静脈内、腫瘍内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与に特に好適である。非限定的な例として、1回の投薬量を1mlの等張NaCl溶液に溶解して、1000mlの皮下注入用流体に加えるか、又は提案された注入部位に注射してよい。
【0353】
投与の責任者は、いかなる場合においても、対象に対して適切な用量を決定することになる。例えば対象は、本明細書の抗原及び/又は抗体、又は抗原及び/若しくは抗体ベースの分子(例えば、本明細書で開示される抗原及び/若しくは抗体並びに関連する核酸分子、ベクター、細胞、若しくは結合部分を含む、ワクチン、複合体、融合タンパク質、若しくはコンジュゲート)を、ある期間にわたって毎日若しくは毎週、又は毎月、隔年、若しくは毎年、投与され得る。
【0354】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される1つ以上の抗体及び/又は抗体ベースの分子(例えば上記1つ以上の抗体をコードする核酸分子)は、本明細書で開示される1つ以上の抗体並びに/又は抗体ベースの分子(例えば上記1つ以上の抗体をコードする核酸分子、及び/若しくは上記1つ以上の抗体若しくは上記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子を含むワクチン)の投与前に、対象に投与してよい。
【0355】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大2週間前、3週間前、又は4週間以上前に、対象に投与してよい。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大1か月前、2か月前、3か月前、4か月前、5か月前、又は6か月以上前に、対象に投与してよい。
【0356】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大3週間前に、対象に投与してよい。
【0357】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大1週間前に、対象に投与してよい。
【0358】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、又は7日以上前に、対象に投与してよい。
【0359】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大3日前に、対象に投与してよい。
【0360】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大30分前、1時間前、2時間前、3時間前、4時間前、5時間前、6時間前、7時間前、8時間前、12時間前、16時間前、又は24時間以上前に、対象に投与してよい。
【0361】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される1つ以上の抗体及び/又は抗体ベースの分子(例えば上記1つ以上の抗体をコードする核酸分子)は、本明細書で開示される1つ以上の抗体並びに/又は抗体ベースの分子(例えば上記1つ以上の抗体をコードする核酸分子、及び/若しくは上記1つ以上の抗体若しくは上記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子を含むワクチンの投与後に、対象に投与してよい。
【0362】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与後に、対象に投与してよい。
【0363】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大2週間後、3週間後、又は4週間以上後に、対象に投与してよい。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、又は6か月以上後に、対象に投与してよい。
【0364】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大3週間後に、対象に投与してよい。
【0365】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大1週間後に、対象に投与してよい。
【0366】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、又は7日以上後に、対象に投与してよい。
【0367】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大3日後に、対象に投与してよい。
【0368】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、12時間後、16時間後、又は24時間以上後に、対象に投与してよい。
【0369】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される1つ以上の抗体及び/又は抗体ベースの分子(例えば上記1つ以上の抗体をコードする核酸分子)は、本明細書で開示される1つ以上の抗体並びに/又は抗体ベースの分子(例えば上記1つ以上の抗体をコードする核酸分子、及び/若しくは上記1つ以上の抗体若しくは上記1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子を含むワクチンの投与中に、対象に投与してよい。
【0370】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記抗原、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与中に、対象に投与される。
【0371】
静脈内、腫瘍内、皮内又は筋肉内注射といった非経口投与のために製剤された組成物に加えて、他の形態としては、例えば:経口投与用の錠剤又は他の固形;リポソーム製剤;徐放性カプセル;生分解性形態及び現在使用されている他のいずれの形態が挙げられる。
【0372】
また、鼻腔内又は吸入用の溶液若しくはスプレー、エアロゾル、又は吸入剤を使用してもよい。点鼻液は、鼻腔経路に液滴又はスプレーで投与するように設計された水性溶液とすることができる。点鼻液は、多くの点で鼻汁と類似したものとなるように調製できる。従って水性点鼻液は等張性であり、pHを5.5~7.5に維持するためにわずかに緩衝されている。更に、眼科用製剤に使用されるものと同様の抗菌防腐剤、及び適切な薬剤安定化剤を、必要に応じて製剤中に含めてもよい。様々な市販の点鼻製剤が知られており、これらは例えば抗生物質及び抗ヒスタミン剤を含むことができ、喘息の予防に使用される。
【0373】
経口製剤は、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等といった賦形剤を含むことができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性製剤、又は粉末の形態を取る。定義された特定の実施形態では、経口組成物は、不活性希釈剤若しくは同化可能な食用キャリアを含み、又は硬質若しくは軟質ゼラチンカプセルに封入されていてよく、又は錠剤へと圧縮されていてよく、又は食品に直接組み込まれていてよい。経口投与のためには、上記組成物を賦形剤と組み合わせて、摂食可能な錠剤、頬内錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハース等の形態で使用できる。
【0374】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセル等は、以下を含有してもよい:トラガカント、アラビアガム、コーンスターチ、又はゼラチン等の結合剤;リン酸二カルシウム等の賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;スクロース、ラクトース、又はサッカリン等の甘味剤;及びペパーミント、冬緑油、又はサクランボ香味料等の香味剤。単位剤形がカプセルである場合、これは上述のタイプの材料に加えて液体キャリアを含有してよい。他の様々な材料が、コーティングとして、又は単位剤形の物理的形状のその他の修正のために、存在してもよい。例えば錠剤、丸剤又はカプセルは、シェラック、糖、又はこれら両方でコーティングされていてよい。シロップ又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチル及びプロピルパラベン、染料、並びにサクランボ又はオレンジ風味等の香味剤を含有してよい。
【0375】
用量の範囲及び投与の頻度は、組成物の性質、並びに特定の対象及び使用される投与経路のパラメータに応じて変化し得る。用量は、投与を受ける対象にも左右され得る。例えば、対象が若年者の場合には比較的低い用量が必要となる可能性があり、対象が成人の対象である場合には比較的高い用量が必要となる場合がある。特定の実施形態では、より正確な用量は、対象の体重に左右され得る。特定の実施形態では、より正確な用量は、対象の年齢に左右され得る。本明細書で開示される組成物の投薬量の、好適な、ただし非限定的な例は、投与を受ける対象の年齢及び体格、標的疾患、処置の目的、体調、投与経路等に応じて変化し得る。投薬量の非限定的な例としては、例えば0.01~約20mg/kg体重、より好ましくは約0.02~約7、約0.03~約5、又は約0.05~約3mg/kg体重が挙げられる。処置の頻度及び持続時間は調整可能である。特定の実施形態では、プライミング用量の後に、上記プライミング用量と略同一であってもそれより少なくてもよい第2の用量又は複数の後続の用量の投与を続けることができ、上記後続の用量は:少なくとも1日~3日;少なくとも1週間;少なくとも2週間;少なくとも3週間;少なくとも4週間;少なくとも5週間;少なくとも6週間;少なくとも7週間;少なくとも8週間;少なくとも9週間;少なくとも10週間;少なくとも12週間;又は少なくとも14週間だけ隔てられている。
【0376】
組成物は、対象への、静脈内投与、腫瘍内投与、皮内投与、動脈内投与、腹腔内投与、病変内投与、頭蓋内投与、関節内投与、前立腺内投与、胸膜内投与、気管内投与、鼻腔内投与、硝子体内投与、腟内投与、直腸内投与、局所(topically)投与、腫瘍内投与、筋肉内投与、髄腔内投与、皮下投与、結膜下投与、小胞内投与、粘膜投与、心膜内投与、臍内投与、眼内投与、経口投与、局所(locally)投与、吸入による投与、注射による投与、注入による投与、連続注入による投与、局所灌流による投与、カテーテルを介した投与、洗浄を介した投与、クリームでの投与、又は液体組成物での投与を含んでよい。
【0377】
本明細書で開示される組成物は、アルミニウム塩及び他の鉱物アジュバント等のアジュバント、界面活性剤、細菌誘導体、ビヒクル、及びサイトカインを含むことができる。アジュバントは、拮抗的な免疫調節特性を有することもできる。例えばアジュバントはTh1又はTh2免疫を刺激できる。本明細書で開示される組成物及び方法は、アジュバント療法も含むことができる。
【0378】
本開示の上記1つ以上の抗原及び/又は上記1つ以上の抗原をコードする核酸分子は、ワクチン組成物の形態で提供され得る。一例として、上記ワクチン組成物は、コロナウイルス及び/若しくはインフルエンザ感染、並びに/又はコロナウイルス誘発性及び/若しくはインフルエンザ誘発性の疾患若しくは障害の、処置又は予防に有用であり得る。コロナウイルスワクチンの非限定的な例としては、Comirnaty、Spikevax、Vaxzevria、Nuvaxovid、及びVidprevtynが挙げられる。インフルエンザワクチンの非限定的な例としては、Afluria、Fluarix、Flublok、Flulaval、Fluvirin、及びFluzoneが挙げられる。理論によって束縛されることを望むものではないが、ワクチンは複数の形態を取ることができる(例えばSchlom, J Natl Cancer Inst. 2012; 104(8):599-613; Salgaller, Cancer Res.1996; 56(20):4749-57及びMarchand, Int J Cancer.1999; 80(2):219-30を参照)。上記ワクチン組成物は追加の抗原又は抗原ベースの分子を含んでよく、これにより、本開示の抗原又は抗原ベースの分子は、複数の抗原ベースの分子の混合物のうちの1つとなる。免疫応答を増強するために、アジュバントを上記ワクチン組成物に添加してもよい。特に本開示の抗原含有ワクチン組成物に関して、薬学的に許容可能なアジュバントとしては、限定するものではないが、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、Aquila社製QS21 stimulon、AsA404 (DMXAA)、βグルカン、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、Imiquimod、ImuFact EV1P321、IS Patch、ISS、1018 ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリルリピドA、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、poly-ICLC、PepTel(登録商標)、Pam3Cys、PLGA微粒子、レシキモド、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、及び/又はバジメザンが挙げられる。
【0379】
あるいは、上記ワクチン組成物は、例えばMHCとの複合体として、本開示の抗原を提示する抗原提示細胞(APC)の形態を取ってよい。いくつかの実施形態では、上記APCは、免疫細胞、限定するものではないが例えば樹状細胞又はB細胞である。抗原を細胞の表面上にパルスしてよく(Thurner, J Exp Med. 1999; 190(11):1669-78)、又は本開示の抗原をコードする拡散を(例えば電気泳動によって)樹状細胞若しくはB細胞に導入してよい(Van Tendeloo, Blood.2001; 98(1):49-56)。
【0380】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるワクチンは対象にプライムブースト法で投与できる。このような実施形態では、上記ワクチンのプライミング用量を対象に投与した後、かつ上記ワクチンのブースト用量を対象に投与する前に、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子を対象に投与してよい。
【0381】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記ワクチンのプライミング用量、又は上記ワクチンのプライミング用量をコードする核酸分子の投与の最大2週間後、3週間後、又は4週間以上後に、対象に投与してよい。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記ワクチンのプライミング用量、又は上記ワクチンのプライミング用量をコードする核酸分子の投与の最大1か月後、2か月後、3か月後、4か月後、5か月後、又は6か月以上後に、対象に投与してよい。
【0382】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記ワクチンのプライミング用量、又は上記ワクチンのプライミング用量をコードする核酸分子の投与の最大1週間後に、対象に投与してよい。
【0383】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記ワクチンのプライミング用量、又は上記ワクチンのプライミング用量をコードする核酸分子の投与の最大3週間後に、対象に投与してよい。
【0384】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記ワクチンのプライミング用量、又は上記抗原をコードする核酸分子の投与の最大1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、又は7日以上後に、対象に投与してよい。
【0385】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記ワクチンのプライミング用量、又は上記ワクチンのプライミング用量をコードする核酸分子の投与の最大3日後に、対象に投与してよい。
【0386】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記ワクチンのプライミング用量、又は上記ワクチンのプライミング用量をコードする核酸分子の投与の最大30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、12時間後、16時間後、又は24時間以上後に、対象に投与してよい。
【0387】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記ワクチンのブースト用量、又は上記ワクチンのブースト用量をコードする核酸分子の投与の最大2週間前、3週間前、又は4週間以上前に、対象に投与してよい。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記ワクチンのブースト用量、又は上記ワクチンのブースト用量をコードする核酸分子の投与の最大1か月前、2か月前、3か月前、4か月前、5か月前、又は6か月以上前に、対象に投与してよい。
【0388】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記ワクチンのブースト用量、又は上記ワクチンのブースト用量をコードする核酸分子の投与の最大1週間前に、対象に投与してよい。
【0389】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記ワクチンのブースト用量、又は上記ワクチンのブースト用量をコードする核酸分子の投与の最大1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、又は7日以上前に、対象に投与してよい。
【0390】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記ワクチンのブースト用量、又は上記ワクチンのブースト用量をコードする核酸分子の投与の最大3日前に、対象に投与してよい。
【0391】
いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子は、上記ワクチンのブースト用量、又は上記ワクチンのブースト用量をコードする核酸分子の投与の最大30分前、1時間前、2時間前、3時間前、4時間前、5時間前、6時間前、7時間前、8時間前、12時間前、16時間前、又は24時間以上前に、対象に投与してよい。
【0392】
本開示の組成物は、対象の体内に、器官内に、若しくは全身に、i.d.、i.m.、s.c.、i.p.及びi.v.で直接投与でき、あるいは、対象若しくはヒト細胞株に由来する、後で対象に投与される細胞に対して、エクスビボで適用でき、又は後で対象に再投与される、対象に由来する免疫細胞の部分集団の選択のために、インビトロで使用できる。核酸を細胞にインビトロで投与する場合、インターロイキン-2等の免疫刺激サイトカインを同時発現するように細胞をトランスフェクトすることが有用である場合がある。上記抗原及び/若しくは抗体又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子は、実質的に純粋であってよく、又は免疫刺激アジュバントと組み合わされてよく、若しくは好適な送達系、例えばリポソーム、ウイルス粒子、ウイルス様粒子(VLP)を用いて投与されてもよい。上記抗原及び/若しくは抗体又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子は、キーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin :KLH)又はマンナン等の好適なキャリアと結合することもできる(例えば国際公開第95/18145号明細書、及びLongenecker et al., 1993を参照)。
【0393】
本開示の抗原及び/又は抗体を細胞又は対象に導入する方法としては、例えばベクター送達、粒子仲介型送達、エクソソーム仲介型送達、脂質ナノ粒子(LNP)仲介型送達、細胞浸透ペプチド仲介型送達、又は埋め込み式デバイス仲介型送達を挙げることができる。いくつかの実施形態では、核酸又はタンパク質は、細胞又は対象に、ポリ(酪酸)(PLA)ミクロスフェア、ポリ(D,L-乳酸-コグリコール酸)(PLGA)ミクロスフェア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質コクリエート、又は脂質微小管といったキャリア内で導入できる。
【0394】
抗体の生成及び単離
いくつかの実施形態では、本開示は、対象(例えばヒト又はマウス)から、本明細書で開示される抗原を標的とする1つ以上の抗体を単離するステップ、及び/又は本明細書で開示される抗原を標的とする抗体を産生する細胞を単離するステップを含む、方法を提供する。関連する態様では、本明細書に記載の方法は、対象から、上記抗原の1つ以上の第2のエピトープを標的とする1つ以上の抗体を単離するステップ、及び/又は上記抗原の1つ以上の第2のエピトープを標的とする抗体を産生する細胞を単離するステップを含んでよい。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の抗体はモノクローナル抗体である。
【0395】
いくつかの実施形態では、上記単離するステップは、本明細書に記載の抗体又は上記抗体を産生する上記細胞を、上記抗原に結合させるステップを含む。特定の実施形態では、上記抗体及び/又は上記1つ以上の抗原は、検出可能な標識を含んでよい。特定の実施形態では、上記抗体及び/又は上記1つ以上の抗原は、レポーター分子を含んでよい。上記検出可能な標識又はレポーター分子は:H、14C、32P、35S、又は125I等の放射性同位体;フルオレセインイソチオシアネート若しくはローダミン等の蛍光若しくは化学発光部分;又はアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、若しくはルシフェラーゼ等の酵素とすることができる。いくつかの実施形態では、上記検出可能な標識又はレポーター分子は、タグ又はポリヒスチジンタグとすることができる。いくつかの実施形態では、上記検出可能な標識又はレポーター分子は、C末端mFcタグ、myc-myc-ヒスチジンタグ、又はmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグとすることができる。試料中のスパイク糖タンパク質の検出又は測定に使用できる具体的かつ例示的なアッセイとしては、中和アッセイ、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光活性化セルソーティング(FACS)が挙げられる。
【0396】
いくつかの実施形態では、上述の方法は更に、対象から単離した上記抗体又はその抗原結合断片をベースとして、モノクローナル抗体(mAb)を生成するステップを含んでよい。いくつかの実施形態では、上記モノクローナル抗体(mAb)はヒト抗体である。いくつかの実施形態では、上記モノクローナル抗体はヒト化抗体である。
【0397】
細胞発現抗体とも呼ばれる、本明細書で開示される抗体産生細胞は、発現される抗体が細胞膜に結合されるか又は細胞膜に固定される(即ち細胞表面抗体)細胞、及び抗体を分泌する細胞を包含できる。抗体産生細胞は、出発一次抗体産生細胞、又は本開示の方法によって選択された一次抗体産生細胞に由来するものであってよい。従って、細胞株、形質細胞、記憶B細胞、ハイブリドーマ、形質細胞性骨髄腫、及び組換え抗体発現細胞を、高親和性抗体を発現する抗体産生細胞の収集の前又は後に、一次抗体産生細胞から導出又は単離できる。例えば一次抗体産生細胞を、骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを作製してよく、又は不死化、例えばウイルス(例えばEBV)に感染させてよく、又は特定のB細胞タイプによって発現されるタンパク質マーカーに基づくセルソーティング技法によって区別してもよい。例えば、高親和性抗体を発現する選択された抗体産生細胞を、細胞表面B細胞マーカーに基づいて、FACSでソーティング(選別)してよい。特定の態様では、本明細書で開示される抗体を産生する細胞はB細胞である。
【0398】
本開示は更に、抗原特異性抗体を発現する一次抗体産生細胞を、その結合特性に基づいてその場で効率的に選択した後、単一細胞(シングルセル)単離のための技法を用いて、例えばある細胞集団内の数億個の細胞をサンプリングできる高スループットのスクリーニング方法である蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いて、単離する方法を提供する。所望の高親和性抗体を発現する細胞は、(クローニングステップ後の抗体ライブラリーのスクリーニングからではなく)抗体を産生する全ての細胞から直接識別及び単離できる。続いて、選択された細胞によって産生された抗体を、直接使用するために宿主細胞内でクローニング及び組換え複製でき、これにより、所望の抗体が得られる蓋然性を確実に高めながら、採用されるステップの数を削減できる。
【0399】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗体を単離するための方法ステップは、例えば:関心対象の抗原に対する特異性を有する一次抗体産生細胞の集団を、低濃度の標識抗原に、上記標識抗原が上記細胞の表面上の抗体に結合するために十分な時間にわたって、接触させるステップ;上記標識抗原が結合した上記細胞を、適切な緩衝液で、約15分~約60分の期間にわたって洗浄するステップ;その後、上記抗原が結合した上記細胞を単離するステップを含んでよい。単離ステップは更に、上記抗原が結合した上記細胞を、識別用標識を含む抗原結合タンパク質を用いて識別するステップを含んでよい。
【0400】
いくつかの実施形態では、本開示は、抗原特異性細胞をビオチニル化抗原に接触させる、細胞選択方法を提供する。このような実施形態では、上記方法は更に、蛍光標識ストレプトアビジンを含んでよい。本開示の方法を用いて単離された抗体をコードする核酸分子を含む宿主細胞も企図される。
【0401】
いくつかの実施形態では、本開示は、関心対象の抗原に対する高い結合親和性を示す抗原特異性抗体産生細胞を識別及び単離する方法を提供し、これらの抗体をコードする核酸は、その後、高親和性抗体の大量生産のために、宿主細胞にクローニングできる。
【0402】
いくつかの実施形態では、非ヒト哺乳類を関心対象の抗原で免疫化し、この動物の上記抗原に対する免疫応答を、抗原特異性イムノアッセイを用いて監視する。適切な免疫応答が達成された後、免疫化された動物から抗体産生細胞を収集する。抗体産生細胞は、限定するものではないが脾臓、リンパ節、骨髄、及び末梢血を含む多数のソースから収集される。例えば、免疫化の後に、免疫化された動物から脾細胞を採取する。溶解による赤血球の除去後、本明細書に記載の方法を用いて、免疫化された動物からのIgG抗原陽性B細胞を細胞集団から単離する。
【0403】
いくつかの実施形態では、末梢血単核球(PBMC)を、関心対象の抗原に対する体液性免疫を有することが分かっているヒト又は非ヒト哺乳動物から採取する。次に、抗体産生細胞集団中で最も高い親和性を有するIgG+抗原陽性B細胞を、本開示の方法に従って、更なるプロセシングのために単離できる。
【0404】
関心対象の抗原に対して高い親和性を示す抗体を発現する細胞を選択するために、採取した細胞を、低濃度、例えば約0.1nM~約25nm、又は約1nM~約20nM、又は約2nM~約10nmの、標識された単量体型抗原に、上記標識抗原が上記免疫細胞の表面上の抗体と結合するために十分な時間にわたって接触させ、いくつかの実施形態では、約5~約60分にわたる、標識抗原に対する免疫細胞の曝露が好適である。いくつかの実施形態では、上記低濃度は約10nM未満である。他の実施形態では、上記抗原の上記低濃度は、約9nm、約8nm、約7nm、約6nm、約5nm、約4nm、約3nm、約2nm、約1nMである。更に他の実施形態では、上記抗原の濃度は5nMである。いくつかの実施形態では、上記抗原の濃度は約1nM未満である。別の実施形態では、上記抗原の濃度は1nMである。別の実施形態では、上記抗原の濃度は1nM未満である。他の実施形態では、上記抗原は可溶性である。
【0405】
いくつかの実施形態では、上記標識はビオチンであり、例えば上記抗原はビオチニル化されている。検出分子と呼ばれる場合もある抗原標識は、抗体産生細胞に結合した関心対象の抗原の更なる検出を可能にする。検出は、上記標識に対して特異的な抗体による免疫染色、又は上記標識に結合する試薬による直接染色によって実施できる。多数の検出キット及び技法が、当該技術分野で公知である。
【0406】
これと同時に又はこれに続いて、次のステップでの単一細胞単離技法を見越して、上記細胞を、B細胞、特にIgG+IgM-細胞(抗B細胞マーカー、又は抗IgG若しくは抗Fc試薬等とインキュベートされた)として検出できる。IgG又はB細胞検出試薬は、関心対象の抗原とのインキュベーションの前、間、又は後で、細胞とインキュベートしてよい。B細胞検出試薬は市販されている(Huang, J. et al., 2013 Nature Protocols, 8(10):1907-1915も参照)。
【0407】
結合していない抗原を除去すると、選択された細胞を、高親和性抗体に富んだ状態とすることができる。
【0408】
結合していない抗原を除去した後、上記細胞を、抗原特異性細胞を識別するための検出可能な標識、例えば蛍光標識を含む、抗原結合タンパク質と接触させてよい。抗原がビオチニル化されている実施形態では、検出に蛍光標識ストレプトアビジンが使用される。検出可能な標識が酵素的に活性化される場合、上記細胞を適切な酵素と接触させることで、結合した抗原を有する細胞を検出する。
【0409】
富化された高親和性抗体発現細胞の検出及び単離のための蛍光活性化セルソーティング(FACS)の使用は、単一細胞ソーティングのための極めて高効率かつ高感度のツールである。フローサイトメトリーによる単一細胞単離のためのプロトコルは公知である(Huang, J. et al, 2013、前出)。この目的のために、蛍光抗原(即ち蛍光標識ストレプトアビジン/ビオチニル化抗原)と結合する細胞を検出し、関心対象の抗原と高い親和性で特異的に結合する抗体を発現する細胞として識別し、96ウェル又は384ウェルプレートの個々のウェルに単離する。
【0410】
手動での単一細胞ピッキング、限界希釈、及び吸着された抗原のB細胞パニング(これらは全て当該技術分野で公知である)を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で公知の別の方法で、細胞をソーティング及び収集してもよい((Rolink, et al., 1996 J Exp Med 183:187-194; Lightwood, D. et al, 2006 J. Immunol. Methods 316(1-2):133-43. Epub 2006 Sep.18)。
【0411】
単離されたB細胞を骨髄腫細胞株等の不死細胞と融合して、ハイブリドーマを作製できる。ハイブリドーマ技法は十分に当業者の技術の範囲内である(Harlow and Lane, 1988、前出)。細胞表面マーカー又は遺伝子発現マーカーによる決定等、特定のB細胞タイプの識別のために、単離されたB細胞を更に区別又は分類してもよい。
【0412】
細胞を収集した後、上記抗体を組換え産生するために、上記細胞からDNAを調製する。上述のように、ソーティングされた各B細胞から直接DNAを抽出して抗体遺伝子をクローニングする前に、DNAを更に豊富にするために、B細胞を必要に応じて培養するか、骨髄腫細胞に融合させるか、又はウイルス(例えばEBV)に感染させる等して不死化してよい。簡潔に述べると、免疫グロブリン可変重鎖及び軽鎖(即ちVH、Ig Vκ、及びVλ)をコードする遺伝子は、従来の技法を用いて実施されるように、例えばWang et al.(J. Immunol. Methods 244:217-225)に記載され、かつ本明細書に記載されているように、選択された抗体産生細胞から単離されたmRNAのRT-PCRを用いて回収される。抗体遺伝子は、IgG重鎖及び軽鎖発現ベクターにクローニングされ、宿主細胞のトランスフェクションによって発現される。
【0413】
好適な宿主細胞内での、本開示の抗体の組換え産生のために、上記抗体遺伝子をコードする核酸を、更なるクローニング(DNAの増幅)のため又は発現のための複製可能なベクターに(安定的又は一時的に)挿入する。多くのベクター、特に発現ベクターが利用可能であり、又は適切な調節エレメントを含むように操作できる。本開示の文脈では、発現ベクターは、染色体、非染色体、及び合成核酸ベクター(発現制御エレメントの好適なセットを含む核酸配列)を含む何らかのベクターであってよい。このようなベクターの例としては、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAとの組み合わせに由来するベクター、及びウイルス核酸(RNA又はDNA)ベクターが挙げられる。一実施形態では、抗体をコードする核酸分子は、例えば(例えばSykes and Johnston、Nat Biotech 12:355-59 (1997)に記載されているような)線状発現エレメント、(例えば米国特許第6,077,835号明細書、及び/若しくは国際公開第00/70087号明細書に記載されているような)圧縮核酸ベクター、又はpBR322、pUC19/18、若しくはpUC118/119等のプラスミドベクターを含む、裸のDNA又はRNAベクターに含まれる。このような核酸ベクター、及びその利用は、当該技術分野で公知である(例えば米国特許第5,589,466明細書、及び米国特許第5,973,972号明細書を参照)。
【0414】
あるいは発現ベクターは、酵素系での発現に好適なベクターであってよい。酵素系での発現に好適ないずれのベクターを採用してよい。好適なベクターとしては例えば、酵母α因子、アルコールオキシダーゼ、及びPGH等の、構成的又は誘導的プロモーターを含むベクターが挙げられる。
【0415】
特定の実施形態では、上記ベクターは、上記抗体の重鎖をコードする核酸分子(又は遺伝子)と、上記抗体の軽鎖をコードする核酸分子とを含み、上記は、本開示の方法によって選択されたB細胞によって産生される。利用されるベクターとしては、記載された核酸分子(遺伝子)を含む発現ベクターが挙げられ、核酸分子(遺伝子)は、宿主細胞内での発現に好適な発現制御配列に作動可能に連結される。
【0416】
ベクターの選択は、使用する宿主細胞に部分的に依存する。宿主細胞としては、限定するものではないが、原核生物又は真核生物(一般には哺乳類)由来の細胞が挙げられる。
【0417】
いくつかの実施形態では、上記宿主細胞は、細菌又は酵母細胞である。いくつかの実施形態では、上記宿主細胞は哺乳類細胞である。他の実施形態では、上記宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese hamster ovary:CHO)細胞(例えばCHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO、CHOt)、COS(例えばCOS-7)、肝細胞、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えばHEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK21)、HeLa、HepG2、W138、MRC 5、Colo25、HB 8065、HL-60、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT細胞、腫瘍細胞、及び上述の細胞に由来する細胞株からなる群から選択される。
【0418】
完全長抗体(可変領域及び定常領域を含む、重鎖及び軽鎖)を、その後、適切な1つ以上のベクターにクローニングできることが理解されるだろう。あるいは、単離された抗体のFab領域を、意図された目的のためのいずれのアイソタイプの定常領域に合わせて、1つ以上のベクターにクローニングできる。従って、単離された抗体の構築に、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgD、及びIgE重鎖定常領域、又はキメラ重鎖定常領域を含む、いずれの定常領域を利用してよい。このような定常領域は、抗体の意図された用途に応じて、いずれのヒト又は動物種から得ることができる。また、抗体可変領域又はFab領域を、ScFv、ダイアボディ等といった他のフォーマットでのタンパク質の発現に適切な1つ以上のベクターにクローニングしてもよい。
【0419】
本開示は、関心対象の抗原に対して特異的な高親和性抗体を含む核酸分子をコードする哺乳類宿主細胞を提供し、上記抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、上記抗体を発現するB細胞から単離されたものであり、また上記B細胞は、単量体形態の低濃度の抗原で免疫化された哺乳類からの細胞の集団から選択される。
【0420】
本開示の方法を用いて単離された細胞に由来する抗体の結合親和性及び速度定数は、当該技術分野で公知の方法に従って、例えば表面プラズモン共鳴によって決定される。一実施形態では、測定は、例えばBiacore 2000又は同様の機器で、25℃で実施される。抗体を抗ヒトFcセンサー表面で捕捉し、可溶性単量体型タンパク質を上記表面に注入する。結合速度定数(k)及び解離速度定数(k)は、曲線あてはめソフトウェアを用いてデータを処理し、1:1結合モデルに当てはめることによって決定される。平衡解離定数(K)及び解離半減期(t1/2)は、速度定数から以下のように計算される:K(M)=k/k;及びt1/2(min)=(ln 2/(60*k))。
【0421】
トランスジェニックマウスでヒト抗体を生成する方法は、当該技術分野で公知である。このような公知の方法のいずれかを本開示の文脈において使用して、スパイク糖タンパク質に特異的に結合するヒト抗体を作製できる。以下のうちのいずれか1つを含む免疫原を用いて、スパイク糖タンパク質に対する抗体を生成できる。本開示の特定の実施形態では、本開示の抗体は、完全長天然スパイク糖タンパク質で、又は生きた弱毒化若しくは不活化ウイルスで、上記タンパク質若しくはその断片をコードするDNAで免疫化されたマウスから得られる。あるいは、上記スパイク糖タンパク質又はその断片は、標準的な生化学的技法を用いて製造でき、修飾して免疫原として使用できる。本開示の一実施形態では、上記免疫原は、組換えにより製造されたスパイク糖タンパク質又はその断片である。本開示の特定の実施形態では、上記免疫原は、スパイクポリペプチドワクチンであってよい。特定の実施形態では、1回以上のブースター注射を投与してよい。特定の実施形態では、上記免疫原は、大腸菌で、又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の他のいずれの真核生物若しくは哺乳類細胞で発現された、組換えスパイクポリペプチドであってよい。
【0422】
VelocImmune(登録商標)技術(例えば米国特許第6,596,541号明細書を参照、Regeneron Pharmaceuticals、VelocImmune(登録商標))、又はモノクローナル抗体を生成するための他のいずれの公知の方法を用いて、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する、スパイク糖タンパク質に対する高親和性キメラ抗体を、最初に単離できる。VelocImmune(登録商標)技術は、内因性マウス定常領域座位に作動可能に連結されたヒト重鎖及び軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの作製を伴い、これにより上記マウスは、抗原刺激に応答して、ヒト可変領域及びマウス定常領域を含む抗体を産生する。上記抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離して、ヒト重鎖及び軽鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に連結する。次に上記DNAを、完全ヒト抗体を発現できる細胞で発現させる。
【0423】
一般に、VelocImmune(登録商標)マウスを関心対象の抗原で攻撃して、抗体を発現したマウスからリンパ細胞(B細胞等)を回収する。上記リンパ細胞を骨髄腫細胞株と融合することにより、不死ハイブリドーマ細胞株を調製し、このようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニング及び選択し、関心対象の抗原に対して特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を識別する。重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離して、上記重鎖及び軽鎖の望ましいアイソタイプ定常領域に連結できる。このような抗体タンパク質は、CHO細胞等の細胞内で産生できる。あるいは、抗原特異性キメラ抗体又は軽鎖及び重鎖の可変ドメインをコードするDNAを、抗原特異性リンパ球から直接単離できる。
【0424】
まず、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体が単離される。以下の実験のセクションと同様に、親和性、選択性、エピトープ等を含む所望の特徴に関して上記抗体を特性決定し、選択する。上記マウス定常領域を所望のヒト定常領域で置換することにより、本開示の完全ヒト抗体、例えば野生型の又は修飾されたIgG1又はIgG4が生成される。選択される定常領域は具体的な用途に応じて変化し得るが、高親和性抗原結合特性及び標的特異性特性は可変領域にある。
【0425】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗体及び抗原結合断片は、大腸菌/T7発現系で産生することもできる。非限定的な例として、抗スパイク糖タンパク質抗体免疫グロブリン分子をコードする核酸を、pETベースのプラスミドに挿入して、大腸菌/T7発現系で発現させてよい。例えば本開示は、抗体若しくはその抗原結合断片、又はその免疫グロブリン鎖を、宿主細胞(例えば、BL21又はBL21DE3等の大腸菌といった細菌宿主細胞)内で発現させる方法を含み、上記方法は、T7プロモーターに作動可能に連結された免疫グロブリン鎖をコードするポリヌクレオチドも含む細胞内で、T7 RNAポリメラーゼを発現させるステップを含む。例えば、本開示のある実施形態では、大腸菌等の細菌宿主細胞は、lacプロモーターに作動可能に連結されたT7 RNAポリメラーゼ遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含み、上記ポリメラーゼ及び上記鎖の発現は、上記宿主細胞をIPTG(イソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシド)とインキュベートすることによって誘導される。
【0426】
キット
本開示は更に、本開示の抗体、抗原、ワクチン、核酸分子、ベクター、脂質ナノ粒子、又は細胞を含むがこれらに限定されない本開示の様々な組成物のいずれかを含み得る、キットを含む。特定の実施形態では、このようなキットは、例えばその中に内包される核酸分子を保存又は維持する構成要素、例えば核酸の分解からの防御を行う試薬を含んでよい。このような成分は、例えばヌクレアーゼ若しくはRNase若しくはDNaseを含まなくてよく、又はRNase若しくはDNaseに対する防御を行うものであってよい。本明細書に記載の組成物又は試薬のうちのいずれを、キットの構成要素としてよい。
【0427】
非限定的な例として、上記キットは、(i)抗原、又は抗原をコードする核酸分子と、(ii)上記抗原の1つ以上の第1のエピトープを標的とする1つ以上の抗体、又はその1つ以上の抗体をコードする1つ以上の核酸分子とを含んでよい。
【0428】
キットは、例えばバイアル、管、少量若しくは微量遠心分離機チューブ、試験管、フラスコ、瓶、シリンジ、又は他のコンテナといった、好適なコンテナも含むことができる。追加の構成要素又は作用剤を提供する場合、上記キットは、この作用剤又は構成要素を中に入れることができる1つ以上の追加のコンテナを内包できる。本明細書におけるキットは、上記抗原及び/若しくは抗体又は上記抗原及び/若しくは抗体ベースの分子(例えば、本明細書で開示される抗原及び/若しくは抗体並びに関連する核酸分子、ベクター、細胞、若しくは結合部分を含む、ワクチン、複合体、融合タンパク質、若しくはコンジュゲート)、を内包するための手段、並びに市販のために密閉された他のいずれの試薬コンテナも含むことになる。このようなコンテナは、射出成形又は吹込み成形されたプラスチック製コンテナを含んでよく、その中に所望のバイアルが保持される。任意に、1つ以上の追加の活性剤が、記載されている組成物に必要となる場合がある。
【0429】
本開示はまた、本明細書に記載の組成物又はキットのいずれか1つを含む製品も提供する。
【0430】
非限定的な実施形態のリスト
本開示は、以下の非限定的な実施形態も含む:
【0431】
実施形態1. 対象における抗体応答の標的を、抗原の1つ以上の望ましくないエピトープからその抗原の他のエピトープに転換する方法であって、上記方法は、上記対象に、上記1つ以上の望ましくないエピトープを標的とする1つ以上の抗体を有効量だけ投与するステップを含み、上記1つ以上の抗体は、上記抗原又は上記抗原をコードする核酸の投与前又は投与中に上記対象に投与される、方法。
【0432】
実施形態2. 上記1つ以上の抗体は、上記抗原又は上記抗原をコードする核酸を上記対象に投与する前に投与される、実施形態1に記載の方法。
【0433】
実施形態3. 上記対象から、望ましくないエピトープではない他の抗原エピトープを認識する抗体を単離するステップを更に含む、実施形態1又は実施形態2に記載の方法。
【0434】
実施形態4. 上記対象から単離された上記抗体をベースとしてモノクローナル抗体(mAb)を生成するステップを更に含む、実施形態3に記載の方法。
【0435】
実施形態5 対象におけるワクチンの効能を向上させる方法であって、上記ワクチンは、抗原又は抗原をコードする核酸を含み、上記方法は、上記対象に、上記抗原の1つ以上の望ましくないエピトープを標的とする1つ以上の抗体を有効量だけ投与するステップを含み、上記1つ以上の抗体は、上記ワクチンの投与前又は投与中に上記対象に投与される、方法。
【0436】
実施形態6. 上記1つ以上の抗体は、上記ワクチンを上記対象に投与する前に投与される、実施形態5に記載の方法。
【0437】
実施形態7. 上記ワクチンはプライムブースト法で投与され、上記1つ以上の抗体は、上記対象に対する上記ワクチンのプライミング投与後かつブースト投与前に投与される、実施形態5に記載の方法。
【0438】
実施形態8. 上記1つ以上の望ましくないエピトープは、免疫優性エピトープである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0439】
実施形態9. 上記免疫優性エピトープは、上記抗原が由来する病原体の異なる株又は種の間で、上記抗原の他のエピトープよりも保存性が低い、実施形態8に記載の方法。
【0440】
実施形態10. 上記抗原はタンパク質抗原である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0441】
実施形態11. 上記抗原はクラスI病原体由来である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0442】
実施形態12. 上記抗原はクラスII病原体由来である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0443】
実施形態13. 上記病原体はウイルスである、実施形態12に記載の方法。
【0444】
実施形態14. 上記ウイルスはコロナウイルスである、実施形態13に記載の方法。
【0445】
実施形態15. 上記コロナウイルスはSARS-CoV-2である、実施形態14に記載の方法。
【0446】
実施形態16. 上記抗原はSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質であり、上記1つ以上の望ましくないエピトープは、上記SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内に含まれる中和エピトープである、実施形態15に記載の方法。
【0447】
実施形態17. 抗原の1つ以上の望ましくないエピトープを、対象の免疫系による認識から遮蔽する方法であって、上記方法は、上記対象に、上記1つ以上の望ましくないエピトープを標的とする1つ以上の抗体を有効量で投与するステップを含む、方法。
【0448】
実施形態18. 上記抗原は、上記対象の内因性分子である、実施形態17に記載の方法。
【0449】
実施形態19. 上記抗原は、自己免疫疾患における免疫応答の標的とされる、実施形態18に記載の方法。
【0450】
実施形態20. 上記1つ以上の抗体はモノクローナル抗体(mAb)である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0451】
実施形態21. 抗原の望ましくないエピトープを標的とする2つ以上のモノクローナル抗体(mAb)を含む、組成物。
【0452】
実施形態22. 上記望ましくないエピトープは、免疫優性エピトープである、実施形態21に記載の組成物。
【0453】
実施形態23. 上記免疫優性エピトープは、上記抗原が由来する病原体の異なる株又は種の間で、上記抗原の他のエピトープよりも保存性が低い、実施形態22に記載の組成物。
【0454】
実施形態24. 上記抗原はタンパク質抗原である、実施形態21~23のいずれか1つに記載の組成物。
【0455】
実施形態25. 上記抗原はクラスI病原体由来である、実施形態21~24のいずれか1つに記載の組成物。
【0456】
実施形態26. 上記抗原はクラスII病原体由来である、実施形態21~24のいずれか1つに記載の組成物。
【0457】
実施形態27. 上記病原体はウイルスである、実施形態26に記載の組成物。
【0458】
実施形態28. 上記ウイルスはコロナウイルスである、実施形態27に記載の組成物。
【0459】
実施形態29. 上記コロナウイルスはSARS-CoV-2である、実施形態28に記載の組成物。
【0460】
実施形態30. 上記抗原はSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質であり、上記望ましくないエピトープは、上記SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)内に含まれる中和エピトープである、実施形態29に記載の組成物。
【0461】
実施形態31. 上記抗原は、自己免疫疾患における免疫応答の標的とされる分子である、実施形態21に記載の組成物。
【実施例
【0462】
本開示を、以下の実施例によっても説明及び実証する。しかしながら、この実施例及び本明細書中のいずれの箇所の他の実施例の使用は、単なる例示であり、本開示の又は例示されているいずれの用語の範囲及び意味を一切限定しない。同様に、本開示は、本明細書に記載のいずれの特定の好ましい実施形態に限定されない。実際には、本開示の多数の修正形態及び変形形態は、本明細書を読めば当業者には明らかになり得るものであり、これらの変形例は、本開示の精神又は範囲から逸脱することなく実施できる。従って本開示は、添付の請求項の用語と、これらの請求項が権利を有する均等物の全範囲とによってのみ限定されるものとする。
【0463】
材料及び方法
免疫化及びイムノアッセイためのタンパク質:
Wuhan-Hu-1(アクセッション番号MN908947.3)からのSARS-CoV-2スパイク三量体(E11047)アミノ酸14-1211、及びスパイクRBD(E10621)アミノ酸319-541を、SARS-CoV-スパイク免疫化マウスにおけるタンパク質免疫原、及びSARS-CoV-2スパイク抗体の検出のためのタンパク質として使用するために、発現させて精製した。SARS-CoV-2スパイクN末端ドメイン(NTD)、S1、及びS2領域(全てWuhan-Hu-1配列MN908947.3から)、並びにSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質は商業的に入手した。
【0464】
マウスの免疫化
メスのC57BL/6マウスを、ACE2結合と重複する中和エピトープを標的とする抗SARS CoV-2スパイクRBD mAb抗体であるE10933及びE10987で、-3日目又は18日目に10mg/kg~0.001mg/kgを静脈内投与することによって処置した。マウスのサブセットはmAb処置を受けなかった。次に、0日目に5μgのSARS-CoV-2スパイク三量体、SARS-CoV-2 RBD、又はPBSを50μgのポリ(I:C)HMW(Poly (I:C) HMW)と共に皮下注射することによって、マウスを免疫化し、21日目にブースト投与した。マウスを42日目に安楽死させ、SARS-CoV-2抗体応答の血清学的分析のために血清を得た。
【0465】
細胞株
アフリカミドリザル(C.aethiops)の腎臓上皮細胞(American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))-CCL81を、T225フラスコ内において、10%のウシ胎児血清、1%のペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン、及び1%のピルビン酸ナトリウムを含有する完全ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium:DMEM)中で培養した。
【0466】
偽型ウイルス産生
非複製型偽型粒子VSV-SARS-CoV-2-スパイクウイルスを、過去に記述されているようにして生成した(Baum A, Fulton BO, Wloga E, Copin R, Pascal KE, Russo V, et al. Antibody cocktail to SARS-CoV-2 Spike Protein prevents rapid mutational escape seen with individual antibodies. Science 2020b; 369(6506):1014-8)。簡潔に述べると、VSV糖タンパク質がゲノムから削除され、VSVがホタルルシフェラーゼ(Fluc)蛍光レポーターを発現するように操作された、VSVΔG系を用いて、偽型粒子を生成した。合成されたSARS-CoV-2スパイクタンパク質を発現プラスミドにクローニングすることによって、WT SARS-CoV-2 Sタンパク質(aa 14-1255;Wuhan-Hu-1、アクセッション番号MN908947.3、D614G置換を含有)を用いて偽型粒子を偽型化した。
【0467】
マウス血清中のAg特異的IgG応答を検出するためのMultiplex Luminexアッセイ
SARS-CoV-2特異的抗体応答を、非GLP改変多重化Luminexイムノアッセイによって測定した。SARS-CoV-2スパイク組換え抗原(完全長SARS-CoV-2スパイク三量体化、N末端ドメイン(NTD)、RBD、S1、及びS2領域;全てWuhan-Hu-1配列MN908947.3から)、並びにSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質を、蛍光バーコード付きマイクロスフェアに連結した。マイクロスフェアに対するタンパク質の化学的連結は、過去に記述されているようにして実施した(Blauvelt A, Simpson EL, Tyring SK, et al. Dupilumab does not affect correlates of vaccine-induced immunity: A randomized, placebo-controlled trial in adults with moderate-to-severe atopic dermatitis. J Am Acad Dermatol 2019; 80: 158-167)。血清試料を1:50で希釈し、54μg/mlの抗E10933+E10987イディオタイプ抗体(それぞれE13269及びE13261)を含めることによって、循環するE10933+E10987をブロックした。希釈された血清(1:50又は1:1250)及びmAb混合物をAg結合ビーズ混合物に加え、4℃で一晩インキュベートした。抗体結合ビーズを、PE結合抗マウスIgG(Columbia Bio、Cat:D5-112-Fc)によって検出した。抗原コーティング済みビーズそれぞれの抗体レベルは、所与の血清希釈における蛍光強度中央値(median fluorescence intensity:MFI)として表される。
【0468】
偽型ウイルス中和アッセイ
天然VSVウイルス糖タンパク質(G)の代わりにSARS-CoV-2スパイク(aa 14-1255、Wuhan-Hu-1配列、MN908947.3)を用いて補完された、ホタルルシフェラーゼ(Fluc)をコードする非複製型組換え水疱性口内炎ウイルス(VSV)を利用して、SARS-CoV-2に対する中和血清の中和力価を測定した。マウス血清中の中和抗体を評価するために、偽型ウイルス粒子(pVSVLuc-SARS-CoV-2スパイク)を、1:20の血漿希釈(Cmaxの予想E10933+E10987血漿濃度の10倍モル過剰)から開始して135μg/mlの抗E10933+E10987イディオタイプ抗体を用いて処理された段階希釈血清とインキュベートして、E10933+E10987仲介型の中和をブロックした。抗スパイクmAbであるE14315+E15160、E15160、E14315、若しくはE10987+E10933を前投与された又はmAbを前投与されていないSARS-CoV-2 RBD免疫化マウスから得られたモノクローナルmAbからの中和力価を評価するために;マウス血清又は得られた抗SARS-CoV-2 mAbと混合された、SARS-CoV-2スパイク偽型化ウイルスを、Vero細胞上に置き、SpectraMax i3プレートリーダーをMiniMaxイメージングサイトメーターと共に使用して、Flucレポーターの発現を利用することにより、感染力を検出した。培地のみ又はウイルスのみで観察された中和を、それぞれ100%中和又は0%中和として定義した。中和のパーセンテージは、実験条件と細胞培養培地のみの場合との間の差を1から引いたものを、ウイルスのみの場合と細胞培養培地のみの場合との間の差で割り、100を掛けることによって計算した。
【0469】
【数1】
【0470】
最終的な血清の中和力価については、GraphPadプリズムを用いて二重のウェルで実施されたアッセイからIC50及びHillSlope値を計算した。検出の限界は、開始時の血漿希釈(1:20に希釈された血漿が同体積の偽型ウイルス粒子と混合され、1:40の希釈に等しくなっている)に基づくものである。
【0471】
組換えSARS-CoV-2タンパク質に対する抗SARS-CoV-2抗体の結合の決定
抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体を含有する試料の、SARS-CoV-2組換えタンパク質に対する結合を、ビーズベースのマルチプレックスイムノアッセイを用いて決定した。簡潔に述べると、抗SARS-CoV-2抗体試料を、個々のSARS-CoV-2スパイクエクトドメイン組換えタンパク質でコーティングされたビーズのアレイとインキュベートし、結合した抗体の結合シグナルを、蛍光体標識抗ヒトκ又は抗ヒトλ抗体を用いて検出し、結合シグナルを、Luminex機器を用いて記録した。
【0472】
抗原ビーズアレイを生成するために、SARS-CoV-2スパイクエクトドメイン組換えタンパク質(表3)と、ニュートラアビジン(ThermoFisher、カタログ番号31050)とを、常磁性Luminexビーズ(MagPlexマイクロスフェア、Luminex Corp.)に共有結合で連結させた。各タンパク質は、10μg/12.5×10ビーズで連結させた。ビオチニル化タンパク質は、10μg/12.5×10ニュートラアビジン連結ビーズで捕捉された。結合アッセイのために、各抗原の2,700個のビーズを96ウェルProcartaPlexプレート上に最終体積75μL/ウェルで加えた後、25μLの抗体試料を加えることにより、ビーズアレイの混合物をブロッキングバッファー(2%のBSA及び0.05%のアジ化ナトリウムを含有するPBS)中で調製した。25℃で2時間のインキュベーションの後、ビーズを200μLの洗浄用緩衝液(0.05%のTween(登録商標) 20を含むDPBS)で2回洗浄した。ビーズ上の結合抗体レベルを検出するために、ブロッキングバッファー中で2.5μg/mLのR-フィコエリトリン結合ヤギ抗ヒトκF(ab’)2(SouthernBiotech、カタログ番号2063-09)を100μL、又はブロッキングバッファー中で1.25μg/mLのR-フィコエリトリンヤギ抗ヒトλ(SouthernBiotech、カタログ番号2070-09)を100μL加えた。30分のインキュベーションの後、ビーズを2回洗浄し、150μLの洗浄用緩衝液中で再懸濁させた。続いてプレートを、Luminex FlexMap 3D機器で、Luminex xPonentソフトウェア、バージョン4.3を用いて読み取り、各ビーズの蛍光強度を蛍光強度中央値(MFI)として記録した。
【0473】
【表3】
【0474】
実施例1. 中和エピトープを標的とするmAbであるE10933及びE10987を、免疫原の投与前に又は投与と同時に投与すると、結果として得られる抗体応答の特性を変化させることができる
プライミング又はブースト用量のSARS-CoV-2スパイク又は受容体結合ドメイン(RBD)ワクチン接種前の、中和エピトープを標的とするαSARS-CoV-2 RBD mAb(E10933及びE10987)によるマウスの前処置の、SARS-CoV-2スパイク領域にわたる全体的なIgG結合レベルに対する効果を評価した。研究の設計を図2に示す。
【0475】
プライミング又はブースト用量のSARS-CoV-2スパイク又はRBDワクチン接種前の、中和エピトープを標的とするαSARS-CoV-2 RBD mAb(E10933及びE10987)による前処置を評価することにより、SARS-CoV-2スパイク領域にわたる全体的なIgG結合レベルに対する影響を決定した。図3に示されているように、E10933及びE10987 mAbで処置されたマウスは、非mAb処置マウスに比べて、一部のスパイク領域においてスパイクIgGレベルのわずかな低下が観察されたものの、42日目までに全てのスパイク領域にわたって高いαスパイクIgGレベルを誘発することが観察された。これは、ワクチン接種前にαSARS-CoV-2 RBD mAbをマウスに投与した場合には、異なる複数のスパイク領域に対して全体的な大きさの差がないことを示唆している。
【0476】
αSARS-CoV-2スパイク偽ウイルス中和力価を調べることにより、マウスを機能的抗体応答について更に評価した。スパイク又はRBD免疫化前にαSARS-CoV-2 RBD mAb(E10933及びE10987)で前処置したマウスは、非mAb処置マウスに比べて、中和力価の有意な低下を誘発した。図4に示されているように、スパイクプライミング免疫化の前にαSARS-CoV-2 RBD mAbで前処置したマウス(平均pVNT50が82)において、非mAb処置マウス(平均pVNT50が14262)に比べて最も大きな違いが観察された。
【0477】
中和エピトープを標的とするαSARS-CoV-2 RBD mAbが、免疫化中に応答をエピトープから偏向させるかどうかを更に理解するために、RBD抗体レベルとpVNT50力価との相関を評価した。図5に示されているように、非mAb処置マウスでは、スパイク又はRBDによる免疫化は、高いRBD IgGレベルと相関する高いpVNT50力価を誘発した。しかしながら、スパイク又はRBDのプライミング又はブースト免疫化前にαSARS-CoV-2 RBD mAbで前処置したマウスでは、高いpVNT50力価とは相関しない多量のRBD IgG抗体が誘発された。SARS-CoV-2スパイク又はRBD免疫化の前に、中和エピトープを標的とするαSARS-CoV-2 RBD mAbを投与した場合に、抗体応答が、これらの極めて強力な中和エピトープから、RBD又はスパイクタンパク質上の弱中和又は非中和エピトープへと偏向されることを示唆している。これは、マウスが、非mAb処置マウスとは異なり、中和能力が低い多量のRBD抗体を依然として誘発することから、明らかである。
【0478】
以上の研究は、免疫原(これは例えばタンパク質ベースのものであってもよく、又はタンパク質をコードするmRNA若しくはDNAであってもよい)の投与の前に、又は投与と同時に、免疫原上の選択されたエピトープを標的とするmAbを投与することにより、結果として得られる抗体応答の特性を大きく変化させることができることを実証している。この技術は、複数の抗体エピトープを包含する抗原を送達又はコードするいずれのワクチンプラットフォームに適用できる。またこの技術は、内因性分子、又は病原体上若しくは病原体内に存在する分子上のエピトープを、免疫系による認識から遮蔽するためにも適用できる。
【0479】
実施例2.SARS-CoV-2 mAbを前投与されたマウスは、RBD免疫化中に優勢なエピトープをブロックでき、非mAb処置・RBD免疫化マウスとはSARS-CoV-2スパイクの抗原認識が異なる抗SARS-CoV-2 mAbを得るために使用できる
この実施例は、抗スパイクmAbを前投与された動物から得られたSARS-CoV-2モノクローナル抗体(mAb)の結合パターンを、複数の懸念される変異株(VOC)、特に以下のVOC:オミクロンBA.1、オミクロンBA.2、オミクロンBA.3、アルファ、ベータ、デルタ、ガンマにわたって調査した。動物の前投与のために試験されたSARS-CoV-2 mAbは:E14315+E15160、E14315、E15160、及びE10987+E10933であった。結果は、RBD免疫化・非mAb前処置マウスに比べて、抗スパイクmAb E14315+E15160、E14315、E15160、又はE10987+E10933を前投与された後でRBDで免疫化された動物から得られたモノクローナル抗体が、複数のVOCにわたって異なる結合パターンを示したが、野生型組換えスパイクタンパク質に対しては示さなかったことを示している(例えば図6A~6Hを参照)。最も注目すべきは、E14315+E15160、E15160前処置マウスにおいて、オミクロンBA.1及びデルタVOCスパイクタンパク質への結合が高かったことであった。これは、SARS-CoV-2 mAbを前投与されたマウスを利用して、RBD免疫化中に優勢なエピトープをブロックでき、また上記マウスを用いて、非mAb処置・RBD免疫化マウスとはSARS-CoV-2スパイクの抗原認識が異なる抗SARS-CoV-2 mAbを得ることができることを示唆している。
【0480】
実施例3.SARS-CoV-2スパイクの免疫化に対する偏向抗体応答に関するE10933及びE10987の用量滴定の評価
SARS-CoV-2スパイクの免疫化に対する偏向抗体応答に関するE10933及びE10987の用量滴定を評価するための研究の設計を、図7に示す。マウスにαSARS-CoV-2 RBD mAbを投与することから確認される偏向効果について、mAb濃度閾値が存在するかどうかを評価するために、SARS-CoV-2スパイクに対する免疫化前に10mg/kg~0.0001mg/kgのαSARS-CoV-2 RBD mAbで前処置されたマウスからの、pVNT50力価及びRBD結合を測定した(図8A~8B)。結果は、マウスが、非mAb処置・SARS-CoV-2スパイク免疫化マウスに比べて、0.1mg/kgの投与において高い中和力価に戻り始め、0.01mg/kgにおいて完全な中和が見られることを示した。全ての群のRBD結合力価は同様であり、これは、異なる複数のRBDエピトープに対する抗体応答の偏向を実証するものであり、またこの効果は滴定可能である。
【0481】
実施例4. 免疫原特異性抗SARS-CoV2モノクローナル抗体(mAb)で前処置されたVelocImmune(VI)マウスの免疫化、及び免疫原に対する血清抗体応答の分析
以下の説明は、免疫原特異的抗SARS-CoV2モノクローナル抗体(mAb)で前処置されたVelocImmune(VI)マウスの免疫化と、上記免疫原に対する血清抗体応答の分析とに関する。
【0482】
免疫化
VelocImmune(VI)マウス(例えば、意図されるあらゆる目的のためにその全体が参照により本出願に援用される米国特許第6,596,541号明細書、Regeneron Pharmaceuticals、VelocImmune(登録商標)を参照)を、標準的な免疫化プロトコルに従って、C末端mFcタグに融合したSARS-CoV-2スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)を含有するタンパク質免疫原で免疫化した(1日目)。図9に示されている免疫化スキームに示されているように、RBDタンパク質のプライミング注射の3日前及び50日後に、マウスを、4つの異なる抗SARS-CoV-2スパイクヒトmAbの4つの異なる組み合わせで前処置し、各抗体の用量は10mg/kgとし、また抗体前処置なし(生理食塩水のみ)のコホートも含めた。28、35、46及び60日目の免疫原ブーストの後、並びにマウスの安楽死の前に、抗体単離のためにマウスに対して事前採血を実施した。血液からの血清を、C末端myc-myc-ヒスチジンタグに融合したSARS-CoV-2スパイクタンパク質RBDドメイン(SARS-CoV-2スパイクタンパク質(RBD).mmHと呼ばれる)に対する、及び前処置で投与されたヒトmAbに対する、力価分析に供した。また血液を、前処置のための抗SARS-CoV-2スパイクヒトmAbに対するヒトIgG定量分析にも供した。
【0483】
抗SARS-CoV-2スパイクタンパク質血清力価の決定
(抗ヒトIgG抗体を用いて前処置した抗SARS-CoV2ヒトmAbを除去した又は除去していない)血清の、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(RBD)に対する抗体力価を、固相酵素結合イムノアッセイ(ELISA)で決定した。96ウェルマイクロタイタープレートを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Irvine Scientific)中の2μg/mlのSARS-CoV-2スパイクタンパク質(RBD).mmHで、4℃で一晩コーティングした。プレートを、0.05%のTween(登録商標) 20を含有するPBS(PBS-T)で洗浄し、PBS中の1%ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin:BSA)250μLを用いて、室温(RT)で1時間にわたってブロックした。プレートをPBS-Tで洗浄した。免疫前及び免疫抗血清を、1%BSA-PBS中で3倍に連続希釈し、RTで1時間にわたって、プレートに添加した。プレートを洗浄し、ヤギ抗マウスIgGホースラディッシュペルオキシダーゼ(Horseradish Peroxidase:HRP)結合二次抗体(Jackson ImmunoResearch)を、1:5000の希釈でプレートに加え、RTで1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、基質としてTMB/H(テトラメチルベンジジン/過酸化水素)(BD)を用いて、15~20分間のインキュベーションによって発色させた。反応を酸で停止させ、プレートを分光光度計(EnVision、Perkin Elmer)上で読み取り、450nmにおける吸光度を記録した。Graphpad PRISMソフトウェアを用いて、抗体力価を算出した。力価は、結合シグナルがバックグラウンドの2倍となる、補間された血清希釈倍率として定義された。
【0484】
抗ヒトIgG血清力価の決定
試験されたマウスが、前処置に含まれていたヒトIgGに対する免疫応答も発動させたかどうかを決定するために、個々の抗SARS-CoV-2スパイク mAbでマイクロタイタープレートをコーティングすることを除く上述のプロトコルを、前処置に含まれていた抗SARS-CoV-2スパイクヒトmAb(マウス抗ヒト抗体、MAHA)に対する免疫応答の検出に適用した。
【0485】
総ヒトIgGの定量化
抗血清中の投与された抗RBD mAbの総量のレベルも、上述のELISAと同様のイムノアッセイによって定量化した。免疫前及び免疫抗血清を3倍に連続希釈して、RBD組換えタンパク質でコーティングされたマイクロタイタープレートに加え、ヤギ抗ヒトIgG-Fc-HRP結合二次抗体(Jackson ImmunoResearch)を検出として使用した。Graphpad PRISMソフトウェアを使用し、前処置に含まれていた各抗SARS-CoV-2スパイク mAbの検量線を用いて、血清中の抗体濃度を計算した。
【0486】
結果
免疫後の組換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質(RBD)を使用して、VIマウスにおける体液性免疫応答を決定した。抗ヒトIgGビーズを用いた免疫沈降により、血清試料の一部から、前処置されたヒト抗SARS-CoV-2 mAbを除去した。簡潔に述べると、0.23mgの抗ヒトIgGビーズ(AbraMag、カタログ番号544061)を、25μLのマウス血清と30分間インキュベートした。ビーズ及びマウス血清の混合物を磁気分離器に加え、マウス血清上清を集めた。このプロセスを更に2回繰り返し、マウス抗体の分析に干渉するいずれのヒトIgG mAbを完全に除去した。28日目のマウスの全てのコホートにおいて、SARS-CoV-2スパイクRBDに対する高い力価が観察され、ヒトmAb除去なしで力価中央値>100,000であった(図10B)が、血清試料中のヒトmAbを除去した後では、力価中央値の範囲は約27,000~176,000であった。28日目の力価に比べて、免疫化の60日後には力価の上昇が観察され、力価中央値はSARS-CoV-2スパイクRBDに対して>300,000(ヒトmAbを除去した場合)及び約56,000~約855,000(ヒトmAbを除去していない場合)であった(図10A~10B)。
【0487】
抗SARS-CoV-2スパイクヒトmAb処置マウスからの血清において、マウス抗ヒトIgG抗体(MAHA)力価を検出した。プレート上にコーティングした抗SARS-CoV-2スパイクmAbの抗体力価は、中央値で、28日目、46日目、及び60日目のそれぞれにおいて約668~989、758~1,395、及び1,851~8,671であった(図11)。
【0488】
総ヒトmAbの平均レベルは、28日目、46日目、及び60日目のそれぞれにおいて、57.7μg/mL、12μg/mL、及び98.7μg/mLであると決定された(図12)。60日目の比較的高いレベルは、50日目にmAbを再投与した結果である。抗ヒトIgGビーズによってhIgGを除去した血清では、ヒトmAbは検出可能なレベルで存在しなかった。際立ったMAHA力価(E10933+E10987を前投与したコホートから28日目に>27,000及び83,000の力価、図11)を有するマウスからヒトIgGを除去する前には、低濃度(<0.5μg/ml)又はBDL(検出限界未満)のSARS-CoV-2スパイクRBD特異的ヒトmAbが観察された。
【0489】
ここで提示されている結果は、抗SARS-CoV-mAbでの前投与に続いてRBD免疫化を受けたマウスが、対照である非mAb前投与マウスと同様の、RBD免疫原に対する検出可能かつ強力な抗体応答を依然として発動させることを実証している。
【0490】
実施例5.CHOt由来の773個の抗COVID19モノクローナル一次上清間のOctet交差競合
試験用抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体(合計773個のmAb)と、免疫化の前処置に含まれていた4つの抗体それぞれとの間の結合競合を、Octet HTXバイオセンサー(ForteBio Corp.,Sartorius社の一部門)上でのリアルタイムの標識なしバイオレイヤー干渉法(bio-layer interferometry:BLI)アッセイを用いて決定した。表5には、試験用抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が記載されている。表6には、免疫化群ごとの、試験された抗SARS-CoV-2 mAbの数が記載されている。表7には、本実施例で使用した試薬が記載されている。「MW」は「分子量(molecular weight)」の略である。
【0491】
【0492】
【0493】
【0494】
実験は全体として、0.01MのHEPES(pH7.4)、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.05%v/vの界面活性剤P20、0.1mg/mLのBSA(Octet HBS-EP緩衝液)を含有する緩衝液中で、プレートを1,000rpmの速度で振盪させながら、25℃で実施された。2つの抗体が、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンを有して発現されるSARS-CoV-2 RBD細胞外ドメイン(SARS-CoV-2 RBD-MMH)上の各エピトープへの結合に関して、互いに競合できるかどうかを評価するために、まず、およそ0.33nMのSARS-CoV-2 RBD.mmHを、抗his抗体でコーティングされたOctetバイオセンサー(HIS1K;Fortebio Inc、#18-5120)上へと捕捉したが、これは、上記バイオセンサーを、SARS-CoV-2 RBD.mmHの10μg/mL溶液を内包したウェルに1分間沈めることによって実施された。続いて、抗原捕捉済みのバイオセンサーを、第1の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体(これ以降、mAb-1と呼ばれる)で飽和させたが、これは、mAb-1(E10933、E10987、E15160、E14315、又はE1932(アイソタイプ対照))の50μg/mL溶液を内包したウェルに3分間浸すことによって実施された。次に、バイオセンサーの先端を、試験用抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体(mAb-2)のうちの1つをそれぞれ含有するCHOt馴化培地のウェルに、3分間浸漬した。実験のステップとステップの間には、全てのバイオセンサーをHBS-EP緩衝液で洗浄した。リアルタイム結合応答を監視し、全てのステップの終了時の結合応答を記録した。E10933、E10987、E15160、E14315、又はアイソタイプ対照と事前に複合体化したSARS-CoV-2 RBD.mmHに結合するmAb-2の応答を比較した。事前に結合されたE10933、E10987、E15160、E14315による阻害のパーセンテージは、以下の式を用いて計算した。

%阻害=100%*(1-(アイソタイプ対照事前結合センサーに対する、mAb-1事前結合センサー上の試験用mAbの割合))
【0495】
結果
CHOt馴化培地中の773個の抗SARS-CoV-2 mAbのパネルを、SARS-CoV-2 RBD免疫化中のマウスの前処置に含まれていた4つの選択された抗SARS CoV-2 mAbに対する交差競合について、評価した。これら4つのmAbを抗His捕捉SARS-Cov-2 RBD.mmhに事前に結合させることにより、試験用mAbがRBD.mmh上の同一の結合エピトープを共有するかどうかを決定した。抗SARS-CoV-2 RBD.mmhへの試験用mAbの結合に対する、事前結合E10933、E10987、E15160、及びE14315の%阻害を計算した。試験用mAbを、上記mAbが単離された元のマウスの各前処置条件によって群分けした。図13A~13Dは、前処置条件の個々のmAb(生理食塩水、E15160+E14315、E15160、E14315、及びE10933+E10987)に対する、事前結合E10933(図13A)、E10987(図13B)、E15160(図13C)、及びE14315(図13D)の阻害の、計算されたパーセンテージを示す。更に、事前結合E10933、E10987、E15160、E14315の結果としてSARS-CoV2 RBD.mmh結合の50%超の減少を示した抗体の生成に対する、前処置条件の影響を、表8にまとめた。「Strat」は「戦略(Strategy)」の略であり、「Sal」は「生理食塩水(Saline)」の略である。
【0496】
【0497】
前処置されていないRBD免疫化マウス(生理食塩水のみのコホート)では、E10933、E10987、E14315、又はE15160と事前に結合されたRBDへの結合の、50%超の減少を示した抗体のパーセンテージは、それぞれ20%、17%、22%、及び16%であった。E15160+E14315での前処置は、E15160のブロッカーを、生理食塩水アームの場合の16%に対して0%まで減少させ;E14315での前処置は、E14315のブロッカーを、生理食塩水アームの場合の22%から0%まで減少させ;E15160での前処置は、E15160のブロッカーを、生理食塩水アームの場合の16%から0%まで減少させ;E10933+E10987での前処置は、E10933ブロッカーを、生理食塩水アームの場合の20%から1%まで減少させた。
【0498】
E15160+E14315及びE10933+10987での前処置は、前処置に含まれる抗体のうちの一方のみによってブロックされるmAbのパーセンテージの低下を示した。
【0499】
E10933+E10987、E15160、E14315、及び/又はE15160+E14315前投与マウスから得られた抗SARS-CoV-2 mAbは、E10933、E15160、E14315、及びE15160に対する競合の低下、又は完全な喪失を示した。反対に、本発明者らは、RBDにおいてE10933、E10987、E15160及び/又はE14315と競合する、RBD免疫化・非mAb前投与マウスから得られた抗SARS-CoV-2 mAbを検出できた。これらの結果は、免疫化中に優勢なエピトープをブロックするmAbの利用によって、結合競合の喪失によって実証されるように、これらのブロックされたエピトープを標的としない免疫応答を生成できることを示している。
【0500】
実施例6.抗SARS-CoV-2中和活性を有し、免疫化中に使用されるmAbと競合しない、選択されたmAbの識別
Octet HTXバイオセンサープラットフォームを用いた結合競合アッセイを用いて、抗SARS-CoV-2中和活性を有し、かつE10933+E10987又はE15160+E14315と競合しない、選択されたmAbを識別する。一例として、前投与を受けた又は前投与を受けていないRBD免疫化マウスから得られた抗SARS-CoV-2 mAbによって阻害される又は競合に敗れるE10933、E10987、E15160、E14315の量を表す%阻害を計算する。特定のエピトープをブロックするために免疫化中に使用されるmAbと競合しないものの依然として中和活性をもたらす抗SARS-CoV-2 mAbの識別は、本明細書に記載のpVSV-SARS-CoV-2スパイク中和アッセイによって達成される。免疫化中の中和mAbは、強力な中和mAbと競合せず、mAbカクテル薬剤製品に含めることができる、更なる望ましいmAbを見つけるために使用される。この実施例は特に、トリプルmAbカクテルにE10987+E10933又はE15160+E14315と共に含めることができるmAbを決定する。
【0501】
実施例7.HAヘッドに対する特異性を有するモノクローナル抗体を前投与されたマウスにおける、インフルエンザヘマグルチニン(HA)抗体応答の調節
この研究は、インフルエンザヘマグルチニン(HA)抗体応答の調節を調査するものであり、ここではマウスは、HAヘッドのシアル酸受容体結合部位(RBS)に対する特異性を有する第1のモノクローナル抗体(mAb1)、及び/又はHAヘッドに結合するもののRBSの外側にある第2のモノクローナル抗体(mAb2)を前投与される。図14に示されている研究の設計によると、マウスは、A/Perth/16/2009(H3N2)からのH3血清型のHA三量体タンパク質で構成されるタンパク質免疫原で免疫化される(0日目)。タンパク質の注射の3日前に、マウスを、上述のモノクローナル抗体若しくはそれらの組み合わせ、又は対照条件(抗体なし)で前処置した。mAb前処置の前、並びに28日目及び42日目の免疫原ブーストの後、並びにマウスの安楽死の前に、抗体単離のためにマウスに対して事前採血を実施した。研究の最後には、免疫化されたマウスからのヘマグルチニン阻害血清力価(HAI)が評価される(即ち、インフルエンザ由来のHA上のRBSに結合して赤血球の凝固を阻害する血清抗体)。mAb1又はmAb1とmAb2との組み合わせを投与されたマウスは、免疫化中にmAb1がRBS部位をブロックすることにより、該部位に特異的な抗体を阻害するため、HAI血清力価を誘発しないと予想される。
【0502】
配列表
【0503】
請求対象の主題は、本明細書に記載の具体的実施形態によってその範囲を制限されないものとする。実際には、本明細書に記載されているものに加えて、請求対象の主題の様々な修正形態が、当業者には以上の説明から明らかになるだろう。このような修正形態は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【0504】
本明細書に引用される全ての特許、出願、刊行物、試験方法、文献、及びその他の資料は、あたかもこれらが本明細書中に物理的に存在しているかのように、その全体が参照により本明細書に援用される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
【国際調査報告】