(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】改変東部ウマ脳炎ウイルス、自己複製RNA構築物、及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/43 20060101AFI20240717BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240717BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240717BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240717BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240717BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240717BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240717BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240717BHJP
A01K 67/0278 20240101ALI20240717BHJP
A01K 67/033 20060101ALI20240717BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240717BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240717BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240717BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240717BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240717BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240717BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240717BHJP
【FI】
C12N15/43 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A01K67/0278
A01K67/033 501
A61K9/127
A61K9/51
A61K9/16
A61P37/04
A61P35/00
A61P31/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500069
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 US2022073563
(87)【国際公開番号】W WO2023283641
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523031024
【氏名又は名称】リプリケイト バイオサイエンス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100225598
【氏名又は名称】桐島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル スティーブン ワン
(72)【発明者】
【氏名】シゲキ ジョーセフ ミヤケ-ストーナー
(72)【発明者】
【氏名】パリナズ アリアマド
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本開示は、改変ウイルスゲノム又はレプリコン(例えば、自己複製RNA)をコードする核酸分子、それらを含有する医薬組成物、並びに細胞培養物又は生体における所望の産物を産生するための当該核酸分子及び組成物の使用を含めた、分子ウイルス学の分野に関する。また、それを必要としている対象において免疫応答を誘発する方法、並びに様々な健康状態を予防及び/又は治療する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)ゲノム又はレプリコンRNAをコードする核酸配列を含む核酸構築物であって、該改変EEEVゲノム又はレプリコンRNAが、1若しくは複数のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部を欠いている、前記核酸構築物。
【請求項2】
前記改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNAが、1若しくは複数のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列のかなりの部分を欠いている、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
前記改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNAが、ウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列を含まない、請求項1~2のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項4】
1若しくは複数の発現カセットを更に含み、該発現カセットのそれぞれが、異種核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項5】
前記発現カセットのうちの少なくとも1つが、異種核酸配列に作動可能に連結されたサブゲノム(sg)プロモーターを含む、請求項4に記載の核酸構築物。
【請求項6】
前記sgプロモーターが、26Sサブゲノムプロモーターである、請求項5に記載の核酸構築物。
【請求項7】
1若しくは複数の非翻訳領域(UTR)を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項8】
前記UTRのうちの少なくとも1つが、異種UTRである、請求項7に記載の核酸構築物。
【請求項9】
前記発現カセットのうちの少なくとも1つが、目的の遺伝子(GOI)のコード配列を含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項10】
前記GOIが、治療用ポリペプチド、予防用ポリペプチド、診断用ポリペプチド、栄養補助食品ポリペプチド、工業用酵素、及びレポーターポリペプチドから成る群から選択されるポリペプチドをコードする、請求項9に記載の核酸構築物。
【請求項11】
前記GOIが、抗体、抗原、免疫調節物質、酵素、シグナル伝達タンパク質、及びサイトカインから成る群から選択されるポリペプチドをコードする、請求項9~10のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項12】
前記GOIのコード配列が、基準コード配列の発現レベルよりも高いレベルでの発現のために最適化される、請求項9~11のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項13】
前記GOIのコード配列が、高められたRNA安定性のために最適化される、請求項9~12のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項14】
本開示の核酸構築物が、ベクターに組み込まれる、請求項1~13のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項15】
前記ベクターが、自己複製RNA(srRNA)ベクターである、請求項14に記載の核酸構築物。
【請求項16】
前記核酸配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号15、配列番号16、配列番号17、又は配列番号18の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む組換え細胞。
【請求項18】
前記組換え細胞が、真核細胞である、請求項17に記載の組換え細胞。
【請求項19】
前記組換え細胞が、動物細胞である、請求項18に記載の組換え細胞。
【請求項20】
前記動物細胞が、脊椎動物細胞又は無脊椎動物細胞である、請求項19に記載の組換え細胞。
【請求項21】
前記組換え細胞が、昆虫細胞である、請求項20に記載の組換え細胞。
【請求項22】
前記組換え細胞が、蚊細胞である、請求項21に記載の組換え細胞。
【請求項23】
前記組換え細胞が、哺乳動物細胞である、請求項20に記載の組換え細胞。
【請求項24】
前記組換え細胞が、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1細胞(COS-7)、ヒト胚性腎細胞(例えば、HEK 293又はHEK 293細胞)、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4細胞)、サル腎細胞(CV1)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa)、イヌ腎細胞(MDCK)、バッファローラット肝細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562)、TRI細胞、FS4細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、アフリカミドリザル腎細胞(Vero細胞)、ヒトA549細胞、ヒト子宮頸部細胞、 ヒトCHME5細胞、ヒトPER.C6細胞、NS0マウスミエローマ細胞であり、ヒト表皮喉頭細胞、ヒト線維芽細胞、ヒトHUH-7細胞、ヒトMRC-5細胞、ヒト筋細胞、ヒトリンパ管内皮細胞、ヒトアストロサイト細胞、ヒトマクロファージ細胞、ヒトRAW264.7細胞、マウス3T3細胞、マウスL929細胞、マウス結合組織細胞、マウス筋細胞、ウサギ腎細胞から成る群から選択される、請求項20に記載の組換え細胞。
【請求項25】
請求項17~24のいずれか一項に記載の少なくとも1つの組換え細胞、及び培養培地を含む細胞培養物。
【請求項26】
請求項1~16のいずれか一項に記載の核酸構築物を含むトランスジェニック動物。
【請求項27】
前記動物が、脊椎動物又は無脊椎動物である、請求項26に記載のトランスジェニック動物。
【請求項28】
前記動物が、昆虫である、請求項26に記載のトランスジェニック動物。
【請求項29】
前記動物が、哺乳動物である、請求項27に記載のトランスジェニック動物。
【請求項30】
前記哺乳動物が、非ヒト哺乳動物である、請求項29に記載のトランスジェニック動物。
【請求項31】
(i)請求項26~30のいずれか一項に記載のトランスジェニック動物、又は(ii)請求項10~16のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む組換え細胞を、該トランスジェニック動物又は該組換え細胞がGOIによってコードされるポリペプチドを産生する条件下で、飼育するか又は培養することを含む、目的のポリペプチドを製造する方法。
【請求項32】
対象において目的のポリペプチドを製造する方法であって、請求項10~16のいずれか一項に記載の核酸構築物を該対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項33】
前記対象が、脊椎動物又は無脊椎動物である、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、昆虫である、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、哺乳動物対象である、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳動物対象が、ヒト対象である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項29~36のいずれか一項に記載の方法によって製造される組換えポリペプチド。
【請求項38】
薬学的に許容される賦形剤、及び以下の:
a) 請求項1~16のいずれか一項に記載の核酸構築物;
b) 請求項17~24のいずれか一項に記載の組換え細胞;及び/又は
c) 請求項37に記載の組換えポリペプチド、
を含む医薬組成物。
【請求項39】
請求項1~16のいずれか一項に記載の核酸構築物、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
請求項17~24のいずれか一項に記載の組換え細胞、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項41】
請求項37に記載の組換えポリペプチド、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記組成物が、リポソーム、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、又はポリマーナノ粒子中に製剤化される、請求項38~41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記組成物が、免疫原性組成物である、請求項38~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記免疫原性組成物が、ワクチンとして製剤化される、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記組成物が、対象に対して実質的に非免疫原性である、請求項38~42のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記医薬組成物が、アジュバントとして製剤化される、請求項38~45のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記医薬組成物が、鼻腔内投与、経皮投与、腹腔内投与、筋肉内投与、節内投与、腫瘍内投与、関節内投与、静脈内投与、皮下投与、膣内投与、及び直腸内投与のうちの1若しくは複数のために製剤化される、請求項38~46のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
それを必要としている対象において薬力学的効果を誘導する方法であって、以下の:
a) 請求項1~16のいずれか一項に記載の核酸構築物;
b) 請求項17~24のいずれか一項に記載の組換え細胞;
c) 請求項37に記載の組換えポリペプチド;及び/又は
d) 請求項38~47のいずれか一項に記載の医薬組成物、
を含む組成物を該対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項49】
前記薬力学的効果が、対象における免疫応答を誘発することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
それを必要としている対象の健康状態を予防及び/又は治療する方法であって、以下の:
a) 請求項1~16のいずれか一項に記載の核酸構築物;
b) 請求項17~24のいずれか一項に記載の組換え細胞;
c) 請求項37に記載の組換えポリペプチド;及び/又は
d) 請求項38~46のいずれか一項に記載の医薬組成物、
を含む組成物を該対象に予防的又は治療的に投与することを含む、前記方法。
【請求項51】
前記状態が、増殖性障害又は微生物感染症である、請求項48~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記対象が、増殖性障害又は微生物感染症に関連する状態を有する又は有する疑いがある、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記の投与された組成物が、対象におけるインターフェロンの産生増加をもたらす、請求項48~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記組成物が、単回療法(単剤療法)として、又は少なくとも1つの追加の療法と組み合わせた第1の療法として、個別に対象に投与される、請求項48~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記の少なくとも1つの追加の療法が、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的療法、及び外科手術から成る群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
薬力学的効果を誘導する、免疫応答を誘発する、健康状態若しくは微生物感染症を予防する、及び/又は治療するキットであって、以下の:
a) 請求項1~16のいずれか一項に記載の核酸構築物;
b) 請求項17~24のいずれか一項に記載の組換え細胞;
c) 請求項37に記載の組換えポリペプチド;及び/又は
d) 請求項38~46のいずれか一項に記載の医薬組成物、
を含む、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月9日に出願された米国特許仮出願第63/220,139号に対する優先権の利益を主張する。先に参照した出願の開示は、あらゆる図面も含め、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
分野
本開示は、分子ウイルス学及び免疫学の分野に関し、特に、改変ウイルスゲノム及びレプリコン(例えば、自己複製RNA)をコードする核酸分子、同じものを含有する医薬組成物、並びに細胞培養物又は生体における所望の産物を産生するための当該核酸分子及び組成物の使用に関する。また、それを必要としている対象において、薬力学的効果を誘導するため、例えば免疫応答を誘発する方法、並びに様々な健康状態を予防及び/又は治療する方法も提供される。
【0003】
配列表の組み込み
添付の配列表の内容を、参照により本明細書にこの出願に援用する。
_配列_Listing_058462-502001WO ST26.xmlであることを名称であった添付の配列表テキストファイルは、2022年7月8日に創成済みであり、93KBである。
【背景技術】
【0004】
背景
近年、いくつかの異なる動物ウイルス群が、相同組換え又はそれらのゲノムの直接工学のいずれかによって遺伝子操作を受けている。DNAウイルス及びRNAウイルスの両方に対する逆遺伝学システムの利用可能性は、例えば、ワクチン、発現ベクター、抗腫瘍剤、遺伝子治療ベクター、及び薬物送達媒体としての組換えウイルスの使用に関する新しい展望を生み出した。
【0005】
例えば、多くのウイルスベースの発現ベクターが、培養組換え細胞における異種タンパク質の発現のために展開されている。例えば、宿主細胞における遺伝子発現のための改変ウイルスベクターの用途は拡大し続けている。この点に関する最近の進歩としては、マルチサブユニットタンパク質複合体の生産のための技術とシステムの更なる開発、及び異種タンパク質生産を改善するためのタンパク質修飾酵素の共発現が挙げられる。ウイルス発現ベクター技術に関するその他の最近の進歩としては、遺伝子発現を制御するための多くの高度なゲノム工学的応用、ウイルスベクターの調製、インビボ遺伝子治療アプリケーション、及びワクチン送達ベクターの創製が挙げられる。
【0006】
しかし、宿主細胞は、病原体の侵入を検出して対抗するための複雑で強力なメカニズムを開発できることが報告されている。更に、ウイルス、特に病原性ウイルスは、感染及び複製に対するこれらの細胞防御と戦うために宿主細胞とともに進化したことが報告されている。感染の結果として、多くの宿主細胞は、ウイルス複製及び/又は追加の細胞に広がる可能性のある子孫のウイルス産生を制御するために、細胞タンパク質翻訳機構をシャットダウンする。この現象は一般に「自然免疫応答」と呼ばれている。感染した細胞はまた、局所的及び全身的に他の細胞に危険信号を送り、抗ウイルス状態を確立し、感染を制御する。これらの細胞性抗ウイルス系は宿主細胞に利益をもたらすが、有益なワクチン抗原又は治療薬を発現するように設計された自己増幅RNA(レプリコン又は自己複製RNAと呼ばれる)にも悪影響を与える可能性がある。例えば、細胞が有益なタンパク質を発現するレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)を検出し、その自然免疫防御機構を活性化すると、斯かる細胞における有益なタンパク質の発現が影響を受け、レプリコンの有効性が損なわれる可能性がある。
【0007】
従って、RNAレプリコンベースの発現プラットフォームにおいて関心のある産物を発現させるためのより効率的な方法及びシステムの必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0008】
概要
本開示は一般的に、様々な健康状態(例えば、増殖性障害及び微生物感染症)の予防並びに管理における使用のための、組換え核酸構築物及び同じものを含む医薬組成物などの免疫治療薬の開発に関する。特に、以下でより詳細に説明されるように、本開示のいくつかの実施形態は、ウイルスの1若しくは複数の構造タンパク質をコードする、ウイルス核酸配列の少なくとも一部を欠いているアルファウイルス東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)の改変ゲノム又はレプリコン(例えば、自己複製RNA)をコードする配列を含む核酸構築物を提供する。また、本明細書に開示される1若しくは複数の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)を含むように操作された組換え細胞及びトランスジェニック動物、目的の分子を製造する方法、(a)本開示の核酸構築物、(b)本開示のポリペプチド、(c)本開示の組換え細胞のうち1若しくは複数を含む医薬組成物、も開示されている。本開示の特定の態様において、薬力学的効果の誘導、例えば、それを必要としている対象において免疫応答を誘発するための、並びに/若しくはそれを必要としている対象において増殖性障害(例えば、癌)及び慢性感染症を含む様々な健康状態の予防及び/又は治療のための組成物及び方法が更に提供される。
【0009】
本開示の一態様において、改変東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)ゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)をコードする核酸配列を含む核酸構築物が、本明細書で提供され、前記改変EEEVゲノム又はレプリコンRNAは、1若しくは複数のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部を欠いている。
【0010】
本開示の核酸構築物の非限定的な例示的な実施形態は、以下の特徴のうちの1若しくは複数を含むことができる。いくつかの実施形態において、改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)は、1若しくは複数のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の相当な部分を欠いている。いくつかの実施形態において、改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNAは、ウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列を含まない。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、1若しくは複数の発現カセットを更に含み、発現カセットのそれぞれは、異種核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む。いくつかの実施形態において、発現カセットのうちの少なくとも1つは、異種核酸配列に作動可能に連結されたサブゲノム(sg)プロモーターを含む。いくつかの実施形態において、sgプロモーターは、26Sサブゲノムプロモーターである。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、1若しくは複数の非翻訳領域(UTR)を更に含む。いくつかの実施形態において、UTRのうちの少なくとも1つは、異種UTRである。
【0011】
いくつかの実施形態において、発現カセットのうちの少なくとも1つは、目的の遺伝子(GOI)のコード配列を含む。いくつかの実施形態において、GOIは、治療用ポリペプチド、予防用ポリペプチド、診断用ポリペプチド、栄養補助食品ポリペプチド、工業用酵素、及びレポーターポリペプチドから成る群から選択されるポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、GOIは、抗体、抗原、免疫調節物質、酵素、シグナル伝達タンパク質、及びサイトカインから成る群から選択されるポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、GOIのコード配列は、基準コード配列の発現レベルよりも高いレベルでの発現に対して最適化される。いくつかの実施形態において、GOIのコード配列は、高められたRNA安定性のために最適化される。
【0012】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物は、ベクターに組み込まれる。いくつかの実施形態において、ベクターは、自己複製RNA(srRNA)ベクターである。
【0013】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物は、配列番号1、配列番号2、配列番号15、配列番号16、配列番号17、又は配列番号18の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0014】
一態様において、本明細書に開示される核酸構築物を含む組換え細胞が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、組換え細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態において、組換え細胞は動物細胞である。いくつかの実施形態において、動物細胞は、脊椎動物細胞又は無脊椎動物細胞である。いくつかの実施形態において、組換え細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、組換え細胞は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1細胞(COS-7)、ヒト胚性腎細胞(例えば、HEK 293又はHEK 293細胞)、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4細胞)、サル腎細胞(CV1)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa)、イヌ腎細胞(MDCK)、バッファローラット肝細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562)、TRI細胞、FS4細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、アフリカミドリザル腎細胞(Vero細胞)、ヒトA549細胞、ヒト子宮頸部細胞、 ヒトCHME5細胞、ヒトPER.C6細胞、NS0マウスミエローマ細胞であり、ヒト表皮喉頭細胞、ヒト線維芽細胞、ヒトHUH-7細胞、ヒトMRC-5細胞、ヒト筋細胞、ヒトリンパ管内皮細胞、ヒトアストロサイト細胞、ヒトマクロファージ細胞、ヒトRAW264.7細胞、マウス3T3細胞、マウスL929細胞、マウス結合組織細胞、マウス筋細胞、ウサギ腎細胞から成る群から選択される。また、関連する態様において、本明細書に開示される少なくとも1つの組換え細胞と培養培地とを含む細胞培養物も提供される。
【0015】
いくつかの実施形態において、組換え細胞は昆虫細胞である。いくつかの実施形態において、組換え細胞は蚊細胞である。
【0016】
別の態様において、本明細書に記載の核酸構築物を含むトランスジェニック動物が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、トランスジェニック動物は、脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施形態において、トランスジェニック動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、トランスジェニック哺乳動物は、非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態において、トランスジェニック動物は昆虫である。いくつかの実施形態において、トランスジェニック昆虫は、トランスジェニック蚊である。別の態様において、目的のポリペプチドの産生方法が本明細書で提供され、前記方法は、組換え細胞又は組換え細胞がGOIによってコードされるポリペプチドを産生する条件下で、(i)本明細書に開示のトランスジェニック動物を飼育するステップ;又は(ii)本明細書に開示の核酸構築物を含む組換え細胞を培養するステップを含む。
【0017】
別の態様において、対象において目的のポリペプチドを製造する方法が本明細書で提供され、前記方法は、本明細書に開示される核酸構築物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象は脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施形態において、対象は昆虫である。いくつかの実施形態において、昆虫は蚊である。いくつかの実施形態において、対象は哺乳動物対象である。いくつかの実施形態において、哺乳動物対象は、ヒト対象である。更に別の態様において、本開示の方法によって産生される組換えポリペプチドが、本明細書で提供される。
【0018】
更に別の態様において、薬学的に許容される賦形剤、及びa)本開示の核酸構築物;b)本開示の組換え細胞;及び/又はc)本開示の組換えポリペプチドを含む医薬組成物が、本明細書で提供される。
【0019】
本開示の医薬組成物の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴のうちの1若しくは複数を含むことができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸構築物及び薬学的に許容される賦形剤を含む組成物が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組換え細胞及び薬学的に許容される賦形剤を含む組成物が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、前記組成物は、本明細書に開示されるような組換えポリペプチド、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、リポソーム、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、又はポリマーナノ粒子中に製剤化された組成物が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、組成物は免疫原性組成物である。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、ワクチンとして製剤化される。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、対象に対して実質的に非免疫原性である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、アジュバントとして製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、鼻腔内投与、経皮投与、腹腔内投与、筋肉内投与、節内投与、腫瘍内投与、関節内投与、静脈内投与、皮下投与、膣内投与、眼内、経口、及び直腸内投与のうちの1若しくは複数のために製剤化される。
【0020】
別の態様において、対象において薬力学的効果を誘導する方法、特に、それを必要としている対象において免疫応答を誘発する方法が、本明細書で提供され、この方法は、a)本開示の核酸構築物;b)本開示の組換え細胞;c)本開示の組換えポリペプチド;及び/又はd)本開示の医薬組成物を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0021】
更に別の態様において、それを必要としている対象の健康状態を予防及び/又は治療する方法が、本明細書で提供され、この方法は、a)本開示の核酸構築物;b)本開示の組換え細胞;c)本開示の組換えポリペプチド;及び/又はd)本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物:を含む組成物を予防的又は治療的に対象に投与することを含む。
【0022】
本開示の方法の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴のうちの1若しくは複数を含むことができる。いくつかの実施態様では、健康状態は増殖性障害又は微生物感染症である。いくつかの実施形態において、対象は、増殖性障害又は微生物感染症に関連する健康状態を有する又は有する疑いがある。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、対象におけるインターフェロンの産生増加をもたらす。いくつかの実施形態において、組成物は、単回療法(単剤療法)として、又は少なくとも1つの追加の療法と組み合わせた第1の療法として、個別に対象に投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的療法、及び外科手術から成る群から選択される。
【0023】
更に別の態様において、薬力学的効果を誘導するため、免疫応答を誘発するため、予防のため、及び/又は健康状態又は微生物感染症の治療のためのキットが、本明細書で提供され、該キットは、a)本開示の核酸構築物;b)本開示の組換え細胞;c)本開示の組換えポリペプチド;及び/又はd)本開示の医薬組成物を含む。
【0024】
本明細書に記載される態様及び実施形態の各々は、実施形態又は態様の文脈から明示的又は明確に除外されない限り、共に使用することができる。
【0025】
前述の概要は例示にすぎず、いかなる意味でも限定することを意図したものではない。本明細書に記載される例示的な実施形態及び特徴に加えて、本開示の更なる態様、実施形態、目的及び特徴は、図面及び詳細な説明並びに請求項から完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による改変EEEVゲノム設計の非限定的な例を図示するものであり、元のウイルスのウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列が完全に欠失している。この図面に記載した改変EEEV設計は、EEEV菌株FL93-939由来の天然5’UTR及び3’UTRを含んでおり、更に、26Sサブゲノムプロモーターの制御下に置かれた目的の異種遺伝子(GOI)を含み得る。非構造タンパク質nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4のコード配列が示されている。
【
図2-1】
図2A~2Bは、本開示のいくつかの実施形態による非限定的な例示的なEEEV RNAレプリコンベースの設計の図式的な例示であり、FL93-939菌株由来の改変EEEVゲノムをコードする配列がプラスミドDNAベクター内に組み込まれており(
図2A)、そしてそれはまた、例示的な目的の遺伝子(GOI)、例えばインフルエンザAウイルスH5N1のヘマグルチニン前駆体(HA)(
図2B)のコード配列も包含する。
【
図2-2】
図2A~2Bは、本開示のいくつかの実施形態による非限定的な例示的なEEEV RNAレプリコンベースの設計の図式的な例示であり、FL93-939菌株由来の改変EEEVゲノムをコードする配列がプラスミドDNAベクター内に組み込まれており(
図2A)、そしてそれはまた、例示的な目的の遺伝子(GOI)、例えばインフルエンザAウイルスH5N1のヘマグルチニン前駆体(HA)(
図2B)のコード配列も包含する。
【
図3】
図3A~3Bは、EEEV RNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)で形質転換されたBHK-21の等高線図である。
図3Aでは、GOIを含まないEEEVレプリコンRNAをエレクトロポレーションによって形質転換し、そして形質転換の20時間後に、その細胞を、固定及び透過処理し、そして、PE結合抗dsRNAマウスモノクローナル抗体(J2、Scicons)を使用して染色して、蛍光フローサイトメトリーによってdsRNA+細胞の頻度を定量化した。
図3Bでは、HAのコード配列を包含するEEEVレプリコンRNAをBHK21細胞内に同様に形質転換し、そして、dsRNA検出に加えて、APC結合抗HAマウスモノクローナル抗体(2B7、Abcam)を使用して、導入遺伝子発現を検出した。抗dsRNA及び抗HA抗体の両方を有する個別細胞の陽性染色法では、本明細書中に記載した改変EEEV設計が、実行可能な合成レプリコンであり、かつ、RNA複製を受け、そして導入遺伝子を発現できることを実証している。
【
図4-1】
図4A~4Bは、本開示のいくつかの実施形態に従って設計された改変EEEVベクターが、2つの例示的な生理活性タンパク質:(i)インターロイキン1レセプターアンタゴニストタンパク質(IL-1RA)及び(ii)インターロイキン-12(IL-12)、を発現するのに使用できることを実証する実験の結果を図式的にまとめる。
図4A~4Bは、EEEV自己複製RNA(srRNA)を用いて形質転換されたBHK-21からの分泌タンパク質生理活性の定量化を例示する棒グラフである。
図4A~4Bに示されるsrRNAは、2つの異なる形状の2つのタンパク質IL-1RA及びIL-12をそれぞれコードするEEEV srRNA(RBI305、RBI306)である。次のような4つの対照VEEVベースのsrRNA:2つの形状(RBI299、RBI300)のIL-1RA及びIL-12の両方をコードするVEEV srRNA、並びに対照導入遺伝子(RBI296、RBI298)を伴ったVEEV srRNA、もまたこれらの実験に包含されている。
図4Aは、srRNA形質転換後24及び48時間における、細胞培養培地中の生理活性IL-1RAの定量化を示す。
図4Bは、srRNA形質転換後の24及び48時間における、細胞培養培地中の生理活性IL-12の定量化を示す。
【
図4-2】
図4A~4Bは、本開示のいくつかの実施形態に従って設計された改変EEEVベクターが、2つの例示的な生理活性タンパク質:(i)インターロイキン1レセプターアンタゴニストタンパク質(IL-1RA)及び(ii)インターロイキン-12(IL-12)、を発現するのに使用できることを実証する実験の結果を図式的にまとめる。
図4A~4Bは、EEEV自己複製RNA(srRNA)を用いて形質転換されたBHK-21からの分泌タンパク質生理活性の定量化を例示する棒グラフである。
図4A~4Bに示されるsrRNAは、2つの異なる形状の2つのタンパク質IL-1RA及びIL-12をそれぞれコードするEEEV srRNA(RBI305、RBI306)である。次のような4つの対照VEEVベースのsrRNA:2つの形状(RBI299、RBI300)のIL-1RA及びIL-12の両方をコードするVEEV srRNA、並びに対照導入遺伝子(RBI296、RBI298)を伴ったVEEV srRNA、もまたこれらの実験に包含されている。
図4Aは、srRNA形質転換後24及び48時間における、細胞培養培地中の生理活性IL-1RAの定量化を示す。
図4Bは、srRNA形質転換後の24及び48時間における、細胞培養培地中の生理活性IL-12の定量化を示す。
【
図5-1】
図5A~5Bは、例示的なウイルス抗原(狂犬病ウイルスのエンベロープ糖タンパク質G(RABV-G)である)をコードするsrRNAのパネルのインビボにおける免疫原性を例示する棒グラフである。パネルには、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE.TC83)、チクングニヤウイルス菌株S27(CHIK.S27)及びDRDE-06(CHIK.DRDE)、シンドビスウイルス株ガードウッド(SIN.GW)、及びAR87(SIN.AR86)、並びに東部脳炎ウイルス(EEE.FL93)に由来するsrRNAが包含された。
図5Aは、2回の免疫化後のELISpotによって評価される抗原特異的脾臓T細胞応答の定量化を示す。
図5Bは、2回の免疫化後の血清からの抗狂犬病中和抗体価を示す。
【
図5-2】
図5A~5Bは、例示的なウイルス抗原(狂犬病ウイルスのエンベロープ糖タンパク質G(RABV-G)である)をコードするsrRNAのパネルのインビボにおける免疫原性を例示する棒グラフである。パネルには、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE.TC83)、チクングニヤウイルス菌株S27(CHIK.S27)及びDRDE-06(CHIK.DRDE)、シンドビスウイルス株ガードウッド(SIN.GW)、及びAR87(SIN.AR86)、並びに東部脳炎ウイルス(EEE.FL93)に由来するsrRNAが包含された。
図5Aは、2回の免疫化後のELISpotによって評価される抗原特異的脾臓T細胞応答の定量化を示す。
図5Bは、2回の免疫化後の血清からの抗狂犬病中和抗体価を示す。
【
図6-1】
図6A~6Cは、ワクチンとしての使用のための、例えば、対象における免疫応答を誘発するための、例示的な腫瘍関連抗原をコードするsrRNAのパネルのインビボにおける免疫原性を示す棒グラフである。パネルには、東部脳炎ウイルス(EEE.FL93)と他の5種類のアルファウイルス:ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE.TC83)、チクングニヤウイルス菌株S27(CHIK.S27)及びDRDE-06(CHIK.DRDE)、シンドビスウイルス菌株ガードウッド(SIN.GW)、及びAR87(SIN.AR86)、に由来するsrRNAが包含された。各srRNAは、3つのポリペプチド:エストロゲン受容体1(ESR1)、ヒト上皮成長因子2(HER2)、及びヒト上皮成長因子2(HER3)の配列、をコードする配列を包含する。
図6A~6Cは、試験した各抗原間の統計的比較を用いた、2回の免疫化を受けたマウスにおいてELISpot分析を使用して測定されたこれらの3種類の抗原に対する脾臓T細胞応答を示す。
【
図6-2】
図6A~6Cは、ワクチンとしての使用のための、例えば、対象における免疫応答を誘発するための、例示的な腫瘍関連抗原をコードするsrRNAのパネルのインビボにおける免疫原性を示す棒グラフである。パネルには、東部脳炎ウイルス(EEE.FL93)と他の5種類のアルファウイルス:ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE.TC83)、チクングニヤウイルス菌株S27(CHIK.S27)及びDRDE-06(CHIK.DRDE)、シンドビスウイルス菌株ガードウッド(SIN.GW)、及びAR87(SIN.AR86)、に由来するsrRNAが包含された。各srRNAは、3つのポリペプチド:エストロゲン受容体1(ESR1)、ヒト上皮成長因子2(HER2)、及びヒト上皮成長因子2(HER3)の配列、をコードする配列を包含する。
図6A~6Cは、試験した各抗原間の統計的比較を用いた、2回の免疫化を受けたマウスにおいてELISpot分析を使用して測定されたこれらの3種類の抗原に対する脾臓T細胞応答を示す。
【
図6-3】
図6A~6Cは、ワクチンとしての使用のための、例えば、対象における免疫応答を誘発するための、例示的な腫瘍関連抗原をコードするsrRNAのパネルのインビボにおける免疫原性を示す棒グラフである。パネルには、東部脳炎ウイルス(EEE.FL93)と他の5種類のアルファウイルス:ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE.TC83)、チクングニヤウイルス菌株S27(CHIK.S27)及びDRDE-06(CHIK.DRDE)、シンドビスウイルス菌株ガードウッド(SIN.GW)、及びAR87(SIN.AR86)、に由来するsrRNAが包含された。各srRNAは、3つのポリペプチド:エストロゲン受容体1(ESR1)、ヒト上皮成長因子2(HER2)、及びヒト上皮成長因子2(HER3)の配列、をコードする配列を包含する。
図6A~6Cは、試験した各抗原間の統計的比較を用いた、2回の免疫化を受けたマウスにおいてELISpot分析を使用して測定されたこれらの3種類の抗原に対する脾臓T細胞応答を示す。
【
図7】
図7は、例示的な生物学的治療用タンパク質(ヒトIL-12)をコードするsrRNAのパネルからのインターロイキン-12(IL-12)のインビボ発現レベルを例示する棒グラフである。パネルには、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE.TC83)、チクングニヤウイルス菌株S27(CHIK.S27)及びDRDE-06(CHIK.DRDE)、シンドビスウイルス株ガードウッド(SIN.GW)、及びAR87(SIN.AR86)、並びに東部脳炎ウイルス(EEE.FL93)に由来するsrRNAが包含された。srRNAはマウスにおいて筋肉内に投与され、そして、血清が7日目に採集されて、タンパク質の全身的レベルが検出された。
【
図8】
図8は、別の例示的な生物学的治療用タンパク質(マウスIL-12)をコードするEEEV srRNAベクターから発現されたIL-12のインビボにおける活性を例示する棒グラフである。IL-12の機能性は、下流の薬力学的マーカーとしてのIFNγの誘導を評価することによって計測された。srRNA投与後3日目のマウスからの血清は、検出可能なレベルのIFNγを示した。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の詳細な説明
とりわけ、組換え細胞における、異種分子、例えばワクチン及び治療用ポリペプチドなどを発現するのに適した、優れた発現能を有するウイルス発現系が、本明細書で提供される。例えば、本開示のいくつかの実施形態は、構造タンパク質をコードするその元のウイルス配列の少なくともいくつかが欠失している、東部ウマ脳炎ウイルスの改変ゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)を含有する核酸構築物、例えば発現構築物及びベクターなどに関する。また、異種ポリペプチドをコードする1若しくは複数の発現カセットを含むウイルスベースの発現ベクターが、本開示のいくつかの実施形態において提供される。本明細書に開示される核酸分子のうちの1若しくは複数を含むように遺伝子操作された組換え細胞が、更に提供される。当該組換え細胞に由来する生体材料及び組換え産物も、当該出願の範囲内である。また、薬力学的効果の誘導、例えば、それを必要としている対象において免疫応答を誘発するために有用な組成物及び方法、並びにそれを必要としている対象において様々な健康状態を予防及び/又は治療する方法も提供される。
【0028】
RNAウイルス(例えば、アルファウイルス)に基づく自己増幅RNA(例えば、レプリコン又は自己複製RNA)を、強力な発現系として使用することができる。例えば、EEEVなどのアルファウイルスをウイルス発現ベクターとして使用する利点として、組換え宿主細胞において大量の異種タンパク質の合成を方向付けることが報告されている。他の利点の中でも、治療用一本鎖抗体などのポリペプチドは、インビボで、高レベルで発現される場合に最も効果的であり得る。更に、培養物(ex vivo)中で細胞から精製された組換え抗体を産生するために、レプリコンRNAからの高タンパク質発現は、抗体産物の全体的な収率を増加させ得る。更に、発現しているタンパク質がワクチン抗原である場合、高レベルの発現は、インビボで最も強力な免疫応答を誘導し得る。
【0029】
アルファウイルスは、それらのUTR、構造領域、及び非構造領域に含まれるモチーフを利用して、宿主細胞におけるそれらの複製に影響を与える。これらの領域には、宿主細胞の自然免疫を回避するメカニズムも含まれている。しかしながら、アルファウイルス種間の有意差が報告されている。例えば、新世界アルファウイルスと旧世界アルファウイルスは、ウイルス複製複合体の組み立てのために細胞内のストレス顆粒、JAK-STATシグナル伝達、FXR、及びG3BPタンパク質を利用するために異なる成分を進化させてきた。ゲノムのどの部分にこれらの成分が含まれているかも、アルファウイルス間で異なる。例えば、PKRの活性化とそれに続くEIF2αのリン酸化の迂回は、シンドビスなどの一部の旧世界アルファウイルスでは下流ループを介して行われるが、この経路を迂回することは、認識可能なDLPがないチクングニアにおいてnsP4を介して行われると考えられている。更に、個々のアルファウイルス間の変動を超えて、アルファウイルスの株内にも、病原性などの特性の変化を説明することができる違いがあることが多い。例として、新世界の東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)の北米株と南米株間の配列変動は、STAT1経路を調節する能力を変化させ、I型インターフェロンの誘導差とその結果生じる病原性の変化をもたらす。
【0030】
アルファウイルスの非構造及び構造領域における宿主細胞弱毒化因子の特定の存在を考えると、合成ベクターでの異種遺伝子発現を可能にするために構造遺伝子を削除すると、個々のベクターに様々な影響がある。非構造領域に異なる宿主弱毒化因子を有する合成レプリコン(例えば、自己複製RNA)は、発現される異種遺伝子に対する免疫応答の誘導において差次的に優れている。例えば、宿主細胞機能の遮断は旧世界ウイルスにおいてnsP2に関係したが、VEEVやEEEVなどの新世界ウイルスでは、これは主としてカプシドタンパク質(C)に関連し、そしてそれは、合成ベクターで一部又はすべて欠失されている。nsP3タンパク質の超可変領域(HVD)は、各アルファウイルスに特異的である宿主相互作用を有する。特に、EEEV nsP3は、細胞FXR及びG3BPタンパク質ファミリー、DDX3、S100A4、IKKβ、PGAM5、並びに細胞骨格再構築及び小胞輸送タンパク質と相互作用することが示された。特に、EEEVは、アルファウイルスの中で最も高い病原性であると見なされ、そして、特徴づけされたEEEV菌株、FL93-939のそれが、マウスにおいて最も高いIFNレベルを誘導する。FL939-939と他の北米菌株は高レベルのIFNを誘導するが、感染野生型IFN欠損マウスにおけるウイルス血症又は死亡率にはわずかな違いがあり、南米EEEV菌株とは対照的に、IFNがこれらの菌株に対する保護にいてほとんど役割を果たしていないことを示唆している。北部(FL93-939)及び南米(BeAr436087)菌株のキメラでは中間体がIFNに対して感度を示し、マウスにおける神経毒性と組織親和性の違いを示して、構造上及び非構造タンパク質の両方が表現型変異に貢献することを実証している。概して、ストレス顆粒を妨げるEEEVの能力、IFNに対する系統依存性の不可知論、及びその強い病原性に貢献するまだ説明されていない他の機構は、EEEVが、ワクチン生物学的治療適用のための異種タンパク質の発現に役立つベクターを作り上げるであろうことを示唆させる。このベクターがもたらす利点が、これまで調査及び予測されることはまったくなかった。
【0031】
以下でより詳細に説明するように、公的に入手可能なアルファウイルスゲノムデータは、構造タンパク質をコードする核酸配列を目的の遺伝子(GOI)で直接置換して自己複製RNA及び導入遺伝子発現レプリコンをもたらすことができるヌクレオチド配列を常に提供するとは限らないという最初の観察がなされた。例えば、利用可能な公開された配列を用いたEEEV構造タンパク質の異種遺伝子への単純な置換は、機能的レプリコンの生成に必ずしも十分ではない。別の言い方をすれば、ワクチンや治療薬での使用に適したレプリコンシステムを作成するには、異種の5’及び/又は3’UTR配列を使用するなどの更なる操作が必要になる。
【0032】
以下により詳細に記載したとおり、本開示のいくつかの実施形態は、1若しくは複数の目的の異種遺伝子(GOI)を発現するように遺伝子操作された改変EEEVゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)に関する。例えば、EEV菌株FL93-939の構造ポリタンパク質遺伝子をインフルエンザAウイルスH5N1遺伝子の合成ヘマグルチニン前駆体(HA)で置換して(例えば、
図2Bを参照のこと)、形質移入されたBHK21細胞においてRNA複製と導入遺伝子発現が可能な自己複製ベクターを作出できることがわかった(例えば、
図3Bを参照のこと)。加えて、以下でより詳細に記載したとおり、本明細書中に記載したいくつかのEEEVベースのsrRNA構築物が、抗原の発現のために利用でき、インビボにおいて計測される薬力学的効果を有するワクチンとして処方され得る(例えば、
図5及び
図6を参照のこと)。更に、
図4A~4Bに記載の実験データは、EEEVベースのsrRNAベクターが、そのコード配列が単一のオープンリーディングフレーム(例えば、ポリシストロン性ORF)内で互いに作動可能に連結され、かつ、インビボにおける薬力学的効果によって計測される生理活性を有する、多種タンパク質の発現のために有効であり得ることを実証する(例えば、
図6を参照のこと)。更に、本開示のEEEVベースのsrRNAベクターはまた、確認されたインビボにおける生理活性を有する生物学的治療用タンパク質(例えば、
図7を参照のこと)の発現にも有用である(例えば
図8を参照のこと)。総合すれば、これらの調査は、治療薬とワクチン適用におけるEEEV srRNAの使用を更に実証する。
定義
【0033】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法、及びその他の科学用語又は専門用語は、本出願が関係する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有することを意図する。場合により、一般的に理解されている意味を有する用語は、明確さのために及び/又は即時参照するために本明細書において定義され、本明細書に斯かる定義を含めることは、必ずしも当該技術分野において一般的に理解されているものに対する実質的な相違を表すと解釈されるべきではない。本明細書に記載又は参照される技術及び手順の多くは、当業者によって十分に理解され、従来の方法論を用いて一般的に採用される。
【0034】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形の参照を含む。例えば、用語「細胞」は、1若しくは複数の細胞を含み、それらの混合物を含む。「A及び/又はB」は、本明細書において、「A」、「B」、「A又はB」、及び「A及びB」の全ての代替を含み使用される。
【0035】
本明細書で使用される用語「投与」及び「投与すること」は、非限定的に、鼻腔内、経皮、静脈内、動脈内、筋肉内、節内、腹腔内、皮下、筋肉内、経口、膣内、及び局所投与、又はそれらの組み合わせを含む投与経路による、生理活性組成物又は製剤の送達を指す。該用語には、非限定的に、医療従事者による投与及び自己投与が含まれる。
【0036】
用語「細胞」、「細胞培養物」、及び「細胞株」は、特定の対象細胞、細胞培養物、又は細胞株だけでなく、培養における移植又は継代の数に関係なく、当該細胞、細胞培養物、又は細胞株の子孫若しくは潜在的な子孫も指す。すべての子孫が親細胞とまったく同一ではないことを理解されたい。これは、特定の改変が、突然変異(例えば、意図的又は不注意な突然変異)又は環境的影響(例えば、メチル化又は他のエピジェネティック修飾)のいずれかのために、後世において起こり得るためであり、その結果、子孫は、実際には、親細胞と同一ではないかもしれないが、子孫が元の細胞、細胞培養、又は細胞株と同じ機能を保持する限り、本明細書で使用される用語の範囲内に依然として含まれる。
【0037】
本開示の組成物、例えば、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物の「有効量」、「治療有効量」、又は「薬学的有効量」という用語は、一般に組成物の非存在下と比較して、組成物が所定の目的を達成するのに十分な量を指す(例えば、投与される効果を達成する、免疫応答を刺激する、疾患を予防又は治療する、又は疾患、障害、感染症、又は健康状態の1若しくは複数の症状を軽減する)。「有効量」の一例は、疾患の症状(単数又は複数)の治療、予防、又は軽減に寄与するのに十分な量であり、「治療有効量」とも称され得る。症状の「軽減」とは、症状の重症度又は頻度の減少、又は症状の排除を意味する。「治療有効量」を含む組成物の正確な量は、治療の目的次第であり、既知の技術を用いて当業者によって確認可能であろう(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar, Dosage Calculations (1999); and Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照のこと)。
【0038】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限及び下限との間の各介在値(文脈が別段に明確に指示しない限り、下限の単位の10分の1まで)と、その規定された範囲内の任意のその他の規定値又は介在値が開示内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、より小さな範囲に独立して含めることができ、規定された範囲内の任意の明確に除外された限度を条件として、開示内にも包含される。規定された範囲が限度の一方又は両方を含む場合、それらに含まれる限度のいずれか又は両方を除外する範囲も開示に含まれる。
【0039】
本明細書では、特定の範囲が、本明細書で使用される場合、通常およその意味を有する「約」という用語が数値の前に付き提示される。「約」という用語は、用語が先行する正確な数、並びに用語が先行する数に近い、又はほぼ用語が先行する数であるような数を文字通りサポートするために使用される。ある数が具体的に列挙された数に近いか、又はほぼ具体的に列挙された数であるかを決定する際に、列挙されていない数に近いか近似する数は、それが提示される文脈において、具体的に列挙された数と実質的に同等であるものを提供する数であり得る。近似の程度が文脈から明確でない場合、「約」は、提供された値を含むすべての場合において、提供された値のプラスマイナス10%以内、又は最も近い有効数字に丸められる。いくつかの実施形態において、「約」という用語は指定値±最大10%、最大±5%、又は最大±1%を示す。
【0040】
「構築物」という用語は、異種供給源からの1若しくは複数の単離された核酸配列を含む組換え分子を指す。例えば、核酸構築物は、異なる供給源の2つ以上の核酸配列が単一の核酸分子に集合しているキメラ核酸分子であり得る。従って、代表的な核酸構築物は、(1)天然に互いに隣接していない(例えば、ヌクレオチド配列の少なくとも1つは、その他のヌクレオチド配列の少なくとも1つに対して異種である)制御及びコーディング配列を含む核酸配列、又は(2)天然に隣接していない機能的なRNA分子又はタンパク質の一部をコードする配列、若しくは(3)天然に隣接していないプロモーター部分を含有する任意の構築物を含む。代表的な核酸構築物としては、任意の組換え核酸分子、直鎖又は環状、一本鎖又は二本鎖DNA又はRNA核酸分子を含み得、ゲノム組み込み又は自律複製が可能な任意の供給源、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス、自律複製ポリヌクレオチド分子、ファージに由来し、1若しくは複数の核酸配列が作動可能に連結されている核酸分子が挙げられる。本開示の構築物は、構築物中にも含まれる目的の核酸配列を直接発現させるために必要な要素を含み得る。このような要素は、目的の核酸配列に作動可能に連結されている(直接転写するように)プロモーターなどの制御要素を含み得、任意選択でポリアデニル化配列を含む。
【0041】
本開示のいくつかの実施形態において、核酸構築物はベクター内に組み込まれてもよい。「ベクター」という用語は、別の核酸分子を移動又は輸送できる核酸分子又は配列を指すために本明細書で使用される。よって、「ベクター」という用語は、DNAベースのベクターとRNAベースのベクターの両方を包含する。「ベクター」という用語は、クローニングベクターと発現ベクター、並びにウイルスベクターと組み込みベクターを包含する。「発現ベクター」は、調節領域を包含するベクターであり、その結果、インビトロ、エクスビボ、及び/又はインビボにおいてDNA配列及び断片を発現することができる。いくつかの実施形態において、ベクターは、例えば、プラスミド(DNAベースのベクター)又は自己複製RNAベクターなど、細胞における自動複製を指示する配列を含み得る。いくつかの実施形態において、ベクターは、宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含み得る。いくつかの実施形態において、ベクターは、インビトロ及び/又はインビボにおいてRNAに転写できるDNA配列を含み得る。有用なベクターは、例えば、プラスミド(例えば、DNAプラスミド又はRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、細菌人工染色体、及びウイルスベクターを包含する。いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、一本鎖ベクター(例えば、ssDNA又はssRNA)であり得る。いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、二本鎖ベクター(例えば、dsDNA又はdsRNA)であり得る。いくつかの実施形態において、ベクターは、遺伝子送達ベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターは、細胞内に遺伝子を移動するための遺伝子送達ビヒクルとして使用される。
【0042】
構築物の構成要素に加えて、ベクターは、例えば、1若しくは複数の選択可能なマーカー、原核生物及び真核生物起点などの1若しくは複数の複製起点、少なくとも1つの多重クローニングサイト、及び/又は細胞のゲノムへの構築物の安定的な組み込みを促進する要素を含み得る。2つ以上の構築物は、単一のベクターなどの単一の核酸分子内に組み込むことができ、又は2つ以上の別々のベクターなどの2つ以上の別々の核酸分子内に含有することができる。「発現構築物」は一般に、目的のヌクレオチド配列に作動可能に連結された少なくとも一つの制御配列を含む。このようにして、例えば、発現するヌクレオチド配列と作動可能に連結するプロモーターが、細胞内で発現するための発現構築物において提供される。本開示の実施のために、構築物及び細胞を調製並びに使用するための組成物及び方法は、当業者に公知である。
【0043】
本明細書で使用される用語「作動可能に連結された」は、2つ以上の要素、例えば、ポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列間の物理的又は機能的連結を意味し、それらの意図された様式で作動することができる。例えば、本明細書に記載の核酸分子、又は核酸分子中のコード配列及びプロモーター配列の文脈において用いられる場合、「作動可能に連結された」という用語は、コード配列及びプロモーター配列が、インフレーム並びに転写での転写因子又はRNAポリメラーゼによるそれぞれの結合の効果を可能にするために、適切な空間及び距離にあることを意味する。作動可能に連結された要素は、連続的又は非連続的であり得る(例えば、リンカーを介して互いに連結され得る)ことを理解されたい。ポリペプチド構築物の文脈において、「作動可能に連結された」とは、アミノ酸配列(例えば、異なるセグメント、部分、領域、又はドメイン)間の物理的連結(例えば、直接的又は間接的に連結された)であって、構築物の記載された活性を提供する。本明細書に開示されるポリペプチド又は核酸分子の作動可能に連結されたセグメント、部分、領域、及びドメインは、連続又は非連続であり得る(例えば、リンカーを介して互いに連結され得る)。
【0044】
本明細書において使用される用語「部分」は、分画を指す。ポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列若しくはタンパク質などの特定の構造に関して、「部分」という用語は、前記構造の連続又は不連続画分を示し得る。例えば、アミノ酸配列の一部は、前記アミノ酸配列のアミノ酸の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、及び少なくとも90%を含む。加えて又は代替的に、当該部分が不連続画分である場合、前記不連続画分は、構造の2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上の部分(例えば、タンパク質のドメイン)から構成され、各部分は、構造の連続要素である。例えば、アミノ酸配列の不連続画分は、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上、例えば前記アミノ酸配列の4部分以下から構成されてもよく、各部分は、アミノ酸配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つの連続アミノ酸、少なくとも10個の連続アミノ酸、少なくとも20個の連続アミノ酸、又は少なくとも30個の連続アミノ酸を含む。
【0045】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限及び下限との間の各介在値(文脈が別段に明確に指示しない限り、下限の単位の10分の1まで)と、その規定された範囲内の任意のその他の規定値又は介在値が開示内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、より小さな範囲に独立して含めることができ、規定された範囲内の任意の明確に除外された限度を条件として、開示内にも包含される。規定された範囲が限度の一方又は両方を含む場合、それらに含まれる限度のいずれか又は両方を除外する範囲も開示に含まれる。
【0046】
本明細書では、特定の範囲が、「約」という用語が数値の前に付き提示される。「約」という用語は、用語が先行する正確な数、並びに用語が先行する数に近い、又はほぼ用語が先行する数であるような数を文字通りサポートするために使用される。ある数が具体的に列挙された数に近いか、又はほぼ具体的に列挙された数であるかを決定する際に、列挙されていない数に近いか近似する数は、それが提示される文脈において、具体的に列挙された数と実質的に同等であるものを提供する数であり得る。
【0047】
2つ以上の核酸又はタンパク質との関連において本明細書で使用される用語「パーセント同一性」は、同一である、又は以下に記載される既定のパラメータを有するBLAST又はBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを用いて、又は手動アライメント及び目視検査によって測定されたものと同一(例えば、比較ウィンドウ又は指定された領域にわたって一致が最大になるように比較及び整列した場合、特定の領域にわたって約60%の配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はより高い同一性)である、特定の割合のヌクレオチド又はアミノ酸を有する2つ以上の配列又はサブ配列を指す。ncbi.nlm.nih.gov/BLASTのNCBIウェブサイトなどを参照のこと。斯かる配列は、「実質的に同一」であると言われる。この定義は、配列の補完も参照する、又は適用できる。この定義には、削除及び/又は追加を有する配列、並びに置換を有する配列も含まれる。配列同一性は、GCSプログラムパッケージ(Devereux et al., Nucleic Acids Res. 12:387, 1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul et al., J Mol Biol 215:403, 1990)などの公開された技術及び広く利用可能なコンピュータプログラムを用いて計算することができる。配列同一性は、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター(1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705)の遺伝学コンピュータグループの配列分析ソフトウェアパッケージなどの配列分析ソフトウェアを使用して、その規定パラメータを使用して測定できる。
【0048】
本明細書において使用される用語「薬学的に許容される賦形剤」は、対象への目的の化合物(単数又は複数)の投与のために薬学的に許容される担体、添加剤、又は希釈剤を提供する任意の好適な物質を指す。そのようにして、「薬学的に許容される賦形剤」は、薬学的に許容される希釈剤、薬学的に許容される添加剤、及び薬学的に許容される担体と呼ばれる物質を包含することができる。本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」は、非限定的に、生理食塩水、溶媒、分散液、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含み、薬学的投与に適合する。補助的な活性化合物(例えば、抗生物質及び追加の治療薬)も組成物に組み込まれ得る。
【0049】
細胞、核酸、タンパク質又はベクターに関して使用されるとき、「遺伝子組換え」という用語は、細胞、核酸、タンパク質又はベクターが、例えば、実験室的方法によって改変された又は実験室的方法の結果であるなどのヒトの介入によって変更又は製造されたことを示す。よって、例えば、遺伝子組換えタンパク質と核酸は、実験室的方法によって製造されたタンパク質と核酸を包含する。遺伝子組換えタンパク質は、天然(非遺伝子組換え又は野生型)のタンパク質には見られないアミノ酸残基を包含するか、又は修飾、例えば標識されたアミノ酸残基を包含することである。その用語は、ペプチド、タンパク質、又は核酸配列への何らかの改変を包含し得る。斯かる改変は、次の:1若しくは複数のアミノ酸、デオキシリボヌクレオチド、又はリボヌクレオチドを含めた、ペプチド、タンパク質又は核酸配列のあらゆる化学修飾;ペプチド又はタンパク質における1若しくは複数のアミノ酸の付加、欠失、及び/又は置換;融合タンパク質、例えば抗体フラグメントを含む融合タンパク質、の作製;そして加えて、核酸配列における1若しくは複数の核酸の付加、欠失、及び/又は置換、を包含し得る。「遺伝子組換え」という用語は、細胞に関して使用される場合、天然に存在する細胞を包含することを意図しないが、それが遺伝子操作又は改変されなかった場合に、細胞内に存在しないであろうポリペプチド又は核酸を包含する又は発現するように遺伝子操作又は改変された細胞を包含する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「レプリコンRNA」という用語は、許容細胞内でそれ自体の増幅又は自己複製を指示するために必要とされるすべての遺伝情報を含有するRNAを意味する。そのため、時々、レプリコンRNAはまた、「自己増幅RNA」(saRNA)又は「自己複製RNA」(srRNA)とも呼ばれる。それ自体の複製を指示するために、RNA分子は、1)ポリメラーゼ、レプリカーゼ、又はウイルスもしくは宿主細胞由来のタンパク質、核酸もしくはリボ核タンパク質と相互作用しRNA増幅プロセスを触媒することができる他のタンパク質をコードし;2)サブゲノムレプリコンにコードされたRNAの複製及び転写に必要とされるcis作用性RNA配列を含有する。これらの配列は、複製のプロセス中にその自己コード化タンパク質、又は非自己コード化細胞由来のタンパク質、核酸もしくはリボ核タンパク質、又は任意のこれらのコンポーネント間の複合体に結合され得る。本開示のいくつかの実施形態において、アルファウイルスレプリコンRNA分子(例えば、srRNA又はsaRNA分子)は概して、以下の順序の要素:複製のためにcisで必要とされる5’ウイルスRNA配列(複数可)、生物学的に活性なアルファウイルス非構造タンパク質(例えば、nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4)をコードする配列、サブゲノムRNAのプロモーター(sgRNA)、複製のためにcisで必要とされる3’ウイルス配列、及び連続するポリアデニル酸管(poly(A))、を含有する。いくつかの例において、異種配列の発現を指示するサブゲノムプロモーター(sg)が、本開示のsrRNA構築物内に包含され得る。更に、RNAレプリコン(例えば、srRNA又はsaRNA)という用語は概して、正極性又は「メッセージ」センスの分子を指し、レプリコンRNAは、任意の既知の天然アルファウイルスの長さとは異なる長さであってもよい。本開示のいくつかの実施形態において、レプリコンRNAは、少なくとも1つの構造的なウイルスタンパク質の配列を含んでおらず;構造遺伝子をコードする配列が、異種配列で置換され得る。レプリコンRNAが組換えアルファウイルス粒子にパッケージングされるこれらの場合において、それは、粒子形成につながるアルファウイルス構造タンパク質との相互作用を開始するように機能する1つ又は複数の配列、いわゆるパッケージングシグナルを含有し得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「個体」は、動物、例えばヒト(例えば、ヒト個体)及び非ヒト動物を含む。いくつかの実施形態において、「対象」又は「個体」は、医師のケアを受けている患者である。従って、対象は、目的の健康状態(例えば、癌又は感染症)及び/又は健康状態の1若しくは複数の症状を有する、有する危険性がある、又は有する疑いのあるヒト患者又は個体であり得る。対象はまた、診断時又はそれ以降に目的の健康状態の危険性がある診断された個体であり得る。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、非ヒト霊長類、及び他の哺乳動物、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、及び非哺乳動物、例えば両生類、爬虫類などを含む。
【0052】
本明細書に記載される本開示の態様及び実施形態は、「含む(comprising)」、「構成する」、及び「本質的に~なる」態様及び実施形態を含むことが理解される。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する」、又は「~によって特徴付けられる」と同義であり、包括的又は無制限であり、追加の、列挙されていない要素又は方法ステップを排除するものではない。本明細書で使用される場合、「~から成る」は、特許請求の範囲に記載された組成物又は方法において、特定されていない任意の要素、工程、又は成分を除外する。本明細書で使用される場合、「本質的に~から成る」は、特許請求の範囲の組成物又は方法の基本的及び新規な特性に実質的に影響を及ぼさない材料又は工程を排除しない。本明細書における用語「含む(comprising)」の任意の列挙は、特に組成物の構成要素の説明又は方法の工程の説明において、列挙された構成要素又は工程から本質的になる、及び列挙された構成要素又は工程から成る組成物及び方法を包含すると理解される。
【0053】
見出し、例えば、(a)、(b)、(i)などは、明細書や請求項を容易に読むためだけに提示される。明細書又は請求項における見出しの使用は、そのステップ又は要素が英字若しくは数字の順序又はそれらが提示される順序で実施される必要はない。
【0054】
本開示の特定の特徴は、明確性のために、別々の実施形態の文脈において記載され、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることを理解されたい。逆に、本開示の様々な特徴は、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈において説明され、別々に、又は任意の適切な部分的組み合わせで提供することもできる。本開示に関する実施形態のすべての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、あたかもすべての組み合わせが個別かつ明示的に開示されたかのように本明細書に開示される。加えて、様々な実施形態及びその要素の全ての部分的組み合わせもまた、本開示によって具体的に包含され、あたかもそのような部分的組み合わせの各々が個別かつ明示的に本明細書に開示されたかのように本明細書に開示される。
東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)
【0055】
東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)は、トガウイルス科の遺伝的、構造的、及び血清学的に関連するウイルスのグループを含むアルファウイルス属の蚊媒介性ウイルスに属する。現在、アルファウイルス属には、シンドビスウイルス(SINV)、セムリキ森林ウイルス(SFV)、ロスリバーウイルス(RRV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、及び東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)などが含まれ、これらはすべて密接に関連しており、哺乳類、げっ歯類、魚類、鳥類などの様々な脊椎動物、及びヒトやウマなどの大型哺乳類、並びに昆虫などの無脊椎動物に感染し得る。特に、EEEVは広く研究されており、これらのウイルスのライフサイクル、複製様式などはよく特徴付けられている。この点に関する更なる情報は、例えば、Corrin T. et al., Vector-Borne and Zoonotic Diseases, Vol. 21, No. 5, 2021に見ることができる。加えて、アルファウイルスは動物細胞内で非常に効率的に複製することが示されているため、斯かる細胞でタンパク質や核酸を産生するためのベクターとして有益である。種と個体の間の感染は主に、蚊を介して発生し、アルファウイルスをアルボウイルス-又は節足動物媒介ウイルスのコレクションに寄与させる。
【0056】
これらのアルファウイルスの各々は、ウイルススパイクタンパク質を含むエンベロープで包囲されたヌクレオカプシドに囲まれた正極性の一本鎖RNAゲノムを有する。アルファウイルス粒子は包まれており、球形である傾向があり(わずかに多形であるが)、等尺性ヌクレオカプシドを有する。アルファウイルスゲノムは、長さ約11~12kbの正極性の一本鎖RNAであり、5’キャップ、3’ポリA尾部、及び酵素機能を有する非構造タンパク質をコードする第1のフレーム、並びにウイルス構造タンパク質(例えば、カプシドタンパク質CP、E1糖タンパク質、E2糖タンパク質、E3タンパク質及び6Kタンパク質)をコードする第2のフレームを有する2つのオープンリーディングフレームである。例えば、EEEVは、5’末端にてキャップされた及び3’末端にてポリアデニル化された約11.7kbの一本鎖、プラスセンスRNAゲノムを有する。EEEVは、感染した蚊の噛み付きによって伝播され、そして、ほとんどのスピルオーバー伝播が、硬木の生えた低平地において起こり、湿地帯が蚊幼虫発生を促す。その名称によって示されるように、EEEVはウマに感染し、そして、発熱、行動変化、及び脳炎の他の症状を引き起こす。野鳥はEEEVの主な保菌動物である。しかしながら、感染はウマにとって致命的であることが多い。
【0057】
アルファウイルスゲノムの5’側3分の2は、ウイルスRNAの転写及び複製に必要な多数の非構造タンパク質をコードする。これらのタンパク質はRNAから直接翻訳され、細胞タンパク質とともに、ウイルスゲノム複製及びサブゲノムRNAの転写に不可欠なRNA依存性RNAポリメラーゼを形成する。4つの非構造タンパク質(nsP1-4)は、ウイルスの複製機構を構成する単一のポリタンパク質として産生される。ポリタンパク質のプロセシングは高度に制御された方法で行われ、P2/3接合部での切断はゲノム複製中のRNAテンプレートの使用に影響を与える。このサイトは狭いくぼみの底部にあり、簡単にはアクセスできない。切断されると、nsP3はnsP2を囲むリング構造を作成する。これら2つのタンパク質は広範な界面を有する。非細胞変性ウイルス又は温度感受性表現型を産生するnsP2における変異は、P2/P3界面領域にクラスター化する。nsP2非細胞変性変異の位置の反対側のP3変異は、P2/3の効率的な切断を妨げる。これは、RNA感染力に影響を与え、ウイルスRNA産生レベルを変化させる可能性がある。
【0058】
ゲノムの3’側3分の1は、ウイルス粒子の形成に必要な全ての構造タンパク質:コアヌクレオカプシドタンパク質C、並びにヘテロ二量体として会合するエンベロープタンパク質P62及びE1、の翻訳のための鋳型として働くサブゲノムRNAを含む。ウイルス膜アンカー表面糖タンパク質は、受容体の認識と膜融合による標的細胞への侵入に関与している。サブゲノムRNAは、nsP4タンパク質をコードするRNA配列の3’末端に存在するp26Sサブゲノムプロモーターから転写される。P62のE2及びE3へのタンパク質分解の成熟は、ウイルス表面の変化を引き起こす。E1、E2、及び時にはE3の糖タンパク質「スパイク」は共にE1/E2二量体又はE1/E2/E3三量体を形成し、E2は中心から頂点に伸び、E1は頂点の空間を埋め、E3が存在する場合はスパイクの頭部に存在する。ウイルスがエンドソームの酸性度にさらされると、E1はE2から解離してE1ホモ三量体を形成する。これは融合ステップが細胞膜及びウイルス膜を共に駆動するのに必要である。アルファウイルス糖タンパク質E1はクラスIIウイルス融合タンパク質であり、インフルエンザウイルス及びHIVに見られるクラスI融合タンパク質とは構造的に異なる。E2糖タンパク質は、その細胞質ドメインを介してヌクレオカプシドと相互作用するように機能し、その外部ドメインは細胞受容体に結合する役割を果たす。ほとんどのアルファウイルスは末梢タンパク質E3を失うが、セムリキウイルスではウイルス表面に結合したままである。
【0059】
アルファウイルス複製は、宿主細胞内の膜状表面で起こることが報告されている。感染サイクルの最初のステップでは、ゲノムRNAの5’末端が、ゲノムRNAに相補的なネガティブ鎖を生成するRNAポリメラーゼ活性を有するポリタンパク質(nsP1-4)に翻訳される。第2の工程では、ネガティブ鎖は、それぞれ2つのRNA:(1)翻訳によって他のnsPタンパク質を産生し、ウイルスのゲノムとして作用する二次ウイルスのゲノムに対応するポジティブゲノムRNA;(2)感染性粒子を形成するウイルスの構造タンパク質をコードするサブゲノムRNA、を産生するための鋳型として使用される。ポジティブゲノムRNA/サブゲノムRNA比は、ポリタンパク質のnsP1、nsP2、nsP3及びnsP4へのタンパク質分解自己切断によって調節される。実際には、ウイルス遺伝子発現は2段階で起こる。第1段階は主に、ポジティブゲノム鎖とネガティブ鎖の合成である。第2段階では、サブゲノムRNAの合成は事実上排他的であるため、大量の構造タンパク質が生成される。
本開示の組成物
【0060】
以下でより詳細に説明するように、本開示の1つの態様は、改変されたウイルスゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)をコードする核酸配列を含む酸構築物に関し、ここで、改変ゲノム又はレプリコンRNAは、対応する未改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNAの1若しくは複数の構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部を欠いている(例えば含まない)。本開示のいくつかの実施形態は、非構造タンパク質nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4のコード配列が存在する、改変アルファウイルスゲノム又はレプリコンRNAを提供するが、1若しくは複数の構造タンパク質をコードする配列の少なくとも一部又は全体が存在しない。また、本明細書に開示される核酸構築物を含むように操作された組換え細胞及び細胞培養物も提供される。
A.核酸構築物
【0061】
以下でより詳細に記載されるように、本開示の一態様は、頭部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)などのアルファウイルスの改変ゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)をコードする核酸配列を含む、新規の核酸構築物に関する。例えば、いくつかの実施形態において、改変されたアルファウイルスゲノムは、親アルファウイルスゲノムの1若しくは複数のゲノム領域における欠失、置換、及び/又は挿入を含み得る。
【0062】
本開示の核酸構築物の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴のうちの1若しくは複数を含み得る。いくつかの実施形態において、核酸構築物は、改変EEEVゲノム又はレプリコンRNAをコードする核酸配列を含み、ここで、改変EEEVゲノム又はレプリコンRNAは、未改変EEEVゲノム又はレプリコンRNAの1若しくは複数の構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部を欠いており、例えば、改変EEEVゲノム又はレプリコンRNAは、1若しくは複数のEEEV構造タンパク質、CP、E1、E2、E3、及び6Kのコード配列の少なくとも一部を含まない。病原性及び非病原性EEEV株の両方が適している。本開示の組成物及び方法に適したEEEV株の非限定的な例としては、EEEV792138、783372、BeAn5122、BeAr300851、BeAr436087、C-49、FL91-4679、FL93-939、GML903836、MP-9、PE6、及びV105-00210が挙げられる。更なる好適なEEEV菌株としては、これだけに限定されるものではないが、Virus Pathogen Resourceウェブサイト(ViPR;www.viprbrc.org/brc/vipr_genome_search.spg? method= SubmitForm& blockId= 868&decorator=togaにて公的に利用可能である)に記載のものが挙げられる。いくつかの実施形態において、改変EEEVゲノム又はレプリコンRNAは、EEEV菌株FL93-939由来である。
【0063】
本開示の核酸構築物の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴のうちの1若しくは複数を含むことができる。いくつかの実施形態において、改変されたウイルスゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)は、未改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNAの1若しくは複数のウイルス構造タンパク質CP、E1、E2、E3、及び6Kをコードする核酸配列の少なくとも一部を欠いている。いくつかの実施形態において、改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNAは、CPをコードする配列の一部又は全体を欠いている。いくつかの実施形態において、改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNAは、E1をコードする配列の一部又は全体を欠いている。いくつかの実施形態において、改変されたウイルスゲノム又はレプリコンRNAは、E2をコードする配列の一部又は全体を欠いている。いくつかの実施形態において、改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNAは、E3をコードする配列の一部又は全体を欠いている。いくつかの実施形態において、改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNAは、6Kをコードする配列の一部又は全体を欠いている。いくつかの実施形態において、改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNAは、CP、E1、E2、E3、及び6Kの組み合わせをコードする配列の一部又は全体を欠いている。本開示のいくつかの実施形態は、未改変EEEVゲノム又はレプリコンRNAの非構造タンパク質nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4のコード配列が存在するが、1若しくは複数の構造タンパク質をコードする配列の少なくとも一部又は全体(例えば、CP、E1、E2、E3、及び6K)のEEEVゲノム又はレプリコンRNAが存在しない、改変EEEVゲノム又はレプリコンRNAを提供する。本開示のいくつかの実施形態は、未改変EEEVゲノム又はレプリコンRNAの非構造タンパク質nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4のコード配列が存在するが、1若しくは複数の構造タンパク質をコードする配列の少なくとも一部又は全体(例えば、CP、E1、E2、E3、及び6K)のEEEVゲノム又はレプリコンRNAが存在しない、改変EEEVゲノム又はレプリコンRNAを提供する。
【0064】
いくつかの実施形態において、改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)は、1若しくは複数のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の実質的な部分を欠いている。当業者は、ウイルス構造ポリペプチドをコードする核酸配列の実質的な部分が、当業者による配列の手動評価によって、又はBLASTなどのアルゴリズムを用いたコンピュータ自動配列比較及び同定のいずれかによって、そのポリペプチドの推定同定を可能にするのに十分な、ウイルス構造ポリペプチドコード核酸配列を含むことができることを理解する。(例えば、“Basic Local Alignment Search Tool”; Altschul SF et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1993を参照のこと)従って、ヌクレオチド配列の実質的な部分は、配列を含む核酸断片の特異的同定及び/又は単離を可能にするのに十分な配列を含む。例えば、核酸配列の実質的な部分は、全長核酸配列の少なくとも約20%、例えば、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%を含み得る。上述のように、本開示は、1若しくは複数のウイルス構造タンパク質をコードする部分的又は完全な核酸配列を欠いている核酸分子及び構築物を提供する。当業者は、本明細書に開示される配列の恩恵を有し、開示された配列の全部又は実質的な部分を、本開示の組成物及び方法に容易に使用することができる。従って、本出願は、本明細書に開示される完全配列、例えば、添付の配列表に記載されるもの、並びに上記で定義したそれらの配列の実質的な部分を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)は、ウイルス構造タンパク質をコードする配列全体を欠く、例えば、改変ウイルスゲノム又はレプリコンRNAは、ウイルス未改変ゲノム又はレプリコンRNAの構造タンパク質をコードする核酸配列を含まない。
【0066】
本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA構築物)は概して、少なくとも約2kbの長さを有する。例えば、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA)は、少なくとも約2kb、少なくとも約3kb、少なくとも約4kb、少なくとも約5kb、少なくとも約6kb、少なくとも約7kb、少なくとも約8kb、少なくとも約9kb、少なくとも約10kb、少なくとも約11kb、少なくとも約12kb又は12kb超の長さを有する。いくつかの実施形態において、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA)は、約4kb~約20kb、約4kb~約18kb、約5kb~約16kb、約6kb~約14kb、約7kb~約12kb、約8kb~約16kb、約9kb~約14kb、約10kb~約18kb、約11kb~約16kb、約5kb~約18kb、約6kb~約20kb、約5kb~約10kb、約5kb~約8kb、約5kb~約7kb、約5kb~約6kb、約6kb~約12kb、約6kb~約11kb、約6kb~約10kb、約6kb~約9kb、約6kb~約8kb、約6kb~約7kb、約7kb~約11kb、約7kb~約10kb、約7kb~約9kb、約7kb~約8kb、約8kb~約11kb、約8kb~約10kb、約8kb~約9kb、約9kb~約11kb、約9kb~約10kb、又は約10kb~約11kbの長さを有する。いくつかの実施形態において、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA)は、約6kb~約14kbの長さを有する。いくつかの実施形態において、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA)は、約6kb~約16kbの長さを有する。
【0067】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物は、1若しくは複数の発現カセットを更に含む。原則として、本明細書に開示される核酸構築物は、一般に、任意の数の発現カセットを含むことができる。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される核酸構築物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は少なくとも6つの発現カセットを含むことができる。当業者は、「発現カセット」という用語が、コード配列、及びインビボ及び/又はエクスビボで、細胞内のコード配列の適切な転写及び/又は翻訳を方向付けるのに十分な制御情報を含む遺伝物質の構築物を指すことを理解する。発現カセットは、所望の宿主細胞及び/又は対象にターゲティングするためのベクターに挿入することができる。従って、いくつかの実施形態において、用語発現カセットは、用語「発現構築物」と交換可能に使用することができる。いくつかの実施形態において、「発現カセット」という用語は、例えば、プロモーター及び/又は終結シグナルなどの調節要素に作動可能に連結された、タンパク質又は機能的RNAをコードする遺伝子、及び任意選択で、遺伝子の転写又は翻訳に影響を及ぼす他の核酸配列又はそれらの組み合わせを含む、核酸構築物を指す。
【0068】
いくつかの実施形態において、発現カセットの少なくとも1つは、異種核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む。従って、本明細書で提供される核酸構築物は、例えば、異種核酸配列に作動可能に連結された調節要素(例えば、プロモーター)を含む場合、異種核酸配列の発現に影響を及ぼすことができる発現ベクターとしての用途を見出すことができる。いくつかの実施形態において、発現カセットの少なくとも1つは、異種核酸配列に作動可能に連結されたサブゲノム(sg)プロモーターを含む。いくつかの実施形態において、sgプロモーターは、26Sサブゲノムプロモーターである。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、1若しくは複数の非翻訳領域(UTR)を更に含む。いくつかの実施形態において、UTRの少なくとも1つは、異種UTRである。
【0069】
いくつかの実施形態において、発現カセットのうちの少なくとも1つは、対象の遺伝子(GOI)のコード配列を含む。いくつかの実施形態において、GOIのコード配列は、例えば、増強された安定性、効力、及び発現(例えば、翻訳効率)などの所望の特性に再設計及び/又は最適化され、そしてそれは、生物学的治療の製造、送達、及び投与の影響を次第に最大化し得る。例えば、いくつかの実施形態において、GOIのコード配列は、基準コード配列の発現レベルよりも高いレベルでの発現に最適化される。ヌクレオチド配列の配列最適化に関して、遺伝暗号の縮重は、遺伝子から産生されるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させることなく、遺伝子の配列をコードするタンパク質の少なくとも1つの塩基を異なる塩基で置換する可能性を提供する。従って、本開示の核酸構築物はまた、遺伝暗号の縮重に関連する置換によって、本明細書に開示される任意のポリヌクレオチド配列から変更された任意の塩基配列を有し得る。コドン使用頻度を記載する参考文献は、容易に公開されている。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列変異体は、様々な理由、例えば、特定の宿主についての発現を最適化するため(例えば、アルファウイルスmRNAにおけるコドン使用を、ヒト、非ヒト霊長類、ハムスター、マウス、又はサルなどの他の生物に好ましいものに変更する)のために作製され得る。従って、いくつかの実施形態において、GOIのコード配列は、例えば、発現に最適化されたコドンの使用を通じて、標的宿主細胞においてコドン最適化されていないコード配列などの基準コード配列の発現レベルより高いレベルでの発現に最適化される。いくつかの実施形態において、GOIのコドン最適化配列は、コドン最適化されていない基準コード配列と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%増強された発現レベルをもたらす。いくつかの実施形態において、GOIのコドン最適化配列は、コドン最適化されていない基準コード配列と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍又は少なくとも5倍増強された発現レベルをもたらす。
【0070】
宿主細胞発現に最適な好ましいコドンを用いてGOIをコードする合成核酸配列を構築するための技術は、当技術分野で周知の技術によって、宿主細胞ゲノムの天然タンパク質をコードするためのコドン使用頻度及びそれらの相対存在量の共通性を分析する計算方法によって決定され得る。コドン使用頻度データベース(http://www.kazusa.or.jp/codon)は、哺乳類細胞環境におけるコドン最適化配列の生成に使用することができる。更に、ある生物の配列を別の宿主生物の最適なコドン使用頻度に変換するための様々なソフトウェアツール、例えばJCatコドン最適化ツール(www.jcat.de)、統合DNAテクノロジー(IDT)コドン最適化ツール(https://www.idtdna.com/CodonOpt)、オプティマイザーオンラインコドン最適化ツール(http://genomes.urv.es/OPTIMIZER)を利用可能である。このような合成配列は、合成核酸分子の構築のために当技術分野で公知の技術によって構築され得、様々な商業ベンダーから入手してもよい。
【0071】
いくつかの実施形態において、GOIのコード配列は、増強されたRNA安定性及び/又は発現に最適化される。RNAの安定性は一般にRNAの「半減期」に関係する。「半減期」は、活性、量、又は分子数の半分を除去するのに必要な期間に関係する。本開示の文脈において、RNAの半減期は、前記RNAの安定性の指標である。RNAの半減期は、RNAの「発現期間」に影響を与える可能性がある。RNA安定性の増強に使用するための原理、戦略、及び方法に関する追加情報は、例えば、Leppek K. et al., Combinatorial optimization of mRNA structure, stability, and translation for RNA-based therapeutics. bioRxiv. (Preprint). Mar 30, 2021. doi: 10.1101/2021.03.29.437587で知ることができる。
【0072】
GOIによってコードされるポリペプチドは、一般に任意のポリペプチドであり得、例えば、治療用ポリペプチド、予防用ポリペプチド、診断用ポリペプチド、栄養補助食品ポリペプチド、工業用酵素、及びレポーターポリペプチドであり得る。いくつかの実施形態において、GOIは、抗体、抗原、免疫調節物質、酵素、シグナル伝達タンパク質、及びサイトカインから成る群から選択されるポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、GOIは、微生物タンパク質、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、哺乳類タンパク質、及び任意のその組み合わせをコードし得る。いくつかの実施形態において、GOIは、インフルエンザAウイルスH5N1のヘマグルチニン前駆体(HA)をコードする。GOIの非限定的な例としては、以下の:G-CSF、GM-CSF、IL-1、IL-10、IL-10-like、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-18BP、IL-1-like、IL-1RA、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-20、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-6-like、IL-7、IL-9、IL-21、IL-22、IL-33、IL-37、IL-38、LIF、及びOSMを含めたインターロイキン及び相互作用タンパク質が挙げられる。追加の好適なGOIとしては、これだけに限定されるものではないが、インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-β、IFN-γ)、TNF(例えば、CD154、LT-β、TNF-α、TNF-β、4-1BBL、APRIL、CD70、CD153、CD178、GITRL、LIGHT、OX40L、TALL-1、TRAIL、TWEAK、及びTRANCE)、TGF-β(例えば、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3)、ヘマトポイエチン(例えば、Epo、Tpo、Flt-3L、SCF、M-CSF、MSP)、ケモカイン及びそれらの受容体(例えば、XCL1、XCL2、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL8、CCL11、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、及びCX3CL1)、免疫抑制性遺伝子産物、並びに関連転写因子(例えば、PECAM1、FCGR3A、Fos、NFKB1、6月、HIF1A、PD-L1、mTOR、STAT5B、及びSTAT4)が挙げられる。本開示の組成物及び方法に好適な追加のGOIとしては、これだけに限定されるものではないが、免疫賦活遺伝子産物(例えば、CD27/CD70、CD40、CD40L、B7.1、BTLA、MAVS、OX40、OX40L、RIG-I、及びSTING)、遺伝子の薬物抵抗性突然変異体/バリアント、例えば、ABCB1、ABCC1、ABCG2、AKT1、Alk、BAFF、BCR-ABL、BRAF、CCND1、cMET、EGFR、ERBB2、ERBB3、ERK2、ESR1、GRB2、Kras、MDR1、MRP1、NTRK1、PDC4、P-gp、PI3K、PTEN、RET、ROS1、RSK1、RSK2、SHIP、及びSTK11など、が挙げられる。また、本開示の組成物及び方法に好適なものとしては、ウイルスタンパク質、特にスパイクタンパク質、線維タンパク質、構造タンパク質、及び付着タンパク質をコードする配列も挙げられる。
【0073】
いくつかの実施形態において、GOIは、抗体又は抗体バリアント(例えば、一本鎖Fv、二重特異的、ラクダ科動物、Fab、及びHCAb)をコードし得る。いくつかの実施形態において、抗体は、癌に関連した若しくはそれで上方制御された表面分子、又は感染性疾患に関連する表面分子を標的化する。いくつかの実施形態において、抗体は、免疫賦活機能を有するか、又は免疫抑制機能を有する表面分子を標的化する。
【0074】
いくつかの実施形態において、GOIは、その欠損又は突然変異が疾患又は健康状態に関連している酵素、例えば、アガルシダーゼβ、アガルシダーゼα、イミグルセラーゼ、タリグルセラーゼα、ベラグルセラーゼα、アルグルセラーゼ、セベリパーゼα、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、エロスルファーゼα、ガルスルファーゼ、アルグルコシダーゼα、及びCTFRなどをコードし得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、GOIは、抗原分子、生物学的治療用分子、又は任意のその組み合わせから選択されるポリペプチドをコードし得る。いくつかの実施形態において、GOIは、腫瘍関連抗原、腫瘍特異抗原、新生抗原、及び任意のその組み合わせから選択されるポリペプチドをコードし得る。いくつかの実施形態において、GOIは、エストロゲン受容体、細胞内シグナル伝達物質酵素、及びヒト表皮増殖受容体から選択されるポリペプチドをコードし得る。いくつかの実施形態において、GOIは、免疫調節薬、血管新生のモジュレーター、細胞外マトリックスのモジュレーター、代謝のモジュレーター、神経学的モジュレーター、及び任意のその組み合わせから選択される生物学的治療用ポリペプチドをコードし得る。いくつかの実施形態において、GOIは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンフォカイン、及び腫瘍壊死因子から選択されるサイトカインをコードし得る。いくつかの実施形態において、GOIは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27、IL-35、IFNγ、及び任意のそのサブユニットから選択されるインターロイキンをコードし得る。いくつかの実施形態において、GOIは、IL-12A、IL-12B、IL-1RA、及び任意のその組み合わせから選択される生物学的治療用ポリペプチドをコードし得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物は、ベクター内に組み込まれてもよい。いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、一本鎖ベクター、例えば、ssDNAベクター又はssRNAベクター、であってもよい。いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、二本鎖のベクター、例えば、dsDNAベクター又はdsRNAベクター、であり得る。いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、プラスミドであり得る。以下により詳細に記載のとおり、本開示のベクターは、組換えDNA技術、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、ローリングサークル増幅(RCA)、分子クローニングなど、又は化学合成を使用して製造され得る。従って、いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、完全合成ベクター、例えば、完全合成ssDNAベクター、であり得る。いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、完全合成dsDNAベクターであり得る。いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、PCR反応の生成物であり得る。いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、RCA反応の生成物であり得る。いくつかの実施形態において、ベクターは、遺伝子送達ベクターであり得る。いくつかの実施形態において、ベクターは、細胞内に遺伝子を移動するための遺伝子送達ビヒクルとして使用され得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物は、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する改変EEEVをコードする核酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物は、配列番号2の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する改変EEEVをコードする核酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物は、配列番号15の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する改変EEEVをコードする核酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物は、配列番号16の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する改変EEEVをコードする核酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物は、配列番号17の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する改変EEEVをコードする核酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物は、配列番号18の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する改変EEEVをコードする核酸配列を含む。
表1:配列表による配列の簡単な説明
【表1】
【0078】
目的の改変EEEVの配列に対して高度な配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%)を有する核酸配列は、それぞれのEEEVゲノムで同定された配列からの縮重プライマー又は遺伝子特異的プライマーを用いたゲノム配列分析、ハイブリダイゼーション、及び/又はPCRによって、本明細書で同定された配列(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号15、配列番号16、配列番号17、又は配列番号18)又は当該技術分野で知られているその他のものを使用することによって同定及び/又は単離され得る。
【0079】
これらの新しい核酸構築物が組み立てられ、特性決定される分子技術及び方法は、本明細書の実施例に、さらに完全に記載される。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される核酸分子は、組換え核酸分子である。先に記載されるとおり、遺伝子組換え核酸分子という用語は、ポリヌクレオチドのヒト操作に由来するか、間接的に生じる任意の核酸分子(例えば、DNA、RNAなど)を意味する。非限定的な例として、cDNAは、インビトロポリメラーゼ反応によって作られた任意の核酸分子と同様に、又はこれにリンカーが接続しているか、又はベクター(例えば、クローニングベクター又は発現ベクター)に組み込まれた、組換えDNA分子である。非限定的な例として、組換え核酸分子は、(1)例えば、化学技術又は酵素技術(例えば、化学的な核酸合成の使用によって、又は複製、重合、エキソヌクレアーゼによる消化、エンドヌクレアーゼによる消化、ライゲーション、逆転写、転写、塩基改変(例えば、メチル化を含む)、又は核酸分子の組換え(相同組換え及び部位特異的な組換えを含む)を用い、インビトロで合成されるか、又は改変され、(2)天然では結合していないヌクレオチド配列の結合を含み、(3)天然に存在するヌクレオチド配列について1つ又は複数のヌクレオチドを欠くような分子クローニング技術を用いて操作され、及び/又は(4)天然に存在するヌクレオチド配列について1つ又は複数の配列の変化又は再編成を有するような分子クローニング技術を用いて操作されている。
【0081】
好ましくは、本明細書に開示される核酸分子は、組換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニングなど)又は化学合成を用いて作られる。本明細書に開示される核酸分子は、天然の核酸分子及びその相同体を含み、天然の核酸分子及びその相同体としては、限定されないが、天然の対立遺伝子変異体、このような改変によって本明細書に記載するような生物学的活性を達成する際に望ましい特性を与えるような様式で1つ又は複数のヌクレオチド残基が挿入され、欠失し、及び/又は置換された改変核酸分子が挙げられる。
【0082】
核酸分子は、天然に存在する核酸配列の変異体を含め、当業者に公知の多くの方法を用いて製造することができる(例えば、Sambrook et al., In: Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)を参照のこと)。核酸分子の配列は、天然に存在する配列に対して、改変することができ、天然に存在する配列から、限定されないが、伝統的な突然変異誘発技術及び組換えDNA技術を含む種々の技術(例えば、限定されないが、部位特異的突然変異誘発、変異を誘発するための核酸分子の化学処理、核酸フラグメントの制限酵素による開裂、核酸フラグメントのライゲーション、核酸配列の選択した領域のPCR増幅及び/又は突然変異誘発、組換えクローニング、オリゴヌクレオチド混合物の化学合成及び核酸分子の混合物を「構築する」ための混合物群のライゲーションを含む化学合成、及びこれらの組み合わせ)を用いて誘導される。核酸分子相同体は、改変核酸分子の混合物から、その核酸分子によってコードされるタンパク質又はレプリコン(例えば、srRNA)の機能についてスクリーニングすることによって、及び/又は野生型遺伝子又はそのフラグメントとのハイブリダイゼーションによって、又は標的又は野生型の核酸分子又は配列に対して相同性を有するプライマーを用いたPCRによって、選択することができる。
B.組換え細胞
【0083】
以下により詳細に記載されるとおり、本開示の一態様は、本明細書に記載の核酸構築物を包含する、及び/又は本明細書中に記載した核酸構築物を包含する(例えば、発現する)ように遺伝子操作された組換え細胞に関する。いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA)は、宿主細胞内に導入されることができて、核酸構築物及び/又はsrRNA構築物を含有する組換え細胞を生じさせる。例えば、本開示の核酸構築物を宿主細胞に導入して、該核酸分子を含有する組換え細胞を産生することができる。従って、本明細書に記載の改変EEEVゲノムをコードする核酸構築物を含有する原核細胞又は真核細胞もまた、本開示の特徴である。関連する態様において、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、本明細書で提供される核酸構築物を動物細胞などの宿主細胞に導入することを含む、細胞を形質転換する方法、次いで形質転換細胞を選択又はスクリーニングする方法に関連する。本開示の核酸構築物の細胞への導入は、当業者に公知の方法、例えば、ウイルス感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、パーティクルガン技術、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸送達などによって達成することができる。
【0084】
一態様において、本開示のいくつかの実施形態は、組換え細胞、例えば、本明細書に開示される核酸構築物を含む遺伝子組換え真核細胞、例えば動物細胞に関する。核酸構築物は、宿主ゲノムに安定に組み込まれることができ、エピソーム複製されることができ、若しくは安定な又は一過性の発現のためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞内に存在する。従って、本開示のいくつかの実施形態において、核酸構築物は、エピソーム単位として組換え宿主細胞において維持及び複製される。いくつかの実施形態において、核酸構築物は、組換え細胞のゲノムに安定に組み込まれる。安定した組み込みは、古典的なランダムゲノム組換え技術、又はより正確なゲノム編集技術、例えば、ガイドRNA指向CRISPR/Cas9又はTALENゲノム編集の使用によって完了することができる。いくつかの実施形態において、核酸構築物は、安定な又は一過性の発現のためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞中に存在する。
【0085】
宿主細胞は、非形質転換細胞、又は少なくとも1つの核酸分子で既に形質移入された細胞のいずれかであり得る。従って、いくつかの実施形態において、宿主細胞は、少なくとも1つの核酸分子で遺伝子を組換えられ得る(例えば、形質導入されるか、形質転換されるか、又は形質移入され得る)。
【0086】
本明細書に記載した目的のタンパク質のクローニング又は発現のための好適な宿主細胞としては、本明細書に記載した原核又は真核細胞が挙げられる。従って、いくつかの実施形態において、組換え細胞は、細菌大腸菌などの原核細胞、又は昆虫細胞(例えば、蚊細胞又はSf21細胞)、若しくは哺乳動物細胞(例えば、COS細胞、NIH 3T3細胞、又はHeLa細胞)などの真核細胞である。いくつかの実施形態において、細胞はインビボである。いくつかの実施形態において、細胞はエクスビボであり、例えば、治療又は手順のための生体又は生物体からの個別細胞として、又は臓器若しくは組織の一部として抽出される、そしてその後、生体又は生物体に戻される。いくつかの実施形態において、細胞はインビトロであり、例えば、リポジトリから得られる。いくつかの実施形態において、組換え細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態において、組換え細胞は動物細胞である。いくつかの実施形態において、動物細胞は、脊椎動物細胞又は無脊椎動物細胞である。いくつかの実施形態において、組換え細胞は、哺乳動物細胞である。グリコシル化タンパク質の発現のための好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎及び脊椎動物)から得ることができる。脊椎動物細胞の例としては、昆虫細胞が挙げられる。
【0087】
脊椎動物細胞はまた、宿主としても使用できる。この点において、懸濁液中での成長に適合させた哺乳動物細胞株は、有用であり得る。いくつかの実施形態において、組換え細胞は動物細胞である。いくつかの実施形態において、動物細胞は、脊椎動物細胞又は無脊椎動物細胞である。いくつかの実施形態において、組換え細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、動物細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態において、動物細胞は、ヒト以外の動物細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は、ヒト以外の霊長類細胞である。有用な哺乳類宿主細胞株の更なる例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1細胞(COS-7)、ヒト胚性腎細胞(例えば、HEK 293又はHEK 293細胞)、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4細胞)、サル腎細胞(CV1)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa)、イヌ腎細胞(MDCK)、バッファローラット肝細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562)、TRI細胞、FS4細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、アフリカミドリザル腎細胞(Vero細胞)、ヒトA549細胞、ヒト子宮頸部細胞、 ヒトCHME5細胞、ヒトPER.C6細胞、NS0マウスミエローマ細胞であり、ヒト表皮喉頭細胞、ヒト線維芽細胞、ヒトHUH-7細胞、ヒトMRC-5細胞、ヒト筋細胞、ヒトリンパ管内皮細胞、ヒトアストロサイト細胞、ヒトマクロファージ細胞、ヒトRAW264.7細胞、マウス3T3細胞、マウスL929細胞、マウス結合組織細胞、マウス筋細胞、ウサギ腎細胞から成る群から選択される。
【0088】
いくつかの実施形態において、組換え細胞は、アフリカミドリザル腎細胞(Vero細胞)、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、ヒトA549細胞、ヒト子宮頸部細胞、 ヒトCHME5細胞、ヒト表皮喉頭細胞、ヒト線維芽細胞、ヒトHEK 293細胞、ヒトHeLa細胞、ヒトHep G2細胞、ヒトHUH-7細胞、ヒトMRC-5細胞、ヒト筋細胞、マウス3T3細胞、マウス結合組織細胞、マウス筋細胞、ウサギ腎細胞から成る群から選択される。
【0089】
いくつかの実施形態において、組換え細胞は、昆虫細胞、例えば、昆虫細胞株の細胞である。いくつかの実施形態において、組換え細胞は、Sf21細胞である。更なる好適な昆虫細胞株としては、非限定的に、昆虫目双翅目、鱗翅目及び半翅目から確立された細胞株が挙げられ、異なる組織源から誘導することができる。いくつかの実施形態において、組換え細胞は、鱗翅目昆虫細胞株の細胞である。過去数十年で、鱗翅目の昆虫細胞株の利用可能性は10年あたり約50株で増加した。利用可能な鱗翅目昆虫細胞株に関するより多くの情報は、例えば、Lynn D.E., Available lepidopteran insect cell lines. Methods Mol Biol. 2007; 388:117-38で知ることができ、参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態において、組換え細胞は、蚊細胞、例えば、ハマダラカ属(An)、アカイエカ属(Cx.)、及びネッタイシマカ(Stegomyia)属内の蚊種の細胞である。本明細書に記載の組成物及び方法に適した例示的な蚊細胞株には、以下の蚊種由来の細胞株が含まれる: Aedes aegypti、Aedes albopictus、Aedes pseudoscutellaris、Aedes triseriatus、Aedes vexans、Anopheles gambiae、Anopheles stephensi、Anopheles albimanus、Culex quinquefasciatus、Culex theileri、Culex tritaeniorhynchus、Culex bitaeniorhynchus、及びToxorhynchites amboinensis。好適な蚊細胞株としては、非限定的に、CCL-125、Aag-2、RML-12、C6/26、C6/36、C7-10、AP-61、A.t. GRIP-1、A.t. GRIP-2、UM-AVE1、Mos.55、Sua1B、4A-3B、Mos.43、MSQ43、及びLSB-AA695BBが挙げられる。いくつかの実施形態において、蚊細胞は、C6/26細胞株の細胞である。
【0090】
別の態様において、本明細書に開示される少なくとも1つの組換え細胞を含む細胞培養物、及び培養培地が、本明細書において提供される。一般に、培養培地は、本明細書に記載の細胞を培養するための任意の好適な培養培地であり得る。多種多様な上記の宿主細胞及び種を形質転換するための技術は、当該技術分野において公知であり、技術文献及び科学文献に記載されている。従って、本明細書に開示される少なくとも1つの組換え細胞を含む細胞培養物も、本出願の範囲内にある。細胞培養物を生成及び維持するのに適した方法及びシステムは、当該技術分野において公知である。
C.トランスジェニック動物
【0091】
また、別の態様において、本明細書に記載の核酸構築物を含むトランスジェニック動物が提供される。いくつかの実施形態において、トランスジェニック動物は、脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施形態において、トランスジェニック動物は昆虫である。いくつかの実施形態において、昆虫は蚊である。いくつかの実施形態において、トランスジェニック動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、トランスジェニック哺乳動物は、非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態において、トランスジェニック動物は、本明細書に記載の目的のタンパク質を産生する。
【0092】
本開示のトランスジェニック非ヒト宿主動物は、外因性核酸を非ヒト動物のゲノムに導入するための当技術分野で公知の標準的な方法を用いて調製される。いくつかの実施形態において、本開示の非ヒト動物は、非ヒト霊長類である。本開示の組成物及び方法に適した他の動物種には、(i)遺伝子組換えに適し、かつ(ii)抗体応答を生じるために免疫グロブリン遺伝子セグメントを再配列することができる動物が挙げられる。このような種の例としては、非限定的に、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ニワトリ、ヤギ、ブタ、ヒツジ及びウシが挙げられる。トランスジェニック非ヒト動物を調製するためのアプローチ及び方法は、当該技術分野において公知である。例示的な方法としては、前核マイクロインジェクション、DNAマイクロインジェクション、初期胚へのレンチウイルスベクター媒介DNA導入及び精子媒介導入、動物の精子(例えばブタ)へのアデノウイルス媒介DNAの導入、レトロウイルスベクター(例えば、鳥類種)、体細胞核移植(例えば、ヤギ内)が挙げられる。トランスジェニック家畜の調製における最先端技術は、Niemann, H. et al. (2005) Rev. Sci. Tech. 24:285-298でレビューされている。
【0093】
いくつかの実施形態において、動物は、脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施形態において、動物は昆虫である。いくつかの実施形態において、昆虫は蚊である。いくつかの実施形態において、動物は哺乳動物対象である。いくつかの実施形態において、哺乳動物は非ヒト動物である。いくつかの実施形態において、哺乳動物は非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態において、本開示のトランスジェニック動物は、古典的なランダムゲノム組換え技術を用いて、又はより正確な技術、例えば、ガイドRNA指向のCRISPR/Casゲノム編集、NgAgo(ナトロノバクテリウム・グレゴリ・アルゴノート)によるDNAガイドエンドヌクレアーゼゲノム編集、TALENsゲノム編集(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)などを用いて作製することができる。いくつかの実施形態において、本開示のトランスジェニック動物は、トランスジェニックマイクロインジェクション技術を用いて作製することができ、相同組換え技術の使用を必要としないため、相同組換えを用いるアプローチよりも調製及び選択が容易であると考えられる。別の態様において、目的のポリペプチドを製造する方法が、本明細書で提供され、ここで、該方法は、(i)本明細書に開示されるトランスジェニック動物を飼育すること;(ii)トランスジェニック動物又は組換え細胞がGOIによってコードされるポリペプチドを産生する条件下で、本明細書に開示される核酸構築物を含む組換え細胞を培養することを含む。
【0094】
別の態様において、対象において目的のポリペプチドを製造する方法が、本明細書で提供され、ここで、該方法は、本明細書に開示される核酸構築物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象は脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施形態において、対象は昆虫である。いくつかの実施形態において、昆虫は蚊である。いくつかの実施形態において、対象は哺乳動物対象である。いくつかの実施形態において、哺乳動物対象は、ヒト対象である。従って、本明細書に開示される方法によって産生される組換えポリペプチドもまた、本開示の範囲内にある。
【0095】
組換えポリペプチドを産生するための開示された方法の非限定な例示的実施形態は、以下の特徴のうちの1若しくは複数を含み得る。いくつかの実施形態において、本開示の組換えポリペプチドを製造する方法は、産生されたポリペプチドを単離及び/又は精製することを更に含む。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドを製造する方法は、半減期を増加させるように産生されたポリペプチドを構造的に改変することを更に含む。いくつかの実施形態において、製造されるポリペプチドのN末端は、半減期を増加させるように更に化学的に又は酵素的に修飾され得る。いくつかの実施形態において、製造されるポリペプチドのC末端は、半減期を増加させるために化学的に又は酵素的に修飾される。本明細書に記載した方法に好適な化学的及び酵素的修飾の非限定的な例としては、PEG化、XTEN化、PASylation(登録商標)、ELP化、及びHAP化が挙げられる。これらの修飾に好適な技術、システム、及び試薬は、当該技術分野で知られている。従って、いくつかの実施形態において、本明細書に記載した方法で製造されるポリペプチドは、半減期を増加させるようにPEG化、XTEN化、PAS化、ELP化、及び/又はHAP化され得る。いくつかの実施形態において、製造されるポリペプチドは、半減期を増加させるように別のタンパク質又はペプチド(例えば、血清アルブミン、抗体Fcドメイン、トランスフェリン、GLK、又はCTPペプチド)に結合される。
D.医薬組成物
【0096】
本開示の核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチドは、組成物(医薬組成物を含む)に組み込むことができる。このような組成物は、一般に、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、本明細書に記載及び提供される組換えポリペプチド、及び薬学的に許容される賦形剤、例えば担体のうちの1若しくは複数を含む。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、免疫疾患又は微生物感染症(例えば、ウイルス感染、微小真菌感染、又は細菌感染)などの健康状態の予防、治療、又は管理のために処方される。例えば、本開示の組成物は、予防用組成物、治療用組成物、又は薬学的に許容される賦形剤若しくはそれらの混合物を含む医薬組成物として製剤化することができる。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、ワクチンとして使用するために製剤化される。いくつかの実施形態において、本出願の組成物は、アジュバントとして使用するために製剤化される。
【0097】
従って、一態様において、薬学的に許容される賦形剤及び:a)本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子);b)本開示の組換え細胞;及び/又はc)本開示の組換えポリペプチドを含む医薬組成物が、本明細書で提供される。
【0098】
本開示の医薬組成物の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴のうちの1若しくは複数を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)及び薬学的に許容される賦形剤を含む組成物が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組換え細胞及び薬学的に許容される賦形剤を含む組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に開示される組換えポリペプチド及び薬学的に許容される賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)は、むき出しの形態で使用され得るか、又は送達ビヒクルを用いて処方され得る。本開示の組成物及び方法に好適な例示的な送達ビヒクルとしては、これだけに限定されるものではないが、リポソーム(例えば、中性又はアニオン系リポソーム)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOMS)、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、固体脂質ナノ粒子(SLN)、ポリプレックス、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)が挙げられるか、又は(送達を容易にする、及び/又はその免疫応答を高める)生物活性リガンドと結合される。これらの化合物は、当業者にとって容易に入手可能である;例えば、Liposomes: A Practical Approach, RCP New Ed, IRL press (1990)を参照のこと。リポソームなど以外のアジュバントもまた使用され、当該技術分野で知られている。アジュバントは、抗原(例えば、核酸構築物、ベクター、srRNA分子)が限局性沈着によるその隔離によって急激に分散することから保護し得るか、又はそれらは、宿主がマクロファージや他の免疫系成分に対して走化作用がある因子を分泌するように刺激する物質を含んでもよい。適切な選択は、例えば、以下で記載したものから当業者によって成され得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、次の:生理学的バッファー、リポソーム、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、固体脂質ナノ粒子(SLN)、ポリプレックス、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOM)、生物活性リガンドのコンジュゲート、又は任意のその組み合わせ、のうちの1若しくは複数を包含する。
【0100】
本開示の組成物は、リポソーム、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、又はポリマーナノ粒子などのその意図された投与経路に適合できるような形式で処方され得る。従って、いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、リポソーム中に製剤化された。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、脂質ベースのナノ粒子(LNP)中に製剤化された。LNPは概して、ウイルス粒子より免疫原性でない。多くのヒトがウイルス粒子に対して既存の免疫を有するが、LNPに対して既存の免疫を有していない。加えて、LNPに対する適応免疫反応が起こる可能性は低く、LNPの反復投薬を可能にする。
【0101】
本明細書に記載した組成物及び方法に好適な脂質は、カチオン性脂質、イオン化カチオン性脂質、アニオン性脂質、又は中性脂質であり得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、本開示のLNPは、1若しくは複数のイオン化脂質を含み得る。本明細書で使用される場合、「イオン化脂質」という用語は、カチオン性であるか、又はpHが脂質のイオン化基のpKaより低く下がった場合にイオン化(プロトン化)するが、より高いpH値においてより中性である脂質を指す。pKaより低いpH値にて、その時、脂質は、陰性荷電核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)と結合することができる。本明細書で使用される場合、「イオン化脂質」という用語は、生理的pHからのpH低下により陽電荷が仮定される脂質、並びに生理的pHなどの選択されたpHにて正味の正電荷を担持するあらゆる多くの脂質種を含む。DOTMAなどの恒久的なカチオン性脂質は、臨床使用において毒性が高過ぎると判明した。イオン化脂質は、好ましくは他の実施形態において、約30~約70MoL%、他の実施形態において、約30MoL%、他の実施形態において、約40MoL%、他の実施形態において、約45MoL%、他の実施形態において、約47.5MoL%、より他の実施形態において、約50MoL%、更に他において、60 MoL%の比で、他の実施形態により脂質製剤で存在する(「mol%」は特定の成分のものである総moleのパーセンテージを意味する)。この段落の「約」という用語は、5MoL%のプラス又はマイナス範囲を意味する。DODMA、又は1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパンは、DLin-MC3-DMA又は0-(Z,Z,Z,Z-ヘプタトリアコンタ-6,9,26,29-テトラエン-19-イル)-4-(N,N-ジメチルアミノ)(「MC3」)のようなイオン化脂質である。
【0103】
本開示の組成物及び方法に好適な例示的なイオン化脂質としては、PCT公開公報WO2020252589A1及びWO2021000041A1、米国特許第8,450,298号及び同第10,844,028号、並びにLove K.T. et al., Proc Natl Acad Sci USA, Feb. 2, 2010 107 (5) 1864-1869に記載のものが挙げられ、そしてその全体を参照により本明細書に援用する。従って、いくつかの実施形態において、本開示のLNPとしては、C16-96、C14-110、及びC12-200などのLove K.T. et al.(2010年、前掲)に記載の1若しくは複数の脂質化合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、LNPとしては、ALC-0315、C12-200、LN16、MC3、MD1、SM-102、及び任意のその組み合わせから成る群から選択されるイオン化カチオン性脂質が挙げられる。いくつかの実施形態において、本開示のLNPとしては、C12-200脂質が挙げられる。C12-200脂質の構造は、当該技術分野で知られており、かつ、例えば、米国特許第8,450,298号及び同第10,844,028号に記載されており、そしてそれを全体として参照により本明細書に援用する。いくつかの実施形態において、C12-200は、コレステロール、C14- PEG2000、及びDOPEと組み合わせられる。いくつかの実施形態において、C12-200は、DSPC及びDMG-PEG2000と組み合わせられる。
【0104】
いくつかの実施形態において、本開示のLNPは、1若しくは複数のカチオン性脂質を包含する。いくつかの異なるイオン化カチオン性脂質は、LNPにおける使用のために開発された。好適なカチオン性脂質としては、これだけに限定されるものではないが、98N12-5、C12-200、C14- PEG2000、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、及び7C1が挙げられる。LNPの1つのタイプにおいて、GalNAc部分は、LNPの外部に取り付けられ、アシアロ糖タンパク質受容体を介した肝臓内への取り込みのためのリガンドとして機能する。これらのカチオン性脂質のいずれも、本開示のsrRNA構築物と核酸構築物の送達のためのLNPを処方するのに使用できる。
【0105】
いくつかの実施形態において、本開示のLNPは、1若しくは複数の中性脂質を包含する。本開示の組成物と方法に好適な非限定的な中性脂質としては、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMが挙げられる。いくつかの実施形態において、本開示のLNPは、PCT公開公報WO2020252589A1及びWO2021000041A1に記載の1若しくは複数のイオン化脂質化合物を包含する。
【0106】
多くの、当該技術分野で知られている他の脂質又は脂質の組み合わせは、LNPを製造するのに使用できる。LNPを製造するために使用するのに好適な脂質の非限定的な例としては、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、及びGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。カチオン性脂質の更なる非限定的な例としては、98N12-5、C12-200、C14- PEG2000、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、7C1、及び任意のその組み合わせが挙げられる。中性脂質の更なる非限定的な例としては、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMが挙げられる。PEG修飾脂質の非限定的な例としては、PEG-DMG、PEG-CerC14、及びPEG-CerC20が挙げられる。
【0107】
いくつかの実施形態において、LNP送達系における脂質対核酸の質量比は、約100:1~約3:1、約70:1~約10:1、又は16:1~4:1である。いくつかの実施形態において、LNP送達系における脂質対核酸の質量比は、約16:1~4:1である。いくつかの実施形態において、LNP送達系における脂質対核酸の質量比は、約20:1である。いくつかの実施形態において、LNP送達系における脂質対核酸の質量比は、約8:1である。いくつかの実施形態において、脂質ベースのナノ粒子は、約1000nm、約500nm、約250nm、約200nm、約150nm、約100nm、約75nm、約50nm、又は約25nm未満の平均直径を有する。いくつかの実施形態において、LNPは、約70nm~100nmの範囲に及ぶ平均直径を有する。いくつかの実施形態において、LNPは、約88nm~約92nm、82nm~約86nm、又は約80nm~約95nmの範囲に及び平均直径を有する。
【0108】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、ポリマーナノ粒子中に製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物は、免疫原性組成物、例えば、対象における免疫応答を刺激することができる組成物である。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、ワクチンとして製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、アジュバントとして製剤化される。いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、生物学的治療用、例えば、生理活性を有する異なる分子の遺伝子送達のためのビヒクル、として製剤化される。生物学的治療用の非限定的な例としては、サイトカイン、ケモカイン、及び他の可溶性免疫調節薬、酵素、ペプチド及びタンパク質作動薬、ペプチド及びタンパク質拮抗薬、ホルモン、受容体、抗体及び抗体誘導体、成長因子、転写因子、並びに遺伝子サイレンシング/編集分子が挙げられる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、アジュバントとして製剤化される。
【0109】
いくつかの実施形態において、免疫原性組成物は、実質的に非免疫原性であるか、又は最小限の免疫原性である、例えば、対象における免疫応答を最小的に刺激する組成物である。いくつかの実施形態において、非免疫原性又は最小免疫原性組成物は、バイオ治療薬として製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、鼻腔内投与、経皮投与、腹腔内投与、筋肉内投与、節内投与、腫瘍内投与、関節内投与、静脈内投与、皮下投与、膣内投与、及び経口投与のうちの1若しくは複数のために処方される。
【0110】
注射用に適した医薬組成物には、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与の場合、適切な担体としては、生理食塩水、静菌水、クレモフォールEL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。これらの場合、組成物は無菌であるべきであり、注射性が容易である程度に流動的であるべきである。組成物は、製造及び保管の条件下で安定であり、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散溶媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合に必要な粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムの使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張化剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトール、及び/又は塩化ナトリウムなどのポリアルコールを組成物に含めるのが一般的である。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0111】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて上記に列挙した成分の1種又は組合せと共に必要量の活性化合物を適切な溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散溶媒及び上記に列挙したものから必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。
【0112】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、例えば、エアゾール、スプレー、ミスト、液体、又は粉末などの吸入向けに製剤化される。吸入による投与は、乾燥粉末又はエアゾール製剤のいずれの形態であってもよく、そしてそれは、いずれかの対象(例えば、患者)によって、吸入デバイス、例えば、マイクロスプレー、加圧式定量吸入器、又はネブライザ、の使用により吸入される。
【0113】
いくつかの実施形態において、組成物は、鼻腔内投与、経皮投与、筋肉内投与、節内投与、静脈内投与、腹腔内投与、経口投与、膣内、又は頭蓋内投与のうちの1若しくは複数のために製剤化される。いくつかの実施形態では、投与された組成物は、対象におけるインターフェロンの産生増加をもたらす。
本開示の方法
【0114】
本明細書に記載の治療用組成物、例えば、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のいずれか1つの投与は、増殖性障害(例えば、癌)、感染症(例えば、急性感染症、慢性感染症、若しくはウイルス感染症)、希少疾患、及び/又は自己免疫疾患、及び/又は炎症性疾患などの関連する健康状態の治療に使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、対象において薬力学的効果を誘導するのに有用であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、それを必要としている対象の免疫応答を調節、例えば、惹起又は抑制するのに有効であり得る。
【0115】
薬力学的効果を与えるそれらの能力に関する本明細書に記載した組成物の分析は、インビボ及び/又はエクスビボにおいて実施され得る。分析できる薬力学的効果の例としては:免疫原性効果(例えば、インビボにおける免疫応答の誘発)、バイオマーカー応答、治療効果、予防効果、所望の効果、望ましくない効果、有害影響、及び病態モデルにおける効果、が挙げられる。いくつかの実施形態において、薬力学的効果の評価は、インビボにおける免疫応答の誘導を評価することを包含する(例えば、実施例1~4を参照のこと)。いくつかの実施形態において、薬力学的効果の評価としては、免疫応答を増強できる、並びに血管新生及び転移を予防する、サイトカイン経路の誘導を評価することを包含する(例えば、実施例1~4を参照のこと)。
【0116】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、1若しくは複数の関連する健康状態を発症する高い危険性を有する、有する疑いのある、又は発症する危険性が高い可能性のある対象を治療する方法において使用するための治療薬に組み込まれ得る。例示的な健康状態又は疾患としては、非限定的に、癌、免疫疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、遺伝子治療、遺伝子置換、心血管疾患、加齢に伴う病状、希少疾患、急性感染症、及び慢性感染症を含み得る。いくつかの実施形態において、該対象は、医師のケアを受けている患者である。
【0117】
本開示の方法に好適な自己免疫疾患の例としては、これだけに限定されるものではないが、関節リウマチ、骨関節炎、スチル病、家族性地中海熱、全身性硬化症、多発性硬化症、強直性脊椎炎、橋本甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、糖尿病性網膜症、糖尿病性血管障害、糖尿病性神経痛、インシュリン炎、乾癬、円形脱毛症、温式及び冷式自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血、急性炎症性疾患、自己免疫性副腎炎、慢性炎症性脱髄性多発神経症(CIDP)、ランバート-イートン症候群、苔癬硬化症、ライム病、グラーブ病、ベーチェット病、メニエール病、反応性関節炎(ライター症候群)、チャーグ-ストラウス症候群、コーガン症候群、クレスト症候群、尋常性天疱瘡及び落葉状天疱瘡、類天疱瘡、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、膵炎、腹膜炎、乾癬性関節炎、リウマチ熱、サルコイドーシス、Sjorgensen症候群、硬皮症、小児脂肪便症、スティフマン症候群、高安動脈炎、一過性グルテン不耐症、自己免疫性ブドウ膜炎、白斑多発性軟骨炎、疱疹状皮膚炎(DH)又はデューリング病、繊維筋痛、グッドパスチャー症候群、ギラン-バレー症候群、橋本甲状腺炎、自己免疫性肝炎、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性結腸炎、重症筋無力症、免疫複合体障害、糸球体腎炎、結節性多発動脈炎、抗リン脂質症候群、多腺性自己免疫性症候群、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、蕁麻疹、自己免疫性不妊症、若年性慢性関節リウマチ、サルコイドーシス、及び自己免疫性心筋障害が挙げられる。
【0118】
本開示の方法に好適な感染症の非限定的な例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、エプスタイン-バールウイルス(EBV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群(MERS)、インフルエンザウイルス、及びエボラウイルスなどのウイルス感染症が挙げられる。本開示の方法に好適な更なる感染症としては、リーシュマニア属、リケッチア属、クラミジア属、コクシェラ属、マラリア原虫、ブルセラ属、マイコバクテリア、リステリア属、トキソプラズマ属及びトリパノソーマ属などの細胞内奇生体による感染症が挙げられる。
【0119】
いくつかの実施形態において、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、例えば、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、腎臓炎、腹膜炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、スチル病、家族性地中海熱、汎発性強皮症及び硬化症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性肺損傷、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、多発性骨髄腫、糸球体腎炎、腎臓炎、喘息、アテローム性動脈硬化、白血球接着不全、多発性硬化症、レイノー症候群、シェーグレン症候群、若年型糖尿病、ライター病、ベーチェット病、免疫複合体腎炎、IgAネフロパシー、IgM多発性神経障害、免疫性血小板減少、溶血性貧血、重症筋無力症、ループス腎炎、エリテマトーデス、関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎、天疱瘡、グレーブス病、橋本甲状腺炎、小血管脈管炎、オーメン症候群、慢性腎不全、自己免疫性甲状腺疾患、急性伝染性腺熱、HIV、ヘルペスウイルス関連疾患、ヒトウイルス感染症、コロナウイルス、他のエンテロウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス又はアデノウイルス感染症、細菌性肺炎、外傷、敗血症、脳卒中/脳水腫、虚血再潅流傷害、並びにC型肝炎などの免疫疾患、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の治療及び/又は予防において有効であり得る。
【0120】
本開示の方法に好適な炎症性疾患の非限定的な例としては、例えば、喘息、炎症性腸疾患(IBD)、慢性大腸炎、脾腫、及び関節リウマチなどの炎症性疾患が挙げられる。
【0121】
従って、一態様において、免疫応答の調節(例えば、誘発)を必要としている対象において免疫応答を誘発する方法が、本明細書で提供され、該方法は、a)本開示の核酸構築物;b)本開示の組換え細胞;c)本開示の組換えポリペプチド;及び/又はd)本開示の医薬組成物、を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0122】
別の態様において、予防及び/又は治療を必要としている対象の健康状態を予防及び/又は治療する方法が、本明細書で提供され、この方法は、a)本開示の核酸構築物;b)本開示の組換え細胞;c)本開示の組換えポリペプチド;及び/又はd)本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物、を含む組成物を予防的又は治療的に対象に投与することを含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、健康状態は、増殖性障害又は微生物感染症(例えば、細菌感染症、微小真菌感染症、又はウイルス感染症)である。いくつかの実施形態において、対象は、増殖性障害又は微生物感染症(例えば、細菌感染症、微小真菌感染症、又はウイルス感染症)に関連する健康状態を有する又はその疑いがある。
【0124】
いくつかの実施形態において、健康状態は、希少疾患、例えば、The Orphan Drug Act (www.fda.gov/ patients/rare-diseases-fda)によって定義される、米国で200,000人未満にしか影響を及ぼしていない疾患又は状態、並びに/或いは炎症性及び/又は自己免疫疾患である。いくつかの実施形態において、対象は、炎症性及び/又は自己免疫疾患、並びに/或いは希少疾患(例えば、これだけに限定されるものではないが、家族性地中海熱又は成人発症スチル病を含む)に関連する状態を有する、或いはそれを有することが疑われる。
【0125】
いくつかの実施形態において、開示された組成物は、その意図された投与経路に適合するように製剤化される。例えば、本開示の核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、経口又は吸入によって与えることができるが、それらは非経口経路を介して投与される可能性が高い。非経口投与経路の例としては、例えば、静脈内投与、節内投与、皮内投与、皮下投与、経皮経皮投与(局所投与)、経粘膜投与、膣内投与、及び直腸内投与が挙げられる。非経口適用に使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分を含み得る:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又はその他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などのバッファー;及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張度調整剤。pHは、一塩基性及び/又は二塩基性リン酸ナトリウム、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調整され得る(例えば、約7.2~7.8のpH、例えば、7.5)。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器、又はガラスやプラスチック製の複数回投与バイアルに封入され得る。
【0126】
このような本開示の対象核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物の投与量、毒性並びに治療有効性は、細胞培養物又は実験動物における、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するための標準的な薬学的手順によって決定され得る。毒性効果と治療効果の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比率として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が一般的に適している。毒性の副作用を示す化合物を使用してもよい一方で、感染していない細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、副作用を減らすために、当該化合物を患部組織の部位に標的化する送達システムを設計するように注意する必要がある。
【0127】
例えば、細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための投与量の範囲を処方する際に使用され得る。当該化合物の投与量は、一般に、毒性がほとんど又は全くないED50を含む循環濃度の範囲内である。投与量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。本開示の方法において使用される任意の化合物について、治療有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定され得る。用量は、細胞培養において決定されるIC50(例えば、症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて処方し得る。斯かる情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定し得る。
【0128】
本明細書に記載の治療用組成物、例えば、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、1日に1回以上~1週間に1回以上(一日おきに一回を含む)投与することができる。当業者は、疾患の重篤度、以前の治療、対象の一般的な健康状態及び/又は年齢、並びに存在するその他の疾患を非限定的に含む、特定の要因が、対象を効果的に治療するために必要な投与量及びタイミングに影響を及ぼし得ることを理解する。更に、本開示の治療有効量の被験体の多価ポリペプチド及び多価抗体による被験体の治療は、単一の治療を含むことができ、又は、一連の治療を含むことができる。いくつかの実施形態において、組成物は、5日間、8時間毎に投与され、続いて2~14日の休息期間、例えば、9日間、続いて、更に5日間、8時間毎の投与が続く。核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)及び組換えポリペプチドに関して、本開示の核酸構築物又は組換えポリペプチドの治療有効量(例えば、有効投与量)は、選択される核酸構築物又は組換えポリペプチドに依存する。例えば、患者体重の約0.001~0.1mg/kgの範囲の単回投与量を投与することができる。いくつかの実施形態において、約0.005、0.01、0.05mg/kgを投与し得る。いくつかの実施形態において、患者体重の約0.03μg~300μg/kgの範囲の単回投与量を投与することができる。いくつかの実施形態において、患者体重の約0.3mg~3mg/kgの範囲の単回投与量を投与することができる。
【0129】
前述のとおり、治療有効量は、健康状態、例えば疾患又は感染症を有する者、有する疑いがある者、又は危険性がある者などを対象に投与した場合に、特定の効果を促進するのに十分である治療用組成物の量を含む。いくつかの実施形態において、有効量は、疾患又は感染症の症状の発症を予防若しくは遅延させる、疾患又は感染症の症状の経過を変化させる(例えば、非限定的に、疾患又は感染症の症状の進行を遅らせる)、又は疾患又は感染症の症状を逆転させるのに十分な量を含む。任意の所与の事例について、適切な有効量は、ルーチンの実験を用いて当業者によって決定され得ることが理解される。
【0130】
疾患又は感染症の治療のための、開示された治療用組成物を含む治療の有効性は、熟練の臨床医によって決定され得る。しかしながら、疾患又は感染症の徴候又は症状の少なくともいずれか1つ又はすべてが改善又は改良される場合には、治療は効果的な治療とみなされる。有効性は、入院又は医学的介入の必要性によって評価されるように、個体の悪化の減退によっても測定できる(例えば、疾患又は感染症の進行が停止するか、少なくとも遅くなる)。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知であり、及び/又は本明細書に記載される。治療は、対象又は動物(いくつかの非限定的な例は、ヒト又は哺乳動物を含む)における疾患又は感染症の任意の治療を含み、(1)疾患又は感染症を阻害すること、例えば、症状の進行を停止又は遅らせること;若しくは(2)疾患又は感染症を緩和すること、例えば、症状の退行を引き起こすこと;及び(3)症状が発症する可能性を予防又は低減すること、を含む。
【0131】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、薬学的に許容される担体を有する組成物中で、及び免疫応答を刺激するのに有効な量で、対象に投与され得る。一般に、対象は、最初の一連の注射(又は以下に説明される他の経路の1つを介した投与)によって免疫され、その後、元の一連の投与によって提供される保護を高めるためにブースターを与えられる。最初の一連の注射及びその後のブースターは、対象における免疫応答を刺激するために必要であるような当該用量及び当該期間にわたって投与される。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、例えば、組成物が投与されていない対象においてインターフェロン産生と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%、対象におけるインターフェロンの産生増加をもたらす。開示された方法のいくつかの実施形態において、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒト対象である。
【0132】
上述のように、注射用に適した薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液(ここで水溶性)又は分散液、及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。これらの場合、組成物は無菌でなければならず、注射性が容易である程度に流動的でなければならない。組成物は更に、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物のコンタミに対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合に必要な粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。
【0133】
滅菌注射用溶液は、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、及び/又は組換えポリペプチドを、必要に応じて上記に列挙した成分の1つ又は組み合わせと共に、適切な溶媒中に必要なマウントで組み込むことによって調製し、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。
【0134】
核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物が適切に保護される場合、上記のように、それらは、例えば、不活性希釈剤又は吸収可能な食用担体と共に経口投与され得る。核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物及びその他の成分は、硬質又は軟質シェルゼラチンカプセルに封入することも、錠剤に圧縮することも、個体の食事に直接組み込むこともできる。経口治療投与のために、活性化合物は、賦形剤と共に組み込まれ、摂取可能な錠剤、口腔錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハ剤などの形態で使用され得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)及び組換えポリペプチドは、脂質ベースのナノ粒子(LNP)によって細胞又は対象に送達され得る。LNPは一般にウイルス粒子よりも免疫原性が低い。多くの人間はウイルス粒子に対する既存の免疫を有している一方で、LNPに対する既存の免疫を有していない。更に、LNPに対する適応免疫応答が起こりにくく、LNPの反復投与が可能となる。
【0136】
LNPにおいて使用するために、いくつかの異なるイオン化可能なカチオン性脂質が開発されている。これらには、とりわけC12-200、MC3、LN16、及びMD1が含まれる。例えば、あるタイプのLNPにおいて、GalNAc部分がLNPの外側に結合し、アジアリロ糖タンパク質受容体を介して肝臓に取り込むためのリガンドとして機能する。これらのカチオン性脂質のいずれも、本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)及び組換えポリペプチドの肝臓への送達のためのLNPを製剤化するために使用することができる。
【0137】
いくつかの実施形態において、LNPは、1000nm、500nm、250nm、200nm、150nm、100nm、75nm、50nm、又は25nm未満の直径を有する任意の粒子を指す。或いは、ナノ粒子のサイズは、1~1000nm、1~500nm、1~250nm、25~200nm、25~100nm、35~75nm、又は25~60nmの範囲であり得る。
【0138】
LNPは、カチオン性、アニオン性、又は中性脂質から製造され得る。融合性リン脂質DOPEや膜成分コレステロールなどの中性脂質を「ヘルパー脂質」としてLNPに含めることができ、トランスフェクション活性とナノ粒子の安定性を高めることができる。カチオン性脂質の制限には、安定性が低く、クリアランスが速いため有効性が低いこと、及び炎症性又は抗炎症性反応が発生することが含まれる。LNPは、疎水性脂質、親水性脂質、又は疎水性及び親水性脂質の両方を有し得る。
【0139】
当該技術分野において公知である多くの脂質又は脂質の組み合わせを、LNPを製造するために使用することができる。LNPの生成に使用されるのに好適な脂質の非限定的な例としては、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、及びGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。カチオン性脂質の非限定的な例としては、98N12-5、C12-200、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、及び7C1が挙げられる。
中性脂質の非限定的な例としては、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMが挙げられる。PEG-改変脂質の非限定的な例としては、PEG-DMG、PEG-CerC14、及びPEG-CerC20が挙げられる。
【0140】
いくつかの実施形態において、脂質を任意の数のモル比で組み合わせてLNPを生成することができる。更に、ポリヌクレオチドを脂質と広範囲のモル比で組み合わせてLNPを生成することができる。
【0141】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の治療用組成物、例えば、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、癌、自己免疫疾患、及び/又は感染症を患っている、患うことが予想される、或いは発症する危険性が高い対象を予防又は治療する方法において使用するための治療組成物に組み込まれる。
【0142】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の治療用組成物、例えば、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、微生物感染症を発症する高いリスクを有する、有する疑いのある、又は発症するリスクが高い可能性がある対象を予防又は治療する方法において使用するための治療組成物に組み込まれる。いくつかの実施形態において、微生物感染症は細菌感染症である。いくつかの実施形態において、微生物感染症は、真菌感染症である。いくつかの実施形態において、微生物感染症はウイルス感染症である。
追加の治療法
【0143】
いくつかの実施形態において、本開示に記載の組成物は、単回療法(単独療法)として、又は少なくとも1つの追加療法(例えば、第2の療法)と組み合わせた第1の療法として、個別に対象に投与される。いくつかの実施形態において、第2の療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的療法、及び外科手術から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、第2の療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法又は手術から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、第1の療法及び第2の療法は、付随して行われる。いくつかの実施形態において、第1の療法は、第2の療法と同時に行われる。いくつかの実施形態において、第1の療法及び第2の療法は、順次投与される。いくつかの実施形態において、第1の治療は、第2の療法の前に投与される。いくつかの実施形態において、第1の療法は、第2の療法の後に投与される。いくつかの実施形態において、第1の療法は、第2の療法の前及び/又は後に投与される。いくつかの実施形態において、第1の療法及び第2の療法は、交代で投与される。いくつかの実施形態において、第1の療法及び第2の療法は、単一の処方中で共に投与される。
キット
【0144】
本明細書に記載の、並びにそれらを製造及び使用するための取扱説明書に記載の方法を実施するための種々のキットも本明細書で提供する。特に、本開示のいくつかの実施形態は、対象における免疫応答を調節するためのキットを提供する。いくつかの他の実施形態は、予防を必要とする被験体における健康状態を予防するためのキットに関する。いくつかの他の実施形態は、治療を必要とする被験体における健康状態を治療する方法のためのキットに関する。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書で提供及び記載される核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のうちの1若しくは複数、並びにそれらを産生及び使用するための書面による取扱説明書を含むキットが本明細書で提供される。
【0145】
いくつかの実施形態において、本開示のキットは、提供された核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のいずれか1つを対象に投与するのに有用な1若しくは複数の手段を更に含む。例えば、いくつかの実施形態において、本開示のキットは、提供された核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のいずれか1つを対象に投与するために使用される、1若しくは複数のシリンジ(プレフィルドシリンジを含む)及び/又はカテーテル(プレフィルドシリンジを含む)を更に含む。いくつかの実施形態において、キットは、所望の目的のために、例えば、診断、予防、又は治療を必要としている対象の健康状態を診断、予防、又は治療するために、他のキットの構成要素と同時に又は連続して投与することができる1若しくは複数の追加の治療薬を有することができる。
【0146】
上述のキットのいずれかは、1若しくは複数の追加の試薬を更に含むことができ、ここで、当該追加の試薬は、希釈バッファー;再構成溶液、洗浄バッファー、コントロール試薬、コントロール発現ベクター、陰性対照、陽性対照、提供された核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)のインビトロ産生に適した試薬、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は本開示の医薬組成物から選択できる。
【0147】
いくつかの実施形態において、キットの構成要素は、別々のコンテナに入れることができる。いくつかの他の実施形態において、キットの構成要素を単一のコンテナ内で組み合わせることができる。従って、本開示のいくつかの実施形態において、キットは、1つのコンテナ(例えば、滅菌ガラス又はプラスチックバイアル)内に、本明細書で提供された及び記載された、1若しくは複数の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物、並びに別のコンテナ(例えば、滅菌ガラス又はプラスチックバイアル)内に更なる治療薬を包含する。
【0148】
別の実施形態において、キットは、単一の、一般的なコンテナ内に、任意選択で医薬組成物の状態で、一緒に製剤化された1若しくは複数の追加の治療薬と組み合わせて、本開示の1若しくは複数の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、及び/又は組換えポリペプチドを含めた、本明細書に記載した組成物の組み合わせを包含する。
【0149】
キットが対象への非経口投与のための医薬組成物を包含する場合、キットは、斯かる投与を実施するためのデバイス(例えば、注入デバイス又はカテーテル)を包含する。例えば、キットは、本開示の1若しくは複数の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、及び/又は組換えポリペプチドを含む、1若しくは複数の皮下注射針又は先に議論した他の注入デバイスを包含する。
【0150】
いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に開示される方法を実施するためにキットの構成要素を使用するための取扱説明書を更に含むことができる。例えば、キットは、該キット中の医薬組成物や剤形に関する情報を含む添付文書を包含することができる。通常、そのような情報は、同封の医薬組成物や剤形を効果的、かつ、安全に使用する際に患者及び医師の役に立つ。例えば、本開示の組み合わせに関する以下の情報:薬物動力学、薬力学、臨床試験、有効性パラメータ、適応症と用法、禁忌、警告、注意、有害反応、過剰投与量、適切な用法と用量、どれように供給されるか、適切な保存条件、参考文献、製造業者/供給業者情報、及び知的所有権情報、が添付文書で提供されてもよい。
【0151】
該方法を実施するための取扱説明書は、一般に適切な記録媒体に記録される。例えば、取扱説明書は、紙やプラスチックなどの基板に印刷することができる。取扱説明書は、添付文書としてキット中、キット又はその構成要素のコンテナのラベル中(例えば、包装又は副包装に関連する)などに存在することができる。取扱説明書は、適切なコンピュータ可読記憶媒体、例えばCD-ROM、フロッピーディスク、フラッシュドライブなどに存在する電子記憶データファイルとして存在することができる。いくつかの例において、実際の取扱説明書はキット中に存在しないが、遠隔の情報供給源から(例えば、インターネットを介して)取扱説明書を得るための手段を提供することができる。この実施形態の一例は、取扱説明書を閲覧することができる及び/又は取扱説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。取扱説明書と同様に、取扱説明書を得るためのこの手段は、適切な基板上に記録することができる。
【0152】
本開示で言及された全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることを具体的かつ個別に示した場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0153】
本明細書で引用された任意の参考文献は先行技術を構成することが認められない。参考文献の議論は、著者が主張することを述べており、出願者は引用文献の正確性及び関連性に異議を唱える権利を留保する。科学雑誌の記事、特許文献、及び教科書を含む多くの情報源が本明細書で参照されているが、この参照は、これらの文献のいずれかが当技術分野における技術常識の一部を形成することを認めるものではないことが、明確に理解される。
【0154】
本明細書で与えられる一般的な方法の議論は、例示のみを目的としている。他の代替方法及び代替は、本開示の検討時に当業者には明らかであり、本出願の精神及び範囲に含まれるべきである。
【0155】
更なる実施形態は、例示として提供される以下の実施例において更に詳細に開示され、本開示又は特許請求の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0156】
本発明の実施は、別段の指示がない限り、分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の従来の技術を採用し、これらは当業者に周知である。斯かる技術は、例えば、Sambrook, J., & Russell, D. W. (2012). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory and Sambrook, J., & Russel, D. W. (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory (jointly referred to herein as “Sambrook”); Ausubel, F. M. (1987). Current Protocols in Molecular Biology. New York, NY: Wiley (including supplements through 2014); Bollag, D. M. et al. (1996). Protein Methods. New York, NY: Wiley-Liss; Huang, L. et al. (2005). Nonviral Vectors for Gene Therapy. San Diego: Academic Press; Kaplitt, M. G. et al. (1995). Viral Vectors: Gene Therapy and Neuroscience Applications. San Diego, CA: Academic Press; Lefkovits, I. (1997). The Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques. San Diego, CA: Academic Press; Doyle, A. et al. (1998). Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology. New York, NY: Wiley; Mullis, K. B., Ferre, F. & Gibbs, R. (1994). PCR: The Polymerase Chain Reaction. Boston: Birkhauser Publisher; Greenfield, E. A. (2014). Antibodies: A Laboratory Manual (2nd ed.). New York, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press; Beaucage, S. L. et al. (2000). Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry. New York, NY: Wiley, (including supplements through 2014); and Makrides, S. C. (2003). Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells. Amsterdam, NL: Elsevier Sciences B.V.などの文献において十分に説明されており、その開示内容は参照により本明細書に援用される。
【0157】
更なる実施形態は、以下の実施例において更に詳細に開示されるが、これらは例示として提供され、本開示又は特許請求の範囲を限定することを意図していない。
実施例1
EEEVベクターの構築
【0158】
この実施例は、目的の遺伝子(例えば、インフルエンザAウイルスH5N1のヘマグルチニン前駆体(HA))の発現を伴ったEEEVベクターの構築のために後に使用されるベースEEEVベクター(例えば、異種遺伝子なし)を構築するために実施された実験の結果を記載する。
【0159】
公的に入手可能なアルファウイルスゲノムデータは、構造タンパク質をコードする核酸配列を目的の遺伝子(GOI)で直接置換して自己複製RNA及び導入遺伝子発現レプリコンをもたらし得るヌクレオチド配列を常に提供するとは限らない、という最初の観察がなされた。以下でより詳細に説明するように、EEEV菌株FL93-939の構造ポリタンパク質遺伝子を、インフルエンザAウイルスH5N1由来のヘマグルチニン(HA)遺伝子(例えば、
図2Bを参照のこと)で置き換えて、トランスフェクトされたBHK-21細胞(例えば、
図3Bを参照のこと)においてRNA複製及び導入遺伝子発現が可能なレプリコン(例えば、自己複製RNA)を作製することが可能である。(すなわち、目的の異種遺伝子を伴わない)ベースEEEVベクターを、次のようにして構築した:ベースEEEVベクター(例えば、
図2Aを参照のこと)を、いくつかの修飾を有する参照配列(Genbank EF151502)由来の4つの~4kb部分(Twist Bioscience)で、デノボ合成した。サイレントG301A、G4516A、及びG7399A突然変異を、SapI制限酵素切断部位を排除するために組み込んだ。サイレントA3550C突然変異を、SpeI制限酵素切断部位を排除するために組み込んだ。サイレントG5725A突然変異を、Esp3I制限酵素切断部位を排除するために組み込んだ。固有の制限酵素切断部位(SpeI、5’-A’CTAG,T-3’)を、天然EEEV構造遺伝子(ここで、5’Aは構造ポリタンパク質のATG開始コドンの位置と一致し、3’Tは構造ポリタンパク質の終止コドンTAAの位置と一致する)のコード配列に代わって組み込んだ。その後のGibson Assembly(登録商標)手順(Gibson et al., Nat. Methods 6, 343-345, 2009)のために、5’アダプター配列(5’-CTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCT-3’;配列番号3)をSpeI部位の上流に挿入し、3’アダプター配列(5’-GACCGCTACGCCCCAATGACCCGACCAGC -3’;配列番号4)をSpeI部位の下流に挿入した。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター(5’-TAATACGACTCACTATAG-3’;配列番号5)を、EEEVゲノム配列の上流、かつ、ポリ(A)配列とそれに続くSapI部位(それは認識部位の上流を切断する)を含む下流に含んだ。SapI部位のすぐ下流は、T7終止配列(5’-AACCCCTCTCTAAACGGAGGGGTTTTTTT-3’;配列番号6)と、それに続く固有の制限酵素切断部位(NotI、5’-GC’GGCC,GC-3’)である。その部品は、5ピースのGibson Assembly(登録商標)反応:線状化pYL骨格と4つの合成フラグメント、で組み合わせられて、EEEVベースベクターをもたらした。
【0160】
異種遺伝子を含有するEEEVベクターの構築を次のようにして実施した:
図2Bに記載のEEEVベクターを、SpeI消化による
図2Aの空のEEEVベクターの線状化によって構築した。インフルエンザ由来のヘマグルチニン(HA)遺伝子(Genbank AY651334)を、コンピュータ内でヒト発現向けにコドン最適化/リファクタリングし、そしてデノボ合成した(IDT)。合成生成物を、5’及び3’アダプター配列をHA遺伝子の末端に加えたプライマーを使用して増幅した。消化産物とPCR産物を、Gibson Assembly(登録商標)手順によって組み合わせて、最終的なベクターを得た。
実施例2
改変EEEVベクターのインビトロ評価
【0161】
この実施例は、上記の実施例1に記載される合成EEEVレプリコン構築物(例えば、自己複製RNA)の発現レベルを評価し、その様々な差異的な挙動(例えば、複製及びタンパク質発現)を調査するために実施されたインビトロ実験の結果を記載する。
【0162】
これらの実験において、EEEV菌株FL93-939に由来する合成レプリコン構築物(例えば、自己複製RNA)が設計され、続けて評価された。
【0163】
インビトロ転写:srRNAは、5’ARCAキャップ(HiScribe(商標) T7 ARCA mRNA kit、NEB)、又はキャップなし転写(HiScribe(商標) T7 High Yield RNA Synthesis Kit, NEB)のいずれかを有する、バクテリオファージT7ポリメラーゼを用いたSapI線状化プラスミド鋳型からのインビトロ転写とそれに続いて、5’キャップ1(Vaccinia Capping System, mRNA Cap 2´-O-Methyltransferase, NEB)を添加することによって調製した。次に、フェノール/クロロホルム抽出、LiCl沈殿、又はカラム精製(Monarch(登録商標) RNA Cleanup Kit, NEB)を用いてsrRNAを精製した。srRNA濃度は、260nmでの吸光度(Nanodrop, Thermo Fisher Scientific)により決定した。
【0164】
複製:srRNAをエレクトロポレーションによりBHK-21又はVero細胞(例えば、4D-Nucleofector(商標)、Lonza)に形質転換した。形質転換後18~20時間で、細胞を固定及び透過処理し(eBioscience(商標) Foxp3 / Transcription Factor Staining Buffer Set、Invitrogen)、続いてPE標識抗dsRNAマウスモノクローナル抗体(J2、Scicons)を用いて染色し、蛍光フローサイトメトリーによってdsRNA+細胞の頻度及び個々の細胞におけるdsRNAの平均蛍光強度(MFI)を定量化した。
【0165】
タンパク質発現:RNAをエレクトロポレーションによりBHK-21又はVero細胞(例えば、4D-Nucleofector(商標)、Lonza)に形質転換した。形質転換後18~20時間で、細胞を、固定及び透過処理し(eBioscience(商標) Foxp3 / Transcription Factor Staining Buffer Set、Invitrogen)、APC結合の抗HAマウスモノクローナル抗体(2B7、Abcam)を使用して染色して、蛍光フローサイトメトリーによって個々の細胞におけるHAタンパク質を発現する細胞の頻度及びHAタンパク質の平均蛍光強度(MFI)を定量化した。
【0166】
追加の実験:BHK-21又はVero細胞を、RNAのエレクトロポレーションに先立って組換えインターフェロン(IFN)の滴定曲線で前処理し、ベクターについての複製及びタンパク質発現に対する影響を、上述のアッセイを用いて測定する。
【0167】
先に記載した実験結果は、例えば、上記のフローサイトメトリーによって検出される、RNA複製を示す自己複製RNA(srRNA)構築物が、薬物動態作用を誘導するのに有望な実用的なベクターであるとみなされ得ることを説明している。加えて、(単数若しくは複数の)導入遺伝子のタンパク質発現を示すsrRNA構築物は、追加の薬物動態作用を誘導する(例えば、宿主において免疫応答を誘発する)のに有望な実用的なベクターであるとみなされ得る。
実施例3
改変EEEVベクターのインビトロ評価
【0168】
この実施例は、合成EEEV自己複製RNA(srRNA)の発現レベルを評価し、その様々な差異的な挙動(例えば、複製及びタンパク質発現)を調査するために実施されたインビトロ実験の結果を記載する。
【0169】
これらの実験において、2つの基準導入遺伝子(RBI296、RBI298)を発現する対照VEEV srRNA、2つの形状(RBI299、RBI300)でIL-1RAとIL-12の両方をコードするVEEV srRNA、及び2つの形状(RBI305、RBI306)でIL-1RAとをIL-12の両方をコードするEEEV srRNAを含めた、EEEV菌株FL93-939に由来する合成srRNAが設計され、続けて評価された。
【0170】
インビトロ転写:srRNAは、キャップなし転写(HiScribe(商標) T7 High Yield RNA Synthesis Kit, NEB)による、バクテリオファージT7ポリメラーゼによって、SapI線状化プラスミド鋳型からのインビトロ転写とそれに続いて、5’キャップ1(Vaccinia Capping System, mRNA Cap 2´-O-Methyltransferase, NEB)を添加することによって調製した。次に、LiCl沈殿によってsrRNAを精製した。srRNA濃度は、260nmでの吸光度(Nanodrop, Thermo Fisher Scientific)により決定した。
【0171】
タンパク質発現:RNAをエレクトロポレーションによりBHK-21細胞(4D-Nucleofector(商標)、Lonza)に形質転換した。形質転換後24及び48時間にて、馴化培地を細胞から回収した。分泌されたIL-1RAを、様々な濃度の遺伝子組換えIL-1RA(Peprotech)又は馴化培地とHEK-Blue(商標)IL-1R細胞(InvivoGen)をプレインキュベートすることによって、生物活性試験により評価した。遺伝子組換えIL-1B(Invivogen)を、細胞に加え、一晩インキュベートし、次に、SEAPレポーターをQUANTI-blue(商標)(Invivogen)を使用して定量化した(例えば、
図4Aを参照のこと)。
【0172】
分泌されたIL-12を、DMEM中のIL-12バイオアッセイ細胞(Promega)上で様々な濃度の遺伝子組換えIL-12(Peprotech)又は馴化培地を一晩インキュベートすることによって生物活性試験により評価し、次に、ルシフェラーゼレポーターを、Bio-Glo(商標)ルシフェラーゼ(Promega)を使用することで定量化した(例えば、
図4Bを参照のこと)。
【0173】
先に記載した実験結果は、(単数若しくは複数の)導入遺伝子のタンパク質発現を示すsrRNA構築物が、追加の薬物動態作用を誘導する(例えば、宿主において免疫応答を誘発する)のに有望な実用的なベクターであるとみなされ得ることを説明している。srRNAベクターから発現されたタンパク質の活性の評価は、発現タンパク質が薬物動態作用を惹起するための意図された機能を保有することを確かめるために重要である。ベクター間の相対タンパク質発現の差は利点(例えば、同等レベルのタンパク質発現を達成するためのより低い用量)を提供することができる。
実施例4
改変EEEVベクターのインビボ評価
【0174】
この実施例は、上記の実施例1及び2に記載される合成EEEVレプリコン構築物(例えば、自己複製RNA)(例えば、非製剤化及びLNP製剤ベクターの両方)によるワクチン接種後の任意の差次的免疫応答を評価するために実施されたインビボ実験の結果を記載する。
【0175】
これらの実験において、EEEV菌株FL93-939に由来する合成レプリコン構築物が設計され、続いて評価された。
【0176】
マウス及び注射:雌C57BL/6又はBALB/cマウスを、Charles River Labs、又はJackson Laboratoriesから購入した。投与当日、10μgの材料を両方の大腿四頭筋に筋肉内注射する。ベクターは、生理食塩水中で製剤化されていない、又はLNP製剤化されているものを投与する。動物は、研究の過程を通して体重及びその他の一般的な観察についてモニタリングされる。免疫原性試験のために、動物には0日目と21日目に投与する。脾臓を14日目及び/又は35日目に採取し、血清を14日目、及び/又は35日目に分離する。ウイルス抗原である、狂犬病糖タンパク質G、をコードするsrRNAのインビボにおける免疫原性を、2回の免疫化後に、ELISpotにより抗原特異的脾臓T細胞応答(
図5A)と、血清からの抗狂犬病中和抗体価(
図5B)の値を求めることによって評価した。すべてのsrRNA免疫化群が、生理食塩水対照と比較して、ロバストのT細胞応答を示したが(例えば、
図5Aを参照のこと)、示差的な応答をsrRNAワクチン間で観察した。同様に、すべてのsrRNA免疫化群が、srRNAワクチン間のいくつかのバリエーションがある状態で、保護的な中和抗体価を示した(例えば、
図5Bを参照のこと)。感染症抗原に加えて、癌抗原に対するsrRNAベースのワクチンの免疫原性を評価した(
図6A~6C)。それぞれのsrRNAワクチンは、ESR1、HER2、及びHER3からの配列を同時コードした。これらの3種類の抗原に対する脾臓T細胞応答を、2回の免疫化を受けたマウスにおいてELISpot分析を使用して測定した。ロバストなT細胞応答が、すべての3種類の標的に対して観察されたが、応答パターンはsrRNAベクター間で異なる(例えば、
図6A~6Cを参照のこと)。
【0177】
タンパク質発現試験のために、動物には0日目に投与し、そして、タンパク質発現を血清ELISA によって3、及び/又は7日目に評価する。IL-12p70を形成するためのヒトIL12A及びIL12BをコードするsrRNAを、マウスにおいて筋肉内に投与した。血清を、7日目に回収して、タンパク質の全身レベルを検出した(例えば、
図7を参照のこと)。
生物学的治療用タンパク質をコードするsrRNAの機能性を確認するために、動物には種が一致したマウスIl12a及びIl12b遺伝子のコード配列を有するEEEV FL93-939由来のsrRNAを投与した。IL-12の機能性を、下流薬力学的マーカーとしてのIFNγの誘導を評価することによって計測する。srRNA投与後の3日目にマウスからの血清は、検出可能なレベルのIFNγを示した(例えば、
図8を参照のこと)。
【0178】
LNP製剤化:いくつかの調査のために、レプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)を、マイクロフルイディクスミキサーを用いて脂質ナノ粒子中に製剤化し、動的光散乱及び封入効率を用いて粒子サイズ、多分散性について分析した。LNPを、イオン化脂質、コレステロール、PEG-2K、及びDOPEから構築される。
【0179】
ELISpot。抗原特異的T細胞応答の大きさを測定するために、製造元の指示に従ってマウスIFNγ ELISpot PLUSキット(HRP)(MabTech)を使用してIFNγ ELISpot分析を実施する。簡単に説明すると、脾細胞を単離し、狂犬病糖タンパク質G、ESR1、HER2、又はHER3のいずれかに相当するペプチドプール、陽性対照としてのPMA/イオノマイシン、又は模擬刺激としてのDMSOのいずれかを表すペプチドを含有する培地中に2~5×106細胞/mLの濃度にて再懸濁した。
【0180】
抗体。狂犬病ウイルスに対する中和抗体応答を、迅速蛍光焦点抑制試験を使用することで計測する。要するに、血清希釈物を、基準量の生きた狂犬病ウイルスと混合し、そして、インキュベートする。中和抗狂犬病抗体が存在する場合、それらはウイルスを中和する。次に、培養した細胞を加え、そして、血清/ウイルス/細胞を一緒にインキュベートする。コートされなかった狂犬病ウイルス(すなわち、抗体によって中和されなかったもの)は細胞に感染し、そして、これは顕微鏡法によって可視化できる。終点力価の計算を、スライド上で観察されたウイルス感染細胞のパーセントから実施した。
【0181】
ELISA。ヒトIL-12p70の検出を、R&D Systems(DY1270)製の市販のキットHuman IL-12p70 DuoSet ELISAを使用して実施した。マウス血清IFNγの検出を、R&D Systems製の市販キット(Mouse IFN-gamma DuoSet)を使用して実施した。
【0182】
総合すれば、これらのデータは、EEEVベースのsrRNAベクターが(単数若しくは複数の)抗原及び生物学的治療用タンパク質をコードするのに使用できるでの、インビボにおいて所望の薬力学的効果を生じさせるための、それぞれ、ワクチン及び治療薬の両方のためのベクターとして使用として使用できることを実証している。
【0183】
本開示の特定の代替が開示されているが、様々な改変及び組み合わせが可能であり、添付の特許請求の範囲の真の精神及び範囲内で企図されることを理解されたい。従って、本明細書に提示される正確な要約及び開示に制限の意図はない。
【配列表】
【国際調査報告】