(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】炉の耐火壁を補修するための方法
(51)【国際特許分類】
F27D 1/16 20060101AFI20240717BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240717BHJP
C22C 38/22 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F27D1/16 Z
C22C38/00 302Z
C22C38/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500167
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022066354
(87)【国際公開番号】W WO2023280541
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511126992
【氏名又は名称】エスエスアーベー テクノロジー アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ・セー・ヨンソン
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AA08
4K051AB03
4K051BB03
4K051GA04
(57)【要約】
本発明は、炉(1)の耐火壁(2)を、その少なくとも1つの壁部分(3)を交換することによって補修するための方法に関し、本方法は:(a)壁部分(3)を取り壊すことと;(b)新たな壁部分(3)を画成する外型枠(4)を現場で設置し、新たな壁部分(3)内に新たな煙道を画成する内型枠(5)を設置することと;(c)外型枠(4)および内型枠(5)によって画成された容積内にキャスタブル耐火材料を打設し、その材料が硬化することを可能にすることと;(d)外型枠を取り除くことと;を含み、内型枠(5)が耐熱金属材料から作製されることを特徴とする。本発明は、炉用の壁部分および炉にも関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉(1)の耐火壁(2)を、その少なくとも1つの壁部分(3)を交換することによって補修するための方法であって:
(a)壁部分(3)を取り壊す工程と;
(b)新たな壁部分(3)を画成する外型枠(4)を現場で設置し、新たな壁部分(3)内に新たな煙道(8)を画成する内型枠(5)を設置する工程と;
(c)外型枠(4)および内型枠(5)によって画成された容積内にキャスタブル耐火材料を打設し、該材料が硬化することを可能にする工程と;
(d)外型枠(4)を取り除く工程と;
を含み、
内型枠(5)は耐熱金属材料から作製されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
耐熱金属材料は、1000℃と1200℃との間の温度のような、炉(1)の動作中の温度に加熱されたとき、好ましくは、1200℃と1400℃との間の温度に加熱されたときにも、形態が安定している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
耐熱金属材料は、1000℃と1200℃との間の温度のような、炉(1)の動作温度に加熱されたとき、好ましくは、1200℃と1400℃との間の温度に加熱されたときにも、化学的に安定している、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
耐熱金属材料は、1000℃に加熱されたときのような、炉(1)の動作温度に加熱されたときに保護表面酸化物層(6)を形成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
耐熱金属材料は、1000℃に加熱されたときのような、炉(1)の動作温度に加熱されたときに保護Al
2O
3表面層(6)を形成するアルミニウム含有合金である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
耐熱金属材料は、フェライト系鉄クロムアルミニウム合金(FeCrAl)である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
耐熱金属材料は、重量パーセントで:
Cr19~25%、好ましくは、Cr20~22%と、
Al3~7%、好ましくは、Al4~6%と、
場合により、Mo1~5%、好ましくは、Mo2~4%と
場合により、C最大0.1%、好ましくは、C最大0.08%と、
場合により、Si最大1%、好ましくは、Si最大0.7%と、
場合により、Mn最大0.5%、好ましくは、Mn最大0.4%と、
残部Feおよび不可避的不純物と
を含むフェライト系鉄クロムアルミニウム合金(FeCrAl)である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
新たな壁部分(3)は、工程a)からd)の完了によって1部片になるように形成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
キャスタブル耐火材料は、シリカベースおよび/またはアルミナベースの材料である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
内型枠(5)は伸縮式の構造を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
耐火壁(2)はレンガ壁である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
炉(1)はコークス炉である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
炉(1)用の壁部分(3)であって、該壁部分(3)は、キャスタブル耐火材料から作製された主要部分(7)と、該主要部分(7)と接触している内型枠(5)とを含み、該内型枠(5)は、耐火壁部分の煙道の境界を定め、
内型枠(5)は、耐熱金属材料から作製されることを特徴とする、前記壁部分。
【請求項14】
耐熱金属材料は、1000℃と1200℃との間の温度のような、炉の動作中の温度に加熱されたとき、好ましくは、1200℃と1400℃との間の温度に加熱されたときにも、形態が安定している、請求項13に記載の壁部分。
【請求項15】
耐熱金属材料は、1000℃と1200℃との間の温度のような、炉の動作温度に加熱されたとき、好ましくは、1200℃と1400℃との間の温度に加熱されたときにも、化学的に安定している、請求項13または14に記載の壁部分。
【請求項16】
耐熱金属材料は、1000℃に加熱されたときのような、炉の動作温度に加熱されたときに保護表面酸化物層(6)を形成する、請求項13~15のいずれか1項に記載の壁部分。
【請求項17】
耐熱金属材料は、1000℃に加熱されたときのような、炉の動作温度に加熱されたときに保護Al
2O
3表面層(6)を形成するアルミニウム含有合金である、請求項13~16のいずれか1項に記載の壁部分。
【請求項18】
耐熱金属材料は、フェライト系鉄クロムアルミニウム合金(FeCrAl)である、請求項13~17のいずれか1項に記載の壁部分。
【請求項19】
耐熱金属材料は、重量パーセントで:
Cr19~25%、好ましくは、Cr20~22%と、
Al3~7%、好ましくは、Al4~6%と、
場合により、Mo1~5%、好ましくは、Mo2~4%と、
場合により、C最大0.1%、好ましくは、C最大0.08%と、
場合により、Si最大1%、好ましくは、Si最大0.7%と、
場合により、Mn最大0.5%、好ましくは、Mn最大0.4%と、
残部Feおよび不可避的不純物と
を含むフェライト系鉄クロムアルミニウム合金(FeCrAl)である、請求項13~17のいずれか1項に記載の壁部分。
【請求項20】
請求項13~19のいずれか1項に記載の壁部分(3)を含む、炉(1)。
【請求項21】
炉(1)はコークス炉である、請求項20に記載の炉(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉の耐火壁を補修するための方法に関する。本発明は、炉用の壁部分および炉にも関する。
【背景技術】
【0002】
様々な目的で材料を加熱するための炉が広く知られている。炉は、様々な形で建設できるが、典型的には、床(またはコーベル)、屋根、およびそれらの間に広がる壁などの要素を含み、それにより、内部で加熱予定の材料のための加熱チャンバが形成される。床、屋根、または壁は、しばしば煙道(flue passage)と称される高温のガスを輸送するためのチャネルを有し、それにより、チャンバを加熱することができる。
【0003】
各要素は、典型的には、セラミックレンガから構築され、レンガは、加熱壁などの要素内で垂直および/または水平に延びる内部煙道、ベント通路、および他の通路を画成するように組み立てられる。
【0004】
厳しい温度循環環境および炉の運転慣行により、炉の耐用年数の間に炉の要素のいくつかまたはすべてが、補修および/または再建設を必要とする場合がある。
【0005】
チャンバに向かう部分を画成する型枠と、煙道を画成する内型枠との間に耐火材料を注型することによって、炉の各セクションを補修することが知られている。次いで、チャンバに向かう型枠は、簡単に取り除くことができるが、内型枠は、取り除くのがより複雑である。取り除く方法の一つは、木製の内型枠を設置し、オーブンをその動作温度に加熱するときにその型枠の木材を焼き払うことによって後から取り除くことである。木材を使用することに伴う課題は、特に、煙道を画成するための複雑な形態が必要とされる場合に型枠を作製するのに時間がかかることである。さらに、木材は、あまり形態が安定しておらず、すなわち、流し込まれる材料の圧力下に置かれると縮み、それにより、型枠の設計プロセスが複雑になる。したがって、炉の垂直の壁部分を補修する場合には、壁部分は、硬化した後に次のセクションが他のセクションの上に形成されるように、各セクションに分割されることが多く、それにより、補修が非常に時間のかかるものになる。
【0006】
別の方法は、鉄(Fe)から作製された内型枠を使用することである。鉄は、酸化性ガスおよび炉からの熱に曝露されると腐食して、鉄に剥離および溶融が引き起こされる。鉄が溶融すると、それが周囲の耐火性セラミック材料の溶融点にも悪影響を及ぼす。したがって、鉄の型枠は、炉の動作の前に取り除かなければならない。したがって、取外しは、高価なプロセスであり、形成できる煙道の形状の複雑さを制限する。さらに、やはり炉の垂直の壁部分を補修する場合に、ここでも、壁部分は、鉄の型枠が機械加工によって取り除くことができるように、各セクションに分割されることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記を考慮すると、本発明の第1の目的は、少なくともある程度まで先行技術の問題のいくつかを克服する、炉の耐火壁を補修するための改善された方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、改善された炉用の壁部分を提供することである。さらに他の目的は、改善された炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、第1の目的は、請求項1に記載の工程を含む方法によって達成される。したがって、炉の耐火壁を、その少なくとも1つの壁部分を交換することによって補修する方法が提供される。本方法は:
(a)壁部分を取り壊すことと;
(b)新たな壁部分を画成する外型枠を現場で設置し、新たな壁部分内に新たな煙道を画成する内型枠を設置することと;
(c)外型枠および内型枠によって画成された容積内にキャスタブル耐火材料を打設し、その材料が硬化することを可能にすることと;
(d)外型枠を取り除くことと;
を含み、内型枠は耐熱金属材料から作製される。
【0009】
本明細書に開示されている方法の提供によって、新たな煙道を画成する内型枠が耐熱金属材料から作製される、炉の耐火壁を補修するための改善された方法が提供される。具体的には、耐熱金属材料の内型枠を提供することによって、内型枠は、炉を動作させる前に取り除く必要なしに、壁部分の内側に残すことができ、それにより、補修プロセスが単純化され、より費用対効果の高いものにされることが実現された。
【0010】
さらに、内型枠を金属材料から作製することによって、気密性の煙道を形成することができる。金属材料は、補修予定の個々の炉の状態に合うように従来の金属加工によって簡単にカスタマイズできる、より複雑な形状を作製できるため、補修方法の順応性も向上する。
【0011】
本発明の目的のために、壁の一部分が補修される必要があると仮定されているが、本明細書に記載されている補修プロセスは、壁全体、屋根および/もしくは床/コーベル領域、またはそのいくつかの部分が交換の必要がある状況に適用できることが理解されよう。したがって、「壁部分」についての言及は、垂直の壁ならびに水平の屋根および床/コーベル部分の両方を包含することが意図される。
【0012】
炉とは、コークスもしくはガラスを作製するかまたはそうではなく様々な目的のために内部で材料を加熱するための炉など、任意の炉を意味する。「炉」に関する他の用語は、「オーブン」または「キルン」とすることができる。以下では、壁が補修予定であるという状態を説明するために炉を用いているが、少数の非限定的な例を挙げるとボイラ、溶解炉/溶鉱炉、ストーブ、または暖炉など、他の形態の加熱装置にも適用できる。
【0013】
炉は、材料を加熱するチャンバを含むことが多く、チャンバは、炉用の壁、床、および天井によって画成できることが多い。炉には、複数のチャンバを有するものがあり、チャンバは、それらの間が壁によってそれぞれ隔てられている。一部のタイプの炉は、いくつかのチャンバを有することが多い。典型的なコークスオーブンの設置は、たとえば、30から100個を超える個々のコークス化チャンバまたはオーブンを横に並べて配置することを含むことがあり、各チャンバは、高さ3から7メートル、典型的には長さ14メートル以上、幅約1メートルである。
【0014】
新たな壁部分を画成する外型枠を「現場で」設置することとは、「現行の炉の内側で」という意味である。たとえば、壁が炉の外側を向いた外壁の場合には、「現行の炉で」を意味することもできる。
【0015】
煙道は、炉の分野においてよく知られた用語である。煙道は、炉を加熱するために加熱用ガスを輸送する炉の壁にあるチャネルである。煙道は、炉の床および/または天井に組み込むこともできる。
【0016】
外型枠および内型枠によって画成された容積内にキャスタブル耐火材料が打設されるとは、内型枠および外型枠によって実質的に限定された容積と理解するべきである。当然ながら、補修予定の壁部分の外側の残りの壁も、キャスタブル耐火材料が打設される実際の容積を画成している。
【0017】
耐熱金属材料とは、その材料特徴を維持しながら高温に曝露できる金属材料を意味する。高温とは、約1000℃以上を意味する。好ましくは、耐熱金属材料は、1000℃超に加熱されたときでも、ガスを生成せず、周囲のキャスタブル耐火材料に影響を及ぼさない。
【0018】
場合により、耐熱金属材料は、1000℃と1200℃との間の温度のような、炉の動作中の温度に加熱されたとき、形態が安定している。形態が安定していることとは、材料がその形状を維持することを意味する。コークス炉などのいくつかのタイプの炉の動作中には、温度は1200℃まで上昇する場合がある。このような高温の場合に、多くの材料は、変形する恐れがあり、それにより、煙道の形状が変わる。そのことは、煙道を通るガスの流れが妨げられる可能性があるため、壁の加熱が一様でなくなること、ならびに炉の加熱能力が低下することなど、いくつかの課題を引き起こすことがある。そのため、その温度で形態が安定している耐熱金属材料を使用することによって、それらの課題を避けることができる。
【0019】
やはり場合により、耐熱金属材料は、1200℃と1400℃との間の温度に加熱されたときにも、形態が安定している。すなわち、炉の正常な温度は通常1000~1200℃のことがあるとはいえ、煙道は、動作温度まで上昇させるために炉を加熱する間など、時には約1300℃まで温度が上昇する場合があることが見出された。その温度では、煙道の形状および高さに応じて、すなわち、煙道の金属材料が湾曲部などでそれ自体に加える重量に応じて、耐熱性の鋼はさらに変形して滑り落ち、その結果煙道が完全にブロックされる可能性がある。その温度で形態が安定している耐熱金属材料を有することによって、煙道の変形されることおよびブロックされる恐れがあることというそのような課題を避けることができる。やはり場合により、耐熱金属材料は、1250℃と1350℃との間の温度で形態が安定している。
【0020】
場合により、耐熱金属材料は、1000℃と1200℃との間の温度のような、炉の動作温度に加熱されたとき、好ましくは、1200℃と1400℃との間の温度に加熱されたときにも、化学的に安定している。化学的に安定していることとは、材料がその環境で反応せず、その有用な特性を維持することを意味する。具体的には、熱および腐食性ガスにおいて有用性が維持される。その意味で、たとえば、煙道においてもたらされる条件下で溶融、腐食、分解、または燃焼する場合は、材料は化学的に不安定であると言える。すなわち、材料は、耐熱性であり形態が安定していても、高温および腐食性ガスを特徴とする周囲環境と反応して、腐食などによって材料を劣化させる可能性があることが見出された。したがって、材料そのものが劣化するためだけでなく、材料からガスが発生し、その溶融点を低下させることなどによって炉の耐火材料に悪影響を及ぼす可能性もあるため、壁の耐用年数が短くなる。化学的にも安定している金属材料を使用することによって、それらの課題は軽減される。
【0021】
場合により、耐熱金属材料は、1000℃に加熱されたときのような、炉の動作温度に加熱されたときに保護表面酸化物層を形成する。したがって、金属材料は、先に説明したように、高温および腐食に関する課題に、より高い程度まで耐え得る。
【0022】
場合により、金属材料は、1000℃に加熱されたときのような、炉の動作温度に加熱されたときに保護Al2O3表面層を形成するアルミニウム含有合金である。Al2O3、すなわち、一般にアルミナとして公知の酸化アルミニウムは、溶融点が高く、硬度が高く、圧縮強度が高く、摩擦係数が低く、腐食環境に対する耐久性が高い。したがって、Al2O3は、材料の化学的安定性にさらなる性能をもたらし、それにより、煙道がより長持ちし、耐用期間が延長される。
【0023】
場合により、耐熱金属材料は、フェライト系鉄クロムアルミニウム合金(FeCrAl)である。
【0024】
好ましくは、金属材料は、重量パーセントで:
- Cr19~25%、好ましくは、Cr20~22%と、
- Al3~7%、好ましくは、Al4~6%と、
- 場合により、Mo1~5%、好ましくは、Mo2~4%と、
- 場合により、C最大0.1%、好ましくは、C最大0.08%と、
- 場合により、Si最大1%、好ましくは、Si最大0.7%と、
- 場合により、Mn最大0.5%、好ましくは、Mn最大0.4%と、
- 残部Feおよび不可避的不純物と
を含むフェライト系鉄クロムアルミニウム合金(FeCrAl)である。
【0025】
場合により、新たな壁部分は、工程a)からd)の完了によって1部片になるように形成される。従来の方法を使用することによって、新たな壁部分は、形成予定の各セクションを他のセクションの上に形成することで、段階的な手順で形成される必要があることが多い。そのことは、特に、壁部分が複雑な煙道の形状を有する場合または壁部分が垂直方向に高くなる場合に当てはまることがある。そのことはさらに、壁部分が垂直壁セクション全体であるときに当てはまることがある。これは、内型枠を取り除く必要があるため、および/または打設されるキャスタブル耐火材料からの高圧により内型枠の形状が変形して、壁部分全体を一度に作製することが難しくなるためである。動作の前に取り除く必要のない耐熱金属材料の内型枠を使用することによって、補修予定の壁部分が壁全体であるときでも、壁部分全体が1つの工程で行うことができることが見出された。
【0026】
場合により、キャスタブル耐火材料は、シリカベースおよび/またはアルミナベースの材料である。これらの材料は、特に、手頃な価格で使用できながらも熱に耐えるのに良好である。
【0027】
場合により、内型枠は、伸縮式の構造を有する。それにより、補修予定の壁部分の条件に合わせて簡単に調節できるより順応性のある内型枠が提供される。セクションを形成する必要がないときは、補修プロセスに必要な時間が有意に短縮されて、補修プロセスがより費用対効果の高いものにされ、炉が動作しない時間が短縮される。
【0028】
場合により、耐火壁はレンガ壁である。すなわち、本方法は、個々のレンガを適合させ、レンガや煙道の間に接合部および継ぎ目を形成するという、レンガ壁の補修の複雑さの多くが不要になるため、レンガ壁を補修するときに特に有益であることが見出されている。
【0029】
本発明は、炉用の壁部分にも関する。壁部分は、キャスタブル耐火材料から作製された主要部分と、主要部分と接触している内型枠とを含む。内型枠は、耐火壁部分の煙道の境界を定め、耐熱金属材料から作製される。したがって、炉の設置または動作の前に内型枠が取り除かれる必要のない壁部分が提供される。さらに、したがって、壁部分は、実質的に気密であり、壁のひび割れなどからのガス漏れを防ぐ。また、壁部分は、補修プロセスの前に既に予め形成して、現場での補修プロセス、すなわち、動作が停止されるときの炉内での補修プロセスを単純化し短縮して、より多くの稼働時間を炉にもたらすことができる。
【0030】
請求項1に記載の方法に関連付けて上記で言及した任意選択の構成は、壁部分にも適用される。
【0031】
したがって、本発明は、本発明による壁部分を含む炉にも関する。
【0032】
場合により、炉はコークス炉である。すなわち、コークス炉のサイズおよび構造によって、壁部分を補修するための方法は、コークス炉の場合に特に有益である可能性があることが見出された。典型的には、コークスは、コークス炉バッテリにおいて生産され、そのバッテリは、横に並んだ複数のコークス化チャンバまたはオーブンを含み、それらは、チャンバの全長にわたって延びる壁によって互いから隔てられている。コークスは、長さ方向に炉から押し出される。典型的なコークス炉の設置は、たとえば、30から100個を超える個々のコークス化チャンバまたはオーブンを横に並べて配置することを含むことがあり、各チャンバは、高さ3から7メートル、典型的には長さ14メートル以上、幅約1メートルである。各壁は、典型的には、いくつかの水平に延びる経路のセラミックレンガから構築されており、レンガは、加熱壁内で垂直および/または水平に延びる内部煙道、ベント通路、ならびに他の通路を画成するように組み立てられる。
【0033】
添付の概略図を参照しながら、本明細書で以下に非限定的な例によって本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の例示的な実施形態による方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による耐火壁の概略側面図である。
【
図3】本発明の例示的な実施形態による炉の概略上面図である。
【
図4】本発明の例示的な実施形態による壁部分の概略断面上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面は必ずしも正確な縮尺で描かれているとは限らないことと、一定の構成の寸法は分かりやすくするために誇張されている場合があることに留意されたい。
【0036】
図1は、本発明の例示的な実施形態による方法のフローチャートを示す。本方法は、炉1の耐火壁2を、
図2~
図4に示されているような壁部分3など、その壁部分3を交換することによって補修する方法である。
【0037】
本方法は:
(a)壁部分3を取り壊す工程を含む。取り壊す工程は、任意の適切な機械的手段によって実現することができる。
(b)新たな壁部分3を画成する外型枠4を現場で設置し、新たな壁部分3内に新たな煙道8を画成する内型枠5を設置する工程を含む。内型枠5は耐熱金属材料から作製される。
(c)外型枠4および内型枠5によって画成された容積内にキャスタブル耐火材料を打設し、その材料が硬化することを可能にする工程を含む。キャスタブル耐火材料は、シリカベースおよび/またはアルミナベースの材料でよいが、注型に適した任意の他の耐火材料とすることもできる。キャスタブル耐火材料の打設は、典型的には、キャスタブル耐火材料の注型を含む。
(d)外型枠4を取り除く工程を含む。外型枠4は、取り除かれるため、木材、厚紙、ファイバーボード、合板など、任意の適切な材料から作製することができる。金属材料または木材と金属の積層体から作製することもできる。外型枠4の取外しは、壁部分3が動作状態に置かれる前に外型枠4を機械的に取り除くことによって行うことができる。補修後に炉1の動作を開始するときに壁部分3を加熱するときなどに、外型枠4を焼き払うことによって取り除くこともできる。
【0038】
内型枠5の耐熱金属材料は、1000℃と1200℃との間の温度のような、炉1の動作中の温度に加熱されたとき、好ましくは、1200℃と1400℃との間の温度に加熱されたときにも、形態が安定していることが可能である。したがって、煙道8の変形を避けることができる。
【0039】
耐熱金属材料は、1000℃と1200℃との間の温度のような、炉1の動作温度に加熱されたとき、好ましくは、1200℃と1400℃との間の温度に加熱されたときにも、化学的に安定していることが可能である。したがって、煙道8の劣化および周囲の耐火材料にとって有害な可能性のあるガスの放出を避けることができる。
【0040】
図2は、本発明の例示的な実施形態による耐火壁2の概略側面図を示す。ここで、炉1の耐火壁2は、レンガ壁であるが、キャスタブル耐火材料で既に作製されている壁など、任意の他のタイプの耐火壁2とすることもできる。補修されるかまたは補修されることが意図された壁部分3の内側の切欠きが示されている。煙道8を見ることができ、煙道8は、壁2自体の内側を垂直方向に延びる垂直部分8aならびに壁2の延長に沿って水平方向に延びる水平部分8bと、それらの間の連結部分8cとを有する。煙道8の水平部分8bおよび連結部分8cは、一般にコーベルとも呼ばれる、炉1の床部分(図示せず)に組み込むことができる。
【0041】
ここで、煙道8の高さ全体をカバーして垂直方向に延びる壁部分3を見ることができる。新たな壁部分3は、工程a)からd)の完了によって1部片になるように形成することができる。壁部分3は、単一の内型枠5および単一の外型枠4を使用して壁部分3の形状を画成し、その後、型枠4と5との間に形成された容積に注型することでキャスタブル耐火材料を打設することによって1部片になるように形成でき、それにより、新たな壁部分3が形成される。型枠4、5は、互いに接合されるいくつかの部分によって作製することもできる。外型枠4は、たとえば、壁部分3を形成するために必要とされる高さまで積み重ねられたいくつかのファイバーボードなどから作製することができる。壁部分3は、各セクションが前のセクションの硬化後に互いの上に積層されることで形成することもできる。
【0042】
本発明の一実施形態において、内型枠5は、伸縮式の構造を有する。それにより、補修予定の壁部分3の条件に合わせて簡単に調節できる、より順応性のある内型枠5が提供される。
【0043】
図3は、本発明の例示的な実施形態による炉1の概略上面図を示す。
【0044】
ここで、炉1はコークス炉1である。炉1は、3つの壁2a、2b、2cの間でコークスを加熱することが意図された2つのチャンバ10を有する。中間の壁2bは現場で補修されており、新たな壁部分3を画成する外型枠4と、新たな壁部分3内に新たな煙道8を画成する内型枠5とが示されている。型枠4、5は、新たな壁部分の主要部分7を構成するキャスタブル耐火材料が打設される容積を画成する。
図3において、外型枠4を取り除く工程(d)はまだ実行されていない。言い換えれば、補修方法を完全に完了するためには、外型枠4は、炉1の動作の前に取り除かなければならない。外型枠4は、再び動作状態になるときに壁3を加熱する間などに、それを焼くことによって取り除くことができる。これは、特に、外型枠4が木製材料から作製されているときに当てはまる場合がある。
【0045】
補修予定の耐火壁2の縁部分の周りを延びるU字形の形態を有する外型枠4が示されている。外型枠4は、壁部分3の両側に位置する2つの別々の外型枠4でもよく、これは、補修予定の壁部分3が縁部分ではないが、補修予定の壁部分3の各側に残りの耐火壁2の部分を有する場合に当てはまる可能性がある。外型枠4は、補修予定の壁部分3に沿って外型枠4を1つだけ含むこともできる。これは、壁部分3の一方の側だけを補修する必要があるときに当てはまる可能性がある。
【0046】
さらに、耐火壁2bを補修する間に壁2a、2c、および補修される壁2bの残りの部分を断熱するように、壁部分3のうちの補修される領域の周りで壁2a、2b、2cに沿って載置された断熱材9を見ることができる。典型的には、コークスは、コークス炉1バッテリで生産され、そのバッテリは、横に並んだ複数のコークス化チャンバ10またはオーブンを含み、それらは、チャンバ10の全長にわたって延びる壁によって互いから隔てられている。典型的なコークス炉1の設置は、たとえば、30から100個を超える個々のコークス化チャンバ10またはオーブンを横に並べて配置することを含むことがある。したがって、
図3の炉1は、同様に最も外側の壁2a、2cに沿って延びるより多くのチャンバ(図示せず)を有するより大きいコークス炉1の一部だけを示している。動作中の壁2a、2b、2cから生成される熱を遮蔽する断熱材9を壁2a、2b、2cに沿って使用することによって、他のチャンバ(図示せず)が動作を維持したままで補修を現場で行って、炉1の稼働時間および向上した生産性を可能にすることができる。
【0047】
図4は、本発明の例示的な実施形態による壁部分3の概略断面上面図を示す。
【0048】
壁部分3は、キャスタブル耐火材料から作製された主要部分7と、主要部分7と接触している内型枠5とを含む。内型枠5は、耐火壁2部分の煙道8の境界を定め、耐熱金属材料から作製される。
【0049】
本発明の一実施形態において、壁部分3はプレハブ式とすることができる。そのようにすると、現場で打設する必要のあるキャスタブル耐火材料がさほど多くなくなり、それにより、硬化する必要のある材料が削減され、その結果、補修に必要な時間が短縮される。また、複雑な形状は現場から離れたところで作製でき、そのため、炉1の一部がメンテナンスおよび補修のために運転停止される前に既に適合性および品質が保証され、それにより、エラーのリスクおよび炉1の長期の運転停止が低減される。
【0050】
図4において、保護表面酸化物層6を有する内型枠5の耐熱金属材料が示されている。保護表面酸化物層6は、1000℃に加熱されたときのような、材料が炉1の動作温度に加熱されたとき、形成することができる。したがって、壁部分3が炉1に設置されて動作状態になるまで、層を形成することができない。しかし、壁部分3は、炉1に設置前に既にその層を形成するために予め加熱することができる。保護表面酸化物層6は、耐熱金属材料を酸素に曝露することによって単純に形成される保護表面酸化物層6など、加熱される必要なく形成されるタイプのものとすることもできる。
【0051】
耐熱金属材料は、たとえば、1000℃に加熱されたときのような、炉1の動作温度に加熱されたときに保護Al2O3表面層6を形成するアルミニウム含有合金とすることができる。たとえば、耐熱金属材料は、フェライト系鉄クロムアルミニウム合金(FeCrAl)でよい。フェライト系鉄クロムアルミニウム合金(FeCrAl)は、重量パーセントで:
- Cr19~25%、好ましくは、Cr20~22%と、
- Al3~7%、好ましくは、Al4~6%と、
- 場合により、Mo1~5%、好ましくは、Mo2~4%と、
- 場合により、C最大0.1%、好ましくは、C最大0.08%と、
- 場合により、Si最大1%、好ましくは、Si最大0.7%と、
- 場合により、Mn最大0.5%、好ましくは、Mn最大0.4%と、
- 残部Feおよび不可避的不純物と
を含むことができる。
【0052】
このような合金は、炉1の動作温度に加熱されたとき、形態が安定し、化学的に安定しており、さらに保護Al2O3表面層6を形成するため、内型枠5の材料として使用されるのに適している。
【0053】
本発明は上記で説明し図面に示す実施形態に限定されないことを理解されたい;むしろ、添付の特許請求の範囲内で多くの変更および修正を行うことができることを当業者なら認識するであろう。
【国際調査報告】