(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】積層造形によって対象物を製造するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/85 20210101AFI20240717BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240717BHJP
B22F 12/41 20210101ALI20240717BHJP
B22F 12/49 20210101ALI20240717BHJP
B22F 10/322 20210101ALI20240717BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240717BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240717BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240717BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20240717BHJP
【FI】
B22F10/85
B22F10/28
B22F12/41
B22F12/49
B22F10/322
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/268
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500461
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 NL2022050385
(87)【国際公開番号】W WO2023282741
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517182527
【氏名又は名称】アディティブ インダストリーズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ビアード、マーク アラン
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL44
4F213WL76
4F213WL78
4F213WL82
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【解決手段】積層造形によって対象物(2)を製造する装置(1)であって、
-電磁放射線(9)への曝露により固化可能な粉末材料(4)の浴を受けるプロセスチャンバ(3)と、
-前記粉末材料(4)の浴の表面レベル(L)に対して前記対象物(2)の一部を位置決めする支持体(5)と、
-前記粉末材料(4)の層の選択部分を固化させる電磁放射ビーム(9)を発生させる固化装置(7)と、
-前記電磁放射ビーム(9)を前記表面レベル(L)に沿って移動させる偏向装置(15)と、
-前記層の前記選択部分の固化中に、前記層の前記選択部分の第1部分(2A)からの熱伝導に関する第1部分(2A)熱抵抗と、前記層の前記選択部分の第2部分(2B)からの熱伝導に関する、前記第1部分(2A)熱抵抗よりも高い第2部分(2B)熱抵抗とを考慮して、前記固化装置(7)および前記偏向装置(15)を制御する制御装置(23)と、
を備えることを特徴とする装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形によって対象物(2)を製造する装置(1)であって、
-電磁放射線(9)への曝露により固化可能な粉末材料(4)の浴を受けるプロセスチャンバ(3)と、
-前記粉末材料(4)の浴の表面レベル(L)に対して前記対象物(2)の一部を位置決めする支持体(5)と、
-前記粉末材料(4)の層の選択部分を固化させる電磁放射ビーム(9)を発生させる固化装置(7)と、
-前記電磁放射ビーム(9)を前記表面レベル(L)に沿って移動させる偏向装置(15)と、
-前記層の前記選択部分の固化中に、前記層の前記選択部分の第1部分(2A)からの熱伝導に関する第1部分(2A)熱抵抗と、前記層の前記選択部分の第2部分(2B)からの熱伝導に関する、前記第1部分(2A)熱抵抗よりも高い第2部分(2B)熱抵抗とを考慮して、前記固化装置(7)および前記偏向装置(15)を制御する制御装置(23)と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記制御装置(23)は、前記層の前記選択部分の固化中に、前記固化が前記第1部分(2A)から前記第2部分(2B)に進行するように、前記偏向装置(15)を制御することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御装置(23)は、前記層の前記選択部分の固化中に、前記電磁放射ビーム(9)の移動方向を変更する前に、前記第1部分(2A)における前記電磁放射ビーム(9)が第1の距離にわたって移動されるように、かつ前記第2部分(2B)における前記電磁放射ビーム(9)が前記第1の距離よりも長い第2の距離にわたって移動されるように、前記偏向装置(15)を制御し、
好ましくは、前記第2の距離は所定の距離を超えることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御装置(23)は、前記層の前記選択部分の固化中に、前記電磁放射ビーム(9)の移動方向を変更するときに前記第1部分(2A)における前記電磁放射ビーム(9)の移動が第1の遅延の分だけ遅延されるように、かつ、前記電磁放射ビーム(9)の移動方向を変更するときに前記第2部分(2B)における前記電磁放射ビーム(9)の移動が前記第1の遅延よりも長い第2の遅延の分だけ遅延されるように、前記偏向装置(15)を制御し、
好ましくは、前記第2の遅延は所定の遅延を超えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記制御装置(23)は、前記層の前記選択部分の固化中に、前記第1部分(2A)における前記電磁放射ビーム(9)のその後の移動が角度(α)を囲むように前記偏向装置(15)を制御し、
前記角度(α)が所定の角度よりも小さい場合、前記第1部分(2A)における前記電磁放射ビーム(9)の移動は遅延されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記第1部分(2B)および前記第2部分(2B)の熱抵抗は、前記粉末材料(4)の浴の熱抵抗および前記対象物(2)の前記部分の熱抵抗に基づくことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記制御装置(23)は、前記層の前記選択部分の固化中に、前記固化装置(7)および前記偏向装置(15)を、前記第2部分(2B)に対する前記電磁放射ビーム(9)のエネルギー密度が前記第1部分(2A)に対するエネルギー密度よりも低くなるように制御し、
好ましくは、前記第2部分(2B)に対する前記エネルギー密度は所定のエネルギー密度以下であり、
好ましくは、前記第1部分(2A)に対する前記電磁放射ビームのスポット形状、スポットサイズおよび/またはハッチ間隔は前記第2部分(2B)に対する前記電磁放射ビームのスポット形状、スポットサイズおよび/またはハッチ間隔と異なることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記プロセスチャンバ(3)内のガスフロー方向のガスフローを実現する装置であって、
前記制御装置(23)は、前記層の前記選択部分の固化中に、前記プロセスチャンバ(3)内のガスフローのガスフロー方向を考慮して前記固化装置(7)および前記偏向装置(15)を制御し、
これにより、前記対象物(2)の製造中に、前記第1部分(2A)および前記第2部分(2B)への所定の熱流入が、前記表面レベル(L)に沿った前記電磁放射ビーム(9)の移動方向とは無関係に実現されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
-電磁放射線(9)への曝露により固化可能な粉末材料(4)の浴を受けるプロセスチャンバ(3)と、
-前記粉末材料(4)の浴の表面レベル(L)に対して対象物(2)の一部を位置決めする支持体(5)と、
-前記粉末材料(4)の層の選択部分を固化させる電磁放射ビーム(9)を発生させる固化装置(7)と、
-前記電磁放射ビーム(9)を前記表面レベル(L)に沿って移動させる偏向装置(15)と、
-前記層の前記選択部分の固化中に、前記層の前記選択部分の第1部分(2A)からの熱伝導に関する第1部分(2A)熱抵抗と、前記層の前記選択部分の第2部分(2B)からの熱伝導に関する、前記第1部分(2A)熱抵抗よりも高い第2部分(2B)熱抵抗とを考慮して、前記固化装置(7)および前記偏向装置(15)を制御する制御装置(23)と、
を備えた装置(1)を用いて、層順の積層造形によって対象物(2)を製造する方法(101)であって、
-前記固化装置(7)によって、前記粉末材料(4)の前記層の前記選択部分を固化するステップ(103)と、
-前記偏向装置(15)によって、前記電磁放射ビーム(9)を前記表面レベル(L)に沿って移動させるステップ(105)と、
-前記制御装置(23)によって、前記層の前記選択部分の第1部分(2A)からの熱伝導に関する第1部分(2A)熱抵抗と、前記層の前記選択部分の第2部分(2B)からの熱伝導に関する、前記第1部分(2A)熱抵抗よりも高い第2部分(2B)熱抵抗とを考慮して、前記固化装置(7)および前記偏向装置(15)を制御するステップ(107)と、
を含むことを特徴する方法。
【請求項10】
前記制御装置(23)は、前記層の前記選択部分の固化の間、前記固化が前記第1部分(2A)から前記第2部分(2B)に進行するように、前記偏向装置(15)を制御し、
前記制御するステップ(107)の間、前記偏向装置(15)は、前記固化が前記第1部分(2A)から前記第2部分(2B)に進行するように制御されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記制御装置(23)は、前記層の前記選択部分の固化中に、前記電磁放射ビーム(9)の移動方向を変更する前に、前記第1部分(2A)における前記電磁放射ビーム(9)が第1の距離にわたって移動されるように、かつ、前記電磁放射ビーム(9)の移動方向を変更する前に、前記第2部分(2B)における前記電磁放射ビーム(9)が前記第1の距離よりも長い第2の距離にわたって移動されるように、前記偏向装置(15)を制御し、
前記制御するステップ(107)の間、前記偏向装置(15)は、前記電磁放射ビーム(9)の移動方向を変更する前に前記第1部分(2A)に対する前記電磁放射ビーム(9)が前記第1の距離にわたって移動されるように、かつ、前記第2部分(2B)に対する前記電磁放射ビーム(9)が前記第1の距離よりも長い前記第2の距離にわたって移動されるように制御されることを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記制御装置(23)は、前記層の前記選択部分の固化中に、前記電磁放射ビーム(9)の移動方向を変更するとき前記第1部分(2A)に対する前記電磁放射ビーム(9)の移動が第1の遅延の分だけ遅延されるように、かつ、前記第2部分(2B)に対する前記電磁放射ビーム(9)の移動が前記第1の遅延よりも長い第2の遅延の分だけ遅延されるように、前記偏向装置(15)を制御し、
前記制御するステップ(107)の間に、前記偏向装置(15)は、前記電磁放射ビーム(9)の前記移動方向を変更するときに前記第1部分(2A)に対する前記電磁放射ビームの移動が前記第1の遅延の分だけ遅延されるように、かつ、
前記電磁放射ビーム(9)の前記移動方向を変更するときに前記第2部分(2B)に対する前記電磁放射ビーム(9)の移動が前記第1の遅延の分よりも長い前記第2の遅延の分だけ遅延されるように、制御されることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記制御装置(23)は、前記層の前記選択部分の固化中に、前記第1部分(2A)に対する前記電磁放射ビーム(9)の異なる方向へのその後の移動が第1の角度(α)を囲むように、かつ、前記第2部分(2B)に対する前記電磁放射ビーム(9)の異なる方向へのその後の移動が前記第1の角度(α)よりも大きい第2の角度(α)を囲むように、前記偏向装置(15)を制御し、
前記制御するステップ(107)の間に、前記偏向装置(15)は、前記第1部分(2A)に対する前記電磁放射ビームの異なる方向へのその後の移動が前記第1の角度(α)を囲むように、かつ、前記第2部分(2B)に対する前記電磁放射ビームの異なる方向へのその後の続の移動が前記第1の角度(α)よりも大きい前記第2の角度(α)を囲むように、制御されことを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記制御装置(23)は、前記層の前記選択部分の固化中に、前記固化装置(7)および前記偏向装置(15)を制御し、
前記制御するステップ(107)の間に、前記偏向装置(15)は、前記第2部分(2B)に対する前記電磁放射ビーム(9)のエネルギー密度が前記第1部分(2A)に対するエネルギー密度よりも低くなるように制御されることを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記装置(1)は、前記プロセスチャンバ(3)内のガスフロー方向のガスフローを実現し、
前記制御装置(23)は、前記層の前記選択部分の固化中に、前記プロセスチャンバ(3)内のガスフローの方向を考慮して、前記固化装置(7)および前記偏向装置(15)を制御し、
前記制御するステップ(107)の間に、前記固化装置(7)および前記偏向装置(15)は、前記プロセスチャンバ(3)内の前記ガスフローの方向を考慮して制御され、
好ましくは、前記第1部分(2A)および前記第2部分(2B)への
所定の熱流入が、前記表面レベル(L)に沿った前記電磁放射ビーム(9)の移動方向とは無関係に実現されるように、前記固化装置(7)および前記偏向装置(15)が制御されることを特徴とする請求項9から14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様によれば、本開示は、積層造形によって対象物を製造する装置に関する。
【0002】
第2の態様によれば、本開示は、積層造形によって対象物を製造する方法に関する。
【0003】
本開示の第1の態様による装置は、以下を備える。
-電磁放射線への曝露によって固化可能な粉末材料の浴を受容するプロセスチャンバ、
-粉末材料の浴の表面レベルに対して対象物の一部を位置決めする支持体、
-粉末材料の層の選択部分を固化させる電磁放射ビームを生成するために配置された固化装置、および
-電磁放射ビームを表面レベルに沿って移動させる偏向装置。
【背景技術】
【0004】
3Dプリンティングまたは積層造形とは、3次元対象物を製造するための様々なプロセスのいずれかを指し、このプロセスでは、コンピュータ制御の下で材料が接合または固化され、3次元対象物が作成される。
【0005】
3次元対象物の製造、特に金属対象物の積層造形における課題の1つは、相対的に高い製品品質を実現しつつ、相対的に低い製造コストを実現することにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、相対的に低い製造コストを実現しつつ、相対的に高い製品品質を実現しつつ、相対的に低い製造コストを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本開示による装置によって達成される。本装置は、層の選択部分の固化中に、層の選択部分の第1部分からの熱伝導に関する第1部分熱抵抗と、層の選択部分の第2部分からの熱伝導に関する、第1部分熱抵抗よりも高い第2部分熱抵抗とを考慮して、固化装置および偏向装置を制御する制御装置を備える。
【0008】
本開示は、3次元対象物の製造、特に金属対象物の付加製造において、粉末材料の浴の固化材料の相対的に少数の層によって支持されるか、または粉末材料の前の層の粉末材料によって支持される対象物の部品を支持する支持体が必要とされ得るという洞察に少なくとも部分的に依拠する。これは、例えば、対象物の一部が、垂直成分と等しいかそれよりも大きい水平成分を有する方向に延びている場合に起こり得る。このような支持体は、一般に、張り出した特徴を構築できるようにするため、また、熱を対象物の張り出した特徴から伝導できるようにするために使用される。このような支持体は、除去にコストがかかり、例えば、対象物の内部に支持体が必要であるにもかかわらず、対象物の完成後に除去することができない場合などは、積層造形の設計の可能性を完全に引き出すときの障壁となる。
【0009】
本開示の第1の態様による制御装置を備えた装置を提供することにより、対象物の製造は、熱伝導に関する熱抵抗を考慮して行われる。これにより、相対的に良好な熱制御が可能となる。これにより、支持体の必要性が回避されるか、または少なくとも大幅に低減される。支持体がない場合に比較的良好な熱制御が行われないと、対象物の一部の反り、粉末材料の浴の表面レベルより上の対象物の成長、材料特性の意図しない変化などの影響が生じる可能性があることに留意されたい。言い換えれば、制御装置は、望ましくない変形、微細構造が回避され、相対的に大きく張り出した特徴が実現されるように、熱流の速度と電磁放射ビームの走査を制御するために配置される。
【0010】
好ましくは、制御装置は、層の選択部分の固化中に、固化が第1部分から第2部分へと進行するように、偏向装置を制御する。層の選択部分の第1部分を固化させることにより、第1部分の熱抵抗が低減される。第1の熱抵抗の低減は、第2部分の熱抵抗の低減に有益であり得る。第2部分の熱抵抗が減少することにより、第2部分から熱を伝導する能力が増加する。これにより、相対的に高い製品品質を実現しつつ、相対的に短い処理時間を可能にする。言い換えれば、第1部分から第2部分に進むことで、熱が伝導されにくい部分の固化が回避されるか、少なくとも低減される。
【0011】
この点に関して、制御装置は、電磁放射ビームのジグジグまたはジグザグの動きを用いて、固化が第1部分から第2部分へと進行するように、偏向装置を制御する。本開示の文脈において、ビームのジグジグ運動は、各ライン走査の固化プロセスが同じ側から開始する走査運動として理解される。一方、ジグザグ運動は、後続の運動の固化プロセスが反対側から開始する運動を指す。
【0012】
本開示による装置の一実施の形態において、制御装置は、層の選択部分の固化中に、電磁放射ビームの移動方向を変更する前に第1部分に対する電磁放射ビームが第1の距離にわたって移動されるように、かつ、電磁放射ビームの移動方向を変更する前に第2部分における電磁放射ビームが第1の距離よりも長い第2の距離にわたって移動されるように、偏向装置を制御する。第1の距離よりも長い第2の距離は、相対的に長いスキャン経路を使用することによって、部分の熱入力間の時間を長くするのに有益である。これは、相対的に高い製品品質を実現するために有益である。
【0013】
この点で、第2の距離が所定の距離を超えると有益である。第2の距離が所定の距離を超えることは、電磁放射ビームの所定の移動速度において、第2部分に対する熱入力間の閾値時間を設定するために有益である。これは、相対的に高い製品品質を実現するために有益である。
【0014】
好ましくは、制御装置はさらに、層の選択部分の固化中に、電磁放射ビームの移動方向を変更するときに第1部分に対する電磁放射ビームの移動が第1の遅延の分だけ遅延されるように、かつ、電磁放射ビームの移動方向を変更するときに第2部分に対する電磁放射ビームの移動が第1の遅延よりも長い第2の遅延の分だけ遅延されるように、偏向装置を制御する。第1の遅延よりも長い第2の遅延は、相対的に長い遅延を使うことによって、一部の熱入力間の時間を増加させるのに有益である。相対的に長い遅延は、より多くの熱が第2部分から伝導されることを可能にする。これは、相対的に高い製品品質を実現するために有益である。
【0015】
この点で、第2の遅延が所定の遅延を超えることが好ましい。第2の遅延が所定の遅延を超えることは、第2部分に対する熱入力の間に閾値時間を設定し、第2部分から熱が伝導されることを可能にするために有益である。これは、相対的に高い製品品質を実現するために有益である。
【0016】
第2の遅延が第2部分の熱抵抗に依存すると有利である。好ましくは、第2の遅延は、第2部分の熱抵抗の関数として増加する。相対的に長い遅延は、第2部分の熱抵抗が相対的に高い場合に、より多くの熱が伝導されることを可能にする。これは、相対的に高い製品品質を実現するために有益である。
【0017】
好ましくは、第2の遅延の間、偏向装置は、層の選択部分の第1部分またはさらなる部分において、電磁放射ビームを表面レベルに沿って移動させる。
【0018】
制御装置は、層の選択部分の固化中に、第1部分に対する電磁放射ビームのその後の移動が角度を囲むように偏向装置を制御すると有利である。この場合、角度が所定の角度よりも小さいときに、第1部分に対する電磁放射ビームの移動が遅延されるように偏向装置を制御すると有利である。
【0019】
制御装置が、層の選択部分の固化中に、第1部分に対する電磁放射ビームの異なる方向へのその後の動きが第1の角度を囲むように、かつ、第2部分に対する電磁放射ビームの異なる方向へのその後の動きが第1の角度よりも大きい第2の角度を囲むように、偏向装置を制御すると有益である。これは、第2部分の一部において投入される熱量を低減し、それによって相対的に高い製品品質を実現できるので有益である。
【0020】
この点で、第2の角度が所定の角度を超えるとさらに好ましい。
【0021】
本開示による装置の一実施の形態において、第1および第2部分の熱抵抗は、材料の浴の熱抵抗および対象物の一部の熱抵抗に基づく。本開示は、粉末材料の熱抵抗が、対象物の一部の熱抵抗、すなわち、電磁放射ビームによって溶融された後の粉末材料が、その後の冷却中に固化し、それによって対象物の一部を形成する部分の熱抵抗と大きく異なる可能性があるという洞察に少なくとも部分的に依拠している。対象物の製造中、固化装置による粉末材料の局所的な固化により、対象物の一部または材料槽の局所的な熱抵抗が変化し、対象物の品質に影響を与える可能性がある。
【0022】
制御装置は、層の選択部分の固化中に、固化装置および偏向装置を制御してもよい。第2部分に対する電磁放射ビームのエネルギー密度が、第1部分に対する電磁放射ビームのエネルギー分布よりも低くなるようにすると有利である。これにより、第2部分における入熱量を、第1部分における入熱量よりも小さくすることができる。これにより、相対的に高い品質を有する対象物を実現できるので有益である。
【0023】
好ましくは、第2部分のエネルギー密度は、所定のエネルギー密度以下である。これは、所定の閾値以下である第2部分における熱量入力を実現するので、相対的に高い品質を有する対象物を実現するのに有益である。
【0024】
好ましくは、第1部分に対する電磁放射ビームのスポット形状、スポットサイズおよび/またはハッチ間隔は、第2部分に対する磁放射ビームのスポット形状、スポットサイズおよび/またはハッチ間隔と異なる。これは、第1部分における熱量入力よりも小さい第2部分における低い熱量入力を実現し、それによって相対的に高い品質を有する対象物を実現するために有益である。
【0025】
好ましくは、電磁放射ビームのハッチ間隔は、第1部分と第2部分とで実質的に同じであり、好ましくは同じである。これは、相対的に高い製品品質を実現しつつ、相対的に低い製造コストを実現できるので有益である。本開示の文脈では、ハッチング距離は、電磁放射ビームの隣り合うスキャン経路の中心線間の距離として理解される。
【0026】
好ましくは、第1部分および第2部分における電磁放射ビームのハッチング間隔の比は、0.25~1.0の範囲内にあり、好ましくは、0.25~0.75の範囲内にあり、より好ましくは、0.25~0.5である。
【0027】
本実施の形態の装置は、プロセスチャンバ内のガスフロー方向のガスフローを実現してもよい。制御装置は、層の選択部分の固化中に、プロセスチャンバ内のガスフローのガスフロー方向を考慮して、固化装置および偏向装置を制御すると、有益である。所定の方向へのプロセスチャンバ内のガスフローは、一般に、例えば、層の選択部分からヒュームおよび空気中の粒子を除去するために使われることに留意されたい。さらに、粉末材料の浴の表面レベルでプロセスパラメータの望ましくない変動を引き起こす可能性のある電磁放射ビームとヒュームとの干渉のリスクを回避するか、少なくとも大幅に低減するために、対象物の製造中にガスフローの方向を考慮できる。
【0028】
本開示は、少なくとも部分的に、電磁放射ビームの移動方向を変更するときにガスフロー方向が高速に変更されない可能性があるという洞察に依拠する。この場合、電磁放射ビームがヒュームを通過し、それにより、第1部分または第2部分において相対的に低い熱量入力を引き起こす可能性がある。本開示による装置は、好ましくは、ガスフロー方向を考慮し、制御装置によって、対象物の製造中に、第1部分および第2部分における所定の熱量投入が、表面レベルに沿った電磁放射ビームの移動方向とは無関係に実現されるように、固化装置および偏向装置を制御する。これは、相対的に高い品質を有する対象物を実現しつつ、相対的に短い処理時間を可能にするので有益である。
【0029】
好ましくは、制御装置は、層の選択部分の固化中に、層の選択部分の第1部分および第2部分を支持する対象物の部分の層の数を考慮して、固化装置および/または偏向装置を制御する。層の選択部分の第2部分の表面レベル以下の、対象物の部分の層の数が相対的に少ないと、相対的に高い第2部分の熱抵抗が生じる可能性がある。
【0030】
この点に関して、制御装置は、層の選択部分の固化中に、所定の層数の閾値を考慮して、固化装置および/または偏向装置を制御すると有益である。
【0031】
好ましくは、制御装置は、層の選択部分の固化中に、第2部分における電磁放射ビームが、第1部分から離れる方向に表面レベルに沿って移動するように、偏向装置を制御する。
【0032】
制御装置は、層の選択部分の固化中に、層の選択部分の第2部分における熱流が、選択部分の第2部分における熱流よりも低いかまたは等しくなるように、固化装置および偏向装置を制御すると有利である。
【0033】
制御装置は、層の選択部分の固化中に、第2部分の最高温度が第1部分の最高温度以下となるように、固化装置および偏向装置を制御すると有益である。
【0034】
本開示による装置の一実施の形態において、装置はさらに以下を備える。
-層の選択部分の温度を検出する検出配置部、
-検出された温度を受信し、検出された温度に基づいて、層の選択部分を固化させる固化装置および/または偏向装置の更新されたプロセス設定を計算するプロセッサユニット。
制御装置は、更新されたプロセス設定を受信し、更新されたプロセス設定に従って、層の選択部分を固化させる固化装置および偏向装置を制御する。
【0035】
第2の態様によれば、本開示は、以下を含む装置を用いて、層シーケンスで層ごとに付加製造によって対象物を製造する方法に関する。
-電磁放射線への曝露によって固化可能な粉末材料の浴を受容するプロセスチャンバ、
-粉末材料の浴の表面レベルに対して対象物の一部を位置決めする支持体、
-粉末材料の層の選択部分を固化させる電磁放射ビームを発生させる固化装置、
-電磁放射ビームを表面レベルに沿って移動させる偏向装置、
-層の選択部分の固化中に、層の選択部分の第1部分の熱伝導に関する第1部分熱抵抗と、層の選択部分の第2部分の熱伝導に関する、第1部分熱抵抗よりも高い第2部分熱抵抗とを考慮して、固化装置および偏向装置を制御する制御装置。
本方法は、以下のステップを含む。
-固化装置によって、粉末材料の層の選択部分を固化するステップ、
-偏向装置によって、電磁放射ビームを表面レベルに沿って移動させるステップ、
-制御装置によって、層の選択部分の第1部分の熱伝導に関する第1部分熱抵抗と、層の選択部分の第2部分の熱伝導に関する、第1部分熱抵抗よりも高い第2部分熱抵抗とを考慮して、固化装置および偏向装置を制御するステップ。
【0036】
第2の態様による方法の実施の形態は、本開示の第1の態様による装置の実施の形態に対応する。第2の態様による方法の利点は、先に提示した本開示の第1の態様による装置の利点に対応する。
【0037】
この点に関して、制御装置は、層の選択部分の固化の間に、固化が第1部分から第2部分へと進行するように偏向装置を制御すると有益であり、制御するステップの間に、偏向装置は、固化が第1部分から第2部分へと進行するように制御されると有益である。層の選択部分の第1部分を固化させることにより、第1部分熱抵抗が低減される。第1部分熱抵抗を低減することは、第2部分熱抵抗を低減するために有益であり得る。第2部分熱抵抗が減少することにより、第2部分から熱を伝導する能力が増加し、それにより、相対的に高い製品品質を実現しつつ、相対的に短い処理時間を可能にする。言い換えれば、第1部分から第2部分に進むことで、熱が伝導されにくい部分の固化が回避されるか、少なくとも低減される。
【0038】
好ましくは、制御装置は、層の選択部分の固化中に、電磁放射ビームの移動方向を変更する前に第1部分における電磁放射ビームが第1の距離にわたって移動されるように、かつ、電磁放射ビームの移動方向を変更する前に第2部分における電磁放射ビームが第1の距離よりも長い第2の距離にわたって移動されるように、偏向装置を制御する。この場合、制御するステップの間に、偏向装置は、電磁放射ビームの移動方向を変更する前に第1部分における電磁放射ビームが第1の距離にわたって移動されるように、かつ、電磁放射ビームの移動方向を変更する前に第2部分における電磁放射ビームが第1の距離よりも長い第2の距離にわたって移動されるように制御される。第1の距離よりも長い第2の距離は、相対的に長いスキャン経路を使用することによって、部分の熱入力間の時間を長くするのに有益である。これは、相対的に高い製品品質を実現するために有益である。
【0039】
本開示による方法の一実施の形態において、制御装置は、層の選択部分の固化中に、電磁ビームの移動方向を変更するときに、第1部分における電磁放射ビームの移動が第1の遅延だけ遅延されるように、かつ、第2部分における電磁放射ビームの移動が第1の遅延よりも長い第2の遅延だけ遅延されるように、偏向装置を制御する。この場合、電磁放射ビームの移動方向を変更するとき、制御するステップの間に、偏向装置は、電磁放射ビームの移動方向を変更するときに、第1部分における電磁放射ビームの移動が第1の遅延によって遅延されるように、かつ、電磁放射ビームの移動方向を変更するときに、第2部分における電磁放射ビームの移動が第1の遅延よりも長い第2の遅延によって遅延されるように制御される。第1の遅延よりも長い第2の遅延は、相対的に長い遅延を使用することによって、部分の熱入力間の時間を増加させるのに有益である。相対的に長い遅延は、より多くの熱が第2部分から伝導されることを可能にする。これは、相対的に高い製品品質を実現するために有益である。
【0040】
好ましくは、制御装置は、層の選択部分の固化中に、第1部分における電磁放射ビームの異なる方向への後続の動きが第1の角度を囲むように、かつ、第2部分における電磁放射ビームの異なる方向への後続の動きが第1の角度よりも大きい第2の角度を囲むように、偏向装置を制御する。制御するステップの間に、第1部分における電磁放射ビームの異なる方向へのその後の動きが第1の角度を囲み、第2部分における電磁放射ビームの異なる方向へのその後の動きが第1の角度よりも大きい第2の角度を囲むように、偏向装置が制御される。これは、第2部分の一部において投入される熱量を低減し、それによって相対的に高い製品品質を実現するために有益である。
【0041】
好ましくは、制御装置は、層の選択部分の固化中に、第2部分に対する電磁放射ビームのエネルギー密度が第1部分に対する電磁放射ビームのエネルギー密度よりも低くなるように、固化装置および偏向装置を制御する。制御するステップの間に、偏向装置は、第2部分に対する電磁放射ビームのエネルギー密度が第1部分に対する電磁放射ビームのエネルギー密度よりも低くなるように制御される。これは、第1部分における熱量入力よりも小さい第2部分における熱量入力を実現し、それによって相対的に高い品質を有する対象物を実現するために有益である。
【0042】
好ましくは、制御装置は、層の選択部分の固化中に、電磁放射ビームのスポットサイズおよび/またはスポット形状が第2部分と第1部分とで異なるように、固化装置および偏向装置を制御する。制御するステップの間に、スポットサイズ、スポット形状および/またはハッチ間隔が第2部分と第1部分とで異なるように、偏向装置が制御される。これは、第1部分における熱量投入よりも小さい第2部分における熱量投入を実現し、それによって相対的に高い品質を有する対象物を実現するために有益である。
【0043】
本開示の第2の態様による方法の一実施の形態において、装置は、プロセスチャンバ内のガスフロー方向のガスフローを実現する。制御装置は、層の選択部分の固化の間に、プロセスチャンバ内のガスフローの方向を考慮して、固化装置および偏向装置を制御する。制御するステップの間、固化装置および偏向装置は、プロセスチャンバ内のガスフローの方向を考慮して制御される。好ましくは、固化装置および偏向装置は、第1部分および第2部分における所定の熱流入が、表面レベルに沿った電磁放射ビームの移動方向とは無関係に実現されるように制御される。
【0044】
好ましくは、方法は、以下のステップをさらに含む。
-計算ユニットによって、第1部分の熱抵抗および第2部分の熱抵抗を考慮して、偏向装置のプロセス設定を計算するステップであって、プロセス設定が、表面レベルに沿って電磁放射ビームを移動させるベクトルを含むステップ、
-制御装置によって、プロセス設定を受信するステップ。
この場合、制御するステップにおいて、制御装置が、プロセス設定に従って偏向装置を制御する。
【0045】
この点で、計算するステップおよび受信するステップが、固化するステップ、移動するステップおよび制御するステップの前に実行されると有益である。この場合、固化するステップの間に、粉末材料の第1の選択層部分が、対象物を製造するために固化される。オフラインシミュレーション中にプロセス設定を事前に計算することは、対象物の製造を開始する前に比較的短いダウンタイムを実現するために有益である。さらに、オフラインシミュレーションにより、異なるプロセスパラメータからなる複数の戦略を評価し、相対的に低い製造コストを実現しながら相対的に高い製品品質を実現できるプロセス設定に到達することができる。
【0046】
本開示による方法の一実施の形態において、方法は、以下のステップをさらに含む。
-検出配置によって、層の選択部分の温度を検出するステップ、
-プロセッサユニットによって、検出された温度を受信するステップ、
-処理装置によって、検出された温度に基づいて、偏向装置の更新されたプロセス設定を計算するステップであって、好ましくは、更新されたプロセス設定が、電磁放射ビームを表面レベルに沿って移動させる更新されたベクトルを含むステップ、
-制御装置によって、更新されたプロセス設定を受信するステップ。
この場合、制御するステップにおいて、制御装置が、更新されたプロセス設定に従って偏向装置を制御する。
【0047】
対象物の製造中に、検出された温度に基づいて更新されたプロセス設定を計算することは、相対的に低い品質の対象物を製造するリスクを回避するか、または少なくとも大幅に低減するために有益である。
【0048】
好ましくは、固化するステップの間、層の選択部分の第1部分は、層の選択部分の第2部分が固化される前に固化される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本開示による方法および装置の実施の形態を、添付の概略図によって説明する。
【
図1】本開示の第1の態様による付加製造によって対象物を製造する装置の垂直断面を示す図である。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、本開示による付加製造によって製造される対象物の、それぞれ上面図および断面側面図である。
【
図3】
図3Aおよび3Bは、
図2の対象物の最上層のスキャン経路を示し、それぞれ上面図および断面側面図である。
【
図4】本開示による付加製造によって製造される対象物のボクセルの2つの後続スキャン経路を示す図である。
【
図5】本開示の第2の態様による付加製造によって対象物を製造する方法を示す図である。
【
図6】本開示の第2の態様による付加製造によって対象物を製造する別の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1に、付加製造によって対象物2を製造するために配置された装置1の垂直断面を示す。装置1は、複数のフレーム部品11、12、13から構築され、電磁放射ビーム9への曝露によって固化可能な粉末材料4の浴を受け入れるプロセスチャンバ3を備える。プロセスチャンバ3は、実質的に気密であり、電磁放射線がプロセスチャンバ3に入ることのできる上壁33によって上側で囲まれている。プロセスチャンバ3は、四方を側壁で囲まれており、そのうちの対向する側壁31と側壁32のみが示されている。粉末材料の浴4は、供給容器(図示せず)から供給される。装置1の下部フレーム部分11には、シャフトが設けられており、そこには、粉末材料の浴4の表面レベルLに対して、製造される対象物2の1つまたは複数の部品を位置決めする支持体5が設けられている。上壁33と表面レベルLとの間の距離は一定である。支持体5は、シャフト内に移動可能に設けられており、対象物2の層を固化させた後、支持体5を下降させるようになっている。
【0051】
装置1の上部13には、粉末材料4の層の選択部分を固化させる電磁放射ビーム9を発生させる固化装置7が設けられている。図示の実施の形態では、固化装置7はレーザ装置であり、支持体5上に設けられた粉末材料4を溶融させるために、レーザ光の形態の電磁放射ビーム9を生成するように配置されている。レーザ装置7によって放射された電磁放射ビーム9は、偏向装置15によって偏向される。偏向装置15は、回転可能な光学素子17を用いて、電磁放射ビーム9を粉末材料4の層の一部の表面Lに沿って移動させる。偏向装置15の回転可能な光学素子17の位置に応じて、電磁放射線は、一例として、放射線19、21に従って放射され、それにより、表面レベルLにおけるスキャン経路を規定する。装置1は、粉末材料4の層の選択部分の固化中に、レーザ装置7および偏向装置15を制御する制御装置23を備える。装置1には、アルゴンや窒素のような不活性ガスをプロセスチャンバ3内へ、またはプロセスチャンバ3を通して供給または流す開口部6が設けられている。
【0052】
装置1はさらに、層2’の選択部分の温度を検出する検出装置25と、検出された温度を受信し、検出された温度に基づいて層2’の選択部分を固化するレーザ装置7および/または偏向装置15の更新されたプロセス設定を計算するプロセッサユニット27とを備える。制御装置23は、更新された工程設定を受信し、更新された工程設定に従って、層2’の選択部分を固化するレーザ装置7および偏向装置15を制御する。
【0053】
例えば
図2Aおよび
図2Bに示すように、対象物2は層ごとに製造される。粉末材料の第1の層4が支持体5上に設けられる。粉末材料4の層の選択部分は、それぞれの粉末材料4を溶融するために、電磁放射ビーム9によって露出される。冷却後、製造される対象物2の固化部分が形成される。製造される対象物2の第1の層を形成した後、支持体5を下降させ、粉末材料4の後続の層を第1の層の上に与える。ここで、第1の層は、既に形成された対象物2の第1の層と、まだ固化していない粉末材料4とからなる。製造される対象物2の後続の層は、粉末材料4の後続の層で固化される。対象物2の後続の層2’は、それに応じて、既に形成された対象物2の層2”の上およびまだ固化されていない粉末材料4の層4’’の上にある粉末材料4の層で製造される。最終的に、製造される対象物2が形成される。対象物2の各部分を固化し、溶融した粉末材料を冷却するために、層の選択部分の各部分に熱制御が必要である。熱制御が悪いと、計画外の成長、部品の反り、製造可能な対象物の制限など、多くの望ましくない影響が生じる。
【0054】
固化される対象物2の後続の層2’の選択部分は、部分的には既に固化された対象物2の層2”の上に位置する一方、部分的には製造される対象物2の一部ではないので、まだ固化していない粉末材料4’’の上に位置する。粉末材料4’および4”の熱抵抗は、固化材料2”の熱抵抗よりも高い。これは、熱が、粉末材料4”上にその下側で直接静止している対象物2の層2’からよりも、既に固化している対象物2の一部に隣接またはその真上に位置する対象物2の一部から、より容易に伝導されることを意味する。
【0055】
粉末材料4’の層の選択部分2’の固化の間、制御装置23は、第1部分2aからの熱伝導に関する第1部分熱抵抗を考慮してレーザ装置7および偏向装置15を制御し、第2部分の熱伝導に関する第2部分熱抵抗を考慮してレーザ装置7および偏向装置15を制御する。第2部分熱抵抗は、第1部分熱抵抗よりも高く、これは熱が第2部分2Bよりも第1部分2Aから伝導しやすいことを意味する。第1部分2Aおよび第2部分2Bの熱抵抗は、粉末材料4の熱抵抗および対象物2の既に実現されている部分の熱抵抗に基づく。
【0056】
本開示による対象物2の製造例を
図3Aおよび
図3Bに示す。
図3Aは、
図3Bの断面側面図に概略的に示されるように、製造される対象物2の最上層2’の上面を概略的に示す。破線の矢線は、製造される対象物2の層2’のそれぞれのスキャン経路を示す。制御装置23は、矢印Sで示すように、電磁放射ビーム9、ひいては固化が、熱抵抗の低い第1部分2Aから熱抵抗の高い第2部分2Bへと進行するように、レーザ装置7および偏向装置15を制御する。第2部分2Bで発生した熱の一部は、第2部分2Bから第1部分2Aに向かって、矢印Sで示すスキャン経路の反対方向に、熱流方向Hに向けられる。
【0057】
層2’が生成されるために、電磁放射ビーム9は、
図3Aにおいて矢印S1~S4で続けて示されるように、ジグジグパターンで第1の距離にわたって最初に移動される。ジグジグパターンは、隣接するスキャン経路が同じ方向に進行するパターンとして理解される。層2’の第1部分2Aが生成されるとき、電磁放射ビーム9の移動方向は、後続の矢印S5およびS6によって示されるように、電磁放射ビーム9がジグジグパターンで第2の方向に移動されるように変更される。対象物2の各層は、複数の部分に分割されてもよい。良好な熱制御を実現するために、複数の部分の各部分は、固化後に冷却するのに十分な時間が必要である。長いスキャン経路を使用することにより、部分ごとの熱入力間の時間が長くなり、良好な熱制御が実現される。あるいは、電磁放射ビーム9は、ジグザグパターン、すなわち隣接するスキャン経路が逆方向に進行するパターンで、第1部分2Aから離れて進行してもよい。
【0058】
本開示による、複数の部分の所与の部分ごとの熱入力間の時間の増加を実現する別の方法は、層2’の選択部分の固化の間に、偏向装置15を、第1部分2Aにおける電磁放射ビーム9の移動が第1の遅延の分だけ遅延され、かつ、第2部分2Bにおける電磁放射ビームの移動が第1の遅延よりも長い第2の遅延の分だけ遅延されるように、制御することである。
図3Bに関連して、遅延は、熱流Hの方向とは反対に増加する。この結果、層2’の左側部分において、熱抵抗が最も高いため、製造される第2の遅延が長くなる。この結果、製造される層2’の右側の部分では、少なくとも第2の遅延より短い第1の遅延が生じる。制御装置23は、例えば、複数の部分の別の部分を固化する前に所定の時間待機することによって、または複数の現在部分を固化し続ける前に層2’とは別の離れた部分を固化することによって、異なる部分の遅延を制御することができる。
【0059】
熱制御のためのさらに別の方法は、層2’の選択部分の固化中に、第2部分2Bに対する電磁放射ビーム9のエネルギー密度が第1部分2Aに対する電磁放射ビーム9のエネルギー密度よりも低くなるように、レーザ装置7および偏向装置15を制御することである。これは、例えば、電磁放射ビーム9のスポット形状またはスポットサイズを変化させることによって実現できる。制御装置23は、レーザ装置7のパワーおよび/または表面レベルLにおける電磁放射ビーム9のスキャン速度を制御することによって、電磁放射ビーム9のエネルギー密度を制御する。従って、第1部分2Aにおけるレーザ出力および/またはスキャン速度を、第2部分2Bよりも高くすることができる。
【0060】
図4は、本開示による対象物2の部分22の一部を固化するための2つのその後のスキャン経路S7およびS8を示す。スキャン経路S8およびS9に対応する電磁放射ビーム9の2つのその後の動きは、角度αを囲む。角度αが相対的に小さい場合、スキャン経路S9は、表面レベルLにおける電磁放射ビーム9の幅に起因してスキャン経路S8と重なる。この結果、それぞれの部分22における熱入力エネルギーが高くなる。所定の部分あたりの熱入力が高くなりすぎるのを避けるために、制御装置23は、層2’の選択部分の固化中に、角度αが所定の角度よりも小さい場合に、電磁放射ビーム9の移動が遅延されるように、偏向装置15を制御するように配置される。
【0061】
さらに、本開示による所与の空間ボクセル当たりの熱入力間の時間の増加を実現するために、制御装置23は、層の選択部分の固化中に、第1部分2Aに対する電磁放射ビーム9の異なる方向への後続の動きが第1の角度αを囲み、第2部分2Bにおける電磁放射ビーム9の異なる方向へのその後の動きが第1の角度αよりも大きい第2の角度αを囲むように、偏向装置15を制御する。
【0062】
さらに、装置1は、開口部6からプロセスチャンバ3内へ、またはプロセスチャンバ3を通ってガスを供給することにより、プロセスチャンバ3内でガスフロー方向のガスフローを実現する。本閉鎖部による部分ごとの熱入力間の時間の増加を実現するための追加的な方法において、制御装置23は、層2’の選択部分の固化中に、対象物2の製造中に、第1部分2Aおよび第2部分2Bにおける所定の熱流入が、表面レベルLに沿った電磁放射ビーム9の移動方向とは無関係に実現されるように、プロセスチャンバ3内のガスフロー方向を考慮して、レーザ装置7および偏向装置15を制御する。
【0063】
図5は、前述の装置1を用いた付加製造によって対象物2を製造する方法101を示す。固化の第1のステップ103では、粉末材料4の層の選択部分がレーザ装置によって固化される。移動ステップ105の間、電磁放射ビーム9は、偏向装置15によって、それぞれの走査経路に従って表面レベルLに沿って移動される。その後、方法101の制御ステップ107の間、レーザ装置7および偏向装置15は、層の選択部分の第1部分2Aからの熱伝導に関する第1部分2Aの熱抵抗と、層の選択部分の第2部分2Bの熱伝導に関する第1部分2Aの熱抵抗よりも高い第2部分2Bの熱抵抗とを考慮して、制御装置23によって制御される。
【0064】
前述したように、制御ステップ107の間、制御装置23は、所定の部分ごとの熱流入間の時間の増加を実現する異なる方法を実現するために、レーザ装置7および/または偏向装置15を制御する。
【0065】
図6は、前述の装置1を用いて、付加製造によって対象物2を製造する別の方法201を示す。この方法201は、方法101について前述したように、固化ステップ103と、移動ステップ105と、制御ステップ107と、を備える。
【0066】
移動ステップ105の前に、方法201は、部分ごとの熱入力間の時間の増加を実現するために提案された方法のうちの1つまたは複数を使用することによって、第1部分2Aの熱抵抗および第2部分2Bの熱抵抗を考慮する、偏向装置15のプロセス設定のための計算ステップ104をさらに備える。計算ステップ104は、プロセッサユニット27に配備された計算ユニットによって実行される。プロセス設定は、電磁放射ビーム9を表面レベルLに沿って移動させるベクトルからなる。移動ステップ105の後、制御ステップ107の前に、プロセス設定は、受信ステップ106の間に制御装置23によって受信される。その後、制御ステップ107の間に、制御装置23は、プロセス設定に従って偏向装置15を制御する。
【0067】
プロセス設定に従って偏向装置15を制御するステップ107の後、検出ステップ108の間、層2’の選択部分の温度が検出装置25によって測定される。受信ステップ109の間に、検出された温度がプロセッサユニット27によって受信される。その後、検出された温度に基づいて偏向装置15の更新されたプロセス設定が計算ステップ104の間に計算される。更新されたプロセス設定は、電磁放射ビーム9を表面レベルLに沿って移動させる更新されたベクトルからなる。
【0068】
計算ステップ104、移動ステップ105、受信ステップ106、制御ステップ107、検出ステップ108、および受信ステップ109のそれぞれのループは、対象物2が製造されるまで周期的に繰り返される。
【国際調査報告】