(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】シトラスファイバーを含有する飲料及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
A23C 9/152 20060101AFI20240717BHJP
A23L 2/66 20060101ALI20240717BHJP
A23C 9/00 20060101ALI20240717BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20240717BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A23C9/152
A23L2/00 J
A23C9/00
A23L2/38 P
A23L2/52
A23L2/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500495
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 US2022036681
(87)【国際公開番号】W WO2023283487
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】202110779247.8
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391026058
【氏名又は名称】ザ コカ・コーラ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ボヤ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジア
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,フジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ,トゥシャール
(72)【発明者】
【氏名】ドン,チョンボ
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC15
4B117LG17
4B117LK13
4B117LK18
4B117LL04
(57)【要約】
ミルクベース及び0.3‰~5‰のミルクベースに基づくシトラスファイバーを含む飲料であって;飲料を調製するために使用されるシトラスファイバー原料は、50%~100%の総食物繊維を含有し、且つ100μm~300μmの粒径D99を有する、飲料が記載される。飲料を調製するための方法も開示される。シトラスファイバー原料の指数及びシトラスファイバー原料対ミルクベースの比は、調製プロセスにおいて厳密に制御されることから、飲料は、中等度の粘度及び良好な味を有し、ガムなどの安定剤を添加しなくても長期安定性を維持し得る。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミルクベース及び0.3‰~5‰のミルクベースに基づくシトラスファイバーを含む飲料であって;前記飲料を調製するために使用されるシトラスファイバー原料は、50%~100%の総食物繊維を含み、且つ100μm~300μmの粒径D99を有する、飲料。
【請求項2】
前記飲料を調製するために使用される前記シトラスファイバー原料は、80%~100%の総食物繊維を含み、且つ200μm~300μmの粒径D99を有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
前記飲料を調製するために使用される前記シトラスファイバー原料は、1%の濃度で70~90℃の熱水に溶解及び分散され、4000rpmで15~20分間の高剪断後、25℃に冷却され、前記得られた分散体は、50センチポアズ~300センチポアズ(0.05Pa・s~0.3Pa・s)の粘度を有する、請求項1又は請求項2に記載の飲料。
【請求項4】
前記飲料を調製するために使用される前記シトラスファイバー原料は、1%の濃度で70~90℃の熱水に溶解及び分散され、4000rpmで15~20分間の高剪断後、25℃に冷却され、前記得られた分散体は、100センチポアズ~250センチポアズ(0.1Pa・s~0.25Pa・s)の粘度を有する、請求項1又は請求項2に記載の飲料。
【請求項5】
前記飲料を調製するために使用される前記シトラスファイバー原料は、10~20倍の水分保持特性を有する、請求項1又は請求項2に記載の飲料。
【請求項6】
前記飲料は、懸濁液安定剤を含有しない、請求項1又は請求項2に記載の飲料。
【請求項7】
シトラスファイバーを含有する飲料を調製するための方法であって、
1)50%~100%の総食物繊維を含み、且つ100μm~300μmの粒径D99を有するシトラスファイバー原料を提供することと;
2)前記シトラスファイバー原料を水と混合し、前記混合物の固体-液体比が1:30~1:500であるように、スラリー相を形成する、
任意選択的に、前記シトラスファイバー原料及び他の固体粒子成分を水と混合し、前記混合物の固体-液体比が1:30~1:500であるように、スラリー相を形成することと;
3)ステップ2)において得られた前記スラリー相をミルクベースと混合し、前記飲料が0.3‰~5‰の前記ミルクベースに基づくシトラスファイバーを含有するようにすることと;
4-1)ステップ3)において得られた前記混合物を滅菌することと;
5-1)ステップ4)における滅菌後の前記混合物を60~75℃の温度で均質化し、平均圧力パラメータを以下のようにすること:100バール~300バール(10MPa~30MPa)の一次圧、二次圧は25バール~150バール(2.5MPa~15MPa)である、前記一次圧と前記二次圧との間の圧力差は50バール~200バール(5MPa~20MPa)である;又は
4-2)ステップ3)において得られた前記混合物を60~75℃の温度範囲にわたって均質化し、平均圧力パラメータを以下のようにすることと:100バール~300バール(10MPa~30MPa)の一次圧、二次圧は25バール~150バール(2.5MPa~15MPa)である、前記一次圧と前記二次圧との間の圧力差は50バール~200バール(5MPa~20MPa)である;
5-2)ステップ4)において得られた前記均質化混合物を滅菌することと、
を含む方法。
【請求項8】
前記ステップ2)において、高剪断のパラメータ範囲が3000~6000rpm/分、剪断時間が10~40分であるように、高剪断を用いて、前記混合を完了する;又は60~85℃で15~35分間のサイクル剪断により、前記混合を完了する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ5-1)又はステップ4-2)に記載される均一な圧力差は、70バール~150バール(7MPa~15MPa)である、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記他の固体粒子組成物は、チョコレート塊、ココア粉末、茶粉末及びナッツ粉末からなる群から選択される、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料及びその調製方法に関する。具体的に、本発明は、シトラスファイバーを含有する飲料及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シトラスファイバーは、可溶性食物繊維(SDF)及び不溶性食物繊維(IDF)を含む、タンジェリン、オレンジ、レモンなどの果実の果皮、皮、及び搾りかすから抽出される食物繊維である。既存の技術を用いて、シトラスファイバーは、例えばヨーグルトなどの食品に添加されている:
【0003】
中国特許出願公開第112889917号明細書は、正常温度設定スタイルのヨーグルトのための安定剤、正常温度設定スタイルのヨーグルト、及びその調製方法を開示している。シトラスファイバーは、正常温度設定スタイルのヨーグルトのための安定剤として、他の成分(カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルジスターチリン酸、ペクチン、寒天、カラギーナン及びジアセチル酒石酸モノ又はジグリセリド)と組み合わせて使用される。しかし、中国特許出願公開第112889917号明細書における正常温度設定スタイルのヨーグルトは、複数の人工安定剤組成物も含み、ここでシトラスファイバーは、その安定化系の1%~5%を占めるにすぎず、それは全安定化系の安定化効果にほとんど寄与しない。
【0004】
中国特許出願公開第109938097号明細書は、シトラスファイバーを含有する適正なラベルのヨーグルト及びその調製方法を開示している。その方法において、シトラスファイバー、予熱した生乳及び他の成分を直接的に混合し、均質化することで、ヨーグルトが調製される。しかし、中国特許出願公開第109938097号明細書において、シトラスファイバーは、厳密にスクリーニングされないことで、シトラスファイバーの原料バッチの差異に起因する、得られる製品の低い再現性及び不安定な品質の原因になりやすい。
【0005】
中国特許出願公開第111248285号明細書は、シトラスファイバーに基づく水中油組成物及び食品を開示しており、ここでシトラスファイバー、脂肪及び水は、シトラスファイバーに基づき、水中油組成物中に調製され、水中油組成物は、均一生成物中で数回均質化され:シトラスファイバーに基づく水中油組成物の分散体は、0.3~0.7μm、例えば0.4~0.5μmの粒径D[4,3]、及び0.3~0.7μm、例えば0.38~0.42μmの粒径d(0.5)を有する。加えて、脂肪成分が添加され、シトラスファイバーに基づく水中油組成物の形成された分散体は、小さい粒径を有し;こうした粒径を達成するため、過剰なエネルギーを消費し、生成コストを増加させる、複数の均質化が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第112889917号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第109938097号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第111248285号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
要約すると、上記の欠点を克服することができるシトラスファイバー含有飲料及びその調製方法、特に、同時に、味を改善し、抗沈降性能を改善し、品質を安定化し、輸送及び貯蔵の安定性を延長し、生成コストを低減することができる、シトラスファイバー含有飲料及びその調製方法が緊急に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって解決されるべき技術的課題は、シトラスファイバーを含有する現在のヨーグルト及びその調製方法の以下の欠点を克服することである:添加される人工安定剤は、ラベルをあまり適正に表示せず;得られた製品の品質は、シトラスファイバーの原料バッチの差異により不安定になりやすく;又はシトラスファイバーは、過剰に加工され、それにより過剰なエネルギーが消費され、生成コストが過剰に高い。本発明は、安定な品質及び低い生成コストを伴うシトラスファイバーを含有する飲料、及びその調製方法を提供する。
【0009】
本発明の発明者は、シトラスファイバー原料が厳密に制御される場合、1ミクロンより小さい粒子への過剰な加工(例えば、複数の均質化など)の必要性がなく、以下の技術的効果が得られ得ることを最初に見出している:味及び抗沈殿特性が改善され、品質が安定であり、輸送及び貯蔵の安定性が延長され、飲料粒子の懸濁液効果が増強され、外観及び安定性が改善され、生成コストが低減される。
【0010】
本発明は、シトラスファイバーを含有する飲料を提供する。飲料は、ミルクベース、及び0.3‰~5‰のミルクベースに基づくシトラスファイバーを含有し;飲料を調製するためのシトラスファイバー原料は、50%~100%の総食物繊維を含有し、且つ100μm~300μmの粒径D99を有する。
【0011】
本発明は、上記のシトラスファイバーを含有する飲料を調製するための方法であって、
1)50%~100%の総食物繊維を含有し、且つ100μm~300μmの粒径D99を有するシトラスファイバー原料を提供することと;
2)シトラスファイバー原料を水と混合し、混合物の固体-液体比が1:30~1:500であるように、スラリー相を形成する、
任意選択的に、シトラスファイバー原料及び他の固体粒子成分を水と混合し、混合物の固体-液体比が1:30~1:500であるように、スラリー相を形成することと;
3)ステップ2)において得られたスラリー相をミルクベースと混合し、飲料が0.3‰~5‰のミルクベースに基づくシトラスファイバーを含有するようにすることと;
4-1)ステップ3)において得られた混合物を滅菌することと;
5-1)ステップ4)における滅菌混合物を60~75℃の温度範囲で均質化し、平均圧力パラメータを以下のようにすること:一次圧は100~300バール(10~30MPa)である、二次圧は25~150バール(2.5~15MPa)である、及び一次圧と二次圧との間の圧力差は50~200バール(5~20MPa)である;又は
4-2)ステップ3)において得られた混合物を60~75℃の温度範囲で均質化し、平均圧力パラメータを以下のようにすることと:一次圧は100~300バール(10~30MPa)である、二次圧は25~150バール(2.5~15MPa)である、及び一次圧と二次圧との間の圧力差は50~200バール(5~20MPa)である;
5-2)均質化後、ステップ4)において得られた混合物を滅菌することと、
を含む方法をさらに提供する。
【0012】
先行技術と比較して、本発明は、以下の有益な効果を有する:本発明によると、シトラスファイバー原料は、厳密に制御され、特に、選択されたシトラスファイバー原料は、50%~100%の総食物繊維を含有し、且つ100μm~300μmの粒径D99を有し、1ミクロンより小さい粒径までの過剰な加工及び他の安定剤の添加についての必要性がなく、以下の技術的効果を得ることができる:味は改善され、品質は安定であり、輸送及び貯蔵の安定性は延長され、飲料粒子の懸濁液効果は増強され、外観及び安定性は改善され、そして生成コストは低減される。
【0013】
以下の詳細な説明から、本発明の他の対象、特徴及び利点は明白となろう。しかし、詳細な説明及び具体的な実施形態は、本発明の好ましい実施形態を示すが、この詳細な説明から、本発明の精神及び範囲における様々な変更及び改善が当業者に明白となることから、あくまで例示的な様式で与えられることは理解されるべきである。
【0014】
以下の図面は、本説明の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに図示することが含まれる。本発明は、本明細書で提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて図面を参照することにより、より十分に理解することができるが、図面は、本発明の保護範囲を限定することは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に従うシトラスファイバーを含有する飲料の粒径分布を示す。
【
図2】
図2は、本発明の比較例1に従う微結晶セルロースを含有する飲料の粒径分布を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施例1に従うシトラスファイバーを含有する飲料、並びに微結晶セルロースを安定剤として使用することによって得られた、比較例1の微結晶セルロース及びフィブロリンを含有する飲料の沈降速度試験の競合結果を示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施例2及び実施例3に従うシトラスファイバーを含有する飲料、並びに微結晶性結晶及び繊維アルコールを使用することによって得られた、安定剤としての微結晶セルロースを含有する飲料の沈降速度試験の競合結果を示す。
【
図5】
図5は、本発明4~7のシトラスファイバーを含有する飲料の沈下速度試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、シトラスファイバーを含有する飲料を提供する。飲料は、ミルクベース、及び0.3‰~5‰のミルクベースに基づくシトラスファイバーを含有し;飲料を調製するためのシトラスファイバー原料は、50%~100%の総食物繊維を含有し、且つ100μm~300μmの粒径D99を有する。
【0017】
本発明によって提供されるシトラスファイバーを含有する飲料は、調整乳、発酵乳又はミルクを含有する飲料を指し得る。任意選択的に、ミルクを含有する飲料は、乳含有飲料、乳酸菌飲料、ミルクティー、ミルクコーヒー、又はこれらの組み合わせを含む。ミルクベースは、新鮮乳及び/又は再構成乳であってもよい。本発明によって提供されるシトラスファイバーを含有する飲料に基づき、そのタンパク質含量は、1.0%~8.0%、好ましくは1.0%~7.0%、及びより好ましくは2.5%~6.0%である。好ましくは、本発明によって提供されるシトラスファイバーを含有する飲料は、≧2.3g/100mlのタンパク質含量範囲を有する。
【0018】
当該技術分野では、シトラスファイバーの粒径が大きくなると、懸濁力が改善すると一般に考えられるが、本発明の発明者は、飲料を調製するためのシトラスファイバー原料が厳密に制御される、例えば、飲料を調製するためのシトラスファイバー原料が50%~100%の総食物繊維を含有し、50μm~300μmの粒径D99を有する場合、他の安定剤を添加する必要性がなく、以下の技術的効果を得ることができることを最初に見出している:味は改善され、品質は安定であり、ラベルは適正であり、輸送及び貯蔵の安定性は延長され、飲料粒子の懸濁液効果は増強され、外観及び安定性は改善され、そして生成コストは低減される。好ましくは、飲料を調製するためのシトラスファイバー原料は、80%~100%の総食物繊維、より好ましくは90%~100%の総食物繊維を含有し、200μm~300μmの粒径D9、より好ましくは230μm~270μmの粒径D99を有する。
【0019】
より好ましくは、飲料を調製するためのシトラスファイバー原料は、1%の濃度で70~90℃の熱水に溶解及び分散され、4,000rpmで15~20分間の高剪断後(又は50~90℃で5~50分間のサイクル剪断中に)2~25℃に冷却され(最も好ましくは25℃に冷却され)、得られた分散体は、50センチポアズ~300センチポアズ(0.05Pa・s~0.3Pa・s)の粘度を有する。その粘度範囲に達し得るシトラスファイバー原料は、最終製品においてより良好な味を得ることができる。最も好ましくは、飲料を調製するためのシトラスファイバー原料は、1%の濃度で70~90℃の熱水に溶解及び分散され、4,000rpmで15~20分間の高剪断後、25℃に冷却され、得られた分散体は、100センチポアズ~250センチポアズ(0.1Pa・s~0.25Pa・s)の粘度を有する。その粘度範囲に達し得るシトラスファイバー原料は、最終製品において最良の味を得ることができる。
【0020】
さらに好ましくは、飲料を調製するためのシトラスファイバー原料は、10~30倍の水分保持特性を有する。好ましくは、10~20倍の水分保持特性を有するシトラスファイバー原料は、貯蔵及び輸送において最終製品をより安定にすることができ、固体粒子を飲料中に懸濁する能力はより強力である。
【0021】
より好ましくは、飲料は、懸濁安定化剤を含まない。懸濁安定化剤は、コロイド、デンプンなど、具体的に、例えば、カラギーナン、ヒドロキシプロピルジスターチリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、寒天、及びジアセチル酒石酸モノ又はジグリセリドのように、層状化から飲料を維持するために当該技術分野で一般に使用される物質を指す。本願は、食品添加物中の人工的に合成された安定剤を天然シトラスファイバーで置換し、飲料の様々な特性が影響を受けないどころか、いくつかの態様において改善されることを保証する。
【0022】
より好ましくは、本発明の飲料は、水及びミルクベースに不溶性の固体粒子成分を指す他の固体粒子成分をさらに含有する。好ましくは、他の固体粒子成分は、チョコレートバール、ココア粉末、茶粉末及びナッツ粉末からなる群から選択される。さらに好ましくは、他の固体粒子成分は、スラリー相における80~300μmの粒径D99範囲、好ましくは100~300μmの粒径D99範囲を有する。好ましくは、固体粒子成分は、シトラスファイバー原料との混合前に、80~300μmの粒径D99範囲に達する。本発明によって提供されるシトラスファイバーを含有する飲料中の不溶性食物粒子の含量は、0.5~5重量%である。より好ましくは、飲料は、0.75%以上のココア粉末を含有する。
【0023】
さらに、本発明は、シトラスファイバーを含有する飲料を調製するための方法であって、
1)50%~100%の総食物繊維を含有し、且つ100μm~300μmの粒径D99を有するシトラスファイバー原料を提供することと
2)シトラスファイバー原料を水と混合し、混合物の固体-液体比が1:30~1:500であるように、スラリー相を形成すること、
任意選択的に、シトラスファイバー原料及び他の固体粒子成分を水と混合し、混合物の固体-液体比が1:30~1:500、好ましくは1:80~1:200、より好ましくは1:100であるように、スラリー相を形成することと;
3)ステップ2)において得られたスラリー相をミルクベースと混合し、飲料が0.3‰~5‰のミルクベースに基づくシトラスファイバーを含有するようにすることと;
4-1)ステップ3)において得られた混合物を滅菌することと;
5-1)ステップ4)における滅菌混合物を60~75℃の温度範囲で均質化し、平均圧力パラメータを以下のようにすること:一次圧範囲は100バール~300バール(10MPa~30MPa)であり、二次圧範囲は25バール~150バール(2.5MPa~15MPa)であり、一次圧と二次圧との間の圧力差範囲は50バール~200バール(5MPa~20MPa)である;又は
4-2)ステップ3)において得られた混合物を60~75℃の温度範囲で無菌的に均質化し、平均圧力パラメータを以下のようにすることと:一次圧範囲は100バール~300バール(10MPa~30MPa)であり、二次圧範囲は25バール~150バール(2.5MPa~15MPa)であり、一次圧と二次圧との間の圧力差範囲は50バール~200バール(5MPa~20MPa)である;
5-2)均質化後、ステップ4)において得られた混合物を滅菌することと、
を含む方法をさらに提供する。
【0024】
好ましくは、本発明の方法のステップ1)において使用されるシトラスファイバー原料は、市販のシトラスファイバー製品であり得るが、その製品は、80%~100%の総食物繊維を含有し、且つ200μm~300μmの粒径D99を有するという基準を満たす必要がある。より好ましくは、シトラスファイバーは、90%~100%の総食物繊維を含有し、230μm~270μmの粒径D99を有する。また、市販のシトラスファイバー製品をさらに加工し、本発明の基準を満たすことができる。より好ましくは、シトラスファイバー原料は、1%の濃度で70~90℃の熱水に溶解及び分散され、4,000rpmで15~20分間の高剪断後、25℃に冷却され、得られた分散体は、50センチポアズ~300センチポアズ(0.05Pa・s~0.3Pa・s)の粘度を有する。最も好ましくは、シトラスファイバー原料は、1%の濃度で70~90℃の熱水に溶解及び分散され、4,000rpmで15~20分間の高剪断後、25℃に冷却され、得られた分散体は、100センチポアズ~250センチポアズ(0.1Pa・s~0.25Pa・s)の粘度を有する。さらに好ましくは、飲料を調製するためのシトラスファイバー原料は、10~20倍の水分保持特性を有する。
【0025】
好ましくは、ステップ2)において、混合のために高剪断が実施され、高剪断のパラメータの範囲は、3,000~6,000rpmで10~40分間であり;さらに好ましくは、高剪断のパラメータの範囲は、4,000~5,000rpmで20~30分間であり;最も好ましくは、高剪断のパラメータは、4,500rpmで25分間である。或いは、ステップ2)は、60~85℃で15~35分間のサイクル剪断によって実施し、混合が完了される。
【0026】
好ましくは、本発明のステップ5-1)においては、ステップ4)における滅菌混合物を60~75℃の温度範囲で均質化し、平均圧力パラメータは、以下のとおりである:一次圧範囲は200バール~300バール(20MPa~30MPa)であり、二次圧範囲は50バール~100バール(5MPa~10MPa)であり、一次圧と二次圧との間の圧力差範囲は70バール~150バール(7MPa~15MPa)である;又はステップ4-2)においては、ステップ3)において得られた混合物を60~75℃の温度範囲で均質化し、平均圧力パラメータは、以下のとおりである:一次圧範囲は200バール~300バール(20MPa~30MPa)であり、二次圧範囲は50バール~100バール(5MPa~10MPa)であり、一次圧と二次圧との間の圧力差範囲は70バール~150バール(7MPa~15MPa)である。或いは、一次圧範囲は120バール~300バール(12MPa~30MPa)であり、二次圧は30バール~90バール(3MPa~9MPa)であり、一次圧と二次圧との間の圧力差は70バール~200バール(7MPa~20MPa)である。より好ましくは、一次圧と二次圧との間の圧力差は、80バール~200バール(8MPa~20MPa)である。均質化の圧力差は、飲料系全体をより均質にすることになる。
【0027】
本発明のステップ4)における好ましい滅菌方法は、110℃~145℃の温度で4秒~30秒間の超高温瞬時滅菌(UHT)であり得る。別の好ましい滅菌方法は、130℃~160℃の温度で0.09秒~15秒、又は0.05~10秒、好ましくは0.09~8秒の直接的な蒸気噴射加熱滅菌又は直接的な蒸気注入加熱滅菌であり得る。
【0028】
他の固体粒子成分は、水及びミルクベースに不溶性の固体粒子成分を指す。好ましくは、他の固体粒子成分は、チョコレートバール、ココア粉末、茶粉末及びナッツ粉末からなる群から選択される。さらに好ましくは、他の固体粒子成分は、スラリー相における80~300μmの粒径D99、好ましくは100~300μmの粒径D99を有する。好ましくは、固体粒子成分は、シトラスファイバー原料との混合前に、80~300μmの粒径D99に達する。本発明によって提供されるシトラスファイバーを含有する飲料中の不溶性食物粒子の含量は、0.5~5重量%である。より好ましくは、飲料は、0.75%以上のココア粉末を含有する。
【0029】
本発明の目的、構造的特徴及び利点は、具体例により、また添付の図面と組み合わせて、以下にさらに詳細に説明される。以下の実施例は、あくまで本発明をより十分に例示するために例証され、保護の範囲を限定しない。
【実施例】
【0030】
実施例1
実施例は、シトラスファイバーを含有する飲料及びその調製方法を例示する。
【0031】
【0032】
上表に示すとおり、シトラスファイバーを含有するココア乳製品は、以下にように調製する:
1)85%の総食物繊維を含有し、250μmの粒径D99を有するシトラスファイバー原料を提供する;
2)12.50gのシトラスファイバー原料を、装置(Sliverson LST)を4,000rpmの回転速度及び80℃の温度で用いて、1,250gの水中の75μmの粒径D99を有する80gのココア粉末と混合し、均一なスラリー相を得て、高剪断を20分持続させる;
3)ステップ2)において得られたスラリー相を、8657.5gの新鮮牛乳と混合し、それに、136℃の温度で5秒間、UHT滅菌を施し、最終的に、飲料は1.25‰のミルクベースに基づくシトラスファイバーを含有する;
4)ステップ3)において得られた混合物を、滅菌ホモジナイザーを65℃で用いて均質化し、ここで第1段階における均質化圧力は250バール(25MPa)であり、第2段階における均質化圧力は50バール(5MPa)である;及び
5)均質化後、滅菌缶詰を25℃の層流ワークベンチで実施する。
【0033】
実施例2
本実施例は、シトラスファイバーを含有する飲料及びその調製方法を例示する。
【0034】
【0035】
上表に示すとおり、シトラスファイバーを含有するココア乳製品は、以下にように調製する:
1)85%の総食物繊維を含有し、250μmの粒径D99を有するシトラスファイバー原料を提供する;
2)20.0gのシトラスファイバー原料を、装置(Sliverson LST)を4,000rpmの回転速度及び80℃の温度で用いて、1,242.5gの水中の75μmの粒径D99を有する80gのココア粉末と混合し、均一なスラリー相を得て、高剪断を20分持続させる;
3)ステップ2)において得られたスラリー相を、8657.5gの新鮮乳と混合し、それに、136℃の温度で5秒間、UHT滅菌を施し、最終的に、飲料は2.0‰のミルクベースに基づくシトラスファイバーを含有する;
4)ステップ3)において得られた混合物を、滅菌ホモジナイザーを65℃で用いて均質化し、ここで第1段階における均質化圧力は250バール(25MPa)であり、第2段階における均質化圧力は50バール(5MPa)である;及び
5)均質化後、滅菌缶詰を25℃の層流ワークベンチで実施する。
【0036】
実施例3
本実施例は、シトラスファイバーを含有する飲料及びその調製方法を例示する。
【0037】
【0038】
上表に示すとおり、シトラスファイバーを含有するココア乳製品は、以下にように調製する:
1)85%の総食物繊維を含有し、250μmの粒径D99を有するシトラスファイバー原料を提供する;
2)40.0gのシトラスファイバー原料を、装置(Sliverson LST)を4,000rpmの回転速度及び80℃の温度で用いて、1,222.5gの水中の75μmの粒径D99を有する80gのココア粉末と混合し、均一なスラリー相を得て、高剪断を20分持続させる;
3)ステップ2)において得られたスラリー相を、8,657.5gの新鮮牛乳と混合し、それに、136℃の温度で5秒間、UHT滅菌を施し、最終的に、飲料は4.0‰のミルクベースに基づくシトラスファイバーを含有する;
4)ステップ3)において得られた混合物を、滅菌ホモジナイザーを65℃で用いて均質化し、ここで第1段階における均質化圧力は250バール(25MPa)であり、第2段階における均質化圧力は50バール(5MPa)である;及び
5)均質化後、滅菌缶詰を25℃の層流ワークベンチで実施する。
【0039】
実施例4
本実施例は、シトラスファイバーを含有する飲料及びその調製方法を例示する。
【0040】
【0041】
上表に示すとおり、シトラスファイバーを含有するココア乳製品は、以下にように調製する:
1)85%の総食物繊維を含有し、250μmの粒径D99を有するシトラスファイバー原料を提供する;
2)21gのシトラスファイバー原料を、装置(Sliverson LST)を4,000rpmの回転速度及び80℃の温度で用いて、862.75gの水中の75μmの粒径D99を有する56gのココア粉末と混合し、均一なスラリー相を得て、高剪断を20分持続させる;
3)ステップ2)において得られたスラリー相を、6060.25gの新鮮乳と混合し、それに、136℃の温度で5秒間、UHT滅菌を施し、最終的に、飲料は3.0‰のミルクベースに基づくシトラスファイバーを含有する;
4)ステップ3)において得られた混合物を、滅菌ホモジナイザーを65℃で用いて均質化し、ここで第1段階における均質化圧力は250バール(25MPa)であり、第2段階における均質化圧力は50バール(5MPa)である;及び
5)均質化後、滅菌缶詰を25℃の層流ワークベンチで実施する。
【0042】
実施例5
本実施例は、シトラスファイバーを含有する飲料及びその調製方法を例示する。
【0043】
【0044】
上表に示すとおり、シトラスファイバーを含有するココア乳製品は、以下にように調製する:
1)85%の総食物繊維を含有し、250μmの粒径D99を有するシトラスファイバー原料を提供する;
2)5.6gのシトラスファイバー原料を、装置(Sliverson LST)を4,000rpmの回転速度及び80℃の温度で用いて、878.15gの水中の75μmの粒径D99を有する56gのココア粉末と混合し、均一なスラリー相を得て、高剪断を20分持続させる;
3)ステップ2)において得られたスラリー相を、6060.25gの新鮮乳と混合し、それに、136℃の温度で5秒間、UHT滅菌を施し、最終的に、飲料は0.8‰のミルクベースに基づくシトラスファイバーを含有する;
4)ステップ3)において得られた混合物を、滅菌ホモジナイザーを65℃で用いて均質化し、ここで第1段階における均質化圧力は250バール(25MPa)であり、第2段階における均質化圧力は50バール(5MPa)である;及び
5)均質化後、滅菌缶詰を25℃の層流ワークベンチで実施する。
【0045】
実施例6
本実施例は、シトラスファイバーを含有する飲料及びその調製方法を例示する。
【0046】
【0047】
上表に示すとおり、シトラスファイバーを含有するココア乳製品は、以下にように調製する:
1)85%の総食物繊維を含有し、145μmの粒径D99を有するシトラスファイバー原料を提供する;
2)28gのシトラスファイバー原料を、装置(Sliverson LST)を4,000rpmの回転速度及び80℃の温度で用いて、855.75gの水中の75μmの粒径D99を有する56gのココア粉末と混合し、均一なスラリー相を得て、高剪断を20分持続させる;
3)ステップ2)において得られたスラリー相を、6060.25gの新鮮乳と混合し、それに、136℃の温度で5秒間、UHT滅菌を施し、最終的に、飲料は4.0‰のミルクベースに基づくシトラスファイバーを含有する;
4)ステップ3)において得られた混合物を、滅菌ホモジナイザーを65℃で用いて均質化し、ここで第1段階における均質化圧力は150バール(15MPa)であり、第2段階における均質化圧力は50バール(5MPa)である;及び
5)均質化後、滅菌缶詰を25℃の層流ワークベンチで実施する。
【0048】
実施例7
本実施例は、シトラスファイバーを含有する飲料及びその調製方法を例示する。
【0049】
【0050】
上表に示すとおり、シトラスファイバーを含有するココア乳製品は、以下にように調製する:
1)85%の総食物繊維を含有し、145μmの粒径D99を有するシトラスファイバー原料を提供する;
2)14gのシトラスファイバー原料を、装置(Sliverson LST)を4,000rpmの回転速度及び80℃の温度で用いて、869.75gの水中の75μmの粒径D99を有する56gのココア粉末と混合し、均一なスラリー相を得て、高剪断を20分持続させる;
3)ステップ2)において得られたスラリー相を、6060.25gの新鮮乳と混合し、それに、136℃の温度で5秒間、UHT滅菌を施し、最終的に、飲料は2.0‰のミルクベースに基づくシトラスファイバーを含有する;
4)ステップ3)において得られた混合物を、滅菌ホモジナイザーを65℃で用いて均質化し、ここで第1段階における均質化圧力は250バール(25MPa)であり、第2段階における均質化圧力は50バール(5MPa)である;及び
5)均質化後、滅菌缶詰を25℃の層流ワークベンチで実施する。
【0051】
比較例1
微結晶セルロースを含有する飲料を、安定剤として0.2%微結晶セルロースと0.1%モノ及びジグリセリド脂肪酸エステルとを使用し、安定剤としてシトラスファイバーを使用しないこと以外は、実施例1に記載のように調製する。
【0052】
比較例2
微結晶セルロースを含有する飲料を、安定剤として0.2%微結晶セルロースと0.1%モノ及びジグリセリド脂肪酸エステルとを使用し、安定剤としてシトラスファイバーを使用しないこと以外は、実施例2に記載のように調製する。
【0053】
効果検証例
実施例1~7において得られたシトラスファイバーを含有する飲料及び比較例1~2において得られた微結晶セルロースを含有する飲料を、粒径分布及び沈降速度について同じ条件下で試験する。具体的な試験方法及び試験結果は、以下のとおりである:
【0054】
1)粒径分布試験及び結果
実施例1の飲料及び比較例1の飲料を、室温で3か月間静置後、それらの粒径分布について試験する。
【0055】
実施例1の飲料及び比較例1の飲料を、LSI3 320レーザー回折粒径分析器によって試験し、得られた結果を
図1及び
図2に示す。
図1は、実施例1において得られたシトラスファイバーを含有する飲料の粒径分布を示し、
図2は、比較例1において得られた微結晶セルロースを含有する飲料の粒径分布を示す。
【0056】
データを分析することにより、安定化系以外の製剤の残りの成分が同じである条件下で、シトラスファイバーを使用するサンプルのD(90)値が0.583μmであり、微結晶セルロースを使用するサンプルのD(90)値が3.088μmであることを認めることができる。したがって、実施例1におけるシトラスファイバーを使用するサンプルの粒径が一般に比較例1における微結晶セルロースを使用するサンプルの場合より小さいことを認知することができる。したがって、実施例1において形成された飲料系全体は、より安定な傾向がある。
【0057】
2)沈降速度試験及び結果
実施例1の飲料及び比較例1の飲料を、室温で3か月間静置後、それらの不溶性粒子の沈降状態について試験する。
【0058】
実施例1及び比較例1を、LUMiSizer分散分析器による遠心分析によって試験した。得られた結果を
図3に示す。
図3は、2回の繰り返し試験において、比較例1の微結晶セルロースを含有する飲料の沈降速度が、実施例1において得られたシトラスファイバーを含有する飲料よりはるかに大きいことが示されることを図示する。したがって、シトラスファイバーがサンプル中の不溶性固体の沈降速度を低下させることができ;少量の場合であっても、その性能は合成安定剤の微結晶セルロースよりはるかに優れ、それ故、シトラスファイバーを含有する本発明がより安定であることが判明している。
【0059】
同様に、実施例2及び実施例3並びに比較例2の不溶性粒子の沈降状態を、室温で3か月間後に試験した。得られた結果を
図4に示す。実施例2におけるシトラスファイバーを含有する飲料の安定性は、同量の微結晶セルロースを含有する飲料(比較例2)と比較して同等である。実施例3の飲料は、安定性の要件を満たす。
【0060】
実施例4~7を、それらの不溶性粒子の沈降状態後の2日間にわたり室温で試験した。得られた結果を
図5に示し、各実施形態において、2つのサンプルを試験する。
図5からわかるように、実施例4~7の飲料は、安定性の要件と合致し、ここで実施例5は、最高の安定性効果を有する。
【0061】
本明細書で明示的に開示される発明は、本明細書で具体的に開示されない任意の要素の不在下で、適切に実行することができる。しかし、方法の多くの変更、変更、改善、他の使用及び適用が可能であり、本発明の精神及び範囲から逸脱しない変更、改善、他の使用及び適用が本発明によって包含されるとも考えられ、本発明が添付の特許請求の範囲のみによって限定されることは、当業者にとって明白であろう。
【国際調査報告】