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特表2024-527370膵臓がんに対する循環マイクロRNAシグネチャ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】膵臓がんに対する循環マイクロRNAシグネチャ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20240717BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20240717BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20240717BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240717BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20240717BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240717BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240717BHJP
【FI】
C12Q1/68
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6837 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6876 C
A61K31/337
A61K45/00
A61P35/00
A61P1/18
G01N33/50 P
C12Q1/6876 Z
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500606
(86)(22)【出願日】2022-07-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 US2022036608
(87)【国際公開番号】W WO2023283476
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/220,195
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511071555
【氏名又は名称】ダナ-ファーバー キャンサー インスティテュート, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524008258
【氏名又は名称】メディカル ユニバーシティ オブ ウッチ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】チャウドリー,ディパンジャン
(72)【発明者】
【氏名】フェンドラー,ヴォイチェフ
(72)【発明者】
【氏名】スタウィスキ,コンラッド
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB26
2G045DA13
2G045DA14
2G045FB02
2G045JA01
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4C084AA17
4C084NA20
4C084ZA66
4C084ZB26
4C086AA01
4C086BA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZA66
4C086ZB26
(57)【要約】
本明細書では、対象から回収した試料中の特定のマイクロRNAバイオマーカーの量を測定するための方法およびキットが提供される。マイクロRNAバイオマーカーは膵臓がんと関連付けられる。また、特定のマイクロRNAバイオマーカーの量について対象をスクリーニングする方法、ならびに膵臓がんを有することが疑われる対象を診断し、処置し、またはモニタリングする方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における膵臓がんを診断するための方法であって、
(a)前記対象から回収した試料を得るステップと、
(b)前記試料中のhsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7g-5p(配列番号7)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、hsa-miR-323a-5p(配列番号15)、hsa-miR-190a-3p(配列番号16)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)からなる群から選択される1種以上の試験マイクロRNAを検出および定量化するステップと、
(c)ステップ(b)において決定された前記試験マイクロRNAの量を統計モデルと比較するステップと
を含み、それによって前記対象における膵臓がんを診断する、前記方法。
【請求項2】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7g-5p(配列番号7)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)を検出および定量化するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-let-7g-5p(配列番号7)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)を検出および定量化するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-let-7g-5p(配列番号7)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)を検出および定量化するステップからなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、およびhsa-miR-194-5p(配列番号13)を検出および定量化するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)が、
hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、およびhsa-let-7g-5p(配列番号7);または
hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)
のいずれかを検出および定量化するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)が、hsa-miR-323a-5p(配列番号15)、hsa-miR-190a-3p(配列番号16)、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、およびhsa-let-7d-5p(配列番号11)を検出および定量化するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)およびhsa-miR-194-5p(配列番号13)を検出および定量化するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)を検出および定量化するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)が、前記試験マイクロRNAの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10種を検出および定量化するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(d)前記試料中のhsa-miR-17-5p(配列番号1)、hsa-miR-199a-3p(配列番号2)、hsa-miR-28-3p(配列番号3)、およびhsa-miR-92a-3p(配列番号4)からなる群から選択される1種以上の正規化マイクロRNAを検出および定量化するステップと、
(e)ステップ(d)において定量化された前記正規化マイクロRNAの量を用いて前記試験マイクロRNAの量を正規化するステップと
をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(d)が、hsa-miR-17-5p(配列番号1)、hsa-miR-199a-3p(配列番号2)、hsa-miR-28-3p(配列番号3)、およびhsa-miR-92a-3p(配列番号4)を検出および定量化するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(d)が、hsa-miR-17-5p(配列番号1)、hsa-miR-199a-3p(配列番号2)、およびhsa-miR-92a-3p(配列番号4)を検出および定量化するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(d)が、前記正規化マイクロRNAの少なくとも2または3種を検出および定量化するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(b)および/またはステップ(d)が、前記マイクロRNAの各々またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブへの前記試料の結合を検出することによって行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(b)および/またはステップ(d)が、核酸検出アッセイを用いて行われ、場合により、前記アッセイがマイクロアレイ、RT-PCR、およびRT-qPCRからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(b)および/またはステップ(d)がRT-qPCRを用いて行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記プローブの少なくとも1つが検出可能な標識を含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記プローブの各々が検出可能な標識を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(b)および/またはステップ(d)が、
前記試料中の前記マイクロRNA分子を逆転写し、それによってcDNA試料を得るステップ;および
前記cDNA試料を配列決定するステップ
によって行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(b)および/またはステップ(d)が、前記cDNA試料を配列決定する前に、前記cDNA試料中の前記DNA分子を増幅するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(b)および/またはステップ(d)がmiRNA-seqを用いて行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7g-5p(配列番号7)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、hsa-miR-323a-5p(配列番号15)、hsa-miR-190a-3p(配列番号16)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)からなる群から選択されるマイクロRNA、またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも1つの試験プローブを含むキット。
【請求項24】
hsa-miR-192-5p(配列番号5)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-98-5p(配列番号6)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-let-7g-5p(配列番号7)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-let-7f-5p(配列番号8)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-let-7a-5p(配列番号9)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-122-5p(配列番号10)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-let-7d-5p(配列番号11)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-340-5p(配列番号12)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-194-5p(配列番号13)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、および
hsa-miR-26b-5p(配列番号14)またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブ
を含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
hsa-miR-192-5p(配列番号5)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-let-7g-5p(配列番号7)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-let-7a-5p(配列番号9)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-122-5p(配列番号10)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-340-5p(配列番号12)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-194-5p(配列番号13)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、および
hsa-miR-26b-5p(配列番号14)またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブ
を含む、請求項23に記載のキット。
【請求項26】
hsa-miR-192-5p(配列番号5)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-let-7g-5p(配列番号7)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-let-7a-5p(配列番号9)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-122-5p(配列番号10)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-340-5p(配列番号12)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-194-5p(配列番号13)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、および
hsa-miR-26b-5p(配列番号14)またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブ
を含む、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
hsa-miR-192-5p(配列番号5)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-98-5p(配列番号6)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-let-7f-5p(配列番号8)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-let-7a-5p(配列番号9)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-122-5p(配列番号10)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-let-7d-5p(配列番号11)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-340-5p(配列番号12)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、および
hsa-miR-194-5p(配列番号13)またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブ
を含む、請求項23に記載のキット。
【請求項28】
hsa-let-7g-5p(配列番号7)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、もしくは
hsa-miR-26b-5p(配列番号14)またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブ
をさらに含む、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
hsa-miR-192-5p(配列番号5)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、および
hsa-miR-194-5p(配列番号13)またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブ
を含む、請求項23に記載のキット。
【請求項30】
hsa-miR-192-5p(配列番号5)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-let-7a-5p(配列番号9)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-194-5p(配列番号13)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-let-7f-5p(配列番号8)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-122-5p(配列番号10)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、
hsa-miR-340-5p(配列番号12)に特異的にハイブリダイズする試験プローブ、および
hsa-miR-26b-5p(配列番号14)またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブ
を含む、請求項23に記載のキット。
【請求項31】
少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10種の試験プローブを含む、請求項23に記載のキット。
【請求項32】
hsa-miR-17-5p(配列番号1)、hsa-miR-199a-3p(配列番号2)、hsa-miR-28-3p(配列番号3)、およびhsa-miR-92a-3p(配列番号4)からなる群から選択されるマイクロRNA、またはそれらのcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも1つの正規化プローブをさらに含む、請求項23~31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項33】
hsa-miR-17-5p(配列番号1)に特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ、
hsa-miR-199a-3p(配列番号2)に特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ、
hsa-miR-28-3p(配列番号3)に特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ、および
hsa-miR-92a-3p(配列番号4)またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ
をさらに含む、請求項23~31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項34】
hsa-miR-17-5p(配列番号1)に特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ、
hsa-miR-199a-3p(配列番号2)に特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ、および
hsa-miR-92a-3p(配列番号4)またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ
をさらに含む、請求項23~31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項35】
少なくとも2または3種の正規化プローブを含む、請求項23に記載のキット。
【請求項36】
正規化プローブを含まない、請求項23~31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項37】
前記プローブの少なくとも1つが検出可能な標識を含む、請求項23~36のいずれか一項に記載のキット。
【請求項38】
前記プローブの各々が検出可能な標識を含む、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
マイクロRNA分子の逆転写用の試薬をさらに含む、請求項23~38のいずれか一項に記載のキット。
【請求項40】
膵臓がんを有することが疑われる対象を処置するための方法であって、
(a)前記対象から回収した試料を得るステップと、
(b)前記試料中のhsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7g-5p(配列番号7)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、hsa-miR-323a-5p(配列番号15)、hsa-miR-190a-3p(配列番号16)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)からなる群から選択される1種以上の試験マイクロRNAを検出および定量化するステップと、
(c)ステップ(b)において決定された前記試験マイクロRNAの量を統計モデルと比較するステップと、
(d)ステップ(c)の前記比較に基づいて膵臓がんのより侵襲的な試験および/または調査のために対象を選択し、場合により、膵臓がんの対象に処置を施すステップと
を含む、前記方法。
【請求項41】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7g-5p(配列番号7)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)を検出および定量化するステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-let-7g-5p(配列番号7)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)を検出および定量化するステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-let-7g-5p(配列番号7)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)を検出および定量化するステップからなる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、およびhsa-miR-194-5p(配列番号13)を検出および定量化するステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
(b)が、
hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、およびhsa-let-7g-5p(配列番号7);または
hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)
のいずれかを検出および定量化するステップを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ステップ(b)が、hsa-miR-323a-5p(配列番号15)、hsa-miR-190a-3p(配列番号16)、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、およびhsa-let-7d-5p(配列番号11)を検出および定量化するステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)およびhsa-miR-194-5p(配列番号13)を検出および定量化するステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)を検出および定量化するステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
ステップb)が、前記試験マイクロRNAの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10種を検出および定量化するステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
(d)前記試料中のhsa-miR-17-5p(配列番号1)、hsa-miR-199a-3p(配列番号2)、hsa-miR-28-3p(配列番号3)、およびhsa-miR-92a-3p(配列番号4)からなる群から選択される1種以上の正規化マイクロRNAを検出および定量化するステップと、
(e)ステップ(d)において定量化された前記正規化マイクロRNAの量を用いて前記試験マイクロRNAの量を正規化するステップと
をさらに含む、請求項40~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
ステップ(d)が、hsa-miR-17-5p(配列番号1)、hsa-miR-199a-3p(配列番号2)、hsa-miR-28-3p(配列番号3)、およびhsa-miR-92a-3p(配列番号4)を検出および定量化するステップを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ステップ(d)が、hsa-miR-17-5p(配列番号1)、hsa-miR-199a-3p(配列番号2)、およびhsa-miR-92a-3p(配列番号4)を検出および定量化するステップを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
ステップ(d)が、前記正規化マイクロRNAの少なくとも2または3種を検出および定量化するステップを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
ステップ(b)および/またはステップ(d)が、前記マイクロRNAの各々またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブへの前記試料の結合を検出することによって行われる、請求項50~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
ステップ(b)および/またはステップ(d)が、核酸検出アッセイを用いて行われ、場合により、前記アッセイがマイクロアレイ、RT-PCR、およびRT-qPCRからなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
ステップ(b)および/またはステップ(d)がRT-qPCRを用いて行われる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記プローブの少なくとも1つが検出可能な標識を含む、請求項54~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記プローブの各々が検出可能な標識を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
ステップ(b)および/またはステップ(d)が、前記試料中の前記マイクロRNA分子を逆転写し、それによってcDNA試料を得るステップ、および前記cDNA試料を配列決定するステップによって行われる、請求項50~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
ステップ(b)および/またはステップ(d)が、前記cDNA試料を配列決定する前に、前記cDNA試料中の前記DNA分子を増幅するステップをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
ステップ(b)および/またはステップ(d)がmiRNA-seqを用いて行われる、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記より侵襲的な試験が、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、X線、陽電子断層撮影およびコンピュータ断層撮影(PET-CT)スキャン、内視鏡検査、超音波検査、核スキャン、および生検からなる群から選択される、請求項40~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記より侵襲的な試験がMRIである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
膵臓がんの前記調査が、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、X線、陽電子断層撮影とコンピュータ断層撮影(PET-CT)スキャン、内視鏡検査、超音波検査、および核スキャンからなる群から選択される定期的な画像試験を含む、請求項40~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記定期的な撮像が、3、6、または12カ月ごとに行われる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記対象が、膵臓がんのための処置を施される、請求項40~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
施される前記処置が、手術、化学療法、免疫療法、および放射線療法からなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記処置が化学療法を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記化学療法が、タキサン、代謝拮抗薬、白金化学療法、アルキル化剤、DNA複製を阻害する薬剤、PARP阻害剤、および抗腫瘍性化学療法からなる群から選択される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記化学療法が、パクリタキセル、ドセタキセル、およびアルブミン結合パクリタキセルからなる群から選択されるタキサンを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記化学療法が、ゲムシタビン塩酸塩、5-フルオロウラシル(5-FU)、およびカペシタビンからなる群から選択される代謝拮抗薬を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記化学療法が、前記プラチナ化学療法オキサリプラチンを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
前記化学療法が、前記アルキル化剤シスプラチンを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
前記化学療法が、イリノテカンおよびリポソーム性イリノテカンからなる群から選択される、DNA複製を阻害する薬剤を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項75】
前記化学療法が、PARP阻害剤オラパリブを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項76】
前記化学療法が、エベロリムス、エルロチニブ塩酸塩、スニチニブ、およびマイトマイシンからなる群から選択される抗腫瘍性化学療法を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項77】
前記処置が、FOLFIRINOX(フォリン酸、フルオロウラシル、イリノテカン塩酸塩、およびオキサリプラチン)、GEMCITABINE-CISPLATIN(ゲムシタビン塩酸塩およびシスプラチン)、GEMCITABINE-OXALIPLATIN(ゲムシタビン塩酸塩およびオキサリプラチン)、およびOFF(オキサリプラチン、フルオロウラシル、およびフォリン酸)からなる群から選択される薬物併用を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項78】
前記処置が、前記免疫療法ペンブロリズマブを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項79】
前記処置が手術を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項80】
前記処置が化学療法および免疫療法を含む、請求項66~76または78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記処置が化学療法および放射線を含む、請求項66~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記処置が手術をさらに含む、請求項68~78または80~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
対象における膵臓がんを診断するための分析方法であって、
c)前記対象由来の前記試料中のhsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7g-5p(配列番号7)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、hsa-miR-323a-5p(配列番号15)、hsa-miR-190a-3p(配列番号16)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)からなる群から選択される1種以上の試験マイクロRNAを検出および定量化するステップと、
d)ニューラルネットワークにおいて、ステップa)で定量化された前記1種以上の試験マイクロRNAの量を分析して、前記対象が膵臓がんを有する確率を決定するステップと、
e)ステップb)の前記分析に基づき、膵臓がんを有する可能性が高いものとして前記対象を割り当てるステップと
を含む、前記対象における膵臓がんを診断するための分析方法。
【請求項84】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7g-5p(配列番号7)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)を検出および定量化するステップを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-let-7g-5p(配列番号7)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)を検出および定量化するステップを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-let-7g-5p(配列番号7)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)を検出および定量化するステップからなる、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、およびhsa-miR-194-5p(配列番号13)を検出および定量化するステップを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項88】
ステップ(b)が、
hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、およびhsa-let-7g-5p(配列番号7);または
hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-miR-98-5p(配列番号6)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-let-7d-5p(配列番号11)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)
のいずれかを検出および定量化するステップを含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
ステップ(b)が、hsa-miR-323a-5p(配列番号15)、hsa-miR-190a-3p(配列番号16)、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、およびhsa-let-7d-5p(配列番号11)を検出および定量化するステップを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項90】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)およびhsa-miR-194-5p(配列番号13)の量を決定するステップを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項91】
ステップ(b)が、hsa-miR-192-5p(配列番号5)、hsa-let-7a-5p(配列番号9)、hsa-miR-194-5p(配列番号13)、hsa-let-7f-5p(配列番号8)、hsa-miR-122-5p(配列番号10)、hsa-miR-340-5p(配列番号12)、およびhsa-miR-26b-5p(配列番号14)を検出および定量化するステップを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項92】
ステップ(b)が、前記試験マイクロRNAの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10種を検出および定量化するステップを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項93】
ステップ(a)が、前記試料中のhsa-miR-17-5p(配列番号1)、hsa-miR-199a-3p(配列番号2)、hsa-miR-28-3p(配列番号3)、およびhsa-miR-92a-3p(配列番号4)からなる群から選択される1種以上の正規化マイクロRNAを検出および定量化するステップをさらに含み;
ステップ(b)が、前記正規化マイクロRNAの量を用いて前記試験マイクロRNAの量を正規化するステップをさらに含む、請求項83~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
ステップ(a)が、正規化miRNAであるhsa-miR-17-5p(配列番号1)、hsa-miR-199a-3p(配列番号2)、hsa-miR-28-3p(配列番号3)、およびhsa-miR-92a-3p(配列番号4)を検出および定量化するステップを含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
ステップ(a)が、正規化miRNAであるhsa-miR-17-5p(配列番号1)、hsa-miR-199a-3p(配列番号2)、およびhsa-miR-92a-3p(配列番号4)を検出および定量化するステップを含む、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
ステップ(a)が、前記正規化マイクロRNAの少なくとも2または3種を検出および定量化するステップを含む、請求項93に記載の方法。
【請求項97】
ステップ(a)が、前記マイクロRNAの各々またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブへの前記試料の結合を検出することによって行われる、請求項83~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
ステップ(a)が、核酸検出アッセイを用いて行われ、場合により、前記アッセイがマイクロアレイ、RT-PCR、およびRT-qPCRからなる群から選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
ステップ(a)がRT-qPCRを用いて行われる、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記プローブの少なくとも1つが検出可能な標識を含む、請求項97~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記プローブの各々が検出可能な標識を含む、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
ステップ(a)が、前記試料中の前記マイクロRNA分子を逆転写し、それによって前記cDNA試料を得るステップ、および前記cDNA試料を配列決定するステップによって行われる、請求項83~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
ステップ(a)が、前記cDNA試料を配列決定する前に、前記cDNA試料中の前記DNA分子を増幅するステップをさらに含む、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
ステップ(a)がmiRNA-seqを用いて行われる、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
膵臓がんを有する可能性が高いものとしての前記対象の割り当てが、50%、60%、70%、80%、または90%を超える精度率を有する、請求項83~104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記精度率が80%を超える、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
膵臓がんを有する可能性が高いものとしての前記対象の割り当てが、50%、60%、70%、80%、または90%を超える特異度率を有する、請求項83~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
特異度率が80%を超える、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
膵臓がんを有する可能性が高いものとしての前記対象の割り当てが、50%、60%、70%、80%、または90%を超える感度率を有する、請求項83~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記感度率が80%を超える、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記試料が血液試料または膵臓試料である、請求項1~22または40~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記血液試料が、血漿、血清、および全血からなる群から選択される、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記対象がヒト対象である、請求項1~22または40~112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記対象が膵臓がんを発症するリスクがより高い、請求項1~22または40~113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記対象が糖尿病を有する、請求項1~22または40~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記対象が膵炎を有する、請求項1~22または40~115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記対象が膵臓がんまたは膵炎の家族歴を有する、請求項1~22または40~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記対象が、遺伝子突然変異による膵臓がんを発症するリスクがより高い、請求項1~22または40~117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記対象が、BRCA1、BRCA2、PALB2、TP53、MLH1、CDKN2A、およびATMからなる群から選択される遺伝子における突然変異を有する、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記統計モデルが、線形判別分析、ロジスティック回帰、多変量適応回帰スプライン、ナイーブベイズ、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、決定木、K近傍法、機能木、最小絶対偏差(LAD)木、ベイジアンネットワーク、エラスティックネット回帰、およびランダムフォレストからなる群から選択される1種以上のモデルを含む、請求項1~22または40~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
前記統計モデルがニューラルネットワークを含む、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記統計モデルがロジスティック回帰を含む、請求項120に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援研究開発に関する陳述
関連出願
本出願は、2021年7月9日出願の米国仮特許出願第63/220,195号の優先権を主張する。この出願の全開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
膵臓がんの生存率は、診断時の腫瘍の大きさおよび転移の程度に依存する。膵臓がんの処置が早ければ早いほど予後は良好である。残念なことに、膵臓がんは通常、進行して転移するまで症状がほとんどかまたはまったく現れない。症例の最大80%が後期に診断され、処置がより困難である(Pancreatic Cancer Prognosis, John Hopkins Medicine:https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/pancreatic-cancer/pancreatic-cancer-prognosisで利用可能)。他のがんと比較して、膵臓がんの5年生存率はわずか5~10%と非常に低く、これは、がんが転移したときにステージIVで診断される人の割合が高いためである。
【0003】
マイクロRNA(miRNA)は、RNAサイレンシングおよび転写後調節により遺伝子発現を制御する低分子調節RNA分子である。これらは組織特異的であることが多く、多数のがんにおいて調節障害である。マイクロRNAは二本鎖ヘアピン構造を有し、メッセンジャーRNAよりも安定である。一部のmiRNAは血液中で検出され、その量は数年間または数十年にわたって血液試料中で安定したままであり、非浸潤性がん診断のためのバイオマーカーとしてそれらを使用する実施可能性を提供する。しかしながら、ほとんどの研究は、血液試料ではなく腫瘍試料中に異常に発現するmiRNAに焦点を当てている。
【0004】
早期膵臓がんの正確であり、確実な診断を目的として、循環miRNAを同定することが当該技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、対象(例えば、ヒト対象)由来の試料(例えば、血液試料)中のマイクロRNAの存在もしくは不存在および/または量を決定する方法、ならびにmiRNAに対するプローブを含むキットを提供する。本開示はまた、対象を処置する方法、ならびに特定のmiRNAの存在または不存在について対象の血液試料をスクリーニングする方法を記載する。
【0006】
本開示は、一態様では、対象における膵臓がんを診断するための方法であって、
(a)対象から回収した試料を得るステップと、
(b)試料中のhsa-miR-192-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-340-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-miR-323a-5p、hsa-miR-190a-3p、およびhsa-miR-26b-5pからなる群から選択される1種以上の試験マイクロRNAを検出および定量化するステップと、
(c)ステップ(b)において決定された試験マイクロRNAの量を統計モデルと比較するステップと
を含み、それによって対象における膵臓がんを診断する、方法を提供する。
【0007】
一部の実施形態では、本方法は、(d)試料中のhsa-miR-17-5p、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-28-3p、およびhsa-miR-92a-3pからなる群から選択される1つ以上の正規化マイクロRNAを検出および定量化するステップと、(e)ステップ(d)において定量化された正規化マイクロRNAの量を用いて試験マイクロRNAの量を正規化するステップとをさらに含む。
【0008】
一部の実施形態では、hsa-miR-192-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-340-5p、hsa-miR-194-5p、およびhsa-miR-26b-5pを検出および定量化するステップを含む方法が提供される。
【0009】
例示的な実施形態では、hsa-miR-192-5p、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-miR-340-5p、およびhsa-miR-26b-5pを検出および定量化するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、hsa-miR-192-5p、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-miR-340-5p、およびhsa-miR-26b-5pを検出および定量化するステップからなる方法が提供される。
【0010】
他の実施形態では、hsa-miR-192-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-340-5p、およびhsa-miR-194-5pを検出および定量化するステップを含む方法が提供される。
【0011】
さらに他の実施形態では、hsa-miR-192-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-340-5p、hsa-miR-194-5p、およびhsa-let-7g-5p;またはhsa-miR-192-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-340-5p、hsa-miR-194-5p、およびhsa-miR-26b-5pのいずれかを検出および定量化するステップを含む方法が提供される。
【0012】
一部の実施形態では、hsa-miR-323a-5p、hsa-miR-190a-3p、hsa-miR-192-5p、およびhsa-let-7d-5pを検出および定量化するステップを含む方法が提供される。
【0013】
他の実施形態では、hsa-miR-192-5pおよびhsa-miR-194-5pを検出および定量化するステップを含む方法が提供される。
【0014】
さらに他の実施形態では、hsa-miR-192-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-miR-340-5p、およびhsa-miR-26b-5pを検出および定量化するステップを含む方法が提供される。
【0015】
一部の実施形態では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10種の試験マイクロRNAを検出および定量化するステップを含む方法が提供される。
【0016】
他の実施形態では、参照マイクロRNAであるhsa-miR-17-5p、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-28-3p、およびhsa-miR-92a-3pを検出および定量化するステップを含む方法が提供される。
【0017】
さらなる実施形態では、参照マイクロRNAであるhsa-miR-17-5p、hsa-miR-199a-3p、およびhsa-miR-92a-3pを検出および定量化するステップを含む方法が提供される。
【0018】
さらに他の実施形態では、少なくとも2または3種の正規化マイクロRNAを検出および定量化するステップを含む方法が提供される。
【0019】
他の実施形態では、マイクロRNAの各々またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのプローブへの試料の結合を検出することによって、マイクロRNAを検出および定量化するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、プローブの少なくとも1つは、検出可能な標識を含む。他の実施形態では、プローブの各々は、検出可能な標識を含む。
【0020】
さらなる実施形態では、核酸検出アッセイによるマイクロRNAを検出および定量化するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、アッセイは、マイクロアレイ、RT-PCR、およびRT-qPCRからなる群から選択される。
【0021】
追加の実施形態では、試料中のマイクロRNA分子を逆転写し、それによってcDNA試料を得ることによってマイクロRNAを検出および定量化するステップと、cDNA試料を配列決定するステップとを含む方法が提供される。一部の実施形態では、本方法は、cDNA試料を配列決定する前に、cDNA試料中のDNA分子を増幅するステップをさらに含む。一部の実施形態では、マイクロRNAを検出および定量化する方法は、miRNA-seqを用いて行われる。
【0022】
さらに別の態様では、本開示は、hsa-miR-192-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-340-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-miR-323a-5p、hsa-miR-190a-3p、およびhsa-miR-26b-5pからなる群から選択されるマイクロRNA、またはそれらのcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも1つの試験プローブを含むキットを提供する。
【0023】
一部の実施形態では、hsa-miR-192-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-98-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-let-7g-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-let-7f-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-let-7a-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-122-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-let-7d-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-340-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-194-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、およびhsa-miR-26b-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、またはそれらのマイクロRNAのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブを含むキットが提供される。
【0024】
他の実施形態では、
hsa-miR-192-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-let-7g-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-let-7a-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-122-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-340-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-194-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、およびhsa-miR-26b-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、またはそれらのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブを含むキットが提供される。
【0025】
一部の実施形態では、hsa-miR-192-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-let-7g-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-let-7a-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-122-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-340-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-194-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、およびhsa-miR-26b-5p、またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブからなるキットが提供される。
【0026】
追加の実施形態では、hsa-miR-192-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-98-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-let-7f-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-let-7a-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-122-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-let-7d-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-340-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、およびhsa-miR-194-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、またはそれらのマイクロRNAのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブを含むキットが提供される。
【0027】
さらなる実施形態では、hsa-let-7g-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、もしくはhsa-miR-26b-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、またはそのマイクロRNAのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブを含むキットが提供される。
【0028】
一部の実施形態では、hsa-miR-192-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、およびhsa-miR-194-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、またはそれらのマイクロRNAのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブを含むキットが提供される。
【0029】
さらなる実施形態では、hsa-miR-192-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-let-7a-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-194-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-let-7f-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-122-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、hsa-miR-340-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、およびhsa-miR-26b-5pに特異的にハイブリダイズする試験プローブ、またはそれらのマイクロRNAのcDNAに特異的にハイブリダイズする試験プローブを含むキットが提供される。
【0030】
一部の実施形態では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10種の試験プローブを含むキットが提供される。
【0031】
さらなる実施形態では、hsa-miR-17-5p、hsa-miR-199a-3p、hsa-miR-28-3p、およびhsa-miR-92a-3pからなる群から選択されるマイクロRNA、またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも1つの正規化プローブを含むキットが提供される。
【0032】
一部の実施形態では、hsa-miR-17-5pに特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ、hsa-miR-199a-3pに特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ、hsa-miR-28-3pに特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ、およびhsa-miR-92a-3pに特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ、またはそれらのマイクロRNAのcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブを含むキットが提供される。
【0033】
追加の実施形態では、hsa-miR-17-5pに特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ、hsa-miR-199a-3pに特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ、およびhsa-miR-92a-3pに特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブ、またはそれらのマイクロRNAのcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる正規化プローブを含むキットが提供される。
【0034】
他の実施形態では、少なくとも2または3種の正規化プローブを含むキットが提供される。
【0035】
追加の実施形態では、正規化プローブを含まないキットが提供される。
【0036】
さらなる実施形態では、検出可能な標識を含む少なくとも1つのプローブを含むキットが提供される。一部の実施形態では、プローブの各々は、検出可能な標識を含む。
【0037】
一部の実施形態では、マイクロRNA分子の逆転写のための試薬を含むキットが提供される。
【0038】
さらに別の態様では、本開示は、膵臓がんを有することが疑われる対象を処置するための方法であって、
(a)対象から回収した試料を得るステップと、
(b)試料中のhsa-miR-192-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-340-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-miR-323a-5p、hsa-miR-190a-3p、およびhsa-miR-26b-5pからなる群から選択される1つ以上の試験マイクロRNAを検出および定量化するステップと、
(c)ステップ(b)において決定された試験マイクロRNAの量を統計モデルと比較するステップと、
(d)ステップ(c)の比較に基づいて膵臓がんのより侵襲的な試験および/または調査のために対象を選択し、場合により、膵臓がんの対象に処置を施すステップと
を含む、方法を提供する。
【0039】
一部の実施形態では、より侵襲的な試験は、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、X線、陽電子断層撮影とコンピュータ断層撮影(PET-CT)スキャン、内視鏡検査、超音波検査、核スキャン、および生検からなる群から選択される。
【0040】
他の実施形態では、膵臓がんの調査は、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、X線、陽電子断層撮影とコンピュータ断層撮影(PET-CT)スキャン、内視鏡検査、超音波検査、および核スキャンからなる群から選択される定期的な画像試験を含む。一部の実施形態では、定期的な撮像は、3、6、または12カ月ごとに行われる。
【0041】
さらに他の実施形態では、対象は、膵臓がんのための処置を施される。一部の実施形態では、施される処置は、手術、化学療法、免疫療法、および放射線療法からなる群から選択される。一部の実施形態では、処置は免疫療法ペンブロリズマブを含む。一部の実施形態では、処置は手術を含む。一部の実施形態では、処置は化学療法および免疫療法を含む。一部の実施形態では、処置は化学療法および放射線を含む。
【0042】
追加の実施形態では、対象は、膵臓がんのための化学療法処置を施される。一部の実施形態では、化学療法は、タキサン、代謝拮抗薬、白金化学療法、アルキル化剤、DNA複製を阻害する薬剤、PARP阻害剤、および抗腫瘍性化学療法からなる群から選択される。一部の実施形態では、化学療法は、パクリタキセル、ドセタキセル、およびアルブミン結合パクリタキセルからなる群から選択されるタキサンを含む。一部の実施形態では、化学療法は、ゲムシタビン塩酸塩、5-フルオロウラシル(5-FU)、およびカペシタビンからなる群から選択される代謝拮抗薬を含む。一部の実施形態では、化学療法は、プラチナ化学療法オキサリプラチンを含む。一部の実施形態では、化学療法は、アルキル化剤シスプラチンを含む。一部の実施形態では、化学療法は、イリノテカンおよびリポソーム性イリノテカンからなる群から選択される、DNA複製を阻害する薬剤を含む。一部の実施形態では、化学療法は、PARP阻害剤オラパリブを含む。一部の実施形態では、化学療法は、エベロリムス、エルロチニブ塩酸塩、スニチニブ、およびマイトマイシンからなる群から選択される抗腫瘍性化学療法を含む。
【0043】
さらなる実施形態では、対象は、膵臓がんのための薬物併用処置を施される。一部の実施形態では、薬物併用は、FOLFIRINOX(フォリン酸、フルオロウラシル、イリノテカン塩酸塩、およびオキサリプラチン)、GEMCITABINE-CISPLATIN(ゲムシタビン塩酸塩およびシスプラチン)、GEMCITABINE-OXALIPLATIN(ゲムシタビン塩酸塩およびオキサリプラチン)、およびOFF(オキサリプラチン、フルオロウラシル、およびフォリン酸)からなる群から選択される。
【0044】
追加の態様では、本開示は、対象における膵臓がんを診断するための分析方法であって、
a)上記対象由来の試料中のhsa-miR-192-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-340-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-miR-323a-5p、hsa-miR-190a-3p、およびhsa-miR-26b-5pからなる群から選択される1種以上の試験マイクロRNAを検出および定量化するステップと、
b)ニューラルネットワークにおいて、ステップa)で定量化された1種以上の試験マイクロRNAの量を分析して、対象が膵臓がんを有する確率を決定するステップと、
c)ステップb)の分析に基づいて、膵臓がんを有する可能性が高いものとして対象を割り当てるステップと
を含む、方法を提供する。
【0045】
一部の実施形態では、膵臓がんを有する可能性が高いものとしての対象の割り当ては、50%、60%、70%、80%、または90%を超える精度率を有する。一部の実施形態では、膵臓がんを有する可能性が高いものとしての対象の割り当ては、50%、60%、70%、80%、または90%を超える特異度率を有する。一部の実施形態では、膵臓がんを有する可能性が高いものとしての対象の割り当ては、50%、60%、70%、80%または90%を超える感度率を有する。
【0046】
さらなる実施形態では、本方法は、試料を得るステップを含む。一部の実施形態では、試料は、血液試料または膵臓試料である。一部の実施形態では、血液試料は、血漿、血清、および全血からなる群から選択される。
【0047】
さらに他の実施形態では、本方法は、対象から回収した試料を得るステップを含む。一部の実施形態では、対象はヒト対象である。一部の実施形態では、対象は、膵臓がんを発症するリスクがより高い。一部の実施形態では、対象は糖尿病を有する。一部の実施形態では、対象は膵炎を有する。一部の実施形態では、対象は、膵臓がんまたは膵炎の家族歴を有する。一部の実施形態では、対象は、遺伝子突然変異による膵臓がんを発症するリスクがより高い。一部の実施形態では、対象は、BRCA1、BRCA2、PALB2、TP53、MLH1、CDKN2A、およびATMからなる群から選択される遺伝子における突然変異を有する。
【0048】
さらなる実施形態では、本方法は、統計モデルの使用を含む。一部の実施形態では、統計モデルは、線形判別分析、ロジスティック回帰、多変量適応回帰スプライン、ナイーブベイズ、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、決定木、K近傍法、機能木、最小絶対偏差(LAD)木、ベイジアンネットワーク、エラスティックネット回帰、およびランダムフォレストからなる群から選択される1種以上のモデルを含む。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】患者の2つの独立したコホートを用いてヒト血清から循環miRNAシグネチャを生成するための実施例1の研究デザインの概略図を示す。模式図はまた、患者がどのようにトレーニングセット、試験セット、および検証セットに割り当てられたかを示す。また、この概略図は、アルゴリズムを作成するために一連の統計ツールを使用し、miRNAの最終セットを作成し、モデルを較正し、qPCRを使用してモデルを検証するステップも示している。
図2】実施例1のトレーニングセットの変数選択研究を示す図である。10種のmiRNAを、ファミリーワイズエラー率(FWER)p値<0.05(Bonferroni調整されたp値を有する)を有するものとして選択した。ボルカノプロット(図2A)および結果の表(図2B)は、これら10種のmiRNAについて、3種が上方制御され、7種が下方制御されたことを示す。
図3-1】後退段階的ロジスティック回帰によりさらに精緻化されたロジスティック回帰性能を用いた、実施例1における分類モデルの開発を示す図である。図3Aは、試験されたmiRNAモデルについての特異度対感度のプロットを示す。図3Bは、最終モデルで使用された4種のmiRNAの計算値を示す。これらの結果は、モデルがHosmer Lemeshow値=4.4927およびp値=0.810161でトレーニングおよび試験セットに非常によく適合することを示す。図3Cは、がん陽性試料対対照におけるがんの検出での感度および特異度を示す。4種のmiRNAの最終ロジスティック回帰モデルは、79.3%の感度と84.1%の特異度を示した。
図3-2】(上記の通り。)
図4】分析におけるmiRNAの数を減少させるために使用される感度分析を伴う人工ニューラルネットワークを使用する、実施例1における分類モデルの開発を示す図である。図4Aは、試験されたモデルmiRNAモデルについての特異度対感度のプロットを示す。人工ニューラルネットワークは、以下の8種のmiRNAを必要とする:hsa-miR-192-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-miR-122-5p、およびhsa-miR-340-5p。図4Bは、がん陽性試料対対照におけるがんの検出での感度および特異度を示す。最終人工ニューラルネットワークは、71.4%の感度と90.9%の特異度を示した。
図5】ロジスティック回帰、生データセット上の人工ニューラルネットワーク、およびSMOTE均衡型データセット上の人工ニューラルネットワークを使用して診断モデルを作成するために、実施例1からのデータセットをトレーニングセット、試験セット、および検証セットに分割することを示す図である。図5Aに示されるように、ポーランド試料の2つのグループのデータセットは、モデリングのために分割された。図5Bは、トレーニングセットから均衡型データセットを作成するためのSMOTE技術の使用を示す。
図6】試験データセットと検証データセットの両方の性能を評価するための2つのmiRNA(hsa-miR-192-5pおよびhsa-miR-194-5p)モデルのロジスティック回帰の実施例1における使用を示す図である。図6Bは、このモデルが、観察されたがんを有する試料対対照におけるがんの予測において、66%の感度率と74%の特異度率を有することを示す。
図7-1】実施例1における古典的(非SMOTE修飾された)データのニューラルネットワークモデルの結果を示す図である。これらの結果は、年齢および性別を含む臨床データ、ならびに全10種のmiRNAを用いて作成した。以下のmiRNAは、正規化のために使用された:hsa-miR-17-5p、hsa-miR-92a-3p、およびhsa-miR-199a-3p。図7Aは、トレーニングセットのROC曲線下面積(AUC)が0.8475であることを示す。図7Bは、トレーニングデータセットおよび試験データセットについて、82.57%の精度、59.72%の感度、および93.84%の特異度の値を提供する。図7Bは、検証データセットについて、精度について83.02%、感度について64.71%、および特異度について91.67%の値を提供する。
図7-2】(上記の通り。)
図8-2】実施例1におけるSMOTE均衡型データセット上のニューラルネットワークモデルの結果を示す図である。これらの結果は、臨床データセット、ならびにhsa-miR-192-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-miR-340-5p、およびhsa-miR-26b-5pを含むトリミングされたmiRNAセットを用いて生成された。以下のmiRNAは、正規化のために使用された:hsa-miR-17-5p、hsa-miR-92a-3p、およびhsa-miR-199a-3p。図8Aは、データセットのAUCが0.8971であることを示す。図8Bは、トレーニングデータセットおよび試験データセットについて、84.86%の精度、79.17%の感度、および87.67%の特異度の値を提供する。図8Bは、検証データセットについて、86.79%の精度、76.47%の感度、および91.67%の特異度の値を提供する。
図8-2】(上記の通り。)
【発明を実施するための形態】
【0050】
本開示は、対象から回収した試料中の特定のmiRNAバイオマーカーの量を測定するための方法およびキットを提供する。miRNAバイオマーカーはがん(例、膵臓がん)と関連付けられる。具体的には、統計的に関連する方法で、対象ががん(例えば、膵臓がん)を有する確率の増加を予測するために使用される、miRNAの試験および正規化の固有の組み合わせが記載される。これらのmiRNAの組み合わせの使用は、疾患に対する個人の感受性をモニタリングするために有用である非侵襲的ながん検出方法を提供する。検出方法は、単独で、または他の公知の診断方法と組み合わせて使用することができる。本明細書に記載される方法は、膵臓がんを検出または診断するために特に有用である。例えば、これらの方法は、最も一般的な鑑別診断である、膵臓がんと膵炎の鑑別に有効である。また、本明細書では、がん(例えば、膵臓がん)と診断された対象を調査し、処置する方法が提供される。
【0051】
この開示に記載される方法は、本明細書に開示される特定の方法および実験条件に限定されるものではなく、このような方法および条件は変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のものであり、限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0052】
さらに、本明細書に記載される実験は、特に断らない限り、当業者に慣用的な分子細胞生物学的および免疫学的技術を使用する。このような技術は、当業者に周知であり、文献で完全に説明されている。例えば、Ausubel, et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., NY, N.Y. (1987-2008)(すべての補遺を含む), Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Fourth Edition) by MR Green and J. Sambrook and Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Chapter 14, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor (2013, 2nd edition)を参照されたい。
【0053】
本明細書に別段の定義がない限り、本明細書で使用される科学用語および技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有する。任意の潜在的な曖昧さがある場合、本明細書に提供される定義は、辞書または外来的な定義に優先する。文脈上別段の要求がない限り、単数語は複数を含み、複数語は単数語を含むものとする。「または」の使用は、特に断らない限り、「および/または」を意味する。用語「含んでいる」の使用、ならびに「含む」および「含まれる」などの他の形態は、限定するものではない。
【0054】
一般的に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質化学および核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法は、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されている。本明細書に提供される方法および技術は、一般的に、当該技術分野において周知である慣用的な方法に従って行われ、特に断らない限り、本明細書全体を通して引用および検討されている種々の一般的およびより具体的な参考文献に記載されているものである。酵素反応および精製技術は、当該技術分野において一般的に達成されるか、または本明細書に記載されるように、製造業者の仕様に従って行われる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品化学および薬化学の実験手法および技術に関連して使用される命名法は、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されているものである。化学合成、化学分析、医薬調製、製剤化、および送達、ならびに患者の処置に標準的な技術が使用される。
【0055】
RNAおよびDNAの検出方法
本開示は、がんの診断および処置のための組成物および方法を提供する。例示的な実施形態では、本明細書では、高感度かつ特異的な膵臓がんのための診断試験が提供される。この診断試験は、核酸の検出および定量に依存する。具体的には、マイクロRNAの検出および定量に依存する診断試験が提供される。
【0056】
本明細書では、核酸の定量および検出のための方法が提供される。本明細書で使用される場合、用語「核酸」とは、相補的核酸とハイブリダイズすることができる2つ以上のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体(例えば、リボース環の2’-Oと4’-C原子間のメチレン架橋を有するリボ核酸)のポリマーを指す。本明細書で使用される場合、この用語には、限定されないが、DNA、RNA、LNA、およびPNAが含まれる。
【0057】
具体的には、本明細書では、マイクロRNAの検出および定量のための方法が提供される。本明細書で使用される用語「マイクロRNA」または「miRNA」とは、ヘアピン二次構造を形成する19~26ヌクレオチドの長さの小さな非コードリボ核酸(RNA)遺伝子産物を指す。本明細書に記載されるマイクロRNAは、参照により本明細書に組み込まれるAmbros et al., RNA. 2003 Mar;9(3):277-9に記載される命名法を用いて命名され、配列はmirbase.orgで見出すことができる。
【0058】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、試験マイクロRNAの使用を含む。本明細書で使用される場合、用語「試験マイクロRNA」とは、その存在もしくは非存在および/または量が、例えば診断目的で(例えば、アルゴリズムを使用して)決定されるマイクロRNAを指す。一部の実施形態では、1つ以上の試験マイクロRNAの存在もしくは不存在および/または量は、正規化目的のために追加的に使用することができる。
【0059】
本明細書で使用される語句「1つ以上の試験マイクロRNAを検出および定量化する」とは、マイクロRNAの濃度、絶対値または存在を測定するために使用され得る任意の方法を包含する。マイクロRNAの量を決定するための例示的な方法には、配列決定(例えば、ギルバート配列決定、サンガー配列決定、SMRT配列決定または次世代シークエンシング)、マイクロアレイ検出、PCR、RT-PCR、リアルタイムqPCR、およびリアルタイムRT-qPCRが含まれる。
【0060】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、正規化を用いて行われる。本明細書で使用される場合、用語「正規化する」または「正規化」とは、第2の測定値(例えば、ハウスキーピング遺伝子のレベル)に対して第1の測定値(例えば、目的とする遺伝子のレベル)を調整することを指し、第1および第2の測定値は、同じ試料(例えば、同じ均質試料の異なる部分)から測定され、第2の測定値は、試料の量および/または質に相関する。正規化により、個々の試料調製物で異なり得る試料の量および/または質に影響されない第1の値の相対量を得ることができる。本明細書で使用される場合、用語「正規化マイクロRNA」または「参照マイクロRNA」とは、試料(例えば、血液試料)中に安定な量を有することが公知であり、試料中の試験マイクロRNAの測定値を正規化するために使用されるマイクロRNAを指す。単一の正規化マイクロRNAを使用して、試料中の標的マイクロRNAの測定量を正規化することができるか、または複数のマイクロRNAの平均値を正規化するために使用することができる。特定の実施形態では、正規化は、増幅サイクルの数(正規化因子マイクロRNAの平均)-増幅サイクルの数(目的とするmiR)によって計算され得る。
【0061】
例示的な実施形態では、表1および2のmiRNAの1つ以上の、または様々な組み合わせは、本明細書に開示される方法を用いて定量化される。表1は、結果を正規化するための参照miRNAを提供する。表2は、がん(例えば、膵臓がん)のバイオマーカーとして役立つ試験miRNAを提供する。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
一部の実施形態では、表2における試験miRNAの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12種のレベルが検出され、定量化される。例示的な実施形態では、表2における試験miRNAの7種のレベルが検出され、定量化される。
【0065】
一部の実施形態では、表1における参照miRNAの1、2、3、または4種のレベルが検出され、定量化される。例示的な実施形態では、表1における参照miRNAの全4種のレベルが検出され、定量化される。追加の例示的な実施形態では、表1における参照miRNAの4種および表2における試験miRNAの7種のレベルが検出され、定量化される。
【0066】
例示的な実施形態では、検出および定量化されるmiRNAは、対象由来の試料から得られる。本明細書で使用される用語「対象」とは、哺乳動物、例えば、ヒト、飼育動物または家畜、例えば、ネコ、イヌ、ウシ、もしくはウマを指す。本明細書で使用される場合、用語「試料」とは、組織または体液などの対象に由来する材料の生物学的標本を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「対象から回収した試料を得ること」は、本明細書に開示される任意の適切な手段、ならびに対象から生物学的標本を取り出すためのルーチンの臨床方法を包含する。試料は、対象から直接採取することができるか、または第三者から得ることができる。試料回収は、例えば、医師、医師助手、看護師、獣医師、歯科医師、カイロプラクター、救急医師、皮膚科医師、腫瘍医師、消化器科医師、または外科医師などの医療提供者によって行うことができる。試料には、限定されないが、血液、粘膜(例えば唾液)、リンパ液、尿、糞便、および固形組織試料が含まれる。例示的な実施形態では、体液試料は、対象から回収される。対象から体液試料を得るための手法は、全血およびリンパ液を回収および処理するための手法を含めて周知である。
【0068】
例示的な実施形態では、対象から得られる試料は、血液試料である。本明細書で使用される場合、用語「血液試料」とは、全血などの対象から採取されたある量の血液、または全血中に正常に含有される細胞(例えば、赤血球、白血球、および血小板)を欠く、血漿などの対象から採取された血液の成分部分、またはフィブリノーゲンおよび一部の凝固因子を欠く血漿である血清を指す。一部の実施形態では、試料は、組織試料である。組織試料は、生検によって得ることができる。一部の実施形態では、試料は、組織生検(例えば、針生検、CTガイド下針生検、吸引生検、内視鏡生検、気管支鏡生検、気管支洗浄液、切開生検、切除生検、パンチ生検、スライス生検、皮膚生検、骨髄生検、または電気化学的ループ切除)である。
【0069】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、核酸間の結合のステップまたは複数のステップを含む。本明細書で使用される場合、用語「結合する」または「結合すること」は、2つの分子間、例えば2つの相補的核酸間の非共有結合または共有結合の相互作用を指す。
【0070】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、核酸間のハイブリダイゼーションのステップまたは複数のステップを含む。本明細書で使用される用語「ハイブリダイズする」とは、第1の一本鎖核酸を第2の相補的一本鎖核酸にアニーリングさせることを指し、第1の核酸と第2の核酸の相補的ヌクレオチドは水素結合によって対を形成する。本明細書で使用される場合、用語「特異的にハイブリダイズすること」は、第1の核酸分子(例えば、特定のヌクレオチド配列を有する核酸プローブ)と第2の核酸分子(例えば、核酸プローブのそれと相補的なヌクレオチド配列を有するマイクロRNA)の間の非共有結合の相互作用を指す。ハイブリダイゼーション条件は、当該技術分野において報告されており、当業者に公知である。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーションを検出するための条件は、核酸検出アッセイ(例えば、マイクロアレイ、RT-PCR、またはRT-qPCR)の適切な条件である。2つの核酸間のハイブリダイゼーションの可能性は、2つの核酸間で相補的なヌクレオチド配列と相関する。オリゴヌクレオチドが生理学的条件下で、37℃を超える、45℃を超える、好ましくは少なくとも50℃、および典型的には60℃~80℃またはそれ以上のTmで標的にハイブリダイズする場合、オリゴヌクレオチドは標的ポリヌクレオチドに「特異的にハイブリダイズする」。オリゴヌクレオチドの「Tm」は、50%が相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズする温度である。Tmは、例えば、Miyada et al., Methods Enzymol. 154:94-107 (1987)に記載されるように、生理食塩水中の標準条件下で決定される。
【0071】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、相補的核酸の相互作用のステップを含む。ポリヌクレオチドは、2つの一本鎖ポリヌクレオチド間で逆平行配置でハイブリダイゼーションが起こる場合、互いに「相補的」として記載される。相補性(あるポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドと相補的である程度)は、一般的に受け入れられている塩基対形成の規則に従って、互いに水素結合を形成することが予想される対立する鎖中の塩基の割合によって定量化できる。
【0072】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、PCRによって行われる。本明細書で使用される用語「PCR」とは、ある量の標的DNAを増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応を指す。PCRは、DNA変性、アニーリングおよび増幅されたDNAの酵素的伸長のための反応の繰り返される加熱および冷却のサイクルからなる熱サイクルに依存する。第1に、DNAの鎖は、高温でDNAの融解または変性と呼ばれるプロセスにおいて分離される。次に、温度を下げ、プライマーおよび標的DNAの鎖が選択的に結合またはアニールすることを可能にし、DNAポリメラーゼが標的DNAを増幅するための鋳型を作製する。次に、DNAポリメラーゼの作動温度で、鋳型依存性のDNA合成が起こる。これらのステップが繰り返されて、標的DNAのコピーが多数つくられる。
【0073】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、プライマーの使用を含む。本明細書で使用される「プライマー」とは、標的DNA配列に選択的に結合し、3’末端でDNAポリメラーゼによる新規デオキシリボヌクレオチドの付加を可能にする、短い一本鎖DNA配列を指す。特定の実施形態によれば、フォワードプライマーは、長さが18~35、19~32または21~31ヌクレオチドである。フォワードプライマーのヌクレオチド配列は、それが標的部位の一部または全部と特異的にハイブリダイズし、そのTm値が50℃~72℃の範囲内であり得、特に58℃~61℃の範囲内であり得、59℃~60℃の範囲内であり得る限り、限定されない。プライマーのヌクレオチド配列は、プライマーTm予測ツールを用いてTm値を確認するように手動で設計され得る。プライマーヌクレオチドは、ヌクレオチド類似体および/または修飾されたヌクレオチド、例えばLNAまたはPNAを含み得る。
【0074】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、RT-PCRを用いて行われる。本明細書で使用される場合、用語「RT-PCR」とは、RNAを増幅するためのプロセスである逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を指す。RNA分子は、逆転写酵素を用いて相補的DNA(cDNA)に逆転写され、次にPCRを用いて、得られたcDNAを増幅する。
【0075】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、RT-qPCRを用いて行われる。本明細書で使用される場合、用語「RT-qPCR」とは、逆転写定量ポリメラーゼ連鎖反応、RT-PCRプロセス中のcDNAの増幅が増幅された標的DNAを検出するプローブを用いてリアルタイムで定量的に検出されるRT-PCRのバリアントを指す。例えば、一部の実施形態では、自己消光核酸プローブを反応混合物に添加する。自己消光核酸プローブは、標的配列に結合した場合にのみ蛍光を発する。PCRの各サイクルが完了すると、自己消光プローブは、増幅されたDNAに結合し、消光せず、光励起源に曝露されて蛍光を発する。DNAが増幅されると、プローブおよび標的結合の増加は、自己消光核酸プローブの増加した蛍光をもたらす。各増幅サイクル後の蛍光プローブの検出は、増幅された標的DNAと結合し、蛍光を発する核酸プローブの量を増加させるため、増幅プロセスのリアルタイム測定を可能にする。一部の実施形態では、インターカレーティング色素プローブは、二本鎖核酸との相互作用の際に蛍光を発する反応混合物に添加される。増幅プロセス中の色素蛍光の増加は、増幅される標的DNAの量が増加するに従って色素プローブ挿入の量が増加するため、リアルタイムでのDNA増幅の測定を可能にする。
【0076】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、プローブの使用を伴う。本明細書で使用される場合、用語「プローブ」とは、試料(例えば、血液試料)中のマイクロRNAの存在もしくは非存在および/または量を決定するために使用される分子または複合体を指す。特定の実施形態では、プローブは、マイクロRNAまたはその相補的DNA(cDNA)に特異的にハイブリダイズすることができる核酸部分(例えば、DNA、修飾されたDNA、または修飾されたRNA)を含む。特定の実施形態では、プローブは、マイクロRNAと同一または相補的な少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の連続するヌクレオチドの配列を含む。特定の実施形態では、プローブは、核酸部分に共有結合的または非共有結合的にコンジュゲートされる検出可能な標識をさらに含む。例示的な検出可能な標識としては、限定されないが、フルオロフォア、小分子(例えば、アビジンファミリーの小分子)、酵素、抗体もしくは抗体断片、またはマイクロRNAに連結される形態で対象中に存在しない核酸配列(例えば、バーコード配列)が挙げられる。したがって、プローブは、マイクロRNAのヌクレオチド配列に相補的であるヌクレオチド配列を有するフルオロフォア標識された核酸であり得る。
【0077】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、正規化プローブの使用を含む。本明細書で使用される場合、用語「正規化プローブ」とは、試料(例えば、血液試料)中の正規化マイクロRNAの存在もしくは非存在および/または量を決定するために使用されるプローブを指す。特定の実施形態では、正規化プローブは、正規化マイクロRNAまたはその相補的DNA(cDNA)に特異的にハイブリダイズすることができる核酸部分(例えば、DNA、修飾されたDNA、または修飾されたRNA)を含む。
【0078】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、試験プローブの使用を含む。本明細書で使用される場合、用語「試験プローブ」とは、試料(例えば、血液試料)中の試験マイクロRNAの存在もしくは非存在および/または量を決定するために使用されるプローブを指す。特定の実施形態では、試験プローブは、試験マイクロRNAまたはその相補的DNA(cDNA)に特異的にハイブリダイズすることができる核酸部分(例えば、DNA、修飾されたDNA、または修飾されたRNA)を含む。
【0079】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、DNA配列の増幅のための試薬の使用を含む。語句「DNA配列の増幅のための試薬」には、限定されないが、(1)熱安定性DNAポリメラーゼ;(2)デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP);(3)DNAポリメラーゼの最適な活性、結合動力学、および安定性のための適切な化学的環境を提供する緩衝液;(4)マグネシウムまたはマンガンイオンなどの二価陽イオン;および(5)カリウムイオンなどの一価陽イオンが含まれる。試薬は、溶液、濃縮溶液、または粉末の形態で提供することができる。
【0080】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、RNA分子の逆転写のための試薬の使用を含む。語句「RNA分子の逆転写のための試薬」は、限定されないが、逆転写酵素;RNase阻害剤;核酸配列(RNAまたはDNAなど)にハイブリダイズするプライマー;アデノシンオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするプライマー;および逆転写酵素の最適な活性、結合動力学、および安定性のための適切な化学的環境を提供する緩衝液を包含する。試薬は、溶液、濃縮溶液、または粉末の形態で提供することができる。
【0081】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、次世代シークエンシングを用いて行われる(preform)。本明細書で使用される場合、用語「次世代シークエンシング」とは、スライドまたはビーズに付着した一本鎖核酸の短い断片のハイスループット並行配列決定、例えば、ILLUMINA、ROCHE(454シークエンシング)、またはION TORRENT、THERMOFISHERによる技術を指す。個々のヌクレオチドの一本鎖核酸への取り込みは、光学的に(取り込まれたヌクレオチドの蛍光を介して)、またはヌクレオチドの取り込み中に放出された水素イオンの検出(例えば、イオン半導体配列決定)によって検出することができる。
【0082】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、マイクロアレイ検出を用いて行われる(preform)。本明細書で使用される場合、用語「マイクロアレイ検出」とは、固体表面の別個の領域(例えば、スライド上のスポットまたはマイクロウェル中のビーズ)に付着した一本鎖核酸プローブを使用して標的核酸を検出する方法を指す。特定の核酸に対するプローブのハイブリダイゼーションは、光学的検出(例えば、フルオロフォア、化学発光分子)または放射線学的検出を用いるなどの種々の方法によって検出することができる。
【0083】
一部の実施形態では、miRNAの検出および定量は、非天然標識の使用を含む。本明細書で使用される場合、用語「非天然標識」は、限定されないが、生物学的分子(例えば、生体によって産生される核酸、ヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、炭水化物、脂質、一次/二次代謝物、または化学生成物)と結合する、それに付着する、またはそれと会合することが可能であり、生物学的分子と会合した場合に分子の検出を許容する1つ以上の標識分子を包含する;非天然標識は、通常、生物学的分子と関連しない。例示的な非天然標識には、限定されないが、抗原性タグ(例えば、ジゴキシゲニン);放射性同位元素(例えば、32P);化学発光または比色化学反応を触媒する酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ);核酸色素(例えば、Hoechst 33342、DAPI、臭化エチジウム);有機フルオロフォア(例えば、6-カルボキシフルオレセイン、テトラクロロフルオレセイン、フルオレセイン、ローダミン、またはシアニン);フルオロフォアクエンチャ(例えば、テトラメチルローダミン、ジメチルアミノアゾベンゼンスルホン酸、BLACK HOLE QUENCHERS、またはIOWA BLACK色素);タンパク質フルオロフォア(例えば、緑色蛍光タンパク質);蛍光共鳴エネルギー移動のためのドナーおよびアクセプターフルオロフォア(例えば、フルオレセインとテトラメチルローダミン、またはNowGFPとmOrange);量子ドットフルオロフォア(例えば、金属カルコゲニド、コアシェル半導体ナノ結晶、または合金半導体量子ドット);ならびに本明細書に記載される非天然標識に結合した、付着した、または会合した免疫系に基づく分子(例えば、フルオロフォアまたは触媒酵素で標識された抗体または抗体断片)が含まれる。
【0084】
診断のための統計モデル
本開示は、がんの診断および処置のための組成物および方法を提供する。例示的な実施形態では、本出願人は、高感度かつ特異的ながん(例えば、膵臓がん)の診断試験を提供している。この診断試験は、統計モデルの使用に依存する。例示的な実施形態では、表1および2のmiRNAの1つ以上の、または様々な組み合わせは、本明細書に開示される方法を用いて定量化され、次に、診断を決定するために統計モデルを用いてさらに分析される。本明細書で使用される場合、用語「診断」とは、個体ががん(例えば、膵臓がん)などの特定の疾患を有し得ることを同定または認識することを指す。
【0085】
例示的な実施形態では、本開示の診断方法は、統計モデルを使用して行われる。本明細書で使用される場合、用語「統計モデル」とは、観察されたデータの数学的表現を指す。本明細書に開示される方法において使用される統計モデルは、当該技術分野において公知である任意の統計モデルであり得る。例示的な統計モデルは、線形判別分析、ロジスティック回帰、多変量適応回帰スプライン、ナイーブベイズ、人工ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、決定木、K近傍法分類子、機能木、最小絶対偏差(LAD)木、ベイジアンネットワーク、エラスティックネット回帰、およびランダムフォレストからなる群から選択される1種以上のモデルを含む。
【0086】
本明細書では、がん(例えば、膵臓がん)の診断を高めるために、個別に、およびグループまたはサブセットで用いることができるmiRNAのグループが開示される。本明細書に開示される診断方法において有用であるmiRNAの一例を表2に示す。表2に提示される試験miRNAは、個人ががん(例えば、膵臓がん)を有する可能性を予測するためのバイオマーカーとして用いることができる。一部の実施形態では、表2における試験miRNAの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12種のレベルを決定し、統計モデルと比較する。例示的な実施形態では、表2における試験miRNAの7種のレベルを決定し、統計モデルと比較する。例示的な実施形態では、表2からの1つ以上の試験miRNAのレベルは正規化される。正規化には、試験miRNAの相対的定量を決定するためのベースラインとして役立つ参照miRNAの使用が伴う。例示的な実施形態では、試験miRNAは表2の1つ以上のmiRNAを含み、参照miRNAは表1の1つ以上のmiRNAを含む。一部の実施形態では、表1の参照miRNAの1、2、3、または4種を使用し、試験miRNAの正規化された量を統計モデルと比較する。例示的な実施形態では、表1の参照miRNAの4種を使用し、試験miRNAの正規化された量を統計モデルと比較する。
【0087】
例示的な実施形態では、本明細書では、対象における膵臓がんを診断するための方法であって、(a)対象から回収した試料を得るステップと、(b)試料中のhsa-miR-192-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-340-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-miR-323a-5p、hsa-miR-190a-3p、およびhsa-miR-26b-5pからなる群から選択される1種以上の試験マイクロRNAを検出および定量化するステップと、(c)ステップ(b)において決定された試験マイクロRNAの量を統計モデルと比較するステップとを含み、それによって対象における膵臓がんを診断する、方法が提供され。
【0088】
例示的な実施形態では、使用される統計モデルはロジスティック回帰である。本明細書で使用される場合、用語「ロジスティック回帰」は、独立変数が二値従属変数に影響を及ぼすかどうかを決定するために使用される統計モデルである。ロジスティック回帰は、データを記載し、1つの従属二値変数と1つ以上の名目、順序、間隔または比レベルの独立変数の間の関係を説明するために使用される。
【0089】
例示的な実施形態では、使用される統計モデルはニューラルネットワークである。本明細書で使用される場合、用語「人工ニューラルネットワーク」または「ニューラルネットワーク」とは、脳の単純な数学モデルを緩やかにモデル化する、シリコでの神経単位のリンクされた集合に基づく予測モデルを指す。人工ニューラルネットワークは、その応答変数とその予測変数の間の複雑な非線形関係の同定を可能にする。人工ニューラルネットワークは、1つ以上の隠れた層を有することができ、各層は、2つ以上の変数を与えられた予測を生成するために相互作用する1つ以上のニューロンを含む。
【0090】
一部の実施形態では、miRNAの量は、対象ががん(例えば、膵臓がん)を有する確率を計算するために統計モデルと比較される。例示的な実施形態では、ニューラルネットワークは、対象ががん(例えば、膵臓がん)を有する確率を計算するために使用される。本明細書では、がん(例えば、膵臓がん)を診断するための分析方法が開示され、統計モデルにおいて、対象ががん(例えば、膵臓がん)を有する確率の計算に基づいて、対象ががんを有する可能性が高いものとして割り当てられる。本明細書で使用される場合、「がんを有する可能性が高い」とは、一般集団におけるがんの統計的発生よりも、対象ががんを有する可能性が高いことを意味する。一部の実施形態では、対象ががんを有する可能性が少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%であると計算される場合、対象はがんを有する可能性が高いものとして割り当てられる。本明細書で使用される場合、「膵臓がんを有する可能性が高い」とは、一般集団における膵臓がんの統計的発生よりも、対象が膵臓がんを有する可能性が高いことを意味する。一部の実施形態では、対象が膵臓がんを有する可能性が少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%であると計算される場合、対象は膵臓がんを有する可能性が高いものとして割り当てられる。例示的な実施形態では、対象が膵臓がんを有する可能性が少なくとも約50%であると計算される場合、対象は膵臓がんを有する可能性が高いものとして割り当てられる。
【0091】
本明細書に開示される方法は、高い精度で対象ががんを有するかどうかを対象由来の試料から決定することができる。一部の実施形態では、がんの診断の精度は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%である。一部の実施形態では、膵臓がんの診断の精度は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%である。例示的な実施形態では、膵臓がんの診断の精度は、少なくとも約80%である。
【0092】
本明細書に開示される方法は、対象が高程度の特異度でがんを有するかどうかを、対象由来の試料から決定することができる。換言すれば、本開示の方法は、高程度の精度でがん対一般的な鑑別診断を検出することができる。一部の実施形態では、がんの診断の特異度は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%である。一部の実施形態では、膵臓がんの診断の特異度は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%である。例示的な実施形態では、膵臓がんの診断の特異度は、少なくとも80%である。
【0093】
本明細書に開示される方法は、対象が高程度の感度でがんを有するかどうかを、対象由来の試料から決定することができる。一部の実施形態では、がんの診断の感度は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%である。一部の実施形態では、膵臓がんの診断の感度は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%である。例示的な実施形態では、膵臓がんの診断の感度は、少なくとも80%である。
【0094】
例示的な実施形態では、本明細書では、対象における膵臓がんを診断するための分析方法であって、(a)上記対象由来の試料中のhsa-miR-192-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-340-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-miR-323a-5p、hsa-miR-190a-3p、およびhsa-miR-26b-5pからなる群から選択される1種以上の試験マイクロRNAを検出および定量化するステップと、(b)ニューラルネットワークにおいて、ステップa)で定量化された1種以上のマイクロRNAの量を分析して、対象が膵臓がんを有する確率を決定するステップと、(c)ステップb)の分析に基づいて、膵臓がんを有する可能性が高いものとして対象を割り当てるステップとを含む、方法が提供される。
【0095】
がんの診断および処置
本明細書に開示される方法は、単独で、またはがんの診断および処置のための他の方法と組み合わせて使用することができる。
【0096】
本明細書に開示される方法を用いて診断することができるがんは、限定されないが、固形腫瘍、血液学的がん(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫)、および転移性病変を含む。一実施形態では、がんは固形腫瘍である。固形腫瘍の例としては、悪性腫瘍、例えば、肉腫および癌腫、例えば、種々の臓器系の腺がん、例えば、肺、乳房、卵巣、リンパ系、消化管(例えば、結腸)、肛門、生殖器および泌尿生殖器(例えば、腎臓、尿路上皮、膀胱細胞、前立腺)、咽頭、CNS(例えば、脳、神経またはグリア細胞)、頭部および頸部、皮膚(例えば、黒色腫)、および膵臓に影響を与えるもの、ならびに、例えば、結腸がん、直腸がん、腎細胞がん、肝臓がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がんまたは小細胞肺がん)、小腸がんおよび食道がんなどの悪性腫瘍を含む腺がんが挙げられる。がんは、早期、中間期、後期、または転移がんであり得る。
【0097】
例示的な実施形態では、がんは膵臓がんである。本明細書で使用される用語「膵臓がん」とは、膵臓に影響を与える悪性腫瘍のグループを指す。膵臓の腺がんは、膵臓がんの中で最も多く見られるタイプで、外分泌細胞のがん増殖から始まる。膵神経内分泌腫瘍、または内分泌細胞から始まる膵島細胞腫瘍はあまり見られない。膵外分泌がんの約95%は腺がんであり、通常は膵管から始まる(膵臓がんについて、米国がん協会:https://www.cancer.org/cancer/pancreatic-cancer/about/what-is-pancreatic-cancer.htmlで入手可能)。まれに、膵酵素を作る細胞からがんが発生することもあり、腺房細胞癌腫として公知である。他のまれなタイプの外分泌がんには、腺扁平上皮癌腫、扁平上皮癌腫、印環細胞癌腫、未分化癌腫、および巨細胞を伴う未分化癌腫が含まれる。(同上)
【0098】
すべての膵臓がんは、原発腫瘍、リンパ節の状態、および転移性疾患の存在の評価に基づいたTNM病期分類システムに従って分類される(Ansari et al. Pancreatic Cancer: Yesterday, Today, and Tomorrow, Future Oncology 2016 Aug;12(16):1929-46)。TNM病期分類システムでは、0期、IA期、IB期、IIA期、IIB期、III期、およびIV期の膵臓がんに分類される。0期は、原発腫瘍が上皮内癌であり、所属リンパ節転移がなく、遠隔転移がないことを示す。IA期は、原発腫瘍が膵臓に限局し、2cm未満またはそれに等しく(T1)、所属リンパ節転移がなく(N0)、遠隔転移がない(M0)ことを示す。IB期は、原発腫瘍が膵臓に限局し、2cmを超え(T2)、所属リンパ節転移がなく(N0)、遠隔転移がない(M0)ことを示す。IIA期は、原発腫瘍が膵臓を超えて進展しているが、腹腔動脈または上腸間膜動脈への浸潤がなく(T3)、所属リンパ節転移がなく(N0)、遠隔転移がない(M0)ことを示す。IIB期は、いずれかのレベルの原発腫瘍の進行(T1~T3)、所属リンパ節転移(N1)、および遠隔転移なし(M0)を示す。III期は、腹腔動脈または上腸間膜動脈に浸潤する原発腫瘍(切除不能な原発腫瘍)(T4)、いずれかのレベルのリンパ節転移(N0~N1)、および遠隔転移なし(M0)を示す。IV期は、いずれかのレベルの原発腫瘍(T0~T4)、いずれかのレベルのリンパ節転移(N0~N1)、および遠隔転移(M1)を示す。
【0099】
本明細書で使用される場合、「膵臓がんを発症するリスクがより高い」とは、遺伝学、年齢、併存疾患などを含む可能性のある因子により、一般集団より膵臓がんを発症する素因があるか、または統計学的に発症する可能性が高い対象を指す。一部の実施形態では、個体は、糖尿病を有するため、膵臓がんを発症するリスクがより高い。本明細書で使用される用語「糖尿病」とは、血糖値の上昇したレベルによって特徴付けられる慢性の代謝性疾患を指す。糖尿病は1型または2型のいずれかに分類することができる。1型糖尿病、またはインスリン依存性糖尿病は、膵臓がインスリンをほとんどか、またはまったく産生しない慢性状態である。2型糖尿病は、体がインスリンに抵抗性を示すようになったか、またはインスリンが十分に生成されなくなったときに生じる。一部の実施形態では、個体は、膵炎を有するため、膵臓がんを発症するリスクがより高い。他の実施形態では、個体は、膵臓がんまたは膵炎の家族歴のために、膵臓がんを発症するリスクがより高い。
【0100】
例示的な実施形態では、個体は、遺伝子突然変異による膵臓がんを発症するリスクがより高い。本明細書で使用される場合、「遺伝子突然変異による膵臓がんを発症するリスクが高い」とは、膵臓がんの発症を一般集団より統計学的に起こりやすくするDNA突然変異を有する個体を指す。これらの遺伝子突然変異は、がんまたは膵臓がんと特異的に相関することが当該技術分野において公知である任意の突然変異を含むことができる。突然変異が膵臓がんと関連付けられる例示的な遺伝子としては、BRCA1、BRCA2、PALB2、TP53、MLH1、CDKN2A、およびATMが挙げられる。
【0101】
例示的な実施形態では、本明細書に開示される方法は、がん診断(例えば、膵臓がん)を確認するために、より侵襲的な試験のために対象を選択するために使用される。本明細書で使用される場合、用語「より侵襲的な試験」とは、本明細書に記載されるmiRNAのレベルを検出することを超えた任意のタイプの試験を指す。一部の実施形態では、「より侵襲的な試験」は、生検または採血などのがんを検出するために対象の試料を回収および分析する試験を含むことができる。一部の実施形態では、「より侵襲的な試験」は、がんを検出するための内視鏡検査または他の探索的手法を含む。一部の実施形態では、「より侵襲的な試験」は、がんを検出するための撮像を含む。例示的な撮像技術には、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、X線、陽電子断層撮影とコンピュータ断層撮影(PET-CT)スキャン、超音波検査、内視鏡検査、および核スキャンが含まれる。
【0102】
例示的な実施形態では、本明細書に開示される方法は、対象ががん(例えば、膵臓がん)を発症するかどうかをモニタリングするために、がんの調査のために対象を選択するために使用される。本明細書で使用される場合、用語「がんの調査」は、定期的に繰り返される、上述の「より侵襲的な試験」方法のいずれかの使用を含むことができる。一部の実施形態では、上記の試験は、以下の時間枠:約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24週間ごとに1回繰り返される。一部の実施形態では、上記の試験は、下の時間枠:約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24カ月ごと1回に繰り返される。
【0103】
例示的な実施形態では、本明細書に開示される方法は、がん(例えば、膵臓がん)の処置のために対象を選択するために使用される。本明細書で使用される場合、用語「処置すること」または「処置」とは、対象における少なくとも1つの症状を軽減、減少、もしくは緩和すること、または疾患の進行の遅延をもたらすことを指す。例えば、処置は、障害の1つもしくは複数の症状の低減、または障害、例えば、がんの完全な根絶であり得る。本開示の意味において、用語「処置する」はまた、予防される状態、疾患もしくは障害に関連付けられるかまたはそれによって引き起こされる疾患を、停止すること、および/またはそれらが悪化するリスクを低減すること、もしくは少なくとも1つの症状を予防することを意味する。例えば、処置は、がん(例えば、膵臓がん)の少なくとも1つの症状を軽減し、減少し、または緩和し得る。
【0104】
手術は、がん(例えば、膵臓がん)に対する例示的な処置である。膵頭部に局在したがんに対する手術は、ウィップル手法(膵頭十二指腸切除術)と呼ばれる。膵切除術と呼ばれる手術は、膵臓の左側を切除するために行うことができる。膵臓がんに対する別の処置は、膵全摘術と呼ばれる膵臓全体を摘出する手術である。
【0105】
化学療法は、がん(例えば、膵臓がん)に対する例示的な処置である。がん(例えば、膵臓がん)を処置するために、種々の例示的な化学療法剤を使用することができる。タキサンはまた、膵臓がんを処置するために使用することができ、例えば、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、およびアルブミン結合パクリタキセル(Abraxane(登録商標))がある。代謝拮抗薬は、膵臓がんを処置するために使用することができ、例えば、ゲムシタビン塩酸塩(Gemzar(登録商標)またはInfugem(登録商標))、5-フルオロウラシル(5-FUまたはAdrucil(登録商標))、またはカペシタビン(Xeloda(登録商標))が含まれる。白金化学療法は、膵臓がんを処置するために使用することができ、例えば、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標))が含まれる。アルキル化剤は、膵臓がんを処置するために使用することができ、例えば、シスプラチン(PLATINOL(登録商標))が含まれる。DNA複製を阻害する薬剤はまた、膵臓がんを処置するために使用することができ、例えば、イリノテカン(Camptosar(登録商標))およびリポソーム性イリノテカン(Onivyde(登録商標))が含まれる。PARP阻害剤はまた、膵臓がんを処置するために使用することができ、例えば、オラパリブ(Lynparza(登録商標))が含まれる。抗腫瘍性化学療法薬はまた、膵臓がんを処置するために使用することができ、例えば、エベロリムス(Afinitor(登録商標))、エルロチニブ塩酸塩(Tarceva(登録商標))、スニチニブ(Sutent(登録商標))、マイトマイシンが含まれる。
【0106】
薬物併用は、がん(例えば、膵臓がん)に対する例示的な処置である。例示的な薬物併用は、FOLFIRINOX(フォリン酸、フルオロウラシル、イリノテカン塩酸塩、およびオキサリプラチン)である。さらなる例示的な薬物併用は、GEMCITABINE-CISPLATIN(ゲムシタビン塩酸塩およびシスプラチン)である。別の例示的な薬物併用は、GEMCITABINE-OXALIPLATIN(ゲムシタビン塩酸塩およびオキサリプラチン)である。さらに別の例示的な薬物併用は、OFF(オキサリプラチン、フルオロウラシル、およびフォリン酸)である。
【0107】
放射線療法は、がん(例えば、膵臓がん)に対する例示的な処置である。放射線療法では、X線または陽子などの高エネルギービームを利用してがん細胞を破壊する。使用される放射線療法は、外部ビーム放射線であり得、放射線の外部ビームは機械から生じ、放射線を患者のがんに向ける。あるいは、内照射療法では、固体または液体などの放射線源を患者の体内に注入する。化学療法および放射線を併用することができ、これを化学放射線療法と呼ぶ。
【0108】
免疫療法は、がん(例えば、膵臓がん)に対する例示的な処置である。ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))などの免疫調節剤は、膵臓がんの処置を処置するために使用することができる免疫療法の一種である。
【0109】
例示的な実施形態では、本明細書では、膵臓がんを有することが疑われる対象を処置するための方法であって、(a)対象から回収した試料を得るステップと、(b)試料中のhsa-miR-192-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-340-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-miR-323a-5p、hsa-miR-190a-3p、およびhsa-miR-26b-5pからなる群から選択される1種以上の試験マイクロRNAを検出および定量化するステップと、(c)ステップ(b)において決定された試験マイクロRNAの量を統計モデルと比較するステップと、(d)ステップ(c)の比較に基づいて膵臓がんのより侵襲的な試験および/または調査のために対象を選択し、場合により、膵臓がんの対象に処置を施すステップとを含む、方法が提供される。
【0110】
一部の実施形態では、処置は、本明細書に記載される種々の処置方法の組み合わせである。例示的な処置方法は、化学療法と免疫療法の組み合わせである。別の例示的な処置方法は、化学療法と放射線の組み合わせである。さらに別の例示的な処置方法は、免疫療法と放射線の組み合わせである。さらなる例示的な処置方法は、手術と組み合わせて本明細書に開示される処置方法(例えば、手術と化学療法、手術と免疫療法、手術と放射線など)のいずれかの使用を含む。
【0111】
キット
キットはまた、本明細書に開示される診断方法および処置方法を行うために提供される。キットは、場合により、キットの様々な成分の使用方法に関する説明書をさらに含み得る。
【0112】
例示的な実施形態では、キットは、hsa-miR-192-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7g-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-340-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-miR-323a-5p、hsa-miR-190a-3p、およびhsa-miR-26b-5pからなる群から選択されるマイクロRNA、またはそのcDNAに特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも1つの試験プローブを含む。
【0113】
本発明のキットは、バイアル、試験管、アンプル、ボトルなどの1つ以上の容器を密閉して収容するように区画化された担体を含み得る。このような容器の各々は、本明細書に記載される成分または成分の混合物(プライマー、試験プローブ、正規化プローブ、非天然標識(例えば、TaqMan(登録商標)、Scorpions(登録商標)、およびLightCycler(登録商標)などの蛍光標識)を有する試験または正規化プローブ、蛍光色素(例えば、SYBR(登録商標)グリーン)、溶媒または緩衝液、DNA配列の増幅のための試薬、RNA分子の逆転写のための試薬など)を含む。一般的に、キットはまた、1つ以上の緩衝液、対照試料などを含有し得る。
【0114】
特定の実施形態では、キットは、本明細書に開示される試験プローブを含有する1つ以上の容器を含む。一部の実施形態では、試験プローブは、検出可能な標識を含有する。一部の実施形態では、キットは、正規化プローブを含有する1つ以上の容器を含む。一部の実施形態では、正規化プローブは、検出可能な標識を含有する。
【0115】
例示的な実施形態では、キットは、miRNA分子の逆転写のための試薬を含有する1つ以上の容器を含む。一部の実施形態では、キットは、逆転写酵素を含有する1つ以上の容器を含む。一部の実施形態では、キットは、オリゴ-dTプライマーを含有する1つ以上の容器を含む。一部の実施形態では、キットは、dNTPを含有する1つ以上の容器を含む。一部の実施形態では、キットは、RNase阻害剤を含有する1つ以上の容器を含む。一部の実施形態では、キットは、RNAにハイブリダイズするプライマーを含有する1つ以上の容器を含む。一部の実施形態では、キットは、逆転写酵素のための適切な化学的環境を提供する緩衝溶液を含有する1つ以上の容器を含む。一部の実施形態では、miRNA分子の逆転写のためのすべての試薬は、単一の容器内に含有される。
【0116】
例示的な実施形態では、キットは、qPCRのための試薬を含有する1つ以上の容器を含む。一部の実施形態では、キットは、DNAポリメラーゼを含有する1つ以上の容器を含む。一部の実施形態では、キットは、DNA結合色素を含有する1つ以上の容器を含む。一部の実施形態では、キットは、非天然標識を含有するプローブを含有する1つ以上の容器を含む。一部の実施形態では、キットは、dNTPを含有する1つ以上の容器を含む。
【0117】
当業者には、本明細書に記載される方法の他の適切な修飾および適応が、本明細書に開示される実施形態の範囲から逸脱することなく、適切な同等物を使用してなされ得ることが容易に明らかになる。ここで、特定の実施形態を詳細に記載したが、以下の実施例を参照することによってより明確に理解され、これらは例示の目的のためにのみ含まれ、限定することを意図するものではない。
【0118】
本明細書で使用される場合、用語「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「有すること(having)」、およびそれらの文法的変形は、記載された特徴、整数、ステップまたは成分を特定するものとしてとられるが、1つ以上の追加の特徴、整数、ステップ、成分またはそれらのグループの追加を排除するものではない。これらの用語は、「からなること」および「から本質的になること」という用語を包含する。
【実施例
【0119】
[実施例1]
ヒト血清から診断的循環miRNAシグネチャを生成するニューラルネットワーク
要約:この実施例は、miRNA発現に依存する膵臓がん検出のための診断試験の開発、および人工ニューラルネットワークを通して疾患の確率を計算する高度なAIに基づくアルゴリズムを記述する。本方法は、miRNA配列決定または定量PCR(qPCR)を用いて測定することができる10種のmiRNAのセットを含む。両方法について、miRNA発現データの入力を使用し、使用者に膵臓がんを有する患者に由来する試料の確率を提供する適切に重み付けされたアルゴリズムが調製された。このモデルは、miRNA-seqを用いてボストンおよびポーランドの182個の試料から開発され、再試験されたポーランドの試料およびポーランドの追加の150個の試料について検証された。健常な患者と、膵臓がんの最も一般的な鑑別診断である膵炎を有する患者由来の試料を使用して、試験性能を評価した。両方の場合において、試料は分類モデルをトレーニングするために使用されるセットに無作為に分割され、試料の20%はモデルの性能を評価するための独立した検証セットとして保持された。miRNA-seqに基づく試験の結果は、約71%の感度と約91%の特異度を示した。qPCRに基づくニューラルネットワークは、約76%の感度と約92%の特異度でこの性能をわずかに改善した。これらの診断値は、糖尿病と診断された患者など、膵臓がんのリスクが高い患者の反復試験に適したものにする。
【0120】
ヒト血清から診断的循環miRNAシグネチャを生成するために、2つの独立したコホートからの182人の患者を有する処置前対象の研究集団を集めた。図1に示されるように、1つのコホートはDana-Farber Cancer Institute(DFCI)で米国にあり、2番目のコホートはロッツ医科大学でポーランドにあった。DFCIコホートの患者は進行期膵臓がん(n=30)であり、年齢および性別を30人の健常対照者と合致させた。ポーランドの患者は膵臓がん(n=44:早期8、進行27、不明9)、膵炎(n=28)、または臨床的に健康であった(n=50)。小配列決定(miRNA-seq)を使用して、卵巣がん(Elias et al. Diagnostic Potential for a Serum miRNA Neural Network for Detection of Ovarian Cancer, Elife. 2017;6:e28932. 2017年10月31日公開.doi:10.7554/eLife.28932)または放射線暴露(Fendler et al. Evolutionarily conserved serum microRNAs predict radiation-induced fatality in nonhuman primates. Sci Transl Med. 2017;9(379):eaal2408. doi:10.1126/scitranslmed.aal2408)において、先に記載されるすべての公知のおよび予測されるmiRNAを検出した。図1に示されるように、その後、患者を以下の3群に無作為に割り当てた:1)変数選択およびモデル開発のためのトレーニングセット、2)分類モデルの診断カットオフの較正のための試験セット、および3)新しいデータ上の診断モデルの性能試験のための検証セット。次に、機械学習アプローチを含む一連の統計ツールを展開して、miRNA-seqデータを分析し、膵臓がん患者と膵炎患者および健常対照者を識別するための最良の性能を有するアルゴリズムを作製した。miRNAの最終セットが確立され、モデル較正が行われると、検証サブグループについてそれらを分析した。利用可能な試料数は限られているにもかかわらず、ニューラルネットワーク分析の性能は85%の精度を超えた。注目すべきことに、早期がんと進行がんの両方が、ニューラルネットワークアプローチを用いて同様の性能で同定された。
【0121】
表1に示される4種の参照miRNAをqPCR検証の目的で同定した。
【0122】
【表3】
【0123】
表2に示される10種のmiRNAを選択し、膵臓がん診断のためのmiRNAシグネチャにおいて使用した。
【0124】
【表4】
【0125】
図2A-Bは、上述したトレーニングセットの変数選択プロセスを示す。10種のmiRNAを、ファミリーワイズエラー率(FWER)p値<0.05(Bonferroni調整されたp値を有する)を有するものとして選択した。ボルカノプロットおよび結果の表は、これら10種のmiRNAについて、3種が上方制御され、7種が下方制御されたことを示す。
【0126】
10種のmiRNAを用いて、2つの主要な方法ロジスティック回帰(分析におけるmiRNA数を減少させるための後退段階的変数選択を伴う)および人工ニューラルネットワーク(分析におけるmiRNA数を減少させるために使用される感度分析を伴う)を用いた分類モデルを開発した。
【0127】
ロジスティック回帰分析の結果は、図3A-Bに示される。図3Aは、試験されたモデルmiRNAモデルについての特異度対感度のプロットを示す。図3Bは、最終モデルで使用された4種のmiRNAの計算値を示す。結果は、50%のカットオフ値を有するファミリーワイズエラー率(FWER)に基づくログを用いて計算された。これらの結果は、モデルがHosmer Lemeshow値=4.4927およびp値=0.810161でトレーニングおよび試験セットに非常によく適合することを示した。図3Cは、試料対対照におけるがんの検出での感度および特異度を示す。4種のmiRNAの最終ロジスティック回帰モデルは、79.3%の感度と84.1%の特異度を示した。
【0128】
人工ニューラルネットワークの結果は、図4A-Bに示されている。図4Aは、試験されたモデルmiRNAモデルについての特異度対感度のプロットを示す。人工ニューラルネットワークは、以下の8種のmiRNAを必要とする:hsa-miR-192-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-let-7d-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-miR-98-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-miR-122-5p、およびhsa-miR-340-5p。図4Bは、試料対対照におけるがんの検出での感度および特異度を示す。最終人工ニューラルネットワークは、71.4%の感度と90.9%の特異度を示した。
【0129】
次に、図1に示されるように、診断モデルのqPCR検証を完了した。分類モデルの結果を、qPCRを用いて再現した。miRNA-seqに使用されたポーランドの試料および下記の表3に示される追加の150個の試料において、10種のmiRNAおよび4種の参照miRNAのセットを定量化した。表2に示される10種のmiRNAを、Bonferroni補正後に有意に異なって発現するように選択したカスタムメイドのアレイを用いて、QPCRに基づく検証を行った。次に、表1に示される4種のmiRNAを、正規化因子として、normiRazorツール(Grabia et al. NormiRazor: Tool Applying GPU-Accelerated Computing for Determination of Internal References in MicroRNA Transcription Studies. BMC Bioinformatics 21, 425 (2020). https://doi.org/10.1186/s12859-020-03743-8)を用いて選択した。
【0130】
【表5】
【0131】
qPCR分析には、サイクル閾値(Ct)の前処理が含まれた。元のCt値のための3つの前処理ステップは、1)バックグラウンドフィルタリング(ブランク試料において測定されたCt値を超える値は非検出として処理された)、2)期待最大化(EM)アルゴリズムを用いた非検出の補完、および3)Ct値の重複除去(2つの測定値からの平均Ct値が得られた)を含んだ。最後に、正規化(dCt計算)を、以下の式を用いて行った:Cq=上位3種の正規化因子(hsa-miR-17-5p、hsa-miR-92a-3p、およびhsa-miR-199a-3p)の平均。
【0132】
次に、3つの異なる技術を使用して最終診断モデルを設計した。これらの技術には、ロジスティック回帰(後退段階的変数選択を伴う)、生データセット上の人工ニューラルネットワーク、およびデータセットを均衡させるための合成少数オーバーサンプリング技術(SMOTE)を用いた人工ニューラルネットワークが含まれた。この分析では、miRNAががんを対照から区別することができることが決定されており、最良の可能な分類ツールを作製する目的に沿って、最終モデルの性能を改善するために年齢および性別データを含む臨床データも使用された。データは、人工ニューラルネットワークの構築におけるオーバーフィッティングを評価するためにトレーニング/試験セットと、偏りのない方法でモデル性能を評価するための検証セットにさらに分割される。最後に、SMOTEオーバーサンプリング技術を用いて、設定の均衡をとり、分類モデルの性能を向上させた。
【0133】
図5Aに示されるように、ポーランド試料の2セットのデータセットは、モデリングのために分割された。予測モデルの開発のために、データセットをトレーニンググループ、試験グループ、および検証グループに分割した。図5Bに示されるように、不均衡問題を打ち消すために、トレーニングセットのためのSMOTE技術を用いて均衡型データセットが作成されたが、試験および検証データセットは同じままであった。
【0134】
図6A-Bに示されるように、2種のmiRNA(hsa-miR-192-5pおよびhsa-miR-194-5p)モデルのロジスティック回帰を用いて、試験と検証データセットの両方の性能を評価した。図6Bは、このモデルが、観察されたがんを有する試料対対照におけるがんの予測において、66%の感度率および74%の特異度率を有することを示す。
【0135】
図7A-Bに示されるように、古典的(非SMOTE修飾された)データのニューラルネットワークモデルを、年齢および性別を含む臨床データ、ならびに全10種のmiRNAを用いて試験した。以下のmiRNAは、正規化のために使用された:hsa-miR-17-5p、hsa-miR-92a-3p、およびhsa-miR-199a-3p。このニューラルネットワークモデルの結果を図7A-Bに示す。図7Aは、トレーニングセットのROC曲線下面積(AUC)が0.8475であることを示す。図7Bは、トレーニングデータセットおよび試験データセットについて、82.57%の精度、59.72%の感度、および93.84%の特異度の値を提供する。図7Bは、検証データセットについて、精度について83.02%、感度について64.71%、および特異度について91.67%の値を提供する。
【0136】
図8A-Bに示されるように、SMOTE均衡型データセット上のニューラルネットワークモデルを、臨床データセット、ならびにhsa-miR-192-5p、hsa-let-7a-5p、hsa-miR-194-5p、hsa-let-7f-5p、hsa-miR-122-5p、hsa-miR-340-5p、およびhsa-miR-26b-5pを含むトリミングされたmiRNAセットを用いて試験した。以下のmiRNAは、正規化のために使用された:hsa-miR-17-5p、hsa-miR-92a-3p、およびhsa-miR-199a-3p。図8Aは、データセットのAUCが0.8971であることを示す。図8Bは、トレーニングおよび試験データセットについて、84.86%の精度、79.17%の感度、および87.67%の特異度の値を提供する。図8Bは、検証データセットについて、86.79%の精度、76.47%の感度、および91.67%の特異度の値を提供する。
【0137】
これらの結果は、同定されたmiRNAセットを用いて膵臓がんを有する患者を同定し、選択ツールに依存して感度76~82%、および特異度83~91%で健常対照または膵炎患者と区別できることを示す。人工ネットワークは、膵臓がんの先験的リスクおよび医師がスクリーニング検査または確認試験としてmiRNAに基づく試験を使用することを好むかどうかに応じて、併用または別々に使用することができる。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
【国際調査報告】