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特表2024-527373生分解性ポリマーベースのバイオコンポジット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】生分解性ポリマーベースのバイオコンポジット
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20240717BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20240717BHJP
   C08K 5/04 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K7/02 ZBP
C08K5/04
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024500645
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 CA2022051065
(87)【国際公開番号】W WO2023279206
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】63/219,344
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524008786
【氏名又は名称】シーティーケイ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・カナダ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CTK Research and Development Canada Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】メコネン,ティザル エイチ
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,アルビンド
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BN232
4J002CF031
4J002CF051
4J002EF047
4J002EL147
4J002FA046
(57)【要約】
本発明は、生分解性コンポジットの製造に使用する組成物、およびポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)成分;麻粉末;および任意選択で1つまたは複数の相溶化剤および/または無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、メチレンジフェニルジイソシアネート、ポリ(グリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレートのコポリマーおよび/またはアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBATを含む生分解性コンポジットを提供する。本発明はまた、該コンポジットを調製する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約30~99.5重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)成分;
b)約0.5~50重量%の麻残渣;および
c)任意選択で、約0.1~50重量%の
無水マレイン酸、グリシジルメタクリルレート、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、メチレンジフェニルジイソシアネート、ポリ(グリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリルレートのコポリマーおよび/またはアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBAT、および/または
無水マレイン酸、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、およびメチレンジフェニルジイソシアネートから選択される1つまたは複数の相溶化剤
を含む、生分解性バイオコンポジットの製造に使用する組成物。
【請求項2】
前記PBAT成分がポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、前記組成物が約0.1~50%の、1つまたは複数の前記相溶化剤でグラフトされたPBATを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
20~40重量%の可塑剤をさらに含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記PBAT成分がPBAT、デンプン、および可塑剤の混合物であり、PBATが前記組成物の約50~65重量%であり、デンプンが前記組成物の約15~35重量%であり、可塑剤が前記組成物の約10~15重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記PBAT成分がPBAT-熱可塑性デンプンブレンドであり、PBATが前記組成物の約50~65重量%であり、熱可塑性デンプンが前記組成物の約30~40重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記麻残渣が、約75~150μmの長さ、約15~40μmの幅、および約3.5~5のアスペクト比を有する粒子を含む、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記麻残渣が約1.0~2.0g/cmの密度を有する、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記麻残渣が、約60~75%のセルロース、5~15%のヘミセルロース、および約10~25%のリグニンを含む、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記麻残渣が処理され、そこからTHCおよびCBDを除去する、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
約1~3重量%の、グリセロールモノステアレートおよび/またはステアリン酸などの加工剤をさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
無機フィラー(タルク、粘土、珪灰石、モンモリロナイト、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、酸化物もしくは硫酸塩など)をさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の組成物でできているバイオコンポジット。
【請求項13】
a)約30~99.5重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)成分;
b)約0.5~50重量%の麻残渣;および
c)任意選択で、約0.1~50重量%の、無水マレイン酸、グリシジルメタクリルレート、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、メチレンジフェニルジイソシアネート;ポリ(グリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリルレートのコポリマーおよび/またはアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBAT、および/または
無水マレイン酸、ピロメリト酸無水物、アクリル酸;ポリアクリル酸、およびメチレンジフェニルジイソシアネートから選択される1つまたは複数の相溶化剤
を含む、バイオコンポジットであって、前記混合物が加熱されている、バイオコンポジット。
【請求項14】
前記PBAT成分がポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、前記バイオコンポジットが0.1~50重量%の、1つまたは複数の前記相溶化剤でグラフトされた前記PBATを含む、請求項13に記載のバイオコンポジット。
【請求項15】
20~40重量%の可塑剤をさらに含む、請求項14に記載のバイオコンポジット。
【請求項16】
前記PBAT成分がPBAT、デンプン、および可塑剤の混合物であり、PBATが前記組成物の約50~65重量%であり、デンプンが前記組成物の約15~35重量%であり、可塑剤が前記組成物の約10~15重量%である、請求項13に記載のバイオコンポジット。
【請求項17】
前記PBAT成分がPBAT-熱可塑性デンプンブレンドであり、PBATが前記組成物の約50~65重量%であり、熱可塑性デンプンが前記組成物の約30~40重量%である、請求項13に記載のバイオコンポジット。
【請求項18】
前記麻残渣が、約75~150μmの長さ、約15~40μmの幅、および約3.5~5のアスペクト比を有する粒子を含む、請求項13~17のいずれかに記載のバイオコンポジット。
【請求項19】
前記麻残渣が約.2~2.0g/cmの密度を有する、請求項13~17のいずれかに記載のバイオコンポジット。
【請求項20】
前記麻残渣が、約60~75%、5~15%のヘミセルロース、および約10~25%のリグニンを含む、請求項13~19のいずれかに記載のバイオコンポジット。
【請求項21】
前記麻残渣が前処理されTHCおよびCBDが除去されている、請求項13~20のいずれかに記載のバイオコンポジット。
【請求項22】
約1~3重量%の、グリセロールモノステアレートおよび/またはステアリン酸などの加工剤をさらに含む、請求項13~21のいずれかに記載のバイオコンポジット。
【請求項23】
無機フィラー(例えばタルク、粘土、珪灰石、モンモリロナイト、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、酸化物もしくは硫酸塩など)をさらに含む、請求項13~22のいずれかに記載のバイオコンポジット。
【請求項24】
a)PBAT成分を麻残渣、および任意選択で相溶化剤と混合すること、および
b)少なくとも前記PBATを溶融するのに十分な押し出し温度で前記混合物を押し出すこと
を含む、請求項13~23のいずれかに記載のバイオコンポジットを調製する方法。
【請求項25】
前記混合物が、スクリュー押出機を介して約80~120rpmのスクリュー速度、約150~220℃の加工温度で押し出される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記混合物が、スクリュー押出機を介して約380~450rpmのスクリュー速度、約130~200℃の加工温度で押し出される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記コンポジットが空冷され、ペレット化される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項28】
請求項13~23のいずれかに記載のバイオコンポジットを調製する方法であって、前記コンポジットが1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBATを含み、前記方法が
a)PBAT、1つまたは複数の相溶化剤、およびフリーラジカル開始剤を混合して反応混合物を形成し、前記反応混合物を溶融加工して相溶化剤がグラフトされたPBATを形成すること、によりグラフトされたPBTAを調製すること、および
b)工程a)で調製した前記相溶化剤がグラフトされたPBATを、前記PBAT成分、麻残渣、および任意選択の可塑剤および/またはフィラーと混合し、少なくとも前記PBATを溶融するのに十分な押し出し温度で前記混合物を押し出すこと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリマー材料の分野に関する。特に、本発明は、ポリマーベースバイオコンポジットおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは前世紀において人間社会の発展において重要な役割に貢献してきた[1]。プラスチック材料の大部分は主に化石燃料に由来する[2]。これらの石油由来のプラスチックは、それぞれの用途で使用されるポリマーの種類に応じて、強く、丈夫で、硬く、耐久性があり、比較的軽量で、安価で、長持ちし、熱的および化学的に安定している[3]ため、包装、建築、輸送、消費財などの使い捨ての用途に適した材料となっている。しかしながら、使用後のプラスチックの放出が管理および制御されておらず、多大な環境汚染負荷となっていた[4]。
【0003】
プラスチック管理への持続可能な手法に向けた最近の取り組みにより、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリカプロラクトン(PCL)などを含む生分解性および/またはバイオベースポリマーを利用して使い捨て消費財を製造することに対する関心が高まっている[5]。
【0004】
生分解性ポリマーの中でも、脂肪族芳香族コポリエステルであるポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)は、消費財や包装用途で使い捨てプラスチックに取って代わるとうたわれている最も魅力的な生分解性ポリマーの1つである。PBATは生分解性に加えて、さまざまな汎用プラスチックに負けない機械的特性を有しているため、食品包装や消費財用途にとって魅力的である。しかし、低密度ポリエチレンよりも約3倍高価であり、硬さ/剛性が低く、使用温度が比較的低いため、コスト競争力のある汎用プラスチック分野での広範な用途が妨げられている[6]。
【0005】
バイオコンポジットの開発におけるフィラーとしてのバイオ資源材料の使用は、弾性率を改善し、最終製品のコストを削減する効果的な手法である[7]。リグニン[8]、キチン[9]、絹粉末[10]、天然繊維[11、12]、コーヒーの出し殻[13]、リンゴ(lingo)セルロース系フィラー[14]、微細藻類バイオマス[15]などのさまざまなバイオ由来の材料、蒸留器で乾燥した可溶物を含む穀物[16]、トウモロコシ残渣[17]、その他のバイオマス[18、19]などは、PBATをベースとするバイオコンポジットの多くの研究者によって研究されてきた。PBATなどの通常は疎水性のポリマーマトリックスと親水性のバイオ資源繊維ベースのフィラーとの間の界面接着力が弱いことは、バイオコンポジットの未解決の課題の1つである。
【0006】
従って、従来のプラスチックに取って代わるために、生分解性ポリマーと持続可能で低コストの生分解性フィラーから調製できる、所望の機械的特性および/または熱機械的特性を有する、コスト競争力のある生分解性材料が必要である。
【0007】
この背景情報は、本発明に関連する可能性があると出願人が考える情報を周知させる目的で提供される。前述の情報のいずれかが本発明に反する先行技術を構成することを認めないことを必ずしも意図するものではなく、またそのように解釈すべきではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Geyer, R., J.R. Jambeck, and K.L. Law, Production, use, and fate of all plastics ever made. Science Advances, 2017. 3(7): p. e1700782.
【非特許文献2】Millet, H., et al., The Nature of Plastics and Their Societal Usage, in Plastics and the Environment. 2019, The Royal Society of Chemistry. p. 1-20.
【非特許文献3】The future of plastic. Nature Communications, 2018. 9(1): p. 2157.
【非特許文献4】Jambeck, J.R., et al., Plastic waste inputs from land into the ocean. Science, 2015. 347(6223): p. 768-771.
【非特許文献5】Di Bartolo, A., G. Infurna, and N.T. Dintcheva, A Review of Bioplastics and Their Adoption in the Circular Economy. Polymers, 2021. 13(8): p. 1229.
【非特許文献6】Mekonnen, T., et al., Progress in bio-based plastics and plasticizing modifications. Journal of Materials Chemistry A, 2013. 1(43): p. 13379-13398.
【非特許文献7】Nakayama, D., et al., Biodegradable Composites Developed from PBAT/PLA Binary Blends and Silk Powder: Compatibilization and Performance Evaluation. ACS Omega, 2018. 3(10): p. 12412-12421.
【非特許文献8】Mohanty, A.K., et al., Composites from renewable and sustainable resources: Challenges and innovations. Science, 2018. 362(6414): p. 536-542.
【非特許文献9】Xing, Q., et al., Biodegradable and High-Performance Poly(butylene adipate-co-terephthalate)-Lignin UV-Blocking Films. ACS Sustainable Chemistry & Engineering, 2017. 5(11): p. 10342-10351.
【非特許文献10】Meng, D., et al., Biodegradable Poly(butylene adipate-co-terephthalate) composites reinforced with bio-based nanochitin: Preparation, enhanced mechanical and thermal properties. Journal of Applied Polymer Science, 2020. 137(12): p. 48485.
【非特許文献11】Muthuraj, R., M. Misra, and A.K. Mohanty, Biodegradable biocomposites from poly(butylene adipate-co-terephthalate) and miscanthus: Preparation, compatibilization, and performance evaluation. Journal of Applied Polymer Science, 2017. 134(43): p. 45448.
【非特許文献12】Pinheiro, I.F., A.R. Morales, and L.H. Mei, Polymeric biocomposites of poly (butylene adipate-co-terephthalate) reinforced with natural Munguba fibers. Cellulose, 2014. 21(6): p. 4381-4391.
【非特許文献13】Moustafa, H., et al., Utilization of Torrefied Coffee Grounds as Reinforcing Agent To Produce High-Quality Biodegradable PBAT Composites for Food Packaging Applications. ACS Sustainable Chemistry & Engineering, 2017. 5(2): p. 1906-1916.
【非特許文献14】Le Digabel, F. and L. Averous, Effects of lignin content on the properties of lignocellulose-based biocomposites. Carbohydrate Polymers, 2006. 66(4): p. 537-545.
【非特許文献15】Torres, S., et al., Green Composites from Residual Microalgae Biomass and Poly(butylene adipate-co-terephthalate): Processing and Plasticization. ACS Sustainable Chemistry & Engineering, 2015. 3(4): p. 614-624.
【非特許文献16】Muniyasamy, S., et al., Biodegradable green composites from bioethanol co-product and poly(butylene adipate-co-terephthalate). Industrial Crops and Products, 2013. 43: p. 812-819.
【非特許文献17】Xu, Z., X. Qiao, and K. Sun, Environmental-friendly corn stover/poly(butylene adipate-co-terephthalate) biocomposites. Materials Today Communications, 2020. 25: p. 101541.
【非特許文献18】de Oliveira, T.A., et al., Biodegradation of mulch films from poly(butylene adipate co-terephthalate), carnauba wax, and sugarcane residue. Journal of Applied Polymer Science, 2019. 136(47): p. 48240.
【非特許文献19】Liu, W., et al., Properties of poly(butylene adipate-co-terephthalate) and sunflower head residue biocomposites. Journal of Applied Polymer Science, 2017. 134(13).
【非特許文献20】Zhu, M., et al., Highly Anisotropic, Highly Transparent Wood Composites. Advanced Materials, 2016. 28(26): p. 5181-5187.
【非特許文献21】Gupta, A., et al., Effects of Amphiphilic Chitosan on Stereocomplexation and Properties of Poly(lactic acid) Nano-biocomposite. Scientific Reports, 2018. 8(1): p. 4351.
【非特許文献22】Arabeche, K., et al., Physical and rheological properties of biodegradable poly(butylene succinate)/Alfa fiber composites. Journal of Thermoplastic Composite Materials. 0(0): p. 0892705720904098.
【非特許文献23】Chang, C.C., B.M. Trinh, and T.H. Mekonnen, Robust multiphase and multilayer starch/polymer (TPS/PBAT) film with simultaneous oxygen/moisture barrier properties. Journal of Colloid and Interface Science, 2021. 593: p. 290-303.
【非特許文献24】Sewda, K. and S.N. Maiti, Crystallization and melting behavior of HDPE in HDPE/teak wood flour composites and their correlation with mechanical properties. Journal of Applied Polymer
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、PBATに基づく生分解性バイオコンポジットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、生分解性コンポジットの製造に使用する組成物が提供され、この組成物は生分解性コンポジットの製造で用いる組成物を含み、該組成物が、a)約30~99.5重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)成分;b)約0.5~50重量%の麻残渣;およびc)任意選択で、約0.1~50重量%の、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、メチレンジフェニルジイソシアネート、ポリ(グリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレートのコポリマーおよび/またはアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBAT、および/または、無水マレイン酸、ピロメリト酸無水物、アクリル酸;ポリアクリル酸、およびメチレンジフェニルジイソシアネートから選択される1つまたは複数の相溶化剤を含む。
【0011】
本発明の一態様によれば、a)約30~99.5重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)成分;b)約0.5~50重量%の麻残渣;およびc)任意選択で、約0.1~50重量%の、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、メチレンジフェニルジイソシアネート;ポリ(グリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレートのコポリマーおよび/またはアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBAT、および/または、無水マレイン酸、ピロメリト酸無水物、アクリル酸;ポリアクリル酸、およびメチレンジフェニルジイソシアネートから選択される1つまたは複数の相溶化剤を含む、またはこれらからでできていて、該混合物が加熱されている、生分解性コンポジットが提供される。
【0012】
本発明の別の態様によれば、本明細書で記載されるバイオコンポジットを調製する方法が提供され、この方法はPBAT成分を麻残渣、および任意選択で相溶化剤と混合すること、および少なくとも前記PBATを溶融するのに十分な押し出し温度で前記混合物を押し出すことを含む。
【0013】
本発明の別の態様によれば、本明細書で記載されるバイオコンポジットを調製する方法が提供され、この方法は
a)PBATを、1つまたは複数の相溶化剤、およびフリーラジカル開始剤と混合して反応混合物を形成し、該反応混合物を溶融加工してグラフト化PBATを形成することによりグラフト化されたPBATを調製すること、および
b)工程a)で調製した前記グラフト化PBATを、PBAT成分、麻残渣、および任意選択の可塑剤および/またはフィラーと混合し、少なくとも前記PBATを溶融するのに十分な押し出し温度で前記混合物を押し出すことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
次に、本発明を、添付の図を参照して例示的な実施形態により説明する:
図1図1Aは麻残渣の形態学的分析であり、図1Bは麻残渣のFTIRスペクトルであり、図1Cは麻残渣の熱重量測定データであり、図1Dは麻残渣の微分重量損失データである。
図2図2は、MAグラフト化前(下)と後(上)のPBATのFTIRスペクトルである。
図3図3A~3Bは、PBAT並びにそのバイオコンポジットのさまざまな麻残渣含有量レベルおよびMAの存在におけるDSCサーモグラムを示す。図3Aは加熱曲線を示し、図3Bは冷却曲線を示す。
図4図4A~4Dは、本発明の実施形態のバイオコンポジットのTGA研究の結果を示す。図4Aは、mPBATを有しない調製試料の温度に対するパーセント重量損失を示し、図4Bは、mPBATを有する調製試料の温度に対するパーセント重量損失を示す。
図5図5A~5Dは、本発明の実施形態の例示的なバイオコンポジットの引張試験の結果を示す。図5Aは、機械的強度および破断点伸びを示し;図5Bは、引張弾性率および靭性を示し;図5Cは、開発されたバイオコンポジットの対応する応力-ひずみ曲線を示し、図5Dは、バイオコンポジットの熱たわみ温度に対するHPの効果を示す。
図6図6A~6Dは、試験片の耐荷重能力に対する温度の影響を示しており、図6Aおよび6Bは、mPBATを有しないおよび有する本発明の実施形態のバイオコンポジットの貯蔵弾性率を示し、図6Cおよび6Dは、mPBATを有しないおよび有するバイオコンポジットのタンデルタを示している。
図7図7A~7Cは、本発明の実施形態の、MAの存在を伴うおよび伴わないPBATおよびそのバイオコンポジットのレオロジー特性を示している。図7Aは複素粘度を示し、図7Bは貯蔵弾性率を示し、図7Cは損失弾性率を示す。
図8図8Aは麻粉末のSEM顕微鏡写真であり、図8Bは純PBATの破面を示し、図8Cは本発明の実施形態のPBAT-10HPバイオコンポジットの破面を示し、図8Dは本発明の実施形態のPBAT-40HPバイオコンポジットの破面を示している。
図9図9A~9Dは、PBAT-40HPの破面の(a)500倍および(b)1000倍、並びにPBAT-40HP-Mの破面の(c)500倍および(d)1000倍の倍率の異なるSEM顕微鏡写真である。
図10図10は、mPBATの存在に起因して開発されたバイオコンポジット中のゲル含有量を示している。
図11図11は、本発明の実施形態のPBAT-40HP-Mバイオコンポジットを用いて圧縮成形することによって調製された代表的なカトラリーおよび可撓性シートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
他に定義されていなければ、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、公称値からの±10%の変動を指す。こうした変動は、特に言及されるかどうかにかかわらず、本明細書で提供される所定の値に常に含まれることを理解されたい。
【0017】
本明細書で使用される場合、「麻残渣」(HR)という用語は、麻のハードおよび/または繊維がミクロンサイズの粒子に粉砕および/またはスライスされた砕いた麻の茎を指す。残渣は粉末または粉塵の形態であり得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、「生分解性」という用語は、太陽光もしくは紫外線、水もしくは湿気、細菌および真菌などの微生物、酵素、または風食にさらされると劣化または分解する材料を指す。場合によっては、げっ歯類、害虫、または昆虫による攻撃も、生分解または環境分解の一形態として見なすことができる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「熱可塑性デンプン」(TPデンプン)という用語は、適当な可塑剤とブレンドされたデンプンを指す。
【0020】
本発明は、生分解性バイオコンポジットを製造するための新規組成物、およびこれらの組成物から形成される生分解性バイオコンポジットに関する。
【0021】
本発明のバイオコンポジットは、バイオコンポジットの十分な靱性を維持しながら、向上した引張弾性率、引張強度、および熱たわみを発揮し、純PBATと比較して全体的に魅力的な材料特性および堆肥化可能性を発揮し、ファストフード用品、化粧品の容器、食品の容器などの幅広い使い捨て消費財にとって魅力的なものになる。
【0022】
一態様では、本発明は、生分解性バイオコンポジットの製造に使用する組成物を提供し、この組成物は、a)約30~99.5重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)成分、および約0.5~50重量%の麻残渣を含む。組成物はまた任意選択で約0.1~50重量%の無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、ピロメリト酸無水物、アクリル酸;ポリアクリル酸;メチレンジフェニルジイソシアネート;ポリ(グリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレートのコポリマーおよびアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤、および/または約0.1~50重量%の、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、メチレンジフェニルジイソシアネート、ポリ(グリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレートのコポリマーおよび/またはアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBATを含む。
【0023】
別の態様では、本発明は、約30~99.5重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)成分、および約0.5~50重量%の麻残渣の混合物でできている生分解性バイオコンポジットを提供する。この混合物は任意選択で、約0.1~50重量%の無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、ピロメリト酸無水物、アクリル酸;ポリアクリル酸、メチレンジフェニルジイソシアネート、ポリ(グリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレートのコポリマーおよびアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤、および/または約0.1~50重量%の無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、メチレンジフェニルジイソシアネート;ポリ(グリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレートのコポリマーおよび/またはアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBATを含み、該混合物は加熱される。
【0024】
本発明のPBAT成分は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)ポリマー、PBAT、デンプンおよび可塑剤の混合物、またはPBATと熱可塑性デンプンのブレンドである場合がある。
【0025】
いくつかの実施形態では、PBAT成分はポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)である。
【0026】
いくつかの実施形態では、PBAT成分は、PBAT、デンプン、および可塑剤の混合物であり、PBATは組成物の約50~65重量%であり、デンプンは組成物の約15~35重量%であり、可塑剤は組成物の約10~15重量%である。
【0027】
いくつかの実施形態では、PBAT成分はPBAT-熱可塑性デンプンブレンドであり、PBATは組成物の約50~65重量%であり、熱可塑性デンプンは組成物の約30~40重量%である。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および/またはバイオコンポジットは、無水マレイン酸、ピロメリト酸無水物、アクリル酸;ポリアクリル酸、メチレンジフェニルジイソシアネート、およびアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および/またはバイオコンポジットは、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、ピロメリト酸無水物、およびメチレンジフェニルジイソシアネートから選択される1つまたは複数の相溶化剤を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物またはバイオコンポジットは、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、ピロメリト酸無水物およびアクリル酸のうちの1つまたは複数でグラフトされたPBATを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および/またはバイオコンポジットは、約20~40%の可塑剤をさらに含む。
【0032】
適当な可塑剤の非限定的な例としては、ポリオール(例えばグリセロールなど)、エチレングリコール、ポリグリセロール、ソルビトール、スクロース、フルクトース、グルコース、尿素、アセチル化モノグリセリド、アルキルシトレート、トリエチルシトレート(TEC)、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、トリブチルシトレート(TBC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、トリオクチルシトレート(TOC)、アセチルトリオクチルシトレート(ATOC)、トリヘキシルシトレート(THC)、アセチルトリヘキシルシトレート(ATHC)、ブチリルトリヘキシルシトレート(BTHC)、トリメチルシトレート(TMC)、アルキルスルホン酸フェニルエステル(ASE)、リグノスルホン酸塩、蜜ろう、油、糖類、ソルビトール、および、グリセロールなどのポリオール、低分子量多糖類、ジエチレングリコールジベンゾエート(DEGDB)、1,5-プロパンジオールジベンゾエート(1,5-PDB)、プロピレングリコールジベンゾエート(PGDB)、ジプロピレングリコールジベンゾエート(DPGDB)、アルキルジベンゾエート、サクシネート、マレエート、フマレート、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
いくつかの実施形態では、可塑剤は、ジエチレングリコールジベンゾエート(DEGDB)、1,5-プロパンジオールジベンゾエート(1,5-PDB)、プロピレングリコールジベンゾエート(PGDB)、ジプロピレングリコールジベンゾエート(DPGDB)、アルキルジベンゾエート、サクシネート、マレエート、フマレート、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0034】
本発明の麻残渣は、麻の茎を製粉および/または砕いてミクロンサイズの粒子を得ることで調製できる。いくつかの実施形態では、麻残渣は、砕いた麻ハード(hemp hurd)および靭皮繊維を含む。いくつかの実施形態では、麻残渣は主に麻のコアと残りの靭皮繊維から構成される。いくつかの実施形態では、麻残渣は麻ハードから構成される。いくつかの実施形態では、残渣は粉末の形態である。
【0035】
いくつかの実施形態では、製粉または粉砕の前に、麻の茎を水酸化ナトリウムの約2~10%水溶液(重量で溶液10部当たり茎1部)で洗浄し、次いで乾燥する。
【0036】
いくつかの実施形態では、麻残渣は、長さ約75~150μm、幅約15~40μm、およびアスペクト比約3.5~5を有する粒子を含む。いくつかの実施形態では、麻粉末は約1.0~2.0g/cmの密度を有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、麻残渣は、約60~75%のセルロース、5~15%のヘミセルロース、および約10~25%のリグニンを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、麻残渣は、テトラヒドロカンナビノール(THC)およびカンナビジオール(CBD)を除去するために前処理される。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および/またはバイオコンポジットは、PBAT成分としてのPBAT、麻残渣および相溶化剤または1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBATを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および/またはバイオコンポジットは、30~99%のPBAT、約5~約40%の麻残渣、および1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされた約0.1~20%のPBATを含む。いくつかの実施形態では、相溶化剤は無水マレイン酸である。
【0041】
いくつかの実施形態では、組成物は
約50~70重量%のPBAT;
約25~30重量%のデンプン;
約10~15重量%のグリセロール;
約0.2~0.7重量%のステアリン酸;および
約0.2重量%~約0.7重量%の麻残渣
を含む。
【0042】
デンプンはジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、コーンスターチ、ワラビデンプン、小麦デンプン、キャッサバデンプン、サゴヤシデンプン、米デンプン、タピオカデンプン、大豆デンプン、クズウコンデンプン、ハスデンプン、ソバデンプンまたはそれらの任意の混合物などの任意の植物デンプン(根および/または穀物デンプン)であり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、デンプンは未加工(すなわち、その自然の状態)であり、デンプンは化学的手段または他の手段によって修飾されていない。
【0044】
いくつかの実施形態では、組成物および/またはバイオコンポジットは約1~3重量%のグリセロールモノステアレートおよび/またはステアリン酸などの加工剤を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、組成物および/またはバイオコンポジットは、無機フィラー(例えば、タルク、粘土、珪灰石、モンモリロナイト、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、酸化物もしくは硫酸塩など)を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、組成物は、約0.5~5%の着色剤、例えば鉱物および/または染料などの着色剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は約1%の着色剤を含む。
【0047】
別の態様では、本発明は、本発明の生分解性バイオコンポジットを調製する方法を提供する。この方法は、PBAT成分を麻残渣と、場合によっては本明細書に記載の相溶化剤または相溶化剤がグラフトされたPBATと混合し、少なくともPBATを溶融するのに十分な押し出し温度で混合物を押し出し成形することを含む。いくつかの実施形態では、混合物は、スクリュー押し出し機を介して、約80~120rpmのスクリュー速度、約150℃~220℃の加工温度で押し出される。いくつかの実施形態では、混合物は、スクリュー押し出し機を介して、約380~450rpmのスクリュー速度、約130℃~200℃の加工温度で押し出される。
【0048】
いくつかの実施形態では、PBAT成分および麻粉末を乾燥させて加工前に残留水分を除去する。乾燥工程は、約60~100℃の従来のオーブンで、または例えば乾燥剤ホイールドライヤーまたはムンタース乾燥剤ホイール(約40~60℃で一晩)を使用する一般的な工業的乾燥方法によって達成できる。
【0049】
いくつかの実施形態では、得られたバイオコンポジットを空冷し、ペレット化する。
【0050】
いくつかの実施形態では、相溶化剤がグラフトされたPBATは、PBATを1つまたは複数の相溶化剤およびフリーラジカル開始剤と混ぜ合わせて反応混合物を形成し、該反応混合物を溶融加工してグラフト化PBATを形成することによって調製できる。
【0051】
いくつかの実施形態では、PBATをまず1つまたは複数の相溶化剤と混合し、該相溶化剤の少なくとも1つを溶融するのに十分な温度まで加熱し、続いて溶融加工の前にフリーラジカル開始剤を添加する。
【0052】
いくつかの実施形態では、溶融加工は約150℃~220℃の温度で達成される。
【0053】
いくつかの実施形態では、溶融加工は溶融押し出しを含む。いくつかの実施形態では、溶融押し出しは、スクリュー押出機を介して、約80~120rpmのスクリュー速度、約300~750g/hの供給速度で行われる。
【0054】
いくつかの実施形態では、生成されたバイオコンポジットを乾燥させて未反応の相溶化剤を除去する。
【0055】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBATを含む本発明のバイオコンポジットは、
a)まず、PBATを1つまたは複数の相溶化剤およびフリーラジカル開始剤と混ぜ合わせて反応混合物を形成し、該反応混合物を溶融加工してグラフト化PBATを形成することにより、グラフト化されたPBATを調製すること;および
b)次いで、工程a)で調製したグラフト化PBATを、PBAT成分、麻残渣、および任意選択の可塑剤および/またはフィラーと混合し、少なくとも該PBATを溶融するのに十分な加工温度で該混合物を押し出すこと
によって調製できる。
【0056】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の方法によって製造されたバイオコンポジットを提供する。
【0057】
本明細書に記載の本発明をよりよく理解するために、添付の図面を参照して以下の実施例を説明する。これらの実施例は、本発明の例示的な実施形態を説明することを目的としており、本発明の範囲をいかなる方法によっても限定することを目的としていないことが理解されるであろう。
【実施例
【0058】
実施例1:麻粉末(HP)の調製
HPを生成するために、茎から靱皮繊維を除去し、残りの木質コア(ハードとも呼ばれる)と残留繊維を微粉砕機で加工して、ミクロンサイズの粒子を含む麻ハードと残留繊維の微粉末を調製する。得られたHPは1%未満のテトラヒドロカンナビノール(THC)を含んでいた。
【0059】
HPのリグニンおよびセルロース含有量測定
麻粉末(HP)のリグニン含有量をZhu et al.が採用した手順[20]を使用して測定した。簡単にいうと、1gの乾燥HPを30℃のエタノールで4時間処理し、ペクチンとワックスを除去したがそれは約2~5%であることが分かった。次に、エタノール洗浄した麻粉末を、継続的に撹拌しながら、20℃で2時間、72%硫酸水溶液蒸解に付した。酸蒸解後、溶液を十分な蒸留水で総酸含有量が3%になるまで希釈し、4時間煮沸した。続いて、蒸解させた塊を室温まで冷却し、濾過し、続いて蒸留水で洗浄した。不溶性分であるリグニン(L、グラム単位)を80℃の従来のオーブンで、24時間乾燥し、秤量した。残存する可溶性分は、HPのセルロース分(セルロースおよびヘミセルロース)と見なした。
【0060】
α-セルロースは、NaOH(2.5molL-1)およびNaSO(0.4molL-1)の水溶液にリグニンおよびヘミセルロースを溶解することによってHPからセルロースを分離することで定量した。所定量のHPを塩基性溶液に懸濁し、100℃で12時間還流した。リグニンとヘミセルロースを溶解した後、未溶解分を回収し、蒸留水で数回洗浄して残留化学物質を除去した。回収した固体を沸騰過酸化水素溶液(2.5molL-1)で漂白して着色剤を除去した。白色固形分を回収し、冷蒸留水で十分に洗浄し、80℃で一晩乾燥し、秤量した。
【0061】
図1Aに示す顕微鏡画像を用いて、上記のように調製した麻粉末の粒子径が長さ約120μm、および幅約27μmで約4.4のアスペクト比を有することが分かった。反応押出プロセス後の逆算を使用してHPの密度を測定すると、1.27gm/cmであった。
【0062】
麻粉末(HP)中のセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどの成分は、蒸解および酸加水分解技術を使用して測定し、表1に記載している。
【0063】
【表1】
【0064】
68~70%のセルロースの存在は、HPの表面にヒドロキシル官能基が豊富にあることを裏付けている。HP上の官能基の存在はFTIRを用いて確認され、典型的なスペクトルを図1Bに示す。ペクチンおよびワックスのカルボキシル官能基(C=O)およびCOに対応するピークがHPに存在し、それぞれ1744cm-1および1249cm-1付近で観察された。セルロースのヒドロキシル基の伸縮振動、C-H基の対称および非対称伸縮振動は、幅広いピークとしてそれぞれ3380cm-1、2903cm-1、2937cm-1で示された。1312cm-1~1465cm-1の間のピークはセルロースおよびヘミセルロースに対応する。これに対して881cm-1~1168cm-1の範囲のスペクトルは、セルロースおよびヘミセルロースの骨格構造に対応する。全体として、これらのスペクトルは、この研究で使用したHP中にペクチン、ワックス、リグニン、セルロース、およびヘミセルロースが存在することを裏付けている。
【0065】
実施例2:MAがグラフトされたPBATの調製
業界で実行可能な溶融押出技術を使用して、MAがグラフトされたPBAT(mPBAT)を生成した。最初に、PBATペレットを5重量%の無水マレイン酸(MA)と混合し、80℃の熱風炉で約30分間保持してMAを溶解し、PBATペレット上に薄いクラストコーティングを作成した。混合物を冷却し、反応開始剤として1重量%のジクミルペルオキシド(DCP)と混合し、溶融加工前に撹拌した。反応押出は、ダイから供給口までの温度プロファイルが130/135/140/150/150/140/135/130℃の8つの温度帯域を備えた二軸押出機(Thermo Scientific社、Haake Process 11、米国)で行った。スクリュー(長さ440mm、L/D40:1)速度を(十分な反応時間を確保するために)60rpm、供給速度を約500g/hに保った。次に、生成したmPBATをペレット化し、秤量し、真空オーブンにて減圧(100mbar)下温度80℃で24時間乾燥させて試料から未反応のMAを除去した。
【0066】
PBATへのグラフト化MAの定量化
PBATへのグラフト化MAは、次のような滴定技術によって定量化した。1gのmPBATを50mLのクロロホルムに溶解し、続いて数滴の塩酸(HCl)を加えて、mPBATに存在する無水物基をすべて加水分解した。
【0067】
無水物基の加水分解により、ASTM D1386規格の通り酸価として検出されるカルボン酸官能基が形成される。加水分解溶液を指示薬としてフェノールフタレインの存在下、アルコールに溶解した0.1M水酸化カリウム(KOH)で滴定した。MAのパーセンテージは式(1)を用いて測定した。
【0068】
ここで、M、V、Wはそれぞれモル濃度、使用したKOH溶液の終点体積(リットル単位)、および使用した試料の重量(クロロホルム中)である。mPBATにおけるMAグラフト化(5つの終点体積の平均に基づいて計算される)はパーセントで示される。
【0069】
実施例3:PBAT、麻残渣、および任意選択で相溶化剤でグラフトされたPBATを含むバイオコンポジットの製造
PBATおよび麻粉末(HP)を秤量し、従来のオーブンにて80℃で一晩乾燥させ、加工前に残留水分を除去した。その後、表2に示すように、PBATをさまざまな含有量のHPおよびmPBATと混合し、スクリュー速度100rpmの二軸押出機により加工温度180℃(全帯域)で溶融加工した。生成したバイオコンポジットを空冷し、ペレット化した。得られたペレットを使用して、シリンダー温度、金型温度、および圧力がそれぞれ190℃、30℃、700barのピストン射出成形システム(HAAKE(登録商標)MiniJet Pro、Thermo Fisher Scientific社、米国)を用いた引張試験、動的機械分析(DMA)、およびレオロジー測定用の試験片を調製した。こうして調製した試験片は、さらに使用するためにジップロック(登録商標)袋に保存した。40重量%を超えてさらにHPを添加すると、粘度増加のために押出機にトルクがかけられるので、この研究では続行しなかった。
【0070】
【表2】
【0071】
ゲル含有量の定量化
開発したバイオコンポジットにおけるゲルの形成は、mPBATの無水物とHPの-OH部分の反応の定性的な指標となり得る。従って、ゲル含有量は、約0.5gの各試料の80℃のクロロホルム中での連続洗浄によるソックスレー抽出にて定量した。次に試料を濾紙で包み、抽出チャンバーに置いた。ソックスレーのセットアップでは抽出溶媒としてクロロホルムを使用した。抽出チャンバーを手動で空にし、このプロセスを合計16~20サイクル繰り返した。これにより、ゲルとHPが漏出するのを制限しながら、PBATと未反応のmPBATがサンプルから完全に除去されることを確実にした。抽出の前後で濾紙の重量を測定し、ゲル含有量値を初期重量のパーセント値として計算した。ソックスレー抽出では、試料から既存の未反応麻粉末は除去されなかった(溶媒の着色がなかったため)。パーセンテージゲル含有量は、以下の式(2)を用いて計算した。
【0072】
ここでW、W、およびCは、初期試料重量、ソックスレー抽出後の試料重量、および試料のHP含有量である。
【0073】
特性評価
フーリエ変換赤外分光法
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)スキャンは、Thermo Scientific社のNicollet 6700を使用して収集した。50mgの各試料を10mLのクロロホルムに溶解した。ひとたび溶解したら、少量(1mL未満)の溶液を純KBr塩ペレット上に滴下した。次に、窒素(N)バックグラウンドで64回のスキャンでFTIR分析を行った。
【0074】
機械的および熱機械的分析
試料の引張特性は、島津製作所(日本)のUniversal Tensile Machine AGS-Xシリーズを用い、500Nロードセルを使用して、5mm/minのクロスヘッド速度、25mmのゲージ長で測定した。少なくとも5つの試験片の引張特性を試験し、それらの平均測定値と標準偏差を報告した。試験片は、ASTM D638タイプVに従って、平均寸法50mm(ゲージ長)×3.3mm(厚さ)×3.2mm(幅)のダンベル形状に射出成形した。
【0075】
熱機械的データは、DMA装置(Q800、TA Instruments社、米国)を用いて記録した。このために、試料を、温度範囲-80℃~90℃、加熱速度3℃/min、周波数1Hz、二重カンチレバー配向を使用したひずみモードで試験した。長方形の試料(50mm(長さ、L)×11.9mm(幅、W)×3mm(厚さ、T))を、ASTM D648-07に従って射出成形しDMA試験を行った。試験片の熱たわみ温度(HDT)もDMAを使用して評価した。測定に必要な力(F)、ひずみ(ε)、およびたわみ(D)は、他[21]で紹介した式に従って次のように計算した。
【0076】
ここでσは試験片にかかる0.455MPaの応力とみなす。
【0077】
走査電子顕微鏡法(SEM)
開発したバイオコンポジットの破面形態を、Zeiss Leo 1530電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて調べた。調製した破砕試料を金ナノ粒子で軽くコーティングし、高解像度の画像を得た。
【0078】
示差走査熱量計(DSC)
PBATとそのバイオコンポジットの熱挙動は、示差走査熱量計(DSC)(TA Instruments社製 Q2000、米国)を使用し、代表的な加熱-冷却-加熱プログラムで調査した。各試料約5mgをまず-80℃に冷却し、次に試料を10℃/分の加熱速度で-80℃から160℃まで加熱した。次に試料を-80℃に冷却し戻し、最後に同じ加熱速度で再び160℃まで加熱した。DSCサーモグラムの冷却曲線と第2の加熱曲線のガラス転移温度(T)、融解温度(T)、および融解エンタルピー(ΔHm)を使用して、さまざまな添加量レベルのHPの均質混合後のPBATの熱挙動の変化を調査した。PBATおよびそのバイオコンポジットの結晶化度(X)は、以下の式(6)に示すように、DSCサーモグラムの第2の融解ピークの下の面積と100%結晶質PBATの融解エンタルピーとの比から計算した。
【0079】
ここで、ΔHはPBAT試料の溶融エンタルピー、ΔHm100は100%結晶質PBATの溶融エンタルピー(つまり114J/g[22])、wは麻粉末添加量の重量分率である。
【0080】
熱重量分析(TGA)
押出試料はすべてTGA(2 Star System、Mettler Toledo、スイス)で特性評価する前に約2mm片にペレット化した。TGAスキャンは、窒素(N)環境下、10℃/分の加熱速度で30℃~700℃で行った。収集したデータは、温度ピーク値と開始値について分析した。
【0081】
レオロジー
純PBAT並びにmPBATを含むおよび含まないそのバイオコンポジットの溶融レオロジー特性を、レオメーター(Thermo Scientific社、HAAKE MARS III、米国)を使用して調べた。試料は平行平板配置を備える線形粘弾性(LVE)領域内で180℃に加熱した。平板間の間隙が1mmの直径35mmの平板を研究に使用した。1%のひずみを加え、0.01~100Hzの周波数範囲内のPBATバイオコンポジットのレオロジー特性を報告した。
【0082】
PBATへのMAグラフト化
図2に示すように、PBATへのMAのグラフト化はFTIR分析を使用して確認した。PBATの場合、2957cm-1、2887cm-1、および1734cm-1のピークは、それぞれ対称および非対称C-H基並びにC=O基の伸縮振動に対応する。指紋領域の1100cm-1~1600cm-1付近の他のピークは、PBAT骨格C-O-CおよびPBAT鎖のフェニレン基の伸縮振動に起因すると考えられる。3060cm-1および1954cm-1の新しいピークの出現は、それぞれ無水物における=C-H伸縮振動および無水物とPBAT鎖の間に発生したC=C基の非対称伸縮に対応する。1687cm-1で発生した新しいショルダーは、鎖のβ切断により生じた低分子量PBATのカルボニル官能基に割り当てられる。全体的に見て、ラジカル開始によるMAグラフト化が首尾よく行われる。さらに、滴定研究に基づくマレイン化度は、式(1)を使用して2.27%±0.28であることが分かった[23]。
【0083】
PBAT/麻粉末バイオコンポジットの熱挙動
さまざまな麻粉末含有量におけるPBAT/HPのDSC加熱および冷却サーモグラムを図3(AおよびB)に示す。DSCサーモグラムから抽出したデータ、すなわちガラス転移温度(T)、融解温度(T)、結晶化温度(T)、および結晶化度(X)を表3に示す。PBATのTは、10~40重量%の麻粉末の均質混合後有意なシフトがなかった(1℃未満)。しかし、mPBATを含むPBATのTは、mPBAT/HPバイオコンポジットではより高温にシフトした。このことで、MAグラフト化の結合効果の結果として、PBATとHPの間の相互作用が高められたことを示した。PBATポリマー鎖運動は、mPBATの存在に起因するHPとの強力な相間接着力により制限されたので、Tが上昇する。
【0084】
PBATのTは、麻粉末の均質混合後、より高温にシフトし(約1~3℃上昇した)、10重量%麻充填PBATバイオコンポジットがTにおける最も大きな増加を示した。同様の傾向がPBAT-HP/mPBATバイオコンポジットについて観察され、10重量%の麻粉末で最も大きなTの増加を示した。麻粉末の添加量のすべての範囲においてmPBATの存在を伴うおよび伴わない麻/PBATと比較すると、PBAT-HPバイオコンポジットのTは、mPBATカップリング剤の存在により低下した。これにより、HPとPBATの効果的な相溶化が確認された。
【0085】
PBATの溶融エンタルピーと冷却エンタルピーは、麻粉末の添加量の増加に伴って減少する。このことによって、PBATの結晶形成と溶融結晶化が麻粉末の存在によって妨げられることを示した。さらに、麻粉末とMAを添加することでPBAT含有量が減少することも、結晶を融解するために必要であるエネルギーが減少し、バイオコンポジットのTが低下する理由である可能性がある。計算された結晶化度Xは、PBATにHPを添加すると低下する。40重量%のHPでは、PBATのXは3.77%から2.70%に低下した(表3を参照)。
【0086】
【表3】
【0087】
図3Bに示されているように、PBATのTは、最大30重量%のHPの添加による大きな影響を受けなかった(わずか約1℃の差)。HP含有量が40重量%に達すると、Tはより高温にシフトした。麻粉末の添加量が増加するにつれて、Tの強度が低下し、幅が広がった。これは、HPを均質混合したときのPBATの結晶子サイズの変化に一致する。40重量%HP充填PBATの結晶化プロセスは、純PBATについては87℃であるのに比べて、約91℃で生じた。これは、HPの存在が不均一核形成の成長とPBATの結晶化を誘発する可能性があることを示している。
【0088】
全体として、MAカップリング剤を添加したHP/PBATのXは、mPBATを含まないものと比較して低下を示した。mPBATカップリング剤を加えたマトリックスと麻粉末の間の結合効果と効果的な界面接着力により、結晶化プロセス、従って全体の結晶化度により高度な中断を引き起こした[24]。従って、コンポジットの相間が改善されたので、mPBATを加えることでPBATの核形成速度とXが低下した。
【0089】
図4Aおよび4Bは、バイオコンポジットのTGA研究を示している。HPの分解開始温度(Ton)はPBATの分解開始温度(~372℃)よりもはるかに低い281℃であることが判明した。バイオコンポジットの場合、PBAT鎖によるHPのカプセル化に起因して、HPの分解温度が、ガスなどのHP分解生成物の生成と漏出が減少するより高温に移行した。このカプセル化は、mPBATを含むバイオコンポジットの場合により顕著に現れた。バイオコンポジットのマトリックスとしての純PBATとは対照的に、mPBATの均質混合によって、Tonで少なくとも10℃の上昇が観察された。mPBATを含むバイオコンポジットの場合、示された最低Tonは331℃であり、これはバイオコンポジットとしては高かった。バイオコンポジットの分解の終わりに観察されたチャー形成も、HPの添加量レベルと一致していた。
【0090】
バイオコンポジットの機械的および熱機械的特性
図5A~5Dは、例示的なバイオコンポジットの引張試験の結果を示す。降伏引張強度(TS)および引張弾性率(TM)は、40%HPの添加後、未充填PBATの7.9MPaおよび79.5MPaから、それぞれ14.3MPaおよび505MPaまで徐々に増加した。TSとTMの増加はHPの強化効果を示した。逆に、破断点伸びは520%(PBAT)から6.8%(PBAT-40HP)に大幅に低下しており、HPとPBAT鎖の間の相互作用が比較的弱いことを示している。10%mPBATを使用すると、TSが24.4MPaに向上し、予想されるTMの低下を伴う顕著な(209%)向上を示した。極限引張強さ(UTS)、それは18.7MPaから24.4MPaに増加した(31%の向上)(表3)。この大幅なTSの増加は、mPBATの結合効果に起因するHPとPBAT鎖の間の界面接着力の向上を示している。高充填PBATと比較して、mPBATの均質混合によって破断点伸びの向上が観察された。例えば、30%のHPを含むPBATの場合、10%mPBATの添加後に165%(図5A)の向上が観察され、その靱性が375%向上した(図5B)。
【0091】
図6A~6Dは、温度に対するDMA分析を使用して評価した、試験片耐荷重能力に対する温度の影響を描写している。HPフィラーを均質混合することで、調査した温度範囲にわたる貯蔵弾性率の大幅な増加が示された。25℃では、未充填のPBATは205MPaの貯蔵弾性率を示したが、その一方で40HPのバイオコンポジット(PBAT-40HP)は2034MPaを示した。それどころか、mPBAT(PBAT-40HP-M)の均質混合によって貯蔵弾性率が1652MPaに低下したが、これは、低分子量鎖を含むmPBATの可塑化効果に関連している可能性がある(図6Aおよび図6B)。より低温では、同様の現象が観察された。ポリマーバイオコンポジットのガラス転移の指標であるタンデルタは、-18℃~22℃の間であることが分かった(図6Cおよび図6D)。これは、DSCデータとはかなり異なる。DSCとDMAにおけるガラス転移のこの変動は、分析に使用されたさまざまな機序の結果である。
【0092】
実際の適用では、熱たわみ温度(HDT)は考慮する必要がある非常に重要なパラメーターである。バイオコンポジットのHDTのデータを図5Dに示す。HPの均質混合に起因するPBAT鎖の制限により、HDTが顕著に向上した。元の状態のPBATの場合、約39℃であったHDTが、40%のHPを添加すると93℃まで上昇したことが分かった。mPBATを添加すると、低分子量PBAT鎖の可塑化効果によりHDTが90℃までわずかに低下した。
【0093】
PBATバイオコンポジットのレオロジー特性
図7A~7Cは、開発したPBATバイオコンポジットの溶融レオロジー特性、すなわち周波数掃引の関数としての複素粘度、貯蔵弾性率および損失弾性率を描写している。PBATの複素粘度は、低周波数掃引ではニュートン挙動を示すことが分かった。しかし一方、高周波ではせん断減粘挙動が徐々に取って代わった(図7A)。同様に、貯蔵弾性率と損失弾性率については、PBATは低周波数から中周波数範囲で周波数依存性を示さなかったが、これはニュートン挙動を反映している。PBATの複素粘度、貯蔵弾性率、損失弾性率はPBAT-HPバイオコンポジットよりも低いため、PBATにおけるHPの補強効果はレオロジー挙動においてはっきりと分かる。PBATの複素粘度、貯蔵弾性率および損失弾性率は、HPの添加量レベルの増加とともに増加した(図7A~C)。HPの含有量が20重量%を超えて増加するにつれて、低周波数でのPBATの複素粘度が徐々にずり減粘挙動に変化した。複素粘度の増加は、貯蔵弾性率と損失弾性率の向上にも適用できる。
【0094】
純PBATの貯蔵弾性率と損失弾性率は、典型的な液体に似た溶融変形応答を示した。PBAT-HPバイオコンポジットではHPが増加するにつれて、貯蔵弾性率と損失弾性率も低周波数でプラトーに向かってシフトした(図7B~C)。
【0095】
mPBATを含むPBAT-10HPでは、PBAT-10HPと比較して、複素粘度、貯蔵弾性率、損失弾性率の向上が示された。これは成分間の相溶性と界面相互作用がより高いことを示しており、複素粘度がより高くなった。麻粉末-PBAT相互作用を高めること以外に、MAがPBAT鎖の軽度の架橋を引き起こす可能性があることが示された。PBATのヒドロキシル基とカルボニル基は、反応性押し出し中にMAを利用して容易に結合できる。その結果、mPBATを用いて加工すると、PBATの複素粘度、貯蔵弾性率、損失弾性率が向上した。しかしながら、HP含有量が20重量%を超えると、PBAT-HPの複素粘度がPBAT-HP-Mよりも高くなることが分かった。同様の傾向が貯蔵弾性率と損失弾性率の両方で観察され、mPBAT相溶化効果がPBATの鎖運動性と高HP含有量での麻粉末の分散性を改善することを示した。結合効果によって可撓性が生じるので、複素粘度が低下する。mPBATを用いてPBATバイオコンポジットの複素粘度を低下させることは、麻粉末含有量が高くても加工し易いため有望である。
【0096】
HPとPBATの界面接着力向上に関わる機序
反応性押し出しプロセスを使用してバイオコンポジットにmPBATを均質混合することによって、mPBATと麻粉末の間に化学反応を生じさせ、共有結合を形成する。化学結合の形成により、HP粒子をPBAT鎖でカプセル化し、溶融反応性押し出し加工時に容易に分散してPBAT鎖と相互作用できる。この向上した界面相互作用が、開発した高添加量(20~40%)の麻粉末のバイオコンポジットの破断点伸びおよび靭性と共に引張強度に大きな影響を及ぼした。
【0097】
得られたHPとPBATとの間の界面接着力の向上はSEMを使用して観察され、図8A~8D並びに図9A~9Dに示されている。麻粉末は、粒子径の変化と共に波形の表面構造を示したことが分かる。純PBAT、PBAT-10HP、およびPBAT-40HPバイオコンポジットの破面をそれぞれ図8B~Dに示す。PBAT-40HPは、高添加量の結果として粒子が重なり合って粒子分散が不十分であったが、PBAT-10HPは実質的な凝集がなく良好な粒子分布を示した。mPBATを有するおよび有しないPBAT-HPのSEM破面の比較を、2つの異なる倍率で図9A~Dに示す。PBAT-HPバイオコンポジットは、大きな界面間隙を有し、粒子とマトリックスの相互作用が不十分であることがわかる(図9A~B)。これは、表面極性の大きな差に起因する、麻粉末とPBATの間の表面非相溶性と低い界面接着力を示している。バイオコンポジットの粒子-マトリックス界面は、mPBAT相溶化剤を均質混合することで有意に高められることが分かった。麻粉末は完全にカプセル化され、PBATに付着している(図9C~D)。mPBATをPBAT-HPに添加した時に分かるように、粒子-マトリックス界面には目立った間隙は存在しない。PBAT-HPへのmPBATの添加によって高められた界面相互作用は、前のセクションで考察した引張強度と破断点伸びのデータにおいても反映された。MAとPBATの反応、およびHPとのそれのさらなる反応により、ポリマー系でゲルが形成され、架橋形成が成功したことを示唆している(図10)。
【0098】
上記で考察したように、麻粉末を均質混合することによって、より高添加量におけるPBATの引張強度と引張弾性率が向上する。しかしながら、高添加量レベルになると、得られるバイオコンポジットの靭性と破断点伸びが低下する。麻粉末を含むPBATの反応性押し出しとその相溶化は靭性と破断点伸びと共に引張強度を高める。
【0099】
代表的なカトラリーと可撓性フィルムを図11に示すようにPBAT-40HP-M試料を使用して調製し、製造したバイオコンポジットの加工性と用途を紹介する。さらに、高添加量のHPも生分解速度の増加に寄与する可能性がある。
【0100】
実施例4:PBAT、デンプン、可塑剤および麻残渣を含むバイオコンポジットの製造
a)約60重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT);b)約27重量%のデンプン;c)約12重量%のグリセロール;c)約0.5重量%のステアリン酸;およびd)約0.5重量%の麻粉末を含む混合物を、STEER World社製の二軸押出機OMEGA 20を使用し、以下の温度プロファイルを用いて:25-130-150-155-165-170-175℃、供給速度約15ポンド/時、スクリュー速度410RPMで押し出した。
【0101】
機械的および熱機械的分析
実施例4の製品の試料の引張特性を、500Nロードセルを備えた島津製作所製のユニバーサル引張機械AGS-Xシリーズを用いて、5mm/分のクロスヘッド速度および25mmのゲージ長で測定した。
【0102】
試験片を、ASTM D638タイプVの通りダンベル形状に射出成形した。結果を平均値と共に以下の表4にまとめる。
【0103】
【表4】
【0104】
実施例4で調製したバイオコンポジットを射出成形に使用して、硬質の容器および形状を形成できる。
【0105】
本発明をある特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなくその様々な変更が当業者には明らかであろう。当業者には明らかなこうした変更はすべて、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約30~99.5重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)成分;
b)約0.5~50重量%の、麻ハードおよび/または繊維がミクロサイズの粒子に粉砕および/またはスライスされた、砕いた麻の茎を含む麻残渣;および
c)任意選択で、約0.1~50重量%の
無水マレイン酸、グリシジルメタクリルレート、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、メチレンジフェニルジイソシアネート、ポリ(グリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリルレートのコポリマーおよび/またはアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBAT、および/または
無水マレイン酸、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、およびメチレンジフェニルジイソシアネートから選択される1つまたは複数の相溶化剤
を含む、生分解性バイオコンポジットの製造に使用する組成物。
【請求項2】
前記PBAT成分がポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、前記組成物が約0.1~50%の、1つまたは複数の前記相溶化剤でグラフトされたPBATを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
20~40重量%の可塑剤をさらに含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記PBAT成分がPBAT、デンプン、および可塑剤の混合物であり、PBATが前記組成物の約50~65重量%であり、デンプンが前記組成物の約15~35重量%であり、可塑剤が前記組成物の約10~15重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記PBAT成分がPBAT-熱可塑性デンプンブレンドであり、PBATが前記組成物の約50~65重量%であり、熱可塑性デンプンが前記組成物の約30~40重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記麻残渣が、約75~150μmの長さ、約15~40μmの幅、および約3.5~5のアスペクト比を有する粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記麻残渣が約1.0~2.0g/cmの密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記麻残渣が、約60~75%のセルロース、5~15%のヘミセルロース、および約10~25%のリグニンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記麻残渣が処理され、そこからTHCおよびCBDを除去する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
約1~3重量%の加工剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
無機フィラーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物でできているバイオコンポジット。
【請求項13】
a)約30~99.5重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)成分;
b)約0.5~50重量%の、麻ハードおよび/または繊維がミクロサイズの粒子に粉砕および/またはスライスされた、砕いた麻の茎を含む麻残渣;および
c)任意選択で、約0.1~50重量%の、無水マレイン酸、グリシジルメタクリルレート、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、メチレンジフェニルジイソシアネート;ポリ(グリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリルレートのコポリマーおよび/またはアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBAT、および/または
無水マレイン酸、ピロメリト酸無水物、アクリル酸;ポリアクリル酸、およびメチレンジフェニルジイソシアネートから選択される1つまたは複数の相溶化剤
の混合物を含む、バイオコンポジットであって、前記混合物が加熱されている、バイオコンポジット。
【請求項14】
前記PBAT成分がポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、前記バイオコンポジットが0.1~50重量%の、1つまたは複数の前記相溶化剤でグラフトされた前記PBATを含む、請求項13に記載のバイオコンポジット。
【請求項15】
20~40重量%の可塑剤をさらに含む、請求項14に記載のバイオコンポジット。
【請求項16】
前記PBAT成分がPBAT、デンプン、および可塑剤の混合物であり、PBATが前記組成物の約50~65重量%であり、デンプンが前記組成物の約15~35重量%であり、可塑剤が前記組成物の約10~15重量%である、請求項13に記載のバイオコンポジット。
【請求項17】
前記PBAT成分がPBAT-熱可塑性デンプンブレンドであり、PBATが前記組成物の約50~65重量%であり、熱可塑性デンプンが前記組成物の約30~40重量%である、請求項13に記載のバイオコンポジット。
【請求項18】
前記麻残渣が、約75~150μmの長さ、約15~40μmの幅、および約3.5~5のアスペクト比を有する粒子を含む、請求項13に記載のバイオコンポジット。
【請求項19】
前記麻残渣が約.2~2.0g/cmの密度を有する、請求項13に記載のバイオコンポジット。
【請求項20】
前記麻残渣が、約60~75%のセルロース5~15%のヘミセルロース、および約10~25%のリグニンを含む、請求項13に記載のバイオコンポジット。
【請求項21】
前記麻残渣が前処理されTHCおよびCBDが除去されている、請求項13に記載のバイオコンポジット。
【請求項22】
約1~3重量%の加工剤をさらに含む、請求項13に記載のバイオコンポジット。
【請求項23】
無機フィラーをさらに含む、請求項13に記載のバイオコンポジット。
【請求項24】
a)PBAT成分を麻残渣、および任意選択で相溶化剤と混合すること、および
b)少なくとも前記PBATを溶融するのに十分な押し出し温度で前記混合物を押し出すこと
を含む、請求項13に記載のバイオコンポジットを調製する方法。
【請求項25】
前記混合物が、スクリュー押出機を介して約80~120rpmのスクリュー速度、約150~220℃の加工温度で押し出される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記混合物が、スクリュー押出機を介して約380~450rpmのスクリュー速度、約130~200℃の加工温度で押し出される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記コンポジットが空冷され、ペレット化される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項28】
請求項13に記載のバイオコンポジットを調製する方法であって、前記コンポジットが1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBATを含み、前記方法が
a)PBAT、1つまたは複数の相溶化剤、およびフリーラジカル開始剤を混合して反応混合物を形成し、前記反応混合物を溶融加工して相溶化剤がグラフトされたPBATを形成すること、によりグラフトされたPBTAを調製すること、および
b)工程a)で調製した前記相溶化剤がグラフトされたPBATを、前記PBAT成分、麻残渣、および任意選択の可塑剤および/またはフィラーと混合し、少なくとも前記PBATを溶融するのに十分な押し出し温度で前記混合物を押し出すこと、
を含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
本発明をある特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなくその様々な変更が当業者には明らかであろう。当業者には明らかなこうした変更はすべて、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
本明細書の当初の開示は、少なくとも下記の態様を包含する。
[1]a)約30~99.5重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)成分;
b)約0.5~50重量%の麻残渣;および
c)任意選択で、約0.1~50重量%の
無水マレイン酸、グリシジルメタクリルレート、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、メチレンジフェニルジイソシアネート、ポリ(グリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリルレートのコポリマーおよび/またはアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBAT、および/または
無水マレイン酸、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、およびメチレンジフェニルジイソシアネートから選択される1つまたは複数の相溶化剤
を含む、生分解性バイオコンポジットの製造に使用する組成物。
[2]前記PBAT成分がポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、前記組成物が約0.1~50%の、1つまたは複数の前記相溶化剤でグラフトされたPBATを含む、前記[1]に記載の組成物。
[3]20~40重量%の可塑剤をさらに含む、前記[2]に記載の組成物。
[4]前記PBAT成分がPBAT、デンプン、および可塑剤の混合物であり、PBATが前記組成物の約50~65重量%であり、デンプンが前記組成物の約15~35重量%であり、可塑剤が前記組成物の約10~15重量%である、前記[1]に記載の組成物。
[5]前記PBAT成分がPBAT-熱可塑性デンプンブレンドであり、PBATが前記組成物の約50~65重量%であり、熱可塑性デンプンが前記組成物の約30~40重量%である、前記[1]に記載の組成物。
[6]前記麻残渣が、約75~150μmの長さ、約15~40μmの幅、および約3.5~5のアスペクト比を有する粒子を含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]前記麻残渣が約1.0~2.0g/cm の密度を有する、前記[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]前記麻残渣が、約60~75%のセルロース、5~15%のヘミセルロース、および約10~25%のリグニンを含む、前記[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]前記麻残渣が処理され、そこからTHCおよびCBDを除去する、前記[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10]約1~3重量%の、グリセロールモノステアレートおよび/またはステアリン酸などの加工剤をさらに含む、前記[1]~[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]無機フィラー(タルク、粘土、珪灰石、モンモリロナイト、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、酸化物もしくは硫酸塩など)をさらに含む、前記[1]~[9]のいずれかに記載の組成物。
[12]前記[1]~[11]のいずれかに記載の組成物でできているバイオコンポジット。
[13]a)約30~99.5重量%のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)成分;
b)約0.5~50重量%の麻残渣;および
c)任意選択で、約0.1~50重量%の、無水マレイン酸、グリシジルメタクリルレート、ピロメリト酸無水物、アクリル酸、ポリアクリル酸、メチレンジフェニルジイソシアネート;ポリ(グリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリルレートのコポリマーおよび/またはアクリル酸のコポリマーから選択される1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBAT、および/または
無水マレイン酸、ピロメリト酸無水物、アクリル酸;ポリアクリル酸、およびメチレンジフェニルジイソシアネートから選択される1つまたは複数の相溶化剤
を含む、バイオコンポジットであって、前記混合物が加熱されている、バイオコンポジット。
[14]前記PBAT成分がポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、前記バイオコンポジットが0.1~50重量%の、1つまたは複数の前記相溶化剤でグラフトされた前記PBATを含む、前記[13]に記載のバイオコンポジット。
[15]20~40重量%の可塑剤をさらに含む、前記[14]に記載のバイオコンポジット。
[16]前記PBAT成分がPBAT、デンプン、および可塑剤の混合物であり、PBATが前記組成物の約50~65重量%であり、デンプンが前記組成物の約15~35重量%であり、可塑剤が前記組成物の約10~15重量%である、前記[13]に記載のバイオコンポジット。
[17]前記PBAT成分がPBAT-熱可塑性デンプンブレンドであり、PBATが前記組成物の約50~65重量%であり、熱可塑性デンプンが前記組成物の約30~40重量%である、前記[13]に記載のバイオコンポジット。
[18]前記麻残渣が、約75~150μmの長さ、約15~40μmの幅、および約3.5~5のアスペクト比を有する粒子を含む、前記[13]~[17]のいずれかに記載のバイオコンポジット。
[19]前記麻残渣が約0.2~2.0g/cm の密度を有する、前記[13]~[17]のいずれかに記載のバイオコンポジット。
[20]前記麻残渣が、約60~75%のセルロース、5~15%のヘミセルロース、および約10~25%のリグニンを含む、前記[13]~[19]のいずれかに記載のバイオコンポジット。
[21]前記麻残渣が前処理されTHCおよびCBDが除去されている、前記[13]~[20]のいずれかに記載のバイオコンポジット。
[22]約1~3重量%の、グリセロールモノステアレートおよび/またはステアリン酸などの加工剤をさらに含む、前記[13]~[21]のいずれかに記載のバイオコンポジット。
[23]無機フィラー(例えばタルク、粘土、珪灰石、モンモリロナイト、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩、酸化物もしくは硫酸塩など)をさらに含む、前記[13]~[22]のいずれかに記載のバイオコンポジット。
[24]a)PBAT成分を麻残渣、および任意選択で相溶化剤と混合すること、および
b)少なくとも前記PBATを溶融するのに十分な押し出し温度で前記混合物を押し出すこと
を含む、前記[13]~[23]のいずれかに記載のバイオコンポジットを調製する方法。
[25]前記混合物が、スクリュー押出機を介して約80~120rpmのスクリュー速度、約150~220℃の加工温度で押し出される、前記[24]に記載の方法。
[26]前記混合物が、スクリュー押出機を介して約380~450rpmのスクリュー速度、約130~200℃の加工温度で押し出される、前記[24]に記載の方法。
[27]前記コンポジットが空冷され、ペレット化される、前記[24]または[25]に記載の方法。
[28]前記[13]~[23]のいずれかに記載のバイオコンポジットを調製する方法であって、前記コンポジットが1つまたは複数の相溶化剤でグラフトされたPBATを含み、前記方法が
a)PBAT、1つまたは複数の相溶化剤、およびフリーラジカル開始剤を混合して反応混合物を形成し、前記反応混合物を溶融加工して相溶化剤がグラフトされたPBATを形成すること、によりグラフトされたPBTAを調製すること、および
b)工程a)で調製した前記相溶化剤がグラフトされたPBATを、前記PBAT成分、麻残渣、および任意選択の可塑剤および/またはフィラーと混合し、少なくとも前記PBATを溶融するのに十分な押し出し温度で前記混合物を押し出すこと、
を含む、方法。
【国際調査報告】