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特表2024-527390可変光透過率を有する要素を含む発光モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】可変光透過率を有する要素を含む発光モジュール
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/24 20060101AFI20240717BHJP
   B60Q 1/50 20060101ALI20240717BHJP
   F21V 13/02 20060101ALI20240717BHJP
   F21W 102/40 20180101ALN20240717BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20240717BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240717BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20240717BHJP
【FI】
B60Q1/24 D
B60Q1/50 Z
F21V13/02 200
F21W102:40
F21W103:60
F21Y115:10
F21Y115:15
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501621
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2022069332
(87)【国際公開番号】W WO2023285388
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】2107568
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ダーキー、サケット
(72)【発明者】
【氏名】フランク、ディナン
(72)【発明者】
【氏名】エメリック、マドリー
(72)【発明者】
【氏名】フロレスタン、デベール
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA18
3K339AA43
3K339BA02
3K339DA01
3K339EA01
3K339EA02
3K339GB16
(57)【要約】
本発明は自動車車両用の発光モジュール(1)に関し、この発光モジュール(1)は、
- 光源(2)と、
- 地面へ光照射野(S)を投射するよう設計されている投射光学系(3)と、
を含む。本発明によれば、発光モジュールは光源と投射光学系の間に配置される可変光透過率を有する要素をさらに含み、前記可変光透過率を有する要素は、少なくとも1つの第1部分と、少なくとも1つの第2部分と、を含む。これらの部分のそれぞれは、第1部分と第2部分によりそれぞれ形成される画像区域が同じ光度を有するように、異なる光透過率を持つ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 光源(2)と、
- 地面へ光照射野(S)を投射するよう設計されている投射光学系(3)と、
を含む、自動車車両用の発光モジュール(1)であって、
前記発光モジュールは、前記光源と前記投射光学系の間に配置される可変光透過率を有する要素(4)をさらに含み、前記可変光透過率を有する要素は、
- 前記光照射野の第1区域(S1)を形成するのに適した光線を受ける第1部分(41)と、
- 前記光照射野の前記第1区域よりも前記光源から遠くに位置する第2区域(S2)を形成するのに適した光線を受ける第2部分(42)と、
を含み、
前記第1部分は第1光透過率と呼ばれる光透過率を有し、これは、第2光透過率と呼ばれる、前記第2部分の前記光透過率よりも低く、
前記第1光透過率および前記第2光透過率は、前記第1区域の光度が前記第2区域の光度と実質的に等しくなるように規定される、
ことを特徴とする発光モジュール(1)。
【請求項2】
前記光源(2)と投射されるパターンが付けられた前記投射光学系(3)との間に配置されるスライド(5)を含み、前記可変光透過率を有する要素が前記スライド(5)上に配置される、請求項1に記載の発光モジュール(1)。
【請求項3】
前記スライド(5)は、前記投射光学系(3)に向けられている第1面(51)と、前記光源(2)に向けられている第2面(52)とを含み、前記第1面は前記投射光学系(3)の焦点面(F)内に配置されて投射される前記パターンを含み、投射された前記パターンは前記光照射野(S)に含まれる、または前記光照射野(S)を形成する、請求項2に記載の発光モジュール(1)。
【請求項4】
前記可変光透過率を有する要素(4)は前記スライド(5)の前記第1面(51)に配置される、請求項3に記載の発光モジュール(1)。
【請求項5】
前記可変光透過率を有する要素(4)は前記スライド(5)の前記第2面(52)に配置される、請求項3に記載の発光モジュール(1)。
【請求項6】
前記光照射野は前記光源(2)の投射画像からなる、請求項1に記載の発光モジュール(1)。
【請求項7】
前記可変光透過率を有する要素は可変な厚さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の発光モジュール(1)。
【請求項8】
前記可変光透過率を有する要素は、可変光透過率を有する層として知られる複数の基本ユニット(400)を含む層(4)により形成され、前記基本ユニット(400)は、前記第1部分(41)の前記基本ユニットの密度(μ1)が前記第2部分(42)の前記基本ユニットの密度(μ2)より高くなるように分散されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の発光モジュール(1)。
【請求項9】
前記基本ユニット(400)は完全に不透明である、請求項8に記載の発光モジュール(1)。
【請求項10】
前記基本ユニット(400)は金属から作られる、請求項7または請求項8に記載の発光モジュール(1)。
【請求項11】
前記可変光透過率を有する層(4)はフォトリソグラフィプロセスを用いて得られる、請求項7から9のいずれか一項に記載の発光モジュール(1)。
【請求項12】
前記可変光透過率を有する要素(4)は、前記光照射野の前記光源(2)から最も遠くに位置する第3区域(S3)を形成するのに適した光線を受ける透明な第3部分(43)をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の発光モジュール(1)。
【請求項13】
前記第2部分(42)は前記第1部分(41)と前記第3部分(43)の間に位置する、請求項12に記載の発光モジュール(1)。
【請求項14】
前記投射光学系(3)は互いに重ねられて積層された複数のレンズ(30)を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の発光モジュール(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車車両用の発光装置の分野に関する。本発明は、特に補助機能を実行するのに適した発光モジュールに関する。本発明は、詳細には車両の近くの、特にドアに隣接する地面へ光照射野を投射する発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のユーザ体験を改善するために、地面へ向けられた照明を有する発光モジュールがバックミラー、または車両の側面でドア枠の下に設置される。こうした発光モジュールは、ドアに隣接する領域を照らす光を地面へ投射するよう配置される。概して、照らされる領域は光照射野を形成して、車両の主軸線に沿って長手方向に延びる。
【0003】
こうした発光モジュールは、同乗者および運転者が車両に入る前に、および/または同乗者および運転者が車両を出る準備をする前に、オンへ切り替えることができる。その結果、同乗者および運転者は地面の状態をよりはっきりと見ることができて、つまずいてしまいかねない地面の起伏があるかどうかを確かめることができる。記載される発光モジュールは、それゆえユーザの安全性を向上させる。
【0004】
加えて、発光モジュールは地面へパターンを投射することが可能な追加の要素を含みうる。このパターンは光照射野に含まれる、またはそのパターン自体が光照射野を形成する。投射されるパターンは車両の製造会社の記章、ロゴ、または審美的な画像とすることができる。地面へ投射される要素は情報を含み、たとえば天気に関連する情報を含む。
【0005】
記載される発光モジュールは制御装置に接続することができる。したがって、発光モジュールはユーザが車両をリモートで始動させた場合にオンへ切り替えられ、ユーザが車両に入るまでオンのままとなる。それゆえ、こうした発光装置は「歓待シナリオ」を成立させるのに用いることができて、これにより車両のユーザの満足感を向上させる。
【0006】
しかし、こうした発光モジュールは、その光度があらゆる場所で均一ではない光照射野を形成するという欠点を有する。
【0007】
記載される発光モジュールは、光照射野が車両の後部へ向けて長手方向に延びうるように、水平に対して下方へ傾いている軸線に沿って光を投射するようにしばしば設置される。そのような投射がなされることで、人が光源から離れるように動いた場合に光照射野の光度が減少する。
【0008】
この欠陥は、発光モジュールが低い高さ、たとえば車両のドアの下に設置された場合に顕著である。この場合、投射軸線はさらに傾き、投射角度はさらに減少する。結果として、投射される光は傾く。その結果、地面上の光照射野の光度は、人が発光モジュールから離れるように動いた場合、徐々に減少する。言い換えると、光照射野は異なる光度を有するいくつかの区域へと分けられる。発光モジュールの近くの区域は、装置から遠く離れた区域よりも強度が強い。
【0009】
投射角度が小さいほど、投射はより傾き、暗い区域、または低い光度の区域の比率がより大きくなる。
【0010】
さらに、光照射野の明るさの違いは、光照射野がパターンにより形成される場合はさらに顕著である。
【発明の概要】
【0011】
この問題を考慮し、本発明の一つの目的は、均一な光度の光照射野を地面へ投射することができる発光モジュールを設計することである。
【0012】
この目的を念頭において、本発明に係る発光モジュールは、
- 光源と、
- 地面へ光照射野を投射するよう設計されている投射光学系と、
を含む。
【0013】
本発明によれば、発光モジュールは光源と投射光学系の間に配置される可変光透過率を有する要素をさらに含み、前記可変光透過率を有する要素は、
- 光照射野の第1区域を形成するのに適した光線を受ける第1部分と、
- 光照射野の第1区域よりも光源から遠くに位置する第2区域を形成するのに適した光線を受ける第2部分と、
を含む。
【0014】
加えて、第1部分は第1光透過率と呼ばれる光透過率を有し、これは、第2光透過率と呼ばれる第2部分の光透過率よりも低い。
【0015】
さらに、第1光透過率および第2光透過率は、第1区域の光度が第2区域の光度と実質的に等しくなるように規定される。
【0016】
言い換えると、光透過率は提案される要素の内部で変化し、それゆえ「可変光透過率を有する要素」という名前となっている。具体的には、可変光透過率を有する要素の第1部分は、前記要素の第2部分よりも不透明である。第1部分は第2部分よりも少ない光を通過させる。加えて、第1部分および第2部分の不透明度は、第2区域と同じ光度に達するように第1区域の光度が削減されるように規定される。
【0017】
したがって、提案される発光モジュールを上述した発光装置に組み込むことで、光照射野の2つの異なる区域の光度は光源に対するそれぞれの位置が異なるにもかかわらず均一となる。
【0018】
こうして得られる光照射野はその全範囲にわたって同じ光度を有し、これにより光照射野の品質が向上し、観察者、特に発光モジュールが設置されている車両のユーザを満足させる。
【0019】
本明細書では、投射光学系は、モジュールの大きさと比べて(有限または無限の)非常に大きな(少なくとも30倍ほど、好ましくは100倍ほどの)距離で、モジュールの一部、たとえば光源自体、または光源の中間画像の実際の画像、および場合によってはアナモルフィックな画像を作り出す。この投射光学系は、1つもしくは複数の反射器、1つもしくは複数のレンズ、1つもしくは複数の導光板、またはさらにこれらの取り得る組み合わせから構成することができる。
【0020】
光源は固体(solid-state)光源とすることができる。「固体」という用語は、固体エレクトロルミネッセンスにより放射される光を指し、半導体を用いて電気を光に変換する。白熱照明と比べて、半導体照明はより少ない熱の発生とより少ないエネルギーの散逸とともに可視光を生成する。一般的に軽量な半導体電子発光装置は、脆弱なガラス管/ガラス電球や長く薄いフィラメント線よりも衝撃や振動に対してより大きな耐性を提供する。そのような装置はフィラメントの蒸発の影響を受けず、これにより発光装置の耐用年数を向上させることができる。この種の照明の一部の例では、電気フィラメント、プラズマ、またはガスの代わりの光源として半導体発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、またはポリマー発光ダイオード(PLED)を含む。
【0021】
本発明に係る発光モジュールは、任意選択で以下の特徴のうちの1つまたは複数を持つことができる:
- 発光モジュールは、光源と投射されるパターンが付けられた投射光学系との間に配置されるスライドを含み、加えて、可変光透過率を有する要素がスライド上に配置される、
- スライドは、投射光学系に向けられている第1面と、光源に向けられている第2面とを含み、前記第1面は投射光学系の焦点面内に配置されて投射されるパターンを含み、投射されたこのパターンは光照射野に含まれ、スライドによりもたらされる投射されたパターンの鮮明さはしたがって改善され、例としてパターンは記章、ロゴ、または物体の画像とすることができて、パターンはフォトリソグラフィまたはレーザー彫刻プロセスを用いて作ることができて、この場合、光照射野は複数の要素から成り、それらの要素は要素間で異なるコントラストを用いて互いに区別される、
- 例示の一実施形態によれば、スライドは、投射されたパターンにより光照射野が形成されるように設計される、
- 一例によれば、スライドは、スライドに到達するすべての光線をその進路を逸らすことなく通過させる透明支持物を含む、
- 可変光透過率を有する要素はスライドの第1面に配置され、可変光透過率を有する要素およびパターンはしたがってスライドの同じ面に配置され、そのようなスライドは、表面処理が片面に集中するので短時間で低コストで製造される、
- 可変光透過率を有する要素はスライドの第2面に配置され、言い換えると、可変光透過率を有する要素およびパターンはスライドの2つの異なる面に配置され、その結果、光照射野の品質はさらに改善され、可変光透過率を有する要素は投射光学系の焦点面内に配置されていないので、この要素の一部を形成する構成要素は光照射野内でぼけて見える、またはさらにまったく見えず、地面に投射される画像の品質は、投射されたパターンのみが鮮明に見えるので保証される、
- 一例によれば、光照射野は光源の投射画像からなり、この場合、発光モジュールは均一な光点を生成するのに用いられて、車両の付近を照らすことを可能とする、
- 可変光透過率を有する要素は可変な厚さを有し、例として、この要素は金属層、特にクロムから出来た層により形成され、光透過率は厚さに反比例して、厚さが大きいほど透過率は低くなる、
- 可変光透過率を有する要素は、可変光透過率を有する層と呼ばれる複数の基本ユニットを含む層により形成され、第1部分の基本ユニットの密度が第2部分の基本ユニットの密度より高くなるように基本ユニットは分散されていて、言い換えると、前記層は異なる密度で基本ユニットを有する複数の部分で構成されており、したがって、所望の区域の光度、特に光源の近くに位置する区域の光度を削減するために、光線の一部を通過させるほぼ不透明な部分を作り出すのに印刷の分野におけるディザリングの手法からインスピレーションを得た、
- 例示の一実施形態では、可変光透過率を有する層は、各部分の中で徐々に変化する密度で基本ユニットを含み、この漸進的な変化はある部分から別の部分へと続き、言い換えると、可変光透過率を有する層は層全体にわたって徐々に変化する密度で基本ユニットを含み、例として、可変光透過率を有する層は基本ユニットの密度が所与の向き(水平、垂直、斜め)および所与の方向(上から下、またはその逆、右から左、またはその逆)において漸進的な変化を示す、
- 例として、各部分において基本ユニットは均等に分散しており、基本ユニットは互いに同じ距離だけ離間している、
- 基本ユニットは完全に不透明である、
- 基本ユニットは金属から作られ、たとえばクロムやアルミニウムから作ることができる、
- 各基本ユニットの大きさは数マイクロメートル程度であり、たとえば、3マイクロメートル程度である、
- 基本ユニットは同一であり、製造するのが簡単で実用的な構成である、
- 可変光透過率を有する層はフォトリソグラフィプロセスを用いて得られ、このプロセスは、基本ユニットを分散させる様々な方法に適合させることができる、精密で柔軟な製造方法である、
- 可変光透過率を有する要素は、光照射野の光源から最も遠くに位置する第3区域を形成するのに適した光線を受ける透明な第3部分をさらに含み、可変光透過率を有する要素が基本ユニットが与えられる層で構成される場合、第3部分には基本ユニットは与えられない、
- 一例によれば、第2部分は第1部分と第3部分の間に位置し、したがって不透明度は第1部分から第3部分へと減少し、結果として、第1区域の光度は、光源から最も遠くに位置する第3区域の光度に達するように減少する、
- 発光モジュールは、前記モジュールからの光の投射軸線が水平に対して下方へ傾き、光と地面が交差することで光照射野が形成されるように配置され、ここでは水平とは車両が位置する地表面に平行な軸線を意味する。
- 投射光学系は複数のレンズを含み、レンズは、たとえば一つのブロックを形成するように、互いに重ねられて積層されている。
【0022】
本発明の別の目的は、本発明に係る発光モジュールを含む自動車車両用の発光装置に関する。
【0023】
任意選択で、発光装置は車両のドア、特に前部ドアの下に設置される。
【0024】
別の例では、発光装置は車両のバックミラーに設置される。
【0025】
更なる革新的な特徴および利点は、添付の図面を参照して非限定的な指示として与えられる以下の説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の例示の一実施形態に係る発光モジュールを含む自動車車両の側面図を示す。
図2図1の発光モジュールの断面図を示す。
図3図1の発光モジュールの一部を形成するスライドの第1面の概略斜視図を示す。
図4図1の発光モジュールの一部を形成するスライドの第2面の概略斜視図を示す。
図5図3の装置の背面図を詳細図A、B、Cと共に示す。
図6図3および図4に示される線VI-VIを通過する面に沿ったスライドの横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
これらの図、特に図1を参照すると、自動車車両10は、示されている左側に前部ドア11と後部ドア13とを含む。発光モジュール1(図1では見えない)を含む発光装置が前部ドア11と後部ドア13の下に位置するドア枠12に設置されている。示されている例では、発光装置はドア枠12の前端部に位置し、車両10の主軸線Pと平行に広がる光照射野Sを地面へ投射するよう配置される。投射軸線は水平軸線に対して角度αを作る。
【0028】
発光装置は、前後の入口ドアに隣接して位置する空間を照らす側部手段として機能する。
【0029】
ここで、光照射野Sは車両10の後部まで広がる。先行技術では、光照射野は可変する光度を有し、時にはこの光照射野の目に見える異なる区域では光度に差がつけられる、つまり、他の区域よりも暗い区域を区別することができる。
【0030】
発光装置が本発明の原理に従って製造された発光モジュール1を含むと仮定すると、光照射野Sは全範囲にわたって均一な光度を有する。言い換えると、光照射野Sは異なる光度を有するいくつかの区域には分けられず、ここではあらゆる場所で同じ光度を有する単一の区域からなる。
【0031】
したがって光照射野の品質が改善される。これを達成するために、発光装置は図2から図6に模式的に示される発光モジュール1を含む。
【0032】
図2では、発光モジュール1は光源2と、投射光学系3と、光源2と投射光学系3の間に配置されるスライド5とを含む。
【0033】
ここで、光源2はLED(発光ダイオード)である。他の種類の光源も考えられる。光源2は1つまたは複数のLEDを含むことができる。ここで、スライド5および投射光学系3の方向に向かう平行光線に由来する光を作り出すため、コリメータ20が光源2の前に配置される。
【0034】
示されている例では、投射光学系3は焦点面Fを有し、互いに重ねられて積層された複数のレンズ30で構成される。ここでは4つのレンズが存在する。
【0035】
レンズ30のそれぞれは、屈折面を有する中央部301と、中央部301を取り囲む外環部302とを含む。屈折面は、光源2からの光線を歪曲収差などの光学的収差を制限しながら、またはさらに除去しながら投射するよう構成される。
【0036】
外環部302は、隣接するレンズの外環部の相補的係合手段と相互作用するのに適した係合手段を備えている。例として、係合手段は溝またはリブを含むことができる。
【0037】
レンズ30のすべてが充分に保持されることを保証するため、レンズ30は組立品の2つの両端をつかむレンズホルダー(図2では図示せず)内に設置される。この目的のため、レンズホルダーは組立品の第1レンズの外環部と最後のレンズを押す端部を含む。
【0038】
ここでは、スライド5は、実例として矩形断面を有する透明板53である。スライド5は、ガラスまたはプラスチック、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)から作ることができる。スライド3は、第1面51および第2面52を有する。スライドは、第1面51が投射光学系3に向けられ、第2面52が光源2に向けられるように、発光モジュール1内に配置される。第1面51は下流面としても知られ、第2面52は上流面としても知られる。用語「上流」および「下流」は、発光モジュール1内の光の伝搬方向において規定される。
【0039】
図3に示されるように、パターン510はスライド5の第1面51に作られる。パターン510は、地面へ投射されて光照射野Sを形成する。この例では、パターン510は文字「V」である。
【0040】
パターン510は、第1面51の表面を処理するプロセスにより得られる。このプロセスは、たとえば第1面51に透明領域510と不透明領域511を作り出すフォトリソグラフィプロセスである。不透明領域511は、光を通さない不透明層513(図6では見えている)、具体的には酸化クロムの層で覆われている。不透明層513は、他の材料、たとえばアルミニウムや銀から作ることができる。透明領域510では、第1面51は覆われないままであり、つまり、第1面51は材料で覆われていない。そのため、光線は透明領域510を通過して投射光学系3へ到達することができる。それゆえ、透明領域は投射されるパターン510を形成する。第1面51は、パターンの像が無限に投射されて投射面上で鮮明となるように、投射光学系3の焦点面F内に配置される。
【0041】
別の例では、透明領域は、透明領域へ到達する光線のすべてを通す透明層により覆うことができる。
【0042】
図4および図5はスライド5の第2面52を示す。本発明およびこの例によれば、可変光透過率を有する要素4が第2面52に配置される。ここでは、可変光透過率を有する要素4は、図4に示される円Pにより囲まれる領域520内に広がる。領域520は第1面51上のパターン510に対向して配置されるので、活性領域520としても知られる。言い換えると、活性領域520は光線を受けて、この光線はその後パターン510へ達する。
【0043】
パターン510に対向して配置されていない第2面52の残りの部分は、不活性領域525として知られる。不透明被膜層が、投射光学系3へ達して光照射野S内に捉えられる可能性のある漂遊光線を防ぐためにこの不活性領域521の上に蒸着される。この不透明被膜層は、第1面51に蒸着される不透明層513と同じ種類とすることができる。
【0044】
ここでは、可変光透過率を有する要素は、互いから離間している複数の基本ユニット400を含む材料層4により形成される。
【0045】
一つの基本ユニット400と隣接するユニットの間の距離は、材料層4の中で変えることができる。
【0046】
図5に示すように、材料層4は矢印Fで表される、図5の上から下へと減少する密度で基本ユニットを含む。たとえば、基本ユニットの密度は上から下へ連続的に減少する。この減少は、線形、または非線形でありうる。別の言い方をすれば、材料層4は、ここでは矢印Fにより示される材料層の広がる方向に互いに連続する複数の部分へと分けることができる。各部分は非常に小さい大きさとすることができて、規定された密度で基本ユニットを含みうる。任意の部分は、すぐ下に位置する部分より大きい密度で基本ユニットを有する。
【0047】
ここでは、材料層4は、スライド5の第2面52の活性領域520内で部分的に広がる。ここでは、基本ユニットは活性領域520の一部分に配置されて、この部分では上から下へと密度が減少する。活性領域520の残りの部分には基本ユニットが与えられない。この残りの部分は材料層4により覆われない領域としても知られ、図4および図5では523で示されている。
【0048】
例として、材料層4の上部41における基本ユニットの分布が図5の「A」で示される拡大図において示されている。材料層4の中間部42における基本ユニットの分布が図5の「B」で示される拡大図において示されている。基本ユニットの密度は、中間領域42よりも上部領域41においてより高くなることに留意されたい。図5の「C」で示される別の拡大図は、下部43における基本ユニットの分布を示し、材料層4により覆われていない領域523に至るまで徐々に密度が減少している。
【0049】
別の例示の実施形態では、基本ユニットは第2面52の活性領域520の全面にわたって可変する密度で配置することができる。この場合、領域523はより低い密度で基本ユニットにより覆われる。
【0050】
別の例示の実施形態によれば、基本ユニットは一定の密度を有するいくつかのグループに分散させることができて、その密度はグループによって異なる。この場合、これらのグループの互いに対しての配置は、発光モジュールが車両にどのように、たとえば、地面に対して傾いていない、すなわち垂直に投射するように、搭載されるかによって決まる。加えて、一定の密度を有する基本ユニットのグループにより分散させることは、特に対照的な輝度を有する表面のパターンに適していることがある。
【0051】
図示されている例に戻ると、図6において基本ユニット400は同じ大きさであることが分かり、これにより材料層4が一定の厚さを持つことが可能となっている。加えて、同一の基本ユニットを持つ材料層4は製造するのが容易である。
【0052】
基本ユニット400は不透明な材料から製造される。ここでは、基本ユニット400は金属、たとえばクロムやアルミニウムから作られる。任意選択で、基本ユニット400は不活性領域525を覆う層と同じ材料から作ることができる。
【0053】
各基本ユニットは、自身が不透明であることで、到達する光線が自身を通過するのを防ぐ。上記に加えて、基本ユニット400は暗い色、あるいはさらに黒でありうる。
【0054】
スライドの第2面52に基本ユニット400が存在することにより、第2面52に到達してスライド本体53を通過し第1面51に到達することのできる光線量が減少する。言い換えると、基本ユニット400はスライドの透明度に影響を及ぼす。より多くの基本ユニット400が存在するほど、スライドの関連する部分はより不透明となる。この部分の不透明度は、その上に存在する基本ユニット400の密度に関連する。
【0055】
上述した基本ユニット400を含む層4は可変光透過率を有する層として知られるが、これは第2面52上で変化するようにスライドの不透明度を変更するからである。第2面52の層4により覆われる部分は、この層4の基本ユニットの密度に比例して変化する不透明度を有する。活性領域520の上部521は、同領域の中間部522よりも不透明である。最後に、基本ユニット400が与えられない領域523は、その当初の透明度を維持する。
【0056】
上述したように可変光透過率を有する層4を有するので、上部521および中間部に達する光線が光源の近くに光照射野Sの複数の区域を形成するのに適した光線であるようにスライド5は発光モジュール1内に配置される。これらの区域は、図1ではS1およびS2で示されている。同時に、領域523に到達する光線は、光照射野の光源から最も遠い区域を形成するのに寄与する。この区域は図1ではS3で示されている。
【0057】
結果的に光度は光照射野Sの至る所で同じとなり、これは第1区域S1および第2区域S2を形成する光線の量が第3区域S3を形成する光線の量と同程度まで削減されるからである。この削減は第2面52の一部分である521および522に基本ユニット400が存在することに由来し、これにより光の一部がスライド5を通過することが防がれる。
【0058】
それゆえ、可変光透過率を有する層により、先行技術における光照射野の不均一な配光を改善することが可能となる。先行技術では、発光モジュールの最も近くに位置し、したがって光源の最も近くに位置する区域は、光源から少し遠くに位置する区域よりも大きな光度を有する。可変光透過率を有する層のため、より照らされる第1区域の光度は、光源からより遠くに位置しているためそれほど照らされない第2区域と同じ光度に達するように削減される。
【0059】
言うまでもなく、本発明は上述した例に限定されない。本発明の範囲から逸脱することなく、記載した例に対して様々な変更を行うことができる。
【0060】
たとえば、スライドの第1面に作られるパターンは異なっていてもよい。可変光透過率を有する層の部分の数、したがって第2面が分けられる部分の数は異なっていてもよい。可変光透過率を有する層を作るのに他の材料および他のプロセスも考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 光源(2)と、
- 地面へ光照射野(S)を投射するよう設計されている投射光学系(3)と、
を含む、自動車車両用の発光モジュール(1)であって、
前記発光モジュールは、前記光源と前記投射光学系の間に配置される可変光透過率を有する要素(4)をさらに含み、前記可変光透過率を有する要素は、
- 前記光照射野の第1区域(S1)を形成するのに適した光線を受ける第1部分(41)と、
- 前記光照射野の前記第1区域よりも前記光源から遠くに位置する第2区域(S2)を形成するのに適した光線を受ける第2部分(42)と、
を含み、
前記第1部分は第1光透過率と呼ばれる光透過率を有し、これは、第2光透過率と呼ばれる、前記第2部分の前記光透過率よりも低く、
前記第1光透過率および前記第2光透過率は、前記第1区域の光度が前記第2区域の光度と実質的に等しくなるように規定される、
ことを特徴とする発光モジュール(1)。
【請求項2】
前記光源(2)と投射されるパターンが付けられた前記投射光学系(3)との間に配置されるスライド(5)を含み、前記可変光透過率を有する要素が前記スライド(5)上に配置される、請求項1に記載の発光モジュール(1)。
【請求項3】
前記スライド(5)は、前記投射光学系(3)に向けられている第1面(51)と、前記光源(2)に向けられている第2面(52)とを含み、前記第1面は前記投射光学系(3)の焦点面(F)内に配置されて投射される前記パターンを含み、投射された前記パターンは前記光照射野(S)に含まれる、または前記光照射野(S)を形成する、請求項2に記載の発光モジュール(1)。
【請求項4】
前記可変光透過率を有する要素(4)は前記スライド(5)の前記第1面(51)に配置される、請求項3に記載の発光モジュール(1)。
【請求項5】
前記可変光透過率を有する要素(4)は前記スライド(5)の前記第2面(52)に配置される、請求項3に記載の発光モジュール(1)。
【請求項6】
前記光照射野は前記光源(2)の投射画像からなる、請求項1に記載の発光モジュール(1)。
【請求項7】
前記可変光透過率を有する要素は可変な厚さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の発光モジュール(1)。
【請求項8】
前記可変光透過率を有する要素は、可変光透過率を有する層として知られる複数の基本ユニット(400)を含む層(4)により形成され、前記基本ユニット(400)は、前記第1部分(41)の前記基本ユニットの密度(μ1)が前記第2部分(42)の前記基本ユニットの密度(μ2)より高くなるように分散されている、請求項1からのいずれか一項に記載の発光モジュール(1)。
【請求項9】
前記基本ユニット(400)は完全に不透明である、請求項8に記載の発光モジュール(1)。
【請求項10】
前記基本ユニット(400)は金属から作られる、請求項8に記載の発光モジュール(1)。
【請求項11】
前記可変光透過率を有する層(4)はフォトリソグラフィプロセスを用いて得られる、請求項8に記載の発光モジュール(1)。
【請求項12】
前記可変光透過率を有する要素(4)は、前記光照射野の前記光源(2)から最も遠くに位置する第3区域(S3)を形成するのに適した光線を受ける透明な第3部分(43)をさらに含む、請求項1に記載の発光モジュール(1)。
【請求項13】
前記第2部分(42)は前記第1部分(41)と前記第3部分(43)の間に位置する、請求項12に記載の発光モジュール(1)。
【請求項14】
前記投射光学系(3)は互いに重ねられて積層された複数のレンズ(30)を含む、請求項1に記載の発光モジュール(1)。
【国際調査報告】