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特表2024-527391アルカリ金属で基板を強化する方法及びデバイス並びに電解液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】アルカリ金属で基板を強化する方法及びデバイス並びに電解液
(51)【国際特許分類】
   C25D 7/00 20060101AFI20240717BHJP
   C25D 3/54 20060101ALI20240717BHJP
   C25C 1/22 20060101ALI20240717BHJP
   C25C 7/06 20060101ALI20240717BHJP
   C25D 21/18 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
C25D7/00 G
C25D3/54
C25C1/22
C25C7/06 301A
C25D21/18 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501651
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 DE2022100506
(87)【国際公開番号】W WO2023284918
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021118609.9
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021118422.3
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517184129
【氏名又は名称】レナ テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】RENA Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Hoehenweg 1, 78148 Guetenbach,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】クーンライン・ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】デラヘイ・フランク
(72)【発明者】
【氏名】カンプ・マティアス
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
4K058
【Fターム(参考)】
4K023AA22
4K023BA29
4K023DA07
4K023EA01
4K024AA01
4K024BB09
4K024CB15
4K024CB26
4K058BA02
4K058BB01
4K058CA14
4K058CA20
4K058CA25
4K058EC04
4K058EC07
4K058ED04
4K058FA05
(57)【要約】
本発明は、アルカリ金属(3)、特にリチウムで基板(2)を強化する方法(100、200)及びデバイス(1、1a)、電池における電極としてこのように強化された基板(2)の使用並びに電解液(4)に関する。強化目的のため、この場合、電解液(4)は、アノード(11)及びカソード(12)を有する電解室(10)並びに供給容器(20a、20b)を通じて回路(K)に誘導される。供給容器(20a、20b)内に配置されたアルカリ金属(3)は酸化され、電解液(4)に溶解される(S1)。電解室(10)内でカソード(12)として使用される基板(2)は、溶解したアルカリ金属(3)で強化される(S2)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属(3)、特にリチウムで基板(2)を強化する方法(100)であって、
電解液(4)が、アノード(11)及びカソード(12)を有する電解室(10)並びにリザーバ容器(20a、20b)を介して回路(K)に誘導され、
前記リザーバ容器(20a、20b)内に配されたアルカリ金属(3)、特にリチウムが酸化され、前記電解液(4)に溶解され(S1)、
前記電解室(10)内でカソード(12)として使用される基板(2)が、溶解した前記アルカリ金属(3)で強化される(S2)、方法(100)。
【請求項2】
前記電解液(4)は前記アルカリ金属(3)と相互作用するための相手物質(4a)を含み、前記リザーバ容器(20a、20b)内に配された前記アルカリ金属(3)は前記相手物質(4a)の補助によって酸化され、前記電解液(4)に溶解される、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
有機相手物質が、相手物質(4a)として使用される、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
使用される前記相手物質(4a)は、メタロセン、ジヒドロフェナジン、ジメトキシベンゼン、チアントルレン、PFPTFBB、ベンゾフェノン、1,3-ベンゾジオキソール、1,3-ジ-tert-ブチル-2,5-ビス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンゼン、フェノチアジン、TEMPO及び該物質の誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの要素である、請求項2又は3に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記リザーバ容器(20a、20b)内の前記相手物質(4a)は、特に、前記リザーバ容器(20a、20b)内に配された前記アルカリ金属(3)の酸化時に、少なくとも80%程度まで、好ましくは少なくとも90%程度まで、特に好ましくは実質的に完全に還元される、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記相手物質(4a)は、前記電解液(4)に溶解した導電性塩に存在する、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記導電性塩は、前記電解液に溶解されると有機イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン又はオゾニドイオンを提供する塩、特に塩化リチウム又は硝酸リチウムである、請求項6に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記リザーバ容器(20a、20b)内に配された前記アルカリ金属(3)は、電気化学的に処理される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記アルカリ金属(3)は、前記電気化学的な処理によって酸化され、前記電解液(4)に溶解される、請求項8に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記リザーバ容器(20a、20b)内の前記アルカリ金属(3)はアノードとして接続された電極(22)と接触状態とされ、前記アルカリ金属(3)は酸化電流の流れによって前記電解液(4)に溶解される、請求項8又は9に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記電気化学的な処理によって前記電解液(4)に溶解したアルカリ金属(3)は、前記リザーバ容器(20a、20b)内で少なくとも部分的に再度堆積される、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記電解液(4)は、前記アルカリ金属(3)の少なくとも一部分の下流側で前記リザーバ容器(20a、20b)内に配置されたカソードとして接続された他方の電極(23)に対して流れることで、前記電解液(4)に溶解されアルカリ金属(3)が前記他方の電極(23)又は該他方の電極(23)と接触状態とされたアルカリ金属(3)に堆積される、請求項11に記載の方法(100)。
【請求項13】
電解液(4)が、カソードとして接続されて前記リザーバ容器(20a、20b)内で前記アルカリ金属(3)の上流側に配置された他方の電極(23)に対して流れることで、前記相手物質(4a)が前記他方の電極(23)において還元される、請求項10に記載の方法(100)。
【請求項14】
前記リザーバ容器(20a、20b)内の前記電解液(4)が、2つの電極(22、23)の間のセパレータ(25)を通じて誘導される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項15】
前記リザーバ容器(20a、20b)内に配された前記アルカリ金属(3)を前記電解液(4)に溶解させるために、前記アルカリ金属(3)を酸化させるガス(5)が前記リザーバ容器(20a、20b)内に導入され、又は前記リザーバ容器(20a、20b)の上流側で前記電解液(4)に溶解される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項16】
ハロゲンガス(5)又は亜硝酸ガス(5)が、前記リザーバ容器(20a、20b)内に導入される、請求項15に記載の方法(100)。
【請求項17】
前記ガス(5)は、前記電解室(10)内でアノード(11)において生成される、請求項15又は16に記載の方法(100)。
【請求項18】
前記電解液(4)に存在する保護物質(4b)は、前記アノード(11)において酸化され、前記基板(2)上の1以上の所定箇所(2a)においてのみ還元される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項19】
アルカリ金属(3)、特にリチウムで基板(2)を強化する方法(200)であって、
アルカリ金属が溶解した電解液が、アノード(11)及びカソード(12)を有する電解室(10)を通じて回路に誘導され、
前記電解室(10)内でカソード(12)として使用される基板(2)が、溶解した前記アルカリ金属(3)で強化され(S2)、
前記電解液(4)中に存在する保護物質(4b)が前記アノード(11)において酸化され、前記基板(2)上の1以上の所定箇所(2a)においてのみ還元される、方法(200)。
【請求項20】
前記基板(2)上を流れる前記電解液(4)中の前記保護物質(4b)のカチオンの濃度が、能動的に制御される、請求項18又は19に記載の方法(100、200)。
【請求項21】
前記保護物質(4b)の酸化電位が、一方では、前記1以上の所定箇所(2a)において前記基板(2)に堆積された前記アルカリ金属(3)を酸化することでそれを前記電解液(4)に溶解させるのに充分であるが、他方では、前記1以上の所定箇所(2a)とは異なる少なくとも1つの箇所(2b)において前記基板(2)に埋め込まれたアルカリ金属(3)を酸化しないように、前記保護物質(4b)が選択される、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法(100、200)。
【請求項22】
前記保護物質(4b)と前記1以上の所定箇所(2a)における第1の基板材料との間の酸化還元電位が、前記保護物質(4b)と前記1以上の所定箇所(2a)とは異なる少なくとも1つの箇所(2b)における前記第1の基板材料とは異なる第2の基板材料との間の酸化還元電位よりも大きくなるように、前記保護物質(4b)が選択される、請求項18から21のいずれか一項に記載の方法(100、200)。
【請求項23】
前記電解液(4)に、メタロセン、ジヒドロフェナジン、チアントルレン、トリフェニルアミン、PFPTFBB、ベンゾフェノン、1,3-ベンゾジオキソール、1,3-ジ-tert-ブチル-2,5-ビス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンゼン、フェノチアジン、TEMPO及び該物質の全ての誘導体の群から選択される保護物質(4b)が添加される、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法(100、200)。
【請求項24】
前記保護物質(4b)は、前記相手物質(4a)に対応する、請求項18から23のいずれか一項に記載の方法(100、200)。
【請求項25】
前記相手物質(4a)は、前記リザーバ容器(20a、20b)内での酸化時に、最大90%程度まで、好ましくは最大80%程度まで、特に好ましくは最大70%程度まで還元される、請求項24に記載の方法(100、200)。
【請求項26】
前記アノード(11)は、電解液(4)及びそこに溶解した物質(4a、4b)に対して不活性である、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法(100、200)。
【請求項27】
前記アノード(11)は、貴金属、好ましくは白金又は銅を有し、特に前記貴金属製である、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法(100、200)。
【請求項28】
請求項1から27のいずれか一項に記載の方法(100、200)を用いて強化された基板(2)の、電池、特にリチウムイオン電池又はリチウム金属電池における電極としての使用。
【請求項29】
アルカリ金属(3)、特にリチウムで基板(2)を強化するデバイス(1)であって、
前記アルカリ金属(3)で強化される基板(2)をカソード(12)として内部に配置可能な、アノード(11)を有する電解室(10)と、
内部で前記アルカリ金属(3)が配置可能なリザーバ容器(20a、20b)と、
前記リザーバ容器(20a、20b)内に配された前記アルカリ金属(3)を酸化するための手段(4a;22;50)と、
電解液(4)を前記電解室(10)及び前記リザーバ容器(20a、20b)を通じて回路(K)に誘導するためのポンプ装置(30)であって、前記手段(4a;22;50)の補助によって前記リザーバ容器(20a、20b)内で酸化されることによって前記電解液(4)に溶解したアルカリ金属(3)が前記電解室(10)内に提供され、カソード(12)として使用される前記基板(2)が前記溶解したアルカリ金属(3)で強化されるように電解液(4)を誘導するためのポンプ装置(30)と、
を備えるデバイス(1)。
【請求項30】
前記リザーバ容器(20a、20b)内に配された前記アルカリ金属(3)を酸化するための前記手段(4a;22;50)は、前記電解液(4)に混合された相手物質(4a)、前記リザーバ容器(20a、20b)内に配置された電極(22)及び/又は前記アルカリ金属(3)を酸化するガス(5)を前記リザーバ容器(20a、20b)内に導入するため若しくは前記リザーバ容器(20a、20b)の上流側で前記電解液(4)に前記ガス(5)を溶解させるためのガス供給手段(50)を備える、請求項29に記載のデバイス(1)。
【請求項31】
前記アルカリ金属(3)を内部に配置可能な第1のリザーバ容器(20a)及び第2のリザーバ容器(20b)と、
前記アルカリ金属(3)の再充填時に、前記第1のリザーバ容器(20a)において、前記電解液(4)が主に、好ましくは実質的に排他的に前記第2のリザーバ容器(20b)を流通し、前記アルカリ金属(3)の再充填時に、前記第2のリザーバ容器(20b)において、前記電解液(4)が主に、好ましくは実質的に排他的に前記第1のリザーバ容器(20a)を流通するように、前記電解液(4)を前記第1及び第2のリザーバ容器(20a、20b)を通じて誘導するように設計された制御装置(40)と、
を備える請求項29又は30に記載のデバイス(1)。
【請求項32】
アルカリ金属(3)、特にリチウムで基板(2)を強化するデバイス(1a)であって、
前記アルカリ金属(3)で強化される基板(2)をカソード(12)として内部に配置可能な、アノード(11)を有する電解室(10)と、
アルカリ金属(3)が溶解され、保護物質(4b)を含む電解液(4)と、
前記電解液(4)を前記電解室(10)を通じて回路(K)に誘導するためのポンプ装置(30)であって、前記電解液(4)に溶解したアルカリ金属(3)が前記電解室(10)に提供され、カソード(12)として使用される前記基板(2)が前記溶解したアルカリ金属(3)で強化され、前記電解液(4)中に存在する前記保護物質(4b)が前記アノード(11)において酸化され、前記基板(2)上の1以上の所定箇所(2a)においてのみ還元されるように前記電解液(4)を誘導するためのポンプ装置(30)と、
を備えるデバイス(1a)。
【請求項33】
特に請求項18から27のいずれか一項に記載の方法における使用のための電解液(4)であって、アノード(11)において酸化可能でありかつアルカリ金属(3)において還元可能な相手物質(4a)を含み、酸化された前記相手物質(4a)の補助による酸化によって前記アルカリ金属(3)を溶解するように構成された電解液(4)。
【請求項34】
特に請求項18から27のいずれか一項に記載の方法における使用のための電解液(4)であって、アルカリ金属(3)が溶解され、保護物質(4b)を含み、該保護物質(4b)は、アノード(11)において酸化可能であり、カソード(12)として使用される基板(2)上で1以上の所定箇所(2a)においてのみ還元可能であり、それにより、前記基板(2)は、前記1以上の所定箇所(2a)において前記電解液(4)に溶解した前記アルカリ金属(3)では強化可能でない、電解液(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属で基板を強化する方法及び装置並びに電池内の電極としてのそのような強化された基板の使用に関するとともに、電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムで強化された電極が使用されるリチウムイオン電池及びリチウム金属電池が、現在開発中である。通常、強化のために、強化対象の電極上にリチウムが電気化学的に堆積され(これは一般にメッキといわれる)又は電極の活性材料中にリチウムが埋め込まれる(これはプレリチウム化といわれることもある)。代替の強化の選択肢は、活性材料を未だ含まない導電性基板、例えば、銅箔上にリチウムを電気化学的に堆積させることである。この場合、活性材料は、リチウムの堆積によって与えられる。
【0003】
電極上へのリチウムの堆積又は電極材料内へのリチウムの埋め込みは、いわゆるロールツーロール処理で実行可能である。この場合、電極材料のストリップ、例えば、銅箔は、リチウムイオンが存在するガルバニック槽を通過する。使用される電解液は、通常は有機かつ無水である。処理は、乾燥又は不活性雰囲気中で実行される。
【0004】
周知のシステムは、炭酸塩系電解液中に導電性塩として六フッ化リン酸リチウム (LiPF)を用いる。電解液中の追加のリチウムイオンが、可溶性リチウムアノードによって与えられる。アノードとして使用される金属リチウムが比較的低コストで入手可能であるので、このようなシステムは運用上の優位性を与え得る。しかし、カソードと可溶性アノードの間の電界分布が堆積処理中に変化してしまうため、長いロールツーロールガイドベルト上でのリチウムイオンの均一な堆積は難しいとされる。
【0005】
不活性アノードを用いるシステムは、異なる手法を採用する。この場合、塩がリチウム源として使用され、これがリチウムイオンの均一な分布を達成可能とする。しかし、不利な点は、実質的に連続的に再充填されなければならないこれらのリチウム塩が幾分高コストであることである。さらに、望ましくない分解生成物が形成されるアノード反応が、起こり得る。
【0006】
例えば、このようなシステムでは、塩化リチウム(LiCl)が、γ-ブチロラクトン(GBL)中で塩として使用される。これは、塩素(Cl)をアノードで生成する。塩素は、非常に腐食性が高く、そのためにシステムを劣化させる。特に、ClはGBLを劣化させるため、GBLでは反応生成物が精製されなければならず、GBLは連続的に補充されなければならない。
【発明の概要】
【0007】
この背景に対して、本発明の1つの課題は、アルカリ金属、特にリチウムによる基板の強化のための代替策を提供することである。特に、効率的な、対象に特化した及び/又は低コストの、アルカリ金属による基板の強化を可能とすることが、本発明の課題となる。
【0008】
さらに、本発明は、そのような強化された電極を有する電池の製造及び/又は使用を可能とする課題に基づく。
【0009】
これらの課題は、独立請求項に記載されるような、アルカリ金属で基板を強化する方法及びデバイスによって並びにその使用及び電解液によって達成される。
【0010】
アルカリ金属、特にリチウムで基板を強化するための本発明の第1の態様に係る方法では、電解液が、カソード及びアノードを有する電解室並びにリザーバ容器を通じて回路内に誘導される。リザーバ容器内に配されたアルカリ金属、特にリチウムは、酸化され、電解液に溶解される。電解室内でカソードとして使用される基板は、溶解したアルカリ金属で強化される。
【0011】
本発明の一態様は、アルカリ金属のイオンをリザーバ容器内でその酸化によって生成し、それらをその場で電解液に溶解させる手法に基づく。イオンを電解室に輸送するのに電解液が使用されてもよく、基板はそれによって適宜有利に電気化学的に強化され、又は強化され得る。リザーバ容器内のアルカリ金属の溶液によって不活性電極の使用が可能となるため、電解室内で好ましくはカソードとして使用される電極と基板との間の電界分布は強化処理の過程において変化しない。同時に、リザーバ容器内のアルカリ金属は、低コストで直ちに補充可能である。例えば、アルカリ金属は、ペレット床としてリザーバ容器内に配置及び補充可能である。この点で、基板面にわたる均一な強化に加えて、一定の電界分布に起因して、この手順はまた、特に効率的にかつ少ない労力で強化処理を実行可能とする。
【0012】
電解液中のアルカリ金属を溶解する目的のため、種々の手段が考えられる。例えば、アルカリ金属は、例えば、電解液によって及び/又はその上を流れるガスによって「受動的に」酸化可能である。この場合の電解液及び/又はガスは、適宜有利に酸化剤を含み、又は酸化剤を形成する。
【0013】
代替的に又はさらに、アルカリ金属は、電解液に「能動的に」溶解されてもよい。例えば、アルカリ金属は、例えば、アノードとして接続された電極にそれを接触させることによって、電気化学的に酸化可能である。
【0014】
本発明の好適な実施形態及びその更なる展開例を以下に説明する。明示的に除外されない限り、これらの実施形態は、相互に及び以下に説明する本発明の態様と任意に組み合わせられ得る。
【0015】
好適な実施形態では、電解液は、アルカリ金属と相互作用するための相手物質を含む。適宜有利には、リザーバ容器内に配されたアルカリ金属は、相手物質の補助によって少なくとも部分的に酸化され、電解液に溶解される。相手物質は、電解液の一部、特に電解液の導電性塩、又は電解液に-好ましくは実質的に1回限り-添加された若しくはされている別個の物質であり得る。この点で、相手物質の使用によって、アルカリ金属の特に低コストの「受動的」酸化が可能となる。
【0016】
相手物質は、適宜有利には酸化還元活性の相手物質であり、好ましくはアノードへのアルカリ金属の電気化学的な堆積時に酸化される。そして、酸化された相手物質は、酸化によってリザーバ容器内のアルカリ金属を溶解可能となり、それにより、相手物質は適宜有利に再還元される。この点で、強化処理時に、いずれのアルカリ金属化合物、特にアルカリ金属を含むいずれの塩も、能動的に電解液に添加又は補給される必要はない。特に、電解液は、強化処理によって「消費」されない。
【0017】
有機相手物質は、相手物質として使用され、特に電解液に混合され、又はそれが好ましい。そのような有機相手物質、特に強化処理後に基板に残るその残渣は、一般に、従来のリチウム電池に適合し、又は少なくとも除去が容易である。例えば、アルカリ金属が、基板に、例えば、フィルム上の活性材料などの被覆に埋め込まれた場合、相手物質の残渣が基板上に残り、特にそれらも埋め込まれる可能性が高い。これは、被覆が多孔質構造体を有してアルカリ金属がそれらの多孔質構造体内に導入される場合に、より高い度合いで起こり得る。相手物質の残渣が各個々の場合において関係する電池の種類に適合する場合、これらの残渣は単に基板上に残り得るにすぎない。一方、不適合がある場合、これらの残渣は、好ましくは少なくとも部分的に除去される。すすぎ及び/又は蒸発ステップは、実際にその価値が証明されている。
【0018】
非常に可逆的な酸化性、及び酸化/還元ステップでの、アルカリ金属に対する酸化電位よりも高い酸化電位を同時に示し得る有機物質は、例えば、フェロセン(C1010Fe)又はコバルトセン(C1210Co)などのメタロセン、ジヒドロフェナジン(C1210)、ジメトキシベンゼン(C10)、チアントレン(thianthrene:C12)、トリフェニルアミン(C1815N)、PFPTFBB(C1210B)、ベンゾフェノン(C1310O)、1,3-ベンゾジオキソール(C)、DBTFB(C1824)、フェノチアジン(C12NS)、TEMPO(C18NO)及びこれらの物質の全ての誘導体である。この点で、使用される、すなわち、電解液に添加される相手物質は、メタロセン、ジヒドロフェナジン、ジメトキシベンゼン、チアントルレン(thiantlurene)、PFPTFBB、ベンゾフェノン、1,3-ベンゾジオキソール、1,3-ジ-tert-ブチル-2,5-ビス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンゼン、フェノチアジン、TEMPO及び上記物質の誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの要素であることが好適である。特に、ジメトキシベンゼン(DMB)の誘導体としてのDBBB(C2034)若しくはDMMB(C1830)又はメタロセン類のフェロセン若しくはコバルトセンが、使用され、すなわち、電解液に添加され得る。
【0019】
この場合、フェロセンを使用する場合には、電解液は、適宜有利にはエチレンカーボネート(C)及び/又はジメチルカーボネート(C)を含む。フェロセンは、2つの物質の各々に良好な可溶性を示す。アルカリ金属としてのリチウムと比較して、フェロセンの酸化電位は、結果として3.2~3.3Vとなり得る。
【0020】
DBBB(2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ビス(2-メトキシエトキシ)ベンゼン)を使用する場合には、電解液は、適宜有利にはプロピレンカーボネート(C)を含む。DBBBは、それに良好な可溶性を示す。アルカリ金属としてのリチウムと比較して、DBBBの酸化電位は、結果として3.8~4Vとなり得る。
【0021】
DMMB(1,4-ジ-tert-ブチル-2-メトキシ-5-(2-メトキシエトキシ)ベンゼン)を使用する場合には、電解液は、適宜有利にはエチレンカーボネート、エチレンメチルカーボネート(C)又はプロピレンカーボネートを含む。DMMBは、これらの物質の各々に良好な可溶性を示す。アルカリ金属としてのリチウムと比較して、DMMBの酸化電位は、結果として約3.9Vとなり得る。
【0022】
TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシド)を使用する場合には、電解液は、適宜有利にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及び/又はエチレンメチルカーボネートを含む。TEMPOは、これらの物質の各々に良好な可溶性を示す。アルカリ金属としてのリチウムと比較して、TEMPOの酸化電位は、結果として約3.5Vとなり得る。
【0023】
電解液中に、特に電解質溶媒として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート又はエチレンメチルカーボネートを提供することによって、高い可溶性がフェロセン、コバルトセン、DBBB、DMMB、ベンゾフェノン、1,3-ベンゾジオキソール、コバルトセン、フェノチアジン又はTEMPOなどの対応する前述の相手物質の酸化状態及び還元状態の双方において確保可能となる。
【0024】
更なる好適な実施形態では、リザーバ容器内の相手物質は、特に、リザーバ容器内に配されたアルカリ金属の酸化時に、少なくとも80%程度まで、好ましくは少なくとも90%程度まで、特に好ましくは実質的に完全に還元される。結果として、相手物質の未還元部分が電解室に侵入して、それにより基板を既に強化したアルカリ金属の少なくとも一部が溶液に再投入されてしまうことが防止され得る。
【0025】
そのような還元の程度は、適度に大きなアルカリ金属接触面を提供することによって及び/又はそれに従ってそこに存在する電解液若しくは相手物質の滞留時間を調整することによって達成可能である。この点で、多数の小型アルカリ金属ペレットをリザーバ容器内に配置し及び/又はそれに従ってリザーバ容器内の電解液の流量を調整すると好都合となり得る。
【0026】
アルカリ金属による還元に代えて又はそれに加えて、カソードとして接続された、リザーバ容器内に配置された(他方の)電極によって、相手物質が、特に確実に、特に所定の程度まで還元されてもよい。
【0027】
代替的に又はさらに、基板上に流れる電解液中の酸化された相手物質の濃度が、他の手段によって能動的に制御され、特に制限されてもよい。例えば、基板上の酸化された相手物質の濃度は、所定の濃度設定点に調整され、特に調節され得る。この目的のため、アノードにおいて酸化された相手物質の少なくとも一部は、電解室から除去可能である。例えば、相手物質のカチオンが溶解した電解液の少なくとも一部が、電解室から流出可能であり、特に吸出可能である。任意選択的に、電解液の排出された部分に存在する酸化された相手物質又は排出された電解液は、電解室から排出された電解液中の酸化された相手物質の濃度を低減するために希釈され得る。特に、電解液の排出された部分はリザーバ容器を通じて誘導可能であり、リザーバ容器内の相手物質は、特にカソードとして接続された電極において還元可能である。そして、電解液は、電解室に戻され、特に基板に向かって流れ得る。
【0028】
他の好適な実施形態では、相手物質は、電解液中に溶解した導電性塩に存在する。これは、いずれの追加の物質も電解液に添加される必要がないという有利な効果を有する。この点で、分離処理が、このように特にコスト効率の高い態様で実行可能である。
【0029】
使用される導電性塩は、電解液に溶解されると、有機イオン、塩化物イオン(Cl)、硝酸イオン(NO )、過塩素酸イオン(ClO )又はオゾニドイオン(O 2-)を提供する塩であることが考えられる。例えば、塩化リチウム(LiCl)、硝酸リチウム(LiNO)、過塩素酸リチウム(LiClO)又はオゾン化リチウム(LiO)が、導電性塩として使用され得る。原則として、電解質、特に電解液に存在する溶媒との接触による、リザーバ容器内に配されたアルカリ金属のパッシベーションの危険がある。一方で、そのようなパッシベーションは、アルカリ金属との相手物質の相互作用に悪影響を与え得る。したがって、更なる好適な実施形態では、リザーバ容器内に配されたアルカリ金属が、電気化学的に処理される。特に、リザーバ容器内に配置された少なくとも2つの電極間に電圧が印加され得る。そのようなアルカリ金属の電気化学的な処理はリザーバ容器内に配されたアルカリ金属のパッシベーションを防止し、又は少なくともパッシベーションが緩和され得る。
【0030】
この場合、アルカリ金属、特に抑制されたアルカリ金属、すなわち、その電解液との反応が、例えば、パッシベーションによって抑制されたものが電気化学的な処理によって電解液に溶解されると特に有利である。言い換えると、電解液中のアルカリ金属イオンの酸化誘導による(すなわち、相手物質によって引き起こされる)溶解に加えて、アルカリ金属イオンも、好ましくは電気化学的に溶解される。リザーバ容器内に配されたアルカリ金属の表面は、材料の好ましくは連続的な電気化学的な変位によって、パッシベーション層がない状態で維持され得る。例えば、表面のパッシベーションが発生又は進行し得る前に、例えばアルカリ金属ペレットの表面上の層が電解液に溶解され得る。この点で、アルカリ金属の電気化学的な溶解によって、リザーバ容器内に配されたアルカリ金属の表面が「フレッシュに維持」可能となるので、相手物質の補助による連続的に高い酸化性が可能となる。
【0031】
この点で、電気化学的な処理によって電解液に溶解したアルカリ金属、すなわち、アルカリ金属イオンがリザーバ容器内に少なくとも部分的に再度堆積されても有利である。これによっても、リザーバ容器内に配されたアルカリ金属の表面がパッシベーション層のない状態に維持可能となる。特に、例えば、抑制されたアルカリ金属が、リザーバ容器の第1の領域において溶解可能とされ、第2の領域に再度堆積可能とされる。言い換えると、電気化学的な処理は、好ましくは、リザーバ容器内に配されたアルカリ金属の一種の「再構成」を伴う。したがって、アルカリ金属の表面の少なくとも実質的に全体が、相手物質の補助によって還元のために常時利用可能である。
【0032】
例えば、リザーバ容器内のアルカリ金属は、酸化電流のフローによってアルカリ金属を電解液に溶解させるために、電極に対して接触状態とされ又は接触状態となり得る。このリザーバ容器内の電極の位置が、第1の領域を画定し得る。この電極は、適宜有利にはアノードとして接続され、すなわち、対応する電流又は電圧源の正極に接続される。この電極の陽極回路は、基本形態を超える望まれない還元から相手物質を保護することもできる。これは、相手物質としてDBBB又はDMMBを使用する場合に特に有利である。
【0033】
この電極は、電解液における及び/又はアルカリ金属との接触に対して長期間の化学的安定性を確保するために、好ましくは、少なくとも部分的に貴金属、例えば、銅、金、銀又は白金からなる。この点で、電極がアルカリ金属との合金を形成しない金属からなる場合に特に有利である。リチウムがアルカリ金属として使用される場合、電極は、例えば、少なくとも部分的に銅からなり得る。
【0034】
代替的に又はさらに、リザーバ容器内のアルカリ金属の「受動的」酸化も可能である。アルカリ金属の溶解を触媒するために、貴金属、例えば、銅又は白金とともにアルカリ金属の導電性化合物を生成することによってリザーバ容器内に局所元素を提供若しくは生成すること、又はその形成を少なくとも可能とし、特に促進することが可能である。この目的のために特に有利には、アルカリ金属が、特にアルカリ金属ペレット床の形態でリザーバ容器内に配置可能な又は配されているケージ又はバスケットが、貴金属で構成され得る。リザーバ容器内での局所元素の提供又は形成によって、アルカリ金属を酸化するための専用電極を省略することが可能となる。結果的に、電圧を電極に印加するのに対応の電源は不要となる。
【0035】
リザーバ容器内の溶解アルカリ金属の対象に特化した堆積は、他方の電極を用いて達成され得る。このリザーバ容器内の追加の電極の位置は、第2の領域を画定し得る。この他方の電極は、カソードとして適宜有利に接続され、すなわち、対応する電流又は電圧源の負極に接続される。
【0036】
他方の電極は、好ましくは、-電解液のフロー方向を基準として-アルカリ金属の少なくとも一部分の下流側で、特に第1及び/又は第2の領域の下流側でリザーバ容器内に配置される。この場合、他方の電極はリザーバ容器内でアルカリ金属に対して接触可能とされ又は接触可能であればよく、例えば、床内に配置されてもよいし又は配置されている。例えば、アノードとして動作する電極によって、電解液に溶解したアルカリ金属の、他方の電極又はそれと接触されるアルカリ金属に対する堆積を達成するために、電解液は適宜有利には他方の電極に対して流れる。
【0037】
他方の電極は、任意選択的に、アルカリ金属が配されず又は配されないこともあるリザーバ容器の所定箇所に配置され得る。他方の電極は、特に、-電解液のフロー方向を基準として-リザーバ容器内のアルカリ金属の上流側に配置され得る。この場合、相手物質は、アルカリ金属の酸化によってではなく、カソードとして動作するこの電極上で還元可能である。この構成は、リザーバ容器内で電気化学的に溶解されたアルカリ金属が他方の電極に堆積することを防止する。この点で、この他方の電極の構成の補助により、電気化学的に溶解されたアルカリ金属は、基板の強化のために利用可能となり得る。これは、電解液に溶解したリチウムイオンの濃度に対して、より良好な制御を与え得る。
【0038】
電解液が相手物質を含む場合、この相手物質(以前に電解室内でアノードにおいて酸化されたもの)はリザーバ容器内でアルカリ金属の上流側に配置された他方の電極において少なくとも部分的に還元され得る。これは、相手物質が電解室内の基板上に流れる場合に既に堆積され又は埋め込まれたアルカリ金属を溶解してしまうことを確実に防止する。同時に、他方の電極において結果として還元された相手物質は、電解室内でアノードにおいて再酸化され得る。
【0039】
アルカリ金属の累積的溶解及び/又は対応する再充填は、リザーバ容器内でのアルカリ金属床の部分的滑動又は浮遊をもたらすことになる。結果として、電極間での短絡の危険がある。したがって、実際には、リザーバ容器内の電解液は、2つの電極間でプラスチックシーブなどのセパレータを通じて誘導され得る。このようなセパレータは、電極間の短絡を防止する有効な手段であることが分かっている。セパレータは、例えば、アルカリ金属が配され又は配置可能なケージ又はバスケット内に設けられ得る。特に、セパレータは、そのようなケージ又はバスケットを分割し得る。ケージ又はバスケットはまた、電気絶縁性でなければならず、例えば、プラスチックで構成されなければならない。代替的に、アルカリ金属は、適切に離隔された2つの電気的に独立したケージ又はバスケット内に配され得る。
【0040】
カソードとして接続された他方の電極がアルカリ金属と接触していない場合、アルカリ金属で充填され又は充填可能なケージ又はバスケットであればよい。セパレータは、この場合には省略可能である。
【0041】
更なる好適な実施形態では、アルカリ金属を酸化するガスは、リザーバ容器内に導入されてリザーバ容器内に配されたアルカリ金属を電解液に溶解させ、又は-電解液のフロー方向を基準として-リザーバ容器の上流側で電解液に溶解される。これにより、アルカリ金属の特に確実な酸化が可能となる。例えば、アルカリ金属がリザーバ容器内にペレットの形態で配される場合、ガスは対応する床を通じて容易に供給され、ペレットのそれに応じて大きな表面積、実質的には全表面積が酸化され得る。この点で、ガスは、電解液に大量のアルカリ金属を溶解するのに使用され得る。
【0042】
特にアルカリ金属の酸化時に、ガスがリザーバ容器内に、ただし任意選択的にリザーバ容器の上流側にも導入されると、ガスは電解液に溶解可能となる。好ましくは、電解液に溶解したガスは、特に溶解アルカリ金属とともに、電解液の導電性塩を少なくとも部分的に形成する。
【0043】
亜硝酸ガスが、アルカリ金属、特にリチウムに対する有効な酸化剤であることが分かっている。この点で、亜硝酸ガスがリザーバ容器内に導入されると好ましい。例えば、NOをリザーバ容器内に導入することが考えられる。NOイオン、特にNOアニオン(NO )は、アルカリ金属の確実な酸化を実現し得る。
【0044】
アルカリ金属の酸化に関する同様に良好な効果は、ハロゲンガスによっても達成可能である。この点で、ハロゲンガスがリザーバ容器内に導入されても好ましい。例えば、Clをリザーバ容器内に導入することが考えられる。Clイオン、特にClアニオン(Cl )も、アルカリ金属の確実な酸化を実現し得る。
【0045】
ほぼ閉鎖的な強化処理を実行し又はほぼ閉鎖的なシステムを動作させるために、リザーバ容器内に導入されるガスの生成を強化処理に統合することが好ましい。したがって、好適な実施形態では、ガスは、電解室内のアノードにおいて生成される。これにより、専用のガス源の必要がなくなり、すなわち、外部ガス供給手段が不要となり、それにより、強化処理に必要な消費材が減少する。
【0046】
好ましくは、ガスは、電解液に溶解した導電性塩から生成される。特に、導電性塩の少なくとも1つの構成要素が、アノードにおいて酸化され得る。適宜有利には、この導電性塩の酸化された構成要素は、気体状態に変換される。結果として得られるガスは、アルカリ金属に再還元されて電解液に溶解されるために、適宜の手段、例えば、ガスライン及び/又はガスポンプによってリザーバ容器に収集及び導入され得る。この点で、導電性塩の少なくとも1つの構成要素は、アルカリ金属を電解液に溶解させるためのガス回路の一部であり得る。
【0047】
本発明の第2の態様は、アルカリ金属、特にリチウムで基板を強化する方法に関し、電解液が、アノード及びカソードを有する電解室を通じて、特に回路内に誘導される。アルカリ金属は電解液に適宜有利に溶解され、すなわち、電解液は好ましくはアルカリ金属の(正に帯電した)イオンを含む。適宜有利には、電解室内でカソードとして使用される基板は、特にアルカリ金属イオンを還元することによって、溶解アルカリ金属で強化される。電解液は、アノードにおいて酸化されるとともに基板上の1以上の所定箇所においてのみ還元される保護物質を含むことが好適である。これにより、有利には、基板が1以上の所定箇所ではアルカリ金属で強化されないようにすることが可能となる。言い換えると、その1以上の所定箇所は、アルカリ金属がない状態に維持され得る。この点で、基板の強化は、空間的に制御され得る。
【0048】
この背景において、保護物質は、強化を基板の活性材料に制限する目的に対して適切であり得る。例えば、基板が、アルカリ金属が埋め込まれ又は埋め込まれるべき導体又は金属箔、例えば、銅箔上に活性材料を含む場合、保護物質は、アルカリ金属が活性材料に埋め込まれる場合にアルカリ金属が導体箔に堆積されないようにするのにも使用可能であり、又は堆積の程度が少なくとも大幅に低減可能である。この目的のため、保護物質は、アノードにおいて酸化され、基板上の所定箇所のみ、例えば、導体箔の直上において還元される。所定箇所における還元は、アルカリ金属がこの箇所において還元されて基板に堆積することも防止し得る。
【0049】
本発明の第2の態様に係る方法は、単独で成立し得る。ただし、これは、原則として、本発明の第1の態様に係る方法にも適合する。この点で、本発明の第2の態様に係る方法は、本発明の第1の態様に係る方法と組み合わされてもよい。したがって、本発明の第1の態様に係る方法の更なる好適な実施形態では、電解液は、アノードにおいて酸化されるとともに基板上の1以上の所定箇所においてのみ還元される保護物質を含む。
【0050】
アノードにおいて可逆的に酸化されて基板上で還元され得るこの保護物質は、例えば、活性材料に完全に覆われていない銅箔において、露出した銅領域にリチウムが堆積されること(これは非常に望ましくない)を防止するのに使用され得る。この場合、露出した銅領域は、所定箇所に対応する。保護物質は、アルカリ金属による堆積が行われ得る前の基板上で還元されるように適宜有利に選択される。
【0051】
基板上で保護物質の保護機能、特に基板上でのその還元性を確保するために、アノードにおいて酸化された相手物質が少なくとも部分的に基板に直接供給されることが好ましい。例えば、そこに存在する酸化保護物質を有する電解液の少なくとも一部が、-電解液のフロー方向を基準として-アノードの下流側で電解室から排出され、基板に直接、すなわち、基板の上流側で電解室内に戻され得る。基板への直接の(再)循環は、電解液及びそこに存在する/溶解した物質の追加の処理のない、すなわち、精製若しくは再処理ステップ及び/又はその他のない流通を意味する。所定箇所の効率的かつ確実な保護のために、例えば、そこに存在する保護物質を有する電解液の所定の部分を基板に直接供給すること(のみ)によって、基板上に流れる電解液中の保護物質のカチオンの濃度を能動的に制御することも有利となり得る。電解液の残余部は処理可能であり、一方で、例えば、リザーバ容器内の保護物質は陰極接続電極上で還元可能である。必要に応じて、基板上の過度に高いカチオン濃度が防止され得る。
【0052】
基板上で繰り返し酸化及び還元される、電解液に添加された保護物質は、漏れ電流をもたらすことになり、それにより、強化処理の効率が低下してしまう。これを緩和するため、保護物質は、その酸化電位が、一方では、1以上の所定領域における基板上に、特に金属箔の直上に堆積されたアルカリ金属、特にリチウムを酸化しかつ結果として溶解するのに充分となるが、他方では、1以上の所定箇所とは異なる少なくとも1つの箇所における基板、特に基板の活性材料に埋め込まれたアルカリ金属を酸化しないように、選択される。そのような酸化電位は、特定の誘導体を選択することによって、又は保護物質の残基を適合することによって達成可能である。「適切な」酸化電位及び結果として「適切な」保護物質-は、基板材料及び/又は基板の活性材料、特に1以上の所定箇所及び/又は1以上の所定箇所とは異なる少なくとも1つの箇所における基板材料に応じて適宜有利に選択される。
【0053】
代替的に又はさらに、保護物質は、基板の1以上の所定箇所に堆積されるが、1以上の所定箇所とは異なる基板の少なくとも1つの箇所には堆積されない。基板、特に導体箔への堆積によって、保護物質は、そこでのアルカリ金属の堆積に対して対象に特化した保護を与えることができる。この目的のため、保護物質は、それが好ましくは1以上の所定箇所において基板の材料上で還元されるように選択され得る。これは、例えば、保護物質と、1以上の所定箇所における第1の基板材料、例えば、銅などの導体箔の材料との間の酸化還元電位の差を、保護物質と、1以上の所定箇所とは異なる少なくとも1つの箇所における第2の基板材料、例えば、活性材料との間のものよりも大きくすることによって達成可能である。代替的に又はさらに、1以上の所定箇所とは異なる少なくとも1つの箇所における保護物質の還元が力学的に抑制されてもよく、及び/又は1以上の所定箇所における基板材料上での還元が触媒的に促進されてもよい。
【0054】
例えば、銅箔がその表面にわたって活性材料で被覆されず、リチウムが活性材料に埋め込まれることになる場合、保護物質は、その還元電位が銅箔上での直接の還元には充分となるが、活性材料上への又は活性材料内への保護物質の堆積又は埋め込みには充分とならないように選択され得る。1以上の所定箇所は、この場合、純銅表面に対応し、1以上の所定箇所とは異なる少なくとも1つの箇所は活性材料表面に対応する。
【0055】
適切な酸化還元電位を有する保護物質は、特にリチウムを有する銅含有基板の強化に関して、とりわけ、フェロセン(C1010Fe)又はコバルトセン(C1210Co)などのメタロセン、ジヒドロフェナジン(C1210)、チアントレン(C12)、トリフェニルアミン(C1815N)、PFPTFBB(C1210B)、ベンゾフェノン(C1310O)、1,3-ベンゾジオキソール(C)、DBTFB(C1824)、フェノチアジン(C12NS)、TEMPO(C18NO)及び上記物質の全ての誘導体を含む。この点で、保護物質の群から選択される物質が電解液に添加されることが好適であり、その群はメタロセン、ジヒドロフェナジン、チアントルレン、トリフェニルアミン、PFPTFBB、ベンゾフェノン、1,3-ベンゾジオキソール、1,3-ジ-tert-ブチル-2,5-ビス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンゼン、フェノチアジン、TEMPO及び上記物質の全ての誘導体を含む。
【0056】
DBBB及びDMMBは、少なくとも特定の条件下で、少なくとも1つのアルカリ金属、すなわち、リチウムに対して不可逆的に還元可能であることが分かっている。この点で、保護物質としてのDBBB及びDMMBの使用に対して追加の予防措置がとられなければならない場合がある。例えば、保護物質又は相手物質が実質的に連続的に強化処理中の電解液に添加可能であり、還元構成要素がフィルタ除去可能である。例えば、-存在する場合には-リザーバ容器内のリチウムに対してDBBB又はDMMBの不可逆的還元を防止し又は少なくとも低減する他の可能性は、そこに位置する電極-及び結果として電極に接触しているアルカリ金属-を陽極酸化することである。この場合、カソードとして接続される電極は、好ましくは、既に還元されたDBBB又はDMMBとアルカリ金属との間の接触を減少させるためにリザーバ容器内のアルカリ金属の下流に配置される。
【0057】
保護物質が相手物質に対応することが好ましい。したがって、この場合、相手物質は、保護物質の役割を担う。言い換えると、特にメタロセン、ジヒドロフェナジン、チアントルレン、トリフェニルアミン、PFPTFBB、ベンゾフェノン、1,3-ベンゾジオキソール、1,3-ジ-tert-ブチル-2,5-ビス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンゼン、フェノチアジン、TEMPO及び上記物質の全ての誘導体を相手物質として使用する場合、専用の保護物質を電解液に添加することは不要となり得る。
【0058】
この場合に基板への相手物質の保護効果を確保するために、相手物質は、例えば、そこに配されるアルカリ金属又はそこに配置される陽極接続された電極によって、リザーバ容器内での酸化時に、最大90%程度まで、好ましくは最大80%程度まで、特に好ましくは最大70%程度まで還元されることが好ましい。これは、例えば、適切に選択されたランタイムによって、すなわち、例えば、それに応じてポンプ装置を設定することによって及び/又はフローが向けられるアルカリ金属面の適切な寸法取りによって、すなわち、例えば、それに応じて大きなアルカリ金属ペレットを選択することによって、達成可能である。これは、相手物質がリザーバ容器内のアルカリ金属上で完全に還元されることを防止するので、電解液中の酸化相手物質の残存濃度は基板に対する保護効果に充分となる。
【0059】
更なる好適な実施形態では、アノードは、電解液に対して-及びそれに溶解したいずれの物質に対しても-不活性である。適宜有利には、アノードは、相手物質、保護物質及び/又は電解液の導電性塩に対して不活性である。結果として、例えば、アルカリ金属塩のアニオンは、アノードを劣化させることなく、したがって、基板の不均質な強化をもたらし得る電解室内の電界分布の変化をもたらすことなく、強化処理時に酸化可能となる。
【0060】
例えば、アノードは、貴金属、好ましくは白金又は銅を含み得る。特に、アノードは、貴金属製であり得る。これは、アノードでの相手物質の酸化に好適である。
【0061】
本発明の第1及び/又は第2の態様に係る方法は、特に無水有機溶媒中の金属層の電気化学的な堆積に有利に使用可能である。これは、リチウムの堆積に特に有効であることが分かっている。これは、アルカリ金属電池のためのアルカリ金属電極、特にアノードの製造にも有利に使用可能であり、リチウムがアルカリ金属として有利に提供される。方法は、アルカリ金属を有する再充電可能な電池のための負電極の強化において、特にリチウムを有するリチウムイオン電池のための負電極の強化においてもその価値が認められている。
【0062】
この点で、本発明の第3の態様によると、本発明の第1及び/又は第2の態様に係る方法を用いて強化された基板が、電池における電極として使用される。特に、リチウムイオン電池又はリチウム金属電池での適用が考えられる。
【0063】
アルカリ金属、特にリチウムで基板を強化するための本発明の第4の態様に係るデバイスは、アノードを有する電解室を備える。さらに、アルカリ金属で強化される基板は、電解室内のカソードとして配置され又は配置可能である。さらに、デバイスは、アルカリ金属が配され又は配置可能であるリザーバ容器、及びリザーバ容器内に配されたアルカリ金属を酸化するための手段を有する。さらに、ポンプ装置が、好ましくは、電解室及びリザーバ容器を通じて回路内に電解液を誘導するために設けられるので、その手段の補助によってリザーバ容器内で酸化され、それにより電解液に溶解したアルカリ金属が電解室に提供され、カソードとして使用される基板が溶解アルカリ金属で強化される。このデバイスは、例えば、リチウムを銅箔に堆積させ又はそれをそのような箔上の活性材料内に埋め込むのに使用可能である。例えば、ペレットの形態でアルカリ金属をリザーバ容器内に提供することによって、従来のシステムの動作とは対照的に、電解液の導電性塩が消費されることもなければ、アノードがアルカリ金属ディスペンサとして設計され、すなわち、離脱可能とされなければならないこともない。この点で、本発明に係るデバイスは、アノード幾何形状の設計に、より大きな自由度を与える。特に、薄い不活性アノードが使用可能である。アルカリ金属で均質な強化を達成するために、電解室内のフロー設計に関する制限も少ない。
【0064】
好適な実施形態では、リザーバ容器内に配されるアルカリ金属を酸化するための手段は、電解液に混合された相手物質、リザーバ容器内に配置された電極、特にアルカリ金属に接触可能な若しくは接触している電極、及び/又はアルカリ金属を酸化するガスをリザーバ容器内に導入し若しくはガスをリザーバ容器の上流側で電解液に溶解させるためのガス供給手段を備える。アルカリ金属を酸化するための手段は、専用のガスポンプ、ガスライン、リザーバ容器内の他方の電極、リザーバ容器に対する電流若しくは電圧源、並びに/又はその他などの更なる部品又はユニットを備える。そのようなアルカリ金属を酸化するための手段は、充分な量のアルカリ金属が基板の有効な強化のために電解液に溶解されることを確実にし、及び/又はリザーバ容器内に配され若しくは配置可能なアルカリ金属の実質的なパッシベーションを少なくとも防止することができる。
【0065】
他の好適な実施形態では、アルカリ金属が配置可能な又は配された第1のリザーバ容器及び第2のリザーバ容器が設けられる。さらに、制御装置が設けられてもよく、制御装置は、第1のリザーバ容器内のアルカリ金属の再充填時には、電解液が主に、好ましくは実質的に排他的に第2のリザーバ容器を流通し、第2のリザーバ容器内のアルカリ金属の再充填時には、電解液が主に、好ましくは実質的に排他的に第1のリザーバ容器を流通するような態様で、第1及び第2のリザーバ容器を通じて電解液を誘導するように設計される。これにより、デバイスの動作、すなわち、堆積処理を中断することなくアルカリ金属が再充填可能となる。これは、電解室を通過するベルト上で堆積が実質的に連続的なものとなるので、ロールツーロール処理において使用される場合に特に有利である。
【0066】
デバイスの動作をさらに促進するために、制御装置は、好ましくは、必要に応じて第1のリザーバ容器及び第2のリザーバ容器をアルカリ金属で充填し、特にそれらを補充するようにも設定される。言い換えると、制御装置は、自動再充填のために設定され得る。好ましくは、アルカリ金属の貯蔵部がこの目的のために設けられ、制御装置はそこからアルカリ金属を除去してそれを第1及び第2のリザーバ容器に供給することができる。
【0067】
アルカリ金属、特にリチウムで基板を強化するための本発明の第5の態様に係るデバイスは、アノードを有する電解室を備える。さらに、アルカリ金属で強化される基板は、電解室内にカソードとして配置され又は配置可能である。適宜有利には、デバイスは、アルカリ金属が溶解されて保護物質を含む電解液を備える。好ましくは、ポンプ装置も、電解室を通じて回路内に電解液を誘導するために設けられ、それにより、電解液に溶解したアルカリ金属が電解室内に提供され、カソードとして使用される基板が溶解アルカリ金属で強化され、電解液中に存在する保護物質がアノードにおいて酸化されるとともに基板上の1以上の所定箇所においてのみ還元される。このデバイスは、例えば、リチウムを銅箔に堆積させ、又はそれをそのような箔上の活性材料に埋め込むのに使用可能である。保護物質を含む電解液を誘導することによって、基板が、特定の重要な領域において、例えば、接触点ではアルカリ金属で強化されないようにすることが可能となる。
【0068】
本発明の第6の態様は、特に本発明の第1又は第2の態様に係る方法における使用のための電解液に関する。電解液はアノードにおいて酸化可能であるとともにアルカリ金属において還元可能な相手物質を含み、電解液は酸化された相手物質の補助による酸化によってアルカリ金属を溶解するように構成される。
【0069】
本発明の第7の態様は、特に本発明の第1又は第2の態様に係る方法における使用のための電解液に関する。電解液にアルカリ金属が溶解され、電解液は、アノードにおいて酸化可能であるとともに1以上の所定箇所においてのみカソードとして使用される基板上では還元可能な保護物質を含むので、基板は、1以上の所定箇所では電解液に溶解したアルカリ金属では強化可能でない。
【0070】
以下に、本発明を図面の補助によってより詳細に説明する。適宜、同じ機能を有する要素には同じ符号が付される。本発明は、機能的特徴の観点を含めて、図面に記載される実施例には限定されない。これまでの記載及びその後の図面の記載は、場合によっては従属請求項において2以上に組み合わせられる多数の特徴を含む。ただし、当業者は、これらの特徴並びに上記及び以降の図面の説明においてに開示した全ての他の特徴も個々に考慮し、それらを組み合わせて有用な更なる組合せとするはずである。特に、全ての上記特徴は、個々に並びに本発明の第1の態様に係る方法、本発明の第2の態様に係る方法、本発明の第3の態様に係る使用、本発明の第4の態様に係るデバイス、本発明の第5の態様に係るデバイス、本発明の第6の態様に係る電解液及び本発明の第7の態様に係る電解液との任意の適宜の組合せにおいて組み合わせられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】アルカリ金属で基板を強化するための従来技術による2つのデバイスを少なくとも部分的に模式的に示す。
図2】リザーバ容器内に保持されたアルカリ金属で基板を強化する方法及びデバイスの一例を少なくとも部分的に模式的に示す。
図3】第1及び第2のリザーバ容器を有するデバイスの一例を少なくとも部分的に模式的に示す。
図4】リザーバ容器の一例を少なくとも部分的に模式的に示す。
図5】リザーバ容器の更なる例を少なくとも部分的に模式的に示す。
図6】リザーバ容器に対するガス供給手段の一例を少なくとも部分的に模式的に示す。
図7】保護物質の補助によってアルカリ金属で基板を強化する方法及びデバイスの一例を少なくとも部分的に模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1は、アルカリ金属3で基板2を強化するための従来技術による2つのデバイス60、70を示す。
【0073】
左側に示すデバイス60は、可溶性アノード61及び強化対象の基板2によって形成されたカソード12を有する電解室10を備える。アノード61は、アルカリ金属3が固体状態、例えば、ペレットの形態で保持されるケージ62を備える。電解室10は、再処理(不図示)の目的のためのポンプ装置30によって再循環可能な電解液4で充填される。電解液4は、適宜有利には、溶媒及びアルカリ金属含有塩(導電性塩ともいう)を含む。
【0074】
電流又は電圧源13によってアノード61とカソード12の間に電圧を印加すると、電解液4に溶解した導電性塩のアルカリ金属カチオンが、電子の取込みにより、基板2に堆積され、又は基板2に埋め込まれる。ケージ62内のアルカリ金属3が酸化してアルカリ金属カチオンを電解液4中に放出するので、電解液4のカチオン濃度は実質的に一定に維持される。ケージ62内のアルカリ金属3は、結果として堆積処理の過程で溶解する。この点で、アノード61は可溶性であるので、時間が経過すると、アノード61の完全な交換、又は少なくともアルカリ金属3のケージ62へのコストのかかる充填が必要となる。
【0075】
右側に示すデバイス70は、同様に設計されている。これは、不活性アノード71の使用によってのみデバイス60とは異なる。
【0076】
電流又は電圧源13によってアノード71とカソード12の間に電圧を印加すると、電解液4に溶解した導電性塩のアルカリ金属カチオンが、基板2に堆積され、又は基板2に埋め込まれる。電解液4のカチオン濃度は結果として低下するので、導電性塩が再充填されなければならない。同時に、アノード71において酸化する導電性塩の構成要素は、潜在的に、電解液4から労力を以て分離されなければならない。
【0077】
図2は、リザーバ容器20a、20b内に保持されたアルカリ金属3で基板2を強化する方法100及びデバイス1の一例を示す。アルカリ金属3を保持するためのリザーバ容器20a、20bに加えて、デバイス1は、電解室10、並びに電解室10及びリザーバ容器20a、20bに流体伝導態様で適宜有利に接続されたポンプ装置30を備える。リザーバ容器20a、20bは、好ましくは、電解室10とは別個に設計され、すなわち、電解室10の外部に配置される。電解室10は、アノード11を備え、カソード12として基板2を保持するように設定される。アノード11は、電流又は電圧源13の正極に適宜有利に接続される。他方で、電流又は電圧源13の負極は、基板2、すなわち、カソード12に接続可能であり又は接続され得る。
【0078】
電解室10は電解液4で適宜有利に充填され又は充填可能であり、電解液4には、リザーバ容器20a、20bに配され又は配置可能なアルカリ金属3と相互作用するための相手物質4aが溶解され又は溶解可能である。この相手物質4aは、電解液4の導電性塩又はその少なくとも1つの構成要素であり得る。導電性塩は、適宜有利にはアルカリ金属3の塩である。例えば、アルカリ金属3としてのリチウムと併せて使用するために考えられる導電性塩は、この点では、LiCl、LiClO、LiNO及び/又はその他である。これらのリチウム塩は、例えば、プロピレンカーボネート(C)、エチレンカーボネート(C)、ジメチルカーボネート(C)、γ-ブチロラクトン(C)、ジエチルカーボネート(C10)、ジメチルエーテル(CO)、1-2-ジオキソオラン(C)、エチレンメチルカーボネート(C)及び/又はその他に溶解され得る。
【0079】
ただし、代替的に、電解液4に混合され又は混和性の追加の相手物質4aも考えられる。ここでは、フェロセン(C1010Fe)、DBBB(C2034)、DMMB(C1830)及びTEMPO(C18NO)が考えられる。また、コバルトセン(C1210Co)又は他のメタロセン、ジヒドロフェナジン(C1210)、ジメトキシベンゼン(C10)、チアントレン(C12)、トリフェニルアミン(C1815N)、PFPTFBB(C1210B)、ベンゾフェノン(C1310O)、1,3-ベンゾジオキソール(C)、DBTFB(C1824)、フェノチアジン(C12NS)並びにこれら及び上記物質の全ての誘導体も考えられる。これらは、前述した溶媒の少なくとも1つに溶解され得る。導電性塩として、LiPF又はLiTFSiも、追加の相手物質4aとともに可能である。
【0080】
方法100において、電解液4は、適宜有利にはポンプ装置30の補助により、電解室10及びリザーバ容器20a、20bを通じて回路Kに誘導される。方法ステップS1において、リザーバ容器20a、20bに配されたアルカリ金属3は、相手物質4aの補助により、電解液4中に酸化によって溶解される。その後、方法ステップS2において、カソード12として使用される基板2が、溶解アルカリ金属3で強化される。
【0081】
方法ステップS1におけるアルカリ金属3の酸化時に、特にカチオンが、電解液4に溶解される。これらの溶解アルカリ金属カチオンは、ポンプ装置30によって電解液4とともに電解室10内にポンプ供給され得る。適宜有利には、アルカリ金属カチオンは、その後に方法ステップS2においてカソード12において電子を受け入れる。したがって、再度中性となるアルカリ金属原子が、金属箔などの基板2に堆積され(いわゆる「メッキ処理」)又は基板2、特に金属箔に付加される活性材料に埋め込まれる(いわゆる「プレリチウム化」)。
【0082】
例えば、基板2がリチウム(Li)での強化対象となる場合、以下の反応がリザーバ容器20a、20b内で方法ステップS1において起こり得る。
Li(s)+[X] → [X]+Li(solv)
なお、[X]は相手物質4aであり、(s)は「固体」を表し、(solv)は「溶媒」、すなわち溶解されたものを表す。これにより、酸化剤として作用する相手物質4aが還元される。
【0083】
カソード12において、好ましくはその後に、以下の反応が、方法ステップS2において進行する。
Li(solv)+e → Li(s)
【0084】
リザーバ容器20a、20b内でアルカリ金属3の再酸化によってこのように堆積され又は埋め込まれたリチウムを交換可能とするために、相手物質4aは、適宜有利にはアノード11において酸化される。
[X](solv) → [X]+e
【0085】
アノード11において酸化された相手物質4aが、既に基板2に堆積され又は基板2に埋め込まれたアルカリ金属3を溶解させないために、アノード11に沿って流れる電解液4がリザーバ容器20a、20bに直接排出されるように、電解室10を通じた電解液4のフローが適宜有利に選択される。代替的に又はさらに、電解室10内の電解液フローは、アノード11及び基板2に対して面平行に誘導され得る。結果として得られる陽極液及び陰極液領域間の向上した分離が、アノード11と基板2の間にシーブメッシュ及び/又はその他を配置することによって達成可能となる。代替的に又はさらに、電解液4は、電解室10内でアノード11又は基板2に沿って流れる電解液流の混合がないような態様で電解室10の異なる地点において排出又は吸出され得る。
【0086】
電解液が保護物質も含む場合(図6参照)、基板2の1以上の所定箇所におけるアルカリ金属3での強化を防止し又は少なくとも弱めるために、アノード11に沿って流れる電解液4の少なくとも一部分を特異的に基板2上に向けることが好ましい。
【0087】
既に上述したように、リザーバ容器20a、20b内に配されたアルカリ金属3は、電解液4に溶解したアルカリ金属イオンのためのリザーバ又は供給源として作用し得る。アルカリ金属3は、例えば、リザーバ容器20a、20b内でペレットの形態で配され又は配置可能である。これらのペレットは、リザーバ容器20a、20b内に、電解液4が容易に流れ得る床を形成し得る。適宜有利には、アルカリ金属3、特にペレットは、リザーバ容器20a、20b内で、ケージ(フィルタ21ということもある)の内部に配され又は配置可能である。そのようなフィルタ21は、リザーバ容器20a、20bの別個の配置に起因して、アルカリ金属3で容易に充填可能である。言い換えると、アルカリ金属3は、容易に再充填可能である。任意選択的に、フィルタ21はまた、容易に完全に交換され得る。
【0088】
基板2がガルバニック槽内の旧来的な電極として図2に模式的に示される場合でも、基板2はベルト、例えば、金属ベルト、特に銅ベルトの一箇所であり得る。図2に示すデバイス1の変形例では、そのようなベルトは電解室10内に投入され、アルカリ金属3での強化後に、電解室10から抜去され、それにより、強化がロールツーロール処理で行われ得る。
【0089】
図3は、アルカリ金属3で基板2を強化するデバイス1の他の例を示す。デバイス1は、図2に示すデバイスと実質的に同様に構成され、第1のリザーバ容器20aに加えて設けられる第2のリザーバ容器20b及び制御装置40のみが異なる。制御装置40は、電解液4を選択的に第1又は第2のリザーバ容器20a、20bに伝導するように適宜有利に設定される。この目的のため、制御装置40は、とりわけ、例えば、リザーバ容器20a、20bへの供給ラインを必要に応じて選択的に遮断可能とする少なくとも1つの2方向バルブ及び/又は2以上の遮断バルブ(不図示)を有するバルブ構成41を含み得る。さらに、制御装置40は、好ましくは、バルブ構成41、特にその個々の部品又は部品群を作動させる手段を有する。例えば、制御装置40は、1以上のアクチュエータを有し得る。
【0090】
第1のリザーバ容器20a内のアルカリ金属3の再充填時に、制御装置40によって、電解液は、主に、好ましくは実質的に排他的に第2のリザーバ容器20bを通過可能とされる。これに応じて、制御装置40は、第2のリザーバ容器20b内のアルカリ金属3の再充填時にも、電解液を主に、好ましくは実質的に排他的に第1のリザーバ容器20aに通過させるのに使用され得る。
【0091】
リザーバ容器20a、20bを通じた電解液フローの自動制御を可能とするために、制御装置40に1以上のセンサ(不図示)を装備することも好都合である。例えば、センサは、リザーバ容器20a、20bの各々におけるアルカリ金属レベルを検出するように設定され得る。
【0092】
図4は、アルカリ金属3で基板を強化するデバイスのためのリザーバ容器20a、20bの一例を示す。リザーバ容器20a、20bは電解液入口26及び電解液出口27を適宜有利に有し、それにより、電解液はリザーバ容器20a、20bを流通し得る。リザーバ容器20a、20bは、固体形態、例えば、ペレットの形態のアルカリ金属3を収容するように設計される。この目的のため、リザーバ容器20a、20bは、好ましくは、フィルタ21(ケージ又はバスケットともいわれることがある)を有する。アルカリ金属3は、電解液中に存在する相手物質の補助によって酸化可能であり、それにより電解液に溶解される(図2参照)。この場合、相手物質は、リザーバ容器20a、20b内のアルカリ金属3を酸化するための手段である。
【0093】
さらに、2つの電極22、23がリザーバ容器20a、20b内に配置されて設けられ、それらは電流又は電圧源24に接続される。電極22、23は、セパレータ25によって分離されている。
【0094】
電極22、23によって、リザーバ容器20a、20bは、有利にはアルカリ金属3を電気化学的に処理するように設計される。特に、アルカリ金属3、特に抑制されたアルカリ金属3は、電極22、23の補助により、例えば、電極22と接触しており又は接触されたアルカリ金属3を酸化する一方の電極22によって電解液に溶解され得る。電極22は、電流又は電圧源24の正極に接続され又はこの目的のために適宜有利に接続されることでアノードとして動作する。この点で、一方の電極22は、リザーバ容器20a、20b内のアルカリ金属3を酸化する手段でもある。
【0095】
電極22の補助による酸化によって溶解されたアルカリ金属3の少なくとも一部はまた、リザーバ容器20a、20b内で再度堆積可能となる。例えば、アルカリ金属3は、第1の領域28において電気化学的な処理によって溶解され、第1の領域28の下流側の第2の領域29において再度堆積され得る。特に、一方の電極22の補助によって電解液に溶解したアルカリ金属3は、他方の電極23及び/又は他方の電極23と接触しており若しくは接触されたアルカリ金属3に堆積可能となる。他方の電極23は、電流又は電圧源24の負極に接続され又はこの目的のために適宜有利に接続されることでカソードとして動作する。他方の電極23は、好ましくは一方の電極22の下流側に配置される。電極22、23によるアルカリ金属3の溶解及び分離は、電解液、特に電解液中に存在する溶媒によってアルカリ金属3の表面のパッシベーションを確実に防止することができる。
【0096】
電解液が、図示する例にあるように、下部から上部にリザーバ容器20a、20bを流通する場合、他方の電極23は、好ましくは、アルカリ金属3の、特に第2の領域29におけるアルカリ金属3の-電解液のフロー方向に関して-下流側に配置される。アルカリ金属3の累積的溶解があれば、第2の領域29における他方の電極23とアルカリ金属3の間の電気的接触がアルカリ金属3の浮遊に起因して断絶しないようにすることができる。同様に、電極22は、第1の領域28においてアルカリ金属3の下流側に適宜有利に配置される。
【0097】
他方で、リザーバ容器20a、20bを通じるフローが上部から下部である場合、電極22、23の好適な構成は、適宜有利に反転される。
【0098】
図5は、アルカリ金属3で基板を強化するデバイスのリザーバ容器20a、20bの更なる例を示す。リザーバ容器20a、20bは、図4に示すリザーバ容器とは、特に、下流側の電極22がアノードとして接続され、すなわち、電流又は電圧源24の正極に接続され、一方で上流側の他方の電極23がカソードとして、すなわち、電流又は電圧源24の負極に接続される点で異なる。さらに、セパレータ25は、他方の電極23がアルカリ金属3と接触できないように適宜有利に配置される。ただし、セパレータ25は、例えば、他方の電極23がフィルタ21の外部に配置される場合には、任意選択的に省略可能である。
【0099】
図5に示す電極22、23の構成は、電解室内で基板の強化のためにアルカリ金属3を電解液中に溶解させるのに使用され得る。アノードとして接続されて酸化剤として作用する電極22はカソードとして接続される他方の電極23の下流側に配置されるので、電解液に溶解したアルカリ金属3は、電極23においては還元できなくなるが、電解液出口27を通じてリザーバ容器20a、20bから流出する。
【0100】
この変形例において、他方の電極23は、デバイスの電解室内でアノードにおいて酸化される、電解液に溶解した相手物質を再度還元するのに使用可能である。この場合、相手物質は、アルカリ金属を酸化する手段としては作用しない。ただし、それは、一方では、電極22、23の間で、及び/又は他方では、電解室内のカソードとして作用する基板とアノードとの間で、電流の生成又は電荷の輸送に寄与し得る。
【0101】
図6は、アルカリ金属3で基板2を強化するデバイス1におけるリザーバ容器20a、20bのためのガス供給手段50の一例を示す。デバイス1は、図2に示すデバイスと実質的に同様に構成される。それらでは、ガス供給手段50のみが異なる。
【0102】
ガス供給手段50は、リザーバ容器20a、20bを流通する電解液4における酸化によって、そこに配されたアルカリ金属3を溶解するために、好ましくは、ガス5をリザーバ容器20a、20b内に導入するように設定される。したがって、ガス供給手段50は、アルカリ金属3を酸化する手段となる。
【0103】
図示する例では、ガス5は、電解室10内でアノード11において生成される。したがって、ガス供給手段50は、アノード11において生成されたガス5を収集するガス収集器51、例えば、ガス抽出システムを有すると好都合である。収集ガス5は、ガスライン52によってリザーバ容器20a、20bに供給可能である。任意選択的に、ガスポンプ(不図示)が、ガス5をガス収集器51からリザーバ容器20a、20bにポンプ供給するように設けられる。ガスライン52は、好ましくは、リザーバ容器20a、20b内に、特にアルカリ金属3の下方、例えば、その床の下方に流入し、それにより、ガスライン52を出るガス5はアルカリ金属3を流通することでそれを酸化することができる。
【0104】
図5に示すデバイス1の変形例において、ガスライン52は、リザーバ容器20a、20bの上流側でリザーバ容器20a、20bへの供給ラインにも流入し得る。この場合、ガス5は、電解液4に適宜有利に溶解され、又は電解液流に少なくとも付加されてそれとともにリザーバ容器20a、20b内に流入する。
【0105】
適宜有利には、ガス5は、アノード11において、電解液4の導電性塩、特に導電性塩の構成要素から得られる。例えば、アルカリ金属3としてリチウムが使用される場合、導電性塩としてLiClが考えられる。塩素ガス(Cl)は、アノード11において、電解液4中の塩化物アニオンから形成可能であり、それはガス収集器51によって収集されてガスライン52を介してリザーバ容器20a、20b内に導入され得る。ここでは、リザーバ容器20a、20bを流通する電解液4にリチウムイオンが溶解するようにリチウムが適宜有利に酸化される。リチウムが酸化されると、塩素ガスが還元され、さらに電解液4に溶解する。これは、幾つかの有利な効果を有する。アノード11において生成された健康に有害な侵食性塩素ガスが循環処理において再利用可能であり、廃棄される必要はない。したがって、塩素ガスは、全く又はあまり放出されない。同時に、LiCl導電性塩は「消費」されず又は少なくとも急速には消費されず、システムの腐食の危険が低減可能となる。
【0106】
LiClの代替物として、LiNOも、導電性塩として使用可能である。これに応じてその後に、亜硝酸ガスがアノード11において生成され、これは運用安全性に関して有利となり得る。
【0107】
図6に示すガス収集器51を有するガス供給手段50の代替物として、ガス収集器51を有さないガス供給手段も考えられる。この場合、ガス5はアルカリ金属3の酸化のためにリザーバ(不図示)から引き出され得る。必要に応じて、アルカリ金属3の酸化時に形成される反応生成物は、その後に適切な精製処理によって電解液4から除去されなければならない。
【0108】
図7は、保護物質4bの補助によってアルカリ金属で基板2の活性材料7bを強化する方法200及びデバイス1aの一例を示す。デバイス1aは、電解室10、及び電解室10に流体伝導態様で適宜有利に接続されたポンプ装置30を有する。電解室10は、アノード11を備え、カソード12として基板2を保持するように設定される。アノード11は、適宜有利には電流又は電圧源13の正極に接続される。他方で、電流又は電圧源13の負極は、基板2、すなわち、カソード12に接続可能であり又は接続され得る。
【0109】
電解室10は、電解液4で適宜有利に充填され又は充填可能である。電解液4は、ポンプ装置30の補助により、電解室10を通じて回路Kに誘導可能であり又は誘導される。したがって、電解液4に溶解したアルカリ金属は、基板2上に流れてそれを強化することができる。アルカリ金属、特にアルカリ金属のカチオンは、アルカリ金属の酸化によって、又は電解液4の導電性塩の構成要素として、例えば、外部リザーバ容器(図2参照)内で電解液4に溶解され得る。
【0110】
保護物質4bは、電解液4に溶解され又は適宜有利に溶解される。保護物質4bは、アノード11において好適な態様で酸化し、基板2上の1以上の所定箇所2aにおいてのみ還元される。1以上の所定箇所2aは、適宜有利には基板2が活性材料7bで覆われていない箇所である。言い換えると、活性材料7bは、1以上の所定箇所2aとは異なる少なくとも1つの箇所2bを画定する。
【0111】
例えば、活性材料7bで被覆された導体箔7a、例えば、銅箔を基板2が有する場合、1以上の所定箇所2aはこの点で「露出した」導体箔に対応する。
【0112】
1以上の所定箇所2aにおける保護物質4bを還元することによって、アルカリ金属3及びこれら同じ箇所2aにおける関連する堆積物の還元が防止され、又は少なくとも低減され得る。したがって、保護物質4bの酸化電位が、基板2の1以上の所定箇所2aにおけるアルカリ金属を溶解するのに充分となるが、1以上の箇所2aとは異なる少なくとも1つの箇所2bに埋め込まれたアルカリ金属を溶解しないように、保護物質4bが選択され、又は好ましくは選択される。代替的に又はさらに、保護物質4bと、基板2の1以上の所定箇所2aにおける、例えば「露出した」導体箔7a上における基板材料との間の酸化還元電位の差が、保護物質4bと、1以上の所定箇所2aとは異なる少なくとも1つの箇所2aにおける、例えば、活性材料7b上又は活性材料7b内での基板材料との間の酸化還元電位の差よりも大きくなるように、保護物質4bが選択され、又は好ましくは選択される。これは、保護物質4bが活性材料7bに埋め込まれることを防止可能とする。
【0113】
任意選択的に、保護物質4bによる酸化に起因して基板2に既に堆積され又は埋め込まれたアルカリ金属の望ましくない離脱又は放出が、酸化された保護物質4bとともにアノード11に沿って流れる電解液4の一部分のみを基板2に直接供給することによって回避可能となる。図2に示すように、電解液4の他の部分はリザーバ容器を介して供給されてもよく、リザーバ容器内では、電解液4に存在する保護物質4bは、それが基板上で還元して強化アルカリ金属をそこで放出できないように、還元される。ここで、保護物質4bもリザーバ容器内でアルカリ金属を酸化するために相手物質を形成すると、-かつ結果としてアルカリ金属を電解液に溶解させると特に有利である(図2及び対応する記載を参照)。
【0114】
保護物質4bとして-任意選択的に相手物質としても-使用され得る可能な物質は、メタロセン、ジヒドロフェナジン、チアントルレン、トリフェニルアミン、PFPTFBB、ベンゾフェノン、1,3-ベンゾジオキソール、1,3-ジ-tert-ブチル-2,5-ビス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンゼン、フェノチアジン及びTEMPO並びにこれらの物質の全ての誘導体を含む。
【符号の説明】
【0115】
1 デバイス
1a デバイス
2 基板
2a 所定箇所
2b 所定箇所とは異なる箇所
3 アルカリ金属
4 電解液
4a 相手物質
4b 保護物質
5 ガス
7a 導体箔
7b 活性材料
10 電解室
11 アノード
12 カソード
13 電流又は電圧源
20a 第1のリザーバ容器
20b 第2のリザーバ容器
21 フィルタ
22 電極
23 他方の電極
24 電流又は電圧源
25 セパレータ
26 電解液入口
27 電解液出口
28 第1の領域
29 第2の領域
30 ポンプ装置
40 制御装置
41 バルブ構成
50 ガス供給手段
51 ガス収集器
52 ガスライン
60 デバイス
61 アノード
62 ケージ
70 デバイス
71 アノード
100 方法
200 方法
S1 方法ステップ
S2 方法ステップ
K 回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】