(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】神経学的疾患を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240717BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240717BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240717BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240717BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240717BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240717BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P25/28
A61P25/00
A61P25/16
A61P27/06
A61P9/00
A61K39/395 D
A61P43/00 121
A61K45/00
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501831
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 CN2022105077
(87)【国際公開番号】W WO2023284710
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524014710
【氏名又は名称】サイノマブ バイオサイエンス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レオン, シュイ-オン
(72)【発明者】
【氏名】チョン, チホ
(72)【発明者】
【氏名】チュアン, チンイー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA21
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA24
4C084MA27
4C084MA31
4C084MA34
4C084MA35
4C084MA43
4C084MA44
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZC202
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4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
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4C085GG05
4C085GG06
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
ある特定の抗CD22抗体または抗原結合性断片を用いて、ベータ-アミロイド(Aβ)プラークの除去を促進する方法、神経炎症を低減させる方法、および神経学的障害(例えば、アルツハイマー病)を処置する方法が、本明細書で提供される。例示的な抗体、その特徴、およびさらなる治療的抗体についてスクリーニングする方法もまた、本明細書に記載される。本発明は、毒性オリゴマー性Aβ1-42が、ヒトミクログリア上で発現されるCD22に結合する、およびある特定の抗CD22抗体が、CD22の内在化を誘導することによってAβプラークの除去を促進することができるという、本発明者らの驚くべき発見に基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベータ-アミロイド(Aβ)プラークの除去を促進することが必要な対象においてその除去を促進する方法であって、前記対象に、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与するステップを含み、前記抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法。
【請求項2】
神経炎症を低減させることが必要な対象において神経炎症を低減させる方法であって、前記対象に、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与するステップを含み、前記抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法。
【請求項3】
前記対象が、臨床的もしくはプレクリニカルアルツハイマー病、前駆アルツハイマー病、ダウン症候群、臨床的もしくはプレクリニカルアミロイド血管症(CAA)、パーキンソン病、多発梗塞性認知症、脳アミロイド血管症、緑内障、子癇前症、認知障害、記憶喪失、または血管中の病原性Aβペプチドによって引き起こされる血管障害を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Aβ関連疾患または障害を処置することが必要な対象においてそれを処置する方法であって、前記対象に、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与するステップを含み、前記抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法。
【請求項5】
神経炎症に関連する疾患または障害を処置することが必要な対象においてそれを処置する方法であって、前記対象に、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与するステップを含み、前記抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法。
【請求項6】
前記Aβ関連または神経炎症関連の疾患または障害が、臨床的もしくはプレクリニカルアルツハイマー病、前駆アルツハイマー病、ダウン症候群、臨床的もしくはプレクリニカルアミロイド血管症(CAA)、パーキンソン病、多発梗塞性認知症、脳アミロイド血管症、緑内障、子癇前症、認知障害、記憶喪失、または血管中の病原性Aβペプチドによって引き起こされる血管障害である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記Aβ関連疾患または障害がアルツハイマー病である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体または抗原結合性断片が、モノクローナル抗体または抗原結合性断片である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体または抗原結合性断片が、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体およびIgG4抗体からなる群から選択される抗体である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体がIgG1抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体または抗原結合性断片が、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFv、(scFv)
2、単一ドメイン抗体(sdAb)および重鎖抗体(HCAb)からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体または抗原結合性断片が、キメラ抗体もしくは抗原結合性断片、ヒト化抗体もしくは抗原結合性断片、またはヒト抗体もしくは抗原結合性断片である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体または抗原結合性断片が、ヒトCD22のCLLNFSCYGYPIQ(配列番号11)およびVFTRSELKFSPQWSHHGKIVTC(配列番号12)に特異的に結合する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体または抗原結合性断片が、それぞれ配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列を有するVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL);ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列を有するVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体または抗原結合性断片が、キメラ抗体または抗原結合性断片である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記キメラ抗体または抗原結合性断片の前記VLおよびVHが、それぞれ配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記キメラ抗体または抗原結合性断片がSM03である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体または抗原結合性断片が、ヒト抗体または抗原結合性断片である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
ヒト化抗体または抗原結合性断片の前記VLおよびVHが、それぞれ配列番号9および配列番号10のアミノ酸配列を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒト化抗体または抗原結合性断片がSM06である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体または抗原結合性断片が、静脈内、筋肉内、皮下、頭蓋内、くも膜下腔内、脳室内、腹腔内、鼻腔内、非経口、外用または皮内投与される、請求項1から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記抗体または抗原結合性断片が、静脈内または皮下投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体または抗原結合性断片が、前記対象の体重1kg当たり1~50mgの範囲内の治療有効量で投与される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記治療有効量が、前記対象の体重1kg当たり約1、約2、約3、約5、約10、約15または約30mgである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体または抗原結合性断片が、1用量当たり300~1,200mgの治療有効量で投与される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体または抗原結合性断片が、2週間に1回または月に1回投与される、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体または抗原結合性断片が、複数の用量で投与される、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体または抗原結合性断片が、少なくとも3か月間、少なくとも6か月間または少なくとも1年間の期間にわたって複数の用量で投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体または抗原結合性断片が、第2の治療剤と組み合わせて投与される、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の治療剤が、抗ベータ-アミロイド抗体、抗CD33抗体、タウ凝集阻害剤、タウタンパク質モジュレーター、コリンエステラーゼ阻害剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト、β-セクレターゼ阻害剤またはインスリン感受性改善薬である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の治療剤が、アデュカヌマブ、ドナネマブ、ガンテネルマブ、レカネマブ、バピネウズマブおよびソラネズマブからなる群から選択される抗ベータ-アミロイド抗体である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の治療剤が、AL003、ゲムツズマブ、リンツズマブ、オゾガマイシン、バダスツキシマブタリリンおよびBI836858からなる群から選択される抗CD33抗体である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記対象がヒト対象である、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ミクログリア細胞によるAβの内在化を誘導する方法であって、前記ミクログリア細胞を、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の有効量と接触させるステップを含み、前記抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年7月13日出願の米国仮出願第63/221,261号に基づく優先権を主張する。
【0002】
1. 分野
本発明は、分子生物学および神経生物学、具体的には、アミロイド-βおよび/または神経炎症に関連する種々の神経学的障害、例えば、アルツハイマー病、アミロイドーシスおよびβ-アミロイド病理の処置における抗体の同定および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
2. 背景
アルツハイマー病(AD)は、アミロイド-β(Aβ)含有細胞外プラークによって特徴付けられる進行性神経変性障害である。この状態をもたらす原因は、一般には未知である。Aβプラークの除去は、AD患者において臨床的利益をもたらし得ることが示されている。しかし、脈管副作用、例えば、ARIA-EおよびARIA-Hに一般に関連するAβプラーク除去のために利用可能な治療選択肢は、ごく限定されている。したがって、Aβプラークをより効率的に除去する新規方法、およびより少ない副作用を有するADのための治療選択肢が、大いに必要とされている。本開示で提供される方法は、この要求を満たし、関連の利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
3. 要旨
ベータ-アミロイド(Aβ)プラークの除去を促進することが必要な対象においてその除去を促進する方法であって、対象に、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与するステップを含み、抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法が、本明細書で提供される。
【0005】
神経炎症を低減させることが必要な対象において神経炎症を低減させる方法であって、対象に、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与するステップを含み、抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法もまた、本明細書で提供される。
【0006】
本明細書で提供される方法の一部の実施形態では、対象は、臨床的もしくはプレクリニカルアルツハイマー病、前駆アルツハイマー病、ダウン症候群、臨床的もしくはプレクリニカルアミロイド血管症(CAA)、パーキンソン病、多発梗塞性認知症、脳アミロイド血管症、緑内障、子癇前症、認知障害、記憶喪失、または血管中の病原性Aβペプチドによって引き起こされる血管障害を有する。
【0007】
Aβ関連疾患または障害を処置することが必要な対象においてそれを処置する方法であって、対象に、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与するステップを含み、抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法もまた、本明細書で提供される。
【0008】
神経炎症に関連する疾患または障害を処置することが必要な対象においてそれを処置する方法であって、対象に、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与するステップを含み、抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法もまた、本明細書で提供される。
【0009】
一部の実施形態では、Aβ関連または神経炎症関連の疾患または障害は、臨床的もしくはプレクリニカルアルツハイマー病、前駆アルツハイマー病、ダウン症候群、臨床的もしくはプレクリニカルアミロイド血管症(CAA)、パーキンソン病、多発梗塞性認知症、脳アミロイド血管症、緑内障、子癇前症、認知障害、記憶喪失、または血管中の病原性Aβペプチドによって引き起こされる血管障害である。一部の実施形態では、Aβ関連疾患または障害は、アルツハイマー病である。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法において使用される抗体または抗原結合性断片は、モノクローナル抗体または抗原結合性断片である。
【0011】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗体または抗原結合性断片は、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体およびIgG4抗体からなる群から選択される抗体である。一部の実施形態では、抗体は、IgG1抗体である。
【0012】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗体または抗原結合性断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、(scFv)2、単一ドメイン抗体(sdAb)および重鎖抗体(HCAb)からなる群から選択される。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗体または抗原結合性断片は、キメラ抗体もしくは抗原結合性断片、ヒト化抗体もしくは抗原結合性断片、またはヒト抗体もしくは抗原結合性断片である。
【0014】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗体または抗原結合性断片は、ヒトCD22のCLLNFSCYGYPIQ(配列番号11)およびVFTRSELKFSPQWSHHGKIVTC(配列番号12)に特異的に結合する。
【0015】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗体または抗原結合性断片は、それぞれ配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列を有するVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL);ならびにそれぞれ配列番号4、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列を有するVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0016】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗体または抗原結合性断片は、キメラ抗体または抗原結合性断片である。一部の実施形態では、キメラ抗体または抗原結合性断片のVLおよびVHは、それぞれ配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、キメラ抗体または抗原結合性断片は、SM03である。
【0017】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗体または抗原結合性断片は、ヒト抗体または抗原結合性断片である。一部の実施形態では、ヒト化抗体または抗原結合性断片のVLおよびVHは、それぞれ配列番号9および配列番号10のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、ヒト化抗体または抗原結合性断片は、SM06である。
【0018】
本明細書で開示される方法の一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、静脈内、筋肉内、皮下、頭蓋内、くも膜下腔内、脳室内、腹腔内、鼻腔内、非経口、外用または皮内投与される。一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、静脈内投与される。一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、皮下投与される。
【0019】
本明細書で開示される方法の一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、対象の体重1kg当たり1~50mgの範囲内の治療有効量で投与される。一部の実施形態では、治療有効量は、対象の体重1kg当たり約1、約2、約3、約5、約10、約15または約30mgである。一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、1用量当たり300~1,200mgの治療有効量で投与される。一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、2週間に1回(biweekly)または月に1回投与される。一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、複数の用量で投与される。一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、少なくとも3か月間、少なくとも6か月間または少なくとも1年間の期間にわたって複数の用量で投与される。
【0020】
本明細書で開示される方法の一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、第2の治療剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、第2の治療剤は、抗ベータ-アミロイド抗体、抗CD33抗体、タウ凝集阻害剤、タウタンパク質モジュレーター、コリンエステラーゼ阻害剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト、β-セクレターゼ阻害剤またはインスリン感受性改善薬である。
【0021】
一部の実施形態では、第2の治療剤は、アデュカヌマブ、ドナネマブ、ガンテネルマブ、レカネマブ、バピネウズマブ(bapineuzumab)およびソラネズマブからなる群から選択される抗ベータ-アミロイド抗体である。
【0022】
一部の実施形態では、第2の治療剤は、AL003、ゲムツズマブ、リンツズマブ、オゾガマイシン、バダスツキシマブタリリン(vadastuximab talirine)およびBI836858からなる群から選択される抗CD33抗体である。
【0023】
本明細書で開示される方法の一部の実施形態では、対象は、ヒト対象である。
【0024】
ミクログリア細胞によるAβの内在化を誘導する方法であって、ミクログリア細胞を、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の有効量と接触させるステップを含み、抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法もまた、本明細書で提供される。
4. 図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、組換えCD22タンパク質へのAβの結合を示すOctet in vitro結合データを提供する。示されるように、Aβは、6×10
-8MのK
DでCD22に結合した。
【0026】
【
図2】
図2は、CD22発現細胞へのAβの結合を示すフローサイトメトリーデータを提供する。示されるように、HEK293細胞におけるヒトCD22の過剰発現は、HEK293細胞の表面上へのFITC-Aβの結合を増加させた。
【0027】
【
図3】
図3は、Aβ処置後のHMC-3細胞の免疫細胞化学PLA染色を提供する。示されるように、陽性シグナル(矢印)は、AβとHMC-3細胞の細胞表面上のCD22との間の物理的相互作用を示す。
【0028】
【
図4】
図4は、HMC3細胞におけるCD22の免疫蛍光染色を提供する。示されるように、抗CD22抗体SM03の処置は、CD22の迅速な内在化を誘導した。
【0029】
【
図5】
図5は、抗CD22抗体の内在化を示す共焦点データを提供する。示されるように、FITC-SM03は、HMC3細胞に添加された後30分以内に内在化された。
【0030】
【
図6】
図6は、HMC-3細胞上での、種々の抗CD22抗体によって誘導されたCD22内在化の速度についてのフローサイトメトリーデータを提供する。示されるように、SM03およびSM06は、最も高い速度の内在化を誘導した。
【0031】
【
図7】
図7は、Aβの内在化を示すフローサイトメトリーデータを提供する。示されるように、SM03およびSM06による処置は各々、FITC-Aβのファゴサイトーシスを増強した。
【0032】
【
図8】
図8は、NFκBシグナル伝達を測定するルシフェラーゼアッセイからのデータを提供する。示されるように、抗CD22抗体SM03 Fabの処置は、HMC-3細胞におけるNFκBシグナル伝達を低減させた。
【0033】
【
図9】
図9は、IL-6分泌を測定するELISAからのデータを提供する。示されるように、抗CD22抗体SM03 Fabの処置は、HMC-細胞によるIL-6分泌を低減させた。
【0034】
【
図10】
図10は、HMC-3細胞上の2,6-シアル酸トランス結合の免疫細胞化学染色を提供する。示されるように、SM03およびSM06は、HMC-3細胞における2,6-シアル酸プローブのトランス結合を促進した。
【発明を実施するための形態】
【0035】
5. 詳細な説明
アルツハイマー病(AD)は、アミロイド-β(Aβ)含有細胞外プラークによって特徴付けられる進行性神経変性障害である。有効な治療選択肢は、なおも大いに必要とされている。毒性オリゴマー性Aβ1-42が、ヒトミクログリア上で発現されるCD22に結合する、およびある特定の抗CD22抗体が、CD22の内在化を誘導することによってAβプラークの除去を促進することができるという、本発明者らの驚くべき発見が、本明細書で開示される。さらに、本明細書で開示される抗CD22抗体は、中枢神経系(CNS)における自己免疫を抑制して、さらなる治療利益を提供することもできることが見出された。したがって、一部の実施形態では、CD22媒介性機構を介して、Aβ蓄積および神経炎症を低減させる方法、ならびに関連の疾患または障害(例えば、AD)を処置する方法が、本明細書で提供される。
【0036】
認知症は、世界中で、2010年の5000万人から、2050年までには1億1300万人まで増加すると推定される。ADは、認知症の主要な原因であり、他の神経変性および脳脊髄病理と合併する場合が多い。神経病理学的特色は、明らかな認知症状の15~20年前に始まる。ADを有する個体は、それらの正常なベースライン認知能力から、プレクリニカルステージの僅かな変化を介して、前駆ADと呼ばれる脳機能不全の明らかな症状へと、そして最終的には、失認のせいで以前には自力で実施していた日常生活活動(ADL)を実施する能力を最終的に損なうAD認知症へと進行する。ADのプレクリニカルステージは、認知障害の臨床的診断が検討される前に生じるステージとみなされる場合が多い。AD認知症は、分子、細胞およびコネクトームレベルでの変化を包含するシナプス機能不全疾患である。AD患者の臨床的徴候には、健忘症状または非健忘症状を伴う認知症が含まれる。これは、言語、視空間処理および実行機能不全を伴う場合が多い(Scharre, Practical Neurology (2019);Dubois et al., Alzheimers Dement (2016), 12(3): 292-323)。ADの神経病理学的ホールマークは、過剰な神経炎症、細胞外Aβ含有プラークの蓄積、および高リン酸化されたタウタンパク質によって特徴付けられる。Aβプラークは、皮質および海馬領域に幅広く存在し、ニューロン喪失の誘発を介して神経回路網の破壊を引き起こし、ミクログリアを介した神経炎症の促進を引き起こす。
【0037】
Aβは、ニューロン表面膜中で富化される膜貫通タンパク質であるアミロイド前駆体タンパク質によって誘導される。生理学的に、これは、α-セクレターゼによって、後にγ-セクレターゼによって切断されて、APPsαを形成する。これは、カルシウム流およびカリウムチャネルをモジュレートすることを介して、シナプス強度の調節において機能する。アミロイド形成経路では、Aβは、β-セクレターゼによって、引き続いてγ-セクレターゼによって切断されて、Aβ1-42を形成する。Aβ1-42は、β-シートコンフォメーションでミスフォールドし、毒性オリゴマー性形態へと凝集する。アミロイドカスケード仮説によれば、毒性オリゴマー性Aβ1-42は、神経毒性および認知症をもたらすプラークへと凝集する。オリゴマー性Aβ1-42は、代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体、ならびに他のニューロン受容体、例えば、α-7ニコチン性アセチルコリン受容体およびインスリン受容体に直接結合して、シナプス強度および樹状突起棘の形態学における病理学的変化を誘導する。オリゴマー性Aβ1-42はまた、パターン認識受容体、即ち、Toll様受容体(TLR)、Nod様受容体(NLR)、RIG様受容体(RLR)、AIM2様受容体(ALR)を介してミクログリア細胞を刺激して、神経炎症を誘発することができる。Aβ1-42は、ミクログリアによって放出される炎症促進性サイトカイン、即ち、IL-1β、IL-8およびTNFαを誘導する。また、これは、Aβ1-42のさらなる凝集の核生成のためのASCスペック(speck)タンパク質(カスパーゼ-1動員ドメインを含有するアポトーシス関連スペック様タンパク質)を分泌するように、NLRP3インフラマソームカスケードを活性化する。
【0038】
毒性オリゴマー性Aβのクリアランスは、AD患者において臨床的利益を与えると提唱されている。2021年の時点で、第III相にある17種の疾患改変治療薬のうちで、そのうち29%が、それらの作用機構(MOA)としてAβを標的にする。アデュカヌマブ、ドナネマブ、ガンテネルマブ、レカネマブ、バピネウズマブおよびソラネズマブを含む抗Aβ抗体は、AβのFc受容体媒介性ファゴサイトーシスおよび非Fc受容体媒介性クリアランスを介して、Aβの種々の毒性形態を標的にする。
【0039】
アデュカヌマブは、Aβの可溶性オリゴマーおよび不溶性細線維を選択的に標的にするIgG1 mAbである。アデュカヌマブは、アミノ酸3~6に結合し、モノマー性形態ではなく、凝集したAβ上のコンフォメーションエピトープを認識する。Aβ凝集物への抗体の結合は、Fcガンマ受容体媒介性ファゴサイトーシスによるクリアランスを誘発し、AD患者において神経回路網のカルシウム恒常性を回復させる。臨床研究がアミロイドプラークの低減を一貫して示したので、アデュカヌマブは、ADの処置のために2021年6月にFDAによって承認された。
【0040】
ADに加えて、Aβの異常な蓄積に関連する他の疾患または障害には、例えば、ダウン症候群、臨床的もしくはプレクリニカルアミロイド血管症(CAA)、パーキンソン病、多発梗塞性認知症、脳アミロイド血管症、緑内障、子癇前症、認知障害、記憶喪失、または血管中の病原性Aβペプチドによって引き起こされる血管障害が含まれる。
【0041】
本開示をさらに記載する前に、本開示が本明細書に示される特定の実施形態に限定されないことを理解すべきであり、本明細書で使用される専門用語が、特定の実施形態を記載することを目的としており、限定を意図しないこともまた理解すべきである。
【0042】
本明細書で他に定義しない限り、本開示において使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有するものとする。さらに、文脈が他を要求しない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションと併せて使用される命名法、ならびにそれらの技法は、当分野で周知であり一般に使用されるものである。
【0043】
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」実体は、その実体のうちの1つまたは複数を指し、例えば、「1つの(a)ベクター」は、1つまたは複数のベクターを示すと理解される。
【0044】
用語「および/または」は、本明細書で使用される場合、他方を伴うかまたは伴わない、2つの特定された特色または成分の各々の具体的な開示として解釈すべきである。したがって、用語「および/または」は、本明細書で「Aおよび/またはB」などの語句において使用される場合、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)および「B」(単独)を含む意図である。同様に、用語「および/または」は、「A、Bおよび/またはC」などの語句において使用される場合、以下の態様の各々を包含する意図である:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0045】
範囲:本開示を通じて、本発明の種々の態様が、範囲形式で示され得る。範囲形式での記載は、単に簡便さおよび簡潔さのために過ぎず、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解すべきである。したがって、範囲の記載は、全ての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると解釈すべきである。例えば、範囲の記載、例えば、1~6は、部分範囲、例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など、ならびにその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3および6を具体的に開示していると解釈すべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0046】
例示的な遺伝子およびポリペプチドは、GenBank番号、GI番号および/または配列番号を参照して本明細書に記載される。当業者は、GenBank(ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)およびEMBL(embl.org/)を含むがこれらに限定されない配列供給源への参照によって、相同な配列を容易に同定することができることが理解される。
5.1 Aβクリアランスおよび神経炎症低減
【0047】
CD22は、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属するB細胞に制限される抗原である。CD22は、シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン(シグレック)としても公知の、I型膜貫通シアロ糖タンパク質である。ヒトCD22は、以下の構造に特異的に結合する:造血細胞、肝臓細胞、肺上皮細胞、脾索(spleenic cord)および脾髄(spleenic follicles)、回腸ストーマ(stoma)、心臓間質、血管、エクリン汗腺における皮膚上皮細胞分泌、結腸間質細胞、肝臓類洞および間質細胞、ならびに中枢神経系(CNS)中の細胞、例えば、脳白質中のミクログリア細胞上で発現されることが公知のN-アセチルノイラミン酸α(2-6)ガラクトース(NeuAc-α(2-6)Gal)(Gagneux et al., Journal of Biological Chemistry (2003), 278(48):48245-50;Safaiyan et al., Neuron (2021), 109(7):1100-17.e10)。CD22は、同じ細胞上(シス-結合)または異なる細胞上(トランス-結合)のいずれかに分布するその特異的リガンドに結合する。CD22のシス-結合は、隣り合う分子間で一般に見出され、このとき、CD22分子のグリカン結合部位は、同じ細胞上の別のCD22または糖タンパク質のグリカン分子にライゲーションされて、ホモ-オリゴマーまたはホモ-マルチマーを形成する。CD22のシス-結合は、分子に対してマスキング効果を発揮して、シグレックが細胞-細胞ライゲーション(トランス-結合)を形成することを防止することが実証されている。休止B細胞では、CD22は、それ自体に対する卓越したシス-リガンドであり、CD22ホモ-オリゴマーを形成する。CD22のトランス-結合は、阻害性の免疫学的シグナルを惹起することを介した免疫寛容のために必要とされる最大阻害応答を発揮するためのシグレックとB細胞受容体(BCR)との物理的会合を生じる(Pessutto et al., 1987. J. Immunol. 138:98-103;Doody et al. 1995. Science 269:242-344;Lanoue et al. 2002. Eur. J. Immunol. 32:348-355;Courtney et al. 2009. PNAS 106:2500-2505)。その例示的なアミノ酸配列を含む、ヒトCD22についてのさらなる情報は、公的データベース、例えば、UniProt(UniProt KB/Swiss-Prot ID:P20273)およびGENBANK(NCBI Ref.NP_001172028.1、NP_001172029.1、NP_001172030.1、NP_001265346.1、NP_001762.2)において見出すことができる。例示的な配列は、以下にも提供される。
【化1】
【化2】
【0048】
CD22は、CNSにおける主要な抗原提示細胞であるミクログリア細胞上で高度に発現される。提示された抗原(例えば、Aβまたは他の自己抗原)は、IL-10の分泌を介してミクログリアの活性化を弱める浸潤性調節性T細胞によって認識され得る。ある特定の抗CD22抗体が、ヒトミクログリアにおいてCD22の内在化を誘導できることが、本開示の発明者らによって発見された。CD22がオリゴマー性Aβ1-42に結合すること、およびCD22の内在化が、CD22結合したAβ1-42のファゴサイトーシスならびに可溶性Aβのマクロピノサイトーシスの両方を介して、Aβのクリアランスを促進することもまた見出された。したがって、一部の実施形態では、本明細書で開示される抗CD22抗体を使用してAβの除去を促進する方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗CD22抗体を使用してAβ関連疾患または障害を処置する方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、Aβ関連疾患または障害疾患は、ADである。
【0049】
本明細書で使用される場合、当分野で理解されるように、CD22の「内在化」は、細胞が陥入しCD22分子を飲み込むプロセスである、CD22のエンドサイトーシスを指す。3つの型のエンドサイトーシスプロセスが存在する:ピノサイトーシス、ファゴサイトーシスおよび受容体媒介性エンドサイトーシス。ピノサイトーシスは、「細胞飲み作用(cell-drinking)」とも呼ばれる、細胞が陥入のプロセスを介して細胞中に少量の細胞外流体を(存在し得る小さい粒子と共に)飲み込むプロセスである。ファゴサイトーシスは、比較的大きい分子または生物(例えば、細菌細胞)が細胞によって飲み込まれるプロセスである。受容体媒介性エンドサイトーシスは、陥入のプロセスならびにクラスリン-コートとして公知のタンパク質被覆層の形成を開始させる、材料が細胞膜の受容体タンパク質上に直接結合するプロセスである。受容体媒介性エンドサイトーシスにおいて形成される小胞は、このクラスリンタンパク質コーティングを含有する。細胞膜上のCD22は、構成的なクラスリン媒介性エンドサイトーシスを介して内在化される。エンドソーム区画に入ると、低pH環境が、その特異的リガンドへの結合(例えば、シスでのCD22結合)を解放し、遊離CD22は、シス-またはトランス-リガンド結合のために細胞表面に戻る。
【0050】
ADに対する現行の抗Aβ抗体治療は、アミロイド負荷を低減させるためにFcγR媒介性ファゴサイトーシスに大きく依存しており、所望されない副作用に関連する。具体的には、磁気共鳴画像法(MRI)異常、例えば、「血管原性浮腫」(VE)および微小出血(mH)を示すシグナル変化が、アミロイド改変治療剤(抗Aβ抗体)を投与した患者において、用量依存的様式で観察されている。アミロイド関連画像異常(ARIA)が、血管原性浮腫(ARIA-E)ならびに微小出血およびヘモジデリン沈着(ARIA-H)を記載するために、Alzheimer’s Association Research Roundtable Workgroupによって提案されている。ARIA-Eは、炎症によって主に引き起こされ、細線維形態のAβに結合するmAbに緊密に結び付けられている。ミクログリアにおけるFcγR媒介性炎症は、主要な役割を担い得る。例えば、FcγR誘導される炎症促進性サイトカイン放出によって媒介される炎症は、脈管完全性に対する損傷を悪化させる。Aβの全ての形態を標的にするヒト化IgG4抗体であるクレネズマブ(Crenzumab)は、より少ないARIA-E事象に関連するが、それは、IgG4 Fc領域が、例えば、IgG1 Fcと比較して、ミクログリアのFcγRへの会合を低減させるからである。
【0051】
このように、本明細書で提供される抗CD22抗体は、高度に効率的なだけでなく、ARIA-Eおよび/またはARIA-Hなどの脈管副作用の低減にも関連する、Aβクリアランスの新規機構を提供する。Aβ標的化抗体とは異なり、本明細書で開示される抗CD22抗体は、治療的抗体とFcγRとの架橋結合が関与しないCD22内在化を介してAβクリアランスを促進し、それにより、引き続く炎症促進性応答を回避する。したがって、低減された脈管副作用を有する効率的なAβクリアランスの方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、脈管副作用を引き起こさない。
【0052】
本明細書で開示される抗CD22抗体(例えば、SM03またはSM06)は、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する。本明細書で開示される抗CD22抗体は、B細胞またはミクログリア細胞の表面上のCD22のシス-結合を破壊すること、ならびに表面CD22の内在化を加速させることによって、CD22のシス-トランス変換を促進する。CD22分子が、ホモ-クラスターのシス-結合を破壊する抗体と共に内在化される場合、CD22分子は、抗体と共に細胞表面にリサイクルされ、ここで、抗体は、さらなるシス-結合を立体的に妨害し、それにより、リサイクルされたCD22のトランス-結合を促進する。このように、本明細書で開示される抗CD22抗体はまた、B細胞、B細胞由来細胞系およびミクログリア上のCD22のシス-結合を破壊すること、ならびに自己組織の2,6-シアル酸結合のシス-トランス変換を促進することによって、中枢免疫系および末梢免疫系の両方において免疫寛容を促進し得、これが、自己組織の免疫寛容の再獲得を可能にし、炎症促進性サイトカイン放出を弱める。CD22のニューロン2,6-シアル酸へのトランス-結合を促進することによって、本明細書で開示される抗CD22抗体は、シナプスのファゴサイトーシスおよびニューロン死を阻害するだけでなく、ミクログリア細胞におけるNF-κBシグナル伝達およびインターロイキン-6(IL-6)分泌を抑制する。したがって、本明細書で開示される方法は、神経炎症を低減させるさらなる治療利益を有する。したがって、一部の実施形態では、本明細書で開示される抗CD22抗体を使用して神経炎症を低減させる方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗CD22抗体を使用して神経炎症関連疾患または障害を処置する方法が、本明細書で提供される。
【0053】
Aβプラークの除去を促進することが必要な対象においてそれを促進する方法であって、対象に、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与するステップを含み、抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法が、本明細書で提供される。Aβ関連疾患または障害を処置することが必要な対象においてそれを処置する方法であって、対象に、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与するステップを含み、抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法もまた、本明細書で提供される。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトCD22に特異的に結合する。一部の実施形態では、Aβ関連疾患または障害は、ADである。一部の実施形態では、Aβ関連疾患または障害は、プレクリニカルADである。
【0054】
一部の実施形態では、Aβプラークを除去するための、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、Aβプラークの除去のための医薬の調製のための、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、Aβ関連疾患または障害の処置における、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、Aβ関連疾患または障害の処置のための医薬の調製のための、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用が、本明細書で提供される。上記使用において、抗体または抗原結合性断片は、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する。一部の実施形態では、Aβ関連疾患または障害は、ADである。一部の実施形態では、Aβ関連疾患または障害は、プレクリニカルADである。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトCD22に特異的に結合する。
【0055】
本明細書で開示されるCD22抗体の処置により、Aβ処置されたミクログリア細胞溶解物のELISAを使用して測定した場合、Aβの内在化の速度は、5.86×10-6pg/s/細胞に達した(データ示さず)。本明細書で提供される使用または方法の一部の実施形態では、Aβは、5.86×10-6pg/s/細胞の速度で除去される。
【0056】
本明細書で提供される方法は、Aβ関連疾患または障害を処置することができる。Aβ関連疾患または障害は、臨床的もしくはプレクリニカルAD、前駆AD、ダウン症候群、臨床的もしくはプレクリニカルアミロイド血管症(CAA)、パーキンソン病、多発梗塞性認知症、脳アミロイド血管症、緑内障、子癇前症、認知障害、記憶喪失、または血管中の病原性Aβペプチドによって引き起こされる血管障害であり得る。
【0057】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、ADを処置するために使用され得る。上記され、当分野で周知のように、オリゴマー性Aβの除去は、ADにおいて臨床的利益を提供することが公知である。ADは、臨床的AD、プレクリニカルADまたは前駆ADであり得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、臨床的ADを処置するために使用され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、プレクリニカルADを処置するために使用され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、前駆ADを処置するために使用され得る。
【0058】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、ダウン症候群を処置するために使用され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、臨床的もしくはプレクリニカルCAAを処置するために使用され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、パーキンソン病を処置するために使用され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、多発梗塞性認知症を処置するために使用され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、脳アミロイド血管症を処置するために使用され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、緑内障を処置するために使用され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、子癇前症を処置するために使用され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、認知障害を処置するために使用され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、記憶喪失を処置するために使用され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、血管中の病原性Aβペプチドによって引き起こされる血管障害を処置するために使用され得る。
【0059】
神経炎症を低減させることが必要な対象において神経炎症を低減させる方法であって、対象に、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与するステップを含み、抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法もまた、本明細書で提供される。神経炎症に関連する疾患または障害を処置することが必要な対象においてそれを処置する方法であって、対象に、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与するステップを含み、抗体または抗原結合性断片が、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、方法もまた、本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、シナプスファゴサイトーシスおよびニューロン死を予防する。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、シナプスファゴサイトーシスおよびニューロン死を、少なくとも20%、少なくとも30、少なくとも40%、少なくとも50%を超えて、ならびに少なくとも60%を超えて、予防する。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、シナプスファゴサイトーシスおよびニューロン死を少なくとも50%予防する。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトCD22に特異的に結合する。
【0060】
一部の実施形態では、神経炎症を低減するための、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、神経炎症の低減のための医薬の調製のための、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、神経炎症に関連する疾患または障害の処置における、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、神経炎症に関連する疾患または障害の処置のための医薬の調製のための、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用が、本明細書で提供される。上記使用において、抗体または抗原結合性断片は、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトCD22に特異的に結合する。
【0061】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、CD22のシス-トランス変換を促進する。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、CD22の内在化を誘導する。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、CD22のシス-トランス変換を促進し、CD22の内在化を誘導する。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」およびその文法的等価物は、疾患もしくは状態、または疾患もしくは状態を有する対象に関連して、処置されている疾患または障害に関連する症状、症状の重症度および/または症状の頻度を抑制する、排除する、低減させる、および/または寛解させる作用を指す。例えば、ADに言及して使用される場合、用語「処置する」およびその文法的等価物は、(a)Aβプラークの量を低減させること、もしくは病的Aβの蓄積の速度を緩徐化すること、または(b)ADに関連する1つもしくは複数の症状、例えば、認知症もしくは認知障害を遅延させる、寛解させる、もしくは最小化すること、を含むがこれらに限定されない、疾患の重症度を低減させる作用、または疾患の進行を遅らせるもしくは緩徐化する作用を指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「投与する」およびその文法的等価物は、本明細書に記載されるまたはさもなくば当分野で公知の方法によって、治療薬または医薬組成物を対象の身体に送達する作用または送達されるようにする作用を指す。治療薬は、化合物、ポリペプチドまたは細胞であり得る。治療薬または医薬組成物を投与することは、対象の身体中に送達される治療薬または医薬組成物を処方することを含む。投与の例示的な形態には、経口剤形、例えば、錠剤、カプセル剤、シロップ、懸濁物;注射可能な剤形、例えば、静脈内(IV)、筋肉内(IM)または腹腔内(IP);クリーム、ゼリー、粉末またはパッチを含む皮下(SC)、経皮剤形;頬側剤形;吸入粉末、スプレー、懸濁物、および直腸坐剤が含まれる。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」、「治療有効量」およびそれらの文法的等価物は、単独でまたは医薬組成物の一部としてのいずれかの、および単一用量でまたは一連の用量の一部としてかのいずれかの、対象に投与された場合に疾患、障害または状態の任意の症状、態様または特徴に対する任意の検出可能な正の効果を有することが可能な量での、対象への薬剤の投与を指す。治療有効量は、関連する生理的効果を測定することによって、確定され得る。必要とされる正確な量は、対象の年齢、体重および全身状態、処置されている状態の重症度、臨床医の判断などに依存して、対象毎に変動する。治療有効量はまた、治療的に有益な効果が治療剤の任意の毒性のまたは有害な効果を上回るような量である。任意の個々の例における適切な「有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重などの因子に従って変動し得、慣用的な実験を使用して当業者によって決定され得る。「予防有効量」は、所望の予防結果、例えば、疾患または障害の開始の遅延または予防を達成するために必要な投薬量でのおよび必要な期間にわたる、有効な量を指す。典型的には、予防用量は、疾患のより早期のステージの前またはその時点で対象において使用されるので、予防有効量は一般に、治療有効量よりも少ない。
【0065】
用語「対象」は、本明細書で使用される場合、特定の処置のレシピエントである、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、げっ歯類などを含むがこれらに限定されない任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。対象は、ヒトであり得る。対象は、特定の疾患を有する患者であり得る。
5.2 CD22抗体
【0066】
上のセクションに記載されるように、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の方法および使用が、本明細書で提供される。用語「抗体」およびその文法的等価物は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの抗原結合部位を介して、標的、例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、または上述のいずれかの組合せを認識しそれに特異的に結合する免疫グロブリン分子を指し、抗原結合部位は通常、免疫グロブリン分子の可変領域内にある。本明細書で使用される場合、この用語は、抗体が所望の生物活性を示す限り、無傷ポリクローナル抗体、無傷モノクローナル抗体、単一ドメイン抗体(sdAb;例えば、ラクダ科動物抗体、アルパカ抗体)、単鎖Fv(scFv)抗体、重鎖抗体(HCAb)、軽鎖抗体(LCAb)、多特異性抗体、二特異性抗体、単一特異性抗体、一価抗体、および抗原結合部位を含む任意の他の改変された免疫グロブリン分子(例えば、二重可変ドメイン免疫グロブリン分子)を包含する。抗体には、マウス抗体、ウサギ抗体、ラクダ抗体、霊長類抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体もまた含まれるがこれらに限定されない。抗体は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれるそれらの重鎖定常ドメインの正体に基づいて、免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、またはそのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)のうちのいずれかであり得る。一部の実施形態では、抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含み得る。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書でHCVRまたはVHと短縮される)および重鎖定常領域から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でLCVRまたはVLと短縮される)および軽鎖定常領域から構成される。
【0067】
他に明示的に示されない限り、用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、無傷抗体の「抗原結合性断片」を含む。用語「抗原結合性断片」は、本明細書で使用される場合、無傷抗体の抗原決定可変領域である、無傷抗体の部分または断片を指す。抗原結合性断片の例には、Fab(ヒンジ領域なしのVL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片)、Fab’(ヒンジ領域で結合されたVL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片)、F(ab’)2(ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片)、Fd(VHおよびCH1ドメインからなる断片)、Fv(抗体の単一の腕のVLおよびVHドメインからなる断片)、直鎖抗体、単鎖抗体分子(例えば、組換え手段によって接続されたVLおよびVH領域を有する単一のポリペプチド鎖であるscFv)、重鎖抗体(HCAb)、軽鎖抗体(LCAb)、ジスルフィド連結されたscFv(dsscFv)、ディアボディ(diabody)(二価の二特異性抗体)、トリボディ(tribody)、テトラボディ(tetrabody)、ミニボディ(minibody)、二重可変ドメイン抗体(DVD)、単一可変ドメイン抗体(sdAbまたはdAb;例えば、ラクダ科動物抗体、アルパカ抗体)、および重鎖抗体の単一可変ドメイン(VHH)、ならびに抗体断片から形成される二特異性または多特異性抗体が含まれるがこれらに限定されない。「二特異性」抗体は、2つの異なる標的を認識しそれに特異的に結合する2つの異なる抗原結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結を含む種々の方法によって産生され得る。例えば、Songsivilai & Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315-321 (1990);Kostelny et al., J. Immunol. 148, 1547-1553 (1992)を参照されたい。
【0068】
抗体またはその抗原結合性断片は、抗体または抗原結合性断片と1つまたは複数の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合的または非共有結合的会合によって形成されるより大きい免疫接着(immunoadhesion)分子の一部であり得る。かかる免疫接着分子の例には、テトラマー性scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov et al. (1995) Human antibodies and Hybridomas 6:93-101)、ならびに二価およびビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチドおよびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov et al. (1994) Mol. Immunol. 31:1047-1058)が含まれる。抗原結合性断片、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片は、従来の技法、例えば、抗体全体のそれぞれパパインまたはペプシン消化を使用して、抗体全体から調製することができる。さらに、抗体、抗原結合性断片および免疫接着分子は、本明細書に記載されるように、標準的な組換えDNA技法を使用して得ることができる。
【0069】
用語「ヒト化抗体」は、本明細書で使用される場合、最低限の非ヒト配列を含有する、特定の免疫グロブリン鎖、キメラ免疫グロブリンまたはそれらの断片である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。典型的には、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリンである。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域残基は、非ヒト種由来の抗体中の対応する残基で置き換えられる。一部の例では、CDRの残基は、所望の特異性、親和性および/または結合能を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ラクダ)のCDR由来の残基によって置き換えられる。ヒト化抗体は、抗体特異性、親和性および/または結合能を精緻化および最適化するために、Fvフレームワーク領域中および/または置き換えられた非ヒト残基内のいずれかにおける、さらなる残基の置換によってさらに改変され得る。用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、ヒトによって産生される抗体、または当分野で公知の技法のいずれかを使用して作製される、ヒトによって産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。
【0070】
用語「重鎖」は、抗体に言及して使用される場合、アミノ末端部分が、約120~130またはそれよりも多くのアミノ酸の可変領域(VH)を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含む、約50~70kDaのポリペプチド鎖を指す。一部の実施形態では、重鎖定常領域は、3つのドメイン:CH1、CH2およびCH3から構成され、CH1ドメインとCH2ドメインとを接続する短い柔軟性のあるヒンジ領域が存在する。定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて、アルファ(a)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と呼ばれる5つの別個の型のうちの1つであり得る。別個の重鎖は、サイズが異なる:α、δおよびγは、およそ450アミノ酸を含有するが、μおよびεは、およそ550アミノ酸を含有する。軽鎖と組み合わされると、これらの別個の型の重鎖は、IgGの4つのサブクラス、即ち、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む、抗体の5つの周知のクラス:それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMを生じる。重鎖は、ヒト重鎖であり得る。
【0071】
用語「軽鎖」は、抗体に言及して使用される場合、アミノ末端部分が、約100~約110またはそれよりも多くのアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含む、約25kDaのポリペプチド鎖を指す。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。軽鎖のおおよその長さは、211~217アミノ酸である。定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)またはラムダ(λ)と呼ばれる2つの別個の型が存在する。軽鎖アミノ酸配列は、当分野で周知である。軽鎖は、ヒト軽鎖であり得る。
【0072】
用語「可変ドメイン」または「可変領域」は、軽鎖または重鎖のアミノ末端に一般に位置し、重鎖において約120~130アミノ酸の長さおよび軽鎖において約100~110アミノ酸の長さを有し、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性において使用される、抗体の軽鎖または重鎖の一部分を指す。可変ドメインは、異なる抗体間で配列が大きく異なる。配列における可変性は、CDRに集中するが、可変ドメイン中のあまり可変性でない部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。軽鎖および重鎖のCDRは、抗体と抗原との相互作用を主に担う。一部の実施形態では、各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序で整列された3つのCDRおよび4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本明細書で使用されるアミノ酸位置の番号付けは、Kabat et al. (1991) Sequences of proteins of immunological interest. (U.S. Department of Health and Human Services, Washington, D.C.) 5thed中にあるような、EU Indexに従う。
【0073】
CDRは、免疫グロブリン(Igまたは抗体)VHβ-シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2またはH3)のうちの1つ、または抗体VLβ-シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2またはL3)のうちの1つを指す。したがって、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在する可変領域配列である。CDR領域は、当業者に周知であり、種々の方法/システムによって定義されている。これらのシステムおよび/または定義は、数年間にわたって開発および精緻化されており、これには、Kabat、Chothia、IMGT、AbMおよびContactが含まれる。例えば、Kabatは、抗体可変(V)ドメイン内の最も超可変性の領域を定義する(Kabat et al, J. Biol. Chem. 252:6609-6616 (1977);Kabat, Adv. Prot. Chem. 32: 1-75 (1978))。Chothia定義は、構造的ループ領域の位置に基づき、CDR領域配列を、保存されたβ-シートフレームワークの一部ではない残基として定義し、したがって、異なるコンフォメーションを適合させることができる(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。両方の専門用語は、当分野で十分に認識されている。さらに、IMGTシステムは、可変領域の構造内の配列可変性および位置に基づく。AbM定義は、KabatとChothiaとの間の妥協策である。Contact定義は、入手可能な抗体結晶構造の分析に基づく。ソフトウェアプログラム(例えば、abYsis)が、抗体配列の分析およびCDRの決定のために、当業者に入手可能であり公知である。カノニカル抗体可変ドメイン内のCDRの位置は、多数の構造の比較によって決定されている(Al-Lazikani et al, J. Mol. Biol. 273:927-948 (1997);Morea et al, Methods 20:267-279 (2000))。超可変領域内の残基の数は、異なる抗体において変動するので、カノニカル位置と比較したさらなる残基は、カノニカル可変ドメイン番号付けスキームにおける残基番号の次に、a、b、cなどで慣習的に番号付けされる(Al-Lazikani et al.、上記(1997))。かかる命名法も同様に、当業者に周知である。
【0074】
例えば、Kabat(超可変性)またはChothia(構造的)指定のいずれかに従って定義されるCDRが、以下の表に示される。
【表5】
1残基番号付けは、Kabat et al., 上記の命名法に従う
2残基番号付けは、Chothia et al., 上記の命名法に従う
【0075】
1つまたは複数のCDRはまた、それをイムノアドヘシンにするために、共有結合的または非共有結合的のいずれかで分子中に取り込まれ得る。イムノアドヘシンは、より大きいポリペプチド鎖の一部としてCDR(複数可)を取り込み得、CDR(複数可)を別のポリペプチド鎖に共有結合的に連結し得、またはCDR(複数可)を非共有結合的に取り込み得る。CDRは、イムノアドヘシンを目的の特定の抗原に結合させる。
【0076】
用語「エピトープ」および「抗原決定基」は、抗体または抗原結合性断片が結合する標的分子の表面上の部位、例えば、抗原の表面上の限局化された領域を指すように本明細書で相互交換可能に使用される。標的分子は、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物または脂質を含み得る。免疫原活性を有するエピトープは、動物において免疫応答を惹起する標的分子の一部分である。抗原活性を有する標的分子のエピトープは、例えば、イムノアッセイによるものを含む当分野で周知の任意の方法によって決定されるように、抗体が結合する標的分子の一部分である。抗原性エピトープは、必ずしも免疫原性である必要はない。エピトープは、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなる場合が多く、特定の三次元的な構造的特徴ならびに特定の電荷特徴を有する。用語「エピトープ」は、線状エピトープおよびコンフォメーションエピトープを含む。エピトープに寄与する標的分子(例えば、ポリペプチド)の領域は、ポリペプチドの連続するアミノ酸であり得、またはエピトープは、標的分子の2つまたはそれよりも多くの不連続の領域に一緒に由来し得る。エピトープは、標的分子の三次元表面特色であってもなくてもよい。連続するアミノ酸から形成されるエピトープ(線状エピトープとも呼ばれる)は、タンパク質変性の際に典型的には保持されるが、三次フォールディングによって形成されるエピトープ(コンフォメーションエピトープとも呼ばれる)は、タンパク質変性の際に典型的には喪失される。エピトープは、典型的には、独自の空間的コンフォメーション中に、少なくとも3、より通常は、少なくとも5、6、7、または8~10アミノ酸を含む。
【0077】
用語「特異的に結合する」は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドまたは分子が、関連するタンパク質および無関係のタンパク質を含む代替的物質とよりも、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、より高い親和性で、または上記の一部の組合せで、エピトープ、タンパク質または標的分子と相互作用することを意味する。標的分子(例えば、抗原)に特異的に結合する結合部分(例えば、抗体)は、例えば、イムノアッセイ、ELISA、バイオレイヤー干渉法(「BLI」)、SPR(例えば、Biacore)、または当業者に公知の他の技法によって同定され得る。典型的には、特異的反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、バックグラウンドの10倍よりも大きくてもよい。例えば、抗体特異性に関する議論については、Paul, ed., 1989, Fundamental Immunology Second Edition, Raven Press, New York at pages 332-336を参照されたい。標的分子に特異的に結合する結合部分は、異なる分子に対するその親和性よりも高い親和性で標的分子に結合することができる。一部の実施形態では、標的分子に特異的に結合する結合部分は、異なる分子に対するその親和性よりも少なくとも20倍高い、少なくとも30倍高い、少なくとも40倍高い、少なくとも50倍高い、少なくとも60倍高い、少なくとも70倍高い、少なくとも80倍高い、少なくとも90倍高い、または少なくとも100倍高い親和性で、標的分子に結合することができる。一部の実施形態では、特定の標的分子に特異的に結合する結合部分は、本明細書に記載されるまたはさもなくば当分野で公知のアッセイを使用しては結合が検出できないような低い親和性で、異なる分子に結合する。一部の実施形態では、「特異的に結合する」は、例えば、結合部分が、約0.1mMまたはそれ未満のKDで分子標的に結合することを意味する。一部の実施形態では、「特異的に結合する」は、ポリペプチドまたは分子が、約10μMもしくはそれ未満または約1μMもしくはそれ未満のKDで標的に結合することを意味する。一部の実施形態では、「特異的に結合する」は、ポリペプチドまたは分子が、約0.1μMもしくはそれ未満、約0.01μMもしくはそれ未満、または約1nMもしくはそれ未満のKDで標的に結合することを意味する。異なる種における相同なタンパク質間の配列同一性に起因して、特異的結合は、1つよりも多くの種におけるタンパク質または標的を認識するポリペプチドまたは分子を含み得る。同様に、異なるタンパク質のポリペプチド配列のある特定の領域内の相同性に起因して、特異的結合は、1つよりも多くのタンパク質または標的を認識するポリペプチドまたは分子を含み得る。一部の実施形態では、第1の標的に特異的に結合する結合部分(例えば、抗体)は、第2の標的に特異的に結合してもしなくてもよいことが理解される。このように、「特異的結合」は、排他的結合、即ち、単一の標的への結合を必ずしも要求しない(排他的結合を含み得るが)。したがって、結合部分(例えば、抗体)は、一部の実施形態では、1つよりも多くの標的に特異的に結合することができる。例えば、抗体は、ある特定の例では、2つの同一な抗原結合部位を含み得、その各々が、2つまたはそれよりも多くのタンパク質上の同じエピトープに特異的に結合する。ある特定の代替的実施形態では、抗体は、二特異性であり得、異なる特異性を有する少なくとも2つの抗原結合部位を含み得る。
【0078】
用語「結合親和性」は、本明細書で使用される場合、一般に、結合部分と標的分子(例えば、抗原)との間の非共有結合的相互作用の総計の強度を指す。結合部分と標的分子との結合は、可逆的なプロセスであり、結合の親和性は、典型的には、平衡解離定数(KD)として報告される。KDは、解離速度(koffまたはkd)の会合速度(konまたはka)に対する比である。結合対のKDが低いほど、親和性は高い。KAは、平衡会合定数であり、これは、平衡解離定数の逆数、即ち、=1/KDでもある。抗体-抗原相互作用について、KDは、遊離抗体の濃度と遊離抗原の濃度との積の、抗体-抗原複合体の濃度に対する比、即ち、[抗原]×[抗体]/[抗原-抗体]として計算され得る。
【0079】
結合親和性を測定する種々の方法が当分野で公知であり、それらのいずれもが、本開示の目的のために使用され得る。具体的な事例的実施形態には、以下が含まれる。一部の実施形態では、「KD」または「KD値」は、当分野で公知のアッセイによって、例えば、結合アッセイによって、測定され得る。KDは、放射性標識された抗原結合アッセイ(RIA)で測定され得る(Chen, et al., (1999) J. Mol Biol 293:865-881)。KDまたはKD値は、例えば、Gatorシステム(Probe Life)またはOctet-96システム(Sartorius AG)を使用するバイオレイヤー干渉法(BLI)を使用することによっても測定され得る。KDまたはKD値は、BIAcoreシステム(例えば、Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、SwedenおよびPiscataway、NJ)を使用することによる表面プラズモン共鳴アッセイを使用することによっても測定され得る。
【0080】
用語「バリアント」は、特定の配列特色を有するタンパク質またはポリペプチド(「参照タンパク質」または「参照ポリペプチド」)に関して本明細書で使用される場合、参照タンパク質または参照ポリペプチドと比較して1つまたは複数(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5など)のアミノ酸置換、欠失および/または付加を有する異なるタンパク質またはポリペプチドを指す。アミノ酸配列に対する変化は、アミノ酸置換であり得る。アミノ酸配列に対する変化は、保存的アミノ酸置換であり得る。タンパク質またはポリペプチドの機能的断片または機能的バリアントは、参照タンパク質またはポリペプチドの基本的な構造的および機能的特性を維持する。
【0081】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」およびそれらの文法的等価物は、本明細書で相互交換可能に使用される場合、直鎖または分岐鎖であり得る、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。これは、非天然のもしくは改変されたアミノ酸を含み得、または非アミノ酸によって中断され得る。ポリペプチド、ペプチドまたはタンパク質はまた、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは改変で改変され得る。
【0082】
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」およびそれらの文法的等価物は、本明細書で相互交換可能に使用される場合、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、改変されたヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらのアナログ、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼによってポリマー中に取り込まれ得る任意の基質であり得る。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「コードする」およびその文法的等価物は、ヌクレオチド(即ち、rRNA、tRNAおよびmRNA)の規定された配列またはアミノ酸の規定された配列のいずれかおよびそれから生じる生物学的特性を有する生物学的プロセス中の他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として機能する、ポリヌクレオチドまたは核酸、例えば、遺伝子、cDNAまたはmRNA中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。したがって、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳がタンパク質を産生する場合、そのタンパク質をコードする。他に特定されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードする、全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列には、イントロンが含まれ得る。
【0084】
「単離された」ポリペプチド、ペプチド、タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または組成物は、天然に見出されない形態のポリペプチド、ペプチド、タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または組成物である。単離されたポリペプチド、ペプチド、タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または組成物には、天然に見出される形態ではもはや存在しない程度まで精製されたものが含まれる。一部の実施形態では、単離されたポリペプチド、ペプチド、タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または組成物は、実質的に純粋である。一部の実施形態では、単離されたポリペプチド、ペプチド、タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞または組成物は、他の細胞性材料および/または化学物質を実質的に含まない。
【0085】
用語「同一な」、パーセント「同一性」およびそれらの文法的等価物は、2つまたはそれよりも多くのポリヌクレオチドまたはポリペプチドに関して本明細書で使用される場合、いずれの保存的アミノ酸置換も配列同一性の一部とはみなさずに、最大の対応を求めて(必要に応じてギャップを導入して)比較されアラインされた場合に同じであるか、または同じであるヌクレオチドもしくはアミノ酸残基の特定されたパーセンテージを有する、2つまたはそれよりも多くの配列または部分配列を指す。パーセント同一性は、配列比較ソフトウェアもしくはアルゴリズムを使用して、または目視検査によって、測定され得る。アミノ酸またはヌクレオチド配列のアラインメントを得るために使用され得る種々のアルゴリズムおよびソフトウェアが、当分野で周知である。これらには、BLAST、ALIGN、Megalign、BestFit、GCG Wisconsin Package、およびそれらのバリアントを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、本明細書で提供される2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、実質的に同一であり、これは、配列比較アルゴリズムを使用してまたは目視検査によって測定される場合に、最大の対応を求めて比較されアラインされた場合に、それらが、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、一部の実施形態では、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有することを意味する。一部の実施形態では、同一性は、少なくとも約10残基、少なくとも約20残基、少なくとも約40~60残基、少なくとも約60~80残基長、またはそれらの間の任意の整数値であるアミノ酸配列の領域にわたって存在する。一部の実施形態では、同一性は、60~80残基よりも長い領域、例えば、少なくとも約80~100残基にわたって存在し、一部の実施形態では、配列は、比較されている配列、例えば、標的タンパク質または抗体のコード領域の全長にわたって実質的に同一である。一部の実施形態では、同一性は、少なくとも約10塩基、少なくとも約20塩基、少なくとも約40~60塩基、少なくとも約60~80塩基長、またはそれらの間の任意の整数値であるヌクレオチド配列の領域にわたって存在する。一部の実施形態では、同一性は、60~80塩基よりも長い領域、例えば、少なくとも約80~1000塩基またはそれよりも長い領域にわたって存在し、一部の実施形態では、配列は、比較されている配列、例えば、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の全長にわたって実質的に同一である。
【0086】
「保存的アミノ酸置換」は、本明細書で使用される場合、1つのアミノ酸残基が類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基で置き換えられた置換である。「保存的に類似の」アミノ酸または残基は、本明細書で使用される場合、類似の側鎖を有する非同一なアミノ酸残基を指す。塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ-分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当分野で定義されている。
【0087】
用語「ベクター」およびその文法的等価物は、本明細書で使用される場合、宿主細胞中に導入され得る遺伝子材料(例えば、ポリヌクレオチド配列)を運搬するために使用されるビヒクルを指し、宿主細胞中で、これは、複製および/または発現され得る。使用のために適用可能なベクターには、例えば、宿主細胞の染色体中への安定な組込みのために動作可能な選択配列またはマーカーを含み得る、発現ベクター、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、エピソームおよび人工染色体が含まれる。さらに、ベクターは、1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子および適切な発現制御配列を含み得る。含まれ得る選択可能なマーカー遺伝子は、例えば、抗生物質もしくは毒素に対する耐性を提供するか、栄養要求欠損を補完するか、または培養培地中にない重要な栄養素を供給する。発現制御配列には、当分野で周知の構成的および誘導性プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどが含まれ得る。2つまたはそれよりも多くのポリヌクレオチドが共発現される場合、両方のポリヌクレオチドが、例えば、単一の発現ベクター中または別々の発現ベクター中に挿入され得る。単一ベクター発現のために、コードするポリヌクレオチドは、1つの共通の発現制御配列に操作可能に連結され得る、または異なる発現制御配列、例えば、1つの誘導性プロモーターおよび1つの構成的プロモーターに連結され得る。宿主細胞中へのポリヌクレオチドの導入は、当分野で周知の方法を使用して確認され得る。ポリヌクレオチドが、所望の産物(例えば、抗CD22抗体または抗原結合性断片)を産生するのに十分な量で発現されることが当業者によって理解され、発現レベルが、当分野で周知の方法を使用して十分な発現を得るために最適化され得ることがさらに理解される。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」は、遺伝子材料、例えば、組換え発現ベクターが導入され得るまたは導入されている細胞を指す。宿主細胞には、外因性遺伝子材料が導入された対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫も含まれる。ある特定の改変は、突然変異または環境的影響のいずれかに起因して、続く生成において生じ得るので、かかる子孫は、親細胞と同一でなくてもよい。
【0089】
本明細書で使用される場合、当分野で理解されるように、「EC」は、薬剤(例えば、抗体)の有効濃度を意味し、用量-応答曲線において一般に使用される。薬剤の「効果」は、正の(活性化)効果または負の効果であり得る。用語「EC50」は、最大半量応答を与える活性薬剤(例えば、抗体)の濃度を指す。また本明細書で使用される場合、当分野で理解されるように、「IC」は、阻害効果を有する薬剤の濃度を意味し、これもまた、用量-応答曲線のために一般に使用される。用語「IC50」は、それが阻害する活性が半分低減される薬剤(例えば、抗体)の濃度を指す。
5.2.1 例示的なCD22抗体
【0090】
上のセクションに記載されるように、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の方法および使用が、本明細書で提供される。本明細書で提供される抗体および抗原結合性断片は、Aβ除去、神経炎症の低減、またはその両方において使用され得る。本明細書で提供される抗体および抗原結合性断片は、Aβおよび/または神経炎症に関連する疾患または障害の処置においても使用され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法において使用される抗体は、ヒトCD22に特異的に結合する。
【0091】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用され得る抗CD22抗体は、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgM抗体である。一部の実施形態では、抗体は、IgA抗体である。一部の実施形態では、抗体は、IgD抗体である。一部の実施形態では、抗体は、IgE抗体である。一部の実施形態では、抗体は、IgG抗体である。一部の実施形態では、抗体は、IgM抗体である。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体またはIgG4抗体であり得る。一部の実施形態では、抗体は、IgG1抗体である。一部の実施形態では、抗体は、IgG2抗体である。一部の実施形態では、抗体は、IgG3抗体である。一部の実施形態では、抗体は、IgG4抗体である。ある特定の実施形態では、抗体は、重鎖定常領域、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMもしくはIgD定常領域、またはグリコシル化部位および/もしくは改変されたグリコシル化部位におけるグリコフォームを有する上記定常領域のいずれかを含む。
【0092】
一部の実施形態では、抗CD22抗体の抗原結合性断片が、本明細書で開示される方法において使用される。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗原結合性断片は、単一ドメイン抗体(sdAb)、重鎖抗体(HCAb)、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、単鎖可変断片(scFv)または(scFv)2であり得る。一部の実施形態では、抗CD22抗体の抗原結合性断片は、単一ドメイン抗体(sdAb)である。一部の実施形態では、抗CD22抗体の抗原結合性断片は、重鎖抗体(HCAb)である。一部の実施形態では、抗CD22抗体の抗原結合性断片は、Fabである。一部の実施形態では、抗CD22抗体の抗原結合性断片は、Fab’である。一部の実施形態では、抗CD22抗体の抗原結合性断片は、F(ab’)2である。一部の実施形態では、抗CD22抗体の抗原結合性断片は、Fvである。一部の実施形態では、抗CD22抗体の抗原結合性断片は、scFvである。一部の実施形態では、抗CD22抗体の抗原結合性断片は、ジスルフィド連結されたscFv[(scFv)2]である。一部の実施形態では、抗CD22抗体の抗原結合性断片は、ディアボディ(dAb)である。
【0093】
一部の実施形態では、組換え抗CD22抗体または抗原結合性断片が、本明細書で開示される方法において使用される。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、モノクローナル抗体または抗原結合性断片を含む。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ポリクローナル抗体または抗原結合性断片を含む。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ラクダ科動物(例えば、ラクダ、ヒトコブラクダおよびラマ)抗体または抗原結合性断片を含む。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、キメラ抗体または抗原結合性断片を含む。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒト化抗体または抗原結合性断片を含む。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒト抗体または抗原結合性断片を含む。一部の実施形態では、抗CD22ヒト化scFvが、本明細書で提供される。一部の実施形態では、抗CD22ヒトヒト化Fabが、本明細書で提供される。
【0094】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、単離される。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、実質的に純粋である。
【0095】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、一価抗原結合部位を含む。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、単一特異性結合部位を含む。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、二価結合部位を含む。
【0096】
一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、代替的抗体を生成するために組換えDNA技術を使用することによって改変される。一部の実施形態では、マウスモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の定常ドメインは、キメラ抗体を生成するために、ヒト抗体の定常領域で置き換えられる。一部の実施形態では、定常領域は、モノクローナル抗体の所望の抗体断片を生成するために短縮または除去される。一部の実施形態では、可変領域(複数可)の部位特異的または高密度突然変異誘発が、モノクローナル抗体の特異性および/または親和性を最適化するために使用される。
【0097】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒト化抗体または抗原結合性断片である。ヒト化抗体を生成するための種々の方法が、当分野で公知である。ヒト化抗体との高親和性結合を達成するための方法は、当分野で公知である。かかる方法の非限定的な例は、可変領域の高頻度突然変異およびかかる高親和性抗体(親和性成熟)を発現する細胞の選択である。ディスプレイライブラリーの使用に加えて、特定された抗原(例えば、組換えCD22またはそのエピトープ)が、非ヒト動物、例えば、げっ歯類を免疫化するために使用され得る。ある特定の実施形態では、げっ歯類抗原結合性断片(例えば、マウス抗原結合性断片)が、当分野で公知のおよび/または本明細書で開示される方法を使用して、生成および単離され得る。一部の実施形態では、マウスは、抗原(例えば、組換えCD22またはそのエピトープ)で免疫化され得る。
【0098】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒト抗体または抗原結合性断片である。ヒト抗体は、当分野で公知の種々の技法を使用して調製され得る。一部の実施形態では、ヒト抗体は、免疫化された不死化ヒトBリンパ球からin vitroで生成される。一部の実施形態では、ヒト抗体は、免疫化された個体から単離されたリンパ球から生成される。いずれの場合にも、標的抗原に対する抗体を産生する細胞が、生成および単離され得る。一部の実施形態では、ヒト抗体は、そのファージライブラリーがヒト抗体を発現する場合、ファージライブラリーから選択される。あるいは、ファージディスプレイ技術が、免疫化されていないドナー由来の免疫グロブリン可変領域遺伝子レパートリーからヒト抗体および抗体断片をin vitroで産生するために使用され得る。抗体ファージライブラリーの生成および使用のための技法は、当分野で周知である。抗体が同定されると、鎖シャッフリングおよび部位特異的突然変異誘発を含むがこれらに限定されない、当分野で公知の親和性成熟戦略が、より高い親和性のヒト抗体を生成するために使用され得る。一部の実施形態では、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するトランスジェニックマウスにおいて産生される。免疫化の際に、これらのマウスは、内因性免疫グロブリン産生の非存在下でフルレパートリーのヒト抗体を産生することが可能である。
【0099】
本明細書で定義される特定のCDR配列は、一般に、Kabat定義とChothia定義との組合せに基づく。しかし、特定の抗体の重鎖CDR(単数または複数)および/または軽鎖CDR(単数または複数)に対する言及は、当業者に公知の全てのCDR定義を包含することが理解される。本明細書で提供される方法において使用され得る抗CD22抗体または抗原結合性断片には、SM03およびSM06、ならびにそれらのバリエーションおよび派生物が含まれる。
【0100】
用語「SM03」は、ヒトCD22(hCD22)に対するキメラ抗体を指す。SM03の配列特色は、以下の表に提供される。SM03の構造的および機能的特色のさらなる記載は、例えば、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Yang et al. (2006), Chinese J New Drug 15(3):186-92;および中国特許第ZL03123054.7号において見出すことができる。
【0101】
用語「SM06」は、その潜在的な免疫原性を低減させるために再操作され、hCD22に対する親和性および特異性を示す、キメラ抗体SM03のフレームワークパッチまたはヒト化バージョンを指す。SM06の配列特色は、以下の表に提供される。SM06の構造的および機能的特色のさらなる記載は、例えば、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Liang et al. (2006) Chinese J New Drug 15(21):1832-36;中国特許第ZL01144894.6号ならびに米国特許第7,321,026号B2および同第7,338,659号B2において見出すことができる。
表1: SM03およびSM06のCDR配列
【表1】
表2: SM03およびSM06の可変領域
【表2】
【0102】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法において使用され得る抗CD22抗体または抗原結合性断片は、SM03/SM06の1つ、2つ、3つ、4つ、5つおよび/または6つのCDRを含む。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、表1からの1つ、2つおよび/または3つのVL CDRを含むVLを含む。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、表1からの1つ、2つおよび/または3つのVH CDRを含むVHを含む。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、表1からの1つ、2つおよび/または3つのVL CDRならびに1つ、2つおよび/または3つのVH CDRを含む。
【0103】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法において使用され得る抗体またはその抗原結合性断片は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1(VL CDR1);(2)配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2(VL CDR2);もしくは(3)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(VL CDR3)、を含む軽鎖可変領域(VL);またはVL CDR中に最大で約3つ、約5つ、約8つ、約10個、約12個もしくは約15個のアミノ酸置換、付加および/もしくは欠失を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、バリアントは、VL CDR中に約5つのアミノ酸置換、付加および/または欠失を有する。一部の実施形態では、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号2のアミノ酸配列を有するVL CDR2;および(3)配列番号3のアミノ酸配列を有するVL CDR3、を含むVL;またはVL CDR中に最大で約3つ、約5つ、約8つ、約10個、約12個もしくは約15個のアミノ酸置換、付加および/もしくは欠失を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、バリアントは、VL CDR中に最大で約5つのアミノ酸置換、付加および/または欠失を有する。
【0104】
一部の実施形態では、(1)配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1(VH CDR1);(2)配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2(VH CDR2);もしくは(3)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(VH CDR3)、を含む重鎖可変領域(VH);またはVH CDR中に最大で約3つ、約5つ、約8つ、約10個、約12個もしくは約15個のアミノ酸置換、付加および/もしくは欠失を有するそのバリアントを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、バリアントは、VH CDR中に最大で約5つのアミノ酸置換、付加および/または欠失を有する。一部の実施形態では、(1)配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR2;および(3)配列番号6のアミノ酸配列を有するVH CDR3、を含むVH;またはVH CDR中に最大で約3つ、約5つ、約8つ、約10個、約12個もしくは約15個のアミノ酸置換、付加および/もしくは欠失を有するそのバリアントを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、バリアントは、VH CDR中に最大で約5つのアミノ酸置換、付加および/または欠失を有する。
【0105】
一部の実施形態では、(a)(1)配列番号1のアミノ酸配列を有するVL CDR1;(2)配列番号2のアミノ酸配列を有するVL CDR2;および(3)配列番号3のアミノ酸配列を有するVL CDR3、を含むVL;またはVL CDR中に最大で約5つのアミノ酸置換、付加および/もしくは欠失を有するそのバリアント;ならびに(b)(1)配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR1;(2)配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR2;および(3)配列番号6のアミノ酸配列を有するVH CDR3、を含むVH;またはVH CDR中に最大で約5つのアミノ酸置換、付加および/もしくは欠失を有するそのバリアント、を含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。
【0106】
VH CDR3およびVL CDR3ドメインは、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性において重要な役割を果たすことが、当分野で周知である。したがって、一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用され得る抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトCD22との適切な会合/解離反応速度論を有し得、SM03および/またはSM06のものと構造的に同一なまたは関連するVH CDR3およびVL CDR3を有し得る。アミノ酸配列:Q-Q-G-N-T-L-P-W-T(配列番号3)を含む、SM03 VL CDR3についてのコンセンサスモチーフは、その結合特異性を変化させることなしに抗体親和性を調整するために1つまたは複数のアミノ酸を置換することによって改変され得、またはあるいは、参照により本明細書に組み込まれる中国特許第ZL200880024788.2号に記載される基準を使用して、SM03 VL CDR3に対して十分な類似性を示す無関係のヒト抗体のVL CDR3によって置き換えられ得る。同様に、アミノ酸配列:H-S-G-Y-G-S-S-Y-G-V-L-F-A-Y(配列番号6)を含む、SM03 VH CDR3についてのコンセンサスモチーフは、その結合特異性を変化させることなしに抗体親和性を調整するために1つまたは複数のアミノ酸を置換することによって改変され得、またはあるいは、参照により本明細書に組み込まれる中国特許第ZL200880024788.2号に記載される基準を使用して、SM03 VH CDR3に対して十分な類似性を示す無関係のヒト抗体のVH CDR3によって置き換えられ得る。当業者は、CDR3ドメイン内のアミノ酸のある特定の置換(複数可)、特に、保存的アミノ酸による置換が、抗体のエピトープ特異性を変化させないことを理解する。このように、一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合性断片(例えば、SM03またはSM06)のCDR3は、結晶構造および/またはコンピュータデータベース分析によって決定される、抗CD22抗体の結合部位構造/接触を維持するために重要であることが公知の位置において、(1)残基の数が同一であり、SM03 CDR3に対して50%もしくはそれよりも高い配列相同性を示す、(2)SM03 CDR3中の対応する位置(複数可)における残基(複数可)に対して同一なもしくは保存的に類似の、少なくとも1つの、好ましくはより多くの芳香族残基を含有する、(3)SM03 CDR3中の対応する位置(複数可)における残基(複数可)に対して同一なもしくは保存的に類似の、少なくとも1つの、好ましくはより多くの荷電残基を含有する、および/または(4)SM03 CDR3中の対応する位置(複数可)における残基(複数可)に対して同一なもしくは保存的に類似の、少なくとも1つの、好ましくはより多くのアミノ酸残基を含有する、ヒトまたは霊長類抗体由来のCDR3で、置き換えられ得る(参照により本明細書に組み込まれる中国特許第ZL200880024788.2号を参照されたい)。一部の実施形態では、1つ~5つ以下の保存的アミノ酸置換が、SM03 VLおよび/もしくはVH CDR3ドメイン内でなされるか、または1つ~5つ以下の保存的に類似の残基を含有する、無関係の霊長類もしくはヒト抗体由来のVLおよび/もしくはVH CDR3が、SM03もしくはSM06のVLおよび/もしくはVH CDR3を置き換えるために使用される。一部の実施形態では、1つ~3つ以下の保存的アミノ酸置換が、SM03 VLおよび/もしくはVH CDR3ドメイン内でなされるか、または、1つ~3つ以下の保存的に類似の残基を含有する、無関係の霊長類もしくはヒト抗体由来のVLおよび/もしくはVH CDR3が、SM03もしくはSM06のVLおよび/もしくはVH CDR3を置き換えるために使用される。
【0107】
一部の実施形態では、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有するVLを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有するVHを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、(a)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性配列同一性を有するVL;および(b)配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性配列同一性を有するVH、を含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。
【0108】
一部の実施形態では、VLを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が本明細書で提供され、VLは、配列番号7に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号7に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVLを有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号7に対して少なくとも90%の配列同一性を有するVLを有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVLを有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号7に対して少なくとも98%の配列同一性を有するVLを有する。一部の実施形態では、配列番号7のアミノ酸配列を有するVLを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。
【0109】
一部の実施形態では、VHを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が本明細書で提供され、VHは、配列番号8に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号8に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVHを有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有するVHを有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVHを有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号8に対して少なくとも98%の配列同一性を有するVHを有する。一部の実施形態では、配列番号8のアミノ酸配列を有するVHを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。
【0110】
一部の実施形態では、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有するVLを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有するVHを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、(a)配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性配列同一性を有するVL;および(b)配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性配列同一性を有するVH、を含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。
【0111】
一部の実施形態では、VLを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が本明細書で提供され、VLは、配列番号9に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVLを有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有するVLを有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVLを有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号9に対して少なくとも98%の配列同一性を有するVLを有する。一部の実施形態では、配列番号9のアミノ酸配列を有するVLを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。
【0112】
一部の実施形態では、VHを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が本明細書で提供され、VHは、配列番号10に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVHを有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性を有するVHを有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVHを有する。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号10に対して少なくとも98%の配列同一性を有するVHを有する。一部の実施形態では、配列番号10のアミノ酸配列を有するVHを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。
【0113】
一部の実施形態では、VLおよびVHを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が本明細書で提供され、VLおよびVHは、それぞれ配列番号7および8のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、VLおよびVHは、それぞれ配列番号9および10のアミノ酸配列を有する。
【0114】
抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書で開示される任意のVLと本明細書で開示される任意のVHとの組合せを含み得る。一部の実施形態では、VLおよびVHは、リンカーによって接続される。リンカーは、柔軟性のあるリンカーまたは剛性のリンカーであり得る。一部の実施形態では、リンカーは、柔軟性のあるリンカーである。一部の実施形態では、リンカーは、(GGGGS)n、n=3、4または5(配列番号19)のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、リンカーは、GSAGSAAGSGEF(配列番号38)のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、リンカーは、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号39)のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、リンカーは、EGKSSGSGSESKS(配列番号40)のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、リンカーは、SSGNSNANSRGPSFSSGLVPLSLRGSH(配列番号41)のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、リンカーは、GGGGGG(配列番号42)のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、リンカーは、剛性のリンカーである。一部の実施形態では、リンカーは、(EAAAK)n、n=3、4または5(配列番号20)のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、リンカーは、(PA)nP、n=1、2、3、4または5(配列番号21)のアミノ酸配列を有する。
【0115】
一部の実施形態では、(a)配列番号7もしくは9のアミノ酸配列を有するVL由来のVL CDR1、2および3を含むVL;ならびに/または(b)配列番号8もしくは10のアミノ酸配列を有するVH由来のVH CDR1、2および3を含むVH、を含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、(a)配列番号9のアミノ酸配列を有するVL由来のVL CDR1、2および3を含むVL;ならびに/または(b)配列番号10のアミノ酸配列を有するVH由来のVH CDR1、2および3を含むVH、を含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。
【0116】
一部の実施形態では、VLを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が本明細書で提供され、VLは、配列番号7のアミノ酸配列を有するVL由来のVL CDR1、2および3を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号9のアミノ酸配列を有するVL由来のVL CDR1、2および3を含む。
【0117】
一部の実施形態では、VHを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が本明細書で提供され、VHは、配列番号8のアミノ酸配列を有するVH由来のVH CDR1、2および3を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号10のアミノ酸配列を有するVH由来のVH CDR1、2および3を含む。
【0118】
一部の実施形態では、VLおよびVHを含む、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片が本明細書で提供され、VLは、配列番号7のアミノ酸配列を有するVL由来のVL CDR1、CDR2およびCDR3を含み、VHは、配列番号8のアミノ酸配列を有するVH由来のVH CDR1、CDR2およびCDR3を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号9のアミノ酸配列を有するVL由来のVL CDR1、CDR2およびCDR3を含み、VHは、配列番号10のアミノ酸配列を有するVH由来のVH CDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0119】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM03と示される抗体である。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM03由来のVLを有する。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM03由来のVHを有する。本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM03由来のVLおよびVHの両方を有し得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM03由来のVL由来のVL CDR1、2および3を含むVLを有する。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM03由来のVH由来のVH CDR1、2および3を含むVHを有する。本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれSM03のVLならびにVH由来のVL CDR1、2および3を含むVLならびにVH CDR1、2および3を含むVHを有し得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM03のバリアントである。SM03バリアントは、配列番号7中に最大で約5つのアミノ酸置換、付加および/または欠失を有する、SM03のVLのバリアントであるVLを有し得る。SM03バリアントは、配列番号8中に最大で約5つのアミノ酸置換、付加および/または欠失を有する、SM03のVHのバリアントであるVHを有し得る。アミノ酸置換、付加および/または欠失は、VH CDRまたはVL CDR中にあり得る。一部の実施形態では、アミノ酸置換、付加および/または欠失は、CDR中にはない。一部の実施形態では、SM03のバリアントは、最大で約5つの保存的アミノ酸置換を有する。一部の実施形態では、SM03のバリアントは、最大で3つの保存的アミノ酸置換を有する。
【0120】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM06と示される抗体である。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM06由来のVLを有する。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM06由来のVHを有する。本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM06由来のVLおよびVHの両方を有し得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM06由来のVL由来のVL CDR1、2および3を含むVLを有する。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM06由来のVH由来のVH CDR1、2および3を含むVHを有する。本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、それぞれSM06のVLならびにVH由来のVL CDR1、2および3を含むVLならびにVH CDR1、2および3を含むVHを有し得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、SM06のバリアントである。SM06バリアントは、配列番号9中に最大で約5つのアミノ酸置換、付加および/または欠失を有する、SM06のVLのバリアントであるVLを有し得る。SM06バリアントは、配列番号10中に最大で約5つのアミノ酸置換、付加および/または欠失を有する、SM06のVHのバリアントであるVHを有し得る。アミノ酸置換、付加および/または欠失は、VH CDRまたはVL CDR中にあり得る。一部の実施形態では、アミノ酸置換、付加および/または欠失は、CDR中にはない。一部の実施形態では、SM06のバリアントは、最大で約5つの保存的アミノ酸置換を有する。一部の実施形態では、SM06のバリアントは、最大で3つの保存的アミノ酸置換を有する。
【0121】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用され得る抗CD22抗体または抗原結合性断片は、少なくとも1つのフレームワーク(FR)領域を有するVHまたはVLを含む。VLについてのFR領域は、Vκ10マウス生殖系列ファミリー由来であり得る。一部の実施形態では、VLについてのFR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれ配列番号30、31、32および33のアミノ酸配列(SM03 VLフレームワーク配列)を有し得る。一部の実施形態では、VHについてのFR領域は、VH5マウス生殖系列ファミリー由来であり得る。一部の実施形態では、VHについてのFR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれ配列番号34、35、36および37のアミノ酸配列(SM03 VHフレームワーク配列)を有し得る。一部の実施形態では、VLについてのFR1領域は、VκIDヒト生殖系列ファミリー由来であり得、VLについてのFR2領域は、Vκ1ヒト生殖系列ファミリー由来であり得、VLについてのFR3領域は、Vκ1ヒト生殖系列ファミリー由来であり得、VLについてのFR4領域は、VκJ1ヒト生殖系列ファミリー由来であり得る。一部の実施形態では、VLについてのFR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれ配列番号22、23、24および25のアミノ酸配列(SM06 VLフレームワーク配列)を有し得る。一部の実施形態では、VHについてのFR1領域は、VH3ヒト生殖系列ファミリー由来であり得;VHについてのFR2領域領域は、VH3ヒト生殖系列ファミリー由来であり得;VHについてのFR3領域は、VH3ヒト生殖系列ファミリー由来であり得;VHについてのFR4領域領域は、VHJ5ヒト生殖系列ファミリー由来であり得る。一部の実施形態では、VHについてのFR1、FR2、FR3およびFR4は、それぞれ配列番号26、27、28および29のアミノ酸配列(SM06 VHフレームワーク配列)を有し得る。
【0122】
本開示は、本明細書に記載される組換え、モノクローナル、キメラ、ヒト化およびヒト抗体、またはそれらの抗体断片に対して実質的に相同なさらなるバリアントおよび等価物をさらに企図する。一部の実施形態では、抗体の結合親和性を改善することが望ましい。一部の実施形態では、特異性、熱安定性、発現レベル、エフェクター機能(複数可)、グリコシル化、免疫原性および/または溶解度を含むがこれらに限定されない、抗体の生物学的特性をモジュレートすることが望ましい。当業者は、アミノ酸変化が、グリコシル化部位の数もしくは位置を変化させる、または膜アンカリング特徴を変更するなど、抗体の翻訳後プロセスを変更し得ることを理解する。
【0123】
バリエーションは、ネイティブ抗体またはポリペプチド配列と比較してアミノ酸配列中に変化を生じる、抗体またはポリペプチドをコードする1つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失または挿入であり得る。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、1つのアミノ酸の、類似の構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸による置き換え、例えば、ロイシンのセリンによる置き換え、例えば、保存的アミノ酸置き換えの結果である。挿入または欠失は、約1~5アミノ酸の範囲であり得る。一部の実施形態では、置換、欠失または挿入は、親分子と比較して、25個未満のアミノ酸置換、20個未満のアミノ酸置換、15個未満のアミノ酸置換、10個未満のアミノ酸置換、5つ未満のアミノ酸置換、4つ未満のアミノ酸置換、3つ未満のアミノ酸置換、または2つ未満のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、生物学的に有用なおよび/または関連する、アミノ酸配列におけるバリエーションは、配列中に挿入、欠失または置換を体系的に作製すること、および得られたバリアントタンパク質を、親タンパク質と比較して活性について試験することによって、決定され得る。
【0124】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法において使用され得る抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、キメラ抗体または抗原結合性断片である。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法において使用され得る抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト化抗体または抗原結合性断片である。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書に記載される抗体または抗原結合性断片由来のVL CDR1、VL CDR2、VL CDR3、VH CDR1、VH CDR2および/またはVH CDR3を含む。一部の実施形態では、抗CD22抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片のバリアントを含む。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片のバリアントは、抗CD22抗体または抗原結合性断片中に1~30個のアミノ酸置換、付加および/または欠失を含む。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片のバリアントは、抗CD22抗体または抗原結合性断片中に1~25個のアミノ酸置換、付加および/または欠失を含む。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片のバリアントは、抗CD22抗体または抗原結合性断片中に1~20個の置換、付加および/または欠失を含む。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片のバリアントは、抗CD22抗体または抗原結合性断片中に1~15個の置換、付加および/または欠失を含む。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片のバリアントは、抗CD22抗体または抗原結合性断片中に1~10個の置換、付加および/または欠失を含む。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片のバリアントは、抗CD22抗体または抗原結合性断片中に1~5個の保存的アミノ酸置換、付加および/または欠失を含む。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片のバリアントは、抗CD22抗体または抗原結合性断片中に1~3個のアミノ酸置換、付加および/または欠失を含む。一部の実施形態では、アミノ酸置換、付加および/または欠失は、保存的アミノ酸置換である。一部の実施形態では、保存的アミノ酸置換(複数可)は、抗体または抗原結合性断片のCDR中にある。一部の実施形態では、保存的アミノ酸置換(複数可)は、抗体または抗原結合性断片のCDR中にはない。一部の実施形態では、保存的アミノ酸置換(複数可)は、抗体または抗原結合性断片のフレームワーク領域中にある。
【0125】
抗体の定常領域(複数可)が、いくつかのエフェクター機能を媒介し、これらのエフェクター機能が、抗体のアイソタイプに依存して変動し得ることが、当分野で公知である。例えば、IgGまたはIgM抗体(抗原に結合した)のFc領域への補体のC1成分の結合は、補体系を活性化する。補体の活性化は、細胞病原体のオプソニン化および溶解において重要である。補体の活性化は、炎症応答もまた刺激し、自己免疫過敏症に関与し得る。さらに、抗体のFc領域は、Fc受容体(FcR)を発現する細胞に結合することができる。IgG(ガンマ受容体)、IgE(イプシロン受容体)、IgA(アルファ受容体)およびIgM(ミュー受容体)を含む、抗体の異なるクラスに対して特異的ないくつかのFc受容体が存在する。細胞表面上のFc受容体への抗体の結合は、抗体コーティングされた粒子の飲み込みおよび破壊、免疫複合体のクリアランス、キラー細胞による抗体コーティングされた標的細胞の溶解(抗体依存性細胞傷害またはADCCと呼ばれる)、炎症メディエーターの放出、胎盤移行、ならびに免疫グロブリン産生の制御を含む、多くの重要かつ多様な生物学的応答を誘発する。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒトIgA抗体の少なくとも1つの定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒトIgD抗体の少なくとも1つの定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒトIgE抗体の少なくとも1つの定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒトIgG抗体の少なくとも1つの定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒトIgM抗体の少なくとも1つの定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒトIgG1抗体の少なくとも1つの定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒトIgG2抗体の少なくとも1つの定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒトIgG3抗体の少なくとも1つの定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒトIgG4抗体の少なくとも1つの定常領域を含む。
【0126】
一部の実施形態では、定常領域のうちの少なくとも1つまたは複数は、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片において改変または欠失されている。一部の実施形態では、抗体は、3つの重鎖定常領域(CH1、CH2またはCH3)のうちの1つもしくは複数および/または軽鎖定常領域(CL)に対する改変を含む。一部の実施形態では、改変された抗体の重鎖定常領域は、少なくとも1つのヒト定常領域を含む。一部の実施形態では、改変された抗体の重鎖定常領域は、1つよりも多くのヒト定常領域を含む。一部の実施形態では、定常領域に対する改変は、1つまたは複数の領域中の1つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失または置換を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の領域が、改変された抗体の定常領域から部分的にまたは完全に欠失される。一部の実施形態では、CH2ドメイン全体が、抗体から除去されている(ΔCH2構築物)。一部の実施形態では、欠失された定常領域は、存在しない定常領域によって典型的には与えられる分子柔軟性の一部を提供する短いアミノ酸スペーサーによって置き換えられる。一部の実施形態では、改変された抗体は、抗体のヒンジ領域に直接融合されたCH3ドメインを含む。一部の実施形態では、改変された抗体は、ヒンジ領域と改変されたCH2および/またはCH3ドメインとの間に挿入されたペプチドスペーサーを含む。
【0127】
一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、Fc領域を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、ヒンジを介して融合される。ヒンジは、IgG1ヒンジ、IgG2ヒンジまたはIgG3ヒンジであり得る。ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のFc領域のアミノ酸配列は、当業者に公知である。一部の場合には、アミノ酸バリエーションを有するFc領域は、ネイティブ抗体において同定されている。一部の実施形態では、改変された抗体(例えば、改変されたFc領域)は、抗体の生物学的プロファイルに次に影響する、変更されたエフェクター機能を提供する。例えば、一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合性断片のFc領域は、血液脳関門(BBB)を横断するそれらの能力を増強するように改変される。一部の実施形態では、定常領域の欠失または不活性化(点突然変異または他の手段を介した)は、それが循環する際の改変された抗体のFc受容体結合を低減させる。一部の実施形態では、定常領域改変は、抗体の免疫原性を低減させる。一部の実施形態では、定常領域改変は、抗体の血清半減期を増加させる。一部の実施形態では、定常領域改変は、抗体の血清半減期を低減させる。一部の実施形態では、定常領域改変は、抗体のADCCおよび/または補体依存性細胞傷害(CDC)を減少させるまたは除去する。一部の実施形態では、対応するIgG2またはIgG4残基によるヒトIgG1 Fc領域中の特定のアミノ酸置換は、改変された抗体においてエフェクター機能(例えば、ADCCおよびCDC)を低減させる。一部の実施形態では、抗体は、1つまたは複数のエフェクター機能を有さない(例えば、「エフェクターなし」抗体)。一部の実施形態では、抗体は、ADCC活性を有さないおよび/またはCDC活性を有さない。一部の実施形態では、抗体は、Fc受容体および/または補体因子に結合しない。一部の実施形態では、抗体は、エフェクター機能(複数可)を有さない。一部の実施形態では、定常領域改変は、抗体のADCCおよび/またはCDCを増加または増強する。一部の実施形態では、定常領域は、ジスルフィド連結またはオリゴ糖部分を排除するように改変される。一部の実施形態では、定常領域は、1つまたは複数の細胞毒素、オリゴ糖または炭水化物結合部位を提供するために、1つまたは複数のアミノ酸を付加/置換するように改変される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ネイティブFc領域と比較して、特定のアミノ酸位置において置換によって操作されたバリアントFc領域を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、EU番号付けに従って、K214R、L234A、L235E、G237A、D356EおよびL358Mからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含むIgG1重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、IgG1重鎖定常領域は、EU番号付けに従って、K214R、L234A、L235E、G237A、A330S、P331S、D356EおよびL358Mからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、IgG1重鎖定常領域は、EU番号付けに従って、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、IgG1重鎖定常領域は、EU番号付けに従って、K214R、D356EおよびL358Mからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、IgG1重鎖定常領域は、EU番号付けに従って、S131C、K133R、G137E、G138S、Q196K、I199T、N203D、K214R、C226S、C229SおよびP238Sからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。
【0128】
一部の実施形態では、バリアントは、抗体またはポリペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシル末端においてアミノ酸残基の付加を含み得る。さらなるアミノ酸残基の長さは、1残基から100またはそれよりも多くの残基までの範囲であり得る。一部の実施形態では、バリアントは、N末端メチオニル残基を含む。一部の実施形態では、バリアントは、融合タンパク質を創出するために、さらなるポリペプチド/タンパク質(例えば、Fc領域)を含む。一部の実施形態では、バリアントは、検出可能であるように操作され、検出可能な標識および/またはタンパク質(例えば、蛍光タグまたは酵素)を含み得る。
【0129】
治療的抗体は、例えば、受容体媒介性トランスサイトーシス、吸着性トランスサイトーシス、担体媒介性輸送、傍細胞輸送および拡散を含む種々の機構を介してBBBを横断する輸送を容易にするように再操作され得る。全ての中で、受容体媒介性トランスサイトーシス(R.M.T.)が、抗体の進入を容易にするために広く探索されている。R.M.T.の使用は、結合の際にトランスサイトーシスを実施することができる、トランスフェリン受容体、インスリン受容体、低密度リポタンパク質受容体(LDL受容体)、CD98、TMEM50A、および内皮細胞上の他の表面受容体を含む。トランスフェリン、インスリン受容体、CD98およびTEME50Aに結合する抗体は、複合体全体のトランスサイトーシスを惹起することができる。LDL受容体の場合、アポリポタンパク質の結合が、トランスサイトーシスプロセスを誘発し得る。したがって、抗体断片またはアポリポタンパク質に連結された治療的抗体が提案され、動物モデルにおいてBBB横断を増強することが検証される。
【0130】
このように、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、BBBを横断するその能力を増強するように操作され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、トランスフェリン、インスリン受容体、CD98またはTEME50Aに結合する第2の抗体または抗原結合性断片に融合される。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、トランスフェリンに結合する第2の抗体または抗原結合性断片に融合され得る。一部の実施形態では、例えば、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、トランスフェリン受容体結合性Fab断片に融合され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、インスリン受容体に結合する第2の抗体または抗原結合性断片に融合され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、CD98に結合する第2の抗体または抗原結合性断片に融合され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、TEME50Aに結合する第2の抗体または抗原結合性断片に融合され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、アポリポタンパク質に融合される。
【0131】
本明細書に記載されるバリアント抗体または抗原結合性断片は、部位特異的突然変異誘発、アラニンスキャニング突然変異誘発およびPCR突然変異誘発を含むがこれらに限定されない、当分野で公知の方法を使用して生成され得る。
【0132】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗CD22抗体または抗原結合性断片のバリアントは、親抗体または抗原結合性断片と類似の程度、同じ程度またはそれよりも高い程度まで、CD22に結合する能力を保持し得る。一部の実施形態では、バリアントは、親抗体または抗原結合性断片に対して、アミノ酸配列において、少なくとも約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれよりも大きく同一であり得る。ある特定の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片のバリアントは、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を有する、親抗CD22抗体または抗原結合性断片のアミノ酸配列を含む。保存的アミノ酸置換は、当分野で公知であり、これには、ある特定の物理的および/または化学的特性を有する1つのアミノ酸が、同じまたは類似の化学的または物理的特性を有する別のアミノ酸に交換されるアミノ酸置換が含まれる。
【0133】
一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片のバリアントは、1つまたは複数の非保存的アミノ酸置換を有する、親抗体または抗原結合性断片のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片のバリアントは、1つまたは複数の非保存的アミノ酸置換を有する、親結合抗体または抗原結合性断片のアミノ酸配列を含み、1つまたは複数の非保存的アミノ酸置換は、バリアントの1つまたは複数の生物活性(例えば、CD22結合)を妨害も阻害もしない。ある特定の実施形態では、1つもしくは複数の保存的アミノ酸置換および/または1つもしくは複数の非保存的アミノ酸置換は、バリアントの生物活性を増強し得、その結果、機能的バリアントの生物活性は、親結合部分と比較して増加する。
【0134】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、手動でまたは介入によって、化学的に改変される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解性切断、および/または細胞リガンドもしくは他のタンパク質への連結によって、化学的に改変されている。多数の化学的改変のいずれもが、公知の技法によって実施され得る。抗CD22抗体または抗原結合性断片は、アミノ酸の1つまたは複数のアナログ(例えば、非天然のアミノ酸が含まれる)、ならびに当分野で公知の他の改変を含み得る。
【0135】
本開示の抗CD22抗体または抗原結合性断片は、当分野で公知の種々の方法によって、それらの物理的、化学的および/または生物学的特性について分析され得る。一部の実施形態では、抗CD22抗体は、CD22(例えば、ヒトCD22)に結合するその能力について試験される。結合アッセイには、表面プラズモン共鳴(例えば、Biacore)、ELISAおよびFACSが含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、CD22に対する結合剤(例えば、抗体)の解離定数は、表面プラズモン共鳴(例えば、BIAcore)によって決定される解離定数である。さらに、抗体は、溶解度、安定性、熱安定性、粘度、発現レベル、発現品質および/または精製効率について評価され得る。
【0136】
SM03およびSM06は共に、約1.2nMの解離定数(KD)でヒトCD22に結合する。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約100nMもしくはそれ未満、約40nMもしくはそれ未満、約20nMもしくはそれ未満、約10nMもしくはそれ未満、約1nMもしくはそれ未満、約0.1nMもしくはそれ未満、50pMもしくはそれ未満、10pMもしくはそれ未満、または1pMもしくはそれ未満の解離定数(KD)で、CD22(例えば、ヒトCD22)に結合する。一部の実施形態では、KDは、約20nMまたはそれ未満である。一部の実施形態では、KDは、約10nMまたはそれ未満である。一部の実施形態では、KDは、約5nMまたはそれ未満である。一部の実施形態では、KDは、約2nMまたはそれ未満である。一部の実施形態では、KDは、約1.5nMまたはそれ未満である。一部の実施形態では、KDは、約1nMまたはそれ未満である。一部の実施形態では、KDは、約0.5nMまたはそれ未満である。一部の実施形態では、KDは、約0.1nMまたはそれ未満である。一部の実施形態では、KDは、約50pMまたはそれ未満である。一部の実施形態では、KDは、約10pMまたはそれ未満である。
【0137】
一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、0.1~1nM、0.5~5nM、1~10nM、1~5nM、5~50nM、10~100nMまたは50~500nMの範囲内のKDで、CD22(例えば、ヒトCD22)に結合する。一部の実施形態では、KDは、0.1~1nMの範囲内である。一部の実施形態では、KDは、0.5~5nMの範囲内である。一部の実施形態では、KDは、1~10nMの範囲内である。一部の実施形態では、KDは、1~5nMの範囲内である。一部の実施形態では、KDは、5~50nMの範囲内である。一部の実施形態では、KDは、10~100nMの範囲内である。一部の実施形態では、KDは、50~500nMの範囲内である。
【0138】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約0.8×109M-1の会合定数(KA)でCD22(例えば、ヒトCD22)に結合する。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約1×106M-1もしくはそれよりも高い、約1×107M-1もしくはそれよりも高い、約1×108M-1もしくはそれよりも高い、約5×108M-1もしくはそれよりも高い、約8×108M-1もしくはそれよりも高い、約1×109M-1もしくはそれよりも高い、約5×109M-1もしくはそれよりも高い、約1×1010M-1もしくはそれよりも高い、約5×1010M-1もしくはそれよりも高い、約1×1011M-1もしくはそれよりも高い、約5×1011M-1もしくはそれよりも高い、または約1×1012M-1もしくはそれよりも高いKAで、CD22(例えば、ヒトCD22)に結合する。一部の実施形態では、KAは、約1×107M-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、KAは、約5×107M-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、KAは、約1×108M-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、KAは、約5×108M-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、KAは、約8×108M-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、KAは、約1×109M-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、KAは、約5×109M-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、KAは、約1×1010M-1またはそれよりも高い。
【0139】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約1×106~1×107M-1、5×106~5×107M-1、1×107~1×108M-1、5×107~5×108M-1、1×108~5×108M-1、1×108~1×109M-1、5×108~1×109M-1、5×108~5×109M-1、1×109~1×1010M-1、5×109~5×1010M-1、1×1010~1×1011M-1、5×1010~5×1011M-1、1×1011~1×1012M-1または5×1011~5×1012M-1の範囲内のKAで、CD22(例えば、ヒトCD22)に結合する。一部の実施形態では、KAは、約1×106~1×107M-1の範囲内である。一部の実施形態では、KAは、約1×107~1×108M-1の範囲内である。一部の実施形態では、KAは、約1×108~1×109M-1の範囲内である。一部の実施形態では、KAは、約5×108~1×109M-1の範囲内である。一部の実施形態では、KAは、約5×108~5×109M-1の範囲内である。一部の実施形態では、KAは、約1×109~1×1010M-1の範囲内である。
【0140】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、SPR(例えば、BIAcore)によって決定される場合、0.0685RU s-1もしくはそれ未満、または0.0137RU s-1もしくはそれ未満のkdで、ヒトCD22から解離する。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約0.5RU s-1もしくはそれ未満、約0.2RU s-1もしくはそれ未満、約0.1RU s-1もしくはそれ未満、約0.08RU s-1もしくはそれ未満、約0.06RU s-1もしくはそれ未満、約0.05RU s-1もしくはそれ未満、約0.04RU s-1もしくはそれ未満、約0.03RU s-1もしくはそれ未満、約0.02RU s-1もしくはそれ未満、約0.01RU s-1もしくはそれ未満、約0.008RU s-1もしくはそれ未満、約0.005RU s-1もしくはそれ未満、または約0.001RU s-1もしくはそれ未満のkdで、ヒトCD22から解離する。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約0.5RU s-1またはそれ未満のkdでヒトCD22から解離する。一部の実施形態では、kdは、約0.2RU s-1またはそれ未満である。一部の実施形態では、kdは、約0.1RU s-1またはそれ未満である。一部の実施形態では、kdは、約0.08RU s-1またはそれ未満である。一部の実施形態では、kdは、約0.06RU s-1またはそれ未満である。一部の実施形態では、kdは、約0.05RU s-1またはそれ未満である。一部の実施形態では、kdは、約0.02RU s-1またはそれ未満である。一部の実施形態では、kdは、約0.01RU s-1またはそれ未満である。一部の実施形態では、kdは、約0.005RU s-1またはそれ未満である。
【0141】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、0.001~0.5RU s-1、0.001~0.1RU s-1、0.001~0.05RU s-1、0.005~0.5RU s-1、0.005~0.1RU s-1、0.01~0.5RU s-1、0.01~0.1RU s-1または0.01~0.05RU s-1の範囲内のkdで、ヒトCD22から解離する。一部の実施形態では、kdは、0.005~0.05RU s-1の範囲内である。一部の実施形態では、kdは、0.01~0.1RU s-1の範囲内である。一部の実施形態では、kdは、0.005~0.1RU s-1の範囲内である。一部の実施形態では、kdは、0.01~0.5RU s-1の範囲内である。一部の実施形態では、kdは、0.01~0.1RU s-1の範囲内である。
【0142】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、SPR(例えば、BIAcore)によって決定される場合、1.13×107RU S-1またはそれよりも高いkaでヒトCD22と会合する。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約1.0×105RU S-1もしくはそれよりも高い、約5.0×105RU S-1もしくはそれよりも高い、約1.0×106RU S-1もしくはそれよりも高い、約5.0×106RU S-1もしくはそれよりも高い、約1.0×107RU S-1もしくはそれよりも高い、約2.0×107RU S-1もしくはそれよりも高い、約3×107RU S-1もしくはそれよりも高い、約4.0×107RU S-1もしくはそれよりも高い、約5.0×107RU S-1もしくはそれよりも高い、約1.0×108RU S-1もしくはそれよりも高い、約5.0×108RU S-1もしくはそれよりも高い、または約1.0×109RU S-1もしくはそれよりも高いkaで、ヒトCD22と会合する。一部の実施形態では、kaは、約1.0×106RU S-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、kaは、約5.0×106RU S-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、kaは、約1.0×107RU S-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、kaは、約2.0×107RU S-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、kaは、約5.0×107RU S-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、kaは、約1.0×108RU S-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、kaは、約1.0×109RU S-1またはそれよりも高い。
【0143】
一部の実施形態では、kaは、1.0×105~1.0×106RU S-1、1.0×106~1.0×107RU S-1、5.0×106~5.0×107RU S-1、1.0×107~5.0×107RU S-1、1.0×107~1.0×108RU S-1または1.0×108~1.0×109RU S-1の範囲内である。一部の実施形態では、kaは、1.0×106~1.0×107RU S-1の範囲内である。一部の実施形態では、kaは、5.0×106~5.0×107RU S-1の範囲内である。一部の実施形態では、kaは、1.0×107~5.0×107RU S-1の範囲内である。一部の実施形態では、kaは、1.0×107~1.0×108RU S-1の範囲内である。一部の実施形態では、kaは、1.0×108~1.0×109RU S-1の範囲内である。
【0144】
エピトープマッピングは、抗体が結合する標的タンパク質上の結合部位、領域またはエピトープを同定する方法である。種々の方法が、標的タンパク質上のエピトープをマッピングために当分野で公知である。これらの方法には、ショットガン突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発およびアラニンスキャニング;ドメインまたは断片スキャニング;ペプチドスキャニング(例えば、Pepscan技術)を含むがこれらに限定されない突然変異誘発;ディスプレイ法(例えば、ファージディスプレイ、微生物ディスプレイおよびリボソーム/mRNAディスプレイ);タンパク質分解およびマススペクトロスコーピー(mass spectroscopy)が関与する方法;ならびに構造決定(例えば、X線結晶解析およびNMR)が含まれる。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、N末端配列決定、アミノ酸分析、HPLC、質量分析、イオン交換クロマトグラフィーおよびパパイン消化を含むがこれらに限定されないアッセイによって特徴付けられる。
【0145】
それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Leung et al. (2015) Mabs 7(1):66-76;Zhao et al. (2014) PLOS ONE 9(5): e96697;米国特許第9371396号B2;および中国特許第ZL201210286457.4号に記載されるように、SM03およびSM06は、0.82×109M-1の範囲の親和性(Ka)で、配列161CLLNFSCYGYPIQ173(配列番号17)および198VFTRSELKFSPQWSHHGKIVTC219(配列番号18)を包含する不連続のコンフォメーションエピトープにおいて特異的に、高い親和性でヒトCD22のドメイン2に結合する。このコンフォメーションエピトープの結合は、CD22の迅速な内在化を誘導し(例えば、表面CD22の50%は、10分以内に内在化され得る)、CD22の2,6-シアル酸結合のシス-トランス変換を促進し、免疫寛容を回復させることができる。また、SM03およびSM06は共に、79.9±27.6ng/mlの範囲のEC50で、SM03およびSM06の抗原結合部位(ABS)に対する抗イディオタイプ抗体(例えば、LRID)に結合する。
【0146】
したがって、本明細書で開示される方法において使用され得る抗CD22抗体または抗原結合性断片は、CD22とAβとの相互作用を立体的に妨害しないエピトープに結合することができる。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、CD22とAβとの相互作用を立体的に妨害しない特異的コンフォメーションエピトープに結合する。一部の実施形態では、エピトープは、161CLLNFSCYGYPIQ173(配列番号17)を含む。一部の実施形態では、エピトープは、198VFTRSELKFSPQWSHHGKIVTC219(配列番号18)を含む。一部の実施形態では、エピトープは、コンフォメーションエピトープであり、161CLLNFSCYGYPIQ173(配列番号17)および198VFTRSELKFSPQWSHHGKIVTC219(配列番号18)の両方を含む。
【0147】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用され得る抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約0.8×109M-1のKAでこのコンフォメーションエピトープに結合することができる。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約1×107M-1もしくはそれよりも高い、約1×108M-1もしくはそれよりも高い、約5×108M-1もしくはそれよりも高い、約1×109M-1もしくはそれよりも高い、約5×109M-1もしくはそれよりも高い、約1×1010M-1もしくはそれよりも高い、約5×1010M-1もしくはそれよりも高い、約1×1011M-1もしくはそれよりも高い、約5×1011M-1もしくはそれよりも高い、または約1×1012M-1もしくはそれよりも高いKAで、このコンフォメーションエピトープに結合する。一部の実施形態では、KAは、約1×107M-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、KAは、約5×107M-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、KAは、約1×108M-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、KAは、約5×108M-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、KAは、約8×108M-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、KAは、約1×109M-1またはそれよりも高い。一部の実施形態では、KAは、約5×109M-1またはそれよりも高い。
【0148】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約1×106~1×107M-1、5×106~5×107M-1、1×107~1×108M-1、5×107~5×108M-1、1×108~5×108M-1、1×108~1×109M-1、5×108~1×109M-1、5×108~5×109M-1、1×109~1×1010M-1、5×109~5×1010M-1、1×1010~1×1011M-1、5×1010~5×1011M-1、1×1011~1×1012M-1または5×1011~5×1012M-1の範囲内のKAで、このコンフォメーションエピトープに結合する。一部の実施形態では、KAは、約1×106~1×107M-1の範囲内である。一部の実施形態では、KAは、約1×106~1×107M-1の範囲内である。一部の実施形態では、KAは、約1×107~1×108M-1の範囲内である。一部の実施形態では、KAは、約1×108~1×109M-1の範囲内である。一部の実施形態では、KAは、約5×108~1×109M-1の範囲内である。一部の実施形態では、KAは、約5×108~5×109M-1の範囲内である。一部の実施形態では、KAは、約1×109~1×1010M-1の範囲内である。
【0149】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、高い親和性で抗イディオタイプ抗体に結合する(例えば、Leung 2015上記;Zhao 2014上記に記載される)。抗イディオタイプ抗体は、それぞれ配列番号13および14のアミノ酸配列を各々が有するVLおよびVHを有する(「LRID」)。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約0.40μg/mlまたはそれ未満のEC50でLRIDに結合する。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約0.08μg/mlのEC50でLRIDに結合することができる。一部の実施形態では、EC50は、約5.0μg/ml、約2.0μg/ml、約1.0μg/ml、約0.8μg/ml、約0.5μg/ml、約0.2μg/ml、約0.1μg/ml、約0.08μg/ml、約0.05μg/ml、約0.02μg/ml、約0.01μg/ml、約0.008μg/ml、約0.005μg/mlまたは約0.001μg/mlである。一部の実施形態では、EC50は、約2.0μg/mlである。一部の実施形態では、EC50は、約1.0μg/mlである。一部の実施形態では、EC50は、約0.8μg/mlである。一部の実施形態では、EC50は、約0.5μg/mlである。一部の実施形態では、EC50は、約0.2μg/mlである。一部の実施形態では、EC50は、約0.1μg/mlである。一部の実施形態では、EC50は、約0.08μg/mlである。一部の実施形態では、EC50は、約0.05μg/mlである。一部の実施形態では、EC50は、約0.01μg/mlである。
【0150】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、0.01~5μg/ml、0.01~1μg/ml、0.01~0.5μg/ml、0.05~5μg/ml、0.05~1μg/ml、0.05~0.5μg/ml、0.1~5μg/mlまたは0.1~1μg/mlの範囲内のEC50でLRIDに結合する。一部の実施形態では、EC50は、0.01~1μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、0.01~0.5μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、0.05~1μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、0.05~0.5μg/mlの範囲内である。
【0151】
一部の実施形態では、CD22(例えば、ヒトCD22)への結合について、上で提供された抗体または抗原結合性断片と競合する抗体または抗原結合性断片もまた、本明細書で提供される。「標的への結合について別の抗体と競合する」抗体は、標的への他の抗体の結合を(部分的にまたは完全に)を阻害する抗体を指す。2つの抗体が標的への結合について互いに競合するかどうか、即ち、1つの抗体が標的への他の抗体の結合を阻害するかどうかおよびその程度は、公知の競合実験、例えば、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)分析を使用して決定され得る。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または100%、CD22(例えば、ヒトCD22)への別の抗体または抗原結合性断片と競合し、その結合を阻害する。競合アッセイは、例えば、Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harb Protoc; 2006; doi: l0.H0l/pdb.prot4277またはChapter 11 of "Using Antibodies" by Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USA 1999に記載されるように実施され得る。
【0152】
一部の実施形態では、ヒトCD22への結合についてSM03と競合する抗体または抗原結合性断片が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、ヒトCD22への結合についてSM06と競合する抗体または抗原結合性断片が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒトバーキットリンパ腫細胞系Ramos細胞上のネイティブCD22に結合する放射性標識されたI125-SM03と、約5.01μg/mlもしくはそれ未満、または約1.02μg/mlもしくはそれ未満のEC50で競合する。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒトバーキットリンパ腫細胞系Ramos細胞上のネイティブCD22に結合する放射性標識されたI125-SM03と、約5.01μg/mlもしくはそれ未満、または約1.02μg/mlのEC50で競合する。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、Ramos細胞上のネイティブCD22に結合する放射性標識されたI125-SM03と、約0.1μg/mlもしくはそれ未満、約0.2μg/mlもしくはそれ未満、約0.5μg/mlもしくはそれ未満、約0.8μg/mlもしくはそれ未満、約1μg/mlもしくはそれ未満、約2μg/mlもしくはそれ未満、約5.0μg/mlもしくはそれ未満、約8μg/mlもしくはそれ未満、約10μg/mlもしくはそれ未満、または約50μg/mlもしくはそれ未満のEC50で競合する。一部の実施形態では、EC50は、約0.1μg/mlまたはそれ未満である。一部の実施形態では、EC50は、約0.5μg/mlまたはそれ未満である。一部の実施形態では、EC50は、約1μg/mlまたはそれ未満である。一部の実施形態では、EC50は、約2μg/mlまたはそれ未満である。一部の実施形態では、EC50は、約5μg/mlまたはそれ未満である。一部の実施形態では、EC50は、約10μg/mlまたはそれ未満である。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、Ramos細胞上のネイティブCD22に結合する放射性標識されたI125-SM03と、約0.1~50μg/ml、約0.1~10μg/ml、約0.1~5μg/ml、約0.5~10μg/ml、約0.5~5μg/ml、約1~10μg/mlまたは約1~5μg/mlの範囲内のEC50で競合する。一部の実施形態では、EC50は、約0.1~50μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、約0.1~10μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、約0.1~5μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、約0.5~10μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、約0.5~5μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、約1~10μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、約1~5μg/mlの範囲内である。
【0153】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ミクログリア細胞(例えば、HMC-3細胞)上のネイティブCD22に結合する放射性標識されたI125-SM03と、約0.1μg/mlもしくはそれ未満、約0.2μg/mlもしくはそれ未満、約0.5μg/mlもしくはそれ未満、約0.8μg/mlもしくはそれ未満、約1μg/mlもしくはそれ未満、約2μg/mlもしくはそれ未満、約5.0μg/mlもしくはそれ未満、約8μg/mlもしくはそれ未満、約10μg/mlもしくはそれ未満、または約50μg/mlもしくはそれ未満のEC50で競合する。一部の実施形態では、EC50は、約0.1μg/mlまたはそれ未満である。一部の実施形態では、EC50は、約0.2μg/mlまたはそれ未満である。一部の実施形態では、EC50は、約0.5μg/mlまたはそれ未満である。一部の実施形態では、EC50は、約1μg/mlまたはそれ未満である。一部の実施形態では、EC50は、約2μg/mlまたはそれ未満である。一部の実施形態では、EC50は、約5μg/mlまたはそれ未満である。一部の実施形態では、EC50は、約10μg/mlまたはそれ未満である。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ミクログリア細胞(例えば、HMC-3細胞)上のネイティブCD22に結合する放射性標識されたI125-SM03結合と、約0.1~50μg/ml、約0.1~10μg/ml、約0.1~5μg/ml、約0.5~10μg/ml、約0.5~5μg/ml、約1~10μg/mlまたは約1~5μg/mlの範囲内のEC50で競合する。一部の実施形態では、EC50は、約0.1~50μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、約0.1~10μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、約0.1~5μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、約0.5~10μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、約0.5~5μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、約1~10μg/mlの範囲内である。一部の実施形態では、EC50は、約1~5μg/mlの範囲内である。
【0154】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、細胞(例えば、B細胞またはミクログリア細胞)との接触の際に、10分以内に表面CD22の約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%の内在化を誘導することができる。一部の実施形態では、内在化速度は、10分以内に表面CD22の約30%である。一部の実施形態では、内在化速度は、10分以内に表面CD22の約40%である。一部の実施形態では、内在化速度は、10分以内に表面CD22の約50%である。一部の実施形態では、内在化速度は、10分以内に表面CD22の約60%である。一部の実施形態では、内在化速度は、10分以内に表面CD22の約70%である。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、接触の際に10分以内に表面CD22の約20%~70%、約30%~70%、約40%~70%、約30%~60%または約40%~60%の内在化を誘導することができる。一部の実施形態では、内在化速度は、10分以内に表面CD22の約20%~70%である。一部の実施形態では、内在化速度は、10分以内に表面CD22の約40%~70%である。一部の実施形態では、内在化速度は、10分以内に表面CD22の約30%~60%である。一部の実施形態では、内在化速度は、10分以内に表面CD22の約40%~60%である。
【0155】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、細胞(例えば、B細胞またはミクログリア細胞)との接触の際に、約2分以内、約5分以内、約10分以内、約15分以内、約20分以内、約30分以内または約1時間以内に、表面CD22の約50%の内在化を誘導することができる。一部の実施形態では、表面CD22の50%は、2分以内に内在化される。一部の実施形態では、表面CD22の50%は、5分以内に内在化される。一部の実施形態では、表面CD22の50%は、10分以内に内在化される。一部の実施形態では、表面CD22の50%は、15分以内に内在化される。一部の実施形態では、表面CD22の50%は、20分以内に内在化される。一部の実施形態では、表面CD22の50%は、30分以内に内在化される。
【0156】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約0.1×10-6pg/s/細胞、約0.2×10-6pg/s/細胞、約0.5×10-6pg/s/細胞、約0.8×10-6pg/s/細胞、約1.0×10-6pg/s/細胞、約2.0×10-6pg/s/細胞、約4.0×10-6、約5.0×10-6pg/s/細胞、約6.0×10-6pg/s/細胞、約7.0×10-6pg/s/細胞、約8.0×10-6pg/s/細胞、約1.0×10-5pg/s/細胞、約2.0×10-5pg/s/細胞、約5.0×10-5pg/s/細胞または約8.0×10-5pg/s/細胞の速度で、Aβの内在化を誘導することができる。一部の実施形態では、速度は、約0.2×10-6pg/s/細胞である。一部の実施形態では、速度は、約0.5×10-6pg/s/細胞である。一部の実施形態では、速度は、約0.8×10-6pg/s/細胞である。一部の実施形態では、速度は、約1.0×10-6pg/s/細胞である。一部の実施形態では、速度は、約2.0×10-6pg/s/細胞である。一部の実施形態では、速度は、約4.0×10-6pg/s/細胞である。一部の実施形態では、速度は、約6.0×10-6pg/s/細胞である。一部の実施形態では、速度は、約1.0×10-5pg/s/細胞である。一部の実施形態では、速度は、約5.0×10-5pg/s/細胞である。一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約0.1~50×10-6pg/s/細胞、約0.1~20×10-6pg/s/細胞、約0.1~10×10-6pg/s/細胞、約0.5~50×10-6pg/s/細胞、約0.5~20×10-6pg/s/細胞、約0.5~10×10-6pg/s/細胞、約1~50×10-6pg/s/細胞、約1~20×10-6pg/s/細胞、約1~10×10-6pg/s/細胞または約1~6×10-6pg/s/細胞の速度で、Aβの内在化を誘導することができる。一部の実施形態では、速度は、約0.1~50×10-6pg/s/細胞である。一部の実施形態では、速度は、約0.5~50×10-6pg/s/細胞である。一部の実施形態では、速度は、約0.5~10×10-6pg/s/細胞である。一部の実施形態では、速度は、約1~50×10-6pg/s/細胞である。一部の実施形態では、速度は、約である。一部の実施形態では、速度は、約1~10×10-6pg/s/細胞である。一部の実施形態では、速度は、約である。一部の実施形態では、速度は、約1~6×10-6pg/s/細胞である。
【0157】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、誘導体化され得または別の機能的分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質)に連結され得、本明細書で開示される方法において使用され得る。したがって、一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗体および抗原結合性断片には、免疫接着分子を含む、本明細書に記載されるヒト抗CD22抗体の誘導体化されたおよび他の方法で改変された形態が含まれる。例えば、抗体および抗原結合性断片は、1つまたは複数の他の分子実体、例えば、別の抗体(例えば、二特異性抗体またはディアボディ)、検出可能な薬剤、細胞傷害剤、医薬品剤、および/または抗体もしくは抗原結合性断片と別の分子との会合を媒介し得るタンパク質もしくはペプチド(例えば、ストレプトアビジンコア領域またはポリヒスチジンタグ)に、(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合、または部位特異的コンジュゲート化に適切な人工アミノ酸/官能基の導入によって)機能的に連結され得る。
【0158】
誘導体化された抗体の1つの型は、2つまたはそれよりも多くの抗体(例えば、同じ型の、または二特異性抗体を創出するためには異なる型の)を架橋結合させることによって産生される。適切なクロスリンカーには、適切なスペーサーによって分離された2つの別個に反応性の基を有するヘテロ二官能的なクロスリンカー(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(m-maleimidobenzoyl-N-huydroxysuccinimide ester))、またはホモ二官能的なクロスリンカー(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル(disuccinimidyle suberate))が含まれる。かかるリンカーは、Thermo Scientific、Waltham、MAから入手可能である。
【0159】
一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、細胞傷害剤または細胞傷害性部分にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ADC(抗体-薬物コンジュゲート)を形成するために、細胞傷害剤にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、細胞傷害性部分は、メトトレキサート、アドリアマイシン/ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、デュオカルマイシン、ダウノルビシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、または他のインターカレート剤を含むがこれらに限定されない化学療法剤である。一部の実施形態では、細胞傷害性部分は、アウリスタチン、マイタンシノイド(例えば、DM1およびDM4)およびチューブリシン(tubulysin)を含むがこれらに限定されない微小管阻害剤である。一部の実施形態では、細胞傷害性部分は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖、リシン(ricin)A鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、Momordica charantia阻害剤、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、Sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)およびトリコテセン(tricothecene)を含むがこれらに限定されない、細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、またはそれらの断片である。一部の実施形態では、抗体は、1つまたは複数の小分子毒素、例えば、カリケアマイシン、マイタンシノイド、トリコテセン(trichothene)およびCC1065にコンジュゲートされる。
【0160】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、診断および/または検出のために薬剤が使用されるのを可能にする検出可能な物質または分子にコンジュゲートされる。検出可能な物質には、酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼおよびアセチルコリンエステラーゼ;補欠分子族、例えば、ビオチンおよびフラビン(類);蛍光材料、例えば、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、シアニン(Cy3)、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド(5-dimethylamine-1-napthalenesulfonyl chloride)およびフィコエリトリン;生物発光材料、例えば、ルシフェラーゼ;放射性材料、例えば、212Bi、14C、57Co、51Cr、67Cu、18F、68Ga、67Ga、153Gd、159Gd、68Ge、3H、166Ho、131I、125I、123I、121I、115In、113In、112In、111In、140La、177Lu、54Mn、99Mo、32P、103Pd、149Pm、142Pr、186Re、188Re、105Rh、97Ru、35S、47Sc、75Se、153Sm、113Sn、117Sn、85Sr、99mTc、201Ti、133Xe、90Y、69Yb、175Yb、65Zn;陽電子放出金属;ならびに磁性金属イオン陽電子放出金属;ならびに磁性金属イオンもまた含まれ得るがこれらに限定されない。
【0161】
本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、固体支持体に結合され得る。かかる固体支持体には、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンが含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、固定化された抗CD22抗体または抗原結合性断片は、イムノアッセイにおいて使用される。一部の実施形態では、固定化された抗CD22抗体または抗原結合性断片は、標的抗原(例えば、ヒトCD22)の精製において使用される。
5.2.2 さらなるCD22抗体
【0162】
本明細書で開示される抗CD22(例えば、ヒトCD22)抗体または抗原結合性断片、例えば、SM03、SM06またはそれらのバリアントもしくは等価物の治療有効量を使用する、Aβプラークの除去を促進する方法、神経炎症を低減させる方法、シナプスファゴサイトーシスおよび/またはニューロン死を予防する方法、Aβ関連疾患または障害を処置する方法、ならびに神経炎症に関連する疾患または障害を処置する方法が、本明細書で開示される。理論に束縛されることは望まないが、SM03、SM06、および本明細書で開示される他の抗CD22抗体は、以下の機能または活性のうちの少なくとも1つを有するので、上述の治療効果を達成するために使用され得ることが理解される:(1)CD22とAβとの相互作用を立体的に妨害しないエピトープに結合する;(2)ヒトCD22のドメイン2に結合する;(3)配列161CLLNFSCYGYPIQ173(配列番号17)および198VFTRSELKFSPQWSHHGKIVTC219(配列番号18)を包含するヒトCD22のコンフォメーションエピトープに結合する;(4)CD22ホモ-クラスターのシス-結合を破壊する;(5)CD22の2,6-シアル酸結合のシス-トランス変換を促進する;(6)ニューロン2,6-シアル酸へのCD22のトランス-結合を促進する;(7)必要に応じて、10分以内に表面CD22の50%が内在化される速度で、例えば、ミクログリア細胞、Ramos細胞および/またはB細胞上のCD22内在化を促進する;(8)ミクログリア細胞におけるAβの内在化を促進する;(9)炎症促進性サイトカイン、例えば、NFκBシグナル伝達およびIL-6分泌を抑制する;ならびに(10)神経炎症を低減させる。
【0163】
ヒトCD22のドメイン2ならびに/または配列161CLLNFSCYGYPIQ173(配列番号17)および198VFTRSELKFSPQWSHHGKIVTC219(配列番号18)を包含するヒトCD22のコンフォメーションエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合性断片は、CD22のニューロン2,6-シアル酸結合のシス-トランス変換を促進することができ、それにより、ミクログリア細胞上のCD22の迅速な内在化を誘導することが理解される。次いで、CD22の迅速な内在化は、細胞表面上のFcγRに係合することなしに、ミクログリア細胞によるCD22結合したAβおよび可溶性Aβの両方の迅速な内在化をもたらし、それにより、FcγR関与から生じるARIA-EおよびARIA-Hを回避する。さらに、CD22の内在化およびAβの除去は共に、炎症性サイトカイン、例えば、NFκBシグナル伝達およびIL-6分泌を抑制することができ、それにより、神経炎症を低減させる。
【0164】
このように、以下の機能または活性のうちの少なくとも1つについて、CD22(例えば、ヒトCD22)に特異的に結合する抗体または抗原結合性断片に関して選択するための方法もまた、本明細書で提供され、選択された抗CD22抗体または抗原結合性断片は、Aβプラークの除去を促進する方法、神経炎症を低減させる方法、シナプスファゴサイトーシスおよび/もしくはニューロン死を予防する方法、Aβ関連疾患もしくは障害を処置する方法、ならびに/または神経炎症に関連する疾患もしくは障害を処置する方法において使用され得る:(1)CD22とAβとの相互作用を立体的に妨害しないエピトープに結合する;(2)ヒトCD22のドメイン2に結合する;(3)配列161CLLNFSCYGYPIQ173(配列番号17)および198VFTRSELKFSPQWSHHGKIVTC219(配列番号18)を包含するヒトCD22のコンフォメーションエピトープに結合する;(4)CD22ホモ-クラスターのシス-結合を破壊する;(5)CD22の2,6-シアル酸結合のシス-トランス変換を促進する;(6)ニューロン2,6-シアル酸へのCD22のトランス-結合を促進する;(7)必要に応じて、10分までに50%のCD22が内在化される速度で、例えば、ミクログリア細胞、Ramos細胞および/またはB細胞上のCD22内在化を促進する;(8)必要に応じて5.86×10-6pg/s/細胞の速度で、ミクログリア細胞におけるAβの内在化を促進する;(9)神経炎症を低減させる;ならびに(10)炎症促進性サイトカイン、例えば、NFκBシグナル伝達およびIL-6分泌を抑制する。一部の実施形態では、選択された抗体または抗原結合性断片は、Aβプラークの除去を促進する方法において使用され得る。一部の実施形態では、選択された抗体または抗原結合性断片は、神経炎症を低減させる方法において使用され得る。一部の実施形態では、選択された抗体または抗原結合性断片は、シナプスファゴサイトーシスおよび/またはニューロン死を予防する方法において使用され得る。一部の実施形態では、選択された抗体または抗原結合性断片は、Aβ関連疾患または障害を処置する方法において使用され得る。一部の実施形態では、選択された抗体または抗原結合性断片は、神経炎症に関連する疾患または障害を処置する方法において使用され得る。
【0165】
説明目的のために、エプラツズマブ(Emab)は、CD22内在化を誘導することが可能であることが同定され、ミクログリア細胞においてAβ除去を促進することも確認された。したがって、Emabおよびその機能的バリアントは、Aβプラークの除去を促進する方法、神経炎症を低減させる方法、シナプスファゴサイトーシスおよび/もしくはニューロン死を予防する方法、Aβ関連疾患もしくは障害を処置する方法、ならびに/または神経炎症に関連する疾患もしくは障害を処置する方法を含む、本明細書で開示される方法において使用され得る。
【0166】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ヒトCD22のドメイン2または配列161CLLNFSCYGYPIQ173(配列番号17)および198VFTRSELKFSPQWSHHGKIVTC219(配列番号18)を包含するヒトCD22のコンフォメーションエピトープへの特異的結合について選択される。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、LRIDへのその結合について選択される(例えば、米国特許第9,371,396号B2)。
【0167】
異なる抗ヒトCD22抗体の中で、その結合エピトープが細胞膜に近いほど、抗体が誘導する内在化の速度が遅くなることが、本開示の発明者によって見出された。したがって、エピトープベースの選択、即ち、細胞膜から離れたエピトープに結合する抗CD22抗体について選択することによって、迅速な内在化を誘導する抗体を同定することができる。本明細書で開示されるまたはさもなくば当分野で公知のエピトープマッピングの任意の方法、例えば、ショットガン突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発およびアラニンスキャニング;ドメインまたは断片スキャニング;ペプチドスキャニング(例えば、Pepscan技術)を含むがこれらに限定されない突然変異誘発;ディスプレイ法(例えば、ファージディスプレイ、微生物ディスプレイおよびリボソーム/mRNAディスプレイ);タンパク質分解およびマススペクトロスコーピーが関与する方法;ならびに構造決定(例えば、X線結晶解析およびNMR)が使用され得る。
【0168】
一部の実施形態では、ドメイン2中の不連続のコンフォメーションエピトープに特異的に結合して、本明細書で開示されるように迅速な内在化を誘導する抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトリンパ球に由来するmRNAから調製されたヒトVLおよびVH cDNAを使用して調製された組換えコンビナトリアル抗体ライブラリー、好ましくは、scFvファージディスプレイライブラリーのスクリーニングによって単離され得る。かかるライブラリーを調製およびスクリーニングするための方法論は、当分野で公知である。ファージディスプレイライブラリーを生成するための市販のキット(例えば、GE Healthcare Life Sciences Recombinant Antibody Phage System(RAPS);およびNew England Biolab Ph.D(商標)Phage Display Library Kit、カタログ番号E8100S)に加えて、抗体ディスプレイライブラリーを生成およびスクリーニングする際の使用のために特に適した方法および試薬の例は、例えば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Fuchs et al. (1991) Biotechnology 9:1369-1372;Hay et al. (1992) Hum Antibod Hybridomas 3:81-85;Huse et al. (1989) Science 246:1275-1281;McCafferty et al., Nature (1990) 348:552-554;Griffiths et al. (1993) EMBO J 12:725-734;Hawkins et al. (1992) J Mol Biol 226:889-896;Clackson et al. (1991) Nature 352:624-628;Gram et al. (1992) PNAS 89:3579-3580;Garrard et al. (1991) Biotechnology 9:1373-1377;Hoogenboom et al. (1991) Nuc Acid Res 19:4133-4137;およびBarbas et al. (1991) PNAS 88:7978-7982において見出すことができる。
【0169】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、0.8×109M-1またはそれよりも高いKaでのヒトCD22への結合についてさらに選択される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約1.2nMまたはそれよりも低いKDでのヒトCD22への結合について選択される。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、0.07RU s-1もしくはそれ未満のkd、または0.015RU s-1もしくはそれ未満のkdでの、ヒトCD22からの解離について選択される。本明細書で言及される結合パラメーターは、本明細書で開示されるまたは当分野で公知の任意の方法、例えば、表面プラズモン共鳴によって決定され得る。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、0.2μg/mlまたはそれ未満のEC50でLRIDの表面結合部分を発現する代理標的細胞に対するCMC活性を誘導するその機能について、さらに選択される。
【0170】
一部の実施形態では、ヒトCD22に対する高い親和性および低いオフ速度(off rate)定数を有するマウス、組換えまたはヒト抗体を単離するために、ヒトCD22に対する高い親和性および低いオフ速度定数を有する親マウスまたはキメラ抗CD22抗体(例えば、受託番号:7621でATCCに寄託されたマウス抗CD22抗体のためのハイブリドーマ)が、PCT公開番号WO93/06213に記載されるエピトープインプリンティング法を使用して、ヒトCD22に対する類似の結合活性を有するヒト重鎖および軽鎖配列を選択するために最初に使用される。この方法において使用される抗体ライブラリーは、好ましくは、PCT公開番号WO92/01047、McCafferty et al., Nature (1990) 348:552-554;およびGriffiths et al., (1993) EMBO J 12:725-734に記載されるように調製およびスクリーニングされるscFvライブラリーである。scFv抗体ライブラリーは、好ましくは、抗原として、組換えヒトCD22(2~4ドメイン)、および/または抗CD22抗体の抗原結合部位(ABS)に対して特異的な抗イディオタイプ抗体(例えば、米国特許第9371396号Bに記載されるLRID)を使用して、スクリーニングされる。
【0171】
最初のヒトVLおよびVHセグメントが選択されると、最初に選択されたVLおよびVHセグメントの異なる対がヒトCD22結合についてスクリーニングされる「ミックス・アンド・マッチ(mix and match)」実験が、好ましいVL/VH対組合せを選択するために実施される。特定の抗原に対する抗体の結合の親和性および/または特異性は、その内容がそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれるWu et al., J. Mol. Biol., 294:151 (1999)に記載されるような、「定向進化」の方法を使用して増加され得る。さらに、親和性をさらに改善しおよび/またはヒトCD22(または組換えCD22(2~4)ドメイン)結合についてのオフ速度定数を低下させるために、好ましいVL/VH対(複数可)のVLおよびVHセグメントが、天然の免疫応答の間の抗体の親和性成熟を担うin vivo体細胞突然変異プロセスと類似のプロセスで、好ましくは、VHおよび/またはVLのCDR3領域内で、ランダムに突然変異され得る。このin vitro親和性成熟は、それぞれVH CDR3またはVL CDR3に対して相補的なPCRプライマーを使用してVHおよびVL領域を増幅することによって達成され得、これらのプライマーは、ある特定の位置において4つのヌクレオチド塩基のランダム混合物で「スパイク」されており、その結果、得られたPCR産物は、VHおよび/またはVL CDR3領域中にランダム突然変異が導入されたVHおよびVLセグメントをコードする。これらのランダムに突然変異されたVHおよびVLセグメントは、ヒトCD22、好ましくは、CD22のドメイン2~4を含有する組換えタンパク質への結合、および/または抗CD22抗体の抗イディオタイプ抗体(例えば、LRID)への結合について再スクリーニングされ得;ヒトCD22、好ましくは、組換えCD22(2~4)ドメイン、および/またはCD22に対する抗イディオタイプ抗体(例えば、LRID)結合についての高い親和性および低いオフ速度を示す配列が、選択され得る。
【0172】
ファージディスプレイに加えて、スクリーニングのための候補モノクローナル抗体は、当業者に周知のハイブリドーマ法を使用しても調製することができる。例えば、ハイブリドーマ法を使用して、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターまたは他の適切な宿主動物が、上記のように免疫化される。一部の実施形態では、リンパ球は、in vitroで免疫化される。一部の実施形態では、免疫化抗原は、ヒトタンパク質またはその断片である。一部の実施形態では、免疫化抗原は、ヒトタンパク質またはその断片である。
【0173】
免疫化の後、リンパ球は、単離され、例えば、ポリエチレングリコールを使用して、適切な骨髄腫細胞系と融合される。ハイブリドーマ細胞は、当分野で公知の特殊化された培地を使用して選択され、未融合のリンパ球および骨髄腫細胞は、選択プロセスを生き残らない。選択された抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、免疫沈降、イムノブロッティングおよびin vitro結合アッセイ(例えば、フローサイトメトリー、FACS、ELISA、BLI、SPR(例えば、Biacore)およびラジオイムノアッセイ)を含むがこれらに限定されない種々の方法によって同定され得る。所望の特異性、親和性および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定されると、クローンは、限界希釈または他の技法によってサブクローニングされ得る。ハイブリドーマは、標準的な方法を使用してin vitro培養物中で、または動物において腹水腫瘍としてin vivoで、増殖され得る。モノクローナル抗体は、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動および透析を含むがこれらに限定されない当分野の標準的な方法に従って、培養培地または腹水から精製され得る。
【0174】
シスでのCD22結合を破壊する抗体または抗原結合性断片についてスクリーニングするさらなる方法は、本開示の発明者らによって以前に開示されている(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2020078453A1)。一部の実施形態では、スクリーニング方法は、抗体の存在下および非存在下で、操作された細胞系への、複数の2,6-シアル酸を含有する外因性プローブの結合を比較することによって、非内在化性のヒトCD22ドメイン1~7と2,6-シアル酸リガンドを含有するドメインとを含む融合タンパク質を発現する操作された細胞系を使用することを含み、抗体は、操作された細胞系への外因性プローブの結合を回復させる場合、CD22シス-結合を破壊することが可能であると同定される。
【0175】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、ヒトCD22ドメイン1~7およびグリコホリンAを含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、グリコホリンAの膜貫通および細胞質部分に融合されたヒトCD22の細胞外ドメインを含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、崩壊促進因子(DAF)タンパク質から単離されたグリコホスファチジルイノシトールシグナル配列に融合されたヒトCD22の細胞外ドメインを含む。
【0176】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号15に対して少なくとも95%同一であるものを含むアミノ酸配列を有する。別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号15に対して少なくとも95、96、97、98または99%同一なアミノ酸配列を有する。別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号15のアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号16に対して少なくとも95%同一であるものを含むアミノ酸配列を有する。別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号15に対して少なくとも95、96、97、98または99%同一なアミノ酸配列を有する。別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号16のアミノ酸配列を有する。
【0177】
一部の実施形態では、外因性プローブは、α2-6-シアリルラクトースで置換されたビオチンコンジュゲート化ポリアクリルアミド(6’PAA-B;Glycotech)である。
【0178】
一部の実施形態では、本明細書で開示されるスクリーニング方法を介して本明細書で開示される治療的使用を有すると同定された非ヒト抗体は、ヒト化され得、このとき、抗体の特定の配列または領域は、ヒトにおいて天然に産生される抗体に対する類似性を増加させるように改変される。一部の実施形態では、抗原結合ドメイン部分は、ヒト化される。
【0179】
しばしば、フレームワーク領域中のフレームワーク残基は、抗原結合を変更、好ましくは改善するために、CDRドナー抗体由来の対応する残基で置換され得る。これらのフレームワーク置換は、当分野で周知の方法によって、例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDRおよびフレームワーク残基の相互作用のモデリング、ならびに特定の位置における異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較によって、同定される(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、例えば、Queenら、米国特許第5,585,089号;およびRiechmann et al., 1988, Nature, 332:323を参照されたい)。
【0180】
ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からの、抗体中に導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「インポート」残基と呼ばれる場合が多く、これらは、典型的には、「インポート」可変ドメインから取られる。したがって、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリン分子由来の1つまたは複数のCDRおよびヒト由来のフレームワーク領域を含む。CDR-グラフティングを含む抗体のヒト化の方法が、当分野で周知である(例えば、その各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる、Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988);欧州特許第239,400号;国際公開番号WO91/09967;ならびに米国特許第4,816,567号;同第6,331,415号;同第5,225,539号;同第5,530,101号;同第5,585,089号;および同第6,548,640号を参照されたい)。かかるヒト化抗体では、無傷ヒト可変ドメインに実質的に満たないヒト可変ドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、一部のCDR残基およびおそらくは一部のFR残基が、げっ歯類抗体中の類似の部位由来の残基によって置換されたヒト抗体である。ヒト化抗体を産生する方法には、ベニアリング(veneering)またはリサーフェシング(resurfacing)(例えば、その各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる、欧州特許第592,106号および同第519,596号;Padlan, 1991, Molecular Immunology, 28(4/5):489-498;Studnicka et al., 1994, Protein Engineering, 7(6):805-814;ならびにRoguska et al., 1994, PNAS, 91:969-973を参照されたい)、鎖シャッフリング(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,565,332号を参照されたい)、ならびに、例えば、その各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0042664号、米国特許出願公開第2005/0048617号、米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、国際公開番号WO9317105、Tan et al., J. Immunol., 169:1119-25 (2002)、Caldas et al., Protein Eng., 13(5):353-60 (2000)、Morea et al., Methods, 20(3):267-79 (2000)、Baca et al., J. Biol. Chem., 272(16):10678-84 (1997)、Roguska et al., Protein Eng., 9(10):895-904 (1996)、Couto et al., Cancer Res., 55 (23 Supp):5973s-5977s (1995)、Couto et al., Cancer Res., 55(8):1717-22 (1995)、Sandhu J S, Gene, 150(2):409-10 (1994)およびPedersen et al., J. Mol. Biol., 235(3):959-73 (1994)において開示される技法もまた含まれる。
【0181】
ヒト化抗体を作製する際に使用される軽鎖および重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低減させるためのものである。いわゆる「ベストフィット」法によれば、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列は、公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。次いで、げっ歯類の配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として受容される(その内容がそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sims et al., J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia et al., J. Mol. Biol., 196:901 (1987))。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体のために使用され得る(その内容がそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta et al., J. Immunol., 151:2623 (1993))。
【0182】
抗体は、標的抗原に対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性の保持を伴って、ヒト化され得る。例えば、ヒト化抗体は、親およびヒト化配列の三次元モデルを使用する、親配列および種々の概念的ヒト化産物の分析のプロセスによって調製され得る。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者に知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の起こり得る三次元コンフォメーション構造を説明し示すコンピュータプログラムが、入手可能である。これらのディスプレイの検査は、候補免疫グロブリン配列の機能性における残基のあり得る役割の分析、即ち、標的抗原に結合する候補免疫グロブリンの能力に影響する残基の分析を可能にする。この方法で、FR残基は、レシピエント配列およびインポート配列から選択され組み合わされ得、そうして、所望の抗体特徴、例えば、標的抗原に対する増加した親和性が、達成される。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に、直接的かつ最も実質的に関与する。
【0183】
組換え免疫グロブリンディスプレイライブラリーからの本明細書で開示される抗CD22抗体のスクリーニングおよび単離の後、選択された抗体をコードする核酸は、ディスプレイパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収され得、標準的な組換えDNA技法によって、他の発現ベクター中にサブクローニングされ得る。所望により、核酸は、本明細書で開示されるまたは当分野で公知の他の抗体形態を創出するためにさらに操作され得る(例えば、さらなる免疫グロブリンドメイン、例えば、さらなる定常領域をコードする核酸に連結され得る)。抗体をコードするDNAを組換え発現ベクター中にクローニングすることを含む、コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングによって単離され、哺乳動物宿主細胞中に導入された組換えヒト抗体を発現させる方法は、当分野で周知である。
【0184】
一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、(1)CD22とAβとの相互作用を立体的に妨害しないエピトープに結合すること、ならびに(2)CD22ホモ-クラスターのシス-結合を破壊すること、CD22の2,6-シアル酸結合のシス-トランス変換を促進すること、および/またはニューロン2,6-シアル酸へのCD22のトランス-結合を促進すること、について、選択される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、CD22内在化を促進する、好ましくは細胞表面上のFcγRに係合することなしに、ミクログリア細胞におけるAβの内在化を促進する、神経炎症を低減させる、ミクログリア細胞におけるNFκBシグナル伝達を抑制する、ミクログリア細胞によるIL-6分泌を抑制するその機能、またはそれらの任意の組合せについて、直接選択される。
【0185】
一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、CD22内在化を促進するその機能について選択される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、好ましくは細胞表面上のFcγRに係合することなしに、ミクログリア細胞におけるAβの内在化を促進するその機能について選択される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、神経炎症を低減させるその機能について選択される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ミクログリア細胞におけるNFκBシグナル伝達を抑制するその機能について選択される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ミクログリア細胞によるIL-6分泌を抑制するその機能について選択される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、神経炎症を抑制するその機能について選択される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、シナプスファゴサイトーシスを抑制するその機能について選択される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、ニューロン死を抑制するその機能について選択される。
【0186】
本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、例えば、標準的なELISAによって、ヒトCD22への結合について試験され得る。簡潔に述べると、マイクロタイタープレートが、精製されたCD22でコーティングされ、次いで、ウシ血清アルブミンでブロッキングされる。抗体の希釈物(例えば、CD22で免疫化されたマウス由来の血漿の希釈物)が各ウェルに添加され、インキュベートされる。プレートは、洗浄され、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされた二次試薬(例えば、ヒト抗体については、ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的ポリクローナル試薬)と共にインキュベートされる。洗浄後、プレートは発色され得、分光光度計によって分析され得る。次いで、免疫化されたマウス由来の血清が、ヒトCD22を発現する細胞系への結合についてフローサイトメトリーによってさらにスクリーニングされ得るが、CD22を発現しない対照細胞系への結合についてはスクリーニングされない。簡潔に述べると、抗CD22抗体の結合は、CD22発現CHO細胞を抗CD22抗体と共にインキュベートすることによって評価され得る。細胞は洗浄され得、結合は、抗ヒトIgG Abを用いて検出され得る。フローサイトメトリー分析は、FACScanフローサイトメトリー(Becton Dickinson、San Jose、CA)を使用して実施され得る。最も高い力価を示すマウスが、融合に使用され得る。
【0187】
上記ELISAアッセイが、抗体、およびしたがって、CD22免疫原との正の反応性を示す抗体を産生するハイブリドーマについてスクリーニングするために使用され得る。次いで、高い親和性でCD22に結合する抗体を産生するハイブリドーマがサブクローニングされ得、さらに特徴付けられ得る。次いで、(ELISAによって)親細胞の反応性を保持する、各ハイブリドーマからの1つのクローンが、細胞バンクを作製するため、および抗体精製のために、選択され得る。
【0188】
抗CD22抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマが、モノクローナル抗体精製のために成長され得る。親和性クロマトグラフィーの前に、上清が濾過および濃縮され得る。溶出されたIgGは、純度を確実にするために、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーによってチェックされ得る。緩衝溶液は交換され得、濃度が決定され得る。モノクローナル抗体は、アリコート化され貯蔵され得る。
【0189】
抗体および抗原結合性断片の構造的および機能的特性を決定するための種々の方法およびアッセイが、当分野で公知である。例えば、選択された抗CD22モノクローナル抗体が独自のエピトープに結合するかどうかを決定するために、各抗体は、市販の試薬(Pierce、Rockford、IL)を使用してビオチン化され得る。ビオチン化MAb結合は、ストレプトアビジン標識されたプローブを用いて検出され得る。未標識のモノクローナル抗体およびビオチン化モノクローナル抗体を使用する競合研究が、CD22コーティングされたELISAプレートを使用して実施され得る。
【0190】
CD22を発現する生細胞へのモノクローナル抗体の結合を試験するために、フローサイトメトリーが使用され得る。簡潔に述べると、CD22発現細胞系(標準的な成長条件下で成長させた)が、0.1%BSAを含有するPBS中種々の濃度のモノクローナル抗体と、4℃で1時間混合される。洗浄後、細胞は、一次抗体染色と同じ条件下で、フルオレセイン標識された抗IgG抗体と反応させられる。試料は、単一の細胞に関してゲーティングするために光および側方散乱特性を使用するFACScan機器によって分析され得、標識された抗体の結合が決定される。蛍光顕微鏡を使用する代替的アッセイが、フローサイトメトリーアッセイ(に加えてまたはその代わりに)使用され得る。細胞は、正確に上記のように染色され得、蛍光顕微鏡によって試験され得る。この方法は、個々の細胞の可視化を可能にするが、抗原の密度に依存して減少した感度を有し得る。
【0191】
種々の抗CD22抗体の結合親和性、交差反応性および結合反応速度論を分析するための方法には、当分野で公知の標準的なアッセイ、例えば、Gatorシステム(Probe Life)もしくはOctet-96システム(Sartorius AG)などを使用するバイオレイヤー干渉法(BLI)、またはBIACORE(商標)2000 SPR機器(Biacore AB、Uppsala、Sweden)を使用するBIACORE(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)分析が含まれる。
【0192】
上で開示された機能的特性について抗CD22抗体または抗原結合性断片を試験またはスクリーニングするためのアッセイは、当分野で周知である。本明細書で開示されるまたはさもなくば当分野で公知の任意の方法が、本明細書で開示されるスクリーニングの方法において使用され得る。例えば、本明細書で開示されるスクリーニング方法において使用され得る機能的アッセイには、NFκBシグナル伝達を測定するためのルシフェラーゼアッセイ、IL-6放出を測定するためのELISAアッセイ、シナプスファゴサイトーシスを測定するためのELISAまたはウエスタンブロットアッセイ、およびニューロン死を測定するためのMTTアッセイが含まれ、これらは全て、以下の実験のセクションで開示される。
【0193】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法を使用して同定または産生される抗CD22抗体および抗原結合性断片、ならびにそれらの治療的使用もまた、本明細書で提供される。
5.3 産生の方法
【0194】
モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体およびヒト化抗体を含むがこれらに限定されない、本明細書で開示される方法において使用され得る抗CD22抗体およびその抗原結合性断片は、本明細書で開示されるまたはさもなくば当分野で公知の任意の方法によって調製され得る。
【0195】
抗体産生の方法は、当分野で周知である。例えば、その各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988);Hammerling et al., in:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563, 681 (Elsevier, N.Y., 1981)を参照されたい。
【0196】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法において使用され得る抗体または抗原結合性断片は、組換えである、即ち、組換え手段によって調製、発現、産生または単離される。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体または抗原結合性断片は、例えば、宿主細胞中に組換え発現ベクターを導入すること、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリー、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor, L.D., et al. (1992) Nucl. Acid Res. 20:6287-95を参照されたい)、または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングが関与する任意の他の手段によって調製、発現、産生もしくは単離された抗体によって、調製され得る。
【0197】
一部の実施形態では、抗体および抗原結合性断片は、宿主細胞における免疫グロブリン軽鎖および重鎖遺伝子の組換え発現によって調製され得る。抗体を組換え発現させるために、宿主細胞には、抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖をコードするDNA断片を保有する1つまたは複数の組換え発現ベクターが導入され、その結果、軽鎖および重鎖は、宿主細胞において発現され、好ましくは、宿主細胞が培養される培地中に分泌され、その培地から抗体が回収され得る。Sambrook, Fritsch and Maniais (eds), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N.Y., (1989)、Ausubel et al. (eds.) Current Protocols In Molecular Biology, Greene Publishing Assoviates, (1989)および米国特許第4,816,397号に記載されるものなどの、標準的な組換えDNA方法論が、抗体重鎖および軽鎖遺伝子を得るため、これらの遺伝子を組換え発現ベクター中に取り込むため、およびベクターを宿主細胞中に導入するために使用される。
【0198】
組換え抗体または抗原断片、例えば、SM03、SM06またはSM03/SM06関連抗体を発現させるために、軽鎖および重鎖可変領域をコードするDNA断片が最初に得られる。これらのDNAは、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)を使用する、マウス抗体軽鎖および重鎖可変配列のためのハイブリドーマの増幅および改変によって、または当業者に公知の標準的な方法を使用する、設計された軽鎖および重鎖可変配列のコードされたアミノ酸配列に基づくオリゴ合成によって、得ることができる。コードDNA配列は、得られた抗体の哺乳動物発現を容易にするためにさらに最適化され得る。
【0199】
マウス抗体についてVHおよびVL断片が得られると、これらの配列は、フレームワークパッチバージョンのSM03(即ち、SM06)をコードするように突然変異され得、その方法は、中国特許第01144894.6号および同第03123054.7号ならびに米国特許第7,321,026号B2および同第7,338,659号B2に記載され、これらは共に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0200】
SM03もしくはSM06またはSM03/SM06関連のVHおよびVLセグメントをコードするDNA断片が(例えば、上記のように、元のマウスVHおよびVL遺伝子の増幅および突然変異誘発によって)得られると、これらのDNA断片は、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、またはscFv遺伝子に変換するために、標準的な組換えDNA技法によってさらに操作され得る。これらの操作では、VLをコードするDNA断片またはVHをコードするDNA断片は、別のタンパク質、例えば、抗体定常領域または柔軟性のあるリンカーをコードする別のDNA断片に動作可能に連結される。用語「動作可能に連結される」は、この文脈で使用される場合、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように2つのDNA断片が接続されることを意味する意図である。
【0201】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に動作可能に連結することによって、全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当分野で公知であり(例えば、Kabat, E.A., et al (1991) Sequences Of Proteins Of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、Ig4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であり得るが、最も好ましくは、IgG1またはIgG4定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子について、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に動作可能に連結され得る。
【0202】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に動作可能に連結することによって、全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当分野で公知であり(例えば、Kabat, E.A., et al (1991) Sequences Of Proteins Of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であり得るが、最も好ましくは、カッパ定常領域である。
【0203】
scFv遺伝子を調製するために、VHをコードするDNA断片およびVLをコードするDNA断片は、柔軟性のあるリンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする別の断片に動作可能に連結され、その結果、VHおよびVL配列は、連続する単一鎖タンパク質として発現され得、VLおよびVH領域は、柔軟性のあるリンカーによって接続される(例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426;Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;McCafferty et al.(1990) Nature 348:552-554を参照されたい)。
【0204】
本明細書で開示される方法において使用され得る抗体または抗原結合性断片を発現させるために、上記のように得られた、部分的なまたは全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAが、発現ベクター中に挿入され、その結果、遺伝子は、転写および翻訳制御配列に動作可能に連結される。この文脈では、用語「動作可能に連結される」は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するそれらの意図した機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター中にライゲーションされることを意味する意図である。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合性であるように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別々のベクター中に挿入され得、またはより典型的には、両方の遺伝子が、同じ発現ベクター中に挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクター上の相補的な制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合には平滑末端ライゲーション)によって、発現ベクター中に挿入される。一部の実施形態では、SM03、SM06またはSM03/SM06関連の軽鎖または重鎖配列の挿入の前に、発現ベクターは既に、抗体定常領域配列を保有している。例えば、SM03もしくはSM06またはSM03/SM06関連のVHおよびVL配列を全長抗体遺伝子に変換するための1つのアプローチは、それぞれ重鎖定常領域および軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクター中にそれらを挿入することであり、その結果、VHセグメントは、ベクター内のCHセグメント(複数可)に動作可能に連結され、VLセグメントは、ベクター内のCLセグメントに動作可能に連結される。さらにまたはあるいは、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を容易にするシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクター中にクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(即ち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0205】
抗体鎖遺伝子に加えて、本明細書で提供される組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を保有し得る。用語「調節配列」は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御する、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む意図である。かかる調節配列は、例えば、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods In Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されている。当業者が理解するように、調節配列の選択を含む、発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなどの因子に依存する。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列には、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメント、例えば、免疫グロブリン重鎖(IgH)エンハンサー(Gillies et al. (1983) Cell 33:717-728)、メタロチオネイン(MT)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、CMVプロモーター/エンハンサー)、サルウイルス40(SV40)(例えば、SV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーが含まれる。ウイルス調節エレメントおよびその配列のさらなる記載については、例えば、米国特許第5,665,578号;同第5,168,062号;同第4,510,245号;および同第4,968,615号を参照されたい。
【0206】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本明細書で提供される組換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択可能なマーカー遺伝子を保有し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、薬物、例えば、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートに対する耐性を付与する。好ましい選択可能なマーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅と併せたdhfr-宿主細胞における使用のため)、グルタミン酸シンターゼ(GS)遺伝子およびneo遺伝子(G418選択のため)が含まれる。
【0207】
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技法によって、宿主細胞中にトランスフェクトされる。用語「トランスフェクション」の種々の形態は、原核生物または真核生物宿主細胞中への外因性DNAの導入のために一般に使用される広範な種々の技法、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクション、リポフェクション、プロトプラスト融合などを包含する意図である。抗体および抗原結合性断片は、原核生物または真核生物のいずれかの宿主細胞において産生され得るが、真核生物細胞、特に哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が好ましく、それは、かかる宿主細胞が、適切にフォールディングされた免疫学的に活性な抗体をアセンブルおよび分泌する可能性が原核生物細胞よりも高いからである。
【0208】
本明細書に記載される方法において使用される組換え抗体を発現させるための好ましい哺乳動物宿主細胞には、SP2/0骨髄腫細胞、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R. J. Kaufman and P. A. Sharp (1982) J. Mol. Biol. 159:601-621に記載されるDHFR選択可能マーカーと共に使用される、Urlaub and Chasin, (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4200に記載されるdfhr-CHO細胞が含まれる)が含まれる。組換え抗体をコードする発現ベクターが哺乳動物宿主細胞中に導入される場合、抗体は、宿主細胞における抗体の発現、またはより好ましくは、宿主が成長される培養培地中への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間にわたって宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を使用して、培養培地から回収され得る。
【0209】
宿主細胞は、無傷抗体の部分、例えば、Fab断片またはscFv分子を産生するためにも使用され得る。上記手順のバリエーションが、本明細書で明示的に企図される。例えば、宿主細胞を、本明細書で開示される方法において使用される抗体の軽鎖または重鎖のいずれか(両方ではない)をコードするDNAでトランスフェクトすることが望ましい場合がある。組換えDNA技術は、CD22への結合に必要ない軽鎖および重鎖のいずれかまたは両方をコードするDNAの一部または全てを除去するためにも使用され得る。かかる短縮されたDNA分子から発現される分子もまた、本明細書で提供される抗体によって包含される。さらに、一方の重鎖および一方の軽鎖が、ヒトCD22に特異的に結合する抗体であり、他方の重鎖および軽鎖が、CD22以外の抗原に対して特異的である、二官能性抗体は、標準的な化学的架橋結合方法によって、本発明の抗体を第2の抗体に架橋結合させることによって産生され得る。
【0210】
本明細書で開示される方法において使用され得る抗体またはその抗原結合性断片の組換え発現の系の一部の実施形態では、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターは、電気穿孔によってSP2/0細胞中に導入される。発現系の一部の実施形態では、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターは、リポフェクションなどの標準的な技法によって、CHO細胞中に導入される。
【0211】
組換え発現ベクター内で、抗体重鎖および軽鎖遺伝子は各々、遺伝子の高レベルの転写を駆動するために、マウスまたはヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)、CMVエンハンサー、メタロチオネインまたはAdMLPプロモーター調節エレメントに動作可能に連結される。組換え発現ベクターは、メトトレキサート選択/増幅を使用した、ベクターでトランスフェクトされたSP2/0細胞の選択を可能にする、DHFR遺伝子もまた保有する。あるいは、マウスまたはヒトIgH、CMVエンハンサー/AdMLP/メタロチオネインプロモーター調節エレメントに動作可能に連結された抗体重鎖および軽鎖遺伝子とDHFR遺伝子とを含有する組換え発現ベクターは、dhfr-であるSP2/0またはCHO細胞をトランスフェクトするために使用され得る。ベクターでトランスフェクトされたSP2/0またはCHO細胞が選択され得、ベクター中の遺伝子発現のレベルは、培養物中のメトトレキサートのレベルを増加させることによって増幅され得る。選択された形質転換体宿主細胞は、抗体重鎖および軽鎖の発現を可能にするために培養され、無傷抗体は、培養培地から回収される。標準的な分子生物学の技法が、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体について選択し、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回収するために、使用される。
5.4 医薬組成物
【0212】
本明細書で開示される方法において使用され得る抗CD22抗体または抗原結合性断片(例えば、SM03、SM06)を含む医薬組成物もまた、本明細書で提供される。一部の実施形態では、医薬組成物は、本明細書で開示される抗CD22抗体または抗原結合性断片の治療有効量および薬学的に許容される担体を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、Aβ関連疾患もしくは障害または神経炎症関連疾患もしくは障害の処置において有用である。一部の実施形態では、医薬組成物は、ADを処置する際に有用である。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象(例えば、ヒト患者)におけるAD進行を阻害する際に有用である。一部の実施形態では、医薬組成物は、対象(例えば、ヒト患者)における認知障害を寛解させる際に有用である。
【0213】
本明細書で開示される医薬組成物中で担体材料と組み合わされ得る治療的抗体の量は、変動し得る。一部の実施形態では、医薬組成物中に存在する抗体の量は、治療効果を生じる量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、薬学的に許容される担体と組み合わせた、約0.01パーセント~約99パーセントの活性成分、約0.1パーセント~約70パーセント、または約1パーセント~約30パーセントの活性成分の範囲である。
【0214】
本明細書で提供される医薬組成物は、本明細書で提供される抗CD22抗体もしくは抗原結合性断片、例えば、SM03、SM06もしくはSM03/SM06関連抗体、または本明細書で開示される方法によって同定される抗CD22抗体もしくは抗原結合性断片を含む。抗CD22抗体または抗原結合性断片は、種々の濃度で存在し得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、本明細書で提供される可溶性抗CD22抗体または抗原結合性断片を、1~1000mg/mlで含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、本明細書で提供される可溶性抗CD22抗体または抗原結合性断片を、10~500mg/ml、10~400mg/ml、10~300mg/ml、10~200mg/ml、10~100mg/ml、20~100mg/mlまたは50~100mg/mlで含む。一部の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、本明細書で提供される抗CD22抗体または抗原結合性断片を、約10mg/ml、約20mg/ml、約30mg/ml、約40mg/ml、約50mg/ml、約60mg/ml、約70mg/ml、約80mg/ml、約90mg/ml、約100mg/ml、約120mg/ml、約150mg/ml、約180mg/ml、約200mg/ml、約300mg/ml、約500mg/ml、約800mg/mlまたは約1000mg/mlで含む。投薬量は、当業者によって容易に調整され得る;例えば、純度における減少は、投薬量における増加を要求する。
【0215】
本明細書で提供される医薬組成物は、種々の形態であり得る。これらには、例えば、液体、半固体および固体剤形、例えば、液体溶液(例えば、注射可能なおよび注入可能な溶液)、分散物または懸濁物、錠剤、丸剤、粉末、リポソームおよび坐剤が含まれる。好ましい形態は、意図した投与様式および治療的適用に依存する。本明細書に記載される医薬組成物または製剤において使用され得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、ならびに注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが含まれる。
【0216】
適切な流動性は、例えば、コーティング材料、例えば、レシチンの使用によって、分散物の場合には要求される粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、注射可能なまたは注入可能な溶液の形態である。一部の実施形態では、医薬組成物は、水性製剤である。かかる製剤は、典型的には、溶液または懸濁物であるが、これには、コロイド、分散物、エマルションおよび多相材料もまた含まれ得る。用語「水性製剤」は、少なくとも50%w/wの水を含む製剤として定義される。同様に、用語「水溶液」は、少なくとも50%w/wの水を含む溶液として定義され、用語「水性懸濁物」は、少なくとも50%w/wの水を含む懸濁物として定義される。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬物濃度に適切な他の秩序のある構造として製剤化され得る。
【0217】
一部の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物は、フリーズドライされ、これに、医師または患者が、使用前に、溶媒および/または希釈剤を添加する。
【0218】
本明細書で提供される医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。薬学的に許容される担体には、生理学的に適合性の、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。例には、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つまたは複数、ならびにそれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体には、組成物中の等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムが含まれる。
【0219】
一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、抗体または抗原結合性断片の保存期間または有効性を増強する微量の補助物質、例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤または緩衝液をさらに含む。一部の実施形態では、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適切である。投与の経路に依存して、活性成分(即ち、抗CD22抗体または抗原結合性断片)は、活性成分を不活性化し得る酸および他の天然の条件の作用から活性成分を保護するための材料でコーティングされ得る。
【0220】
本明細書で開示される抗CD22抗体または抗原結合性断片、例えば、SM03、SM06またはSM03/SM06関連抗体を有する医薬組成物の調製のためのキットもまた、本明細書で提供される。一部の実施形態では、キットは、本明細書で開示される抗CD22抗体または抗原結合性断片および薬学的に許容される担体を、1つまたは複数の容器中に含む。別の実施形態では、キットは、対象への投与のための、本明細書で開示される抗CD22抗体または抗原結合性断片を含み得る。具体的な実施形態では、キットは、抗CD22抗体または抗原結合性断片の調製および/または投与に関する使用説明書を含む。
【0221】
一部の実施形態では、本明細書で開示される医薬組成物または製剤は、以下を含む:(a)本明細書で開示される抗CD22抗体もしくは抗原結合性断片;(b)緩衝剤;(c)安定化剤;(d)塩;(e)増量剤;および/または(f)界面活性剤。一部の実施形態では、医薬組成物または製剤は、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも6か月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも5年間またはそれよりも長い期間にわたって、安定である。一部の実施形態では、医薬組成物または製剤は、4℃、25℃または40℃で貯蔵した場合に安定である。一部の実施形態では、それらの長期貯蔵を可能にするために、抗CD22抗体または抗原結合性断片の安定性を改善する医薬組成物または製剤もまた、本明細書で提供される。本明細書で開示される医薬組成物は、防腐剤、等張化剤、キレート剤、安定剤および/または界面活性剤のうちの1つまたは複数、ならびにそれらの種々の組合せをさらに含み得る。医薬組成物における防腐剤、等張剤、キレート剤、安定剤および界面活性剤の使用は、当業者に周知である。Remington: The Science And Practice Of Pharmacy, 19th edition, 1995に対して参照がなされ得る。
【0222】
本明細書で開示される医薬組成物または製剤において有用な緩衝剤は、別の酸または塩基の添加後に溶液の酸性度(pH)を選択された値の近傍に維持するために使用される弱酸または弱塩基であり得る。適切な緩衝剤は、製剤のpH制御を維持することによって、医薬製剤の安定性を最大化し得る。適切な緩衝剤はまた、生理的適合性を確実にし得るまたは溶解度を最適化し得る。レオロジー、粘度および他の特性もまた、製剤のpHに依存し得る。一般的な緩衝剤には、ヒスチジン、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸塩およびリン酸塩が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、緩衝剤は、等張剤、および潜在的に、当分野で公知の酸または塩基によるpH調整と共に、ヒスチジン(例えば、L-ヒスチジン)を含む。ある特定の実施形態では、緩衝剤は、L-ヒスチジンである。ある特定の実施形態では、製剤のpHは、約2と約10との間または約4と約8との間で維持される。
【0223】
安定化剤は、その製品を安定化するために、医薬品製品に添加される。かかる薬剤は、異なる方法でタンパク質を安定化し得る。一般的な安定化剤には、アミノ酸、例えば、グリシン、アラニン、リシン、アルギニンもしくはスレオニン、炭水化物、例えば、グルコース、スクロース、トレハロース、ラフィノース(rafftnose)もしくはマルトース、任意の種類および分子量のポリオール、例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、シクロデキストリンもしくはデキストラン(destran)、またはPEGが含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、安定化剤は、凍結乾燥された調製物中でのFIXポリペプチドの安定性を最大化するように選択される。ある特定の実施形態では、安定化剤は、スクロースおよび/またはアルギニンである。
【0224】
増量剤は、製品に体積および質量を追加するために医薬組成物または製剤に添加され得、それにより、その正確な計量および取り扱いを容易にする。一般的な増量剤には、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウムまたはステアリン酸マグネシウムが含まれるがこれらに限定されない。
【0225】
界面活性剤は、親液性基および疎液性基を有する両親媒性物質である。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、双性イオン性または非イオン性であり得る。非イオン性界面活性剤の例には、アルキルエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アミンエトキシレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、脂肪アルコール、例えば、セチルアルコールもしくはオレイルアルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、ポリソルベート、またはドデシルジメチルアミンオキシドが含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80である。
【0226】
本明細書で開示される医薬組成物は、薬学的に許容される抗酸化剤もまた含み得る。薬学的に許容される抗酸化剤の例には、以下が含まれる:(1)水可溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油可溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
【0227】
これらの組成物は、アジュバント、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤もまた含有する。微生物の存在の防止は、上記滅菌手順によって、ならびに種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって、その両方で確実にされ得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に含めることもまた望ましい場合がある。さらに、注射可能な医薬品形態の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0228】
医薬組成物または製剤は、典型的には、製造および貯蔵の条件下で無菌かつ安定でなければならない。薬学的に許容される担体には、無菌水溶液または分散物、および無菌の注射可能な溶液または分散物の即時の調製のための無菌粉末が含まれる。無菌の注射可能な溶液は、上に列挙された成分の1つまたは組合せと共に、適切な溶媒中に必要とされる量で治療的抗体または抗原結合性断片を取り込み、その後、必要に応じて濾過滅菌することによって、調製され得る。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当分野で公知である。一般に、分散物は、基本分散媒と上に列挙したものからの必要とされる他の成分とを含有する無菌ビヒクル中に活性な化合物を取り込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製の一部の方法は、以前に無菌濾過されたその溶液から、活性成分+任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0229】
本明細書で開示される医薬組成物は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む徐放性製剤など、迅速な放出に対して活性成分を保護する担体を用いて調製され得る。生分解性の生体適合性のポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が使用され得る。かかる製剤の調製のための多くの方法が、特許されているか、または当業者に一般に公知である。例えば、Sustained And Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0230】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、in vivoでの適切な分布を確実にするように製剤化され得る。例えば、BBBは、多くの高度に親水性の化合物を締め出す。本明細書に記載される治療的抗体がBBBを横断するのを容易にするために、これらは、例えば、リポソーム中で製剤化され得る。リポソームを製造する方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;同第5,374,548号;および同第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞または臓器中に選択的に輸送される1つまたは複数の部分を含み得、そうして、標的化された薬物送達を増強する(例えば、V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照されたい)。例示的な標的化部分には、葉酸またはビオチン(例えば、Lowらに対する米国特許第5,416,016号を参照されたい)、マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153: 1038);抗体(P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357: 140;M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39: 180);サーファクタントタンパク質A受容体(Briscoe et al. (1995) Am. J. Physiol. 1233: 134);pl20(Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)が含まれる;K. Keinanen;M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346: 123;J.J. Killion;I.J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273もまた参照されたい。
5.5 処置の方法
【0231】
上のセクションに記載されるように、Aβまたは神経炎症関連の疾患または障害を処置することにおける抗CD22抗体および抗原結合性断片(例えば、SM03またはSM06)の医学的使用が、本明細書で提供される。本明細書で開示される、または本明細書で開示されるスクリーニング方法を使用して同定される任意の抗CD22抗体または抗原結合性断片は、本明細書で開示される方法において使用され得る。一部の実施形態では、治療的抗体は、SM03である。一部の実施形態では、治療的抗体は、SM06である。一部の実施形態では、Aβプラークの除去を促進することが必要な対象においてそれを促進する方法が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、Aβ関連疾患または障害を処置することが必要な対象においてそれを処置する方法もまた、本明細書で提供される。一部の実施形態では、神経炎症を低減させることが必要な対象において神経炎症を低減させる方法もまた、本明細書で提供される。一部の実施形態では、神経炎症に関連する疾患または障害を処置することが必要な対象においてそれを処置する方法もまた、本明細書で提供される。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、シナプスファゴサイトーシスおよびニューロン死を予防する。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、シナプスファゴサイトーシスおよびニューロン死を、少なくとも20%、少なくとも30、少なくとも40%、少なくとも50%を超えて、または少なくとも60%を超えて、予防する。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトCD22に特異的に結合する。
【0232】
本明細書で開示される、Aβプラークの除去を促進する方法、神経炎症を低減させる方法、Aβ関連疾患または障害を処置する方法、および/または疾患もしくは障害を処置する方法は、対象に、CD22に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の治療有効量を投与するステップを含み、抗体または抗原結合性断片は、(a)CD22のシス-トランス変換を促進する、および/または(b)CD22の内在化を誘導する。
【0233】
一部の実施形態では、Aβ関連疾患もしくは障害および/または神経炎症関連疾患もしくは障害は、臨床的もしくはプレクリニカルAD、前駆AD、ダウン症候群、臨床的もしくはプレクリニカルアミロイド血管症(CAA)、パーキンソン病、多発梗塞性認知症、脳アミロイド血管症、緑内障、子癇前症、認知障害、記憶喪失、または血管中の病原性Aβペプチドによって引き起こされる血管障害であり得る。
【0234】
本発明の方法に適切な対象には、Aβプラークの除去および/または神経炎症における低減が望ましいヒト患者が含まれる。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法で処置される対象は、臨床的もしくはプレクリニカルAD、前駆AD、ダウン症候群、臨床的もしくはプレクリニカルアミロイド血管症(CAA)、パーキンソン病、多発梗塞性認知症、脳アミロイド血管症、緑内障、子癇前症、認知障害、記憶喪失、または血管中の病原性Aβペプチドによって引き起こされる血管障害であり得る、Aβ関連または神経炎症関連の疾患または障害と診断される。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法で処置される対象は、臨床的もしくはプレクリニカルAD、前駆AD、ダウン症候群、臨床的もしくはプレクリニカルアミロイド血管症(CAA)、パーキンソン病、多発梗塞性認知症、脳アミロイド血管症、緑内障、子癇前症、認知障害、記憶喪失、または血管中の病原性Aβペプチドによって引き起こされる血管障害であり得る、Aβ関連または神経炎症関連の疾患または障害を発症するリスクがある。対象は、哺乳動物であり得る。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0235】
一部の実施形態では、対象は、ADと診断される。一部の実施形態では、対象は、ADを発症するリスクがある。一部の実施形態では、対象は、プレクリニカルADを有する。一部の実施形態では、対象は、臨床的ADを有する。一部の実施形態では、対象は、前駆ADを有する。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法で処置される対象は、ADに対する標準的な治療で されている。一部の実施形態では、対象は、以前に処置されていない。
【0236】
本明細書で提供される抗CD22抗体もしくは抗原結合性断片(例えば、SM03またはSM06)または医薬組成物は、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、頭蓋内投与、くも膜下腔内投与、脳室内投与、腹腔内投与、脊髄投与、鼻腔内投与、胸膜内投与、外用投与または皮内投与を含むがこれらに限定されない、当分野で公知の任意の方法によって、対象に投与され得る。
【0237】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗CD22抗体もしくは抗原結合性断片(例えば、SM03またはSM06)または医薬組成物は、非経口投与を使用して対象に投与され得る。語句「非経口投与」は、本明細書で使用される場合、通常は注射による、経腸および外用投与以外の投与の様式を意味し、これには、限定なしに、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内(intracapsular)、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内(intraarticular)、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内(intrastemal)注射および注入が含まれる。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、静脈内注入または注射によって投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、筋肉内注射によって投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、皮下注射によって投与される。
【0238】
血液脳関門は、脳の内外への物質輸送を緊密に調節する。当分野で公知のように、ADを有する患者は、脈管漏出に関連し、脳中へのIgG透過は、およそ0.2%に達し得る。このように、体系的に送達された治療的抗体は、BBBを横断でき、病変部位に到達できる。あるいは、一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合性断片は、頭蓋内投与を使用して局所送達され得る。一部の実施形態では、脳室内投与が採用される。
【0239】
本明細書で提供される抗CD22抗体もしくは抗原結合性断片(例えば、SM03またはSM06)または医薬組成物は、当分野で公知の医療用デバイスを用いて投与され得る。例えば、一部の実施形態では、針なし皮下注射デバイス、例えば、米国特許第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号;または同第4,596,556号に開示されたデバイスが使用され得る。本明細書に記載される使用のための周知のインプラントおよびモジュールの例には、以下が含まれる:制御された速度で薬物療法を分配するためのインプラント可能な微量注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号;皮膚を介して医薬を投与するための治療的デバイスを開示する米国特許第4,486,194号;正確な注入速度で薬物療法を送達するための薬物療法注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号;連続的な薬物送達のための変流量のインプラント可能な注入装置を開示する米国特許第4,447,224号;マルチチャンバー区画を有する浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,439,196号;および浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,475,196号。これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる。多くの他のかかるインプラント、送達系およびモジュールが、当業者に公知である。
【0240】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、例えば、不活性希釈剤または同化可能な可食担体と共に、経口投与され得る。治療的抗体はまた、硬もしくは軟シェルゼラチンカプセル剤中に封入され、錠剤へと圧縮され、または対象の食餌中に直接取り込まれる。経口治療的投与のために、治療的抗体は、賦形剤と共に取り込まれ得、摂取可能な錠剤、頬側錠剤、トローチ、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁物、シロップ、ウエハなどの形態で使用され得る。
【0241】
本明細書で提供される方法は、本明細書に記載される抗CD22抗体または抗原結合性断片(例えば、SM03またはSM06)の治療有効量を投与するステップを含む。治療的抗体の実際の投薬量レベルは、患者にとって毒性であることなしに、特定の患者について所望の治療的応答を達成するのに有効な量を得るために、変動され得る。選択された投薬量レベルは、本明細書に記載される特定の組成物の活性、投与の経路、投与の時間、排出の速度、処置の持続時間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、処置されている患者の年齢、性別、体重、状態、相対的な健康および以前の病歴などの医学分野で周知の因子を含む、種々の薬物動態学的因子に依存する。
【0242】
一般に、投薬量は、単一用量については、例えば、宿主体重1kg当たり約0.1~100mgの範囲であり得る。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片(例えば、SM03またはSM06)は、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kgで投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約1mg/kgで投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約5mg/kgで投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約10mg/kgで投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約20mg/kgで投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約40mg/kgで投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約60mg/kgで投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約100mg/kgで投与される。
【0243】
一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片(例えば、SM03またはSM06)は、約1~5mg/kg、約1~10mg/kg、約1~20mg/kg、約1~50mg/kg、約1~100mg/kg、約5~10mg/kg、約5~20mg/kg、約5~50mg/kg、約5~100mg/kg、約10~50mg/kgまたは約10~100mg/kgの範囲内の用量で投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約1~5mg/kgの範囲内の用量で投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約1~10mg/kgの範囲内の用量で投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約1~50mg/kgの範囲内の用量で投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約10~50mg/kgの範囲内の用量で投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片は、約10~100mg/kgの範囲内の用量で投与される。
【0244】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、約10~2000mgの用量で抗CD22抗体または抗原結合性断片(例えば、SM03またはSM06)を投与するステップを含む。一部の実施形態では、用量は、約10mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg 約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mgまたは約2000mgである。一部の実施形態では、抗体は、100mgの用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、300mgの用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、600mgの用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、900mgの用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、1200mgの用量で投与される。
【0245】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、約10~50mg、10~100mg、10~200mg、100~300mg、100~500mg、300~600mg、300~900mg、300~1200mg、600~1200mg、600~1800mgまたは1000~2000mgの範囲内の用量で、抗CD22抗体または抗原結合性断片(例えば、SM03またはSM06)を投与するステップを含む。一部の実施形態では、抗体は、100~500mgの範囲内の用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、300~600mgの範囲内の用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、300~900mgの範囲内の用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、600~1200mgの範囲内の用量で投与される。
【0246】
処置の間、より低い用量で開始し、これを後に標的用量まで増やすことが一般的である。説明目的のために、一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、約100mgの用量で抗CD22抗体または抗原結合性断片を投与するステップを含み、この用量は、約600mgの標的用量まで徐々に増やされる。
【0247】
対象には、日に1回、1日おきに、週に1回、2週間に1回、月に1回、または経験的分析によって決定される任意の他のスケジュールに従って、かかる用量が投与され得る。例示的な処置は、延長された期間、例えば、少なくとも6か月間の期間にわたる複数の投薬量での投与を必然的に伴う。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、抗CD22抗体または抗原結合性断片を週に1回投与するステップを含む。一部の実施形態では、方法は、2週間に1回の投与を含む。一部の実施形態では、方法は、月に1回の投与を含む。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片(例えば、SM03またはSM06)は、週に1回、2週間に1回または月に1回皮下投与される。一部の実施形態では、抗CD22抗体または抗原結合性断片(例えば、SM03またはSM06)は、週に1回、2週間に1回または月に1回静脈内投与される。
【0248】
抗CD22抗体または抗原結合性断片(例えば、SM03またはSM06)は、必要に応じて、および適切な場合、最大で3か月間、6か月間、9か月間、12か月間、18か月間、24か月間、30か月間または36か月間投与され得る。一部の実施形態では、処置は、少なくとも3か月間持続する。一部の実施形態では、処置は、少なくとも6か月間持続する。一部の実施形態では、処置は、少なくとも12か月間持続する。一部の実施形態では、処置は、少なくとも24か月間持続する。
【0249】
例えば、投与のラウンド、投薬量、処置頻度、および処置の長さの種々の実施形態の全ての順列および組合せが、本明細書で明示的に企図され、本明細書で開示される治療方法において採用され得る。
【0250】
説明目的のために、以下の処置レジメンが、本明細書で開示される(例えば、SM03またはSM06)または本明細書で開示される方法において同定される抗CD22抗体または抗原結合性断片の投与を含む本明細書で開示される方法において採用され得る。
【0251】
一部の実施形態では、治療的抗体は、4週間毎におよび少なくとも21日間離れて、約10mg/kgの用量で静脈内または皮下投与される。一部の実施形態では、以下の用量設定スケジュールが含まれる:注入1~2:1mg/kg IV;注入3~4:3mg/kg IV;注入5~6:6mg/kg IV;注入7およびそれ以降:10mg/kg IV。
【0252】
一部の実施形態では、治療的抗体は、10、20または40mg/kgの単一用量、24週間にわたる1週間おきの10mg/kgの第2の用量、および16か月間にわたる毎月の10または20mg/kgの第3の用量で、静脈内または皮下投与される。
【0253】
一部の実施形態では、治療的抗体は、週に1回の約250mgまたは2週間に1回の500mgの用量で、最大で2年間、静脈内または皮下投与される。一部の実施形態では、処置は、約120mgの月に1回のショットで始まる。
【0254】
投薬量レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療的または予防的応答)を提供するために調整され得る。例えば、単一のボーラスが投与され得、いくつかの分割された用量が経時的に投与され得、または用量は、治療的状況の緊急要求によって示される場合、比例的に低減もしくは増加され得る。投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、単位剤形で非経口組成物を製剤化することが特に有利である。単位剤形は、本明細書で使用される場合は、処置される哺乳動物対象のための単位的投薬量として適した物理的に個別の単位を指す;各単位は、必要な医薬品担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の治療的抗体を含有する。適切な投薬は、軽減される状態の型および重症度と共に変動することに留意すべきである。任意の特定の対象について、具体的な投薬量レジメンが、個々の必要性、および組成物を投与するまたはその投与を監督する人物の専門的判断に従って、経時的に調整すべきであること、ならびに本明細書に示される投薬量範囲が例示に過ぎず、特許請求された組成物の範囲も実行も限定しない意図であることを、さらに理解すべきである。
【0255】
Aβ関連疾患もしくは障害または神経炎症関連疾患もしくは障害の処置において、時折、疾患または障害は、本明細書で提供される方法で治癒され得るが、任意の臨床的改善が、利益を構成する。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、アミロイドを、平均約50センチロイド(centiloid)(CL)、約60CL、約70CL、約80CL、約90CL、約95CLまたは約99CL低減させる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、アミロイドを、平均約50CL低減させる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、アミロイドを、平均約80CL低減させる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、アミロイドを、平均約90CL低減させる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、アミロイドを、平均50~100CL、60~100CL、70~100CL、80~100CLまたは90~100CL低減させる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、アミロイドを、平均50~100CL低減させる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、アミロイドを、平均90~100CL低減させる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、神経炎症を低減させる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、血管原性浮腫を低減させる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、シナプスファゴサイトーシスおよびニューロン死を予防する。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、ADの開始を予防する、または進行ADを遅延もしくは停止させる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、ADの症状を寛解させる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、認知障害を寛解させる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、認知障害の開始を遅延させる。
【0256】
FcγRを架橋結合する治療的抗体と比較して、本明細書で開示される抗CD22抗体は、脈管副作用(即ち、ARIA-E、ARIA-H)を有さないまたはかかる副作用が低減されている。さらに、一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、血管原性浮腫を低減させる。
【0257】
本明細書で開示される抗CD22抗体または抗原結合性断片は、当分野で公知の種々の方法によって投与され得る。当業者に理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に依存して変動する。一部の実施形態では、治療的抗体は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む徐放性製剤など、迅速な放出に対してそれを保護する担体を用いて調製され得る。生分解性の生体適合性のポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル(polyorthoesteer)およびポリ乳酸が使用され得る。かかる製剤の調製のための多くの方法が、特許されている、または当業者に一般に公知である。例えば、Sustained And Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。治療的適用では、比較的短い間隔での比較的高い投薬量が、疾患の進行が低減または終結されるまで、および患者が疾患の症状の部分的または完全な寛解を示すまで、時折必要とされる。
【0258】
異なる作用機構を有する薬剤を使用する併用療法は、相加的または相乗的効果を生じ得る。併用療法は、単独療法において使用される用量よりも低い用量の各薬剤を可能にし得、それにより、毒性副作用を低減させる、および/または本明細書で開示される薬剤の治療指数を増加させる。併用療法は、薬物耐性が発生する可能性を減少させることができる。一部の実施形態では、さらなる治療は、本明細書に記載される抗体もしくは抗原結合性断片または医薬組成物の治療指数における増加を生じる。一部の実施形態では、さらなる治療は、本明細書に記載される抗体もしくは抗原結合性断片または医薬組成物の毒性および/または副作用における減少を生じる。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗CD22抗体もしくは抗原結合性断片または医薬組成物は、さらなる治療と組み合わせて投与され得る。
【0259】
一部の実施形態では、第2の治療剤は、抗Aβ抗体、抗CD33抗体、タウ凝集阻害剤、タウタンパク質モジュレーター、コリンエステラーゼ阻害剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト、β-セクレターゼ阻害剤またはインスリン感受性改善薬である。一部の実施形態では、第2の治療剤は、炎症促進性サイトカインの放出を抑制する第2の抗体、またはミクログリア細胞ファゴサイトーシス活性を増強する薬剤であり得る。
【0260】
一部の実施形態では、第2の治療剤は、抗Aβ抗体である。抗Aβ抗体は、アデュカヌマブ、ドナネマブ、ガンテネルマブ、レカネマブ、バピネウズマブおよびソラネズマブからなる群から選択され得る。一部の実施形態では、第2の治療剤は、アデュカヌマブである。一部の実施形態では、第2の治療剤は、ドナネマブである。一部の実施形態では、第2の治療剤は、ガンテネルマブである。
【0261】
一部の実施形態では、第2の治療剤は、抗CD33抗体である。一部の実施形態では、第2の治療剤は、AL003(AbbVie)、ゲムツズマブ、リンツズマブ、オゾガマイシン、バダスツキシマブタリリンおよびBI836858からなる群から選択される。一部の実施形態では、第2の治療剤は、AL003である。一部の実施形態では、第2の治療剤は、ゲムツズマブである。一部の実施形態では、第2の治療剤は、リンツズマブである。
【0262】
一部の実施形態では、第2の治療剤は、タウ凝集阻害剤である。一部の実施形態では、第2の治療剤は、メチレンブルー誘導体LMTX(LMTMまたはTRx0237としても公知)またはクルクミンである。
【0263】
一部の実施形態では、第2の治療剤は、タウタンパク質モジュレーターである。一部の実施形態では、第2の治療剤は、メマンチン、セレン酸ナトリウム、アルボシジブ(alvocidib)、セリシクリブ(seliciclib)、チデグルシブ、リチウム、サルサラートまたはMK-8719である。
【0264】
一部の実施形態では、第2の治療剤は、コリンエステラーゼ阻害剤またはアセチルコリンエステラーゼ阻害剤である。一部の実施形態では、第2の治療剤は、ドネペジル、リバスチグミンまたはガランタミンである。
【0265】
一部の実施形態では、第2の治療剤は、NMDAアンタゴニストである。一部の実施形態では、第2の治療剤は、メマンチンである。
【0266】
第2の治療剤は、本明細書に記載される抗CD22抗体もしくは抗原結合性断片または医薬組成物の投与の前に、それと同時発生的に、またはそれに引き続いて投与され得る。組み合わせ投与には、単一の医薬製剤での、もしくは別々の製剤を使用した共投与、またはいずれの順序であってもよいが、一般には、全ての活性薬剤がそれらの生物活性を同時に発揮することができるような期間内の連続投与が含まれ得る。当業者は、処置されている対象の必要性に基づいて、併用療法において使用されるさらなる薬剤のタイミングおよび投薬を含む、組合せ中の本明細書に記載される医薬組成物およびさらなる治療を投与するのに適切なレジメンを容易に決定することができる。
【0267】
本明細書において引用される全ての論文、刊行物および特許は、各個々の論文、刊行物または特許が参照により組み込まれると具体的かつ個々に示されたのと同様に、参照により本明細書に組み込まれ、どの刊行物が引用されたかと関連して、方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。しかし、本明細書で引用される任意の参考文献、記事、刊行物、特許、特許公報および特許出願の言及は、世界のどの国においても、それらが有効な先行技術を構成することまたは共通の一般知識の一部を形成することの承認としても任意の形態の示唆としても解釈されず、されるべきではない。
【0268】
文脈が他を示さない限り、本明細書に記載される種々の特色が任意の組合せで使用され得ることが、具体的に意図される。
【0269】
他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【実施例】
【0270】
5.6 実験
5.6.1
(実施例1)
ミクログリア細胞上のCD22発現。
免疫組織化学手順、免疫細胞化学手順およびデータベース検索を使用して、CD22は、Ramos細胞、B細胞およびミクログリア細胞(例えば、HMC-3細胞およびBV-2細胞)を含む複数の型の細胞上で発現されることが見出された。
【表3】
Ramos:ヒトバーキットリンパ腫細胞;HMC-3:ヒトミクログリア細胞;BV-2:マウスミクログリア細胞。
【0271】
一貫して、以下の表に示されるように、ミクログリア細胞(例えば、HMC-3細胞およびBV-2細胞)を含む上記細胞系への種々の抗CD22抗体の結合もまた検出した。
【表4】
+は陽性結合を示し、-は結合なしを示す。
5.6.2
(実施例2)
オリゴマー性Aβ1-42へのCD22のin vitroでの結合。
【0272】
Octet 96e SPRシステムを使用して、Aβ1-42へのCD22のin vitroでの結合を分析した。ストレプトアビジンバイオセンサーに、50μg/mLビオチン化オリゴマー性Aβ1-42をロードし;種々の濃度のCD22との相互作用を、バイオセンサーを用いて検出した。ステップは以下の通りであった:最初に、ストレプトアビジンバイオセンサーを、50μg/mLビオチン化オリゴマー性Aβ1-42中に4分間ロードし;第2に、バイオセンサーを、動態学的緩衝液(PBS+0.02%Tween(登録商標)20、0.1%BSA)で10秒間洗浄し;第3に、バイオセンサーを、会合のために、種々の濃度のCD22の細胞外ドメイン(Peprotech)中に2分間ロードした。
図1に示されるように、CD22は、約2.79nMのK
Dでオリゴマー性Aβ1-42に結合した。
5.6.3
(実施例3)
CD22発現細胞へのオリゴマー性Aβ1-42の結合。
【0273】
HEK293細胞を、1日目に、31250細胞/cm
2の密度で6ウェルプレート上に播種した。2日目に、HEK293細胞を、Lipofectamine 3000(Invitrogen)でトランスフェクトして、全長ヒトCD22を2日間にわたって過剰発現させた。4日目に、トランスフェクトされた細胞を、成長培地中1μg/mLのFITC-Aβと共に氷上で1時間インキュベートした。細胞をトリプシン処理し、フローサイトメーターによって分析した。
図2に示されるように、HEK293細胞におけるヒトCD22の過剰発現は、HEK293細胞の表面上へのFITC-Aβの結合を増加させ、これは、Aβと細胞表面上のCD22との間での結合を実証している。
5.6.4
(実施例4)
HMC-3細胞上のオリゴマー性Aβ1-42へのCD22の結合
【0274】
近接ライゲーションアッセイ(PLA)を使用して、HMC-3細胞上のAβ1-42へのCD22の結合を評価した。HMC-3細胞を、1%ゼラチンコーティングされたカバースリップ上に、26000細胞/cm
2の密度で播種した。細胞を、オリゴマー性Aβで、氷上で1時間処置した。細胞を、PBSで1回洗浄し、次いで、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で5分間固定した。細胞を、抗CD22抗体および抗Aβ抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。PLAアッセイを、製造業者のプロトコールに従って実施した(Duolink(登録商標)Proximity Ligation Assay、Sigma-Aldrich)。蛍光画像を、Zeiss 710正立顕微鏡を用いて取得した。
図3に示されるように、HMC-3細胞を点線で取り囲んだ。矢印によって示される陽性シグナルは、CD22とAβとの間での物理的相互作用を実証した。
5.6.5
(実施例5)
抗CD22抗体は、CD22の内在化を誘導した
【0275】
HMC3細胞を、1%ゼラチンコーティングされたカバースリップ上に、26000細胞/cm
2の密度で播種した。細胞を、10μg/mLのSM03で処置し、氷上で1時間インキュベートした。次いで、細胞を37℃でインキュベートして、内在化を誘導した。示された時点において、培地を除去し、細胞を4%PFAで固定した。表面CD22発現を、マウス抗ヒトCD22抗体(Abcam)およびAlexaflour488コンジュゲート化抗マウスIgG抗体を用いて検出した。
図4に示されるように、HMC-3細胞を、SM03で3分間、5分間、10分間、30分間および60分間処置した。SM03は、処置後僅か3分で、表面CD22発現を20%低減させた。
5.6.6
(実施例6)
ヒトミクログリア細胞における抗CD22抗体の内在化。
【0276】
HMC-3細胞を、1%ゼラチンコーティングされたカバースリップ上に、26000細胞/cm
2の密度で播種し、FITC-SM03で30分間処置した。HMC3細胞を、PBS中4%のパラホルムアルデヒドで固定し、共焦点画像を、Zeiss 800顕微鏡を用いて獲得した。
図5に示されるように、FITC-SM03は、HMC3細胞において、処置後30分以内に内在化された。
【0277】
HMC-3細胞を、30000細胞/cm
2の密度で6ウェルプレート上に播種した。細胞を、10μg/mLの示された抗CD22抗体と共に、氷上で2時間インキュベートした。次いで、細胞を、37℃でインキュベートして、内在化を誘導した。示された時点において、培地を除去し、細胞を4%PFAで固定した。表面抗CD22抗体、即ち、SM03、SM06、EmabまたはM971を各々、AlexaFlour 488コンジュゲート化抗ヒトIgG抗体(Invitrogen)を用いて検出した。
図6に示されるように、異なる抗CD22抗体は、HMC-3細胞による異なる速度の内在化を示した。SM03およびSM06は、HMC-3細胞による最も高い速度の内在化を誘導した。
5.6.7
(実施例7)
抗CD22抗体によって増強されるオリゴマー性Aβの内在化
【0278】
HMC-3細胞を、60000細胞/cm
2の密度で6ウェルプレート上に播種した。HMC-3細胞を、成長培地中1μg/mLのFITC-Aβで、24時間事前処置した。次いで、細胞を、10μg/mLのSM03、SM06、EmabおよびM971またはIgGアイソタイプ対照で、示された時間、例えば、4時間、8時間、16時間および24時間にわたって処置した。細胞をトリプシン処理し、4%PFAで室温で5分間固定した。細胞をマウス抗ヒトCD22抗体(Abcam)で染色し、FITC-Aβ内在化を、フローサイトメーターを用いて分析した。
図7に示されるように、SM03、SM06およびEmab(M971ではなく)は、FITC-Aβの増強されたファゴサイトーシスを示した。SM03およびSM06は共に、試験した全ての抗体のうちで最も高いファゴサイトーシス能力を示した。
5.6.8
(実施例8)
抗CD22抗体は、ミクログリア細胞においてNFκBシグナル伝達経路を抑制した
【0279】
HMC-3細胞を、50000細胞/cm
2の密度で24ウェルプレート上に播種した。細胞を、NFκBルシフェラーゼレポータープラスミドでトランスフェクトした(Invitrogen、Lipofectamine 3000)。次いで、トランスフェクトされた細胞を、LPSで刺激し、異なる濃度のSM03 Fab断片で共処置した。ルシフェラーゼ読み取りを、処置の24時間後に記録した。
図8に示されるように、SM03 Fabは、NFκBシグナル伝達を用量依存的様式で低減させ、ミクログリアの活性化が、SM03処置によって低減されたことを実証している。
5.6.9
(実施例9)
抗CD22抗体は、ミクログリア細胞においてIL-6分泌を抑制した
【0280】
HMC-3細胞を、125000細胞/cm
2の密度で96ウェルプレート上に播種した。HMC-3細胞をLPSで刺激し、異なる濃度のSM03 Fab断片で共処置した。処置の24時間後、培地を収集し、製造業者のプロトコールに従ってIL-6 ELISAキット(R&D systems)を用いて試験した。
図9に示されるように、SM03 Fabは、IL-6分泌を低減させ、ミクログリアの活性化が、SM03処置で低減されたことがさらに確認された。
5.6.10
(実施例10)
抗CD22抗体は、HMC-3細胞上の2,6シアル酸のトランス結合を促進した
【0281】
HMC3細胞を、1%ゼラチンコーティングされたカバースリップ上に、26000細胞/cm
2の密度で播種した。細胞を、示された時間にわたって抗CD22抗体で処置した。培地を除去し、細胞を、4%PFAで室温で5分間固定した。固定された細胞を、FITCコンジュゲート化2,6-シアル酸プローブ(GlycoTech)と共に4℃で一晩インキュベートした。蛍光画像を、Leica DMI6000B顕微鏡を用いて取得した。
図10に示されるように、SM03およびSM06は、HMC-3細胞において2,6-シアル酸プローブのトランス結合を促進した。
5.6.11
(実施例11)
抗CD22抗体は、シナプスファゴサイトーシスおよびニューロン死を低減させる
【0282】
SM03およびSM06を含む抗CD22抗体を、機能的アッセイに供して、シナプスファゴサイトーシスおよび/またはニューロン死を低減させることにおけるそれらの活性を試験する。シナプスファゴサイトーシスを評価するために、HMC-3細胞を、分化したSH-SY5Yニューロン細胞と共に共培養する。分化したSH-SY5Y上に発達したシナプスは、PSD-95タンパク質の発現によって示される。HMC-3ミクログリア細胞におけるPSD-95発現は、ミクログリア細胞によるシナプスファゴサイトーシスの速度を示すウエスタンブロットまたはELISAを使用して測定することができる。SM03および/またはSM06の処置は、HMC-3細胞においてPSD-95発現を低減させ、これらの抗CD22抗体が、ミクログリア細胞によるシナプスファゴサイトーシスを阻害することができることを示している。
【0283】
ニューロン死を測定するために、分化したSH-SY5Y細胞を、示された抗CD22抗体の存在下または非存在下で、LPS刺激後のHMC-3細胞の培養培地で処置する。SH-SY5Yの死を、MTTアッセイによって測定する。SM03および/またはSM06の処置は、SH-SY5Yの死を低減させる。
6. 電子的に提出された配列表に対する言及
【0284】
本出願は、2022年7月1日に作成され、56,981バイトのサイズを有する、表題「022A003WO01.XML」の配列表を、参照により取り込む。
【配列表】
【国際調査報告】