(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電磁波を用いて動作する距離センサを試験するための検査装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
G01S7/40 169
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501980
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2022069437
(87)【国際公開番号】W WO2023285451
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021118333.2
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506012213
【氏名又は名称】ディスペース ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】dSPACE GmbH
【住所又は居所原語表記】Rathenaustr.26,D-33102 Paderborn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン グラーフ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ホーエンブリンク
(72)【発明者】
【氏名】クリス ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ティム フィッシュ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AF01
(57)【要約】
時間的に一貫したかつ時間的に限られた少なくとも1つのセンサ信号の形態の電磁波を用いて動作する距離センサ(2)を試験するための検査装置(1)であって、検査装置(1)は、受信信号(SRX)として電磁的自由空間波を受信するための受信要素(3)と、電磁的出力信号(STX)を放射するための放射要素(4)と、を備え、シミュレーション動作中、受信信号(SRX)または受信信号(SRX)から導出された受信信号(S’RX)が、指定可能な時間遅延(tdelay,soll)を伴って信号処理ユニット(5)を介して供給され、これにより、シミュレートされた反射信号として、時間遅延させられた信号(Sdelay)となるように時間遅延させられ、時間遅延させられた信号(Sdelay)または時間遅延させられた信号(Sdelay)から導出された時間遅延させられた信号(S’delay)が、出力信号(STX)として放射要素(4)を介して放射される、検査装置(1)が図示および説明されている。このような検査装置(1)を動作させるための対応する方法(10)も、請求対象である。信号処理ユニット(5)により、受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号(SRX)が、または受信したセンサ信号(SRX)から導出された受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号(S’RX)が、遅延ステップ(6)において、当該遅延ステップ(6)の開始時、ひいては受信した時間的に限られたセンサ信号(SRX)の処理の開始時に指定された時間遅延(tdelay,soll)を、たとえ当該遅延ステップ(6)中に、ひいては受信したセンサ信号(SRX)または受信したセンサ信号(SRX)から導出された受信したセンサ信号(S’RX)の持続的な処理中に、当該指定された時間遅延(tdelay,soll)が変更されたとしても一定の作動時間遅延(tdelay,work)として用いることによって完全に処理されて、時間遅延させられたセンサ信号(Sdelay)が生成されることにより、シミュレートされた反射信号の不整合性が回避される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間的に一貫したかつ時間的に限られた少なくとも1つのセンサ信号の形態の電磁波を用いて動作する距離センサ(2)を試験するための検査装置(1)であって、
前記検査装置(1)は、受信信号(S
RX)として電磁的自由空間波を受信するための受信要素(3)と、電磁的出力信号(S
TX)を放射するための放射要素(4)と、を備え、
シミュレーション動作中、前記受信信号(S
RX)または前記受信信号(S
RX)から導出された受信信号(S’
RX)は、指定可能な時間遅延(t
delay,soll)を伴って信号処理ユニット(5)を介して供給され、これにより、シミュレートされた反射信号として、時間遅延させられた信号(S
delay)となるように時間遅延させられ、
前記時間遅延させられた信号(S
delay)または前記時間遅延させられた信号(S
delay)から導出された時間遅延させられた信号(S’
delay)は、出力信号(S
TX)として前記放射要素(4)を介して放射される検査装置(1)において、
前記信号処理ユニット(5)により、受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号(S
RX)は、または、受信した前記センサ信号(S
RX)から導出された受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号(S’
RX)は、遅延ステップ(6)において、前記遅延ステップ(6)の開始時、ひいては受信した時間的に限られた前記センサ信号(S
RX)の処理の開始時に指定された時間遅延(t
delay,soll)を、たとえ前記遅延ステップ(6)中に、ひいては受信した前記センサ信号(S
RX)または受信した前記センサ信号(S
RX)から導出された受信した前記センサ信号(S’
RX)の持続的な処理中に、前記指定された時間遅延(t
delay,soll)が変更されたとしても一定の作動時間遅延(t
delay,work)として用いることによって完全に処理されて、時間遅延させられたセンサ信号(S
delay)が生成されることを特徴とする、
検査装置(1)。
【請求項2】
前記遅延ステップ(6)において、受信した前記センサ信号(S
RX)または受信した前記センサ信号(S
RX)から導出された受信した前記センサ信号(S’
RX)が持続的な処理中であるということが、以下のことによって検出され、すなわち、前記信号処理ユニット(5)が、前記受信信号(S
RX)または前記受信信号(S
RX)から導出された前記受信信号(S’
RX)の信号レベル(A)または信号出力(P)を特定し、特定された前記信号レベル(A)または特定された前記信号出力(P)が、前記信号レベルまたは前記信号出力に関して指定されたアクティブ閾値(ASW)を上回っている場合に、受信した前記センサ信号(S
RX)または受信した前記センサ信号(S
RX)から導出された受信した前記センサ信号(S’
RX)が依然として持続的な処理中であると推定することによって検出される、
請求項1記載の検査装置(1)。
【請求項3】
特定された前記信号レベル(A)または特定された前記信号出力(P)が、前記信号レベルまたは前記信号出力に関して指定された前記アクティブ閾値(ASW)を、指定されたアクティブ期間にわたって上回っている場合に、前記信号処理ユニット(5)は、前記遅延ステップ(6)の開始、ひいては受信した前記センサ信号(S
RX)または受信した前記センサ信号(S
RX)から導出された受信した前記センサ信号(S’
RX)の持続的な処理の開始を検出する、
請求項2記載の検査装置(1)。
【請求項4】
前記遅延ステップ(6)の終了、ひいては受信した前記センサ信号(S
RX)または受信した前記センサ信号(S
RX)から導出された受信した前記センサ信号(S’
RX)の持続的な処理の欠如が、以下のことによって検出され、すなわち、前記信号処理ユニット(5)が、前記受信信号(S
RX)または前記受信信号(S
RX)から導出された前記受信信号(S’
RX)の信号レベル(A)または信号出力(P)を特定し、特定された前記信号レベル(A)または特定された前記信号出力(P)が、前記信号レベルまたは前記信号出力に関して指定されたパッシブ閾値(PSW)を下回っている場合に、受信した前記センサ信号(S
RX)または受信した前記センサ信号(S
RX)から導出された受信した前記センサ信号(S’
RX)の処理の非存在を推定することによって検出される、
請求項1から3までのいずれか1項記載の検査装置(1)。
【請求項5】
特定された前記信号レベル(A)または特定された前記信号出力(P)が、前記信号レベルまたは前記信号出力に関して指定された前記パッシブ閾値(PSW)を、指定されたパッシブ期間(t
p)にわたって下回っている場合に、前記信号処理ユニット(5)は、前記遅延ステップ(6)の終了、ひいては受信した前記センサ信号(S
RX)または受信した前記センサ信号(S
RX)から導出された受信した前記センサ信号(S’
RX)の持続的な処理の完了を検出する、
請求項4記載の検査装置(1)。
【請求項6】
前記アクティブ期間および/または前記パッシブ期間(t
p)は、1つのレーダフレームの複数のセンサ信号からなる、とりわけ複数の一緒に纏められたセンサ信号からなる1つの一緒に纏められたシーケンスの、複数の相次いだセンサ信号同士の間の休止よりも長くなるように選択される、
請求項3または5記載の検査装置(1)。
【請求項7】
時間的に一貫したかつ時間的に限られた少なくとも1つのセンサ信号の形態の電磁波を用いて動作する距離センサ(2)を試験するための検査装置(1)を動作させるためのコンピュータにより実装される方法(10)であって、前記検査装置(1)は、受信信号(S
RX)として電磁的自由空間波を受信するための受信要素(3)と、電磁的出力信号(S
TX)を放射するための放射要素(4)と、信号処理ユニット(5)と、を含み、
シミュレーション動作中、前記受信信号(S
RX)または前記受信信号(S
RX)から導出された受信信号(S’
RX)は、指定可能な時間遅延(t
delay,soll)を伴って前記信号処理ユニット(5)を介して供給され、これにより、シミュレートされた反射信号として、時間遅延させられた信号(S
delay)となるように時間遅延させられ、
前記時間遅延させられた信号(S
delay)または前記時間遅延させられた信号(S
delay)から導出された時間遅延させられた信号(S’
delay)は、出力信号(S
TX)として前記放射要素(4)を介して放射される方法(10)において、
受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号(S
RX)は、または受信した前記センサ信号(S
RX)から導出された受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号(S’
RX)は、遅延ステップ(6)において、前記遅延ステップ(6)の開始時、ひいては受信した時間的に限られた前記センサ信号の処理の開始時に指定された時間遅延(t
delay,soll)を、たとえ前記遅延ステップ(6)中に、ひいては受信した前記センサ信号(S
RX)または受信した前記センサ信号(S
RX)から導出された受信した前記センサ信号(S’
RX)の持続的な処理中に、前記指定された時間遅延(t
delay,soll)が変更されたとしても一定の作動時間遅延(t
delay,work)として用いることによって完全に処理されて、時間遅延させられたセンサ信号(S
delay)が生成されることを特徴とする、
方法(10)。
【請求項8】
前記信号処理ユニット(5)によって実施される方法(10)に関する、請求項2から6までの少なくとも1項の下位概念に記載された特徴を有する、
請求項7記載の方法(10)。
【請求項9】
時間的に一貫したかつ時間的に限られた少なくとも1つのセンサ信号の形態の電磁波を用いて動作する距離センサ(2)を試験するための検査装置(1)の信号処理ユニット(5)によって実行された場合に、請求項7または8記載の方法(10)を前記信号処理ユニット(5)に実施させる命令を備えた、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間的に一貫したかつ時間的に限られた少なくとも1つのセンサ信号の形態の電磁波を用いて動作する距離センサを試験するための検査装置であって、検査装置は、受信信号として電磁的自由空間波を受信するための受信要素と、電磁的出力信号を放射するための放射要素と、を備え、シミュレーション動作中、受信信号または受信信号から導出された受信信号が、指定可能な時間遅延を伴って信号処理ユニットを介して供給され、これにより、シミュレートされた反射信号として、時間遅延させられた信号となるように時間遅延させられ、時間遅延させられた信号または時間遅延させられた信号から導出された時間遅延させられた信号が、出力信号として放射要素を介して放射される、検査装置に関する。本発明はさらに、上述した検査装置を動作させるための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
距離センサを試験するための上記の検査装置と、このような検査装置を動作させるための方法と、は種々の技術分野および適用領域から、例えばとりわけ自動車分野での制御装置の開発および制御装置の試験の分野から公知であり、これについては、例えば国際公開第2020/165191号を参照されたい。他の適用領域は、エンドオブライン(End-of-Line)のテストベンチであり、すなわち製造ラインの終了時に製品を検査するために、ここでは距離センサを検査するために使用される装置である。このケースでは、電磁波を用いて動作する距離センサの試験が問題となっている。自動車分野では、レーダセンサが使用されることが圧倒的多数である。しかしながら、基本的に、例えば可視光領域のような電磁波の他の周波数領域で動作する距離センサ、または例えばレーザ用途の場合のように長いコヒーレンス長を有する電磁波を放出する電磁的放射源を用いて動作する距離センサ(例えば、LiDAR)を試験することも可能である。
【0003】
冒頭に述べた検査装置により、試験されるべき距離センサに対して、実質的に任意の距離にあるオブジェクトを偽装することが可能となる。本明細書において考察される形式の距離センサは、基本的に、これらの距離センサから放出された電磁波が、距離センサの放射範囲内にあるオブジェクトによって反射され、この反射された電磁波を距離センサが受信して、電磁波の伝搬時間からオブジェクトまでの距離を決定するように動作する。信号伝搬時間の特定は、直接的に実施可能であるが(飛行時間(time-of-flight)を測定する)、巧妙な信号評価を介して間接的に実施されることが多い。最初のケースでは、非常に短いセンサ信号を用いて、すなわちパルスを用いて動作されることが多いが、後者のケースでは、時間的に識別可能に拡張された送信信号が使用されることが多い。例として、ここでは周波数変調された連続波信号が挙げられるだろう。
【0004】
検査装置は、距離センサを試験するために、この距離センサの放射範囲内に位置付けられ、検査装置は、距離センサから放出された自由空間波を受信し、この受信信号を、指定された時間遅延に従って検査装置の信号処理ユニットによって遅延させ、次いで、時間遅延させられた信号を、検査装置の放射要素を介して試験されるべき距離センサの方向に再放射し、これにより、距離センサにおいて、設定された時間遅延に従って遠ざけられたオブジェクトの印象が生じる。
【0005】
本明細書では、時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号を用いて動作する距離センサが考察される。従来技術では、そのような信号を、例えばチャープ信号(略して「チャープ」)として、すなわち時間に依存して変化する周波数を有する正弦波信号として実現することが公知である。他の形式の変調を用いて実現することも考えられる。多くの距離センサは、複数の、例えば128または256個のこのような時間的に限られたチャープを送出し、この場合、チャープ同士の間には短い送信休止が存在する。複数の時間的に短い間隔で相次いだチャープからなるこのようなシーケンスには、信号処理のための比較的長い送信休止が続く。送信休止を含めたチャープシーケンスは、フレームとも称される。フレームは、現在のところ持続的な測定時には、典型的には数十ヘルツのフレーム繰り返し周波数で動作させられる。試験されるべき距離センサは、それぞれの個々の送出されたチャープ送信信号から距離測定値を取得することができる。このことは、チャープ信号のうちのさらに送信される部分と、チャープ信号のうちの、反射されてすでに再受信された部分と、の混合によって実施される。信号伝搬時間、ひいては距離情報は、混合信号の周波数から得られる。送出されたチャープ信号を反射するオブジェクトが、距離センサに対して相対的な半径方向の運動成分を有している場合には、複数の相次いだチャープの混合信号は、位相差を有しており、これらの位相差を特定することができ、これらの位相差から半径方向の運動成分に関する速度情報が直接的に取得可能であり、また取得される。
【0006】
距離センサを試験するための上記の検査装置を使用する場合、とりわけ指定可能な時間遅延に関する可変の指定値を用いて動的なシミュレーション動作が行われる場合には、例えば、識別された1つのオブジェクトに、広範囲の数値範囲内でばらついている複数の速度が対応付けられることにより、距離センサの側で、とりわけシミュレートされたオブジェクトの半径方向の速度に関して見かけ上のエラーが含まれた信号評価が繰り返し生じるということが注目されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、従来技術から知られたエラー状況が回避されるように、上述した検査装置および上述した方法を構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基礎となる課題を解決するために、まず始めに、試験されるべき距離センサの、とりわけ速度信号に関して観察される上述した見かけ上のエラー評価の起源が、そもそも検査装置に由来しているということを認識する必要があった。距離センサにおける見かけ上のエラー評価は、いつも以下のような場合に生じる可能性がある(ただし、必ずしも生じるとは限らない)ということが認識され、すなわち、ちょうど信号処理ユニットが、受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号を、最初に指定された時間遅延を用いて処理して、時間遅延させられたセンサ信号を生成しているところであって、かつこの処理プロセスの最中に他の時間遅延が指定されて、依然として持続中である遅延過程に直接的に算入された場合に、こうした見かけ上のエラー評価が生じる可能性があるということが認識された。変更された指定された時間遅延が直接的に考慮されることにより、遅延させられたセンサ信号の推移において不連続性が生じてしまうことは珍しくなく、この不連続性を有する信号は、その後、最終的には距離センサにおいても不連続性箇所を有するシミュレートされた反射センサ信号として存在することとなり、そこで、見かけ上のエラーが含まれた評価につながってしまう。「見かけ上のエラーが含まれた」というのは、評価は完全に正しく実施されているが、その基礎となっているデータベースが不整合(inconsistent)であるからである。現実の状況では、すなわち現実の移動するオブジェクトを検出する際には、実際に不連続性箇所が発生することはない。なぜなら、現実のオブジェクトからの距離が跳躍的に変化することはあり得ないからである。
【0009】
この問題を解決するために、冒頭に述べた検査装置において、かつ冒頭に述べたこのような検査装置を動作させるための方法において、本発明によれば、信号処理ユニットにより、受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号が、または受信したセンサ信号から導出された受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号が、遅延ステップにおいて、当該遅延ステップの開始時、ひいては受信した時間的に限られたセンサ信号の処理の開始時に指定された時間遅延を、たとえ当該遅延ステップ中に、ひいては受信したセンサ信号または受信したセンサ信号から導出された受信したセンサ信号の持続的な処理中に、当該指定された時間遅延が変更されたとしても一定の作動時間遅延として用いることによって完全に処理されて、時間遅延させられたセンサ信号が生成される。
【0010】
すなわち、本発明による解決手段は、指定された特定の時間遅延に基づいている一旦開始された遅延ステップを、一定の作動時間遅延として維持されるこの時間遅延を用いて、しかもその途中で新たな指定可能な時間遅延が設定または指定されたとしても、一定の作動時間遅延として維持されるこの時間遅延を用いて完成させるということにある。これにより、遅延させられるべきセンサ信号は、完全に1つの統一的な作動時間遅延を用いて処理されることとなる。検査装置を上述したように構成した場合、または検査装置を相応に構成された方法を用いて動作させた場合には、距離センサにおけるシミュレートされた反射信号を評価する際における問題を実質的に完全に解決することができるということが判明した。
【0011】
本明細書では、受信信号と、受信信号から導出された受信信号と、が常に概念的に区別される。受信信号そのものは、検査装置の受信要素によって受信される自由空間波に基づいている。受信した信号が信号処理ユニットに転送される前にさらなる信号処理が行われる場合には、厳密には、もはや受信信号そのものではなく、受信信号から導出された受信信号である。このことは、例えば受信信号が、より低い中間周波数へとダウンコンバートされる場合に該当し、これにより、信号伝送経路の技術的な実現に対する要求が低減され、また、信号処理の速度に対する要求も低減される。意味に則ると、このことは、当然、時間遅延させられた信号についても、または時間遅延させられた信号から導出された時間遅延させられた信号についても当てはまるが、これについてさらなる説明は必要ないだろう。
【0012】
検査装置の好ましい実施形態は、遅延ステップにおいて、受信したセンサ信号または受信したセンサ信号から導出された受信したセンサ信号が持続的な処理中であるということが、以下のことによって検出され、すなわち、信号処理ユニットが、受信信号または受信信号から導出された受信信号の信号レベルまたは信号出力を特定し、特定された信号レベルまたは特定された信号出力が、信号レベルまたは信号出力に関して指定されたアクティブ閾値を上回っている場合に、受信したセンサ信号または受信したセンサ信号から導出された受信したセンサ信号が依然として持続的な処理中であると推定することによって検出されることを特徴としている。信号レベルまたは信号出力に関するアクティブ閾値は、検査装置の動作環境内に存在する決して完全には回避することができない信号雑音を、目下の有効信号と明確に区別することが可能となるように選択されるべきである。
【0013】
この関連において、検査装置のさらなる好ましい実施形態は、特定された信号レベルまたは特定された信号出力が、信号レベルまたは信号出力に関して指定されたアクティブ閾値を、指定されたアクティブ期間にわたって上回っている場合に、信号処理ユニットが、遅延ステップの開始、ひいては受信したセンサ信号または受信したセンサ信号から導出された受信したセンサ信号の持続的な処理の開始を検出することを特徴としている。この手法によれば、アクティブ閾値を上回っているかもしれないが非常に短時間しか持続しないような妨害信号を、遅延させられるべき有効信号と確実に区別することが可能となる。
【0014】
上述した実施形態によれば、当然、遅延ステップの開始を検出することができるだけでなく、遅延ステップが依然として持続中であるかどうかを識別することもでき、すなわち、遅延ステップの開始のみならず遅延ステップの存在も識別することができる。
【0015】
相応に、遅延ステップの終了または遅延ステップの非存在を識別することもできる。検査装置の好ましい実施例では、遅延ステップの終了、ひいては受信したセンサ信号または受信したセンサ信号から導出された受信したセンサ信号の持続的な処理の欠如が、以下のことによって検出され、すなわち、信号処理ユニットが、受信信号または受信信号から導出された受信信号の信号レベルまたは信号出力を特定し、特定された信号レベルまたは特定された信号出力が、信号レベルまたは信号出力に関して指定されたパッシブ閾値を下回っている場合に、受信したセンサ信号または受信したセンサ信号から導出された受信したセンサ信号の処理の非存在を推定することによって検出される。
【0016】
アクティブ閾値とパッシブ閾値とを、同一に選択することができる。有利な実施形態では、ある程度のヒステリシス効果を得るために、アクティブ閾値がパッシブ閾値よりも大きく選択される。
【0017】
アクティブ期間に相応して、遅延ステップの完了または遅延ステップの非存在を識別するためのパッシブ期間を定義することもできる。すなわち、その場合には、特定された信号レベルまたは特定された信号出力が、信号レベルまたは信号出力に関して指定されたパッシブ閾値を、指定されたパッシブ期間にわたって下回っている場合に、信号処理ユニットが、遅延ステップの終了、ひいては受信したセンサ信号または受信したセンサ信号から導出された受信したセンサ信号の持続的な処理の完了を検出する。
【0018】
検査装置のさらなる好ましい実施例では、アクティブ期間および/またはパッシブ期間は、1つのレーダフレームの複数のセンサ信号からなる、とりわけ複数の一緒に纏められたセンサ信号からなる1つの一緒に纏められたシーケンスの、複数の相次いだセンサ信号同士の間の休止よりも長くなるように選択される。検出期間を相応に選択することにより、1つのレーダフレームの複数の相次いだセンサ信号のための送信シーケンスが完全に終了して初めて、時間遅延に関する新たな指定された値への切り替えが実施されるように手配することができる。すなわち、その場合、指定された時間遅延に関する新たな値への切り替えは、レーダフレームの大きな送信休止において初めて実施される。このことは、試験されるべき距離センサが、レーダフレームの検出されたデータを全体として評価する場合に有意義であり、この場合、1つには、すべての受信および混合されたセンサ信号そのものが評価され(距離情報)、1つには、受信および混合されたセンサ信号の全体性に関して位相評価が実施される(速度情報)。
【0019】
さらに、時間的に一貫したかつ時間的に限られた少なくとも1つのセンサ信号の形態の電磁波を用いて動作する距離センサを試験するための検査装置の信号処理ユニットによって実行された場合に、上述した方法を信号処理ユニットに、ひいては検査装置に実施させる命令を備えた、コンピュータプログラムが請求対象である。
【0020】
詳細には、独立請求項に記載されている本発明による検査装置および本発明による方法を発展させるため、かつ構成するための複数の手段が存在する。このことは、以下の図面における図示との関連において示されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】電磁波を用いて動作する距離センサを試験するための公知の検査装置および公知の方法を概略的に示す図である。
【
図2】チャープの形態の、時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号を示す図である。
【
図3】一貫したチャープシーケンス(フレーム)を示す図である。
【
図4】受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号と、指定された時間遅延に応じて時間遅延させられた信号と、を示す図である。
【
図5】距離センサによる評価後のエラーのない典型的な測定結果を示す距離-速度線図である。
【
図6】距離センサによって特定された見かけ上のエラーが含まれた速度を示す距離-速度線図である。
【
図7】受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号と、指定された時間遅延に応じてシミュレートされた時間遅延させられた信号と、を示す図であり、後者のシミュレートされた時間遅延させられた信号は、持続中の遅延ステップにおいて変更されて時間遅延に関して考慮された指定された新たな時間遅延を有し、結果的に生じた位相ジャンプを有する。
【
図8】距離センサにおける位相ジャンプを有していないシミュレートされた反射信号の評価と、位相ジャンプを有するシミュレートされた反射信号の評価と、を概略的に示す図である。
【
図9】シミュレートされた反射信号における位相ジャンプを回避する目的で、指定された時間遅延が遅延ステップ中に変更されたにもかかわらず一定の指定された時間遅延を用いた、受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号の時間遅延を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1~
図9には、時間的に一貫したかつ時間的に限られた少なくとも1つのセンサ信号の形態の電磁波を用いて動作する距離センサ2を試験するための検査装置1と、対応する検査装置1を動作させるための方法10と、がそれぞれ異なる態様および詳細度で示されている。
【0023】
距離センサ2は、電磁的自由空間波を検査装置1の方向に放射し、検査装置1によって生成されたシミュレートされた電磁的反射信号STXを受信する。検査装置1は、距離センサ2から放出された自由空間波を受信するために受信要素3を有し、かつシミュレートされた電磁的反射信号STXを放射するために放射要素4を有する。距離センサ2そのものは、検査装置1には属していないが、検査装置1がどのように距離センサ2と相互作用するかを理解することが重要である。受信信号SRXまたは受信信号SRXから導出された信号S’RXは、信号処理ユニット5を介して供給され、信号処理ユニット5は、特定の範囲内の時間遅延を指定することができる。したがって、時間遅延回路5の入力信号は、時間遅延させられた信号Sdelayとなるように時間遅延させられる。時間遅延させられた信号Sdelayまたは時間遅延させられた信号Sdelayから導出された信号S’delayは、次いで、シミュレートされた反射信号STXとして放射要素4を介して放射される。
【0024】
図1には、達成されるべき時間遅延t
delay,sollが、情報として信号処理ユニット5に供給されることが示されている。本明細書に示されている検査装置1の場合、この情報がどのようにして厳密に信号処理ユニット5に供給されるのかという技術的な実現手法については重要でない。一般的に、設定されるべき時間遅延に関する指定値は、環境シミュレータに由来しており、この環境シミュレータは、環境オブジェクトを用いてシミュレートされるべきシーンをシミュレートし、環境オブジェクトの対応する位置情報、速度情報、および/または加速度情報を準備する。例えば、試験されるべき距離センサからシミュレートされるべきオブジェクトまでの距離が30mであることが既知である場合には、電磁波の信号伝搬時間としての光速を考慮して対応する時間遅延が計算され、時間遅延t
delay,sollとして指定される。
【0025】
図2には、検査装置1の受信信号S
RXとして、時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号が示されている。ここでは、検査されるべき距離センサ2が、この形式の信号を送出するということが仮定とされる。このような時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号の特別な実施形態として、ここではチャープ信号(略してチャープ)が示されており、このチャープ信号は、周波数変調信号である。このケースでは、正弦波振動の周波数は、定義通りに時間の経過と共に増加する。その場合、検査装置1において、このチャープは、受信したセンサ信号S
RXとして存在し、同じく連続的に、ひいては位相ジャンプなしに推移する。信号は、時間的に限られた範囲を有し、すなわち時間的に限られた波束である。
【0026】
図3には、複数のチャープからなる1つのシーケンスが示されており、これらのチャープは、時間的に定義された方式で相次いでおり、すなわちそれぞれ短い送信休止によって相互に離間されており、これに続いて長い送信休止を備えており、この長い送信休止は、従来技術において公知の距離センサ2の場合には一般的に信号処理のために使用される。
【0027】
距離センサ2では一般的に、反射信号として受信したすべてのチャープが、すなわちチャープフレームのうちのそれぞれの個々のチャープも、距離測定値に対して評価される。複数の時間的に相次いだチャープの相互の位相位置を評価することにより、半径方向の速度情報が計算される。
図4には、検査装置1および方法10の基本的な機能方式が示されている。検査装置1は、時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号を、受信信号S
RXとして受信し、この受信信号S
RXは、ここでは簡略化のために正弦波として示されている。検査装置1において時間遅延t
delay,sollが指定されている場合には、受信したセンサ信号S
RXが、信号処理ユニット5によって厳密にこの時間遅延値t
delay,sollの分だけ時間遅延させられる。時間遅延t
delay,sollに関して指定された値は、オブジェクト距離をシミュレートすべき場合における、シミュレートされた反射信号の伝搬時間に相当する。
【0028】
図5には、距離-速度線図が示されており、この距離-速度線図は、距離センサ2におけるチャープフレームの評価に基づいた測定シーケンスの評価を示す。ここでは、オブジェクトが、わずかな変動幅しか有していない距離Rにおいて識別されており、かつこのオブジェクトが、同じく実質的にほとんど変動を受けていない相対的な半径方向の速度成分vを有しているということが見て取れる。この結果は、妥当なものである。例えば、1つのフレームの1つの完全なチャープシーケンスが数十ミリ秒で送出されることを仮定すると、すなわち複数の測定値も、この数十ミリ秒以内で受信されることを仮定すると、日常生活から知られた環境オブジェクトは、たとえこれらが移動したとしても、わずかにしか変化しない場所とほぼ一定の速度とを有する。なぜなら、場所および速度は、わずかな測定期間では、例えば道路交通シナリオでは、実質的に変化しないからである。
【0029】
図6には、検査装置1を用いてシミュレートされた反射信号を評価することによって得られた、距離センサ2によるチャープシーケンスの評価を示すものとして、さらなる距離-速度線図が示されている。オブジェクトは、ほぼ一定の距離において識別されているが、速度情報が非常に広範囲にわたってばらついているということが見て取れる。距離センサ2によって特定された速度値は、このケースでは検査装置1が一定のシミュレートされるべき速度vで動作しているにもかかわらず、ばらついている。すなわち、この見かけ上のエラー評価がどのようにして生じるか、また、このような見かけ上のエラー評価をどのようにして回避することができるのかが、問題となる。
【0030】
受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号SRXが、遅延ステップ6にある最中に、指定された時間遅延tdelay,sollが変更され、かつこの変更された指定された時間遅延tdelay,soll,neuが、遅延ステップ6において実施されるべき時間遅延の基礎として使用された場合に、このようなエラーが発生することが判明した。
【0031】
図7に、説明したアプローチの影響が示されている。上の線図には、受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号S
RXが、ここでもやはり正弦波の波束の形態で示されている。下の線図には、時間遅延させられた信号S
delay、すなわちシミュレートされた反射信号が示されている。遅延ステップ6の開始時には、指定された時間遅延t
delay,sollが存在し、その場合、当該指定された時間遅延t
delay,sollが、遅延ステップ6において作動時間遅延t
delay,workとして使用される。時間遅延が依然として持続している間、すなわち遅延ステップ6が依然として終了していない間に、時間遅延に関する新たな値t
delay,soll,neuが指定され、作動時間遅延t
delay,workとして直接的にも利用される。作動時間遅延t
delay,workという用語は、遅延値が、受動的に存在しているだけでなく、時間遅延させられた信号を計算または特定するための基礎として使用されるということを明確にするものである。この切り替えにより、多くの場合、計算された時間遅延させられた信号S
delayにおいて不連続性が生じ、このことは、
図7の下の線図においても見て取れる。この不連続性箇所、すなわち位相位置におけるジャンプが、従来技術において公知の検査装置1によって検査された、検査されるべき距離センサ2における見かけ上のエラーが含まれた評価に対する原因であることが判明した。すなわち、実際には、試験されるべき距離センサ2における評価にエラーが含まれているわけではなく、むしろ、シミュレートされた反射信号の生成において問題が存在するということである。
【0032】
図8は、不連続性箇所を有するシミュレートされた反射信号を、距離センサ2において評価する際における問題を説明するために使用される。距離センサ2において生成された3つの混合信号S
M1,S
M2,S
M3が示されており、これら3つの混合信号S
M1,S
M2,S
M3は、それぞれ送出されたチャープと、検査装置1によって生成されてシミュレートされて距離センサ2によって再受信されたシミュレートされた反射されたチャープと、の混合に基づいている。混合信号S
M1,S
M2,S
M3は、実質的に固定の周波数を有する高調波振動である。それぞれのチャープまたはそれぞれの混合信号S
M1,S
M2,S
M3の時間的な伸び具合は、左から右に向かって第1の時間軸に沿って延在するように示されている。複数の相次いだチャープ、または複数の相次いだチャープに基づく混合信号S
M1,S
M2,S
M3は、第2の時間軸に沿って時間的に次々に並んで示されている。距離情報を特定するために、それぞれの混合信号S
M1,S
M2,S
M3が周波数分析に供され、これにより、それぞれの混合信号S
M1,S
M2,S
M3から距離情報が得られる。複数のそれぞれ異なる時間的に相次いだ混合信号S
M1,S
M2,S
M3が、ある程度の時間オフセット、ひいては位相オフセットφを有していることが見て取れ、このオフセットは、第2の時間軸の方向におけるデータセットのフーリエ解析によって特定される。最初の2つの混合信号S
M1,S
M2は、妨害されておらず連続的でもある2つのチャープ信号の混合に基づいた連続的な振動推移である。第3の混合信号S
M3では、検査装置1によって生成されたシミュレートされた反射信号が、
図7に基づいて説明したような位相ジャンプを有している。なぜなら、時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号S
RXに対する遅延ステップ6中に、2つのそれぞれ異なる指定された時間遅延t
delay,sollおよびt
delay,soll,neuが、作動時間遅延t
delay,workとして使用されたからである。
図7において見て取れるような生成されたシミュレートされた反射信号における位相ジャンプは、
図8において見て取れるように当然、混合信号S
M3に伝達される。これにより、評価におけるそれぞれ異なる位相値φと、これらの位相値から結果的に生じるそれぞれ異なる対応する速度値と、が生じることとなる。このことは、距離センサ2において対応する信号を評価する際において確認された問題を説明している。
【0033】
指摘した問題は、図示の検査装置1と、
図9に詳細に示されているような図示の方法10と、において、信号処理ユニット5により、受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号S
RXが、または受信したセンサ信号S
RXから導出された受信した時間的に一貫したかつ時間的に限られたセンサ信号S’
RXが、遅延ステップ6において、当該遅延ステップ6の開始時、ひいては受信した時間的に限られたセンサ信号S
RXの処理の開始時に指定された時間遅延t
delay,sollを、たとえ当該遅延ステップ6中に、ひいては受信したセンサ信号S
RXまたは受信したセンサ信号S
RXから導出された受信したセンサ信号S’
RXの持続的な処理中に、当該指定された時間遅延t
delay,sollが変更されたとしても一定の作動時間遅延t
delay,workとして用いることによって完全に処理されて、時間遅延させられたセンサ信号S
delayが生成されることによって解決される。
図9には、遅延ステップ6中に新たに指定された時間遅延t
delay,soll,neuが、古い指定された時間遅延t
delay,sollに基づいた遅延ステップ6が終了するまでの間、信号遅延のための新たな指定値として使用されることに対してブロックされ、したがって、時間遅延させられたシミュレートされた反射信号を計算するための基礎としては使用されないということが示されている。その後にようやく、すでに時間遅延ステップ中に新たに指定された時間遅延t
delay,soll,neuが、作動時間遅延t
delay,workとして使用される。
【0034】
図面に示された検査装置1および図示の方法10は、遅延ステップ6において、受信したセンサ信号SRXまたは受信したセンサ信号SRXから導出された受信したセンサ信号S’RXが持続的な処理中であるということが、以下のことによって検出され、すなわち、信号処理ユニット5が、受信信号SRXまたは受信信号SRXから導出された受信信号S’RXの信号レベルAまたは信号出力Pを特定し、特定された信号レベルAまたは特定された信号出力Pが、信号レベルまたは信号出力に関して指定されたアクティブ閾値ASWを上回っている場合に、受信したセンサ信号SRXまたは受信したセンサ信号SRXから導出された受信したセンサ信号S’RXが依然として持続的な処理中であると推定することによって検出される((P(SRX)vA(SRX))>ASW)。
【0035】
図面に示された検査装置1および図示の方法10は、特定された信号レベルAまたは特定された信号出力Pが、信号レベルまたは信号出力に関して指定されたアクティブ閾値ASWを、指定されたアクティブ期間にわたって上回っている場合に、信号処理ユニット5が、遅延ステップ6の開始、ひいては受信したセンサ信号SRXまたは受信したセンサ信号SRXから導出された受信したセンサ信号S’RXの持続的な処理の開始を検出することによって実施され、このことは、ここでは詳細には示されていない。
【0036】
図面に示された検査装置1および図示の方法10は、遅延ステップ6の終了、ひいては受信したセンサ信号SRXまたは受信したセンサ信号SRXから導出された受信したセンサ信号S’RXの持続的な処理の欠如が、以下のことによって検出され、すなわち、信号処理ユニット5が、受信信号SRXまたは受信信号SRXから導出された受信信号S’RXの信号レベルAまたは信号出力Pを特定し、特定された信号レベルAまたは特定された信号出力Pが、信号レベルまたは信号出力に関して指定されたパッシブ閾値PSWを下回っている場合に、受信したセンサ信号SRXまたは受信したセンサ信号SRXから導出された受信したセンサ信号S’RXの処理の非存在を推定することによって検出されるという点でさらに共通している。
【0037】
図面に示された検査装置1および図示の方法10は、特定された信号レベルAまたは特定された信号出力Pが、信号レベルまたは信号出力に関して指定されたパッシブ閾値PSWを、指定されたパッシブ期間tpにわたって下回っている場合に、信号処理ユニット5が、遅延ステップ6の終了、ひいては受信したセンサ信号SRXまたは受信したセンサ信号SRXから導出された受信したセンサ信号S’RXの持続的な処理の完了を検出するようにさらに構成されている((P(SRX)vA(SRX))<PSW)。このケースでは、パッシブ期間tpは、遅延ステップ6中に作動時間遅延tdelay,workとして使用されていた、指定された時間遅延tdelay,sollの長さを有する。このことは、有意義である。なぜなら、処理されたシミュレートされた時間遅延させられた信号は、いずれにせよ受信信号が受信されるよりも時間遅延の値の分だけ長時間、検査装置1内に存在しているからである。
【0038】
検査装置1および方法10の図示の実施形態では、パッシブ期間tpは、1つのレーダフレームの複数のセンサ信号からなる、すなわち複数の一緒に纏められたセンサ信号からなる1つの一緒に纏められたシーケンスの、複数の相次いだセンサ信号同士の間の休止よりも長くなるように選択されている。これにより、完全に新しいレーダフレームのセンサ信号が受信された場合に初めて、有効な作動時間遅延tdelay,workとして、新たに指定された時間遅延tdelay,sollへと切り替えることが可能となるということが達成される。
【符号の説明】
【0039】
1 検査装置
2 距離センサ
3 受信要素
4 放射要素
5 信号処理ユニット
6 遅延ステップ
10 方法
SRX 受信信号
S’RX 受信信号SRXから導出された受信信号
STX 出力信号
tdelay,soll 指定可能な時間遅延
Sdelay 時間遅延させられた信号
S’delay 時間遅延させられた信号から導出された時間遅延させられた信号
tdelay,soll,neu 新たに指定された時間遅延
tdelay,work 一定の作動時間遅延
tdelay,soll 指定可能な時間遅延
SM1,SM2,SM3 混合信号
φ 位相オフセット
R 距離
v 速度
A 信号レベル
P 信号出力
ASW アクティブ閾値
PSW パッシブ閾値
tp パッシブ期間
【国際調査報告】