(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】記憶ナチュラルキラー細胞の拡大
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240717BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240717BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240717BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240717BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240717BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240717BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240717BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61K35/17 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502087
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 US2022037178
(87)【国際公開番号】W WO2023288007
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524016541
【氏名又は名称】ウーゲン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】サリバン,ライアン パトリック
(72)【発明者】
【氏名】クロバク,ケネス エム.
(72)【発明者】
【氏名】クーパー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】マティアー,メアリー エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ゴヴェロ,ジェニファー エル.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BB19
4B065CA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087AA04
4C087BB37
4C087CA04
4C087DA18
4C087DA32
4C087NA20
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
本開示は、概して、とりわけ、記憶様及びサイトカイン誘導性記憶様(CIML)NK細胞を含めたナチュラルキラー(NK)細胞、それを作成し及び例えば癌の治療に使用する方法、NK細胞の抗腫瘍特性を増加させる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次、
a)精製されたNK細胞を拡大すること;及び
b)前記NK細胞をプライミングすること
によって作製される精製された記憶ナチュラルキラー(NK)細胞の集団。
【請求項2】
精製されたNK細胞を同時にプライミング及び拡大することによって作製される精製された記憶ナチュラルキラー(NK)細胞の集団。
【請求項3】
前記NK細胞が、新鮮な又は凍結された白血球アフェレーシス産物又は供血から濃縮される、請求項1又は2に記載の記憶NK細胞。
【請求項4】
前記NK細胞が、リンパ球前駆細胞から分化する、請求項1又は2に記載の記憶NK細胞。
【請求項5】
前記NK細胞が、ネガティブ又はポジティブ選択、又はこれらの組み合わせによって精製される、請求項1又は2に記載の記憶NK細胞。
【請求項6】
前記NK細胞が、
・IL-12、IL-23、IL-27、及びIL-35のうちの1つ以上;
・IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上;及び
・IL-18、IL-1a、IL-1b、IL-36a、IL-36b、及びIL-36gのうちの1つ以上;
又はその機能性断片、及び/又はその機能性断片を含む融合タンパク質、又は前述のいずれかの組み合わせ
への曝露によってプライミングされる、請求項1又は2に記載の記憶NK細胞。
【請求項7】
前記NK細胞が、18t15-12sへの曝露によってプライミングされる、請求項6に記載の記憶NK細胞。
【請求項8】
前記NK細胞が、1分~24時間にわたってプライミングされる、請求項1~7のいずれか一項に記載の記憶NK細胞。
【請求項9】
前記NK細胞が、IL-12、IL-15、及びIL-18への曝露によってプライミングされる、請求項6に記載の記憶NK細胞。
【請求項10】
前記NK細胞が、1分~24時間にわたってプライミングされる、請求項9に記載の記憶NK細胞。
【請求項11】
前記NK細胞が、7t15-21s及びATF1への曝露によって拡大される、請求項1~10のいずれか一項に記載の記憶NK細胞。
【請求項12】
前記NK細胞が、1~40日間にわたって拡大される、請求項11に記載の記憶NK細胞。
【請求項13】
前記記憶NK表現型が、未処理のNK細胞と比較したときのCD69、CD25、及びNKG2A発現の増加、並びにCD16発現の維持によって指示される、請求項1~12のいずれか一項に記載の記憶NK細胞。
【請求項14】
前記記憶NK細胞に、未処理のNK細胞と比較して、
・癌細胞に対する細胞傷害性の改善;
・持続性の改善;
・抗腫瘍活性の改善;及び/又は
・サイトカイン産生の増加;
のうちの1つ以上が見られる、請求項1~13のいずれか一項に記載の記憶NK細胞。
【請求項15】
前記癌細胞が、K562細胞である、請求項14に記載の記憶NK細胞。
【請求項16】
前記産生されるサイトカインが、IFNg、TNFa、GM-CSF、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の記憶NK細胞。
【請求項17】
持続性が、免疫不全マウスにおいて1~14日間にわたって測定されるとおりである、請求項14に記載の記憶NK細胞。
【請求項18】
前記マウスが、NSGマウスである、請求項17に記載の記憶NK細胞。
【請求項19】
抗腫瘍活性が、免疫不全マウスにおける癌細胞の腫瘍成長の低減として測定される、請求項14に記載の記憶NK細胞。
【請求項20】
前記NK細胞が、サイトカイン誘導性記憶様(CIML)NK細胞である、請求項1~19のいずれか一項に記載の記憶NK細胞。
【請求項21】
a)標的細胞上の抗原を標的化する少なくとも1つの細胞外リガンド結合ドメイン;
b)ヒンジドメイン;
c)膜貫通ドメイン;
d)任意選択で、1つ以上の共刺激ドメイン;及び
e)細胞質シグナル伝達ドメイン
を含む、少なくとも1つのキメラ抗原受容体(CAR)を加えて含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の記憶NK細胞。
【請求項22】
a)濃縮したNK細胞集団を精製すること;
b)前記NK細胞を拡大すること;及び
c)前記NK細胞をプライミングすること
を含む記憶NK細胞を作成する方法。
【請求項23】
a)濃縮したNK細胞集団を精製すること;及び
b)前記NK細胞を同時にプライミング及び拡大すること
を含む記憶NK細胞を作成する方法。
【請求項24】
前記NK細胞が、新鮮な又は凍結された白血球アフェレーシス産物又は供血から濃縮される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記NK細胞が、リンパ球前駆細胞から分化する、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項26】
前記NK細胞が、ネガティブ又はポジティブ選択、又はこれらの組み合わせによって精製される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項27】
前記NK細胞が、
・IL-12、IL-23、IL-27、及びIL-35のうちの1つ以上;
・IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上;及び
・IL-18、IL-1a、IL-1b、IL-36a、IL-36b、及びIL-36gのうちの1つ以上;
又はその機能性断片、及び/又はその機能性断片を含む融合タンパク質、又は前述のいずれかの組み合わせ
への曝露によってプライミングされる、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項28】
前記NK細胞が、18t15-12sへの曝露によってプライミングされる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記NK細胞が、1分~24時間にわたってプライミングされる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記NK細胞が、IL-12、IL-15、及びIL-18への曝露によってプライミングされる、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記NK細胞が、2~40日間にわたってプライミングされる、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記NK細胞が、7t15-21s及びATF1への曝露によって拡大される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項33】
前記NK細胞が、1~40日間にわたって拡大される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項34】
前記記憶NK表現型が、未処理のNK細胞と比較したときのCD69、CD25、及びNKG2A発現の増加、並びにCD16発現の維持によって指示される、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記記憶NK細胞に、未処理のNK細胞と比較して、
・癌細胞に対する細胞傷害性の改善;
・持続性の改善;
・抗腫瘍活性の改善;及び/又は
・サイトカイン産生の増加;
のうちの1つ以上が見られる、請求項22~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記癌細胞が、K562細胞である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記産生されるサイトカインが、IFNg、TNFa、GM-CSF、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
持続性が、免疫不全マウスにおいて1~14日間にわたって測定されるとおりである、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記マウスが、NSGマウスである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記抗腫瘍活性の改善が、免疫不全マウスにおける癌細胞の腫瘍成長の低減である、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞が、サイトカイン誘導性ML(CIML)NK細胞である、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
増殖性悪性腫瘍を治療する方法であって、請求項1~21のいずれか一項に記載の記憶NK細胞、又は請求項22~41のいずれか一項に記載の方法により作成されるとおりの記憶NK細胞の、それを必要としている患者への投与を含む方法。
【請求項43】
前記細胞が、新鮮なまま患者に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記増殖性悪性腫瘍が、癌である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記癌が、血液癌である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記血液癌が、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、及び骨髄異形成症候群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記血液癌が、B細胞リンパ腫である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記B細胞リンパ腫が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)及び慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記血液癌が、T細胞リンパ腫である、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記T細胞リンパ腫が、T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、T細胞慢性リンパ球性白血病(T-CLL)、及びセザリー症候群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記血液癌が、白血病である、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記白血病が、急性骨髄(又は骨髄性)白血病(AML)、慢性骨髄(又は骨髄性)白血病(CML)、急性リンパ球性(又はリンパ芽球性)白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)及びヘアリー細胞白血病から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記血液癌が、形質細胞悪性腫瘍である、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
前記形質細胞悪性腫瘍が、リンパ形質細胞性リンパ腫、形質細胞腫、及び多発性骨髄腫から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記癌が、固形腫瘍である、請求項44に記載の方法。
【請求項56】
前記固形腫瘍が、黒色腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、肉腫、又は癌腫から選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記固形腫瘍が、脳、頭部、頸部、乳房、肺(例えば、非小細胞肺癌、NSCLC)、生殖器系(例えば、卵巣)、上部消化管、膵臓、肝臓、腎系(例えば、腎臓)、膀胱、前立腺又は結腸直腸の腫瘍である、請求項55に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年7月15日に出願された米国仮特許出願第63/222,306号の優先権の利益を主張するものであり、この開示は、その全体が本明細書に書かれたものとして参照により援用される。
【0002】
本開示は、概して、とりわけ、記憶/記憶様及びサイトカイン誘導性記憶様(CIML)NK細胞を含めた、ナチュラルキラー(NK)細胞、それを作成し及び例えば癌の治療に使用する方法、及びNK細胞の抗腫瘍特性を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、グランザイム及びパーフォリンを標的に向けて放出することによって抗体依存性細胞毒性を呈する細胞傷害性リンパ球として特徴付けられることの多い一群の自然免疫細胞を構成する。ほとんどのNK細胞は、様々な活性化型及び抑制型受容体の集まりに加え、特異的な細胞表面マーカープロファイル(例えば、CD3、CD56+、CD16+、CD57+、CD8+)を有する。最近になってNK細胞は、ある種の癌治療の重要な構成要素になりつつあるが、全血中のNK細胞の割合は比較的低いため、多量のNK細胞の生成が大きな障害となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該技術分野においては、記憶NK細胞を生成する様々な方法が公知であり、その全て又はほぼ全てが、低収率、フィーダー細胞の使用、及び高価な試薬など、様々な欠点を抱えている。結果的に、記憶NK細胞を多量に生み出す改良されたシステム及び方法を提供することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書には、概念的に単純且つ効率的なやり方で記憶/記憶様NK細胞の生成及び拡大を可能にする組成物及び方法が開示される。記憶NK細胞は、記憶NK細胞を形成するためのNK細胞のプライミングと、所望の分量への拡大とを同時に行うプロセスで生成することができる。或いは、NK細胞を所望の分量に拡大し、次にプライミングすることにより、記憶NK細胞が形成される。
【0006】
配列の簡単な説明
表4及び表5の配列番号1~48は、キメラ抗原受容体の様々な構成要素の配列である。
【0007】
配列番号49~50は、EFP 7t15-21sを作り上げる例示的な拡大融合タンパク質(EFP)鎖の配列である。
【0008】
配列番号51~70は、例示的な架橋剤抗組織因子抗体ATF1の配列である。
【0009】
配列番号71~72は、PFP 18t15-12sを作り上げる例示的なプライミング融合タンパク質(PFP)鎖の配列である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面の簡単な説明
【
図1】拡大剤とプライミング剤との所与の組み合わせ(7t15-21s+ATF1、18t15-12s)によって作製した記憶NK細胞についての、所与のエフェクター対標的細胞比での、記憶NK細胞による6/7日目のインビトロ癌細胞(K562)殺傷率を示す。
【
図2】拡大剤とプライミング剤との所与の組み合わせ(7t15-21s+ATF1、18t15-12s)によって作製した記憶NK細胞についての、所与のエフェクター対標的細胞比での、記憶NK細胞による13日目のインビトロ癌細胞(K562)殺傷率を示す。
【
図3】拡大剤とプライミング剤との所与の組み合わせ(7t15-21s+ATF1、18t15-12s)によって作製した記憶NK細胞についての、所与のエフェクター対標的細胞比での、記憶NK細胞による17日目のインビトロ癌細胞(K562)殺傷率を示す。
【
図4】拡大剤とプライミング剤との所与の組み合わせ(7t15-21s+ATF1、18t15-12s)によって作製した記憶NK細胞による癌細胞(K562)殺傷の細胞比のEC50を示す。
【
図5】所与の細胞密度における培養下で所与の日数にわたって刺激したNK細胞の数の累積変化倍数を示す。
【
図6】250nMのプライミング剤で所与の時間長さにわたってプライミングした拡大後の細胞についての所与のエフェクター:標的比でのインビトロ癌細胞(K562)殺傷率を示す。
【
図7】250nMプライミング剤18t15-12sで所与の時間長さにわたってプライミングした拡大後の細胞についての、2、4、6、8、10、12、14及び16日目における、20:1のエフェクター:標的比でのインビトロ癌細胞(K562)殺傷率を示す。
【
図8】250nMプライミング剤18t15-12sで所与の時間長さにわたってプライミングした拡大後の細胞についての、2、4、6、8、10、12、14及び16日目における、4:1のエフェクター:標的比でのインビトロ癌細胞(K562)殺傷率を示す。
【
図9】250nMプライミング剤18t15-12sで所与の時間長さにわたってプライミングした拡大後の細胞についての、2、4、6、8、10、12、14及び16日目における、0.8:1のエフェクター:標的比でのインビトロ癌細胞(K562)殺傷率を示す。
【
図10】250nMプライミング剤18t15-12sで所与の継続期間にわたってプライミングした拡大後の細胞についての、2、4、6、8、10、12、14及び16日目における、0.16:1のエフェクター:標的比でのインビトロ癌細胞(K562)殺傷率を示す。
【
図11】単独又はK562標的細胞の存在下のいずれかで24時間培養した後の細胞培養物(K562のみ、拡大したNK細胞、及び拡大し且つ250nMプライミング剤18t15-12sで所与の継続期間にわたってプライミングしたNK細胞)におけるIFNg産生を示す。
【
図12】拡大のみ、プライミング後に拡大、及び拡大後にプライミングによって作製したNK細胞の拡大倍数を示す。
【
図13】単離後、3時間プライミング、一晩プライミング、一晩プライミング後に拡大、拡大後に3時間プライミング、拡大後に一晩プライミング、又は拡大のみとしたNK細胞についての所与のエフェクター:標的比でのインビトロ癌細胞(K562)殺傷率を示す。
【
図14】単離後、3時間プライミング、一晩プライミング、一晩プライミング後に拡大、拡大後に3時間プライミング、拡大後に一晩プライミング、又は拡大のみとしたNK細胞の細胞K562殺傷EC
50を示す。
【
図15】単離後、3時間プライミング、一晩プライミング、一晩プライミング後に拡大、拡大後に3時間プライミング、拡大後に一晩プライミング、又は拡大のみとしたNK細胞からの細胞培養物(NK細胞単独、又はK562細胞有り)におけるIFNg産生を示す。
【
図16】免疫不全NSGマウスの血中における、3時間プライミング、一晩プライミング、一晩プライミング後に拡大、拡大のみ、又は拡大後に3時間プライミングとしたことによって作製したNK細胞の数の、t=0での注射後7日目におけるバックグラウンドと比べた変化倍数を示す。
【
図17】拡大した、及び拡大後にプライミングしたNK細胞による14日目のK562-Luc殺傷を示す。
【
図18】拡大した、及び拡大後にプライミングしたNK細胞によるK562-Luc殺傷のEC50を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本明細書には、概念的に単純且つ効率的なやり方で記憶/記憶様NK細胞の生成及び拡大を可能にする組成物及び方法が提供される。記憶NK細胞は、記憶NK細胞を形成するためのNK細胞のプライミングと、所望の分量への拡大とを同時に行うプロセスで生成することができる。或いは、NK細胞を所望の分量に拡大し、次にプライミングすることにより、記憶NK細胞が形成される。
【0012】
このように、本明細書には、順次、
a)精製されたNK細胞の集団を拡大すること;及び
b)NK細胞をプライミングすること
によって作製される記憶ナチュラルキラー(NK)細胞が提供される。
【0013】
また、本明細書には、精製されたNK細胞の集団を同時にプライミング及び拡大することによって作製される精製された記憶ナチュラルキラー(NK)細胞も提供される。
【0014】
また、本明細書には、順次、
a)NK細胞の集団を精製すること;
b)NK細胞を拡大すること;及び
c)NK細胞をプライミングすること
によって作製される記憶ナチュラルキラー(NK)細胞も提供される。
【0015】
また、本明細書には、
a)NK細胞の集団を精製すること;及び
b)NK細胞を同時にプライミング及び拡大すること
によって作製される記憶ナチュラルキラー(NK)細胞も提供される。
【0016】
更に本明細書には、
a)精製されたNK細胞集団を拡大すること;及び次に
b)NK細胞をプライミングすること
を含む記憶NK細胞を作成する方法が開示される。
【0017】
更に本明細書には、精製されたNK細胞集団を同時にプライミング及び拡大することを含む記憶NK細胞を作成する方法が開示される。
【0018】
更に本明細書には、
a)NK細胞の集団を精製すること;
b)NK細胞を拡大すること;及び次に
c)NK細胞をプライミングすること
を含む記憶NK細胞を作成する方法が開示される。
【0019】
更に本明細書には、
a)NK細胞の集団を精製すること;及び
b)NK細胞を同時にプライミング及び拡大すること
を含む記憶NK細胞を作成する方法が開示される。
【0020】
また、以下の実施形態も提供される。
【0021】
一部の実施形態において、NK細胞集団は、供血、又は新鮮な若しくは予め凍結保存されていた白血球アフェレーシス産物から出発して精製される。一部の実施形態において、精製は、ポジティブ選択(例えば、Miltenyi CliniMACS Prodigyにて)を経て実施される。一部の実施形態において、精製は、ネガティブ選択(例えば、StemCell EasySepのNK細胞濃縮キット)を経て実施される。一部の実施形態において、精製は、ポジティブ選択とネガティブ選択との組み合わせを用いて実施される。一部の実施形態において、NK細胞は、リンパ球前駆細胞から分化させる。
【0022】
一部の実施形態において、NK細胞は、サイトカインの組み合わせ、又はその機能性断片、及び/又はその機能性断片を含む融合タンパク質、又は前述のいずれかの組み合わせと、任意選択で架橋剤とを含む拡大剤への曝露によって拡大される。
【0023】
一部の実施形態において、NK細胞は、
・IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上、又はその機能性断片;又は
・IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上の機能性断片を含む融合タンパク質;
及び任意選択で架橋剤;又は
・NK細胞架橋抗体及び拡大サイトカインで機能化したマイクロスフェア;
又は前述のいずれかの組み合わせ
を含む拡大剤への曝露によって拡大される。
【0024】
一部の実施形態において、NK細胞は、IL-7、IL-21、及びIL-15の組み合わせ、又はその機能性断片、及び/又はその機能性断片を含む融合タンパク質、又は前述のいずれかの組み合わせを含む拡大剤への曝露によって拡大される。
【0025】
一部の実施形態において、NK細胞は、IL-7、IL-21、及びIL-15の機能性断片を含む融合タンパク質を含む拡大剤への曝露によって拡大される。
【0026】
一部の実施形態において、NK細胞は、7t15-21sを含む拡大剤への曝露によって拡大される。
【0027】
一部の実施形態において、拡大剤は架橋剤を含む。一部の実施形態において、架橋剤は架橋抗体である。一部の実施形態において、架橋抗体はATF1である。
【0028】
一部の実施形態において、NK細胞は、7t15-21sとATF1とを含む拡大剤への曝露によって拡大される。
【0029】
一部の実施形態において、NK細胞は、NK細胞架橋抗体及び拡大サイトカインで機能化したマイクロスフェアを含む拡大剤への曝露によって拡大される。
【0030】
一部の実施形態において、NK細胞は、1日~40日間にわたる拡大剤への曝露によって拡大される。一部の実施形態において、NK細胞は、7日~21日間にわたる拡大剤への曝露によって拡大される。一部の実施形態において、NK細胞は、約14日間にわたる拡大剤への曝露によって拡大される。
【0031】
一部の実施形態において、拡大剤は7t15-21sとATF1とを含む。一部の実施形態において、拡大剤は、0.1~300nmの濃度の7t15-21sと、0.01~200nmの濃度のATF1とを含む。一部の実施形態において、拡大剤は、0.2~200nmの濃度の7t15-21sと、0.01~100nmの濃度のATF1とを含む。一部の実施形態において、拡大剤は、約50nmの濃度の7t15-21sと、約25nmの濃度のATF1とを含む。
【0032】
一部の実施形態において、NK細胞は、約14日間にわたる7t15-21s及びATF1への曝露によって拡大される。一部の実施形態において、NK細胞は、約14日間にわたる約50nmの濃度の7t15-21s及び約25nmの濃度のATF1への曝露によって拡大される。
【0033】
一部の実施形態において、NK細胞は、例えば、サイトカインの組み合わせ、又はその機能性断片、及び/又はその機能性断片を含む融合タンパク質、又は前述のいずれかの組み合わせから選択されるプライミング剤への曝露によってプライミングされる。
【0034】
一部の実施形態において、NK細胞は、
・IL-12、IL-23、IL-27、及びIL-35のうちの1つ以上;
・IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上;及び
・IL-18、IL-1a、IL-1b、IL-36a、IL-36b、及びIL-36gのうちの1つ以上;
又はその機能性断片、及び/又はその機能性断片を含む融合タンパク質、又は前述のいずれかの組み合わせ
を含むプライミング剤への曝露によってプライミングされる。
【0035】
一部の実施形態において、NK細胞は、IL-12、IL-15、及びIL-18の組み合わせを含むプライミング剤への曝露によってプライミングされる。
【0036】
一部の実施形態において、NK細胞は、IL-12、IL-15、及びIL-18の機能性断片を含む融合タンパク質を含むプライミング剤への曝露によってプライミングされる。一部の実施形態において、NK細胞は、融合タンパク質18t15-12sを含むプライミング剤への曝露によってプライミングされる。
【0037】
一部の実施形態において、NK細胞は、200~300nMの濃度の18t15-12sでプライミングされる。一部の実施形態において、NK細胞は、250nmの濃度の18t15-12sでプライミングされる。
【0038】
一部の実施形態において、NK細胞は、1分~24時間にわたってプライミングされる。一部の実施形態において、NK細胞は、0.5~16時間にわたってプライミングされる。一部の実施形態において、NK細胞は、1~3時間にわたってプライミングされる。
【0039】
一部の実施形態において、NK細胞は凍結保存される。
【0040】
一部の実施形態において、NK細胞は初めに拡大され、次にプライミングされる。
【0041】
一部の実施形態において、NK細胞は、出発数の10倍超に拡大される。一部の実施形態において、NK細胞は、出発数の100倍超に拡大される。一部の実施形態において、NK細胞は、出発数の1000倍超に拡大される。
【0042】
一部の実施形態において、NK細胞は、同時に拡大及びプライミングされる。
【0043】
一部の実施形態において、細胞は、記憶様(ML)NK表現型を有する。
【0044】
一部の実施形態において、記憶様表現型は、細胞表面CD69、CD25、CD16、及び/又はNKG2Aの発現レベルによって指示される。
【0045】
一部の実施形態において、記憶NK細胞には、プライミングされていないNK細胞と比較して、
a)癌細胞に対する細胞傷害性の改善;
b)持続性の改善;
c)抗腫瘍活性の改善;及び/又は
d)サイトカイン産生の増加;
のうちの1つ以上が見られる。
【0046】
一部の実施形態において、癌細胞は、K562細胞である。
【0047】
一部の実施形態において、産生されるサイトカインは、IFNg、TNFa、GM-CSF、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0048】
一部の実施形態において、持続性は、免疫不全マウスにおいて1~14日間にわたって測定されるとおりである。
【0049】
一部の実施形態において、マウスは、NSGマウスである。
【0050】
一部の実施形態において、抗腫瘍活性は、免疫不全マウスにおけるK562細胞の腫瘍成長の低減として測定される。
【0051】
一部の実施形態において、NK細胞は、サイトカイン誘導性記憶様(CIML)NK細胞である。
【0052】
一部の実施形態において、記憶NK細胞は、加えて、
a)標的細胞上の抗原を標的化する少なくとも1つの細胞外リガンド結合ドメイン;
b)ヒンジドメイン;
c)膜貫通ドメイン;
d)任意選択で、1つ以上の共刺激ドメイン;及び
e)細胞質シグナル伝達ドメイン
を含む、少なくとも1つのキメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0053】
また、本明細書には、増殖性悪性腫瘍を治療する方法であって、上記の実施形態に係る記憶NK細胞、又は上記の実施形態の方法によって作成されるとおりの細胞の、それを必要としている患者への投与を含む方法も提供される。
【0054】
一部の実施形態において、細胞は、新鮮なまま患者に投与される。
【0055】
一部の実施形態において、増殖性悪性腫瘍は、癌である。
【0056】
一部の実施形態において、癌は、血液癌である。
【0057】
一部の実施形態において、血液癌は、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、及び骨髄異形成症候群から選択される。
【0058】
一部の実施形態において、血液癌は、B細胞リンパ腫である。
【0059】
一部の実施形態において、B細胞リンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)及び慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)から選択される。
【0060】
一部の実施形態において、血液癌は、T細胞リンパ腫である。
【0061】
一部の実施形態において、T細胞リンパ腫は、T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、T細胞慢性リンパ球性白血病(T-CLL)、及びセザリー症候群から選択される。
【0062】
一部の実施形態において、血液癌は、白血病である。
【0063】
一部の実施形態において、白血病は、急性骨髄(又は骨髄性)白血病(AML)、慢性骨髄(又は骨髄性)白血病(CML)、急性リンパ球性(又はリンパ芽球性)白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)及びヘアリー細胞白血病から選択される。
【0064】
一部の実施形態において、血液癌は、形質細胞悪性腫瘍である。
【0065】
一部の実施形態において、形質細胞悪性腫瘍は、リンパ形質細胞性リンパ腫、形質細胞腫、及び多発性骨髄腫から選択される。
【0066】
一部の実施形態において、癌は、固形腫瘍である。
【0067】
一部の実施形態において、固形腫瘍は、黒色腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、肉腫、又は癌腫から選択される。
【0068】
一部の実施形態において、固形腫瘍は、脳、頭部、頸部、乳房、肺(例えば、非小細胞肺癌、NSCLC)、生殖器系(例えば、卵巣)、上部消化管、膵臓、肝臓、腎系(例えば、腎臓)、膀胱、前立腺又は結腸直腸の腫瘍である。
【0069】
列挙される実施形態
本明細書にはまた、以下の実施形態も提供される:
【0070】
実施形態1.順次、
a)精製されたNK細胞を拡大すること;及び
b)NK細胞をプライミングすること
によって作製される精製された記憶ナチュラルキラー(NK)細胞の集団。
【0071】
実施形態2.精製されたNK細胞を同時にプライミング及び拡大することによって作製される精製された記憶ナチュラルキラー(NK)細胞の集団。
【0072】
実施形態3.NK細胞が、新鮮な又は凍結された白血球アフェレーシス産物又は供血から濃縮される、実施形態1又は2に記載の記憶NK細胞。
【0073】
実施形態4.NK細胞がリンパ球前駆細胞から分化する、実施形態1又は2に記載の記憶NK細胞。
【0074】
実施形態5.NK細胞が、ネガティブ又はポジティブ選択、又はこれらの組み合わせによって精製される、実施形態1又は2に記載の記憶NK細胞。
【0075】
実施形態6.NK細胞が、
・IL-12、IL-23、IL-27、及びIL-35のうちの1つ以上;
・IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上;及び
・IL-18、IL-1a、IL-1b、IL-36a、IL-36b、及びIL-36gのうちの1つ以上;
又はその機能性断片、及び/又はその機能性断片を含む融合タンパク質、又は前述のいずれかの組み合わせ
への曝露によってプライミングされる、実施形態1又は2に記載の記憶NK細胞。
【0076】
実施形態7.NK細胞が、18t15-12sへの曝露によってプライミングされる、実施形態6に記載の記憶NK細胞。
【0077】
実施形態8.NK細胞が、1分~24時間にわたってプライミングされる、実施形態1~7のいずれか一つに記載の記憶NK細胞。
【0078】
実施形態9.NK細胞が、IL-12、IL-15、及びIL-18への曝露によってプライミングされる、実施形態6に記載の記憶NK細胞。
【0079】
実施形態10.NK細胞が、1分~24時間にわたってプライミングされる、実施形態9に記載の記憶NK細胞。
【0080】
実施形態11.NK細胞が、7t15-21s及びATF1への曝露によって拡大される、実施形態1~10のいずれか一つに記載の記憶NK細胞。
【0081】
実施形態12.NK細胞が、1~40日間にわたって拡大される、実施形態11に記載の記憶NK細胞。
【0082】
実施形態13.記憶NK表現型が、未処理のNK細胞と比較したときの、CD69、CD25、及びNKG2A発現の増加、並びにCD16発現の維持によって指示される、実施形態1~12のいずれか一つに記載の記憶NK細胞。
【0083】
実施形態14.未処理のNK細胞と比較して、記憶NK細胞に、
・癌細胞に対する細胞傷害性の改善;
・持続性の改善;
・抗腫瘍活性の改善;及び/又は
・サイトカイン産生の増加
のうちの1つ以上が見られる、実施形態1~13のいずれか一つに記載の記憶NK細胞。
【0084】
実施形態15.癌細胞がK562細胞である、実施形態14に記載の記憶NK細胞。
【0085】
実施形態16.産生されるサイトカインが、IFNg、TNFa、GM-CSF、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態14に記載の記憶NK細胞。
【0086】
実施形態17.持続性が、免疫不全マウスにおいて1~14日間にわたって測定されるとおりである、実施形態14に記載の記憶NK細胞。
【0087】
実施形態18.マウスがNSGマウスである、実施形態17に記載の記憶NK細胞。
【0088】
実施形態19.抗腫瘍活性が、免疫不全マウスにおける癌細胞の腫瘍成長の低減として測定される、実施形態14に記載の記憶NK細胞。
【0089】
実施形態20.NK細胞が、サイトカイン誘導性記憶様(CIML)NK細胞である、実施形態1~19のいずれか一つに記載の記憶NK細胞。
【0090】
実施形態21.加えて、
a.標的細胞上の抗原を標的化する少なくとも1つの細胞外リガンド結合ドメイン;
b.ヒンジドメイン;
c.膜貫通ドメイン;
d.任意選択で、1つ以上の共刺激ドメイン;及び
e.細胞質シグナル伝達ドメイン
を含む、少なくとも1つのキメラ抗原受容体(CAR)を含む、実施形態1~20のいずれか一つに記載の記憶NK細胞。
【0091】
実施形態22.記憶NK細胞を作成する方法であって、
a)濃縮したNK細胞集団を精製すること;
b)NK細胞を拡大すること;及び
c)NK細胞をプライミングすること
を含む方法。
【0092】
実施形態23.記憶NK細胞を作成する方法であって、
a)濃縮したNK細胞集団を精製すること;及び
b)NK細胞を同時にプライミング及び拡大すること
を含む方法。
【0093】
実施形態24.NK細胞が、新鮮な又は凍結された白血球アフェレーシス産物又は供血から濃縮される、実施形態22又は23に記載の方法。
【0094】
実施形態25.NK細胞が、リンパ球前駆細胞から分化する、実施形態22又は23に記載の方法。
【0095】
実施形態26.NK細胞が、ネガティブ又はポジティブ選択、又はこれらの組み合わせによって精製される、実施形態22又は23に記載の方法。
【0096】
実施形態27.NK細胞が、
・IL-12、IL-23、IL-27、及びIL-35のうちの1つ以上;
・IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上;及び
・IL-18、IL-1a、IL-1b、IL-36a、IL-36b、及びIL-36gのうちの1つ以上;
又はその機能性断片、及び/又はその機能性断片を含む融合タンパク質、又は前述のいずれかの組み合わせ
への曝露によってプライミングされる、実施形態22又は23に記載の方法。
【0097】
実施形態28.NK細胞が、18t15-12sへの曝露によってプライミングされる、実施形態27に記載の方法。
【0098】
実施形態29.NK細胞が、1分~24時間にわたってプライミングされる、実施形態28に記載の方法。
【0099】
実施形態30.NK細胞が、IL-12、IL-15、及びIL-18への曝露によってプライミングされる、実施形態27に記載の方法。
【0100】
実施形態31.NK細胞が、2~40日間にわたってプライミングされる、実施形態28に記載の方法。
【0101】
実施形態32.NK細胞が、7t15-21s及びATF1への曝露によって拡大される、実施形態22又は23に記載の方法。
【0102】
実施形態33.NK細胞が、1~40日間にわたって拡大される、実施形態22又は23に記載の方法。
【0103】
実施形態34.記憶NK表現型が、未処理のNK細胞と比較した、CD69、CD25、及びNKG2A発現の増加、並びにCD16発現の維持によって指示される、実施形態1~33のいずれか一つに記載の方法。
【0104】
実施形態35.未処理のNK細胞と比較して、記憶NK細胞に、
・癌細胞に対する細胞傷害性の改善;
・持続性の改善;
・抗腫瘍活性の改善;及び/又は
・サイトカイン産生の増加
のうちの1つ以上が見られる、実施形態22~34のいずれか一つに記載の方法。
【0105】
実施形態36.癌細胞がK562細胞である、実施形態35に記載の方法。
【0106】
実施形態37.産生されるサイトカインが、IFNg、TNFa、GM-CSF、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態35に記載の方法。
【0107】
実施形態38.持続性が、免疫不全マウスにおいて1~14日間にわたって測定されるとおりである、実施形態35に記載の方法。
【0108】
実施形態39.マウスが、NSGマウスである、実施形態38に記載の方法。
【0109】
実施形態40.抗腫瘍活性の改善が、免疫不全マウスにおける癌細胞の腫瘍成長の低減である、実施形態35に記載の方法。
【0110】
実施形態41.細胞が、サイトカイン誘導性ML(CIML)NK細胞である、実施形態1~40のいずれか一つに記載の方法。
【0111】
実施形態42.増殖性悪性腫瘍を治療する方法であって、実施形態1~21のいずれか一つに記載の記憶NK細胞、又は実施形態22~41のいずれか一つに記載の方法によって作成されるとおりの記憶NK細胞の、それを必要としている患者への投与を含む方法。
【0112】
実施形態43.細胞が、新鮮なまま患者に投与される、実施形態42に記載の方法。
【0113】
実施形態44.増殖性悪性腫瘍が、癌である、実施形態42に記載の方法。
【0114】
実施形態45.癌が、血液癌である、実施形態44に記載の方法。
【0115】
実施形態46.血液癌が、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、及び骨髄異形成症候群から選択される、実施形態44に記載の方法。
【0116】
実施形態47.血液癌が、B細胞リンパ腫である、実施形態46に記載の方法。
【0117】
実施形態48.B細胞リンパ腫が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)及び慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)から選択される、実施形態47に記載の方法。
【0118】
実施形態49.血液癌が、T細胞リンパ腫である、実施形態46に記載の方法。
【0119】
実施形態50.T細胞リンパ腫が、T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、T細胞慢性リンパ球性白血病(T-CLL)、及びセザリー症候群から選択される、実施形態49に記載の方法。
【0120】
実施形態51.血液癌が、白血病である、実施形態46に記載の方法。
【0121】
実施形態52.白血病が、急性骨髄(又は骨髄性)白血病(AML)、慢性骨髄(又は骨髄性)白血病(CML)、急性リンパ球性(又はリンパ芽球性)白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)及びヘアリー細胞白血病から選択される、実施形態51に記載の方法。
【0122】
実施形態53.血液癌が、形質細胞悪性腫瘍である、実施形態46に記載の方法。
【0123】
実施形態54.形質細胞悪性腫瘍が、リンパ形質細胞性リンパ腫、形質細胞腫、及び多発性骨髄腫から選択される、実施形態53に記載の方法。
【0124】
実施形態55.癌が、固形腫瘍である、実施形態44に記載の方法。
【0125】
実施形態56.固形腫瘍が、黒色腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、肉腫、又は癌腫から選択される、実施形態55に記載の方法。
【0126】
実施形態57.固形腫瘍が、脳、頭部、頸部、乳房、肺(例えば、非小細胞肺癌、NSCLC)、生殖器系(例えば、卵巣)、上部消化管、膵臓、肝臓、腎系(例えば、腎臓)、膀胱、前立腺又は結腸直腸の腫瘍である、実施形態55に記載の方法。
【0127】
免疫エフェクター細胞の拡大及びプライミング方法
NK細胞のインビトロ拡大は、サイトカイン、又は、好ましくは、サイトカインの機能性断片を含む拡大融合タンパク質、及びその多連鎖複合体を含む拡大剤を使用する濃縮プロセスで実施し得る。例えば、拡大剤は、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上、又はこれらの組み合わせ、例えば、IL-7、IL-21、及びIL-15のカクテルを、所望の分量又は拡大倍数のNK細胞を生じさせるのに十分な量で含み得る。かかるサイトカインは、市販品が入手されてもよく、又は当該技術分野において公知の方法により作成されてもよい。又は、例えば、拡大剤は、1つ以上の拡大融合タンパク質、例えば、国際公開第2020047299号、国際公開第202047473号、又は国際公開第2020257639号に開示される多連鎖融合タンパク質複合体の中から選択されてもよい、例えば7t15-21sを、NK細胞を拡大するのに十分な量で含み得る。7t15-21sの配列を表1に開示する。
【0128】
【0129】
拡大は、加えて、上記に開示される融合タンパク質の連結ドメインを標的化する抗体、例えば抗組織因子抗体など、架橋剤の使用によって容易になる。抗組織因子抗体の例は、当該技術分野において公知である。国際公開第202047473号及び国際公開第2020257639号は、使用されるa-TF Abを開示している。また、米国特許第8,007,795号及び国際公開第2003037911号、詳細には、H36ハイブリドーマのCDR及びヒト化フレームワーク領域LC-08(
図12)及びHC-09(
図13)を取り込むIgG1ヒト化抗体も参照のこと。以下の表Xは、WO’473号及びWO’639号において使用されるものと思われる、US’795号及びWO’911号に開示される、HCW Biologicsから入手される、及び特に指定されない限り以下の実験で使用され、本明細書においてATF1と称されるa-TF Abの配列を開示する。ATF1 HCDR2は、以下の2つの配列のうちの一方である。このように、本明細書に開示されるとおりの拡大剤は、上記に開示されるとおりの1つ以上のサイトカインの組み合わせ又はEFPを、ATF1などの架橋剤(その1つ又は複数の配列を表2に開示する)と一緒に含み得る。
【0130】
【0131】
【0132】
当該技術分野においては代替的な架橋結合方法が公知であり、機能化したマイクロパーティクル(ビーズ)、フィーダー細胞及び細胞膜粒子が挙げられる。多くの場合にフィーダー不要のシステムが好ましい。例えば、抗CD2及び抗NKp46抗体で機能化された溶解可能なアルギン酸ナトリウムマイクロスフェアを利用するR&D SystemsのCloudzヒトNK細胞拡大キットを本明細書に開示されるとおりの拡大サイトカイン(又はその断片、又はそれを含む融合タンパク質)及びこれらの組み合わせと共に、拡大後にマイクロパーティクルを速やかに溶解させて細胞の回収を容易にするための放出緩衝液に加えて使用し得る。
【0133】
記憶様の性質を獲得するためのプライミングは、IL-12、IL-23、IL-27、及びIL-35のうちの1つ以上;IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上;及びIL-18、IL-1a、IL-1b、IL-36a、IL-36b、及びIL-36gのうちの1つ以上など、刺激性サイトカインの組み合わせを含むプライミング剤で実施される。或いは、プライミング剤は、サイトカインの機能性断片を含むプライミング融合タンパク質、及びその多連鎖複合体を含み得る。例えば、融合タンパク質は、国際公開第2020047299号、国際公開第202047473号、又は国際公開第2020257639号に開示される多連鎖融合タンパク質複合体、例えば18t15-12s(HCW-9201)の中から選択されてもよく、その配列を表3に開示する。
【0134】
【0135】
キメラ抗原受容体(CAR)及びCARを担持する免疫エフェクター細胞
本明細書にはまた、本明細書に開示されるとおりのポリペプチドを含むキメラ抗原受容体(CAR)、及びそれを発現する免疫エフェクター細胞も提供される。CARは、1)細胞外リガンド結合ドメイン、即ち、抗原認識ドメイン、2)ヒンジドメイン、3)膜貫通ドメイン、及び4)細胞質シグナル伝達ドメイン、5)及び任意選択で、共刺激ドメインを典型的に含む組換え融合タンパク質である。
【0136】
CARの設計、送達及び発現方法、及びCARを発現する臨床級の細胞集団の製造方法については、当該技術分野において公知である。CARの設計は、概して各細胞型に合わせて調整される。
【0137】
キメラ抗原受容体の細胞外リガンド結合ドメインは、抗原、典型的には悪性細胞の表面発現抗原を認識して、それに特異的に結合する。細胞外リガンド結合ドメインは、例えば、それが約0.1pM~約10μM、又は約0.1pM~約1μM、又は約0.1pM~約100nMの親和性定数又は相互作用の親和性(KD)で抗原に結合するとき、抗原に特異的に結合する。相互作用の親和性を決定する方法は、当該技術分野において公知である。細胞外リガンド結合ドメインはまた、抗原の第1の多型変異体に対し、それが同じ抗原の第2の多型変異体と比べてそれに選択的に結合するときにも、特異的に結合すると言うことができる。
【0138】
CARにおける使用に好適な細胞外リガンド結合ドメインは、任意の抗原結合ポリペプチドであってよく、幅広い種類のそれが当該技術分野において公知である。一部の例では、細胞外リガンド結合ドメインは、単鎖Fv(scFv)である。他の抗体ベースの認識ドメイン(cAb VHH(ラクダ抗体可変ドメイン)及びそのヒト化バージョン、lgNAR VH(サメ抗体可変ドメイン)及びそのヒト化バージョン、sdAb VH(シングルドメイン抗体可変ドメイン)及び「ラクダ化」抗体可変ドメインが、使用に好適である。一部の例では、単鎖TCR(scTv、VαVβを持つ単鎖2ドメインTCR)などのT細胞受容体(TCR)ベースの認識ドメインもまた、使用に好適である。一部の実施形態において、細胞外リガンド結合ドメインは、標的抗原に対する天然の結合パートナー、又はその機能性断片から構築される。例えば、一般にCARは、B細胞成熟抗原(BCMA)及び膜貫通活性化因子・CAML相互作用因子(TACI)のリガンドを標的化してBCMA及びTACIの両方を有効に共標的化する多発性骨髄腫の治療のためのAPRILタンパク質の一部分で構築され得る。
【0139】
CARがその細胞外リガンド結合ドメインを介して結合する、標的化される抗原は、悪性骨髄(AML)細胞、T細胞又は他の細胞に発現する抗原であり得る。悪性骨髄(AML)細胞に発現する抗原としては、CD33、FLT3、CD123、及びCLL-1が挙げられる。T細胞に発現する抗原としては、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、TCRα(TRAC)、及びTCRβが挙げられる。悪性形質細胞に発現する抗原としては、BCMA、CS1、CD38、CD79A、CD79B、CD138、及びCD19が挙げられる。悪性B細胞に発現する抗原としては、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD27、CD38、及びCD45が挙げられる。
【0140】
典型的には、細胞外リガンド結合ドメインは、膜貫通(TM)ドメインによってキメラ抗原受容体の細胞内ドメインに連結される。ペプチドヒンジが細胞外リガンド結合ドメインを膜貫通ドメインに結び付ける。膜貫通ドメインは細胞膜を横断し、CARをT細胞表面にアンカリングし、及び細胞外リガンド結合ドメインを細胞質シグナル伝達ドメインに結び付け、ひいてはT細胞表面上のCARの発現に影響を与える。
【0141】
膜貫通ドメインは、天然の供給源又は合成の供給源のいずれにも由来し得る。供給源が天然である場合、このドメインは、任意の膜結合型又は膜貫通型タンパク質に由来し得る。例えば、膜貫通領域は、T細胞受容体のα鎖、β鎖又はζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8(例えば、CD8α、CD8β)、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、及びPAG/Cbpに由来し得る(即ち、少なくともこれらの1つ又は複数の膜貫通領域を含む)。或いは、膜貫通ドメインは合成であって、主に疎水性のアミノ酸残基(例えば、ロイシン及びバリン)を含んでもよい。場合によっては、合成膜貫通ドメインの各末端に、フェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのトリプレットが見られることになる。一部の実施形態において、膜貫通ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD8α鎖アイソフォーム1前駆体(NP_001139345.1)又はCD28に由来する。2~10アミノ酸長など、低分子オリゴペプチド又はポリペプチドリンカーが、CARの膜貫通ドメインと内質ドメインとの間の連結を形成し得る。一部の実施形態において、CARは2つ以上の膜貫通ドメインを有し、それらは同じ膜貫通ドメインの繰り返しであってもよく、又は異なる膜貫通ドメインであってもよい。
【0142】
NK細胞は、幾つもの膜貫通(TM)アダプターを発現し、これらは、活性化型受容体との会合によって惹起されて活性化シグナルを送る。それが、活性化型受容体からのTMドメインの操作を介したNK細胞特異的シグナルの亢進をもたらし、それによって内因性アダプターが付加される。TMアダプターは、活性化シグナルを送る能力のある任意の内因性TMアダプターであってよい。一部の実施形態において、TMアダプターは、FceR1γ(ITAMx1)、CD3ζ(ITAMx3)、DAP12(ITAMx1)、又はDAP10(YxxM/YINM)、NKG2D、FcγRIIIa、NKp44、NKp30、NKp46、actKIR、NKG2C、CD8α、及びIL15Rbから選択され得る。
【0143】
CARは、細胞外リガンド結合ドメインと膜貫通ドメインとの間にヒンジ領域を更に含み得る。用語「ヒンジ領域」(等しく、「ヒンジ」又は「スペーサー」)は、概して、膜貫通ドメインを細胞外リガンド結合ドメインに連結する機能を持つ任意のオリゴペプチド又はポリペプチドを意味する。詳細には、ヒンジ領域は、より可動性が高く、且つ接触し易い細胞外リガンド結合ドメインを提供するために使用され、効率的なCAR発現及び活性のため安定性を付与することができる。ヒンジ領域は、最大300アミノ酸、好ましくは10~100アミノ酸及び最も好ましくは25~50アミノ酸を含み得る。ヒンジ領域は、CD28、4-1BB(CD137)、OX-40(CD134)、CD3ζ、T細胞受容体α鎖又はβ鎖、CD45、CD4、CD5、CD8、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、ICOS、CD154など、天然に存在する分子の全て若しくは一部又は抗体定常領域の全て若しくは一部に由来し得る。一部の実施形態において、例えば、ヒンジ配列は、CD8a分子又はCD28分子に由来する。或いは、ヒンジ領域は、天然に存在するヒンジ配列に対応する合成配列であってもよく、又はヒンジ領域は、完全に合成のヒンジ配列であってもよい。一実施形態において、ヒンジドメインは、ヒトCD8α(配列番号2)、FcγRIIIα受容体、又はIgGlの一部を含み、それと少なくとも80%、90%、95%、97%、又は99%の配列同一性を有する。
【0144】
抗原認識後、細胞質シグナル伝達ドメインが免疫エフェクター細胞にシグナルを伝達すると、免疫エフェクター細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つが活性化する。NK細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性又はサイトカインの分泌を含めたヘルパー活性であり得る。通常は細胞質シグナル伝達ドメイン全体が用いられ得るが、多くの場合に鎖全体を使用する必要はない。細胞質シグナル伝達ドメインのトランケートされた一部分が使用される点で、それがエフェクター機能を伝達する限りは、かかるトランケートされた一部分をインタクトな鎖の代わりに使用し得る
【0145】
刺激する形で作用する細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)として知られるシグナル伝達モチーフを持つものであり得る。細胞質シグナル伝達配列を持つITAMの例としては、CD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD32(FcγRIIa)、DAP10、DAP12、CD79a、CD79b、FcγRIγ、FcγRIIIγ、FcεRIβ(FCERIB)、及びFcεRIγ(FCERIG)に由来するものが挙げられる。
【0146】
第1世代のCARは典型的には、内因性TCRからのシグナルの一次的な伝達を担うものであるCD3鎖からの細胞質シグナル伝達ドメインを有する。第2世代のCARは、様々な共刺激タンパク質受容体(例えば、CD28、4-1BB、ICOS)からの細胞質シグナル伝達ドメインをCARの細胞質シグナル伝達ドメインに付加することにより、細胞に追加的なシグナルを提供する。
【0147】
「共刺激ドメイン」は、インビボでのサイトカイン産生、増殖、細胞傷害性、及び/又は持続性を亢進させる共刺激タンパク質の細胞内シグナル伝達ドメインに由来する。前臨床研究では、第2世代のCARの設計によって抗腫瘍活性が向上することが指し示されている。最近では、第3世代、及び更に後続の世代のCARにおいて、複数の共刺激ドメインを組み合わせることにより効力が更に増強されている。これらのCARがグラフトされた細胞では、共刺激受容体/リガンド相互作用と関係なしに、拡大、活性化、持続性、及び腫瘍根絶効率が向上することが実証されている。
【0148】
例えば、CARの細胞質シグナル伝達ドメインは、シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ)それ自体を含むように設計することができ、又はCARの文脈で有用な任意の他の1つ又は複数の所望の細胞質ドメインと組み合わせることができる。例えば、CARの細胞質ドメインは、シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ)鎖部分と共刺激シグナル伝達領域とを含む。共刺激シグナル伝達領域とは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部分を指す。かかる分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83と特異的に結合するリガンド、CD8、CD4、b2c、CD80、CD86、DAP10、DAP12、MyD88、BTNL3、及びNKG2Dが挙げられる。
【0149】
一部の実施形態において、細胞質シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ(CD3ζ)シグナル伝達ドメインである。一部の実施形態において、共刺激ドメインは、CD28、4-1BBの細胞質ドメイン、又はこれらの組み合わせを含む。場合によっては、共刺激シグナル伝達領域は、1つ以上の細胞内シグナル伝達及び/又は共刺激分子の細胞質ドメインを1、2、3、又は4つ持つ。
【0150】
1つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28及び/又は4-1BBの細胞質ドメインに、シグナル伝達を亢進させる1つ以上の突然変異を持っていてもよい。一部の実施形態において、開示されるCARは、Y206及び/又はY218のリン酸化が改変されているCD28の突然変異形態の細胞質ドメインを含む共刺激シグナル伝達領域を含む。一部の実施形態において、開示されるCARは、Y206に減弱性の突然変異を含み、これはCARの活性を低減することになる。一部の実施形態において、開示されるCARは、Y218に減弱型の突然変異を含み、これはCARの発現を低減することになる。減弱を実現するため、アラニン又はフェニルアラニンなど、任意のアミノ酸残基をチロシンに代えて置換することができる。一部の実施形態において、Y206及び/又はY218のチロシンがリン酸化模倣残基に置換される。一部の実施形態において、開示されるCARのリン酸化模倣残基によるY206の置換、これはCARの活性を増加させることになる。一部の実施形態において、開示されるCARは、リン酸化模倣残基によるY218の置換を含み、これはCARの発現を増加させることになる。例えば、リン酸化模倣残基は、ホスホチロシンであってもよい。一部の実施形態において、CARは、リン酸化模倣アミノ酸と、同じCARの異なる残基におけるリン酸化可能でないアミノ酸による1つ又は複数の置換との組み合わせを含み得る。例えば、CARは、Y209及び/又はY191にアラニン又はフェニルアラニン置換を含み、加えてY206及び/又はY218にリン酸化模倣置換を含み得る。
【0151】
一部の実施形態において、開示されるCARは、TRAF1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF5、TRAF6、又はこれらの任意の組み合わせなど、特異的TRAFタンパク質への結合を亢進させる突然変異を持つ1つ以上の4-1BBドメインを含む。場合によっては、41BB突然変異は、例えば、NF-kBを通じて、T細胞のTRAF1依存的及び/又はTRAF2依存的増殖及び生存を亢進させる。場合によっては、4-1BB突然変異は、例えば、IRF7/INFβを通じて、TRAF3依存的抗腫瘍有効性を亢進させる。従って、開示されるCARは、TRAF結合を亢進させる、及び/又はNFκBシグナル伝達を亢進させるこれらの強調した配列中に少なくとも1つの突然変異を有する4-1BBの1つ又は複数の細胞質ドメインを含み得る。
【0152】
また本明細書に開示されるとおり、TRAFタンパク質は、場合によっては、NFκB及び4-1BBとは関係なくCAR T細胞機能を亢進させることもできる。例えば、TRAFタンパク質は、場合によっては、T細胞におけるCD28共刺激を亢進させることができる。従って、本明細書にはまた、CARを、TRAF1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF5、TRAF6、又はこれらの任意の組み合わせなど、1つ以上のTRAFタンパク質と共発現する免疫エフェクター細胞も開示される。場合によっては、CARは、腫瘍抗原を標的化する任意のCARである。例えば、第1世代のCARは、典型的にはCD3鎖からの細胞内ドメインを有した一方、第2世代のCARは、様々な共刺激タンパク質受容体(例えば、CD28、4-1BB、ICOS)からの細胞内シグナル伝達ドメインをCARの細胞質シグナル伝達ドメインに付加することにより、T細胞に追加的なシグナルを提供した。場合によっては、CARは、4-1BB活性化が亢進した開示されるCARである。
【0153】
CARを発現する細胞の種類に応じて、CAR構成要素の変異が有利であり得る。
【0154】
例えば、NK細胞では、一部の実施形態において、膜貫通ドメインは、NKG2D、FcγRIIIa、NKp44、NKp30、NKp46、actKIR、NKG2C、又はCD8αに関連する配列であり得る。特定の実施形態において、NK細胞はML-NK又はCIML-NK細胞であり、TMドメインはCD8αである。NK細胞で上手く機能しないある種のTMドメインが、概してサブセットでは機能し得る;CD8αは、例えば、ML-NKでは機能するが、NK細胞では概して機能しない。
【0155】
同様に、NK細胞では、一部の実施形態において、1つ又は複数の細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば、CD28、CD137/41BB(TRAF、NFkB)、CD134/OX40、CD278/ICOS、DNAM-1(Y-モチーフ)、NKp80(Y-モチーフ)、2B4(SLAMF)::ITSM、CRACC(CS1/SLAMF7)::ITSM、CD2(Y-モチーフ、MAPK/Erk)、CD27(TRAF、NFkB)、又はインテグリン(例えば、複数のインテグリン)など、NK細胞で機能する能力を有する任意の1つ又は複数の共活性化型受容体であり得る。
【0156】
同様に、NK細胞では、一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、NK細胞において機能する能力を有するサイトカイン受容体であり得る。例えば、サイトカイン受容体は、IL-2/15Rbyc::Jak1/3、STAT3/5、PI3K/mTOR、MAPK/ERKなど、持続性、生存、又は代謝に関連するサイトカイン受容体であり得る。別の例として、サイトカイン受容体は、IL-18R::NFkBなど、活性化に関連するサイトカイン受容体であり得る。別の例として、サイトカイン受容体は、IL-12R::STAT4など、IFN-γ産生に関連するサイトカイン受容体であり得る。別の例として、サイトカイン受容体は、IL-21R::Jak3/Tyk2、又はSTAT3など、細胞傷害性又は持続性に関連するサイトカイン受容体であり得る。別の例として、細胞内シグナル伝達ドメインは、FceR1γ(ITAMx1)、CD3ζ(ITAMx3)、DAP12(ITAMx1)、又はDAP10(YxxM/YINM)など、TMアダプターであり得る。別の例として、CAR細胞内シグナル伝達ドメイン(エンドドメインとしても知られる)は、CD28ファミリー(CD28及びICOSなど)又は腫瘍壊死因子受容体(TNFR)遺伝子ファミリー(4-1BB、OX40、又はCD27など)からの共刺激分子に由来し得る。TNFRファミリーメンバーは、TRAFタンパク質の動員を通じてシグナルを送り、細胞活性化、分化及び生存に関連する。概してあらゆるNK細胞で上手く機能するわけではないこともあるある種のシグナル伝達ドメインが、サブセットでは機能し得る;CD28又は4-1BBは、例えば、ML-NKで機能する。
【0157】
CARの任意のドメインがまた、CARの鍵となるシグナル伝達及び抗原認識モジュールを分割することを目的として、ヘテロ二量化ドメインも含み得る。
【0158】
CARは、本明細書に記載されるとおりの上述のドメインの任意の一部分又はパートを機能性のCARをもたらす任意の組み合わせで含むように設計されてもよい。
【0159】
CAR及びCAR担持細胞の作成方法
キメラ受容体をコードするキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトは、従来の方法で調製することができる。大体において天然配列が利用されるため、様々な構成要素を適切につなぎ合わせることが可能となるように、必要に応じて天然の遺伝子が単離及び操作される(例えば、II型受容体を利用するとき、免疫シグナル伝達受容体成分を反転させなければならないこともある)。従って、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用することにより、遺伝子の望ましくない部分の欠失を生じさせる適切なプライマーを使用して、キメラ受容体のN末端及びC末端タンパク質をコードする核酸配列を単離し得る。或いは、クローン化遺伝子の制限消化を用いてキメラコンストラクトを生成することもできる。いずれの場合にも、配列は、平滑末端化された、又は相補的なオーバーラップのある制限部位が提供されるように選択することができる。
【0160】
キメラコンストラクトを調製するための様々な操作はインビトロで行うことができ、詳細な実施形態では、キメラコンストラクトは、標準的な形質転換又はトランスフェクション方法を用いて、適切な宿主にあるクローニング及び発現用のベクターに導入される。従って、毎回の操作後に、DNA配列をつなぎ合わせることにより得られたコンストラクトをクローニングし、ベクターを単離し、及びその配列をスクリーニングして、配列が所望のキメラ受容体をコードすることを確実にする。配列は、制限分析、シーケンシングなどによってスクリーニングすることができる。
【0161】
キメラコンストラクトは、免疫エフェクター細胞にネイキッドDNAとして導入するか、又は好適なベクターに導入することができる。ネイキッドDNAを使用して電気穿孔により免疫エフェクター細胞を安定にトランスフェクトする方法は、当該技術分野において公知である。ネイキッドDNAとは、概して、プラスミド発現ベクターに発現に適切な向きで含まれるキメラ受容体をコードするDNAを指す。
【0162】
或いは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、又はレンチウイルスベクター)を使用してキメラコンストラクトを免疫細胞、例えば、T細胞に導入することができる。好適なベクターは、対象の免疫エフェクター細胞において非複製性である。ウイルスをベースとする多数のベクターが公知であり、ここで細胞において維持されるウイルスのコピー数は、細胞の生存能を維持するのに十分な低さである。例示的ベクターとしては、pFB-neoベクター(STRATAGENE(商標))並びにHIV、SV40、EBV、HSV又はBPVをベースとするベクターが挙げられる。トランスフェクトされた、又は形質導入された免疫エフェクター細胞が、所望の調節を備えた、且つ所望のレベルの表面膜タンパク質として発現する能力がキメラ受容体にあることが確立されると、そのキメラ受容体が宿主細胞において機能性であって、所望のシグナル誘導(例えば、適切なリガンドによる刺激時のランテス、1-α、GM-CSFの産生)を提供するかどうかを決定することができる。
【0163】
操作したCARは、キメラ抗原受容体をコードする核酸配列を標的細胞ゲノムに効率的且つ安定に組み込むレトロウイルスを使用してCAR担持免疫エフェクター細胞に導入してもよい。当該技術分野において公知の他の方法としては、限定はされないが、レンチウイルス形質導入、トランスポゾンベースのシステム、直接のRNAトランスフェクション、及びCRISPR/Casシステム(例えば、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(又はCasD)、Cash、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas1Od、CasF、CasG、CasH、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(又はCasA)、Cse2(又はCasB)、Cse3(又はCasE)、Cse4(又はCasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3,Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csz1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、及びCu1966等などの好適なCasタンパク質を使用するI型、II型、又はIll型システム)が挙げられる。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)もまた使用し得る。例えば、Shearer RF and Saunders DN, “Experimental design for stable genetic manipulation in mammalian cell lines: lentivirus and alternatives,” Genes Cells 2015 January; 20(1):1-10を参照のこと。Cas-CRISPRタンパク質を含む塩基編集CRISPRシステムをデアミナーゼなどの塩基編集タンパク質に融合したもの(例えば、Beam Therapeuticsからのもの)もまた使用し得る。
【0164】
CARの構築に使用し得る選択された構成要素のアミノ酸配列を以下の表4及び表5に開示する。
【0165】
【0166】
【0167】
以下の表5は、記載される抗原を標的化するVH及びVLドメインの配列を開示する。これらの配列は、表4からの又は本明細書に開示されるとおりのエレメントと共にCARに組み込まれてもよい。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
細胞特異的変異
上記に開示されるCARの構成要素及び構築方法は、概してT細胞及び他の免疫エフェクター細胞における使用に好適であるが、限定されるわけではない。細胞サブセットでは、ある種の変異が有用であってもよく、それらは当該技術分野において公知である。
【0172】
例えば、NK細胞では、TMドメインは、NKG2D、FcγRIIIa、NKp44、NKp30、NKp46、actKIR、NKG2C、又はCD8αから選択し、又は適合させてもよい。NK細胞はまた、活性化型受容体との会合によって惹起される、それによってNK細胞特異的シグナルの亢進を提供する幾つもの膜貫通アダプターも発現する。例えば、TMアダプターは、FceR1γ(ITAMx1)、CD3ζ(ITAMx3)、DAP12(ITAMx1)、又はDAP10(YxxM/YINM)から選択し、又は適合させることができる。特定の実施形態において、TMドメイン及びアダプターは、例えば:NKG2DとDAP10、FcγRIIIaとCD3ζ又はFceR1γ、NKp44とDAP12、NKp30とCD3ζ又はFceR1γ、NKp46とCD3ζ又はFceR1γ、actKIRとDAP12、及びNKG2CとDAP12のように対にしてもよい。
【0173】
特定の実施形態において、NK細胞では、ヒンジドメインは、例えば、NKG2、TMα、又はCD8から選択し、又は適合させてもよい。
【0174】
特定の実施形態において、NK細胞では、細胞内シグナル伝達及び/又は共刺激ドメインは、CD137/41BB(TRAF、NFkB)、DNAM-1(Y-モチーフ)、NKp80(Y-モチーフ)、2B4(SLAMF)::ITSM、CRACC(CS1/SLAMF7)::ITSM、CD2(Y-モチーフ、MAPK/Erk)、CD27(TRAF、NFkB);1つ以上のインテグリン(例えば、複数のインテグリン);IL-2/15Rbyc::Jak1/3、STAT3/5、PI3K/mTOR、及びMAPK/ERKなど、持続性、生存、又は代謝に関連するサイトカイン受容体;IL-18R::NFkBなど、活性化に関連するサイトカイン受容体、IL-12R::STAT4など、IFN-γ産生に関連するサイトカイン受容体;IL-21R::Jak3/Tyk2、又はSTAT3など、細胞傷害性又は持続性に関連するサイトカイン受容体;及び上記に開示されるとおりのTMアダプターのうちの1つ以上を含み得る。一部の実施形態において、NK細胞CARは、3つのシグナル伝達ドメイン、TMドメイン、及び任意選択で、TMアダプターを含む。
【0175】
共刺激ドメインの選択はまた、NK細胞の表現型又はサブタイプにも依存し得る;例えば、一部の実験では、4-1BBは記憶様(ML)NK細胞(CIMLを含む)において共刺激ドメインとして有効であり得るが、NK細胞では効果が低くなる。加えて、ML NK細胞でより選択的に発現するシグナル伝達ドメインを利用してもよく、それらとしては、DNAM-1、CD137、及びCD2が挙げられる。
【0176】
免疫エフェクター細胞
本明細書に開示されるとおりの免疫エフェクター細胞には、記憶NK細胞、記憶様(ML)NK細胞、及びサイトカイン誘導性記憶様(CIML)NK細胞など、NK細胞及びそのサブタイプ、並びにこれらの変異体が含まれ、そのいずれも、末梢血又は臍帯血細胞、幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、及びNK-92細胞などの不死化NK細胞を含めた様々な供給源に由来し得る。
【0177】
NK細胞
ナチュラルキラー(NK)細胞は、従来、異常な又はストレスを受けている細胞を抗原認識又は事前感作によるのでなく、活性化型及び抑制型受容体からのシグナルの組み込みを通じて標的化し、排除することにより病原体に対する宿主防御及び抗腫瘍免疫応答を媒介する自然免疫エフェクターリンパ球と考えられている。ナチュラルキラー(NK)細胞は、それが大きな毒性なく安全に投与されており、移植片対宿主病(GvHD)を引き起こさず、天然で悪性細胞を認識して排除し、及び細胞工学的操作に適しているため、同種異系細胞免疫療法のT細胞に代わるものである。
【0178】
記憶、記憶様、及びCIML NK細胞
その自然の細胞傷害及び免疫刺激活性に加えて、NK細胞は、場合によっては記憶様又はサイトカイン誘導性記憶様(CIML)NK細胞とも呼ばれる、持続性のある記憶NK集団を含めた、ロバストなリコール反応を生じる異種細胞及び万能細胞サブセットを構成する。記憶NK細胞は、自然の刺激、又は人工的な刺激(「プライミング」)のいずれであれ、炎症誘発性サイトカイン又は活性化型受容体経路による刺激によって作製することができる。サイトカイン活性化によって作製される記憶NK細胞は、白血病免疫療法のセッティングで臨床的に使用されている。
【0179】
CD56、Ki-67、NKG2Aの増加、及び活性化型受容体NKG2D、NKp30、及びNKp44の増加が、インビボで分化した記憶NK細胞において観察されている。加えて、インビボ分化では、CD16及びCD11bの発現中央値の僅かな低下が示された。ML NK細胞では、ACT及びBL NK細胞の両方と比べてTRAIL、CD69、CD62L、NKG2A、及びNKp30陽性NK細胞の頻度の増加が観察された一方、CD27+及びCD127+ NK細胞の頻度は減少した。最後に、インビトロで分化したML NK細胞と異なり、インビボで分化したML NK細胞は、CD25を発現しなかった。
【0180】
サイトカイン誘導性記憶様ナチュラルキラー細胞(CIML-NK)
例えば、インターロイキン-12(IL-12)、IL-15、及びIL-18など、サイトカインの組み合わせによるプライミング(事前の活性化)により、NK細胞を誘導して記憶様表現型を獲得することができる。これらのサイトカイン誘導性記憶様(CIML)NK細胞(CIML-NK又はCIML)は、サイトカインでの再刺激時又は活性化型受容体による惹起時に反応の亢進を呈する。CIML NK細胞は、IL-12、IL-15、及びIL-18などのサイトカイン及び/又はその近縁のファミリーメンバー、又はその機能性断片、又はその機能性断片を含む融合タンパク質による活性化により作製し得る。
【0181】
記憶NK細胞は典型的には、従来のNK細胞と比較したとき、細胞表面タンパク質発現パターンについて差を呈する。かかる発現パターンは当該技術分野において公知であり、例えば、CIML NK細胞におけるCD56、CD56サブセットCD56dim、CD56サブセットCD56bright、CD16、CD94、NKG2A、NKG2D、CD62L、CD25、NKp30、NKp44、及びNKp46の(対照NK細胞と比較した)増加を含み得る(例えば、Romee et al. Sci Transl Med. 2016 Sep 21;8(357):357を参照のこと)。記憶NK細胞はまた、異種NK細胞集団と比較したときの、細胞傷害性などのエフェクター機能の亢進、持続性の改善、IFN-γ産生の増加など、観察されるインビトロ及びインビボ特性によって同定されてもよい。
【0182】
医薬組成物
また、薬学的に許容可能な担体中に開示の分子を含む医薬組成物も開示される。医薬担体については当業者に公知である。それは最も典型的には、生理的pHの滅菌水、生理食塩水、及び緩衝溶液などの溶液を含め、ヒトへの薬物の投与に標準的な担体となるであろう。典型的には、製剤中には、製剤を等張性にするのに適切な量の薬学的に許容可能な塩が使用される。薬学的に許容可能な担体の例としては、限定はされないが、生理食塩水、リンゲル溶液及びデキストロース溶液が挙げられる。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、及びより好ましくは約7~約7.5である。溶液は、RNアーゼフリーでなければならない。更なる担体としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスであって、有形の物品、例えば、フィルム、リポソーム又はマイクロパーティクルの形態であるマトリックスなど、徐放製剤が挙げられる。当業者には、例えば、投与される組成物の投与経路及び濃度に応じて、ある種の担体がより好ましいものであり得ることは明らかであろう。
【0183】
医薬組成物は、選択の分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、保存剤、表面活性剤などを含み得る。医薬組成物はまた、抗微生物剤、抗炎症剤、麻酔薬などの1つ以上の活性成分も含み得る。
【0184】
非経口投与用の製剤には、滅菌水性又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルションが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステル類である。水性担体としては、水、アルコール溶液/水溶液、エマルション又は懸濁液が、生理食塩水及び緩衝媒体を含め、挙げられる。非経口溶媒としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、又は固定油が挙げられる。静脈内溶媒としては、体液及び栄養補充液、電解質補充液(リンゲルのデキストロースをベースとするものなど)などが挙げられる。保存剤及び他の添加剤、例えば、抗微生物薬、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなどもまた存在し得る。
【0185】
治療適用
本明細書に開示されるNK細胞は、癌及び骨髄異形成症候群などの増殖性疾患の進行の治療又は予防に使用することができる。癌は、血液学的悪性腫瘍又は固形腫瘍であり得る。血液学的悪性腫瘍には、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、及びこれらの亜型が含まれる。リンパ腫は、様々な方法で、多くの場合に根底にある悪性細胞の種類に基づいて分類することができ、ホジキンリンパ腫(多くの場合にリード・シュテルンベルク細胞の癌であるが、時にまたB細胞で発生することもある;他の全てのリンパ腫は、非ホジキンリンパ腫である)、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、並びに本明細書に定義し及び当該技術分野において公知であるとおりの他のものが挙げられる。骨髄異形成症候群は、未成熟白血球及び/又は造血幹細胞(HSC)が冒される一群の疾患を含む;MDSはAMLに進行し得る。
【0186】
B細胞リンパ腫としては、限定はされないが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、並びに本明細書に定義し及び当該技術分野において公知であるとおりの他のものが挙げられる。
【0187】
T細胞リンパ腫としては、T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-ALL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、T細胞慢性リンパ球性白血病(T-CLL)、セザリー症候群、並びに本明細書に定義し及び当該技術分野において公知であるとおりの他のものが挙げられる。
【0188】
白血病としては、急性骨髄(又は骨髄性)白血病(AML)、慢性骨髄(又は骨髄性)白血病(CML)、急性リンパ球性(又はリンパ芽球性)白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)ヘアリー細胞白血病(時にリンパ腫として分類される)、並びに本明細書に定義し及び当該技術分野において公知であるとおりの他のものが挙げられる。
【0189】
形質細胞悪性腫瘍としては、リンパ形質細胞性リンパ腫、形質細胞腫、及び多発性骨髄腫が挙げられる。
【0190】
固形腫瘍としては、黒色腫、神経芽細胞腫、神経膠腫又は癌腫であって、脳、頭頸部、乳房、肺(例えば、非小細胞肺癌、NSCLC)、生殖器系(例えば、卵巣)、上部消化管、膵臓、肝臓、腎系(例えば、腎臓)、膀胱、前立腺及び結腸直腸の腫瘍などが挙げられる。
【0191】
本明細書に記載される方法は、概してそれを必要としている対象に対して実施される。本明細書に記載される治療方法を必要としている対象は、癌を有するか、それと診断されているか、それを有する疑いがあるか、又はそれを発症するリスクがあるか、又はその後期へと進行するリスクがある対象であり得る。治療の必要性の決定は、典型的には、問題となっている疾患又は病態に整合する病歴、理学的診察、又は診断検査によって判定されることになる。本明細書に記載される方法によって治療可能な様々な病態の診断は、当該分野の技能の範囲内にある。対象は、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、マウス、ラット、サル、ハムスター、モルモット、及びヒトなどの哺乳類、又はニワトリなどの他の動物を含め、動物対象であってもよい。例えば、対象はヒト対象であってもよい。
【0192】
概して、ある療法、例えば、抗体又はその機能性の抗原結合断片、CAR担持免疫エフェクター細胞、又は抗体-薬物コンジュゲートの安全で有効な量は、例えば、望ましくない副作用を最小限に抑えながらも、対象に所望の治療効果を生じさせるであろう量である。
【0193】
本明細書に記載される方法によれば、投与は、非経口、肺内、経口、局所、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、腫瘍内、髄腔内、頭蓋内、脳室内、皮下、鼻腔内、硬膜上、眼内、頬側、又は直腸投与であってもよい。製剤が、例えば、生物製剤又は細胞療法である場合、投与様式は、注射又は注入によることになる可能性が高いであろう。
【0194】
標準ケア及び免疫療法に向けたコンディショニングレジメン
AMLなどの癌の標準ケア治療には、化学療法及びターゲット療法を含めた抗癌医薬療法が関わり得る。
【0195】
例えば、シタラビン(シトシンアラビノシド又はara-C)とダウノルビシン(ダウノマイシン)又はイダルビシンなどのアントラサイクリンとの組み合わせは、AMLに対する第一選択の化学療法である。AMLの治療に使用し得る他の化学療法薬としては、クラドリビン(ロイスタチン(Leustatin)、2-CdA)、フルダラビン(フルダラ(Fludara))、ミトキサントロン、エトポシド(VP-16)、6-チオグアニン(6-TG)、ヒドロキシウレア、プレドニゾン又はデキサメタゾンなどのコルチコステロイド類、メトトレキサート(MTX)、6-メルカプトプリン(6-MP)、アザシチジン(ビダーザ(Vidaza))、及びデシタビン(ダコジェン(Dacogen))が挙げられる。加えて、ターゲット療法が、FLT-3突然変異を持つ患者におけるミドスタウリン(リダプト(Rydapt))又はギルテリチニブ(ゾスパタ(Xospata));CD33陽性AMLにおけるゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ(Mylotarg));ベネトクラクス(ベネクレクスタ(Venclexta))などのBCL-2阻害薬;イボシデニブ(チブソボ(Tibsovo))又はエナシデニブ(イドヒファ(Idhifa))などのIDH阻害薬;及びグラスデギブ(ダウリスモ(Daurismo))などのヘッジホッグ経路阻害薬など、適切な患者において使用されてもよい。完全寛解率は初期導入化学療法後に80%もの高さに上り得るが、大多数のAML患者は最終的には再発又は難治性(RR)疾患へと進行することになり、5年生存率は60歳未満の人で約35%及び60歳を超える人で10%である。Walter RB et al., “Resistance prediction in AML: analysis of 4601 patients from MRC/NCRI, HOVON/SAKK, SWOG and MD Anderson Cancer Center,” Leukemia 29(2):312-20 (2015)及びDoehner, Het al., “Acute Myeloid Leukemia, ” NEJM 373 (12): 1136-52 (2015)を参照されたい。
【0196】
癌の治療においては、コンディショニングレジメンを伴っても、又は伴わなくても、いずれであってもよい養子細胞移入(ACT)療法が可能である。典型的には、悪性障害を有する患者でHSCTなどのACTが実施されるとき、免疫アブレーションを引き起こして移植片拒絶反応を予防するため、及び腫瘍量を低減するため、手順の一環として、前処置又はコンディショニングレジメンが投与される。従来、これらの目標は、本来超致死量である全身照射法(TBI)及び毒性に重複のない化学療法剤、いわゆる「高強度」ACT前コンディショニングを用いることにより達成されていた。しかしながら、ACTの有効性には、悪性宿主細胞に対するドナー細胞の免疫学的反応(即ち、移植片対腫瘍効果)が実質的に寄与していることが認められたため、低強度の骨髄非破壊的コンディショニングレジメンが開発されており、高齢の患者及び医学的に虚弱な患者を含め、より幅広い患者に対するACT適用が可能になっている。
【0197】
コンディショニングレジメンは、当該技術分野において公知である。例えば、Gyurkocza and Sandmaier BM, “Conditioning regimens for hematopoietic cell transplantation: one size does not fit all ,” Blood 124(3): 344-353 (2014)を参照のこと。コンディショニングレジメンは、2006年のBone Marrow Transplantation Tandem Meetingの間にCenter for International Blood and Marrow Transplant Research(CIBMTR)によって開催された低強度コンディショニングレジメンワークショップ(Reduced-Intensity Conditioning Regimen Workshop)に従い、高用量(骨髄破壊的)、低強度、及び骨髄非破壊的に分類し得る。
【0198】
定義
特に定義しない限り、本開示に関連して使用される科学技術用語は、当業者が一般に理解する意味を有するものとする。更に、文脈上特に必要でない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、且つ複数形の用語は単数形を含むものとする。概して、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、並びにタンパク質及びオリゴ又はポリヌクレオチド化学及びハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法、及びそれらの技法は、当該技術分野で周知の、一般的に使用されているものである。
【0199】
本明細書で使用されるとき、用語「抗体」は、特異的結合を付与するのに十分な標準的な免疫グロブリン配列エレメントを含むか、又は例えば、ある特定の標的抗原に免疫反応を示す及び/又はそれに向けられるポリペプチドを指す。当該技術分野において公知のとおり、自然界で産生されるとおりのインタクトな抗体は、2つの同一の重鎖ポリペプチド(各約50kD)及び2つの同一の軽鎖ポリペプチド(各約25kD)が互いに会合して、一般に「Y字型」構造と称されるものとなることで構成される約150kDの四量体薬剤である。各重鎖は、少なくとも4つのドメイン(各約110アミノ酸長)-アミノ末端可変(VH)ドメインと、続く3つの定常ドメイン:CH1、CH2、及びカルボキシ末端CH3で構成される。「スイッチ」として公知の短い領域が、重鎖可変領域と定常領域とを結び付けている。「ヒンジ」がCH2及びCH3ドメインを抗体の残りの部分に結び付ける。インタクトな抗体では、このヒンジ領域における2つのジスルフィド結合が2つの重鎖ポリペプチドを互いに結び付けている。各軽鎖は、別の「スイッチ」によって互いに隔てられている2つのドメイン-アミノ末端可変(VL)ドメインと、続くカルボキシ末端定常(CL)ドメインで構成される。インタクトな抗体四量体は、2つの重鎖-軽鎖二量体で構成され、ここでは重鎖及び軽鎖が単一のジスルフィド結合によって互いに連結されている;2つの他のジスルフィド結合が重鎖ヒンジ領域を互いに結び付けているため、これらの二量体が互いに結び付けられることになり、四量体が形成される。天然で産生される抗体はまた、典型的にはCH2ドメイン上で、グリコシル化されている。天然抗体の各ドメインは、扁平な逆平行βバレルに互いに詰め合わされた2つのβシート(例えば、3本鎖、4本鎖、又は5本鎖シート)で形成される「免疫グロブリンフォールド」によって特徴付けられる構造を有する。各可変ドメインは、「相補性決定領域」として知られる3つの超可変ループ(CDR1、CDR2、及びCDR3)と、4つの幾らかインバリアントな「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)とを持つ。自然抗体が折り畳まれると、FR領域がβシートを形成して、それらがドメインの構造的フレームワークを提供し、重鎖及び軽鎖の両方からのCDRループ領域が三次元空間で一体になることにより、Y構造の先端に位置する単一の超可変抗原結合部位が生み出される。天然に存在する抗体のFc領域は補体系のエレメントに結合し、また、例えば細胞傷害性を媒介するエフェクター細胞を含め、エフェクター細胞上の受容体にも結合する。
【0200】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部分を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の幾つかの例としては、限定はされないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、線状抗体、単鎖可変断片(scFv)、及び抗体断片で形成される多重特異性抗体が挙げられる。一部の実施形態において、抗体断片は抗原結合断片である。
【0201】
現在の抗体工学及び改良方法のレビューについては、R. Kontermann and S. Dubel, (2010) Antibody Engineering Vols.1 and 2, Springer Protocols, 2nd Edition and W. Strohl and L. Strohl (2012) Therapeutic antibody engineering: Current and future advances driving the strongest growth area in the pharmaceutical industry, Woodhead Publishingを参照することができる。抗体及び抗原結合断片の作製及び精製方法は当該技術分野において周知であり、Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, chapters 5-8 and 15を参照することができる。
【0202】
用語「抗原」は、可溶性であり得るか、又は細胞膜結合型であり得る分子実体、詳細には、限定はされないが、抗体又はTCRを含むがこれらに限定されない適応免疫系、又はトランスジェニックTCR、キメラ抗原受容体(CAR)、scFv又はその多量体、Fab断片又はその多量体、抗体又はその多量体、単鎖抗体又はその多量体、又は構造への結合を高親和性で果たすことのできる任意の他の分子を含むがこれらに限定されない操作された分子による認識を受けることのできる分子実体を指す。
【0203】
「抗原結合ドメイン」は、本明細書で使用されるとき、CARの文脈では、CARの中で抗原に特異的に結合する(及びそれによって抗原を持つ細胞を標的化することが可能な)領域を指す。CARは、抗原結合ドメインを1つ以上含み得る。概して、CARのターゲティング領域は細胞外である。抗原結合ドメインは、抗体又はその抗原結合断片を含み得る。抗原結合ドメインは、例えば、完全長重鎖、Fab断片、単鎖Fv(scFv)断片、二価単鎖抗体又はダイアボディを含み得る。アフィボディ又は天然に存在する受容体からのリガンド結合ドメインなど、所与の抗原に特異的に結合する任意の分子を抗原結合ドメインとして使用し得る。多くの場合に抗原結合ドメインはscFvである。通常、scFvでは、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の可変部分が可動性リンカーによって融合されてscFvを形成する。かかるリンカーは、例えば(GGGG4S)3であり得る。一部の例では、抗原結合ドメインが、CARが使用されることになる種と同じ種に由来することが有益である。例えば、それをヒトで治療的に使用することが計画されるとき、CARの抗原結合ドメインがヒト又はヒト化抗体又はその抗原結合断片を含むことが有益であり得る。ヒト又はヒト化抗体又はその断片は、当該技術分野において周知の種々の方法によって作成することができる。
【0204】
本明細書で使用されるとき、用語「結合親和性」は、ある一つの分子が、その分子上のある部位で別の分子に結合する強度を指す。ある特定の分子が別の特定の分子に結合する又は特異的に会合することになる場合、それらの2つの分子は互いに結合親和性を呈すると言われる。結合親和性は、一対の分子についての会合定数及び解離定数に関係するが、これらの定数を測定又は決定することは、本明細書の方法にとって重要でない。むしろ、親和性は、記載される方法の分子間の相互作用を記載するために本明細書で使用されるとき、概して実証的研究で観察される見かけの親和性であり(特に指定されない限り)、これを使用すると、1つの分子(例えば、抗体又は他の特異的結合パートナー)が2つの他の分子(例えば、あるペプチドの2つのバージョン又は変異体)に結合するであろう相対強度を比較することができる。結合親和性、会合定数、及び解離定数の概念は周知である。
【0205】
用語「癌」は、医学的には悪性新生物として公知である。癌は、制御されない細胞成長が関わる幅広い一群の疾患である。癌では、細胞(癌性細胞)が無制御に分裂及び成長して悪性腫瘍を形成し、身体の近接した部位に浸潤する。癌はまた、身体の遠隔の部位にもリンパ系又は血流を通じて広がり得る。ヒトに発症する異なる公知の癌は200種を超える。
【0206】
用語「化学療法」は、標準化されたレジメンの一環としての1つ以上の細胞傷害性抗新生物薬(「化学療法剤」又は「化学療法薬」)による癌(癌性細胞)の治療を指す。化学療法は治癒目的で与えられてもよく、又はそれは寿命を延ばすこと若しくは症状を緩和することを目標としてもよい。これは多くの場合に、放射線療法、手術、及び/又はハイパーサーミア療法など、他の癌治療と併せて用いられる。従来の化学療法剤は、ほとんどの癌細胞の主な特性の一つである、急速に分裂する細胞を殺傷することによって働く。これはつまり、化学療法が、骨髄、消化管、及び毛包の細胞など、正常な状況下で急速に分裂する細胞にもまた害を及ぼすということを意味する。その結果、骨髄抑制(血液細胞の産生低下、ひいてはまた免疫抑制も)、粘膜炎(消化管の内膜の炎症)、及び脱毛症(抜け毛)など、化学療法で最もよく見られる副作用が生じる。
【0207】
用語「キメラ抗原受容体」、省略形「CAR」は、細胞、例えばT細胞又はNK細胞に抗原特異性をグラフトする操作された受容体を指す。本明細書に開示されるCARは、抗原ターゲティング領域としても知られる抗原結合ドメイン(典型的には、抗体重鎖及び軽鎖可変領域で構成される単鎖可変領域)、細胞外スペーサー/リンカードメイン又はヒンジ領域、膜貫通ドメイン及び少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含み;これは、任意選択で、少なくとも1つの共刺激ドメインなど、他のエレメントを含み得る。細胞外ドメインはまた、シグナルペプチドも含み得る。抗原特異的領域が対応する抗原に結合すると、シグナル伝達ドメインが宿主細胞においてエフェクター細胞機能を媒介する。
【0208】
用語「組み合わせ免疫療法」は、2つの療法アプローチ、例えば、当該技術分野において癌などの疾患の治療に公知の療法アプローチの協奏的な適用を指す。用語「組み合わせ免疫療法」はまた、抗原認識受容体による治療などの免疫療法と、造血細胞、例えば、抗原認識受容体による認識に抵抗性の造血細胞の移植などの別の療法との協奏的な適用も指し得る。細胞上での抗原の発現とは、抗原が細胞の細胞表面上に十分に存在するため、抗原認識受容体がそれを検出、結合及び/又は認識できることを意味する。
【0209】
「共刺激シグナル伝達領域」(等しく、共刺激又は「コスティム(co-stim)」ドメイン)とは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部を指す。共刺激分子は、免疫エフェクター細胞が効率的に反応するのに必要な、抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子の例については、上記で考察され、及び当該技術分野において公知である。典型的には2~10アミノ酸長である低分子オリゴペプチド又はポリペプチドリンカーが、細胞内シグナル伝達ドメインのエレメント間の連結を形成し得る。顕著なリンカーは、グリシン-セリンのダブレットである。
【0210】
用語「サイトカイン誘導性記憶様」、又は、等しく「CIML」は、NK細胞との関連では、「記憶」又は「記憶様」表現型を有することを意味し、プライミング剤を使用して作製される。
【0211】
用語「細胞傷害性」は、本明細書において記憶NK細胞との関連で使用されるとき、細胞が罹患細胞を標的化して殺傷する能力を指す。
【0212】
「罹患細胞」は、細胞、組織又は生物についての正常又は健常な状態から逸脱した、病原体、毒性物質、照射、又は細胞内部調節解除の影響によって生じ得る状態を指す。「罹患細胞」はまた、病原性ウイルスに感染した細胞も指し得る。更に用語「罹患細胞」は、個体の癌を構成し又はそれを生じさせるものであり得る悪性細胞又は新生物細胞を指し得る。
【0213】
用語「操作された細胞」及び「遺伝子修飾された細胞」は、本明細書で使用されるとき、同義的に使用することができる。これらの用語は、外来性遺伝子又は核酸配列を持っている、及び/又はそれを発現すること、又はその天然の形態又は機能から外れるように遺伝子修飾されていて(例えば欠失している又はノックアウトされている遺伝子)、次にはそれが細胞又はその子孫の遺伝子型又は表現型を修飾する遺伝子を持っていることを意味する。細胞は、自然状態ではそうした細胞で発現しないペプチド又はタンパク質を安定に又は一過性に発現するように、当該技術分野において周知の組換え方法により修飾することができる。細胞の遺伝子修飾方法としては、限定されないが、トランスフェクション、電気穿孔、ヌクレオフェクション、形質導入であって、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、非組込み型レトロウイルス又はレンチウイルスベクター、トランスポゾン、デザイナーヌクレアーゼであって、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN又はCRISPR/Casを含めたものを用いる形質導入が挙げられる。
【0214】
用語「濃縮する」は、本明細書においてNK細胞との関連で使用されるとき、更なる分析又は使用のために高濃度化し、精製し、又は単離することを意味する。濃縮及び精製された細胞集団は、大多数の所望の細胞と、無視できる割合の他の細胞とを含む。
【0215】
用語「倍数選択的」は、本明細書で使用されるとき、ある一つの標的に対して持つ親和性が、別の標的に対するその親和性の少なくともx倍高いことを意味し、ここでxは少なくとも2であり、及びそれより大きい、例えば、10、20、50、100、又は1000であってもよい。好ましい実施形態において、倍数選択性は治療的に有意味であり、即ち、ある一つの標的を発現する細胞が殺傷され、且つ他の標的を担持する細胞が生き残ることを可能にするのに十分である。
【0216】
用語「遺伝子修飾」又は遺伝子修飾された」は、限定はされないが細胞のゲノムDNAを含め、核酸内容の改変を指す。これには、限定はされないが、核酸配列の単一のヌクレオチド又は断片の交換又は欠失の導入による細胞ゲノムDNA配列の改変が含まれる。この用語はまた、それによって細胞ゲノムDNA配列の直接的又は間接的な改変につながるか否かに関係なく、細胞への核酸の任意の導入も指す。
【0217】
用語「造血細胞」は、限定はされないが、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞(即ち、増殖し、且つ赤血球系細胞、リンパ球、及び骨髄球を含めた異なる血液細胞型を少なくとも部分的に再構成する能力を有する)を含めた、造血能力を有する造血系の細胞の集団を指す。用語「造血細胞」にはまた、本明細書で使用されるとき、造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞から分化して血液細胞(即ち、赤血球系細胞、リンパ球、及び骨髄球を含めた血液細胞型)を形成する細胞も含まれる。
【0218】
抗原認識受容体による抗原の認識に抵抗性のドナー造血細胞とは、その細胞が、抗原に特異的な抗原認識受容体による検出、結合及び/又は認識をそれほど容易には受けることができないこと、又は検出、結合及び/又は認識が損なわれているため、免疫療法の間にその細胞が殺傷されないことを意味する。
【0219】
用語「免疫細胞」又は「免疫エフェクター細胞」は、αβT細胞、NK細胞(記憶NK、ML-NK、及びCIML-NKを含む)、NKT細胞(iNKT細胞を含む)、B細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、γδT細胞、間葉系幹細胞又は間葉系間質細胞(MSC)、単球及びマクロファージなど、免疫系の一部であってよい、特定のエフェクター機能を果たす細胞を指す。好ましい免疫細胞は、αβT細胞、NK細胞(記憶NK、ML-NK、及びCIML-NKを含む)、NKT細胞(iNKT細胞を含む)、ILC、CIK細胞、LAK細胞又はγδT細胞など、細胞傷害性エフェクター機能のある細胞である。「エフェクター機能」は、細胞の特殊化した機能を意味し、例えば、NK細胞では、エフェクター機能は細胞溶解活性又はサイトカインの分泌を含めたヘルパー活性であり得る。
【0220】
用語「免疫療法」は、「免疫応答の誘導、亢進、又は抑制による疾患の治療」として定義される医学用語である。免疫応答を引き出し又は増幅するように設計された免疫療法は、活性化免疫療法に分類され、一方、低減し又は抑制する免疫療法は、抑制免疫療法に分類される。活性化型免疫療法としての癌免疫療法は、免疫系を刺激することにより腫瘍を拒絶し及び破壊しようと試みる。養子細胞移入は、細胞ベースの細胞傷害性反応を用いて癌細胞を攻撃する。患者の癌に対して天然の又は遺伝子操作された反応性を有するT細胞などの免疫細胞がインビトロで生成され、次に癌患者に移し戻される。
【0221】
本明細書で使用されるとき、用語「個体」は、動物を指す。優先的には、個体は、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ヤギ、ニワトリ、イヌ、サル又はヒトなどの哺乳類である。より優先的には、個体はヒトである。個体は、癌などの疾患に罹患している個体(患者)であってもよいが、対象はまた、健常な対象であってもよい。
【0222】
CARの「細胞内シグナル伝達ドメイン」(等しく、細胞質シグナル伝達ドメイン又はエフェクタードメイン;これらは細胞内ドメイン又はエンドドメインの一部である)は、CARが発現する免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与する。「エフェクター機能」は、細胞の特殊化した機能を意味し、例えば、NK細胞では、エフェクター機能は細胞溶解活性又はサイトカインの分泌を含めたヘルパー活性であり得る。細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達し、及びCARを発現する細胞が特殊化した機能を果たすように仕向けるタンパク質の一部を指す。
【0223】
細胞内シグナル伝達ドメインには、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な所与のタンパク質の細胞内シグナル伝達ドメインの任意の完全な又はトランケートされた一部が含まれ得る。CARにおける使用のための細胞内シグナル伝達ドメインの顕著な例としては、抗原受容体会合後にシグナル伝達を惹起するために協力して働く受容体及び共受容体の細胞質配列が挙げられる。
【0224】
概して、免疫エフェクター細胞のCAR活性化は2つのクラスの細胞質シグナル伝達配列、第一に、CARを通じて抗原依存性一次活性化を惹起するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)及び第二に、抗原非依存的様式で二次又は共刺激シグナルを提供する働きをするもの(二次細胞質シグナル伝達配列、共刺激シグナル伝達ドメイン)によって媒介されることができる。従って、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、一次細胞質シグナル伝達ドメインと、任意選択で二次細胞質シグナル伝達ドメイン(即ち、共刺激又は「コスティム(co-stim)」ドメイン)とを含み得る。
【0225】
刺激する形で働く一次細胞質シグナル伝達配列には、ITAM(免疫受容体チロシン活性化モチーフシグナル伝達モチーフ)が含まれてもよい。CARに使用されることの多いITAMを持つ一次細胞質シグナル伝達配列の例は、本明細書に開示され、及び当該技術分野において公知である。
【0226】
用語「悪性」又は「悪性腫瘍」は、新生物を構成するか、新生物に由来するか、又は新しい新生物細胞の起源となり得る細胞、細胞群又は組織を表す。この用語は、組織の正常又は健常な細胞との対照での新生物細胞を表して使用される。悪性腫瘍は、非癌性良性腫瘍と比べると、悪性腫瘍がその成長の点で自己限定性でなく、隣接組織に浸潤する能力を有し、及び遠隔の組織に広がる能力を有し得る点で対照をなす。良性腫瘍は、これらの特性のいずれも有しない。悪性腫瘍は、退形成、侵襲性、及び転移並びにゲノム不安定性によって特徴付けられる。用語「前悪性細胞」は、まだ悪性でないが、悪性になろうとしている細胞又は組織を指す。
【0227】
用語「記憶」又は「記憶様」は、NK細胞との関連では、NK細胞の一般集団と比較して細胞傷害性が改善された、且つ長寿命/持続性である活性化された表現型を有することを意味し、典型的には、NK細胞の一般集団と比較して、CD69、CD25、及びNKG2Aの細胞表面発現の増加、並びにCD16の発現の維持を呈する。
【0228】
用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、本開示に記載される抗体に適用されるとき、任意の真核生物、原核生物、又はファージクローンからの単一コピー又はクローンに由来する化合物であり、それが産生される方法ではない。本開示のmAbは、均一な又は実質的に均一な集団で存在し得る。
【0229】
用語「持続性」は、本明細書において使用されるとき、細胞、特に対象に養子移入された細胞が生存し続ける能力を指す。
【0230】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書では、アミノ酸残基のポリマーを指して同義的に使用される。これらの用語はまた、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的模倣体であるようなアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0231】
用語「プライミングする」は、NK細胞との関連では、記憶/記憶様表現型となるようにプライミング剤を使用して刺激し又は活性化させることを意味する。「プライミング剤」は、刺激サイトカインの組み合わせ、例えば、
・IL-12、IL-23、IL-27、及びIL-35のうちの1つ以上;
・IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、及びIL-21のうちの1つ以上;及び
・IL-18、IL-1a、IL-1b、IL-36a、IL-36b、及びIL-36gのうちの1つ以上、
又はかかるサイトカインの機能性断片を含む1つ以上の「プライミング融合タンパク質」、又はその1つ以上の多連鎖複合体を含む。かかるタンパク質の例は、本明細書に開示される。
【0232】
一般に、用語「受容体」は、可溶性であっても又は細胞表面膜に付着していてもよい生体分子であって、細胞表面膜に付着していても又は可溶性であってもよい定義付けられた構造体に特異的に結合する生体分子を指す。受容体としては、限定はされないが、抗体及び抗体様構造、接着分子、トランスジェニックの又は天然に存在するTCR又はCARが挙げられる。具体的には、用語「抗原認識受容体」は、本明細書で使用されるとき、天然TCR、トランスジェニックTCR、CAR、scFv又はその多量体、Fab断片又はその多量体、抗体又はその多量体、二重特異性T細胞エンハンサー(BiTE)、ダイアボディ、又は特異的結合を高親和性で果たすことのできる任意の他の分子など、膜結合型又は可溶性受容体であってもよい。
【0233】
用語「副作用を低減する」とは、抗原を発現する非標的細胞に向けられる毒性など、抗原認識受容体による免疫療法の任意の合併症、望ましくない又は病的なアウトカムの重症度の低下を指す。「副作用を低減する」とはまた、抗原認識受容体による免疫療法の間の患者の痛み、害又は死亡リスクを低下させる又は回避する手段も指す。
【0234】
本明細書で使用されるとき、用語「配列同一性」は、2つ以上の配列を配列の一致が最大となるように、即ち、ギャップ及び挿入を考慮してアラインメントしたときの、それらの配列の対応する位置における同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基の割合を意味する。同一性は、公知の方法により容易に計算することができる。同一性を決定する方法は、調べている配列間に最大の一致を与えるように設計される。その上、同一性を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムにコード化される。比較に最適な配列のアラインメントは、例えば、スミス・ウォーターマン(Smith & Waterman)の局所的相同性アルゴリズムによるか、相同性アラインメントアルゴリズムによるか、類似性検索法によるか、又は、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実装によるか(Accelrys, Inc.、San Diego、California、米国から入手可能なGCG Wisconsin PackageのGAP、BESTFIT、PASTA、及びTFASTA)、又は目視検査により実行することができる。概略については、Altschul, S. F. et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)及びAltschul et al. Nucl. Acids Res. 25: 3389-3402 (1997)を参照のこと。パーセント配列同一性及び配列類似性の決定に好適なアルゴリズムの一例は、BLASTアルゴリズムである。
【0235】
「シグナルペプチド」は、本明細書で使用されるとき、CARの文脈では、細胞内における、例えばある種の細胞小器官(小胞体など)及び/又は細胞表面へのタンパク質の輸送及び局在化を導くペプチド配列を指す。
【0236】
用語「スペーサー」又は「ヒンジ」は、本明細書で使用されるとき、CARの文脈では、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間にある親水性領域を指す。本明細書に開示されるCARは細胞外スペーサードメインを含み得るが、かかるスペーサーは省くこともまた可能である。スペーサーには、抗体のFc断片又はその断片、抗体のヒンジ領域又はその断片、抗体のCH2又はCH3領域、アクセサリータンパク質、人工スペーサー配列又はこれらの組み合わせが含まれ得る。スペーサーの顕著な例は、CD8αヒンジである。
【0237】
抗原認識受容体に関連して用語「特異的に結合する」又は「~に特異的」又は「特異的に認識する」は、抗原の特異的多型変異体を認識してそれに結合するが、他の変異体は実質的に認識せず又は結合しない抗原認識受容体の抗原結合ドメインを指す。
【0238】
用語「副作用」は、所望の治療アウトカムに加えて起こる抗原認識受容体による免疫療法の任意の合併症、望ましくない又は病的なアウトカムを指す。用語「副作用」は、優先的には、抗原を発現する非標的細胞であって、しかし本明細書に記載されるとおりの罹患細胞ではない細胞上に標的抗原が存在する場合に免疫療法の間に起こる可能性のあるオンターゲットオフ腫瘍毒性を指す。免疫療法の副作用は、移植片対宿主病の発症であり得る。
【0239】
用語「標的」又は「標的抗原」は、標的細胞の表面上に存在する任意の細胞表面タンパク質、糖タンパク質、糖脂質又は任意の他の構造を指す。この用語はまた、標的細胞上に存在する任意の他の構造、詳細には、限定はされないが、抗体又はTCRを含むがこれらに限定されない適応免疫系、又はトランスジェニックTCR、CAR、scFv又はその多量体、Fab断片又はその多量体、抗体又はその多量体、単鎖抗体又はその多量体、又は構造への結合を高親和性で果たすことのできる任意の他の分子を含むがこれらに限定されない操作された分子による認識を受けることのできる構造も指す。
【0240】
用語「標的細胞」は、本明細書で使用されるとき、個体に適用される又は適用されることになる抗原認識受容体によって認識される細胞を指す。
【0241】
用語「治療有効量」は、治療利益を提供する量を意味する。
【0242】
CARの「膜貫通ドメイン」は、かかるドメインの任意の所望の天然又は合成供給源に由来し得る。供給源が天然であるとき、このドメインは、任意の膜結合型又は膜貫通型タンパク質に由来し得る。膜貫通ドメインは、例えば、CD8α、CD28、NKG2D、又は本明細書に開示される若しくは当該技術分野において公知の他のものに由来し得る。鍵となるシグナル伝達及び抗原認識モジュールが2つの(又は更に多くの)ポリペプチド上にあるとき、ひいてはCARは2つの(又はそれより多い)膜貫通ドメインを有し得る。鍵となるシグナル伝達及び抗原認識モジュールを分割すると、CARの各ポリペプチドにおける小分子依存的ヘテロ二量化ドメインに起因して、CAR細胞発現を小分子依存的に力価決定可能且つ可逆的に制御することが可能となる(Wu et al, 2015, Science 350: 293-303)。
【0243】
本明細書で使用されるとき、用語「移植」は、対象にドナー細胞、例えば造血細胞又はCAR担持免疫エフェクター細胞の集団を投与することを意味する。
【0244】
用語「治療」は、本明細書で使用されるとき、疾患の少なくとも1つの徴候又は症状の頻度又は重症度を低減することを意味する。
【実施例】
【0245】
実施例
以下の例により、本発明が更に例示される。
【0246】
実施例1.拡大のみ、プライミングと同時に拡大、及び拡大後にプライミングのインビトロ培養及び活性
材料及び方法:CD3枯渇及びCD56ポジティブ選択を使用して全血からNK細胞を単離した。次に、選択されたNK細胞を96ウェルプレートにおいてNK MACS培地+サプリメント+10%HI-HABで培養し、以下の条件でプライミング/拡大した(ここで、1×7t15-21s及びATF1はそれぞれ200nM及び100nMであり、1×18t15-12sは250nMである;希釈は全て、これらの値から指示されるとおり計算する)。
a)拡大のみ:+7t15-21s及びATF1、指示される濃度において37度、5%CO2で2日間、6日間、又は10日間のいずれか。その後2日毎に、7t15-21s及びATF1を新鮮培地と共に指示される濃度まで補充した。
b)プライミングと同時に拡大:+18t15-12s、7t15-21s及びATF1、指示される濃度において37度、5%CO2で2日間、6日間、又は10日間のいずれか。その後2日毎に、18t15-12s、7t15-21s及びATF1を新鮮培地と共に指示される濃度まで補充した。
c)拡大後にプライミング:+7t15-21s及びATF1、指示される濃度において37度、5%CO2で2日間、6日間、又は10日間のいずれか。その後2日毎に、7t15-21s及びATF1を新鮮培地と共に指示される濃度まで補充した。指示されるとおり2、6、又は10日目、18t15-12sを指示される濃度で一晩加えた。
【0247】
上記のプロセスにより生成されたNK細胞の表現型を判定するため、適切な時点でNK細胞を回収し、洗浄し、受容体発現に関して、純度及び/又は活性化マーカー、例えば、抗CD56、抗CD3、Live/Dead Yellow、抗NKG2A、抗CD69、抗CD25、及び抗CD16を含むフローパネルで染色することにより判定した。以下のクローンを使用した:
・抗CD45(HI30クローン)
・抗CD56(CMSSBクローン)
・抗CD3(SK7クローン)
・Live/Dead Yellow(Thermo Fisher)
・抗NKG2A(REA110クローン)
・抗CD69(FN50クローン)
・抗CD25(CD25-4E3クローン)
・抗CD16(eBioCD16クローン)
Attune NXtフローサイトメーターを使用した。次にデータをFlowjo v10.7において、生存CD56+CD3-細胞をゲーティングし、上述のマーカーの各々の蛍光強度中央値を判定して分析した。CD69、CD25、及びNKG2A発現の増加、並びにCD16発現の維持が、CIML-NK細胞表現型を指し示している。
【0248】
上記のプロセスにより生成されたNK細胞の殺傷活性を判定するため、適切な時点で、培養したNK細胞を回収して洗浄し、次に10%ヒトAB型血清(Gibco))含有のNK MACS培地に再懸濁し、96ウェルプレートに10,000個のルシフェラーゼ発現K562(K562-Luc)ヒト腫瘍細胞(ATCC)と共に指示されるエフェクター対標的(E:T)比で24~48時間、IL-2(Miltenyi)有り又は無しで加え、その後ルシフェラーゼ活性(生存K562細胞)をルシフェラーゼの読取り(Promega)によって判定した。データは示さず。
【0249】
結果:この例は、上記のプロセスにより生成されたNK細胞のインビトロ活性及びフローサイトメトリー表現型を実証している。
【0250】
結果は、表面タンパク質発現の累積変化倍数、細胞サイズ、及び個々の遺伝子についての蛍光強度中央値を示した表6~表11に示す。
【0251】
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
或いは、iPSC細胞などのリンパ球前駆細胞、又は臍帯血NK細胞を好適な培地で培養し、NK細胞をプライミング及び/又は拡大することのできる形態に分化させてもよい。
【0258】
実施例2.プライミングを途中又は最後とするインビトロ拡大及びプライミング
材料及び方法:精製されたNK細胞を様々な濃度の拡大剤7t15-21s及びATF1で2日毎に処理した。6日目及び14日目、200nM及び100nMの7t15-21s及びATF1で拡大した細胞を250nMの18t15-12sで活性化させて、200nM及び100nMの7t15-21s及びATF1で拡大を継続した。6、13及び17日後、次にNKを指示された比でK562-Luc2細胞(ATCC)のプレートのRPMI+10%熱失活FBSに加えた。次にプレートを37℃及び5%CO2で24時間インキュベートした。K562細胞の殺傷をルシフェラーゼの読取りによって測定した。EC:50が低いほど、より良好な殺傷と考えられる。
【0259】
結果:この例は、大規模な上記のプロセスにより生成されたNK細胞のインビトロ活性及びフローサイトメトリー表現型を実証している。
【0260】
【0261】
実施例3.拡大のみ、プライミングと同時に拡大、拡大後にプライミング、及び拡大後にプライミング及び拡大のインビトロ培養及び活性
材料及び方法:CD3枯渇及びCD56ポジティブ選択を使用して全血からNK細胞を単離した。次に、選択されたNK細胞を96ウェルプレートにおいてNK MACS培地+サプリメント+10%HI-HABで培養し、以下の条件でプライミング/拡大した(ここで、1×7t15-21s及びATF1はそれぞれ200nM及び100nMであり、×/4はそれぞれ50nM及び25nMである):
a)拡大のみ:+1×又は×/4 7t15-21s及びATF1、37度、5%CO2で4日間。培養6日目及びその後2日毎に、7t15-21s及びATF1を新鮮培地と共に1×又は×/4まで補充した。
b)プライミングと同時に拡大:250nM/1×、250nM/×/4、62.5nM/1×、又は62.5nM/×/4の+18t15-12s、7t15-21s及びATF1、37度、5%CO2で6日間。培養6日目及びその後2日毎に、18t15-12s、7t15-21s及びATF1を新鮮培地と共に指示される濃度まで補充した。
c)拡大後にプライミング:+1×又は×/4 7t15-21s及びATF1、37度、5%CO2で4日間。培養6日目及びその後2日毎に、7t15-21s及びATF1を新鮮培地と共に1×又は×/4まで補充した。指示されるとおり6日目又は14日目に、18t15-12sを250nM又は62.5nMで3時間加えた。
d)拡大後にプライミング及び拡大3時間:+1×又は×/4 7t15-21s及びATF1、37度、5%CO2で4日間。培養6日目及びその後2日毎に、7t15-21s及びATF1を新鮮培地と共に1×又は×/4まで補充した。6日目又は14日目に、18t15-12s、7t15-21s及びATF1を250nM/1×、250nM/×/4、62.5/1×、又は62.5/×/4で3時間加えた。
e)拡大後にプライミング及び拡大48時間:+1×又は×/4 7t15-21s及びATF1、37度、5%CO2で4日間。培養6日目及びその後2日毎に、7t15-21s及びATF1を新鮮培地と共に1×又は×/4まで補充した。6日目又は14日目に、18t15-12s、7t15-21s及びATF1を250nM/1×、250nM/×/4、62.5nM/1×、又は62.5nM/×/4で48時間加えた。
【0262】
上記のプロセスにより生成されたNK細胞の表現型を判定するため、適切な時点でNK細胞を回収し、洗浄し、受容体発現に関して、純度及び/又は活性化マーカー、例えば、抗CD56、抗CD3、Live/Dead Yellow、抗NKG2A、抗CD69、抗CD25、及び抗CD16を含むフローパネルで染色することにより判定した。以下のクローンを使用した:
・抗CD45(HI30クローン)
・抗CD56(CMSSBクローン)
・抗CD3(SK7クローン)
・Live/Dead Yellow(Thermo Fisher)
・抗NKG2A(REA110クローン)
・抗CD69(FN50クローン)
・抗CD25(CD25-4E3クローン)
・抗CD16(eBioCD16クローン)
Attune NXtフローサイトメーターを使用した。次にデータをFlowjo v10.7において、生存CD56+CD3-細胞をゲーティングし、上述のマーカーの各々の蛍光強度中央値を判定して分析した。CD69、CD25、及びNKG2A発現の増加、並びにCD16発現の維持が、CIML-NK細胞表現型を指し示している。
【0263】
上記のプロセスにより生成されたNK細胞の殺傷活性を判定するため、適切な時点で、培養したNK細胞を回収して洗浄し、次に10%ヒトAB型血清(Gibco))含有のNK MACS培地に再懸濁し、96ウェルプレートに10,000個のルシフェラーゼ発現K562(K562-Luc)ヒト腫瘍細胞(ATCC)と共に指示されるエフェクター対標的(E:T)比で24~48時間、IL-2(Miltenyi)有り又は無しで加え、その後ルシフェラーゼ活性(生存K562細胞)をルシフェラーゼの読取り(Promega)によって判定した。
【0264】
結果:この例は、上記のプロセスにより生成されたNK細胞のインビトロ活性及びフローサイトメトリー表現型を実証している。
【0265】
結果は、NK細胞数の累積変化倍数、個々の表面タンパク質発現の蛍光強度中央値、及びK562-Luc殺傷を示した表12~表17に示す。
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
【0272】
実施例4.拡大のみ及び拡大後にプライミングの大規模インビトロ培養及び活性
材料及び方法:MACS prodigyで凍結leukopakからCD3枯渇及びCD56ポジティブ選択を使用してNK細胞を単離した。次に、選択されたNK細胞をSt. Gobainバッグ内のNK MACS培地+サプリメント+10%HI-HAB+25nM 7t15-21s+50nM ATF1で0.25e6/mLの初期細胞濃度において37度、5%CO2で6日間培養した。培養6日目及びその後2日毎に細胞をカウントし、0.25e6/mLの濃度に希釈し、7t15-21s及びATF1を最終的な培地容積に適切な濃度になるまで補充した。14日目、細胞を凍結するか(拡大のみ)、又は細胞を50e6/mLに濃縮するかのいずれかとし、18t15-12を250nMの最終濃度となるように加えた(拡大後にプライミング)。このようにプライミングした細胞を37度、5%CO2で様々な時間にわたってインキュベートした。指示される時間長さ(30分、1時間、2時間、3時間、5時間又は一晩)にわたって18t15-12sを加えた後、細胞を回収し、HBSS(-/-)、0.5%HSAで2回洗浄し、凍結緩衝液(90%ヒト血清、10%DMSO)に再懸濁した。コントロールレートフリーザーを使用して細胞を2e6細胞/mL又は20e6細胞/mLのいずれかで凍結した後、気相の液体窒素に移した。次に細胞を解凍し、洗浄し、カウントし、及び下流アッセイで利用して機能を測定した。
【0273】
上記のプロセスにより生成されたNK細胞の表現型を判定するため、適切な時点でNK細胞を回収し、洗浄し、受容体発現に関して、純度及び/又は活性化マーカー、例えば、抗CD56、抗CD3、Live/Dead Yellow、抗NKG2A、抗CD69、抗CD25、及び抗CD16を含むフローパネルで染色することにより判定した。以下のクローンを使用した:
・抗CD45(HI30クローン)
・抗CD56(CMSSBクローン)
・抗CD3(SK7クローン)
・Live/Dead Yellow(Thermo Fisher)
・抗NKG2A(REA110クローン)
・抗CD69(FN50クローン)
・抗CD25(CD25-4E3クローン)
・抗CD16(eBioCD16クローン)
Attune NXtフローサイトメーターを使用した。次にデータをFlowjo v10.7において、生存CD56+CD3-細胞をゲーティングし、上述のマーカーの各々の蛍光強度中央値を判定して分析した。CD69、CD25、及びNKG2A発現の増加、並びにCD16発現の維持が、CIML NK細胞表現型を指し示している。
【0274】
上記のプロセスにより生成されたNK細胞の殺傷活性を判定するため、適切な時点で、培養したNK細胞を回収して洗浄し、次に10%ヒトAB型血清(Gibco))含有のNK MACS培地に再懸濁し、96ウェルプレートに10,000個のルシフェラーゼ発現K562(K562-Luc)ヒト腫瘍細胞(ATCC)と共に指示されるエフェクター対標的(E:T)比で24~48時間、IL-2(Miltenyi)有り又は無しで加え、その後ルシフェラーゼ活性(生存K562細胞)をルシフェラーゼの読取り(Promega)によって判定した。
【0275】
上記のプロセスにより生成されたNK細胞のサイトカイン産生能力を判定するため、NK細胞を解凍し、次に10%ヒトAB型血清(Gibco)含有のNK MACS培地に再懸濁し、96ウェルプレートに10,000個のルシフェラーゼ発現K562(K562-Luc)ヒト腫瘍細胞(ATCC)と共に1:1のエフェクター対標的(E:T)比で24時間又は単独で加え、その後上清を回収し、IFNg ELISA(R&D Systems)によりIFNg産生を判定した。
【0276】
結果:この例は、上記のプロセスにより大規模で生成されたNK細胞のインビトロ活性及びフローサイトメトリー表現型を実証している。
【0277】
【0278】
実施例5.拡大のみ、プライミング後に拡大、及び拡大後にプライミングの大規模インビトロ培養及び活性
材料及び方法:MACS prodigyで凍結leukopakからCD3枯渇及びCD56ポジティブ選択を使用してNK細胞を単離した。次に、選択されたNK細胞をSt. Gobainバッグ内のNK MACS培地+サプリメント+10%HI-HAB+25nM 7t15-21s+50nM ATF1で0.25e6/mLの初期細胞濃度において37度、5%CO2で6日間培養した。培養6日目及びその後2日毎に、細胞をカウントし、0.25e6/mLの濃度に希釈し、7t15-21s及びATF1を最終的な培地容積に適切な濃度になるまで補充した。14日目、細胞を様々な密度(2e6、5e6、10e6、25e6、35e6又は50e6/mL)に濃縮し、18t15-12を250nMの最終濃度となるように加えた。細胞を37度、5%でインキュベートした。指示される時間長さ(3時間又は一晩)にわたって18t15-12を加えた後、細胞を回収し、HBSS(-/-)、0.5%HSAで2回洗浄し、凍結緩衝液(90%ヒト血清、10%DMSO)に再懸濁した。コントロールレートフリーザーを使用して細胞を2e6細胞/mL又は20e6細胞/mLのいずれかで凍結した後、気相の液体窒素に移した。次に細胞を解凍し、洗浄し、カウントし、及び下流アッセイで利用して機能を測定した。
【0279】
上記のプロセスにより生成されたNK細胞の表現型を判定するため、適切な時点でNK細胞を回収し、洗浄し、受容体発現に関して、純度及び/又は活性化マーカー、例えば、抗CD56、抗CD3、Live/Dead Yellow、抗NKG2A、抗CD69、抗CD25、及び抗CD16を含むフローパネルで染色することにより判定した。以下のクローンを使用した:
・抗CD45(HI30クローン)
・抗CD56(CMSSBクローン)
・抗CD3(SK7クローン)
・Live/Dead Yellow(Thermo Fisher)
・抗NKG2A(REA110クローン)
・抗CD69(FN50クローン)
・抗CD25(CD25-4E3クローン)
・抗CD16(eBioCD16クローン)
Attune NXtフローサイトメーターを使用した。次にデータをFlowjo v10.7において、生存CD56+CD3-細胞をゲーティングし、上述のマーカーの各々の蛍光強度中央値を判定して分析した。CD69、CD25、及びNKG2A発現の増加、並びにCD16発現の維持が、CIML-NK細胞表現型を指し示している。
【0280】
上記のプロセスにより生成されたNK細胞の殺傷活性を判定するため、適切な時点で、培養したNK細胞を回収して洗浄し、次に10%ヒトAB型血清(Gibco))含有のNK MACS培地に再懸濁し、96ウェルプレートに10,000個のルシフェラーゼ発現K562(K562-Luc)ヒト腫瘍細胞(ATCC)と共に指示されるエフェクター対標的(E:T)比で24~48時間、IL-2(Miltenyi)有り又は無しで加え、その後ルシフェラーゼ活性(生存K562細胞)をルシフェラーゼの読取り(Promega)によって判定した。
【0281】
上記のプロセスにより生成されたK細胞のサイトカイン産生能力を判定するため、NK細胞を解凍し、次に10%ヒトAB型血清(Gibco)含有のNK MACS培地に再懸濁し、96ウェルプレートに10,000個のルシフェラーゼ発現K562(K562-Luc)ヒト腫瘍細胞(ATCC)と共に1:1のエフェクター対標的(E:T)比で24時間又は単独で加え、その後上清を回収し、IFNg ELISA(R&D Systems)によりIFNg産生を判定した。
【0282】
上記のプロセスにより生成されたNK細胞のインビボ持続性を判定するため、NK細胞を解凍し、HBSSに20e6/mLで再懸濁した。2e6~5e6個の細胞(例えば、100uL中)を免疫不全NSGマウス(Jackson Laboratories、Bar Harbor Maine)に静脈内注射した。ヒトIL-2(Miltenyi Biotec、50,000IU)を2日毎に投与することによってマウスを支持し、7日目に血液を採取し、以下からなるフローパネルで染色することによりNK細胞数を測定し:
・抗CD56(CMSSBクローン)、
・抗CD3(SK7クローン)、
・Live/Dead Yellow(Thermo Fisher)、
・抗マウスCD45(30-F11クローン)、及び
・抗ヒトCD45(HI30クローン)
その後固定して赤血球を溶解させた。次にAttune NXtフローサイトメーターでhuCD45+マウスCD45-CD3-生細胞数に関して細胞を分析した。
【0283】
結果:この例は、上記のプロセスにより大規模で生成されたNK細胞のインビトロ活性及びフローサイトメトリー表現型を実証している。
【0284】
【0285】
実施例6.拡大のみ及び拡大後にプライミングのインビトロ培養及び活性
材料及び方法:CD3枯渇及びCD56ポジティブ選択を使用して全血からNK細胞を単離した。次に、選択されたNK細胞を組織培養処理済みフラスコで培養し、次に細胞培養バッグのNK MACS培地+サプリメント+10%HI-HABに移し、以下の条件で拡大した:
a)拡大のみ:50nM 7t15-21s及び25nM ATF1、37度、5%CO2で4日間。培養5日目及びその後2、3日毎に、7t15-21s及びATF1をそれぞれ50nM及び25nMまで補充し、細胞を新鮮培地で適切な濃度に希釈した。14日目に細胞を90%HAB、10%DMSOに凍結した。
b)拡大後にプライミング:50nM 7t15-21s及び25nM ATF1、37度、5%CO2で4日間。培養5日目及びその後2、3日毎に、7t15-21s及びATF1をそれぞれ50nM及び25nMまで補充し、細胞を新鮮培地で適切な濃度に希釈した。14日目、18t15-12sを250nMで3時間加えた。次に細胞を90%HAB、10%DMSOに凍結した。
【0286】
上記のプロセスにより生成されたNK細胞の表現型を判定するため、凍結した細胞を解凍し、受容体発現に関して、純度及び/又は活性化マーカー、例えば、抗CD56、抗CD3、Live/Dead Yellow、抗NKG2A、抗CD69、抗CD25、及び抗CD16を含むフローパネルで染色することにより判定した。以下のクローンを使用した:
・抗CD45(HI30クローン)
・抗CD56(CMSSBクローン)
・抗CD3(SK7クローン)
・Live/Dead Yellow(Thermo Fisher)
・抗NKG2A(REA110クローン)
・抗CD69(FN50クローン)
・抗CD25(CD25-4E3クローン)
・抗CD16(eBioCD16クローン)
Attune NXtフローサイトメーターを使用した。次にデータをFlowjo v10.7において、生存CD56+CD3-細胞をゲーティングし、上述のマーカーの各々の蛍光強度中央値を判定して分析した。CD69、CD25、及びNKG2A発現の増加、並びにCD16発現の維持が、CIML-NK細胞表現型を指し示している。結果は以下の表18~表22に示す。
【0287】
【0288】
【0289】
【0290】
【0291】
【0292】
上記のプロセスにより生成されたNK細胞の殺傷活性を判定するため、適切な時点で、培養したNK細胞を回収して洗浄し、次に10%ヒトAB型血清(Gibco))含有のNK MACS培地に再懸濁し、96ウェルプレートに10,000個のルシフェラーゼ発現K562(K562-Luc)ヒト腫瘍細胞(ATCC)と共に指示されるエフェクター対標的(E:T)比で24~48時間、IL-2(Miltenyi)有り又は無しで加え、その後ルシフェラーゼ活性(生存K562細胞)をルシフェラーゼの読取り(Promega)によって判定した。結果は
図17~
図18に示す。
【0293】
結果:この例は、上記のプロセスにより生成されたNK細胞のインビトロ活性及びフローサイトメトリー表現型を実証している。
【0294】
実施例7.CIML-NK細胞のインビボ殺傷活性
インビボでの殺傷有効性を判定するため、NSGマウスにK562-Luc(ATCC)腫瘍細胞を移植する。NK細胞培養の終了時、細胞を回収し、洗浄し、腫瘍担持動物に2-10e6個のNK細胞を静脈内注射するとともに、一部の対照マウスは注射しないままとする。マウスをヒトIL-2(50,000IU)のq2d投与により支持し、毎週腫瘍成長について、マウスにルシフェリンを注射し、及び能力のある器具でルシフェラーゼを読み取ることにより測定する。
【0295】
実施例8.臨床試験プロトコル
上記に開示されるとおりのNK細胞を、凍結保存されている場合には解凍し、癌などの疾患の治療のため、好適な媒体に入れて患者に注入し得る。例えば、急性骨髄性白血病及び骨髄異形成症候群におけるNK細胞の安全性及び有効性に関して試験する例示的方法は、臨床試験プロトコルNCT04354025号、NCT03068819号、NCT01898793号、NCT02782546号及びNCT04893915号に開示されている。これらのプロトコルには、IL-12、IL-15、及びIL-18のカクテル又はプライミング融合タンパク質複合体のいずれかでプライミングした後に任意選択で拡大した記憶NK細胞が関わる。同様の臨床試験を、拡大した後にプライミングするか、又は同時に拡大及びプライミングした記憶NK細胞を使用して行い得る。
【0296】
【0297】
【0298】
【0299】
【0300】
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
【0305】
【0306】
【0307】
【0308】
本明細書に開示される方法に係る、拡大後にプライミングした、又は同時に拡大及びプライミングした記憶NK細胞は、例えば上記の臨床試験プロトコルに示されるとおり、AML、MDS、及び他の疾患の治療において有効であるものと予想される。
【0309】
上記に示した詳細な説明は、当業者が本発明を実施するのに役立つよう提供される。しかしながら、本明細書に記載され及び特許請求される本発明は、本明細書に開示される具体的な実施形態によって範囲が限定されるものでなく、なぜならそれらの実施形態は、本発明の幾つかの態様の例示として意図されるためである。任意の均等な実施形態が、本発明の範囲内にあることが意図される。実際、当業者には、前述の記載から、本発明の発見の趣旨又は範囲から逸脱することのない本発明の様々な変形例が、本明細書に図示され及び記載されるものに加えて明らかになるであろう。かかる変形例もまた、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】