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特表2024-527409複数の磁石を有する装置を操作する手段および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】複数の磁石を有する装置を操作する手段および方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 33/452 20220101AFI20240717BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20240717BHJP
   B01F 35/222 20220101ALI20240717BHJP
   B01F 35/212 20220101ALI20240717BHJP
   B01L 3/00 20060101ALI20240717BHJP
   G01N 1/28 20060101ALN20240717BHJP
   G01N 1/38 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
B01F33/452
B01J19/08 D
B01F35/222
B01F35/212
B01L3/00
G01N1/28 J
G01N1/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502190
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022069945
(87)【国際公開番号】W WO2023285692
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】21186129.9
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521002017
【氏名又は名称】プレオミクス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】PREOMICS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケーゼマン,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】クルカ,ニルス・アー
【テーマコード(参考)】
2G052
4G036
4G037
4G057
4G075
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052FB06
2G052FD08
2G052GA24
4G036AC22
4G036AC24
4G037DA18
4G037EA10
4G057AB31
4G057AB38
4G075AA13
4G075AA61
4G075AA65
4G075BB05
4G075CA42
4G075DA02
4G075EB01
4G075EC11
4G075ED01
4G075FC20
(57)【要約】
本発明は、装置を動作させる方法に関し、前記装置は、容器のアレイと、前記容器のうちの少なくとも2つに十分に近接した1つまたは複数のコイルであって、前記コイルを通って流れる電流は前記容器の内部を磁場に曝し、前記少なくとも2つの容器は各々少なくとも1つの第1の永久磁石を含む、1つまたは複数のコイルと、前記コイルに接続された電源とを備え、前記方法は、(a)第1の永久磁石の運動をトリガするために前記コイルに変動または振動電流を送達することと、(b)近傍の容器内の第1の永久磁石を互いに磁気的に整列させないようにするのに十分な磁気パルスを断続的に印加することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置を動作させる方法であって、
前記装置は、容器のアレイと、前記容器のうちの少なくとも2つに十分に近接した1つまたは複数のコイルであって、前記コイルを通って流れる電流は前記容器の内部を磁場に曝し、前記少なくとも2つの容器は各々少なくとも1つの第1の永久磁石を含む、1つまたは複数のコイルと、前記コイルに接続された電源とを備え、
前記方法は、
(a)前記第1の永久磁石の運動をトリガするために前記コイルに変動または振動電流を送達することと、
(b)近傍の容器内の第1の永久磁石を互いに磁気的に整列させないようにするのに十分な磁気パルスを断続的に印加することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記磁気パルスは、前記電流の前記変動または振動の1つまたは複数の持続時間にわたって前記電流を増加させることによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
装置であって、
(i)取り外し可能な容器のアレイ、
(ii)各々が少なくとも1つの第1の永久磁石を含む前記容器の少なくとも2つ、
(iii)前記容器の前記少なくとも2つに十分に近接した1つまたは複数のコイルであって、前記コイルを通って流れる電流が前記容器の内部を磁場に曝すような1つまたは複数のコイル、
(iv)前記コイルに接続された電源、ならびに
(v)1.前記コイルを流れる前記電流の特性を測定する手段であって、前記特性は、好ましくは電流および位相である、手段、
2.前記容器の近傍もしくは内部の磁場を、好ましくは前記容器の各々について個別に測定するように構成された複数のセンサ、ならびに/または
3.好ましくは前記コイルに電流が流れていない時点で、前記コイル内の前記第1の永久磁石によって発生する電磁誘導を測定する手段、を備える、装置。
【請求項4】
(v)2.の前記センサは、前記磁場の強度、前記磁場の均一性、前記第1の永久磁石の有無、および前記第1の永久磁石の運動のうちの1つまたは複数を測定するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
(vi)前記コイルの温度を決定する手段、および
(vii)前記第1の永久磁石を定位置に保持する手段をさらに備える、
請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記手段(vii)は、
a.磁性体の1つまたは複数のピース、
b.1つまたは複数の第2の永久磁石、
c.1つまたは複数の電磁石であって、
前記手段a.、b.およびc.は、前記第1の永久磁石を前記容器内の所定の位置に保持するために、前記第1の永久磁石の近傍で前記容器の外側にあり、好ましくはa.の前記ピースおよびb.の前記永久磁石の位置は、調整後a.およびb.が前記第1の永久磁石と有意に相互作用しないように調整可能である、1つまたは複数の電磁石、ならびに
d.各容器内の所定の位置に前記第1の永久磁石を取り付ける非磁性手段、から選択される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
(i)前記容器のアレイは、96、384もしくは1536ウェルを有するマイクロタイタープレートである、
(ii)前記コイルは、前記容器のアレイを取り囲む単一のコイル、好ましくはヘルムホルツコイルである、もしくは、例えばプリント回路基板に含まれる複数のコイル、もしくは複数のヘルムホルツコイルであり、好ましくは、前記複数のコイルもしくは前記複数のヘルムホルツコイルは、前記容器のアレイの各容器がコイルによって囲まれているようなものである、および/または
(iii)前記電源はパルス幅変調用に構成されている、
請求項3~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、
(viii)1.電磁遮蔽を提供する、ならびに/または
2.前記容器のアレイの挿入および取り外しを可能にするために、開口部を備えているか、もしくは開放されるように構成されているハウジングをさらに備える、
請求項3~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記方法は、
(a)各容器内の所定の位置に取り付けられている程度に第1の永久磁石を解放する、および/または前記第1の永久磁石を磁気的に整列した相対位置から解放するのに十分な磁気パルスを任意に印加することと、
(b)前記コイルに変動または振動電流を送達して、前記第1の永久磁石を運動させる磁場を誘導することと、
(c)請求項3(v)で定義された手段および/またはセンサによって生成された読み出しを分析することと、
(d)工程(c)の前記分析が、近傍の容器内の第1の永久磁石が磁気的に整列していることを示す場合に、近傍の容器内の前記第1の永久磁石を互いに磁気的に整列しないようにするのに十分な磁気パルスを断続的に印加することと、を含む、請求項3~8のいずれか1項に記載の装置を動作させる方法。
【請求項10】
(c)の前記分析は、第1の永久磁石の近傍で得られた請求項3(v)に記載の前記手段および/またはセンサの前記読み出しを、任意の第1の永久磁石からある距離にある前記読み出しと比較することを含み、前記距離は、任意の第1の永久磁石による磁気干渉が無視できるほど十分である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(e)前記装置の手段(vi)によって決定された前記温度に応答して前記電流を変調すること、および
(f)請求項6a.の前記ピースまたは請求項6b.の前記第2の永久磁石の位置を調整して、好ましくは前記電流が送達されているときに、それらが前記第1の永久磁石と相互作用しないようにすることの一方または両方をさらに含む、
請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
請求項3~8のいずれか1項に記載の前記装置に、請求項9~11のいずれか1項に記載の前記方法の工程を実行させるための命令を備える、コンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載の前記コンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
キットオブパーツであって、
(a)装置であって、
(i)容器のアレイを受容するように構成された1つまたは複数のコイル、
(ii)前記コイルに接続された電源、ならびに
(iii)1.前記コイルを流れる前記電流の特性を測定する手段であって、前記特性は、好ましくは電流および位相である、手段、
2.前記容器の前記近傍もしくは内部の磁場を、好ましくは前記容器の各々について個別に測定するように構成された複数のセンサ、および/または
3.好ましくは前記コイルに電流が流れていない時点で、前記コイル内の前記第1の永久磁石によって発生する電磁誘導を測定する手段、を備える装置、
ならびに
(b)容器のアレイであって、前記容器のうちの少なくとも2つが各々少なくとも1つの第1の永久磁石を含み、任意選択的に、各磁石が各容器の内側の所定の位置に取り付けられ、磁気パルスによって解放されるように構成されている、容器のアレイ、を備える、キットオブパーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置を動作させる方法に関し、前記装置は、容器のアレイと、前記容器のうちの少なくとも2つに十分に近接した1つまたは複数のコイルであって、前記コイルを通って流れる電流は前記容器の内部を磁場に曝し、前記少なくとも2つの容器は各々少なくとも1つの第1の永久磁石を含む、1つまたは複数のコイルと、前記コイルに接続された電源とを備え、前記方法は、(a)第1の永久磁石の運動をトリガするために前記コイルに変動または振動電流を送達することと、(b)近傍の容器内の第1の永久磁石を互いに磁気的に整列させないようにするのに十分な磁気パルスを断続的に印加することと、を含む。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、特許出願および製造者のマニュアルを含む多数の文献を引用する。これらの文献の開示は、本発明の特許性に関連するとは考えられないが、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。より具体的には、全ての参照文献は、あたかも各個々の文献が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に参照により組み込まれる。
【0003】
試料を保持する容器内の運動磁石の使用は広く普及しており、例えば質量分析による下流分析のために生物学的および臨床的試料を調製するプロセスを含む。試料を保持する容器内を運動する磁石は、混合する手段であるだけでなく、例えば出願人の以前の出願である国際公開第2020/002577号および国際公開第2021/228971号に記載されているように、生物学的細胞の破壊および生体分子の断片化の手段であってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらおよび他のプロセスがハイスループット方式で、例えばマイクロタイタープレートのウェルで実行される場合、隣接するウェルの磁石は空間的に近接している。そのような状況下では、隣接する容器内の磁石によって所与の磁石に及ぼされる磁場は、各磁石の所望の運動を引き起こすために印加される外部磁場と重複または干渉する可能性がある。結果として、近接ウェル内の磁石は磁気的に整列することができ、外部磁場によってトリガされると考えられる運動は減少するかまたは完全に停止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
とりわけこの技術的問題に対処するために、本発明は、第1の態様において、装置を動作させる方法を提供し、前記装置は、容器のアレイと、前記容器のうちの少なくとも2つに十分に近接した1つまたは複数のコイルであって、前記コイルを通って流れる電流は前記容器の内部を磁場に曝し、前記少なくとも2つの容器は各々少なくとも1つの第1の永久磁石を含む、1つまたは複数のコイルと、前記コイルに接続された電源とを備え、前記方法は、(a)第1の永久磁石の運動をトリガするために前記コイルに変動または振動電流を送達することと、(b)近傍の容器内の第1の永久磁石を互いに磁気的に整列させないようにするのに十分な磁気パルスを断続的に印加することと、を含む。
【0006】
前記装置は、工程(a)に従って動作すると、一般に、前記容器内の前記永久磁石の変動、振動または不規則な運動を提供する。前記容器の内容物に応じて、前記運動は、成分の混合、粒子状物質の懸濁状態の維持、細胞もしくはウイルスなどの生体物質の溶解、または細胞もしくはウイルスを溶解することによって得ることができるが必ずしも得る必要はないタンパク質を含む生体分子などの断片化分子を提供する。したがって、装置の最も実用的な用途では、容器の少なくとも1つは、液体または試料、好ましくは生物由来の試料を収容する。
【0007】
前記容器のアレイは、マイクロタイタープレートとして実装されてもよい。以下をさらに参照されたい。容器は、蓋によって閉じることができる開口部を有し、前記蓋は任意である。容器は、任意の形状を有することができ、好ましくは円筒形であり、任意選択的に底部に向かって先細になる。典型的な実施態様では、前記アレイの容器の大部分またはすべては、前記第1の永久磁石の1つまたは複数、好ましくは1つを含む。
【0008】
コイルは、本発明のさらなる態様に関連して以下に説明するように実装することができる。コイルに流れる電流により磁場界が発生する。
【0009】
前記第1の永久磁石は、材料、形状またはサイズに関して特に限定されない。
適切な磁石は、強磁性材料およびフェリ磁性材料、特に以下の元素およびそれらの合金を含むかまたはそれらからなる:ネオジム-鉄、ネオジム-鉄-ホウ素(例えばNdFe14B)、コバルト、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、鉄、ニッケル、酸化鉄、マンガン-ビスマス、マンガン-アンチモン、マンガン-ヒ素、イットリウム-酸化鉄、酸化クロム、酸化ユーロピウム、およびサマリウム-コバルト。特に好ましい材料は、ネオジム-鉄およびサマリウム-コバルトである。
【0010】
サイズに関して、前記磁石の寸法は、好ましくは、磁石の最大寸法が容器の最小寸法よりも小さく、例えば前記容器の最小寸法の0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1倍未満であるような寸法である。円筒形またはほぼ円筒形の容器の場合、前記容器の前記最小寸法は、一般に、開口部の円形直径である。マイクロタイタープレートを使用する用途に適した磁石の例示的なサイズ(最大寸法)は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10mmなどの0.1~10mmのサイズを含み、384および1536ウェルプレートなどの高密度のマイクロタイタープレートを使用する場合、より小さい値が好ましい。そのような相対的または絶対的なサイズは、3次元空間における磁石の自由な運動を可能にするか、または可能にするように選択され、第1の態様の方法に従って動作される装置の想定される用途に関して最良の性能を提供する。
【0011】
前記磁石の形状に関して、特に制限はなく、磁石の自由運動に悪影響を及ぼさない形状が好ましい。例示的な形状には、棒、棒状のもの、竿、丸みを帯びた端部を有する竿、立方体、直方体、プリズム、球、細長い楕円体および扁平な楕円体、ディスク、四面体、八面体、十二面体、および二十面体が含まれる。
【0012】
「振動する」という用語は規則的な運動を示すが、「変動する」という用語はより広義であり、不規則な運動も包含する。その点に関して特に好ましいものはない。好ましい実施形態では、時間の関数としての前記電流のアンペア数は、(i)矩形関数、(ii)正弦関数、(iii)三角関数、(iv)鋸歯状関数、または(v)(i)~(iv)のいずれか1つの組み合わせまたは畳み込みである。電流の変動または振動の周波数は、特に限定されないが、50~1000Hzであってもよい。
【0013】
前記第1の永久磁石によって生成される磁場の強度に応じて、および小型化の程度(隣接するウェルの中心間の間隔が96ウェルプレートから384ウェルプレート、1536ウェルプレートへと減少する)に応じて、隣接する永久磁石によって生成される磁場間の干渉を回避することはできない場合がある。そのような干渉は、磁石の整列をもたらす可能性があり、電流によって生成され、コイルを通って流れる外部磁場は、磁石の所望の運動を引き起こすことができない可能性がある。
【0014】
(b)に従ってパルスを印加することによって、磁石の整列が中断され、外部磁場に応答した前記磁石の運動が再開する。望ましくない整列位置(A)と、パルス印加時の第1の永久磁石の自由な運動の再確立(B)との比較については、図1を参照されたい。
【0015】
したがって、前記磁気パルスは、変動または振動電流を前記コイルに送達することによって生成される磁場とは異なり、後者は、第1の永久磁石の連続的な運動を引き起こす働きをする。特に、後者は、第1の永久磁石が磁気的に整列した相対位置にあると、第1の永久磁石の運動を引き起こすことができない可能性があるが、前記磁気パルスはそうではない。逆に、前記磁気パルスは、前記整列位置を解消するように設計される。そのために、前記磁気パルスは、変動電流または振動電流を前記コイルに送達することによって生成される前記磁場とは、例えば強度に関して本質的に異なる。特に、前記パルスによって送達される磁場は、工程(a)の間に前記コイルによって生成される磁場よりも強い。好ましくは、前記パルスによって生成される前記磁場は、工程(a)の間に生成される磁場の1.1倍~1000倍、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、または500倍強い。磁場が変動している限り、そのような比較には平均磁場を使用することが好ましい。好ましくは、前記平均は経時的な算術平均である。あるいは、工程(a)および(b)でそれぞれ印加される最大磁場を前記比較に使用することができる。
【0016】
「断続的に」という用語は、(i)例えば以下でさらに詳述する測定値に応答して、または所定の間隔で、規則的または不規則な間隔で繰り返して、および/または(ii)装置が工程(a)に従って動作する期間よりも短い期間にわたって印加される前記パルスを指す。工程(a)と工程(b)の持続時間の好ましい比は、1.5対100、2対50、5対20、例えば10である。前記比は一定であってもよく、すなわち、各パルスに適用されてもよく、または変化してもよく、その場合、上記の数は時間平均比を指す。さらに、所与の設定または用途に最適に適合するために、前記比の微調整を実行することができる。以下でさらに詳述するセンサの読み出しも、そのような目的のために利用することができる。
【0017】
広義には、本発明による「パルス」は、前記第1の永久磁石によって感知される磁場の任意の変化であり、前記磁石の磁気整列を解消するのに十分である。工程(a)に使用される電流の特性を変更することによって好都合かつ有利に達成されるが(詳細については以下を参照)、前記パルスはまた、前記磁石を磁場に曝露することができる任意の追加のまたはさらなる手段によって生成されてもよい。
【0018】
好ましい実施形態では、前記磁気パルスは、前記電流の変動または振動の1つまたは複数の持続時間にわたって前記電流を増加させることによって行われる。これは、パルスを使用または参照する本発明のすべての態様、特に以下にさらに開示される第3の態様に適用される。
【0019】
言い換えれば、前記パルスは振動または変動していてもよいが、そうである必要はない。前記1つまたは複数の変動または振動は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50または100の振動または変動など、1~1000の間であり得る。一般的には1回の振動で十分である。パルスを所与の設定または用途に合わせることは、さらなる困難を伴わずに行うことができる。
【0020】
あるいは、前記パルスの持続時間はまた、1回の振動よりも短くてもよく、好ましくは1回の振動の持続時間の0.001倍~0.99倍、例えば1回の振動の持続時間の0.01倍、0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍、0.5倍、0.6倍、0.7倍、0.8倍または0.9倍であってもよい。一般的に言えば、特に1回未満の振動の持続時間の場合、パルスは、非振動性および非変動性であってもよく、矩形、三角形または鋸歯状プロファイルなどの任意のプロファイルを有してもよく、前記プロファイルは、1回または複数回、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9または10回などの2~100回適用されてもよい。
【0021】
電流の前記増加は、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍など、1.1倍~100倍であってもよい。
【0022】
前記増加はまた、特に前記パルスの前記持続時間が1振動未満である場合、10倍超、例えば20倍、50倍または100倍であってもよい。
【0023】
好ましくは、パルスは、より強力ではあるが、工程(a)に使用されるものと同じ手段によって生成されるため、第1の工程の方法は、工程(b)によるパルスが工程(a)によってトリガされるように意図された運動をトリガまたは再確立するので、工程(a)の連続的な適用と見なすこともできる。
【0024】
以下でさらに詳述するように、最初に工程(a)を実行する前にもパルスを印加することができる。
【0025】
第2の態様では、本発明は装置を提供し、装置は、(i)取り外し可能な容器のアレイ、(ii)各々が少なくとも1つの第1の永久磁石を含む前記容器の少なくとも2つ、(iii)前記容器の前記少なくとも2つに十分に近接した1つまたは複数のコイルであって、前記コイルを通って流れる電流が前記容器の内部を磁場に曝すような1つまたは複数のコイル、(iv)前記コイルに接続された電源、ならびに(v)1.前記コイルを流れる電流の特性を測定する手段であって、前記特性は、好ましくは電流および/もしくは位相である、手段、2.容器の近傍もしくは内部の磁場を、好ましくは前記容器の各々について個別に測定するように構成された複数のセンサ、ならびに/または3.好ましくは前記コイルに電流が流れていない時点で、前記コイル内の第1の永久磁石によって発生する電磁誘導を測定する手段、を備える。
【0026】
この装置は、第1の態様に従って操作される装置の構成要素に加えて、項目(v)による手段および/またはセンサを含む。したがって、前記装置は第1の態様の方法を実行することができることが理解される。
【0027】
本発明のプロトタイプ装置を図2に示す。遮蔽体(詳細については以下を参照)を含む本発明の装置を図4に示す。例示的なセンサ読み出しを図3に示す。
【0028】
特に、前記装置は、前記コイルに変動または振動電流を送達して、第1の永久磁石の運動をトリガする磁場を誘導するように構成され、前記装置は、第1の永久磁石が各容器内の所定の位置に取り付けられている限りにおいて第1の永久磁石を解放するのに十分な磁気パルスを印加するように、および/または前記第1の永久磁石を磁気的に整列した相対位置から解放するように構成され、および/または前記装置は、好ましくは前記電流の持続時間または1つもしくは複数の変動もしくは振動の間、前記電流を増加させることによって前記磁気パルスを発生させるように構成される。
【0029】
上記の本発明の第1の態様として開示されているように、装置は、項目(v)による手段またはセンサなしで正常に動作することができるが、第2の態様による装置がより標的化されたパルスの印加を提供することを考えると、第2の態様による装置が好ましい。パルスの前記標的化された印加は、電流を制御する制御要素によって行われてもよい。前記制御要素は、好ましくは前記電源の構成要素である。項目(v)の手段またはセンサの読み出しを電源に戻す好ましい手段は、第3の態様に関連して以下でさらに詳述される。
【0030】
(v)による手段およびセンサは、好ましくは、容器ごとに1つ存在するようなものである。(v)1に関して、これは、各容器がコイルによって囲まれることによって実施されてもよく、これは好ましいが必須ではない(以下をさらに参照)。ただし、代替的な実施形態では、2つの容器に1つまたは4つの容器に1つなど、隣接する容器のグループごとに1つの手段またはセンサ(v)を使用することができる。
【0031】
手段およびセンサ(v)は、第1の磁石によって生成された磁場が測定されるそれぞれの容器に十分に近接していることが理解される。
【0032】
手段およびセンサ(v)を容器に十分に近接させることは、前記手段およびセンサを前記装置に含まれるプレートに組み込むことによって達成することができ、前記プレートは、その上に容器のアレイを配置することを可能にするように構成される。前記プレートはまた、前記1つまたは複数のコイル(iii)を備えてもよい。あるいは、前記プレートは前記1つまたは複数のコイルを備えない。次いで、前記1つまたは複数のコイルは、さらなるプレートに含まれてもよく、またはいかなるプレートの一部でもなくてもよい。
【0033】
(v)2.によるセンサは、ホールセンサまたは第2のコイルとして実装されてもよい。ホールセンサは、当該技術分野において既知であり、様々な製造業者から入手可能である。それらは、磁場を測定するためにホール効果を利用する。第2のコイルは、第1の永久磁石によって発生する磁気誘導を測定する。
【0034】
第2の態様の装置の好ましい実施形態では、(v)2.の前記センサは、前記磁場の強度、前記磁場の均一性、第1の永久磁石の有無、および前記第1の永久磁石の運動のうちの1つまたは複数を測定するように構成されるか、またはそのように使用される。磁場の特性を測定することは、ホールセンサに固有の特性である。第1の永久磁石は磁場を発生させるので、後者の磁場は第1の永久磁石の位置および運動に敏感である。
【0035】
さらに好ましい実施形態では、前記装置は、(vi)前記コイルの温度を決定する手段、および(vii)第1の永久磁石を定位置に保持する手段の一方または両方をさらに備える。
【0036】
前記コイルの温度を測定することは、特に、容器が使用され、および/または高温に敏感な試料が処理される用途にとって興味深い。代替または追加として、容器内の温度が測定されてもよく、適切な手段が第2の態様の装置に含まれてもよい。
【0037】
好ましくは、前記手段(vii)は、
a.磁性体の1つまたは複数のピース、
b.1つまたは複数の第2の永久磁石、
c.1つまたは複数の電磁石であって、
前記手段a.、b.およびc.は、前記第1の永久磁石を前記容器内の所定の位置に保持するために、第1の永久磁石の近傍で前記容器の外側にあり、好ましくはa.の前記ピースおよびb.の前記永久磁石の位置は、調整後a.およびb.が前記第1の永久磁石と有意に相互作用しないように調整可能である、1つまたは複数の電磁石、ならびに
d.各容器内の所定の位置に前記第1の永久磁石を取り付ける非磁性手段、から選択される。
【0038】
前記電磁石は、第1の永久磁石を所定の位置に保持するか、または運動させるかに応じてオンおよびオフにすることができる。
【0039】
前記非磁性手段は、取り付けが磁気パルスによって解消され得るようなものである。これは、例えば容器の蓋の内側(容器が蓋を備えている限り)または容器の壁に接着剤を用いて磁石を取り付けることによって達成することができる。代替的または追加的に、容器は、磁石を保持するように設計されたリッジを備えてもよい。
【0040】
前記項目a.、b.およびc.は、第1の態様の方法に従ってパルスを生成する手段としても使用することができる。
【0041】
さらに好ましい実施形態では、(i)前記容器のアレイは、好ましくは96、384もしくは1536ウェルを有するマイクロタイタープレートである、(ii)コイルは、前記容器のアレイを取り囲む単一のコイル、好ましくはヘルムホルツコイルである、もしくは、例えばプリント回路基板に含まれる複数のコイル、もしくは複数のヘルムホルツコイルであり、好ましくは、前記複数のコイルもしくは前記複数のヘルムホルツコイルは、前記容器のアレイの各容器がコイルによって囲まれているようなものである、および/または(iii)前記電源はパルス幅変調用に構成されている。
【0042】
ヘルムホルツコイルは、均一な磁場を送達するので好ましい。
コイルがプリントされたプリント回路基板(PCB)は、製造の容易さおよびコンパクトな設計の観点から有利である。そのようなPCBは、前記コイルを収容する上述のプレートの好ましい実施態様である。
【0043】
パルス幅変調は、電流の時間プロファイルを制御する当技術分野で確立された手段である。好ましい時間プロファイルは上に開示されている。
【0044】
好ましくは、前記装置は、(viii)1.電磁遮蔽を提供する、ならびに/または2.前記容器のアレイの挿入および取り外しを可能にするために、開口部を備えているか、もしくは開放されるように構成されているハウジングをさらに備える。
【0045】
幾何学的形状に関して、前記開口部は、好ましくは、前記容器のアレイの挿入および取り外しが前記アレイによって画定される平面に沿って行われるようなものである。これは、試料のハイスループット処理のために設計された自動化システムによる処理を容易にする。
【0046】
第3の態様では、本発明は、第2の態様による装置を動作させる方法を提供し、前記方法は、(a)各容器内の所定の位置に取り付けられている程度に第1の永久磁石を解放する、および/または前記第1の永久磁石を磁気的に整列した相対位置から解放するのに十分な磁気パルスを任意に印加することと、(b)前記コイルに変動または振動電流を送達して、第1の永久磁石を運動させる磁場を誘導することと、(c)前記装置の項目(v)で定義された手段および/またはセンサによって生成された読み出しを分析することと、(d)工程(c)の前記分析が、近傍の容器内の前記第1の永久磁石が磁気的に整列していることを示す場合に、近傍の容器内の前記第1の永久磁石を互いに磁気的に整列しないようにするのに十分な磁気パルスを断続的に印加することと、を含む。
【0047】
好ましい実施形態では、(c)の前記分析は、第1の永久磁石の近傍で得られた前記装置の項目(v)に記載の前記手段および/またはセンサの読み出しを、任意の第1の永久磁石からある距離にある読み出しと比較することを含み、前記距離は、任意の第1の永久磁石による磁気干渉が無視できるほど十分である。
【0048】
ある距離にある前記読み出しは、コイルのみによって生成される磁場の特性を提供する。前記読み出しは、容器の近傍、例えば、意図的に空のままである、すなわち第1の永久磁石を含まない容器の下に配置された手段またはセンサから得ることができる。
【0049】
さらに好ましい実施形態では、前記方法は、(a)前記装置の手段(vi)によって決定された温度に応答して前記電流を変調すること、および(b)a.の前記ピースまたはb.の前記第2の永久磁石の位置を調整して、好ましくは前記電流が送達されているときに、それらが前記第1の永久磁石と相互作用しないようにすることの一方または両方をさらに含む。
【0050】
容器またはその中に含まれる試料を過熱する危険性がある場合、電流のアンペア数を下げるかまたは0に設定することができる。
【0051】
前記調整は、最初に所定の位置に固定された第1の永久磁石が運動し始めることを可能にするように機能する。調整は、第1の永久磁石からの前記ピースまたは前記第2の永久磁石の空間距離の増加を伴う。
【0052】
第4の態様では、本発明は、第2の態様の装置に、第3の態様の方法の工程を実行させるための命令を備えるコンピュータプログラムを提供する。
【0053】
第5の態様では、本発明は、第4の態様のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読媒体を提供する。
【0054】
第6の態様では、本発明はキットオブパーツを提供し、キットオブパーツは、(a)装置であって、(i)容器のアレイを受容するように構成された1つまたは複数のコイル、(ii)前記コイルに接続された電源、ならびに(iii)1.前記コイルを流れる電流の特性を測定する手段であって、前記特性は、好ましくは電流および/もしくは位相である、手段、2.容器の近傍もしくは内部の磁場を、好ましくは前記容器の各々について個別に測定するように構成された複数のセンサ、および/または3.好ましくは前記コイルに電流が流れていない時点で、前記コイル内の第1の永久磁石によって発生する電磁誘導を測定する手段、を備える装置、
ならびに
(b)容器のアレイであって、前記容器のうちの少なくとも2つが各々少なくとも1つの第1の永久磁石を含み、任意選択的に、各磁石が各容器の内側の所定の位置に取り付けられ、磁気パルスによって解放されるように構成されている、容器のアレイ、を備える。
【0055】
第2の態様の装置の好ましい実施形態は、必要な変更を加えて第6の態様のキットに適用される。
【0056】
図は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明によるパルスは、運動が再開する(B)ように、(A)に示すように永久磁石の整列位置を解消する。「+」および「-」は、それぞれ磁石のN極およびS極を表す。
図2】本発明による例示的な設定を示す。一連のホールセンサがマイクロタイタープレートの底部に取り付けられている。
図3】時間の関数としての磁場を示す。(A)ベースライン。(B)動作中。上段:コイルによって発生する磁場、下段:コイルと永久磁石の磁場の和、中段:差(磁石の磁場のみ)。
図4】本発明の装置の外観図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
実施例は、本発明を例示する。
【実施例1】
【0059】
実施例1
機器およびプロトコル
ホールセンサのセット(レシオメトリック線形ホール効果磁気センサDRV5055A1-TI)は、96ウェルマイクロタイタープレートの底部に取り付けられている。図2を参照されたい。
【0060】
マイクロタイタープレートのウェルの大部分は、各々永久磁石(円筒形2×2mm Nd磁石N48、円筒軸に沿って磁化)を含む。
【0061】
USBデジタルオシロスコープ(IDSO1070A Hantek)は、センサによって送達された信号を読み出すために使用される。
【0062】
ホールセンサのうちの1つは、ウェル内の永久磁石の磁場が無視できる場所、例えば空のウェルの底部に配置される。これはベースラインを定義する。装置が動作しているとき、コイルによって生成される磁場はベースラインである。
【0063】
少なくとも1つのホールセンサは、永久磁石を含むウェルの下に配置され、ホールセンサを下に有するウェルの少なくとも1つは、各々が永久磁石も含むウェルによって囲まれている。これは、大部分のウェルが液体および/または試料ならびに試料調製のための永久磁石を含む現実の状況に対応する。これは測定値を定義する。磁場は、コイルによって生成された磁場と永久磁石によって生成された磁場との和である。
【0064】
測定値
図3に示すように、オシロスコープは、(i)ベースライン、(ii)測定値、および(iii)測定値マイナスベースラインの差を示す。前記差は、永久磁石のみによって生成される磁場である。この差は、磁石の位置および運動に敏感である。磁石の整列した位置の場合(図1A)、ホールセンサは磁石から生じる場を検出しない。非整列または運動の場合、磁石は、センサによって検出可能な磁場を送達する。
【0065】
図3(B)に見られるように、パルスは、(i)整列位置から開始するときに磁石の運動を首尾よく開始し、(ii)自由運動の期間の後に運動が減少し、磁石が整列位置で停止した場合、運動を首尾よく再開する。パルスの断続的な印加は、磁石の一定の運動を保証する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】