(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】がんの治療を改善するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20240717BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240717BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240717BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20240717BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20240717BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240717BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12N5/078
C12N5/10
C12N5/09
C12N5/077
C12N5/0783
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502457
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 US2022037373
(87)【国際公開番号】W WO2023288102
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524019472
【氏名又は名称】サイプレ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CYPRE,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】フリバル、コリン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ、ビン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ08
4B065AA90X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA46
(57)【要約】
培養中の腫瘍細胞の周囲に組織バリア(間質バリアなど)を組み込んだ三次元腫瘍モデルを利用し、腫瘍細胞に対するin vivo免疫細胞応答の再現を可能にするシステム、組成物、及び方法が記載される。そのような腫瘍モデルは、個体の腫瘍に対して効果的と思われる適切な治療モード及びプロトコルを正確に評価するために使用される。そのような腫瘍モデルを使用して、モデルで利用される腫瘍細胞に応答する免疫細胞を選択的に増殖させることができる。そのように増殖させた免疫細胞の集団を、その後治療に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん患者の診断及び治療を予測する方法であって、
前記がん患者の腫瘍の病理に関するデータを取得すること、
前記腫瘍内又は前記腫瘍付近のがん細胞、間質細胞、又は免疫細胞の分布を決定すること、
前記がん患者から得られた腫瘍細胞、間質細胞、及び免疫細胞のうちの2つ以上を含む前記腫瘍の複数の三次元モデルを生成することであって、
前記三次元モデルのそれぞれが、前記病理によって示されるがん細胞、間質細胞、又は免疫細胞の分布を反映し、前記複数の三次元モデルのそれぞれが試験表面上に堆積され、前記三次元モデルのそれぞれの腫瘍細胞が前記試験表面に結合されるか、又は無細胞層が前記試験表面に結合される、前記生成すること、
前記複数の三次元モデルを複数の抗がん治療にさらすこと、
前記三次元腫瘍モデルに対する前記抗がん治療の効果を測定すること、及び
前記がん患者における前記抗がん治療のうちの1つ以上の治療効果を、前記三次元腫瘍モデルに対する効果に基づいて予測すること
を含む方法。
【請求項2】
前記複数の三次元腫瘍モデルのそれぞれは、第1のコンパートメント及び第2のコンパートメントを含み、前記第1のコンパートメントは第1の面及び第2の面を有し、前記第1の面は前記試験表面と接触しており、前記第2の面は前記第2のコンパートメントと接触しており、前記第1のコンパートメント及び前記第2のコンパートメントの一方又は両方は、任意選択で細胞外マトリックス、生体材料、及び生体高分子足場のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腫瘍細胞及び免疫細胞を前記第1のコンパートメントに共存させることにより、免疫炎症(immune inflamed)腫瘍のモデルを提供する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
免疫排除(immune excluded)腫瘍のモデルを提供するように、前記第1のコンパートメントに腫瘍細胞が存在し、免疫細胞は存在せず、かつ免疫細胞は前記第2のコンパートメント内又は前記第2のコンパートメントの表面に存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
間質細胞が腫瘍細胞と免疫細胞との間に挟まれるように、間質細胞が前記第1のコンパートメントの付近に配置される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
腫瘍細胞及び間質細胞は、前記複数の三次元腫瘍モデルの少なくとも一部に共存する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
腫瘍細胞及び免疫細胞は、前記複数の三次元腫瘍モデルの少なくとも一部に共存する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
免疫細胞及び間質細胞は、前記複数の三次元腫瘍モデルの少なくとも一部に共存する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
腫瘍細胞、間質細胞、及び免疫細胞は、前記複数の三次元腫瘍モデルの少なくとも一部に共存する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
免疫砂漠(immune desert)腫瘍のモデルを提供するように、免疫細胞は前記腫瘍モデルに存在しない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記三次元モデルの一部に液体媒体を提供することをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記液体媒体は、免疫細胞、及び任意選択で間質細胞を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
腫瘍細胞、間質細胞、又は免疫細胞は、前記腫瘍の外科的サンプル、前記腫瘍の生検、前記がん患者の正常組織から得られるか、又は前記がん患者の循環液から得られる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫細胞は、治療を受けていない制御条件下にある三次元腫瘍への浸潤が妨げられる活性化T細胞である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫細胞は、治療を受けていない制御条件下にある三次元腫瘍に浸潤可能な活性化T細胞である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
データは、免疫組織化学(IHC)、フローサイトメトリー、遺伝子発現、及び腫瘍微小環境又は個々の患者の腫瘍の構成に関する情報を提供する方法のうちの少なくとも1つによって取得される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
IHCは、前記がん患者の腫瘍、免疫、及び間質コンパートメントの相対的な方向及び位置に関連するデータを提供する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の抗がん治療のうちの少なくとも1つは、がん標的療法、免疫調節剤、化学療法、がん以外の状態の治療に従来利用されている再利用薬剤、放射線、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記三次元腫瘍モデルはリキッドハンドリングシステムを使用して生成される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記リキッドハンドリングシステムはバイオプリンターである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記リキッドハンドリングシステムはフォトマスク及び光源を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記リキッドハンドリングシステムは自動化されている、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
細胞外マトリックス、生体材料、又は生体高分子足場のうちの少なくとも1つを前記試験表面上に堆積させることを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
間質細胞は、線維芽細胞、内皮細胞、間葉幹細胞(MSC)、脂肪細胞、及び周皮細胞からなる群から選択される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
免疫細胞は、先天性又は後天性免疫系の刺激性免疫細胞、先天性又は後天性免疫系の抑制性免疫細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、T細胞、NK細胞、B細胞、樹状細胞、マスト細胞、好中球、及びマクロファージからなる群から選択される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
データは自動分析によって収集され、自動分析は、ハイコンテントイメージング、セルソーティング、フローサイトメトリー、プロテオーム解析、発現解析、及びゲノム配列決定からなる群から選択される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
自動分析によって収集されたデータを評価することで、前記複数の三次元腫瘍モデル内の免疫細胞浸潤、腫瘍細胞死、及び他の腫瘍微小環境変化のうちの1つ以上を定量化することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
間質細胞は前記がん患者から得られる、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
間質細胞は前記がん患者ではない第1の代替供給源から得られる、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
免疫細胞は前記がん患者から得られる、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
免疫細胞は前記がん患者ではない第2の代替供給源から得られる、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
がん患者のがん治療を最適化する方法であって、
病歴のある複数のがん患者について、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法を使用して、過去の予測治療効果を含む第1のデータセットを生成すること、
前記病歴のある複数のがん患者の治療結果を含む第2のデータセットを生成すること、及び
学習アルゴリズムを含む人工知能システムに前記第1及び第2のデータセットを提供することで、予測治療効果と治療結果とを相関させる治療計画アルゴリズムを生成すること、及び
請求項1~31のいずれか一項に記載の方法の適用から予測された治療効果に前記治療計画アルゴリズムを適用することで、最適化された治療計画の推奨を提供すること
を含む方法。
【請求項33】
がん患者のがん治療を最適化する方法であって、
病歴のある複数のがん患者について、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法を使用して、過去の予測治療効果を含む第1のデータセットを生成すること、
前記病歴のある複数のがん患者の治療結果を含む第2のデータセットを生成すること、及び
学習アルゴリズムを含む人工知能システムに前記第1及び第2のデータセットを提供することで、予測治療効果と治療結果とを相関させる治療計画アルゴリズムを生成すること、及び
前記がん患者の腫瘍の病理に関連するデータに治療計画アルゴリズムを適用することで、最適化された治療計画の推奨を提供すること
を含む方法。
【請求項34】
前記人工知能システムはニューラルネットワークとして構成されている、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記人工知能システムは、情報ネットワークを介してアクセスされる、請求項32~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記情報ネットワークはユーザインターフェースを含み、前記ユーザインターフェースはサブスクリプションサービスを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
三次元の細胞ベースのアッセイを行う方法であって、
培養容器内の細胞外マトリックス又はヒドロゲルの平面又は本質的に平面の第1の層を含む平面三次元構築物を含み、第1の細胞が、前記第1の層の下に提供されるか、又は前記第1の層の中に混合され、第2の細胞が、前記第1の層の上に提供され、
液体培養培地において一定期間にわたって前記第1の細胞と前記第2の細胞との間の相互作用を評価することを含む方法。
【請求項38】
前記第1の細胞は、免疫細胞、標的細胞、及び免疫細胞と標的細胞の組み合わせからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の細胞は、免疫細胞、標的細胞、及び免疫細胞と標的細胞の組み合わせからなる群から選択される、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記構築物は、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、正常組織細胞、疾患細胞、病原体、細菌、及びウイルスからなる群から選択される細胞種をさらに含む、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記構築物は、平面又は本質的に平面の第2の層を含む、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第2の細胞は、腫瘍細胞、非腫瘍疾患哺乳類細胞、病原体、細菌、ウイルス、ケモカイン源、化学誘引物質源、及び免疫応答を可能にする刺激源からなる群から選択される、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記構築物は、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、及びそれらの誘導体からなる群から選択される免疫細胞を含む、請求項39~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記第2の細胞は、ヒト由来、動物由来、又は非動物由来のものである、請求項39~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記構築物は、天然又は合成由来のポリマー;脱細胞化組織、タンパク質、デキストラン、アルギン酸塩、ポリ(エチレングリコール)、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ、及び化学的又は物理的架橋のために配合されたそれらの化学的に修飾された誘導体からなる群から選択される生体材料を含む、請求項37~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記構築物は、電磁放射、温度、又は時間を使用して重合されたポリマーを含む少なくとも1つの層を含む、請求項37~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1つの層は、生体適合性、弾性率、多孔性、及び分解性に適するように選択されることで、層内又は層間の栄養素交換及び細胞相互作用を可能にする、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
標準の又はカスタマイズされた成形法、フォトリソグラフィー、バイオプリンティング、又は前記構築物の層のサイズ、形状、及び平面性を制御する技術を使用して前記構築物を製造するステップを含む、請求項37~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の層は、10マイクロメートルから2ミリメートルの間の規定の厚さを有する、請求項37~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の層は、100マイクロメートルから1ミリメートルの間の規定の厚さを有する、請求項37~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
三次元の細胞ベースのアッセイシステムであって、
培養容器内の細胞外マトリックス又はヒドロゲルの第1の平面又は本質的に平面の層、
前記第1の層の下の、前記第1の層の中に混合された、又は前記第1の層の上の第1の細胞、及び
第2の層であって、前記第2の層に混合されているか又は前記第2の層の上に配置された第2の細胞を含む前記第2の層
を含む、システム。
【請求項52】
前記第1の細胞は、免疫細胞、標的細胞、及び免疫細胞と標的細胞の組み合わせからなる群から選択される、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記第2の細胞は、免疫細胞、標的細胞、及び免疫細胞と標的細胞の組み合わせからなる群から選択される、請求項51又は52に記載のシステム。
【請求項54】
間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、正常組織細胞、疾患細胞、病原体、細菌、及びウイルスからなる群から選択される細胞種を含む、請求項51~53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項55】
平面又は本質的に平面の第2の層を含む、請求項51~54のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項56】
前記第2の細胞は、腫瘍細胞、非腫瘍疾患哺乳類細胞、病原体、細菌、ウイルス、ケモカイン源、化学誘引物質源、及び免疫応答を可能にする刺激源からなる群から選択される、請求項53~55のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項57】
T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、及びそれらの誘導体からなる群から選択される免疫細胞を含む、請求項53~56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項58】
前記第2の細胞は、ヒト由来、動物由来、又は非動物由来のものである、請求項53~57のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項59】
天然又は合成由来のポリマー;脱細胞化組織、タンパク質、デキストラン、アルギン酸塩、ポリ(エチレングリコール)、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ、及び化学的又は物理的架橋のために配合されたそれらの化学的に修飾された誘導体からなる群から選択される生体材料を含む、請求項51~58のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項60】
前記システムは、電磁放射、温度、又は時間を使用して重合されたポリマーを含む少なくとも1つの層を含む、請求項51~59のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項61】
前記少なくとも1つの層は、生体適合性、弾性率、多孔性、及び分解性に適するように選択されることで、層内又は層間の栄養素交換及び細胞相互作用を可能にする、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記第1又は第2の層は、標準の又はカスタマイズされた成形法、フォトリソグラフィー、又はバイオプリンティングの産物である、請求項51~61のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項63】
前記第1の層は、10マイクロメートルから2ミリメートルの間の規定の厚さを有する、請求項51~62のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項64】
前記第1の層は、100マイクロメートルから1ミリメートルの間の規定の厚さを有する、請求項51~62のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項65】
請求項37~50のいずれか一項に記載の方法において、細胞生存率、細胞構造、及び第1又は第2の細胞のいずれかにおける細胞アポトーシスマーカーの存在のうちの少なくとも1つを決定することを含む、治療法の有効性を評価する方法。
【請求項66】
評価は、生細胞画像解析、免疫蛍光、フローサイトメトリー、プロテオミクス解析、及びゲノム解析のうちの少なくとも1つによって行われる、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記構築物の層への免疫細胞浸潤の特性評価、標的細胞の集合体への免疫細胞浸潤、タンパク質分泌の分析、サイトカインの特性評価、標的細胞又は免疫細胞に対する観察可能な変化、標的細胞又は免疫細胞におけるアポトーシスの特性評価、標的細胞又は免疫細胞における増殖の特性評価、標的細胞又は免疫細胞における細胞凝集体サイズの特性評価、標的細胞又は免疫細胞における表現型変化の特性評価、及び標的及び免疫細胞における遺伝子型変化の特性評価のうちの少なくとも1つを含む、請求項65又は66に記載の方法。
【請求項68】
請求項51~64のいずれか一項に記載のシステムから細胞を回収する方法であって、前記構築物の層の少なくとも一部を、化学的消化、酵素的消化、機械的消化、又はキレート剤の添加による破壊のうちの少なくとも1つに供することを含む、方法。
【請求項69】
前記層の消化又は破壊によって放出された細胞を回収するためのロボットによる選択又は吸引のうちの少なくとも一方を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
個別化医療を提供する方法であって、
患者又は病原体由来の標的細胞及び自己又は同種異系免疫細胞を含む請求項37~50のいずれか一項に記載の方法を実行すること、
前記構築物を、放射線療法、化学療法、標的療法、及び免疫療法からなる群から選択される治療法に供すること、及び
前記治療法の有効性を決定すること、
及び、特定の患者又は患者グループに対する臨床上の意思決定を支援するために、有効性情報を医療専門家に提供すること
を含む方法。
【請求項71】
免疫細胞集団を拡大させる方法であって、
免疫細胞が前記第1又は第2の層内の標的細胞の付近で培養される請求項37~50のいずれか一項に記載の方法を実行すること、
免疫細胞が増殖して拡大された免疫細胞集団を生成するのに十分なインキュベーション期間を提供すること、及び
前記拡大された免疫細胞集団を前記構築物から回収すること
を含む方法。
【請求項72】
前記拡大された免疫細胞集団は回収後に改変される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記拡大された免疫細胞集団は、遺伝子改変、追加の拡大、又はそれらの組み合わせによって改変される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記免疫細胞は、自己由来のものか同種異系由来のものである、請求項70~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
抗体を産生する方法であって、
前記免疫細胞が、拡大された免疫細胞集団を生成するための培養B細胞又はハイブリドーマ細胞である請求項70~73のいずれか一項に記載の方法を実行すること、
拡大された免疫細胞集団から細胞部分集団を選択すること、及び
前記細胞部分集団から前記抗体を収集すること
を含む方法。
【請求項76】
選択することが、ライブイメージング、手動ピッキング、及びロボットピッキングによって行われる、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
内因性細胞治療の方法であって、
前記免疫細胞が末梢血、脾臓、又は疾患微小環境に由来する請求項70~73のいずれか一項に記載の方法を実行すること、
前記免疫細胞を増殖させることで、拡大された免疫細胞集団を生成すること、及び
前記拡大された免疫細胞集団の少なくとも一部を治療を必要とする個体に注入すること
を含む方法。
【請求項78】
免疫細胞の部分集団を、前記拡大された免疫細胞集団に対して分離すること、及び前記免疫細胞の部分集団を、治療を必要とする患者に注入することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
患者有効性を評価するために、請求項37~50のいずれか一項に記載の方法によって前記免疫細胞の部分集団を評価することを含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
患者有効性の評価は注入後に行われる、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
患者有効性の評価は注入前に行われる、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
特定の表現型を有する免疫細胞を提供する方法であって、
抗原産生細胞又は腫瘍細胞層を含む三次元培養物を生成すること、
前記三次元培養物を免疫細胞と接触させることで共培養物を生成すること、
前記特定の表現型を有する前記免疫細胞を生成するのに十分な期間、前記共培養物をインキュベートすること
を含む方法。
【請求項83】
前記三次元培養物は間質細胞層を含み、前記間質細胞層は、前記抗原産生細胞又は腫瘍細胞層と前記免疫細胞との間に介在する、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記間質細胞層は線維芽細胞を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記三次元培養物はヒドロゲル又は細胞外マトリックス成分を含む、請求項82~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記特定の表現型を有する前記免疫細胞を生成するのに十分な期間、前記共培養物をインキュベートすることは、前記免疫細胞に対する刺激効果をもたらし、前記刺激効果は、抗原特異的刺激、CD3/CD28刺激、CD137を伴うCD3/CD28刺激、及び1つ以上のサイトカインによる共刺激からなる群から選択される、請求項82~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記1つ以上のサイトカインは、IL2、IL7、及びIL5からなる群から選択される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記免疫細胞は、末梢血単核球又は腫瘍浸潤リンパ球である、請求項82~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記抗原産生細胞は病原体細胞である、請求項82~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記三次元培養物はサイトカイン産生細胞を含む、請求項82~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記サイトカイン産生細胞は、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、サイトカイン産生免疫細胞、及び樹状細胞からなる群から選択される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記三次元培養物は50Paから20kPaの剛性を有する、請求項92に記載の方法。
【請求項93】
前記三次元培養物の少なくとも一部は、マトリックスメタロプロテイナーゼによって分解可能である、請求項82~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記三次元培養物は、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、及びポリエチレングリコールからなる群から選択される1つ以上の成分を含む、請求項82~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記三次元培養物は、20μmから2mmの厚さを有する、請求項82~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記三次元培養物は、別個の領域及び/又は方向にパターン化される、請求項82~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記三次元培養物は多孔質膜を含む、請求項82~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
選択された表現型を有する前記免疫細胞はメモリーT細胞である、請求項82~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記メモリーT細胞は、幹細胞メモリーT細胞、中枢メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、及び移行メモリーT細胞からなる群から選択される、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
選択された表現型を有する前記免疫細胞は、細胞溶解性エフェクターT細胞、NK細胞、及びマクロファージのうちの1つ以上からなる群から選択される、請求項82~98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
免疫療法を提供する方法であって、
請求項82~101のいずれか一項に記載の方法によって産生された特定の表現型を有する免疫細胞を単離することで、単離免疫細胞を提供すること、
前記単離免疫細胞を薬学的に許容される担体と接触させることで免疫治療組成物を生成すること、及び
治療を必要とする個体に前記免疫治療組成物を投与すること
を含む方法。
【請求項102】
前記薬学的に許容される担体は液体媒体であり、投与は治療される個体に注入することによる、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記薬学的に許容される担体は、生体適合性ヒドロゲル又は組織足場であり、投与は治療される個体の一部に局所適用することによる、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
特定の表現型を有する免疫細胞を提供するシステムであって、
抗原産生細胞又は腫瘍細胞層を含む三次元培養物、及び
前記三次元培養物とに共培養されている免疫細胞
を含み、前記三次元培養物は、前記特定の表現型を有する前記免疫細胞のクローン増殖を増強するように構成されている、システム。
【請求項105】
前記三次元培養物は間質細胞層を含み、前記間質細胞層は、前記抗原産生細胞又は腫瘍細胞層と前記免疫細胞との間に介在する、請求項104に記載のシステム。
【請求項106】
前記間質細胞層は線維芽細胞を含む、請求項105に記載のシステム。
【請求項107】
前記三次元培養物はヒドロゲル又は細胞外マトリックス成分を含む、請求項104~106のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項108】
前記三次元培養物は、前記免疫細胞に対する刺激効果をもたらすように構成されており、前記刺激効果は、抗原特異的刺激、CD3/CD28刺激、CD137を伴うCD3/CD28刺激、及び1つ以上のサイトカインによる共刺激からなる群から選択される、請求項104~107のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項109】
前記1つ以上のサイトカインは、IL2、IL7、及びIL5からなる群から選択される、請求項108に記載のシステム。
【請求項110】
前記免疫細胞は、末梢血単核球又は腫瘍浸潤リンパ球である、請求項104~109のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項111】
前記抗原産生細胞は病原体細胞である、請求項104~110のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項112】
前記三次元培養物はサイトカイン産生細胞を含む、請求項104~111のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項113】
前記サイトカイン産生細胞は、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、サイトカイン産生免疫細胞、及び樹状細胞からなる群から選択される、請求項112に記載のシステム。
【請求項114】
前記三次元培養物は50Paから20kPaの剛性を有する、請求項104~113のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項115】
前記三次元培養物の少なくとも一部は、金属メタロプロテイナーゼによって分解可能である、請求項104~114のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項116】
前記三次元培養物は、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、及びポリエチレングリコールからなる群から選択される1つ以上の成分を含む、請求項104~115のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項117】
前記三次元培養物は、20μmから2mmの厚さを有する、請求項104~116のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項118】
前記三次元培養物は、別個の領域及び/又は方向にパターン化される、請求項104~117のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項119】
前記三次元培養物は多孔質膜を含む、請求項104~118のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項120】
選択された表現型を有する前記免疫細胞はメモリーT細胞である、請求項104~119のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項121】
前記メモリーT細胞は、幹細胞メモリーT細胞、中枢メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、及び移行メモリーT細胞からなる群から選択される、請求項120に記載のシステム。
【請求項122】
選択された表現型を有する前記免疫細胞は、細胞溶解性エフェクターT細胞、NK細胞、及びマクロファージのうちの1つ以上からなる群から選択される、請求項104~121のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項123】
免疫治療組成物を製造するための特定の表現型を有する免疫細胞の使用であって、請求項82~101のいずれか一項に記載の方法によって産生された特定の表現型を有する免疫細胞を単離すること、及び薬学的に許容される担体中の前記特定の表現型を有する免疫細胞を提供することを含む、使用。
請求項123
前記薬学的に許容される担体は、注入に適した液体媒体である、請求項123に記載の使用。
【請求項124】
前記薬学的に許容される担体は、生体適合性ヒドロゲル又は組織足場である、請求項123に記載の使用。
【請求項125】
三次元の細胞ベースのアッセイシステムであって、
培養容器内の細胞外マトリックス又はヒドロゲルの第1の平面又は本質的に平面の層、
第1の層の下の、又は第1の層の中に混合された第1の細胞、
第2の細胞を含む第2の層であって、前記第2の層は本質的に平面である、前記第2の層
を含むシステム。
【請求項126】
前記第1の細胞は、免疫細胞、標的細胞、及び免疫細胞と標的細胞の組み合わせからなる群から選択される、請求項125に記載のシステム。
【請求項127】
前記第2の細胞は、免疫細胞、標的細胞、及び免疫細胞と標的細胞の組み合わせからなる群から選択される、請求項125又は126に記載のシステム。
【請求項128】
前記システムは、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、正常組織細胞、疾患細胞、病原体、細菌、及びウイルスからなる群から選択される細胞種をさらに含む、請求項125~127のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項129】
前記第2の層は細胞外マトリックス又はヒドロゲルを含む、請求項125~128のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項130】
前記第2の細胞は、腫瘍細胞、非腫瘍疾患哺乳類細胞、病原体、細菌、ウイルス、ケモカイン源、化学誘引物質源、及び免疫応答を可能にする刺激源からなる群から選択される、請求項125~129のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項131】
前記システムは、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、及びそれらの誘導体からなる群から選択される免疫細胞を含む、請求項125~130のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項132】
前記第2の細胞は、ヒト由来、動物由来、又は非動物由来のものである、請求項125~131のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項133】
前記システムは、天然又は合成由来のポリマー;脱細胞化組織、タンパク質、デキストラン、アルギン酸塩、ポリ(エチレングリコール)、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ、及び化学的又は物理的架橋のために配合されたそれらの化学的に修飾された誘導体からなる群から選択される生体材料を含む、請求項125~132のいずれか一項に記載のシステム。
請求項133
電磁放射、温度、又は時間を使用して重合されたポリマーを含む少なくとも1つの層を含む、請求項125~132のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項134】
前記少なくとも1つの層は、生体適合性、弾性率、多孔性、及び分解性に適するように選択されることで、層内又は層間の栄養素交換及び細胞相互作用を可能にする、請求項133に記載のシステム。
【請求項135】
前記第1の層は、標準の又はカスタマイズされた成形法、フォトリソグラフィー、又はバイオプリンティングのステップの産物である、請求項125~134のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項136】
前記第1の層は、10マイクロメートルから2ミリメートルの間の規定の厚さを有する、請求項125~135のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項137】
前記第1の層は、100マイクロメートルから1ミリメートルの間の規定の厚さを有する、請求項125~135のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年7月15日に出願された米国仮特許出願第63/222,150号の利益を主張する。これら及び他のすべての参照された外部資料は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる参考文献における用語の定義又は使用が、本明細書に提供されるその用語の定義と一致しない、又は矛盾する場合、本明細書に提供されるその用語の定義が優先されるものとする。
【0002】
発明の分野
本発明の分野は、がんの創薬及び個別化医療、特にがんの個別化治療である。
【背景技術】
【0003】
以下の背景説明は、本発明を理解するのに役立つ情報を含んでいる。ただし、ここで提供される情報のいずれかが先行技術であること、又は現在請求されている発明に関連していること、又は具体的又は黙示的に参照されている出版物が先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
がんは非常に多様な状態であり、様々な組織や細胞種から発生する新生細胞、様々な症状(固形、非固形など)、及び表現型(血管性、非血管性、非悪性、悪性、局所性、転移性、化学感受性など)を伴う。さらに、がんに対する個々の免疫反応は大きく異なる(例えば、炎症(inflamed)、排除(excluded)、コールド、「免疫砂漠」)。臨床医は、化学療法、放射線療法、温熱療法、抗体ベースの免疫療法、細胞ベースの免疫療法など、様々な治療アプローチを自由に利用できるが、特定の個体に対してどの治療アプローチが最も効果的となりそうかを判断するための適切なツールが不足している。さらに、創薬研究者や前臨床研究者が利用している現在のツールでは、最有力候補化合物や治療法を臨床に進めるために複雑な腫瘍微小環境をin vitroで再現する能力が非常に限られている。
【0005】
例えば、Downingらの特許文献1、及びChalmersらの特許文献2は、腫瘍細胞における特定の変異を迅速に同定する方法を提供している。そのような変異は、ある程度の治療上の洞察を提供し得るが、遺伝情報に限定されているため、そのような腫瘍のin situでの効果的な治療に関する直接的なデータは提供しない。本明細書におけるすべての出版物は、個々の出版物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じように、参照により組み込まれる。組み込まれた参考文献における用語の定義又は使用が、本明細書で提供されるその用語の定義と一致しない、又は矛盾する場合、本明細書で提供されるその用語の定義が適用され、参考文献でのその用語の定義は適用されない。
【0006】
特許文献3には、新生細胞を含む三次元細胞培養物を抗がん剤に曝露することによって腫瘍感受性を判定する方法が記載されている。同様に、Sikora及びPathakの特許文献4には、ニワトリ漿尿膜上への腫瘍細胞の異種移植に基づく試験システムが記載されている。しかし、そのようなアプローチでは、腫瘍の構造、患者の腫瘍を取り囲む組織、及び腫瘍に対する患者自身の免疫反応を再現できない。そのため、治療アプローチを決定するために直接役立つデータは提供されない。
【0007】
Presnellらの特許文献5では、バイオプリントされた間質微小環境に挿入された腫瘍細胞を含む三次元がんモデルの使用により、組織成長の様々な側面に対する候補治療の効果が判定され、これは個別化された治療への応用も含む。しかし、記載されている方法では移植された腫瘍細胞を固定することができないため、視覚化が複雑になる。さらに、記載された方法は、腫瘍に関連する病理所見を説明できない。最後に、間質微小環境を提供するために堆積に依存すると、達成できる寸法が必然的に制限される。
【0008】
したがって、治療法の成功を正確に予測するのに適切な腫瘍モデルを提供できるシステム及び方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0208706号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0363066号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/0252703号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2019/0029235号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2019/309264号明細書
【発明の概要】
【0010】
本発明の主題は、がんやその他の疾患状態の治療を促進するための、がん(例えば、腫瘍細胞、線維芽細胞など)及び他の疾患状態に特徴的な細胞、ならびに治療用化合物及び/又は免疫細胞を組み込んだ平面三次元構築物を提供するシステム、組成物、及び方法を提供する。そのような構築物は、免疫細胞の選択的クローン増殖にも使用でき、ひいては治療に利用することができる。
【0011】
本発明の概念の実施形態は、がん患者の腫瘍の病理に関するデータを取得すること、腫瘍内又は腫瘍付近のがん細胞、間質細胞、又は免疫細胞の分布を決定すること、(i)がん患者から得られた腫瘍細胞、(ii)間質細胞、及び/又は(iii)免疫細胞のうちの2つ以上を含む腫瘍の複数の三次元モデルを生成することによって、がん患者を診断し及び治療を予測する方法を含む。がん細胞、免疫細胞、及び/又は間質細胞は、がん患者又は非患者源(すなわち、同種異系源、組織又は細胞培養物、外植組織など)から得ることができる。そのような方法では、三次元モデルのそれぞれが、病理によって示されるがん細胞、間質細胞、又は免疫細胞の分布を反映し、複数の三次元モデルのそれぞれが試験表面上に堆積され、複数の三次元モデルのそれぞれの腫瘍細胞が試験表面に結合されるか、又は無細胞層が試験表面に結合される。複数の三次元モデルは複数の抗がん治療にさらされ、三次元腫瘍モデルに対する抗がん治療の効果が特性評価される。がん患者における1つ以上の抗がん治療の治療効果は、三次元腫瘍モデルに対する効果に基づいて予測できる。
【0012】
複数の三次元腫瘍モデルのそれぞれは、第1のコンパートメント及び第2のコンパートメントを含むことができ、第1のコンパートメントは第1の面及び第2の面を有し、第1の面は試験表面と接触しており、第2の面は第2のコンパートメントと接触しており、第1のコンパートメント及び第2のコンパートメントの一方又は両方は、(任意選択で)細胞外マトリックス、生体材料、及び生体高分子足場のうちの1つ以上を含むことができる。腫瘍細胞と免疫細胞をこの第1のコンパートメントに共存させることで、免疫炎症腫瘍のモデルを提供することができる。あるいは、免疫排除腫瘍のモデルを提供するために、免疫細胞が第2のコンパートメント内又は第2のコンパートメントの表面に存在する状態で、腫瘍細胞は第1のコンパートメントに存在し、免疫細胞は第1のコンパートメントに存在しないものとしてもよい。いくつかの実施形態では、間質細胞(例えば、線維芽細胞、内皮細胞、間葉系幹細胞(MSC)、脂肪細胞、及び/又は周皮細胞)が腫瘍細胞と免疫細胞(例えば、先天性又は後天性免疫系の刺激性免疫細胞、先天性又は後天性免疫系の抑制性免疫細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、T細胞、NK細胞、B細胞、樹状細胞、マスト細胞、好中球、及び/又はマクロファージ)との間に挟まれるように、間質細胞は第1のコンパートメントの付近に配置される。あるいは、いくつかの実施形態では、腫瘍細胞及び間質細胞は、複数の三次元腫瘍モデルの少なくとも一部に共存することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞及び免疫細胞は、複数の三次元腫瘍モデルの少なくとも一部に共存する。いくつかの実施形態では、免疫細胞及び間質細胞は、複数の三次元腫瘍モデルの少なくとも一部に共存する。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞、間質細胞、及び免疫細胞は、複数の三次元腫瘍モデルの少なくとも一部に共存する。いくつかの実施形態では、免疫砂漠腫瘍のモデルを提供するために、免疫細胞は腫瘍モデルに存在しない。
【0013】
そのような方法は、三次元モデルの一部に液体媒体を提供することを含み得る。液体媒体は、免疫細胞、及び任意選択で間質細胞を含み得る。腫瘍細胞、間質細胞、及び/又は免疫細胞は、腫瘍の外科的サンプル、腫瘍の生検、がん患者の正常組織から得られ、がん患者の循環液から得られ、あるいは樹立細胞株から得られる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、治療を受けていない制御された条件下にある三次元腫瘍への浸潤が妨げられる活性化T細胞である。あるいは、免疫細胞は、治療を受けていない制御された条件下にある三次元腫瘍に浸潤できる活性化T細胞であり得る。
【0014】
そのような方法で利用されるデータは、免疫組織化学(IHC)、フローサイトメトリー、遺伝子発現、及び腫瘍微小環境又は個々の患者の腫瘍の構成に関する情報を提供する方法の1つ以上によって取得できる。そのようにして提供されるIHCデータは、がん患者の腫瘍、免疫、及び間質コンパートメントの相対的な方向と位置に関連したものであり得る。そのようなデータは、ハイコンテントイメージング、セルソーティング、フローサイトメトリー、プロテオーム解析、発現解析、及び/又はゲノム配列決定などの自動分析によって収集できる。いくつかの実施形態では、自動分析によって収集されたデータを評価することで、複数の三次元腫瘍モデル内の免疫細胞浸潤、腫瘍細胞死、及び他の腫瘍微小環境変化のうちの1つ以上を定量化することができる。
【0015】
そのような方法で評価される抗がん治療は、がん標的療法、免疫調節剤、化学療法、がん以外の状態の治療に従来利用されている再利用薬剤、放射線、又はこれらの2つ以上の組み合わせであり得る。そのような方法で利用される三次元腫瘍モデルは、バイオプリンターなどのリキッドハンドリングシステムを使用して生成でき、自動化することができる。そのような液体ハンドリングシステムは、フォトマスク及び光源を含むことができる。そのようなリキッドハンドリングシステムは、細胞外マトリックス、生体材料、又は生体高分子足場のうちの1つ以上を試験表面上に堆積させることができる。
【0016】
本発明の概念のいくつかの実施形態は、病歴のある複数のがん患者について上述した方法を使用して開発された過去の予測治療効果を含む第1のデータセットを生成すること、前記病歴のある複数のがん患者の治療結果を含む第2のデータセットを生成すること、及び第1及び第2のデータセットにアクセスして、予測された治療効果と治療結果とを相関させる、又は他の方法で関連付ける提案された治療計画アルゴリズムを生成するように構成された学習アルゴリズムを人工知能システムに提供すること、及びがん患者の治療に効果的であると考えられる1つ以上の治療プロトコルを提供又は提案するために、予測された治療効果に治療計画アルゴリズムを適用することによって、がん患者のがん治療を最適化する方法である。そのような人工知能システムはニューラルネットワークとして構成できる。いくつかの実施形態では、人工知能システムは、情報ネットワークを介してアクセスされ、また、サブスクリプションサービスを介してアクセスされ得る。
【0017】
本発明の概念のいくつかの実施形態は、病歴のある複数のがん患者について上述した方法を使用して過去の予測治療効果を含む第1のデータセットを生成すること、前記病歴のある複数のがん患者について記録された治療結果を含む第2のデータセットを生成すること、及び学習アルゴリズムを含む人工知能システムに第1及び第2のデータセットを提供して、予測治療効果と治療結果とを相関させる治療計画アルゴリズムを生成すること、及びがん患者の腫瘍の病理に関連するデータに治療計画アルゴリズムを適用して、がん患者の治療計画を報告又は提案することによって、がん患者のがん治療を最適化する方法である。そのような人工知能システムはニューラルネットワークとして構成され得る。そのような人工知能システムはニューラルネットワークとして構成され得る。いくつかの実施形態では、人工知能システムは、情報ネットワークを介してアクセスされ、また、サブスクリプションサービスを介してアクセスされ得る。
【0018】
本発明の概念の実施形態は、培養容器内の細胞外マトリックス又はヒドロゲルの平面又は本質的に平面の第1の層を含む平面三次元構築物を得ることによって、三次元の細胞ベースのアッセイを行う方法を含み、ここで、第1の細胞(例えば、免疫細胞、標的細胞、又は免疫細胞と標的細胞の組み合わせ)は、第1の層の下に提供されるか、又は第1の層の中に混合され、第2の細胞(例えば、免疫細胞、標的細胞、及び免疫細胞と標的細胞の組み合わせ)は、第1の層の上に提供され、一定期間にわたって第1の細胞と第2の細胞との間の相互作用を測定又はその他の方法で特性評価する。第2の細胞は、腫瘍細胞、非腫瘍疾患哺乳類細胞、病原体、細菌、ウイルス;ケモカイン源、化学誘引物質源、免疫応答を可能にする刺激源、及び/又は免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、及び/又はそれらの誘導体)であり得る。第2の細胞は、ヒト由来、非ヒト動物由来、又は非動物由来のものであり得る。そのような構築物はさらに、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、正常組織細胞、疾患細胞、病原体、細菌、及び/又はウイルスを含み得る。
【0019】
そのような構築物は、天然又は合成由来のポリマー;脱細胞化組織、タンパク質、デキストラン、アルギン酸塩、ポリ(エチレングリコール)、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ、及び/又は化学的又は物理的架橋のために配合されたそれらの化学的に修飾された誘導体などの生体材料を含み得る。そのような構築物は、電磁放射、温度、及び/又は時間を使用して重合されたポリマーを含む少なくとも1つの層を含み得る。そのような構築物は、平面の、又は本質的に平面の第2の層を含み得る。少なくとも1つの層は、生体適合性、弾性率、多孔性、及び分解性に適するように選択されることで、構築物の層内又は構築物の層間の栄養素交換及び細胞相互作用を可能にすることができる。
【0020】
これらの方法に適した構築物は、標準の又はカスタマイズされた成形法、フォトリソグラフィー、バイオプリンティング、及び/又は構築物の1つ以上の層のサイズ、形状、及び平面性を制御する技術を使用して製造できる。そのような構築物の第1の層は、10マイクロメートルから2ミリメートルの間、好ましくは100マイクロメートルから1ミリメートルの間の規定の厚さ、及び50Paから20kPaの剛性を有することができる。
【0021】
本発明の概念の実施形態は、培養容器内の細胞外マトリックス又はヒドロゲルの第1の平面又は本質的に平面の層、第1の層の下の、第1の層の中に混合された、又は第1の層の上の第1の細胞(例えば、免疫細胞、標的細胞、又は免疫細胞と標的細胞の組み合わせ)、第1の層の上にある細胞外マトリックス又はヒドロゲルの第2の層、及び第2の層に混合されるか、第2の層の上に配置される第2の細胞(例えば、免疫細胞、標的細胞、免疫細胞と標的細胞の組み合わせ、腫瘍細胞、非腫瘍疾患哺乳類細胞、病原体、細菌、ウイルス;ケモカイン源、化学誘引物質源、免疫応答を可能にする刺激源)を含む三次元の細胞ベースのアッセイシステムを含む。そのような第2の細胞は、ヒト由来、非ヒト動物由来、又は非動物由来のものであり得る。適切な免疫細胞は含む そのようなアッセイ系は、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、正常組織細胞、罹患細胞、病原体、細菌、及び/又はウイルスをさらに含み得る。そのようなアッセイシステムは、平面又は本質的に平面の第2の層を含み得る。そのようなアッセイ系は、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、及び/又はこれらの誘導体などの免疫細胞を含み得る。
【0022】
そのようなアッセイシステムは、天然又は合成由来のポリマー;脱細胞化組織、タンパク質、デキストラン、アルギン酸塩、ポリ(エチレングリコール)、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ、及び化学的又は物理的架橋のために配合されたそれらの化学的に修飾された誘導体などの生体材料を含み得る。そのようなアッセイシステムは、電磁放射線、温度、又は時間を使用する重合によって生成されるポリマーを含む少なくとも1つの層を含み得る。
【0023】
そのようなアッセイシステムの少なくとも1つの層は、生体適合性、弾性率、多孔性、及び分解性に適するように選択されることで、層内又は複数の層間の栄養素交換及び細胞相互作用を可能にする。そのようなアッセイシステムは、標準の又はカスタマイズされた成形法、フォトリソグラフィー、バイオプリンティング、又は構築物の層のサイズ、形状、及び平面性を制御する技術を使用して構築できる。そのようなアッセイシステムの第1の層は、10マイクロメートルから2ミリメートルの間、好ましくは100マイクロメートルから1ミリメートルの間の規定の厚さ、及び50Paから20kPaの剛性を有することができる。
【0024】
本発明の概念の実施形態は、上述した方法において、細胞生存率、細胞構造、及び第1又は第2の細胞のいずれかにおける細胞アポトーシスマーカーの存在のうちの少なくとも1つを測定することによって、治療法の有効性を評価する方法を含む。そのような測定結果は、生細胞画像解析、免疫蛍光、フローサイトメトリー、プロテオミクス解析、及びゲノム解析のうちの少なくとも1つによって取得され得る。そのような方法は、構築物の層への免疫細胞浸潤、又は標的細胞の集合体への免疫細胞浸潤の測定値の取得、タンパク質分泌の分析、サイトカインの特性評価、標的細胞又は免疫細胞に対する観察可能な変化、標的細胞又は免疫細胞におけるアポトーシスの特性評価、標的細胞又は免疫細胞における増殖の特性評価、標的細胞又は免疫細胞における細胞凝集体サイズの特性評価、標的細胞又は免疫細胞における表現型変化の特性評価、及び/又は標的及び免疫細胞における遺伝子型変化の特性評価を含み得る。そのような方法は、三次元構築物又はアッセイシステムの層の少なくとも一部を、化学的消化、酵素的消化、機械的消化、又はキレート剤の添加による破壊のうちの少なくとも1つに供することを含み得る。そのようなステップは、層の消化又は破壊によって放出された細胞を回収するためのロボットによる選択又は吸引を含み得る。
【0025】
本発明の概念の実施形態は、患者又は病原体由来の標的細胞及び自己又は同種異系免疫細胞を組み込んだ上述した方法を実行すること、使用される構築物又はアッセイシステムを1つ以上の治療法(例えば、放射線療法、化学療法、標的療法、及び/又は免疫療法)に供すること、前記構築物又はアッセイシステムでの前記1つ以上の治療法の有効性を決定すること、及び特定の患者又は患者グループに対する臨床上の意思決定を支援するために、そのような決定に基づく有効性情報を医療専門家に提供することによって、個別化医療を提供する方法を含む。
【0026】
本発明の概念の実施形態は、上述した方法であって、三次元構築物又はアッセイシステムが第1又は第2の層内の標的細胞の付近で培養された免疫細胞を含む方法を実行すること、免疫細胞が増殖して拡大された免疫細胞集団を生成するのに十分なインキュベーション期間を提供すること、及び拡大された免疫細胞集団を三次元構築物又はアッセイシステムから回収することによって、免疫細胞集団を拡大させる方法を含む。拡大された免疫細胞集団は、回復後に、例えば遺伝子改変、追加の拡大、又はそれらの組み合わせによって改変される。そのような免疫細胞は、自己由来のものであっても同種異系由来のものであってもよい。
【0027】
本発明の概念の実施形態は、三次元構築物又はアッセイシステムが拡大された免疫細胞集団を生成するための培養B細胞又はハイブリドーマ細胞である免疫細胞を含む上述したクローン増殖方法を実行すること、拡大された免疫細胞集団から細胞部分集団を選択すること、及び選択された細胞部分集団から抗体を収集することによって、抗体を産生する方法を含む。そのような選択は、ライブイメージング、手動ピッキング、及び/又はロボットピッキングを使用して行うことができる。
【0028】
本発明の概念の実施形態は、増殖させる細胞が末梢血、脾臓、又は疾患微小環境に由来する免疫細胞である上述したクローン増殖方法を実行すること、免疫細胞を増殖させることで、拡大された免疫細胞集団を生成すること、及び拡大された免疫細胞集団の少なくとも一部を治療を必要とする個体に注入することによる、内因性細胞治療の方法を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞の部分集団(これは患者における有効性に関して評価され得る)が、拡大された免疫細胞集団から分離され、治療を必要とする患者に注入される。患者有効性の評価は、注入後又は注入前に行うことができる。
【0029】
本発明の概念の実施形態は、抗原産生細胞(例えば、腫瘍細胞又は病原体細胞)層を含む三次元培養物を生成すること、三次元培養物を免疫細胞と接触させることで共培養物を生成すること、及び特定の表現型を有する免疫細胞を生成するのに十分な期間共培養物をインキュベートすること、特定の表現型を有する免疫細胞を生成するのに十分な期間共培養物をインキュベートすることによって、特定の表現型(例えば、末梢血単核球又は腫瘍浸潤リンパ球)を有する免疫細胞を提供する方法を含む。適切な表現型には、細胞溶解性エフェクターT細胞、NK細胞、マクロファージ、メモリーT細胞、例えば幹細胞メモリーT細胞、中枢メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、及び移行メモリーT細胞が含まれる。期間は、抗原特異的刺激、CD3/CD28刺激、CD137を伴うCD3/CD28刺激、及び1つ以上のサイトカイン(例えば、IL2、IL7、及びIL5)による共刺激など、免疫細胞に対する刺激効果をもたらすように選択できる。そのような三次元培養物は、抗原産生細胞層と免疫細胞との間に介在する間質細胞層(これは線維芽細胞を含み得る)を含み得る。いくつかの実施形態では、三次元培養物は、サイトカイン産生細胞(例えば、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、サイトカイン産生免疫細胞、及び/又は樹状細胞)を含み得る。
【0030】
そのような三次元培養物は、ヒドロゲル又は細胞外マトリックス成分を含み得る。三次元培養物は、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、及びポリエチレングリコールを含むことができ、三次元培養物の少なくとも一部は、金属メタロプロテイナーゼによって分解可能であり得る。三次元培養物は、20μmから2mmの厚さを有することができ、50Paから20kPaの剛性を有することができる。三次元培養物は、例えば容器又はウェル内又は表面上など、別個の領域及び/又は方向にパターン化することができる。いくつかの実施形態では、三次元培養物は多孔質膜を含むことができる。
【0031】
本発明の概念の実施形態は、上述した方法によって産生された特定の表現型を有する免疫細胞を単離することで、単離免疫細胞を提供すること、単離免疫細胞を薬学的に許容される担体と接触させることで免疫治療組成物を生成すること、及び治療を必要とする個体に免疫治療組成物を(例えば、点滴によって)投与することによって、免疫療法を提供する方法を含む。適切な薬学的に許容される担体には、注射又は注入に適した液体媒体が含まれる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、生体適合性ヒドロゲル又は組織足場であり、これらを治療される個体の一部に局所適用によって投与することができる。
【0032】
本発明の概念の実施形態は、三次元培養物中に共培養されている抗原産生細胞層(例えば、病原性細胞層、腫瘍細胞層など)及び免疫細胞(例えば、末梢血単核球又は腫瘍浸潤リンパ球)を含む三次元培養物を含む、特定の表現型を有する免疫細胞を提供するシステムを含み、三次元培養物は、特定の表現型を有する免疫細胞のクローン増殖を増強するように構成されている。そのようなシステムの三次元培養物は、抗原産生細胞又は腫瘍細胞層と免疫細胞との間に介在する間質細胞層を含み得る。三次元培養物は、10マイクロメートルから2ミリメートルの間、好ましくは100マイクロメートルから1ミリメートルの間の規定の厚さを有することができ、50Paから20kPaの剛性を有することができる。そのようなシステムでは、三次元培養物を別個の領域及び/又は方向にパターン化することができる。
【0033】
そのようなシステムでは、三次元培養物は、抗原産生細胞又は腫瘍細胞層と免疫細胞との間に介在する間質細胞層を含むことができる。そのような間質細胞層は線維芽細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、三次元培養物は、ヒドロゲル及び/又は細胞外マトリックス成分を含む。三次元培養物の少なくとも一部は、金属メタロプロテイナーゼによって分解可能である。いくつかの実施形態では、三次元培養物は、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、ポリエチレングリコール、及び/又は多孔質膜を含み得る。
【0034】
そのようなシステムでは、三次元培養物は、抗原特異的刺激、CD3/CD28刺激、CD137を伴うCD3/CD28刺激、及び1つ以上のサイトカイン(例えば、IL2、IL7、及び/又はIL5)による共刺激などの刺激効果を免疫細胞に提供するように構成され得る。いくつかの実施形態では、三次元培養物はサイトカイン産生細胞を含む。適切なサイトカイン産生細胞には、線維芽細胞、内皮細胞、サイトカイン産生免疫細胞、及び樹状細胞が含まれる。
【0035】
そのような系では、選択された表現型を有する免疫細胞はメモリーT細胞であり得る。そのようなメモリーT細胞は、幹細胞メモリーT細胞、中枢メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、及び移行メモリーT細胞であり得る。いくつかの実施形態では、選択された表現型を有する免疫細胞は、細胞溶解性エフェクターT細胞、NK細胞、及びマクロファージのうちの1つ以上からなる群から選択される。
【0036】
本発明の概念の実施形態は、免疫治療組成物を製造するための特定の表現型を有する免疫細胞の使用を含み、これは、上述した方法によって産生された特定の表現型を有する免疫細胞を単離すること、及び薬学的に許容される担体中の特定の表現型を有する免疫細胞を提供することを含む。そのような薬学的に許容される担体は、注入に適した液体媒体であり得る。あるいは、薬学的に許容される担体は、生体適合性ヒドロゲル又は組織足場であってもよい。
【0037】
本発明の概念の実施形態は、培養容器内に細胞外マトリックス又はヒドロゲルの第1の平面又は本質的に平面の層(標準の又はカスタマイズされた成形、フォトリソグラフィー、又はバイオプリンティングの製品であり得る)と、第1の層の下の、又は第1の層の中に混合された第1の細胞(例えば、免疫細胞、標的細胞、又は免疫細胞と標的細胞の組み合わせ)と、第2の細胞(例えば、免疫細胞、標的細胞、免疫細胞と標的細胞の組み合わせ、腫瘍細胞、非腫瘍疾患哺乳類細胞、病原体、細菌、ウイルス、ケモカイン源、化学誘引物質源、及び/又は免疫応答を可能にする刺激源)を含む第2の層であって、平面である第2の層とを有する三次元の細胞ベースのアッセイシステムを含む。そのような第2の細胞は、ヒト由来、非ヒト動物由来、又は非動物由来のものであり得る。そのようなシステムは、1つ以上の他の細胞種、例えば、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、正常組織細胞、疾患細胞、病原体、細菌、ウイルス、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、及びそれらの誘導体を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の層は細胞外マトリックス又はヒドロゲルを含み得る。そのようなシステムは、天然又は合成由来のポリマー;脱細胞化組織、タンパク質、デキストラン、アルギン酸塩、ポリ(エチレングリコール)、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ、及び化学的又は物理的架橋のために配合されたそれらの化学的に修飾された誘導体などの生体材料又は生体適合性材料を含み得る。そのようなシステムの少なくとも1つの層は、電磁放射、温度、又は時間を使用して重合されたポリマーを含み得る。そのようなシステムの少なくとも1つの層は、生体適合性、弾性率、多孔性、及び分解性に適するように選択されることで、層内又は層間の栄養素交換及び細胞相互作用を可能にすることができる。そのようなシステムでは、第1の層は、10マイクロメートルから2ミリメートルの間、好ましくは100マイクロメートルから1ミリメートルの間の規定の厚さを有することができる。
【0038】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様及び利点は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明ならびに添付の図面からより明らかになるであろう。図面において、同様の番号は同様の構成要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、本発明の概念の例示的な平面三次元構築物を概略的に示す。
【
図2】
図2は、本発明の概念の平面三次元構築物内の細胞の動きを概略的に示す。
【
図3A】
図3A~3Dは、浸潤免疫細胞の顕微鏡写真、及びそのような細胞の浸潤に対する免疫チェックポイント阻害剤の効果及び腫瘍細胞に対するその後の効果を提供する。
図3Aは、本発明の概念の平面三次元構築物における腫瘍細胞を含む層と免疫細胞を含む層との間に配置された細胞外マトリックス(ECM)バリアを通る免疫細胞の浸潤の顕微鏡写真を示す。
【
図3B】
図3Bは、そのような構築物における免疫細胞浸潤に対する免疫チェックポイント阻害剤の適用の効果を示す典型的なデータのヒストグラムを提供する。
【
図3C】
図3Cは、そのような構築物における腫瘍細胞死に対する免疫チェックポイント阻害剤の効果を示す典型的なデータのヒストグラムを提供する。
【
図3D】
図3Dは、そのような構築物における腫瘍面積に対するチェックポイント阻害剤の効果を示す典型的なデータを示す。
【
図4】
図4は、本発明の概念の平面三次元構築物を使用した免疫細胞のクローン増殖の概略図及び顕微鏡写真を提供する。クローン増殖は、下層に腫瘍細胞が含まれる場合に明らかである。
【
図5】
図5は、薬物療法に対する腫瘍感受性への線維芽細胞の効果を対象とした研究の典型的な結果を示す。示されているように、腫瘍細胞を覆う層に線維芽細胞が存在すると、保護効果が得られる。
【
図6】
図6は、線維芽細胞を含む介在層を含まないか又は含む腫瘍細胞含有平面三次元構築物における免疫細胞分布の研究の典型的な結果を示す。左側のパネルは、そのような介在線維芽細胞層のないそのような構築物の顕微鏡写真を示しており、免疫細胞はランダムに分布している。右側のパネルは、線維芽細胞を含む介在層を含むそのような構築物の顕微鏡写真を示しており、腫瘍細胞は線維芽細胞紡錘体に沿って非ランダムに分布している。
【
図7】
図7は、免疫細胞(例えばPBMC)の存在下で腫瘍細胞が線維芽細胞層とともに培養されている、本発明の概念の平面三次元構築物の顕微鏡写真を提供する。
【
図8】
図8は、免疫細胞の非存在下で腫瘍細胞が線維芽細胞層とともに培養されている、本発明の概念の平面三次元構築物の顕微鏡写真を提供する。
【
図9】
図9は、本発明の概念の平面三次元構築物内の腫瘍細胞を覆う線維芽細胞ネットワークに沿った免疫細胞(PBMC)の顕著な凝集を示す顕微鏡写真を提供する。
【
図10A】
図10は、培養腫瘍細胞を組み込んだ本発明の概念の平面三次元構築物中で培養された免疫細胞を特性評価するために行われたフローサイトメトリー研究の典型的な結果を示す。
【
図11A】
図11は、患者から採取した腫瘍細胞を組み込んだ本発明の概念の平面三次元構築物中で培養された免疫細胞を特性評価するために行われたフローサイトメトリー研究の典型的な結果を示す。
【
図12】
図12は、腫瘍細胞を組み込んだ本発明の概念の平面三次元構築物中で培養された免疫細胞のクローン増殖の選択的増強を実証するフローサイトメトリー研究の典型的な結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
以下の説明は、本発明を理解するのに役立つ情報を含んでいる。ただし、ここで提供される情報のいずれかが先行技術であること、又は現在請求されている発明に関連していること、又は具体的又は黙示的に参照されている出版物が先行技術であることを認めるものではない。
【0041】
本発明の主題は、培養中の腫瘍細胞の周囲に組織バリア(間質バリアなど)のアナログを組み込むことができ、腫瘍細胞に対する個体の免疫細胞応答を複製することができる三次元腫瘍モデルを提供する装置、システム、及び方法を提供する。そのような腫瘍モデルを使用することで、個体の腫瘍に対して効果があると思われる適切な治療モードとプロトコルを正確に評価することができる。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍モデルを使用することで、モデルで利用される腫瘍細胞に応答する免疫細胞を選択的に増殖させることができる。このように拡大された免疫細胞集団を、その後、治療に利用することができる(例えば、拡大された免疫細胞集団の少なくとも一部を腫瘍を有する個体に戻すことによって)。
【0042】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様及び利点は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明ならびに添付の図面からより明らかになるであろう。図面において、同様の番号は同様の構成要素を表す。
【0043】
いくつかの実施形態において、本発明の特定の実施形態を説明し及び特許請求するために使用される、成分の量、濃度などの特性、反応条件などを表す数値は、場合によっては「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、いくつかの実施形態では、明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、特定の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施形態では、数値パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広範な範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示す数値は、可能な限り正確に報告されている。本発明のいくつかの実施形態で示される数値には、それぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じるある種の誤差が含まれ得る。
【0044】
本明細書の説明及び以下の特許請求の範囲全体で使用される場合、「1つ」、「前記」、及び「その」の意味には、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数の参照が含まれる。また、本明細書の説明で使用される場合、「(~の)中」の意味には、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、「(~の)中」及び「(~の)上」が含まれる。
【0045】
文脈が反対のことを示していない限り、本明細書に記載されるすべての範囲はその上限・下限を含むものとして解釈されるべきであり、無制限の範囲は商業的に実用的な値のみを含むものとして解釈されるべきである。同様に、文脈が反対のことを示していない限り、値のすべてのリストは中間値を含むものとして考慮されるべきである。
【0046】
本明細書における値の範囲の記載は、その範囲内にある個別の値をそれぞれ個別に参照することを省略した方法として機能することを意図しているにすぎない。本明細書に別段の指示がない限り、範囲を伴う個々の値は、あたかも本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で特定の実施形態に関して提供されるあらゆる例、又は例示的な表現(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにすることを目的としており、別途請求される本発明の範囲に制限を課すものではない。明細書中のいかなる文言も、特許請求されていない要素が本発明の実施に必須であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0047】
本明細書に開示される本発明の代替要素又は実施形態のグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、又はそのグループの他のメンバーや本明細書に記載の他の要素と任意に組み合わせて参照され及び請求され得る。利便性及び/又は特許性の理由から、グループの1つ以上のメンバーをグループに含め、又はグループから削除することができる。そのような包含又は削除が行われた場合、明細書は、そのように変更されたグループを含むものとみなされ、したがって添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの記載要件を充足する。
【0048】
開示された技術は、がんの正確かつ効果的な治療を含む多くの有利な技術的効果を提供することが理解されるべきである。
本願で使用される「本質的に平面」という用語は、平面性からの偏差が10%以下である特徴表面を指す。
【0049】
以下の説明は、本発明の主題の多くの例示的な実施形態を提供する。各実施形態は、発明の要素の単一の組み合わせを表すが、本発明の主題は、開示された要素の可能なすべての組み合わせを含むとみなされる。したがって、1つの実施形態が要素A、B、及びCを含み、第2の実施形態が要素B及びDを含む場合、本発明の主題は、たとえ明示的に開示されていなくても、A、B、C、又はDの他の残りの組み合わせも含むとみなされる。
【0050】
本明細書で使用される場合、文脈上そうでないことが示されない限り、「~に結合される」という用語は、直接結合(互いに結合される2つの要素が互いに接触する)及び間接結合(少なくとも1つの追加の要素が2つの要素の間に位置している)の両方を含むことを意図している。したがって、「~に結合される」及び「~と結合される」という用語は同義的に使用される。
【0051】
本明細書の説明及び以下の特許請求の範囲全体で使用される場合、「1つ」、「前記」、及び「その」の意味には、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数の参照が含まれる。また、本明細書の説明で使用される場合、「(~の)中」の意味には、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、「(~の)中」及び「(~の)上」が含まれる。
【0052】
本明細書に開示される本発明の代替要素又は実施形態のグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、又はそのグループの他のメンバーや本明細書に記載の他の要素と任意に組み合わせて参照され及び請求され得る。利便性及び/又は特許性の理由から、グループの1つ以上のメンバーをグループに含め、又はグループから削除することができる。そのような包含又は削除が行われた場合、明細書は、そのように変更されたグループを含むものとみなされ、したがって添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの記載要件を充足する。
【0053】
本発明の概念の実施形態の中心は、三次元組織モデルの生成である。そうするための任意の適切な方法を使用することができる。好ましい実施形態では、装置及び方法は、米国特許第10,073,346号、米国特許第10,423,071号、及び米国特許出願第16/156,663号に記載されており、これらは本発明者らによる研究であり、参照により本明細書に組み込まれる。これらは、1つ以上の光活性化可能なポリマー前駆体を含む懸濁液中に細胞を導入する方法を記載している。特定の構成を有するフォトマスクを通して適切な波長の光にさらすと、細胞が懸濁された所望のプロファイル(フォトマスクによって提供される)の三次元固体の重合及び形成がもたらされる。三次元固体の寸法は、照射される領域、提供される細胞懸濁液の量、提供される光の量(強度、露光などによる)、培養プレートウェルに挿入されるピラーの存在及び構成など、多くの要因に応じて異なる。
【0054】
そのような方法により、多種多様な形状及びサイズの細胞含有固体の生成が可能になる。固体生成のサイクルを繰り返すことにより、異なる構成のフォトマスクの連続的な使用、及びその後の上に重なる三次元固体(これは浮遊細胞、成長因子、走化性因子などを組み込むことができる)の生成から得られる多種多様な複雑な形状が生成される。これらの方法では、得られる三次元固体の異なる部分に異なる細胞種を組み込むことにより、多種多様な複雑な組織モデルを生成することもできる。
【0055】
本発明の概念の実施形態は、多種多様な疾患状態を対象とすることができる。がんへの適用(例えば、腫瘍モデルの使用による)を以下に説明するが、本発明者らは、そのような細胞ベースのモデルの非腫瘍疾患状態への適用も想定している。他の非腫瘍疾患モデルには、線維症、炎症、CNS疾患、及び機能不全の表現型又は遺伝子型で挙動する突然変異正常細胞の有用性を排除するその他の疾患が含まれ得る。前記モデルには、腫瘍モデルと同様の方法で微小環境細胞、すなわち間質細胞(例えば、線維芽細胞)及び免疫細胞(T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、単球など)を補充することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、非罹患細胞モデルは、疾患(腫瘍)モデルで試験される化合物の毒性アッセイとして機能するように同様の方法で開発され得る。前記モデルは、患者由来又はアロジェニックドナー細胞、又は特定の健康な組織系統(例えば、心臓、神経(脳、CNS)、皮膚、骨など)の細胞株を含み得る。さらに、健康な細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)などの幹細胞に由来するものであってもよい。健康な3Dモデルは静的又は動的な流体流動培養の中にあり、疾患(腫瘍)モデルとは別個であるか又は疾患(腫瘍)モデルに結合されており、薬物化合物試験のヒトに似た閉鎖システムをシミュレートする。
【0057】
本発明の概念のシステムは、以下に説明する平面三次元構築物を含むことに加えて、そのような構築物を利用して実行される方法をサポートする機構を含むことができることが理解されるべきである。そのような構成要素には、液体(例えば、懸濁液中の細胞、溶液中の薬物など)をそのような構築物を含む容器に分注するために、及び/又はそのような容器から液体を収集するために(例えば、増殖させたクローン細胞を回収するなどのために)配置された、液体の取り扱い及び分注のための器具(例えば、ピペッター)が含まれる。そのような構成要素には、平面三次元構築物を観察又はモニタリングするためのセンサ機器、例えば、適切な光学装置(カメラ、顕微鏡など)が含まれ得る。同様に、そのようなシステムは、そのようなリキッドハンドリング装置及びセンサ機器装置に通信可能に結合された制御システムを含み得る。そのような制御システムは、適切なインターフェースを介して手動制御を可能にすることができ、及び/又はユーザー指定のタスクを実行するための計算装置を含むことができる。そのようなユーザ指定のタスクには、平面三次元構築物のメンテナンス及び/又はモニタリングが含まれてもよく、平面三次元構築物を利用する機能的タスクが含まれてもよい。そのような機能的タスクには、後述するように、特定の薬物の添加(例えば、スクリーニング研究のため)、クローン増殖のための免疫細胞の分注、クローン増殖した細胞の収集などが含まれ得る。そのようなコントローラには、そのようなタスクを実行するための命令をエンコードするメモリデバイスが含まれ得る。
【0058】
そのようなコントローラは、他のシステムコンポーネントと同じ場所に設置することも、遠隔地に設置することもできる。そのようなリモートサーバにはサーバ経由でアクセスできる。以下の説明を通じて、サーバ、サービス、インターフェース、ポータル、プラットフォーム、又はコンピューティングデバイスから形成される他のシステムに関して多数の言及が行われる。そのような用語の使用は、コンピュータ読み取り可能な有形の非一時的媒体に格納されたソフトウェア命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを有する1つ以上のコンピューティングデバイスを表すものとみなされることが理解されるべきである。例えば、サーバは、説明された役割、責任、又は機能を果たす方法で、ウェブサーバ、データベースサーバ、又は他のタイプのコンピュータサーバとして動作する1つ以上のコンピュータを含むことができる。
【0059】
本発明の概念の一実施形態は、個々の患者に対する効果的な治療を予測する方法である。最初のステップでは、個々の患者の腫瘍の特徴及び特性が特徴付けられる。これは、腫瘍及び/又は循環がん細胞から採取したサンプルのゲノム、エクスプレソーム(expressome)、及び/又はプロテオーム解析(例えば、免疫組織化学、フローサイトメトリー、イムノアッセイなどによる特異的表面マーカーの同定)、及び/又は画像化を含む、任意の適切な方法によって達成することができる。そのような特徴付けは、免疫系の細胞の有無を決定するために使用でき、腫瘍を免疫炎症(炎症の証拠及び/又は腫瘍内の免疫細胞の存在を示す)、免疫排除(例えば、免疫細胞は存在するが、腫瘍を囲む間質細胞バリアで停止している)、又は免疫「砂漠」(つまり、免疫細胞が見えない)として分類することを可能にする。
【0060】
腫瘍とその免疫状態の特徴付けに続いて、個々の患者の、その患者の正常組織内に存在する腫瘍の三次元モデルを作成できる。上で述べたように、このモデルは任意の適切な方法で作成できる。この三次元モデルは、試験ウェルの床や膜の表面などの適切な固体表面に堆積される。そのようなモデルでは、自然に存在する組織層を、堆積した細胞の層及び/又はそのような細胞を含む1つ以上のポリマーマトリックスによって表すことができる。そのようなポリマーマトリックスには、細胞外マトリックスの成分、生体材料、生体高分子足場、フォトポリマー前駆体などの支持成分が含まれ得る。
【0061】
腫瘍細胞は患者から入手することも、腫瘍細胞株の形態で入手することもできる。そのような腫瘍細胞株は、例えば起源の組織、腫瘍の種類、及び/又は腫瘍マーカーの発現の点で、患者の腫瘍の細胞を表すことができる。好ましい実施形態では、腫瘍細胞は、例えば、外科手術、生検、及び/又は循環腫瘍細胞の収集を通じて個々の患者から得られる。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞は、懸濁液中に保持された細胞又は細胞の塊として提供され得る。他の実施形態では、腫瘍細胞は、腫瘍塊の1つ以上の無傷の部分として提供され得る。他の実施形態では、前記腫瘍細胞又は腫瘍塊を動物モデル(例えば、マウス)で継代することで患者由来異種移植(PDX)モードを生成することができ、次いで、そこから細胞をin vitro細胞培養研究のために切り取ることができる。さらに別の実施形態では、細胞は、増殖を可能にするために細胞培養において増殖及び樹立され得る(「不死化」細胞株として永続的に、又は一定の継代後に老化する初代細胞株として)。固体表面上(又は固体表面上に堆積される細胞を含まないマトリックス材料の層上)に堆積される初期層は、個々の患者から得られた生きた腫瘍細胞を含む。腫瘍の特徴付けにより、腫瘍が炎症を起こしている/免疫細胞の浸潤を受けていることが示された場合、この初期層はそのような免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、B細胞、樹状細胞、マスト細胞、好中球、マクロファージなどの自然免疫系及び獲得免疫系の刺激細胞及び抑制細胞)を含み得る。これらの免疫細胞は患者から入手できる。あるいは、そのような免疫細胞は、患者から収集した後に改変された免疫細胞であって、そのような改変された免疫細胞を利用する細胞指向性免疫療法の結果をモデル化するための改変された免疫細胞であり得る。あるいは、いくつかの実施形態では、そのような初期層は腫瘍細胞及び間質細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、初期層は、腫瘍細胞、間質細胞、及び免疫細胞を含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加層を、初期層の全体又は少なくとも一部の上に堆積させることができる。そのような追加層は、個体の腫瘍に近い環境の側面を再現することができる(例えば、間質細胞の層による被膜)。そのような追加層を、モデルの最初の腫瘍細胞を含む部分の上に堆積させることができる。例えば、腫瘍が間質細胞を含む層に覆われていることが特徴付けによって示された場合、そのような追加層は間質細胞を含み得る。適切な間質細胞には、線維芽細胞、内皮細胞、間葉幹細胞(MSC)、脂肪細胞、及び/又は周皮細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、この追加層は、細胞外マトリックス、生体高分子足場、及び/又は生体材料の成分を含み得る。本発明の概念の好ましい実施形態では、そのような追加層用の細胞は患者から得られるが、他の実施形態では、細胞培養又は異なる個体から得られる対応する細胞を使用することができる。いくつかの実施形態では、この追加層は、間質細胞と免疫細胞の両方を含むことができる。
【0063】
上で述べたように、個体の腫瘍の特徴付けにより、免疫細胞が腫瘍の付近に存在するが、腫瘍自体の中には見られないことが示され得る。そのような場合、これらの免疫細胞は、腫瘍の少なくとも一部を取り囲む間質細胞又は同様の細胞のバリア又はその近くに位置することが多い。そのようなバリアは、上述した追加層によって三次元腫瘍モデルで表現できる。特徴付けにより免疫細胞が存在し、この領域にあることが示された場合は、そのような免疫細胞を含む第2の追加層を堆積し、間質細胞を含む層が腫瘍細胞を含む層と免疫細胞を含む層との間に位置するように配置することができる。そのような免疫細胞は、好ましくは個体から得られる。あるいは、個体における細胞指向性免疫療法の結果を再現するために、そのような免疫細胞をその個体から取得し、三次元モデルに組み込む前に改変することもできる。あるいは、そのような免疫細胞は、別の個体及び/又は組織培養物から得ることができる。
【0064】
三次元腫瘍モデルが生成されたら、液体媒体(組織培養培地など)を導入してモデルを覆い、酸素と栄養を供給する。そのような培地は、治療用化合物及び治療法(例えば、化学療法薬、他の用途からの再利用薬剤、免疫調節剤、遺伝子編集酵素、細胞療法など)のビヒクルとして使用でき、必要に応じて変更できる。いくつかの実施形態では、この液体媒体は懸濁液中の免疫細胞及び/又は間質細胞などの細胞を含み得る。懸濁液中のそのような免疫細胞は、循環免疫細胞の存在を(少なくとも部分的に)再現することができる。
【0065】
三次元腫瘍モデルが生成されると、個体のがんに対して提案された治療法を適用できるようになる。適切な治療モードには、化学療法、免疫療法、放射線療法、温熱療法、及び/又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、2つ以上の治療モードを組み合わせることができる。例えば、2つ以上の化学療法薬を利用することができる。あるいは、化学療法、免疫療法、放射線療法、及び/又は温熱療法のうちの2つ以上を組み合わせて、三次元腫瘍モデルに適用することもできる。好ましい実施形態では、複数の腫瘍モデルが生成され、2つ以上の治療アプローチが並行して試験される。例えば、マルチウェルディッシュ又はプレートを利用して、並行して治療するためにディッシュ又はプレートのウェルに個々の三次元腫瘍モデルを堆積させることができる。
【0066】
提案された治療の適用中及び/又は適用後に、提案された治療の効果を判定するために腫瘍モデルを観察又は特性評価することができる。観察又は特性評価の任意の適切な方法を利用することができる。例えば、適切に透明な表面上に堆積させた場合、腫瘍細胞を顕微鏡で直接観察することができ、腫瘍細胞死、モデルの腫瘍細胞含有部分への以前に分離された免疫細胞の浸透などを観察することができる。あるいは、腫瘍モデルからサンプルを取得し、(例えば、免疫組織化学的染色、遺伝子発現の特性評価などにより)特性評価することもできる。さらに他の実施形態では、三次元腫瘍モデルと接触している流体のサンプルを取得し、炎症、酸化ストレス、アポトーシスなどのマーカーの含有量について特性評価することができる。特性評価の適切な方法には、ハイコンテントイメージング、単一細胞選別(例えば、フローサイトメトリー)、免疫細胞浸潤を定量化するためのプロテオミクス解析及び/又はゲノム解析、腫瘍細胞死の観察、及び腫瘍微小環境変化が含まれる。そのような測定結果は、治療適用前(例えば、ベースライン)、治療適用中、及び治療適用後に取得することができる。
【0067】
そのように提案された治療の結果を分析することで、特定の患者の腫瘍の治療に効果的と思われる1つ以上の治療モードを選択できるようになる。そのようなアプローチは腫瘍の種類だけでなく、腫瘍の構造及び/又は腫瘍細胞に対する患者の免疫系の進行中の反応も再現することにより、高度な予測モデルを提供することを理解すべきである。本発明の概念の好ましい実施形態では、複数の三次元腫瘍モデルの生成、そのような腫瘍モデルへの様々な治療の適用、そのような治療に対する腫瘍モデルの反応の特性評価、そのような特性評価から得られるデータの分析、及び1つ以上の治療プロトコルの推奨の1つ以上のステップが自動システムによって提供される。
【0068】
いくつかの実施形態では、過去の又は以前に収集されたデータ、治療プロトコルの適用時の本発明の概念の腫瘍モデルの特性評価からのデータ、推奨及び/又は選択されたプロトコル、及び多数の個々の患者からの転帰を、1つ以上のデータベースにおける1つのデータ収集として集約することができる。そのようなデータ収集は、人工知能システムを訓練するための基礎として使用でき、その後、このデータ収集を使用することで、個体のために、データ収集には表されていない1つ以上の治療プロトコルを決定又は推奨することができる(個別化された三次元腫瘍モデルから収集されたデータに少なくとも部分的に基づいて)。そのような人工知能システムは、進化的アルゴリズムを利用することができ、ニューラルネットワークアーキテクチャを有することができる。そのような人工知能システムは、ローカルに提供することも、適切なユーザインターフェース(例えば、ウェブページやポータブルデバイス用のアプリケーション)を介してリモートでアクセスすることもできる。いくつかの実施形態では、リモートでアクセス可能な人工知能システムをサブスクリプションサービスとして提供することができる。いくつかの実施形態では、そのような人工知能システムを利用して、個別化された三次元腫瘍モデルを生成及び利用することなく、個体の腫瘍の特性評価からのデータのみに基づいて、個体の治療プロトコルを評価及び推奨することができる。
【0069】
本発明の概念の別の実施形態は、免疫細胞(例えば、PBMCの末梢血単核球、T細胞、NK細胞など)の多層三次元構築物を、腫瘍細胞及び/又は腫瘍関連化学誘引物質と、及びいくつかの実施形態では、in vitroで固形腫瘍に関連する追加の細胞種(例えば、上皮細胞など)と組み合わせて利用する。ここでの層は平面又は本質的に平面であり得る。これらは、腫瘍細胞及び/又は腫瘍細胞産物とヒト免疫系の細胞成分との間の生体内相互作用のシミュレーションが研究及び/又は利用される場合、及び正確さと有効性のために構築物内の層の正確かつ便利なイメージングが必要な場合などの、様々な用途に使用される。
【0070】
三次元の層状細胞含有腫瘍又は組織モデルを生成するための従来技術の方法及び組成物は、重合前の流体成分の上面でのメニスカス形成により、必然的に、様々な厚さの凹面又は凸面の層を生成する。そのような配置又はモデルでは、所与の層内の細胞の分布は、少なくとも部分的に、この凹面又は凸面の幾何学的形状のアーチファクトである。顕微鏡検査は必然的に指定された焦点面に限定されるため、そのような凹面又は凸面層内の細胞集団及び/又は分布の変化を正確に評価するには、層状モデルを分解しないと正確に評価できない。例えば、懸濁液中の細胞をそのようなモデルに追加すると、凹面の中心又は凸面の周辺に向かって溜まったり、単純な沈降により細胞が凝集したりする可能性がある。さらに、凹面又は凸面が非常に急な場合、モデルの異なる層が同じ焦点面内に位置する可能性があり、正確な定量には顕微鏡検査が実用的ではなくなる。
【0071】
したがって、本発明の概念のいくつかの実施形態では、別個の平面層の三次元配置が提供され、隣接する層のすべて又は一部が互いに直接物理的に接触し、層が観察のために層内又は層の上に配置された顕微鏡の焦点面と平行になるように配置される。個々の層は、機械的に安定したゲルを提供するポリマー成分(架橋されたものであり得る)を含み、腫瘍細胞(例えば、個体由来の細胞、樹立された腫瘍細胞株由来の細胞など)、生体内の腫瘍に関連する細胞(例えば、上皮細胞、間質細胞など)、成長因子、化学誘引因子、ケモカイン、サイトカイン、抗体、及び/又は免疫系の細胞(PBMC、T細胞など)を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の層は、架橋ポリマー成分を含むことができ、本質的に物理的バリアとして機能する腫瘍細胞、成長因子、化学誘引因子、及び/又は免疫系の細胞を除外することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、組成物及び/又は架橋度は、所望の密度、剛性、及び/又は(例えば、細胞、成長因子、生体分子、化学療法剤、免疫療法剤などに対する)透過性を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、構築物の指定された層内に、及び構築物の指定された層を通して埋め込まれた細胞として提供され得る。他の実施形態では、細胞は、構築物の層の露出表面上に堆積することができ、場合によっては、そのような層に移動することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、細胞の層は、隣接する層の両方が細胞の層に接触するように、構築物の層の間に堆積され得る。他の実施形態では、細胞の領域は、構築物の層内に提供され、細胞の領域が構築物の隣接層に近接するように配置され得る。例えば、腫瘍のすぐ周囲の被膜又は領域に見出される細胞(例えば、上皮細胞、間質細胞、線維芽細胞など)を代表する細胞を、生体内腫瘍において見出される治療に対するバリアを模倣するような方法で堆積させることができる。
【0074】
本発明の概念のいくつかの実施形態では、1つ以上の平面三次元構築物を使用することで、がん細胞(例えば、患者特異的腫瘍細胞、腫瘍細胞株など)に対する細胞ベースの治療の有効性を評価することができる。例えば、そのような治療に利用される免疫細胞(例えば、PBMC、T細胞、NK細胞、マクロファージなど)は、(例えば、層への組み込み及び/又は層の露出表面への懸濁液としての塗布によって)平面三次元構築物の表層又は上層に導入され得る。平面三次元構築物の他の層は、腫瘍/がん細胞及び/又はそのような腫瘍/がん細胞に関連する化学誘引化合物を含み得る。免疫細胞及び/又は介在層の移動を経時的に観察することで、そのような免疫細胞の凝集、遊走、増殖、及び/又は細胞毒性効果を判定することができる。
【0075】
そのような実施形態のいくつかでは、腫瘍/がん細胞と免疫細胞との間に介在する層又は層間の界面は、in vitroで腫瘍に関連する細胞(例えば、上皮細胞、間質細胞など)を含むことができ、そのような層又は層間の界面を通る遊走及び/又はそのような層又は層間の界面での凝集を使用することで、がんのin vivo治療中にそのようなバリアを克服する際の免疫細胞の有効性を判定することができる。いくつかの実施形態では、そのような構築物は、腫瘍又はがん細胞に向けられる生体分子及び/又は薬剤を含むか、又はそれらに曝露され得る。例としては、特異的抗体、免疫チェックポイントタンパク質アナログ(PD-1及び/又はPDL-1のアナログなど)、in situ遺伝子編集用組成物、及び/又は化学療法化合物が挙げられる。
【0076】
本発明の概念の別の実施形態は、免疫細胞(例えば、PBMC、T細胞、TCM細胞、NK細胞)の選択的クローン増殖における平面三次元構築物の利用である。そのようなクローン増殖細胞は、例えば、細胞ベースの免疫療法に使用され得る。そのような実施形態では、免疫細胞は、腫瘍もしくはがん細胞及び/又は1つ以上の腫瘍関連増殖因子を含む層と直接的又は間接的に接触する層に提供され得る。そのような免疫細胞は、平面三次元構築物の層に統合することができ、及び/又はそのような構築物の層の露出表面に適用される免疫細胞の懸濁液として適用することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍を取り囲む組織に特徴的な細胞の層を、腫瘍細胞とクローン増殖のために提示された免疫細胞との間に挿入することができる。そのような細胞の例としては、線維芽細胞などの間質細胞が挙げられる。
【0077】
応答性又は活性な免疫細胞が分裂し、時間の経過とともに拡大した応答性又は活性な免疫細胞集団を形成することが観察され得る。驚くべきことに、本発明者らは、免疫細胞増殖のための従来の技術と比較して、これにかかる時間経過を大幅に短縮できることを発見した。例えば、免疫細胞の集団は、(従来の技術では6週間から8週間であるのに対して)約7日から約14日の期間にわたって少なくとも10倍に拡大することができる。そのような方法はまた、有利なことに、そのような免疫細胞と腫瘍細胞との効果的な共培養を可能にし、一方で、望ましくないレベルの成長因子を有する腫瘍細胞をサポートするのに使用される従来の基底膜由来産物(例えば、エンゲルブレス・ホルム・スウォーム(Engelbreth-Holm-Swarm)マウス腫瘍由来)に存在する非腫瘍抗原に対する望ましくない免疫原性反応を回避することができる。
【0078】
本発明の概念の平面三次元構築物の例を以下の
図1に示す。示されるように、平面三次元構築物は、ゲル又はポリマーマトリックスを含む底部平面一次層を含み得る。そのようなマトリックスには、細胞又は活性化合物を添加しなくてもよい。いくつかの実施形態では、そのようなポリマーマトリックスには、細胞又は活性化合物を組み込むことができる。組み込まれるのに適切な細胞には、腫瘍又は他の標的細胞、腫瘍に関連する非腫瘍細胞(例えば、間質細胞など)、免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞又はPBMCなど)、免疫細胞を引き寄せる活性化合物(例えば、ケモカイン、サイトカイン、タンパク質、低分子量化合物)、及び/又は免疫細胞を寄せ付けない活性化合物が含まれる。そのような一次層は、液体媒体と直接接触することができる。他の実施形態では、この一次層と接触する平面二次層を設けることができ、同様に細胞及び/又は活性化合物を含むことができる。そのような実施形態では、二次層の露出表面は液体媒体と接触している。左側のパネルでは、標的(例えば、腫瘍)細胞を組み込んだゲル又はポリマーの層の上に、懸濁液として適用される免疫細胞の層が重ねられる。
【0079】
本発明の概念の平面三次元構築物の例を
図1に示す。左側のパネルでは、単一のゲル又はポリマー層が提供される。上記のように、そのようなポリマー又はゲル層は、標的細胞、免疫細胞、疾患に関連する非標的細胞、及び/又は免疫細胞の機能又は活性に影響を与える活性化合物を含み得る。示されているように、免疫細胞の層は、液体媒体中のそのような細胞の懸濁液を適用することによって、このゲル層の露出表面上に提供される。中央のパネルは、上述のゲル又はポリマーの一次下層が、同様に標的細胞、免疫細胞、非標的細胞、及び/又は免疫細胞の機能又は活性に影響を与える活性化合物を含有することができる二次ゲル又はポリマー層で覆われる代替実施形態を示す。この例では、二次層は、二次層内に埋め込まれた免疫細胞を含む。
図1の右側は、中央のパネルに示される実施形態と同様の別の実施形態を示すが、液体媒体中の細胞懸濁液の適用によって免疫細胞が二次層の露出表面に適用される。いくつかの実施形態では、細胞の層(例えば、腫瘍に関連する非腫瘍細胞、間質細胞、上皮細胞)が、一次層と二次層との間に介在することができ、又は層の露出表面上に分布することができることを理解されたい。また、免疫細胞は第1の層に埋め込まれ、腫瘍細胞はその層の上又は第2の層に埋め込まれ得る。
【0080】
使用中、平面三次元構築物の1つの位置にある細胞は、構築物内を、例えば構築物の層間で、又は層の露出表面から層の内部へ移動することができる。例えば、
図1の中央のパネルに示される実施形態の第2の層に埋め込まれた免疫細胞は、腫瘍細胞及び/又は化学誘引物質化合物を含む一次層の中へ移動することができる。同様に、一次層又は二次層の露出表面に分布する免疫細胞は、層に腫瘍細胞及び/又は化学誘引物質化合物が含まれる場合、層の内部に移動することができる。構築物の二次ゲル又はポリマー層の上の層として提供される細胞は、二次層の中へ移動でき、続いて一次層の中へ移動できることを理解されたい。例えば、二次層の露出表面に懸濁液として適用された免疫細胞は、二次層の中へ移動し、続いて腫瘍細胞及び/又は化学誘引物質化合物を含む一次層に移動することができる。そのような移動及び浸潤の例を
図2に示す。同様に、免疫細胞は層内で腫瘍細胞と共に埋め込まれ、層内で移動できることを理解されたい。
【0081】
腫瘍細胞を含む平面三次元構築物の一次層への免疫細胞の移動及び浸潤の例を
図3A~3Dに示す。
図3Aに示すように、導入後12日目に、免疫細胞が一次層に移動し、一次層に提供された腫瘍細胞との共培養物を形成した。この移動及び浸潤は、免疫チェックポイント阻害剤などの活性化合物を含めることによって増強することができる(
図3Bを参照)。適切なチェックポイント阻害剤には、PD-1/PD-L1及び/又はCTLA-4/B7-1/B7-2を遮断する薬物が含まれ得る。そのように改善された免疫細胞の浸潤は、一次層の腫瘍細胞を破壊する際の免疫細胞の有効性を効果的に高めることができる(
図3Cを参照)。これは
図3Dに示されており、この図はそのような研究の典型的な結果のヒストグラムを提供する。示されているように、薬物(チェックポイント阻害剤)の濃度が増加すると、腫瘍サイズが減少する。そのような発見は、有効性を評価し、個々の患者に使用するのに適したチェックポイント阻害薬を特定するために適用できることが理解されるべきである。同様に、そのような発見は、新しいチェックポイント阻害剤化合物のスクリーニングに適用できる。
【0082】
本発明の概念の別の実施形態は、層の露出表面でエフェクター細胞(例えば、免疫細胞)における分裂及び/又はクローン増殖を刺激するための、本発明の概念の平面三次元構築物の層に埋め込まれた標的細胞(例えば、腫瘍細胞又は他の疾患細胞)の使用である。そのようなクローン増殖した細胞集団は、例えばピペッティング、手動採取、及び/又はロボット採取(例えば、酵素的又は機械的手段を使用して)によって容易に採取される。いくつかの実施形態では、そのようなクローン増殖は、腫瘍又は他の疾患細胞を含むゲル又はポリマー層の露出表面で起こる。他の実施形態では、そのようなクローン増殖は、本発明の概念の平面三次元構築物のそのような一次層と接触しているか少なくとも部分的に接触している二次層の露出表面内及び/又は露出表面上で起こる。そのようなクローン増殖の一例を
図4に示す。示されているように、ゲル/ポリマー層に標的細胞が存在しない場合、表面は個々の分離された免疫細胞を示す。驚くべきことに、標的細胞がゲル/ポリマー層に存在すると、クローン増殖した免疫細胞の大きいコロニーが発生する。
【0083】
上述したように、いくつかの実施形態では、非標的細胞は、本発明の概念の平面三次元構築物の1つ以上の層に、そのような層の露出表面で、及び/又は構築物の2つの層の間の界面に組み込まれ得る。そのような非標的細胞は疾患状態に関連したものであり得るが、疾患細胞を代表するものではない。例えば、そのような非標的細胞は、腫瘍を取り囲んでいる、他の点では正常な細胞の層(例えば、間質細胞又は上皮細胞)に見出される細胞であり得る。いくつかの実施形態では、そのような非標的細胞は、エフェクター細胞(免疫細胞など)の移動及び/又は活性を妨害する可能性がある。そのため、本発明の概念の平面三次元構築物にそのような非標的細胞を含めることは、そのような妨害を克服する方法を調査するための、及び/又は患者固有の治療アプローチを特定するためのツールとして有用にすることができる。そのような妨害の一例を
図5に示す。示されているように、免疫細胞及びチェックポイント阻害剤の存在は、腫瘍細胞が本発明の概念の平面三次元構築物のゲル/ポリマー層に埋め込まれている場合、腫瘍細胞死を誘導するのに効果的である。しかし、この効果は、一次ゲル/ポリマー層内、一次層の露出表面、又は一次層と二次層の間の界面に線維芽細胞が含まれることによってブロックされる。
【0084】
この現象の別の例を
図6に示す。この図は、腫瘍細胞を含むゲル/ポリマー層内又は層上の免疫細胞の分布の顕微鏡写真を提供する。左のパネルではゲル/ポリマー層は線維芽細胞を含まないが、右のパネルではゲル/ポリマー層に線維芽細胞が含まれている。示されているように、線維芽細胞が存在しない場合、免疫細胞は視野全体に均一に分布している。驚くべきことに、線維芽細胞がゲル/ポリマー層に含まれていると、免疫細胞は線維芽細胞紡錘体に沿って凝集することが判明した。理論に束縛されることを望まないが、本発明者は、そのような凝集が免疫細胞の機能及び/又は活性に悪影響を与えると考える。
【0085】
上述したように、いくつかの実施形態では、本発明の概念の平面三次元構築物は、in vitroで腫瘍に関連する非腫瘍細胞(例えば、線維芽細胞など)を含み得る。本発明者らは、本発明の概念の平面三次元構築物が、活性な免疫細胞の非存在下で、構築物中の腫瘍に関連する非腫瘍細胞の存在が腫瘍細胞の死亡率の低下を助け、より大きい腫瘍細胞凝集体の形成を助けることを示すことを発見した。この効果は
図7に示されている。
図8に示すように、免疫細胞が
図7に示すように本発明の概念の平面三次元構築物に導入された場合、免疫細胞は、免疫細胞との界面付近に存在する線維芽細胞(HDF)の場所に凝集する。この現象は
図9にさらに詳細に示されている。この図は、免疫細胞と腫瘍細胞との間に介在する線維芽細胞を含む界面での免疫細胞の顕著な凝集を示すが、いくらかの浸潤が認められる。これは、本発明の概念の平面三次元構築物が、免疫系の細胞成分からの腫瘍の隔離及び/又は腫瘍に関連する非腫瘍細胞による細胞ベースの免疫療法を調査及び回避するためのツールとして利用できることを示している。
【0086】
図14
本発明者らはまた、驚くべきことに、本明細書に記載される三次元構築物として提供される腫瘍細胞による末梢血単核細胞(PBMC)の刺激が、メモリーT細胞(TCM)などの特定の免疫細胞表現型のクローン増殖をもたらし得ることを発見した。そのようなメモリーT細胞は、免疫療法での使用に非常に望ましいものである。本発明者らはまた、予想外にも、腫瘍細胞とPBMCとの間に位置し、物理的及び化学的バリアの両方を提供する、腫瘍周囲の組織(線維芽細胞など)に見られる細胞の介在層を含めることにより、この効果が増強され得ることを発見した。患者由来の腫瘍細胞を組み込んだ三次元組織構築物を用いた、介在線維芽細胞含有層あり及びなしでの刺激されたPBMCからの特定のT細胞表現型の拡大を
図10に示す。示されているように、共培養では腫瘍細胞とCD3+腫瘍細胞が明らかである。特定のT細胞表現型は、特徴的な細胞表面マーカーの有無によって識別できる。例えば、TCM細胞は、CD4、CD8、CD45RA、CD45RO、CD197、CD62L、CD27、CD95などの特定の表面マーカーの存在によって識別できる。CD4+及びCD8+T細胞の増加は、腫瘍細胞と共培養すると明らかである。この効果は、活性化されたPBMCが腫瘍細胞と線維芽細胞の介在層を提供する三次元構築物と共培養された場合に強化される。対応する結果は、
図11に示すように、患者由来の腫瘍細胞を含む三次元組織構築物を使用して実施された同様の研究で見られる。両方の研究において、本発明者らは、線維芽細胞を組み込んだ介在層の使用により、浸潤T細胞が増加し、特定のT細胞表現型への分化が促進されることを発見した。
【0087】
本発明の概念のいくつかの実施形態では、本発明の概念の平面三次元構築物を使用して、免疫細胞の選択的クローン増殖を誘導することができる。
図12に示すように、本発明の概念の三次元培養物で提供される腫瘍細胞との共培養は、特に線維芽細胞が三次元培養物で提供される場合、PBMCからのTCM T細胞表現型のクローン増殖の選択的増強を提供する。具体的には、本発明の概念の三次元培養物で提供されるPBMCと腫瘍細胞との共培養は、そのような三次元培養物の非存在下でのPBMC培養物と比較して、TCM細胞のクローン増殖の約4倍の増加をもたらした。PBMCと、腫瘍細胞及び線維芽細胞を組み込んだ(上記のような)本発明の概念の三次元培養物との共培養は、そのような三次元培養物の非存在下でのPBMC培養物と比較して、TCM細胞のクローンの約15倍の増加をもたらした。
【0088】
本発明の概念の一実施形態は、生体外で免疫細胞を刺激し、刺激された免疫と抗原産生細胞又は病原体(例えば、腫瘍細胞又は病原体細胞、又はそれらに由来する細胞)とを三次元培養物中(例えば、1つ以上の腫瘍細胞型及び/又はそのような腫瘍を取り囲む被膜組織に存在する線維芽細胞などの細胞を組み込んだもの)で共培養し、その後増殖させることによって治療用細胞産物を生成する方法である。三次元培養物には、細胞外マトリックス及び/又はヒドロゲルを組み込むことができる。治療的価値を有する特定の表現型は、例えば、1つ以上の特定の細胞表面マーカーを同定するフローサイトメトリーによって、得られた拡大された集団から選択することができる。
【0089】
そのような方法では、免疫細胞の生体外刺激は、任意の適切な方法で行うことができる。免疫細胞を刺激するための適切な方法の例としては、(限定するものではないが)抗原特異的刺激、CD3/CD28刺激(CD137の有無にかかわらず)、及び/又は刺激サイトカイン(例えば、IL2、IL7、IL15)への曝露が挙げられる。刺激に適した免疫細胞は、PBMC及び/又は腫瘍浸潤白血球に由来し得る。同様に、遺伝子編集法(例えば、CRISPR)を、免疫細胞の機能を調節するために、本発明の概念の平面三次元構築物中の免疫細胞にその場で適用することができる。例えば、相対的な有効性を決定するために、1種以上のCAR-T細胞をそのような構築物中でin situで生成することができる(その後、これを使用して治療方針を決定することができる)。
【0090】
そのような方法で利用される三次元培養物は、サイトカイン産生細胞(例えば、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞など)及び/又は他の免疫細胞(例えば、樹状細胞)などの追加の成分を含むことができる。そのような三次元培養物の細胞外マトリックス又はヒドロゲル成分(例えば、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール、アルギン酸塩、及び/又はこれらの化学修飾誘導体)は、培養中の細胞の分化及び挙動に影響を与える可能性のある機械的ストレス成分を提供し得る。したがって、そのような構造成分は、約200Paから約20kPa、又はこの範囲内の任意の範囲の剛性を提供することができる。いくつかの実施形態では、三次元培養物の構造成分は、抗原産生細胞(例えば、腫瘍細胞)の増殖を可能にする、マトリックスメタロプロテイナーゼによって分解可能な1つ以上の成分を含むことができる。
【0091】
そのような方法で利用される三次元培養物は、細胞外マトリックス及び/又はヒドロゲル成分を含み、かつ約50μmから約2mmの厚さ又は深さを有する1つ以上の層を含み得る。いくつかの実施形態では、層の厚さは、その幅及び/又は長さにわたって変化し得る。複数の層を有する三次元培養物では、それらの層は同じ厚さ又は異なる厚さを有することができる。そのような三次元培養物の細胞外マトリックス及び/又はヒドロゲル成分は、連続構造又は不連続構造(例えば、別個の領域及び/又は配向にパターン化されたもの)として提供され得る。そのような不連続又はパターン化された培養物は、異なる細胞集団の空間的分離を提供することができ、任意の適切な技術(例えば、フォトパターニング、マイクロピペッティング、予め形成されたセグメントの位置決め、バイオプリンティングなど)を使用して生成することができる。いくつかの実施形態では、三次元組織培養物は、三次元組織培養物内(例えば、三次元培養物に組み込まれた2つの細胞集団の間)又は三次元組織培養物の表面に配置することができる、1つ以上の多孔質膜を組み込むことができる。そのような多孔質膜は、約1μmから約10μmの範囲の孔径を有することができ、細胞選択性を高めることができる。
【0092】
そのような装置及び方法を使用するクローン増殖によって及び/又はその際に提供される免疫細胞には、エフェクターT細胞及びメモリーT細胞が含まれ得る。そのようなメモリーT細胞は、メモリーT細胞幹細胞、中枢メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、及び/又は移行メモリーT細胞であり得る。そのような装置及び方法を使用するクローン増殖によって及び/又はその際に提供される他の細胞集団には、細胞溶解性エフェクターT細胞、樹状細胞、NK細胞、及び/又はマクロファージが含まれる。いくつかの実施形態では、そのような装置及び方法を使用するクローン増殖によって及び/又はその際に提供される免疫細胞集団は、これらの細胞種の2つ以上の組み合わせを含み得る。
【0093】
上述のように選択的クローン増殖によって提供される免疫細胞を、免疫療法に利用することができる。例えば、個体から得た腫瘍細胞を含む三次元培養物と共培養したPBMCからの選択的クローン増殖に由来するTCM細胞を使用することで、その個体のための患者特異的な免疫療法を提供することができる。そのような実施形態では、そのような免疫細胞を単離し(例えば、フローサイトメトリーを使用して)、薬学的に許容される担体中に懸濁することができる。次いで、そのような懸濁細胞を、治療が必要な個体に投与することができる。例えば、そのような免疫細胞を液体媒体に懸濁し、静脈内注入によって投与することができる。あるいは、そのような免疫細胞は、生体適合性で薬学的に許容されるヒドロゲル及び/又は組織足場で提供され、治療される組織に局所的に適用され得る。
【0094】
上で述べたように、本発明の概念の平面三次元構築物は、病原性細胞(例えば、腫瘍細胞)と、感染症又は疾患の過程のそれを模倣する細胞性免疫系の構成要素との間の新規かつ有用な並置を提供する。そのような構築物はまた、治療方法の有効性を低下させ得る組織又は疾患に特有の特徴、例えば、罹患組織の周囲の被膜又は他の組織バリアの存在を提供することもできる。これらの特徴は、個別化医療を含む、効果的な治療モードを特定又はスクリーニングする方法を提供する。最後に、そのような平面三次元構築物は、病原性細胞と反応する免疫細胞の選択的クローン増殖のための機構を提供する。そのような増殖したクローンを、治療用途又は治療製剤での使用のために回収することができる。そのような発見は、幅広いシステム、方法、及び組成物を裏付けている。
【0095】
本発明の概念の実施形態は、がん患者の腫瘍の病理に関するデータを取得すること、腫瘍内又は腫瘍付近のがん細胞、間質細胞、又は免疫細胞の分布を決定すること、(i)がん患者から得られた腫瘍細胞、(ii)間質細胞、及び/又は(iii)免疫細胞のうちの2つ以上を含む腫瘍の複数の三次元モデルを生成することによって、がん患者の診断及び治療を予測する方法を含む。がん細胞、免疫細胞、及び/又は間質細胞は、がん患者又は非患者源(すなわち、同種異系源、組織又は細胞培養物、外植組織など)から得ることができる。そのような方法では、三次元モデルのそれぞれが、病状によって示されるがん細胞、間質細胞、又は免疫細胞の分布を反映し、複数の三次元モデルのそれぞれが試験表面上に堆積され、複数の三次元モデルのそれぞれの腫瘍細胞が試験表面に結合されるか、又は無細胞層が試験表面に結合される。複数の三次元モデルは複数の抗がん治療にさらされ、三次元腫瘍モデルに対する抗がん治療の効果が特性評価される。がん患者における1つ以上の抗がん治療の治療効果は、三次元腫瘍モデルに対する効果に基づいて予測できる。
【0096】
複数の三次元腫瘍モデルのそれぞれは、第1のコンパートメント及び第2のコンパートメントを含むことができ、第1のコンパートメントは第1の面及び第2の面を有し、第1の面は試験表面と接触しており、第2の面は第2のコンパートメントと接触しており、第1のコンパートメント及び第2のコンパートメントの一方又は両方は、(任意選択で)細胞外マトリックス、生体材料、及び生体高分子足場のうちの1つ以上を含むことができる。腫瘍細胞と免疫細胞をこの第1のコンパートメントに共存させることで、免疫炎症腫瘍のモデルを提供することができる。あるいは、免疫排除腫瘍のモデルを提供するために、免疫細胞が第2のコンパートメント内又は第2のコンパートメントの表面に存在する状態で、腫瘍細胞は第1のコンパートメントに存在し、免疫細胞は第1のコンパートメントに存在しないものとしてもよい。いくつかの実施形態では、間質細胞(例えば、線維芽細胞、内皮細胞、間葉系幹細胞(MSC)、脂肪細胞、及び/又は周皮細胞)が腫瘍細胞と免疫細胞(例えば、先天性又は後天性免疫系の刺激性免疫細胞、先天性又は後天性免疫系の抑制性免疫細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、T細胞、NK細胞、B細胞、樹状細胞、マスト細胞、好中球、及び/又はマクロファージ)との間に挟まれるように、間質細胞は第1のコンパートメントの付近に配置される。あるいは、いくつかの実施形態では、腫瘍細胞及び間質細胞は、複数の三次元腫瘍モデルの少なくとも一部に共存することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞及び免疫細胞は、複数の三次元腫瘍モデルの少なくとも一部に共存する。いくつかの実施形態では、免疫細胞及び間質細胞は、複数の三次元腫瘍モデルの少なくとも一部に共存する。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞、間質細胞、及び免疫細胞は、複数の三次元腫瘍モデルの少なくとも一部に共存する。いくつかの実施形態では、免疫砂漠腫瘍のモデルを提供するために、免疫細胞は腫瘍モデルに存在しない。
【0097】
そのような方法は、三次元モデルの一部に液体媒体を提供することを含み得る。液体媒体は、免疫細胞、及び任意選択で間質細胞を含み得る。腫瘍細胞、間質細胞、及び/又は免疫細胞は、腫瘍の外科的サンプル、腫瘍の生検、がん患者の正常組織から得られ、がん患者の循環液から得られ、あるいは樹立細胞株から得られる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、治療を受けていない制御された条件下にある三次元腫瘍への浸潤が妨げられる活性化T細胞である。あるいは、免疫細胞は、治療を受けていない制御された条件下にある三次元腫瘍に浸潤できる活性化T細胞であり得る。
【0098】
そのような方法で利用されるデータは、免疫組織化学(IHC)、フローサイトメトリー、遺伝子発現、及び腫瘍微小環境又は個々の患者の腫瘍の構成に関する情報を提供する方法の1つ以上によって取得できる。そのようにして提供されるIHCデータは、がん患者の腫瘍、免疫、及び間質コンパートメントの相対的な方向と位置に関連したものであり得る。そのようなデータは、ハイコンテントイメージング、セルソーティング、フローサイトメトリー、プロテオーム解析、発現解析、及び/又はゲノム配列決定などの自動分析によって収集できる。いくつかの実施形態では、自動分析によって収集されたデータを評価することで、複数の三次元腫瘍モデル内の免疫細胞浸潤、腫瘍細胞死、及び他の腫瘍微小環境変化のうちの1つ以上を定量化することができる。
【0099】
そのような方法で評価される抗がん治療は、がん標的療法、免疫調節剤、化学療法、がん以外の状態の治療に従来利用されている再利用薬剤、放射線、又はこれらの2つ以上の組み合わせであり得る。そのような方法で利用される三次元腫瘍モデルは、バイオプリンターなどのリキッドハンドリングシステムを使用して生成でき、自動化することができる。そのような液体ハンドリングシステムは、フォトマスク及び光源を含むことができる。そのようなリキッドハンドリングシステムは、細胞外マトリックス、生体材料、又は生体高分子足場のうちの1つ以上を試験表面上に堆積させることができる。
【0100】
本発明の概念のいくつかの実施形態は、病歴のある複数のがん患者について上述した方法を使用して開発された過去の予測治療効果を含む第1のデータセットを生成すること、前記病歴のある複数のがん患者の治療結果を含む第2のデータセットを生成すること、及び第1及び第2のデータセットにアクセスして、予測された治療効果と治療結果とを相関させる、又は他の方法で関連付ける提案された治療計画アルゴリズムを生成するように構成された学習アルゴリズムを人工知能システムに提供すること、及びがん患者の治療に効果的であると考えられる1つ以上の治療プロトコルを提供又は提案するために、予測された治療効果に治療計画アルゴリズムを適用することによって、がん患者のがん治療を最適化する方法である。そのような人工知能システムはニューラルネットワークとして構成できる。いくつかの実施形態では、人工知能システムは、情報ネットワークを介してアクセスされ、また、サブスクリプションサービスを介してアクセスされ得る。
【0101】
本発明の概念のいくつかの実施形態は、病歴のある複数のがん患者について上述した方法を使用して過去の予測治療効果を含む第1のデータセットを生成すること、前記病歴のある複数のがん患者について記録された治療結果を含む第2のデータセットを生成すること、及び学習アルゴリズムを含む人工知能システムに第1及び第2のデータセットを提供して、予測治療効果と治療結果とを相関させる治療計画アルゴリズムを生成すること、及びがん患者の腫瘍の病理に関連するデータに治療計画アルゴリズムを適用して、がん患者の治療計画を報告又は提案することによって、がん患者のがん治療を最適化する方法である。そのような人工知能システムはニューラルネットワークとして構成され得る。そのような人工知能システムはニューラルネットワークとして構成され得る。いくつかの実施形態では、人工知能システムは、情報ネットワークを介してアクセスされ、また、サブスクリプションサービスを介してアクセスされ得る。
【0102】
本発明の概念の実施形態は、培養容器内の細胞外マトリックス又はヒドロゲルの平面又は本質的に平面の第1の層を含む平面三次元構築物を得ることによって、三次元の細胞ベースのアッセイを行う方法を含み、ここで、第1の細胞(例えば、免疫細胞、標的細胞、又は免疫細胞と標的細胞の組み合わせ)は、第1の層の下に提供されるか、又はその中に混合され、第2の細胞(例えば、免疫細胞、標的細胞、及び免疫細胞と標的細胞の組み合わせ)は、第1の層の上に提供され、一定期間にわたって第1の細胞と第2の細胞との間の相互作用を測定又はその他の方法で特性評価する。第2の細胞は、腫瘍細胞、非腫瘍疾患哺乳類細胞、病原体、細菌、ウイルス;ケモカイン源、化学誘引物質源、免疫応答を可能にする刺激源、及び/又は免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、及び/又はそれらの誘導体)であり得る。第2の細胞は、ヒト由来、非ヒト動物由来、又は非動物由来のものであり得る。そのような構築物はさらに、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、正常組織細胞、疾患細胞、病原体、細菌、及び/又はウイルスを含み得る。
【0103】
そのような構築物は、天然又は合成由来のポリマー;脱細胞化組織、タンパク質、デキストラン、アルギン酸塩、ポリ(エチレングリコール)、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ、及び/又は化学的又は物理的架橋のために配合されたそれらの化学的に修飾された誘導体などの生体材料を含み得る。そのような構築物は、電磁放射、温度、及び/又は時間を使用して重合されたポリマーを含む少なくとも1つの層を含み得る。そのような構築物は、平面の、又は本質的に平面の第2の層を含み得る。少なくとも1つの層は、生体適合性、弾性率、多孔性、及び分解性に適するように選択されることで、構築物の層内又は構築物の層間の栄養素交換及び細胞相互作用を可能にすることができる。
【0104】
これらの方法に適した構築物は、標準の又はカスタマイズされた成形法、フォトリソグラフィー、バイオプリンティング、及び/又は構築物の1つ以上の層のサイズ、形状、及び平面性を制御する技術を使用して製造できる。そのような構築物の第1の層は、10マイクロメートルから2ミリメートルの間、好ましくは100マイクロメートルから1ミリメートルの間の規定の厚さ、及び50Paから20kPaの剛性を有することができる。
【0105】
本発明の概念の実施形態は、培養容器内の細胞外マトリックス又はヒドロゲルの第1の平面又は本質的に平面の層、第1の層の下の、第1の層の中に混合された、又は第1の層の上の第1の細胞(例えば、免疫細胞、標的細胞、又は免疫細胞と標的細胞の組み合わせ)、第1の層の上にある細胞外マトリックス又はヒドロゲルの第2の層、及び第2の層に混合されるか、第2の層の上に配置される第2の細胞(例えば、免疫細胞、標的細胞、免疫細胞と標的細胞の組み合わせ、腫瘍細胞、非腫瘍疾患哺乳類細胞、病原体、細菌、ウイルス;ケモカイン源、化学誘引物質源、免疫応答を可能にする刺激源)を含む三次元の細胞ベースのアッセイシステムを含む。そのような第2の細胞は、ヒト由来、非ヒト動物由来、又は非動物由来のものであり得る。適切な免疫細胞は含む そのようなアッセイ系は、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、正常組織細胞、罹患細胞、病原体、細菌、及び/又はウイルスをさらに含み得る。そのようなアッセイシステムは、平面又は本質的に平面の第2の層を含み得る。そのようなアッセイ系は、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、及び/又はこれらの誘導体などの免疫細胞を含み得る。
【0106】
そのようなアッセイシステムは、天然又は合成由来のポリマー;脱細胞化組織、タンパク質、デキストラン、アルギン酸塩、ポリ(エチレングリコール)、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ、及び化学的又は物理的架橋のために配合されたそれらの化学的に修飾された誘導体などの生体材料を含み得る。そのようなアッセイシステムは、電磁放射線、温度、又は時間を使用する重合によって生成されるポリマーを含む少なくとも1つの層を含み得る。
【0107】
そのようなアッセイシステムの少なくとも1つの層は、生体適合性、弾性率、多孔性、及び分解性に適するように選択されることで、層内又は複数の層間の栄養素交換及び細胞相互作用を可能にする。そのようなアッセイシステムは、標準の又はカスタマイズされた成形法、フォトリソグラフィー、バイオプリンティング、又は構築物の層のサイズ、形状、及び平面性を制御する技術を使用して構築できる。そのようなアッセイシステムの第1の層は、10マイクロメートルから2ミリメートルの間、好ましくは100マイクロメートルから1ミリメートルの間の規定の厚さ、及び50Paから20kPaの剛性を有することができる。
【0108】
本発明の概念の実施形態は、上述した方法において、細胞生存率、細胞構造、及び第1又は第2の細胞のいずれかにおける細胞アポトーシスマーカーの存在のうちの少なくとも1つを測定することによって、治療法の有効性を評価する方法を含む。そのような測定結果は、生細胞画像解析、免疫蛍光、フローサイトメトリー、プロテオミクス解析、及びゲノム解析のうちの少なくとも1つによって取得され得る。そのような方法は、構築物の層への免疫細胞浸潤、又は標的細胞の集合体への免疫細胞浸潤の測定値の取得、タンパク質分泌の分析、サイトカインの特性評価、標的細胞又は免疫細胞に対する観察可能な変化、標的細胞又は免疫細胞におけるアポトーシスの特性評価、標的細胞又は免疫細胞における増殖の特性評価、標的細胞又は免疫細胞における細胞凝集体サイズの特性評価、標的細胞又は免疫細胞における表現型変化の特性評価、及び/又は標的及び免疫細胞における遺伝子型変化の特性評価を含み得る。そのような方法は、三次元構築物又はアッセイシステムの層の少なくとも一部を、化学的消化、酵素的消化、機械的消化、又はキレート剤の添加による破壊のうちの少なくとも1つに供することを含み得る。そのようなステップは、層の消化又は破壊によって放出された細胞を回収するためのロボットによる選択又は吸引を含み得る。
【0109】
本発明の概念の実施形態は、患者又は病原体由来の標的細胞及び自己又は同種異系免疫細胞を組み込んだ上述した方法を実行すること、使用される構築物又はアッセイシステムを1つ以上の治療法(例えば、放射線療法、化学療法、標的療法、及び/又は免疫療法)に供すること、前記構築物又はアッセイシステムでの前記1つ以上の治療法の有効性を決定すること、及び特定の患者又は患者グループに対する臨床上の意思決定を支援するために、そのような決定に基づく有効性情報を医療専門家に提供することによって、個別化医療を提供する方法を含む。
【0110】
本発明の概念の実施形態は、上述した方法であって、三次元構築物又はアッセイシステムが第1又は第2の層内の標的細胞の付近で培養された免疫細胞を含む方法を実行すること、免疫細胞が増殖して拡大された免疫細胞集団を生成するのに十分なインキュベーション期間を提供すること、及び拡大された免疫細胞集団を三次元構築物又はアッセイシステムから回収することによって、免疫細胞集団を拡大させる方法を含む。拡大された免疫細胞集団は、回復後に、例えば遺伝子改変、追加の拡大、又はそれらの組み合わせによって改変される。そのような免疫細胞は、自己由来のものであっても同種異系由来のものであってもよい。
【0111】
本発明の概念の実施形態は、三次元構築物又はアッセイシステムが拡大された免疫細胞集団を生成するための培養B細胞又はハイブリドーマ細胞である免疫細胞を含む上述したクローン増殖方法を実行すること、拡大された免疫細胞集団から細胞部分集団を選択すること、及び選択された細胞部分集団から抗体を収集することによって、抗体を産生する方法を含む。そのような選択は、ライブイメージング、手動ピッキング、及び/又はロボットピッキングを使用して行うことができる。
【0112】
本発明の概念の実施形態は、増殖させる細胞が末梢血、脾臓、又は疾患微小環境に由来する免疫細胞である上述したクローン増殖方法を実行すること、免疫細胞を増殖させることで、拡大された免疫細胞集団を生成すること、及び拡大された免疫細胞集団の少なくとも一部を治療を必要とする個体に注入することによる、内因性細胞治療の方法を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞の部分集団(これは患者における有効性に関して評価され得る)が、拡大された免疫細胞集団から分離され、治療を必要とする患者に注入される。患者有効性の評価は、注入後又は注入前に行うことができる。
【0113】
本発明の概念の実施形態は、抗原産生細胞(例えば、腫瘍細胞又は病原体細胞)層を含む三次元培養物を生成すること、三次元培養物を免疫細胞と接触させることで共培養物を生成すること、及び特定の表現型を有する免疫細胞を生成するのに十分な期間共培養物をインキュベートすること、特定の表現型を有する免疫細胞を生成するのに十分な期間共培養物をインキュベートすることによって、特定の表現型(例えば、末梢血単核球又は腫瘍浸潤リンパ球)を有する免疫細胞を提供する方法を含む。適切な表現型には、細胞溶解性エフェクターT細胞、NK細胞、マクロファージ、メモリーT細胞、例えば幹細胞メモリーT細胞、中枢メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、及び移行メモリーT細胞が含まれる。期間は、抗原特異的刺激、CD3/CD28刺激、CD137を伴うCD3/CD28刺激、及び1つ以上のサイトカイン(例えば、IL2、IL7、及びIL5)による共刺激など、免疫細胞に対する刺激効果をもたらすように選択できる。そのような三次元培養物は、抗原産生細胞層と免疫細胞との間に介在する間質細胞層(これは線維芽細胞を含み得る)を含み得る。いくつかの実施形態では、三次元培養物は、サイトカイン産生細胞(例えば、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、サイトカイン産生免疫細胞、及び/又は樹状細胞)を含み得る。
【0114】
そのような三次元培養物は、ヒドロゲル又は細胞外マトリックス成分を含み得る。三次元培養物は、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、及びポリエチレングリコールを含むことができ、三次元培養物の少なくとも一部は、金属メタロプロテイナーゼによって分解可能であり得る。三次元培養物は、20μmから2mmの厚さを有することができ、50Paから20kPaの剛性を有することができる。三次元培養物は、例えば容器又はウェル内又は表面上など、別個の領域及び/又は方向にパターン化することができる。いくつかの実施形態では、三次元培養物は多孔質膜を含むことができる。
【0115】
本発明の概念の実施形態は、上述した方法によって産生された特定の表現型を有する免疫細胞を単離することで、単離免疫細胞を提供すること、単離免疫細胞を薬学的に許容される担体と接触させることで免疫治療組成物を生成すること、及び治療を必要とする個体に免疫治療組成物を(例えば、点滴によって)投与することによって、免疫療法を提供する方法を含む。適切な薬学的に許容される担体には、注射又は注入に適した液体媒体が含まれる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、生体適合性ヒドロゲル又は組織足場であり、これらを治療される個体の一部に局所適用によって投与することができる。
【0116】
本発明の概念の実施形態は、三次元培養物中に共培養されている抗原産生細胞層(例えば、病原性細胞層、腫瘍細胞層など)及び免疫細胞(例えば、末梢血単核球又は腫瘍浸潤リンパ球)を含む三次元培養物を含む、特定の表現型を有する免疫細胞を提供するシステムを含み、三次元培養物は、特定の表現型を有する免疫細胞のクローン増殖を増強するように構成されている。そのようなシステムの三次元培養物は、抗原産生細胞又は腫瘍細胞層と免疫細胞との間に介在する間質細胞層を含み得る。三次元培養物は、10マイクロメートルから2ミリメートルの間、好ましくは100マイクロメートルから1ミリメートルの間の規定の厚さを有することができ、50Pa~20kPaの剛性を有することができる。そのようなシステムでは、三次元培養物を別個の領域及び/又は方向にパターン化することができる。
【0117】
そのようなシステムでは、三次元培養物は、抗原産生細胞又は腫瘍細胞層と免疫細胞との間に介在する間質細胞層を含むことができる。そのような間質細胞層は線維芽細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、三次元培養物は、ヒドロゲル及び/又は細胞外マトリックス成分を含む。三次元培養物の少なくとも一部は、金属メタロプロテイナーゼによって分解可能である。いくつかの実施形態では、三次元培養物は、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、ポリエチレングリコール、及び/又は多孔質膜を含み得る。
【0118】
そのようなシステムでは、三次元培養物は、抗原特異的刺激、CD3/CD28刺激、CD137を伴うCD3/CD28刺激、及び1つ以上のサイトカイン(例えば、IL2、IL7、及び/又はIL5)による共刺激などの刺激効果を免疫細胞に提供するように構成され得る。いくつかの実施形態では、三次元培養物はサイトカイン産生細胞を含む。適切なサイトカイン産生細胞には、線維芽細胞、内皮細胞、サイトカイン産生免疫細胞、及び樹状細胞が含まれる。
【0119】
そのような系では、選択された表現型を有する免疫細胞はメモリーT細胞であり得る。そのようなメモリーT細胞は、幹細胞メモリーT細胞、中枢メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、及び移行メモリーT細胞であり得る。いくつかの実施形態では、選択された表現型を有する免疫細胞は、細胞溶解性エフェクターT細胞、NK細胞、及びマクロファージのうちの1つ以上からなる群から選択される。
【0120】
本発明の概念の実施形態は、免疫治療組成物を製造するための特定の表現型を有する免疫細胞の使用を含み、これは、上述した方法によって産生された特定の表現型を有する免疫細胞を単離すること、及び薬学的に許容される担体中の特定の表現型を有する免疫細胞を提供することを含む。そのような薬学的に許容される担体は、注入に適した液体媒体であり得る。あるいは、薬学的に許容される担体は、生体適合性ヒドロゲル又は組織足場であってもよい。
【0121】
本発明の概念の実施形態は、培養容器内に細胞外マトリックス又はヒドロゲルの第1の平面又は本質的に平面の層(標準の又はカスタマイズされた成形、フォトリソグラフィー、又はバイオプリンティングの製品であり得る)と、第1の層の下の、又は第1の層の中に混合された第1の細胞(例えば、免疫細胞、標的細胞、又は免疫細胞と標的細胞の組み合わせ)と、第2の細胞(例えば、免疫細胞、標的細胞、免疫細胞と標的細胞の組み合わせ、腫瘍細胞、非腫瘍疾患哺乳類細胞、病原体、細菌、ウイルス、ケモカイン源、化学誘引物質源、及び/又は免疫応答を可能にする刺激源)を含む第2の層であって、平面である第2の層とを有する三次元の細胞ベースのアッセイシステムを含む。そのような第2の細胞は、ヒト由来、非ヒト動物由来、又は非動物由来のものであり得る。そのようなシステムは、1つ以上の他の細胞種、例えば、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、正常組織細胞、疾患細胞、病原体、細菌、ウイルス、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、及びそれらの誘導体を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の層は細胞外マトリックス又はヒドロゲルを含み得る。そのようなシステムは、天然又は合成由来のポリマー;脱細胞化組織、タンパク質、デキストラン、アルギン酸塩、ポリ(エチレングリコール)、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ、及び化学的又は物理的架橋のために配合されたそれらの化学的に修飾された誘導体などの生体材料又は生体適合性材料を含み得る。そのようなシステムの少なくとも1つの層は、電磁放射、温度、又は時間を使用して重合されたポリマーを含み得る。そのようなシステムの少なくとも1つの層は、生体適合性、弾性率、多孔性、及び分解性に適するように選択されることで、層内又は層間の栄養素交換及び細胞相互作用を可能にすることができる。そのようなシステムでは、第1の層は、10マイクロメートルから2ミリメートルの間、好ましくは100マイクロメートルから1ミリメートルの間の規定の厚さを有することができる。
【0122】
当業者には、本明細書の発明の概念から逸脱することなく、すでに説明したもの以外にも多くの修正が可能であることが明らかである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の趣旨を除いて制限されるべきではない。さらに、明細書と特許請求の範囲の両方を解釈する際には、すべての用語は文脈と一致する可能な限り広範な方法で解釈されるべきである。特に、「含む」という用語は、非排他的な方法で要素、コンポーネント、又はステップを指すものとして解釈されるべきであり、これは、参照された要素、コンポーネント、又はステップが存在し得る、利用され得る、又は明示的に参照されていない他の要素、コンポーネント、又はステップと組み合わせられ得ることを示す。明細書、特許請求の範囲が、A、B、C...、及びNからなる群から選択されたもののうちの少なくとも1つに言及している場合、本文は、AプラスNやBプラスNなどではなく、その群から1つの要素のみを必要とするものとして解釈されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を有する患者の診断及び治療
の予測
に使用するためのシステムであって、
前記腫瘍の複数の三次元モデルであって、前記三次元モデルのそれぞれが、前
記患者から得られた腫瘍細胞、間質細胞、及び免疫細胞のうちの2つ以上を含
み、前記三次元モデルのそれぞれが、前記
腫瘍の病理によって示されるがん細胞、間質細胞、又は免疫細胞の分布を反映し、前記複数の三次元モデルのそれぞれが試験表面上に堆積され、前記三次元モデルのそれぞれの腫瘍細胞が前記試験表面に結合されるか、又は無細胞層が前記試験表面に結合される、
前記三次元モデルを含む
システム。
【請求項2】
前記複数の三次
元モデルのそれぞれは、第1のコンパートメント及び第2のコンパートメントを含み、前記第1のコンパートメントは第1の面及び第2の面を有し、前記第1の面は前記試験表面と接触しており、前記第2の面は前記第2のコンパートメントと接触しており、前記第1のコンパートメント及び前記第2のコンパートメントの一方又は両方は、任意選択で細胞外マトリックス、生体材料、及び生体高分子足場のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の
システム。
【請求項3】
前記腫瘍は免疫炎症(immune inflamed)腫瘍であり、前記免疫炎症腫瘍のモデルを提供するように、腫瘍細胞及び免疫細胞
が前記第1のコンパートメントに共存
し、
免疫排除(immune excluded)腫瘍のモデルを提供するように、前記第1のコンパートメントに腫瘍細胞が存在し、免疫細胞は存在せず、かつ免疫細胞は前記第2のコンパートメント内又は前記第2のコンパートメントの表面に存在し、間質細胞が腫瘍細胞と免疫細胞との間に挟まれるように、間質細胞が前記第1のコンパートメントの付近に配置される、請求項2に記載の
システム。
【請求項4】
腫瘍細胞及び間質細胞は、前記複数の三次
元モデルの少なくとも一部に共存する
か、
腫瘍細胞及び免疫細胞は、前記複数の三次元モデルの少なくとも一部に共存するか、
免疫細胞及び間質細胞は、前記複数の三次元モデルの少なくとも一部に共存するか、又は
腫瘍細胞、間質細胞、及び免疫細胞は、前記複数の三次元モデルの少なくとも一部に共存する、請求項1に記載の
システム。
【請求項5】
前記三次元モデルは免疫砂漠(immune desert)腫瘍
のものであり、免疫細胞は前記
三次元モデルに存在しない、請求項1に記載の
システム。
【請求項6】
前記三次元モデルの一部に液体媒体を提供することをさらに含
み、前記液体媒体は、免疫細胞、及び任意選択で間質細胞を含む、請求項
1に記載の
システム。
【請求項7】
腫瘍細胞、間質細胞、又は免疫細胞は、前記腫瘍の外科的サンプル、前記腫瘍の生検、前記患者の正常組織から得られるか、又は前記患者の循環液から得られ、かつ前記免疫細胞は、治療を受けていない制御条件下にある三次元腫瘍への浸潤が妨げられる活性化T細胞である
か、
前記免疫細胞は、治療を受けていない制御条件下にある三次元腫瘍に浸潤可能な活性化T細胞である、請求項
1に記載の
システム。
【請求項8】
間質細胞は、線維芽細胞、内皮細胞、間葉幹細胞(MSC)、脂肪細胞、及び周皮細胞からなる群から選択される
か、
免疫細胞は、先天性又は後天性免疫系の刺激性免疫細胞、先天性又は後天性免疫系の抑制性免疫細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、T細胞、NK細胞、B細胞、樹状細胞、マスト細胞、好中球、及びマクロファージからなる群から選択される、請求項
1に記載の
システム。
【請求項9】
三次元の細胞ベースのアッセイを行う方法であって、
培養容器内の細胞外マトリックス又はヒドロゲルの平面又は本質的に平面の第1の層を含む平面三次元構築物
であって、第1の細胞が、前記第1の層の下に提供されるか、又は前記第1の層の中に混合され、第2の細胞が、前記第1の層の上に提供され
た前記平面三次元構築物を得ること、
及び
液体培養培地において一定期間にわたって前記第1の細胞と前記第2の細胞との間の相互作用を評価することを含む方法。
【請求項10】
前記第1の細胞は、免疫細胞、標的細胞、及び免疫細胞と標的細胞の組み合わせからなる群から選択される
か、
前記第2の細胞は、免疫細胞、標的細胞、及び免疫細胞と標的細胞の組み合わせからなる群から選択される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記構築物は、間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、免疫細胞、正常組織細胞、疾患細胞、病原体、細菌、及びウイルスからなる群から選択される細胞種をさらに含む
か、
前記構築物は、平面又は本質的に平面の第2の層を含む、請求項
9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の細胞は、腫瘍細胞、非腫瘍疾患哺乳類細胞、病原体、細菌、ウイルス、ケモカイン源、化学誘引物質源、及び免疫応答を可能にする刺激源からなる群から選択される
か、
前記構築物は、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、及びそれらの誘導体からなる群から選択される免疫細胞を含むか、前記第2の細胞は、ヒト由来、動物由来、又は非動物由来のものであるか、前記構築物は、天然又は合成由来のポリマー;脱細胞化組織、タンパク質、デキストラン、アルギン酸塩、ポリ(エチレングリコール)、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、それらの組み合わせ、及び化学的又は物理的架橋のために配合されたそれらの化学的に修飾された誘導体からなる群から選択される生体材料を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の層は、10マイクロメートルから2ミリメートルの間の規定の厚さを有する
か、
前記第1の層は、100マイクロメートルから1ミリメートルの間の規定の厚さを有する、請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
免疫細胞集団を拡大させる方法であって、
免疫細胞が前記第1又は第2の層内の標的細胞の付近で培養される請求項
9~
13のいずれか一項に記載の方法を実行すること、
免疫細胞が増殖して拡大された免疫細胞集団を生成するのに十分なインキュベーション期間を提供すること、及び
前記拡大された免疫細胞集団を前記構築物から回収すること
を含む方法。
【請求項15】
前記拡大された免疫細胞集団は回収後に改変さ
れ、前記拡大された免疫細胞集団は、遺伝子改変、追加の拡大、又はそれらの組み合わせによって改変される、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
特定の表現型を有する免疫細胞を提供する方法であって、
抗原産生細胞又は腫瘍細胞層を含む三次元培養物を生成すること、
前記三次元培養物を免疫細胞と接触させることで共培養物を生成すること、
前記特定の表現型を有する前記免疫細胞を生成するのに十分な期間、前記共培養物をインキュベートすること
を含
み、前記三次元培養物は間質細胞層を含み、前記間質細胞層は、前記抗原産生細胞又は腫瘍細胞層と前記免疫細胞との間に介在する、方法。
【請求項17】
前記特定の表現型を有する前記免疫細胞を生成するのに十分な期間、前記共培養物をインキュベートすることは、前記免疫細胞に対する刺激効果をもたらし、前記刺激効果は、抗原特異的刺激、CD3/CD28刺激、CD137を伴うCD3/CD28刺激、及び1つ以上のサイトカインによる共刺激からなる群から選択される、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫細胞は、末梢血単核球又は腫瘍浸潤リンパ球である、請求項
16に記載の方法。
【請求項19】
前記三次元培養物は、別個の領
域又は方向にパターン化される、請求項
16に記載の方法。
【請求項20】
選択された表現型を有する前記免疫細胞は
、メモリーT細胞
、幹細胞メモリーT細胞、中枢メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、移行メモリーT細胞、細胞溶解性エフェクターT細胞、NK細胞、及びマクロファージのうちの1つ以上からなる群から選択される、請求項
16に記載の方法。
【国際調査報告】