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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】プリント回路基板用の電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
G01R15/18 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502568
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2022067197
(87)【国際公開番号】W WO2023001482
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】2150966-6
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522034789
【氏名又は名称】アルストム・ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】マルティン、リンダール
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA05
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
プリント回路基板(PCB)(102)に組み込まれ、第1導電路(106)を流れる電流(104)を検知する電流センサ(100)。電流センサ(100)は、PCB(102)の平面において開形状(112)を形成する第1導電巻線(110)を備えており、開形状(112)は、第1端部(114a)および第2端部(114b)を有し、PCB(102)の平面における検知領域(116)であって、検知領域(116)内に配置された第1導電路(106)を流れる電流(104)を検知するための、検知領域(116)を画定する。第1導電巻線(110)は、PCB(102)の厚み(d)にわたって延在する複数の巻きを有する導電部から形成され、第1導電巻線(110)は、PCB(102)内の障害物(108)から、少なくとも第1端部(114a)から障害物(108)までの絶縁距離(118)だけ離間している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路基板(PCB)に組み込まれ、第1導電路を流れる電流を検知する電流センサであって、
前記PCBの平面において開形状を形成する第1導電巻線を備えており、
前記開形状は、第1端部および第2端部を有し、前記PCBの前記平面における検知領域であって、前記検知領域内に配置された前記第1導電路を流れる前記電流を検知するための、検知領域を画定し、
前記第1導電巻線は、前記PCBの厚みにわたって延在する複数の巻きを有する導電部から形成され、
前記第1導電巻線は、前記PCB内の障害物から、少なくとも前記第1端部から前記障害物までの距離だけ離間している、電流センサ。
【請求項2】
前記開形状は、楕円弧、円弧、U字形状を有する弧、または開放多角形である、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記第1端部から前記障害物までの前記距離は、前記第2端部から前記障害物までの距離に等しい、請求項1または2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記第1端部から前記障害物までの前記距離に沿った絶縁部は、前記第1導電巻線と前記障害物との間に配置された
PCB材料、
空気、および
絶縁材料
のうち少なくとも1つにより提供される、請求項1~3のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項5】
前記複数の巻きは、4~100の範囲内の巻きを備える、請求項1~4のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項6】
前記複数の巻きは、8~32の範囲内の巻きを備える、請求項1~5のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第1導電巻線は、前記第1導電路内の前記電流を示す出力電圧信号を生成する積分回路に電気的に接続されている、請求項1~6のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項8】
前記障害物は、前記第1導電路の電位と異なる電位を有する第2導電路であり、
前記第1端部から前記障害物までの前記距離は、前記第2導電路と前記第1導電巻線との間の電気的干渉を抑制するため、前記第2導電路からの距離に対応している、請求項1~7のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項9】
前記第1端部および前記第2端部は、前記第1端部および前記第2端部を通過する開きの軸と、前記第1端部と前記第2端部との間の前記軸上の中点とを規定し、
前記第1端部および前記第2端部は、前記開きの軸に垂直であり前記中点を通過する軸が前記第2導電路の位置と合致するように、前記第2導電路に対して配置されている、請求項8に記載の電流センサ。
【請求項10】
前記導電部は、第1電気端子および第2電気端子を備え、
前記第1電気端子および前記第2電気端子は、前記第1端部または前記第2端部に一緒に配置されている、請求項1~9のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項11】
前記第1導電路内の前記電流以外の電磁放射源から前記第1導電巻線を少なくとも部分的に遮蔽するように配置された遮蔽材料をさらに備える、請求項1~10のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項12】
前記遮蔽材料は、前記第1電気端子から前記第2電気端子への電気的な戻りの少なくとも一部を形成する、請求項10および11に記載の電流センサ。
【請求項13】
前記第1導電路は、電子デバイスのピンからなる、請求項1~12のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項14】
前記電子デバイスは、半導体トランジスタであり、
前記半導体トランジスタは、シリコントランジスタ、シリコンカーバイドトランジスタまたは高出力半導体トランジスタのいずれかである、請求項13に記載の電流センサ。
【請求項15】
第1導電路を流れる電流を検知する電流センサを、プリント回路基板(PCB)に組み込む方法であって、
前記PCBの平面において第1導電巻線を開形状に配置することを備えており、
前記開形状は、第1端部および第2端部を有し、前記PCBの前記平面における検知領域であって、前記検知領域内に配置された前記第1導電路を流れる前記電流を検知するための、検知領域を規定し、
前記第1導電巻線は、前記PCBの厚みにわたって延在する複数の巻きを有する導電部から形成され、
前記第1導電巻線は、前記PCB内の障害物から、少なくとも前記第1端部から前記障害物までの距離だけ離間している、方法。
【請求項16】
前記配置することの前に、
前記第1導電路を流れる前記電流の大きさ、
前記障害物のサイズ、
前記第1導電巻線と前記障害物との間の電位差、
前記第1導電巻線と前記第1導電路との間の電位差、
前記第1導電路と前記障害物との間の電位差、および/または
絶縁材料を構成する材料
のうち少なくとも一部に基づいて、絶縁距離を決定することをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記電流センサからセンサ信号を受け取ることと、
信号処理モジュールによって、前記センサ信号の少なくとも一部に基づいて、前記電流の電流測定値を測定することと、
をさらに備える、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
第1プリント回路基板(PCB)に組み込まれ、第1導電路を流れる第1電流を検知する第1電流センサと、
第2PCBに組み込まれ、第2導電路を流れる第2電流を検知する第2電流センサと、
前記第1電流センサおよび前記第2電流センサからのセンサ信号を処理する信号処理モジュールと、
を備えており、
前記第1電流センサおよび前記第2電流センサの各々は、請求項1~14のいずれかに記載の電流センサであり、
前記信号処理モジュールは、前記第2電流センサからのセンサ信号の少なくとも一部に基づいて、前記第1電流の電流測定値を生成するように構成されているシステム。
【請求項19】
前記第1電流センサの第1検知領域は、前記第1電流により誘導された第1磁束、および前記第2電流により誘導された第2磁束を集めるように配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第2導電路を流れる前記第2電流は、制御信号によって制御され、
前記信号処理モジュールは、前記制御信号の少なくとも一部に基づいて、前記第1電流の電流測定値を生成するようにさらに構成されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
第1の前記障害物および第2の前記障害物は、同一の障害物である、請求項18~20のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
前記第1PCBおよび前記第2PCBは、同一のPCBの一部分である、請求項18~21のいずれかに記載のシステム。
【請求項23】
前記第1導電路は、第1電子デバイスのピンであり、
前記第2導電路は、第2電子デバイスのピンであり、
前記第1電子デバイスおよび前記第2電子デバイスは、前記PCB上の同一の電気回路の一部である、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1電流センサおよび前記第2電流センサは、対称に配置されている、請求項18~23のいずれかに記載のシステム。
【請求項25】
前記第1PCBおよび前記第2PCBは平行平面に配置され、前記第1電流センサおよび前記第2電流センサは、前記第1PCBおよび前記第2PCBに平行な平面に関して対称に配置されている、または
前記第1PCBおよび前記第2PCBは同一のPCBの一部分であり、前記第1電流センサおよび前記第2電流センサは、前記PCBに垂直な平面に関して対称に配置されている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
鉄道車両の駆動系のためのモータコンバータであって、
それぞれが少なくとも1つのピンを有する1または複数のトランジスタと、
前記1または複数のトランジスタの前記少なくとも1つのピンを流れる電流を検知する、少なくとも1つの請求項1~14のいずれかに記載の電流センサと、
を備える、モータコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサとも呼ばれる、電流を検知または測定するセンサに関する。特に、本発明は、プリント回路基板(printed circuit board:PCB)への組み込み用の電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
電流センサは、導電路を流れる電流を測定することが望まれる様々な電子的な状況において使用される。電流に対する望ましい特徴は、いくつか例を挙げれば、高い検知性および正確性、広い範囲の動作周波数(「広い帯域幅(bandwidth)」とも呼ばれる)、ならびに環境的な干渉への高い耐性を含んでもよい。
【0003】
電流を検知するための2つの先行技術、すなわちシャント抵抗器および磁場センサが存在する。
【0004】
シャント抵抗器センサは、電流測定が望まれる電気回路の一部分に電気的に接続され、一般的に「シャント」と呼ばれる既知抵抗値の抵抗器を含む。オームの法則を利用すれば、シャントを跨いで測定された電圧降下は、そこを流れる電流の指標として用いることができる。しかし、高電流においては、高い電力消費によるシャントの加熱が大きく、電流センサの正確性を低下させる可能性がある。また、電力消費それ自体が損失であり、そのため望ましくない。
【0005】
磁場センサは、導電路を流れる電流が当該電流に比例した磁場を生成するため、電流センサとして用いることができる。このようなセンサは、誘導された磁場を検知する際に、ファラデーの法則またはホール効果を利用することができる。シャント抵抗器と異なり、その電流が測定されている部品に、磁気に基づいた電流センサを電気的に接続する必要が無い。よって、それは、例えば部品間の電気的な独立が必要な状況、または高電流の用途において望ましい。
【0006】
密集した、または過密の環境に取り付けられた電子部品は、一般的に、その周囲に従来型の電流センサを取り付けるために必要な空間を有していない可能性がある。電気端子、PCB内のネジ、および/または他の部品などの障害物は、これらの障害物の近くの部品に電流センサを取り付けることを難しくする可能性がある。これは、PCBへ電流センサを組み込む状況にとって、特に真実である。
【0007】
プリント回路基板(PCB)に電流センサを組み込むいくつかの試みが存在する。PCBは一般に小さいサイズであるが、技術が進歩し、機能密度(functional density)に対する人間の努力が増加するに従って、より小さくなりつつあるため、PCBへ部品を組み込む場合、部品の小型化が考慮される必要がある。
【0008】
いくつかの部品の物理的特性は、当該部品が小型化されると変化する可能性があり、そのため、小型化は、部品の各要素をより小さくすることほど単純ではない可能性がある。さらに、小型化された部品を有するPCBの使用を要求する一定の用途は、これらの部品のその動作範囲の全体にわたる適切な機能をもたらさない可能性がある。1つの例は、シリコンカーバイドに基づいた半導体を用いたり、この種の材料の速いスイッチング特性を利用したりする際の高帯域幅の電流検知に対する需要の増加である。よって、広い範囲の用途に実装される際に、小型化された部品の適切な機能を確保するため、電流センサのさらなる変化が必要とされるだろう。
【0009】
「配線抵抗検知(trace resistance sensing)」などの技術が電流センサの空間節約的な構成として用いられ、それによって、シャント抵抗器は、既知の固有の抵抗値を有するPCB内の配線(例えば銅)によって置換される。このようなセンサの動作は、絶縁型の増幅器(isolation amplifier)の使用、または他の後処理技術を通じて向上される可能性がある。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、正確性および高帯域幅の点で改良された、PCB内の導電路を流れる電流を検知する電流センサを提供する。
【0011】
第1態様によれば、プリント回路基板(PCB)に組み込まれ、第1導電路を流れる電流を検知する電流センサが提供される。当該電流センサは、PCBの平面において開形状を形成する第1導電巻線を備えており、開形状は、第1端部および第2端部を有し、PCBの平面における検知領域であって、検知領域内に配置された第1導電路を流れる電流を検知するための、検知領域を画定する。第1導電巻線は、PCBの厚みにわたって延在する複数の巻きを有する導電部から形成され、第1導電巻線は、PCB内の障害物から、少なくとも第1端部から障害物までの絶縁距離だけ離間している。
【0012】
導電路は、接続線、PCB内の電気部品の導電部分、または検知が望まれる電流を流す類似の部品であってもよい。例えば、第1導電路は、半導体トランジスタ(すなわち、シリコントランジスタ、シリコンカーバイドトランジスタ、または高出力半導体トランジスタなど)のような電子デバイスのピンまたは端子であってもよい。
【0013】
第1導電巻線は、PCBの厚みにわたって延在する複数の巻きを有するといった形で曲折する配線(銅、アルミニウムまたはいくつかの他の導電材料)としての導電部から形成される。複数の巻きは、電流センサの帯域幅および周波数応答をさらに増加できるように、4~100の範囲内の巻き、あるいは、好ましくは、8~32の巻きを備えてもよい。
【0014】
導電路は、そこから放射する円形(またはほぼ円形)の磁力線を有することになるため、導電巻線の巻きは、PCB内でこれらの磁力線の少なくとも一部分を囲むように配置される。つまり、導電巻線の長手に垂直な(すなわち、巻線の開形状の2つの端部の間に延在する)断面からみて、導電巻線の巻きは、磁束を集め、起電力(electromotive force:EMF)が第1導電路内の電流によって(すなわち、ファラデーの電磁誘導の法則によって)第1導電巻線内に生成されるように配置される。
【0015】
導電巻線内に生成された起電力は、次に、導電巻線が形成された導電部にわたる電圧信号として現れる。いくつかの例において、第1導電巻線は、第1導電路内の電流を示す出力電圧信号を生成する積分回路に電気的に接続される。積分回路の電気的接続は、例えば導電巻線が形成された導電部の一方の端部における電気端子に跨がってもよい。追加的または代替的に、導電巻線からの電圧信号は、ソフトウェア手段による積分を行うことができる処理モジュールに提供されてもよい。積分された電圧が電流、すなわち導電路を流れる電流の電流量(current value)の測定値に比例するため、電圧信号の積分値は、電流量を決定することを可能にする。
【0016】
いくつかの例によれば、導電巻線が形成された導電部は、例えば導電部の長手のいずれかの先端に、第1電気端子および第2電気端子を備えてもよい。これら2つの電気端子は、有利には、(PCBの平面視で)導電巻線の開形状の第1端部または第2端部に一緒に配置されてもよい。これにより、電気端子は、他の部品(例えば上述したような積分回路)に容易に電気的に接続できる。
【0017】
これを実現するため、第2電気端子は、導電巻線の形状に沿って第1端子と同一の端部に戻されてもよい。これにより、電流センサは、その構造において密集して保たれ、端子間の電気的な接続が必要とされる際に、Z方向における磁場(すなわち、干渉)を打ち消しつつ、障害物を避けることができる。
【0018】
第1導電巻線は、PCBの平面において、第1端部および第2端部を有する開形状を形成する。開形状は、導電路を囲む検知領域を画定しつつ、少なくとも第1端部からPCB内の障害物までの絶縁距離を許容するのに適した任意の開形状であってよい。例えば、開形状は、楕円弧、円弧(すなわち、完全な円もしくは楕円から取り出された円もしくは楕円の任意の部分)、もしくは(曲がった底部もしくは平らな底部を伴う)U字形状などの弧、または開いた四角形もしくは八角形などの開放多角形(区分直線形状と呼ばれてもよい)であってよい。開形状は、少なくとも、PCBの上方または下方からみた際に開形状を形成するように配置された軸を第1導電巻線が(例えば、その長手に沿って)有するという意味で、PCBの平面において形成されている。開形状は、さらに、PCBの平面における(例えば、当該形状の幅または厚みとしての)延長部を通じて、例えば弧の場合、上方または下方からみた際に円環の領域を形成するように形成されてもよい。つまり、この開形状は、第1導電巻線の内部構造とは無関係に、例えばPCBの厚みにわたって延在する巻きとは無関係に、PCBの平面において形成される。開形状は、最大の磁束収集、組み立ての容易さ、障害物の回避、および/または他の望ましい特徴のために最適化されてもよい。
【0019】
第1導電巻線の開形状によって画定される検知領域は、電流が通過して起電力を生成することが可能な領域、すなわち導電路を流れる電流が検知されることが可能な領域である。電流センサは、そこを流れる電流が検知されることが可能であるように、導電路の十分近くに配置される。好ましくは、電流センサの導電巻線は、電流により生成される磁束の収集を最大化する形状である。
【0020】
電流センサは、有利には、PCB内の障害物から離間する(すなわち、障害物を避ける)ことが可能であるような開形状を有する。いくつかの例によれば、障害物は、PCB上の固定点もしくは結合点(ネジ、くぎ、固定具など)、またはPCBにおける端部もしくは開口部(例えば、PCBに機械形成された間隙もしくは貫通孔、もしくは単なるその端部の境界)などの機械的な障害物であってよい。
【0021】
いくつかの例によれば、障害物は、第1導電路の電位と異なる電位を有する第2導電路であってよい。これらの例では、絶縁距離は、第2導電路と第1導電巻線との間の電気的干渉を抑制するため、第1端部から第2導電路までの距離に対応してよい。電流センサの正確性は電流によって生成される磁束を集める導電巻線の性能に依存するため、磁束又は他の電磁信号が導電巻線内で電気的干渉を起こさないことが好ましく、なぜなら、これが出力電圧信号に影響し、そのため測定された電流の正確性に影響しうるからである。さらに、第2導電路が第1導電路と異なる電位を有する場合、潜在的な電気アークの危険性が存在する。電気的干渉の他の形態は、電流センサの寿命を通じた漏れ電流および/または材料の劣化を含む。
【0022】
障害物が第2導電路である例では、電流センサは、第2導電路を流れる電流から放射する磁束が電流センサから測定された電流量に実質的に影響を与えないように配置されてもよい。例えば、第1端部および第2端部は、第1端部および第2端部を通過する開きの軸と、第1端部と第2端部との間の当該軸上の中点とを規定してもよい。開きの軸は、導電巻線の開形状の開いた部分に架かる線として考えてよい。開形状の第1端部および第2端部は、開きの軸に垂直であり中点を通過する軸が第2導電路の位置と合致するように、第2導電路に対して配置されてもよい。このようにして、導電巻線の巻きを一方向に通過する(これにより起電力を生じる)磁力線のすべて(またはほとんど)は、実質的に、導電巻線の巻きを(ほぼ)反対方向に通過し、第1起電力を実質的に打ち消すもう1つの起電力を生じる。ただし、「厳密に垂直な」は理想的でもあるため、測定された電流量の正確性を実質的に損なわなければ、厳密な垂直からのいくらかのずれがあってもよいと理解されるだろう。
【0023】
いくつかの例において、導電巻線内の干渉を低減するためのさらなる技術は、遮蔽物を用いて導電巻線を保護することである。例えば、第1導電路内の電流以外の電磁放射源から第1導電巻線を少なくとも部分的に遮蔽するように、遮蔽材料が配置されてもよい。そのため、この方法で電流センサの正確性をさらに向上させることができる。
【0024】
さらにいくつかの例によれば、遮蔽材料は、第1電気端子から第2電気端子への電気的な戻りの少なくとも一部を形成してもよい。すなわち、遮蔽材料は、導電材料であり、第1電気端子および第2電気端子が一緒に配置されることを可能にすることを補助するように、導電巻線の第1電気端子と第2電気端子との間の導電路の一部を形成してもよい。
【0025】
障害物からの絶縁距離は、導電巻線の第1端部(すなわち、導電巻線により形成された形状の第1端部)から障害物までの最小距離である。このように導電巻線の端部を配置することにより、障害物に邪魔されずに、最大の磁束と電流への最接近とが実現できる。そのため、電流センサの改良された正確性が実現できる。第1端部から障害物までの絶縁距離は、第2端部から障害物までの絶縁距離と等しくてもよいし、あるいは異なっていてもよい。
【0026】
絶縁距離は、例えば障害物が電位を有するか、あるいは有しない導電部である場合、障害物から導電巻線を絶縁するために用いることができる。絶縁距離に沿い、十分な空間距離および沿面距離(clearance and creepage distance)を実現する絶縁部は、第1導電巻線と障害物との間に配置されたPCB材料(すなわち、当該PCBが形成された材料)、空気、および絶縁材料(コンフォーマルコーティング、プラスチック、ゴムまたは他の絶縁体など)のうち少なくとも1つにより提供される。
【0027】
第2態様によれば、第1導電路を流れる電流を検知する電流センサを、PCBに組み込む方法が提供される。当該方法は、PCBの平面において第1導電巻線を開形状に配置することを備えており、開形状は、第1端部および第2端部を有し、PCBの平面における検知領域であって、検知領域内に配置された第1導電路を流れる電流を検知するための、検知領域を規定する。第1導電巻線は、PCBの厚みにわたって延在する複数の巻きを有する導電部から形成され、第1導電巻線は、障害物から、少なくとも第1端部から障害物までの絶縁距離だけ離間している。
【0028】
いくつかの例では、当該方法は、当該配置することの前に、第1導電路を流れる電流の大きさ、障害物のサイズ、第1導電巻線と障害物との間の電位差、第1導電巻線と第1導電路との間の電位差、第1導電路と障害物との間の電位差、および/または(上述した)絶縁材料を構成する材料のうち、少なくとも一部に基づいて、絶縁距離を決定することをさらに備える。
【0029】
いくつかの例では、電流センサは電子積分回路を有してもよいし、あるいは信号処理モジュールが代わりに用いられてもよい。この後者の場合、当該方法は、電流センサからセンサ信号を受け取ることと、信号処理モジュールによって、センサ信号の少なくとも一部に基づいて、電流の電流測定値を測定することとをさらに備えてもよい。
【0030】
第3態様によれば、第1電流センサ、第2電流センサおよび信号処理モジュールを備えるシステムが提供される。第1電流センサは、第1PCBに組み込まれ、第1導電路を流れる第1電流を検知し、第2電流センサは、第2PCBに組み込まれ、第2導電路を流れる第2電流を検知する。これらの電流センサは、本開示の第1または第2態様について上述したものと同一か、または類似する。信号処理モジュールは、第1電流センサおよび第2電流センサからのセンサ信号を処理するために提供される。信号処理モジュールは、第2電流センサからのセンサ信号の少なくとも一部に基づいて、第1電流の電流測定値を生成するように構成されている。
【0031】
いくつかの例によれば、第1電流センサの第1検知領域は、第1電流により誘導された第1磁束を集めるように配置され、第2電流センサの第2検知領域は、第2電流により誘導された第2磁束を集めるように配置されている。第2電流を起源とする磁束のいくらかは、第1導電巻線によって集められ、総起電力に寄与してもよい(すなわち、それは打ち消さない可能性がある)。このような例では、測定精度を改良するため、第1電流の大きさを測定する際に、第2電流センサからの信号出力を計算に入れてもよい。同じことが、第1電流が第2電流センサに及ぼす影響に対して適用される。いくつかの例において、第2センサからの信号出力を計算に入れることは、第1および第2電流間の既知の距離、または第1もしくは第2センサ信号の誤差などのさらなる考慮を備えてもよい。
【0032】
追加的または代替的に、第2導電路を流れる第2電流は、制御信号によって制御され(すなわち、センサ信号に含まれ)、信号処理モジュールは、当該制御信号の少なくとも一部に基づいて、第1電流の電流測定値を生成するようにさらに構成されてもよい。制御信号は、取り付けられた電流センサを第2導電路が有しない場合にも用いられてよい。
【0033】
上述した2つの段落に記載された2つのシステムの概念は、電流センサの正確性を改良するため、独立にまたは一緒に用いることができる。
【0034】
第2電流によって生じる電磁的干渉から第1電流センサを遮蔽しようとする代わりに、そこから誘導される電圧信号が信号処理モジュールによる計算に入れられ、電流センサが他の電流によって誘導された磁束を正確に補償してもよい。この処理は、一方または両方の電流の既知の特徴を計算に入れてもよいし、あるいは所与の電流センサに関連する電流以外の電流からの寄与を除去するように、電圧信号に対して信号処理方法が適用されてもよい。
【0035】
ただし、「第1」および「第2」という用語が用いられているが、第1の障害物および第2の障害物は同一の障害物であってもよいし、さらに/あるいは、第1PCBおよび第2PCBは同一のPCBの一部分であってもよい。
【0036】
上述のように、導電路は、電子デバイスのピンであってもよい。例えば、第1導電路は第1電子デバイスのピンであってもよいし、第2導電路は第2電子デバイスのピンであってもよい。そして、第1PCBおよび第2PCBが同一のPCBの一部分である場合、第1電子デバイスおよび第2電子デバイスは、当該PCBを介して電気的に接続されてもよい。
【0037】
いくつかの例では、第1電流センサおよび第2電流センサは、対称に配置されている。例えば、第1PCBおよび第2PCBは平行平面に配置され、第1電流センサおよび第2電流センサは、第1PCBおよび第2PCBに平行な平面に関して対称に配置されてもよい。代替的に、第1PCBおよび第2PCBは同一のPCBの一部分であり、第1電流センサおよび第2電流センサは、当該PCBに垂直な平面に関して対称に配置されてもよい。
【0038】
第4態様によれば、それぞれが少なくとも1つのピンを有する1または複数のトランジスタと、1または複数のトランジスタの少なくとも1つのピンを流れる電流を検知する、上述した電流センサと同一または類似の少なくとも1つの電流センサと、を備える鉄道車両の駆動系のためのモータコンバータが提供される。
【0039】
1または複数の実施形態が、一例としてのみ、下記の図面(寸法がその通りであると理解されるべきではない)を参照して説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A図1Aは、本開示の一実施形態に係る、PCBに組み込まれた電流センサを模式的に示す斜視図である。
図1B図1Bは、図1Aの電流センサを模式的に示す、PCBの平面図である。
図1C図1Cは、図1Aの電流センサの導電巻線の構成を模式的に示す、PCBの断面図である。
図1D図1Dは、図1Aの電流センサの導電巻線の他の構成を模式的に示す、PCBの断面図である。
図2図2は、例示的な実装における様々な開形状(弧形状を含む)を示す、PCBの平面図である。
図3図3は、例示的な実装における様々な電流センサおよび障害物の配置を示す、PCBの平面図である。
図4図4は、例示的な実装における様々な導電路および電流センサの配置を示す、PCBの平面図である。
図5図5は、本開示の一実施形態に係る、電流センサをPCBに組み込むための方法を模式的に示す図である。
図6図6は、本開示の一実施形態に係る、電流センサおよび信号処理モジュールを備えるシステムを模式的に示す図である。
図7図7は、本開示の一実施形態に係る、電気鉄道の駆動系のためのモータコンバータを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は様々な変形および代替的な形式に変更可能であるが、特定の実施形態は、本明細書で詳細に説明する図面において例示の方法によって示されている。しかし、本明細書における詳細な説明および本明細書に添付された図面は、本発明を開示された特定の形式に限定するようには意図されていないと理解されるべきである。むしろ、その意図は、付属の請求項の範囲内に入るすべての変形、均等物、および代替物を包含することである。
【0042】
本明細書における先行技術文献または比較例へのいかなる言及も、そのような先行技術が、広く知られている、または当該分野において周知の一般的な知識の一部を形成するという自認として考慮されるべきではない。
【0043】
本明細書で用いられる、「備える」、「備えている」という語、および同様の語は、排他的または網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、それらは、「含んでいる、しかし限定されない」を意味するように意図されている。
【0044】
本発明は、以下の多くの図示された例によって説明される。これらの例は、図示および例示のみのために提供され、本発明の範囲を制限するようには意図されていないと解釈されるだろう。代わりに、本発明の範囲は、付属の請求項によって規定されるべきである。さらに、各実施形態の形式において例示が存在するが、本発明は、本明細書で説明された実施形態の組み合わせをも包含すると認識されるだろう。
【0045】
図1Aは、一実施形態に係る、プリント回路基板(PCB)に組み込まれた電流センサを模式的に示す斜視図である。
【0046】
図1Aに図示されるように、厚みdを有するPCB102に組み込まれた電流センサ(一般的に100として表示される)が示されている。電流センサ100は、導電路106を流れる電流104を検知するように配置されている。図示を容易にするため、導電路106はPCB102の両側に延在するとして図示されているが、代わりに、導電路106は、PCB102またはその一部分の厚みdにわたってのみ延在してもよい。
【0047】
導電路106が示され、PCB102内の障害物108に近接している。導電路106と同様に、障害物108はPCB102の両側に延在するとして示されているが、代わりに、障害物108は、PCB102またはその一部分の厚みdにわたってのみ延在してもよい。本質的に、障害物108(妨害するもの、支障があるもの、塞ぐもの等として考えられてもよい)は、電流センサの空間的な配置を制約する。しかし、電流センサ100、そして特にその導電巻線110の形状は、障害物108の存在にも関わらず、導電路106を流れる電流の測定を可能にする。
【0048】
障害物108は、PCB102内のプラスチック製の結合ネジ、またはPCB102の貫通孔のような機械的な障害物などであって、そのため障害物108の近傍に電流センサ100を取り付ける性能を制約する良性または悪性の(inert or benign)障害物であってもよい。
【0049】
また、障害物108は、さらなる導電路(例えば、電子デバイスの隣接するピン、または電流を流し、もしくは流さないPCB102内の接続線もしくは配線など)であってもよい。
【0050】
電流センサ100は導電巻線110を備えており、導電巻線110は、図示の目的のため図面では視認できるが、電流センサの上方および/もしくは下方においてPCB102に含まれる1または複数の層、遮蔽材料、ならびに/またはいくつかの他の部品もしくは素子によって見えづらくてもよい。さらに後述するように、導電巻線は、PCBの厚みd(すなわち、厚みdの全体またはその一部分)にわたって延在する複数の巻きを有する導電部から形成される。
【0051】
図1Aに示すように、導電巻線110は、PCB102の平面(すなわち、図示された座標軸におけるXY平面)において開形状112を形成する。開形状112は、導電巻線110を境界付ける実線として示されているが、これは純粋に説明のためであり、この輪郭は見えなくてもよい。すなわち、開形状112は、導電巻線110の配置によって形成される。導電巻線110が導電路106の周りに楕円弧を形成するように配置されているため、図1Aの例における開形状112は、楕円弧である。しかし、開形状112は、以下でより詳細に説明するように、弧、円弧、U字形状(例えば、曲がったもしくは平らな底部を有する)、直線、開いた四角形もしくは八角形などの開放多角形、またはいくつかの他の開形状などの任意の開形状であってよい。開形状112は、例えば弧の場合に上方または下方からみた際に円環の領域を形成するように、PCB102の平面における延長部(すなわち、幅または厚みを提供する)によってさらに形成されてもよい。
【0052】
開形状112は、第1端部114aおよび第2端部114bを有する(「端部」という用語は、導電巻線110を形成する導電部の電気端子とは関係を有さない)。開形状112は交わる線分を有さず、開形状112は同一の点で開始および終了しない。よって、PCB102上で、開形状112の第1端部114aは、障害物108によって分離された開形状112の第2端部114bとは物理的に異なる位置にある。
【0053】
有利には、導電巻線110は、障害物108に合致するように配置されることが可能な開き(第1端部114aと第2端部114bとの間の間隔によって規定される)を有する開形状112を形成する。図1Aに示すように、電流センサ100(特にその導電巻線110)は、PCB102内の障害物108から、少なくとも第1端部114aから障害物108までの絶縁距離118だけ離間している。
【0054】
この配置は、電流センサ100の導電巻線110が、障害物108によって課される空間的な制限を考慮に入れつつ、最適な磁束収集、組み立ての容易さ、材料の最小限の使用などに向いた形状となることを可能にする。
【0055】
導電巻線110によって形成される開形状112は、検知領域116を画定する。検知領域116は、導電路106を流れる電流(例えば電流104)によって生成される磁束が信頼性高く検知でき、導電路106を流れる電流の測定値を生成するような領域である。よって、センサは、電流センサ100によって電流104が検知できるように、検知領域116内に位置する導電路106を伴うPCB内に配置される。
【0056】
本明細書の議論はPCB102の平面(すなわち、XY平面)の状況において行うが、検知領域116は、3次元的(3D)であってもよい。よって、図1Aに図示された検知領域116は、この3D形状のPCB102の図示された表面への射影された断面図として考えてよい。これは、導電巻線110の開形状112を議論する際と同じ抽象化である。すなわち、図示された開形状112は、導電巻線110の境界の射影(導電巻線110を延長した軸が沿って配置された形状の図示として考えてもよい)である。しかし、導電巻線110の実際の形状は、それがPCB102の厚みdを通過して延在するという3Dであってもよい。
【0057】
本願の議論は直交配置(例えば、導電路および障害物がZ軸に整列されている)に関するが、本願で開示される技術は、例えば、導電路106または障害物108がZ軸に整列されていない配置にも等しく適用できると解釈されるだろう。このような場合、絶縁距離118は、もう1つの方向性に沿って、例えば障害物108および導電巻線110の最接近から決定されてもよい。
【0058】
図1Bは、図1Aの電流センサを上方から(すなわち、Z軸が紙面手前方向である)模式的に示す、PCBの平面図である。PCB102は示されていない。
【0059】
図1Bに示すように、第1端部114aと障害物108の間の絶縁距離118aは、第2端部114bから障害物108への絶縁距離118bよりも小さい。しかし、絶縁距離118aは、絶縁距離118bよりも大きい、または等しくてもよい。
【0060】
電流センサ100の適切な動作に必要な障害物108からのいくらかの最小の間隔が存在する場合、絶縁距離118aを絶縁距離118bと等しくすることが有利である可能性がある。このようにして、導電巻線110の開形状112内における導電路106の最大の接近が実現でき、そのため、検知性、正確性、および/または電流センサ100の外部干渉への耐性を増大する。
【0061】
図1Cは、図1Aの電流センサを模式的に示す、PCBの断面図である。当該断面図は、Y方向に整列された導電巻線110の一部分(例えば、図1Bにおける右端部分)でみている。
【0062】
上述したように、導電巻線110はPCB102の厚みdにわたって延在する複数の巻き120を有する導電部から形成されている。作図上の目的のため、約5つの巻き120が示されている。しかし、複数の巻き120は、4~100の範囲内の巻きを備えてもよい。導電巻線110におけるより少ない巻き120は、電流センサ100のより大きな帯域幅、および/またはよりよい周波数応答を可能にできるが、より少ない磁束収集の能力しか存在しない。これらの要因の有利なトレードオフは、8~32の範囲内の複数の巻き120を使用することによって実現できる。
【0063】
上述したように、導電巻線110の巻き120は、それを通る磁力線の通過を可能にするよう、ある場所(すなわち、X-Z平面内の場所)を囲む。
【0064】
図1Cに図示されたPCB102は4つの層(各々は点線で模式的に示されている)を有するが、PCB102はより多くの、またはより少ない層を有してもよい。導電巻線110の巻き120は、この図示された例においてPCB102の第2層から第3層に延在し(下から順に数えている)、導電巻線110が形成された導電部は、第1電気端子122aおよび第2電気端子122bを有する。
【0065】
さらに、図示された例では、第2電気端子122bへの戻りが第1電気端子122aと一緒に配置されるために、PCB102の第1および第4層間に設けられた電気戻りループ124が存在する。いくつかの例では、これらの端子122aおよび122bは、導電巻線110の第1端部114aまたは第2端部114bに一緒に配置されてもよい。
【0066】
また、図1Cには、遮蔽材料(上部遮蔽部分126aおよび下部遮蔽部分126bとして示されているが、以下の文章では一般に遮蔽材料126と呼ぶ)が示されている。遮蔽材料は、導電路106内の電流104以外の電磁放射源から導電巻線110を少なくとも部分的に遮蔽するように設けられている。図示された例では、遮蔽材料126は、PCB102の第1および第4層、すなわち示されたようにPCB102の最上および最下層に配置されている。しかし、他の層が用いられてもよいと解釈されるだろう。さらに、遮蔽材料126は、追加的または代替的に、他の方向からの(例えば、X軸に沿って)導電巻線110の遮蔽を提供するように、PCB102の厚みdにわたって延在するように配置されてもよいと解釈されるだろう。
【0067】
遮蔽材料126は、導電材料であってよく、また、それが無ければ導電巻線110に変動を来たし、例えば電流センサ100からの電流測定値の結果における不正確性を生じさせうる電磁的干渉を仕切る「幕」として考えてもよい。遮蔽材料126の遮蔽/仕切り性能を補助するため、遮蔽材料126の一部分126aおよび126bは、互いに、および/またはグランド接続128と電気的に接続されてもよい。
【0068】
いくつかの例では、図示されたように、遮蔽材料126は、第1電気端子122aから第2電気端子122bへの電気的な戻りの少なくとも一部を形成してもよい。これは、外部の電磁的干渉への改善された耐性を保ちつつ、より少ない層を有するPCB102に電流センサを取り付けることを有利に可能にできる。このような例では、遮蔽材料126は、有利には、導電性を有し、導電巻線110と同じ導電部から形成されてもよい。
【0069】
図1Dは、図1Aの導電巻線110の代替的な構成を示しており、戻りループ124は、導電巻線110の最初のループと同様の経路に沿って形成されている。図1Cおよび1Dに示す戻りループ124はZ方向における磁場(干渉)を打ち消し、図1Dに示す構成は、PCB102において空間的に占めること(例えば、層および/または厚みなど)のさらなる低減を実現できる。
【0070】
図2は、例示的な実装における様々な開形状112を示す、PCB102の平面図である。
【0071】
上述したように、導電巻線110の開形状112は、PCB102の平面への射影から(すなわち、PCBの上方またはPCBの下方から)みた場合、PCB102におけるその配置の空間的な境界として考えてよい。よって、図2に図示された開形状112は、構成要素ではなくてよいが、代わりに、PCB102の平面における導電巻線110の一般的な配置を表示しているといえる。
【0072】
開形状112の第1の例は、楕円弧である弧112aである。弧112aは、代わりに、円弧であってもよい。通電する導電路から放射する理想的な磁力線は、円形の経路を有する。よって、円弧は、例えばそこを流れる電流(電流104など)を有する同心に配置された導電路(導電路106など)からのより大きな量の磁束を有利に集めることができる。
【0073】
開形状112のさらなる例は、ある角度(すなわち、直角または何らかの他の角度)で結合された2つの直線として考えることが可能なL字形状112bである。代替的に、開形状112は、例えば平らな底部を有し、ある角度で結合された3つの直線として考えることが可能なU字形状112cであってもよい。この構想の拡張は、開形状112を形づくるようにそこから除かれた部分を有する矩形の箱形状(すなわち、開いた多角形の一例である開いた矩形)でありうる。代替的に、これらの線のいくつか、またはすべては、曲がっていてもよい。
【0074】
開形状112は、代わりに、直線112dまたは2つの直線112d(平行に配置された場合に「等号」の配置を形成するような)から形成されてもよい。直線112dは、単一の電流センサを形成するように、個々に積分回路に接続されてもよいし、および/または接続線もしくは配線(点線によって示されている)によって互いに電気的に接続されてもよい。
【0075】
導電巻線110を、直線を含む形状に配置することは、電流センサ110の構築を実質的に簡略化できる。それは、さらに直線間の結合角を直角に構築することを簡略化できる。
【0076】
全体的に均一な幅の導電巻線110が図示されているが、空間的制約、構築の際の考慮、または他の動機によって、幅を変化させる(すなわち、導電巻線110の長手に沿った巻きのサイズを変化させる)必要性があってもよい。
【0077】
図3は、例示的な実装における電流センサ100a-g、導電路106および障害物108の様々な配置を示す、PCB102の平面図である。
【0078】
図示の目的のため、電流センサ100a-gは、この例の弧において、その導電巻線によって規定される開形状によって表現されている。
【0079】
電流センサ100aは、導電路106を少なくとも部分的に取り巻くまたは囲むように配置されているが、電流104を起源とする磁力線が通過するように導電路106が配置されている限り、導電巻線の形状によって画定される検知領域の大きさまたは形状は、このことを要求しなくてもよい。電流センサ100aは、障害物108に近接している。電流センサ100aの開きは、開形状の第1および第2端部がその近接する障害物108から等しい絶縁距離を有するように配置されている。図3において、当該開形状が有利に障害物108を回避することを見ることができる。
【0080】
電流センサ100bおよび100cは、PCB102の平面において対称に配置されている。また、電流センサ100aおよび100dは、PCB102の平面において対称に配置されている。
【0081】
また、電流センサ100dおよび100eは、PCB102の平面において対称に配置され、異なる導電路106を流れる電流を測定するように配置されている一方、これらに近接する同一の障害物108を有する。
【0082】
また、電流センサ100fおよび100gは、PCB102の平面において対称に配置され、2つの障害物108に相互に近接する一方、同一の導電路106を流れる電流を測定するように配置されている。よって、電流センサ100fおよび100gに近接する障害物108が完全にまたは取り巻く形状を有する電流センサ100の取り付けを妨げるが、複数の電流センサ(例えば100fおよび100g)は、導電路106を流れる同一の電流を個々に測定するように配置できる。
【0083】
PCB102の平面における対称性は、例えば先の図面で規定したようなX、YおよびZ方向のいずれかに沿って対称の平面を含むと解釈されるだろう。さらに、電流センサ100a-gはすべて同一のPCB102上に取り付けられ/配置されているように示されているが、電流センサ100a-gは、代わりに、例えば少なくとも互いに空間的に固定された、分かれたPCB上に取り付けられ/配置されてもよい。
【0084】
電流センサの対称的な配置(すなわち、導電巻線の形状がPCBの平面に平行または垂直なある平面において実質的に対称である)は、1つの電流センサを通過する導電路からの磁束の、もう1つの電流センサを通過する導電路からの磁束に対する、予測可能または釣り合いの取れた影響を可能にする。よって、他の電流からの干渉は、測定された電流信号/電流量に容易く加えられ、またはそこから取り除かれることができる。
【0085】
いくつかの例において、第1電流センサ(例えば100a)の第1検知領域は、第1電流によって誘導された第1磁束を集めるように配置され、第2電流センサ(例えば100d)の第2検知領域は、当該第1磁束を集めるように配置される。そして、信号処理モジュールは、電流センサ100aに関係する導電路を流れる電流の量/信号値を生成する、およびその逆をするように、電流センサ100aおよび100dの両方からの信号を処理するように用いられてもよい。
【0086】
さらなる例によれば、第1導電路106を流れる第1電流は、制御信号に従って制御されてもよい。例えば、第1導電路は、半導体トランジスタのピンであってもよい。これは、半導体トランジスタがゲートピン上の電圧によって制御されるスイッチとして使用される例示的な状況を表現する。このような場合、半導体トランジスタのスイッチングからの結果の電流が測定できるように、トランジスタの主電流を流すピン(ドレイン、ソース、コレクタ、エミッタ、またはトランジスタの種類に依存する同様のもの)を流れる電流が測定されることが有利である。
【0087】
この具体例において、信号処理モジュールが第1電流に対する制御信号の少なくとも一部に基づいて第2電流(例えば隣接するトランジスタスイッチのピン)の電流測定値を生成するようにさらに構成されるように、制御信号が信号処理モジュールに供給されてもよい。例えば、近くの電流の磁気的干渉が少なくとも当該制御信号に基づいて推定されてもよく、あるいは、第1電流がオフである(すなわち、第1導電路に電流が流れていない)と制御信号が表示する際に第2電流の電流測定値を取得することがタイミング付けられてもよく、これにより、電流測定値に電磁的干渉が存在しないことが期待される。
【0088】
また、電流センサを導電路106の近くに対して配置して、そこからの干渉を軽減するような干渉磁場が生成されることを期待し、よって遮蔽材料の必要性、または干渉を低減するための他の技術(例えば信号処理)を軽減することができる。
【0089】
図4は、例示的な実装における様々な導電路A-Cおよび電流センサ(再び弧形状で表示されている)の配置を示す、PCB(図示せず)の平面図である。
【0090】
電流センサの開いた(弧)形状は、上記説明のように、第1端部および第2端部を有する。第1端部および第2端部は、第1端部および第2端部を通過する開きの軸130aと、第1端部と第2端部との間の軸130a上の中点とを規定する。また、開きの軸130aに垂直であり当該中点を通過する軸130bが図示されている。
【0091】
3つの例示的な導電路A、BおよびC(紙面奥に向かう)が示されており、点線は、それらの結果生じる磁場である。導電路Aは実質的に軸130bに整列されており、導電路Bは実質的に軸130aに整列されており、導電路Cはこれらの間のどこかにある。
【0092】
図4に示すように、Aからの磁力線のすべて(Aと符号付けられている)は、導電巻線に進入し(すなわち、下方から)、かつ導電巻線から退出し(すなわち、上端において)、そのため導電路Aからの起電力の寄与は打ち消される。
【0093】
Bからの磁力線の大部分(Bと符号付けられている)は、導電巻線を1回のみ横切り、そのため導電路Bからの寄与は打ち消さない。
【0094】
導電路CはAとBの間のどこかにあるが、いくつかの磁力線(例えばC1)は打ち消す一方、その他(例えばC2)は打ち消さないようにみえる。よって、電流を有する導電路の近くに対する電流センサの開きの有利な配置は、当該開きの端部の間のおおよそ半分の位置にある軸に沿うことであるといえ、すなわち、第1端部および第2端部は、開きの軸130aに垂直であり当該中点を通過する軸130bが導電路Aの位置と合致するように、導電路Aの近くに対して配置される。
【0095】
図5は、本発明の一実施形態に係る、電流センサをPCBに組み込むための方法500を模式的に示す図である。
【0096】
方法500は、ブロック510によって表示された、PCBの平面において第1導電巻線を開形状に配置することを含む。
【0097】
この方法500によれば、開形状は、第1端部および第2端部を有し、PCBの平面における検知領域であって、検知領域内に配置された第1導電路を流れる電流を検知するための、検知領域を規定する。さらに、第1導電巻線は、PCBの厚みにわたって延在する複数の巻きを有する導電部から形成され、第1導電巻線は、PCB内の障害物から、少なくとも第1端部から障害物までの絶縁距離だけ離間している。
【0098】
方法500は、当該配置することの前に、例えば絶縁距離を最小にする、および/または電流から放射する磁束を集める電流センサの能力を最大にするという視点から、絶縁距離を決定することをさらに含んでもよい。
【0099】
当該決定は、導電路を流れる電流の大きさに基づいてもよく、なぜなら、例えばこれが、導電路からどのくらい離れていれば導電巻線がそこから放射する磁場を依然として検知可能であるか(すなわち、検知領域と導電路の重複)に影響する可能性があるからである。
【0100】
当該絶縁距離の決定は、例えばPCBにおける導電巻線の設置(取り付け/組み込み)の機械的な限界に影響しうる障害物のサイズに基づいてもよい。さらに、障害物が導電路である場合、当該サイズ(すなわち、サイズまたは形状)は、その電磁的性質に影響する可能性がある。
【0101】
当該決定は、追加的または代替的に、第1導電巻線と障害物との間の電位差に基づいてもよく、なぜなら、これが、例えば導電巻線と障害物との間の電気アークの傾向に影響するからである。
【0102】
当該決定は、追加的または代替的に、第1導電巻線と第1導電路との間の電位差に基づいてもよく、なぜなら、これが、例えば導電巻線と導電路との間の電気アークの傾向に影響するからである。
【0103】
当該決定は、追加的または代替的に、第1導電路と障害物との間の電位差に基づいてもよく、なぜなら、これが、例えば導電路と障害物との間の電気アークの傾向に影響するからである。
【0104】
追加的または代替的に、絶縁部の決定は、絶縁材料を構成する材料に基づいてもよい。例えば、絶縁材料(すなわち、絶縁距離に沿って絶縁部を提供する材料)がよい絶縁性を有する場合、絶縁距離は低減できる。これは、電流センサがその構成において、よりいっそう密集であることを可能にする。
【0105】
図6は、一実施形態に係る、電流センサ100Lおよび100R、ならびに信号処理モジュール134を備えるシステム600を模式的に示す図である。
【0106】
図6に示すように、第1PCB102aに組み込まれ、第1障害物108aに近接して位置する第1導電路106aを流れる第1電流を検知する第1電流センサ100Lが存在する。この電流センサ100Lは、上述したものと同一または類似であってよい。システム600は、さらに、第2PCB102bに組み込まれ、第2障害物108bに近接して位置する第2導電路106bを流れる第2電流を検知する第2電流センサ100Rを備える。物理的な配置は図3を参照して上述したように一般的でよいため、図6は、PCB102aおよび102bの物理的な配置を示すように意図されていない。
【0107】
第1電流センサ100Lはブロック132aで表現された第1センサ信号を出力し、第2電流センサ100Rはブロック132bで表現された第2センサ信号を出力する。
【0108】
図示されたシステムは、さらに、第1電流センサ100Lおよび第2電流センサ100Rからのセンサ信号132aおよび132bを処理する信号処理モジュール134を備える。
【0109】
信号処理モジュール134は、第2電流センサ100Rからのセンサ信号の少なくとも一部に基づいて、第1電流(すなわち、導電路106aを流れる電流)の電流測定値を生成するように構成されている。よって、第1導電路106aから放射する磁束は、第1電流センサ100Lおよび第2電流センサ100Rの導電巻線によって集められ、信号処理モジュール134によって生成された第1導電路106aを流れる電流の電流測定値に寄与するために用いられてもよい。一般的に、電流センサ100Rは1または複数の電流センサであってよく、すべてが既知の制御信号に従って制御される。第1電流(すなわち、第1導電路106aを流れる電流)は、電流センサ100Rで例示される1または複数のこれらの電流センサからのセンサ信号の少なくとも一部に基づいてもよい。
【0110】
いくつかの例において、既知の制御信号は、第1電流の電流測定値の生成において用いられてもよい。すなわち、第2導電路106bを流れる第2電流の制御信号は、第2電流が一時停止したことを表示してもよく、これは、第1電流センサ100Lから測定された第1導電路106aの電流が隣接する106bを流れる電流からの寄与によって過度に影響されないということを確認するために用いられてもよい。同様の方法で、第2電流からの影響は、制御信号に基づいて推定され、従って第1電流の電流測定値を生成する際に信号処理モジュール134によって計算に入れられてもよい。
【0111】
図7は、一実施形態に係る、電気鉄道の駆動系のためのモータコンバータ136を模式的に示す図である。
【0112】
モータコンバータ136は、例えばモータコンバータの136の動作を制御するトランジスタ138を有してもよい。トランジスタ138は、上記説明で説明された電流センサと同一または類似であり、トランジスタ138のピン140を流れる電流を検知するように配置された電流センサ100を有するピン140を有する。
【0113】
トランジスタ138は、ドレインまたはソースピン(もしくはコレクタ、エミッタ、またはトランジスタの種類に依存する類似のもの)などのピンを有してもよい。一例として、電流センサ100がドレインピン(そして上述のように導電路である)を流れる電流を測定してもよく、よって、ソースピンは、上記説明で説明された障害物108の意味における障害物として考えてもよい。よって、電流センサ100は、ドレインピン140(トランジスタ138の主電流を流す)を流れる電流を測定するように配置できることに加え、トランジスタ138の他のピンから離間することもできる。
【0114】
トランジスタは技術が進歩するにつれてより近くに詰め込まれるため、本発明は、高い正確性、高い帯域幅、上述した干渉への耐性の優位性を維持しつつ、増加する密集した電子環境における電流の測定を有利に提供できる。
【0115】
明示的に表明された場合を除いて、異なる図面において示された例は、組み合わせることができ、異なる図面において似通った参照番号を有する要素は、互いに同一または類似であってもよいと解釈されるだろう。いかなる事件においても、上記説明は本発明の範囲を限定するものではないし、本発明は下記の請求項の範囲によってのみ規定されると意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】