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特表2024-527425ヒト血液タンパク質ビトロネクチンを阻害するための組成物および方法
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  • 特表-ヒト血液タンパク質ビトロネクチンを阻害するための組成物および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ヒト血液タンパク質ビトロネクチンを阻害するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240717BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240717BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240717BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240717BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K47/36
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/32
A61K9/08
A61K9/06
A61P43/00 111
A61P27/02
A61K38/02
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503666
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 US2022037704
(87)【国際公開番号】W WO2023003949
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/224,214
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517006821
【氏名又は名称】サンフォード バーナム プレビーズ メディカル ディスカバリー インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】マラッシ,フランチェスカ・エム
(72)【発明者】
【氏名】シン,ギョンス
(72)【発明者】
【氏名】ケント,ジェームス,イー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD22Z
4C076DD25Z
4C076DD30Z
4C076DD38X
4C076DD41Z
4C076DD43Z
4C076DD49Z
4C076EE06X
4C076EE32X
4C076EE58G
4C076FF17
4C076FF57
4C076FF61
4C084AA17
4C084BA44
4C084MA17
4C084MA28
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZC411
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
(57)【要約】
ヒト血液タンパク質ビトロネクチンの活性を阻害する方法が、開示される。方法は、ヒト血液タンパク質ビトロネクチンのカルシウムおよびヒドロキシアパタイト結合部位の活性を阻害する組成物を投与すること、を含む。眼科用組成物もまた、開示される。組成物は、1,000ダルトン未満の分子量を有する有効量の有機化合物;ならびに、増粘剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、可溶化剤、保存剤、清涼化剤、および軟膏基剤からなる群から選択されるうちの1種以上、を含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト血液タンパク質ビトロネクチンの活性を阻害するための方法であって、
前記ヒト血液タンパク質ビトロネクチンのカルシウムおよびヒドロキシアパタイト結合部位の活性を阻害する組成物を、投与すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ヒト血液タンパク質ビトロネクチンが、ヒトの眼において存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、1,000ダルトン未満の分子量を有する有効量の有機化合物を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、眼科用組成物である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、増粘剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、可溶化剤、保存剤、清涼化剤、および軟膏基剤からなる群から選択されるうちの1種以上をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記増粘剤が、ジェランガムまたはキサンタンガムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記カルシウムおよびヒドロキシアパタイト結合部位が、前記ヒト血液タンパク質ビトロネクチンのHXドメインである、請求項3記載の方法。
【請求項8】
前記有機化合物が、前記HXドメインに結合する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、地図状萎縮すなわち加齢黄斑変性を処置するための方法である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
VnへのHAP/Caの結合を阻害し、1,000ダルトン未満の分子量を有する、有効量の有機化合物;ならびに
増粘剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、可溶化剤、保存剤、清涼化剤、および軟膏基剤からなる群から選択されるうちの1種以上、
を含有する、眼科用組成物。
【請求項11】
前記増粘剤が、ジェランガムまたはキサンタンガムである、請求項10に記載の眼科用組成物。
【請求項12】
前記pH調整剤が、塩酸、クエン酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンからなる群から選択される、請求項10に記載の眼科用組成物。
【請求項13】
前記湿潤剤が、グリセリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マンニトール、ポリビニルアルコール(PVA)、およびヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される、請求項10に記載の眼科用組成物。
【請求項14】
前記眼科用組成物が、点眼液または眼軟膏である、請求項10に記載の眼科用組成物。
【請求項15】
前記眼科用組成物が、地図状萎縮すなわち加齢黄斑変性を処置するためのものである、請求項10に記載の眼科用組成物。
【請求項16】
ヒトの眼におけるドルーゼン形成を処置または予防するための方法であって、
眼におけるドルーゼン形成の処置または予防を必要とする患者を特定すること;ならびに
ビトロネクチン-カルシウム結合および/またはビトロネクチン-ヒドロキシアパタイト結合を阻害する有効量の組成物を、前記患者の眼に投与すること、を含む、方法。
【請求項17】
ヒト血液タンパク質ビトロネクチンの活性を阻害するための方法であって、
ビトロネクチン依存性ヒドロキシアパタイト沈着を阻害する組成物を投与すること、
を含む、方法。
【請求項18】
前記ヒト血液タンパク質ビトロネクチンが、ヒトの眼において存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、1,000ダルトン未満の分子量を有する有効量の有機化合物を含有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、眼科用組成物である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、増粘剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、可溶化剤、保存剤、清涼化剤、および軟膏基剤からなる群から選択されるうちの1種以上をさらに含有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記増粘剤が、ジェランガムまたはキサンタンガムである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、地図状萎縮すなわち加齢黄斑変性を処置するための方法である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
ビトロネクチン依存性ヒドロキシアパタイト沈着を阻害し、1,000ダルトン未満の分子量を有する、有効量の有機化合物;ならびに
増粘剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、可溶化剤、保存剤、清涼化剤、および軟膏基剤からなる群から選択されるうちの1種以上、
を含有する、眼科用組成物。
【請求項25】
前記増粘剤が、ジェランガムまたはキサンタンガムである、請求項24に記載の眼科用組成物。
【請求項26】
前記pH調整剤が、塩酸、クエン酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンからなる群から選択される、請求項24に記載の眼科用組成物。
【請求項27】
前記湿潤剤が、グリセリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マンニトール、ポリビニルアルコール(PVA)、およびヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される、請求項24に記載の眼科用組成物。
【請求項28】
前記眼科用組成物が、点眼液または眼軟膏である、請求項24に記載の眼科用組成物。
【請求項29】
前記眼科用組成物が、地図状萎縮すなわち加齢黄斑変性を処置するためのものである、請求項24に記載の眼科用組成物。
【請求項30】
ヒトの眼におけるドルーゼン形成を処置または予防するための方法であって、
眼におけるドルーゼン形成の処置または予防を必要とする患者を特定すること;および
ビトロネクチン依存性ヒドロキシアパタイト沈着を阻害する有効量の組成物を、前記患者の眼に投与すること、を含む、方法。
【請求項31】
前記組成物が、
化学物質(chemical entity);ならびに
増粘剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、可溶化剤、保存剤、清涼化剤、および軟膏基剤からなる群から選択されるうちの1種以上、
を含有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記化学物質が、1,000ダルトン未満の分子量を有する有機化合物である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記化学物質が、抗体、ナノボディ、またはペプチドである、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年7月21日に出願された米国仮特許出願番号63/224,214への利益を主張し、あらゆる目的のために、その全開示が本明細書で参考として援用される。
【0002】
政府の権利
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)より授与されたGM118186のもと政府支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、ヒト血液タンパク質ビトロネクチン(vitronectin)(Vn)を阻害するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
地図状萎縮とは、後期の加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)の一部としての、網膜の中心部である黄斑の慢性進行性変性である。この疾患は、網膜外側組織、網膜色素上皮および脈絡毛細管枝の局所的で境界のはっきりした萎縮を伴う。この疾患は、通常、中心窩の周囲領域から始まり、時間の経過とともに中心窩を侵すように拡大し、中心暗点や永続的な視力低下をもたらす。
【0005】
AMD患者の数は2020年には1億9600万人を超え、2040年までには2億8800万人に達すると推定されている。AMDへの進行の指標としては、網膜下の小石状の石灰化した黄白色のタンパク質-脂質沈着物であるドルーゼンの出現が挙げられる。AMDの形態には、滲出型(湿潤型)と萎縮型(乾燥型)がある。滲出型AMDに対しては現在有望な処置法がいくつかあるが、萎縮型AMDすなわち地図状萎縮に対してはFDAが承認した処置法は存在しない。萎縮型AMDすなわち地図状萎縮に対する効果的な処置法が、必要とされている。
【0006】
(発明の概要)
1つの実施形態において、本発明は、ヒト血液タンパク質ビトロネクチンの活性を阻害するための方法を提供する。当該方法は、ヒト血液タンパク質ビトロネクチンのカルシウムおよびヒドロキシアパタイト結合部位の活性を阻害する組成物を投与することを含む。いくつかの態様において、前記組成物は、AMD関連ドルーゼン形成を阻害する。いくつかの態様において、当該方法は、AMDに関連する異所性沈着物の量を減少させる。いくつかの態様において、当該方法は、AMDに関連する異所性沈着物の形成を防止する。いくつかの態様において、当該方法は、AMDに関連する異所性沈着物の量を減少させる処置を必要とする患者を特定することを含む。いくつかの態様において、前記ヒト血液タンパク質ビトロネクチンは、ヒトの眼において存在する。
【0007】
別の実施形態において、前記組成物は、1,000ダルトン未満の分子量を有する、有効量の有機化合物を含む。
【0008】
別の実施形態において、前記組成物は、眼科用組成物である。
【0009】
別の実施形態において、前記組成物は、増粘剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、可溶化剤、保存剤、清涼化剤、および軟膏基剤からなる群から選択されるうちの1種以上を、さらに含む。
【0010】
別の実施形態において、前記増粘剤は、ジェランガムまたはキサンタンガムである。
【0011】
別の実施形態において、前記カルシウムおよびヒドロキシアパタイト結合部位は、前記ヒト血液タンパク質ビトロネクチンのHXドメインである。
【0012】
別の実施形態において、前記有機化合物は、前記HXドメインに結合する。
【0013】
別の実施形態において、本方法は、地図状萎縮すなわち加齢黄斑変性を処置するための方法である。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、
1,000ダルトン未満の分子量を有する有効量の有機化合物;ならびに
増粘剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、可溶化剤、保存剤、清涼化剤、および軟膏基剤からなる群から選択されるうちの1種以上、を含有する眼科用組成物を、提供する。
【0015】
別の実施形態において、前記増粘剤は、ジェランガムまたはキサンタンガムである。
【0016】
別の実施形態において、前記pH調整剤は、塩酸、クエン酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンからなる群から選択される。
【0017】
別の実施形態において、前記湿潤剤は、グリセリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マンニトール、ポリビニルアルコール(PVA)、およびヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される。
【0018】
別の実施形態において、前記眼科用組成物は、点眼液または眼軟膏である。
【0019】
別の実施形態において、前記眼科用組成物は、地図状萎縮すなわち加齢黄斑変性を処置するためのものである。
【0020】
別の実施形態において、本出願は、ヒトの眼におけるドルーゼン形成を処置または予防するための方法を提供する。当該方法は、眼におけるドルーゼン形成の処置または予防を必要とする患者を特定すること;ならびに、ビトロネクチン-カルシウム結合および/またはビトロネクチン-ヒドロキシアパタイト結合を阻害する有効量の組成物を、前記患者の眼に投与すること、を含む。
【0021】
別の実施形態において、本出願は、ヒト血液タンパク質ビトロネクチンの活性を阻害するための方法を提供する。当該方法は、ビトロネクチン依存性ヒドロキシアパタイト沈着を阻害する組成物を投与することを含む。
【0022】
別の実施形態において、前記ヒト血液タンパク質ビトロネクチンは、ヒトの眼において存在する。
【0023】
別の実施形態において、前記組成物は、1,000ダルトン未満の分子量を有する有効量の有機化合物を、含有する。
【0024】
別の実施形態において、前記組成物は、眼科用組成物である。
【0025】
別の実施形態において、前記組成物は、増粘剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、可溶化剤、保存剤、清涼化剤、および軟膏基剤からなる群から選択されるうちの1種以上を、さらに含有する。
【0026】
別の実施形態において、前記増粘剤は、ジェランガムまたはキサンタンガムである。
【0027】
別の実施形態において、当該方法は、地図状萎縮すなわち加齢黄斑変性を処置するための方法である。
【0028】
別の実施形態において、本出願は、
ビトロネクチン依存性ヒドロキシアパタイト沈着を阻害し、1,000ダルトン未満の分子量を有する、有効量の有機化合物;ならびに
増粘剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、可溶化剤、保存剤、清涼化剤、および軟膏基剤からなる群から選択されるうちの1種以上、を含有する眼科用組成物、を提供する。
【0029】
別の実施形態において、前記増粘剤は、ジェランガムまたはキサンタンガムである。
【0030】
別の実施形態において、前記pH調整剤は、塩酸、クエン酸、リン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンからなる群から選択される。
【0031】
別の実施形態において、前記湿潤剤は、グリセリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マンニトール、ポリビニルアルコール(PVA)、およびヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される。
【0032】
別の実施形態において、前記眼科用組成物は、点眼液または眼軟膏である。
【0033】
別の実施形態において、前記眼科用組成物は、地図状萎縮すなわち加齢黄斑変性を処置するためのものである。
【0034】
別の実施形態において、本出願は、ヒトの眼におけるドルーゼン形成を処置または予防するための方法を提供する。当該方法は、眼におけるドルーゼン形成の処置または予防を必要とする患者を特定すること;およびビトロネクチン依存性ヒドロキシアパタイト沈着を阻害する有効量の組成物を、前記患者の眼に投与すること、を含む。
【0035】
別の実施形態において、前記組成物は、
化学物質(chemical entity);ならびに
増粘剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、可溶化剤、保存剤、清涼化剤、および軟膏基剤からなる群から選択されるうちの1種以上、を含有する。
【0036】
別の実施形態において、前記化学物質は、1,000ダルトン未満の分子量を有する有機化合物である。
【0037】
別の実施形態において、前記化学物質は、抗体、ナノボディ、またはペプチドである。
【0038】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明は、両方とも例示的かつ説明的なものであり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供することを意図していることを、理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を示し、本明細書とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0040】
図1図1は、VnがHAP形成を促進することを示すin vitroドルーゼンモデルにおける蛍光強度を示す。
図2図2は、Vn抗体がVnによるHAP形成を阻害することを示すin vitroのドルーゼンモデルにおける蛍光強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0042】
老化した眼の網膜色素上皮の下に蓄積する細胞外沈着物は、加齢黄斑変性の特徴である。異所性沈着物は、血中タンパク質、脂質、およびヒドロキシアパタイトを豊富に含む。ミネラル化した沈着物も、黄斑変性症の進行に関連している。
【0043】
ヒト血液タンパク質ビトロネクチン(Vn)は、複数のリガンドと相互作用して、止血、細胞接着および細胞遊走、自然免疫、組織リモデリング、ならびに骨リモデリングを調節するヒト血液タンパク質である。Vnは、可溶性のカルシウムイオンおよび固体のヒドロキシアパタイトの両方に、化学的特異性をもって結合する。Vnはまた、バイオミネラリゼーションの核となり、脂質滴周囲のドルーゼン沈着を促進する可能性がある。Vn/脂質/ヒドロキシアパタイト(HAP)小球体に干渉することにより、AMDのドルーゼン形成が阻害される可能性がある。従って、VnのカルシウムおよびHAP結合部位の活性を阻害する組成物は、AMDに関連するヒト眼における異所性沈着物の形成を、減少させるまたは防止する可能性がある。
【0044】
血中において、Vnは、インタクトな75,000Daのグリコシル化分子として、または65,000Daおよび10,000Daの2つのジスルフィド結合ポリペプチドとして、循環する。Vnの配列は、プラスミノーゲンの活性化を調整することを担う44残基のソマトメジンBドメインから始まり、インテグリン受容体との結合を介在するArgGlyAspモチーフが続く。これらは、立体構造の乱れが予測される90残基のセグメントによって、HXドメインに連結されている。325残基のHXドメインは、成熟(mature)Vnの配列の約70%を含み、重要な結合部位を含んでいる。
【0045】
HXドメインの構造には、4枚のブレードを持つβプロペラが含まれており、各ブレードは1つのβββαHXリピートによって形成され、末端はジスルフィド結合によって接続されている。プロペラ上部(各β1の始点と定義)は滑らかな表面を形成し、下部からはより長い柔軟なループが突き出ている。4本のβ1ストランドはプロペラの中心で会合して、金属-塩化物-金属イオンのトリプレットを閉塞するチャネルを形成する。チャネル内部では、塩化物が4つのβ1アミド水素によって結合され、各金属イオンは、4つのβ1カルボニル酸素に加えて水または硫酸塩からの酸素によって、配位される。
【0046】
VnのHXドメインは、高い親和性と化学的特異性をもって、可溶性イオン化カルシウムおよび結晶性ヒドロキシアパタイトの両方に結合することができる。循環Vnは、in vivoでカルシウム結合している。カルシウム結合部位は、Vn-HXプロペラの上部に位置し、ここで、4つのAspが、チャネル開口部の上方に高度に集中した電気陰性の電位を生成する。カルシウムがチャネル内で閉塞する可能性は低い。同じ部位がイオン化カルシウムとヒドロキシアパタイトの両方の結合に関与しており、イオン化カルシウムは、ヒドロキシアパタイトに対するVnの親和性を、協同的に高める。
【0047】
カルシウムに対するリン脂質の親和性はよく知られており、リン脂質は膜表面でリン酸カルシウムクラスターを核形成することが示されている。従って、脂質リン酸基は、脂質液滴表面でのVnを介したHAPのエピタキシャルミネラル化にテンプレートを提供すると予測される。Vnのカルシウム結合親和性は、循環Vnのカルシウム結合状態を維持するのには十分高いが、Vn結合カルシウムをHAPの表面または脂質滴と交換するには十分低い。このようなカルシウム交換相互作用により、HAPの結晶成長を調整し溶解に対して安定化させるVn表面層の蓄積が促進される可能性がある。このように、Vnのカルシウムおよびヒドロキシアパタイト結合部位の活性を阻害する組成物は、AMDに関連するヒト眼におけるドルーゼンおよび/または他の異所性沈着物の形成を阻害し得、および/または不安定化させ、減少させるのに役立つ。
【0048】
Vnの主要ドメインのプロペラ構造は、遊離カルシウムおよびHAPカルシウムを捕捉する。Vn、特にVnの主要ドメインのプロペラ構造は、ドルーゼン形成に積極的な役割を果たしている。HAP結合タンパク質は数多く存在するが、Vnは、HAPのミネラル化と脂質への沈着を促進するという点で独特である。このことは、石灰化ドルーゼンの骨様シェルを画定するHAPのミネラル化を、Vnがどのように組織化するのかを理解することにつながる。具体的には、Vnはリン酸カルシウムクラスター形成の核を形成することによって、HAP形成を開始する。Vnのプロペラドメインは、循環脂質またはHAP表面との、可溶性イオン化カルシウムおよびリン酸の交換を、調整する。このように、Vnを阻害および/または干渉することにより、HAPの沈着およびドルーゼンの形成が阻害され得る。
【0049】
in vitroアッセイは、AMDのドルーゼンにおいて見られるようなプロト小球体(proto-spherule)を産生するように設計された。HAPは特異的蛍光色素で検出された。このアッセイは、阻害物質を発見するために使用された。
【0050】
VnのHXドメインの阻害により、加齢黄斑変性に関連するプラークの形成が防止される。VnのHXドメインの適切な阻害物質は、スクリーン(in vitroアッセイ)によって同定され得る。
【0051】
前記スクリーンにおいて同定された化合物は、ヒトの眼におけるVnの活性を阻害する能力を示す。これらの化合物には、分子量1,000Da未満の有機分子が含まれる。
【0052】
本発明で使用するのに適した医薬組成物には、有効成分をその意図する目的を達成するのに有効な量で含有している組成物が、含まれる。より具体的には、治療有効量とは、処置を受ける対象の発症を予防するか、または既存の症状を緩和するのに有効な量を意味する。有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0053】
本発明の方法で使用されるなんらかの化合物について、治療有効量は、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。例えば、細胞培養で決定されるIC50(細胞の50%が所望の効果を示す用量)を含む循環濃度範囲を実現するために、動物モデルにおいて、用量が策定され得る。このような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために、用いることができる。
【0054】
治療有効量とは、患者における症状の改善または生存期間の延長をもたらす化合物の量を指す。このような化合物の毒性および治療効果は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、LD50(集団の50%に致死する用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定するために、測定され得る。毒性作用と治療効果の用量比が治療指数であり、LD50とED50の比で表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトに使用するため投与量の範囲を策定する際に、使用され得る。このような化合物の投与量は、好ましくはED50を含む循環濃度の範囲内にあり、毒性はほとんどまたは全くない。投与量は、採用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で異なり得る。正確な剤形、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して、個々の医師により選択され得る。投与量および投与間隔は、所望の効果を維持するのに十分な活性部分の血漿レベルをもたらすために、個別に調整され得る。
【0055】
投与される組成物の量は、処置される対象、対象の体重、疾患の重症度、投与方法および処方医の判断によって異なる。
【0056】
このように、本発明に従って使用するための医薬組成物は、薬学的に使用され得る製剤への活性化合物の加工を容易にする賦形剤および助剤を含む一種以上の生理学的に許容される担体を用いて、従来の方法で製剤化され得る。適切な製剤化は、選択される投与経路によって異なる。
【0057】
非経口投与用の医薬製剤には、水溶性形態における活性化合物の水溶液が、含まれる。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性注射用懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなど、懸濁液の粘度を高める物質を含んでもよい。任意で、前記懸濁液はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解度を増加させる適切な安定剤または薬剤を含んでもよい。
【実施例
【0058】
タンパク質の調製
【0059】
Vnを、大腸菌(Escherichia coli)から調製した。全ての緩衝液を、Milli-Q脱イオン水で調製した。カルシウムを含まない調製物を得るために、緩衝液T1(20mMトリスHCl pH8、6M グアニジン、10mM ジチオスレイトール)から緩衝液T2(20mMトリスHCl pH8、500mM ArgCl、300mM NaCl、5mM β-メルカプトエタノール、1mMヒドロキシエチルジスルフィド)への滴下希釈によって、タンパク質をフォールディングし、次いで、緩衝液M1(20mM MES,pH6.5、300mM NaCl)に透析し、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex(登録商標) 200 10/300GL,GE Healthcare)を実施した。緩衝液M1にCaClを補充することによって、カルシウム含有サンプルを調製した。
【0060】
化合物の同定および最適化
【0061】
In vitroドルーゼンモデル:HAP-タンパク質-脂質プロト小球体の産生
【0062】
このモデルでは、蛍光発光は小球体上に沈着したHAPの量を反映した。結果を図1に示す。ビトロネクチンは、用量依存的および時間依存的に小球体へのHAP沈着を増加させる。アミロイド-β(Aβ)は、HAPのミネラル化に、有意な影響を及ぼさない。ピロリン酸(PPi)はミネラル化の阻害物質であり、ネガティブコントロールとしての役割を果たす。多くのHAP結合タンパク質が存在するが、Vnは独特であり、HAPのミネラル化に積極的な役割を果たしている。
【0063】
このアッセイを用いて、潜在的な阻害物質としてのVn抗体を試験した。Vn抗体はAb(Origene;TA321171)、Ab(Antibodies-Online;ABIN1454094)、およびAb(LS-Bio;LS-C407672)である。結果を図2に示す。ビトロネクチンは、用量および時間依存的にHAP沈着を促進する。抗体Abは、Ab:Vnモル比1:10で、Vn依存性HAP沈着を阻害する。この結果は、Vnを阻害することによりHAP沈着とドルーゼン形成を阻害できることを、示している。
【0064】
前記化合物は、Vnの阻害活性をスクリーニングすることにより同定される。同定された化合物は、合理的設計によって、さらに最適化される。
【0065】
阻害活性
【0066】
最適化された化合物の阻害活性を測定する。
【0067】
眼科用組成物
【0068】
有効量の最適化された化合物を含有する眼科用組成物を調製し、試験する。
【0069】
本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、本発明において様々な修正および変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内にある限り、本発明の修正および変更を包含することが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】